▶ 川▲崎▼ファクトリー株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002849
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】水道水用軟質保存袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/18 20060101AFI20231228BHJP
B65D 30/20 20060101ALI20231228BHJP
B65D 33/14 20060101ALI20231228BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20231228BHJP
B65D 65/20 20060101ALI20231228BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B65D65/18
B65D30/20 A
B65D33/14 Z
B65D33/00 A
B65D65/20
B65D30/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022112055
(22)【出願日】2022-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】501328854
【氏名又は名称】川▲崎▼ファクトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084076
【弁理士】
【氏名又は名称】首藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 信明
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AA14
3E064AB23
3E064BA22
3E064BC14
3E064EA18
3E064FA04
3E064HB01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB01
3E086BB23
3E086CA11
(57)【要約】
【課題】 紫外線の影響を受け難い水道水を保存すると共に、低環境影響素材を用いてリサイクル処理が容易で、且つ、袋内の水量の視認性を確保した袋水道水用軟質保存袋の提供。
【解決手段】、柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の縦方向に袋内の水量を目視可能な目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分を除く袋に紫外線遮蔽処理を施したことを特徴とし、袋の製袋素材としての積層フィルム構成が、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層から成る積層フィルム構成であることを特徴とする水道水用軟質保存袋
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の縦方向に袋内の水量を目視可能な目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分を除く袋に紫外線遮蔽処理を施したことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項2】
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の縦方向に袋内の水量を可視可能な目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分と前記袋の底面部分とを除く袋に紫外線遮蔽処理を施したことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項3】
請求項1、請求項2に記載の目視透明部分は、袋の上端側から下端側に向けて細い帯状に少なくとも一条設けられたことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3に記載の水道水用軟質保存袋は、袋の製袋素材としての積層フィルム構成が、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層から成る積層フィルム構成であることを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項5】
請求項4の紫外線遮断不透明印刷層は、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分を除いて全面的に設けられたことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項6】
請求項4の紫外線遮断不透明印刷層は、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分と袋の底面部分とを除いて全面的に設けられたことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項7】
請求項4、請求項5、請求項6に記載の紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキであることを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項8】
請求項4、請求項5、請求項6、請求項7に記載の紫外線遮断不透明印刷層は、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率が0.01%以下に設けられたことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の各々に記載の目視透明部分の縁際に、袋を吊るした状態における水道水の残量を実測した残量水量値を施したことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の各々に記載の水道水用軟質保存袋は、水を入れると船底型の底面部が展開して自立可能であることを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害等の非常時に、水道水をタンクに満載して運ぶ給水車からの水道水を受けて保存するための軟質の水袋、即ち、水道水用軟質保存袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害地においては、何よりも被災者の救済が第一であり、生命維持のために飲料水の供給が必要となる。このため、国や地方自治体では、水道水を満載した給水車を災害地に派遣して水道水を給水するが、この際、被災者等に、水道水を受けて保存するための水道水用軟質保存袋(以下、単に保存袋といもいう)を配布する。
本発明は、このような用途に用いられる水道水用軟質保存袋(以下、単に保存袋ともいう)に関するものである。
【0003】
従来、この種の保存袋としては、ナイロンやポリエチレン等の軟質素材を主体とした透明な袋が用いられている。軟質素材を用いているのは、非常時に備えて、多数の袋を保管する際や運搬する際の保管や運搬スペースを最少にするためであり、軟質素材の袋であれば小さく折り畳みできるからであり、透明な袋としているのは、給水車からの給水時の注入水量や、被災者における保存時の残量確認を容易に視認可能とするためである。
【0004】
非常用飲料水収納用の袋の先行文献として次の文献がある。
【特許文献】特許第4627187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、水道水を保存するには、病気の原因となる微生物や細菌の繁殖を抑制するため、水道法によって、残留塩素を0.1mg/L以上保持(以下、法定水質ともいう)することが義務づけられている。このため、水道水を飲料として保存するには、この法定残留塩素を長期に亘って保持できる保存袋であることが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の保存袋、即ち、透明な保存袋では、水道水が紫外線に晒され易く、紫外線を受けると残留塩素の分解が促進されてしまい、長期保存には耐え難く、しかも、水道水中の残留塩素は、時間経過と共に自然分解して行くため、水道水を入れた保存袋は、紫外線の届かない冷暗所での保存が望ましいが、非常時等の場合、殊に真夏の炎天下の災害現場等においては、必ずしも良好な冷暗所に保存できるとは限らない。
又、被災者等にとっては、生命維持に欠かせない水道水の残量を正確に把握しておく必要があるが、従来のような、水道水が充填された状態での容器形状が充填量の如何によって不定形となる軟質製の保存袋では残量の正確な把握が難しかった。
【0007】
他方、災害時に使用された保存袋は、廃棄物として大量廃棄されることになるため、低影響環境素材の使用やリサイクル処理の容易さ等への環境への配慮も必要となる。
紫外線遮断機能を持つ容器包装材料としては、アルミ箔をラミネートした合成樹脂フィルムが優れていることはよく知られているが、アルミ箔がラミネート加工されていると、廃棄物処理やリサイクルの面で問題があるため、近年では無機酸化物蒸着等を施したフィルムや印刷でアルミ箔を代替する動きが進んでいる。
【0008】
しかし、このような容器包装材料を災害等の非常時に使用する水道水用保存袋として使用するには、内容物を袋外から容易には視認し難いという問題がある。災害等の非常時における水道水の袋への注入口作業は、殆どの場合手作業によって行われるからである。
【0009】
本発明は、上記の課題に応えるべく、日光、特に紫外線の影響を受け難い水道水を保存するための袋であり、低環境影響素材を使用し、リサイクル処理のし易さに配慮し、且つ、袋への注入水量或いは残り水量の視認性を確保した袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の水道水用軟質保存袋の発明は、柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の縦方向に袋内の水量を目視可能な目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分を除く袋に紫外線遮蔽処理を施したことを特徴とする。
【0011】
請求項2の水道水用軟質保存袋の発明は、柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の縦方向に袋内の水量を可視可能な目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分と前記袋の底面部分とを除く袋に紫外線遮蔽処理を施したことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1、請求項2に記載の水道水用軟質保存袋において、目視透明部分は袋の上端側から下端側に向けて細い帯状に少なくとも一条設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2、請求項3に記載の水道水用軟質保存袋においては、袋の製袋素材としての積層フィルム構成が、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層から成る積層フィルム構成であることを特徴とする。
【0014】
請求項5の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項4の紫外線遮断不透明印刷層が、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分を除いて全面的に設けられたことを特徴とする。
【0015】
請求項6の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項4の紫外線遮断不透明印刷層が、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分と袋の底面部分とを除いて全面的に設けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項7の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項4、請求項5、請求項6に記載の紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキであることを特徴とする。
【0017】
請求項8の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7に記載の紫外線遮断不透明印刷層が、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率を0.01%以下に設けられたことを特徴とする。
【0018】
請求項9の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項1乃至請求項8の各々に記載の目視透明部分の縁際に、袋を吊るした状態においての残量を実測した残量水量値を施したことを特徴とする。
【0019】
請求項10の水道水用軟質保存袋の発明は、請求項1乃至請求項9の各々に記載の水道水用軟質保存袋は、水を入れると船底型の底面部が展開して自立可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至請求項10の各発明によれば、何れも、従来の保存袋に較べて、紫外線遮断効果が高く水道水の法定残留塩素の長期保存を可能とすると共に、袋への注入水量や袋内の残量をより正確に容易に知ることができる。
【0021】
請求項4乃至請求項8の各発明によれば、何れも、製袋素材として環境に優しい低環境影響素材が使用されているので、保存袋としての使用後のリサイクル処理等の後処理が容易となる。
【0022】
請求項7、請求項8の各発明によれば、水道水に含まれる残留塩素である次亜塩素酸ナトリウムの分解を抑制することができ、水道水の法定残留塩素の長期保存を可能とすることができる。
【0023】
請求項9の発明によれば、袋への注入水量や袋内の残量を従来の目分量よりも、より正確に視認することができる。
【0024】
請求項10の発明によれば、水道水用軟質保存袋をより安定的に保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は水道水用軟質保存袋の背面側斜視図である。
【
図2】
図2は目視透明部分を横断する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、スタンディングパウチ型の水道水用軟質保存袋の実施例を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
【実施例0027】
図に示すスタンディングパウチ型の軟質性の袋は、袋の底を円形や船底型にして、液体が充填された状態においては、袋が自立可能に製造された柔軟性に富んだ軟質性の樹脂製袋であって、液体が充填されていない状態では折り畳みで平面的になったり、屈曲が自在となったりするが、液体が充填されると自立する液体包装用の袋である。
【0028】
このスタンディングパウチ型袋は、略長方形状の正面側袋部材1と、前記正面側袋部材と背中合わせに上辺と左右の三辺とが貼り合わされる前記正面袋部材1と同形状の背面側袋部材2と、前記正面側袋部材1と背面側袋部材2との下辺側に在って外周縁が前記正面側袋部材1と背面側袋部材2との両下辺とに貼り合わされる底面袋部材3としての船底型底面袋部材とで製袋されている。
【0029】
図中の符号4は、正面側袋部材1と背面側袋部材2とが張り合わせられた上辺側に設けられた水口であって、この例では、水道水の注入口と出水口とを兼ねている。
尚、この実施例では、一つの水口4で注入口と出水口とを兼用しているが、これに限らず、袋の形態に応じて、注入口と出水口とを個別に設けても良いし(図示せず)、注水時間短縮化のために注入口を大口径としたり(図示せず)、衛生面を考慮して出水口を例えばコック式で開閉する蛇口構造としてもよい(図示せず)。このようなコック式で開閉する蛇口構造の出水口の場合には、比較的大容量の袋の下部側に設けるのが好適である(図示せず)。
【0030】
図2において、実施例に示す袋の構造は、シート状の複数のフィルム素材を積層した積層構造で製袋したもので、袋の外側から内側にかけて、即ち、
図2の頁の上から下にかけて、順に、透明合成樹脂基材層5、紫外線を遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層6、透明接着剤層7、製袋に必要な熱融着性透明合成樹脂層8の四層からなる積層シート構造であるが、勿論、これに限られない。
これ等の製袋素材は、何れも、環境に優しい低環境影響素材であるので、保存袋としての使用後のリサイクル処理等の後処理が容易となる
【0031】
透明合成樹脂基材層5としては、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンテフタレート(PET)樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルムや、植物由来のポリオレフィンを用いるとよい。
尚、この約6リットル容量の実施例の袋における透明合成樹脂基材層5の層の厚さは5~50μmである。
【0032】
紫外線を遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層6としては、紫外線遮断効果のある素材を用いるに制限や制約はないが、この実施例では、白色顔料とバインダとを含む白色インキを用いており、前記透明合成樹脂基材層5が製袋された段階で、その透明合成樹脂基材層5の裏側即ち図示のように袋の内側に印刷されている。
又、白色インクを構成する原料として特に限定するものはないが、白色顔料としては酸化チタン、バインダとしてはポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0033】
この実施例における紫外線遮断不透明印刷層6の厚さは、地表に届く紫外線の内、次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進するとされる波長領域280~380nmの透過率が0.01%以下となるように調整されている。これにより、水道水に含まれる残留塩素である次亜塩素酸ナトリウムの分解を効果的に抑制することができ、水道水の法定残留塩素のより永い長期保存を可能とすることができる。
【0034】
透明接着剤層7は、前記紫外線遮断不透明印刷層6を施した透明合成樹脂基材層5と熱融着性透明合成樹脂層8とを接着するウレタン系接着剤であるが、勿論、これに限らず、他の適当な接着剤を用いてもよい。
【0035】
熱融着性透明合成樹脂層8は、内容物である水道水に接する袋の最内層であり、製袋するための熱融着に用いられる層である。この熱融着性透明合成樹脂層8としては、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムが好ましいが、植物由来のポリオレフィンであってもよい。この実施例における熱融着性透明合成樹脂層8の厚さは、100~200μmである。
【0036】
図1乃至
図3において、符号9は、袋内の水量を目視可能とするために、袋を吊り下げた状態において、袋の上端側から下端側にかけての縦方向、即ち、袋の上端側から下端側に向けて、この実施例では比較的細い帯状の透明部分が一条設けられている。以下、この目視可能な透明部分を目視透明部分ともいう。
この実施例では、比較的細い帯状の透明部分が一条、目視透明部分9として設けられているが、これは、紫外線遮蔽が第1の目的の袋であるがために、紫外線を通す透明部分を最小限としたいためであるから、この透明部分9は残量が目視可能な最小限の形状であればよく、実施例に示す形状や数に制限されない。
【0037】
この実施例の袋は液体が満たされると自立可能なスタンディングパウチ型であるが、このようなスタンディングパウチ型の袋であっても、液体が十分満たされていない状態下では自立し難いがため、スタンディングパウチ型であるか否かを問わず、平面的な折り畳みや屈曲が自在な柔軟な軟質性の袋を、例えば、手で目の高さに吊るしたような状態において、水量が容易に視認できるように、目視透明部分9は設けられている。
【0038】
前記目視透明部分9の縁際の縦方向には、袋を吊るした状態において、残量を実測した残量水量値を適宜施すとよい。これは、この種の保存袋が軟質性であるがために、残量に応じて袋が変形するため、当該袋の軟質度合いや形状等によって、残量毎の形状が変形するため、当該袋の軟質度合いや形状毎に、残量の度合い即ち吊るした状態における残量水位、例えば、残量500ml、1000ml、1500ml、2000ml毎に、当該袋の目視透明部分9の縁沿いに目印としての目盛りを施し、或いは目印に残量数値を合わせて施すとよい。これにより、目視だけに頼っての目分量による注入水量や残量の把握よりもより正確に注入水量や残量を容易に知ることができる。
【0039】
尚、この実施例では、紫外線遮蔽処理を目視透明部分を除く袋に全体に施してあるが、必ずしも全体に施す必要はなく、水道水を入れて保管状態おかれた袋に紫外線が侵入し難い部分、例えば、袋の底面部分を除いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、水道水用軟質保存袋だけに限らず、水道水を保存するための容器に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 正面側袋部材
2 背面側袋部材
3 底面部材
4 水口(注入口兼出水口)
5 透明合成樹脂基材層
6 紫外線遮断不透明印刷層
7 透明接着剤層
8 熱融着性透明合成樹脂層
9 目視透明部分
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の上端側から下端側に向けての縦方向に袋内の水量を可視可能な一条の細い帯状の目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分を除く袋に紫外線遮蔽処理を施し、
前記目視透明部分には、袋を吊るした状態における水道水の残量を実測した残量水量値を施し、
前記袋の製袋素材としての積層フィルム構成は、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層とし、
前記紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキで、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分を除いて全面的に、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率が0.01%以下に設けられたことを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【請求項2】
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の上端側から下端側に向けての縦方向に袋内の水量を可視可能な一条の細い帯状の目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分と前記袋の底面部分とを除く袋に紫外線遮蔽処理を施し、
前記目視透明部分には、袋を吊るした状態における水道水の残量を実測した残量水量値を施し、
前記袋の製袋素材としての積層フィルム構成は、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層とし、
前記紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキで、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分と袋の前記底面部分とを除いて全面的に、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率が0.01%以下に設けられ、
前記袋は、水を入れると船底型の底面部が展開して自立可能であることを特徴とする水道水用軟質保存袋。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害等の非常時に、水道水をタンクに満載して運ぶ給水車からの水道水を受けて保存するための軟質の水袋、即ち、水道水用軟質保存袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害地においては、何よりも被災者の救済が第一であり、生命維持のために飲料水の供給が必要となる。このため、国や地方自治体では、水道水を満載した給水車を災害地に派遣して水道水を給水するが、この際、被災者等に、水道水を受けて保存するための水道水用軟質保存袋(以下、単に保存袋といもいう)を配布する。
本発明は、このような用途に用いられる水道水用軟質保存袋(以下、単に保存袋ともいう)に関するものである。
【0003】
従来、この種の保存袋としては、ナイロンやポリエチレン等の軟質素材を主体とした透明な袋が用いられている。軟質素材を用いているのは、非常時に備えて、多数の袋を保管する際や運搬する際の保管や運搬スペースを最少にするためであり、軟質素材の袋であれば小さく折り畳みできるからであり、透明な袋としているのは、給水車からの給水時の注入水量や、被災者における保存時の残量確認を容易に視認可能とするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1 特許第4627187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、水道水を保存するには、病気の原因となる微生物や細菌の繁殖を抑制するため、水道法によって、残留塩素を0.1mg/L以上保持(以下、法定水質ともいう)することが義務づけられている。このため、水道水を飲料として保存するには、この法定残留塩素を長期に亘って保持できる保存袋であることが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の保存袋、即ち、透明な保存袋では、水道水が紫外線に晒され易く、紫外線を受けると残留塩素の分解が促進されてしまい、長期保存には耐え難く、しかも、水道水中の残留塩素は、時間経過と共に自然分解して行くため、水道水を入れた保存袋は、紫外線の届かない冷暗所での保存が望ましいが、非常時等の場合、殊に真夏の炎天下の災害現場等においては、必ずしも良好な冷暗所に保存できるとは限らない。
又、被災者等にとっては、生命維持に欠かせない水道水の残量を正確に把握しておく必要があるが、従来のような、水道水が充填された状態での容器形状が充填量の如何によって不定形となる軟質製の保存袋では残量の正確な把握が難しかった。
【0007】
他方、災害時に使用された保存袋は、廃棄物として大量廃棄されることになるため、低影響環境素材の使用やリサイクル処理の容易さ等への環境への配慮も必要となる。
紫外線遮断機能を持つ容器包装材料としては、アルミ箔をラミネートした合成樹脂フィルムが優れていることはよく知られているが、アルミ箔がラミネート加工されていると、廃棄物処理やリサイクルの面で問題があるため、近年では無機酸化物蒸着等を施したフィルムや印刷でアルミ箔を代替する動きが進んでいる。
【0008】
しかし、このような容器包装材料を災害等の非常時に使用する水道水用保存袋として使用するには、内容物を袋外から容易には視認し難いという問題がある。災害等の非常時における水道水の袋への注入口作業は、殆どの場合手作業によって行われるからである。
【0009】
本発明は、上記の課題に応えるべく、日光、特に紫外線の影響を受け難い水道水を保存するための袋であり、低環境影響素材を使用し、リサイクル処理のし易さに配慮し、且つ、袋への注入水量或いは残り水量の視認性を確保した袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の水道水用軟質保存袋の発明は、
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の上端側から下端側に向けての縦方向に袋内の水量を可視可能な一条の細い帯状の目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分を除く袋に紫外線遮蔽処理を施し、
前記目視透明部分には、袋を吊るした状態における水道水の残量を実測した残量水量値を施し、
前記袋の製袋素材としての積層フィルム構成は、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層とし、
前記紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキで、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分を除いて全面的に、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率が0.01%以下に設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の水道水用軟質保存袋の発明は、
柔軟な軟質性の袋に水道水を満たして吊るした状態において前記吊るされた状態の袋の上端側から下端側に向けての縦方向に袋内の水量を可視可能な一条の細い帯状の目視透明部分を設けると共に、前記目視透明部分と前記袋の底面部分とを除く袋に紫外線遮蔽処理を施し、前記目視透明部分には、袋を吊るした状態における水道水の残量を実測した残量水量値を施し、前記袋の製袋素材としての積層フィルム構成は、袋の外側から内側にかけて順に、透明合成樹脂基材層、紫外線遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層、透明接着剤層、熱融着性透明合成樹脂層とし、前記紫外線遮断不透明印刷層は、白色顔料とバインダとを含む白色インキで、透明合成樹脂基材層に対し、目視透明部分と袋の前記底面部分とを除いて全面的に、地表に届く紫外線の内の次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進する波長領域の透過率が0.01%以下に設けられ、前記袋は、水を入れると船底型の底面部が展開して自立可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至請求項2の各発明によれば、何れも、従来の保存袋に較べて、紫外線遮断効果が高く水道水の法定残留塩素の長期保存を可能とすると共に、袋への注入水量や袋内の残量をより正確に容易に知ることができる。
【0013】
又、何れも、製袋素材として環境に優しい低環境影響素材が使用されているので、保存袋としての使用後のリサイクル処理等の後処理が容易となる。
【0014】
又、水道水に含まれる残留塩素である次亜塩素酸ナトリウムの分解を抑制することができ、水道水の法定残留塩素の長期保存を可能とすることができる。
【0015】
又、袋への注入水量や袋内の残量を従来の目分量よりも、より正確に視認することができる。
【0016】
又、水道水用軟質保存袋をより安定的に保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は水道水用軟質保存袋の背面側斜視図である。
【
図2】
図2は目視透明部分を横断する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、スタンディングパウチ型の水道水用軟質保存袋の実施例を
図1乃至
図4に基づいて説明する。
【実施例0019】
図に示すスタンディングパウチ型の軟質性の袋は、袋の底を円形や船底型にして、液体が充填された状態においては、袋が自立可能に製造された柔軟性に富んだ軟質性の樹脂製袋であって、液体が充填されていない状態では折り畳みで平面的になったり、屈曲が自在となったりするが、液体が充填されると自立する液体包装用の袋である。
【0020】
このスタンディングパウチ型袋は、略長方形状の正面側袋部材1と、前記正面側袋部材と背中合わせに上辺と左右の三辺とが貼り合わされる前記正面袋部材1と同形状の背面側袋部材2と、前記正面側袋部材1と背面側袋部材2との下辺側に在って外周縁が前記正面側袋部材1と背面側袋部材2との両下辺とに貼り合わされる底面袋部材3としての船底型底面袋部材とで製袋されている。
【0021】
図中の符号4は、正面側袋部材1と背面側袋部材2とが張り合わせられた上辺側に設けられた水口であって、この例では、水道水の注入口と出水口とを兼ねている。
尚、この実施例では、一つの水口4で注入口と出水口とを兼用しているが、これに限らず、袋の形態に応じて、注入口と出水口とを個別に設けても良いし(図示せず)、注水時間短縮化のために注入口を大口径としたり(図示せず)、衛生面を考慮して出水口を例えばコック式で開閉する蛇口構造としてもよい(図示せず)。このようなコック式で開閉する蛇口構造の出水口の場合には、比較的大容量の袋の下部側に設けるのが好適である(図示せず)。
【0022】
図2において、実施例に示す袋の構造は、シート状の複数のフィルム素材を積層した積層構造で製袋したもので、袋の外側から内側にかけて、即ち、
図2の頁の上から下にかけて、順に、透明合成樹脂基材層5、紫外線を遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層6、透明接着剤層7、製袋に必要な熱融着性透明合成樹脂層8の四層からなる積層シート構造であるが、勿論、これに限られない。
これ等の製袋素材は、何れも、環境に優しい低環境影響素材であるので、保存袋としての使用後のリサイクル処理等の後処理が容易となる
【0023】
透明合成樹脂基材層5としては、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンテフタレート(PET)樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルムや、植物由来のポリオレフィンを用いるとよい。
尚、この約6リットル容量の実施例の袋における透明合成樹脂基材層5の層の厚さは5~50μmである。
【0024】
紫外線を遮蔽処理する紫外線遮断不透明印刷層6としては、紫外線遮断効果のある素材を用いるに制限や制約はないが、この実施例では、白色顔料とバインダとを含む白色インキを用いており、前記透明合成樹脂基材層5が製袋された段階で、その透明合成樹脂基材層5の裏側即ち図示のように袋の内側に印刷されている。
又、白色インクを構成する原料として特に限定するものはないが、白色顔料としては酸化チタン、バインダとしてはポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0025】
この実施例における紫外線遮断不透明印刷層6の厚さは、地表に届く紫外線の内、次亜塩素酸ナトリウムの分解を促進するとされる波長領域280~380nmの透過率が0.01%以下となるように調整されている。これにより、水道水に含まれる残留塩素である次亜塩素酸ナトリウムの分解を効果的に抑制することができ、水道水の法定残留塩素のより永い長期保存を可能とすることができる。
【0026】
透明接着剤層7は、前記紫外線遮断不透明印刷層6を施した透明合成樹脂基材層5と熱融着性透明合成樹脂層8とを接着するウレタン系接着剤であるが、勿論、これに限らず、他の適当な接着剤を用いてもよい。
【0027】
熱融着性透明合成樹脂層8は、内容物である水道水に接する袋の最内層であり、製袋するための熱融着に用いられる層である。この熱融着性透明合成樹脂層8としては、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムが好ましいが、植物由来のポリオレフィンであってもよい。この実施例における熱融着性透明合成樹脂層8の厚さは、100~200μmである。
【0028】
図1乃至
図3において、符号9は、袋内の水量を目視可能とするために、袋を吊り下げた状態において、袋の上端側から下端側にかけての縦方向、即ち、袋の上端側から下端側に向けて、この実施例では比較的細い帯状の透明部分が一条設けられている。以下、この目視可能な透明部分を目視透明部分ともいう。
この実施例では、比較的細い帯状の透明部分が一条、目視透明部分9として設けられているが、これは、紫外線遮蔽が第1の目的の袋であるがために、紫外線を通す透明部分を最小限としたいためであるから、この透明部分9は残量が目視可能な最小限の形状であればよく、実施例に示す形状や数に制限されない。
【0029】
この実施例の袋は液体が満たされると自立可能なスタンディングパウチ型であるが、このようなスタンディングパウチ型の袋であっても、液体が十分満たされていない状態下では自立し難いがため、スタンディングパウチ型であるか否かを問わず、平面的な折り畳みや屈曲が自在な柔軟な軟質性の袋を、例えば、手で目の高さに吊るしたような状態において、水量が容易に視認できるように、目視透明部分9は設けられている。
【0030】
前記目視透明部分9の縁際の縦方向には、袋を吊るした状態において、残量を実測した残量水量値を適宜施すとよい。これは、この種の保存袋が軟質性であるがために、残量に応じて袋が変形するため、当該袋の軟質度合いや形状等によって、残量毎の形状が変形するため、当該袋の軟質度合いや形状毎に、残量の度合い即ち吊るした状態における残量水位、例えば、残量500ml、1000ml、1500ml、2000ml毎に、当該袋の目視透明部分9の縁沿いに目印としての目盛りを施し、或いは目印に残量数値を合わせて施すとよい。これにより、目視だけに頼っての目分量による注入水量や残量の把握よりもより正確に注入水量や残量を容易に知ることができる。
【0031】
尚、この実施例では、紫外線遮蔽処理を目視透明部分を除く袋に全体に施してあるが、必ずしも全体に施す必要はなく、水道水を入れて保管状態おかれた袋に紫外線が侵入し難い部分、例えば、袋の底面部分を除いてもよい。