(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028519
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240226BHJP
B43K 29/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
B43K29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005748
(22)【出願日】2024-01-18
(62)【分割の表示】P 2021508173の分割
【原出願日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2019055046
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】尾形 衛
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(57)【要約】
【課題】 紙媒体等への筆記機能と電子機器への位置指示器としての機能との両方の機能を備え、衝撃に対する耐性をも備えた電子ペンを提供する。
【解決手段】 フェライトコア3は、筐体1の内部のペン先側の部分において、筐体1に対して固定される。芯体2は、グラファイトを含有する樹脂により棒状体に構成されている。芯体2は、筐体1の開口部1hを通じて、フェライトコア3に挿通されて取り付けられ、筐体1から引き抜く際に機能する引き抜き部2bを備えている。芯体2の本体部2cの直径は、フェライトコア3の直径方向の厚みよりも長くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先側の端部に開口部を有する筒状の筐体と、
前記筐体の内部のペン先側の部分において、前記筐体に対して固定された筒状部材と、
少なくとも顔料と樹脂を混ぜ合わせた素材により1本の棒状体に構成され、前記筐体の前記開口部を通じて、前記筒状部材に挿通されて取り付けられる芯体と、
を備え、
前記芯体は、前記筐体に取り付けられた状態では、前記芯体の側面が、前記筒状部材の内壁面と前記筐体の前記開口部の内壁面とに若干の隙間を隔てて対向し、
前記芯体の前記筒状部材に挿通される部分の直径が、前記筒状部材の外径と内径の差よりも大きい
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体に加わる筆圧を検出するための筆圧検出部と、
前記筆圧検出部を押圧するための押圧部材と
を備え、
前記芯体のペン先側とは反対の端部が、他の部分よりも直径が短いホールド部となり、当該ホールド部が、前記押圧部材に対して、嵌合するようにされて固定される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記筐体の前記開口部の直径よりも、前記筒状部材の内径の方が大きい
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記筒状部材は、フェライトコアであり、
前記フェライトコアの外側側面にコイルが巻回されると共に、当該コイルに対してキャパシタが接続されることにより共振回路が構成されて、電磁誘導式の電子ペンとして機能する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記顔料として、無機顔料あるいは有機顔料を用いる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項6】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体は、前記筐体から引き抜く際に機能する凹部である引き抜き部を有し、前記筐体に取り付けられた状態では、前記引き抜き部が前記開口から突出した状態となる、
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体は、前記筐体から引き抜く際に機能する凸部である引き抜き部を有し、前記筐体に取り付けられた状態では、前記引き抜き部が前記開口から突出した状態となる、
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体のペン先側の部分は、テーパー形状になっている
ことを特徴とする電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タブレットPC(Personal Computer)などの位置検出装置が搭載された電子機器に対する位置指示器としての機能を実現する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、教育分野においても、電子ペンとタブレットPCが活用されるようになってきている。例えば、児童、生徒の一人ひとりに電子ペンとタブレットPCを貸与し、文字の入力を通して漢字の書き順を教えたり、質問に対する解答を得るようにしたりするなどのことが行われている。電子ペンによるタブレットPCへの入力の場合、紙媒体を使用することなく、何度も繰り返し入力し直すことができるので便利である。電子ペンは、例えば、POM樹脂により形成された芯体が用いられるなど、比較的に壊れにくいものである。
【0003】
図3は、電子ペンの従来例を示す図である。例えば、
図3(A)、(B)に示す電子ペン100、200は、ずれも電磁誘導方式のものである。筐体101、201の内部には、フェライトコア103、203の外側面にコイル104、204が巻回された構成部分が搭載されている。コイル104、204には、図示しないコンデンサが接続されて共振回路を構成している。芯体102、202は、筐体101、201の開口部からフェライトコア103、203の貫通孔に挿通され、筆圧検出部105、205に当接し、芯体102、202にかけられる筆圧の検出が可能になっている。
【0004】
そして、電子ペンによるタブレットPCへの描画入力は、紙媒体への筆記と異なり、何度も繰り返し書き直すことが簡単にできる反面、表示画面の切り替えが容易で、一瞬にして表示画面を切り替えることができ、入力情報を消去できる。従って、入力情報を保持しておくためには、入力情報を内蔵の記憶媒体に保存させるようにする操作を行わなければならない。そして、電子ペンとタブレットPCだけでなく、ノートなどの紙媒体も併用し、学習に利用するようにしたいとする要求がある。このため、電子ペンを持ち替えることなく、紙媒体に記録を行うことができると共に、タブレットPCに対しても描画入力を行えるようにすることが求められる。
【0005】
後に記す特許文献1には、シャープペンシルユニットを組み込んだ電子ペンが開示されており、当該特許文献1に開示の発明を用いることによって、紙媒体への筆記機能とタブレットPCへの入力機能とを兼ね備えた電子ペンを実現することができる。当該電子ペンを利用することにより、必要な情報は紙媒体に記録して取っておくことができ、問題に対する解答などは、タブレットPCに入力して即座に解答するといったことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたシャープペンシルユニットを組み込んだ電子ペンの場合、シャープペンシルの芯は、通常、0.5mm程度の細いものであり、また、電子ペン自体のペン先も細いものとなる。このため、小学校の低学年の児童が使用しようする場合にが、力の入れ加減が難しく、シャープペンシルの芯がすぐに折れてしまって、紙媒体に思ったように筆記できなかったり、タブレットPCの操作画面を傷付けてしまったりする可能性がある。
【0008】
教育分野での利用を考えた場合、特に小学校の低学年の児童が使用することも考慮すると、
図3を用いたように構成されている従来の電子ペンと同様にして使用できると共に、紙媒体への記録も可能な電子ペンの実現が望まれる。また、電子ペンを頻繁に落としたり、ぶつけたりするといったことも発生すると考えられる。このため、外から加わる衝撃に対しても耐性があり、壊れにくいことが要求される。
【0009】
以上のことに鑑み、この発明は、紙媒体等への筆記機能と電子機器への位置指示器としての機能との両方の機能を備え、衝撃に対する耐性をも備えた電子ペンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、
ペン先側の端部に開口部を有する筒状の筐体と、
前記筐体の内部のペン先側の部分において、前記筐体に対して固定された筒状部材と、
少なくとも顔料と樹脂を混ぜ合わせた素材により1本の棒状体に構成され、前記筐体の前記開口部を通じて、前記筒状部材に挿通されて取り付けられる芯体と、
を備え、
前記芯体は、前記筐体に取り付けられた状態では、前記芯体の側面が、前記筒状部材の内壁面と前記筐体の前記開口部の内壁面とに若干の隙間を隔てて対向し、
前記芯体の前記筒状部材に挿通される部分の直径が、前記筒状部材の外径と内径の差よりも大きい
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0011】
この電子ペンによれば、筒状部材は、筐体の内部のペン先側の部分において、当該筐体に対して固定されるので、外からの衝撃(力)に対してがたつくことがなく、破損かから守られる。芯体は、少なくとも顔料と樹脂を混ぜ合わせた素材により1本の棒状体に構成されているので、紙媒体等に対して物理的に筆跡を残すことができるようにされる。すなわち、紙媒体等への筆記機能と電子機器に対して用いられる位置指示器としての機能との両方を備えるようにされる。
【0012】
更に、芯体の筒状部材に挿通される部分の直径は、筒状部材の直径方向の厚みよりも大きいものとされる。すなわち、筒状部材の厚みをより薄くすると共に、その分、芯体自体の直径を大きくすることができるようにされる。これにより、芯体をより太いものとして構成し、折れ難くされる。これにより、筒状部材に加えて、芯体の強度も確保される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の電子ペンの実施の形態を説明するための図である。
【
図2】この発明の電子ペンの他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しながら、この発明の電子ペンの実施の形態について説明する。なお、電子ペン(位置指示器)及び位置検出装置の方式には、電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance technology)方式)とアクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)とがある。
【0015】
電磁誘導方式は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のループコイルを配設したセンサ部を位置検出装置が備える。そして、当該センサ部の複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。対応する電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、当該センサ部からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させ、この信号に筆圧情報を含めて位置検出センサに送信する。これを受信期間において位置検出装置が受信して、電子ペンによる指示位置と筆圧を検出する。
【0016】
アクティブ静電結合方式の場合には、電子ペンは、電子ペンに搭載された発振回路からの信号に筆圧情報をも含めて送信し、これを位置検出装置で受信して、指示位置と筆圧を検出する。
【0017】
この発明の電子ペンは、電磁誘導方式のものにも、また、アクティブ静電結合方式のものにも用いることができる。しかし、以下に説明する実施の形態においては、説明を簡単にするため、電磁誘導方式(EMR方式)の電子ペンに対して、この発明を適用した場合を例にして説明する。
【0018】
[電子ペンの構成例]
図1は、この発明の電子ペンの実施の形態を説明するための図である。
図1(A)は、この実施の形態の電子ペンを軸心方向に2分割し、前側部分を取り除いて示したペン先側部分の断面図である。但し、
図1(A)において、芯体2は断面ではなく、その全体を示している。
図1(B)は、芯体2を拡大して示した図であり、
図1(C)は、
図1(A)のペン先側部分をより拡大して示した断面図である。
【0019】
図1(A)に示すように、この実施の形態の電子ペンの筐体1は、円筒形をなしている。
図1(A)、(C)に示すように、筐体1のペン先側は、テーパー形状とされ、その先端部は開口部1hになっている。この開口部1hを介して、後述する芯体2が挿抜される。筐体1の内部のペン先側の部分には、筒状に形成されたフェライトコア3が収納される。フェライトコア3は、ペン先側(前端側)の端部部分が筐体1に対して固定される。また、フェライトコア3のペン先側とは反対側(後端側)には、例えば、エラストマ(elastomer)で形成された筒状の緩衝部材5が設けられており、この緩衝部材5を介して、フェライトコア3の後端側の端部部分が筐体1に対して固定される。
【0020】
このように、フェライトコア3は、その前端側と後端側との両端部分において、筐体1に対して固定されている。なお、
図1(A)においては、フェライトコア3の後端側にしか緩衝部材5を設けていないが、フェライトコア3の前端側にも緩衝部材を設けるようにしてもよい。要は、フェライトコア3は、直接に、あるいは、緩衝部材等の介在物を介して、筐体1に対して固定され、筐体1内で移動したり、がたついたりしないようにされていればよい。なお、緩衝部材5は、ゴム、スポンジ、フェルトなどの弾性のある種々の素材により形成できる。
【0021】
図1(A)、(C)に示すように、フェライトコア3の外側面にはコイル4が巻回されている。コイル4には、後述する可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部7や回路基板9に搭載されているコンデンサ(図示せず)が並列に接続されて、共振回路を構成する。緩衝部材5の後端側には、芯体2と筆圧検出部7とを接続する押圧部材6が設けられている。押圧部材6のペン先側の端部部分は、芯体2の後端側が嵌合する凹部になっており、ペン先側と反対側の端部部分は、筆圧検出部7を押圧するための凸部になっている。
【0022】
芯体2は、顔料を含む素材によって円柱状(棒状体)に形成されたものである。顔料は、着色に用いる粉末で水や油に不溶のものを意味する。顔料には、無機顔料として、グラファイト(黒)、チタン(白)、クロムバーミリオン(朱)、黄鉛(黄)、酸化鉄(赤)などがあり、有機顔料として、パーマネントレッド(赤)、フタロシアニングリーン(緑)、ファーストイエロー(黄)などがある。この他にも種々の顔料が存在する。顔料と、樹脂、粘土、ワックスなどの媒体物とを混ぜ合わせることにより、種々の色の芯体を構成できる。したがって、用いる顔料によって、目的とする色の筆跡を紙媒体等に残すことができる芯体2を構成できる。
【0023】
この実施の形態においては、顔料としてグラファイト(黒鉛、石墨)を用い、これを所定の樹脂と混ぜ合わせることによって芯体2を構成している。芯体2は、紙媒体等に対して鉛筆と同様の黒色の筆跡を残すことができると共に、擦り減りが少ないものである。また、芯体2は、その硬度も従来の電子ペンのPOM樹脂により形成された芯体と同程度とされる。従って、芯体2が装着された電子ペンがタブレットPCの操作面上で用いられた場合であっても、当該操作面に対して傷を付けることなどの不都合を生じさせることがないものである。このような芯体2を用いることによって、紙媒体等への筆記機能とタブレットPCなどに対する位置指示器としての機能との2つの機能を備えた電子ペンが実現できる。なお、この実施の形態において、芯体2を構成するグラファイトと樹脂との比率は、50:50である。また、樹脂は、ポリエチレンである。
【0024】
図1(B)に示すように、芯体2は、ペン先部2a、引き抜き部2b、本体部2c、ホールド部2dの4つの部分からなる。ペン先部2aはテーパー形状とされた部分であり、その先端は丸みをおびている。引き抜き部2bは、ペン先部2aと本体部2cとの間に設けられた凹部(溝部)である。筐体1内に取り付けられた芯体2を取り外す場合に、引き抜き部2bに使用者が手の指の爪などを引っ掛けて引き抜くようにすることによって、芯体2を筐体1から容易に取り外すことができる。本体部2cは、引き抜き部2bとホールド部2dの間に位置する部分である。ホールド部2dは、本体部2cの後端側に位置し、本体部2cの直径よりも短い直径となっている部分である。
【0025】
図1(A)に示すように、芯体2は、筐体1の開口部1hを通じて、フェライトコア3に挿通され、芯体2のホールド部2dが押圧部材6の凹部に嵌合して、筐体1内に取り付けられる。この場合、芯体2の引き抜き部2bを含む先端部分が、筐体1の開口部1hから突出した状態となる。筆圧検出部7は、押圧部材の凸部を保持する保持部材71と、第1の電極72と、リング状に形成されたスペーサ73と、円形の板状体である誘電体74と、第2の電極75とからなる。第2の電極75は誘電体の一方の面に接触して設けられている。第1の電極72は、これに押圧力(負荷)が掛かっていない状態のときには、スペーサ73を介して、誘電体74の他方の面から離れて位置するようにされている。なお、保持部材71は、合成ゴムなどの弾性材料により形成されており、スペーサ73は、硬質樹脂などにより形成されている。
【0026】
筐体1内に取り付けられた芯体2は、軸心方向に移動可能にされている。芯体2のペン先部2aに筆圧がかけられると、筆圧に応じて、芯体2が筐体1内に押し込まれ、これに応じて押圧部材6が保持部材71を介して、第1の電極72を誘電体74側に近づけ、第1の電極を誘電体74に接触させる。従って、ペン先部2aにかかる押圧力に応じて、第1の電極72と誘電体74との距離や接触面積が変化し、これに応じて第1の電極と第2の電極との間の静電容量が変化する。この第1の電極72と第2の電極75の間の静電容量の変化に応じて、芯体2のペン先部2aに掛かっている筆圧を検出できる。芯体2のペン先部2aに掛けられた筆圧が解除されると、芯体2は第1の電極72や保持部材71により押し戻されて、元の位置に復帰する。
【0027】
筆圧検出部7の第2の電極の後段には、基板保持部材8が設けられ、この基板保持部材の凹部に対して、回路基板9が嵌合して保持される。回路基板9には、制御用IC(Integrated Circuit)やコンデンサなどの種々の回路部品が搭載されている。回路基板9には、上述したコイル4の両端や筆圧検出部7の第1の電極と第2の電極からの伝電線が接続される。これにより、回路基板9に搭載された回路部の機能により、筆圧を検出すると共に、共振作用によってコイル4に生じさせる信号(磁界)の位相の変化として、筆圧を示す情報を含めて信号に含めて送信することができるようにしている。
【0028】
更に、上述した緩衝部材5と基板保持部材8とは、筐体1の内側に設けられる筒状保持部材10によって保持される。これによりフェライトコア3及びコイル4、緩衝部材5、押圧部材6、筆圧検出部7、基板保持部材8は、筐体1内に保持される。また、図示しないが、回路基板9の後端側は、筐体1の後端部に固定される。これにより、回路基板9もまた筐体1内に保持される。このようにして、この実施の形態の電子ペンが構成されている。
【0029】
この実施の形態の電子ペンにおいては、筐体1の直径は、
図1(A)に示したように9.0mmである。また、
図2(C)に示したように、フェライトコア3の内径は3.0mmであり、外径は5.0mmである。また、筐体1の開口部1hの直径は2.95mmである。また、芯体2の本体部2cの直径は、2.85である。従来の電子ペンの場合、
図3にも示したように、芯体をPOM樹脂等の強度の高いもので作成し、また、フェライトコアの強度も維持するために、フェライトコアの直径方向の両端の厚みの合計は、芯体の直径よりも大きくなるようにされている。
【0030】
また、
図3(A)に示したように、従来の電子ペン100の場合、フェライトコア103の貫通孔103hの直径(フェライトコア103の内径)よりも、筐体101の開口部101hの直径の方が大きくなっている。同様に、
図3(B)に示したように、従来の電子ペン200の場合にも、フェライトコア203の貫通孔203hの直径(フェライトコア203の内径)よりも、筐体201の開口部201hの直径の方が大きくなっている。
【0031】
これは、芯体102、202の軸心方向の移動の邪魔にならないようにするなどのためである。この場合、フェライトコア103、203の厚みが厚いため、芯体102、202が、フェライトコア103、203と接触するようなことがあっても、両方とも破損することがなく、設計上の自由度が高い。このため、筐体101、201の開口部101h、201hの直径を大きく設計することができた。
【0032】
しかし、この実施の形態の電子ペンの場合には、フェライトコア3のフェライトコアの直径方向の両端の厚みの合計は2.0mmであり、芯体2の本体部2cの直径は、2.85mmである。すなわち、この実施の形態の電子ペンの場合には、芯体2の直径を従来よりも太くし、フェライトコア3の厚みを従来よりも薄くしている。従って、この実施の形態の電子ペンの場合、芯体2の本体部2cの直径は、フェライトコア3の外径から内径を引いた長さよりも長くなるようにされている。
【0033】
このように、芯体2の本体部2cの直径を長くすることにより、芯体2の強度を高めることができる。逆に、フェライトコア3の厚みは従来の電子ペンの場合よりもかなり薄くなる。しかし、フェライトコア3は、筐体1に対して固定されている。このため、フェライトコア3が、筐体1内で移動したり、がたついたりすることはない。また、
図1(A)、(C)に示すように、筐体1の開口部1hの直径は、フェライトコア3の内径よりも小さい。このため、この実施の形態の電子ペンが筆記に用いられた場合であっても、芯体2は筐体1の開口部1hの内壁部分によって位置規制され、芯体2が、フェライトコア3と接触する場合はない。
【0034】
また、この実施の形態の電子ペンが、落下するなどして、筐体1から突出している芯体2のペン先部2aに、軸心方向と交差する方向の大きな負荷(力)が掛かったとする。この場合においても、芯体2は筐体1の開口部1hの内壁部分によって位置規制され、芯体2が、フェライトコア3と接触する場合はない。従って、この実施の形態の電子ペンの場合、フェライトコア3が芯体2と接触して破損するといったこともないし、筐体1内でフェライトコア3が移動したり、がたついたりすることもないので、フェライトコア3が外的な衝撃により破損することもない。
【0035】
[芯体2の他の例]
図2は、この発明の電子ペンの芯体の他の例を説明するための図である。この例の電子ペンの芯体2Aは、
図1に示した芯体2と同様に、グラファイトを含有する樹脂により円柱状に形成されたものであるが、その外形が
図1に示した芯体2とは異なる。すなわち、この例の芯体2Aは、
図2(A)に示すように、ペン先部2Aa、引き抜き部2Ab、本体部2Ac、ホールド部2Adの4つの部分からなる。
【0036】
ペン先部2Aaはテーパー形状とされた部分であり、その先端は丸みをおびている。引き抜き部2Abは、ペン先部2Aaの本体部2Ac側が外側に張り出した凸部となっている部分である。本体部2Acは、引き抜き部2Abとホールド部2Adの間に位置する部分である。ホールド部2Adは、本体部2Acの後端側に位置し、本体部2Acの直径よりも短い直径となっている部分である。
【0037】
このように、引き抜き部2Abが凸部として構成された芯体2Aの場合、これを筐体1に取り付けると、
図2(B)に示すように、筐体1の端部と、芯体2Aの引き抜き部2Abとの間に隙間が生じる。これにより、筐体1内に取り付けられた芯体2Aを取り外す場合に、引き抜き部2Abに使用者が手の指の爪などを引っ掛けて引き抜くようにすることによって、芯体2Aを筐体1から容易に取り外すことができる。
【0038】
なお、
図1を用いて説明した電子ペンの芯体2に替えて、
図2(A)に示した芯体2Aを用いるようにするだけで、
図2(B)に示したように、電子ペンを構成できる。すなわち、芯体2Aの本体部2Ac、ホールド部2Adのサイズは、
図1に示した芯体2の場合と同様にすれば、芯体2に替えて、芯体2Aを用いた電子ペンが構成できる。
【0039】
[実施の形態の効果]
芯体2、2Aに、グラファイトなどの顔料を含有する樹脂を用いることにより、紙媒体等に対して、従来の鉛筆の場合と同様に、物理的に筆跡を残すようにできる。更に、芯体2、2Aは、グラファイトなどの顔料を含有する樹脂なので、擦り減りが少なく、電子ペンの芯体としても機能する。すなわち、紙媒体等への筆記機能と、タブレットPCなどの位置検出装置が搭載された電子機器に対する位置指示器としての機能との両方を備えた筆記具(電子ペン)が実現できる。
【0040】
また、芯体の直径を従来のものよりも太くできるので、衝撃に強い芯体を用いた電子ペンを実現できる。逆に、直径が太い芯体を用いる場合、フェライトコア3の厚みが薄くなり、フェライトコア3が衝撃に弱いものとなる。しかし、筐体1のペン先側の開口部1hの直径を、フェライトコア3の内径よりも短くすることによって、芯体2、2Aが直接にフェライトコア3に接触しないようにできる。また、フェライトコア3を少なくとも前端側の端部において、好ましくは前端側と後端側の両方の端部において、筐体1に対して固定することによって、フェライトコア3が筐体1の内部でガタつくことを防止できる。これらの構成により、厚みの薄いフェライトコア3が破損することのない電子ペンが実現できる。
【0041】
[変形例]
図1を用いて説明した芯体2の本体部2cの直径のサイズと、フェライトコア3の内径及び外形のサイズは一例であり、筐体1のサイズなどに応じて、種々のサイズとすることができる。この場合、芯体2の本体部の直径は、フェライトコア3の外径から内径を減算した場合の値(長さ)よりも大きく(長く)する必要がある。すなわち、フェライトコア3の直径方向の両端の厚みの和よりも、芯体2の本体部2cの直径の方が長くなるように構成する。これにより、従来の電子ペンよりも太い芯体2が構成できる。
【0042】
また、上述した実施の形態では、芯体2、2Aは、グラファイトを含有する樹脂により構成するものとして説明した。この場合、グラファイトの含有量を調整することにより、紙媒体への筆記時おける筆跡の濃さが異なる電子ペンを構成できる。すなわち、鉛筆には、例えば、2B、B、HB、F、H、2Hなどの濃さの違うものが存在するが、筆跡の濃さの異なる電子ペンを実現することもできる。
【0043】
また、グラファイトを含有させる樹脂の種類を変えることにより、筆跡の濃さを調整したり、また、書き味を変えたりすることも可能である。上述した実施の形態では、樹脂としてポリエチレンを用いたが、その他の例としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドなどでもよい。もちろん、グラファイトと所定の粘土とを混合して焼成し、芯体を構成することもできる。このような芯体の場合、紙媒体等への筆記により、芯体自体が擦り減って短くなるため、芯体の交換の回数が多くなるため、樹脂などの擦り減りを低減させることができる材料を用いるようにした方が好ましい。
【0044】
また、用いる顔料を変えることにより、種々の色の筆跡を残すことができる芯体を構成し、これを電子ペンの芯体として用いるようにすることができる。
【0045】
また、上述した実施の形態では、電磁誘導方式の電子ペンにこの発明を適用した場合を例にして説明したが、これに限るものではない。例えば、アクティブ静電結合方式の電子ペンにもこの発明を適用できる。すなわち、紙媒体への筆記機能と電子機器に対する位置指示器としての機能を備えたアクティブ静電結合方式の電子ペンを実現する場合にもこの発明を適用できる。
【0046】
具体的には、アクティブ静電結合方式の電子ペンにおいて、充電用にコイルを搭載する場合がある。この場合に芯体の周囲にフェライトコアを配置して、芯体にノイズの混入を防止するように構成する。このような場合に、この発明を適用できる。また、アクティブ静電結合方式の電子ペンの場合、交換可能な電池式の場合には、フェライトコアではなく、筒状部材を用いて、芯体を保護したり、芯体の軸心方向への移動を安定に行うことができるようにしたりする場合がある。このような場合にも、この発明を適用できる。
【0047】
なお、グラファイトを含有する樹脂により芯体を構成し、更に導電性物質を添加するようにすれば、導電性の芯体を構成できるので、アクティブ静電結合方式の電子ペンを実現できる。すなわち、アクティブ静電結合方式の電子ペンの場合、用いる芯体は導電性を有していなければならない。このため、グラファイトなどと導電性を有する材料を芯体に混ぜ合わせるようにしたり、芯体に金属性の軸芯を設けたりすることにより、導電性のよい芯体を構成できる。
【符号の説明】
【0048】
1…筐体、1h…開口部、2、2A…芯体、2a、2Aa…ペン先部、2b、2Ab…引き抜き部、2c、2Ac…本体部、2d、2Ad…ホールド部、3…フェライトコア、4…コイル、5…緩衝部材、6…押圧部材、7…筆圧検出部、71…保持部材、72…第1の電極、73…スペーサ、74…誘電体、75…第2の電極、8…基板保持部材、9…回路基板、10…筒状保持部材