(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028730
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】腎細胞がん(RCC)およびその他のがんに対する免疫療法において使用するための新規ペプチドおよびペプチドとスキャフォールドの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240227BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240227BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240227BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240227BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240227BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240227BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240227BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240227BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61K35/17
A61K39/00 H
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/64
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K35/76
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197848
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2023010823の分割
【原出願日】2016-03-24
(31)【優先権主張番号】1505585.8
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/140,767
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】メア,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインシェンク,トニ
(72)【発明者】
【氏名】スホール,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハープリート
(72)【発明者】
【氏名】ソング,コレット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんの免疫療法において使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞を提供する。
【解決手段】本発明は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号114、および配列番号1~配列番号114と少なくとも88%相同的なその変異配列の群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドおよびその薬学的に許容可能な塩であって;前記ペプチドが完全長ポリペプチドでない、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、MHCクラス-Iまたは-II分子と結合する能力を有し、前記ペプチドが前記MHCと結合した場合に、CD4および/またはCD8T細胞によって認識されることができ、前記変異体が主要組織適合性複合体(MHC)分子と結合し、および/またはT細胞を前記変異体ペプチドと交差反応させる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
そのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号114のいずれか1つに記載の一続きのアミノ酸を含んでなる、請求項1または2に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項4】
前記ペプチドまたはその変異体が、8~100、好ましくは8~30、より好ましくは8~16のアミノ酸の全長を有し、最も好ましくは前記ペプチドが、配列番号1~配列番号114のいずれかに記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項5】
前記ペプチドが、修飾され、および/または非ペプチド結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項6】
前記ペプチドが、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなる融合タンパク質の一部である、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体をエンコードする核酸であって、任意選択的に異種プロモーター配列と結合する、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を発現する能力がある、発現ベクター。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載の発現ベクターを含んでなり、好ましくは樹状細胞などの抗原提示細胞である、組換え宿主細胞。
【請求項10】
医療において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、または請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドを提示する、または請求項7に記載の核酸を発現する、または請求項8に記載の発現ベクターを有する、請求項9に記載の宿主細胞を培養するステップと、前記ペプチドまたはその変異体を前記宿主細胞またはその培養液から単離するステップとを含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を製造する方法。
【請求項12】
T細胞を、適切な抗原提示細胞の表面または抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面に発現される抗原負荷ヒトクラスIまたはII MHC分子に、前記T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり生体外で接触させるステップを含んでなり、前記抗原が、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチドである、活性化Tリンパ球を製造するインビトロ法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する細胞を選択的に認識する、請求項12に記載の方法によって製造される活性化Tリンパ球。
【請求項14】
請求項13で定義される活性T細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、その標的細胞が、請求項1~5のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを提示する患者において、標的細胞を死滅させる方法。
【請求項15】
抗体、特に、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を特異的に認識する、可溶性または膜結合抗体であって、好ましくは、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体がMHC分子と結合した場合に、前記抗体が免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する、抗体。
【請求項16】
免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
がんを治療するためのまたはがん治療薬の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の細胞、請求項13に記載の活性化Tリンパ球、または請求項15に記載の抗体の使用。
【請求項18】
がんが、ペプチド配列番号1~配列番号114がそれに由来するタンパク質の過剰発現を示す、肺がん、脳がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がん、およびその他の腫瘍の群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド変異体、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項10に記載の細胞、請求項13に記載の活性化Tリンパ球、または請求項15に記載の抗体を含有する医薬組成物を溶液または凍結乾燥形態で含んでなる容器;
(b)任意選択的に、前記凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)任意選択的に、配列番号1~配列番号151からなる群から選択される少なくとももう1つのペプチド、および
(d)任意選択的に、(i)前記溶液の使用、または(ii)前記凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書
を含んでなるキット。
【請求項20】
(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(V)フィルター、(vi)針、または(V)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記ペプチドが、配列番号1~配列番号114からなる群から選択される、請求項18または19に記載のキット。
【請求項22】
a)前記個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される、腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;
b)a)で同定された前記ペプチドを、正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および/または過剰提示について予備選別されたペプチド貯蔵庫と比較するステップと;
c)少なくとも1つのペプチドを、前記患者において同定されたTUMAPと一致する前記貯蔵庫から選択するステップと;
d)ステップc)に基づいて、個別化ワクチンまたは化合物ベースのまたは細胞療法を構築するステップと
を含んでなる、個別化抗がんワクチンを製造する方法。
【請求項23】
前記TUMAPが、
a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;
a2)前記発現データを、前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップと
によって同定される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
結合ペプチドを前記腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から溶出させて、前記溶出したリガンドを配列決定することで、MHCリガンドの配列が同定される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍サンプルの組織型に対応する前記正常組織が、前記同一患者から得られる、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記貯蔵庫に包含される前記ペプチドが、
aa.正常組織または組織群と比較して悪性組織で過剰発現される遺伝子を同定するステップを含んでなる、マイクロアレイまたは配列決定ベース発現プロファイリングなどの高度並列法によって、ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を実施するステップと;
ab.ステップaaで検出された、選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、ペプチドを選択するステップと;
ac.健常ドナーまたは前記患者からのヒトT細胞を使用した生体外免疫原性アッセイを含んでなる、前記選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導を判定するステップ;または
ba.HLAリガンドを前記腫瘍サンプルから質量分析を使用して同定するステップと;
bb.正常組織または組織群と比較して悪性組織で過剰発現される遺伝子を同定するステップを含んでなる、マイクロアレイまたは配列決定ベース発現プロファイリングなどの高度並列法によって、ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を実施するステップと;
bc.前記同定されたHLAリガンドを前記遺伝子発現データと比較するステップと;
bd.ステップbcで検出された、選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、ペプチドを選択するステップと;
be.ステップbdから選択されたTUMAPを腫瘍組織上で再検出し、健常組織上の検出欠如または希な検出が、mRNAレベルにおける過剰発現の関連性を裏付けるステップと;
bf.健常ドナーまたは前記患者からのヒトT細胞を使用した生体外免疫原性アッセイを含んでなる、前記選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導を判定するステップと
に基づいて同定される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記貯蔵庫に包含される前記ペプチドの免疫原性が、生体外免疫原性アッセイ、個々のHLA結合についての患者免疫モニタリング、MHC多量体染色、ELISPOTアッセイおよび/または細胞内サイトカイン染色を含んでなる方法によって判定される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記貯蔵庫が、配列番号1~配列番号151からなる群から選択される複数のペプチドを含んでなる、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記個々の患者からの正常な対応する組織と比較して前記腫瘍サンプルに特有の少なくとも1つの変異を同定するステップと、前記ワクチンに包含するために、または細胞療法を作成するために、前記変異と関連があるペプチドを選択するステップとをさらに含んでなる、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの変異が、全ゲノム配列決定によって同定される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
T細胞受容体、好ましくは可溶性または膜結合T細胞受容体であって、HLAリガンドと反応性であり、前記リガンドが配列番号1~配列番号151からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有する、T細胞受容体。
【請求項32】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~配列番号151と少なくとも88%同一である、請求項30に記載のT細胞受容体。
【請求項33】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~配列番号151のいずれかからなる、請求項30または31に記載のT細胞受容体。
【請求項34】
前記T細胞受容体が可溶性分子として提供され、任意選択的に、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する、請求項30~32のいずれか一項に記載のT細胞受容体。
【請求項35】
請求項30~33のいずれか一項に記載のTCRをエンコードする核酸であって、任意選択的に異種プロモーター配列と結合する、核酸。
【請求項36】
請求項34に記載の核酸を発現する能力がある、発現ベクター。
【請求項37】
請求項34に記載の核酸、または請求項15に記載の抗体をコードする核酸、または請求項35に記載の発現ベクターを含んでなる、好ましくはT細胞またはNK細胞である、宿主細胞。
【請求項38】
請求項36に記載の宿主細胞を培養するステップと、前記T細胞受容体を前記宿主細胞および/またはその培養液から単離するステップとを含んでなる、請求項30~33のいずれか一項に記載のT細胞受容体を製造する方法。
【請求項39】
a)配列番号1~配列番号114からなる群から選択されるペプチド;
b)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチドMHC複合体と反応性のT細胞受容体;
c)a)に記載のペプチドと、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端のアミノ酸1~80とを含んでなる融合タンパク質;
d)a)~c)のいずれかをコードする核酸、または前記核酸を含んでなる発現ベクター;
e)d)の発現ベクターを含んでなる宿主細胞;
f)T細胞を、抗原特異的様式でT細胞を活性化するのに十分な時間にわたり、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるa)に記載のペプチドと生体外で接触させるステップを含んでなる方法、ならびにこれらの活性化T細胞を自己または他の患者に移入する方法によって得られる、活性化Tリンパ球;
g)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチド-MHC複合体および/またはa)に記載のペプチドを提示する細胞と反応性であり、例えば、免疫活性化ドメインまたは毒素との融合によって潜在的に修飾される、抗体、または可溶性T細胞受容体;
h)配列番号1~配列番号114からなる群から選択されるペプチドを認識し、および/または配列番号1~配列番号151からなる群から選択されるペプチドとMHC分子との複合体を認識する、アプタマー;
i)a)~h)のいずれかに記載のコンジュゲートされまたは標識されたペプチドまたはスキャフォールド
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分と、薬学的に許容可能な担体、および任意選択的に、薬学的に許容可能な賦形剤および/または安定剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項40】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体、好ましくはMHC分子と結合している請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドまたはその変異体を特異的に認識する、アプタマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法において使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本発明は、がんの免疫療法に関する。本発明は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【0002】
本発明は、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスI分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発のための標的として、使用され得る。
【背景技術】
【0003】
腎臓がんは女性より男性でより一般的であり、2012年には世界的に、男性では9番目に一般的ながんであり(214,000症例)、女性では14番目に一般的ながんである(124,000症例)。新規症例の70%は先進国および高度先進国で出現し、新規症例の34%は欧州にあり、新規症例の19%は北米にあると推定される。2012年における腎臓がんによる推定死亡者は、143,000人であった(男性91,000人、女性52,000人);腎臓がんは、全世界のがん死亡の第16番目に一般的な原因である。
【0004】
最も高い発生率は、チェコ共和国で見られる。高い発生率は、北欧、東欧、北米、オーストラリアでも見られる。アフリカや東アジアの多くでは、低い発生率が推定されている。症例死亡率は、中進国または開発途上国(全体的な死亡対罹患率、0.5)よりも、高度先進国(0.4)においてより低い。症例の3.1%のみがアフリカで診断されたが、この地域では死亡の5.7%が発生した。発生率と死亡率は、開発程度が異なる多くの国々において増大している(World Cancer Report,2014)。
【0005】
大部分の腎臓がんは、腎実質内の異なる細胞型から生じる腫瘍の不均一なクラスである、腎細胞がん(RCC)である。大部分は明細胞腎臓がん(腎臓がん症例の約70%)であり、乳頭状(10~15%)、色素嫌性(約5%)、集合尿細管(<1%)腎細胞がんがそれに続く。これらの腎細胞腫瘍サブタイプのそれぞれは、異なる遺伝的特徴を有する(Moch,2013;World Health Organization Classification of Tumours,2004)。
【0006】
腎細胞がん(RCC)は、早期警告徴候の欠如、多様な臨床徴候、および放射線および化学療法に対する抵抗性によって特徴付けられる。RCCを有する患者の合計25~30%が、最初に明らかな転移を呈する(Hofmann et al.,2005)。RCC患者の約3分の1は、時間経過と共に転移性疾患を発症する。したがって、RCC患者のほぼ50~60%が最終的に転移性疾患を呈する(Bleumer et al.,2003;Hofmann et al.,2005)。転移性疾患がある者のうち、およそ75%が肺転移、36%がリンパ節および/または軟部組織合併症、20%が骨合併症、および18%が肝臓合併症を有する(Sachdeva et al.,2010)。
【0007】
サイトカインベースの第一選択全身療法を受けている、転移性疾患があるRCC患者は、5つの予後因子に基づいて、生存を予測するリスク群に分類され得る(Motzer et al.,2004)。より短い生存率に関連する治療前の特徴は、カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(<80%)、高血清乳酸デヒドロゲナーゼ(>1.5ULN)、低ヘモグロビン(<LLN)、高い補正血清カルシウム(>10mg/dL)、1年未満の診断から治療までの期間である。これらのリスク因子に基づいて、患者は3つのリスク群に分類された。リスク因子ゼロ(好ましいリスク)がある患者の18%における、死亡までの中位時間は30ヶ月であった。患者の62%は、1つまたは2つのリスク因子(中程度のリスク)を有し、この群の生存期間中央値は14ヶ月であった。患者の20%を構成する3つ以上のリスク因子(芳しくないリスク)がある患者は、5ヶ月間の生存期間中央値を有した。このMSKCCリスク群分類の適用は、進行したRCCの臨床試験に広く用いられている。リスク分類は、臨床試験の計画および結果の解釈、治療の方向付けのために使用し得る。
【0008】
RCCのリスク要因は、タバコの喫煙および肥満である。様々なメタ分析が、喫煙常習は非喫煙と比較して、腎臓がんのリスクを高めることを確認した(Cho et al.,2011;Hunt et al.,2005)。1日当たりの喫煙タバコ本数と関連がある、リスクの用量依存性増大もある。リスクは、禁煙後5年間で低下する。過体重、特に肥満は、女性と男性の双方にとって腎臓がんのリスク因子である(Ljungberg et al.,2011)。過体重および肥満に帰せられる腎臓がんの全ての症例の比率は、米国では約40%、欧州諸国では最高40%と推定されている(Renehan et al.,2008;Renehan et al.,2010)。肥満が腎臓の発がんに影響を与える機序は、不明確である。性ステロイドホルモンは、直接的な内分泌受容体媒介効果によって、腎細胞の増殖に影響を及ぼしてもよい。性ホルモン結合性グロブリンおよびプロゲステロンのレベルの低下、インスリン抵抗性、およびインスリン様成長因子1(IGF-1)などの成長因子のレベル増大などの内分泌疾患を併発する肥満は、腎臓の発がんに寄与してもよい。近年、症例対照研究が、明細胞がんと肥満とのより強い関連性を報告している(World Cancer Report,2014)。
【0009】
初期治療は、最も一般的には、罹患した腎臓の部分的または完全除去のどちらかであり、依然として根治的治療の主流である(Rini et al.,2008)。予後スコアの悪い患者の第一選択治療として、いくつかのがん団体および協会によって作成された指針は、インターフェロン-α(IFN-α)およびmTOR阻害剤テムシロリムス(Torisel(登録商標))と組み合わされた、受容体チロシンキナーゼ阻害物質(TKI)であるスニチニブ(Sutent(登録商標))およびパゾパニブ(Votrient(登録商標))、モノクローナル抗体であるベバシズマブ(Avastin(登録商標))を推奨する。米国NCCNならびに欧州EAUおよびESMOによって作成された指針に基づいて、サイトカイン(IFN-α、IL-2)による先行治療法が失敗したRCC患者では、TKIであるソラフェニブ、パゾパニブまたは最近ではアキシチニブが、第二選択治療として推奨される。NCCN指針は、この状況(NCCNカテゴリーIによる高レベルの証拠)において、スニチニブもまた勧める。
【0010】
エベロリムスおよびアキシチニブは、確立されたガイドラインに従ったTKIを用いたVEGF標的治療の恩恵を受けていない患者のための第2選択療法として推奨される。
【0011】
RCCの既知の免疫原性(immunogenity)は、進行したRCCにおける免疫療法およびがんワクチンの使用を支持する基礎に相当する。
【0012】
リンパ球PD-1発現とRCCの進行期、等級、および予後との間の興味深い相関、ならびにRCC腫瘍細胞による選択的PD-L1発現と、より芳しくない臨床転帰との潜在的関連性は、単独のまたは抗血管新生薬またはその他の免疫療法アプローチと併用される、RCC治療のための新規抗PD-1/PD-L1薬の開発をもたらした(Massari et al.,2015)。
【0013】
進行したRCCでは、TRIST試験と称される第III相がんワクチン治験が、第一選択標準的治療に追加された、TroVax(ポックスウイルスベクターと共に腫瘍関連抗原である5T4を使用したワクチン)が、局所的進行またはmRCCがある患者の生存期間を延長するかどうかを評価する。いずれの群でも生存期間中央値に達しておらず、399人の患者(54%)が試験に残っているが、データの解析は、TroVaxが免疫学的に活性であり、5T4特異的抗体応答の強度と改善された生存期間との間に相関があることの双方を実証する、以前の臨床結果を裏付ける。さらにRCCにおいて過剰発現されるエピトープを使用してペプチドワクチンを検索する、いくつかの研究がある。
【0014】
腫瘍ワクチンの様々なアプローチが、研究されている。腫瘍細胞溶解産物、樹状細胞と腫瘍細胞の融合物、または全腫瘍RNAをはじめとする、全腫瘍アプローチを使用した研究が、RCC患者において実施され、これらの治験のいくつかで腫瘍病変の寛解が報告された(Avigan et al.,2004;Holtl et al.,2002;Marten et al.,2002;Su et al.,2003;Wittig et al.,2001)。
【0015】
ここ数年間に、RCCで発現され、抗原特異的CTLによって認識されるいくつかのヒトTAAが、発現クローニング、逆免疫学アプローチ、またはDNAマイクロアレイ技術を使用して定義され、特徴付けられている(Dannenmann et al.,2013;Michael and Pandha,2003;Minami et al.,2014;Renkvist et al.,2001;Wierecky et al.,2006)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
がんの治療に伴う重度の副作用および費用を考慮すると、がん全般、そして特にRCCの治療に使用し得る要素を同定する必要がある。がんのより良い診断、予後の評価、および治療成功の予測につながる、がん全般、特にRCCのためのバイオマーカーに相当する要素を同定する必要性もまたある。
【0017】
がんの免疫療法は、がん細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する選択肢に相当する。がん免疫療法は、腫瘍関連抗原の存在を利用する。
【0018】
腫瘍関連抗原(TAA)の現行の分類は、次の主要群を含んでなる:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る、これまでに同定された最初のTAAは、このクラスに属し、元々はがん精巣(CT)抗原と称されたが、それは、そのメンバーが組織学的に異なるヒト腫瘍において発現し、正常組織では、精巣の精母細胞/精原細胞のみに存在し、時として胎盤に存在するためであった。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織のT細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーおよびNY-ESO-1である。
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有される。既知の分化抗原のほとんどは、メラノーマおよび正常メラノサイトに見られる。これらのメラノサイト系関連タンパク質の多くは、メラニン生合成に関与し、したがって腫瘍特異的でないが、それでもなおがん免疫療法のために広く利用されている。例としては、メラノーマに対するチロシナーゼとMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
c)過剰発現されたTAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセスされて潜在的に提示され得るエピトープの多くは、T細胞認識の閾値レベル未満であり得る一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、先に確立された免疫寛容の破壊による抗がん応答を始動し得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼまたはWT1である。
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行に関連する。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型があるタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍(関連)エクソンに由来する場合に生じてもよい。
e)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、特異的でなく腫瘍において過剰発現もされないタンパク質から生じてもよいが、それでもなお、腫瘍において主に活性である翻訳後プロセスによって腫瘍関連になる。このクラスの例は、腫瘍にMUC1のような新規エピトープをもたらす改変グリコシル化パターン、または腫瘍特異的であってもなくてもよい分解中のタンパク質スプライシングのような事象から生じる。
f)オンコウイルスタンパク質:これらのTAAはウイルスタンパク質であり、それらは発がん過程において重要な役割を果たしてもよく、外来性である(ヒト由来でない)ため、それらはT細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんにおいて発現されるヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0019】
T細胞ベースの免疫療法は、主要組織適合性複合体(MHC)の分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質由来ペプチドエピトープを標的とする。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それはそれぞれの腫瘍細胞で発現されて、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0020】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は結合溝をもたらし、それはペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される。
【0021】
MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見られる。それらは、主に内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見られる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される(Brossart and Bevan,1997;Rock et al.,1990)。MHCクラスII分子は、大部分はプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に見られ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外因性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0022】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0023】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答の誘導と維持において重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である(Gnjatic et al.,2003)。腫瘍部位では、Tヘルパー細胞が、細胞毒性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境を維持して(Mortara et al.,2006)、例えば、CTL、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける(Hwang et al.,2007)。
【0024】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが判明している(Dengjel et al.,2006)。
【0025】
伸長された(より長い)本発明のペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0026】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を統合する上で、重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、し、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた、細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0027】
例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であっても、インターフェロンγ(IFNγ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された(Beatty and Paterson,2001;Mumberg et al.,1999)。CD4 T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある(Braumuller et al.,2013;Tran et al.,2014a)。
【0028】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかし、Dengjel et al.は、いくつかのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から直接成功裏に同定した(国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0029】
CD8およびCD4依存性の双方のタイプの応答は、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0030】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多形性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常は8~12アミノ酸残基長であり、通常は、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する、「結合モチーフ」を有する。
【0031】
MHCクラスI依存免疫反応においては、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特異的T細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0032】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、腫瘍細胞によって、健常組織と比較して過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、ある種の腫瘍に存在するだけでなく、高い濃度(すなわち、それぞれのペプチド細胞当たりのコピー数)で存在することもさらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、(und)したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい(Singh-Jasuja et al.,2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列内にエピトープが存在することが必須である。
【0033】
基本的に、MHC分子に結合できるあらゆるペプチドが、T細胞エピトープとして機能してもよい。生体外または生体内T細胞応答誘導のための必要条件は、対応するTCRがあるT細胞の存在、およびこの特定のエピトープに対する免疫寛容の不在である。
【0034】
したがって、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではない、T細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍および正常組織間の示差的転写プロファイル、または示差的ペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現され、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。これは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRがあるT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本発明の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能性および/または増殖性T細胞がある、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが、重要である。このような機能性T細胞は、T細胞と定義され、それは特異的抗原による刺激時にクローン増殖され得て、エフェクター機能を果たすことができる(「エフェクターT細胞」)。
【0035】
本発明による特異的TCR(例えば、可溶性TCR)および抗体またはその他の結合分子(スキャフォールド)によってペプチドMHCを標的化する場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。これらの場合には、提示が決定要因である。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の第1の態様では、本発明は、配列番号1~配列番号114、または配列番号1~配列番号114と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは、少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関し、その中で前記変異体は、MHCと結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、その中で前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0037】
本発明は、配列番号1~配列番号114、または配列番号1~配列番号114と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異体からなる群から選択される配列を含んでなる、本発明のペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたはその変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0038】
続く表は、本発明によるペプチド、それらの各配列番号、およびそれらのペプチドの予測される起源(基礎)遺伝子を示す。表1および表2の全てのペプチドは、HLA-A*02に結合する。表2のペプチドは、高い誤り率があるまたはアルゴリズムを使用して計算された、ハイスループットスクリーニングの結果としての大きなリスト中で以前開示されているが、これまでがんとは全く関連付けられていなかった。表3のペプチドは、本発明のその他のペプチドとの組み合わせで有用であってもよい、追加的なペプチドである。表4AおよびBのペプチドは、それぞれの基礎ポリペプチドの過剰発現または過剰提示を伴う様々なその他の悪性腫瘍の診断および/または治療においてさらに有用である。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
本発明は、例えば、肺がん、脳がん、胃がん、結腸または直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がんなどの増殖性疾患の治療において使用するための本発明によるペプチドにさらに一般に関する。
【0043】
特に好ましいのは、配列番号1~配列番号114からなる群から選択される、本発明による単独のまたは組み合わせのペプチドである。より好ましいのは、配列番号1~配列番号63(表1を参照されたい)からなる群から選択される単独のまたは組み合わせのペプチド、およびRCC、肺がん、脳がん、胃がん、結腸または直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がん、および好ましくはRCCの免疫療法におけるそれらの使用である。
【0044】
以下の表4Aに示されるように、本発明によるペプチドの多くは、その他の腫瘍型上にもまた見られ、したがって、その他の適応症のための免疫療法においても使用され得る。
図1Eおよび実施例1もまた参照されたい。
【0045】
【0046】
【0047】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、肺がんの併用療法のための、配列番号21、27、29、30、33、37、39、44、50、51、52、63、67、68、69、79、91、93、96、97、98、100、102、114、117、119、121,123、126、127、128、129、130、131、165、137、138、140、142、143、145、146、147、148、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0048】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、脳がんの併用療法のための、配列番号31、38、52、66、69、73、79、100、102、103、114、119、126、129、130、135、136、137、138、139、140、141、143、145、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0049】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、胃がんの併用療法のための、配列番号32、67、96、110、126、130、134、135、137、143、および148のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0050】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、結腸直腸がんの併用療法のための、配列番号21、26、30、36、37、46、63、79、82、93、96、97、100、103、115、119、126、129、130、133、137、138、139、143、145、146、147、148、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0051】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、肝臓がんの併用療法のための、配列番号1、5、15、21、23、24、27、38、39、47、67、72、78、79、84、85、86、91、93、94、98、99、100、101、103、104、113、114、115、119、121、122、124、126、129、130、131、132、133、135、136、137、139、141、143、144、145、147、148、149、および150のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0052】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、膵臓がんの併用療法のための、配列番号8、16、26、27、29、37、38、51、52、56、59、67、68、69、73、79、82、96、97、100、105、109、111、114、117、119、121、124、126、127、128、129、131、133、134、135、137、138、140、141、142、146、147、148、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0053】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、前立腺がんの併用療法のための、配列番号24、26、29、45、63、78、79、90、96、97、107、113、119、125、137、138、139、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0054】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、白血病の併用療法のための、配列番号14、24、27、33、39、61、63、68、107、108、110、112、126、135、138、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0055】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、乳がんの併用療法のための、配列番号16、29、65、67、69、73、87、96、97、98、111、117、121、127、132、135、137、148、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0056】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、メラノーマの併用療法のための、配列番号28、34、38、44、47、54、55、63、73、86、87、97、100、104、105、127、130、140、141、142、143、145、147、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0057】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、卵巣がんの併用療法のための、配列番号2、12、16、21、26、29、30、31、33、37、38、44、45、49、52、54、59、63、69、79、88、96、97、99、100、101、107、109、116、117、119、121、126、129、135、137、140、141、145、146、147、148、および149のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0058】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、食道がんの併用療法のための、配列番号24、34、45、51、59、67、68、79、82、93、96、97、104、114、119、126、130、131、133、134、135、138、140、141、142、143、および148のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0059】
したがって、本発明の別の態様は、好ましくは、RCC、肺がん、脳がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓のがん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がん、および好ましくはRCCの群から選択される増殖性疾患の併用治療のための、本発明によるペプチドの使用に関する。
【0060】
好ましくは、本発明は、RCC、肺がん、脳がん、胃がん、結腸直腸がん、肝臓のがん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がん、および好ましくはRCCの群から選択される増殖性疾患の好ましくは併用療法のための、配列番号1および/または15に記載の本発明によるペプチドの使用に関する。
【0061】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子に結合する能力、または長さ変異体などの伸長形態ではMHCクラスIIに結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0062】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは(それぞれ)配列番号1~配列番号114に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0063】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、修飾され、および/または非ペプチド結合を含む。
【0064】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体(またはその配列中)に融合した、融合タンパク質の一部である。
【0065】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0066】
本発明は、本発明による核酸を発現でき、および/または発現する、発現ベクターにさらに関する。
【0067】
本発明は、疾患の治療において、および医療において、特にがんの治療において使用される、本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0068】
本発明は、本発明によるペプチドに、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体に、特異的に対抗する抗体と、そしてこれらを製造する方法とにさらに関する。
【0069】
本発明は、自己由来または同種異系T細胞に組み込まれた、T細胞受容体(TCR)、特に可溶性TCR(sTCR)、およびクローン化TCR、そしてこれらを製造する方法、ならびに前記TCRを有するまたは前記TCRと交差反応する、NK細胞またはその他の細胞を製造する方法にさらに関する。
【0070】
抗体およびTCRは、本発明の配列番号1~配列番号151に記載のペプチドの免疫療法的使用の追加的な実施形態である。
【0071】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0072】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0073】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に、抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0074】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号114を含有する、好ましくは配列番号1~配列番号63または変異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現する能力がありまたは発現する、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0075】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0076】
本発明は、本発明によって製造されるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0077】
本発明は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、本発明による活性化Tリンパ球、T細胞受容体または抗体またはその他のペプチド-および/またはペプチド-MHC-結合分子の使用にさらに関する。好ましくは、前記薬剤は、がんに対して有効である。
【0078】
好ましくは、前記薬剤は、細胞療法、可溶性TCRまたは抗体に基づくワクチンまたはタンパク質のためのものである。
【0079】
本発明は、本発明による使用にさらに関し、前記がん細胞は、RCC、肺がん、脳がん、胃がん、結腸または直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がん、および好ましくはRCC細胞である。
【0080】
本発明は、がん、好ましくはRCCの診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドをベースとするバイオマーカーにさらに関する。マーカーは、ペプチドそれ自体の過剰提示、または対応遺伝子の過剰発現であり得る。マーカーはまた、好ましくは免疫療法、最も好ましくはバイオマーカーによって同定されるのと同じ標的を標的とする免疫療法である、治療の成功確率を予測するのに、使用されてもよい。例えば、抗体または可溶性TCRを使用して腫瘍切片が染色され、MHCと複合体形成する目的ペプチドの存在が検出され得る。
【0081】
任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0082】
本発明はまた、がん治療の文脈におけるこれらの新規標的の使用に関する。
【0083】
ABCC3は、肝細胞がん、卵巣がん、直腸がん、骨肉腫、乳がん、非小細胞肺がん、多形性神経膠芽細胞腫、および膵管腺がんに関連する(Mohelnikova-Duchonova et al.,2013;Molina-Pinelo et al.,2014;Goode et al.,2014;Liu et al.,2014c;Yu et al.,2014;Sedlakova et al.,2015;Zuniga-Garcia et al.,2015;Wang et al.,2014c)。
【0084】
ACLYは、乳がん、肝臓がん、結腸がん、肺がん、および前立腺がんなどの様々な腫瘍において異常に発現され、腫瘍病期および分化と逆相関する(Zu et al.,2012)。
【0085】
膵臓がんにおけるADAM8の過剰発現は、膵管腺がん細胞の移動および侵襲性の増大に関連する(Schlomann et al.,2015)。ADAM8は、肺がん、腎細胞がん、および脳がんにおける腫瘍細胞の移動および浸潤に関与する(Mochizuki and Okada,2007)。
【0086】
ADCY5遺伝子の過剰メチル化およびmRNA発現の低下は、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、および肺腺がんにおいて生じる(Kuang et al.,2008;Tong et al.,2010;Sato et al.,2013a)。
【0087】
AHNAK2は、線維芽細胞成長因子1(FGF1)の非古典的分泌経路の重要な要素であり、腫瘍増殖および浸潤に関与する因子である(Kirov et al.,2015)。
【0088】
AIFM2の発現は、大部分のヒト腫瘍において下方制御されることが示された(Wu et al.,2004;Mei et al.,2006)。AIFM2は、卵巣がん細胞株における腫瘍形成能の機能抑制に関連する9つの遺伝子の1つとして同定された(Notaridou et al.,2011)。
【0089】
AKR1A1は、乳がんにおいて上方制御されることが示され、肺がんおよび喉頭がんに関連する(Penning,2014;Hlavac et al.,2014;Kim et al.,2012)。
【0090】
ALPK2発現は、結腸直腸腺腫において下方制御され、正常な結腸陰窩から腺腫への移行において可能な役割を果たす(Yoshida et al.,2012)。ALPK2は、胃がんにおけるコピー数の喪失と過小発現との間に強い関連性を示す(Junnila et al.,2010)。
【0091】
ANGPTL4は、乳がん、漿液性卵巣がんにおいて上方制御されることが示され、神経膠芽腫、肝細胞がん、口腔扁平上皮がん、および肺がんに関連する(Ferguson et al.,2013;Tanaka et al.,2015;Ng et al.,2014;Garner et al.,2015;Schumann et al.,2015;Johnson et al.,2015)。
【0092】
APOL1発現は、腎細胞がん組織および細胞株において下方制御される(Hu et al.,2012)。
【0093】
ARRDC3は、乳がんおよび前立腺がんに関連する(Wang et al.,2014a;Huang et al.,2012a)。
【0094】
ATG2Bフレームシフト変異体は、高いマイクロサテライト不安定性がある胃および結腸がんにおいて、一般的である(Kang et al.,2009)。
【0095】
ATP11Aは、結腸直腸がんにおいて上方制御されることが示され、リンパ芽球性白血病に関連しており、結腸直腸がんにおける転移バイオマーカーとして提言されている(Miyoshi et al.,2010;Zhang et al.,2005)。
【0096】
ATP2A1は、がん悪液質において上方制御されることが示された(Fontes-Oliveira et al.,2013)。
【0097】
ATP2A2は、皮膚がん、結腸がん、および肺がんに関連する(Korosec et al.,2006;Hovnanian,2007)。
【0098】
CACNA1Hは、アルドステロン産生腺腫、前立腺がん、および乳がんに関連する(Felizola et al.,2014;Asaga et al.,2006;Gackiere et al.,2013)。
【0099】
CACNA1Iは、結腸がん、乳がんおよび前立腺がんに関連する(Basson et al.,2015)。
【0100】
CARD8は、卵巣がん、乳がん、および肺がんをはじめとするいくつかのがん細胞株において、ならびに結腸直腸がん、胃がんまたは乳がんがある患者に由来する組織において、高度に発現される(Pathan et al.,2001;Yamamoto et al.,2005)。
【0101】
CCT6Aは、精巣胚細胞腫瘍および悪性メラノーマに関連する(Tanic et al.,2006;Alagaratnam et al.,2011)。
【0102】
CITは、隣接する非腫瘍組織と比較して、肝細胞がん(HCC)において頻繁に上方制御されるRNAiによるCITノックダウンは、生体内でHCC細胞の腫瘍形成能を抑制する(Fu et al.,2011)。
【0103】
CLIC4の腫瘍細胞における下方制御、腫瘍間質における上方制御は、腎臓がん、卵巣がん、乳がん、肺がん、および皮膚性がんをはじめとする多くのヒトがんにおいて一般的であり、悪性化進展を標識する(Suh et al.,2007a;Okudela et al.,2014;Suh et al.,2007b)。
【0104】
COL18A1の差次的発現が、膀胱がん、ラブドイド腫瘍、および卵巣がんにおいて報告され、遺伝子内の特異的多形性は、散発性乳がんのリスクを増大させることが示された(Fang et al.,2013;Gadd et al.,2010;Lourenco et al.,2006;Peters et al.,2005)。
【0105】
COL6A2は、子宮頸がん、高悪性度漿液性卵巣がんにおける全生存率不良、B前駆体急性リンパ芽球性白血病、肝細胞がん、原発性および転移性脳腫瘍、肺の扁平上皮がん、頭頸部扁上皮がんに関連し、子宮頸がんの潜在的DNAメチル化として記載された(Cheon et al.,2014;Chen et al.,2014c;Vachani et al.,2007;Liu et al.,2010b;Seong et al.,2012;Hogan et al.,2011)。
【0106】
CUL7は、膵臓がんおよび肝細胞がんに関連する(Wang et al.,2014b;Paradis et al.,2013)。
【0107】
CYB5A発現は、肝細胞がんにおいて下方制御される(Khan et al.,2013a)。CYB5Aは、膵管腺がんの予後因子であり、自食作用誘導およびTRAF6調節を通じてその腫瘍抑制因子機能を発揮する(Giovannetti et al.,2014)。CYB5Aは発がん性分子を解毒する酵素をコードし、膵臓がんの予後因子である(Blanke et al.,2014;Giovannetti et al.,2014)。
【0108】
CYFIP2発現は、乳がんにおいて新たに形成されたリンパ節において増大する(Gantsev et al.,2013)。CYFIP2発現は、対象組織と比較して胃腫瘍サンプル中で低下する(Cheng et al.,2013)。CYFIP2は、慢性リンパ球性白血病においてメチル化されるいくつかのアポトーシス関連遺伝子の1つである(Halldorsdottir et al.,2012)。
【0109】
CYP2J2は酵素であり、それは食道がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、および結腸がんをはじめとする多様なヒトがんにおいて過剰発現されることが示された。CYP2J2は、EGFRリン酸化とPI3KおよびMAPKシグナル伝達活性化とを促進し、チロシンキナーゼ阻害剤をさらに代謝し、それにより抗がん剤抵抗性を与えることで、がん細胞の増殖を増大させてアポトーシスを阻害する(Jiang et al.,2005;Narjoz et al.,2014)。
【0110】
DCBLD2は、膠芽細胞腫および頭頸部がん(HNC)において上方制御され、EGFR刺激腫瘍形成に必要である(Feng et al.,2014)。さらに、DCBLD2は高度に転移性の肺がん亜系および組織サンプルにおいて、上方制御される(Koshikawa et al.,2002)。対照的に、DCBLD2の発現は、胃がんにおいてそのプロモーターの過剰メチル化によって停止される(Kim et al.,2008)。
【0111】
DDX41は、急性骨髄性白血病に関連する(Antony-Debre and Steidl,2015)。
【0112】
マイクロRNA生合成における2つの重要な酵素の1つであるDROSHAは、胃腸腫瘍、乳がん、および子宮頸がんをはじめとする、いくつかのがんにおいて過剰発現されて、腫瘍細胞の増殖、コロニー形成、および遊走を促進するようである(Avery-Kiejda et al.,2014;Havens et al.,2014;Zhou et al.,2013)。
【0113】
DUSP14遺伝子における一塩基多型は、メラノーマリスクの変化に関連する(Yang et al.,2014a;Liu et al.,2013)。
【0114】
EGFRは、乳がんおよび唾液腺アデノイドがんにおいて上方制御されることが示され、非小細胞肺がん、肝細胞がん、および結腸直腸がんに関連する(Dienstmann et al.,2015;Wang et al.,2015b;Steinway et al.,2015;Xiao et al.,2015;Inoue et al.,2015)。
【0115】
EGLN3発現は、非小細胞肺がんおよび腎細胞がんにおいて上方制御されることが示された。さらに、EGLN3は、明細胞腎細胞がんおよび結腸直腸がんに関連する(Tanaka et al.,2014;Yang et al.,2014d;Toth et al.,2014;Chu et al.,2014)。
【0116】
ENO1発現は、非小細胞肺がんにおいて上方制御されることが示された。さらに、ENO1は、子宮内膜がん、膵管腺がん、神経膠芽腫、および鼻咽頭がんに関連する(Yang et al.,2014b;Naryzhnyi et al.,2014;Principe et al.,2015;Fu et al.,2015;Zhao et al.,2015a)。
【0117】
ENO2は、肺がん、固体神経内分泌がん、顆粒状細胞腫瘍、膵臓がんに関連する(Sigari et al.,2014;Zizi-Sermpetzoglou et al.,2014;Liu et al.,2014a;Bedir et al.,2015;Wang et al.,2013b)。
【0118】
ENO3は、B細胞リンパ腫、胞状軟部肉腫、横紋筋肉腫、および神経芽細胞腫に関連する(Oka et al.,1989;Mukai et al.,1986;Royds et al.,1985;Ishiguro et al.,1984)。ENPP3は、神経芽細胞腫、病期II結腸直腸がん、頭頸部扁上皮がん、急性好塩基性白血病、および胆管がんに関連する(Agesen et al.,2012;Staal-Viliare et al.,2007;Gomez-Villafuertes et al.,2014;Yano et al.,2004;Thiel et al.,2011)。
【0119】
ERAP1は、子宮頸がん、腎細胞がん、食道扁平上皮がん、メラノーマ、卵巣がん、および神経芽細胞腫に関連する(Mehta et al.,2015;Forloni et al.,2010;Liu et al.,2010a;Kamphausen et al.,2010;Ayshamgul et al.,2011;Stoehr et al.,2013)。
【0120】
ESM1発現は、胃がんにおいて上昇することが示され、肝芽細胞腫、鼻咽頭がん、および卵巣がんに関連しており、胃がんの潜在的バイオマーカーであってもよい(Yu et al.,2013;Dong et al.,2014;Lv et al.,2014;El Behery et al.,2013)。
【0121】
FHL2は、急性骨髄性白血病、卵巣がん、肺がん、大腸がん、乳がん、膵管腺がん、およびヒト悪性メラノーマにおいて上方制御され、前立腺がんおよび横紋筋肉腫において下方制御されることが示された(Kleiber et al.,2007;Westphal et al.,2015;Qian et al.,2010;Zienert et al.,2015)。
【0122】
FKBP10は、白血病細胞におけるアドリアマイシン耐性表現型の獲得および維持に関与する新規遺伝子として同定される(Sun et al.,2014b)。FKBP10は、その上方制御を通じて、結腸直腸がんに関連付けられている(Olesen et al.,2005)。対照的に、FKBP10の低発現は上皮性卵巣がんに特徴的であった(Quinn et al.,2013)。
【0123】
FLT1は、結腸がん、前立腺がん、非小細胞肺がん、および膵臓がんに関連する(Awasthi et al.,2015;Heist et al.,2015;Tsourlakis et al.,2015;Zhang et al.,2015)。
【0124】
FZD1は、食道がん、甲状腺がん、子宮肉腫、前立腺がん、扁平細胞/腺扁平上皮がんおよび、胆嚢の腺がん、結腸がん、および乳がんに関連する(Goksel et al.,2014;Hung et al.,2014;Davidov et al.,2014;Su et al.,2015;Zhang et al.,2012a;Planutis et al.,2013;Devaney et al.,2013;Li et al.,2014a)。
【0125】
FZD2は、食道がんにおいて上方制御されることが示され、消化管間質腫瘍、唾液腺様嚢胞がん、および結腸直腸がんに関連する(Wang and Zheng,2014;Ding et al.,2015;Prakash et al.,2005;Liu et al.,2014b)。
【0126】
FZD7は、卵巣がんにおいて上方制御されることが示され、子宮頸がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、メラノーマ、乳がん、胃がん、および中枢神経細胞腫に関連する(Anastas et al.,2014;Li et al.,2014c;Gonzalez et al.,2014;Song et al.,2014;Deng et al.,2015;Asad et al.,2014;Vasiljevic et al.,2013;Rocken and Warneke,2012;Dey et al.,2013)。
【0127】
GAL3ST1活性は、腎細胞がん(RCC)組織およびRCC細胞株SMKT-R3において増大する(Honke et al.,1996)。GAL3ST1発現は、正常な卵巣間質組織および正常な表面卵巣上皮細胞との対比で、卵巣上皮性がん細胞において上方制御される(Liu et al.,2010c)。
【0128】
N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2であるGALNT2は、胃がん細胞内のMMP-2およびTGF-s1の低減を通じて、そしてそこでそれが頻繁に下方制御される肝細胞がんにおけるEGF受容体活性の阻害を通じて、抗増殖および抗転移活性を発揮することが示された。対照的に、扁平上皮がんにおいては、GALNT2の過剰発現が、O-グリコシル化とGFR活性を改変することで、腫瘍細胞の浸潤能を高めることが報告された(Hua et al.,2012;Lin et al.,2014;Wu et al.,2011)。
【0129】
GRAMD4は肝細胞がん(HCC)細胞株およびHCC組織において上方制御され、その発現増大はHCCの臨床病理学的特徴と相関する(Zhang et al.,2013)。
【0130】
HAVCR1は、卵巣明細胞がんおよび腎細胞がんに関連する、新規バイオマーカー候補として記載されている(Bonventre,2014;Kobayashi et al.,2015)。HAVCR1は、腎明細胞がん由来細胞株において、IL-6/STAT-3/HIF-1A軸を活性化することが示されて、腫瘍進行および患者転帰を決定する(Cuadros et al.,2014)。腎臓におけるHAVCR1の構成的発現は、腎明細胞がん発症の潜在的易罹患性形質として記載された(Cuadros et al.,2013)。HAVCR1は、腎細胞がんおよび卵巣明細胞がん、および結腸直腸がんにおいて、上方制御されると記載されている(Wang et al.,2013c)。HAVCR1上方制御は、結腸直腸がんの潜在的診断バイオマーカー、そして手術後のより長い無病期間の予後マーカーとして記載され、それはまた、結腸直腸がんにおける転移カスケードに関与してもよい(Wang et al.,2013c)。HAVCR1は、T細胞大顆粒リンパ球白血病に関連することが示された(Wlodarski et al.,2008)。
【0131】
HSF2BPは、HSF2と結合するHSF2結合タンパク質をコードし、HSF2活性化の調節に関与してもよい(RefSeq,2002)。
【0132】
HSF4は、加熱またはその他のストレス条件下で熱ショック応答遺伝子を活性化する、熱ショック転写因子4をコードする(RefSeq,2002)。HSF4は、神経膠芽腫において下方制御されることが示された(Mustafa et al.,2010)。
【0133】
異なる研究が、子宮頸がん、腎細胞がん、および膀胱がんの疾患進行における、HSPA2の重要な役割を示唆する遺伝子内多形性は、胃がんの発生と関係がある(Ferrer-Ferrer et al.,2013;Garg et al.,2010a;Garg et al.,2010b;Singh and Suri,2014)。
【0134】
HSPA8は食道扁平上皮がんにおいて過剰発現され、生体外では食道がん細胞内のHSPA8の高発現レベルが、これらの細胞の酸化ストレス誘発アポトーシスに反作用することが示された。さらに、HSPA8は、多発性骨髄腫および結腸がんにおいて過剰発現され、BCR-ABL1誘導性のHSPA8発現は、慢性骨髄性白血病において細胞生存を促進する(Chatterjee et al.,2013;Dadkhah et al.,2013;Jose-Eneriz et al.,2008;Kubota et al.,2010;Wang et al.,2013a)。
【0135】
HSPG2はメラノーマ、口腔扁平上皮がん、腎明細胞がん、および前立腺腫瘍に関連し、肝細胞がんおよび結腸腫瘍において、その下方制御が示された(Nikitovic et al.,2014;Warren et al.,2014;Gbormittah et al.,2014;Zaghloul et al.,2015;Kawahara et al.,2014;Suhovskih et al.,2015;2015;Elewa et al.,2015;Lai et al.,2011)。
【0136】
HTRA1は、肝細胞がん、脾臓辺縁帯リンパ腫、扁平上皮がん、および神経芽細胞腫に関連し、胃がん、乳がん、胆嚢がん、および肺腺がんにおいて下方制御されることが示された(Xu et al.,2014;D'Angelo et al.,2014;Fujinaga et al.,2014;Sahasrabuddhe et al.,2014;Franco et al.,2015;Arribas et al.,2015;Zhao et al.,2015b;Bao et al.,2015)。
【0137】
HTRA3は、口腔扁平上皮がんおよび甲状腺がんにおいて上方制御され、卵巣がん、乳がん、子宮内膜がん、および肺がんにおいて下方制御されることが示され、結腸直腸がんに関連し、口腔がんの潜在的予後バイオマーカーであってもよい(Karagiannis et al.,2014;Zhao et al.,2014;Moriya et al.,2015;Narkiewicz et al.,2009;Beleford et al.,2010;Zurawa-Janicka et al.,2012;Yin et al.,2013)。
【0138】
IGF2BP3は、インスリン様成長因子IIの翻訳を抑制するがん胎児性タンパク質である、インスリン様成長因子II mRNA結合タンパク質3をコードする(RefSeq,2002)。生体外実験は、IGF2BP3が、腫瘍細胞増殖、付着、および浸潤を促進することを示した。さらに、IGF2BP3は、高悪性度かつ進行したがんに関連することが示されている(Bell et al.,2013;Gong et al.,2014)。IGF2BP3過剰発現は、多数の腫瘍型で記載され、例えば、神経芽細胞腫、結腸直腸がん、肝臓内胆管細胞がん、肝細胞がん、前立腺がん、および腎細胞がんなどにおいて、予後不良、進行した腫瘍病期および転移と相関する(Bell et al.,2013;Findeis-Hosey and Xu,2012;Hu et al.,2014;Szarvas et al.,2014;Jeng et al.,2009;Chen et al.,2011;Chen et al.,2013;Hoffmann et al.,2008;Lin et al.,2013;Yuan et al.,2009)。
【0139】
慢性骨髄性白血病(CML)においてチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性を示した45人の患者の内3人において、IGLC1が新たに検出され、再発する欠損が検出された(Nowak et al.,2010)。
【0140】
IGLC2のヘテロ接合性喪失は、頭蓋内髄膜腫の情報価値のある症例の50%で示されている(Kim et al.,1993)。
【0141】
IGLJ3は、有毛細胞白血病における好ましい軽鎖IGλの組成物のために普遍的に使用される連結遺伝子である(Forconi et al.,2008)。
【0142】
IGLV2-14は、正常、自己反応性、および新生細胞由来の関連レパートリーと比較して、慢性リンパ性白血病(CLL)において3番目に頻度の高いIGLV遺伝子である(Stamatopoulos et al.,2005)。
【0143】
IGLV3-21は、正常、自己反応性、および新生細胞由来の関連レパートリーと比較して、慢性リンパ性白血病(CLL)において最も頻度の高いIGLV遺伝子である(Stamatopoulos et al.,2005)。
【0144】
INADLは、シスプラチン-ゲムシタビン併用化学療法に応答して、非小細胞肺がんにおいて下方制御される(Ma et al.,2015)。
【0145】
ITGA3は、結腸直腸がんにおいて上方制御されることが示され、前立腺がん、類表皮がん、早期胃がん、および骨肉腫に関連する(Yang et al.,2014c;Chong et al.,2014;Lustosa et al.,2014;Ren et al.,2014;Bauer et al.,2014;Mertens-Walker et al.,2015)。
【0146】
ITGB4は、前立腺がん、胃がん、乳がん、口腔扁平上皮がん、および卵巣がんに関連し、膵管腺がんにおいて上方制御されることが示された(Chen et al.,2014b;Xin et al.,2014;Zubor et al.,2015;Masugi et al.,2015;Gao et al.,2015b;Kawakami et al.,2015)。ITGB4(CD104とも称される)は、α6サブユニットと結合する傾向があり、食道扁平上皮がん、膀胱がん、および卵巣がんなどのいくつかの浸潤性がんの生物学において、中心的役割を果たす可能性が高い(Kwon et al.,2013;Pereira et al.,2014;Chen et al.,2014b)。ITGB4における一塩基多型は、腫瘍の攻撃性および生存に影響を与えるようであり、乳がん患者にとって予後的重要性を有してもよい(Brendle et al.,2008)。
【0147】
IVNS1ABPは、BCL1/JH陽性多発性骨髄腫に関連し、多発性骨髄腫の潜在的予後マーカーであるかもしれない(Ni et al.,2012)。
【0148】
JAG2は、膵管腺がん、肝細胞がん、および網膜芽細胞腫において上方制御されることが示され、多発性骨髄腫、子宮内膜がん、前立腺がん、骨肉腫、頭頸部がん、および膀胱の尿路上皮がんに関連する(Sun et al.,2014a;Li et al.,2014b;Carvalho et al.,2014;Xiao et al.,2014;Zhang et al.,2014a;Sasnauskiene et al.,2014;Lu et al.,2014;Hu et al.,2015;Li et al.,2013)。
【0149】
KCNK15遺伝子の過剰メチル化は、結腸がん、白血病、および膀胱がんをはじめとするいくつかの細胞株において見いだされた(Shu et al.,2006)。
【0150】
KIF12は、乳がんにおいて過剰発現されることが示され、腎臓腫瘍、子宮がん、および膵臓がんに関連する(Katoh and Katoh、2005;Tan et al.,2012)。
【0151】
KLHDC7Bは、子宮頸部扁平上皮がんに関連し、子宮頸部扁平上皮がんの潜在的バイオマーカーである(Guo et al.,2015)。
【0152】
LRP2は、肝細胞がん、膵臓がん、悪性メラノーマ、原発性中枢神経系リンパ腫、および腎明細胞がんに関連する(Fernandez-Banet et al.,2014;Andersen et al.,2015;Pedersen et al.,2010;Schuetz et al.,2005;Anderson et al.,2013)。
【0153】
LRRK2は、ホルモン関連がん、乳がん、およびパーキンソン病患者における随伴性非皮膚がんに関連し、パーキンソン病がある患者における血液学的がんに関連してもよい(Ruiz-Martinez et al.,2014;Agalliu et al.,2015;Inzelberg et al.,2012)。
【0154】
MACC1は、胃がん、結腸直腸がん、肺がん、および乳がんをはじめとする多くのがん実体において過剰発現され、患者のがんの進行、転移、および低生存率に関連する(Huang et al.,2013;Ma et al.,2013;Stein,2013;Wang et al.,2015a;Wang et al.,2015c;Ilm et al.,2015)。MACC1は、c-Metおよびβカテニンの増加と、c-Myc、サイクリンD1、caspase9、BAD、およびMMP9をはじめとするそれらの下流標的遺伝子の増加とをもたらす、βカテニンおよびPI3K/AKTシグナル伝達経路を標的化することを通じて、発がんを促進する(Zhen et al.,2014;Yao et al.,2015)。
【0155】
MAGED2の過剰発現は、メラノーマ、乳がんおよび結腸がんに関連する(Li et al.,2004;Strekalova et al.,2015)。
【0156】
METは、脱分化型脂肪肉腫において上方制御されることが示され、メラノサイト腫瘍、肝細胞がん、非小細胞肺がん、遺伝性乳頭状腎臓がん、および胃腺がんに関連する(Petrini,2015;Finocchiaro et al.,2015;Steinway et al.,2015;Bill et al.,2015;Yeh et al.,2015)。
【0157】
NAT8は、リンパ芽球性白血病に関連する(Mak et al.,2014)。
【0158】
NDRG1は、膵臓がんなどのがんにおける転移抑制因子であり、前立腺がんおよび結腸がんにおいて下方制御されることが示された一方で、肝細胞がんおよび子宮頸腺がんにおいて上方制御されることが示された(Nishio et al.,2008;Cheng et al.,2011;Bae et al.,2013;Richardson et al.,2013)。
【0159】
NLRC5は、リンパ系由来腫瘍細胞株において下方制御されることが示された(Staehli et al.,2012)。
【0160】
NPTX2は、膵臓がん、ユーイング肉腫、および神経膠芽腫において、プロモーター過剰メチル化によって下方制御された(Zhang et al.,2012b;Alholle et al.,2013;Shukla et al.,2013)。
【0161】
NQO2は、子宮内膜がん、乳頭状甲状腺微小がん、および食道がんに関連する(Hevir-Kene and Rizner,2015;Malik et al.,2012;Lee et al.,2013)。
【0162】
OPN3発現は、5-フルオロウラシル感受性Bel7402およびHepG2細胞と比較して、5-フルオロウラシル耐性肝細胞がん細胞株Bel7402およびHepG2において低下する(Jiao et al.,2012)。
【0163】
PDZD2は、小腸神経内分泌腫瘍および前立腺がんに関連する(Tam et al.,2006;Rehfeld et al.,2014)。
【0164】
PDZK1の過剰発現は、多発性骨髄腫の薬剤耐性における役割を有してもよい(RefSeq,2002)。
【0165】
PFKFB3は、胃がん、結腸がん、肺がん、乳がんにおいて上方制御されることが示され、膵臓がん、前立腺がん、および神経膠芽腫に関連する(Minchenko et al.,2014;Fleischer et al.,2011;Ragnum et al.,2013)。
【0166】
PLCB1は、原発性頭頸部扁上皮がん、骨髄性白血病、および多形性神経膠芽細胞腫に関連する(Guerrero-Preston et al.,2014;Waugh,2014;Ramazzotti et al.,2011)。
【0167】
PLIN2は、脂質貯蔵と、初期結腸直腸がん検出のための血漿バイオマーカーとに関与する(Matsubara et al.,2011)。PLIN2は、対照と比較して、明細胞および乳頭腎細胞がんがある患者において顕著に増大する。PLIN2の術前尿濃度は、腫瘍のサイズと病期を反映する(Morrissey et al.,2014)。PLIN2発現は、正常組織および肺扁平上皮がんよりも、肺腺がん標本で有意により高い(Zhang et al.,2014b)。
【0168】
PLOD1発現は、ヒト乳がん進行に関連する(Gilkes et al.,2013)。
【0169】
PRKCDBPは、乳がん脳転移および原発性乳がんにおいて下方制御されることが示された。さらに、PRKCDBPは、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、肺がん、および胃がんに関連する(Bai et al.,2012;Moutinho et al.,2014;Li et al.,2015;Tong et al.,2012;Wikman et al.,2012)。
【0170】
RASGRP3は、神経膠芽腫、乳がん、およびヒトメラノーマにおいて上方制御されることが示され、前立腺がん、肝細胞がん、および経口がんに関連する(Nagy et al.,2014;Sowalsky et al.,2015;Lee et al.,2015;Yang et al.,2011;Bhatnagar et al.,2012;Martinez-Lopez et al.,2012)。
【0171】
RCN1は、ヒト内皮および前立腺がん細胞株の原形質膜に局在する(RefSeq,2002)。RCN1は、乳がんにおいて過剰発現される(Amatschek et al.,2004)。
【0172】
RENは、腎細胞がん、膵臓がん、線維形成性小円形細胞腫瘍、および糸球体傍細胞腫瘍に関連する(Elouazzani et al.,2014;Lee et al.,2014;Nakai et al.,2015;Araujo et al.,2015)。
【0173】
RGS5は、肺がんにおいて下方制御され、腎明細胞がん、肝細胞がん、いくつかのリンパ腫亜型、および副甲状腺腺腫において上方制御されることが示され、結腸直腸がん、神経芽細胞腫、卵巣がん、非小細胞肺がん、および胃がんに関連する(Volz et al.,2015;Xu et al.,2015;Wang et al.,2010a;Dannenmann et al.,2013;Koh et al.,2011;Huang et al.,2012b;Altman et al.,2012;Kumps et al.,2013;Sethakorn and Dulin,2013;Hu et al.,2013)。
【0174】
RPGRIP1Lは、部分的に有糸分裂チェックポイントタンパク質Mad2を介して足場非依存性増殖を抑制し、ヒト肝細胞がんにおける腫瘍抑制因子遺伝子候補である(Lin et al.,2009)。
【0175】
RRADは、肺がん、卵巣がん、および鼻咽頭がんにおいて下方制御されることが示され、多形性神経膠芽細胞腫、食道扁平上皮がん、および肝細胞がんに関連する(Wang et al.,2014d;Yeom et al.,2014;Liu et al.,2015;Mo et al.,2012;Lin and Chuang,2012;Jin et al.,2013)。
【0176】
SEMA5Bは、腎細胞がんにおいて上方制御されるが、これまでに、その発現は、他のがんタイプまたは正常組織において見出されていない(Hirota et al.,2006)。
【0177】
プラスミン-α2-プラスミン阻害剤複合体の血漿レベルは、非小細胞肺がんにおける生存期間の予測因子であることが示され、前立腺がんがある患者の血中では、α2-抗プラスミンの低活性が観察された(Taguchi et al.,1996;Zietek et al.,1996)。
【0178】
SLC16A3発現は、肝細胞がん患者における予後不良に関連付けられており、細胞株実験において、細胞増殖、移動、および浸潤を増大させた(Gao et al.,2015a)。腫瘍形成におけるSLC16A3の機能的関与が、膵臓がんのサブセットにおいて示された(Baek et al.,2014)。
【0179】
SLC16A4は、非小細胞肺がん、腺アデノイドがん、膵臓乳管がん、口腔扁平上皮がん、および胃がんにおいて上方制御されることが示され、乳がんおよび肝細胞がんに関連する(Baek et al.,2014; Gao et al.,2015a; Yan et al.,2014;Jensen et al.,2014;Koo and Yoon,2015;Granja et al.,2015;Baenke et al.,2015)。
【0180】
有機アニオン輸送体2および有機カチオン輸送体2の高度発現は、FOLFOXベースの化学療法を用いて治療された転移性結腸直腸がんがある患者における良好な転帰の独立した予測因子である(Tashiro et al.,2014)。SLC22A2、SLC22A11、SLC28A1、SLC28A3およびSLC29A1のmRNA発現は、非新生物膵臓組織と比較すると、膵臓腫瘍において下方制御される(Mohelnikova-Duchonova et al.,2013a)。SLC22A2(OCT2としてもまた知られている)は、近位尿細管におけるシスプラチン取り込みを制御して、OCT2の阻害は、重度のシスプラチン誘発腎毒性から保護する(Sprowl et al.,2013)。
【0181】
SLC47A1は、前立腺がんに関連する(Joerger et al.,2015)。
【0182】
SLC6A13発現は、大腸がんにおいて上方制御されることが示された(Tran et al.,2014b)。
【0183】
SMYD2は、食道扁平上皮原発性がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、および急性リンパ芽球性白血病において上方制御されることが示された(Sakamoto et al.,2014;Komatsu et al.,2015;Nguyen et al.,2015)。
【0184】
SYT9は、子宮頸がんおよび前立腺がんに関連し、子宮頸がんの潜在的バイオマーカーを提示し得る(Chen et al.,2014c;Bao et al.,2011)。
【0185】
TGFBI発現は、胆管細胞がん、肝臓がん、胃がん、食道扁平上皮がん、および腎明細胞がんにおいて上昇することが示されたさらに、TGFBIは、結腸直腸がんに関連することが示された(Lebdai et al.,2015;Ozawa et al.,2014;Zhu et al.,2015;Han et al.,2015)。
【0186】
THY1は、抗侵襲活性を有する、鼻咽頭がんにおける候補腫瘍抑制因子遺伝子である(Lung et al.,2010)。
【0187】
TIMP1タンパク質発現は、転移性肝疾患がある患者における、小児期急性リンパ芽球性白血病および乳がんにおける、予後不良に関連する(Bunatova et al.,2012;Scrideli et al.,2010;Sieuwerts et al.,2007)。TIMP1は、膵臓がん検出のための潜在的血清マーカーである(Slater et al.,2013)。TIMP1は、周知の甲状腺がんマーカーである(Griffith et al.,2006)。
【0188】
TPI1は、骨肉腫において下方制御されることが示され、乳がん、食道扁平上皮がん、神経膠芽腫、子宮内膜がん、および卵巣がんに関連する(Zamani-Ahmadmahmudi et al.,2014;Chen et al.,2014a;Yoshida et al.,2013;Khan et al.,2013b;Gao et al.,2014)。
【0189】
TRIP6は、ユーイング(Ewings’s)肉腫、鼻咽頭がん、および神経膠芽腫において上方制御されることが示され、乳がんに関連する(Pavlikova et al.,2015;Lai et al.,2010;Fei et al.,2013;Grunewald et al.,2013)。
【0190】
UBE2QL1転写は、腎細胞がんにおいて下方制御されることが示された(Wake et al.,2013)。
【0191】
UGDHは、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣漿液性腺がん、乳がん、および肝細胞がんに関連する(Lapointe and Labrie,1999;Konno,2001;Fan et al.,2009;Wei et al.,2009;Wang et al.,2010b)。
【0192】
VKORC1多形性は、前立腺がんを発症するリスクに関連するかもしれない(Nimptsch et al.,2009)。VKORC1は、PIVKAII(ビタミンK不在によって誘導されるタンパク質)濃度に影響を及ぼし、それは肝細胞がんをスクリーニングするために利用される(Wang et al.,2010c)。
【発明を実施するための形態】
【0193】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識された抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を用いて腫瘍成長に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0194】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10アミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0195】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI限定細胞毒性T細胞では、エフェクター機能は、ペプチドパルスされた、ペプチド前駆体パルスされたまたは天然ペプチド提示標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0196】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。ペプチドは、好ましくは9アミノ酸長であるが、8アミノ酸長程度に短くあり得て、10、11または12アミノ酸長以上に長くあり得て、MHCクラスIIペプチド(本発明のペプチドの伸長された変種)の場合、それらは13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長以上に長くあり得る。
【0197】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。ペプチドは生体内で塩ではないので、本発明によるペプチドの塩は、それらの生体内の状態が、ペプチドと実質的に異なることに留意すべきである。
【0198】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。オリゴペプチドの長さは、その中で正しいエピトープまたはエピトープが保持されれば、本発明には重要でない。オリゴペプチドは、典型的に、約30アミノ酸残基長未満であり、約15アミノ酸長を超える。
【0199】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のα-アミノおよびカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結する、一連のアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは本発明には重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0200】
ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはこのような分子をコードするポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導できれば「免疫原性」である(したがって本発明における「免疫原」である)。本発明では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導できる分子であり、本発明では、T細胞応答を誘導できる分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるのに使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0201】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC受容体に結合している短いペプチドを必要とし、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC/ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的に8~14アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0202】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A*01、HLA-A*02、およびHLA-B*07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0203】
【0204】
本発明のペプチドは、好ましくは、本明細書に記載される本発明のワクチンに包含される場合、A*02に結合する。ワクチンはまた、汎結合MHCクラスIIペプチドを含んでもよい。したがって、本発明のワクチンを使用して、A*02陽性の患者においてがんを治療し得る一方で、これらのペプチドの汎結合特性のために、MHCクラスIIアロタイプを選択する必要はない。
【0205】
本発明のA*02ペプチドが、例えばA*24などの別の対立遺伝子に結合するペプチドと組み合わされた場合、MHCクラスI対立遺伝子のいずれか単独による対処と比較して、任意の患者集団のより高い割合を治療し得る。大多数の母集団では、対立遺伝子のいずれか単独によって、50%未満の患者が対処され得る一方で、HLA-A*24およびHLA-A*02エピトープを含んでなるワクチンは、任意の妥当な母集団で、少なくとも60%の患者を治療し得る。具体的には、様々な地域において、以下の百分率の患者が、これらの対立遺伝子の少なくとも1つについて陽性である:米国61%、西欧62%、中国75%、韓国77%、日本86%(www.allelefrequencies.netから計算された)。
【0206】
好ましい実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0207】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNA断片は、cDNAフラグメントと短いオリゴヌクレオチドリンカーから構築され、またはひと続きのオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる合成遺伝子が提供される。
【0208】
本明細書の用法では「ペプチドコーディング(またはコードする)ヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの製造に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0209】
本明細書の用法では、核酸配列への言及は、一本鎖および二本鎖の核酸の双方を含む。したがって、例えば、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその補体との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の補体を指す。
【0210】
「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の天然発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0211】
コード領域は、非変異(「正常」)、変異または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来し得る。
【0212】
「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に起因する同等物をコードし、したがって同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列の、天然翻訳産物である、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0213】
コード配列に言及する場合、「フラグメント」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0214】
「DNA断片」という用語は、別々のフラグメントの形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内因性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用した標準生化学的方法によって、断片およびその構成ヌクレオチド配列が同定、操作、および回収できる量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このような断片は、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって中断されていない、読み取り枠の形態で提供される。非翻訳DNA配列は、それがコード領域の操作または発現を妨げない、読み取り枠下流に存在してもよい。
【0215】
「プライマー」という用語は、短い核酸配列を意味し、それはDNAの1本鎖と対合し得て、DNAポリメラーゼがそこでデオキシリボヌクレオチド鎖合成を開始する、遊離3’-OH末端を提供する。
【0216】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0217】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えば、それが天然起源であれば天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得て、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないと言う意味では、なおも単離されている。
【0218】
本発明によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく;むしろ、それは相対的定義であることが意図されて、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁までの、出発原料または天然物質の精製が明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが明示的に包含される。
【0219】
本発明によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「富化形態」であってもよい。本明細書の用法では、「富化」という用語は、物質濃度が、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍であることを意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化調製物もまた、検討される。本発明を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。「活性フラグメント」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター中で、例えば、ウサギまたはマウスのようなそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与すると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列のフラグメントを意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物内でT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性フラグメント」はまた、生体外T細胞応答を誘導するのに使用されてもよい。
【0220】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「断片」、および「フラグメント」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列は、より大型の配列の部分集合を形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、断片またはフラグメントに相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、いずれかのエンドヌクレアーゼによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0221】
本発明によると、配列に言及する場合、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる、参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が差異を構成して、
(iiii)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じる任意のギャップもまた、塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0222】
比較配列と、それに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同じまたはそれを上回るアライメントが存在すれば、その中に、上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0223】
したがって上述したように、本発明は、配列番号1~配列番号114、または配列番号1~配列番号114と88%相同的であるその変異体、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異体からなる群から選択される配列を含んでなる、ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子または前記ペプチドの伸長バージョンを、クラスIIに結合する能力を有する。
【0224】
本発明では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度を指す(上の同一性百分率を参照されたい)。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他のツールが、公共データベースによって提供される。
【0225】
当業者は、特定のペプチドの変異体によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(Appay et al.,2006;Colombetti et al.,2006;Fong et al.,2001;Zaremba et al.,1997)。
【0226】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1~配列番号114からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様に、HLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で、置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が改変されることを意味する。例えば、ペプチドは、それがHLA-A*02または-DRなどの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにしてそれは、活性化CTLのTCRに結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。
【0227】
これらのT細胞は、引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義される同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。学術文献およびデータベース(Rammensee et al.,1999;Godkin et al.,1997)から演繹され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的に、アンカー残基であり、結合溝を構成するポリペプチド鎖の極性、電気物理的、疎水性、および空間特性によって画定されるHLA受容体の結合モチーフと適合する、コア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1~配列番号114に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異型がMHCクラスIまたはII分子に結合する能力を維持するかどうかを判定できるであろう。本発明の変異型は、活性化T細胞のTCRに結合する能力を維持し、それは引き続いて、本発明の態様で定義されるような同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞と交差反応して、それを殺滅し得る。
【0228】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドは、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、アミノ酸鎖の末端に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物の間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0229】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0230】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するがサイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。高度に非保存的な置換は、極性アミノ酸の、または塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸による置換を伴うかもしれない。しかし化学効果は完全に予測可能でなく、遊離基置換は単純な化学的原理からは予測できない偶然の効果を生じさせる可能性があるので、このような「遊離基」置換は、潜在的に無効であるとして却下され得ない。
【0231】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本発明の抗原性ペプチドに通常見られるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに、非標準アミノ酸(すなわち、一般的な天然タンパク質新生アミノ酸以外)もまた置換目的で使用して、本発明による免疫原および免疫原性ポリペプチドが製造されてもよい
【0232】
2つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等のまたはそれを超える抗原活性のあるペプチドをもたらすことが発見された場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。最大でも、ペプチド内の4つ以上の位置を超えて同時に置換されることはない。
【0233】
本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較すると、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が、実質的に変化したり悪影響を受けたりすることなく交換される、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸を有し得る(アンカーモチーフについては下記を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチド中では、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が非修飾ペプチドと比較して実質的に変化したり悪影響を受けることなく、1つまたは2つのアミノ酸が、それらの保存的交換パートナー(以下を参照されたい)で交換され得る。
【0234】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、その他のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異体を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0235】
【0236】
より長い(伸長された)ペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は8~11アミノ酸長であるが、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質から、ペプチドプロセッシングによって生成することが可能である。実際のエピトープ側面に位置する残基は、プロセッシング中に実際のエピトープを曝露させるのに必要なタンパク質分解切断に、実質的に影響を及ぼさない残基であることが好ましい。
【0237】
本発明のペプチドは、最大4個のアミノ酸によって伸長させ得て、すなわち4:0~0:4の間のあらゆる組み合わせで、どちらかの末端に1、2、3または4個のアミノ酸が付加され得る。本発明による伸長の組み合わせは、表7にある。
【0238】
【0239】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0240】
したがって本発明のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0241】
代案の実施形態では、ペプチドは、4つを超えるアミノ酸で、好ましくは最大30アミノ酸の全長まで、片側または両側で伸長される。これは、MHCクラスII結合ペプチドをもたらしてもよい。MHCクラスIIへの結合は、当該技術分野で公知の方法によって試験される得る。
【0242】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14、すなわち8、9、10、11、12、13、14アミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。
【0243】
もちろん、本発明によるペプチドまたは変異型は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する。ペプチドまたは変異体のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0244】
好ましくは、本発明によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増大の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0245】
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号に1~配列番号114に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0246】
「から本質的になる」は、本発明によるペプチドが、配列番号1~配列番号114のいずれかに記載の配列またはその変異体に加えて、MHC分子エピトープのエピトープとして機能するペプチドの一部を必ずしも構成しない、追加的なNおよび/またはC末端に位置するアミノ酸の一連の配列を含有することを意味するものとする。
【0247】
それでもなお、これらの一連の配列は、本発明によるペプチドの細胞への効率的な導入を提供する上で重要であり得る。本発明の一実施形態では、ペプチドは、例えば、NCBI、GenBank受入番号X00497に由来する、HLA-DR抗原関連不変鎖(p33、以下の「Ii」)の80個のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質の一部である。その他の融合物中では、本発明のペプチドは、本明細書に記載されるような抗体、またはその機能的部分に、特に抗体の配列中に、前記抗体によって特異的に標的化されるように融合し得て、または例えば、本明細書に記載されるような樹状細胞に対して特異的な抗体に、またはその中に融合し得る。
【0248】
さらにペプチドまたは変異型は、より強力な免疫応答を引き起こすために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するようにさらに修飾されてもよい。ペプチド配列のこのような最適化方法は当該技術分野で周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入が挙げられる。
【0249】
逆ペプチド結合においては、アミノ酸残基はペプチド(-CO-NH-)結合によって連結せず、ペプチド結合が逆転する。このようなレトロ-インベルソペプチド模倣剤は、例えば、参照により本明細書に援用される、Meziere et al(1997)(Meziere et al.,1997)に記載されるものなどの当該技術分野で既知の方法を使用して製造されてもよい。このアプローチは、側鎖の方向でなく主鎖に関与する変化を含有する、擬ペプチドの生成を伴う。Meziere et al.(Meziere et al.,1997)は、MHC結合およびTヘルパー細胞応答のために、これらの擬ペプチドが有用であることを示す。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロインバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかにより高い耐性がある。
【0250】
非ペプチド結合は、例えば、-CH2-NH、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-である。米国特許第4,897,445号明細書は、標準手順によって合成されるポリペプチド、およびNaCNBH3の存在下でアミノアルデヒドとアミノ酸を反応させることで合成される非ペプチド結合が関与する、ポリペプチド鎖中の非ペプチド結合(-CH2-NH)を固相合成する方法を提供する。
【0251】
上述の配列を含んでなるペプチドは、それらのアミノおよび/またはカルボキシ末端に存在する追加的な化学基と共に合成して、ペプチドの安定性、生物学的利用能、および/または親和性を高めてもよい。例えば、カルボベンゾキシル、ダンシル、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水性基が、ペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシ-カルボニル基が、ペプチドのアミノ末端に配置されてもよい。さらに、疎水性基、t-ブチルオキシカルボニル、またはアミド基が、ペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。
【0252】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を改変するように合成されてもよい。例えば、通常のL異性体でなく、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基のD異性体が使用されてもよい。なおもさらに、本発明のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つが、周知の非天然起源アミノ酸残基の1つで置換されてもよい。これらのような変化は、本発明のペプチドの安定性、生物学的利用能および/または結合作用の増大に役立ってもよい。
【0253】
同様に、本発明のペプチドまたは変異体は、ペプチド合成の前または後のどちらかに、特定のアミノ酸を反応させることで化学的に修飾されてもよい。このような修飾の例は、当該技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に援用される、R.Lundblad,Chemical Reagents for Protein Modification,3rd ed.CRC Press,2004(Lundblad,2004)に要約される。アミノ酸の化学修飾としては、これに限定されるものではないが(although without limitation thereto)、アシル化、アミジン化、リジンのピリドキシル化、還元アルキル化、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、システインのシステイン酸への過ギ酸酸化によるカルボキシル基のアミド修飾およびスルフヒドリル修飾、水銀誘導体形成、その他のチオール化合物との混合ジスルフィド形成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化による修飾が挙げられるが、これに限定されるものではない(is not limited to)。この点において、当業者は、タンパク質の化学修飾に関するより詳細な手順について、Current Protocols In Protein Science,Eds.Coligan et al.(John Wiley and Sons NY 1995-2000)(Coligan et al.,1995)の第15章を参照されたい。
【0254】
簡単に述べると、例えばタンパク質中のアルギニル残基の修飾は、付加体を形成するためのフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンなどの隣接するジカルボニル化合物の反応に基づくことが多い。別の実施例は、メチルグリオキサールとアルギニン残基の反応である。システインは、リジンおよびヒスチジンなどのその他の求核性部位の同時の修飾なしに修飾され得る。その結果、システイン修飾のために多数の試薬が利用可能である。Sigma-Aldrichなどの会社のウェブサイト(http://www.sigma-aldrich.com)が、特定の試薬に関する情報を提供する。
【0255】
タンパク質中のジスルフィド結合の選択的還元もまた、一般的である。ジスルフィド結合は、生物医薬品の加熱処理中に形成されて酸化され得る。ウッドワード試薬Kを使用して、特定のグルタミン酸残基が修飾されてもよい。N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミドを利用して、リジン残基とグルタミン酸残基の間に分子内架橋が形成され得る。例えば、ジエチルピロ炭酸は、タンパク質中のヒスチジル残基修飾のための試薬である。ヒスチジンはまた、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを使用して修飾され得る。リジン残基およびその他のα-アミノ基の反応物は、例えば、ペプチドの表面への結合またはタンパク質/ペプチド架橋で有用である。リジンはポリ(エチレン)グリコールの付着部位であり、タンパク質のグリコシル化の主要な修飾部位である。タンパク質中のメチオニン残基は、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、およびクロラミンTによって修飾され得る。
【0256】
テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾールを使用して、チロシル残基が修飾され得る。ジチロシンの形成を通じた架橋は、過酸化水素/銅イオンによって達成され得る。
【0257】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシニミド、臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルまたは3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドール(BPNS-スカトール)が使用されている。
【0258】
PEGによる治療用タンパク質およびペプチドの成功裏の修飾が、循環半減期の延長に関連することが多い一方で、タンパク質と、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびホルムアルデヒドとの架橋は、ハイドロゲル調製のために使用される。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、カリウムシアネートでのカルバミル化によって達成されることが多い。
【0259】
ペプチドが修飾されまたは非ペプチド結合を含む、ペプチドまたは変異体は、本発明の好ましい実施形態である。一般に、ペプチドおよび変異体(少なくともアミノ酸残基間にペプチド結合を含有するもの)は、Lukas et al.(Lukas et al.,1981)によって、そしてその中で引用される参考文献によって開示される、Fmoc-ポリアミド様式の固相ペプチド合成によって合成されてもよい。一時的なN-アミノ基保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の反復性切断は、N,N-ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して実施される。側鎖官能基は、それらのブチルエーテル(セリン、スレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護されてもよい。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド官能基を保護するために、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル基が活用される。固相担体は、ジメチルアクリルアミド(主鎖単量体)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(架橋剤)、およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(機能化因子)の3つの単量体から構成される、ポリジメチル-アクリルアミドポリマーをベースとする。使用されるペプチド-対-樹脂の切断可能な結合因子は、酸不安定性4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介共役手順を使用して付加されるアスパラギンおよびグルタミンを除いて、全てのアミノ酸誘導体は、それらのあらかじめ形成された対称的な無水物誘導体として付加される。全ての共役および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン(isotin)試験手順を使用してモニターされる。合成完了時に、ペプチドは樹脂担体から切断され、同時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸での処理によって、側鎖保護基が除去される。一般に使用されるスカベンジャーとしては、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水が挙げられ、正確な選択は、合成されるペプチドの構成アミノ酸に左右される。ペプチドの合成のための固相法と溶液相法の組み合わせもまた、可能である(例えば、(Bruckdorfer et al.,2004)、およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。
【0260】
トリフルオロ酢酸は、真空蒸発によって除去され、引き続くジエチルエーテルを用いた磨砕は、粗製ペプチドをもたらす。存在する任意のスカベンジャーは、単純な抽出手順によって除去され、それは水相の凍結乾燥時に、スカベンジャーを含まない粗製ペプチドを与える。ペプチド合成のための試薬は、通常、例えば、Calbiochem-Novabiochem(Nottingham,UK)から入手できる。
【0261】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えば、アセトニトリル/水勾配分離を使用した逆相高速液体クロマトグラフィーなどの技術の任意の1つまたは組み合わせによって実施されてもよい。
【0262】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析を使用して、高速原子衝撃(FAB)質量分光分析によって、ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量分光分析によって、実施されてもよい。
【0263】
過剰提示ペプチドを選択するために、中央値サンプル提示ならびに反復試験変動を示す、提示プロファイルが計算される。プロファイルは、目的腫瘍実体のサンプルを正常なサンプルのベースラインに並置させる。次に、線形混合効果モデルのp値を計算し(Pinheiro et al.,2015)、誤検出率によって複数試験について補正する(Benjamini and Hochberg,1995)ことで、これらの各プロファイルが過剰提示スコアに統合され得る。
【0264】
質量分析によるHLAリガンドの同定と相対的定量化のために、衝撃凍結サンプルからのHLA分子が精製されて、HLA関連ペプチドが単離された。単離ペプチドが分離され、オンラインナノエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験によって、配列が同定された。その結果生じたペプチド配列は、RCCサンプル(N=18*02陽性サンプル)から記録された天然TUMAPの断片化パターンと、同一配列の対応する合成標準ペプチドの断片化パターンとの比較によって、確認された。ペプチドは、原発性腫瘍のHLA分子のリガンドとして直接、同定されたので、これらの結果は、18人のRCC患者から入手された原発性がん組織上における、同定されたペプチドの天然プロセッシングおよび提示の直接的証拠を提供する。
【0265】
発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.1(例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第2013-0096016号明細書を参照されたい)は、いくつかの異なる非がん性組織および臓器と比較した、がん組織上のHLA拘束性ペプチドレベルの直接相対定量化に基づく、妥当な過剰提示ペプチドワクチン候補の同定と選択ができるようにする。これは、独自仕様のデータ解析パイプラインで処理された獲得LC-MSデータを使用して、配列同定のためのアルゴリズム、スペクトルクラスタリング、イオン計数、滞留時間アライメント、電荷状態のデコンボリューション、および正規化を組み合わせる、無標識示差定量化の開発によって達成された。
【0266】
各ペプチドおよびサンプルの誤差推定値を含む、提示レベルが確立された。腫瘍組織上で排他的に提示されるペプチド、および腫瘍内で過剰提示されるペプチドが、非がん性の組織および臓器との比較で同定された。
【0267】
RCC組織サンプルからのHLAペプチド複合体は精製されてHLA結合ペプチドが単離され、LC-MSによって分析された(実施例を参照されたい)。本出願に含まれる全てのTUMAPは、このアプローチによって原発性RCCサンプル上で同定され、原発性RCC上におけるそれらの提示が確認された。
【0268】
複数のRCCおよび正常組織上で同定されたTUMAPは、無標識LC-MSデータのイオン計数を使用して定量化された。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量に相関すると仮定する。様々なLC-MS実験におけるペプチドの全ての定量的シグナルは、中心傾向に基づいて正規化され、サンプル当たりで平均化されて、提示プロファイルと称される棒グラフにマージされた。提示プロファイルは、タンパク質データベース検索、スペクトルクラスタリング、電荷状態デコンボリューション(除電)、および滞留時間アライメントおよび正規化のような、異なる解析法を統合する。
【0269】
さらに、発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.は、がんまたはその他の感染組織上で、MHC拘束性、好ましくはHLA拘束性のペプチドレベルの直接絶対定量化ができるようにする。簡単に述べると、分析された組織サンプルの全DNA含有量から、総細胞数が計算された。組織サンプル中のTUMAPの全ペプチド量は、天然TUMAPと、既知量のTUMAPの同位体標識バージョン、いわゆる内標準との比率として、ナノLC-MS/MSによって測定された。TUMAP単離の効率は、TUMAP単離手順の可能な限り早い時点で、全ての選択されたTUMAPのペプチド:MHC複合体を組織溶解産物に添加して、ペプチド単離手順の完了に続く、ナノLC-MS/MSによるそれらの検出によって判定された。総細胞数および全ペプチド量は、組織サンプル当たり三連の測定から計算された。ペプチド単離効率は、それぞれ三連で測定された、10回の添加実験からの平均として計算された(実施例6および表12を参照されたい)。
【0270】
本発明は、本発明のペプチドを過剰にまたは排他的に提示する、好ましくはRCCである、がん/腫瘍を治療するのに有用なペプチドを提供する。これらのペプチドは、原発性ヒトRCCサンプル上で、HLA分子によって天然に提示されることが、質量分析法によって示された。
【0271】
それにペプチドが由来する起源遺伝子/タンパク質(「完全長タンパク質」または「基礎タンパク質」とも称される)の多くは、正常組織と比較してがんにおいて高度に過剰発現されることが示されて、起源遺伝子の高度な腫瘍関連性が実証され、「正常組織」は、本発明との関連で、健康な腎細胞またはその他の正常組織細胞のどちらかを意味するものとする(実施例2を参照されたい)。さらに、ペプチドそれ自体は、腫瘍組織上で強く過剰提示されるが正常組織上では過剰提示されず、「腫瘍組織」は本発明との関連で、RCCに罹患している患者に由来するサンプルを意味するものとする(実施例1を参照されたい)。
【0272】
HLA結合ペプチドは、免疫系、特にTリンパ球によって認識され得る。T細胞は、例えば、誘導ペプチドを提示するRCC細胞などの、認識されたHLA/ペプチド複合体を提示する細胞を破壊し得る。
【0273】
本発明のペプチドは、T細胞応答を刺激でき、および/または過剰提示されることが示されおり、したがって本発明に従って、抗体および/または可溶性TCRなどのTCRの製造のために使用され得る(実施例3、実施例4を参照されたい)。さらに、ペプチドは、それぞれのMHCと複合体化した場合に、本発明による抗体および/またはTCR、特にTCR製造のためにも使用され得る。それぞれの方法は当業者に良く知られており、それぞれの参考文献にもまた見られる。したがって本発明のペプチドは、それによって腫瘍細胞が破壊され得る、患者における免疫応答を生じさせるのに有用である。患者における免疫応答は、理想的には免疫原性を増強する薬剤(すなわちアジュバント)との組み合わせで、記載されるペプチド、または適切な前駆体(例えば伸長ペプチド、タンパク質、またはこれらのペプチドをコードする核酸)を患者に直接投与することで、誘導され得る。本発明の標的ペプチドは、正常組織上では同等のコピー数で提示されないので、このような治療的ワクチン接種から生じる免疫応答は、腫瘍細胞に対して高度に特異的であることが予測され得て、患者の正常細胞に対する望まれない自己免疫反応のリスクを防止する。
【0274】
本明細書は、鎖およびaβ鎖(「α/βTCR」)を含んでなるT細胞受容体(TCR)にさらに関する。MHC分子によって提示された際に、TCRおよび抗体に結合できるペプチドもまた提供される。本明細書はまた、本明細書のTCRおよびペプチドを発現するための核酸、ベクター、および宿主細胞;そしてそれを使用する方法にも関する。
【0275】
「T細胞受容体」(TCRと略記される)という用語は、αポリペプチド鎖(α鎖)およびaβポリペプチド鎖(β鎖)を含んでなるヘテロ二量体分子を指し、ヘテロ二量体受容体は、HLA分子によって提示されるペプチド抗原と結合できる。本用語は、いわゆるγ/δTCRもまた含む。
【0276】
一実施形態では、本明細書は、本明細書に記載されるようなTCRを製造する方法を提供し、方法は、TCRの発現を促進するのに適した条件下でTCRを発現できる、宿主細胞を培養するステップを含んでなる。
【0277】
本明細書の別の態様では、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に、抗原が負荷され、または抗原/クラスIまたはII MHC複合体モノマーを四量体化することで、クラスIまたはII MHC四量体上に抗原が負荷される、本明細書に記載の方法に関する。
【0278】
α/βTCRのαおよびβ鎖、そしてγ/δTCRのγおよびδ鎖は、一般にそれぞれ2つの「領域」、すなわち可変および定常領域を有すると見なされる。可変領域は、可変領域(V)の連結と、連結領域(J)とからなる。可変領域はまた、リーダー領域(L)を含んでもよい。βおよびδ鎖はまた、多様性領域(D)を含んでもよい。αおよびβ定常領域はまた、αおよびβ鎖を細胞膜に固着させるC末端膜貫通(TM)領域を含んでもよい。
【0279】
γ/δTCRに関して、「TCRγ可変領域」という用語は、本明細書の用法ではリーダー領域(L)のないTCRγV(TRGV)領域とTCRγJ(TRGJ)領域との連結を指し、TCRγ定常領域という用語は、細胞外TRGC領域を指し、またはC末端トランケート型TRGC配列を指す同様に「TCRδ可変領域」という用語は、リーダー領域(L)のないTCRδV(TRDV)領域とTCRδD/J(TRDD/TRDJ)領域との連結を指し、「TCRδ定常領域」という用語は、細胞外TRDC領域を指し、またはC末端トランケート型TRDC配列を指す。
【0280】
本明細書のTCRは、好ましくは、約100μM以下、約50μM以下、約25μM以下、または約10μM以下の結合親和性(KD)で、ペプチド-HLA分子複合体に結合する。より好ましいのは、約1μM以下、約100nM以下、約50nM以下、約25nM以下の結合親和性を有する、高親和性TCRである。本発明のTCRの好ましい結合親和性範囲の非限定的例としては、約1nM~約10nM;約10nM~約20nM;約20nM~約30nM;約30nM~約40nM;約40nM~約50nM;約50nM~約60nM;約60nM~約70nM;約70nM~約80nM;約80nM~約90nM;および約90nM~約100nMが挙げられる。
【0281】
本明細書の用法では、本明細書のTCRとの関連で、「特異的結合」およびそれらの文法的変種は、ペプチド-HLA分子複合体に対して、100μM以下の結合親和性(KD)を有するTCRを意味するために使用される。
【0282】
本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、それらの定常領域の間に導入された、ジスルフィド結合を有してもよい。このタイプの好ましいTCRとしては、TRAC定常領域配列とTRBC1またはTRBC2定常領域配列とを有するものが挙げられるが、ただし、TRACのThr48およびTRBC1またはTRBC2のSer57は、システイン残基によって置換されており、前記システインは、TCRのTRAC定常領域配列とTRBC1またはTRBC2定常領域配列との間に、ジスルフィド結合を形成する。
【0283】
上述の導入された鎖間結合の存在下または不在下で、本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、TRAC定常領域配列とTRBC1またはTRBC2定常領域配列とを有してもよく、TCRのTRAC定常領域配列と、TRBC1またはTRBC2定常領域配列とが、TRACのエクソン2のCys4と、TRBC1またはTRBC2のエクソン2のCys2との間の天然ジスルフィド結合によって連結されてもよい。
【0284】
本明細書のTCRは、放射性核種、フルオロフォア、およびビオチンからなる群から選択される、検出可能な標識を含んでなってもよい。本明細書のTCRは、放射性核種、化学療法剤、または毒素などの治療的活性薬剤にコンジュゲートされてもよい。
【0285】
一実施形態では、α鎖に少なくとも1つの変異を有し、および/またはβ鎖に少なくとも1つの変異を有する本明細書のTCRは、非変異TCRと比較して修飾されたグリコシル化を有する。
【0286】
一実施形態では、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖に少なくとも1つの変異を含んでなるTCRは、ペプチド-HLA分子複合体に対して、非変異TCRα鎖および/または非変異TCRβ鎖を含んでなるTCRの少なくとも2倍の結合親和性および/または結合半減期を有する。腫瘍特異的TCRの親和性増大とその利用は、最適TCR親和性のウィンドウの存在に依存する。このようなウィンドウの存在は、HLA-A2限定病原体に対して特異的なTCRが、HLA-A2限定腫瘍関連自己抗原に対して特異的なTCRと比較して、一般に約10分の1のKD値を有するという観察に基づく。腫瘍抗原は免疫原性である可能性を有するが、腫瘍は個人自身の細胞から生じるので、改変された翻訳プロセッシングのある変異型タンパク質またはタンパク質のみが、免疫系によって異質と見なされことが今や知られている。上方制御されまたは過剰発現される抗原(いわゆる自己抗原)は、腫瘍に対する機能性免疫応答を必ずしも誘導しない。これらの抗原に対して高度に反応性のTCRを発現するT細胞は、中枢性免疫寛容として知られている過程、すなわち自己抗原に対する低親和性TCRがあるT細胞のみが残留する過程によって、胸腺内で負選択される。したがって、発明による(tot he)ペプチドに対する本明細書のTCRまたは変異体の親和性は、当該技術分野で周知の方法によって増大され得る。
【0287】
本明細書は、本明細書に従ってTCRを同定して単離する方法にさらに関し、前記方法は、HLA-A*02陰性健常ドナーからのPBMCをA2/ペプチドモノマーと共にインキュベートするステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共にインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる
【0288】
本明細書は、本明細書に従ってTCRを同定して単離する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補償する多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)がある遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスを目的ペプチドで免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)がある遺伝子組換えマウスから得られるPBMCをインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる
【0289】
一態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、本明細書のTCR-αおよび/またはTCR-β鎖をコードする核酸が、γレトロウイルスまたはレンチウイルスなどの発現ベクターにクローン化される。組換えウイルスが生成され、次に、抗原特異性および機能性結合活性などの機能について試験される。次に、最終生成物のアリコートを使用して、標的T細胞集団(一般に患者のPBMCから精製される)が形質導入され、それは患者への輸液前に増殖される。別の態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、例えば、生体外転写システム(sys-tems)などの当該技術分野で公知の技術によって、TCR RNAが合成される。次に生体外で合成されたTCR RNAは、健常ドナーから得られた原発性CD8+T細胞内に、電気穿孔によって導入され、腫瘍特異的TCR-αおよび/またはTCR-β鎖が再発現される。
【0290】
発現を増大させるために、本明細書のTCRをコードする核酸は、レトロウイルス長末端反復(LTR)、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)U3、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、β-アクチン、ユビキチン、およびシミアンウイルス40(SV40)/CD43複合プロモーター、伸長因子(EF)-1a、および脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターなどの強力なプロモーターと作動可能に連結されてもよい。好ましい実施形態では、プロモーターは、発現される核酸に対して異種である。強力なプロモーターに加えて、本明細書のTCR発現カセットは、レンチウイルスコンストラクトの核転座を促進する、中央ポリプリントラクト(cPPT)(Follenzi et al.,2000)、およびRNA安定性を増大させることで導入遺伝子発現のレベルを高める、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(wPRE)(Zufferey et al.,1999)をはじめとする、導入遺伝子発現を促進し得る追加的な要素を含有してもよい。
【0291】
本発明のTCRのαおよびβ鎖は、別々のベクターにある核酸によってコードされてもよく、または同一ベクターにあるポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0292】
高レベルのTCR表面発現の達成には、導入されたTCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方が、高レベルで転写される必要がある。これを行うために、本明細書のTCR-αおよびTCR-β鎖は、この障害を克服できることが示されている、単一ベクター内のバイシストロニックコンストラクトにクローン化されてもよい。TCR-αおよびTCR-β鎖は、翻訳中に2つのタンパク質に分かれて等モル比のTCR-αおよびTCR-β鎖の生成を確実にする単一転写物から生成されるので、TCR-αおよびTCR-β鎖の間のウイルス配列内リボソーム進入部位の使用は、双方の鎖の協調発現をもたらす(Schmitt et al.2009)。
【0293】
本明細書のTCRをコードする核酸はコドン最適化されて、宿主細胞からの発現が増大されてもよい。遺伝コードの重複は、いくつかのアミノ酸が2つ以上のコドンによってコードされるようにするが、特定のコドンは、適合tRNAの相対可用性ならびにその他の要因のために、他のものよりも「最適」でない(Gustafsson et al.,2004)。各アミノ酸が、哺乳類遺伝子発現のための最適コドンによってコードされるように、TCR-αおよびTCR-β遺伝子配列を修飾すること、ならびにmRNA不安定モチーフまたは潜在的スプライス部位を除去することは、TCR-αおよびTCR-β遺伝子発現を有意に促進することが示されている(Scholten et al.,2006)。
【0294】
さらに、導入TCR鎖と内因性TCR鎖の間の誤対合は、自己免疫に重大なリスクをもたらす特異性の獲得を引き起こすこともある。例えば、混合TCR二量体の形成は、適切に対合するTCR複合体を形成するために利用できるCD3分子の数を減少させてもよく、ひいては導入TCRを発現する細胞の機能性結合活性を有意に低下させ得る(Kuball et al.,2007)。
【0295】
誤対合を減少させるために、本明細書の導入TCR鎖のC末端領域は、鎖間親和性を高める一方で、導入鎖が内因性TCRと対形成する能力を低下させるために、修飾されてもよい。これらのストラテジーとしては、ヒトTCR-αおよびTCR-βのC末端領域をそれらのマウス対応物(マウス化C末端領域)で置換する;導入TCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方に第2のシステイン残基を導入することで、C末端領域に第2の鎖間ジスルフィド結合を作製する(システイン修飾);TCR-αおよびTCR-β鎖C末端領域内の相互作用残基を交換する(「ノブ・イン・ホール」);そしてTCR-αおよびTCR-β鎖の可変領域をCD3ζに直接融合させる(CD3ζ融合)が挙げられる(Schmitt et al.2009)。
【0296】
一実施形態では、宿主細胞は、本細書のTCRを発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、宿主細胞は、ヒトT細胞またはT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞またはT細胞前駆細胞は、がん患者から得られる。その他の実施形態では、T細胞またはT細胞前駆細胞は、健常ドナーから得られる。本明細書の宿主細胞は、治療される患者に関して、同種異系または自己由来であり得る。一実施形態では、宿主は、α/βTCRを発現するように形質転換されたγ/δT細胞である。
【0297】
「医薬組成物」は、医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0298】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドを含んでなる(上記もまた参照されたい)。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、酸性塩は、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基から調製される(典型的に、薬剤の中性形態が中性NH2基を有する)。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を用いて調製される。
【0299】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドを含んでなる。
【0300】
好ましくは、本発明の薬剤は、ワクチンなどの免疫療法剤である。それは、患者に直接、罹患臓器に、または全身的に、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.投与され、または生体外で患者またはヒト細胞株に由来する細胞に適用されて、それが引き続いて患者に投与され、または生体外で使用されて患者に由来する免疫細胞の亜集団が選択され、次にそれが患者に再投与されてもよい。核酸が、生体外で細胞に投与される場合、インターロイキン2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるように、細胞を形質移入することが有用であってもよい。ペプチドは、実質的に純粋であり、または免疫刺激アジュバント(下記参照)と組み合わされ、または免疫賦活性サイトカインと組み合わせて使用され、または例えばリポソームなどの適切な送達系によって投与されてもよい。ペプチドはまた、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはマンナンなどの適切な担体に共役されてもよい(国際公開第95/18145号パンフレットおよび(Longenecker et al.,1993)を参照されたい)。ペプチドはまた、標識されてもよく、融合タンパク質であってもよく、またはハイブリッド分子であってもよい。その配列が本発明に記載されるペプチドは、CD4またはCD8 T細胞を刺激することが予測される。しかし、CD8 T細胞の刺激は、CD4 Tヘルパー細胞によって提供される援助の存在下で、より効率的である。したがって、CD8 T細胞を刺激するMHCクラスIエピトープでは、ハイブリッド分子の融合パートナーまたはセクションは、適切にはCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供する。CD4およびCD8刺激エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で同定されたものを含む。
【0301】
一態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号114に記載されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの追加的なペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個のペプチドとを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特異的TAAから誘導されてもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0302】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはペプチド変異体をエンコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、単鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖があるポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本発明のなおもさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0303】
例えば相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNA断片に、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターおよびDNA断片が連結されて、組換えDNA分子が形成する。
【0304】
1つまたは複数の制限酵素認識部位を含有する合成リンカーは、DNA断片をベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、International Biotechnologies Inc.New Haven,CN,USAをはじめとするいくつかの供給元から商業的に入手できる。
【0305】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki RK、et al.(Saiki et al.,1988)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば適切な制限酵素認識部位を改変することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0306】
次にDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を適切な宿主において発現させ、本発明のペプチドまたは変異体を含んでなるポリペプチドが製造されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本発明のペプチドまたは変異体をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および製造のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0307】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0308】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳制御調節ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような調節は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞内で選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御要素があるDNA配列を発現ベクター内に組み込むことを伴う。
【0309】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。
【0310】
次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収れさ得る。
【0311】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、発現系は、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0312】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部と、ネオマイシンなどの耐性マーカーとがある、CMVまたはSV40プロモーターを含んでなる。一例は、Pharmacia,Piscataway,NJ,USAから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0313】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞において、構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに駆動する。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは、典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞における高レベルのDNA複製をもたらす。CMVベクターは、例えば、細菌細胞におけるpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌におけるアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝子、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用した精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞において使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0314】
別の実施形態では、本発明の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトに類似する)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって、共に連結または融合されてもよく、またはそれらの間のいかなる追加的なペプチドもなしに連結されてもよい。これらのコンストラクトはまた、がん療法のために使用され得て、MHC IとMHC IIの双方が関与する免疫応答を誘導してもよい。
【0315】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc.,Bethesda,MD,USAから入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、および米国微生物系統保存機関(ATCC)Rockville,MD,USAから入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト線維芽および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA 92037,USAから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、例えば、Paulina Balbas and Argelia Lorence”Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression,Reviews and Protocols,”Part One,Second Edition,ISBN 978-1-58829-262-9の教科書、および当業者に知られているその他の文献にある。
【0316】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに左右される周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al.(Cohen et al.,1972)および(Green and Sambrook,2012)を参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al.(Sherman et al.,1986)に記載される。Beggs(Beggs,1978)の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞を形質移入するのに有用な、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤などの試薬が、Stratagene Cloning Systems,or Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD 20877,USAから入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0317】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、上清中のタンパク質の存在が、抗体を使用して検出され得る。
【0318】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞は、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子中に負荷されてもよいように、本発明のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0319】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質が負荷されたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、米国食品医薬品局(FDA)によって2010年4月20日に認可された(シプロイセルT)(Rini et al.,2006;Small et al.,2006)。
【0320】
本発明のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる。ペプチドまたはその変異型を製造する方法を提供する。
【0321】
別の実施形態では、本発明のペプチド、核酸または発現ベクターは、医療において使用される。例えば、ペプチドまたはその変異体は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射のために調合されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c.、i.d.、i.p.、i.m.、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに左右される。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al.,2012)。
【0322】
活性ワクチン接種のために使用されるポリヌクレオチドは、実質的に純粋であってもよく、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概説は、例えば、Teufel et al.(Teufel et al., 2005)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または2つ以上のウイルスの構成要素を含有するハイブリッドベースのシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野において周知である。「遺伝子銃」などを通じた物理的送達もまた、使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチド(単数)またはペプチド(複数)は、例えば、上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0323】
本発明の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、免疫応答(例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって本発明の薬剤中で有用であると見なされる。適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンに由来するフラジェリンまたはTLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321、IL-2やL-13やIL-21などのインターロイキン、インターフェロン-αまたは-βまたはそれらのPEG化誘導体、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOM、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコグリコリド)[PLG]ベースおよびデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソームおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquila’s QS21 stimulon、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体、およびRibi’s DetoxまたはQuilまたはSuperfosなどのその他の独自仕様の補助剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的な、いくつかの免疫学的アジュバント(例えばMF59)が、以前記載されている(Allison and Krummel,1995)。サイトカインもまた、使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への移動に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体が参照により本明細書に具体的に援用される、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-12、IL-15、IL-23、IL-7、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連づけられている(Gabrilovich et al.,1996)。
【0324】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を促進することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘導性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生きたまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防的および治療的ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする、多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を促進し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの配合物、または類似配合物中で、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg,2006)。米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である、Mologen(Berlin,Germany)製のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0325】
有用なアジュバントその他の例としては、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera);ポリ(I:C)などのdsRNAアナログおよびそれらの誘導体(例えばAmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGF Trap、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4などの免疫活性小型分子および抗体;免疫系の重要な構造体を標的にするその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGFβ、抗TNFα受容体);SC58175が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらは治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0326】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0327】
本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、およびインターフェロンαなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0328】
本発明による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、およびレシキモドなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 20、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、ポリICLC(Hiltonol(登録商標))、および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0329】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、風味、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与され得る。このような組成物中で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe,2000)から採用され得る。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。例示的調合物は、例えば、欧州特許第2112253号明細書にある。
【0330】
本発明によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、それぞれの腫瘍が抗原のいくつかを発現することを予期して設計され、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーする。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「出来合」で使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的なバイオマーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である(Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0331】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチドとMHCの複合体)を有する特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導できる。別の実施形態では、キャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を介して、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらのフラグメント、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。分子が標的に結合するスキャフォールドであるかどうかを評価するために、結合アッセイが実施され得る。
【0332】
「特異的」結合は、特異的標的を保有する細胞を殺滅できる活性分子を装備したスキャフォールドが、特異的標的がないがその他のペプチド-MHC複合体を提示する別の細胞を殺滅できない程度に、スキャフォールドがその他の天然ペプチド-MHC-複合体よりもさらに良好に、目的ペプチド-MHC-複合体に結合することを意味する。交差反応性ペプチド-MHCのペプチドが天然に存在せず、すなわち、ヒトHLA-ペプチドームに由来しない場合、その他のペプチド-MHC複合体への結合は無関係である。標的細胞死滅を評価する試験は、当該技術分野で周知である。それらは、非改変ペプチド-MHC提示がある標的細胞(初代細胞または細胞株)、または天然に存在するペプチド-MHCレベルに達するようにペプチドを負荷された細胞を使用して、実施されるべきである。
【0333】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0334】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、および抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。
【0335】
ポリペプチドスキャフォールドに関するさらなる情報については、例えば国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景セクション、およびその中で引用された参考文献を参照されたい。
【0336】
本発明は、アプタマーにさらに関する。アプタマー(例えば、国際公開第2014/191359号パンフレット、およびその中で引用される文献を参照されたい)は、短い一本鎖核酸分子であり、それは、所定の三次元構造に折り畳まれて、特異的標的構造体を認識し得る。それらは、標的療法を開発するための適切な代案のようであった。アプタマーは、高い親和性および特異性で、多様な複合体標的と選択的に結合することが示されている。
【0337】
細胞表面に位置する分子を認識するアプタマーは、過去10年内に同定されており、診断および治療的アプローチを開発する手段を提供する。アプタマーは、毒性および免疫原性がほぼ皆無であることが示されているので、それらは生物医学的用途のための有望な候補である。確かに、例えば、前立腺特異的膜抗原認識アプタマーなどのアプタマーは、標的療法のために成功裏に用いられており、異種移植片生体内モデルにおいて機能できることが示されている。さらに、特異的腫瘍細胞株を認識するアプタマーが同定されている。
【0338】
DNAアプタマーは、様々ながん細胞、特に固形腫瘍に由来するものに対して広域スペクトル認識特性を示す一方で、非腫瘍形成性および主要健常細胞を認識しないように選択され得る。同定されたアプタマーが、特異的腫瘍サブタイプを認識するだけでなく、むしろ一連の腫瘍と相互作用する場合、これは、アプタマーをいわゆる広域スペクトル診断薬および治療薬として応用可能にする。
【0339】
さらに、フローサイトメトリーによる細胞結合挙動の研究は、アプタマーが、ナノモル濃度範囲内の非常に良好な見かけの親和性を見せたことを示した。
【0340】
アプタマーは、診断および治療目的で有用である。さらに、アプタマーの一部は腫瘍細胞に取り込まれ、したがって腫瘍細胞内へのsiRNAなどの抗がん剤の標的化送達のための分子ビヒクルとして、機能し得ることが示され得た。
【0341】
アプタマーは、細胞SELEX(試験管内進化法)技術を使用して、細胞および組織などの複合体標的に対して、および本発明による配列番号1~配列番号114のいずれかに記載の配列とMHC分子とを含んでなり、好ましくはそれからなるペプチド複合体などに対して、選択され得る。
【0342】
本発明のペプチドを使用して、MHC/ペプチド複合体に対する特異的抗体が生成され、開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織のサイズと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0343】
したがってHLA拘束性抗原と複合体化した、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、組換え抗体を製造する方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる、遺伝子操作された非ヒト哺乳類を前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリーを作製するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリーから単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0344】
HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する抗体を提供することも、本発明のさらなる態様であり、その中で抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である。
【0345】
このような抗体および一本鎖クラスI主要組織適合性複合体を製造するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を製造するためのその他のツールは、本発明の目的で、その内容全体が参照により全て明示的に援用される、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、および文献(Cohen et al.,2003a;Cohen et al.,2003b;Denkberg et al.,2003)で開示される。
【0346】
好ましくは、抗体は、20ナノモル濃度未満、好ましくは10ナノモル濃度未満の結合親和性で複合体に結合し、それは本発明の文脈で「特異的」とも見なされる。
【0347】
本発明は、配列番号1~配列番号114からなる群から選択される配列、または配列番号1~配列番号114と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチド、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異体に関し、前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0348】
本発明は、配列番号1~配列番号114からなる群から選択される配列、または、配列番号1~配列番号114と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異体を含んでなるペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたは変異体は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0349】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0350】
本発明は、ペプチドが、配列番号1~配列番号114に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0351】
本発明は、ペプチドが(化学的に)修飾された、および/または非ペプチド結合を含む、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0352】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなり、またはペプチドは、例えば樹状細胞特異的抗体などの抗体に(またその中に)融合する。
【0353】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関するが、ただしペプチドは完全(完全長)ヒトタンパク質でない。
【0354】
本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0355】
本発明は、本発明による核酸を発現できる、発現ベクターにさらに関する。
【0356】
本発明は、医療において、特にRCC治療において使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0357】
本発明は、本発明による核酸または本発明による発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0358】
本発明は、抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0359】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0360】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に、抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0361】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号114または前記異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現できる、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0362】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0363】
本発明は、本発明によるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0364】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における、使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0365】
本発明は、薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0366】
本発明は、発明による使用にさらに関し、前記がん細胞は、RCC細胞であり、また肺がん、脳がん、胃がん、結腸または直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、および食道がんなどのその他の固形または血液学的腫瘍細胞である。
【0367】
本発明は、RCCの診断および/または予後診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質およびバイオマーカーにさらに関する。本発明はまた、がん治療のためのこれらの新規標的の使用に関する。
【0368】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。無処理または「完全」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、本発明による所望の特性(例えば、RCCマーカー(ポリ)ペプチドの特異的結合、がんマーカー遺伝子を増大レベルで発現するRCC細胞への毒素の送達、および/またはRCCマーカーポリペプチドの活性阻害)のいずれかを示しさえすれば、フラグメント(例えば、CDRs、Fv、Fab、およびFcフラグメント)、またはこれらの免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子ヒト化バージョンのポリマーもまた含まれる。
【0369】
可能な場合は常に、本発明の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本発明の抗体は、周知の方法を使用して生成されてもよい。当業者は、本発明の抗体を製造するために、完全長RCCマーカーポリペプチドまたはそのフラグメントのどちらを使用してもよいことを理解するであろう。本発明の抗体を製造するために使用されるポリペプチドは、天然原料から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して製造されてもよい。
【0370】
例えば、配列番号1~配列番号114ポリペプチドに記載のペプチドなどの本発明によるペプチドをコードするcDNA;またはその変異体またはフラグメントが、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞)で発現され得て、その後、組換えタンパク質が精製されて、本発明による抗体を生成するために使用される、RCCマーカーポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体製剤を生成するために使用され得る。
【0371】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの生成が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性がある抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、それに対して抗体が使用される目的に従って、既知の方法によりそれらの所望の活性について試験される(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、免疫療法など;抗体の生成および試験のさらなるガイダンスについては、例えば、Greenfield,2014(Greenfield,2014))を参照されたい。例えば、抗体は、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット、ホルマリン固定がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色で試験されてもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0372】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体集団から入手される抗体を指し;すなわち、母集団を構成する個々の抗体は、微量で存在してもよい可能な自然発生的変異以外は同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する、抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントを特に含む(その内容全体が本明細書に援用される、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0373】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法においては、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫剤によって典型的に免疫化されて、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0374】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなどの組換えDNA法によって製造されるものであってもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。
【0375】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体フラグメント、特にFabフラグメントを作製するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載される。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位があるFabフラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りのFcフラグメントとを典型的に生じる。ペプシン処理は、F(ab’)2フラグメントおよびpFc’フラグメントをもたらす。
【0376】
抗体フラグメントは、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、フラグメントの活性が非修飾抗体または抗体フラグメントと比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合できるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれにしても、抗体フラグメントは、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現と、発現したポリペプチドの試験によって同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体フラグメントをエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0377】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見られない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中では、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0378】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、それは典型的に「移入」可変領域から得られる。ヒト化は、齧歯類CDR(複数)またはCDR(単数)配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、その中では、実質的に非損傷ヒト可変領域未満が、非ヒト生物種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中ではいくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換される。
【0379】
免疫化に際して、内因性免疫グロブリン生成不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を用い得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体生成の完全阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー中でも産生され得る。
【0380】
本発明の抗体は、好ましくは薬学的に許容できる担体中で、対象に投与される。典型的に、製剤中で適当量の薬理的に許容可能な塩が使用されて、製剤を等張にする。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路と濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0381】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0382】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような測定の実施は、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与しなくてはならない抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日当たり約1(μg/kg~最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。好ましくはRCCを治療するための抗体投与に続いて、治療用抗体の効力は、熟練した実務家に良く知られている様々な方法で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象におけるがんのサイズ、数、および/または分布がモニターされてもよい。抗体投与不在下で起こるであろう疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発生を予防する、治療的に投与された抗体は、がん治療のための有効な抗体である。
【0383】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を製造する方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は、相補性決定領域を標的とする変異誘発によって増大させ得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイを利用し得る(米国特許第2010/0113300号明細書、(Liddy et al.,2012))。ファージディスプレイ中に、そして薬剤として実用する際に、T細胞受容体を安定化させる目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞上で特定機能を発揮させるために、毒素、薬剤、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、および抗CD3ドメインのようなエフェクター細胞動員ドメインなどに、連結させ得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞において発現され得る。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットにある。TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載される。追加的な製造法は、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0384】
例えば、本明細書で開示されるような特定のペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)などのTCRを提供することが、本発明のさらなる態様である。
【0385】
さらに本発明のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断を確認し得る。
【0386】
抗体またはTCRはまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、免疫シンチグラフィー(immunoscintiography)を使用して腫瘍が位置確認され得るように、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、3H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらのフラグメントは、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、親和性(Kd)は1×10μM未満である。
【0387】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオジンおよびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウムおよびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価であってもよく、列挙される方法の2つ以上によって検出可能であってもよい。 これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に十分に技術分野で承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【0388】
本発明の別の態様は、活性化T細胞を製造するインビトロ法を含み、方法は、生体外T細胞を、適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトMHC分子に、T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり接触させるステップを含んでなり、抗原は本発明によるペプチドである。好ましくは、抗原提示細胞と共に、十分な量の抗原が使用される。
【0389】
好ましくは、哺乳類細胞は、TAPペプチド輸送体のレベルまたは機能が皆無でありまたは低下している。TAPペプチド輸送体が欠如している適切な細胞としては、T2、RMA-S、およびショウジョウバエ細胞が挙げられる。TAPは、抗原処理に関連する輸送体である。
【0390】
ヒトペプチド負荷欠損細胞株T2は、12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852,USAの米国微生物系統保存機関からカタログ番号CRL1992の下に入手でき;ショウジョウバエ細胞株Schneider株2は、カタログ番号CRL19863の下にATCCから入手でき;マウスRMA-S細胞株は、Ljunggren et al.(Ljunggren and Karre,1985)に記載される。
【0391】
好ましくは、移入前に、宿主細胞は、MHCクラスI分子を実質的に発現しない。刺激因子細胞が、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA3のいずれかなどのT細胞のための共刺激シグナルを提供する上で重要な分子を発現することもまた、好ましい。多数のMHCクラスI分子および共刺激因子分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLデータベースから公的に入手可能である。
【0392】
MHCクラスIエピトープが抗原として使用される場合、T細胞はCD8陽性T細胞である。
【0393】
抗原提示細胞が、このようなエピトープを発現するように形質移入される場合、好ましくは細胞は、配列番号1~配列番号114および/または配列番号115~配列番号:151またはそれらの変異アミノ酸配列を含有するペプチドを発現できる、発現ベクターを含んでなる。
【0394】
生体外でT細胞を製造するために、その他のいくつかの方法が使用されてもよい。例えば、自己由来腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLを生成するために使用され得る。Plebanski et al.(Plebanski et al.,1995)は、T細胞の調製において、自己由来末梢血リンパ球(PLB)を利用した。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自己由来T細胞の製造も可能である。B細胞もまた、自己由来T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己CTLの調製において使用されてもよい。S.Walter et al.(Walter et al.,2003)は、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用したT細胞の生体外プライミングを記載し、それはまた、選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法でもある。本発明では、ビオチン:ストレプトアビジン生化学によって、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体を表面ポリスチレン粒子(ミクロビーズ)に共役することで、aAPCが生成された。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答を選択的に引き起こすことを可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性があるその他のタンパク質を保有すべきである。さらにこのようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0395】
同種異系細胞はまた、T細胞の調製において使用されてもよく、方法は、参照により本明細書に援用される、国際公開第97/26328号パンフレットで詳述される。例えば、ショウジョウバエ細胞およびT2細胞に加えて、その他の細胞を使用して、CHO細胞、バキュロウイルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、およびワクシニア感染標的細胞などの抗原が提示されてもよい。さらに植物ウイルスが使用されてもよい(例えば、外来性ペプチド提示のための高収率システムとしてのササゲモザイクウイルス開発を記載するPorta et al.(Porta et al.,1994)を参照されたい)。
【0396】
本発明のペプチドに向けられた活性化T細胞は、治療法において有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、前述の本発明の方法によって入手可能な活性化T細胞を提供する。
【0397】
上記方法によって製造される活性化T細胞は、配列番号1~配列番号114のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0398】
好ましくは、T細胞は、そのTCRを通じた、HLA/ペプチド複合体(例えば結合)との相互作用によって、細胞を認識する。T細胞は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法で有用であり、患者には有効数の活性化T細胞が投与される。患者に投与されるT細胞は、患者に由来して、上述のように活性化されてもよい(すなわち、それらは自己T細胞である)。代案としては、T細胞は、患者でなく別の個人に由来する。もちろん、個人が健常人であれば、それが好ましい。「健常人」によって、本発明者らは、個人が概して健康良好であり、好ましくは有能な免疫系を有して、より好ましくは容易に検査され検出され得るいかなる疾患にも罹患していないことを意味する。
【0399】
生体内で、本発明によるCD8陽性T細胞の標的細胞は、(時にMHCクラスIIを発現する)腫瘍細胞であり得て、および/または腫瘍(腫瘍細胞)周囲の間質細胞であり得る(それは時にMHCクラスIIもまた発現する;(Dengjel et al.,2006))。
【0400】
本発明のT細胞は、治療用組成物の活性成分として使用されてもよい。したがって、本発明は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法もまた提供し、方法は、上で定義されるようなT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる。
【0401】
「異常に発現される」によって、本発明者らは、正常な発現レベルと比較して、ポリペプチドが過剰発現されること、または腫瘍がそれに由来する組織においては遺伝子がサイレントであるが、腫瘍においてはそれが発現されることもまた意味する。「過剰発現」によって、本発明者らは、ポリペプチドが、正常組織に存在するレベルの少なくとも1.2倍のレベルで;好ましくは正常組織に存在するレベルの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意味する。
【0402】
T細胞は、例えば上で記載されるものなどの当該技術分野で公知の方法によって得られてもよい。T細胞のこのいわゆる養子免疫伝達のためのプロトコルもまた、当該技術分野で周知である。概説は、Gattioni et al.and Morgan et al.(Gattinoni et al.,2006;Morgan et al.,2006)にある。
【0403】
本発明の別の態様は、その核酸がクローン化されて、好ましくはT細胞である宿主細胞に導入されるT細胞受容体を生成するための、MHCと複合体形成するペプチドの使用を含む。次に、この遺伝子操作T細胞は、がん治療のために患者に移入され得る。
【0404】
本発明の任意の分子、すなわちペプチド、核酸、抗体、発現ベクター、細胞、活性化T細胞、T細胞受容体またはそれをエンコードする核酸は、免疫応答を逃れた細胞によって特徴付けられる障害の治療に有用である。したがって本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において使用されてもよい。分子は、単独で、または本発明のその他の分子または既知の分子との組み合わで、使用されてもよい。
【0405】
本発明は、
(a)溶液中のまたは凍結乾燥形態の上述の医薬組成物を含有する容器;
(b)任意選択的に、凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;および
(c)任意選択的に、(i)溶液の使用、または(ii)凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書
を含んでなるキットをさらに目的とする。
【0406】
キットは、(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(V)濾過、(vi)針、または(V)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなってもよい。容器は、好ましくは、ボトル、バイアル、シリンジまたは試験管であり;それは、多回使用容器であってもよい。医薬組成物は、好ましくは凍結乾燥される。
【0407】
本発明のキットは、好ましくは、適切な容器内の本発明の凍結乾燥製剤と、その再構成および/または使用のための取扱説明書とを含んでなる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。好ましくは、キットおよび/または容器は、容器上の、または容器に付随する、取扱説明を含み、それは再構成および/または使用上の指示を示す。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が、上述されるようなペプチド濃度に再構成されることを表示してもよい。ラベルは、製剤が皮下投与に有用であり、または皮下投与用であることをさらに表示してもよい。
【0408】
製剤を収容する容器は、多回使用バイアルであってもよく、それは再構成製剤の反復投与(例えば2~6回の投与)を可能にする。キットは、適切な希釈剤(例えば、炭酸水素ナトリウム溶液)を含んでなる、第2の容器をさらに含んでなってもよい。
【0409】
希釈剤と凍結乾燥製剤の混合時に、再構成製剤中の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)であり、好ましくは3mg/mL/ペプチド(=1500μg)以下である。キットは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明が掲載されるパッケージインサートをはじめとする、商業的および使用者観点から望ましい、その他の物品をさらに含んでもよい。
【0410】
本発明のキットは、その他の構成要素(例えば、その他の化合物またはこれらのその他の化合物の医薬組成物)が添加されたまたは添加されない、本発明による医薬組成物製剤を含有する単回容器を有してもよく、または各構成要素のための別個の容器を有してもよい。
【0411】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(例えばGM-CSF)、化学療法剤、天然物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管新生因子または阻害剤、アポトーシス誘導剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の同時投与と合わせて使用するためにパッケージされた、本発明の製剤を含む。キットの構成要素は、あらかじめ混合されてもよく、または各構成要素は、患者への投与前に別個の異なる容器内にあってもよい。キットの構成要素は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは無菌水溶液中で、提供されてもよい。またキットの構成要素は、固体として提供されてもよく、それは、好ましくは別の異なる容器内に提供される、適切な溶媒の添加によって液体に変換されてもよい。
【0412】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体または液体を封入するその他のあらゆる手段であってもよい。通常、2つ以上の構成要素がある場合、キットは、第2のバイアルまたはその他の容器を含有して、別々の投薬を可能にする。キットは、薬学的に許容可能な液体のための別の容器もまた、含有してもよい。好ましくは、治療用キットは、装置(例えば、1本または複数本の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有して、本キットの構成要素である本発明の作用物質の投与を可能にする。
【0413】
本製剤は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内または経皮などの任意の許容できる手段によるペプチド投与に適するものである。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくはi.d.投与であり、輸液ポンプによってもよい。
【0414】
本発明のペプチドは、RCCから単離されたので、本発明の薬剤は、好ましくはRCCを治療するために使用される。
【0415】
本発明は、予備スクリーニングTUMAPの貯蔵庫から選択される少なくとも1つのペプチドを含んでなる、医薬組成物を製造するステップを含んでなる、個々の患者のための個別化医薬品を製造する方法にさらに関し、医薬組成物中で使用される少なくとも1つのペプチドは、個々の患者における適切さについて選択される。一実施形態では、医薬組成物はワクチンである。方法はまた、TCR単離などの下流用途、または可溶性抗体、およびその他の治療選択肢のためのT細胞クローンを製造するのにも適応され得る。
【0416】
「個別化医薬品」は、積極的個別化がんワクチンおよび自己由来患者組織を使用した養子細胞療法をはじめとする、このような個々の患者の治療のためにのみ使用される、一個人の患者のために特に調整された治療法を意味するものとする。
【0417】
本明細書の用法では、「貯蔵庫」という用語は、特定の腫瘍型における免疫原性および/または過剰提示について予備スクリーニングされている、一群のまたは一組のペプチドを指すものとする。「貯蔵庫」という用語は、ワクチンに含まれる特定のペプチドが、予備製造されて物理的設備内で貯蔵されることを暗示することは意図されないが、その可能性も検討される。ペプチドは、製造される各個別化ワクチンのために新規に製造されてもよく、または予備製造されて貯蔵されてもよいことが、明示的に検討される。貯蔵庫(例えば、データベースの形態)は、様々なHLA-AHLA-BおよびHLA-C対立遺伝子があるR患者の腫瘍組織内で高度に過剰発現される、腫瘍関連ペプチドから構成される。それは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチドまたは伸長MHCクラスIペプチドを含有してもよい。いくつかのRCC組織から採取された腫瘍関連ペプチドに加えて、貯蔵庫は、HLA-A*02およびHLA-A*24標識ペプチドを含有してもよい。これらのペプチドは、TUMAPによって誘導されるT細胞免疫の規模を定量的に比較できるようにし、したがって抗腫瘍応答を引き起こすワクチンの能力について、重要な結論が導かれるようにする。第2に、それらは、患者において、「自己」抗原に由来するTUMAPに対するいかなるワクチン誘導T細胞応答も観察されない症例において、「非自己」抗原に由来する重要な陽性対照ペプチドとして機能する。第3に、それは、患者の免疫能力状態に関する結論が導かれるようにしてもよい。
【0418】
貯蔵庫のためのTUMAPは、遺伝子発現解析、質量分析、およびT細胞免疫学を組み合わせた、統合ゲノム機能解析アプローチ(XPresident(登録商標))を使用して同定される。アプローチは、高い割合の腫瘍上に真に存在するが、正常組織上では発現されず、または最小限にのみ発現されるTUMAPだけが、さらなる分析のために選択されることを保証する。最初のペプチド選択のために、患者に由来するRCCサンプルおよび健常ドナーに由来する血液を段階的アプローチで分析した:
1.悪性物質からのHLAリガンドを質量分析法によって同定した
2.ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を使用して、一連の正常器官および組織と比較して悪性組織(RCC)中の遺伝子過剰発現を同定した
3.同定されたHLAリガンドを遺伝子発現データと比較した。好ましくは、ステップ2で検出されたような選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、腫瘍組織上で過剰提示されまたは選択的に提示されるペプチドが、多重ペプチドワクチンのための適切なTUMAP候補と見なされた。
4.同定されたペプチドのTUMAPとしての妥当性を支持する追加的な証拠を同定するために、文献調査を実施した
5.mRNAレベルでの過剰発現の関連性をステップ3からの選択されたTUMAPの腫瘍組織上における再検出と、健常組織における検出の欠如(またはまれな)検出によって確認した。
6.選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導が可能かどうかを評価するために、健常ドナーならびにRCC患者からのヒトT細胞を使用して、生体外免疫原性アッセイを実施した。
【0419】
一態様では、貯蔵庫に含める前に、ペプチドが免疫原性について予備スクリーニングされる。制限を意図しない一例として、貯蔵庫に包含されるペプチドの免疫原性は、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体が負荷された人工抗原提示細胞による、健常ドナーからのCD8+T細胞の反復刺激を通じた、生体外T細胞プライミングを含んでなる方法によって判定される。
【0420】
この方法は、稀ながんに、そして稀な発現プロファイルがある患者にとって、好ましい。一定組成がある多重ペプチド混合物とは対照的に、現在開発されている貯蔵庫は、腫瘍における抗原の実際の発現とワクチンとの顕著により高いマッチングを可能にする。多標的アプローチでは、各患者のために、選択された単一のまたは組み合わされた数種の「既製」ペプチドが利用される。理論上は、例えば50個の抗原性ペプチドのライブラリーからの5個の異なる抗原性ペプチドの選択に基づくアプローチは、それだけでおよそ1700万個の可能な医薬品(DP)組成物をもたらす。
【0421】
一態様では、ペプチドは、本明細書に記載される、または以下のような本発明による方法に基づく、個々の患者のためのそれらの適切さに基づいて、ワクチンへの包含のために選択される。
【0422】
HLA表現型、トランスクリプトミクスおよびペプチドミクスデータが、患者の腫瘍材料および血液サンプルから収集されて、「貯蔵庫」および患者に特有の(すなわち変異)TUMAPを含有する、各患者に対して最も適切なペプチドが同定される。患者腫瘍内で選択的にまたは過剰発現されて、可能であれば、患者の個々のPBMCと共に試験すると、強力な生体外免疫原性を示すペプチドが選択される。
【0423】
好ましくは、ワクチンに含まれるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で同定されたペプチドを上述のペプチド貯蔵庫と比較するステップと;(c)少なくとも1つのペプチドを患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある貯蔵庫(データベース)から選択するステップとを含んでなる方法によって同定される。例えば、腫瘍サンプルによって提示されるTUMAPは、(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって同定される。好ましくは、MHCリガンドの配列は、腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、溶出したリガンドを配列決定することで同定される。好ましくは、腫瘍サンプルおよび正常組織は、同一患者から入手される。
【0424】
貯蔵庫(データベース)モデルを使用してペプチドを選択するのに加えて、またはその代案として、TUMAPを患者において新規に同定し、次に、ワクチンに含めてもよい。一実施例として、(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)発現データを腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって、候補TUMAPが患者において同定されてもよい。別の実施例として、個々の患者からの正常な対応組織と比較して、腫瘍サンプルに特有の変異を含有するタンパク質が同定されてもよく、特異的に変異を標的とするTUMAPが同定され得る。例えば、腫瘍のゲノム、および対応する正常組織のゲノムは、全ゲノム配列決定によって配列決定され得る。遺伝子のタンパク質コード領域における非同義の変異を発見するために、ゲノムDNAおよびRNAが腫瘍組織から抽出され、正常な非変異ゲノム生殖細胞系DNAが末梢血単核細胞(PBMC)から抽出される。適用されたNGSアプローチは、タンパク質コード領域の再配列決定(エクソーム再配列決定)に限定される。この目的で、供給業者が提供する標的富化キットを使用して、ヒトサンプルからのエクソンDNAが捕捉され、例えばHiSeq2000(Illumina)による配列決定がそれに続く。それに加えて、遺伝子発現の直接定量化と、変異遺伝子が患者の腫瘍において発現されることの妥当性評価とのために、腫瘍mRNAが配列決定される。結果として得られる数百万の配列読み取りは、ソフトウェアアルゴリズムを通じて処理される。出力一覧は、変異および遺伝子発現を含有する。PBMC由来生殖細胞系の多様性と比較することで腫瘍特異的体細胞突然変異が判定され、優先順位がつけられる。次に、新規に同定されたペプチドは、貯蔵庫について上述した免疫原性について試験され得て、適切な免疫原性を保持する候補TUMAPが、ワクチンへの包含のために選択される。
【0425】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を上述の方法(方法)によって同定するステップと;(b)a)で同定されたペプチドを対応する正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および過剰提示について予備選別されたペプチドの貯蔵庫と比較するステップと;(c)少なくとも1つのペプチドを患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある貯蔵庫から選択するステップと;(d)任意選択的に、(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0426】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0427】
ひとたび個別化ペプチドベースのワクチンのためのペプチドを選択したら、ワクチンを製造する。ワクチンは、好ましくは、約33%DMSOなどの20~40%DMSO、好ましくは約30~35%DMSOに溶解された、個々のペプチドからなる液体製剤である。
【0428】
製品に包含される各ペプチドをDMSOに溶解する。単一ペプチド溶液の濃度は、製品に包含されるペプチド数に応じて選択しなくてはならない。単一ペプチドDMSO溶液を等量で混合し、ペプチド当たり約2.5mg/mlの濃度で、製品に包含される全てのペプチドを含有する溶液を得る。次に、混合溶液を注射用水で1:3に希釈して、33%DMSO中でペプチド当たり0.826mg/mlの濃度を得る。希釈溶液を0.22μmの無菌フィルターを通して濾過する。最終バルク溶液を得る。
【0429】
最終バルク溶液をバイアルに充填して、使用時まで-20℃で保存する。1本のバイアルは、0.578mgの各ペプチドを含有する700μLの溶液を含有する。この内、500μL(ペプチド当たりおよそ400μg)を皮内注射のために適用する。
【0430】
がんを治療するために有用であるのに加えて、本発明のペプチドは、診断法としてもまた有用である。ペプチドはRCCから生成されたので、そしてこれらのペプチドは正常組織には存在せずまたはより低レベルで存在すると判定されたので、これらのペプチドを利用してがんの存在を診断し得る。
【0431】
特許請求されるペプチドの血液サンプル中の組織生検上の存在は、がん診断において病理学者を補佐し得る。抗体、質量分析法またはその他の当該技術分野で公知の方法の手段による特定のペプチドの検出は、組織サンプルが悪性または炎症性または概して病的であることを病理学者に告げ得て、またはRCCのバイオマーカーとして利用され得る。ペプチド基の存在は、病的組織の分類または下位分類を可能にし得る。
【0432】
患部組織検体上のペプチドの検出は、特にTリンパ球が作用機序に関与することが知られておりまたは予測される場合に、免疫系が関与する治療法の利点を判定できるようにする。MHC発現の喪失は、それによって感染悪性細胞が免疫監視を逃れる、十分に説明された機序である。したがってペプチドの存在は、この機序が、分析した細胞によって活用されていないことを示す。
【0433】
本発明のペプチドは、ペプチドまたはMHC分子と複合体化したペプチドに対するT細胞応答または抗体応答などの、これらのペプチドに対するリンパ球応答を分析するのに使用されるかもしれない。これらのリンパ球応答は、さらなる治療段階を決定するための予後マーカーとして使用され得る。これらの応答はまた、例えば、タンパク質、核酸、自己材料のワクチン接種や、リンパ球の養子免疫伝達などの異なる手段によるリンパ球応答の誘導を目指す、免疫療法アプローチにおける代理応答マーカーとして使用され得る。遺伝子治療の設定では、副作用の評価において、ペプチドに対するリンパ球応答が考慮され得る。リンパ球応答のモニタリングはまた、例えば移植片対宿主病および宿主対移植片病の検出など、移植治療の経過観察検査のための有益な手段かもしれない。
【0434】
本発明をここで、その好ましい実施形態を描写する以下の実施例において、添付図面を参照して説明するが、それでもなお、それらには限定されないものとする。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0435】
【
図1A】正常組織およびRCCにおける様々なペプチドの過剰提示を示す。
図1A)遺伝子:SLC17A3、ペプチド:ALIVSLPYL(配列番号1)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、2動脈、3骨髄、7脳、3乳房、13結腸、1卵巣、1十二指腸、4食道、2胆嚢、3心臓、4白血球サンプル、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸(recti)、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、5胃、1精巣、2胸腺、3甲状腺腺、2子宮、2静脈、12腎臓、18RCC。ペプチドはまた、肝臓がんでも見いだされた(図示せず)。
【
図1B】
図1B)遺伝子:SOGA2、ペプチド:YLEEDVYQL(配列番号128)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、2動脈、3骨髄、7脳、3乳房、13結腸、1卵巣、1十二指腸4食道、2胆嚢、3心臓、4白血球サンプル、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸(recti)、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、5胃、1精巣、2胸腺、3甲状腺腺、2子宮、2静脈、12腎臓、18RCC。ペプチドはまた、膵臓がん、卵巣がん、胃がん、および肺がんでも見いだされた(図示せず)。
【
図1C】
図1C)遺伝子:SEMA5B、ペプチド:ALDPSGNQLI(配列番号12)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、2動脈、3骨髄、7脳、3乳房、13結腸、1卵巣、1十二指腸4食道、2胆嚢、3心臓、4白血球サンプル、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸(recti)、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、5胃、1精巣、2胸腺、3甲状腺腺、2子宮、2静脈、12腎臓、18RCC。ペプチドはまた、卵巣がん、脳がん、および肺がんでも見いだされた(図示せず)。
【
図1D】
図1D)遺伝子:RGS5、ペプチド:GLASFKSFL(配列番号8)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、2動脈、3骨髄、7脳、3乳房、13結腸、1卵巣、1十二指腸4食道、2胆嚢、3心臓、4白血球サンプル、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸(recti)、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、5胃、1精巣、2胸腺、3甲状腺腺、2子宮、2静脈、12腎臓、18RCC。ペプチドはまた、前立腺がん、乳がん、結腸がん、肝臓がん、メラノーマ、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、脳がん、胃がんおよび肺がんでも見いだされた(図示せず)。
【
図1E】
図1E)遺伝子:SLC16A3、ペプチド:VVDEGPTGV(配列番号135)-組織左から右:1白血球細胞株、5正常組織(3肺、1リンパ節、1脾臓)、77がん組織(2脳がん、1乳がん、1結腸がん、1食道がん、10腎臓がん、1白血病、1肝臓がん、35肺がん、12卵巣がん、8膵臓がん、5胃がん)。ペプチド提示のないサンプルは図示されない。試験された正常な(健常)組織パネルは、
図1A)~Dと同一であった。
【
図1F】
図1F)遺伝子:ESM1、ペプチド:LLVPAHLVAA(配列番号25)-組織左から右:1脂肪組織、3副腎、2動脈、3骨髄、7脳、3乳房、13結腸、1十二指腸、4食道、2胆嚢、3心臓、4白血球、19肝臓、43肺、1リンパ節、1卵巣、6膵臓、2末梢神経、1腹膜、1脳下垂体、3胸膜、1前立腺、6直腸、3骨格筋、3皮膚、2小腸、4脾臓、5胃、1精巣、2胸腺、3甲状腺腺、2子宮、2静脈、12腎臓、18RCC。ペプチドは、膵臓がん、食道がん、脳がん、肺がんおよび子宮がんでもまた見いだされた(図示せず)。
【
図1G】
図1G)遺伝子:ARHGAP42、ペプチド:ILIKHLVKV(配列番号15)-組織左から右:1細胞株(1メラノーマ)、17がん組織(1結腸がん、5腎臓がん、1肝臓がん、3肺がん、4リンパ節がん、1精巣がん、2子宮がん)。
【
図1H】
図1H)遺伝子:HTR、ペプチド:FIADVVEKI(配列番号33)-組織左から右:16がん組織(1脳がん、1乳がん、1食道がん、3腎臓がん、1白血病、5肺がん、1リンパ節がん、2卵巣がん、1膵臓がん)。
【
図1I】
図1I)遺伝子:HSF2B、ペプチド:VLLDTILQL(配列番号38)-組織左から右:1良性(腎臓がん)、3細胞株(1膵臓、1胸膜、1前立腺)、1その他の疾患(1皮膚)、9正常組織(1肺、1リンパ節、2胎盤、1小腸、3脾臓、1甲状腺)、67がん組織(1胆管がん、5脳がん、2乳がん、2食道がん、2胆嚢がん、4腎臓がん、7白血病、3肝臓がん、16肺がん、5リンパ節がん、1骨髄性細胞がん、9卵巣がん、1膵臓がん、1直腸がん、5皮膚がん、2膀胱がん、1子宮がん)。
【
図1J】
図1J)遺伝子:TRAM1、ペプチド:YLLNLNHLGL(配列番号39)-組織左から右:2細胞株(1腎臓、1膵臓)、1正常組織(1肺)、19がん組織(1乳がん、2腎臓がん、3白血病、2肝臓がん、7肺がん、1リンパ節がん、1卵巣がん、1直腸がん、1膀胱がん)。
【
図1K】
図1K)遺伝子:PXDNL、ペプチド:SILDAVQRV(配列番号52)-組織左から右:23がん組織(3脳がん、4乳がん、3腎臓がん、8肺がん、2卵巣がん、1膵臓がん、1皮膚がん、1子宮がん)。
【
図1L】
図1L)遺伝子:THY1、ペプチド:SLLQATDFMSL(配列番号82)-組織左から右:11細胞株(11膵臓細胞株)、4正常組織(1腎臓、1リンパ節、1胎盤、1気管)、36がん組織(1胆管がん、5脳がん、3乳がん、4結腸がん、1食道がん、3腎臓がん、1肝臓がん、9肺がん、1リンパ節がん、1卵巣がん、2膵臓がん、1直腸がん、2皮膚がん、1膀胱がん、1子宮がん)。
【
図1M】
図1M)遺伝子:ARRDC3、ペプチド:KIPPVSPSI(配列番号98)-組織左から右:2細胞株(2腎臓)、4正常組織(1副腎、1肺、1リンパ節、1胎盤)、47がん組織(4脳がん、1乳がん、1食道がん、1胆嚢がん、5腎臓がん、1白血病、5肝臓がん、12肺がん、2リンパ節がん、4卵巣がん、3前立腺がん、2皮膚がん、6子宮がん)。
【
図1N】
図1N)遺伝子:TIMP1、ペプチド:KLQDGLLHI(配列番号103)-組織左から右:1細胞株(1血液細胞)、29がん組織(2脳がん、5結腸がん、3腎臓がん、1肝臓がん、4肺がん、2リンパ節がん、3卵巣がん、1膵臓がん、1直腸がん、6皮膚がん、1精巣がん)。
【
図2A】正常組織および35RCCサンプルのパネルで、RCCにおいて高度に過剰発現されまたは排他的に発現される本発明の起源遺伝子の例示的発現プロファイル(正常な腎臓と比較した相対発現)を示す。組織左から右:副腎、動脈、骨髄、脳(全体)、乳房、結腸、食道、心臓、腎臓(三連)、白血球、肝臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、胎盤、前立腺、唾液腺、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、膀胱、子宮子宮頸部、子宮、静脈、23正常腎臓サンプル、35RCCサンプル。
図2A)GAL3ST1;
【
図3-1】健常HLA-A
*02+ドナーのペプチド特異的生体外CD8+T細胞応答の結果としての、ペプチド特異的多量体染色後の例示的免疫原性データ:フローサイトメトリー結果を示す。CD8+T細胞は、抗-CD28 mAbで被覆された人工的APCと、配列番号20ペプチド(C、左パネル)、配列番号34ペプチド(D、左パネル)、配列番号1ペプチド(E、左パネル)または配列番号15ペプチド(F、左パネル)とそれぞれ複合体形成するHLA-A
*02とを使用して、初回刺激された。3サイクルの刺激後、A
*02/配列番号20(C)、A
*02/配列番号34(D)、A
*02/配列番号1(E)またはA
*02/配列番号15(F)を用いた2D多量体染色によって、ペプチド反応性細胞の検出が実施された。右パネル(C、D、E、およびF)は、無関係のA
*02/ペプチド複合体で刺激された細胞の対照染色を示す。生存一重細胞は、CD8+リンパ球についてゲートされた。ブーリアンゲートは、異なるペプチドに対して特異的な多量体によって検出された、擬陽性事象の排除を助けた。CD8+リンパ球の中の特異的多量体+細胞の頻度が示される。
【実施例0436】
実施例1
細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの同定および定量化
組織サンプル
患者の腫瘍組織は、BioServe(Beltsville,MD,USA);University Hospital of Munich;京都府立医科大学(KPUM);University Hospital of Tubingenから入手された。正常(健常)組織は、Bio-Options Inc.,CA,USA;BioServe,Beltsville,MD,USA;Capital BioScience Inc.,Rockville,MD,USA;Geneticist Inc.,Glendale,CA,USA;University Hospital of Geneva;University Hospital of Heidelberg;京都府立医科大学(KPUM);University Hospital Munich;ProteoGenex Inc.,Culver City,CA,USA;University Hospital of Tubingenから入手された。
【0437】
全ての患者の告知に基づく同意書は、外科手術または検死解剖の前に得られた。組織は切除直後に衝撃凍結され、TUMAPの単離まで-70℃未満で保存された。
【0438】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチド貯留は、わずかに修正されたプロトコル(Falk et al.,1991;Seeger et al.,1999)に従って、HLA-A*02-特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体W6/32、CNBr活性化セファロース、酸処理、および限外濾過を使用して、免疫沈殿によって固形組織から得られた。
【0439】
質量分析
得られたHLAペプチド貯留は、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquity UPL C system、Waters)によってそれらの疎水性に従って分離し、ESI源を装着したLTQ-velosおよびfusion hybrid質量分光計(ThermoElectron)内で溶出ペプチドを分析した。ペプチド貯留は、毎分400nLの流速を適用して、1.7μm C18逆相材料(Waters)で充填された分析用融合シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)上に直接挿入した。引き続いて、毎分300nLの流速で10%から33%へのBの二段階180分間二成分勾配を用いて、ペプチドを分離した。勾配は、溶媒A(水中の0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から構成された。nanoESI源への導入には、金被覆ガラス毛管(PicoTip、New Objective)を使用した。LTQ-Orbitrap質量分光計は、TOP5ストラテジーを使用してデータ依存モードで操作した。手短に述べると、Orbitrap(R=30000)内の高質量精度の完全スキャンでスキャンサイクルを開始し、これもまたOrbitrap(R=7500)内の5種の最も豊富な前駆イオンのMS/MSスキャンがそれに続き、以前選択されたイオンは動的に排除された。タンデム質量スペクトルは、SEQUESTおよび追加的な手動調節によって解釈した。同定されたペプチド配列は、生成された天然ペプチド断片化パターンと、配列が同一の合成参照ペプチドの断片化パターンとの比較によって確認した。
【0440】
イオン計数によって、すなわちLC-MS特性の抽出と解析(Mueller et al.,2007)によって、無標識相対LC-MS定量化を実施した。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量に相関すると仮定する。抽出された特性は、電荷状態デコンボリューションと滞留時間アライメント(Mueller et al.,2008;Sturm et al.,2008)によってさらに処理した。最終的に、全てのLC-MS特性を配列同定結果と相互参照して、異なるサンプルの定量的データと、組織からペプチドへの提示プロファイルとを組み合わせた。定量的データは、技術的および生物学的複製内の変動を説明する中心的傾向に従って、2段階で正規化された。このようにして、それぞれの同定されたペプチドが定量的データに関連付けられ得て、サンプルと組織の間の相対定量化ができるようになる。さらに、ペプチド候補について得られた全ての定量的データを手動で検査し、データ整合性を保証して自動解析の確度を確認した。各ペプチドについて提示プロファイルを計算し、平均サンプル提示ならびに反復試験変動を示した。プロファイルは、RCCサンプルを正常組織サンプルのベースラインに並置する。例示的過剰提示ペプチドの提示プロファイルは、
図1に示される。代表的ペプチドの提示スコアは、表8に示される。
【0441】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0442】
実施例2
本発明のペプチドをコードする遺伝子発現プロファイリング
正常細胞と比較した腫瘍細胞上のペプチドの過剰提示または特異的提示は、免疫療法におけるその有用性にとって十分であり、いくつかのペプチドは、それらの起源タンパク質が正常組織にもまた存在するにもかかわらず、腫瘍特異的である。それでもなお、mRNA発現プロファイリングは、免疫療法のためのペプチド標的の選択において、安全性のレベルを高めることができる。特に、アフィニティ成熟TCRなどの高い安全性リスクがある治療の選択肢では、理想的な標的ペプチドは、腫瘍に特有で正常組織上には見られないタンパク質に由来する。
【0443】
RNA起源および調製
外科的に除去された組織標本は、告知に基づく同意書が各患者から入手された後に、上述の通り提供された(実施例1を参照されたい)。腫瘍組織標本を手術直後にスナップ凍結し、その後、液体窒素下で乳鉢と乳棒を用いて均質化した。TRI試薬(Ambion,Darmstadt,Germany)を使用して、これらのサンプルから全RNAを調製し、RNeasy(QIAGEN,Hilden,Germany)による精製がそれに続き;どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って実施した。
【0444】
健常ヒト組織からの全RNAは、商業的に入手された(Ambion,Huntingdon,UK;Clontech,Heidelberg,Germany;Stratagene,Amsterdam,Netherlands;BioChain,Hayward,CA,USA)。幾人(2~123人)かの個人からのRNAは、各個人からのRNAが等しく重み付けされるように混合した。
【0445】
全てのRNAサンプルの品質および量は、RNA 6000 Pico LabChipキット(Agilent)を使用して、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent,Waldbronn,Germany)上で評価した。
【0446】
マイクロアレイ実験
全ての腫瘍および正常組織RNAサンプルの遺伝子発現解析は、Affymetrix Human Genome(HG)U133AまたはHG-U133 Plus 2.0オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)によって実施した。全てのステップは、Affymetrixマニュアルに従って実施した。簡単に述べると、マニュアルに記載されるようにして、SuperScript RTII(Invitrogen)およびオリゴdT-T7プライマー(MWG Biotech,Ebersberg,Germany)を使用して、5~8μgの全RNAから二本鎖cDNAを合成した。生体外転写は、U133AアレイのためのBioArray High Yield RNA Transcript Labelling Kit(ENZO Diagnostics,Inc.,Farmingdale,NY,USA)を用いて、またはU133 Plus 2.0のためのGeneChip IVT Labelling Kit(Affymetrix)を用いて実施し、cRNA断片化、ハイブリダイゼーション、そしてストレプトアビジン-フィコエリトリンとビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(Molecular Probes,Leiden,Netherlands)とを用いた染色がそれに続いた。Agilent 2500A GeneArray Scanner(U133A)またはAffymetrix Gene-Chip Scanner 3000(U133 Plus 2.0)で画像をスキャンして、全てのパラメータについてデフォルト設定を使用して、GCOSソフトウェア(Affymetrix)によってデータを解析した。正規化のために、Affymetrixによって提供される100個のハウスキーピング遺伝子を使用した。ソフトウェアによって与えられるシグナルlog比から、相対的発現値を計算し、正常な腎臓サンプルを自由裁量で1.0に設定した。RCC中で高度に過剰発現されまたは排他的に発現される本発明の起源遺伝子の代表的発現プロファイルは、
図2に示される。さらなる例示的遺伝子の発現スコアは、表9に示される。
【0447】
【0448】
実施例3
MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて研究を実施した。このようにして、本発明者らは、これまでに本発明の22個のHLA-A*0201拘束性TUMAPの免疫原性を示し得て、これらのペプチドが、それに対するCD8+前駆T細胞がヒトに存在する、T細胞エピトープであることを実証した(表10)。
【0449】
CD8+T細胞の生体外プライミング
ペプチドMHC複合体(pMHC)および抗CD28抗体を負荷した、人工抗原提示細胞による生体外刺激を実施するために、本発明者らは、最初に、告知に基づく同意後に、University clinics Mannheim,Germanyから得られた健常ドナーのCD8ミクロビーズ(Miltenyi Biotec,Bergisch-Gladbach,Germany)を使用した正の選択を通じて、新鮮HLA-A*02白血球除去生成物からCD8+T細胞を単離した。
【0450】
PBMCおよび単離CD8+リンパ球またはPBMCは、10%熱不活性化ヒトAB血清(PAN-Biotech,Aidenbach,Germany)、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(Cambrex,Cologne,Germany)、1mMピルビン酸ナトリウム(CC Pro,Oberdorla,Germany)、20μg/mlゲンタマイシン(Cambrex)を添加した、RPMI-Glutamax(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)からなるT細胞培地(TCM)中で、使用時まで培養した。2.5ng/mlのIL-7(PromoCell,Heidelberg,Germany)および10U/mlのIL-2(Novartis Pharma,Nurnberg,Germany)もまた、この段階でTCMに添加した。
【0451】
pMHC/抗CD28被覆ビーズの生成、T細胞刺激、および読み取りは、高度に定義された生体外システム内で、刺激条件当たり4種の異なるpMHC分子と、読み取り条件当たり8種の異なるpMHC分子を使用して実施した。
【0452】
製造会社(Perbio,Bonn,Germany)が推奨する通りにスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3(Jung et al.,1987)を化学的にビオチン化した。使用されたビーズは、直径5.6μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(Bangs Laboratories,Illinois,USA)であった。
【0453】
陽性および陰性対照刺激のために使用されたpMHCは、それぞれ、A*0201/MLA-001(修飾Melan-A/MART-1に由来するペプチドELAGIGILTV(配列番号152))およびA*0201/DDX5-001(DDX5に由来するYLLPAIVHI、配列番号153)であった。
【0454】
4×12.5ngの異なるビオチンpMHCの存在下で、800,000個のビーズ/200μlを96ウェルプレート内で被覆し、洗浄して、引き続いて200μlの容量中で600ngのビオチン抗CD28を添加した。5ng/mlのIL-12(PromoCell)を添加した200μlのTCM中で、1×106のCD8+T細胞を2×85個の洗浄被覆ビーズと、37℃で3日間にわたり同時インキュベートすることで、96ウェルプレート内で刺激を開始した。次に80U/mlのIL-2を添加した新鮮TCMで培地の半分を交換し、37℃で4日間にわたり培養を継続した。この刺激サイクルを合計3回実施した。条件当たり8種の異なるpMHC分子を使用したpMHC多量体読み取りでは、5種の異なる蛍光色素への共役を包含するわずかな修正を加えて、以前記載されたような(Andersen et al.,2012)二次元コンビナトリアルコーディングアプローチを使用した。最後に、Live/dead近赤外染料(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)、CD8-FITC抗体クローンSK1(BD,Heidelberg,Germany)、および蛍光性pMHC多量体による細胞の染色によって多量体解析を実施した。解析では、適切なレーザーおよびフィルターを装着したBD LSRII SORP血球計数器を使用した。ペプチド特異的細胞を全CD8+細胞の百分率として計算した。FlowJoソフトウェア(Tree Star,Oregon,USA)を使用して、多量体解析の評価を実施した。特異的多量体+CD8+リンパ球の生体外初回刺激は、陰性対照刺激と比較することで検出された。1人の健常ドナーの少なくとも1つの評価可能生体外刺激ウェルが、生体外刺激後に、特異的CD8+T細胞株を含有することが認められれば、所与の抗原の免疫原性が検出された(すなわちこのウェルは、CD8+T細胞内に少なくとも1%の特異的多量体+を含有し、特異的多量体+細胞の百分率は、陰性対照刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0455】
RCCペプチドの生体外免疫原性
HLAクラスIペプチドを試験するために、ペプチド特異的T細胞株の生成によって生体外免疫原性が実証され得た。本発明の2種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の例示的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に
図3に示される。本発明からの3つのペプチドの結果が、表10A)およびB)に要約される。
【0456】
【0457】
【0458】
実施例4
ペプチドの合成
Fmocストラテジーを使用した標準的な十分に確立された固相ペプチド合成を使用して、全てのペプチドを合成した。個々のペプチドのアイデンティティーおよび純度は、質量分析および分析用RP-HPLCによって判定した。純度>50%の白色から灰白色の凍結乾燥物(トリフルオロ酢酸塩)として、ペプチドを得た。全てのTUMAPは、好ましくはトリフルオロ酢酸塩または酢酸塩として投与され、その他の塩形態もまた可能である。
【0459】
実施例5
MHC結合アッセイ
本発明によるT細胞ベースの治療法のための候補ペプチドを、それらのMHC結合能力(親和性)についてさらに試験した。個々のペプチド-MHC複合体は、UVリガンド交換によって生成され、UV感受性ペプチドはUV照射に際して切断されて、分析される目的ペプチドで交換された。ペプチド受容性MHC分子と効果的に結合して安定化し得るペプチド候補のみが、MHC複合体の分離を防止する。交換反応の収率を判定するために、安定化MHC複合体の軽鎖(β2m)の検出に基づくELISAを実施した。アッセイは、Rodenko et al.(Rodenko et al.,2006)に一般的に記載されるようにして実施した。
【0460】
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)をPBS中の2μg/mlストレプトアビジンにより室温で一晩被覆して4回洗浄し、ブロック緩衝液を含有する2%BSA中で37℃で1時間ブロックした。再折りたたみされたHLA-A*020102:01/MLA-001単量体が、15~500ng/mlの範囲をカバーする標準物質の役割を果たした。UV交換反応のペプチド-MHC単量体をブロック緩衝液で100倍に希釈した。サンプルを37℃で1時間インキュベートして4回洗浄し、2ug/mlのHRP共役結合抗β2mと共に37℃で1時間インキュベートして再度洗浄し、NH2SO4で停止させたTMB溶液で検出した。吸光は、450nmで測定した。抗体またはそれらのフラグメント、および/またはT細胞受容体またはそれらのフラグメントの生成および製造のためには、高い交換収率(好ましくは50%より高い、最も好ましくは75%より高い)を示す候補ペプチドが、MHC分子に対する十分な結合活性を示してMHC複合体の分離を防止することから、一般に好ましい。
【0461】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【0462】
実施例6
細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの絶対定量化
抗体および/またはTCRなどのバインダーの生成は、骨の折れる工程であり、いくつかの選択された標的に対してのみ実施されてもよい。腫瘍関連および特異的ペプチドの場合、選択基準としては、提示の排他性および細胞表面に提示されるペプチドの密度が挙げられるが、これに限定されない。固形腫瘍サンプル中の細胞当たりのTUMAPコピーの定量化は、単離されたTUMAPの絶対定量化、TUMAP単離の効率、および分析される組織サンプルの細胞計数を必要とする。
【0463】
ナノLC-MS/MSによるペプチド定量化
質量分析によるペプチドの正確な定量化のために、内標準法を使用して各ペプチドの検量線を作成した。内標準は各ペプチドの二重同位体標識変異体であり、すなわち、2つの同位体標識アミノ酸がTUMAP合成に含まれた。それは、腫瘍関連ペプチドとはその質量異なるのみであるが、他の物理化学的性質に差異を示さない(Anderson et al.,2012)。内標準を各MSサンプルに添加して、全てのMSシグナルを内標準のMSシグナルに対して正規化し、MS実験間の潜在的な技術的変動を平準化した。
【0464】
少なくとも3つの異なるマトリックス中、すなわち、ルーチンのMSサンプルと同様の天然サンプルからのHLAペプチド溶出液中で検量線を作成し、各調製物を二連のMS試験で測定した。評価のために、MSシグナルを内標準のシグナルに対して正規化し、検量線をロジスティック回帰によって算出した。
【0465】
組織サンプルからの腫瘍関連ペプチドの定量化のために、それぞれのサンプルにも内標準を添加し;MSシグナルを内標準に対して正規化し、ペプチド検量線を使用して定量化した。
【0466】
ペプチド/MHC単離の効率
あらゆるタンパク質精製処理と同様に、組織サンプルからのタンパク質の単離には、目的タンパク質のいくらかの損失が伴う。TUMAP単離の効率を判定するために、絶対定量化のために選択された全てのTUMAPについて、ペプチド/MHC複合体を生成した。添加されたものを天然ペプチド/MHC複合体から識別できるように、TUMAPの単一同位体標識バージョンを使用し、すなわち、1つの同位体標識アミノ酸をTUMAP合成に含めた。これらの複合体は、新鮮に調製された組織溶解産物に、すなわち、TUMAP単離手順の可能な限り早い時点で添加して、次に、後続の親和性精製において、天然ペプチド/MHC複合体のように捕捉した。したがって単一標識TUMAPの回収率を測定することで、個々の天然TUMAPの単離効率に関する結論が可能になる。
【0467】
少数のサンプルで単離効率が分析され、これらの組織サンプル間で同等であった。対照的に、単離効率は個々のペプチド間で異なる。これは、単離効率が、限定数の組織サンプルにおいてのみ判定されるが、任意のその他の組織標本に外挿されてもよいことを提案する。しかしながら、単離効率がペプチドからその他のペプチドに外挿されないこともあるので、各TUMAPは個別に分析する必要がある。
【0468】
固体冷凍組織中の細胞数測定
絶対ペプチド定量化に供した組織サンプルの細胞数を測定するために、本発明者らは、DNA含量分析を適用した。この方法は、異なる起点の幅広いサンプルに、最も重要なことには、冷凍サンプルに適用できる(Alcoser et al.,2011;Forsey and Chaudhuri,2009;Silva et al.,2013)。ペプチド単離プロトコル中に、組織サンプルを均質溶解産物に処理して、それから小さな溶解産物アリコートを取り出す。アリコートを3つに分割し、それからDNAを単離する(QiaAmp DNA Mini Kit,Qiagen,Hilden,Germany)。蛍光ベースのDNA定量化アッセイ(Qubit dsDNA HS Assay Kit,Life Technologies,Darmstadt,Germany)を使用して、少なくとも2つの反復試験において、各DNA単離からの全DNA含有量を定量化する。
【0469】
細胞数を計算するために、一連の定義された細胞数がある、単一健常血液細胞のアリコートから、DNA標準曲線を作成した。標準曲線を使用して、各DNA単離物からの全DNA含有量から、全細胞含有量を計算する。既知の溶解産物アリコートの容量および全溶解産物容量を考慮して、ペプチド単離のために使用された組織サンプルの平均総細胞数を外挿する。
【0470】
ペプチド細胞当たりコピー数
前述の実験のデータを用いて、本発明者らは、サンプルの全ペプチド量を総細胞数で除算して、それに続いて単離効率により除算することで、細胞当たりのTUMAPコピー数を算出した。選択されたペプチドの細胞コピー数は、表12に示される。
【0471】
【0472】
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