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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028478
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】保冷車
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/06 20060101AFI20240226BHJP
   B62D 33/04 20060101ALI20240226BHJP
   B60P 3/20 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F25D23/06 W
F25D23/06 302A
B62D33/04 B
B60P3/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003599
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2020062478の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508365551
【氏名又は名称】北海道車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 泰一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 喜男
(57)【要約】
【課題】保冷車用パネルをより薄くすることができるとともに、外力に耐えることができる優れた強度を持つ断熱パネルを備えた保冷車を提供する。
【解決手段】保冷車1の内張パネル160は、内側に配置される内板161と、内板161の外側に配置される第1断熱材162と、内板161とともに、第1断熱材162を挟み込む第2断熱材163と、を有し、第2断熱材163と外板111との間に生じる側壁隙間S1には、第3断熱材170が配設され、第1断熱材162は、真空断熱材であり、第2断熱材163および第3断熱材170は、押出式ポリスチレンフォームである。隣接する内張パネル160の幅方向の端部の突き合わせ面160tには、上下方向に延びる断面形状がI型の樹脂製目地ジョイナー180が配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷空間を有する保冷車であって、
前記保冷空間は、
前記保冷車の左右にそれぞれ配置される側面断熱パネルと、
天面側に配置される天面断熱パネルと、
床面に配置される床面断熱パネルと、
前側に配置される前面断熱パネルと、
後側に配置される後面断熱パネルと、によって規定され、
前記側面断熱パネルは、
前記保冷車の前方から後方に向かって外側に配置された外板と、
前記外板の内面に固定され、前記保冷車の前方から後方に沿って所定の間隔で配置された、上下方向に延びる複数の柱部材と、
前記保冷車の前方から後方に沿って複数配置され、前記柱部材に固定される内張パネルと、を含み、
前記内張パネルは、
内側に配置される内板と、
前記内板の外側に配置される第1断熱材と、
前記内板とともに、前記第1断熱材を挟み込む第2断熱材と、を有し、
前記第2断熱材と前記外板との間に生じる側壁隙間には、第3断熱材が配設され、
前記第1断熱材は、真空断熱材であり、
前記第2断熱材および前記第3断熱材は、押出式ポリスチレンフォームであり、
隣接する前記内張パネルの幅方向の端部の突き合わせ面には、上下方向に延びる断面形状がI型の樹脂製目地ジョイナーが配置されている、保冷車。
【請求項2】
前記第2断熱材には、前記第1断熱材を嵌め込むための凹部が設けられている、請求項1に記載の保冷車。
【請求項3】
前記床面断熱パネルは、
前記保冷車の保冷車床面の上に、前記保冷車の前方から後方に向かって所定の間隔で複数配置され、左右方向に延びる梁部材と、
複数の前記梁部材の上に配置される床構造材と、
前記床構造材の上に配置される床面材と、
隣接する前記梁部材同士の間の前記保冷車床面と前記床構造材との間に生じる床隙間に配置される床面断熱パネル部材と、を含み、
前記床面断熱パネル部材は、
前記床構造材側に配置される第4断熱材と、
前記保冷車床面側に配置される第5断熱材と、を有し、
前記第4断熱材は、真空断熱材であり、
前記第5断熱材は、押出式ポリスチレンフォームである、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の保冷車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷車に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷車に用いられる断熱パネルに関する技術が、たとえば、特開平10-114245号公報(特許文献1)、特開平11-264497号公報(特許文献2)、特開2002-267344号公報(特許文献3)、特開2005-188714号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-114245号公報
【特許文献2】特開平11-264497号公報
【特許文献3】特開2002-267344号公報
【特許文献4】特開2005-188714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献に開示される保冷車用の断熱パネルは、高い断熱性を有する真空断熱材を含んでいる。上記真空断熱材を含むことで、上記断熱パネルを薄くすることができる。上記断熱パネルを薄くすることにより、保冷車の積載効率を向上させることができる。
【0005】
一方、上記断熱パネルを薄くすることで、積荷のラッシングもしくは保冷車運転時の振動の外力に対する上記保冷車用パネルの強度が不足する。上記断熱パネルの強度不足により、上記断熱パネルが変形するなどし、内部の上記真空断熱材が破損して保冷能力が低下する課題があった。
【0006】
本発明の目的は、保冷車用パネルをより薄くすることができるとともに、外力に耐えることができる優れた強度を持つ断熱パネルを備えた保冷車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係わる保冷車は、保冷空間を有する保冷車であって、上記保冷空間は、上記保冷車の左右にそれぞれ配置される側面断熱パネルと、天面側に配置される天面断熱パネルと、床側に配置される床面断熱パネルと、前側に配置される前面断熱パネルと、後側に配置される後面断熱パネルと、によって規定される。
【0008】
上記側面断熱パネルは、上記保冷車の前方から後方に向かって外側に配置された外板と、上記外板の内面に固定され、上記保冷車の前方から後方に沿って所定の間隔で配置された、上下方向に延びる複数の柱部材と、上記保冷車の前方から後方に沿って複数配置され、上記柱部材に固定される内張パネルと、を含む。
【0009】
上記内張パネルは、内側に配置される内板と、上記内板の外側に配置される第1断熱材と、上記内板とともに、上記第1断熱材を挟み込む第2断熱材とを有し、上記第2断熱材と上記外板との間に生じる側壁隙間には、第3断熱材が配設され、上記第1断熱材は、真空断熱材であり、上記第2断熱材および上記第3断熱材は、押出式ポリスチレンフォームである。隣接する上記内張パネルの幅方向の端部の突き合わせ面には、上下方向に延びる断面形状がI型の樹脂製目地ジョイナーが配置されている。
【0010】
上記保冷車の他の形態においては、上記第2断熱材には、上記第1断熱材を嵌め込むための凹部が設けられている。
【0011】
上記保冷車の他の形態においては、上記床面断熱パネルは、上記保冷車の保冷車床面の上に、上記保冷車の前方から後方に向かって所定の間隔で複数配置され、左右方向に延びる梁部材と、複数の上記梁部材の上に配置される床構造材と、上記床構造材の上に配置される床面材と、隣接する上記梁部材同士の間の上記保冷車床面と上記床構造材との間に生じる床隙間に配置される床面断熱パネル部材と、を含む。
【0012】
上記床面断熱パネル部材は、上記床構造材側に配置される第4断熱材と、上記保冷車床面側に配置される第5断熱材とを有し、上記第4断熱材は、真空断熱材であり、上記第5断熱材は、押出式ポリスチレンフォームである。
【発明の効果】
【0013】
本開示に従えば、保冷車用パネルをより薄くすることができるとともに、外力に耐えることができる優れた強度を持つ断熱パネルを備えた保冷車を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態の保冷車の概略図である。
図2】実施の形態の保冷車の後方から前方を見た保冷空間の概略図である。
図3】実施の形態の側面断熱パネルの構造を示す概略図である。
図4図3中のIV-IV線矢視断面斜視図である。
図5図3中のIV-IV線矢視断面図である。
図6】実施の形態の内張パネルの構造を示す分解斜視図である。
図7】実施の形態の内張パネルの変形例1の構造を示す分解斜視図である。
図8】実施の形態の内張パネルの変形例2の構造を示す分解斜視図である。
図9】実施の形態の内張パネルの変形例3の構造を示す分解斜視図である。
図10】実施の形態の床面断熱パネルの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態における保冷車1について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率、部材数を変更して図示している箇所がある。
【0016】
図中に示すX方向は、保冷車1の前後方向に相当し、Y方向は、保冷車1の上下方向に相当し、Z方向は、保冷車1の左右方向に相当する。以下の説明で並行とは、相互の間隔がどの位置であっても同一に配置される平行を含み、本実施の形態では、この平行の意味より若干場所によっては間隔が異なってよい、緩やかな意味として並行という文言を用いている。
【0017】
[実施の形態1]
<保冷車1>
図1および図2を参照して、本実施の形態の保冷車1の概略的な構成について説明する。図1は、保冷車1の概略図、図2は、保冷車1の後方から前方を見た保冷空間CAの概略図である。
【0018】
保冷車1は、保冷空間CAを有する保冷車1であって、この保冷空間CAは、保冷車1の左側および右側(図中Z方向)にそれぞれ配置される側面断熱パネル110と、天面側に配置される天面断熱パネル120と、床面に配置される床面断熱パネル130と、前側に配置される前面断熱パネル140と、後側に配置される後面断熱パネル150と、によって規定されている。各断熱パネル同士は、公知の金具等を用いて保冷性能に影響を与えないように連結されている。
【0019】
後面断熱パネル150は、積荷の積載を行なうため、観音扉の形態により開閉可能である。側面断熱パネル110にも、積荷の積載を行なうための扉が設けられる場合があるが、ここでの図示は省略する。前面断熱パネル140の中央よりの天面側寄りの部分には、冷却空調のための送風窓140Aが設けられている。
【0020】
<側面断熱パネル110>
図3から図6を参照して、側面断熱パネル110の構成について説明する。図3は、側面断熱パネル110の構造を示す概略図、図4は、図3中のIV-IV線矢視断面斜視図、図5は、図3中のIV-IV線断面図、図6は、内張パネルの構造を示す分解斜視図である。
【0021】
天面断熱パネル120、後面断熱パネル150、前面断熱パネル140および後面断熱パネル150の構成は、側面断熱パネル110と同じ構成であることから、ここでの説明は省略する。
【0022】
側面断熱パネル110は、保冷車1の前後方に向かって(図中のX方向)外側に配置された外板111と、この外板111の内面にビスや接着材等を用いて固定され、保冷車1の前後方に沿って所定の間隔で配置された、上下方向(図中Y方向)に延びる複数の柱部材112と、保冷車1の前方から後方に沿って複数配置され、柱部材112にビスB1を用いて固定される内張パネル160とを含む。複数の柱部材112が、側面断熱パネル110の骨組みを構成し、側面断熱パネル110の剛性を高める。
【0023】
外板111は、前後方向に伸びる矩形の平板である。外板111のX方向における長辺は、約6300[mm]~約6500[mm]である。本実施の形態における。外板111の長辺は、たとえば、約6466[mm]である。外板111のY方向における短辺(図中Y方向)は、約2300[mm]~約2500[mm]である。本実施の形態における外板111の短辺は、たとえば、約2464[mm]である。
【0024】
外板111は、アルミ板またはFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)板で構成される。アルミ板の場合、外板111の厚みは、約0.9[mm]~約1.1[mm]である。本実施の形態におけるアルミ板を使用した場合の外板111の厚みは、たとえば、約1.0[mm]である。
【0025】
外板111がFRP板で構成される場合、外板111の厚みは、約1.4[mm]~約1.6[mm]である。本実施の形態におけるFRP板を使用した場合の外板111の厚みは、たとえば、約1.5[mm]である。
【0026】
柱部材112は、アルミまたはスチール製のハット形の鋼材が用いられる。高さ約35[mm]、最大幅は約74[mm]である。柱部材112は上下方向に延び、X方向に沿って約450[mm]のピッチで配置されている。
【0027】
内張パネル160は、内側に配置される内板161と、この内板161の外側に配置される第1断熱材162と、内板161とともに、第1断熱材162を挟み込む第2断熱材
163とを有している。内板161には、板厚さ約6[mm]の合板が用いられる。第1断熱材162には、厚さ約8[mm]~10[mm]の真空断熱材を用いるとよい。第2断熱材163には、樹脂製断熱材が用いられる、たとえば厚さ約20[mm]の押出式ポリスチレンフォーム(XPS)を用いるとよい。
【0028】
上記真空断熱材は、パナソニック社製のU-Vacua(登録商標)が好ましい。上記真空断熱材の熱伝導率は、たとえば、0.0025[W/(m・K)]である。先行文献2および先行文献3で使用されている真空断熱材に比べて、約3.2倍の断熱性能を有する。上記真空断熱材の熱伝導率は、0.0025[W/(m・K)]以下でもよい。
【0029】
第2断熱材163の表面には、2行2列に配置された4つの埋め込み用の凹部163hが設けられている。この凹部163hに、4枚の第1断熱材162が相互に並行に配置されている。各第1断熱材162は、凹部163hにおいて接着材等を用いて第2断熱材163に固定される。さらに、内板161が、第1断熱材162および第2断熱材163に接着材等を用いて固定される。固定に際しては、接着材が塗布された後に加圧される。これにより、相互の部材が強固に固定される。内張パネル160は、一枚のパネル部材として取り扱われる。
【0030】
内張パネル160のX方向の幅は、約900[mm]であり、図中Y方向の高さは、約2000[mm]である。この内張パネル160が、X方向に沿って複数枚配置されている(図2参照)。
【0031】
内張パネル160の幅方向の中央部に柱部材112が通過し、内張パネル160の両端部が、柱部材112のフランジ部112fにビスB1を用いて固定される。隣接する内張パネル160の幅方向の端部の突き合わせ面160tには、Y方向に延びる断面形状がI型の樹脂製目地ジョイナー180が配置されている。
【0032】
内張パネル160の第2断熱材163と外板111との間に生じる側壁隙間S1には、第3断熱材170が、その側壁隙間S1を埋めるように配設される。第3断熱材には、板状の押出式ポリスチレンフォーム(XPS)を用いてもよいし、吹付方式により硬質ウレタンフォームを噴霧するようにしてもよい。
【0033】
(第1断熱材162の配置構成の変形例)
図7から図9を参照して、第1断熱材162の他の配置構成について説明する。図7から図8は、内張パネル160の変形例1から変形例3の構造を示す分解斜視図である。
【0034】
上記実施の形態では、内板161と第2断熱材163との間に埋め込まれ、2行2列に配置された4つの第1断熱材162を1セットの断熱構造としているが、この配置に限定されない。図7に示すように、内張パネル160に1枚の第1断熱材162を埋め込むようにしてもよい。図8に示すように、内張パネル160にY方向に長く、X方向に沿って配置される2枚の第1断熱材162を埋め込むようにしてもよい。図9に示すように、内張パネル160にX方向に長く、Y方向に沿って配置される2枚の第1断熱材162を埋め込むようにしてもよい。このように、1セットの断熱構造に含まれる第1断熱材162の数量および配置は、内張パネル160に要求される保冷性能に応じて適宜変更可能である。
【0035】
(床面断熱パネル130)
図10を参照して、床面断熱パネル130の構成について説明する。図10は、床面断熱パネル130の構造を示す断面図である。この断面図はX方向に沿って見た断面構造を示す。
【0036】
保冷車1の保冷車床面200は、C形チャネル鋼210および鋼板220を含む。C形チャネル鋼210は、X方向である前後方向に沿って所定のピッチで配置されている。
【0037】
床面断熱パネル130は、保冷車床面200の上に、保冷車1のX方向である前方から後方に向かって所定の間隔で複数配置され、Z方向である幅方向に延びる梁部材211と、複数の梁部材211の上に配置される床構造材212と、この床構造材212の上に配置される床面材213と、隣接する梁部材211同士の間の保冷車床面200と、床構造材212との間に生じる床隙間S2に配置される床面断熱パネル部材230とを含む。
【0038】
梁部材211は、床隙間S2を設けるためのものであり、本実施の形態では、高さ約60[mm]の角材が用いられている。角材の幅は、約50[mm]~70[mm]程度である。床面材213には、厚さ2.5[mm]のアルミ板が用いられている。角材の配置ピッチは、約390[mm]から410[mm]である。
【0039】
床構造材212には、厚さが約12[mm]の複数枚のベニヤ板212aが用いられる。このベニヤ板212aは、Z方向に細長い板材が用いられる。図2の荷室から見た場合には、ベニヤ板212aは、前方から後方に向かって敷き詰めるように配置される。ベニヤ板212aの端部には、隣合うベニヤ板212aを連結するための凹凸が設けられている。
【0040】
床面断熱パネル部材230は、床構造材212側に配置される第4断熱材231と、保冷車床面200側に配置される第5断熱材232とを有する。第4断熱材231には、厚さ約8[mm]~10[mm]の真空断熱材を用いるとよい。真空断熱材の大きさは、約340[mm]×720[mm]の矩形形状である。第5断熱材232には、樹脂製断熱材が用いられる、たとえば厚さ約50[mm]の押出式ポリスチレンフォーム(XPS)を用いるとよい。押出式ポリスチレンフォーム(XPS)の大きさは、床隙間S2を埋める大きさとなる。第4断熱材231および第5断熱材232は、接着材を用いて床隙間S2内に固定される。
【0041】
上記真空断熱材は、パナソニック社製のU-Vacua(登録商標)が好ましい。上記真空断熱材の熱伝導率は、たとえば、0.0025[W/(m・K)]である。先行文献2および先行文献3で使用されている真空断熱材に比べて、約3.2倍の断熱性能を有する。上記真空断熱材の熱伝導率は、0.0025[W/(m・K)]未満でも良い。
【0042】
(作用・効果)
本実施の形態における保冷車1は、内張パネル160は、内側に配置される内板161と、内板161の外側に配置される第1断熱材162と、内板161とともに、第1断熱材162を挟み込む第2断熱材163とを有し、第2断熱材163と外板111との間に生じる側壁隙間S1には、第3断熱材170が配設され、第1断熱材162は、真空断熱材であり、第2断熱材163および第3断熱材170は、押出式ポリスチレンフォームである。
【0043】
この構成を採用することで、側面断熱パネル110においては、保冷空間の近接する位置に保冷効果の高い真空断熱材が配置され、外部との真空断熱材との間に二重の第2断熱材163および第3断熱材170が配設されることから、外部からの熱の保冷空間への流入を効果的に抑制することができる。
【0044】
さらに、内張パネル160を一枚のパネル部材として取り扱うことできるため、内張パネル160を柱部材112に設置する場合の作業性の向上を図ることができる。さらに、
所定のピッチで柱部材112を配置させた骨組み方式を採用することにより、側面断熱パネル110の剛性の向上を図ることができる。
【0045】
床面断熱パネル130においても、保冷効果の高い真空断熱材と押出式ポリスチレンフォームとの二重構造とすることで、側面断熱パネル110との相乗効果により、外部からの熱の保冷空間への流入を効果的に抑制することができる。
【0046】
ここで、本実施の形態の保冷車1において、保冷空間(庫内)の庫内温度の変化を測定した。測定箇所は、図1を参照して、リア扉中央位置P1および庫内中央位置P2における温度変化の実験を行なった。
【0047】
比較のための保冷車(以下、比較保冷車と称する)においては、側面断熱パネル110に75[mm]のウレタンフォームを用いた車両を準備した。側面断熱パネル110の総厚さは、82[mm]である。他方、本実施の形態(以下、開発保冷車と称する)では、上記した真空断熱材と押出式ポリスチレンフォームとの二重構造であり、側面断熱パネル110の総厚さは、62[mm]である。
【0048】
比較保冷車と開発保冷車とは、同じタイプの車両であり、両車の仕様は、車両タイプ「4t冷蔵冷凍トラック」、車両総重量「8,000kg未満」、馬力「210ps」、車両寸法「8600[mm]×2490[mm]×3350[mm]」である。また、比較保冷車の冷凍機は、「デンソー:パッケージ型EP7タイプ6550W(5420kcal/h)」、開発保冷車の冷凍機は、「デンソー:パッケージ型P4タイプ5000W(4300kcal/h)」である。
【0049】
温度変化の測定結果は、リア扉中央位置P1では、庫内温度が30℃の状態で1時間経過後の庫内温度は、比較保冷車は、約6℃であるのに対して、開発保冷車は、約2℃であった。庫内中央位置P2でも同様に、庫内温度が30℃の状態で1時間経過後の庫内温度は、比較保冷車は、約2℃であるのに対して、開発保冷車は、約マイナス2℃であった。
【0050】
このように、開発保冷車の方が、保冷能力が高いことが確認できた。また、上記のように、開発保冷車の方が比較保冷車よりも側面断熱パネル110の総厚さを薄くすることができる。これにより、保冷車1の保冷空間が増加し、荷物の積載効率が向上する。さらに上記真空断熱材を有する側面断熱パネル110は、保冷能力が高い。これにより、保冷車1による輸送効率の向上が図られ、運転手不足の解消、運転手の労働環境の改善を期待することができる。
【0051】
さらに、柱材115を採用した骨組み構造は、側面断熱パネル110の外力に対する強度を上げる。側面断熱パネル110の強度が向上することにより、ラッシング時に側面断熱パネル110のZ方向へかかる負荷に対して耐久性が向上する。さらに、側面断熱パネル110の強度の向上は、保冷車運転時の振動による断熱パネルの変形に対しても耐久性が向上し、真空断熱材の破損を防ぐことができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 保冷車、110 側面断熱パネル、111 外板、112 柱部材、112f フランジ部、120 天面断熱パネル、130 床面断熱パネル、140 前面断熱パネル
、140A 送風窓、150 後面断熱パネル、160 内張パネル、161 内板、162 第1断熱材、163 第2断熱材、163h 凹部、170 第3断熱材、180
樹脂製目地ジョイナー、200 保冷車床面、210 C形チャネル鋼、211 梁部材、212 床構造材、213 床面材、220 鋼板、230 床面断熱パネル部材、231 第4断熱材、232 第5断熱材、B1 ビス、CA 保冷空間、S1 側壁隙間、S2 床隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷空間を有する保冷車であって、
前記保冷空間は、
前記保冷車の左右にそれぞれ配置される側面断熱パネルと、
天面側に配置される天面断熱パネルと、
床面に配置される床面断熱パネルと、
前側に配置される前面断熱パネルと、
後側に配置される後面断熱パネルと、によって規定され、
前記床面断熱パネルは、
前記保冷車の保冷車床面の上に、前記保冷車の前方から後方に向かって所定の間隔で複数配置され、左右方向に延びる梁部材と、
複数の前記梁部材の上に配置される床構造材と、
前記床構造材の上に配置される床面材と、
隣接する前記梁部材同士の間の前記保冷車床面と前記床構造材との間に生じる床隙間に配置される床面断熱パネル部材と、
を含み、
前記床面断熱パネル部材は、
前記床構造材側に配置される断熱材と、
前記保冷車床面側に配置される断熱材と、を有し、
前記床構造材側に配置される断熱材は、真空断熱材であり、
前記保冷車床面側に配置される断熱材は、押出式ポリスチレンフォームである、
保冷車。