(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028309
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
C08G 77/54 20060101AFI20240226BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240226BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240226BHJP
G02B 1/113 20150101ALN20240226BHJP
【FI】
C08G77/54
C09K3/18 104
G02B1/18
G02B1/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218251
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2022127234の分割
【原出願日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021130808
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022031220
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022031226
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022106050
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】半田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
(72)【発明者】
【氏名】松井 元志
(72)【発明者】
【氏名】トルティシ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌和
(72)【発明者】
【氏名】中野 希望
(72)【発明者】
【氏名】大向 吉景
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
(57)【要約】
【課題】指紋拭き取り性に優れた表面処理層を形成することができる表面処理剤の提供。
【解決手段】下記式(1)又は(2)で表されるシロキサン基含有シラン化合物。各記号は、明細書に記載の通りである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
上記R
H中には、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が2つ以上存在し;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表されるシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項2】
RSは、-(SiR3
2-O)a-であり、
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり、
aは、2~1500である、
請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項3】
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項4】
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項5】
aは、10~500である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項6】
R
Hは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、又は(S4):
【化2】
[式中:
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
X
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
R
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり;
Z
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり;
R
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
35は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。
R
g1及びR
h1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり;
Z
4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、及び(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項7】
前記式(S1)で表される基は、下記式(S1-b):
【化3】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
で表される基である、請求項6に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項8】
RHは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S2)、(S3)、又は(S4)で表される基である、請求項6に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項9】
RHは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S2)、又は(S3)で表される基である、請求項6に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項10】
RHは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S3)、又は(S4)で表される基である、請求項6に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項11】
RHは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S3)で表される基である、請求項6に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項12】
α、β、及びγは、1である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項13】
XAは、単結合又は下記式:
-(R51)p5-(X51)q5-
[式中:
R51は、単結合、-(CH2)s5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、
s5は、1~20の整数であり、
X51は、-(X52)l5-であり、
X52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CH2)n5-からなる群から選択される基であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~20の整数であり、
l5は、1~10の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項14】
XAは、それぞれ独立して、
単結合
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-、
-X53-(CH2)t5-又は
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-
[式中、
X53は、単結合、-O-、-CO-、-CONR54-、-O-CONR54-、-O-(CH2)u5-CONR54-、又は-O-(CH2)u5-CO-であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数であり、
u5は、1~20の整数である。]
で表される2価の有機基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項15】
XAは、それぞれ独立して、
-(CH2)s5-O-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-CONR54-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-O-(CH2)u5-CO-、又は
-(CH2)s5-O-(CH2)u5-CONR54-(CH2)t5-
[式中、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数であり、
u5は、1~20の整数である。]
で表される2価の有機基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項16】
XAは、それぞれ独立して、3~10価の有機基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項17】
X
Aは、それぞれ独立して、下記:
【化4】
[式中、X
aは、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]
で表される基である、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項18】
Xa、それぞれ独立して、下記式:
-(CX121X122)x1-(Xa1)y1-(CX123X124)z1-
[式中、
X121~X124は、それぞれ独立して、H、OH、または、-OSi(OR121)3(式中、R121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NR122-、-C(=O)-NR122-、-NR122-C(=O)-、またはSであり、
R122は、C1-6の炭化水素鎖であり、
x1は、0~10の整数であり、
y1は、0または1であり、
z1は、1~10の整数である。]
で表される基である、請求項17に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物を含有する、組成物。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載のシロキサン含有シラン化合物、および該シロキサン含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合体からなる化合物の少なくとも一つを含有する、組成物。
【請求項21】
さらに、R71OR72、R73
n8C6H6-n8、R74R75R76Si-(O-SiR77R78)m8-R79、及び(OSiR77R78)m9
[式中
R71~R79は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の一価の有機基であり、
m8は、1~6の整数であり、
m9は、3~8の整数であり、
n8は、0~6の整数である。]
で表される化合物から選択される溶媒を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記溶媒は、R74R75R76Si-(O-SiR77R78)m8-R79である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
表面処理剤である、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
真空蒸着用である、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
湿潤被覆用である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
請求項19に記載の組成物を含有するペレット。
【請求項28】
基材と、該基材上に、請求項1に記載のシロキサン基含有シラン化合物から形成された層とを含む物品。
【請求項29】
光学部材である、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
ディスプレイである、請求項28に記載の物品。
【請求項31】
下記式(1-a)又は(2-a):
【化5】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
X
Bは、それぞれ独立して、
-(CH
2)
s6-X
53-X
54、
-X
53-(CH
2)
t6-X
54、又は
-(CH
2)
s6-X
53-(CH
2)
t6-X
54
(式中、
X
53は、-O-、-CO-、-CONR
74-、-O-CONR
74-、-O-(CH
2)
u6-CONR
74-、又は-O-(CH
2)
u6-CO-、単結合であり、
X
54は、R
75、-NR
75
2、-SiR
75
2R
76、-SiR
75
3、-CR
75
2R
75、-CR
75
3、-SiCl
2R
76、-SiCl
3、又は
【化6】
であり、
R
75は、-CH=CH
2、又は-CH
2-CH=CH
2であり、
R
76は、1価の有機基であり、
R
74は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基、又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s6は、1~20の整数であり、
t6は、1~20の整数であり、
u6は、1~20の整数である。)
である。]
で表される化合物。
【請求項32】
X53は、-CONR74-である、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
X54は、-Si(CH2CH=CH2)3、又は-SiCl3である、請求項31に記載の化合物。
【請求項34】
X
54は、
【化7】
である、請求項31に記載の化合物。
【請求項35】
-X53-X54は、-CON(CH2CH=CH2)2、-CONHCH2C(CH2CH=CH2)3である、請求項31に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のシラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水撥油性を提供し得ることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシラン化合物は、指紋拭き取り性に優れた表面処理層を与えることができるが、より高い機能を有する表面処理層が求められている。
【0005】
本開示は、指紋拭き取り性に優れた表面処理層を形成することができる表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下記の態様を含む。
[1] 下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
上記R
H中には、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が2つ以上存在し;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表されるシロキサン基含有シラン化合物。
[2] R
Sは、-(SiR
3
2-O)
a-であり、
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり、
aは、2~1500である、
上記[1]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[3] R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、ハロゲン原子により置換されていてもよいC
1-6アルキル基又はアリール基である、上記[1]又は[2]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[4] R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[5] aは、10~500である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[6] R
Hは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、又は(S4):
【化2】
[式中:
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
X
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
R
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり;
Z
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり;
R
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
35は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。
R
g1及びR
h1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり;
Z
4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、及び(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[7] 前記式(S1)で表される基は、下記式(S1-b):
【化3】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
で表される基である、上記[6]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[8] R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S2)、(S3)、又は(S4)で表される基である、上記[6]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[9] R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S2)、又は(S3)で表される基である、上記[6]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[10] R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S3)、又は(S4)で表される基である、上記[6]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[11] R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、式(S3)で表される基である、上記[6]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[12] α、β、及びγは、1である、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[13] X
Aは、単結合又は下記式:
-(R
51)
p5-(X
51)
q5-
[式中:
R
51は、単結合、-(CH
2)
s5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、
s5は、1~20の整数であり、
X
51は、-(X
52)
l5-であり、
X
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-CONR
54-、-O-CONR
54-、-NR
54-及び-(CH
2)
n5-からなる群から選択される基であり、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~20の整数であり、
l5は、1~10の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基である、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[14] X
Aは、それぞれ独立して、
単結合
C
1-20アルキレン基、
-(CH
2)
s5-X
53-、
-X
53-(CH
2)
t5-又は
-(CH
2)
s5-X
53-(CH
2)
t5-
[式中、
X
53は、単結合、-O-、-CO-、-CONR
54-、-O-CONR
54-、-O-(CH
2)
u5-CONR
54-、又は-O-(CH
2)
u5-CO-であり、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数であり、
u5は、1~20の整数である。]
で表される2価の有機基である、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[15] X
Aは、それぞれ独立して、
-(CH
2)
s5-O-(CH
2)
t5-、
-(CH
2)
s5-CONR
54-(CH
2)
t5-、
-(CH
2)
s5-O-(CH
2)
u5-CO-、又は
-(CH
2)
s5-O-(CH
2)
u5-CONR
54-(CH
2)
t5-
[式中、
R
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数であり、
u5は、1~20の整数である。]
で表される2価の有機基である、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[16] X
Aは、それぞれ独立して、3~10価の有機基である、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[17] X
Aは、それぞれ独立して、下記:
【化4】
[式中、X
aは、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]
で表される基である、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[18] X
a、それぞれ独立して、下記式:
-(CX
121X
122)
x1-(X
a1)
y1-(CX
123X
124)
z1-
[式中、
X
121~X
124は、それぞれ独立して、H、OH、または、-OSi(OR
121)
3(式中、R
121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
X
a1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NR
122-、-C(=O)-NR
122-、-NR
122-C(=O)-、またはSであり、
R
122は、C
1-6の炭化水素鎖であり、
x1は、0~10の整数であり、
y1は、0または1であり、
z1は、1~10の整数である。]
で表される基である、上記[17]に記載のシロキサン基含有シラン化合物。
[19] 上記[1]~[18]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物を含有する、組成物。
[20] 上記[1]~[18]のいずれか1項に記載のシロキサン含有シラン化合物、および該シロキサン含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合体からなる化合物の少なくとも一つを含有する、組成物。
[21] さらに、R
71OR
72、R
73
n8C
6H
6-n8、R
74R
75R
76Si-(O-SiR
77R
78)
m8-R
79、及び(OSiR
77R
78)
m9
[式中
R
71~R
79は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の一価の有機基であり、
m8は、1~6の整数であり、
m9は、3~8の整数であり、
n8は、0~6の整数である。]
で表される化合物から選択される溶媒を含む、上記[19]又は[20]に記載の組成物。
[22] 前記溶媒は、R
74R
75R
76Si-(O-SiR
77R
78)
m8-R
79である、上記[21]に記載の組成物。
[23] 前記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンである、上記[21]~[22]に記載の組成物。
[24] 表面処理剤である、請求項上記[19]~[23]のいずれか1項に記載の組成物。
[25] 真空蒸着用である、上記[19]又は[24]に記載の組成物。
[26] 湿潤被覆用である、上記[19]又は[24]に記載の組成物。
[27] 上記[19]~[25]のいずれか1項に記載の組成物を含有するペレット。
[28] 基材と、該基材上に、上記[1]~[18]のいずれか1項に記載のシロキサン基含有シラン化合物、上記[19]~[26]のいずれか1項に記載の組成物から形成された層とを含む物品。
[29] 光学部材である、上記[28]に記載の物品。
[30] ディスプレイである、上記[28]に記載の物品。
[31] 下記式(1-a)又は(2-a):
【化5】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
X
Bは、それぞれ独立して、
-(CH
2)
s6-X
53-X
54、
-X
53-(CH
2)
t6-X
54、又は
-(CH
2)
s6-X
53-(CH
2)
t6-X
54
(式中、
X
53は、-O-、-CO-、-CONR
74-、-O-CONR
74-、-O-(CH
2)
u6-CONR
74-、又は-O-(CH
2)
u6-CO-、単結合であり、
X
54は、R
75、-NR
75
2、-SiR
75
2R
76、-SiR
75
3、-CR
75
2R
75、-CR
75
3、-SiCl
2R
76、-SiCl
3、又は
【化6】
であり、
R
75は、-CH=CH
2、又は-CH
2-CH=CH
2であり、
R
76は、1価の有機基であり、
R
74は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基、又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s6は、1~20の整数であり、
t6は、1~20の整数であり、
u6は、1~20の整数である。)
である。]
で表される化合物。
[32] X
53は、-CONR
74-である、上記[31]に記載の化合物。
[33] X
54は、-Si(CH
2CH=CH
2)
3、又は-SiCl
3である、上記[31]に記載の化合物。
[34] X
54は、
【化7】
である、上記[31]に記載の化合物。
[35] -X
53-X
54は、-CON(CH
2CH=CH
2)
2、-CONHCH
2C(CH
2CH=CH
2)
3である、上記[31]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、指紋拭き取り性に優れた表面処理層を形成することができる表面処理剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2~10価の有機基」とは、炭素を含有する2~10価の基を意味する。かかる2~10価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1~9個の水素原子を脱離させた2~10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0012】
本開示の化合物は、下記式(1)又は(2):
【化8】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
R
Hは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
上記R
H中には、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が2つ以上であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表されるシロキサン基含有シラン化合物である。
【0013】
上記RSは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基である。ここに、2価の直鎖オルガノシロキサン基とは、シロキサンの主骨格(-SiR2-O-SiR2-)が直鎖であるオルガノシロキサン基を意味し、Si原子に結合するR基は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0014】
好ましい態様において、RSは、下記式:
-(SiR3
2-O)a-
[式中:
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり、
aは、2~1500である。]
で表される基である。
【0015】
上記R3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基である。かかる炭化水素基は、置換されていてもよい。
【0016】
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくは非置換炭化水素基、又はハロゲン原子により置換されている炭化水素基である。かかるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0017】
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0018】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖
である。C1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0019】
上記アリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0020】
一の態様において、R3は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0021】
別の態様において、R3は、フェニル基である。
【0022】
別の態様において、R3は、各出現においてそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0023】
上記aは、2~1500である。aは、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、例えば30以上、又は50以上であり得る。aは、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下、さらにより好ましくは150以下、例えば100以下、又は80以下であり得る。
【0024】
aは、好ましくは5~1000、より好ましくは10~500、さらに好ましくは15~200、さらにより好ましくは15~150であり得る。
【0025】
上記R1は、炭化水素基であり、上記R3と同意義である。
【0026】
R1は、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0027】
一の態様において、R1は、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0028】
別の態様において、R1は、フェニル基である。
【0029】
別の態様において、R1は、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0030】
上記pは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0031】
上記qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0032】
一の態様において、pは0であり、qは1である。
【0033】
上記RHは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、RH中には、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が2つ以上存在する。
【0034】
好ましい態様において、R
Hは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、又は(S4):
【化9】
[式中:
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
X
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
R
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり;
Z
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり;
R
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
35は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。
R
g1及びR
h1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり;
Z
4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、及び(S4)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である。
【0035】
上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0036】
R11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0037】
R11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0038】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0039】
R12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0040】
上記式中、n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(S1)において、n1が1~3である(SiR11
n1R12
3-n1)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S1)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0041】
n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0042】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0043】
一の態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0044】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0045】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。
【0046】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0047】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0048】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0049】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0050】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。
【0051】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0052】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11
n1R12
3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0053】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化10】
[式中、
R
11、R
12、R
13、X
11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0054】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化11】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0055】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1-SiR21
p1R22
q1R23
r1である。
【0056】
上記Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1として記載する構造は、右側が(SiR21
p1R22
q1R23
r1)に結合する。
【0057】
好ましい態様において、Z1は、2価の有機基である。
【0058】
好ましい態様において、Z1は、Z1が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S2)において、(Si-Z1-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0059】
上記Z1は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0060】
好ましい態様において、Z1は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4-である。
【0061】
別の好ましい態様において、上記Z1は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1は、-CH2CH2-であり得る。
【0062】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’である。
【0063】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)に結合する。
【0064】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0065】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S2)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0066】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1’-O-(CH2)z2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0067】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4’-である。
【0068】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CH2CH2-であり得る。
【0069】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”である。
【0070】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22”
q1”R23”
r1”)に結合する。
【0071】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0072】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S2)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0073】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1”-O-(CH2)z2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0074】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0075】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CH2CH2-であり得る。
【0076】
上記R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0077】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0078】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0079】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0080】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0081】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位において、3である。
【0082】
上記q1”は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0083】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0084】
R22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0085】
R22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0086】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0087】
R23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0088】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’及びr1’の合計は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位において、3である。
【0089】
一の態様において、p1’は、0である。
【0090】
一の態様において、p1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0091】
一の態様において、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0092】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0093】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0094】
R22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0095】
R22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0096】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0097】
R23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0098】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位において、3である。
【0099】
一の態様において、p1は、0である。
【0100】
一の態様において、p1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0101】
一の態様において、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0102】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0103】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0104】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0105】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0106】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0107】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0108】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位において、3である。
【0109】
一の態様において、k1は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0110】
式(S2)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0111】
好ましい態様において、式(S2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0112】
好ましい態様において、式(S2)で表される基は、-Z1-SiR22
q1R23
r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’
q1’R23’
r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z1、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0113】
好ましい態様において、式(S2)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0114】
好ましい態様において、式(S2)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0115】
好ましい態様において、式(S2)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0116】
好ましい態様において、式(S2)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0117】
Rd1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2-CR31
p2R32
q2R33
r2である。
【0118】
Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2として記載する構造は、右側が(CR31
p2R32
q2R33
r2)に結合する。
【0119】
好ましい態様において、Z2は、2価の有機基である。
【0120】
好ましい態様において、Z2は、シロキサン結合を含まない。
【0121】
上記Z2は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5-O-(CH2)z6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0122】
好ましい態様において、Z2は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8-である。Z2がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0123】
別の好ましい態様において、上記Z2は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2は、-CH2CH2-であり得る。
【0124】
R31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’
q2’R33’
r2’である。
【0125】
Z2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’
q2’R33’
r2’)に結合する。
【0126】
好ましい態様において、Z2’は、シロキサン結合を含まない。
【0127】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5’-O-(CH2)z6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0128】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0129】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CH2CH2-であり得る。
【0130】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。
【0131】
上記Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z3として記載する構造は、右側が(SiR34
n2R35
3-n2)に結合する。
【0132】
一の態様において、Z3は酸素原子である。
【0133】
一の態様において、Z3は2価の有機基である。
【0134】
好ましい態様において、Z3は、シロキサン結合を含まない。
【0135】
上記Z3は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0136】
好ましい態様において、Z3は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0137】
別の好ましい態様において、上記Z3は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z3は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z3は、-CH2CH2-であり得る。
【0138】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0139】
R34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0140】
R34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rhは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0141】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0142】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0143】
上記式中、n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(S3)の末端部分においては、n2が1~3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S3)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0144】
n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0145】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0146】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0147】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0148】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0149】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位において、3である。
【0150】
q2’は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0151】
R32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0152】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0153】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0154】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0155】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0156】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位において、3である。
【0157】
一の態様において、p2は、0である。
【0158】
一の態様において、p2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0159】
一の態様において、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0160】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0161】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0162】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0163】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0164】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0165】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0166】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2)単位において、3である。
【0167】
一の態様において、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位は、式(S3)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0168】
好ましい態様において、式(S3)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0169】
好ましい態様において、式(S3)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0170】
好ましい態様において、式(S3)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0171】
好ましい態様において、式(S3)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0172】
上記Rg1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1、-Z4-SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1、-Z4-CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0173】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1である。
【0174】
上記Z4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z4として記載する構造は、右側が(SiR11
n1R12
3-n1)に結合する。
【0175】
一の態様において、Z4は酸素原子である。
【0176】
一の態様において、Z4は2価の有機基である。
【0177】
好ましい態様において、Z4は、シロキサン結合を含まない。
【0178】
上記Z4は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0179】
好ましい態様において、Z4は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0180】
別の好ましい態様において、上記Z4は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z4は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z4は、-CH2CH2-であり得る。
【0181】
好ましい態様において、式(S1)、(S2)、(S3)及び(S4)は、シロキサン結合を含まない。
【0182】
一の態様において、RHは、式(S2)、(S3)又は(S4)で表される基である。
【0183】
一の態様において、RHは、式(S2)、又は(S3)で表される基である。
【0184】
一の態様において、RHは、式(S3)、又は(S4)で表される基である。
【0185】
一の態様において、RHは、式(S1)で表される基である。好ましい態様において、式(S1)は、式(S1-b)で表される基である。好ましい態様において、式中、R13は、水素原子であり、X11は、単結合、又は-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)であり、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0186】
一の態様において、RHは、式(S2)で表される基である。好ましい態様において、式(S3)は、-SiRa1
2Rc1、又は-SiRa1
3であり、Ra1は、-Z1-SiR22
q1R23
r1であり、Z1は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、q1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0187】
一の態様において、RHは、式(S3)で表される基である。好ましい態様において、式(S4)は、-CRe1
2Rf1、又は-CRe1
3であり、Re1は、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2であり、Z3は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n2は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0188】
一の態様において、RHは、式(S4)で表される基である。好ましい態様において、Rg1及びRh1は、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1であり、Z4は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0189】
XAは、主に指紋拭き取り性等の機能を提供するシロキサン部(RS1又はRS2)と基材との結合能を提供する部(RH)とを連結するリンカーと解される。従って、当該XAは、式(1)及び(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0190】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらα及びβは、XAの価数に応じて変化し得る。α及びβの和は、XAの価数と同じである。例えば、XAが10価の有機基である場合、α及びβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、又はαが1かつβが9となり得る。また、XAが2価の有機基である場合、α及びβは1である。
【0191】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、XAの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、XAの価数から1を引いた値である。
【0192】
XAは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基である。
【0193】
上記XAにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0194】
一の態様において、XAは、単結合又は2価の有機基であり、α、β、及びγは1である。
【0195】
一の態様において、XAは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5であり、γは2~5である。
【0196】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0197】
X
Aが、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)及び(2)は、下記式(1’)及び(2’)で表される。
【化12】
【0198】
一の態様において、XAは単結合である。
【0199】
別の態様において、XAは2価の有機基である。
【0200】
一の態様において、XAとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51)p5-(X51)q5-
[式中:
R51は、単結合、-(CH2)s5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、好ましくは-(CH2)s5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは1~6の整数、例えば1~3の整数であり、あるいは、1~20の整数、好ましくは4~15の整数、より好ましくは7~13の整数であり、
X51は、-(X52)l5-であり、
X52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CH2)n5-からなる群から選択される基であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、好ましくは水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
n5は、各出現においてそれぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは1~6の整数、例えば1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、XA(典型的にはXAの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、XAは、これらの基により置換されていない。なお、XAは、左側が、RS1又はRS2に結合する。
【0201】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0202】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、-(R51)p5-(X51)q5-R52-である。R52は、単結合、-(CH2)t5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、好ましくは-(CH2)t5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0203】
好ましくは、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
X53は、
単結合、
-O-、
-S-、
-CO-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-O-(CH2)u5-CONR54-、
-O-(CH2)u5-CO-、又は
-CONR54-(CH2)u5-N(R54)-、
(式中、R54は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)である。]
であり得る。
【0204】
より好ましくは、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-、
-X53-(CH2)t5-、又は
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-
[式中、X53、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0205】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-、
-X53-(CH2)t5-又は
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-
[式中、
X53は、単結合、-O-、-CO-、-CONR54-、-O-CONR54-、-O-(CH2)u5-CONR54-、又は-O-(CH2)u5-CO-であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5、t5、及びu5は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0206】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、
-(CH2)s5-O-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-CONR54-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-O-(CH2)u5-CO-、又は
-(CH2)s5-O-(CH2)u5-CONR54-(CH2)t5-
[式中、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s5、t5、及びu5は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0207】
上記XAは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、XAは、非置換である。
【0208】
尚、上記XAは、各式の左側がRS1又はRS2に結合し、右側がRHに結合する。
【0209】
別の態様において、XAは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0210】
さらに別の態様において、X
Aの例として、下記:
【化13】
[式中、X
aは、単結合または2価の有機基である。]
で表される基が挙げられる
【0211】
上記Xaは、イソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xaとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0212】
Xaとしては、下記式:
-(CX121X122)x1-(Xa1)y1-(CX123X124)z1-
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、OH、または、-OSi(OR121)3(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NR122-、-C(=O)-NR122-、-NR122-C(=O)-、またはSであり(各結合の左側がCX121X122に結合する。)、
R122はC1-6の炭化水素鎖、好ましくはC1-6アルキル基であり、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0213】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0214】
上記Xaとしては、下記式:
-(CH2)m12-O-(CH2)m13-
(式中、m12は1~10の整数であり、m13は1~10の整数である。)
で表される基、
-(CH2)m15-O-CH2CH(OH)-(CH2)m16-
(式中、m15は1~10の整数であり、m16は1~10の整数である。)
で表される基、
-(CH2)m18-
(式中、m18は1~10の整数である。)
で表される基、又は
-(CH2)m20-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m21-
(式中、m20は1~10の整数であり、m21は1~10の整数である。)
で表される基
で表される基が特に好ましい。
【0215】
上記Xaとして、特に限定されないが、-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-S-、-NR121-、-(CH2)m22-C(=O)-O-(CH2)m23-、-(CH2)m22-O-C(=O)-(CH2)m23-、-(CH2)m22-C(=O)-NR121-(CH2)m23-、-(CH2)m22-NR121-C(=O)-(CH2)m23-CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-
(式中R121は、C1-6炭化水素鎖であり、m22は1~10の整数であり、m23は1~10の整数である。)
等が挙げられる。
【0216】
上記Xaは、左側がイソシアヌル環に結合する。
【0217】
一の態様において、本開示のシロキサン基含有シラン化合物は、式(1)で表されるシロキサン基含有シラン化合物である。
【0218】
一の態様において、本開示のシロキサン基含有シラン化合物は、式(2)で表されるシロキサン基含有シラン化合物である。
【0219】
上記式(1)又は(2)で表されるシロキサン基含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×102~1×105の数平均分子量を有し得る。上記式(1)又は(2)で表されるシロキサン基含有シラン化合物は、好ましくは1,000~30,000、より好ましくは1,500~10,000の数平均分子量を有することが、摩耗耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「数平均分子量」は、1H-NMRにより測定される値とする。
【0220】
上記シロキサン基含有シラン化合物は、例えば、オルガノシロキサン基を有する化合物と、加水分解性シラン基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0221】
例えば、下記式:
R61-COOH
[式中、R61は、オルガノシロキサン基含有基である。]
で表される化合物を、下記式:
NH2-R62
[式中、R62は、アリル基含有基である。]
で表される化合物と反応させて、下記式:
R61-CONH-R63-R64
n
[式中、
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R63は、(n+1)価のリンカー基であり、
R64は、アリル基である。]
を得る。次いで、得られたアリル化合物を、
HSiR65
mR66
3-m
[式中、
R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R66は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0222】
別の方法として、下記スキームに従って、R
61-COOHから、オキサジアゾール化合物を得、原料として用いることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。例えば、Rが末端にアリル基を有する場合、上記のようにHSiR
65
mR
66
3-mを反応させることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【化14】
[式中:
R
61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
Rは、末端に官能基を含んでいてもよい、アルキル、又はアリ-ルであり、
上記官能基は、エステルなどのカルボン酸誘導体(例えば、アリル、エステル、アミド、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、ニトリル)、アミン、エポキシド、ベンゼン環、アルコール、又は不飽和結合である。]
【0223】
別の方法として、下記式:
R61-CWmX3-m
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
Xは、加水分解性基であり、
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
で表される化合物を、下記式:
M-R62
[式中:
Mは、金属含有基、例えばLi、ハロゲン-Mg、Znであり、
R62は、アリル基含有基である。]
で表される化合物と反応させて、下記式:
R61-CWm(-R63-R64)3-m
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R63は、2価の基であり、
R64は、アリル基であり、
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
を得る。次いで、得られたアリル化合物を、
HSiR65
mR66
3-m
[式中、
R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R66は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0224】
別の方法として、下記式:
R61-COR67
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R67は、OH、又はハロゲン元素、NR2、-OCOR’、アルコキシ基などの加水分解性基であり、
Rは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、
R’は、水素原子またはアルキル基である。]
で表される化合物と、
M-R62
[式中:
Mは、金属含有基、例えばLi、ハロゲン-Mg、又はZnであり、
R62は、アリル基含有基である。]
で表される化合物と反応させて、下記式:
R61-C(OH)(-R63-R64)2
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R63は、2価の基であり、
R64は、アリル基である。]
で表される化合物を得る。得られた化合物を、下記式:
L-R62
[式中:
Lは、脱離基であり、
R62は、アリル基含有基である。]
である化合物と反応させて、
R61-C(-O-R63-R64)(-R63-R64)2
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R63は、2価の基であり、
R64は、アリル基である。]
で表される化合物を得る。次いで、得られたアリル化合物を、
HSiR65
mR66
3-m
[式中、
R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R66は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0225】
別の方法として、下記式:
R61-CH=CH2
[式中:R61は、オルガノシロキサン基含有基である。]
で表される化合物と、下記式
H-SiX3
[式中、Xは加水分解性基である。]
とを反応させて、下記式:
R61-CH2CH2SiX3
で表される化合物を得る。次いで、得られた化合物を、
M-R62
[式中、
Mは、金属含有基、例えばLi、ハロゲン-Mg、又はZnであり、
R62は、アリル基含有基である。]
で表される化合物と反応させて、下記式:
R61-CH2CH2Si(-R63-R64)3
[式中:
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R63は、2価の基であり、
R64は、アリル基である。]
を得る。続いてアリル化合物を得る。次いで、得られたアリル化合物を、
HSiR65
mR66
3-m
[式中、
R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
R66は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基であり、
mは、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0226】
上記の反応において、R61-CH=CH2は、酸化剤と反応させることにより、エポキシ化合物とし、かかるエポキシ化合物を用いて、本開示の式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0227】
さらに、R61-CH=CH2は、HSRで表されるチオール化合物と反応させて、R61-CH2-CH2-SR又はR61-CH(SR)-CH3で表されるチオ化合物とし、かかるチオ化合物を用いて、本開示の式(1)で表される化合物を得ることができる。ここに、Rは、任意の基である。
【0228】
さらに、下記スキームに示す通り、R
61-CH=CH
2は、ジエンと反応させて、環状化合物とし、かかる環状化合物を用いて、本開示の式(1)で表される化合物を得ることができる。
【化15】
[式中、Rは、それぞれ独立して、炭化水素、水素原子、または酸素原子、窒素原子、又は、-COR’である。R’は、任意の基である。]
【0229】
さらに、下記スキームに示す通り、R
61-CH=CH
2は、ジボラン、ボランジメチルスルフィド錯体、9-ボラビシクロ[3,3,1]-ノナン等のホウ素試薬と反応させて、次いで、得られたボラン誘導体をアルコール化合物に変換し、かかるアルコール化合物を用いて、本開示の式(1)で表される化合物を得ることができる。
【化16】
[式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭化水素基である。]
【0230】
別の方法として、下記式:
R61-SiW2-H
[式中、
R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
Wは、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。]
で表される化合物と、下記式:
H2C=CH-R67
[R67は、アミド、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、ニトリル、アミン、エポキシド、ベンゼン環、アルコール等の官能基含有基である。]
とを反応させて、下記式:
R61-SiX2-CH2CH2-R67
で表される化合物を得ることができる。かかる化合物を、原料として、上記の反応を適宜利用して、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0231】
別の方法として、下記式:
R61-CH2NR68H
[式中、R61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R68は、任意の基である。]
で表される化合物を下記式
HOCO-R69
[式中、R69は、二重結合基含有基である。]
で表される化合物と反応させて下記式:
R61-CH2NR68CO-R69
を得る。かかる化合物を、原料として、R69内に含まれる二重結合に対して上記のヒドロシリル化反応を行うことにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0232】
別の方法として、下記式:
R61-CH2NH2
[式中、R61は、オルガノシロキサン基含有基である。]
で表される化合物を、
R70-COOH
[式中、R70は、二重結合、アミド、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、ニトリル、アミン、エポキシド、ベンゼン環、アルコール等の官能基含有基である。]
で表される化合物と反応させて、
R61-CH2NHCO-R70
が得られ、かかる化合物を原料として、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0233】
別の方法として、下記スキームに示すように、エポキシ化合物と、下記に示すような化合物とを反応させて得られる化合物を原料として、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【化17】
[式中、
R
61は、オルガノシロキサン基含有基であり、
R
1は、水素原子、またはアルキル基であり、
R
2は、水素原子、またはアルキル基であり、
Rは、末端に官能基を含んでいてもよい、炭化水素基であり、
上記官能基は、エステルなどのカルボン酸誘導体(例えば、エステル、アミド、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、ニトリル)、アミン、エポキシド、ベンゼン環、アルコール、又は不飽和結合である。]
【0234】
別の方法として、下記スキームに従って、R
61-CH
2Xとイソシアヌル酸とを、適切な塩基(水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、金属ヘキサメチルジシラジドなど)の存在下で反応させて、置換イソシアヌレート化合物を得ることができる。ここに、Xは脱離性官能基であり、例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド。パラトルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、カルボキシラートが挙げられる。
【化18】
【0235】
上記ヒドロシリル化は、好適には、遷移金属触媒を用いて行われる。かかる遷移金属触媒としては、第8族~10族遷移金属触媒が好ましく、中でも、白金触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。中でも、白金触媒が好ましい。白金触媒としては、Pt/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、Pt/テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、塩化白金酸、酸化白金等が挙げられる。中でも、Pt/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体およびPt/テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体のいずれかが好ましい。
【0236】
上記遷移金属触媒の使用量は、反応対象である二重結合を有する化合物に対する質量比が、0.1~1,000ppmであることが好ましく、1~100ppmであることが特に好ましい。上記の使用量とすることにより、適切に反応が進行し、触媒に起因する着色を抑制することができる。
【0237】
好ましい態様において、上記触媒、特に白金触媒と、含窒素化合物、又は含硫黄化合物とを併用する。これらの化合物は1種を使用しても、2種以上を使用してもよい。
【0238】
上記含窒素化合物としては、脂肪族アミン化合物、トリエチルアミン、芳香族アミン化合物(アニリン、ピリジン等)、リン酸アミド(ヘキサメチルホスホルアミド等)、アミド化合物(N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等。)、尿素化合物(テトラメチル尿素等。)、環状アミド化合物(N-メチルピロリドン等。)等が挙げられる。含窒素化合物の中でも後述するドナー数の高い化合物が好ましく、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド、尿素化合物が好ましい。また、含窒素化合物の塩基性が高いと、加水分解性基の加水分解や縮合反応等の副反応が進行しやすくなるため、塩基性は低いかまたは中性の化合物が良い。このような点から芳香族アミン化合物、リン酸アミド、尿素化合物が好ましい。
【0239】
上記含硫黄化合物としては、スルホキシド化合物(テトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0240】
上記の化合物としては、芳香族アミン化合物およびスルホキシド化合物の1種以上が好ましく、テトラメチレンスルホキシド、又はジメチルスルホキシドの1種以上が特に好ましい。
【0241】
上記の含窒素化合物および含硫黄化合物は、いずれもドナー数が大きい。ドナー数とは、溶媒パラメータの一つであり、電子(対)供与性の尺度である。ドナー数が大きい化合物を上記遷移金属触媒と併用すると、遷移金属触媒中の遷移金属にかかる化合物が配位し、そのため、二重結合を有する化合物の遷移金属への配位が制御されるものと考えられる。その結果、特定組成を有する組成物が得られる。
【0242】
ここに、ドナー数は、含窒素化合物又は含硫黄化合物と、SbCl5とが1:1付加体を形成するときの熱量であり、種々の化合物のドナー数、ドナー数の算出方法等は、たとえば、下記参考文献(1)および(2)等に開示されている。(1)Pure&Appl.Chem.,Vol.41,No.3,pp.291-326,1975。(2)Pure&Appl.Chem.,Vol.58,No.8,pp.1153-1161,1986。
【0243】
上記含窒素化合物又は含硫黄化合物の使用量は、二重結合を有する化合物の100質量部に対して、0.001~1,000質量部が好ましく、0.01~10質量部が特に好ましい。また、遷移金属触媒と含窒素化合物又は含硫黄化合物の使用量の質量比率(含窒素化合物又は含硫黄化合物:遷移金属触媒)は、10:1~10,000:1が好ましく、20:1~1,000:1が特に好ましい
【0244】
本開示は、上記式(1)又は(2)で表される化合物の中間体を提供する。
【0245】
本開示は、下記式(1-a)又は(2-a):
【化19】
[式中:
R
S1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
1-R
S-R
2
q-であり;
R
S2は、-O
p-R
S-R
2
q-であり;
R
Sは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の直鎖オルガノシロキサン基であり;
R
1は、炭化水素基であり;
R
2は、-SiR
3
2-であり;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、炭化水素基であり;
pは、0又は1であり;
qは、それぞれ独立して、0又は1であり;
X
Bは、それぞれ独立して、
-(CH
2)
s6-X
53-X
54、
-X
53-(CH
2)
t6-X
54、又は
-(CH
2)
s6-X
53-(CH
2)
t6-X
54
(式中、
X
53は、-O-、-CO-、-CONR
74-、-O-CONR
74-、-O-(CH
2)
u6-CONR
74-、又は-O-(CH
2)
u6-CO-、単結合であり、
X
54は、R
75、-NR
75
2、-SiR
75
2R
76、-SiR
75
3、-CR
75
2R
75、-CR
75
3、-SiCl
2R
76、-SiCl
3、又は
【化20】
であり、
R
75は、-CH=CH
2、又は-CH
2-CH=CH
2であり、
R
76は、1価の有機基であり、
R
74は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C
1-6アルキル基、又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基であり、
s6は、1~20の整数であり、
t6は、1~20の整数であり、
u6は、1~20の整数である。)
である。]
で表される化合物を提供する。
【0246】
式(1-a)及び(2-a)におけるRS1及びRS2は、式(1)及び(2)におけるRS1及びRS2と同意義である。
【0247】
XBは、それぞれ独立して、-(CH2)s6-X53-X54、-X53-(CH2)t6-X54、又は-(CH2)s6-X53-(CH2)t6-X54である。
【0248】
X53は、単結合、-O-、-CO-、-CONR74-、-O-CONR74-、-O-(CH2)u6-CONR74-、又は-O-(CH2)u6-CO-であり、好ましくは--O-、-CO-、-CONR74-、-O-CONR74-、-O-(CH2)u6-CONR74-、又は-O-(CH2)u6-CO-、より好ましくはCONR74-である。
【0249】
R74は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基、又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基、好ましくは水素原子、C1-6アルキル基、又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。
【0250】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0251】
一の態様において、R74は水素原子である。
【0252】
別の態様において、R74は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。
【0253】
X
54は、R
75、-NR
75
2、-SiR
75
2R
76、-SiR
75
3、-CR
75
2R
75、-CR
75
3、-SiCl
2R
76、-SiCl
3、又は
【化21】
であり、好ましくは-NR
75
2、-SiR
75
2R
76、-SiR
75
3、-CR
75
2R
75、-CR
75
3、又は
【化22】
である。
【0254】
一の態様において、X54は、R75、-NR75
2、-SiR75
2R76、-SiR75
3、-CR75
2R75、又は-CR75
3、好ましくは-SiR75
3、又は-CR75
3、より好ましくは-SiR75
3である。
【0255】
別の態様において、X
54は、
【化23】
である。
【0256】
R75は、-CH=CH2、又は-CH2-CH=CH2、好ましくは-CH2-CH=CH2である。
【0257】
R76は、1価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基、炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、上記と同意義である。
【0258】
好ましい態様において、-X53-X54は、-CON(CH2CH=CH2)2、-CONHCH2C(CH2CH=CH2)3である。
【0259】
X54が、-SiR75
2R76、又は-CR75
2R75である場合、好ましくは、2価の直鎖オルガノシロキサン基は、aが2以上、好ましくは3以上の-(SiR3
2-O)a-である。
【0260】
次に、本発明の組成物について説明する。
【0261】
本開示の組成物は、式(1)又は(2)で表される少なくとも1種のシロキサン基含有シラン化合物を含有する。
【0262】
一の態様において、本開示の組成物中、シロキサン基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0263】
別の態様において、本開示の組成物中、シロキサン基含有シラン化合物は、式(2)で表される化合物である。
【0264】
別の態様において、本開示の組成物中、シロキサン基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物である。
【0265】
本開示の組成物中、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対して、式(2)で表される化合物が、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%又は10モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下又は5モル%以上10モル%以下である。
【0266】
一の態様において、上記の式(1)又は(2)で表される化合物の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.1~50.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、さらに好ましくは5.0~25.0質量%、特に好ましくは10.0~20.0質量%であり得る。
【0267】
別の態様において、上記の式(1)又は(2)で表される化合物の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~2質量%であり得る。
【0268】
一の態様において、本開示の組成物は、シロキサン含有シラン化合物、及び該シロキサン含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合体からなる化合物の少なくとも1つを含有する。
【0269】
一の態様において、本開示の組成物は、R71OR72、R73
n8C6H6-n8、R74R75R76Si-(O-SiR77R78)m8-R79、及び(OSiR77R78)m9
[式中
R71~R79は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の一価の有機基であり、
m8は、1~6の整数であり、
m9は、3~8の整数であり、
n8は、0~6の整数である。]
で表される化合物から選択される溶媒を含み得る。
【0270】
上記炭素数1~10個の一価の有機基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、さらに環状構造を含んでいてもよい。
【0271】
一の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0272】
別の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲン原子を含まない。
【0273】
好ましい態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲンにより置換されていてもよい炭化水素基、好ましくはハロゲンにより置換されていない炭化水素基である。
【0274】
一の態様において、上記炭化水素基は、直鎖である。
【0275】
別の態様において、上記炭化水素基は、分枝鎖である。
【0276】
別の態様において、上記炭化水素基は、環状構造を含む。
【0277】
一の態様において、上記溶媒は、R71OR72である。
【0278】
R71及びR72は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基、より好ましくはC1-6のアルキル基、又はC5-8のシクロアルキル基であり得る。
【0279】
一の態様において、上記溶媒は、R73
n8C6H6-n8である。
【0280】
C6H6-n8は、n8価のベンゼン環である。即ち、R73
n8C6H6-n8は、n8個のR73により置換されたベンゼンである。
【0281】
R73は、それぞれ独立して、ハロゲン、又はハロゲンにより置換されていてもよいC1-6のアルキル基であり得る。
【0282】
n8は、好ましくは1~3の整数である。
【0283】
一の態様において、上記溶媒は、R74R75R76Si-(O-SiR77R78)m8-R79である。
【0284】
一の態様において、上記溶媒は、(OSiR77R78)m9である。(OSiR77R78)m9は、複数のOSiR77R78単位が環状に結合することにより形成される環状シロキサンである。
【0285】
R74~R79は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6のアルキル基、好ましくはC1-6のアルキル基、より好ましくはC1-3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0286】
m8は、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~2であ。
【0287】
m9は、好ましくは3~6の整数、より好ましくは3~5の整数である。
【0288】
好ましい態様において、上記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンであり得る。
【0289】
本開示の組成物は、好ましくは表面処理剤である。
【0290】
本開示の表面処理剤は、溶媒、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アミン化合物、アルコール類、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0291】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシロキサン類;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、HFE7100、HFE7200、HFE7300、CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOH等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0292】
シリコーンオイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3):
R1a-(SiR3a
2-O)a1-SiR3a
2-R1a ・・・(3)
[式中:
R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
a1は、2~3000である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0293】
上記R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基である。かかる炭化水素基は、置換されていてもよい。
【0294】
R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくは非置換炭化水素基、又はハロゲン原子により置換されている炭化水素基である。かかるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0295】
R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0296】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖
である。C1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0297】
上記アリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0298】
一の態様において、R3aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0299】
別の態様において、R3aは、フェニル基である。
【0300】
別の態様において、R3aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0301】
上記R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、上記R3aと同意義である。
【0302】
R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0303】
一の態様において、R1aは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0304】
別の態様において、R1aは、フェニル基である。
【0305】
別の態様において、R1aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0306】
上記a1は、2~1500である。a1は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、例えば30以上、又は50以上であり得る。a1は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下、さらにより好ましくは150以下、例えば100以下、又は80以下であり得る。
【0307】
a1は、好ましくは5~1000、より好ましくは10~500、さらに好ましくは15~200、さらにより好ましくは15~150であり得る。
【0308】
上記シリコーンオイルは、500~100000、好ましくは1000~10000の平均分子量を有していてよい。シリコーンオイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0309】
上記シリコーンオイルとしては、例えば-(SiR3a
2-O)a1-のa1が30以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得ることができる。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0310】
上記シリコーンオイルは、本開示の表面処理剤に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.1~5質量%含まれ得る。
【0311】
本開示の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示のシロキサン基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0312】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0313】
上記アルコール類としては、例えば1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~6のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOHが挙げられる。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、表面処理剤の安定性を向上させ、また、パーシロキサン基含有シラン化合物と溶媒の相溶性を改善させる。
【0314】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B、Si、Ta、Nb、Mo、W、Cr、Hf、V等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、または含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等が挙げられる。
【0315】
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。上記芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、ピリジン等を挙げることができる。
【0316】
好ましい態様において、上記遷移金属は、M-R(式中、Mは、遷移金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される遷移金属化合物として含まれる。遷移金属化合物を、遷移金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0317】
上記加水分解性基とは、上記シロキサン基含有シラン化合物に関する加水分解性基と同様に、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、遷移金属原子から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORm、-OCORm、-O-N=CRm
2、-NRm
2、-NHRm、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換または非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0318】
好ましい態様において、上記加水分解性基とは、-ORmであり、好ましくはメトキシまたはエトキシである。加水分解性基としてアルコキシ基を用いることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性および耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0319】
一の態様において、上記加水分解性基は、上記したシロキサン基含有シラン化合物に含まれる加水分解性基と同じであってもよい。シロキサン基含有シラン化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を同じ基とすることにより、かかる加水分解性基が相互に交換された場合であっても、その影響を小さくすることができる。
【0320】
別の態様において、上記加水分解性基は、上記したシロキサン基含有シラン化合物に含まれる加水分解性基と異なっていてもよい。シロキサン基含有シラン化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を異なるものとすることにより、加水分解の反応性を制御することができる。
【0321】
一の態様において、上記加水分解性基と、上記シロキサン基含有シラン化合物に含まれる加水分解性基は、表面処理剤中において、相互に入れ替わっていてもよい。
【0322】
好ましい態様において、上記遷移金属化合物は、Ta(ORm)5であり、好ましくはTa(OCH2CH3)5であり得る。
【0323】
上記触媒は、表面処理剤全体に対して、例えば、0.0002質量%以上含まれ得る。上記触媒は、表面処理剤全体に対して、0.02質量%以上含まれることが好ましく、0.04質量%以上含まれることがより好ましい。上記触媒は、表面処理剤全体に対して、例えば、10質量%以下含まれてもよく、特に1質量%以下含まれる。本開示の表面処理剤は、上記触媒が、上記のような濃度含むことによって、より耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る。
【0324】
上記触媒の含有量は、本開示のシロキサン基含有シラン化合物に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が特に好ましい。
【0325】
触媒は、本開示のシロキサン基含有シラン化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0326】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0327】
本開示の表面処理剤は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0328】
本開示の表面処理剤は、基材を処理した場合に、水とn-ヘキサデカンの接触角から算出した表面自由エネルギーが18~35mN/mである表面を与える。
【0329】
上記表面自由エネルギーは、好ましくは20mN/m以上、より好ましくは22mN/m以上、さらに好ましくは24mN/m以上であり、好ましくは33mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、さらに好ましくは28mN/m以下、さらにより好ましくは26mN/m以下である。
【0330】
上記表面自由エネルギーは、水及びn-ヘキサデカンを用いて接触角計により、基材表面のそれぞれの接触角(θ1及びθ2)を測定し、次いで、下記式に前記接触角の値と水及びn-ヘキサデカンの表面自由エネルギーの値とを代入し、得られた2つの式からなる連立方程式を解いてγSd及びγSpを求める。そして、γSdとγSpの和が基材表面の表面自由エネルギーγSである。
{(1+cosθ)・γL}/2=(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2
[式中、
γLは液体の表面自由エネルギーであり、γLd及びγLpは、それぞれ分散項及び極性項であって、γL=γLd+γLpである。]
水の表面自由エネルギーγL=72.8mN/m
水の表面自由エネルギー分散項γLd=21.8mN/m
水の表面自由エネルギー極性項γLp=51.0mN/m
n-ヘキサデカンの表面自由エネルギーγL=27.6mN/m
n-ヘキサデカンの表面自由エネルギー分散項γLd=27.6mN/m
n-ヘキサデカンの表面自由エネルギー極性項γLp=0mN/m
【0331】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、乾燥被覆法、好ましくは真空上着用である。
【0332】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、湿潤被覆法、好ましくは浸漬コーティング用である。
【0333】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0334】
以下、本開示の物品について説明する。
【0335】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0336】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0337】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、Ta3O5,Nb2O5、HfO2、Si3N4、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0338】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0339】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0340】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0341】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0342】
本開示の物品は、上記基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成することにより製造することができる。
【0343】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0344】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ワイプコーティング、スキージーコート法、ダイコート、インクジェット、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法及び類似の方法が挙げられる。
【0345】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0346】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0347】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシロキサン類など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)及び/又はパーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)、シロキサン類が特に好ましく、さらには、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンがより好ましい。
【0348】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0349】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0350】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、または含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン等の有機アミン類などを使用できる。遷移金属、脂肪族アミン化合物、及び芳香族アミン化合物は、上記と同様のものが挙げられる。
【0351】
本開示の物品に含まれる表面処理層は、高い摩耗耐久性の双方を有する。また、上記表面処理層は、高い摩耗耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、耐薬品性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0352】
従って、本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0353】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0354】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0355】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。また、本開示によって得られる層を有する物品は、自動車内外装部材であってもよい。外装材の例には、次のものが挙げられる:ウィンドウ、ライトカバー、社外カメラカバー。内装材の例には、次のものが挙げられる:インパネカバー、ナビゲーションシステムタッチパネル、加飾内装材。
【0356】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、摩耗耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0357】
以上、本開示の化合物、組成物、及び物品について詳述した。なお、本開示の化合物、組成物、及び物品などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例0358】
以下、本開示について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0359】
合成例1
R-COOH(10g)、2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(1.71g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.98g)、トリエチルアミン(1.44mL)、4-ジメチルアミノピリジン(84mg)、及びジクロロメタン(30mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。混合液をジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(8.88g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0360】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.25 (m), 1.45-1.59 (m, 2H), 1.20-1.48 (m, 14H), 1.53-1.65 (m, 2H), 2.03 (d, 2H, 7.6Hz), 2.16 (t, 2H, 7.6Hz), 3.20 (d, 2H, 6.4Hz), 5.05-5.14 (m, 6H), 5.51-5.60 (m, 1H), 5.80-5.93 (m, 3H).
13C NMR (CDCl3, 133 MHz) δ[ppm]: 0.2, 1.0, 1.8, 18.3, 23.2, 29.3, 29.4, 29.6, 30.3, 33.5, 37.1, 40.0, 40.1, 45.0, 118.1, 134.2, 172.9.
【0361】
実施例1
合成例1で得られたR-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(2g)、トルエン(10mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.29mL)、アニリン(46mg)、及びトリメトキシシラン(1.43mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3(2.21g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0362】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.2-0.21 (m), 0.41-0.65 (m, 8H), 1.10-1.50 (m, 26H), 1.55-1.65 (m, 2H), 2.14 (t, 2H, 7.2 Hz), 3.09 (d, 2H, 6.0 Hz), 3.45-3.62 (m, 27H), 5.67-5.75 (m, 1H)
13C NMR (CDCl3, 133 MHz) δ[ppm]: 0.1, 1.0, 1.7, 9.5, 16.1, 18.2, 23.2, 26.0, 29.4, 29.4, 29.6, 30.2, 33.4, 37.0, 38.1, 39.1, 43.6, 50.4, 173.0.
【0363】
合成例2
R-COOH(10g)、ジアリルアミン(2.01g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.98g)、4-ジメチルアミノピリジン(84mg)、およびジクロロメタン(30mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、塩酸および水で洗浄した後、減圧濃縮することで、R-CON(CH2CH=CH2)2(9.00g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0364】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.25-0.30 (m), 1.45-1.59 (m, 2H), 1.20-1.40 (m, 14H), 1.55-1.68 (m, 2H), 2.30 (t, 2H, 7.2Hz), 3.86 (d, 2H, 5.2Hz), 3.98 (d, 2H, 6.0Hz), 5.05-5.23 (m, 4H), 5.68-5.84 (m, 2H).
13C NMR (CDCl3, 133 MHz) δ[ppm]: 0.2, 1.0, 1.8, 18.3, 23.2, 25.4, 29.4, 29.5, 29.6, 33.1, 33.5, 47.8, 49.1, 116.5, 117.0, 133.0, 133.5, 173.2.
【0365】
実施例2
R-CON(CH2CH=CH2)2(2g)、トルエン(10mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.20mL)、アニリン(32mg)、およびトリメトキシシラン(1.00mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで、R-CON{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}2(2.23g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0366】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.31 (m), 0.42-0.65 (m, 6H), 1.10-1.40 (m, 14H), 1.63-1.71 (m, 6H), 2.26 (t, 2H, 7.2 Hz), 3.19 (t, 2H, 7.6 Hz), 3.27 (t, 2H, 7.6 Hz), 3.45-3.65 (m, 18H).
13C NMR (CDCl3, 133 MHz) δ[ppm]:0.2, 1.0, 1.7, 6.3, 6.4, 18.2, 20.8, 22.3, 23.2, 25.6, 29.4, 29.5, 29.6, 33.2, 33.4, 48.2, 50.2, 50.48, 50.53, 172.8
【0367】
合成例3
R-(COOH)2(10g,信越化学社製、X-22-162C)、2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(1.05g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.2g)、4-ジメチルアミノピリジン(52mg)、及びジクロロメタン(33mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。混合液をジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することにより、R-(CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3)2(7.3g)を得た。なお、Rは、―CH2CH2-(OSi(CH3)2)n-CH2CH2-であり、繰り返し単位数nの平均値は、31である。
【0368】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.30 (m), 0.81-0.85 (m, 4H), 2.03 (d, 12H), 2.17-2.22 (m, 4H), 3.19 (d, 4H), 5.07-5.15 (m, 12H), 5.63 (2H, brt), 5.83-5.90 (m, 6H).
【0369】
実施例3
合成例3で得られたR-(CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3)2(2g)、トルエン(9.5mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.19mL)、アニリン(0.03mL)、及びトリメトキシシラン(0.92mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3(2g)を得た。なお、Rは、―CH2CH2-(OSi(CH3)2)n-CH2CH2-であり、繰り返し単位数nの平均値は、31である。
【0370】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.30 (m), 0.57-0.70 (m, 12H), 0.81-0.87 (m, 4H), 1.17-1.37 (m, 12H), 1.27-139 (m, 12H), 2.13-2.23 (m, 4H), 3.09 (d, 4H), 3.54-3.65 (m, 54H), 5.88 (2H, brt).
【0371】
合成例4
R-CH2OH(201g,信越化学社、X-22-170DX)、アセトン(400mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を混合し、氷水で0℃に冷却した。混合液を0℃で撹拌しながら、臭化カリウム(1.02g)、TEMPO(0.210g)を加えた。10分撹拌後トリクロロイソシアヌル酸(19.9g)を加えた。なりゆきで室温まで昇温し終夜撹拌した。混合液にイソプロピルアルコール(200mL)を加え、揮発成分を減圧濃縮した。濃縮液に水(300mL)を加え、ジクロロメタンで抽出し、乾燥したのちに溶媒を減圧留去することで、R-COOH(180g)を得た。
Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2-(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-である。繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0372】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.11-0.27 (m) , 0.52-0.58 (m, 4H), 0.89 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.28-1.33 (m, 4H), 1.66-1.70 (m, 2H), 3.54 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 4.11 (s, 2H)
【0373】
合成例5
合成例4で得られたR-COOH(10g)、2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(1.71g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.98g)、4-ジメチルアミノピリジン(84mg)、及びジクロロメタン(30mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。混合液をジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(8.88g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2-(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0374】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.10-0.30 (m), 0.52-0.59 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.26-1.33 (m, 4H), 1.61-1.69 (m, 2H), 2.05 (d, J = 7.3 Hz, 6H), 3.22 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 3.47 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.93 (s, 2H), 5.08-5.13 (m, 6H), 5.82-5.92 (m, 3H), 6.75 (brs, 1H)
【0375】
実施例4
合成例5で得られたR-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(5g)、トルエン(5mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.24mL)、アニリン(38mg)、及びトリメトキシシラン(1.19mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3(4.8g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0376】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.13-0.32 (m), 0.54-0.63 (m, 10H), 0.90 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.23-1.37 (m, 16H), 1.62-1.69 (m, 2H), 3.17 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 3.47-3.50 (m, 2H), 3.56-3.63 (m, 27H), 3.94 (s, 2H), 6.54 (brs, 1H)
【0377】
実施例5
合成例5で得られたR-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(1g)、トルエン(5mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、94μL)、(CH3COO)3SiCH3(3.6mg)、及びトリクロロシシラン(0.25mL)を混合した。混合物を、60℃で4時間撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C{CH2CH2CH2SiCl3}3(0.9g)を得た。Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0378】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.14-0.33 (m), 0.57-0.64 (m, 4H), 0.96 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.24-1.42 (m, 16H), 1.48-1.58 (m, 6H), 1.68-1.72 (m, 2H), 3.22 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 3.50 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 4.05 (s, 2H), 6.68 (brs, 1H)
【0379】
合成例6
R-CH=CH2(5g,Gelest社、MCR-V21)、トルエン(5g)、トリクロロシラン(0.31g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、32μL)を混合し、60℃で4時間撹拌した。室温に放冷し、溶媒を減圧留去したのちにテトラヒドロフラン(5g)に溶解させ、氷冷下アリルマグネシウムクロリド(1.0mol/L、4.4mL)を加えた。なりゆきで室温まで昇温し17時間撹拌したのちに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた。不溶物をセライトパッドで濾過し、ろ液をジクロロメタンで抽出した。溶媒を減圧留去しR-CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3(4.7g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0380】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.07 (s), 0.42-0.62 (4H, m), 0.89 (3H, t), 1.26-1.35 (4H, m), 1.60 (6H, d), 4.84-5.17 (6H, m), 5.80 (3H, tdd)。
【0381】
実施例6
合成例6で得られたR-CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3(2.5g)、トルエン(2.5mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.10mL)、アニリン(16mg)、及びトリメトキシシシラン(0.52mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CH2CH2Si(CH2CH2CH2Si(OCH3)3)3(2.5g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0382】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.08 (s), 0. 41-0.74 (12H, m), 0.89 (3H, t), 1.23-1.33 (4H, m), 1.42-1.63 (6H, m), 3.57 (27H, s)。
【0383】
合成例7
R-CH=CH2(5g,Gelest社、MCR-V25)、トルエン(5g)、トリクロロシラン(0.27g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、76μL)を混合し、60℃で4時間撹拌した。室温に放冷し、溶媒を減圧留去したのちにテトラヒドロフラン(5g)に溶解させ、氷冷下アリルマグネシウムクロリド(1.0mol/L、2.2mL)を加えた。なりゆきで室温まで昇温し17時間撹拌したのちに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた。不溶物をセライトパッドで濾過し、ろ液をジクロロメタンで抽出した。溶媒を減圧留去しR-CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3(4.2g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、200である。
【0384】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.09 (s), 0.40-0.62 (4H, m), 0.90 (3H, t), 1.20-1.32 (4H, m), 1.62 (6H, d), 4.85-5.15 (6H, m), 5.82 (3H, tdd)。
【0385】
実施例7
合成例7で得られたR-CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3(3.6g)、トルエン(4mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、54μL)、アニリン(9mg)、及びトリメトキシシシラン(0.27mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CH2CH2Si(CH2CH2CH2Si(OCH3)3)3(3.3g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、200である。
【0386】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.08 (s), 0. 39-0.73 (12H, m), 0.85 (3H, t), 1.21-1.32 (4H, m), 1.420-1.65 (6H, m), 3.55 (27H, s)。
【0387】
合成例8
R(-CH=CH2)2(5g,Gelest社、DMS-V21)、トルエン(10g)、トリクロロシラン(1.48g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.41mL)を混合し、60℃で4時間撹拌した。室温に放冷し、溶媒を減圧留去したのちにテトラヒドロフラン(10g)に溶解させ、氷冷下アリルマグネシウムクロリド(1.0mol/L、12.1mL)を加えた。なりゆきで室温まで昇温し17時間撹拌したのちに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた。不溶物をセライトパッドで濾過し、ろ液をジクロロメタンで抽出した。溶媒を減圧留去しR-[CH2CH2Si{CH2CH=CH2}3]2(4.4g)を得た。なお、Rは、-Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、52である。
【0388】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.08 (s), 0.38-0.63 (4H, m), 1.65 (6H, d), 4.81-5.13 (6H, m), 5.80 (3H, tdd)。
【0389】
実施例8
合成例8で得られたR-[CH2CH2Si{CH2CH=CH2}3]2(3g)、トルエン(6mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.25mL)、アニリン(41mg)、及びトリメトキシシシラン(1.25mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-[CH2CH2Si{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3]2(2.7g)を得た。なお、Rは、-Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数nの平均値は、52である。
【0390】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.10 (s), 0. 33-0.75 (16H, m), 1.45-1.68 (12H, m), 3.52 (27H, s)。
【0391】
合成例9
2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(2g)、トリエチレングリコール2-ブロモエチルメチルエーテル(8.9g)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(5.0g)をシクロペンチルメチルエーテル(6mL)に溶解させ、80℃で6時間撹拌した。室温程度に冷却した後、炭酸水素ナトリウム水溶液と水で洗浄し、減圧濃縮して、PG-NHCH2C(CH2CH=CH2)3(2.9g)を得た。なお、PGは、CH3(OCH2CH2)4-である。
【0392】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 2.05 (d, J =7.3 Hz, 6H), 2.41-2.47 (m, 2H), 2.76-2.81 (m, 2H), 3.37 (s, 3H), 3.59-3.65 (m, 14H), 5.00-5.10 (m, 6H), 5.77-5.88 (m, 3H).
【0393】
合成例10
合成例4で得られたR-COOH(3g)、PG-NHCH2C(CH2CH=CH2)3(0.34g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.18g)、4-ジメチルアミノピリジン(7.8mg)、及びジクロロメタン(3mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。混合液をジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することにより、R-CON(PG)-CH2C(CH2CH=CH2)3(2.5g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2-(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-であり、PGは、CH3(OCH2CH2)4-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0394】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.12-0.31 (m), 0.50-0.58 (m, 4H), 0.89 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.24-1.34 (m, 4H), 1.60-1.67 (m, 2H), 2.02 (d, J = 7.3 Hz, 6H), 3.25 (s, 2H), 3.37 (s, 3H) , 3.49 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.56-3.65 (m, 16H), 3.98 (s, 2H), 5.05-5.16 (m, 6H), 5.80-5.94 (m, 3H).
【0395】
実施例9
合成例10で得られたR-CON(PG)-CH2C(CH2CH=CH2)3(1.7g)、トルエン(4mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.078mL)、アニリン(12mg)、及びトリメトキシシラン(0.39mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CON(PG)-CH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3(1.5g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-であり、PGは、CH3(OCH2CH2)4-であり、繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0396】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.11-0.31 (m), 0.52-0.64 (m, 10H), 0.93 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.22-1.36 (m, 16H), 1.64-1.68 (m, 2H), 3.15 (s, 2H) , 3.35 (s, 3H), 3.46-3.49 (m, 2H), 3.55-3.68 (m, 43H), 3.95 (s, 2H).
【0397】
合成例11
1,3-ジアリル-イソシアヌル酸(3.0g)をジメチルアセトアミド(14mL)に溶解させた。炭酸カリウム(1.5g)を加え、攪拌しながら加熱した。ジメチルアセトアミドに溶解したR-OSO2CF3(6.0g)を加え更に加熱、撹拌を続けた。反応の終点を1H-NMRで確認し、反応液を純水で洗浄し、減圧濃縮することで、下記の化合物を得た。なお、R-OSO2CF3(6.0g)は、信越化学工業の末端アルコール(X-22-170DX)から変換した。Rは、CH3(CH2)3-(Si(CH3)O)n-Si(CH3)2-(CH2)3-O-(CH2)2-である。繰り返し単位数nの平均値は、78である。
【0398】
【0399】
実施例10
合成例11で得られた化合物(5g)、トルエン(30mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.17mL)、アニリン(29mg)、およびトリメトキシシラン(0.9mL)を混合し、室温で終夜攪拌した後、減圧濃縮することで、下記の化合物を得た。繰り返し単位数nの平均値は、78である。
【0400】
【0401】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.33-0.36 (m), 0.4-0.6 (m, 4H), 0.85-0.92 (m, 7H), 1.26-1.32 (m, 4H), 1.54-1.64 (m, 2H), 1.71-1.79 (m, 4H), 3.42 (t, 2H, 6.8 Hz), 3.54-3.60 (m, 18H) 3.64 (d, 2H, 6.0 Hz), 3.85 (d, 4H, 7.2 Hz), 4.09 (d, 2H, 6.0 Hz)
【0402】
合成例12
R-(CH=CH2)2(5g)、トルエン(10g)、トリクロロシラン(0.65g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.18mL)を混合し、60℃で4時間撹拌した。室温に放冷し、溶媒を減圧留去したのちにテトラヒドロフラン(10g)に溶解させ、氷冷下アリルマグネシウムクロリド(1.0mol/L、5.3mL)を加えた。なりゆきで室温まで昇温し17時間撹拌したのちに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた。不溶物をセライトパッドで濾過し、ろ液をジクロロメタンで抽出した。溶媒を減圧留去しR-(CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3)2(4.4g)を得た。なお、Rは、―SiPh2(OSiPh2)m-(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数m、nの平均値は、それぞれ26、87である。
【0403】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.18-0.16 (m), 0.38-0.63 (4H, m), 1.65 (6H, d), 4.81-5.13 (6H, m), 5.80 (3H, tdd), 7.12-7.48 (m), 7.50-7.74 (m)
【0404】
実施例11
合成例12で得られたR-(CH2CH2Si(CH2CH=CH2)3)2(3g)、トルエン(6mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.11mL)、アニリン(18mg)、及びトリメトキシシシラン(0.55mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-[CH2CH2Si{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3]2(2.8g)を得た。なお、Rは、―SiPh2(OSiPh2)m-(OSi(CH3)2)n-であり、繰り返し単位数m、nの平均値は、それぞれ26、87である。
【0405】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.10 (s), 0. 31-0.77 (m, 32H), 1.43-1.70 (m, 12H), 3.50-3.61 (s, 54H)。
【0406】
合成例13
合成例4で得たR-COOH(2.11g)、ジアリルアミン(18mL)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.14g)、4-ジメチルアミノピリジン(6mg)、およびジクロロメタン(4.0g)を混合し、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、塩酸および水で洗浄した後、減圧濃縮することで、R-CON(CH2CH=CH2)2(1.88g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2-(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-である。繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0407】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.04-0.09 (m), 0.51-0.56 (m), 0.86-0.90 (t), 1.25-1.35 (m), 1.60-1.67 (m), 3.45-3.49 (t), 3.91-3.99 (dd), 4.14 (s), 5.12-5.21 (m), 5.70-5.81 (m).
【0408】
実施例12
合成例13で得られたR-CON(CH2CH=CH2)2(1.7g)、トルエン(1.7g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.20mL)、ピリジン(10mg)、およびトリメトキシシラン(0.32mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで、R-CON{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}2(1.97g)を得た。なお、Rは、CH3CH2CH2CH2Si(CH3)2-(OSi(CH3)2)n-(CH2)3-OCH2-である。繰り返し単位数nの平均値は、57である。
【0409】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.08-0.08 (m), 0.51-0.55 (m), 0.86-0.88 (t), 1.25-1.32 (m), 1.60-1.66 (m), 3.56-3.64 (m).
【0410】
合成例14
10-ウンデセン酸メチル(5.02g)、トルエン(1.7g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.3mL)、ピリジン(0.1mL)をそれぞれ加えた後、氷浴で5℃以下まで冷却し、1,1,1,3,3-ペンタメチルジシロキサン(20mL)を加えて、60℃で3時間攪拌した。その後およびトリメトキシシラン(0.32mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで(CH3)3SiO(CH3)2Si(CH2)10COOMe(8.62g)を得た。
【0411】
合成例15
R-COOMe(3.0g)、トルエン(8.7mL)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(0.140g)、2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(0.75g)をそれぞれ加えた後、75℃で24時間攪拌した。混合液をトルエンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(2.74g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-OSi(CH3)2-(CH2)10-である。
【0412】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.01-0.04 (m), 0.45-0.49 (m), 1.23-1.26 (m), 1.56-1.64 (m), 2.05 (s), 2.15-2.19 (t), 3.22 (s), 3.82-3.85 (m), 5.05-5.16 (m), 5.75-5.84 (m), 6.24 (s)
【0413】
実施例13
合成例14で得られたR-CONH-CH2C(CH2CH=CH2)3(2.07g)、トルエン(2g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.2mL)、ピリジン(0.1mL)、及びトリメトキシシラン(0.5mL)を混合した。混合物を、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することにより、R-CONH-CH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3(2.53g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-OSi(CH3)2-(CH2)10-である。
【0414】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.14-0.05 (m), 0.46-0.50 (t), 0.54-0.63 (m), 1.25-1.27 (m), 1.57-1.66 (m), 2.12-2.16 (t), 3.17 (s), 3.56 (s), 6.54 (s).
【0415】
比較例1
特開2019-44179号に記載の方法に従い、下記化合物を合成した。
CH3O(CH2CH2O)n-1CH2C(O)NHCH2C{CH2CH2CH2Si(OCH3)3}3
繰り返し単位数nの平均値は、22である。
【0416】
合成例16
R-COOH(5g)、アリルアミン(0.59g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.99g)、4-ジメチルアミノピリジン(42mg)、およびジクロロメタン(15mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、塩酸および水で洗浄した後、減圧濃縮することで、R-CONH-CH2CH=CH2(3.82g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0417】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.30 (m), 0.48-0.56 (m, 2H), 1.18-1.37 (m, 14H), 1.58-1.69 (m, 2H), 2.19 (t,2H, 7.6 Hz), 3.87-3.90 (m, 2H), 5.11-5.20 (m, 2H), 5.49 (brs, 1H), 5.77-5.89 (m, 1H)
【0418】
比較例2
R-CONH-CH2CH=CH2(2g)、トルエン(5mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.10mL)、アニリン(16mg)、およびトリメトキシシラン(0.5mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで、R-CON-CH2CH2CH2Si(OCH3)3(2.11g)を得た。
Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
【0419】
比較例3
特開2014-84405号に記載の方法に従い、上記合成例13で得た(CH
3)
3Si-(OSi(CH
3)
2)
n-(CH
2)
10-CONH-CH
2CH=CH
2(繰り返し単位数nの平均値は19である)を用いて、下記化合物を合成した。
【化26】
Rは、(CH
3)
3Si-(OSi(CH
3)
2)
n-(CH
2)
10-である。繰り返し単位数nの平均値は19である。
【0420】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.20-0.30 (m), 0.38-0.68 (m, 16H), 1.20-1.38 (m, 14H), 1.46-1.68 (m, 4H), 2.10-2.23 (m, 2H), 3.18-3.26 (m, 1H), 3.44-3.65 (m, 19H)
【0421】
<表面処理層の形成>
[スピンコート処理]
上記実施例1~5及び10、ならびに比較例1の化合物をそれぞれ1.5wt%イソプロパノール溶液となるよう希釈し、表面処理剤1~7を得た。表面処理剤1~7を、50mm×50mmのガラス基板に10分間UV/O3処理を行ってドライ洗浄を行った後、3000rpmで30秒間スピンコートを行った。その後、オーブンで100℃、2時間の加熱処理を行うことにより、表面処理層を得た。
【0422】
<評価>
[接触角の測定]
接触角の測定は、25℃環境下において、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いた。具体的には、測定対象の表面処理層を有する基材を水平に静置し、その表面にマイクロシリンジから水を滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより静的接触角を測定した。静的接触角は、基材の表面処理層の異なる5点において測定し、その平均値を算出した値を用いた。オレイン酸の接触角は、液量2μLで着液4秒後に測定した。
【0423】
【0424】
<表面処理層の形成>
上記実施例1、3、4、6~13、ならびに比較例2~3の化合物をそれぞれ20wt%の1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液となるよう希釈し、表面処理剤5~9を得た。上記で調製した表面処理剤8~18を、化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。
具体的には、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに表面処理剤0.1gを充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。その後、電子線蒸着方式により二酸化ケイ素を7nmの厚さで蒸着させて二酸化ケイ素膜を形成し、続いて抵抗加熱方式によりボートを加熱することで表面処理層を形成した。
【0425】
<評価>
[耐摩耗性評価]
耐摩耗性試験後の評価サンプルについて、上記インク除去性の評価試験を実施して、同様の評価基準にて指紋除去性を評価した。耐摩擦試験後の指紋除去性に優れる程、摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。
(初期評価)
初期評価(摩擦回数0回)として、表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げたのちに、水の静的接触角を測定した。
(耐摩耗性試験後の評価) 形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(井元製作所社製)を用いて、下記条件で3000回(または6000回)往復させた。
摩擦子:ベンコット M-3II(製品名、旭化成社製)
移動距離(片道):60mm
移動速度:8,400mm/分
荷重:100g/3cm2
【0426】
[インク除去性評価]
表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げて評価サンプルとした。摩耗回数0回、3000回、6000回後に実施した。評価サンプルの表面層に油性のフェルトペン(マッキー極太黒色:製品名、ゼブラ社製)で線を引いた後、ベンコットM-3IIを摩耗子として、移動速度:70rpm、荷重:100g/3cm2の条件で50回摩耗した後の、油性インク(線)の付着状態を目視で観察し、インク除去性(初期のインク除去性)を以下の基準にしたがって評価した。
◎(優良):油性インクの除去率が90%以上である。
○(良好):油性インクの除去率が60%以上90%未満である。
△(可) :油性インクの除去率が30%以上60%未満である。
×(不良):油性インクの除去率が30%未満である。
【0427】
【0428】
<処理剤溶液の調製>
実施例1および4の化合物を、10wt%となるよう、表3に示す溶媒(S)で希釈し、表面処理剤1~13を得た。
【0429】
<相溶性試験>
上記で調製した表面処理剤1~13を、23~27℃の実験室内に10分間静置し、表面処理剤の状態を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0430】
〇(良好):均一に混和し透明な溶液である。
×(不良):不均一であり、二相に分離する。
【0431】
<保存安定性試験>
上記で調製した表面処理剤1~13を、23~27℃、遮光下で7日間静置したのちに、表面処理剤の状態を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
【0432】
◎(優良):溶液が均一であり、濁りがなく固形成分を生成していない。
〇(良好):薬液内に固形成分が生成していないものの、液面に固形分がみられる。
△(可) :薬液内に固形成分が確認できるものの、流動性がある。
×(不良):ゲル化し流動性がない。
【0433】
【0434】
<指紋拭き取り性評価>
表面処理剤5、6、及び11~13を用いて、上記<表面処理層の形成>に記載の方法で表面処理層を形成した後、基材表面上の余剰分を拭き上げて評価サンプルとした。評価サンプルに27Nの力で皮脂を付着した。次いで、評価サンプルの表層面の指紋跡を1kgの円柱状の重りにベンコートM-3IIを取り付け、以下の条件で一方向に10回往復することで、表層の指紋をふき取った後の指紋付着状態をHazeメーターで測定した。結果を下記表4に示す。
【0435】
拭き取り布:ベンコット M-3II(製品名、旭化成社製)
移動距離(片道):60mm
移動速度:8,400mm/分
荷重:1000g/3cm2
◎(優良):指紋跡がほとんど見えない
〇(良好):指紋がわずかに見える
△(可) :指紋が薄いがはっきり見える。
×(不良):はっきり見える。
【0436】
<ヘイズ測定>
上記の指紋拭き取り評価を行った後の評価試料をヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH-7000)を用いてヘイズ値を測定した。結果を下記表4に示す。
【0437】