(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002838
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】溶解炉の燃焼方法と装置
(51)【国際特許分類】
F27B 3/28 20060101AFI20231228BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20231228BHJP
F27B 3/20 20060101ALI20231228BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F27B3/28
F27D7/02 A
F27B3/20
B22D45/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102282
(22)【出願日】2022-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】507015929
【氏名又は名称】株式会社サンコー
(71)【出願人】
【識別番号】520357235
【氏名又は名称】西川 直久
(72)【発明者】
【氏名】西川 直久
【テーマコード(参考)】
4K045
4K063
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA02
4K045BA03
4K045DA02
4K045RA12
4K045RB12
4K045RB22
4K063AA04
4K063AA13
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA01
4K063DA08
4K063DA31
(57)【要約】
【課題】
金属を溶融処理する溶解炉1において、熱源1を断続的にオン・オフさせるようにすることにより、得られる製品の品質を確保しながら、現場の状況に応じた加熱状態を維持し、熱効率を向上させるものである。
【解決手段】
金属を溶融処理する溶解炉1において、熱源1を断続的にオン・オフさせるようにするものであり、熱源1を制御装置Tにより断続的にオン・オフ可能としたことにより、従来のような各所の温度検出に基づく高価な制御系を用いることなく、初期の目的を達成できた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を溶融処理する溶解炉1において、熱源1を断続的にオン・オフさせるようにすることを特徴とする溶解炉の燃焼方法。
【請求項2】
熱源1の同じパターンの断続的なオン・オフを複数セット設定することを特徴とする請求項1に記載の溶解炉の燃焼方法。
【請求項3】
熱源1の異なるパターンの断続的なオン・オフを複数セット設定することを特徴とする請求項1に記載の溶解炉の燃焼方法。
【請求項4】
金属を溶融処理する溶解炉1において、熱源1を制御装置Tにより断続的にオン・オフ可能としたことを特徴とする溶解炉の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムや鉄鋼等を溶融する溶解炉の燃焼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にアルミニウムや鉄鋼、その他の金属素材は、その材料を溶解炉で高熱処理して溶解し、製品化するものであるが、供給される材料が供給される状況に応じて加熱が最適に行われる必要があり、そのためには一般的に、刻々と変化する適宜ポイントでの温度データ、材料の供給状況データ等を逐一チェックし、その変化に応動してコンピュータ制御により行うようにしている。
【0003】
そして金属溶解現場では、一般的に汎用機をメーカーから購入して設置し、現場に応じた状況を踏まえて種々の設定を施して稼働させるのであるが、個々の現場に整合した条件設定を調えることは困難である。
【0004】
例えば、特許文献1(特開昭61-264127号公報)や特許文献2(特公平3-43553号公報)に記載の発明では、複数のバーナのうち、一部のバーナを必要熱量に応じて定まる時間間隔でオン・オフさせることが開示されている。
【0005】
即ち、供給される材料が断続的に供給される溶解炉では、その材料の供給状況に対応し、現場で状況変化を感知し、例えば材料が少なくなると、複数のバーナの内のいずれかオフにして火力を落とすように火加減を調整するもののであって、オフになっている以外のバーナは燃焼が継続されていた。
【0006】
しかしながら、材料の供給から溶解されて流下する間、所定の箇所の温度変化は刻々と変化する上に、材料の供給状況の測定時点から、一般的に高温の溶解炉は熱源を切っても直ぐには熱が下がらず、かなりのタイムラグあって、炉内が空になっても直ちには冷却されず、かなりの時間高熱が維持されたり、逆に熱源が落ちて長時間後では温度が下がり過ぎてしまい、熱源がオンになっても、必要な高熱に達するまで、かなりのタイムロスが生じる欠点があり、それを防ぐためには炉の各所の温度を的確に精度良く測定し、それに基づいて火力を制御することが必要で、そのためには高価な制御システムが要求されるものであった。
【0007】
また、それらの燃焼方式では、いずれも複数のバーナを設置し、それらの一部を交互に点火したり、消火したりする場合でも、全バーナが一斉に消火することはなく、常にいずれかが燃焼状態を維持するようにしていたため、部分消火による省力化の効果は殆ど期待できない上、その制御が上記のように相当難しく、装置が複雑となり、故障もしやすく、扱い難い欠点があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭61-264127号公報
【特許文献2】特公平3-43553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属を溶融処理する溶解炉において、材料の供給状況が種々に変化しても、トータル的に満足できる燃焼状態を維持し、対応できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金属を溶融処理する溶解炉において、熱源が断続的にオン・オフを繰り返して行われるようにするものであり、その制御には、コンピュータによる制御装置、或いはタイマのような制御装置Tを介在させるものである。
【0011】
通常、溶解炉の溶解室の燃焼は、煙道或いはタワー部付近上部に熱電対を設け、設定温度になるまでは調整された空燃比でフルパワー燃焼を行うが、処理扉開時の場合は最小燃焼になる機構を取り入れている場合もある。また保持室内の溶湯レベル以上になった場合も最小燃焼状態になる。
【0012】
溶解室の燃焼はそもそも材料投入口(溶解タワー)より投入された例えばアルミ材料を溶解するのが本来の目的であり、通常、溶解バーナの出力設定は最終仕様に基づいて設定されているが、引き渡しが済み、お客様にて操業を開始すると、様々な諸条件が想定仕様と異なることが多く、当初の仕様に基づいた操業はできない、或いはしないことが多発しており、特に材料投入に限っても、時間当たりの投入量は様々で、今回注視したのは、時間当たりの投入量が大幅に減少(例えば仕様内容の6割程度しか溶解しない)した場合でも有効な対処方法である。
【0013】
本発明の方式は、溶解バーナの燃焼を連続で燃焼させたり、或いは各地点の温度変化を感知し、それに対応して燃焼を制御するのではなく、微分的なOFF燃焼を加え、燃焼リズムをON-OFFといった燃焼に切り替えることで、燃焼状態を常に総体的にバランスを保ち、減少した材料投入量に適合させる仕組みである。この方法を採用することで様々なメリットが生まるものである。
【0014】
また、バーナ燃焼のオン・オフの切り替えは、従来のように溶解炉の燃焼状況変化を感知し、それに応答させるものではなく、予め比較的短時間のオン・オフを設定することにより対応するもので、それを繰り返すことにより、全体として一定の時間のオフを断続的に挟み込むことにより、従来のような各所の温度感知に応動させることによる無駄な燃焼をなくし、トータルとしては所定の溶解を経て湯を得られるものである。
【0015】
オン・オフの時間配分は、比較的短い時間、例えば数分でワンセット、例えば3分オン-2分オフ、
2分オン-3分オフ、2分オン-2分オフとし、トータルとしての時間設定は、現場の状況に応じて適宜設定することができる。
【0016】
またオン・オフの設定時間は、何れも5分程度以内で設定するのが好ましい。その理由は、5分以上オンとすると、アルミニウム系では、既に燃焼状態がマックスに達しているため、過燃焼になり、燃焼効率が低下するためであり、逆に5分以上オフにすると、一旦適度に加熱されていた溶解炉内の材料の温度が下がり過ぎて、そのため、適正温度に復帰するのに時間が掛かり過ぎると共に、得られる製品品質が不安定になる可能性が出るためである。
【0017】
尚、アルミニウム系では比較的低温燃焼のため、上記のような時間設定としたが、それ以外の高温燃焼溶解の場合は、実際の燃焼に応じて設定時間を適宜長短調整すれば良い。
【0018】
そして本発明の燃焼に拠れば、材料の過多、種類に拘わらず、バーナの燃焼は常にオンの状態とオフの状態を繰り返すもので、従来のような無駄なマックス燃焼を長時間持続することなく、また逆に長時間燃焼停止により溶解炉が低温になり過ぎることもなく、常に適度の幅の温度範囲に炉温を維持させることができることになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、予め材料の供給状況を把握し、それに応じてきめ細かく熱源のオン・オフを材料の供給の過多変化が生じても、予め熱源が適宜オン・オフするようにすることにより、従来のような各所の熱検出を要することなく、許容される温度幅で燃焼状態が保持されるものであって、材料供給が途切れ気味の時にでもその前後でマックス燃焼が行われることを抑止して空焚きを防止し、また逆に材料が多く供給されている場合、一旦燃焼が落ちていても、所定の設定された時間が経過すればサイクル的にマックス燃焼になるので、溶解室が過冷却されず、その溶解には支障が生じないものである。
【0020】
即ち、本発明は、完全に燃焼を止める時間帯と燃焼する時間帯を交互に組み込むことにより、無駄な過燃焼をなくしてトータルとして所定の熱効率は維持しながら、結果として省エネが図れ、溶解室の高温化を防ぐことで酸化物発生を抑止すると共に、溶解室の高温化を防ぐことで材料偏析の抑止できて、得られる製品の品質を高度に保つことができ、また、タワーの材料水位レベルが上がることで材料投入時の衝撃緩和、タワーの材料水位が安定することで保持排熱の熱交換率が上がる等のメリットがある。
【0021】
また、上記のように過燃焼が抑えられるので、炉体の過熱による損傷を抑え、また、バーナのオフをオンと交互に挟み、所定の間隔で間欠的にバーナを完全に消火させる状態を挟むことにより、その間の無駄な燃焼がなくなるので、燃焼コストは明確に引き下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例えば
図1のようなタワー式アルミ溶解炉において材料3の溶解はタワーのホッパー1から材料3を溶解室2に投入し、処理室5に移動し、バーナ4で加熱して溶解される。バーナ4は単一であっても、2以上であっても構わない。
【0023】
溶解室2に投入された材料3はバーナ4の加熱により、時間経過と共に溶落し、溶湯は処理室5を経て取出室6に流れ、最終的に汲出口7より汲み出されるのであるが、溶解室2は次第に空になっていく。ここで問題なのは溶解室2の空焚きである。
【0024】
一定のサイクルで材料3が投入されている場合は空焚きにならないが、材料3の投入タイミングが遅れると、溶解室2は空焚きになる。空焚きになると、当然、燃料が無駄に消費される上に、また炉体も過熱によりダメージを被ることになる。
【0025】
この空焚きの実用的な防止策として、本発明では、溶解室2のバーナ4を連続で燃焼させるのではなく、規則的なOFFを加えて、ONとOFFの間欠状態で燃焼させることで上記問題点を解消することができる。このバーナ4のオン・オフの切り替えはコンピュータによる制御回路や、タイマー等の制御装置Tを介して任意に設定できる。オン・オフの比率は任意に設定できるが、好ましくはオフをオンの1/2以下、更に好ましくは、1/5以下である。
【0026】
オン・オフの設定は、通常、同じ間隔のオン・オフを数回繰り返すことにより決定することができるが、異なる間隔のオン・オフパターンを複数セット組み合わせることも勿論構わない。
【0027】
またオン・オフの設定時間は、上記したように、いずれも5分程度以内とすることとするのであるが、この設定時間の決定は、まず溶解炉内の内容物の量により予め目安を付けて試運転し、それで製品の状態が良ければその条件で本操業し、もう少し改良が必要ならタイマーを再度設定し直して改善することができる。一旦決定すれば、小刻みに変更することなく、長期間設定を維持して稼働することができる。
【0028】
このような間欠運転を行うことにより、省エネが図れ、溶解室の高温化を防ぐことで酸化物発生を抑止すると共に、材料偏析の抑止を行え、またタワーの材料レベルが安定することで、材料投入時の衝撃が緩和されて、タワーの耐久性(炉体の寿命)を向上させると共に、排熱の熱交換の向上が図れる等の多くの効果が期待できるものである。
【0029】
また上記のように不要な燃焼を抑制することにより、CO2削減、NOX削減にもなり、環境に優しい作業環境にも寄与できる。
【0030】
次に具体的な実施例、参考例を挙げる。
【実施例0031】
測定対象炉1
TOYO250tDCマシン用手元溶解炉(鋳造温度 670℃)
ショットサイクル 27秒
DAIKI製 SER-150(溶解バーナ間欠運転用に改造したもの)
タイマー設定値は、ON用で4分、OFF用で1分とした。
鋳造量は190.5kg(254ショット×0.75kg)、
使用ガス量は19立方メートルであった。
この例では鋳造1kg当たりのガス使用量は0.100立方メートルであった。
尚、この間欠運転時の汲出し側の油面変動は殆ど見られなかった。