(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028496
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】電動式建設機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240226BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240226BHJP
B60K 11/04 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F9/00 C
B60K11/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004648
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2020095887の分割
【原出願日】2020-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錦織 秀
(72)【発明者】
【氏名】金田 健佑
(57)【要約】
【課題】駆動システムを停止させ、バッテリーを充電する充電モードでの冷却ファンの回転を適切に制御する。
【解決手段】電動式建設機械の制御方法は、バッテリーから電力を供給される電動モータにより機体を駆動させる駆動システムを冷却する冷却ファンを備える電動式建設機械の制御方法であって、前記駆動システムを停止させ、前記バッテリーを充電する充電モードにおいて、前記冷却ファンの回転数を前記充電モードに応じた充電モード回転数に設定することを有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーから電力を供給される電動モータにより機体を駆動させる駆動システムを冷却する冷却ファンを備える電動式建設機械の制御方法であって、
前記駆動システムを停止させ、前記バッテリーを充電する充電モードにおいて、前記冷却ファンの回転数を前記充電モードに応じた充電モード回転数に設定することを有する、電動式建設機械の制御方法。
【請求項2】
前記充電モード回転数は、前記駆動システムを駆動する駆動モードに応じて設定される前記冷却ファンの回転数である駆動モード回転数とは別に設定されている、請求項1に記載の電動式建設機械の制御方法。
【請求項3】
前記充電モード回転数が、前記駆動システムの駆動状態に対応する、請求項2に記載の電動式建設機械の制御方法。
【請求項4】
前記充電モード回転数は、前記駆動モード回転数より低く設定される、請求項2または3に記載の電動式建設機械の制御方法。
【請求項5】
前記駆動状態は、前記駆動システムの発熱状態に応じて変化するパラメータにより検出される、請求項3に記載の電動式建設機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式建設機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部電源からの電力によって駆動される電動モータを備えた電動式建設機械が提案されている。例えば特許文献1では、電動モータで駆動されて熱交換装置を冷却する第1冷却ファンとは別に第2冷却ファンを設け、電動モータの停止時に、第2冷却ファンを駆動させて制御盤を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動式建設機械では、電動モータの駆動源として、外部電源以外に、例えば充電可能なバッテリーを用いる構成も考えられる。バッテリーを搭載した電動式建設機械では、バッテリーまたは外部電源から供給される電力により、機体を駆動させる駆動システムが構築される。そして、このような駆動システムの動作モードとして、駆動システムを駆動する駆動モードの他に、駆動システムの駆動を停止させてバッテリーを充電する充電モードを設けることができる。
【0005】
しかし、充電モードにおける冷却ファンの回転制御については、特許文献1も含めて未だ提案されていない。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、駆動システムを停止させ、バッテリーを充電する充電モードでの冷却ファンの回転を適切に制御することができる電動式建設機械の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電動式建設機械の制御方法は、バッテリーから電力を供給される電動モータにより機体を駆動させる駆動システムを冷却する冷却ファンを備える電動式建設機械の制御方法であって、前記駆動システムを停止させ、前記バッテリーを充電する充電モードにおいて、前記冷却ファンの回転数を前記充電モードに応じた充電モード回転数に設定することを有する。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、充電モードでの冷却ファンの回転を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式建設機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
【
図2】上記油圧ショベルの機関室の内部の概略の構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】上記油圧ショベルにおける冷却水の循環経路を示す説明図である。
【
図4】上記油圧ショベルにおける作動油の循環経路を示す説明図である。
【
図5】上記油圧ショベルの制御系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図6】上記冷却水の温度と冷却ファンの回転数との関係を示すグラフである。
【
図7】上記作動油の温度と上記冷却ファンの回転数との関係を示すグラフである。
【
図8】上記油圧ショベルが有する電動モータの回転数と上記冷却ファンの回転数との関係を示すグラフである。
【
図9】上記油圧ショベルが有するインバータの出力と上記冷却ファンの回転数との関係を示すグラフである。
【
図10】上記冷却水の温度に基づく上記冷却ファンの回転制御による動作の流れを、駆動モードから充電モードにわたって示すフローチャートである。
【
図11】上記冷却水の温度に基づいて制御される上記冷却ファンの回転数の遷移の一例を示すグラフである。
【
図12】上記冷却水の温度に基づいて制御される上記冷却ファンの回転数の遷移の他の例を示すグラフである。
【
図13】上記冷却水および作動油の温度に基づく上記冷却ファンの回転制御による動作の流れを、上記駆動モードから上記充電モードにわたって示すフローチャートである。
【
図14】上記冷却水の温度に基づいて制御される上記冷却ファンの回転数の遷移のさらに他の例を示すグラフである。
【
図15】上記冷却水の温度に基づいて制御される上記冷却ファンの回転数の遷移のさらに他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0011】
〔1.電動式建設機械〕
図1は、本実施形態の電動式建設機械の一例である油圧ショベル1の概略の構成を示す側面図である。なお、電動式建設機械は、油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダ等の他の車両であってもよい。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0012】
ここで、
図1において、方向を以下のように定義する。まず、下部走行体2が直進する方向を前後方向とし、そのうちの一方側を「前」とし、他方側を「後」とする。
図1では、例として、ブレード23に対して走行モータ22側を「前」として示す。また、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。このとき、操縦席41aに座ったオペレータ(操縦者、運転手)から見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。
【0013】
(下部走行体)
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0014】
(作業機)
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0015】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0016】
(上部旋回体)
上部旋回体4は、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に構成される。上部旋回体4には、操縦部41、旋回台42、旋回モータ43、機関室44等が配置される。なお、機関室44の内部の詳細については後述する。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。
【0017】
上部旋回体4には、複数の油圧ポンプ71(
図2参照)が配置される。各油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ63(
図2参照)によって駆動される。各油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作業油(圧油)を供給する。任意の油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(
図4参照)と呼ぶ。
【0018】
操縦部41には、操縦席41aが配置される。操縦席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが操縦席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0019】
上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と、外部電源である商用電源51とは、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、商用電源51から供給される電力により、電動モータ63を駆動することができる。また、商用電源51から供給される電力を、上部旋回体4に着脱可能に取り付けられるバッテリー53(例えばリチウムイオンバッテリー)に供給することにより、バッテリー53を充電することも可能である。
【0020】
上部旋回体4には、バッテリー53の他に、後述する冷却ファンF(
図2参照)を駆動する専用のファン駆動用電源54が着脱可能に取り付けられる。ファン駆動用電源54は、例えば12Vの直流電圧を出力する鉛バッテリーで構成される。バッテリー53およびファン駆動用電源54(鉛バッテリー)は、長期使用または寿命によって性能が低下した場合には、新品と交換可能である。
【0021】
なお、下部走行体2、作業機3および上部旋回体4は、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータ等を含んで構成されてもよい。この場合、下部走行体2、作業機3および上部旋回体4を、油圧機器を用いずに、全て電力によって駆動することができる。つまり、下部走行体2、作業機3および上部旋回体4をまとめて機体BAとしたとき、機体BAは、電力のみによって駆動されてもよいし(オール電動)、電力と油圧機器とを併用して駆動されてもよい。したがって、本実施形態の油圧ショベル1は、少なくとも電力によって駆動される機体BAを含む構成であると言える。
【0022】
〔2.機関室の内部構成〕
図2は、機関室44の内部の概略の構成を模式的に示す平面図である。なお、
図2では、便宜的に、機関室44の上面の図示を省略するとともに、油圧ポンプ71を1つのみ図示する。機関室44の内部には、上記したバッテリー53および油圧ポンプ71の他に、インバータ62、電動モータ63、熱交換装置HE、冷却ファンF、作動油タンク74等が設けられる。作動油タンク74には、油圧アクチュエータ73を駆動するための作動油が収容される。また、機関室44には、給電器61(
図3参照)も配置される。
【0023】
(給電器、インバータ)
給電器61は、商用電源51から給電ケーブル52を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ62は、給電器61から出力される直流電圧、またはバッテリー53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ63に供給する。
【0024】
後述する駆動モードでは、インバータ62から出力される交流電圧が電動モータ63に供給されて電動モータ63が駆動される。一方、後述する充電モードでは、給電器61から出力される直流電圧がバッテリー53に供給され、バッテリー53が充電される。
【0025】
(電動モータ)
電動モータ63は、商用電源51およびバッテリー53の少なくとも一方からインバータ62を介して供給される電力により駆動される。電動モータ63は、例えばモータの回転軸が左右方向となるように機関室44に配置されるが、この配置には限定されない。上記したバッテリー53は、電動モータ63の上方に配置される。さらに、バッテリー53の上方には、シートマウントを介して操縦席41aが配置される。なお、電動モータ63とバッテリー53との位置関係も、上記の例には限定されない。
【0026】
電動モータ63の回転軸(出力軸)には、油圧ポンプ71が接続される。油圧ポンプ71により、作動油タンク74内の作動油が、油圧バルブ72(
図4参照)を介して油圧アクチュエータ73に供給される。
【0027】
(熱交換装置)
熱交換装置HEは、機関室44内において、電動モータ63に対して油圧ポンプ71とは反対側に位置する。熱交換装置HEは、第1の熱交換装置HE1と、第2の熱交換装置HE2と、を含んで構成される。
【0028】
《第1の熱交換装置》
第1の熱交換装置HE1は、冷却媒体に対して熱交換を行うラジエータで構成される。冷却媒体は、電動モータ63等を通る循環経路内を循環することで、電動モータ63等を冷却する。なお、本実施形態では、上記の冷却媒体として、水(以下、「冷却水」と呼ぶ)を用いているが、水以外の媒体(例えば油)であってもよい。
【0029】
図3は、冷却水の循環経路を示す説明図である。冷却水は、給電器61、インバータ62、電動モータ63、第1の熱交換装置HE1、水タンク64、電動水ポンプ65の順に循環する。第1の熱交換装置HE1では、電動モータ63から供給される高温の冷却水を、冷却ファンFからの送風によって熱交換して冷却し、水タンク64に戻す。冷却水を循環させることにより、電動モータ63等の機器を冷却することができる。
【0030】
上記の給電器61、インバータ62、電動モータ63、電動水ポンプ65は、電力により機体BA(
図1参照)を駆動させる駆動システムDSを構成する。すなわち、本実施形態の電動式建設機械としての油圧ショベル1は、電力により機体BAを駆動させる駆動システムDSを備える。そして、油圧ショベル1は、駆動システムDSを冷却するための冷却媒体の熱交換を行う熱交換装置HE(例えば第1の熱交換装置HE1)を備える。
【0031】
なお、本実施形態では、駆動システムDSに含まれる給電器61、インバータ62、電動モータ63は、全て水冷であるが、一部は空冷であってもよい。例えば、電動モータ63を空冷とし、インバータ62を水冷としてもよい。
【0032】
《第2の熱交換装置》
第2の熱交換装置HE2は、油圧アクチュエータ73の駆動に用いる作動油に対して熱交換を行うオイルクーラーで構成される。作動油も、冷却水と同様に、油圧ショベル1内の循環経路を循環する。
【0033】
図4は、作動油の循環経路を示す説明図である。作動油は、油圧ポンプ71、油圧バルブ72、油圧アクチュエータ73、第2の熱交換装置HE2、作動油タンク74の順に循環する。第2の熱交換装置HE2では、油圧アクチュエータ73から供給される高温の作動油を、冷却ファンFからの送風によって冷却し、作動油タンク74に戻す。作動油は高温になると特性(例えば粘度)が低下し、潤滑等の性能が低下する。したがって、第2の熱交換装置HE2において作動油を冷却することにより、作動油の性能低下を抑制することができる。
【0034】
上記の油圧ポンプ71、油圧バルブ72、油圧アクチュエータ73は、駆動システムDSを構成する給電器61、インバータ62、電動モータ63、電動水ポンプ65と併用される。したがって、油圧ポンプ71、油圧バルブ72、油圧アクチュエータ73も、機体BA(
図1参照)を駆動させる上記の駆動システムDSに含まれる。すなわち、駆動システムDSは、電動モータ63と、電動モータ63によって駆動される油圧ポンプ71と、油圧ポンプ71から供給される作動油によって駆動される油圧アクチュエータ73と、を含む。そして、熱交換装置HE(第2の熱交換装置HE2)が、作動油に対して熱交換を行う。
【0035】
(冷却ファン)
冷却ファンFは、熱交換装置HEに対して電動モータ63側に位置し、熱交換装置HE(第1の熱交換装置HE1、第2の熱交換装置HE2)に向かって送風する。このような冷却ファンFは、上記したファン駆動用電源54から供給される電力によって駆動されるモータと、上記モータによって回転する回転ファンと、を含む。冷却ファンFによって熱交換装置HEに吹き付けられ、冷却水および作動油との熱交換によって温められた空気は、機関室44の側壁または上面に設けられたスリット(図示せず)を介して、機関室44の外部に排出される。
【0036】
なお、本実施形態では、1つの冷却ファンFが、第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2の両方に送風する構成としているが、第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2のどちらか一方に対してのみ送風する構成であってもよい。例えば、第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2が機関室44内で離間して配置される場合には、第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2のそれぞれに対応して冷却ファンFを設け、各冷却ファンFから第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2のそれぞれに対して別々に送風する構成であってもよい。
【0037】
つまり、1つの冷却ファンFによる送風の対象となる熱交換装置HEは、第1の熱交換装置HE1および第2の熱交換装置HE2の両方であってもよいし、第1の熱交換装置HE1のみであってもよいし、第2の熱交換装置HE2のみであってもよい。この場合、冷却ファンFは、冷却水と作動油とのうちの少なくとも一方に対して熱交換を行う熱交換装置HEに向かって送風する構成であればよいとも言える。
【0038】
すなわち、本実施形態の電動式建設機械としての油圧ショベル1は、熱交換装置HEを冷却する空気を送る冷却ファンFを備える。
【0039】
なお、冷却ファンFによる冷却方式には、吸込方式と、吐出方式とがある。吸込方式とは、外部から内部に空気を吸い込んで熱交換装置HEを冷却する方式である。したがって、吸込方式では、油圧ショベル1の外部、冷却ファンF、熱交換装置HE、内部、外部、の順に空気が流れる。これに対して、吐出方式とは、外部から一旦空気を吸い込み、内部で冷却ファンFによって熱交換装置HEに空気を吐出する方式である。したがって、吐出方式では、油圧ショベル1の外部、内部、冷却ファンF、熱交換装置HE、外部、の順に空気が流れる。本実施形態では、冷却ファンFによる冷却方式として、吸込方式、吐出方式のいずれも採用することができる。
【0040】
〔3.制御系の構成〕
図5は、油圧ショベル1の制御系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、上記の構成に加えて、動作モード選択部45と、制御部80と、パラメータ検出部90と、を備える。
【0041】
(動作モード選択部)
動作モード選択部45は、
図1の操縦席41aの周囲に設けられ、電動モータ63の動作モードを選択するためにオペレータによって操作される。この動作モード選択部45は、例えば、キー、押圧ボタン、レバー、タッチパネル表示装置等を含んで構成される。キーの回動、押圧ボタンのオン/オフ、レバー操作、タッチパネルによる指示入力等により、電動モータ63の動作モードの設定および切り替えを行うことができる。
【0042】
ここで、電動モータ63の動作モードとしては、駆動モードと、充電モードと、がある。駆動モードは、バッテリー53のみからの電力供給、または、商用電源51およびバッテリー53の両方からの電力供給により、電動モータ63を駆動して駆動システムDSを駆動する動作モードである。駆動モードでは、電動モータ63の駆動によって、油圧ポンプ71を駆動して作動油を油圧アクチュエータ73に供給する。これにより、油圧アクチュエータ73を駆動することができる。
【0043】
一方、充電モードは、駆動システムDSの駆動を停止させて、電力を蓄電するバッテリー53を充電する動作モードである。充電モードでは、商用電源51から給電器61を介してバッテリー53に電力が供給される。これにより、バッテリー53が充電される。
【0044】
このように、上記動作モードは、駆動システムDSを駆動する駆動モードと、駆動システムDSの駆動を停止させて電力を蓄電するバッテリー53を充電する充電モードと、を含む。
【0045】
(制御部)
制御部80は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる電子制御ユニットで構成される。制御部80は、主制御部80aと、冷却ファン制御部80bと、記憶部80cと、を含む。主制御部80aおよび冷却ファン制御部80bは、例えば共通のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)で構成されるが、別々のCPUで構成されてもよい。
【0046】
主制御部80aは、油圧ショベル1において、冷却ファンF以外の各部の動作を制御する。冷却ファン制御部82は、駆動システムDSの動作モードに応じて冷却ファンFの回転を制御する。すなわち、油圧ショベル1は、(動作モード選択部45によって)設定された動作モードに応じて冷却ファンFの回転を制御する冷却ファン制御部82を備える。なお、冷却ファン制御部82による冷却ファンFの回転制御の詳細については後述する。冷却ファン制御部82は、冷却ファンFを回転させる駆動信号を冷却ファンFに送る駆動回路を含む。
【0047】
記憶部80cは、主制御部80aおよび冷却ファン制御部80bの動作プログラムの他、後述するテーブル等の各種の情報を記憶するメモリである。このような記憶部80cは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含んで構成される。
【0048】
(パラメータ検出部)
パラメータ検出部90は、駆動システムDSの駆動状態に応じて変化するパラメータを検出する。上記パラメータとしては、冷却水の温度、作動油の温度、電動モータ63の回転数等がある。これらのパラメータを検出するため、パラメータ検出部90は、冷却水温度センサ90aと、作動油温度センサ90bと、電動モータ回転数検出センサ90cと、を含んで構成される。
【0049】
冷却水温度センサ90aは、冷却水の温度を検出するセンサである。冷却水温度センサ90aは、例えば給電器61の入口に設置されるが、
図3で示した冷却水の循環経路内で冷却水の温度を検出できる位置に設置されればよく、設置位置は給電器61の入口には限定されない。
【0050】
作動油温度センサ90bは、作動油の温度を検出するセンサである。作動油温度センサ90bは、例えば作動油タンク74の内部に設置されるが、
図4で示した循環経路内で作動油の温度を検出できる位置に設置されればよく、設置位置は作動油タンク74の内部には限定されない。
【0051】
冷却水温度センサ90aおよび作動油温度センサ90bは、例えばサーミスタで構成されるが、他のセンサ(例えば熱電対、測温抵抗体など)で構成されてもよい。
【0052】
電動モータ回転数検出センサ90cは、電動モータ63の回転数そのものを検出するセンサである。電動モータ回転数検出センサ90cは、レゾルバ、エンコーダ、ホール素子等を用いて構成される。冷却ファン制御部80bは、電動モータ回転数検出センサ90cによって検出された値を基に、冷却ファンFの回転数を演算し、CAN(Controller Area Network)通信信号として出力するが、この構成には限定されない。
【0053】
なお、上記したインバータ62は、内部にセンサ62aを有しており、センサ62aで検出された電圧および電流から電力を演算して出力する。インバータ62が出力する電力も、駆動システムDSの駆動状態に応じて変化するパラメータを構成する。
【0054】
ここで、例えば、電動モータ63の回転数が増大するにつれて、電動モータ63の発熱量が増大するとともに、電動モータ63を動力源とする油圧アクチュエータ73の発熱量が増大する。このため、電動モータ63からの熱の伝達により、冷却水の温度が上昇するとともに、油圧アクチュエータ73からの熱の伝達により、作動油の温度が上昇する。また、電動モータ63の回転数が増大するとき、電動モータ63に電力を供給するインバータ62の出力も当然増大する。
【0055】
したがって、パラメータ検出部90が、パラメータとして、冷却水の温度、作動油の温度、または電動モータ63の回転数を検出することにより、または、インバータ62が出力電力を演算して求めることにより、冷却ファン制御部80bは、上記パラメータに基づいて、駆動システムDS(例えば電動モータ63)の駆動状態(低負荷/高負荷、駆動中/停止状態)を判断することができる。
【0056】
また、上記のように、冷却水の温度、作動油の温度、電動モータ63の回転数、インバータ62の出力は、駆動システムDS(例えば電動モータ63)の発熱状態に応じて変化する。したがって、駆動システムDSの駆動状態は、駆動システムDSの発熱状態によって変化するパラメータ(冷却水の温度、作動油の温度、電動モータ63の回転数、インバータ62の出力)により検出されると言える。
【0057】
〔4.冷却ファンの回転制御について〕
本実施形態では、上述した冷却ファン制御部80bは、駆動モード、充電モードのそれぞれにおいて、上記パラメータに基づいて冷却ファンFの回転を制御する。以下、それぞれの動作モードにおける冷却ファンFの回転制御について説明する。
【0058】
<A.駆動モードでの冷却ファンの回転制御>
動作モード選択部45により、駆動システムDS(例えば電動モータ63)の動作モードとして駆動モードが選択されると、冷却ファン制御部80bは、駆動モードにおける冷却ファンFの回転数Cを、駆動モードで検出されるパラメータ(例えば、冷却水の温度、作動油の温度、電動モータ63の回転数、インバータ62の出力のいずれか1つ)に基づいて制御する。より詳しくは、以下の通りである。
【0059】
(A-1.冷却水の温度に基づく冷却ファンの回転制御)
図6は、冷却水の温度D(℃)と、その冷却水の温度Dに対して、駆動モードで制御すべき(目標となる)冷却ファンFの回転数C(rpm:revolutions per minute、1rpm=1/60s
-1)との関係を示すグラフである。冷却水の温度Dと、目標となる冷却ファンFの回転数Cとは、ほぼ線形の関係にある。本実施形態では、制御部80の記憶部80cに、
図6で示した関係がテーブルの状態で予め記憶されている。
【0060】
駆動モードでは、冷却ファン制御部80bは、冷却水温度センサ90aによって検出された冷却水の温度Dから、冷却ファンFの回転数Cを
図6のテーブルに基づいて求め、求めた回転数Cで冷却ファンFを回転させる。例えば、駆動モードにおいて、冷却水温度センサ90aが冷却水の温度D1(℃)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図6のテーブルから、温度D1と対応する冷却ファンFの回転数C11(rpm)を求め、求めた回転数C11で冷却ファンFを回転させる。また、例えば、駆動モードにおいて、冷却水温度センサ90aが冷却水の温度D2(℃)(>D1)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図6のテーブルから、温度D2と対応する冷却ファンFの回転数C12(rpm)(>C11)を求め、求めた回転数C12で冷却ファンFを回転させる。
【0061】
(A-2.作動油の温度に基づく冷却ファンの回転制御)
図7は、作動油の温度G(℃)と、その作動油の温度Gに対して、駆動モードで制御すべき冷却ファンFの回転数Cとの関係を示すグラフである。作動油の温度Gと、目標となる冷却ファンFの回転数Cとは、ほぼ線形の関係にある。本実施形態では、制御部80の記憶部80cに、
図7で示した関係がテーブルの状態で予め記憶されている。
【0062】
駆動モードでは、冷却ファン制御部80bは、作動油温度センサ90bによって検出された作動油の温度Gから、制御すべき冷却ファンFの回転数Cを
図7のテーブルに基づいて求め、求めた回転数Cで冷却ファンFを回転させる。例えば、駆動モードにおいて、作動油温度センサ90bが作動油の温度G1(℃)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図7のテーブルから、温度G1と対応する冷却ファンFの回転数C21(rpm)を求め、求めた回転数C21で冷却ファンFを回転させる。また、例えば、駆動モードにおいて、作動油温度センサ90bが作動油の温度G2(℃)(>G1)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図7のテーブルから、温度G2と対応する冷却ファンFの回転数C22(rpm)(>C21)を求め、求めた回転数C22で冷却ファンFを回転させる。
【0063】
(A-3.電動モータの回転数に基づく冷却ファンの回転制御)
図8は、電動モータの回転数M(rpm)と、その回転数Mに対して、駆動モードで制御すべき冷却ファンFの回転数Cとの関係を示すグラフである。電動モータの回転数Mと、目標となる冷却ファンFの回転数Cとは、ほぼ線形の関係にある。本実施形態では、制御部80の記憶部80cに、
図8で示した関係がテーブルの状態で予め記憶されている。
【0064】
駆動モードでは、冷却ファン制御部80bは、電動モータ回転数検出センサ90cによって検出された電動モータ63の回転数Mから、冷却ファンFの回転数Cを
図8のテーブルに基づいて求め、求めた回転数Cで冷却ファンFを回転させる。例えば、駆動モードにおいて、電動モータ回転数検出センサ90cが電動モータ63の回転数M1(rpm)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図8のテーブルから、回転数M1と対応する冷却ファンFの回転数C31(rpm)を求め、求めた回転数C31で冷却ファンFを回転させる。
【0065】
(A-4.インバータの出力に基づく冷却ファンの回転制御)
図9は、インバータ62の出力P(W)と、その出力Pに対して、駆動モードで制御すべき冷却ファンFの回転数Cとの関係を示すグラフである。インバータ62の出力Pと、目標となる冷却ファンFの回転数Cとは、ほぼ線形の関係にある。本実施形態では、制御部80の記憶部80cに、
図9で示した関係がテーブルの状態で予め記憶されている。
【0066】
駆動モードでは、冷却ファン制御部80bは、インバータ62の出力Pから、冷却ファンFの回転数Cを
図9のテーブルに基づいて求め、求めた回転数Cで冷却ファンFを回転させる。例えば、駆動モードにおいて、インバータ62が出力P1(W)を検出すると、冷却ファン制御部80bは、
図9のテーブルから、出力Pと対応する冷却ファンFの回転数C41(rpm)を求め、求めた回転数C41で冷却ファンFを回転させる。
【0067】
冷却ファン制御部80bは、上記した4つのパラメータ(冷却水の温度D、作動油の温度G、電動モータ63の回転数M、インバータ62の出力P)のうち、いずれか1つを選択し、選択した1つのパラメータに基づいて、冷却ファンFの回転数Cを制御することができる。
【0068】
このように、駆動モードでは、冷却ファン制御部80bが、駆動システムDS(例えば電動モータ63)の発熱状態に応じて変化するパラメータに基づいて、冷却ファンFの回転数Cを制御する。これにより、駆動モードでは、駆動システムDSの駆動状態に応じた冷却ファンFの回転制御を実現することができる。つまり、駆動モードでは、電動モータ63の駆動状態に応じて、冷却ファンFの回転数Cを変化させ、回転数Cに過不足を生じさせることなく冷却ファンFを回転させることができる。したがって、冷却ファンFの回転不足による、熱交換装置HEでの冷却水の冷却不足または作動油の冷却不足の発生を抑えることができる。その結果、電動モータ63の発熱に起因する故障の発生および作動油の高温による性能低下を抑制しつつ、冷却ファンFを必要最小限の回転数Cで回転させることによって、消費電力を必要最小限に抑えることができる。
【0069】
特に、冷却ファン制御部80bは、駆動モードにおける冷却ファンFの回転数Cを、パラメータとしての冷却媒体の温度に基づいて制御することが望ましい。なお、上記冷却媒体は、例えば冷却水であるが、油であってもよいことは前述の通りである。
【0070】
電動モータ63の回転数Mおよびインバータ62の出力Pは、短時間で急激に変化し得るが、冷却媒体の温度(例えば冷却水の温度D)は、電動モータ63の駆動状態に応じて滑らかに変化し、短時間で急激に変化しない。したがって、駆動モードにおいて、冷却媒体の温度に基づいて冷却ファンFの回転数Cを制御することにより、冷却ファンFの回転制御が比較的容易となる。
【0071】
以上では、駆動モードにおいて、冷却ファン制御部80bが複数のパラメータのいずれか1つに基づいて、冷却ファンFの回転数Cを制御する例について説明したが、複数のパラメータを組み合わせて冷却ファンFの回転数Cを制御してもよい。例えば、冷却ファン制御部80bは、駆動モードにおける冷却ファンFの回転数Cを、パラメータとしての冷却媒体(例えば冷却水)の温度Dと作動油の温度Gとの両方に基づいて制御してもよい。この場合、冷却水および作動油の両方を十分に冷却する効果が得られる冷却ファンFの回転数Cを設定することが可能となる。
【0072】
例えば、駆動モードにおいて、冷却水温度センサ90aによって検出された冷却水の温度がD1であり、作動油温度センサ90bによって検出された作動油の温度がG1であるとする。そして、温度D1に応じた回転数C11が、作動油の温度G1に応じた回転数C21よりも高いとする。このとき、冷却ファン制御部80bは、駆動モードにおける冷却ファンFの回転数Cを、冷却媒体の温度(例えばD1)に応じた回転数(C11)と、作動油の温度(例えばG1)に応じた回転数(例えばC21)とのうち、より高いほう(例えばC11)に制御する。
【0073】
この場合、回転数C11での冷却ファンFの回転により、冷却水の冷却効果と作動油の冷却効果とを両方得ることができる。特に、作動油については、冷却に必要な回転数C21よりも高い回転数C11で冷却ファンFが回転するため、冷却効果がより促進されるが、消費電力の低減効果よりも作動油の冷却効果(作動油の高温による性能低下の抑制効果)を優先する場合には、このような冷却ファンFの回転制御が非常に有効となる。
【0074】
<B.充電モードでの冷却ファンの回転制御>
次に、充電モードにおける冷却ファンFの回転制御について説明する。ここでは、駆動モードから充電モードへの動作モードの移行も含めて説明する。
【0075】
(B-1.冷却水の温度に基づく回転制御)
図10は、冷却水の温度Dに基づく冷却ファンFの回転制御による動作の流れを、駆動モードから充電モードにわたって示すフローチャートである。電動モータ63の駆動が開始されると(S1)、駆動モードにおいて例えば冷却水の温度Dに基づく冷却ファンFの回転制御が行われる。これにより、電動モータ63の駆動状態に応じた回転数で冷却ファンFが回転する(S2)。動作モード選択部45によって充電モードが選択されなければ(S3でNo)、S2での冷却ファンFの回転制御が引き続き行われる。
【0076】
電動モータ63の駆動開始から所定時間(例えばt11(min))が経過し、動作モード選択部45によって充電モードが選択されると(S3でYes)、電動モータ63の駆動が停止されて充電モードに入る。そして、パラメータ検出部90(例えば冷却水温度センサ90a)は、駆動モードと同様に、冷却水の温度Dを検出する(S4)。なお、充電モードでの冷却水の温度Dの検出タイミングは、充電モードに入った直後であってもよいし、充電モードに入ってから所定時間(例えば数秒)経過したタイミングであってもよい。
【0077】
そして、冷却ファン制御部80bは、冷却水温度センサ90aによって検出された冷却水の温度Dが所定の閾値(冷却水用閾値Dth(℃))以下であるか否かを判断する(S5)。
【0078】
例えば、充電モードで検出された冷却水の温度がD1であり、
図6に示すように、温度D1が冷却水用閾値Dth以下である場合(S5でYes)、冷却ファン制御部80bは、冷却ファンFの回転数Cを、駆動モードで制御していた回転数(例えば温度D1に対応する回転数C11)よりも低い回転数(例えばC13(rpm))に設定し、回転数C13で冷却ファンFを回転させる(S6)。すなわち、冷却ファン制御部80bは、(パラメータ検出部90で検出された)パラメータが閾値以下である場合、駆動モードでの冷却ファンFの回転数(駆動モードでの上記パラメータの値に対応する回転数)よりも低い回転数を、充電モード回転数として設定する。なお、充電モード回転数とは、充電モードでの冷却ファンFの回転数を意味する(以下、同様とする)。
【0079】
冷却水の温度D1が冷却水用閾値Dth以下の低温であれば、冷却ファン制御部80bは、充電モードに入る前の駆動モードにおいて、電動モータ63が比較的低負荷で駆動されたと判断することができる。電動モータ63が低負荷で駆動されると、電動モータ63の発熱量が少ないため、充電モードにおいて冷却ファンFの回転数を低下させても、電動モータ63の発熱に起因する故障は発生しにくいと考えられる。したがって、この場合、冷却ファン制御部80bは、冷却ファンFの回転数を駆動モードから変更することができると判断する。このような判断に基づいて、充電モードにおける冷却ファンFの回転数を駆動モードよりも低下させることにより、冷却ファンFの回転によって消費される電力を低減することができる。
【0080】
一方、充電モードで検出された冷却水の温度が例えばD2であり、この温度D2が冷却水用閾値Dthを超えている場合(S5でNo)、冷却ファン制御部80bは、駆動モードで制御していた回転数(例えば温度D2に対応する回転数C12)と同じ回転数で冷却ファンFを回転させる(S7)。すなわち、冷却ファン制御部80bは、(パラメータ検出部90で検出された)パラメータが閾値を超えている場合、駆動モードでの冷却ファンFの回転数を、充電モード回転数として設定する。言い換えれば、冷却ファン制御部80bは、上記パラメータが閾値を超えている場合、充電モードにおける冷却ファンFの回転数を、駆動モードでの(上記パラメータの値に対応する)冷却ファンの回転数に維持する。
【0081】
冷却水の温度D2が冷却水用閾値Dthを超える高温であれば、冷却ファン制御部80bは、駆動モードにおいて電動モータ63が高負荷で駆動されたと判断することができる。電動モータ63が高負荷で駆動されると、電動モータ63の発熱に起因する故障が発生しやすくなる。したがって、この場合、冷却ファン制御部80bは、冷却ファンFの回転数を駆動モードから変更すべきではないと判断し、このような判断に基づき、充電モードでは駆動モードと同じ回転数で冷却ファンFを回転させる。
【0082】
これにより、充電モードでは、駆動モードと同様の冷却ファンFの送風強さが確保され、熱交換装置HEでの冷却水に対する熱交換が促進される。したがって、充電モードにおいて、冷却水に対する冷却効果を高めることができる。その結果、駆動モードで発生した熱に起因して、電動モータ63が故障する事態を低減することができ、機器の安全を確保することができる。
【0083】
また、冷却水の循環経路には、電動モータ63の他に、給電器61およびインバータ62も存在する(
図3参照)。給電器61およびインバータ62は、電動モータ63と同様に、電力によって発熱する。特に、インバータ62については、電動モータ63と同様に、作業負荷が大きくなるにつれて発熱温度が高くなる。したがって、上述のように冷却水の冷却効果を高めることは、給電器61およびインバータ62の発熱に起因する故障の低減にもつながる。
【0084】
また、熱交換装置HEが第2の熱交換装置HE2を含む構成では、冷却ファンFの送風強さを確保することにより、作動油の熱交換も促進される。これにより、充電モードにおいて、作動油に対する冷却効果を高めて、作動油の高温による性能低下を抑制することもできる。
【0085】
電動モータ63の駆動開始から所定時間(例えばt21(min))が経過した時点で、バッテリー53の充電が完了し、充電モードが終了すると(S8)、冷却ファン制御部80bは冷却ファンFの回転を停止させ(S9)、冷却ファンFの回転制御を終了する。結果的に、S6の回転制御を行った場合、冷却ファンFの回転数Cの遷移は
図11に示す通りとなる。一方、S7の回転制御を行った場合、冷却ファンFの回転数Cの遷移は
図12に示す通り(回転数の変化なし)となる。
【0086】
以上のように、冷却ファン制御部80bは、充電モードにおける冷却ファンFの回転数を、駆動システムDSの(駆動モードでの)駆動状態に対応する充電モード回転数に設定する(S6、S7)。
【0087】
これにより、駆動システムDSの駆動状態に応じた効果を得ることができる。例えば、駆動システムDS(電動モータ63)が駆動モードにおいて高負荷で駆動された場合には、冷却ファンFの充電モード回転数を駆動モードでの回転数と同等に設定して、駆動モードで発生した熱に起因する駆動システムDSの故障を低減することができる。一方、駆動システムDSが駆動モードにおいて低負荷で駆動された場合には、例えば、冷却ファンFの充電モード回転数を駆動モードでの回転数よりも低い回転数に設定して、消費電力を低減することができる。
【0088】
特に、S6では、充電モード回転数は、駆動モードにおける冷却ファンFの回転数よりも小さい。このため、駆動システムDSが低負荷で駆動された場合については、消費電力の低減効果を得ることができる。
【0089】
また、充電モードにおいて、パラメータ(例えば冷却水の温度)が閾値以下である場合には、冷却ファン制御部80bは、駆動モードでの冷却ファンFの回転数よりも低い回転数を、充電モード回転数として設定する(S6)。これにより、冷却ファンFの回転によって消費される電力を低減することができる。
【0090】
一方、充電モードにおいて、パラメータが閾値を超えている場合、冷却ファン制御部80bは、駆動モードでの冷却ファンFの回転数を、充電モード回転数として設定する(S7)。この場合、充電モードでは、熱交換装置HEに対して強い送風が維持され、冷却水に対する熱交換が促進される。これにより、冷却水の冷却効果を高めて、機器の故障の低減効果、または作動油の性能低下の抑制効果を得ることができる。
【0091】
また、冷却ファン制御部80bは、充電モードにおける冷却ファンFの回転数を、パラメータとしての冷却媒体の温度(例えば冷却水の温度D)に基づいて制御する(S5~S7)。
【0092】
駆動モードでの冷却ファンFの回転制御においても述べたように、冷却媒体の温度は、電動モータ63の駆動状態に応じて滑らかに変化し、短時間で急激に変化しない。充電モードにおいても同様であり、冷却媒体の温度は電動モータ63の停止後滑らかに変化(例えば低下)する。このため、充電モードでは、冷却媒体の温度に基づいて冷却ファン61の回転数を制御することにより、その制御が容易となる。
【0093】
(B-2.冷却水の温度および作動油の温度に基づく回転制御)
上記した充電モードでの冷却ファンFの回転制御は、パラメータとして、冷却水の温度Dに加えて、作動油の温度Gを用いて行ってもよい。
【0094】
図13は、冷却水の温度および作動油の温度Gに基づく冷却ファンFの回転制御による動作の流れを、駆動モードから充電モードにわたって示すフローチャートである。
図13では、S5でNo以降の処理が、
図10とは若干異なる。以下、
図10と異なる点について説明する。
【0095】
S5にてNo、つまり、充電モードで検出された冷却水の温度が例えばD2であり、この温度D2が冷却水用閾値Dthを超えている場合、冷却ファン制御部80bは、作動油温度センサ90bによって検出された作動油の温度Gが所定の閾値(作動油用閾値Gth(℃))以下であるか否かを判断する(S5-1)。
【0096】
例えば、充電モードで検出された作動油の温度がG1であり、
図7に示すように、温度G1が作動油用閾値Gth以下である場合(S5-1でYes)、冷却ファン制御部80bは、駆動モードで制御していた回転数(例えば冷却水の温度に応じた回転数(例えば冷却水の温度D2に対応する回転数C12)と同じ回転数で冷却ファンFを回転させ(S7-1)、その後、
図10と同様にS8に移行する。なお、S7-1の処理は、
図10のS7と実質的に同じである。
【0097】
一方、例えば、充電モードで検出された作動油の温度がG2であり、温度G2が作動油用閾値Gthを超えている場合(S5-1でNo)、冷却ファン制御部80bは、駆動モードで制御していた回転数(例えば温度G2に対応する回転数C22)と同じ回転数で冷却ファンFを回転させ(S7-2)、その後、
図10と同様にS8に移行する。すなわち、
図7-2では、冷却ファン制御部80bは、パラメータとしての作動油の温度G2が閾値としての作動油用閾値Gthを超えている場合、駆動モードでの作動油の温度G2に応じた冷却ファンFの回転数C22を、充電モード回転数として設定する。つまり、冷却ファン制御部80bは、冷却ファンFの回転数を、駆動モードでの作動油の温度(例えばG2)に応じた回転数(例えばC22)に維持する。
【0098】
作動油は、高温になると性能が低下することが懸念される。充電モードにおいて、作動油の温度が作動油用閾値Gthを超えている場合に、冷却ファンFの回転数を、駆動モードでの作動油の温度に応じた回転数に維持することにより、作動油の冷却効果を高めて、作動油の高温による性能低下を抑制することができる。
【0099】
なお、充電モードでは、電動モータ63の駆動が停止され、電動モータ63の回転数Mおよびインバータ62の出力Pがゼロになる。このため、充電モードでは、駆動モードで行ったような、電動モータ63の回転数Mまたはインバータ62の出力Pに基づく冷却ファンFの回転制御は行われない。
【0100】
なお、以上では、充電モードにおける冷却ファンFの回転制御として、駆動モードでの回転制御で用いたパラメータと同じパラメータ(例えば冷却水の温度D、作動油の温度G)に基づく冷却ファンFの回転制御について説明したが、駆動モードと充電モードとで、異なるパラメータに基づいて、冷却ファンFの回転数Cを制御してもよい。例えば、駆動モードでは、電動モータ63の回転数Mに基づいて冷却ファンFの回転数Cを制御し、充電モードでは、冷却水の温度Dに基づいて冷却ファンFの回転数Cを制御してもよい。
【0101】
なお、以上では、充電モードにおいて、冷却ファン制御部80bが冷却ファンFの回転数を一定の値に制御する例について説明したが、冷却ファンFの回転数を充電モードの期間で段階的または連続的に変化させてもよい。例えば、
図14に示すように、充電モードにおいて、バッテリー53の充電が完了する前に、冷却水の温度が十分に低下した場合には、その時点(例えば電動モータ63の駆動開始から所定時間(例えばt15(min))が経過した時点)で冷却ファンFの回転を完全に止めたり、
図15に示すように、冷却ファンFの回転数を段階的に減少させてもよい。これらの場合、冷却ファンFの回転停止による消費電力の低減効果を、
図11および
図12の制御に比べてさらに高めることができる。
【0102】
なお、本実施形態では、充電モードの終了時点で冷却ファンFの回転を停止させているが、短時間でバッテリー53の充電が完了し、充電モードが早期に終了する場合において、冷却水等の冷却効果が不十分と考えられる場合には、充電モードが終了しても所定時間の間は冷却ファンFの回転を継続し、上記所定時間の経過後に冷却ファンFの回転を停止させるようにしてもよい。
【0103】
なお、本実施形態では、冷却ファン制御部80bが、パラメータ検出部90によって検出されたパラメータと、予め設定したテーブルとに基づいて、冷却ファンFの回転数を制御する例について説明したが、冷却ファンFの回転制御はこの例に限定されるわけではない。例えば、冷却ファン制御部80bは、パラメータ検出部90によって実際に検出されたパラメータの値(検出値)が目標値に近づくようにフィードバック制御(例えばPID制御)を行いながら、冷却ファンFの回転数を制御してもよい。
【0104】
なお、本実施形態では、
図6等に基づく冷却ファンFの回転制御において、冷却水の温度D等と冷却ファンFの回転数Cとを1対1で対応させて、冷却ファンFの回転数Cを制御しているが、必ずしも1対1対応で制御する必要はない。例えば冷却水の所定の温度範囲(複数の温度)に対して冷却ファンFの回転数Cを1つ割り当て、冷却水の所定の温度範囲内の温度については、共通の回転数Cで冷却ファンFを回転させる制御を行ってもよい。
【0105】
なお、本実施形態では、
図6等の関係を示すテーブルを制御部80の記憶部80c(
図5参照)に記憶させる例について説明したが、上記テーブルは、油圧ショベル1内で制御部80とは異なるメモリに記憶されてもよい。また、上記テーブルは、油圧ショベル1の外部のサーバー(例えばクラウドサーバー)に記憶され、冷却ファン制御部80bが上記サーバーと通信することにより、パラメータに応じた冷却ファンFの回転数の情報を取得し、取得した回転数で冷却ファンFを回転させる制御を行ってもよい。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、例えばバッテリーで駆動される電動モータを有する油圧ショベルなどの電動式建設機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 油圧ショベル(電動式建設機械)
53 バッテリー
63 電動モータ
71 油圧ポンプ
73 油圧アクチュエータ
80b 冷却ファン制御部
90 パラメータ検出部
BA 機体
DS 駆動システム
F 冷却ファン
HE 熱交換装置