IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 近藤 正佳の特許一覧

特開2024-2847次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン
<>
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図1
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図2
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図3
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図4
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図5
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図6
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図7
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図8
  • 特開-次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002847
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】次世代高真空圧密システムと真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法、及び圧力増減タンク,鉛直ドレーン
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/02 20060101AFI20231228BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E02D3/02 103
E02D3/10 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022111443
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】506101805
【氏名又は名称】近藤 正佳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正佳
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA04
2D043CA05
2D043CB08
2D043DA04
2D043DA09
(57)【要約】
【課題】急速圧密となる真空沸騰圧密工法は、急激な減圧変化が必須条件である。これを可能とする次世代高真空圧密システムの構築が必要である。しかし、真空ポンプによる急激な減圧は実際の地盤では無理である。
【解決手段】新しい真空装置はボイルの法則に基づく圧力増減タンクである。上下動するピストンの隙間の密封性は、筒型ピストンの外周面を包み込む筒状シールで解決した。その方法は隙間に作用する流体圧力よりも筒状シールを介した筒型ピストン内部から外筒への接触圧力が大きくなるように設計する。当該システムは熱供給装置を連結させたコールドトラップと高真空の発生が容易な圧力増減タンクと真空圧の調整が容易な真空ポンプを組み合わせ、急激な減圧変化で真空沸騰を起こすことで真空沸騰圧密工法を実現した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次世代高真空圧密システムを用いた真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法において、当該高真空圧密システムは、気水分離真空タンクから伸びる真空経路が1乃至2以上に分岐し、それぞれの真空経路は熱供給装置を連結させたコールドトラップを経由して空気の体積の増加による高真空の発生が容易な圧力増減タンクに至るもので、圧力増減タンクの作動速度は急激な減圧を起こす速度以上とすることに加え、水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置の複合効果で、高水圧下でも水分子の動きを活発化させることで真空沸騰を確実に起こすことを特徴とする次世代高真空圧密システムを用いた真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法。
【請求項2】
請求項1の圧力増減タンクにおいて、前記タンクの構造は、ピストンガイドが取り付けられて空気口のある頂板、真空経路に連結する受口のある底板で形成される外筒と外筒内を上下動する内空間を有する筒型ピストンと筒型ピストンの上下動装置から成り、筒型ピストンの上面には外部自動仕切弁、下面には内部自動仕切弁を設け、さらに、筒型ピストンの外周面全体には多数の通気孔を設けたもので、この外周面を柔軟で弾力のある筒状シールで包み、この筒状シールは筒型ピストンの上下の端部面のみを接着固定とし、中間面を自由面の状態で外筒にぴったり納まるもので、筒型ピストンの垂直性保持は、ピストンガイドと筒型ピストンの2箇所で行うこと、外筒と筒型ピストンの隙間の密封性は、隙間に作用する流体圧力よりも筒状シールを介した筒型ピストン内部から外筒への接触圧力が大きくなるように接触面積を設計することで減圧,加圧の両方の密封性を筒状シールの同一面で確保すること、筒型ピストンを極限まで押下げたときは、筒型ピストンの下面と外筒底板の間にほとんど空間が生じないことなどで圧力増減タンクの容積の実質最大値を拡大し、最小値を極小とするなどの要因で、真空装置の性能を飛躍的に向上させたことを特徴とする圧力増減タンク。
【請求項3】
請求項1の次世代高真空圧密システムを用いた真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法において、前記高真空圧密システムは、気水分離真空タンクから伸びる真空経路が複数に分岐し、それぞれの真空経路は熱供給装置を連結させたコールドトラップを経由して空気の体積増加による高真空の発生が容易な圧力増減タンクと真空圧の調整が容易な真空ポンプに至る2種類の真空装置を組み合わせたもので、圧力増減タンクの作動速度は、急激な減圧を起こす速度以上とすることに加え、水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置の複合効果で、高水圧下でも水分子の動きを活発化させることで真空沸騰を確実に起こすと共に真空ポンプの安定的な真空圧を加えることで高真空を安定的に持続することを特徴とする次世代高真空圧密システムを用いた真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法。
【請求項4】
請求項1の真空沸騰圧密工法又は真空圧密浚渫工法に使用する圧力増減タンクを導入した気水分離タンクにおいて、気水分離タンクを複数に分割して底部で連通させ、一方は気水分離タンクを兼ねた圧力増減タンクとし、他方は水中ポンプ用タンクとしたことで気水分離タンク自体に圧力増減タンクの機能を持たせたことを特徴とする圧力増減タンクを導入した気水分離タンク。
【請求項5】
請求項1の真空圧密浚渫工法に使用する圧力増減タンクを導入した気水分離タンクにおいて、気密載荷函体の一部を構成する気水分離タンクは1乃至2基の圧力増減タンクと濾過及び水中ポンプ用タンクから構成され、圧力増減タンクは気水分離タンクの役割と真空圧密浚渫工法の本来の真空装置としての役割を果たす共に、加圧機能で圧力増減タンク内の滞留水を加圧して濾過タンクに送り、ここで水質汚濁物質を除去して水質基準をクリアできれば直接放流し、できなければここから水中ポンプで外部の高度濾過装置に送りだして処理することを特徴とする真空圧密浚渫工法に使用する圧力増減タンクを導入した気水分離タンク。
【請求項6】
請求項1の真空沸騰圧密工法における気密シートにおいて、気密シートの下面に互いに重ね合わせ部分を確保して撥水性の高い材質のドレーンシートを接着して二重シートを形成し、気密シートと水平ドレーンを兼ね備えると共に二重シートで全体の強度を高めたことを特徴とする真空沸騰圧密工法における気密シート。
【請求項7】
請求項1の真空沸騰圧密工法の鉛直ドレーンにおいて、当該ドレーンの構造はドレーン芯体と両面のドレーンフィルターから成り、ドレーン芯体は透水流路と気密流路に分かれ、これらの流路は底部に装着するドレーンアンカーを介して連通させ、鉛直ドレーン材は常温では容易には曲げ変形しない硬度を有する熱可塑性樹脂とすることで、地盤沈下の大半を伴下がりで吸収させて曲げ変形を最小とし、前記気密流路,透水流路の圧縮空気による流体抵抗を小さくして鉛直ドレーン内に充満した間隙水を空気に置き換える方法を易にすることを特徴とする真空沸騰圧密工法の鉛直ドレーン。
【請求項8】
請求項7の鉛直ドレーンを用いる真空沸騰圧密工法において、当該鉛直ドレーンの打設方法は、まずドレーン打設機のドレーンリールに巻かれた鉛直ドレーンを加熱装置に通して直線状にし、次に地盤沈下分を延長した鉛直ドレーンをケーシングに挿入して打設し、次に延長した分だけケーシング及びドレーン材を共に引上げ、次にケーシングだけを引き抜くことで打設跡を残し、鉛直ドレーンの大半が地盤沈下で伴下がりを容易にするようにしたことを特徴とする真空沸騰圧密工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧沸騰の原理に基づき、常温の間隙水で飽和された地盤を次世代高真空圧密システムで減圧沸騰させる真空沸騰圧密工法により、急速な地盤沈下及び密度増加による地盤改良を図り、それぞれの目的に合わせて活用する。さらには真空沸騰圧密と浚渫の工程を一連の工程で行う真空圧密浚渫工法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空圧密工法は1949年頃、スウェーデンのKjellmanが盛土荷重の代わりに大気圧を用いた大気圧載荷工法を発案したことに始まる。現在は真空ポンプを排気専用として排気と排水を分離した気水分離タンク方式へと進化している。真空圧密工法はその工法の特性から、載荷盛土ができないような軟弱地盤にも容易に適用される。反面、真空圧密工法の真空載荷圧(大気圧と真空圧との差)は101.3kPaの理論限界値がある。真空圧密工法で最も重要な課題はドレーン内の流体圧を極力低く、且つ安定に保つことである。
【0003】
海底地盤の真空圧を活用した工法として真空圧密浚渫工法がある。これは真空圧密と浚渫を一連とした工法である。この工法は気密載荷函体と称する装置で地盤の気密性の確保,圧密載荷及び浚渫のバケットの役割をする。この気密載荷函体の構造は底面開口の箱型構造で内部天井面に薄型のタンクで水平ドレーンを設け、これの直下にドレーン機能のある函体隔壁で分割して複数の隔室を形成し、隔室上面には透水性蓋を設け、前記函体の外部上面の中央部分には気水分離タンク及び函体タワーが取付けられている。(特許文献1参照)
【0004】
2019年に真空圧密システムにおいて、気密シート下の減圧が限りなく-100kPaに迫る高真空圧密システムが発明された。従来の真空圧密システムの減圧は-70~-80kPa程度である。減圧を安定的に98kPa持続させると、これだけで減圧が25%~40%向上する。この高真空圧密システムの威力は、粘土地盤の間隙水の現状温度が沸点となるまで減圧することで、間隙水を沸騰させることができるとしている。間隙水を沸騰させたならば、沸騰を起こさない範囲で最も低い減圧を継続させることで効率よく粘土地盤の圧密沈下が急激に進行する。以降、この減圧沸騰で急激に圧密沈下が進行する現象を真空沸騰圧密と称している。
【0005】
周知のように水は沸騰しなくても蒸発する。特に水蒸気は真空中では活発に発生する。水が気体(水蒸気)に変わるときは体積が激増する。それ故に水蒸気の発生は減圧の真空圧に対して反対の極めて大きな加圧として作用する。従来の真空圧密システムはこの水蒸気圧の影響を見逃していた。このため、従来の真空圧密システムの減圧は70~80kPa程度が限界となっている。この水蒸気圧の解決手段は気水分離タンクから真空ポンプに至る真空経路にコールドトラップと増強真空タンクを組み込むだものが高真空圧密システムである。(特許文献2参照)
【0006】
真空沸騰圧密を可能とする高真空圧密システムの真空関連装置は、気水分離真空タンクと真空ポンプの間に増強真空タンク,コールドトラップの順番で設置する。コールドトラップの役割は、真空経路に発生する水蒸気をコールドトラップで霜(氷)として捕集することで真空ポンプを最大限に機能させるものである。この高真空圧密システムは真空圧密浚渫工法の圧密工程にも組み込まれる。当該工法は底面開口の気密載荷函体で浚渫可能な強度までできるだけ短い時間で圧密する必要がある。このとき減圧沸騰圧密が威力を発揮する。(特許文献2参照)
【0007】
真空圧密工法による地盤改良深度の限界は理論的に10mである。鉛直ドレーンが水に満たされ、水位面から10mの深度までしか真空ポンプで水を吸い上げられない。粘土地盤の間隙水を沸騰させるためには、高真空圧を直接粘性土地盤に伝達する必要がある。そこで、鉛直ドレーン内の滞留水を空気と置き換えることで、真空圧密工法による地盤改良の限界深度10mを大きく拡大する高深度の真空圧密工法が発明された。(特許文献2参照)(特許文献3参照)
【0008】
2021年に真空沸騰圧密のメカニズムを明らかにして定量的な設計,施工管理を可能とした真空沸騰圧密工法が発明された。真空沸騰圧密の原理は新しく確認されたファインバブル効果にある。ファインバブルの表面は水中では負に帯電している。常温の地盤の間隙水を真空圧で減圧沸騰させると、ファインバブルが発生して粘土構造の電気的平衡が崩れ急速に圧密が進行する。この時の必要なファインバブル量は粘性土地盤等の陽イオン交換容量で決まり、ファインバブル量は沸騰時間で決まってくることを明らかにした。
【0009】
すなわち、真空沸騰圧密工法の設計,施工管理は、ファインバブル量を粘性土地盤等の陽イオン交換容量及び真空圧密試験を基にして設定し、ファインバブルの相当量を発生させる有効沸騰時間を別枠で真空圧密工程に組み入れる。ファインバブル効果により粘土の骨格を形成するペッド間の電気的引力を一時的に消失させ、合わせて粘土の透水性を向上させて急速真空圧密を行うことで、粘土地盤等の圧密時間の短縮と圧密沈下の増大を図る地盤改良、あるいは殺菌,有害なイオン等を圧密排水と共に除去する土壌浄化を図るというものである(特許文献4参照)
【0010】
ファインバブル効果の詳細は「次世代の真空圧密工法-真空沸騰圧密工法と脱炭素社会に向けたブルーカーボン」と題した論文において、実験を基に考察されている。(非特許文献1参照)
【0011】
2022年に深海底の資源泥の採取に用いられる真空ポンプとは異なる真空装置,圧力増減タンクが発明された。資源泥の採取は真空圧密浚渫工法を応用,進化させたものである。(特許文献5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4996883号
【特許文献2】PCT/JP2020/036153
【特許文献3】特願2919-213667
【特許文献4】PCT/JP2021/049038
【特許文献5】特願2022-44620
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】近藤正佳 他/次世代の真空圧密工法「真空沸騰圧密工法」と脱炭素社会に向けたブルーカーボン/第14回環境地盤工学シンポジウム発表論文集/地盤工学会(Japanese Geotechnical Society)2021年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の真空沸騰圧密工法は、常温で地盤を沸騰させる高真空を確保するために、気水分離タンクから真空ポンプに至る真空経路に増強真空タンクとコールドトラップを組み込んだ高真空圧密システムへと進化させた。次に、真空沸騰圧密工法の急速圧密の原理はファインバブル効果であるとし、地盤の沸騰に必要なファインバブル量は対象地盤の陽イオン交換容量で決まり、ファインバブル量は沸騰時間で決まることを明らかにした。そこで、必要なファインバブル量の有効沸騰時間は、真空圧密工程に別枠で組み入れた。
【0015】
ここで、通常の加熱沸騰と真空沸騰圧密工法の減圧沸騰の違いについて改めて整理する。液相中で蒸気泡が生成されることを「沸騰」と呼ぶ。液相と平衡して蒸気泡が存在するための条件は二つある。一つ目は、蒸気泡の圧力は外圧(周囲液相圧力)よりも高いこと。二つ目は、液相の温度も蒸気泡の温度も共に,液相圧力に対応する飽和温度よりも高くなければならないことである。通常の水の加熱沸騰、例えば、水を鍋で沸騰させた場合は、外圧は大気圧(1気圧)のみで、飽和温度は100℃である。蒸気泡は鍋底の微細な気泡(沸騰の核)を基に拡大しながら水中を活発に上昇して水面(気液境界)で破裂する。
【0016】
これに対して、真空沸騰圧密工法の減圧沸騰は、常温を飽和温度とする。非特許文献1で、水深10mの水圧下における真空圧による減圧沸騰の確認実験を行っている。観測パイプは高さ11.0m,直径3.5mmの透明なアクルリ樹脂パイプである。パイプは上部に0.5mの空間を残し、高さ10.5mまで水を満たして密閉する。そして、上端から真空ポンプで真空引きをして観察した。実験中のパイプは密閉状態なので水の吸い上げは起こらない。水温は17.5℃,これの飽和蒸気圧は2.0kPaである。減圧は飽和蒸気圧より少し高真空の-99.8kPa(絶対圧:1.5kPa)に設定。
【0017】
観測パイプの上部は水圧が極めて小さいので、減圧沸騰の蒸気泡の径は1mm以上となる。実際に水面下-50cm付近から、微細な気泡が活発に発生して拡大しながら水中を上昇し水面で破裂した。やがて観測パイプの上部の沸騰は勢いをなくした。この実験で特筆すべきことは、いつの間にか観測パイプ内面全体にわたってミリバブルが張り付く現象が見られたことである。パイプに張り付いたミリバブルは、水面からパイプの底に向かって徐々に発生したものではなく、時間と共にパイプ全体に無数に生じた。それも最初は目に見えない微細な気泡がミリバブルに成長した。これは明らかに沸騰である。観測パイプの中間部の外圧は50.6kPa(=1.5kPa+9.81kN/m×5m)である。ミリバブルの内圧は、50.6kPaよりも大きいことになる。これの通常の飽和温度は81.4℃である。また、観測パイプ底面の外圧は104.5kPa(=1.5kPa+9.81kN/m×10.5m)である。ミリバブルの内圧は、104.5kPaよりも大きいことになる。これの通常の飽和温度は約101℃である。実験の水温は17.5℃であるから、通常では沸騰は起こらないはずである。しかし、実際には沸騰が確認された。今までに知られていない現象である。注目すべきことは、いきなりミリバブルが発生したのではなく、目に見ない微小なファインバブルが発生してそれらが合体してミリバブルに成長したと推察されることである。
【0018】
また、真空圧密試験装置で粘土試料を沸騰させる真空圧密試験を行った。その結果、粘土試料に必要なファイバブル量を発生する沸騰時間を十分に与えると驚異的な圧密促進効果が確認された。蒸気泡の発生場所は粘土試料の間隙水である。この間隙はミリバブルが発生する広さはない。発生した蒸気泡はファインバブルである。気泡は小さくなればなるほど表面張力の影響で気泡内部の圧力が高くなるという自己加圧効果が知られている。直径が100μm以下の気泡をファインバブルと言う。この気泡は2種類に分けられ、直径が100μm以下で1μm以上の泡をマイクロバブル、1μm以下の気泡をウルトラファインバブルと呼んでいる。ちなみに、1ミクロン(μ)の気泡の内圧は3.87気圧(atm)である。
【0019】
実験では通常の飽和温度に全く達していないのに沸騰が起こり、ファインバブルが発生した。ファインバブルは径が小さくなるに従い気泡内圧力が高くなり、高水圧下でも存在が可能である。しかし、ファイバブルの存在可能と発生は別のメカニズムである。何故、実験では沸騰してファインバブルが発生したのかを明らかにする必要がある。その原因は外圧の急激な減圧変化と推察される。真空圧密試験の減圧は瞬時である。海底地盤を想定した真空沸騰実験の減圧は数分である。急激な減圧変化は水分子を突発的に激しく突き動かす。個々の水分子の動きが激しくなって動く範囲が広くなるということは、水から水蒸気に変化するときに体積が急激に拡大することと類似性が見られる。すなわち、液中にナノスケールでの空隙(真空スペース)が生成され、「自発核生成」と呼ばれるファインバブルの蒸気泡を生成する基(沸騰の核)が生成された。このことが沸騰を起こした原因と考えられる。
【0020】
実際の地盤において、従来の真空圧密システムの減圧の実績は-70~-80kPaである。この減圧に要する時間は数十日間である。必要な減圧に120日間要した事例もある。常温の地盤を沸騰させる高真空圧密システムの減圧は-99kPaを超える。この高真空圧密システムは真空状態で発生する真空経路の水蒸気圧を除去して高真空を確保したもので、減圧速度を特別に高めるものではない。この高真空圧密システムの減圧に要する時間も、数十日間になると予測される。ゆっくりとした減圧では沸騰は起こらない。実際の地盤では従来の高真空圧密システムでは沸騰は起こらないと判断される。
【0021】
真空沸騰圧密が成立する必須条件は急激な減圧変化である。従って、本発明が解決しようとする課題1は、実際の地盤において、急激な減圧を可能とする次世代高真空圧密システムの構築である。現在、真空圧密工法の真空装置は真空ポンプである。真空沸騰圧密工法も同様である。しかし、真空ポンプによる急激な減圧は実際の地盤では無理である。課題1は真空ポンプに代わる強力な真空装置の発明が加わる。すなわち、急激な減圧を可能とする次世代高真空圧密システムの構築とこれを可能にする強力な真空装置の発明である。これは工期短縮による工費縮減の観点からも重要な課題である。
【0022】
高深度の地盤、例えば、地下水位-100mの高水圧の地盤の周囲液相圧力(外圧=大気圧+水圧)は11気圧(atm)である。真空圧の減圧となる1気圧の振れ幅の割合は9%に過ぎない。地盤を確実に沸騰させるためには外圧の水圧部分を低減させるのが得策である。水圧部分の低減方法は、鉛直ドレーン内に充満した圧密排水の滞留水を一時的に空気に置き換える。この方法には2種類の鉛直ドレーンが発明されている。
【0023】
特許文献2の鉛直ドレーンは、濾過材で被覆されて内径と外径がぴったり合う大小二種類の中空の硬質多孔管,抜出し防止器具,フレキシブル管,そして水中を自重で沈降する緩衝粒子から成る。大小二種類の中空の硬質多孔管を交互に差込み、抜出し防止器具を取り付けて順次連結することで、ドレーンを蛇行させずに地盤沈下に追随させる。そして、フレキシブル管の圧縮空気で内部空間に充満した間隙水を緩衝粒子と共に一体の状態で頂部へと押し上げる。ただし、この鉛直ドレーンは、打設時に個々の鉛直ドレーンを接続しながら打設するもので作業効率が悪いのが難点である。
【0024】
特許文献3の鉛直ドレーンは、従来の鉛直ドレーンと同様に板状断面で、ドレーンリールに収納され扱いやすい。そして、この鉛直ドレーンの先端部から頂部に向けて圧縮空気を噴出する構造とし、鉛直ドレーンの内部空間の断面積はドレーン機能に必要な通水断面積の下限よりも大きく、且つドレーン先端部からの圧縮空気圧で内部空間に充満した間隙水を一体の状態で頂部へと押し上げることを可能とする通水断面積の上限よりも小さいことを特徴としている。また、この鉛直ドレーンの地盤沈下の追随は蛇行変形によるものである。ただし、この鉛直ドレーンは、蛇行変形が激しくなった場合、あるいは鉛直ドレーンが長大となる高深度地盤の場合において、ドレーン内滞留水を空気に置き換える効率が大幅に低下するのが難点である。
【0025】
本発明が解決しようとする課題2は、鉛直ドレーンの打設効率が良く、且つ、高深度地盤においても、ドレーン内の滞留水を確実に空気に置き換えられる鉛直ドレーンであることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
課題1は急激な減圧を可能とする次世代高真空圧密システムの構築とこれを可能とする強力な真空装置の発明である。実際の地盤において、急激な減圧を可能とする真空装置はボイルの法則に基づき、密閉タンクの容積が最小値(ゼロに近い極小値)から最大値の間を増減する圧力増減タンクである。温度が一定のとき、気体の圧力は体積に反比例する。例えば,圧力増減タンクの容積が気水分離タンクの10倍であれば、圧力増減タンクの容積を最小から最大にすると、内圧は1/10となる。さらにもう一度繰り返すと1/100となる。ここで、真空装置は減圧機能があれば十分である。しかし、真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法は加圧機能も必要とするのでこの機能を加えて圧力増減タンクと称している。
【0027】
真空装置である圧力増減タンクの絶対条件は、密封性の確保にある。ただし、浚渫だけを目的とした真空圧密浚渫工法の圧力増減タンクと急激な減圧を必要とする真空沸騰圧密工法の圧力増減タンクでは構造に明確な違いが生じる。特許文献5の圧力増減タンクの構造は、資源採掘バケットの頂板に固定される外筒と外筒内のピストンの上下動の傾き防止のガイドを兼ねる内筒の中間に仕切板を付けて筒型ピストンとし、これの上下動装置、及び筒型ピストンの仕切板に設けた外部との自動仕切弁と資源採掘バケット本体の頂板に設けた内部との自動仕切弁から成る。この構造は真空沸騰圧密工法では致命的な欠点を生じる。それは内筒の中間に仕切板を付けた筒型ピストンの構造にある。つまり、筒型ピストンを極限まで押下げても仕切板の下に空間が残る。空気の増減で真空圧を生み出す真空装置である圧力増減タンクは前記空間がゼロになるのが理想である。圧力増減タンクで急激な減圧を必要とする真空沸騰圧密工法は、この空間が大きな障害となる。
【0028】
本発明の圧力増減タンクの構造は、ピストンガイド,例えばリニアブッシュが取り付けられて空気口のある頂板、真空経路に連結する受口のある底板が一体となった外筒と外筒内を上下動する内空間を有する筒型ピストンと筒型ピストンの上下動装置、例えば復動式油圧シリンダーから成る。筒型ピストンの上面には外部に通じる外部自動仕切弁、下面には内部の真空経路に通じる内部自動仕切弁を設け、さらに、筒型ピストンの外周面全体には多数の通気孔を設けたものである。筒型ピストンの外周面は柔軟で弾力のある筒状シールで包み、この筒状シールは筒型ピストンの上下の端部面のみを接着固定とし、中間面を自由面の状態で外筒にぴったり納まるものである。
【0029】
ここで、本発明の筒型ピストンの垂直性の保持はピストンガイドと筒型ピストンの筒の外周面の2か所で保持される。特許資料5の単独で垂直性を保持するガイドを兼ねた内筒と比較して垂直精度は歴然とした差がある。本発明の筒型ピストンは上下動に対して全く偏心が生じない。これは密封性の確保に当たって重要な要素である。そして、外筒とピストンの隙間の密封性は、隙間に作用する流体圧力よりも筒状シールを介した筒型ピストン内部から外筒への接触圧力が大きくなるように接触面積を設計する。これにより減圧,加圧の両方の密封性を同一筒状シールで確保する。つまり、減圧,加圧を別々にする特許資料5の筒状シールの幅は2倍必要となる。本発明の筒型ピストンは2倍にならない分だけ圧力増減タンクの容積の実質最大値を拡大することになる。また、筒型ピストンを極限まで押下げたとき、筒型ピストンの下面と外筒底板の間には空間がほとんど生じない。従って、圧力増減タンクの容積の最小値は極小となる。これに対して特許資料5は必ず障害となる空間ができる。本発明の圧力増減タンクは前記の構造形態が性能を飛躍的に向上させて急激な減圧を可能にしている。
【0030】
次世代高真空圧密システムは急激な減圧を可能とする圧力増減タンクを用いて構築する。次世代高真空圧密システムを用いた真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法において、当該高真空圧密システムは、気水分離真空タンクから伸びる真空経路が1乃至2以上に分岐し、それぞれの真空経路は熱供給装置を連結させたコールドトラップを経由して空気の体積の増加による高真空の発生が容易な圧力増減タンクに至るものである。そして、圧力増減タンクの作動速度は急激な減圧を起こす速度以上とする。これに加えて、水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置の複合効果で、さらに急激な減圧を容易とし、高水圧下でも水分子の動きを活発化させることで真空沸騰を確実に起こすものである。
【0031】
次世代高真空圧密システムにおいて、圧力増減タンクの容積の最小値から最大値にする作動速度を急激な減圧の起こる速度以上と規定した。これは、圧力増減タンクの性能が良くても低速度で作動させたのでは急激な減圧とはならないからである。圧力増減タンクで減圧沸騰の起こる作動速度は、20mm/s程度を目標にしている。実際の地盤において、この速度であるならば減圧沸騰が起きる高真空の到達時間は、10分程度で可能である。実際の地盤での10分は急激な減圧となる。逆にいうならば、次世代高真空圧密システムは圧力増減タンクの作動速度が20mm/sで減圧沸騰が起きる性能でなければならない。実際の地盤において、次世代高真空圧密システムによる真空沸騰圧密工法及び真空圧密浚渫工法は、急激な減圧を起こさせるからこそ真空(減圧)沸騰が起こり、真空沸騰だからこそ劇的な急速圧密が実現する。ちなみに、真空ポンプは数十日間の減圧時間でも減圧沸騰が起こる高真空とはならない。そもそも急激な減圧には全くならない。
【0032】
上記の次世代高真空圧密システムは、真空装置である圧力増減タンクの前に水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置を組込んだものである。コールドトラップは水蒸気を氷(霜)の形で捕集する。氷がコールドトラップに大量に付着すると能力が低下してくるので融氷工程が必要になる。減圧沸騰させる次世代高真空圧密システムは、この融氷を空温供給装置ではとても間に合わず熱供給装置が必要になる。次世代高真空圧密システムは、本来の効果に加えてコールドトラップと熱供給装置を組込んだ複合効果で、急激な減圧を容易とし、高水圧下でも水分子の動きを活発化させることで真空沸騰を確実に起こすことができる。
【0033】
次に提示する次世代高真空圧密システムは、気水分離真空タンクから伸びる真空経路が複数に分岐し、それぞれの真空経路は熱供給装置を連結させたコールドトラップを経由して空気の体積増加による高真空の発生が容易な圧力増減タンクと真空圧の調整が容易な真空ポンプに至る2種類の真空装置を組み合わせたものである。
圧力増減タンクと真空ポンプを比較すると、圧力増減タンクは減圧能力及び減圧速度は比較にならないほど高い。しかし、筒型ピストンは上下動するので減圧は断続的になる。これの是正は、2基の圧力増減タンクをペアにして作動周期をずらして減圧を連続的にすることが可能である。ただし、一定の真空圧を持続させるには不向きである。これに対して真空ポンプは、減圧能力は低いが安定性があり減圧調整が容易である。このため、一定の真空圧を持続させるのに向いている。異なる特性の圧力増減タンクと真空ポンプを組み合わせるものである。その結果、圧力増減タンクの作動速度は急激な減圧を起こす速度以上とすることに加え、水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置の複合効果で、さらに急激な減圧を容易とし、高水圧下でも水分子の動きを活発化させることで真空沸騰を確実に起こし、そして、真空ポンプの安定的な真空圧を加えることで高真空を安定的に持続することを特徴とする次世代高真空圧密システムと進化する。
【0034】
次世代高真空圧密システムの減圧の原理は、気水分離タンクの空気の体積が圧力に反比例するものである。次に提示する次世代高真空圧密システムは、気水分離タンクに小型の圧力増減タンクを導入する。
【0035】
真空沸騰圧密工法又は真空圧密浚渫工法に使用する圧力増減タンクを導入した気水分離タンクにおいて、気水分離タンクを複数に分割して底部で連通させる。そして、一方は圧力増減タンクを兼ねた気水分離タンク(圧力増減型気水分離タンク)とし、他方は水中ポンプ用タンク(濾過及び水中ポンプ用タンク)としたことで気水分離タンク自体に圧力増減タンクの機能を持たせる。次世代高真空圧密システムが気水分離タンクに圧力増減タンクを導入する最大のメリットは、筒型ピストンを極限まで押下げたとき、圧力増減タンクの容積は極小となり、そこを起点として減圧を開始することにある。
【0036】
次に提示する圧力増減タンクを導入した気水分離タンクは、真空圧密浚渫工法の気密載荷函体の一部を構成する気水分離タンクに関する。これはヘドロ海底地盤等で、当該気水分離タンクに集積した圧密排水の水質汚濁物質対策を主要目的とする。当該気水分離タンクは1乃至2基の圧力増減タンクと濾過及び水中ポンプ用タンクから構成される。そして、圧力増減タンクは気水分離タンクの役割と真空圧密浚渫工法の本来の真空装置としての役割を果たす。さらに、圧力増減タンクは加圧機能で圧力増減タンク内の滞留水を加圧して濾過及び水中ポンプ用タンクに送る。ここで水質汚濁物質を除去して水質基準をクリアできれば直接放流し、できなければここから水中ポンプで外部の高度濾過装置に送りだして処理する。
【0037】
次世代高真空圧密システム使用の真空沸騰圧密工法における対象地盤の表面を覆う気密シートに関する。気密シートの下面に互いに重ね合わせ部分を確保して撥水性の高い材質のドレーンシートを接着して二重シートを形成し、気密シートと水平ドレーンを兼ね備えるものである。この気密シートの使用で工期短縮が図ることが出来る。また、強度の高い二重シートであることから、使い捨てではなく簡易な補修で何度も再使用が可能である。
【0038】
課題2は、鉛直ドレーンの打設効率が良く、且つ、ドレーン内の滞留水を確実に空気に置き換えられる鉛直ドレーンであることである。これは対象地盤が大深度に及ぶ真空沸騰圧密工法などを想定している。従来の鉛直ドレーンは地盤沈下に追随できるように材質が常温で蛇行状の曲げ変形が容易にできる硬度を有している。そして、曲げ変形してもドレーン機能が損なわれないことに重点が置かれている。
【0039】
当該鉛直ドレーンは板状のドレーン芯体と両面のドレーンフィルターから成る。鉛直ドレーンは従来のドレーンと同様にドレーン打設機のドレーンリールに巻取り収納する。この鉛直ドレーンの構造はドレーン芯体が透水流路と気密流路に分かれ、これらの流路は底部に装着するドレーンアンカーを介して連通させる。鉛直ドレーン材は常温では容易には曲げ変形しない硬度を有する熱可塑性樹脂とすることで、地盤沈下の大半を伴下がりで吸収させて曲げ変形を最小とする。圧密排水による鉛直ドレーン内に充満した間隙水を空気に置き換える方法は、気密流路に圧縮空気を送って透水流路を経由して水平ドレーンに排出する。このとき、鉛直ドレーンの曲げ変形を最小とすることで流体抵抗を小さくする。そして、鉛直ドレーン内を大気圧状態にしてから次世代真空圧密システムを稼動させることで地盤全体の減圧沸騰を確実にする。
【0040】
当該鉛直ドレーンが沈下に対して大半が伴下がる仕組みの説明である。鉛直ドレーンの打設方法は、まずドレーン打設機のドレーンリールに巻かれた鉛直ドレーンを加熱装置に通して直線状にし、次に地盤沈下分を延長した鉛直ドレーンをケーシングに挿入して打設し、次に延長した分だけケーシング,ドレーン材を共に引上げ、次にケーシングだけを引き抜くことで打設跡を残し、鉛直ドレーンの大半が地盤沈下で伴下がりを容易にする。地盤に打設された鉛直ドレーンは地盤沈下時には常温硬度となり、沈下に対して大半が伴下がりをし、曲げ変形は緩やかな変形にとどまる。
【発明の効果】
【0041】
真空沸騰圧密が成立する必須条件は、急激な減圧変化であることを明らかにし、急激な減圧を可能とする次世代高真空圧密システムを構築した。当該システムは熱供給装置を連結させたコールドトラップと空気の体積の増加による高真空の発生が容易な圧力増減タンクを組み合わせたものである。そして、圧力増減タンクの作動速度は急激な減圧を起こす速度以上とする。これに加えて、水蒸気圧を消去するコールドトラップとこれの融氷の熱供給装置の複合効果で、急激な減圧により真空(減圧)沸騰を実現し、実際の地盤の真空沸騰圧密工法を確立するという効果をもたらした。
【0042】
真空装置である圧力増減タンクのピストンは内空間を有する筒型ピストンとした。そして、圧力増減タンクの減圧,加圧における密封性は、筒状シールの同一面で確保したことで圧力増減タンクの容積の実質最大値を拡大し、筒型ピストンの構造形態から容積の最小値を極小とすることで、実際の地盤の急激な減圧で真空沸騰を起こす圧力増減タンクを実現し、さらには次世代高真空圧密システムを構築する効果をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】 本発明の次世代高真空圧密システムの一例を示す説明図
図2】 本発明の圧力増減タンクの一例を示す鉛直断面図
図3図1のシステムにコールドトラップを組み込んだ次世代高真空圧密システムの説明図
図4】 本発明の圧力増減型気水分離タンクの鉛直断面図
図5図4の気水分離タンクを採用した次世代高真空圧密システムの説明図
図6】 本発明の二重気密シートの斜視図
図7】 本発明の鉛直ドレーンの鉛直断面図
図8】 同鉛直ドレーンの水平断面図
図9図7と直角方向の鉛直ドレーンの鉛直断面図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図1図9に基づいて説明する。
【0045】
図1は本発明の真空沸騰圧密工法,真空圧密浚渫工法に用いる次世代高真空圧密システムの一例を示す説明図である。図に示す高真空圧密システムは、気水分離真空タンクから伸びる真空経路が二つに分かれ、それぞれの真空経路に熱供給装置を連結させたコールドトラップと圧力増減タンクを並列に配置した例である。図において、1は気水分離タンク、1aは水中ポンプ、2は真空経路、4は圧力増減タンク、5はコールドトラップ、6は熱供給装置、7は鉛直ドレーン、8は気密シート、10は水平ドレーンである。
【0046】
図2は本発明の真空装置である圧力増減タンク1の一例を示す鉛直断面図である。図2aは筒型ピストン42が極限まで下がって体積が極小の状態である。図2bは筒型ピストン42が極限まで上がって体積が最大の状態である。図において、4は圧力増減タンク、41はタンクの外筒、411は外筒の頂板、412は外筒の底板、413は外筒の外周面、41aは空気口、42は筒型ピストン、421はピストンの上面、422はピストンの下面、423はピストンの外周面、42aは外部自動仕切弁、42bは内部自動仕切弁、42cは管状シール、43はピストン上下動装置、43aはピストンガイドである。
【0047】
ここで、図2を用いて圧力増減タンク4の減圧,加圧及び密閉の仕組みについて説明する。圧力増減タンク4による減圧は筒型ピストン42の上昇による密閉空間の体積増加である。図2aに示す筒型ピストン42の体積が極小から上昇を想定する。この減圧時には外部自動仕切弁42aを開、内部自動仕切弁42bを閉にすることで、タンクの外筒41と筒型ピストン42の隙間には外部圧による内向き(下向き)の流体圧力と同時に筒状シール42cを介して筒型ピストン42の内部よりタンクの外筒41に接触圧力が作用することで密閉する。
圧力増減タンク4による加圧は筒型ピストン42の下降による密閉空間の体積減少である。図2bに示す筒型ピストン42の体積が最大から下降を想定する。この加圧時には外部自動仕切弁42aを閉、内部自動仕切弁42bを開にすることで、タンク外筒41と筒型ピストン42の隙間には内部圧による外向き(上向き)の流体圧力と同時に筒状シール42cを介して筒型ピストン42の内部よりタンク外筒41に接触圧力が作用することで密閉する。圧力増減タンク4による加圧の用途は、真空圧密浚渫工法において利用される。
【0048】
圧力増減タンク4は連続稼動で筒型ピストン42が上昇,下降を繰り返す。下降で加圧状態にする必要がない場合は、外部自動仕切弁42aを開、内部自動仕切弁42bを開にして真空経路2との連絡を遮断して空気を空気口41aから外部に排出する。図1に示す次世代高真空圧密システムは圧力増減タンク4を2基並列に配置している。今、2基の圧力増減タンク4の状態が図2a,図2bとして、サイクルを合わせ同時に稼動させると連続稼動の強力な真空装置となる。
【0049】
図3図1のシステムに真空ポンプ3を組み込んだ次世代高真空圧密システムの説明図である。図3に示す高真空圧密システムは、気水分離真空タンク1から伸びる真空経路2が4つに分岐し、それぞれの真空経路2は熱供給装置6を連結させたコールドトラップ5を経由して圧力増減タンク4と真空ポンプ3の2種類の真空装置を2基ずつ組み合わせて配置した例である。所定の高真空を圧力増減タンク4で確保したならば、真空ポンプ3で安定維持する役割分担が可能である。
【0050】
図4は本発明の圧力増減タンク4を導入した圧力増減型気水分離タンク11の鉛直断面図である。図は気水分離タンクを3分割して底部で連通させ、中央に濾過及び水中ポンプ用タンク112、両側に圧力増減・気水分離兼用タンク111を2基設けた例である。増減・気水分離兼用タンク111は1基でも良い。それは工事規模で決まる。図において、1aは水中ポンプ、1bは分離タンク連通管である。なお、圧力増減タンク4は小型のタンクで符号は図2と同じである。
【0051】
図5図4の圧力増減型気水分離タンク11を採用した次世代高真空圧密システムの説明図である。なお、図の符号は図3と同じである。なお、圧力増減型気水分離タンク11は真空圧密浚渫工法にも採用される。特にヘドロ海底地盤等で、水質汚濁物質対策を主要目的とする場合は、濾過及び水中ポンプ用タンク111において、タンク下部を濾過層、タンク上部に水中ポンプ1aを設置する。
【0052】
図6は本発明の二重気密シートの斜視図である。図において、9は二重気密シート、91は表面の気密シート、92は下面のドレーンシートである。
【0053】
図7は本発明の鉛直ドレーンの鉛直断面図である。図は鉛直ドレーン7、鉛直ドレーンキャップ73、鉛直ドレーンアンカー74が分離した状態で示してある。また、ドレーンフィルター72は一部剥した状態で示してある。図において、71はドレーン芯体、72はドレーンフィルター、731はキャップ部材、732はキャップ鉛直差し込み部材、741はアンカー部材、742はアンカー差し込み部材、7aは気密流路、7bは透水流路である。鉛直ドレーンキャップ73は気密流路7aと透水流路7bが分離している。また、鉛直ドレーンキャップ73は鉛直ドレーン7用のキャップ鉛直差し込み部材732と水平ドレーン10用のキャップ水平差し込み部材733がある。各ドレーンの差し込みは接着剤を塗布して接着する。鉛直ドレーンアンカー74は気密流路7aと透水流路7bが連通している。
【0054】
図8は同じく鉛直ドレーンの水平断面図である。図9図7と直角方向の鉛直ドレーンの鉛直断面図である。図において、10は水平ドレーン、733はキャップ水平差し込み部材である。
【符号の説明】
【0055】
1 気水分離タンク
11 圧力増減型気水分離タンク
111 圧力増減・気水分離兼用タンク
112 濾過及び水中ポンプ用タンク
1a 水中ポンプ
1b 分離タンク連通管
2 真空経路
3 真空ポンプ
4 圧力増減タンク
41 タンクの外筒
411 外筒の頂板
412 外筒の底板
413 外筒の外周面
41a 空気口
42 筒型ピストン
423 ピストンの外周面
42a 外部自動仕切弁
42b 内部自動仕切弁
42c 管状シール
43 ピストン上下動装置
43a ピストンガイド
5 コールドトラップ
6 熱供給装置
7 鉛直ドレーン
71 ドレーン芯体
72 ドレーンフィルター
73 鉛直ドレーンキャップ
74 鉛直ドレーンアンカー
7a 気密流路
7b 透水流路
8 気密シート
9 二重気密シート
10 水平ドレーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9