(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028658
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】抗VEGFで処置された加齢黄斑変性症に罹患している患者の臨床転帰に遺伝変異型を関連付ける方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240226BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240226BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240226BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240226BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240226BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20240226BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALN20240226BHJP
【FI】
C07K19/00
A61P27/02
A61K38/16
A61K38/17
C07K16/00
C07K14/71
C12Q1/6827 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010498
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2023021608の分割
【原出願日】2016-12-01
(31)【優先権主張番号】62/291,274
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/262,589
(32)【優先日】2015-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パーリー、ロラ
(72)【発明者】
【氏名】ハモン、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ポールディング、チャールズ
(57)【要約】
【課題】黄斑変性症の処置のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】医薬組成物はアフリベルセプトを含有し、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722、rs5962095、rs2106124、rs1879796、rs12148845、rs12148100、rs17482885及びrs17629019から構成される群から選択される1つ以上の一塩基多型を有する対象における黄斑変性症の処置に使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722、rs5962095、rs2106124、rs1879796、rs12148845、rs12148100、rs17482885及びrs17629019から構成される群から選択される1つ以上の一塩基多型を有する対象における黄斑変性症の処置のための医薬組成物であって、アフリベルセプトを含有した医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/262,589号及び2106年2月4日に出願された米国仮特許出願第60/291,274号の利益を主張するものであり、本願において参照によりそれらの両方の内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
黄斑変性症は、網膜内液が蓄積し、網膜を損傷して視野の中心での視覚の喪失を招くことがある、重篤な病状である。黄斑変性症は、加齢性のものであり得る。「乾燥型」(非滲出型)及び「湿潤型」(「新生血管型」または「滲出型」)の黄斑変性症が認識されている。
【0003】
新生血管黄斑変性症では、視覚喪失が異常血管成長(脈絡膜血管新生)に起因し得る。網膜における異常血管の増殖は、血管内皮成長因子(VEGF)によって刺激される。新しい血管は脆く、黄斑の下における血液及びタンパク質の漏出につながることがある。これらの血管による出血、漏出及び瘢痕化は最終的に光受容体に対する不可逆的損傷及び急速な視覚喪失を招く可能性がある。
【0004】
アイリーア(登録商標)(アフリベルセプト)注射剤及びルセンティス(著作権)(ラニビズマブ)は、湿潤型黄斑変性症の処置のために米国及びヨーロッパにおいて承認されているバイオ医薬である。アフリベルセプト及びラニビズマブはVEGF阻害剤である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(i)アフリベルセプトまたはラニビズマブを投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含む、当該方法を開示する。
【0006】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0007】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ遺伝子変異型対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ遺伝子変異型対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のより低いレベルと関連付けられる、当該方法を開示する。
【0008】
本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成している添付の図面は、開示される方法及び構成物のいくつかの実施形態を例示しており、記載と併せて、開示される方法及び構成物の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】VIEW1試験において視力、解剖学的転帰及び処置頻度によって測られる抗VEGF剤応答に関連する遺伝子変異型を特定するのに用いられる統計学的研究の概略図を示す。
【
図2】VIEW1完全解析セットにおいて認められた分布を反映していた性別、年齢、人種、視力及び病巣タイプを含むPGx補助研究のベースライン特性及び臨床人口統計データを示す。
【
図3】米国及びカナダ(約96%の白人を無作為化)の154箇所の場所におけるVIEW1研究のための最終試料セットを生成するためにチップ上のSNPに適用される品質対照尺度を示す。
【
図4】VIEW1試験のための最終試料セットを生成するためにチップ上のSNPに適用される品質対照尺度を示す。
【
図5】解剖学的応答、つまりX染色体SNP(rs2056688)を示したものであり、それは解剖学的転帰との最も高い関連性を示し、52週目において、0.2578のオッズ比(OR)及び、網膜内液の存在との点毎の関連性(p値7.27×10
-7)が実証された。
【
図6】rs2056688のSNPが非コード領域に位置していたこと、及び推定変異型の約400kb上流に最近接関連機能性遺伝子(プロテインキナーゼX関連(PRK-X))の位置が特定されたことを示す。
【
図7】さらなる近隣SNPが用量効果を示したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
開示される方法及び構成物は、特定の実施形態及びその中に含まれる実施例についての以下の詳細な説明と、図面ならびにそれらの上記及び下記の記載を参照することによってより容易に理解され得る。
【0011】
特に指定しない限り、開示される方法及び構成物が具体的な合成方法、具体的な分析技法または特定の試薬に限定されず、それゆえ変化し得る、ということは理解されるべきである。また、本明細書において使用する専門用語が特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を意図してないということも、理解されるべきである。
【0012】
開示される方法及び構成物が、記載されている特定の方法論、プロトコール及び試薬に限定されないことは理解される、というのも、これらは変化し得るからである。また、本明細書において使用する専門用語が特定の実施形態を説明するためのものであるに過ぎず、別記の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していない、ということも理解されるべきである。
【0013】
本明細書において明記される何らかの方法または態様が、特定の順序でそのステップが実施されることを要求していると解釈されることは、明示的に別段の定めをした場合を除き、決して意図されない。したがって、方法に関する請求項が、ステップを具体的な順序に限定すべきと特許請求の範囲または記載の中で具体的に述べていない場合、順序が暗示されることはいかなる点においても決して意図されない。このことは、ステップもしくは操作フローの並べ方に関する論理的事項、文法構造もしくは句読点に由来する単純な意味合い、または明細書中に記載の態様の数もしくはタイプを含めて、可能ないかなる非明示的解釈基準に対しても成り立つ。
【0014】
開示される方法及び構成物のために使用されることができるか、それらと共に使用されることができるか、それらに備えて使用されることができるか、またはそれらの産物である、材料、構成物及び成分を開示する。これら及びその他の材料は本明細書中に開示されており、また、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などが開示される場合、これらの複合物の個別及び集合としての様々な各々の組み合わせ及び並び替えについての具体的言及が明確に開示されていなくとも各々が本明細書において具体的に企図及び記載されていることは理解される。例えば、PRR拮抗薬の開示及び記述があり、行うことのできるいくつかの改変についての記述があるならば、PRR拮抗薬及び可能な改変のありとあらゆる組み合わせ及び並べ替えは、逆の具体的指示がなされていない限り、具体的に企図されている。したがって、ある部類の分子A、B及びCが開示されるとともにある部類の分子D、E及びFならびに一例としての組み合わせ分子A-Dが開示されているならば、たとえ各々が個別に挙げられておらずとも、各々が個別及び集合的に企図されている。したがって、この例では、A、B及びC;D、E及びF;ならびに組み合わせ例A-Dの開示により、各組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fは具体的に企図され、かつ開示されているとみなされるべきである。同様に、これらのいかなる部分集合または組み合わせも具体的に企図及び開示されている。したがって、例えば、A、B及びC;D、E及びF;ならびに組み合わせ例A-Dの開示により、A-E、B-F及びC-Eの小群が具体的に企図され、かつ開示されているとみなされるべきである。この概念は、限定されないが本開示の構成物を作製及び使用する方法のステップを含めて本願のあらゆる態様に当てはまる。したがって、実施することができる種々の付加的なステップがあるならば、これらの付加的なステップの各々を、開示されている方法の任意の具体的な実施形態または実施形態の組み合わせと共に実施することができること、及びそのような組み合わせの各々が具体的に企図され、かつ開示されているとみなされるべきであることが理解される。
【0015】
定義
本明細書及び別記の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明確に別段の定めがなされない限り、複数形への言及を包含する。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は2つ以上のそのような担体の混合物などを包含する。
【0016】
本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通して、「comprise(含む)」という用語及びその言葉の変形、例えば「含んでいる」及び「comprises(含む)」は、「非限定的に含む」ことを意味するものであり、例えば他の添加物、成分、完全体またはステップを排除することは意図されない。とりわけ、1つ以上のステップまたは操作を含むものとして記されている方法においては、各ステップがそのステップにおいて列挙されていない他の添加剤、成分、整数またはステップを排除することは意図されないという意味で、各ステップは(そのステップが「から構成される」などの用語を含んでいない限り)列挙されているものを含むことが具体的に企図される。
【0017】
範囲は、本明細書において、「約」ある特定値から、かつ/または「約」別の特定値まで、のように表現することができる。そのような範囲が表されている場合、別の実施形態は、一方の特定値から、かつ/または他方の特定値までを含む。同様に、「約」という先行詞を使用することによって値が近似として表されている場合には特定値が別の実施形態を形成する、ということは理解されよう。さらに、各範囲の終点が他の終点に関して、及び他の終点と独立しての双方で意義を成すことは、理解されよう。また、本明細書にいくつかの値が記載されていること、及び本明細書において各値がその値自体に加えて「約」その特定値としても開示されていることも、理解される。例えば、値「10」が開示されているならば、「約10」もまた開示されている。さらに、当業者には適切に理解されるように、ある値が開示されている場合にはその値「以下」、「その値以上」、及び値間の可能な範囲もまた開示されていることも、理解される。例えば、値「10」が開示されているならば、「10以下」及び「10以上」も開示されている。さらに、本願全体を通して、データがいくつかの異なる形式で提供されていること、及びこれらのデータが終点、始点及びデータ点の任意の組み合わせについての範囲を表すことも、理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示されているならば、10超及び15超、10以上及び15以上、10未満及び15未満、10以下及び15以下、ならびに10に等しい及び15に等しい、ならびに10~15が開示されているとみなされることは理解される。例えば、10及び15が開示されているならば、11、12、13及び14もまた開示されている。
【0018】
「場合による」または「場合によって」は、後に記載されている事象または状況が起こってもよいし起こらなくてもよいこと、及び上記事象または状況が起こる場合とそれが起こらない場合とが記載に含まれることを、意味する。
【0019】
本明細書において使用する「または」という用語は、特定の列挙のいずれか1つのメンバーを意味し、さらに、その列挙の任意の組み合わせを含む。
本明細書において使用する場合、「対象」という用語は、個体を意味する。一態様において、対象はヒトなどの哺乳動物である。一態様において、対象は非ヒト霊長類であることができる。非ヒト霊長類は、数例を挙げれば、マーモセット、サル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン及びテナガザルを含む。「対象」という用語はまた、飼育動物、例えば猫や犬、家畜(例えば、ウシ(乳牛)、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、フェレット、チンチラ、マウス、ウサギ、ラット、アレチネズミ、モルモットなど)及び鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、キジ、pigeons(ハト)、doves(ハト)、オウム、オカメインコ、ガチョウなど)を含む。対象はまた、限定されないが、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、キンギョ、ティラピア、サケ及びマス)、両生類及び爬虫類を含むことができる。本明細書において使用する場合、「対象」は、「患者」に同じであり、その用語は互換的に使用することができる。
【0020】
「多型」という用語は、ある集団において遺伝学的に判定される1つ以上の代替配列または対立遺伝子の発生を指す。「多型部位」は、配列変化が起こる遺伝子座のことである。多型部位は、少なくとも1つの対立遺伝子を有する。二対立遺伝子多型は2つの対立遺伝子を有する。三対立遺伝子多型は3つの対立遺伝子を有する。二倍体生物は対立形質のホモ接合体またはヘテロ接合体であり得る。多型部位は、わずか1塩基対である場合がある。多型部位の例としては、制限酵素断片長多型(RFLP)、可変数タンデム反復(VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、及び単純反復配列が挙げられる。本明細書において使用する場合、「多型」への言及は、1セットの多型(すなわちハプロタイプ)を包含することができる。
【0021】
「一塩基多型(SNP)」は、単一のヌクレオチドによって占有される多型部位において起こることがあり、それは、対立遺伝子配列間の変異部位である。その部位は、対立遺伝子の高度に保存された配列が先行及び後行していることがある。SNPは、多型部位において1つのヌクレオチドが別のヌクレオチドによって置き換わることによって生じることがある。1つのプリンが別のプリンで置き換わること、または1つのピリミジンが別のピリミジンで置き換わることは、塩基転位と呼ばれる。プリンがピリミジンで置き換わること、またはその逆は、塩基転換と呼ばれる。同義SNPは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列を変えない、コード領域での1つのヌクレオチドの別のヌクレオチドによる置換を指す。非同義SNPは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列を変える、コード領域での1つのヌクレオチドの別のヌクレオチドによる置換を指す。SNPは、基準対立遺伝子に対する1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入によっても生じ得る。
【0022】
「1セットの」多型は、1つ以上の多型、例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または6つ超の多型を意味する。
【0023】
本明細書において使用する場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの高分子形態であることができ、DNAまたはRNAであることができ、さらに、一本鎖または二本鎖であることができる。核酸は、プロモーター及びその他の調節配列を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、合成手段によって調製することができる。核酸は、いずれか1つの多型部位を跨ぐかまたはそれに隣接する、DNAの部分またはその相補体を含む。当該部分は、5~100連続塩基であることができ、5、10、15、20または25ヌクレオチドを下限とし10、15、20、25、30、50または100ヌクレオチドを上限とする範囲(上限は下限よりも大きいものとする)にあることができる。5~10、5~20、10~20、12~30、15~30、10~50、20~50または20~100塩基の核酸が一般的である。多型部位は、当該部分のいかなる位置においても起こる可能性がある。2本鎖核酸のうちの一本の鎖の配列に対する言及は、相補配列を定義付け、また、文脈から明らかである場合は別として、一本鎖の核酸に対する言及はその相補体にも言及している。
【0024】
本明細書に記載の「ヌクレオチド」は、繋がったときに核酸RNA及びDNAの個々の構造単位を形成する分子を指す。ヌクレオチドは、核酸塩基(窒素塩基)と、5炭素糖(リボースかまたは2-デオキシリボースのどちらか)と、1つのリン酸基とからなる。「核酸」は、ヌクレオチドモノマーから作られた高分子量の巨大分子である。DNAにおいて、プリン塩基はアデニン(A)及びグアニン(G)であり、ピリミジンはチミン(T)及びシトシン(C)である。RNAはチミン(T)の代わりにウラシル(U)を使用する。
【0025】
本明細書において使用する場合、「遺伝子変異型」または「変異型」という用語は、配列がある集団において最も優勢な配列とは異なっている(例えば、本明細書に記載のSNPの場合には1ヌクレオチドだけ異なっている)ヌクレオチド配列を指す。例えば、ヌクレオチド配列におけるいくつかの変異または置換は、異なるアミノ酸がコードされてその結果として遺伝子変異型ポリペプチドが生じるように、コドンを変化させる。遺伝子変異型のその他の非限定的な例としては、挿入、欠失、挿入欠失、フレームシフト変異型、停止コドン変異型、同義変異型、非同義変異型及びコピー数多型(例えば、欠失及び重複)が挙げられる。「遺伝子変異型」という用語はまた、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない位置において、配列がある集団において最も優勢な配列とは異なっている、ポリペプチドを指すこともできる(つまり、保存された変化)。遺伝子変異型ポリペプチドは、リスクハプロタイプによってコードされるもの、保護ハプロタイプによってコードされるもの、または中立ハプロタイプによってコードされるものであり得る。遺伝子変異型ポリペプチドは、リスク関連のもの、保護関連のもの、または中立的なものであり得る。
【0026】
「単離核酸」または「精製核酸」とは、本発明のDNAの由来する生物の天然に存在するゲノムにおいてその遺伝子に隣接している遺伝子を含まない、DNAを意味する。したがって、当該用語には、例えば、自律的に複製するプラスミドもしくはウイルスなどのベクターに組み込まれるもの、または、原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるもの(例えば、導入遺伝子)、または、別個の分子として存在するもの(例えば、PCR、制限酵素消化または化学的合成もしくは試験管内合成によって製造される、cDNAまたはゲノム断片もしくはcDNA断片)である、組換えDNAが含まれる。それにはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。「単離核酸」という用語はさらに、RNAにも言及しており、例えば、単離DNA分子によってコードされるかまたは化学的に合成されるかまたは少なくともいくつかの細胞構成要素(例えば、他のタイプのRNAまたはポリペプチド分子)から分離されているかもしくはそれらを含まない、mRNA分子にも言及している。
【0027】
本明細書において使用する場合、「処置される」または「処置する」とは、疾患、病態または障害の治癒、改善、安定化または防止を意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、能動的な処置、つまり、特異的に疾患、病態または障害の改善に向けた処置を含み、さらには原因治療、つまり、関連する疾患、病態または障害の原因の除去に向けられた処置も含む。さらに、この用語は、姑息的治療すなわち、疾患、病態または障害の治癒ではなく症候の緩和を狙いとする処置、予防治療すなわち、関連する疾患、病態または障害の進行を最小限に抑えるかまたは部分的もしくは完全に抑制することに向けた処置、及び対症療法すなわち、関連する疾患、病態または障害の改善に向けた別の特異的療法を補うために採用される処置を含む。様々な態様において、当該用語は、哺乳動物(例えばヒト)を含めた対象のいかなる処置も包含し、また、(i)疾患に罹患し易い可能性があるものの未だそれを有すると診断されていない患者におけるその疾患の発生の防止、(ii)疾患の抑制、すなわちその発症の阻止、または(iii)疾患の緩和、すなわち疾患を退行させることを含む。
【0028】
「投与する」「投与される」及び「投与」という用語は、医薬製剤を対象に提供する任意の方法を指す。そのような方法は当業者によく知られており、限定はされないが、経口投与、舌下投与、経頬側粘膜投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔投与、局所投与、膣内投与、経眼投与、耳内投与、脳内投与、クモ膜下腔内投与、直腸投与、腹腔内投与ならびに、注射による投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与及び皮下投与)を含む非経口投与を含む。経眼投与には、局所投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、眼球上投与、球後投与、眼窩内投与及び、硝子体内投与を含む眼内投与を含むことができる。投与は連続的または間欠的であることができる。様々な態様において、製剤は、治療的に投与されること、つまり、既存の疾患または症状を処置するために投与されることができる。さらなる種々の態様において、製剤は、予防的に投与されること、つまり、疾患または症状の防止のために投与されることができる。
【0029】
配列間の配列類似性または配列同一性(その用語は本明細書において互換的に使用される)の計算は、以下のとおりに行われる。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性率を決定するには、最適な比較のために配列を整列させる(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列または核酸配列のうちの片方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較のために整列させる基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、よりいっそう好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列におけるある位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合には、分子はその位置において同一である。
【0030】
2つの配列間の同一性率は、ギャップの数を考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数と、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のある各ギャップの長さの関数である。
【0031】
配列の比較及び2つの配列間の同一性率の決定は、数学的アルゴリズムを用いて成し遂げることができる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性率は、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(1970,J.Mol.Biol.48:444-453)のアルゴリズムを使用して、Blossum62行列またはPAM250行列ならびに、16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み及び1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して決定される。また別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド間の同一性率は、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMP行列ならびに、40、50、60、70または80のギャップ重み及び1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して決定される。パラメータの特に好ましい(かつ、別段の定めがない限り使用されるべき)セットは、ギャップペナルティが12、ギャップ延長ペナルティが4、フレームシフトギャップペナルティが5である、Blossum62スコア行列である。
【0032】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の間の同一性率は、ALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(1989,Cabios,4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用して決定することができる。
【0033】
別段の定義がなされない限り、本明細書において使用するあらゆる科学技術用語は、開示される方法及び構成物の属する分野において技量を有する者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本発明の方法及び構成物の実践または試験には、本明細書に記載のものと類似するかまたは等価である任意の方法及び材料を使用することができるが、とりわけ有用な方法、装置及び材料について記載する。本明細書中で引用される刊行物及び引用の対象である材料を、参照により本明細書に具体的に援用する。本明細書中のいかなるものも、先行発明の効力によって本発明がそのような開示に先行する権利を有さないことを認めるものと解釈されるべきではない。参考文献が先行技術を構成することは何ら認めていない。参考文献についての記述は、著者の主張していることを述べているのであり、出願人らは、引用された文書の正確さ及び適切性に異論を唱える権利を保有している。本明細書では数多くの刊行物に言及しているが、これらの文書のいずれかが当該技術分野における共通一般知識の一部を形成するという容認をそのような言及が構成していないことは、明らかに理解されよう。
【0034】
当業者であれば、本明細書に記載の方法及び構成物の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するであろうし、または慣例的実験しか用いずにそれを見出すことができるであろう。そのような均等物を以下の特許請求の範囲によって包含することが意図される。
【0035】
方法
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0036】
抗VEGF剤または硝子体内用抗VEGF剤の例としては、限定されないが、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、スニチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、チボザニブ、アキシチニブ、イマチニブまたはパゾパニブが挙げられる。
【0037】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、硝子体内用抗VEGF剤を投与されかつ遺伝子変異型対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の解剖学的転帰を、硝子体内用抗VEGF剤を投与されかつ遺伝子変異型対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の解剖学的転帰と比較すること、及び(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含む、当該方法を開示する。
【0038】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を1年間投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、遺伝子変異型対立遺伝子のコピーを有さない患者における網膜内嚢胞様浮腫(液)のレベルと比べた場合の、遺伝子変異型対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する対象における網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0039】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、硝子体内用抗VEGF剤を投与されかつ遺伝子変異型対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の解剖学的転帰を、硝子体内用抗VEGF剤を投与されかつ遺伝子変異型対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の解剖学的転帰と比較すること、及び(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、統計学的関連付けのステップの前に対象からのDNA試料の遺伝子型判定が行われる、当該方法を開示する。いくつかの態様では、解剖学的結果は、15文字(視力)の増加である。いくつかの態様では、処置頻度は、通年の投薬の後での硝子体内用抗VEGF剤による積極的な処置の継続的必要性を反映することができる。
【0040】
本明細書に記載の統計学的関連付けは、ロジスティック回帰分析、ハーディー・ワインベルグ平衡検定を含めた遺伝子データのQC、同状態性(IBS)評価及び/または性別確認を含むことができる。集団構造は、主成分分析(PCA)を用いて評価することができる。統計学的関連付けは、ベースライン値及びモデルの共変数としての任意の潜在的集団構造変数を使用するロジスティック回帰を含むことができる。
【0041】
いくつかの態様では、解剖学的転帰は、網膜内嚢胞様浮腫の存在、視覚の向上/視力の改善、または網膜内液の減少である。用いることができるさらなる解剖学的転帰としては、限定されないが例えば、光干渉断層撮影法(OCT)によって測定される中心網膜厚の減少、網膜内液と網膜下液との両方の完全な消散、脈絡膜新生血管(CNV)領域の減少、蛍光血管撮影によって測定される新生血管病巣の全体的大きさの減少、及びOCTによって測定される網膜下過反射性(SHM)物質の減少が挙げられる。
【0042】
いくつかの態様において、統計学的関連性は、p値として測ることができる。例えば、異なるタイプのp値、すなわち等しい分散がどちらにも想定されている元データ及び対数変換データについての単純t検定p値、及びチェビー・チェッカーp値を得ることができる。これらのp値は、個体基準でのみならず、多数の比較を考慮に入れることによっても、表されることができる。mix-o-matic法は、これらのp値についてのさらなる情報を提供するために適用されることができる。いくつかの態様では、関連性のp値は、1×10-5以下、1×10-6以下、1×10-7以下、1×10-8以下などである。いくつかの態様では、関連性のp値は、1×10-5すなわち示唆的統計学的有意性及び1×10-8すなわち実験的統計学的有意性に等しいかまたはそれ以下である。
【0043】
いくつかの態様では、統計学的関連性の効果の大きさは、オッズ比として測ることができる。例えば、統計学的関連性の効果の大きさは、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在のオッズの比率に対する、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在のオッズの比率として測ることができる。いくつかの態様では、そのオッズ比は、0.2以下、0.3以下、0.4以下、0.5以下、0.6以下、0.7以下、0.8以下または0.9以下である。対立遺伝子の1つのコピーを有することは、対立遺伝子の2つのコピーを有する個体よりも小さい影響を与えるであろう。
【0044】
いくつかの態様では、統計学的関連性は、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象における15文字(視力)の増加のオッズの比率に対する、硝子体内用抗VEGF剤で処置されかつ対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象における15文字の増加のオッズの比率として測ることができる。いくつかの態様では、そのオッズ比は、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上または2.9以上である。
【0045】
いくつかの態様では、統計学的関連性は、硝子体内用抗VEGF剤による継続的積極的処置の必要性がより低くかつ対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象のオッズに対する、硝子体内用抗VEGF剤による継続的積極的処置の必要性がより高くかつ対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する新生血管加齢黄斑変性症対象のオッズの比率として測ることができる。いくつかの態様では、そのオッズ比は、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下または3.2以下である。
【0046】
いくつかの態様では、本方法は、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付けるために用いることができる。いくつかの態様では、遺伝子変異型は、1つ以上の一塩基多型であることができる。
【0047】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在のレベルの低下と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0048】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤を投与されかつ遺伝子変異型対立遺伝子のコピーを有さない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、遺伝子変異型対立遺伝子の1つまたは2つのコピーを有する対象における網膜内液のレベルの低下と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0049】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0050】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の網膜内液の減少に関連付けられ、遺伝子変異型が、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722及びrs5962095から構成される群から選択される一塩基多型である、当該方法を開示する。いくつかの態様では、遺伝子変異型は、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722、rs5962095、rs2106124、rs1879796、rs12148845、rs12148100、rs17482885及びrs17629019から構成される群から選択される一塩基多型である。
【0051】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0052】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少に関連付けられ、網膜内液の減少が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における視力の改善である、当該方法を開示する。
【0053】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0054】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少と関連付けられ、関連性のp値が1×10-6以下である、当該方法を開示する。
【0055】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0056】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少と関連付けられ、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少に対する、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少のオッズ比が0.5以下である、当該方法を開示する。
【0057】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0058】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少と関連付けられ、遺伝子変異型が一塩基多型である、当該方法を開示する。
【0059】
本明細書では、視力、解剖学的転帰または処置頻度に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)(i)硝子体内用抗VEGF剤を投与された新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(ii)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の解剖学的転帰に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、1年間の処置の後での網膜内嚢胞様浮腫(液)の欠如と比べた場合の、網膜内嚢胞様浮腫(液)の存在と関連付けられる、当該方法を開示する。
【0060】
本明細書では、網膜内液に遺伝子変異型を関連付ける方法であって、(a)新生血管加齢黄斑変性症対象の集団の1つ以上の遺伝子変異型を、(b)新生血管加齢黄斑変性症対象の上記集団の網膜内液に、統計学的に関連付けることを含み、1つ以上の遺伝子変異型が、硝子体内用抗VEGF剤で処置されていない新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液のレベルと比べた場合の、硝子体内用抗VEGF剤で処置された新生血管加齢黄斑変性症対象における網膜内液の減少と関連付けられ、遺伝子変異型が一塩基多型であり、一塩基多型が、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722及びrs5962095から構成される群から選択される、当該方法を開示する。
【0061】
キット
さらに、本明細書に記載の方法を利用するためのキットが本明細書において記載される。本明細書に記載のキットは、対象の試料中の1つ以上の遺伝子変異型を検出するための1つ以上のアッセイを含むことができる。
【実施例0062】
以下の実施例は、本明細書の特許請求の範囲に記載の複合物、構成物、物品、装置及び/または方法がいかにして作製及び評価されるかについての完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示されており、単に本発明の例として意図されたものであり、本発明者らが本発明として見なすものの範囲を限定することは意図されない。数(例えば、量、温度など)に関する正確性を確実とするように努めてはいるものの、いくらかの誤差及び変動は考慮されるべきである。特に指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃表示または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0063】
VIEW1及びVIEW2は、新生血管加齢黄斑変性症(AMD)の第III相臨床試験(VEGF Trap-Eye:湿潤型AMDにおける有効性及び安全性に関する調査)であり、その処置において対象はアフリベルセプトの硝子体内注射を受けた(Heier JS,et al.,Am.Acad.Opthalmol.119:2537(2012))。
【0064】
この統計学的研究の目的は、VIEW1試験において視力、解剖学的転帰及び処置頻度によって測られる抗VEGF薬物応答に関連する遺伝子変異型を特定することであった。VIEW1試験の概要を
図1に示す。VIEW1試験では、新生血管AMDの処置におけるラニビズマブと比べた場合のアフリベルセプト硝子体内注射(IAI)の有効性及び安全性が評価された。
【0065】
52週目に全てのIAI群は、全ての視力終点の向上がRq4と同程度であることを実証した。眼球有害事象の発生率は、全ての処置群において同程度であり、患者の10%超において起こっている有害事象は、結膜出血、眼痛、網膜出血及び視力低下であった。
【0066】
362名のVIEW1患者に対してゲノム全体にわたる関連付け研究(GWAS)を行った。Illumina Omni Express Exomeチップを使用してDNA試料の遺伝子型判定を行った。ベースライン値を使用するロジスティック回帰を実施して遺伝子変異型と有効性変数との間での関連性を確立した。およそ百万個の変異型についてGWAS解析を実施した。ベースライン値を使用するロジスティック回帰を用いて遺伝子変異型と有効性変数との間での関連性を判定した。全ての処置群を統合した。各SNPについて、遺伝的形質の加成様式に従って遺伝子型をコード化した。52週目における15以上のETDRS文字の増加と、52週目における網膜内嚢胞様浮腫(時間領域光干渉断層撮影法(TD-OCT)によって測定される液)の存在と、96週目における処置の頻度とに関連する変異型を評価した。また、処置負荷にも変異型を関連付けた。具体的には、52週目から96週目[試験2年目]にかけて7回超の注射を必要とする患者を分析した。さらに、52週目における網膜内嚢胞様浮腫(液として定義される)の存在にも変異型を関連付けた。また、VIEW1の患者人口統計データ及びベースライン特性も特定した。(
図2を参照のこと)。チップ上のSNPに対して品質対照尺度を適用して最終試料セットを生成した。(
図3及び
図4を参照のこと)。
【0067】
解剖学的応答、つまりX染色体SNP(rs2056688)は、解剖学的転帰との最も高い関連性を示し、52週目において、0.2578のオッズ比(OR)及び、網膜内液の存在との点毎の関連性(p値7.27×10
-7)が実証された。(
図5を参照のこと)。
【0068】
4つの近隣SNP(rs5962084、rs5962087、rs5915722、rs5962095)は、同程度のOR(0.3151~0.3461)及び点毎の関連性(5.48×10
-6~8.59×10
-6)を示した。rs2056688は非コード領域に位置しており、最近接関連機能性遺伝子(プロテインキナーゼX関連(PRK-X))が推定変異型の約400kb上流に位置特定された。(
図6を参照のこと)。有意性がより低いさらなるSNPが、52週目における視覚の15以上のETDRS文字の増加を有する患者の割合と96週目における処置の頻度とに関連して見つかった。
【0069】
さらなる近隣SNPは、用量効果を示した。変異型コピーの数が0->1->2と増加することによって、52週目において存在する液の可能性が約50%から約25%を経て約10%へと減少することが判明した。(
図7を参照のこと)。
図8は、研究で特定されたSNAをまとめたものである。
【0070】
結論:VIEW1試験において抗VEGF処置を受けている新生血管AMD患者のGWASによって、遺伝子変異型と、52週目におけるTD-OCTにより測定される網膜内液の存在との示唆的関連性が特定された。変異型は、血管新生に関与するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼであるPRK-Xの遺伝子の近傍のX染色体上の位置に存在していた。
【0071】
[付記1]
黄斑変性症患者の処置のための薬剤の製造における血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤の使用であって、前記患者は、以前にVEGF阻害剤を約1年間投与されており、前記患者から得られるDNA試料で遺伝子型アッセイを行うか行ったことにより決定される1つ以上の遺伝子変異型を前記患者が有しており、前記1つ以上の遺伝子変異型は、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722、rs5962095、rs2106124、rs1879796、rs12148845、rs12148100、rs17482885及びrs17629019から構成される群から選択される一塩基多型である、前記使用。
【0072】
[付記2]
前記1つ以上の遺伝子変異型は、rs2056688、rs5962084、rs5962087、rs5915722及びrs5962095から構成される群から選択される一塩基多型である、付記1に記載の使用。
【0073】
[付記3]
前記1つ以上の遺伝子変異型は、rs2106124、rs1879796、rs12148845及びrs12148100から構成される群から選択される一塩基多型である、付記1に記載の使用。
【0074】
[付記4]
前記1つ以上の遺伝子変異型は、rs17482885及びrs17629019から構成される群から選択される一塩基多型である、付記1に記載の使用。
【0075】
[付記5]
前記患者は、前記1つ以上の遺伝子変異型についてヘテロ接合性である、付記1に記載の使用。
【0076】
[付記6]
前記患者は、前記1つ以上の遺伝子変異型についてホモ接合性である、付記1に記載の使用。
【0077】
[付記7]
前記遺伝子変異型がrs2056688である、付記1に記載の使用。
[付記8]
前記VEGF阻害剤は、前記黄斑変性症患者の治療のために3ヶ月毎に約2mgの量である、付記1~4のいずれか一項に記載の使用。
【0078】
[付記9]
前記VEGF阻害剤がアフリベルセプトである、付記1~5のいずれか一項に記載の使用。