(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028616
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20240226BHJP
【FI】
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009267
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2022101514の分割
【原出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】513040384
【氏名又は名称】株式会社マネーフォワード
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】坂 裕和
(72)【発明者】
【氏名】山内 健太
(72)【発明者】
【氏名】板東 雄二郎
(57)【要約】
【課題】ユーザの需要に合致した資金調達に関する情報を的確に提示することが可能な情報処理システム等を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、制御部を備える。制御部は、取得ステップと、抽出ステップと、を実行するように構成される。取得ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、を取得する。ここで、第1の情報は、対象ユーザの取得ステップ実行時の会計情報を含む。第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含む。抽出ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、に基づき、対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
制御部を備え、
前記制御部は、取得ステップと、抽出ステップと、を実行するように構成され、
前記取得ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、を取得し、
ここで、前記第1の情報は、対象ユーザの前記取得ステップ実行時の会計情報を含み、
前記第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含み、
前記抽出ステップでは、前記第1の情報と、前記第2の情報と、に基づき、前記対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する、情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記制御部は、さらに表示制御ステップを実行するように構成され、
前記表示制御ステップでは、前記抽出ステップで抽出された前記提示情報を、前記対象ユーザが視認可能に表示させる、情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記取得ステップでは、前記第1の情報として、複数の前記対象ユーザの前記会計情報を取得する、情報処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記抽出ステップでは、前記第2の情報に関する学習済みモデルに基づき、前記提示情報を抽出する、情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、複数の前記第1のユーザと、複数の前記第2のユーザと、の各々の前記会計情報を学習し、前記資金調達を申込む確率を算出するためのモデルであり、
前記抽出ステップでは、前記対象ユーザが前記資金調達を申込む確率を算出した上で、当該確率が所定値以上となった場合に、前記提示情報を抽出する、情報処理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、第1の会計情報と、第2の会計情報と、を用いて作成されたモデルであり、
前記第1の会計情報は、複数の前記第1のユーザの各々が前記資金調達を申込んだ時における、複数の前記第1のユーザの各々の会計情報であり、
前記第2の会計情報は、前記学習済みモデルの作成又は更新時の、複数の前記第2のユーザの各々の会計情報である、情報処理システム。
【請求項7】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、互いに類似する複数の資金調達の申込み内容に基づいて学習されたモデルである、情報処理システム。
【請求項8】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、前記第1のユーザ及び/又は前記第2のユーザの属性に基づいて学習されたモデルであり、
前記属性は、業種、事業年数、社員数、拠点、沿革及び経営理念からなる群から選択される1以上に関連する情報を含む、情報処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記制御部は、さらにメッセージ準備ステップを実行するように構成され、
前記メッセージ準備ステップでは、前記提示情報に付随するメッセージを準備し、ここで、前記メッセージは、前記対象ユーザに対して前記資金調達を促す内容を示すメッセージである、情報処理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理システムにおいて、
前記メッセージ準備ステップでは、前記第1の情報の内容に基づき、複数用意されたメッセージの中から選択を行うことで前記提示情報に付随する前記メッセージを準備する、情報処理システム。
【請求項11】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記制御部は、さらに演算ステップを実行するように構成され、
前記演算ステップでは、前記取得ステップで取得した前記第1の情報と、前記第2の情報と、に基づき、前記提示情報について、前記対象ユーザへ提示すべき時期を演算し、
前記抽出ステップは、前記提示情報とともに、前記演算ステップで演算された前記対象ユーザへ提示すべき時期を抽出する、情報処理システム。
【請求項12】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記第1の情報及び/又は前記第2の情報に含まれる前記会計情報は、所定の時点における現金残高、所定の期間における現金入出、所定の時点におけるキャッシュフロー、所定の時点又は期間における財務指標、及び所定の時点又は期間における株価からなる群から選択される1以上に関連する情報を含む、情報処理システム。
【請求項13】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記提示情報は、金融商品又は決済代行サービスに関する情報を含む、情報処理システム。
【請求項14】
情報処理方法であって、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の情報処理システムに係る各ステップを備える、方法。
【請求項15】
プログラムであって、
コンピュータに請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の情報処理システムの各ステップを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中小企業や個人事業等を営む経営者にとって、適切な資金調達手段を確保することは重要な事項である。これに関連し、以前よりユーザに金融商品等を案内する技術が開拓されてきた。典型的なものとして、特許文献1には、顧客の都合にあわせて、金融商品を案内する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、資金調達手段を確保したい経営者としては、自身の事業体の現況に適合した商品やサービスなどが提示されることが望ましいと考えられる。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、ユーザの需要に合致した資金調達に関する情報を的確に提示することが可能な情報処理システム等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、制御部を備える。制御部は、取得ステップと、抽出ステップと、を実行するように構成される。取得ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、を取得する。ここで、第1の情報は、対象ユーザの取得ステップ実行時の会計情報を含む。第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含む。抽出ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、に基づき、対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する。
【0007】
上記態様によれば、ユーザの需要に合致した資金調達に関する情報を的確に提示することが可能な情報処理システム等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システム100を表す構成図である。
【
図2】対象ユーザ端末1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】サーバ3のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】サーバ3における制御部33等によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】情報処理システム100の実行する情報処理を説明するためのアクティビティ図である。
【
図7】本実施形態に係る学習済みモデルを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
すなわち、本実施形態の情報処理システムは以下に示すものである。
情報処理システムであって、
制御部を備え、
前記制御部は、取得ステップと、抽出ステップと、を実行するように構成され、
前記取得ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、を取得し、
ここで、前記第1の情報は、対象ユーザの前記取得ステップ実行時の会計情報を含み、
前記第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含み、
前記抽出ステップでは、前記第1の情報と、前記第2の情報と、に基づき、前記対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する、情報処理システム。
【0011】
はじめに、本実施形態の一態様について例示的に説明する。
一例として、この態様は、ユーザの財務情報及び/又は取引情報(トランザクションデータ)に基づいて、当該ユーザに対して融資の可否を判断し、融資の申し込みを受け付けるサービスに対して適用される。ここで、このサービスを、便宜上、サービスXと称する。
【0012】
サービスXは、複数のユーザによって利用される。複数のユーザは、企業や個人事業主などであり、各々異なるユーザである。従って、複数のユーザの財務情報は各々異なり、かつ、複数のユーザの取引情報も各々異なる。
【0013】
ここで、サービスXを介して、資金調達の一例である銀行融資についての融資可否が判断される場合を想定する。ここで、この銀行融資を、便宜上、金融商品Aと称する。
【0014】
2022年6月1日を基準に説明する。サービスXを介して、2022年6月1日よりも前に金融商品Aに申し込んだユーザが複数存在する場合を想定し、これらのユーザを申込ユーザ1~申込ユーザNと称する。なお、本開示では、申込ユーザは第1のユーザとも称される。一方、2022年6月1日の時点で金融商品Aに申し込んでいないかったユーザも複数存在する場合を想定し、これらのユーザを非申込ユーザ1~非申込ユーザMと称する。ここで、N及びMは、2以上の自然数である。
【0015】
サービスXは、申込ユーザ1~N及び非申込ユーザ1~Mの各々の財務情報及び取引情報を取得することができる。なお、本開示において、財務情報及び取引情報を含む情報を会計情報とも称する。サービスXは、ユーザに対して会計情報の入力を要求することによって、当該ユーザの会計情報を取得することもできるし、サービスXと連携するクラウド型会計サービスからユーザの会計情報を取得することもできる。また、融資の審査や提案を行うサービスXが会計サービスの一つの機能として実現されてもよい。
【0016】
サービスXでは、申込ユーザの会計情報と、非申込ユーザの会計情報とを教師データとして機械学習を行うことで、対象ユーザが金融商品Aを申し込む確率を算出する学習モデルを生成する。ここで、学習モデルは2022年6月1日に生成されるものとする。
【0017】
サービスXは、申込ユーザ1~申込ユーザNの各々が金融商品Aに申し込んだ時点における会計情報1~会計情報Nを取得することができ、取得した会計情報1~会計情報Nを学習モデルのための教師データとして用いることが出来る。なお、申込ユーザ1~申込ユーザNが金融商品Aに申し込んだ時点(日時)は、偶然同じになることもあるが、通常は各々異なる。融資の申し込みは、サービスXに対する金融商品の融資の仮審査(事前審査)であってもよいし、本審査の依頼であっても良い。従って、サービスXは、ユーザからのこのような依頼を受け付けたタイミングを、ユーザが金融商品を申し込んだ時点として取り扱ってもよい。
【0018】
また、会計情報は、融資の提供を受けることによって変化する。従って、教師データに用いられる会計情報1~会計情報Nとしては、金融商品Aによる融資の提供を受けることによって会計情報が変化する直前の会計情報を用いることもできる。例えば、融資の提供によって変化する前の会計情報において、サービスXが取得可能な最新の会計情報が、申し込んだ時点における会計情報として取り扱われてもよい。
【0019】
また、サービスXは、非申込ユーザ1~非申込ユーザMの各々の会計情報1~会計情報Mを取得することができ、会計情報1~会計情報Mを学習モデルのための教師データとして用いることが出来る。教師データに用いられる会計情報1~会計情報Mとしては、学習モデルを生成する直前の会計情報を用いることができる。本例では、2022年6月1日に学習モデルが生成されるが、それよりも前であって、かつ最新で取得可能な会計情報を会計情報1~会計情報Mとして教師データに用いることができる。
【0020】
上記のようにして生成された学習モデルは、対象ユーザの会計情報に基づいて、当該対象ユーザが金融商品Aを申し込む確率を算出することが出来る。複数の対象ユーザ1~ユーザTがサービスXを利用している場合、学習モデルは、対象ユーザ1~Tの各々の会計情報1~Tに基づいて、複数の対象ユーザの各々が金融商品Aを申し込む確率を算出することが出来る。例えば、対象ユーザ1~Tのうち、金融商品Aを申し込む確率が所定値以上と算出された対象ユーザに対して、サービスXは金融商品Aを提案することが出来る。なお、所定値は自由に設定可能であるが、例えば、0.5(50%)である。具体的には、サービスXにログインした対象ユーザに対して、サービスXの画面を介して、金融商品Aを提案することが出来る。また、対象ユーザに金融商品Aを提案する際には、当該対象ユーザと会計情報などの状況が似たユーザが過去に金融商品Aを申し込んでいた旨を当該対象ユーザに通知してもよい。
【0021】
なお、非申込ユーザは学習モデルを生成する時点では申込を行っていないユーザではあるが、非申込ユーザを対象ユーザとして取り扱って、学習モデルを利用した申し込み確率の計算を行っても良い。すなわち、非申込ユーザに対しても金融商品の提案がなされ得る。
【0022】
また、上記の説明では、金融商品Aに対して申込が行われる確率を算出する学習モデルについて説明したが、金融商品Aだけでなく、金融商品Aと類似する金融商品に対しても申込が行われる確率を当該学習モデルを用いて算出してもよい。例えば、金融商品Aがある銀行からの銀行融資である場合、他の銀行からの銀行融資は金融商品Aと類似する金融商品として取り扱うことができる。また、複数の金融商品に対して学習モデルを生成し、当該複数の金融商品の各々に対して対象ユーザが申し込む確率を算出し、算出された確率が所定値以上となった金融商品を対象ユーザに提案してもよい。
【0023】
また、教師データとして用いられる会計情報の具体的な中身としては、現金残高(例えば、月末の現金残高)、現金の入出履歴、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー、その他トランザクションデータなどがあげられるが、これらに限定されるべきではない。
【0024】
また、申込ユーザ及び非申込ユーザの業種と事業規模(従業員数や売上など)も考慮して学習モデルを生成し、対象ユーザの業種と事業規模にも基づいて、対象ユーザが金融商品を申込む確率を算出してもよい。
【0025】
以上のような本開示の一態様によれば、対象ユーザの会計情報と類似する会計情報の申込ユーザが過去に存在する場合に、対象ユーザに対して積極的に金融商品を提案することが出来るようになる。
【0026】
なお、上記した説明は、あくまで一つの例であって、本発明は上記した例に限定されるべきではない。また、上記した例を、矛盾が生じない範囲で、下記に図面を参照して説明される実施形態と組み合わせてもよい。
【0027】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0028】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0029】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0030】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0031】
1.1 情報処理システム100
図1は、本実施形態に係る情報処理システム100を表す構成図である。本実施形態の情報処理システム100は対象ユーザ端末1と、サーバ3と、を備え、これらがネットワーク4を通じて接続されている。なお、
図1においては、対象ユーザ端末1の他、対象ユーザと利害関係を有する第3のユーザの所有する第3のユーザ端末2が示されている。これらの構成要素についてさらに説明する。なお、情報処理システム100に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。したがって、サーバ3単体であってもシステムの一例となる。
【0032】
1.2 対象ユーザ端末1
対象ユーザ端末1は、提示情報が提示され得るユーザが所持する端末である。例えば、対象ユーザ端末1は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等が想定されるが、その詳細は限定されるものではない。
【0033】
図2は、対象ユーザ端末1のハードウェア構成を示すブロック図である。
対象ユーザ端末1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、表示部14と、入力部15と、を有し、これらの構成要素が対象ユーザ端末1の内部において通信バス10を介して電気的に接続されている。通信部11、記憶部12及び制御部13の説明は、後述の、サーバ3における通信部31、記憶部32及び制御部33と略同様のため省略する。
【0034】
表示部14は、例えば、対象ユーザ端末1の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部14は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、端末の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。ここでは、表示部14は、対象ユーザ端末1の筐体に含まれるものとして説明する。
【0035】
入力部15は、対象ユーザ端末1の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部15は、表示部14と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTYキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部15がユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力が命令信号として、通信バス10を介して制御部13に転送され、制御部13が必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。
【0036】
1.3 第3のユーザ端末2
第3のユーザ端末2は、対象ユーザと関係性を有する第3のユーザが所持する端末である。ここで対象ユーザとの間に存在する関係性の詳細はとくに制限されるものではないが、例えば、対象ユーザと、第3のユーザと、の間に利害関係がある場合が例示される。また、第3のユーザが対象ユーザの出資者であるという関係や、第3のユーザが対象ユーザのメンターであるという関係等が例示される。
例えば、第3のユーザ端末2は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等が想定されるが、その詳細は限定されるものではない。
【0037】
第3のユーザ端末2のハードウェア構成は、前述の対象ユーザ端末1のハードウェア構成と同様である場合が例示される。すなわち、第3のユーザ端末2は
図2で示される各種構成(通信部、記憶部、制御部、表示部、入力部及び通信バス)を有していてもよいが、ここでは省略のため、説明を割愛する。
【0038】
1.4 サーバ3
図3は、サーバ3のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態の情報処理システム100に包含されるサーバ3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を有し、これらの構成要素がサーバ3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0039】
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、サーバ3は、通信部31を介して、対象ユーザ端末1や第3のユーザ端末2等とネットワーク4を介して種々の情報を通信する。
【0040】
記憶部32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部33によって実行されるサーバ3に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。特に、記憶部32は、制御部33によって実行されるサーバ3に係る種々のプログラム等を記憶している。
【0041】
制御部33は、サーバ3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部33は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、サーバ3に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部32に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部33によって具体的に実現されることで、制御部33に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、2.節においてさらに詳述する。なお、制御部33は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0042】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部32に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部33によって具体的に実現されることで、制御部33に含まれる各機能部として実行されうる。
【0043】
図4は、サーバ3における制御部33等によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、情報処理システム100の一例であるサーバ3は、取得部331と、抽出部332と、表示制御部333と、メッセージ準備部334と、演算部335と、記憶管理部336と、を備えるものである。
【0044】
取得部331は、ユーザの端末操作等を契機として種々の情報を取得する。本実施形態の情報処理システム100においては、典型的には、取得部331は、第1の情報と、第2の情報と、を取得する。ここで、第1の情報は、対象ユーザの取得ステップ実行時の会計情報を含み、第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含む。この情報処理の詳細については追って説明する。
【0045】
抽出部332は、前述した第1の情報と、第2の情報と、に基づき、対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する。ここで、この提示情報には、資金調達を行うことが可能な商品(金融商品等)が含まれ得る。また、この提示情報には、事業者が資金調達を行うことを助ける各種役務が含まれ得る。抽出部332が行う、この抽出に係る情報処理の詳細については追って説明する。
【0046】
表示制御部333は、種々の表示情報を生成して、ユーザが視認可能な表示内容を制御するように構成される。典型的には、表示制御部333は、前述の抽出部332が抽出した提示情報を対象ユーザや第3のユーザが視認可能に表示させる。なお、表示情報とは、画面、画像、アイコン、テキスト等といった、ユーザが視認可能な態様で生成された情報そのものでもよいし、例えば対象ユーザ端末1や第3のユーザ端末2に画面、画像、アイコン、テキスト等を表示させるためのレンダリング情報であってもよい。
【0047】
メッセージ準備部334は、提示情報に付随するメッセージを準備する。ここで、このメッセージは、対象ユーザに対して前記資金調達を促す内容を示すメッセージである。なお、このメッセージの準備方法について、メッセージ準備部334が所定のアルゴリズムに基づき、メッセージを生成する態様であってもよいし、前述した第1の情報の内容に基づき、複数用意されたメッセージの中から選択を行うことでメッセージを準備する態様であってもよい。
【0048】
演算部335は、取得部331が取得した第1の情報と、第2の情報とに基づき、提示情報について、対象ユーザへ提示すべき時期を演算する。この演算に係る情報処理の詳細については追って説明する。
【0049】
記憶管理部336は、本実施形態の情報処理システム100に関連する、記憶すべき種々の情報について管理するように構成される。典型的には、記憶管理部336は、対象ユーザの属性や個人情報、情報処理の過程で生じた入力・出力事項を記憶領域に記憶させるように構成される。この記憶領域は、例えばサーバ3の記憶部32や各種端末の記憶部が例示されるが、この記憶領域は必ずしも情報処理システム100のシステム内である必要はなく、記憶管理部336は、種々の情報を外部記憶装置などに記憶するように管理することもできる。
【0050】
3.情報処理方法
本節では、前述した情報処理システム100の実行する情報処理方法の各ステップについて、
図5のアクティビティ図を参照しながら説明を行う。
【0051】
図5は、情報処理システム100の実行する情報処理を説明するためのアクティビティ図である。
図5中のアクティビティA101に示されるように、まず、サーバ3に備えられる取得部331は、第1の情報と第2の情報とを取得する。
ここで、第1の情報は、対象ユーザの取得ステップ実行時の会計情報を含む。また、第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含む。
【0052】
本実施形態において、「対象ユーザ」、「第1のユーザ」および「第2のユーザ」は、いずれも事業体であってよい。この事業体は、個人(個人事業主)、法人を問わず、その業種も制限されるものではない。
【0053】
ここで、「会計情報」としては財務会計情報と、管理会計情報の双方を含み得る。本実施形態の情報処理システム100においては、取得する会計情報が財務会計情報であってもよい。また、第1の情報及び/又は第2の情報に含まれる会計情報は、所定の時点における現金残高、所定の期間における現金入出、所定の時点におけるキャッシュフロー、所定の時点又は期間における財務指標、及び所定の時点又は期間における株価からなる群から選択される1以上に関連する情報を含んでもよい。
【0054】
なお、上述の現金入出に関連する情報としては、例えば、売上高の数値を含んでもよい。また、上述のキャッシュフローに関連する情報としては、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー等の数値を含んでもよい。上述の財務指標に関連する情報としては、売上高経常利益率、自己資本当期純利益率、流動比率、自己資本比率、労働生産性、固定比率、固定長期適合率、インタレスト・カバレッジ・レシオ等の各種財務指標に関する数値を含んでもよい。
【0055】
また、取得部331は、第1の情報として、単独の対象ユーザの会計情報を取得してもよいが、複数の対象ユーザの会計情報を取得してもよい。同様に、取得部331は、第2の情報として、単独の第1のユーザ及び/又は単独の第2のユーザの会計情報を取得してもよく、複数の第1のユーザ及び/又は複数の第2のユーザの会計情報を取得してもよい。
なお、このように第1の情報として、複数の対象ユーザの会計情報を取得する際、取得部331は、互いに事業規模(従業員数、売上等)が類似していたり、業種が同一又は類似であったりする、複数の対象ユーザを選定して会計情報を取得するように構成されてもよい。
同様に、第2の情報として、複数の第1のユーザ及び/又は複数の第2のユーザの会計情報を取得する際、取得部331は、互いに事業規模(従業員数、売上等)が類似していたり、業種が同一又は類似であったりする、複数の第1のユーザ及び/又は複数の第2のユーザを選定して会計情報を取得するように構成されてもよい。
【0056】
さらに、取得部331が取得する情報は、上記以外の情報を含んでもよい。例えば、第1の情報として、対象ユーザの属性を含ませてもよい。この属性は、例えば、対象ユーザの、業種、事業年数、社員数、拠点、沿革及び経営理念からなる群から選択される1以上に関連する情報を含んでもよい。
【0057】
また、取得部331が取得する情報に関し、第2の情報の一部に、経済指標に関する情報等を含ませてもよい。この経済指標は、景気動向指数を含んでもよく、その場合、係る景気動向指数は先行指数、一致指数及び遅行指数のいずれであってもよい。また、上述の第1の情報と同様に、第2の情報として、第1のユーザや第2のユーザの属性を含ませてもよい。この第1のユーザや第2のユーザの属性は、例えば、第1のユーザ及び/又は第2のユーザの、業種、事業年数、社員数、拠点、沿革及び経営理念からなる群から選択される1以上に関連する情報を含んでもよい。
【0058】
また、取得部331が第2の情報を取得する際における「資金調達への申込を行った第1のユーザ」と、「資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザ」について、この資金調達の詳細としては、資金調達者が資金調達機関から融資を受ける融資型や、資金調達者が資金調達機関を引受先とした社債を発行することにより資金を調達する私募型等を含み得る。典型的には、資金調達への申込とは、融資商品等の金融商品への申込であってもよい。
【0059】
なお、取得部331が第1の情報や第2の情報を取得する手段はとくに制限されるものではないが、例えば、第1の情報は、対象ユーザの使用している会計ソフトや、銀行、カード、ECサイトのアプリ等から取得することができる。すなわち、取得部331は、サーバ3の通信部31、ネットワーク4等を介して、会計ソフトや各種アプリを利用している対象ユーザ端末1から財務情報を取得することができる。第2の情報も同様に、第1のユーザや第2のユーザの使用している会計ソフトや、銀行、カード、ECサイトのアプリ等から取得することができる。その他、第1のユーザや第2のユーザの有価証券報告書等の公表資料を取得することで、この第2の情報の取得が達成されてもよい。一例として、このような公表資料は、データベースに記憶されたものを採用すればよい。
一方、上述のように通信部31、ネットワーク4等を介す以外にも、サーバ3の記憶部32に第1の情報や第2の情報が記憶されている場合は、取得部331が、この記憶部32に記憶されている各種情報を取得することで、取得ステップは達成される。
【0060】
上記のようにして、取得部331が、第1の情報と、第2の情報と、を取得したのち、サーバ3の抽出部332は、これら第1の情報と、第2の情報と、に基づき、対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する(アクティビティA102)。
【0061】
すなわち、本実施形態の情報処理システム100は、第1のユーザや第2のユーザの資金調達に関する実績に基づき、対象ユーザに対して資金調達に関するレコメンドを行い得る提示情報を抽出することができる。前述の通り、第2の情報に係る、資金調達への申込は、融資商品等の金融商品への申込であってもよいことから、提示情報としても、金融商品に関する情報を含んでもよい。その他、提示情報は、このような金融商品に関する情報に加えて、もしくは、金融商品に関する情報に代えて、対象ユーザの財務状況の改善に資する種々の手続やサービス等に関する情報を含んでもよい。典型的には、提示情報は、決済代行サービスに関する情報を含んでもよく、その他、対象ユーザに対する助成金に関する情報などを含んでもよい。
【0062】
この抽出ステップについて、典型的な例の一つを以下の表1を用いて説明する。
まず、この抽出ステップが実行されるに先立って、サーバの記憶部32には、複数の資金調達の内容(金融商品(商品ア、商品イ等))と、それぞれの資金調達について申込実績の有無、資金調達を申込んだ事業者(ユーザ)については、係る事業者の会計情報が紐付けられて記憶されている(表1参照)。なお、このように紐付けられた情報は前述した第2の情報に相当する。
【0063】
抽出部332は、取得部331により取得された対象ユーザの会計情報を考慮した上で、対象ユーザに対して提示すべき資金調達の内容を提示情報として抽出する。例えば、対象ユーザの取得ステップ実行時の現金残高が750万円程度であれば、抽出部332は、申込時の現金残高が相対的に高い事業者(ユーザ)の多い商品イよりも、申込時の現金残高が相対的に低い事業者(ユーザ)の多い商品アを、提示情報として選定し、抽出する。
なお、参照すべき会計情報は現金残高のみに制限される必要もなく、各種会計情報を複合的に考慮することで、提示すべき資金調達の内容が選定されてよい。
【0064】
【0065】
このようにして抽出された提示情報は、典型的には、表示制御部333により、対象ユーザが視認可能に表示される(アクティビティA103)。
図6は、対象ユーザに示される提示情報の例である。この
図6に示されるように、提示情報に係る融資プランや決済代行サービスについて、対象ユーザに対して、添付ファイルAF1及び添付ファイルAF2を提示することにより案内を行うことが可能である。ここで、
図6における添付ファイルAF1には融資プラン(金融商品)の詳細、添付ファイルAF2には決済代行サービスの詳細が記載されている。
また、この場合、係る提示情報は対象ユーザ端末1の表示部14に表示される。
【0066】
また、
図6に示されるように、提示情報には、対象ユーザに対して資金調達を促す内容を示すメッセージMS1が付されてもよい。典型的には、提示情報に付随するメッセージMS1には、対象ユーザが資金調達を行うべき理由が含まれる。なお、このメッセージはメッセージ準備部334が準備するものであり、前述の通り、メッセージ準備部334が所定のアルゴリズムに基づき、メッセージを生成してもよく、メッセージ準備部334が、第1の情報の内容に基づき、複数用意されたメッセージの中から選択を行うことでメッセージを準備してもよい。
【0067】
また、このメッセージは対象ユーザの財務状況等に応じて、異なるものとなるように設定されてもよい。例えば、対象ユーザが現時点で既に融資の必要性が高い場合には、速やかに融資を受けるよう促すこともできる。また、スタートアップ企業等において、大きく融資を受けることで事業をさらに成長させる事ができる場合には、その旨をメッセージとして述べることもできる。
なお、メッセージ準備部334がメッセージを準備する際に、対象ユーザの会計情報のほか、設立からの年数等を加味して適切なメッセージを準備するようにメッセージ準備部334が構成されていてもよい。
【0068】
上で述べたように、本実施形態の情報処理システム100は、第1の情報と、第2の情報と、に基づき提示情報を抽出するが、係る抽出処理について、以下のような構成を採用してもよい。
【0069】
すなわち、サーバ3の抽出部332は、第2の情報に関する学習済みモデルに基づき、提示情報を抽出してもよい。係る学習済みモデルの詳細について以下述べていくこととする。
【0070】
一例において、学習済みモデルは、第1のユーザの会計情報と、申込を行った資金調達とを紐付けて学習されたモデルであり、抽出部332は、この学習モデルに第1の情報を入力することにより、対象ユーザに提示する資金調達等を抽出することができる。
ここで、第1のユーザの会計情報は、第1のユーザが資金調達の申込を行った時点での会計情報であってもよく、第1のユーザが資金調達の申込を行った時点を含む所定の期間での会計情報であってもよく、それ以外の任意の時点や期間での会計情報であってもよい。
すなわち、このような学習済みモデルにおいては、対象ユーザと第1のユーザとの会計情報の類似性などを根拠に、抽出部332は、対象ユーザに提示する資金調達に関する提示情報を抽出することができる。
なお、提示情報に係る資金調達は、第1のユーザが申込を行った資金調達そのものでもよいし、第1のユーザが申込を行った資金調達に類似するものであってもよい。
【0071】
また、このような学習済みモデルにおいては資金調達の申込を行っていない第2のユーザについての会計情報も学習されており、抽出部332は、このような第2のユーザに関する情報を参照しながら、対象ユーザに対して親和性の高い資金調達に関する情報を抽出することができる。
【0072】
典型的な例について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る学習済みモデルを説明するための概念図である。ここで、この
図7A、
図7B及び
図7Cのそれぞれは、横軸を時間(T)、縦軸を現金残高(V)とし、それぞれ現金残高(V)の推移を示すものである。より詳細には、第1のユーザの現金残高(V)の推移を
図7A、第2のユーザの現金残高(V)の推移を
図7B、対象ユーザの現金残高(V)の推移を
図7Cとして示している。
【0073】
この
図7Aは、第1のユーザの現金残高(V)の推移とともに、時点T1において第1のユーザがある資金調達を申込んだ実績を示している。また、
図7Bでは、第2のユーザの現金残高(V)の推移を示しているが、第2のユーザは、資金調達の申込実績がないため、このような実績についての表示がない。本実施形態の学習済みモデルにおいては、このように、第1のユーザと第2のユーザのそれぞれについて、資金調達の内容と、会計情報(現金残高等)の推移と、が紐付けて学習されている。
本実施形態の情報処理システム100の抽出部332は、第1の情報に係る対象ユーザの会計情報(現金残高(V)等)を根拠に、提示することが適切な資金調達の内容を抽出することとなる。例えば、取得ステップを実行したタイミングが
図7Cの時点T2であれば、抽出部332は、この時点T2における会計情報に類似するユーザを探索し、探索したユーザの申込んだ資金調達の内容を根拠に、提示すべき資金調達の内容を抽出することができる。
すなわち、
図7Aの期間Taと、
図7Cの期間Tbとが、互いに類似する推移となっており、このことを根拠に
図7Aにおける第1のユーザが申込んだ資金調達の内容を提示内容とすることができる。
なお、学習済みモデルは一種のパラメータ(例えば、現金残高(V))のみに基づくものである必要はなく、複数種のパラメータを組み合わせて学習されたものであってもよい。その場合、学習済みモデルを更新するにあたって適宜重み付けするパラメータが変更されてもよい。
なお、会計情報の類似性の判断手法は、公知の手法の中から選択した上で設定すればよい。例えば、複数存在する数値(点)同士の各々の類似性を判断する場合には、各々についての、マハラノビス距離、ユークリッド距離、コサイン距離などのいずれかを計算する手法を適用することが可能である。また、複数存在する数値の推移(線)同士の各々の類似性を判断するにあたっては、時系列間の差異・類似性を定量化する類似性尺度(dissimilarity measure)を用いたクラスタリングの手法を活用することも可能である。
【0074】
なお、
図7では、第1のユーザと第2のユーザとがそれぞれ単独である内容を示しているが、学習済みモデルは、複数の第1のユーザと、複数の第2のユーザと、の各々の会計情報を学習し、資金調達を申込む確率を算出するためのモデルであってもよい。また、抽出部332は、対象ユーザが資金調達を申込む確率を算出した上で、当該確率が所定値以上となった場合に、提示情報を抽出してもよい。
すなわち、対象ユーザに対して、ある資金調達を提示するか否かの観点でいえば、第1のユーザの多寡と、第1のユーザの各々についての対象ユーザとの会計情報の類似性、第2のユーザの多寡と、第2のユーザの各々についての会計情報の類似性を根拠に、対象ユーザが資金調達を申込む確率を算出することができる。また、抽出部332は、この算出した抽出が所定値以上となった場合に、提示情報を抽出するように構成されていてもよい。
【0075】
また、
図7では、第1のユーザと、第2のユーザと、がそれぞれ単独である内容を示しているが、学習済みモデルは、複数の第1のユーザと、複数の第2のユーザと、の各々の会計情報に基づいて作成されたものであってもよい。
より具体的には、本実施形態の学習済みモデルは第1の会計情報と、第2の会計情報と、を用いて作成されたモデルであり、この第1の会計情報は、複数の第1のユーザの各々が資金調達を申込んだ時における、複数の第1のユーザの各々の会計情報であり、第2の会計情報は、学習済みモデルの作成又は更新時の、複数の第2のユーザの各々の会計情報である。このような態様を採用することで、提示情報の信頼性の向上に資することができる。
なお、このような学習済みモデルを作成するにあたっては、複数の第1のユーザの各々が資金調達を申込んだ時点に加え、当該時点を含む所定の期間の会計情報が用いられてもよい。すなわち、学習済みモデルを作成又は更新するにあたって、第1の会計情報として資金調達を申込んだ所定の時点における会計情報を扱うのであれば、第2の会計情報としても、学習済みモデルを作成又は更新する所定の時点における会計情報を扱うことができる。また、学習済みモデルを作成又は更新するにあたって、第1の会計情報として資金調達を申込んだ時点を含む所定の期間における会計情報を扱うのであれば、第2の会計情報としても、学習済みモデルを作成又は更新する時点を含む所定の期間における会計情報を扱うことができる。
【0076】
なお、この学習済みモデルは、複数の第2のユーザの取得ステップ実行時の各々の会計情報を用いてモデルを作成されているが、本実施形態の学習済みモデルにおいては、複数の第2のユーザの各々の会計情報は、複数の第1のユーザの各々が資金調達を申込んだ時に対応する時の情報であってもよい。典型的な例を挙げると、第1のユーザAが資金調達を申込んだ時期が2015年3月31日である場合は、学習させるべき第2のユーザの会計情報は2015年3月31日(時点)や、この2015年3月31日を含む所定の期間(例えば、2014年4月1日から2015年3月31日までの通期)である。
【0077】
さらに、学習済みモデルは、第1のユーザ及び/又は第2のユーザの属性に基づいて学習されたモデルであってもよい。すなわち、抽出部332は、対象ユーザに提示する提示情報を抽出するにあたって、第1のユーザや第2のユーザの属性を考慮することもできる。ここで、この属性は、業種、事業年数、社員数、拠点、沿革及び経営理念からなる群から選択される1以上に関連する情報を含んでもよい。
すなわち、この学習済みモデルを利用する抽出ステップにおいては、ユーザの属性ごとに複数のモデルが準備され、抽出部332は、対象ユーザの属性に対応したモデルを利用して提示情報を抽出することができる。
また、対象ユーザと業種や事業年数が近いユーザ(第1のユーザ又は第2のユーザ)の情報について相対的に重み付けをした上で、抽出部332は提示情報を抽出するように構成されてもよい。このような態様を採用することで、提示情報の信頼性の向上に資することができる。
【0078】
また、上述の学習済みモデルは、ある資金調達そのものについて着目した上でその申込実績に基づいて学習されたモデルであったが、学習済みモデルは、互いに類似する複数の資金調達の申込み内容に基づいて学習されたモデルであってもよい。すなわち、ある資金調達そのものでなくても、性質の類似した資金調達が存在する場合は、その類似した資金調達に対しての申込実績の有無に基づいて、対象ユーザに対して提示する提示情報を抽出してもよい。
ここで、複数の資金調達が類似する場合とは、融資対象、金利、返済方式、返済期間、返済回数、融資額、融資手数料、担保及び連帯保証人からなる群から選択される項目のうち1以上の項目に関する条件が、互いに同一又は類似する場合等が挙げられる。なお、この類似性を評価するにあたり、金利や返済期間、融資額等、数字に関する条件を有する項目については、適宜、類似である場合と、非類似である場合と、の閾値が設けられていてもよい。
典型的な例では、金融商品2点について、各々の融資額の上限が完全に一致はしないものの、各々が数値として近似するようであれば、双方の金融商品について申込有無を根拠に第1のユーザと第2のユーザとを設定し、学習済みモデルが作成されてもよい。
【0079】
以上のようにして、抽出部332は、対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出することができる。
【0080】
このようにしてサーバ3の抽出部332によって抽出された提示情報は、前述したように、表示制御部333により対象ユーザに視認可能に表示される(
図6等参照)。なお、取得ステップにおいて、複数の対象ユーザの会計情報を取得した場合は、提示情報を提示すべき複数の対象ユーザに対して、提示情報を表示させるように構成されてよい。このようにして提示情報を対象ユーザに示した後は、取得部331の取得した情報の履歴や、抽出部332の抽出した提示情報に関する詳細等を、サーバ3の記憶部32にデータとして格納する(アクティビティA104)。この処理は、典型的にはサーバ3の記憶管理部336が実行する。
【0081】
このように、本実施形態の情報処理システム100では、第1のユーザと、第2のユーザとの各々の会計情報と、資金調達への申込の実績より、対象ユーザに提示することが可能な情報を高精度で抽出することができる。
このような観点で、本実施形態では、ユーザの需要に合致した資金調達に関する情報を的確に提示することが可能な情報処理システム等が達成されているといえる。
【0082】
4.その他
その他、情報処理システム100に関して、以下のような態様を採用してもよい。
【0083】
以上の実施形態では、情報処理システム100の構成として説明したが、コンピュータに情報処理システム100の各ステップを実行させるプログラムが提供されてもよい。
【0084】
以上の実施形態では、抽出部332が抽出した提示情報を、そのまま対象ユーザが視認可能となるように表示させる態様を示したが、サーバ3に有する演算部335は、取得部331が取得した第1の情報と、第2の情報と、に基づき、提示情報について、対象ユーザへ提示すべき時期を演算し、抽出部332は、提示情報とともに、演算部335で演算された対象ユーザへ提示すべき時期を抽出してもよい。例えば、
図7Cのように対象ユーザの財務状況が下降傾向にある場合、実際に提示情報を対象ユーザに提示すべき時期を、所定の閾値を割り込むタイミングとなるように演算部335が演算してもよい。すなわち、取得ステップ実行時に、対象ユーザの財務状況がさほど悪くない場合、そのまま提示情報を提示したとしても興味を持たれない可能性がある反面、対象ユーザの財務状況が悪くなるタイミングで提示情報を提示した場合は、係る提示情報に興味を持たれる可能性は高まると考えられる。本実施形態の情報処理システム100においては、抽出部332が、このような提示情報を提示すべき時期もあわせて抽出することができ、この時期を見計らって、表示制御部333が、対象ユーザが視認可能となるように提示情報を表示させてもよい。
【0085】
以上の実施形態では、サーバ3の表示制御部333が、対象ユーザが提示情報を視認可能となるように表示制御を行う態様を示したが、提示情報を表示させる態様は必ずしも対象ユーザに限られない。すなわち、以上の実施形態では、サーバ3の表示制御部333が対象ユーザ端末1の表示部14に提示情報を表示させる態様を示したが、例えば、対象ユーザ以外の第3のユーザの所有する第3のユーザ端末2の表示部に提示情報を表示させてもよい。前述したように、第3のユーザは、対象ユーザの出資者やメンターであってもよく、表示制御部333は、このような第3のユーザが提示情報を視認可能となるように表示制御を行ってもよい。この場合でも、提示情報に接した第3のユーザが、対象ユーザに対して資金調達の助言を行うことができるという点で有効である。
【0086】
以上の実施形態では、サーバ3の表示制御部333が、対象ユーザが提示情報を視認可能となるように表示制御を行う態様を示したが、この表示制御を必須としなくてもよい。例えば、抽出された提示情報を所有する者が、対象ユーザに対して別途郵便物を作成するように本実施形態の情報処理システム100を活用してもよい。
【0087】
以上の実施形態では、サーバ3が種々の記憶や制御を行ったが、サーバ3に代えて、複数の外部装置が用いられてもよい。すなわち、ブロックチェーン技術等を用いて、取得された第1の情報及び第2の情報、抽出した提示情報に関する情報等を分散して複数の外部装置に記憶させてもよい。
【0088】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0089】
(1)情報処理システムであって、制御部を備え、前記制御部は、取得ステップと、抽出ステップと、を実行するように構成され、前記取得ステップでは、第1の情報と、第2の情報と、を取得し、ここで、前記第1の情報は、対象ユーザの前記取得ステップ実行時の会計情報を含み、前記第2の情報は、資金調達への申込を行った第1のユーザと、資金調達への申込を行なわなかった第2のユーザと、の各々の会計情報を含み、前記抽出ステップでは、前記第1の情報と、前記第2の情報と、に基づき、前記対象ユーザに対する資金調達に関する提示情報を抽出する、情報処理システム。
【0090】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記制御部は、さらに表示制御ステップを実行するように構成され、前記表示制御ステップでは、前記抽出ステップで抽出された前記提示情報を、前記対象ユーザが視認可能に表示させる、情報処理システム。
【0091】
(3)上記(1)又は(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記取得ステップでは、前記第1の情報として、複数の前記対象ユーザの前記会計情報を取得する、情報処理システム。
【0092】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記抽出ステップでは、前記第2の情報に関する学習済みモデルに基づき、前記提示情報を抽出する、情報処理システム。
【0093】
(5)上記(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、複数の前記第1のユーザと、複数の前記第2のユーザと、の各々の前記会計情報を学習し、前記資金調達を申込む確率を算出するためのモデルであり、前記抽出ステップでは、前記対象ユーザが前記資金調達を申込む確率を算出した上で、当該確率が所定値以上となった場合に、前記提示情報を抽出する、情報処理システム。
【0094】
(6)上記(4)又は(5)に記載の情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、第1の会計情報と、第2の会計情報と、を用いて作成されたモデルであり、前記第1の会計情報は、複数の前記第1のユーザの各々が前記資金調達を申込んだ時における、複数の前記第1のユーザの各々の会計情報であり、前記第2の会計情報は、前記学習済みモデルの作成又は更新時の、複数の前記第2のユーザの各々の会計情報である、情報処理システム。
【0095】
(7)上記(4)ないし(6)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、互いに類似する複数の資金調達の申込み内容に基づいて学習されたモデルである、情報処理システム。
【0096】
(8)上記(4)ないし(7)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、前記第1のユーザ及び/又は前記第2のユーザの属性に基づいて学習されたモデルであり、前記属性は、業種、事業年数、社員数、拠点、沿革及び経営理念からなる群から選択される1以上に関連する情報を含む、情報処理システム。
【0097】
(9)上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記制御部は、さらにメッセージ準備ステップを実行するように構成され、前記メッセージ準備ステップでは、前記提示情報に付随するメッセージを準備し、ここで、前記メッセージは、前記対象ユーザに対して前記資金調達を促す内容を示すメッセージである、情報処理システム。
【0098】
(10)上記(9)に記載の情報処理システムにおいて、前記メッセージ準備ステップでは、前記第1の情報の内容に基づき、複数用意されたメッセージの中から選択を行うことで前記提示情報に付随する前記メッセージを準備する、情報処理システム。
【0099】
(11)上記(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記制御部は、さらに演算ステップを実行するように構成され、前記演算ステップでは、前記取得ステップで取得した前記第1の情報と、前記第2の情報と、に基づき、前記提示情報について、前記対象ユーザへ提示すべき時期を演算し、前記抽出ステップは、前記提示情報とともに、前記演算ステップで演算された前記対象ユーザへ提示すべき時期を抽出する、情報処理システム。
【0100】
(12)上記(1)ないし(11)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の情報及び/又は前記第2の情報に含まれる前記会計情報は、所定の時点における現金残高、所定の期間における現金入出、所定の時点におけるキャッシュフロー、所定の時点又は期間における財務指標、及び所定の時点又は期間における株価からなる群から選択される1以上に関連する情報を含む、情報処理システム。
【0101】
(13)上記(1)ないし(12)のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記提示情報は、金融商品又は決済代行サービスに関する情報を含む、情報処理システム。
【0102】
(14)情報処理方法であって、上記(1)ないし(13)のいずれか1項に記載の情報処理システムに係る各ステップを備える、方法。
【0103】
(15)プログラムであって、コンピュータに上記(1)ないし(13)のいずれか1項に記載の情報処理システムの各ステップを実行させる、プログラム。
もちろん、この限りではない。
【0104】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1 :対象ユーザ端末
2 :第3のユーザ端末
3 :サーバ
4 :ネットワーク
10 :通信バス
11 :通信部
12 :記憶部
13 :制御部
14 :表示部
15 :入力部
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :制御部
100 :情報処理システム
331 :取得部
332 :抽出部
333 :表示制御部
334 :メッセージ準備部
335 :演算部
336 :記憶管理部
AF1 :添付ファイル
AF2 :添付ファイル
MS1 :メッセージ