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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002870
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ゴム樹脂材料及び金属基板
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20231228BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08F299/02
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166356
(22)【出願日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】111123563
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB161
4J127BB221
4J127BB261
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD231
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG161
4J127BG16Y
4J127BG311
4J127BG31Y
4J127CB231
4J127DA12
4J127DA16
4J127DA35
4J127DA39
4J127DA51
4J127DA61
4J127EA05
4J127FA37
(57)【要約】
【課題】本発明は、ゴム樹脂材料及び金属基板を提供する。
【解決手段】ゴム樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~50重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含む。シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物及び前記樹脂組成物に分散する無機フィラーを含むゴム樹脂材料であって、前記樹脂組成物は、
液体ゴム10重量%~50重量%と、
ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、
シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含み、
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含み、
前記シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含むことを特徴とする、ゴム樹脂材料。
【請求項2】
前記樹脂組成物はビスマレイミド樹脂を含まない、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項3】
シアネート樹脂の重量平均分子量は、100g/mol~3000g/molである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項6】
前記液体ゴムの分子量は、3500g/mol~4200g/molである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項7】
前記液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマーを含み、前記液体ゴムの総重量を100重量%として、ビニル基の前記液体ゴムでの含有量は、60重量%~80重量%である、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項8】
前記液体ゴムは、ポリブタジエンホモポリマーである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項9】
前記液体ゴムの25℃での粘度は、35000cps~43000cpsである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項10】
前記樹脂組成物100重量部に対して、前記無機フィラーの添加量は、50重量部~180重量部である、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項11】
前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項12】
前記ゴム樹脂材料は、前記樹脂組成物100重量部に対して、過酸化物0.5重量部~5重量部を含む、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項13】
ゴム樹脂材料で製造された基材層と、前記基材層に設置された金属層とを備える、金属基板であって、
前記ゴム樹脂材料は、樹脂組成物及び前記樹脂組成物に分散する無機フィラーを含み、前記樹脂組成物は、
液体ゴム10重量%~50重量%と、
ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、
シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含み、
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含み、
前記シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含むことを特徴とする、金属基板。
【請求項14】
前記ゴム樹脂材料の10GHzでの誘電正接は、0.0035未満である、請求項13に記載の金属基板。
【請求項15】
前記ゴム樹脂材料の10GHzでの比誘電率は、3.0~3.5である、請求項13に記載の金属基板。
【請求項16】
ガラス転移温度は、210℃~270℃である、請求項13に記載の金属基板。
【請求項17】
剥離強度は、4.0lb/in~7.5lb/inである、請求項13に記載の金属基板。
【請求項18】
熱膨張係数は、20ppm/℃・K~40ppm/℃・Kである、請求項13に記載の金属基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム樹脂材料及び金属基板に関し、特に、低誘電ゴム樹脂材料及び金属基板に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th generation wireless system,5G)の開発に伴い、5G無線通信規格を満たすために、高周波伝送が現在の開発の主流となっている。現有の高周波伝送の技術において、伝送路での信号損失を低減することは、重要な目標である。
【0003】
誘電損失を低減するために、アンテナ及び無線周波数フロントエンド(radio frequency front-end,RFFE)回路を送受信モジュールのパッケージアンテナ(antenna-in-package,AIP)の技術が統合されている。このように、アンテナと増幅器又は他の回路システムとの距離を縮めることができるため、誘電損失及び製品の体積を小さくする効果を果たせる。
【0004】
アンテナの実装技術では、高周波伝送に適したゴム樹脂材料の開発が進んでいる。高周波伝送に応用するために、樹脂材料は通常、低い比誘電率(dielectric constant,Dk)と低い誘電正接(dielectric dissipation factor,Df)の特性を持っている。本明細書において、樹脂材料の比誘電率と誘電正接とを合わせて、誘電特性と称す。
【0005】
現在市販のゴム樹脂材料は、特定の比率の液体ゴムを添加することによって、樹脂材料の誘電特性を低減させるが、液体ゴムの添加量は、高すぎてはいけない。液体ゴムの含有量が高すぎると、樹脂材料のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が低くなると共に、樹脂材料と金属層との剥離強度が低下する。
【0006】
故に、成分の改良により、ゴム樹脂材料の難燃性、剥離強度及び誘電特性を同時に成り立たることによって、上述した欠点を克服することは、本事業にとって重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ゴム樹脂材料及び金属基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、ゴム樹脂材料を提供することである。ゴム樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~50重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含む。シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、樹脂組成物はビスマレイミド樹脂を含まない。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、シアネート樹脂の重量平均分子量は、100g/mol~3000g/molである。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molである。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムの分子量は、3500g/mol~4200g/molである。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムを合成するモノマーは、ブタジエンモノマーを含み、前記液体ゴムの総重量を100重量%として、前記液体ゴムは、ビニル基60重量%~80重量%を含む。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムは、ポリブタジエンホモポリマーである。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムの25℃での粘度は、35000cps~43000cpsである。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの添加量は、50重量部~180重量部である。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、無機フィラーは、表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含む。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、ゴム樹脂材料は、樹脂組成物100重量部に対して、過酸化物0.5重量部~5重量部を含む。
【0020】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、金属基板を提供することである。金属基板は、ゴム樹脂材料で製造された基材層と、前記基材層に設けられた金属層とを備える。ゴム樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に分散する無機フィラーを含む。樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~50重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含む。ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含む。シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含む。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、ゴム樹脂材料の10GHzでの誘電正接は、0.0035未満である。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、ゴム樹脂材料の10GHzでの比誘電率は、3.0~3.5である。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、金属基板の剥離強度は、4.0lb/in~7.5lb/inである。
【0024】
本発明の一つの実施形態において、金属基板の剥離強度は、4.0lb/in~7.5lb/inである。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、金属基板の熱膨張係数は、20ppm/℃・K~40ppm/℃・Kである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有利な効果として、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板は、「前記樹脂組成物は、液体ゴム、ポリフェニレンエーテル樹脂及びシアネートを含む」及び「前記シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含む」といった技術特徴によって、ゴム樹脂材料の耐熱性及び誘電特性を向上させると共に、ゴム樹脂材料の熱膨張係数を低減させる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。しかし、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0028】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る「ゴム樹脂材用及び金属基板」の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0029】
[ゴム樹脂材料]
本発明では、特定のポリフェニレンエーテル樹脂を用いることによって、従来の大量で液体ゴムを含むことによる耐熱性及び剥離強度が不良である問題を解決することができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂を添加した後でも、ゴム樹脂材料の誘電特性(高い比誘電率及び高い誘電正接)が不良となる問題を起こさない。尚、本発明では、特定のシアネート樹脂を添加することによって、ゴム樹脂材料の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion,CTE)を低減することができる。このように、本発明に係るゴム樹脂材料は、良好な耐熱性、剥離強度及び誘電特性を有すると共に、低い熱膨張係数を有する。
【0030】
具体的に説明すると、本発明に係るゴム樹脂材料は、樹脂組成物及び樹脂組成物に均一に分散する無機フィラーを含む。以下にて、樹脂組成物及び無機フィラーの特性について詳しく説明する。
【0031】
[樹脂組成物]
本発明に係る樹脂組成物は、液体ゴム10重量%~50重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、シアネート樹脂5重量%~60重量%と、を含む。
【0032】
上述した特定の成分及び含有量を有する樹脂組成物によって、本発明に係るゴム樹脂材料は、耐熱性と誘電特性が良好、且つ低熱膨張係数を有する金属基板の製造として用いられると共に、金属基板は、高周波伝送の分野に適用する。また、本発明に係る樹脂材料は、金属層との接着力が良好である。なお、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板の特性の測定については後述する。
【0033】
本発明のゴム樹脂材料は液体ゴムを含む。液体ゴムは、高い溶解性という特徴を有するため、各成分の間の相容性を向上させると共に、液体ゴムは、反応性官能基を有するため、樹脂材料を硬化した後の架橋度を向上させることができる。
【0034】
本発明に係る液体ゴムの分子量が、2000g/mol~6000g/molであることによって、樹脂組成物の流動性を向上した上で、ゴム樹脂材料の充填性を更に向上することができる。好ましくは、液体ゴムの分子量は、3500g/mol~4200g/molである。例えば、液体ゴムの分子量は、3600g/mol、3700g/mol、3800g/mol、3900g/mol、4000g/mol又は4100g/molであってもよい。液体ゴムの25℃での粘度は、35000cps~43000cpsである。
【0035】
好ましくは、液体ゴムの樹脂組成物での含有量は、15重量%~45重量%である。例えば、液体ゴムの樹脂組成物での含有量は、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%又は40重量%であってもよい。
【0036】
一つの実施形態において、液体ゴムは、液体ジエン系ゴムを含む。好ましくは、液体ジエン系ゴムは、高い比率でビニル基を含む側鎖を有する。特に、高い比率で1,2-ビニル基側鎖を含む液体ジエン系ゴムである。
【0037】
液体ゴムが少なくとも1つのビニル基を含む不飽和側鎖(若しくは、ビニル基)を有する場合に、架橋した樹脂組成物の架橋密度及び耐熱性が向上する。具体的に説明すると、液体ゴムを合成するための材料は、ブタジエンモノマーを含む。液体ゴムは、ブタジエンモノマーのみで合成されてもよく、ブタジエンモノマーと他のモノマーで合成されてもよい。簡単に言えば、液体ゴムは、ブタジエンホモポリマー又はブタジエン共重合体であってもよく、好ましくは、ブタジエンホモポリマーである。
【0038】
液体ゴムを合成するための材料がブタジエンモノマーを含む場合、液体ゴムは、液体ゴムの総重量を100重量%として、ビニル基60重量%~80重量%を含む。
【0039】
一つの好ましい実施形態において、液体ゴムはポリブタジエンホモポリマーである。即ち、液体ゴムを合成するためのモノマーは、他のモノマー(例えば、スチレンモノマー)を含まず、ブタジエンのみ含む。
【0040】
好ましくは、ポリフェニレンエーテルの樹脂組成物での含有量は、25重量%~55重量%であってもよい。例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂の樹脂組成物での含有量は、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%又は50重量%である。
【0041】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、ゴム樹脂材料の誘電特性及びガラス転移温度を向上させると共に、ゴム樹脂材料の熱膨張係数を低減することができる。
【0042】
一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は、1500g/mol~5000g/molであり、好ましくは、1500g/mol~4500g/molであり、より好ましくは、1500g/mol~3500g/molである。
【0043】
一つの実施例において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有する第1のポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有する第2のポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有する第3のポリフェニレンエーテル、又はそれらの組み合わせを含む。
【0044】
一つの好ましい実施形態において、第1のポリフェニレンエーテルの平均数量は1~2であると共に、第1のポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である。第1のポリフェニレンエーテルにおけるビスマレイミド基は、不飽和結合を提供することで、架橋反応の進行が有利となって、ゴム樹脂材料の剥離強度を向上する効果を果たせる。このように、第1のポリフェニレンエーテルの添加で、ゴム樹脂材料の誘電特性、ガラス転移温度、剥離強度及び熱膨張係数が改良される。
【0045】
また、第1のポリフェニレンエーテルを添加すれば、液体ゴムの添加量を低減することができる。例えば、樹脂組成物が20重量%~40重量%の第1のポリフェニレンエーテルを含む場合、液体ゴムの添加量は、10重量%~30重量%に低減することができるため、ゴム樹脂材料のガラス転移温度の低減を回避するか、若しくは、ゴム樹脂材料と金属層との剥離強度の低減を回避することができる。
【0046】
説明すべきことは、本発明の第1のポリフェニレンエーテルは、従来のゴム樹脂材料におけるビスマレイミド樹脂の代わりとして用いられる。即ち、本発明に係るゴム樹脂材料は、ビスマレイミド樹脂を含まなくてもよい。このように、本発明に係るゴム樹脂材料に含まれた成分の種類が少なく、ゴム樹脂材料全体の相容性は比較向上させ、液体ゴムの添加量を適切に減少させることができる。
【0047】
本発明の第2のポリフェニレンエーテル及び第3のポリフェニレンエーテルは、ゴム樹脂材料の誘電特性を向上する効果を果たせ、特に、ゴム樹脂材料の誘電正接を低減することを果たせる。よって、第1のポリフェニレンエーテル、第2のポリフェニレンエーテル及び第3のポリフェニレンエーテルを混用することによって、ゴム樹脂材料の特性を制御する効果を果たせる。
【0048】
本発明のシアネート樹脂の分子末端にシアネート基を有し、シアネート樹脂の添加は、液体ゴムとポリフェニレンエーテル樹脂との架橋度を向上することができる。また、シアネート樹脂の添加によって、ゴム樹脂材料の熱膨張係数を低減し、金属基板の熱安定性を向上することができる。
【0049】
好ましくは、シアネート樹脂の樹脂組成物での含有量は、10重量%~55重量%である。例えば、シアネート樹脂の樹脂組成物での含有量は、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%或50重量%であってもよい。
【0050】
本発明において、シアネート樹脂は、主鎖構造がビスフェノールMで形成されたシアネート樹脂を含み、即ち、シアネート樹脂は、ビスフェノールM型シアネート樹脂を含む。
【0051】
シアネート樹脂の主鎖構造の分子末端にシアネート基を有すると共に、シアネート樹脂におけるシアネート基の平均数量は1~2である。一つの実施形態において、シアネート樹脂の重量平均分子量は、100g/mol~70000g/molであり、100g/mol~5000g/molであることが好ましく、100g/mol~3000g/molであることがより好ましく、100g/mol~1000g/molであることが更により好ましい。シアネート樹脂の25℃での粘度は、425mPa・s~475mPa・sである。シアネート樹脂の重量平均分子量及び粘度が前記範囲に含まれる場合、樹脂組成物の架橋性を効果的に向上させると共に、樹脂組成物の粘度及び加工性に悪影響を与えなく、熱硬化性樹脂材料のその後の応用として有利となる。
【0052】
一つの示範例において、シアネート樹脂は、一種以上のシアネート化合物を更に含んでもよく、シアネート化合物は、2つ以上のシアネート基を有する。
【0053】
[無機フィラー]
無機フィラーの添加により、ゴム樹脂材料の粘度を低減させ、且つゴム樹脂材料の比誘電率を低減させることができる。一部の種類の無機フィラーは、ゴム樹脂材料の熱導電性を向上させることもあるが、上述した説明は概に説明したものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0054】
本発明において、無機フィラーは、二酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。一つの好ましい実施形態において、無機フィラーは、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、二酸化チタンとを同時に含み、また、二酸化チタンは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム又はそれらの組み合わせで置換されてもよい。二酸化ケイ素は、溶融シリカ又は結晶シリカであってもよい。好ましくは、二酸化ケイ素は溶融シリカである。
【0055】
一つの好ましい実施形態において、無機フィラーは、表面処理を行うことにより、無機フィラーの表面にメタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含む。このように、無機フィラーと液体ゴムとを反応することが可能となり、それによって、ゴム樹脂組成物が良好な相容性を有し、金属基板の耐熱性に悪影響を与えない。
【0056】
特筆すべきことは、無機フィラーは、単一又は複数の成分で混合されてなるものであってもよい。また、全ての無機フィラーが表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含むか、若しくは、一部の無機フィラーが表面処理を行うことにより、メタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含んでもよい。例えば、無機フィラーは、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む時に、一つの実施形態において、二酸化ケイ素が表面処理を行うことによりメタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含むが、酸化アルミニウムが表面処理を行われていない。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
無機フィラーの外観は、球状である。無機フィラーの平均粒子径(D50)は、0.3μm~3μmであると共に、無機フィラーの最大粒子径(D99)は、10μm未満であることによって、無機フィラーをゴム樹脂組成物に均一に分散することにとって有利である。一つの実施形態において、無機フィラーの純度は、99.8%以上である。
【0058】
無機フィラーの添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの添加量は、50重量部~180重量部であり、60重量部~160重量部であることが好ましく、70重量部~150重量部であることはより好ましい。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0059】
[シロキサンカップリング剤]
ゴム樹脂材料は、シロキサンカップリング剤を更に含んでもよい。シロキサンカップリング剤の添加は、繊維布、樹脂組成物及び無機フィラーの間の反応性及び相容性を向上させ、金属基板の剥離強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0060】
一つの好ましい実施形態において、シロキサンカップリング剤は、メタクリレート基及びビニル基の中の少なくとも1つを含む。シロキサンカップリング剤の分子量は、100g/mol~500g/molであり、110g/mol~250g/molであることが好ましく、120g/mol~200g/molであることがより好ましい。
【0061】
樹脂組成物の総重を100重量部として、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部であり、好ましくは、0.5重量部~3重量部である。
【0062】
[過酸化物]
ゴム樹脂材料は、過酸化物を更に含んでもよい。過酸化物は、ラジカル開始剤として用いられ、好ましくは、オレフィン架橋開始剤である。樹脂組成物の総重量を100重量部として、過酸化物の含有量は、0.5重量部~5重量部である。例えば、過酸化物として、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(Dicumyl Peroxide,DCP)、過酸化ベンゾイル(benzoyl Peroxide,BPO)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexane)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン(2,5-dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexyne)、1,1-ビス(tert-ブチルジオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(1,1-di(tert-butylperoxy)-3,3,5-trimethylcyclohexane)、ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(di(tert-butylperoxyisopropyl)benzene)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
[触媒]
ゴム樹脂材料は、触媒を更に含んでもよい。触媒は、ゴム樹脂材料の硬化を促進させて高周波基板を形成する、という役割を果たせる。樹脂組成物の総重を100重量部として、触媒の含有量は、0.25重量部~1.5重量部である。
【0064】
例えば、触媒として、イミダゾール系化合物であってもよく、例えば、トリフェニルイミダゾール(triphenylimidazole)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-ethyl-4-methylimidazole,2E4MZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1-Benzyl-2-phenylimidazole,1B2PZ)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(1-cyanoethyl-2-phenylimidazole,2PZ-CN)及び2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール(2,3-dihydro-1H-pyrrole[1,2-a]benzimidazole,TBZ)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0065】
[難燃剤]
ゴム樹脂材料は、難燃剤を更に含んでもよい。難燃剤の添加により、高周波基板の難燃性を向上させることができる。例えば、難燃剤は、リン系難燃剤又は臭素系難燃剤であってもよい。好ましくは、難燃剤はハロゲンフリー難燃剤であり、即ち、臭素を含まないものである。
【0066】
臭素系難燃剤として、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(ethylene bistetrabromophthalimide)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(tetradecabromodiphenoxy benzene)、デカブロモジフェノキシオキシド(decabromo diphenoxy oxide)又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0067】
リン系難燃剤として、リン酸エステル系(sulphosuccinic acid ester)、ホスファゼン系(phosphazene)、ポリリン酸アンモニウム系、ポリリン酸メラミン系(melamine polyphosphate)又はシアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)であってもよい。リン酸エステル系難燃剤としては、リン酸トリフェニル(triphenyl phosphate,TPP)、テトラフェニルレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(tetraphenyl resorcinol bis(diphenylphosphate),RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol A bis(diphenyl phosphate),BPAPP)、ビスフェノールAビス(ジメチル)ホスファート(BBC)、レゾルシノール二リン酸、レゾルシノールビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0068】
難燃剤の添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、難燃剤の添加量は、0.1~5重量部である。
【0069】
[特性の測定]
本発明に係るゴム樹脂材料が高周波伝送に応用することができることを証明するため、本発明では、液体ゴム10重量%~50重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂20重量%~60重量%と、シアネート樹脂5重量%~60重量%とを混合することで樹脂組成物を形成して、樹脂組成物に無機フィラーを配合することによって、実施例1~3及び比較例1~6に係るゴム樹脂材料を製造した。実施例1~3及び比較例1~6に係るゴム樹脂材料の成分比は、表1に示すとおりである。実施例1~3及び比較例1~6に係るゴム樹脂材料のガラス転移温度、比誘電率及び誘電正接は、表2に示す通りである。
【0070】
次に、ガラス繊維布を、実施例1~3及び比較例1~6に係るゴム樹脂材料に浸漬させて、含浸、乾燥及び成形との工程を行った後に、プリプレグ(prepreg)を得た。プリプレグは、その後の加工処理を行い、プリプレグに金属層が設置された後に、実施例1~3及び比較例1~6に係る金属基板を製造した。実施例1~3及び比較例1~6における金属基板の剥離強度及び耐熱性については、表2に示すとおりである。
【0071】
表1において、ビスフェノールM型シアネート樹脂として、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェニルシアネートを用い、過酸化物として、ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを用いたが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0072】
表2における、ゴム樹脂材料/金属基板を評価する方法は、以下の通りである。
(1)ガラス転移温度:熱重量分析装置(Thermogravimetric Analyzer,TGA)を用いてゴム樹脂材料のガラス転移温度を測定する。
(2)比誘電率(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、樹脂材料の10GHzの周波数での比誘電率を測定する。
(3)誘電正接(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、樹脂材料の10GHzの周波数での誘電正接を測定する。
(4)剥離強度:試験方法IPC-TM-650-2.4.8に基づいて、金属基板の剥離強度を測定する。
(5)耐熱性:圧力鍋において温度120℃、圧力2atmで金属基板を120分加熱して、288℃のはんだ付け炉に浸し、基板がポップコーンするまでにかかる時間を記録する。ポップコーンするまでにかかる時間は10分間を超えると、「OK」を示す。ポップコーンするまでにかかる時間は10分間より少ないと、「NG」を示す。
(6)熱膨張係数:金属基板を4.5mm×30mm×0.1mmのサンプルに切り出し、そのサンプルを熱機械分析装置(TA Instruments製)に置いて、10℃/分の加熱速度で、サンプルを40℃から340℃に加熱することで、50℃~120℃の温度範囲における、平面方向の線熱膨張係数を測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1の結果によれば、実施例1~3に係るゴム樹脂材料は、高いガラス転移温度及び優れた誘電特性を有することで、金属基板の耐熱性を向上することができる。また、実施例1~3に係る金属基板は、良好な剥離強度及び低い熱膨張係数を有する。
【0076】
実施例1~3に係るゴム樹脂材料を比較すると、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテルを添加する場合、ボム樹脂材料のガラス転移温度を大幅に向上させることができ、金属基板の耐熱性を向上させると共に、金属基板に良好な剥離強度及び低い熱膨張係数を与えられた。具体的に説明すると、ゴム樹脂材料のガラス転移温度は、250℃~270℃に向上し、金属基板の剥離強度は、5.5lb/in~7.5lb/inであり、金属基板の熱膨張係数は、20ppm/℃・K~30ppm/℃・Kであった。
【0077】
一方、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル又は分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテルを添加する際に、ゴム樹脂材料の誘電正接を低減することができる。具体的に、ゴム樹脂材料の誘電正接は、0.0030未満となった。
【0078】
このように、異なる特性の要求によって、ゴム樹脂材料に異なる末端官能基を有するポリフェニレンエーテルを添加することで、ゴム樹脂材料に異なる特性を与える。
【0079】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板は、「前記樹脂組成物は、液体ゴム、ポリフェニレンエーテル樹脂及びシアネートを含む」及び「前記シアネート樹脂はビスフェノールM型シアネート樹脂を含む」といった技術特徴によって、ゴム樹脂材料の耐熱性及び誘電特性を向上させると共に、金属基板の耐熱性及び剥離強度を向上し、金属基板の熱膨張係数を低減させる。
【0080】
更に説明すると、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板は、「ポリフェニレンエーテル樹脂は、分子末端にビスマレイミド基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にメタクリレート基を有するポリフェニレンエーテル、分子末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテル又はそれらの組み合わせを含む」といった技術特徴により、ゴム樹脂材料に異なる特性を与える。
【0081】
更に説明すると、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板は、「液体ゴムの分子量は、3500g/mol~4200g/molである」といった技術特徴により、樹脂組成物の流動性を向上することができる。
【0082】
更に説明すると、本発明に係るゴム樹脂材料及び金属基板は、「ポリフェニレンエーテルの水酸基価は、0.5mgKOH/g未満である」といった技術特徴により、ゴム樹脂材料と金属層との接着力が良好となる。
【0083】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。