(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028733
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】植物におけるウイルスベースの遺伝子編集のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240227BHJP
A01H 6/82 20180101ALN20240227BHJP
A01H 5/00 20180101ALN20240227BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A01H6/82
A01H5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197962
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2020505169の分割
【原出願日】2018-07-30
(31)【優先権主張番号】62/539,160
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,シンペン
(72)【発明者】
【氏名】ヘー,イージアン
(72)【発明者】
【氏名】ポーグ,グレゴリー・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ハイアット,エメット・アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】ローソン,ダーリーン・マデリン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物ゲノムの定義された領域に特異的改変を含む変化したゲノムを有する稔性植物を作製するための、より効率的で効果的な方法を提供する。
【解決手段】タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞内に導入することを含み、前記機能的編集成分が、前記タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞内に導入することを含み、前記機能的編集成分が、前記タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法。
【請求項2】
機能的編集成分が、DNAを切断するエンドヌクレアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エンドヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
核酸が、RNA発現ベクターを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ベクターが、タバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
機能的編集成分が、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに作動可能に連結された、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
機能的編集成分をコードする核酸を植物細胞内に導入する前に、前記機能的編集成分をコードする核酸をインビトロで合成することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
機能的編集成分をコードする核酸が、摩擦、高圧スプレー又は遺伝子銃の使用により植物細胞に機械的に導入される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
改変が、標的部位における少なくとも1つのヌクレオチドの置換、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、又は少なくとも1つのヌクレオチドの挿入のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
機能的編集成分をコードする核酸を含む植物の一部を採取すること、及び前記植物の一部を選択培地で培養することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
機能的編集成分をコードする核酸を含む植物部分が、植物の葉、分裂組織、シュート及び/又は花から採取される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
植物部分を培養して再生植物を生産することをさらに含む、請求項10又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
植物部分の標的部位における改変を確認することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
標的部位に改変を含む少なくとも1つの植物細胞を単離することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
標的部位に改変を含む植物細胞を含む植物を培養することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
植物が、ゲノムの標的部位に改変を含む種子を生産するまで前記植物を培養する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ゲノムの標的部位に改変を含む種子に対して胚救出を実施することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
改変を含む植物から生産された少なくとも1つの種子を植えること、植えた前記種子を栽培して改変された標的部位を含むタバコ植物を生産すること、編集された前記タバコ植物を収穫すること、並びに収穫された前記植物からタバコ製品を製造することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
機能的編集成分が、標的部位に特異的となるように遺伝子操作されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
標的部位が、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内に位置する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
タバコがニコチアナ・タバカム(N.tabacum)タバコ又はニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)タバコである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法により生産されたタバコ植物又は植物部分。
【請求項23】
請求項15に記載の方法により生産されたタバコ種子。
【請求項24】
機能的編集成分をコードする核酸配列を含むRNA発現ベクターを含むタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【請求項25】
機能的編集成分が、DNAを切断するエンドヌクレアーゼである、請求項24に記載のタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【請求項26】
エンドヌクレアーゼが、メガヌクレアーゼ又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つである、請求項24又は25のいずれか一項に記載のタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【請求項27】
RNA発現ベクターが、タバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである、請求項24~26のいずれか一項に記載のタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【請求項28】
機能的編集成分が、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに作動可能に連結された、請求項24~26のいずれか一項に記載のタバコ植物、タバコ植物部分、又はタバコ植物細胞。
【請求項29】
プロモーターに作動可能に連結されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むように改変されたタバコモザイクウイルス(TMV)ゲノム。
【請求項30】
メガヌクレアーゼが、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ、又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的である、請求項29に記載の改変TMVゲノム。
【請求項31】
プロモーターが、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターである、請求項29に記載の改変TMVゲノム。
【請求項32】
請求項29~31のいずれか一項に記載のTMVゲノムをコードする核酸配列を含むベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年7月31日出願の「植物におけるウイルスベースの遺伝子編集のための方法及び組成物」という表題の米国仮特許出願第62/539,160号に対する優先権を主張するものである。米国仮特許出願第62/539,160号の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、遺伝子編集成分の送達により植物ゲノムの標的部位を編集するための組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
トランスジェニック技術は、植物を改変するための強力なツールを提供する。それでも、植物ゲノム内に外来DNAを導入するためのトランスジェニック改変(transgenic modification)の適用は、公衆安全性の懸念に関連付けられてきた。植物ゲノムを改変するために使用できるが、外来遺伝物質を導入しない技術の適用が必要である。したがって、外来DNAを植物に導入することなく植物の形質を改善する系を開発する必要がある。特に、外来DNAを組み込むことなく、植物ゲノムの部位特異的改変を発生できるツールが必要である。
【0004】
ニコチアナ(Nicotiana)植物における組換えタンパク質の一過性発現は、提供される速度と収量の劇的な増加のため、安定した形質転換の迅速で便利な代替手段である。(Fischer et al.,Curr Opin Plant Biol 2004;7(2):152-8)。使用される発現ベクターに応じて、一過性発現系には2つの基本的なタイプがある。第1のタイプは、強力な構成的プロモーターの転写制御下に目的のコード配列を有する標準(非ウイルス)ベクターに基づく。第2のタイプの一過性発現は、発現ベクターとして適合させた植物ウイルス、主にRNAウイルスを利用する。一過性発現系に関して、ウイルスベースの系は、2つのサブグループ:独立して機能する(植物体内での複製、局所移動及び全身移動)ウイルスベクターに基づいて構築されたベクターと、複製及び局所移動を可能にするが、全身感染を支援はしない最小限の遺伝子を含むウイルスベクターに基づいて構築されたベクターとに分けることができる。独立したウイルスベクターを使用する生成は、ベクターをコードするインビトロ合成された感染性RNA転写産物を植物に接種することで開始できるが、通常最小のウイルスベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)トランスフェクション、T-DNA移入及びその後の該ベクターをコードする感染性RNAの植物体内での転写を使用して始められる。これらの発現系の共通要素は、好ましい生成宿主としてのニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)(Nb)の使用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fischer et al.,Curr Opin Plant Biol 2004;7(2):152-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コード配列及び非コード配列を含むDNAセグメントの単離、クローニング、移入及び組換えは、制限エンドヌクレアーゼ酵素を使用して実行することができる。植物ゲノム内の特異的改変部位を標的とするいくつかのアプローチが開発されているが、植物ゲノムの定義された領域に特異的改変を含む変化したゲノムを有する稔性植物を作製するための、より効率的で効果的な方法の必要性が依然としてある。
【0007】
実施形態という用語及び同様の用語は、本開示の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広範囲に言及することを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、また以下の特許請求の範囲の意味又は範囲を限定するものではないと理解すべきである。この概要は、本開示のさまざまな態様の高レベルの概説であり、以下の発明を実施するための形態の節でさらに説明される概念の一部を紹介するものである。この概要は、特許請求する主題の重要な、又は本質的な特徴の特定を意図するものではなく、特許請求する主題の範囲を決定するために単独で使用されることを意図するものでもない。本主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、任意の又はすべての図面、及び各請求項の参照により理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、改変タバコモザイクウイルス(mTMV)を使用した遺伝子編集成分の送達により、植物ゲノムの標的部位を編集するための組成物及び方法を提供する。特に、本開示は、タバコから製造された、又はタバコに由来する製品に使用するための、又はタバコを組み込むための、ヒトによる摂取を意図した改変タバコ材料を生産するためのタバコゲノムの改変方法に関する。本開示は、さまざまな方法で具現化することができる。
【0009】
特定の実施形態では、本開示は、改変タバコモザイクウイルス(mTMV)を使用し、植物ゲノムへのDNA中間体又は外因性遺伝子挿入を使用しない機能的編集成分の送達により、植物ゲノムの標的部位を編集するための組成物及び方法を提供する。本明細書に開示の方法を使用して、タバコ細胞のゲノムなどの植物ゲノムの標的部位の改変のために、DNAエンドヌクレアーゼなどの遺伝子編集系を植物細胞に送達することができる。さらに、本明細書に開示の方法及び組成物は、植物細胞へのRNAの送達の前に、メガヌクレアーゼをコードするRNA分子のインビトロ生成を提供する。機能的編集成分をコードする核酸分子の導入及びその後の該機能的編集成分の発現後、植物を栽培し、ゲノム標的部位が編集された種子を作製することができる。次いで、種子の胚救出を行い、培養して、異種遺伝物質を含まない改変植物が作製され得る。
【0010】
例えば、特定の実施形態では、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞に導入することを含み、機能的編集成分が、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法が開示される。いくつかの実施形態では、核酸はRNA分子である。特定の実施形態では、機能的編集成分は、DNAを切断するエンドヌクレアーゼをコードする。エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ及び/又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つであり得る。いくつかの実施形態では、核酸はRNA発現ベクターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、ベクターはタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである。したがって、一態様では、植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、標的部位に特異的なDNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むRNA分子を含むように改変されたタバコモザイクウイルス(TMV)ゲノムを導入することを含み、発現すると、該DNAエンドヌクレアーゼが標的部位に改変を導入する方法が提供される。
【0011】
機能的編集成分は、プロモーターに作動可能に連結させることができる。特定の実施形態では、プロモーターは植物細胞において機能的なプロモーターである。例えば、いくつかの実施形態では、プロモーターはCaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つである。追加的及び/又は代替的に、核酸は植物細胞内で合成されてもよく、又は機能的編集成分をコードする核酸を植物細胞に導入する前にインビトロで合成されてもよい。
【0012】
特定の実施形態では、標的部位は、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内にある。又は、別の遺伝子を標的とする場合もある。
【0013】
核酸分子は、DNAエンドヌクレアーゼをコードするRNA分子であってもよい。標的部位の改変は、該標的部位における1以上のヌクレオチドの少なくとも1つの欠失、挿入又は置換であり得る。改変は二本鎖切断でもあり得る。例えば、いくつかの態様では、DNAエンドヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。例えば、メガヌクレアーゼは、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的となるように改変された(例えば、遺伝子操作された)メガヌクレアーゼであり得る。改変TMVゲノムは、エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結された、植物細胞において活性であるプロモーターをさらに含み得る。
【0014】
上記のように、いくつかの態様では、RNA分子はベクター上に位置する。特定の態様では、DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸分子は、pDN15、pBS1057、p30B又は他の特定のベクター系などのGENEWARE(R)TMVベースの遺伝子発現ベクター中に位置する。RNA分子などの核酸分子は、植物細胞への送達の前にインビトロで合成することができる。RNA分子は、摩擦、高圧スプレー、遺伝子銃、又は同様の技術を使用した機械的伝播によって導入することができる。場合によっては、機能的編集成分をコードする核酸は、摩擦、高圧スプレー又は遺伝子銃の使用により植物細胞に機械的に導入される。
【0015】
本明細書に開示の方法はまた、改変標的部位を有する植物並びに本明細書に記載の方法により作製された改変標的部位を有する植物及び種子を増殖させることを含む。場合によっては、植物及び/又は種子は、ニコチアナ・タバカム・タバコ(N.tabacum tobacco)又はニコチアナ・ルスティカ・タバコ(N.rustica tobacco)である。又は、植物及び/又は種子は、本明細書に開示の他のタバコであってもよい。
【0016】
例えば、本方法は、機能的編集成分をコードする核酸を含む植物の一部を採取すること、及び選択培地上で該植物の一部を培養することをさらに含み得る。場合によっては、機能的編集成分をコードする核酸を含む植物部分は、植物の葉、分裂組織、シュート(苗条)及び/又は花から採取される。
【0017】
いくつかの態様では、この方法は、植物部分を培養して再生植物を生産することをさらに含む。この方法は、植物部分及び/又はそれに由来する植物の標的部位の改変を確認することも含み得る。追加的及び/又は代替的に、この方法は、標的部位に改変を含む少なくとも1つの植物細胞を単離することを含み得る。少なくとも1つの細胞及び/又は植物部分を培養して、標的部位に改変を有する植物を生産することができ、いくつかの実施形態では、植物は、該植物がゲノムの標的部位に改変を含む種子を生産するまで培養され得る。いくつかの実施形態では、胚救出は、ゲノムの標的部位に改変を含む種子で実施することができる。標的部位に改変を含む植物又は第2の植物から生成されたタバコ種子を植えて栽培し、標的部位に改変を有する植物を生産することができる。次いで、植物を収穫し、タバコ製品を生産するために使用することができる。
【0018】
本明細書に開示の方法により生産されるタバコ植物などの植物も提供される。本明細書に開示の方法によって生産されるタバコ種子などの種子が提供される。
【0019】
いくつかの態様では、メガヌクレアーゼなどのDNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むように改変されたタバコモザイクウイルス(TMV)ゲノムが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターはGENEWARE(R)ベクターであり得る。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的である。又は、メガヌクレアーゼは、他の標的に特異的であり得る。改変TMV(mTMV)ゲノムは、DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結された、CaMV35Sプロモーター、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターなどのプロモーターを含むことができる。本明細書に開示のTMVゲノムを含む改変タバコモザイクウイルスが、提供される。これらの構築物を含むベクター及び本明細書に開示の追加の実施形態もまた、開示される。
【0020】
機能的編集成分をコードする核酸配列を含むRNA発現ベクターを含むタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞もまた、開示される。特定の実施形態では、機能的編集成分は、標的部位でDNAを切断するエンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ及び/又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つであり得る。いくつかの実施形態では、核酸はRNA発現ベクターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、ベクターはタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである。機能的編集成分は、プロモーターに作動可能に連結させることができる。特定の実施形態では、プロモーターは植物細胞において機能的なプロモーターである。例えば、いくつかの実施形態では、プロモーターはCaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つである。特定の実施形態では、標的部位は、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内にある。又は、別の遺伝子を標的とする場合もある。
【0021】
また、特定の実施形態では、DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むRNA分子をタバコ植物細胞内に導入し、発現する際に該DNAエンドヌクレアーゼがタバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入することにより、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変することによって作製されたタバコ植物、タバコ植物部分若しくはタバコ植物細胞、及び/又はタバコ種子が提供される。一実施形態では、ベクターはGENEWARE(R)ベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼはメガヌクレアーゼであり得る。
【0022】
本開示は、図面の非限定的な説明の参照により、よりよく理解されると思われる。以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。図面では、文脈からそうでないことが示されていない限り、類似の記号は通常、類似の要素を示している。発明を実施するための形態、図面及び特許請求の範囲に記載されている例示的実施形態は、限定することを意図していない。本明細書に提示される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般的に記載され、図に示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、分離及び設計することができ、それらはすべて本明細書において明示的に企図されることは容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、サイクル3緑色蛍光タンパク質(c3GFP)を発現するように改変されたGENEWARE(R)pDN15ベクターを含むRJRTARL002ベクターのマップを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態によるRJRTARL002ベクターの接種後7日目の、タバコの3つの異なるタイプ、ニコチアナ・タバカム変種 キサンチ(Nicotiana tabacum var.Xanthi)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)及びニコチアナ・タバカム変種K326(Nicotiana tabacum var.K326)の例を示す図である。上の行の画像は、UV光に曝露され、緑色蛍光タンパク質が視覚化されている。下の行の画像は白色光に曝露され、感染領域が視覚化されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これ以降、本開示をより詳細に説明する。本開示は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載された態様に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの態様は、適用される法的要件をこの開示が満たすように提供される。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許、出願、公開された出願及び他の刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。この節に記載されている定義が、参照により本明細書に組み込まれている特許、出願、公開出願及び他の出版物に記載されている定義に反する、又は矛盾している場合、この節に記載されている定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義より優先される。
【0025】
本開示又はその(1以上の)実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「この(the)」及び「前記(said)」は、1以上の要素を意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。本明細書に記載の本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「からなる」及び/又は「から本質的になる」ことを含むことを理解されたい。
【0026】
「及び/又は」という用語は、2以上の項目のリストで使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で、又は列挙された項目の任意の1以上と組み合わせて使用できることを意味する。例えば、表現「A及び/又はB」は、A及びBのいずれか又は両方、すなわち、A単独、B単独又はAとBとの組み合わせを意味することを意図している。「A、B及び/又はC」という表現は、A単独、B単独、C単独、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、又はA、B及びCの組み合わせを意味することを意図している。
【0027】
本開示のさまざまな態様は、範囲形式で提示される。範囲形式での説明は単に便宜上及び簡潔にするためのものと理解するべきであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈するべきではない。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数値(1、2、3、4、5及び6)を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0028】
「標的部位」、「標的配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」及び「ゲノム標的遺伝子座」という用語は、本明細書で互換的に使用され、機能的編集成分によって認識される、植物細胞のゲノム(葉緑体(choloroplastic)DNA及びミトコンドリアDNAを含む)中のポリヌクレオチド配列を指す。標的部位は植物ゲノム内の内因性部位であり得、又は、標的部位は植物に対して異種性であって、それによりゲノム内に自然に存在しなくてもよく、又は標的部位は自然に存在する位置と比較して異種性のゲノム位置で見出されてもよい。本明細書で使用される「内因性標的配列」及び「天然標的配列」という用語は本明細書で交換可能に使用され、植物のゲノムに対して内因性又は天然であり、植物のゲノム内のその標的配列の内因性又は天然の位置にある標的配列を指す。
【0029】
本明細書で使用される「機能的編集成分」とは、遺伝子編集系の成分をコードするコード部分を含むポリヌクレオチドを指す。場合によっては、機能的編集成分はエンドヌクレアーゼである。場合によっては、機能的編集成分はgRNAであり、RNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼA又はCas9エンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼ)を標的とすることができる。RNAガイドエンドヌクレアーゼは、標的部位で植物細胞ゲノムの二本鎖切断を誘導し得る。又は、他の機能的編集分子を使用してもよい。
【0030】
本明細書で使用される「ゲノム編集エンドヌクレアーゼ」は、遺伝子編集系のタイプ又は成分である。そのような遺伝子編集系は、ゲノムDNAを改変して、本明細書に記載の植物などの「ゲノム編集」植物を作製するために使用される。このような改変には外来DNAの取り込みは含まれないが、植物自体の修復系によるDNAの修復は含まれる。例えば、機能的編集成分としては、植物細胞に移入させることができるゲノム編集DNAエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドRNAを挙げることができる。そのようなポリヌクレオチドRNAは、RNAウイルス骨格に挿入することができる。そのようなエンドヌクレアーゼには、メガヌクレアーゼ、ガイドRNA及びCRISPR-cas9若しくはその一部、又はTALEN、ZFN、CRISPR-cas9若しくはメガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)などのガイドエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが含まれる。特定の実施形態では、目的の植物細胞で発現が達成されるように、機能的編集成分はプロモーターなどの十分な調節要素に作動可能に連結される。
【0031】
本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、大きな認識部位(12~40塩基対の二本鎖DNA配列)を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼ(すなわち、エンドヌクレアーゼ)である。その結果、この部位は通常、任意の所与のゲノムで1回だけ発生する。メガヌクレアーゼを使用して、細菌、植物又は動物を問わず、すべてのゲノムタイプを改変することができる。
【0032】
本明細書で使用される「相同組換え」(HR)は、相同部位での2つのDNA分子間のDNA断片の交換を含む。相同組換えの頻度は多くの要因に影響される。さまざまな生物で、相同組換えの量、及び相同組換えと非相同組換えとの相対的割合に関連して変動する。一般に、相同領域の長さは相同組換え事象の頻度に影響し、相同領域が長いほど、頻度が高くなる。相同組換えを観察するために必要な相同領域の長さも種によって変わる。多くの場合、少なくとも5kbの相同性が利用されているが、わずか25~50bpの相同性でも相同組換えが観察されている。例えば、Singer et al.,(1982)Cell 31:25-33;Shen and Huang,(1986)Genetics 112:441-57;Watt et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4768-72、Sugawara and Haber,(1992)Mol Cell Biol 12:563-75、Rubnitz and Subramani,(1984)Mol Cell Biol 4:2253-8;Ayares et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5199-203;Liskay et al.,(1987)Genetics 115:161-7を参照されたい。
【0033】
「改変ヌクレオチド」又は「編集ヌクレオチド」とは、その非改変ヌクレオチド配列と比較した場合に少なくとも1つの変化を含む目的のヌクレオチド配列を指す。そのような「改変」には、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0034】
「植物」という用語は、植物全体、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、種子及びそれらの子孫を指す。植物細胞には、限定するものではないが、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子由来の細胞が含まれる。植物部分には、限定するものではないが、根、茎、シュート、葉、花粉、種子、腫瘍組織を含む分化及び未分化組織、並びにさまざまな形態の細胞及び培養物(例えば、単一細胞、プロトプラスト、胚及びカルス組織)が含まれる。植物組織は、植物内又は植物器官、組織又は細胞培養物内にあり得る。「植物器官」という用語は、植物の形態学的及び機能的に異なる部分を構成する植物組織又は組織群を指す。「ゲノム」という用語は、生物の各細胞、又はウイルス又はオルガネラに存在する遺伝物質(遺伝子及び非コード配列)の完全な相補体、及び/又は1つの親に由来するユニット(半数体)として継承された染色体の完全なセットを指す。「子孫」は、植物の任意の後続の世代を含む。
【0035】
ゲノム編集植物には、例えば、ゲノム配列内の1以上のヌクレオチドの欠失により導入された異種ポリヌクレオチドをそのゲノム内に含む植物が含まれる。ゲノム配列は、場合によってはDNAであってもよい。追加的及び/又は代替的に、欠失は、DNAによってコードされるRNAに存在し得る。欠失は、改変ヌクレオチド配列が後継世代に引き継がれるように、ゲノム内に安定して組み込まれ得る。ゲノム編集植物は、そのゲノム内に複数の改変を含むこともできる。各改変(例えば、欠失、置換)は、ゲノム編集植物に異なる形質を付与することができる。編集されたゲノムは、任意の細胞、細胞株、カルス、組織、植物部分又は植物を含むことができ、その遺伝子型は改変された核酸の存在により変更されており、最初にそのように変更された植物及び最初のトランスジェニックからの有性交配又は無性繁殖により創造された植物を含む。従来の植物育種法、外来ポリヌクレオチドの挿入をもたらす本明細書に記載のゲノム編集手順、又はランダム交配、非組換えウイルス感染、非組換え細菌性形質転換、非組換え転位、又は自然突然変異などの自然発生事象によるゲノムの変更(染色体又は染色体外)は、ゲノム編集植物と見なされることを意図していない。特定の実施形態では、ゲノム編集植物は、ゲノム遺伝子座における突然変異(欠失、挿入又は置換)を含むが、植物ゲノムに挿入された異種DNAを有さない。例えば、ゲノム編集植物は、植物のゲノム内の標的部位を切断し、次いで修復過程中に突然変異を導入する非相同末端結合(NHEJ)による修復によって創造することができる。
【0036】
概説
本開示は、植物のゲノム編集のための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載の方法及び組成物は、植物ゲノム内の標的部位の改変のために、1以上のベクターを利用して核酸分子を送達することができる。特定の実施形態では、DNAエンドヌクレアーゼを生成する核酸はベクターに含められる。いくつかの実施形態では、ベクターは、核酸分子の植物への送達、又は核酸分子の発現のための、TMVベクターなどのウイルスベクタープラットフォームに基づく。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはゲノム編集エンドヌクレアーゼである。
【0037】
ウイルスベクター
植物ウイルスベースのベクターは、植物全体でタンパク質及び核酸の迅速で一過性の発現を可能する。多くの異なる植物ウイルスが発現ベクターとして機能するように改変されているが、タバコモザイクウイルス(TMV)ベースのベクターは、植物で一貫して高レベルの外来タンパク質又は核酸を発現でき、植物における遺伝子発現又は遺伝子サイレンシングのいずれかのために真っ先に使用されるウイルスベクターであった(Fitzmaurice et al.2002;Pogue et al.,Ann Rev Phytopathol 2002;40:45-74.)TMVは、約6400ヌクレオチドの一本鎖プラス鎖RNAゲノムを有する。TMVビリオンは、ゲノムRNAをらせん状にキャプシド化する17.5kDaのコートタンパク質(CP)の約2100コピーで構成される剛性の棒状粒子である。RNA複製に関与するウイルスタンパク質はゲノムRNAから直接転写されるが、内部遺伝子の発現はサブゲノムRNAの生成を介して行われる。サブゲノムRNAの生成は、サブゲノムプロモーターとして機能するTMVゲノム内の配列によって制御される。CPはサブゲノムRNAから翻訳され、感染細胞で生成される最も豊富なタンパク質及びRNAである。TMV感染植物では、感染組織1グラムあたり数ミリグラムのCPが産生される。
【0038】
GENEWARE(R)発現ベクターは、TMV CPプロモーターの活性の強度と持続時間との両方を利用して、植物宿主細胞の翻訳優先順位を再プログラムし、TMVコートタンパク質と同様の高レベルでウイルスがコードするタンパク質を合成する(Pogue et al.,2002.;Shivprasad et al.,Virology 1999;255(2):312-23)。
【0039】
他の系では、T7 RNAポリメラーゼプロモーターの制御下にあるTMV RNAゲノムの完全長cDNAコピーが、大腸菌和合性(compatible)プラスミドで構築されている。ウイルスcDNAの操作は、標準的な組換えDNA手順と、感染性RNAを生成するためにT7 RNAポリメラーゼによりインビトロで転写された組換えDNAとを使用して実施することができる。感染性転写産物は、主にNb植物を感染させるために使用される。感染性RNAは、研磨剤を塗布することにより引き起こされる創傷を介して植物細胞に侵入する(Pogue et al.1998)。ウイルスは最初の細胞で複製し、隣接する細胞に移動して円形の感染巣を生成し、次いで気中葉への輸送のために植物の維管束系に侵入する。そこで、感染した各葉の大部分の細胞に全身感染する。外来遺伝子は、レプリカーゼ、移動タンパク質(MP)、CPを含む他のウイルスタンパク質産物を発現するすべての細胞で発現される。TMV発現系は、ヒトの酵素、抗菌剤、サイトカイン、ワクチン、免疫グロブリンの断片を含む200を超える組換えタンパク質及び抗原の産生に使用される。さらに、RNAi、アンチセンス及びヘアピンループ構築物の使用が、数千の内因性遺伝子を「サイレンシング」するために使用されている(Fitzmaurice et al.,2002;Kentucky Bioprocessing Co.未公開データ)。
【0040】
植物にアグロバクテリウム株を浸入させることによって始められる1つの最新の一過性最小ウイルスベース系は、トバモウイルス及びポテックスウイルスの一過性の系に基づいている。この技術及びその応用は、多数の出版物に記載されている(Pogue et al.,2010。Gleba&Giritch in Recent Advances in Plant Virology.eds.,Caranta,Tepfer,&Lopez-Moya.Norfolk,Caister Academic Press 2011:387-412)。これらの発現ベクターは一般的に単一成分であり(インビボで組み換えて完全に機能的なゲノムを形成する2成分系も同様に使用されている)、動作可能に結合された(operatively attached)DNA依存性RNAポリメラーゼIIプロモーター、例えばカリフラワーモザイクウイルス35S RNAシストロンから発現された全ゲノムを含む。これらの発現ベクターは、サイトカイン、インターフェロン、細菌及びウイルス抗原、成長ホルモン、ワクチン抗原、単鎖抗体及びモノクローナル抗体(mAb)を含む多数の異種タンパク質の発現が実証され、用途が広いことが証明されている。これらの発現レベルは、医薬品及び診断検体から、分子量5~150 kDaの組織培養賦形剤及び生化学試薬に至るまでの製品の、経済的に実行可能な生産を裏付ける。
【0041】
これらのベクターは、2つの異なる植物ウイルスゲノム:適切にイントロンを付加し、潜在性イントロンプロセシング部位を除去したTMV関連ウイルスのカブ葉脈透化トバモウイルス(TVCV)、又はジャガイモウイルスX(PVX)から構築することができる。ウイルスRNA複製に必要なすべての遺伝子をコードするウイルスレプリコンのcDNAは、まずウイルスベクターを導入し、導入されたアグロバクテリウムによってトランスフェクトされた植物全体の多くの細胞に運ばれるアグロ浸潤法によって始められる。次に、ベクターはT-DNA領域からの転写によって「活性化」され、インビボでウイルスRNAを生成し、該RNAをウイルスにコードされたタンパク質を介してRNA増幅のために細胞質に移行させる。ほとんどのベクターは、細胞間移動に必要なタンパク質、例えば、トバモウイルスベースのベクター由来の移動(30K)タンパク質、及びポテックスウイルスベースのベクターのためのトリプルブロック産物及びコートタンパク質をコードする。これらのタンパク質は、接種された葉の中でウイルスベクターゲノムの局所的な移動を可能にし、わずか5~7日で大部分の細胞が感染し、所望のタンパク質産物の生産部位となる。植物の気中部分は通常、接種後(dpi)6~8日までに収穫され、所望の産物が抽出される。
【0042】
植物における遺伝子発現の代替戦略には、一過性又は安定した植物形質転換が含まれる。組換えDNA技術により、外来DNA配列を植物のゲノムに挿入(形質転換)することが可能になり、植物の表現型が変化してトランスジェニック植物が生成される。組換え改変に使用される最も一般的に使用される植物形質転換法は、アグロバクテリウム感染及び導入遺伝子がランダムに予測不可能なコピー数で植物ゲノムに組み込まれる微粒子銃である。したがって、得られる表現型をよりよく予測するために、より標的化された組込みを提供するための、植物における導入遺伝子組込みを制御する努力が行われている。
【0043】
一部の植物ウイルスはゲノムをセグメント化しており、2以上の物理的に別個の核酸片が一緒になってウイルスゲノムを構成している。特定の事例では、これらの別個の小片は同じウイルスキャプシドに一緒にパッケージ化されており、他のウイルス(すなわち、複数のゲノムを有するウイルス)では、各ゲノムセグメントは各自のウイルス粒子にパッケージ化されている。ウイルスゲノムによる植物の感染は、通常、植物ウイルス核酸(例えば、RNA)又はパッケージ化されたゲノムを含むキャプシドのいずれかの送達により達成することができる。植物細胞に侵入して感染させるためには、植物ウイルスは、ワックス及びペクチンの保護層に加えて、細胞壁を通過する必要がある。ほとんど又はすべての植物ウイルスは、細胞に侵入するために、細胞壁表面受容体ではなく、細胞壁の機械的破壊に依存していると考えられている。そのような破壊は、例えば、細胞の物理的損傷によって、ウイルスを送達することができる細菌、真菌、線虫、昆虫、又はダニなどの生物によって引き起こすことができる。実験室では、ウイルスは通常、植物にウイルスを擦りつけるだけで植物細胞に投与される。
【0044】
ウイルスが細胞に侵入(感染)すると、通常、感染細胞内で複製し、次いで局所的に拡散する。例えば、ウイルスは複製して、最初に感染した葉の中で細胞間拡散する。局所的な拡散に続いて、ウイルスは感染していない葉、例えば植物の上葉に移動することができ、これは全身感染又は全身拡散と呼ばれる。一般に、多くの植物ウイルスの細胞間拡散には機能的移動タンパク質が必要であるが、全身拡散には機能的コートタンパク質(及び一般的には機能的移動タンパク質も)必要である。機能的移動タンパク質及びコートタンパク質をコードする成分に加えて、ウイルスは、局所的又は全身的な拡散に必要な、又はそのような拡散を促進する追加の成分を含んでよい。これらのシス作用成分は、コード成分又は非コード成分のいずれであってもよい。例えば、これらは、ウイルス転写産物の3’非翻訳領域(UTR、NTRとも呼ばれる)の一部に対応する場合がある(すなわち、ウイルス転写産物の3’非翻訳領域の転写の鋳型を提供する場合がある)。したがって、感染のための重要なウイルス成分は、ウイルスゲノムのコード領域又は非コード領域のいずれでもあり得る。
【0045】
局所(葉内)感染又は全身感染のいずれかの確立を成功させるためには、ウイルスは複製可能でなければならない。多くのウイルスは、複製過程に関与する1以上のタンパク質(本明細書において複製タンパク質又はレプリカーゼタンパク質と呼ばれる)をコードする遺伝子を含む。例えば、多くのRNA植物ウイルスは、RNAポリメラーゼをコードする。追加のタンパク質も必要となり得る(例えば、ヘリカーゼ又は(1つ又は複数の)メチルトランスフェラーゼタンパク質)。ウイルスゲノムは、複製タンパク質をコードする機能遺伝子に加えて、複製に必要な、又は複製を促進するさまざまな配列成分を含み得る。局所的な葉内感染では、(1つ又は複数の)移動促進タンパク質によって媒介されるウイルスの細胞間移動が必要とされる。例えば、TMVの場合、葉内感染にはMPタンパク質の発現が必要である。CPは必要としない。ポテックスウイルス属のジャガイモウイルスなどの他のウイルスは、細胞間移動及び葉内感染を確立するために、移動タンパク質とCP発現とを必要とする。
【0046】
植物に感染するすべてのウイルスを、本明細書に開示の遺伝子編集のためのウイルスベクター又はベクター系を調製するために使用することができる。例えば、植物に感染するすべてのウイルスのゲノムは、感染植物のゲノムの標的部位を編集するために、機能的編集成分を発現するように改変することができる。以下で詳細に説明するように、特定の実施形態では、GENEWARE(R)ベクターが使用される。
【0047】
特定の実施形態では、本明細書に開示の方法及び組成物で使用されるウイルスは、ssRNAウイルス、具体的には、(+)鎖ゲノムを有するssRNAウイルスであり得る。そのようなウイルスに存在する遺伝物質を操作するための技術及び試薬は、当技術分野において公知である。例えば、ウイルスゲノムのDNAコピーを調製し、発現ベクター、特に細菌ベクター又はTiプラスミド内にクローニングすることができる。特にジェミニウイルスを含む特定のssDNAウイルスを使用して、機能的編集成分を植物細胞に送達することもできる。一般に、本発明のベクター及びウイルスゲノムは、RNA又はDNAの形態で存在し得ることが理解されよう。加えて、DNAベクター内に存在するRNAウイルスのゲノム又はその一部などの特徴に言及する場合、その特徴はRNA形態のDNAコピーとして存在することを理解されたい。このcDNAは、インビトロではT7若しくは他のポリメラーゼを使用した転写、又はインビボでは鋳型としてアグロバクテリウム又は粒子送達Ti DNAを使用した宿主DNA依存性RNAポリメラーゼIIを使用した転写により、感染性RNA転写産物に変換される。
【0048】
本明細書に開示の遺伝子編集方法及び組成物に従って、多数の異なるタイプのウイルスを使用することができる。例示的なウイルスには、ブロモウイルス科のメンバー(例えば、ブロモウイルス、アルファモウイルス、イラウイルス)及びトバモウイルス科が含まれる。特定のウイルス種には、例えば、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)、リンゴクロロティックリーフスポットウイルス、リンゴステムグルービングウイルス、ムギ斑葉モザイクウイルス(Barley Stripe Mosiac Virus)、オオムギ黄化萎縮ウイルス、ビート萎黄ウイルス、ソラマメ斑紋ウイルス、ソラマメウルトウイルス、ブロムモザイクウイルス(BMV)、カーネーション潜在ウイルス、カーネーション斑紋ウイルス、カーネーションリングスポットウイルス、ニンジン斑紋ウイルス、キャッサバ潜在ウイルス(CL V)、ササゲクロロティックモットルウイルス、ササゲモザイクウイルス(CPMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、レタス伝染性黄斑ウイルス、トウモロコシ退緑斑紋ウイルス、トウモロコシラヤドフィノウイルス、トウモロコシ縞葉枯病ウイルス(MSV)、パースニップ黄斑ウイルス、エンドウエネーションモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、ラズベリー黄化ウイルス、イネ壊疽ウイルス(RNV)、イネ縞葉枯ウイルス、イネツングロ球状ウイルス、ライグラスモザイクウイルス、土壌感染性ムギ類萎縮ウイルス、インゲンマメ南部モザイクウイルス、タバコエッチウイルス(TEV)、タバコモザイクウイルス(TMV)、タバコ壊疽ウイルス、タバコ茎壊疽ウイルス、タバコリングスポットウイルス、トマトブッシースタントウイルス、トマトゴールデンモザイクウイルス(TGMV)及びカブ黄斑モザイクウイルス(TYMV)が含まれる。特定の実施形態では、ウイルスは、ポティウイルス、クコモウイルス、ブロモウイルス、トブラウイルス又はポテックスウイルスである。一実施形態では、タバコモザイクウイルス(TMV)が使用される。
【0049】
これらの植物ウイルスの要素を、公知の技術(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,NY,1989;Clover et al.,Molecular Cloning,IRL Press,Oxford,1985;Dason et al.,Virology,172:285-292,1989;Takamatsu et al.,EMBO J6:307-311,1987;French et al.,Science 231:1294-1297,1986;Takamatsu et al.,FEBS Lett.269:73-76,1990;Yusibov and Loesch-Fries,Virology,208(1):405-7,1995.Spitsin et al.,Proc Natl Acad Sci USA,96(5):2549-53,1999などを参照されたい)に従って遺伝子操作して、本明細書に開示の遺伝子編集の方法及び組成物に従って使用するためのウイルスベクターを作製することができる。
【0050】
上記のように、特定の実施形態では、本明細書に開示の方法及び組成物で使用されるウイルスベクターは、DNAエンドヌクレアーゼなどの遺伝子編集系の成分(機能的編集成分)を発現するように改変されたTMVベクターである。本明細書で使用される「TMVベクター」は、TMVゲノムの少なくとも1つの機能的要素を含むDNA又はRNAベクターである。TMVは、広範囲の植物、特にタバコ及びナス科の他のメンバーに感染する、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。TMVゲノムは、6.3~6.5 kbの一本鎖(ss)RNAで構成されている。3’末端はtRNAのような構造をしている。5’末端は、メチル化ヌクレオチドキャップ(m7G5’pppG)を有する。ゲノムは4つのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードすることができ、そのうち2つは漏れやすいUAG終止コドンのリボソームリードスルーにより単一のタンパク質を生成する。4つの遺伝子は、レプリカーゼ(メチルトランスフェラーゼ[MT]及びRNAヘリカーゼ[Hel]ドメイン)、RNA依存性RNAポリメラーゼ、いわゆる移動タンパク質(MP)及びキャプシドタンパク質(CP)をコードする。
【0051】
本明細書で使用される場合、TMVゲノムの要素又はTMVゲノム要素は、TMV複製及び/又はTMV感染に必要な機能タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子(すなわち、遺伝子)を指す。例えば、TMVゲノムの要素とは、機能的レプリカーゼ又はその一部(MT又はHelドメインなど)、RNA依存性RNAポリメラーゼ、移動タンパク質(MP)、及び/又はキャプシドタンパク質(CP)をコードする遺伝子を指す。いくつかの実施形態では、改変TMV(mTMV)ゲノムは、RNA依存性RNAポリメラーゼをコードする遺伝子を含まずに、レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質をコードする遺伝子を含む。
【0052】
本明細書に開示の方法及び組成物の特定の実施形態では、TMVベクターはTMVゲノムのすべての要素を含む。他の実施形態では、TMVゲノム要素は、少なくとも2つの別個のベクターに分割され、完全で機能的なTMVは、各ベクター由来のTMV要素の発現の後で組み立てることができる。したがって、少なくとも2つのベクターを使用する場合、一方又は双方のベクター単独では全身感染させることができず、一緒になることによりTMVの全身感染を支援するために必要なすべての機能を提供し、植物ゲノムの標的部位の改変のための機能的編集成分の発現を可能にする。したがって、本明細書に開示の方法及び組成物は、ウイルス成分がトランスで互いに補完し、全身感染能力及び/又は植物ゲノム内の標的部位の改変のための機能的編集成分の発現を提供できるという認識を提供する。特定の実施形態では、TMVベクターはTMVのU1株に基づく。例えば、TMVベクターはGENEWARE(R)pDN15ベクターである。GENEWARE(R)ベクターは、pUC19骨格に基づくことができる。参照により本明細書に組み込まれるWO99/36516を参照されたい。
【0053】
特定の実施形態では、RNA複製に関与するウイルスタンパク質はゲノムRNAから直接転写されるが、内部遺伝子の発現はサブゲノムRNAの生成を介して起こる。サブゲノムRNAの生成は、サブゲノムプロモーターとして機能するTMVゲノム内のRNA配列によって制御される。コートタンパク質はサブゲノムRNAから翻訳され、感染細胞で生成される最も豊富なタンパク質及びRNAである。TMV感染植物では、感染組織1グラムあたり数mgのコートタンパク質が産生される。タバコモザイクウイルス発現ベクターは、この強力なサブゲノムプロモーターの活性の強度と持続時間との両方を利用する。
【0054】
特定の実施形態では、ベクターはGENEWARE(R)系を含む。GENEWARE(R)ベクターは、以下の2つの異なる方法で外来タンパク質又はペプチドの発現を可能にする:1)独立した遺伝子発現:ウイルスコートタンパク質の代わりに発現用の外来遺伝子を追加することにより、内在性ウイルスコートタンパク質プロモーターから発現させる。例えば、DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列は、ウイルスコートタンパク質プロモーターに作動可能に連結することができる。転写活性がより低く、配列が同一ではない第2のコートタンパク質プロモーターを異種コード領域の下流に配置し、次いでウイルスコートタンパク質又は選択マーカーをコードする遺伝子を追加してもよい。これは第3のサブゲノムRNA(MP発現RNAを含む)をコードし、過剰発現を目的とする異種遺伝子に加えて、ウイルス複製及び全身移動に必要なすべての遺伝子をウイルスベクターが発現できるようにする。2)ウイルス粒子の表面での免疫原性ペプチドの表示:TMVビリオンは、直径約18nm、長さ300nmの剛性の棒状である。ビリオン及びコートタンパク質の構造はX線回折により決定され、ゲノムRNAをキャプシド化した、1ターンあたり16.3サブユニットの右巻きヘリックス内に位置する約2,130のコートタンパク質サブユニットの構造であることが明らかとなっている。
【0055】
機能的編集成分
ウイルスベクターを使用して、機能的編集成分を植物細胞又は細胞に送達することができる。機能的編集成分としては、植物のゲノムの改変に寄与する任意の核酸又はアミノ酸を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法は、特定のエンドヌクレアーゼの部位特異性を利用して、目的の内因性ポリヌクレオチド(例えば、目的の内因性遺伝子)の少なくとも1つの認識配列を切断することができる。切断後、部位を編集するか、又は目的の外因性遺伝子を標的部位内に挿入することができる。対応する認識配列を特異的又は優先的に切断する任意のエンドヌクレアーゼを、本明細書に開示の方法及び組成物で使用することができる。認識配列及び内因性認識配列を特異的及び優先的に切断するエンドヌクレアーゼを使用することにより、認識配列以外の部位での切断が最小化され、それにより切断の効率が向上する。したがって、本明細書に開示の認識配列及び内因性認識配列の切断のためのエンドヌクレアーゼは、ゲノム編集エンドヌクレアーゼとして機能するメガヌクレアーゼなどのメガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、コンパクトTALEN、megaTAL又はCRISPRであり得る。
【0056】
編集酵素の他の形態が、他の実施形態で使用することができる。注目を集めているそのようなアプローチの1つは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の利用である(Antunes et al.,BMC Biotechnology(2012),12:86)。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとFokIヌクレアーゼドメインとのキメラ融合体であり、ジンクフィンガードメインをさまざまな異なるDNA配列を認識するように操作することができるため、ゲノム内の既存の部位を認識して切断する能力を有する。ヒトゲノム内の天然の部位での相同組込みを標的とするために、操作されたZFNが使用されてきた。ZFNは、シロイヌナズナ、タバコ及びトウモロコシでも試験されており、NHEJ及び相同組換え(HR)により、それぞれ16%と2%という高い頻度で導入部位の変異を標的化できることが示されている。しかし、ZFNの2つの潜在的に重要な制限:(1)「オフサイト(off-site)」切断によって引き起こされると推定される植物及び哺乳動物細胞での毒性、及び(2)切断に関連する不正確な事象(例えば、欠失、小さな挿入)が報告されている。
【0057】
さらに、FokIドメインをキサントモナス(Xanthomona)属の植物病原性細菌中で同定された転写活性化因子様(TAL)エフェクタータンパク質に融合することにより、ZFNと同様のアプローチが得られた。これらのTALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、哺乳動物細胞及び植物プロトプラストにおいて標的二本鎖切断を良好に生じさせることが示されている。ZFNとTALENの汎用性は、広範囲の多様なDNA配列を認識するように操作される能力にあるが、最近の出版物では、この汎用性が他のエンドヌクレアーゼに導入できることが示されている。例えば、タンパク質工学はホーミングエンドヌクレアーゼにも適用されている。I-SceI及びそのホモログであるI-MsoI及びI-CreIに由来するこれらの「カスタム」エンドヌクレアーゼは、細菌、酵母及び哺乳動物細胞株のDNA切断を標的にすることも示されている。より最近、Fauser et al.(2012)は、部位特異的エンドヌクレアーゼをさらに使用するシロイヌナズナの非常に効率的な遺伝子ターゲティングシステムを報告した。この改善は、酵素が標的及び染色体トランスジェニックドナーの両方内で切断し、ターゲティングベクターが切り取られるという事実に依存している(Fauser F,et al.P Natl Acad Sci USA 2012,109(19):7535-7540)。
【0058】
メガヌクレアーゼ
特定の実施形態では、機能的編集成分は、植物ゲノム内の標的部位に特異的となるように改変されたメガヌクレアーゼである。特定の実施形態では、ゲノム編集メガヌクレアーゼを使用することができる。本明細書に記載のメガヌクレアーゼは、足場として使用するための天然に存在するメガヌクレアーゼI-CreIに基づくことができる。I-CreIは、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas rheinhardti)の葉緑体に見られるホーミングエンドヌクレアーゼである(Thompson et al.1992,Gene 119,247-251)。このエンドヌクレアーゼはホモダイマーであり、23S rRNA遺伝子の偽パリンドロームの22bpのDNA部位を認識し、イントロンの導入により使用される二本鎖DNA切断を生み出す。I-CreIは、単一のLAGLIDADGモチーフを担持するグループエンドヌクレアーゼのメンバーである。LAGLIDADG酵素には、コンセンサスモチーフの1つ又は2つのコピーが含まれている。I-CreIなどの単一モチーフ酵素はホモダイマーであり、二重モチーフ酵素は2つの別個のドメインを有するモノマーである。したがって、I-CreI足場に由来するメガヌクレアーゼを、目的の22bpヌクレオチド配列を認識するように再設計した場合、それぞれがこの22bp認識部位の一部を認識し、これらの協調がこの22bp認識部位での二本鎖切断の誘導に必要とされる2つのモノマーユニットを設計してもよい。協調作用は、2つのモノマーユニットを1つの単鎖メガヌクレアーゼに連結することにより達成することができ、又は例えばWO2007/047859に記載のように、ヘテロダイマーの形成を促進することによって達成することもでき、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
したがって、ペプチドリンカーが2つの異種LAGLIDADGメガヌクレアーゼサブユニットを共有結合して「単鎖ヘテロダイマーメガヌクレアーゼ」又は「単鎖メガヌクレアーゼ」を形成する融合タンパク質が本明細書に開示され、少なくともN末端サブユニットは、モノ-LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来し、これらのサブユニットが一緒に機能して、2つのサブユニットの半分の認識部位のハイブリッドであるタバコ細胞のゲノムの非パリンドロームDNA認識部位に優先的に結合し、切断する。特に、遺伝子操作された単鎖メガヌクレアーゼを使用して、天然に存在するメガヌクレアーゼが認識しない、タバコ細胞のゲノム内の非パリンドロームDNA配列を認識することができる。本発明はまた、特に遺伝子工学、タンパク質発現、ニコチンデメチラーゼ活性の調節及び診断と研究におけるインビトロ応用のために、タバコ植物、植物部分又は植物細胞のゲノム内の限られた数の遺伝子座において所望の遺伝子配列の組換えを引き起こすようにメガヌクレアーゼを利用することによって組換え核酸及び操作されたタバコ植物を生産する、そのようなメガヌクレアーゼを使用する方法を提供する。米国特許第9,434,931号、第9,340,777号、第8,445,251号及び第8,338,157号を参照されたく、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示の方法及び組成物は、一緒に機能してタバコ細胞のゲノム内の非パリンドローム認識部位を認識及び切断する1以上のモノ-LAGLIDADGメガヌクレアーゼに由来する、一対の共有結合LAGLIDADGサブユニットを含む組換え単鎖メガヌクレアーゼを利用する。いくつかの実施形態では、モノ-LAGLIDADGサブユニットは、I-CreI、I-MsoI及びI-CeuIから選択される野生型メガヌクレアーゼに由来する。
【0061】
CRISPR/Cas
他の実施形態では、機能的編集成分は、II型CRISPR/Cas系などのRNAガイドエンドヌクレアーゼ系の一部であり得る。本明細書で使用されるエンドヌクレアーゼ系は、植物細胞のゲノムに二本鎖又は一本鎖切断を導入することができるエンドヌクレアーゼ、又はエンドヌクレアーゼと他の機能的編集成分との組み合わせを指すことができる。細菌及び古細菌は、クラスター化され規則的に間隔を空けられた短いパリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系と呼ばれる適応免疫防御を進化させており、これは、短いRNAを使用して外来核酸の分解を指示する(WO2007/025097)。細菌のII型CRISPR/Cas系は、crRNAとtracrRNAを使用して、CasエンドヌクレアーゼをそのDNAターゲットに誘導する。crRNA(CRISPR RNA)は、二本鎖DNA標的の一方の鎖に相補的な領域を含み、tracrRNA(トランス活性化CRISPR RNA)と塩基対を形成してRNA二重鎖を形成し、CasエンドヌクレアーゼにDNA標的の切断を指示する。
【0062】
いくつかの実施形態では、CRISPR酵素はI型若しくはIII型CRISPR酵素であるか、又はCRISPR酵素はII型CRISPR酵素である。このII型CRISPR酵素は、任意のCas酵素であり得る。好ましいCas酵素は、Cas9として同定され、これは、II型 CRISPR系由来の複数のヌクレアーゼドメインを有する最大のヌクレアーゼと相同性を共有する酵素の一般的なクラスを指すことができる。最も好ましくは、Cas9酵素はspCas9又はsaCas9由来である、又はこれらに由来する。本明細書で使用される「Casエンドヌクレアーゼ」は、Cas9エンドヌクレアーゼなどの任意のII型RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼであり得る。一実施形態では、Cas9ヌクレアーゼはSpCas9、SaCas9、NmCas9又はAnCas9である。特定の実施形態では、CRISPR酵素は、ゲノムの標的部位での切断を指示するためにcrRNAのみを必要とするCpf1エンドヌクレアーゼである。さらに、Cpf1エンドヌクレアーゼは、Cas酵素による切断によって作成された平滑末端カットではなく、ゲノムに付着二本鎖切断を作り出す。
【0063】
本明細書で使用される「ガイドRNA」という用語は、エンドヌクレアーゼに標的部位での切断を指示する、ゲノム内の標的部位に特異性を有する任意のRNAに関する。特定の実施形態では、ガイドRNAは、2つのRNA分子、可変ターゲティングドメインを含むcrRNA(CRISPR RNA)及びtracrRNAの合成融合体である。一実施形態では、ガイドRNAは、12~30ヌクレオチド残基の可変ターゲティングドメインと、Casエンドヌクレアーゼと相互作用することができるRNA断片とを含む。本明細書で使用する「ガイドポリヌクレオチド」という用語は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、任意選択的に切断可能にするポリヌクレオチド配列に関する。ガイドポリヌクレオチドは、単一分子又は二重分子であり得る。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はそれらの組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)であり得る。いくつかの実施形態では、ガイドポリヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド、例えば限定するものではないが、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdC、2,6-ジアミノプリン、2’-フルオロA、2’-フルオロU、2’-O-メチルRNAへのホスホジエステル結合又は連結改変、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への連結、又は環化をもたらす5’から3’への共有結合を含むことができる。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドは、「ガイドRNA」とも呼ばれる。
【0064】
ガイドポリヌクレオチドは、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメイン又はVTドメインと呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン又はCERドメインと呼ばれる)とを含む二重分子(二重ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であり得る。二重分子ガイドポリヌクレオチドのCERドメインは、相補性の領域に沿ってハイブリダイズする2つの別個の分子を含む。2つの別個の分子は、RNA、DNA及び/又はRNA-DNA-組み合わせ配列であり得る。いくつかの実施形態では、CERドメインに連結されたVTドメインを含む二重ガイドポリヌクレオチドの第1分子は、「crDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)、又は「crRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)、又は「crDNA-RNA」(DNAとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成される場合)と呼ばれる。いくつかの実施形態では、CERドメインを含む二重ガイドポリヌクレオチドの第2分子は、「tracrRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)又は「tracrDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)、又は「tracrDNA-RNA」(DNAとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成される場合)と呼ばれる。一実施形態では、RNA/Cas9エンドヌクレアーゼ複合体を誘導するRNAは、二重鎖crRNA-tracrRNAを含む二重鎖RNAである。
【0065】
ガイドポリヌクレオチドまた、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメイン又はVTドメインと呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチドドメイン(エンドヌクレアーゼ認識ドメイン又はCERドメインと呼ばれる)とを含む単一分子でもあり得る。「ドメイン」とは、RNA、DNA及び/又はRNA-DNA-組み合わせ配列であり得るヌクレオチドの連続ストレッチを意味する。単一ガイドポリヌクレオチドのVTドメイン及び/又はCERドメインは、RNA配列、DNA配列又はRNA-DNA組み合わせ配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドは、tracrNucleotide(CERドメインを含む)に連結されたcrNucleotide(CERドメインに連結されたVTドメインを含む)を含み、連結はRNA配列、DNA配列、又はRNA-DNAの組み合わせ配列を含むヌクレオチド配列である。crNucleotide及びtracrNucleotide由来の配列で構成される単一ガイドポリヌクレオチドは、「単一ガイドRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)又は「単一ガイドDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチで構成される場合)又は「単一ガイドRNA-DNA」(RNAとDNAヌクレオチドとの組み合わせで構成される場合)と呼ぶことができる。一実施形態では、単一ガイドRNAは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成できるII型CRISPR/Cas系のcrRNA又はcrRNA断片とtracrRNA又はtracrRNA断片とを含み、前記ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物のゲノム標的部位に向かわせ、Casエンドヌクレアーゼがゲノム標的部位に二本鎖切断を導入できるようにする。二重ガイドポリヌクレオチドに対して単一ガイドポリヌクレオチドを使用する一態様は、唯一の発現カセットが単一ガイドポリヌクレオチドを発現させるために必要なことである。
【0066】
「可変ターゲティングドメイン」又は「VTドメイン」という用語は、本明細書で互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の一方の鎖(ヌクレオチド配列)に相補的なヌクレオチド配列を含む。第1のヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の相補性%は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76 %、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり得る。可変標的ドメインは、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、可変ターゲティングドメインは、12~30ヌクレオチドの連続ストレッチを含む。可変ターゲティングドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列、又はそれらの任意の組み合わせから構成され得る。
【0067】
ガイドポリヌクレオチドの「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」又は「CERドメイン」という用語は、本明細書において互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列(ガイドポリヌクレオチドの第2ヌクレオチド配列ドメインなど)を含む。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列、又はそれらの任意の組み合わせから構成され得る。
【0068】
単一ガイドポリヌクレオチドのcrNucleotideとtracrNucleotideとを連結するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列又はRNA-DNA組み合わせ配列を含むことができる。一実施形態では、単一のガイドポリヌクレオチドのcrNucleotideとtracrNucleotideとを連結するヌクレオチド配列は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100ヌクレオチド長であり得る。別の実施形態では、単一ガイドポリヌクレオチドのcrNucleotideとtracrNucleotideとを連結するヌクレオチド配列は、テトラループ配列、例えば限定するものではないが、GAAAテトラループ配列を含むことができる。
【0069】
ガイドポリヌクレオチド、VTドメイン及び/又はCERドメインのヌクレオチド配列改変は、限定するものではないが、5’キャップ、3’ポリアデニル化テール、リボスイッチ配列、安定性制御配列、dsRNA二重鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドを細胞内位置に標的化する改変又は配列、追跡を提供する改変又は配列、タンパク質の結合部位を提供する改変又は配列、ロックされた核酸(LNA)、5-メチルdCヌクレオチド、2,6-ジアミノプリンヌクレオチド、2’-フルオロAヌクレオチド、2’-フルオロUヌクレオチド、2’-O-メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18分子への連結、5’から3’への共有結合、又はそれらの任意の組み合わせから選択することができる。これらの改変は、少なくとも1つの追加の有益な特徴をもたらし、この追加の有益な特徴は、改変又は調節された安定性、細胞内ターゲティング、追跡、蛍光標識、タンパク質又はタンパク質複合体の結合部位、相補的標的配列への結合親和性、細胞分解に対する耐性の改変及び細胞透過性の増加の群から選択される。
【0070】
特定の実施形態では、ガイドRNA及びCasエンドヌクレアーゼは、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位に二本鎖切断を導入できる複合体を形成することができる。本開示のいくつかの実施形態では、可変標的ドメインは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長である。一実施形態では、ガイドRNAは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成できるII型CRISPR/Cas系のcrRNA(又はcrRNA断片)とtracrRNA(又はtracrRNA断片)とを含み、ガイドRNA/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物のゲノム標的部位に向かわせ、Casエンドヌクレアーゼがゲノム標的部位に二本鎖切断を導入できるようにする。
【0071】
植物におけるウイルスベースの遺伝子編集のための組成物
本開示の実施形態は、プロモーターに作動可能に連結されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むように改変されたタバコモザイクウイルス(TMV)ゲノムを提供する。このプロモーターは、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターであり得る。特定の実施形態では、メガヌクレアーゼは、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的である。又は、他の遺伝子を標的とする場合もある。
【0072】
本明細書では、少なくとも1つの機能的編集成分を含む、GENEWARE(R)pDN15ベクターなどの改変TMV(すなわち、mTMV)ベクターが提供される。したがって、いくつかの実施形態では、mTMVベクターは、植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたDNAエンドヌクレアーゼをコードする配列とともに、機能的レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質をコードする。一実施形態では、機能的編集成分はゲノム編集エンドヌクレアーゼである。
【0073】
いくつかの実施形態では、mTMVベクターは、植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたCas9エンドヌクレアーゼをコードする配列、及び植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたgRNAをコードする配列の少なくとも1つとともに、機能的レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、mTMVベクターは、機能的編集成分を含まずに、機能的レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質のうちの少なくとも1つを含む。mTMVベクターはまた、植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたCas9エンドヌクレアーゼをコードする配列、及び植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたgRNAをコードする配列の少なくとも1つを含み、TMVゲノムの要素を含まない。特定の実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド及び/又はgRNAをコードするポリヌクレオチドの3’にターミネーターが存在する。
【0074】
いくつかの実施形態では、TMVベクター(pDN15又は他のタイプのGENEWARE(R)ベクターなど)は、選択マーカー遺伝子及び標的化エンドヌクレアーゼの発現を提供する。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。これらの実施形態では、TMVベクターの前に、トバモウイルスベクターゲノムに動作可能に連結された(operatively linked to)T7 RNAポリメラーゼプロモーターがあり、最初に転写されたヌクレオチドが、インビトロ転写及びウイルスゲノム配列による正しい開始を介してキャッピングを促進する。ベクターは、緑色蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子、バスタ耐性(bar)、又は二機能タンパク質を産生するための2つの遺伝子の融合を含む天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターを下流に挿入することにより改変することができる。別のトバモウイルスゲノム由来の第2のコートタンパク質サブゲノムプロモーター、それに続く遺伝子編集エンドヌクレアーゼ(ゲノム編集エンドヌクレアーゼ、TALEN、ZFN又はCRISPR-cas9などのメガヌクレアーゼの1つを含む)を含む第2の挿入を、レポーター構築物の下流に行うことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ベクターは、コートタンパク質を欠くように設計されて、全身性及び持続の感染の欠如を保証することができる。追加的及び/又は代替的に、ベクターは、インビトロで生成された転写産物の正しいRNA切断を促進するウイルスNTRのリボザイム3’により、トバモウイルスの3’非翻訳領域(NTR)で終了させて、転写産物の感染性を高めることもできる。したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示のエンドヌクレアーゼをコードする本明細書に開示のウイルスベクターは、コートタンパク質をコードする核酸を欠いている。
【0076】
特定の実施形態では、上記のような2つの発現カセット戦略が使用される場合、レポーター遺伝子及びエンドヌクレアーゼ配列は逆の順序で挿入することができる(エンドヌクレアーゼは天然トバモウイルスコートタンパク質サブゲノムプロモーターの制御下にあり、レポーター遺伝子は第2のトバモウイルスコートタンパク質サブゲノムプロモーターの制御下にある)。さらなる改変として、レポーター遺伝子(単一又は二重活性タンパク質)をエンドヌクレアーゼ配列に融合させて、天然のサブゲノムプロモーターから単一シストロンのみを翻訳可能にすることができた。エンドヌクレアーゼ/レポーター遺伝子融合の後で、リボザイム配列の上流に必要な3’NTR配列を挿入することができる。ガイドRNAは、TMVベースのベクターで次の3つの方法で同時に発現できます。1)選択マーカー終止コドンの下流に挿入する。2)エンドヌクレアーゼ終止コドンの下流への挿入;3)又は第3異種サブゲノムプロモーターの組み込み(例えば、最初はタバコ緑斑モザイクウイルスから、2番目はトマトモザイクウイルスから)及びプロモーターの下流のgRNA配列の挿入。
【0077】
同様に、少なくとも1つの機能的編集成分を含むTMVゲノムが、本明細書において提供される。したがって、いくつかの実施形態では、mTMVゲノムは、植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたDNAエンドヌクレアーゼをコードする配列とともに、機能的レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、mTMVゲノムは、植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたCas9エンドヌクレアーゼをコードする配列、及び植物細胞で活性な構成的プロモーターに作動可能に連結されたgRNAをコードする配列の少なくとも1つとともに、RNAポリメラーゼ、機能的レプリカーゼ、移動タンパク質及びキャプシドタンパク質を含む。特定の実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド及び/又はgRNAをコードするポリヌクレオチドの3’にターミネーターが存在する。
【0078】
特定の実施形態では、pDN15などのTMVベクター、又は他のGENEWARE(R)TMV、又はPVXベクターは、コートタンパク質プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結された核酸配列を含み、該核酸配列はゲノム編集エンドヌクレアーゼなどのメガヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、別個のメガヌクレアーゼをコードする複数のベクター又は複数のRNA分子を植物細胞に導入することができる。例えば、タバコゲノムの複数の標的部位は、別個の標的部位に特異的な異なるメガヌクレアーゼをコードする核酸分子、例えばRNA分子を導入することにより改変することができる。
【0079】
本明細書に開示の組成物及び方法は、機能的編集成分の植物細胞への送達のために改変TMVゲノムを利用する。例えば、植物細胞にメガヌクレアーゼを送達するようにTMVゲノムを改変することができ、又はメガヌクレアーゼをコードするRNAを植物細胞に直接送達して発現させる前に、メガヌクレアーゼをインビトロで発現させることができる。いくつかの実施形態では、TMVゲノムは、GFP又は他の公知のマーカーなどの検出可能なマーカーを含むように改変することができる。追加的及び/又は代替的に、TMVゲノムは、ゲノム編集エンドヌクレアーゼを含むように改変することができる。いくつかの実施形態では、TMVゲノムは、Cas9エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子及び植物ゲノムの標的部位の改変のためのgRNA又はgRNA成分を含むように改変することができる。1以上のmTMVベクターが植物細胞に送達され、続いてmTMVゲノムが発現されると、そこにコードされている機能的編集成分が発現され、植物ゲノムの標的部位の改変が促進できるようになる。
【0080】
プロモーター
機能的編集成分の発現のために、植物細胞内で活性なプロモーターをTMVベクターに組み込むことができる。特定の代替実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織優先プロモーター、細胞型優先プロモーター、又は発達段階優先プロモーターである。構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT-DNAに由来する1’-又は2’-プロモーター、ユビキチン1プロモーター、Smasプロモーター、シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(米国特許第5,683,439号)、Nosプロモーター、pEmuプロモーター、rubiscoプロモーター、GRP1-8プロモーター及び当業者に公知のさまざまな植物遺伝子由来の他の転写開始領域が含まれる。低レベルの発現が望まれる場合、(1つ又は複数の)弱いプロモーターを使用することができる。弱い構成的プロモーターには、例えば、Rsyn7プロモーターのコアプロモーター(WO 99/43838及び米国特許第6,072,050号)、コア35S CaMVプロモーターなどが含まれる。他の構成的プロモーターとしては、例えば、米国特許第5,608,149号、第5,608,144号、第5,604,121号、第5,569,597号、第5,466,785号、第5,399,680号、第5,268,463号及び第5,608,142が挙げられる。また、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,177,611号を参照されたい。いくつかの実施形態では、プロモーターはCaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターである。
【0081】
誘導性プロモーターの例は、低酸素又は寒冷ストレスにより誘導可能なAdh1プロモーター、熱ストレスにより誘導可能なHsp70プロモーター、両方とも光により誘導可能なPPDKプロモーター及びペプカルボキシラーゼプロモーターである。また、化学的に誘導可能なプロモーターも有用であり、例えば除草剤解毒剤誘導性のIn2-2プロモーター(米国特許第5,364,780号)、エストロゲン誘導性のEREプロモーター及びオーキシン誘導性でタペータム特異的であるが、カルス内で活性であるAxig1(PCT US01/22169)である。
【0082】
発生制御下のプロモーターの例には、葉、根、果実、種子又は花などの特定の組織で優先的に転写を開始するプロモーターが含まれる。「組織特異的」プロモーターは、特定の組織でのみ転写を開始するプロモーターである。遺伝子の構成的発現とは異なり、組織特異的発現は、いくつかの相互作用レベルの遺伝子調節の結果である。したがって、相同又は密接に関連する植物種からのプロモーターは、特定の組織における導入遺伝子の効率的で信頼性の高い発現を達成するために使用することが好ましいと思われる。いくつかの実施形態では、発現カセットは組織優先プロモーターを含む。「組織優先」プロモーターは、通常転写を開始するプロモーターであるが、特定の組織において必ずしも全体的又は単独ではない。例えば、エンドリシン又は他の膜破壊酵素をコードする核酸分子は、葉優先又は茎優先のプロモーターに作動可能に連結させることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、発現構築物は、細胞型特異的プロモーターを含む。「細胞型特異的」プロモーターは、1以上の器官の特定の細胞型、例えば、根の維管束細胞、葉、柄の細胞及び茎細胞(stem cell)で発現を主に促進するプロモーターである。発現構築物は、細胞型優先プロモーターを含むこともできる。「細胞型優先」プロモーターは、1以上の器官の特定の細胞型、例えば、根の維管束細胞、葉、柄の細胞及び茎細胞(stem cell)で通常発現を主として駆動するが、必ずしも全体的又は単独ではない。本明細書に記載の発現構築物は、種子優先プロモーターを含むこともできる。いくつかの実施形態では、種子優先プロモーターは、胚嚢、初期胚、初期胚乳、アリューロン及び/又は基底胚乳転送細胞層(BETL)において発現を有する。種子優先プロモーターの例には、限定するものではないが、27kDのガンマゼインプロモーター及びワキシープロモーター、Boronat,A.et al.(1986)Plant Sci.47:95-102;Reina,M.et al.Nucl.Acids Res.18(21):6426;及びKloesgen,R.B.et al.(1986)Mol.Gen.Genet.203:237-244、が含まれる。胚、果皮及び胚乳で発現するプロモーターは、米国特許第6,225,529号及びPCT公開WO 00/12733に開示されている。
【0084】
化学的に調節されるプロモーターを使用して、外因性の化学調節因子の適用を介して植物の遺伝子の発現を調節することができる。目的に応じて、プロモーターは、化学物質の適用が遺伝子発現を誘導する化学物質誘導プロモーターであっても、又は化学物質の適用が遺伝子発現を抑制する化学物質抑制プロモーターであってもよい。化学的に誘導可能なプロモーターは当技術分野で公知であり、限定するものではないが、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤によって活性化されるトウモロコシIn2-2プロモーター、発芽前除草剤として使用される疎水性求電子化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター及びサリチル酸によって活性化されるタバコPR-1aプロモーターが含まれる。他の目的の化学調節プロモーターには、ステロイド応答性プロモーター(例えば、the glucocorticoid-inducible promoter in Schena et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10421-10425及びMcNellis et al.(1998)Plant J.14(2):247-257を参照されたい)、並びにテトラサイクリン誘導性及びテトラサイクリン抑制性プロモーター(例えば、Gatz et al.(1991)Mol.Gen.Genet.227:229-237、並びに米国特許第5,814,618号及び第5,789,156号を参照されたい)が含まれ、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
組織優先プロモーターを利用して、特定の植物組織内の発現構築物の発現増強を標的にすることができる。組織優先プロモーターは、当技術分野において公知である。例えば、Yamamoto et al.(1997)Plant J.12(2):255-265;Kawamata et al.(1997)Plant Cell Physiol.38(7):792-803;Hansen et al.(1997)Mol.Gen Genet.254(3):337-343;Russell et al.(1997)Transgenic Res.6(2):157-168;Rinehart et al.(1996)Plant Physiol.112(3):1331-1341;Van Camp et al.(1996)Plant Physiol.112(2):525-535;Canevascini et al.(1996)Plant Physiol.112(2):513-524;Yamamoto et al.(1994)Plant Cell Physiol.35(5):773-778;Lam(1994)Results Probl.Cell Differ.20:181-196;Orozco et al.(1993)Plant Mol Biol.23(6):1129-1138;Matsuoka et al.(1993)Proc Natl.Acad.Sci.USA 90(20):9586-9590;及びGuevara-Garcia et al.(1993)Plant J.4(3):495-505を参照されたい。そのようなプロモーターは、必要に応じて、発現が弱くなるように改変することができる。
【0086】
葉優先プロモーター及び茎優先プロモーターは、当技術分野において公知である。例えば、Yamamoto et al.(1997)Plant J.12(2):255-265;Kwon et al.(1994)Plant Physiol.105:357-67;Yamamoto et al.(1994)Plant Cell Physiol.35(5):773-778;Gotor et al.(1993)Plant J.3:509-18;Orozco et al.(1993)Plant Mol.Biol.23(6):1129-1138;及びMatsuoka et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(20):9586-9590を参照されたい。さらに、cabプロモーター及びrubiscoプロモーターも使用することができる。例えば、Simpson et al.(1958)EMBO J 4:2723-2729及びTimko et al.(1988)Nature 318:57-58を参照されたい。
【0087】
根優先プロモーターは公知であり、文献から入手可能な多くのものから選択するか、又はさまざまな適合種から新たに単離することができる。例えば、Hire et al.(1992)Plant Mol.Biol.20(2):207-218(soybean root-specific glutamine synthetase gene);Keller and Baumgartner(1991)Plant Cell 3(10):1051-1061(root-specific control element in the GRP 1.8 gene of French bean);Sanger et al.(1990)Plant Mol.Biol.14(3):433-443(root-specific promoter of the mannopine synthase(MAS)gene of Agrobacterium tumefaciens);及びMiao et al.(1991)Plant Cell 3(1):11-22(full-length cDNA clone encoding cytosolic glutamine synthetase(GS),which is expressed in roots and root nodules of soybean).を参照されたい。さらに、Bogusz et al.(1990)Plant Cell 2(7):633-641も参照されたく、窒素固定非マメ科のパラスポニア・アンダーソンニ(Parasponia andersonii)、及び関連する非窒素固定非マメ科のトレマ・トメントサ(Trema tomentosa)のヘモグロビン遺伝子から単離された2つの根特異的プロモーターが記載されている。これらの遺伝子のプロモーターは、β-グルクロニダーゼレポーター遺伝子に連結され、非マメ科植物、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)及びマメ科植物ロトゥス・コルニクラトゥス(Lotus corniculatus)の両方に導入され、どちらの場合も根特異的プロモーター活性が保持された。Leach and Aoyagi(1991)は、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)の高度に発現したroIC及びroIDの根誘導遺伝子のプロモーターの分析について記載している(Plant Science(Limerick)79(1):69-76を参照されたい)。彼らは、エンハンサーと組織優先DNA決定因子とがそれらのプロモーターにおいて分離されていると結論付けた。Teeri et al.(1989)は、lacZへの遺伝子融合を使用して、オクトピンシンターゼをコードするアグロバクテリウムT-DNA遺伝子が根端の表皮で特に活性であり、TR2 ’遺伝子が無傷の植物で根特異的であり、葉組織の創傷により刺激され、殺虫性又は殺幼虫性遺伝子との使用が特に望ましい特徴の組み合わせであることを示している(EMBO J.8(2):343-350を参照されたい)。nptII(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII)に融合したTR1’遺伝子も同様の特徴を示した。追加の根優先プロモーターには、VfENOD-GRP3遺伝子プロモーター(Kuster et al.(1995)Plant Mol.Biol.29(4):759-772)、及びroIBプロモーター(Capana et al.(1994)Plant Mol.Biol.25(4):681-691が含まれる。さらに、米国特許第5,837,876号、第5,750,386号、第5,633,363号、第5,459,252号、第5,401,836号、第5,110,732及び第5,023,179号を参照されたい。ファセオリン遺伝子(Murai et al.(1983)Science 23:476-482及びSengopta-Gopalen et al.(1988)PNAS 82:3320-3324)。
【0088】
他のベクター要素
追加の配列改変は、細胞宿主における遺伝子発現を増強することが知られている。これらには、擬似ポリアデニル化シグナル、エキソン-イントロンスプライス部位シグナル、トランスポゾン様反復及び遺伝子発現に有害であり得る他のそのような十分に特徴付けられた配列をコードする配列の除去が含まれる。異種ヌクレオチド配列のG-C含有量は、宿主細胞で発現する公知の遺伝子を参照して計算して、所与の細胞宿主の平均レベルに調整することができる。可能であれば、予測されるヘアピン二次mRNA構造を避けるために、配列が改変される。
【0089】
mTMVベクターは、外来遺伝子コード領域の上流に5’リーダー配列をさらに含んでもよい。そのようなリーダー配列の作用により、翻訳を強化することができる。翻訳リーダーは当技術分野で公知であり、限定するものではないが、ピコルナウイルスリーダー、例えば、EMCVリーダー(エンセファロマイオカルダイティス(Encephalomyocarditis)5’非コード領域)(Elroy-Stein,et al.,(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:6126-6130);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus))(Allison,et al.,(1986)Virology 154:9-20);MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus));ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)(Macejak,et al.,(1991)Nature 353:90-94);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)(Jobling,et al.,(1987)Nature 325:622-625);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)(Gallie,et al.,(1989)Molecular Biology of RNA,pages 237-256)及びトウモロコシ退緑斑紋ウイルス(maize chlorotic mottle virus)(MCMV)リーダー(Lommel,et al.,(1991)Virology 81:382-385)が含まれ、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、Della-Cioppa,et al.,(1987)Plant Physiology 84:965-968も参照されたく、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。mRNAの安定性を高めることが公知である方法、例えば、トウモロコシユビキチンイントロンなどのイントロンも利用することができ(Christensen and Quail,(1996)Transgenic Res.5:213-218;Christensen,et al.,(1992)Plant Molecular Biology 18:675-689)又はthe maize AdhI intron(Kyozuka,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.228:40-48;Kyozuka,et al.,(1990)Maydica 35:353-357)、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
mTMVベクターを調製する際に、必要に応じて適切なリーディングフレーム内に適切な向きでDNA配列を提供するように、さまざまなDNA断片を操作することができる。この目的のために、DNAを新たに合成し、DNAアダプター又はリンカーを使用してDNA断片を結合するか、又は便利な制限部位の提供、余分なDNAの除去、制限部位の除去などの他の操作を伴うことができる。この目的のために、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば遷移及び転換を伴うことができる。
【0091】
レポーター遺伝子又は選択マーカー遺伝子
特定の実施形態では、TMVベクターはレポーター遺伝子又は選択マーカー遺伝子を含むことができる。選択マーカーの例には、限定するものではないが、制限酵素部位を含むDNAセグメント;スペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、バスタ、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)などの抗生物質を含む毒性化合物に対する耐性を提供する生成物をコードするDNAセグメント;レシピエント細胞に欠けている生成物(tRNA遺伝子、栄養要求性マーカーなど)をコードするDNAセグメント;容易に同定できる生成物(例えば、β-ガラクトシダーゼ、GUSなどの表現型マーカー;緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン(CFP)、黄色(YFP)、赤色(RFP)などの蛍光タンパク質及び細胞表面タンパク質)をコードするDNAセグメント;PCR用の新しいプライマー部位の生成(例えば、以前に並置されていない2つのDNA配列の並置)、制限エンドヌクレアーゼ又は他のDNA改変酵素、化学物質などによって作用されないか、又は作用されるDNA配列の包含;並びに同定を可能にする特定の改変(メチル化など)に必要なDNA配列の包含、が含まれる。特定の実施形態では、レポーター遺伝子は、GFP若しくはバスタ耐性遺伝子、又は二機能タンパク質を産生するための2つの遺伝子の融合である。例えば、TMVベクターはpDN15ベクターであり得る。
【0092】
特定の実施形態では、pDN15ベクターなどのGENEWARE(R)ベクターは、TMVゲノムに作動可能に連結されたT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含むことができ、その結果、最初に転写されたヌクレオチドは、インビトロ転写及びウイルスゲノム配列による正しい開始を介してキャッピングを促進する。さらに、pDN15ベクターは、天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターの下流にあるレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドにより改変することができる。レポーター構築物の下流で、第2のTMVコートタンパク質サブゲノムプロモーターは、メガヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼA)又はCas9エンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結させることができる。最後に、pDN15ベクターは、ウイルスNTRのリボザイム3’を有し、インビトロで生成された転写産物の正しいRNA切断を促進する。他の実施形態では、エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、天然のTMVコートタンパク質サブゲノムプロモーターに作動可能に連結させることができ、レポーター遺伝子は、第2のTMVコートタンパク質サブゲノムプロモーターに作動可能に連結させることができる。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子を、エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結させて、天然のサブゲノムプロモーターから単一シストロンを翻訳可能にすることができた。
【0093】
いくつかの実施形態では、他のTMVベクターは、多くの双子葉植物及び単子葉植物に対するこの形質転換系の有用性を高めるために、異なる、又はより広い宿主範囲を有するウイルスのゲノムを使用して上記のように構築することができる。異なるTMVベクターは同じ細胞に同時に感染することはできないが、トバモウイルスはポティウイルス、クコモウイルス、ブロモウイルス、トブラウイルス又はポテックスウイルスに重複感染できる。上記のファミリー由来のウイルスから構成される第2のウイルスベクターは、第2の植物遺伝子を標的とする第2のヌクレアーゼを発現するように改変することができる。第2の非TMVベクターは、インビトロで転写され、本明細書に記載のTMVベクターに同時感染することができる。その後、バスタ耐性発現の選択を進め、2つの遺伝子を編集するための植物のスクリーニングを、ゲノムシーケンシング技術を使用してスクリーニングすることができる。逆に、一過性のバスタ耐性は、耐性遺伝子を発現するTMVベクターによって付与され、再生のための組織が選択されると、トランスフェクトされた組織で一過性に複製し続ける。特定の実施形態では、本明細書に開示のTMVベクターは、コートタンパク質の発現を防ぐように改変することができる。
【0094】
ウイルスベースの遺伝子編集の方法
植物ゲノムの標的部位を改変する方法を本明細書に開示する。例えば、特定の実施形態では、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞に導入することを含み、機能的編集成分が、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法が開示される。特定の実施形態では、機能的編集成分は、DNAを切断するエンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ及び/又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つであり得る。いくつかの実施形態では、核酸はRNA発現ベクターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、ベクターはタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである。
【0095】
機能的編集成分は、プロモーターに作動可能に連結させることができる。特定の実施形態では、プロモーターはCaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つである。本明細書において詳細に述べるように、核酸は植物細胞内で合成されてもよく、又は機能的編集成分をコードする核酸を植物細胞に導入する前にインビトロで合成されてもよい。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法は、機能的編集成分を発現するように改変された少なくとも1つのTMVベクターを導入することを含む。一実施形態では、機能的編集成分はゲノム編集エンドヌクレアーゼである。代替の実施形態では、植物細胞のゲノムの標的部位を改変する方法は、ガイドRNAを発現するように改変された少なくとも1つのTMVベクターを、機能的編集成分としてCasエンドヌクレアーゼを有する植物細胞内に導入することを含み、前記ガイドRNA及びCasエンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼが標的部位に二本鎖切断を導入できるようにする複合体を形成することができる。
【0097】
二本鎖切断がDNAに誘導されると、細胞のDNA修復機構が活性化され、切断が修復される。エラーを起こしやすいDNA修復機構は、二本鎖切断部位で突然変異を引き起こす可能性がある。切断された端部をまとめる最も一般的な修復機構は、非相同末端結合(NHEJ)経路である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1-12)。染色体の構造的完全性は通常、修復によって保存されるが、欠失、挿入、又はその他の再配置が可能であり、一般的である(Siebert and Puchta,(2002)Plant Cell 14:1121-31;Pacher et al.,(2007)Genetics 175:21-9)。二本鎖切断は、相同DNA配列間の相同組換え(HR)によって修復することもできる。例えば、二本鎖切断の成熟に関与するエキソヌクレアーゼ活性によって二本鎖切断周辺の配列が変化すると、非分裂体細胞内の相同染色体、又はDNA複製後の姉妹染色分体などの相同配列が利用可能な場合、遺伝子変換経路は元の構造を復元することができる(Molinier et al.,(2004)Plant Cell 16:342-52)。異所性及び/又はエピジェネティック(epigenic)DNA配列は、相同組換えのDNA修復鋳型としても機能する(Puchta,(1999)Genetics 152:1173-81)。
【0098】
相同組換え修復(Homology-directed repair)(HDR)は、二本鎖及び一本鎖DNA切断を修復する細胞の機構である。相同組換え修復には、相同組換え(HR)及び一本鎖アニーリング(SSA)が含まれる(Lieber.2010 Annu.Rev.Biochem.79:181-211)。HDRの最も一般的な形態は相同組換え(HR)と呼ばれ、これはドナーとアクセプターDNA間の最長配列相同性要件を有する。HDRの他の形態には、一本鎖アニーリング(SSA)及び切断誘導複製が含まれ、これらにはHRと比較して短い配列相同性が必要である。nickでの相同組換え修復(一本鎖切断)は、二本鎖切断でのHDRとは異なる機構を介して起こすことができる(Davis and Maizels.PNAS(0027-8424),111(10),p.E924-E932。
【0099】
例えば、相同組換え(HR)を介した植物細胞のゲノムの変化は、遺伝子工学の強力なツールである。高等植物における相同組換えの頻度は低いにもかかわらず、植物の内因性遺伝子の相同組換えの成功例が存在する。所与のゲノム領域とドナーDNAに見出される対応する相同領域との間の構造的類似性は、相同組換えの発生を可能にする任意の程度の配列同一性であってよい。例えば、ドナーDNAの「相同領域」と植物ゲノムの「ゲノム領域」とによって共有される相同性又は配列同一性の量は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%であり得る、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性であってよく、そのような配列が相同組換えを行える。
【0100】
「ドナーDNA」を使用して、二本鎖切断を修復、又は目的のポリヌクレオチドを二本鎖切断部位に挿入することができる。したがって、ドナーDNAは標的部位に対して異種であってもよく、mTMVベクター上に提供されるか、又は植物細胞のmTMVゲノムから発現させることができる。本発明による「異種」という用語は、配列に関して使用される場合、発現される種以外の種に由来する配列、又は発現される種と同じ種に由来する場合、意図的な人間の介入によって、発現される組成物及び/又はゲノム遺伝子座におけるその天然の形態から実質的に改変されている配列を意味することが意図される。
【0101】
ドナーDNA上の相同領域は、標的部位に隣接する任意の配列との相同性を有することができる。いくつかの実施形態では、相同領域は標的部位にすぐ隣接するゲノム配列と有意な配列相同性を共有するが、この相同領域は、さらに標的部位の5’又は3’であり得る領域に対して十分な相同性を有するように設計できることが認識される。さらに他の実施形態では、相同領域は、下流ゲノム領域とともに標的部位の断片と相同性を有することもできる。一実施形態では、第1の相同領域は標的部位の第1の断片をさらに含み、第2の相同領域は標的部位の第2の断片を含み、第1及び第2の断片は異なる。
【0102】
一実施形態では、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系又はエンドヌクレアーゼAを使用して、1以上のドナーDNAを植物細胞に提供することにより、1以上の目的のポリヌクレオチド、又は1以上の目的の形質を、1以上の標的部位に導入する。前記1以上の標的部位に変化を含む植物細胞から、稔性植物を作製することができ、その変化は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入及び(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、からなる群から選択される。特定の実施形態では、標的部位は、標的部位でのRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9又はエンドヌクレアーゼA)による切断が目的のタンパク質又は形質の発現を防止できるように、目的のタンパク質又は形質をコードするポリヌクレオチド内に配置することができる。いくつかの実施形態では、これらの変化させた標的部位を含む植物は、同じ複合形質遺伝子座に少なくとも1つの目的の遺伝子又は形質を含む植物と交配することができ、それによって前記複合形質遺伝子座にさらに形質を積み重ねることができる(US-2013-0263324-A1も参照されたい)。
【0103】
本明細書において提供される一実施形態では、植物ゲノム内の標的部位を編集する方法は、植物細胞と、メガヌクレアーゼをコードする核酸分子などの機能的編集成分を含むmTMVベクター、又はゲノム改変に必要な機能的編集成分すべてを全体として含む少なくとも2つのmTMVベクターと接触させることを含む。ある実施形態では、改変されたRJRTARL002などのGENEWARE(R)ベクターが使用される。
【0104】
mTMVのアセンブリ及びメガヌクレアーゼなどの機能的編集成分の発現の後で、コードされたエンドヌクレアーゼによって二本鎖切断を標的部位に導入することができる。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼをコードするRNA分子などの核酸分子はmTMVベクターからインビトロで合成され、植物細胞に直接送達することができ、コードされたメガヌクレアーゼによって二本鎖切断を標的部位に導入することができる。特定の実施形態では、二本鎖切断はNHEJにより修復され、それにより標的部位を含む任意のコード配列を不活性化することができる。特定の実施形態では、第1及び第2の相同領域に隣接する目的のポリヌクレオチドは、相同組換えにより植物ゲノムの標的部位に挿入することができる。具体的には、ドナーDNAの第1及び第2の相同領域は、それらの対応するゲノム相同領域との相同組換えを受けて、ドナーとゲノムとの間でDNAを交換させることができる。したがって、提供された方法は、ドナーDNAの目的のポリヌクレオチドを植物ゲノムの標的部位の二本鎖切断に組み込ませ、それにより元の標的部位を変化させ、編集されたゲノム標的部位を生成する。
【0105】
本明細書に開示のベクターなどの、限定するものではないが、改変GENEWARE(R)ベクターなどのmTMVベクター(例えば、RJRTARL002又はゲノム編集エンドヌクレアーゼをコードするDNA断片を含むように改変された改変RJRTARL002)又は機能的編集成分を含む複数のmTMVベクターは、標的部位を有する植物細胞にTMVを導入するための当技術分野で公知の任意の手段によって導入することができる。TMVを発現ベクターに変換するために、追加のサブゲノムプロモーターをウイルスゲノムに挿入して、機能的編集成分などの挿入された外来遺伝子の発現を駆動することができる。したがって、「TMVベクター」又は「mTMVベクター」は、少なくとも1つの機能的編集成分を発現するように改変されたTMVゲノムである。例えば、mTMVベクターは、メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、標的部位に特異的な完全gRNAをコードするポリヌクレオチド、crRNAをコードするポリヌクレオチド、tracrRNAをコードするポリヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、mTMVベクター上の機能的編集成分は、植物細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、mTMVベクターは、アグロバクテリウム感染に使用されるTiプラスミド上に位置する。例えば、Tiプラスミドは、mTMVベクター、複製起点及び病原性領域、とりわけアグロバクテリウム由来の遺伝物質の植物への移入に関与する他の公知の領域を含むことができる(White et al.,Plant Biotechnology,Kung and Arntzen eds.Butterworth Pub.,Boston,Mass.,1989)。
【0106】
植物の感染及び栽培
本明細書に記載の方法は、アグロ浸潤又はアグロ感染手順の1以上を使用して、目的の標的部位を有するタバコ植物にmTMVベクターを感染させることを含むことができる。また、本方法は、植物組織への圧力浸潤、葉の表面への手による接種(例えば、摩擦)、植物床への機械的接種、葉への高圧スプレー又は真空浸潤を行うことにより、本明細書に記載のmTMVベクターを導入することを含むことができる。特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼをコードする核酸分子は、機械的伝播手段によって植物細胞に直接送達される。例えば、インビトロでGENEWARE(R)ベクターから合成されたメガヌクレアーゼをコードするRNA分子は、摩擦、高圧スプレー、遺伝子銃、又は同様の技術により植物細胞に送達することができる。GENEWARE(R)ベクターは、不可解なスプライス部位を除去し、核からの放出を促進するイントロンを追加するように改変することができる。メガヌクレアーゼをコードするそのようなTMVベクターは、植物細胞に直接送達することもでき、この場合、メガヌクレアーゼは植物細胞においてベクターから発現される。Pogue et al.,2010.Gleba&Giritch in Recent Advances in Plant Virology.eds.,Caranta,Tepfer,&Lopez-Moya.Norfolk,Caister Academic Press 2011:387-412を参照されたく、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmTMVは、葉浸潤によるアグロバクテリウム形質転換を介して植物に感染する。エンドヌクレアーゼ系の機能的編集成分(例えば、CRISPR/Cas又はメガヌクレアーゼ)を単一のmTMVベクターで提供してもよく、又は異なる機能的編集成分をTVCVやPVXなどの別個のウイルスベクターで提供して、各機能的編集成分が、植物ゲノムの標的部位を編集できる活性なエンドヌクレアーゼ系をもたらすように発現させて、感染させてもよい。葉浸潤に続いて、mTMVベクター単独又はmTMV及びPVXベクターがmTMVゲノム要素を発現して、葉組織内で複製し、隣接する葉組織に拡散可能な組み立てられたmTMVを生成することができる。mTMVの複製及び拡散中に、コードされたエンドヌクレアーゼ系は、植物ゲノムの標的部位に改変を導入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmTMVに感染した植物は、植物が開花するまで栽培することができる。開花後、エンドヌクレアーゼ及び他の機能的編集成分の発現により誘導される、種子のゲノムの標的部位における編集を含む種子が生成されるまで植物を栽培することができる。ゲノムの標的部位に編集を含む種子を単離し、その後栽培して、植物細胞のすべて又は実質的にすべての標的部位にゲノム編集を有し、mTMVベクター又はTMVが残存しない植物を生成することができる。
【0108】
特定の実施形態では、TMVベクターのRNA転写産物、又はDNAベースのトバモウイルスベクターのアグロ浸潤により提供される、DNAエンドヌクレアーゼをコードするRNA分子を有する植物の部分(例えば、植物の葉、分裂組織、シュート及び/又は花)を収穫し、選択培地で培養することができる。例えば、RNA分子の導入部位を取り囲む植物の部分を植物から採取し、選択培地で培養することができる。いくつかの実施形態では、植物の部分はRNA分子を有する葉の部分であるか、又はメガヌクレアーゼを発現するTMVゲノムは葉の部分である。いくつかの実施形態では、選択培地はバスタを含む。TMVベクターの非DNAベースの性質と、植物組織に全身感染することができないこととに起因して、耐性は一過性である。TMVベクターは、植物組織の選択に十分なバスタ耐性タンパク質を提供し、その後、成長中及び成熟中の苗木で増殖しなくなる。
【0109】
特定の実施形態では、機能的エンドヌクレアーゼ系を発現する単一のmTMVベクターの葉浸潤又は機能的エンドヌクレアーゼ系を集合的に発現する別個のmTMVベクターの浸潤後に、葉組織からmTMVを収集することができる。いくつかの実施形態では、mTMVは、植物の葉又は任意の他の植物部分から、感染後少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、21、28、35、又は42日に収集することができる。mTMVは、植物組織からTMVを収集するための当技術分野で公知の任意の方法によって、植物組織(例えば葉組織)から収集することができる。特定の実施形態では、mTMVに感染した葉組織を酢酸緩衝液の存在下で粉砕し、約42℃に加熱し、遠心分離して抽出物を透明にすることができる。mTMVゲノムの要素が別個のmTMVベクターで送達された場合でも、mTMVは感染部位から完全で機能的なウイルスとして収集することができる。いくつかの実施形態では、mTMVは、タバコ植物などの植物の分裂組織、シュート及び/又は花から収集することができる。特定の実施形態では、植物部分は、特定の部分におけるmTMVの蓄積に基づいて増殖のために選択される。例えば、機能的エンドヌクレアーゼをコードするウイルスベクターの蓄積が生じる植物部分は、組織培養でのさらなる培養のために植物から採取又は収集することができる。特定の実施形態では、分裂組織、シュート及び/又は花は、機能的エンドヌクレアーゼをコードするウイルスベクターを蓄積し、組織培養での増殖のために収集される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターからのGFP発現を使用して、機能的エンドヌクレアーゼを発現するウイルスベクターの蓄積を有する植物部分の同定を支援することができる。組織培養で増殖した植物部分は、当技術分野で公知の方法に従って植物内で成長させることができる。
【0110】
収集後、収集されたmTMVを使用して第2の植物を感染させることができる。特定の実施形態では、感染植物から収集したmTMVを使用して、第2の植物の植物実生に感染させる。次に、感染した実生を栽培し、その間にmTMVが完全なエンドヌクレアーゼ系を発現して、植物ゲノムの標的部位を編集する。例えば、感染した実生を植物を開花するまで栽培し、エンドヌクレアーゼ及び他の機能的編集成分の発現により誘導される、種子のゲノムの標的部位に編集を含む種子が生成される。ゲノムの標的部位に編集を含む種子を単離し、その後栽培して、植物細胞のすべて又は実質的にすべての標的部位にゲノム編集を有する植物を生成することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、ゲノムの標的部位に編集を含むゲノムを有するタバコ種子は、胚救出又は他のウイルス除去工程に供することができる。本明細書で使用される場合、胚救出は、育種家が、弱く、未熟であるか、又は親植物上で成熟生存種子に発達しない胚を発芽させようとする工程である。例えば、胚救出の1つの形態は胚珠培養であり、これは、胚珠を種子から無菌的に採取し、該胚珠を発芽させて植物に成長させるために、人工培地に置くことを伴う。したがって、胚救出又は他のウイルス除去工程に続いて、ゲノム標的部位に編集を有する植物が生成され、機能するmTMV又はTMVベクターは残っていない。
【0112】
標的部位
タバコ植物細胞のゲノム内の目的の標的部位は、目的の形質をコードするポリヌクレオチド又は目的の形質に関与する経路を、コードするポリヌクレオチド内に配置することができる。標的部位の長さは可変であり、例えば、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又はそれ以上のヌクレオチド長である標的部位を含む。さらに、標的部位はパリンドロームであってもよく、すなわち、一方の鎖の配列が相補鎖の反対方向に同じ配列を読み取る。ニック/切断部位は標的配列内にあってもよく、又はニック/切断部位は標的配列の外側にあってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、標的部位は、例えば、除草剤耐性コード配列、殺虫剤コード配列、殺線虫コード配列、抗菌コード配列、抗真菌コード配列、抗ウイルスコード配列、非生物的及び生物的ストレス耐性コード配列、又は、収量、穀物品質、栄養素含有量、澱粉の品質と量、窒素固定及び/又は利用、脂肪酸、並びに油分及び/又は組成などの植物の形質を改変する配列などの目的のポリヌクレオチド内に配置することができる。より具体的な目的のポリヌクレオチドには、限定するものではないが、作物収量を改善する遺伝子、作物の望ましさを改善するポリペプチド、干ばつ、窒素、温度、塩分、有毒金属又は微量元素などの非生物的ストレスに対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子、又は殺虫剤及び除草剤などの毒素に対する耐性、若しくは真菌、ウイルス、細菌、昆虫及び線虫による攻撃などの生物的ストレス及びこれらの生物に関連する疾患の発生に対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子が含まれる。目的のポリヌクレオチドの一般的なカテゴリーには、例えば、ジンクフィンガーなどの情報に関与する遺伝子、キナーゼなどの伝達に関与する遺伝子及び熱ショックタンパク質などのハウスキーピングに関与する遺伝子が含まれる。例えば、導入遺伝子のより具体的なカテゴリーには、農学、耐虫性、耐病性、除草剤耐性、繁殖力又は繁殖不能性、穀物特性及び市販品の重要な形質をコードする遺伝子が含まれる。目的の遺伝子には、概して、油、澱粉、炭水化物又は栄養代謝に関与する遺伝子、並びに穀粒サイズ、ショ糖負荷などに影響を与える遺伝子が含まれるが、これらは、組み立てるか、又は、限定するものではないが除草剤耐性などの本明細書に記載の他の形質と組み合わせて使用することができる。
【0114】
特定の実施形態では、標的部位は、タバコ植物の根におけるニコチンからノルニコチンへの代謝変換に関与するニコチンデメチラーゼ内に配置することができる。遺伝子内の標的部位を改変することによりニコチンデメチラーゼの活性を低下させると、ニコチンデメチラーゼ活性が低下した改変植物によって産生されるタバコ製品中のタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)のレベルを低下させることができる。例えば、ニコチンデメチラーゼは、CYP82E2、CYP82E21、CYP82E10、CYP82E3、CYP82E4又はCYP82E5であり得る。例えば、米国特許出願公開第20150315603号を参照されたい。標的部位は、フィトエンデサチュラーゼ(PDS)をコードする遺伝子、又はニコチンシンターゼやニコチンデメチラーゼなどのニコチン合成経路の任意の遺伝子内に配置することもできる。特定の実施形態では、標的部位は、アルカロイド生合成に関与する遺伝子内に配置することができる。例えば、本明細書に開示のヌクレアーゼの標的部位を含み得るアルカロイド生合成経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子には、限定するものではないが、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPT)、イソフラボンレダクターゼ(A622)、ベルベリンブリッジ酵素(BBL)、ニコチンN-デメチラーゼ(NND)、N-メチルプトレシンオキシダーゼ(MPO)、プトレシンメチルトランスフェラーゼ(PMT)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)及びアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)が含まれる。例えば、Dewey and Xie,Phytochemistry 94(2013):10-27を参照されたく、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
いくつかの実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ及び/又はRNAガイドエンドヌクレアーゼによる切断後に標的部位に挿入することができる。目的のポリヌクレオチドは、mTMVベクター又は植物細胞に提供される別個の発現ベクターで提供される。いくつかの実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、相同組換えの機会を提供するために、第1及び第2の相同アームに隣接している。特定の実施形態では、第1の相同アームは標的部位の5’末端のDNA領域と相同であり、第2の相同アームは標的部位の3’末端の領域と相同である。他の実施形態では、第1の相同アームは標的部位の3’末端のDNA領域と相同であり、第2の相同アームは標的部位の5’末端の領域と相同である。
【0116】
本明細書で使用する場合、相同アームと標的部位は、2つの領域が相同組換え反応の基質として作用するのに十分なレベルの配列同一性を互いに共有する場合、互いに「対応する」又は「対応している」。「相同性」とは、対応する配列と同一であるか、又は配列同一性を共有するDNA配列を意味する。所与の標的部位と標的化ベクターに見出される対応する相同アームとの間の配列同一性は、相同組換えの発生を可能にする任意の程度の配列同一性であってよい。例えば、相同アーム(又はその断片)及び標的部位(又はその断片)によって共有される配列同一性の量は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%であり得る、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性であってよく、そのような配列が相同組換えを行える。さらに、相同アームと対応標的部位との間の相同性対応領域は、切断された認識部位で相同組換えを促進するのに十分な任意の長さであり得る。例えば、所与の相同アーム及び/又は対応標的部位は、相同アームと細胞のゲノム内の対応標的部位との相同組換えが行われるために十分な相同性を有するように、約400bp~約500bp、約500bp~約600bp、約600bp~約700bp、約700bp~約800bp、約800bp~約900bp、又は約900bp~約1000bpの相同性対応領域を含むことができる。
【0117】
目的のタンパク質の発現
目的のポリヌクレオチド配列は、疾患又は耐害虫性の提供に関与するタンパク質をコードすることができる。「耐病性」又は「耐害虫性」とは、植物が植物と病原体との相互作用の結果である有害な症状を回避することを意図している。耐害虫性遺伝子は、根切り虫、ヨトウムシ、アワノメイガの幼虫(European Corn Borer)などの大きな収穫抵抗を有する害虫に対する耐性をコードすることができる。抗菌保護のためのリゾチーム又はセクロピンなどの耐病性及び耐虫性遺伝子、又は抗真菌保護のためのデフェンシン、グルカナーゼ若しくはキチナーゼなどのタンパク質、又は線虫若しくは昆虫を制御するためのバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)エンドトキシン、プロテアーゼ阻害剤、コラゲナーゼ、レクチン若しくはグリコシダーゼはすべて有用な遺伝子産物の例である。耐病性形質をコードする遺伝子には、フモニシンに対するような解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号);非病原性(avr)及び耐病性(R)遺伝子が含まれる(Jones et al.(1994)Science 266:789;Martin et al.(1993)Science 262:1432;and Mindrinos et al.(1994)Cell 78:1089)などが含まれる。耐虫性遺伝子は、根切り虫、ヨトウムシ、アワノメイガの幼虫(European Corn Borer)などの大きな収穫抵抗を有する害虫に対する耐性をコードすることができる。そのような遺伝子には、例えば、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号、第5,747,450号、第5,736,514号、第5,723,756号、第5,593,881及びGeiser et al.(1986)Gene 48:109)などが含まれる。
【0118】
「除草剤耐性タンパク質」又は「除草剤耐性コード核酸分子」の発現から生じるタンパク質には、そのタンパク質を発現しない細胞よりも高い濃度の除草剤に耐える能力、又はそのタンパク質を発現しない細胞よりも長期間にわたって一定濃度の除草剤に耐える能力を細胞に付与するタンパク質が含まれる除草剤耐性形質は、アセト乳酸シンターゼ(ALS)の作用を阻害する働きをする除草剤、特にスルホニル尿素型除草剤に対する耐性をコードする遺伝子、グルタミンシンターゼの作用を阻害する働きをする除草剤に対する耐性をコードする遺伝子、例えば、ホスフィノスリシン又はバスタに対する耐性(例えば、bar遺伝子)、グリホセートに対する耐性(例えば、EPSPシンターゼ遺伝子及びGAT遺伝子)、HPPD阻害剤に対する耐性(例えば、HPPD遺伝子)、又は当技術分野で公知の他のそのような遺伝子によって植物に導入され得る。例えば、米国特許第7,626,077号、第5,310,667号、第5,866,775号、第6,225,114号、第6,248,876号、第7,169,970号、第6,867,293及び米国仮出願第61/401,456号を参照されたく、当該文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。bar遺伝子は除草剤バスタに対する耐性をコードし、nptll遺伝子は抗生物質カナマイシン及びジェネティシンに対する耐性をコードし、並びにALS遺伝子変異体は除草剤クロルスルフロンに対する耐性をコードする。さらに、目的のポリヌクレオチドは、目的の標的遺伝子配列のメッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも一部に相補的なアンチセンス配列も含み得ることが認識されている。アンチセンスヌクレオチドは、対応するmRNAとハイブリダイズするように構築される。アンチセンス配列の改変は、配列が対応するmRNAとハイブリダイズし、その発現に干渉する限り行うことができる。このようにして、対応するアンチセンス配列に対して70%、80%又は85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用することができる。さらに、アンチセンスヌクレオチドの一部を使用して、標的遺伝子の発現を破壊してもよい。一般に、少なくとも50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、又はそれ以上の配列を使用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、植物中の内因性遺伝子の発現を抑制するためにセンス配向で使用されてもよい。センス配向のポリヌクレオチドを使用して植物の遺伝子発現を抑制する方法は、当技術分野で公知である。この方法は概して、内因性遺伝子の転写産物に対応するヌクレオチド配列の少なくとも一部に作動可能に連結された、植物の発現を駆動するプロモーターを含むDNA構築物で植物を形質転換することを伴う。典型的には、そのようなヌクレオチド配列は、内在性遺伝子の転写産物の配列に対して実質的な配列同一性、概して約65%超の配列同一性、約85%超の配列同一性、又は約95%超の配列同一性を有する。米国特許第5,283,184号及び第5,034,323号を参照されたく、当該特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
目的のポリヌクレオチドは表現型マーカーでもあり得る。表現型マーカーは、視覚的マーカーを含むスクリーニングマーカー又は選択マーカーであり、ポジティブ選択マーカー又はネガティブ選択マーカーであるかを問わず、選択マーカーが含まれる。任意の表現型マーカーを使用することができる。具体的には、選択マーカー又はスクリーニングマーカーは、多くの場合特定の条件下で、それを含む分子又は細胞を同定又はポジティブ若しくはネガティブに選択可能にするDNAセグメントを含む。これらのマーカーは、限定するものではないが、RNA、ペプチド又はタンパク質の産生などの活性をコードすることができ、又はRNA、ペプチド、タンパク質、無機及び有機の化合物又は組成物などの結合部位を提供することもできる。特定の実施形態では、GFPをコードする遺伝子を標的部位に挿入することができる。
【0121】
植物
本明細書に開示の方法及び組成物を使用して、目的の任意の植物のゲノムの標的部位を編集することができる。特定の実施形態では、本明細書で開示される方法及び組成物で使用される植物はタバコ植物である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示の少なくとも1つのRNA分子がタバコ植物に導入される。本明細書に開示の方法に従って、任意のタバコ種を改変することができる。「タバコ」又は「タバコ植物」とは、ニコチン性アルカロイドを産生するニコチアナ属の種を指す。特定の実施形態では、使用できるタバコには、熱風乾燥種(flue-cured)又はバージニアタバコ(例えば、K326)、バーレー種(すなわち、明色空気乾燥種(light air cured))、日干し乾燥種(sun-cured)(例えば、Katerini、Prelip、Komotini、Xanthi及びYambolタバコを含むインディアンクルヌール並びにオリエンタルタバコ)、メリーランドタバコ、ダーク、火力乾燥種(dark-fired)、暗色空気乾燥種(dark air cured)(例えば、Pasado、Cubano、Jatim及びBezukiタバコ)、明色空気乾燥種(light air cured)(例えば、North Wisconsin及びGalpaoタバコ)、インディアン空気乾燥種、Red Russian及びRusticaタバコ、並びに他のさまざまな希少又は特殊タバコ、及び前述のタバコのさまざまなブレンドが含まれる。さまざまなタイプのタバコ、栽培慣行及び収穫慣行の説明は、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davis et al.(Eds.)(1999)に記載されており、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。ニコチアナ属由来のさまざまな代表的な他のタイプの植物は、Goodspeed,The Genus Nicotiana,(Chonica Botanica)(1954);米国特許第4,660,577号、Sensabaugh,Jr.et al.;米国特許第5,387,416号、White et al.及び米国特許第7,025,066、Lawson et al.;米国特許出願公開第2006/0037623号、Lawrence,Jr.及び第2008/0245377号、Marshall et al.;に説明されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。代表的なニコチアナ種には、ニコチアナ・タバカム(N.tabacum)、ニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)、ニコチアナ・アラタ(N.alata)、ニコチアナ・アレンツィイ(N.arentsii)、ニコチアナ・エクセルシオール(N.excelsior)、ニコチアナ・フォルゲチアナ(N.forgetiana)、ニコチアナ・グラウカ(N.glauca)、ニコチアナ・グルチノサ(N.glutinosa)、ニコチアナ・ゴセイ(N.gossei)、ニコチアナ・カワカミイ(N.kawakamii)、ニコチアナ・ナイチアナ(N.knightiana)、ニコチナナ・ラングスフォルフィー(N.langsdorffi)、ニコチアナ・オトファラ(N.otophora)、ニコチアナ・セッチェルリ(N.setchelli)、ニコチアナ・シルベストリス(N.sylvestris)、ニコチアナ・トメントサ(N.tomentosa)、ニコチアナ・トメントシフォミス(N.tomentosiformis)、ニコチアナ・アンドゥラタ(N.undulata)、ニコチアナ・x・サンデラエ(N.x sanderae)、ニコチアナ・アフリカナ(N.africana)、ニコチアナ・アンプレシカウリス(N.amplexicaulis)、ニコチアナ・ベナビデシイ(N.benavidesii)、ニコチアナ・ボナリエンシス(N.bonariensis)、ニコチアナ・デブネイ(N.debneyi)、ニコチアナ・ロンギフロラ(N.longiflora)、ニコチアナ・マリチナ(N.maritina)、ニコチアナ・メガロシフォン(N.megalosiphon)、ニコチアナ・オシデンタリス(N.occidentalis)、ニコチアナ・パニクラタ(N.paniculata)、ニコチアナ・プランバギニフォリア(N.plumbaginifolia)、ニコチアナ・レイモンディイ(N.raimondii)、ニコチアナ・ロズラタ(N.rosulata)、ニコチアナ・シムランス(N.simulans)、ニコチアナ・ストックトニイ(N.stocktonii)、ニコチアナ・スアヴェオレンス(N.suaveolens)、ニコチアナ・アンブラティカ(N.umbratica)、ニコチアナ・ベルンチナ(N.velutina)、ニコチアナ・ウィガンディオイデス(N.wigandioides)、ニコチアナ・アカウリス(N.acaulis)、ニコチアナ・アカミナタ(N.acuminata)、ニコチアナ・アテヌアタ(N.attenuata)、ニコチアナ・ベンサミアナ(N.benthamiana)、ニコチアナ・カビコラ(N.cavicola)、ニコチアナ・クレベランディイ(N.clevelandii)、ニコチアナ・コルディフォリア(N.cordifolia)、ニコチアナ・コリンボサ(N.corymbosa)、ニコチアナ・フラグランス(N.fragrans)、ニコチアナ・グッドスピーディイ(N.goodspeedii)、ニコチアナ・リニアリス(N.linearis)、ニコチアナ・ミエルシイ(N.miersii)、ニコチアナ・ヌディカウリス(N.nudicaulis)、ニコチアナ・オブツシフォリア(N.obtusifolia)、ニコチアナ・オクシデンタリス・サブスピーシス・ヘスペリス(N.occidentalis subsp.Hersperis)、ニコチアナ・パウシフロラ(N.pauciflora)、ニコチアナ・ペチュニオイデス(N.petunioides)、ニコチアナ・クラドリヴァルヴス(N.quadrivalvis)、ニコチアナ・レパンダ(N.repanda)、ニコチアナ・ロツンディフォリア(N.rotundifolia)、ニコチアナ・ソランフォリア(N.solanifolia)及びニコチアナ・スペガウイニイ(N.spegazzinii)が含まれる。本明細書で使用される非バーレー種タバコは、バーレー種ではない任意の変種である。したがって、当業者は、本明細書に開示の方法及び組成物を使用して、ナス科の任意のメンバーのゲノムを改変できることを理解されよう。
【0122】
ニコチアナ種は、遺伝子改変技術又は交雑育種技術を使用して誘導することができる(例えば、タバコ植物を遺伝子操作又は交配して、成分、特性又は属性の生成を増減させることができる)。例えば、植物の遺伝子改変のタイプは、米国特許第5,539,093号、Fitzmaurice et al.;米国特許第5,668,295号、Wahab et al.;米国特許第5,705,624号、Fitzmaurice et al.;米国特許第5,844,119号、Weigl;米国特許第6,730,832号、Dominguez et al.;米国特許第7,173,170号、Liu et al.;米国特許第7,208,659号、Colliver et al.及び米国特許第7,230,160号、Benning et al.;米国特許出願公開第2006/0236434号、Conkling et al.;並びにPCT WO 2008/103935号、Nielsen et al.に説明されている。さらに、タバコのタイプについては、米国特許第4,660,577号、Sensabaugh,Jr.et al.;米国特許第5,387,416号、White et al.;及び米国特許第6,730,832号、Dominguez et al.を参照されたく、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のニコチアナ属の遺伝子改変植物は、肥料が豊富な土壌又は肥料なしでの栽培、花の袋掛け又は袋掛けなし、又は摘花又は摘花なしなどの従来の栽培及び収穫技術に適している。収穫された葉と茎は、限定するものではないが、パイプ、葉巻及び紙巻きタバコ、並びに葉タバコ、刻みタバコ、又は刻みタバコを含むあらゆる形態の噛みタバコを含む任意の伝統的なタバコ製品に使用できる。
【0123】
「対照」又は「対照植物」又は「対照植物細胞」は、対象植物又は植物細胞の表現型の変化を測定するための基準点を提供する。対照植物又は植物細胞は、例えば:(a)野生型植物又は細胞、すなわち、対象植物又は細胞を生じた遺伝的改変の出発物質と同じ遺伝子型のもの;(b)出発材料と同じ遺伝子型の植物又は植物細胞であるが、ヌル構築物で(すなわち、本明細書に記載の機能的編集成分を発現しない構築物で)形質転換されているもの;(c)対象植物又は植物細胞の子孫の中で形質転換されていない分離個体である植物又は植物細胞;又は(d)機能的編集成分をコードする異種核酸が発現しない条件下での対象植物又は植物細胞自体、を含むことができる。同様に、「対照タバコ製品」とは、所与の標的部位で編集されていないタバコ植物又は植物の部分で生産されたタバコ製品を指すことができる。
【0124】
本明細書に開示のように、ゲノム標的部位で編集されたタバコ植物細胞は、植物全体に成長させることができる。単一の植物プロトプラスト形質転換体又はさまざまな形質転換外植片からの植物の再生、発達及び栽培は、当技術分野において周知である。例えば、McCormick et al.(1986)Plant Cell Reports 5:81-84;Weissbach and Weissbach,In:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press,Inc.San Diego,Calif.,(1988)を参照されたい。この再生と成長の過程には、通常、形質転換細胞の選択、発根した小植物体段階までの胚発生の通常の段階を通してそれらの個別の細胞を培養するステップが含まれる。トランスジェニック胚及び種子も同様に再生される。得られたトランスジェニック発根シュートは、その後、土壌などの適切な植物成長媒体に植えられる。好ましくは、再生植物は自家受粉し、ホモ接合のトランスジェニック植物を提供する。さもなければ、再生された植物から得られた花粉は、農業的に重要な系統の種子成長植物と交配する。逆に、これらの重要な系統の植物の花粉は、再生植物に受粉するために使用される所望の表現型特性の発現が安定して維持され継承されることを確実にするために2世代以上を成長させ、その後、所望の表現型特性の発現が確実に達成されるように種子を収穫する。この様式で、本明細書に提示される組成物は、本明細書に提供されるポリヌクレオチド、例えば、ゲノムに安定に組み込まれた組換えmiRNA発現構築物を有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」とも呼ばれる)を提供する。
【0125】
特定の実施形態では、機能的編集成分をコードする少なくとも1つのmTMVベクターは、葉浸潤によるアグロバクテリウム形質転換によって導入することができる。次に、得られた植物を開花させ、ゲノム編集種子を収穫し、植物細胞にmTMVが残存しないゲノム編集植物に成長させることができる。特定の実施形態では、ゲノム編集種子は、胚救出又は他のウイルス除去工程に供することができる。続いて、ゲノム編集種子から成長したニコチアナ植物又は植物部分を、限定するものではないが、サザンブロット分析、DNAシーケンシング、PCR分析又は表現型分析などの当業者に公知の方法を使用して選択することができる。前述の実施形態によって編集された植物又は植物部分は、植物形成条件下で成長する。植物形成条件は、当技術分野で周知である。
【0126】
タバコ製品
ゲノム編集種子から成長した植物は、その後収穫され、タバコ製品の製造に使用することができる。例えば、収穫後、タバコ植物及び/又は葉を発酵させることができる。タバコのための例示的な発酵方法は、米国特許第2,927,188号、Brenik et al.;米国特許第4,660,577号、Sensabaugh et al.;米国特許第 4,528,993号、Sensabaugh et al.;and 米国特許第5,327,149号、Roth et al.に提供されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。発酵は、例えば、ラクトバチルスの存在によって強化され、結果として、(例えば、上記の乳酸菌処理溶液による)所与のサンプルに関連するラクトバチルス属細菌の量の変更は、いくつかの実施形態では、そのサンプルの発酵に影響を及ぼし得る。その処理されたタバコが後に発酵に供される場合、いくつかの実施形態では、発酵は、ラクトバチルス属細菌の存在が多いほど強化され得る。いくつかの実施形態では、ラクトバチルス属細菌は、エンドリシン又は他の膜破壊酵素を発現する。「強化された」とは、発酵過程が、例えば、より迅速に、及び/又はより均一に進行することを意味する。
【0127】
発酵が所望の程度まで完了すると、発酵タバコ材料は通常、熱で処理される。この熱処理は、いくつかの実施形態では、発酵を停止し、任意の活性な栄養微生物を熱で殺すのに十分であり得る。この発酵後熱処理は、例えば、発酵前の熱処理に関して上述した方法と同様の方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、その後、さまざまな成分を熱処理された発酵タバコ材料に加えることができる。例えば、防腐剤、ケーシング、水分及び塩分は、熱処理された発酵タバコ材料に適切な成分を添加することにより(例えば、そのような成分を発酵容器に直接添加することにより)調整することができる。又は、いくつかの実施形態では、発酵の前に試薬のプールを調整することが有利である場合、発酵の前に特定の成分を加えることができる。特定の実施形態では、上記に開示された方法に従って、熱処理されたタバコ材料は、保管及び出荷のために乾燥される(例えば、約15%~約20%の水分レベル、例えば、約18%の水分)。そのような熱処理されたタバコ材料は、例えば最終塩分、防腐剤、ケーシング及び水分含有量を調整することにより、その後処理することができる。
【0128】
処理後、処理されたタバコ材料は、緑色形態で使用することができる(例えば、植物又はその一部は、乾燥工程に供することなく使用することができる)。例えば、植物又はその一部は、重大な保管、取り扱い、又は加工条件に供することなく使用することができる。特定の状況では、植物又はその一部が収穫後すぐに使用されることが有利である。又は、例えば、緑色形態の植物又はその一部は、後で使用するために冷蔵又は冷凍、凍結乾燥することができ、照射、黄変、乾燥(dried)、乾燥(cured)(例えば、空気乾燥技術又は熱の適用を使用する技術を使用して)、加熱又は調理(例えば、ロースト、炒め、又は煮沸)に供することができ、又は後で使用するために保管又は加工に供することができる。乾燥後にTSNA形成の減少、発酵の強化などの利点が実現されるので、したがって、本明細書に記載の処理された材料は、例えばタバコ製品で使用する前に有利に乾燥されることは理解されよう。
【0129】
可燃性又は無煙の形態で使用することを意図されるタバコ組成物は、単一のタイプのタバコを(例えば、いわゆる「ストレートグレード(straight grade)」形態で)組み込んでもよい。例えば、タバコ組成物内のタバコは、熱風乾燥タバコのみで構成されてもよい(例えば、熱風乾燥タバコの葉身又は熱風乾燥タバコの葉身と熱風乾燥タバコの茎との混合物のいずれかでタバコのすべてが構成されても、又はそれに由来してもよい)。タバコ組成物内のタバコは、いわゆる「ブレンド」形態を有してもよい。例えば、本発明のタバコ組成物内のタバコは、熱風乾燥バーレー種(例えば、マラウイバーレー種タバコ)及びオリエンタルタバコ(例えば、タバコの葉身、又はタバコの葉身とタバコの茎との混合物で構成される、又はそれに由来するタバコ)の部分又は小片の混合物を含み得る。例えば、代表的なブレンドは、乾燥重量ベースで約30~約70部のバーレー種タバコ(例えば、葉身、又は葉身と茎)と、約30~約70部の熱風乾燥タバコ(例えば、茎、葉身、又は葉身と茎)とを組み込むことができる。他の例示的なタバコブレンドは、乾燥重量ベースで約75部の熱風乾燥タバコ、約15部のバーレー種タバコ及び約10部のオリエンタルタバコ;又は約65部の熱風乾燥タバコ、約25部のバーレー種タバコ及び約10部のオリエンタルタバコ;又は約65部の熱風乾燥タバコ、約10部のバーレー種タバコ及び約25部のオリエンタルタバコを組み込む。他の例示的なタバコブレンドは、約20~約30部のオリエンタルタバコ及び約70~約80部の熱風乾燥タバコを組み込む。
【0130】
本開示に従って提供されるタバコ材料は、当技術分野で一般的に知られている方法でさらに加工及び使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2012/0272976号、Byrd et al.及び第2014/0299136号、Moldoveanu et alを参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる。さまざまな実施形態では、タバコは喫煙品、無煙タバコ製品及び電子喫煙品に使用することができる。
【0131】
したがって、特定の実施形態では、対照タバコ植物と比較した場合に標的部位に編集を含む本明細書に開示の改変タバコ植物を収穫し、タバコ製品に加工することができる。本明細書で使用するタバコ製品には、葉タバコ、刻みタバコ、カットタバコ、粉砕タバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、ニコチン抽出物、無煙タバコ、湿潤又は乾燥嗅ぎタバコ、クレテック、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、紙巻きタバコ、噛みタバコ、ビディ、ビット、紙巻きタバコ、シガリロ、非通気式リセスフィルター紙巻きタバコ、通気式リセスフィルター紙巻きタバコ、葉巻及びタバコ含有のガム、ロゼンジ、パッチ、電子タバコ、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、本明細書で提供されるタバコ製品は、本明細書で開示のmTMVベクターを使用して改変されていないタバコ植物又は植物部分によって生産される対応するタバコ製品と比較して、ニコチン含有量の減少を含む。
【0132】
以下の実施例は、本開示に関連するさらなる態様を例示するために提供されるが、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特に明記しない限り、すべての部及びパーセントは乾燥重量によるものである。
【実施例0133】
[実施例1]
ウイルスRNA媒介形質転換系
ベクターの構築:GENEWARE(R)TMVベクター(pDN15など)の前に、トバモウイルスベクターゲノムに動作可能に連結された(operatively linked to)T7 RNAポリメラーゼプロモーターがあり、最初に転写されたヌクレオチドが、インビトロ転写及びウイルスゲノム配列による正しい開始を介してキャッピングを促進する。ベクター(pDN15など)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などのレポーター遺伝子、バスタ耐性(bar)、又は二機能タンパク質を産生するための2つの遺伝子の融合を含む天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターを下流に挿入することにより改変することができる。別のトバモウイルスゲノム由来の第2のコートタンパク質サブゲノムプロモーター、それに続く遺伝子編集エンドヌクレアーゼ(TALEN、ZFN、CRISPR-cas9又はメガヌクレアーゼの1つを含む)を含む第2の挿入を、レポーター構築物の下流に行う。ベクター(pDN15など)は、全身性で持続性の感染を確実に防ぐコートタンパク質を欠いており、トバモウイルスの3’非翻訳領域(NTR)で終了する。最後に、ベクター(pDN15など)は、ウイルスNTRのリボザイム3’をコードしていることにより、インビトロで生成された転写産物の正しいRNA切断を促進し、転写産物の感染性を高める。2つの発現カセット戦略が使用される場合、レポーター遺伝子及びエンドヌクレアーゼ配列を逆の順序で挿入する。エンドヌクレアーゼは、ネイティブトバモウイルスコートタンパク質サブゲノムプロモーターの制御下にあり、レポーター遺伝子は第2のトバモウイルスコートタンパク質サブゲノムプロモーターの制御下にある。さらなる改変として、レポーター遺伝子(単一又は二重活性タンパク質)をエンドヌクレアーゼ配列に融合させて、天然のサブゲノムプロモーターから単一シストロンのみを翻訳可能にすることができる。エンドヌクレアーゼ/レポーター遺伝子融合の後で、リボザイム配列の上流に必要な3’NTR配列を挿入する。
【0134】
[実施例2]
遺伝子編集手順
感染性ベクターRNAを、T7プロモーターを用いてインビトロで合成する。合成されたRNA分子を、摩擦、高圧スプレー、遺伝子銃、又は同様の技術を使用した直接機械的伝播によって植物の葉細胞に送達する。合成されたRNAは、エンドヌクレアーゼRNA配列を含むシャトルとして機能する。ウイルス転写産物は、複製タンパク質を生成する感染植物細胞において複数のゲノムRNAに翻訳され、サブゲノムRNA配列を生成する。RNAは複製され、レポーター遺伝子及びエンドヌクレアーゼをコードするRNAを含むサブゲノムRNAを生成する。これらは翻訳されて、感染のレポーター(視覚的又は除草剤選択による)及びエンドヌクレアーゼタンパク質を提供し、これが植物ゲノムを部位特異的様式で編集する。
【0135】
葉の材料は、インサイチュで、又は細胞培養を介して感染部位の選択に使用することができる。インサイチュ選択の場合、バスタを葉の表面にスプレーし、バスタ耐性遺伝子を含むウイルスベクターRNAが複製している感染葉組織が、24~48時間後に生きた緑色葉材料で示される。緑色葉組織を切除し、バスタを含む選択再生培地で培養する。GFPが発現している領域を同定するために、長波長のUV光を使用して葉の組織を視覚化する。次に、これらの領域を切除し、バスタを含む選択再生培地に塗布する。いずれかの方法を使用して、発根したシュートが生じ、成長培地又は土壌に移し、その後、いずれのウイルス又はゲノム編集タンパク質配列も含まない多くの種子が生じる。
【0136】
[実施例3]
形質転換植物細胞におけるGENEWARE(R)ベクターの作製及びGFPレポータータンパク質の発現。
【0137】
A.GFPを使用したGENEWARE(R)組換えベクターの作製
これらの実験では、タバコモザイクウイルス(TMV)に由来するGENEWARE(R)ベクターを使用した。GENEWARE(R)ベクターを使用すると、外来タンパク質をコードする遺伝子をウイルスコートタンパク質(CP)の代わりに挿入でき、内在性ウイルスCPプロモーターによって駆動され、植物細胞で過剰発現する(Pogue et al.,2010)。
【0138】
Geneware(R)ベクターがタバコ植物に感染し、タバコ細胞で外来タンパク質を産生できることを確認するために(Pogue et al.,2010)、RJRTARL002ベクターを本質的に実施例1に記載のように構築した。
図1は、サイクル3緑色蛍光タンパク質(c3GFP)を発現するように改変されたGENEWARE(R)ベクターを含むRJRTARL002ベクターのマップを示す。RJRTARL002は、コートタンパク質及び移動タンパク質をコードする配列の間に挿入されたサイクル3緑色蛍光タンパク質(c3GFP)を有するGENEWARE(R)ベクターである(
図1)。このベクターを使用して、タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum))K326変種、タバコ((ニコチアナ・タバカム・キサンチ(Nicotiana tabacum))Xanthi変種及びニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)植物を感染させた。本質的に、RNAは、市販の転写キットを介してRJRTARL002ベクターDNAから生成された。次に、感染性RJRTARL002 RNAを希釈し、植物の葉の接種に使用した。
【0139】
転写は以下のように行われた。Ambion mMessage mMachine(Applied Biosystems/Ambion Part#:AM1344)を使用して実施した反応の場合、サンプルは以下を含んだ:10μLの2×NTP/CAP、2μLの10×反応バッファー、1μgのベクターDNA、2μLの10×T7酵素ミックス、ヌクレアーゼ非含有水20μL。その後、サンプルを混合し、37℃において2~3時間インキュベートした。反応ミックスは、接種する葉の数に応じてスケールアップできる。
【0140】
接種のために、転写産物のアリコート(20μL)を80μLの接種バッファーと混合して、合計100μLの接種材料を調製した。接種バッファーは研磨水と0.75%(重量/容量)グリシン、1.05%(重量/容量)二塩基性リン酸カリウム(K2HPO4)、1%(重量/容量)ピロリン酸ナトリウム十水和物(Na4PO7・10H2O)、1%(重量/体積)ベントナイト及び1%(重量/体積)セライトとで作られた。
【0141】
接種物(25μL)を各葉の上に置き、手袋をはめた指でそっとこすって葉を創傷させ、ウイルスを侵入させた。接種された植物を、接種後の複数の時点で紫外線(UV)光の下でチェックした。
図2は、本開示の実施形態によるRJRTARL002ベクターの接種後7日目の、タバコの3つの異なるタイプ、ニコチアナ・タバカム変種キサンチ(Nicotiana tabacum var.Xanthi)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)及びニコチアナ・タバカム変種K326(Nicotiana tabacum var.K326)の例を示す図である。上の行の画像は、UV光に曝露され、緑色蛍光タンパク質が視覚化されている。下の行の画像は白色光に曝露され、感染領域が視覚化されている。サイクル3 GFPの発現は明らかに目に見えた。この結果は、GENEWARE(R)ベクターがタバコ植物においてタンパク質を産生できることを実証した。
【0142】
B.TMVの保持のための次世代植物の評価
GENEWARE(R)ベクターはタバコウイルスTMVに由来するため、ウイルスの感染は、感染した種子を介して次世代の植物に広がる可能性がある。このことが起きたかどうかを評価するために、2つのRJRTARL002を接種したニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)植物由来の種子を収穫し、これらの種子から発芽した約40の植物を紫外線下でチェックした。これらの植物ではGFPは観察されなかった。さらに、ランダムに選んだ10個の植物をTMV用Agdia ImmunoStrip(R)で試験したが、これらの10個の植物ではTMV感染は検出されなかった。これらの結果は、GENEWARE(R)接種植物から種子を介して次世代植物にTMV感染が伝播されなかったことを示している。
【0143】
[実施例4]
クリーンなGMO植物を作製するためのCasベースのウイルスベースのゲノム編集プロトコル
RNAガイドエンドヌクレアーゼCas9は、ヒト、植物及び真菌を含む複数の系で機能することが証明されている。本明細書に記載の方法は、CRISPR骨格配列を植物ゲノムに導入せずにCRISPR-cas9編集植物を作製し、それによって「クリーン」なGMO植物を作製することができる。
【0144】
CRISPR-cas9遺伝子及びgRNA配列を、ウイルスゲノムをコードするベクター内に移入した。完全なTMVベクター転写産物は、インビトロ由来の転写物からタバコ植物に伝播される。次いで、タバコ植物を、ウイルス又は単一のトバモウイルスベクター又は複数のベクターに分離されたトバモウイルス及びCRISPR/Cas系と組み合わせたPVXベクターのいずれかを含む、複数のアグロバクテリウムベクターを使用して感染させる。異なるベクターを含むアグロバクテリウムを、若い植物に感染させるために使用する。
【0145】
2つのベクターにより、それぞれが感染植物細胞において感染し、CRISPR/Cas系の成分を発現する。ベクターはアグロバクテリウムの浸潤部位において複製し、CRISPR/Cas系の成分を発現しながら植物細胞全体に拡散する。CRISPRとgRNAは、ウイルスが拡散するにつれて植物細胞全体に発現し、植物ゲノム内の標的部位の改変をもたらす。
【0146】
感染植物が開花して種子を生産すると、ゲノム編集種子が多数生産される。又は、代わりに、mTMVをアグロバクテリウムの浸潤部位から収集し、実生に直接感染させるために使用する。実生が成長し、花と種子を生産すると、ゲノム編集された種子が多数生産される。上記の種子からウイルス非含有植物を得るために、種子に対して胚救出法を実施する。得られた植物は、標的部位における編集を含み、外来DNAは全く含まない。
【0147】
したがって、ゲノム編集活性は、感染植物内でのみ活性であり、本方法は一過性となる。しかし、植物が成長し、改変されたウイルスが拡散すると、より多くの植物組織がゲノム編集される。ゲノム編集された植物の種子は、この感染植物から得られる。植物ゲノムにCRISPR配列又は他の外来DNAを含まないこれらのゲノム編集種子は、USDAの定義により非トランスジェニック(non-trans genetic)生物となる。
【0148】
[実施例5]
モデル遺伝子ノックアウト
マーカー遺伝子は、植物の遺伝子形質転換プロトコルで日常的に使用され、確実に非形質転換細胞/組織から形質転換された細胞/組織の選択/スコアリングを行う。選択マーカーの中でも、抗生物質及び除草剤耐性遺伝子は、植物の遺伝子形質転換で最も広く使用されている。フィトエンデサチュラーゼ(PDS)はカロテノイド合成経路の重要な酵素であり、多くの植物種から特徴付けられている高度に保存された遺伝子である。Matthews,et al,J.Exp.Bot.,54:2215-2230。PDSの触媒活性の喪失は、遺伝子ノックアウト事象のスコアリングマーカーとして使用できる矮性アルビノ再生体を産生する、アルビノ及び矮性の出現を特徴とするフィトエンの蓄積をもたらす。Qin et al.,(2007)Cell Res.,17:471-482。RNAガイドエンドヌクレアーゼCas9は、ヒト、植物及び真菌を含む複数の系で機能することが証明されている。本明細書に記載の方法は、CRISPR骨格配列を植物ゲノムに導入せずにCRISPR-cas9編集植物を作製し、それによって「クリーン」なGMO植物を作製する。
【0149】
アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)のPDS遺伝子(NM_202816.2)又はニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)又は他の種のPDS遺伝子の配列は、遺伝子の601~728bpの領域において即時破壊に使用できる。CRISPR-cas9遺伝子及びgRNA配列を、ウイルスゲノムをコードするベクター内に移入した。完全なTMVベクター転写産物は、インビトロ由来の転写物からタバコ植物に伝播される。反対に、タバコ植物は、ウイルス又は異なるウイルス部分を含む複数のアグロバクテリウムベクター(トバモウイルス及びPVXベクター)を使用して感染させる。TMVゲノムの要素とCRISPR/Cas系の成分は、複数のベクターに分離されている。異なるベクターを含むアグロバクテリウムを、若い植物に感染させるために使用する。
【0150】
次いで、ウイルスゲノムの各要素は、感染植物細胞内で発現し、CRISPR/Cas系の成分を発現するように改変された完全なTMVを組み立てる。組み立てられた改変ウイルスはアグロバクテリウムの浸潤部位において複製し、CRISPR/Cas系の成分を発現しながら植物細胞全体に拡散する。CRISPRとgRNAは、ウイルスが拡散するにつれて植物細胞全体に発現し、植物ゲノム内の標的部位の改変をもたらす。光退色組織のスクリーニングにより、PDSノックアウト表現型を含む領域を容易に同定することができる。
【0151】
感染植物が開花して種子を生産すると、多数のゲノム編集種子が生産され、これらを、矮小化した光退色表現型によってスクリーニング及び選択することもできる。又は、代わりに、mTMVをアグロバクテリウムの浸潤部位から収穫し、実生に直接感染させるために使用する。実生が成長し、花と種子を生産すると、ゲノム編集された種子が多数生産される。上記の種子からウイルス非含有植物を得るために、種子に対して胚救出法を実施し、光退色表現型に基づいて選択する。得られた植物は、標的部位における編集を含み、外来DNAは全く含ない。
【0152】
したがって、ゲノム編集活性は、感染植物内でのみ活性であり、本方法は一過性となる。しかし、植物が成長し、改変されたウイルスが拡散すると、より多くの植物組織がゲノム編集される。ゲノム編集された植物の種子は、この感染植物から得られる。植物ゲノムにCRISPR配列又は他の外来DNAを含まないこれらのゲノム編集種子は、USDAの定義により非トランスジェニック(non-trans genetic)生物となる。
【0153】
[実施例6]
無煙タバコ組成物の調製
経口使用のための無煙タバコ製品(STP)としての使用に適した無煙タバコ組成物は、収穫された標的部位にゲノム編集を有するタバコの葉を使用して以下の様式で提供される。約30ミクロンの平均粒径を有するタバコ粒子を有するタバコ材料を提供する。タバコ材料は、約54℃の開放雰囲気で乾燥して、水分含有量を約50パーセント~約10パーセント未満に減らす。充填剤(イソマルト)、塩(塩化ナトリウム)、甘味料(スクラロース)及び香料(バニリン、噴霧乾燥ペパーミント、噴霧乾燥メントール)を含むさまざまな乾燥成分を提供する。粉末状のすべての乾燥成分と乾燥タバコ材料を一緒に加え、約120 rpmで約3分間、パドル付きのホバートミキサーで完全に混合する。
【0154】
約38℃~約42℃の融点を有する脂質物質を提供する。脂質物質は、パーム核油とパーム油とのブレンドを含む非水素化ラウリンコーティング脂肪である。
【0155】
脂質物質を混合容器で融解させる。融解した脂質物質を有する混合容器に熱を維持しながら、混合しながら混合乾燥製剤を添加し、それにより、水分含量約10パーセント未満を有する無煙タバコ組成物の流動性スラリーを作る。スラリーを型に入れて、無煙タバコ製品1片あたり約1グラムの重量を達成する。スラリーは、周囲空気乾燥により約45分間硬化させ、その後、無煙タバコ製品の個々の小片を型から取り外す。
【0156】
[実施例7]
本開示の実施形態
A1.タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むRNA分子をタバコ植物細胞導入することを含み、発現すると、DNAエンドヌクレアーゼがタバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法。
【0157】
A2.RNA分子がベクター上に位置する、実施形態A1の方法。
【0158】
A3.ベクターがタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである、実施形態A2の方法。
【0159】
A4.DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列が、ウイルスコートタンパク質プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態A3の方法。
【0160】
A5.DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むRNA分子を、RNA分子を植物細胞に導入する前に、インビトロで合成することをさらに含む、実施形態A1~A4のいずれか1つの方法。
【0161】
A6.RNA分子が、摩擦、高圧スプレー又は遺伝子銃の使用によって植物細胞に機械的に導入される、実施形態A5の方法。
【0162】
A7.導入されたRNA分子がDNAエンドヌクレアーゼを発現するタバコモザイクウイルスを生成する、実施形態A5又はA6の方法。
【0163】
A8.ベクターが植物細胞内に導入される、実施形態A2~A4のいずれか1つの方法。
【0164】
A9.RNA分子を含む植物の一部を採取すること、並びに植物の一部を選択培地で培養することをさらに含む、実施形態A1~A8のいずれか1つの方法。
【0165】
A10.RNA分子を含む植物部分が、植物の葉、分裂組織、シュート及び/又は花から採取される、実施形態A9の方法。
【0166】
A11.植物部分を培養して再生植物を生産することをさらに含む、実施形態A9又はA10のいずれか1つの方法。
【0167】
A12.植物部分の標的部位における改変を確認することをさらに含む、実施形態A9~A10のいずれか1つの方法。
【0168】
A13.標的部位に改変を含む少なくとも1つの植物細胞を単離することをさらに含み、改変が標的部位において1以上のヌクレオチドの少なくとも1つの欠失、挿入又は置換を含む、実施形態A1~A12のいずれか1つの方法。
【0169】
A14.標的部位に改変を含む植物細胞を含む植物を培養することをさらに含む、実施形態A13の方法。
【0170】
A15.植物がゲノムの標的部位に改変を含む種子を生産するまで植物を培養する、実施形態A14の方法。
【0171】
A16.ゲノムの標的部位に改変を含む種子に対して胚救出を実施することをさらに含む、実施形態A15の方法。
【0172】
A17.改変を含む植物から生産された種子を植えること、植えた種子を栽培して編集されたタバコ植物を生産すること、編集されたタバコ植物を収穫すること、並びに収穫された植物からタバコ製品を製造することをさらに含む、実施形態A16の方法。
【0173】
A18.改変が二本鎖切断である、実施形態A1~A17のいずれか1つの方法。
【0174】
A19.DNAエンドヌクレアーゼがメガヌクレアーゼである、実施形態A1~A18のいずれか1つの方法。
【0175】
A20.メガヌクレアーゼが標的部位に特異的であるように改変されている、実施形態A19の方法。
【0176】
A21.標的部位が、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内に位置する、実施形態A20の方法。
【0177】
A22.タバコがニコチアナ・タバカム(N.tabacum)タバコである、実施形態A1~A21のいずれか1つの方法。
【0178】
A23.タバコがニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)タバコである、実施形態A1~A21のいずれか1つの方法。
【0179】
A24.実施形態A1~A23のいずれか1つの方法により生産されたタバコ植物又は植物部分。
【0180】
A25.実施形態A15の方法により生産されたタバコ種子。
【0181】
A26.DNAエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むベクターを含むタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0182】
A27.プロモーターに作動可能に連結されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むように改変された、メガヌクレアーゼが、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的であるタバコモザイクウイルス(TMV)ゲノム。
【0183】
A28.プロモーターが、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターである、実施形態A27のTMVゲノム。
【0184】
A29.実施形態27又は28のTMVゲノムをコードする核酸配列を含むベクター。
【0185】
B1.タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞内に導入することを含み、機能的編集成分が、タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法。
【0186】
B2.機能的編集成分がDNAを切断するエンドヌクレアーゼである、実施形態B1の方法。
【0187】
B3.エンドヌクレアーゼがメガヌクレアーゼ又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つである、実施形態B2の方法。
【0188】
B4.核酸がRNA発現ベクターを含む、実施形態B1~B3のいずれか1つの方法。
【0189】
B5.ベクターがタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである、実施形態B4の方法。
【0190】
B6.機能的編集成分がCaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに作動可能に連結された、実施形態B1~B5のいずれか1つの方法。
【0191】
B7.機能的編集成分をコードする核酸を植物細胞内に導入する前に、機能的編集成分をコードする核酸をインビトロで合成することをさらに含む、実施形態B1~B6のいずれか1つの方法。
【0192】
B8.機能的編集成分をコードする核酸が、摩擦、高圧スプレー又は遺伝子銃の使用により植物細胞に機械的に導入される、実施形態B1~B7のいずれか1つの方法。
【0193】
B9.改変が、標的部位における少なくとも1つのヌクレオチドの置換、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、又は少なくとも1つのヌクレオチドの挿入のうちの少なくとも1つを含む、実施形態B1~B8のいずれか1つの方法。
【0194】
B10.機能的編集成分をコードする核酸を含む植物の一部を採取すること、並びに植物の一部を選択培地で培養することをさらに含む、実施形態B1~B9のいずれか1つの方法。
【0195】
B11.機能的編集成分をコードする核酸を含む植物部分が、植物の葉、分裂組織、シュート及び/又は花から採取される、実施形態B10の方法。
【0196】
B12.植物部分を培養して再生植物を生産することをさらに含む、実施形態B10又はB11のいずれか1つの方法。
【0197】
B13.植物部分の標的部位における改変を確認することをさらに含む、実施形態B1~B12のいずれか1つの方法。
【0198】
B14.標的部位に改変を含む少なくとも1つの植物細胞を単離することをさらに含む、実施形態B1~B13のいずれか1つの方法。
【0199】
B15.標的部位に改変を含む少なくとも1つの植物細胞を含む植物を培養することをさらに含む、実施形態B14の方法。
【0200】
B16.植物が、ゲノムの標的部位に改変を含む種子を生産するまで植物を培養する、実施形態B15の方法。
【0201】
B17.ゲノムの標的部位に改変を含む種子に対して胚救出を実施することをさらに含む、実施形態B16の方法。
【0202】
B18.改変を含む植物から生産された少なくとも1つの種子を植えること、植えた種子を栽培して改変された標的部位を含むタバコ植物を生産すること、編集されたタバコ植物を収穫すること、並びに収穫された植物からタバコ製品を製造することをさらに含む、実施形態B17の方法。
【0203】
B19.機能的編集成分が、標的部位に特異的となるように遺伝子操作されている、実施形態B1~B18のいずれか1つの方法。
【0204】
B20.標的部位が、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ、又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内に位置する、実施形態B1~B19のいずれか1つの方法。
【0205】
B21.タバコがニコチアナ・タバカム(N.tabacum)タバコ又はニコチアナ・ルスティカ(N.rustica)タバコである、実施形態B1~B20のいずれか1つの方法。
【0206】
B22.実施形態B1~B21のいずれか1つの方法により生産されたタバコ植物又は植物部分。
【0207】
B23.実施形態B16の方法により生産されたタバコ種子。
【0208】
B24.機能的編集成分をコードする核酸配列を含むRNA発現ベクターを含むタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0209】
B25.機能的編集成分がDNAを切断するエンドヌクレアーゼである、実施形態B24のタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0210】
B26.エンドヌクレアーゼがメガヌクレアーゼ又はガイドRNA及び/又はCas9エンドヌクレアーゼの1つである、実施形態B24又はB25のいずれか1つのタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0211】
B27.RNA発現ベクターがタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターである、実施形態B24~B26のいずれか1つのタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0212】
B28.機能的編集成分が、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに作動可能に連結された、実施形態B24~B26のいずれか1つのタバコ植物、タバコ植物部分又はタバコ植物細胞。
【0213】
B29.プロモーターに作動可能に連結されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むように改変された、タバコモザイクウイルス(TMV)ゲノム。
B30.メガヌクレアーゼが、PDS(フィトエンデサチュラーゼ)、ニコチンシンターゼ、又はニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子内の標的部位に特異的である、実施形態B29の改変TMVゲノム。
【0214】
B31.プロモーターが、CaMV35S、T7 RNAポリメラーゼプロモーター又はコートタンパク質サブゲノムプロモーターである、実施形態B29の改変TMVゲノム。
【0215】
B32.実施形態B29~B31のいずれか1つのTMVゲノムをコードする核酸配列を含むベクター。
タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位を改変する方法であって、機能的編集成分をコードする核酸をタバコ植物細胞内に導入することを含み、前記機能的編集成分が、前記タバコ植物細胞のゲノム内の標的部位に改変を導入する方法。