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特開2024-28734電動ハンドルを有する外科用ステープラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028734
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電動ハンドルを有する外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023198039
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2020544651の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】62/636,070
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/734,154
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン エリック ディー
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ ジョナサン アール
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンズ ティモシー エム
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ファム アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ギュギィ ザガリー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】スポルディング ジョシュア エー
(72)【発明者】
【氏名】ハルヴォルセン クリスチャン エー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気モータを含む駆動システムを有する外科用ステープラのための電動ハンドルを提供する。
【解決手段】電動ハンドル40は、ハンドル40に接続されたリロードシャフト20に結合されたジョーアセンブリ30を関節運動させる手動関節運動機構を含む。手動関節運動機構は、ハンドル40に器具シャフト20が係合している時に関節運動ノブの回転に応答して関節運動部材を並進させるボールねじ機構を含む。関節運動機構は、ジョーアセンブリ30が長手方向中心配向に戻ることを可能にする解除機能を含む。電動ハンドル40は、駆動システム用の電源として機能するバッテリパックを含む。制御システムは、ユーザ入力及びステープラ10の動作パラメータに基づいてモータの作動を制御し、ステープラ10の所定の位置のためのいくつかのモータ駆動プロファイルを提供する。電動ハンドル40は、手動復帰機構を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体内で前記長手方向軸線を中心に回転可能な作動シャフトであって、該作動シャフト上に形成されたラックを含む作動シャフトと、
前記ハンドル本体内で摺動可能な復帰ロック機構、シャフト回転機構及びシャフト後退機構を含む機械的復帰機構と、を備え、
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと動作係合して前記作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、前記ラックが前記電気モータから解放されて前記手動復帰機構と係合する第2の位置に回転可能である、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項2】
前記復帰ロック機構は、ロック位置からロック解除位置に前記ハンドル本体に対して長手方向に摺動可能な復帰ロックを備えている、
請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項3】
前記シャフト後退機構は、該シャフト後退機構から延びる突出部を備え、前記復帰ロックは、前記ロック位置において前記突出部に係合し、前記ロック解除位置において前記突出部から解放される、
請求項2に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項4】
前記電気モータに電気的に結合された制御装置をさらに備え、前記復帰ロック機構は、前記制御装置に電気的に結合されている、
請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項5】
前記復帰ロック機構の作動は、前記制御装置を無効にする、
請求項4に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項6】
前記復帰ロック機構は、該復帰ロック機構によって長手方向に摺動して前記制御装置と電気的に係合して前記制御装置を無効にするばねを含む、
請求項5に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項7】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを備えたハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置され出力シャフトを含む電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能な作動シャフトであって、該作動シャフト上に形成されたラックを含む作動シャフトと、
前記モータの前記出力シャフトに結合されたモータギアと、
前記モータギアと駆動係合し、前記ラックと動作可能に係合し、第2のギアセグメントに回転可能に結合された第1のギアセグメントと、前記第1のギアセグメントと前記第2のギアセグメントとの間に延びる中心領域とを含む補助ギアと、を備え、
前記第1のギアセグメントは前記モータギアと駆動係合し、前記第2のギアセグメントは前記ラックと動作可能に係合する、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項8】
前記中心領域において前記補助ギアを支持する支持プレートをさらに備える、
請求項7に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項9】
前記支持プレートは、該支持プレートを貫通する補助ギアボアと、該支持プレートを貫通するモータギアボアとを含む、
請求項8に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項10】
前記支持プレートは、金属材料を含む、
請求項8に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のギアセグメントは、第1の係合面を含み、前記第2のギアセグメントは、第2の係合面を含み、前記第1の係合面及び前記第2の係合面は、前記第1のギアセグメント及び前記第2のギアセグメントを回転可能に結合するように結合される、
請求項7に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の係合面は、四角い歯型のプロファイルを定める軸線方向に延びるボスによって定められ、前記第2の係合面は、四角い歯型のプロファイルを定める軸線方向に延びるボスによって定められる、
請求項11に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項13】
前記中心領域は、前記第1のギアセグメント及び前記第2のギアセグメントの外径よりも小さな外径を有する、
請求項7に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項14】
取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含むハンドル本体と、
前記ハンドル本体内の電力システムと、
前記電力システムに動作可能に結合された作動シャフトと、
手動作動式関節運動ノブ及び関節運動アダプタを含む関節運動機構と、
関節運動ロックアウト機構と、を備え、
前記手動作動式関節運動ノブは、前記ハンドル本体の近位端に配置されて前記長手方向軸線を中心に回転可能であり、前記関節運動アダプタは、前記ハンドル本体の前記遠位端に配置され、
前記関節運動アダプタは、前記長手方向軸線を中心とした前記関節運動ノブの回転が前記関節運動アダプタを長手方向に摺動させるように前記関節運動ノブに動作可能に結合され、
前記関節運動ロックアウト機構は、前記外科用ステープラに器具シャフトが結合されていない時に、前記関節運動ノブを前記関節運動アダプタから解放する、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項15】
前記関節運動ロックアウト機構は、前記外科用ステープラに器具シャフトが結合されていない時に、前記関節運動機構を中心位置に維持する、
請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項16】
前記関節運動ロックアウト機構は、前記ハンドルアセンブリの前記遠位端におけるロックアウトスリーブと、該ロックアウトスリーブに結合された少なくとも1つのロックアウトアームとを含む、
請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項17】
前記少なくとも1つのロックアウトアームは、2つのロックアウトアームを含む、
請求項16に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項18】
前記関節運動機構の位置を識別するように構成された関節運動機構位置センサをさらに備える、
請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項19】
前記関節運動ロックアウト機構の位置を識別するように構成された関節運動ロックアウト機構位置センサをさらに備える、
請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項20】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に移動可能に結合されたトリガーとを含むハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に位置することができるモータ及び電源を含む、前記ハンドル本体内の電力システムと、
前記電力システムに動作可能に結合され、前記ハンドル本体内で長手方向に摺動可能な作動シャフトと、
前記作動シャフトの前記長手方向位置を特定するように構成された位置センサと、
前記電力システム、前記トリガー及び前記位置センサに電気的に結合されて、把持器具ゾーン、ロックアウトゾーン及び発射ゾーンに対応する前記作動シャフトの位置における前記モータの少なくとも1つの動作パラメータを定めるモータ駆動ロジックプロファイルを定めるように構成された制御システムと、を備えちる、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項21】
前記ハンドルアセンブリは、ユーザディスプレイをさらに備える、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項22】
前記ユーザディスプレイは、多色LED光リングを含む、
請求項21に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、パルス幅変調負荷サイクルを含む、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項24】
前記制御システムは、前記モータの電流負荷をモニタするように構成される、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項25】
前記制御システムは、触覚フィードバックモジュールをさらに含む、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項26】
前記触覚フィードバックモジュールは、方向を素早く交互に入れ替える実質的に方形波のプロファイルで前記モータを駆動して、前記作動シャフトの動きを伴わずに前記ハンドルアセンブリの振動を発生させる、
請求項25に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項27】
前記実質的に方形波のプロファイルは、遅延セグメントをさらに含む、
請求項26に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項28】
前記制御システムは、モータ極性検証モジュールをさらに含む、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項29】
前記制御システムに電気的に結合された取り外し可能メモリモジュールをさらに備える、
請求項20に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項30】
前記メモリモジュールは、前記電源に電気的に結合される、
請求項29に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項31】
前記電源は、バッテリパックを含む、
請求項30に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項32】
前記バッテリパックは、該バッテリパック及び前記メモリモジュールに電気的に結合された放電抵抗器をさらに含み、前記メモリモジュールを除去すると、前記バッテリパックが前記放電抵抗器に電気的に結合されて前記バッテリパックが枯渇するようになる、
請求項31に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項33】
ロックアウト機構を有する取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含むハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に位置することができるモータ及び電源を含む、前記ハンドル本体内の電力システムと、
前記電力システムに動作可能に結合され、前記ハンドル本体内で長手方向に摺動可能な作動シャフトと、
前記作動シャフトの前記長手方向位置を特定するように構成された位置センサと、
前記モータの電流引き込み及び前記作動シャフトの前記長手方向位置をモニタし、前記モータの電流引き込みプロファイルの傾斜を計算し、前記モニタされた傾斜を使用して前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウトモジュールを含む、前記電力システム、前記トリガー及び前記位置センサに電気的に結合された制御システムと、を備え、
前記ロックアウトモジュールは、前記ロックアウト機構の係合の検出時に前記モータの動作を停止するように構成される、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項34】
前記ロックアウトモジュールは、前記電流引き込みプロファイルの前記傾斜の連続する複数の平均値が所定のロックアウト許容範囲内に収まる時に前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成される、
請求項33に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項35】
前記ロックアウトモジュールは、前記制御システムが負荷サイクルランプアップにおいて前記モータを駆動している時に前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウトランプアップサブモジュールを含む、
請求項34に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項36】
前記ロックアウトランプアップサブモジュールは、前記モータの前記電流引き込みが電流閾値を超える負荷サイクルランプアップに前記モータがある状態で前記ロックアウト機構の係合を検出する、
請求項35に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項37】
前記ロックアウトモジュールは、前記制御システムが負荷サイクルランプアップ後の遷移期間において前記モータを駆動している時に前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウト遷移サブモジュールを含む、
請求項33に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項38】
前記ロックアウトモジュールは、前記制御システムが負荷サイクルランプアップ後の前記遷移期間後に所定の作動シャフト位置の範囲にわたって前記モータを駆動している時に前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウト遷移後サブモジュールを備えている、
請求項37に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項39】
前記ロックアウトモジュールは、前記制御システムが負荷サイクルランプダウンにおいて前記モータを駆動している時に前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウト遷移サブモジュールを含む、
請求項33に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項40】
前記ロックアウトランプダウンサブモジュールは、前記モータが、前記モータの前記電流引き込みが複数の連続するモニタされた事象にわたって減少しない負荷サイクルランプダウンにある状態で前記ロックアウト機構の係合を検出する、
請求項39に記載のハンドルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2018年2月27日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の米国仮特許出願第62/636,070号、及び2018年9月20日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ」という名称の米国仮特許出願第62/734,154号の利益を主張するものである。これらの各文献は、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に外科用閉塞器具(surgical occlusion instruments)に関し、具体的には外科用電動ステープラに関する。
【背景技術】
【0003】
外科用ステープラは、組織を近づけ又はクランプして、クランプされた組織を共にステープリングするために使用される。従って、外科用ステープラは、組織をクランプして組織にステープルを通すための機構を有する。この結果、例えばクランプされた組織を正しくステープリングするための複雑な機構に関連して複数のトリガー及びハンドルが生産されてきた。これらの複雑な機構により、外科用ステープラは、高い製造間接費と、装置の故障及びユーザの混乱を招く潜在的な根源とを有することができる。従って、複雑な機構を伴わずに、クランプされた組織を確実にステープリングできることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第15/486,227号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第15/486,008号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書のいくつかの実施形態では、外科用ステープリングシステムのための電動ハンドルを提供する。電動ハンドルは、電源によって作動アダプタを選択的に作動させるように駆動される駆動システムを含むことができる。電動ハンドルは、関節運動アダプタ(articulation adapter)を選択的に作動させる手動関節運動機構(manual articulation mechanism)を含むことができる。電動ハンドルは、関節運動アダプタ及び作動アダプタをリロードシャフトの関節運動部材及び駆動部材に同時に結合するバイオネット結合部を有するカプラをさらに含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、外科用ステープリングシステムの電動ハンドルが、可動トリガー及び電動ハンドル上の発射/復帰ボタン(fire/return button)からのユーザ入力に応答して駆動システムを作動させる制御システムを含む。制御システムは、駆動システムの動作トルク、作動アダプタの長手方向位置、及びジョーアセンブリの長さ又は構成の識別を含む様々な動作パラメータに応答して、駆動システムの作動プロファイルをさらに変化させることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、外科用ステープリングシステムの電動ハンドルが、ボールねじ機構を含む手動関節運動システムを含む。ボールねじ機構は、ステープリングシステムのジョーアセンブリの所定の関節運動範囲内での連続関節運動を可能にすることができる。ボールねじ機構は、長手方向中心位置に付勢され、解除機構の使用を通じて速やかに中心位置をとることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電気モータ、作動シャフト及び機械的復帰機構を含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電気モータは、ハンドル本体内に配置される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能であるとともに、ハンドル本体内で長手方向軸線を中心に回転可能である。作動シャフトは、シャフト上に形成されたラックを含む。作動シャフトは、ラックが電気モータと動作係合して作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、ラックが電気モータから切断されて手動復帰機構と係合する第2の位置に回転可能である。手動復帰機構は、ハンドル本体内で摺動可能な復帰ロック機構と、シャフト回転機構と、シャフト後退機構とを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電気モータ、作動シャフト、モータギア、補助ギアを含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電気モータは、ハンドル本体内に配置される。モータは、出力シャフトを含む。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能である。モータギアは、モータの出力シャフトに結合される。補助ギアは、モータギアと駆動係合する。補助ギアは、ラックと動作可能に係合する。補助ギアは、第2のギアセグメントに回転可能に結合された第1のギアセグメントと、第1のギアセグメントと第2のギアセグメントとの間に延びる中心領域とを含む。第1のギアセグメントは、モータギアと駆動係合し、第2のギアセグメントは、ラックと動作可能に係合する。
【0010】
いくつかの実施形態では、取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電力システム、作動シャフト、関節運動機構、及び関節運動ロックアウト機構を含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電力システムは、ハンドル本体内に存在する。作動シャフトは、電力システムに動作可能に結合される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能である。関節運動機構は、手動作動式関節運動ノブと、関節運動アダプタとを含む。手動作動式関節運動ノブは、ハンドル本体の近位端に配置され、長手方向軸線を中心に回転可能である。関節運動アダプタは、ハンドル本体の遠位端に配置される。関節運動アダプタは、関節運動ノブを長手方向軸線の周囲で回転させると関節運動アダプタが長手方向に摺動するように、関節運動ノブに動作可能に結合される。関節運動ロックアウト機構は、外科用ステープラに器具シャフトが結合されていない時に関節運動ノブを関節運動アダプタから解放する。
【0011】
いくつかの実施形態では、外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電力システム、作動シャフト、位置センサ、及び制御システムを含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に移動可能に結合されたトリガーとを含む。電力システムは、ハンドル本体内に存在する。電力システムは、ハンドル本体内に配置できるモータ及び電源を含む。作動シャフトは、電力システムに動作可能に結合される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向に摺動可能である。位置センサは、作動シャフトの長手方向位置を特定するように構成される。制御システムは、電力システム、トリガー及び位置センサに電気的に結合される。制御システムは、把持器具ゾーン、ロックアウトゾーン及び発射ゾーンに対応する作動シャフトの位置におけるモータの少なくとも1つの動作パラメータを定めるモータ駆動ロジックプロファイルを定めるように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、ロックアウト機構を有する取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電力システム、作動シャフト、位置センサ、及び制御システムを含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電力システムは、ハンドル本体内に存在する。電力システムは、ハンドル本体内に配置できるモータ及び電源を含む。作動シャフトは、電力システムに動作可能に結合される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向に摺動可能である。位置センサは、作動シャフトの長手方向位置を特定するように構成される。制御システムは、電力システム、トリガー及び位置センサに電気的に結合される。制御システムは、モータの電流引き込みと作動シャフトの長手方向位置とをモニタし、モータの電流引き込みプロファイルの傾斜を計算し、モニタされた傾斜を使用してロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウトモジュールを含む。ロックアウトモジュールは、ロックアウト機構の係合の検出時にモータの動作を停止(depower)するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電動ハンドルの実施形態を有する外科用ステープリングシステムの実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用ステープリングシステムの電動ハンドルの側面図である。
図3】駆動システムを示すようにコンポーネントを除去した図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図4図2の電動ハンドルの駆動システムの実施形態の斜視図である。
図5図4の駆動システムの斜視図である。
図6図4の駆動システムの分解斜視図である。
図7図4の駆動システムの斜視図である。
図8図2の電動ハンドルの電源の実施形態の斜視図である。
図9図8の電源の実施形態の断面斜視図である。
図10図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図11図2の電動ハンドルの関節運動機構の実施形態の切欠上面図である。
図12】関節運動位置にある図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図13】別の関節運動位置にある図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図14】中心位置にあって解除ボタンが作動した図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図15】中心位置にあって解除ボタンが作動した図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図16】関節運動機構がロックアウト構成にある図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図17】関節運動機構がロック解除構成にある図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図18図2の電動ハンドルの駆動システム及び関節運動機構の斜視図である。
図19図2の電動ハンドルの関節運動機構の関節運動リンク及びロックアウトリンクの斜視図である。
図20】オーバーライド復帰機構が解放構成にある図2の電動ハンドルの斜視図である。
図21】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの斜視図である。
図22】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図23】オーバーライド復帰機構が解放構成にある図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図24】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図25】オーバーライド復帰機構が復帰構成にある図2の電動ハンドルの斜視図である。
図26】オーバーライド復帰機構が復帰構成にある図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図27】オーバーライド復帰機構が復帰構成にあって手動復帰サイクルが開始された図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図27A図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の復帰爪の斜視図である。
図27B図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の側面図である。
図27C図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の側面図である。
図28】外科用ステープラのオーバーライド復帰機構の別の実施形態の側面図である。
図29図28のオーバーライド復帰機構の斜視図である。
図30図28のオーバーライド復帰機構の斜視図である。
図31図28のオーバーライド復帰機構の側面図である。
図32】外科用ステープリング装置のいくつかの実施形態で使用されるリロードカートリッジの斜視図である。
図33】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態で使用される発射梁及び発射部材の斜視図である。
図34】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態のジョーアセンブリの近位端の部分的分解斜視図である。
図35】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図36】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図37】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図38】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図39】未発射のリロードが挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図40】少なくとも部分的に発射済みのリロードが挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図41】リロードが挿入されていない図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図42】電気的に結合された光リングユーザディスプレイを有する図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図43図2の電動ハンドルの光リングユーザディスプレイの側面図である。
図44図2の電動ハンドルの光リングユーザディスプレイの斜視図である。
図45図2の電動ハンドルの制御システムの実施形態の情報及び電力フローのブロック図である。
図46図2の電動ハンドルの例示的な動作シーケンスの動作シーケンスフローチャートである。
図47図2の電動ハンドルの制御装置が実行できるモータ制御ロジックプロファイルの1つの実施形態の概略図である。
図48図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルの1つの例示的なジョーアセンブリ把持及び発射前ロックアウトのモータ負荷対作動ラック位置のプロットである。
図49図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルの完全な発射を通じた1つの例示的なジョーアセンブリ把持のモータ負荷対作動ラック位置のプロットである。
図50】電源オン構成及び組織把持構成で動作する図2の電動ハンドルの制御装置が実行できるモータ制御ロジックプロファイルの1つの実施形態の概略図である。
図51】発射構成で動作する図50のモータ制御ロジックプロファイルの実施形態の概略図である。
図52】反転構成で動作する図50のモータ制御ロジックプロファイルの実施形態の概略図である。
図53】電源オン構成及び組織把持構成で動作する図2の電動ハンドルの制御装置が実行できるモータ制御ロジックプロファイルの別の実施形態の概略図である。
図54】発射構成で動作する図53のモータ制御ロジックプロファイルの実施形態の概略図である。
図55】反転構成で動作する図53のモータ制御ロジックプロファイルの実施形態の概略図である。
図56】触覚フィードバックモジュールのモータ駆動プロファイルの実施形態の概略図である。
図57】触覚フィードバックモジュールのモータ駆動プロファイルの別の実施形態の概略図である。
図58】電動ハンドルアセンブリの実施形態のいくつかの動作状態にわたる測定された電流引き込み対作動シャフト位置の例示的なプロットである。
図59】電動ハンドルアセンブリの実施形態の第1のロックアウト係合状態にわたる測定された電流引き込み対作動位置の例示的なプロットである。
図60】電動ハンドルアセンブリの実施形態の第2のロックアウト係合状態にわたる測定された電流引き込み対作動位置の例示的なプロットである。
図61】電動ハンドルアセンブリの実施形態の例示的なロックアウト機構制御ロジックプロファイルである。
図62】電動ハンドルアセンブリの実施形態のモータ極性検証論理構造である。
図63】電動ハンドルアセンブリの取り外し可能メモリモジュールの1つの実施形態の斜視図である。
図64A図63の取り外し可能メモリモジュールを取り外した側面図である。
図64B図63の取り外し可能メモリモジュールを取り外した側面図である。
図65】電動ハンドルアセンブリのいくつかの実施形態の取り外し可能メモリモジュールの別の実施形態の斜視図である。
図66】電動ハンドルアセンブリのいくつかの実施形態の取り外し可能メモリモジュールの別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図2に、外科用ステープリングシステムの実施形態を示す。図示の外科用ステープラ10の実施形態は、細長いシャフト20と、ジョーアセンブリ30と、ハンドルアセンブリ40とを含む。図1には、ジョーアセンブリ30が開放構成にある外科用ステープラ10と、電動ステープル発射(powered staple firing)及び手動ジョーアセンブリ関節運動(manual jaw assembly articulation)を有する電動ハンドルの実施形態とを示す。図2には、細長いシャフトを除去した外科用ステープラシステム10の電動ハンドル40を示す。図2の電動ハンドル40は、電動ステープル発射及び手動ジョーアセンブリ関節運動を有する。図示の実施形態では、ハンドル40上の回転ノブの回転によって、シャフト20によって定められる長手方向軸線を中心にシャフト20及びジョーアセンブリ30を自由に回転させることができる。他の実施形態では、ステープリングシステムを、長手方向軸線を中心とした所定の範囲内でのジョーアセンブリの回転、又は回転可能に固定されたジョーアセンブリを可能にするように構成することができる。
【0015】
引き続き図1を参照すると、図示の外科用ステープラ10の実施形態は、腹腔鏡外科手術で使用されるようなサイズ及び構成を有することができる。例えば、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30は、アクセスポート又はトロカールカニューレを通じて手術野内に導入されるようなサイズ及び構成を有することができる。いくつかの実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、例えば8mm未満などの比較的小さなワーキングチャネル直径を有するトロカールカニューレを通じて挿入されるようなサイズ及び構成を有することができる。他の実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、例えば10mm、11mm、12mm又は15mmなどのさらに大きなワーキングチャネル直径を有するトロカールカニューレを通じて挿入されるようなサイズ及び構成を有することができる。他の実施形態では、本明細書で説明する外科用ステープラのいくつかの態様を、開腹手術法で使用される外科用ステープリング装置に組み込むこともできると想定される。
【0016】
引き続き図1を参照すると、図示のように、細長いシャフト20は略管状の部材を含む。細長いシャフト20は、近位端から遠位端に延びる。細長いシャフト20は、近位端22と遠位端24との間に延びる外科用ステープラ10の中心長手方向軸線Lを定める。
【0017】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、細長いシャフト20の遠位端において細長いシャフト20にジョーアセンブリ30が結合される。ジョーアセンブリ30は、第1のジョー32と、第1のジョー32に枢動可能に結合された第2のジョー34とを含む。図示の実施形態では、第1のジョー32が、中心長手方向軸線Lに沿って遠位方向に延び、ハンドル40の関節運動機構に応答して細長いシャフト20に対して関節運動できるように、細長いシャフト20の遠位端24に固定される。初期構成では、第1のジョー32が、リロード50内に配置された複数のステープル36を含む。他の実施形態では、リロード50をジョーアセンブリ30と一体化して、シャフトアセンブリ20全体とステープルが装填されたジョーアセンブリ30とが単一のリロードアセンブリを定めるようにすることができる。いくつかの実施形態では、ステープルを最初に第2のジョー34内に位置決めすることができる。
【0018】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、細長いシャフト内で長手方向に摺動可能な駆動部材又は梁(beam)によって、ジョーアセンブリ30をステープリング構成に対して開放構成(図1)から閉鎖構成に作動させることができる。初期位置では、梁を細長いシャフト20の遠位端24に位置決めすることができる。梁が初期位置にある状態では、第2のジョー34が第1のジョー32から離れて枢動することによって、ジョーアセンブリ30が開放構成になる。作動部材又は梁が長手方向軸線Lに沿って遠位方向に並進すると、作動梁は第2のジョー34に係合する。作動梁が初期位置から遠位方向に第1の距離だけ並進すると、ジョーアセンブリが開放構成から閉鎖構成に作動することができる。ジョーアセンブリ30が閉鎖構成にある状態では、作動梁を近位方向に第1の距離だけ戻すと、ジョーアセンブリ30が開放構成に戻ることができる。作動梁の遠位端は、第1のジョー32からステープルを展開するように構成されたステープルスライダを前進させることができ、これによって作動梁が第1の距離を過ぎて遠位方向にさらに並進すると、第1のジョー32のリロード50から複数のステープル36が展開されるようになる。
【0019】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、ハンドルアセンブリが細長いシャフト20の近位端において細長いシャフト20に結合されるように構成される。図示のように、ハンドルアセンブリ40は、固定ハンドル42と、固定ハンドル42に枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを定めるハウジングを含むピストルグリップ構成を有する。他の実施形態では、本明細書で説明する態様を含む外科用ステープラ装置が、例えばシザースグリップ構成又はインライン構成などの他の構成のハンドルアセンブリを有することもできると想定される。以下でさらに詳細に説明するように、ハンドルアセンブリ40は、可動ハンドル44の動きに応答して作動シャフトを選択的に前進させるように構成された電動作動機構(powered actuation mechanism)を収容する。
【0020】
図示の実施形態では、外科用ステープラ10が、使い捨てカートリッジリロード50内に位置する複数のステープル36を含むことができる一方で、ジョーアセンブリ30は、1回の手術において複数のステープルカートリッジリロード50と共に再利用されるように構成される。いくつかの実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、ハンドルアセンブリ40に取り外し可能に結合できる使い捨てリロードシャフトを定める。従って、図示の実施形態では、ハンドルアセンブリ40が、その遠位端にカプラ46を含む。カプラ46は、外科用ステープラ10の細長いシャフト20に係合するように適合される。カプラ46は、ハンドルアセンブリ42を細長いシャフト20に取り外し可能に結合できる外側コネクタと、ハンドルアセンブリ42の作動シャフトを細長いシャフト20の駆動部材に取り外し可能に結合できる第1の内側コネクタと、ハンドルアセンブリ42の関節運動カプラを細長いシャフト20の関節運動リンクに取り外し可能に結合できる第2の内側コネクタとを有するバイオネット接続を有することができる。これらの3つの取り外し可能な結合は、細長いシャフト20がハンドルアセンブリ42に結合された時に同時に行われる。従って、外科用ステープラ10は、外科手術中にハンドルアセンブリ40を複数のリロードシャフト20と共に再利用できるように構成することができる。他の実施形態では、ハンドルアセンブリ及び細長いシャフトのいくつかの部分を再利用できる一方で、ジョーアセンブリ内の細長いシャフトの残り部分が使い捨てカートリッジを定めるものと想定される。他のいくつか実施形態では、ハンドルアセンブリ及び細長いシャフトを再利用できる一方で、ジョーアセンブリが使い捨てカートリッジを定める。さらに他の実施形態では、複数のステープルを収容するジョーインサートが使い捨てカートリッジを定めることができる一方で、外科用ステープラの残り部分が再利用可能である。
【0021】
図2に、外科用ステープリングシステムの電動ハンドルの実施形態を示す。電動ハンドルは、シャフト構成、ジョーアセンブリ構成及びステープル構成を特定の手術に合わせて選択できるように、様々なシャフトリロード及びカートリッジと共に使用することができる。図示のハンドルの実施形態では、ジョーのクランピング及び開放、並びにステープルラインの発射が電動(モータ駆動)で行われる。ジョーアセンブリの関節運動は、オペレータが回転させる関節運動ノブによって手動で制御することができる。モータは、異なる使用段階中におけるハンドルの機能を決定する埋め込み制御システムによって制御される。
【0022】
引き続き図2を参照すると、電動ハンドル40は、固定ハンドル42と、固定ハンドル42に枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを有するピストルグリップ構成を含む。固定ハンドルの下面には、電源130又はバッテリが位置することができる。電動ハンドル40は、ユーザがステープリングシーケンスを選択的に制御できるようにする発射又は発射/反転ボタン150などのユーザコントロールをさらに含むことができる。電動ハンドル40は、電動システムの故障、制御システムの故障、電源の故障、「ロックジョー(lockjaw)」又はその他の機械的拘束(mechanical binding)の際にユーザがステープリングシステムを手動で開放構成に戻せるようにする、冗長な手動オーバーライド復帰システム170をさらに含むことができる。電動ハンドルは、回転可能な関節運動ノブ190を含む手動関節運動機構をさらに含むことができる。図示の実施形態では、関節運動ノブ190が、電動ハンドルの近位端に位置して、ステープリングシステムの長手方向軸線に概ね対応する軸の周囲で回転することができる。いくつかの実施形態では、電動ハンドルが、ユーザに所望のステータス指示(status indicia)を表示する環状光リング(annular light ring)などの照明付きユーザディスプレイ(illuminated user display)をさらに含むことができる。
【0023】
電動ハンドルアセンブリ及び関連する作動機構の様々な実施形態は、2017年4月12日に出願された「外科用ステープラのためのリロードシャフトアセンブリ(Reload Shaft Assembly for Surgical Stapler)」という名称の米国特許出願第15/486,227号、及び2017年4月12日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の米国特許出願第15/486,008号に開示されており、これらの文献は、いずれもその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0024】
電動駆動システム
図3に、電動ハンドルの一部分を切り欠いた図が示されている。図示の切欠図では、電動ハンドルの駆動システムを明確に示すため、電動ハンドルの幾つかの構成部品を除去している。図示の実施形態では、駆動システムが、固定ハンドル42内に位置するモータ112と、モータ112の出力シャフト上に位置するモータギア114と、モータギア114と駆動係合する補助ギア116とを含む。いくつかの実施形態では、モータ112がブラシ付きDCギアモータである。補助ギア116を通じた伝達力は、モータ112が固定ハンドル内で横方向中心に位置してハンドルのバランス及びユーザの人間工学の強化を可能にすることができるという利点を有する。さらに、いくつかの実施形態では、モータギア114及び補助ギア116を、ラック122に所望の作動トルクをもたらすように構成することができる。いくつかの実施形態では、モータ112が、モータ112と補助ギア116に結合されたモータギア114との間に動作結合されて所望の作動トルクをもたらすマルチギアトランスミッションを含むことができる。モータ112は、制御システムを介して電源130に電気的に結合することができる。ハンドル内の制御システムは、駆動システムと連動して、作動シャフト120の位置、従ってジョーアセンブリの作動を測定する。
【0025】
駆動システムは、ハンドル内のマイクロコントローラを含む制御システムに情報を提供するハードウェアに取り付けられる。この埋め込みシステムは、モータの速度及びトルクを制御することができる。この埋め込みシステムは、ユーザ入力(トリガーの動き及び発射/反転ボタンの押圧)及び駆動システムの位置に基づいて装置の機能を制御することもできる。制御システムは、モータからのフィードバックを測定して、ステープルの発射を継続するのに負荷が高すぎないかどうか、又はリロードカートリッジのロックアウトが作動したかどうかを判定することもできる。制御システムは、バッテリ寿命を測定して装置の発射回数を制限することもできる。駆動システムは、主に電動動作のために構成されるが、いくつかの実施形態では、本明細書でさらに説明するような、電動動作に優先する手動復帰機構を提供することが望ましい場合もある。
【0026】
図4図6に、電動ハンドルの駆動システムの詳細図を示す。図示の実施形態では、駆動システムが、支持プレート121によって終点間を支持された分岐補助ギア(bifurcated auxiliary gear)116を含む。この補助ギア116の支持構成には、モータギア114が重い負荷条件において補助ギア116から分離する傾向を大幅に低減できる強固な機構を提供するという利点がある。
【0027】
図5図6を参照すると、分岐補助ギア116は、第2のギアセグメント115に回転可能に結合された第1のギアセグメント113を含む。第1のギアセグメント113は第1の係合面を含むことができ、第2のギアセグメント115は第2の係合面を含むことができ、これによって第1の係合面と第2の係合面とが結合して、第1のギアセグメント113が第2のギアセグメント115に回転可能に結合されるようになる。図示の実施形態では、第1のギアセグメント113が、軸線方向に延びて第1の係合面を定めるボスを含み、第2のギアセグメント115が、軸線方向に延びて第2の係合面を定めるボスを含む。第1のギアセグメント及び第2のギアセグメントの軸線方向に延びるボスは、それぞれ第1のギアセグメント113と第2のギアセグメント115との回転結合を可能にする四角い歯型の(square toothed)又は「城郭(castle)」型の断面形状を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のギアセグメント113、115が回転可能に結合すると、軸線方向に延びるボス同士が係合して、第1のギアセグメント113及び第2のギアセグメント115のいずれかの外径よりも小さな外径を有する中心領域を形成する。
【0028】
図6には、分岐補助ギア116を有する駆動システムの分解図を示す。図示のように、駆動システムは、補助ギア116の第1の端部と第2の端部との間に配置された支持プレート121をさらに含む。支持プレート121は、補助ギアボア123及びモータギアボア125が形成された剛直なプレートとすることができる。いくつかの実施形態では、支持プレート121が金属材料を含むことができる。駆動システムは、補助ギアボア123内に位置する補助ギアブッシング117と、モータギアボア125内に位置するモータギアブッシング119とをさらに含むことができる。ブッシング117、119は、DELRIN(登録商標)材料などの比較的摩擦係数の低い材料を含むことができる。作動シャフトブラケット又はガイド部材127は、作動シャフト120のラック122と補助ギア116の第2のギアセグメント115との係合を容易にすることができる。
【0029】
図5図6を参照すると、補助ギア116の第1のギアセグメント113及び補助ギアの第2のギアセグメント115は、補助ギア116の中心領域が補助ギアボア123及び補助ギアブッシング117を貫通して補助ギア116の第1の端部と第2の端部との間が支持されるように、支持プレート121を中心にして組み立てることができる。図示の実施形態では、補助ギア116の第1のギアセグメント113がモータギア114とギア係合(geared engagement)する。補助ギア116の第2のギアセグメント115は、作動シャフト120のラック面122とギア係合する。支持プレート121は、ハンドルアセンブリハウジングの壁部及びそこに形成されたボスによって封入されて駆動システムを支持することができる。
【0030】
図7を参照すると、電動動作中、補助ギア116は、ハンドル本体内を長手方向に延びる作動シャフト120上のラック122と噛合係合(meshed engagement)する。図示の実施形態では、補助ギアがガイド部材内に支持され、ガイド部材を貫いて作動シャフト120が摺動する。ガイド部材127は、補助ギア116とラック122との間の噛合接触(meshed contact)の維持を支援する。作動シャフト120の遠位端は、電動ハンドルの遠位端のカプラ46(図1)内に長手方向に延びる作動アダプタ124に自由回転可能に結合される。
【0031】
作動アダプタ124は、シャフト20が電動ハンドル40のカプラ46に結合されることによって、バイオネット接続を介してシャフト20内の駆動部材に接続される。従って、シャフト20がハンドル40に取り付けられると、モータ112及びラック122が、器具シャフト20内を延びてジョーアセンブリに結合された駆動部材を駆動するようになる。従って、ハンドル内の駆動システムは、「ラックアンドピニオン」設計を含む。ユーザの入力に応答したモータ112の動作は、作動シャフト120を長手方向前方及び後方に駆動して、ステープラを閉鎖動作、発射動作又は開放動作で選択的に作動させる。
【0032】
図8及び図9に、電動ハンドル40の電源130の実施形態を示す。電源130は、電動ハンドルモータ及び制御システムに直流を供給するように構成することができる。図示の実施形態では、ステープラが12Vで動作することができる。図示の電源は、直列に接続されて12V電源を形成する4つの3Vリチウムイオンバッテリ132を含むことができる。図示のように、バッテリ132は、プラスチックハウジング134内に4×1の構成で積み重なってバッテリパックを形成する。他の実施形態では、その他の数及び構成の個々のバッテリセルを使用してバッテリパックを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、AA、AAA、或いは別の標準的な又は専用の使い捨て又は充電式化学バッテリでバッテリパックを構成することができる。図示の電動ハンドル40の実施形態では、バッテリパックが固定ハンドルの底部に位置する。この位置決めは、ハンドル40を平面上に設定する安定表面をもたらすことが望ましい。他の実施形態では、ハンドルの近位端などのハンドル内の他の場所に電源を配置することもできると想定される。電源130は、主電源スイッチと、発光ダイオードなどの表示灯とを含むことができる。表示灯は、点灯色、点滅シーケンス又は単色照明(solid illumination)の使用を通じて、電源のパワーオン/オフ状態、低電力状態、又は再充電状態などのその他の電源状態情報を表示するように構成することができる。
【0033】
引き続き図8及び図9を参照すると、いくつかの実施形態では、電源130をハンドル40と共にパッケージングすることができるが、使用前には組み込まれない。ユーザは、使用時にハンドル40の底部に電源130を係合させることによってバッテリパックを組み込むことができる。バッテリパックを組み込まずに出荷すると、使用前の意図しないバッテリ放電の発生を抑えることができるという利点がある。さらに、取り外し可能なバッテリパックであれば、新たなバッテリが利用可能になった時に、ステープラシステムを新たなバッテリで容易にアップグレードすることができる。他の実施形態では、取り外し可能なストリップがバッテリパックの電気的接続を遮った状態でハンドル内に電源をパッケージングして組み込むこともできる。さらに他の実施形態では、壁コンセント、USBコネクタ又は別の標準的な電気的接続部などのAC又はDC電源に差し込まれるように構成された電源ケーブルをハンドルに同梱することもできる。
【0034】
いくつかの実施形態では、電源が、ステープラの使用のデジタル記録を記憶することができる不揮発性メモリなどのメモリモジュールをさらに含む。例えば、メモリモジュールは、発射中のバッテリ電圧及びモータ電流の定期的サンプリング、ソフトウェア状態機械の一連の状態、起こり得るあらゆる予期せぬ事象、使用したシャフトのタイプ、発射の回数、発射間の間隔、並びにステープラハンドルのモデル及びシリアル番号を含むステープラの各発射の詳細を記録するように構成することができる。メモリモジュールは、ユーザがバッテリパックを再利用できないようにバッテリパック自体が使用されたかどうかを記録することもできる。他の実施形態では、メモリモジュールが電源と一体化されないように、メモリモジュールをハンドルアセンブリ内で電源から隔てて配置し、例えば回路基板144(図4)上に配置又は回路基板144に電気的に結合し、或いはハンドルアセンブリ上の電気ポートから容易に取り外せるように配置することなどができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、電動ハンドル40及び関連する電源130を、1回の手術で使用して手術後に廃棄されるように構成することができる。電源130は、再利用の機会を減らす電力排出(power drain)を含むことができる。ユーザは、外科手術での使用後にハンドル40からバッテリパックを取り外すことができる。ハンドル40からバッテリパックを取り外すと、バッテリの排出を開始することができる。例えば、一度バッテリパックを使用した後には、低抵抗器(low value resistor)又は電気的特徴に端子を接続することによってバッテリを短絡させることができる機械的特徴が、回路についても同じタスクを達成することができる。また、外科手術の終了後にハンドル40内にバッテリパックが残っている場合、いくつかの実施形態では、ハンドルの制御システムが、最大制限時間後に機能を無効にしてバッテリパックを排出するようにプログラムされる。例えば、メモリモジュールを含む電源の実施形態では、マイクロコントローラが、所定数の発射ストローク後にメモリモジュール上の発射回数記憶位置などの記憶位置を修正できる発射管理モジュールを含むことができる。マイクロコントローラは、起動動作シーケンスにおいて発射回数記憶位置を評価するように構成することができる。この記憶位置によってバッテリが使用されていることが示された場合、いくつかの実施形態では、マイクロコントローラを、ステープラを無効にして電源内の放電回路を作動させるように構成することができる。マイクロコントローラは、1つの実施形態では12時間よりも長い期間などの所定の期間にわたってハンドルアセンブリがオンになっていた場合、1つの実施形態では12回などの所定の回数よりも多く発射が行われた場合、手動オーバーライド復帰機構が展開された場合、又は回復不能な故障が生じた場合などの他の所定の動作条件においても放電回路を作動させるように構成することができる。
【0036】
図4図10に、電動ハンドル内で使用される位置センサ機構の実施形態を示す。動作時には、モータギア114が回転すると、これに対応してハンドル40内に取り付けられたクラウンギア142が回転する。クラウンギア142は、ポテンショメータに結合されることにより、ポテンショメータにおける抵抗の測定変化に基づいてモータギア114の位置、従って作動ラックの実際の位置を特定することができる。いくつかの実施形態では、制御システムを配置できる回路基板144にポテンショメータを取り付けることができる。
図示の実施形態は、ポテンショメータに基づく位置センサ機構を含むが、他の実施形態では、例えばホール効果センサを含む磁気エンコーダの使用、作動シャフトが所定の距離だけ移動した時に作動するリミットスイッチの使用、作動シャフトに沿ったパターンの移動を測定するフォトダイオード、モータのシャフト上に位置する光学エンコーダ、又はその他の位置検知システムなどの光学系の使用を含む他の位置検知機構を使用することもできると想定される。
【0037】
関節運動機構
図11図17に、電動ハンドル40の関節運動機構の実施形態を示す。図示の実施形態では、ハンドルが、シャフトの遠位端におけるジョーアセンブリを、完全な関節運動位置において長手方向中心位置に対するいずれかの方向に最大45°関節運動させることができる。いくつかの実施形態では、電動ハンドルが、ハンドルの近位端において手動で作動される関節運動ノブ190に結合された一連のコンポーネントを含む手動関節運動機構を使用する。他の実施形態では、手動で作動される関節運動ノブ及び関節運動機構のいくつかの関連する要素を、ハンドルの遠位端に隣接する位置などのハンドル上の他の位置に配置することもできる。
【0038】
図11及び図12を参照すると、リロードシャフトがハンドルに結合されると、関節運動機構は、リロードシャフト内を長手方向に延びる関節運動部材に結合される。関節運動機構が長手方向に作動すると、関節運動部材がシャフトに対して近位方向又は遠位方向に並進して、シャフトの遠位端におけるジョーアセンブリを関節運動させる。
【0039】
図11を参照すると、関節運動機構は、1又は2以上のボールベアリング194が乗ることができる少なくとも1つの螺旋溝又はねじ山195を有するボールねじ192を含む。図示の実施形態では、関節運動機構が、2つのねじ山195内に係合できる2つのボールベアリング194を含む。ボールベアリング194は、ボールねじ192の半径方向外側に位置するボールスリーブ191のボールベアリングアパーチャ189内に配置される。ボールベアリング194は、ボールベアリング194の半径方向外側に位置する解除スリーブ196によってねじ山195内に維持される。接続ピン193などによってボールスリーブ191に結合された関節運動ノブ190が回転すると、ボールスリーブ191が回転軸の周囲で回転してボールベアリング194がねじ山195内を移動し、これに対応してボールねじ192が長手方向に並進する。ジョーアセンブリの関節運動は、関節運動ノブ190を回転させることに対応してボールスリーブ191及びボールベアリング194が回転軸の周囲で回転する一方で、これらの長手方向位置が回転軸に沿って一定であることによって達成される。この時、ボールねじ192のねじ山195内に係合したボールベアリング194は、ボールねじ192を回転軸に沿って前方及び後方に並進させる。図示の実施形態では、ボールスリーブ191が概ね管状であって内部にキャビティが形成され、ボールねじ192の一部がキャビティ内に位置してキャビティ内を長手方向に並進する。図示の関節運動機構の実施形態は、ボールねじのねじ山に係合できる2つのボールベアリングを含むが、他の実施形態では、関節運動機構が、例えば単一の螺旋ねじ内に位置する単一のボールベアリング、又は対応する数の螺旋ねじ山内の3又は4以上のボールベアリングなどの2つよりも少ない又は多くのボールベアリングを有することもできると想定される。
【0040】
図11及び図12を参照すると、ボールねじ192は、一対の関節運動リンク202に結合された遠位端200に延びる。関節運動リンク202は、互いに間隔を空けることによって、ハンドル内の駆動システム及び作動シャフトの半径方向外側に位置できることが望ましい。関節運動リンク202の遠位端は、ハンドルの遠位端の作動アダプタの半径方向外側に同軸的に位置することができる関節運動アダプタ204に回転可能に結合することができる。この回転結合は、比較的低い摩擦特性を有する関節運動ベアリング205を含むことができる。この関節運動ベアリング205は、関節運動機構の動作中に、結合されたリロードシャフトのハンドルアセンブリに対する回転、及び関節運動アダプタ204の長手方向の動きを容易にすることができる。図示の関節運動機構の実施形態は、ハンドル内の作動機構から横方向にオフセットされた2つの関節運動リンクを含むが、他の実施形態では、関節運動機構が、例えば1つの関節運動リンク、或いは3又は4以上の関節運動リンクなどの2つよりも少ない又は多くの関節運動リンクを有することもできると想定される。
【0041】
引き続き図11図13を参照すると、関節運動アダプタ204は、シャフトがハンドルに結合された時に、バイオネット接続によってシャフト内の関節運動部材に接続することができる。ねじ山195は、ボールねじを近位方向に動かすと、ハンドルから見た時にジョーアセンブリが長手方向中心位置に対して左側に関節運動し、ボールねじ192を遠位方向に動かすと、ハンドルから見た時にジョーアセンブリが長手方向中心位置に対して右側に関節運動するように構成することができる。図12及び図13には、動作範囲の終端を定める完全に関節運動した構成にある関節運動機構を示す。
【0042】
ボールねじ192の螺旋ねじ山195は連続しているので、関節運動機構は、ジョーアセンブリが所望の動作範囲間で実質的に無限の角度位置まで関節運動することを可能にできるという利点を有する。いくつかの実施形態では、関節運動機構を、シャフトの長手方向軸線によって定められる長手方向中心位置に対して-45°~+45°のジョーアセンブリの関節運動動作範囲をもたらすように構成することができる。他の実施形態では、関節運動機構を、+/-45°を上回る関節運動をもたらす範囲、又は+/-45°を下回る関節運動をもたらす範囲を含む他の関節運動動作範囲をもたらすように構成することもできる。いくつかの実施形態では、関節運動機構を、長手方向中心位置に対して単一方向に関節運動をもたらすように構成することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ボールねじ192上のねじ山195のピッチが可変である。例えば、ねじ山195は、ジョーアセンブリが関節運動するのに大きな力を必要とし得る場合にはより高い機械的倍率(mechanical advantage)を有利にもたらすように、ねじ山の端部に向かって相対的に狭くなるピッチを含むことができる。ねじ山195は、ジョーアセンブリが関節運動するのに小さな力を必要とし得る場合には比較的低い機械的倍率での素早い動きを可能にするように、ねじ山の中心に向かって相対的に広くなるピッチを含むことができる。他の実施形態では、関節運動ノブを回転させることによるステープラのジョーアセンブリの関節運動の量が、関節運動機構の関節運動範囲にわたって変化しない比例的なものになるように、ねじ山195が一定のピッチを含む。このような一定ピッチのねじ山が付いたボールねじは、作動機構の動作中に容易に予測可能な応答をもたらすことが望ましい。
【0044】
図14図15を参照すると、関節運動機構は、関節運動機構をあらゆる関節運動位置から長手方向中心位置に有利にリセットできる解除機構を含むことができる。解除機構は、ユーザが解除ボタン198を押すことによって動作する。図示の実施形態では、解除ボタン198が、関節運動ノブ190内に半径方向に入れ子状に配置される。
【0045】
図14を参照すると、解除ボタン198を操作すると、解除スリーブ196が遠位方向に前進する。解除スリーブ196の半径方向内面には、相対的に小さな内径を有する係合面186と、相対的に大きな内径を有する解除面188とを含むように段差が付いており、係合面と解除面との間は滑らかに傾斜する。動作時には、解除スリーブの係合面が、ボールねじ192のねじ山195内にボールベアリング194を維持する。解除ボタン198が押されると、係合面が遠位方向に前進することによってボールベアリング194がねじ山195から解放され、ボールスリーブ内のボールベアリングアパーチャ189を通じて半径方向外向きに前進して解除面に接触することができる。
【0046】
引き続き図14を参照すると、ボールベアリング194がねじ山195から解放された状態では、関節運動機構を中心位置に付勢することができる。いくつかの実施形態では、ボールねじ192が、2つのばねなどの付勢部材とシャフトからのばね力とによって中心位置に付勢される。ねじ山195に沿って中心位置に位置するボールベアリング194は、ジョーアセンブリの長手方向中心位置に対応する。
【0047】
図15を参照すると、解除ボタン198が元の構成(undisturbed configuration)に復帰できるようになると、解除スリーブ196がばねによって近位方向に後退する。解除スリーブ196が近位方向に動くと、ボールベアリング194がボールねじのねじ山195と係合するように強いられる。この結果、関節運動機構を使用してジョーアセンブリを長手方向中心位置から関節運動させることができ、或いはジョーアセンブリが長手方向中心位置に存在する状態でステープラを使用することができる。
【0048】
図16図17には、関節運動機構のいくつかの実施形態のシャフト認識及び関節運動ロックアウト機構(shaft recognition and articulation lockout mechanism)300を示す。関節運動機構は、ハンドルアセンブリに器具シャフトが結合されていない場合に関節運動機構を中心位置に維持する関節運動ロックアウト機構を含むことができる。従って、関節運動アダプタ204の中心位置が維持されて、上述した器具シャフトとハンドルアセンブリとのバイオネット結合が容易になる。器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない時にも関節運動機構が係合構成で維持されていれば、器具シャフトをハンドルアセンブリに結合しようとして器具シャフト内の関節運動部材を関節運動アダプタ204と位置合わせすることが困難になる恐れがある。図示のハンドルアセンブリの実施形態では、関節運動ロックアウト機構をシャフト認識機構に結合することができる。
【0049】
引き続き図16図17を参照すると、シャフト認識及び関節運動ロックアウト機構は、ハンドルアセンブリの遠位端におけるロックアウトスリーブ302と、ロックアウトスリーブに結合された少なくとも1つのロックアウトアーム304とを含む。図示の実施形態では、ロックアウトスリーブ302が関節運動アダプタ204の半径方向外側に位置することができる。図示のように、関節運動ロックアウト機構は、解除スリーブ196に結合された近位端からロックアウトスリーブ302に結合された遠位端までハンドルアセンブリ内を長手方向に延びる2つのロックアウトアーム304を含む。ロックアウトアームは、関節運動リンク202及び作動シャフト120、並びにその他の駆動機構コンポーネントの横方向外側に位置することができる。他の実施形態では、1つ又は2つよりも多くのロックアウトアーム304がロックアウトスリーブ302を解除スリーブ196に結合することも、ロックアウトアーム304を図示の実施形態とは異なる横方向位置に配置することもできる。
【0050】
動作時には、ハンドルアセンブリに器具シャフトが結合されると、ロックアウトスリーブ302が、器具シャフトの近位端におけるボス、タブ、カラー又はその他の要素に接触する。バイオネット結合が行われているので、この接触によってロックアウトスリーブが近位方向に所定量だけ並進する。器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない場合(図16)、関節運動ロックアウト機構及び解除スリーブ196は、ボールベアリングが解除スリーブ196の解除面に接した状態で解除スリーブ196が配置されるように構成される。従って、関節運動機構はロックアウト構成にある。従って、器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない場合には、ボールベアリングがボールねじのねじ山から解放されているので、関節運動機構を作動させることなく関節運動ノブを回転させることができる。
【0051】
図17を参照すると、器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されると、関節運動ロックアウト機構は係合構成に移行する。器具シャフトがロックアウトスリーブに係合すると、ロックアウトスリーブ302と、これに結合されたロックアウトアーム304とが近位方向に並進する。ロックアウトアーム304の近位端は、関節運動機構の解除スリーブ196に結合され、これによってロックアウトアーム304が近位方向に移動すると解除スリーブ196も近位方向に前進して、ボールベアリングをボールねじのねじ山に係合させるようになる。従って、器具シャフトが取り付けられた場合、関節運動ノブを回転させると関節運動アダプタが並進して、器具シャフトに結合されたエンドエフェクタを関節運動させる。
【0052】
図18及び図19を参照すると、関節運動機構及びシャフト認識/関節運動ロックアウト機構の各々は、それぞれの機構の位置を識別するセンサ306、308を含むことができる。図示の実施形態では、関節運動機構のセンサが、1つの関節運動リンク202上に形成された歯付きラック(toothed rack)とギア係合するポテンショメータを含み、シャフト認識/関節運動ロックアウト機構のセンサが、1つのロックアウトアーム304とギア係合するポテンショメータを含むことができる。いくつかの実施形態では、関節運動機構及びシャフト認識/関節運動ラッチ機構の各センサを、制御システムを配置できる回路基板144に取り付けることができる。従って、制御システムは、電動ハンドルの開放/閉鎖、発射及び復帰動作中に関節運動位置データ及びシャフト認識位置データの一方又は両方を取り込んでモータ駆動プロファイル(motor drive profile)を修正することができる。例えば、制御システムは、関節運動位置を取り込んで、測定されたアクチュエータラック及びアクチュエータ位置に補正値を適用することにより、所定の測定された関節運動を考慮して補正されたアクチュエータの位置に基づいてモータの特定の動作状態を制御できるようになる。図示の実施形態は、ポテンショメータに基づく位置センサ機構を含んでいるが、他の実施形態では、他の位置検知機構を使用することもできると想定される。
【0053】
手動オーバーライド復帰システム
図20図27に、電動ハンドルの手動復帰機構の実施形態を示す。手動復帰機構は、電源の故障、他の動力部品の故障、或いは機械的故障又は拘束の場合に冗長復帰機構を有利に提供することができる。
【0054】
図20図25を参照すると、手動復帰機構は、ジョーアセンブリの開放構成に対応するハンドル内の最近位位置に作動シャフト120を戻すために順に操作される3つの個別の独立して動作可能なサブアセンブリを含む。図示のように、手動復帰機構170は、復帰ロック機構、シャフト回転機構、及びシャフト後退機構を含む。図20には、復帰ロック機構がロック構成にある電動動作モード中の電動ハンドルを示す。動作中、ステープラを手動で開放構成に戻すことが望ましい場合には、最初に復帰ロック機構を作動させて手動復帰機構をロック解除する。
【0055】
図21図22に示すように、復帰ロック機構を作動させるには、最初にハンドルアセンブリのハウジングに対して復帰ロック171を近位方向に摺動させる。この復帰ロック171の動きにより、シャフト回転機構及びシャフト後退機構がロック解除される。図示の実施形態では、復帰ロック171が、シャフト回転機構の動きを妨げていた位置から移動して、シャフト回転機構を使用できるように露出させる。同時に、復帰ロック171は、シャフト後退機構上のロック突出部173又はタブから解放されて、シャフト後退機構がハンドルアセンブリから離れて枢動することを可能にする。復帰ロックが近位方向に摺動すると、シャフト後退機構のレバーがハンドルアセンブリから離れて付勢され、ハンドルアセンブリから離れて枢動できるようになる。
【0056】
図23及び図24を参照すると、復帰ロック171は、近位方向に摺動して復帰機構をロック解除すると、ハンドルアセンブリの制御装置に電気的に結合してハンドルアセンブリを停止させることができる。従って、ひとたび復帰ロック機構が操作されると、たとえユーザが手動復帰機構及び駆動システムを繰り返し使用するために手動で再配置しようと試みた場合でも、ハンドルをそれ以上使用できなくすることができる。図示の実施形態では、ハンドルアセンブリが電動動作するように構成されている場合(図23)、制御装置を有する回路基板144から復帰ロックが電気的に切り離される。復帰ロックは、近位方向に摺動して復帰機構をロック解除すると、回路基板144上の回路に電気的に係合する型打ちばね部品(stamped spring component)175を近位方向に動かしてハンドルアセンブリを停止する。ばね部品175は、近位方向のみに動き、たとえ復帰ロックがその初期位置に向かって遠位方向に戻った場合でも遠位方向に戻らないように構成される。従って、復帰ロック171を摺動させることによって復帰機構をロック解除すると、ハンドルアセンブリの電動機能は恒久的に作動不能になる。
【0057】
図25及び図26を参照すると、ユーザは、手動復帰機構170のシャフト回転機構を操作するために、この時点では復帰ロックの動きによって阻まれていない、ハンドルの外面上に延びる回転レバー172を回転させる。回転レバー172は、作動シャフトに回転可能に結合されたシャフト回転カラーに結合される。図示の実施形態では、作動シャフト120が、シャフト回転カラー176を貫通して摺動可能である。従って、シャフト回転カラー176を回転させると、作動シャフト120がその長手方向軸線の周囲で約90度回転する。この回転は、作動シャフトのラック122を駆動システムの補助ギア116との係合から解除して位置決めする。作動シャフト120は作動アダプタ(図5)に回転可能に結合されているので、この回転は、作動アダプタに影響を与えることなく行うことができる。
【0058】
図示の実施形態は、ユーザによって回転される回転レバー172を有するシャフト回転機構を含むが、他の実施形態では、シャフト回転機構を、復帰ロックが近位方向に動いた時に自己展開するように構成することもできる。例えば、自己展開するシャフト回転機構は、ねじれ付勢(torsional bias)を有するシャフト回転カラーを含むことができる。いくつかの実施形態では、シャフト回転カラーがねじりばねによってハンドルアセンブリに結合される。復帰ロックが近位方向に摺動すると、シャフト回転のねじれ付勢によって作動ラックが回転し、補助ギアから解放されてシャフト後退機構と係合しやすくなる。
【0059】
図26及び図27を参照すると、シャフト回転機構が操作されると、シャフト後退機構が動作して作動シャフトをハンドル内で近位方向に戻すことができる。復帰ロックをハンドルアセンブリ内で近位方向に摺動させると、電動ハンドル上の復帰レバー180がロック解除される。復帰レバー180は、枢動継手(pivot joint)184において復帰爪(return pawl)182に枢動可能に結合される。作動シャフト120のラック122は、回転して駆動システムとの係合状態から外れた時に、回転してシャフト後退機構と係合している。復帰レバー180は、1回又は一連の復帰サイクル(図26図27)を通じて回転して復帰爪182を作動シャフト120上のラック122に係合させ、作動シャフト120をラチェット式動作でハンドル内の近位方向に後退させることができる。
【0060】
図27A図27Cを参照すると、復帰爪182は、作動シャフトの後退を容易にするように構成することができる。図示の実施形態では、復帰爪182が、復帰サイクルの一部の最中にモータマウントのガイド部材127と相互作用するように配置された突出ボス(protruding boss)又は第2の爪歯(pawl tooth)183を含む。第2の爪歯183がガイド部材127に接触すると、復帰爪182は、作動シャフト120のラック122との係合を制限される(図27B)。第2の爪歯183は、そうでなければユーザが比較的低い機械的倍率を有するようになる復帰サイクルの一部の最中に、復帰爪182とラック122との係合を制限するように配置できることが望ましい。図示のように、第2の爪歯183は、復帰レバー180が作動シャフト120の長手方向軸線に対して所定の角度で配置されて所望の機械的倍率をもたらす(図27C)まで、復帰爪182がラック122に係合するのを防ぐ。
【0061】
図28図31に、電動ハンドルの手動復帰機構の別の実施形態を示す。手動復帰機構170’のコンポーネント及び動作は、図20図27の手動復帰機構170に関して上述したものと同様である。しかしながら、手動復帰機構170’の使用時には、復帰ロック及びシャフト回転機構の機能をワームギア駆動式のシャフト回転カラー176’によって提供することができる。従って、ユーザは、例えば六角棒スパナ(hexagonal key)などを用いてワームギアドライブを回転させることによって、最初に作動シャフト120を電動駆動システムから離して回転させることができる。シャフト回転機構は、ワームギアの回転を通じてシャフト後退機構を解除し、作動ラックを電動ドライブから切り離し、作動ラックをシャフト後退機構と係合するように位置決めする(図31)。手動復帰機構170’のシャフト後退機構は、復帰レバー180’が復帰爪182’に枢動可能に結合された、手動復帰機構170に関して上述したものと同様のラチェット式動作を含む。
【0062】
二位置ロックアウト機構
図32に、独立した空のジョーアセンブリと発射済みのリロードロックアウト機構とを有する外科用ステープラ装置の細長いシャフトと共に使用されるリロードカートリッジ250を示す。以下でさらに説明するように、ジョーアセンブリ内にリロードカートリッジ250が存在せずに、ユーザが開閉ストローク(open-close stroke)でジョーアセンブリを把持しようと試みた場合、二位置ロックアウトレバーが第1のロック位置に移動する。図示のように、リロードカートリッジは、リロードがジョーアセンブリのリロード支持体(reload support)内に位置する時に空のジョーアセンブリロックアウト機構を無効化(defeat)する第2の位置に二位置ロックアウトレバーを配置するようなサイズ及び位置決めの第1のロックアウトアクチュエータを含む。第1のロックアウトアクチュエータは、カートリッジの本体の側壁から横方向内向きに延びる傾斜ボス(ramped boss)252を含むことができる。
【0063】
引き続き図32を参照すると、図示の実施形態では、リロードカートリッジ250が、未発射のリロードがジョーアセンブリ内に位置する時に発射済みのリロードロックアウト機構を無効化するロック解除位置に二位置ロックアウトレバーを配置するようなサイズ及び構成の第2のロックアウトアクチュエータを含む。従って、二位置ロックアウトレバーは、2つのロックアウト位置に加えてロック解除位置にも枢動することができる。いくつかの実施形態では、第2のロックアウトアクチュエータが、リロードカートリッジ250のスライダ255から近位方向に延びる尾部(tail)254を含む。リロードカートリッジ250が未発射状態の場合、スライダ255は、スライダ尾部254が近位方向に延びてロックアウトレバーに係合するように近位位置に存在する。発射部材は、発射ストロークにおいて遠位方向に進むと、リロードカートリッジ内のスライダに当接してスライダを遠位方向に前進させる。従って、リロードカートリッジ250が部分的に発射した(又は完全に発射した)状態になると、近位方向に延びるスライダ尾部254は、発射済みのリロードロックアウト機構を無効化する位置に存在しなくなる。
【0064】
図33に、独立した空のジョーアセンブリと発射済みのリロードロックアウト機構とを有する外科用ステープラ装置の細長いシャフトアセンブリと共に使用される発射梁(firing beam)226を示す。発射梁226は、近位端から遠位端230に延びる。発射梁226の遠位端230には、概ねI形の梁構成を有する発射部材240が配置される。I形梁発射部材240の上側及び下側水平フランジ242、244がジョーアセンブリの第1及び第2のジョーのチャネルに乗ってジョーを接近させ、その後のステープル発射中にジョーの間隔を維持する。I形梁プロファイルの垂直部分には、ステープルの行間で組織を切断する切刃(cutting blade)245が配置される。I形梁発射部材240は、連動嵌め(interlock fit)、溶接、別の接合法、又はこれらの何らかの組み合わせによって発射梁226の遠位端に取り付けることができる。I形梁発射部材240の近位縁は、発射梁226が開いたジョーアセンブリに対応する完全に後退した位置にある状態でロックアウトレバーの近位部分に載ることができる、近位方向に延びる突出部又は尾部247を有することができる。
【0065】
引き続き図33を参照すると、発射梁は、空のジョーアセンブリロックアウト機構と共に使用される第1のロックアウトノッチ222と、発射済みのリロードロックアウト機構と共に使用される第2のロックアウトノッチ224とを含むことができる。図示の実施形態では、第1のロックアウトノッチ222が、発射梁226の隣接する下縁220から第1の高さだけ延びる。以下でさらに説明するように、第1の高さは、リロードカートリッジが存在しない状態でジョーアセンブリを接近させようとする試みによって空のジョーアセンブリロックアウトが作動した時に、ロックアウトレバーの近位端の高さに対応するように選択される。
【0066】
引き続き図33を参照すると、図示の実施形態では、第2のロックアウトノッチ224が、第1のロックアウトノッチ222の近位の発射梁上に位置する。第2のロックアウトノッチ224は、発射梁226の隣接する下縁220から第2の高さだけ延びる。以下でさらに説明するように、第2の高さは、以前に発射済みの又は部分的に発射済みのリロードを発射しようとする試みによって発射済みのリロードロックアウト機構が作動した時に、ロックアウトレバーの近位端の高さに対応するように選択される。
【0067】
図示の発射梁226の実施形態は、実質的に連続する第1のロックアウトノッチ222及び第2のロックアウトノッチ224を有することにより、発射梁の隣接する下縁220が第1のロックアウトノッチ222及び第2のロックアウトノッチ224に対応する長手方向距離にわたって軽減される。他の実施形態では、発射梁の下縁の軽減されていないセグメントによって、第1のロックアウトノッチ及び第2のロックアウトノッチを互いに離間することもできると想定される。以下でさらに説明するように、第1のロックアウトノッチ及び第2のロックアウトノッチの高さ及び長手方向位置は、ステープラハンドルアセンブリの所望の動作特性を達成するように構成することができる。
【0068】
図34及び図35に、空のジョーアセンブリロックアウト機構及び発射済みのリロードロックアウト機構を示す目的で様々なコンポーネントを隠したジョーアセンブリ270の一部を部分的分解図(図34)及び切欠側面図(図35)で示す。いくつかの実施形態では、ロックアウト機構が、二位置ロックアウトレバー280、付勢ばね290、第1のロックアウトノッチ222、及び第2のロックアウトノッチ224を含む。三位置ロックアウトレバー280は、リロードカートリッジ上の第1のロックアウトアクチュエータ及び第2のロックアウトアクチュエータに係合するように構成された遠位端282と、遠位端に隣接する枢動軸284と、第1のロックアウトノッチ又は第2のロックアウトノッチのいずれかに係合するように、或いはいずれにも係合しないように構成された近位端286とを有する。付勢ばね290は、枢動軸284の遠位側のロックアウトレバー280の端部を第2のジョー274のリロード支持体に向かって下向き方向に付勢する少なくとも1つの下側ばねアーム292を有する。図示の実施形態では、付勢ばねが2つの下側ばねアーム292を有し、これらの間には発射部材240及び発射梁226が通過できる間隙が存在する。付勢ばね290は、第1のジョー272を開放構成に向けて付勢する少なくとも1つの上側ばねアーム294を有することができる。付勢ばね290は、発射梁226にまたがるように構成できるとともに、少なくとも1つの下側ばねアーム292と少なくとも1つの上側ばねアーム294とが延び出る中央サドル部材を有することができる。
【0069】
図36図41に、2つのロックアウト機構の動作を示す。これらのジョーアセンブリのいくつかの実施形態の近位端の部分的切欠側面図には、ロックアウト機構の動作の視認性を高めるために、ジョーアセンブリの(付勢ばねなどの)いくつかの要素を示しておらず、(発射部材240などの)いくつかのコンポーネントを透明要素として示している。図36図39には、第2のジョー274のリロード支持体内に完全な未発射のステープルリロード250カートリッジが位置する時のロックアウト機構の機能を示す。図40には、発射済みのリロードロックアウト機構の動作を示す。図41には、空のジョーアセンブリロックアウト機構の動作を示す。
【0070】
図36には、ジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。ジョーアセンブリは、第1のジョー272が第2のジョー274に対して開放位置に付勢されるような開放構成にある。発射部材240及び発射梁226は、ロックアウトレバー280の近位面が発射部材240の近位方向に延びる尾部247に乗るような完全に近位方向に後退した位置にある。従って、ロックアウトレバー280の遠位端282がリロード支持体からわずかに離れて上昇することにより、リロード支持体とロックアウトレバー280との間にロックアウトアクチュエータが位置できるようになる。
【0071】
引き続き図36を参照すると、ロックアウトレバー280の遠位端282がわずかに上昇すると、リロードカートリッジ本体上に形成された第1のロックアウトアクチュエータの傾斜した近位面又は傾斜ボス252を受け入れることができる。ロックアウトレバー280の遠位端282は、リロード支持体へのジョーアセンブリの挿入時にリロードカートリッジ250が近位方向に摺動した時に第1のロックアウトアクチュエータに係合するように配置された横方向延長部(lateral extension)283(図34)と、第2のロックアウトアクチュエータに係合するように配置された内側面281(図34)とを有する。
【0072】
図37に、リロード250カートリッジが部分的に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の横方向延長部283は、傾斜ボス252の傾斜した近位面283に係合している。リロード250カートリッジが近位方向にさらに摺動すると、横方向延長部283は、リロード支持体に対する第1の高さまで傾斜面を上昇し、ロックアウトレバー280を第2の位置に枢動させて空のジョーアセンブリロックアウト機構を無効化する。空のジョーアセンブリロックアウト機構の動作については、以下で図41を参照しながらさらに説明する。図示の実施形態では、ロックアウトレバー280の遠位端282が第1のロックアウトアクチュエータによってリロード支持体から第1の高さに上昇すると、未発射のリロード250カートリッジの第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254が、第1のロックアウトアクチュエータのすぐ遠位の、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281に係合するように配置される高さに位置決めされる。従って、図37に示すような切欠側面図で見た場合、第1のロックアウトアクチュエータ及び第2のロックアウトアクチュエータは、リロード250カートリッジがリロード支持体に挿入された時にロックアウトレバー280の遠位端282を2つの所定の位置に上昇させるように構成された漸進的傾斜プロファイル(progressive ramped profile)を定める。
【0073】
図38に、リロード250カートリッジがほぼ完全に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281は、第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254の傾斜した近位面に係合している。図示の実施形態では、リロード250のスライダの近位方向に延びる尾部254が、リロードカートリッジが未発射状態の時にロックアウトレバー280の遠位端282に係合する引き込み傾斜面(lead-in ramped surface)を有する。いくつかの実施形態では、ロックアウトレバー280及びスライダ尾部254を、滑らかで比較的低摩擦なリロードの挿入を実現して、カートリッジの挿入中にスライダが拘束される可能性又は意図せず前進する可能性を低減するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、リロード250カートリッジとリロード支持体との間のわずかな角度ずれの可能性にもかかわらずロックアウトレバー280がスライダ尾部との相互作用によって枢動するように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281が丸みを帯びた(radiused)遠位端を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、スライダ尾部254の傾斜した近位面が、リロード支持体に対する第1のロックアウトアクチュエータの高さよりも低い近位端においてリロード支持体に対する第1の高さから延びることができる。従って、リロード支持体内に未発射のリロード250カートリッジが位置する時には、ロックアウトレバー280の遠位端282が、リロードカートリッジとリロード支持体との間の幅広い角度アラインメントで第1のロックアウトアクチュエータから第2のロックアウトアクチュエータにスムーズに移行することができる。
【0074】
図39に、リロード250カートリッジが完全に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281は、第2のロックアウトアクチュエータの傾斜した近位面に沿って第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254上に前進している。このスライダ尾部254の傾斜面に沿った前進によってロックアウトレバー280が枢動軸284の周囲で枢動し、ロックアウトレバー280の遠位端282がリロード支持体に対して第2の高さに来るようになる。ロックアウトレバー280の遠位端が第2の高さにある場合、ロックアウトレバーは、空のジョーアセンブリロックアウト機構のロック解除状態及び発射済みのリロードロックアウト機構のロック解除状態に対応するロック解除位置に存在する。
【0075】
引き続き図39を参照すると、ロックアウトレバー280がロック解除位置にある場合、ロックアウトレバー280の近位端286は、発射梁の下縁よりも低い高さに位置する。従って、発射部材240及び発射梁226は、動作可能に結合された機械的又は電動ハンドルアセンブリ(図1図5)からのユーザ入力に応答して、開閉ストローク及び発射ストロークを通じて遠位方向に前進することができる。従って、ジョーアセンブリのリロード支持体に未発射のリロードカートリッジが挿入されると、空のジョーアセンブリロックアウト機構及び発射済みのリロードロックアウト機構の両方が無効化されて、ユーザがステープラハンドルアセンブリを操作してジョーアセンブリで組織を把持し、発射梁及び発射部材をジョーアセンブリ内で遠位側に並進させることによってジョーアセンブリからステープルを発射することが可能になる。
【0076】
図40を参照すると、リロード250カートリッジが少なくとも部分的に発射されると、リロード250内のスライダが近位側の未発射位置から遠位方向に前進する。発射ストロークが完了すると、スライダがリロードカートリッジ内の遠位位置に残った状態で、復帰又は後退ストロークでのハンドルアセンブリの操作に応答して、発射梁226及び発射部材240を近位方向に後退させることができる。従って、リロード250カートリッジが部分的に又は完全に発射されると、第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部は、ロックアウトレバー280の遠位端282に係合する位置に存在しなくなる。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1のロックアウトアクチュエータ又は傾斜ボス252はカートリッジの本体に対して動かない。従って、部分的に又は完全に発射済みのリロード250がリロード支持体内に位置する場合、第1のロックアウトアクチュエータがロックアウトレバー280の遠位端282に係合して、ロックアウトレバー280の遠位端282をリロード支持体に対して第1の高さに位置決めされる。ロックアウトレバー280の遠位端282がロックアウトレバーの第2の位置に対応する第1の高さに来ると、空のジョーアセンブリロックアウト機構は無効化されるが、発射済みのリロードロックアウト機構はロックされる。
【0077】
引き続き図40を参照すると、ロックアウトレバー280が第2の位置にある場合、ロックアウトレバー280の近位端286は、発射梁226上の第2のロックアウトノッチ224に対応する高さに存在する。さらに、いくつかの実施形態では、付勢ばね290(図34)がロックアウトレバー280の遠位端282の上面に力を及ぼして、ロックアウトレバー280の近位端286を発射梁226上の第2のロックアウトノッチ224に対応する高さに維持する傾向にある。従って、発射済みのリロードカートリッジがジョーアセンブリ内に存在する状態でユーザがジョーアセンブリを作動させようと試みた場合、ロックアウトレバー280の近位端286が発射梁226の第2のロックアウトノッチ224内に収容されるまで発射梁226が遠位方向に前進して、発射済みのリロードロックアウト機構の係合を示すとともに、発射梁及び発射部材のさらなる遠位方向の動きを防ぐことができる。
【0078】
引き続き図40を参照すると、いくつかの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構を、開閉ストロークの少なくとも一部においてステープリング装置のジョーアセンブリの動作を可能にするように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第2のロックアウトノッチ224の位置及びロックアウトレバー280の長さを、ジョーアセンブリの完全に閉じた構成又はほぼ完全に閉じた構成に対応する位置における発射済みのリロード機構の係合時に発射梁226が停止する(arrested)ようなサイズ及び構成にすることができる。このような構成のジョーアセンブリでは、発射部材240が、第1のジョー及び第2のジョーを近づける遠位位置に前進してしまっても、刃先245を実質的に引っ込んだ位置に維持する。開閉ストロークを可能にするように構成された発射済みのリロードロックアウトでは、リロードカートリッジからステープルを発射した後に、ユーザが、1又は2以上の開閉ストロークでジョーアセンブリを操作して、潜在的な第2のリロードを適用する様々な位置における組織の厚み及び一貫性を評価できるという利点がある。同様に、トロカールなどの外科的アクセスポートを通じたステープリング装置の挿入では、一般にジョーアセンブリが閉鎖構成であることを必要とし得るので、ユーザは、1又は2以上の外科的アクセスポートを通じてジョーアセンブリを引っ込めて再挿入し、手術部位の様々な位置における組織の厚み及び一貫性を評価することもできる。
【0079】
引き続き図40を参照すると、いくつかの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構を、発射ストロークにおけるステープリング装置の動作を防ぐようにさらに構成することができる。通常、図1図5に関して説明したものなどの本明細書で説明した細長いシャフト及びジョーアセンブリと共に使用されるように構成された機械的電動ステープラハンドルアセンブリは、ジョーアセンブリが閉鎖構成になった時にのみユーザがジョーアセンブリの発射ストロークの動作を積極的に選択できるようにする発射モードセレクタ機構又は発射安全スイッチを含む。従って、いくつかの実施形態では、第2のロックアウトノッチ224の位置及びロックアウトレバー280の長さを、ジョーアセンブリの完全に閉じた構成の近位にある位置に対応する位置における発射済みのリロードロックアウト機構の係合時に発射梁226が停止するようなサイズ及び構成にすることができる。従って、これらの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構が係合すると、ユーザは、ハンドルアセンブリ上で発射ストロークの動作を選択することができなくなる。ハンドルアセンブリ上での発射ストロークの選択を防ぐ発射済みのリロードロックアウト機構の動作は、ロックアウトが係合したことをユーザに示す役割を果たすことが有利である。
【0080】
図41に、リロードカートリッジが挿入されておらず発射部材及び発射梁が長手方向にわずかに前進したジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。リロードが存在しない場合、発射部材240の尾部247がロックアウトレバー280の近位端286から前進すると、付勢ばね290(図34)がロックアウトレバー280の遠位端282の上面にリロード支持体に向けて力を及ぼす。従って、ユーザがジョーアセンブリを開閉ストロークで前進させるようにハンドルアセンブリを作動させたことに応答して発射梁226が最初に前進すると、空のジョーアセンブリロックアウト機構のロック構成に対応する第1の位置にロックアウトレバー280が枢動する。発射梁226が遠位方向に前進すると、ロックアウトレバー280の近位端286が発射梁226上の第1のロックアウトノッチ222に収容されて空のジョーアセンブリロックアウト機構に係合し、発射梁226及び発射部材240のさらなる遠位方向の並進を防ぐ。
【0081】
引き続き図41を参照すると、いくつかの実施形態では、空のジョーアセンブリロックアウト機構を、ジョーアセンブリの実質的に開いた構成に対応する位置において発射梁の動きを停止させるように構成することができる。例えば、発射梁226上の第1のロックアウトノッチ222の位置、ロックアウトレバー280の長さ、及び発射部材240の尾部247の長さは、空のリロードロックアウト機構がジョーアセンブリの開閉ストロークの初期に固定されるようなサイズ及び構成にすることができる。空のジョーアセンブリロックアウト機構が開閉ストロークの初期部分の最中にロックするように構成されている場合には、ジョーアセンブリ内にリロードカートリッジが存在しない場合にユーザがハンドルアセンブリを作動させて外科的アクセスポートを通じて挿入できるほど十分にジョーアセンブリを閉じることができないという利点がある。従って、空のジョーアセンブリロックアウト機構がこのように構成されている場合、ユーザは、うっかり空のジョーアセンブリを手術部位に導入する前に、リロードカートリッジがジョーアセンブリ内に存在しない旨の触覚指示を得られる。さらに、このような空のジョーアセンブリロックアウトは、ジョーアセンブリ内にリロードが存在しないジョーアセンブリに対して、発射部材240の刃先245を実質的に後退した遮蔽位置に維持することが望ましい。
【0082】
光リングユーザディスプレイ
いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリが、発射の困難性に関する情報、試験時間に関する情報及び装置の状態を含む動作データを処理して場合によってはメモリモジュールに記憶又は保存する制御装置を含むことができる。従って、ステープラは、外科医がまさに実行しようとしている発射に関する知的判断を行うことができるように、外科医に特定の動作情報を伝えるユーザディスプレイを含むことが望ましいと考えられる。例えば、場合によっては、クランプ時間、及びクランプされた組織の厚みがステープラのエンドエフェクタにおいてステープルリロードカートリッジの動作パラメータ内でステープリングするのに適したものであるかどうかに関するいくつかの情報をユーザに提供することが望ましいと考えられる。
【0083】
図42を参照すると、いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリが、環状照明「光リング」ユーザディスプレイ402サブアセンブリなどの多機能照明ディスプレイをユーザディスプレイとして含むことができる。外科手術中には、ハンドルアセンブリが様々な角度方向に位置変更されて操作されるので、光リングサブアセンブリの環状構成は、あらゆる装置配向からオペレータに視認性の高いユーザディスプレイを提供することが有利である。
【0084】
図43図44を参照すると、図示の実施形態では、光リングユーザディスプレイ402が、環状光反射体404と、環状光リング406と、複数の光源408とを含む。環状光反射体404は、半径方向内向きに光を放つ光源408からの照明が環状光反射体から反射されて環状光リングを通じて伝播するように、環状光リング406の半径方向内側に配置される。光リング406の材料は、高度な光透過率を可能にしながらユーザに外部輝点(external bright spots)が見えないように光分散を制御するように選択することができる。図示のように、ユーザディスプレイ402は、光リングユーザディスプレイ402の周囲でほぼ等間隔を空けた4つの光源408を含む。いくつかの実施形態では、これらの各光源が、様々な色及び輝度で照明を行うことができるRGB発光ダイオードを含むことができる。光リングユーザディスプレイ402は、リジッドフレックス(Rigid Flex)プリント基板などのフレキシブルプリント基板上の回路基板などのハンドルアセンブリの制御装置に電気的に結合することができる。図示のように、フレキシブルプリント基板410は、環状構成に形成して環状光リング406と環状光反射体404との間に配置することができる。光源408は、環状光反射体404に向けて半径方向内向きに光を放出するようにフレキシブル電気ケーブル410の内面に取り付けることができる。フレキシブルプリント基板及びハウジング反射体の形状は、反射光を最大化して輝点を最小化するいずれかの角度に光源が保持されることを容易に可能にできることが望ましい。
【0085】
光リングユーザディスプレイ402の1つの実施形態を図示して上述したが、光リングユーザディスプレイの他の実施形態は他の態様を含むこともできると想定される。例えば、いくつかの実施形態では、光リングユーザディスプレイ内で4つよりも多くの又は少ない光源408を使用することができ、異なる又はさらなる照明技術を使用することもできる。いくつかの実施形態では、光リングユーザディスプレイに環状光反射体を含めることなく環状光リング406を通じて直接発光するように、フレキシブル電気ケーブル410の外面上に光源を配置することができる。他の実施形態では、ハンドルアセンブリのハウジングの一方又は両方の半分に形成された表面を使用して、独立した環状光リングを使用することなく光源から光を発することができる。
【0086】
図42を参照すると、光リングユーザディスプレイ402を制御装置に電気的に結合して、様々な状態メッセージをユーザに表示するように構成することもできると想定される。ユーザに所望の情報を伝えるように、例えば色、輝度、点滅シーケンス、又は常時オン/オフ照明(steady on/off illumination)を制御することができる。また、いくつかの実施形態では、特定の色遷移又は輝度遷移の発生及び/又は速度を使用してユーザに情報を伝えることもできる。いくつかのディスプレイ制御プロファイルでは、第1の色を使用して、ハンドルが発射作動の可能性がない開放-クランプ機能(open-to-clamp functionality)にあることを示し、第2の色を使用して、ステープラがステープルを発射するように構成された発射モードにあることを示すことができる。さらなる色又は他の印を使用して、発射の完了、発射機構の反転及び発射エラーの発生などのステープラの他の事象又は動作状態を表すこともできる。
【0087】
制御装置
図示のハンドルアセンブリのいくつかの特徴に関して上述したように、ハンドルアセンブリは制御装置をさらに含むことができる。図示のように、制御装置は、様々な追加のセンサ、電源及びユーザディスプレイコンポーネントが電気的に結合された回路基板に電気的に結合されたマイクロコントローラを含むことができる。制御装置は、モータを駆動して、開放-クランプ機能を提供した後にステープラジョーアセンブリにおいてステープル発射機能を提供するように構成することができる。制御装置は、モータ負荷センサ、作動ラック位置センサ、シャフト認識センサ及び関節運動位置センサのうちの1つ又は2つ以上からのセンサデータに基づいてモータの動作パラメータを修正するようにさらに構成することができる。
【0088】
図45に、電動ハンドルの例示的な制御システムのデータ及び電力の流れを示す概略的フロー図を示す。図示のフロー図では、制御システムが、図示のマイクロコントローラ502を含む。様々な実施形態では、マイクロコントローラが、特定用途向けファームウェア及び/又はソフトウェアを実行する特定用途向け集積回路又は汎用マイクロコントローラを含むことができる。図示のように、マイクロコントローラは、電源内のバッテリ504から電力とバッテリ状態に関するデータとを受け取る。マイクロコントローラは、モータドライバ506、電流モニタ508、作動ラック位置検知機構510、並びにシャフト接続及びタイプモニタ512などのステープラの様々な機械的ハードウェアからさらにデータを受け取る。関節運動機構に関して上述したように、マイクロコントローラ502は、関節運動位置検知機構514から関節運動位置情報をさらに受け取ることができる。マイクロコントローラは、トリガー位置センサ516及び押しボタンスイッチを介してユーザからのデータをさらに受け取ることができる。制御システムは、モータドライバ506を通じて電動ハンドルの駆動システムを作動させる制御信号を出力することができる。制御システムは、いくつかの実施形態では取り外し可能モジュールを含むことができるメモリモジュール520にいくつかの動作パラメータ情報を出力できるとともに、本明細書で説明した光リングユーザディスプレイなどのハンドル上のLED照明522を通じてユーザに見えるいくつかのデータを出力することもできる。いくつかの実施形態では、制御システムを、独立した触覚モジュールの作動、又は本明細書で図56図57を参照しながらさらに説明するような、モータの回転に順方向及び逆方向の1又は2以上のわずかな変位を指示できる触覚生成モータ駆動プロファイル(haptic generation motor drive profile)の作動などによって、ユーザはフィードバック感覚を感じるけれども作動ラックの位置は著しく影響を受けないような触覚フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラを、例えばBluetooth(登録商標)、WiFi又は別の無線プロトコルなどを介して無線で情報を送受信するように構成することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、制御システムが、電動ハンドルの動作パラメータをさらに定めるようにも構成される。例えば、制御システムは、電源又は制御システム自体上のメモリモジュールに問い合わせることによって、電動ハンドルが1回よりも多くの処置に使用されたかどうかを検出することができる。いくつかの実施形態では、ステープリングシステムが1回の処置で使用されるように設計され、再滅菌されるように設計されていない。また、制御システムは、電源又は制御システム上のメモリモジュールに問い合わせを行ってステープルの発射回数を検出して、さらなる発射を完了するのに十分なバッテリ電力が残っているかどうかを評価することもできる。
【0090】
いくつかの実施形態では、制御システムが、ステープルの発射を防ぐことができる組織特性を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、制御システムが、駆動システムのモータの位置、速度及び供給トルクをモニタすることができる。制御システムは、ジョーアセンブリを閉じるのに超過時間が必要な場合、又はジョーが低速で閉じられている場合に、ジョーアセンブリを閉じるのに過剰トルクが必要であるかどうかを検出することができる。これらの状態は、ジョーアセンブリ内の組織の厚み又は密度が大きすぎてステープラが効果を発揮できないことを示すことができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、作動シャフトの位置を時間に対してモニタし、このモニタされた位置及び時間をベースライン「ゼロ負荷」時間基準位置及び時間に対して評価して、厚み及び密度などの組織特性を算定することができる。駆動システムが所定の動作パラメータを超過した場合、制御システムは、エラー状態を示して発射動作を停止することができる。
【0091】
図46に、制御システムの例示的な発射シーケンスの動作フローチャートのブロック図を示す。図示のように、制御システムは、トリガー及び発射ボタンからのユーザ入力と、様々なセンサ及びモニタからのハードウェア入力とを統合して、ジョーアセンブリを完全に開いた状態530から発射シーケンス534への完全に閉じた状態532に前進させ、その後に完全に開いた状態530に戻る。
【0092】
発射動作中、制御装置は、提供すべき作動シャフトの位置をモニタして、所望のモータ駆動プロファイルを提供することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラが、作動ラック位置の様々な動作ゾーンを識別するモータ駆動ロジックプロファイルを用いて動作し、例えばこれらの各ゾーン及びこれらのゾーン内の様々な作動ラック位置のモータ速度及びモータ負荷モニタリングなどの所定のモータ駆動パラメータを適用することができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、制御装置内の又は制御装置に電気的に結合されたコンピュータ可読媒体などのメモリモジュールに記憶されたソフトウェア又はファームウェアベースの計算プログラムとすることができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルが、把持器具ゾーン、ロックアウトゾーン、発射ゾーン、完全発射ゾーン、復帰ゾーン及び開放ゾーンのうちの1つ又は2つ以上の動作パラメータ、及びこれらを通じた動作シーケンスを定めることができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、関節運動位置センサ、シャフト認識センサ、モータ負荷モニタ、又はその他のセンサ入力のうちの1つ又は2つ以上から受け取られたセンサ入力に応答して、関連するゾーン及びいくつかの位置を調整するように構成することができる。
【0093】
把持器具ゾーンは、器具シャフトに取り付けられたエンドエフェクタのジョー開放位置とジョークランプ位置との間の作動ラックの動きゾーンに対応する。この領域では、マイクロコントローラを、ユーザによって入力されトリガーポテンショメータなどのトリガー位置センサによってマイクロコントローラに送信されるトリガーの動き度合いに比例してジョーアセンブリを駆動するように構成することができる。トリガーが完全に押圧された場合、装置は、エンドエフェクタのジョーが完全に閉じた位置になる位置に作動シャフトを前進させる。トリガーが完全に解除された場合、装置はジョーの開放に戻る。完全にトリガーを引くと同時に発射ボタンを押すと、作動シャフトはロックアウトゾーンに前進する。他の実施形態では、把持器具ゾーンにおいて、マイクロコントローラを、ジョーの閉鎖量がトリガー動きによって定められるのではなく、把持器具ゾーンにおけるジョーの閉鎖速度がトリガー動きによって定められるように、トリガーの変位角度に比例した割合でモータを駆動するように構成することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、特定のゾーンにおいてパルス幅変調を通じてモータ速度を所望の移動速度に変更することができる。いくつかの実施形態では、把持器具ゾーンにおいて100%未満の負荷サイクルでモータをパルス幅変調することができる。いくつかの実施形態では、把持器具ゾーンにおいて約50%~90%の負荷サイクルでモータを駆動することが望ましいと考えられる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、把持器具ゾーンにおいてモータが70%の負荷サイクルでパルス幅変調されるように構成することができる。
【0095】
ユーザがハンドル上の発射ボタンを押圧した場合、制御装置は、把持器具ゾーンにおけるジョー閉鎖位置からモータ駆動ロジックプロファイルのロックアウトゾーンに進む。ロックアウトゾーンは、発射済みのステープラリロードカートリッジが存在する場合、又はステープラリロードカートリッジが存在しない場合にステープラの発射作動を防ぐ発射ロックアウトを含む、器具シャフト及びジョーアセンブリのモータ制御プロファイルを提供するように構成することができる。この種のロックアウトが動作すると、器具シャフト又はジョーアセンブリにおける発射機構の一部がアクチュエータの所定の作動位置においてさらに前進することが防がれるので、モータの負荷が大幅に増加する可能性がある。従って、制御装置は、ロックアウトゾーンの最中に、予想されるモータ負荷のスパイクについてアクチュエータラック位置センサ及びモータ負荷センサからのセンサ情報をモニタすることができる。
【0096】
本明細書に示すハンドルアセンブリ及び制御装置の実施形態はトリガー及び発射ボタンを含むが、他の実施形態では、ハンドルアセンブリ及び制御装置を、発射ボタンのない単一のトリガー又はトリガーの単一のボタンなどの単一のコントロールで動作するように構成することもできると想定される。これらの単一コントロールの実施形態では、制御装置を、最初のトリガー圧迫(trigger squeeze)時又はボタン押下時に把持ゾーンで動作し、その後の解除及び第2のトリガー圧迫時又はボタン押下時にロックアウトゾーンに進むように構成することができる。さらに、他の実施形態では、ハンドルアセンブリ及び制御装置を、例えば発射シーケンスを通じてモータ及びアクチュエータを遠位方向又は順方向に前進させるように制御装置によって構成された発射ボタン、並びにモータ及びアクチュエータを近位方向又は逆方向に動作させるように構成された反転ボタンなどの二重入力トリガーで動作するように構成することができる。
【0097】
制御装置は、ロックアウトゾーンの開始時の初期停止位置から、パルス幅変調された負荷サイクルをランプアップさせてロックアウトゾーンモータ速度を達成するモータ駆動プロファイルを適用する。いくつかの実施形態では、ロックアウトゾーン負荷サイクルが把持器具ゾーン負荷サイクルよりも小さい。例えば、いくつかの実施形態では、ロックアウトゾーン負荷サイクルが約30%~約60%であることが望ましいと考えられる。他の実施形態では、ロックアウトゾーン負荷サイクルが約45%~55%である。いくつかの実施形態では、ロックアウトゾーン全体を通じてロックアウトゾーン負荷サイクルを約50%とすることができる。ロックアウトゾーン内では、制御装置が、作動ラック位置をモニタして、いくつかの所定の位置に関するモータ負荷を評価する。制御装置は、最初はジョーの閉じた位置から負荷スパイクについて積極的にモータ負荷をモニタしない。アクチュエータ負荷サイクルが比較的低い動作負荷に落ち着くロックアウトゾーン負荷サイクルにランプアップすると、比較的高い負荷が存在し得る。作動ラック位置が所定のロックアウト低位置(lockout low position)に達すると、制御装置は、潜在的なモータ負荷スパイクをモニタするようになる。制御装置は、作動ラックがロックアウト高位置(lockout high position)として定められる位置に並進するまでモータ負荷をモニタし続ける。
【0098】
ロックアウト低位置及びロックアウト高位置は、ロックアウト公称位置(lockout nominal position)の周囲の所定のバッファを定める。ロックアウト公称位置は、ロックアウト機構の動作に起因する予想モータ負荷スパイク位置に対応する。しかしながら、実際のモータ負荷スパイクの位置は、組織の厚み及びジョーの関節運動に関連する様々な要因によって予想ロックアウト公称位置から変位することがあり、従ってロックアウトゾーンは、ロックアウト公称位置のいずれかの側のバッファゾーンに及ぶ範囲内のモータ負荷スパイクを検出するように構成される。
【0099】
いくつかの実施形態では、制御装置が、モータによって引き出された電流を追跡することによってモータ負荷をモニタする。いくつかの実施形態では、ロックアウト電流スパイクが、所定の電流閾値を超えるいずれかの値として定められる。以下でさらに説明するように、制御システムの他の実施形態では、制御装置が、把持器具ゾーンに係合するロックアウト機構の他の実施形態の係合を検出するロックアウトモジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、閾値を、ロックアウト低位置などの所定の位置でサンプリングされた電流値に負荷のスパイクを示すことができる追加の量を加えたものとして定めることができる。いくつかの実施形態では、閾値を、ロックアウト低電流値に追加の少なくとも20mAを加えたものとすることができる。他の実施形態では、閾値を、ロックアウト低電流値に追加の少なくとも50mAを加えたものとなるように定めることができる。さらに他の実施形態では、閾値を、ロックアウト低位置でサンプリングされた電流値に30mAを加えたものとして定めることができる。他の実施形態では、他のモータパラメータをモニタし、他の閾値を使用して負荷スパイクを定めることができる。制御装置がロックアウト低位置とロックアウト高位置との間のモータ負荷スパイクを検出した場合、通常、この状態は、リロードの欠落又は使用に起因して発射ロックアウトが誘発されたことを示す。制御装置が発射ロックアウトを検出した場合、モータ駆動プロファイルは、直ちに作動シャフトを戻してジョーアセンブリをジョーの開放に戻すように構成される。制御装置は、ロックアウトゾーンにおける発射ロックアウトに対応するモータ負荷スパイクを検出しなかった場合には発射ゾーンに進む。
【0100】
発射ゾーンは、ロックアウトゾーンの最後のロックアウト高(lockout high)と完全発射ゾーンの最初の完全発射の開始との間に発生する。制御装置は、モータ駆動負荷サイクルをロックアウトゾーン負荷サイクルから比較的高い負荷サイクルにランプアップさせるモータ駆動プロファイルを有し、このゾーンの継続時間にわたってこの速度で移動する。例えば、いくつかの実施形態では、発射ゾーンの負荷サイクルを70%~100%とすることができる。いくつかの実施形態では、サイクルの継続時間にわたって発射ゾーンの負荷サイクルを約100%とすることができる。
【0101】
完全発射ゾーンは、作動ラックの並進が所定の完全発射開始位置に達した時に開始する。作動ラックが完全発射開始位置に並進すると、制御装置は、モータ負荷サイクルを完全発射ゾーン負荷サイクルにランプダウンさせるモータ駆動プロファイルを適用する。いくつかの実施形態では、完全発射ゾーン負荷サイクルを約30%~80%、望ましくは約40%~60%とすることができる。いくつかの実施形態では、完全発射ゾーン負荷サイクルを約50%とすることができる。制御装置は、電流スパイクの検出を開始するためにモータ負荷もモニタする。完全発射ゾーンにおける電流スパイクは、ジョーアセンブリの発射機構及びリロードがその移動の遠位端に達したことを示す。いくつかの実施形態では、I形梁ジョー閉鎖(I-beam jaw closure)及び発射梁が完全に延び、ジョーアセンブリの遠位端にぶつかっている。いくつかの実施形態では、完全発射開始位置でサンプリングされた電流を上回るいずれかの値として定められる電流スパイクを検出するために、完全発射ゾーン中にモータ負荷をモニタすることができる。
【0102】
制御装置は、上述したシャフト認識センサからのセンサデータを取り込み、ハンドルアセンブリに結合されたジョーアセンブリの長さに基づいて、完全発射ゾーンを開始する完全発射開始位置のために異なる値を割り当てることができる。例えば、30mmのジョーを有するジョーアセンブリでは、45mmのジョーを有するジョーアセンブリと比べて完全発射開始位置が相対的に低くなる。同様に、45mmのジョーを有するジョーアセンブリでは、60mmのジョーを有するジョーアセンブリと比べて完全発射開始位置が相対的に低くなる。いくつかの実施形態では、シャフト認識センサ及び制御装置を、複数のシャフト長さを認識して、これらの認識されたシャフト長さに対応する完全発射ゾーン位置を定めるように構成することができる。例えば、1つの実施形態では、シャフト認識センサ及び制御装置を、30mm、45mm及び60mmのうちの1つ又は2つ以上のジョーアセンブリを含むシャフトについて個別の完全発射ゾーン位置を定めるように構成することができる。また、シャフト認識センサ及び制御装置は、ハンドルアセンブリにいつシャフトが結合されていないかを認識して、このような状態が認識された時に作動ゾーンの一部又は全部を通じたモータの作動を防ぐように構成することもできる。
【0103】
完全発射ゾーンは、完全発射位置において終了する。完全発射位置は、制御装置が完全発射電流スパイクを検出するはずの計算位置に対応する。しかしながら、いくつかの実施形態では、制御装置が、組織の厚み及び関節運動を含む様々な要因に起因してこの位置の前又は後に発生し得る電流スパイクの検出時にのみ復帰ゾーンに進む。完全発射開始位置と同様に、制御装置は、シャフト認識センサからのセンサデータを取り込み、ハンドルアセンブリに結合されたジョーアセンブリの長さに基づいて、完全発射開始位置のために異なる値を割り当てることができる。さらに、いくつかの実施形態では、制御装置が、図19を参照して上述した関節運動センサからのセンサデータを取り込んで、完全発射開始位置及び完全発射位置の調整位置を定めることができる。
【0104】
装置が完全に発射されると、制御装置は復帰ゾーンに進む。復帰ゾーンでは、制御装置が、比較的高速でモータを駆動するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、制御装置が、復帰ゾーンにおいて70%~100%の負荷サイクルでモータを駆動することができる。他の実施形態では、制御装置が、復帰ゾーンにおいて85%~100%の負荷サイクルでモータを駆動することができる。さらに他の実施形態では、制御装置が、ジョーアセンブリのジョー閉鎖位置に対応する位置に作動シャフトが位置決めされるまで、約100%の負荷サイクルでモータを駆動することができる。この時、ユーザは、トリガーを引いてジョーアセンブリのジョー開放位置に対応する作動ラック位置に100%の負荷サイクルでモータを駆動することによって、制御装置を開放ゾーンに進ませることができる。
【0105】
図47図49に、上述したモータ駆動ロジックプロファイルの例を使用したハンドルアセンブリの例示的な動作の態様を示す。図47には、モータ駆動ロジックプロファイルのいくつかの態様を含む、電動ハンドルアセンブリの完全発射及び復帰動作サイクルの概略図を示す。中央矢印540は、結合されたジョーアセンブリのジョー開放位置に対応する較正「0」から開始して、本明細書で説明した作動ラックポテンショメータなどの作動ラックセンサをモニタすることによって定められる指示「カウント」数(indicated number of ‘counts’)だけラベル通りに増加する作動ラックの位置を表す。上述した様々なゾーンには中央矢印にまたがってラベルを付けており、いくつかの位置には番号を付しており、第1の位置はジョー開放位置1に対応し、第2の位置はジョー閉鎖位置2に対応し、第3の位置はロックアウト低位置4に対応し、第4の位置はロックアウト公称位置4に対応し、第5はロックアウト高位置5に対応し、第6の位置は完全発射開始位置6に対応し、第7の位置は完全発射位置7に対応する。完全発射開始位置6及び完全発射位置7は、シャフト認識センサによって認識された異なるシャフト形状に関連する異なる位置値を示すように繰り返される。上記の説明は、特定のモータ動作速度、位置及びジョーサイズを含むが、他の実施形態では、本ハンドルアセンブリの制御装置が、異なる速度、位置及びジョーサイズを含むモータ駆動ロジックプロファイル、又は他のセンサからのセンサデータを取り込んだモータ駆動ロジックプロファイルを取り込むこともできると想定される。
【0106】
図47を参照すると、モータ制御ロジックプロファイルは、ジョー開放位置1とジョー閉鎖位置2との間に広がる把持器具ゾーン542、ジョー閉鎖位置2とロックアウト高位置5との間に広がるロックアウトゾーン544、ロックアウト高位置5と完全発射開始位置6との間に広がる発射ゾーン546、完全発射開始位置6と完全発射位置7との間に広がる完全発射ゾーン548、完全発射位置7からジョー閉鎖位置2まで広がる復帰ゾーン550、及びジョー閉鎖位置2からジョー開放位置1まで広がる開放ゾーン552を含むことができる。図示のモータ制御ロジックプロファイルの実施形態は、把持器具ゾーン542の外側にロックアウトゾーン544を含むが、図32図41のロックアウト機構に関してさらに説明したように、ロックアウトゾーンは、制御システムが図58図61を参照しながら説明するようなロックアウトモジュールを含むことができるように、把持器具ゾーンに重なり合うこともできる。
【0107】
図48及び図49に、本明細書で説明したモータ制御ロジックプロファイルの実施形態を使用して動作するハンドルアセンブリの例示的な発射ストロークにおけるモータ負荷(ミリアンペア単位)対作動ラック位置(カウント単位)のプロットを示す。図48には、ロックアウトゾーン中に作動ラックのロックアウト低位置3とロックアウト公称位置4との間でロックアウトモータ負荷スパイクに遭遇した、閉鎖及びロックアウトゾーンを通じたモータ負荷の1例を示す。上述したように、このようなモータ負荷スパイクに遭遇すると、制御装置は、作動ラックをエンドエフェクタのジョー開放構成に対応する位置に戻す。図示のように、モータ負荷は、ジョー閉鎖位置2の辺りでもスパイクする。この負荷スパイクは、制御装置が把持器具ゾーンからロックアウトゾーンに進む際のモータの停止及び異なる速度での再開に対応することができる。この初期動き負荷スパイク(initial movement load spike)は、作動ラックの約15カウントなどのわずかな並進を要して落ち着くことができる。従って、ロックアウトゾーンでは、制御装置が、ロックアウトゾーンの開始時の過渡的負荷スパイクを越えるロックアウト低位置3までロックアウト状態に対応する負荷スパイクをモニタしない。
【0108】
図49には、完全発射位置7を通じたモータ負荷対ジョー開放からの作動ラック位置1の1例を示す。図示のように、モータ負荷は、ジョー閉鎖位置2におけるロックアウトゾーンの開始及びロックアウト高位置5における発射ゾーンの開始に対応する作動ラック位置において一時的にスパイクすることができる。これらの位置では、制御装置が、モニタされるモータ負荷を一時的に高めるモータ速度変化を指示することができる。
【0109】
図45図46に関して上述したように、マイクロコントローラは、制御システムによって、本明細書で説明する電動ハンドルの把持、発射及び復帰シーケンスにおいてユーザ入力とシステムハードウェア入力とを統合するように構成することができる。制御システムは、マイクロコントローラ上で動作するソフトウェア又はファームウェアシステムにおいて具体化することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラを、電動ハンドルの動作シーケンスを定める単一の制御システムによって構成することができる。他の実施形態では、マイクロコントローラを、ユーザが所望のステープリング動作特性のための所望の動作シーケンスを選択できるように複数の制御システムによって構成することができる。図50図52及び図53図55の概略図に関して、2つの例示的な制御システムのいくつかの態様について説明する。一般に、図50図52の制御システムは、ハンドルが動作を開始する前に、トリガー又は発射ボタンの作動の形のユーザからの手動入力を必要とするように構成される。このような制御システムは、ステープリング動作に対して高度なユーザコントロール及び予測可能性を提供できることが望ましい。図53図55の制御システムは、さらなるユーザ入力を伴わずに続行するように、ステープリング動作のいくつかの部分を自動化するように構成される。このような制御システムは、より効率的なステープリングシーケンスを容易にしてユーザが疲労する可能性を低減できることが望ましい。他の実施形態では、制御システムが、図53図55に示すシステムの自動化された特徴の全部ではなく一部を図50図52のシステムなどのより手動的な制御システムに含めることもできると想定される。制御システムのさらに他の実施形態では、図53図55のシステムにさらなる自動化動作シーケンスを追加することもできると想定される。
【0110】
図50図52に、制御システムの例示的な把持(図50)、発射(図51)及び復帰(図52)シーケンスの動作フローチャートを概略的に示すブロック図を示す。図示のように、制御システムは、ハンドルアセンブリがジョーアセンブリを完全に開いた状態から発射シーケンスへの完全に閉じた状態に前進させてその後に完全に開いた状態に戻すように動作する際に、トリガー及び発射ボタンからの(概ね矩形のブロックに「ユーザアクション」として示す)ユーザ入力と、様々なセンサ及びモニタから報告される(細長い六角形ブロックに「ハンドル位置」として示す)ハンドル位置情報と、(ダイヤモンド形ブロックに「ハンドルアクション」として示す)対応するハンドルアクションとを統合する。
【0111】
図50には、制御システムの電源オン及び把持動作のいくつか態様を概略的に示す。凡例に示す上述したような制御システムのいくつか態様を概略的に示す様々な形状に加えて、例えば図42図44を参照して説明した光リングなどの多色LEDで表すことができるユーザフィードバック指標(user feedback indicia)の1例を、ユーザにハンドルの動作状態を示す選択色、点滅頻度及び負荷サイクルの1例と共に引用符内に示す。他の実施形態では、図50図52の制御システムに関連して他のユーザフィードバック指標を提示することもできると想定される。
【0112】
引き続き図50を参照すると、初期電源オン動作は、白色の滑らかなパルスで示される。初期位置ではジョーアセンブリが開いており、ステープラは、トリガー560の動きに応答してジョーの開閉を行うことができる把持構成にある。ジョーアセンブリ内に未発射のリロードカートリッジが存在する場合、ハンドルアセンブリは、開放位置と閉鎖位置との間のジョーアセンブリの動きが、一般にハンドルから間隔を置いた初期位置からハンドルに接近した圧迫位置(squeezed position)へのトリガーの動きに対応するように動作するように構成される。このトリガーとジョーアセンブリとの概ね比例する動作には、ユーザがジョーを繰り返し開閉して手術野内の所望のステープリング位置及び組織配置を正確に発見できるようになるという利点がある。
【0113】
引き続き図50を参照すると、図示の制御システムでは、ユーザがトリガーを完全にハンドルに近づけた場合にジョーが閉じ、ユーザフィードバック指標がこの閉鎖構成562を青色照明で示す。ジョーがこの閉鎖状態にある場合、図示の制御システムは、さらなるユーザ入力がなければハンドルを把持構成に維持する。従って、完全に近づいた位置からユーザがトリガーを解除した場合、ジョーが(トリガーの解除量に対応する位置まで)開くようになる。ハンドルアセンブリに発射構成に入る指示を行うように制御システムを構成するには、さらなるユーザ入力が必要である。
【0114】
引き続き図50を参照すると、ジョーアセンブリ内にリロードが存在しない場合、或いはジョーアセンブリ内に使用済み又は部分的に使用済みのリロードが存在する場合、ジョーは完全に閉じない。図示の制御システムでは、ユーザフィードバック指標が、ユーザにトリガーを解除してジョーが開放構成に戻るのを可能にするように促す黄色光564を表示する。
【0115】
図50及び図51には、電動ハンドルの制御システムの把持構成及び発射構成の動作を概略的に示す。図示の制御システムでは、トリガーが完全に近づいた位置に保持されてジョーが完全に閉じている(単色の青色光のユーザフィードバック指標によって示される)場合、ユーザは、制御システムがハンドルに発射構成(図51)に入るように指示するためにハンドル上の発射ボタン566を押圧しなければならない。発射構成に入ると、ユーザフィードバック指標は単色の緑色光を表示する。トリガーが完全に近づいた位置に維持された状態で2回目のボタンが押されると、制御システムは、ハンドルに把持構成に戻るように指示してユーザフィードバック指標を青色光で表示させる。ハンドルアセンブリが発射構成にあってユーザフィードバック指標が緑色光を表示している場合、ユーザは、発射を開始するために、最初にトリガーを解除した後にトリガー568を近づけて完全に近づいた位置に保持することにより、モータを作動させて、ステープラから全てのステープルが展開される完全発射位置に向けてジョーアセンブリの発射部材を前進させるようにハンドルに指図する。ユーザがステープルの発射を中断したいと望む場合には、トリガーを解除すると、制御システムがモータに停止するように指示する。ユーザは、中断状態から発射動作に戻したいと望む場合、再びトリガーを近づけて発射動作に再突入することができる。或いは、ユーザは、このトリガーが解除された中断状態からステープリングを中止したいと望む場合、ボタンを押圧することによってハンドルに完全発射位置を迂回して復帰構成に入るように制御システムに指示させるとともに、この復帰構成を反映するユーザフィードバック指標の明確な点滅を引き起こすことができる。
【0116】
図51及び図52に、電動ステープラハンドルの制御システムの発射及び復帰動作のいくつか態様を概略的に示す。ユーザが完全に発射動作を実行することによって、或いはトリガーを解除した後に発射ボタンを押圧することで発射動作を中断した後に停止することによって、ハンドルに反転構成に入るように制御システムに指示させた場合、トリガーを接近状態に維持することで、制御システムは、ハンドルに逆方向に動作して発射部材をジョーアセンブリ内で長手方向に後退させるように指示するようになる。ユーザは、復帰動作を中断したいと望む場合、トリガーを解除することができる。その後、ユーザは、再びハンドルに対してトリガーを近づけることによって復帰動作を再開することができる。この復帰動作の手動制御には、必要時に発射部材を完全に後退させることなくステープルの構成及び組織の圧迫を調べるオプションをユーザに提供できるという利点がある。復帰動作は、ジョーアセンブリが閉鎖位置にあってトリガーが依然としてハンドル本体に近づいた状態で完了する。
【0117】
図50及び図52を参照すると、復帰動作が完了すると、制御システムは、ハンドルアセンブリに把持構成に戻るように指示する。その後、ユーザは、トリガーを解除してジョーアセンブリを開放構成に戻すことができる。この発射及び復帰動作後の手動によるジョーの開放制御には、ステープリングした組織からジョーアセンブリを完全に解除する前にユーザが組織の圧迫をモニタしてそのための追加時間を可能にすることができるという利点がある。
【0118】
図53に、図53図55の制御システムの電源オン及び把持動作のいくつか態様を概略的に示す。図53図55の制御システムの概略図におけるブロック形状及びユーザフィードバック指標は、図50図52の制御システムに関して提示した規定に対応する。
【0119】
引き続き図53を参照すると、初期電源オン動作は、白色の滑らかなパルスで示される。初期位置では、ジョーアセンブリが開いており、制御システムが、トリガーの動き(570)に応答してジョーの開閉を行うことができる把持構成に留まるようにハンドルに指示する。ジョーアセンブリ内に未発射のリロードカートリッジが存在する場合、ハンドルアセンブリは、開放位置と閉鎖位置との間のジョーアセンブリの動きが、ハンドルから間隔を置いた初期位置からハンドルに近づいた圧迫位置へのトリガーの動きに概ね対応するように動作するように構成される。このトリガーとジョーアセンブリとの概ね比例する動作には、ユーザがジョーを繰り返し開閉して手術野内の所望のステープリング位置及び組織配置を正確に発見できるようになるという利点がある。
【0120】
引き続き図53を参照すると、図示の制御システムでは、ユーザがハンドルに対してトリガーを完全に近づけた場合にジョーが閉じ、ユーザフィードバック指標がこの閉鎖構成572を青色照明で示す。制御システムは、たとえその後にトリガーが解除された場合でもこの閉鎖構成を自動的に維持するようにハンドルに指示する。ジョーがこの係止閉鎖状態(latched closed state)にある場合、図示の制御システムは、さらなるユーザ入力がなければジョーが完全に閉じられた把持構成にハンドルを維持する。この係止閉鎖位置は、ユーザがトリガーを解除して組織の圧迫を維持しながらハンドルを操作して手術部位における視認性を得ることを可能にするという利点を有する。ユーザは、ジョーアセンブリを係止閉鎖構成から解除したいと望む場合、再びトリガーを近づけることにより、制御システムに、ジョーを非係止閉鎖構成(unlatched closed configuration)に位置決めする(これに対応してユーザフィードバック指標を「オフ」にする)ようにハンドルに指示させることができる。その後にトリガーを解除すると、制御システムは、ジョーを開放構成に動かすようにハンドルに指示する。
【0121】
引き続き図53を参照すると、ジョーアセンブリ内にリロードが存在しない場合、或いはジョーアセンブリ内に使用済み又は部分的に使用済みのリロードが存在する場合、ジョーは完全に閉じない。図示の制御システムでは、ユーザフィードバック指標が、ユーザにトリガーを解除してジョーが開放構成に戻るのを可能にするように促す黄色光574を表示する。
【0122】
図53及び図54には、電動ハンドルの制御システムの把持構成及び発射構成の動作を概略的に示す。図示の制御システムでは、(単色の青色光のユーザフィードバック指標によって示される)トリガーが解除されてジョーが完全に閉じた係止構成にある場合、ユーザは、制御システムがハンドルに発射構成(図54)に入るように指示するためにハンドル上の発射ボタンを押圧(566)しなければならない。発射構成に入ると、ユーザフィードバック指標は点滅する緑色光を表示する。トリガーが完全に解除位置に維持された状態で2回目のボタンが押される(576)と、制御システムは、ジョーアセンブリが係止閉鎖位置にある把持構成に戻るようにハンドルに指示してユーザフィードバック指標を青色光で表示させる。ハンドルアセンブリが発射構成にあってユーザフィードバック指標が点滅する緑色光を表示している場合、ユーザは、発射を開始するために、トリガーを近づけて(578)完全に近づいた位置に保持することにより、制御システムに、モータを作動させてステープラから全てのステープルが展開される完全発射位置に向けてジョーアセンブリの発射部材を前進させるようにハンドルに指図させる。この発射動作においてトリガーが近づけられると、ユーザフィードバック指標は単色の緑色照明を表示する。完全発射位置に到達すると、制御システムは、モータの動作を停止するようにハンドルに指示するとともに、ハンドルが復帰構成に入ったことを示す異なるパターンを提示するようにユーザディスプレイ指標に指示する。ユーザが発射動作中にステープルの発射を中断したいと望む場合には、トリガーを解除する(580)と、制御システムがモータに停止するように指示する。ユーザは、中断状態から発射動作に戻したいと望む場合、再びトリガーを近づけて(578)発射動作に再突入することができる。或いは、ユーザは、このトリガーが解除された中断状態からステープリングを中止したいと望む場合、ボタンを押圧する(582)ことによってハンドルに完全発射位置を迂回して復帰構成に入るように制御システムに指示させるとともに、この復帰構成を反映するユーザフィードバック指標の明確な点滅を引き起こすことができる。
【0123】
図54及び図55に、電動ステープラハンドルの制御システムの発射及び復帰動作のいくつか態様を概略的に示す。ユーザが完全に発射動作を実行することによって、或いはトリガーを解除した後に発射ボタンを押圧することで発射動作を中断した後に停止することによって、ハンドルに反転構成に入るように制御システムに指示させた場合、トリガーを接近状態に戻してトリガーを解除する(584)ことで、制御システムは、逆方向に動作して発射部材をジョーアセンブリ内で長手方向に後退させるようにハンドルに指示するようになる。この復帰動作は、発射部材がジョー内のジョー閉鎖位置に後退してユーザが復帰動作中にトリガーを解除できるようになるまで自動的に進行する。その後、ユーザは、再びハンドルに対してトリガーを近づけることによって復帰動作を再開することができる。この自動化された復帰動作の制御は、ステープルの発射完了時のユーザインタラクションの必要性を低減することによってユーザの利便性を高めることが望ましい。復帰動作は、ジョーアセンブリが閉鎖位置にある状態で完了する。
【0124】
図53及び図55を参照すると、復帰動作が完了すると、制御システムは、ジョーが係止閉鎖構成にあってユーザフィードバック指標が青色で照明する把持構成に戻るようにハンドルアセンブリに指示する。その後、ユーザは、再びトリガーを近づけた後に解除して、閉じたジョーアセンブリの係止を解除し、ジョーアセンブリを開放構成に戻すことができる。この発射及び復帰動作後の手動によるジョーの開放制御には、ステープリングした組織からジョーアセンブリを完全に解除する前にユーザが組織の圧迫をモニタしてそのための追加時間を可能にすることができるという利点がある。
【0125】
触覚フィードバックモジュール
図42図44を参照して説明した光リングユーザディスプレイに加え、ハンドルアセンブリの特定の動作状態を示すようにハンドルをいくつかのパターンでうならせ又は振動させることなどの触覚フィードバックの使用を通じてさらなるユーザフィードバックを提供することもできる。いくつかの実施形態では、振動フィードバックモータなどの専用の触覚フィードバック生成器をハンドルアセンブリ内に配置して、いくつかの状態でユーザフィードバックを提供するように構成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、さらなるコンポーネントを使用することなく触覚フィードバックを提供できることが望ましい。ハンドルアセンブリは、組織を切断して近づけるための線形作動力(linear actuation force)を提供するDCモータ及び減速機(reduction drive)を含むことができるので、このモータ及び駆動システムは、コンポーネント間の機械的間隙に起因するバックラッシュを含むことがある。このバックラッシュに起因して、ステープリングシステムのアクチュエータ及びジョーアセンブリの動きを生じないDCモータ出力シャフトの初期作動期間が存在する。従って、いくつかの実施形態では、DCモータを立て続けに時計回り及び反時計回りに駆動することによって、アクチュエータの大幅な並進を伴わずにユーザにハンドルアセンブリの著しい振動をもたらすことができる。このDCモータの触覚フィードバックモードを達成するために、制御システムは、それぞれがモータ及び駆動システムのバックラッシュに起因して作動シャフトの動きを生じない所定の持続時間を有する時計回りのピーク592と反時計回りのピーク594とが交互に入れ替わる実質的に方形波のモータ駆動波形プロファイル590でモータを駆動するように作動できる触覚フィードバックモジュールを含むことができる。図56に、ハンドルアセンブリ内のハンドルがうなる又は振動する感覚で触覚フィードバックをもたらす例示的なモータ駆動プロファイル590を示す。また、この方形波及び結果として生じるモータの振動は、例えば波形の隣接するピーク間に停止された中断(depowered pause)又は遅延を導入することによって変化させることができる。図57に、交互に入れ替わる時計回りのピーク592と反時計回りのピーク594との間に停止遅延時間(depowered time delay)596を取り入れて触覚フィードバックによる脈動感覚(pulsing sensation)を生成する例示的なモータ駆動波形プロファイル590’を示す。従って、触覚フィードモジュールは、ハンドルアセンブリの異なる動作状態に対応できる異なるパターンの又は脈動するうなり(pulsating buzzing)又は振動パターンを生じるように構成することができる。例示的なモータ駆動波形プロファイル590、590’は、理想的な方形波として示しているが、他の実施形態では、触覚モジュールが、作動シャフトの大幅な動きを伴わずにモータの動きを生じるように構成された他の波形プロファイルを含むこともできると想定される。
【0126】
ロックアウト制御モジュール
図47図49を参照して上述したように、いくつかの実施形態では、制御システムを、アクチュエータ位置の規定の「ロックアウトゾーン」内の電流をモニタするように構成することができる。これらの実施形態では、制御システムが、電流閾値のみに依拠してロックアウト機構の係合の存在を判定することができる。いくつかの実施形態では、電流閾値が、ロックアウトゾーンの開始時のサンプルに、リロードロックアウトが無効化されておらずアクチュエータの移動が停止したことを示す一定の300mAを加えたものに基づいて決定されたものである。しかしながら、この制御システムの一要素ロックアウト検知モジュール(one factor lockout sensing module)は、アクチュエータがジョーアセンブリの発射ストロークに差し掛かっている時に把持領域の外側で最も効果的である。制御システムは、把持領域の外側ではモータの一定のPWM動作を指示する。さらに、アクチュエータが把持領域を越えて遠位方向に前進した時には既に組織のクランピングが行われており、従って組織の厚み及び一貫性の変動に起因するあらゆる潜在的な電流変動が最小化される。しかしながら、図32図41を参照して上述した二位置ロックアウト機構は、把持器具ゾーン内で係合可能な場合にいくつかの動作的利点をもたらすので、制御システムのロックアウト検出モジュールのさらなる改善を必要とし得る。
【0127】
図32図41を参照して上述したように、二位置ロックアウト機構は、空のジョーアセンブリと少なくとも部分的に発射済みのリロードとに対応する2つの異なるアクチュエータ位置において係合できることが望ましい。いくつかの実施形態では、発射梁に形成されたロックアウトノッチが実質的に連続することができるので、これらのロックアウトアクチュエータ位置が互いに比較的近接する。さらに、いくつかの実施形態では、これらのアクチュエータ位置の各々が、制御システム動作の把持ゾーン又は領域内に存在することができる。把持領域では、制御システムを、発射状態に入る前にジョーアセンブリのジョーの開閉の完全なユーザ制御を提供するように構成することができる。ユーザは、部分的なジョーの閉鎖、再開放及び再閉鎖を制限なく行うことができる。いくつかの実施形態では、把持領域において、トリガーが比例的なジョーの閉鎖に対応づけられ、すなわちトリガーを25%引くとジョーが25%閉じる。しかしながら、ユーザがジョーの中断、開放又は閉鎖を行う度にモータは停止して再始動する。モータが慣性に打ち勝って全速までランプアップし、大きな瞬間的電流スパイクをもたらすにはさらなる電力を要する。さらに、通常、ジョーアセンブリは、把持領域におけるジョーの閉鎖中に組織を圧迫するので、ジョー間に位置する組織の厚み又は密度の増加に応答してモータに加わる負荷が上昇する。従って、場合によっては、電流検出のみに基づく制御システムのロックアウトモジュールは、過渡的なユーザ入力及び組織の圧迫状態に起因して1又は2以上のロックアウト機構が把持器具領域内のアクチュエータ位置において係合し得る偽陽性指標をもたらす恐れがある。
【0128】
図58に、電動ステープラの様々な動作状態の25個の例示的な電流プロファイル600の重複プロット(overlap plot)を示す。このプロットは、ポテンショメータなどの位置検出装置の「カウント」で測定した、作動シャフト又はアクチュエータの作動位置にわたって追跡した(ミリアンペアで測定した)モータ負荷又は電流引き込みを示す。なお、受ける負荷及び検出される位置は、モータ、バッテリ及びギアリングの仕様に加え、細長いシャフト、ジョーアセンブリ及びロックアウト機構のサイズ及び構成に基づいて変動し得る。従って、このプロットは、電動ステープラのいくつかの実施形態の性能を示すものにすぎない。このプロットには、図41に関して上述したようなリロードが存在しない状態602で動作して空のジョーアセンブリロックアウト機構を誘発する電動ハンドルアセンブリ、図40に関して上述したような発射済みのリロードが存在する状態604で動作して発射済みのリロードロックアウト機構を誘発する電動ハンドルアセンブリ、及び未発射のリロードが存在する状態606で動作してロックアウト機構の係合を伴わずに把持動作を完了する電動ハンドルアセンブリの電流対位置を示す。このプロットには、組織の圧迫が電流引き込みに与える影響を比較するために、負荷の軽い模擬組織608及び負荷の重い模擬組織610の両方がジョーアセンブリ内に位置する場合の未発射のリロードを有するハンドルアセンブリの動作からのデータを示す。異なるロックアウト位置及び公称電流引き込みにもかかわらず、ロックアウト状態が係合した時の電流プロファイルの傾斜は全ての試験間で一貫しているように見える。
【0129】
制御システムがモニタできるロックアウト状態という点では、時間及び位置の信頼性が低いことがあり、その変化率は、アクチュエータの移動の把持ゾーンで発生し得る異なる負荷間で一貫していない。通常の把持器具使用において発生する電流引き込み状態によって電流閾値が単独で誤誘発されることがあり、電圧もバッテリの枯渇と共に変化する。しかしながら、1つの一貫したロックアウト状態は、ロックアウト状態の存在時に異なる許容範囲に収まる、図58に示すようなアクチュエータ位置に対する電流プロファイルの傾斜である。公称電流引き込みは低い傾斜を示すのに対し、把持器具の使用ははるかに急な傾斜を有する。稀な場合を除き、ロックアウト係合は、他の事例間に位置する固有の電流対時間プロットを有する。特定の構成の細長いシャフトのロックアウト傾斜許容範囲は、大型サンプルサイズからのロックアウト傾斜を調べることによって計算することができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、作動シャフト位置に対する電流引き込みの傾斜をモニタして、ロックアウト機構が係合したことを示すロックアウト許容範囲に電流プロファイル傾斜が収まるかどうかを検出するロックアウトモジュールを含むことができる。制御システムのロックアウトモジュールは、ロックアウト機構の係合564、574が示された時にモータを解放して、図50図55のモータ駆動プロファイルに関して説明したさらなる行動を取るように制御システムを構成するように構成することができる。図59に、図41の空のジョーアセンブリロックアウト機構が係合したような、リロードが存在しない(602)例示的な作動シーケンスのモータ電流引き込みデータ対アクチュエータ位置のプロットを示す。このプロットデータは、初期電流スパイク610と、公称電流引き込み領域612と、比較的一貫した電流プロファイル傾斜を有するロックアウト係合領域614とを反映する。図60には、図40の発射済みのリロードロックアウト機構が係合した、以前に発射済みのリロードを有する(604)例示的な作動シーケンスのモータ電流引き込みデータ対アクチュエータ位置のプロットを示す。このプロットデータは、初期電流スパイク620と、公称電流引き込み領域622と、比較的一貫した電流プロファイル傾斜を有するロックアウト係合領域624とを反映する。このプロットデータは、ジョーアセンブリ内の組織負荷にかかわらないロックアウト係合領域624における電流プロファイルの傾斜の一貫性を示すように、ジョーアセンブリによって軽く組織を圧迫した(626)例示的な作動シーケンスと、ジョーアセンブリによって強く組織を圧迫した(628)例示的な作動シーケンスとを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、制御システムのロックアウトモジュールを、たとえロックアウト機構の係合に対応する傾斜を示すはずのモータ引き込み対位置のモニタリングにおける過渡的不一致(transient inconsistencies)の場合でも、より一貫したロックアウト係合検出を行うようにさらに改善することができる。いくつかの例では、組織密度の変化、駆動系部品の摩耗又はデータ収集の遅延に起因して、電流プロファイルが瞬間的不一致を示しやすくなることがある。電流は、ギアのうちの1つに傷又はバリがある場合、或いは異常に厚い組織のポケット(pocket of tissue)が圧縮された場合に、予想される傾斜から一時的に逸脱することがある。これらの変動に対抗するために、制御システムにおけるロックアウトモジュールのいくつかの実施形態では、安定した信頼性の高い傾向を表示するように、電流(傾斜)の変化を複数のデータエントリにわたって平均化することができる。いくつかの実施形態では、電流プロファイルの傾斜を5つのデータエントリにわたって平均化することができる。この平均化によってロックアウトの検出がわずかに遅れることもあるが、この遅延期間中にコンポーネントが耐え抜くことができるわずかな追加力よりも誤検出率に対する恩恵の方が上回ることができる。
【0131】
上述したように、傾斜が偶発的に許容ウィンドウ(acceptance window)内に収まり得ることが稀に発生する。1つのこのような事例は、トリガーの作動にまつわる過渡的負荷条件(transient load conditions)に起因する。トリガーが動いた後には、電流プロファイルが対応する電流スパイクを示す。このスパイクのピーク時には、電流が一瞬落ち着いてから再び公称へと低下する。これらのわずかな鎮静カウント(few counts of settling)中に、たまに電流の変化がロックアウト許容範囲内に収まる。
【0132】
電流傾斜又はプロファイルのみに基づいてロックアウト係合を検出するロックアウトモジュールの実施形態では、これらのデータ点が、誤ってロックアウト機構の係合を示すようになる。従って、いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールを、電流傾斜の複数の連続平均のうちの最低限が所定の許容範囲内に収まる時にのみロックアウト機構の係合を検出するように構成することができる。例えば、ロックアウトモジュールは、電流傾斜の3つの連続平均が許容範囲内に収まる時にのみロックアウト機構の係合を検出するように構成することができる。(以前の複数の電流傾斜プロファイルの)平均がロックアウト許容範囲内に収まる場合、制御システムはこの平均を記憶し、ロックアウトモジュールは、(いくつかの実施形態では10ms後の)制御システムによる次のデータ収集時に新たなデータ点を使用して(最初の複数の電流プロファイルからの最も古い電流プロファイル値はもはや計算に入れずに)再び以前の複数の電流プロファイルの平均を計算し、この新たな平均をロックアウト許容範囲と比較する。3つの連続する値がロックアウト許容範囲内に収まる場合、ロックアウトモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示すことができる。第2又は第3の平均が許容ウィンドウ内に収まらない場合、制御システムは、記憶されたあらゆる平均を消去して、所定のロックアウト範囲内の3つの連続する電流プロファイル平均をモニタし続けることができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールを、誤ったロックアウト係合の指示を提供することがある過渡的状態を排除するようにさらに改善することができる。把持領域におけるいくつかのモータ負荷プロファイルには、ロックアウト係合領域内にあることが経験的に判定される電流プロファイルの傾斜に対応する所定の許容範囲内の複数の連続する電流プロファイル平均を生成できる電流スパイクが存在する。いくつかの実施形態では、許容範囲を、電流引き込みをmA単位で測定した電流プロファイルと、ポテンショメータベースの位置検知機構においてカウント単位で測定したアクチュエータ位置とから計算された12~40とすることができる。他の実施形態では、許容範囲が、異なる計算ユニット、或いは異なるハンドルアセンブリ、シャフトアセンブリ又はロックアウト機構構成に基づく異なる範囲を有することができる。従って、いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールが、複数の連続する平均が所定のロックアウト許容範囲内に収まる際のロックアウト係合をモニタすることに加え、複数の連続する許容可能な平均のうちの最後の平均を最初の複数の平均と比較することができる。この時、ロックアウトモジュールは、最後の平均が最初の平均よりも大きい場合に、ロックアウト機構が係合したことを示すことができる。図56を参照すると、ロックアウト機構の係合中には、傾斜が一貫した範囲内に収まるが、依然として時間と共に徐々に増加する。しかしながら、通常、電流スパイク後の電流傾斜平均は時間と共に減少する。従って、ロックアウトモジュールは、複数の電流傾斜平均が過渡的電流スパイクを示している可能性が高いかどうかを評価することによって、ロックアウト機構の係合の検出におけるエラーをさらに低減するように構成することができる。
【0134】
上述した把持領域におけるロックアウト機構の係合を検出するいくつか態様の説明に照らせば、いくつかの実施形態では、制御システムが、ロックアウト機構の係合を把持領域におけるモータに対する他の過渡的負荷状態と一貫して区別するように構成されたロックアウトモジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、モータ電流、アクチュエータ位置及び経過時間を定期的にモニタすることができ、ロックアウトモジュールが、電流傾斜プロファイルがロックアウト機構の係合を示すかどうかを計算するための、ソフトウェア又はファームウェアで具体化された一連のコンピュータプロセッサ実行可能命令を含むことができる。1つの実施形態では、ロックアウトモジュールを、以下の基準に基づいてロックアウトが係合したことを示すように構成することができる。
・pmw=最大pmwの場合
・yn=モータ電流
・Δyn=傾斜=電流の変化=(yn-yn-1)
・xn=以前の5つのΔyの平均=[(Δyn+Δyn-1+Δyn-2+Δyn-3+Δyn-4)/5]
・12~40=許容範囲=12≦xn<40
・3つの連続値が必要=12≦xn,xn-1,xn-2<40
・最後の連続値は最初よりも大きくなければならない=xn>xn-2
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウトが係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0135】
ロックアウトモジュールが上記の論理構造を適用することによってロックアウト係合の大部分は検出されるが、いくつかの実施形態では、制御システムが、特定の動作条件下でロックアウト係合の検出をさらに強化するようにロックアウトモジュールをさらに改善することができる。上述したように、ロックアウトモジュールの動作条件のうちの1つは、モニタされたモータのpmwがpmw maxであり、すなわちロックアウトモジュールは、トリガーが完全に押圧されて制御システムがハンドル内のモータに全速力で動作するように指示した時に利用されるというものである。
【0136】
しかしながら、把持係合中にPLLCのトリガーが押圧又は解除された場合、モータは、静止状態から全速力に移行しなければならない。モータが一瞬にして全速力で回転するように指示された場合、速度の急上昇に起因して、結果として生じる電流スパイクが大きくなる。代わりに、ランプアップサイクルを通じてモータの速度を制御することによって電流スパイクを最小化することもできる。この制御は、pwm、すなわちパルス幅変調を利用する。pwmは、モータが受け取る電力の割合を決定する。pwm=100の場合、モータは全速力で動作する。pwm=50の場合、モータはその最大速度の50%で動作する。トリガーが動いた後の設定間隔においてpwmをランプアップさせることにより、モータはさらにゆっくりと全速力に移行し、結果として生じるあらゆる電流スパイクは依然として存在するが、大幅に低下する。いくつかの実施形態では、把持領域におけるpwmランプアップのランプアッププロファイルが完了するのに100ms未満しか掛からず、従って上述したロックアウトモジュールは、(いくつかの実施形態では約1.5秒で遷移することができる)ロックアウト領域の大部分にわたって機能している。
【0137】
一方で、pwmが最大pwmでない時には、可能性は低いが考えられる特定のシナリオを考慮するいくつかの補正的なサブモジュールの適用によって、ロックアウトモジュールによるロックアウト検出を改善することができる。例えば、ユーザが、ロックアウト機構のわずかな位置カウント内でアクチュエータを動かすのにちょうど足りるだけトリガーを引き、その後に停止させる場合。トリガーを再係合させると、ユーザは、pwmにシャフトをランプアップさせ、ジョーアセンブリは、同時に物理的にロックアウト機構に係合する。この不安定な領域中に上述したロックアウトモジュールに依拠すると、ロックアウト機構の検出が遅れてしまう。代わりに、いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールが、上記の使用シナリオにおいてロックアウト機構の係合をさらに素早く検出するロックアウトランプアップサブモジュールをさらに含むことができる。
【0138】
ロックアウトランプアップサブモジュールは、ロックアウトモジュールの終了条件(end condition)として構成することができる。ロックアウト機構が係合したことがロックアウトモジュールによって示された後に、ロックアウトランプアップサブモジュールを実行して、pwmが、位置指標カウント(position index counts)にわたって電流の増加がモニタされたことによって識別できる電流ランプアップ状態にあるかどうかを判定することができる。そうである場合、ロックアウトランプアップサブモジュールは、ロックアウトモジュールがロックアウト機構の係合を示すことができる前にさらなる評価を適用することができる。このロックアウトランプアップサブモジュールは、過渡的ユーザトリガー入力(transient user trigger inputs)に起因する誤ったロックアウト機構検出のリスクを抑えることができるという利点を有する。例えば、上述した使用シナリオに加えて、ユーザがわずかな量のトリガーの押圧と解除とを故意に繰り返した場合には、トリガーが振動し、電流もこれに従う。ユーザがこのようにしてトリガーを小刻みに動かし続けた場合、最終的に電流は、ロックアウトモジュールがロックアウト機構の係合を示すのに必要な連続平均内を含むロックアウト許容範囲と一致することができる。このトリガー振動使用シナリオでは、通常の手の震えを上回る意図的な動作が必要であるが、ランプアップサブモジュールは、特定のモニタされた電流プロファイルがロックアウト機構の係合に起因するものであるか、それともトリガーの振動に起因するものであるかを識別するように構成することができる。
【0139】
ロックアウトランプアップサブモジュールは、(ロックアウトモジュールがロックアウト機構の存在を示してpwmがランプアップ状態にあると評価された後に)始動した場合、モニタされた電流を計算された閾値と比較する。この電流閾値は、電流が公称を上回っており、従ってロックアウト機構の係合によってモータに負荷が加わっていることを示すことを保証する。サブモジュールは、克服する必要がある電流閾値を計算するために、これまでの最初のインスタンスであるpwm=最大pwmを評価する。制御システムは、この電流値を電流ベースラインとして記憶し、トリガーが完全に解除されてジョーがその開放位置に戻った時にはいつでもリセットすることができる。トリガーが増分的に押圧された場合には、最初のインスタンスであるpwm=最大pwmのみが電流ベースラインとして保存される。このベースラインは、ハンドル内の特定のモータ、駆動系部品及びバッテリを所与とするその時点での予想電流値の基準を提供する。この初期値は、駆動系の移動(drivetrain travel)はこれまでのところ最小であり、ロックアウト機構は依然として比較的離れているため、以前に発生したロックアウトにリスクはないので、電流ベースラインとして記憶することができる。
【0140】
この電流ベースラインに位置依存電流補正値(position-dependent current correction value)が加わって電流閾値が確立される。この電流補正値は、その後に把持領域内で行われるクランピング及び組織の圧迫に起因する位置に伴う公称電流の増加を考慮する。位置に基づく電流補正値は、理想的なロックアウト位置における最大公称電流値をプロットし、これらを接続する線形方程式を計算することにより、所定の細長いシャフト及びロックアウト機構アセンブリについて経験的に決定することができる。その後、これらの所定の電流補正値は、ロックアウトランプアップサブモジュールがロックアウト機構の係合の存在を評価する際に使用できるように記憶することができる。
【0141】
ロックアウトランプアップサブモジュールの動作では、電流閾値が確立されると、モニタされた電流が比較され、これが閾値を上回る場合、ロックアウトランプアップサブモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示す。いくつかの実施形態では、ロックアウトランプアップサブモジュールを、以下の論理構造に従って動作するソフトウェア又はファームウェアプログラムで具体化することができる。
・ロックアウトモジュール=真(TRUE)の場合
・pwm≠最大pwm(ランプアップ)の場合
・yn=モータ電流
・yb=電流ベースライン=最大pwmの最初のインスタンスにおけるy
・yths=電流閾値=電流ベースライン+[(5*位置)-200]
・電流は電流閾値を上回らなければならない=yn>yths
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウト係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0142】
いくつかの実施形態では、制御システムのロックアウトモジュールが、ロックアウトモジュールによるロックアウト機構の検出をさらに改善するロックアウト遷移サブモジュールを含むことができる。ロックアウト遷移サブモジュールは、pwmランプアップのピークにおいて作動することができる。トリガーの動き及び電流スパイク後に最終的にモータが最大速度(pwm=最大pwm)に達すると、電流は落ち着いて安定し、多くの場合わずかに低下することができる。ステープラ使用のシナリオ中に、最大速度に達したことによって電流が落ち着いている時にロックアウト機構が係合した場合、ロックアウトモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示さない場合がある。このようなシナリオでは、最後の電流平均が最初の電流平均よりも低い。この偽陰性を防ぐために、いくつかの実施形態では、ロックアウト遷移サブモジュールが、各ランプアップの最初のインスタンスであるpwm=最大pwm中に実行される。
【0143】
ロックアウト遷移サブモジュールは、さらなる平均を取ることによる電流低下の場合のロックアウト機構の検出をさらに強化することができる。ロックアウト遷移サブモジュールは、ランプアップから最大pwmへの遷移中に作動することができる。動作中、ロックアウト遷移サブモジュールは、(各平均が以前の5つの電流変化を表す)以前の3つの平均を平均化して、さらに安定したデータ点を形成する。ロックアウト遷移サブモジュールは、最初の平均を許容範囲と比較する代わりに、第2の取得された平均を別の許容ウィンドウと比較する。このサブモジュールは、ランプアップ毎に1回のみ作動するので連続値を待つことができず、従ってこの単一の第2の平均値のみが分析される。第2の平均が(特定のステープラ構成について経験的に決定された)許容範囲内に収まる場合、次のステップは、ロックアウトランプアップサブモジュールの場合と同じ電流閾値計算を使用して電流閾値を計算することである。電流閾値が確立されると、モニタされた電流を電流閾値と比較し、この電流が閾値を上回る場合、ロックアウト遷移サブモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示す。
【0144】
いくつかの実施形態では、ロックアウト遷移サブモジュールを、以下の論理構造に従って動作するソフトウェア又はファームウェアプログラムで具体化することができる。
・ロックアウトモジュール=偽(FALSE)の場合
・pwm=最大pwm(ランプアップ当たりの最初のインスタンス)の場合
・yn=モータ電流
・Δyn=傾斜=電流の変化=(yn-yn-1)
・xn=以前の5つのΔyの平均=[(Δyn+Δyn-1+Δyn-2+Δyn-3+Δyn-4)/5]
・zn=以前の3つのXの平均=(xn+xn-1+xn-2)/3
・15~40=許容範囲=15<zn<40
・yb=電流ベースライン=最大pwmの最初のインスタンスにおけるy
・yths=電流閾値=電流ベースライン+[(5*位置)-225]
・電流は電流閾値を上回らなければならない=yn>yths
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウト係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0145】
いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールが、ロックアウト遷移サブモジュールの後に所定の作動シャフトの動き範囲のために作動するロックアウト遷移後サブモジュールをさらに含むことができる。1つの実施形態では、ロックアウト遷移後サブモジュールが、ロックアウト遷移サブモジュールの後の10カウントで作動する。電流は、pwm maxへの遷移から落ち着くと、振動してわずかに低下し、素早い連続を得ることができる。しかしながら、ロックアウト機構が係合した場合、電流は、この遷移後又は10カウントウィンドウ全体を通じて着実に増加する。遷移後期間中の過渡的な振動する電流引き込み状態の場合、ロックアウトモジュールは、計算された平均に影響する数カウントの傾向の必要性に起因して、係合したロックアウト機構の存在を示すのに数カウントを要することがある。従って、ロックアウト遷移サブモジュールの後のロックアウト遷移後サブモジュールの作動を通じて、ロックアウトモジュールの性能を高めるとともに、装置上の摩耗を低減することができる。ロックアウト遷移後サブモジュールは、ロックアウト遷移モジュールの後の所定の変位のために作動し、モニタされた電流の変化を以前の指標の電流変化と比較して、所定の測定期間にわたる上昇傾向があるかどうかを調べる。いくつかの実施形態では、電流の変化が3回連続して増加している場合、ロックアウト遷移後サブモジュールがロックアウト機構の係合を示す。
【0146】
いくつかの実施形態では、ロックアウト遷移後サブモジュールを、以下の論理構造に従って動作するソフトウェア又はファームウェアプログラムで具体化することができる。
・ロックアウトモジュール=偽(FALSE)の場合
・遷移サブモジュール=偽(FALSE)の場合
・最大pwm遷移後10カウント以内の場合
・yn=モータ電流
・Δyn=傾斜=電流の変化=(yn-yn-1)
・電流変化の増加=Δyn>Δyn-1
・3つの連続値が必要=Δyn>Δyn-1>Δyn-2>Δyn-3
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウト係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0147】
ロックアウトモジュールは、制御システムからのモータ駆動のpwmランプダウン中にロックアウト機構の検出を改善するロックアウトランプダウンサブモジュールをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、ロックアウトランプダウンサブモジュールが、制御システムがモータに減速又は停止するように指示した時にいつでも発生するpwmランプダウン中に作動する。制御システムがpwmランプアップを介してモータに電流スパイクを避けるように指示するのと同様に、pwmは、トリガーが解除された時、又はアクチュエータが把持領域内のトリガー位置に比例する位置に達した時にランプダウンする。pwmがランプダウンすると、電力要件が低下することによって電流も同様に減少すると予想される。ロックアウトランプダウンサブモジュールは、pwmランプダウン事象中に電流が予想通りに減少したことを検証する。ロックアウトランプダウンサブモジュールは、電流の変化をゼロ状態と比較することができる。電流の変化が複数の連続測定にわたってゼロよりも大きい場合、ロックアウトランプダウンサブモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示す。いくつかの実施形態では、ロックアウトランプダウンサブモジュールが、3つの測定期間にわたって電流の変化をゼロ状態と比較する。
【0148】
いくつかの実施形態では、ロックアウトランプダウンサブモジュールを、以下の論理構造に従って動作するソフトウェア又はファームウェアプログラムで具体化することができる。
・ロックアウトモジュール=偽(FALSE)の場合
・遷移サブモジュール=偽(FALSE)の場合
・遷移後サブモジュール=偽(FALSE)の場合
・pwm≠最大pwm(ランプダウン)の場合
・yn=モータ電流
・Δyn=傾斜=電流の変化=(yn-yn-1)
・電流変化の増加=Δyn>0
・3つの連続値が必要=Δyn、Δyn-1、Δyn-2>0
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウト係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0149】
図61に、様々なサブモジュールを含むロックアウトモジュールの例示的なフローチャートを示す。図示の実施形態では、制御システムが(いくつかの実施形態では10ms毎に)電流及び位置のモニタリングをリフレッシュすると、ハンドルは、作動シャフト位置ポテンショメータを読み取って、依然としてロックアウト領域内にあるかどうかを判定する。アクチュエータがロックアウト領域内にある場合、ハンドルアセンブリの制御システムは、ロックアウトモジュール630を実行する。ロックアウトモジュールがロックアウト機構の係合を示す場合、制御システムは、ロックアウトランプアップサブモジュール632が適用可能であるかどうかを判定し、適用可能であればこれを実行する。ランプアップサブモジュール632が適用可能でない場合、制御システムは、ロックアウト機構が係合してモータを停止させたことを示す。ランプアップサブモジュール632が適用可能であってロックアウト機構が係合したことを示す場合、制御システムは、ロックアウト機構が係合してモータを停止させたことを示す。ランプアップサブモジュール632が適用可能であってロックアウト機構の係合を発見しない場合、ロックアウトモジュール630は終了し、再開まで10ms待つ。ロックアウトモジュール630がロックアウト機構の係合を発見しない場合、制御システムは、遷移サブモジュール634、その後に遷移後サブモジュール636、最後にランプダウンサブモジュール638を評価する。
【0150】
いくつかの実施形態では、制御システムのロックアウトモジュール及び様々なサブモジュールがロックアウト機構の係合の存在を示さない場合、制御システムは、ロックアウトモジュールにおいて使用されるあらゆる記憶されたX及びZ変数(平均)を消去することができる。制御システムが、未だに3つの連続する合格が存在しない(ただし電流試行(current attempt)は合格した)という理由でロックアウトモジュールをリセットした場合、ハンドルは変数値を保持する。電流ベースラインも、ハンドルが完全にジョー開放位置にリセットされるまで保持される。
【0151】
モータ極性検証モジュール
いくつかの実施形態では、制御システムが、DCモータの移動方向を評価して補正する極性検証モジュールを含むことができる。ステープラハンドルアセンブリの製造中には、DCモータが逆極性配向で取り付けられる可能性がある。逆のモータ極性の発生を大幅に低減するために、いくつかのハンドルアセンブリ及び試験手順を実行することができる。しかしながら、これらの手順には時間が掛かり、間接費が加わる恐れがある。モータが意図せず逆極性配向で取り付けられた場合、ステープラは、ユーザ入力に応答して思い通りに機能しなくなる。逆極性のモータ取り付けの影響を抑えるために、いくつかの実施形態では、制御システムが、DCモータへの電力付与時にアクチュエータ位置をモニタするように構成されたモータ極性検証モジュールを含むことができる。従って、モータ極性検証モジュールは、ハンドルアセンブリの生産から極性検証手順を削除することができるので、ハンドルアセンブリの生産効率を高めてコストを削減することができるという利点を有する。極性検証モジュールは、特定のモータ極性が特定の作動方向をもたらすデフォルト極性仮定(default polarity assumption)を含むことができる。極性検証モジュールは、モータに既知の極性で電力を付与し、アクチュエータの位置の変化をモニタすることができる。
【0152】
図62に、ハンドルアセンブリの制御システムに組み込むことができる、モータ極性検証モジュール640の例示的な論理フロー構造を示す。モータ642への電力の付与後にアクチュエータ位置がデフォルト極性仮説と一致して変化していた場合、制御システムのモータ駆動ロジックは変化しないままである(644)。モータ642への電力の付与後にアクチュエータ位置がデフォルト極性仮説の方向とは逆の方向に変化していた場合、制御システムのモータ駆動ロジックは、把持、ステープリング及び復帰動作において付与すべき電力646の極性を反転させるように修正される。いくつかの実施形態では、極性の反転後に極性検証モジュールによって極性が反転した場合、極性検証モジュールを、モータに反転極性648で電力を付与して作動シャフトの移動方向が順方向であることを検証することによって移動方向を再試験するように構成することができる。
【0153】
取り外し可能データログ
理解できるように、外科用ステープラの1又は2以上の把持、発射及び後退動作における制御システムの動作では、モータの電流引き込み、モータの速度、電力、トルク、ロックアウト作動、発射済みのリロードカートリッジの数、及びバッテリ寿命などに関する様々なデータを、ハンドルアセンブリ内に位置する固体メモリモジュールなどのメモリデバイスに記憶することができる。このデータは、検索して分析することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、このデータを、有線又は無線通信プロトコルを介してハンドルアセンブリに電子的に結合することによって検索することができる。しかしながら、ハンドルアセンブリは外科装置であるため、以前に使用されたハンドルアセンブリにアクセスしてデータを検索することに関連する記号論理学的課題(logistical challenges)が存在し得る。従って、いくつかの実施形態では、外科用ステープラハンドルアセンブリが、外科手術の完了時にハンドルアセンブリから取り外すことができる取り外し可能メモリモジュールを含むことができる。
【0154】
図63及び図64A図64Bを参照すると、いくつかの実施形態では、電源又はバッテリパック650が、取り外し可能メモリモジュール652を含むことができる。図示の実施形態では、バッテリパックが、メモリモジュール652を含む電気的に結合されたプリント基板アセンブリ(PCBA)を含む。PCBAは、メモリモジュール652を含むハンドルアセンブリの動作データパラメータの読み書きアクセス(read write access)のために、通信インターフェイスを通じてマイクロプロセッサに接続することができる。PCBAは、PCBA上に配置された電気コンタクトパッドなどのデータインターフェイス面(data interface surface)をさらに含むことができる。使用中、外科手術が完了すると、ユーザは、ハンドルアセンブリからバッテリパック650を取り外し、バッテリパック650からメモリモジュール652を含むPCBAを取り外すことができる。いくつかの実施形態では、メモリモジュール652の素早い分離を容易にする取り外し可能なプルタブによってPCBAをバッテリパック650に結合することができる。他の実施形態では、専用の取り外しツール又はその他のハンドツールの使用を通じてメモリモジュール652をバッテリパックから取り外すことができる。メモリモジュール652を取り外したら、ステープラ及びバッテリパックを医療廃棄物として適切に処理することができる。
【0155】
引き続き図63及び図64A図64Bを参照すると、いくつかの実施形態では、バッテリパック650が、メモリモジュール652及び1又は2以上のバッテリセル656に電子的に結合されたバッテリ放電回路654をさらに含むことができる。図示のように、バッテリパックからメモリモジュールを取り外すと、バッテリパック650内に収容された放電回路654がバッテリを枯渇させて、廃棄後のバッテリ端子の潜在的短絡による電気的な又は火災の危険性を低下させる。いくつかの実施形態では、バッテリ放電回路654が、メモリモジュールの取り外し時にバッテリを枯渇させるように構成された放電抵抗器を含むことができる。
【0156】
図65を参照すると、いくつかの実施形態では、PCBの取り外し可能部分に取り外し可能メモリモジュール660を配置することができる。図示のように、PCBの取り外し可能部分は、ユーザがPCB662からメモリモジュール660を素早く分離できるように、離脱又は穿孔部分664によってPCBに接合することができる。PCBの取り外し可能部分は、メモリモジュール660に電気的に結合された複数のコンタクトパッドなどの電子インターフェイス面668をさらに含むことができる。
【0157】
図66を参照すると、いくつかの実施形態では、取り外し可能メモリモジュール670を、はさみ又はその他の容易に利用可能な器具を使用して容易に切断されるように選択できるコネクタによってハンドルアセンブリ内のメインプリント基板662(PCB)に結合することができる。図示の実施形態では、メモリモジュールが、フレキシブルPCB674によってメインPCB662に電子的に結合されたメモリPCB672上に配置される。ハンドルアセンブリの使用後、ユーザは、フレキシブルPCB674を切断してメモリモジュール670及びメモリPCB672を取り外すことができる。メモリPCB672は、メモリモジュール670に電気的に結合された複数のコンタクトパッドなどの電子インターフェイス面678をさらに含むことができる。
【0158】
本明細書で説明したメモリモジュールは、ハンドルアセンブリの動作中にメモリモジュールへの不用意なアクセスを防ぐ一方で、ハンドルアセンブリの完了時にはメモリモジュールへのアクセスを可能にするように、ハンドルアセンブリ内に配置することができる。例えば、図63及び図64A図64Bを参照しながら説明したように、いくつかの実施形態では、メモリモジュールを、バッテリを取り外す際に取り外すことができるように、ハンドルアセンブリのバッテリパック又はバッテリ区画内に収容することができる。他の実施形態では、メモリモジュールを、ハンドルアセンブリ上の専用アクセスパネルの背後に配置することができる。いくつかの実施形態では、専用のアクセスパネルが、開くために専用のツール又は鍵を必要とすることができる。他の実施形態では、メモリモジュールを、図21図31を参照して説明したような手動オーバーライド復帰システムの動作時にアクセス可能とすることができる。
【0159】
本出願では、いくつかの好ましい実施形態及び実施例を開示したが、当業者であれば、本発明は、具体的に開示した実施形態を超えて他の代替実施形態及び/又は発明の使用及び自明な修正及びその同等物にまで拡大すると理解するであろう。さらに、これら発明の様々な特徴は、単独で使用することも、又は上記で明確に説明した以外のこれらの発明の他の特徴と組み合わせて使用することもできる。従って、本明細書に開示した本発明の範囲は、上述した特定の開示した実施形態によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきものである。
【符号の説明】
【0160】
10 外科用ステープラ
20 細長いシャフト
22 近位端
24 遠位端
30 ジョーアセンブリ
32 第1のジョー
34 第2のジョー
36 ステープル
40 ハンドルアセンブリ
42 固定ハンドル
44 トリガー
46 カプラ
50 リロード
L 中心長手方向軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図27A
図27B
図27C
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
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図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
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図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64A
図64B
図65
図66
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体内で前記長手方向軸線を中心に回転可能な作動シャフトであって、該作動シャフト上に形成されたラックを含む作動シャフトと、
前記ハンドル本体内で摺動可能な復帰ロック機構、シャフト回転機構及びシャフト後退機構を含む機械的復帰機構と、を備え、
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと動作係合して前記作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、前記ラックが前記電気モータから解放されて前記手動復帰機構と係合する第2の位置に回転可能である、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを有するハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸線に沿って摺動可能であり、前記ハンドル本体内で前記長手方向軸線を中心に回転可能な作動シャフトであって、該作動シャフト上に形成されたラックを含む作動シャフトと、
前記ハンドル本体内で摺動可能な復帰ロック機構、シャフト回転機構及びシャフト後退機構を含む機械的復帰機構と、を備え、
前記作動シャフトは、前記ラックが前記電気モータと動作係合して前記作動シャフトを長手方向に摺動させる第1の位置から、前記ラックが前記電気モータから解放されて前記手動復帰機構と係合する第2の位置に回転可能である、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項2】
前記復帰ロック機構は、ロック位置からロック解除位置に前記ハンドル本体に対して長手方向に摺動可能な復帰ロックを備えている、
請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項3】
前記シャフト後退機構は、該シャフト後退機構から延びる突出部を備え、前記復帰ロックは、前記ロック位置において前記突出部に係合し、前記復帰ロック機構がロック解除位置にある間、前記突出部から解放される、
請求項2に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項4】
前記電気モータに電気的に結合された制御装置をさらに備え、前記復帰ロック機構は、前記ロック解除位置にあるとき、前記制御装置に電気的に結合される、
請求項2に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項5】
前記復帰ロック機構の作動は、前記ハンドルアセンブリを無効にする、
請求項4に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項6】
前記ハンドルアセンブリの無効化が永久的である、請求項5に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項7】
前記復帰ロック機構が、前記ハンドル鎖線ぶりを無効にするために前記制御装置と電気的に係合するように前記復帰ロック機構によって長手方向に摺動可能なばね部品を含んでいる、請求項5記載のハンドルアセンブリ。
【請求項8】
前記ばね部品は、近位方向への移動のためにのみ構成され、前記復帰ロック機構がロック位置に戻されても遠位方向には戻らない、請求項7に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項9】
前記復帰ロック機構、前記シャフト回転機構、および前記シャフト後退機構が順に作動する、請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項10】
開放構成と閉鎖構成とを有するジョーアセンブリをさらに備え、前記機械的復帰機構が、前記ジョーアセンブリの開放構成に対応するハンドルアセンブリの最近位位置に前記作動シャフトを戻すように構成されている、請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項11】
前記シャフト回転機構が、ハンドルアセンブリの外面に延びる回転レバーを備え、該回転レバーが、前記復帰ロック機構がロック解除位置にあるときにブロック解除され、前記シャフト回転機構が、前記作動シャフトを電動モータとの係合から外れるように回転させるように構成されている、請求項3に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項12】
前記シャフト回転機構が、前記作動シャフトを前記長手方向軸線に対して90度回転させるように構成されたシャフト回転カラーをさらに備える、請求項11に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項13】
前記シャフト回転機構がねじりばねを備え、該ねじりばねが、前記復帰ロック機構がロック解除位置にあるとき、前記作動シャフトを前記電気モータとの係合から自動的に回転させるように構成されている、請求項3に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項14】
前記シャフト後退機構が、前記作動シャフトをハンドルアセンブリの最も近位側の位置に戻すように構成され、前記シャフト後退機構が、枢動継手において復帰爪に結合された復帰レバーをさらに備える、請求項11又は13に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項15】
前記シャフト回転機構が、前記シャフトアセンブリを前記電動モータとの係合から外れて前記シャフト抗体機構との係合に回転させるように構成されている、請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項16】
前記作動シャフトは、前記作動シャフトが前記シャフト回転機構と係合する範囲を制御する1つ以上の爪をさらに備える、請求項15に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項17】
前記復帰ロック機構と前記シャフト回転機構は、ワームギアドライブにより実行され、前記ワームギアドライブは、キー(key)により回転可能である、請求項1に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項18】
前記ワームギアドライブの回転は、前記作動シャフトを前記電気モータから切り離し、前記作動シャフトを前記シャフト後退機構と係合するように位置決めする、請求項17に記載のハンドルアセンブリ。
【外国語明細書】