IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

特開2024-28476セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028476
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240226BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240226BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
H01G4/30 311Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003510
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2019142892の分割
【原出願日】2019-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】粂井 良太
(57)【要約】
【課題】セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止、巻出し帯電の低減を両立することができる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供すること。
【解決手段】無機粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、易滑塗布層がアクリル樹脂、及びメラミン系架橋剤を含有する組成物が硬化されてなるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、
前記易滑塗布層がアクリル樹脂、及び架橋剤を含有する組成物が硬化されてなり、
前記架橋剤がメラミン系架橋剤であり、
前記アクリル樹脂の水酸基価が50mgKOH/g以上450mgKOH/g以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂のガラス転移温度が50℃以上110℃以下である請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
前記易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下、かつ粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である請求項1また2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
前記易滑塗布層の厚みが0.001μm以上2μm以下である請求項1~のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上2.0μm以下である請求項に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム に関する。更に詳しくは、セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止、巻出し帯電の低減をすべて具備させることができるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材フィルムの離型剤層が設けられている面とは反対の面(裏面)の表面粗度を比較的粗くすることによりセラミックグリーンシート製造用離型フィルムが巻かれた状態で保管されたときにセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの表裏が貼り付く(ブロッキング)等の不具合を解消するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は突起が大きいため、ピンホールや部分的な厚みばらつきが生じるという問題点があった。
【0003】
そこで突起の高さを低減させるために裏面の突起を塗布層により埋めることによりセラミックグリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止しようとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる従来技術によれば、突起高さは低くなるものの突起密度が低いため、突起にかかる圧力が大きく、セラミックグリーンシートをさらに薄膜化させた場合、ピンホールの発生が生じるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-203822号公報
【特許文献2】特開2014-144636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止、巻出し帯電の低減をすべて具備させることができる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
【0007】
1. 無機粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、前記易滑塗布層がアクリル樹脂、及びメラミン系架橋剤を含有する組成物が硬化されてなるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【0008】
2. 前記アクリル樹脂のガラス転移温度が50℃以上110℃以下である上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【0009】
3. 前記アクリル樹脂の水酸基価が50mgKOH/g以上450mgKOH/g以下である上記第1または第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【0010】
4. 前記易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下、かつ粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である上記第1~第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【0011】
5. 前記易滑塗布層の厚みが0.001μm以上2μm以下である上記第1~第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【0012】
6. 上記第1~第5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
【0013】
7. 製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上2.0μm以下である上記第6に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【0014】
8. 上記第6または第7に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止、巻出し帯電の低減を全て具備させることができる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム(以下、単に離型フィルムということがある)は、基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型塗布層、もう一方の面に粒子を含む易滑塗布層を有する離型フィルムである。
【0018】
易滑面の突起密度を高めるため、易滑塗布面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を特定の範囲に収めることで、近年のグリーンシート薄膜化に対応可能な離型フィルムも提案されている(例えば、国際公開第2017/017354号)。かかる技術により、突起密度を高くすることで、突起高さを低く維持したまま、良好な巻取り性と、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止を一応具備させることができるので好ましい。
【0019】
本発明においては、易滑塗布層として、アクリル樹脂及び、メラミン系架橋剤を含有する組成物が硬化されてなることから、易滑塗布層の硬度が適度に高くなり、離型塗布層塗工後に巻き取ったときの易滑塗布層の変形が起こりにくくなる。一般的に接触する2つのものの接触面積が大きくなるほど、2つのものを剥がした時の剥離時帯電は大きくなることが知られている。易滑塗布層の変形量が少ないと易滑塗布層と離型層の接触面積が小さくなるので、離型フィルムロールを巻きだした時の巻出し帯電を抑制できるため好ましい。巻出し帯電が少ないことは、環境異物の離型面への付着によるセラミックコンデンサの品質異常を防止できるため好ましい。近年のトレンドであるセラミックシート薄膜化においては、従来では問題とならなかった離型面への微小な環境異物の付着であっても問題となることから、本発明で規定する易滑塗布層の組成を有する離型フィルムが有効であり、易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を特定の範囲に収めることを加えると更に好ましいものとなる。
【0020】
(基材フィルム)
本発明において好ましく基材として用いられるフィルムとしては、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムが好ましい。また、前記のようなポリエステルのジカルボン酸成分、又は、ジオール成分の一部として、第三成分モノマーが共重合されたポリエステルからなるフィルムであってもよい。これらのポリエステルフィルムの中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートフィルムが最も好ましい。
【0021】
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明における所望の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0022】
(易滑塗布層)
本発明の離型フィルムは、上記のようなポリエステル製の基材フィルムの一方の表面上に易滑塗布層を有するものである。易滑塗布層中には、少なくともバインダー樹脂及び粒子が含まれていることが好ましい。
【0023】
(易滑塗布層中のバインダー樹脂)
本発明における易滑塗布層を構成するバインダー樹脂としてはアクリル樹脂が含まれていることが好ましい。アクリル樹脂は、分子中に水酸基、及びカルボキシル基を有するアクリル樹脂であることが好ましい。水酸基を有する構成ユニットは、全構成ユニット100モル%中、20~90モル%含まれていることが更に好ましい。水酸基を有する構成ユニットが20モル%以上であると、アクリル樹脂の水溶性を適度に保つこと、およびメラミン系架橋剤との強固な架橋構造が形成されるため好ましい。一方、90モル%以下であると、アクリル樹脂の水酸基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。
【0024】
水酸基をアクリル樹脂に導入するには、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマーや、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ-ブチロラクトンやε-カプロラクトンの開環付加物等を共重合成分として用いるとよい。中でも、水溶性を阻害しない点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは2種以上併用してもよい。言うまでもないが、本発明でいうアクリル樹脂とはメタクリル樹脂を含んでいる。
【0025】
アクリル樹脂の水酸基価は50mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の水酸基価が50mgKOH/g以上であれば、アクリル樹脂の水溶性が良好となり、かつメラミン系架橋剤との強固な架橋構造が形成されるため好ましい。
【0026】
アクリル樹脂の水酸基価は450mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは400mgKOH/g以下、更に好ましくは350mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の水酸基価が450mgKOH/g以下であれば、アクリル樹脂の水酸基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。
【0027】
本発明で用いるアクリル樹脂は水酸基に加えて、カルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。カルボキシル基を有することで、水溶性を容易に付与することが可能となる。例として(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシ基を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を含有するモノマーが挙げられる。
【0028】
カルボキシル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、4モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。4モル%以上であると、水溶性を付与することが容易となり好ましい。カルボキシル基を有するモノマーは、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。65モル%以下であると、得られる塗膜のTgが後述する好適範囲に対して高くなりすぎず、造膜性や、インラインコーティングにおける延伸適正が良好であり好ましい。
【0029】
良好な水溶性を発現させるためには、アクリル酸やメタクリル酸の共重合によってアクリル樹脂中に導入されたカルボキシル基を中和することが好ましい。塩基性の中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン化合物や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機系塩基性物質等があり、このうち、中和剤の揮発のしやすさ、架橋構造の形成のしやすさのためには、中和剤としてアミン化合物を使用することが好ましい。なかでも、粒子の凝集が発生しない点からアンモニアが最も好ましい。また中和率としては、30モル%~95モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%~90モル%である。中和率が30モル%以上の場合、アクリル樹脂の水溶性が十分であり、塗布液調製の際にアクリル樹脂の溶解が容易であり、乾燥後の塗膜面が白化したりするおそれがなく好ましい。一方、中和率が95モル%以下であると、水溶性が高すぎず、塗布液調製においてアルコール等の混合が容易となり好ましい。
【0030】
アクリル樹脂の酸価は40mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であれば、水溶性を付与することが容易となり好ましい。
【0031】
アクリル樹脂の酸価は400mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の酸価が400mgKOH/g以下であれば、アクリル樹脂のカルボキシル基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。粒子の分散性が良好であると易滑塗布面に粗大な突起が発生せず、セラミックシートのピンホールが発生しないため好ましい。
【0032】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることが好ましく、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上である。アクリル樹脂のガラス転移温度が50℃以上であると、易滑塗布層の硬度が適度に高くなり好ましい。
【0033】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は110℃以下であることが好ましく、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下である。アクリル樹脂のガラス転移温度が110℃以下であると、易滑塗布層を塗工した後の延伸工程で、塗膜にクラックが発生せず均一に延伸されるため好ましい。
【0034】
Tgを上記範囲にするために共重合されるTg調整用モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーや、非アクリル系ビニルモノマーが利用できる。(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、n-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有アクリル系モノマー;メタクリル酸ビニル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0035】
また、非アクリル系ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(m-メチルスチレンとp-メチルスチレンの混合物)、クロロスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルモノマー;が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
Tg調整用のモノマーは、水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーの適正量を決めてから、その残部とすることが好ましい。共重合体のTgは、下記のFoxの式で求められる。
【0037】
【数1】
【0038】
n:各モノマーの質量分率(質量%)
Tgn:各モノマーのホモポリマーのTg(K)

Tg調整のために共重合されるモノマーとして、長鎖アルキル基など表面自由エネルギーを低下させる成分が導入されていることが好ましい。長鎖アルキル基を導入したアクリル樹脂としては、アクリル樹脂の側鎖に炭素数が8~20程度のアルキル基を有するものが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルを主な繰り返し単位とする重合体であり、エステル交換された部分に炭素数8~20の長鎖アルキル基を含む共重合体も好適に使用することができる。
【0039】
Tg調整のために共重合されるモノマー中の長鎖アルキル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。50モル%以下であると、得られる塗膜のTgが好適範囲に対して低くなりすぎず、塗膜の硬度が高く維持できるため好ましい。本発明においては、Tgが好適範囲を維持できるのであれば、長鎖アルキル基を有するモノマーは、0モル%であっても構わないが、5モル%以上であるとアクリル樹脂のTg調整の効果が明瞭となり好ましい。
【0040】
本発明で使用するアクリル樹脂は、公知のラジカル重合によって得ることができる。乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等、いずれも採用可能である。取り扱い性の点からは、溶液重合が好ましい。溶液重合に用いることのできる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコールn-ブチルエーテル、イソプロパノール、エタノール、n-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-オキソラン、メチルソロソルブ、エチルソロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは水と混合して用いてもよい。
【0041】
重合開始剤としてはラジカルを発生する公知の化合物であればよいが、例えば、2,2-アゾビス-2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド等の水溶性アゾ系重合開始剤が好ましい。重合の温度や時間等は適宜選択される。
【0042】
アクリル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000程度が好ましい。より好ましい範囲は、20,000~150,000である。Mwが10,000以上の場合、テンター内での熱分解のおそれがなく好ましい。Mwが200,000以下であると、塗布液の粘度の著しい上昇がなく、塗工性が良好であり好ましい。
【0043】
本発明における易滑塗布層のバインダーとして、アクリル樹脂以外に他のバインダー樹脂を併用してもよい。他のバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0044】
アクリル樹脂の易滑塗布層中の含有量としては、全固形分中、20質量%以上95質量%以下が好ましい。より好ましくは30質量%以上90質量%以下である。20質量%以上であれば、架橋成分である水酸基やカルボキシル基が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。95質量%以下であれば、架橋する対象である架橋剤の量が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。
【0045】
(架橋剤)
本発明において、易滑塗布層中に架橋構造を形成させるために、易滑塗布層はメラミン系架橋剤を含有していることが好ましい。メラミン系架橋剤を含有させることにより、PET基材との密着性を向上させること、及びアクリル樹脂の水酸基やカルボキシル基との架橋を促進させることにより易滑層の塗膜強度を向上させることができ、結果として離型フィルムロールを巻きだした時の巻出し帯電を抑制することができる。また他の架橋剤を併用してもよく、併用できる具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、イソシアネート系、シラノール系等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0046】
メラミン系架橋剤としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、トリアジンとメチロール基を有する化合物が特に好ましい。本発明におけるメラミン系架橋剤とは、次に述べるメラミン系架橋剤が、アクリル樹脂と架橋構造を形成する場合は、メラミン系架橋剤に由来する成分を意味する。またメラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物にいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系化合物の熱硬化を促進するため、例えばp-トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0047】
このようなメラミン系架橋剤を用いると、メラミン系架橋剤の自己縮合による塗膜硬度アップによる巻き出し帯電抑制が見られるだけでなく、アクリル樹脂に含まれる水酸基やカルボキシル基とメラミン系架橋剤の反応が進行し、より高硬度な樹脂層を得ることができる。より高硬度の塗膜によって、巻き出し時の易滑塗布層の変形が少なく、巻き出し帯電をより抑制できるフィルムを得ることができる。
【0048】
架橋剤の易滑塗布層中の含有量としては、全固形分中、5質量%以上80質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以上70質量%以下である。5質量%以上であれば、塗布層の樹脂の架橋密度が低下しないことから好ましい。80質量%以下であれば、架橋する対象であるアクリル樹脂の水酸基やカルボキシル基の量が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。
【0049】
(易滑塗布層中の粒子)
易滑塗布層は、表面にすべり性を付与するために、滑剤粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。塗布層に適度な滑り性を与えるためには、シリカが特に好ましく使用される。
【0050】
粒子の平均粒径は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。粒子の平均粒径は10nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0051】
粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子の平均粒径が1000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0052】
また、例えば、平均粒径が10~270nm程度の小さい粒子と、平均粒径が300~1000nm程度の大きい粒子を混用することも、後述の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(P)を小さく保ちながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくして、すべり性と平滑性を両立させる上で好ましく、特に好ましくは、30nm以上250nm以下の小さい粒子と、平均粒径が350~600nmの大きい粒子を併用することである。小さい粒子と大きい粒子を混用する場合、塗布層固形分全体に対して、小さい粒子の質量含有率を大きい粒子の質量含有率より大きくしておくことが好ましい。
【0053】
粒子の易滑塗布層からの脱落を防止する点で、有機粒子を使用することも特に好ましい。有機粒子を使用することで、易滑塗布層のバインダー及び、架橋剤成分との相互作用が強くなり、脱落を防止することが容易となり好ましい。有機粒子の中でも、易滑塗布層中に存在するアクリル樹脂と化学構造が似通っているアクリル系樹脂粒子及び/又はメタクリル系樹脂粒子が、粒子の易滑塗布層からの脱落の防止性において特に好ましい。これら有機粒子は、易滑塗布層からの粒子の脱落が問題になり易い、比較的大きな平均粒径の粒子として含有させることが好ましく、例えば、平均粒径が300~1000nmの粒子として含有させることが好ましい。更に好ましくは、平均粒径が350~600nmの粒子として含有させることである。もちろん、前記の平均粒径の有機粒子がアクリル系樹脂粒子及び/又はメタクリル系樹脂粒子であることは特に好ましい態様である。
【0054】
粒子の平均粒径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察を行い、凝集していない粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
【0055】
本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0056】
粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率が50質量%以下であれば、透明性が保たれ、易滑塗布層からの粒子の脱落が顕著に発生せず、好ましい。
【0057】
粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率は、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率が1質量%以上であれば、滑り性が確保できて好ましい。
【0058】
易滑塗布層に含まれる粒子の含有率を測定する方法としては、例えば、易滑塗布層に有機成分の樹脂と無機粒子が含まれる場合、次の方法を用いることができる。まず加工フィルムに設けられた易滑塗布層を溶剤などを用いて加工フィルムより抽出し乾固することで易滑塗布層取り出す。次に得られた易滑塗布層に熱をかけ、易滑塗布層に含まれる有機成分を熱により燃焼留去させることで無機成分のみを得ることができる。得られた無機成分と燃焼留去前の易滑塗布層の重量を測定することで、易滑塗布層に含まれる粒子の質量%を測定することができる。このとき、市販の示差熱・熱重量同時測定装置を用いることで精度良く測定することができる。なお、上記の粒子の易滑塗布層の全固形分中の比率は、粒子が複数種類存在する場合は、その複数種の合計量の比率を意味する。
【0059】
(易滑塗布層中の添加剤)
易滑塗布層に他の機能性を付与するために、塗布外観を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0060】
易滑塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、過剰に添加することで塗布外観の異常が発生しない程度の範囲で塗布層に含有させることが好ましい。
【0061】
塗布方法としては、ポリエステル基材フィルム製膜時に同時に塗布する所謂インラインコーティング法、及び、ポリエステル基材フィルムを製膜後、別途コーターで塗布する所謂オフラインコーティング法のいずれも適用できるが、インラインコーティング法が効率的でより好ましい。
【0062】
塗布方法として塗布液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗布する。
【0063】
本発明において、ポリエステルフィルム上に易滑塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合した所謂水系の溶媒が好ましい。
【0064】
易滑塗布液の固形分濃度はバインダー樹脂の種類や溶媒の種類などにもよるが、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。塗布液の固形分濃度は35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0065】
塗布後の乾燥温度についても、バインダー樹脂の種類、溶媒の種類、架橋剤の有無、固形分濃度などにもよるが、70℃以上であることが好ましく、250℃以下であることが好ましい。
【0066】
(ポリエステルフィルムの製造)
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。また、テンター内で縦横同時に二軸延伸する方法も挙げられる。
【0067】
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであっても構わないが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0068】
ポリエステルフィルム基材の厚みは5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。厚みは5μm以上であると、フィルムの搬送時にシワが入りにくく好ましい。
【0069】
ポリエステルフィルム基材の厚みは50μm以下であることが好ましく、より好ましくは45μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。厚みが40μm以下であると、単位面積当たりのコストが低下するため好ましい。
【0070】
インラインコートの場合は縦方向の延伸前の未延伸フィルムに塗工しても、縦方向の延伸後で横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工しても良い。縦方向の延伸前に塗工する場合にはロール延伸前に乾燥工程を設けることが好ましい。横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工する場合はテンター内でのフィルム加熱工程で乾燥工程を兼ねることが出来るので、必ずしも別途乾燥工程を設ける必要はない。なお、同時二軸延伸する場合も同様である。
【0071】
易滑塗布層の膜厚は0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.03μm以上である。塗布層の膜厚が0.001μm以上であると、塗布膜の造膜性が維持され、均一な塗布膜が得られるため好ましい。
【0072】
易滑塗布層の膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングが生じるおそれがなく好ましい。
【0073】
後述する離型塗布層上に、塗布、成型されるセラミックグリーンシートは、塗布、成型後に離型フィルムと共にロール状に巻き取られる。このとき、セラミックグリーンシート表面に離型フィルムの易滑塗布層が接触した状態で巻き取られることとなる。セラミックグリーンシート表面に欠陥を発生させないために、易滑塗布層の外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の易滑塗布層表面)は、適度に平坦であることが必要であり、領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0074】
易滑塗布層の外表面の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上、最大突起高さ(P)が60nm以上であれば、易滑塗布面が平滑になりすぎず適度な滑り性が維持できるため好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下、最大突起高さ(P)が500nm以下であれば、易滑塗布面が粗くなりすぎず突起によるセラミックグリーンシートの欠陥が発生せず好ましい。
【0075】
本発明では、領域表面平均粗さ(Sa),最大突起高さ(P)を上記範囲にすることに加え、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であることが好ましい。粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を10μm以下に制御することで、単位面積当たりの突起個数が増加する。突起個数が増加すると、突起一つ当たりにかかる圧力が分散され小さくなるため、ピンホールの発生を効果的に抑制できて好ましい。粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは3μm以下である。しかしながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が小さ過ぎることは、易滑塗布層中の粒子の含有量が多過ぎることなどと関連し、領域表面平均粗さ(Sa)が大きくなることや、最大突起高さ(P)が大きくなることとも関連があるので、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であっても構わず、1μm以上であっても構わない。
【0076】
本発明では、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を所定の範囲にするために、易滑塗布層に含まれる粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましい。より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子径が1000nm以下であると、粒子間の距離が大きくなりすぎることがなく、RSmが所定の範囲に調節されて好ましい
易滑塗布層の表面自由エネルギーは、45mJ/m以下であることが好ましく、40mJ/m以下であることがより好ましい。易滑塗布層の表面自由エネルギーが、45mJ/m以下となることで、工程での環境異物が付着しにくくなり、離型面への異物付着が起こりにくくなり、セラミックグリーンシートの環境異物起因のピンホールが発生しにくくなり好ましい。
【0077】
(離型塗布層)
本発明における離型塗布層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
【0078】
本発明における離型塗布層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、0.2~2.0μm厚みの超薄膜セラミックグリーンシート製造時にもピンホールなどの欠点を少なくすることができる。
【0079】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などが挙げられる。
【0080】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0081】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62-7028A/B、X62-7052、X62-7205、X62-7622、X62-7629、X62-7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56-A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF-UV265AMなど)が挙げられる。
【0082】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
【0083】
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性、ラウリル変性などをしたアルキド樹脂やアクリル樹脂、またはメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂、アクリル系樹脂なども好適である。
【0084】
上記、メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂としては、日立化成社製のテスファイン303、テスファイン305、テスファイン314などが挙げられる。メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアクリル樹脂としては、日立化成社製のテスファイン322などが挙げられる。
【0085】
本発明における離型塗布層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
【0086】
本発明における離型塗布層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
【0087】
本発明における離型塗布層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0088】
本発明において、離型塗布層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.005~2.0μmとなる範囲がよい。離型塗布層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型塗布層の厚みが2.0μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下によるセラミックグリーンシートの厚みムラを生じおそれがなく好ましい。また、硬化時間が長くなり過ぎないので、離型塗布層を構成する樹脂が凝集するおそれがなく、突起を形成するおそれがないため、セラミックグリーンシートのピンホール欠点が生じにくく好ましい。
【0089】
離型塗布層を形成させたフィルム外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の離型塗布層表面)は、その上で塗布、成型するセラミックグリーンシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ20nm以下がより好ましい。領域表面粗さが5nm以下、且つ、最大突起高さが30nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0090】
本発明において、離型塗布層を形成させたフィルム表面を所定の粗さ範囲に調節するためには、PETフィルムには実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。なお、本発明における「実質的に無機粒子を含有しない」とは、基材フィルム及び離型塗布層の両者について、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下であることで定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下である。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0091】
本発明において、離型塗布層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。
【0092】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0093】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0094】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0095】
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0096】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例0097】
次に、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0098】
[NMR測定]
アクリルポリオール中に導入された共重合成分の比率は、核磁気共鳴分光法(1H-NMR、13C-NMR:Varian Unity 400、Agilent社製)を用いて確認した。測定は、合成したアクリルポリオール中の溶媒を真空乾燥機にて除去した後、乾固物を重クロロフォルムに溶解させて行った。得られたNMRスペクトルから、各基の部位に帰属される化学シフトδ(ppm)のピークを同定した。得られた各ピークの積分強度を求め、各基の部位の水素数と積分強度から、アクリルポリオールに導入された共重合成分の組成比率(mol%)を確認した。
【0099】
[Tgの確認]
上記NMR測定で求めた共重合成分の組成比率と、前記したFoxの式から各アクリルポリオールのTgを求めた。
【0100】
[延伸適性]
アクリルポリオール自体の延伸適性を評価するため、合成したアクリルポリオール(1)~(13)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単体の溶解液を調製した後、縦延伸のみを行ったポリエステルフィルムの表面に、溶解液をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出してプレ乾燥を行った。次いで、サンプルを手廻し延伸装置(東洋紡エンジニアリング社製)にセットして、100℃の熱風循環オーブン中に入れ、ゆっくりと延伸操作を行った。延伸前の長さの4倍の長さになるまで延伸操作を行い、延伸装置を熱風循環オーブンから取り出した。その後、延伸後の塗膜を光学顕微鏡(倍率:200倍)にて観察し、下記の基準に従って、延伸によるクラッキングの有無を判断した。
○:クラックが全く見られない。
△:クラックがやや見られる(1本~4本)。
×:5本以上のクラック、もしくは全面にクラックが見られる。
【0101】
(1)塗布フィルムの表面特性
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
【0102】
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm (Sa,P測定)
・測定長さ(Lr:基準長さ):187μm(RSm測定)
(2)易滑塗布層の粒子分散性評価(狭視野、VertScan 測定視野187×139μm)
上記(1)で測定した最大突起高さ(P)の値で下記のような基準で判断した。
【0103】
○: 最大突起高さ(P)が0.2μm以下
○△: 最大突起高さ(P)が0.2μmより大きく、0.3μmより小さい。
【0104】
△: 最大突起高さ(P)が0.3μm以上
(3)易滑塗布層の粒子分散性評価(広視野、目視 測定視野600mm×420mm)
暗室にて目視でLEDライト(LED LENSER社製、LED LENSER P5R.2)を用いて、A4サイズのグリーンシート製造用剥離フィルムを4枚観察し、白く視認できる粒子凝集物にマーキングを行い、下記のような基準で判断した。
【0105】
◎: 粒子凝集物無し
○: 粒子凝集物が1個から3個。
【0106】
△: 粒子凝集物が4個以上。
【0107】
(4)耐粉落ち性
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT-200)にグリーンシート製造用剥離フィルム(3cm(フィルム幅方向)×20cm(フィルム長手方向))を易滑塗布層が上になるように取り付け、荷重ヘッド部(2cmx2cm、200g)と試料フィルムの接触部にアルミ箔(厚さ80μm、算術的平均表面粗さ0.03μm)を用い、10cmの距離を1往復2秒の速度で10往復させた。黒台紙の上に得られたフィルムをのせ、粉落ちしているか目視で確認した。
【0108】
○:黒台紙上で粉落ちが確認できない。
【0109】
△:黒台紙上で全体的にわずかな粉落ちが確認できる。
【0110】
(5)表面自由エネルギー
25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学株式会社製: 全自動接触角計 DM-701)を用いて離型フィルムの離型面に水(液滴量1.8μL)、ジヨードメタン(液適量0.9μL)、エチレングリコール(液適量0.9μL)の液滴を作成しその接触角を測定した。接触角は、各液を離型フィルムに滴下後10秒後の接触角を採用した。前記方法で得られた、水、ジヨードメタン、エチレングリコールの接触角データを「北崎-畑」理論より計算し離型フィルムの表面自由エネルギーの分散成分γsd、極性成分γsp、水素結合成分γshを求め、各成分を合計したものを表面自由エネルギーγsとした。本計算には、本接触角計ソフトウェア(FAMAS)内の計算ソフトを用いて行った。
【0111】
(6)離型フィルムロールの巻出し帯電
各実施例および各比較例で得られたグリーンシート製造用剥離フィルムを、幅400mm、長さ5000mのロール状に巻き上げ、剥離フィルムロールを得た。この剥離フィルムロールを40℃、湿度50%以下の環境下に30日間保管した後、200m/minで巻き返す際の帯電量を春日電機社製「KSD-0103」を用いて測定した。帯電量は、巻出し直後100mmの箇所について、巻出し長さ500M毎に測定し、その平均値を算出した。
【0112】
○:±3kV未満
○△:±3kV以上、5kV未満
△:±5kV以上、10kV未満
×:±10kV以上
(7)セラミックグリーンシートのピンホール、厚みばらつき評価
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、2.0mmのガラスビーズを分散媒とするペイントシェーカーを用いて2時間分散し、セラミックスラリーを得た。
【0113】
トルエン 22.5質量%
エタノール 22.5質量%
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 50 質量%
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBH-3) 5 質量%
次いで離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが0.5μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、スラリー面と平滑化塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cmの加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
【0114】
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cmの範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
【0115】
◎:ピンホールの発生なし、厚みばらつき特に良好
○:ピンホールの発生なし、厚みばらつき特に問題なし
△:ピンホールの発生がごくわずかにあり、厚みばらつきが若干見える。
【0116】
×:ピンホールの発生が少しあり、及び、厚みばらつきが少し目立つ。
【0117】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0118】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0119】
(積層フィルムZの製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流させ、PET(I)を反離型面側層、PET(II)を離型面側層となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャステイング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムZを得た。得られたフィルムZの離型面側層のSaは2nm、反離型面側層のSaは28nmであった。
【0120】
(アクリルポリオールA-1の製造)
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)77質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)33質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)490質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2-アゾビス-2―メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミドを0.5質量部フラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)840質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、トリエチルアミンを加え、溶液のpHが5.5~7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A-1)を得た。アクリルポリオール(A-1)のNMR測定による組成比率、Tg、延伸適性、酸価を表1に併記した。
【0121】
(アクリルポリオール(A-2)~(A-13)の製造)
表1に示したように、MMA、St、SMA、HEMA、MAA、AA、仕込み時IPA、希釈時IPA水溶液の量、及び中和剤を変更した以外はアクリルポリオール1の製造と同様にして、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A-2)~(A-13)を得た。アクリルポリオール(A-2)~(A-13)のNMR測定による組成比率、Tg、延伸適性、酸価、水酸基価を表1に併記した。なお、組成比率は、MMA、St(スチレン)、SMA(ステアリルメタクリレート)、を各々l-1、l-2、l-3(単位)、HEMAをm(単位)、MAA、AA(アクリル酸)をn(単位)として表した。
【0122】
【表1】
【0123】
(ポリエステル樹脂B0-1の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチルー5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、エチレングリコール185.1質量部、ネオペンチルグリコール185.1質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(B0-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(B0-1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(B0-1)の還元粘度を測定したところ,0.60dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は65℃であった。
【0124】
(ポリエステル水分散体B-1の製造)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(B0-1)30質量部、エチレングリコール-n-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体(B-1)を作製した。
【0125】
(ポリエステル樹脂B0-2の重合)
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート163質量部、ジメチルイソフタレート163質量部、1,4ブタンジオール169質量部、エチレングリコール324質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。
【0126】
次いで、フマル酸14質量部およびセバシン酸203質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂(B0-2)を得た。得られた疎水性共重合ポリエステル樹脂(B0-2)は、淡黄色透明であった。
【0127】
(ポリエステル水分散体B-2の製造)
次いで、グラフト樹脂の製造撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、この共重合ポリエステル樹脂(B0-2)60質量部、メチルエチルケトン45質量部およびイソプロピルアルコール15質量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸24質量部をポリエステル溶液に添加した。
【0128】
次いで、スチレン16質量部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部をメチルエチルケトン19質量部に溶解した溶液を、0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール8質量部を添加した。次いで、水300質量部とトリエチルアミン24質量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。
【0129】
その後、反応器の内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、淡黄色透明のポリエステル系樹脂を得、固形分濃度25質量%の均一な水分散性ポリエステル系グラフト共重合体分散液(B-2)を調製した。得られたポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度は68℃であった。
【0130】
(ポリウレタン水分散体C-1の製造)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分37質量%の水溶性ポリウレタン樹脂溶液C-1を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移点温度は-30℃であった。
【0131】
(メラミン系架橋剤D-1)
メチル化メラミン(三和ケミカル製、商品名ニカラックMX-035、固形分濃度70質量%)
(メラミン系架橋剤D-2)
メチル/n-ブチル化メラミン(三和ケミカル製、商品名ニカラックMX-45、固形分濃度100質量%)
(シリカ粒子E-1)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP2040、平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
(シリカ粒子E-2)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名スノーテックスXL、平均粒径40nm、固形分濃度40質量%)
(シリカ粒子E-3)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名スノーテックスZL、平均粒径100nm、固形分濃度40質量%)
(シリカ粒子E-4)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP4540M、平均粒径450nm、固形分濃度40質量%)
(アクリル粒子E-5)
アクリル粒子水分散体(日本触媒製、商品名MX100W、平均粒径150nm、固形分濃度10質量%)
(アクリル粒子E-6)
アクリル粒子水分散体(日本触媒製、商品名MX200W、平均粒径350nm、固形分濃度10質量%)
(アクリル粒子E-7)
アクリル粒子水分散体(日本触媒製、商品名MX300W、平均粒径450nm、固形分濃度10質量%)
(離型剤溶液X-1)
熱硬化型アミノアルキド樹脂(日立化成社製 テスファイン314、固形分60質量%)100質量部と硬化触媒としてp-トルエンスルホン酸(日立化成社製、ドライヤー900、固形分50質量%)1.2質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0132】
(離型剤溶液X-2)
UV硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ社製 UV9300、固形分濃度100質量%)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0133】
(実施例1)
(易滑塗布液1の調整)
下記の組成の易滑塗布液1を調整した。
【0134】
(易滑塗布液1)
水 45.51質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
メラミン系架橋剤D-1(固形分濃度70質量%) 2.03質量部
シリカ粒子E-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤F-1(シリコーン系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
(ポリエステルフィルムの製造)
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ粒子を実質的に含有していないPET樹脂ペレット(PET(II))を、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0135】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0136】
次いで、上記易滑塗布液をバーコーターでPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸、乾燥後の塗布量が0.1μmになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ31μmのインラインコーティングポリエステルフィルムを得た。
【0137】
(離型塗布層の形成)
上記で得たインラインコーティングポリエステルフィルムに離型剤溶液X-1を易滑塗布層積層面とは反対表面に、乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、130℃の熱風で30秒間乾燥することで離型塗布層を形成し超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。巻き取り性等、工程通過性、ハンドリング性は特に問題なく優秀であった。ロールとして巻き取った後に、セラミックシート塗工のために再度巻きだした時の巻出し帯電も低く、環境異物の付着が抑制できセラミックコンデンサの歩留まりを落とすことなく、品質の良いセラミックコンデンサを作成することができた。
【0138】
(実施例2)
実施例1で使用した易滑塗布液1中のメチル化メラミン系架橋剤をメチル/n-ブチル化メラミンD-2(固形分濃度100質量%)に変更した易滑塗布液2を使用した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0139】
(実施例3~19、21~24)
易滑塗布液1を、表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0140】
(実施例20)
離型塗布層の形成を下記のように実施した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0141】
(離型塗布層の形成)
得たインラインコーティングポリエステルフィルムに離型剤溶液X-2を乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(ヘレウス株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型塗布層を形成し超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0142】
(比較例1~4)
易滑塗布液1を、表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0143】
(比較例5)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例1で作成した一方の表面に易滑塗布層を有するインラインコーティングフィルムの代わりに、E5000-25μm(東洋紡製)に変更して使用した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。E5000はフィルム内部に粒子を含有しており、両表面のSaがともに0.031μmであった。
【0144】
(比較例6)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例1で作成した一方の表面に易滑塗布層を有するインラインコーティングフィルムの代わりに、積層フィルムZに変更して使用した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。積層フィルムZのPET(II)ペレットを吐出した面(粒子を含有しない層)に離型塗布層を設けた。
【0145】
各実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
上記表2において、易滑塗布液中の樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤について、各々の組成を固形分の質量部として記載しており、易滑塗布液中に存在する樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤の固形分の質量部の総和が易滑塗布層の全固形分の質量部となり、樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤について、各々の固形分の質量部を易滑塗布層の全固形分の質量部で除して、樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤の易滑塗布層中の全固形文中の質量百分率を求めることができる。
【0148】
実施例1~24においては、離型加工後ロールを再度巻きだした場合の巻出し帯電が低く環境異物が付着しにくいため、セラミックコンデンサの歩留まりを落とすことなく、品質の良いセラミックコンデンサを作成することができた。離型フィルムとして、無機粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、易滑塗布層がアクリル樹脂及び、メラミン系架橋剤を含有する組成物が硬化されてなるため、易滑塗布層の架橋密度が高く易滑塗布層の変形量が小さくなる。離型加工済のフィルムロールを巻きだす際の離型層と易滑層の剥離時に、接触面積が小さくなるため、帯電する量を抑制できたと考えられる。
【0149】
一方、比較例1~4においては、本発明で規定するアクリル樹脂、及びメラミン系架橋剤を含有する組成物が硬化されてなる易滑塗布層ではないため、易滑塗布層の架橋密度が低くなり、易滑塗布層の変形量が大きくなる。離型加工済のフィルムロールを巻きだす際の離型層と易滑層の剥離時に、接触面積が大きくなるため、巻出し帯電が大きくなったと考えられる。また、比較例5、6においては巻出し帯電は低いものの、本発明で規定する易滑塗布層を有しておらず、易滑面の表面粗さが大きいため、セラミックシートにピンホールが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止、帯電による環境異物の付着の防止を両立させることができるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの提供が可能となる。また、本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いることにより、極薄膜のセラミックグリーンシートが得られ、微小なセラミックコンデンサを効率的に製造することができる。