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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028688
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】豆腐類の連続製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20240227BHJP
【FI】
A23L11/45 A
A23L11/45 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022141755
(22)【出願日】2022-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】592035154
【氏名又は名称】株式会社田定工作所
(72)【発明者】
【氏名】田 益久
(72)【発明者】
【氏名】富岡 康充
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB02
4B020LC02
4B020LC07
4B020LC10
4B020LG05
4B020LK02
4B020LP15
4B020LP26
4B020LP30
4B020LR02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原料大豆及び搾汁豆乳に由来する豆腐本来の風味を発現し、経時的に風味が劣化しない豆腐類の生地を連続的に大量に製造する方法に使用される撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】豆腐類の連続製造装置100は、豆乳が流通する連続供給ライン内に撹拌装置10を備え、この撹拌装置は、撹拌対象となる豆乳及びにがりが流入される流入口及びにがりが混合され撹拌された後の混合液が流出される流出口を備えた撹拌装置本体と、この撹拌装置本体の所定の軸線に沿って延出する駆動軸と、この駆動軸を前記所定の軸線周りに回転駆動する駆動手段と、前記撹拌装置本体内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳が流通する連続供給ライン内に撹拌装置を備え、
この撹拌装置は、撹拌対象となる豆乳及びにがりが流入される流入口及びにがりが混合され撹拌された後の混合液が流出される流出口を備えた撹拌装置本体と、
この撹拌装置本体の所定の軸線に沿って延出する駆動軸と、
この駆動軸を前記所定の軸線周りに回転駆動する駆動手段と、
前記撹拌装置本体内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体とを具備し、
前記撹拌用回転体は、
前記所定の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該所定の軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、前記流体中に浸漬され、前記所定の軸線回りに回転駆動される本体と、
前記第1の端面に形成され、前記所定の軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、
前記第2の端面に形成され、前記所定の軸線から前記第1の距離より長く設定された第2の距離だけ離間した第2の開口と、
前記撹拌装置は、前記第1及び第2の開口を互いに連通する流路とを備え、
前記本体の第2の端面に対向して配設され、該第2の端面の吐出口から旋回流として吐出された豆乳とにがりの混合液を受けて直進流に整流して吐出する整流手段を更に具備することを特徴とする豆腐類の連続製造装置。
【請求項2】
前記整流手段は、前記撹拌用回転体に対して固定的に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項3】
前記整流手段は、
円板状の整流器本体と、
この整流器本体に形成され前記駆動軸が回動自在に挿通される挿通孔と、
この挿通孔の周囲に、前記所定の軸線に同芯状に、且つ、等角度的に配設され、厚さ方向に貫通した複数の整流路とを備え、
各整流路は、前記撹拌用回転体の回転方向に向かって所定の鋭角で傾斜する延出軸線を備え、
前記駆動軸の回転方向に沿って旋回してきた流体は、前記整流路内に入り込み、前記傾斜した延出軸に沿って流れるように矯正され、前記駆動軸の回転方向とは逆方向の速度成分を与えられて、直進流に整流して吐出されることを特徴とする請求項2に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項4】
前記整流路は、前記整流器本体の前記撹拌用回転体に対向する一方の端面に形成された一方の開口と、これと反対側の他方の端面に形成された他方の開口とを備え、
前記他方の開口は、前記一方の開口に対して、前記駆動軸の中心軸線を中心とした円周方向に関して、前記駆動軸の回転方向とは逆の方向にオフセットした状態で配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項5】
前記整流手段は、前記撹拌用回転体に対して相対回転するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項6】
前記整流手段は、
前記撹拌装置本体の所定の第2の軸線に沿って延出する第2の駆動軸と、
この第2の駆動軸を前記所定の第2の軸線周りに回転駆動する第2の駆動手段と、
前記撹拌装置本体内に配設され、前記第2の駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた整流用回転体とを具備し、
前記整流用回転体は、
前記所定の第2の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の第2の軸線に交差する第3及び第4の一対の端面、及び、該所定の第2の軸線と同心に形成され、第3及び第4の端面の外周縁を互いに連結する第2の外周面を有し、前記流体中に浸漬され、前記所定の第2の軸線回りに回転駆動される本体と、
前記第3の端面に形成され、前記所定の第2の軸線から第3の距離だけ離間した第3の開口と、
前記第4の端面に形成され、前記所定の第2の軸線から前記第3の距離より長く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口と、
前記第3及び第4の開口を互いに連通する整流路とを備え、
前記第2の駆動手段は、前記撹拌用回転体を回転駆動する駆動手段による回転方向とは逆の回転方向に沿って整流用回転体を回転駆動する第2の駆動モータを備え、
前記撹拌用回転体の第2の開口から吐出してきた旋回流が、該整流用回転体の前記第3の開口から前記整流路内に流入し、
前記撹拌用回転体の回転方向とは逆の回転方向に第2の駆動モータにより整流用回転体が回転することにより、整流用回転体の第4の開口からは流体が直進流として整流された状態で吐出することを特徴とする請求項5に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項7】
前記所定の軸線と、前記所定の第2の軸線とは、互いに同軸に整合していることを特徴とする請求項6に記載の豆腐類の連続製造装置。
【請求項8】
前記撹拌用回転体と前記整流用回転体とは、実質的に同一形状に形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の豆腐類の連続製造装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、日が経っても風味の良い豆腐類を連続的に大量生産できる製造法に使用する撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐には絹豆腐、木綿豆腐、ソフト豆腐、充填豆腐があり、また豆腐の生地を油で揚げた加工品として油揚げ、がんもどき、厚揚げなどがある。これら豆腐類の基になる豆腐は、大豆を搾汁した豆乳に凝固剤を分散して大豆タンパクと反応し、凝固して作られる伝統食品である。凝固剤には各種あるが、穏やかな甘みを有して大豆風味を引き立てる凝固剤としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムの無機塩がある。古くから使われている苦汁も塩化マグネシウムが主成分の無機塩である。しかし、これらの無機塩は大豆タンパクとの反応が非常に速攻で凝固が早く、豆乳中に均一に分散する前に部分的に凝固反応が進み、収量も悪く食感も悪くなりやすい。そのため豆腐組織が均一な豆腐を得るには小スケールに限り、かつ熟練した技術を要していた。
【0003】
従って豆腐を連続的に大量に製造するためには、工程上ゆっくりと大豆タンパクと反応させる必要があり、凝固剤の中でも凝固反応が徐々に始まる硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンを使うことで反応はうまくいくが、大豆本来の風味からほど遠く、豆腐の風味に問題があった。
【0004】
近年、豆腐の大量生産において、塩化マグネシウムを主体とした凝固反応速度の速い無機塩を速度コントロールして遅効化した豆腐用凝固剤が使われるようになった。遅延化の方法は速効性の無機塩を多価アルコールやポリグリセリンの脂肪酸部分エステルである乳化剤で油中水型に乳化または分散した無機塩系凝固剤組成物(特許文献1~5)にしたものである。一般には界面活性のある乳化剤で無機塩と食用油脂の界面の界面張力を低下し、乳化して安定化したものが多い。一方、乳化剤を使わずに天然ワックスと食用油脂の混合物に速効性の無機塩を油中水型に乳化した無機塩系凝固剤組成物(特許文献6)もある。これら遅効化処理した油中水型の無機系凝固剤組成物は乳化にがりとして市販されている。
【0005】
乳化にがりは豆腐用凝固剤の一つであり、製造ライン中の豆乳に撹拌機で連続的に分散して豆腐の大量生産に使われる。しかし、製造直後から時間とともに味が変化する、いわゆる味抜けという表現の風味劣化が生じる問題があった。これは豆腐を小袋包装して加熱殺菌した日持ちのする豆腐には大きな問題となる。
【0006】
かかる乳化にがりは豆腐メーカーではなく乳化剤メーカーなどが専門的に製造して販売するため、保管および流通の関係から製造後1年以上経時的に乳化安定を維持する必要があり、耐塩性で強力な油中水型乳化に適しているポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(以下PGPRという)を主体にした界面活性の強い乳化剤を多く配合しているのが一般的である。そのため、乳化剤の味が残り、豆腐本来の風味を阻害する問題もあった。
【0007】
油中水型の乳化にがりは水溶性の無機塩を内包しており、豆乳中に細かく機械的に分散されることで乳化にがりの油性被膜が壊れて無機塩が溶出し、豆乳中の大豆タンパクと反応してネットワークの網状にゲル化して凝固する。
【0008】
ところで、豆腐は本来の大豆のうまみと香りを生かすことでおいしい豆腐となるが、そのためには大豆タンパクと凝固剤が反応してタンパク架橋して薄い網目状のタンパク膜でうまみ成分を閉じ込める必要がある。従って凝固剤が豆乳のタンパクと反応する前に、できるだけ細かく均一にしかも早く分散し、その後しっかりとタンパクと反応するようにしなければならない。
【0009】
凝固剤を豆乳に機械的に分散する主な撹拌方法として、いくつか穴の開いた板を1から2回上下して撹拌するワンツー方式、低せん断であるが分散能力に優れる遠心回転式撹拌による方法、高せん断力を持つインライン高速高せん断撹拌による方法がある。これらのうち、ワンツー方式は、穏やかな上下撹拌のため凝固剤の分散は粗く、また均一になりにくく、分散槽も小さいため、バッチ型の少量生産に適しており、凝固剤も速効に反応する無機塩をそのまま使われることが多い。
【0010】
また、遠心回転式撹拌による方法は、羽で撹拌するのではなく、吐出口と吸入口が流路で連通した回転体を回転することで、吐出口の遠心力が吸入口の遠心力より大きくなって水流を発生して撹拌する方式(特許文献7)であり、例えば、M-Revo((株)IPMS製、M-Revoは登録商標)及びM-Revoにせん断力を付加するために吸入口に小さな羽を付けたサイレントコア(泰喜物産(株)製、特許文献8)がある。これらは分散能力に優れているので乳化にがりを用いた豆腐の製造には好適であるが、M-Revo及びサイレントコアは共に構造上バッチまたはバッチ連続しか使うことができず、少量生産に適しているものの連続の大量生産には適さない。
【0011】
また、インライン高速高せん断撹拌による方法は、ローターステーターが配管内に組み込まれ、高速回転で強力に撹拌して強いせん断力で乳化にがりを細かく瞬時に分散する装置を使う。例えばパイプラインホモミクサー(プライムミックス(株)製)、マイルダー((株)マツボー製、マイルダーは登録商標)、システムマグ((株)アースシステム21製)などの装置がある。従って、経時的に乳化安定の良い乳化にがりとインライン高速高せん断の撹拌機を組み合わせたシステムが最も多く豆腐の連続大量生産に使われている。
【0012】
しかし、インライン高速高せん断撹拌による連続の大量生産では、乳化にがりを豆乳中に高せん断で撹拌混合するため、乳化にがりの分散と同時に乳化にがりの油性被膜も破れ、溶出した速効性の無機塩とタンパクが部分的に凝固反応し、形成が始まったタンパク膜を高回転のローターステーターで破断してしまう。結果としてうまみ成分をここから徐々に逃すことになり、せん断力をあまりかけずに製造ができる小バッチの少量生産に比べ、連続の大量生産では豆腐のおいしさが軽減していた。これが大量生産において製造直後から時間とともに味が変化する、いわゆる味抜けという表現の風味劣化が生じる原因と思われる。また、豆腐を生地として油で揚げた加工品である油揚げ、がんもどき、厚揚げなども少量で丁寧に作られる職人のものに比べると当然風味が落ちていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】_特許第2912249号
【特許文献2】_特許第3516298号
【特許文献3】_特許第4105674号
【特許文献4】_特開2006-94831号
【特許文献5】_特許第4801006号
【特許文献6】_特許第6030595号
【特許文献7】_特許第4418019号
【特許文献8】国際公開番号WO2017/002795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこでこの発明は、原料大豆及び搾汁豆乳に由来する豆腐本来の風味を発現し、経時的に風味が劣化しない豆腐類の生地を連続的に大量に製造する方法に使用される撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、この発明の目的は、原料大豆及び搾汁豆乳に由来する豆腐本来の風味を発現し、経時的に風味が劣化しない豆腐類の生地を連続的に大量に製造する方法に使用される撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置を提供することを目的とする。
【0016】
上述した目的を達成するため、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項1の記載によれば、豆乳が流通する連続供給ライン内に撹拌装置を備え、この撹拌装置は、撹拌対象となる豆乳及びにがりが流入される流入口及びにがりが混合され撹拌された後の混合液が流出される流出口を備えた撹拌装置本体と、この撹拌装置本体の所定の軸線に沿って延出する駆動軸と、この駆動軸を前記所定の軸線周りに回転駆動する駆動手段と、前記撹拌装置本体内に配設され、前記駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体とを具備し、前記撹拌用回転体は、前記所定の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の軸線に交差する第1及び第2の一対の端面、及び、該所定の軸線と同心に形成され、第1及び第2の端面の外周縁を互いに連結する外周面を有し、前記流体中に浸漬され、前記所定の軸線回りに回転駆動される本体と、前記第1の端面に形成され、前記所定の軸線から第1の距離だけ離間した第1の開口と、前記第2の端面に形成され、前記所定の軸線から前記第1の距離より長く設定された第2の距離だけ離間した第2の開口と、前記撹拌装置は、前記第1及び第2の開口を互いに連通する流路とを備え、前記撹拌装置は前記本体の第2の端面に対向して配設され、該第2の端面の吐出口から旋回流として吐出された豆乳とにがりの混合液を受けて直進流に整流して吐出する整流手段を更に具備することを特徴としている。
【0017】
このように、請求項1に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、従来のような高回転で撹拌体を回転駆動しなくても、十分な撹拌力を得ることが出来、また、これにより、エネルギーロスを抑制した経済的に優位性のある豆腐類の連続製造装置を提供することが出来ることになる。
【0018】
また、この発明に係わる豆腐類の連続製造装置は、請求項2の記載によれば、前記整流手段は、前記撹拌用回転体に対して固定的に配設されていることを特徴としている。
【0019】
このように、請求項2に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、回転駆動部をするなく設定することにより、エネルギーロスをより確実に達成することが出来ることになる。
【0020】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項3の記載によれば、前記整流手段は、円板状の整流器本体と、この整流器本体に形成され前記駆動軸が回動自在に挿通される挿通孔と、この挿通孔の周囲に、前記所定の軸線に同芯状に、且つ、等角度的に配設され、厚さ方向に貫通した複数の整流路とを備え、各整流路は、前記撹拌用回転体の回転方向に向かって所定の鋭角で傾斜する延出軸線を備え、前記駆動軸の回転方向に沿って旋回してきた流体は、前記整流路内に入り込み、前記傾斜した延出軸に沿って流れるように矯正され、前記駆動軸の回転方向とは逆方向の速度成分を与えられて、直進流に整流して吐出されることを特徴としている。
【0021】
このように、請求項3に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、撹拌用回転体から吐出された旋回流は、整流手段により直進流として整流され、十分な撹拌エネルギーをもって流体の撹拌を行うことが出来るので、撹拌用回転体の回転を高回転に上げる必要が無くなる効果を達成することが出来ることになる。
【0022】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項4の記載によれば、前記整流路は、前記整流器本体の前記撹拌用回転体に対向する一方の端面に形成された一方の開口と、これと反対側の他方の端面に形成された他方の開口とを備え、前記他方の開口は、前記一方の開口に対して、前記駆動軸の中心軸線を中心とした円周方向に関して、前記駆動軸の回転方向とは逆の方向にオフセットした状態で配設されていることを特徴としている。
【0023】
このように、請求項4に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、撹拌用回転体から吐出された旋回流は、整流手段により直進流として整流され、十分な撹拌エネルギーをもって流体の撹拌を行うことが出来るので、撹拌用回転体の回転を低回転に抑える効果を達成することが出来ることになる。
【0024】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項5の記載によれば、前記整流手段は、前記撹拌用回転体に対して相対回転するように配設されていることを特徴としている。
【0025】
このように、請求項5に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、簡単な構成で、エネルギーロスをより確実に達成することが出来ることになる。
【0026】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項6の記載によれば、前記整流手段は、前記撹拌装置本体の所定の第2の軸線に沿って延出する第2の駆動軸と、この第2の駆動軸を前記所定の第2の軸線周りに回転駆動する第2の駆動手段と、前記撹拌装置本体内に配設され、前記第2の駆動軸にこれと一体回転するように取り付けられた整流用回転体とを具備し、前記整流用回転体は、前記所定の第2の軸線に沿って所定距離離間した状態で、該所定の第2の軸線に交差する第3及び第4の一対の端面、及び、該所定の第2の軸線と同心に形成され、第3及び第4の端面の外周縁を互いに連結する第2の外周面を有し、前記流体中に浸漬され、前記所定の第2の軸線回りに回転駆動される本体と、前記第3の端面に形成され、前記所定の第2の軸線から第3の距離だけ離間した第3の開口と、前記第4の端面に形成され、前記所定の第2の軸線から前記第3の距離より長く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口と、前記第3及び第4の開口を互いに連通する整流路とを備え、前記第2の駆動手段は、前記撹拌用回転体を回転駆動する駆動手段による回転方向とは逆の回転方向に沿って整流用回転体を回転駆動する第2の駆動モータを備え、前記撹拌用回転体の第2の開口から吐出してきた旋回流が、該整流用回転体の前記第3の開口から前記整流路内に流入し、前記撹拌用回転体の回転方向とは逆の回転方向に前記第2の駆動モータにより前記整流用回転体が回転することにより、整流用回転体の第4の開口からは流体が直進流として整流された状態で吐出することを特徴としている。
【0027】
このように、請求項6に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、撹拌用回転体から吐出された旋回流を、直進流として整流することが可能となる。
【0028】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項6の記載によれば、前記所定の軸線と、前記所定の第2の軸線とは、互いに同軸に整合していることを特徴としている。
【0029】
このように、請求項7に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、構造を複雑化することなく、整流効果を確実に達成することができることになる。
【0030】
また、この発明に係る豆腐類の連続製造装置は、請求項8の記載によれば、前記撹拌用回転体と前記整流用回転体とは、実質的に同一形状に形成されていることを特徴としている。
【0031】
このように、請求項8に記載の豆腐類の連続製造装置を構成することにより、全体コストの低廉化を達成することが出来ることになる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、撹拌体を高速で回転させなくとも、十分な撹拌力を得ることのできる撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置が提供されることになる。
【0033】
また、この発明によれば、エネルギーロスを抑制した状態で、十分な撹拌力を得ることのできる撹拌装置を備えた豆腐類の連続製造装置が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】 この発明の第1の実施形態に係る豆腐類の連続製造装置の構成を模式的に示す図である。
図2図1に示す豆腐類の連続製造装置に用いられる撹拌装置の構成を取り出して示す正面図である。
図3図2に示す撹拌装置に備えられ撹拌部と整流部との一体構造を示す正面断面図である。
図4図2に示す撹拌装置に用いられる撹拌用回転体の構造を取りだして示す縦断面図である。
図5図2に示す撹拌装置に用いられる撹拌用回転体の構造を取り出して示す平面図である。
図6図2に示す撹拌装置に用いられる整流板の構造を取り出して示す底面図である。
図7図6に示す整流板の整流用流路の形成状態を、図6のVII―VII線に沿って切断して示す断面図である。
図8】 この発明の他の実施形態にかかわる撹拌装置の構成を示す正面図である。
図9図8に示す他の実施形態の撹拌装置に設けられた整流部を構成する整流用回転体を取り出して示す縦断面図である。
図10】 豆腐類の連続製造装置に適用される乳化にがり製造装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の第1の実施形態に係る豆腐類の連続製造装置100を、図1乃至図9を参照して詳細に説明する。尚、豆腐類の連続製造装置100においては、豆乳に乳化にがりを加えるステップと、乳化にがりを加えた豆乳が流通する供給ライン内に設けられた撹拌体により豆乳と乳化にがりを撹拌分散するステップを含み、より詳細には、特定の豆腐用凝固剤を、低せん断でありながら高分散能力に優れた遠心回転式撹拌機を使って供給ライン内で豆乳に分散するインライン方式で豆腐の連続生産を行うものである。
【0036】
すなわち、この実施形態の豆腐類の連続製造装置100で使用される塩化マグネシウム主体の凝固剤を水相とする油中水型の乳化にがりは、低せん断の撹拌で乳化が壊れずに豆乳に細かく均一に油中水型に分散し、次いで高濃度の凝固剤を内包している油性被膜の乳化粒子が豆乳との浸透圧の差で自然に乳化破壊が起こり、凝固剤が豆乳に溶出する。
【0037】
このように溶出した凝固剤は、豆乳の大豆タンパクと反応してタンパク架橋し、薄い網目状のタンパク膜を形成し、大豆本来のうまみと香りを閉じ込めて凝固して豆腐となる。従ってこの実施形態に使う乳化にがりは、豆乳に低せん断で分散されるときは安定であるが、分散後は浸透圧差で破壊するような弱い油性被膜に調整した乳化にがりが好ましい。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態の豆腐類の連続製造装置100の構成について、模式的に表したものである。ここで、豆腐の製造方法には、豆乳を連続的に搬送コンベヤの成型ベルトもしくは型箱に送り込みながら凝固剤との攪拌分散を行う所謂「連続式」と、型箱内で一定量ずつ攪拌分散を行う所謂「バッチ式」が挙げられるが、この第1の実施形態に係る撹拌装置が適用される豆腐の製造方法においては、豆腐の大量生産に好適な「連続式」を採用している。
【0039】
図1に示すように、連続式の豆腐製造装置100は、豆乳を貯蔵する豆乳タンク102と、この豆乳タンク102から撹拌装置10へと豆乳を供給するための第1の供給ライン104と、この第1の供給ライン104の途中に設けられた第1の供給ポンプ106と、乳化にがりを貯蔵するための凝固剤タンク108と、この凝固剤タンク108から凝固剤を第1の供給ライン104へと供給するための第2の供給ライン110と、この第2の供給ライン110の途中に設けられた第2の供給ポンプ112と、さらに、撹拌装置10から排出される乳化にがりが撹拌分散された豆乳を成型ベルト114に供給するための第3の供給ライン116とを備えている。なお、この第1の実施形態では、撹拌装置10により凝固剤が撹拌分散された豆乳は成型ベルト114に吐出されるが、これを成型用の型箱に吐出しても良いことは言うまでもない。
【0040】
尚、この実施形態では、撹拌装置10の手前の第1の供給ライン104に乳化にがりの第2の供給ライン110を接続し、乳化にがりを直接添加しているが、これを前もって羽根撹拌等でキャビテーションが発生しない程度に軽く予備分散してから第1の供給ライン104内の豆乳に添加してもよい。また、撹拌装置10を駆動させると水流が発生するので乳化にがりが分散・混合された豆乳は自動的に第3の供給ライン116内を流れるが、乳化にがり及び豆乳は第1及び第2の供給ポンプ106、112を夫々使って流量を調整するのが好ましい。
【0041】
この実施形態の豆腐類の連続製造装置100において特徴的な構成を有する撹拌装置10を詳細に説明する。この撹拌装置10は、撹拌羽根を用いて撹拌する従前の撹拌装置とは異なり、豆乳と乳化にがりの混合物が、撹拌体に形成されている流路内を通過して吐出口から吐出される際に、遠心力により連続的に混合分散されるというものである。このように、撹拌装置10は遠心力を利用するため、機械的なせん断を行うローターステーター等に比べて、混合分散力のあるインライン低せん断が可能となり、キャビテーションを起こさない特徴がある。
【0042】
この実施形態を特徴づける撹拌装置10について、図2乃至図5を参照して、詳細に説明する。
【0043】
撹拌装置10は、図2に示すように、詳細は図示していない豆腐製造装置100の取り付けステイの下部に取り付けられる上取付部12を備えている。この上取付部12は、上部に位置する平板状の取付板12Aと、この取付板12Aの下部に連接された状態で垂下する取付スリーブ12Bとから一体に形成されている。取付板12Aの上面には、後述する撹拌用回転体14を回転駆動する駆動装置16を構成する駆動モータ18が固定されている。この駆動モータ18には、上述した取付板12Aを下方に向けて貫通した状態で、モータ軸18Aが取り付けられている。
【0044】
このモータ軸18Aには、カップリング20を介して駆動シャフト22が同軸に連接され、この駆動シャフト22の下端は、上述した撹拌用回転体14に同軸に連接され、一体回転するように設定されている。尚、カップリング20は、上述した取付スリーブ12B内に収納された状態で配設されている。そして、この取付スリーブ12Bの下部には、駆動シャフト22の中間部を回動自在に保持するメカニカルシール24が収納された下取付部26が取り付けられている。
【0045】
また、この下取付部26の下部には、撹拌ブロック28が一体的に連接されている。この撹拌ブロック28は、撹拌後(即ち、分散・混合後)の豆乳を一旦受ける受け空間30Aが内部に形成された受け部30と、この受け部30の下部に一体的に取り付けられた撹拌部32とを備えて構成されている。この撹拌部32は、図3に取り出して示すように円筒状に形成され、換言すれば、内部に断面円状の中空部32Aが形成されており、この中空部32Aに、上述した撹拌用回転体14が回転可能に収納されることになる。尚、再び図2に示すように、受け部30の側面には、上述した第3の供給ライン116に連結されるための開口30Bが形成されており、この開口30Bには、第3の供給ライン116に接続するための出口側フェルール34が取り付けられている。
【0046】
上述したように、撹拌部32の中空部32Aには、上述した撹拌用回転体14が回転自在に収納されており、駆動シャフト22がこの撹拌用回転体14に同軸に連接されていて、駆動シャフト22の回転に伴い、中空部32A内で回転駆動されることになる。ここで、上述したように、駆動シャフト22は、その上端をカップリング20を介して駆動モータ18のモータ軸18Aに一体回転するように連結されており、中間部をメカニカルシール24を介して回転可能に支持される状態で、受け部30を貫通して撹拌用回転体14に同軸に連結されるものである。
【0047】
一方、撹拌部32の底部には、中央部を除く周縁部に、厚さ方向に複数の貫通孔36Aが形成された軸受け部36が取り付けられており、駆動シャフト22はこの軸受け部36の中央部に設けた軸受け36Bにより回転自在に軸支されている。また、この軸受け部36を下方から覆うようにして、連結部38が取り付けられており、この連結部38には、上述した第2の供給ライン110に連結される入り口側フェルール40が取り付けられている。
【0048】
この実施形態の撹拌装置10においては、撹拌ブロック30の撹拌部32における細長い中空部32A内に貯留された流体としての豆乳LQ中に、撹拌用回転体14を浸漬した状態で配置されており、駆動装置16により撹拌用回転体14を回転させることで、豆乳LQを乳化にがりと混合する状態で撹拌するように構成されている。尚、この中空部32Aは、上端面が開放され、中心軸線に沿って細長く延出する状態で形成されており、第1の半径r1の内周面32Bを備えている。
【0049】
ここで、撹拌用回転体14は、図4及び図5に取り出して示すように、円板状の回転体本体42を備え、この回転体本体42は、中心軸線CAに直交する面に沿うと共に、互いに所定間隔だけ離間して設けられた上下一対の端面42A、42B(図中下側の端面を第1の端面として符号42Aで示し、図中上側の端面を第2の端面として符号42Bで示す。)と、第1及び第2の端面42A,42Bの外周縁を互いに連結し、中心軸線CAから第2の半径r2の外周面42Cとを備えて構成されている。この本体42は、ステインレス鋼等のSUS材やアルミニウム等の金属材料から形成されているものであるが、これに限定されること無く、PP、PTFE若しくはMCナイロン等の合成樹脂材料により形成されることが出来ることは、言うまでも無い。
【0050】
ここで、この実施形態においては、撹拌用回転体14の回転体本体42の外周面42Cの第2の半径r2は、上述した中空部32Aの内周面32Bの第1の半径r1よりも、僅かに小さな値に設定されている。換言すれば、この実施形態において、撹拌用回転体14の回転体本体42の外周面42Cは、中空部32Aの内周面32Bに近接する状態で、撹拌部32内に入れられているものである。
【0051】
即ち、回転体本体42の外周面20Cと中空部32Aの内周面32Bとの間には、間隙g(=r1-r2)が存在しているが、この間隙gは、この実施例においては、回転体本体42の回転に伴い、これの外周面42Cに触れる液体LQに発生する境界層の厚さよりも僅かに大きな値となるように設定されている。尚、この境界層の厚さは、撹拌用回転体14の回転速度及び豆乳LQの粘度等により定まるものであり、換言すれば、撹拌用回転体14の回転体本体42のサイズは、これの回転速度及び撹拌対象としての豆乳LQの粘度等により予め計算される間隙gを考慮して、設計されるものである。
【0052】
特に、この間隙gの設定においては、これが回転体本体42の外周面42C上に規定される境界層の厚さよりも小さく設定されると、この間隙gを液体LQが通る(通過する)ことが阻害され、一種の液体シールが規定されてしまうことになる。この結果、中空部32A内に貯留された流体LQが、この撹拌用回転体14により上下に分断されて、詳細は後述するが、撹拌用回転体12回転に伴い、撹拌用回転体12の下側に位置する豆乳LQと乳化にがりとが撹拌用回転体14の上側に吐出される状態で、間隙gを通っての下側に戻る流れが阻止されることになる
【0053】
一方、この間隙gの設定において、上記流体シールの発生阻止の観点から、この間隙gの値を大きく設定してしまうと、必然的に、撹拌用回転体14の回転体本体42の第2の半径r2が相対的に小さな値とせざるを得ない状況となる。この第2の半径r2が小さくなると、これも後述する点であるが、回転体本体42の第2の端面42Bに形成される開口46の半径方向に沿う長さが制限されて、この結果、撹拌用回転体14の回転に伴い後述する第1の流路50に作用する遠心力が、第2の半径r2を最大限に設定する場合と比較して相対的に弱くなってしまい、従って、撹拌力が弱まることとなり、好ましくないことは言うまでも無い。このように、間隙gの値の設定には、この実施例においては、上述した境界層の厚さより僅かに大きな値とすることが好適するものである。
【0054】
ここで、図5に示すように、上述した撹拌用回転体14の回転体本体42の、第1の端面としての下側端面42Aには、複数の第1の開口44、この実施例態様では、6個の下側開口44が形成され、第2の端面としての上側端面42Bにも、下側開口44と同数の6個の上側開口46が第2の開口として形成されている。
【0055】
また、回転体本体42の中心部には、中心軸線CAに沿って上下方向に貫通した状態で、上述した駆動シャフト22が緊密に嵌入される挿通穴48が形成されている。尚、駆動シャフト22が挿通穴48に嵌入された状態で、図示しない結合機構を介して、駆動シャフト22と回転体本体42とは一体的に結合され、駆動シャフト22の回転に応じて撹拌用回転体14は一体回転するように設定されている。尚、結合機構はこの発明の要旨とは無関係であるので、これ以上の説明を省略する。
【0056】
下側開口44の各々は、中心軸線CAから第1の距離d1に中心位置があって、下側端面42Aの内周部において等角度的に配置されている。換言すれば、図4及び図5に示すように、6つの下側開口44の中心位置は、半径d1の円周線上に等角度的に位置しているものである。また、上側開口46の各々は、中心軸線CAから上記した第1の距離d1とは異なるとともに、この実施形態では第1の距離d1よりも長い第2の距離d2に中心位置があって、上側端面42Bの外周部において等角度的に配置されている。換言すれば、6つの上側開口46の中心位置は、半径d2の円周線上に等角度的に位置しているものである。
【0057】
上下一対の開口44,46は、図4に示すように、軸方向に沿う高さ位置は異なるものの、図5に示すように、平面視においては、回転体本体42の同一直径上に位置するように配置されている。このように各対の開口44,46は、図4に再び示すように、第1の流路50により互いに連結されている。このような構成において、撹拌用回転体14が中心軸線CA周りに回転駆動されると、第1の流路50内に充填されている液体LQに遠心力が作用する。ここで、中心軸線CAより遠い位置にある上側開口46に作用する遠心力は、中心軸線CAより近い位置にある下側開口22に作用する遠心力よりも強いものとなる。
【0058】
この結果、第1の流路50内の豆乳LQ及び乳化にがりは、この遠心力を受けて、上側開口46から外方に吐出されて、撹拌用回転体14の上方に吐出されることになる。この観点から、上側開口46は吐出口として機能するものである。
【0059】
ここで、この豆乳LQ及び乳化にがりの第1の流路50から上側開口(吐出口)46を介しての吐出時の水流は、第1の流路50の延出方向に沿う力と共に、撹拌用回転体14の回転に伴う円周方向に沿う力の合力を受けることとなり、要は、結果として撹拌用回転体14の回転方向に沿う旋回水流となるものである。本願発明者は、従前の撹拌装置における撹拌力の向上を企図する中で、撹拌用回転体14から吐出する水流が、旋回水流となっていることに新規に着目し、種々実験を繰り返し、所謂直進水流が最も撹拌力が発揮されることを見出した。このため、本願発明においては、撹拌用回転体14の第2の端面42Bに形成された吐出口46から旋回流として吐出された豆乳LQ及び乳化にがりを受けて直進流に整流して吐出する整流手段を備えることを最大の特徴とするものであるが、この整流手段については、後に詳細に説明する。
【0060】
一方、中空部32A内において回転体本体42よりも下側に位置する豆乳LQ及び乳化にがりは、第1の流路50内を通り上側開口(吐出口)46から吐出されることにより、第1の流路50内が負圧となり、この負圧に基づき、第1の流路50内に引き込まれることになる。この観点から、下側開口44は吸込口として機能するものである。
【0061】
そして、第1の流路50は、図4に示すように、上側開口(吐出口)46とこれに対応する下側開口(流入口)44とを直線状に連続する空間により構成されているものであり、その断面形状は、円形状となるように設定されている。このように第1の流路50の形状を設定することにより、第1の流路50内を通る豆乳LQ及び乳化にがりへの流路抵抗は効果的に低いものとなる。尚、第1の流路50が連通する上側開口(吐出口)46及び下側開口(吸込口)44は、図5において楕円形状として示されているが、これは、上述したように第1の流路50の断面形状が円形に設定されている結果として楕円形状を呈しているまでで、必須要件は、第1の流路50の断面形状が円形であることであり、開口部における楕円形状と見える状況は、その結果でしかない。
【0062】
また、上述したように第1の流路50は、直線状に延出するように構成されているので、回転体本体42にエンドミル等の機械的加工によって簡単に形成され、回転体本体42の中心軸線CA方向に対して傾斜すると共に、平面視において、この中心軸線CAからの放射状に延出するものである。
【0063】
次に、図3及び図6並びに図7を参照して、この実施形態の特徴をなす整流手段としての整流部52について説明する。
【0064】
この実施形態において、図2に示すように、整流部52は、回転体本体42の上側の第2の端面42Bに対向して固定的に配設され、第2の端面42Bの吐出口46から旋回流として吐出された流体を受けて直進流に整流して吐出するように構成されている。具体的には、この整流部52は、図3に取り出して示すように、上述した撹拌ブロック28の撹拌部32の上面に、これを全面的に覆う状態で配設された整流器本体としての整流板54を備えている。この整流板54は、図6にその平面形状を示すように、略円板状に形成され、その中心部には、駆動シャフト22が回動自在に挿通される挿通穴56が形成されている。そして、この整流板54には、挿通穴56を中心として合計8本の整流用流路58が厚さ方向に貫通した状態で、挿通穴56を中心とした円周上を、円周方向に沿って等角度的に配設されている。
【0065】
ここで、各整流用流路58は、図7にも取り出して示すように、撹拌用回転体14の回転方向に対向する所定の鋭角で傾斜する延出軸線AXを備えるように形成され、駆動シャフト22の回転方向に沿って旋回してきた流体LQは、各整流用流路58内に入り込み、上述した傾斜した延出軸AXに沿って流れるように矯正され、これにより駆動シャフト22の回転方向とは逆方向の速度成分を与えられて、直進流に整流されて吐出されることになる。
【0066】
また、上述した整流用流路58は、整流板54の撹拌用回転体14に対向する一方の端面54Aに形成された一方の開口60と、これと反対側の他方の端面54Bに形成された他方の開口62とを備え、この他方の開口62は、一方の開口60に対して、駆動シャフト22の中心軸線を中心とした円周方向に関して、駆動シャフト22の回転方向とは逆の方向にオフセットした状態で配設されていることになる。
【0067】
このように、撹拌用回転体14から吐出された旋回流は、整流部52により直進流として整流され、十分な撹拌エネルギーをもって流体の撹拌を行うことが出来るので、撹拌用回転体14の回転を高回転に上げる必要が無くなる効果を達成することが出来ることになる。尚、この明細書で用いる用語「直進流」は、厳密な意味で直進性を有する水流だけを意味するものでなく、旋回流と比較して概ね直進性を有する水流として定義されているものである。具体的効果としては、上述した特許文献2に記載の撹拌装置を豆腐製造装置に適用した場合と比較して、撹拌用観点体の回転数を約半分に減じる効果が確認され、これにより、省エネを図ることが可能となる。
【0068】
以上のように、この第1の実施形態の撹拌装置10は構成されているので、駆動装置16が起動して駆動シャフト22を中心軸線CA回りに回転駆動することにより、この駆動シャフト22と一体回転するように取り付けられた撹拌用回転体14も、容器18内で豆乳LQ及び乳化にがり中に浸漬された状態で、中心軸線CA回りに回転駆動されることになる。この結果、第1の流路50内に充填されている豆乳LQ及び乳化にがりに、上側開口46(吐出口)から吐出する方向に作用する遠心力が作用し、このようにして、第1の流路50内の豆乳LQ及びにゅかにがりは、この遠心力を受けて、上側開口46から外方に吐出されて旋回流となる。
【0069】
このように、豆乳LQ及び乳化にがりは撹拌用回転体12の回転に伴い中空部32A内で撹拌され、この豆乳LQ及び乳化にがりが2液(又は2相)以上の場合において、撹拌によりよく混ざり合い、一液化(単相化)されることになるし、この一液LQに粉体が混入している場合であって、この粉体が難溶性の場合でも、粉体の混入濃度の均質化が図られることになるし、この粉体が可溶性の場合には、粉体の豆乳LQへの溶け込みの促進化と、粉体が溶け終わったあとの豆乳LQの濃度の均質化とが合わせて達成されることになる。
【0070】
また、上記撹拌動作時には、第1の流路50の流入口を構成する下側開口44(吸込口)が、撹拌用回転体14の回転体本体42の上側端面20Bに対して直交する状態で配設されている構成と比較すれば、この実施例では第1の流路50が斜めに開口し、この結果、開口部に鋭利なエッジを備える構成となっている。この結果、この第1の流路50に流入する豆乳LQ及び乳化にがりは、下側開口44(吸込口)の鋭利なエッジにより剪断を受けることになり、豆乳LQ及び乳化にがりの撹拌効率が向上することになる効果を合わせて達成すること出来るものである。
【0071】
この発明は、上述した実施形態の構成及び数値等に何ら限定されること無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形可能であることは言うまでも無い。
【0072】
例えば、上述した実施形態においては、整流手段としての整流部52は、撹拌部32に一体的に形成された整流板52から構成されるように、換言すれば、撹拌用回転体14に対して固定配置されるように説明したが、この発明は、このような整流部の固定配置に限定されることなく、図8に他の実施形態として示すように、撹拌用回転体14に対して相対回転するように配設することが出来るものである。
【0073】
以下に、図8を参照して、この他の実施形態に係る撹拌装置10Xを説明する。尚、以下の説明において、上述した一実施形態で用いた部材・部品には、同一符号を付してその説明を省略する。また、整流用回転体64を回転駆動する構成には、これに類似する撹拌用回転体14を回転駆動する構成を示す符号に、サフィックスXを付して表すこととし、その詳細な説明を省略する。
【0074】
即ち、この他の実施形態に係る撹拌装置10Aにおいては、整流手段としての整流部52は、固定された整流板ではなく、上述した撹拌用回転体14と同一構成の整流用回転体64を備えている。この整流用回転体64は、撹拌装置本体14の駆動シャフト22における中心軸線CAと同軸に整合された第2の軸線CAXに沿って延出する第2の駆動シャフト22Xと、この第2の駆動シャフト22Xを上述した所定の第2の軸線CAX周りに回転駆動する第2の駆動装置16Xと、撹拌部32の中空部32Aと同様に設けられた受け空間30Aに収容され、第2の駆動シャフト22Xにこれと一体回転するように取り付けられた整流用回転体64とを備えて構成されている。
【0075】
この整流用回転体64は、図9に取り出して示すように、所定の第2の軸線CAXに沿って所定距離離間した状態で、所定の第2の軸線CAXに交差する第3及び第4の一対の端面64A,64B、及び、所定の第2の軸線CAXと同心に形成され、第3及び第4の端面64A,64Bの外周縁を互いに連結する第2の外周面64Cを有し、受け空間30Aの流体中に浸漬され、所定の第2の軸線CAX回りに回転駆動される本体と、下側の第3の端面64Aに形成され、所定の第2の軸線CAXから第3の距離だけ離間した第3の開口66と、第4の端面64Bに形成され、第2の軸線CAXから前記第3の距離より長く設定された第4の距離だけ離間した第4の開口68と、これら第3及び第4の開口66,68を互いに連通する整流路(整流用流路)70とを備えている。
【0076】
そして、第2の駆動部16Xは、撹拌用回転体14を回転駆動する駆動部18による回転方向(この実施形態においては時計方向)とは逆の回転方向(この実施形態においては反時計方向)に沿って整流用回転体64を回転駆動する第2の駆動モータ18Xを備え、撹拌用回転体14の上側開口46から吐出してきた旋回流が、整流用回転体64の第3の開口66か整流路70内に流入し、撹拌用回転体14の時計方向の回転方向とは逆の反時計方向の回転方向に整流用回転体64が回転することにより、整流用回転体54において整流用流路58を流れる際に旋回成分が相殺され、整流用流路58の第4の開口68からは流体が直進流として整流された状態で吐出することになる。
【0077】
換言すれば、撹拌用回転体14は、駆動モータ18により回転駆動されているが、整流用回転体64は、駆動モータ18とは独立して別個に配設された第2の駆動モータ18Xにより回転駆動されるものであるが、ここで注意しなければならない点は、この第2の駆動モータ18Xによる整流用回転体64の回転方向は、撹拌用回転体14の回転方向とは逆方向になるように設定されている点である。
【0078】
このようにして、この他の実施形態に係る攪拌装置10Xを構成することにより、上述した実施形態と同様に、撹拌用回転体14から吐出されてきた旋回流は、整流用回転体64の撹拌用回転体14の回転方向とは逆方向の回転により、整流用回転体64の第4の開口(吐出口)68から吐出される水流は、旋回成分が相殺されて、所謂直進流として生成されることとなり、旋回成分が無くなった分、撹拌流の撹拌力が格段と向上し、従来の整流部を備えない撹拌装置と比較して、これより低い回転数でも十分な撹拌効果を奏することが出来ることとなる。
【0079】
最後に、上述した実施形態の豆乳等の連続製造装置100において、豆腐を製造する際、あるいはその直前に適宜乳化にがりを必要な量だけ製造し、豆腐製造ラインに直接または一旦専用タンクに保管してから必要に応じてポンプで供給してもよい。乳化にがりを専用タンクに保管する場合は乳化状態にもよるが室温で1日以内にするのが好ましい。以下、図9を参照して、乳化にがりの製造ラインの構成について説明する
【0080】
この実施形態にかかる乳化にがり製造装置は、図10に示すように、水相を入れるための水相タンク120と、油相を入れるための油相タンク122と、乳化機124と、水相供給ライン126と、油相循環ライン128と、乳化にがり排出ライン130と、水相供給ポンプ132と、油相循環ポンプ134と、乳化にがりタンク136と、循環・排出切替弁138とを備えて構成されてる。
【0081】
油相は油相タンク122から乳化機124を通って油相循環ライン128を循環し、油相循環ライン128中で水相が水相タンク120から供給される。そして、乳化機124(例えば、パイプラインホモミクサー(プライミックス製))により油中水型に乳化され、油相循環ライン128を通って油相タンク122に戻り、次の循環に回る。二循環目の油相循環ライン128内は油中水型で外相が油相であり、ライン内での水相との混合は油中水型に働くため、水相の供給量は最大化が図れる。水相供給終了後、所望の水相粒径になるまで乳化機の通液・油相循環を継続し、所望の水相粒径になった後は、循環・排出切替弁138を排出側に切替、直接豆乳ラインに供給するか、または乳化にがりタンク136に入れ、いったん保管してから定量的に豆乳ラインに供給される。
【0082】
このように、豆腐製造ラインとは別に設けた乳化にがり製造ラインにより製造された乳化にがりが直接豆腐製造ラインに供給できることから、油中水型安定化のための乳化剤を必ずしも必要とせず、豆腐風味の維持、向上が図れる。また、乳化機を通液する油相循環ラインに水相を供給することから、水相(無機塩)/油相比率の最大化が図れ、更に、油相循環パス回数に応じて水相粒径がコントロールでき油性被膜の最適化が図れることから、乳化にがりの分散性、油性被膜破壊による無機塩の放出制御が大豆蛋白凝固組織づくりに均質性・緻密化をもたらす。特に、せん断力の低い分散機には有効な乳化にがりが供給できることになる。
【0083】
この実施形態における豆腐類の連続製造装置100で使用される乳化にがりは上述した製造方法により生成される乳化にがりに特に限定されるものではない。一般に利用されている乳化にがりは、植物性食用油脂を油相とし、塩化マグネシウム等の無機塩の水溶液を水相として、耐塩性に優れた油中水型乳化力の強力な乳化剤であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを多用した油中水型乳化にがりである。この乳化剤の使用目的は高塩濃度の水相を油中に均一分散状態で長期間保持することである。よって乳化にがりを製造して長期保存する必要性がない乳化にがりでは、必ずしも乳化剤を必要とはしない。
【0084】
この実施形態の豆腐類の連続製造装置100で使用される乳化にがりは、低せん断力、高分散性能の撹拌体による豆乳中への分散性に寄与できる形態が好ましい。さらに、前記記載する、乳化にがりの製造方法により、水相(無機塩)/油相比率の最大化が図れ、油相循環パス回数に応じて水相粒径が制御できる形態がより好ましい。こうした背景から種々検討したところ、高融点を有する油溶性微結晶を分散、懸濁した植物性液状油を油相とする乳化にがりを用いることで、この実施形態の豆腐類の連続製造装置100が有用である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上詳述したように、この発明に係る豆腐類の連続製造装置100は、絹豆腐、木綿豆腐、充填豆腐などの豆腐の他に、油揚げ、がんもどき、厚揚げ等の豆腐生地の製造に使うことができ、それを油で揚げて連続で大量に加工製造できる。例えば自動凝固成型機で連続的に凝固した後、豆腐を切断して油で揚げれば風味と組織の良い油揚げが効率よく大量製造できる。
【符号の説明】
【0086】
100…連続式の豆腐製造装置
102…豆乳タンク
104…第1の供給ライン
106…第1の供給ポンプ
108…凝固剤タンク
110…第2の供給ライン
112…第2の供給ポンプ
114…成型ベルト
116…第3の供給ライン
120…水相タンク
122…油相タンク
124…乳化機
126…水相供給ライン
128…油相循環ライン
130…乳化にがり排出ライン
132…水相供給ポンプ
134…油相循環ポンプ
136…乳化にがりタンク
138…循環・排出切替弁
10;10X…撹拌装置
12…上取付部
12A…取付板
12B…取付スリーブ
14…撹拌用回転体
16(16X)…駆動装置
18(18X)…駆動モータ
18A(18AX)…モータ軸
20(20X)…カップリング
22(22X)…駆動シャフト
24(24X)…メカニカルシール
26(26X)…下取付部
28(28X)…撹拌ブロック
30…受け部
30A…受け空間
30B…開口
32…撹拌部
32A…中空部
32B…内周面
34…出口側フェルール
36…軸受け部
36A…貫通孔
36B…軸受け
38…連結部
40…入り口側フェルール
42…回転体本体
42A:42B…端面
42C…外周面
44…下側開口(吸込口)
46…上側開口(吐出口)
48…挿通穴
50…第1の流路
52(52X)…整流部(整流手段)
54…整流板
54A…一方の端面
54B…他方の端面
56…挿通穴
58…整流用流路
60…一方の開口
62…他方の開口
64…整流用回転体
64A;64B…端面
64C…外周面
66…第3の開口(吸込口)
68…第4の開口(吐出口)
70…整流路
CA(CAX)… 中心軸線
d1…吸込口の中心軸線CAからの第1の距離
d2…吐出口の中心軸線CAからの第2の距離
g… 撹拌用回転体が収容される空間の内周面と回転体本体の外周面との隙間
LQ…液体
r1…容器18の内周面18Aの半径
r2…回転体本体42の外周面20Cの半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10