(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028659
(43)【公開日】2024-03-04
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
G04G 3/00 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
G04G3/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010557
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2020013241の分割
【原出願日】2020-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 重彰
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 淳志
(72)【発明者】
【氏名】臼田 俊也
(57)【要約】
【課題】時間精度を向上できる時計を提供すること。
【解決手段】時計は、水晶振動子と、水晶振動子を発振させる発振回路を備えた制御装置と、水晶振動子と制御装置とを接続する配線と、水晶振動子、配線、および制御装置を収納する収納容器と、収納容器を収納する外装ケースと、を備え、平面視において、水晶振動子と制御装置とは収納容器内で並設される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と、
前記水晶振動子を発振させる発振回路を備えた制御装置と、
前記水晶振動子と前記制御装置とを接続する配線と、
前記水晶振動子、前記配線、および前記制御装置を収納する収納容器と、
前記収納容器を収納する外装ケースと、を備え、
平面視において、前記水晶振動子と前記制御装置とは前記収納容器内で並設される
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記制御装置は、前記水晶振動子に接続される制御装置電極を有し、
前記水晶振動子は、前記制御装置に接続される水晶振動子電極を有し、
前記制御装置電極と前記水晶振動子電極とは、平面視で隣り合って配置される
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の時計において、
前記制御装置は、前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、定電圧回路とを備え、
前記収納容器には、前記分周回路と接続される第1端子と、前記定電圧回路に接続される第2端子とが設けられる
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計において、
前記外装ケースに取り付けられる時計用バンドを備え、
前記外装ケースには、前記時計用バンドの一端部が取り付けられる第1取付部と、他端部が取り付けられる第2取付部とが設けられ、
前記水晶振動子は、前記第1取付部と前記第2取付部とを結ぶ仮想線に対して、長手方向が交差するように配置される
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項4に記載の時計において、
前記水晶振動子は、前記仮想線と前記長手方向とが成す角度が、60°以上、かつ、120°以下となるように配置される
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転制御装置に設けられたICおよび水晶振動子により、指針の回転周期を調速可能に構成された時計が開示されている。
特許文献1の時計では、ICおよび水晶振動子を駆動させて水晶振動子を発振させる。そして、当該水晶振動子の発振周波数に基づいて、指針の回転周期を高精度に調速できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の時計では、水晶振動子の発振特性は、水晶振動子とICとを接続させる配線の配線寄生容量の変動の影響を受ける。例えば、特許文献1の時計では、水晶振動子とICは分離して配置され、配線により両者を電気的に接続している。なお、この配線には寄生容量が生じる。配線の寄生容量は、固体ばらつきや温度および湿度などの環境要因により変動し、この寄生容量の変動は水晶振動子の発振特性に影響を与える。これにより、指針の回転周期の精度が悪くなる問題があった。そのため、水晶振動子とICとを接続させる配線の配線寄生容量の変動を小さくでき、時間精度を向上できる時計が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の時計は、水晶振動子と、前記水晶振動子を発振させる発振回路を備えた制御装置と、前記水晶振動子と前記制御装置とを接続する配線と、前記水晶振動子、前記配線、および前記制御装置を収納する収納容器と、前記収納容器を収納する外装ケースと、を備え、平面視において、前記水晶振動子と前記制御装置とは前記収納容器内で並設される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態]
以下、本開示の一実施形態の時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図である。本実施形態では、時計1は電子制御式機械時計として構成される。
図1に示すように、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
【0008】
時計1は、外装ケース2内に収容されたムーブメント150(
図2参照)と、時刻情報を表示する時針4A、分針4B、秒針4Cとを備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。また、文字板3には、時刻を指示するためのアワーマーク3Bや、パワーリザーブ針5で持続時間を指示する扇形のサブダイヤル3Cが設けられている。
【0009】
外装ケース2の12時側の側面には第1取付部8Aが設けられ、6時側の側面には第2取付部8Bが設けられている。そして、第1取付部8Aには時計用バンド9の一方の端部が取り付けられ、第2取付部8Bには時計用バンド9の他方の端部が取り付けられている。つまり、本実施形態では、外装ケース2の12時側の側面および6時側の側面に、時計用バンド9が取り付けられている。
【0010】
また、外装ケース2の3時側の側面には、りゅうず7が設けられている。りゅうず7は、時計1の中心に向かって押し込まれた0段位置から1段位置および2段位置に引き出されて移動することができる。
りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。りゅうず7による日車6や時針4A、分針4Bの修正方法は、従来の時計と同様であるため説明を省略する。
【0011】
また、りゅうず7を0段位置で回転すると、後述するぜんまい41を巻き上げることができる。そして、ぜんまい41の巻き上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。本実施形態の時計1は、ぜんまい41をフルに巻き上げた場合に、約40時間の持続時間を確保できる。
【0012】
[ムーブメント]
図2は、ムーブメント150の要部を示す平面図である。
ムーブメント150は、香箱車40と、角穴車61と、角穴伝え車62と、香箱伝え車63と、輪列50と、収納容器100と、を備えている。
【0013】
香箱車40は、ぜんまい41(
図5)と、伝達歯車42と、香箱真43と、香箱歯車44とを備えている。
ぜんまい41は、外端が香箱歯車44に固定され、内端が香箱真43に固定されて、香箱車40に収容されている。
伝達歯車42は、香箱歯車44の径寸法よりも小さく形成されており、香箱伝え車63と噛み合っている。
香箱真43は、地板130および図示略の輪列受に軸支され、伝達歯車42および香箱歯車44に対して回転可能になっている。すなわち、香箱真43を回転させることでぜんまい41が巻き上げられ、巻き上げられたぜんまい41が解けることで香箱歯車44が回転駆動されるようになっている。
香箱歯車44は、輪列50と噛み合っており、ぜんまい41が解けることで輪列50を回転駆動する。
【0014】
角穴車61は、伝達歯車42と同一径寸法に形成されて、香箱真43に固定されている。この角穴車61は、ぜんまい41の巻上げ機構によって回転され、図示略のコハゼと噛み合っている。コハゼは、角穴車61に噛み合うことで、角穴車61がぜんまい41の巻き解け方向に回転することを規制するストッパーである。巻上げ機構は、巻真64、つづみ車65、きち車66、丸穴車67、角穴中間車68を備えている。
そして、りゅうず7を回転操作することにより、巻真64が回転することで、つづみ車65、きち車66、丸穴車67、および角穴中間車68を介して角穴車61が回転する。角穴車61が回転することで、香箱真43が回転するため、ぜんまい41が巻き上げられる。
【0015】
また、ぜんまい41が解けることで回転駆動する香箱歯車44の回転は、二番車51、二番車51と噛み合う三番車52、二番車51と重なり、三番車52と噛み合う四番車53、四番車53と噛み合う五番車54、五番車54と噛み合う六番車55により構成された増速輪列である輪列50を介して増速される。そして、発電機80のローター81へと伝達される。
二番車51と一体の図示略の筒かなには、分針4Bが取り付けられ、筒かなから日の裏車を介して回転が伝達される筒車には、時針4Aが取り付けられる。四番車53の軸部先端には、秒針4Cが取り付けられる。さらに、最も高速となる六番車55の回転は、発電機80のローター81に伝達される。
【0016】
発電機80は、ローター81と、ローター81が回転可能に配置されるステーター82と、ステーター82の一部に巻き回されるコイル83とを備えて構成されている。
ステーター82は、ローター81が一端側に配置される一対のステーター本体84を備えている。そして、コイル83は、ステーター本体84にそれぞれ巻線されている。
発電機80で発電された電気的エネルギーは、後述するIC10や水晶振動子90に供給される。IC10は、発電機80のコイル83をショートさせてブレーキ力を発生させることで、ローター81の回転制御を行い、輪列50を調速するように構成されている。
【0017】
角穴伝え車62は、一体に形成された回転軸62Aを備えている。この回転軸62Aは、図示略の回転錘受にベアリングを介して支持されている。この角穴伝え車62は、角穴車61と噛み合う。
回転軸62Aには、駆動車621が一体に形成されている。なお、駆動車621を角穴伝え車62とは別体で形成し、回転軸62Aに対して回り止めした状態で固定してもよい。
角穴伝え車62は、ぜんまい41を巻き上げる際に角穴車61が回転することで回転し、これに伴って、駆動車621は、回転軸62Aを中心にして角穴伝え車62と一体的に回転する。
【0018】
香箱伝え車63は、角穴伝え車62の回転軸62Aと同軸上に設けられた回転軸63Aにより回転自在に軸支され、香箱車40の伝達歯車42と噛み合う。また、この香箱伝え車63には、角穴伝え車62に向けて突出する突出軸63Bが一体的に設けられている。
突出軸63Bには、駆動車621と噛み合う従動車631が回転自在に軸支されている。すなわち、香箱伝え車63と角穴伝え車62との間には、駆動車621および従動車631が設けられる。
【0019】
[収納容器]
図3は、収納容器100の要部を示す平面図であり、
図4は、収納容器100の要部を示す拡大断面図である。なお、本実施形態では、文字板3と直交する方向から見た場合を、平面視として説明する。また、
図4では、分かりやすくするために、IC10、IC電極10A、水晶振動子本体91、水晶振動子電極92、固定部93等の厚さを誇張して記載している。
図2~4に示すように、収納容器100は、図示略の回路基板に配置されており、収納容器本体部101と、収納容器蓋部102とを有する箱型に形成されている。本実施形態では、収納容器本体部101の底部は、多層基板により構成されている。
また、本実施形態では、収納容器100の内部は封止されており、封止された内部に水晶振動子90とIC10とが、平面視で並設されている。これにより、IC10と水晶振動子90とを近づけて配置することができ、従来技術のように水晶振動子とICとを個別に設置し、互いを配線でつなぐ形態と比較して配線寄生容量の変動を低減できる。なお、IC10は、本開示の制御装置の一例である。
【0020】
IC10と水晶振動子90とは、電気的に接続されている。具体的には、IC10は、水晶振動子90に接続されるIC電極10Aを有する。また、水晶振動子90は、水晶振動子本体91と、水晶振動子本体91とIC10とを接続させる水晶振動子電極92と、固定部93とを有する。そして、IC電極10Aと水晶振動子電極92とは、配線103によって接続されている。なお、本実施形態では、配線103は、ワイヤボンディング、スルーホール、および、配線パターンにより構成されている。具体的には、IC10の表面側に配置する配線103をワイヤボンディングにより構成し、収納容器本体部101の底部内に配置する配線103をスルーホールおよび配線パターンにより構成する。なお、IC電極10Aは、本開示の制御装置電極の一例である。
ここで、本実施形態では、IC電極10Aと水晶振動子電極92とは、平面視で隣り合って配置されている。これにより、IC電極10Aと水晶振動子電極92とを接続させる配線103を短くすることができる。そのため、当該配線103の配線寄生容量の変動を小さくできるので、水晶振動子90の発振特性を安定化させることができる。また、水晶振動子90とIC10とを平面視で並べて配置(並設)することにより薄型化にも寄与する。
【0021】
[水晶振動子の配置]
図3、4に示すように、水晶振動子90は、長手方向の一端部側に設けられた固定部93にて、水晶振動子本体91が収納容器本体部101の底部に固定されている。すなわち、水晶振動子90は、収納容器本体部101により片持ち支持されている。本実施形態では、固定部93は導電性接着剤で構成されている。なお、固定部93は、上記構成に限られるものではなく、例えば、メタライズパターンやはんだ等により構成されていてもよい。
そして、本実施形態では、水晶振動子90は、
図2に示すように、時計1の12時側および6時側を結ぶ仮想線L、つまり、第1取付部8Aと第2取付部8Bとを結ぶ仮想線Lに対して、長手方向が交差するように配置される。具体的には、水晶振動子90は、仮想線Lに対して長手方向が直交するように配置されている。
【0022】
ここで、時計1を落下させてしまった場合に、外装ケース2の側面が下向きになって、地面等と衝突してしまうことがある。この際、外装ケース2の12時側の側面、または、6時側の側面が下向きになって落下した場合、外装ケース2の12時側の側面および6時側の側面には、前述したように、取付部8A、8Bを介して時計用バンド9が取り付けられている。そのため、この場合、時計用バンド9が地面等と衝突することから、落下の衝撃は時計用バンド9によって緩和される。
一方、外装ケース2の3時側の側面、または、9時側の側面が下向きになって落下した場合は、時計用バンド9によって衝撃が緩和されることがないので、落下の衝撃が大きくなる。すなわち、この場合、時計1の3時側および9時側を結ぶ線分に沿って大きな応力が発生する。
【0023】
この際、仮に、水晶振動子90が、仮想線Lに対して長手方向が平行になるように配置されていると、水晶振動子90の長手方向と前述した応力の作用する方向とが直交することになる。そうすると、前述したように、水晶振動子90は、水晶振動子本体91が長手方向の一端部側の固定部93にて片持ち支持されているので、当該応力によって固定部93に大きなモーメントが作用することになる。そのため、固定部93が損傷しやすくなってしまう。
これに対し、本実施形態では、前述したように、水晶振動子90は、仮想線Lに対して長手方向が直交するように配置されている。すなわち、水晶振動子90は、長手方向が前述した応力の作用する方向と平行になっている。そのため、当該応力によって固定部93に大きなモーメントが作用することを抑制でき、当該モーメントに対する耐久性を向上することができる。
【0024】
[時計の概略構成]
図5は、時計1の概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、時計1は、収納容器100と、IC10と、ぜんまい41と、輪列50と、表示部70と、発電機80と、水晶振動子90と、整流回路110と、電源回路120と、を備えている。なお、本実施形態では、時計1は、所謂年差時計と呼ばれる時間精度を維持可能に構成されている。
【0025】
水晶振動子90は、後述する発振回路11で駆動されて発振信号を発生する。
輪列50は、前述したように、ぜんまい41と、
図2に示す発電機80のローター81とを連結している。さらに、輪列50は、ローター81と、
図1に示す指針4A~4C、5とを連結している。これにより、ぜんまい41は、輪列50を介して指針4A~4C、5を駆動させる。
表示部70は、
図1に示す指針4A~4Cを備えて構成され、時刻を表示する。また、表示部70は、パワーリザーブ針5を備える。
整流回路110は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなり、発電機80からの交流出力を昇圧、整流して、電源回路120に充電供給するものである。
【0026】
[IC]
IC10は、発振回路11と、分周回路12と、回転検出回路13と、制動制御回路14と、定電圧回路15と、温度補償機能部20とを備える。なお、ICは、Integrated Circuitの略語である。
【0027】
発振回路11は、電源回路120の電圧が高くなると駆動し、発振信号発生源である水晶振動子90を発振させる。そして、水晶振動子90の発振信号(32768Hz)をフリップフロップからなる分周回路12に出力する。
分周回路12は、前記発振信号を分周して、複数の周波数(例えば、2kHz~8Hz)のクロック信号を作成し、制動制御回路14や温度補償機能部20に必要なクロック信号を出力する。ここで、分周回路12から制動制御回路14に出力されるクロック信号は、後述するように、ローター81の回転制御の基準となる基準信号fs1である。また、分周回路12には、第1端子P1が接続されている。第1端子P1は、収納容器100の外表面に露出して設けられている。これにより、当該第1端子P1を介して、分周回路12から出力される基準信号fs1を外部に出力可能にしている。
回転検出回路13は、発電機80に接続された図示略の波形整形回路とモノマルチバイブレーターとで構成され、発電機80のローター81の回転周波数を表す回転検出信号FG1を出力する。
【0028】
制動制御回路14は、回転検出回路13から出力される回転検出信号FG1と、分周回路12から出力される基準信号fs1とを比較し、発電機80の調速を行うための制動制御信号を、図示略のブレーキ回路に出力する。なお、基準信号fs1は、通常運針時のローター81の基準回転速度(例えば、8Hz)に合わせた信号である。したがって、制動制御回路14は、ローター81の回転速度(回転検出信号FG1)と基準信号fs1との差に応じて制動制御信号のデューティー比を変更し、ブレーキ回路を制御してブレーキ力を調整し、ローター81の動きを制御する。
定電圧回路15は、電源回路120から供給される外部電圧を一定電圧に変換して供給する回路である。本実施形態では、定電圧回路15は、発振回路11および分周回路12を定電圧で駆動する。また、定電圧回路15には、第2端子P2が接続されている。第2端子P2は、前述した第1端子P1と同様に、収納容器100の外表面に露出して設けられている。これにより、当該第2端子P2を介して、定電圧回路15の駆動電圧を収納容器100の外部から確認可能にしている。
【0029】
[温度補償機能部]
温度補償機能部20は、水晶振動子90等の温度特性を補償して発振周波数の変動を抑制するものであり、温度補償機能制御回路21と、温度補償回路30とを備える。
温度補償機能制御回路21は、所定のタイミングになると、温度補償回路30を動作させる。
温度補償回路30は、温度測定部である温度センサー31と、温度補正テーブル記憶部32と、個体差補正データ記憶部33と、演算回路35と、論理緩急回路36と、周波数調整制御回路37とを備える。
【0030】
温度センサー31は、時計1が使用されている環境の温度に応じた出力を演算回路35に入力する。温度センサー31としては、ダイオードを使用したものや、CR発振回路を使用したものが利用でき、ダイオードやCR発振回路の温度特性を利用して変化する出力信号で現在の温度を検出している。本実施形態では、出力信号を波形整形すれば、すぐにデジタル信号処理が可能なCR発振回路を、温度センサー31として使用している。すなわち、環境温度により、CR発振回路から出力される信号の周波数が変化し、その周波数により温度を検出している。また、CR発振回路を定電流で駆動するように構成すると、温度センサー31の駆動電流は定電流値で決まるため、設計により電流値をコントロール可能となり、低消費電流化し易くなる。定電流駆動型のCR発振回路は低電圧駆動、低消費電流化が可能なため、時計1に温度補償機能を付ける場合の温度センサー31として適している。
【0031】
温度補正テーブル記憶部32は、理想的な水晶振動子90、および、理想的な温度センサー31の場合に、ある温度でどれだけ歩度を補償すればよいかが設定された温度補正テーブルを記憶している。すなわち、温度補正テーブル記憶部32は、水晶振動子90および温度センサー31で共通の温度補正テーブルを記憶している。なお、温度補正テーブルは、本開示の温度補正データの一例である。
また、水晶振動子90や温度センサー31には製造による個体差が生じる。個体差としては、例えば、水晶振動子90の温度特性の2次係数、水晶振動子90の頂点温度、水晶振動子90の頂点歩度、温度センサー31の出力周波数、発振回路11の負荷容量等が挙げられる。そこで、予め製造や検査の工程で測定した、水晶振動子90の特性や、温度センサー31の特性を基に、どれだけ個体差を補正すれば良いかを設定した個体差補正データが個体差補正データ記憶部33に書き込まれている。なお、本実施形態では、温度補償機能動作の中で、上記した水晶振動子90や温度センサー31の個体差を補償する動作を個体差温度補償動作と称する。
温度補正テーブル記憶部32は、マスクROMを利用している。マスクROMを利用するのは、半導体メモリーの中で最も単純なため、集積度を高くし、面積を小さくできるためである。
個体差補正データ記憶部33は、不揮発性メモリーで構成され、特にFAMOSを使用している。FAMOSは、書込み後の電流値が低い事や、不揮発性メモリーの中で比較的低い電圧でデータ書き込みが可能なためである。
【0032】
演算回路35は、温度センサー31の測定温度と、温度補正テーブル記憶部32に記憶された温度補正テーブルと、個体差補正データ記憶部33に記憶された個体差補正データとを利用して、歩度の補正量を演算する。そして、演算回路35は、その演算結果を論理緩急回路36および周波数調整制御回路37に出力する。
【0033】
論理緩急回路36は、分周回路12の各分周段に所定のタイミングでセットもしくはリセット信号を入力することで、デジタル的に基準信号fs1の周期を長くしたり、短くしたりする回路である。例えば、10秒に1回、約30.5μsec(1/32768Hz)だけ基準信号fs1の周期を短くすると、1日では8640回クロックの周期を短くすることになるので、8640回×30.5μsec=0.264secだけ信号の変化が速くなる。つまり、1日で0.264sec/dayだけ時刻は進むことになる。なお、sec/day(s/d)は歩度であり、1日の時刻のずれを表す。
【0034】
周波数調整制御回路37は、前述のとおり、発振回路11の付加容量を調整することにより、発振回路11の発振周波数そのものを調整する回路である。発振回路11は付加容量を大きくすると、発振周波数が小さくなるため、時刻を遅らすことができる。逆に、付加容量を小さくすると、発振周波数が大きくなるため、時刻を進ませることができる。
このように、本実施形態では、論理緩急回路36と周波数調整制御回路37とを組み合わせて、歩度を調整する。
【0035】
[第1端子および第2端子]
次に、第1端子P1および第2端子P2による発振特性の確認方法について説明する。
前述したように、IC10は、第1端子P1を介して、分周回路12から出力される基準信号fs1を外部に出力することができる。これにより、電源回路120の電源電圧を徐々に低下させながら、分周回路12から出力される基準信号fs1を確認することにより、IC10の発振停止電圧を確認することができる。
また、前述したように、第2端子P2を介して、発振回路11および分周回路12を駆動させる定電圧回路15の駆動電圧を、収納容器100の外部から確認することができる。
そうすると、定電圧回路15の駆動電圧から、IC10の発振停止電圧を差し引くことにより、IC10の発振余裕度、つまり、IC10の発振特性を確認することができる。
このように、本実施形態では、水晶振動子90に発振特性を確認するための配線を、水晶振動子90と発振回路11とを接続させる配線に接続しなくても、発振特性を確認することができる。
なお、水晶振動子90と発振回路11とを接続する配線の間に水晶振動子の発振特性を検査するための配線を接続し収納容器100の外部に引き出す形態が一般的であるが、本開示においては水晶振動子90と発振回路11とを接続する配線には検査用配線を接続しない。上述のように、分周回路12に接続される第1端子P1により、水晶振動子90と発振回路11の総合特性を検査し、定電圧回路15に接続される第2端子P2により、発振回路11の単体特性を検査できる。また、第1端子P1と第2端子P2の検査結果を用いて水晶振動子90の単体特性の検査も可能である。このように検査端子を設けることにより、従来技術と比較して水晶振動子90と発振回路11間の総配線長を短くすることができ寄生容量の影響を小さくできる。
【0036】
[実施形態の作用効果]
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態の時計1は、水晶振動子90と、水晶振動子90を発振させる発振回路11を備えたIC10と、水晶振動子90とIC10とを接続する配線103と、水晶振動子90、配線103、およびIC10を収納する収納容器100と、収納容器100を収納する外装ケース2と、を備える。そして、平面視において、水晶振動子90とIC10とは並設される。
これにより、水晶振動子90とIC10とを接続する配線103を短くできるので、当該配線の配線寄生容量の変動を小さくすることができる。そのため、水晶振動子90の発振特性を安定化させることができるので、時間精度を向上できる。
さらに、平面視において、水晶振動子90とIC10とは並設されるので、水晶振動子90とIC10とを重ねて配置する場合に比べて、収納容器100の厚さを小さくすることができる。そのため、時計1を薄型化することができる。
【0037】
本実施形態では、IC10は、水晶振動子90に接続されるIC電極10Aを有し、水晶振動子90は、IC10に接続される水晶振動子電極92を有する。そして、IC電極10Aと、水晶振動子電極92とは、平面視で隣り合って配置される。
これにより、IC電極10Aと水晶振動子電極92との間の距離を短くできるので、水晶振動子90とIC10とを接続させる配線103を短くできる。そのため、水晶振動子90の発振特性を安定化させることができ、時間精度を向上できる。
【0038】
本実施形態では、収納容器100には、分周回路12と接続される第1端子P1と、定電圧回路15に接続される第2端子P2とが設けられる。
これにより、水晶振動子90と発振回路11とを接続させる配線に、発振特性を確認するための配線を接続しなくても、発振特性を確認することができる。そのため、水晶振動子90の配線寄生容量の変動を小さくでき、時間精度を向上できる。
【0039】
本実施形態では、水晶振動子90は、第1取付部8Aと第2取付部8Bとを結ぶ仮想線Lに対して、長手方向が交差するように配置される。
落下時の衝撃によって水晶振動子90の固定部93に加わるモーメントに対する耐久性を向上することができる。
【0040】
[変形例]
なお、本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
【0041】
前記実施形態では、水晶振動子90は、仮想線Lに対して、長手方向が直交するように配置されていたが、これに限定されない。例えば、水晶振動子90は、仮想線Lと長手方向とが成す角度が、60°以上、かつ、120°以下となるように配置されていてもよい。
これにより、前述したような、外装ケース2の3時側の側面、または、9時側の側面が下向きになって落下した場合に生じる応力によって、固定部93に作用するモーメントを低下できる。具体的には、水晶振動子90が仮想線Lに対して長手方向が平行になるように配置されている場合に比べて、固定部93に作用するモーメントを半分以下にすることができるので、時計1を落下させた場合等に生じる衝撃に対する耐久性を向上できる。
【0042】
前記実施形態では、時計1は、ぜんまい41を1つ備えて構成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、ぜんまいを2つ備えて構成されていてもよい。
【0043】
前記実施形態では、時計1は、発電機80および輪列50を備える電子制御式機械時計として構成されていたが、これに限定されない。例えば、時計は、電池、モーター、水晶振動子等を備えるアナログクオーツ時計や、デジタル表示部を備えるデジタルクオーツ時計として構成されていてもよい。この場合、電池は二次電池として構成されていてもよく、当該二次電池を充電するための太陽電池等の発電機構を備えていてもよい。さらに、針位置検出機能、電波受信機能、通信機能等を備えて構成されていてもよい。
【0044】
前記実施形態では、水晶振動子90とIC10とを接続させる配線103は、ワイヤボンディング、スルーホール、および、配線パターンにより構成されていたが、これに限定されない。
図6は、変形例の収納容器100Aを示す平面図である。
図6に示すように、水晶振動子90とIC10とを、ワイヤボンディングおよび配線パターンにより構成された配線103Aにより接続させてもよい。
【0045】
前記実施形態では、温度補償回路30は、温度補正テーブル記憶部32および個体差補正データ記憶部33を備えて構成されていたが、これに限定されない。例えば、温度補償回路30は、温度補正テーブル記憶部32および個体差補正データ記憶部33のいずれか一方を備えて構成されていてもよい。また、温度補償回路30を備えない場合も、本開示に含まれる。
【0046】
前記実施形態では、温度補償回路30は、論理緩急回路36と周波数調整制御回路37とを組み合わせて、歩度を調整するように構成されていたが、これに限定されない。例えば、温度補償回路30は、論理緩急回路36および周波数調整制御回路37のいずれか一方により、歩度を調整するように構成されていてもよい。
【0047】
前記実施形態では、温度補正テーブル記憶部32はマスクROMで構成され、個体差補正データ記憶部33はFAMOSで構成されていたが、これに限定されるものではなく、これらは実施にあたって適宜設定すれば良い。
【0048】
前記実施形態では、定電圧回路15は、発振回路11および分周回路12を駆動するように構成されていたが、これに限定されるものではなく、定電圧回路にて駆動される対象は、実施にあたって適宜設定すれば良い。
【0049】
前記実施形態では、時計1は、水晶振動子90を備えて構成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、AT振動子やMEMS振動子を備えて構成されていてもよい。
【0050】
[本開示のまとめ]
本開示の時計は、水晶振動子と、前記水晶振動子を発振させる発振回路を備えた制御装置と、前記水晶振動子と前記制御装置とを接続する配線と、前記水晶振動子、前記配線、および前記制御装置を収納する収納容器と、前記収納容器を収納する外装ケースと、を備え、平面視において、前記水晶振動子と前記制御装置とは前記収納容器内で並設される。
これにより、水晶振動子と制御装置とを接続する配線を短くできるので、当該配線の配線寄生容量の変動を小さくすることができる。そのため、水晶振動子の発振特性を安定化させることができるので、時間精度を向上できる。
さらに、平面視において、水晶振動子と制御装置とは並設されるので、水晶振動子と制御装置とを重ねて配置する場合に比べて、収納容器の厚さを小さくすることができる。そのため、時計を薄型化することができる。
【0051】
本開示の時計において、前記制御装置は、前記水晶振動子に接続される制御装置電極を有し、前記水晶振動子は、前記制御装置に接続される水晶振動子電極を有し、前記制御装置電極と前記水晶振動子電極とは、平面視で隣り合って配置されていてもよい。
これにより、制御装置電極と水晶振動子電極との間の距離を短くできるので、水晶振動子と制御装置とを接続させる配線を短くできる。そのため、水晶振動子の発振特性を安定化させることができ、時間精度を向上できる。
【0052】
本開示の時計において、前記制御装置は、前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、定電圧回路とを備え、前記収納容器には、前記分周回路と接続される第1端子と、前記定電圧回路に接続される第2端子とが設けられていてもよい。
これにより、水晶振動子に発振特性を確認するための配線を接続しなくても、発振特性を確認することができる。そのため、水晶振動子の配線寄生容量の変動を小さくでき、時間精度を向上できる。
【0053】
本開示の時計において、前記外装ケースに取り付けられる時計用バンドを備え、前記外装ケースには、前記時計用バンドの一端部が取り付けられる第1取付部と、他端部が取り付けられる第2取付部とが設けられ、前記水晶振動子は、前記第1取付部と前記第2取付部とを結ぶ仮想線に対して、長手方向が交差するように配置されていてもよい。
これにより、落下時の衝撃によって水晶振動子の固定部に加わるモーメントに対する耐久性を向上することができる。
【0054】
本開示の時計において、前記水晶振動子は、前記仮想線と前記長手方向とが成す角度が、60°以上、かつ、120°以下となるように配置されていてもよい。
これにより、水晶振動子の固定部に加わるモーメントを半分以下にできるので、耐久性を向上できる。
【符号の説明】
【0055】
1…時計、2…外装ケース、3…文字板、3A…カレンダー小窓、3B…アワーマーク、3C…サブダイヤル、4A…時針、4B…分針、4C…秒針、5…パワーリザーブ針、6…日車、7…りゅうず、8A…第1取付部、8B…第2取付部、9…時計用バンド、10…IC(制御装置)、10A…IC電極(制御装置電極)、11…発振回路、12…分周回路、13…回転検出回路、14…制動制御回路、15…定電圧回路、20…温度補償機能部、21…温度補償機能制御回路、30…温度補償回路、31…温度センサー、32…温度補正テーブル記憶部、33…個体差補正データ記憶部、35…演算回路、36…論理緩急回路、37…周波数調整制御回路、40…香箱車、41…ぜんまい、42…伝達歯車、43…香箱真、44…香箱歯車、50…輪列、51…二番車、52…三番車、53…四番車、54…五番車、55…六番車、61…角穴車、62…角穴伝え車、62A…回転軸、63…香箱伝え車、63A…回転軸、63B…突出軸、64…巻真、65…つづみ車、66…きち車、67…丸穴車、68…角穴中間車、70…表示部、80…発電機、81…ローター、82…ステーター、83…コイル、84…ステーター本体、90…水晶振動子、91…水晶振動子本体、92…水晶振動子電極、93…固定部、100、100A…収納容器、101…収納容器本体部、102…収納容器蓋部、103、103A…配線、110…整流回路、120…電源回路、130…地板、150…ムーブメント、621…駆動車、631…従動車、L…仮想線、P1…第1端子、P2…第2端子。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と、
前記水晶振動子を発振させる発振回路を備えた制御装置と、
前記水晶振動子と前記制御装置とを接続する配線と、
前記水晶振動子、前記配線、および前記制御装置を収納する収納容器と、
前記収納容器を収納する外装ケースと、を備え、
平面視において、前記水晶振動子と前記制御装置とは前記収納容器内で並設され、
前記水晶振動子は、水晶振動子本体と、前記水晶振動子本体の長手方向の端部に設けられる固定部とを有し、前記固定部にて前記収納容器の底部に固定される
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記制御装置は、前記水晶振動子に接続される制御装置電極を有し、
前記水晶振動子は、前記制御装置に接続される水晶振動子電極を有し、
前記制御装置電極と前記水晶振動子電極とは、平面視で隣り合って配置される
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の時計において、
前記制御装置は、前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、定電圧回路とを備え、
前記収納容器には、前記分周回路と接続される第1端子と、前記定電圧回路に接続される第2端子とが設けられる
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計において、
前記外装ケースに取り付けられる時計用バンドを備え、
前記外装ケースには、前記時計用バンドの一端部が取り付けられる第1取付部と、他端部が取り付けられる第2取付部とが設けられ、
前記水晶振動子は、前記第1取付部と前記第2取付部とを結ぶ仮想線に対して、長手方向が交差するように配置される
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項4に記載の時計において、
前記水晶振動子は、前記仮想線と前記長手方向とが成す角度が、60°以上、かつ、120°以下となるように配置される
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の時計において、
前記配線は、前記制御装置に接続されるワイヤボンディングと、前記ワイヤボンディングに接続されるスルーホール、および、配線パターンと、により構成される
ことを特徴とする時計。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計において、
前記収納容器は、有底筒状の収納容器本体部と、前記収納容器本体部の開口を覆う収納容器蓋部と、を有して箱型に構成され、
前記収納容器の前記底部は、前記制御装置が配置される第1底部と、前記第1底部よりも前記収納容器蓋部側に位置し、かつ、前記水晶振動子の前記固定部が固定される第2底部とを有して段差状とされ、
前記収納容器本体部の前記底部側の外面は平面とされている
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
請求項7に記載の時計において、
前記収納容器蓋部の外面は平面とされている
ことを特徴とする時計。