(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028546
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】強磁性無端ベルトの磁気特性を測定する装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/12 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
G01R33/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007014
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020068823の分割
【原出願日】2020-04-07
(31)【優先権主張番号】10 2019 109 337.6
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520122884
【氏名又は名称】ドクター ブロックハウス メステヒニク ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ジーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ピョートル クリムチク
(57)【要約】
【課題】強磁性無端ベルトの磁気特性を高い分解能で測定する。
【解決手段】磁化可能な無端ベルトの一部分の磁気特性を測定する装置および方法を開示する。本装置は、磁界を発生させるための一次コイルと、磁束を案内するためのスロット付きヨークと、測定用の複数のコイルとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化可能な無端ベルト(2)の磁気特性を測定する装置(1)であって、
磁界(4)を発生させる一次コイル(3)であって、前記無端ベルト(2)を取り囲む一次コイル(3)と、
磁束密度を測定する二次コイル(6)であって、前記一次コイル(3)の内側に配置され、前記無端ベルト(2)を取り囲む二次コイル(6)と、
前記無端ベルト(2)に平行な各幅部分において、前記磁界(4)を測定するための第1の複数の測定デバイス(7)であって、前記二次コイル(6)の内側に配置され、かつ、前記無端ベルト(2)の一方側と他方側に対称的に配置された第1の複数の測定デバイス(7)と、
上部と下部を備え、かつ、前記一次コイル(3)を取り囲み、かつ、磁束を案内するスロット付きヨーク(5)であって、前記スロット付きヨーク(5)の前記上部は前記無端ベルト(2)の一方側に配置され、前記スロット付きヨーク(5)の前記下部は前記無端ベルト(2)の他方側に対称的に配置され、かつ、前記無端ベルト(2)は前記ヨーク(5)のスロットを通って延在するヨーク(5)と、
前記ヨーク(5)のスロットの内側に配置され、前記無端ベルト(2)の各幅部分において、前記無端ベルト(2)から前記ヨーク(5)に入る磁束全体を測定するための第2の複数の測定デバイス(8)であって、前記無端ベルト(2)の一方側と前記無端ベルト(2)の他方側に対称的に配置された第2の複数の測定デバイス(8)と
を有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1および前記第2の複数の測定デバイスは、少なくとも2つの幅部分において測定を行う
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、
前記無端ベルト(2)の縁に配置された第1及び第2の測定デバイス(7、8)はそれぞれ、中心に配置された測定デバイス(7、8)よりも狭い幅部分において検出を行う
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の装置であって、
前記第1の測定デバイス(7)および前記第2の測定デバイス(8)はコイルであり、前記第1の測定デバイス(7)の軸は、前記第2の測定デバイス(8)の軸に対して垂直である
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の装置であって、
前記無端ベルト(2)の移動方向における前記第2の測定デバイス(8)によって測定される領域の範囲は、前記無端ベルト(2)の移動方向における前記ヨークの前面の範囲を超える、
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
磁化可能な無端ベルト(2)の1つの幅部分の磁気特性を測定する方法であって、
上部と下部を備えるスロット付きヨーク(5)により取り囲まれ、前記ヨーク(5)のスロットを通って延在する前記無端ベルト(2)を取り囲む一次コイル(3)であって、前記スロット付きヨーク(5)の前記上部は前記無端ベルト(2)の一方側に配置され、前記スロット付きヨーク(5)の前記下部は前記無端ベルト(2)の他方側に配置される一次コイル(3)により磁界(4)を発生させるステップと、
前記一次コイル(3)の内側に配置され、前記無端ベルト(2)を取り囲む二次コイル(6)により総磁束密度(4)を測定するステップと、
前記二次コイル(6)の内側に、かつ、前記無端ベルト(2)の各幅部分に、配置された第1の複数の測定デバイス(7)であって、前記無端ベルト(2)の一方側と他方側に対称的に配置された第1の複数の測定デバイス(7)により、前記無端ベルト(2)の表面に平行な幅部分(7a)において前記磁界を測定するステップと、
前記ヨーク(5)のスロットの内側に、かつ、前記無端ベルト(2)の各幅部分に、配置された第2の複数の測定デバイス(8)であって、前記無端ベルト(2)の一方側と前記無端ベルト(2)の他方側に対称的に配置された第2の複数の測定デバイス(8)により、前記無端ベルト(2)の幅部分から前記ヨーク(5)に入る磁束全体を測定するステップと、
前記無端ベルトの前記幅部分の磁気特性を、測定された前記総磁界と、当該幅部分における磁束密度と、前記無端ベルト(2)の当該幅部分の磁界とに基づき、測定するステップと
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記無端ベルト全体の幅は、計測上は、少なくとも2つの幅部分に分割される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法であって、
前記無端ベルトは、連続的に移動する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化可能な無端ベルトの磁気特性を測定する装置および方法であって、特に、スチールベルト、磁界発生用のコイルを有する装置、測定用の複数のコイルを対象とする。
【背景技術】
【0002】
変圧器用コアならびに固定子およびその他鉄心は、互いに電気的に絶縁された軟磁性薄板(所謂薄鉄板または薄鋼板)の多数の層で構成されている。
【0003】
積層鉄板製のコアでは、各薄板は、打ち抜かれたまたは切断された個別の薄板から製作されるのが一般である。このような個別の薄板は、鋼帯から打ち抜かれるか、または、長手方向および横方向パーツによって切断される。そのため、コアの特性は、個別の薄板が互いに電気的に絶縁されている場合は、各薄板の磁気特性に応じて決まる。したがって、重要な磁気パラメータは、薄板が交番磁界によって励磁されたときに薄板に発生する総電力損失である。
【0004】
このような電磁鋼帯は、通常は、ロール状で(所謂コイルとして)製造および供給されるものであり、無端ベルトとも称される。無端ベルトの磁気特性は、ベルト内のあらゆる場所で同一であるのではなく、領域毎に大幅に異なることがある。
【0005】
したがって、強磁性材料製の無端ベルトの磁気特性を非破壊的に測定して、当該無端ベルトの磁気特性に関する知見を得て、当該無端ベルトの各領域をそれぞれの磁気特性に応じて処理できるようにすることが望ましい。
【0006】
このような無端ベルトの磁気特性を測定する従来の装置は、無端ベルトの磁気特性の測定値を、ベルトの幅全体にわたって一括で測定している。
【0007】
特許文献1に記載されている装置では、無端ベルトが装置を通って延在している。この無端ベルトは、励磁コイルおよび測定用コイルを通って延在することになり、この測定用コイルは、無端ベルトの幅全体にわたって測定する。複数の測定用コイル(所謂界磁コイルまたはHコイル)が無端ベルトの幅方向に隣り合わせで配置され、この複数の測定用コイルが、無端ベルトの磁気特性を幅全体にわたって一括で測定するにすぎない。無端ベルトの磁化損失を測定するために、規定された磁束密度Bを励磁コイルによってベルトに発生させ、磁界HをHコイルで測定し、測定された磁束密度Bと磁界Hの値から公知の方法で磁気損失を求めることができる。
【0008】
特許文献2には、強磁性材料製の無端ベルトの磁気特性を無端ベルトの幅全体にわたって連続的に測定する装置が記載されている。この装置は、磁界を発生させるための励磁コイルを備えており、このコイルの巻線は、無端ベルトの幅全体にわたって延在している。測定用コイルは、励磁コイルの内側に、且つ、励磁コイルと同軸に配置されている。測定用コイルは、無端ベルトが励磁コイル内の交流電流によって励磁されたときに該無端ベルトに誘導される磁束を測定する。更に、この装置は、ヨークを少なくとも2つ備えている。これらヨークは、励磁コイルの周りに延在し、無端ベルトを通すための空隙を有し、磁気回路を完成させる。この少なくとも2つのヨークは、互いから距離を置いて配置されている。各ヨークは、多数のヨーク片で構成されており、これらヨーク片は、互いに絶縁され、並べて配置されている。2つのヨークが離れて配置されていること、且つ、これらヨークがそれぞれのヨーク片に細分割されていることにより、無端ベルトに発生する渦電流が細分割され、ひいては測定中の無端ベルトでの渦電流による損失が減り、損失測定時の測定精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,281,678号
【特許文献2】独国特許発明第24 11 565 C2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の従来技術に基づく、無端ベルトの連続測定(所謂インライン測定)のための装置であって、特に、無端ベルトの幅全体にわたって最大限の局所的分解能で、交番磁界励起時の損失電力が得られる装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
磁化可能な無端ベルト(2)の磁気特性を測定する装置(1)である。装置(1)は、磁界(4)を発生させる一次コイル(3)であって、前記無端ベルト(2)を取り囲む一次コイル(3)と、磁束密度を測定する二次コイル(6)であって、前記無端ベルト(2)を取り囲む二次コイル(6)と、磁束を案内する、スロット付きヨーク(5)であって、前記無端ベルト(2)は前記ヨーク(5)のスロットを通って延在するヨーク(5)と、前記無端ベルト(2)に平行な各幅部分において、前記磁界(4)を測定するための第1の複数の測定デバイス(7)と、前記無端ベルト(2)の幅部分それぞれにおける前記磁束を測定するための第2の複数の測定デバイス(8)と
を有する。
【発明の効果】
【0012】
以下に記載する装置およびこれに対応する方法は、無端ベルトの磁気損失電力のこのような連続測定を、無端ベルトの幅全体にわたって高い局所的分解能での実現を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】強磁性無端ベルトの磁気特性を測定する装置の斜視図である。
【
図3】磁界または磁束を求める測定デバイスの第1の配置の概略を表したものである。
【
図4a】磁界または磁束を求める測定デバイスの別の配置の概略を表したものである。
【
図4b】磁界または磁束を求める測定デバイスの別の配置の概略を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の各図において、同じ参照符号は、模式的に図示されている装置の同じ要素を示している。これらの図は一定の縮尺で描かれてはおらず、全ての詳細を示してもいない。これらの図は、本装置のさまざまな配置を示す役割を担っているだけである。これらの図は、装置の概略図であり、実質的には、励磁コイルと、センサまたは測定用コイルとの配置を示している。明瞭化のために、励磁コイルをトリガするための電気機器および電子機器の素子や、センサまたは測定用コイルからの信号を評価するための電子機器の素子は図示されていない。その理由は、これらの構造およびトリガは以下の説明から当業者には明らかであることによる。
【0015】
後述する本発明の実施形態においては、コイルと無端ベルトとの間の距離のばらつきを平均化によって打ち消すために、無端ベルトの上方および下方に複数の界磁コイルが配置されている。実施形態の複数の選択肢として、前述のコイルと無端ベルトとの間の距離が既知で且つ一定である場合は、対応するコイルを無端ベルトの上方または下方にのみ配置できる。同様に、後述する実施形態においては、無端ベルトからヨークに入る磁束全体を検出するために、複数のプローブコイルが無端ベルトの上方および下方に配置される。実施形態の複数の選択肢としては、対称性または他の理由により各磁束を十分な精度で判定できるのであれば、前述のプローブコイルを無端ベルトの上方または下方にのみ配置できる。
【0016】
図1は、無端ベルト2の磁気特性を測定する装置1の概略斜視図を示す。この装置は、入口側と出口側を有する筐体1aを備える。入口側および出口側には、スロット形状の開口部がそれぞれ配置される。作動中、無端ベルト2は入口側から装置に入り、出口側から装置を出る。このとき、無端ベルトは、矢印2aで示すように、装置を通過して連続的に移動する。無端ベルトの磁気特性は、無端ベルトが装置を通過しつつ連続的に測定できる。このようにして、製造ラインにおいて装置を「インラインで」使用できる。
【0017】
図2は、前述の装置の、無端ベルト2の移動方向2aに沿った概略断面図を示す。装置の重要なコイルまたはセンサのみが示されている。筐体1aは、この図に示されていない。
【0018】
磁気特性を(特に、再着磁中の損失を)測定しようとする強磁性無端ベルト2は、本装置を通って延在し、矢印2aの方向に移動する。
【0019】
本装置は、励磁コイル3を備える。励磁コイルは、このようなシステムでは一次コイルとも呼ばれる。励磁コイル3の巻線3aと、励磁電流が流れる方向とを図に示す。なお、励磁電流は、50Hz~400Hzの周波数、特に50Hzまたは60Hzの周波数を通常は有する。これにより、励磁コイル3は、図示の瞬間において、矢印4にて示す場を発生させている。励磁コイル3の巻線は、無端ベルトの周囲を案内されるので、無端ベルトの幅は磁界4内にある。発生した磁界4の方向は、無端ベルトの移動方向に平行な方向と逆平行な方向との間で変化する。
【0020】
本装置1は、磁界4を案内するためのスロット付きヨーク5を備える。ヨーク5の各スロットは、装置の入口側および出口側に配置されている。無端ベルトは、ヨーク5の両スロットを通って延在する。
図2では、このように、ヨーク5の一方の部分が無端ベルト2の下方に配置され、ヨーク5のもう一方の部分が無端ベルト2の上方に配置されている。
【0021】
したがって、発生した磁界4は、ヨーク5を通って、およびその間で無端ベルト2を通って、または無端ベルト2に平行に空気を通って、流れる。
【0022】
更に、本装置は、二次コイル6を備える。二次コイル6の巻線は、励磁コイル3の巻線と同軸に、且つ、励磁コイル3と同様に、無端ベルト2の幅全体にわたって延在している。すなわち、二次コイル6の巻線は、無端ベルトを取り囲んでいる。二次コイル6は、励磁コイル3の内側に配置される。更に、二次コイル6は、磁界全体が二次コイル6を通過するように、励磁コイル3の内側に配置されるのが理想的である。これにより、無端ベルト内の磁束を二次コイル6によって測定できる。ある実施形態において、二次コイル6は励磁コイル3の内側に配置され、励磁コイル3の巻線の直近に絶縁層を有する。これにより、二次コイル6は、磁束全体の測定を可能にする。
【0023】
また、装置1は、複数の所謂界磁コイル7と、これらに対応する複数の所謂プローブコイル8、所謂ピックアップコイルとを有する。一対の界磁コイル7は、対応して配置された一対のプローブコイル8に対して割り当てられる。
【0024】
無端ベルトの移動方向に互いに隣接配置された複数の異なるセグメントについて、本装置では、これらセグメントおける再着磁中の電力損失を測定可能となる。この結果、磁気特性は、無端ベルトの幅全体にわたって測定されるのではなく、より狭いセグメント単位で測定される。計測上は、無端ベルトの幅は、互いに隣接する複数の部分に細分割され、これら複数の部分は、それぞれの幅を有する。このようにして、計測上は、無端ベルトを複数のセグメントに分割できる。以下に説明するように、各セグメントの長さは、測定デバイスの長さによってあらかじめ決まり、各セグメントの幅は、全体の幅の一部分となる。
【0025】
無端ベルト全体の幅は、通常は0.9~2mであり、計測上は、複数の幅部分に細分割される。これら複数の部分それぞれの幅は、同一であってもよく、異なってもよい。無端ベルトの縁に位置する幅部分については、例えば、エッジ効果をより適切に考慮できるようにするために、中間の幅部分より大幅に狭くしてもよい。
【0026】
界磁コイル7は、無端ベルトの上方および下方に対で配置される。界磁コイル7は、無端ベルトの表面に平行な磁界を測定するためのものである。磁界を測定するための一対の界磁コイルは、1つのセグメントに対して、すなわち1つの幅部分に対して設けられる。これら界磁コイルの向きは、励磁コイル3の方向に平行である。この場合、複数の界磁コイル7がベルトの幅方向に互いに隣接して配置され、磁界の場の強さが無端ベルト2の幅全体にわたって測定されるようになっている。無端ベルトの上方および下方に配置された複数対の界磁コイル7はそれぞれ、同じ幅における場の強さを検出する。各界磁コイルの幅はセグメントの幅であり、すなわち、セグメントの幅部分の幅である。以下の記載において、各界磁コイルの幅は、セグメントの測定幅に等しい。別の実施形態においては、ホールセンサや磁力計等の他の測定手段を使用して磁界の強さを測定可能である。
【0027】
装置1は、プローブコイル8を更に備える。プローブコイル8は、ピックアップコイルとも称され、無端ベルト2からヨーク5に入る磁束を、1つの幅部分において測定する。プローブコイル8は、ヨーク5の空隙またはスロットに配置されている。プローブコイル8は、このような1つの幅部分における磁束を検出するための幅を有する。この幅は、界磁コイルの幅に対応し、対応する幅の磁界を含む。以下においては、1つのプローブコイルの幅は、セグメントの測定幅に等しい。したがって、1つのプローブコイル8は、一対の界磁コイルが磁界の強さを測定した1つの幅部分の磁束を測定するので、これらコイルまたは対応する測定デバイスはそれぞれ同じ幅を有する。各幅部分に対して、1つのプローブコイル8が無端ベルトの上方に配置され、1つのプローブコイル8が無端ベルトの下方に配置されることが好ましい。これらプローブコイル8は、無端ベルト2の、プローブコイル8と同じ幅の磁束を、その幅部分において検出する。無端ベルトのこのような幅部分またはセグメントの総磁束は、無端ベルトの上方および下方に載置された一対のプローブコイルが検出した磁束の和である。
【0028】
別の実施形態においては、プローブコイル8と界磁コイル7を、別の測定デバイス(例えばホールプローブ)で代替可能である。磁束測定用の測定デバイス8は、必要に応じて、これを装置1の入口端または出口端に設置可能である。
【0029】
界磁コイル7およびプローブコイル8の各々は、無端ベルト2の幅に対して互いに対で割り当てられる。これにより、一対の界磁コイル7が、無端ベルトの1つの幅部分における場の強さを検出し、割り当てられた一対のプローブコイル8は、同じ幅部分において無端ベルトから鉄心に入る磁束を測定する。
【0030】
このようにして、無端ベルトの同じ幅部分に配置された一対の界磁コイル7と一対のプローブコイル8とは、無端ベルトに平行な磁界の強さと、無端ベルト2の同じ幅部分にお
ける(すなわち無端ベルトの1つのセグメントにおける)磁束とを検出する。よって、当該セグメントにおけるヒステリシスの算出が可能となり、これにより損失値の算出が可能となる。
【0031】
測定された場の強さHと磁束密度Bとから無端ベルトの一セグメントの相関電力損失CPL(Correlated Power Loss)を求めることができる。場の強さの測定は、上側および下側の界磁コイル7で実現する。1つのセグメントにおいて無端ベルトの上方で測定された場の強さは、以下においてHoと呼び、無端ベルトの下方で測定された場の強さは、Huと呼ぶものとする。セグメントの磁束密度の測定は、プローブコイル8によって行われる。当該セグメントにおいて無端ベルトの上方で測定された磁束密度は、以下においてBoと呼び、当該セグメントにおいて無端ベルトの下方で測定された磁束密度は、Buと呼ぶものとする。
【0032】
1つのセグメントの場の強さは、以下のように求められる。まず、無端ベルトの上方および下方にある1つのセグメントの場の強さが、界磁コイル7を用いて求められる。
【数1】
N:巻線数
A:磁束が横切る断面積
μ
0:磁界定数
u
Ho:上側界磁コイルにおける誘起電圧
u
Hu:下側界磁コイルにおける誘起電圧
【0033】
次に、場の強さHuおよびHoの平均値を算出する。上側および下側の界磁コイルから材料表面までの距離は同じであると仮定する。本装置はこの仮定を満たすので、場の平均強さH
Mediumを算出できる。
【数2】
【0034】
無端ベルトの各セグメントについて平均化された場の強さHSegmentは、校正係数kを掛けることによって得られる。校正係数kは、これら界磁コイル7の平均値を一次コイル3が発生させた場の強さに適合化させる。
HSegment=ki*HMedium
【0035】
1つのセグメントにおける磁束密度も同様に求められる。1つのセグメントにおける磁束は、複数の部分磁束の和から得られる、または、上側または下側のプローブコイルによって得られる。そのため、まず、これらプローブコイル8に誘起される電圧を対で加算する。
u
B(t)=u
Bo(t)+u
Bu(t)
これにより、1つのセグメントにおける磁束Φ
Bが得られる。
【数3】
【0036】
ここで、測定された磁束Φ
Bを、複数のセグメントにおいて、測定された総磁束密度に相関させる。総磁束密度は、二次コイル6によって測定されたものである。相関係数n
iは、1つのセグメントについて求められた磁束密度Φ
Bを総磁束密度に適応させる。
【数4】
N:プローブコイル8の巻線数
A:無端ベルトの当該セグメントにおいて磁束が横切る断面積
【0037】
ここで、一セグメントについて求められたH
Segmentの値およびB
Segmentの値から電力損失を求めることができる。
【数5】
f:励起場の周波数
ρ:無端ベルトの平均密度
T:励起場の周期
【0038】
このように、無端ベルトの1つのセグメントの電力損失が、当該幅部分の磁束密度Bの測定値および場の強さHの測定値から求められる。
【0039】
セグメントにおける電力損失を算出するために、本装置は、測定された電圧/電流をデジタル信号に変換するための適切な測定変換器と、デジタル信号処理デバイスとを備える。デジタル化された測定値は、デジタル信号処理に送られる。デジタル信号処理デバイスは、デジタル化された測定値に基づき、適切なコンピュータプログラムを使用して、各セグメントについて電力損失値を求める。求められた電力損失値は、グラフィック表示にして表示することができる。
【0040】
図3は、界磁コイル7または対応する磁界測定用測定デバイスと、プローブコイル8またはこれに対応する測定デバイスであって無端ベルト2からヨーク5に入る磁束の測定用の測定デバイスとの概略配置を示す。
図3には、無端ベルト2、一次励磁コイル3、磁界全体を測定するための二次コイル6は示されていない。矢印2aは、無端ベルトがヨーク5の第1および第2スロットを通って延在する方向を示す。
【0041】
無端ベルトの上方および下方の磁界を測定する測定デバイス7は、幅7aを有する。無端ベルト(図示せず)の上方に配置された測定デバイス7の幅は、無端ベルトの下方に配置された測定デバイスの幅に対応する。同様に、無端ベルトから鉄心5に入る磁束を測定する測定デバイス8は、幅8aを有する。無端ベルトの上方に配置された測定デバイス8の幅は、無端ベルトの下方の当該幅部分に配置された測定デバイス8の幅に対応する。
【0042】
磁気特性が測定される無端ベルトの1つの部分の幅7aまたは幅8aは、測定デバイス7の幅または測定デバイス8の同一の幅、すなわち測定デバイスの幅によって決まる。そのため、測定デバイス7および8は、1つの幅部分について、場の強さまたは磁束を求める。したがって、
図3に示されている設計では、測定時に装置の中に存在する、無端ベルト2の1つの長さ部分が、計測上は、3つの互いに並んだ幅部分に細分割される。
【0043】
図4aは、測定デバイス7,8の別の配置の概略斜視図を示す。測定デバイス7,8は、ヨーク5の内側またはヨークの空隙(スロット)に配置されている。上記の
図3と同様に、無端ベルト2、一次励磁コイルいずれも図示されていない。
【0044】
図4bは、無端ベルトに平行な磁界を測定するための測定デバイス7の配置と、無端ベルトからヨーク5に入る磁束を測定するための測定デバイスであるプローブコイル8の対応する配置とを示す概略上面図である。
図4bには、これら測定デバイスの配置を示すために、ヨーク5の上側脚部は示されていない。この図に模式的に示されているように、ヨーク5は、バンド方向に並べて配置された複数の部分ヨークで構成してもよい。
【0045】
無端ベルトの移動方向は、この図でも矢印2aで示されている。これら測定デバイスの配置が示しているのは、無端ベルトの縁またはヨーク5の一方の縁に載置された3つの測定デバイス7’の測定幅は、中心に配置された8つの測定デバイス7”より狭いことである。同様に、無端ベルトの縁またはヨーク5の一方の縁に配置されたプローブコイル8’の幅は、中心に配置された8つのプローブコイル8”の幅より相応に狭い。1つの幅部分のこれら測定デバイス7の測定幅は、ここでも1つの測定デバイス8の測定幅に対応する。これにより、無端ベルトの1つの幅部分の磁気特性を、一対の測定デバイス7と一対の測定デバイス8とによって求めることができる。本実施形態においては、無端ベルトの1つの長さ部分の磁気特性を検出するために、合計で14対の測定デバイス7(例えば界磁コイル)および対応する14対の測定デバイス8(例えばプローブコイル)が使用される。各縁に設けられた3対の界磁コイル7’および3対のプローブコイル8’の幅は、より中心に配置された、対応する界磁コイル対7”またはプローブコイル8”の幅より小さい。したがって、この配置では、無端ベルトの各縁領域における磁気特性をより細かい分解能で求めることができる。
【0046】
強磁性無端ベルトの磁気特性測定用の従来の装置類に、励磁コイル3と総磁界を求めるための二次コイル6とに加えて、ヨーク5を設け、装置内の空間条件が適切となっている場合は、磁界を求めるための測定デバイス7を無端ベルトに平行に配置できる。すなわち、無端ベルトからヨークに入る磁束を測定するために、例えば、界磁コイル7および対応するプローブコイル8を配置できる。
【符号の説明】
【0047】
1 磁気特性を測定するための装置
1a 筐体
2 無端ベルト
2a 無端ベルトの移動方向
3 励磁コイル、一次コイル
3a 巻線
4 磁界
5 ヨーク
6 二次コイル
7 界磁コイル、測定デバイス
7a 幅=界磁コイルの測定幅
7’ エッジ領域の界磁コイル、測定デバイス
7” 中心領域の界磁コイル、測定デバイス
8 プローブコイル、測定デバイス
8a 幅=プローブコイル8の測定幅
8’ エッジ領域のプローブコイル、測定デバイス
8” 中心領域のプローブコイル、測定デバイス