(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028229
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】チューナブル光学デバイス用の、液体
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20240222BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240222BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240222BHJP
A61L 27/48 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61L27/18
C09K3/00 L
A61L27/16
A61L27/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023134220
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 121 080.4
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516049342
【氏名又は名称】オプトチューン スウィッツァーランド アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド アンドレアス ニーデラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブレンドル
(72)【発明者】
【氏名】マルタ ヴィディエラ デル ブランコ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス マドリガル
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB22
4C081CA021
4C081CA081
4C081CA161
4C081CA211
4C081CA272
4C081CB021
4C081CB051
4C081CB052
4C081CC01
4C081CE01
4C081CE07
4C081CE11
4C081CF22
4C081DA16
4C081DC15
(57)【要約】
【課題】明細書に記載の課題。
【解決手段】
本発明は、チューナブル光学デバイス用の液体であって、チューナブル光学的デバイスは、容積部及び膜を備え、容積部は、
・少なくとも1つの式(I)の化合物、
【化1】
・少なくとも1つの添加剤、詳細には、少なくとも1つの添加剤は、保護剤、安定剤、追跡子、緩衝剤及び/又は表面張力調整剤の群から選択される、
を含む液体で満たされている、チューナブル光学デバイス用の液体に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューナブル光学デバイス用の液体であって、
前記チューナブル光学的デバイスは容積部及び膜を備え、
前記容積部は、以下を含む前記液体により満たされている、前記チューナブル光学デバイス用の液体:
●少なくとも1つの式(I)の化合物、
【化1】
式中、
各R
1は、他のすべてのR
1から独立して、C
x-アルキル-Aから選択され、詳細には、各R
1は、C
x-アルキル-Aから選択され、
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3から選択され、とくにH及びCNから、選択され、
xは、3~20の整数であり、
各R
2は、他のすべてのR
2から独立して、C
y-アルキル、C
y-アルキル-B、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、詳細には、他のすべてのR
2から独立して、-H、C
y-アルキル、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、
Bは、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3から選択され、とくにCF
3及びCNから、選択され、
yは、1~17の整数であり、とくに1~6の整数、であり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、独立して、-H、C
1~4-アルキル、フェニル及び(CH
2)-フェニルから選択され、とくにメチルから、選択され、
nは、1~50の整数であり、
xとyの和は、≦21であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、1つ以上の置換基-Fによって任意に置換されている、及び
●少なくとも1つの添加剤、詳細には、前記少なくとも1つの添加剤は、保護剤、安定剤、追跡子、緩衝剤及び/又は表面張力調整剤の群から選択される、
さらに、前記膜は、エラストマー膜又は熱可塑性膜から選択され、詳細には、置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜、ウレタン膜、アクリル膜、ポリエチレンテレフタラート膜、ポリエチレン膜、環状オレフィンポリマーもしくは環状オレフィンコポリマー膜、より詳細には、置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜、から選択される。
【請求項2】
少なくとも1つの添加剤の総和が、50%より少ない、詳細には、20%より少ない、より詳細には、5%より少ない、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項3】
容積部が、式1の少なくとも1つの化合物を含む液体で満たされていて、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が、液体の光学特性を調整するように選択されている、請求項1又は2に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項4】
保護剤が、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV吸収剤、重合防止剤及び腐食防止剤から選択される、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項5】
酸化防止剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオナート)、D-アルファ-トコフェロールアセタート、L-アルファ-トコフェロールアセタート、L(+)-アスコルビン酸及び/又はビスフェノール-Aから選択される、請求項1~4のいずれかに記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項6】
重合防止剤が、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルイソブチノール、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び/又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)から選択される、請求項1~5のいずれかに記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項7】
金属不活性化剤が、ベンゾトリアゾール、オキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジン、N,N’-(ジサリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、エチレン-ジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアジアゾール及び/又はトリアゾールから選択される、請求項1~6のいずれかに記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項8】
UV吸収剤が、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、トリアジン、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン、ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾル-2-イル)-4,6-ビス(2-フェニル-2-プロパニル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾル-2-イル)-4、6-ジ-tert-ブチルフェノール及び/又はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)から選択される、請求項1~7のいずれかに記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項9】
腐食防止剤が、ジチオリン酸亜鉛、ベンゾトリアゾール、ヘキサミン、フェニレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、亜硫酸塩及び/又はアスコルビン酸から選択される、請求項1~8のいずれかに記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項10】
安定剤が、分散剤、ナノ粒子、凍結防止剤、及び/又は可塑剤から選択される、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項11】
分散剤が両親媒性化合物である、請求項10に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項12】
ナノ粒子が、SiO2、TiO2、ZnO及び/又はBaTiO3、詳細には、SiO2及び/又はTiO2、より詳細には、SiO2から選択される、請求項10に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項13】
凍結防止剤が、含酸素炭化水素である、請求項10に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項14】
可塑剤がジ-n-ヘキシルフタラート及び/又はビスフェノール-Aから選択される、請求項10に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項15】
追跡子が蛍光ナノ粒子及び/又は量子ドットから選択される、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項16】
表面張力調整剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート及び/又はソルビタンモノオレアートから選択される、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【請求項17】
緩衝剤が、ホスファート緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤、ボラート緩衝剤、シトラート緩衝剤、グリシン緩衝剤、ジエタノールアミン、酢酸-酢酸ナトリウム、アンモニア及び塩化アンモニウムから選択される、請求項1に記載のチューナブル光学デバイス用の液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、ドイツ国特許出願第10 2022 121 080.4号として出願されたドイツ国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、シロキサン系ポリマー及び少なくとも1つの添加剤を含むチューナブル(tunable)光学デバイス用の液体に関する。
【0003】
発明の背景
光学デバイスは、チューナブルレンズなどを包含するところ、典型的には、透明で弾性的に拡張可能な膜と、膜に対向する(面する)光学素子と、光学素子を膜に接続する壁とを備える。膜、光学素子及び壁は、レンズの容積部(volume)を区切り、該容積部は液体で満たされている。
【0004】
レンズの焦点は、膜の曲率を変更することによって調整され得る。これは、例えば、膜の光学的に活性な部分を変形させるように保持リングを膜に押し付けるアクチュエータを使用することによって達成され得る(米国特許出願公開第2010202054号)。
【0005】
また、例えばコイルによって(国際公開第2010104904号)、又は膜を変形させるために膜に直接窪みを付けるリング状ピストンによって(米国特許出願公開第2011267703号)、膜に力が直接加えられるレンズアセンブリも公知である。
【0006】
あるいは、膜の光学的挙動は、光学素子に対して高さが調整可能であるように設計された壁を使用することによって変化させることができる。壁の高さを修正することにより、容積部の内部に存在する流体の圧力、及びそれに伴う膜の曲率、及び/又は光学素子に対する膜の空間的位置が調整される。
【0007】
国際公開第2018/119408号は、患者の眼の水晶体嚢内に埋め込むための調節式眼内レンズを開示している。レンズは、内部流体チャンバと、シロキサン系液体で満たされた外部流体リザーバとを備える。充填可能な容積部は、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)コポリマーなどのポリマー材料によって区切られる。対象の水晶体嚢内の水は、浸透圧平衡を達成するために、ポリマー材料を通して内側流体チャンバ又は外側流体リザーバの中又は外へ移動し得る。
【0008】
眼内レンズ装置に適したシロキサン系レンズオイルのさらなる例は、国際公開第2017/205811号に開示されている。約15,000ダルトン未満の分子量を有する任意の成分の約4重量%未満を有する、ジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンの混合物%は、バルクポリマー材料と接触したときにバルクポリマー材料の膨潤をもたらさないことが見出された。バルクポリマー材料は、シリコーン、アクリル、プラスチック又はポリマー性ヒドロゲルから構成され得る。
【0009】
化学構造及び組成に基づいて、チューナブル液体レンズでの使用に適したほとんどのエラストマー膜材料は、容積部内に充填された液体によって引き起こされる溶解性及び膨潤性に基づく影響を被る。
【0010】
本発明は、添加剤の添加によって、チューナブルレンズでの使用に適した液体の範囲を拡大することを目的とする。添加剤の添加は、材料又は該材料と接触する材料のより良好な保護を可能にし、その化学的及び物理的特性ならびに材料の耐久性を改善する。
【0011】
この目的は、本明細書の従属請求項、例、図面及び一般的な説明に記載されているさらなる有利な態様を用いて、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【0012】
本発明のサマリー
本発明の第1の局面は、チューナブル光学デバイス用の液体であって、チューナブル光学的デバイスは容積部及び膜を備え、容積部は、
・少なくとも1つの式(I)の化合物、
【化1】
式中、
各R1は、他のすべてのR1から独立して、Cx-アルキル-Aから選択され、詳細には、各R
1は、C
x-アルキル-Aから選択され、
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにH及びCNから選択され、
xは、3~20の整数であり、
各R
2は、他のすべてのR
2から独立して、C
y-アルキル、C
y-アルキル-B、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、詳細には、他のすべてのR
2から独立して、-H、C
y-アルキル、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、
Bは、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにCF
3及びCNから選択され、
yは、1~17、詳細には、1~6の整数であり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、独立して、-H、C
1~4-アルキル、フェニル及び(CH
2)-フェニル、とくにメチルから選択され、
nは、1~50の整数であり、
xとyの和は、≦21であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、1つ以上の置換基-Fによって任意に置換されている、化合物、及び
・少なくとも1つの添加剤、詳細には、少なくとも1つの添加剤は、保護剤、安定剤、追跡子、緩衝剤及び表面張力調整剤の群から選択される、添加剤
を含む液体で満たされており、
膜は、エラストマー膜又は熱可塑性膜から、とくに置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜、ウレタン膜、アクリル膜、ポリエチレンテレフタラート膜、ポリエチレン膜、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー膜から、より具体的には置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜から選択される、チューナブル光学デバイス用の液体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、0.1%の酸化防止剤を添加した85℃での経時的な粘度を示す。X軸:時間[週];左Y軸:粘度[mPa×s];右Y軸:増加百分率[%]。
【
図2】
図2は、0.05%の酸化防止剤を添加した85℃での経時的な粘度を示す。X軸:時間[週];左Y軸:粘度[mPa×s];右Y軸:増加百分率[%]。
【0014】
用語及び定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切である場合には常に、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されるいずれかの定義が参照により本明細書に組み入れられるいずれかの文書と矛盾する場合、記載されている定義が優先するものとする。
【0015】
本明細書で使用される場合、「備える、含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」及び「包含する(including)」という用語、及びその他の類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、これらの単語の任意の1つに続く1つ又は複数の項目が、このような1つ又は複数の項目の網羅的な列挙であることを意味しないか、列挙された1つ又は複数の項目のみに限定されることを意味しないという点で、意味において等価であり、非限定的であることが意図される。例えば、構成要素A、B及びCを「備える(comprising)」物品は、構成要素A、B及びCからなる(すなわち、のみを含有する)ことができ、又は構成要素A、B及びCのみならず1つ又は複数の他の成分も含有することができる。したがって、「備える(comprises)」及びその類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」の態様の開示を包含することが意図され、理解される。
【0016】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限の間にある、下限の単位の10分の1までの各介在する値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された又は介在する値は、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に服して、本開示内に包含されることが理解される。記載された範囲が限界の一方又は両方を包含する場合、それらの含まれた限界の一方又は両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0017】
本明細書における「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体に向けられた変動を包含する(及び記載する)。例えば、「約X」という記載は、「X」という記載を包含する。
【0018】
本明細書で使用される場合、添付の特許請求の範囲を含めて、単数形「a」、「or」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を包含する。
【0019】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0020】
本明細書の文脈におけるCx-アルキル又はCy-アルキルという用語は、ある数(x又はy)のC原子からなるアルキル部分に関する。アルキル部分は、直鎖又は分岐鎖であり得る。例えば、n-ブチル、2-メチルプロピル及びtert-ブチルは、x又はyが4である例である。
【0021】
本発明の文脈におけるPDMSという用語は、ポリジメチルシロキサン(CAS番号63148-62-9)に関する。
【0022】
本発明の文脈における置換されたPDMSという用語は、フェニル又はフッ化物などの追加の置換基による少なくとも部分的に官能化されたPDMSに関する。
【0023】
その最も広い意味での置換されたという用語は、1個又は数個の炭素原子においてフッ化物Fによって置換されているアルキル又はフェニルに関する。非限定的な例には、-CH2F、-CHF2、-CF3、-(CH2)2F、-(CHF)2H、-(CHF)2F、-C2F5、-(CH2)3F、-(CHF)3H、-(CHF)3F、-C3F7、-(CH2)4F、-(CHF)4H、-(CHF)4F及びC4F9が含まれる。同様の定義が、1個又は数個の炭素原子においてフェニルで置換されている置換されたアルキルにも適用される。
【0024】
本発明の文脈における添加剤という用語は、材料の化学的及び物理的特性の向上及び/又は材料の耐久性の改善を包含する、材料又は該材料と接触する材料、例えば液体を保護する化合物又は物質に関する。1つより多くの添加剤を使用することによって、いくつかの異なる効果を利用することができる。
【0025】
本発明の文脈における保護剤という用語は、添加剤として使用される化合物又は物質であって、腐食、UV光依存性分解、UV光依存性重合、温度依存性重合及び温度依存性分解を包含するがこれらに限定されない外的要因から、化合物又は物質がその上で使用される材料を特異的に保護する化合物又は物質に関する。
【0026】
本発明の文脈における安定剤という用語は、添加剤として使用される化合物又は物質であって、該化合物又は物質がその上で使用されている材料の化学的及び物理的特性を向上させる化合物又は物質に関し、化学的及び物理的特性は、屈折率、分散、透過、粘度及び異なる温度での酸化安定性を包含するが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の文脈における追跡子という用語は、第三者による違法な配布の場合に、本発明において特許請求される光学デバイスの正確かつ容易な検出を確保する添加剤として使用される化合物又は物質に関する。
【0028】
本発明の文脈における表面張力調整剤という用語は、添加剤として使用される化合物又は物質であって、チューナブル光学デバイス内の液体の表面張力を調整し、液体によって覆われる表面の被覆率の向上を可能にし、液体が覆っている表面への液体の付着の最小化を可能にして、調整可能な光学デバイスの完全な動作を可能にする化合物又は物質に関する。
【0029】
本発明の文脈における酸化防止剤という用語は、材料の酸化、本発明の場合には、UV光又は温度などの外的作用を通じて発生するラジカルのクエンチングによる膜の酸化を減速又は回避する化合物又は物質に関する。したがって、本発明の文脈における酸化防止剤は、ラジカル捕捉剤として機能することができる。
【0030】
本発明の文脈における金属不活性化剤という用語は、金属によって触媒される、ポリマーの酸化を防止又は遅延させる添加剤として使用される化合物又は物質に関する。金属不活性化剤は、本明細書においては光学デバイスの金属表面由来の触媒的に活性を有する金属イオンと不活性な錯体を形成し、それによって、酸化又は還元によってヒドロペルオキシドからラジカルを生成する金属の能力を低下させる。金属不活性化剤の例としては、オキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジン、クエン酸、N,N’-(ジサリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、エチレン-ジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアジアゾール及びトリアゾールならびにこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の文脈におけるUV吸収剤という用語は、UV吸収剤が保護するポリマーよりもはるかに強くUV光を吸収し、UV光自体に対して高い安定性を有する添加剤として使用される化合物又は物質に関する。UV吸収剤の励起状態は、放射線を生成することなく基底状態に急速に緩和する。
【0032】
本発明の文脈における重合防止剤という用語は、光誘起重合、熱誘起重合又は自己重合を防止又は遅延させる添加剤として使用される化合物又は物質に関する。重合防止剤は、ラジカル捕捉剤として機能する。
【0033】
本発明の文脈における腐食防止剤という用語は、酸化を通じて材料、通常は金属の腐食速度を妨げる又は減少させる添加剤として使用される化合物又は物質に関する。アミンを含む腐食防止剤により、酸素は水又は他の無害な物質に変換される。亜硫酸塩を含む腐食防止剤は、環境によって誘発される腐食から表面を保護する表面上のコーティングを形成するか、又は潤滑剤として機能する亜硫酸塩を表面上に堆積させる。
【0034】
本発明の文脈におけるヒンダードアミン系光安定剤(HALS)という用語は、ポリマーの熱誘起解重合及びラジカル誘起解重合ならびに光酸化に対する長期保護を有する化合物のクラスに関する。HALSの機序は、過酸化物又はヒドロペルオキシドとの反応によるHALSのニトロキシドラジカル(RNO・)への酸化から始まり、その後ポリマーアルキルラジカルと反応して、様々な化合物と反応することができるヒドロキシルアミンエーテルを生じるフリーラジカル捕捉反応の複雑なセットに基づく。新しいRNO・ラジカルは、ヒドロキシルアミンエーテルの、アルキルペルオキシラジカル及びアシルペルオキシラジカルとの反応から再生され得る。最も広く使用されているHALSは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体である。
【0035】
本発明の文脈における分散剤という用語は、粒子の分離を改善し、沈降又は凝集を防止するために液体中の添加剤として使用される化合物又は物質に関する。
【0036】
本発明の文脈における両親媒性化合物という用語は、親水性及び親油性の両方の特性を有する化学的化合物に関する。例としては、石鹸、界面活性剤、リン脂質及びリポタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の文脈における含酸素炭化水素という用語は、アルコール、エステル、エーテル及びケトンを包含する、酸素を含有する化学オレフィン溶媒に関する。例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル及び酢酸ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の文脈における凍結防止剤という用語は、液体の凝固点又はゲル化点を低下させる添加剤として使用される化合物又は物質に関する。
【0039】
本発明の文脈における可塑剤という用語は、材料、通常はポリマー系材料を軟化させ、その可塑性を増大させ、その粘度を減少させる添加剤として使用される化合物又は物質に関する。
【0040】
本発明の文脈におけるエラストマー膜という用語は、ポリマーが粘弾性、すなわち粘性かつ弾性であり、弱い分子間力を有するポリマー膜に関する。
【0041】
本発明の文脈における熱可塑性膜という用語は、ポリマーが高温で変形可能になるポリマー膜に関する。
【0042】
本発明の文脈における緩衝剤という用語は、化合物又は物質、とくに液体への他のイオンの添加時にpHの小さな変化を示す部分的に中和された弱酸又は弱塩基を含有する水溶液に関する。
【0043】
本発明の詳細な説明
本発明の第1の局面は、チューナブル光学デバイス用の液体であって、チューナブル光学的デバイスは容積部及び膜を備え、容積部は、
・少なくとも1つの式(I)の化合物、
【化2】
式中、
各R1は、他のすべてのR1から独立して、Cx-アルキル-Aから選択され、詳細には、各R
1は、C
x-アルキル-Aから選択され、
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにH及びCNから選択され、
xは、3~20の整数であり、
各R
2は、他のすべてのR
2から独立して、C
y-アルキル、C
y-アルキル-B、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、詳細には、他のすべてのR
2から独立して、-H、C
y-アルキル、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、
Bは、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにCF
3及びCNから選択され、
yは、1~17、詳細には、1~6の整数であり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、独立して、-H、C
1~4-アルキル、フェニル及び(CH
2)-フェニル、とくにメチルから選択され、
nは、1~50の整数であり、
xとyの和は、≦21であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、1つ以上の置換基-Fによって任意に置換されている、化合物、及び
・少なくとも1つの添加剤、詳細には、少なくとも1つの添加剤は、保護剤、安定剤、追跡子、緩衝剤及び表面張力調整剤の群から選択される、添加剤
を含む液体で満たされており、
膜は、エラストマー膜又は熱可塑性膜から、とくに置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜、ウレタン膜、アクリル膜、ポリエチレンテレフタラート膜、ポリエチレン膜、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー膜から、より具体的には置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜から選択される、チューナブル光学デバイス用の液体に関する。
【0044】
置換されていないPDMS又は置換されたPDMSは光学的に透明である。
【0045】
レンズの焦点は、膜の曲率を変更することによって調整され得る。これは、例えば、保持リングを膜に押し付けるアクチュエータを使用することによって、コイルによって、又は膜を変形させるために膜に直接窪みを付けるリング状ピストンによって、又は光学素子に対して高さが調整可能であるように設計された壁を使用することによって達成され得る。
【0046】
ある態様において、チューナブル光学デバイス用の液体であって、チューナブル光学的デバイスは容積部及び膜を備え、容積部は、
・少なくとも1つの式(I)の化合物、
【化3】
式中、
各R1は、他のすべてのR1から独立して、Cx-アルキル-Aから選択され、詳細には、各R
1は、C
x-アルキル-Aから選択され、
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにH及びCNから選択され、
xは、3~20の整数であり、
各R
2は、他のすべてのR
2から独立して、C
y-アルキル、C
y-アルキル-B、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、詳細には、他のすべてのR
2から独立して、-H、C
y-アルキル、フェニル、-(CH
2)-フェニルから選択され、
Bは、CN、フェニル、-(CH
2)-フェニル及びCF
3、とくにCF
3及びCNから選択され、
yは、1~17、とくに1~6の整数であり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、独立して、-H、C
1~4-アルキル、フェニル及び(CH
2)-フェニル、とくにメチルから選択され、
nは、1~50の整数であり、
xとyの和は、≦21であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、1つ以上の置換基-Fによって任意に置換されている、化合物、及び
・少なくとも1つの添加剤、詳細には、少なくとも1つの添加剤は、保護剤、安定剤、追跡子及び表面張力調整剤の群から選択される、添加剤
を含む液体で満たされており、
膜は、エラストマー膜又は熱可塑性膜から、とくに置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜、ウレタン膜、アクリル膜、ポリエチレンテレフタラート膜、ポリエチレン膜、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマー膜から、より具体的には置換されたPDMS又は置換されていないPDMS膜から選択される、チューナブル光学デバイス用の液体。
【0047】
ある態様において、PDMS又は置換されたPDMSは純粋に弾性であり、低い粘弾性減衰を有する。
【0048】
ある態様において、PDMSは、フェニル又はフッ化物などの追加の置換基によって少なくとも部分的に官能化され得る。官能化は、適用される液体に応じて選択され得、液体と前記PDMSの間にとくに低い溶解度を提供する。
【0049】
ある態様において、PDMSは置換されていないPDMSである。
【0050】
ある態様において、容積部は、少なくとも1つの式1の化合物で満たされ、添加剤、詳細には、阻害剤又は吸収剤などの材料の安定性を変化させるための添加剤を含む。
【0051】
ある態様において、容積部は、少なくとも1つの式1の化合物を含む液体で満たされ、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、液体の光学特性を調整するように選択される。
【0052】
調整され得る光学特性には、屈折率、アッベ数、すなわち材料の分散、及び光透過率が含まれる。より多量のフェニル置換基を導入することにより、屈折率を増加させることができるのに対して、より多量のフッ素置換基を導入することは、屈折率を減少させる。式1の2つ以上の化合物を使用することにより、2つ以上の化合物の体積比によって屈折率を調整することができる。
【0053】
ある態様において、容積部は、式1の1つの化合物を含む液体で満たされ、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、液体の光学特性を調整するように選択される。
【0054】
ある態様において、容積部は、式1の2つ以上の化合物の混合物で満たされる。
【0055】
これにより、屈折率や密度などの光学特性の調整が可能になる。類似の極性又は類似の化学的特性を有する側鎖を有する液体又は材料は混和性である、例えば、異なる量のフェニル又はフッ素置換基を有するシリコーン油は混和性である。このような液体又は材料を混合することにより、その必要に応じて屈折率を調整することができる。例えば、より多量のフェニル置換基は屈折率を増大させ、フッ素置換基の量が増加すると液体の屈折率が減少する。次いで、ポリグリコール及びポリオールは、屈折率を調整するために特定の割合でエステルと混和性である。ある態様において、容積部は、2つ以上の式1の化合物の混合物で満たされ、添加剤、詳細には、阻害剤又は吸収剤などの材料の安定性を変化させるための添加剤を含む。
【0056】
ある態様において、容積部は、式1の化合物で少なくとも50%充填される。
【0057】
ある態様において、チューナブル光学的デバイスは、膜の曲率を調整するように設計された装置を備える。
【0058】
ある態様において、チューナブル光学的デバイスは、膜の曲率を調整するためのアクチュエータを備える。
【0059】
ある態様において、チューナブル光学的デバイスは、膜の曲率を調整するように設計されたリング、コイルもしくはピストン、又は膜の曲率を調整するために高さを調整できるように設計された壁を備える。
【0060】
容積部は、シリコーン系ポリマー(式1の化合物)で満たされる。ポリマーは、側鎖R1及びR2によって特徴付けられる1~50個のモノマーを含む。
【0061】
側鎖は、膜構造を通る式1の化合物の透過及び輸送を制限する立体障害に寄与する。
【0062】
ポリマーは、R1及び/又はR2に様々な部分を有する異なるモノマーから構成され得る。一例は、R1にアルキルを有するモノマーとR1にアルキル-CN部分を有するモノマーとの混合物から構成されるポリマーであり得る。また、R2での変化は、1つのポリマー内において可能である。例えば、R1がアルキル-CN部分であることを特徴とするポリマーでは、R2部分はメチルと-CH2-フェニルの間で変化し得る。
【0063】
R1及びR2におけるCx-及びCy-アルキル部分は、それぞれ直鎖又は分岐鎖アルキルであり得る。
【0064】
ある態様において、各R1は、他のすべてのR1と同一である。
【0065】
ある態様において、各R2は、他のすべてのR2と同一である。
【0066】
ある態様において、各R1は他のすべてのR1と同一であり、各R2は他のすべてのR2と同一である。
【0067】
部分R1~R8は、任意にフッ素化され得る。詳細には、ポリマーの立体効果は、完全な又は部分的なF置換によって調整され得る。したがって、膜構造を通したポリマーの透過及び輸送が回避され得る。これは、xとyの合計がかなり小さい場合、例えばR1のアルキル部分がC3~7-アルキルの範囲にある場合にとくに重要である。
【0068】
ある態様において、F置換は、40%を超える範囲である。
【0069】
ある態様において、部分R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、完全に又は部分的に、とくに完全に置換されている。これは、xとyの合計がかなり小さい場合、例えばR1のアルキル部分がC3~7-アルキルの範囲にある場合にとくに重要である。
【0070】
R1及びR2により長い側鎖を有する態様において、側鎖は、とくに少なくとも40%置換される。
【0071】
R1及びR2により長い側鎖を有する態様において、側鎖は、とくに少なくとも40%置換され、部分R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、完全に又は部分的に、とくに完全に置換される。
【0072】
光学レンズに適用する場合、容積部中に満たされる液体(式1の化合物)は透明でなければならない。
【0073】
ある態様において、式1の化合物の屈折率は、1.33~1.6、とくに1.44~1.47である。
【0074】
式1の化合物の粘度は、数nと相関する。多くのモノマーからなるポリマーは、より少ないモノマーからなるポリマーよりも粘性がより高い。ポリマーの粘度は、チューナブル光学的デバイスの焦点を調整することができる速さに影響を及ぼす。ほとんどの用途では、100 000cStに等しい又はそれ未満の粘度が適切である。
【0075】
ある態様において、式1の化合物の粘度は≦100000cSt、とくに5~2000cStである。
【0076】
Aが-CNである場合、式1の化合物は極性である。極性構造は非極性環境で低い溶解度を有し、したがって、弾性膜要素としてPDMSが使用される場合には、例えば密閉系において、水の存在が抑制される条件下で極性液体を用いることが適切である。
【0077】
ある態様において、xは、Aが-CNである場合、3~13の整数である。
【0078】
ある態様において、xは、Aが-CNである場合、3~6の整数である。
【0079】
式1の極性化合物の場合、アルキル、トリフルオロアルキル及びフェニル類、とくにフェニル、-(CH2)-フェニル及びCF3、より具体的にはCF3などの他の非反応性部分による-CN部分を同時に置換することによって、光学デバイスに適用するための膨潤又は他の特性に著しく影響を及ぼすことなく屈折率を調整することができる。-CN部分の特性を全体的に維持し、PDMSなどのエラストマーとの適合性を維持するために、これらの置換物の割合は、最大50%の範囲であり得る。
【0080】
ある態様において、n≧2の場合、Aは、全R1のうち少なくとも50%において-CNである。
【0081】
ある態様において、Aは、すべてのR1について-CNである。
【0082】
Aが-Hである場合、式1の化合物は疎水性である。液体の疎水性特性は、水が内部及び外部に拡散することができる開放系での使用に好ましい。
【0083】
ある態様において、Aは、すべてのR1について-Hである。
【0084】
ある態様において、xは、Aが-Hである場合、6~20、とくに9~20の整数である。
【0085】
式1の疎水性化合物の場合、よくバランスのとれた特性のセットを維持するために、C6~13、とくにC9~13-アルキルがR1において使用され得る。R1に短い側鎖を含む化合物(例えば、x=9)については、粘度及び融点の両方がかなり低いが、多くの用途にとって興味深く、一方、PDMSから作製された膜の、約85℃のより高い温度での膨潤が適切になってくる。他方で、R1にかなり大きなアルキル基を含む化合物(x=12又は13)は、より高い融点、典型的には10~15℃超を有し、その使用は制限され得る。それにもかかわらず、より短い又はより長いアルキル鎖を含む化合物は、ほとんどの標準的な用途に適している。
【0086】
ある態様において、xは、Aが-Hである場合、6~13、とくに9~13の整数である。
【0087】
ある態様において、xは、Aが-Hである場合、9~12の整数である。
【0088】
また、式1の疎水性化合物の場合、R1及び/又はR2の部分的置換によって屈折率を調整することができる。例えば、R2におけるメチル基は、いくつかのモノマーにおいて、フェニル又は(CH2)-フェニル部分によって交換され得る。
【0089】
ある態様において、部分Cx-アルキル-AのCx-アルキルは、直鎖である。
【0090】
ある態様において、部分Cx-アルキル-AのCx-アルキル及びCy-アルキルは、直鎖である。
【0091】
典型的には、n数は1~50の範囲である。この範囲内であれば、弾性膜材料の基本的な相溶性が達成され、膨潤は無視できる範囲に抑制される。注目すべきことに、粘度は、モノマーの数nが増加するにつれて増加する。ほとんどの適用場面では、低い粘度が好ましく、とくにより低い温度ではそうである。適応要素のより高い調整速度をもたらすからである。一方、高粘度であることが、光学の動態があまり重要ではない場合には好ましい場合があり得るものの、機械的衝撃に対する堅牢性、低い蒸気圧、(誘発された気泡形成を伴う)キャビテーションに対する堅牢性を有するものか、又は同等のものが好ましい。妥当な粘度限界は100000cStである。1~5などの低いn数は、詳細には、高圧気体雰囲気中で低温環境からの急速な移動後に、高温及び機械的衝撃と組み合わされると、光学デバイスの内部において、低い圧力での蒸気生成というある種のリスクを誘導し得る。それにもかかわらず、低い又は極めて低い温度では、このような低分子量タイプの液体が好ましいことがあり得る。これらの極端な条件(高い/低い温度;高い/低い圧力)は、宇宙において適用された場合に発生する可能性がある。宇宙においては、焦点チューナブルレンズなどのチューナブル光学デバイスが光学系の重量を大幅に低下させることができるからである。
【0092】
ある態様において、nは、1~5の整数である。
【0093】
適用場面として、例えば、カメラシステムにおいては、周囲温度(例えば、15℃~40℃、好ましくは-20℃~85℃)での用途には、11~29個のモノマーからなるポリマーがとくに適している。
【0094】
ある態様において、nは、11~29の整数である。
【0095】
とくに高温(例えば、40°~150℃)で使用されるチューナブル光学的デバイスの場合、ポリマーの標準温度及び圧力(STP)粘度は高くするべきである。
【0096】
ある態様において、nは、30~50の整数である。
【0097】
適切な膜は、光学的に透明であり、低い粘弾性減衰を有し、極めて広い温度範囲、すなわち少なくともマイナス40℃~200℃にわたって化学的及び物理的安定性(安定な弾性を包含する)を示すものである。
【0098】
ある態様において、膜は透明であり、-40℃~+200℃の温度で安定である。
【0099】
ある態様において、少なくとも1つの添加剤の合計は50%より少ない。
【0100】
ある態様において、少なくとも1つの添加剤の合計は20%より少ない。
【0101】
ある態様において、少なくとも1つの添加剤の合計は5%より少ない。
【0102】
ある態様において、保護剤は、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV吸収剤、重合防止剤及び/又は腐食防止剤から選択される。
【0103】
ある態様において、保護剤は、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV吸収剤、重合防止剤及び腐食防止剤又はこれらの混合物から選択される。
【0104】
酸化防止剤、金属不活性化剤、UV吸収剤、重合防止剤及び腐食防止剤の群は、外的影響からの材料の保護を増加させるか、又は改善する。
【0105】
ある態様において、酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオナート)、D-アルファ-トコフェロールアセタート、L-アルファ-トコフェロールアセタート、L(+)-アスコルビン酸及び/又はビスフェノール-Aから選択される。
【0106】
モノマー又はポリマーのアルキル鎖は、より高い温度で切断され得、液体の粘度を変化させる好ましくない重合を誘発する反応性ラジカルを残す。この好ましくない重合は、ラジカル捕捉剤として機能することができる酸化防止剤の添加によって回避される。
【0107】
酸化防止剤は、単独で、又は様々な酸化防止剤の混合物として添加され得る。
【0108】
ある態様において、酸化防止剤は2%~10%添加される。
【0109】
ある態様において、酸化防止剤は0.5%~2%添加される。
【0110】
ある態様において、酸化防止剤は0.5%未満で添加される。
【0111】
ある態様において、重合防止剤は、Seigyozai-No.6~10、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルイソブチノール、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び/又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)から選択される。
【0112】
モノマー又はポリマーのアルキル鎖は、より高い温度で又は光によって切断され得、液体の粘度を変化させる好ましくない重合を誘発する反応性ラジカルを残す。この好ましくない重合は、重合防止剤の添加によって回避され、ラジカル捕捉剤として作用することによって熱又は光誘導性重合を防止する。反応性ラジカルは、ラジカル捕捉剤によって不活性化される。
【0113】
重合防止剤は、単独で、又は様々な重合防止剤の混合物として添加される。
【0114】
ある態様において、重合防止剤は、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルイソブチノール、tert-ブチルヒドロペルオキシド及び/又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)から選択される。
【0115】
ある態様において、重合防止剤は、2%~10%添加される。
【0116】
ある態様において、重合防止剤は、0.5%~2%添加される。
【0117】
ある態様において、重合防止剤は0.5%未満で添加される。
【0118】
ある態様において、金属不活性化剤は、N,N’-ビス(サリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、ベンゾトリアゾール、オキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジン、N,N’-(ジサリチリデン)-1,2-プロパンジアミン、エチレン-ジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアジアゾール及び/又はトリアゾールから選択される。
【0119】
周囲の金属は、ポリマーの熱酸化を加速させ得る。金属によって触媒されるポリマーの酸化を防止するために、金属不活性化剤は触媒として活性を有する金属イオンと不活性錯体を形成する。得られた錯体は熱的に安定である。したがって、キレート剤との金属の錯体形成は、金属がヒドロペルオキシドと会合するのを防ぐ、すなわち、酸化又は還元によってヒドロペルオキシドからラジカルを生成する金属の能力を減少させる。
【0120】
メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、チアジアゾール及びトリアゾールは、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0121】
金属不活性化剤は、単独で、又は様々な金属不活性化剤の混合物として添加される。
【0122】
金属不活性化剤がラジカル捕捉部分を含まなければ、金属不活性化剤は酸化防止剤と組み合わされ得る。
【0123】
ある態様において、金属不活性化剤は2%~10%添加される。
【0124】
ある態様において、金属不活性化剤は0.5%~2%添加される。
【0125】
ある態様において、金属不活性化剤は0.5%未満で添加される。
【0126】
ある態様において、UV吸収剤は、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾトリアゾール及びヒンダードアミン系光安定剤(HALS)から選択される。
【0127】
UV吸収剤は、UV吸収剤が保護するポリマーよりもはるかに強力に破壊的なUV光を吸収する。これらの化合物の励起状態は、放射線自体を生成することなく極めて迅速かつ効率的に基底状態に緩和し、したがってUV安定性が高い。UV吸収剤は、UV光によって誘発される、ポリマーの解重合を防止する。
【0128】
UV吸収剤は、単独で、又は様々なUV吸収剤の混合物として添加される。
【0129】
ベンゾフェノン、トリアジン及びベンゾトリアゾールは、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0130】
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジンの誘導体であり、これは、4位でさらに置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0131】
ある態様において、UV吸収剤は2%~10%添加される。
【0132】
ある態様において、UV吸収剤は0.5%~2%添加される。
【0133】
ある態様において、UV吸収剤は0.5%未満で添加される。
【0134】
ある態様において、腐食防止剤は、ジチオリン酸亜鉛、ベンゾトリアゾール、ヘキサミン、フェニレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、亜硫酸塩及び/又はアスコルビン酸から選択される。
【0135】
腐食防止剤は、使用される腐食防止剤に応じて、酸素を水に変換することによって、又は金属表面上に保護層を追加することによって、接触する金属の腐食速度を防止し、又は減少させる。
【0136】
腐食防止剤は、単独で、又は様々な腐食防止剤の混合物として添加される。
【0137】
ある態様において、腐食防止剤は、クロマート又はニトラートである。
【0138】
ある態様において、腐食防止剤は2%~10%添加される。
【0139】
ある態様において、腐食防止剤は0.5%~2%添加される。
【0140】
ある態様において、腐食防止剤は0.5%未満で添加される。
【0141】
ある態様において、安定剤は、分散剤、ナノ粒子、凍結防止剤及び/又は可塑剤から選択される。
【0142】
液体中の添加剤としての安定剤の使用は、粘度、光学密度及びポリマー安定化を最適化することによってポリマー特性を強化する。
【0143】
安定剤は、単独で、又は様々な安定剤の混合物として添加される。
【0144】
ある態様において、分散剤は両親媒性化合物である。
【0145】
分散剤は、液体上の粒子の凝集及び沈降を防止する。
【0146】
両親媒性化合物は、単独で、又は様々な両親媒性化合物の混合物として添加される。
【0147】
ある態様において、分散剤は2%~10%添加される。
【0148】
ある態様において、分散剤は0.5%~2%添加される。
【0149】
ある態様において、分散剤は0.5%未満で添加される。
【0150】
ある態様において、ナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZnO及び/又はBaTiO3から選択される。
【0151】
液体への添加剤としてのナノ粒子の使用は、理想的な光学密度を生成することができるように屈折率の適合を可能にする。
【0152】
ナノ粒子は、単独で、又は様々なナノ粒子の混合物として添加される。
【0153】
ある態様において、ナノ粒子は、SiO2及び/又はTiO2から選択される。
【0154】
ある態様において、ナノ粒子はSiO2である。
【0155】
ある態様において、ナノ粒子は、10%~60%添加される。
【0156】
ある態様において、ナノ粒子は、5%~10%添加される。
【0157】
ある態様において、ナノ粒子は5%未満で添加される。
【0158】
ある態様において、凍結防止剤は含酸素炭化水素である。
【0159】
凍結防止剤は、より低い温度での液体の粘度の適合を可能にする。液体の粘度は、より低い温度で自然に減少する。凍結防止剤の添加により、凝固点はより低い温度に低下され、より低い温度での粘度は室温での粘度と同様に留まる。
【0160】
含酸素炭化水素は、単独で、又は様々な含酸素炭化水素の混合物として添加される。
【0161】
凍結防止剤の、別の添加剤との組み合わせは、より低い温度での液体粘度をさらに高める。
【0162】
ある態様において、凍結防止剤は2%~10%添加される。
【0163】
ある態様において、凍結防止剤は0.5%~2%添加される。
【0164】
ある態様において、凍結防止剤は0.5%未満で添加される。
【0165】
ある態様において、可塑剤は、ジ-n-ヘキシルフタラート及び/又はビスフェノール-Aから選択される。
【0166】
液体への可塑剤の添加は、とくに他の添加剤と組み合わせてレンズ特性を最適化することができるように、液体の可塑性を増加させ、液体の粘度を低下させる。
【0167】
可塑剤は、単独で、又は異なる可塑剤の混合物として添加される。
【0168】
ある態様において、追跡子は、蛍光ナノ粒子及び/又は量子ドットから選択される。
【0169】
追跡子は、製造された光学デバイスの容易な検出を可能にするために、特定の固有の濃度で添加される。
【0170】
追跡子は、単独で、又は異なる追跡子の混合物として添加される。
【0171】
ある態様において、凍結防止剤は0.5%~1%添加される。
【0172】
ある態様において、凍結防止剤は0.01%~0.5%添加される。
【0173】
ある態様において、凍結防止剤は0.01%未満で添加される。
【0174】
ある態様において、表面張力調整剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート及び/又はソルビタンモノオレアートから選択される。
【0175】
表面張力調整剤は、チューナブル光学デバイス内の液体の表面張力を調整し、液体によって覆われる表面の被覆率の向上を可能にし、液体が覆っている表面への液体の付着の最小化を可能にして、調整可能な光学デバイスの完全な動作を可能にする。
【0176】
表面張力調整剤は、単独で又は様々な表面張力調整剤の混合物として添加される。
【0177】
ある態様において、表面張力調整剤は2%~10%加えられる。
【0178】
ある態様において、表面張力調整剤は0.5%~2%加えられる。
【0179】
ある態様において、表面張力調整剤は0.5%未満で追加される。
【0180】
ある態様において、緩衝剤は、ホスファート緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤、ボラート緩衝剤、シトラート緩衝剤、グリシン緩衝剤、ジエタノールアミン、酢酸-酢酸ナトリウム、アンモニア及び塩化アンモニウムから選択される。
【0181】
緩衝剤は、液体のpHを安定化することによって、液体を汚染し、液体のpH値に影響を与える外部因子によって引き起こされる分解から液体を保護する。
【0182】
引用された先行技術文献:
1.優先権出願DE 10 2022 121 080.4
【外国語明細書】