(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028717
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ポリオレフィンエラストマーの架橋のための有機過酸化物の混合物の使用
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240227BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196654
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020532720の分割
【原出願日】2018-12-14
(31)【優先権主張番号】1762257
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディソン, ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルー, チャオ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スコーチ又は時期尚早の架橋のリスクを最小限にしながら、エチレン-酢酸ビニルコポリマーについて用いられるものと同様の動作条件下で、ポリオレフィンエラストマーを効果的に架橋することができる組成物の使用を提供する。
【解決手段】ポリオレフィンエラストマーを架橋するための、式(I)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、及び式(II)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、を含む組成物の使用。
[式(I)中、R
1は6以下の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]
[式(II)中、R
1は7以上の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンエラストマーを架橋するための、
- 式(I)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート:
[式(I)中、R
1は6以下の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]、及び
- 式(II)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、
[式(II)中、R
1は7以上の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]
を含む組成物の使用。
【請求項2】
組成物が、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリオレフィンエラストマーが、エチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー、好ましくは直鎖状、分岐状又は環状C3-C20アルファオレフィンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリオレフィンエラストマーが、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、エチレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/プロピレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ブテン/1-オクテンコポリマー、及びエチレン/1-ブテン/スチレンコポリマーからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリオレフィンエラストマーが、直鎖状及び均一に分岐状の、エチレンとアルファオレフィンのコポリマーからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
式(I)において、R1が、C2-C5アルキル基、より好ましくはC3アルキル基であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
式(I)において、R2が、C1-C10、好ましくはC4-C8、アルキル基であり、好ましくはC5又はC6アルキル基であり、より好ましくはC5アルキル基であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
式(I)のモノペルオキシカーボネートが、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、tert-ブチル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TBIC)、tert-オクチル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TOIC)、及びtert-ヘキシル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(THIC)からなる群より選択され、好ましくはtert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
式(II)において、R1が、C7-C10、より好ましくはC7-C9、アルキル基である、より好ましくはC8アルキル基であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
式(II)において、R2が、C1-C10、好ましくはC2-C9、特にC4-C8アルキル基であり、より好ましくはC4又はC5アルキル基、さらにより好ましくはC4アルキル基であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
式(II)のモノペルオキシカーボネートが、OO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)、OO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)、OO-tert-オクチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TOEC)、及びOO-tert-ヘキシル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(THEC)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートの間の質量比が、0.1:99.9から80:20、好ましくは1:99から70:30、より好ましくは10:90から60:40の範囲で変化することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー、好ましくは請求項3から5のいずれか一項に記載のエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー、
- 請求項1及び6から8のいずれか一項に記載の少なくとも一つの式(I)のモノペルオキシカーボネート、
- 請求項1及び9から11のいずれか一項に記載の少なくとも一つの式(II)のモノペルオキシカーボネート、
を含む架橋性組成物であって;
- 組成物が、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含む、
組成物。
【請求項14】
式(I)及び(II)のモノペルオキシカーボネートの量が、100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり3重量部以下であることを特徴とする、請求項13に記載の架橋性組成物。
【請求項15】
トリアリル シアヌレート、トリアリル イソシアヌレート、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、トリアリル トリメリテート、トリメチロールプロパン トリアクリレート、及びトリメチロールプロパン トリメタクリレートからなる群より選択され、好ましくは、トリアリル シアヌレート、トリアリル イソシアヌレート、トリメチロールプロパント リアクリレート、及びトリメチロールプロパン トリメタクリレートからなる群より選択され、さらにより好ましくは、トリアリル イソシアヌレートである、有機過酸化物以外の少なくとも一つの助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の架橋性組成物。
【請求項16】
組成物が、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートの混合物に対して計算して、特に100重量部の組成物のモノペルオキシカーボネート全含有量に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いていることを特徴とする、請求項1及び3から12のいずれか一項に記載の使用又は請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
組成物がtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いていることを特徴とする、請求項1及び3から12のいずれか一項に記載の使用又は請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物を架橋する少なくとも一つの工程(a)を含む、材料を製造するための方法。
【請求項19】
材料が、封入材料、特に太陽電池、ワイヤ及びケーブル絶縁、パイプ及びホース、ローラーコーティング、回転成形、携帯電話物品、及び靴底を封入するための材料からなる群より選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
架橋工程(a)が、130から250℃、好ましくは130から180℃、より好ましくは140から165℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
架橋工程(a)の前及び/又はそれと同時に、請求項13から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物を成形、押出成形、及び射出成形することからなる群より選択される工程(a’)を含むことを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマーを含む材料。
【請求項23】
(i)連続して:
・光電池モジュールの前面を形成する第1の透明な層、
・請求項13から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物から得られる層、
・互いに電気的に結合し、並んで配置される複数の太陽電池、
・請求項13から17のいずれか一項に記載の架橋性組成物から得られる層、
・モジュールの後面(又はバッキング)を形成する第2の層又は多層アセンブリ;
を含むアセンブリを積層する少なくとも一つの工程:
(ii)工程(i)の間に一緒に積層された層をプレスする少なくとも一つの工程:
を含む光電池モジュールを製造するための方法。
【請求項24】
請求項23に記載の太陽電池を封入するための材料を含む光電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、特に光電池用途での使用が意図される、ポリオレフィンエラストマー(POE)、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンとのコポリマーを架橋するための、以下に定義される有機過酸化物の混合物の使用に関する。
【0002】
本発明は、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(POE)、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー、及び以下に定義される有機過酸化物の少なくとも一つの混合物を含む架橋性組成物にも関係する。
【0003】
本発明は、上に定義された架橋性組成物を架橋する工程を含む、ポリオレフィンエラストマー(POE)に基づく材料、好ましくは特に光電池のための封入材料を製造するための方法にも関する。
【0004】
本発明は、同様に、上記の方法により得ることができる、ポリオレフィンエラストマー、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマーに基づく材料、及びそのような材料を含む光電池モジュールを対象とする。
【0005】
光電池モジュール(ソーラーパネル又はソーラーコレクターとも呼ばれる)の役割は、概して、連続電流の形態で電気を生成するように入射太陽エネルギーを電気エネルギーに変換することである。
【0006】
光電池モジュールは、主に半導体から構成され、モジュールの前面を形成する第1の透明な層と、モジュールの後面を形成する第2の層との間に並んで配置される、光電池(太陽電池とも呼ばれる)のアセンブリに特に相当する。
【0007】
モジュールの前面を形成する第1の層は、概して、光電池が光束を受け取ることが可能となるように、透明な固体ガラスシートを使用して作製される。
【0008】
モジュールの後面(又はバッキング)を形成する第2の層は、可撓性の材料、例えばプラスチック、又はガラス若しくは金属材料から作製され得る。特に、モジュールの前面及び後面はどちらも、ガラスシートで作製され得る(その製造方法は二重ガラスプロセスと呼ばれる)。さらに、このフィルムは、モジュールの頂部へ光を反射させるように、及び単一ガラスパネルで通常失われる放射線の一部を電池に透過させるように、概して、酸化チタンタイプの顔料で、任意選択的には他の充填剤(炭酸カルシウム、タルク、シリカ等のタイプのもの)と組み合わせて、着色される。
【0009】
単一ガラスパネルの場合、モジュールの後面を形成する第2の層は、好ましくは、例えば、ポリエチレン テレフタレート(PET)又はポリアミド(PA)等の電気絶縁ポリマーの薄膜(その頂部には、ポリフッ化ビニル(PVF)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)に基づく一又は複数の薄膜が存在し、その層の頂部には、金属、例えばアルミニウムの層が存在する)で構成された多層アセンブリからなり、起こり得る機械的衝撃からモジュールを保護する。その場合、モジュールの後面は、この種類の多層アセンブリで作製され得るのに対して、モジュールの前面はガラスシートで作製される。
【0010】
光電池は、互いに(直列に又は並列に)電気的に接続されており、それらに電気絶縁を、並びに湿気、雨若しくは雪などの悪天候、及び紫外線などの外部環境因子からの保護を提供するために、封入される。
【0011】
光電池の封入に使用される、好ましくはフィルムの形態の材料は、現在、エチレンのホモポリマー又はコポリマーに基づいて設計されている。より具体的には、エチレン及び酢酸ビニル(EVA)のコポリマーは、そのような封入の実施に特に有利であるが、これは、それらが、高い電気抵抗率を有しながら光電池モジュールの基材に容易に接着することが可能な透明な材料を製造することができるためである。これらの理由により、EVA系樹脂は、現在の市場の大部分を占める。
【0012】
特にモジュール基材に対する良好な接着特性、耐クリープ性、及び悪天候に対する耐劣化性に関して、本願の観点から満足のいく熱機械的特性を得るために、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの架橋を行うこと及び良好な架橋密度を得ることが重要である。実際、架橋密度が低すぎる場合、得られる材料は、とりわけ、不十分な引き裂き及び破壊抵抗に悩まされる可能性があり、光電池パネルの上面が到達し得る高温に照らして経時的に流れる可能性がある。典型的に用いられる架橋剤は、過酸化物、例えば過酸化ジクミル(DCP)、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ペルオキシカーボネート、ジアルキルペルオキシド、及びこれらの混合物である。モノペルオキシカーボネートの例として、エチレン-酢酸ビニル(EVA)コポリマーを架橋するために、OO-tert-アミル O-2-エチルヘキシル モノペルオキシカーボネート(TAEC)、OO-tert-ブチル O-2-エチルヘキシル モノペルオキシカーボネート(TBEC)、OO-tert-イソブチル O-イソプロピル モノペルオキシカーボネート(TBIC)、又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンを使用することは、周知の慣行である。
【0013】
したがって、光電池モジュールを製造するための方法では、太陽電池及びそれらの導電体は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー及び一又は複数の架橋剤に基づく組成物から得られる二つの層(又はフィルム)間に配置される。この種類の製造方法は、EVA系組成物が架橋される所与の期間にわたって特定の温度で光電池モジュールを形成する様々な層を積層させる単一の工程を含む。したがって、モジュールの様々な層は互いにプレスされ、太陽電池は透明なEVA系材料に覆われることになる。
【0014】
それにもかかわらず、紫外線及び湿気の影響下で、EVAは化学分解を受け、酢酸を放出する傾向があり、それは太陽電池の腐食を加速し、電池を封入する材料の黄変又は褐色さえも引き起こすことが観察された。そのような現象はまた、太陽電池における入射光束の透過率の変化を誘発し、それにより長期にわたってそれらの電力を低減し得る。
【0015】
さらに、この黄変の欠陥は、封入材料とモジュールの様々な層との間の接着性の低下を伴う場合があり、その結果、一方ではモジュールの内部への水の浸透が起こり、他方では、封入材料とモジュールの前面及び/又は後面の間に捕捉された気泡の形成が起こる。これらの気泡の形成は、封入材料と、モジュールの面、特に後面との間に膨張を生じさせ、それにより、魅力的ではない可視的な表面トレースの外観(スネイルトレイルと称される)を引き起こす。これらの気泡の存在はまた、太陽電池から熱を消散させることをより困難にし、それにより太陽電池の過熱を増加させ、それらの寿命に影響を及ぼす。あるいは、EVAに基づく材料は、湿り比熱条件下で透過性であるという不利益を有する。
【0016】
さらに、EVAで製造された光電池モジュールはまた、寄生性の漏れ電流の存在により、電池の電気的特性の段階的な悪化に特に感受性である欠点も有する。この現象は、電位誘発劣化(PID)として知られる。
【0017】
上で言及した様々な欠点を克服するために、EVA以外の化合物を使用して太陽電池の封入に用いられる材料を製造する提案が先行技術で既になされた。例として、ポリビニルブチレート(PVB)、シリコーンゴム、又はポリオレフィンエラストマー(POE)が特に挙げられ、これらは、湿り比熱条件下でEVAで調製されたものよりも透過性が低い材料を得ることを目的とする。
【0018】
より具体的には、ポリオレフィンエラストマーの使用は、太陽電池の封入が意図された材料を製造するのに有利であることを証明するが、これは、これらの材料が湿り比熱条件下で低い透過性とともに高い電気抵抗率を有するためである。ポリオレフィンエラストマーは、特に、前面及び後面がガラスシートを使用して製造される光電池モジュールにおいて良好な性能特性を有する。
【0019】
しかしながら、ポリオレフィンエラストマーは、同じ架橋剤の存在下、同一の動作条件下で、エチレン-酢酸ビニルコポリマーよりも架橋が困難であることを証明する。より具体的には、ポリオレフィンエラストマーを架橋する方法は、特に、エチレン-酢酸ビニルコポリマーに用いられるものよりも高い架橋温度、より高い過酸化物の濃度、及び/又は長い架橋時間を必要とする場合がある。この結果は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの代わりとしてポリオレフィンエラストマー利用する産業における生産性の実質的な低下である。
【0020】
この困難を克服するために、特許公開第2017-085032号は、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)の存在下で架橋される、エチレン及びアルファオレフィンのコポリマーの光電池用途における使用を記載している。この種類の架橋剤を使用することにより、同様の動作条件下でエチレン及びアルファオレフィのコポリマーについて得られるものと比較して満足のいく架橋速度及び密度が可能となる。
【0021】
しかしながら、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)は、光電池モジュールの製造に役立つ様々な層を積層する工程が実施される前に、特にバレル中又は押し出し機のヘッドでポリオレフィンエラストマーの時期尚早の架橋を引き起こすリスクを伴う。時期尚早な架橋のこの現象(スコーチングとも呼ばれる)は、混合物の塊の中にゲル粒子の形成を引き起こす結果を有し、それは封入材料の一定数の不規則性(不均一性、表面粗さ)を引き起こし、最終的に光電池モジュールの外観及び特性に影響を与える可能性がある。さらに、過度のスコーチングは、押出プロセスの完全な停止につながり、材料の生産性を低下させる可能性がある。
【0022】
あるいは、スコーチの減少は、光電池モジュールモジュールの最終特性とそれらの生産性との両方に影響を及ぼしやすい。
【0023】
したがって、本発明の目的の一つは、所望の用途に適した熱機械的特性を備えた材料を得るために、前記材料の生産性及び最終特性に影響を及ぼしやすい時期尚早の架橋(又はスコーチ)のリスクを最小限にしながら、特に、満足のいく架橋速度及び架橋密度をもたらすポリオレフィンエラストマーを架橋するのに良好な特性を有する化合物を用いることである。
【0024】
換言すれば、スコーチ又は時期尚早の架橋のリスクを最小限にしながら、エチレン-酢酸ビニルコポリマーについて用いられるものと同様の動作条件下で、ポリオレフィンエラストマーを効果的に架橋することができる化合物を提供する真の必要性が存在する。
【0025】
上記の観点から、本発明の目的は、より具体的には、好ましくは光電池モジュールの太陽電池の封入が意図される材料を提供することであり、この材料は、湿り比熱条件下で、エチレン-酢酸ビニルコポリマーから得られる材料のものよりも高い電気抵抗率だけでなく、低い透過性も有する。
【0026】
したがって、本発明は、特に、
- 式(I)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート:
[式(I)中、R
1は、6以下の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]
- 以下の式(II)に、一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート:
[式(II)中、R
1は、7以上の数の炭素原子を含むアルキル基を表し、R
2はアルキル基を表す]
を含む組成物の、ポリオレフィンエラストマーを架橋するための使用を提供する。
【0027】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含む。用語「厳密に0.4%未満」とは、0から0.4重量%を意味し、エンドポイント0%は含まれ、エンドポイント0.4%は除外されることを意味する。
【0028】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0029】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の、組成物のモノペルオキシカーボネートの含有量の合計に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。より好ましくは、前記組成物は、tert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0030】
あるいは、本発明は、ポリオレフィンエラストマー、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマーを架橋するための、それぞれ式(I)及び(II)に一致する少なくとも二つの異なるモノペルオキシカーボネートの混合物の使用であって、混合物が、100重量部の混合物に対して計算して、厳密に0.4%未満のジアルキル ヒドロペルオキシドを含有する、使用に関係する。
【0031】
よって、本発明の組成物は、生産性及び得られる材料の最終特性を損なう可能性のあるスコーチ又は時期尚早の架橋のリスクを最小限にしながら、満足のいく架橋速度及び架橋密度をもたらす利点を有する。
【0032】
換言すれば、本発明の組成物は、ポリオレフィンエラストマーの全体的な架橋速度及び架橋密度を損なうことなく、スコーチ耐性時間の増加を可能にする。
【0033】
より具体的には、本発明の組成物は、特に、時期尚早の架橋のリスクを低減させながら、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネートで得られた良好な架橋特性の保全を可能にする。
【0034】
さらに、本発明の組成物は、エチレン及び酢酸ビニルのコポリマーに用いられるものと同様の動作条件下で、ポリオレフィンエラストマー、好ましくはエチレン及び少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマーの有効な架橋を可能にする。
【0035】
本発明は、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)、上記のような、式(I)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、及び上記のような、式(II)に一致する、式(I)のモノペルオキシカーボネートとは異なる少なくとも一つのモノペルオキシカーボネートを含む架橋性組成物にも関する。
【0036】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含む。「厳密に0.4%未満」とは、0から0.4重量%を意味し、0%のエンドポイントは含まれ、0.4%のエンドポイントは除外されることを意味すると理解される。
【0037】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。前記組成物は、好ましくは、100重量部の、組成物のモノペルオキシカーボネートの含有量の合計に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。より好ましくは、前記組成物は、tert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0038】
本発明の架橋性組成物は、高い生産性を有し、所望の用途に適した熱機械的特性を有する、材料、特に、好ましくは太陽電池のための封入材料又は密封材料へのアクセスを提供する。
【0039】
よって、本発明の架橋性組成物は、光電池モジュールを製造するための方法中に架橋を受ける利点を示す。
【0040】
さらに、本発明は、同様に、上記のような架橋性組成物を架橋する工程を含む、材料を製造するための方法に関する。
【0041】
本発明の方法は、良好な熱機械的特性を有し、その起こり得る構造の粗化が最小限にされる材料をもたらす利点を有する。
【0042】
同様に、本発明の別の主題は、上記の方法により得ることができる少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)を含む材料に関する。
【0043】
該材料は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーから得られる材料よりも、湿り比熱条件下で、良好な電気抵抗率を有し、透過性が低い利点を有する。
【0044】
さらに、この材料は、その耐スコーチ性により、著しい表面欠陥を示さない(又はほとんど示さない)。
【0045】
得られた材料は、好ましくは太陽電池を封入するための材料である。
【0046】
本発明は、同様に、太陽電池を封入するそのような材料を含む光電池モジュールに関する。
【0047】
光電池モジュールは、封入材料の存在による特性の増強を示す。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明及び実施例を読むとより明確になるであろう。
【0049】
以下では、別途指示されない限り、値の範囲のエンドポイントはこの範囲に含められる。
【0050】
「少なくとも一つ」という表現は、「一又は複数」という表現と同等である。
【0051】
用途
本発明に従って、上記の組成物は、ポリオレフィンエラストマー、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマーの架橋を可能にする。
【0052】
本発明の意味における「ポリオレフィン」は、オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等に由来するポリマーを意味する。
【0053】
本発明の意味における「~に由来する」とは、ポリマーの主鎖及び/又はポリマーの隣接する鎖(又はペンダント鎖)の単位は、ポリマーが作製されるモノマーの重合又は共重合に起因する。
【0054】
本発明の意味における「ポリオレフィンエラストマー」は、オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等に由来するエラストマーポリマーを意味する。
【0055】
本発明の意味における「エラストマー」とは、周囲温度で15分間にわたって、好ましくは、少なくとも20%の一軸変形を受け、好ましくは応力が作用しなくなったときの初期形状に比べて5%未満の残留変形を伴ってその初期形状を回復することができるポリマーを意味する。
【0056】
本発明によるポリオレフィンエラストマーは、有利にはエチレンに由来する。換言すれば、ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、エチレンから得られる少なくとも一つの単位を含む。
【0057】
本発明によるポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、少なくとも一つのアルファオレフィンをさらに含む。
【0058】
ポリオレフィンエラストマーは、ポリマーの全重量に対して計算して、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくはさらに少なくとも25重量%の量のアルファオレフィンを含む。
【0059】
ポリオレフィンエラストマーは、ポリマーの全重量に対して計算して、好ましくは50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくはさらに35重量%未満のアルファオレフィン含有量を含む。
【0060】
したがって、ポリオレフィンエラストマーは、ポリマーの全重量に対して計算して、15%から50重量%、好ましくは15%から45重量%、さらに良くは15%から35重量%、さらにより良くは20%から35重量%のアルファオレフィン含有量を含み得る。
【0061】
ポリマー内のアルファオレフィン含有量は、Randall(Rev. Macromol Chem. Phys.、C29(2及び3))により記載されるプロトコールに従って、炭素13核磁気共鳴(NMR)分光学により測定され得る。
【0062】
アルファオレフィンは、好ましくは直鎖状、分岐状又は環状C3-C20アルファオレフィンである。
【0063】
好ましくは、アルファオレフィンは、直鎖状又は分岐状C3-C20アルファオレフィンである。
【0064】
C3-C20アルファオレフィンは、好ましくは、プロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン及び1-オクタデセンからなる群より選択される。
【0065】
アルファオレフィンは、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサン等のアルファオレフィンをもたらす環状構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタンも含有し得る。
【0066】
特定の環状オレフィン、例えばノルボルネン及び対応するオレフィンは、本発明の意味においてアルファオレフィンと考えられてもよく、上記のアルファオレフィンの代わりに使用されてもよい。
【0067】
ポリオレフィンエラストマーは、有利には、エチレンとアルファオレフィン、特に直鎖状又は分岐状C3-C20アルファオレフィンのコポリマーである。
【0068】
ポリオレフィンエラストマーは、有利には、エチレンと少なくとも一つのアルファオレフィン、特に直鎖状又は分岐状C3-C20アルファオレフィンのコポリマーである。
【0069】
ポリオレフィンエラストマーは、有利には、その他のモノマーを排除して、エチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのみからなるコポリマーである。ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、特に超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、Dow Chemical社によりFlexomer(登録商標)の名前で販売されるエチレン/1-ヘキセン ポリエチレン)、エチレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/プロピレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ブテン/1-オクテンコポリマー、及びエチレン/1-ブテン/スチレンコポリマーからなる群より選択される。
【0070】
好ましいポリオレフィンコポリマーは、直鎖状又は均一に分岐状の、エチレンとアルファオレフィンのコポリマーからなる群より選択される。実質的に直鎖状のエチレンコポリマーが特に好ましく、それらは特に米国特許第5272236号、同第5278272号、及び同第5986028号に記載されている。
【0071】
直鎖状及び均一に分岐状の、エチレンとアルファオレフィンのコポリマーの例には、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによりTAFMER(登録商標)の名前で販売されるコポリマー、Exxon Chemical CompanyによりEXACT(登録商標)の名前で販売されるコポリマー、及びDow Chemical CompanyによりAFFINITY(登録商標)の名前で販売されるコポリマーが含まれる。
【0072】
ポリオレフィンエラストマーは、プロピレン、1-ブテン、並びに他のアルキレンベースのコポリマー、例えばプロピレンに由来する大部分の単位及び別のアルファオレフィンに由来する少数の単位(エチレンを含む)を含むコポリマーも含有し得る。本発明に属するポリプロピレンの例には、特に、Dow Chemical CompanyによりVERSIFY(登録商標)の名前で販売されるポリマー、及びExxon Mobil Chemical CompanyによりVISTAMAXX(登録商標)の名前で販売されるポリマーが含まれる。
【0073】
本発明のポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、ASTM D-3418-03手順に従って、示差走査熱量測定(DSC)により測定した、-35℃未満、好ましくは-40℃未満、より好ましくは-45℃、さらにより好ましくは-50℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0074】
ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、100g/10分未満、好ましくは75g/10分未満、より好ましくは50g/10分未満、さらにより好ましくは35g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0075】
有利には、ポリオレフィンエラストマーは、1g/10分未満、さらにより好ましくは5g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0076】
ポリオレフィンエラストマーのメルトフローインデックス(MFI)は、ASTM規格D1238、NF規格T51-016又はISO規格1133に記載される方法のような、押出性及び材料の成形可能性についての情報へのアクセスを提供する、熱可塑性材料を特性評価するために一般的に使用される方法に従って測定される。
【0077】
参照されるMFI値は、2.16kg(単位はg/10分で表す)の負荷下、190℃の温度でASTM規格D1238に従って決定される。
【0078】
ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、0.9g/cc未満、特に0.89g/cc未満、好ましくは0.885g/cc未満、さらにより好ましくは0.88g/cc未満、さらにより好ましくは0.875g/cc未満の密度を有する。
【0079】
ポリオレフィンエラストマーは、有利には、0.85g/cc超、さらにより好ましくは0.86g/cc超の密度を有する。
【0080】
ポリオレフィンエラストマーの密度は、ASTM規格D-792に記載される手順に従って測定される。
【0081】
本発明に従って、ポリオレフィンエラストマーを架橋するのに使用される組成物は、上記のような少なくとも一つの式(I)のモノペルオキシカーボネートを含む。
【0082】
好ましくは、式(I)において、R1は、6以下の数の炭素原子を含む分岐状アルキル基を表し、R2は分岐状アルキル基を表す。
【0083】
好ましくは、式(I)において、R1とR2は異なる。
【0084】
式(I)に従って、R1は、好ましくはC2-C5基である。R1は、好ましくはC3アルキル基、特に分岐状C3アルキル基(イソプロピル)である。
【0085】
式(I)に従って、R2は、好ましくはC1-C10、好ましくはC4-C8、アルキル基である。R2は、好ましくはC5又はC6アルキル基、特に分岐状C5(tert-アミル)又はC6(tert-ヘキシル)アルキル基である。
【0086】
有利には、R1はC2-C5アルキル基であり、R2はC1-C10アルキル基、特にC4-C8アルキル基である。
【0087】
さらに有利には、R1はC3アルキル基であり、R2はC5又はC6アルキル基である。
【0088】
式(I)のモノペルオキシカーボネートは、好ましくは、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、tert-アミル ペルオキシ n-プロピル モノカーボネート(TAPC)、tert-ブチルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TBIC)、tert-オクチル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TOIC)、及びtert-ヘキシル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(THIC)からなる群より選択される。
【0089】
式(I)のモノペルオキシカーボネートは、好ましくは、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)及びtert-ヘキシル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(THIC)からなる群より選択される。
【0090】
式(I)のモノペルオキシカーボネートは、好ましくは、以下の式:
のtert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)に相当する。
【0091】
好ましくは、式(II)において、R1は、7以上の数の炭素原子を含む分岐状アルキル基を表し、R2は分岐状アルキル基を表す。
【0092】
好ましくは、式(II)において、R1とR2は異なる。
【0093】
式(II)に従って、R1は、7以上の数の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはC7-C10アルキル基、より好ましくはC7-C9アルキル基である。R1は、好ましくはC8アルキル基、特に分岐状C8アルキル基である。
【0094】
式(II)に従って、R2は、好ましくはC1-C10、好ましくはC2-C9、特にC4-C8、アルキル基である。好ましくは、R2は、C4又はC5アルキル基、特に分岐状C4又はC5アルキル基である。より好ましくは、R2は、C4アルキル基、特に分岐状C4アルキル基である。
【0095】
有利には、R1は、C7-C10アルキル基、特にC7-C9アルキル基であり、R2は、C1-C10アルキル基、特にC2-C9、特にC4-C8、アルキル基である。
【0096】
式(II)のモノペルオキシカーボネートは、好ましくは、OO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)、OO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)、OO-tert-オクチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TOEC)、及びOO-tert-ヘキシル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(THEC)からなる群より選択される。
【0097】
上記及び本発明によるモノペルオキシカーボネートは、アルケマにより販売されるLuperox(登録商標)又はLupersol(登録商標)の商品名で市販されている。
【0098】
好ましくは、式(II)のモノペルオキシカーボネートは、OO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)又はOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)、より具体的にはOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)に相当する。
【0099】
式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートの間の質量比は、好ましくは0.1:99.9から80:20、好ましくは1:99から70:30、より好ましくは10:90から60:40の範囲で変化する。
【0100】
より好ましくは、式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートの間の質量比は60:40である。
【0101】
好ましくは、式(I)において、R1は6以下の数の炭素原子を含む分岐状アルキル基を表し、R2は分岐状アルキル基を表し、式(II)において、R1は7以上の数の炭素原子を含む分岐状アルキル基を表し、R2は分岐状アルキル基を表す。
【0102】
本発明は、有利には、ポリオレフィンエラストマーを架橋するための、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、並びにOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)、OO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)、OO-tert-オクチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TOEC)、及びOO-tert-ヘキシル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(THEC)からなる群より選択される式(II)のモノペルオキシカーボネートの使用に関する。
【0103】
好ましくは、本発明は、ポリオレフィンエラストマー、好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマーを架橋するための、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)及びOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)又はOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)の使用に関する。
【0104】
好ましくは、本発明は、ポリオレフィンエラストマーを架橋するための、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)及びOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)の使用に関する。
【0105】
これらの実施態様に従って、ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、エチレンに由来する少なくとも一つの単位を含む。
【0106】
これらの実施態様に従って、ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、エチレンとアルファオレフィン、特に直鎖状又は分岐状C3-C20アルファオレフィンのコポリマーからなる群より選択される。
【0107】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含む。
【0108】
本発明の組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含まない。前記組成物は、有利には、100重量部の、組成物のモノペルオキシカーボネートの含有量の合計に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。より好ましくは、
特に、本発明の組成物は、100重量部のtert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)及びOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)からなる混合物に対して計算して、0.4から4重量%の未満量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含まない。
【0109】
Tert-アルキル ヒドロペルオキシドは、好ましくは、t-ブチル ヒドロペルオキシド(TBHP)、t-アミル ヒドロペルオキシド(TAHP)、t-ヘキシル ヒドロペルオキシド(THHP)、1,1,3,3-テトラメチルブチル ヒドロペルオキシド(TOHP)、パラメンタン ヒドロペルオキシド(PMHP)、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロペルオキシド(2,5-2,5)、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0110】
より具体的には、組成物は、tert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0111】
架橋性組成物
上に示すように、架橋性組成物は:
- 上記のような少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)、
- 上記のような、式(I)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、及び
- 上記のような、式(II)に一致する少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート
を含む。
【0112】
前記組成物は、好ましくは、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、厳密に0.4重量%未満のtert-アルキル ヒドロペルオキシドを含む。
【0113】
好ましくは、組成物は、100重量部の式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートとの混合物に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0114】
好ましくは、前記組成物は、100重量部の、組成物のモノペルオキシカーボネートの含有量の合計に対して計算して、0.4から4重量%未満の量で存在するtert-アルキル ヒドロペルオキシドを欠いている。
【0115】
式(I)及び(II)のモノペルオキシカーボネートは、好ましくは、100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり3重量部以下の量で組成物中に存在する。
【0116】
したがって、式(I)及び(II)のモノペルオキシカーボネートの量は、好ましくは、100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり3重量部以下である。
【0117】
好ましくは、式(I)及び(II)のモノペルオキシカーボネートの量は、100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり0.1から3重量部未満、好ましくは0.2から1.5重量部、より好ましくは0.3から1重量部、より好ましくは0.4から1重量部、より好ましくは0.4から0.7重量部、さらにより好ましくはおよそ0.5重量部の範囲内で変化する。
【0118】
架橋性組成物は、有利には、ポリオレフィンエラストマー、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、並びにOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)、OO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)、OO-tert-オクチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TOEC)、及びOO-tert-ヘキシル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(THEC)からなる群より選択される式(II)のモノペルオキシカーボネートを含む。
【0119】
架橋性組成物は、好ましくは、ポリオレフィンエラストマー、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、及びOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)を含む。
【0120】
あるいは、架橋性組成物は、好ましくは、ポリオレフィンエラストマー、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)、及びOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)を含む。
【0121】
さらにより好ましくは、ポリオレフィンエラストマーは、好ましくは、エチレンとアルファオレフィンのコポリマー、特にエチレンと直鎖状又は分岐状C3-C20アルファオレフィンのコポリマーからなる群より選択される。
【0122】
式(I)のモノペルオキシカーボネートと式(II)のモノペルオキシカーボネートの間の質量比は、好ましくは60:40である。
【0123】
本発明の架橋性組成物は、有機過酸化物ではない少なくとも一つの助剤をさらに含み得る。
【0124】
前記助剤は、有利には、少なくとも一つのカルバメート、マレイミド、アクリレート、メタクリレート、又はアリル官能基を含む。アリルカルボキシレートが使用されてもよく、これは、アリル、ジアリル、及びトリアリルのタイプからなる群より選択され得る。
【0125】
前記助剤は、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、アルファメチルスチレン、アルファメチルスチレンダイマー、エチレン グリコール ジメタクリレート、フェニレン ジメタクリレート、ジエチレン グリコール ジメタクリレート、トリエチレン グリコール ジメタクリレート、テトラエチレン グリコール ジメタクリレート、ポリエチレン グリコール 200 ジメタクリレート、ポリエチレン グリコール 400 ジメタクリレート、1,3-ブタンジオール ジメタクリレート、1,4-ブタンジオール ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオール ジメタクリレート、1,12-ドデカンジオール ジメタクリレート、グリセロール 1,3-ジメタクリレート、ジウレタン ジメタクリレート、トリメチロールプロパン トリメタクリレート、ビスフェノール A エポキシ ジアクリレート、ジプロピレン グリコール ジアクリレート、トリプロピレン グリコール ジアクリレート、ポリエチレン グリコール 600 ジアクリレート、エチレン グリコール ジアクリレート、ジエチレン グリコール ジアクリレート、トリエチレン グリコール ジアクリレート、テトラエチレン グリコール ジアクリレート、ネオペンチル グリコール エトキシレート ジアクリレート、ブタンジオール ジアクリレート、ヘキサンジオール ジアクリレート、脂肪族ウレタン ジアクリレート、トリメチロールプロパン トリアクリレート、トリメチロールプロパン エトキシレート トリアクリレート、トリメチロールプロパン プロポキシレート トリアクリレート、グリセロール プロポキシレート トリアクリレート、脂肪族ウレタン トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリスリトール ペンタアクリレート、トリアリル シアヌレート(TAC)、トリアリル イソシアヌレート、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、ブタジエン、クロロプレン、及びイソプレンからなる群より選択され得る。
【0126】
より好ましくは、助剤は、以下:トリアリル シアヌレート、トリアリル イソシアヌレート、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、トリアリル トリメリテート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択され、好ましくは以下:トリアリル シアヌレート(TAC)、トリアリル イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)からなる群より選択され、さらにより好ましくはトリアリル イソシアヌレートである。
【0127】
前記助剤は、組成物の全重量に対して、0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%で存在し得る。
【0128】
本発明の架橋性組成物に助剤を使用する主な目的は、架橋速度を増加させることである。この助剤はまた、前記過酸化物の分解中の残留ガス排出の低減、及び最終的には封入材料中の気泡の数の低減を可能にする。
【0129】
モノペルオキシカーボネートの架橋助剤に対する質量比は、好ましくは1:10から10:1、最も好ましくは1:3から3:1の範囲である。
【0130】
本発明の架橋性組成物は、一又は複数の添加剤、例えばカップリング剤、UV安定剤、UV吸収剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、染料、有機又は無機顔料、及びこれらの混合物をさらに含み得る。カップリング剤の例は、モノアルキル チタネート、(ビニル)トリクロロシラン、及び(ビニル)トリアルコキシシランである。それらは、エチレンポリマーの重量に対して、0.01から5重量%存在し得る。
【0131】
UV安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)から選択され得るが、一方、UV吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン、トリアジン、及びベンゾトリアゾールから選択され得る。これらの化合物は、エチレンポリマーの重量に対して、0.01から3重量%存在し得る。
【0132】
二酸化ケイ素、アルミナ、タルク、及び炭酸カルシウム等の無機充填剤は、機械的強度を増強させるために添加され得るが、ナノメートルの粘土は、それらが与える透明性のために好ましい。
【0133】
有機又は無機顔料はまた、架橋性組成物を着色するために添加され得る。白色を生成することを可能にする二酸化チタンが特に挙げられ、これは、組成物が、光電池パネルの後面で使用されるフィルムを製造するために用いられる場合に特に有用である。
【0134】
可塑剤の例は、パラフィン系又は芳香族鉱物油、フタレート、アゼレート、アジペートなどである。
【0135】
酸化防止剤は、フェノール、ホスフェート、又は硫黄酸化防止剤であり得る。一変型として、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン等のキノリンが酸化防止剤として使用され得る。
【0136】
好ましい一実施態様によれば、架橋性組成物中の過酸化物の全量は、100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり3重量部未満、より好ましくは100重量部のポリオレフィンエラストマー当たり1.5重量部未満である。
【0137】
より好ましくは、架橋性組成物は、上記のようなポリオレフィンエラストマー、上記のような、式(I)のモノペルオキシカーボネート、及び式(II)のモノペルオキシカーボネート、及び任意選択的に以下の添加剤の少なくとも一つ:カップリング剤、UV安定剤、UV吸収剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、染料、助剤、及びそれらの混合物からなる。
【0138】
本発明の架橋性組成物は、好ましくは、上記のようなポリオレフィンエラストマー、式(I)のモノペルオキシカーボネート、上記のような式(II)のモノペルオキシカーボネート、カップリング剤、及び助剤を含む。
【0139】
式(II)のモノペルオキシカーボネートの使用
本発明はまた、上記のような、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)、及び上記のような式(I)の少なくとも一つのモノペルオキシカーボネートを含む組成物の時期尚早の架橋のリスクを低減するための、上記のような、式(II)のモノペルオキシカーボネートの使用を対象とする。
【0140】
あるいは、式(II)のモノペルオキシカーボネートは、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)及び式(I)の少なくとも一つのモノペルオキシカーボネートを含む組成物のスコーチ時間の増加を可能にする。
【0141】
架橋性組成物を製造するための方法
本発明は、同様に、上記のような、少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくは、少なくとも一つの、エチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)、上記のような、式(I)の少なくとも一つのモノペルオキシカーボネート、及び上記のような、式(II)に一致する、式(I)のモノペルオキシカーボネートとは異なる少なくとも一つのモノペルオキシカーボネートを混合する工程を含む、架橋性組成物を製造するための方法に関する。
【0142】
混合工程は、有利には、好ましくは本発明のモノペルオキシカーボネートの分解温度より低い温度で、連続ミキサー及びミキサー-押出機等の従来の装置で実行され得る。
【0143】
架橋性組成物から材料を製造するための方法
本発明は、同様に、上記のような架橋性組成物を架橋する(又は硬化させる)工程を含む、材料を製造するための方法に関する。
【0144】
材料は、好ましくは、エチレンから得られる少なくとも一つの単位を含むポリオレフィンエラストマーを含む。
【0145】
材料は、特に、封入材料、特に、太陽電池、ワイヤ及びケーブル絶縁、パイプ及びホース(例えば、自動車用ラジエータ、飲料水、及び床暖房のためのものを含む)、ローラーコーティング、回転成形、携帯電話物品、及び靴底を封入するための材料からなる群より選択される。
【0146】
材料は、有利には太陽電池を封入するための材料である。
【0147】
架橋(又は硬化)工程は、好ましくは積層工程からなる。
【0148】
架橋工程(a)は、好ましくは130から250℃、好ましくは130から180℃、より好ましくは140から165℃の温度で実行される。
【0149】
前記架橋工程(a)は、好ましくは8から30分、より好ましくは12から25分の時間で実行される。
【0150】
前記方法は、好ましくは、架橋工程(a)より前及び/又は(a)と同時に、上記のような組成物の成形、押出成形、及び射出成形から選択される工程(a’)を含む。材料が太陽電池を封入するための材料であるとき、前記工程は好ましくは押出成形工程である。
【0151】
工程(a’)は、例えば、50から2000μm、好ましくは100から1000μmの厚さを有するシートを製造するために実施され得る。
【0152】
前記工程(a’)は、Tダイ押出機、又は変型として、二本ロール機に結合した二軸押出機を用いて実施され得る。
【0153】
工程(a’)は、80から150℃、より好ましくは90から120℃の温度で実施される。
【0154】
好ましくは、工程(a’)の間に架橋は得られない。
【0155】
特定の一実施態様では、工程(a’)及び(a)は、単一工程で実施される。
【0156】
光電池モジュールを製造するための方法
一実施態様によれば、本発明は:
(i)以下:
・光電池モジュールの前面を形成する第1の透明な層、
・本発明の架橋性組成物から得られる層、
・互いに電気的に結合し、並んで配置される複数の太陽電池、
・本発明の架橋性組成物から得られる層、
・モジュールの後面(又はバッキング)を形成する第2の層又は多層アセンブリ、
を連続して含むアセンブリを積層する少なくとも一つの工程と、
(ii)工程(i)中に一緒に積層された層をプレスする少なくとも一つの工程
を含む、光電池モジュールを製造するための方法に関する。
【0157】
光電池モジュールの前面を形成する第1の層は、ガラスシート又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のシートであり得る。
【0158】
モジュールの後面を形成する第2の層は、薄ガラスシート又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のシートであり得る。
【0159】
あるいは、モジュールの後面を形成する多層アセンブリは、ポリエチレン テレフタレート(PET)又はポリアミド(PA)等の電気絶縁ポリマーのフィルム(その頂部には、ポリフッ化ビニル(PVF)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフルオロポリマーに基づく一又は複数のフィルムが存在し、その層の頂部には、金属、例えばアルミニウムのフィルムが存在し得る)から構成される。
【0160】
変型例では、モジュールの後面を形成する多層アセンブリは、ガラスシート(その頂部には、上記の方法により得ることができるポリオレフィンエラストマーを含む材料が存在する)で構成される。
【0161】
太陽電池は、好ましくは、結晶シリコン又は有機光電池物質からなる。
【0162】
本発明の架橋性組成物から得られる層は、好ましくはシートである。
【0163】
プレス工程は、加熱しながら及び/又は減圧下で、例えば130から250℃、好ましくは130から180℃、より好ましくは140から165℃の温度で、減圧下で、8から30分間、例えば8から25分の範囲で変化し得る硬化時間にわたって、従来の技術により実施され得る。本発明の組成物は、このプレス工程中に又は続いて架橋され得る。
【0164】
本方法は、好ましくは、プレス及び硬化(又は架橋)の単一の同時工程を含む。
【0165】
ポリオレフィンエラストマーに基づく材料
同様に、本発明の別の主題は、上記の方法により得ることができる少なくとも一つのポリオレフィンエラストマー(好ましくはエチレンと少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー)を含む材料に関する。
【0166】
得られる材料は、好ましくは、封入材料、特に、太陽電池、ワイヤ及びケーブル絶縁、パイプ及びホース(例えば、自動車用ラジエータ、飲料水、及び床暖房のためのものを含む)、ローラーコーティング、回転成形、及び携帯電話物品、及び靴底を封入するための材料からなる群より選択される。
【0167】
材料は、有利には封入材料、さらにより好ましくは太陽電池を封入するための材料である。
【0168】
より有利には、封入材料は、太陽電池と光電池モジュールの前面を形成するガラスパネル(上部ガラスパネル)との間に配置される透明なフィルムであるか、又は、二重ガラスプロセスの場合は、モジュールの後部を形成するガラスパネル(下部ガラスパネル)と太陽電池との間に配置される透明若しくは着色フィルムである。
【0169】
よって、材料は、好ましくは、特に二重ガラスプロセスにおける、光電池モジュールを製造するための方法において使用される。
【0170】
より好ましくは、ポリオレフィンエラストマーを含む材料は、フィルム、特にエチレンポリマー、特に直鎖状及び均一に分岐状のエチレンとアルファオレフィンのコポリマーのフィルムである。
【0171】
本発明の材料は、架橋密度を改善し、スコーチ問題を著しく減少させるか、又は消失させもする。これにより、表面欠陥がなく、高い抵抗率を示すフィルムを得ることができる。
【0172】
光電池モジュール
本発明は、同様に、上記のような太陽電池を封入するための少なくとも一つの材料を含む光電池モジュールに関する。
【0173】
特に、本発明の光電池モジュールは、少なくとも以下:
・光電池モジュールの前面を形成し、光束を受け取ることが意図される第1の透明な層、
・上記のような、互いに電気的に結合し、並んで配置される複数の太陽電池を封入する材料、
・光電池モジュールの後面(又はバッキング)を形成する第2の層又は多層アセンブリ
を含み;
複数の太陽電池を封入する材料は、多層アセンブリの第1の層と第2の層との間に配置される。
【0174】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つが、本質的に限定するものではない。
【実施例0175】
実施例1:
次の組成物は以下を混合することにより調製された:
- ポリオレフィンエラストマー(日本ポリエチレン株式会社のKST340T、MFI 12~16g/10分、5kgの負荷;55~70℃の融点、DSCにより測定)、tert-アミルペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(アルケマにより販売されるLuperox(登録商標)TAIC)
- 同じポリオレフィンエラストマーであるが、OO-tert-ブチル O-イソプロピル モノペルオキシカーボネート(アルケマにより販売されるLuperox(登録商標)TBIC)を含むもの、
- 同じポリオレフィンエラストマーであるが、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)とOO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)を60:40の質量比で含むもの、
- 同じポリオレフィンエラストマーであるが、tert-アミル ペルオキシ イソプロピル モノカーボネート(TAIC)とOO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)を60:40の質量比で含むもの、
- 同じポリオレフィンエラストマーであるが、OO-tert-アミル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TAEC)を含むもの、
- 同じポリオレフィンエラストマーであるが、OO-tert-ブチル O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(TBEC)を含むもの。
【0176】
このように、50回転/分の回転速度を使用して、12分間、35℃の温度でHaake密閉式ミキサー内で調製された。ポリマー混合物は、続いて、50℃の温度に調節された開放型ロール機に通され、およそ2mmの厚さのシートが製造される。
【0177】
およそ2から3グラムの上記の組成物の試料を、試料の硬化特性を測定することができ、結果を分析するためのソフトウェアを含む、GOTECHにより供給された可動ダイレオメータ(MDR)のプレートに適用する。試料のそれぞれを、二つのダイの間の温度制御空洞(下部は振動して試料に周期的な応力又は変形を加え、上部のダイは試料の変形に対するトルク応答を測定するためのトルクセンサーに接続されている)に置く。
【0178】
剛性は時間の関数として継続的に記録される。試料の剛性は、発生する加硫に伴って増加する。
【0179】
この機器は、他のデータの中でも、国際標準(ASTM D5289及びISO 6502)により定義される、ML(最小トルク)、MH(最大トルク、到達したときに、硬化状態に到達するために必要な時間も定義する)、tc10(硬化状態の10%までの時間)、及びtc90(硬化状態の90%までの時間)の計算値を提供することができる。
【0180】
MDRは、115℃及び145℃の温度で、試料に0.5°の振動振幅(変形の程度)を30分間加えて活性化される。スコーチ時間は、全硬化の10%に達するのに必要な時間、すなわちtc10として定義される。
【0181】
この試験は、以下の試料で実施され、モノペルオキシカーボネートの量は、100部のPOE あたりの部(phr)として示される:
【0182】
TBICの使用は、架橋時間(tc90)が20分であるとすれば、遅すぎるPOE架橋速度をもたらし、産業的には不十分である。
【0183】
TAICの使用は、TBICに対するPOE架橋速度の増加と架橋密度のわずかな改善(MH-ML)を可能にする。しかしながら、スコーチ時間(tc10)は問題を引き起こし、例えば封入材料の表面に粗さを生み出すことにより、産業的見地からのリスクを生じさせ得る。
【0184】
TBECの使用は、長すぎるポリマー架橋時間(tc90)をもたらす。さらに、TAEC及びTBECの使用は、不十分な架橋密度(MH-ML)をもたらす。
【0185】
TAICとTAECの混合物の使用は、TBICのみ又はTBECのみを含有する配合物と比較してPOEの架橋を促進させること(tc90)と、TAICのみを含有する配合物と比較して、スコーチ時間(tc10)を延長することにより、時期尚早の架橋のリスクから保護しながら、TAEC又はTBECよりも良好な架橋密度を保持することとの両方を可能にする。
【0186】
同様に、TAICとTBECの混合物の使用は、TBICのみ又はTBECのみを含有する配合物と比較してPOEの架橋を促進させること(tc90)と、TAICのみを含有する配合物と比較して、スコーチ時間(tc10)を延長することにより、時期尚早の架橋のリスクから保護しながら、良好な架橋密度を保持することとの両方を可能にする。