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  • 特開-排気浄化装置とフランジの溶接方法 図1
  • 特開-排気浄化装置とフランジの溶接方法 図2
  • 特開-排気浄化装置とフランジの溶接方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002846
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】排気浄化装置とフランジの溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/00 20060101AFI20231228BHJP
   B23K 9/02 20060101ALI20231228BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20231228BHJP
【FI】
B23K9/00 501Z
B23K9/02 D
F01N13/08 E
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022111442
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄
【テーマコード(参考)】
3G004
4E081
【Fターム(参考)】
3G004BA05
3G004DA11
3G004FA04
3G004GA01
3G004GA06
4E081AA10
4E081BA30
4E081CA08
4E081CA11
4E081DA12
4E081YX03
(57)【要約】
【課題】溶接トーチと容器体との干渉懸念が少なく、溶接時の熱歪や溶接ビードへのガス当たりの懸念も少ない、排気浄化装置とフランジの溶接方法を提案する。
【解決手段】フランジの嵌挿孔の周囲に形成した環状凸部に口部を外嵌し、環状凸部の端縁と口部の内面とを容器体の側から隅肉溶接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気浄化装置とフランジの溶接方法であって、
排気浄化装置の容器体に筒状の口部を形成し、
フランジの嵌挿孔の周囲に形成した環状凸部に前記口部を外嵌し、
前記環状凸部の端縁と前記口部の内面とを前記容器体の側から隅肉溶接することを特徴とする排気浄化装置とフランジの溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置とフランジの溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の排気装置において、排気浄化装置である触媒コンバータと排気管とを接続するために、触媒コンバータは内部に触媒担体を保持する金属製の容器体であって、容器体の中央部に触媒担体を保持するとともに、その片側か両側に排気管と接続するための円筒状の口部を有し、中央部と口部はテーパ状に繋がれている。容器体としては、プレスモナカ半体を溶接で組合わせる構造や、パイプ端部をスピニング加工で成形しテーパ部と口部を一体成形する製法などが一般的である。
【0003】
そして、口部にフランジを取付け、そのフランジと相手排気管側のフランジとを相互に締結することが行われている。締結においては、フランジ同士を貫通するボルトにナットを螺合させる方法や、密着させたフランジ同士の外縁にV断面の円環バンドを外嵌し、円環バンドの周長を減少させることで両フランジを外側から把持する方法などがある。
【0004】
口部へのフランジの取付けにおいては、図2に示すように、筒状の口部24をフランジ21の嵌挿孔26に嵌めた状態で、環状凸部23の端縁部と口部24の外面とを全周隅肉溶接25で固定するのが通例である。すなわち、口部24の外側での溶接である。このような溶接形態では、フランジ21が相手側部品と当接する取付面22と全周隅肉溶接25とが離れているため、溶接部への入熱による変形の影響が取付面22にまで及び難い。
【0005】
しかしながら、図3に示すように、口部35に対して容器体34(ケーシング)が近い形状にあってはαの範囲内で溶接トーチを運用することになり、容器体34と溶接トーチ37の運用軌跡が干渉してしまい、図2のような外側溶接は著しく困難となる。
【0006】
そのような場合には、口部35の内側(流路内)にて全周隅肉溶接36を施す場合がある。すなわち、環状凸部33の内面と口部35の端縁部を溶接固定する。このような所謂内側溶接の例として、例えば、特許第4578386号や第5057161号が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4578386号
【特許文献2】特許第5057161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら図3及び先行技術文献に記載された内側溶接では、全周隅肉溶接36の盛り上がった溶接ビードが流路内に露出し易く、溶接ビードに排気ガスが多く当たる場合には溶接ビードが高温となり、全周隅肉溶接36の劣化や強度低下が懸念される。また、フランジ31の板厚内で溶接される場合が多いので、溶接ビードがフランジの取付面32に近くならざるを得ず、溶接時の入熱による取付面32の熱歪も懸念される。溶接トーチと容器体との干渉懸念が少なく、溶接時の熱歪や溶接ビードへのガス当たりの懸念も少ない溶接構造/方法が待たれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の排気浄化装置とフランジの溶接方法は、排気浄化装置の容器体に筒状の口部を形成し、フランジの嵌挿孔の周囲に形成した環状凸部に口部を外嵌し、環状凸部の端縁と口部の内面とを容器体の側から隅肉溶接するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接トーチと容器体との干渉が無く、溶接時の熱歪や溶接ビードへのガス当たりの懸念も少ない溶接方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る溶接方法による溶接部分の断面図である。
図2】従来の外側溶接方法による溶接部分の断面図である。
図3】従来の内側溶接方法による溶接部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の望ましい実施形態について図1を参照して説明する。排気浄化装置1は容器体2にフランジ4が溶接接合された触媒コンバータであり、図1は本願の溶接方法によって溶接された状態を示す。図1の左方が排気系の上流、すなわち内燃機関側であり、排気ガスは排気浄化装置1の内部を左方から右方へ流下する。図1は排気浄化装置1の中心軸を含む面で切断した断面図であり、本願の溶接方法に関係のある上流部分のみを図示し、それ以外の図示は省略している。
【0013】
フランジ4は排気浄化装置1における最上流部位にあって、上流側排気管(図示せず)からの排気ガスを嵌装孔7から容器体2の内部へと導通するとともに、上流側排気管の下流端のフランジと、取付面6にて相互に密着し強固に締結される。そして、フランジ4の下流側に延設された環状凸部5に、容器体2と一体形成された筒状の口部3が外嵌されている。
【0014】
このような各部位の位置関係を保った状態で環状凸部5の端縁部と口部3の内面とに全周隅肉溶接8が施され、図1の排気浄化装置1を得る。この溶接においては、溶接トーチ9は容器体2側(容器体2内部)からフランジ4側へ指向しての溶接運用となるため、溶接トーチ9と容器体2との干渉を確実に回避できる。また、図左方から流入する排気ガスに対して全周隅肉溶接8の溶接ビードが環状凸部5の陰になるため、排気ガスの溶接ビードへの衝接も抑えられる。更に、取付面6と全周隅肉溶接8間の距離も保てるため、取付面6への熱影響を回避し易い。
【0015】
なお、本溶接方法は溶接トーチ9が容器体2の内部にあって溶接施工するため、施工後に溶接トーチ9を容器体2外へ出せることが条件となる。すなわち、容器体中央部と上流部(図示)とが別体構造であるとか、容器体2の下流側開口(図示せず)から取出せるとかの構造である必要がある。
【0016】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱し範囲の変更があっても本発明に包含される。全周隅肉溶接方法はMIG溶接、TIG溶接など任意である。また、フランジが容器体の上流側ではなくて下流側の口部に取付けられる場合にも適用される。また、環状凸部に外嵌される口部が、フランジの裏面側(反取付面側の面)に当接していても良い。
【符号の説明】
【0017】
1 排気浄化装置
2、34 容器体
3、24、35 口部
4、21、31 フランジ
5、23、33 環状凸部
6、22、32 取付面
7、26 嵌装孔
8、25、36 全周隅肉溶接
9、37 溶接トーチ
図1
図2
図3