(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028380
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤を用いる遺伝子改変されたキメラ抗原受容体T細胞の機能の制御及び調節
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20240226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240226BHJP
A61K 35/17 20150101ALN20240226BHJP
A61K 31/506 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/04
A61P35/02
A61K35/17
A61K31/506
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000190
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2020531041の分割
【原出願日】2018-12-07
(31)【優先権主張番号】17205922.2
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518098047
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアン-ウニヴェルシテート・ヴュルツブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フデチェク
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・メシュテルマン
(57)【要約】
【課題】がん免疫療法において遺伝子改変されたキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞の機能を制御及び調節するためのダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤の使用を提供する。
【解決手段】本発明は、遺伝子改変された免疫細胞に対するダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤の免疫調節の特徴に関する。本発明は、免疫療法のために使用され得る治療の投与及びスケジュール、投与経路、感受性の受容体バリアント並びに治療可能な細胞種に依存して免疫細胞阻害剤の他に、免疫細胞のエンハンサーとしての、ダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤の適応を包含する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんの治療方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
前記方法において、前記組成物が前記患者に投与され、且つ
前記方法が、免疫療法を含むがんを治療する方法である、
組成物。
【請求項2】
前記免疫療法が養子免疫療法である、請求項1に規定の使用のための請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記免疫療法が、免疫細胞を用いる免疫療法である、請求項1又は2に規定の使用のための請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫療法が、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を用いる免疫療法である、請求項3に規定の使用のための請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記キメラ抗原受容体が抗原に結合することができる、請求項4に規定の使用のための請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記キメラ抗原受容体が細胞表面抗原に結合することができる、請求項5に規定の使用のための請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原ががん抗原である、請求項5又は6に規定の使用のための請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が、CD4、CD5、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD52、CD64、CD70、CD72、CD123、CD135、CD138、CD220、CD269、CD319、ROR1、ROR2、SLAMF7、BCMA、αvβ3インテグリン、α4β1インテグリン、LILRB4、EpCAM-1、MUC-1、MUC-16、L1-CAM、c-kit、NKG2D、NKG2Dリガンド、PD-L1、PD-L2、Lewis-Y、CAIX、CEA、c-MET、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、Her2、FAP、FR-a、EphA2、GD2、GD3、GPC3、IL-13Ra、メソテリン、PSMA、PSCA、VEGFR、及びFLT3からなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に規定の使用のための請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗原が、CD19、CD20、CD22、CD123、SLAMF7、ROR1、BCMA、及びFLT3からなる群から選択される、請求項8に規定の使用のための請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗原がCD19である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原がROR1である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原がBCMAである、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原がFLT3である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原がCD20である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原がCD22である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗原がCD123である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗原がSLAMF7である、請求項9に規定の使用のための請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
前記がんが、前記抗原を発現するがん細胞を含む、請求項5~17のいずれか一項に規定の使用のための請求項5~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記キメラ抗原受容体が、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、DAP10、NKG2D、MyD88及びOX40共刺激ドメインからなる群から選択される共刺激ドメインを含む、請求項4~18のいずれか一項に規定の使用のための請求項4~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記キメラ抗原受容体がCD28共刺激ドメインを含む、請求項19に規定の使用のための請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記キメラ抗原受容体が4-1BB共刺激ドメインを含む、請求項19に規定の使用のための請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記キメラ抗原受容体がOX40共刺激ドメインを含む、請求項19に規定の使用のための請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記免疫細胞がリンパ球である、請求項3~22のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記免疫細胞がBリンパ球又はTリンパ球である、請求項3~23のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記免疫細胞がTリンパ球である、請求項24に規定の使用のための請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記免疫細胞がCD4+及び/又はCD8+ Tリンパ球である、請求項25に規定の使用のための請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記免疫細胞がCD4+ Tリンパ球である、請求項26に規定の使用のための請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記免疫細胞がCD8+ Tリンパ球である、請求項26に規定の使用のための請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリー幹T細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導性キラーT細胞、ガンマ/デルタT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び顆粒球からなる群から選択される、請求項3~28のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がSrcキナーゼ阻害剤である、請求項1~29のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がNFATの上流のキナーゼの阻害剤である、請求項1~30のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がLckキナーゼ阻害剤である、請求項1~31のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、及びPP1阻害剤からなる群から選択される、請求項1~32のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がダサチニブである、請求項33に規定の使用のための請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がボスチニブである、請求項33に規定の使用のための請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がPP1阻害剤である、請求項33に規定の使用のための請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がニロチニブである、請求項33に規定の使用のための請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が前記免疫細胞の阻害を引き起こす、請求項3~37のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記阻害が前記免疫細胞の細胞媒介性エフェクター機能の阻害である、請求項38に規定の使用のための請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記免疫細胞の前記阻害が、それらの
I)細胞溶解活性、及び/又は
II)サイトカイン分泌、及び/又は
III)増殖
の阻害である、請求項38又は39に規定の使用のための請求項38又は39に記載の組成物。
【請求項41】
前記阻害が前記免疫細胞におけるPD1発現の阻害を含む、請求項38~40のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記阻害が、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、及びIL-10からなる群から選択される1つ又は複数のサイトカインの前記免疫細胞のサイトカイン分泌の阻害を含む、請求項38~41のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記阻害が前記免疫細胞のIFN-γ及び/又はIL-2分泌の阻害を含む、請求項38~42のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記阻害が前記免疫細胞のIFN-γ分泌の阻害を含む、請求項43に規定の使用のための請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記阻害が前記免疫細胞のIL-2分泌の阻害を含む、請求項43に規定の使用のための請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
前記阻害が部分的な阻害又は完全な阻害である、請求項38~45のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記阻害が前記免疫細胞の生存率を減少させない、請求項38~46のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記阻害が、前記組成物が前記患者に投与される所与の期間にわたり前記免疫細胞の生存率を減少させず、前記期間が、1時間、好ましくは2時間、好ましくは3時間、好ましくは4時間、好ましくは5時間、好ましくは6時間、好ましくは8時間、好ましくは12時間、好ましくは18時間、好ましくは1日、好ましくは2日、より好ましくは3日、よりいっそう好ましくは7日、よりいっそう好ましくは2週、よりいっそう好ましくは3週、よりいっそう好ましくは4週、よりいっそう好ましくは2か月、よりいっそう好ましくは3か月、よりいっそう好ましくは6か月である、請求項47に規定の使用のための請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記阻害が可逆的である、請求項38~48のいずれか一項に規定の使用のための請求項38~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記阻害が、前記組成物が所与の長さの時間にわたり前記患者に投与されなかった後に反転される、請求項49に規定の使用のための請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記所与の長さの時間が、3日、好ましくは2日、より好ましくは24時間、よりいっそう好ましくは18時間、よりいっそう好ましくは12時間、よりいっそう好ましくは8時間、よりいっそう好ましくは6時間、よりいっそう好ましくは4時間、よりいっそう好ましくは3時間、よりいっそう好ましくは2時間、よりいっそう好ましくは90分、よりいっそう好ましくは60分、よりいっそう好ましくは30分である、請求項50に規定の使用のための請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が連続的又は間欠的に投与される、請求項1~51のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が連続的に投与される、請求項52に規定の使用のための請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物が間欠的に投与される、請求項52に規定の使用のための請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物の初期投与の後に前記チロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルが前記治療の継続期間の間に閾値血清レベルにおいて又は前記閾値血清レベルより高くに維持されるように前記組成物が投与される、請求項1~54のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記方法において、前記組成物の初期投与の後に前記チロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルが前記治療の継続期間の間に少なくとも1回閾値血清レベルより高くに及び少なくとも1回同じ閾値血清レベルより低くに維持されるように前記組成物が投与される、請求項1~55のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記閾値血清レベルが、0.1nM~1μM、好ましくは1nM~500nM、より好ましくは5nM~100nM、よりいっそう好ましくは10nM~75nM、よりいっそう好ましくは25nM~50nMの範囲内である、請求項55又は56に規定の使用のための請求項55又は56に記載の組成物。
【請求項58】
前記閾値血清レベルが50nMである、請求項57に規定の使用のための請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記閾値血清レベルが最小血清レベルであり、前記最小血清レベルにおいて、前記免疫細胞の前記阻害が、それらの
I)細胞溶解活性、及び/又は
II)サイトカイン分泌、及び/又は
III)増殖
の完全な阻害である、請求項55~58のいずれか一項に規定の使用のための請求項55~58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
がんの前記治療が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して向上した臨床アウトカムを有する、請求項1~59のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記使用が、前記がんに対する前記免疫療法と関連付けられる毒性を軽減又は予防するための使用である、請求項1~60のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記患者において腫瘍負荷を減少させるための使用である、請求項1~61のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の治療効果を減少させない、請求項1~62のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の治療効果を増加させるための使用である、請求項1~63のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の疾病及び死亡を減少させるための使用である、請求項1~64のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の抗腫瘍有効性を増加させるための使用である、請求項1~65のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の生着及び/又は持続と比較して前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の生着及び/又は持続を増加させるための使用である、請求項3~66のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法を含む方法における前記免疫細胞の生着と比較して前記免疫療法における前記免疫細胞の生着を増加させるための使用である、請求項3~67のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~67のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法を含む方法における前記免疫細胞の疲弊と比較して前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の疲弊を減少させるための使用である、請求項3~68のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記組成物が、
I)免疫療法によるがんの前記治療の前、及び/又は
II)免疫療法によるがんの前記治療と並行して、及び/又は
III)免疫療法によるがんの前記治療の後
に投与される、請求項1~69のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前に投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療と並行して投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前及び免疫療法によるがんの前記治療と並行して投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項75】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項76】
前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療と並行して及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項77】
前記組成物が、免疫療法によるがんの前記治療の前、免疫療法によるがんの前記治療と並行して、及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、請求項70に規定の使用のための請求項70に記載の組成物。
【請求項78】
前記使用が、前記免疫療法における前記免疫細胞の活性化を予防するための使用である、請求項3~77のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
前記免疫細胞が休止状態の免疫細胞である、請求項78に規定の使用のための請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
前記免疫細胞がヒト起源である、請求項3~79のいずれか一項に規定の使用のための請求項3~79のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項81】
ヒト起源の前記免疫細胞が初代ヒト細胞である、請求項80に規定の使用のための請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
前記初代ヒト細胞が初代ヒトTリンパ球である、請求項81に規定の使用のための請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
ヒト起源の前記免疫細胞が前記患者に関して同種細胞である、請求項80~82のいずれか一項に規定の使用のための請求項80~82のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
ヒト起源の前記免疫細胞が前記患者に関して同系細胞である、請求項80~82のいずれか一項に規定の使用のための請求項80~82のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項85】
前記免疫細胞が、前記キメラ抗原受容体を一過的又は安定に発現する免疫細胞である、請求項4~84のいずれか一項に規定の使用のための請求項4~84のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項86】
前記キメラ抗原受容体が、第一、第二、又は第三世代のキメラ抗原受容体である、請求項4~85のいずれか一項に規定の使用のための請求項4~85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
前記キメラ抗原受容体が単鎖可変断片を含み、好ましくは、前記単鎖可変断片が前記抗原に結合することができる、請求項5~86のいずれか一項に規定の使用のための請求項5~86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項88】
前記キメラ抗原受容体がリガンド又はその断片を含み、前記リガンド又はその断片が前記抗原に結合することができる、請求項5~86のいずれか一項に規定の使用のための請求項5~86のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
前記キメラ抗原受容体が、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、T細胞受容体アルファ鎖、T細胞受容体ベータ鎖、T細胞受容体デルタ鎖、及びT細胞受容体ガンマ鎖からなる群から選択される1つ又は複数のドメインを含むシグナル伝達ドメインを含む、請求項5~88のいずれか一項に規定の使用のための請求項5~88のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項90】
前記がんが、前記免疫療法において疾病及び死亡のより高いリスクと関連付けられるがんである、請求項1~89のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
前記がんが、1つ又は複数のチェックポイント分子を発現する細胞を含み、前記1つ又は複数のチェックポイント分子が、好ましくは、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAからなる群から選択される、請求項1~90のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
前記がんが、PD-L1を発現する細胞を含む、請求項91に規定の使用のための請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
前記がんが、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、及びリンパ腫からなる群から選択されるがんである、請求項1~92のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~92のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項94】
前記がんが骨髄腫である、請求項93に規定の使用のための請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
前記がんが白血病である、請求項93に規定の使用のための請求項93に記載の組成物。
【請求項96】
前記がんがリンパ腫である、請求項93に規定の使用のための請求項93に記載の組成物。
【請求項97】
前記がんが癌腫であり、好ましくは、前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、及び膵臓がんからなる群から選択される癌腫である、請求項93に規定の使用のための請求項93に記載の組成物。
【請求項98】
前記白血病が、B細胞白血病、T細胞白血病、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、又は慢性骨髄性白血病である、請求項95に規定の使用のための請求項95に記載の組成物。
【請求項99】
前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、又はB細胞リンパ腫である、請求項96に規定の使用のための請求項96に記載の組成物。
【請求項100】
前記がんが、
I)CD19陽性、及び/又は
II)BCMA陽性、及び/又は
III)ROR1陽性、及び/又は
IV)FLT3陽性、及び/又は
V)CD20陽性、及び/又は
VI)CD22陽性、及び/又は
VII)CD123陽性、及び/又は
VIII)SLAMF7陽性
として特徴付けられるがんである、請求項1~99のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
前記がんがCD19陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
前記がんがBCMA陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項103】
前記がんがROR1陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項104】
前記がんがFLT3陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項105】
前記がんがCD20陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項106】
前記がんがCD22陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項107】
前記がんがCD123陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項108】
前記がんがSLAMF7陽性である、請求項100に規定の使用のための請求項100に記載の組成物。
【請求項109】
前記患者が、単独での前記免疫療法による前記がんの前記治療に適格でない患者である、請求項1~108のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~108のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項110】
前記患者が、キメラ抗原受容体を発現するT細胞を用いる従来の養子免疫療法に適格でない患者である、請求項1~109のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~109のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項111】
前記患者が、サイトカイン放出症候群を発生する増加したリスクを有する、請求項1~110のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~110のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項112】
前記患者が、前記免疫療法と関連付けられる神経毒性の副作用を発生する増加したリスクを有する、請求項1~111のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~111のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項113】
前記患者が、前記免疫療法と関連付けられるオンターゲット/オフ腫瘍効果を発生する増加したリスクを有する、請求項1~112のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~112のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項114】
前記患者が、IFN-γ、IL-6、及びMCP1の群から選択される1つ又は複数のサイトカインの上昇した血清レベルを有する、請求項1~113のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~113のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項115】
前記患者が、前記免疫療法に対する免疫応答を発生した患者であり、前記免疫応答が前記がんに対する前記免疫療法の副作用である、請求項1~114のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項116】
前記治療方法が、同種又は自己造血幹細胞移植と組み合わせた治療方法である、請求項1~115のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~115のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項117】
前記組成物が薬学的に許容される担体を更に含む、請求項1~116のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~116のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項118】
前記組成物が経口投与以外の経路により投与される、請求項1~117のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~117のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項119】
前記がんが慢性骨髄性白血病及び急性リンパ芽球性白血病以外のがんである、請求項1~118のいずれか一項に規定の使用のための請求項1~118のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
患者において免疫療法と関連付けられる1つ又は複数の副作用の治療方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
且つ、前記方法において、前記組成物が前記患者に投与される、
組成物。
【請求項121】
前記免疫療法が、請求項2~17及び19~29のいずれか一項に規定の免疫療法である、請求項120に規定の使用のための請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
前記がんが、請求項18、90~108、及び119のいずれか一項に規定のがんである、請求項120又は121に規定の使用のための請求項120又は121に記載の組成物。
【請求項123】
前記患者が、請求項109~115のいずれか一項に規定の患者である、請求項120~122に規定の使用のための請求項120~122に記載の組成物。
【請求項124】
前記使用が、請求項1~119のいずれか一項に規定の使用である、請求項120~123に規定の使用のための請求項120~123に記載の組成物。
【請求項125】
免疫療法と関連付けられる前記1つ又は複数の副作用が、
I)サイトカイン放出症候群、並びに/又は
II)マクロファージ活性化症候群、並びに/又は
III)オフターゲット毒性、並びに/又は
IV)正常及び/若しくは悪性細胞のオンターゲット/オフ腫瘍認識、並びに/又は
V)免疫療法細胞の拒絶、並びに/又は
VI)免疫療法細胞の意図しない活性化、並びに/又は
VII)免疫療法細胞のトニックシグナル伝達及び活性化、並びに/又は
VIII)神経毒性、並びに/又は
IX)腫瘍崩壊症候群
からなる群から選択される、請求項120~124のいずれか一項に規定の使用のための請求項120~124のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項126】
免疫療法と関連付けられる前記副作用がサイトカイン放出症候群である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
免疫療法と関連付けられる前記副作用がオフターゲット毒性である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項128】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が正常及び/又は悪性細胞のオンターゲット/オフ腫瘍認識である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項129】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞の拒絶である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項130】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞の意図しない活性化である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項131】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞のトニックシグナル伝達及び活性化である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項132】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が神経毒性である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項133】
免疫療法と関連付けられる前記副作用が腫瘍崩壊症候群である、請求項125に規定の使用のための請求項125に記載の組成物。
【請求項134】
前記サイトカイン放出症候群が、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、及びIL-10からなる群から選択される1つ又は複数のサイトカインの上昇したサイトカイン血清レベルにより特徴付けられる、請求項126に規定の使用のための請求項126に記載の組成物。
【請求項135】
前記使用が、前記上昇したサイトカイン血清レベルのうちの1つ又は複数の低減を引き起こすための使用である、請求項134に規定の使用のための請求項134に記載の組成物。
【請求項136】
前記サイトカイン放出症候群が前記免疫療法により引き起こされる、請求項134又は135に規定の使用のための請求項134又は135に記載の組成物。
【請求項137】
患者においてがんを治療するための免疫療法においてキメラ抗原受容体を発現する細胞を調節する方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
且つ、前記方法において、前記組成物が前記患者に投与される、
組成物。
【請求項138】
前記免疫療法が、請求項2~17、19~29、及び125~136のいずれか一項に規定の免疫療法である、請求項137に規定の使用のための請求項137に記載の組成物。
【請求項139】
前記がんが、請求項18、90~108、及び119のいずれか一項に規定のがんである、請求項137又は138に規定の使用のための請求項137又は138に記載の組成物。
【請求項140】
前記患者が、請求項109~115のいずれか一項に規定の患者である、請求項137~139のいずれか一項に規定の使用のための請求項137~139のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項141】
前記使用が、請求項1~136のいずれか一項に規定の使用である、請求項137~140のいずれか一項に規定の使用のための請求項137~140のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項142】
I)免疫細胞、及び
II)チロシンキナーゼ阻害剤
を含む、組成物。
【請求項143】
前記免疫細胞が、請求項3~17、19~29、及び79~89のいずれか一項に規定の免疫細胞である、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、請求項30~59のいずれか一項に規定のチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項142又は143に記載の組成物。
【請求項145】
前記組成物が薬学的に許容される担体を含む、請求項142~144のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項146】
請求項1~141のいずれか一項に規定の使用のための、
I)免疫細胞と、
II)チロシンキナーゼ阻害剤と
の組合せ。
【請求項147】
前記免疫細胞が、請求項3~17、19~29、及び79~89のいずれか一項に規定の免疫細胞である、請求項144に記載の組合せ。
【請求項148】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、請求項30~59のいずれか一項に規定のチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項146又は147に記載の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん免疫療法において遺伝子改変されたキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞の機能を制御及び調節するためのダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤の使用に関する。本発明は、CAR-T細胞免疫療法の間に起こり得る潜在的に生命を脅かす副作用の予防及び治療を通じて安全性を増進するためのダサチニブ及び他のチロシンキナーゼ阻害剤の使用、並びにCAR-T細胞免疫療法の抗がん効力及び有効性を増大するためのダサチニブの使用を含む。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように一過性の又は安定な遺伝子移入により操作されたT細胞を用いる養子免疫療法は、血液学及び腫瘍学において化学療法及び放射線療法で難治性の進行した悪性腫瘍のための高度に革新的且つ高度に効果的な新規の治療として前臨床的及び臨床的研究が為されている。
【0003】
CARは、合成のデザイナー受容体であり、腫瘍細胞上の表面分子又は構造に結合する細胞外抗原結合部分;T細胞表面上の受容体のアンカーとなるスペーサー及び膜貫通ドメイン;並びに各々の標的分子又は構造の結合後にCAR-T細胞を活性化させ及び刺激するための細胞内シグナル伝達モジュール、最も一般的には、CD28又は4-1BBに由来する共刺激部分とシスのCD3ゼータドメインを一般的に含む。加えて、NKG2Dドメイン、T細胞受容体定常ドメイン、及び他のCD3サブユニットを含む代替的なCAR設計が開発されている。現在、CARの抗原結合、シグナル生成及び導入、その後のT細胞活性化並びに刺激のプロセスの理解は不完全であり、これは少なくとも部分的には、CARが内因性T細胞において存在するドメイン(例えば、CD3ゼータ、CD28及び4-1BBのようなシグナル伝達ドメイン)を含むが、新たな人工的な方法でCAR構築物にアセンブルされるという事実による。
【0004】
CAR-T細胞免疫療法の有効性の臨床的な概念実証は、B細胞白血病及びリンパ腫において悪性細胞上に発現されるCD19分子に特異的なCAR-T細胞(CD19 CAR-T細胞)を用いて達成されており[1]~[3]、最近では、多発性骨髄腫(MM)において発現されるB細胞成熟抗原(BCMA)に特異的なCAR-T細胞(BCMA CAR-T細胞)を用いても達成されている[4]。自己又は同種CD19 CAR-T細胞の養子導入は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、及びMMを有する患者において永続性のある完全及び部分奏功を誘導している。CD19 CAR-T細胞は、2017年に再発性/難治性のALL及びNHLの治療についてFDAにより承認されている。BCMA CAR-T細胞の養子導入は、MMを有する患者において永続性のある完全及び部分奏功を誘導している。現在、CD19、BCMA及び他の抗原を標的化するCAR-T細胞を用いる多数の臨床試験が世界中のがんセンターにおいて進行中である。
【0005】
CAR-T細胞療法は際立って強力且つ高度に効果的な新規の抗がん治療として評価されているが、安全性に関する重大な懸念がある。CAR-T細胞(CD19 CAR-T細胞及びBCMA CAR-T細胞を含む)の臨床使用は、多数の急性及び慢性の、潜在的に生命を脅かし、一部の場合には致死性の副作用を明らかにしており、それがこれまで、CAR-T細胞の臨床使用を制限し、骨髄移植及び免疫療法において高度な経験を有する高度に専門化されたがんセンターにおいて医学的に適合する患者にそれを応用することを制約してきた。これらの副作用は、以下に起因し得る(但し、それに限定されない):i)各々の標的抗原を発現する多数の腫瘍細胞の存在に起因して患者への養子導入後の強い活性化及びCAR-T細胞からのその後のサイトカイン放出(サイトカイン放出症候群、CRS);ii)CAR-T細胞による腫瘍細胞殺傷の結果として蓄積する腫瘍細胞残屑を取り込む患者の身体中の他の免疫細胞の活性化(例えば、マクロファージ活性化症候群、MAS);iii)各々の標的抗原を発現する患者の身体中の正常細胞のオンターゲット認識及び除去(例えば、CD19 CAR-T細胞による正常B細胞の枯渇);iv)CARの各々の標的抗原を発現しない患者の身体中の正常(又は悪性)細胞のオフターゲット認識;v)CAR構築物、又はT細胞が同種ドナーに由来する場合のT細胞の認識に起因して、移入されたCAR-T細胞に対する患者の免疫系の免疫応答に起因するCAR-T細胞の拒絶;vi)CAR構築物が内因性の免疫細胞により認識されるモチーフ(例えば、Ig由来のCARスペーサードメイン中のFcモチーフ)を宿す場合のCAR-T細胞の意図しない活性化;vii)抗原を用いる刺激から独立したCAR-T細胞のトニックシグナル伝達及び活性化。
【0006】
CAR-T細胞療法の重篤な副作用はCRSである。CRS症状は、GM-CSF、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10といった炎症促進性サイトカインのレベルの上昇により引き起こされ[5]、多くの場合にCAR-T細胞移入の数時間から数日以内の、発熱の発生と共に一般的に開始する。CRS症状としては、頻脈/低血圧、倦怠感、疲労、筋肉痛、吐き気、無食欲及び毛細血管漏出を挙げることができ、多臓器不全を結果としてもたらすことがある[6]。CRSの発生リスクは、投与されるCAR-T細胞の総用量、及びCAR-T細胞療法以前の腫瘍負荷と相関する[5]、[7]。CRSは、CAR-T細胞療法における疾病(morbidity)及び死亡の主要な原因である。
【0007】
現在、臨床的CRSを予防及び治療し、並びにCAR-T細胞療法の状況における他の副作用を予防又は治療する能力は非常に限られている。現在、患者への注入後にCAR-T細胞の機能を効果的に制御する手段はない。CAR-T細胞は「生きた薬物」であり、すなわち、患者への注入後にそれらは患者の免疫系の部分となり、患者において拡大増殖及びその後に縮小し、腫瘍再発を予防するメモリーCAR-T細胞として長期間持続することがある。CAR-T細胞の生着及び持続(曲線下面積、AUC)は治療効果と相関することが実証されている。これに関して、CAR-T細胞は、予測可能な一貫した半減期で患者において除去され、代謝され又は分解される従来の薬物とは異なる。
【0008】
現在、CRSを軽減し、及びCAR-T細胞療法の副作用を治療又は予防するための3つの主要な戦略がある。1)トシリズマブ:インターロイキン-6(IL-6)はCRSにおいて不可欠な役割を果たすことが示されており、したがって、抗IL-6受容体(IL-6R)抗体トシリズマブを通じたIL-6Rの遮断が多くの場合に試みられ、顕著な割合の患者においてCRSを軽減することが示されている。しかしながら、この介入はCAR-T細胞に対して直接的な効果を発揮せず、むしろ症候性治療である。2)ステロイド:デキサメタゾン又はプレドニゾンの投与を通じてCRS又は他のCAR-T細胞媒介性の副作用を軽減することが一般的に試みられている。しかしながら、CRS又は他の副作用を制御するそれらの能力は低い。ステロイドは免疫抑制性であることが公知であるので、CAR-T細胞療法の状況におけるそれらの使用は、CAR-T細胞の治療効果に負の影響を及ぼし得るという懸念を生じさせた。3)自殺遺伝子及び枯渇マーカー:一部のCAR-T細胞生成物は「緊急停止装置」、すなわち、CAR-T細胞のアポトーシスを誘導するように二量体化薬物により誘発され得る誘導性カスパーゼ9(iCasp9)のような自殺遺伝子を備える。その制限は、この戦略は高レベルのこの自殺遺伝子を発現するCAR-T細胞のために良好に機能するが、発現が低いもの[8]又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)若しくは補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘導してCAR-T細胞を除去する抗体により誘発され得るEGFRt若しくはCD20tのような枯渇マーカー[9]においては効果的でないことである。しかしながら、これらの抗体依存的な枯渇マーカーは、患者の免疫系が変化していない場合にのみ機能することができるが、以前の集中的な化学療法後に、又はCARのオンターゲット認識の部分としての正常な免疫細胞の枯渇に起因して、それは多くの場合に当てはまらない。自殺遺伝子及び枯渇マーカーに伴う主要な懸念は、それらはCAR-T細胞を除去し、治療効果を終了させることである。現行のCAR構築物の免疫原性に起因して、2回目の注入は多くの場合に可能でないため(患者は免疫応答を発生し、2回目の注入時にCAR-T細胞を拒絶するため)、これは特に懸念される。帰結として、iCasp9又はEGFRtがCAR-T細胞免疫療法の状況において誘発された症例の報告は現在存在しない。
【0009】
CAR-T細胞を与えられた、CRS及び/又は神経毒性を発生する高いリスクがある患者は、IFN-γ、IL-6、MCP1が挙げられるがそれに限定されない血清サイトカインを測定すること、及び体温のようなウイルス的徴候を測定することにより同定され得ることが最近示されている[2]、[10]。そのような患者においてCAR-T細胞の機能を制御(及び間欠的に休止)できれば、これらの毒性を軽減又は予防することが可能となる。
【0010】
現在、患者への投与後にCAR-T細胞の機能を制御するため、CAR-T細胞生成物のその後の抗がん効果を保存しながら、CRS又は他の副作用を予防又は治療するための方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【0011】
CAR-T細胞がん免疫療法における別の課題は、患者のサブセットにおいてこの治療は効果的でなく、所望の治療応答に繋がらないことである。CAR-T細胞療法の無効力に繋がり得るいくつかの機序がある(以下が挙げられるがそれに限定されない):1)特に、高い腫瘍負荷を有する患者、及び固形腫瘍を有する患者において、抗原への一定の曝露及び結果として生じるCARからの一定のシグナル伝達により、CAR-T細胞が疲弊すること。2)ex vivoでの製造後にCAR-T細胞が疲弊し、その後に患者の身体中で生着、拡大増殖、持続、増殖及びがん細胞に対して機能しないこと;3)CAR構築物からのトニックシグナル伝達に起因してCAR-T細胞が疲弊し、活性化誘導性細胞死(AICD)を起こすこと;4)CAR-T細胞は、PD-1が挙げられるがそれに限定されないチェックポイント分子を発現し、チェックポイント分子が生存率(viability)、増殖及びがん細胞に対する機能を阻害すること。プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)はT細胞の表面上に発現される。PD-1は、がん細胞上及び腫瘍微環境中で共通して発現されるそのリガンド、PD-L1に結合するとT細胞においてアポトーシスを促進する。チェックポイント遮断剤、すなわち、抗PD-1又は抗PD-L1抗体を通じたPD-1_PD-L1アクシスの遮断は、がん免疫療法において内因性及びCAR改変T細胞の機能を増大するための戦略として追究されている[11]。
【0012】
現在、CAR-T細胞免疫療法に応答しない患者においてCAR-T細胞の生存率及び機能を向上させる手段について満たされていない必要性が存在する。
【0013】
チロシンキナーゼ阻害剤ダサチニブ(著作権Sprycel)は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)[13]及びALLにおける約20%の症例[14]において共通して発現されるBCR-ABL融合タンパク質の阻害剤として開発された[12]。2010年以来、ダサチニブは、Ph+のALL及びCMLのファーストライン治療のために承認されている。加えて、ダサチニブは、内因性の生理学的T細胞受容体を通じた刺激後に従来のT細胞のシグナル伝達カスケードに関与するSRCキナーゼLckのATP結合部位を遮断することが示されている[15]~[18]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. N. Kochenderferら、「Lymphoma remissions caused by anti-CD19 chimeric antigen receptor T cells are associated with high serum interleukin-15 levels」、J. Clin. Oncol.、2017年
【非特許文献2】C. J. Turtleら、「Immunotherapy of non-Hodgkins lymphoma with a defined ratio of CD8+ and CD4+ CD19-specific chimeric antigen receptor-modified T cells」、Sci. Transl. Med.、2016年
【非特許文献3】C. J. Turtleら、「CD19 CAR-T cells of defined CD4+:CD8+ composition in adult B cell ALL patients」、J. Clin. Invest.、2016年
【非特許文献4】S. A. Aliら、「T cells expressing an anti-B-cell maturation antigen chimeric antigen receptor cause remissions of multiple myeloma.」、Blood、128巻、13号、1688~700頁、2016年9月
【非特許文献5】M. L. Davilaら、「Efficacy and Toxicity Management of 19-28z CAR T Cell Therapy in B Cell Acute Lymphoblastic Leukemia」、Sci. Transl. Med.、2014年
【非特許文献6】D. W. Leeら、「Current concepts in the diagnosis and management of cytokine release syndrome」、Blood、2014年
【非特許文献7】R. J. Brentjensら、「CD19-Targeted T Cells Rapidly Induce Molecular Remissions in Adults with Chemotherapy-Refractory Acute Lymphoblastic Leukemia」、Sci. Transl. Med.、p. sc、2013年
【非特許文献8】I. Diaconuら、「Inducible Caspase-9 Selectively Modulates the Toxicities of CD19-Specific Chimeric Antigen Receptor-Modified T Cells」、Mol. Ther.、25巻、3号、580~592頁、2017年3月
【非特許文献9】X. Wangら、「A transgene-encoded cell surface polypeptide for selection, in vivo tracking, and ablation of engineered cells」、Blood、2011年
【非特許文献10】J. Gustら、「Endothelial Activation and Blood-Brain Barrier Disruption in Neurotoxicity after Adoptive Immunotherapy with CD19 CAR-T Cells」、Cancer Discov.、2017年
【非特許文献11】J. Weber、「Immune checkpoint proteins: A new therapeutic paradigm for cancerpreclinical background: CTLA-4 and PD-1 blockade」、Seminars in Oncology. 2010年
【非特許文献12】J. S. Tokarskiら、「The structure of dasatinib (BMS-354825) bound to activated ABL kinase domain elucidates its inhibitory activity against imatinib-resistant ABL mutants」、Cancer Res.、66巻、11号、5790~5797頁、2006年6月
【非特許文献13】P. C. Nowell及びD. A. Hungerford、「Chromosome Studies on Normal and Leukemic Human Leukocytes 1」
【非特許文献14】D. Catovskyら、「Multiparameter studies in lymphoid leukemias.」、Am. J. Clin. Pathol.、72巻、4号Suppl、736~45頁、1979年10月
【非特許文献15】S. Blake、T. P. Hughes、G. Mayrhofer、及びA. B. Lyons、「The Src/ABL kinase inhibitor dasatinib (BMS-354825) inhibits function of normal human T-lymphocytes in vitro」、Clin. Immunol.、127巻、3号、330~339頁、2008年6月
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【非特許文献17】C. K. Fraserら、「Dasatinib inhibits recombinant viral antigen-specific murine CD4+ and CD8+ T-cell responses and NK-cell cytolytic activity in vitro and in vivo」、Exp. Hematol.、37巻、2号、256~265頁、2009年2月
【非特許文献18】R. Weichselら、「Profound Inhibition of Antigen-Specific T-Cell Effector Functions by Dasatinib」、Clin. Cancer Res.、14巻、8号、2484~2491頁、2008年3月
【非特許文献19】M. Kalosら、「T Cells with Chimeric Antigen Receptors Have Potent Antitumor Effects and Can Establish Memory in Patients with Advanced Leukemia」、Sci. Transl. Med.、2011年
【非特許文献20】J. N. Kochenderferら、「Donor-derived CD19-targeted T cells cause regression of malignancy persisting after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation」、Blood、122巻、25号、4129~4139頁、2013年12月
【非特許文献21】K. C. Straathofら、「An inducible caspase 9 safety switch for T-cell therapy」、Blood、2005年
【非特許文献22】M. Hudecekら、「Receptor affinity and extracellular domain modifications affect tumor recognition by ROR1-specific chimeric antigen receptor T cells」、Clin. Cancer Res.、2013年
【非特許文献23】F. R. Luoら、「Dasatinib (BMS-354825) Pharmacokinetics and Pharmacodynamic Biomarkers in Animal Models Predict Optimal Clinical Exposure」、Clin. Cancer Res.、12巻、23号、7180~7186頁、2006年12月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤ダサチニブの連続的な投与を通じてCAR-T細胞の機能を遮断する該薬物の以前に未知であった予想外の能力に関する本発明者らの発見を利用する。更に、本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤ダサチニブの間欠的な投与を通じてCAR-T細胞の機能を増大する該薬物の以前に未知であった予想外の能力に関する本発明者らの発見を利用する。
【0016】
本発明によれば、ダサチニブの連続的な投与は、CAR-T細胞機能の急速且つ完全な遮断を付与する。この遮断は、CAR-T細胞がある特定の閾値より高い濃度においてダサチニブに連続的に曝露される限り効果的なままである。この遮断は、活性化されていない及び既に活性化されたCAR-T細胞において効果的である。この遮断は、CD8+キラーT細胞並びにCD4+ヘルパー(及び制御性)T細胞の両方において効果的である。更に、この遮断は、CARの抗原特異性から独立して、並びに抗原結合ドメイン、細胞外スペーサードメイン、及び細胞内シグナル伝達及び共刺激部分に関するCARの特定の設計から独立して効果的である。更に、この遮断は、ダサチニブへの曝露が維持される限り効果的であるが、ダサチニブへの曝露が中止されると急速且つ完全に可逆的である。更に、この遮断は、CAR-T細胞の生存率に影響せず、且つ、ダサチニブへの曝露が中止されると抗がん機能を発揮するCAR-T細胞の能力に影響しない。本発明によれば、CAR-T細胞の機能を制御するダサチニブの能力は、CAR-T細胞の機能を制御及び阻害するステロイドの能力とは別個であり、且つそれより優れている。本発明によれば、CAR-T細胞機能を遮断するダサチニブの能力は、CRSの予防及び治療が挙げられるがそれに限定されないCAR-T細胞療法の安全性を増進するために活用され得る。
【0017】
本発明によれば、ダサチニブの間欠的な投与は、CAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大するために活用され得る。この増大は、ダサチニブへの間欠的な曝露によるCAR-T細胞の生存率及び機能の増加に起因する。更に、この増大は、ダサチニブへの間欠的な曝露によるCAR-T細胞の生着、増殖及び持続の増加に起因する。更に、この増大は、ダサチニブへの間欠的な曝露によるCARの優れたシグナル伝達に起因する。更に、この増大は、ダサチニブへの間欠的な曝露による、PD-1が挙げられるがそれに限定されないCAR-T細胞上の阻害性免疫チェックポイント分子の発現の減少に起因する。間欠的な投与は、ダサチニブの濃度が、CAR-T細胞機能を遮断するために必要とされる濃度より連続的には高くない一定又は可変の長さの間隔でのダサチニブの任意の使用を含む。
【0018】
本発明は、以下の好ましい実施形態により例示される:
1.患者におけるがんの治療方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
前記方法において、前記組成物が前記患者に投与され、且つ
前記方法が、免疫療法を含むがんを治療する方法である、
組成物。
2.前記免疫療法が養子免疫療法である、項目1に規定の使用のための項目1に記載の組成物。
3.前記免疫療法が、免疫細胞を用いる免疫療法である、項目1又は2に規定の使用のための項目1又は2に記載の組成物。
4.前記免疫療法が、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を用いる免疫療法である、項目3に規定の使用のための項目3に記載の組成物。
5.前記キメラ抗原受容体が抗原に結合することができる、項目4に規定の使用のための項目4に記載の組成物。
6.前記キメラ抗原受容体が細胞表面抗原に結合することができる、項目5に規定の使用のための項目5に記載の組成物。
7.前記抗原ががん抗原である、項目5又は6に規定の使用のための項目5又は6に記載の組成物。
8.前記抗原が、CD4、CD5、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD52、CD64、CD70、CD72、CD123、CD135、CD138、CD220、CD269、CD319、ROR1、ROR2、SLAMF7、BCMA、αvβ3インテグリン、α4β1インテグリン、LILRB4、EpCAM-1、MUC-1、MUC-16、L1-CAM、c-kit、NKG2D、NKG2Dリガンド、PD-L1、PD-L2、Lewis-Y、CAIX、CEA、c-MET、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、Her2、FAP、FR-a、EphA2、GD2、GD3、GPC3、IL-13Ra、メソテリン、PSMA、PSCA、VEGFR、及びFLT3からなる群から選択される、項目5~7のいずれか一項に規定の使用のための項目5~7のいずれか一項に記載の組成物。
9.前記抗原が、CD19、CD20、CD22、CD123、SLAMF7、ROR1、BCMA、及びFLT3からなる群から選択される、項目8に規定の使用のための項目8に記載の組成物。
10.前記抗原がCD19である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
11.前記抗原がROR1である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
12.前記抗原がBCMAである、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
13.前記抗原がFLT3である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
14.前記抗原がCD20である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
15.前記抗原がCD22である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
16.前記抗原がCD123である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
17.前記抗原がSLAMF7である、項目9に規定の使用のための項目9に記載の組成物。
18.前記がんが、前記抗原を発現するがん細胞を含む、項目5~17のいずれか一項に規定の使用のための項目5~17のいずれか一項に記載の組成物。
19.前記キメラ抗原受容体が、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、DAP10、NKG2D、MyD88及びOX40共刺激ドメインからなる群から選択される共刺激ドメインを含む、項目4~18のいずれか一項に規定の使用のための項目4~18のいずれか一項に記載の組成物。
20.前記キメラ抗原受容体がCD28共刺激ドメインを含む、項目19に規定の使用のための項目19に記載の組成物。
21.前記キメラ抗原受容体が4-1BB共刺激ドメインを含む、項目19に規定の使用のための項目19に記載の組成物。
22.前記キメラ抗原受容体がOX40共刺激ドメインを含む、項目19に規定の使用のための項目19に記載の組成物。
23.前記免疫細胞がリンパ球である、項目3~22のいずれか一項に規定の使用のための項目3~22のいずれか一項に記載の組成物。
24.前記免疫細胞がBリンパ球又はTリンパ球である、項目3~23のいずれか一項に規定の使用のための項目3~23のいずれか一項に記載の組成物。
25.前記免疫細胞がTリンパ球である、項目24に規定の使用のための項目24に記載の組成物。
26.前記免疫細胞がCD4+及び/又はCD8+ Tリンパ球である、項目25に規定の使用のための項目25に記載の組成物。
27.前記免疫細胞がCD4+ Tリンパ球である、項目26に規定の使用のための項目26に記載の組成物。
28.前記免疫細胞がCD8+ Tリンパ球である、項目26に規定の使用のための項目26に記載の組成物。
29.前記免疫細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリー幹T細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導性キラーT細胞、ガンマ/デルタT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び顆粒球からなる群から選択される、項目3~28のいずれか一項に規定の使用のための項目3~28のいずれか一項に記載の組成物。
30.前記チロシンキナーゼ阻害剤がSrcキナーゼ阻害剤である、項目1~29のいずれか一項に規定の使用のための項目1~29のいずれか一項に記載の組成物。
31.前記チロシンキナーゼ阻害剤がNFATの上流のキナーゼの阻害剤である、項目1~30のいずれか一項に規定の使用のための項目1~30のいずれか一項に記載の組成物。
32.前記チロシンキナーゼ阻害剤がLckキナーゼ阻害剤である、項目1~31のいずれか一項に規定の使用のための項目1~31のいずれか一項に記載の組成物。
33.前記チロシンキナーゼ阻害剤が、ダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、及びPP1阻害剤からなる群から選択される、項目1~32のいずれか一項に規定の使用のための項目1~32のいずれか一項に記載の組成物。
34.前記チロシンキナーゼ阻害剤がダサチニブである、項目33に規定の使用のための項目33に記載の組成物。
35.前記チロシンキナーゼ阻害剤がボスチニブである、項目33に規定の使用のための項目33に記載の組成物。
36.前記チロシンキナーゼ阻害剤がPP1阻害剤である、項目33に規定の使用のための項目33に記載の組成物。
37.前記チロシンキナーゼ阻害剤がニロチニブである、項目33に規定の使用のための項目33に記載の組成物。
38.前記チロシンキナーゼ阻害剤が前記免疫細胞の阻害を引き起こす、項目3~37のいずれか一項に規定の使用のための項目3~37のいずれか一項に記載の組成物。
39.前記阻害が前記免疫細胞の細胞媒介性エフェクター機能の阻害である、項目38に規定の使用のための項目38に記載の組成物。
40.前記免疫細胞の前記阻害が、それらの
I)細胞溶解活性、及び/又は
II)サイトカイン分泌、及び/又は
III)増殖
の阻害である、項目38又は39に規定の使用のための項目38又は39に記載の組成物。
41.前記阻害が前記免疫細胞におけるPD1発現の阻害を含む、項目38~40のいずれか一項に規定の使用のための項目38~40のいずれか一項に記載の組成物。
42.前記阻害が、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、及びIL-10からなる群から選択される1つ又は複数のサイトカインの前記免疫細胞のサイトカイン分泌の阻害を含む、項目38~41のいずれか一項に規定の使用のための項目38~41のいずれか一項に記載の組成物。
43.前記阻害が前記免疫細胞のIFN-γ及び/又はIL-2分泌の阻害を含む、項目38~42のいずれか一項に規定の使用のための項目38~42のいずれか一項に記載の組成物。
44.前記阻害が前記免疫細胞のIFN-γ分泌の阻害を含む、項目43に規定の使用のための項目43に記載の組成物。
45.前記阻害が前記免疫細胞のIL-2分泌の阻害を含む、項目43に規定の使用のための項目43に記載の組成物。
46.前記阻害が部分的な阻害又は完全な阻害である、項目38~45のいずれか一項に規定の使用のための項目38~45のいずれか一項に記載の組成物。
47.前記阻害が前記免疫細胞の生存率を減少させない、項目38~46のいずれか一項に規定の使用のための項目38~46のいずれか一項に記載の組成物。
48.前記阻害が、前記組成物が前記患者に投与される所与の期間にわたり前記免疫細胞の生存率を減少させず、前記期間が、1時間、好ましくは2時間、好ましくは3時間、好ましくは4時間、好ましくは5時間、好ましくは6時間、好ましくは8時間、好ましくは12時間、好ましくは18時間、好ましくは1日、好ましくは2日、より好ましくは3日、よりいっそう好ましくは7日、よりいっそう好ましくは2週、よりいっそう好ましくは3週、よりいっそう好ましくは4週、よりいっそう好ましくは2か月、よりいっそう好ましくは3か月、よりいっそう好ましくは6か月である、項目47に規定の使用のための項目47に記載の組成物。
49.前記阻害が可逆的である、項目38~48のいずれか一項に規定の使用のための項目38~48のいずれか一項に記載の組成物。
50.前記阻害が、前記組成物が所与の長さの時間にわたり前記患者に投与されなかった後に反転される、項目49に規定の使用のための項目49に記載の組成物。
51.前記所与の長さの時間が、3日、好ましくは2日、より好ましくは24時間、よりいっそう好ましくは18時間、よりいっそう好ましくは12時間、よりいっそう好ましくは8時間、よりいっそう好ましくは6時間、よりいっそう好ましくは4時間、よりいっそう好ましくは3時間、よりいっそう好ましくは2時間、よりいっそう好ましくは90分、よりいっそう好ましくは60分、よりいっそう好ましくは30分である、項目50に規定の使用のための項目50に記載の組成物。
52.前記組成物が連続的又は間欠的に投与される、項目1~51のいずれか一項に規定の使用のための項目1~51のいずれか一項に記載の組成物。
53.前記組成物が連続的に投与される、項目52に規定の使用のための項目52に記載の組成物。
54.前記組成物が間欠的に投与される、項目52に規定の使用のための項目52に記載の組成物。
55.前記組成物の初期投与の後に前記チロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルが前記治療の継続期間の間に閾値血清レベルにおいて又は前記閾値血清レベルより高くに維持されるように前記組成物が投与される、項目1~54のいずれか一項に規定の使用のための項目1~54のいずれか一項に記載の組成物。
56.前記方法において、前記組成物の初期投与の後に前記チロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルが前記治療の継続期間の間に少なくとも1回閾値血清レベルより高くに及び少なくとも1回同じ閾値血清レベルより低くに維持されるように前記組成物が投与される、項目1~55のいずれか一項に規定の使用のための項目1~55のいずれか一項に記載の組成物。
57.前記閾値血清レベルが、0.1nM~1μM、好ましくは1nM~500nM、より好ましくは5nM~100nM、よりいっそう好ましくは10nM~75nM、よりいっそう好ましくは25nM~50nMの範囲内である、項目55又は56に規定の使用のための項目55又は56に記載の組成物。
58.前記閾値血清レベルが50nMである、項目57に規定の使用のための項目57に記載の組成物。
59.前記閾値血清レベルが最小血清レベルであり、前記最小血清レベルにおいて、前記免疫細胞の前記阻害が、それらの
I)細胞溶解活性、及び/又は
II)サイトカイン分泌、及び/又は
III)増殖
の完全な阻害である、項目55~58のいずれか一項に規定の使用のための項目55~58のいずれか一項に記載の組成物。
60.がんの前記治療が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して向上した臨床アウトカムを有する、項目1~59のいずれか一項に規定の使用のための項目1~59のいずれか一項に記載の組成物。
61.前記使用が、前記がんに対する前記免疫療法と関連付けられる毒性を軽減又は予防するための使用である、項目1~60のいずれか一項に規定の使用のための項目1~60のいずれか一項に記載の組成物。
62.前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記患者において腫瘍負荷を減少させるための使用である、項目1~61のいずれか一項に規定の使用のための項目1~61のいずれか一項に記載の組成物。
63.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の治療効果を減少させない、項目1~62のいずれか一項に規定の使用のための項目1~62のいずれか一項に記載の組成物。
64.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の治療効果を増加させるための使用である、項目1~63のいずれか一項に規定の使用のための項目1~63のいずれか一項に記載の組成物。
65.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の疾病及び死亡を減少させるための使用である、項目1~64のいずれか一項に規定の使用のための項目1~64のいずれか一項に記載の組成物。
66.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法と比較して前記がんに対する前記免疫療法の抗腫瘍有効性を増加させるための使用である、項目1~65のいずれか一項に規定の使用のための項目1~65のいずれか一項に記載の組成物。
67.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の生着及び/又は持続と比較して前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の生着及び/又は持続を増加させるための使用である、項目3~66のいずれか一項に規定の使用のための項目3~66のいずれか一項に記載の組成物。
68.がんの前記治療における前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法を含む方法における前記免疫細胞の生着と比較して前記免疫療法における前記免疫細胞の生着を増加させるための使用である、項目3~67のいずれか一項に規定の使用のための項目3~67のいずれか一項に記載の組成物。
69.前記使用が、単独での前記がんに対する前記免疫療法を含む方法における前記免疫細胞の疲弊と比較して前記がんに対する前記免疫療法における前記免疫細胞の疲弊を減少させるための使用である、項目3~68のいずれか一項に規定の使用のための項目3~68のいずれか一項に記載の組成物。
70.前記組成物が、
I)免疫療法によるがんの前記治療の前、及び/又は
II)免疫療法によるがんの前記治療と並行して、及び/又は
III)免疫療法によるがんの前記治療の後
に投与される、項目1~69のいずれか一項に規定の使用のための項目1~69のいずれか一項に記載の組成物。
71.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前に投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
72.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療と並行して投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
73.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
74.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前及び免疫療法によるがんの前記治療と並行して投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
75.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療の前及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
76.前記組成物が免疫療法によるがんの前記治療と並行して及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
77.前記組成物が、免疫療法によるがんの前記治療の前、免疫療法によるがんの前記治療と並行して、及び免疫療法によるがんの前記治療の後に投与される、項目70に規定の使用のための項目70に記載の組成物。
78.前記使用が、前記免疫療法における前記免疫細胞の活性化を予防するための使用である、項目3~77のいずれか一項に規定の使用のための項目3~77のいずれか一項に記載の組成物。
79.前記免疫細胞が休止状態の免疫細胞である、項目78に規定の使用のための項目78に記載の組成物。
80.前記免疫細胞がヒト起源である、項目3~79のいずれか一項に規定の使用のための項目3~79のいずれか一項に記載の組成物。
81.ヒト起源の前記免疫細胞が初代ヒト細胞である、項目80に規定の使用のための項目80に記載の組成物。
82.前記初代ヒト細胞が初代ヒトTリンパ球である、項目81に規定の使用のための項目81に記載の組成物。
83.ヒト起源の前記免疫細胞が前記患者に関して同種細胞である、項目80~82のいずれか一項に規定の使用のための項目80~82のいずれか一項に記載の組成物。
84.ヒト起源の前記免疫細胞が前記患者に関して同系細胞である、項目80~82のいずれか一項に規定の使用のための項目80~82のいずれか一項に記載の組成物。
85.前記免疫細胞が、前記キメラ抗原受容体を一過的又は安定に発現する免疫細胞である、項目4~84のいずれか一項に規定の使用のための項目4~84のいずれか一項に記載の組成物。
86.前記キメラ抗原受容体が、第一、第二、又は第三世代のキメラ抗原受容体である、項目4~85のいずれか一項に規定の使用のための項目4~85のいずれか一項に記載の組成物。
87.前記キメラ抗原受容体が単鎖可変断片を含み、好ましくは、前記単鎖可変断片が前記抗原に結合することができる、項目5~86のいずれか一項に規定の使用のための項目5~86のいずれか一項に記載の組成物。
88.前記キメラ抗原受容体がリガンド又はその断片を含み、前記リガンド又はその断片が前記抗原に結合することができる、項目5~86のいずれか一項に規定の使用のための項目5~86のいずれか一項に記載の組成物。
89.前記キメラ抗原受容体が、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、T細胞受容体アルファ鎖、T細胞受容体ベータ鎖、T細胞受容体デルタ鎖、及びT細胞受容体ガンマ鎖からなる群から選択される1つ又は複数のドメインを含むシグナル伝達ドメインを含む、項目5~88のいずれか一項に規定の使用のための項目5~88のいずれか一項に記載の組成物。
90.前記がんが、前記免疫療法において疾病及び死亡のより高いリスクと関連付けられるがんである、項目1~89のいずれか一項に規定の使用のための項目1~89のいずれか一項に記載の組成物。
91.前記がんが、1つ又は複数のチェックポイント分子を発現する細胞を含み、前記1つ又は複数のチェックポイント分子が、好ましくは、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-L1、PD-L2、TIM-3、及びVISTAからなる群から選択される、項目1~90のいずれか一項に規定の使用のための項目1~90のいずれか一項に記載の組成物。
92.前記がんが、PD-L1を発現する細胞を含む、項目91に規定の使用のための項目91に記載の組成物。
93.前記がんが、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、及びリンパ腫からなる群から選択されるがんである、項目1~92のいずれか一項に規定の使用のための項目1~92のいずれか一項に記載の組成物。
94.前記がんが骨髄腫である、項目93に規定の使用のための項目93に記載の組成物。
95.前記がんが白血病である、項目93に規定の使用のための項目93に記載の組成物。
96.前記がんがリンパ腫である、項目93に規定の使用のための項目93に記載の組成物。
97.前記がんが癌腫であり、好ましくは、前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、及び膵臓がんからなる群から選択される癌腫である、項目93に規定の使用のための項目93に記載の組成物。
98.前記白血病が、B細胞白血病、T細胞白血病、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、又は慢性骨髄性白血病である、項目95に規定の使用のための項目95に記載の組成物。
99.前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、又はB細胞リンパ腫である、項目96に規定の使用のための項目96に記載の組成物。
100.前記がんが、
I)CD19陽性、及び/又は
II)BCMA陽性、及び/又は
III)ROR1陽性、及び/又は
IV)FLT3陽性、及び/又は
V)CD20陽性、及び/又は
VI)CD22陽性、及び/又は
VII)CD123陽性、及び/又は
VIII)SLAMF7陽性
として特徴付けられるがんである、項目1~99のいずれか一項に規定の使用のための項目1~99のいずれか一項に記載の組成物。
101.前記がんがCD19陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
102.前記がんがBCMA陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
103.前記がんがROR1陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
104.前記がんがFLT3陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
105.前記がんがCD20陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
106.前記がんがCD22陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
107.前記がんがCD123陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
108.前記がんがSLAMF7陽性である、項目100に規定の使用のための項目100に記載の組成物。
109.前記患者が、単独での前記免疫療法による前記がんの前記治療に適格でない患者である、項目1~108のいずれか一項に規定の使用のための項目1~108のいずれか一項に記載の組成物。
110.前記患者が、キメラ抗原受容体を発現するT細胞を用いる従来の養子免疫療法に適格でない患者である、項目1~109のいずれか一項に規定の使用のための項目1~109のいずれか一項に記載の組成物。
111.前記患者が、サイトカイン放出症候群を発生する増加したリスクを有する、項目1~110のいずれか一項に規定の使用のための項目1~110のいずれか一項に記載の組成物。
112.前記患者が、前記免疫療法と関連付けられる神経毒性の副作用を発生する増加したリスクを有する、項目1~111のいずれか一項に規定の使用のための項目1~111のいずれか一項に記載の組成物。
113.前記患者が、前記免疫療法と関連付けられるオンターゲット/オフ腫瘍効果を発生する増加したリスクを有する、項目1~112のいずれか一項に規定の使用のための項目1~112のいずれか一項に記載の組成物。
114.前記患者が、IFN-γ、IL-6、及びMCP1の群から選択される1つ又は複数のサイトカインの上昇した血清レベルを有する、項目1~113のいずれか一項に規定の使用のための項目1~113のいずれか一項に記載の組成物。
115.前記患者が、前記免疫療法に対する免疫応答を発生した患者であり、前記免疫応答が前記がんに対する前記免疫療法の副作用である、項目1~114のいずれか一項に規定の使用のための項目1~114のいずれか一項に記載の組成物。
116.前記治療方法が、同種又は自己造血幹細胞移植と組み合わせた治療方法である、項目1~115のいずれか一項に規定の使用のための項目1~115のいずれか一項に記載の組成物。
117.前記組成物が薬学的に許容される担体を更に含む、項目1~116のいずれか一項に規定の使用のための項目1~116のいずれか一項に記載の組成物。
118.前記組成物が経口投与以外の経路により投与される、項目1~117のいずれか一項に規定の使用のための項目1~117のいずれか一項に記載の組成物。
119.前記がんが慢性骨髄性白血病及び急性リンパ芽球性白血病以外のがんである、項目1~118のいずれか一項に規定の使用のための項目1~118のいずれか一項に記載の組成物。
120.患者において免疫療法と関連付けられる1つ又は複数の副作用の治療方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
且つ、前記方法において、前記組成物が前記患者に投与される、
組成物。
121.前記免疫療法が、項目2~17及び19~29のいずれか一項に規定の免疫療法である、項目120に規定の使用のための項目120に記載の組成物。
122.前記がんが、項目18、90~108、及び119のいずれか一項に規定のがんである、項目120又は121に規定の使用のための項目120又は121に記載の組成物。
123.前記患者が、項目109~115のいずれか一項に規定の患者である、項目120~122に規定の使用のための項目120~122に記載の組成物。
124.前記使用が、項目1~119のいずれか一項に規定の使用である、項目120~123に規定の使用のための項目120~123に記載の組成物。
125.免疫療法と関連付けられる前記1つ又は複数の副作用が、
I)サイトカイン放出症候群、並びに/又は
II)マクロファージ活性化症候群、並びに/又は
III)オフターゲット毒性、並びに/又は
IV)正常及び/若しくは悪性細胞のオンターゲット/オフ腫瘍認識、並びに/又は
V)免疫療法細胞の拒絶、並びに/又は
VI)免疫療法細胞の意図しない活性化、並びに/又は
VII)免疫療法細胞のトニックシグナル伝達及び活性化、並びに/又は
VIII)神経毒性、並びに/又は
IX)腫瘍崩壊症候群
からなる群から選択される、項目120~124のいずれか一項に規定の使用のための項目120~124のいずれか一項に記載の組成物。
126.免疫療法と関連付けられる前記副作用がサイトカイン放出症候群である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
127.免疫療法と関連付けられる前記副作用がオフターゲット毒性である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
128.免疫療法と関連付けられる前記副作用が正常及び/又は悪性細胞のオンターゲット/オフ腫瘍認識である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
129.免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞の拒絶である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
130.免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞の意図しない活性化である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
131.免疫療法と関連付けられる前記副作用が免疫療法細胞のトニックシグナル伝達及び活性化である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
132.免疫療法と関連付けられる前記副作用が神経毒性である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
133.免疫療法と関連付けられる前記副作用が腫瘍崩壊症候群である、項目125に規定の使用のための項目125に記載の組成物。
134.前記サイトカイン放出症候群が、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、及びIL-10からなる群から選択される1つ又は複数のサイトカインの上昇したサイトカイン血清レベルにより特徴付けられる、項目126に規定の使用のための項目126に記載の組成物。
135.前記使用が、前記上昇したサイトカイン血清レベルのうちの1つ又は複数の低減を引き起こすための使用である、項目134に規定の使用のための項目134に記載の組成物。
136.前記サイトカイン放出症候群が前記免疫療法により引き起こされる、項目134又は135に規定の使用のための項目134又は135に記載の組成物。
137.患者においてがんを治療するための免疫療法においてキメラ抗原受容体を発現する細胞を調節する方法において使用するための組成物であって、前記組成物がチロシンキナーゼ阻害剤を含み、
且つ、前記方法において、前記組成物が前記患者に投与される、
組成物。
138.前記免疫療法が、項目2~17、19~29、及び125~136のいずれか一項に規定の免疫療法である、項目137に規定の使用のための項目137に記載の組成物。
139.前記がんが、項目18、90~108、及び119のいずれか一項に規定のがんである、項目137又は138に規定の使用のための項目137又は138に記載の組成物。
140.前記患者が、項目109~115のいずれか一項に規定の患者である、項目137~139のいずれか一項に規定の使用のための項目137~139のいずれか一項に記載の組成物。
141.前記使用が、項目1~136のいずれか一項に規定の使用である、項目137~140のいずれか一項に規定の使用のための項目137~140のいずれか一項に記載の組成物。
142.I)免疫細胞、及び
II)チロシンキナーゼ阻害剤
を含む、組成物。
143.前記免疫細胞が、項目3~17、19~29、及び79~89のいずれか一項に規定の免疫細胞である、項目142に記載の組成物。
144.前記チロシンキナーゼ阻害剤が、項目30~59のいずれか一項に規定のチロシンキナーゼ阻害剤である、項目142又は143に記載の組成物。
145.前記組成物が薬学的に許容される担体を含む、項目142~144のいずれか一項に記載の組成物。
146.項目1~141のいずれか一項に規定の使用のための、
I)免疫細胞と、
II)チロシンキナーゼ阻害剤と
の組合せ。
147.前記免疫細胞が、項目3~17、19~29、及び79~89のいずれか一項に規定の免疫細胞である、項目144に記載の組合せ。
148.前記チロシンキナーゼ阻害剤が、項目30~59のいずれか一項に規定のチロシンキナーゼ阻害剤である、項目146又は147に記載の組合せ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1:CAR構築物。scFv:単鎖可変断片(VH-(G
4S)
3リンカー-VL)。IgG4-FCヒンジ:免疫グロブリンG4のヒンジドメイン。CD28:CD28共刺激ドメイン。4-1BB:4-1BB共刺激ドメイン。3ゼータ:CD3ゼータ刺激ドメイン。2A:T2Aリボソームスキップモチーフ。tEGFR:切断型上皮成長因子受容体。(A)4-1BB共刺激ドメインを有するCAR CD19。(配列番号1~配列番号9)。(A)~(E)のアミノ酸配列は、N末端からC末端の順序でアミノ酸の1文字表記により表される。アミノ酸配列のC末端はアステリスクにより表されることに留意されたい。
【
図1B】
図1:CAR構築物。scFv:単鎖可変断片(VH-(G
4S)
3リンカー-VL)。IgG4-FCヒンジ:免疫グロブリンG4のヒンジドメイン。CD28:CD28共刺激ドメイン。4-1BB:4-1BB共刺激ドメイン。3ゼータ:CD3ゼータ刺激ドメイン。2A:T2Aリボソームスキップモチーフ。tEGFR:切断型上皮成長因子受容体。(B)CD28共刺激ドメインを有するCAR CD19。(配列番号10~配列番号18)。(A)~(E)のアミノ酸配列は、N末端からC末端の順序でアミノ酸の1文字表記により表される。アミノ酸配列のC末端はアステリスクにより表されることに留意されたい。
【
図1C】
図1:CAR構築物。scFv:単鎖可変断片(VH-(G
4S)
3リンカー-VL)。IgG4-FCヒンジ:免疫グロブリンG4のヒンジドメイン。CD28:CD28共刺激ドメイン。4-1BB:4-1BB共刺激ドメイン。3ゼータ:CD3ゼータ刺激ドメイン。2A:T2Aリボソームスキップモチーフ。tEGFR:切断型上皮成長因子受容体。(C)4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CAR。(配列番号19~配列番号29)。(A)~(E)のアミノ酸配列は、N末端からC末端の順序でアミノ酸の1文字表記により表される。アミノ酸配列のC末端はアステリスクにより表されることに留意されたい。
【
図1D】
図1:CAR構築物。scFv:単鎖可変断片(VH-(G
4S)
3リンカー-VL)。IgG4-FCヒンジ:免疫グロブリンG4のヒンジドメイン。CD28:CD28共刺激ドメイン。4-1BB:4-1BB共刺激ドメイン。3ゼータ:CD3ゼータ刺激ドメイン。2A:T2Aリボソームスキップモチーフ。tEGFR:切断型上皮成長因子受容体。(D)4-1BB共刺激ドメインを有するSLAMF7 CAR(配列番号30~配列番号40)。(A)~(E)のアミノ酸配列は、N末端からC末端の順序でアミノ酸の1文字表記により表される。アミノ酸配列のC末端はアステリスクにより表されることに留意されたい。
【
図1E】
図1:CAR構築物。scFv:単鎖可変断片(VH-(G
4S)
3リンカー-VL)。IgG4-FCヒンジ:免疫グロブリンG4のヒンジドメイン。CD28:CD28共刺激ドメイン。4-1BB:4-1BB共刺激ドメイン。3ゼータ:CD3ゼータ刺激ドメイン。2A:T2Aリボソームスキップモチーフ。tEGFR:切断型上皮成長因子受容体。(E)CD28共刺激ドメインを有するSLAMF7 CAR(配列番号41~配列番号51)。(A)~(E)のアミノ酸配列は、N末端からC末端の順序でアミノ酸の1文字表記により表される。アミノ酸配列のC末端はアステリスクにより表されることに留意されたい。
【
図2A】
図2:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroで生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、ダサチニブ(0nM)の非存在下、及び滴定用量のダサチニブ(12.5~100nM)の存在下でのCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。CAR-T細胞により媒介された特異的溶解のパーセントを非CAR改変T細胞を参照及び対照として使用して算出した。特異的溶解を12時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。A)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性を遮断する。このアッセイにおける標的細胞:K562/CD19。
【
図2B】
図2:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroで生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、ダサチニブ(0nM)の非存在下、及び滴定用量のダサチニブ(12.5~100nM)の存在下でのCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。CAR-T細胞により媒介された特異的溶解のパーセントを非CAR改変T細胞を参照及び対照として使用して算出した。特異的溶解を12時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。B)ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性を遮断する。このアッセイにおける標的細胞:K562/CD19。
【
図2C】
図2:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroで生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、ダサチニブ(0nM)の非存在下、及び滴定用量のダサチニブ(12.5~100nM)の存在下でのCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。CAR-T細胞により媒介された特異的溶解のパーセントを非CAR改変T細胞を参照及び対照として使用して算出した。特異的溶解を12時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。C)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性を遮断する。このアッセイにおける標的細胞:K562/ROR1。
【
図3A】
図3:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(6.25~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD8
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてサイトカインIFN-γ及びIL-2をELISAにより測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた各サイトカインの量を引いて決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ及びIL-2の相対量(ダサチニブの非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。他に指し示さなければ、示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。A)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞においてIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表)の産生及び分泌を遮断する。
【
図3B】
図3:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(6.25~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD8
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてサイトカインIFN-γ及びIL-2をELISAにより測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた各サイトカインの量を引いて決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ及びIL-2の相対量(ダサチニブの非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。他に指し示さなければ、示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。B)ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞においてIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表、n=2)の産生及び分泌を遮断する。
【
図3C】
図3:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(6.25~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD8
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてサイトカインIFN-γ及びIL-2をELISAにより測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた各サイトカインの量を引いて決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ及びIL-2の相対量(ダサチニブの非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。他に指し示さなければ、示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。C)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ T細胞においてIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表)の産生及び分泌を遮断する。
【
図4A】
図4:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の増殖を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(3.125~100nM)の存在下のいずれかにおいて、抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖を72時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより解析し、増殖指数を決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答した相対的な増殖(ダサチニブの非存在下でのCAR-T細胞の増殖指数に対して正規化したパーセント)を示す。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。A)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の増殖を遮断する。
【
図4B】
図4:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の増殖を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(3.125~100nM)の存在下のいずれかにおいて、抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖を72時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより解析し、増殖指数を決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答した相対的な増殖(ダサチニブの非存在下でのCAR-T細胞の増殖指数に対して正規化したパーセント)を示す。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。B)ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の増殖を遮断する。
【
図4C】
図4:ダサチニブはCD8
+ CAR-T細胞の増殖を遮断する。CD8
+ CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(3.125~100nM)の存在下のいずれかにおいて、抗原陽性(K562/CD19又はK562/ROR1)標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖を72時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより解析し、増殖指数を決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答した相対的な増殖(ダサチニブの非存在下でのCAR-T細胞の増殖指数に対して正規化したパーセント)を示す。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。C)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ T細胞の増殖を遮断する。
【
図5A】
図5:ダサチニブは、CD4
+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(3.125~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD4
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてマルチプレックスサイトカインアッセイによりサイトカインGM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-8を測定した。図表は、抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたサイトカインの量を示す。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。A)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD4
+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。
【
図5B】
図5:ダサチニブは、CD4
+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(3.125~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD4
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてマルチプレックスサイトカインアッセイによりサイトカインGM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-8を測定した。図表は、抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたサイトカインの量を示す。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。B)ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD4
+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する。
【
図6A】
図6:ダサチニブはSLAMF7 CAR-T細胞の機能を遮断する。A)CD8
+ SLAMF7 CAR-T細胞(上の図表:4-1BB共刺激ドメインを有する;下の図表:CD28共刺激ドメインを有する)の細胞溶解活性をin vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、ダサチニブ(0nM)の非存在下、及び滴定用量のダサチニブ(20~100nM)の存在下でのK562/SLAMF7に対するCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。CAR-T細胞により媒介された特異的溶解のパーセントを非CAR改変T細胞を参照及び対照として使用して算出した。特異的溶解を14時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。
【
図6B】
図6:ダサチニブはSLAMF7 CAR-T細胞の機能を遮断する。B)ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(20~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD8
+ SLAMF7 CAR-T細胞(薄灰色:4-1BB共刺激ドメインを有する;濃灰色:CD28共刺激ドメインを有する)を抗原陽性(K562/SLAMF7)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてELISAによりサイトカインIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表)を測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた各サイトカインの量を引いて決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ及びIL-2の相対量(ダサチニブの非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。*** p<0.001。
【
図6C】
図6:ダサチニブはSLAMF7 CAR-T細胞の機能を遮断する。C)ダサチニブ(0nM)の非存在下又はダサチニブ(20~100nM)の存在下のいずれかにおいて、CD4
+ SLAMF7 CAR-T細胞(薄灰色:4-1BB共刺激ドメインを有する;濃灰色:CD28共刺激ドメインを有する)を抗原陽性(K562/SLAMF7)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてELISAによりサイトカインIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表)を測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた各サイトカインの量を引いて決定した。図表は、ダサチニブの存在下で抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ及びIL-2の相対量(ダサチニブの非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。*** p<0.001。
【
図7A】
図7:ダサチニブは、CARシグナル伝達に関与するチロシンキナーゼのリン酸化を遮断する。ダサチニブの非存在下(ダサチニブ-)又はダサチニブの存在下(100nM;ダサチニブ+)のいずれかにおいて、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をRCH-ACV標的細胞と共培養した。ウエスタンブロットを行って、Lck/Srcファミリーキナーゼ(Y416)、CAR会合CD3ゼータ(Y142)、ZAP70(Y319)のリン酸化及び総タンパク質発現を決定した。A)ダサチニブ処理対ダサチニブ非処理T細胞におけるSrcファミリーキナーゼ(Y416)、CAR会合CD3ゼータ(Y142)、ZAP70(Y319)のリン酸化、並びに対応するタンパク質Lck、CD3ゼータ及びZAP70の総発現を示すウエスタンブロット。β-アクチンをローディングコントロールとして染色し、正規化のために使用している。
【
図7B】
図7:ダサチニブは、CARシグナル伝達に関与するチロシンキナーゼのリン酸化を遮断する。ダサチニブの非存在下(ダサチニブ-)又はダサチニブの存在下(100nM;ダサチニブ+)のいずれかにおいて、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をRCH-ACV標的細胞と共培養した。ウエスタンブロットを行って、Lck/Srcファミリーキナーゼ(Y416)、CAR会合CD3ゼータ(Y142)、ZAP70(Y319)のリン酸化及び総タンパク質発現を決定した。B)図表は、ダサチニブ非処理T細胞(100%)対ダサチニブ処理T細胞において相対的なリン酸化(パーセント)を示す。n=3の独立した実験において定量的ウエスタンブロット解析により得られた要約データ。* p<0.05。
【
図8】
図8:ダサチニブは、CD8
+及びCD4
+ CAR-T細胞においてGFPのNFAT媒介性の発現を遮断する。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+(左パネル)及びCD4
+(右パネル)T細胞を、NFAT誘導性のGFPレポーター遺伝子を用いて改変した。T細胞を次に、ダサチニブの存在下(100nM;ダサチニブ+)又はダサチニブの非存在下(ダサチニブ-)のいずれかで24時間、CD19陽性(Raji)又はCD19陰性(K562)標的細胞を用いて刺激し、レポーター遺伝子の誘導をフローサイトメトリーにより解析した。図表は、FITCチャネルにおいてGFP(緑色蛍光タンパク質)について得られた平均蛍光強度(MFI)を示す。結果は、n=3の独立した実験において得られた要約データを示す。** p<0.01、*** p<0.001。
【
図9】
図9:ダサチニブを用いる遮断はCAR-T細胞の生存率を減少させない。ダサチニブの非存在下(ダサチニブ-)又はダサチニブの存在下(100nM、ダサチニブ+)のいずれかにおいて、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をCD19陽性標的細胞(K562/CD19)と24時間共培養した。1つの設定において、共培養[ダサチニブ(+)]の開始の1時間後にダサチニブを培地に加えた。共培養の終了時に、生T細胞(アネキシン-V
-/7-AAD
-)、アポトーシスT細胞(アネキシン-V
+/7-AAD
-)、及び死T細胞(アネキシン-V
+/7-AAD
+)のパーセンテージをフローサイトメトリーにより決定した。図表は、n=3の独立した実験において得られた生、アポトーシス及び死T細胞の平均パーセンテージを示す。* p<0.05。
【
図10A】
図10:ダサチニブは活性化CD8
+ CAR-T細胞の機能を遮断する。A)ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現する活性化CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する。
図2に示すように、CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。ダサチニブ(100nM)を細胞傷害性アッセイの開始時(0h)又は細胞傷害性アッセイの開始の1時間後(1h)のいずれかにおいて加えた。結果は、n=3の独立した実験において得られた要約データを示す。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
【
図10B】
図10:ダサチニブは活性化CD8
+ CAR-T細胞の機能を遮断する。B)ダサチニブは、活性化CD8
+ CAR-T細胞のサイトカインの産生及び分泌を遮断する。
図3に示すように、サイトカインの産生及び分泌をELISAにより解析した。ダサチニブ(100nM)を共培養の開始時(0h)又は共培養の開始の2時間後(+2h)のいずれかにおいて加えた。結果は、n=3の独立した実験において得られた要約データを示す。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
【
図10C】
図10:ダサチニブは活性化CD8
+ CAR-T細胞の機能を遮断する。C)ダサチニブは、活性化CD8
+ CAR-T細胞の増殖を遮断する。
図4に示すように、増殖をCFSE色素の希釈により解析した。ダサチニブ(100nM)を共培養の開始時(0h)、又は共培養の開始の1時間後(+1h)、3時間後(+3h)若しくは48時間後(+48h)のいずれかにおいて加えた。結果は、n=3の独立した実験において得られた要約データを示す。* p<0.05、*** p<0.001。
【
図11】
図11:ダサチニブは、逐次的な刺激の間にCAR-T細胞活性化を予防する。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+(左パネル)及びCD4
+(右パネル)T細胞を、NFAT誘導性のGFPレポーター遺伝子を用いて改変した。T細胞を次に24時間毎にCD19陽性(Raji)標的細胞を用いて刺激した。ダサチニブをアッセイ開始時(黒丸)又はアッセイ開始の1時間後(dasa +1h、灰色の丸)のいずれかにおいて加えた後、新たな標的細胞と同時に24時間毎に培地に加えた。非処理のCAR T細胞を比較(非処理、白丸)のために含めた。レポーター遺伝子の誘導をフローサイトメトリーにより解析した。図表は、FITCチャネルにおいてGFP(緑色蛍光タンパク質)について得られた平均蛍光強度(MFI)を示す。示したデータは、異なる健常ドナーからのT細胞を用いたn=2(CD8
+)及びn=3の実験(CD4
+)において得られた平均値+SDである。* P≦0.05、** P≦0.01、*** P≦0.001、二元配置分散分析による。
【
図12A】
図12:CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの短期曝露後に急速且つ完全に可逆的である。CAR-T細胞の細胞溶解活性の遮断は、ダサチニブへの短期間、2時間の曝露後に急速且つ完全に可逆的である。
図2に示すように、CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。ダサチニブ(100nM)を細胞傷害性アッセイの開始時(-2h)に加えた後、洗浄除去した(0h)。ダサチニブ(0nM)に曝露しなかったCD8
+ CAR-T細胞は参照として働いた。***p<0.001。A)4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞を用いて行ったアッセイ。示したデータは、n=3の独立した実験において得られた要約データである。
【
図12B】
図12:CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの短期曝露後に急速且つ完全に可逆的である。CAR-T細胞の細胞溶解活性の遮断は、ダサチニブへの短期間、2時間の曝露後に急速且つ完全に可逆的である。
図2に示すように、CD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性をin vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。ダサチニブ(100nM)を細胞傷害性アッセイの開始時(-2h)に加えた後、洗浄除去した(0h)。ダサチニブ(0nM)に曝露しなかったCD8
+ CAR-T細胞は参照として働いた。***p<0.001。B)CD28共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞を用いて行ったアッセイ。示したデータは、n=2の独立した実験において得られた要約データである。
【
図13】
図13:ダサチニブへの長期曝露はCAR-T細胞の生存率を減少させない。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞を、ダサチニブ[100nM、(+)]を含有する培養培地中で維持した。共培養の前[d0(-)]、2日後(d2)及び8日後(d8)に、生T細胞(アネキシン-V
-/7-AAD
-)、アポトーシスT細胞(アネキシン-V
+/7-AAD
-)、及び死T細胞(アネキシン-V
+/7-AAD
+)のパーセンテージをフローサイトメトリーにより決定した。非処理のCD8
+ CAR-T細胞[(-)]を言及した日において比較のために染色した。図表は、1人の健常ドナーからのデータにおいて得られた生、アポトーシス及び死T細胞の平均パーセンテージを示す。
【
図14A】
図14:CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。A)CAR-T細胞の細胞溶解活性の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞の細胞溶解活性の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をダサチニブ(100nM)を含有する培養培地中で維持した。1日後(左パネル)及び7日後(右パネル)、CD8
+ CAR-T細胞のアリコートを洗浄し、
図2に示すように、in vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてそれらの細胞溶解活性を解析した。細胞溶解活性の遮断がダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的であるかどうかを解析するために、細胞傷害性アッセイの開始時に100nMの最終濃度までダサチニブを共培養物に加えた。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。レジェンドの説明:dasaなし/dasaなし:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露せず、ダサチニブは細胞傷害性アッセイの間に存在しない。dasaなし/dasa:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露せず、ダサチニブは細胞傷害性アッセイの間に存在する。dasa/dasaなし:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露し、ダサチニブは細胞傷害性アッセイの間に存在しない。dasa/dasa:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露し、ダサチニブは細胞傷害性アッセイの間に存在する。*** p<0.001。
【
図14B】
図14:CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。B)CAR-T細胞のサイトカインの産生及び分泌の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞のサイトカインの産生及び分泌の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をダサチニブ(100nM)を含有する培養培地中で維持した。1日後及び7日後、CD8
+ CAR-T細胞のアリコートを洗浄し、
図3に示すように、サイトカインの産生及び分泌を解析した。サイトカインの産生及び分泌の遮断がダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的であるかどうかを解析するために、共培養の開始時に100nMの最終濃度までダサチニブを加えた。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。レジェンドの説明:Dasa前-:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露しない。Dasa前1:ダサチニブに1日間曝露する。Dasa前7:ダサチニブに7日間曝露する。Dasa間-:ダサチニブはサイトカインアッセイのための共培養の間に存在しない。Dasa間+:ダサチニブはサイトカインアッセイのための共培養の間に存在する。*** p<0.001。
【
図14C】
図14:CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。C)CAR-T細胞の増殖の遮断はダサチニブへの長期曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的であり、CAR-T細胞の増殖の遮断はダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的である。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をダサチニブ(100nM)を含有する培養培地中で維持した。1日後及び7日後、CD8
+ CAR-T細胞のアリコートを洗浄し、
図4に示すように、増殖を解析した。増殖の遮断がダサチニブへの長期曝露後に依然として効果的であるかどうかを解析するために、共培養の開始時に100nMの最終濃度までダサチニブを加えた。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。レジェンドの説明:Dasa前-:1日又は7日の培養の間にダサチニブに曝露しない。Dasa前1:ダサチニブに1日間曝露する。Dasa前7:ダサチニブに7日間曝露する。Dasa間-:ダサチニブは増殖アッセイのための共培養の間に存在しない。Dasa間+:ダサチニブは増殖アッセイのための共培養の間に存在する。** p<0.01、*** p<0.001。
【
図15A】
図15:ダサチニブは、in vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカイン分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する。A)実験の設定及び処置スケジュール:NSGマウスにホタルルシフェラーゼ形質導入Raji腫瘍細胞を-7日目にi.v.尾静脈注射により接種し、ダサチニブをi.p.注射により6時間毎に0日目の0時間時から1日目の30時間時まで(合計6用量)投与した。CAR-T細胞(すなわち、CD8
+及びCD4
+ CD19 CAR/4-1BB T細胞、総用量:5×10e6;CD8:CD4比=1:1)又は対照非形質導入T細胞を0日目の3時間時に投与した。生物発光イメージングを-1日目、1日目及び3日目に行って腫瘍負荷を決定した。1日目の33時間時、及び3日目に、マウスのコホートを屠殺し、末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(SP)を分析した。
【
図15B】
図15:ダサチニブは、in vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカイン分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する。B)マウス血清中のサイトカインレベルを1日目の33時間時及び3日目に得られた試料においてマルチプレックスサイトカイン分析により決定した。図表は、非形質導入対照T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えなかった(対照/-);CD19 CAR-T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えなかった(CAR/-);CD19 CAR-T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えた(CAR/+)マウスのコホートにおいて得られたそれぞれGM-CSF、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-5及びIL-6の濃度を示す。* p<0.05;** p<0.01。
【
図15C】
図15:ダサチニブは、in vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカイン分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する。C)Raji腫瘍負荷を-1日目、1日目及び3日目に生物発光イメージングにより決定した。図表は、非形質導入対照T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えなかった(対照/-);非形質導入対照T細胞及びダサチニブを与えた(対照/+);CD19 CAR-T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えなかった(CAR/-);CD19 CAR-T細胞を用いて処置され、且つダサチニブを与えた(CAR/+)マウスのコホートにおいて得られた、-1日目と1日目との間(黒バー)、及び1日目と3日目との間(灰色バー)の生物発光シグナルの平均倍数変化を示す。** p<0.01;*** p<0.001。
【
図15D】
図15:ダサチニブは、in vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカイン分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する。D)末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(Sp)中の養子導入されたCAR改変及び対照非形質導入T細胞の存在を1日目及び3日目にフローサイトメトリーにより解析した。図表は、生(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとしてCAR改変及び対照非形質導入T細胞(ヒトCD3
+/ヒトCD45
+として同定される)の頻度を示す。レジェンドの説明:対照/非処置:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;対照/処置:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた;CAR/非処置:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;CAR/処置:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた。
【
図15E】
図15:ダサチニブは、in vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカイン分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する。E)養子導入されたCD19 CAR/4-1BB改変及び非形質導入対照T細胞はまた、NFAT誘導性のGFPレポーター遺伝子を備えていた。GFPレポーター遺伝子の発現をCAR改変及び対照T細胞において骨髄(下の図表)及び脾臓(上の図表)においてフローサイトメトリーにより解析した。図表は、CAR改変及び対照非形質導入T細胞(ヒトCD3
+/ヒトCD45
+として同定される)におけるGFPの平均蛍光強度(MFI)を示す。レジェンドの説明:対照/非処置:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;対照/処置:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた;CAR/非処置:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;CAR/処置:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた。*p<0.05;** p<0.01;*** p<0.001。
【
図16A】
図16:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/4-1BB-T細胞を機能オフ状態に休止させる。A)実験の設定及び処置スケジュール:NSGマウスにホタルルシフェラーゼ形質導入Raji腫瘍細胞をi.v.尾静脈注射により0日目に接種した。CAR-T細胞(すなわち、CD8
+及びCD4
+ CD19 CAR/4-1BB T細胞、総用量:5×10e6;CD8:CD4比=1:1)又は対照非形質導入T細胞を7日目に投与した。ダサチニブを6時間毎に10日目~12日目(計8用量)に投与して、機能オン・オフ・オンシーケンスを生成した。生物発光イメージング及び出血を7、10、12、14、17日目に行い、生物発光イメージングをその後に週1回(dx)続けて、腫瘍負荷を決定した。
【
図16B】
図16:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/4-1BB-T細胞を機能オフ状態に休止させる。B)経時的な腹側平均ルミネッセンスとして測定した腫瘍負荷の進展。上の図表は個々のマウスの進展を示し、下の図表は各処置コホートの平均BLIを示す。レジェンドの説明:対照(オン/オフ/オン):マウスは非形質導入対照T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR(オン):マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブは与えられなかった;CAR(オン/オフ/オン):マウスはCD19 CAR-T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた。
【
図16C】
図16:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/4-1BB-T細胞を機能オフ状態に休止させる。C)図表は、非形質導入対照T細胞及びダサチニブを用いて(対照(オン/オフ/オン));CD19 CAR-T細胞を用い、且つダサチニブを用いずに(CAR(オン));CD19 CAR-T細胞及びダサチニブを用いて(CAR(オン/オフ/オン)処置されたマウスのコホートにおいて得られた、指し示した日の間の腫瘍負荷の相対変化を示す。** p<0.01;*** p<0.001。
【
図16D】
図16:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/4-1BB-T細胞を機能オフ状態に休止させる。D)マウス血清中のサイトカインレベルを10日目、12日目、14日目及び17日目に得られた試料においてマルチプレックスサイトカイン分析により決定した。図表はIFN-γの濃度を示し、左の図表は平均IFNγ及び個々のデータポイントを示す。右の図表は各処置コホートにおける各マウスの進展を示す。* p<0.05;** p<0.01。レジェンドの説明:対照(オン/オフ/オン):マウスは非形質導入対照T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR(オン):マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブは与えられなかった;CAR(オン/オフ/オン):マウスはCD19 CAR-T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた。
【
図17A】
図17:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/CD28-T細胞を機能オフ状態に休止させる。A)実験の設定及び処置スケジュール:NSGマウスにホタルルシフェラーゼ形質導入Raji腫瘍細胞をi.v.尾静脈注射により0日目に接種した。CAR-T細胞(すなわち、CD8
+及びCD4
+ CD19 CAR/CD28 T細胞、総用量:5×10e6;CD8:CD4比=1:1)又は対照非形質導入T細胞を7日目に投与した。ダサチニブを6時間毎に10日目~12日目(計8用量)に投与し、機能オン・オフ・オンシーケンスを生成した。生物発光イメージング及び出血を7、10、12、14、17日目に行い、生物発光イメージングをその後に週1回(dx)続けて、腫瘍負荷を決定した。
【
図17B】
図17:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/CD28-T細胞を機能オフ状態に休止させる。B)経時的な腹側平均ルミネッセンスとして測定した腫瘍負荷の進展。左の図表は各処置コホートのメジアンBLIを示し、右の図表は個々のマウスの進展を示す。レジェンドの説明:CAR/Dasa:マウスはCD19/CD28 CAR-T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR/DMSO:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブは与えられなかったが、10日目~12日目にビヒクルの注射を与えられた;対照/Dasa:マウスは非形質導入対照T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR/-:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられたが、注射は与えられなかった。
【
図17C】
図17:ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19 CAR/CD28-T細胞を機能オフ状態に休止させる。C)図表は、レジェンドにしたがって処置されたマウスのコホートにおいて得られた、指し示した日の間の腫瘍負荷の相対変化を示す。レジェンドの説明:対照/Dasa:マウスは非形質導入対照T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR/Dasa:マウスはCD19/CD28 CAR-T細胞及び10日目~12日目にダサチニブを与えられた;CAR/DMSO:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブは与えられなかったが、10日目~12日目にビヒクルの注射を与えられた;CAR/-:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられたが、注射は与えられなかった。** p<0.01;*** p<0.001。
【
図18A】
図18:ダサチニブは、デキサメタゾンと比較してCAR-T細胞機能に対して優れた制御を発揮する。A)ダサチニブは、デキサメタゾンと比較してCAR-T細胞による細胞溶解活性に対して優れた制御を発揮する。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性をin vitroでの生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、デキサメタゾン(0μM)の非存在下、及び滴定用量のデキサメタゾン(0.1~100μM)の存在下でのCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す(上の図表)。一部の実験において、T細胞を指し示した用量のデキサメタゾンを用いて24時間前処理し、上記のように細胞傷害性アッセイを行った(下の図表)。0.1μMのダサチニブの存在下でのCAR-T細胞の細胞溶解活性を参照として比較のために示す。CAR-T細胞により媒介された特異的溶解のパーセントを非特異的対照T細胞を使用して算出し、10時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、*** p<0.001。
【
図18B】
図18:ダサチニブは、デキサメタゾンと比較してCAR-T細胞機能に対して優れた制御を発揮する。B)ダサチニブは、デキサメタゾンと比較してCAR-T細胞におけるサイトカインの産生及び分泌に対して優れた制御を発揮する。デキサメタゾン(0μM)の非存在下又はデキサメタゾン(0.1~100μM)の存在下のいずれかにおいて、CD8
+ CAR-T細胞を抗原陽性(K562/CD19)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてサイトカインIFN-γ及びIL-2をELISAにより測定した。抗原に応答して特異的に産生された各サイトカインの量を、刺激なしで得られた量をK562/CD19抗原陽性標的細胞を用いた刺激後に得られた量から引くことにより決定した。図表は、抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答して特異的に産生されたIFN-γ(上の図表、灰色バー)及びIL-2(下の図表、灰色バー)の相対量(処理の非存在下で放出されたサイトカインの量に対して正規化したパーセント)を示す。一部の実験において、T細胞を指し示した用量のデキサメタゾンを用いて24時間前処理した(黒バー)。0.1μMのダサチニブの存在下でのCAR-T細胞のサイトカイン産生を参照として比較のために示す。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。* p<0.05、** p<0.01。
【
図18C】
図18:ダサチニブは、デキサメタゾンと比較してCAR-T細胞機能に対して優れた制御を発揮する。C)ダサチニブは、CD8
+ CAR-T細胞の増殖に関してデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞の増殖に対して優れた制御を発揮する。CD8
+ CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、デキサメタゾン(0μM)の非存在下又はデキサメタゾン(0.1~100μM)の存在下のいずれかにおいて、抗原陽性(K562/CD19)標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖を72時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより解析し、増殖指数を決定した。図表は、抗原陽性標的細胞を用いた刺激に応答した相対的な増殖(処理の非存在下でのCAR-T細胞の増殖指数に対して正規化したパーセント)を示す(灰色バー)。一部の実験において、T細胞を指し示した用量のデキサメタゾンを用いて24時間前処理した(黒バー)。0.1μMのダサチニブの存在下でのCAR-T細胞の増殖を参照として比較のために示す。示したデータは、n=3のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。*** p<0.001。
【
図19A】
図19:CAR-T細胞の機能に対するダサチニブ及び他の臨床的に承認されたチロシンキナーゼ阻害剤の影響。A)細胞溶解活性:4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性を生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、100nMのダサチニブ、5.3μMのイマチニブ、4.2μMのラパチニブ及び3.6μMのニロチニブの存在下、又は対照として非処理での細胞溶解活性を示す。CAR-T細胞により媒介された抗原陽性標的細胞(RCH-ACV)の特異的溶解のパーセントを非特異的対照T細胞を参照として使用して算出し、8時間まで1時間間隔で決定した。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。
【
図19B】
図19:CAR-T細胞の機能に対するダサチニブ及び他の臨床的に承認されたチロシンキナーゼ阻害剤の影響。B)IFN-γ産生:4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ CAR-T細胞を、100nMのダサチニブ、5.3μMのイマチニブ、4.2μMのラパチニブ及び3.6μMのニロチニブの存在下、又は対照として非処理で、抗原陽性(RCH-ACV)標的細胞と共培養した。20時間のインキュベーション後にこれらの共培養物から得られた上清においてELISAによりIFN-γを測定した。抗原に応答して特異的に産生されたIFN-γの量を、刺激なしで得られた量を抗原陽性標的細胞を用いて得られた量から引くことにより決定した。示したデータは、n=2のドナーから調製したCAR-T細胞株を用いて独立した実験において得られた要約データである。
【
図19C】
図19:CAR-T細胞の機能に対するダサチニブ及び他の臨床的に承認されたチロシンキナーゼ阻害剤の影響。C)増殖:4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8
+ T細胞をCFSEを用いて標識し、100nMのダサチニブ、5.3μMのイマチニブ、4.2μMのラパチニブ及び3.6μMのニロチニブの存在下、又は対照として非処理で、抗原陽性(RCH-ACV)標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖を72時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーにより解析した。ヒストグラムの下の表は、それぞれ≧3/2/1の細胞分裂を起こしたCAR-T細胞のパーセンテージを提供する。
【
図20】
図20:CAR-T細胞の細胞溶解活性に対するダサチニブ及び他のSrcキナーゼ阻害剤の影響。4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解活性を生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいて解析した。図表は、滴定用量(1~1000nM)のサラカチニブ、ボスチニブ、PP1阻害剤又はダサチニブの存在下でのCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す。非形質導入対照T細胞と比較した抗原陽性標的細胞(K562/CD19)の特異的溶解のパーセントを共培養の4時間後に決定した。
【
図21A】
図21:ダサチニブへの間欠的な曝露はin vivoにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大する。A)実験の設定及び処置スケジュール:NSGマウスにホタルルシフェラーゼ形質導入Raji腫瘍細胞をi.v.尾静脈注射により0日目に接種した。CAR-T細胞(すなわち、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+及びCD4
+ T細胞、総用量:5×10e6;CD8:CD4比=1:1)又は対照非形質導入T細胞を7日目にi.v.尾静脈注射により投与した。ダサチニブをi.p.注射により24時間毎にd7からd11まで投与した後、i.p.注射により36時間毎にd12及びd14に投与した(計7用量)。連続的な生物発光イメージングを行って腫瘍負荷を決定した。15日目に、マウスを屠殺し、末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(SP)を分析した。
【
図21B】
図21:ダサチニブへの間欠的な曝露はin vivoにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大する。B)生物発光イメージングにより評価した腫瘍負荷。図表は、各々の処置コホートにおける各マウスの背側身体全体を包含する目的の領域から得られたp/s/cm
2/srでの平均輝度として背側生物発光シグナルを示す。各コホートは2匹の動物からなる。レジェンドの説明:対照/-:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;対照/+:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた;CAR/-:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;CAR/+:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた。
【
図22A】
図22:ダサチニブへの間欠的な曝露は、in vivoにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を増大する。実験の設定及び処置スケジュールは
図21Aにおけるものと同じである。末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(SP)中の養子導入されたCD19 CAR改変及び対照非形質導入T細胞の存在をフローサイトメトリーにより解析した。A)ゲーティング戦略並びにCD19 CAR-T細胞を与えられたがダサチニブを与えられなかった処置コホート(CD19 CAR、上パネル)、並びにCD19 CAR-T細胞及びダサチニブを与えられた処置コホート(下パネル)からの例示的なマウスにおいて得られたデータ。
【
図22B】
図22:ダサチニブへの間欠的な曝露は、in vivoにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を増大する。実験の設定及び処置スケジュールは
図21Aにおけるものと同じである。末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(SP)中の養子導入されたCD19 CAR改変及び対照非形質導入T細胞の存在をフローサイトメトリーにより解析した。B)図表は、生(7-AAD
-)細胞のパーセンテージとしてCAR改変及び対照非形質導入T細胞(ヒトCD3
+/ヒトCD45
+として同定される)の頻度を示す。各コホートは2匹の動物からなる。レジェンドの説明:対照/-:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;対照/+:マウスは非形質導入対照T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた;CAR/-:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった;CAR/+:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた。
【
図23】
図23:ダサチニブを用いる間欠的な処置はCAR-T細胞上のPD1の発現を減少させる。実験の設定及び処置スケジュールは
図21Aにおけるものと同じである。図表は、抗PD1 mAbを用いた染色後に得られた平均蛍光強度(MDI)としてCD19 CAR/4-1BB T細胞上のPD-1の発現を示す。各コホートは4匹の動物からなる。** p<0.01;*** p<0.001。レジェンドの説明:CAR/-:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられなかった(黒バー);CAR/+:マウスはCD19 CAR-T細胞を与えられ、且つダサチニブを与えられた(灰色バー)。
【
図24】
図24:ダサチニブにより遮断されるCAR-T細胞は、iCasp9自殺遺伝子を用いるその後の除去に感受性である。4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞をiCaspase9自殺遺伝子を用いて改変した。100nMのダサチニブの非存在下又は存在下、及びiCaspase誘導性薬物の非存在下又は存在下において、50U/mlのIL-2を添加した培地中でT細胞を培養した。24時間後、細胞を抗CD3 mABを用いて標識し、iCasp+ T細胞の存在についてフローサイトメトリーにより解析した。図表は、CAR-T細胞のパーセンテージとしてiCasp
+細胞のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
遺伝子改変CAR-T細胞を用いる養子免疫療法は、医学において急速に進化しつつあるトランスレーショナルリサーチ分野である。CD19特異的CAR-T細胞は、末期ステージの白血病及びリンパ腫患者において永続性のある完全寛解を誘導することが実証されている[2]、[7]、[10]、[19]、[20]。CAR-T細胞療法と関連付けられる主要な懸念は、急性及び慢性の潜在的に生命を脅かす副作用の発生、並びにこれらの操作されたT細胞を患者に注入するとその機能及び運命を制御できないことに関する。
【0021】
CAR-T細胞療法の副作用を治療するための現行の戦略としては、CRSの臨床的な出現と関連付けられているIL-6のようなサイトカインを中和する試み、CAR-T細胞の活性を低減するためのステロイドの使用、並びにCAR-T細胞を除去するための自殺遺伝子及び枯渇マーカーの組込みが挙げられる。これらの全ての戦略は大きな短所を有しており、受容体へのサイトカインの結合を中和又は予防する試みは、CAR-T細胞自体に対して直接的な効果を発揮しない症候性治療であり、ステロイドは、CAR-T細胞に対して不完全な制御のみを発揮し、CRS及び他の副作用を予防又は停止することができず、自殺遺伝子及び枯渇マーカーは、CAR-T細胞を除去することを目的とし、抗腫瘍効果も終了させ、これは患者及び医師により所望されない。現在知られているいずれの戦略も、患者又は治療医が患者の身体においてCAR-T細胞の機能に対して精密な、時間通りの制御を発揮することを可能としない。
【0022】
本発明によれば、患者の身体においてCAR-T細胞の機能を制御し、且つ患者及び医師がCAR-T細胞の注入後にCAR-T細胞に対する精密な、時間通りの「遠隔制御」を発揮することを可能とするためにダサチニブが使用される。
【0023】
本発明によれば、ダサチニブは、CARシグナル伝達及び次いで起こるCAR-T細胞機能に対して用量依存的な滴定可能な阻害効果を発揮する。ダサチニブの用量に依存して、CAR-T細胞の機能は、部分的又は完全に遮断され得る。CAR-T細胞機能のダサチニブ誘導性の遮断は、患者の身体において毒性を軽減又は予防するため、及びCAR-T細胞の機能を制御するために活用され得る(実施例2を参照)。
【0024】
本発明によれば、ダサチニブによるCAR-T細胞の機能的な遮断は、急速な即時の始まりを有する。ダサチニブがある特定の閾値より高い濃度において提供される場合に遮断は完全である(すなわち、細胞溶解活性、サイトカイン分泌及びCAR-T細胞の増殖は完全に阻害される)。この閾値より低い場合、ダサチニブはCAR-T細胞機能の部分的な遮断を発揮する。ダサチニブ誘導性のCAR-T細胞阻害/遮断の機序としては、Lckのような内因性Srcキナーゼのリン酸化への干渉、並びにNFATのような転写因子の形成及び機能への干渉を通じたCARシグナル伝達の遮断が挙げられるがそれに限定されない(実施例2を参照)。
【0025】
本発明によれば、ダサチニブは、CD8+ T細胞及びCD4+ T細胞の両方においてCAR-T細胞機能を阻害及び遮断することができ、且つ、Lckのような内因性Srcキナーゼ、及びNFATのような転写因子を通じたシグナル伝達を少なくとも部分的に使用する任意の合成の受容体構築物に対して普遍的に応用可能である(実施例2を参照)。
【0026】
本発明は、休止状態の非活性化CAR-T細胞の活性化の予防を可能とするだけでなく、既に活性化してそれらのエフェクター機能を発揮中のCAR-T細胞の機能を遮断する(実施例3を参照)。CRS及び副作用の臨床症状の臨床診断時に、患者の身体中のCAR-T細胞は既に活性化していることを考慮するとこれは特に重要である。
【0027】
本発明によれば、CAR-T細胞機能に対するダサチニブの遮断効果は急速且つ完全に可逆的である(実施例5を参照)。ダサチニブへのCAR-T細胞の曝露は、それらの生存率を低減せず、且つその後に抗腫瘍機能を再開するそれらの能力を劣化させない(実施例5を参照)。これは決定的に重要であり、且つステロイド(CAR-T細胞の生存率を低減し、且つその後の機能を劣化させる)(実施例9を参照)並びにCAR-T細胞を終了させる自殺遺伝子/枯渇マーカー(実施例13を参照)から区別する特徴である。本発明によれば、ダサチニブは、全てのCAR-T細胞機能(すなわち、細胞溶解活性、IFN-γ及びIL-2といったサイトカイン分泌、増殖)に対して完全な制御を発揮する一方、ステロイドはIL-2分泌及び増殖にのみ干渉し、細胞溶解又はIFN-γの分泌を阻害しない(実施例2及び9を参照)。
【0028】
本発明によれば、CAR-T細胞に対するダサチニブの遮断効果は、ダサチニブの濃度がある特定の閾値より高く維持される限り効果的であり、患者又は治療医により所望に応じて延長し及び永続させることができる(実施例5を参照)。
【0029】
本発明によれば、ダサチニブは、CAR-T細胞療法の間又は後に起こる副作用を予防、軽減又は治療するために使用され得る。特に、ダサチニブは、サイトカイン放出症候群を軽減、予防及び/又は治療するために使用され得る(実施例6を参照)。
【0030】
本発明によれば、ダサチニブは、患者の身体中で所望の濃度(例えば、血清レベル)を達成するために好適な任意の方法で投与され得る。非限定的な例として、これには、任意の種類のポンプ、注入、注射及び/又は経口投与の使用が含まれる。
【0031】
本発明によれば、CAR-T細胞機能の阻害及び/又は遮断はまた、Lckのような内因性Srcキナーゼ、及びNFATのような転写因子に干渉する他の化合物を用いて達成されてもよい(実施例10を参照)。
【0032】
本発明によれば、ダサチニブはまた、CAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大するために使用され得る。実施例11に示すように、ダサチニブへの間欠的な曝露は、腫瘍細胞との遭遇後のCAR-T細胞の増加した生存率に繋がる。更に、ダサチニブへのCAR-T細胞の間欠的な曝露は、in vivoにおいて養子導入後の優れた生着、増殖及び持続に繋がる。更に、ダサチニブへのCAR-T細胞の間欠的な曝露は、in vivoにおいて優れた抗腫瘍機能に繋がる。
【0033】
本発明によれば、ダサチニブはまた、PD-1が挙げられるがそれに限定されないCAR-T細胞上のチェックポイント分子の発現を減少させるために使用され得る(実施例12を参照)。したがって、本発明はまた、CAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大するためのダサチニブの使用を含む。
【0034】
ダサチニブがCAR-T細胞の機能に干渉し、それを完全に遮断できるという発見は予想外であり、予見できないものであった。CARは、非遺伝子改変ヒトT細胞において起こるアミノ酸配列及びタンパク質のドメインを含む合成のデザイナー受容体である。しかしながら、これらのアミノ酸配列及びドメインは新たな人工的な方法で組み合わせられ、これらのドメインがCARにおいてどのように機能し、シグナルを生成/伝達するのかについての知識は現在存在しないか、又は非常に限られたものに過ぎない。
【0035】
ダサチニブがダサチニブへの間欠的な曝露後にCAR-T細胞の機能を増大し、且つCAR-T細胞上のPD1の発現を減少させることができるという発見は予想外であり、予見できないものであった。むしろ、ダサチニブへのCAR-T細胞の曝露は効果を有しないか、又は毒性効果を発揮すると予想されたであろう。
【0036】
定義及び実施形態
以下において他に定義されなければ、本発明において使用される用語は、当業者に公知の一般的な意味にしたがって理解される。
【0037】
本明細書において引用される各刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、本発明に矛盾しない限りにおいて参照することにより全体が全ての目的のために組み込まれる。参考文献は、角括弧中の参照番号及び「参考文献」のセクションにおいて提供される対応する参照文献の詳細により指し示される。
【0038】
本明細書において言及される「キナーゼ阻害剤」は、1つ又は複数のキナーゼに結合して前記キナーゼに対して阻害効果を発揮することにより前記キナーゼを阻害する分子性化合物である。キナーゼ阻害剤は、1つ又は複数のキナーゼ種に結合することができ、該結合により1つ又は複数のキナーゼのキナーゼ活性が低減される。本明細書において言及されるキナーゼ阻害剤は典型的には小分子であり、小分子は、低分子量(典型的には1kDa未満)及び小サイズ(典型的には1nmより小さい直径)の分子性化合物である。
【0039】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤はチロシンキナーゼ阻害剤である。好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤はSrcキナーゼ阻害剤である。より好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤はLck阻害剤である。非常に好ましい実施形態では、キナーゼ阻害剤はダサチニブである。
【0040】
「KD」又は「KD値」という用語は、当該技術分野において公知のように平衡解離定数に関する。本発明の文脈において、これらの用語は、特定の目的の抗原(例えば、CD19、ROR1、BCMA、又はFLT3)に関する標的化剤(例えば、CAR T細胞)の平衡解離定数に関し得る。平衡解離定数は、複合体(例えば、抗原-標的化剤複合体)がその成分(例えば、抗原及び標的化剤)に可逆的に解離する傾向の指標である。KD値を決定する方法は当該技術分野において公知である。
【0041】
「チロシンキナーゼ阻害剤」(a tyrosine kinase inhibitor)等の用語は、キナーゼ阻害剤の存在を指すが、追加のキナーゼ阻害剤、例えば、1、2、3又はより多くの追加のキナーゼ阻害剤が存在し得る可能性を除外しないことが理解されるべきである。一実施形態では、本発明によれば、1つのキナーゼ阻害剤のみが使用される。
【0042】
一実施形態では、キメラ抗原受容体は、抗原、好ましくはがん抗原、より好ましくはがん細胞表面抗原に結合することができる。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、がん抗原の細胞外ドメインに結合することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、免疫細胞、好ましくはT細胞において発現される。本発明の好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞において発現され、且つ前記T細胞が抗原発現がん細胞に高い特異性で特異的に結合して、前記がん細胞に対して成長阻害効果、好ましくは細胞傷害効果を発揮することを可能とする。
【0044】
本明細書に記載される「養子免疫療法」は、がんの標的化された治療のための患者への免疫細胞の移入を指す。細胞は、患者又は別の個体を起源としてもよい。養子免疫療法において、免疫細胞、好ましくはT細胞は、典型的には、個体、好ましくは患者から抽出され、in vitroで遺伝子改変及び培養され、且つ患者に投与される。養子免疫療法は、標的化された成長阻害、好ましくは細胞傷害性、従来の治療と共に起こる非腫瘍細胞への非標的化毒性がより低い腫瘍細胞の処置を可能とする点で有利である。
【0045】
本発明による好ましい実施形態では、T細胞は、がんを有する患者から単離され、前記がんにより発現される抗原に結合することができるキメラ抗原受容体をコードする遺伝子移入ベクターを形質導入され、且つ前記がんを治療するために患者に投与される。好ましい実施形態では、T細胞はCD8+ T細胞又はCD4+ T細胞である。
【0046】
本明細書において使用されるようなチロシンキナーゼ阻害剤との関連における「間欠的な投与」又は「間欠的に投与される」という用語は、患者が治療ウィンドウ内のチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態と患者が治療ウィンドウより低いチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態との間の間欠的な変化を引き起こす投与レジームにおける前記チロシンキナーゼ阻害剤の使用を指す。所与のチロシンキナーゼ阻害剤の治療ウィンドウは、当該技術分野において公知の任意の方法により決定され得る。代替的に、本明細書において使用されるようなチロシンキナーゼ阻害剤との関連における「間欠的な投与」又は「間欠的に投与される」という用語は、患者がチロシンキナーゼの完全な阻害を引き起こすチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態と患者がチロシンキナーゼの部分的な阻害を引き起こすチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態との間の間欠的な変化、又は患者がチロシンキナーゼの完全な阻害を引き起こすチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態と患者がチロシンキナーゼの阻害を引き起こさないチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態との間の間欠的な変化、又は患者がチロシンキナーゼの部分的な阻害を引き起こすチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態と患者がチロシンキナーゼの阻害を引き起こさないチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを有する状態との間の間欠的な変化を引き起こす投与レジームにおける前記チロシンキナーゼ阻害剤の使用を指す。そのような阻害は、当該技術分野において公知の任意の方法により、例えば、適切な酵素アッセイを使用してチロシンキナーゼ自体の活性を測定することにより、又は前記キナーゼの下流の細胞機能を測定することにより、測定され得る。本発明によれば、部分的な阻害は、阻害剤の非存在下の状況と比較して、少なくとも25%から最大で75%までの阻害を指す。本明細書において使用される場合、「阻害しない」は、阻害剤の非存在下の状況と比較して、25%未満、好ましくは10%未満の阻害を指す。本発明によれば、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の場合、25%未満、好ましくは10%未満の阻害は、好ましくは、前記Tリンパ球の細胞傷害性溶解、サイトカイン分泌、及び増殖の阻害であり得る。本発明によれば、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の場合、少なくとも25%であるが75%以下の阻害は、好ましくは、前記Tリンパ球の細胞傷害性溶解、サイトカイン分泌、及び増殖の阻害であり得る。本発明によれば、ダサチニブの間欠的な投与は、好ましくは、ダサチニブの血清レベルが50nMより高い状態とダサチニブの血清レベルが50nM又は50nMより低い状態との間の間欠的な変化を引き起こす。間欠的な投与は、好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤の消失半減期より長い投与間隔を使用することにより、より好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤の消失半減期の2倍より長い投与間隔を使用することにより、更により好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤の消失半減期の3倍、更により好ましくは4倍、更により好ましくは5倍より長い投与間隔を使用することにより、達成されてもよい。例えば、ダサチニブの間欠的な投与は、好ましくは、ダサチニブについて少なくとも6時間の投与間隔を使用することにより、より好ましくは、ダサチニブについて少なくとも12時間の投与間隔を使用することにより、達成されてもよい。各投与レジームについて、各々のチロシンキナーゼ阻害剤の適切な投与量は、薬物動態学及び薬力学のルーチンの実験に基づいて選択され得ることが当業者により理解されるであろう。
【0047】
本明細書において使用されるようなチロシンキナーゼ阻害剤との関連における「連続的な投与」又は「連続的に投与される」という用語は、連続的な方式においてチロシンキナーゼの完全な阻害を引き起こす投与レジームにおける前記チロシンキナーゼ阻害剤の使用を指す。本発明によれば、完全な阻害は、阻害剤の非存在下の状況と比較して、少なくとも75%の阻害を指す。そのような阻害は、当該技術分野において公知の任意の方法により、例えば、適切な酵素アッセイを使用してチロシンキナーゼ自体の活性を測定することにより、又は前記キナーゼの下流の細胞機能を測定することにより、測定され得る。本発明によれば、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の場合、少なくとも75%の阻害は、好ましくは、前記Tリンパ球の細胞傷害性溶解、サイトカイン分泌、及び増殖の阻害であり得る。代替的に、本明細書において使用されるようなチロシンキナーゼ阻害剤との関連における「連続的な投与」又は「連続的に投与される」という用語は、連続的に治療ウィンドウ内にあるチロシンキナーゼ阻害剤の血清レベルを結果としてもたらす投与レジームにおける前記チロシンキナーゼ阻害剤の使用を指す。本発明によれば、ダサチニブの連続的な投与は、ダサチニブの血清レベルが50nM又は50nMより高くに一貫して維持される任意の投与を包含する。例示的な好ましい実施形態では、ダサチニブは連続的に投与され、前記連続的な投与は、6~8時間毎の50mg~200mg、好ましくは6時間毎の140mgのダサチニブの経口投与を含む。
【0048】
本明細書において言及される「細胞媒介性エフェクター機能」又は「細胞エフェクター機能」という用語は、細胞、好ましくは免疫細胞が別の細胞に対して発揮する効果を記載する。本発明による例示的な「細胞媒介性エフェクター機能」は、細胞、好ましくは免疫細胞が、別の細胞、好ましくは腫瘍又はがん細胞に対して方向付けられた細胞溶解活性を発揮する細胞傷害性溶解である。
【0049】
「オンターゲット/オフ腫瘍毒性」又は「オンターゲット/オフ腫瘍認識」という用語は、非腫瘍細胞に対するオンターゲット効果により引き起こされるそれぞれ毒性又は認識を指す。そのような毒性は、免疫療法の、典型的には前記免疫療法の免疫細胞による、標的化された抗原を発現する非悪性宿主組織、各々には細胞に対する、標的抗原特異的攻撃に起因する毒性であってもよい。
【0050】
本明細書において使用される「オフターゲット毒性」という用語は、免疫療法が標的化された標的抗原を発現しない非悪性宿主組織、すなわち、組織又は細胞に対する、非特異的攻撃、例えば、免疫療法の、好ましくは前記免疫療法の免疫細胞による非特異的攻撃に起因する毒性を指す。
【0051】
本明細書において使用される「マクロファージ活性化症候群」又は「MAS」という用語は、腫瘍細胞の溶解を通じた細胞残屑の放出により引き起こされるマクロファージの過度の活性化及び増殖を指す。
【0052】
本明細書において言及される「サイトカイン分泌の阻害」は、当該技術分野において公知の任意の方法により決定され得る。そのような阻害は、好ましくはサイトカイン血清レベルの低減、より好ましくは、少なくとも50%のサイトカイン血清レベルの低減である。
【0053】
本明細書において使用される「サイトカイン放出症候群」は、それが当該技術分野において公知である通りの用語を指す。本発明によれば、サイトカイン放出症候群は、がんに対する免疫療法における、例えばキメラ抗原受容体を発現し得る、免疫細胞、例えばTリンパ球によるサイトカインの放出であって、サイトカインのこの放出が患者において望ましくない副作用を引き起こすようなものを指す。がんに対する養子免疫療法においてTリンパ球により放出されてサイトカイン放出症候群の発生を引き起こすことがある例示的なサイトカインは、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、及びIL-10、好ましくは、IFN-γ及びIL2である。
【0054】
「拒絶」又は「免疫療法細胞の拒絶」という用語は当該技術分野において公知である。それは、好ましくは、前記がんに対する養子免疫療法を用いて治療されるがん患者において起こる免疫反応であって、前記養子免疫療法が、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現する同種又は同系Tリンパ球の移植を含み、免疫反応が、前記同種又は同系Tリンパ球の枯渇を引き起こすものを指す。
【0055】
本明細書において使用される「意図しない活性化」又は「免疫療法細胞の意図しない活性化」という用語は当該技術分野において公知である。それは、好ましくは、細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いるがんに対する養子免疫療法であって、他の細胞、好ましくは免疫細胞が、標的抗原への前記キメラ抗原受容体の特異的結合とは独立して前記Tリンパ球に結合して、キメラ抗原受容体を介する前記Tリンパ球の特異的抗原結合の非存在下で前記Tリンパ球の活性化を引き起こすものを指す。
【0056】
「トニックシグナル伝達」又は「免疫療法細胞のトニックシグナル伝達及び活性化」という用語は当該技術分野において公知である。それは、好ましくは、細胞相互作用とは独立したがんに対する養子免疫療法におけるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の活性化を指す。
【0057】
本明細書において使用される「腫瘍崩壊症候群」は、それが当該技術分野において公知である通りの用語を指す。本発明によれば、腫瘍崩壊症候群は、例えば、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いる、がんに対する養子免疫療法等の免疫療法の間に多量の腫瘍細胞が溶解し、且つ溶解した腫瘍細胞の細胞残屑が血流中に放出されて、前記免疫療法と関連付けられる副作用を引き起こす場合に起こり得る。Tリンパ球による細胞傷害性溶解に起因する前記腫瘍細胞残屑の放出は、例えば、腎損傷を引き起こし得る。
【0058】
本明細書において使用される「神経毒性」は、中枢及び/又は末梢神経系と関連付けられる細胞への毒性効果を引き起こす任意のプロセスを指す。
【0059】
本明細書において使用される「生存率」は、死細胞と比較した生細胞の割合を指す。生細胞の割合を決定するアッセイは当該技術分野において公知である。本明細書において実証された例示的な非限定的な方法としては、生存細胞の割合を決定するためのアネキシンV及び7-AADを用いる染色が挙げられる。
【0060】
本明細書において使用される抗体という用語は、目的の抗原に特異的に結合することができる任意の機能的抗体を指す。特に限定されないが、抗体という用語は、ニワトリ等の鳥類並びにマウス、ヤギ、非ヒト霊長動物及びヒト等の哺乳動物といった適切な供給源となる任意の種からの抗体を包含する。好ましくは、抗体はヒト化又はヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒト配列及び目的の抗原(例えば、ヒトFLT3)への結合特異性を付与する非ヒト配列の小部分を含有する抗体である。抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、これは、当該技術分野において周知の方法により調製され得る。抗体という用語は、IgG-1、-2、-3、若しくは-4、IgE、IgA、IgM、又はIgDアイソタイプ抗体を包含する。抗体という用語は、モノマー抗体(例えば、IgD、IgE、IgG)又はオリゴマー抗体(例えば、IgA若しくはIgM)を包含する。抗体という用語はまた、特に限定されないが、単離された抗体及び改変された抗体、例えば、遺伝子操作された抗体、例えば、キメラ抗体又は二重特異性抗体を包含する。
【0061】
本明細書において使用される抗体断片又は抗体の断片は、抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持する抗体の部分を指す。この能力は、例えば、当該技術分野において公知の方法により抗原への特異的結合について抗体と競合する抗原結合部分の能力を決定することにより決定され得る。特に限定されないが、抗体断片は、組換えDNA法及び抗体の化学的又は酵素断片化による調製といった当該技術分野において公知の任意の好適な方法により製造され得る。抗体断片は、Fab断片、F(ab')断片、F(ab')2 断片、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、ダイアボディ又は抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持する抗体の任意の他の部分であってもよい。
【0062】
本明細書に記載される「抗体」(例えば、モノクローナル抗体)又は「その断片」は、誘導体化されたもの又は異なる分子に連結されたものであってもよい。例えば、抗体に連結され得る分子は、他のタンパク質(例えば、他の抗体)、分子標識(例えば、蛍光、発光、有色若しくは放射性分子)、薬剤及び/又は毒性剤である。抗体又は抗原結合部分は、直接的に(例えば、2つのタンパク質間の融合物の形態)、又はリンカー分子を介して(例えば、当該技術分野において公知の任意の好適な種類の化学的リンカー)連結されていてもよい。
【0063】
本発明による「がんの治療」又は「がんを治療する」等の用語は治療処置を指す。治療処置作業が機能するか否かの評価は、例えば、治療された1又は複数の患者において治療ががんの成長を阻害するかどうかを評価することにより為され得る。好ましくは、阻害は、当該技術分野において公知の適切な統計的検定による評価で統計的に有意である。がんの成長の阻害は、本発明にしたがって治療される患者の群におけるがんの成長を非治療患者の対照群に対して比較することにより、又は当該技術分野の標準がん治療及び本発明による治療を与えられる患者の群を当該技術分野の標準がん治療のみを与えられる患者の対照群と比較することにより評価されてもよい。がんの成長の阻害を評価するためのそのような研究は、臨床研究のための承認された基準、例えば、充分な検定力を有する二重盲検の無作為化研究にしたがって設計される。「がんを治療する」という用語は、がんの成長が部分的に阻害される(すなわち、患者におけるがんの成長が患者の対照群と比較して遅延される)がんの成長の阻害、がんの成長が完全に阻害される(すなわち、患者におけるがんの成長が停止する)阻害、及びがんの成長が後退する(すなわち、がんが縮小する)阻害を含む。治療処置が機能するか否かの評価は、がん進行の公知の臨床的指標に基づいて為され得る。
【0064】
本発明によるがんの治療は、追加の又は二次的な治療的利益もまた患者において起こることを除外しない。例えば、追加の又は二次的な利益は、がんの治療の前、並行して、又は後に実行される移植される造血幹細胞の生着の増進であってもよい。
【0065】
「免疫療法を含むがんを治療する方法であるがんの治療方法において使用するための組成物」という用語は、組成物ががんに対して直接的な効果を有する状況に関することができ、又は、それは、例えば、免疫療法を増進することにより、組成物ががんに対して間接的な効果を有する状況に関することができる。例えば、ダサチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤を含む組成物は、養子免疫療法、例えば、CAR T細胞を用いる養子免疫療法を増進し得る。
【0066】
本発明によるがんの治療は、ファーストライン療法、セカンドライン療法、サードライン療法、又はフォースライン療法であり得る。治療はまた、フォースライン療法より後の療法であり得る。これらの用語の意味は当該技術分野において公知であり、米国国立がん研究所により一般的に使用される学術用語に従う。
【0067】
本明細書において使用される「結合することができる」という用語は、結合される分子(例えば、CD19、FLT3、BCMA、又はROR1)と複合体を形成する能力を指す。結合は、典型的には、イオン結合、水素結合及びファンデルワールス力等の分子間力により非共有結合的に起こり、典型的には可逆的である。結合能力を決定する様々な方法及びアッセイは当該技術分野において公知である。結合は、通常、高い親和性を有する結合であり、KD値により測定される親和性は、好ましくは1μM未満、より好ましくは100nM未満、よりいっそう好ましくは10nM未満、よりいっそう好ましくは1nM未満、よりいっそう好ましくは100pM未満、よりいっそう好ましくは10pM未満、よりいっそう好ましくは1pM未満である。
【0068】
本明細書において使用される場合、「含む」(comprising)又は「含む」(comprises)等の用語の各出現は、任意選択的に、「からなる」(consisting of)又は「からなる」(consists of)で置換されてもよい。
【0069】
任意の好適な希釈剤といった薬学的に許容される担体は、当該技術分野において公知のように本明細書において使用され得る。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、より特にはヒトにおいて使用するために連邦政府若しくは州政府の規制機関により承認されていること又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方において列記されていることを意味する。薬学的に許容される担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌等張水性緩衝液、及びその組合せが挙げられるがそれに限定されない。配合物は投与の方式に適するように適切に適合されることが理解されるであろう。
【0070】
本発明による組成物及び配合物は、医薬組成物及び配合物の調製のための公知の標準にしたがって調製される。例えば、組成物及び配合物は、例えば、薬学的に許容される成分、例えば、担体、賦形剤又は安定化剤を使用することにより、適切に貯蔵及び投与され得る方法において調製される。そのような薬学的に許容される成分は、患者に医薬組成物又は配合物を投与する場合に使用される量において毒性ではない。医薬組成物又は配合物に加えられる薬学的に許容される成分は、組成物又は配合物中に存在するチロシンキナーゼ阻害剤の化学的性質(標的化剤が、例えば、抗体若しくはその断片であるのか、それともキメラ抗原受容体を発現する細胞であるのかに依存する)、医薬組成物の特定の意図される使用及び投与の経路に依存してもよい。
【0071】
本発明による好ましい実施形態では、組成物又は配合物は、ヒトへの投与のために好適であり、好ましくは、配合物は無菌及び/又は非発熱性である。
【0072】
本発明による使用のための免疫細胞とチロシンキナーゼ阻害剤との「組合せ」は特定の投与の方式に限定されない。免疫細胞及びチロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、別々であるが同時に、又は1つの組成物中で同時に投与され得、又はそれらは別々に別々の時点において投与され得る。
【0073】
好ましい実施形態は、養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療、軽減又は予防するための前記養子免疫療法と組み合わせたSrcキナーゼ阻害剤の使用である。より好ましい実施形態は、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療、軽減又は予防するためのがんに対する前記養子免疫療法と組み合わせたSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤の使用であって、がんに対する前記養子免疫療法が、前記がんの細胞の一部により発現される抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞、好ましくはTリンパ球の移植を含む、使用である。よりいっそう好ましい実施形態は、キメラ抗原受容体を発現するように遺伝子改変されたTリンパ球を用いるがんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療、軽減又は予防するためのダサチニブの使用であって、キメラ抗原受容体が、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができる、使用である。
【0074】
好ましい実施形態は、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療、軽減又は予防するためのSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用であって、前記免疫療法が、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するように遺伝子改変されたTリンパ球の移植を含む、使用である。この実施形態では、移植されるTリンパ球において発現されるキメラ抗原受容体はがん細胞の細胞表面抗原に結合し、それが前記がん細胞の細胞傷害性溶解を引き起こし、且つ、前記養子免疫療法と関連付けられる副作用は、主に又は部分的に、キメラ抗原受容体を発現する前記Tリンパ球により媒介される細胞傷害性溶解時の前記がん細胞の細胞残屑の放出により引き起こされる。より好ましい実施形態では、細胞残屑の前記放出により引き起こされる前記養子免疫療法と関連付けられる副作用は、腫瘍崩壊症候群又はマクロファージ活性化症候群として分類され得る。
【0075】
好ましい実施形態は、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療、軽減又は予防するためのSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用であって、前記免疫療法が、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するように遺伝子改変されたTリンパ球の移植を含む、使用である。この実施形態では、移植されるTリンパ球において発現されるキメラ抗原受容体はがん細胞の細胞表面抗原に結合し、それが前記がん細胞の細胞傷害性溶解及び前記Tリンパ球の活性化を引き起こし、且つ、前記養子免疫療法と関連付けられる副作用は、主に又は部分的に、前記細胞表面抗原への前記キメラ抗原受容体の結合時のキメラ抗原受容体を発現する前記Tリンパ球によるサイトカインの放出により引き起こされ、好ましくは、前記細胞表面抗原はがん細胞の表面上にある。より好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現する前記Tリンパ球によるサイトカインの前記放出により引き起こされる前記免疫療法と関連付けられる副作用は、サイトカイン放出症候群として分類され得る。
【0076】
好ましい実施形態では、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を予防するための前記Srcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用は、養子免疫療法より以前の前記Srcキナーゼ阻害剤の投与を含む。別の好ましい実施形態では、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用を治療又は軽減するための前記Srcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用は、がんに対する養子免疫療法の後の、好ましくは、がんに対する前記養子免疫療法と関連付けられる副作用の症状が起こった時の、前記Srcキナーゼ阻害剤の投与を含む。がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用の症状は、IFN-γ、IL-6、若しくはMCP1の血清レベルの上昇、及び/又は体温の上昇を含んでもよい。
【0077】
好ましい実施形態では、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用は、主に又は部分的に、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、又はIL-10の血清レベルの上昇に起因し、好ましくは、IFN-γ及びIL-2の血清レベルの上昇に起因する。好ましい実施形態では、がんを治療する方法は、前記がんの細胞の一部により発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現する同種又は同系Tリンパ球を用いる養子免疫療法を含む。この実施形態では、前記Tリンパ球は、前記細胞表面抗原に結合すると、サイトカインGM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、又はIL-10、好ましくは、IFN-γ及びIL-2を放出して、その血清レベルの上昇を引き起こす。好ましい実施形態は、前記Tリンパ球の阻害により前記サイトカインの放出を低減して、前記サイトカインの血清レベルの前記上昇と関連付けられる症状の減少を引き起こすためのSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用である。
【0078】
別の好ましい実施形態では、がんに対する養子免疫療法と関連付けられる副作用は、主に又は部分的に、オンターゲット/オフ腫瘍認識に起因する。好ましい実施形態では、がんを治療する方法は、前記がんの細胞の一部により発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現する同種又は同系Tリンパ球を用いる養子免疫療法を含む。この実施形態では、前記Tリンパ球は、非腫瘍の非悪性細胞の一部において発現される前記細胞表面抗原に結合して、前記非腫瘍の非悪性細胞の望ましくない細胞傷害性溶解を引き起こす。好ましい実施形態は、前記Tリンパ球の細胞溶解活性の阻害によりオンターゲット/オフ腫瘍認識を低減して、前記オンターゲット/オフ腫瘍認識と関連付けられる症状の減少を引き起こすためのSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用である。例示的な実施形態は、CD19に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いるCD19陽性がんを治療する方法におけるダサチニブの使用であって、前記Tリンパ球が、CD19を発現する非腫瘍細胞に結合して、前記非腫瘍細胞の細胞傷害性溶解に繋がり、患者において望ましくないオンターゲット/オフ腫瘍の副作用を引き起こすものである、使用である。
【0079】
好ましい実施形態は、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の細胞媒介性エフェクター機能を阻害するための、前記Tリンパ球を用いる養子免疫療法によりがんを治療する方法におけるSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤、最も好ましくはダサチニブの使用である。好ましい実施形態では、前記Srcキナーゼ阻害剤は、前記Tリンパ球のサイトカイン分泌、細胞傷害性溶解、又は増殖の減少を引き起こす。好ましい実施形態では、前記Tリンパ球によるGM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、又はIL-10、好ましくは、IFN-γ及びIL-2のサイトカイン分泌は、前記Srcキナーゼ阻害剤の非存在下での前記サイトカインの分泌と比較して、前記Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%低減される。好ましい実施形態では、前記サイトカイン分泌は少なくとも50%低減される。
【0080】
好ましい実施形態では、がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いる養子免疫療法により前記がんを治療する方法におけるSrcキナーゼ阻害剤の使用は、前記Tリンパ球の生存率を著しく減少させない。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の生存率は、Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%である。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の生存率は、Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも80%である。
【0081】
好ましい実施形態では、がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いる養子免疫療法により前記がんを治療する方法におけるSrcキナーゼ阻害剤の使用は、前記Tリンパ球の増殖を阻害する。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の増殖は、Srcキナーゼ阻害剤の非存在下での前記Tリンパ球の増殖と比較して、前記Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも10%、20%、30%、40% 50%、60%、70%、80%、又は90%低減される。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の増殖は、Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも50%低減される。
【0082】
好ましい実施形態では、がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いる養子免疫療法により前記がんを治療する方法におけるSrcキナーゼ阻害剤の使用は、前記細胞表面抗原を発現する標的細胞の細胞傷害性溶解のための前記Tリンパ球の能力を阻害する。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の細胞傷害性溶解は、Srcキナーゼ阻害剤の非存在下での前記Tリンパ球の増殖と比較して、前記Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも10%、20%、30%、40% 50%、60%、70%、80%、又は90%低減される。好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球の細胞傷害性溶解は、Srcキナーゼ阻害剤が投与された後に少なくとも90%低減される。
【0083】
好ましい実施形態では、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現するTリンパ球を用いる養子免疫療法によりがんを治療する方法におけるSrcキナーゼ阻害剤の使用は、PD1の発現のための前記Tリンパ球の能力を阻害する。好ましい実施形態では、前記Tリンパ球におけるPD1の発現は、前記Srcキナーゼ阻害剤の非存在下での前記Tリンパ球におけるPD1の発現と比較して統計的に有意に低減される。好ましい実施形態では、前記Tリンパ球におけるPD1の発現は、少なくとも5%、10%、15%、20%、又はより大きく低減される。好ましい実施形態では、前記Tリンパ球におけるPD1の発現は、少なくとも10%低減される。
【0084】
好ましい実施形態は、養子免疫療法を向上又は補強するための養子免疫療法と組み合わせたSrcキナーゼ阻害剤の使用であって、Srcキナーゼ阻害剤が間欠的に投与される、使用である。より好ましい実施形態は、がんに対する養子免疫療法の抗がん効果を向上させるためのがんに対する前記養子免疫療法と組み合わせたSrcキナーゼ阻害剤、好ましくはダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤の使用であって、がんに対する前記養子免疫療法が、前記がんの細胞の一部により発現される抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞、好ましくはTリンパ球の移植を含み、且つ、前記Srcキナーゼ阻害剤が間欠的に投与される、使用である。よりいっそう好ましい実施形態は、キメラ抗原受容体を発現するように遺伝子改変されたTリンパ球を用いるがんに対する養子免疫療法の抗がん効果を向上させるためのダサチニブの使用であって、キメラ抗原受容体が、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができ、且つ、ダサチニブが間欠的に投与される、使用である。この実施形態では、ダサチニブは間欠的に投与され、それにより、前記Tリンパ球は部分的に阻害される。部分的な阻害は、前記Tリンパ球の細胞媒介性エフェクター機能の阻害であってもよく、前記阻害は、前記Tリンパ球の1つ又は複数の細胞媒介性エフェクター機能の少なくとも25%から最大で75%までの阻害である。好ましい実施形態では、ダサチニブは間欠的に投与され、それにより、ダサチニブの血清レベルは連続的に50nM又は50nMより高くはならない。別の好ましい実施形態では、ダサチニブは間欠的に投与され、それにより、ダサチニブの血清レベルは連続的に10nM又は10nMより高くはならない。例示的な実施形態では、ダサチニブは間欠的に投与され、間欠的な投与は、1日当たり50~200mg、好ましくは1日当たり100mgのダサチニブの経口投与を含む。
【0085】
好ましい実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤はSrcキナーゼ阻害剤である。より好ましい実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブ、サラカチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、又はPP1阻害剤である。より好ましい実施形態では、阻害剤はボスチニブである。より好ましい実施形態では、阻害剤はサラカチニブである。より好ましい実施形態では、阻害剤はニロチニブである。より好ましい実施形態では、阻害剤はPP1阻害剤である。よりいっそう好ましい実施形態では、阻害剤はダサチニブである。
【0086】
好ましい実施形態では、がんを治療する方法は、前記がんの細胞の一部において発現される細胞表面抗原に結合することができるキメラ抗原受容体を発現する同種又は同系Tリンパ球を用いる養子免疫療法を含む。より好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、CD4、CD5、CD10、CD19、CD20、CD22、CD27、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD52、CD64、CD70、CD72、CD123、CD135、CD138、CD220、CD269、CD319、ROR1、ROR2、SLAMF7、BCMA、αvβ3インテグリン、α4β1インテグリン、LILRB4、EpCAM-1、MUC-1、MUC-16、L1-CAM、c-kit、NKG2D、NKG2Dリガンド、PD-L1、PD-L2、Lewis-Y、CAIX、CEA、c-MET、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、Her2、FAP、FR-a、EphA2、GD2、GD3、GPC3、IL-13Ra、メソテリン、PSMA、PSCA、VEGFR、又はFLT3に結合することができる。よりいっそう好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、CD19、BCMA、ROR1、FLT3、CD20、CD22、CD123、又はSLAMF7に結合することができる。
【0087】
好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、DAP10、NKG2D、MyD88又はOX40共刺激ドメインを含む。より好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、CD28、4-1BB、又はOX40共刺激ドメインを含む。
【0088】
好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体は、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、T細胞受容体アルファ鎖、T細胞受容体ベータ鎖、T細胞受容体デルタ鎖、及びT細胞受容体ガンマ鎖シグナル伝達ドメインを含む。
【実施例0089】
本発明を以下の非限定的な実施例により例示する。
【0090】
(実施例1)
材料及び方法
ヒト対象
ヴュルツブルク大学[Universitatsklinikum Wurzburg、Germany(UKW)]の治験審査委員会により承認された研究プロトコールに参加するための書面によるインフォームドコンセントを提供した健常ドナーから血液試料を得た。Ficoll-Hypaque(Sigma社、St.Louis、MO)での遠心分離により末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0091】
細胞株
293T、K562、Raji及びRCH-ACV細胞株をGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ、Braunschweig、Germany)から得た。全長ヒトROR1遺伝子のレンチウイルス形質導入によりK562-ROR1を生成した。全長ヒトCD19遺伝子のレンチウイルス形質導入によりK562-CD19を生成した。K562、Raji及びRCH-ACVの各細胞株に、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)強化型緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを形質導入して、マウスにおけるフローサイトメトリー(GFP)、生物発光ベースの細胞傷害性アッセイ(ffLuc)、及び生物発光イメージング(ffLuc)による検出を可能とした。10%のウシ胎仔血清及び100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地中で各細胞株を培養した。
【0092】
免疫表現型解析
以下の共役mAb:CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD62L、PD-1及びマッチしたアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)の1つ又は複数を用いてPBMC及びT細胞株を染色した。自社内でビオチン化(EZ-Link(商標)Sulfo-NHS-SS-Biotin、ThermoFisher Scientific社、IL;製造者の指示による)した抗EGFR抗体(ImClone Systems Inc.社)及びストレプトアビジン-PE(BD Biosciences社)を用いた染色によりCAR形質導入(すなわち、EGFRt+)T細胞を検出した。製造者により指示されるように生/死細胞の識別のために7-AAD(BD Biosciences社)を用いた染色を行った。フロー分析をFACS Canto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを解析した。
【0093】
ベクター構築
4-1BB又はCD28共刺激ドメインを有するROR1又はCD19特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されている。参考文献[5](参照することにより全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる)を参照。CAR構築物の図式的な設計を
図1A~Cに提供する。全てのベクターは、CARの下流の導入遺伝子カセットにおいてコードされる切断型上皮成長因子受容体(EGFRt)を含んでいた。参考文献[9](参照することにより全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる)を参照。CAR及びEGFRt導入遺伝子をT2Aリボソームスキップエレメントにより分離した。
【0094】
本発明者らは、NFAT応答性エレメントの制御下の野生型緑色蛍光タンパク質(NFAT誘導性GFPwt)又は≒4時間のin vivoでの半減期を有するマウスオルニチンデカルボキシラーゼの残基422~461の突然変異型バージョンにより不安定化させたGFP変種(NFAT誘導性GFPd4)を含有するepHIV7レンチウイルスベクターからレポーター遺伝子ベクターを開発した。
【0095】
本発明者らは、[21]に記載されるようなiCasp9自殺遺伝子を含有する誘導性自殺スイッチを構築した。
【0096】
レンチウイルスの調製
CAR/EGFRt、ffluc/GFP及びNFATindGFPをコードするレンチウイルスの上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して各々のレンチウイルスベクタープラスミド及びパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを共トランスフェクトした293T細胞において製造した。トランスフェクションの16h後に培地を変更し、72h後にレンチウイルスを回収した。ウイルス粒子を回収するために、超遠心分離を4℃において24,900rpmで2時間行った。レンチウイルスの滴定を行うために増加量のウイルスをJurkat細胞に形質導入し、形質導入の3日後にフローサイトメトリーを使用してタンパク質の表面発現について細胞を解析した。
【0097】
CAR-T細胞の調製
[5]、[22]に記載されるようにCAR-T細胞を生成した。簡潔に述べれば、CD8+セントラルメモリー及びCD4+バルクT細胞を免疫磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社、Bergisch-Gladbach、Germany)を用いる陰性単離を使用して健常ドナーのPBMCから精製し、ビーズ製造者の指示にしたがって抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)を用いて活性化させ、5の感染多重度(MOI)においてレンチウイルスの上清を用いて形質導入を行った。一部の実験において、CAR/EGFRt及びNFATindGFPをコードするレンチウイルスの上清を用いてT細胞への併用形質導入を行った。スピノキュレーションによりビーズ刺激の1日後にレンチウイルス形質導入を行った。10%のヒト血清、GlutaminMAX(Life Technologies社)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mLのIL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を繁殖させ、維持した。生存性T細胞を定量化するためにトリパンブルー染色を行った。6日目のビーズ除去及び10~14日目までの拡大増殖後に、T細胞をEGFRtについて濃縮し、急速拡大増殖プロトコール(ROR1 CAR-T細胞及び対応する非形質導入対照T細胞)又は照射CD19+フィーダー細胞を用いる抗原特異的拡大増殖(CD19 CAR-T細胞及び対応する非形質導入対照T細胞)のいずれかを使用して更に拡大増殖した。
【0098】
CAR-T細胞機能の解析
細胞傷害性:標的細胞にffluc_GFPを安定的に形質導入し、5:1のエフェクター対標的(E:T)比においてエフェクターT細胞と共に1×104細胞/ウェルにおいて3連のウェルにおいてインキュベートした。D-ルシフェリン基質(Biosynth社、Staad、Switzerland)を共培養物に0.15mg/mlの最終濃度まで加え、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中のルミネッセンスシグナルの減少をルミノメーター(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)を使用して測定した。標準的な式を使用して特異的溶解を算出した。
【0099】
サイトカイン分泌:5×104個のT細胞を4:1のE:T比において標的細胞(K562/ROR1、K562/CD19、RCH-ACV)と共に2連又は3連のウェルにプレーティングし、IFN-γ及びIL-2をELISAにより測定し、又は20hのインキュベーション後に除去した上清におけるマルチプレックスサイトカインイムノアッセイ(Luminex社)によりサイトカインパネルを測定した。特定のサイトカイン産生は、非刺激のCAR-T細胞により放出されたサイトカインの量を抗原特異的な刺激後に放出されたサイトカインの量から引くことにより算出した。図表に示すような%での残余サイトカイン分泌は、ダサチニブ処理の非存在下でのCAR-T細胞(100%)に対して正規化している。
【0100】
増殖:T細胞を0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)を用いて標識し、洗浄し、4:1のE:T比において照射(80Gy)刺激性細胞(K562/ROR1、K562/CD19又はRCH-ACV)と共に2連又は3連のウェルにプレーティングした。外因性のサイトカインは培養培地に加えなかった。72時間のインキュベーション後に、抗CD3 mAbを用いて細胞を標識し、フローサイトメトリーにより解析してT細胞の細胞分裂を評価した。FlowJo Software(FlowJO社、LLC、Ashland、Oregon、USA)を使用して増殖指数を算出し、「残余増殖」、すなわち、ダサチニブの非存在下でのCAR-T細胞の増殖(100%)に対して正規化したものを決定するために使用した。
【0101】
ウエスタンブロット解析
拡大増殖後、T細胞を洗浄し、外因性のIL-2の非存在下で2日間培養した。RCH-ACVを用いたT細胞の30分の刺激(4:1のE:T比)後にタンパク質を単離した。製造者の指示にしたがって以下の抗体:抗pSrc fam Y416(cell signaling社 #2101S)、抗Lck(cell signaling社 #2752S)、抗pCD247 Y142(CD3ゼータ、BD社 #558402)、抗CD247(Sigma Life science社 #HPA008750)、抗pZap70 Y319(cell signaling社 #2717S)及び抗Zap70(...)を使用して還元条件下でウエスタンブロットを行った。β-アクチンに対する染色をローディングコントロールとして正規化のために使用した。ChemiDoc MPイメージングシステム(Biorad社、Munich、Germany)を使用してウエスタンブロットを展開し、Image Lab Software(Biorad社、Munich、Germany)を使用してウエスタンブロットの定量的解析を行った。
【0102】
NFATレポーターアッセイ
NFAT誘導性GFPwtレポーター遺伝子を(共)発現するT細胞を、5:1のE:T比において照射(80Gy)Raji若しくはK562腫瘍細胞と共に又は標的細胞なしで10UのIL-2の存在下で共培養した。T細胞及び標的細胞をダサチニブの非存在下又は100nMのダサチニブの存在下で共培養した。24時間の共培養後に、抗CD3 mAbを用いて細胞を標識し、フローサイトメトリーにより解析してT細胞におけるGFP発現を評価した。
【0103】
アポトーシスアッセイ
CD8+ CD19 CAR-T細胞を50UのIL-2の存在下で単独で又は4:1のE:T比において照射(80Gy)K562/CD19腫瘍細胞と共に培養した。ダサチニブをアッセイの開始時又はアッセイの開始の2時間後のいずれかにおいて100nMの最終濃度まで加えた。24時間の共培養に、製造者の指示にしたがって抗CD8 mAb、7AAD及びアネキシンV(BD Biosciences社、Heidelberg、Germany)を用いて共培養物を標識し、フローサイトメトリーにより解析してアポトーシス及び死T細胞の量を評価した。
【0104】
ICasp+ T細胞の除去
iCasp自殺遺伝子を共発現するCAR-T細胞を50U/mlのIL-2の存在下で、更なる処理なし又は100nMのダサチニブの存在下のいずれかにおいて、及びiCaspase誘導性薬物である10nMのAP20187の非存在下及び存在下において、培養した。24時間後、細胞を抗CD3 mABを用いて標識し、iCasp+ T細胞の存在についてフローサイトメトリーにより解析した。
【0105】
ダサチニブの調製
凍結乾燥されたダサチニブはSelleck Chemicals社(Houston、TX、USA)から購入し、DMSO(AppliChem社、Darmstadt、Germany)中で再構成して10mMの濃度のストック溶液を得た。DMSO又は適切な媒体中での更なる希釈により標準溶液を調製した。
【0106】
デキサメタゾンの調製
デキサメタゾン(SigmaAldrich社、Steinheim、Germany)をDMSO(AppliChem社、Darmstadt、Germany)中で再構成して100mMの濃度のストック溶液を得た。DMSO又は適切な媒体中での更なる希釈により標準溶液を調製した。
【0107】
他のチロシンキナーゼ阻害剤の調製
ニロチニブ、ラパチニブ及びイマチニブはCell Signaling社(Leiden、Netherlands)から購入し、DMSO(Sigma Aldrich社)中で再構成してそれぞれ10mMの濃度のストック溶液を得た。サラカチニブ、ボスチニブ及びPP1阻害剤はSelleck Chemicals社(Houston、TX、USA)から購入し、DMSO中で再構成してそれぞれ10mMの濃度のストック溶液を得た。DMSO又は適切な媒体中での更なる希釈により標準溶液を調製した。
【0108】
in vivo実験
UKWの動物実験委員会により全てのマウス実験は承認された。NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(雌、6~8週齢)はCharles River社(Sulzfeld、Germany)から購入した。尾静脈注射(i.v.)を介して1×106個のRaji/ffluc_GFP腫瘍細胞をマウスに接種した。尾静脈注射(i.v.)を介して5×106個のCAR改変又は対照非形質導入T細胞(CD4:CD8比=1:1)を用いてマウスを処置した。10mg/kgのダサチニブ(連続する処置)、又は5mg/kg(間欠的な処置)の用量において腹腔内注射(i.p.)によりダサチニブを投与した。IVIS Lumina imager(Perkin Elmer社、Baesweiler、Germany)上での連続的な生物発光イメージングにより腫瘍負荷及び分布を解析した。マウスに0.3mg/gのルシフェリンのi.p.注射を与え、1秒~1分の取得時間における小ビニングモードにおいてルシフェリン注射の10分後に画像を取得して非飽和画像を得た。LivingImage Software(Caliper社)を使用してデータを解析し、各個々のマウスの全身を包含する目的の領域において平均輝度(又はフォトンフラックス)を解析した。実験の終了時にマウスを屠殺し、骨髄、末梢血及び脾臓中のヒトT細胞をフローサイトメトリーにより解析した。マルチプレックスサイトカインを使用して血清中の(ヒト)サイトカインの存在を測定した。
【0109】
(実施例2)
ダサチニブはCAR-T細胞機能を遮断する
A)ダサチニブはCD19 CAR-T細胞及びROR1 CAR-T細胞の機能を遮断する
ダサチニブはCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する
本発明者らは、n=3の健常ドナーからCD8+ CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らが標的細胞としてCD19(CD19 CAR-T細胞の試験用)又はROR1(ROR1 CAR-T細胞の試験用)のいずれかを形質導入したK562を使用して生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。ダサチニブをアッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。
【0110】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断できることを示す。細胞溶解性CAR-T細胞機能のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的であり(
図2A)、
- アッセイ培地中で≦12.5nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能は有意に影響されなかった(t=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の93%の特異的溶解と比較して処理したCAR-T細胞による標的細胞の>88%の特異的溶解);
- アッセイ培地中で25nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(t=6hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による53%の特異的溶解と比較して標的細胞の26%の特異的溶解;及びt=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の93%の特異的溶解と比較して標的細胞の73%の特異的溶解);
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(t=6hまで標的細胞の7%未満の特異的溶解;及びt=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の93%の特異的溶解と比較して標的細胞の12%未満の特異的溶解)。
【0111】
本発明者らは、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断できることを確認した(
図2B)。
- アッセイ培地中で50nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(t=5hにおいて非ダサチニブ処理CAR-Tによる標的細胞の52%の特異的溶解と比較して標的細胞の23%未満の特異的溶解;及びt=10hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の91%の特異的溶解と比較して標的細胞の47%の残余の特異的溶解);
- アッセイ培地中で100nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(t=10hにおける非ダサチニブ処理CAR-T細胞による91%の特異的溶解と比較して、任意の所与の時点についての標的細胞の10%未満の特異的溶解)。
【0112】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8+ T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断できることを確認した(
図2C)。
- アッセイ培地中で25nMのダサチニブの濃度において、t=5hまでの非ダサチニブ処理CAR-T細胞による73%の特異的溶解と比較して標的細胞の2%未満の特異的溶解があり、且つ、アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、t=10hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による94%の特異的溶解と比較して、任意の所与の時点についての標的細胞の2%未満の特異的溶解があった。
【0113】
ダサチニブはCD8+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する
本発明者らは、ダサチニブの存在下又は非存在下においてCD8+ CAR-T細胞株のサイトカインの産生及び分泌を解析した。CAR-T細胞を、本発明者らがCD19(CD19 CAR-T細胞の試験用)又はROR1(ROR1 CAR-T細胞の試験用)のいずれかを形質導入したK562と共培養した。ダサチニブを共培養アッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。ELISAを行って、共培養物から除去された上清中のIFN-γ及びIL-2を検出した。
【0114】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを示す。サイトカインの産生及び分泌のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的である(
図3A):
- アッセイ培地中で≧6.25nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して45%未満の残余の特異的IFN-γ産生、及び60%未満の残余の特異的IL-2産生があった;
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して残余の特異的IFN-γ産生はなく、且つ1%未満の残余の特異的IL-2産生があった。
【0115】
本発明者らは、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図3B)。
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して4.5%未満の残余の特異的IFN-γ産生があり、且つ残余の特異的IL-2産生はなかった。
【0116】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図3C)。
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して3%未満の残余のIFN-γ、及び8.5%未満の残余のIl-2産生があった。
【0117】
これらのデータは、ダサチニブは、受容体の設計及び特異性とは独立してCAR-T細胞によるサイトカイン分泌の好適な阻害剤であるという事実の証拠である。
【0118】
ダサチニブはCD8+ CAR-T細胞の増殖を遮断する
本発明者らは、ダサチニブの存在下又は非存在下においてCD8+ CAR-T細胞株の増殖を解析した。CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、本発明者らがCD19(CD19 CAR-T細胞の試験用)又はROR1(ROR1 CAR-T細胞の試験用)のいずれかを形質導入したK562と共培養した。ダサチニブを共培養アッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。フローサイトメトリー解析を行って、共培養アッセイの終了時のT細胞の増殖を決定した。アッセイ期間の間に起こった細胞分裂の平均数を指し示す増殖指数を算出し、それを使用して、ダサチニブの非存在下で刺激されたCAR-T細胞の増殖指数を100%として正規化した残余増殖を決定した。
【0119】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞の増殖を完全に遮断できることを示す。増殖のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的である(
図4A):
- アッセイ培地中で≧3.125nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して80%未満の残余増殖があり;
- アッセイ培地中で≧12.5nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して45%未満の残余増殖があり;
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して8%未満の残余増殖があった。
【0120】
本発明者らは、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞の増殖を完全に遮断できることを確認した(
図4B)。
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して7%未満の残余増殖があった。
【0121】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するROR1 CARを発現するCD8+ T細胞の増殖を完全に遮断できることを確認した(
図4C)。
- アッセイ培地中で≧50nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して7%未満の残余増殖があった。IL-2を用いる刺激を陽性対照及び参照として使用した。
【0122】
ダサチニブはCD4+ CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する
本発明者らは、ダサチニブの存在下又は非存在下においてCD4+ CAR-T細胞株のサイトカインの産生及び分泌を解析した。CAR-T細胞を、本発明者らがCD19を形質導入したK562と共培養した。ダサチニブを共培養アッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。マルチプレックスサイトカイン分析を共培養物から除去された上清中で行った。
【0123】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD4+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを示す。サイトカインの産生及び分泌のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的である(
図5A):
- 共培養アッセイ培地中で≧25nMのダサチニブの濃度において、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-8の産生及び分泌は、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して(ほぼ)完全に遮断された(GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8について>95%の低減)。
【0124】
本発明者らは、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD4+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図5B)。
- 共培養アッセイ培地中で≧25nMのダサチニブの濃度において、GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-8の産生及び分泌は、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して(ほぼ)完全に遮断された(GM-CSF、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8について>95%の低減)。
【0125】
B)ダサチニブはSLAMF7 CAR-T細胞の機能を遮断する
ダサチニブはCD8+ SLAMF7 CAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断する
本発明者らは、n=2の健常ドナーからSLAMF7特異的CD8+ CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らがSLAMF7を形質導入したK562を標的細胞として使用して生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。K562-SLAMF7は、全長ヒトSLAMF7遺伝子のレンチウイルス形質導入により生成された。ダサチニブをアッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。
【0126】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するSLAMF7-CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断できることを示す。細胞溶解性CAR-T細胞機能のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的である(
図6A、上の図表;4-1BB共刺激を有するSLAMF7-CARの構造について
図1Dも参照):
- アッセイ培地中で20nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(t=6hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の63%の特異的溶解と比較して標的細胞の21%の特異的溶解、及びt=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の83%の特異的溶解と比較して標的細胞の35%の特異的溶解);
- アッセイ培地中で≧40nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(t=6hまでの標的細胞の5.5%未満の特異的溶解;及びt=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の83%の特異的溶解と比較して標的細胞の10%未満の特異的溶解)。
【0127】
本発明者らは、ダサチニブはまた、CD28共刺激ドメインを有するSLAMF7 CARを発現するCD8
+ T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断できることを確認した(
図6A、下パネル;CD28共刺激ドメインを有するSLAMF7 CARの構造について
図1Eも参照)。
- アッセイ培地中に20、40及び60nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(t=6hにおいて非ダサチニブ処理CAR-Tによる標的細胞の67%の特異的溶解と比較して標的細胞の21%未満の特異的溶解;及びt=12hにおいて非ダサチニブ処理CAR-T細胞による標的細胞の85%の特異的溶解と比較して標的細胞の35%未満の残余の特異的溶解);
- アッセイ培地中で≧80nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(t=12hにおける非ダサチニブ処理CAR-T細胞による85%の特異的溶解と比較して、任意の所与の時点についての標的細胞の3%未満の特異的溶解)。
【0128】
ダサチニブはCD8+及びCD4+SLAMF7 CAR-T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を遮断する
本発明者らは、n=2の健常ドナーからSLAMF7特異的CD8+及びCD4+ CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、ダサチニブの存在下又は非存在下においてCD8+及びCD4+ CAR-T細胞株のサイトカインの産生及び分泌を解析した。CAR-T細胞を、本発明者らがSLAMF7を形質導入したK562と共培養した。ダサチニブを共培養アッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。ELISAを行って、共培養物から除去された上清中のIFN-γ及びIL-2を検出した。
【0129】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するSLAMF7 CARを発現するCD8+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを示す。サイトカインの産生及び分泌のダサチニブ誘導性の遮断の程度は用量依存的である(
図6B):
- アッセイ培地中で20nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して15%未満の残余の特異的IFN-γ産生があり、且つ残余の特異的IL-2産生はなかった;
- アッセイ培地中で≧40nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して0.8%未満の残余の特異的IFN-γ産生があり、且つ残余の特異的IL-2産生はなかった。
【0130】
本発明者らは、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するSLAMF7 CARを発現するCD8+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図6B)。
- アッセイ培地中で≧20nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して4%未満の残余の特異的IFN-γ産生があり、且つ残余の特異的IL-2産生はなかった。
- アッセイ培地中で≧40nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して0.2%未満の残余の特異的IFN-γ産生であり、且つ残余の特異的IL-2産生はなかった。
【0131】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するSLAMF7 CARを発現するCD4
+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図6C)。
- アッセイ培地中で≧20nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して0.5%未満の残余のIFN-γがあり、且つ残余のIl-2産生はなかった。
【0132】
本発明者らはまた、ダサチニブは、CD28共刺激ドメインを有するSLAMF7 CARを発現するCD4
+ T細胞においてサイトカインの産生及び分泌を完全に遮断できることを確認した(
図6C)。
- アッセイ培地中で≧20nMのダサチニブの濃度において、非ダサチニブ処理CAR-T細胞と比較して1.2%未満の残余のIFN-γがあり、且つ残余のIl-2産生はなかった。
【0133】
これらのデータは、ダサチニブは、受容体の設計及び特異性とは独立してCAR-T細胞によるサイトカイン分泌の好適な阻害剤であるという事実の追加の証拠である。
【0134】
C)ダサチニブはCAR-T細胞のシグナル伝達を遮断する
ダサチニブはCARシグナル伝達に関与するキナーゼのリン酸化を遮断する
本発明者らは、100nMのダサチニブの存在下又は非存在下において4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞をRCH-ACV標的細胞(CD19+)と共培養し、ウエスタンブロット解析を行って、CARシグナル伝達に関与すると推定されるキナーゼのリン酸化状態を決定した。
【0135】
本発明者らがダサチニブの存在下で共培養したCAR-T細胞において、Lck/Srcファミリーキナーゼのチロシン416、CAR CD3ゼータのチロシン142、及びZAP70のチロシン319におけるリン酸化は、本発明者らがダサチニブの非存在下で共培養したCAR-T細胞と比較してより低かった(
図7A)。参照及び対照のために、本発明者らは、ダサチニブ処理及び非処理の両方のCAR-T細胞において、Lck、CAR CD3ゼータ、及びZAP70、及びβ-アクチンについての付随的なウエスタンブロットを行った。CARに含まれるCD3ゼータドメイン(CAR CD3ゼータ)は、その別個の分子量により内因性のCD3ゼータから区別した。
【0136】
定量的ウエスタンブロット解析は、ダサチニブ処理CAR-T細胞におけるリン酸化は、ダサチニブの非存在下で共培養したCAR-T細胞と比較してそれぞれ12.86%(CAR CD3ゼータ)、21.57%(Lck)及び11.61%(ZAP70)に過ぎないことを示した(
図7B)。
【0137】
ダサチニブはGFP発現のNFAT媒介性の誘導を遮断する
本発明者らは、NFAT誘導性のGFPレポーター遺伝子を共発現するように本発明者らが形質導入したCD8+ CD19 CAR/4-1BB T細胞を調製した。本発明者らは、100nMのダサチニブの存在下又は非存在下のいずれかにおいて、これらのT細胞をRaji(CD19+)又はK562(CD19)腫瘍細胞と共培養し、フローサイトメトリー解析を行ってGFPレポーター遺伝子の発現を決定した。
【0138】
データは、ダサチニブの存在下において、GFPレポーター遺伝子発現の誘導は完全に妨げられたことを示す。ダサチニブの非存在下でのGFP発現の平均蛍光強度(MFI)は、Rajiを用いた刺激後に平均で1211であり、ダサチニブの存在下でのRajiを用いた刺激後に129に過ぎず、これは、非刺激T細胞を用いて得られたバックグラウンドMFI(MFI 117)と類似している(
図8、左パネル)。
【0139】
本発明者らは、ダサチニブの存在はCD4
+ CD19 CAR/4-1BB T細胞においてNFATシグナル伝達及びGFPレポーター遺伝子発現を妨げることを確認した(
図8、右パネル)。
【0140】
データは、ダサチニブは、CD8+ T細胞及びCD4+ T細胞の両方においてCARシグナル伝達を完全に遮断し、且つNFAT転写因子の発現を防止することを示す。
【0141】
ダサチニブによるシグナル伝達の妨害はCAR-T細胞の生存率を減少させない
本発明者らは、100nMのダサチニブの非存在下又は存在下のいずれかにおいて、CD8+ CD19 CAR/4-1BB T細胞を単独で又は照射K562/CD19との共培養として24時間培養した。共培養の終了時に、本発明者らは、アネキシン-V及び7-AADを用いる染色を行って、生CAR-T細胞(アネキシン-V陰性/7-AAD陰性)、アポトーシスを起こしているCAR-T細胞(アネキシン-V陽性/7-AAD陰性)、及び死CAR-T細胞(アネキシン-V陽性/7-AAD陽性)のパーセンテージを決定した。
【0142】
データは、K562/CD19腫瘍細胞を用いた刺激後及びダサチニブの存在下において、ダサチニブの非存在下(生:25.4%;アポトーシス:66.2%;死8.4%)より高い割合の生CAR-T細胞及びより低い割合の死又はアポトーシスCAR-T細胞(生:47.4%;アポトーシス:45.7%;死6.9%)であったことを示す(
図9)。共培養アッセイの開始の2時間後にCAR-T細胞及びK562/CD19腫瘍細胞の共培養物にダサチニブを加えた場合に類似の効果が観察された(生:41.7%;アポトーシス:51.3%;死7%)。これらのデータは、ダサチニブは、腫瘍細胞との遭遇後の活性化誘導細胞死(AICD)からCAR-T細胞を保護できることを示す。
【0143】
合わせると、データは、ダサチニブは、休止状態のCAR-T細胞の刺激、活性化及びその後のエフェクター機能を完全に遮断できることを示す。遮断はCD8+ T細胞及びCD4+ T細胞の両方において効果的であり、抗原特異性及びCAR構築物の特定の設計(例:共刺激部分)とは独立して機能する。ダサチニブによるCAR-T細胞機能の遮断は用量依存的である。CAR-T細胞機能の部分的な阻害もまた達成することができ、それはダサチニブの選択された濃度に依存する。
【0144】
(実施例3)
ダサチニブは活性化CAR-T細胞の機能を遮断する
ダサチニブは活性化CAR-T細胞の機能を遮断する
本発明者らは、ダサチニブが、既に活性化されてエフェクター機能を実行中であるCAR-T細胞の機能を遮断できるかどうかを決定することを試みた。本発明者らは、n=3の健常ドナーからCD8+ CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らがCD19を形質導入したK562標的細胞を使用して生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。ダサチニブを共培養の開始の1時間後にアッセイ培地に加えた(dasa +1h)。比較のために、本発明者らは、ダサチニブを共培養のまさに開始時に加える設定(dasa;実施例2の実験において行ったように)、及びダサチニブを加えない設定(非処理)を含めた。
【0145】
データは、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現する既に活性化されたCD8
+ T細胞の細胞溶解機能を遮断できることを示す。ダサチニブ(100nM)を共培養の開始の1時間後にアッセイ培地に加えた設定において、本発明者らは、共培養の7時間まで特異的に溶解した標的細胞のパーセンテージの増加の低減を検出した。7時間後、特異的に溶解した標的細胞のパーセンテージはプラトーに達し、更に増加せず、t=10時間において34%の特異的溶解であった(
図10A)。比較のために、ダサチニブを共培養物に加えなかった設定において、全10時間のアッセイ期間にわたり特異的な標的細胞溶解のはるかに速く且つ安定した増加があった。2時間を超えた各解析時点において、特異的に溶解した標的細胞のパーセンテージは、遅延した(+1時間)ダサチニブ添加を伴う設定と比較してより高かった。10時間の解析時点において、特異的に溶解した標的細胞のパーセンテージは>90%であった(
図10A)。ダサチニブ(100nM)を共培養の開始時に加えた設定において、実施例2において得られたデータと合致して、細胞溶解活性の完全な遮断があった。
【0146】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現する既に活性化されたCD8
+ T細胞のサイトカインの産生及び分泌を遮断できることを示す。CD8
+ CAR-T細胞をK562/CD19標的細胞と20時間共培養し、これらの共培養物から得られた上清中のIFN-γ及びIL-2の存在をELISAにより解析した。データは、ダサチニブ(100nM)を共培養の開始の2時間後にアッセイ培地に加えた設定において、ダサチニブを加えなかった設定(非処理対照)と比較してIFN-γ及びIL-2のより低いレベルであったことを示す(
図10B)。正規化(非処理CAR-T細胞におけるサイトカイン産生のレベル=100%)後、残余のIFN-γ及びIl-2産生のパーセンテージはそれぞれ51%及び28%であった(
図10B)。
【0147】
本発明者らはまた、ダサチニブは、4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現する既に活性化されたCD8
+ T細胞の増殖を遮断できることを示す。CD8
+ CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、K562/CD19標的細胞と共培養した。CAR-T細胞の増殖をCFSE色素の希釈に基づいて72時間後に解析し、増殖指数を算出した。ダサチニブ(100nM)を共培養の開始時(0h)、又は共培養の開始の1時間後(+1h)、若しくは3時間後(+3h)、若しくは48時間後(+48h)のいずれかにおいて加えた。ダサチニブの非存在下でK562/CD19標的細胞を用いて刺激されたCAR-T細胞において観察された増殖を参照(増殖=100%)として使用した。データは、共培養の開始の1時間後及び3時間後におけるダサチニブの添加は、非処理CAR-T細胞と比較して26%及び72%未満のより低い増殖指数に繋がったことを示す(
図10C)。共培養の開始の48時間後におけるダサチニブの添加は、非処理CAR-T細胞と比較して91%のより低い増殖指数に繋がったが、この差異は統計的に有意でなかった(
図10C)。
【0148】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブは、既に活性化されてエフェクター機能を実行中のCAR-T細胞の機能を遮断できることを示す。この能力は、CAR-T細胞免疫療法の状況において毒性を軽減するため又は毒性の増悪を予防するための特定の臨床的関連性を有する。
【0149】
(実施例4)
ダサチニブは逐次的な刺激の間にCAR-T細胞活性化を予防する
本発明者らは、NFAT/GFPレポーターシステムを用いてシグナル伝達レベルに関して活性化CAR-T細胞に対するダサチニブの効果を調べ、且つダサチニブ媒介性の阻害が経時的に且つ逐次的な抗原遭遇の間に持続的であり得るかどうかを評価した(
図11)。NFATレポーターCAR T細胞を実施例1に記載したように生成した。
【0150】
本発明者らは、本発明者らがCD19を形質導入したK562標的細胞との共培養後のCD8+及びCD4+ CAR-TにおけるGFPのNFAT推進性発現を解析した。共培養の開始の1時間後(dasa +1h)又はアッセイ開始の間(dasa)にダサチニブをアッセイ培地に加えた。比較のために、本発明者らは、ダサチニブを加えない設定(非処理)を含めた。その後に、標的細胞及び100nMのダサチニブを同時に24時間毎に加えた。
【0151】
データは、ダサチニブをアッセイ開始の1時間後に加えた場合、1日目に、T細胞は部分的に活性化され、GFPの発現の低減を示したことを示す(非処理であるが刺激されたCAR-T細胞における1949と比較して734のMFI)。ダサチニブが始めから存在した場合、ダサチニブが始めから存在した場合、GFPの発現は1日目に完全に抑制された(MFI 137)。
【0152】
データは、始めから処理されたT細胞、及びアッセイ開始の1時間後に処理されたT細胞のいずれにおいても、ダサチニブが一旦存在すると、GFPは2日目又は3日目のその後の刺激により誘導されなかったことを示す。代わりに、GFPレベルは3日目まで減少し、更なる抗原特異的刺激はダサチニブにより予防され、細胞は機能オフ状態に維持されたことを指し示す。
【0153】
本発明者らは、ダサチニブは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CAR及びNFAT/GFPレポーターシステムを共発現するCD4
+ T細胞においてその後の抗原特異的刺激を予防することを確認した(
図11)。
【0154】
データは、ダサチニブをアッセイ開始の1時間後に加えた場合、1日目に、T細胞は部分的に活性化され、GFPの発現の低減を示したことを示す(非処理であるが刺激されたCAR-T細胞における2288と比較して841のMFI)。ダサチニブが始めから存在した場合、GFPの発現は1日目に完全に抑制された(MFI 317)。
【0155】
データは、始めから処理されたT細胞、及びアッセイ開始の1時間後に処理されたT細胞のいずれにおいても、ダサチニブが一旦存在すると、GFPは2日目又は3日目のその後の刺激により誘導されなかったことを示す。代わりに、GFPレベルは3日目まで減少したが(それぞれ、MFI 108及びMFI 326)、GFP発現は非処理CAR-T細胞において高いままであり(MFI 2499)、更なる抗原特異的刺激はダサチニブにより予防され、細胞は機能オフ状態に維持されたことを指し示す。
【0156】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブは、既に活性化されたCAR-T細胞の機能を遮断できることを裏付ける。更には、データは、ダサチニブは、既に誘導された活性化を妨害し、抗原の存在にもかかわらず転写因子のその後の誘導を予防できることを示す。
【0157】
(実施例5)
CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブの除去後に急速且つ完全に可逆的である
CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの短期曝露後に急速且つ完全に可逆的である
本発明者らは、n=3の健常ドナーから4-1BB共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8+ T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らがCD19を形質導入したK562標的細胞を使用して生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。
【0158】
ダサチニブ(100nM)を共培養の開始時にアッセイ培地に加えた(t=-2h)。2時間後(t=0h)、アッセイ培地を廃棄し、新鮮なアッセイ培地で置き換えた(すなわち、ダサチニブを除去した)。CAR-T細胞の細胞溶解活性を1時間間隔で10時間解析した。比較のために、本発明者らは、ダサチニブがアッセイ培地中に存在しない設定を含めた(
図12A)。
【0159】
データは、ダサチニブの存在下において(すなわち、共培養アッセイの最初の2時間において)、実施例2において得られたデータと合致して、CAR-T細胞はいかなる細胞溶解活性も発揮しなかったことを示す。しかしながら、培地変更の直後に(すなわち、ダサチニブの除去の直後に)、CAR-T細胞は細胞溶解活性を発揮し始めた。+4時間時に、CAR-T細胞は標的細胞の77%の特異的溶解を付与した。10時間時における共培養アッセイの終了時に、CAR-T細胞は、共培養の最初の2時間においてダサチニブを用いて処理しなかったCAR-T細胞と類似して、標的細胞の>95%の特異的溶解を付与した(
図12A)。データは、本発明者らがn=2の健常ドナーから調製したCD28共刺激を有するCD19 CARを発現するCD8
+ T細胞株を用いて裏付けられた(
図12B)。
【0160】
ダサチニブへの長期曝露はCAR-T細胞の生存率を減少させない
ダサチニブの非存在下[(-)]又はダサチニブの存在下[100nM,(+)]のいずれかにおいて連続する8日間、50U/mlのIL-2を添加した培養培地中でCD8+ CD19 CAR/4-1BB-T細胞を維持した。ダサチニブを培養培地に24時間毎に加えた。
【0161】
2日目(すなわち、48時間の短期曝露)及び8日目(長期曝露)に、本発明者らは、各培養条件からCAR-T細胞のアリコートを得、7AAD及びアネキシンVを用いる染色を使用して細胞生存率を決定した。各時点において、生存CAR-T細胞のパーセンテージは、ダサチニブなしで培養されたCAR-T細胞と比較した場合にダサチニブの存在下に維持されたCAR-T細胞株においてより高かった(
図13)。データは、ダサチニブへの短期曝露及び長期曝露の両方はCAR-T細胞の生存率の減少に繋がらないことを示す。
【0162】
CAR-T細胞機能の遮断はダサチニブへの曝露及びその後の除去後に急速且つ完全に可逆的である
ダサチニブの非存在下又はダサチニブの存在下(100nM)のいずれかにおいて連続する7日間、50U/mlのIL-2を添加した培養培地中でCD8+ CD19 CAR/4-1BB-T細胞を維持した。ダサチニブを培養培地に24時間毎に加えた。
【0163】
1日(すなわち、24時間の短期曝露)後及び7日(長期曝露)後に、本発明者らは、各培養条件からCAR-T細胞のアリコートを得、完全培地の変更を行ってダサチニブを除去した。次に、本発明者らは、機能試験を行って、ダサチニブへの以前の曝露が抗腫瘍機能を発揮するCAR-T細胞のその後の能力に影響を及ぼしたかどうかを評価した。データは、ダサチニブへの短期曝露及び長期曝露の両方並びにダサチニブのその後の除去の後に、CAR-T細胞は、ダサチニブの非存在下で培養されたCAR-T細胞と同一のレベル及び効力において抗腫瘍機能を発揮できたことを示す。
【0164】
図14Aにおけるデータは、ダサチニブへの1日(左の図表)及び7日(右の図表)の曝露、並びにダサチニブのその後の除去後に、CAR-T細胞は、ダサチニブに全く曝露されなかったCAR-T細胞と同等に標的細胞の急速且つ強力な特異的細胞溶解活性を発揮したことを示す(dasaなし/dasaなしと比較したdasa/dasaなし)。
図14Aにおけるデータはまた、ダサチニブへの1日(左の図表)及び7日(右の図表)の曝露、ダサチニブのその後の除去(洗浄)並びにダサチニブへの新たな曝露(dasa/dasa)後に、CAR-T細胞の細胞溶解活性の完全な遮断が依然として機能していたことを示す。
【0165】
図14Bにおけるデータは、ダサチニブへの1日及び7日の曝露、並びにダサチニブのその後の除去後に、CAR-T細胞は、ダサチニブに全く曝露されなかったCAR-T細胞(Dasa前-)と同等に、標的細胞を用いた刺激に応答してIFN-γ(左の図表)及びIL-2(右の図表)を産生及び分泌したことを示す。
図14Bにおけるデータはまた、ダサチニブへの1日及び7日の曝露、ダサチニブのその後の除去並びにダサチニブへの新たな曝露(Dasa間)後に、CAR-T細胞のサイトカインの産生及び分泌の完全な遮断が依然として機能していたことを示す。
【0166】
図14Cにおけるデータは、ダサチニブへの1日及び7日の曝露並びにダサチニブのその後の除去後に、CAR-T細胞は、ダサチニブに全く曝露されなかったCAR-T細胞(Dasa前-)と同等に、標的細胞を用いた刺激に応答して増殖したことを示す。
図14Cにおけるデータはまた、ダサチニブへの1日及び7日の曝露、ダサチニブのその後の除去並びにダサチニブへの新たな曝露(Dasa間)後に、CAR-T細胞の増殖の完全な遮断が依然として機能していたことを示す。
【0167】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブによるCAR-T細胞機能の遮断はCAR-T細胞生存率に負に影響しないこと、及び、CAR-T細胞機能の遮断は前処理の継続期間とは独立してダサチニブの除去後に急速且つ完全に可逆的であることを示す。ダサチニブへの以前の曝露は、繰返しの曝露においてCAR-T細胞機能を遮断するダサチニブの能力を不可能にしない。これらのデータは、ダサチニブは、CAR-T細胞の機能を精密且つ非常に効果的に制御するために使用され得ることを示す。
【0168】
(実施例6)
ダサチニブはin vivoにおいてCAR-T細胞機能を遮断し且つサイトカイン放出症候群を予防する
ダサチニブはマウス異種移植リンパ腫モデルにおいてCAR-T細胞機能を遮断する
本発明者らは、免疫不全マウス(NSG/Raji)において異種移植モデルを用いて、in vivoにおいてCD19 CAR/4-1BB-T細胞に対するダサチニブの影響を評価した。実験の設定及び処置スケジュールを
図15Aに提供する。簡潔に述べれば、n≧3のマウスのコホートに0日目に1×10^6個のホタル-ルシフェラーゼ_GFP形質導入Raji腫瘍細胞を接種し、7日目にマウスをCAR形質導入T細胞又は対照非形質導入T細胞のいずれかを用いて処置した。T細胞生成物は等しい割合のCD4
+ T細胞及びCD8
+ T細胞(1:1の比)からなり、総用量は5×10^6個のT細胞であった。各処置コホートにおいて、マウスの亜群にダサチニブをT細胞移入の3時間前から開始した後に、6時間毎に計6用量で与えた。
【0169】
マウスにおけるダサチニブの公知の薬物動態及び薬力学[23]に基づいて(i.p.注射後の薬物動態はi.v.注射後よりも速くはないと想定する)、これは、ダサチニブが少なくとも100nMの濃度においてマウス血清中に存在するT細胞移入の3時間前からT細胞移入の33時間後までのウィンドウ(総ウィンドウ:36時間)を提供した。このマウスモデルにおいて、ダサチニブによる遮断は、したがって、CAR-T細胞移入の+1日目まで効果的であり、CAR-T細胞移入の+3日目にはもはや効果的でないはずである。
【0170】
ダサチニブはin vivoにおいてCAR-T細胞におけるサイトカインの産生及び分泌を遮断し且つサイトカイン放出を予防する
本発明者らは、CAR-T細胞及びダサチニブを用いて並行して処置したマウス(NSG/Raji)において血清サイトカインレベルを解析した。サイトカインレベルを決定するために、本発明者らは、マウス血清においてマルチプレックスサイトカイン分析を行った(
図15B)。
【0171】
データは、CAR-T細胞及びダサチニブを与えたマウス(+1日目、CAR/+)において、CAR-T細胞を与え且つダサチニブを与えなかったマウス(CAR/-)と比較して、GM-CSF(6.4pg/ml)、IFN-γ(13.4pg/ml)、TNF-α(0.04pg/ml)、IL-2(検出限界未満)、IL-5(21.4pg/ml)及びIL-6(検出未満)[すなわち、3.2%のGM-CSF、1.7%のIFN-γ、0.3%のTNF-α及び2.6%のIL-5レベル]の有意により低い血清レベルがあったことを示す(
図15B)。データは、ダサチニブはCAR-T細胞のサイトカイン分泌を遮断できるという本発明者らのin vitroでの以前の観察(実施例2を参照)を裏付ける。データはまた、ダサチニブによるCAR-T細胞機能の遮断は急速に可逆的であるという本発明者らのin vitroでの以前の観察(実施例5を参照)を裏付ける(
図15B)。
【0172】
ダサチニブが中止されていた実験の+3日目に、サイトカイン血清レベルは、同じマウスにおいて+1日目(ダサチニブが投与されていた)に観察された血清サイトカインレベルと比較して、45.8pg/mlのGM-CSF、411.8pg/mlのIFN-γ、0.9pg/mlのTNF-α、0.2pg/mlのIL-2、331.2pg/mlのIL-5及び0.9pg/mlのIL-6[それぞれ、GM-CSFにおいて7.2、IFN-γにおいて30.7、TNF-αにおいて22.9、及びIL-5分泌において15.5の倍数変化]に増加した(
図15B)。
【0173】
合わせると、これらのデータは、i)CAR-T細胞におけるサイトカインの産生及び分泌はin vivoにおいてダサチニブにより遮断され得ること;ii)サイトカインの産生及び分泌の遮断は、ダサチニブの繰返しの投与により少なくとも36時間維持され得ること;iii)サイトカイン分泌の遮断はin vivoにおいてダサチニブの中止後に可逆的であることを示す。
【0174】
CAR-T細胞機能はin vivoにおいてダサチニブの存在下で遮断され、ダサチニブへの曝露が中止されるとCAR-T細胞はin vivoにおいて抗腫瘍機能を再開する
本発明者らは、CAR-T細胞又は非形質導入対照T細胞のいずれかを与え、且つ
図15Aにおける処置スケジュールにしたがってダサチニブを与えたか、又はダサチニブを与えなかったマウスにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を解析した。Raji腫瘍負荷を-1日目、1日目及び3日目に生物発光イメージングにより決定した。
【0175】
データは、-1日目と1日目との間に、CAR-T細胞+ダサチニブを与えたマウス(CAR/+;14.1の倍数変化)は、非形質導入対照T細胞及びダサチニブを与えたマウス(対照/+;15.4の倍数変化)と類似の速度の腫瘍進行を示し(
図15C、黒バー)、すなわち、CARは効果的でなかったことを示す。比較のために、腫瘍進行は、ダサチニブなしでCAR-T細胞を与えたマウスにおいてこの短い間隔において有意により遅かった。
【0176】
データは、ダサチニブ投与を中止していた+1日目から+3日目に、CAR-T細胞(以前のダサチニブあり又はなし)を用いて処置した両方の群において腫瘍負荷の強い低減があったこと、特に、ダサチニブを用いて以前に処置したマウスにおいて腫瘍負荷の強い低減があったことを示し、ダサチニブによるCAR-T機能の遮断はin vivoにおいて急速に可逆的であったことを説明する(
図15C、灰色バー)。
【0177】
本発明者らは、フローサイトメトリーを使用してT細胞注射後のd1及びd3において、マウスの骨髄(BM)、脾臓(SP)及び末梢血(PB)中のヒトT細胞の存在を解析した。生ヒトT細胞は、7AAD-、CD3+及びCD4+として同定した。
【0178】
データは、1日目に、ヒトT細胞の頻度は、CAR-T細胞を与え且つダサチニブを与えなかったマウス(CAR/非処置:BM:0.099%;PB 0.16%)と比較してCAR-T細胞及びダサチニブを与えたマウス(CAR/処置:BM:0.087%;PB:0.19%)において異ならず、すなわち、ダサチニブの投与はCAR-T細胞の生着を損なわせなかったことを示す(
図15D、d +1)。+3日目に、CAR-T細胞の頻度は、ダサチニブを与えなかったマウス(CAR/非処置:BM:0.56%;PB:0.61%)と比較してダサチニブを用いて並行して処置したマウス(CAR/処置:BM:0.23%;PB:0.36%)においてより低く(
図15D、d+3)、ダサチニブはCAR-T細胞の増殖及び拡大増殖を遮断できるという本発明者らのin vitroでの観察と合致していた。
【0179】
ダサチニブはin vivoにおいてCAR-T細胞におけるCARシグナル伝達及びNFAT転写因子の誘導を遮断する
本発明者らは、NFAT誘導性のGFPレポーター遺伝子を共発現するように本発明者らが形質導入したCD8
+及びCD4
+ CD19CAR/41BB T細胞を調製した。本発明者らは、上記のような異種移植マウスモデルを使用し(
図15A)、フローサイトメトリー分析を行って、(d +1)の間又は(d+3)のダサチニブ処置の後の、ダサチニブの存在下又は非存在下においてCAR-T細胞又は対照T細胞のいずれかを用いて処置したマウスの骨髄及び脾臓から単離したヒトT細胞におけるGFPレポーター遺伝子の発現を決定した。
【0180】
データは、ダサチニブの存在下において、骨髄及び脾臓から得られたCAR-T細胞におけるGFPレポーター遺伝子の発現は、ダサチニブを用いて処置されなかったマウスと比較してダサチニブを用いて処置したマウスにおいて有意により低かったことを示す(
図15E)。骨髄CAR-T細胞におけるGFPの平均蛍光強度(MFI)は、d +1においてダサチニブの非存在下(CAR/非処置)で10687であり、ダサチニブの存在下(CAR/処置)で6967に過ぎず、これは35%の低減である。GFPレポーター遺伝子発現の類似の低減が、d +1の脾臓CAR-T細胞において観察された(低減:36%)。ダサチニブがもはや効果的でなかったd +3において、骨髄における以前に処置されたCAR-T細胞と非処置CAR-T細胞との間で差異は10%に過ぎず、脾臓における以前に処置されたCAR-T細胞と非処置CAR-T細胞との間で23%に過ぎなかった。
【0181】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブはin vivoにおいてCAR-T細胞の機能を制御できることを示す。特に、データは、ダサチニブの投与は、CAR-T細胞からのサイトカイン放出を予防し、サイトカイン放出症候群を予防することを示す。ダサチニブを用いる処置は、T細胞の生着を損なわせない。ダサチニブへの曝露を中止すると、CAR-T細胞は抗腫瘍機能を再開する。
【0182】
(実施例7)
ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19CAR/4-1BB CAR-T細胞の機能を遮断する
ダサチニブはマウス異種移植リンパ腫モデルにおいてCAR-T細胞機能を遮断する
本発明者らは、免疫不全マウス(NSG/Raji)において異種移植モデルを用いて、in vivoにおいて活性化CAR/4-1BB-T細胞に対するダサチニブの影響を評価した。実験の設定及び処置スケジュールを
図16Aに提供する。簡潔に述べれば、n≧6のマウスのコホートに0日目に1×10^6個のホタル-ルシフェラーゼ_GFP形質導入Raji腫瘍細胞を接種し、7日目にマウスをCAR形質導入T細胞又は対照非形質導入T細胞のいずれかを用いて処置した。T細胞生成物は等しい割合のCD4
+ T細胞及びCD8
+ T細胞(1:1の比)からなり、総用量は5×10^6個のT細胞であった。指し示したコホートにおいて、マウスにT細胞移入の3日後、及びその後に6時間毎に計8用量でダサチニブを与えた。マウスにおけるダサチニブの公知の薬物動態及び薬力学に基づいて、これは、ダサチニブがCAR-T細胞の機能の遮断のために必要とされる閾値より高い濃度においてマウス血清中に存在する腫瘍接種後10日目から12日目までのウィンドウを提供した。CAR-T細胞機能はダサチニブの存在下でオフであり、ダサチニブ投与が中止されると機能オンに再点火される。
【0183】
本発明者らは、CAR-T細胞又は非形質導入対照T細胞のいずれかを与え、且つ
図16Aにおける処置スケジュールにしたがってダサチニブを与えたか、又はダサチニブを与えなかったマウスにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を解析した。Raji腫瘍負荷を7日目、10日目、12日目、14日目、17日目、及びその後に週に1回、生物発光イメージングにより決定した(
図16B)。データは、T細胞移入後の第1期(7日目~10日目)において、CD19-CAR T細胞は、BLIにより実証されるように、抗リンパ腫活性を発揮し始め、リンパ腫の進行を遅延させたことを示す(
図16B)。T細胞移入後の第2期(10日目~12日目)において、ダサチニブ処置コホートにおけるBLIシグナルの強い増加により立証されるように、ダサチニブは、機能オフ状態を急速に誘導し、抗リンパ腫反応性を停止させた。対照的に、BLIシグナルは、CD19-CAR T細胞を与えたがダサチニブを与えなかったマウスにおいてこの期間の間に増加しなかった。第3期(12日目より後)において、CAR T細胞が機能オン状態に戻ることを可能とするためにダサチニブの投与を中止した。BLIシグナルの急速な減少により明らかにされるように、CAR T細胞は抗リンパ腫機能を急速に再開した。17日目より後に、CAR-T細胞は、ダサチニブを用いて処置したコホートにおいて腫瘍の制御においてよりいっそう効果的であり、腫瘍は全てのマウスにおいて59日目まで制御された。対照的に、CAR-T細胞を与えたがダサチニブを与えなかったコホートのマウスの大部分において腫瘍は再発した(
図16B)。
【0184】
データは、7日目~10日目に、対照T細胞を与えたマウス(2018%の成長速度)と比較した場合に、CAR-T細胞を与えたマウスは、CARのみを与えたマウス及びその後にダサチニブを与えることを決定されたマウス(それぞれ298%及び227%の成長速度)におけるものと等しい腫瘍成長の低減を示したことを示す。10日目~12日目に、CAR-T細胞+ダサチニブを与えたマウス(CAR(オン/オフ/オン));405%)は、単独でCAR-T細胞を与えたマウス(CAR(オン)22.2%)よりはるかに速い速度の腫瘍進行を示し(
図16C)、すなわち、CARはCAR-T細胞の一次活性化にもかかわらずダサチニブの存在下で効果的でなかった。データは、ダサチニブ投与を中止していた12~17日目に、CAR-T細胞を用いて処置した両方の群において腫瘍負荷の強い低減があり(以前のダサチニブあり又はなし;それぞれ66%及び97.8%の腫瘍ルミネッセンスの低減)、特に、ダサチニブを用いて以前に処置したマウスにおいて腫瘍負荷の強い低減があったことを示し、ダサチニブによるCAR-T機能の遮断はin vivoにおいて急速に可逆的であったことを説明する(
図16C)。
【0185】
ダサチニブはin vivoにおいてCAR-T細胞からのサイトカインの産生及び分泌を遮断し、サイトカイン放出症候群を予防する
本発明者らは、CAR-T細胞及びダサチニブを用いて並行して処置したマウス(NSG/Raji)において血清サイトカインレベルを解析した。サイトカインの発現を評価するために、本発明者らは、マウス血清中のIFNγの分析を行った(
図16D)。
【0186】
データは、CAR-T細胞を与えたマウスにおいて、IFNγ血清レベルは10日目、すなわちダサチニブ投与の前に等しかったことを示す。12日目、すなわちダサチニブ投与の後に、CAR-T細胞を与え且つダサチニブを与えなかったマウス(CAR(オン))(157pg/ml)と比較してダサチニブを与えたマウス(CAR(オン/オフ/オン))においてIFN-γの有意により低い血清レベル(24pg/ml)があった(
図16D)。データは、ダサチニブは、活性化CAR-T細胞のサイトカイン分泌を遮断することができ、且つ阻害されたT細胞のその後の刺激を予防するという本発明者らのin vitroでの以前の観察(実施例3及び実施例4を参照)を裏付けた。
【0187】
データはまた、ダサチニブによるCAR-T細胞機能の遮断は急速に可逆的であるという本発明者らのin vitroでの以前の観察(実施例5を参照)を裏付けた。ダサチニブが中止されていた実験の14日目に、サイトカイン血清レベルは38pg/mlのIFN-γに増加し、これは、12日目(ダサチニブが投与されていた)の同じマウスにおいて観察された血清サイトカインレベルと比較して1.6の倍数変化である(
図16D)。
【0188】
合わせると、これらのデータは、i)活性化CAR-T細胞におけるサイトカインの産生及び分泌はin vivoにおいてダサチニブにより遮断され得ること;ii)サイトカインの産生及び分泌の遮断はダサチニブの繰返しの投与により少なくとも54時間維持され得ること;iii)サイトカイン分泌の遮断はin vivoにおいてダサチニブの中止後に可逆的であることを示す。
【0189】
(実施例8)
ダサチニブはin vivoにおいて活性化CD19/CD28 CAR-T細胞の機能を遮断する
ダサチニブはマウス異種移植リンパ腫モデルにおいてCAR-T細胞機能を遮断する
本発明者らは、免疫不全マウス(NSG/Raji)において異種移植モデルを用いて、in vivoにおいて活性化CAR/CD28-T細胞に対するダサチニブの影響を評価した。実験スケジュールの設定及び処置スケジュールを
図17Aに提供する。簡潔に述べれば、n≧8のマウスのコホートに0日目に1×10^6個のホタル-ルシフェラーゼ_GFP形質導入Raji腫瘍細胞を接種し、7日目にマウスをCAR形質導入T細胞又は対照非形質導入T細胞のいずれかを用いて処置した。T細胞生成物は等しい割合のCD4
+ T細胞及びCD8
+ T細胞(1:1の比)からなり、総用量は5×10^6個のT細胞であった。指し示したコホートにおいて、マウスにT細胞移入の3日後、すなわち10日目に、6時間毎に計8用量でダサチニブを与えた。マウスにおけるダサチニブの公知の薬物動態及び薬力学に基づいて、これは、ダサチニブがCAR-T細胞の機能の遮断のために必要とされる閾値より高い濃度においてマウス血清中に存在する腫瘍接種後10日目から12日目までのウィンドウを提供した。対照として、CAR-T細胞を与えたマウスのコホートをダサチニブ非含有ビヒクルを用いて追加的に処置した(CAR/DMSOとして指し示す)。
【0190】
CAR-T細胞機能はダサチニブの存在下でオフであり、ダサチニブ投与が中止されると機能オンに再点火される。
【0191】
本発明者らは、CAR-T細胞又は非形質導入対照T細胞のいずれかを与え、且つ
図17Aにおける処置スケジュールにしたがってダサチニブを与えたか、又はダサチニブを与えなかったマウスにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を解析した。Raji腫瘍負荷を7日目、10日目、12日目、14日目、17日目、及びその後に週に1回、生物発光イメージングにより決定した。データは、T細胞移入後の第1期(7日目~10日目)において、BLIの減少により実証されるように、CD19-CAR T細胞は抗リンパ腫活性を発揮し始め、強く活性化されたことを示す。同時に、腫瘍は、CAR T細胞及びダサチニブを与えたマウスにおいて急速に成長した(
図17B)。T細胞移入後の第2期(10日目~12日目)において、ダサチニブは、機能オフ状態を急速に誘導し、抗リンパ腫反応性を停止させ、腫瘍はダサチニブ処置コホートにおける10匹の動物のうちの7匹において再成長を開始した。対照的に、BLIシグナルは、CD19-CAR T細胞を与えたが追加の処置を与えなかった10匹のマウスのうちの9匹のマウスにおいて、並びにCD19-CAR T細胞及びダサチニブ非含有ビヒクルを与えた10匹のマウスのうちの8匹のマウスにおいて、この期間の間に急速に低減された。第3期(12日目より後)において、CAR T細胞が機能オン状態に戻ることを可能とするためにダサチニブの投与を中止した。実際、BLIシグナルの急速な減少により明らかにされるように、CAR T細胞は抗リンパ腫機能を急速に再開し(
図17B)、CAR-T細胞及びビヒクル又は単独でのCAR-T細胞を与えたマウス(それぞれ966及び839のメジアンBLI)と比較した場合に17日目によりいっそう大きい寛解(507のメジアンBLI)に繋がった。
【0192】
データは、7日目~10日目に、対照T細胞を与えたマウス(1628%の成長速度)と比較した場合に、CAR-T細胞を与えたマウスは腫瘍成長の低減を示し、T細胞が活性化された(それぞれ75%(dasa)、15%(DMSO)及び11%(CARのみ)の腫瘍の低減)ことを指し示したことを示す(
図17C)。10日目~12日目に、CAR-T細胞+ダサチニブを与えたマウス(CAR(オン/オフ/オン));33%の成長)は、単独でCAR-T細胞を与えたマウス(32%(CAR/DMSO)及び61%(CAR/-)のBLIの低減)のように腫瘍進行を示し(
図17C)、すなわち、CARはCAR-T細胞の一次活性化にもかかわらずダサチニブの存在下で効果的でなかった。
【0193】
データは、ダサチニブ投与を中止していた12~14日目に、CAR-T細胞を用いて処置した全ての群において腫瘍負荷の強い低減があり(CAR/DMSOにおいて10匹のうちの9匹、及びCAR単独コホートにおいて6/10)、特に、ダサチニブを用いて以前に処置したマウスにおいて腫瘍負荷の強い低減があった(10匹のマウスのうちの10匹、71%のBLIの平均低減)ことを示し、ダサチニブによるCAR-T機能の遮断はin vivoにおいて急速に可逆的であったことを説明する(
図17C)。
【0194】
(実施例9)
ダサチニブはデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞機能に対して優れた制御を発揮する
本発明者らは、n=3の健常ドナーから4-1BB共刺激ドメインを有するCD8+ CD19 CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らがCD19を形質導入したK562を標的細胞として使用して機能試験を行って、CAR-T細胞機能に対するデキサメタゾンの影響を評価した。デキサメタゾンをアッセイの開始時にアッセイ培地に加えたか、又は指し示した用量において24時間の前処理のために使用した。
【0195】
ダサチニブはデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞の細胞溶解機能に対して優れた制御を発揮する
本発明者らは、生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。データは、デキサメタゾンは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断することはできないことを示す。細胞溶解機能のデキサメタゾン誘導性阻害の程度は主に用量には依存せず、むしろ処理スケジュールに依存した:
- デキサメタゾンをアッセイの開始時にアッセイ培地に加えた場合、CAR-T細胞の細胞溶解機能は、適用したいずれの用量においても有意に影響されなかった(
図18A、左パネル)(非処理CAR-T細胞により媒介された標的細胞の91%の特異的溶解と比較して処理したCAR-T細胞による標的細胞の>87%の特異的溶解)。
- CAR-T細胞をデキサメタゾンを用いて24h前処理した場合(
図18A、右パネル)、全ての試験した用量においてCAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害のみがあった(非処理CAR-T細胞により媒介された標的細胞の91%の特異的溶解と比較してt=10hにおいてデキサメタゾン処理CAR-T細胞による標的細胞の>45%の特異的溶解)。
- CAR-T細胞により媒介される標的細胞の特異的溶解の完全な遮断が、アッセイの開始時に0.1μMのダサチニブを用いて処理した細胞について観察され、該細胞は参照として比較のために両方のパネルに含まれた(t=10hにおいて<1%の特異的溶解)。
【0196】
ダサチニブはデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞によるサイトカインの産生及び分泌に対して優れた制御を発揮する
本発明者らは、デキサメタゾンの存在下又は非存在下においてCD8+ CAR-T細胞株によるサイトカインの産生及び分泌を解析した。ELISAを行って、共培養物から除去された上清中のIFN-γ及びIL-2を検出した。
【0197】
データは、デキサメタゾンは、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8+ CAR-T細胞においてサイトカイン分泌を完全に遮断することはできないことを示す。サイトカインの分泌に対するデキサメタゾンの影響は処理スケジュールに依存し、且つ異なるサイトカインについて異なる:
- 前処理した(黒バー)又はアッセイの間にのみ処理した(灰色バー)CAR-T細胞についてIFN-γ分泌の有意な低減はなかった(
図18B、左パネル)。デキサメタゾンの任意の所与の濃度において、非処理CAR-T細胞と比較してデキサメタゾンを用いて処理したCAR-T細胞による43%より多くの残余の特異的IFN-γ分泌があった。
- 前処理した(黒バー)又はアッセイの間にのみデキサメタゾンを用いて処理した(灰色バー)CAR-T細胞についてIL-2分泌の部分的な低減があった(
図18B、右パネル)。デキサメタゾンの任意の所与の濃度において、非処理CAR-T細胞と比較してデキサメタゾンを用いて処理したCAR-T細胞による17%未満の残余の特異的IL-2分泌があった。0.1μMのダサチニブを用いて処理したCAR-T細胞はIL-2分泌の完全な遮断を示し、これは実験2において得られたデータと合致し、参照として比較のために含めた。
【0198】
ダサチニブはデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞の増殖に対して優れた制御を発揮する
本発明者らは、デキサメタゾンの存在下又は非存在下においてCD8+ CAR-T細胞株の増殖を解析した。CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、本発明者らがCD19を形質導入したK562と共培養した。フローサイトメトリー分析を行って、72h後のT細胞の増殖を決定した。アッセイ期間の間に起こった細胞分裂の平均数を指し示す増殖指数を算出し、それを使用して、更なる処理の非存在下で刺激されたCAR-T細胞の増殖指数を100%として正規化された残余増殖を決定した。
【0199】
データは、デキサメタゾンはCD8
+ CAR-T細胞の増殖を低減できることを裏付ける。効果は、デキサメタゾンを用いる24hの前処理を与えたCAR-T細胞と共培養の開始時にデキサメタゾンを与えたCAR-T細胞との間で等しかった。任意の所与の濃度において、残余増殖は、非処理のままとしたCAR-T細胞と比較して26%未満であった(
図18C)。それにもかかわらず、0.1μMのダサチニブを用いて観察されたようなCAR-T細胞の増殖の完全な遮断(<5.6%)は、デキサメタゾンにより達成され得なかった。
【0200】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブはデキサメタゾンと比較してCAR-T細胞に対して優れた制御を発揮することを示す。特に、データは、共培養の開始時及びアッセイの24h前のいずれにおいても、CAR-T細胞へのデキサメタゾンの投与は、0.1μMのダサチニブを用いるCAR-T細胞の処理により観察されるようなCAR-T細胞機能の完全な遮断を達成できないことを示す。
【0201】
(実施例10)
チロシンキナーゼ阻害剤はCAR-T細胞エフェクター機能に影響を及ぼすことができる
CAR-T細胞の機能に対するダサチニブ及び他の臨床的に承認されたチロシンキナーゼ阻害剤の影響
本発明者らは、n=2の健常ドナーから4-1BB共刺激ドメインを有するCD8+ ROR1 CAR-T細胞株を調製した。各T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、標的細胞としてROR1+ RCH-ACVを使用して機能試験を行って、CAR-T細胞機能に対する臨床的に承認されたTKIのパネルの影響を評価した。TKIは、100nMのダサチニブ、5.3μMのイマチニブ、4.2μMのラパチニブ又は3.6μMのニロチニブの最終濃度までアッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。非処理CAR-T細胞を算出のための対照として使用した。
【0202】
本発明者らは、生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8
+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析した。データは、試験したパネルのうち、ダサチニブは、細胞溶解機能を完全に遮断できる唯一のTKIであることを示す(t=8時間において特異的溶解<5%)(
図19A)。データは、ラパチニブ、ニロチニブ又はイマチニブの存在下において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があったことを示す(t=8時間において非処理CAR-T細胞により媒介された>90%の特異的溶解と比較してラパチニブ、ニロチニブ又はイマチニブのいずれかを用いて処理したCAR-T細胞により媒介された<75%の特異的溶解)。
【0203】
本発明者らは、RCH-ACV標的細胞とのCAR-T細胞の共培養物から除去した上清を使用してELISAを行うことによりCD8
+ CAR-T細胞のIFN-γの産生及び分泌を解析した。データは、ダサチニブ及びニロチニブはIFN-γの産生及び分泌の量を低減できることを示す(
図19B):
- 100nMのダサチニブの存在下において、IFN-γの産生及び分泌は完全に遮断され、検出レベル未満であった。
- 3.6μMのニロチニブの存在下において、IFN-γの産生及び分泌は、非処理CAR-T細胞により産生される1310pg/mlと比較して480pg/mlに低減され、これは36.6%の残余のIFNγ分泌と類似する。
【0204】
本発明者らは次に、TKI処理の存在下又は非存在下においてCD8+ CAR-T細胞株の増殖を解析した。CAR-T細胞をCFSEを用いて標識し、RCH-ACVと共培養した。CAR-T細胞の増殖を共培養の72h後にフローサイトメトリーにより評価した。
【0205】
データは、100nMのダサチニブを用いた処理は、実施例2において示したデータに類似してCAR-T細胞の増殖の(ほぼ)完全な阻害を媒介することを示す。データはまた、ニロチニブはCD8+ CAR-T細胞の増殖を部分的に遮断できることを示し、アッセイ培地中に3.6μMのニロチニブの濃度において、2.84の増殖指数を有する非処理CAR-T細胞と比較して増殖指数は2.24に低減された。
【0206】
CAR-T細胞の細胞溶解機能に対するダサチニブ及び他のSrcキナーゼ阻害剤の影響
本発明者らは、1人の健常ドナーから4-1BB共刺激ドメインを有するCD8+ CD19 CAR-T細胞株を調製した。T細胞株において、本発明者らはEGFRt形質導入マーカーを使用して>90%の純度までCAR発現T細胞を濃縮した。本発明者らは、本発明者らがCD19を形質導入したK562を標的細胞として使用して4時間の生物発光ベースの細胞傷害性アッセイにおいてCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解活性を解析して、CAR-T細胞の細胞溶解機能に対するSrcキナーゼ阻害剤のパネルの影響を評価した。Srcキナーゼ阻害剤を4-log濃度範囲にわたりアッセイの開始時にアッセイ培地に加えた。
【0207】
データは、4つの試験したSrcキナーゼ阻害剤のうち、3つの阻害剤はCAR-T細胞の細胞溶解活性を遮断できることを示す(
図20):
- アッセイ培地中で10nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(非処理CAR-T細胞による標的細胞の82%の特異的溶解と比較して標的細胞の16.1%の特異的溶解)。
- アッセイ培地中で≧100nMのダサチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(非処理CAR-T細胞による標的細胞の82%の特異的溶解と比較して標的細胞の<3%の特異的溶解)。
- アッセイ培地中で10nMのPP1阻害剤の濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の部分的な阻害があった(非処理CAR-T細胞による標的細胞の82%の特異的溶解と比較して標的細胞の62.4%の特異的溶解)。
- アッセイ培地中で≧100nMのPP1阻害剤の濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(非処理CAR-T細胞による標的細胞の82%の特異的溶解と比較して標的細胞の<3%の特異的溶解)。
- アッセイ培地中で1000nMのボスチニブの濃度において、CAR-T細胞の細胞溶解機能の(ほぼ)完全な阻害があった(非処理CAR-T細胞による標的細胞の82%の特異的溶解と比較して標的細胞の<3%の特異的溶解)。
【0208】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブ以外のチロシンキナーゼ阻害剤はCAR-T細胞機能に対して阻害効果を発揮できることを示す。特に、データは、ニロチニブはCAR-T細胞からのサイトカインの産生及び分泌の強力な阻害剤であることを示す。Srcキナーゼ阻害剤PP1阻害剤及びボスチニブはCD8+ CAR-T細胞の細胞溶解機能を完全に遮断することができる。
【0209】
(実施例11)
ダサチニブを用いる間欠的な処置はCAR-T細胞機能を増大する
ダサチニブへの間欠的な曝露はin vivoにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大する
本発明者らは、免疫不全マウス(NSG/Raji)において異種移植モデルを用いて、in vivoにおいてCD19 CAR/4-1BB-T細胞に対するダサチニブの影響を評価した。実験の設定及び処置スケジュールを
図21Aに提供する。簡潔に述べれば、n≧2のマウスのコホートに0日目に1×10^6個のホタル-ルシフェラーゼ_GFP形質導入Raji腫瘍細胞を接種した。CAR-T細胞(すなわち、4-1BB共刺激ドメインを有するCD19 CARを発現するCD8
+及びCD4
+ T細胞、総用量:5×10e6;CD8:CD4比=1:1)又は対照非形質導入T細胞を7日目にi.v.尾静脈注射により投与した。5mg/kgのダサチニブをi.p.注射により24時間毎にd7からd11まで投与した後、i.p.注射により36時間毎にd12及びd14において投与した(計7用量)。連続的な生物発光イメージングを行って7、9及び15日目に腫瘍負荷を決定した。
【0210】
マウスにおけるダサチニブの公知の薬物動態及び薬力学[23]に基づいて、これは、ダサチニブが、実施例2に示すようにCAR-T細胞の機能の一時的な遮断に繋がるはずである>50nMの濃度においてマウス血清中に存在する各注射後≒6時間のウィンドウを提供した。その後の21時間にわたり(次の注射まで)、ダサチニブは50nMの阻害閾値より低いはずであり、したがって、CAR-T細胞機能に対して阻害効果を有しないはずである。
【0211】
データは、ダサチニブを用いたマウスの間欠的な処置はin vivoにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増加させることを示す(
図21B)。CAR-T細胞及びダサチニブを与えたマウスは、ダサチニブなしでCAR-T細胞を与えたマウスと比較して優れた腫瘍制御及びより遅い腫瘍進行を示した。8日目に、ダサチニブなしでCAR-T細胞を与えたマウスにおける平均生物発光シグナルは1.9e10p/s/cm*2/srであった一方、CAR-T細胞及びダサチニブを用いる間欠的な処置を与えたマウスにおいて平均生物発光シグナルは5.6e9p/s/cm*2/srに過ぎなかった(p<0.05)。8日目に、ダサチニブと共に非形質導入対照T細胞を与えたマウスとダサチニブなしで非形質導入対照T細胞を与えたマウスとの間で生物発光シグナルにおける統計的に有意な差はなかった。
【0212】
ダサチニブへの間欠的な曝露はin vivoにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を増大する
本発明者らは、
図21Aに記載されるように異種移植モデルを使用して、ダサチニブへの間欠的な曝露を用いたマウスにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を解析した。15日目に、マウスを屠殺し、末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓(SP)をフローサイトメトリーによりヒトCAR-T細胞の存在について解析した。生ヒトT細胞(7AAD
-、CD3
+、CD45
+)及び残留腫瘍細胞(GFP
+)のパーセンテージを評価するために使用したゲーティング戦略を
図22Aに示す。
【0213】
データは、
図21Bに示したように、ダサチニブへの間欠的な曝露はCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大することを示す。全ての生細胞のうちの58.8%のGFP陽性腫瘍細胞という高い腫瘍負荷がCAR-T細胞を用いて処置した1匹の個々のマウスの骨髄において検出された(
図22A、上パネル)。それとは対照的に、CAR-T細胞及び間欠的なダサチニブを用いて処置した1匹の例示的なマウスは、骨髄中の全ての生細胞のうちの0.22%の残留腫瘍負荷を示した(
図22A、下パネル)。
【0214】
図22Bにおけるデータは、ダサチニブを用いる間欠的な処置はin vivoにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を増大することを示す。骨髄及び脾臓において、ヒトCAR-T細胞のパーセンテージは、CAR-T細胞を与えたが間欠的なダサチニブを与えなかった動物(BM:1.9%、SP:3.2%)と比較した場合に間欠的なダサチニブを用いて処置した動物(BM:7.3%;SP:6.9%)においてより高かった(p>0.05)。
【0215】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブへの間欠的な曝露はin vivoにおいてCAR-T細胞の抗腫瘍機能を増大し、ダサチニブへの間欠的な曝露はまた、in vivoにおいてCAR-T細胞の生着、増殖及び持続を増大することを示す。
【0216】
(実施例12)
ダサチニブを用いる間欠的な処置はCAR-T細胞上のPD-1発現を減少させる
実施例11において導入したマウスモデルに基づいて(
図21A)、本発明者らは、骨髄(BM)、末梢血(PB)及び脾臓(SP)におけるヒトCAR-T細胞上のPD-1の表面発現をフローサイトメトリーにより解析した。
【0217】
データは、ダサチニブの間欠的な曝露は、間欠的なダサチニブに曝露しなかったマウスの対応する臓器におけるCAR-T細胞と比較して骨髄及び末梢血中のCAR-T細胞におけるPD-1発現を有意に低減することを示す(
図23):
- 骨髄(BM)において、抗PD1 mAbを用いてCAR-T細胞を染色した後に得られた平均蛍光強度(MFI)は、ダサチニブに曝露しなかったマウス(CAR/-)において9461であり、ダサチニブを用いて間欠的に処置されたマウス(CAR/+)において7025に過ぎなかった。
- 末梢血(PB)において、抗PD1 mAbを用いてCAR-T細胞を染色した後に得られた平均蛍光強度(MFI)は、ダサチニブに曝露しなかったマウス(CAR/-)において4110であり、ダサチニブを用いて間欠的に処置されたマウス(CAR/+)において2775に過ぎなかった。
- 脾臓(SP)において、抗PD1 mAbを用いてCAR-T細胞を染色した後に得られた平均蛍光強度(MFI)は、ダサチニブに曝露しなかったマウス(CAR/-)において4318であり、ダサチニブを用いて間欠的に処置されたマウス(CAR/+)において23652に過ぎなかった。
【0218】
合わせると、これらのデータは、間欠的な曝露により、ダサチニブはCAR-T細胞上のPD-1の発現を減少させることを示す。
【0219】
(実施例13)
ダサチニブにより遮断されるCAR-T細胞は、iCasp9自殺遺伝子を用いるその後の除去に感受性である
100nMのダサチニブの非存在下又は存在下のいずれかにおいて、及びiCaspase誘導性薬物である10nMのAP20187の非存在下又は存在下において、50U/mlのIL-2を添加した培地中でiCasp自殺遺伝子を共発現するCAR-T細胞を培養した。24時間後、細胞を抗CD3 mABを用いて標識し、フローサイトメトリーによりiCasp+ T細胞の存在について解析した。
【0220】
データは、自殺遺伝子の誘導及びT細胞のその後のアポトーシスはダサチニブにより影響されないことを示す(
図24):
二量体化剤の存在下(ダサチニブ/二量体化剤+)において、iCasp
+細胞のパーセンテージは45%に低減され、これは100nMのダサチニブ(36%)及び二量体化剤(ダサチニブ+/二量体化剤+)の存在下でのiCasp
+のパーセンテージと同等であった。
【0221】
合わせると、これらのデータは、ダサチニブにより遮断されるCAR-T細胞は、iCasp9自殺遺伝子を用いるその後の除去に感受性であることを示す。
本発明による使用のための免疫細胞及びチロシンキナーゼ阻害剤の他に、本発明の方法のために使用される材料は、医薬製品及び診断製品の製造のための公知の標準にしたがって、請求項の方法及び使用のため(例えば、本明細書において定義されるようにがんを治療するため)の製品として産業的に生産及び販売することができる。したがって、本発明は産業的に応用可能である。