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特開2024-28225無機物コーティングされている廃セパレータを含む中空成形用の高分子組成物および高分子組成物を中空成形して製造される成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028225
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】無機物コーティングされている廃セパレータを含む中空成形用の高分子組成物および高分子組成物を中空成形して製造される成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
C08L23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133596
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0104050
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン サン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョン シ ウク
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB03X
4J002BB03Y
4J002GG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二次電池のセパレータから回収した高密度ポリエチレンを含み、優れた機械的物性を有する、中空成形用の高分子組成物を提供する。
【解決手段】中空成形用の高分子組成物であって、無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックスが0.01~5g/10minである新材の高密度ポリエチレンとを含み、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が20重量%以下である、中空成形用の高分子組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空成形用の高分子組成物であって、
無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックスが0.01~5g/10minである新材の高密度ポリエチレンとを含み、
前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が20重量%以下である、中空成形用の高分子組成物。
【請求項2】
前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が3~10重量%である、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項3】
前記廃材の高密度ポリエチレンは、無機物コーティングされていない廃セパレータをさらに含み、
前記無機物コーティングされていない廃セパレータを投入して前記中空成形用の高分子組成物の無機物の含有量を調整するものである、請求項2に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項4】
前記廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)は、下記式1を満たし、前記メルトフローインデックスは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたものである、請求項2に記載の中空成形用の高分子組成物。
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
【請求項5】
前記廃材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,21.6kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(HLMI)が0.1~7.0g/10minである、請求項4に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項6】
前記新材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が0.1~2g/10minである、請求項4に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項7】
前記無機物コーティングされている廃セパレータおよび前記無機物コーティングされていない廃セパレータは、1:0.1~10の重量比を満たす、請求項3に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項8】
前記廃材の高密度ポリエチレンは、30~50重量%含まれる、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項9】
前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンは、1:1~3の重量比を満たす、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項10】
前記廃セパレータは、廃二次電池または二次電池不良製品から回収した廃セパレータ、二次電池のセパレータ製造工程で発生するスクラップ、およびトリミング後に回収したセパレータの端部から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の廃セパレータである、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項11】
前記中空成形用の高分子組成物は、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が0.05~1.0g/10minである、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項12】
引張強度が220kg/cm以上であり、伸び率が300%以上である、請求項1に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項13】
23±2℃の温度で測定したアイゾット衝撃強度が10kJ/m以上であり、曲げ強度が9,000kgf/cm以上である、請求項12に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項14】
ASTM D1693に準じて測定した環境応力亀裂抵抗が10時間以上である、請求項12に記載の中空成形用の高分子組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の中空成形用の高分子組成物を含む、成形用のペレット。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の中空成形用の高分子組成物を中空成形して製造される、成形品。
【請求項17】
無機物コーティングされている廃セパレータおよび無機物コーティングされていない廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、新材の高密度ポリエチレンとを含む、中空成形用の高分子組成物の製造方法であって、
(a)前記無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量を測定するステップと、
(b)前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して3~10重量%となるように各含有量を調整し、下記式1を満たす前記新材の高密度ポリエチレンを選定するステップと、
(c)前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合して前記中空成形用の高分子組成物を製造するステップとを含む、廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法。
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
(上記式1において、
MIおよびMIは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定された前記廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)である。)
【請求項18】
前記ステップ(c)は、
前記無機物コーティングされている廃セパレータ、前記無機物コーティングされていない廃セパレータ、および前記新材の高密度ポリエチレンを1箇所に混合してペレットを製造するものである、請求項17に記載の廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(c)は、
前記無機物コーティングされている廃セパレータおよび前記無機物コーティングされていない廃セパレータを混合して第1ペレットを製造し、
その後、前記第1ペレットおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合するステップを含むものである、請求項17に記載の廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無機物コーティングされている廃セパレータを含む中空成形用の高分子組成物および高分子組成物を中空成形して製造される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の使用の大衆化に伴い、寿命が尽きて捨てられる廃二次電池の量も増加している。よって、廃二次電池をリサイクルするための様々な方法が研究されているが、例えば、廃二次電池を回収して放電、破砕、選別工程を含む前処理作業を行うことにより、外装缶、セパレータ、負/正極などを分類し、その後コバルト、ニッケル、リチウム、マンガンなどの金属を回収することができる。
【0003】
しかし、前記廃二次電池から回収した廃セパレータや、不良製品からの廃セパレータ、または製造工程で発生するセパレータスクラップは、再生することができず、焼却または破砕後、海外搬出などの適切でない方法により処理されており、資源の無駄遣いであり、環境汚染の原因であると指摘されている。
【0004】
よって、上記問題を解決するために、廃セパレータをリサイクルするための様々な努力がなされているが、廃セパレータ自体の物性において、環境応力亀裂抵抗が悪く、伸び率および曲げ強度も不足し、低いメルトインデックスにより加工性が良くないため、成形が困難であるという問題がある。
【0005】
特に、最近生産される自動車の二次電池用のセパレータは、耐熱性の向上のためにセラミックコーティングが施されているのがほとんどである。しかし、セラミックコーティングされている廃セパレータが成形用の高分子組成物に含まれる場合、セラミックの影響で伸び率や衝撃強度などの物性が大きく低下するという問題が生じ、それを解決するためにさらに時間とコストをかけてセラミックを除去する前処理工程を行わざるを得ないという欠点がある。
【0006】
よって、さらなる前処理工程を行うことなくセラミックコーティングされている廃セパレータをリサイクルすることができ、優れた加工性を有することから様々な形状に成形することができ、優れた機械的物性を実現することができる、環境にやさしい成形用の高分子組成物に関する研究開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記問題を解決するために、別の前処理工程を経ていない無機物コーティングされている廃セパレータを含む中空成形用の高分子組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の他の目的は、廃材の高密度ポリエチレンを特定の含有量以上含むにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックス、および伸び率、曲げ強度、衝撃強度などの機械的物性を示す、環境にやさしい中空成形用の高分子組成物および中空成形製造される成形品を提供することにある。
【0009】
本開示のさらに他の目的は、無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量に応じて無機物コーティングされていない廃セパレータおよび新材の高密度ポリエチレンの物性および含有量を調整することにより、所定の数値範囲内の無機物の含有量と中空成形において好まれるメルトフローインデックスを有し、卓越した機械的物性を示す中空成形用の高分子組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、上記目的を達成するために、さらなる前処理工程を行うことなくセラミックコーティングされている廃セパレータをリサイクルすることができ、優れた加工性および優れた機械的物性を実現することができる、環境にやさしい成形用の高分子組成物を製造するために絶え間ない研究を重ねた結果、特定の条件を満たす新材の高密度ポリエチレンを含み、高分子組成物の総重量に対して無機物の含有量が特定の含有量を満たす場合、廃材の高密度ポリエチレンを特定の含有量以上含むにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックスを有することから加工成形性に優れ、伸び率、曲げ強度、衝撃強度などの卓越した機械的物性を示す高分子組成物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本開示は、中空成形用の高分子組成物であって、無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックスが0.01~5g/10minである新材の高密度ポリエチレンとを含み、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が20重量%以下である、中空成形用の高分子組成物を提供する。
【0012】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が3~10重量%であってもよい。
【0013】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、無機物コーティングされていない廃セパレータをさらに含み、前記無機物コーティングされていない廃セパレータを投入して前記中空成形用の高分子組成物の無機物の含有量を調整するものであってもよい。
【0014】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)は、下記式1を満たし、前記メルトフローインデックスは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたものであってもよい。
【0015】
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
【0016】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,21.6kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(HLMI)が0.1~7.0g/10minであってもよい。
【0017】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が0.1~2g/10minであってもよい。
【0018】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記無機物コーティングされている廃セパレータおよび前記無機物コーティングされていない廃セパレータは、1:0.1~10の重量比を満たすものであってもよい。
【0019】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、30~50重量%含まれてもよい。
【0020】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンは、1:1~3の重量比を満たすものであってもよい。
【0021】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃セパレータは、廃二次電池または二次電池不良製品から回収した廃セパレータ、二次電池のセパレータ製造工程で発生するスクラップ、トリミング後に回収したセパレータの端部などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の廃セパレータであってもよい。
【0022】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が0.05~1.0g/10minであってもよい。
【0023】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、引張強度が220kg/cm以上であり、伸び率が300%以上であってもよい。
【0024】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、23±2℃の温度で測定したアイゾット衝撃強度が10kJ/m以上であり、曲げ強度が9,000kgf/cm以上であってもよい。
【0025】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、ASTM D1693に準じて測定した環境応力亀裂抵抗が10時間以上であってもよい。
【0026】
本開示は、上述の中空成形用の高分子組成物を含む成形用のペレットを提供することができる。
【0027】
本開示は、上述の中空成形用の高分子組成物を中空成形して製造される成形品を提供することができる。
【0028】
本開示は、無機物コーティングされている廃セパレータおよび無機物コーティングされていない廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、新材の高密度ポリエチレンとを含む、中空成形用の高分子組成物の製造方法であって、
(a)前記無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量を測定するステップと、
(b)前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して3~10重量%となるように各含有量を調整し、下記式1を満たす前記新材の高密度ポリエチレンを選定するステップと、
(c)前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合して前記中空成形用の高分子組成物を製造するステップとを含む、廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法を提供する。
【0029】
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
(上記式1において、MIおよびMIは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定された廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)である。)
【0030】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(c)は、前記無機物コーティングされている廃セパレータ、前記無機物コーティングされていない廃セパレータ、および前記新材の高密度ポリエチレンを1箇所に混合してペレットを製造するものであってもよい。
【0031】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(c)は、前記無機物コーティングされている廃セパレータおよび前記無機物コーティングされていない廃セパレータを混合して第1ペレットを製造し、その後、前記第1ペレットおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合するステップを含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本開示は、無機物コーティングされている廃セパレータを含む中空成形用の高分子組成物に関し、具体的には、一実施形態による中空成形用の高分子組成物は、特定の条件を満たす新材の高密度ポリエチレンを含み、高分子組成物の総重量に対して無機物の含有量が特定の含有量を満たすことにより、廃材の高密度ポリエチレンを特定の含有量以上含むにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックスを有し、伸び率、曲げ強度、衝撃強度などの卓越した機械的物性を示すことができる。前記高分子組成物を中空成形して製造される成形品は、成形性や外観品質、上部荷重強度および環境応力亀裂抵抗特性に優れ、さらには、積載試験や落下試験の評価基準以上の品質を示すことができ、様々な産業分野において優れた機械的物性と環境親和性を強点として幅広く用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示をより詳細に説明する。ただし、下記実施例または実施形態は、本開示を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本開示は、それに限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
【0034】
なお、他に定義されない限り、すべての技術用語および科学用語は、本開示の属する技術の分野における当業者の一人に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0035】
本明細書で説明に用いられる用語は、単に特定の実施形態を効果的に記述するためのものであり、本開示の限定を意図するものではない。
【0036】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈で特に示さない限り、複数の形態も含むものと意図することができる。
【0037】
さらに、本明細書で特に言及なしに用いられる単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義されない限り、全組成物のいずれか1つの成分が組成物中に占める重量%を意味する。
【0038】
さらに、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、それは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0039】
さらに、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値および上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態および幅から論理的に誘導される増分、それらのうちの限定されたすべての値、並びに互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含むことができる。本発明の明細書において、特に定義されない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0040】
以下、本開示についてより具体的に説明する。
【0041】
本開示は、中空成形用の高分子組成物であって、無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックスが0.01~5g/10minである新材の高密度ポリエチレンとを含み、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が20重量%以下である、中空成形用の高分子組成物を提供する。
【0042】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、無機物コーティングされている廃セパレータおよび無機物コーティングされていない廃セパレータを含んでもよい。前記無機物の含有量を調整するために、無機物コーティングされていない廃セパレータを中空成形用の高分子組成物に投入することができ、投入される無機物コーティングされていない廃セパレータの含有量は、廃材の高密度ポリエチレンの含有量や無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量などに応じて容易に調整することができる。
【0043】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記無機物コーティングされている廃セパレータは、無機物の含有量が1~99重量%、具体的には5~90重量%、より具体的には30~80重量%であってもよく、前記無機物コーティングされていない廃セパレータは、無機物が実質的に含まれないものであってもよく、実質的に含まれないことは、無機物の含有量が1重量%未満であることであってもよいが、それに限定されるものではない。また、前記無機物は、セラミックであってもよく、非制限的な例として、SiO、Al、TiO、SnO、CeO、ZrO、BaTiOおよびYなどから選択される1つ以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、無機物コーティングされている廃セパレータおよび無機物コーティングされていない廃セパレータを1:0.1~10の重量比、具体的には1:0.3~7の重量比、より具体的には1:0.5~5の重量比で含んでもよい。上記範囲を満たす場合、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量を効率的に調整することができる。
【0045】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、20重量%以上、30重量%以上、具体的には30~50重量%含まれてもよい。一般に、廃材の高密度ポリエチレンを高い含有量で含むほど環境親和性を容易に確保することができるが、メルトフローインデックスや機械的物性が低下する。しかし、一実施形態による中空成形用の高分子組成物は、廃材の高密度ポリエチレンを30重量%以上含むにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックスを有することができ、さらには、高分子組成物を中空成形して製造される成形品の場合、伸び率、衝撃強度などの卓越した機械的物性を実現することができる。
【0046】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記無機物コーティングされている廃セパレータや前記無機物コーティングされていない廃セパレータは、廃二次電池または二次電池不良製品から回収した廃セパレータ、二次電池のセパレータ製造工程で発生するスクラップ、トリミング後に回収したセパレータの端部などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の廃セパレータなどであってもよいが、それに限定されるものではない。また、前記廃材の高密度ポリエチレンは、セパレータの用途に製造される過程で得られたスクラップなどのように廃棄されたものまたは上述のように廃二次電池から回収した廃セパレータの高密度ポリエチレンであれば、大きな制限なしに使用することができる。
【0047】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が50,000~2,000,000g/mol、具体的には80,000~1,500,000g/mol、より具体的には100,000~1,000,000g/molであってもよく、数平均分子量(Mn)が30,000~1,000,000g/mol、具体的には40,000~500,000g/mol、より具体的には50,000~300,000g/molであってもよく、多分散性指数(PDI)が1~50、具体的には1.5~20、より具体的には3~10であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0048】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,21.6kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(HLMI)が0.1~10.0g/10min、具体的には0.1~7.0g/10min、より具体的には0.2~5.0g/10minであってもよい。また、2.16kgの荷重条件で測定されたメルトフローインデックス(MI)は、0.001~0.5g/10min、具体的には0.005~0.10g/10minであってもよい。一実施形態による高分子組成物は、上記範囲のメルトフローインデックスを有する廃材の高密度ポリエチレンを含むにもかかわらず、中空成形に適したメルトフローインデックスを実現することができるという利点がある。
【0049】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、密度が0.9~2.5g/cm、具体的には0.93~2.20g/cm、より具体的には0.94~2.0g/cmであってもよい。
【0050】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、融点(Tm)が100℃以上、具体的には120℃以上、より具体的には130℃以上であってもよく、上限は特に限定されないが、200℃以下であってもよい。
【0051】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、引張強度(Tensile Strength at Yield)が100~550kgf/cm、具体的には200~400kgf/cmであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0052】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、破断するまでの伸び率(Elongation)が1~2000%、具体的には10~1000%であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0053】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、曲げ強度が2,000~25,000kgf/cm、具体的には3,000~20,000kgf/cmであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0054】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、常温(23±2℃)アイゾット衝撃強度が5kJ/m以上、具体的には10kJ/m以上であってもよい。上限は特に限定されず、例えば200kJ/m以下であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0055】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンは、環境応力亀裂抵抗(ESCR)が10時間以上、具体的には20時間以上であってもよい。上限は特に限定されず、例えば10000時間以下であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0056】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が50,000~500,000g/mol、具体的には80,000~400,000g/mol、より具体的には100,000~300,000g/molであってもよく、数平均分子量(Mn)が5,000~250,000g/mol、具体的には7,000~200,000g/mol、より具体的には10,000~150,000g/molであってもよいが、それに限定されるものではなく、市販の製品を使用することができる。
【0057】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)は、下記式1、具体的には下記式1-1を満たすものであってもよい。ここで、前記メルトフローインデックスは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたものであってもよい。
【0058】
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
【0059】
[式1-1]
-3.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-1.6
【0060】
上記式1、具体的には上記式1-1を満たす廃材の高密度ポリエチレンおよび新材の高密度ポリエチレンを含む高分子組成物の場合、中空成形に適したメルトフローインデックスを示すことができ、よって、さらに向上した作業効率、低い不良率を実現することができる。
【0061】
また、前記新材の高密度ポリエチレンは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が上記式1、具体的には上記式1-1を満たすものであれば特に限定されないが、具体的には0.1~5g/10min、具体的には0.1~2g/10min、より具体的には0.1~1.5g/10minまたは0.4~1.5g/10minであってもよい。さらに、21.6kgの荷重条件で測定された高荷重メルトフローインデックス(HLMI)は、5~70g/10min、具体的には10~50g/10minであってもよい。
【0062】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、密度が0.930~0.970g/cm、具体的には0.940~0.970g/cmであってもよい。
【0063】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、多分散性指数(PDI,Mw/Mn)が2以上、具体的には3以上であってもよいが、それに限定されるものではなく、20以下であってもよい。
【0064】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、融点(Tm)が100℃以上、具体的には120℃以上、より具体的には130℃以上であってもよいが、それに限定されるものではなく、200℃以下であってもよい。
【0065】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、引張強度が100~500kgf/cm、具体的には200~400kgf/cm、より具体的には220~350kgf/cmであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0066】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、破断するまでの伸び率(Elongation)が300~3000%、具体的には500~2000%であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0067】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、常温(23±2℃)アイゾット衝撃強度(IZod)が1kJ/m以上、具体的には5~50kJ/mであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0068】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、曲げ強度が5000~20000kgf/cm、具体的には7000~17000kgf/cm、より具体的には9000~15000kgf/cmまたは10000~15000kgf/cmであってもよいが、それに限定されるものではない。
【0069】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記新材の高密度ポリエチレンは、環境応力亀裂抵抗(ESCR)が5時間以上、具体的には10時間以上であってもよく、上限は特に限定されない。
【0070】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、上述の物性を満たす新材の高密度ポリエチレンを含む中空成形用の高分子組成物の場合、微粉やヒュームなどの発生が抑制されて優れた工程安定性を実現することができ、無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンを相当量含有するにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックスを示して作業効率がさらに向上し、卓越した伸び率、衝撃強度、曲げ強度などの機械的物性を有する、環境にやさしい成形品を製造することができるという利点がある。
【0071】
従来、廃セパレータの廃材の高密度ポリエチレンをリサイクルするために、それを単独でまたは他のポリエチレンと混合して使用したが、それを過量含む場合、低いメルトフローインデックスと不足する機械的物性が問題となった。それを解決するために、本開示においては、特定の条件を満たす新材のポリエチレンを適用した場合、中空成形に適した機械的物性および加工性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0072】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンは、1:0.5~5の重量比、具体的には1:1~3の重量比を満たすものであってもよい。
【0073】
あるいは、一実施形態による中空成形用の高分子組成物は、前記廃材の高密度ポリエチレン20~60重量%および前記新材の高密度ポリエチレン40~80重量%を含んでもよく、具体的には、前記廃材の高密度ポリエチレン30~50重量%および前記新材の高密度ポリエチレン50~70重量%を含んでもよい。
【0074】
上述の範囲を満たす場合、中空成形に適したメルトフローインデックスを示して中空成形時に優れた作業効率を有し、微粉やヒュームなどの発生が減少して優れた工程安定性を実現すると共に機械的物性が向上した成形品を製造することができるという利点がある。さらには、前記廃材の高密度ポリエチレンの含有量が高くなるほどリサイクル効率が高くなり、環境親和性をより効果的に実現することができる。
【0075】
具体的には、一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が3~15重量%、より具体的には3~10重量%であってもよい。上述の範囲を満たす場合、前記中空成形用の高分子組成物が前記無機物コーティングされている廃セパレータを含むにもかかわらず、中空成形に適したメルトフローインデックスを示すことができると共に、卓越した伸び率、衝撃強度、曲げ強度などの機械的物性を効果的に実現することができる。
【0076】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、密度が0.9~1.5g/cm、具体的には0.93~1.3g/cm、より具体的には0.94~1.1g/cmであってもよい。
【0077】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定されたメルトフローインデックス(MI)が0.05~1.0g/10min、具体的には0.1~0.5g/10minであってもよい。また、21.6kgの荷重条件で測定された高荷重メルトフローインデックス(HLMI)は、5~30g/10min、具体的には10~20g/10minであってもよい。上記範囲を満たす場合、中空成形時に適切な加工性を付与することで、より向上した作業効率および低い不良率を実現することができる。
【0078】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、引張強度が180kg/cm以上、具体的には200kg/cm以上、より具体的には220kg/cm以上であってもよく、上限は特に限定されないが、400kg/cm以下であってもよい。また、前記中空成形用の高分子組成物は、破断するまでの伸び率が300%以上、具体的には400%以上、より具体的には500%以上であってもよく、上限は特に限定されないが、2000%以下であってもよい。
【0079】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、23±2℃の温度で測定したアイゾット衝撃強度が3kJ/m以上、具体的には5kJ/m以上、より具体的には10~50kJ/mであり、曲げ強度が9,000kgf/cm以上、具体的には10,000~20,000kgf/cmまたは10,000~15,000kgf/cmであってもよい。
【0080】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記中空成形用の高分子組成物は、ASTM D1693に準じて測定した環境応力亀裂抵抗が10時間以上、具体的には20時間以上であってもよく、上限は特に限定されないが、例えば10000時間以下であってもよい。
【0081】
一実施形態による中空成形用の高分子組成物において、前記高分子組成物は、目的および用途に応じて、当該技術分野において一般的に使用される添加剤をさらに含んでもよい。例えば、酸化防止剤、UV吸収剤、UV安定剤、滑剤、顔料、着色剤、充填剤、可塑剤、流動化剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤などをさらに含んでもよく、前記添加剤は、目的とする物性を阻害しない範囲で適切な含有量で含まれてもよい。
【0082】
前記UV吸収剤は、ベンゾトリアジン系またはベンゾトリアゾール系UV吸収剤であってもよく、さらに、ジブチルヒドロキシトルエン、ノニルフェニルホスファイト、ジブチルメチルフェノールなどの一次、二次酸化防止剤またはHALS系UV安定剤と混合して使用してもよいが、それらの種類および含有量は、目的とする物性を阻害しないものであれば特に限定されない。
【0083】
非制限的な例として、前記ベンゾトリアゾール系UV吸収剤は、2-(2’-ヒドロメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジルフェニル))ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-di-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、前記ベンゾトリアジン系UV吸収剤としては、例えばビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0084】
また、前記滑剤は、押出成形時に流動性を高めて摩擦熱を抑制する役割を果たすものであって、炭化水素系、カルボン酸系、アルコール系、アミド系、エステル系化合物、およびそれらの混合物などから選択される1つ以上の組み合わせであってもよいが、それらの種類および含有量は、目的とする物性を阻害しないものであれば特に限定されない。
【0085】
本開示は、上述の中空成形用の高分子組成物を含む成形用のペレットを提供することができる。前記ペレットは、成形品を製造する前に均一な大きさに裁断された形態をいい、押出や射出などの通常かつ公知の方法により製造することができる。また、前記ペレットの大きさおよび形態は、限定されず、通常使用される添加剤または公知の添加剤をさらに含んでもよい。
【0086】
本開示は、上述の中空成形用の高分子組成物を中空成形して製造される成形品を提供することができる。中空成形は、通常用いられる方法または公知の方法により行うことができる。前記成形品は、低容量容器、貯蔵用または保管用容器、密閉容器、包装容器などの成形品であってもよいが、それらに限定されるものではない。一実施形態による成形品は、引張強度、伸び率、曲げ強度、衝撃強度、ESCRなどの物性が卓越であり、様々な産業分野の製品への適用に適しており、何よりも二次電池の廃セパレータをリサイクルして製造するという点で、環境親和性に優れているという利点がある。
【0087】
以下、一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法についてより具体的に説明する。
【0088】
本開示は、無機物コーティングされている廃セパレータおよび無機物コーティングされていない廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンと、新材の高密度ポリエチレンとを含む、中空成形用の高分子組成物の製造方法であって、
(a)前記無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量を測定するステップと、
(b)前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して3~10重量%となるように各含有量を調整し、下記式1を満たす前記新材の高密度ポリエチレンを選定するステップと、
(c)前記廃材の高密度ポリエチレンおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合して前記中空成形用の高分子組成物を製造するステップとを含む、廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法を提供する。
【0089】
[式1]
-4.3≦log(MI)+2×log(MI)≦-0.9
(上記式1において、MIおよびMIは、ASTM D1238(190℃,2.16kg)に準じて測定された廃材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)および前記新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックス(MI)である。)
【0090】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(a)は、無機物の含有量を分析するために通常用いられる分析方法や公知の方法により行うことができる。無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量の分析結果は、上述の廃材の高密度ポリエチレンの無機物の含有量と同じであってもよく、異なってもよいが、それに限定されるものではない。
【0091】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(b)は、無機物コーティングされている廃セパレータ、無機物コーティングされていない廃セパレータ、および新材の高密度ポリエチレンの含有量を調整するステップであって、適切な物性の新材の高密度ポリエチレンを選定し、先にステップ(a)で測定した無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量に応じて無機物コーティングされていない廃セパレータおよび新材の高密度ポリエチレンの含有量を調整することができる。
【0092】
具体的には、メルトフローインデックスが上記式1を満たす新材の高密度ポリエチレンを選定し、前記無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が前記中空成形用の高分子組成物の総重量に対して3~10重量%の範囲を満たすように、廃材の高密度ポリエチレンにおける無機物コーティングされている廃セパレータの含有量と廃材の高密度ポリエチレンおよび新材の高密度ポリエチレンの重量比を調整するものであってもよい。一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法は、所定含有量以上の無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンを含有し、環境親和性を容易に確保することができ、上述のステップにより高分子組成物を製造することにより、中空成形に適したメルトフローインデックスおよび機械的物性を効果的に実現することができる。
【0093】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(a)~(b)は、自動化システムにより処理することができる。工程をより効率的に行うために、無機物コーティングされている廃セパレータの無機物の含有量の測定、新材の高密度ポリエチレンの選定、および原料の含有量の調整過程が上述の条件を満たすように、自動化システムにより処理することができる。
【0094】
一実施形態による廃セパレータをリサイクルした中空成形用の高分子組成物の製造方法において、前記ステップ(c)は、前記ステップ(b)により選定した原料を含有量通りに投入して高分子組成物を製造するステップであって、通常の方法や公知の配合方法により行うことができる。非制限的な例として、押出機、ロールミル、バンバリーミキサー(banbury mixer)、ニーダー(kneader)などを用いて配合するものであってもよい。
【0095】
前記原料は、上述の無機物コーティングされている廃セパレータ、無機物コーティングされていない廃セパレータ、および新材の高密度ポリエチレンを含んでもよく、一実施形態により前記原料を1箇所に混合してペレットを製造することができる。
【0096】
他の実施形態によれば、前記無機物コーティングされている廃セパレータおよび前記無機物コーティングされていない廃セパレータを混合して第1ペレットを製造し、その後、前記第1ペレットおよび前記新材の高密度ポリエチレンを混合するステップを含んでもよい。原料を複数のステップに分けて配合または溶融混練する場合、より多い量の廃セパレータを投入して高分子組成物を製造することができるという利点がある。
【0097】
以下、実施例および比較例に基づいて本開示をより詳細に説明する。ただし、下記実施例および比較例は、本開示をより詳細に説明するための一例にすぎず、下記実施例および比較例に限定されるものではない。
【0098】
下記実施例および比較例の物性は以下の方法で測定した。
【0099】
[物性評価方法]
1.密度[g/cm]:垂直カラム(Column)を用いた線形密度勾配管に密度を知っている標準試験片を基準として高さに応じた密度値の検量線(Calibration Curve)を作成し、その後実施例で製造した試験片をカラムに浮かべて試料が止まった高さを記録し、前記検量線と対照することで試験片の密度を記録した。
【0100】
2.分子量(Mw,Mn)[g/mol]:GPC(Agilent社製,Infinity1260)を用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。GPCカラムの温度は160℃にした。溶剤はトリクロロベンゼン、標準物はポリスチレンを使用し、常温、1mL/minの流速(flow rate)で分析した。また、前記Mw、Mnから多分散性指数(PDI)の値を計算した。その他の具体的な条件は下記のとおりである。
【0101】
-分析機器:3個のカラム(モデル名:Agilent社製,PLgel Olexis 7.5×300mm,13μm)と1個のガードカラム(モデル名:Agilent社製,PLgel Olexis 7.5×50mm,13μm)が連結され、温度160℃、GPC流量1mL/minに設定されており、屈折率検出器(Refractive Index Detector)が連結されたGPCシステム(モデル名:Agilent社製,1260 Infinity II High-Temperature GPC System)を使用した。
【0102】
-試料の準備:2~5mgのサンプルをBHT200ppmの1,2,4-トリクロロベンゼン1Mに使用して溶解した。この際、試料は、前処理器(Agilent PL-SP 260 VS Sample Preparation System)を使用して150℃で4時間撹拌して製造し、製造された溶液を前記GPCに200μL注入して分析した。
【0103】
3.メルトフローインデックス(MI)[g/10min]:ASTM D1238に準じて測定し、190℃、2.16kgの条件で10分当たり溶離されるグラム(g/10min)でメルトフローインデックス(MI)を測定し、190℃、21.6kgの条件で10分当たり溶離されるグラム(g/10min)で高荷重メルトフローインデックス(HLMI)を測定した。
【0104】
4.引張強度(Tensile Strength at Yield)および伸び率(Elongation(at break))[kgf/cm,%]:ASTM D638に準じて測定し、具体的には、試験片の厚さは2.0mmであり、前記試験片を23±2℃の温度条件および50%の湿度環境で40時間コンディショニング(Conditioning)した後、50mm/minの速度条件で測定した。
【0105】
5.アイゾット衝撃強度[kJ/m]:ASTM D256に準じて、Dimension Aの条件(10.16±0.05mm)で試験片を製作し、前記試験片を23℃の温度条件および50%の湿度環境で40時間コンディショニングした後、23±2℃の温度で常温アイゾット衝撃強度を測定した。
【0106】
6.曲げ強度[kgf/cm]:試験片を23℃の温度条件および50%の湿度環境で40時間コンディショニングした後、ASTM D790のProcedure Bの条件(0.1mm/mm/min)に準じて測定した。
【0107】
7.環境応力亀裂抵抗(ESCR)[時間]:ASTM D1693のCondition B、F50(Bath温度50℃)に準じて測定した。
【0108】
8.無機物の含有量[重量%]:TGA(Waters Pacific Pte社製,Discovery TGA)を用いて、実施例で製造した試料5~10mgをアルミニウムパンに配置し、窒素雰囲気で700℃まで10℃/10minの速度で加熱し、その後Air条件で900℃まで昇温することで内部の有機物を除去した。加熱前の試料の重量に対する加熱後の残量の重量の比を計算し、それをセラミックの含有量にして下記表に示した。
【0109】
[製造例1]
フィルム状の無機物がコーティングされている廃セパレータ試料を準備し、試料のセラミックの含有量は60重量%と測定された。単独では加工することができず、別途の物性は評価できなかった。
【0110】
[製造例2]
無機物がコーティングされる前の(または無機物が除去された)廃セパレータ試料を5cm×5cm以下の大きさに粉砕し、加工温度230℃で押出機によりペレットを取得し、それを十分に乾燥して製造例2の無機物がコーティングされていない廃材の高密度ポリエチレンペレットを製造し、物性を測定して下記表1に示した。
【0111】
上記製造例1および2において、廃セパレータ試料としては、廃二次電池や二次電池不良製品から回収した試料と、高密度ポリエチレンを原料とする二次電池のセパレータ製造工程で発生するスクラップやトリミング後に回収したセパレータの端部の試料を使用した。
【0112】
[実施例1~7および比較例1および2]
上記製造例1の無機物の含有量を考慮して、上記製造例2の無機物がコーティングされていない廃材の高密度ポリエチレンおよび下記表1の物性を有する新材の高密度ポリエチレン(A~F)を下記表2の含有量通りに投入して高分子組成物を製造した。前記高分子組成物をBravender社製の350ccのインターナルミキサー(Internal Mixer)に投入し、加工温度200℃で40rpmで5分間溶融混練し、次いで圧縮プレスによりシート状に作製し、その後破砕することにより、成形用のペレットを製造した。前記成形用のペレットを射出または圧縮成形して各物性評価規格に適した試験片を製造し、下記計算式1の値と上述の物性を測定して下記表1、3および4に示した。
【0113】
[計算式1]
log(MI)+2×log(MI
(上記計算式1において、MIおよびMIは、上記式1と同様である。)
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
上記表3および4に示すとおり、上記実施例による高分子組成物は、無機物コーティングされている廃セパレータを含む廃材の高密度ポリエチレンを30重量%以上含有するにもかかわらず、中空成形工程において好まれるメルトフローインデックスを有して優れた加工性を実現することができ、中空成形品において好まれる伸び率、引張強度、衝撃強度、曲げ強度などの機械的物性を示すと共に、廃セパレータをリサイクルすることで環境親和性を効果的に実現できることを確認した。
【0119】
また、比較例1により、無機物の含有量が30重量%以上である場合、加工を行いにくいことが、比較例2と実施例1、3との比較により、メルトフローインデックスが0.01~5g/10minである新材の高密度ポリエチレンを使用した高分子組成物の場合、中空成形工程において好まれるメルトフローインデックスを示すことが分かった。
【0120】
特に、実施例3、4および5の比較により、無機物コーティングされている廃セパレータに起因する無機物の含有量が3~10重量%である場合、より優れた物性を示すことを、また、実施例6、7により、新材の高密度ポリエチレンのメルトフローインデックスが0.1~2g/10minの範囲でより優れた加工性を実現できることを確認した。
【0121】
[実施例8]
80Lのバンバリーミキサーに、製造例1のセラミックがコーティングされている廃セパレータ12kg、および製造例2のセラミックがコーティングされていない廃セパレータ28kgを投入し、90℃の温度、65rpmの条件で約3分間溶融混練し、その後250Τのシングルスクリュー(Single Screw)押出機で押し出すことにより、第1ペレットを製造した。次いで、同じミキサーに前記第1ペレットおよびYUZEX 2600Sを1:1の割合で投入し、90℃の温度、65rpmの条件で約5分間溶融混練し、その後シングルスクリュー押出機で押し出すことにより、成形用のペレットを製造した。前記成形用のペレットを射出または押し出して各物性評価規格に適した試験片を製造し、物性を測定して下記表5に示した。
【0122】
[実施例9]
80Lのバンバリーミキサーに、製造例1のセラミックがコーティングされている廃セパレータ10kg、製造例2のセラミックがコーティングされていない廃セパレータ20kg、およびYUZEX 7302 10kgを投入し、90℃の温度、65rpmの条件で約3分間溶融混練し、その後250Τのシングルスクリュー押出機で押し出して第1ペレットを製造した。他の過程は実施例8と同様に行って各物性評価規格に適した試験片を製造し、物性を測定して下記表5に示した。
【0123】
【表5】
【0124】
上記表5に示すとおり、実施例8および9の高分子組成物は、バンバリーミキサーを用いて成形用のペレットを製造することで、より経済的かつ容易に廃セパレータをリサイクルすることができることから環境親和性を積極的に向上させることができ、製造例1のセラミックがコーティングされている廃セパレータおよび製造例2のセラミックがコーティングされていない廃セパレータの重量比を1:2~2.5の範囲にして無機物の含有量を適宜調整することで、より中空成形において好まれるメルトフローインデックス、および伸び率、曲げ強度、衝撃強度などの機械的物性を達成することができることを確認した。また、追加実験により、製造例1のセラミックがコーティングされている廃セパレータのみの場合、溶融混練作業が困難であることを確認した。
[評価例]
【0125】
上記実施例で製造した成形用のペレットを用いて中空成形を行い、それにより1.5L、18Lの中空成形品を製造した。中空成形品の評価項目を成形品の外観、上部荷重(Top load)強度[kgf/cm]、環境応力亀裂抵抗(ESCR)、積載試験および落下試験とし、その結果を下記表6に示した。
【0126】
ここで、成形品の外観は、成形品の表面外観を観察し、表面が滑らかで光沢がある場合は良好(◎)、表面は滑らかであるが光沢がない場合は普通(△)、表面に凹凸があって外部突起が触れた場合は不良(×)で示した。また、上部荷重強度は、ASTM D2659に準じて、UTMによる容器の粉砕収率特性(Crush Yield Properties)により測定された。容器のESCRの場合、1.5Lの小型容器は、ASTM D5571に準じて、容器の内部に10%IGEPAL水溶液を入れ、その後50℃のオーブン下で各容器当たり4.5kgの重錘を載せて14日間水溶液の漏れの有無を評価し、18Lの容器は、20kPaの水圧を30分間維持して水溶液の漏れの有無を判断する方法で評価し、漏れの有無によってPassまたはFailで示した。積載試験は、内容物を入れた容器を4段積載してから2週間保管し、容器の潰れおよび内容物の漏れの有無を評価した。落下試験は、容器に水を半分以上入れてから約4mの高さから落下させ、内容物の漏れの有無を評価してPassまたはFailで記載した。
【0127】
【表6】
【0128】
上記表6に示すとおり、上記実施例の高分子組成物を中空成形して製造した成形品は、外観が良好であり、上部荷重強度および環境応力亀裂抵抗特性も優れ、積載試験および落下試験基準を通過したことから、中空成形に通常使用される高密度ポリエチレン製品(2600S)と同等または類似の物性を示すことを確認した。一方、比較例2の高分子組成物を用いた場合、成形性が不足して容器の製造が不可能であった。そのようなことから、一実施形態により製造された中空成形用の高分子組成物は、無機物コーティングされている廃セパレータを所定含有量以上含むにもかかわらず、中空成形において好まれるメルトフローインデックスを有して加工性が卓越であり、それにより製造される成形品は、卓越した機械的物性および環境親和性を効果的に実現できることを確認した。
【0129】
以上、本発明は特定の事項と限定された実施例により説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものにすぎず、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0130】
よって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、当該特許請求の範囲と均等であるかまたは等価的変形があるすべてが本発明の思想の範疇に属するといえる。