(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028222
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】シート状の光硬化性組成物、光硬化性組成物、シート状の光硬化性組成物の製造方法、および積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 299/06 20060101AFI20240222BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20240222BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240222BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240222BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20240222BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240222BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C08F299/06
C08G18/67 010
C08G18/48 079
B32B27/40
C09J7/30
C09J175/14
C09J11/06
C09J4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133436
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2022130982
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡山 竜大
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】根本 崇
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J034
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25J
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】湾曲した被着体を貼り合わせる際に、被着体の変化に追従して貼り合わせることを可能にする光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】以下の(A)成分および(B)成分を含み、成膜成分を含まない、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物。
(A)成分:(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:特定の構造のポリオール
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分および(B)成分を含み、成膜成分を含まない、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:以下のポリオール
【化1】
(ここで、R
1とR
2はそれぞれ独立した水素原子または1価の炭化水素基であり、R
3とR
4はそれぞれ独立した炭素数が3以上であって2価の炭化水素基であり、nとmは1以上のそれぞれ独立した整数である)
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【請求項2】
前記(A)成分の重量平均分子量が1000~50000であり、前記(A)成分は1分子内に(メタ)アクリロイル基を1~4個含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A-2)成分がイソホロンジイソシアネートである、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)成分および前記(B)成分のみ含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、(C)成分としてカップリング剤、(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含み、
前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分のみ含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.1~15質量部含む、請求項5に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
以下の(A)成分、以下の(B)成分および溶剤を含む、光硬化性組成物。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:以下のポリオール
【化2】
(ここで、R
1とR
2はそれぞれ独立した水素原子または1価の炭化水素基であり、R
3とR
4はそれぞれ独立した炭素数が3以上であって2価の炭化水素基であり、nとmは1以上のそれぞれ独立した整数である)
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【請求項8】
以下の(A)成分、以下の(B)成分および溶剤を含む光硬化性組成物から溶剤を揮発させる工程を有する、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物の製造方法。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:以下のポリオール
【化3】
(ここで、R
1とR
2はそれぞれ独立した水素原子または1価の炭化水素基であり、R
3とR
4はそれぞれ独立した炭素数が3以上であって2価の炭化水素基であり、nとmは1以上のそれぞれ独立した整数である)
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【請求項9】
前記揮発を離型紙または離型フィルム上で行う、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の光硬化性組成物と、離型紙または離型フィルムとを有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の様に物体と湾曲した被着体を接着する際には、粘着剤などが使用される。しかしながら、物体と被着体を貼り合わせる際に被着体の形状が変化することで、スプリングバックにより粘着剤が被着体から剥離することが知られている。特に、被着体が難接着なプラスチックなどであると剥離し易くなり、被着体の形状が変化し易い場合さらに剥離し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、物体と湾曲した被着体を貼り合わせる際に被着体の変化に追従することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、硬化前に粘着性を有し、硬化後に接着する光硬化性組成物を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
本発明の第一の実施態様は、以下の(A)成分および(B)成分を含み、成膜成分を含まない、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物である。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:後記一般式1のポリオール
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【0007】
本発明の第二の実施態様は、前記(A)成分の重量平均分子量が1000~50000であり、前記(A)成分は1分子内に(メタ)アクリロイル基を1~4個含む、第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0008】
本発明の第三の実施態様は、前記(A-2)成分がイソホロンジイソシアネートである、第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0009】
本発明の第四の実施態様は、前記(A)成分および前記(B)成分のみ含む、第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第五の実施態様は、さらに、(C)成分としてカップリング剤、(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含み、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分のみ含む、第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0011】
本発明の第六の実施態様は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.1~15質量部含む、第五の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0012】
本発明の第七の実施態様は、以下の(A)成分、以下の(B)成分および溶剤を含む光硬化性組成物である。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
(A-1)成分:後記一般式1のポリオール
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【0013】
本発明の第八の実施態様は、以下の(A)成分、以下の(B)成分および溶剤を含む光硬化性組成物から溶剤を揮発させる工程を有する、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物の製造方法である。
(A-1)成分:後記一般式1のポリオール
(A-2)成分:ポリイソシアネート化合物
(A-3)成分:分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレート
(B)成分:光開始剤
【0014】
本発明の第九の実施態様は、前記揮発を離型紙または離型フィルム上で行う、第八の実施態様に記載の製造方法である。
【0015】
本発明の第十の実施態様は、第一の実施態様に記載の光硬化性組成物と、離型紙または離型フィルムとを有する、積層体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第一の実施態様は、硬化前に粘着性を有し、硬化後に接着性を有する硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物である。本発明の第一の実施態様における光硬化性組成物は、物体と湾曲した被着体を貼り合わせる際に被着体の変化に追従することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細を次に説明する。なお、本明細書においては、「本発明の光硬化性組成物」は、各実施態様の光硬化性組成物を含む概念である。
本発明の第一の実施態様における光硬化性組成物は、以下の(A)成分および(B)成分を含み、成膜成分を含まない。
【0018】
(A)成分は、下記の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーである。(A)成分の重量平均分子量が1000~50000であることが好ましく、さらに好ましくは、5000~45000である。
【0019】
ここで、重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用いたゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)などで測定された値を指す。また、(A)成分は、1分子内に(メタ)アクリロイル基を1~4個含むことが好ましく、2~4個含むことが最も好ましい。さらに、好ましいのは、アクリロイル基を有する(A)成分である。また、以下、アクリロイル基とメタクリロイル基を合わせて(メタ)アクリロイル基とも呼び、(メタ)アクリロイル基を含む化合物を(メタ)アクリレートとも呼ぶ。
【0020】
(A-1)成分は下記の一般式1のポリオールである。一般式1において、R1とR2はそれぞれ独立した水素原子または1価の炭化水素基であり、R3とR4はそれぞれ独立した炭素数が3以上であって2価の炭化水素基であり、nとmは1以上のそれぞれ独立した整数である。
【0021】
【0022】
(A-1)成分に加えて、(A-1)成分とは別のポリオールも使用して(A)成分を合成することもできる。(A-1)成分とは別のポリオールとしては、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カプロラクトンジオール、ビスフェノールポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。中でも、透明性に優れ、耐久性に優れることから、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールなどが好ましい。最も好ましいのは、ポリオールとして(A-1)成分のみを使用することである。
【0023】
(A-2)成分はポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を指す。ポリイソシアネート化合物としては、具体的には芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。中でも、(A)成分の成膜性が良好な観点から、イソホロンジイソシアネートが最も好ましい。
【0026】
(A-3)成分は分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレートである。1分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートを使用することができる。
分子内に水酸基を含む(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコールなどの二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートまたはジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。中でも、(A)成分の成膜性が良好な観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0028】
(A)成分の合成方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を使用することができる。例えば、分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを、モル比(ポリオール化合物:ポリイソシアネート化合物)で好ましくは3:1~1:3、更に好ましくは2:1~1:2の割合で、希釈剤(例えば、メチルエチルケトン、メトキシフェノールなど)中で反応させてウレタンプレポリマーを得る。
【0029】
次いで、更に、得られたウレタンプレポリマー中に残存するイソシアネート基と、これと反応するのに十分な量の少なくとも分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとを反応させて、ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーを合成できる。
【0030】
また、合成時に用いる触媒としては、例えば、オレイン酸鉛、テトラブチルスズ、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセチルオキシジスタノキサン、トリエチルアミン、1,4-ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタン、N-エチルモルホリンなどを挙げることができる。中でも活性が高く、透明性に優れる硬化物が得られることから、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛が好ましい。
【0031】
これらの触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.0001~10質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10~100℃、好ましくは30~90℃である。(A)成分は合成を開始する前の段階で溶剤や後記の(メタ)アクリレートモノマーなどで希釈されていてもよい。
【0032】
(B)成分は、光開始剤である。(B)成分としては、紫外線や可視光などのエネルギー線を光照射することにより分解してラジカル種を発生させれば使用することができる。(B)成分としては、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。照度が低いまたは積算光量が小さい光照射でも光硬化性が向上することから、(B)成分はアシルホスフィンオキサイド系光開始剤を含むことが好ましい。
【0033】
アセトフェノン系光開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどが挙げられるが、この限りではない。
【0034】
ベンゾイン系光開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられるが、この限りではない。
【0035】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられるが、この限りではない。
【0036】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリドなどが挙げられるが、この限りではない。
【0037】
アシルホスフィンオキサイド系光開始剤としては、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイドなどが挙げられるが、この限りではない。
【0038】
本発明の第一の実施態様における光硬化性組成物は、形状維持性および転写性の観点から(A)成分および(B)成分のみ含むことが好ましい。(A)成分100質量部に対して、(B)成分の添加量は0.1~5.0質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~4.0質量部、特に好ましくは1.0~3.0質量部である。(B)成分の添加量が0.1質量部以上であれば光硬化性を発現しやすく、5.0質量部以下であれば硬化物が有色になる可能性が低くなる。
【0039】
本発明の光硬化性組成物は、さらに(C)成分としてカップリング剤、(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことができる。本発明の光硬化性組成物が(C)成分を含む場合、形状維持性および転写性の観点から(A)~(C)成分のみを含むことが好ましい。その際、(C)成分は、(A)成分100質量部に対して0.1~15質量部添加することができる。当該範囲で添加することで、接着力の向上や耐久性の向上を図ることが出来る。ここで、カップリング剤と(メタ)アクリレートモノマーはいずれも25℃で液状である。25℃で液状である成分を(A)成分に加える際には、25℃で液状である成分はカップリング剤および(メタ)アクリレートモノマーのみから選択されることが好ましい。
【0040】
本発明で使用することができるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤が挙げられる。シラン系カップリング剤の具体例として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、その他γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でもより密着性の向上が期待できるという観点で、エポキシ基または(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0041】
本発明で使用することができる(メタ)アクリレートモノマー((A)成分を除く)としては、単官能(メタ)アクリレートモノマー、二官能(メタ)アクリレートモノマー、三官能(メタ)アクリレートモノマー、四官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーとしては二官能の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーは、組成物の粘度を下げるために分子量が10000以下であることが好ましく、さらに好ましくは5000以下であり、最も好ましくは1000以下である。
【0042】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
二官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0044】
三官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
四官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは単独または二種類以上を混合して用いることができる。
【0046】
(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。明確な原因は分からないが、耐久性が向上する観点から、(C)成分におけるモノマーは(メタ)アクリルアミドモノマーを含むことが好ましい。本発明においては(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては、KJケミカルズ株式会社製のDMAA、ACMO、DEAAなどが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0047】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、エーテル結合および(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、エーテル結合の繰り返し構造を1分子中に8~30有するポリエーテルモノマーが最も好ましい。エーテル結合の繰り返し構造の数が8以上のポリエーテルモノマーは、高温高湿の雰囲気下で外部から硬化物内部に透過してくる水分と分離して白濁しない。一方、エーテル結合の繰り返し構造の数が30以下のポリエーテルモノマーは、モノマー同士が結晶化せずに硬化物が白濁しない。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
エーテル結合および(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0049】
エーテル結合および(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートの分子量は200~5000が好ましく、より好ましくは250~3000である。
【0050】
エーテル結合および(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートの具体例としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステル14G、M-90G、AM-130G、M-230G、A-400、A-600、APG-700、A-1000、9G、14G、23G、1206PEなどが、日油株式会社製のPDE-600、PDP-700、ADE-600などが、共栄社化学株式会社製のライトエステルシリーズとして130MA、130A、14EG、14EG-Aなどが挙げられるが、この限りではない。
【0051】
本発明の第一の実施態様における光硬化性組成物は成膜成分(ただし、(A)~(C)成分を除く。)を含まない。また、本発明の第七の実施態様における光硬化性組成物は成膜成分を含まないことが好ましい。(A)成分に対して成膜成分を添加すると本発明の第一の実施態様における光硬化性組成物が硬くなりすぎて初期粘性を発現することができない。成膜成分としては、25℃で固体であり、同じ構造を繰り返す骨格を有するエラストマーや熱可塑性樹脂などが挙げられる。成膜成分の具体例としては、25℃で固体のエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリルポリマー、ポリエステル樹脂、ウレタンエラストマーなどが挙げられる。
【0052】
本発明には、その他成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、溶剤、無機充填剤および有機充填剤などの充填剤、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、染料、顔料、難燃剤、増感剤、熱開始剤、重金属不活性剤、イオントラップ剤、乳化剤、水分散安定剤、消泡剤、離型剤、レベリング剤、ワックス、レオロジーコントロール剤、界面活性剤などの添加剤を配合してもよい。
【0053】
本発明では、(A)成分、(B)成分および溶剤を含む本発明の第七の実施態様における光硬化性組成物から溶剤を揮発させて、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物を製造することができる。
【0054】
溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどの塩素系溶剤、トリクロロフルオロエタンなどのフッ素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤などが挙げられる。上記その他成分との相溶性を考慮するとケトン系溶剤が好ましい。
【0055】
また、シート化工程で加熱により溶剤等の揮発成分を揮発させる。加熱により溶剤等を揮発させた状態において、微量の溶剤等が残量していたとしても、シート状組成物には溶剤等を含んでいないものと解釈する。
【0056】
無機充填剤の具体例としてはガラス粉、フュームドシリカ粉、シリカ粉、アルミナ粉、マイカ粉、シリコーンゴム粉、炭酸カルシウム粉、窒化アルミ粉、カーボン粉、カオリンクレー粉、乾燥粘土鉱物粉、乾燥珪藻土粉、金属粉などが挙げられる。
【0057】
さらに、フュームドシリカ粉としては、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで表面を化学修飾(疎水化)したものなどが挙げられる。その具体例としては、例えば日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズとしてR974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202などの市販品が挙げられる。無機充填剤は、流動性などの改良や硬化物の機械的強度を向上させる目的で添加することができる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
紫外線吸収剤の具体例としては、株式会社ADEKA社製のアデカスタブLA-52、LA-57、LA-63P、LA-68、LA-72、LA-77Y、LA-77Gなど、城北化学工業株式会社製のJF-90、JF-95などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
シート状の光硬化性組成物を得る方法としては、公知の技術を使用することができる。例えば、光硬化性組成物に溶剤を添加して意図的に粘度を下げた原液を作製し、予め表面に離型処理が施された離型フィルムに原液を塗工した後、溶剤を揮発させて光硬化性組成物をシート状に加工する。これにより、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物が得られる。なお、溶剤の揮発は離型フィルム上だけでなく、離型紙上で行ってもよい。このようにして、光硬化性組成物と、離型紙または離型フィルムとを有する積層体が得られる。
また、シート状の光硬化性組成物の片面または両面に離型フィルムを貼り合わせてよい。
【0061】
離型フィルムに原液を塗工する方法としては、フローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、ワイヤバー法、リップダイコート法などが挙げられる。
また、溶剤の揮発工程における乾燥装置としては、熱風乾燥炉やIR炉などを使用することができる。
【0062】
離型フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などを挙げることができるが、剥離性の観点からプラスチックフィルムが好ましい。
前記離型フィルムの厚みは、好ましくは5~300μm、より好ましくは25~200μmである。
前記離型フィルムは、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、長鎖アルキル系化合物などによる離型処理したものが好ましい。
【0063】
本発明に係る硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物は粘着性が発現しているため、離型フィルムはシート状の光硬化性組成物の両面に存在することが好ましく、2種類の離型フィルムは剥離性が異なることが好ましい。
【0064】
本発明の光硬化性組成物は紫外線、可視光などのエネルギー線の照射により硬化することができる。150~750nmの波長域の照射光が好ましい。本発明の光硬化性組成物は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプまたはLEDランプを使用して1~100kJ/m2の積算光量で硬化することができる。積算光量は、好ましくは5~70kJ/m2である。
【0065】
本発明の光硬化性組成物は液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置の組み立てに用いることができる。具体的には、本発明の光硬化性組成物は、表示素子、カバーパネル、タッチパネル、VRゴーグルなどを表示装置に組み立てることや有機EL素子そのものの組み立てに適している。
これらを組み立てる際の部材として、様々な部材が複合的に使用される。コロナ処理等の表面処理を行っていない未処理PET、表面処理済のPET、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられ、さらには、これらの部材は様々な組合せで接着される。
【0066】
両面に離型フィルムが貼り合わせてあるシート状の光硬化性組成物を用いて、二つの透明な被着体を接着する工程について以下に説明する。
【0067】
接着工程は、ラミネート工程と硬化工程で構成される。
ラミネート工程では、剥離性が強い離型フィルムを光硬化性組成物から剥がし、一方の被着体に光硬化性組成物を付着させる。その状態でラミネーターにより圧力かけながら、一方の被着体と光硬化性組成物を貼り合わせる。その後、剥離性が弱い離型フィルムを光硬化性組成物から剥がし、もう一方の被着体を同様にラミネーターにて光硬化性組成物に貼り合わせる。
【0068】
最後にエネルギー線を照射することによりシート状光硬化性組成物を硬化して二つの被着体を接着することができる。
ラミネーターの代わりに、真空中や減圧雰囲気で被着体と光硬化性組成物を貼り合わせることができる真空プレス機、真空ラミネーターまたはオートクレーブなどを用いることができる。
接着工程はこれに限定されるものではない。
【実施例0069】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、溶剤を揮発させて得られる、硬化前の状態で25℃においてシート状の光硬化性組成物を単にシート状組成物と呼び、溶剤を含む光硬化性組成物を単に原液と呼ぶ。
【0070】
[実施例1~5、比較例1~6]
原液を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:以下の(A-1)~(A-3)成分から合成されたウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー
【0071】
・合成1
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を240g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを74g、(A-3)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレートを7g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.8g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを175g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:2、重量平均分子量:40000の合成物1を得た。
【0072】
・合成2
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を288g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを95g、(A-3)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレートを17g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.4g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを100g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:2、重量平均分子量:20000の合成物2を得た。
【0073】
・合成3
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を273g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを100g、(A-3)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレートを26g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.4g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを100g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:2、重量平均分子量:10000の合成物3を得た。
【0074】
・合成4
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を292g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを96g、(A-3)成分としてn-ブタノールを11g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.8g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを100g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:0、重量平均分子量:20000の合成物4を得た。
【0075】
・合成5
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を227g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを69g、(A-3)成分としてn-ブタノールを4g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.6g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを200g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:0、重量平均分子量:40000の合成物5を得た。
【0076】
・合成6
(A-1)成分としてビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約800)を304g、(A-2)成分としてイソホロンジイソシアネートを95g、ウレタン化触媒としてジブチルスズジラウレートを0.6g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.2g、合成溶媒としてメチルエチルケトンを100g、反応釜に添加して、70℃で約16時間撹拌した。その結果、(メタ)アクリレート官能基数:0、重量平均分子量:2400の合成物6を得た。
【0077】
・合成7
合成1におけるビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオールをポリプロピレングリコール(数平均分子量約2000)に変更し、合成溶媒を用いないことにより、(メタ)アクリレート官能基数:2、重量平均分子量:20000の合成物7を得た。
【0078】
・合成8
合成1におけるビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ポリオールをビスフェノールAエチレンオキサイド変性ポリオール(数平均分子量約500)に変更することで、(メタ)アクリレート官能基数:2、重量平均分子量:26000の合成物8を得た。
【0079】
(B)成分:光開始剤
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE TPO BASF社製)
【0080】
(C)成分:カップリング剤
・3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503 信越化学工業株式会社製)
【0081】
(C)成分:(メタ)アクリレートモノマー
・ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート(エチレングリコールの繰り返し:n=14)(NKエステル14G 新中村化学工業株式会社製)
【0082】
成膜成分
・固形分50質量%のフェノキシ樹脂のメチルエチルケトン溶解液(YP-70(フェノキシ樹脂) 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)
表1では固形分の質量部を記載し、溶解に使用したメチルエチルケトンは下記の溶剤に含める。
【0083】
溶剤
・メチルエチルケトン(試薬)
【0084】
(A)成分(または(A’)成分)および溶剤(比較例6においては成膜成分も含む)を撹拌釜に秤量して25℃雰囲気下で1時間撹拌した。メチルエチルケトンが揮発していれば、揮発した分のメチルエチルケトンを補った。次にそれ以外の成分を添加してさらに30分間撹拌した。その結果、各原液を得た。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0085】
【0086】
[シート化工程]
得られた原液をそれぞれ、ベルトコンベアー型塗工機を使用して、200μmのクリアランスで剥離性が弱い(剥がれ難い)離型フィルムB(東洋紡株式会社製のAK801)の上に塗工した。500mm/分のスピードで、80℃雰囲気の長さ1.5mの乾燥ラインと100℃雰囲気の長さ1.5mの乾燥ラインの2つの乾燥ラインを通して、塗工後の原液を乾燥することでシート状組成物を得た。剥離性が強い(剥がれ易い)離型フィルムA(東洋紡株式会社製のA31)を、シート状組成物に貼り合わせた。離型フィルムB、シート状組成物および離型フィルムAがこの順に積層された、2種類の離型フィルムを付与したシート状組成物を作製した。
【0087】
各離型フィルムの剥離性は次の通り比較した。
JIS Z0237:2009に基づき、剥離処理面に日東電工株式会社製のポリエステル粘着テープNo.31Bを2kgローラーにより貼り付けた。貼り付けてから30分後に、剥離角度180°、剥離速度0.3m/分の条件で、各離型フィルムの剥離強度を測定した。
【0088】
その結果、剥離強度が弱い離型フィルムAの剥離強度は0.05N/25mmであった。一方、剥離強度が強い離型フィルムBの剥離強度は0.16N/25mmであった。
【0089】
離型フィルムを含めたシート状組成物の膜厚をシックネスゲージで測定し、2種類の離型フィルムの厚さを差し引いたシート状組成物の厚さは150μmであった。溶剤を揮発させるための乾燥において、溶剤は表面から乾燥していくため、内部の溶剤が揮発しにくくなる。そのため、膜厚を厚くすると塗膜内部に気泡が残留する。よって、クリアランスは300μm以下であることが好ましい。
【0090】
実施例1~5および比較例1~6で得られた各シート状組成物を用いて、形状維持性確認(硬化前)、剥離性確認(硬化前)、転写性確認(硬化前)および剥離強度測定(硬化前後)を実施した。以下、表1の原液の番号をそのまま反映させて表2に表記する。
【0091】
[形状維持性確認(硬化前)]
実施例1~5および比較例1~6で得られた各シート状組成物を25℃雰囲気下に保管した後、離型フィルムAを剥がし、下記の評価基準に従って目視で確認を行い、結果を表2の「成膜性」の欄に記載した。
【0092】
また、原液の調製において成分が相溶しなかった場合は、「非相溶」と記載した。成膜性が「×」または「非相溶」の場合、剥離性確認(硬化前)、転写性確認(硬化前)、剥離強度測定(硬化前後)を行わなかった。
【0093】
評価基準
○:形状を維持することができる
×:形状を維持することができない(シート状組成物が離型フィルムに付着する、シート状組成物が次第に流れ出るなど)
【0094】
[剥離性確認(硬化前)]
実施例1~5および比較例1~6で得られた各シート状組成物から離型フィルムAを剥がし、下記の評価基準に従って目視で確認を行い、結果を表2の「剥離性」の「離型フィルムA」の欄に記載した。
【0095】
次に、離型フィルムAを剥がしたシート状組成物から離型フィルムBを剥がし、下記の評価基準に従って目視で確認を行い、結果を表2の「剥離性」の「離型フィルムB」の欄に記載した。
剥離性が「×」の場合、転写性確認(硬化前)、剥離強度測定(硬化前後)を行わなかった。
【0096】
評価基準
○:離型フィルムから剥がれてシート状組成物が切れない
×:離型フィルムから剥がれないまたはシート状組成物が切れる
【0097】
[転写性確認(硬化前)]
離型フィルムAを剥がしたシート状組成物に対して、厚さ2.0mm×幅25mm×長さ100mmの無アルカリガラス板を付着させて、25℃にロール温度を設定したロールラミネーターにより転写を行った。離型フィルムBを手で剥がした際に、無アルカリガラス板にシート状組成物が残るか目視で確認して、下記の評価基準で「転写性」を判断した。転写性が「×」の場合、剥離強度測定(硬化前後)を行わなかった。
【0098】
評価基準
○:25℃で転写できる(シート状組成物が残る)
×:25℃で転写できない(シート状組成物が残らない)
【0099】
[剥離強度測定(硬化前後)]
下記の被着体1と2を使用して剥離強度を測定した。
被着体1:厚さ50μm×幅25mm×長さ150mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)(東洋紡株式会社製のA4300)
【0100】
被着体2:厚さ2mm×幅25mm×長さ150mmのCOC(環状オレフィン・コポリマー)(ポリプラスチック株式会社製のTOPAS8007S-04)
【0101】
被着体2は、前処理としてプラズマ処理により水接触角を40°未満にした。シート状組成物から離型フィルムAを剥がして被着体2に25mm×800mmの面積で25℃にロール温度を設定したロールラミネーターにより転写を行った。
【0102】
次に、離型フィルムBを剥がして被着体1に25℃にロール温度を設定したロールラミネーターにより転写を行いテストピースを作製し、硬化前のテストピースとした。同様のテストピースを作製し、水銀灯で積算光量:30kJ/m2の光を照射し、硬化後のテストピースとした。
それぞれのテストピースを万能試験機テンシロンにより引張速度が60mm/分で、180°方向に引っ張り、それぞれ「硬化前の剥離強度(N/cm)」と「硬化後の剥離強度(N/cm)」を測定した。
【0103】
硬化前の剥離強度は2.0N/cm以上であることが好ましく、硬化後の剥離強度は1.0N/cm以上であることが好ましい。
【0104】
【0105】
実施例1~5で得られた各シート状組成物においては、成膜性、剥離性および転写性の全てにおいて優れた結果が得られた。
先に、剥離しやすい離型フィルムAを剥がすことができ、次に剥離しにくい離型フィルムBを剥がすことで、順次、離型フィルムを剥がす工程が実施できる。仮に、両方の離型フィルムが同じ程度の剥離性の場合、両方の離型フィルムにシート状組成物が引っ張られて破れてしまう。
【0106】
また、硬化前の剥離強度を測定するときは、(B)成分から発生するラジカル種により(A)成分が架橋する前であることから、各シート状組成物が軟質であり剥離強度が高く発現した。
硬化後の剥離強度を測定するときは、各シート状組成物(既に架橋が行われて硬化物)が硬質であることから、剥離強度が低く発現した。
【0107】
転写の際にシート状組成物が被着体から剥離していると、光照射により架橋をさせてもシート状組成物が被着体に追従することができず、被着体と物体を貼り合わせることができない。そのため、実施例1~5で得られた各シート状組成物は転写の際に、比較例1~6で得られた各シート状組成物と比較して被着体に対する密着性が良く、被着体に追従することができる。
【0108】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2022年8月19日出願の日本特許出願(特願2022-130982)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は光学分野、特に、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置の組み立てに用いることができる。具体的には、表示素子、カバーパネル、タッチパネル、VRゴーグルなどを表示装置に組み立てることや有機EL素子そのものの組み立てに適しており、硬化前において粘着性が発現するため、安定した転写が行えるため、被着体が平面ではなく曲面であっても対応することができる。