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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028456
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】剥離剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20240226BHJP
   E04G 23/02 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C09D9/00
E04G23/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002457
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2019178887の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北尾 成史
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
(57)【要約】
【課題】剥離効果の速効性、持続性に優れた剥離剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の剥離剤組成物は、二塩基酸エステルと、脂肪酸モノエステルと、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二塩基酸エステルを含む剥離剤組成物であって、
さらに、脂肪酸モノエステルと、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含み、
前記脂肪酸モノエステルが、飽和脂肪酸モノエステル及び不飽和脂肪酸モノエステルを含む、
ことを特徴とする剥離剤組成物。
【請求項2】
前記二塩基酸エステルと、前記脂肪酸モノエステルとの混合比率(重量比率)が、20:80から80:20であることを特徴とする請求項1に記載の剥離剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離効果の速効性、持続性に優れた剥離剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜(旧塗膜)を塗り替える方法として、旧塗膜の上に新しい塗料を塗装する方法、または、旧塗膜を一旦剥離し新しい塗料を塗装する方法等が挙げられる。従来コストや工期短縮等の面から旧塗膜に上に新しい塗料を塗装する方法で塗り替える場合が多く、現在旧塗膜の上に2回ないし3回以上塗り重ねた建築物、土木構造物は数多く存在する。
【0003】
しかし、既に劣化した旧塗膜の上に新しい塗料を何重にも塗り重ねると、塗膜自体が重くなり基材に負荷を与える恐れがある。また塗膜自体の厚みが厚くなりすぎ空間を圧迫してしまう場合もある。さらに近年では高機能性塗膜が登場し、塗膜の上に新しい塗料を塗装すること自体が難しい場合もある。
【0004】
このような問題から、最近では旧塗膜を一旦剥離する方法が多くなってきている。
旧塗膜を剥離する方法としては、サンダー処理、ブラスト処理、高圧水噴射、タガネハツリ等の物理的手法、薬剤、溶剤を利用した化学的手法等が挙げられるが、最近では、下地損傷、粉塵飛散等の問題、環境配慮等の観点から、二塩基酸エステル系溶剤を使用した剥離剤が用いられるようになっている。(例えば、特許文献1等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-166143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、塗付してから剥離が可能になるまでに時間がかかる場合があった。さらに、剥離可能な持続時間が短い場合もあり、より早く剥離できるとともに、剥離可能な持続時間が長い剥離剤の開発が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、二塩基酸エステルを含む剥離剤組成物において、脂肪酸モノエステルと、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含有することによって、塗付してからより早く剥離可能になる速効性に優れ、かつ、剥離可能な状態を長時間保持できる持続性に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.二塩基酸エステルを含む剥離剤組成物であって、
さらに、脂肪酸モノエステルと、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含み、
前記脂肪酸モノエステルが、飽和脂肪酸モノエステル及び不飽和脂肪酸モノエステルを含む、
ことを特徴とする剥離剤組成物。
2.前記二塩基酸エステルと、前記脂肪酸モノエステルとの混合比率(重量比率)が、20:80から80:20であることを特徴とする1.に記載の剥離剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の剥離剤組成物は、素早く剥離可能な状態にする速効性、剥離可能な状態を長時間保持できる持続性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の剥離剤組成物は、二塩基酸エステルと、脂肪酸モノエステルと、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含むことを特徴とするものである。
本発明は、二塩基酸エステルと脂肪酸モノエステルとが相溶しやすく、二塩基酸エステルと脂肪酸モノエステルとを混合することで旧塗膜内へと浸透しやすくなり、二塩基酸エステルの剥離効果を素早く発揮させる(速効性)ことができるとともに、脂肪酸モノエステルが揮発しにくく、二塩基酸エステルの剥離効果を長時間持続させる(持続性)ことができることを見出したものである。
さらに本発明では、脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物を含むことで、上記速効性、持続性を高めることができることを見出したものである。すなわち脂肪族炭化水素化合物及び/または芳香族炭化水素化合物は、旧塗膜内へと浸透しやすく、また塗膜を軟化させやすいため、上記剥離効果(速効性、持続性)に優れた剥離剤組成物を得ることができる。特に脂肪族炭化水素化合物を含む場合は、剥離効果の持続性を向上させることができ、芳香族炭化水素化合物を含む場合は、剥離効果の速効性を向上させることができる。
また本発明では、10℃以上の常温ではもちろんのこと、10℃未満の低温下においても、剥離効果の速効性、持続性に優れたものである。
【0012】
二塩基酸エステルとしては、炭素数2以上12以下のアルキルセグメントを有するジカルボン酸と炭素数1以上12以下のアルキルアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。
具体的には、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、コハク酸ジイソブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、グルタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘキシル、コハク酸ジ-2-エチルヘキシル、グルタル酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。本発明では特に、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
二塩基酸エステルの含有量は、組成物全量に対し、15重量%以上70重量%以下、さらには25重量%以上65重量%以下であることが好ましい。二塩基酸エステルは、主に剥離効果を付与する成分で、上記含有量であることにより優れた剥離効果を発揮することができる。
【0013】
脂肪酸モノエステルとしては、例えば、脂肪酸とアルキルアルコールとのエスエル化合物等が挙げられ、特に、炭素数6以上24以下(好ましくは炭素数8以上20以下)の脂肪酸と炭素数1以上24以下(好ましくは炭素数1以上12以下)のアルキルアルコールとのエスエル化合物等を好ましく用いることができる。
具体的には、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸ヘキシル、ヘキサン酸ヘプチル、ヘキサン酸オクチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸プロピル、ヘプタン酸ブチル、ヘプタン酸ヘキシル、ヘプタン酸オクチル、オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、オクタン酸プロピル、オクタン酸ブチル、オクタン酸ペンチル、オクタン酸ヘキシル、オクタン酸ヘプチル、オクタン酸オクチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、ノナン酸プロピル、ノナン酸ブチル、ノナン酸ペンチル、ノナン酸ヘプチル、デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸ブチル、デカン酸ヘキシル、デカン酸ヘプチル、ドデカン酸メチル、ドデカン酸エチル、ドデカン酸プロピル、ドデカン酸ブチル、ドデカン酸ヘキシル、ドデカン酸ヘプチル、ドデカン酸オクチル、テトラデカン酸メチル、テトラデカン酸エチル、テトラデカン酸プロピル、テトラデカン酸ブチル、テトラデカン酸テトラデシル、ヘキサデカン酸メチル、ヘキサデカン酸エチル、ヘキサデカン酸プロピル、ヘキサデカン酸ブチル、ヘキサデカン酸2-エチルヘキシル、オクタデカン酸メチル、オクタデカン酸エチル、オクタデカン酸プロピル、オクタデカン酸ブチル、オクタデカン酸2-エチルヘキシル、オクタデカン酸オクタデシル、エイコサン酸メチル、エイコサン酸エチル等の飽和脂肪酸モノエステル、
パルミトレイン酸メチル、パルミトレイン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ペンチル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸-2-エチルヘキシル、エライジン酸メチル、エライジン酸エチル、エライジン酸プロピル、エライジン酸ブチル、エライジン酸ペンチル、エライジン酸-2-エチルヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸イソプロピル、リノール酸ブチル、リノール酸ペンチル、リノール酸ヘキシル、リノール酸ヘプチル、リノール酸-2-エチルヘキシル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸プロピル、リノレン酸ブチル、リノレン酸ペンチル、リノレン酸ヘキシル、リノレン酸ヘプチル、リノレン酸-2-エチルヘキシル、アラキドン酸メチル、アラキドン酸エチル、アラキドン酸ブチル、アラキドン酸-2-エチルヘキシル、エイコセン酸メチル、エイコセン酸エチル、エイコセン酸ブチル、エイコセン酸ヘプチル、エイコセン酸-2-エチルヘキシル、エイコサペンタエン酸メチル、エイコサペンタエン酸エチル、エイコサペンタエン酸ブチル、エイコサペンタエン酸-2-エチルヘキシル、エルカ酸メチル、エルカ酸エチル、エルカ酸ブチル、エルカ酸-2-エチルヘキシル、ドコサヘキサエン酸メチル、ドコサヘキサエン酸エチル、ドコサヘキサエン酸ブチル、ドコサヘキサエン酸-2-エチルヘキシル、リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、リシノール酸ヘプチル、リシノール酸-2-エチルヘキシル等の不飽和脂肪酸モノエステル、
あるいはヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、水添大豆油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、ブドウ種子油脂肪酸、黒クミン油脂肪酸、カボチャ核油脂肪酸、ボラージ種子油脂肪酸、小麦胚種油脂肪酸、菜種油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、ピーナッツ油脂肪酸、杏仁油脂肪酸、ピスタチオ油脂肪酸、アーモンド油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、マカデミアナッツ油脂肪酸、アボカド油脂肪酸、シーバックソーン油脂肪酸、ごま油脂肪酸、大麻油脂肪酸、ヘーゼルナッツ油脂肪酸、サクラソウ油脂肪酸、野ばら油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、くるみ油脂肪酸等のモノエステル、バイオディーゼル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では特に、不飽和脂肪酸モノエステルを含むことが好ましく、特にオレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル等から選ばれる1種または2種以上を好ましく用いることができる。
脂肪酸モノエステルの含有量は、二塩基酸エステルと脂肪酸モノエステルとの混合比率(重量比率)で、20:80から80:20、さらには30:70から70:30であることが好ましい。
このような混合比率であることにより、剥離効果の速効性、持続性に優れた剥離剤組成物を得ることができる。
【0014】
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、パラフィン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、ヘキシルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、ジブチルシクロヘキサン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
脂肪族炭化水素化合物を含む場合、脂肪族炭化水素化合物の含有量は、組成物全量に対し、1重量%以上20重量%以下、さらには2重量%以上15重量%以下であることが好ましい。脂肪族炭化水素化合物を含むことによって、特に、剥離効果の持続性を向上させることができる。
【0015】
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルエタン、(メチルフェニル)フェニルエタン、ジメチルビフェニル、ベンジルトルエン、ナフタレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン等、あるいは、スワゾール1000、スワゾール1500(丸善石油化学社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150(エクソンモービル社製)等の工業用芳香族炭化水素溶媒等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
芳香族炭化水素化合物を含む場合、芳香族炭化水素化合物の含有量は、組成物全量に対し、5重量%以上50重量%以下、さらには10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。芳香族炭化水素化合物を含むことによって、特に、剥離効果の速効性を向上させることができる。
【0016】
脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物は、剥離効果の速効性、持続性を必要とする用途によって、脂肪族炭化水素化合物または芳香族炭化水素化合物を適宜選定して用いることができる。本発明では、脂肪族炭化水素化合物及び芳香族炭化水素化合物を用いることが好ましく、より持続性を必要する用途に対しては脂肪族炭化水素化合物をより多く、より速効性を必要する用途に対しては芳香族炭化水素化合物をより多く、用いることが好ましい。
【0017】
本発明の剥離剤組成物は、上記成分の他に、例えば、界面活性剤、増粘剤、酸化剤、還元剤、ワックス、アミン化合物、芳香剤、着色剤、染料等の添加剤、また上記以外の溶剤を用いることもできる。
【0018】
上記以外の溶剤としては、例えば、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、2,6-ジメチルシクロヘキサノール、2,3-ジメチルシクロヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール等の脂肪族アルコール、フェノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の脂肪族エーテル溶剤、エチルフェニルエーテル、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、2,5―ジメチルアニソール、2-エチルアニソール、4-エチルアニソール、n-ブチルフェニルエーテル、t-ブチルアニソール、n-ペンチルアニソール、n-ヘキシルアニソール、n-ヘプチルアニソール、n-オクチルアニソール、1-メチルナフチルエーテル、2-メチルナフチルエーテル、ジフェニルエーテル、3-フェノキシトルエン等の芳香族エーテル溶剤、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエーテルエステル溶剤、シクロヘキサノン、イソホロン、ジイソブチルケトン、2-(1-シクロヘキセニル)シクロヘキサノン等のケトン溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N-メチルピロリドン、2-ピロリドン、1-3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の含窒素溶剤、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジグリコール等の含硫黄溶剤、が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では特に、含窒素溶剤、芳香族アルコールから選ばれる1種以上を好ましく用いることができる。
【0019】
増粘剤としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、ソーコナイト、スティーブンサイト、フルオロヘクトライト、ラポナイト、レクトナイト、バーミキュライト、イライト、マカタイト、カネマイト、イリエライト、マガディアイト、ケニヤアイト等の粘土鉱物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また粘土鉱物以外の増粘剤として、例えば、膨潤性シリカ、セルロース系増粘剤、ポリアクリル酸系増粘剤等を用いることができる。
本発明では特に、セピオライト及び/またはパリゴルスカイトを含むことが好ましく、旧塗膜を軟化させやすく、剥離可能の状態を長時間保持することができる。なおパリゴルスカイトは、アタパルジャイトともいい、本発明ではパリゴルスカイトとアタパルジャイトは同義で扱う。
増粘剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、組成物全量に対しその合計量で、0.1重量%以上15重量%以下、さらには0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0020】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等特に限定されず用いることができる。
【0021】
酸化剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、アクリル酸、リノール酸、オレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アルギン酸、グリコール酸、グルコン酸、グルタミン酸、トルエンスルホン酸、ニコチン酸、尿酸、ハロゲン置換酢酸、ベンゼンスルホン酸、過酸化水素、過塩素酸塩、過ホウ酸塩等が挙げられる。
【0022】
還元剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、イソプロピルアミン、モノブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0023】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、ペトロラタム、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ラノリン、みつろう、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
本発明の剥離剤組成物は、建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜(旧塗膜)を剥離するもので、適用できる旧塗膜としては、特に限定されない。
旧塗膜としては、例えば、JIS K5621「一般用さび止めペイント」、JIS K5651「アミノアルキド樹脂塗料」、JIS K5658「建築用耐候性上塗り塗料」、JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5668「合成樹脂エマルション模様塗料」、JIS K5670「アクリル樹脂系非水分散形塗料」、JIS A6909「建築用仕上塗材」等が挙げられる。
【0025】
本発明の剥離剤組成物は、このような旧塗膜の上に、好ましくは0.2kg/m以上5.0kg/m以下、より好ましくは0.3kg/m以上3.0kg/m以下で塗付すればよい。塗装器具としては特に限定されず、例えば、ローラー、刷毛、鏝、ヘラ、スプレー、ガン等を用いて塗装すればよい。
【0026】
また本発明の剥離剤組成物は、塗付後30分から3時間程度で優れた剥離効果が発現し、さらに24時間から48時間経過後も剥離効果が持続している。そのため、施工者のタイミングにあわせて剥離が可能である。剥離器具としては特に限定されず、例えば、鏝、ヘラ、スクレーパー等を用いて剥離すればよい。
【実施例0027】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0028】
表1に示す重量割合にて下記原料を均一に混合した剥離剤組成物1~23を用意した。
・二塩基酸エステル1:フタル酸ジメチル
・二塩基酸エステル2:グルタル酸ジメチル
・二塩基酸エステル3:コハク酸ジメチル
・二塩基酸エステル4:アジピン酸ジメチル
・脂肪酸モノエステル1:オクタデカン酸メチル
・脂肪酸モノエステル2:オクタデカン酸オクタデシル
・脂肪酸モノエステル3:オレイン酸メチル
・脂肪酸モノエステル4:リノール酸メチル
・脂肪族炭化水素化合物1:パラフィン
・芳香族炭化水素化合物1:ソルベッソ100
・芳香族炭化水素化合物1:キシレン
・溶剤1:N-メチルピロリドン
・溶剤2:ベンジルアルコール
・増粘剤1:セピオライト
・増粘剤2:パリゴルスカイト
・増粘剤3:ベントナイト
【0029】
(試験)
温度23度、相対湿度50%の環境下および温度5℃の環境下にて、それぞれ下記に示す旧塗膜面が垂直となるように置き、表1に示す剥離用組成物を下記に示す所要量でローラー塗りし、下記の試験を実施した。
旧塗膜1:スレート板(300×300×6mm)の片面に、アクリル樹脂、酸化チタンを主成分とするアクリル樹脂エナメルを吹付け、塗膜厚0.2mmの塗膜を形成させ、これを促進耐候性試験機「アイスーパーUVテスター」(岩崎電気株式会社製)にて400時間曝露させたものを旧塗膜とした。剥離用組成物所要量0.5kg/m
旧塗膜2:スレート板(300×300×6mm)の片面に、アクリルシリコン樹脂、酸化チタンを主成分とするアクリルシリコン樹脂塗料を吹付け、塗膜厚0.2mmの塗膜を形成させ、これを促進耐候性試験機「アイスーパーUVテスター」(岩崎電気株式会社製)にて400時間曝露させたものを旧塗膜とした。剥離用組成物所要量0.5kg/m
【0030】
(試験1)剥離効果の速効性
塗付後3時間後、ヘラを用いて塗膜剥離を行い、その度合いを、「5」(問題無くスムーズに剥離でき、優れた剥離効果を示した。)から「1」(剥離が困難であり、剥離効果に劣っていた。)の5段階で評価した。結果は表1に示す。
【0031】
(試験2)剥離効果の持続性
塗付後48時間後、ヘラを用いて塗膜剥離を行い、その度合いを評価した。評価は試験1と同様である。結果は表1に示す。
【0032】
【表1】