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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028554
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】アクセスポイント及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20240226BHJP
   H04W 28/16 20090101ALI20240226BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240226BHJP
   H04W 74/04 20090101ALI20240226BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W28/16
H04W84/12
H04W74/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007437
(22)【出願日】2024-01-22
(62)【分割の表示】P 2021563378の分割
【原出願日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】10201904246S
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(71)【出願人】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チトラカール ロジャン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン レイ
(72)【発明者】
【氏名】浦部 嘉夫
(57)【要約】
【課題】マルチAPネットワークにおいてジョイント送信及び再送通信の提供を容易にすること。
【解決手段】APは、マルチAP送信データをカプセル化し、カプセル化されたマルチAP送信データと、カプセル化されたマルチAP送信データに割り当てられたマルチAP送信パケットIDと、を含むデータフレームを生成し、データフレームをスレーブAPに送信し、マルチAP送信を開始するための、割り当てられたマルチAP送信パケットIDを含む第1のマルチAP送信トリガフレームを送信し、通信装置が、AP及びスレーブAPによってマルチAP送信において通信装置にジョイント送信されたデータフレームの1つ以上のMPDUを受信することに失敗したと判断し、失敗したMPDUをスレーブAPに再分配することなく、割り当てられたマルチAP送信パケットIDを含む第2のマルチAP送信トリガフレームをスレーブAPに送信する。
【選択図】図31
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイント(AP)であって、
マルチAP送信データをカプセル化し、カプセル化された前記マルチAP送信データと、カプセル化された前記マルチAP送信データに割り当てられたマルチAP送信パケットIDと、を含むデータフレームを生成する回路と、
前記データフレームをスレーブAPに送信し、マルチAP送信を開始するための、割り当てられた前記マルチAP送信パケットIDを含む第1のマルチAP送信トリガフレームを送信する送信機と、
を備え、
前記回路は、通信装置が、前記AP及び前記スレーブAPによって前記マルチAP送信において前記通信装置にジョイント送信された前記データフレームの1つ以上のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を受信することに失敗したと判断し、
前記送信機は、失敗した前記MPDUを前記スレーブAPに再分配することなく、割り当てられた前記マルチAP送信パケットIDを含む第2のマルチAP送信トリガフレームを前記スレーブAPに送信する、
AP。
【請求項2】
前記第2のマルチAP送信トリガフレームは、前記通信装置に再度ジョイント送信される前記MPDUを示す、
請求項1に記載のAP。
【請求項3】
アクセスポイント(AP)において、マルチAP送信データをカプセル化することと、
前記APにおいて、カプセル化された前記マルチAP送信データと、カプセル化された前記マルチAP送信データに割り当てられたマルチAP送信パケットIDと、を含むデータフレームを生成することと、
前記APによって、前記データフレームをスレーブAPに送信することと、
前記APによって、マルチAP送信を開始するための、割り当てられた前記マルチAP送信パケットIDを含む第1のマルチAP送信トリガフレームを送信することと、
前記APにおいて、通信装置が、前記AP及び前記スレーブAPによって前記マルチAP送信において前記通信装置にジョイント送信された前記データフレームの1つ以上のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を受信することに失敗したと判断することと、
前記APによって、失敗した前記MPDUを前記スレーブAPに再分配することなく、割り当てられた前記マルチAP送信パケットIDを含む第2のマルチAP送信トリガフレームを前記スレーブAPに送信することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電子デバイス及びシステムのための通信装置及び通信方法に関し、より詳細には、マルチAPネットワークにおけるジョイント再送(joint re-transmission)に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチAPジョイント送信(joint transmission)を介して通信する無線ネットワークは、電子デバイスが、複数の電子デバイスに送られるジョイント送信をもってネットワークにおいて通信することを可能にする。このようなネットワークは、無線通信が1つの電子デバイスへの単一の送信に制限される他の無線ネットワークよりも有利である。
【発明の概要】
【0003】
非限定的且つ例示的な一実施形態は、マルチAPネットワークにおいてジョイント送信及び再送通信を提供することを容易にする。例えば、この通信は、2つ以上のアクセスポイント(AP)と1つ以上の無線局(無線ステーション:STA)との間のジョイント再送を含む。
【0004】
例示的な一実施形態は、動作中、別のアクセスポイント(AP)から、通信装置にジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示すジョイント送信(JT)トリガフレームを受信する受信機と、前記通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUを記憶するローカルメモリと、を含むAPである。
【0005】
なお、一般的な実施形態又は特定の実施形態は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、記憶媒体、又はこれらの任意の選択的な組み合わせとして、実現可能であることに留意されたい。
【0006】
開示されている実施形態の更なる恩恵及び利点は、本明細書及び図面から明らかになるであろう。これらの恩恵及び/又は利点は、本明細書及び図面の様々な実施形態及び特徴によって個別に得ることができる。ただし、このような恩恵及び/又は利点のうちの1つ以上を得るために、これらの特徴全てを設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面において、同様の参照符号は、別々の図を通して同一の要素又は機能的に類似する要素を示す。添付の図面は、以下の詳細な説明と共に本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する。添付の図面は、様々な実施形態を例示するとともに、本実施形態に従った様々な原理及び利点を説明する役割を果たす。当業者は、図面中の要素が、単純且つ明確にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないことを理解するであろう。
図1】例示的な実施形態に従ったマルチAPシステムを含む無線ネットワークを示す図
図2A】例示的な実施形態に従った、企業ネットワークとして示されるマルチAPシステムを示す図
図2B】例示的な実施形態に従った、ホームネットワーク又はオフィスネットワークとして示されるマルチAPシステムを示す図
図2C】例示的な実施形態に従った、マスタ-スレーブ構成として示されるマルチAPシステムを示す図
図3】例示的な実施形態に従ったMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示す図
図4】例示的な実施形態に従った、マルチAPシステムでのジョイント送信におけるメッセージシーケンスを示す図
図5A】例示的な実施形態に従った、JTデータをカプセル化するために使用されるデータフレームを示す図
図5B】例示的な実施形態に従った、JTデータをカプセル化するために使用されるデータフレームを示す図
図6】例示的な実施形態に従った、データフレームと、プロトコル名及びペイロードタイプを示す第1のテーブルと、AP協調パケットタイプを示す第2のテーブルと、を示す図
図7】例示的な実施形態に従った、マスタAPとスレーブAPとターゲットSTAとの間のジョイント送信を示す図
図8】例示的な実施形態に従ったJTトリガフレームを示す図
図9】例示的な実施形態に従った、マルチAPシステムにおけるマスタAPとスレーブAPとの間のジョイント送信セッションのためのメッセージシーケンスを示す図
図10】例示的な実施形態に従った、ジョイント送信セッションをネゴシエート又はティアダウンするために無線で交換されるAP協調アクションフレームを示す図
図11】例示的な実施形態に従った、イーサネット(登録商標;以降省略)フレームがJTデータ及びAP協調アクションフレームをカプセル化するフレームを示す図
図12】例示的な実施形態に従った、ターゲットSTAへのジョイント送信のためのトリガフレームを示す図
図13】例示的な実施形態に従った、マスタAPがジョイント送信に参加しない通信交換を示す図
図14】例示的な実施形態に従った、別のAPから情報を収集するために、情報問い合わせフェーズにおいてAPによって使用されるアクションフレームを示す図
図15】例示的な実施形態に従った、マスタAPからスレーブAPへのデータ共有のためのフレームを示す図
図16】例示的な実施形態に従った、集約MACプロトコルデータユニット(A-MPDU)としてのJTデータフレームを示す図
図17】例示的な実施形態に従った、スレーブAPへのデータ共有に使用される集約MACプロトコルデータユニット(A-MPDU)としてのフレームを示す図
図18】例示的な実施形態に従ったジョイント送信トリガフレームを示す図
図19】例示的な実施形態に従った、両方ともマスタAPにアソシエーションされている2つのSTAへの分散MU-MIMOジョイント送信の例を示す図
図20】例示的な実施形態に従った、JTデータフレーム、確認応答(ACK又はAck)フレーム及びBlockAck(ブロックAck)フレームを示す図
図21】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータフレームを受信することに失敗し、マスタAPがジョイント送信手順を繰り返すジョイント送信を示す図
図22】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータフレームを受信することに失敗し、スレーブAPがAckフレームを処理し、マスタAPがデータ分配を繰り返すことなくジョイント送信を繰り返すジョイント送信を示す図
図23】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPが、BlockAckフレームを処理し、JTデータを削除するジョイント送信を示す図
図24】例示的な実施形態に従った、マスタAPがBlockAckフレームを受信することに失敗した場合に、STAがJTデータを受信することに失敗したジョイント送信及びエラー回復を示す図
図25】例示的な実施形態に従った、AP協調情報応答フレームと削除理由を含むテーブルとを示す図
図26】例示的な実施形態に従った、バックホールBSS及びフロントホールBSSにおける無線ネットワーク及びSTAとの無線送信を示す図
図27】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPがJTトリガフレームを使用してJT MPDUを削除するジョイント送信を示す図
図28】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPが確認応答フレームに関する情報をマスタAPに中継するジョイント送信を示す図
図29】例示的な実施形態に従ったAP協調情報応答フレームを示す図
図30】例示的な実施形態に従った、バッファをフラッシュする指示を含むJTトリガフレームを示す図
図31】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、非即時BlockAckがジョイント送信に対してサポートされているジョイント送信を示す図
図32】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、非即時BlockAckがジョイント送信に対してサポートされている分散MU-MIMOジョイント送信を示す図
図33】例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗したジョイント送信と、保存されたJTデータを削除するようにスレーブAPに指示する特殊目的フレームと、を示す図
図34】例示的な実施形態に従った、AP協調セッションアクションフィールド値についてのテーブル及びAP協調データフラッシュフレームを示す図
図35】例示的な実施形態に従った電子デバイスを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
電子デバイスは、マルチAPネットワークにおいてジョイント送信(JT)データを送信及び受信するよう構成され得る。これらの電子デバイスは、単一の電子デバイスへの単一の送信に制限される従来の電子デバイスよりも多くの利点を有する。しかしながら、マルチAPネットワークにおいてジョイント送信を実行することは、多くの技術的問題を有する。
【0009】
既存の802.11BSS(基本サービスセット)は、スタンドアロンユニットとして動作する。各BSSのAPは、それぞれのAPにアソシエーションされている無線局(STA)にのみ無線通信サービスを提供する。APが、アソシエーションされているSTAへの無線リンクに提供できるデータレートは、そのリンクに使用されるMCS(変調・符号化方式)に依存し、MCSは、各STAのSINR(信号対干渉雑音比)に依存する。典型的には、より高いMCSは、より高いSINRで達成され得るのに対し、低いSINRレベルでは、低いMCSしか可能でないことがある。スタンドアロンBSSでは、送信電力を調整することによって、APにより信号比を制御することができるが、STAによる干渉経験は、制御するのがはるかに困難である。この問題は、ネットワークのエッジに存在し、複数のBSSの無線範囲(OBSS(オーバーラッピング(オーバーラップする)BSS)ゾーンとしても知られている)内にあるSTAに特に当てはまる。1つのBSSにおける有用な信号は、本質的に、別のBSSのSTAに対する干渉である。
【0010】
マルチAP協調(連携:coordination)(例えば、近傍BSSのAP間の協調)は、メンバーSTAのSINRを改善するための効果的な方法として用いられ得る。そのような方式は、管理されたネットワーク(例えば、企業ネットワーク、スタジアム設定等)又は宅内ネットワーク(例えば、マルチAPホームメッシュネットワークを伴う)における高密度AP配備等、APの増加によって可能になる。
【0011】
様々なマルチAP協調方式は、2つの一般的なグループに分けられ得る。第1のグループは、送信電力制御、協調ビームフォーミング、協調Nullフォーミング、協調スケジューリング等を通じて、OBSSへの干渉を低減させることを試みる方式を含む。第2のグループは、同じSTAへの複数のAPによる同期送信を通じて、STAにおける信号レベルを増大させることを試みる方式を含む。第2のグループの方式は、マルチAPジョイント処理若しくはマルチAPジョイント送信又は分散MU-MIMOとして知られているかもしれない。
【0012】
ジョイント送信は、信号レベルを改善するだけでなく、干渉信号を希望信号に変換することによって干渉を低減させる。したがって、例示的な実施形態は、STAへの干渉を低減させ、STAに対するSINRを改善することによって、オーバーラップするBSS又はマルチAPシステムにおけるSTAに関連する技術的問題を解決する。これらの問題は、スレーブAP間でジョイント送信データ(ジョイントMU-MIMOデータ)をどのように分配して(distribute)同期させるか、及び、本明細書で説明する他の問題を含む。
【0013】
例示的な一実施形態は、動作中、別のアクセスポイント(AP)から、通信装置にジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示すジョイント送信(JT)トリガフレームを受信する受信機と、通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUを記憶するローカルメモリと、を含むAPである。
【0014】
例示的な別の実施形態は、アクセスポイント(AP)であって、動作中、通信装置が、AP及び別のAPによって通信装置にジョイント送信された1つ以上のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を受信することに失敗したと判断する回路と、動作中、失敗したMPDUを別のAPに再分配すること(re-distributing)なく、ジョイント送信(JT)トリガフレームを別のAPに送信する送信機と、を含むAPである。
【0015】
図1は、例示的な実施形態に従ったマルチAPシステム100を含む無線ネットワークである。例えば、システム100は、3つのBSS(BSS1、BSS2及びBSS3として示されている)を含む。各BSSは、少なくとも1つのAP(AP1、AP2及びAP3として示されている)を有する。複数のSTA(STA1~STA5として示されている)は、システム全体にわたって分散されている。STA1は、単一のBSS(BSS1)に存在し、STA2は、3つのオーバーラップするBSS(BSS1~BSS3)に存在し、STA3は、2つのオーバーラップするBSS(BSS1及びBSS3)に存在し、STA4は、2つのオーバーラップするBSS(BSS2及びBSS3)に存在し、STA5は、単一のBSS(BSS2)に存在する。
【0016】
図1では、STA2は、AP3にアソシエーションされているが、3つのAP(AP1、AP2及びAP3)は、STA2に同時に送信するようにそれらの送信を協調することができる。この同時送信は、STA2におけるSINRレベルを増大させ、STA2についてのより高いスループットに変換されるより高いMCSの使用を容易にする。
【0017】
マルチAP協調方式は、典型的には、参加AP間で、何らかの種類の時間同期を利用するが、利用される同期レベルは、ジョイント送信、特に分散MU-MIMOの場合に、最も高い。このため、例示的な1つ以上の実施形態は、1つのAP(マスタAPと呼ばれる)が同期信号を提供し、他の参加AP(スレーブAPと呼ばれる)がマスタAPの範囲内にあるジョイント送信を実現する。図1では、AP3がマスタAPであるのに対し、AP1及びAP2がスレーブAPである。マスタAPは、コーディネーティングAP若しくはジョイント送信(JT)AP又はマルチAPコントローラ等といった代替名によって知られているかもしれないのに対し、スレーブAPは、マルチAPデバイス又はコーディネーテッドAP等として知られているかもしれない。
【0018】
例示的な実施形態では、以下でより詳細に説明するように、ジョイント送信は、全参加APがSTAに同じ信号を送信することを含む。これは、MACレイヤ固有フィールドが全参加APで同等であることを含む。
【0019】
図2Aは、例示的な実施形態に従った、企業ネットワークとして示されるマルチAPシステム200である。例えば、このシステムは、オーバーラップする送信でブロードキャストする複数のAP(AP1~AP8として示されている)を含む。各APは、それぞれのチャネル(Ch)を動作させる。例えば、AP1は、Ch36で動作し、AP2は、Ch52で動作し、AP3は、Ch149で動作し、AP4は、Ch44で動作し、AP5は、Ch56で動作し、AP6は、Ch161で動作し、AP7は、Ch48で動作し、AP8は、Ch60で動作する。
【0020】
企業ネットワークでは、APの位置及び周波数割当ては、容量を最大化するように、配備中に慎重に計画される。図2Aに示すように、隣接するAPは、BSS間干渉を最小限に抑えるために、オーバーラップしないチャネルを使用する。APは、ビーム幅の狭い高利得指向性アンテナを使用することができる。隣接するAPは、互いの無線範囲内にないこともある。複数のAP又は全てのAPは、同じサービスセット識別子(SSID)を使用することができる。更に、APは、イーサネットを使用して接続され、中央APコントローラによって設定及び/又は制御されてもよい。ほとんどのエッジSTAは、少なくとも2つのAPのカバレッジ内にある。AP間通信は、例えば、イーサネット又は帯域外メッシュ無線直接リンクを用いることができる。隣接するAPに、オーバーラップしないプライマリチャネルが割当てられているにもかかわらず、広帯域チャネルが使用される場合、BSS間干渉がOBSSゾーンに存在することは不可避である。ほとんどの企業ネットワークは中央管理され、AP間の協調がより容易であるので、企業ネットワークは、ジョイント送信システムの主要な候補である。
【0021】
図2Bは、例示的な実施形態に従った、ホームネットワーク又はオフィスネットワークとして示されるマルチAPシステム230である。例えば、このシステムは、オーバーラップする送信でブロードキャストする複数のAP(AP1~AP3として示されている)を含む。各APは、それぞれのチャネルを動作させる。例えば、AP1は、Ch36で動作し、AP2は、Ch149で動作し、AP3は、Ch52で動作する。
【0022】
マルチAPシステム(例えば、Wi-Fi(登録商標;以降省略) EasyMesh)は、住宅又はオフィス等のエリア全体にわたってWi-Fiカバレッジを提供するための例示的な構成である。APの位置及び周波数割当ては、カバレッジを最大化するように計画される。例えば、1つのAPが、マルチAPコントローラとして動作してよいのに対し、残りのAPが、マルチAPエージェントとして動作してよい。APは、少なくとも1つの他のAPの無線カバレッジ内にあることが予想され得る。バックホールBSSは、AP間シグナリングのためにセットアップされる。バックホールBSSは、フロントホールSSIDとは異なるSSIDを使用してよい。ほとんどのエッジSTAは、少なくとも2つのAPのカバレッジ内にある。更に、AP間通信は、無線直接リンク又は無線リンクと有線リンクとの混合を用いることができる。このようなマルチAPホーム又はスモールオフィスネットワークも、ジョイント送信システムの良い候補である。
【0023】
図2Cは、例示的な実施形態に従った、マスタ-スレーブ構成として示されるマルチAPシステム260である。例えば、このシステムは、マスタAP270と、2つのスレーブAP280及び282と、STA284と、を含む。AP間通信は、リンク290を介して行われ、APとSTAとの間の通信は、リンク292を介して行われる。
【0024】
ジョイント送信の場合、APは、実際のジョイント送信の前に、STAにジョイント送信される送信データ(上位レイヤデータ)を所有する。しかしながら、例示的な1つ以上の実施形態では、送信データを所有することは、ジョイント送信のSINR利得を実現するために十分ではないことがある。無線で送信される実際のデータシンボルは、複数のAP又は全てのAP等の参加AP間で同期される必要がある。これは、送信データのPHYレイヤ処理及びMACレイヤ処理が、参加AP間で同じであることを意味する。例示的な実施形態は、マルチAPジョイント送信のためにデータを分配して同期させるためのシステム、装置及び方法を含む。
【0025】
例示的な1つ以上の実施形態では、ジョイント送信は、2つのフェーズで行われる、すなわち、スレーブAPへのJTデータの分配(distribution)と、ターゲットSTAへのジョイント送信と、が行われる。
【0026】
第1フェーズ(スレーブAPへのジョイント送信データの分配)では、ジョイント送信されるデータは、実際のジョイント送信の前に、図2Cにおけるリンク290等の、APからAPへのリンクを介して、参加スレーブAPに分配される。分配は、AP間の無線バックホールリンクを介して行われてもよいし、AP間の有線バックホールリンク(例えば、イーサネット)を介して行われてもよい。無線バックホールが使用される場合、スレーブAPは、ジョイント送信を開始する前に、AP間の通信を目的として、マスタAPによってセットアップされた別個のBSSにおいてマスタAPにアソシエーションされていることがある。AP間のバックホールリンクに使用される無線チャネルは、APとターゲットSTAとの間のフロントホールリンクと異なってよい。
【0027】
第2フェーズ(ターゲットSTAへのジョイント送信)では、ターゲットSTAへの2つ以上の参加APによる実際のジョイント送信が、図2Cにおける無線リンク292等のリンクを介して行われる。ジョイント送信の前に、スレーブトリガフレーム又はジョイント送信(JT)トリガフレーム(JT Trigger frame)と呼ばれることがある、リンク290を介したマスタAPからの同期信号が先行してよい。いくつかのシナリオでは、マスタAPは、ジョイント送信に参加してよいのに対し、いくつかのシナリオでは、マスタAPは、ジョイント送信に参加し得ず、スレーブAPのみが、ジョイント送信に参加してよい。異なるAPのセットは、異なるターゲットSTAへのジョイント送信に関与してよい。
【0028】
図3は、例示的な実施形態に従った、ジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)300である。MPDUは、MACヘッダ(MAC Header)及びフレームボディ(Frame Body)を含む。MACヘッダは、フレーム制御(Frame Control)と、継続時間(Duration)と、アドレス1(Address 1)(受信機アドレス(RA:Receiver Address))と、アドレス2(Address 2)(送信機アドレス(TA:Transmitter Address))と、アドレス3(Address 3)(BSSID)と、シーケンス制御(Sequence Control)と、QoS制御(QoS Control)と、HT制御(HT Control)と、を含む。フレームボディは、データペイロード(Data Payload)と、MICと、FCSと、を含む。アドレス3フィールドは、データフレームがA-MSDUを運ぶ場合、BSSIDを運ぶ。そうでない場合、アドレス3フィールドは、ソース(送信元)アドレス(SA:Source Address)、すなわち、データペイロードのソースであるデバイスのMACアドレスを運ぶ。
【0029】
ジョイント送信のSINR利得を実現するために、無線で送信される実際のデータシンボルは、参加AP間で同期される。更に、送信のPHYレイヤ処理及びMACレイヤ処理は、参加AP間で同じである。典型的には、通常の送信(例えば、非ジョイント送信)の場合、上位レイヤ(例えば、IPレイヤ)は、MPDU(MACプロトコルデータユニット)300を生成するために、MACヘッダの先頭への付加、FCSの付加、必要に応じてMACパディング等のMACレイヤ処理を実行するMACレイヤに、送信されるデータペイロード(例えば、IPパケット)を渡す。保護が有効化されている場合、データペイロードは、更に、MACフレームボディへのCCMPヘッダ(CCMP Header)フィールド及びMICフィールドの付加をもたらす暗号化手順を受けることがある。次いで、MPDUは、PHYプリアンブルの先頭への付加、PHY符号化の適用、PHYパディングの付加等といったPHYレイヤ処理のために、PHYレイヤに渡されて、PPDU(PHYプロトコルデータユニット)が生成され、最後にPPDUが無線で送出される。
【0030】
ジョイント送信の場合、参加APは、データペイロードに適用されるMACパラメータ及びPHYパラメータを認識している必要がある。加えて、MACレイヤでは、ローカルで生成されるいくつかのフィールドがある。フレーム制御、アドレス2(TA)、アドレス3(BSSID)、QoS制御、HT制御等の一部のフィールドは、マスタAPによって生成されたフィールドと一致するように、スレーブAPのMACレイヤによって上書きされることがあるのに対し、シーケンス制御、CCMPヘッダ等の一部のフィールドは、MPDUごとに異なり、通常は各APにおいてローカルで生成される。したがって、このようなフィールドは、AP間で同期させるのがより困難である。更に、MACレイヤにおいて、2つ以上のMPDUを集約して、A-MPDU(集約MPDU:Aggregated MPDU)を形成することもあるし、1つのMPDUが、S-MPDU(単一MPDU:Single MPDU)を構成することもある。全参加APのMACレイヤ間でジョイント送信されるデータを同期させるために、マスタAPは、実際のMACレイヤA-MPDU又はS-MPDUを生成して全参加スレーブAPに分配することができる。MPDU内のシーケンス制御フィールドは、マスタAPによって生成され、同じ番号空間が、マスタAPからターゲットSTAへの直接送信(すなわち、単一のAP送信)及びジョイント送信の両方のために、シーケンス制御フィールドのシーケンス番号サブフィールドに使用される。暗号化が有効化されている場合、マスタAPは、データペイロードも暗号化し、MICフィールドを付加する。この場合、ジョイント送信(JT)データは、ジョイント送信されるMACレイヤデータを指す。
【0031】
場合によっては、マスタAPは、実際のジョイント送信フェーズに関与しないこともある(例えば、スレーブAPのみがジョイント送信に参加することもある)。これは、マスタAPが、中央コントローラとして実現され、ターゲットSTAから離れている場合に、起こり得る。この場合、ターゲットSTAは、スレーブAPのうちの1つにアソシエーションされ、マスタAPにはアソシエーションされない。
【0032】
ターゲットSTAがスレーブAPにアソシエーションされているこのような場合、データ分配フェーズ中に、マスタAPは、MPDUが、ターゲットSTAがアソシエーションされているスレーブAPによって生成されたように見えるように、MPDU300のMACヘッダフィールドを設定する。例えば、アドレス2(TA)フィールド及びアドレス3(BSSID)は、スレーブAPのMACアドレスに設定される。また、マスタAPは、使用される次のシーケンス制御と、オプションとして、ターゲットSTAへの送信に使用されるCCMPパケット番号(PN)及び暗号化鍵IDと、についてスレーブAPに問い合わせ、MPDU300のフィールドをそれぞれ設定する。この場合のMPDU内のシーケンス制御フィールドは、スレーブAPによって生成され、同じ番号空間が、スレーブAPからターゲットSTAへの直接送信(すなわち、単一のAP送信)及びジョイント送信の両方のために、シーケンス制御フィールドのシーケンス番号サブフィールドに使用される。
【0033】
図4は、例示的な実施形態に従った、マルチAPシステムでのジョイント送信におけるメッセージシーケンス400である。
【0034】
802.11WLAN等の分散無線ネットワークでは、無線チャネルへのアクセスは、CSMA/CAによって制御され、正確な送信時間を予測することは困難である。同様に、送信失敗及び再送は、送信の順序を維持することを困難にする。このため、ジョイント送信では、データ分配フェーズとジョイント送信フェーズとを分離することが有利であり得る。
【0035】
図4に示すように、ジョイント送信は、2つのフェーズで行われる、すなわち、スレーブAPへのジョイント送信データの分配と、1つ以上のターゲットSTAへのジョイント送信と、が行われる。第1フェーズでは、1つ以上のジョイント送信データが、(例えば、無線バックホールを介して)スレーブAPに分配される。各ジョイント送信データには、一意なIDが割当てられる。第2フェーズでは、マスタAPは、JTトリガフレームを送信することによって、ジョイント送信を開始する。このフレームは、全参加APによってジョイント送信されるジョイント送信データを識別する一意なIDを運ぶ。
【0036】
図4は、データ分配フェーズ410がジョイント送信フェーズ420から分離されるジョイント送信に関わる例示的なメッセージシーケンスを示している。データ分配フェーズ410中に、マスタAPは、1つ以上のジョイント送信(JT)データをスレーブAPに分配する。この場合のJTデータは、ジョイント送信される実際のS-MPDU又はA-MPDUであってよく、スレーブAPにアドレス指定された別のデータフレーム内にカプセル化される。JTデータを分配するオーバーヘッドを低減させるために、カプセル化データフレームは、ユニキャスト送信の代わりにグループキャスト送信としてスレーブAPに送信されてよい。マスタAPは、マルチユーザ(MU)PPDUフォーマットを使用して、異なるJTデータを異なるスレーブAPに同時に分配することもできる。
【0037】
各JTデータを一意に識別するために、マスタAPは、JTパケットID(JT Packet ID)と呼ばれることがある一意なIDを各JTデータに割当てる。各スレーブAPは、カプセル化されたJTデータ(encapsulated JT Data)を受信すると、JTパケットIDによってインデクシングされたJTデータを逆カプセル化して(de-encapsulate)、ローカルメモリに保存する。スレーブAPが、JTデータをターゲットSTAに直ちに転送するのではなく、JTデータを保存することを確実にするために、RAをスレーブAPのMACアドレスに設定することによって、JTデータをカプセル化するデータフレームを、スレーブAPにアドレス指定することができる。4アドレスMACヘッダが、スレーブAPへのデータフレームに使用される場合、RA(アドレス1)及びDA(アドレス3)の両方を、スレーブAPのMACアドレスに設定することができる。ジョイント送信及びより速い取得のための厳しい時間同期要件に起因して、JTデータフレームは、別個のメモリ(例えば、ローカルEDCAキューとは異なる)に保存されてよい。
【0038】
ジョイント送信フェーズ420では、マスタAPは、JTトリガフレームをスレーブAPに送信することによって、ジョイント送信を開始する。JTトリガフレームは、スレーブAPに時間同期を提供する。加えて、JTトリガフレームは、ジョイント送信されるJTデータのJTパケットIDも運ぶ。各スレーブAPは、JTトリガフレームを受信すると、JTパケットIDに対応するJTデータをローカルメモリから取得し(取り出し)、JTデータから構築されたJT PPDUを送信する。
【0039】
図5A及び図5Bは、例示的な実施形態に従った、JTデータをカプセル化するために使用されるデータフレームである。
【0040】
図5Aは、データフレーム(Data frame)500のフレームボディ内に、この場合はS-MPDUであるJTデータ(JT Data)をカプセル化する、マスタAPによって送信されるデータフレーム500を示している。S-MPDUは、MPDUデリミタ(MPDU Delimiter)と、実際のMPDUと、必要に応じてパディング(Padding)と、から構成される。各ジョイント送信データには、一意なID(JTパケットID)が割り当てられている。この場合、JTパケットIDは、S-MPDUを一意に識別する。
【0041】
図5Bは、データフレーム550のフレームボディ内に、この場合はA-MPDUであるJTデータをカプセル化する、マスタAPによって送信されるデータフレーム550を示している。A-MPDUは、2つ以上のA-MPDUサブフレーム(A-MPDU subframe)と、必要に応じてEOF(End-of-frame)パディング(EOF Padding)と、から構成される。各A-MPDUサブフレームは、S-MPDUと同じフォーマットを共有する。この場合、JTパケットIDは、A-MPDUを一意に識別する。
【0042】
暗号化が有効化されている場合、JTデータ内のMPDUの各々は、データフレーム500又は550内にカプセル化する前に、マスタAPによっても暗号化される。
【0043】
各スレーブAPは、カプセル化されたJTデータを受信すると、JTパケットIDによってインデクシングされたJTデータを逆カプセル化して、ローカルメモリに保存する。ジョイント送信のための厳しい時間同期要件に起因して、より速い取得のために、JTデータフレームは、別個のメモリ(例えば、ローカルEDCAキューとは異なる)に保存されてよい。
【0044】
スレーブAPは、受信したJTデータを1つ以上のターゲットSTAに直ちに転送しない。これを確実にするために、4アドレスMACヘッダが、スレーブAPへのデータフレームに使用される場合、RA(アドレス1)及びDA(アドレス3)の両方が、スレーブAPのMACアドレスに設定される。
【0045】
図6は、例示的な実施形態に従った、データフレーム600と、ペイロードタイプフィールドの符号化を示す第1のテーブル610と、AP協調パケットタイプフィールドの符号化を示す第2のテーブル620と、を示している。
【0046】
データフレーム600は、(例えば、図4における410において説明した)データ分配フェーズ中にJTデータをカプセル化する。この例では、データフレーム600のフレームボディは、他のカプセル化タイプと区別するために、ペイロードタイプ(Payload Type)フィールドが5「AP協調(AP Coordination)」に設定されているEthertype 89-0dフレームを運ぶ。Ethertype 89-0dは、イーサネットフレーム内のIEEE802.11フレームのカプセル化のために元々割り当てられたEthertypeである。ペイロードタイプが「AP協調」に設定されている場合のEthertype 89-0dフレームのペイロードは、テーブル620に示すように、AP協調パケットタイプ(AP Coordination Packet Type)フィールドが0、1又は2に設定されている場合、パケット内容(Packet Content)フィールド内のJTデータを運ぶことができる。送信先MACアドレス(Destination MAC Address)は、ターゲットSTA(例えば、ジョイント送信のターゲット)のMACアドレスを運ぶ。JTパケットIDは、JTデータに割当てられる一意なIDであるのに対し、パケット長(Packet Length)フィールドは、パケット内容フィールドにおいて運ばれるJTデータのサイズを示す。802.11データフレームが、JTデータをカプセル化するために排他的に使用される場合、ホスト802.11データフレームのシーケンス制御フィールド632内のシーケンス番号(Sequence Number)サブフィールド630は、暗黙的なJTパケットIDとして使用されてよく、JTパケットIDフィールドは、Ethertype 89-0dフレームボディ内で省かれてよい。
【0047】
スレーブAPが、JTデータをターゲットSTAに直ちに転送するのではなく、JTデータを保存することを確実にするために、MACヘッダのRAフィールドをスレーブAPのMACアドレスに設定することによって、JTデータをカプセル化するデータフレーム600が、スレーブAPにアドレス指定される。4アドレスMACヘッダが使用される場合、RA(アドレス1)及びDA(アドレス3)の両方が、スレーブAPのMACアドレスに設定される。
【0048】
図7は、例示的な実施形態に従った、マスタAPと、スレーブAPと、ターゲットSTAと、の間のジョイント送信700を示している。
【0049】
(例えば、図4における420において説明した)ジョイント送信フェーズでは、マスタAPは、JTトリガフレーム710をスレーブAPに送信することによって、ジョイント送信を開始する。同期に使用されるPHYパラメータ及びMACパラメータに加えて、JTトリガフレームは、ジョイント送信されるJTデータのJTパケットIDも運ぶ。各スレーブAPのMACレイヤは、そのスレーブAPをジョイント送信に参加しているAPとして識別するJTトリガフレームを受信すると、JTパケットIDに対応するJTデータをローカルメモリから取得しPHYレイヤに渡す。PHYレイヤは、そのJTデータからJT PPDUを構築した後、JTトリガフレームの終了からSIFS(Short Interframe Space)後にJT PPDUを送信する。マスタAPも、JTパケットIDに対応するJTデータからJT PPDUを構築し、JTトリガフレームの終了からSIFS後にJT PPDUを送信する。チャネル状態は、異なるAPで異なり得るので、各スレーブAPは、マスタAP又はターゲットSTAの送信に起因して設定されたNAV(ネットワーク割当てベクトル)が無視され得ることを除いて、チャネルが、JTトリガフレームの終了後のSIFS中にアイドルであるとみなされる場合にのみ、チャネル状態を考慮し、JT PPDUを送信する必要があり得る。ターゲットSTAに関しては、JTデータを受信すると、複数のAPが送信に関与したことさえ認識しないことがある。ターゲットSTAに関する限り、これは、マスタAP、又は、フレームのTAアドレス(アドレス2)フィールドにおいて現れるMACアドレスを有するAPからの単なる別の送信である。受信が成功した場合、ターゲットSTAは、TAアドレス(アドレス2)フィールドにおいて現れるMACアドレスを有するAPに、確認応答フレーム(ACK又はブロックAck)を送信する。
【0050】
図8は、例示的な実施形態に従ったJTトリガフレーム800である。各ユーザ情報(User Info)フィールドは、スレーブAP及びターゲットSTAのセットの情報を運ぶ。
【0051】
スレーブAPのMACアドレス(MAC Address of Slave APs)フィールドは、特定のSTAのセットのためのジョイント送信に参加しているスレーブAPを識別する。単一のスレーブAPのみがジョイント送信に関与している場合、これは省かれることがあり、スレーブAPは、MACヘッダ内のRAフィールドによって識別される。各ユーザ情報フィールド内のAID12フィールドは、アップリンクOFDMA送信を要求するために使用される他のトリガフレームとJTトリガフレームとを区別するために、特別な値(例えば、2047)に設定されてよい。
【0052】
JTパケットIDフィールドは、JT PPDUにおいて運ばれる(格納/記憶された)MPDUを識別する。S-MPDUの場合、これは、S-MPDUのシーケンス制御フィールドの値であってよい。同一のデータがジョイント送信される場合(送信ダイバーシチ)、フィールド値は、異なるスレーブAPに対して同じであってよい。あるいは、異なるデータがジョイント送信される場合(D-MIMO)、フィールド値は、異なるスレーブAPに対して異なってよい。
【0053】
加えて、ジョイント送信PHYレイヤ情報(Joint Transmission PHY Layer Info)フィールドは、JT PPDUの符号化に使用される追加のPHYパラメータを指定する。例えば、意図しないビームフォーミングを防止するために、送信ダイバーシチジョイント送信(非コヒーレントジョイント送信としても知られている)に対しては、異なる巡回シフトダイバーシチ(CSD:Cyclic Shift Diversity)値が、同じ空間ストリームを用いてターゲットSTAへのジョイント送信に参加する異なるAPの送信アンテナ(送信チェーン)に使用されることが望ましい。このような場合、ジョイント送信PHYレイヤ情報フィールドは、スレーブAPが送信チェーンに使用する(CSD)値を指定してよい。マスタAPは、各スレーブAPの各送信チェーンに使用されるCSD値を選択してよく、正確なCSD値をスレーブAPに通知する。あるいは、正確なCSD値をシグナリングする代わりに、マスタAPは、ジョイント送信に関与する送信チェーンにインデックス#を割当て、ジョイント送信PHYレイヤ情報フィールド内でスレーブAPにインデックス#を通知する。スレーブAPは、格納/記憶されているCSD値のテーブルを参照することによって、インデックス#に従ってCSI値を選択する。スレーブAPが2つ以上のアンテナを使用して送信する場合、インデックス#は、テーブル内の次のインデックス#に対応するCSD値を使用する、後続のアンテナとの開始インデックスであってよい。ターゲットSTA情報(Target STA Information)は、スレーブAPによる1つ以上のターゲットSTAへのジョイント送信に関連する情報を運ぶ。ジョイント送信情報(Joint Transmission Information)は、送信される格納/記憶されたデータ及びターゲットSTAに対する空間ストリームを識別する。
【0054】
更に、空間ストリーム割当て(Spatial Stream Allocation)フィールドは、各ターゲットSTAに対して割当てられた空間ストリームを示し、MIMOジョイント送信の場合にのみ存在する。開始空間ストリーム(Starting Spatial Stream)フィールドは、STAに割当てられた最初の空間ストリームを示し、空間ストリーム数(Number of Spatial Streams)フィールドは、STAに割当てられた、最初の空間ストリームを含む連続した空間ストリームの総数を示す。
【0055】
図9は、例示的な実施形態に従った、マルチAPシステムにおけるマスタAPとスレーブAPとの間のジョイント送信セッションのためのメッセージシーケンス900である。
【0056】
ジョイント送信が2つ以上のフレームに対して行われることが予想される場合、例示的な実施形態は、実際のジョイント送信の前に、マスタAPと参加スレーブAPとの間のジョイント送信セッションをセットアップする。ジョイント送信セッションネゴシエーション中に、マスタAP及びスレーブAPは、ジョイント送信に関与するターゲットSTAに関する情報を交換する。マスタAP及びスレーブAPはまた、セッション全体を通じて使用されることが予想されるジョイント送信パラメータ(例えば、使用されるチャネル、PPDUフォーマット(HT、VHT又はHE等)、MU-MIMOのためのプリコーディング方式等)を指定する。各ジョイント送信セッションは、一意なセッションID(Session ID)によって識別される。マスタAPは、AP協調セッション要求(AP Coordination Session Request)フレームをスレーブAPに送信することによって、ジョイント送信セッションのセットアップを開始する。スレーブAPが、この要求を受諾した場合、スレーブAPは、ステータスコードフィールドが受諾(Accept)に設定されたAP協調セッション応答(AP Coordination Session Response)フレームをマスタAPに返送する。マスタAPは、ジョイント送信に参加しているスレーブAPごとにこのプロセスを繰り返す。セッションを終了するために、マスタAPは、AP協調セッションティアダウン(AP Coordination Session Teardown)フレームをスレーブAPに送信する。
【0057】
図10は、例示的な実施形態に従った、ジョイント送信セッションをネゴシエート又はティアダウンするために、AP間で交換されるAP協調アクションフレームを示している。この図は、AP協調セッション要求1000と、AP協調セッション応答1002と、AP協調セッションティアダウン1004と、AP協調セッションアクションフィールド値を有するテーブル1010と、AP協調タイプフィールド値を有するテーブル1020と、を示している。
【0058】
アクション動作フレームの新しいカテゴリが、マルチAP協調用に定義され、カテゴリ(Category)フィールドにおいて示される。5つの新しいアクションフレームが、マルチAP協調に関連するAP間通信を目的として定義され、これらのうちの3つは、セッションのセットアップ/ティアダウンに使用される(テーブル1010にリストされている「AP協調セッションアクション」フィールドの値によって示される)。セッションは、様々なタイプのマルチAP協調方式に対してセットアップされてよく、テーブル1020にリストされているAP協調セッション要求フレームの「AP協調タイプ(AP Coordination Type)」フィールドの値によって示される。例えば、ジョイント送信セッションの場合、これは、2に設定される。AP協調セッション要求フレーム1000内の「ターゲットSTA情報(Target STA Information)」フィールドは、ジョイント送信に参加することが予想される1つ以上のターゲットSTAのMACアドレスをリストする。
【0059】
AP協調セッション要求フレーム1000内の「タイプ固有パラメータ(Type Specific parameters)」フィールドは、AP協調タイプに固有の追加のセッションパラメータを運ぶ。例えば、ジョイント送信の場合、このフィールドは、ジョイント送信のためのチャネル情報を指定することができる。チャネル情報は、マスタAP及びスレーブAPが異なるフロントホールチャネルにおいて動作しているときに存在してよい。「タイプ固有パラメータ」フィールドは、ジョイント送信が開始することが予想される開始時間を示してもよい。高密度ネットワークにおいて、隣接APが、BSS干渉を緩和するために、異なるチャネルにおいて動作することは一般的である。チャネル情報において指定されたチャネルが、スレーブAPの動作チャネルと異なる場合、及び、スレーブAPがAP協調セッション要求を受諾した場合、スレーブAPは、示されるジョイント送信開始時間の前に、指定されたジョイント送信チャネルにチャネルを切り替えることが予想される。
【0060】
別の例として、ジョイント送信の場合、暗号化が、ジョイント送信に対して有効化されており、暗号化が、各APにおいてローカルで実行される場合、「タイプ固有パラメータ」フィールドは、暗号化に使用されるセキュリティ鍵(Security Key)(例えば、PTK)を含んでもよい。
【0061】
更に別の例として、ジョイント送信の場合、「タイプ固有パラメータ」フィールドは、JTデータフレームを保存するためにスレーブAPによって割り当てられるように、マスタAPによって要求されたバッファスペース量を含んでもよい。
【0062】
図11は、例示的な実施形態に従った、イーサネットフレームがJTデータ及びAP協調アクションフレームをカプセル化するフレーム1100を示している。
【0063】
マスタAPは、ジョイント送信データフレーム(ジョイント送信データペイロードを運ぶS-MPDU又はA-MPDU全体)を、802.3(イーサネット)フレーム内にカプセル化し、イーサネットリンクを介してスレーブAPに送信する。暗号化が使用される場合、暗号化されたフレームがカプセル化される。
【0064】
イーサネットフレームが、AP間でAP協調情報を交換するために使用される場合、Ethertype 89-0dフレームは、例えばAP協調セッションをセットアップ又はティアダウンするためのAP協調アクションフレームをカプセル化するために使用されてよい。この場合、ペイロードタイプ(Payload Type)フィールドは、「AP協調(AP Coordination)」に設定され、Ethertype 89-0dフレームペイロードは、AP協調アクションフレームを運ぶ。この場合の「AP協調パケットタイプ(AP Coordination Packet Type)」フィールドは、AP協調アクションフレームに設定(図6におけるテーブル620に示す3に設定)され、パケット内容(Packet Content)フィールドは、AP協調アクションフレームを運ぶのに対し、ペイロード内の他のフィールドは省かれる。
【0065】
MACヘッダ内の送信先アドレス(Destination Address)は、スレーブAPが、受信されたJTデータフレームをターゲットSTAに直ちに転送しないことを確実にする。例えば、そのサブフィールドは、ターゲットSTAのMACアドレスではなく、スレーブAPのMACアドレスに設定される。
【0066】
異なるスレーブAPへの送信は、有線バックホールシナリオ又は混合バックホールシナリオでは時間同期されなくてもよく、同時に又は異なる時間に行われてもよい。JTパケットIDは、ジョイント送信の内容を同期させるために使用される。
【0067】
図12は、例示的な実施形態に従った、ターゲットSTAへのジョイント送信のためのトリガフレーム1200を示している。
【0068】
ジョイント送信トリガフレーム1200は、AP協調セッションID(AP Coordination Session ID)1210を含む。このセッションIDは、どのジョイント送信セッションがトリガされているかを示すために、JTトリガフレームに含まれる。このセッションIDに基づいて、JTトリガフレームを受信するスレーブAPは、セッションセットアップ中にネゴシエートされた共通パラメータを取得する。このような事前ネゴシエートされたパラメータは、マスタAPがパラメータのいずれかを明示的にオーバーライドしない限り、JTトリガフレーム内で省かれる。無線媒体を介したジョイント送信制御シグナリングのオーバーヘッドが低減される。
【0069】
更に、セッションIDに対応する全スレーブAPが、ジョイント送信に関与している場合、スレーブAPのMACアドレスフィールドは省かれてもよい。ターゲットSTAがセッションIDから明らかである場合、送信先MACアドレスフィールドは省かれてもよい。
【0070】
図13は、例示的な実施形態に従った、マスタAPがジョイント送信に参加しない通信交換1300を示している。
【0071】
前述したように、場合によっては、マスタAPは、実際のジョイント送信フェーズに関与しないことがあり、スレーブAPのみが、ジョイント送信に関与することがある。これは、マスタAPが、中央コントローラとして実現され、ターゲットSTAから離れている場合に、又は、マスタAPが、実際のAPでさえなくてもよく、コアネットワーク内のマルチAPコントローラデバイスであってもよい場合に、起こり得る。この場合、ターゲットSTAは、マスタAPではなくスレーブAPのうちの1つにアソシエーションされる。JTトリガフレームを含む、スレーブAPとマスタAPとの間の通信は、有線バックホール(例えば、イーサネット)を介して行われ得る。マスタAPとスレーブAPとの間に無線リンクがない場合、JTトリガフレームであっても、イーサネットフレーム内にカプセル化される。ジョイント送信のための厳しい時間同期要件に起因して、また、JTトリガフレームがスレーブAP間の時間同期に使用されるという事実のために、JTトリガフレームの送信のための有線バックホールの使用は、全参加スレーブAPがJTトリガフレームを同時に受信することが保証され得る場合にのみ可能である。この場合、ペイロードタイプフィールドは「AP協調」に設定され、Ethertype 89-0dフレームペイロードは、JTトリガフレームを運ぶ。この場合の「AP協調パケットタイプ」フィールドは、JTトリガフレームに設定(図6におけるテーブル620に示す4に設定)され、パケット内容フィールドは、JTトリガフレームを運ぶのに対し、ペイロード内の他のフィールドは省かれる。この種類の配備は、スレーブAPがマスタAPの無線範囲内にあることを要求する制約を取り除き、はるかに大規模なジョイント送信を可能にし、中央位置におけるマスタAPは、複数の物理的位置におけるジョイント送信をリモートで管理することができる。しかしながら、全参加スレーブAPがJTトリガフレームを同時に受信することが保証され得ない場合、JTトリガフレームは、無線媒体を介して送信される。
【0072】
ターゲットSTAがマスタAPにアソシエーションされていないこのような場合、マスタAPは、シーケンス制御フィールドに使用される値、又は、スレーブAPによってローカルで生成されたCCMPパケット番号(PN)を知ることができないことがある。例えば、ターゲットSTAがスレーブAP1にアソシエーションされている場合、データ分配フェーズ1320の前に、マスタAPは、情報問い合わせ(クエリ)フェーズ1310を開始し、使用される次のシーケンス制御と、オプションとして、ターゲットSTAへの送信に使用されるCCMPパケット番号(PN)及び暗号化鍵IDとについて、スレーブAP1に問い合わせる。MPDU全体がスレーブAPに分配される場合、マスタAPは、問い合わせた情報を使用して、カプセル化されたJTデータのそれぞれのフィールドを設定する、あるいは、ジョイント送信用のMPDUが、スレーブAPによってローカルで生成される場合、情報は、スレーブAPに分配される。
【0073】
データ分配フェーズ1320よりも前の何らかの時点において、マスタAPはまた、スレーブAP1を介する代わりに、上位レイヤデータがマスタAP自体を介してルーティングされるための設定を行う。これは、マスタAPがターゲットSTAのためのサービングAPとして記録されるように、データペイロードをAPに転送するネットワークルータデバイスのルーティングテーブルを一時的に更新することによって、行われてよい。
【0074】
データ分配フェーズ1320中に、マスタAPは、データが、ターゲットSTAがアソシエーションされているスレーブAP1によって生成されたように見えるように、カプセル化されたJTデータのMACヘッダフィールドを設定する。例えば、ジョイント送信されるMPDUのアドレス2(TA)フィールドが、スレーブAP1のMACアドレスに設定される。また、(JTデータの)MPDUのシーケンス制御フィールド内のシーケンス番号サブフィールドは、暗黙的なJT識別子として使用され、その結果、明示的なJTパケットIDは、JTデータに割当てられない。ジョイント送信フェーズ1330中に、マスタAPは、依然として、JTトリガフレームを送信することによって、ジョイント送信を開始するが、スレーブAPのみが、実際のジョイント送信に参加する。ターゲットSTAでは、送信は、スレーブAP1によって開始されたように見える。
【0075】
図14は、例示的な実施形態に従った、別のAPから情報を収集するために、情報問い合わせフェーズにおいてAPによって使用されるアクションフレーム1400を示している。
【0076】
AP協調情報要求(AP Coordination Info Request)フレームは、マスタAPによって要求された、ターゲットSTAに対するスレーブAPのパラメータに関する情報を示す要求された情報ビットマップ(Requested Information bitmap)を含む。スレーブAPは、AP協調情報応答(AP Coordination Info Response)フレームを使用して、要求された情報をマスタAPに報告する。含まれる情報は、報告された情報ビットマップ(Reported Information bitmap)によって示される。
【0077】
マスタAPは、要求を開始することができるが、スレーブAPが要求を開始することも可能である。AP協調情報要求フレーム1410は、送信APによって要求された、ターゲットSTAに対する受信APのパラメータに関する情報を示す要求された情報ビットマップを含む。受信APは、AP協調情報応答フレーム1420を使用して、要求された情報を要求APに報告する。含まれる情報フィールドは、報告された情報ビットマップによって示される。報告された情報ビットマップにおいて、ビットが1に設定されている場合、対応するフィールドが、AP協調情報応答フレーム1420に含まれ、そうでない場合、対応するフィールドは存在しない。
【0078】
図15は、例示的な実施形態に従った、マスタAPからスレーブAPへのデータ共有のためのフレーム1500を示している。
【0079】
マスタAPは、MACレイヤフレーム全体(MPDU又はA-MPDU)をカプセル化する代わりに、上位レイヤデータペイロード(MSDU(MACサービスデータユニット)としても知られている)と、MACヘッダの他の関連フィールドと、だけを、Ethertype 89-0dフレームボディのペイロードフィールド内にカプセル化する。複数のデータペイロードが含まれる場合、シーケンス制御フィールド及びCCMPヘッダ(含まれる場合)は、それぞれ、開始シーケンス番号(SN)及びパケット番号(PN)を運ぶ。これに基づいて、各スレーブAPは、ジョイント送信されるMPDU又はA-MPDUを生成する。必要に応じて、データの暗号化が、各スレーブAPによって実行される。
【0080】
フレーム制御、継続期間/ID、QoS制御及びHT制御フィールドのコピーが、ローカルで生成されるMPDU用のMACヘッダを生成するためにスレーブAPによって使用される。代替的に、これらのフィールドの一部又は全部は、これらのフィールドがJTセッションを通じて同じままである場合、JTセッションセットアップ中に分配されてもよい。
【0081】
フレーム制御フィールド1520内の「保護フレーム(Protected Frame)」ビットがセットされている場合、CCMPヘッダフィールド1510が存在する。CCMPヘッダフィールド1510は、順次増加するパケット番号(PN)を使用する後続のMPDUで最初のMPDUを暗号化するために使用されるPNを運ぶ。
【0082】
シーケンス制御フィールド1520は、ローカルで生成されるA-MPDUに使用されるシーケンス番号(SN)を運ぶ。これは、最初のMPDUについての開始SNとして使用され、A-MPDUにおける後続のMPDUに対して順次増加する。
【0083】
パケット内容フィールド1530は、上位レイヤペイロード(MSDUとしても知られている)のみを運ぶ。スレーブAPの各々は、ローカルで生成されたMACヘッダを上位レイヤペイロードに付加して、ジョイント送信用のMPDUを生成する。
【0084】
図16は、例示的な実施形態に従った、集約MACプロトコルデータユニット(A-MPDU)としてのJTデータフレーム1600を示している。
【0085】
各スレーブAPは、ジョイント送信データフレーム1600をローカルで生成し、それをメモリに保存する。例えば、各スレーブAPは、マスタAPから受信した情報1602に基づいて、ジョイント送信されるMPDU又はA-MPDUを生成する。図16における矢印は、追加を必要とする一部のフィールドを除いて、フィールドが、ローカルで生成されるMPDUに単にコピーされることを意味する。最初の生成されたMPDUは、マスタAPから受信したシーケンス制御フィールドを直接使用するのに対し、後続の各MPDUは、シーケンス制御フィールド1620内のシーケンス番号サブフィールドを1ずつインクリメントする。MPDU又はA-MPDUは、マスタAPからカプセル化されたデータを受信するとすぐに生成され、メモリに保存されてよい。暗号化が必要とされる場合(フレーム制御フィールド1610内の「保護フレーム(Protected Frame)」ビットによって示される)、各スレーブAPは、データペイロードも暗号化し、MICを生成してペイロードに付加する。最初の暗号化されたMPDUは、マスタAPから受信したCCMPヘッダフィールドを直接使用するのに対し、後続の各MPDUは、CCMPヘッダフィールド内のPNサブフィールドを1ずつインクリメントする。暗号化されたMPDUは、JTパケットID1630によってインデクシングされて、メモリに保存される。
【0086】
代替的に、スレーブAPが、十分な速さのプロセッサを有する場合、データ分配フェーズ中に、受信されたMACパラメータ及びペイロードがメモリに保存され、JTトリガフレームが受信された後にのみ、MPDU生成(及び必要に応じて暗号化)が行われてもよい。
【0087】
図16では、ローカルで生成されたJTデータフレーム1600のMPDU内のアドレス2(TA)フィールド1622も、マスタAPから受信された情報1602内の対応するアドレス2(TA)フィールド1630からコピーされる。アドレス2(TA)フィールド1630は、ターゲットSTAがアソシエーションされているAPに応じて、マスタAPのMACアドレス、又は、スレーブAPのMACアドレスのうちの1つ、のいずれかに設定される。各A-MPDUサブフレームの残りのフィールド(MPDUデリミタ、パディング、FCS等)及びEOFパディングは、ローカルで生成される。更に、CCMP暗号化フレームでは、フレーム制御フィールド1610内の「保護フレーム」ビットがセットされている場合、CCMP暗号化が、スレーブAPによって実行される。
【0088】
フレーム1600の1つの利点は、バックホールを介するデータ転送のオーバーヘッドが低減されることである。
【0089】
図17は、例示的な実施形態に従った、スレーブAPへのデータ共有のために使用される集約MACプロトコルデータユニット(A-MPDU)としてのフレーム1700を示している。
【0090】
マスタAPは、4アドレスMACヘッダフォーマットの802.11データフレーム1700を使用して、JTデータをスレーブAPに分配する(Ethertype 89-0dカプセル化を用いない)。この分配方式は、例えば、Wi-Fi EasyMesh配備において、スレーブAPがマスタAPにアソシエーションされているときに使用されてよい。
【0091】
スレーブAPは、マスタAPからジョイント送信データを受信すると、ジョイント送信するMPDUを生成する。生成されたMPDU1730のMACヘッダ内のシーケンス制御フィールド1734内のシーケンス番号は、暗黙的なJT識別子として使用される。
【0092】
ターゲットSTAがマスタAPにアソシエーションされ、マスタAPも実際のジョイント送信に参加する配備の例について考える。マスタAPは、A-MPDU1700をスレーブAPに送信してJTデータを分配する。A-MPDUのMPDU内の各データフレームは、4アドレスMACヘッダフォーマットを使用し、MPDU1710のフレームボディは、ジョイント送信される実際のデータペイロード1720(必要に応じて暗号化され、CCMPヘッダフィールド及びMICフィールドを含む)を運ぶ。この場合、JTデータは、データペイロード1720(必要に応じて暗号化され、CCMPヘッダフィールド及びMICフィールドを含む)を指す。データペイロード1720の最終送信先は、スレーブAPではないので、フレーム制御フィールド1712内の「To DS」ビット及び「From DS」ビットは、APからSTAへの送信又はSTAからAPへの送信を区別するために、両方とも1に設定される。また、HE制御フィールド1714は、EHT使用のために拡張され、新しい制御ID(Control ID)が、AP協調のために定義される。制御フィールドは、様々なマルチAP協調方式のための制御信号を運ぶために使用されてよく、協調方式を示すAP協調タイプ1716は、図10におけるテーブル1020内の値のうちの1つに、例えば、JTシーケンス制御(JT Sequence Control)1718を運ぶためにHE制御フィールドの後続フィールドが使用される場合には、ジョイント送信用に2に設定されてよい。JTシーケンス制御フィールド1718は、ジョイント送信される実際のMPDUのシーケンス制御フィールド1734を運ぶ。
【0093】
マスタAPから、AP協調のためにHE制御フィールド1714を運ぶA-MPDU1710を受信すると、アドレス指定されたスレーブAP(アドレス1(RA)によって示される)は、A-MPDUをターゲットSTA(アドレス3(DA)によって示される)に転送する代わりに、マスタAPから受信した情報に基づいて、ジョイント送信されるMPDU又はA-MPDUを生成する。生成されたMPDU1730は、3アドレスMACヘッダフォーマットを使用する802.11データフレームである。
【0094】
図17において、矢印は、生成されたMPDUにおいて、フレーム制御フィールド1732内の「To DS」ビットが0に設定されているのに対し、「From DS」ビットが1に設定されていることを除いて、フィールドが、受信されたMPDUから生成されるMPDUにコピーされることを示す。生成されるMPDUのシーケンス制御フィールド1734は、マスタAPから受信されたJTシーケンス制御1718からコピーされる。継続期間フィールド、アドレス2(TA)フィールド及びQoS制御フィールドは、変更されることなくコピーされるのに対し、アドレス3(DA)フィールドは、アドレス1(RA)フィールドにコピーされ、アドレス4(SA)フィールドは、生成されるMPDU内のアドレス3(SA)フィールドにコピーされる。JTシーケンス制御フィールドを運ぶHE制御フィールドは、生成されるMPDUでは省かれる。生成されるMPDUのフレームボディは、マスタAPから受信されたMPDU1710から直接コピーされる(すなわち、更なる処理は行われない)。しかしながら、FCSフィールド1738は、スレーブAPによってローカルで生成される。ここで、データペイロード1720が暗号化されている場合に注目すべき重要な側面は、CCMP暗号化がターゲットSTAの消費のために実行され、したがって、暗号化に使用されるMACヘッダパラメータが、MPDU1710のMACヘッダフィールドに基づくのではなく、ジョイント送信される実際のMPDU1730に含まれるMACヘッダフィールドに基づくことである。具体的には、CCMPカプセル化手順中に、マスタAPは、スレーブAPによって生成されるように、フレーム制御フィールド1732と、アドレス1(RA)フィールド1740と、アドレス2(TA)フィールド1742と、アドレス3(SA)フィールド1744と、シーケンス制御フィールド1746と、QoS制御フィールド1748と、を使用して、CCMP暗号化に使用される追加の認証データ(AAD)を構築する。アドレス4フィールドは、AADに含まれない。CCMPヘッダフィールド、暗号化されたデータペイロード1720及び生成されたMICは、MPDU1710のフレームボディに含まれ、更なる処理なく、スレーブAPによってMPDU1730のフレームボディに直接コピーされる。これにより、スレーブAPの暗号化に関連する処理オーバーヘッドが大幅に低減させる。
【0095】
MPDU又はA-MPDUは、マスタAPからデータを受信するとすぐにスレーブAPによって生成され、メモリに保存されてよい。MPDUは、シーケンス制御フィールド1734のシーケンス番号サブフィールドによってインデクシングされて、メモリに保存される。代替的に、スレーブAPが、十分な速さのプロセッサを有する場合、データ分配フェーズ中に、受信されたMPDU/A-MPDUは、変更されることなく、メモリに保存され、(ジョイント送信のための)MPDU生成は、JTトリガフレームが受信された後にのみ行われてもよい。
【0096】
図18は、例示的な実施形態に従ったジョイント送信トリガフレーム1800を示している。
【0097】
JTトリガフレームは、ジョイント送信されるMPDUのシーケンス番号のリストを含む。スレーブAPは、必要に応じて、保存されたMPDUからA-MPDUを構築する。
【0098】
MPDU(JTデータ)のシーケンス制御フィールド内のシーケンス番号サブフィール(例えば、図16における1620又は図17における1732)は、暗黙的なJT識別子として使用される。これにより、マスタAPは、(JTトリガフレーム1800内のシーケンス番号情報フィールド1810内に特定のシーケンス番号を示すことによって)実際のジョイント送信中にJTデータの内容をより柔軟に選択することができる。
【0099】
この柔軟さは、例えば、失敗したMPDUのみが再送されるジョイント再送中に果たされ得る。シーケンス番号情報(Sequence Number Information)フィールド1810は、ジョイント送信されるMPDUを識別する。シーケンス番号ビットマップ(Sequence Number Bitmap)サブフィールドにおいて1に設定されたビットは、含まれるMPDUのシーケンス番号を示し、開始シーケンス番号(SSN:Starting Sequence Number)サブフィールドに対応する、ビットマップ内の最初のビット(n=1)と、(SSN+n-1)に対応するn番目のビットと、がある。
【0100】
図19は、例示的な実施形態に従った、両方ともマスタAPにアソシエーションされている2つのSTAへの分散MU-MIMO(D-MU-MIMO)ジョイント送信1900の例である。
【0101】
符号1910及び1912は、スレーブAPへのデータ分配を示す。JTデータは、それぞれSTA1及びSTA2に宛てられるスレーブAPに分配される。例えば、JTデータ1910及び1912は、図17におけるA-MPDU1700であってよい。JTデータ1910及び1920を受信すると、スレーブAPは、受信したJTデータから必要なフィールドをコピーすることによって、ジョイント送信用のMPDU1730を生成することができる。スレーブAPは、更に、ローカルで生成したMPDUを1つのA-MPDUに集約し、指定されたローカルバッファにA-MPDUを保存することができる。図19には示されていないが、D-MU-MIMOジョイント送信については、実際のジョイント送信の前に、APは、例えば、明示的なサウンディング手順を実行することによって、APとターゲットSTAとの間のチャネルのチャネル状態情報(CSI)を収集する必要がある。マスタAPは、従来の802.11サウンディング手順に従って、対象とするAPとターゲットSTAとの間のチャネルのCSIを収集するように各スレーブAPに指示することができる。スレーブAPは、CSIをマスタAPに報告する。マスタAPが全てのスレーブAPからCSIを収集すると、マスタAPは、ジョイント送信に使用されるステアリング行列(steering matrix)を算出する。次いで、マスタAPは、ステアリング行列の関連セクションを各スレーブAPに分配する。これは、データ分配フェーズの前又は後に行われてよい。符号1914は、ターゲットSTAへのジョイント送信を開始するために使用されるジョイント送信トリガフレームを示す。JTトリガフレーム1914は、マスタAPから受信されたステアリング行列を使用して、2つの空間ストリームを用いるMUジョイント送信を開始する。符号1920は、空間ストリーム1を用いたSTA1へのジョイント送信(STA1へのS.N.1~5)を示す。符号1922は、空間ストリーム2を用いたSTA2へのジョイント送信(STA2へのS.N.11~15)を示す。1920及び1922は、同時に行われるが、異なる空間ストリームを用いる。
【0102】
別の問題は、スレーブAPがJTデータ(例えば、マスタAPによって以前に分配されたデータ)をどのくらいの期間保存すべきかが明らかでないことである。バッファスペースは、APのための限られたリソースであるので、スレーブAPの観点からは、より新しいJTデータのための余地を作るために、すでに送信されているJTデータをできるだけ早く削除することが有益である。しかしながら、JTデータの削除が早過ぎると、ジョイント再送において、マスタAPは、スレーブAPが再送されるJTデータを依然として所有しているのか、又は、マスタAPがJTデータを再分配する必要があるかどうか、がわからない、ということによる不明確性の問題が生じる。
【0103】
再分配及び再送には、他の問題もある。例えば、無線バックホールに起因して、かなりのプロトコルオーバーヘッドが存在する。バックホール送信とジョイント送信とが強く結び付けられている場合、このオーバーヘッドは、送信障害があるときに更に増大する。
【0104】
例示的な実施形態は、これらの問題を解決し、マルチAPジョイント送信及び再送方式のための確認応答手順を提供する。また、例示的な実施形態は、再送オーバーヘッドを低減させる。
【0105】
図20は、例示的な実施形態に従った、JTデータフレーム2000、確認応答(ACK又はAck)フレーム2010及びBlockAckフレーム2020を示している。
【0106】
複数のAPがジョイント送信に参加することがあるが、ターゲットSTAの観点からは、単一のAP送信として見えることがある。STAは、ジョイント送信を認識することさえできないことがある。Ackフレーム又はBlockAckフレームのRAフィールドは、単に、JTデータフレームのTAフィールドからコピーされる。これは、通常、ターゲットSTAがアソシエーションされているAPのMACアドレスとして設定される。更に、デフォルトでは、APは、自身のMACアドレスと一致しないRAフィールドを有するAckフレーム又はBlockAckフレームは解析(パース)しない。その結果、これらのAPは、ジョイント送信が成功したか否かを認識しない。
【0107】
図20では、JTデータフレーム2000のアドレス2(TA)2030が、アソシエーションされているAP(例えば、マスタAP、又は、スレーブAPのうちの1つ)のMACアドレスに設定される。JTデータフレーム2000の受信に成功すると、アドレス指定されたSTAは、ACKフレーム2010又はBlockAckフレーム2020を送信することによって、JTデータフレームに対して確認応答する。STAは、JTデータフレームのTAフィールド2030を、Ackフレーム2010のRAフィールド2040又はBlockAckフレーム2020のRAフィールド2050にコピーする。
【0108】
図21は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータフレームを受信することに失敗し、マスタAPがジョイント送信手順を繰り返すジョイント送信2100を示している。
【0109】
上述したように、STAは、ジョイント送信を認識することさえできないことがある。したがって、ACKは、JTデータのTA(すなわち、図21のこの例ではマスタAP)にアドレス指定される。この場合、スレーブAPがJTデータをどのように処理するかは標準化されていないので、手順はスレーブAPにとって簡単である。しかしながら、スレーブAPへのデータの再分配に起因して、送信オーバーヘッドは高い。ここで、マスタAPは、スレーブAPが各ジョイント送信の直後にJTデータを削除すると想定する。マスタAPは、Ackフレームが特定のタイムアウト値内に受信されない場合、再送を開始する。再送の場合、マスタAPは、単に、データ分配フェーズを含むジョイント送信手順全体を繰り返す。
【0110】
代替的に、スレーブAPは、ジョイント送信のたびにJTデータをメモリから削除するのではなく、一度に1つのJTデータのみをメモリに保持してもよい。新しいJTデータがマスタAPから受信された場合、スレーブAPは、もしあれば、既存のJTデータを置き換える。いずれにせよ、送信失敗の場合には、スレーブAPへのデータの再分配に起因して、再送オーバーヘッドが高いことが分かる。
【0111】
図22は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータフレームを受信することに失敗し、スレーブAPがAckフレームを処理し、マスタAPがデータ分配を繰り返すことなくジョイント送信を繰り返すジョイント送信2200を示している。
【0112】
図22に示すように、スレーブAPは、ジョイント送信のための確認応答手順に積極的に参加する。以下でより完全に説明するように、JTデータは、成功裏に確認応答されるまで又はリトライ制限に達するまで、スレーブAPによって保持される(すなわち、送信機が通常従う再送手順にスレーブAPも従う)。
【0113】
ジョイント送信の後、スレーブAPはまた、あたかもACKフレームがスレーブAPにアドレス指定されたかのように、(マスタAP又は別のスレーブAPにアドレス指定された、)ターゲットSTAからのAckフレームを処理する。ACKフレームが受信された場合、ジョイント送信データは削除される。ACKフレームが受信されない場合、ジョイント送信データは、再送の可能性のために保持される。スレーブAPは、ジョイント送信MSDUごとにリトライカウンタ(ショート(短)リトライカウンタすなわちSRC、及び、ロング(長)リトライカウンタすなわちLRC)を維持し、ジョイント再送ごとにこれらのカウンタをインクリメントする。いずれかのリトライ制限に達すると、対応するジョイント送信MSDUは破棄される。リトライ制限は、全参加AP間で同期される、すなわち、それらは同じ値でなければならない。
【0114】
送信失敗の場合、マスタAPは、ジョイント送信のみを繰り返す。データ分配は繰り返されない。再送中、バックホールを介するデータ分配は省略される。更に、ジョイント再送を開始するJTトリガフレームは、よりロバストな送信モード(より低いMCS等)を指定してもよいし、異なるPHY符号化が指定されてもよい(例えば、HARQ再送が用いられる場合)。
【0115】
図23は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPが、BlockAckフレームを処理し、JTデータを削除するジョイント送信2300を示している。
【0116】
この図は、ブロック確認応答が用いられる集約送信の例を示している。ジョイント送信中、複数のMPDUを集約して運ぶA-MPDUは、APによってジョイント送信され、ターゲットSTAは、成功裏に受信されたMPDUに対して確認応答する、マスタAP宛てのBlockAckフレームを送信することによって応答する。この例では、スレーブAPはまた、(マスタAPにアドレス指定された、)ターゲットSTAからのBlockAck(BA)フレームを、あたかもBlockAckフレームがスレーブAPにアドレス指定されたかのように処理する。BlockAckフレームが、MPDUが受信されたことを示す場合、MPDUは、ローカルバッファから削除される。BlockAckフレームが、MPDUが受信されないことを示す場合、MPDUは、再送の可能性のために保持される。図23では、元のジョイント送信中に、S.N.1~10を有するMPDUがジョイント送信されているが、ターゲットSTAは、S.N.5及び6を有するMPDUを受信することに失敗し、BlockAckフレームは、受信されなかったとしてS.N.5及び6を有するMPDUを報告する。BlockAckを処理した後、スレーブAP1及びスレーブAP2は、S.N.5及び6を有するMPDUを除く送信されたMPDUを削除する。その後、マスタAPは、S.N.5及び6を有するMPDUの再送及びS.N.11~20を有するMPDUの送信を指示するJTトリガフレームを送信する。スレーブAPはMPDUを保持しているので、マスタAPは、S.N.5及び6を有するMPDUをスレーブAPに再分配する必要がない。ACK/BAを復号し、リトライカウンタを維持する必要性に起因して、スレーブAPの処理負荷は増大するが、データ分配のオーバーヘッドは、再送に関して取り除かれる。
【0117】
スレーブAPは、ライフタイム(lifetime)タイマに基づいて、又は、AP協調セッションがティアダウンされたとき(セッションがセットアップされている場合)、保存されたJTデータを削除してもよい。更に、BAビットマップに基づいて、ターゲットSTAによって成功裏に受信されたMSDUが削除される。
【0118】
図24は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、マスタAPがターゲットSTAからBlockAckフレームを受信することに失敗したジョイント送信2400及びエラー回復を示している。
【0119】
この図は、何らかの理由により、スレーブAPがAck/BAフレームを受信するが、マスタAPがAck/BAフレームを受信することに失敗する場合のエラー回復の例を示している。この状況は、例えば、マスタAPがスレーブAPと比較してターゲットSTAから離れている場合、又は、単に隠れノード干渉等に起因して、起こり得る。
【0120】
以下でより完全に説明するように、スレーブAPは、(例えば、スレーブAPがジョイント送信についてBAを受信するが、マスタAPがBAを受信することに失敗したときに)JTトリガフレームにおいて参照されるJTデータをすでに削除していることがある。スレーブAPは、削除されたJTデータ及び削除の理由をマスタAPに通知するための特別なフレームを送信する。マスタAPは、失敗したMPDUのみを再送することができる。
【0121】
スレーブAPは、成功裏に受信されたS.N.1~4、7~10を有するMPDUに対して確認応答したBAフレームを受信したので、これらのMPDUをメモリから削除することがある。しかしながら、マスタAPは、ブロックAck(BA)フレームを受信することに失敗したので、元のジョイント送信が失敗したと想定し、S.N1~10を有するMPDUを参照するJTトリガフレームを送信することによって、全てのMPDUのジョイント再送を開始することがある。
【0122】
JTトリガフレームのSIFS後に、マスタAPは、JT PPDUを送信する。スレーブAPは、もはやJTトリガフレームにおいて参照されるMPDUのうちの一部を所有していないので、スレーブAPは、ジョイント送信に参加しない。これは、単一のAP送信であるので、ターゲットSTAは、JT PPDU全体を受信することに失敗する。JTトリガフレームの内容に基づいて、スレーブAPは、マスタAPがBAフレームを受信することに失敗したと推定することができる。マスタAPがこのような再送の試みを繰り返し続けることを防止するために、スレーブAPは、JTトリガフレームにおいて参照されるMPDUのうちの一部がすでに削除されていることを報告し、削除理由(例えば、成功裏に確認応答された)も示すためのAP協調情報応答フレームをマスタAPに送信することができる。次いで、マスタAPは、失敗したMPDU(すなわち、S.N.5及び6を有するMPDU)のみを選択的に再送することに進むことができる。
【0123】
図25は、例示的な実施形態に従った、AP協調情報応答フレーム2500と、削除理由を含むテーブル2510と、を示している。
【0124】
AP協調情報応答フレーム2500は、マスタAPに報告される削除されたJTデータ(Deleted JT Data)2520を含む。削除されたJTデータ2520は、削除理由(テーブル2510に示される)と、スレーブAPによって削除されたMPDUのシーケンス番号を一緒に示す開始シーケンス番号及びシーケンス番号ビットマップと、を含む。
【0125】
テーブル2510は、削除理由フィールド値(例えば、0~3)と、対応するフィールド値に関連付けられた意味と、を含む。
【0126】
スレーブAPは、AP協調情報応答フレーム2500を使用して、現在保存されているJTデータをマスタAPに通知する。AP協調情報応答フレームは、スレーブAPのメモリから削除されたJTデータを参照するJTトリガフレームが受信された場合に、送信される。
【0127】
マスタAPは、スレーブAPからAP協調情報応答フレーム2500を受信すると、削除理由に基づいて、次のアクションを決定する。理由が、ライフタイムを超えていること(Exceeded Lifetime)である例について考える。この場合、ジョイント送信は、試みられることさえなかった可能性がある。マスタAPは、JTデータをスレーブAPに再分配し、ジョイント送信を試みることができる。
【0128】
理由が、リトライ制限に達したこと(Reached RetryLimit)である別の例について考える。この場合、ジョイント送信の数にかかわらず、送信は失敗したので、マスタAPは、リトライ制限に達した場合、送信を諦めることができる。
【0129】
理由が、成功裏に確認応答されたこと(Successfully acknowledged)である別の例について考える。この場合、マスタAPは、送信が失敗したJTデータ(MPDU)を認識するので、マスタAPは、削除されていない失敗したJTデータのみを再送することができる。成功裏に確認応答されたJTデータは、ジョイント再送から省かれる。
【0130】
図26は、例示的な実施形態に従った、バックホールBSS及びフロントホールBSSにおける無線ネットワーク2600及びSTAとの無線送信を示している。
【0131】
無線ネットワーク2600は、バックホールBSS2610と、フロントホールBSS2620と、複数のAP(AP1~AP3として示されている)と、複数のSTA(STA1~STA3として示されている)と、を含む。バックホールBSSは、AP間で通信するためにAPによって使用されるのに対し、フロントホールBSSは、APとSTAとの間の通信に使用される。ダイアグラム2630は、バックホールBSS及びフロントホールBSSにおけるAP間の通信リンクを示している。太い点線は、バックホールBSSにおけるAP間の伝送リンクを表すのに対し、細い点線は、フロントホールBSSにおけるAPとSTAとの間の伝送リンクを表す。このネットワーク構成では、マスタAPは、論理バックホールAP及び論理フロントホールAPを含んでよいのに対し、スレーブAPは、バックホールAP及び論理フロントホールAPにアソシエーションする論理バックホールSTAを含んでよい。STAは、マスタAP又はスレーブAPのいずれかのフロントホールAPにアソシエーションされる。各APにおけるフロントホールエンティティ及びバックホールエンティティのMACアドレスは、異なってよい。
【0132】
スレーブAPがジョイント送信についてのAck/BAフレームを識別することをより容易にするために、マスタAPが、ジョイント送信されるフレームのMACヘッダ内のTA(送信機アドレス)として使用される一意なMACアドレスを割当てることも可能である(例えば、図20におけるフレームを参照)。このようなMACアドレスは、ジョイント送信送信アドレス(JT TA:Joint Transmission Transmit Address)又はジョイント送信MACアドレスと呼ばれることがある。
【0133】
そのような1つの例がここで与えられる。バックホールAPのMACアドレスは、ジョイント送信のためのTAとして使用されてよい。これは、バックホールBSSのBSSIDであってもよい。ここで、スレーブAPは、RAフィールドがJT TAに設定されたAck/BAフレームのみを処理する。この場合、ターゲットSTAはまた、JT TAを認識する必要がある。ジョイント送信の前に、アソシエーションされているAPは、ターゲットSTAにJT TAを通知し、ターゲットSTAは、JT TAをメモリに保存する。JT TAの存在により、STAもジョイント送信を認識する。
【0134】
マスタAPは、チャネル状態に基づいて、単一のAP送信とジョイント送信との間で動的に切り替えることが可能であり、MPDUへのシーケンス番号の割当てが問題になり得る。例えば、最初に、APは、単一のAP送信を試み、最もロバストなMCS等を使用した後でさえ、単一のAP送信が繰り返し失敗すると、マルチAPジョイント送信に切り替えることができる。シーケンス番号計画を単純化するために、特定のターゲットSTAへの送信に対して、マスタAPは、通常の送信(TAとしてマスタAPのMACアドレスを使用する単一のAP送信)及びジョイント送信(TAとしてJT TAを使用する)の両方のために、同じシーケンス番号空間からの連続するシーケンス番号を使用することができる。この場合、TA(JT TA又はマスタAPのMACアドレスのいずれか)に関係なくシーケンス番号に基づいてMPDUを並べ替えることができるので、ターゲットSTAについてのMPDU並べ替えは容易である。反対に、スレーブAPにおけるブロックAckスコアボーディング手順は、スコアボードビットマップの一部のみがジョイント送信確認応答中に使用され得るので、わずかにより複雑であり得る。
【0135】
図27図32は、更に2つの例示的な実施形態を示している(図27図29は1つの実施形態を示しており、図30図32は別の実施形態を示している)。これらの実施形態では、スレーブAPは、ジョイント送信のための確認応答手順に積極的に参加しない。マスタAP、又は、ジョイント送信されるフレームのTAフィールドにおいて現れるMACアドレスを有するAPのみが、Ack/BAフレームを処理する必要がある。これは、スレーブAPのフレーム処理負荷を低減させる。
【0136】
図27図29では、各ジョイント送信は、ターゲットSTAによって直ちに確認応答され、非即時(non-immediate)BAは使用されないと仮定する。ここで、非即時BlockAckは、送信されたフレームのAckポリシがブロックAckに設定されている送信を指す。この場合、アドレス指定された受信者は、状態を記録することを除いて、フレームを受信したときにアクションを行わない。受信者は、将来、BlockAckReqフレーム又は暗黙的なブロックack要求を予想することができる。
【0137】
JTトリガフレームは、2つの目的を果たす。第1に、JTトリガフレームは、ジョイント送信を開始し、ジョイント送信されるJTデータを参照する元の(明示的な)目的を果たす。第2に、JTトリガフレームは、以前のジョイント送信の送信ステータスを示す新しい目的(暗黙的)を果たす。
【0138】
図27は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPがJTトリガフレームを使用してJT MPDUを削除するジョイント送信2700を示している。
【0139】
この図では、スレーブAPは、JTトリガフレームの内容を使用して、成功裏に送信されたと推測されるJT MPDUを削除する。すでにジョイント送信されているMPDUは、再送対象としてリストされていない場合は削除される。マスタAPはまた、スレーブAPに、それらのJT MPDUをフラッシュするようにシグナリングするためだけに、JTトリガフレームを使用してもよい。
【0140】
ジョイント送信されるMPDUのリストに基づいて、スレーブAPは、成功裏に送信され、廃棄される適格があるMPDUを推測する。更に、新しい(保存されていない)MPDUをリストするJTトリガフレームは、より古いMPDUの削除をトリガする。図27では、元のジョイント送信中に、S.N.1~10を有するMPDUがジョイント送信されているが、ターゲットSTAは、S.N.5及び6を有するMPDUを受信することに失敗し、BlockAckフレームは、受信されていないとして、S.N.5及び6を有するMPDUを報告する。BlockAckを処理した後、マスタAPは、S.N.5及び6を有するMPDUの再送及びS.N.11~20を有するMPDUの送信を指示するJTトリガフレームを送信する。このJTトリガフレームの内容に基づいて、スレーブAPは、S.N.1~4及びS.N.7~10を有するMPDUがSTAによって成功裏に受信されたと推測し、これらを削除することに進むことができる。全てのAPはまた、S.N.5及び6を有するMPDU及びS.N.11~20を有するMPDUをジョイント送信することに進む。全てのMPDUの受信が成功すると、ターゲットSTAは、同じことを示すBlockAckフレームをもって応答する。マスタAPは、ジョイント送信される更なるMPDUを有していないので、以前に送信されていないS.N.21を有するMPDUをリストする特殊目的JTトリガフレームを送信する。このJTトリガフレームの唯一の目的は、スレーブAPにおけるバッファのフラッシュをトリガすることである。新しい(保存されていない)S.N.21を有するMPDUをリストするJTトリガフレームを受信すると、スレーブAPは、バッファに保存されている、より古いMPDUを削除することに進む。
【0141】
図28は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、スレーブAPが確認応答フレームに関する情報をマスタAPに中継するジョイント送信2800を示している。
【0142】
この図は、ターゲットSTAがスレーブAPにアソシエーションされており、マスタAPが実際のジョイント送信に参加しない配備の場合を示している。スレーブAPのみが、実際のジョイント送信に参加する。Ack/BAフレームのRAフィールドは、スレーブAPのうちの1つのスレーブAPのMACアドレスとして設定される。マスタAPは、ジョイント送信についてのAck/BAフレームを受信/処理することができず、再送に関する決定を行うために、スレーブAPに、そのような情報をマスタAPに中継させる必要がある。
【0143】
この例では、ターゲットSTAは、スレーブAP1にアソシエーションされており、したがって、BlockAckは、スレーブAP1にアドレス指定される。スレーブAP1は、BlockAckフレームを受信するので、BlockAckフレームの内容に基づいてMPDUを削除することができ、削除決定のために後続のJTトリガフレームを待つ必要はない。更に、スレーブAP1は、ブロックAckの内容をマスタAPに転送する。他のスレーブAP(すなわち、この例ではスレーブAP2)は、ジョイント送信のための確認応答手順に明示的に参加する必要はないが、前述したように、後続のJTトリガフレームを使用して、送信されたMPDUを削除するかどうかを決定することができる。アソシエーションされているAPのみが、Ack/BAフレームの処理に関与する。
【0144】
図29は、例示的な実施形態に従った、受信されたAck/ブロックAckフレームの内容をマスタAPに転送するためにスレーブAPによって使用され得るAP協調情報応答フレーム2900である。
【0145】
ターゲットSTAがスレーブAPにアソシエーションされている場合、スレーブAPは、AP協調情報応答フレーム2900を使用して、ターゲットSTAから受信したAckフレーム又はBlockAckフレームの内容をマスタAPに転送する。AP協調情報応答フレームは、Ack/BAフレームがターゲットSTAから受信されない場合、スレーブAPによって送信されない。
【0146】
フレームボディは、ターゲットSTAから受信されたAckフレーム又はブロックAckフレームの内容を運ぶAck情報(Ack Info)2910を含む。Ack情報2910は、BA制御(BA Control)フィールド及びBA情報(BA Information)フィールドを含む。Ackフレームの情報を転送する場合、BA制御フィールドは、Ackフレームのシーケンス制御フィールドを含み、BA情報フィールドは省かれる。BlockAckフレームの情報を転送する場合、受信されたBlockAckフレームのBA制御フィールド及びBA情報フィールドが、Ack情報フィールドのそれぞれのフィールドにコピーされる。
【0147】
更に、Ack情報フィールドがフレームボディに含まれ、Ack情報フィールド2910がAckフレームの内容を運ぶか又はBlockAckフレームの内容を運ぶかをAck/BAフィールド(例えば、Ackフレームをシグナリングする0という値及びBlockAckフレームをシグナリングする1という値)が示す場合、Ack情報2920は1に設定される。
【0148】
図29のフレームの実現は、スレーブAPについて動作を単純に保ちながら、データ分配オーバーヘッドを低減させる。
【0149】
図30は、例示的な実施形態に従った、バッファをフラッシュする明示的な指示を含むJTトリガフレーム3000である。
【0150】
JTトリガフレーム3000は、バッファをフラッシュするかどうか、すなわち、もはや保存される必要がないJTデータを削除するかどうかの指示を含むフラッシュバッファ(Flush Buffer)フィールド3010を含む。例えば、フラッシュバッファビットが1に設定されている場合、JTトリガフレームにリストされていないJT識別情報(S.N.又はJTパケットID)を有する以前に送信されたJTデータは、スレーブAPのメモリから削除される。フラッシュバッファビットが0に設定されている場合、保存されたJTデータが保持される。
【0151】
フレーム3000はまた、シーケンス番号情報フィールド3020を含む。スレーブAPのバッファをフラッシュするための特殊目的JTトリガフレームとして使用される場合、ビットマップは、省かれてもよいし、全てゼロに設定されてもよい。
【0152】
図31は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、非即時ブロックAckがジョイント送信に対してサポートされているジョイント送信3100を示している。
【0153】
この図は、非即時BlockAckがジョイント送信に対してサポートされている場合の送信ダイバーシチ又はSU-MIMOの場合の例を示している。非即時BlockAckは、AckポリシがブロックAckに設定されている送信を指す。この場合、アドレス指定された受信者は、状態を記録することを除いて、フレームを受信したときにアクションを行わない。受信者は、将来、BlockAckReqフレーム又は暗黙的なブロックack要求を予想することができる。
【0154】
ジョイント送信中、ジョイント送信されたフレームのAckポリシが「ブロックAck」として設定されている場合、ターゲットSTAは、即時に応答せず、ブロックAckフレームを返送するために、BlockAckReqフレームを待つ。そのような場合、2つ以上のJTトリガフレーム及びJT PPDUのセットが、以前のジョイント送信に対する確認応答が受信される前に、次々に送信されることが可能である。この送信バーストにおいて前に送信されたJTデータの削除を後続のJTトリガフレームがトリガすることを防止するために、受信ステータスについての何らかの確認をターゲットSTAから受信する前であっても、「フラッシュバッファ」指示は、元のジョイント送信中に、無効(ディセーブル)(0)に設定される。マスタAPは、ジョイント再送を開始するJTトリガフレームにおいて、「フラッシュバッファ」指示を有効(イネーブル)(1)に設定して、このJTトリガフレームにおいて参照されていない以前に送信されたJTデータを削除することが今現在安全であることをスレーブAPにシグナリングすることができる。
【0155】
したがって、このJTトリガフレームは、スレーブAPのバッファをフラッシュするか否かの明示的な指示(例えば、ビットを1又は0に設定することによる)を運ぶことができる。JTトリガフレーム[JTパケットID=5、F.B=1](JT Trigger frame [JT Packet ID = 5, F.B = 1])は、5未満のIDを有するJTパケットをメモリから安全に削除することができるのに対し、IDが5であるJTパケットがジョイント再送されることを、スレーブAPにシグナリングする。更に、新しい(保存されていない)JTデータ及びF.B.=1をリストするJTトリガフレーム[JTパケットID=6、F.B=1](JT Trigger frame [JT Packet ID = 6, F.B = 1])は、全てのより古いJTデータの削除をトリガする。
【0156】
図32は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗し、非即時BlockAckがジョイント送信に対してサポートされている分散MU-MIMOジョイント送信3200を示している。
【0157】
この図は、2つのターゲットSTAへの同時ジョイント送信のための分散MU-MIMOの場合の例である。フラッシュバッファ指示の使用は、JTトリガフレーム内のJTデータのシグナリングにいくつかの違いがあることを除いて、同じである。1つの違いとして、異なるデータは、ジョイント送信中に、異なる空間ストリームを介して異なるSTAに送信され、異なるターゲットSTA用のJTデータは、同じジョイント送信内で異なってよい。別の違いとして、ターゲットSTAからのBlockAckフレームは、MU-BARフレーム(マルチユーザBlockAckReqフレーム)を使用して要求される。
【0158】
図33は、例示的な実施形態に従った、STAがJTデータを受信することに失敗したジョイント送信3300と、保存されたJTデータを削除するようにスレーブAPに指示する特殊目的フレームと、を示している。
【0159】
特殊目的フレームは、保存されたJTデータを削除するようにスレーブAPに指示するためにマスタAPによって使用されるように定義される。スレーブAPは、このフレームが受信されるまで、保存されたJTデータを保持する。JTトリガフレームは、ジョイント送信を開始するためにのみ使用される(すなわち、バッファをいつフラッシュするかを決定するためには使用されない)。
【0160】
この図は、マスタAPが、スレーブAPがJTデータをどれくらいの期間保持するかを完全に担う例示的な実施形態を示している。別個のフレーム(AP協調データフラッシュ(AP Coordination Data Flush))は、スレーブAPのバッファをフラッシュするようにスレーブAPに指示するためにマスタAPによって使用される。スレーブAPは、削除され得るJTデータを示すAP協調データフラッシュが受信されるまで、全てのJTデータを保持する。
【0161】
図34は、例示的な実施形態に従った、AP協調セッションアクションフィールド値についてのテーブル3400及びAP協調データフラッシュフレーム3410を示している。
【0162】
マスタAPは、AP協調データフラッシュアクションフレーム3410を使用して、保存されたJTデータを削除するようにスレーブAPに指示する。AP協調データフラッシュフレームは、AP協調セッションアクション(AP Coordination Session Action)フィールドが5(AP協調データフラッシュ)に設定されたAP協調アクションフレームであってよい。AP協調データフラッシュフレームは、マスタAPによって受信された各Ack/BAの後に送信されてもよいし、ジョイント送信(再送を含む)全体が完了すると送信されてもよい。
【0163】
このフレームは、スレーブAPのバッファから削除され得るMPDUのS.N.を一緒に示す開始シーケンス番号フィールド及びシーケンス番号ビットマップフィールドを有するデータフラッシュ(Data Flush)フィールド3420を含む。ジョイント送信バーストの終わりに使用される場合、開始シーケンス番号フィールドの値は、保存されたJTデータの中で最も大きいS.N.よりも大きい値に設定されてよく、その場合、スレーブAPは、(以前の送信ステータスにかかわらず)全ての保存されたJTデータをフラッシュする。そのような場合、シーケンス番号ビットマップは、この特別な使用を区別するために、全てゼロに設定されてよい。
【0164】
図35は、例示的な実施形態に従った電子デバイス3500の一例である。
【0165】
電子デバイス3500は、電源3510と、メモリ3520と、中央処理装置(CPU)3530と、二次記憶装置3540と、無線I/F3550(送信機及び/又は受信機を含む)と、を含む。無線I/F3550は、アンテナ3570と通信するMAC3552及びPHY3560を含む。MAC3552は、更に、JT識別情報生成部3554と、JTデータバッファ3556と、JTデータカプセル化/逆カプセル化3558と、JTバッファ管理3562と、を含む。
【0166】
電子デバイス3500が、マスタAP又はスレーブAP等のAPである例示的な実施形態について考える(JT識別情報生成部3554はマスタAPにのみ存在することに留意されたい)。
【0167】
電子デバイス3500は、別のAPから、通信装置にジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示すジョイント送信(JT)トリガフレームを(例えば、無線受信機において)受信するように動作する回路を含む。JTデータバッファ3556(メモリ3520の論理部分であってよい)は、通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUと、ジョイント送信のために別のAPによって分配されたMPDUと、を記憶する。
【0168】
例示的な実施形態では、JTバッファ管理3562は、JTデータがJTデータバッファ3556にどれくらいの期間保持されるべきかを決定する。JTバッファ管理3562はまた、そのような決定に至るために、Ack/BAフレーム、JTトリガフレーム又はAP協調データフラッシュフレームを処理する役割を担う。
【0169】
電子デバイス3500は、JTデータと、JTデータを一意に識別するJT識別情報と、を含むフレームを生成するように動作する回路を含む。例えば、JT識別情報生成部ブロック3554は、スレーブAPに分配されたJTデータに対応するJT識別情報を生成する役割を担う。JTデータカプセル化/逆カプセル化ブロック3558は、データ分配フェーズ中に、802.11データフレーム又は802.3イーサネットフレーム内にJTデータをカプセル化するためにマスタAPによって使用される。このブロックは、マスタAPから受信されたJTデータを逆カプセル化するためにスレーブAPによって使用される。JTデータバッファ3556は、ジョイント送信に使用されるJTデータを記憶する。マスタAPでは、JTデータバッファ3556は、別個のバッファでなくてもよく、全ての送信データフレームを記憶する共有バッファであってもよい。スレーブAPでは、JTデータバッファ3556は、ジョイント送信に使用されるデータフレームを記憶するために排他的に使用される別個のバッファであってもよい。電子デバイス3500は、APが、無線ネットワーク内の1つ以上のSTA等の1つ以上の通信装置にデータフレームを送信することを可能にする無線送信機及び/又はアンテナ3570等の回路を更に含む。
【0170】
本開示は、ソフトウェアによって、ハードウェアによって、又はハードウェアと協働するソフトウェアによって、実現可能である。上述した各実施形態の説明において使用されている各機能ブロックは、その一部又は全てを、集積回路等のLSIによって実現可能であり、各実施形態において説明された各プロセスは、その一部又は全てを、同じLSI又はLSIの組み合わせによって制御可能である。LSIは、チップとして個別に形成可能である、又は、機能ブロックの一部又は全てを含むように1つのチップを形成することができる。LSIは、自身に結合されたデータ入出力部を含むことができる。LSIは、ここでは、集積度の違いに応じて、IC、システムLSI、スーパーLSI、又はウルトラLSIと称されることがある。しかしながら、集積回路を実現する技術は、LSIに限定されるものではなく、専用回路、汎用プロセッサ、又は専用プロセッサを使用することによって実現可能である。更に、LSIの製造後にプログラムすることができるFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)や、LSI内部に配置されている回路セルの接続及び設定を再設定できるリコンフィギャラブル・プロセッサを使用することもできる。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現可能である。半導体技術又は別の派生技術の進歩の結果として、LSIが将来の集積回路技術に置き換わる場合、その将来の集積回路技術を使用して機能ブロックを集積化することができる。バイオテクノロジを適用することもできる。
【0171】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、又はシステム(通信装置と総称)によって実現可能である。
【0172】
通信装置は、送受信機及び処理/制御回路を備えることができる。送受信機は、受信機及び送信機を備えることができる、且つ/又は、受信機及び送信機として機能することができる。送受信機は、送信機及び受信機として、増幅器、RF(無線周波数)変調器/復調器等を含むRFモジュールと、1つ以上のアンテナと、を含むことができる。
【0173】
通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピュータ(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ネットブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0174】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されるものではなく、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、又はシステム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター、コントロール・パネル等)、自動販売機、及びその他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(things)」をも含む。
【0175】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0176】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサ等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置には、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサが含まれる。
【0177】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、及びその他あらゆる装置、デバイス、又はシステムが含まれる。
【0178】
例示的な他の実施形態は、以下の例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0179】
例示的な一実施形態は、動作中、別のアクセスポイント(AP)から、通信装置にジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示すジョイント送信(JT)トリガフレームを受信する受信機と、前記通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUを記憶するローカルメモリと、を備えるAPである。
【0180】
前記JTトリガフレームは、前記通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUが前記ローカルメモリから削除されるかどうかの明示的な指示を含む。
【0181】
前記ローカルメモリは、前記JTトリガフレームを受信するまで、前記通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUを記憶する。
【0182】
前記JTトリガフレームは、前記通信装置にジョイント送信されるMPDUのシーケンス番号値を含み、前記APは、前記JTトリガフレームにおいて示されていないシーケンス番号値を有する以前に送信されたMPDUを前記ローカルメモリから削除する。
【0183】
前記APは、動作中、ジョイント送信されることが前記JTトリガフレームにおいて示されるMPDUを保持していない場合に、前記ローカルメモリから削除されたMPDUのシーケンス番号値と、該MPDUを前記ローカルメモリから削除する理由と、を含むフレームを、前記別のAPに送信する送信機を更に備える。
【0184】
前記受信機は、更に、前記通信装置から、1つ以上の他のAP及び前記APによってジョイント送信された成功裏に受信されたMPDUに対して確認応答する確認応答(ACK)フレーム又はブロックAck(BA)フレームを受信するように動作し、前記ACKフレーム又は前記BAフレームは、前記APにアドレス指定されており、前記APは、動作中、前記ACKフレーム又は前記BAフレームの内容を運ぶフレームを前記別のAPに送信する送信機を更に備える。
【0185】
例示的な別の実施形態は、アクセスポイント(AP)であって、動作中、通信装置が、前記AP及び別のAPによって前記通信装置にジョイント送信された1つ以上のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を受信することに失敗したと判断する回路と、動作中、失敗したMPDUを前記別のAPに再分配することなく、ジョイント送信(JT)トリガフレームを前記別のAPに送信する送信機と、を備えるAPである。
【0186】
前記JTトリガフレームは、前記通信装置に再度ジョイント送信されるMPDUを示す。
【0187】
例示的な別の実施形態は、アクセスポイント(AP)において、別のAPから、通信装置にジョイント送信されるMACプロトコルデータユニット(MPDU)を示すジョイント送信(JT)トリガフレームを受信することと、前記通信装置に以前に送信された1つ以上のMPDUを前記APのローカルメモリに記憶することと、を含む方法である。
【0188】
例示的な別の実施形態は、アクセスポイント(AP)において、通信装置が、前記AP及び別のAPによって前記通信装置にジョイント送信された1つ以上のMACプロトコルデータユニット(MPDU)を受信することに失敗したと判断することと、前記APによって、失敗したMPDUを前記別のAPに再分配することなく、ジョイント送信(JT)トリガフレームを前記別のAPに送信することと、を含む方法である。
【0189】
例示的な別の実施形態は、アクセスポイント(AP)であって、動作中、別のAPと共に、MACプロトコルデータユニット(MPDU)を通信装置にジョイント送信する送信機と、動作中、前記通信装置から、成功裏に受信されたMPDUに対して確認応答する確認応答(ACK)フレーム又はブロックAck(BA)フレームを受信する受信機と、を備え、前記ACKフレーム又は前記BAフレームにおける受信機アドレスは、前記送信機のMACアドレスとは異なり、前記APは、前記通信装置によって成功裏に受信されたとして前記ACKフレーム又は前記BAフレームによって確認応答されたシーケンス制御値を有するMPDUをローカルメモリから削除する、APである。
【0190】
前記APは、更に、前記通信装置によって成功裏に受信されたとして確認応答されなかったシーケンス制御値を有するMPDUを前記APのローカルメモリに保存する。
【0191】
前記ACKフレーム又は前記BAフレームにおける受信機アドレスは、前記別のAPのMACアドレスである。
【0192】
前記ACKフレーム又は前記BAフレームにおける受信機アドレスは、前記通信装置への前記MPDUのジョイント送信のために前記別のAPによって割当てられたMACアドレスである。
【0193】
例示的な別の実施形態は、動作中、アソシエーションされているAPから、ジョイント送信のために割当てられたJT MACアドレスを受信する受信機と、前記JT MACアドレスを記憶するローカルメモリと、を備え、前記受信機は、更に、送信機アドレス(TA)フィールドが前記JT MACアドレスに設定されているMPDUを受信する、通信装置である。
【0194】
前記通信装置は、動作中、受信機アドレス(RA)フィールドが前記JT MACアドレスに設定されており、前記受信されたMPDUに対して確認応答するACKフレーム又はBAフレームを送信する送信機を更に備える。
【0195】
例示的な実施形態が、本実施形態の前述の詳細な説明において提示されたが、多数の変形形態が存在することを理解されたい。例示的な実施形態は、例に過ぎず、本開示の範囲、適用可能性、動作又は構成をいかなるようにも限定することを意図していないことを更に理解されたい。むしろ、前述の詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供し、特許請求の範囲に記載される本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態において説明されたステップ及び動作方法の機能及び構成に様々な変更を行うことができることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35