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特開2024-28460化合物の結晶形態及び化合物の結晶形態を生成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028460
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】化合物の結晶形態及び化合物の結晶形態を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20240226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240226BHJP
   A61K 31/662 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C07F9/6574 Z
A61P43/00 111
A61K31/662
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024002602
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2020550745の分割
【原出願日】2019-03-18
(31)【優先権主張番号】62/646,540
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519096068
【氏名又は名称】バイキング・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒロコ・マサムネ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・バーカー
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、薬学的開発を促進するために、改善された形態のホスホネートTRβアゴニストを提供することである。
【解決手段】本発明は、結晶形態が、TBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態又は結晶形Cである式Iの化合物を結晶化させる方法、及び式Iの化合物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
の化合物の結晶形態又はその溶媒和物を含む組成物。
【請求項2】
結晶形態が、少なくとも1つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
結晶形態が、少なくとも3つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
結晶形態が約122℃の融点を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
結晶形態が、エタノール、EtOAc、トルエン、アセトン、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を含む群からの溶媒を含む溶媒和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒がテトラヒドロフランである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
結晶形態が約125℃の融点を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
溶媒がエタノールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
結晶形態が約66℃の融点を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
溶媒がEtOAcである、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
結晶形態が約68℃の融点を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
溶媒がトルエンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
結晶形態が約78℃の融点を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
溶媒がアセトンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
結晶形態が約96℃の融点を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
溶媒がメチルtert-ブチルエーテルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
結晶形態が約108℃の融点を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
50質量%を超える結晶形態を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
80質量%を超える結晶形態を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
95質量%を超える結晶形態を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
結晶形態から本質的になる、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
結晶形態が結晶形Cである、請求項18から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を製造する方法であって、
式Iの化合物の非晶質形態を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程と、
第2の溶媒を第1の溶液へ添加して、第2の混合物を生成する工程と、
式Iの化合物の結晶形態を第2の混合物から分離する工程と
を含み
式Iの化合物が、
【化2】
である、方法。
【請求項24】
結晶形態が、少なくとも1つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
結晶形態が、少なくとも1つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第1の溶媒が、EtOAc、エタノール、酢酸、オクタノール、NMP、TBME、トルエン、ピリジン、ニトロベンゼン、水、ヘプタン、THF、アセトン、アセトニトリル及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
第1の溶媒がTHFを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第1の溶媒が更にヘプタンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
第1の溶媒が、THF及びヘプタンを75:25v/vの比で含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2の溶媒が、EtOAc、エタノール、酢酸、オクタノール、NMP、TBME、トルエン、ピリジン、ニトロベンゼン、水、ヘプタン、THF、アセトン、アセトニトリル及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
第2の溶媒がヘプタンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第2の混合物のかき混ぜを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
結晶形態の分離が、第2の混合物のろ過を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を製造する方法であって、
式Iの化合物を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程と、
式Iの化合物のシーディング結晶形態又はその溶媒和物を、第1の溶液に添加してシード混合物を生成する工程と、
生成された式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を、シード混合物から分離する工程と
を含み、
式Iの化合物が、
【化3】
である、方法。
【請求項35】
生成された結晶形態が、少なくとも1つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
生成された結晶形態が、少なくとも1つの特徴的なピークを含む粉末X線回折パターンを示し、前記特徴的なピークが、9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°2θからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
シーディング結晶形態が、TBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態、結晶形C及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
シーディング結晶形態が結晶形Cである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
シーディング結晶形態がTHF溶媒和物結晶形態である、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、製薬化学、生化学、及び医学の分野に関する。特に、式Iの化合物の結晶形態、並びにそれを製造する方法及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺ホルモン(TH)は、成長、発達、代謝、及び恒常性において重要な役割を果たす。それらは、チロキシン(T4)及び3,5,3'-トリヨード-L-チロニン(T3)として、甲状腺によって生成される。T4はヒトにおける主な分泌形態であり、末梢組織において脱ヨード酵素によってより活性な形態T3に酵素的に脱ヨードされる(deiodinate)。THは、核ホルモン受容体スーパーファミリーに属する甲状腺ホルモン受容体(TR)と相互作用することによってその作用を及ぼし、標的遺伝子の転写を調節する。
【0003】
TRはほとんどの組織で発現され、2つのアイソフォーム(TRα及びTRβ)として存在する。組織分布研究、マウスノックアウト研究、及び甲状腺ホルモン不応症候群(RTH)に離間している患者の評価によって、TRαは心臓における主なアイソフォームであり、ほとんどの心臓機能を調節し、一方で、TRβアイソフォームは肝臓及び脳下垂体において優位を占め、コレステロール代謝及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生を調節することが、それぞれ立証されている。加えて、TRβアゴニストは、副腎白質ジストロフィー(ALD)、並びに高コレステロール血症及び脂肪肝疾患等の脂質障害、例えば、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び糖原病(GSD)の治療に使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,560,490号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの有望なホスホネートTRβアゴニストが発見されているが、薬学的開発を促進するために、こうした化合物の改善された形態へのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一部の実施形態は、式I:
【0008】
【化1】
【0009】
の化合物の結晶形態又はその溶媒和物を含む組成物を提供する。
【0010】
他の実施形態は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を製造する方法であって、式Iの化合物の非晶質形態を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程と、第2の溶媒を第1の溶液へ添加して、第2の混合物を生成する工程と、式Iの化合物の結晶形態を第2の混合物から分離する工程とを含み、式Iの化合物が、
【0011】
【化2】
【0012】
である、方法を提供する。
【0013】
更に他の実施形態は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を製造する方法であって、式Iの化合物を第1の溶媒に溶解し、第1の溶液を生成する工程と、式Iの化合物のシーディング(seeding)結晶形態又はその溶媒和物を第1の溶液に添加して、シード混合物(seeded mixture)を生成する工程と、生成した式Iの化合物の結晶形態はその溶媒和物をシード混合物から分離する工程とを含み、
式Iの化合物が、
【0014】
【化3】
【0015】
である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】非晶質形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図2】TBME溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図3】トルエン溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図4】エタノール溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図5】THF溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図6a】EtOAc溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図6b図6aのEtOAc溶媒和物結晶形態の、拡大した粉末X線回折パターンを示す図である。
図7a】アセトン溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図7b図7aのアセトン溶媒和物結晶形態の、拡大した粉末X線回折パターンを示す図である。
図8a】THF溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図8b図8aのTHF溶媒和物結晶形態の、拡大した粉末X線回折パターンを示す図である。
図9】結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図10a】THF溶媒和物結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図10b図10aのTHF溶媒和物結晶形態の、拡大した粉末X線回折パターンを示す図である。
図11】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図12】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図13】TBME溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図14】トルエン溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図15】エタノール溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図16】EtOAc溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図17】アセトン溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図18】THF溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図19a】結晶形Cの第1加熱示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図19b図19aからの結晶形Cの第2加熱示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図20a】混合結晶形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
図20b図20aの混合結晶形態の拡大した粉末X線回折パターンを示す図である。
図21】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図22】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図23】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図24】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図25】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図26】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図27】結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
図28a】結晶形Cの第1加熱示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図28b図28aからの結晶形Cの第2加熱示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
図29a】結晶形Cの動的蒸気収着分析結果を示すグラフである。
図29b】結晶形Cの水中相平衡分析結果を示すグラフである。
図30】観察ピーク値を備える、結晶形Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
式(I)の化合物の結晶形態、又はそれらの溶媒和物、及び式Iの化合物を結晶化する方法が、本明細書で開示される。式Iの化合物は、以下:
【0018】
【化4】
【0019】
に示される。
【0020】
式Iの結晶形態は、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶質形態、テトラヒドロフラン(THF)溶媒和物結晶形態、酢酸エチル(EtOAc)溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態及び結晶形C(本明細書で記述)を含む。
【0021】
本出願は、式Iの化合物の第1の結晶形態、及び式Iの化合物の様々な結晶形態を結晶化する方法に関する。結晶形態は、改善された安定性、加工性及び製造の容易さを有利に示す。その結果、式Iの結晶形態、特に結晶形Cは、長期安定性並びに水蒸気の低い吸着及び脱着を提供する。したがって、結晶形態は、ALD、並びに脂質障害、例えば、高コレステロール血症及び脂肪肝疾患の治療に関して、著しい臨床的改善を提供する。
【0022】
本出願は、式Iの化合物の様々な結晶溶媒和物形態及び非溶媒和(nonsolvated)形態、並びに式Iの化合物を結晶化する方法にも関する。
【0023】
式Iの化合物を結晶化する方法
式Iの化合物、又はその溶媒和物を結晶化する方法が開示される。式Iの化合物の結晶形態は、一般に、式Iの化合物を制御された条件下で結晶化することによって、得る又は生成することができる。一部の実施形態では、この方法はTBME溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法はトルエン溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法はエタノール溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法はTHF溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法はEtOAc溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法はアセトン溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、この方法は結晶形Cを生成する。
【0024】
一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の非晶質形態を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の非晶質形態及び結晶形態の混合物を第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、第2の溶媒を第1の溶液へ添加して、第2の混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、第2の溶媒はヘプタンである。
【0025】
一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を、第1の溶液にシーディングして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、TBME溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、トルエン溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、エタノール溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、THF溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、EtOAc溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、アセトン溶媒和物結晶形態を第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、結晶形Cを第1の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。
【0026】
一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、TBME溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、トルエン溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、エタノール溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、THF溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、EtOAc溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、アセトン溶媒和物結晶形態を第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。一部の実施形態では、この方法は、結晶形Cを第2の溶液にシードして、シード混合物を生成する工程を含む。
【0027】
一部の実施形態では、シード混合物は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、TBME溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、トルエン溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、エタノール溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、THF溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、EtOAc溶媒和物結晶形態を生成する。一部の実施形態では、シード混合物は、アセトン溶媒和物結晶形態を生成する。
【0028】
一部の実施形態では、シード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、TBME溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、トルエン溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、エタノール溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、THF溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、EtOAc溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、アセトン溶媒和物結晶形態をシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。一部の実施形態では、結晶形Cをシードしたシード混合物は、結晶形Cを生成する。
【0029】
一部の実施形態では、この方法は、式Iの化合物の結晶形態又はその溶媒和物を分離する工程を含む。一部の実施形態では、分離は、ろ過、例えば、熱ろ過によって実施される。一部の実施形態では、分離された生成物は、例えば、空気乾燥によって、乾燥され得る。
【0030】
一部の実施形態では、第1の溶媒は、単一の溶媒であり得る。一部の実施形態では、第1の溶媒は、2種又はそれ以上の溶媒の混合物であり得る。一部の実施形態では、第1の溶媒は、EtOAcを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、エタノールを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、酢酸を含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、オクタノールを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、TBMEを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、トルエンを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、ピリジンを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、ニトロベンゼンを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、水を含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、ヘプタンを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、THFを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、アセトンを含んでもよい。一部の実施形態では、第1の溶媒は、アセトニトリルを含んでもよい。
【0031】
一部の実施形態では、第2の溶媒は、単一の溶媒であり得る。一部の実施形態では、第2の溶媒は、2種又はそれ以上の溶媒の混合物であり得る。一部の実施形態では、第2の溶媒は、EtOAcを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、エタノールを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、酢酸を含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、オクタノールを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、NMPを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、TBMEを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、トルエンを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、ピリジンを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、ニトロベンゼンを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、水を含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、ヘプタンを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、THFを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、アセトンを含んでもよい。一部の実施形態では、第2の溶媒は、アセトニトリルを含んでもよい。
【0032】
一部の実施形態では、この方法はかき混ぜを更に含む。一部の実施形態では、かき混ぜは撹拌により実施される。一部の実施形態では、かき混ぜは超音波処理によって実施される。
【0033】
一部の実施形態では、この方法の一部は、同じ温度で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、様々な温度で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、室温で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、0℃~100℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、20℃~25℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、50℃~80℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、50℃~60℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、65℃~75℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、23℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、55℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、70℃で実施される。一部の実施形態では、この方法の一部は、第1の溶液、第2の混合物、シード混合物、結晶形態の分離、及びかき混ぜを含んでもよい。
【0034】
式Iの化合物の結晶形態
式Iの化合物の結晶形態、又はそれらの溶媒和物、特にTBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態及び結晶形C(以下に記述)も、本明細書で開示される。
【0035】
TBME溶媒和物結晶形態
TBME溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0036】
TBME溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図2は、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、TBME溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるTBME溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0037】
図13は、TBME溶媒和物結晶形態の示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は、TBME溶媒和物結晶形態に対する108℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、TBME溶媒和物結晶形態は、約103℃~113℃、約106℃~約110℃、又は約108℃の融点を示す。TBME溶媒和物結晶形態を、熱重量分析(TGA)によって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、14.1%の質量損失を示している。
【0038】
トルエン溶媒和物結晶形態
トルエン溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0039】
トルエン溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図3は、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、トルエン溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるトルエン溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0040】
図14は、トルエン溶媒和物結晶形態のDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、トルエン溶媒和物結晶形態に対する78℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、トルエン溶媒和物結晶形態は、約73℃~83℃、約76℃~約80℃、又は約78℃の融点を示す。トルエン溶媒和物結晶形態を、TGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、13.9%の質量損失を示している。
【0041】
エタノール溶媒和物結晶形態
エタノール溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0042】
エタノール溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図4は、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、エタノール溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるエタノール溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0043】
図15は、エタノール溶媒和物結晶形態のDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、エタノール溶媒和物結晶形態に対する66℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、エタノール溶媒和物結晶形態は、約61℃~71℃、約64℃~約68℃、又は約66℃の融点を示す。エタノール溶媒和物結晶形態を、TGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、7.8%の質量損失を示している。
【0044】
THF溶媒和物結晶形態
THF溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0045】
THF溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図5図8a及び8b、並びに図10a及び10bは、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、THF溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるTHF溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0046】
図18は、THF溶媒和物結晶形態のDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、THF溶媒和物結晶形態に対する125℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、THF溶媒和物結晶形態は、約120℃~130℃、約123℃~約127℃、又は約125℃の融点を示す。THF溶媒和物結晶形態を、TGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、1つの事例では11.9%の質量損失を示し、別の事例では12.1%の質量損失を示した。
【0047】
EtOAc溶媒和物結晶形態
EtOAc溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0048】
EtOAc溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図6a及び6bは、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、EtOAc溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるEtOAc溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0049】
図16は、EtOAc溶媒和物結晶形態のDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、EtOAc溶媒和物結晶形態に対する68℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、EtOAc溶媒和物結晶形態は、約63℃~73℃、約66℃~約70℃、又は約68℃の融点を示す。EtOAc溶媒和物結晶形態を、TGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、10.8%の質量損失を示している。
【0050】
アセトン溶媒和物結晶形態
アセトン溶媒和物結晶形態を形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0051】
アセトン溶媒和物結晶形態を、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図7a及び7bは、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、アセトン溶媒和物結晶形態の結晶構造を示す。以下に記述する方法によって得ることができるアセトン溶媒和物結晶形態は、XRPDパターンから決定され得る特徴的なピークを示す。
【0052】
図17は、アセトン溶媒和物結晶形態のDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、アセトン溶媒和物結晶形態に対する96℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、アセトン溶媒和物結晶形態は、約91℃~101℃、約94℃~約98℃、又は約96℃の融点を示す。アセトン溶媒和物結晶形態を、TGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、9.0%の質量損失を示している。
【0053】
結晶形C
一部の実施形態は、式(I)の非溶媒和結晶形態を含み、本明細書で結晶形Cと呼ぶ。結晶形Cを形成するための正確な条件は、経験的に決定することができ、実際に好適であると見出されたいくつかの方法を提供することだけが可能である。
【0054】
結晶形Cを、実験方法のセクションで更に詳細に記述する様々な技術を使用して特徴付けた。図11、12、21~27及び30は、粉末X線回折(XRPD)によって決定した、形態Cの結晶構造を示す。上で開示した方法によって得られ得る結晶形Cは、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°の2シータ(2θ)に、顕著なピークを示す。したがって、一部の実施形態では、式Iの化合物の結晶形態は、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°の2θから選択される、少なくとも1つの特徴的なピーク(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の特徴的なピーク)を有する。一部の実施形態では、式Iの化合物の結晶形態は、およそ9.1°、12.4°、13.8°、16.0°、16.6°、17.1°、18.6°、19.1°、21.6°、21.7°、及び23.7°の2θから選択される、少なくとも3つの特徴的なピークを有する。
【0055】
当該技術分野でよく理解されるように、異なる機器でX線回折パターンが測定された場合の実験のばらつきのために、ある度合いのばらつき内で2θ値が一致する場合、ピーク位置は等しいと見なされる。例えば、米国薬局方(United States Pharmacopeia)は、10個の最も強い回折ピークの角度設定が標準物質の角度設定と±0.2°以内で一致し、かつピークの相対強度が20%を超えて変動しない場合、同一性が確認されると述べている。したがって、一部の実施形態では、本明細書で列挙するピーク位置は、±0.5°以内の2θのばらつきを含む。他の実施形態では、本明細書で列挙するピーク位置は、±0.2°以内の2θのばらつきを含む。本明細書で開示される時、2θの値に言及する場合の「およそ」という用語は、±0.5°の2θと定義する。
【0056】
図19a及び19b、並びに図28a及び28bは、結晶形CのDSCによって得られた結果を示す。これらの結果は、結晶形Cに対する約122℃の温度でのピークを示し、これは結晶の融点を示す。したがって、一部の実施形態では、結晶形Cは、約117℃~127℃、約120℃~約124℃、又は約122℃の融点を示す。結晶形CをTGAによって分析し、25℃から200℃まで実行した場合、1つの事例では1.3%の質量損失を示し、別の事例では<0.1%の質量損失を示した。
【0057】
一方、図29aは、結晶形Cの動的蒸気収着(DVS)結果を示し、0.2質量%未満の水の取り込み(water uptake)を示している。DVA分析に続くXRPDの結果である、図24及び25は、形態Cが異なる多形に転移しなかったことを確認している。図29bは水中での3日間の相平衡実験を示し、これは、図26のXRPDに見られるような結晶形Cの変換を示さなかった。
【0058】
したがって、結晶形Cは、広範囲の湿度にわたって非吸湿性かつ安定であると特徴付けることができる。結晶形Cは良好な結晶化度も示し、残存溶媒の含有量は非常に低く(<0.1%)、融点は比較的高く(およそ122℃)、結晶形Cは水和物形成のいかなる証拠も示さない。対照的に、溶媒和物形態は、脱溶媒和して、溶媒和物と非晶質形態の混合物を生成する傾向がある。結晶形Cによって実証された、こうした有利で意外な非吸湿性及び安定性を利用することができる。例えば、治療方法及び薬学的組成物結晶形Cは、長期安定性並びに水蒸気の低い吸着及び脱着を提供することができ、ALD、並びに脂質障害、例えば、高コレステロール血症及び脂肪肝疾患の治療に関して、著しい臨床的改善を提供することができる。
【0059】
副腎白質ジストロフィー(ALD)及び脂質障害を治療する方法
式Iの化合物、したがって、本明細書で開示される式Iの化合物のいずれかの組成物は、ALD、並びに脂質障害、例えば、高コレステロール血症及び脂肪肝疾患、例えば、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、又は糖原病(GSD)を治療又は回復させるために、患者に投与され得る。したがって、式Iの化合物は、患者、例えばALDを患う患者の状態を改善するために投与され得る。別の例として、脂質障害、例えば、高コレステロール血症及び脂肪肝疾患を治療するために、式Iの化合物は投与され得る。
【0060】
式Iの化合物は、ALD及び脂質障害の治療のために、組み合わせて患者に投与され得る。式Iの化合物は、肝性脳症を患う患者の状態を改善するために投与され得る。式Iの化合物は、ALDに関連する症状を緩和するために投与され得る。式Iの化合物は、高コレステロール血症を患う患者の状態を改善するために投与され得る。式Iの化合物は、高コレステロール血症に関連する症状を緩和するために投与され得る。式Iの化合物は、脂肪肝疾患を患う患者の状態を改善するために投与され得る。式Iの化合物は、脂肪肝疾患に関連する症状を緩和するために投与され得る。
【0061】
式Iの化合物の治療上効果的な量が、患者に投与される。当業者に容易に明白であるように、投与される有用な生体内投与量及び特定の投与様式は、年齢、体重、苦痛の重症度、並びに治療される哺乳類種、用いられる特定の化合物、及びこれらの化合物が用いられる特定の用途に依存して変動するであろう(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」を参照されたく、特に第1章、第1頁の参照とともに、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。所望の結果を達成するのに必要な投与量レベルである、有効な投与量レベルの決定は、型通りの薬理学的方法を使用して、当業者によって達成することができる。典型的には、生成物のヒト臨床応用は、所望の効果が達成されるまで投与量レベルを増加させながら、より低い投与量レベルで始められる。代わりに、本方法によって特定された組成物の有用な用量及び投与経路を確立するために、確立している薬理学的方法を使用して、許容できる生体外研究を使用することができる。
【0062】
1日1回の用量が、投与され得る。代わりに、複数回の用量、例えば、2、3、4又は5回の用量が投与され得る。こうした複数回の用量は、1カ月又は2週間又は1週間の期間にわたって投与され得る。一部の実施形態では、1回の用量、又は複数回の用量、例えば、2、3、4又は5回の用量は、毎日投与され得る。
【0063】
式Iの化合物の組成物
式Iの化合物の組成物も本明細書で開示される。本出願の組成物は、有利には、ALD又は脂質障害の患者への経口投与及び/又は静脈内投与に特に適している。一部の実施形態では、組成物は、本出願で開示される方法の1つによって得ることができる。例えば、非晶質結晶化法及び/又はシーディング結晶化法は、本出願の組成物を生み出すことができる。
【0064】
一部の実施形態では、組成物は、式Iの化合物の結晶形態(例えば、本明細書で開示される、TBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態、及び/又は結晶形C)を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約20質量%の式Iの化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約50質量%の式Iの化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約80質量%の式Iの化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約95質量%の式Iの化合物の結晶形態を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約50質量%の結晶形Cを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約80質量%の結晶形Cを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約95質量%の結晶形Cを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約99質量%の結晶形Cを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、式Iの化合物の結晶形態から本質的になる。一部の実施形態では、組成物は、結晶形Cから本質的になる。一部の実施形態では、組成物は、TBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態、及び結晶形Cのうちの少なくとも2つ(例えば、2、3又は4つ)の形態の混合物を含む。
【0065】
一部の実施形態では、組成物は、結晶形Cを含む。例えば、組成物は、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の結晶形Cを含み得る。同様に、組成物は、例えば、TBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態又はアセトン溶媒和物結晶形態も含み得る。組成物は任意選択で、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%のTBME溶媒和物結晶形態、トルエン溶媒和物結晶形態、エタノール溶媒和物結晶形態、THF溶媒和物結晶形態、EtOAc溶媒和物結晶形態、アセトン溶媒和物結晶形態、及び/又は結晶形Cを含み得る。
【0066】
薬学的組成物
本出願の式Iの化合物の組成物は、患者(例えば、ヒト)へ投与するためにも配合され得る。式Iの化合物、したがって、本明細書で開示される組成物は、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに投与するために配合され得る。したがって、式Iの化合物は、標準的な薬学的に許容できる担体及び/又は賦形剤とともに、薬学的技術分野で型通りであるように、医薬として配合され得る。製剤の正確な性質は、所望の投与経路を含むいくつかの要素に依存するであろう。典型的には、式Iの化合物は、口腔、静脈内、胃内、皮下、血管内又は腹腔内投与用に配合される。
【0067】
薬学的担体又は希釈剤は、例えば、水、又は等張液、例えば、水中5%デキストロース若しくは生理食塩水であり得る。固体経口形態は、活性化合物と一緒に、希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、ショ糖、セルロース、コーンスターチ又はバレイショデンプン;潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はポリエチレングリコール;結合剤、例えば、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えば、デンプン、アルギン酸、アルギネート又はグリコール酸デンプンナトリウム;発泡剤(effervescing mixture);色素;甘味料;湿潤剤、例えば、レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸;及び、一般に、薬学的製剤で使用される無毒かつ薬理学的に不活性な物質を含有し得る。こうした医薬品は、公知の方式で、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣、又はフィルムコーティングのプロセスによって製造され得る。
【0068】
経口投与用の液体分散体は、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤であり得る。シロップ剤は、担体として、例えば、ショ糖、又はグリセリン及び/若しくはマンニトール及び/若しくはソルビトールとともにショ糖を含有し得る。
【0069】
懸濁剤及び乳剤は、担体、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含有し得る。筋肉内注射用の懸濁剤又は液剤は、式Iの化合物と一緒に、薬学的に許容できる担体、例えば、滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸エチル、グリコール、例えば、プロピレングリコール、及びラウリル硫酸ナトリウムを含有し得る。
【0070】
医薬は、式Iの化合物及び薬学的に許容できる担体から本質的になり得る。
【0071】
経口製剤は、一般に約1mg~約100gの範囲で式Iの化合物の投与量を含み得る。したがって、一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書で開示される式Iの化合物の組成物を、約1mg~約50gの範囲で含む。一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書で開示される式Iの化合物の組成物を、約1mg~約100mgの範囲で含む。一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書で開示される式Iの化合物の組成物を、約1mg~約20mgの範囲で含む。一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書で開示される式Iの化合物の組成物を、約5mg~約15gの範囲で含む。一部の実施形態では、経口製剤は、本明細書で開示される式Iの化合物の組成物を、約10mg含む。
【0072】
静脈内製剤も、一般に約1mg~約100gの範囲(例えば、約10mg)で式Iの化合物の投与量を含み得る。一部の実施形態では、静脈内製剤は、約5~約300mg/mL(好ましくは約25~約200mg/mL、より好ましくは約40~約60mg/mL)の式Iの化合物の濃度を有する。
【0073】
組成物、又は前記組成物を含有する医薬は、任意選択で密封されたパッケージングに配置され得る。密封されたパッケージングは、湿気及び/又は周囲空気が組成物又は医薬と接触することを低減する又は防ぐことができる。一部の実施形態では、パッケージングはハーメチックシールを含む。一部の実施形態では、パッケージングは、密封されたパッケージ内に真空下で又は不活性ガス(例えば、アルゴン)を用いて密封される。したがって、パッケージングは、パッケージング内に保存された組成物又は医薬の分解速度を、抑制又は低減することができる。様々なタイプの密封されたパッケージングが、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,560,490号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているが、医薬用の例示的な密封されたパッケージを開示している。
【0074】
実施例及び実験方法
追加の実施形態が以下の実施例で更に詳細に開示されるが、これらは特許請求の範囲を決して制限するものではない。
【0075】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析を、Bruker社D8 advance又はPhilips社PW 1710で実行した。Bruker社D8装置を使用する実施形態では、CuKα放射線、35kV/45mAの管電力、VANTEC1検出器、0.017°2θのステップの大きさ、105±5秒のステップ当たり時間、及び2°~50°2θの走査範囲を使用して試料を走査した。試料は、受け取ったまま、又はわずかに粉砕して準備した。12mmの試料直径及び0.1mmの深さを備える、シリコン単結晶試料ホルダーを使用した。
【0076】
Philips社PW装置を使用する実施形態では、銅Kα放射線、0.02°2θのステップの大きさ、2.4秒のステップ当たり時間、及び2°~50°2θの走査範囲を使用して試料を走査した。0.1mmの試料ホルダーを使用した。試料は、フラットな表面を得るために軽く圧力をかける以外は、特別な処理をせず測定した。測定は、周囲の空気雰囲気で実施した。
【0077】
熱重量分析(TGA)
熱重量測定は、Perkin-Elmer社Thermobalance TGS-2(アルミニウム試料皿、N2雰囲気50ml/分、加熱速度10K/分、範囲25~200又は25~350℃)を用いて実行した。
【0078】
熱重量フーリエ変換赤外分光法分析(TG-FTIR)
熱重量フーリエ変換赤外分光法測定は、Bruker社FTIR Spectrometer Vector 22に連結したNetzsch社Thermo-Microbalance TG 209(ピンホールを備える試料皿、N2雰囲気、加熱速度10K/分、範囲25~250℃)を用いて実行した。
【0079】
示差走査熱量測定分析(DSC)
一部の実施形態では、DSCは、Perkin Elmer社DSC7を用いて、以下の実験条件:3.26~4.51mgの試料質量、閉じた金試料皿、温度範囲-50℃~100℃/150℃/225℃、加熱速度10又は20K/分で実行した。試料は、空気中で秤量した。
【0080】
他の実施形態では、DSCは、Perkin Elmer社DSC7を用いて、以下の実験条件:3.53mgの試料質量、閉じた金試料皿、温度範囲-50℃~150℃、加熱速度20K/分で実行した。試料は空気中で秤量した。
【0081】
1H核磁気共鳴(NMR)
試料は、CDCl3に溶解した。NMRスペクトルは、Bruker社分光計(Ultrashield TM、B ACS 60, 300MHz)で記録した。
【0082】
カールフィッシャー水分分析
カールフィッシャー水分分析は、標準的な手順により実行した。
【0083】
動的蒸気収着(DVS)
試料(9.869mg)をPt皿上に配置し、所定の湿度プログラムを始動させる前に、試料を25℃、50%相対湿度(r.h.)で平衡させた。所定の湿度プログラムは、50%1.0時間、50%r.hから0%r.hまで;5%r.h/時間、0%r.hで5時間、0%r.hから93%r.hまで;5%r.h/時間、93%r.hで5時間、93%r.hから50%r.hまで;及び5%r.h/時間、50%r.hで1時間を含む。
【0084】
溶媒
Fluka又はMerck等級溶媒を使用した。関連実験用Fluka No.95305脱イオン水。
【0085】
およその溶解度の測定
一部の実施形態では、室温でのおよその溶解度を決定するために、工程で固体材料に溶媒を添加した。すべての添加の後、試料を十分に撹拌した。完全に溶解するまで、又は20mlの溶媒が添加されるまで、溶媒の添加を継続した。
【0086】
他の実施形態では、正確に秤量された量の式Iの化合物に、可能であれば完全な溶解が得られるまで超音波処理しながら、わずかな増加(通常100~1000μL)で試験溶媒のアリコートを添加した。溶解は、視覚的に決定した。実際の溶解度は、遅い溶解速度又は過剰な溶媒の使用に起因して、報告されたものより高い可能性がある。およその溶解度は、mg/mLで最も近い整数に決定した。
【0087】
結晶化実験
40mg~256mgの化合物を用いて、結晶化実験を実行した。溶液又はスラリーを、磁気撹拌機で撹拌した。ろ過(気孔率P4ガラスフィルター)の後に得られた試料を、不安定な水和物又は溶媒和物の起こり得る脱溶媒和を防ぐために、室温で、短時間だけ空気乾燥した。
【0088】
出発原料A
出発原料は、Metabasis Therapeutics Inc.社から得た。材料は、図1のXRPDによって確認されるように、非晶質と特徴付けられた。
【0089】
系統的な結晶化実験を実行するために、室温でのおよその溶解度を知るべきである。非晶質出発原料Aの23℃でのおよその溶解度を、以下のTable 1(表1)に示す。
【0090】
【表1】
【実施例0091】
溶液に基づく結晶化の試行
以下の実施例では、すべての蒸発及びスラリーは油を与えた。様々な溶媒及び逆溶媒(antisolvent)中で複屈折性でありかつ消光性(extinctive)である微量の固体を有する、高温試料をスラリー化しても、収率又は結晶の大きさの増加をもたらさなかった。高温で、逆溶媒蒸気下で、油及び出発原料に圧力を加えると、油及びゲルに埋め込まれた、複屈折性でありかつ消光性である微量の固体をまさにもたらした。温度循環実験は、結晶化の徴候を示さなかった。これらの結果は、式Iの化合物を結晶化することの難しさを実証している。
【0092】
溶液に基づく様々な結晶化実験及び結果の詳細を、以下のTable 2(表2)に示す。
【0093】
【表2A】
【0094】
【表2B】
【実施例0095】
非溶媒に基づく結晶化の試行
高温及び湿度ストレス(humidity stress)実験は、複屈折及び消光性を示す少量の固体を含有する油をもたらした。超音波処理は、より一般的な技術を超える利点を提供するようには見えない。これらの結果は、式Iの化合物を結晶化することの困難さを更に確認している。ジイソプロピルエステル類似体を使用するヘテロシーディング(heteroseeding)も、効果がなかった。
【0096】
非溶剤に基づく様々な結晶化実験及び結果の詳細を、以下のTable 3(表3)に示す。
【0097】
【表3】
【実施例0098】
結晶化実験
非晶質形態をTHFとヘプタンの混合物(比75:25v/v)に室温で溶解した場合、式(I)の化合物の自発結晶化(spontaneous crystallization)が観察された。濁った「溶液」が得られるまで、追加のヘプタンを添加した。この濁った「溶液」を室温で16時間磁気撹拌機で撹拌し、白色ペーストを生み出した。XRPD測定は結晶材料を確認した、図5(以下の試験9)。いくつかの他の溶媒系にある非晶質形態の溶液又はスラリーにシードするために、この第1の結晶材料を使用した。ほとんどの場合、結晶材料は、短時間内に室温で生成された。溶媒和物は、これらの結晶化条件を使用して常に生成された。エタノール溶媒和物(試験8)及びTHF溶媒和物(試験14)は、溶液NMR(図示せず)によって確認された。
【0099】
THF溶媒和物をヘプタン中80℃で脱溶媒和する第1の試行(試験15)は、粘稠な粘着性塊をもたらした。室温に冷却した後、スラリーにエタノール溶媒和物をシードし、室温で20時間撹拌した。ろ過及び室温での空気乾燥の後、試料は非常に少量の残存溶媒しか含有せず、XRPDは、新しい結晶形態(すなわち、結晶形C)の生成を確認した、図9。溶液NMRスペクトル(図示せず)は、出発原料と同じスペクトルを示している。この非溶媒和結晶形Cを、さらなる結晶化実験にシードするために使用した。
【0100】
様々な結晶化実験は、式Iの化合物のより大きな規模の量の結晶形態又は溶媒和物形態を生成した。例えば、THF溶媒和物(試験結果20)及び非溶媒和結晶形C(試験結果21及び23)は、200mgの規模で生成された。
【0101】
様々な結晶化実験及び結果の詳細を、以下のTable 4(表4)に示す。
【0102】
【表4A】
【0103】
【表4B】
【0104】
【表4C】
【0105】
【表4D】
【0106】
【表4E】
【0107】
【表4F】
【0108】
【表4G】
【実施例0109】
結晶試料の特性評価
結晶固体形態をXRPD、TGA、DSCによって特徴付けし、溶液NMRによって試料を選択した。
【0110】
非溶媒和結晶形CのXRPD結果である、図11、12、21~27及び30は、良好な結晶化度を示し、残存溶媒の含有量は非常に少なく(<0.1%)、溶融温度は122℃(密封して閉じた試料皿;DSCピーク温度)、図19a及び19b、である。溶液NMRは、出発原料のスペクトル(図示せず)を示している。
【0111】
DSCによる溶媒和物の特性評価である、図13~18は、密封して閉じた試料皿で測定されるピークの温度によって推定されるように、溶媒和物の安定性の概要を提供した。溶媒和物のピークの温度は、大きく変動する。観察された最も高い温度は、THF溶媒和物(125℃)の図18に関してであり、その高い安定性を反映している。図15のエタノール溶媒和物(66℃)及び図16のEtOAc溶媒和物(68℃)に関しては、ピークの温度ははるかに低く、対応する溶媒の沸点より十分下である。エタノール溶媒和物(試験結果8)及びTHF溶媒和物(試験結果14)を溶液NMR(図示せず)によって確認し、出発原料及び対応する溶媒和物の溶媒のスペクトルを示した。
【0112】
実施例4のTG質量損失及びDSCピーク温度の結果を、以下のTable 5(表5)に示す。
【0113】
【表5】
【実施例0114】
追加シーディング結晶化実験
式Iの化合物の他の非溶媒和結晶形態を捜すために、異なる温度の溶媒混合物中での相平衡実験及びシーディング実験を使用した。いくつかの典型的な結晶化技術(例えば、溶融物からの再結晶化又は溶液の冷却による結晶化)は、これらの条件下では化合物の核生成が妨げられるので、適用できなかった。次に溶媒和物の脱溶媒和は、非晶質形態を生成する傾向がある。
【0115】
非溶媒和結晶形Cを室温で使用して、エタノール及びTHF中の非晶質形態の濃厚溶液にシードすることによって、エタノール溶媒和物(試験結果26)及びTHF溶媒和物(試験結果29)をそれぞれ生成した。DSCによる異なる溶媒和物の特性評価は、密封して閉じた試料皿で測定されたピーク温度によって推定されるように、溶媒和物の安定性の概要を提供した。
【0116】
結晶形Cは、試験30での条件下で直接生成した。非晶質形態をEtOAcに溶解し、75℃に加熱した。1:7v/v EtOAc/ヘプタンの比に到達するまで、ヘプタンをゆっくり添加した。系に結晶形Cをシードし、77℃でさらなる時間撹拌した。固体をサスペンションの熱ろ過によって分離した。XRPDは、非溶媒和結晶形Cが生成したことを示した、図21
【0117】
非溶媒和結晶形Cの結晶化のためには、対応する溶媒和物又は油を生成しなかったが、それでも許容できる溶解度を示した、溶媒/逆溶媒混合物が望ましい。1:7v/v未満の比のEtOAc/ヘプタン混合物中、76℃で、結晶形Cをシードした場合でさえ、油が生成した(試験結果34)。
【0118】
非溶媒和結晶形Cは、EtOAc/ヘプタン 1:7v/vで、高い物理的及び化学的安定性を示す。室温及び78℃での3日間の相平衡実験は、試験37から、結晶形Cの変換を示さなかった。溶液NMRは、出発原料と同じスペクトルを示した(図示せず)。
【0119】
EtOAc/ヘプタン 1:7v/v中、結晶形Cのシードを備える非晶質形態のスラリーを室温で18時間撹拌することによっても、結晶形Cが生成した(試験42)。しかしながら、2℃では、EtOAc溶媒和物が形成された(試験43)。異なる温度で、溶媒/逆溶媒混合物中での、EtOAc溶媒和物の安定領域を試験する必要がある。EtOAc/ヘプタンプロセスを使用する場合は、エタノール/ヘプタンプロセスを使用する場合より、溶媒/逆溶媒比のより広い範囲にわたり、結晶形Cは物理的により安定に見える(試験33及び34)。
【0120】
図23の試験44及び試験45で見られるように、少数の試料に関して、約18°2θ近傍のXRPDピークはより広かった。このため、図27の18°2θ近傍に比較的広いピークを示した試料を、過飽和溶液にシードした(試験47)。この安定性実験で生成した固体は、このより広いピークが物理的により安定な形態を示さないことを明らかにした。
【0121】
追加シーディング結晶化実験の詳細及び実施例5の試料の固体状態の結果を、以下のTable 6(表6)に示す。
【0122】
【表6A】
【0123】
【表6B】
【0124】
【表6C】
【0125】
【表6D】
【0126】
【表6E】
【0127】
【表6F】
【0128】
【表6G】
【0129】
【表6H】
【0130】
【表6I】
【実施例0131】
THF溶媒和物の安定性
溶媒和物の脱溶媒和は、非晶質形態を生成する傾向がある。96%r.h、室温で8週間THF溶媒和物を保管すると(試験48)、XRPD、図20a及び20bによって確認されるように、溶媒和物と非晶質形態の混合物を生成した。
【0132】
実施例6のTHF溶媒和物安定性試験の結果を、以下のTable 7(表7)に示す。
【0133】
【表7】
【実施例0134】
水和物形成
結晶形Cは、水和物形成のいかなる証拠も示さない。25℃でのDVS分析は、湿度を50から93%r.hに増加した場合、又は50%r.hから0%r.h(およそ±0.1%)に低減した場合、水蒸気の非常に少ない吸着/脱着を示した。図29aの室温(試験49)、及び40℃(試験50)で、96%r.hで3日間保管した後、XRPDは、結晶形態の変換を示さなかった。カールフィッシャー法によって測定した水の取り込みは、非常に少なかった(<0.2%)。加えて、室温で3日間の、水中での相平衡実験は、結晶形態の変換を示さなかった(試験51)、図29b。XRPD図である図26の広いバックグラウンドは、サスペンションのろ過に続く、室温での念入りな乾燥の後に試料に残存する水に起因している。カールフィッシャーの結果は、45%の含水量を示している。
【0135】
実施例7の水和物形成試験の結果を、以下のTable 8(表8)に示す。
【0136】
【表8】
【実施例0137】
式Iの粉末X線回折(XRPD)測定
式Iの化合物の結晶形CのXRPD測定を測定した。観察されたピークを、図30及びTable 9(表9)に示す。顕著なピークを、Table 10(表10)に列挙する。この試料の好ましい配向状態がわからないので、いずれのピークもこの材料に代表的又は特徴的であることがわからないことを留意されたい。
【0138】
収集するデータの範囲は、機器に依存し得る。ほとんどの状況下で、最大約30°2θの範囲内のピークを選択した。データを収集するために使用した機器及び/又は固有のピーク分解能に基づいて、最も近い0.01°2θに各ピークを丸めるために、丸めアルゴリズムを使用した。図及び表の両方で、x軸(°2θ)に沿ったピークの位置を独自のソフトウェアを使用して決定し、上記基準に基づいて、小数点以下1つ又は2つの有効数字に丸めた。ピーク位置のばらつきは、±0.2°2θの内で与えられる。d-間隔リストに関して、d-間隔を計算するために使用する波長は、CuKα1波長の1.5405929Åであった。
【0139】
【表9】
【0140】
表10は、「顕著なピーク」として特定されたXRPDデータを提供している。顕著なピークは、すべての観察されたピークリストのサブセットである。顕著なピークは、好ましくは重ならない、強い強度を備える低角度のピークを特定することによって、観察されたピークから選択される。
【0141】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b
図20a
図20b
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28a
図28b
図29a
図29b
図30
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
の化合物の結晶形態又はその溶媒和物を含む組成物。
【外国語明細書】