(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028745
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】コンパクトな高エネルギーイオン注入システム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20240227BHJP
H05H 9/00 20060101ALI20240227BHJP
H05H 5/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H05H9/00 A
H05H5/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023198893
(22)【出願日】2023-11-24
(62)【分割の表示】P 2020567069の分割
【原出願日】2019-05-22
(31)【優先権主張番号】15/995,913
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】装置は、第1のイオンエネルギーでイオンビームを生成するように構成されたイオン源を含み得る。該装置は、さらに、イオン源の下流に配置され、第1のイオンエネルギーよりも大きい第2のイオンエネルギーまでイオンビームを加速するように構成されたDC加速器カラムを含み得る。装置は、DC加速器カラムの下流に配置され、第2のイオンエネルギーよりも大きい第3のイオンエネルギーまでイオンビームを加速するように構成された線形加速器を含み得る。
【効果】既知の線形加速器と比較して、高エネルギーイオン注入装置用の総設置面積がより小さいという利点を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のイオンエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源および抽出システムと、
前記イオン源の下流に配置され、前記第1のイオンエネルギーよりも大きい第2のイオンエネルギーまで前記イオンビームを加速するように構成されたDC加速器カラムと、
前記DC加速器カラムの下流に配置され、前記第2のイオンエネルギーよりも大きい第3のイオンエネルギーまで前記イオンビームを加速するように構成された線形加速器と
を備える、装置。
【請求項2】
前記線形加速器が、少なくとも1つの三重間隙加速器段を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記線形加速器が、少なくとも3つの三重間隙加速器段を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記線形加速器が、共振器を備える少なくとも1つの加速器段と、前記共振器に連結され、20MHzを上回る周波数を有する信号を生成する高周波生成器とを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記信号が、40MHzの周波数を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記線形加速器が、前記DC加速器カラムと前記線形加速器との間に配置されたバンチャをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記線形加速器が、複数の加速器段を備え、少なくとも1つの加速器段は、第1電圧信号を受信するために第1電圧源に連結され、少なくとも1つの他の加速器段は、前記第1電圧信号に対して位相がずれた第2電圧信号を受信するために連結されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のイオンエネルギーが200keV以上であり、前記第3のエネルギーが1MeV以上である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
高エネルギーイオンビームを生成する方法であって、
イオン源において低イオンエネルギーでイオンビームを生成することと、
DC加速器カラムを通して、前記イオンビームを200keVを上回る中間イオンエネルギーまで加速することと、
前記DC加速器カラムの下流に配置された線形加速器において、前記イオンビームを1MeVを上回る高エネルギーまで加速することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記線形加速器が、少なくとも1つの三重間隙加速器段を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記線形加速器が、共振器を備える少なくとも1つの加速器段と、前記共振器に連結された40MHz生成器とを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記線形加速器が、前記DC加速器カラムと前記線形加速器との間に配置されたバンチャをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記線形加速器が複数の加速器段を備え、前記線形加速器において前記イオンビームを加速することが、前記線形加速器の第1の加速器段に第1電圧信号を印加することと、前記線形加速器の第2加速器段に第2電圧信号を印加することとを含み、前記第2電圧信号は、前記第1電圧信号に対して位相がずれている、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記線形加速器が、複数の無線周波数電圧信号によってそれぞれ駆動される複数の加速器段を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
コンパクトな高エネルギーイオン注入システムであって、
第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源および抽出システムと、
前記イオン源の下流に配置され、前記イオンビームを200keVを上回る中間イオンエネルギーまで加速するように構成されたDC加速器カラムと、
前記DC加速器カラムの下流に配置され、前記イオンビームの軌道を変更するように構成された分析器と、
前記分析器の下流に配置され、前記イオンビームを1MeVを上回る高エネルギーまで加速するように構成された線形加速器と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概してイオン注入装置に関し、より詳細には、高エネルギービームラインイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]イオン注入は、衝突を介して基板にドーパントまたは不純物を導入するプロセスである。イオン注入システムは、イオン源および一連のビームライン構成要素を備え得る。イオン源は、イオンが生成されるチャンバを備え得る。イオン源はまた、電源およびチャンバの近くに配置された抽出電極アセンブリも備え得る。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器、第1の加速または減速段、コリメータ、および第2の加速または減速段を含み得る。光線を操作するための一連の光学レンズのように、ビームライン構成要素は、特定の種、形状、エネルギー、および/または他の性質を有するイオンまたはイオンビームをフィルタし、集束させ、かつ操作することが可能である。イオンビームは、ビームライン構成要素を通過し、プラテンまたはクランプ上に取り付けられた基板に向かって方向付けられ得る。
【0003】
[0003]約1MeV以上のイオンエネルギーを生成することができる注入装置は、高エネルギーイオン注入装置、または高エネルギーイオン注入システムと称されることが多い。高エネルギーイオン注入装置の1つのタイプは、いわゆるタンデム加速アーキテクチャを採用しており、イオンは、第1のカラムを通って高エネルギーまで加速され、電荷交換を受けて極性を変化させ、次いで第2のエネルギーまで加速され、第2のカラムにおいて第1のエネルギーの約2倍になる。別のタイプの高エネルギーイオン注入装置は、線形加速器、すなわちリニアック(LINAC)と呼ばれ、チューブとして配置された一連の電極がイオンビームを伝導し、かつ、一連のチューブに沿ってますます高いエネルギーにまで加速し、電極がAC電圧信号を受信する。標準のLINACは、コイルおよびキャパシタを含む共振器回路を用いて、13.56MHz(または10~20MHzの範囲内にあってもよい)の信号によって駆動される。全般的に、13.56MHz共振器を採用する標準的なLINACは、多くの加速器段を採用し、その結果多くの共振器が、最初は低エネルギーのイオンビームをターゲットイオンエネルギーまで加速するために、動作のための比較的大きな設置面積を必要とする。これらおよび他の検討事項に対して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0004】
[0004]様々な実施形態は、新規なイオン注入装置に関する。一実施形態では、装置は、第1のイオンエネルギーでイオンビームを生成するように配置されたイオン源を含み得る。装置は、さらに、イオン源の下流に配置され、第1のイオンエネルギーより大きい第2のイオンエネルギーまでイオンビームを加速するように構成された、DC加速器カラムを含み得る。装置は、DC加速器カラムの下流に配置された線形加速器を含み得、該線形加速器は、第2のイオンエネルギーより大きい第3のイオンエネルギーまでイオンビームを加速するように構成される。
【0005】
[0005]別の実施形態では、高エネルギーイオンビームを生成するための方法は、イオン源において低イオンエネルギーでイオンビームを生成することを含み得る。本方法は、DC加速器カラムを通じて200keVより大きい中間イオンエネルギーまでイオンビームを加速することを含み得る。本方法は、さらに、DC加速器カラムの下流に配置された線形加速器において、1MeVより大きい高エネルギーまでイオンビームを加速することを含み得る。
【0006】
[0006]さらなる実施形態では、第1のエネルギーでイオンビームを生成するように配置された、イオン源および抽出システムを含む、コンパクトな高エネルギーイオン注入システムが提供される。該システムは、さらに、イオン源の下流に配置され、200keVより大きい中間イオンエネルギーまでイオンビームを加速するように構成された、DC加速器カラムを含み得る。該システムは、DC加速器カラムの下流に配置され、イオンビームの軌道を変更するように構成された分析器と、分析器の下流に配置され、1MeVより大きい高エネルギーまでイオンビームを加速するように構成された線形加速器とを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]本開示の実施形態による装置を明示する例示的な実施形態を示す。
【
図2】[0008]本開示の実施形態による線形加速器の例示的な加速器段の構造を示す。
【
図3】[0009]
図2の線形加速器の加速器段に関連する様々なパラメータを示すグラフである。
【
図4】[0010]本開示の実施形態に従って配置された、LINACの加速器段に対するモデリング結果を提示する。
【
図5】[0011]本開示のいくつかの実施形態による例示的なプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0012]図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。
【0009】
[0013]ここで、本開示による装置、システムおよび方法を、システムおよび方法の実施形態が示される添付の図面を参照しながら、以下により十分に説明する。該システムおよび方法は、多くの異なる形態で実現されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されない。その代わりに、上記実施形態は、本開示が一貫しておりかつ完全となるように提供され、当業者にシステムおよび方法の範囲を十分に伝える。
【0010】
[0014]図面に見られるような半導体製造デバイスの構成要素の形状寸法および配向に対して、これらの構成要素およびその構成部品の相対的な配置および配向を記載するために、「上部」、「底部」、「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」、「横方向」、および「長手方向」などの用語が本書で使用され得る。専門用語には、具体的に言及された単語、その派生語、および同様の趣旨の単語が含まれ得る。
【0011】
[0015]本明細書で使用される、単数形で列挙され、「a」または「an」という単語に続く要素または動作は、複数の要素または動作を潜在的に含むものとしても理解される。さらに、本開示の「一実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む付加的な実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しない。
【0012】
[0016]本明細書では、ビームラインアーキテクチャに基づく、改良型の高エネルギーイオン注入システムのためのアプローチが提供される。簡潔にするために、本明細書では、イオン注入システムは「イオン注入装置」とも称され得る。様々な実施形態は、高エネルギーイオンを生成する能力を提供するための新規な構成を提供し、ここで、基板に供給される最終イオンエネルギーは、1MeV以上であってよい。本開示の実施形態の一態様は、2つの異なる加速サブシステムの新規な組み合わせであり、既知のビームラインアーキテクチャを超える様々な利点を提供する。例示的な実施形態において、DC加速器カラムは、コンパクトなビームラインアーキテクチャにおいて高エネルギーイオンビームを生成するために、新規な線形加速器と直列に設けられる。
【0013】
[0017]ここで
図1を参照すると、例示的な装置がブロック形式で示される。装置100は、ビームラインイオン注入装置を表し得、いくつかの要素は、説明を明確にするために示されない。装置100は、当技術分野で知られているように、イオン源102と、ターミナル104内に配置されたガスボックス107とを含み得る。イオン源102は、第1のエネルギーでイオンビーム106を生成するために、抽出構成要素およびフィルタ(図示せず)を含む抽出システムを含み得る。第1のイオンエネルギーのための適切なイオンエネルギーの例は、5keV~100keVの範囲であるが、実施形態は、この文脈に限定されない。高エネルギーイオンビームを生成するために、装置100は、イオンビーム106を加速するための様々な付加的な構成要素を含む。装置100は、イオン源102の下流に配置されたDC加速器カラム108を含む。DC加速器カラム108は、イオンビーム106を加速させ、第2のイオンエネルギーで加速ビーム109を生成するように構成されている。第2のイオンエネルギーは、イオン源102によって生成された第1のイオンエネルギーよりも大きい。DC加速器カラム108は、中型のエネルギーイオン注入装置で使用されるカラムなどの既知のDC加速器カラムのように構成されてもよい。
【0014】
[0018]図示のように、装置100は、既知の装置と同様、イオンビーム106の軌道を変化させることによって加速イオンビーム109を分析するよう機能する分析器110を含み得る。また、装置100は、DC加速器カラム108の下流に配置されたバンチャ(集束器、buncher)112および線形加速器114(破線で示される)を含み得、ここで、線形加速器114は、第2のエネルギーよりも大きい第3のエネルギーで、高エネルギーイオンビーム115を生成するために、加速イオンビーム109を加速するように構成される。線形加速器114は、図示のように直列に配置された複数の加速器段126を含み得る。様々な実施形態では、第3のエネルギーは、イオンビーム106の最終イオンエネルギー、またはほぼ最終イオンエネルギーを表し得る。様々な実施形態では、装置100は、フィルタ磁石116、スキャナ118、コリメータ120などの付加的な構成要素を含み得、スキャナ118およびコリメータ120の一般的な機能は周知であり、本明細書ではさらに詳細には記載しない。このようにして、高エネルギーイオンビーム115によって表される高エネルギーイオンビームは、基板124を処理するために、最終ステーション122に供給されてもよい。
【0015】
[0019]装置100の際立った特徴は、DC加速器段と線形加速器との直列の連結である。様々な実施形態では、DC加速器段108は、200keV以上のエネルギーまでイオンビーム106を加速し得る。一例として、イオンビーム106は、イオン源102から抽出され、20keV~80keVの範囲の第1のエネルギーを提供され得、DC加速器段は、イオンビーム106を加速して、500keVの第2のエネルギーで加速イオンビーム109を生成する。次いで、500keVのエネルギーを有する加速イオンビーム109が、さらなる加速のために線形加速器114に伝導される。比較的高エネルギーを有する加速イオンビーム109を線形加速器114に提供する利点を以下に詳細に示す。
【0016】
[0020]本開示の様々な実施形態によると、線形加速器114は、加速イオンビーム109を高エネルギーまでさらに加速するために、複数の加速器段を含み得る。いくつかの実施形態では、線形加速器114の加速器段は、二重間隙加速器段であってもよく、他の実施形態では、線形加速器114の加速器段は、三重間隙加速器段であってもよい。特定の実施形態では、線形加速器114は、少なくとも3つの三重間隙加速器段を含み得る。
【0017】
[0021]
図2は、本開示の実施形態による、線形加速器の例示的な加速器段の構造を示す。
図3は、
図2の線形加速器の加速器段に関連する様々なパラメータを示すグラフである。より詳細には、
図2は、三重間隙加速器段として配置された加速器段200の実施形態を示す。既知のように、線形加速器(LINAC)は集束イオンビームとしてイオンビームを受け取る。集束イオンビームは、二重間隙加速器段内の2つの間隙、または三重間隙加速器段内の3つの間隙で加速され得る。
【0018】
[0022]
図2の構成は、共振器204と、共振器204に連結された高周波生成器202と、ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216として示される一連の加速ドリフト管とを含む、三重間隙加速器段を示す。「ドリフト管」という用語は、電界がチューブの内部に侵入しないように制御された電位で導体によって囲まれたビームラインの空洞または領域を示すことが知られているが、該電界はドリフト管の入口領域および出口領域に制限される。したがって、荷電粒子は、このドリフト管を通って一定の速度で移動または「ドリフト」することになる。高周波生成器202は、例えば20MHz以上の無線周波数信号を生成し得、いくつかの実施形態では、40MHzの信号を生成し得る。共振器204は、無線周波電圧信号などの高電圧、高周波信号を生成するための電圧源として作用する昇圧器として構成され得る。この高電圧信号は、ドリフト管の電圧を制御するために使用され、したがって、加速器段200によって提供される加速を規定する。概して
図2に示すように配置された一連の加速器段を直列に配置して、イオンエネルギーを最終的な目標イオンエネルギーまで漸増的に増加させることができる。
【0019】
[0023]本開示の実施形態によると、加速器段内のドリフト管の長さのみならず、線形加速器114などの線形加速器内の加速器段の数を特定するためにも、様々な検討事項を考慮に入れることができる。最初に、加速器段200の動作原理について簡単に説明する。
図2の構成に示すように、第1の加速ドリフト管であるドリフト管210は、所与のイオンエネルギーを有するイオンビーム230を受け取り、このイオンエネルギーはDC加速器カラム108によって規定される。RF電圧は、
図3に示すAC信号302として提供され得、ここで、AC信号302は、イオンの束がその位置にある時間に対応するz軸値に沿って示される。束が加速すると、一時的な周波数は固定されているにもかかわらず、この束の波長は長くなる。次いで、束(イオンビーム230によって表される)は、加速器段のドリフト管に印加されるRF信号の印加によって、加速器段200を通って加速される。RF信号は、
図3において、例示的な印加信号であるAC信号302によって示されるように、正弦波などの適切な形状を有し得る。AC信号302は、印加電圧の最大振幅Vmaxによって特徴付けられ得、ここで、AC信号は、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加される。したがって、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加される電圧の最大値は、2Vmaxである。特に、ドリフト管210、および最後のドリフト管であるドリフト管216は、接地されている。
【0020】
[0024]
図2にさらに示されるように、加速器段200は、点P1におけるドリフト管210の端部と点P2におけるドリフト管212の始点との間の間隙220によって特徴付けられる。加速器段は、さらに、点P3におけるドリフト管212の端部と点P4におけるドリフト管214の始点との間の間隙222によって特徴付けられる。加速器段は、さらに、点P5におけるドリフト管214の端部と点P6におけるドリフト管216の始点との間の間隙224によって特徴付けられる。特に、所与のドリフト管内では、イオンビーム230は加速せず、所与の速度で所与のドリフト管を通って単にドリフトする。加速器段200の各間隙において、AC信号は、隣接するドリフト管の間でイオンビーム230(集束イオンビームとして)を加速するように切り替わる。
【0021】
[0025]Vmaxを有する所与のAC電圧信号について、イオンビーム230に付与される付加エネルギーの最大量は、4qVmaxに等しいことが示され得る。ここで、qはイオンの電荷である。この最大エネルギーは、所与のドリフト管のチューブの長さが集束イオンビームの速度に適合されるときに、イオンビーム230に付与されてもよい。チューブの長さが長すぎるか短すぎる場合、所与の間隙にわたってイオンビームに付与されるエネルギーの量は、付加エネルギーの2Vmax未満である。周知のように、イオンの速度は、単にイオンエネルギーおよびイオン質量によって決まり、イオンの荷電状態の影響を受けない。したがって、最大エネルギーは、典型的には、より高いイオン質量に対してより高くなる。その結果、加速器段200の所与のドリフト管のチューブの長さは、イオンビーム230に使用されるイオンのイオンエネルギーおよびイオン質量を考慮して設計され得る。一例として、注入エネルギーは、より低いイオン質量と比較して、より高いイオン質量に対してより高くなる可能性がある。
【0022】
[0026]加速器段を含む線形加速器の構成要素は容易に切り換えることができないので、所与の加速器段の様々なドリフト管の設計は、装置100などの装置で採用される様々なイオン種およびイオンエネルギーを考慮に入れてよい。参考までに、既知のLINACに関しては、生成器は、通常、13.56MHzでの動作に制限されてきた。原理上は、40MHz生成器を含む40MHz電源を使用してLINACを駆動することができ、この場合、共振器サイズは、13.56MHz共振器と比較して、それに応じて縮小され得る。特に、所与のチューブにおける最大電圧増加を得るために、チューブの長さは、イオンのエネルギーに適合される。したがって、イオンエネルギーが増加するにつれて、チューブの長さはビームラインに沿って増加する。以下に詳述するように、より重いイオンおよびより低いエネルギーに対しては、より短い長さのチューブが必要とされる。例えば、100keVのリンイオンエネルギーに対しては、40MHz共振器の場合、約1cmの長さのチューブが要求される。かかる短い長さは、イオンビームの幅、したがってドリフト管の最小内径が1センチメートルのオーダーであり得る場合、ビーム制御と両立しないことがある。かかる短い長さでは、電界はドリフト管の「長さ」全体に侵入し、ドリフト管を無効にする。13.56MHzの共振器に関しては、80keVのリンの場合の理想的なチューブの長さは約3cmであり、イオンビームが一連のチューブに入って高エネルギーへの加速を受けるときに、イオンビームを伝導するためのより適合性の高い形状寸法を提示する。かかる13.56MHzのLINACシステムの欠点は、比較的大きな共振器およびそれに付随するより大きなLINACであり、かかるイオン注入装置のために大きな設置面積を生成する。
【0023】
[0027]表Iは、10MeVまでのイオンエネルギーの関数として示される、様々なイオン種、水素、ホウ素、およびリンについての理想的なチューブの長さのリストを提供する。この長さは、指定のイオンが、AC電圧の180°またはπラジアンに相当する時間に移動する距離である。チューブの長さも信号周波数の関数であり、40MHzの周波数(本実施形態が40MHz技術を採用し得る)に関してのみならず、線形加速器で一般に使用される13.56MHzに関しても示される。特に、160keV(0.16MeV)以下のイオンエネルギーでは、理想的なチューブの長さは非常に短く、リンでは4cm以下である。40MHzでは、リンイオンのチューブの長さは、160keVまたは80keVで約1cmである。いくつかの例では、イオンビームのビーム幅が1cmのオーダーであり得ると仮定すると、イオンビームを適切に制御するための光学系は、ビーム幅よりも長い、例えば少なくとも2センチメートルまたは3センチメートルのチューブの長さを要求し得る。したがって、表1は、イオンを加速するためにのみ線形加速器を採用し、本実施形態のDC加速器カラムを欠く、既知のビームラインイオン注入装置において13.5MHz周波数を使用する1つの理由を強調する。換言すれば、既知の線形加速器ビームライン注入装置は、線形加速器に入るイオンビームに対して、80keV以下のオーダーのイオンエネルギーを生成し得る。より低い周波数(13.56MHz)のRF生成器は、リンに対して3cmのオーダーの線形加速器のためのチューブの長さを可能にし、1cmのイオンビームのための適切なビーム制御に適している。特に、上述のように、40MHzでは、イオンビームを加速するための理想的なチューブの長さは、1cmのリンイオンビームを制御するための適切なドリフト管を構築するには短すぎる(0.6cm)。
【0024】
[0028]上述の点に鑑みて、装置100の構成は、イオンビームを加速するために線形加速器のみを採用するよりも、既知のビームライン注入装置を超えた利点を提供する。特に、DC加速器カラムは、例えば500keVのエネルギーまでイオンを加速し得るので、リンイオンビームを加速するためのこのエネルギーにおける理想的なチューブの長さは、2cmのオーダーであり、1cmのイオンビームを適切に制御するためのドリフト管を構築するのに適正な長さである。
表I
【0025】
[0029]加速器段においてイオンビームを加速するために40MHzの電圧信号を使用するさらなる利点は、13.56MHz共振器と比較して、共振器のサイズが付随して縮小することである。共振器のサイズは、共振器を通るAC場の周波数に反比例してよく、既知の13.56MHz共振器と40MHz共振器との間でスケーリングを行う場合、実質的により小さな共振器サイズをもたらす。
【0026】
[0030]上述のように、一連のドリフト管から成る加速器段に供給される電圧を適切に合わせるためには、ドリフト管の長さは、イオン種のイオンエネルギーおよび質量に対して適切であるべきである。
図3に戻って、印加されたRF電圧に関するモデリングの結果がさらに示され、ここで、Vmaxは80kV、周波数は20MHz、かつ、ドリフト管は、ほぼm/q=15でピークを生成するように選択される。ここで、qは電荷であり、mは質量である。電圧はV=Vmax cos(ωt+Φ)のように変化すると仮定する。集束イオンビーム(イオンビーム230)が各ドリフト管を移動するにつれて、ACの位相は変化する。曲線304は、ドリフト管の中心軸に沿った電圧を表し、一方、曲線306は、ドリフト管の縁部における電圧を表す。曲線308はイオンエネルギーを表し、加速器段に入る最初のエネルギーは80keVである。間隙220は、10mmの長さを有し、間隙222は、20mmの長さを有し、間隙224は、10mmの長さを有し、ドリフト管212の長さは12mmであり、一方、ドリフト管214の長さは、24mmである。イオンビーム230の質量は15amuと仮定する。図示するように、イオンエネルギーは、理論上の最大値400keV(Vmaxが80kV、注入エネルギーが80keVと仮定して)のうち、最終エネルギーの約330keVを有する3つの間隙にわたって3つの増分で増加する。
【0027】
[0031]様々な実施形態によると、複数の加速器段を直列に配置して、目標値までイオンエネルギーを増加させることができ、ここで、各加速器段はエネルギーを付加する。第1の加速器段の第1の電圧信号の位相は、第2の加速器段の第2の電圧信号の位相と同相であってもよいが、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の加速器段は、第1の加速器段の第1の電圧信号に対して位相がずれた第2の電圧信号を受信するように連結されてもよい。
【0028】
[0032]
図4を参照すると、本開示の実施形態に従って配置された、イオン質量(m/qとして表される)の関数としての加速器段のエネルギー上昇が示される。曲線402は、
図2および
図3に関して上述したように、三重間隙加速器段によって生成されるエネルギー増加を表す。曲線402は、二重間隙加速器段によって生成されるエネルギー増加を表す。ここで、両ケースにおいて80kVのVmaxを仮定する。三重間隙加速器段は、所与のVmaxのピークで2倍のエネルギー増加を生じさせ、一方、二重間隙加速器段は、エネルギー増加がピーク付近にとどまるより広い範囲を有する。三重間隙加速器段構成からのエネルギー増加が、7から25のm/qの間で、依然として最大エネルギー増加の80%であることに留意されたい。
【0029】
[0033]
図5は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なプロセスフロー500を示す。ブロック502では、第1のイオンエネルギーを有するイオンビームが、イオン源から生成される。第1のイオンエネルギーは、既知の抽出装置を使用してイオンビームを抽出することによって付与され得、そのエネルギーは、いくつかの実施形態において、5keVと100keVとの間で変化し得る。ブロック504では、イオンビームは、DC加速器カラムを通って第2のイオンエネルギーまで加速される。いくつかの例では、第2のイオンエネルギーは、500keV程度の高さであり得る。ブロック506では、集束イオンビームがバンチャによって生成され、その集束イオンビームは、イオンビームから生成され、DC加速器カラムから受け取られる。そのようにして、集束イオンビームは、第2のイオンエネルギーを保持し得る。ブロック508では、集束イオンビームは、線形加速器を使用して第3のイオンエネルギーまで加速される。様々な実施形態によると、線形加速器は、1MeV以上のイオンエネルギーまで集束イオンビームを加速し得る。
【0030】
[0034]上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。比較的高エネルギーでイオンを注入するためのDC加速サブシステムを提供することによって、本実施形態は、既知の線形加速器と比較して、高エネルギーイオン注入装置用の総設置面積がより小さいという利点を提供する。関連する利点は、最終ビームエネルギーを生成するために使用される加速器ドリフト管がより短いということであり、これは、LINACサブシステムがより短く、全体的なツールがよりコンパクトであることを意味する。本実施形態によって与えられる付加的な利点は、より高い周波数の共振器を使用する能力であり、注入エネルギーがより高いため、共振器がより小さいことを意味する。さらなる関連する利点は、より高い周波数で動作することによって破壊リスクを減少させる能力であり、SF6などの扱いにくい絶縁手段を使用する必要がなくなることである。
【0031】
[0035]本開示の特定の実施形態が本明細書に記載されてきたが、当該技術分野が許す限り範囲が広く本明細書が同様に解されるため、本開示はこれらに限定されない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲および思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のイオンエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源および抽出システムと、
前記イオン源の下流に配置され、前記第1のイオンエネルギーよりも大きい第2のイオンエネルギーまで前記イオンビームを加速するように構成されたDC加速器カラムと、
前記DC加速器カラムの下流に配置され、前記イオンビームを解析して、前記第2のイオンエネルギーを有する質量分析されたイオンビームを生成するように構成された質量分析器と、
前記質量分析器の下流に配置され、前記第2のイオンエネルギーよりも大きい第3のイオンエネルギーまで前記質量分析されたイオンビームを加速するように構成された線形加速器と
を備え、前記線形加速器は、複数の無線周波数電圧信号によってそれぞれ駆動される複数の加速器段を備える、イオン注入装置。
【請求項2】
前記複数の加速器段の所定の加速器段が、
共振器と、
複数のドリフト管であって、前記複数のドリフト管の少なくとも1つのドリフト管が前記共振器に結合された、複数のドリフト管と、
前記共振器に結合されており、RF電圧信号を発生させる、高周波発生器と、
を備えた、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記RF電圧信号が13.56MHz以上の周波数を有する、請求項2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記線形加速器が、少なくとも1つの三重間隙加速器段を備える、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記線形加速器が、前記DC加速器カラムと前記線形加速器との間に配置されたバンチャをさらに備える、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
少なくとも1つの加速器段が、第1電圧信号を受信するために第1電圧源に連結され、少なくとも1つの他の加速器段が、前記第1電圧信号に対して位相がずれた第2電圧信号を受信するために連結されている、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記第2のイオンエネルギーが200keV以上であり、前記第3のイオンエネルギーが1MeV以上である、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項8】
高エネルギーイオンビームを生成する方法であって、
イオン源において低イオンエネルギーでイオンビームを生成することと、
DC加速器カラムを通して、前記イオンビームを中間イオンエネルギーまで加速することと、
前記中間イオンエネルギーで前記イオンビームを質量分析器に通して、質量分析されたイオンビームを生成することと、
前記DC加速器カラムの下流に配置された線形加速器において、前記質量分析されたイオンビームを前記中間イオンエネルギーよりも大きい高イオンエネルギーまで加速することと
を含み、前記線形加速器は、複数の無線周波数電圧信号によってそれぞれ駆動される複数の加速器段を備える、方法。
【請求項9】
前記複数の加速器段の所定の加速器段が、
共振器と、
複数のドリフト管であって、前記複数のドリフト管の少なくとも1つのドリフト管が前記共振器に結合された、複数のドリフト管と、
前記共振器に結合された高周波発生器と、
を備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記線形加速器が、少なくとも1つの三重間隙加速器段を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記高周波発生器が13.56MHz以上で動作する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記中間イオンエネルギーが200keV以上であり、前記高イオンエネルギーが1MeV以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記線形加速器において前記質量分析されたイオンビームを加速することが、
前記線形加速器の第1の加速器段に第1電圧信号を印加することと、前記線形加速器の第2加速器段に第2電圧信号を印加することとを含み、前記第2電圧信号は、前記第1電圧信号に対して位相がずれている、請求項8に記載の方法。
【外国語明細書】