(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028291
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240226BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240226BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240226BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20240226BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/15 340
A61F13/511 400
B32B5/26
D04H1/4374
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216929
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2019145560の分割
【原出願日】2019-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】大倉 千明
(72)【発明者】
【氏名】京塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
(57)【要約】
【課題】トップシート及び拡散層の両者の性質を併せ持つ不織布として使用することができる、吸収性物品用不織布を提供する。
【解決手段】第1繊維層と、第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層を含み、第1繊維層は、第1繊維層の総質量を基準として接着性繊維を60質量%以上含み、第2繊維層は、第2繊維層の総質量を基準としてセルロース系繊維を60質量%以上含み、第1繊維層は接着性繊維により繊維同士が接着され、第1繊維層と第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化され、第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置され、(i)不織布の厚み変化率が16%以上、又は(ii)第2繊維層に含まれる繊維は接着性繊維により接着されていない、を満たす吸収性物品用不織布である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
前記第1繊維層が、接着性繊維を含み、
前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第2繊維層が、セルロース系繊維を含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第1繊維層は、前記接着性繊維により繊維同士が接着されており、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置され、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす、
(i)下記の測定方法により測定した前記不織布の厚み変化率が16%以上であること
(ii)前記第2繊維層に含まれる繊維は前記接着性繊維により接着されていないこと
吸収性物品用不織布。
[厚み変化率]
厚み測定機を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定し、294Pa荷重時の厚さ(P1)と1.96kPa荷重時の厚さ(P2)から以下の式に基づいて算出する。
厚み変化率(%)=[(P1-P2)/P1]×100
【請求項2】
前記接着性繊維の繊度が1.0dtex以上5.0dtex以下である、請求項1に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項3】
前記接着性繊維は、芯鞘型複合繊維を含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項4】
前記接着性繊維は、偏心芯鞘型複合繊維を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項5】
前記セルロース系繊維の繊度が1.0dtex以上5.0dtex以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項6】
前記セルロース系繊維は、繊維断面が3葉以上の多葉型であるセルロース系繊維を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布であり、吸収性物品のトップシートと拡散層の両方の機能を有する吸収性物品用不織布。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収性物品用不織布が含まれる吸収性物品。
【請求項9】
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であり、前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置される吸収性物品用不織布の製造方法であって、
ウェブの総質量を基準として接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含む第1繊維ウェブを作製する工程、
前記接着性繊維により前記第1繊維ウェブの繊維同士を接着させる接着工程、
ウェブの総質量を基準としてセルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含む第2繊維ウェブを作製する工程、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブを積層して積層繊維ウェブを得る積層工程、
前記積層繊維ウェブについて前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブの繊維同士を交絡させて一体化する交絡工程、を含み、
前記第1繊維ウェブが前記第1繊維層となり、前記第2繊維ウェブが前記第2繊維層となった、吸収性物品用不織布の製造方法。
【請求項10】
前記交絡工程が水流交絡処理を含む、請求項9に記載の吸収性物品用不織布の製造方法。
【請求項11】
前記接着工程が熱風加工処理を含む、請求項9又は10に記載の吸収性物品用不織布の製造方法。
【請求項12】
前記接着工程後で前記第1繊維ウェブまたは前記積層繊維ウェブをロールに巻き取ることなく、前記積層繊維ウェブを交絡工程に付す、請求項9~11のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布の製造方法。
【請求項13】
前記接着工程が前記第1繊維ウェブの一方の面に熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が水流交絡処理を含み、
前記第2繊維ウェブは前記第1繊維ウェブの熱風を当てた面に積層し、
前記水流交絡処理は、前記第2繊維ウェブの側から先に水流を噴射することを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性用物品用不織布に関し、さらに詳しくは、吸収性物品のトップシート及び拡散層として使用可能な吸収性物品用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品(例えば、おむつ、尿漏れパッド、ナプキン、パンティライナー等)は、トップシート、拡散層及び吸収体等で構成されている。トップシートは、吸収性物品に接触した水分を速やかに吸収性物品に引き込むことと人の肌に良好な触感を与えること、引き込んだ水分がトップシート表面に再び戻らないようにすること等が要求される。拡散層は、トップシートで引き込まれた水分を拡散させながら速やかに通過させて、吸収体に移動させること等が要求される。吸収体は、吸収した水分をしっかり保持すること等が要求される。
【0003】
例えば、特許文献1は、肌に当接する第1繊維層と、前記第1繊維層に隣接している第2繊維層とを含む吸収性物品用表面シートであって、前記第1繊維層は、芯成分がポリプロピレンを含み、鞘成分が前記ポリプロピレンの融点よりも5℃以上低い融点を有する熱可塑性樹脂を含む第1芯鞘型複合短繊維を50質量%以上含む繊維層であり、前記第2繊維層は、芯成分がポリエステル樹脂を含み、鞘成分が前記ポリエステル樹脂の融点よりも50℃以上低い融点を有する熱可塑性樹脂を含み、前記芯成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている第2芯鞘型複合短繊維を50質量%以上含む繊維層であり、前記第1芯鞘型複合短繊維は、繊度が0.5dtex以上2.1dtex以下であり、前記第2芯鞘型複合短繊維は、繊度が2.2dtex以上5.2dtex以下であり、前記第1芯鞘型複合短繊維と前記第2芯鞘型複合短繊維の少なくとも一部が、前記第1芯鞘型複合短繊維と前記第2芯鞘型複合短繊維の鞘成分により熱接着している、吸収性物品用トップシートとして使用可能な不織布を開示する。特許文献1は、その不織布は、滑らかな触感を有するとともに、ランオフ及び吸液速度等の吸液特性が良好であるという有利な効果を奏することを開示する。
【0004】
例えば、特許文献2は、セルロース繊維に架橋剤を添加し、機械的撹拌、フラッフ化及び加熱処理を施して、繊維内架橋結合を有し、変形が付与、固定されたセルロース繊維を含有する繊維から構成される、吸収性物品用拡散層として使用可能なシートを開示する。特許文献2は、そのシートは、トップシート上にある尿及び体液等の液体を加圧圧縮下でも素早く吸収し、吸収された液体を殆ど保持せずに、その液体を吸収体へ迅速に拡散放出できるという有利な効果を奏することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-204983号公報
【特許文献2】特開平08-308873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、吸収性物品を製造するためには、別々に製造されたトップシート用不織布と拡散層用不織布を貼り合わせることが必要であった。特にトップシート用不織布または拡散層用不織布にセルロース系繊維が含まれていると、貼り合わせの際に接着剤を使用する方法が採られているが、その方法によるとトップシート用不織布と拡散層用不織布との間に隙間が生じることや、接着剤の量が安定しないことにより、安定した吸液性能を発揮できない場合があった。更に、近年、吸収性物品には、付着した液体の色を目立たなくさせる性質(「マスキング性」ともいう)が求められるようになった。
【0007】
一方、吸収性物品について、継続的なコストダウンの要求があり、接着剤の使用はコストアップにつながるため、接着剤を使用せずに貼り合わせる方法について検討が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、トップシート用不織布と拡散層用不織布の両方の性質を併せ持つ不織布を、一つの製造工程で製造することができれば、吸収性物品の製造を簡素化することができ、安定な吸液性能を発揮できることを見出した。更に、そのような不織布は、吸収性物品用途に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本開示は、一の要旨として、吸収性物品用不織布を提供し、それは、
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
前記第1繊維層が、接着性繊維を含み、
前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第2繊維層が、セルロース系繊維を含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第1繊維層は、前記接着性繊維により繊維同士が接着されており、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置され、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす、
(i)下記の測定方法により測定した前記不織布の厚み変化率が16%以上であること
(ii)前記第2繊維層に含まれる繊維は前記接着性繊維により接着されていないこと
吸収性物品用不織布である。
[厚み変化率]
厚み測定機を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定し、294Pa荷重時の厚さ(P1)と1.96kPa荷重時の厚さ(P2)から以下の式に基づいて算出する。
厚み変化率(%)=[(P1-P2)/P1]×100
【0010】
更に本開示は、他の要旨として、吸収性物品用不織布の製造方法を提供し、それは、
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であり、前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置される吸収性物品用不織布の製造方法であって、
ウェブの総質量を基準として接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含む第1繊維ウェブを作製する工程、
前記接着性繊維により前記第1繊維ウェブの繊維同士を接着させる接着工程、
ウェブの総質量を基準としてセルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含む第2繊維ウェブを作製する工程、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブを積層して積層繊維ウェブを得る積層工程、
前記積層繊維ウェブについて前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブの繊維同士を交絡させて一体化する交絡工程、を含み、
前記第1繊維層は前記第1繊維ウェブを含み、前記第2繊維層は前記第2繊維ウェブを含む、吸収性物品用不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、トップシート及び拡散層の両者の性質を併せ持つ不織布として使用することができる。よって、本発明の吸収性物品用不織布は、吸収性物品を製造するために好適に使用することができ、その製造方法を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例7の5枚の不織布サンプルについて、2回目の吸液時間の測定後に、人工経血と同等の濃さの色の部分が最も小さい不織布サンプルの表面の写真である。実施例7の不織布では、人工経血と同等の濃さの色の部分が実質的になかった。
【
図2】
図2は、比較例3の5枚の不織布サンプルについて、2回目の吸液時間の測定後に、人工経血と同等の濃さの色の部分が最も小さい不織布サンプルの表面の写真である。比較例3の不織布では、人工経血と同等の濃さの色の部分が、1回目の吸液時間の測定後から、明確に存在した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は一の要旨において、新たな吸収性物品用不織布を提供する。
本発明の実施形態の不織布は、
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
前記第1繊維層が、接着性繊維を含み、
前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第2繊維層が、セルロース系繊維を含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第1繊維層は、前記接着性繊維により繊維同士が接着されており、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置され、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす、
(i)下記の測定方法により測定した前記不織布の厚み変化率が16%以上であること
(ii)前記第2繊維層に含まれる繊維は前記接着性繊維により接着されていないこと
吸収性物品用不織布である。
[厚み変化率]
厚み測定機を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定し、294Pa荷重時の厚さ(P1)と1.96kPa荷重時の厚さ(P2)から以下の式に基づいて算出する。
厚み変化率(%)=[(P1-P2)/P1]×100
【0014】
本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、吸収性物品(例えば、おむつ、尿漏れパッド、ナプキン、パンティライナー等)の人の肌に直接触れる用途(例えば、吸収性物品用トップシート、好ましくは更に拡散層の機能を有する用途)に使用することができる。
【0015】
本発明の実施形態の不織布は、第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、前記第1繊維層が、接着性繊維を含み、前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、前記第1繊維層は、前記接着性繊維により繊維同士が接着されている。
【0016】
(接着性繊維)
本発明の実施形態の不織布において、「接着性繊維」とは、接着処理(例えば、熱接着処理、電子線照射、および超音波溶着(超音波ウェルダー)等)により接着性を示し、繊維同士を接着させて、接着箇所を形成することができる繊維をいい、本開示が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0017】
接着性繊維は、例えば、熱可塑性樹脂からなる合成繊維を含む。
熱可塑性樹脂は、本開示が目的とする不織布を得られる限り特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、エチレン-アクリル酸共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66等のポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等のエンジニアリングプラスチック、並びにそれらのエラストマー等を例示でき、これらから任意に選択することができる。
【0018】
合成繊維は、上記から選択される一または複数の熱可塑性樹脂から成る単一繊維であってよく、あるいは二以上の成分(「セクション」ともいえる)からなる複合繊維であってよい。複合繊維において、各成分は、一つの熱可塑性樹脂からなっていてよく、あるいは二以上の熱可塑性樹脂が混合されたものであってよい。複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、分割型複合繊維、海島型複合繊維、またはサイドバイサイド型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致しない偏心芯鞘型複合繊維であってよく、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致する同心芯鞘型複合繊維であってよい。接着性繊維は、芯鞘型複合繊維を含むことが好ましく、偏心芯鞘型複合繊維を含むことがより好ましい。
【0019】
単一繊維であるか複合繊維であるかにかかわらず、合成繊維は異型断面を有していてよい。芯鞘型複合繊維および海島型複合繊維の場合、その繊維断面において、芯成分および/または島成分は異型断面を有していてよい。
合成繊維が異型断面を有する場合、その断面は、楕円形、多角形、星形、または複数の凸部が基部で接合した形状(例えば、クローバー形状)であってよい。
本実施形態においては、合成繊維として、二以上の合成繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
合成繊維が、複合繊維である場合、融点のより低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。低融点の熱可塑性樹脂(低融点成分)は不織布を生産する工程で熱が加わったときに溶融または軟化して、接着成分となる。低融点成分は、繊維同士の接着または他の部材への接着に寄与し、接着箇所を形成し得る。
合成繊維が、複合繊維である場合、低融点成分が、繊維断面において、繊維の周面の長さに対して50%以上の長さで露出していることが好ましく、60%以上の長さで露出していることがより好ましく、80%以上の長さで露出していることがさらに好ましく、繊維の周面全体にわたって露出していることが特に好ましい。
【0021】
本発明の実施形態において、第1繊維層は、接着性繊維により繊維同士が接着されている。
接着性繊維の低融点成分が繊維断面において繊維周面に露出している部分が少なすぎないことで接着可能となる領域がより適度に存在し、繊維同士の接着箇所の数がより適度となり、繊維同士の接着箇所の接着強力がより適度となり、接着性繊維による接着をより十分にし得る。そのため不織布の毛羽の抑制及び不織布の強力をより好適なものとし得る。さらに、その後の交絡において、繊維同士の接着が解消される程度がより適度となり、より不織布の毛羽の抑制及び不織布の強力をより十分にし得る。
後述するように本発明の実施形態の不織布は第2繊維層がセルロース系繊維を含み、第1繊維層と第2繊維層は交絡によって一体化される。
【0022】
複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組み合わせは、例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、およびプロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ(ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂)、ならびにポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレン共重合体/ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体/ポリプロピレン等の二種類のポリオレフィン系樹脂の組み合わせ(ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂)、および例えばポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸等の融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせ(ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂)を含む。
【0023】
なお、単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
【0024】
接着性繊維が、融点のより低い熱可塑性樹脂が鞘部を構成する芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘の組み合わせは、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル(例えば、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート、ポリプロピレン/エチレン-アクリル酸共重合体を含む。鞘がポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレン)または共重合ポリエステルである芯鞘型複合繊維は、前記鞘を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱処理することで鞘が溶融又は軟化して、繊維同士を接着して、接着箇所を形成する性質を有する。
【0025】
接着性繊維が、芯鞘型複合繊維を含む場合、芯鞘型複合繊維の芯と鞘の複合比(体積比、芯/鞘)は、例えば80/20~20/80であってよく、特に60/40~40/60であってよい。
鞘の割合が少なすぎないことで、繊維同士の接着がより十分となり、毛羽の抑制がより好適となる、または不織布の強力がより好適となり得る。または不織布の強力がより好適となり得る。鞘の割合が多すぎないことで、繊維形状を保つ芯成分の割合がより十分となって、不織布の強力がより好適となり得る。
【0026】
接着性繊維は、二以上の繊維を含み、それらの繊維の接着成分の融点が相互に異なってよい。例えば接着性繊維が2つの繊維を含み、それら繊維の接着成分の融点の差が10℃以上40℃以下であってよく、さらには15℃以上30℃以下であってよい。
【0027】
接着性繊維の繊度は、1.0dtex以上5.0dtex以下であることが好ましく、1.2dtex以上4.8dtex以下であることがより好ましく、1.3dtex以上4.5dtex以下であることが更により好ましく、1.5dtex以上3.5dtex以下であることが特に好ましい。
接着性繊維の繊度が、上述の範囲内である場合、不織布の強力がより向上し、かつ不織布の風合いがより柔らかくなり好ましい。また接着性繊維の繊度が、上述の範囲内である場合、吸液時間の短さおよびウェットバック防止性を良好にすることができるため好ましい。
接着性繊維が分割型複合繊維を含む場合、繊度が0.1dtex以上1.0dtex未満である接着性繊維を含んで良い。
【0028】
接着性繊維の繊維径は、10μm以上33μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましく、14μm以上25μm以下であることが更により好ましく、16μm以上22μm以下であることが特に好ましい。
接着性繊維の繊維径が、上述の範囲内である場合、不織布の強力がより向上し、かつ不織布の風合いより柔らかくなり好ましい。また接着性繊維の繊維径が上述の範囲内である場合、吸液時間の短さおよびウェットバック防止性を良好にすることができるため好ましい。
接着性繊維が分割型複合繊維を含む場合、繊維径が3μm以上10μm未満である接着性繊維を含んで良い。
【0029】
接着性繊維の、繊維長は、25mm以上100mm以下であることが好ましく、30mm以上70mm以下であることがより好ましく、35mm以上60mm以下であることが更により好ましい。
接着性繊維の繊維長が、上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となるので、好ましい。特に本開示の不織布は、一度接着性繊維により構成繊維同士を接着させた後、交絡処理を行うことで製造することができる。従って、繊維長が大きすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、第2繊維層の構成繊維との交絡性をより好適にし得る。また繊維長が小さすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、不織布の風合いをより十分に柔らかくできる程度に繊維の交絡性をより好適なものとし得る。
【0030】
接着性繊維は立体捲縮を有することが好ましい。本明細書で、「立体捲縮」という用語は、捲縮の山(または山頂部)が鋭角である機械捲縮と区別されるために用いられる。立体捲縮は、例えば、山部が湾曲した捲縮(波形状捲縮)、山部が螺旋状に湾曲した捲縮(螺旋状捲縮)、波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮、機械捲縮の鋭角の捲縮と波形状捲縮および螺旋状捲縮の少なくとも一つとが混在した捲縮をいう。接着性繊維は機械捲縮を有してもよい。
接着性繊維が複合繊維である場合、顕在捲縮性複合繊維でもよい。「顕在捲縮性複合繊維」とは、繊維の段階で立体捲縮を発現している繊維を指す。顕在捲縮性複合繊維は、繊維の収縮を伴う熱処理により立体捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維とは異なる。
【0031】
接着性繊維が偏心芯鞘型複合繊維である場合、偏心率は5%以上50%以下であることが好ましく、7%以上30%以下であることがより好ましい。ここでいう偏心率とは、次式で定義される。
(式)偏心率(%)=(単繊維の中心と芯成分の中心との間の距離)×100/(単繊維半径)
接着性繊維が、立体捲縮を有する場合、第1繊維層の嵩が高くなり、液戻りにより液体が第1繊維層の表面に出ることを抑えるため、また、マスキング性を良好にすることができるため好ましい。また接着性繊維が立体捲縮を有する場合、第1繊維層がクッション性を有するため着用感を良好にすることができるため好ましい。接着性繊維は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0032】
接着性繊維は、第2繊維層に含まれるセルロース系繊維よりも親水性が低いことが好ましい。繊維の親水性は例えば接触角によって知ることができる。ここで、接触角とは、水の自由表面が繊維に接する場所で、水面と繊維表面とのなす角(水の内部にある角をとる)をいう。接着性繊維が、第2繊維層に含まれるセルロース系繊維よりも親水性が低いことにより、液戻りにより液体が第1繊維層の表面に出ることを抑えることができるため、また、第1繊維層から第2繊維層へと液体を引き込みやすいため好ましい。
【0033】
接着性繊維は、親水性繊維処理剤を含有する繊維であってよい。親水性繊維処理剤の含有形態は特に限定されない。親水性繊維処理剤は、接着性繊維の表面に付着していてよく、あるいは繊維中に分散させられていてよい。親水性繊維処理剤は、接着性繊維の表面にスプレー等で吹き付けることにより、または任意の方法で接着性繊維の表面に塗布することにより、接着性繊維の表面に付着させることができる。親水性繊維処理剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を溶融紡糸することによって、親水性繊維処理剤を繊維中に分散させることができる。親水性繊維処理剤の種類は特に限定されない。親水性繊維処理剤は公知のものであってよい。親水性繊維処理剤として、例えば、界面活性剤を含む繊維処理剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0034】
親水性繊維処理剤の含有量は、繊維質量(繊維処理剤を除く繊維の質量)を100質量%としたときに、0.1質量%以上2.0質量%以下であってよい。親水性繊維処理剤の含有量は、特に0.15質量%以上1.0質量%以下であってよく、より特には0.2質量%以上0.6質量%以下であってよい。
【0035】
第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、前記接着性繊維を70質量%以上100質量%以下含むことが好ましく、前記接着性繊維を80質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、前記接着性繊維を90質量%以上100質量%以下含むことが更に好ましい。第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含むことで、不織布表面の毛羽立ちを抑えることができ、また、不織布の形状安定性を良好にすることができるため好ましい。
【0036】
第1繊維層は、接着性繊維以外の繊維が含まれていてよい。接着性繊維以外の繊維は、例えば、セルロース系繊維、セルロース系繊維でない天然繊維(例えば羊毛、シルク等)、接着性繊維ではない合成繊維(例えば、接着性繊維の接着成分を溶融させるときに溶融または軟化せず、接着性を示さない合成繊維等)を含み、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0037】
接着性繊維以外の繊維は、40質量%以下の割合で含まれてよく、特に30質量%以下の割合で含まれてよく、より特には20質量%以下の割合で含まれてよく、さらにより特には10質量%以下の割合で含まれてよく、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。本発明の実施形態において、第1繊維層は、接着性繊維とセルロース系繊維からなる不織布であってよく、接着性繊維からなる不織布であってよい。
【0038】
本発明の実施形態において、第1繊維層の繊維同士は接着性繊維により接着されている。即ち、本発明の実施形態の第1繊維層は、接着箇所を含む。これにより、不織布の強度および毛羽の抑制が両方とも確保されて、取扱い性が向上する。接着性繊維による接着は、接着性繊維の一部が、溶融もしくは軟化して、または変質して接着性を示し、それと交差または接触する繊維を固定することにより達成され得る。繊維同士の接着は、具体的には、接着性繊維と接着性繊維との接着のことをいい、他の繊維がさらに含まれる場合には、加えて接着性繊維と他の繊維との接着のことをいう。接着は、熱を加えて接着性繊維の一部を溶融または軟化させる熱接着によるものであってよく、あるいは、電子線等の照射または超音波溶着によるものであってよい。
【0039】
第1繊維層は、10g/m2以上50g/m2以下の目付を有することが好ましく、15g/m2以上45g/m2以下の目付を有することがより好ましく、20g/m2以上40g/m2以下の目付を有することが更により好ましく、20g/m2以上35g/m2以下の目付を有することが特に好ましい。第1繊維層が上述の範囲の目付を有する場合、第1繊維層の嵩が高くなり、液戻りにより液体が第1繊維層の表面に出ることを抑えるため、また、マスキング性を良好にすることができるため好ましい。
【0040】
本発明の実施形態において、前記第2繊維層は、セルロース系繊維を含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されている。
【0041】
更に、本発明の実施形態において、前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置され、
下記(i)及び(ii)のいずれかを満たす。
(i)下記の測定方法により測定した前記不織布の厚み変化率が16%以上であること
(ii)前記第2繊維層に含まれる繊維は前記接着性繊維により接着されていないこと
[厚み変化率]
厚み測定機を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定し、294Pa荷重時の厚さ(P1)と1.96kPa荷重時の厚さ(P2)から以下の式に基づいて算出する。
厚み変化率(%)=[(P1-P2)/P1]×100
【0042】
(セルロース系繊維)
本発明の実施形態の不織布において、「セルロース系繊維」とは、繊維素繊維とも呼ばれ、一般的に、セルロースを原料とする繊維をいう。
セルロース系繊維は、例えば、綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ及びカポック等の植物に由来する天然繊維;ビスコース法で得られるレーヨン(ビスコースレーヨン)及びポリノジックレーヨン、銅アンモニア法で得られるキュプラ、及び溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)及びリヨセル(登録商標)等の再生繊維;溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;及びアセテート繊維等の半合成繊維を含み、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0043】
セルロース系繊維の繊度は、1.0dtex以上5.0dtex以下であることが好ましく、1.0dtex以上4.0dtex以下であることがより好ましく、1.0dtex以上3.5dtex以下であることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊度が、上述の範囲内である場合、繊度が小さすぎないことで第2繊維層に空隙を形成し、第1繊維層から液体を引き込みやすくなるため、また繊度が大きすぎないことで第2繊維層の地合が良好となり、第2繊維層の表面を平坦にして吸収体と均一に接触させることができるため好ましい。また、セルロース系繊維の繊度が上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となり、不織布の交絡性が低すぎないことで不織布の強力や第1繊維層と第2繊維層との一体化がより好適となり、また、不織布の交絡性が高すぎないことで第2繊維層の空隙がより好適となるため好ましい。
【0044】
セルロース系繊維の、繊維径は、5μm以上25μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましく、10μm以上17μm以下であることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊維径が、上述の範囲内である場合、繊維径が小さすぎないことで第2繊維層に空隙を形成し、第1繊維層から液体を引き込みやすくなるため、また繊維径が大きすぎないことで第2繊維層の地合が良好となり、第2繊維層の表面を平坦にして吸収体と均一に接触させることができるため好ましい。また、セルロース系繊維の繊維径が上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となり、不織布の交絡性が低すぎないことで不織布の強力や第1繊維層と第2繊維層との一体化がより好適となり、また、不織布の交絡性が高すぎないことで第2繊維層の空隙がより好適となるため好ましい。
【0045】
セルロース系繊維の、繊維長は、25mm以上100mm以下であることが好ましく、30mm以上70mm以下であることがより好ましく、35mm以上60mm以下であることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊維長が、上述の範囲内である場合、繊維の交絡性が好適となるので、好ましい。繊維長が大きすぎないことで不織布の強力がより好適となるため好ましい。また、繊維長が小さすぎないことで第2繊維層の空隙がより好適となるため、また、第1繊維層と第2繊維層との一体化がより好適となるため、好ましい。
【0046】
セルロース系繊維の、繊維の断面(横断面、又は繊維の長さ方向と垂直方向の断面)は、円形であっても非円形であってもよく、非円形の形状として、楕円形、Y形、X形、井形、多葉形、多角形、星形、菊花形等が挙げられる。繊維の断面が非円形である場合、第2繊維層に空隙を形成し、第1繊維層から液体を引き込みやすくなるため好ましい。
【0047】
また、セルロース系繊維は、繊維の断面が、多葉形のセルロース系繊維を含むことが好ましく、繊維の断面が、多葉形のセルロース系繊維を含む場合、第2繊維層に空隙を形成し、第1繊維層から液体を引き込みやすくなるという有利な効果を奏する。繊維断面が3葉以上の多葉型であるセルロース系繊維を含むことがより好ましい。繊維断面が3葉以上の多葉型であるセルロース系繊維を含む場合、第2繊維層に空隙を形成し、第1繊維層から液体を引き込みやすくなるという有利な効果を奏する。
【0048】
セルロース系繊維として、再生繊維や半合成繊維などの化学繊維であることが好ましい。化学繊維は、天然繊維と比べ、繊度及び/又は繊維径及び繊維長のばらつきをより低減することができ、第2繊維層の空隙の大きさを比較的均一にすることができるため、液体を第2繊維層で持ちにくくするためより好ましい。
セルロース系繊維は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0049】
第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、前記セルロース系繊維を70質量%以上100質量%以下含むことが好ましく、前記セルロース系繊維を80質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、前記セルロース系繊維を90質量%以上100質量%以下含むことが更に好ましい。前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含むと、第1繊維層から第2繊維層へと液体を引き込むやすく、また、第2繊維層において液体を拡散させやすいため好ましい。
【0050】
第2繊維層は、セルロース系繊維以外の繊維が含まれていてよい。セルロース系繊維以外の繊維は、例えば、セルロース系繊維でない天然繊維(例えば羊毛、シルク等)、接着性繊維、接着性繊維ではない合成繊維(例えば、接着性繊維の接着成分を溶融させるときに溶融または軟化せず、接着性を示さない合成繊維等)を含み、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0051】
セルロース系繊維以外の繊維は、40質量%以下の割合で含まれてよく、特に30質量%以下の割合で含まれてよく、より特には20質量%以下の割合で含まれてよく、さらにより特には10質量%以下の割合で含まれてよく、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。本発明の実施形態において、第2繊維層は、接着性繊維とセルロース系繊維からなる不織布であってよく、セルロース系繊維からなる不織布であってよい。第2繊維層が接着性繊維を含む場合、第2繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分の融点が第1繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分の融点よりも低いことが好ましい。特に、第2繊維層が接着性繊維を含む場合、第1繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分は、第2繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分が溶融する温度では溶融しない接着成分であることが好ましい。
【0052】
本発明の実施形態において、第2繊維層の繊維同士は交絡されている。即ち、本発明の実施形態の不織布は、交絡箇所を含む。これにより、不織布の強度を向上させることができ、また、第2繊維層の厚さを均一にして吸収体と均一に接触させることができる。繊維同士の交絡は、不織布を物質の流れに付すなどして、繊維同士を絡ませることにより達成され得る。繊維同士の交絡とは、具体的には、セルロース系繊維とセルロース系繊維との交絡をいい、他の繊維がさらに含まれる場合には、加えてセルロース系繊維と他の繊維(例えば、接着性繊維)との交絡等をいう。交絡は、ニードルパンチ法によるものでも流体流によるものでもよく、流体流としては、水流、気流、水蒸気流などによるものでもよい。本発明の実施形態においては、セルロース系繊維を交絡させるために水流又は水蒸気流によるものが好ましい。
【0053】
第2繊維層は、10g/m2以上50g/m2以下の目付を有することが好ましく、15g/m2以上45g/m2以下の目付を有することがより好ましく、20g/m2以上40g/m2以下の目付を有することが更により好ましく、20g/m2以上35g/m2以下の目付を有することが特に好ましい。第2繊維層が上述の範囲の目付を有する場合、第2繊維層で液体を持ちすぎず、液体を拡散させながら吸収体へと移行させることができるため好ましい。
【0054】
本発明の実施形態の不織布は、第1繊維層と第2繊維層が積層された積層構造を有し、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは、第1繊維層の繊維と第2繊維層の繊維との交絡により一体化されている。繊維の交絡は、不織布を物質の流れに付すなどして、繊維を絡ませることにより達成され得る。繊維の交絡とは、具体的には、セルロース系繊維と接着性繊維との交絡をいい、他の繊維がさらに含まれる場合には、加えてセルロース系繊維と他の繊維との交絡、接着性繊維と他の繊維との交絡等をいう。交絡は、ニードルパンチ法によるものでも流体流によるものでもよく、流体流としては、水流、気流、水蒸気流などによるものでもよい。本発明の実施形態においては、セルロース系繊維を交絡させるために水流又は水蒸気流によるものが好ましい。
【0055】
本発明の実施形態の不織布は、(ii)第2繊維層に含まれる繊維が第1繊維層に含まれる接着性繊維により接着されていないことが好ましい。第2繊維層に含まれる繊維が第1繊維層に含まれる接着性繊維により接着されていないことにより、不織布表面の濡れ性が良好となり、マスキング性が良く、好ましい。第2繊維層に含まれる繊維が第1繊維層に含まれる接着性繊維により接着されていないことは、接着性繊維が例えば接着成分の溶融により接着性を示す場合、接着性繊維が接着した箇所は溶融により変形するため、その変形の有無等により確認することができる。第2繊維層に含まれる繊維が第1繊維層に含まれる接着性繊維により接着されている不織布は、例えば、第1繊維層の繊維と第2繊維層の繊維とを交絡により一体化した後に接着性繊維により繊維同士を接着させることで得られるが、その場合は第1繊維層の嵩が十分でないことや、第1繊維層の風合いが硬くなることがある。
【0056】
本発明の実施形態の不織布は、第2繊維層が接着性繊維を含む場合、第1繊維層に含まれる繊維が第2繊維層に含まれる接着性繊維により接着されていてよい。特に第2繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分の融点が第1繊維層に含まれる接着性繊維の接着成分の融点よりも低い場合は、第1繊維層と第2繊維層との一体化を良好にしつつ、第1繊維層の嵩を良好に維持し、また、第1繊維層の風合いを良好に維持することができるため好ましい。
【0057】
本発明の実施形態の不織布は、第1繊維層及び第2繊維層に開孔が形成されていないことが好ましい。第1繊維層及び第2繊維層に開孔が形成されていることで、マスキング性が良くない場合がある。
【0058】
本発明の実施形態の不織布は、30g/m2以上100g/m2以下の目付を有することが好ましく、30g/m2以上80g/m2以下の目付を有することがより好ましく、30g/m2以上70g/m2以下の目付を有することが更により好ましく、30g/m2以上65g/m2以下の目付を有することが特に好ましい。不織布が上述の範囲の目付を有する場合、不織布は、嵩が高く、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性が良好となり、マスキング性が良いという有利な効果を奏する。
【0059】
本発明の実施形態の不織布は、0.20mm以上5.0mm以下の厚さ(294Paの荷重を加えて測定される厚さ)を有することが好ましく、0.50mm以上4.0mm以下の厚さを有することがより好ましく、1.25mm以上3.60mm以下の厚さを有することが更により好ましい。不織布が上述の範囲の厚さを有する場合、不織布は、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性が良好となり、マスキング性が良く、また、着用感が良いという有利な効果を奏する。
【0060】
本実施形態の不織布は全体として、例えば、0.0100g/cm3以上0.100g/cm3以下の繊維密度を有してよく、0.0125g/cm3以上0.0600g/cm3以下の繊維密度を有することが好ましく、0.0180g/cm3以上0.0400g/cm3以下の繊維密度を有することがより好ましい。不織布全体の繊維密度は、目付と厚さ(294Paの荷重を加えて測定される厚さ)から求めることができる。不織布が上述の範囲の密度を有する場合、不織布は、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性が良好となり、マスキング性が良く、また、着用感が良いという有利な効果を奏する。
【0061】
本発明の実施形態の不織布は、(i)不織布の厚み変化率が16%以上であることが好ましく、16%以上70%以下であることがより好ましく、16%以上65%以下であることが更により好ましく、16%以上60%以下であることが特に好ましい。不織布の厚み変化率は、実施例で詳細に説明する。
本発明の形態の不織布は、不織布の厚み変化率が上述の範囲内である場合、不織布表面の濡れ性が良好となり、マスキング性が良く、好ましい。
【0062】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する強伸度について、MD方向の引張強さが25N/5cm以上125N/5cm以下であることが好ましく、25N/5cm以上100N/5cm以下であることがより好ましく、CD方向の引張強さが3N/5cm以上30N/5cm以下であることが好ましく、3N/5cm以上25N/5cm以下であることがより好ましい。本発明の実施形態の不織布は、不織布の引張強さが上述の範囲内である場合、不織布の形状安定性がより向上し、好ましい。
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する強伸度について、MD方向の伸び率が20%以上100%以下であることが好ましく、23%以上90%以下であることがより好ましく、CD方向の伸び率が20%以上120%以下であることが好ましく、28%以上110%以下であることがより好ましい。本発明の実施形態の不織布は、不織布の伸び率が上述の範囲内である場合、不織布の柔軟性がより向上し、好ましい。
【0063】
本発明の実施形態の不織布は、以下の実施例で説明する1回目の吸液時間と2回目の吸液時間の平均値が、50秒未満であることが好ましく、40秒未満であることがより好ましく、25秒未満であることが更により好ましい。本発明の実施形態の不織布は、1回目の吸液時間と2回目の吸液時間の平均値が上述の範囲内である場合、使用感が好適であり、好ましい。
【0064】
本発明の実施形態の不織布は、以下の実施例で説明する1回目のウェットバック量と2回目のウェットバック量の平均値が、0.7g以下であることが好ましく、0.5g以下であることがより好ましい。本発明の実施形態の不織布は、1回目のウェットバック量と2回目のウェットバック量の平均値が上述の範囲内である場合、使用感が好適であり、好ましい。
【0065】
本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、吸収性物品のトップシートと拡散層の両方の機能を有することが好ましい。
本発明の実施形態において、吸収性物品用不織布が含まれる吸収性物品を提供することができる。そのような吸収性物品として、例えば、おむつ、尿漏れパッド、ナプキン、パンティライナー等を例示できる。本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置されて、吸収性物品内に配置される。本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、吸収性物品のトップシートと拡散層の両方の機能を有することができるので、より安定した吸液性能を発現することができるとともに、より簡便に製造することができる吸収性物品を提供することができる。
【0066】
本開示は、他の要旨において、新たな吸収性物品用不織布の製造方法を提供する。
本発明の実施形態の製造方法は、
第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であり、前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置される吸収性物品用不織布の製造方法であって、
第1繊維ウェブの総質量を基準として、接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含む第1繊維ウェブを製造する工程、
前記接着性繊維により前記第1繊維ウェブの繊維同士を接着させる接着工程、
第2繊維ウェブの総質量を基準として、セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含む第2繊維ウェブを製造する工程、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブを積層して積層繊維ウェブを得る積層工程、
前記積層繊維ウェブについて前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブの繊維同士を交絡させて一体化する交絡工程、を含み、
前記第1繊維ウェブを含む前記第1繊維層と、前記第2繊維ウェブを含む前記第2繊維層が積層された、吸収性物品用不織布の製造方法である。
【0067】
本発明の実施形態の製造方法は、
第1繊維ウェブの総質量を基準として、接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含む第1繊維ウェブを製造する工程、及び
前記接着性繊維により前記第1繊維ウェブの繊維同士を接着させる接着工程、を含む。
【0068】
第1繊維ウェブは、第1繊維ウェブの総質量を基準として、接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含む繊維を用いて、公知の方法で製造することができる。第1繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブのようないずれの形態であってもよい。第1繊維ウェブの形態は、パラレルウェブであると不織布の表面がより滑らかとなるため好ましい。第1繊維ウェブが、第1繊維ウェブの総質量を基準として、接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含むことで、接着工程に付した後の第1繊維ウェブについて搬送等の工程性が良好となるため好ましい。
【0069】
第1繊維ウェブは、接着処理(又は接着工程)に付される。接着処理は、例えば熱処理(熱接着処理)であってよい。熱処理によれば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が熱処理の際、加熱によって溶融または軟化し、繊維ウェブを構成する繊維同士を接着させることができる。熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(例えば、熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理であってよいが、不織布の風合いを良好とするため熱風加工処理を含むことが好ましい。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。
【0070】
接着処理が熱風加工処理である場合、熱風を複数回吹き付けてもよい。また熱風を複数回吹き付ける場合、最初の熱風の温度よりも2回目の熱風の温度が高いことが好ましい。
【0071】
接着処理が熱風加工処理である場合、熱風の風速は、毛羽立ちの抑制および風合いの柔らかさを良好にする観点で、0.1m/min以上3.0m/min以下であることが好ましく、0.2m/min以上2.5m/min以下であることがより好ましく、0.3m/min以上2.0m/min以下であることがさらに好ましい。
【0072】
熱処理の温度は、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が軟化または溶融する温度としてよく、例えば、当該成分の融点以上の温度としてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分が高密度ポリエチレンである場合に、熱風加工を実施するときには、130℃以上150℃以下の温度の熱風を吹き付けてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分がエチレン-アクリル酸共重合体である場合、熱風加工を実施するときに、90℃以上140℃以下の温度の熱風を吹き付けてよく、特には95℃以上130℃以下の温度の熱風を吹き付けてよく、より特には100℃以上120℃以下の熱風を吹き付けてよい。また、熱処理の温度は、毛羽立ちの抑制および風合いの柔らかさを良好にする観点で、熱接着成分の融点または軟化点よりも0℃以上5℃以下高い温度とすることが好ましく、1℃以上4℃以下高い温度とすることがより好ましく、2℃以上3℃以下高い温度とすることがさらに好ましい。
【0073】
接着処理は、電子線等の照射、または超音波溶着によるものであってよい。これらの接着処理によっても、接着性繊維を構成する樹脂成分で繊維同士を接着させることができる。
【0074】
本発明の実施形態の製造方法は、
第2繊維ウェブの総質量を基準として、セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含む第2繊維ウェブを製造する工程、
前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブを積層して積層繊維ウェブを得る積層工程、
前記積層繊維ウェブについて前記第1繊維ウェブと前記第2繊維ウェブの繊維同士を交絡させて一体化する交絡工程、を含む。
【0075】
第2繊維ウェブは、第2繊維ウェブの総質量を基準として、セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含む繊維を用いて、公知の方法で製造することができる。第2繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブのようないずれの形態であってもよい。第2繊維ウェブの形態は、パラレルウェブであると繊維が一方向に配向しているため第1繊維層の構成繊維と交絡しやすく、第2繊維層の目付が低くても第1繊維層と一体化しやすいため好ましい。第2繊維ウェブの形態は、第1繊維ウェブの形態と同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。
【0076】
製造された第2繊維ウェブは、第1繊維ウェブに積層されて、積層繊維ウェブが製造される。
【0077】
積層繊維ウェブは、交絡処理(又は交絡工程)に付される。交絡処理として、例えば、水流交絡処理及び水蒸気流交絡処理等を例示することができ、これらのいずれかを含むことが好ましい。前記交絡工程が、水流交絡処理を含むことが好ましい。これらの交絡処理によれば、第2繊維ウェブのセルロース系繊維による交絡が行いやすく、所望の物性を有する不織布を得ることができる。
【0078】
本発明の実施形態の製造方法は、接着処理(又は接着工程)の後、交絡処理(又は交絡工程)までの間に冷却処理(又は冷却工程)を含むことが好ましい。つまり、第1繊維ウェブが接着処理に付された後で、かつ、積層処理に付される前までに、及び/または、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとが積層処理に付された後で、かつ、積層繊維ウェブが交絡処理に付される前までに、第1繊維ウェブ及び/または積層繊維ウェブは冷却処理(又は冷却工程)に付されることが好ましい。冷却工程は、空冷または水冷等が挙げられる。接着処理に付された後の第1繊維ウェブが、十分に冷却されていない場合、接着性繊維の接着成分が軟化した状態であり得る。その状態で交絡処理に付されると、接着箇所が剥離しやすくなり得、不織布の毛羽立ちの抑制が不十分となり得る。
【0079】
積層繊維ウェブの水流交絡処理は、支持体に積層繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施することができる。支持体は、積層繊維ウェブ表面を平坦し、かつ凹凸を有しないものとするならば、1つあたりの開孔面積が0.2mm2を超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていない支持体を用いるとよい。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体を用いるとよい。
【0080】
水流交絡処理は、例えば、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上、15MPa以下の水流を、繊維ウェブの表面及び裏面の各々に、1回以上5回以下ずつ噴射することにより実施することができる。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下である。
【0081】
水流交絡処理は、水流が噴出する微細なオリフィスが、例えば数mmの間隔をあけて配置されたノズルを用いて、不織布に繊維同士の交絡の度合いがより高い高交絡部と、高交絡部よりも繊維同士の交絡の度合いが低い低交絡部とを、高交絡部と低交絡部とが不織布の平面視で交互に配置されるように形成してよい。このようなノズルを用いる場合は、オリフィスからの水流が当たる箇所が筋状となって、高交絡部を形成し、水流が当たらない部分が低交絡部を形成する。高交絡部の厚さは低交絡部の厚さよりも小さくなる傾向にある。不織布に高交絡部及び低交絡部を形成することにより、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性を良好とし、かつ、第1繊維層と第2繊維層との一体化を強固にすることができる。
【0082】
このようなノズルを用いる場合、ノズルは、例えば、オリフィスの孔径を0.05mm以上、0.5mm以下としてよく、オリフィス間の間隔は、2mm以上20mm以下としてよく、特に3mm以上15mm以下としてよく、より特には4mm以上10mm以下としてよい。オリフィス間の間隔が狭すぎると、高交絡部間の距離が狭くなる、すなわち低交絡部の幅が狭くなり、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性が良好にならない場合がある。水流の水圧は、例えば、1MPa以上10MPa以下であってよく、特に2MPa以上8MPa以下であってよい。
【0083】
このようなノズルを用いる場合、水流は、積層繊維ウェブの一方の面に1回のみ噴射して実施することが好ましい。一方の面に複数回水流を噴射すると、あるいは両方の面に水流を噴射すると、低交絡部の幅が狭くなり、吸液時間の短さ及びウェットバック防止性が良好にならない場合がある。
【0084】
水流交絡処理の際に使用される支持体は、板状またはロール状の支持体であってよく、ロール状の支持体であることが好ましい。支持体がロール状であると、積層繊維ウェブが湾曲し、積層繊維ウェブの厚さ方向(又は通常湾曲したウェブの外側方向)において繊維密度がより小さくなる。柱状水流を外側から噴射すると、柱状水流による交絡が比較的進みやすくなる。本発明の実施形態の不織布は、第1繊維ウェブが接着処理に付され、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとの積層繊維ウェブが交絡処理に付される。
【0085】
水流交絡処理は、積層繊維ウェブの第2繊維ウェブ側から柱状水流を噴射することを含むことが好ましい。これにより第2繊維ウェブに効率よく水流のエネルギーを当てられるため交絡性がよく、第1繊維ウェブの嵩高性を維持しつつ、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとの一体化がより強くすることができるため好ましい。
【0086】
交絡処理が水流交絡処理である場合、積層繊維ウェブは交絡処理の後に乾燥処理(乾燥工程)に付されることが好ましい。乾燥処理は熱風を吹き付ける熱風加工処理等により行うことができる。乾燥処理の温度は、第1繊維ウェブに含まれる接着性繊維の接着成分(熱接着成分)の軟化または溶融する温度よりも低い温度であることが好ましい。乾燥処理の温度は、熱接着成分の融点または軟化点よりも10℃以上低い温度とすることが好ましく、15℃以上低い温度とすることがより好ましく、20℃以下低い温度とすることがさらに好ましい。交絡処理の後に再度接着成分を軟化または溶融させないと、不織布の嵩がへたりにくくなり、不織布の風合いが硬くなり難い。乾燥処理に限らず、交絡処理の後に積層繊維ウェブに行う加工は第1繊維ウェブに含まれる接着性繊維の接着成分が溶融する温度よりも低い温度で行うことが好ましい。
【0087】
第2繊維ウェブが接着性繊維を含む場合、積層繊維ウェブが交絡処理に付された後に、第2繊維ウェブの接着性繊維により繊維同士を接着させる工程に付してよい。特に、第2繊維ウェブに含まれる接着性繊維の融点を第1繊維ウェブに含まれる接着性繊維の接着成分の融点よりも低いものとし、第1繊維ウェブに含まれる接着性繊維の接着成分が溶融する温度よりも低い温度で第2繊維ウェブに含まれる接着性繊維の接着成分を溶融させて繊維同士を接着させることが好ましい。
【0088】
前記接着工程後、前記第1繊維ウェブはロールに巻き取ることができる。第1繊維ウェブは、巻きだされて積層工程に送られてよい。また、前記積層工程後、前記積層繊維ウェブはロールに巻き取ることができる。積層繊維ウェブは、巻きだされて交絡工程に送られてよい。しかしながら、第1繊維ウェブも、積層繊維ウェブも、巻き取られることなく、前記交絡工程に付すことができる。これにより第1繊維ウェブの嵩が維持され、第1繊維層の嵩を高くし、液戻りにより液体が第1繊維層の表面に出ることを抑えるため、また、マスキング性を良好にすることができるため好ましい。
【0089】
また、本発明の実施形態の製造方法は、
前記接着工程が前記第1繊維ウェブの一方の面に熱風を当てる熱風加工処理を含み、
前記交絡工程が水流交絡処理を含み、
前記第2繊維ウェブは前記第1繊維ウェブの熱風を当てた面に積層し、
前記水流交絡処理は、前記第2繊維ウェブの側から先に水流を噴射することを含む、ことができる。これにより第2繊維ウェブに効率よく水流のエネルギーを当てられるため交絡性がよく、第1繊維ウェブの嵩高性を維持しつつ、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとの一体化をより強くすることができるため好ましい。
【0090】
本発明の形態の不織布は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、及びパンティライナー等の吸収性物品に好適に使用することができる。更に、全体的な性質のバランスに優れ、人の肌等に直接触れる用途、例えば、吸収性物品用トップシート及び拡散層等に使用することができる。また、吸収する液体の色のマスキング性に優れるため、生理用ナプキンに特に好適に使用することができる。
【実施例0091】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0092】
実施例及び比較例の不織布を製造するために使用した繊維を以下に示す。
<接着性繊維>
繊維11:ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度2.6dtex、繊維長51mm、偏心率25%の立体捲縮を有する偏心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)V(商品名))
繊維12:ポリ乳酸が芯であり、ポリブチレンサクシネート(融点:約115℃)が鞘である、繊度2.4dtex、繊維長51mmの同心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(KK)PL(商品名))
繊維13:ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度2.0dtex、繊維長45mmの同心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)(商品名))
繊維14:ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度1.35dtex、繊維長30mmの同心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)(商品名))
繊維15:ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度4.4dtex、繊維長51mmの同心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)(商品名))
繊維16:ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度3.3dtex、繊維長51mm、偏心率25%の立体捲縮を有する偏心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)V(商品名))
繊維17:ポリプロピレンと高密度ポリエチレンの組み合わせからなり、分割数が8である、繊度1.8dtex、繊維長45mmの分割型複合繊維(分割により形成される繊維のうち最小の繊度を有するものの繊度は0.275dtex)(ダイワボウポリテック(株)製のDFS-7(商品名))
【0093】
<セルロース系繊維>
繊維21:繊度2.2dtex、繊維長38mmの繊維断面が3葉型(Y字型)であるビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製のコロナRBA(商品名))
繊維22:繊度2.2dtex、繊維長51mmの繊維断面が菊花型であるビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製のコロナCD(商品名))
繊維23:繊度3.3dtex、繊維長51mmの繊維断面が菊花型であるビスコースレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製のコロナCD(商品名))
【0094】
<実施例1の不織布の製造>
繊維11のみを用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約30g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱し、繊維11の鞘成分により繊維同士を熱接着(接着処理)した、第1繊維層となるエアスルー不織布を得た。
繊維21のみを用い、パラレルカード機を使用して、目付が約30g/m2である第2繊維層となる繊維ウェブを製造し、エアスルー不織布の上に積層して積層体とした。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の積層体を載置した。積層体を速度4m/minで進行させながら、積層体の繊維ウェブ(第2繊維層)側の表面に対して、水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。積層体の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、積層体のエアスルー不織布(第1繊維層)側である表面に対して、同様に水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。
この積層体を、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃で乾燥処理を行って、実施例1の不織布を得た。第1繊維層と第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されていた。また、第1繊維層及び第2繊維層は開孔が形成されていなかった。
【0095】
<実施例2の不織布の製造>
実施例1において、繊維21を繊維22に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の不織布を得た。
【0096】
<実施例3の不織布の製造>
実施例1において、繊維21を繊維23に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の不織布を得た。
【0097】
<実施例4の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維12に変更し、第1繊維層となるエアスルー不織布を得る工程において、熱風貫通式熱処理機の温度を128℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の不織布を得た。
【0098】
<実施例5の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維13に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の不織布を得た。
【0099】
<実施例6の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維14変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の不織布を得た。
【0100】
<実施例7の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維15に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の不織布を得た。
【0101】
<実施例8の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維16に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の不織布を得た。
【0102】
<実施例9の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維17に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の不織布を得た。
【0103】
<実施例10の不織布の製造>
実施例1において、積層体の繊維ウェブ(第2繊維層)側の表面に対して噴射する柱状水流の水圧を2.0MPaに変更し、その後、積層体のエアスルー不織布(第1繊維層)側である表面に対して柱状水流を噴射する際に、水供給器のノズルが孔径0.2mmのオリフィスが7.0mm間隔で設けられている水供給器に変更し、柱状水流の水圧を6.0MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の不織布を得た。
【0104】
<実施例11の不織布の製造>
実施例10において、繊維11を繊維14に変更したこと以外は、実施例10と同様にして実施例11の不織布を得た。
【0105】
<実施例12の不織布の製造>
実施例10において、繊維11を繊維15に変更したこと以外は、実施例10と同様にして実施例12の不織布を得た。
【0106】
<実施例13の不織布の製造>
実施例10において、繊維11を繊維13に変更したこと以外は、実施例10と同様にして実施例13の不織布を得た。
【0107】
<実施例14の不織布の製造>
実施例1において、積層体のエアスルー不織布(第1繊維層)側である表面に対して柱状水流を噴射するのではなく、積層体の繊維ウェブ(第2繊維層)側の表面に対して、再度柱状水流を噴射することに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例14の不織布を得た。
【0108】
<実施例15の不織布の製造>
実施例1において、第1繊維層の目付を約40g/m2に変更し、第2繊維層の目付を約20g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例15の不織布を得た。
【0109】
<実施例16の不織布の製造>
実施例1において、繊維11を繊維13に変更し、第1繊維層の目付を約20g/m2に変更し、第2繊維層の目付を約40g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例16の不織布を得た。
【0110】
<比較例1の不織布の製造>
繊維11のみを用い、パラレルカード機を使用して、第1繊維層となる繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約30g/m2であった。
繊維21のみを用い、パラレルカード機を使用して、目付が約30g/m2である第2繊維層となる繊維ウェブを製造し、第1繊維層となる繊維ウェブの上に積層して積層体とした。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の積層体を載置した。積層体を速度4m/minで進行させながら、積層体の第2繊維層側の表面に対して、水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。積層体の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、積層体の第1繊維層側である表面に対して、同様に水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。
この積層体を、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱し、乾燥処理と、繊維11の鞘成分により繊維同士の熱接着(接着処理)を行い、比較例1の不織布を得た。
【0111】
<比較例2の不織布の製造>
繊維11のみを用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約30g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱し、繊維11の鞘成分により繊維同士を熱接着(接着処理)した、エアスルー不織布を得た。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述のエアスルー不織布を載置した。エアスルー不織布を速度4m/minで進行させながら、エアスルー不織布の表面に対して、水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。エアスルー不織布の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、エアスルー不織布の反対側の表面に対して、同様に水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射し、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃で乾燥処理を行って、第1繊維層となる不織布を得た。
次に、繊維21のみを用い、パラレルカード機を使用して、目付が約30g/m2である繊維ウェブを製造した。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の繊維ウェブを載置した。繊維ウェブを速度4m/minで進行させながら、繊維ウェブの表面に対して、水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、繊維ウェブの反対側の表面に対して、同様に水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射し、熱風貫通式熱処理機を用いて80℃で乾燥処理を行って、第2繊維層となる不織布を得た。
この第2繊維層となる不織布の上に第1繊維層となる不織布を積層し、不織布同士を一体化していない比較例2の不織布(積層体)を得た。
【0112】
<比較例3の不織布の製造>
繊維11のみを用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約60g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱し、繊維11の鞘成分により繊維同士を熱接着(接着処理)した、比較例3のエアスルー不織布を得た。なお比較例3は積層不織布ではなく、第1繊維層のみからなる不織布である。
【0113】
不織布の評価は、下記のように行った。
<不織布の厚さ、厚み変化率、密度>
厚み測定機((株)大栄科学精器製作所製のTHICKNESS GAUGE モデル CR-60A(商品名))を用い、不織布に294Pa又は1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定した。
厚み変化率は、294Pa荷重時の厚さ(P1)と1.96kPa荷重時の厚さ(P2)から以下の式に基づいて算出した。
厚み変化率(%)=[(P1-P2)/P1]×100
不織布の密度は、不織布の目付と、294Paの荷重を加えて得た不織布の厚さに基づいて算出した。
【0114】
<強伸度>
強伸度は、JIS L 1913:2010 6.3に準じて測定した。定速緊張形引張試験機を用いて、試料片(不織布)の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で、引張試験を行った。切断時の荷重値(引張強さ)、伸び率、10%伸長時応力を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果は、いずれも3点の試料について測定した値の平均で示した。
【0115】
<吸液時間、ウェットバック量、マスキング性>
実際に販売されている生理用ナプキンを用いて吸液性能を評価した。
(1)生理用ナプキン(P&G製、商品名「ウィスパー ピュアはだ(超スリムふつうの日・昼用 22cm)」)の表面シート、および表面シートの下に位置する2枚のシートを剥がして吸収体を露出させ、吸収体の上に220mm×80mm(縦方向×横方向)に切断した不織布(実施例または比較例の不織布)を設置した。不織布は第2繊維層が吸収体と接するように配置した。第1繊維層の上に注入筒付きプレート(高さ75mm、筒上部の内径25mm、筒下部の内径10mmの二段円筒状のもの)を置き、注入筒付きプレートの注入筒内に5.0ccの人工経血(粘度8mPa・s、温度37℃)を注入した。不織布表面から液が見えなくなるまでに要した時間(吸液時間)を測定した。吸液時間が短いほど、吸液速度は高いといえる。なお、人工経血の組成は、グリセリン12.61質量%、蒸留水84.88質量%、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)0.45質量%、NaCl(塩化ナトリウム)0.97質量%、Na2CO3(炭酸ナトリウム)1.04質量%、赤粉0.06質量%とした。
【0116】
(2)上記吸液時間の測定の際、人工経血の注入から10分後に、実施例の不織布の上にろ紙(東洋濾紙株式会社製、商品名ADVANTEC(登録商標)No.2、10cm×10cm)を10枚置き、ろ紙の上に質量1kg(形状:正方形、10cm×10cm)の重りを載せた。重りを載せてから20秒後にろ紙を取り出して、人工経血を吸収したろ紙の質量を測定し、不織布の上に載せる前のろ紙の質量を差し引き、ウェットバック量を算出した。ウェットバック量が小さいほど、ウェットバックが起こりにくいといえる。
【0117】
(3)2回目の吸液時間の測定は、1回目の人工経血注入後から25分後に人工経血を注入して測定した。人工経血の量等は1回目と同様の条件で行った。2回目のウェットバック量の測定は、2回目の人工経血の注入から10分後に、1回目のウェットバック量の測定と同様にして行った。
【0118】
吸液時間(ウェットバック量)の測定は、1つの実施例または比較例の不織布について5つのサンプルを用意し、5つのサンプルそれぞれについて測定した吸液時間(ウェットバック量)の平均値をその実施例または比較例の吸液時間(ウェットバック量)とした。
【0119】
吸液時間は、以下の数値基準により4段階評価した。
◎:1回目と2回目の平均値が25秒未満である
○:1回目と2回目の平均値が25秒以上40秒未満である
△:1回目と2回目の平均値が40秒以上50秒未満である
×:1回目と2回目の平均値が50秒以上である
【0120】
ウェットバック量は、以下の数値基準により3段階評価した。
◎:1回目と2回目の平均値が0.5g以下
○:1回目と2回目の平均値が0.5gより大きく0.7g以下である
×:1回目と2回目の平均値が0.7gより大きい
【0121】
マスキング性は、1回目の吸液時間の測定後からウェットバック量の測定前までの間に撮影した不織布表面の写真1枚、及び、2回目の吸液時間の測定後からウェットバック量の測定前までの間に撮影した不織布表面の写真1枚から不織布表面に見える人工経血の色の濃さについて以下の基準で評価した。なお、1つの実施例または比較例の不織布について5つのサンプルの写真が合計10枚あるが、1回目及び2回目の吸液性能測定時の各5枚の写真について、最も人工経血の色が薄く見える(人工経血が隠蔽されている)写真を各1枚選んだ。より詳細には、不織布表面から見える人工経血の色について、色が濃い部分の面積が最も小さい写真を1枚選定した。実施例7の不織布サンプルの表面の写真を
図1に示した。比較例3の不織布サンプルの表面写真を
図2に示した。
○:1回目及び2回目の両方とも、使用した人工経血の色の濃さと同等の濃さの部分がない
△:1回目または2回目について、使用した人工経血の色の濃さと同等の濃さの部分がある
×:1回目及び2回目の両方とも、使用した人工経血の色の濃さと同等の濃さの部分がある
【0122】
<毛羽>
毛羽は、不織布の表面(第1繊維層側)を観察し、以下の基準により評価した。
○:良い(毛羽は極めて少ない)
△:普通(毛羽は気にならない程度ある)
×:悪い(毛羽が気になる程度ある)
【0123】
【0124】
【0125】
【表3】
*)比較例2の実測目付、密度、厚さ、強伸度については、第1繊維層及び第2繊維層それぞれの数値を記載している。前の数値が第1繊維層の数値であり、後の数値が第2繊維層の数値である。比較例2では第1繊維層と第2繊維層とは交絡によって一体化されていない。
【0126】
実施例1~16の吸収性物品用不織布は、第1繊維層と、前記第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層とを含む不織布であって、
前記第1繊維層が、接着性繊維を含み、
前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として前記接着性繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第2繊維層が、セルロース系繊維を含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として前記セルロース系繊維を60質量%以上100質量%以下含み、
前記第1繊維層は、前記接着性繊維により繊維同士が接着されており、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは繊維同士の交絡により一体化されており、
前記不織布の厚み変化率が16%以上であり、
前記第1繊維層が使用者の肌により近い側に配置されるので、
毛羽、吸液時間、ウェットバック量、マスキング性について優れ、
トップシート及び拡散層の両者の性質を併せ持つ不織布として使用することができる。 よって、実施例1~16の吸収性物品用不織布は、吸収性物品を製造するために好適に使用することができ、その製造方法を簡素化することができる。
【0127】
比較例1は、不織布の厚み変化率が16%以上ではなく、また、第1繊維層に含まれる接着性繊維と第2繊維層に含まれるセルロース系繊維とが接着されており、マスキング性に劣る。マスキング性に劣る不織布は、不織布の第1繊維層側の表面に人工経血が比較的多く存在していることになるため、肌が触れると濡れる感覚を得ることになり、使用感に劣る。
比較例2は、第1繊維層の接着性繊維は、接着箇所を有し、更に交絡されているが、第2繊維層と一体化されておらず、吸液時間に劣る。
比較例3は、セルロース繊維を含む第2繊維層を有さず、ウェットバック量とマスキング性に劣る。
本発明の実施形態の吸収性物品用不織布は、トップシート及び拡散層の両者の性質を併せ持つ不織布として使用することができる。よって、本発明の吸収性物品用不織布は、吸収性物品を製造するために好適に使用することができ、その製造方法を簡素化することができる。