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  • 特開-模型部品、及び、模型部品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028597
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】模型部品、及び、模型部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/42 20060101AFI20240226BHJP
   A63H 3/00 20060101ALI20240226BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20240226BHJP
   A63H 9/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A63H3/42
A63H3/00 Z
A63H3/36 Q
A63H3/36 C
A63H9/00 Q
A63H9/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008792
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2021022021の分割
【原出願日】2019-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴大
(57)【要約】
【課題】安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層とを有する模型部品であって、前記第2の層は少なくとも一部分の厚みが他の部分よりも薄く形成された領域を含み、前記領域には、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれる模型部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は少なくとも一部分の厚みが他の部分よりも薄く形成された領域を含み、
前記領域には、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれることを特徴とする模型部品。
【請求項2】
前記領域には、複数の前記部分が隣接して配置されている、請求項1に記載の模型部品。
【請求項3】
前記第1の色の濃度は前記第2の色の濃度よりも高く、
前記第1の色と前記第2の色とは、互いに同系色、類似色、または、反対色の関係を有する色である請求項1または2に記載の模型部品。
【請求項4】
前記領域は、前記第1の色が前記第2の材料を透過して前記模型部品の外部から視認可能となる第1の厚さよりも薄い部分を含むように形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項5】
前記第2の層は、前記領域において、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さから、前記第1の厚さに変化するように形成されている請求項4に記載の模型部品。
【請求項6】
前記第2の厚さは、前記第1の厚さの半分の厚さである、請求項5に記載の模型部品。
【請求項7】
前記模型部品は人形の顔の部品であって、前記領域は前記人形の顔の頬の一部を形成する、請求項1から6のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項8】
前記第1の色は不透明色であって、前記第2の色は透明色である請求項1に記載の模型部品。
【請求項9】
前記部分の周辺において、前記第2の層の厚みが増加するように変化している、請求項8に記載の模型部品。
【請求項10】
前記第1の層の前記第2の層と接する面は、段差または凹部を含む構造を有し、前記第2の層の厚みは前記構造に対応して変化している、請求項8または9に記載の模型部品。
【請求項11】
第3の色の第3の材料で形成された第3の層を更に備え、
前記第3の層は、前記第1の層の表面に露出し、かつ、前記第2の層により覆われた第1の突起部を有し、前記第1の突起部の端部及び前記端部の周辺において前記第2の層の厚みが変化している、請求項8から10のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項12】
第4の色の第4の材料で形成された第4の層をさらに備え、
前記第4の層は、前記第1の層及び前記第2の層を貫通して、前記第2の層の表面に露出した第2の突起部を有する、請求項11に記載の模型部品。
【請求項13】
前記第3の色及び前記第4の色は、前記第1の色とは異なる不透明色である請求項12に記載の模型部品。
【請求項14】
前記第1の突起部の周辺における前記第2の層の厚みと、前記第2の突起部の周辺における前記第2の層の厚みとが異なる、請求項12または13に記載の模型部品。
【請求項15】
前記模型部品は、人形の眼の部品である請求項8から14のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項16】
模型部品の製造方法であって、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と
を含み、
前記第2の工程では、少なくとも一部分の厚みが他の部分よりも薄く形成された領域を含み、前記領域には前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれるように前記第2の層が成形される製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品及び模型部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるプラモデル(登録商標)と呼ばれるような組み立て模型の部品(パーツとも言う)、例えば、玩具の顔に着色する際は、一か所一か所、人の手で色を塗ったり、彩色個所に開口部が設けられたマスクを利用してスプレーで塗装したりすることが行われている(特許文献1を参照)。また、複数の印刷機とコンベアを備えた彩色装置を利用して塗装を自動化したものも提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3-34226号公報
【特許文献2】特開平8-47585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、色が段階的に濃くなっていくようなグラデーションを施すには技量が必要であり、品質を安定させるのは困難である。また、塗装用の彩色装置を用いる場合、追加の設備投資や、設備が大型化するという問題もある。
【0005】
本発明は、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、模型部品であって、
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は少なくとも一部分の厚みが他の部分よりも薄く形成された領域を含み、
前記領域には、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に対応する模型部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】実施形態1に対応する模型部品の構造の一例を説明するための図である。
図3】実施形態2に対応する模型部品の構造の一例を説明するための図である。
図4】実施形態2に対応する模型部品の構造の他の一例を説明するための図である。
図5】実施形態2に対応する模型部品の断面構造の一例を説明するための図である。
図6】実施形態2に対応する模型部品の断面構造の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同じ要素を示している。また、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態おいて成形材料としてポリスチレンを例示するがこれに限定されず、他の材質(ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)の利用を排除するものではない。
【0010】
[実施形態1]
まず、発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法を、図1のフローチャートに従って説明する。S101では、模型部品の骨格部分を構成する1次成形層を形成するための1次成形を行う。1次成形層の成形材料(素材)としては、汎用ポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を使用することができる。次に、S102では、1次成形層の上側に、1次成形層を覆うように2次成形層を形成するための2次成形を行う。2次成形層の成形材料は、強化ポリスチレン(KPS)を使用することができる。2次成形層は模型部品の外側表面を形成することになるが、その厚みは部分的に異なっており、薄く形成されている部分は、その下側に形成された1次成形層の色が透ける程度の薄さで形成されている。また、薄く形成されている部分の一部からは1次成形層が2次成形層の表面に露出している。
【0011】
上記の工程において、1次成形層の成形材料と2次成形層の成形材料とは、少なくとも色が異なっている。2次成形層に比べ、1次成形層は濃度の高い色とすることができる。例えば、模型部品が人形の顔や体の一部を構成する場合に、表面を構成する2次成形層は肌色であるのに対して、1次成形層は濃い肌色、あるいは、濃いオレンジ色、濃いピンク色などとすることができる。本実施形態では、このように1次成形層と2次成形層とを異なる色の成形材料で形成し、その上で2次成形層を薄く形成し、その下にある色の異なる1次成形層が透けて見えるようにすることで、グラデーションを表現可能にする。
【0012】
また、各成形層の成形材料の材質については、1次成形層及び2次成形層を互いに結合させて一体化させるため、共通の材質とすることができる。上記の例ではKPS、GPPS、HIPSの性質の違いはあれど、ポリスチレンとして共通の材料を用いている。ポリスチレン以外にも、例えばABS樹脂やポリエチレン(PE)等を共通に用いてもよい。また、一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい。
【0013】
上記の少なくとも2段階の成形工程からなる模型部品の製造方法は、例えば多色成形装置を用いて実施することができる。各成形工程では、その工程に対応する成形型を使用する。具体的には、成形型のランナー溝や各部品を成形するための成形空間(キャビティ)に成形材料を流入させて成形物を形成し、冷却した後に成形型から成形物が取り出される。1次成形で作製された成形物については、それぞれ次の成形工程の成形型に取り付けられて、2次成形が実行される。図1は工程数が2の場合の例を示したが、当該工程数はあくまで説明のためのものであって、1次成形の前、或いは、2次成形の後に追加の成形工程を設けてもよい。多色成形装置を用いた成形方法そのものは公知であるため、より詳細な説明は省略する。
【0014】
図2は、図1の製造方法に従って製造された模型部品の構造の一例を説明するための図である。図2(A)は、本実施形態に対応する2段階の成形工程により作製された、人形玩具の顔の一部としての模型部品20の一例を示す図である。模型部品20の眼下の頬の領域21には赤味を表現する1次成形層の露出部分が含まれる。当該領域21は左右の頬の位置に存在する。孔22は、眼の模型部品が挿入される挿入孔であって、眼の模型部品の構造については実施形態2において説明する。
【0015】
図2(B)は模型部品20の領域21を通るA-A'断面を例示的に示す断面図である。断面図に示すように、2次成形層202は1次成形層201を覆うように形成され、2次成形層202の表面には凹凸が形成されると共に、厚みが位置によって異なっている。2次成形層202は模型の表面を形成する成形層であって、模型の所望の外形に応じた表面を有している。模型部品20は人形玩具の顔の一部であるため、2次成形層の表面の凹凸により鼻、頬などが表現されている。
【0016】
1次成形層201と2次成形層202とを比較すると、1次成形層201は2次成形層202の相似形(2次成形層202を縮小した形状)である部分と、相似形でない部分とを含むように構成されている。1次成形層201の相似形の部分は、2次成形層202の厚みが所定値に保たれる。一方、相似形でない部分は、相似形の部分よりも隆起(凸状を形成)しており、これにより、2次成形層202が所定値よりも薄く形成されることになる。ここで、所定値は、2次成形層を透過して1次成形層の色が外側から視認可能でなくなるような2次成形層の厚みのうち、最も薄い厚みに相当する。領域21に相当する部分は特に2次成形層202の厚みが薄くなっていると共に、1次成形層201には突起203が形成されている。当該突起203の先端は2次成形層202の表面に露出しており、領域21における頬の赤味を形成する。
【0017】
2次成形層202の厚みは、模型部品20の個所によって異なっていることがわかる。例えば、厚み、D1、D2、D3を比較すると、D1>D2≒D3となっている。ここで、D1は2次成形層202の表面から1次成形層201が透けて見えない領域における厚み(上述の所定値の厚みに相当する)を有することとする。また、D2、D3はそれぞれ、2次成形層202の表面から1次成形層201が透けて見える領域における最薄部の厚みを有する。D2、D3は、D1の所定値の厚みよりも薄ければよい。
【0018】
本実施形態においては、D1、D2、D3の数値をそれぞれD1=d1(例えば、1ミリメートル)、D2=D3=d2(例えば、0.5ミリメートル)とすることができる。ただし、これはあくまで一例であって、使用する素材の性質(透過度)に応じてd1、d2の値をより小さく、あるいは、大きくしてもよい。あるいは、場所によって下地の透過度合いを変更したい場合には、領域内の最薄値を異なる値としてもよい。例えば、D2は、0.5ミリメートルに対し、D3は0.7ミリメートルとしてもよい。
【0019】
このようにして2次成形層202を部分的に薄く形成することにより、2次成形層202を透過してその内側に位置する1次成形層201の色味を模型部品20の外側から観察することが可能となる。また、1次成形層201に突起203を形成することにより、1次成形層が有する色を直接に模型部品20の表面に露出させることができる。
【0020】
このとき、模型部品20の表面に露出する突起203の先端部分の大きさ、突起203の数、突起203の配置を調節することにより、模型部品20の表面において任意の色彩的な表現が可能となる。例えば、先端部を小さくし、数多くの突起を密に配置することで、チーク(頬紅)の表現が可能となる。
【0021】
図2(C)は2次成形層202を透過して1次成形層201の色味が模型部品20の外側から観察可能になる場合を説明するための図である。図2(C)に示すように、領域21は、2次成形層202において厚みが薄く形成された位置に形成される。また、1次成形層201に形成された突起203も模型部品20の外側から確認することができる。
【0022】
このとき、領域21においては、2次成形層202の厚みが最薄値のd2から下地が透けて見えなくなるd1まで変化することにより、領域21は最薄値において最も濃く下地の1次成形層201の色が透けて見える個所から、徐々に色が薄くなって2次成形層202自体の色に遷り変わるので、観察者は模型部品20の表面においてグラデーションを観察することができる。
【0023】
グラデーションの見え方は、d2からd1への変化のさせかたの違いによって異ならせることが可能である。例えば、厚みの変化の度合いを、急峻とするか、あるいは、緩やかとするかによって、濃い色から薄い色への変化の仕方が異なるため、異なるグラデーション表現を実現することができる。例えば、部分的に濃い色を出したい場合には、d2からd1の変化を急峻とすればよい。その一方、濃い色から淡い色を経て2次成形層202の素材色に遷移させたい場合には、d2からd1への変化を緩やかにする。例えば、厚さd2となる位置を中心とした円形領域において、中心から半径方向に厚さを増加させていき、中心から半径rの位置において厚さd1となるような状況を想定した場合、半径rを大きくすれば変化は緩やかになり、半径rを小さくすれば変化は急峻になる。
【0024】
また、同一の成形材料であればd1の値は固定的に決まるが、d2の値は可変とすることができるので、表現したいグラデーションの態様に応じてd2の値を変更してもよい。グラデーションを付加しようとする領域において、表現しようとする色が最濃値よりも薄くてもよい場合には、例えばd2の値を0.5ミリメートルではなく0.7ミリメートルとすることができる。
【0025】
また、2次成形において用いる素材の色が1色の場合を説明したが、複数色の素材を重ねて使用してもよい。例えば、上述の実施形態では、人形玩具の表面を形成する2次成形層の色が肌色であり、1次成形層の色がオレンジあるいはピンクである場合を説明したが、陰影を与えるために、1次成形層の下に黒色層をさらに形成してもよい。その際に、上記実施形態と同様にして層の厚みを調整することにより、陰影の与え方を調整することができる。
【0026】
[実施形態2]
次に、第2の実施形態について説明する。上述の実施形態では人形玩具の顔の一部である眼下の頬の領域との関連で第1の実施形態について説明した。これに対し、以下では当該顔の一部である眼の構造との関連で実施形態を説明する。
【0027】
本実施形態の模型玩具は眼の構造体であって、図2(A)に示す人形玩具の顔の挿入孔22に挿入される。図3(A)は、眼の構造体30の外観の一例を示す図である。当該構造体30は、模型玩具20の表側に面する有色透明のレンズ部材32が配置され、構造体30の内部を透視することができる。またレンズ部材32の一部からは瞳の光沢を表現するための光沢部材33及び34が露出している。レンズ部材32の内側には瞳孔部材35が配置されている。レンズ部材32は、例えばオレンジ色の透明の材料で形成されており、その厚みにより外部から認識される色の濃さが異なる。例えば、厚みが厚い部分はより濃いオレンジ色を有するように認識される。
【0028】
レンズ部材32の成形材料(素材)としては、例えば透明(または半透明)の汎用ポリスチレン(GPPS)を使用することができる。また、光沢部材33、34、瞳孔部材35の各成形層の成形材料としては不透明のポリスチレン(PS)または強化ポリスチレン(KPS)を使用することができる。
【0029】
実施形態1で示した図1のフローチャートに当てはめると、本実施形態では、S101では、光沢部材33、34、瞳孔部材35の各成形層を1次成形層として不透明のポリスチレン(PS)または強化ポリスチレン(KPS)により順に成形する。それぞれの層は異なる色の成形材料を使用するため、成形材料毎の成形工程において成形されるが、ここではまとめて簡単のために1次成形層と呼ぶ。その後に、1次成形層の上側に、当該成形層の少なくとも一部を覆うように2次成形層として、汎用ポリスチレン(GPPS)によりレンズ部材32を成形する。
【0030】
図4に、構造体30を構成する部材をそれぞれ単独で示した図を示す。図4(A)は、レンズ部材32の構造を示す。レンズ部材32には光沢部材33や34を表面に露出させるための開口321や322が設けられているとともに、その厚みが異なるように形成されている。
【0031】
図4(B)は光沢部材33の構造を示す。光沢部材33は、レンズ部材32の表面に露出する部分331、332と、それ以外のレンズ部材32の内側に位置する部分333等とを含むように構成されている。レンズ部材32の内側に位置する部分333はレンズ部材32の内側の形状と対応する形状(平坦部、段差、凹部を含む)を有しており、当該形状によりレンズ部材32の厚みが決定される。光沢部材33の中央には瞳孔部材35を貫通させるための孔334が設けられている。また、光沢部材33には、光沢部材34を貫通させるための孔335が設けられている。光沢部材33は例えば白色の不透明の材料で形成することができる。
【0032】
図4(C)は、光沢部材34の構造を示す。光沢部材34は、光沢部材33とレンズ部材32とを貫通し、レンズ部材32の表面に露出する突起部341、342を含むように構成され、光沢部材33とは異なる色(例えば、黄色)の不透明の材料で形成することができる。
【0033】
図4(D)は瞳孔部材35の構造を示す。瞳孔部材35は、光沢部材33の孔334に貫通させる突起部351を含むように構成される。突起部351の端部はレンズ部材32により覆われる。また、瞳孔部材34は眼の輪郭を形成する部材352を含むことができる。瞳孔部材34は、光沢部材33や34とは異なる色(例えば、黒色)の不透明の材料で形成することができる。
【0034】
図5(A)は、図4(A)から(D)に示した各部材を結合した状態の構造体30を示し、図5(B)は、図5(A)の構造体30のB-B'断面を例示的に示す断面図である。当該断面図に示すように、レンズ部材32の厚みは場所によって異なっており、これにより瞳の色の濃淡を表現することができる。例えば、瞳孔部材35の突起部351の端部付近においてはレンズ部材32が徐々に薄くなっており、これに伴って素材色(オレンジ色)が徐々に薄くなり、瞳孔部材35の色が徐々に強くなる。
【0035】
また、光沢部材33のレンズ部材32の表面に露出している突起部332の付近では、レンズ部材32は厚く形成されている一方で、光沢部材34のレンズ部材32の表面に露出している突起部341の付近では薄く形成されている。このように、突起部の周辺においてもレンズ部材32の厚みを変えることによって、瞳内におけるグラデーションを表現することができる。
【0036】
また、図5(C)は、図5(A)の構造体30のC-C'断面を例示的に示す断面図である。当該断面図に示すように、レンズ部材32の表面に露出している光沢部材33の突起部331の周辺の位置において、レンズ部材32の厚みが連続的に変化していることが分かる。具体的に、突起部331の周囲では厚みが薄く、外側に向かうにしたがって厚みが増加している。このことにより突起部331のレンズ部材32の表面に露出している部分の輪郭周囲にグラデーションが施されるので、当該部分の輪郭がぼやけるような視覚効果を期待できる。
【0037】
このようにして、レンズ部材32の厚みを異ならせ、また、段階的、或いは、徐々に厚く(薄く)していくことで、瞳の色の濃淡を表現することができる。
【0038】
次に図6を参照して、レンズ部材32の裏側の構造について説明する。図6(A)は、レンズ部材32の裏側の構造の一例を示す。図6(B)は、図6(A)のレンズ部材32のC-C'断面を例示的に示す断面図である。図6(C)は、図6(A)のレンズ部材32のD-D'断面を例示的に示す断面図である。これらの断面図に示すように、レンズ部材32の厚みは場所によって異なっており、その厚みの変化は、階段状に段階的に変化しているものと、連続的に徐々に変化しているものとがある。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第1の色は不透明色であって、前記第2の色は透明色であり、
前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分を含み、前記部分の周辺に前記第2の層の厚みが増加するように変化する周辺部を含む、模型部品。
【請求項2】
複数の前記部分が隣接して配置されている、請求項1に記載の模型部品。
【請求項3】
前記第1の層の前記第2の層と接する面は、段差または凹部を含む構造を有し、前記第2の層の厚みは前記構造に対応して変化している、請求項1または2に記載の模型部品。
【請求項4】
第3の色の第3の材料で形成された第3の層を更に備え、
前記第3の層は、前記第1の層の表面に露出し、かつ、前記第2の層により覆われた第1の突起部を有し、前記第1の突起部の端部及び前記端部の周辺において前記第2の層の厚みが変化している、請求項1から3のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項5】
第4の色の第4の材料で形成された第4の層をさらに備え、
前記第4の層は、前記第1の層及び前記第2の層を貫通して、前記第2の層の表面に露出した第2の突起部を有する、請求項4に記載の模型部品。
【請求項6】
前記第3の色及び前記第4の色は、前記第1の色とは異なる不透明色である請求項5に記載の模型部品。
【請求項7】
前記第1の突起部の周辺における前記第2の層の厚みと、前記第2の突起部の周辺における前記第2の層の厚みとが異なる、請求項5または6に記載の模型部品。
【請求項8】
前記模型部品は、人形の眼の部品である請求項1から7のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項9】
模型部品の製造方法であって、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と
を含み、
前記第1の色は不透明色であって、前記第2の色は透明色であり、
前記第2の工程では、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれ、前記部分の周辺に前記第2の層の厚みが増加するように変化する周辺部が含まれるように前記第2の層が成形される製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、模型部品であって、第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層とを有する模型部品であって、前記第2の層は少なくとも一部分の厚みが他の部分よりも薄く形成された領域を含み、前記領域には、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分が含まれる。
本発明はまた、模型部品であって、第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、前記第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層であって、第2の色の第2の材料からなる第2の層とを有する模型部品であって、前記第1の色は不透明色であって、前記第2の色は透明色であり、前記第1の層が前記第2の層の表面に露出した部分を含み、前記部分の周辺に前記第2の層の厚みが増加するように変化する周辺部を含む。