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特開2024-28381架橋性組成物、部材および架橋性組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028381
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】架橋性組成物、部材および架橋性組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20240226BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240226BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C08L27/16
C08K5/14
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000209
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2022192803の分割
【原出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021209617
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 一良
(72)【発明者】
【氏名】竹村 光平
(72)【発明者】
【氏名】川合 智士
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 尊
(57)【要約】
【課題】アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材であって、耐硝酸性に優れる部材を与えることができる架橋性組成物を提供すること。
【解決手段】アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材に用いる架橋性組成物であって、フッ素ゴムおよび架橋剤を含有しており、さらに、受酸剤として、ハイドロタルサイトを含有し、または、受酸剤として、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有し、もしくは、含有しておらず、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満である、架橋性組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材に用いる架橋性組成物であって、
フッ素ゴムおよび架橋剤を含有しており、
さらに、
(a)受酸剤として、ハイドロタルサイトを含有し、または、
(b)受酸剤として、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有し、もしくは、含有しておらず、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満である、
架橋性組成物。
【請求項2】
(a)の場合において、ハイドロタルサイトの含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部である請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
(a)の場合において、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満である請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
(b)の場合において、ハイドロタルサイトの含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1質量部未満である請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
(b)の場合において、ハイドロタルサイト以外の受酸剤が、金属酸化物、金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩および弱酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または4に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
フッ素ゴムが、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムである請求項1、2または4に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴム、および、パーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2または4に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド単位および下記一般式(1):
CHX=CXRf (1)
(式中、XおよびXは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体(1)単位を含有するフッ素ゴム(1)、ならびに、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2または4に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
含フッ素単量体(1)が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである請求項8に記載の架橋性組成物。
【請求項10】
フッ素ゴム(1)が、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有し、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計が0.001~10質量%である請求項8に記載の架橋性組成物。
【請求項11】
架橋剤が、パーオキサイドである請求項1、2または4に記載の架橋性組成物。
【請求項12】
共架橋剤をさらに含有する請求項11に記載の架橋性組成物。
【請求項13】
アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材であって、
前記部材が、請求項1、2または4に記載の架橋性組成物を架橋することにより得られるフッ素ゴム架橋物を含有する部材。
【請求項14】
アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材を形成するための、請求項1、2または4に記載の架橋性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材に用いる架橋性組成物、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材、および、架橋性組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、A)硬化性フルオロエラストマー;B)硬化剤;ならびにC)含水酸化硝酸ビスマス化合物および酸化ビスマスからなる群から選択される酸受容体を含む硬化性フルオロエラストマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-534271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材であって、耐硝酸性に優れる部材を与えることができる架橋性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材に用いる架橋性組成物であって、フッ素ゴムおよび架橋剤を含有しており、さらに、
(a)受酸剤として、ハイドロタルサイトを含有し、または、
(b)受酸剤として、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有し、もしくは、含有しておらず、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満である、架橋性組成物が提供される。
【0006】
(a)の場合において、ハイドロタルサイトの含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
(a)の場合において、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満であることが好ましい。
(b)の場合において、ハイドロタルサイトの含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1質量部未満であることが好ましい。
(b)の場合において、ハイドロタルサイト以外の受酸剤が、金属酸化物、金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩および弱酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フッ素ゴムが、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムであることが好ましい。
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴム、および、パーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド単位および下記一般式(1):
CHX=CXRf (1)
(式中、XおよびXは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体(1)単位を含有するフッ素ゴム(1)、ならびに、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
含フッ素単量体(1)が、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンであることが好ましい。
フッ素ゴム(1)が、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有し、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計が0.001~10質量%であることが好ましい。
架橋剤が、パーオキサイドであることが好ましい。
共架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0007】
また、本開示によれば、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材であって、前記部材が、上記の架橋性組成物を架橋することにより得られるフッ素ゴム架橋物を含有する部材が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材を形成するための、上記の架橋性組成物の使用が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材であって、耐硝酸性に優れる部材を与えることができる架橋性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
アンモニアは燃焼しても二酸化炭素が発生しないことから、燃焼機関に用いる代替燃料として期待されている。燃焼機関においてアンモニアを燃焼させた場合、燃焼機関から排出される排気ガスには、従来の化石燃料のみが使用される燃焼機関に比べて高濃度の窒素酸化物が含まれることが通常であり、窒素酸化物は水分により硝酸に容易に変化する。こうして発生した硝酸は、燃焼機関の空気管理システムに用いられるゴム部材を膨潤させる問題がある。
【0012】
特許文献1には、上記した組成を有する硬化性フルオロエラストマー組成物から得られるフッ素ゴム物品が、長期間および/または高温で希酸、冷却剤流体またはバイオ燃料に曝露される場合、驚くべきことに低い体積膨潤度、すなわち、10体積%未満、好ましくは5体積%未満を示すと記載されている。
【0013】
しかしながら、従来のバイオ燃料を用いる燃焼機関の空気管理システムの部材は、高濃度の硝酸に対する耐膨潤性が十分とはいえない。したがって、高濃度の硝酸に対する十分な耐膨潤性を有し、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材として用いても膨潤したり損傷したりすることがない部材を与える架橋性組成物が求められる。
【0014】
架橋性組成物に用いられる受酸剤の種類、受酸剤の含有量などを適切に選択することにより、得られる架橋物の硝酸に対する耐膨潤性が顕著に向上し、アンモニア燃焼機関から生じる高濃度の硝酸と接触した場合でも優れた耐膨潤性を示すことが今や見出された。新たに見出された知見によれば、受酸剤の種類、受酸剤の含有量などが適切に選択された架橋性組成物から得られる架橋物は、たとえば、5質量%以上の高濃度の硝酸水溶液中に、80℃以上の温度で長時間浸漬された場合でも、大きく膨潤することなく、元の形状を保っている。
【0015】
すなわち、本開示の架橋性組成物は、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材を形成するために用いる組成物であって、受酸剤の種類、受酸剤の含有量などを適切に選択することにより、アンモニア燃焼機関から発生する硝酸に対する耐膨潤性が著しく向上した架橋物を与えることができる組成物である。
【0016】
アンモニア燃焼機関とは、アンモニアを燃焼させることにより生じた熱を機械的エネルギーに変換する機関を意味し、アンモニアを燃料として用いるものであれば、内燃機関であってもよいし、外燃機関であってもよい。アンモニア燃焼機関は、燃料としてアンモニアのみを燃焼させる燃焼機関であってもよいし、メタン、石炭などの他の化合物とアンモニアとの混合物を混焼させる燃焼機関であってもよい。アンモニア燃焼機関は、たとえば、自動車、船舶、発電機などにおいて用いられる。アンモニア燃焼機関は、自動車、船舶に用いられる小型ディーゼル燃焼機関であってよい。上記燃料中のアンモニアの濃度は1~100体積%である。
【0017】
空気管理システムとは、その内部をガスが循環するものであり、例えば、一般的なエンジン(自動車、船舶、建機など)に付帯するエアフィルター、ターボチャージャー、中間冷却器、吸気マニホールド、及び、排ガス再循環冷却器などが挙げられる。
【0018】
空気管理システムの部材は、空気管理システムを構成する部材であり、空気管理システムに直接接続している部材も含む。例えば、エアダクト、ターボチャージャーホース、EGR(排気再循環)ホース及びシール、中間冷却器のホース及びシール、吸気マニホールドシール、酸素センサーのホース及びシール、他のセンサーのホース及びシールなどが挙げられる。空気管理システムの部材が使用される環境温度は特に限定されないが、0~200℃が好ましく、0~150℃がより好ましい。
【0019】
空気管理システムの内部を循環するガスには、アンモニアの燃焼ガスに含まれる窒素酸化物、窒素酸化物から生じる硝酸などが含まれる。本開示の架橋性組成物から得られるフッ素ゴム架橋物は硝酸に対する耐膨潤性に優れることから、硝酸を含有する燃焼ガスと接触した場合でも膨潤しにくい。したがって、本開示の架橋性組成物は、特に、アンモニア燃焼機関から排出される排気ガスと接触する部材に好適に用いることができる。排気ガスと接触する部材としては、燃焼機関の排気系に通常用いられる部材が挙げられ、たとえば、ホース、シール材などが挙げられる。
【0020】
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴムおよび架橋剤を含有している。
【0021】
さらに、本開示の第1の架橋性組成物は、受酸剤として、ハイドロタルサイトを含有する。架橋性組成物がハイドロタルサイトを含有することによって、架橋性組成物から得られる架橋物の高濃度の硝酸に対する耐膨潤性が、他の受酸剤を使用した場合に比べて顕著に向上するとともに、架橋物が耐アンモニア性および耐尿素性に優れることから、本開示の第1の架橋性組成物を、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材を形成するための材料として好適に用いることができる。耐尿素性は、尿素SCRシステム等において尿素触媒を使用する場合などに、部材に必要とされる特性である。
【0022】
本開示の第1の架橋性組成物において、ハイドロタルサイトの含有量は、部材の耐アンモニア性および耐尿素性に優れることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは8質量部以下であり、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0023】
本開示の第1の架橋性組成物は、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量は、部材の耐硝酸性が一層向上することから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0~1質量部であり、より好ましくは0質量部以上1質量部未満であり、さらに好ましくは0~0.5質量部以下であり、尚さらに好ましくは0~0.1質量部であり、特に好ましくは0質量部である。
【0024】
また、本開示の第2の架橋性組成物は、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有し、もしくは、含有しておらず、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有する場合には、その含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、1質量部未満である。架橋性組成物中のハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量を低減することによって、架橋性組成物から得られる架橋物の高濃度の硝酸に対する耐膨潤性が顕著に向上することから、本開示の第2の架橋性組成物を、アンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材を形成するための材料として好適に用いることができる。
【0025】
本開示の第2の架橋性組成物において、ハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量は、部材の耐硝酸性が一層向上することから、フッ素ゴム100質量部に対して、0質量部以上1質量部未満であり、より好ましくは0~0.5質量部以下であり、さらに好ましくは0~0.1質量部であり、特に好ましくは0質量部である。
【0026】
本開示の第2の架橋性組成物は、ハイドロタルサイトを実質的に含有しないことが好ましい。本開示の第2の架橋性組成物中のハイドロタルサイトの含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0質量部以上1質量部未満であり、より好ましくは0~0.5質量部以下であり、さらに好ましくは0~0.1質量部であり、尚さらに好ましくは0.1質量部未満であり、特に好ましくは0質量部である。
【0027】
本開示で用いるハイドロタルサイトは、特に限定されるものではないが、一般式:
[(M 2+1-x3+ (OH)x+[An- x/n・mHO]x-
(式中、M 2+は2価の金属イオンであり、M3+は3価の金属イオンであり、An-はn価のアニオンであり、xは0<x<0.5を満たす数であり、mは0≦mを満たす数である。)で示される化合物であることが入手容易の点からより好ましい。ハイドロタルサイト類としては、天然品であっても合成品であってもよい。
【0028】
2+は、2価の金属イオンを示し、たとえば、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+またはZn2+をあげることができる。これらの中でも、容易に入手可能である点から、Mg2+および/またはZn2+が好ましい。
【0029】
3+は、3価の金属イオンを示し、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+またはIn3+をあげることができる。これらの中でも、容易に入手可能の点から、Al3+が好ましい。
【0030】
n-は、n価のアニオンを示し、たとえば、OH、F、Cl、Br、NO 、CO 2-、SO 2-、Fe(CN) 3-、CHCOO、シュウ酸イオンまたはサリチン酸イオンをあげることができる。これらの中でも、容易に入手可能の点から、CO 2-が好ましい。
【0031】
上記式において、M 2+がMg2+および/またはZn2+であり、M3+がAl3+であり、An-がCO 2-であることが特に好ましい。
【0032】
xは0<x<0.5を満たす数であり、0.2≦x≦0.4を満たす数であることが好ましく、0.2≦x≦0.33を満たす数であることがより好ましい。xがこの範囲であれば、ハイドロタルサイトの生成が安定である。
【0033】
mは0≦mを満たす数であり、0≦m≦1を満たす数であることが好ましい。
【0034】
ハイドロタルサイトは、上記式で示される不定比化合物であるが、これらの中でも、入手が容易な点から、MgAl(OH)16CO・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・mHO(0≦m)、MgAl(OH)12CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO(0≦m)、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、およびMgZnAl(OH)12CO・mHO(0≦m)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、MgAl(OH)16CO・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO(0≦m)、およびMgZnAl(OH)12CO・mHO(0<m)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0035】
本開示の第1の架橋性組成物および本開示の第2の架橋性組成物は、ハイドロタルサイト以外の受酸剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。ハイドロタルサイト以外の受酸剤としては、たとえば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化亜鉛等の金属酸化物、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、メタケイ酸ナトリウム等の特表2011-522921号公報に記載されたアルカリ金属ケイ酸塩、特開2003-277563号公報に記載された弱酸の金属塩等が挙げられる。弱酸の金属塩としては、Ca、Sr、Ba、Na、Kの炭酸塩、安息香酸塩、蓚酸塩、亜リン酸塩などが挙げられる。
【0036】
受酸剤としては、金属酸化物、金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩および弱酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴムを含有する。本開示において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0038】
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
【0039】
本開示において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0040】
本開示において、パーフルオロゴム(パーフルオロエラストマー)とは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0041】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0042】
架橋部位を与えるモノマーとは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0043】
本開示で用いるフッ素ゴムとしては、特に限定されず、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムなどが挙げられる。また、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム型塩を用いた架橋が可能なフッ素ゴムであってもよい。
【0044】
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムは、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムである。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、ポリオール架橋可能な部分フッ素化ゴムが好ましい。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、特に限定されず、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムが挙げられる。
【0045】
フッ素ゴムとしては、なかでも、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムが好ましい。パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとしては、特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ素ゴムが有するヨウ素原子、臭素原子、CN基;フッ素ゴムの主鎖または側鎖に存在する炭素-炭素間の不飽和結合;などが挙げられる。
【0046】
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。フッ素ゴムとしては、なかでも、部分フッ素化ゴムが好ましく、パーオキサイド架橋可能な部分フッ素化ゴムがより好ましい。以下では、フッ素ゴムの単量体組成について詳述するが、以下で詳述する単量体組成は、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムおよびポリオール架橋可能なフッ素ゴムの単量体組成として好適であり、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムの単量体組成として特に好適である。
【0047】
部分フッ素化ゴムとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)および一般式:CF=CF-Rf(式中、Rfは-CFまたは-ORf(Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体に基づく単量体単位を含有することが好ましい。部分フッ素化ゴムは、なかでも、VdF単位またはTFE単位を含有することが好ましい。
【0048】
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
フッ素ゴムとしては、なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴム、および、パーフルオロフッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0050】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる共重合体が好ましく、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる共重合体がより好ましい。
【0051】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(100):CHX101=CX102Rf101(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(170):CH=CH-(CF-X171(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。
【0052】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VDF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VDF/PMVE/TFE系ゴム、VDF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。
【0053】
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体が好ましい。
【0054】
パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(11):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf111は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
一般式(12):CF=CFOCFORf121
(式中、Rf121は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー
一般式(13):CF=CFO(CFCF(Y131)O)(CF
(式中、Y131はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
【0055】
一般式(11)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0056】
一般式(12)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
一般式(13)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0058】
TFE/PMVE共重合体の組成は、好ましくは45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは55~80/20~45であり、さらに好ましくは55~70/30~45である。
【0059】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の組成は、好ましくは45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0060】
TFE/炭素数が4~12の一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー共重合体の組成は、好ましくは50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは60~88/12~40であり、さらに好ましくは、65~85/15~35である。
【0061】
TFE/炭素数が4~12の一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の組成は、好ましくは50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
【0062】
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0063】
パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(13)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0064】
パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-8118号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
【0065】
フッ素ゴムとしては、部材の耐アンモニア性および耐尿素性が一層向上することから、特に、ビニリデンフルオライド単位および下記一般式(1):
CHX=CXRf (1)
(式中、XおよびXは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体(1)単位を含有するフッ素ゴム(1)、ならびに、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0066】
上記一般式(1)におけるRfとしては、直鎖のフルオロアルキル基が好ましく、直鎖のパーフルオロアルキル基がより好ましい。また、Rfの炭素数は、1~6であることが好ましい。
【0067】
上記一般式(1)においては、XがHであり、XがFであることが好ましい。
【0068】
含フッ素単量体(1)としては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)等があげられ、なかでも、CH=CFCF(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)が好ましい。含フッ素単量体(1)としては、1種または2種以上の単量体を使用してよい。
【0069】
フッ素ゴム(1)は、さらに、ビニリデンフルオライド単位および含フッ素単量体(1)単位以外の他の単量体単位を含有してもよい。他の単量体としては、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種または2種以上の単量体を使用してよい。
【0070】
上記他の単量体としては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、および、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、および、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEがさらに好ましい。また、上記他の単量体として、TFEのみを用いることも好ましい形態の一つである。
【0071】
上記架橋部位を与える単量体としては、たとえば、
一般式(2):CX =CX-RfCHR
(式中、Xは、同一または異なって、H、Fまたは-CH、Rfは、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、Rは、Hまたは-CH、Xは、IまたはBrである。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、
一般式(3):CX =CX-Rf
(式中、Xは、同一または異なって、H、Fまたは-CH、Rfは、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、Xは、IまたはBrである。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体(好ましくは、一般式:CH=CH(CFI(nは2~8の整数である。)で表されるヨウ素含有単量体)、
一般式(4):CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、Xは、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、IまたはBrである。)で表される単量体、
一般式(5):CH=CFCFO(CF(CF)CFO)(CF(CF))-X
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、Xは、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、I、Brまたは-CHOHである。)で表される単量体、
一般式(6):CR=CR-Z-CR=CR
(式中、R~Rは、同一または異なって、Hまたは炭素数1~5のアルキル基である。Zは、直鎖または分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン若しくはオキシアルキレン基、または、
-(Q)-CFO-(CFCFO)(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qはアルキレンまたはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0072】
一般式(6)で表される単量体としては、たとえば、CH=CH-(CF-CH=CH、CH=CH-(CF-CH=CH、CH=CH-(CF-CH=CH、一般式:CH=CH-Z-CH=CH(式中、Zは、-CHOCH-CFO-(CFCFO)m1(CFO)n1-CF-CHOCH-で表されるフルオロポリオキシアルキレン基であり、m1/n1は0.5であり、分子量は2000である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0073】
上記架橋部位を与える単量体としては、なかでも、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、および、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOHからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0074】
上記架橋部位を与える単量体としては、CF=CFOCFCFCHIが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させることができるので、特に好ましい。
【0075】
フッ素ゴム(1)におけるビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比は、好ましくは87/13~20/80であり、ビニリデンフルオライド単位のモル比の下限はより好ましくは22/78以上であり、さらに好ましくは50/50以上であり、特に好ましくは60/40以上であり、ビニリデンフルオライド単位のモル比の上限はより好ましくは78/22以下である。また、他の単量体単位の含有量は、好ましくは全単量体単位の0~50モル%であり、より好ましくは1~40モル%である。
【0076】
フッ素ゴム(1)は、ビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位および他の単量体単位のみからなる共重合体であることが好ましい。
【0077】
フッ素ゴム(1)は、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有することが好ましく、ヨウ素原子を有することがより好ましい。フッ素ゴム(1)のヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計は、部材の圧縮永久歪み特性が一層向上することから、好ましくは0.001~10質量%であり、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計の上限は、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下であり、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計の下限は、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.08質量%以上であり、最も好ましくは0.1質量%以上である。フッ素ゴム(1)におけるヨウ素原子および臭素原子の結合位置は、フッ素ゴム(1)の主鎖の末端でも側鎖の末端でもよく、もちろん両者であってもよい。このようなフッ素ゴムにおいては、ヨウ素末端または臭素末端が架橋点(架橋部位)となり、架橋密度が高い架橋物が得られる他、パーオキサイド架橋をより容易に行うことが可能になる。
【0078】
フッ素ゴム(1)としては、ビニリデンフルオライド単位および含フッ素単量体(1)単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が87/13~22/78である共重合体(I)、ビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15~20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1~50モル%である共重合体(II)、および、ビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位を含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15~20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0~50モル%であり、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有し、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計が0.001~10質量%である共重合体(III)、からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0079】
共重合体(I)は、ビニリデンフルオライド単位および含フッ素単量体(1)単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が87/13~22/78である。共重合体(I)のビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比は、好ましくは82/18~60/40である。
【0080】
共重合体(II)は、ビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15~20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1~50モル%である。
【0081】
共重合体(II)におけるビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比は、好ましくは85/15~50/50であり、より好ましくは85/15~60/40である。
【0082】
共重合体(II)の他の単量体単位の含有量は、全単量体単位の1~40モル%であることが好ましい。共重合体(II)が含有する他の単量体としては、上述したものが好適である。
【0083】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび上記含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位を含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15~20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0~50モル%であり、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有し、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計が0.001~10質量%である。
【0084】
共重合体(III)としては、実質的にビニリデンフルオライド単位および含フッ素単量体(1)のみを含有する共重合体、または、実質的にビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位のみを含有する共重合体が好ましい。この場合の共重合体(III)は、本開示の効果を損なわない範囲で、反応性乳化剤を使用して製造したものであってもよい。また、連鎖移動剤に由来するI末端等を含んでいてもよい。
【0085】
共重合体(III)としては、実質的にビニリデンフルオライド単位および含フッ素単量体(1)単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が80/20~20/80であることがより好ましい。
【0086】
共重合体(III)は、また、実質的にビニリデンフルオライド単位、含フッ素単量体(1)単位、並びに、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な他の単量体単位のみを含有し、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15~50/50であり、他の単量体単位が全単量体単位の1~50モル%であることもより好ましい。
【0087】
本開示において、各単量体単位の含有量は、NMR法により測定する値である。
【0088】
共重合体(III)は、ヨウ素原子および臭素原子の少なくとも一方を有し、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計が0.001~10質量%である。ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計の上限は、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下であり、ヨウ素原子および臭素原子の含有量の合計の下限は、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.08質量%以上であり、最も好ましくは0.1質量%以上である。
【0089】
ヨウ素含有量は、次の方法により測定できる。NaCOとKCOとを1対1(重量比)で混合し、得られた混合物を純水20mlに溶解することにより、吸収液を調製し、試料(含フッ素ポリマー)12mgにNaSOを5mg混ぜて混合物を調製し、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、発生した燃焼ガスを吸収液に導入し、得られた吸収液を30分間放置した後、吸収液中のヨウ素イオンの濃度を、島津20Aイオンクロマトグラフを用い測定し、ヨウ素イオン0.5ppmを含むKI標準溶液および1.0ppmを含むKI標準溶液を用いて作成した検量線を用いて、測定値からヨウ素イオンの含有量を決定することができる。
【0090】
共重合体(III)におけるヨウ素原子および臭素原子の結合位置は、共重合体(III)の主鎖の末端でも側鎖の末端でもよく、もちろん両者であってもよい。このような共重合体においては、ヨウ素末端または臭素末端が架橋点(架橋部位)となり、架橋密度が高い架橋物が得られる他、パーオキサイド架橋をより容易に行うことが可能になる。
【0091】
共重合体(III)は、架橋部位を与える単量体としてヨウ素または臭素含有単量体を使用する製造方法、重合開始剤または連鎖移動剤として臭素化合物またはヨウ素化合物を使用する製造方法、などによって製造することができる。
【0092】
共重合体(III)において、他の単量体は、ビニリデンフルオライドおよび含フッ素単量体(1)と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種または2種以上の単量体を使用してよい。
【0093】
共重合体(III)における他の単量体単位の含有量は、好ましくは全単量体単位の0~50モル%であり、より好ましくは全単量体単位の1~50モル%である。
【0094】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体としては、たとえば、上述した一般式(2)~(6)で表される単量体が挙げられる。
【0095】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体としては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、および、CH=CH(CFCH=CHからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0096】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体としては、CF=CFOCFCFCHIが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させることができるので、特に好ましい。
【0097】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体は、全単量体単位の0.01~10モル%であることが好ましく、0.01~2モル%であることがより好ましい。
【0098】
フッ素ゴム(1)としては、共重合体(III)がさらに好ましい。
【0099】
フッ素ゴム(1)のガラス転移温度は、25℃以下であってよく、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下であり、さらに好ましくは-10℃以下である。さらには-20℃以下とすることもできる。
【0100】
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、X-DSC7000)を用い、試料10mgを-75℃まで冷却した後、20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度とすることにより求める。
【0101】
フッ素ゴム(1)としては、シール性に優れることから、数平均分子量(Mn)が7000~500000であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が10000~1000000であることが好ましく、Mw/Mnが1.3~8.0であることが好ましい。上記数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および、Mw/Mnは、GPC法により測定する値である。
【0102】
フッ素ゴム(1)の100℃のムーニー粘度(ML1+10(100℃))は、良好な成形状態を得ることができることから、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また200以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることが特に好ましい。ムーニー粘度は、ASTM-D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定する値である。
【0103】
フッ素ゴム(1)は、一般的なラジカル重合法により製造することができる。重合形態は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合のいずれの形態でもよいが、工業的に実施が容易であることから、乳化重合であることが好ましい。
【0104】
上記の重合においては、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0105】
連鎖移動剤としては、たとえば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、2-プロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0106】
連鎖移動剤として臭素化合物またはヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物またはヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物またはヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物またはヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、
一般式:RBr
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または、炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物またはヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素原子または臭素原子がポリマーに導入され、架橋点として機能する。
【0107】
臭素化合物およびヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0108】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0109】
フッ素ゴム(1)のうち、特に共重合体(III)を製造するための重合では、連鎖移動剤として臭素化合物またはヨウ素化合物を使用することが好ましい。
【0110】
フッ素ゴム(1)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。特に、分子構造の異なる2種類の共重合体を併用する形態であってもよい。
【0111】
上記分子構造の異なる2種類の共重合体を併用する形態としては、分子構造の異なる共重合体(I)を2種類用いる形態、分子構造の異なる共重合体(II)を2種類用いる形態、分子構造の異なる共重合体(III)を2種類用いる形態、1種類の共重合体(I)と1種類の共重合体(II)を併用する形態、1種類の共重合体(I)と1種類の共重合体(III)を併用する形態、1種類の共重合体(II)と1種類の共重合体(III)を併用する形態が挙げられる。
【0112】
本開示の架橋性組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤としては、ポリオール架橋及びパーオキサイド架橋で通常使用される架橋剤が挙げられる。架橋剤としては、ポリヒドロキシ化合物およびパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーオキサイドがより好ましい。部材の耐硝酸性を重視する場合はパーオキサイド架橋が好適であるが、フッ素ゴム架橋物を他材料と加硫接着させることにより積層体や複合部品を形成する場合であって、パーオキサイド架橋では十分に加硫接着させることが難しい場合には、ポリオール架橋を選択することにより、耐硝酸性および接着性を両立させる必要が生じる場合がある。
【0113】
本開示の架橋性組成物が、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムを含有する場合は、架橋剤として、ポリヒドロキシ化合物を含有することが好ましい。本開示の架橋性組成物が、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムを含有する場合は、架橋剤として、パーオキサイドを含有することが好ましい。また、フッ素ゴムとして、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム型塩を用いた架橋が可能なフッ素ゴムを用いる場合には、架橋剤としてピリジニウム塩を用いることができる。
【0114】
また、本開示の架橋性組成物は、架橋促進剤、塩基性化合物、共架橋剤などを含有してもよい。
【0115】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールA、2,6-ジヒドロキシ-9H-フルオレン-9-オン、3,6-ジヒドロキシ-9H-フルオレン-9-オン、2,7-ジヒドロキシ-9H-フルオレン-9-オン、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジオール、フルオレセイン(CAS No.2321-07-5)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビフェノール、2,3’-ビフェノール、2,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール、3,4’-ビフェノール、2,6-ジヒドロキシアントラキノン、2,7-ジヒドロキシアントラキノン、1,1,1-トリフルオロ-2,2,2-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,6-ジヒドロキシ-9H-キサンテン-9-オン、4-フルオロレソルシノール、5-フルオロレソルシノール、4-クロロレソルシノール、4’,7-ジヒドロキシイソフラボン、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、6-ヒドロキシ-3-クマラノンなどがあげられる。
【0116】
ポリヒドロキシ化合物の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0117】
ポリヒドロキシ化合物などの架橋剤を他の化合物と混合して用いることができる。架橋剤を含有する混合物としては、たとえば、架橋剤と架橋促進剤との固溶体や架橋剤とそれを溶解させることができる化合物との混合物などが挙げられる。固溶体としては、架橋剤と第4級ホスホニウム塩との固溶体が好ましい。第4級ホスホニウム塩としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドが好ましい。
【0118】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、本開示の架橋性組成物は、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0119】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0120】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムアイオダイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムメチルスルフェート、8-エチル-1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-プロピル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-エイコシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-テトラコシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド(以下、DBU-Bとする)、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-フェネチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7―ウンデセニウムクロライド、8-(3-フェニルプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、DBU-Bが好ましい。
【0121】
第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル-2-メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0122】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、特開平11-147891号公報に開示されている、架橋剤としてビスフェノールAFを含有する含フッ素エラストマー用加硫促進剤、特開2010-150563号公報に記載されている、架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を含有する第4級ホスホニウム塩とポリヒドロキシ化合物の付加物を用いることもできる。架橋剤および架橋促進剤としてこれらの化合物(混合物)を用いる場合、上記架橋剤の含有量(質量部)は、フッ素ゴム100質量部に対する化合物の含有量から、化合物中の架橋促進剤の含有量を除いた値である。
【0123】
架橋促進剤の含有量は特に限定されないが、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.5~1質量部がより好ましい。
【0124】
架橋剤および架橋促進剤として、特開平11-147891号公報に開示されている含フッ素エラストマー用加硫促進剤、特開2010-150563号公報に記載されている第4級ホスホニウム塩とポリヒドロキシ化合物の付加物を用いる場合、上記架橋促進剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対するこれらの化合物の含有量から、化合物中の架橋剤の含有量を除いた値である。
【0125】
ピリジニウム塩としては、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム塩が挙げられる。ピリジニウム塩の好適な含有量として、特表2018-514627号公報に記載の含有量を、本開示の架橋性組成物にも適用することができる。
【0126】
架橋剤がピリジニウム塩である場合、本開示の架橋性組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。塩基性化合物としては、特表2018-514627号公報に記載の塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物の好適な含有量として、特表2018-514627号公報に記載の含有量を、本開示の架橋性組成物にも適用することができる。
【0127】
パーオキサイドとしては、通常パーオキサイド架橋に用いられている架橋剤であればとくに限定されるものではなく、一般には、熱や酸化還元系の存在で容易にパーオキシラジカルを発生するものがよい。具体的には、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が好ましい。
【0128】
パーオキサイドの含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、1.0~5質量部がより好ましい。
【0129】
架橋剤がパーオキサイドである場合、本開示の架橋性組成物は、共架橋剤を含有することが好ましい。共架橋剤としては、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。フッ素ゴムと共架橋剤とを混練りする際には、共架橋剤を不活性無機粉体などに含浸させたものを用いてもよい。
【0130】
共架橋剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0131】
本開示の架橋性組成物には、必要に応じてフッ素ゴム架橋性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、瀝青炭、硫酸バリウム、珪藻土、焼成クレー、タルク等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、粘着性付与剤(クマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂等)、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、発泡剤、国際公開第2012/023485号に記載の酸化防止剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、架橋促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0132】
充填剤としては、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;珪藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤、ポリテトラフルオロエチレン、含フッ素熱可塑性樹脂、マイカ、シリカ、セライト、クレー等が挙げられる。
【0133】
カーボンブラックなどの充填剤の含有量は、特に限定されるものではないが、フッ素ゴム100質量部に対して0~300質量部であることが好ましく、1~150質量部であることがより好ましく、2~100質量部であることが更に好ましく、2~75質量部であることが特に好ましい。
【0134】
ワックス等の加工助剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることが更に好ましい。加工助剤、可塑剤や離型剤を使用すると、得られる成形品の機械物性やシール性が下がる傾向があるので、目的とする得られる成形品の特性が許容される範囲でこれらの含有量を調整する必要がある。
【0135】
本開示の架橋性組成物は、ジアルキルスルホン化合物を含有してもよい。ジアルキルスルホン化合物としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン等が挙げられる。ジアルキルスルホン化合物の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることがさらに好ましく、0~3質量部であることが特に好ましい。本開示の架橋性組成物がジアルキルスルホン化合物を含有する場合には、ジアルキルスルホン化合物の含有量の下限値は、たとえば、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であってよい。
【0136】
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴム、ハイドロタルサイト類、架橋剤、共架橋剤、架橋促進剤、充填材などを、一般に使用されているゴム混練り装置を用いて混練りすることにより得られる。ゴム混練り装置としては、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、二軸押し出し機などを用いることができる。
【0137】
本開示の架橋性組成物を架橋する方法としては、プレス架橋、スチーム架橋、オーブン架橋など通常用いられている方法はもちろんのこと、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、どのような条件下においても架橋反応を行うことができる。架橋条件としては、使用する架橋剤の種類などにより適宜決めればよいが、通常、150~300℃の温度で、1分~24時間加熱を行う。プレス架橋、スチーム架橋の場合、150~180℃の温度で行うことが好ましく、架橋時間は、少なくとも架橋時間T90の時間まで行えばよいが、例えば1分~2時間である。その後(プレス架橋又はスチーム架橋を行った後)のオーブン架橋の場合、170℃~250℃の温度で行うことが好ましいが、必ずしも行う必要はなく、オーブン架橋の架橋時間は例えば、0~48時間であることが好ましい。
【0138】
本開示のアンモニア燃焼機関の空気管理システムの部材は、架橋性組成物を架橋することにより得られるフッ素ゴム架橋物を含有する。本開示の部材は、たとえば、ホース、シール材などであってよい。
【0139】
本開示の部材は、たとえば、アンモニア燃焼機関の吸気・排気系の部材として好適に用いることができる。
【0140】
上記吸気・排気系における具体的な使用形態としては、吸気マニホールド、排気マニホールド等に用いられるパッキンや、スロットルのスロットルボディパッキン;EGR(排気再循環)、押圧コントロール(BPT)、ウエストゲート、ターボウエストゲート、アクチュエーター、バリアブル・タービン・ジオメトリー(VTG)ターボのアクチュエーター、排気浄化バルブ等に用いられるダイアフラム;EGR(排気再循環)のコントロールホース、エミッションコントロールホース、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、ターボチャージャーホース、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース、排気ガスホース、エアインテークホース、ターボホース、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)センサーホース等のホース;エアダクトやターボエアダクト;インテークマニホールドガスケット;EGRのシール材、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート、(ターボチャージャーなどの)タービンシャフトシールや、自動車のエンジンにおいて使用されるロッカーカバーや空気吸い込みマニホールドなどの溝部品に用いられるシール部材、尿素SCRシステムの部材などが挙げられる。
【0141】
その他、排出ガス制御部品において、蒸気回収キャニスター、触媒式転化装置、排出ガスセンサー、酸素センサー等に用いられるシールや、蒸気回収および蒸気キャニスターのソレノイド・アーマチュアのシール;吸気系マニフォールドガスケットなどとして用いることができる。
【0142】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0143】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0144】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0145】
<フッ素ゴムの単量体組成>
19F-NMR(Bruker社製AC300P型)を用いて測定した。
【0146】
<ムーニー粘度>
ASTM D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定した。測定温度は100℃である。
【0147】
<ヨウ素含有量>
NaCOとKCOとを1対1(重量比)で混合し、得られた混合物を純水20mlに溶解することにより、吸収液を調製した。試料(フッ素ゴム)12mgにNaSOを5mg混ぜて混合物を調製し、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、発生した燃焼ガスを吸収液に導入した。得られた吸収液を30分間放置した後、吸収液中のヨウ素イオンの濃度を、島津20Aイオンクロマトグラフを用いて測定した。ヨウ素イオン0.5ppmを含むKI標準溶液および1.0ppmを含むKI標準溶液を用いて作成した検量線を用いて、ヨウ素イオンの含有量を決定した。
【0148】
<架橋特性(最大トルク(MH)、最適架橋時間(T90))>
架橋性組成物について、一次架橋時に加硫試験機(MDR H2030、エムアンドケー社製)または加硫試験機(RUBBER PROCESSANALY ANALYZER RPA2000、アルファテクノロジーズアクイジション社製)を用いて、表1~3に記載の条件で架橋曲線を求め、トルクの変化より、最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を求めた。
【0149】
<引張強さおよび切断時伸び>
厚さ2mmの架橋シートを用いて、ダンベル6号形状の試験片を作製した。得られた試験片および引張試験機(エー・アンド・デイ社製テンシロンRTG-1310)を使用して、JIS K6251:2010に準じて、500mm/分の条件下、23℃における引張強さおよび切断時伸びを測定した。
【0150】
<硬さ>
厚さ2mmの架橋シートを3枚重ねたものを用いて、タイプAデュロメーターを使用して、JIS K6253-3:2012に準拠して、硬さ(Peak値、3秒後の値)を測定した。
【0151】
<耐硝酸性(1)>
5質量%硝酸水溶液中に、厚さ2mmの架橋シートを90℃で72時間浸漬させ、架橋シートを回収した。浸漬前後の架橋シートの比重と質量を測定して、体積変化率を以下の式に従って算出した。比重は、自動比重計DMA-220H(新光電子社製)を用いて測定した。
体積変化率(%)={[(浸漬後の架橋シートの質量)/(浸漬後の架橋シートの比重)]-[(浸漬前の架橋シートの質量)/(浸漬前の架橋シートの比重)]}/[(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの比重)]×100
【0152】
<耐硝酸性(2)>
60質量%硝酸水溶液中に、厚さ2mmの架橋シートを80℃で72時間浸漬させ、架橋シートを回収した。浸漬前後の架橋シートの比重と質量を測定して、体積変化率を以下の式に従って算出した。
体積変化率(%)={[(浸漬後の架橋シートの質量)/(浸漬後の架橋シートの比重)]-[(浸漬前の架橋シートの質量)/(浸漬前の架橋シートの比重)]}/[(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの比重)]×100
【0153】
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。
フッ素ゴムA
パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム
VdF/TFE/HFP=50/30/20(モル比)
ムーニー粘度(ML(1+10)100℃):52
ヨウ素含有量:0.23質量%
フッ素ゴムB
パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム
VdF/2,3,3,3-テトラフルオロプロペン=77/23(モル比)
ムーニー粘度(ML(1+10)100℃):45
ヨウ素含有量:0.21質量%
フッ素ゴムC
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム
VdF/TFE/HFP=58/20/22(モル比)
ムーニー粘度(ML(1+10)100℃):42
フッ素ゴムD
ポリオール架橋可能なフッ素ゴム
VdF/HFP=78/22(モル比)
ムーニー粘度(ML(1+10)100℃):55
【0154】
共架橋剤A:トリアリルイソシアヌレート
パーオキサイド系架橋剤A:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
ポリオール系架橋剤:ビスフェノールAF
架橋促進剤:DBU-B
ハイドロタルサイト:DHT-4A(協和化学工業株式会社)、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mH
【0155】
実施例1~8および比較例1~4
表1~3の処方に従ってそれぞれの成分を配合し、オープンロール上で混練りして、架橋性組成物を調製した。得られた架橋性組成物の最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を表1~3に示す。次に、表1~3に記載の条件の一次架橋(プレス架橋)、および、表1~3に記載の条件の二次架橋(オーブン架橋)により、架橋性組成物を架橋させ、架橋シート(厚さ2mm)を得た。得られた架橋シートの評価結果を表1~3に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】