IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クオルテックの特許一覧

<>
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図1
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図2
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図3
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図4
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図5
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図6
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図7
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図8
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図9
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図10
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図11
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図12
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図13
  • 特開-配線基板の評価方法および評価装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002837
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】配線基板の評価方法および評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20231228BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20231228BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20231228BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
H05K3/00 Q
G01N27/00 Z
G01N27/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102280
(22)【出願日】2022-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】長谷川将司
(72)【発明者】
【氏名】杉林祐至
(72)【発明者】
【氏名】中西泰介
【テーマコード(参考)】
2G059
2G060
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB15
2G059BB16
2G059BB20
2G059CC03
2G059DD03
2G059EE01
2G059HH02
2G059HH06
2G059JJ01
2G059KK01
2G059MM01
2G060AA06
2G060AC05
2G060AE17
2G060AF08
(57)【要約】
【課題】
配線パターンのライン/スペースが狭いとマイグレーションが発生する。マイグレーションが発生するが、ライン/スペースとマイグレーション発生との関係が定量化されていない。
【解決手段】
水202に配線基板102を浸水させることにより、銅配線パターン104より銅イオンが水202に溶出し、フラックスのイオン成分が溶出する。溶出した銅イオンはイオン交換樹脂203により吸着させる。銅イオンを吸着したイオン交換樹脂203は再生液204に浸け、再生液204に銅イオンを溶出させる。再生液204に中和液205で中和させた後、試薬バソクプロインを滴下して発色させる。発色した再生液は、波長分光装置で吸光度(Abs)を測定し、銅イオン量を定量化する。フラックスのイオン成分は、導電率計で定量化する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配線が形成された基板を、第1の水溶液に浸水させる第1の工程と、
前記第1の工程後の前記第1の水溶液から、金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させる第2の工程と、
前記イオン交換樹脂から、前記金属イオンを第2の水溶液に溶出させる第3の工程と、
前記第2の水溶液を中和させる中和液を混合させる第4の工程と、
前記第2の水溶液に、前記金属イオンと錯体を形成する反応材料を混合させる第5の工程と、
前記第5の工程後の前記第2の水溶液の透過率または吸光度を測定する第6の工程と、
前記第1の水溶液の導電率を測定する第7の工程を有することを特徴とする配線基板の評価方法。
【請求項2】
前記反応材料は、ネオクプロインとバソクプロインのうち、少なくとも一方であることを特徴とする請求項1記載の配線基板の評価方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂は、強陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1記載の配線基板の評価方法。
【請求項4】
前記金属イオンは、銅イオンであることを特徴とする請求項1記載の配線基板の評価方法。
【請求項5】
金属配線が形成された基板から、第1の水溶液に金属イオンを溶出させる第1の手段と、
前記第1の水溶液から、金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させる第2の手段と、
前記イオン交換樹脂から、前記金属イオンを第2の水溶液に溶出させる第3の手段と、
前記第2の水溶液に、前記金属イオンと錯体を形成する反応材料を混合させる第4の手段と、
前記第2の水溶液の透過率または吸光度を測定する第5の手段を具備することを特徴とする配線基板の評価装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、電子回路基板、積層基板、積層フィルム、フィルム配線基板等の耐マイグレーション性予測法、マイグレーション評価方法、電子部品の実装評価方法、半田付け評価方法、半田付け予測方法、フラックス/ソルダーレジストの選定に関するものである。
【0002】
また、配線基板の良否判定方法および当該評価装置、予測装置に関するものである。また、配線基板のライン/スペース(L/S)の設計指針、評価に関するものである。これらの評価装置、検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等のデジタル電子機器は、高機能化・多機能化の流れが、近年ますます加速している。高機能化・多機能化のためには半導体部品等の高密度実装が進展しているため、半導体部品を搭載するプリント配線板のライン/スペースも精細化の一途をたどっている。
【0004】
プリント配線板のライン/スペースは、電子部品等の高密度実装のためには、重要な事項であるが、フラックス、レジストの性能、種類も電子部品等の高密度実装を左右する。
【0005】
プリント配線板においては耐マイグレーション性に優れ、高い絶縁信頼性を確保するための研究開発が活発に実施されている。ところが、耐マイグレーション性を評価するには、長期間に及ぶ絶縁信頼性試験を行う必要があり、プリント基板の設計、研究開発効率の点で時間的な障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-080094号公報
【0007】
特許文献1には、加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加して、Cole-Coleプロットを得ること、および得られたCole-Coleプロット上のワールブルグインピーダンス(Fw)の存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測することが記載されている。
【発明の概要】
【0008】
本願発明は、水含む水溶液に、フラックス101を塗布等した基板102等を浸水させて(浸けて)、銅配線(銅箔)パターンを構成する銅等の金属イオン、フラックスのイオン成分等を取り出す。金属イオンはイオン交換樹脂で吸着させた後、再生溶液にイオン交換樹脂を入れ、イオン交換樹脂を再生させて金属イオンを再生溶液に取り出す。再生溶液は中和して、吸光度測定を行う。フラックスのイオン成分は、導電度(率)計で、導電度(率)を測定する。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、Cole-Coleプロット上のワールブルグインピーダンス(Fw)の存在に基づいて、計算等を実施する必要がある。Cole-Coleプロットは時間を要し、また、Cole-Coleプロットによりマイグレーションを予測することは、間接的であり、現実と乖離した結果になることが多い。
【0010】
配線パターンのライン/スペースが狭いとマイグレーションが発生する。マイグレーションが発生するが、ライン/スペースとマイグレーション発生との関係が定量化されていないため、実験、信頼性試験を実施し、ライン/スペースの検証と設計を進める必要がある。この期間は長期間を必要とするため、基板の配線設計に長期間を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、水202に配線基板102を浸水させる(浸ける)ことにより、銅配線パターン104から銅イオンが水202に溶出する。また、フラックスのイオン成分が水202に溶出する。溶出した銅イオンはイオン交換樹脂203により吸着させる。
【0012】
銅イオンを吸着したイオン交換樹脂203は再生液204に浸け、再生液204に銅イオンを溶出させる。再生液204に中和液205で中和させた後、試薬バソクプロイン206等を滴下して発色させる。発色した再生液は、波長分光装置で吸光度(Abs)を測定し、銅イオン量(銅イオン濃度)を定量化する。
【0013】
水202に溶出したフラックスのイオン成分(イオン量、イオン濃度)は、水202の導電率を変化させる。水202の導電率を導電率計で測定することにより、イオン量(イオン濃度)を定量化する。
【0014】
本願発明の配線基板の評価方法は、金属配線が形成された基板を第1の水溶液に浸水させる第1の工程と、第1の工程後の前記第1の水溶液から金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させる第2の工程と、イオン交換樹脂から金属イオンを第2の水溶液に溶出させる第3の工程と、第2の水溶液を中和させる中和液を混合させる第4の工程と、第2の水溶液に金属イオンと錯体を形成する反応材料を混合させる第5の工程と、第5の工程後の第2の水溶液の透過率または吸光度を測定する第6の工程と、第1の水溶液の導電率を測定する第7の工程を有することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、反応材料は、ネオクプロインとバソクプロインのうち、少なくとも一方であり、イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0016】
本願発明の配線基板の評価装置は、金属配線が形成された基板から第1の水溶液に金属イオンを溶出させる第1の手段と、第1の水溶液から金属イオンをイオン交換樹脂に吸着させる第2の手段と、イオン交換樹脂から金属イオンを第2の水溶液に溶出させる第3の手段と、
【0017】
第2の水溶液に金属イオンと錯体を形成する反応材料を混合させる第4の手段と、第2の水溶液の透過率または吸光度を測定する第5の手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
金属イオン量により発色させ、測定対象成分を含む溶液の吸光度を測定することより金属イオン量を定量化でき、フラックス等から溶出したイオン量を定量化するため、効率的で、簡単かつ迅速に配線基板の評価を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の配線基板の評価方法の説明図である。
図2】本発明の配線基板の評価に使用する配線基板の説明図である。
図3】本発明の配線基板の評価に使用する配線基板の説明図である。
図4】本発明の配線基板の評価に使用する配線基板の説明図である。
図5】本発明の配線基板の評価装置の説明図である。
図6】分光波長に対する吸光度(Abs:Absorbance)のグラフである。
図7】分光波長に対する吸光度(Abs:Absorbance)のグラフである。
図8】分光波長に対する吸光度(Abs:Absorbance)のグラフである。
図9】配線パターンのスペースに対する吸光度(Abs:Absorbance)のグラフである。
図10】配線パターンのスペースに対する吸光度(Abs:Absorbance)のグラフである。
図11】銅とキレートを形成したネオクプロイン、バソクプロインの構造式である。
図12】配線基板の浸水させた水溶液の抵抗値変化を示すグラフである。
図13】配線基板の浸水させた水溶液のイオン量の変化を示す説明図である。
図14】配線基板の浸水させた水溶液の伝導率変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一あるいは類似の機能を有する要素あるいは構成には同一の符号を付し、また、説明を省略する場合がある。また、本明細書に記載する本発明の実施例は、それぞれの実施例と一部または全部と組み合わせることができる。
なお、本発明の図面等で、説明を容易にするため、理解を容易にするため、図示を容易にするため等に、省略、拡大、縮小等した箇所がある。
【0021】
本願発明は、プリント配線板等の耐マイグレーション性の評価等だけでなく、フラックス残渣、フラックスの信頼性、フラックスの酸価、半田材料の適否、半田付け条件の適否、ソルダペーストの適否、フレックス、ソルダペーストの供給量、電子部品の実装、リフロー条件、リフロー方法、洗浄等の評価、採用、適用、検証することができる。
【0022】
また、フラックスから水溶液に溶出したイオン量を定量化することにおり、フラックス残渣、フラックスの信頼性、フラックスの酸価、半田材料の適否、半田付け条件の適否、ソルダペーストの適否、フレックス、ソルダペーストの供給量、電子部品の実装、リフロー条件、リフロー方法、洗浄等の評価、採用、適用、検証することができる。
【0023】
したがって、以下の実施例、図面等において、フラックス101として説明するが、フラックス101は半田、ソルダペースト等に置き換えても良いことは言うまでもない。また、フラックス101は、半田、ソルダペースト等に読み替えて良いことは言うまでもない。
本発明の配線基板の評価方法、配線基板の評価装置は、評価基板等の評価、解析、分析に対しても適用することができ、また、評価指針を定量化できる。
【0024】
フラックス残渣はフラックスの蒸気、加熱されたフラックスおよび加熱されないフラックスなどに起因しており、その作用は単なる変色から製品の機能の完全破壊にまで及ぶ場合がある。フラックス残渣の影響により絶縁抵抗が減少する問題は腐食と密接に関係している。腐食による故障や絶縁抵抗の減少についての予測は難しく、一般に認められた評価方法がない。
【0025】
フラックスの酸化性は、フラックス固形分1g中の遊離酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数で表される。同じ酸価のフラックスであっても活性度や腐食性にはかなりの違いがある。酸価はpHの値とはまったく関係がない量である。予測は難しく、一般に認められた評価方法はない。
【0026】
ソルダペーストは、半田粉末を高粘度のフラックス(ベヒクル)に混合分散したものであり、面実装分野で多量に使われている。ソルダペーストは通常75~90重量パーセントの半田粉を含んでおり、半田粉末とフラックスの分離の防止、粘性およびチクソトロピー性(揺変性)を付与するための特殊な補助成分が添加されている。
【0027】
高密度実装およびリフロー後の無洗浄化の目的で、酸化の少ない球形粉を使用したソルダペーストが注目されている。球形粉は保存を十分管理することによって長期間酸化を防止することができるが、予測は難しく、また、評価方法がない。
【0028】
面実装におけるソルダペーストの供給方法は、スクリーンまたはメタルマスクを使用した印刷法とニードルから一定量を押し出すディスペンサ法が主に用いられている。しかし、ソルダペーストの供給量は、印刷法とニードルから一定量を押し出すディスペンサ法とも、具体的にどの程度を供給すれば良いかは、実装評価を行って決定している。実装評価以外に予測は難しく、また、評価方法がない。
【0029】
リフロー方法には赤外線輻射加熱法、熱風循環加熱法、蒸気相凝縮加熱法(VPS)および不活性ガス雰囲気加熱法などがある。赤外線輻射加熱法は設備費用、ランニングコストのいずれにおいても低廉で生産性にも優れているが、熱容量に大きな違いのある部品の実装、耐熱性のない部品の実装などには不向きである。
【0030】
熱風循環加熱法は熱容量の異なる部品の実装、耐熱性のない部品の実装などに適しているが、低温長時間加熱による接合部の酸化が問題視されている。リフロー方法と接合部の酸化の関係等が不明であり、酸化の予測は難しい。また、適切な評価、方法がない。
【0031】
日本における民生機器の半田付けは、ほとんどの分野で無洗浄化されている。しかし、最近の面実装化の普及と高密度化により民生用といえども、検査機の自動化に対応させる目的で洗浄を行っているのが現状である。
【0032】
洗浄方法洗浄方法は溶剤中に浸漬して、超音波による振動を利用して残渣を洗浄する方法、溶剤蒸気で洗浄する方法、および溶剤を高圧スプレーして除去する方法などがある。洗浄に関して、洗浄効果の予測は難しく、また、評価方法がない。
【0033】
以上の課題に対して、実質的に評価方法、予測方法、評価装置はない。電子部品等を実装し、信頼性試験等を実施して、各課題に対する条件を見出し、改善を行っているのが実情である。
【0034】
本発明は上記の課題に対して、本発明の評価方法を実施、あるいは本発明の評価装置を適用し、発色による吸光度を測定することにより、評価の基準、課題の程度を定量化し、設計指針、対策方策の策定に寄与できるものである。
【0035】
本発明では、実施態様として、吸光度(Abs:Absorbance)を測定するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、透過率を測定しても良いことは言うまでもない。また、反射率で測定し、評価しても良い。また、これらの組み合わせにより評価等を実施しても良い。
【0036】
また、フラックスを溶け込んだ水溶液のイオン濃度(イオン量)を、電気導電率(伝導度、伝導率、導電率、導電度)を導電率計で測定するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、マルチ水質チェッカ、pHメータ、水質分析器等でも間接的にあるいは直接的にイオン濃度(イオン量)を定量化できることは言うまでもない。
【0037】
また、発色した溶液などを吸収紙等に吸着あるいは吸収させ、前記吸収紙の分光透過率、分光反射率等を測定しても良い。また、色差を求め、あるいは数値で表現して定量化しても良い。
図2は、配線基板の評価を行うために、標準として使用する本発明の配線基板(標準基板と呼ぶ)を模式的に示す説明図である。
【0038】
標準基板(評価基板)102として、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、セラミック基板、フレキシブル基板、メタルベース基板、リジット基板が例示される。なお、構造として、積層基板に限定されず、ビルドアップ基板、エニーレイヤー基板、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)基板等でも良い。
【0039】
また、本発明は、配線パターン104が形成された基板102に限定されるものではなく、金属部品、薄膜形成材料、電子部品、めっき部品、金属部品にも適用あるいは採用できるものである。
基板102には、配線パターン104が形成されている。配線パターンのL/S(ライン/スペース)は、目的にあわせて複数種類のパターンが形成される。
【0040】
図2は1枚の基板102に1種類の銅配線パターンを例示しているが、実施態様として、1枚に基板102に複数のL/S(ライン/スペース)の銅配線パターン104が同時に形成あるいは作製され、L/S(ライン/スペース)が異なる評価基板として割取りされる。同時に複数種類のL/S(ライン/スペース)等が異なるものを形成し、同一エッチング条件等にすることにより、L/S(ライン/スペース)の差異が明確になる。
【0041】
図2では、銅配線パターンは数本を図示しているが、実際には、スペース(S)0.5mm、1mm等で、100本(組)以上が形成される。一般的に銅配線パターン上にフラックス101が塗布、印刷等される。
【0042】
銅配線パターン104は、平面上に配置あるいは構成されているものに限定されない。絶縁材料を介して、複数の配線が交差配線されている基板、フィルムにも本発明は適用できる。また、配線基板のコンタクトホール(ビアホール等)の評価、検証等にも本発明は適用できる。
【0043】
図2(b)は、図2(a)のAA’線での断面図である。銅配線パターン104上には、フラックス101(フラックスに限定されるものではなく、ソルダーレジスト、固体半田等を含む)が塗布あるいは印刷されている。
【0044】
接続パターン105aは、銅配線パターン104aを電気的に接続している。接続パターン105aに印加した電圧値が、銅配線パターン104aに印加される。接続パターン105bは、銅配線パターン104bを電気的に接続している。接続パターン105aに印加した電圧値が、銅配線パターン104bに印加される。
【0045】
フラックス101は、半田付け促進剤である。通常、金属の表面には酸化被膜が存在するため、単純に半田を熱によって溶かしただけでは母材と接合できない。酸化被膜は一度除去しても、空気中の酸素と結びついて、酸化被膜ができる。フラックス101は、主剤、活性剤、溶媒から構成あるいは形成される。
【0046】
フラックス101の主剤は樹脂(ロジン、合成樹脂等)である。主剤が加熱されて、半田や被着面の表面にある酸化被膜を除去し、同時に、半田と被着面表面を保護し再酸化を防止する。
【0047】
活性剤は、半田と被着面の表面にある酸化被膜を除去する力を増大させる添加剤である。半田種類や半田付けの温度や時間によっては複数種の活性剤を含む場合がある。
【0048】
フラックス101には活性剤して、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、エチルアミン塩酸塩等が含有、添加等がされている。これらの活性剤によりイオンが発生、生成する。
【0049】
溶媒にはアルコール系溶剤が使用され、主剤である固形の樹脂を溶解する。また、フラックス101の粘度を調整し、プリント配線板などへの均一塗付や母材へのぬれ、隙間への浸透を改善する等の働きをする。
【0050】
半田付けを行うためには、母材と半田が通常の半田付け条件(半田の融点プラス30~80℃)において両者の間に合金を生成することが必要である。そのためには母材と半田の両者を活性な状態(原子状態)にする必要がある。
【0051】
フラックスは、半田および母材金属の活性化の役割とこの活性化された表面と大気中の酸素との接触による再酸化を防止して、活性化された表面を保護する役割をもっている。
【0052】
特に活性剤の影響により、マイグレーションを引き起こすことが多い。フラックス101に使用される活性剤には、有機酸、アミノ酸、アミン、アミンのハロゲン化水素酸塩系がある。
【0053】
半田付け作業の能率を左右するフラックスを選択するのであるから、その基準となるのは当然フラックスの作業性、すなわちフラックスの効力があげられる。一方、電子部品の組み立てに使用する面からは、フラックスの腐食性、電気絶縁性すなわちフラックスの信頼性があげられる。
【0054】
この二つの基準すなわち効力と信頼性は相反しており、高活性フラックスは腐食性が強く、非腐食性フラックスは活性度があったとしてもきわめて少ない。多くの電子部品は腐食に敏感である。
【0055】
銅配線の質と、銅配線のライン/スペース(L/S)(特にS(スペース))に対するフラックスの選定が重要であるが、実務上、対象配線基板に対して、多種多様のフラックスを使用し、実装評価を実施しないと選定の良否、対象配線基板とフラックスとの組み合わせの適否が判定することができない。
【0056】
本発明はこの問題に対して、実装評価を行うことなく、フラックスの選定の良否、対象配線基板とフラックスとの組み合わせの適否を判定、評価、判断できる技術的思想を提供するものである。
【0057】
マイグレーションには、特にS(スペース)が重要である。S(スペース)が所定距離よりも狭い方が、マイグレーションが発生し易い傾向にある。L(ライン)は、銅配線(銅箔)パターンの表面積が影響するため、図4に図示するように、L(ライン)幅を共通にして、S(スペース)を変化した評価基板を作製することが好ましい。
【0058】
本発明の実施例において配線パターンは、銅箔であるとして説明するがこれに限定するものではない。アルミニウムからなる配線パターンでも本発明は適用できる。また、金ありは鉄等の他の金属からなる配線パターン、金属構成であっても良い。また、金属めっきに関しても本発明が適用できることは言うまでもない。
【0059】
図2(b)、図3図4は、図2(a)のAA’線での断面図を示している。銅配線パターンの厚みはDである。1つの割取り基板で、異なるL/S(ライン/スペース)の銅配線パターン104を形成した場合、各割取り基板の銅配線パターン104の厚みDは同一になる。したがって、割取り基板で異なるL/S(ライン/スペース)の銅配線パターン104を形成することが好ましい。
【0060】
マイグレーションの発生は、銅箔の厚みDも影響する。L/S(ライン/スペース)は、変化させた場合であっても銅箔の厚みDは、同一に形成する。銅箔の厚みDを一定にして、フラックス101等を塗布等し、本発明の評価方法および評価装置を適用する。
本発明は、配線パターン104のL/S評価だけでなく、配線パターンの厚みの評価、検証にも適用できることは言うまでもない。
【0061】
銅配線パターン104の長さKは長い方が、本発明の実施におけるマイグレーションの評価判定、評価結果が良好になる。銅配線パターン104aと銅配線パターン104bとが面する距離が長いほどマイグレーション発生の影響が大きい。
【0062】
また、フラックス残渣、フラックスの信頼性、フラックスの酸価、ソルダペーストの適否、ソルダペースト等の残渣、電子部品の実装信頼性、リフロー条件不良、洗浄不良等の問題も発生し易い。したがって、本願発明の評価方法を実施すること、本願発明の評価装置を使用することにより、課題量の定量化、対応策の実施が容易となる。
【0063】
本願発明は、フラックス101、ソルダーレジスト101の選定、評価だけでなく、半田付けの良否、半田の選定、半田付けの状態を定量化し、対応策方法を明確化できる方法、装置に関するものであり、また、適応できる。
【0064】
図3の実施例での基板102には、銅配線パターン104が形成されている。配線パターンのL/S(ライン/スペース)は、目的にあわせて複数種類のパターンが構成あるいは作製される。
【0065】
図3図3(a)、図3(b)、図3(c)は、それぞれL/S(ライン/スペース)が異なる。これらの構成(形態)は、1枚の基板102に複数構成を作製あるいは構成する。
【0066】
図3(a)はL1/S1(ライン/スペース)、図3(b)はL2/S2(ライン/スペース)、図3(c)はL3/S3(ライン/スペース)である。各基板にフラックス101を塗布等し、本発明の評価方法を実施する。
図3の銅配線パターンでは、異なるL/S(ライン/スペース)でのマイグレーション等の評価を実施することができる。
【0067】
図4図4(a)、図4(b)、図4(c)は、L(ライン)が同一で、S(スペース)が異なる。これらの構成(形態)は、1枚の基板102に複数構成を作製あるいは構成する。
【0068】
図4(a)はS1(スペース)、図3(b)はS2(スペース)、図3(c)はS3(スペース)である。各基板にフラックス101を塗布等し、本発明の評価方法を実施する。
図4の銅配線パターンでは、異なるS(スペース)でのマイグレーション等の評価を実施することができる。
【0069】
マイグレーションの評価には、スペース(S)が重要である。スペース(S)が狭い(短い)ほど、マイグレーションは発生しやすくなる。ライン(L)は、本発明のマイグレーションの評価では、狭い方が良い。マイグレーションが発生し易いからである。スペース(S)が異なる構成の基板102で評価することにより、スペース(S)がいくら以上必要かを、評価あるいは判断できる。判断は、フラックス101の種類、品質、構成により、定量的に実施できることになる。
基板102に複数のL/S(ライン/スペース)あるいはS(スペース)の異なる銅配線パターン104が同時に形成あるいは作製される。
【0070】
図2図3図4の評価基板等を使用し、フラックス101の塗布前に、洗浄等を行う。洗浄液あるいは洗浄時間の差異によってもマイグレーションの発生は異なる。したがって、フラックス101を共通にし、洗浄液、洗浄時間、洗浄方法を異ならせて、本発明の評価方法を実施することにより、どの洗浄液、洗浄時間、洗浄方法が適正かを評価、判断することができる。
【0071】
図2では、銅配線パターンは数本を図示しているが、実際には、スペース(S)0.5mm、1mm等等比的に形成された銅配線パターン104が、100本以上が形成される。銅配線パターン上にフラックス101が塗布、印刷等される。
【0072】
接続パターン105aは、銅配線パターン104aを電気的に接続している。接続パターン105aに印加した電圧値が、銅配線パターン104aに印加される。接続パターン105bは、銅配線パターン104bを電気的に接続している。接続パターン105aに印加した電圧値が、銅配線パターン104bに印加される。必要に応じて、接続パターン105の一端には電圧印加ランドが形成される。
【0073】
本願発明は、イオン交換水等の水に、フラックス101を塗布等した基板102を浸水させて(浸けて、浸して)、銅箔を構成する銅等の金属イオンを取り出す。なお、水または水蒸気202を吹き付けても(噴霧しても)良い。
【0074】
水溶液202にはフラックス由来のイオン性残渣が溶け出る。水溶液202のイオン濃度が高いと、伝導度が高くなる。イオン濃度は伝導度で把握することができる。イオン性残渣、イオン濃度はマイグレーション発生に密接に関係する。したがって、伝導度を伝導率計等で測定することにおより、マイグレーション発生を定量化することができる。
【0075】
金属イオンはイオン交換樹脂で吸着させた後、再生溶液にイオン交換樹脂を入れ、イオン交換樹脂を再生させて金属イオンを再生溶液に取り出す。再生溶液は中和して、吸光度測定を行う。
【0076】
図1は、本発明の配線基板の評価方法の説明図である。図1図2図3で説明した基板102には、実施態様に則してフラックス101、ソルダーレジスト101が塗布される。
【0077】
たとえば、フラックス101の種類に依存するマイグレーションの発生を評価する場合は、図3図4等で説明した複数の銅配線の銅配線パターン104にフラックス101を塗布する。
【0078】
フラックス101の塗布方法として、ハケ塗り方式、滴下方式、噴霧方式等が例示される。これらの方式においてどの方式が適正かについても本発明の配線基板の評価方法の適用することができる。
【0079】
フラックス101の適正な種類、品質を評価する場合は、フラックス101を塗布して評価するとした。たとえば、フラックス101の清浄化作用、酸化防止作用、表面張力低下作用がある。フラックス101の種類を変化させて、本発明の本発明の配線基板の評価方法、配線基板の評価装置を適用することができる。
【0080】
本発明は、フラックス101に限定されるものではなく、ソルダーレジスト、半田、フラックス含有する半田等に置き換えることができることは言うまでもない。
【0081】
基板102を水202に浸水させる期間は、12時間から36時間である。また、水202をヒータ(加熱冷却器)207で加温する。加温温度は、50~80℃であり、所定値に維持する。浸水時間および加温温度により、銅配線パターン104から流出する銅イオン量は変化する。フラックス101が含有する活性物質の酸化性が強い場合は、銅配線パターン104から流出する銅イオン量は大きくなる。
【0082】
本発明は、水202に限定されない。アルコール等の溶液を使用しても良い。水を採用する場合は、純水が好ましいが、イオン交換水であれば、試薬による発色の変化に差異は生じない。水溶液202は、溶液である。水に特定されるものではない。
フラックス101による銅配線パターン104の被覆度が強いと銅配線パターン104から流出する銅イオン量は少なくなる。
【0083】
基本的には、銅配線パターン104から流出する銅イオン量が多いほど、マイグレーションを引き起こしやすくなる。本発明は銅イオンをキレート化し、発色剤で発色させる。発色の程度は、吸光度を測定することにより測定できる。したがって、原理的には水に流出した銅イオンの量により、マイグレーションの発生し易さを定量化できる。
また、イオン残渣が多いほど、マイグレーションを引き起こしやすくなる。本発明はイオン残渣を導電率計等で測定し、定量化する。
配線基板の評価は、導電率計等で測定したイオン残渣(イオン濃度)と吸光度で定量化する。
【0084】
銅イオンの流出量、イオン化量は、フラックス101の含有物(活性物質等)、フラックス101の種類、銅配線パターン104の表面酸化量、銅配線パターンの清浄度等により異なる。また、銅配線パターンのライン/スペース(L/S)により異なる。本発明は、銅イオンの流出量を吸光度で定量化することにより、最低必要な、スペース(S)、フラックス101の適切な活性度を把握できることになる。
【0085】
フラックス101あるいはソルダーレジスト101等の含有物(活性物質等)、粘度、銅配線パターン104の被覆性、銅配線パターン104の洗浄度、環境温度、銅配線パターン104のL/S等により、流出する金属イオン(銅イオン量)は変化する。変化する金属イオン(銅イオン量)を定量化することにより、銅箔パターン(銅配線パターン)104の設計指針、フラックス101あるいはソルダーレジスト101等、基板102の洗浄指針、選択指針、設計指針を明確にすることができる。また、決定することができる。
【0086】
本願発明は、イオン交換水に、フラックス101を塗布等した基板102を浸水させて、銅箔を構成する銅等の金属イオンを取り出す。金属イオンはイオン交換樹脂で吸着させた後、再生溶液にイオン交換樹脂を入れ、イオン交換樹脂を再生させて金属イオンを再生溶液に取り出す。再生溶液は中和して、吸光度測定を行う。
【0087】
フラックス残渣は、マイグレーション、高周波特性の悪化、樹脂封止の不具合などの原因となる。はんだ付け後のフラックス残渣が品質上の問題となるかは、対象となる実装製品の要求特定やその後工程により異なる。フラックス残渣が招く代表的な不具合としては、マイグレーション、高周波特性の悪化など電気的信頼性の低下や、樹脂モールド工程での不濡れ、硬化不良、密着不良などが挙げられる。フラックスのイオン残渣、イオン濃度は、イオン伝導度測定計を用いて、伝導度を測定して定量化する。
【0088】
本発明は、溶液中の金属イオン濃度を測定するためにキレート試薬を使用し、吸光分析を実施する。以下の実施例では、銅イオンの検出を例示して説明するが、本願発明はこれに限定するものではない。
【0089】
水銀イオンに対してTAN(1-(2-チアゾリルアゾ)-2-ナフト-ル)、鉄イオンに対してバソフェナントロリン、コバルトイオンに対してPAN(1-(2-Pyridylazo)-2-naphthol)とすることが好ましく、また、抽出剤は、o-ニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE)とすることができる。
【0090】
金属イオンとしては、いかなるイオンであっても良いが、銅イオン、水銀イオン、コバルトイオン、鉄イオンを挙げることができる。発色剤は、これらイオンと反応して発色するものであればいかなるものであっても良い。
【0091】
銅イオンに対してはバソクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、水銀イオンに対してはTAN、鉄イオンに対してはバソフェナントロリン、コバルトイオンに対してはPANといったキレート剤が好ましい。
【0092】
また、抽出剤は、これら金属イオンと発色剤とが反応して生成される反応生成物を良好に抽出することができるものであればいかなるものであってもよく、たとえば、o-NPOE等のエーテルやフタル酸エステル等のエステルとすることができる。
図5は、一実施態様としての本願発明の配線基板の評価装置の説明図であり、図1は一実施態様としての本願発明の配線基板の評価装方法説明図である。
以下、図1図5を参照しながら、本願発明の配線基板の評価装置および評価方法について説明をする。
【0093】
図1(a)に図示するように、基板102をイオン交換水(水)202に浸水させる。水202は、ヒータ(加熱冷却器)207で加温し、50~70℃の所定温度に維持させる。水の温度は、マイグレーションの進行に依存する。ヒータ(加熱冷却器)207はヒータ(加熱冷却器)コントローラ501で温度制御される。
【0094】
なお、ヒータ(加熱冷却器)207は加温だけでなく、所定温度にするものであるから、冷却装置機能を有するものが好ましい。つまり、加熱冷却装置(加熱冷却器、温度設定回路、温度維持器)207である。したがって、ヒータ(加熱冷却器)207は、ペルチェ素子、温風器等の他の発熱装置/発熱手段あるいは冷却装置/冷却手段に置き換えても良い。以上の事項は本発明の他の実施例においても同様である。
容器201aには、タンク(水)505に出力側に配置された電磁弁503aの開閉操作により実施する。
電磁弁503はコントロール回路517により制御される。なお、電磁弁503は手動であっても良い。
【0095】
イオン交換水202はヒータ(加熱冷却器)207aで加温あるいは冷却されて、所定温度に維持される。イオン交換水202は攪拌ファン502aで攪拌される。
【0096】
基板102をイオン交換水(水)202に浸水させる時間は、12~36時間の所定時間に設定される。時間が長い方が、イオン交換水202に溶け出る金属イオン量が多くなる。しかし、時間の経過とともに、溶出する金属イオン量が頭打ちになる場合がある。したがって、実験により設定時間を検討する。
また、フラックスのイオン残渣もイオン交換水(水)202に溶出する。イオン残渣は比較的短時間に溶出する。
【0097】
次に、図1(b1)に図示するように、水202を容器201bに入れる(移動させる)。また、図1(b2)に図示するように、水202を容器201eに入れる(移動させる)。
【0098】
図5では、電磁弁503bを開いて、配管518aを介して、容器201bに移動させる。また、電磁弁503be開いて、配管518bを介して、容器201eに移動させる。
水溶液202(水202)の移動には、ポンプ504を使用し、水202を短時間、かつ所定水量を移動させる。
【0099】
容器201bには、イオン交換樹脂203が充填あるいは配置されている。イオン交換樹脂203として、カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)が例示される。
【0100】
カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)は、内部にマイナスの電荷の固定イオンを有し、それを電気的に中和するプラスの電荷のイオンが存在する。このプラスイオンは他のイオンと交換することが可能である。イオン交換樹脂203は水中に存在する+イオンを吸着する。カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)は、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂が例示される。
【0101】
強酸性カチオン交換樹脂は幅広いpH領域で使用でき、多くの+イオンを吸着できる。イオン交換樹脂はイオンの種類によって、交換性にし易さ・し難さがある。一般に、強酸樹脂のイオンの選択性は電荷が高いイオンほど交換捕捉しやすく、また水和イオンの小さいもの(原子番号の大きいもの)は交換しやすい傾向がる。したがって、銅イオンは吸着しやすい。
強酸性カチオン交換樹脂は薬剤で再生して再利用する。薬剤は一般的に塩酸または硫酸水溶液を使用する。
強酸性陽イオン交換樹脂は強酸性のため再生しにくく、高い再生率を得るためには理論化学当量より多量の再生剤が必要となる。
【0102】
イオン交換樹脂203として、弱酸性陽イオン交換樹脂を使用しても良い。弱酸性陽イオン交換樹脂はカルボン酸基を交換基として持つ樹脂であり、酢酸等と同様に弱酸性を示す。
【0103】
化学構造的にメタクリル酸系とアクリル酸系の2つの種類がある。その違いは交換基の酸性度が異なる。メタクリル酸系の使用できるpH範囲は約5以上であり、アクリル酸系は約4以上である。使用できるpH範囲に制限があるため強酸性陽イオン交換樹脂に比べて用途は限られるが、再生しやすいという特長がある。
【0104】
弱酸性陽イオン交換樹脂の各種イオンに対する吸着の強さ(選択性)は、強酸性陽イオン交換樹脂と大体類似している。価数が高いイオン程選択性が大きくなる。Hイオンに対する選択性が非常に大きい。このため、Hイオンが他の陽イオンで交換された後、薬剤(一般的に塩酸または硫酸水溶液)を使用してR-COOHの形に戻して繰り返し使用する時の再生が容易である。理論化学当量より僅かに多い程度の薬剤量で再生が可能である。
【0105】
その他、イオン交換樹脂として、キレート樹脂を用いても良い。キレート樹脂は特定の金属イオンと非常に強く結合して錯体を形成する。金属イオンに対して選択吸着性があり、特定の金属イオンを選択的に吸着することができる。
【0106】
キレート樹脂は、特定の金属イオンに対する選択性がカチオン樹脂や、アニオン樹脂と比較して非常に大きい。キレート樹脂の種類により金属イオンに対する選択性が異なるため、対象となる金属種によりキレート樹脂を選定する必要がある。
【0107】
フラックス101は、主剤、活性剤、溶媒から構成あるいは形成される。主剤は、樹脂(ロジン、合成樹脂等)である。主剤が加熱されて、半田や被着面の表面にある酸化被膜を除去し、同時に、半田と被着面表面を保護し再酸化を防ぐ。
【0108】
活性剤は、半田と被着面の表面にある酸化被膜を除去する力を増大させる添加剤である。半田の種類や半田付けの温度や時間によっては複数種の活性剤を含む場合がある。
【0109】
フラックス101には活性剤して、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、エチルアミン塩酸塩等が含有、添加等がされている。これらの活性剤によりイオンが発生、生成する。 溶媒は、アルコール系溶剤が使用され、主剤である固形の樹脂を溶解する。また、フラックスの粘度を調整し、プリント配線板などへの均一塗付や母材へのぬれ、隙間への浸透を改善する等の働きを担う。
【0110】
図1(b1)に図示するように、銅イオンを含有する水202中にイオン交換樹脂203を投入する。あるいは、イオン交換樹脂203が配置された容器201b内に銅イオンを含有する水202を注入する。
【0111】
図5では、容器201b内にイオン交換樹脂203が配置され、容器201bにポンプ504で容器201a内の水202を注入する。イオン交換樹脂203は注入された水202から金属イオン(銅イオン)を吸着する。
【0112】
図1(a)の水202には、金属イオン(たとえば、銅イオン)以外に、主剤の樹脂が溶出し、水202が着色する。着色した水202の吸光度を測定する場合、溶出した樹脂の影響を受け、銅イオンを選択して検出することができない。
【0113】
図1(b1)では、イオン交換樹脂203が選択的に金属イオンを吸着する。主剤の樹脂は吸着されない。図2の容器201bに注入さえた水202は銅イオンだけでなく、主剤の樹脂が溶け込み着色している。
【0114】
イオン交換樹脂203は銅イオンを吸着し、主剤の樹脂成分等は吸着しない。結果、イオン交換樹脂203は銅イオンを吸着し、水202から銅イオンを分離することができる。次に、イオン交換樹脂203を水洗し、イオン交換樹脂203の表面に付着した樹脂成分等を洗い流す。
【0115】
水洗したイオン交換樹脂203は、図1(c1)に図示するように、容器201cに充填されたイオン交換樹脂203の再生液(イオン交換樹脂再生水溶液)204に浸水される。
【0116】
再生液(再生水溶液)204は、塩酸または硫酸水溶液を使用する。再生液204を使用することにより、イオン交換樹脂203を再利用することができる。再生液204にイオン交換樹脂203を浸水させることにより、イオン交換樹脂203は金属イオンを放出する。
強酸性イオン交換樹脂203がNa->H形場合は、再生液(再生水溶液)204として、3~8%塩酸水溶液または硫酸水溶液を使用することが好ましい。
【0117】
H―>Na形の場合は、イオン交換樹脂をカラムに詰め、0.5~2.0%の塩化ナトリウム水溶液あるいは水酸化ナトリウム水溶液を2~4BV*(*BV:(Bed Volume):充填したイオン交換樹脂体積量を1BVとする)通液させる。このとき、液の接触時間は最低15分以上とする(イオン形が変換されている間は酸性あるいは中性の溶液が流出する)。
【0118】
H->K形の場合は、0.5M (~3wt%)の水酸化カリウム水溶液を3~4.5BV*通液させる。Na->H形の場合は、5~8%の塩酸水溶液を5~6BV*通液させる。
たとえば、H形の陽イオン交換樹脂をNa形に変換したい場合、1Nの塩化ナトリウム溶液で浸漬・リンスすることによってNa形に変換できる。
【0119】
図1(c1)に図示するように、再生液(イオン交換樹脂再生水溶液)204に浸水したイオン交換樹脂203は、金属イオン(銅イオン)を再生液204中に流出する。金属イオンを再生液204に取り出すことができる。
【0120】
図5では、イオン交換樹脂203が配置された容器201bに、タンク(再生液)507からイオン交換樹脂再生水溶液(再生液)204が注入される。注入は、コントロール回路517が電磁弁503cを制御することにより行う。容器201b内には、ヒータ(加熱冷却器)207bが配置され、再生液204を所定温度となるように維持する。
【0121】
次に、図1(d1)に図示するように、容器201dの再生液204に中和水溶液(中和液)205が加えられる。再生液204が塩酸HClの場合は、中和液205として、水酸化ナトリウムNaOHが例示される。酸と塩基が反応して,互いにその性質を打ち消し合うことにより、中和される。塩酸と水酸化ナトリウム水溶液とを混合すると,次の反応が起こり,塩化ナトリウムと水を生じる。
【0122】
中和させるのは、図1(e1)、図5の試薬の反応時に、pHを中性にすることが好ましいためである。ただし、pHが、試薬による発色に影響しない場合、あるいは影響が小さい場合は中和工程を省略できることは言うまでもない。
【0123】
図1(e1)、図5において、試薬を滴下し、発色させて吸光度を測定するとしたが、発色後の水溶液を濃縮させた後、吸光度を測定しても良い。また、発色させた水溶液を吸着紙等の吸着させた後、吸着紙の分光透過率あるいは分光反射率を測定しても良い。
試薬として銅イオンの場合は、ネオクプロインとバソクプロインのうち、少なくとも一方を採用することが好ましい。
【0124】
図1(e1)、図5において、吸光度(Abs)を測定するとしたが、吸光度に限定されるものではない。金属イオン等により発色した程度あるいは割合を定量化できるものであればいずれの方法であっても良い。たとえば、反射率、透過率であっても良いことは言うまでもない。
【0125】
図5では、容器201bに、タンク(中和液)508から中和液(中和水溶液)205が注入され、再生液(再生水溶液)204が中和される。中和時に、pH測定器519により、pH測定を行う。pHは5以上9以下となるように調整される。好ましくは、pHは6以上8以下となるように調整される。
【0126】
中和液205は、電磁弁503dの開くことにより容器201bに注入される。電磁弁503dの開閉度合いにより、中和液205の注入量、注入速度が可変あるいは一定制御される。
【0127】
以上の実施例では、タンク(中和液)508から中和液205を注入するとしたが、これに限定するものではない。中和液の他、緩衝液、還元剤、対イオン溶液が添加し、注入しても良いことは言うまでもない。また、中和は水溶液に限定されるものではなく、固体、粉末からなる中和剤を使用しても良い。
緩衝液として酢酸アンモニウム、還元剤として硫酸ヒドロキシルアミン((NHOH)SO)、対イオン溶液としてピクリン酸溶液が例示される。
【0128】
pHが調整された再生液204は、容器515に送られる。容器への送水は電磁弁503gの制御により実施する。容器への送水量は、吸光度が測定できる容量でよく、1~4ccのわずかな量で良い。残りの再生液204は、電磁弁503fを開くことにより容器201bから排出される。再生液204の排出後、イオン交換樹脂203は、水で洗浄される。
図1(e1)で、中和された再生液204は評価液(評価溶液)516となり、評価液516に試薬206が滴下される。
【0129】
測定対象成分を銅イオンの場合は、試薬206として、バソクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)が例示される。バソクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)と銅イオンとが反応し、バソクプロインが配位子(リガンド)として銅イオンに配位し、対イオンとともに選択的に錯体を形成する。銅イオンと錯体を形成したバソクプロインのモデルを図11(b)に図示する。
【0130】
銅イオンに配位したバソクプロインは正電荷をもっており、これとイオンペアを形成するために負電荷をもつ対イオンが添加される。なお、この場合の対イオンとしては、ピクリン酸を挙げることができる。
この錯体は、濃度に応じて薄黄色から赤色に発色する。異なる色に変色等するため、約30℃~約60℃にすることが好ましい。
発色は、評価液516のpHによって発色が異なる。良好な発色が得られるようにpHを調整することが好ましい。また、金属イオン等の測定対象成分は、酸化によって発色剤との反応が低下し、他の金属イオンの妨害を受けやすくなる。このため、測定対象成分を含む溶液に、緩衝液、還元剤を添加することができる。これにより、pHを所定範囲に維持することができ、また、還元状態を維持することができる。
【0131】
バソクプロインの他、ネオクプロイン(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、DMPHEN)でも良い。銅イオンと錯体を形成したネオクプロインのモデルを図11(a)に図示する。
【0132】
本発明の評価方法は、銅を含む評価溶液(評価液)516に、ネオクプロインまたはバソクプロインを注入して銅とネオクプロインまたはバソクプロインとの錯体を形成させ、該錯体含有溶液を吸光分析する点に特徴がある。
評価溶液516を採取してバソクプロインを滴下すれば、試料中の銅は酸化の影響を受けずに測定できる。また、バソクプロインと同様に銅と特異的に反応するネオクプロインについても同じ結果が得られる。
本願発明は、イオン交換水に、フラックス101等を塗布等した基板102を浸水させて、銅箔を構成する銅等の金属イオンを取り出す。金属イオンはイオン交換樹脂で吸着させた後、再生溶液にイオン交換樹脂を入れ、イオン交換樹脂を再生させて金属イオンを再生溶液に取り出す。再生溶液は中和して、吸光度測定を行う。
【0133】
銅イオンを例示したが、本願発明はこれに限定するものではない。水銀イオンに対してTAN(1-(2-チアゾリルアゾ)-2-ナフト-ル)、鉄イオンに対してバソフェナントロリン、コバルトイオンに対してPAN(1-(2-Pyridylazo)-2-naphthol)とすることが好ましく、また、抽出剤は、o-ニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE)とすることができる。
【0134】
金属イオンとしては、いかなるイオンであっても良いが、銅イオン、水銀イオン、コバルトイオン、鉄イオンを挙げることができる。発色剤は、これらイオンと反応して発色するものであればいかなるものであっても良い。
【0135】
銅イオンに対してはバソクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、水銀イオンに対してはTAN、鉄イオンに対してはバソフェナントロリン、コバルトイオンに対してはPANといったキレート剤が好ましい。
【0136】
また、抽出剤は、これら金属イオンと発色剤とが反応して生成される反応生成物を良好に抽出することができるものであればいかなるものであってもよく、たとえば、o-NPOE等のエーテルやフタル酸エステル等のエステルとすることができる。
【0137】
容器515の評価液516には、試薬滴下器514からバソフェナントロリン等の試薬が滴下される。試薬により図11に図示するように錯体が形成され、錯体の形成により、試薬により、評価液516が発色する。
【0138】
図5に図示するように、分光器511により波長分光された光が発生し、発生した光は入射光510aとなり、容器515に注入された評価液516に照射される。評価液は入射光510aを吸収または透過し、出射光510bは、受光素子512に入射する。入射光510aと出射光510bの強度の関係から吸光度(Abs)が測定される。
【0139】
分光器511は、コントロール回路(制御装置)517によって制御される。分光器511から所定波長の光を照射し、評価液516の発色試料を透過した光を受光素子512で受光する。受光した光は、受光素子512で電圧信号等に変換され、透過率が計算され、その透過率から吸光度が算出される。
計算手段としては、プロセッサおよびメモリ等の記憶手段を備えるコンピュータを挙げることができ、受け取った電圧信号等から透過率を計算し、透過率から吸光度を算出するプログラムを保持し、実行することができるものとされる。
【0140】
銅錯体の吸光度は、波長485nm付近である。したがって、吸光度は480nm以上490nmで求めることが好ましい。一例として、485nmで比色する。バソクプロイン酸を加え、485nmの吸光度を測定する。
【0141】
図6は、波長と吸光度(Abs)の関係を示すグラフである。一点鎖線は、銅イオンが少ない場合であり、点線は銅イオンが多い場合である。実線は銅イオンが少ない場合と銅イオンが多い場合との中間的な測定例である。
【0142】
図1(a)において、評価基板102から銅イオンが多く溶出すると、図6の点線のグラフとなる。評価基板102から銅イオンの溶出が少ないと、図6の点線の一点鎖線のグラフとなる。
【0143】
図1のいずれのグラフにおいても、485nm近傍の吸光度(Abs)が高くなっている。したがって、485nm近傍の吸光度を測定すること、あるいは求めることにより、銅イオン量を定量化できる。
【0144】
実線、点線、一点鎖線のグラフは、フラックス(半田、ソルダーレジスト等を含む)101の種類により変化する。フラックス101は活性剤などを含有し、活性剤の種類等により、銅配線パターン104の酸化状態が変化するのが一因である。酸化状態はマイグレーションの発生に影響するため、フラックス101の種類に対して、485nmの吸光度を測定することにより、フラックス101の選定、評価が定量化できる。
【0145】
図7は、フラックス(ソルダーレジスト)101を同一として、配線基板102の洗浄方法を変更した実施例である。洗浄の方法により、485nmの吸光度が変化する。したがって、485nmの吸光度を測定することにより、配線基板102の洗浄方法の選定、評価が定量化できる。
吸光度の測定波長は、470mm~495nmの範囲が好ましく、特に、480nm~490nmの範囲が好ましい。
【0146】
図8は、485nmの吸光度の測定において、時間経過に対する吸光度の変化を測定したグラフである。バソクプロイン等の試薬を評価液516に滴下すると、発色が開始される。発色により吸光度(Abs)は高くなっていく。発色は20分程度で飽和状態となる。したがって、試薬と注入後、攪拌して20分以上経過してから吸光度を測定することが好ましい。
【0147】
図8は、図1(a)において、基板102を浸水させてから、水202銅イオンが溶出する時間(h)に対する吸光度(Abs)の変化時間を示すグラフである。吸光度は1.0で規格化している。
【0148】
基板102を水202に浸水させると、銅配線パターン104等から銅イオンが水202に溶出する。溶出する銅イオン量が増加すると、図1(e1)の測定における吸光度が上昇する。
【0149】
銅イオンの溶出は、時間の経過とともに上昇する。図8のグラフに図示するように、12時間の経過後で吸光度は0.75(規格値)を越え、18時間には、ほぼ飽和状態の吸光度(規格値)1.0となる。したがって、図1(a)における基板102の浸水時間は、18時間以上とすることが好ましい。更に好ましくは24時間以上とすることが好ましい。
【0150】
なお、図1(a)、図5において、基板102を水202に浸水、浸けるとしたが、浸けることに限定するものではない。たとえば、基板102に水、湯、水蒸気等を噴霧しても良い。
【0151】
また、図1(a)、図5において、基板102を水202に浸水、浸ける、水等を噴霧するとしたが、水202に限定するものではない。たとえば、アルコール等に基板102を浸アルコール、浸ける、アルコール等の溶剤、希釈剤を噴霧しても良い。
【0152】
485nm等での吸光度の測定において、バソクプロイン等の試薬を評価液516に滴下すると、発色が開始される。発色により吸光度(Abs)は高くなっていく。発色は20分程度で飽和状態となる。したがって、試薬と注入後、攪拌して20分以上、経過してから吸光度を測定することが好ましい。
図9は、配線基板102の銅配線パターン104のスペース(S)(図4を参照)に対する吸光度(Abs)の測定結果のグラフである。
【0153】
吸光度が高いほど水202に溶出する銅イオン量が多いこと示す。吸光度が低いほど水202に溶出する銅イオン量が少ないこと示す。スペース(S)が0.15mmで、グラフは変曲点となる。したがって、銅配線パターン104のスペース(S)は、0.15mm以上とすることが好ましい。したがって、測定した基板102に使用するフラックス101では、銅配線パターン104をスペースS=0.15mm以上とすることが好ましいと言う設計指針を得ることができる。
【0154】
図10図9と同様に、配線基板102の銅配線パターン104のスペース(S)(図4を参照)に対する吸光度(Abs)の測定結果のグラフである。フラックス101の種類をフラックスA、フラックスB、フラックスCの3種類の場合を例示している。吸光度が高いほど水202に溶出する銅イオン量が多いこと示す。吸光度が低いほど水202に溶出する銅イオン量が少ないこと示す。
【0155】
吸光度の測定に合わせて、あるいは、吸光度の測定の替りに、蛍光あるいは燐光の発光特性を測定することが好ましい。ネオクプロイン、バソクプロイン等により金属イオンが錯体を形成する。評価液516に紫外線領域の波長の光を照射することにより、錯体が紫外線等を吸収して発光する。
【0156】
発光強度が大きい光波長により、錯体の金属が特定され、発光強度により金属イオン(銅イオン)の含有量を定量化できる。蛍光(燐光)発光特性と、吸光度の両方を加味することにより、銅配線パターン等から溶出した銅イオン(金属イオン)量を定量化できる。
【0157】
本発明の実施例では、主として銅配線パターン等から溶出した銅イオン量を検出あるいは評価することを例示して説明するが、これに限定するものではない。たとえば、半田から流出する鉛、錫、銀等を本発明の評価方法、評価装置で検出、評価できる。
【0158】
フラックスAの場合は、スペース(S)が0.2mm近傍で、グラフは変曲点となる。したがって、フラックスAは、銅配線パターン104のスペース(S)が0.2mm以上とすることが好ましい。したがって、測定した基板102に使用するフラックスAでは、銅配線パターン104をスペースS=0.2mm以上とすることが好ましいと言う設計指針、評価データを得ることができる。
【0159】
フラックスBの場合は、スペース(S)が0.1mm近傍で、グラフは変曲点となる。したがって、フラックスBは、銅配線パターン104のスペース(S)が0.1mm以上とすることが好ましい。したがって、測定した基板102に使用するフラックスBでは、銅配線パターン104をスペースS=0.1mm以上とすることが好ましいと言う設計指針、評価データを得ることができる。
【0160】
フラックスCの場合は、スペース(S)が0.15mm近傍で、グラフは変曲点となる。したがって、フラックスCは、銅配線パターン104のスペース(S)が0.15mm以上とすることが好ましい。したがって、測定した基板102に使用するフラックスCでは、銅配線パターン104をスペースS=0.15mm以上とすることが好ましいと言う設計指針、評価データ、設計ルールを得ることができる。
以上のことから、図10に示す実施例では、配線パターン104のスペースSを狭ピッチとする場合は、フラックスBを採用することが好ましい。
【0161】
図10のグラフは、フラックス101(ソルダーレジスト101)の種類、粘度、乾燥状態等で変化する。また、基板102の洗浄状態によっても変化する。したがって、本発明の配線基板の評価方法を実施することにより、基板102の設計指針、採用するフラックス101等の選択基準を決定することができる。また、定量的な評価データを得ることができる。
【0162】
以上の実施例では、配線基板等がから溶出する銅イオンの量を吸光度により定量化することを例示して説明したが、本願発明はこれに限定するものではない。基板はアルミ基板等があり、配線は、金めっき、錫めっき、亜鉛めっきされたものもある。これらから溶出する金属イオンも本発明の評価方法あるいは評価装置で定量化できる。また、含有する水銀の溶出量も評価できる。
【0163】
水銀イオンに対してTAN(1-(2-チアゾリルアゾ)-2-ナフト-ル)、鉄イオンに対してバソフェナントロリン、コバルトイオンに対してPAN(1-(2-Pyridylazo)-2-naphthol)とすることが好ましく、また、抽出剤は、o-ニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE)とすることができる。
【0164】
フラックス101は、活性剤を含有する。フラックス101は数種の活性剤を含む場合がある。フラックス101の活性剤として、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、エチルアミン塩酸塩等が含有、添加等がされている。これらの活性剤によりイオンが発生、生成する。活性剤の炭素鎖が短くなるほど、イオン化濃度が高く、銅の溶出量が多く、活性力が高い傾向がある。カルボン酸は炭素鎖が短いほど、カルボン酸と銅との接触回数が増え、反応性が大きくなるため、炭素鎖が短いほど、反応点であるカルボン酸の密度が高い。
【0165】
マイグレーション、デンドライトが生成され易いのはCuの溶出力が高い活性剤であることが多い。溶出力の高い活性剤により、正極で銅が+イオンとなって溶出し、負極に引き寄せられ、負極で電子を受け取り、還元されて析出する。
したがって、フラックス101が有するイオン化濃度を評価、定量化することは、配線基板の設計、あるいは配線基板の評価方法として有用である。
【0166】
イオン濃度が高いと伝導度が高くなる。イオンが減少すると水溶液の抵抗値が高くなる。図2図3図4で説明した評価基板にフラックスを塗布し通電する。通電後、評価基板を水溶液に浸水させ、溶液の抵抗値を測定すると図12となる。
【0167】
図12は、横軸は通電時間であり、縦軸は測定した導電率から抵抗値に換算した抵抗値である。抵抗値は1010Ωで規格化している。時間(h)=0は、通電していない時であり、フラックスのイオン性残渣を示す。通電により、フラックス由来のイオン性残渣が消費され、フラックスなし基板の抵抗値に近づく傾向がある。
【0168】
図13は、イオン残渣の変化の説明図である。フラックス101を塗布等した配線基板の銅配線パターン104a、銅配線パターン104b間に、フラックスのイオン523が多数存在する(図13(a))。銅配線パターン104a、銅配線パターン104bに通電すると、通電によってイオンが消費される(図13(b))。イオンの消費により、抵抗値が上昇する。
イオンが全て消費されると、抵抗値の上昇が停止する(図13(c))。
【0169】
図14は、L/S=0.16mm(実線)、L/S=0.32mm(点線)を、通電の経過時間20時間(h)および経過時間50時間(h)の伝導度(μS/cm)を測定した結果である。イオン交換水(一点鎖線)の伝導度(μS/cm)は、1.54μS/cmである。
【0170】
L/S=0.16mm(実線)、L/S=0.32mm(点線)とも通電により伝導度が減少する。経過時間50(h)では、伝導度がイオン交換水と同水準である。
【0171】
フラックス由来のイオン性残渣が多いと、マイグレーション、デンドライトが生成され易い。したがって、配線基板に採用するフラックスの選定方法として、イオン残渣を定量化することが好ましい。イオン残渣は導電率の測定により、定量化できる。また、フラックスは、銅イオンの生成にも寄与する。
【0172】
したがって、銅イオン量を吸光度測定することにより定量化することが好ましい。本発明は、イオン残渣(イオン濃度)の定量化、銅イオンの定量化を行うことにより、配線基板の設計に大きな効果を発揮する。
【0173】
図1(b2)に図示するように、容器201aの水溶液202は、容器201eに水溶液202aとして注入される。水溶液202aは、イオン交換水524で、100倍以上1000倍以下に希釈される。
次に、図1(c2)に図示するように、水溶液は、ヒータ(加熱冷却器)207cで30秒以上120秒以下の時間、沸騰させる。
【0174】
次に、図1(d2)に図示するように、容器201fに満たした水525に容器201eと浸けて、20(±2)℃になるまで静置する。水525は、ヒータ(加熱冷却器)207cで20(±2)℃に保持される。
次に、図1(e2)に図示するように、容器201eの水溶液202aの電気導電率(導電度)(μS/cm)を測定する。
【0175】
電気伝導率(導電率、電気伝導度)は、どの程度電気を通しやすいかを表す指標となる値である。一般的に電気伝導率を表す場合、Sではなく単位長さ当たりの量である比伝導率Sm-1(S/m)を用いて表す。単位長さ当たりで電気伝導率を表す方が、物質の性質を示すのに都合がよいためである。本実施例では導電率計の目盛としてはμS/cmを用いている。
導電率計は、2つの電極間に交流電圧をかけて電気伝導率を測定する装置である。水の電気伝導率はイオン性の不純物が多いほど上昇する。
【0176】
図5に図示するように、容器201aの水溶液202は、電磁弁503eを開き、配管518dを介して、容器201eに注入される。容器201aに注入された水溶液は、水溶液202aとしている。
【0177】
容器201eには、タンク(水)522から、イオン交換水524が注入される。水溶液202aは、イオン交換水524で、100倍以上1000倍以下に希釈される。
【0178】
水溶液202aは、ヒータ(加熱冷却器)207cで30秒以上120秒以下の時間、沸騰させる。水溶液202aは、攪拌ファン502bで攪拌される。ヒータ(加熱冷却器)207cは、ヒータ(加熱冷却器)コントローラ501で制御され、水溶液202aは沸騰あるいは所定の温度に保持される。水溶液202aは沸騰後、ヒータ(加熱冷却器)207cで20(±2)℃まで冷却される。
【0179】
溶液202aは、配管518eを介して容器201gに送られる。容器201gへの溶液202aの注入は、電磁弁503jの制御により実施される。溶液202aの電気導電率(導電度)は、導電率計521で計測される。
【0180】
導電率計521、吸光度測定器509はコントロール回路517で制御される。分光器511から所定波長の光を照射し、評価液516の発色試料を透過した光を受光素子512で受光する。受光した光は、受光素子512で電圧信号等に変換され、透過率が計算され、その透過率から吸光度が算出される。
導電率計521の測定データは、イオン濃度を示し、フラックス101等の活性度を定量化することができる。
吸光度および電気導電率(導電度)から、銅配線パターン104の銅(Cu)との反応性が定量化することができる。
【0181】
本発明はプリント基板、電子回路基板、積層基板、積層フィルム、フィルム配線基板等の耐マイグレーション性予測法、マイグレーション評価方法、電子部品の実装評価方法、半田付け評価方法、半田付け予測方法、配線基板の良否判定方法に適用することができる。
【0182】
また、配線基板に限定されるものではなく、金属めっき部材、金属の塗装状態、金属部品、電気部材、電気素子等に対しても適用することができる。その他、金属物、金属薄膜を使用する機器、たとえば、タッチパネル装置(タッチパネル)、EL表示装置(EL表示パネル)、液晶表示装置(液晶表示パネル)等の電子機器にも適用することができる。
【0183】
本明細書、本図面で開示した技術的思想は、これらの電子機器装置の適用に限定されるものではない。たとえば、モバイル機器、テレビ機器、家電製品、通信機器、パーソナルコンピュータ機器等、外部に金属薄膜等の構成物が形成または配置された機器に適用できることは言うまでもない。
【0184】
また、タッチパネル装置(タッチパネル)、EL表示装置(EL表示パネル)、液晶表示装置(液晶表示パネル)が取り付けられた家電機器、通信機器等の機器にも適用できることは言うまでもない。
【0185】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えることができる。また、それぞれの実施例の一部または全部を組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本開示は、配線基板の設計指針、配線基板の製造方法、タッチパネル装置、ELあるいは液晶表示装置等の電子機器等の評価にも有用である。
【符号の説明】
【0187】
101 フラックス
102 基板
104 銅配線パターン
105 接続パターン
201 容器
202 水(水溶液)
203 イオン交換樹脂
204 イオン交換樹脂再生水溶液
205 中和水溶液
206 試薬
207 ヒータ(加熱冷却器)
501 ヒータ(加熱冷却器)コントローラ
502 攪拌ファン
503 電磁弁
504 ポンプ
505 タンク(水)
507 タンク(再生液)
508 タンク(中和液)
509 吸光度測定器
510a 入射光
510b 透過光
511 分光器
512 受光素子
514 試薬滴下器
515 容器
516 評価液
517 コントロール回路
518 配管
519 pH測定器
521 導電率計
522 タンク(水)
523 イオン
524 イオン交換水
525 水

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14