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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028567
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20240226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240226BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/4535 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240226BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K31/136
A61P29/00
A61P37/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61P29/00 101
A61K31/137
A61K31/4545
A61K31/4535
A61K31/192
A61K31/195
A61K31/704
A61K31/485
A61K47/38
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008085
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2020032543の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019051052
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】志賀 祐子
(72)【発明者】
【氏名】東 梢
(57)【要約】
【課題】
イブプロフェンとロラタジンを含有しても、ロラタジンの経時的な含量低下が抑制された固形組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)イブプロフェン及び(b)ロラタジンを含有するところに、更に(c)カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする固形組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イブプロフェン、(b)ロラタジン、(cアンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
(c)アンブロキソールの塩がアンブロキソール塩酸塩である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
(c)ブロムヘキシンの塩がブロムヘキシン塩酸塩である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項4】
(c)グリチルリチン酸の塩がグリチルリチン酸二カリウムである請求項1に記載の固形組成物。
【請求項5】
(c)チペピジンの塩がチペピジンヒベンズ酸塩である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項6】
(c)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である請求項1に記載の固形組成物。
【請求項7】
剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である請求項1~6のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項8】
(a)イブプロフェン及び(b)ロラタジンを含み、(b)ロラタジンが安定化された固形組成物を製造するための、(cアンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用。
【請求項9】
(a)イブプロフェン及び(b)ロラタジンを含む固形組成物中の(b)ロラタジンを安定化するための、(cアンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェンとロラタジンを含有する固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェンは、関節リウマチ、関節痛及び関節炎、神経痛及び神経炎、背腰痛、頸腕症候群、子宮付属器炎、月経困難症、紅斑(結節性紅斑、多形滲出性紅斑、遠心性環状紅斑)に有効であるほか、急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛にも有効であり、解熱鎮痛薬に加え、総合感冒薬の解熱鎮痛成分として広く配合されている(非特許文献1)。
【0003】
ロラタジンは、第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第2世代抗ヒスタミン薬)として、アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚そう痒症)に伴うそう痒に有効であり、スイッチOTC成分として認可された(非特許文献2)。
【0004】
カルボシステインは、粘液構成成分調整作用、杯細胞過形成抑制作用、気道炎症抑制作用及び粘膜正常化作用を有し、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核に対する優れた去痰作用を有する化合物として広く知られており、総合感冒薬や鎮咳去痰薬に広く配合されている(非特許文献3)。
【0005】
アンブロキソール及びその塩は、肺表面活性物質の分泌促進作用、気道液の分泌促進作用及び線毛運動亢進作用を有し、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難に対する優れた去痰作用を有する化合物として広く知られており、またスイッチOTC成分として認可され、総合感冒薬に配合されている(非特許文献4)。
【0006】
ブロムヘキシン及びその塩は、漿液性分泌増加作用、酸性糖蛋白溶解・低分子化作用、肺表面活性物質の分泌促進作用及び線毛運動亢進作用を有することにより、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺結核、塵肺症、手術後に対する優れた去痰作用を有する化合物とし広く知られており、総合感冒薬や鎮咳去痰薬に広く配合されている(非特許文献5)。
【0007】
トラネキサム酸は抗アレルギー・抗炎症作用を有し、扁桃炎、咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹等の症状対する優れた効果を示すことから、総合感冒薬や鎮咳去痰薬、鼻炎薬等に広く配合されている(非特許文献6)。
【0008】
グリチルリチン酸及びその塩は、カンゾウ(甘草)に含まれる成分として広く知られており、消炎作用、抗アレルギー作用、細胞修復作用等があり、消化性潰瘍や去痰薬としての効果があることが知られている。また、甘味剤や矯味剤としても広く配合されている(非特許文献7)。
【0009】
チペピジン及びその塩は延髄の咳中枢を抑制し咳の感受性を低下させることにより鎮咳作用を示すとともに、気管支腺分泌を亢進し気道粘膜線毛上皮運動を亢進することにより去痰作用を示す化合物として、感冒・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)・急性気管支炎・慢性気管支炎・肺炎・肺結核・気管支拡張症に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難に広く用いられている(非特許文献8)
【0010】
デキストロメトルファン及びその塩は、延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す化合物として、感冒・急性気管支炎・慢性気管支炎・気管支拡張症・肺炎・肺結核・上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)に伴う咳嗽に広く用いられている(非特許文献9)。
【0011】
これまで、POEソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルマクロゴールと、水を含有する基剤に、イブプロフェンとロラタジンとシクロデキストリンを配合したカプセル剤が知られている(特許文献1)。この文献では、ロラタジンの結晶化による溶解性の低下を、シクロデキストリンの共存により解決する方法が示されている。しかしながら、この技術は、ロラタジンを特殊な溶剤と水を含有する基剤に溶解又は分散させる工程が必要となり、利用できる製剤が軟カプセルに制限され、またその製造工程も限定的であった。
【0012】
今までに、イブプロフェンとロラタジンとの間に、ロラタジンの含量低下に直接影響を与えるような相互作用が生じるか否かについては、知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】添付文書 ブルフェン錠100/ブルフェン錠200/ブルフェン顆粒20%(2012年4月改訂(第14版))科研製薬株式会社
【非特許文献2】添付文書 クラリチン錠10mg/ クラリチンレディタブ錠10mg(2017年1月改訂(第16版))バイエル薬品株式会社
【非特許文献3】添付文書 ムコダイン錠250mg/ムコダイン錠500mg(2016年12月改訂(第16版))杏林製薬株式会社
【非特許文献4】添付文書 ムコソルバン錠15mg(2017年11月改訂(第9版))帝人ファーマ株式会社
【非特許文献5】添付文書 ビソルボン錠4mg(2017年7月改訂(第7版))サノフィ株式会社
【非特許文献6】添付文書 トランサミン錠250mg/トランサミン錠500mg/トランサミンカプセル250mg/トランサミン散50%(2013年4月改訂(第10版))第一三共株式会社
【非特許文献7】医薬品添加物辞典2016 日本医薬品添加物協会編集 薬事日報社
【非特許文献8】添付文書 アスベリン錠10/アスベリン錠20/アスベリン散10%/アスベリンドライシロップ2%/アスベリンシロップ0.5%/アスベリンシロップ「調剤用」2%(2017年10月改訂(第13版))ニプロESファーマ株式会社
【非特許文献9】添付文書 メジコン錠15mg/メジコン散10%(2016年4月改訂(第11版))塩野義製薬株式会社
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008-143807
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、イブプロフェン及びロラタジンを含有する固形組成物を製造したところ、ロラタジンの含量が経時的に低下するという驚くべき知見を得た。本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、イブプロフェンとロラタジンを含有しても、ロラタジンの経時的な含量低下が抑制された固形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させると、意外にもロラタジンの経時的な含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は
(1)(a)イブプロフェン、(b)ロラタジン、(c)カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする固形組成物、
(2)(c)アンブロキソールの塩がアンブロキソール塩酸塩である(1)に記載の固形組成物、
(3)(c)ブロムヘキシンの塩がブロムヘキシン塩酸塩である(1)に記載の固形組成物、
(4)(c)グリチルリチン酸の塩がグリチルリチン酸二カリウムである(1)に記載の固形組成物、
(5)(c)チペピジンの塩がチペピジンヒベンズ酸塩である(1)に記載の固形組成物、
(6)(c)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である(1)に記載の固形組成物、
(7)剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である(1)~(6)のいずれかに記載の固形組成物、
(8)(a)イブプロフェン及び(b)ロラタジンを含み、(b)ロラタジンが安定化された固形組成物を製造するための、(c)カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用、
(9)(a)イブプロフェン及び(b)ロラタジンを含む固形組成物中の(b)ロラタジンを安定化するための、(c)カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用、
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、イブプロフェン及びロラタジンを含有し、ロラタジンの安定性に優れた固形組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いられるイブプロフェンは、化学式C1318で示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。イブプロフェンは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の固形組成物中におけるイブプロフェンの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常5~95質量%、好ましくは10~90質量%、15~85質量%、15~80質量%、20~70質量%、20~60質量%である。
【0020】
本発明に用いられるロラタジンは、化学式C2223ClN示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。ロラタジンは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の固形組成物中におけるロラタジンの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.001~50質量%、0.01~30質量%、好ましくは0.1~10質量%、0.2~7質量%である。
【0021】
本発明に用いられるカルボシステインは、化学式CNOSで示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしないが、通常、L-カルボシステインが使用される。カルボシステインは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の固形組成物中におけるカルボシステインの含有量は、特に限定されないが、通常1~95質量%、5~85質量%、好ましくは10~65質量%である。
【0022】
本発明に用いられるアンブロキソールは、化学式C1318BrOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアンブロキソール又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、アンブロキソール又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。本発明の固形組成物中におけるアンブロキソール又はその塩の含有量(アンブロキソール又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01~50質量%、好ましくは0.1~30質量%である。
【0023】
本発明に用いられるブロムヘキシンは、化学式C1420Brで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いても良い。このようなブロムヘキシン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、ブロムヘキシン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。本発明の固形組成物中におけるブロムヘキシン又はその塩の含有量(ブロムヘキシン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01~30質量%、好ましくは0.1~30質量%、0.2~30質量%である。
【0024】
本発明に用いられるトラネキサム酸は、化学式C15NOで示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。トラネキサム酸は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の製剤中におけるトラネキサム酸の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常1~95質量%、3~95質量%、好ましくは5~70質量%、8~85質量%、10~65質量%である。
【0025】
本発明におけるグリチルリチン酸又はその塩は、カンゾウ(甘草)に含まれる成分として広く知られており、市販品にて入手するか、公知の製造方法によって製造することができ、生薬由来であっても良い。
グリチルリチン酸又はその塩は、成分そのものであってもよいし、生薬又は漢方薬に含有されていてもよい。特に、グリチルリチン酸類を含む生薬として、カンゾウ(カンゾウエキスやカンゾウ末)を用いることができ、カンゾウ中には、グリチルリチン酸は遊離酸及び塩の両方の形態で存在する。
グリチルリチン酸の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されないが、例えばグリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノカリウムが挙げられる。グリチルリチン酸及びその塩として、好ましくはグリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウムであり、特に好ましくはグリチルリチン酸二カリウムである。
本発明の固形組成物中におけるグリチルリチン酸及びその塩の含有量(グリチルリチン酸及びその塩を2種以上含む場合はそれらの総量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、通常グリチルリチン酸として0.01~50質量%、好ましくは0.1~30質量%である。
【0026】
本発明に用いられるチペピジンは、化学式C1517NSで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなチペピジン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、チペピジン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくはヒベンズ酸塩である。本発明の固形組成物中におけるチペピジン又はその塩の含有量(チペピジン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~50質量%、0.1~30質量%、好ましくは1~30質量%である。
【0027】
本発明に用いられるデキストロメトルファンは、化学式C1825NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなデキストロメトルファン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、デキストロメトルファン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、臭化水素酸塩、フェノールフタリン塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは臭化水素酸塩である。本発明の固形組成物中におけるデキストロメトルファン又はその塩の含有量(デキストロメトルファン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~50質量%、好ましくは0.5~30質量%である。
【0028】
また、(a)イブプロフェンと(b)ロラタジンの配合比は、特に限定されないが、ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部以上が好ましい。ロラタジンの経時的な含量低下が顕著になるからである。上限は特に限定されないが、60質量部としてもよく20質量部としてもよい。
【0029】
また、(a)ロラタジンと、(c)カルボシステインの配合比は、発明の効果の点からロラタジン1質量部に対し、カルボシステインを4質量部以上が好ましく、25質量部以上でもよい。また、上限は特に限定されず、75質量部としてもよい。
【0030】
(a)ロラタジンと、(c)アンブロキソール及びその塩の配合比は、発明の効果の点からロラタジン1質量部に対し、アンブロキソール及びその塩を1.5質量部以上が好ましく、4質量部以上でもよい。また、上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、4.5質量部としてもよい。
【0031】
(a)ロラタジンと、(c)ブロムヘキシン及びその塩の配合比は、ロラタジン1質量部に対し、発明の効果の点からブロムヘキシン及びその塩を0.2質量部以上が好ましく、0.26質量部以上が好ましく、0.4質量部以上でもよい。上限は特に限定されず、4質量部としてもよく、1.2質量部としてもよい。
【0032】
(a)ロラタジンと、(c)トラネキサム酸の配合比は、ロラタジン1質量部に対し、発明の効果の点からトラネキサム酸を4質量部以上が好ましく、9.3質量部以上としてもよい。上限は特に限定されず、100質量部としてもよく、75質量部としてもよい。
【0033】
(a)ロラタジンと、(c)グリチルリチン酸及びその塩の配合比は、ロラタジン1質量部に対し、発明の効果の点からグリチルリチン酸として0.1質量部以上が好ましく、1.2質量部以上がより好ましく、2.4質量部としてもよい。上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、6質量部としてもよい。
【0034】
(a)ロラタジンと、(c)チペピジン及びその塩の配合比は、ロラタジン1質量部に対し、発明の効果の点からチペピジン及びその塩を1質量部以上が好ましく、2.5質量部以上がより好ましく、4質量部以上としてもよい。また、上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、7.5質量部としてもよい。
【0035】
(a)ロラタジンと、(c)デキストロメトルファン及びその塩の配合比は、ロラタジン1質量部に対し、発明の効果の点からデキストロメトルファン及びその塩を0.5質量以上が好ましく、1.6質量部以上がより好ましい。また、上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、4質量部、5質量部としてもよい。
【0036】
本発明の固形組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤、矯味矯臭剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0037】
本発明の固形組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0038】
本発明の固形組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0039】
本発明の固形組成物は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、(a)イブプロフェン(以下、(a)成分ともいう)、(b)ロラタジン(以下、(b)成分ともいう)、(c)カルボシステイン、アンブロキソール及びその塩、ブロムヘキシン及びその塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩、チペピジン及びその塩、並びにデキストロメトルファン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、(c)成分ともいう)を単に混合するだけでも良く、混合後に造粒しても良く、得られた造粒物を被覆してもよい。また、(a)成分、(b)成分又は(c)成分は必ずしも同一の造粒物に含まれている必要はない。 例えば、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後に、(b)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(b)成分を含有する造粒物を製造後に、(c)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物と、(b)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後、2つの造粒物を混合する、等である。
【0040】
造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法が挙げられる。また得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合してもよい。また、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【0041】
本発明の固形組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(好ましくは硬カプセル剤)である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【実施例0042】
以下に実施例、対照例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
(対照例1)
ロラタジンに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例1)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例2)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及び乳糖4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例3)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及び結晶セルロース4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例1)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びL-カルボシステイン4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例2)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びアンブロキソール塩酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例3)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びブロムヘキシン塩酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例4)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びトラネキサム酸4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例5)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びグリチルリチン酸二カリウム4質量部(グリチルリチン酸として2.4質量部)を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例6)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びチペピジンヒベンズ酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例7)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン10質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0043】
(試験方法)
対照例、比較例及び実施例の組成物を65℃にて14日間保存し、14日後における組成物中のロラタジンの残存率をHPLC法により評価した。
表1に、65℃14日保存後のロラタジン残存率(%)を示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、イブプロフェンとロラタジンを配合した比較例1~3ではロラタジンの含量に低下が確認された。一方、L-カルボシステイン、アンブロキソール塩酸塩、ブロムヘキシン塩酸塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム、チペピジンヒベンズ酸塩及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を配合した実施例1~7では、ロラタジンの含量の低下を抑制することができた。
【0046】
以下に実施例、対照例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
(比較例4)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例8)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びL-カルボシステイン25質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例9)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びアンブロキソール塩酸塩1.5質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例10)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びブロムヘキシン塩酸塩0.4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例11)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びトラネキサム酸9.3質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例12)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びグリチルリチン酸二カリウム2質量部(グリチルリチン酸として1.2質量部)を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例13)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びチペピジンヒベンズ酸塩2.5質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例14)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物1.6質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0047】
(試験方法)
比較例及び実施例の組成物を65℃にて14日間保存し、14日後における組成物中のロラタジンの残存率をHPLC法により評価した。
表2に、65℃14日保存後のロラタジン残存率(%)を示した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、イブプロフェンとロラタジンを配合した比較例4ではロラタジンの含量に低下が確認された。一方、L-カルボシステイン、アンブロキソール塩酸塩、ブロムヘキシン塩酸塩、トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム、チペピジンヒベンズ酸塩及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を配合した実施例8~14では、ロラタジンの含量の低下を抑制することができた。
【0050】
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
(実施例15)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びブロムヘキシン塩酸塩0.2質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例16)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びチペピジンヒベンズ酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例17)
ロラタジン1質量部に対し、イブプロフェン20質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物0.5質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0051】
(試験方法)
実施例の組成物を65℃にて14日間保存し、14日後における組成物中のロラタジンの残存率をHPLC法により評価した。
表3に、65℃14日保存後のロラタジン残存率(%)を示した。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、イブプロフェンとロラタジンを配合した際に確認された(比較例4)ロラタジンの含量低下は、ブロムヘキシン塩酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物を配合した実施例15~17において、抑制することができた。
【0054】
以下に製剤調製例を挙げる。
製剤例1~12
表4及び表5記載の処方例について、公知の技術を用いて錠剤、散剤又は顆粒剤を製造する。得られる散剤又は顆粒剤を、公知の技術を用いて、硬カプセルに充填し、硬カプセル剤を製造する。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、イブプロフェン及びロラタジンを含有し、ロラタジンの安定性に優れた固形組成物の提供が可能となった。