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特開2024-28700ポリオレフィン系樹脂フィルム、及びそれを用いた積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028700
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂フィルム、及びそれを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/04 20060101AFI20240227BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240227BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240227BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240227BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240227BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20240227BHJP
   B29K 59/00 20060101ALN20240227BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
B29C55/04
B32B27/32 D
B32B27/32 E
B32B7/022
C08L23/10
C08J5/18 CES
B65D65/40 D
B29K59:00
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192993
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2021527502の分割
【原出願日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019114735
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸松 稚登
(72)【発明者】
【氏名】西 忠嗣
(57)【要約】      (修正有)
【課題】得られた包装袋が、透明性、シール性等に優れ、かつ容易に引裂けるポリオレフィン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂フィルムであって、前記組成物がプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を少なくとも含み、下記1)~5)を満足するポリオレフィン系樹脂フィルム。
前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、1)オレフィン系ブロック共重合体の含有率が0~2重量部である。2)オレフィン系共重合エラストマー樹脂の含有率が0~2重量部である。3)プロピレン単独重合体の含有率が0~40重量部である。
4)前記フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の熱収縮率が25%以下である。
5)前記フィルムの面配向係数ΔPが0.0100以上0.0145以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂フィルムであって、前記ポリオレフィン系樹脂組成物がプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を少なくとも含み、下記1)~7)を満足するポリオレフィン系樹脂フィルム。
1)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、オレフィン系ブロック共重合体の含有率が0~2重量部である。
2)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、オレフィン系共重合エラストマー樹脂の含有率が0~2重量部である。
3)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、プロピレン単独重合体の含有率が0~40重量部である。
4)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率が25%以下である、ポリオレフィン系樹脂フィルム。
5)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの屈折率から計算される面配向係数ΔPが0.0100以上0.0145以下である。
6)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの下記式1で計算される、長手方向の配向係数ΔNxが0.010以上である。
ΔNx=Nx-[(Ny+Nz)/2] (式1)
Nx:長手方向の屈折率
Ny:長手方向に対し垂直方向の屈折率
Nz:面方向の屈折率
7)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの1μmあたりの突刺強度が0.12N/μm以上、1.0μm以下である。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の表面におけるマルテンス硬さが80N/mm以上であり、押し込みクリープ率(Cit)が3.0%以下である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムのヘイズが1%以上20%以下である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の引裂強度が0.8N以下である請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの突刺強度が0.12N/μm以上である請求項1~4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に位置する層のアンチブロッキング剤濃度が3000ppm以下である請求項1~5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の重合体からなる二軸配向フィルムとの積層体。
【請求項8】
前記積層体の長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の直進カット性が8mm以下であり、長手方向及び幅方向のうち熱収縮率が大きい方向の引裂強度が0.8N以下である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の積層体からなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂フィルムに関する。また、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の重合体からなる二軸配向フィルムとの積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、主にポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、あるいはポリプロピレン樹脂フィルムなどの基材フィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムとの積層体の周辺部を、ポリオレフィン系樹脂フィルム面同士が接触する状態でポリオレフィン系樹脂フィルムの融点近くの温度で加熱圧着(以下、ヒートシール)することにより製造される。
食品包装袋においては、乾物や菓子など水蒸気バリア性の必要な食品を包装するためのフィルムとしてポリオレフィン系樹脂からなるヒートシール性フィルムを利用することが多い。また近年、女性の社会進出、核家族化、あるいは高齢化の進行などの社会背景から、フィルムにより包装された食品の需要が大きくなっており、同時に特性の向上が更に求められている。例えば高齢者のような力の弱い人でも容易に中の食品を取り出せるようにするために開封性の改善が求められている。
【0003】
また、包装袋から食品内容物を取り出す際は、包装袋の周辺のシール部分に入れられた切込み部分、いわゆるノッチ部分から手で包装袋を引裂くことが多いが、従来の積層体を使用した場合、包装袋の一辺、通常は水平方向に対して平行に引裂くことができず、斜めに開封されてしまったり、包装袋の表面と裏面の積層体で裂けの進行方向が上下で逆になる現象、いわゆる泣別れが発生してしまい、食品内容物が取り出しにくくなり、ふりかけのような1
粒子状の内容物をこぼしてしまったりする恐れがあった。
【0004】
包装袋を包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが困難である理由は、積層体に用いる基材フィルムに歪みがあること、すなわち基材フィルムの分子配向軸方向が包装体の一辺に対して平行でないからである。
【0005】
基材フィルムの分子配向軸方向を包装袋の引裂き方向と同じにすることができればこのような問題は発生しない。製造された広幅の延伸フィルムの幅方向中央部の分子配向軸方向はフィルムの走行方向と一致しており包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが可能である。ところが、フィルムの幅方向端部では分子配向軸方向が傾いてしまい、包装袋の引裂き方向は傾いてしまう。フィルムの幅方向端部を使用した基材フィルムを完全に避けて調達することは現実的ではない上に、基材フィルムの生産速度高速化や広幅化に伴い、歪みの程度は従来よりもさらに大きくなる傾向にある。
また、乾物や菓子などの食品包装袋においては、内容物を視認しやすい方が良い。
【0006】
そこで、基材フィルムと積層される、ポリオレフィン系樹脂フィルムの工夫により、こういった問題を解決することが、試みられている。
【0007】
特許文献1に、ポリプロピレン系樹脂に直鎖状低密度ポリエチレンや高圧法低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂を添加したシートを一軸延伸する技術が知られている。しかし、フィルム外観に問題があった。
【0008】
また、特許文献2に、シール層にプロピレン-エチレンブロック共重合体とエチレン-プロピレン共重合体を含むポリオレフィン系樹脂シートを3.0倍で一軸延伸することにより得られたフィルムが知られている。しかしヘイズ、シール強度、引裂強度、及び泣別れに問題があった。
【0009】
また、特許文献3に、プロピレン-エチレンブロック共重合体とエチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体を含むポリオレフィン系樹脂シートを一軸延伸することにより得られるフィルムが知られている。
しかし、内容物の視認性に問題点があった。
【0010】
また、特許文献4に、シール層にプロピレン-エチレン共重合体とプロピレン-ブテン共重合体を含むポリオレフィン系樹脂シートをテンター方式により一軸延伸する技術が知られている。しかし、耐破袋性に問題があった。
【0011】
また、特許文献5に、プロピレン-エチレン共重合体を含むポリオレフィン系樹脂シートを縦方向に一軸延伸する技術が知られている。しかし、突刺強度に問題があった。
【0012】
また、特許文献6に、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体とエチレン-ブテン共重合エラストマー樹脂を含むポリオレフィン系樹脂シートを4~6倍に一軸延伸したフィルムが知られている。しかし、熱収縮率が高いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002-003619号公報
【特許文献2】特許第5790497号公報
【特許文献3】特許5411935号公報
【特許文献4】特開2016-32911号公報
【特許文献5】特開2018-79583号公報
【特許文献6】特開2014-141302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムのような分子配向軸の歪みが大きい基材フィルムと積層した場合においても、その積層体から得られた包装袋は、透明性、耐屈曲ピンホール性、耐ブロッキング性に優れ、かつ泣別れなく、容易に引裂けるポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体を特定の割合で有するポリプロピレン系樹脂組成物ポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の熱収縮率、面配向係を制御することにより、二軸配向ポリアミド系樹脂フィルムのような分子配向軸の歪みが大きい基材フィルムと積層し、その積層体から得られた包装袋は透明性、シール性、製袋性に優れ、かつ泣別れなく、容易に引裂けることを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
【0016】
[1]
ポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂フィルムであって、前記ポリオレフィン系樹脂組成物がプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を少なくとも含み、下記1)~5)を満足するポリオレフィン系樹脂フィルム。
1)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、オレフィン系ブロック共重合体の含有率が0~2重量部である。
2)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、オレフィン系共重合エラストマー樹脂の含有率が0~2重量部である。
3)前記ポリオレフィン系樹脂組成物においてプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を100重量部に対して、プロピレン単独重合体の含有率が0~40重量部である。
4)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率が25%以下である、ポリオレフィン系樹脂フィルム。
5)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの屈折率から計算される面配向係数ΔPが0.0100以上0.0145以下である。
【0017】
[2]
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の表面におけるマルテンス硬さが80N/mm以上であり、押し込みクリープ率(Cit)が3.0%以下である[1]に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【0018】
[3]
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムのヘイズが1%以上20%以下である[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【0019】
[4]
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の引裂強度が1.0N以下である[1]~[3]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【0020】
[5]
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの突刺強度が0.12N/μm以上である[1]~[4]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【0021】
[6]
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に位置する層のアンチブロッキング剤濃度が3000ppm以下である[1]~[5]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【0022】
[7]
[1]~[6]のいずかれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の重合体からなる二軸配向フィルムとの積層体。
【0023】
[8] 前記積層体の長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の直進カット性が8mm以下であり、長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の引裂強度が0.8N以下である、[7]に記載の積層体。
【0024】
[9] [7]又は[8]に記載の積層体からなる包装体。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、透明性、シール性、製袋性に優れ、かつ泣別れなく、容易に引裂ける包装体を提供するのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂フィルムはプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を主体とするポリオレフィン系樹脂フィルムである。
【0027】
(プロピレン-αオレフィンランダム共重合体)
本発明において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体は、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2又は4~20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。かかる炭素原子数が2又は4~20のα-オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を用いることができる。特に限定されるものではないが、延伸性、低収縮性の面からエチレンを用いるのが好ましい。また、少なくとも1種類以上であればよく、必要に応じて2種類以上を混合して用いることができる。特に好適であるのはプロピレン-エチレンランダム共重合体である。
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の融点は125℃以上が好ましく、より好ましくは130℃以上である。融点が125℃以上であると、直進カット性が得られやすい。
【0028】
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)の下限は好ましくは0.6g/10minであり、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは1.2g/10minである。フィルム厚みの均一性が損なわれることがある。ランダム共重合体のメルトフローレートの上限は好ましくは12.0g/10minであり、より好ましくは9.0g/10minであり、さらに好ましくは8.0g/10minである。
具体的には例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー製プライムポリプロF-724NPC、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR7.0g/10min、融点142℃)、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(住友化学株式会社製住友ノーブレンFL8115A、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR7.0g/10min、融点148℃)、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー製プライムポリプロF-794NV、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR5.7g/10min、融点134℃)、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体(住友化学株式会社製住友ノーブレンFL6745A、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR6.0g/10min、融点130℃)などが挙げられる。特に好適であるのは主とするモノマーがプロピレンであり、一定量のエチレンとブテンを共重合させたプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体である。本報ではランダム共重合体を構成するモノマー組成比の多い順に呼称し記載した。
【0029】
(プロピレン-エチレンブロック共重合体)
本発明においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体を使用することができ、これより耐破袋性を高めやすい。本発明におけるプロピレン-エチレンブロック共重合体は、多量のプロピレンと少量のエチレンとの共重合成分からなる一段目の重合工程と、少量のプロピレンと多量のエチレンとの共重合成分からなる二段目の重合工程からなる多段共重合体である。具体的には、特開2000-186159号公報で示されるように、気相法重合を行っているものを用いるのが好ましい。すなわち、第1工程で実質的に不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体とした重合体部分(A成分)を重合し、次いで第2工程を気相中でエチレン含量が20~50重量部のプロピレンとエチレンとの共重合体部分(B成分)を重合して得られるブロック共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
プロピレン-αオレフィンブロック共重合体の融点は125℃以上が好ましく、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。融点が125℃以上であると、直進カット性が得られやすい。
【0030】
上記プロピレン-エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg測定)は特に限定されないが1~10g/10minが好ましく、2~7がより好ましい。1g/10min未満では粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難であり、逆に、10g/10minを超えた場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じるからである。
【0031】
(共重合エラストマー)
本発明においては、ポリオレフィンを主体とする熱可塑性の共重合エラストマーを添加することができ、これより耐破袋性を高めやすい。
また、上記オレフィン系エラストマーとしては、例えば、融点が好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下または融点が観測されない炭素数2~20のα-オレフィン重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。
具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1単独重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1・1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等を挙げることができる。
エチレン-ブテン共重合エラストマーのなかでもエチレンとブテンを共重合させて得られる非晶性または低結晶性のエラストマー、比較的高いショア硬度やよい透明性を示すオレフィン系熱可塑性共重合エラストマーとして、プロピレンとブテンを共重合させて得られる結晶性のエラストマーであるプロピレン-ブテン共重合エラストマー、あるいはそれらの混合物が好ましい。
【0032】
オレフィン系熱可塑性共重合エラストマーの230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.2~5.0g/10min、密度が820~930kg/m、GPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.3~6.0であるものを用いるのが望ましい形態である。荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト(MFR)が0.2g/10minを下回ると、均一な混練が不十分となり、フィッシュアイが発生しやすくなり、また5.0g/minを超えると、耐破袋性の観点から好ましくない。
【0033】
(プロピレン単独重合体)
本発明においては、プロピレン単独重合体を使用することができ、これにより引裂強度を小さくしやすく、透明性も高めやすい。プロピレン単独重合体には、結晶性が高く、剛性や耐熱性に優れるアイソタクチックポリプロピレンや結晶性が低く柔軟性に優れるアタクチックポリプロピレンがある。使用するプロピレン単独重合体としては、結晶性が高く熱収縮率の悪化を抑えられるアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。
上記プロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg測定)は特に限定されないが1~10g/10minが好ましく、2~7がより好ましい。1g/10min未満では粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難であり、逆に、10g/10minを超えた場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じるからである。
【0034】
(添加剤)
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物は、アンチブロッキング剤を含んでよい。アンチブロッキング剤は1種類でもよいが、2種類以上の粒径や形状が異なる無機粒子を配合した方が、フィルム表面の凹凸においても、複雑な突起が形成され、より高度なブロッキング防止効果を得ることができる。
添加するアンチブロッキング剤は特に限定されるものではないが、球状シリカ、不定形シリカ、ゼオライト、タルク、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、ホウ酸アルミニウムなどの無機粒子や、ポリメチルメタクリレート、超高分子量ポリエチレンなどの有機粒子を添加することができる。
2層又は3層以上の多層構成の場合は、全層に添加してもよく、二軸配向フィルムをラミネートする側の層の表面に凹凸があると、ラミネート加工の外観不良になることがあるので、フィルム同士をヒートシールする側の層のみに添加することが好ましい。
二軸配向フィルムをラミネートする側の層をラミネート層、その表面をラミネート面と呼び、一方のフィルム同士をヒートシールする側の層をシール層、その表面をシール面と呼ぶ。
添加するアンチブロッキング剤は添加する層のポリオレフィン系樹脂組成物に対して、3000ppm以下であることが好ましく、2500ppm以下がより好ましい。3000ppm以下とすることにより、アンチブロッキング剤の脱落を低減することができる。本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、有機系潤滑剤を添加しても良い。積層フィルムの滑性やブロッキング防止効果が向上し、フィルムの取り扱い性がよくなる。その理由として、有機滑剤がブリードアウトし、フィルム表面に存在することで、滑剤効果や離型効果が発現したものと考える。
有機系潤滑剤は常温以上の融点を持つものを添加することが好ましい。有機滑剤は、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが挙げられる。
具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどである。これらは単独で用いても構わないが、2種類以上を併用することで過酷な環境下においても滑性やブロッキング防止効果を維持することができるので好ましい。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて任意の層に適量の酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、造核剤、着色剤、その他の添加剤及び無機質充填剤等を配合することができる。
酸化防止剤として、フェノール系やホスファイト系の併用、もしくは一分子中にフェノール系とホスファイト系の骨格を有したものを単独使用が挙げられる。中和剤として、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0036】
(ポリオレフィン系樹脂組成物)
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、プロピレン-エチレンブロック共重合体を0~2重量部含有することが好ましい。さらにまたポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、プロピレン-エチレンブロック共重合体を0~1重量部含有することがさらに好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体が2重量部以下とすると透明性、低温ヒートシール性が良好となりやすい。
【0037】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、オレフィン系熱可塑性共重合エラストマーを0~2重量部含有することが好ましい。
さらにまたポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、オレフィン系熱可塑性共重合エラストマーを0~1重量部含有することがさらに好ましい。2重量部以下とすることで熱収縮率、透明性が良好となりやすい。
【0038】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、プロピレン単独重合体を0~40重量部含有することが好ましい。さらにまたポリオレフィン系樹脂組成物において、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体100重量部に対して、プロピレン単独重合体を0~25重量部含有することが好ましい。40重量部以下とすることで、低温ヒートシール性を得やすく、低温でのヒートシール強度が得られやすい。
【0039】
(ポリオレフィン系樹脂フィルム)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムは、単層であっても良く、2層又は3層以上の多層であっても良い。3層構成の場合は中間層に製造工程ででた半製品や製造後の製品フィルムをリサイクルしたペレットを添加することにより、ヒートシールエネルギーや耐破袋性を損なうことなくコストを下げたり、融点の低いプロピレン-αオレフィンランダム共重合体をシール層のみに添加し、中間層やラミネート層は融点の高いプロピレン-αオレフィンランダム共重合体を主体として使用するなど、各層で組成が若干異なる樹脂を使用することよって、よりその効果を高めることができる。
【0040】
(ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法は、例えばインフレーション方式、Tダイ方式が使用できるが、透明性を高めるためや、ドラフトのかけ易さからTダイ方式が好ましい。インフレーション方式は冷却媒体が空気であるのに対し、Tダイ方式は冷却ロールを用いるため、冷却速度を高くするには有利な製造方法である。冷却速度を速めることにより、未延伸シートの結晶化を抑制できるため、後工程でロールによる延伸が有利となる。こうした理由からTダイ方式が好ましい。
【0041】
溶融した原料樹脂をキャスティングし、無配向のシートを得る際の冷却ロールの温度の下限は好ましくは15℃であり、より好ましくは20℃である。上記未満であると、冷却ロールに結露が発生し、密着不足となることがある。冷却ロールの上限は好ましくは60℃でより好ましくは50℃である。上記を超えると透明性が悪化することがある。
【0042】
無配向のシートを延伸する方式は特に限定するものではなく、例えばインフレーション方式、テンター横延伸方式、ロール縦延伸方式が使用できるが、配向の制御のし易さからロール縦延伸方式が好ましい。
ここでいう縦延伸とは、原料樹脂組成物をキャスティングしてから延伸したフィルムを巻取る工程までのフィルムが流れる方向を意味し、横方向とは流れ方向と直角の方向を意味する。
【0043】
無配向のシートを延伸することにより、直進カット性が発現する。これは分子鎖の構造が延伸方向に規則的に配列されるためである。
延伸倍率の下限は好ましくは3.3倍である。これより小さいと降伏強度が低下し、引裂強度が大きくなったり、直進カット性が劣ることがある。より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは3.8倍である。
延伸倍率の上限は好ましくは5.5倍である。これより大きいと過剰に配向が進行し、シールエネルギーが低下し、落下後の耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは5.0倍であり、さらに好ましくは4.7倍である。
【0044】
延伸ロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは60℃である。これより低いとフィルムにかかる延伸応力が高くなり、フィルムが厚み変動を発生することがある。より好ましくは70℃である。
延伸ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃である。これを越えると、フィルムにかかる延伸応力が低くなり、フィルムの引裂強度が低下するばかりか、延伸ロールにフィルムが融着してしまうことがあり、製造が困難になることがある。より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは120℃であり、特に好ましくは110℃である。
【0045】
未延伸シートを延伸工程に導入する前に予熱ロールに接触させ、シート温度を上げておくことが好ましい。
無配向のシートを延伸する際の予熱ロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは70℃であり、より好ましくは80℃である。上記未満であると延伸応力が高くなり、厚み変動を発生することがある。予熱ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは120℃ある。上記以上であると、熱収縮率が増大することがある。これは延伸前の熱結晶化を抑制し延伸後の残留応力を小さくすることができるためである。
【0046】
縦延伸工程を経たポリオレフィン系樹脂フィルムには、熱収縮を抑制するためにアニール処理を行うことが好ましい。アニール処理方式には、ロール加熱方式、テンター方式などがあるが、設備の簡略さやメンテナンスのし易さからロール加熱方式が好ましい。アニール処理することによって、フィルムの内部応力を低下させることで、フィルムの熱収縮を抑え、さらに易引裂き性をさらに向上することができる。このため、従来のように引裂き性を高めるために、延伸倍率を単に大きくする場合に比べてヒートシール強度を犠牲にすることが少ない。
アニール処理温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃である。
上記未満であると熱収縮率が高くなったり、引裂強度が大きくなったり、製袋後の包装袋の仕上がりが悪化することがある。より好ましくは90℃である。
アニール処理温度の上限は特に限定されないが好ましくは125℃である。アニール処理温度が高い方が、熱収縮率が低下しやすいが、これを超えると、ヒートシール強度が悪化したり、フィルムが製造設備に融着したりすることがある。より好ましくは120℃であり、特に好ましくは115℃である。
【0047】
アニール工程ではロールの回転速度を小さくするなど、フィルムの搬送速度を順次遅くするなどして、緩和工程を設けることができる。緩和工程を設けることにより、製造されたポリオレフィン系樹脂フィルムの熱収縮率をより小さくすることができ、ヒートシール強度も大きくできる。
緩和工程の緩和率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。10%以下であると搬送中のフィルムがたるみにくく、工程への巻き付きを起こしにくい。緩和率の下限は好ましくは1%であり、より好ましくは3%である。1%以上であると、ポリオレフィン系樹脂フィルムの熱収縮率が高くなりにくい。
【0048】
本発明においては、以上に記述したポリオレフィン系樹脂フィルムと、他の素材の二軸配向フィルムをラミネートする側の表面をコロナ処理等で表面を活性化させるのが好ましい。該対応により基材フィルムとのラミネート強度が向上する。
【0049】
(フィルム厚み)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みの下限は好ましくは7μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは12μmであり、特に好ましくは15μmである。15μ以上であると基材フィルムの厚みに対し相対的に厚くなるため、積層体としての直進カット性が悪化しにくく、またフィルムの腰感が得られ加工しやすい他、耐衝撃性が得られやすく耐破袋性が得られやすい。フィルム厚みの上限は好ましくは150μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは50μmである。150μm以下であるとフィルムの腰感が強すぎず加工しやすくなるあるほか、好適な包装体を製造しやすい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂フィルムの特性について述べる。
(ヘイズ)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムのヘイズの下限は好ましくは1.0%であり、より好ましくは2.0%である。1.0%以上であるとフィルム表面の凹凸が極端に少ない状態ではないため包装体の内面ブロッキングが発生しにくい。ヘイズの上限は好ましくは20.0%であり、より好ましくは15.0%であり、更に好ましくは10.0%である。20.0%以下であると包装体の視認性を得られやすい。
【0051】
(熱収縮率)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率の上限は25%である。上記を超えると引裂強度が高くなると同時に、ヒートシール時の収縮が大きくなり、包装体の外観を損なうことがある。好ましくは20%であり、さらに好ましくは17%である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率の下限は2%である。これより小さくしようとすると、アニール温度やアニール時間を著しく大きくする必要があるため、外観が著しく悪化する場合がある。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が小さい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率の上限は1%である。1%以下であると、幅方向の引裂強度が大きくなったり、あるいは直進カット性に劣る。好ましくは0.5%である。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が小さい方向の120℃で30分間加熱後の熱収縮率の下限は-5%である。上記未満であると、ヒートシール工程でフ15
ィルムに伸びが発生しにくく、包装体の外観が悪化しにくい。好ましくは-3%である。
【0052】
(突刺強度)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの1μmあたりの突刺強度の下限は好ましくは0.12N/μmであり、より好ましくは0.14N/μmである。0.12N/μm以上であると包装体に突起が当たった時にピンホールが発生しにくい。突刺強度の上限は好ましくは1.0N/μmであり、より好ましくは0.8N/μmであり、さらに好ましくは0.5N/μmである。1.0μm/μm以下であると腰感が強すぎず、フィルムまたは積層体にした時のハンドリングが容易となる。
【0053】
(長手方向の配向係数)
本発明で使用する長手方向の配向係数ΔNxは式1により計算することができる。
ΔNx=Nx-[(Ny+Nz)/2] (式1)
Nx:長手方向の屈折率Ny:長手方向に対し垂直方向の屈折率Nz:面方向の屈折率
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向の配向係数ΔNxの下限は好ましくは0.010であり、より好ましくは0.015であり、更に好ましくは0.020である。0.010以上であると包装体の直進カット性が得られやすい。長手方向の配向係数ΔNxの上限は好ましくは0.0270であり、より好ましくは0.026である。0.0270以下であるとシール強度が低下ににくい。
【0054】
(面配向係数)
本発明で使用する面配向係数ΔPは屈折率より計算することができる。面方向への配向係数は式2により計算することができる。
ΔP=[(Nx+Ny)/2]-Nz (式2)
x:長手方向の屈折率Ny:長手方向に対し垂直方向の屈折率Nz:面方向の屈折率
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの面方向の配向係数ΔPの下限は好ましくは0.0100であり、より好ましくは0.0120である。0.0100以上であると包装体の突刺強度が得られやすい。面配向係数ΔPの上限は好ましくは0.0160であり、より好ましくは0.0150であり、更に好ましくは0.0140である。0.0160以下であるとシール強度が低下しにくい。
【0055】
(フィルムの融点)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの融点の下限は特に限定されないが、好ましくは120℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは140℃以上である。120℃以上であるとヒートシールに対する耐熱性が得られやすい。融点の上限は好ましくは150℃であり、より好ましくは145℃である。150℃以下であると低温シール性を得やすい。
【0056】
(耐屈曲ピンホール性)
耐屈曲性はゲルボピンホール評価で測定することができる。本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムに1℃において1000回屈曲を与えた後のピンホール個数の好ましくは35個であり、より好ましくは30個であり、さらに好ましくは25個であり、特に好ましくは20個である。35個以下であると包装体を輸送する際の屈曲衝撃によりピンホールが発生しにくい。
【0057】
(引裂強度)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の引裂強度の上限は好ましくは0.8Nである。0.8N以下であるとラミネートフィルムを引裂きやすい。より好ましくは0.6Nであり、特に好ましくは0.5Nである。
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの長手方向及び幅方向のうち120℃で30分間加熱後の熱収縮率が大きい方向の引裂強度の下限は好ましくは0.1Nである。0.1N以上であると耐破袋性が得られやすい。より好ましくは0.3Nである。
【0058】
(加速ブロッキング強度)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの加速ブロッキング強度の下限は好ましくは20mN/70mmであり、より好ましくは30mN/70mmである。20mN/7mm以上であるとフィルムの腰感が得られやすい。加速ブロッキング強度の上限は好ましくは100mN/70mmであり、より好ましくは80mN/70mmであり、更に好ましくは60mN/70mmである。100mN/70mm以下であると包装体の内面でブロッキングを起こしにくい。
【0059】
(マルテンス硬さ)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも片面、特にシール面のマルテンス硬さの下限は好ましくは80N/mmであり、より好ましくは90N/mmであり、特に好ましくは100N/mm以上である。80N/mm以上であると包装体の内面でブロッキングを起こしにくいさらに好ましくは90N/70mmである。マルテンス硬さの上限は好ましくは140N/mmであり、より好ましくは130N/mmであり、更に好ましくは120N/mmである。140N/mm以下であるとフィルムが硬すぎず耐屈曲ピンホール性が得られやすい。
【0060】
(押し込みクリープ率)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムのシール面の押し込みクリープ率(cit)の下限は好ましくは1.8%であり、より好ましくは2.0%である。1.8%以上であるとフィルムが硬くならず耐屈曲ピンホール性が得られやすい。押し込みクリープ率(cit)の上限は好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.8%である。3.0%以下であると包装体の内面でブロッキングを起こしにくい。
【0061】
(濡れ張力)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムと、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の基材フィルムとラミネートする面の濡れ張力の下限は好ましくは30mN/mであり、より好ましくは35mN/mである。30mN/m以上であるとラミネート強度が低下しにくい。濡れ張力の上限は好ましくは55mN/mであり、より好ましくは50mN/mである。55mN/m以下であるとポリオレフィン系樹脂フィルムをロールに巻回したときにフィルム同士のブロッキングが発生しにくい。
【0062】
(積層体の構成及び製造方法)
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いた積層体は、前記ポリオレフィン系樹脂フィルムをシーラントとして用い、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、及びポリプロピレン樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムとの積層体である。また、公知の技術として接着性やバリア性を付与する目的でこれらの基材フィルムにコーティングや蒸着加工をしたものを用いたり、アルミ箔をさらに積層するなどの構成としてもよい。
具体的には例えば、二軸延伸PETフィルム/アルミ箔/シーラント、二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルム/シーラント、二軸延伸ナイロンフィルム/シーラント、二軸延伸ポリプロピレンフィルム/シーラント、二軸延伸PETフィルム/二軸延伸ナイロンフィルム/アルミ箔/シーラントなどが挙げられる。
この中でも二軸延伸ナイロンフィルムは、従来のシーラントを使用した場合は積層体の直進カット性が大きく悪化してしまう。本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムをシーラントとして使用することで、いずれの構成においても良好な直進カット性の積層体を製造することができる。
積層の方法はドライラミネート方式、押し出しラミネート方式など公知の方法が使用できる。
【0063】
本発明の積層体の特性について述べる。
(突刺強度)
本発明の積層体の突刺強度の下限は好ましくは10Nであり、より好ましくは12Nであり、さらに好ましくは14Nであり、特に好ましくは16Nである。10N以上であると包装体に突起が接触した時にピンホールが発生しにくい。突刺強度の上限は好ましくは45Nであり、より好ましくは30Nであり、さらに好ましくは25Nである。45N以下であると積層体の腰感が強すぎずハンドリングが容易となる。
【0064】
(直進カット性)
本発明の積層体の直進カット性の上限は、好ましくは8mmであり、より好ましくは7mmであり、さらに好ましくは6mmであり、特に好ましくは3mmである。8mm以下であると包装体が泣別れしにくい。
【0065】
(泣別れ)
本発明の積層体の泣別れの上限は好ましくは12mmであり、より好ましくは10mmであり、さらに好ましくは6mmであり、特に好ましくは4mmである。12mm以下であると包装体を引裂いた際、内容物がこぼれにくい。
【0066】
(ヒートシール強度)
本発明の積層体のレトルト前のヒートシール強度の下限は好ましくは18N/15mmであり、より好ましくは19N/15mmであり、更に好ましくは20N/15mmである。20N/15mm以上であると耐破袋性が得られやすい。ヒートシール強度は60N/15mmあれば十分である。
また、1μmあたりのヒートシール強度の上限は好ましくは3.0N/15mm・μmであり、より好ましくは2.0N/15mm・μmである。3.0N/15mm・μm以下であれば耐衝撃性の高い樹脂やフィラーなど添加剤が必要とならず、コスト高となりにくい。1μmあたりにヒートシール強度の下限は特に限定されないが好ましくは0.9N/15mm・μmであり、より好ましくは0.95N/15mm・μmであり、さらに好ましくは1.0N/15mm・μmである。0.9N/15mm・μm以上であると輸送の際にシールが剥がれにくく内容物が漏出しにくい。
【0067】
(包装体)
食料品などの内容物を自然界の埃やガスなどから保護することを目的に、内容物の周囲を包むように配置された前記積層体を包装体と呼ぶ。包装体は20前記積層体を切り出し、加熱したヒートシールバーや超音波などで内面同士を接着し、袋状にするなどして製造され、例えば長方形の積層体2枚をシーラント側が内側になるよう重ね、四辺をヒートシールした四方シール袋などが広く使用されている。内容物は食料品であってもよいが、日用雑貨などその他の生産物などであってもよく、包装体の形状もスタンディングパウチやピロー包装体などの長方形以外の形状であってもよい。
【実施例0068】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。各実施例で得られた特性は以下の方法により測定、評価した。
評価の際、フィルム製膜の工程におけるフィルムの流れ方向を長手方向、流れ方向に垂直な方向を幅方向とした。
【0069】
(1)樹脂密度
JIS K7112:1999年のD法(密度こうばい管)に準じて密度を評価した。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0070】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K-7210-1に基づき230℃、荷重2.16kgで測定をった。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0071】
(3)ヘイズ
JIS K7136に基づきヘイズを測定した。ラミネート前のポリオレフィン系樹脂フィルムにおいて、N=3で測定し、平均値を算出した。
【0072】
(4)引裂強度
フィルム及び積層体を延伸方向150mm、延伸方向に対して垂直方向60mmの短冊状の試験片を切り出した。試験片の一方の短辺の中央部から延伸方向に沿って30mmの切り込みを入れた。試験片を温度23℃/相対湿度50%の雰囲気で状態調節してから測定を行った。
切込みを入れた試験片の左右の短辺から10mmの距離の範囲をそれぞれつかみ具でつかみ、2つのつかみ具の間の距離を40mmとなるようにして、(株)島津製作所製オートグラフAG-Iの取り付け、試験片の長辺と二つのつかみ具の仮想中心線とが平行になるように注意深く締め付けた。
試験速度を200mm/minとし、試験機を始動させ,引裂きが試験片のもう一方の短辺に達するまで引裂力を記録し、25mm、50mm、75mm、100mm引裂いた地点における引裂力の平均値を求めた。
巻き取ったフィルムの内面を手前にして、向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合と、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合の両方について各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用し引裂強度とした。
同様に積層体のポリオレフィン系樹脂フィルム側を手前にして、向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合と、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合の両方を各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用し引裂強度とした。
【0073】
(5)突刺強度
ポリオレフィン系樹脂フィルム、及び積層体を、食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して23℃下で突刺強度を測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺速度50mm/分でフィルムに突き刺し、針がフィルムを貫通する際の強度を測定した。得られた測定値をフィルムの厚みで割り、フィルム1μmあたりの突刺強度[N/μm]を算出した。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0074】
(6)長手方向の配向係数、面配向係数
JIS K0062:1999年の化学製品の屈折率測定法に準じて密度を評価した。N=3で測定し、平均値を算出した。長手方向の配向係数ΔNxは式1により、面方向への配向係数ΔPは式2により計算した。
ΔNx=Nx-[(Ny+Nz)/2] (式1)
ΔP=[(Nx+Ny)/2]-Nz (式2)
【0075】
(7)融点
(株)島津製作所製、島津示差走査熱量計DSC-60を用いて得られた、ポリオレフィン系樹脂フィルムのDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。開始温度30℃、昇温速度5℃/min、終了温度180℃とした。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0076】
(8)耐屈曲ピンホール性
ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層した積層体を長手方向280mm、幅方向260mmに切り出した。ポリオレフィン系樹脂フィルムが内側になるようにφ89mm、高さ260mmの円筒状にし、セロハンテープで固定した。テスター産業(株)製、恒温槽付ゲルボフレックステスターにサンプルを取付け、1℃1000回の屈曲負荷をかけた。サンプルを取り外し、ピンホールの数を測定した。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0077】
(9)熱収縮率
ラミネート前のフィルムを120mm四方に切り出した。長手方向、幅方向それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。120℃に保温したオーブン内にサンプルを吊り下げ、30分間熱処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、熱収縮率を計算した。N=3で測定し、平均値を算出した。
熱収縮率=(熱処理前の標線長-熱処理後の標線長)/熱処理前の標線長×100(%) (式3)
【0078】
(10)加速ブロッキング強度
ポリオレフィン系樹脂フィルムを長手方向148mm、幅方向105mmに切り出した。シール面同士を向かい合わせて重ね合わせた。50℃環境で30分予熱をした後、50℃に保持した7.0cm四方のアルミ板で挟み込んだ。(株)東洋精機製作所製ミニテストプレスMP-SCHを使用し、50℃、100kNの条件でアルミ板とサンプルをプレスし、15分間保持した。取り出したサンプルを幅方向70mmに裁断した。重ねたサンプルを30mm開き、3mm径の金属棒を幅方向に平行になるように挿入した。(株)島津製作所製オートグラフAG-Iにサンプルを装着し、長手方向に200mm/minの条件で金属棒を移動させる時の加重を測定した。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0079】
(11)マルテンス硬さ、押し込みクリープ率ポリオレフィン系樹脂フィルムを10mm
四方に切り出し、測定面を上にして接着剤を塗ったカバーガラスに乗せ24hr乾燥させた。(株)島津製作所製、島津ダイナミック超微小硬度計DUH-211を使用し、マルテンス硬さ、押し込みクリープ率を測定した。測定モードは負荷-除荷試験、試験力0.5mN、負荷速度6.0mN/sec、負荷保持時間2secとし、圧子はTriangular15を使用した。N=10で測定し、平均値を算出した。
【0080】
(12)直進カット性
直進カット性とは積層体を引裂いた際に、一方向に平行して真直ぐに引裂ける性能を示す。測定は以下の方法で行った。実施例、比較例では延伸方向への直進カット性が発現するため、延伸方向への測定を実施した。
積層体を延伸方向150mm、延伸方向に対して垂直方向60mm、の短冊に切り出し、短辺の中央部から測定方向に沿って30mmの切り込みを入れた。JIS K7128-1:1998に準じてサンプルを引き裂いた。
切込み30mmを含まず延伸方向に120mm引き裂いた時点で、延伸方向と垂直方向に移動した距離を測定し、その絶対値を記録した。向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟む場合、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟む場合の両方を各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用した。
【0081】
(13)泣別れ
積層体のヒートシールフィルム同士を向い合せヒートシールし、内寸延伸方向120mm、延伸方向に垂直方向170mmの四方シール袋を作成した。四方シール袋の端にノッチを作成し、延伸方向に手で引裂いた。反対の端までカットを進め、袋の表側と裏側のフィルムの引裂き線のズレを測定した。右手側が手前になる方向、左手側が手前になる方向の両方について各N=3で測定した平均値を算出し、大きい方の測定値を採用した。
【0082】
(14)製袋仕上がり
積層体のポリオレフィン系樹脂フィルム側同士を重ね合せ、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃でヒートシールし、内寸長手方向120mm、幅方向170mmの4方シール袋を作成した。この4方シール袋の仕上がり状態を目視で確認した。
○:ヒートシール部付近のゆがみが無く、袋が完全に長方形である△:ヒートシール部付近のゆがみが少ない
×:ヒートシール部付近のゆがみが大きく、袋のエッジが波打っている
【0083】
(15)ヒートシール強度
ヒートシール条件および強度測定条件は次の通りである。すなわち、実施例・比較例で得られた積層体のポリオレフィン系樹脂フィルム側同士を重ね合せ、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃でヒートシールした後、放冷した。各温度でヒートシールされたフィルムからそれぞれ長手方向80mm、幅方向15mmの試験片を切り取り、各試験片について、クロスヘッドスピード200mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定した。試験機はインストロンインスツルメンツ製の万能材料試験機5965を使用した。各N=3回で測定を行い、平均値を算出した。
【0084】
(16)配向角
基材フィルムの配向角(°)は王子計測機器(株)製分子配向計MOA-6004で測定した。長手方向120mm、幅方向100mmにサンプルを切り出し、計測器に設置し、測定されたAngleの値を配向角とした。なお、長手方向が0°である。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0085】
(実施例1)
(ポリオレフィン系樹脂フィルム)
実施例1ないし4及び比較例1ないし8のポリプロピレン系樹脂フィルムについて、後出の表1および表2に示した各層の樹脂組成とその割合に基づき、原料を調整した。表1および表2に記載のように各層の調整物を100重量部として有機滑剤として、ベヘニン酸アミドを含有量がそれぞれヒートシール層に260ppm、中間層に260ppm、無機アンチブロッキング剤として平均粒径4μmのシリカを含有量がヒートシール層に2000ppmとなるように添加した。これらの原料を均一になるように混合し、ポリオレフィン系樹脂フィルムを製造するための混合原料を得た。
(使用原料)
原料A 住友化学製 プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体 FL8115A(MFR7.0g/10min、融点148℃)
原料B プライムポリマー製 プロピレン-エチレンランダム共重合体 F-724NPC(MFR7.0g/10min、融点149℃)
原料C ブテン-エチレンランダム共重合体(融点120℃、エチレン含有量4.0重量部)
原料D 住友化学製 プロピレン-エチレンブロック共重合体 WFS5293-22(樹脂密度891kg/m、230℃、MFR3.0g/10min)原料E 住友化学製 アイソタクチックポリプロピレン FLX80E4(MFR7.5g/min、融点164℃)
原料F 千葉ファインケミカル製 アタクチックポリプロピレンサンアタック
原料G 三井化学製 エチレン-ブテン共重合エラストマー樹脂 タフマーA-4085S(190℃、2.16kgにおけるMFR1.4g/10min)
原料H 三井化学製 プロピレン-ブテン共重合エラストマー樹脂 タフマーXM-7070S(190℃、2.16kgにおけるMFR3.0g/10min)
原料I プライムポリマー製 直鎖状低密度ポリエチレン エボリューSP1520(MFR2.0g/10min、密度0.913g/cm
原料J 住友化学製 プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体 FL8115A(MFR6.0g/10min、融点130℃)
【0086】
(溶融押出)
中間層に用いる混合原料をスクリュー直径90mmの3ステージ型単軸押出し機で、ラミネート層用およびヒートシール層用の混合原料をそれぞれ直径45mmおよび直径65mmの3ステージ型単軸押出し機を使用し、ラミネート層/中間層/ヒートシール層の順になるよう導入し、巾800mmでプレランドを2段階にし、かつ溶融樹脂の流れが均一になるように段差部分の形状を曲線状としてダイス内の流れが均一になるように設計したTスロット型ダイに導入し、ダイスの出口温度を230℃で押出した。ラミネート層/中間層/ヒートシール層の厚み比率はそれぞれ25%/50%/25%とした。
(冷却)
ダイスから出てきた溶融樹脂シートを21℃の冷却ロールで冷却し、厚みが70μmよりなる未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。冷却ロールでの冷却に際しては、エアーノズルで冷却ロール上のフィルムの両端を固定し、エアーナイフで溶融樹脂シートの全幅を冷却ロールへ押さえつけ、同時に真空チャンバーを作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止した。エアーノズルは、両端ともフィルム進行方向に直列に設置した。ダイス周りはシートで囲い、溶融樹脂シートに風が当たらないようした。
【0087】
(予熱)
未延伸シートを加温したロール群に導き、シートとロールを接触させることによってシートを予熱した。予熱ロールの温度は80℃とした。複数のロールを使用し、フィルムの両面を予熱した。
(縦延伸)
前記未延伸シートを縦延伸機に導き、ロール速度差により、3.5倍に延伸し厚みを20μmとした。延伸ロールの温度は80℃とした。
(アニール処理)
アニーリングロールを使用し5%の緩和率を与えながら100℃で熱処理を施した。複数のロールを使用し、フィルムの両面を熱処理した。
【0088】
(コロナ処理)
フィルムの片面(ラミネート面)にコロナ処理を施した。
(巻き取り)
製膜速度は20m/分で実施した。製膜したフィルムは耳部分をトリミングし、ロール状態にして巻き取った。フィルムの片面(ラミネート面)の濡れ張力は42mN/mであった。
【0089】
(積層体の作成)
得られたポリオレフィン系樹脂フィルムと、基材フィルムとして東洋紡製の二軸延伸ナイロンフィルム(N1102、厚み15μm、配向角長手方向に対し22°)とを、主剤(東洋モートン社製、TM569)33.6質量部と硬化剤(東洋モートン社製、CAT10L)4.0質量部と酢酸エチル62.4質量部を混合して得られたエステル系接着剤をその塗布量が3.0g/mとなるよう基材フィルムに塗布し、ドライラミネートした。これを巻き取ったものを40℃に保ち、3日間エージングを行い、積層体を得た。
【0090】
(実施例2、実施例4)
実施例1において、表1に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを80μmとし、縦延伸倍率を4.0倍とした以外は同様の方法において20μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0091】
(実施例3)
実施例1において、表1に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを90μmとし、縦延伸倍率を4.5倍とした以外は同様の方法において20μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0092】
(比較例1)
実施例1において、アンチブロッキング剤は添加せずに表2に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを270μmとし、予熱ロールの温度を105℃とし、延伸ロール温度を105℃とし、縦延伸倍率を4.5倍とし、アニール処理温度を120℃とした以外は同様の方法において60μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0093】
(比較例2)
実施例2において、表2に示す原料を使用し、アニール処理を行わなかった以外は同様の方法において90μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0094】
(比較例3)
実施例2において、アンチブロッキング剤は添加せずに表2に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを100μmとし、予熱ロール温度を102℃とし、延伸ロール温度を102℃とし、アニール処理温度を135℃とした以外は同様の方法において25μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0095】
(比較例4)
実施例2において、ヒートシール層のアンチブロッキング剤を3000ppmとし表2に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを320μmとし、縦延伸は行わずテンター方式によって予熱温度135℃、延伸温度165℃において8.0倍に横延伸し、テンター内において155℃の熱風でアニール処理をした以外は同様の方法において40μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0096】
(比較例5)
実施例2において、ヒートシール層のアンチブロッキング剤を2400ppmとし表2に示す原料を使用し、ラミネート層/中間層/ヒートシール層の厚み比率を2/5/29とし、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを180μmとし、縦延伸倍率を5.0倍とし、アニール処理を行わなかった以外は同様の方法において36μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0097】
(比較例6)
比較例1において、ヒートシール層のアンチブロッキング剤を2400ppmとしに表2に示す原料を使用し、ラミネート層/中間層/ヒートシール層の厚み比率を17/33/10とし、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを258μmとし、延伸倍率を4.3倍とし、アニール処理を行わなかった以外は同様の方法において60μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0098】
(比較例7)
実施例2において、ヒートシール層のアンチブロッキング剤を3000ppmとしに表2に示す原料を使用し、未延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚みを100μmとし、縦延伸倍率を5.0倍とした以外は同様の方法において20μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。実施例1と同様にして積層体を得た。
【0099】
(比較例8)
実施例2において、アニールロール温度を130℃とした以外は同様の方法において20μmのポリオレフィン系樹脂フィルムの製膜を行った。
【0100】
比較例1では、ブロック共重合体を主体として使用したために透明性(ヘイズ)に劣るものであった。
比較例2、比較例5、比較例6ではアニール処理を行わなかったため、熱収縮率が高く製袋仕上がりに劣るものであった。
比較例3では、プロピレン単独重合体を多く使用したため、融点が高く低温シール性に劣るものであった。
比較例4では、延伸方向が横延伸であるため、面配向係数小さく突刺強度に劣るものであった。
比較例7では、融点が低いブテン-エチレンランダム共重合体を使用したため、直進カット性、泣別れに劣るものであった。
比較例8では、アニール温度を高くしたために、ヒートシール強度に劣るものであった。
上記結果を表1および表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表1及び表2で、評価結果を「測定不可*」としているものは、特性評価中にフィルムが延伸方向に裂けてしまい、測定値が得られなかったことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明により透明性、シール性、製袋性、耐破袋性に優れ、かつ泣別れなく、容易に引裂ける包装体を提供することができ、産業に大きく貢献できる。