(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028759
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】生物学的試料を動的に培養するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C12N 5/073 20100101AFI20240227BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N5/073
C12M3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199583
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2022144768の分割
【原出願日】2016-02-17
(31)【優先権主張番号】2015900536
(32)【優先日】2015-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
2.MATLAB
3.PYTHON
4.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】517149128
【氏名又は名称】ジェネア アイピー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ボム,エドゥアード
(72)【発明者】
【氏名】スペンス,サイモン・ジョナソン
(72)【発明者】
【氏名】ラニヨン,サミュエル・ロス・ガーランド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ART処置を受けている患者の胚をインキュベートするのに適合した胚培養システムにおける生存可能な胚の割合を高めるためにフィードバックを提供する方法。
【解決手段】胚培養システムは複数のモジュールを含み、各モジュールは、複数の胚を各々収容するための間隔を置いて配置された、複数のマイクロウェルを含む培養ディッシュを収容する1つのチャンバーを有し、フィードバックが、胚培養システムのチャンバーと連動した環境パラメータを測定するステップ、及び、培養システムの培養ディッシュと連動した培養培地パラメータを測定するステップ、を含み、各モジュールに関する検査手段及び培地のサンプリング手段の1つ又はそれらの組合せを、1以上の胚に使用して、環境パラメータを操作するための胚培養システムのチャンバーを選択し、そして、培養培地パラメータを操作するための胚培養システムの培養ディッシュを選択する、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料の生存能を改善するために生物学的試料培養システムにおいてフィードバックを提供する方法であって、フィードバックが、
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定および操作するステップ、ならびに、
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む方法。
【請求項2】
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定および操作するステップが、
温度およびガス組成を変化させることにより、培養システムにおける生物学的試料のチャンバー環境を改変するステップ、
個別のガス容器を提供し、チャンバーガス操作を可能にするステップ、
熱ストレスを適用して試料発生を改善するステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップが、
培養システムの培養ディッシュについて、載置されている成分を混合することにより培地を操作するステップ、
吸引および/または分注を介して生物学的試料周辺の培地を変化させるステップ、
培地の組成を感知し、リアルタイムフィードバックを可能にするステップ、
培地および環境のpHレベルを感知するステップ、
培地pHレベルを変化させるステップ、
試料の座位とは離して培地成分を混合して組み合わせるステップ、
液体を混合領域内に別個に分注し、試料の座位内に分注する前にステージングを可能にするステップ、
NIRSを使用し、補充のために試料培地の検出を可能にするステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項7】
生物学的試料が、
胚、
幹細胞、
卵母細胞、
精子、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムであって、
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定するための環境パラメータ測定装置、
環境パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを操作するための環境パラメータ操作装置、
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定するための培地パラメータ測定装置、
培地パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを操作するための培地パラメータ操作装置、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含むシステム。
【請求項9】
培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
培地パラメータ測定装置が、光学分光デバイスを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
培地パラメータ測定装置が、NIRSを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
生物学的試料培養システムにおける生物学的試料の培養を制御する方法であって、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するステップ、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培
養ポッド内に分注するステップ、
少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するステップ、
を含む方法。
【請求項15】
培地成分が、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
培地成分が、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項14、15または16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの生物学的試料が、
胚、
幹細胞、
卵母細胞、
精子、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムであって、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、
少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、
を含むシステム。
【請求項20】
試料の生存能を改善するためにインタラクティブ制御に適合した生物学的試料培養システムであって、
少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッドを、包括基礎培地に浸漬するための試料取扱い装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培
養ポッド内に分注するための分注装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを適合させるための環境制御装置、
を含むシステム。
【請求項21】
培地成分が、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
培地成分が、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項19から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
フィードバック装置が、光学分光デバイスを含む、請求項19または21から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
フィードバック装置が、NIRSを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
本明細書に開示の方法またはプロトコル。
【請求項27】
本明細書に開示の装置、システムおよび/またはデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は、2015年2月17日に発明の名称「生物学的試料を動的に培養するための方法および装置(Method and Apparatus for Dynamically Culturing a Biological Sample)」で出願されたGenea Ltdによる豪州仮特許出願第20159005
36号に基づく優先権を主張し、その明細書は、その全体があらゆる目的のため参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、生物学的試料の試験、評価および培養の分野に関する。本明細書において以下では、培養スペース中に位置する生物学的試料、特に接合子、胚、卵母細胞、幹細胞および精子の評価および培養との関連で本発明を説明することが簡便であると考えられるが、しかしながら、本発明がその使用のみに限定されないことが認められるべきである。本発明はまた、胚発生中のインキュベーションのための最適で安全な培養条件を同時に提供するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
[0003]本明細書を通じて、単数形での「発明者」という語の使用は、本発明の一人(単一)の発明者への言及と解されても、二人以上(複数)の発明者への言及と解されてもよい。
【0004】
[0004]本明細書において文献、デバイス、作用または知識についての任意の議論が含まれるのは、本発明の文脈を説明するためであることが認められるべきである。さらに、本明細書全体を通じて、議論は、本発明者の認識および/または本発明者によるある関連技術分野の問題の同定ゆえに生じる。さらに、本明細書における題材、たとえば文献、デバイス、作用または知識についての任意の議論は、本発明者の知識および経験の観点から本発明の文脈を説明するために含まれ、したがって、任意のかかる議論は、題材のうちの任意のものが、先行技術の基礎または豪州その他の地域の関連技術分野における一般的な知識の一部を、本明細書における開示および特許請求の範囲の優先日以前に形成することの認容と解されるべきでない
[0005]生殖補助技術(ART:Assisted Reproductive Technology)は、先進国において生殖補助の手段としてますます重要となっている。背景としては、1981年に米国に導入されたのち、およそ150,000のARTサイクルが米国で2010年中に実施され、47,090回の生児出生および61,564人の乳児がもたらされた。ARTの使用は、潜在需要と比較して依然として相対的にまれであるとはいえ、過去10年間で使用は大きく増加し、結果として今日では、毎年生まれる乳児のうち、米国ではおよそ1%、他国では2~4%が、体外受精(IVF:In Vitro Fertilization)を使用して妊娠している。この点に関して、米国疾病管理予防センターの最近のインターネット記事(http://www.cdc.gov/art)をさらに参照されたい。
【0005】
[0006]IVFは、複数の卵子を成熟させるために、女性の卵巣のホルモン刺激を伴い、これらの卵子を取り出し、実験室で受精させ、2から6日間培養し、妊娠のために女性の子宮に戻す。第1日に受精させ、染色体が分裂し、2度の細胞分裂を経て第2日早くまでに4細胞期に達し、第3日早くまでに8細胞期に達した卵子は、染色体が分裂し、1度だけ細胞分裂を経て第2日に2細胞期に達し、第3日に4細胞期に達した卵子よりも、子をもたらす可能性が高い。広く認められている胚生存能の指標の1つであり、それに続く妊娠の成功の貢献因子の1つは(患者特有の因子ではあるが)、適切で時宜を得た胚発生パ
ターンであり、すなわち、細胞分裂が正常に適切な時点で生じることである。
【0006】
[0007]初期ヒト胚発生の基礎的な経路および事象については、発生の成否の予測に役立つと考えられる因子も含めて、ほとんど知られていない。結果として、IVFを通じた妊娠の可能性を高めるために、有害な結果をもたらす可能性があると十分裏づけられている(たとえば、Pinborg 20051を参照のこと)にもかかわらず、多くの場合、複数の胚が子宮に移植される。
1Pinborg A (2005). IVF/ICSI twin pregnancies: risks and prevention. Human Reproduction Update 11: 5-593
[0008]この問題に対する応答として、多くのIVFプログラムが、胚培養を第5日または第6日まで延長し、単一の胚盤胞を移植する。この実施法は、多胎妊娠のリスクをうまく減少させつつ、36歳未満の女性について、1移植胚当たりのより高い着床/妊娠率をもたらす。だが、多くの患者由来の受精卵が、培養下で胚盤胞を形成しない。さらに、よく研究されたマウス胚モデルは、4細胞から16細胞期の間にインビボで生じる速い卵割速度が、現存の培養条件下ではインビトロで再現されないことを示す。胚盤胞形成は、細胞分裂の数とは独立に、受精後所定の間隔で開始するので、インビボで発生したマウス胚は、胚盤胞期に、培養下で発生した胚の2倍を超える数の細胞を有する。状況がヒト胚についても同じであるなら、培養延長は、胎児を形成するのに利用可能な細胞が比較的少ない胚盤胞をもたらすと考えられ、これは、一部のIVFベビーについて報告されている低い出生時体重について、ありうる説明である。(Kiesslingら 1991)
[0009]IVF処置に必要な卵母細胞は、経膣超音波にガイドされた針吸引により回収される。1個から40個超の卵母細胞を回収できるが、10個から20個が典型的である。次に、卵母細胞を、ヒト卵管液をベースとする培養培地内に置き、37℃でインキュベートする。次に、通常は約100,000個から約200,000個の精子を、培地の小滴中の卵母細胞に添加するか、または単一の精子を、細胞質内注入法(ICSI:intracytoplasmic injection)を使用して卵母細胞に直接注入する。受精は、12から20時間後に、受精が生じたことを示す父系(精子由来)および母系(卵子由来)の前核の存在により実証できる。受精率は、0から100%の間で変化しうるが、平均約6~70%の受精率が正常である。続いて、「最善」の形態等級を有する胚を移植のために選択する。
【0007】
[0010]多くの因子が、インビトロでの哺乳動物着床前胚の発生に影響を及ぼす。適切な温度調節および培養培地配合に加えて、ヒト胚は一般に、酸化ストレスの影響を受けやすい。したがって、ヒト胚は一般に、低酸素濃度(約2~7%)下で培養されるが、いくつかのセンターでは依然として、大気中酸素濃度(約20%)を利用している。
【0008】
[0011]IVF処置がますます臨床的重要性を増していることを鑑みると、回収卵母細胞の形態評価は依然としてかなり表面的なものに留まっている(Rienziら 20112)。インビトロ採取卵母細胞の典型的な検査は、実体顕微鏡を使用した卵丘の存在および大まかな形態の評価に限定されている。続いて、倒立顕微鏡を使用した迅速評価もまた、細胞質、囲卵腔、および透明帯の評価を含めて、裸出(denudation)(卵丘細胞の離脱)後に実施される。(Rienziら 2011)。この評価は、発生段階[分裂中期1(MI)またはMII]および質(細胞質、極体、または透明帯の劣化兆候を探すことによる)に関する非常に表面的な情報しか提供しない。続いて、MII卵母細胞をICSI(細胞質内精子注入法(Intra Cytoplasmic Sperm Injection))に供し、その時点から得られた胚の発生能を、それが由来する卵母細胞の質とは無関係に、胚自体の形態のみに基づいて推定する(Rienziら 2011)。
2Rienzi L, Vajta G, Ubaldi F (2011). Predictive value of oocyte morphology in human IVF: a systematic review of the literature. Human Reproduction Update 17: 34
-45.
[0012]受精胚が培養下になると、形態評価が重要な手順となる。常法の倒立顕微鏡検査を、所定のチェックポイントで、定期的にインビトロ培養中毎日または2日ごとに実施し、国際的に認められた基準を定量的特性評価のために適用するが、これらのパラメータの予測値に関していくつかの懸念がある(Cumminsら、19863;Emilianiら、20064)。
3Cummins JM, Breen TM, Harrison KL, et al. (1986). A formula for scoring human embryo growth rates in in-vitro fertilization: its value in predicting pregnancy and in comparison with visual estimates of embryo quality. Journal In Vitro Fertilization Embryo Transfer 3: 284-295.
4Emiliani S, Fasano G, Vandamme B, et al. (2006). Impact of the assessment of early cleavage in a single embryo transfer policy. Reproductive Biomedicine Online
13: 255-260.
[0013]高い着床能を有する胚を同定することを目的として、複数の異なるアプローチが開発されてきた。生存可能な胚を選択するための最も広く支持されている方略は、胚移植時の割球の数および、数少ない国際的に受け入れられた胚等級づけ基準のうちの1つに従って胚に与えられる等級として定義される胚の外観等級に頼るものである(Beuchatら 20085)。しかしながら、これらの形態的側面は、妊娠の成功をもたらすことが可能な最適な胚をはっきり認識することを可能にするほど十分には、胚生存能と相関しない。初期卵割胚の選択(Shoukirら 19976)、胚盤胞期までの培養(Gardnerら 19987)、前核(PN:pronuclear)期接合子のスコアリング(Ebnerら 20038)、胚のメタボロミクスプロファイルの解析および細胞生検後のその染色体構成の検査を含め、胚生存能推定の予測正確性を改善する複数の代替的方略が提案されてきた。
5Beuchat A, Thevenaz P, Unser M, et al. (2008). Quantitaivemorphometrical characterization of human pronuclear zygotes. Human Reproduction23: 1983-1992.
6Shoukir Y, Campana A, Farley T, et al. (1997). Early cleavage of in-vitro fertilized human embryos to the 2-cell stage: a novel indicator of embryo quality and
viability. Human Reproduction 12: 1531-1536.
7Gardner DK, Vella P, Lane M, et al. (1998). Culture and transfer of human blastocysts increases implantation rates and reduces the need for multiple embryo transfers. Fertlity and Sterility 69: 84-88.
8Ebner T, Moser M, Soomergruber M, et al. (2003). Selection based on morphological assessment of oocytes and embryos at different stages of preimplantation development: a review. Human Reproduction Update 9: 251-262.
[0014]上の方法により提示された改善にもかかわらず、それらは依然として本質的に主観的な測定であり、胚スコアリングの予測正確性をさらに洗練するアルゴリズムにより駆動される複数の自動化されたスコアリングシステムが考案されてきた。これらには、前核接合子スコアリングシステムが含まれる(Beuchatら 2008)。より近年は、微速度撮影画像化が、卵割時期(Arav 20089)、胚盤胞発生率(Cruzら 201110)、および、有糸分裂までの時間、細胞質分裂、透明帯の厚さ等の表現型測定値の組合せ(Wongら、201011)を推定するものを含む、いくつかのスコアリングアルゴリズム内に組み込まれてきた。使用される形態スコアリングシステムとは無関係に、微速度撮影画像化により可能となる胚スコアリングの予測正確性の本質的な増加がある(Montagら 201112)。
9Arav A (2008). Prediction of embryonic developmental competence by time-lapse observation and “shortest-half”analysis. Reproductive Biomedicine Online 17: 669-675.
10Cruz M, Gadea B, Garrido N, et al. (2011). Embryo quality, blastocyst and ongoing pregnancy rates in oocyte donation patients whose embryos were monitored by
time-lapse imaging. Journal of Assisted Reproduction and Genetics 28: 59-573.
11Wong CC, Loewke KE, Bossert NL, et al. (2010). Non-invasive imaging of human embryos before embryonic genome activation predicts development to the blastocyst
stage. Nature Biotechnology 28: 1115-1121.
12Montag M, Liebenthron J, Koster M (2011). Which morphological scoring system is relevant in human embryo development.
[0015]国際特許出願公開第WO2012/047678号(Auxogyn,Inc.)は、ヒト胚、卵母細胞、または多能性細胞の自動化された画像化および評価のためのシステムを提供し、自動化されたディッシュ検出およびウェル占有判定が記載されている。加えて、マルチウェル培養ディッシュおよび2モード画像化のための照明アセンブリが記載されている。これらのデバイスは、ヒトの不妊を治療するのに有用な胚および卵母細胞をインビトロで同定するか、またはその同定を容易にするのに使用される。国際公開第WO2012/047678号の装置(apparatus)は、画像化システムを保持する1つまたは複数の棚を有する標準的なインキュベーターを含む。画像化システムは、ローディングプラットフォームを有し、インキュベーターの内部に置かれて、それらのローディングプラットフォーム上にマウントされたディッシュ中で培養された1つまたは複数の胚を画像化する。換言すれば、複数の全体の画像化システムが、各画像化システムのマウントされたディッシュと関連づけられる1つまたは複数の胚のために、インキュベーターとともにインサイチューで配置される。
【0009】
[0016]一般に、患者の混同または生物学的試料の誤同定を最小化することが重要である。微速度撮影設備を有するものを含む現在のシステムでは、多くの場合、生物学的試料を含有するディッシュの蓋に手書きのラベルが必要であるか、または試料はディッシュおよび蓋自体に等しくラベルがないことがありうる。胚はディッシュ上に維持されるので、ディッシュの蓋を胚ごとに分離できるよう留意すべきである。これに加えて、ディッシュは除去して異なる位置に置くことができ、したがって、微速度撮影画像が実際の胚ともはや一致しないことがありうる。
【0010】
[0017]胚生存能に関して、現在のインキュベーターシステムは、「セット・アンド・フォゲット(set and forget)」で動作しうる。換言すれば、単一の温度が機器(instrument)全体について設定される。さらに、胚発生を培養中に増強しないこともありうる。
【0011】
[0018]現在のシステムはまた、生物学的試料の培養環境に対し、様々なレベルの阻害を提供しうる。たとえば、微速度撮影(time-lapse)を伴わない「卓上」(‘bench top’)インキュベーターは、ディッシュを定期的に制御環境から取り除くことを要しうる。国際公開第WO2012/047678号(Auxogyn,Inc.)により開示されている特定の微速度撮影システムに関しては、このシステムは、複数のデバイスが大きなインキュベーター内に置かれる微速度撮影デバイスのみを提供するに過ぎず、したがって、インキュベーター環境は、患者の任意の個別の生物学的試料について制御されてはいない。例として、Unisense FertiliTech A/SのEmbryoscope(商標)インキュベーターシステム、もっと一般的に、微速度撮影システムは、すべてのディッシュが共有環境内に置かれることを要しうるのであり、したがって、一人の患者のディッシュが除去される場合、他の患者試料が影響を受けうる。これに加えて、これらのシステムは、単一のカメラおよび共有環境を伴う。結果は、患者試料が阻害されるというものでありうる。なぜなら、機器がカメラを1台しか有しないがゆえに、試料は絶えず移動し、それゆえそれらの環境において妨害されるからである。
【0012】
[0019]胚の発生に最適な培養培地、および、胚が単一培養環境中またはインビボ条件を模倣するよう設計された複数の培地、すなわち連続培地(sequential med
ia)中で発生することから利益を得るかどうかに関して、多くの研究がなされてきた。この研究は、生殖補助後の成功率の改善に大きく貢献してきた。
【0013】
[0020]しかしながら、胚が発生する培養培地および条件の研究および洗練は、着床に好適だと考えられる胚のパーセンテージを一定程度改善できるだけである。これらの最適化された状況においてさえ、着床に好適でない不良な結果の胚と考えられる胚が依然として存在する。加えて、一部の胚の発生を最適化できる条件および培地は、すべての胚に普遍的に当てはまるものではなく、それゆえ各胚に、良好な結果または生存可能な胚へと発生する最善の見込みのためにそれが必要とする特定のものを提供できない。
【0014】
[0021]既存の研究は、複数の因子の評価を通じて、主に、上で議論したとおり、適切な胚発生パターンについての胚の画像化を通じて、不良な結果の胚と区別して良好な結果の胚を同定することに焦点を合わせてきた。したがって、良好な結果の胚と考えられる胚を着床させることによってのみ、妊娠成功の見込みが改善される。
【0015】
[0022]しかしながら、結果が不良であることが予測される胚を、良好な結果の胚へと変化させることを試みる研究は、ほとんどなされていない。着床に好適な良好な結果の胚が比較的高いパーセンテージとなりうる場合、妊娠成功の見込みは高まる。これは、年齢および現状等の様々な理由から、良好な結果の胚の数が比較的少ない女性にとって、とりわけ重要である。
【0016】
[0023]したがって、不良または良好な結果または結果の指標を単に提供できるだけでなく、不良な結果を良好な結果へと改善するかまたは変化させる能力を提供する生物学的試料培養環境を有することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
[0024]本明細書に記載の実施形態の一目的は、関連技術分野のシステムの上述の欠点のうちの少なくとも1つを克服もしくは緩和することか、または、関連技術分野のシステムの有用な代替案を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
[0025]一態様では、本発明は、生物学的試料の生存能を改善するために生物学的試料培養システムにおいてフィードバックを提供する方法を提供し、フィードバックは、生物学的試料培養システムと連動した(operatively associated with)環境パラメータを測定および操作するステップ、ならびに、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップ、のうちの1つまたはそれらの組合せを含む。
【0019】
[0026]好ましくは、生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定および操作するステップは、温度およびガス組成を変化させることにより、培養システムにおける生物学的試料のチャンバー環境を改変するステップ、個別のガス容器を提供し、チャンバーガス操作を可能にするステップ、熱ストレスを適用して試料発生(sample develpment)を改善するステップ、のうちの1つまたはそれらの組合せを含む。
【0020】
[0027]生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップが、培養システムの培養ディッシュについて、載置されている成分を混合することにより培地を操作するステップ、吸引および/または分注を介して生物学的試料周辺の培地を変化させるステップ、培地の組成を感知し、リアルタイムフィードバックを可能にするステップ、培地および環境のpHレベルを感知するステップ、培地pHレベルを変化
させるステップ、試料の座位とは離して培地成分を混合して組み合わせるステップ、液体を混合領域内に別個に分注し、試料の座位内に分注する前にステージングを可能にするステップ、NIRSを使用し、補充のために試料培地の検出を可能にするステップ、のうちの1つまたはそれらの組合せを含むこともまた好ましい。
【0021】
[0028]培地パラメータは、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよく、バッファー、水、アミノ酸、塩、糖、タンパク質、のうちの1つまたはそれらの組合せをさらに含んでいてもよい。
【0022】
[0029]環境パラメータは、温度、湿度、ガス組成、pHレベル、のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。
[0030]別の一態様では、本発明は、試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動する(operating)のに適合した生物学的試料培養システムを提供し、システムは、生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定するための環境パラメータ測定装置、環境パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを操作するための環境パラメータ操作装置、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定するための培地パラメータ測定装置、培地パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを操作するための培地パラメータ操作装置、のうちの1つまたはそれらの組合せを含む。
【0023】
[0031]培地パラメータ測定装置は、光学分光デバイスを含んでいてもよく、好ましくはNIRSを含む。
[0032]別の一態様では、本発明は、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するステップ、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するステップ、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するステップ、を含む、生物学的試料培養システムにおける生物学的試料の培養を制御する方法を提供する。
【0024】
[0033]好ましくは、少なくとも1つの生物学的試料は、胚、幹細胞、卵母細胞、または精子を含む。
[0034]また別の一態様では、本発明は、試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供し、システムは、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、を含む。
【0025】
[0035]本発明のさらに別の一態様では、試料の生存能を改善するためにインタラクティブ制御に適合した生物学的試料培養システムが提供され、システムは、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッドを、包括基礎培地(generic
base media)に浸漬するための試料取扱い装置、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータ
のうちの1つまたはそれらの組合せを適合させるための環境制御装置、を含む。
【0026】
[0036]上述のシステムでは、培地成分は、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。さらに、培地成分は、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。
【0027】
[0037]上述のシステムでは、環境パラメータは、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。
【0028】
[0038]上述のシステムでは、フィードバック装置は、光学分光デバイスを含んでいてもよく、好ましくは、フィードバック装置はNIRSを含む。
[0039]本明細書に記載の実施形態の第1の態様では、複数の試料のうちの少なくとも1つをインキュベートすることに適合した少なくとも1つの独立にアクセス可能なモジュールを含む、培養試料の自動評価のための装置が提供され、少なくとも1つのモジュールは、光源と、視野領域のスイープを可能にするようモジュールを貫通する視野軸(viewing axis)の周囲の運動に適合した、移動可能な光学検査手段と、に連動される。
【0029】
[0040]移動可能な光学検査手段の運動は、視野軸と垂直なX-Y平面、および、視野軸を含むZ方向、のうちの1つまたはそれらの組合せに限定できる。好ましくは、移動可能な光学検査手段に可能な運動は、光学検査手段が、光学検査手段の光学視野方向と垂直なX-Y平面内を自由に並進可能であることを、光学視野方向を含む直交Z方向のさらなる運動自由度とともに含む。移動可能な光学検査手段の運動は、特定の実施形態では、離心性または軌道性であってもよい。
【0030】
[0041]好ましくは、移動可能な光学検査手段は、楕円回転対物レンズシステムまたはより一般に、回転対物レンズシステムによる運動に適合する。少なくとも1つのモジュールは、モジュール内で制御環境を有する培養チャンバーを密封するための蓋およびラッチ機構を含んでいてもよい。モジュールは、培養試料を維持するために少なくとも培養チャンバー内のガス組成および温度を制御するための手段を含んでいてもよい。好ましくは、少なくとも1つのモジュールは、平衡化手段をさらに含む。光学検査手段は、楕円回転対物レンズシステムと連動する(in operative connection with)カメラおよび顕微鏡のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。好ましい装置は、培養試料を収容するための複数の間隔を置いて配置されたマイクロウェルを含む培養ディッシュをさらに含んでいてもよく、培養ディッシュは、モジュール内の配置に適合する。さらに、装置はまた、培養ディッシュを光学検査手段に対して正確な位置に配置するためのアラインメント手段を含んでいてもよい。
【0031】
[0042]本明細書に記載の実施形態の別の一態様では、
独立にアクセス可能なモジュールの培養チャンバー内で、生物学的試料を実質的に楕円
形の配列に配置するステップ、
実質的に楕円形の配列の個別の試料を、モジュールを貫通する視野軸と垂直なX-Y平面内の光学検査手段を用いて画像化し、個別の試料の発生の微速度撮影記録または測定値を得るステップ、
を含む、培養試料を生存能について評価する方法が提供される。
【0032】
[0043]上の方法は、個別の試料の画像をデータ処理手段に送信し、個別の試料の発生の微速度撮影記録または測定値を得るステップをさらに含んでいてもよい。この方法はまた、独立培養チャンバー内の温度、ガス供給、CO2レベルおよび湿度、のうちの1つまたはそれらの組合せを独立に制御するステップもさらに含んでいてもよい。個別の試料を画像化するステップは、好ましくは、配偶子合体を、あとに続く試料発生事象を微速度撮影測定において評価するための基準点として利用することを含む。
【0033】
[0044]他の態様および好ましい形態が、本明細書において開示され、かつ/または、添付の特許請求の範囲において定義され、本発明の記載の一部を形成する。
[0045]本質的には、本発明の実施形態は、培養条件および培養中の試料特性を制御変数として測定することにより、フィードバック機構を試料培養環境に提供することが、生成できる生存可能な試料の割合を高めると考えられるという認識に由来する。さらに、制御条件を伴う培養試料のための安定環境を提供および維持でき、生存能の観察および培養試料の評価が、移動可能な検査手段を用いて、隣接または近接する試料の発生を妨害することなしに得られる。
【0034】
[0046]本発明の実施形態は、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞、のうちの1つまたはそれらの組合せを含む生物学的試料の維持および画像化のためのモジュラーシステムを提供し、これは、高度に制御された最適環境においてそれらの細胞のハイスループット培養を可能にし、画像キャプチャおよび遠隔処理を伴うビルトインの光学検査(顕微鏡/カメラ)システムを組み込む。好ましくは、光学検査システムは、発生する培養試料(たとえば、胚)を妨害することなしにマルチウェルスキャニングを可能にする固有の楕円回転対物レンズを組み込む。
【0035】
[0047]本発明の実施形態の応用可能性のさらなる範囲は、本明細書において以下に記載の詳細な説明から明らかになると考えられる。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示のためにのみ記載されることが理解されるべきである。なぜなら、本明細書における開示の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになると考えられるからである。
【0036】
[0048]本発明の好ましいおよび他の実施形態のさらなる開示、目的、利点および態様は、以下の実施形態の説明を、添付の図面と併せて参照することにより、当業者によってよりよく理解されうる。添付の図面は、例示の目的でのみ提供され、したがって、本明細書における開示を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい一実施形態による生物学的試料培養システムのインキュベーターモジュール構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す生物学的試料培養システムを、取り外された状態で示す本発明の好ましい実施形態による特定の微速度撮影インキュベーターモジュールとともに示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい一実施形態による
図2の微速度撮影インキュベーターモジュールの断面図である。
【
図4-1】
図4は、本発明の一実施形態による回転レンズアセンブリを有するカメラを示す図である。
【
図4-2】
図4aは、本発明の好ましい一実施形態による、培養チャンバーの環境制御のための好ましいシステムを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の好ましい実施形態による、複数の培養ディッシュへと移動する回転レンズアセンブリを有するカメラを示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の好ましい一実施形態による、xおよびy軸上を複数の培養ディッシュおよびディッシュ上の複数の位置へと移動する固定レンズアセンブリを有するカメラを示す図である。
【
図7】
図7は、個別の試料を同定するための印を含む本発明の好ましい一実施形態による、胚位置のそれぞれへと移動する回転レンズを示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の好ましい実施形態による培養ディッシュをその最も単純な形態で示す図である。培養試料ディッシュは、個別の試料を同定するために印を備え、ユーザーのための把持手段を含む。
【
図9-1】
図9は、本発明の好ましい実施形態の培養ディッシュを、断面の吹出拡大図とともに示す図である。
【
図9-2】
図9aは、本発明の実施形態の代替的培養ディッシュを、断面の吹出拡大図とともに示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態による改善された培養ディッシュを示す図である。
【
図11】
図11は、好ましい一実施形態による、アバットメントが、ディッシュを繰り返し正確な位置に再配置することを確実にするための定位ピンである培養ディッシュを示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態を使用して達成可能な画質を示す図である。図中、
図12(a)は2PN胚を示し、
図12(b)は2細胞胚を示し、
図12(c)は孵化している胚盤胞を示し、
図12(d)は孵化した胚および孵化している胚を示す。
【
図13】
図13は、a)マスキングなしのPOC2およびb)円形暗視野スタイルのマスクを伴うPOC2を使用した、本発明の好ましい実施形態においてキャプチャされた画像を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の別の好ましい一実施形態による胚のための代替的生物学的試料培養システムを示す図である。
【
図15】
図15は、
図14に示す胚培養システムを、取り外された状態で示す本発明の代替的一実施形態による微速度撮影インキュベーターモジュールとともに示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の好ましい代替的一実施形態による
図15の微速度撮影インキュベーターモジュールの断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の代替的一実施形態による回転レンズアセンブリを有するカメラを示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の代替的一実施形態による、培養チャンバーの環境制御のための別の好ましいシステムを示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の好ましい一実施形態による、例示的な制御された入力、出力および制御可能なシステム特性を示す図である。
【
図20】
図20は、培地操作を伴うフィードバックに適合した本発明の好ましい一実施形態による試料培養システムを示す図である。
【
図21】
図21は、環境操作を伴うフィードバックに適合した本発明の好ましい一実施形態による試料培養システムを示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の好ましい一実施形態による試料培養システムを混合および分注する段階を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明の好ましい一実施形態による、試料培養システムのチャンバーの環境修正および変更に必要なワークフローを示すフローチャートである図である。
【
図24】
図24は、本発明の好ましい一実施形態による、試料培養システムの培養ディッシュ内に分注する時点までの流体成分のワークフロー進行を示すフローチャートである図である。
【
図25】
図25は、本発明の好ましい一実施形態による、粉末成分のワークフロー進行および試料培養システムの培養ディッシュ内へのそれらの分注を示すフローチャートである図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[0049]本明細書の文脈では、以下の用語の定義を適用する。
[0050]胚は、2つの半数体配偶子細胞(たとえば未受精卵母細胞および精細胞)が結合し、二倍体全能細胞、たとえば受精卵を形成するときに形成される接合子と、直後の細胞分裂、すなわち、桑実胚すなわち16細胞期および胚盤胞期(分化栄養外胚葉および内部細胞塊を有する)に至るまでの胚分裂から得られる胚との、両方を指すために使用される。
【0039】
[0051]卵母細胞は、未受精雌生殖細胞または配偶子を指すために使用される。
[0052]接合子は、2つの半数体配偶子細胞(たとえば未受精卵母細胞および精細胞)が結合して二倍体全能細胞を形成するときに形成される単一細胞を指すために使用される。
【0040】
[0053]多能性細胞は、生物において複数の細胞型に分化する能力を有する任意の細胞を意味するよう使用される。多能性細胞の例には、幹細胞、卵母細胞、および1細胞胚(すなわち接合子)が含まれる。
【0041】
[0054]幹細胞は、(a)自己再生する能力を有し、(b)分化した細胞型をもたらす潜在能力を有する、細胞または細胞集団を指すために使用される。
[0055]有糸分裂または有糸分裂細胞周期は、細胞の染色体の複製ならびにそれら染色体および細胞質から2つの娘細胞への分裂をもたらす細胞内事象を指す。有糸分裂細胞周期は、間期および有糸分裂期の2つの相に分けられる。
【0042】
[0056]第1卵割事象は、最初の分裂、すなわち、卵母細胞から2つの娘細胞への分割、すなわち細胞周期1である。第1卵割事象の完了の際、胚は2つの細胞からなる。
[0057]第2卵割事象は、分裂の第2セット、すなわち、元の娘細胞から2つの孫娘細胞への分裂である。第2卵割の完了の際、胚は4つの細胞からなる。
【0043】
[0058]細胞質分裂/細胞分裂は、細胞が細胞分裂を受ける有糸分裂の相であり、すなわちそれは、細胞の分割された核質およびその細胞質が分裂して2つの娘細胞をもたらす有糸分裂の段階である。
【0044】
[0059]第1細胞質分裂は、受精後最初の細胞分裂事象、すなわち、2つの娘細胞をもたらす受精卵母細胞の分裂である。第1細胞質分裂は、通常は、受精約1日後に生じる。
[0060]第2細胞質分裂は、胚において観察される2回目の細胞分裂事象、すなわち、受精卵母細胞の娘細胞から孫娘細胞の第1のセットへの分裂である。
【0045】
[0061]
図1を参照すると、本発明の実施形態は、生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムである装置10を含む。この装置は、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の培養および画像化に特に好適である。
【0046】
[0062]好ましい装置は、
図1に示す蓋13および開口用ラッチ12を有し、独立に操作および制御できる複数のインキュベーターモジュール20を含み、それぞれ、温度監視および制御、ガス監視および制御、顕微鏡観察および画像キャプチャ、微速度撮影画像処理
ならびに外部データ解析デバイスへの接続が可能である。
【0047】
[0063]
図3に示す好ましい一形態のさらなる詳細では、各モジュール20は、蓋ラッチ32により操作され、図示するとおりインキュベーションチャンバー36を外部環境から密封し、前記チャンバー36への独立したアクセスを可能にする蓋33を有する。事実上、これは、隣接するモジュール20を妨害することなしに、好適な培養試料の除去を提供する。これは、培養物を回収するために扉/蓋33を開くときにすべての細胞培養物を環気および温度条件の変化にさらす従来のバルクインキュベーターに対し、重要な利点を提供する。
図1は、10と符号が付されたかかる装置の一例の全体を示す。実際には、各装置10に組み込めるモジュール20の数に制限はない。
図3の詳細に示すとおり、各モジュールは、微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31を収容するための個別の培養チャンバー36、環境を制御するための加熱されたPCB37および46を含む。モジュール20と連動するのは、たとえば
図3に示すとおり、カメラ43、運動機構42(好ましくはZスタックおよび焦点Y軸移動制御である)、レンズ定位モーター44、光源34と組み合わせて作動する回転レンズ41を含む光学検査手段である。
【0048】
[0064]
図2を参照すると、それぞれ個別のインキュベーターモジュール20は、たとえば修理または保守のため、他のモジュール20と独立に装置10から取り外せる。モジュール20の取外しは、装置10の他のモジュール20の機能に影響を及ぼさない。
図3は、装置10内での使用を意図し、前記装置10に固定可能な、インキュベーターモジュール20の一実施形態を示す。各インキュベーションチャンバー36の内部環境温度は、ヒーター37、46および温度センサーを使用して所定値に制御される。好ましい一実施形態では、2つのヒーターは、前記チャンバーを加熱するために使用され、一方の37は蓋上に、もう一方の46はステージ上に配置される。好ましい実施形態では、温度は37℃に設定される。各モジュール20は、ガス供給のための入口38および所定のガス流量を維持するためのバルブを備える。好ましい実施形態では、酸素、二酸化炭素および窒素、のうちの1つまたはそれらの組合せから通常はなる事前に混合されたガスを、インキュベーションチャンバー36内に、前記入口およびバルブを介して供給する。
【0049】
[0065]別の一実施形態では、ガス、通常は酸素、二酸化炭素および窒素は、別の入口を介して装置に供給され、インキュベーションチャンバー36内に供給される前に、その場で混合される。この実施形態では、前記混合は、約5%の酸素、約6%の二酸化炭素および約89%の窒素からなる環気を提供できる。さらなる一実施形態では、ガスは、約20%の酸素、約5%の二酸化炭素および約75%の窒素からなる環気を提供するよう混合され
る。
【0050】
[0066]前述の気体は、インキュベーションチャンバー36内への供給前に加湿でき、その目的は、前記チャンバー内の湿った環気を維持することである。
図4aでは、ガスは、管を通じてバイアル内の水性溶液中に流れる。次に、湿ったガスは、バイアルの上方に、制御環境培養チャンバー内へと流れる。
図4aに示すとおり、ガスの加湿は、管を通じて水性溶液を含有するバイアル内にガスを直接供給することにより達成される。
図4aは、水性溶液を伴うバイアル53を含有するモジュール20の一部を示す。湿ったガスは、バイアル53内の水性溶液を通じて、インキュベーションチャンバーまたは個別の培養チャンバー52内へと上昇する。一実施形態では、水性溶液は、水のみからなる。代替的実施形態では、水性溶液は、水を添加剤、たとえばグリセロールとともに含んでいてもよい。光学センサー54が、管の端部またはバイアル53のいずれかに取り付けられ、ガス遮断がないことを保証するよう気泡の存在を検出する。光学センサー54が、管の端部またはバイアル53のいずれかに取り付けられ、気泡の存在を検出する。
【0051】
[0067]各モジュール20は、細胞または組織を均一に観察および画像化できるよう、細
胞培養ディッシュを培養期間中実質的に不動のまま保持できる、対象ホルダーを備える。
図11を参照すると、好ましい実施形態では、培養ディッシュの正確な配置は、たとえば3つの配置ピンおよび移動可能なラッチの形態の、アラインメント手段またはアバットメント111を使用して達成される。他の実施形態では、対象ホルダーは、任意の数の配置ピンおよび/またはラッチ111を含みうる。対象ホルダーは、光が顕微鏡の対物レンズまで透過できる開口部または窓を有する。
【0052】
[0068]各モジュール20は、追加の培養ディッシュのためのインキュベーションチャンバーにおける領域を含有する。前記培養ディッシュ領域は、培養ディッシュ内に含有されうる細胞培養物の顕微鏡観察を可能にしないが、ユーザーが監視されない培養試料を培養すること、または、細胞培養物とともに使用する前の培養培地を平衡化することを可能にする。
【0053】
[0069]各モジュールは、培養試料、細胞または組織を監視するためのカメラシステムまたは顕微鏡のうちの1つまたはそれらの組合せを含みうる光学検査手段を備える。顕微鏡またはカメラシステムは、当該技術分野において知られている任意の好適なデザインであってよい。好ましい実施形態では、顕微鏡は、単純チューブ顕微鏡である。代替的実施形態では、顕微鏡デザインは、単純チューブ顕微鏡、ホフマン・モジュレーション・コントラスト顕微鏡、微分干渉コントラスト顕微鏡、暗視野顕微鏡、位相差顕微鏡、のうちの任意のものから選択できる。
【0054】
[0070]顕微鏡の使用の例では、単純チューブ顕微鏡は、10×対物レンズ、光が透過する開口部または開放部を有するスペーサーチューブ、および画像キャプチャのためのCMOSセンサーを含む。一実施形態では、ディフューザーおよび円形開放部が光源と試料との間に配置され、試料を斜光で照らし、キャプチャ画像のコントラストの増加を提供する。さらに、追加のフィルターまたは拡散マスクもまた、必要なら光路内に導入できる。好ましい実施形態では、試料を照らす光の均一性を高めるため、集光レンズシステムを用いてもよい。好ましい実施形態内の光学デザインは、収集される画像の十分なコントラストを提供し、卵割、胚盤胞拡張および孵化等の事象に加えて、培養試料の特徴、たとえば極体、前核、核小体、および内部細胞塊(ICM)の同定を可能にする。代替的一実施形態では、光学検査手段は、画像センサー、たとえばCCDカメラを含む。
【0055】
[0071]好ましくは、各顕微鏡は、オートおよび/またはマニュアルフォーカスのための対物レンズ定位モーターを備える。
[0072]本実施形態では、顕微鏡のための照明光源は、550nmの波長および可変強度の発光ダイオード(LED)により提供される。他の実施形態では、光源は異なる波長のものであってもよい。当業者により理解されると考えられるとおり、照明光源の波長および出力は、目的の培養試料、細胞または組織の光毒性のダメージまたはストレスを最小化するよう選択できる。照明関連のストレスをさらに最小化するために、照明光源は、好ましくは、培養プロセス中の観察または画像化の期間にだけ、スイッチをオンにされる。光学検査手段のセンサーによりキャプチャされた画像は、外部データ処理もしくはコンピュータシステムにより、または、装置と連動し、いくつかの実施形態では装置内にある画像処理手段により、処理および解析できる。
【0056】
[0073]本発明の実施形態の特定の有利な一特徴は、顕微鏡および/またはカメラ光学検査手段の一部としての、楕円回転対物レンズシステムの提供であり、これは、視野領域のスイープを可能にする光学検査手段の偏心運動を提供する。
図4は、楕円回転のための例示的駆動機構を示す。この新機軸により付与される利点は、培養容器を移動させることなしに複数の胚または生物学的試料を画像化できるというものである。
図4に示すとおり、カメラ支持部51内のカメラ43が、対物レンズ47の運動を提供するレンズ定位モータ
ー44により駆動されるモーターベルト48を含むモーターベルトアセンブリへと通じるスペーサーチューブ49とともに提供される。
図4の回転レンズアセンブリは、画像化領域のスイープを提供する偏心運動を提供する。このように対物レンズを移動させつつ良好な画質を維持する能力は、低倍率対物レンズの使用に依存し、斜照明経路により補助される。好ましい一実施形態では、レンズ運動は、単純なステッピングモーターにより補助できる。
【0057】
[0074]
図5は、複数の培養容器または微速度撮影培養ディッシュ57がモジュラー装置内に収納されている、本発明のさらなる一実施形態を示す。この実施形態では、回転レンズアセンブリ56を有する顕微鏡/楕円駆動機構ユニットが、ガイド機構に沿って移動し、複数の培養容器から、前記容器を妨害することなく、画像収集を可能にする。典型的には、かかる駆動機構は、
図6に図示するとおり、2方向(XおよびY)への運動を可能にし、したがって、画像定位および画質について微細スケールの制御を可能にする。
【0058】
[0075]
図7は、微速度撮影ディッシュ上の複数の培養試料位置のそれぞれへの光学検査手段の定位を可能にする、回転レンズの例示的運動を示す。例として、この手段により、調節環境下で複数の胚を検査できる。
図8は、微速度撮影検査培養試料ディッシュのための複数の培養試料ウェル103を収容する例示的培養ディッシュ90を示し、調製ウェル94は、培地または胚を調製する柔軟性をユーザーに提供する。さらに、
図9は、培養試料ウェル103を示す
図8のディッシュの吹出拡大図を、流体制御壁91、培養試料、たとえば胚を配置するためのディボット92、および個別の試料を同定するための印90とともに示す。
【0059】
[0076]
図9Aは、流体制御壁91、チャネル93および培養試料、たとえば胚を配置するためのディボット92を示す、改良された培養試料ウェルの吹出拡大図を示す。
[0077]
図10および
図11は、改良された培養ディッシュデザインを示し、ユーザー把持領域101が、ラベル領域102とともに提供される。さらに、
図11は、本発明の一実施形態が、信頼性の高い光学検査のために装置10内の培養ディッシュの正確な定位および再配置を提供できる、好ましい手段を示す。アラインメント手段111またはアバットメントは、
図11に示す定位ピンにより提供され、ディッシュを繰り返し正確な位置に再配置できるよう保証する。チャンバーの支持床または壁内にある、またはそれらと連動した代替的アラインメント手段、たとえば戻り止め、切込みまたは他の同等の手段を、正確な再配置を提供するために使用できる。
【0060】
[0078]本発明の実施形態により達成できる光学検査の例を、
図12および
図13に示す。たとえば、
図13は、マスキングシステムを使用することなしにキャプチャされた画像と、円形の暗視野スタイルの絞りを使用してキャプチャされた画像との間の違いを示す。
【0061】
[0079]
図7から
図11に特に示すとおり、本発明の好ましい実施形態はまた、試料、たとえば接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞を培養するための複数のマイクロウェルが内部にある基本構造を含む、培養ディッシュを提供する。培養ディッシュは、上述のとおり、ディッシュをモジュラー装置に正確に配置して患者の安全性を改善することを可能にするための、有用性を高める複数の特徴をさらに含む。
【0062】
[0080]培養ディッシュは、たとえば、WIPO番号WO2014/106286として公開された本願出願人の同時係属国際(PCT)特許出願に記載の、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の維持および画像化のためのモジュラー機器とともに作動するようデザインされ、これは、高度に制御された最適環境においてそれらの細胞のハイスループット培養を可能にし、画像キャプチャおよび遠隔処理を伴うビルトインの顕微鏡システムを組み込む。顕微鏡システムは、発生する胚を妨害することなしにマルチウェルスキャニ
ングを可能にする固有の楕円回転対物レンズを組み込む。
【0063】
[0081]
図8では、培養ディッシュの最も単純な形態の一実施形態を示す。培養ディッシュの最も単純な形態は、試料、たとえば接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞を培養するための複数のマイクロウェルが内部にある基本構造を含む。
図8、9および9Aを参照すると、好ましい一実施形態では、この基本構造のマイクロウェルは円形パターンに配列され、各マイクロウェルは、培養培地が流入できるチャネル93の底部に配置される。これらの構造は、培養ディッシュの所望の領域に培養培地を保持するよう提供される流体制御壁91に囲まれる。チャネル93の底部は、マイクロウェルから上方に流体制御壁91まで傾斜していてもよく、結果として、この表面上に置かれた場合、胚をマイクロウェルに向かって移動させるよう重力が補助しうる。マイクロウェルは、ディッシュの輸送中、他の胚が置かれるかまたは移動される間、および、培養培地の吸入または分注中に、胚がウェル外に移動しないよう保証するのに十分な深さおよび形状のものである。これらの特徴を、
図9Aにより詳細に示す。次に、インキュベーション中の培養培地の蒸発を限定するよう、培養培地を培養ディッシュの壁により保持される適切な油で被覆できる。
【0064】
[0082]本発明の最も単純な形態が有する特徴は、培養ディッシュが培養培地で容易に充填されることを可能にし、培地を所望の領域に保持する。培養培地は、必要に応じて培養プロセス中に油層の下よりディッシュから除去して交換でき、新鮮な培地のディッシュを平衡化して新しいディッシュに胚を移す必要性を回避する。マイクロウェルは、胚が、本発明の好ましい形態におけるモジュラー機器を使用して観察でき、個別に同定できる位置に維持されるよう保証する。培養ディッシュのデザインは、本発明のモジュラー機器の好ましい実施形態を使用して、実体顕微鏡、倒立顕微鏡を用いて胚を観察することが可能なよう保証する。胚は、蓋を取り外すことなく監視できる。なぜなら、ディッシュの材料は透明だからである。
【0065】
[0083]好ましい一実施形態では、培養ディッシュの最も単純な形態は、
図10および
図11に記載のとおり、改良されたデザイン内に組み込まれる。この実施形態は、ディッシュをモジュラー装置に正確に配置して患者の安全性を改善することを可能にする、有用性を高める複数の特徴を有する。培養ディッシュは、複数の構成においてディッシュを安全に取り扱うことを可能にする、いくつかの把持領域101を備える。ラベルを配置するための大きな領域102が提供され、明確な患者同定および追跡管理を保証する。好ましくは、ディッシュは、モジュラー機器において1方向にしか置けないようデザインされ、培養試料(たとえば胚)がモジュラー機器を使用して正確に同定および視覚化されることを保証する。これは、モジュラー機器上の配置ピンおよびラッチとアラインする、ディッシュ上の特徴111を使用して達成される。このシステムはまた、ディッシュが機器内に正確に配置されるよう保証する。上述のとおり、これらの特徴は、
図10および
図11に示すが、それらがこれらの描写と異なっていてもよいことは、当業者の誰にも明らかである。
【0066】
[0084]好ましい一実施形態では、培養ディッシュは、単一のタイプのプラスチック、好ましくはポリスチレンから構築される。代替的実施形態では、ディッシュは、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞との使用に適切だと当業者の誰でも認識できる任意のプラスチックを使用して構築されてもよい。さらなる一実施形態では、プラスチック培養ディッシュの表面の全部または一部を、細胞培養容器に適切な方法、たとえばプラズマ処理を使用して処理できる。この表面処理の目的は、他でもなく、表面の水和性を改善し、培養培地によるディッシュの充填率を高めることであってよい。代替的実施形態では、培養ディッシュの前述の改善されたデザインは、複数の異なるタイプのプラスチックから構築でき、
図8に示す断面は1つのタイプのプラスチックで構築され、残りは別のタイプから形成される。
【0067】
[0085]好ましい実施形態において、本発明において利用されるマイクロウェルは、下に列挙する利点を伴う以下の仕様と一致すべきである。すなわち、
・個別同定およびグループ培養が可能であるべきである。
【0068】
・マイクロウェルは、回転レンズでの観察を容易にするため、円形にまたは円の周囲のグループで配列されるべきである。
・妨害があるなかでウェル内の胚を維持するのに十分な深さ/形状。
【0069】
・機器内にディッシュを配置するための特徴。
・可能な固有の方向。
・正確(accurate and precise)な配置。
【0070】
・容易で安全な取扱いのための特徴-こぼす可能性を低減する。
・培地を保持するための流体制御壁。
・油制御壁。
【0071】
・好ましくは、培養試料がウェル内に落ちるのを補助するよう、傾斜壁が提供される。
・オートフォーカスを補助するウェルの壁上のマーキング/ステップ。
・培地交換。
【0072】
・キャリーオーバーを最小化するディッシュの特徴。
・「チャネル」を通じた培地の流量を増加させる特徴。
[0086]特に好ましい一実施形態では、本発明は、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の維持および画像化のためのモジュラーシステムとして利用される。したがって、それぞれが、細胞生存に好適な適切なガスおよび温度条件を維持する手段、チャンバー湿度を平衡化する手段、培養空間における使用が意図された顕微鏡ユニット、複数の視野の画像化を可能にする楕円駆動機構、画像キャプチャユニットおよびさらなる処理のために画像を送信する手段を含有するモジュールを含む装置が提供される。
【0073】
[0087]このシステムは、装置内に一体で提供される画像処理のための手段を含む。
[0088]さらに、好ましい一実施形態は、
細胞または組織を顕微鏡/インキュベーターモジュールの対象ホルダー上の培養容器内に置くステップ、
モジュールハウジング内に顕微鏡/インキュベーターモジュールを配置するステップ、
細胞または組織をインキュベーション期間中本質的に不動なまま保持するステップ、
培養容器内の個別の細胞または組織を、楕円駆動経路レンズシステムにより画像化するステップ
を含む、培養空間に配置された細胞または組織の画像をデータ処理手段に送信するための方法を提供する。
【0074】
[0089]追加の態様では、好ましい実施形態は、配偶子合体を、その後の胚発生事象の時間評価の基準点として使用する。この点に関して、生存能の推定を、配偶子合体をその後の胚発生事象の時間評価のための基準点として使用して、培養下の胚のレビューとともに提供でき、これは、現在知られているIVF技術と比較して、より正確な事象の時間決定を可能にしうると考えられる。したがって、配偶子合体からの事象の時間決定は、胚発生の解析の改善を可能にしうる。
【0075】
[0090]追加の態様では、好ましい実施形態は、胚拡張を、そしてそれゆえ、患者に移植して戻す前の解凍中の生存能を評価する測定として、微速度撮影を使用する。微速度撮影
画像化を、とりわけ拡張等の特性に基づいて解凍胚の生存能を評価するために使用する。解凍胚のための評価のかかる新しい方法は、最善の胚の選択の改善をもたらしうる。
【0076】
[0091]使用が容易であり、発生学者が胚をレビューするのに費やす時間を減少させる、胚のレビュー能力が提供される。この点に関して、先行技術のシステムは、発生学者が多大な時間を費やすことを要する複雑なレビュー方法を利用する。本発明による好ましいシステムは、以下のうちの1つまたはそれらの組合せを利用できる。
【0077】
[0092]胚発生を示す微速度撮影画像ハイライトパッケージの創出または生成。このパッケージは、ユーザーにより定義でき、認識された事象に基づいて自動的に生成でき、胚構造/構成部の測定に基づいて自動的に生成できる。それは、所定の期間の始点および終点またはその期間を「挟む」(”bookend”)ウィンドウからの画像を、事象がその期間または組合せに生じたかどうかを同定するために使用できる。
【0078】
[0093]胚発生の重要な段階、たとえば配偶子合体、卵割、胞胚形成の短いビデオクリップを生成できる。クリップは、デフォルト値および/またはユーザー定義の「時間ウィンドウ」のいずれかに基づく。次に、これらのクリップは、ユーザーの裁量で分割してまたはまとめてレビューできる。
【0079】
[0094]赤色、琥珀色および緑色を、運命を決定し、重要な事象を示すために使用でき、たとえば、胚に生存能がないことを示すため赤色が選択され、有害事象が観察されたときに琥珀色が選択され、良好な発生を示すために緑色が選択される。
【0080】
[0095]レビューは培養中(その時点までのレビュー)に、たとえば毎日または重要な事象が生じたと予測される時点で実施できる。次に、運命選択の最終点ですべての事象の要約を提供できる。
【0081】
[0096]ユーザーインターフェースは、エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう、ディッシュの物理的配列に合致するよう配列される。チャンバーの物理的レイアウトが、大型ディスプレイスクリーン上にミラーリングされる。ディッシュの円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示される。
【0082】
[0097]電子的に読み取れる(または光学的に読み取って変換できる)、培養ディッシュ上またはその中のRFID、バーコーディング、OCRまたは他の識別子を利用できる。このシステムは、ディッシュ(そしてそれゆえ胚)と関連づけられるすべてのデータにアクセスすることを可能にし、それゆえ、誤った胚が患者に移植されるかもしれないラベリングのミスおよび混同の可能性を最小化する。システムを、すべての微速度撮影画像を正確な患者IDと関連づけるために使用できる。
【0083】
[0098]各チャンバーは、情報、たとえばこれに限定されないが、患者ID、環境条件、アラーム状態、警告またはそれらの組合せを表示できる独立したディスプレイを有する。チャンバー上の患者IDの表示は、誤った胚が患者に移植されるかもしれない混同の可能性のリスクを最小化する。ディスプレイは、LCDスクリーン、電子ペーパーまたは他の電子ディスプレイデバイスであってもよい。好ましくは、それはLCDスクリーンである。
【0084】
[0099]各チャンバー内の環境、たとえば温度、ガス、湿度、運動、音またはそれらの組合せは、自動で制御でき、培養中のプロファイルに応じて変更できる。この自動的プロセスは、培養期間を通じて、胚のための条件を最適化する機会を提供する。システムは、以下のとおり実施できる。
【0085】
[00100]機器の所定のセットのための汎用環境プロファイルがユーザーにより予め定義
され、これが次に、この機器のセットにおいて培養されるすべての胚に適用される。このプロファイルは、概日リズム周期に基づいていてもよい。
【0086】
[00101]環境プロファイルはユーザーにより設定されるが、個々の患者のためにカスタ
マイズされる。このカスタマイズは、患者の測定および/または観察、たとえば体温に基づいていてもよい。
【0087】
[00102]さらに、このカスタマイズされたプロファイルを、患者により提供され、場合
によっては何らかのアプリまたはロガーを使用して収集されるデータを使用してシステムにより自動で生成できる。
【0088】
[00103]環境プロファイルは、患者の胚の微速度撮影画像の自動解析に基づいて、培養
期間中に「オン・ザ・フライ」で生成および/または修正される。
[00104]微速度撮影画像は、並行して全チャンバーにわたってキャプチャでき、zスタ
ック内の画像間の時間の差を低減する。これは、たとえば配偶子合体を探すために、zスタックを横断するときに重要である。これはまた、複数のカメラが単一の接続を介してPCに接続することを可能にする機器内のUSBハブの使用により可能となる。パラレルキャプチャのためのカメラおよびチャンバーの好ましい数は6である。好ましい実施形態では、PCは、システム内に収納される。
【0089】
[00105]以下を含む複数の他の機能を提供できる。すなわち、
・チャンバーごとの独立湿度制御
・チャンバーごとの独立ガス供給
・ガスが流れており、それゆえ障害がないことを決定するための気泡検出
・制御されたディッシュ定位
・扉ラッチロック
・CO2感知好ましくは、各チャンバーは、少なくとも1つの専用CO2センサーを有する。
【0090】
・全マイクロウェルにわたって増強されたコントラストおよび均等照明を増強するための集光レンズシステム
・照明光源の正確な位置を保証する蓋配置ピン(lid locating pin)が提供され、チャンバーのステージの蓋配置ピンは、蓋および照明光源の正確な位置を保証するために使用される。
【0091】
・胚インキュベーターのPCBを使用する加熱
・6つまでのチャンバーを単一のシステムに統合するための機構として、USBハブを機器内に提供し、6つのカメラが単一の接続を介してPCに接続することを可能にしうると想定される。結果として、カメラを単一のシステムで同時に管理できる。
【0092】
・zスタック間の最短時間および画像キャプチャを可能にするため、6つのモジュールにわたる画像のパラレルキャプチャが提供され、zスタック間の最短時間および画像キャプチャを可能にする。したがって、これは、zスタック内の画像間の時間差を低減する。これは、たとえば配偶子合体を探すために、zスタックをするときに重要である。
【0093】
・先行技術では、胚は、画像キャプチャに必要とされるよりもはるかに長い時間照明される。これに対処するため、スケジューリングソフトウェアが、LEDがオンになっている時間を最小化でき、帯域幅利用を最小化できる。これを達成する1つの方法は、照明を
オフにして視野を調整することによる。
【0094】
・ユーザー定義の事象および/または自動認識された事象に基づいてハイライトパッケージを生成すること
・プレイバック中のユーザー定義可能な焦点面、すなわち、焦点面はプレイバック全体について単一の位置にあってもよい。現在のシステムでは、Zスタックが断続的にしか利用可能でない、すなわち、zスタックが4画像ごとにしか収集されないことがありうる。解決策として、以前にキャプチャされたzスタックからの画像を、微速度撮影プレイバック中に複数の焦点面の視野を可能にするために使用することが好ましい。有利にはこれは、たとえ胚が移動するとしても、または、それが大きく成長するときでも、プレイバック中に常に胚に焦点が合っていることを保証しうる。それはまた、ユーザーが胚発生の全体を通じて胚の様々な部分を解析することを可能にする。「オン・ザ・フライ」で焦点を合わせる手段として、ユーザーは、プレイバック中に焦点面(focal play)をマニュアルで調整できる。
【0095】
・プレイバック中の自動焦点面選択-プレイバック中の自動焦点面選択を、微速度撮影解析に基づいて達成できる。この点に関して、システムは、胚に焦点があったままであることを保証するよう、焦点面を自動的に選択する。
【0096】
・卵割を決定する方法が、事象を決定する補助となりうるか、または絶対検出
・zスタック画像キャプチャの統合による3D画像化を提供すること・したがって、Zスタック画像は照合および変換され、胚の3D画像を提供する。
【0097】
[00106]各チャンバーの環境条件の独立制御、たとえば、各チャンバーにおいて、温度
、湿度および/またはガス供給のうちの1つまたはそれらの組合せを独立に制御することは、各患者について条件をカスタマイズする可能性を可能にする。また、1つのチャンバーが何らかの理由で失敗した場合でも、すべての他の患者の胚には影響が及ばない。
【0098】
[00107]胚が穏やかに移動できる機構、たとえばこれに限定されないが、インキュベー
ターチャンバーのステージまたはその一部の移動/傾斜を提供することは、卵母細胞/胚のインビボ微小環境をシミュレートするステージ/培地の微小移動または傾斜を可能にする。したがって、インビボ微小環境を模倣することにより、胚培養能を高めることが可能でありうる。
【0099】
[00108]ウェル内で胚を転がし、より良好な評価を可能にするための機構もまた提供で
きる。これは、この操作前に画像では見えない特徴を観察するために、ユーザーが胚と相互作用することを可能にする。
【0100】
[00109]同様に、胚をインキュベーターチャンバー内で音および/または音楽に曝露す
る機構を提供できる。胚培養能を高めることが、そのことにより、胚を音/音楽に曝露することにより可能となりうる。
【0101】
[00110]人が処理することで導入されうるエラーまたはミスを回避するために、電子的
に読み取れる(または光学的に読み取って変換できる)RFID、バーコード、または他の識別子をディッシュに埋め込むことが可能である。かかる識別子を使用することで、ディッシュが機器内に置かれるとき、ディッシュと関連づけられる全データにデータベースからアクセスできる。
【0102】
[00111]同様に、機器は、全画像(および他のログデータ)を、対応する患者IDと関
連づけ、画像と関連づけられる患者の詳細の入力に関してヒューマンエラーを回避できる
。
【0103】
[00112]機器はまた、評価されているディッシュに関する情報、たとえば患者名、個別
の環境条件および/またはチャンバーもしくはアラーム条件の監視と関連する他のパラメータを表示するよう組み合わされた小さなディスプレイスクリーンを備える。かかる特徴の提供は、機器の現状を理解するためにユーザーが機器と相互作用する必要がなく、情報をホワイトボード等の外部に記す必要がないことを意味する。
【0104】
[00113]本発明者は、微速度撮影および他のログデータが、通常は、ラボのデータベー
スの外部に貯蔵されることに気づいた。好ましくは、グレードづけをラボのデータベースに直接エクスポートすることは、データのさらなる有効活用を可能にし、データへのアクセスを単純化し、データへの整合的なアクセス方法を保証する。
【0105】
[00114]培養中に環境プロファイルを自動制御することも可能であり、温度、ガス、湿
度、運動、音またはそれらの組合せを含む個別のチャンバーの環境は、培養期間を通じて変更される。たとえば、以下のプロファイルを利用できる。すなわち、
[00115]プロファイルは、所定の場所/クリニックのすべての患者についてユーザーが
前もって定義でき、汎用環境プロファイルが、所定の機器のセットについてユーザーにより設定され、これは次に、この機器のセットにおいて培養されるすべての胚に適用される。
【0106】
[00116]プロファイルは、温度の正確な制御による概日リズム温度周期に基づいて、卵
母細胞および胚のインビボ微小環境をシミュレートしていてもよい。
[00117]プロファイルは個々の患者についてカスタマイズでき、環境プロファイルはユ
ーザーにより設定され、個々の患者についてカスタマイズされる。
【0107】
[00118]プロファイルは、患者の測定および/または観察、たとえば体温に基づいてい
てもよい。
[00119]プロファイルは、ドナーから得られるデータ(アプリ、ロガー、等)に補助さ
れ、ドナーに基づいていてもよく、カスタマイズされたプロファイルは患者の測定および/または観察に基づき、プロファイルはシステムにより自動生成される。
【0108】
[00120]プロファイルは、培養プロセス中に記録された胚の微速度撮影画像の自動解析
、測定、および/または観察に基づいていてもよく、環境プロファイルは、患者の胚の微速度撮影画像の自動解析に基づいて、培養期間中に「オン・ザ・フライ」で生成および/または修正される。
【0109】
[00121]胚相互作用についてのオーディット・トレールがわずかであり、紙ベースであ
ることを本発明者は認識している。試料の安全もまた懸念される。この点に関して、たとえばQC、電子署名、証拠等の目的のため、発生学者の身分証明をシステムとの相互作用ごとに記録できる。好ましくは、各発生学者は、以下のうちの1つまたはそれらの組合せを使用する。すなわち、発生学者を同定するRFID、バーコード(または他の光学的に認識可能なID)、スキャナ上の指紋、スキャンされる網膜または入力されるPINであり、機器と彼らの全相互作用を記録する。有利には、各ディッシュに対して誰がどのような相互作用をいつ実施したかのオーディットが提供される。有益なことに、機器の各ユーザーについて、適切な相互作用のみが可能となる。
【0110】
[00122]上のコンセプトをさらに詳細に述べると、好ましい実施形態では、発生学者が
インキュベーターにアクセスする際に彼らの指紋のスキャンが生じうる。やはり、各発生学者は、以下のうちの1つまたはそれらの組合せを使用する。すなわち、彼らが使用を許
可された機器との相互作用を可能にするRFID、バーコード(または他の光学的に認識可能なID)、スキャナ上の指紋、スキャンされる網膜または入力されるPIN。
【0111】
[00123]先行技術では、良好な画質を得るために、複雑な光学が必要とされうる。そこ
で、好ましい実施形態では、本発明者は、全マイクロウェルにわたって増強されたコントラストおよび均等照明のための集光レンズシステムを提供し、これは、全マイクロウェルにわたって増強されたコントラストおよび均等照明を提供するために使用される単純な集光レンズシステムにより提供できる。
【0112】
[00124]これまで、トレーニング資料は手作業でまとめられてきた。しかしながら、記
録されたレビュー/グレードづけの結果を使用して、QCトレーニングパッケージを自動生成でき、それゆえ、トレーニングを生成するのに要する労力は軽減される。さらに、十分なQCトレーニングがないことが多い。胚の事象/タイプに関するユーザーにより定義できるQC画像ライブラリーの自動生成は、クリニックの全発生学者が定期的なQCおよびトレーニングの目的で注意喚起されて記入する、Eメール/内部サイトを自動生成できる。
【0113】
[00125]現在のシステムでは、患者は、自身の胚の発生を見ることができないが、好ま
しい実施形態では、安全なネットワーク相互作用を使用して患者のための遠隔監視が提供され、患者は許可された胚を遠隔地で見ることができ、その結果、患者は自身の胚の発生を見ることができる。好ましい一実施形態では、バックアップヒーター手段が各PCBのために提供され、2つのヒーター回路が利用され、その結果、一方が故障した場合には他方が引き継ぐ。PCB回路は、ヒーターのうちの一方が故障した場合でも、環境温度の制御を継続することが可能な、ビルトインの冗長性を有する。これは、ソフトウェアを介して自動制御され、胚環境が損なわれないよう保証する。
【0114】
[00126]ディッシュは、培地調製および培地交換を容易にするようデザインされる。図
8に示すとおり、ディッシュは、予備取扱いウェル94を伴ってデザインされ、培地調製を可能にする。
図9Aに示すとおり、ディッシュは、流体制御障壁91、ディボット9に隣接するチャネル93を有し、培養培地の除去および交換を容易にしつつ胚がディッシュに残るようデザインされる。したがって、培養期間中に胚を新しいディッシュに移動する必要がなく、それゆえ、それらの発生に対する妨害を最小化する。デザインは、培地のキャリーオーバーを最小化する一方で、胚が「乾ききる」ことのないよう保証する。
【0115】
[00127]1つのモジュールずつのファームウェアのアップグレード(F/W)を可能に
するよう、モジュラーソフトウェアを形成でき、機会があるときにいつでも(すなわち、モジュール作動停止中に)スケジュールできる。
【0116】
[00128]Zスタックが一部の微速度撮影についてしか利用できない場合、画像キャプチ
ャの最適化により、すべての微速度撮影をzスタックに収めることを可能にする。こうして、Zスタックは、微速度撮影の任意のフレームで見ることができ、任意のzスタックでビデオプレイバックでき、zスタックプロファイルを使用してビデオプレイバックできる。
【0117】
[00129]さらに、現在のシステムでは、事象は、長いビデオを見ることによってしか見
出すことができない。顕著な量の相違(連続画像間の相違)は、微速度撮影フレーム間の相違を経時的にグラフ化することにより確立される。これは、レビュー時間を短縮させる。
【0118】
[00130]記録された画像は大容量のストレージを占めるので、微速度撮影画像は、微速
度撮影画像に必要なストレージ空間を低減するために、時間的および空間的(画像内およびzスタック間)圧縮のうちの1つまたはそれらの組合せを使用する。
【0119】
[00131]加湿フラスコ内の水位検出を、水位を測定する加湿フラスコ内の液面感知法に
より提供できる。これは、水が尽きて低湿度環境をもたらさないよう保証する。
[00132]培養ディッシュの正確な配置は、たとえば3つの配置ピンおよび移動可能なラ
ッチの形態の、アラインメント手段またはアバットメント111を使用して達成される。
【0120】
[00133]さらに、扉ラッチ/ロック機構として、として、各モジュールは、蓋ラッチに
より操作され、インキュベーションチャンバーを外部環境から密封し、前記チャンバーへの独立したアクセスを可能にする蓋を有する。このようにして、個別のチャンバーを外部環境から完全に密封し、外部からの影響が最小化され、ガス濃度が安定したレベルに維持されるよう保証する。
【0121】
[00134]先行技術のシステムでは、どの物理的項目がディスプレイ上のどの項目により
表されるのかが不明確でありうる。好ましい実施形態における解決策は、GUIと合致する物理的配列であり、これはエラーを最小化する。これは、大型ディスプレイ上にミラーリングされるチャンバーレイアウト順序により達成される。ディッシュの円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示され、これは、誤った項目を選択する可能性を低減する。
【0122】
[00135]本発明の代替的実施形態を含む生物学的試料培養のための代替的システムを、
図14から
図18に示し、同様の符号は
図1から
図11の実施形態の同様の特徴を参照する。
【0123】
[00136]
図14を参照すると、本発明の代替的一実施形態は、
図1の実施形態と同様に
、生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムであり、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の培養および画像化に特に好適な、生物学的試料用装置10を含む。
【0124】
[00137]好ましい装置は、
図14に示す蓋13および開口用ラッチ12を有し、独立に
操作および制御できる複数のインキュベーターモジュール20を含み、それぞれ、温度監視および制御、ガス監視および制御、顕微鏡観察および画像キャプチャ、微速度撮影画像処理ならびに外部データ解析デバイスへの接続が可能である。
【0125】
[00138]
図16に示す好ましい一形態のさらなる詳細では、各モジュール20は、蓋ラ
ッチ32により操作され、図示するとおりインキュベーションチャンバー36を外部環境から密封し、前記チャンバー36への独立したアクセスを可能にする蓋33を有する。
図3の運動機構42(好ましくはZスタックおよび焦点Y軸移動制御である)は示されていない。
【0126】
[00139]
図17は、
図4のものに代替する一実施形態のカメラアセンブリを示す。cc
dカメラが最適な焦点のための正確な距離に配置されるよう保証するため、スペーサーチューブが必要である。
【0127】
[00140]
図18では、
図4aに示すものに代替する一実施形態を示し、ガスの加湿が、
管を通じて水性溶液を含有するバイアル内にガスを直接供給することにより達成されることを示す。
図4aの図と同様の
図18は、水性溶液を伴うバイアル53を含有するモジュール20のその部分を示す。湿ったガスは、バイアル53内の水性溶液を通じて、インキュベーションチャンバーまたは個別の培養チャンバー52内へと上昇する。一実施形態で
は、水性溶液は、水のみからなる。代替的実施形態では、水性溶液は、水を添加剤、たとえばグリセロールとともに含んでいてもよい。光学センサー54が、管の端部またはバイアル53のいずれかに取り付けられ、ガス遮断がないことを保証するよう気泡の存在を検出する。光学センサー54が、管の端部またはバイアル53のいずれかに取り付けられ、気泡の存在を検出する。
【0128】
[00141]患者の混同の最小化に関して、本発明の実施形態は、以下に役立ちうる。すな
わち、
・患者の混同、画像の混同がないよう保証するために、デバイスが患者の詳細を自動的にプログラムにより読み取ることを可能にするRFID、バーコード、またはOCRを含む培養ディッシュを用いて、胚および患者の安全性を改善すること。これは、ユーザーが患者の詳細を打ち込む必要がないこの読取り方法により達成される。
【0129】
・機器は、患者の情報を読み取って独立LCDスクリーン上に表示する。
[00142]
図19は、本発明の好ましい一実施形態による、例示的な制御された入力、出
力および制御可能なシステム特性または変数を示す。
【0130】
[00143]
図20は、生物学的試料培養システムのシステム構成図であり、ある位置での
培地成分の基本的な培地操作を示し、培地成分は次に、ステージングおよび混合領域に個別に移されて組み合わされ、次に培養ディッシュ内に分注される。
図20はまた、NIRS(すなわち、近赤外線分光-光学分光)について、隣接するウェル内かまたは同じウェル内で感知可能であるかのいずれかの2つの位置の選択肢を示す。
【0131】
[00144]
図21は、やはり、生物学的試料培養システムのシステムレベルの図である。
図21では、環境操作の好ましい形態を示し、これは、様々なセンサーに補助されて制御下で使用されるチャンバーおよび要素、たとえばヒーター要素、水チャンバー、およびガス容器に接続された、様々な環境パラメータセンサーを示す。
【0132】
[00145]
図22は、新しい培地成分の混合および培養ディッシュ内への分注を示す。液
体成分は、回転バルブを通じて選択され、次に、ステージングおよび混合位置内にマイクロドーズするためにシリンジポンプが使用される。粉末成分は、閉じられた回転バルブを通じて選択され、これは、所定の量の選択された成分を混合領域内に堆積させる。次に、液体および粉末培地成分を混合し、次に、シリンジポンプを用いて所定の制御により培養ディッシュ内に分注する。
【0133】
[00146]
図23は、チャンバー内の環境修正および変更に必要なワークフローを示すフ
ローチャートである。
[00147]
図24は、流体成分のワークフロー進行および培養ディッシュ内へのそれらの
分注を示すフローチャートである。
【0134】
[00148]
図25は、粉末成分のワークフロー進行および培養ディッシュ内へのそれらの
分注を示すフローチャートである。
[00149]胚生存能改善に関して、本発明の実施形態は、以下に役立ちうる。すなわち、
・個別に制御(温度、湿度、およびガス)された各患者チャンバーを有すること
・微速度撮影画像からのフィードバックが、インキュベーター内に直接フィードバックされ、温度、湿度およびガス濃度レベルを変更することにより、発生に最善の環境をカスタマイズする
・胚発生をさらに改善するための音、振動の使用、すなわち、概日リズムの利用/刺激
・胚にとって最善の条件をカスタマイズするための微速度撮影画像化からのフィードバック。(音、振動、温度、湿度およびガス)
・胚評価を改善するために明視野と暗視野の両方を組み合わせる能力。
【0135】
[00150]環境に対する妨害の最小化に関して、本発明の実施形態は、以下に役立ちうる
。すなわち、
・各患者のための個別の環境およびカメラを有すること、
・インキュベーション中に患者試料を静止させること、
・ディッシュ内にありながら培養培地の除去および交換を容易にする手法により培地交換を改良すること。これは、ひいては、機器内への自動培養培地交換を可能にする。
【0136】
・自動培地交換により、機器は、微速度撮影からのフィードバックを使用し、胚のための最善の培地条件をカスタマイズするを能力を有し、患者試料の妨害をさらに低減しうる。
【0137】
[00151]胚の形態の微速度撮影画像化のレビューが、妊娠の予測生存能の評価を可能に
することが認められてきた。胚形態の微速度撮影画像化中、それがうまくいかない段階、時点、たとえば、胞胚形成の8細胞分裂、断片化、または卵割速度段階のいずれかを定義する可能性がある。個別の胚チャンバー環境条件を変更する能力は、胚形態速度の再活性化および/または増強を可能にする。再活性化および増強は、胚の描写を、不良な胚に分類されるものから着床可能な胚に変化させる。再活性化および増強は、形態プロセスの異常、すなわち、卵割が速すぎる、遅すぎる胚の卵割速度および胚盤胞期の細胞サイズの異常を修正する。形態を通じて監視される胚は、染色体異常を伴って胚盤胞期まで発生可能であり、染色体が正常と分類されるものもまた、一定の割合で胚盤胞期および着床に到達できない。(Magli、2007)
[00152]同定される条件には、患者の年齢、民族、表現型、遺伝および血液情報、胚の
個別の環境、胚の培地、培地の流動、胚の周囲の概日リズム周期が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
[00153]患者の詳細によって、胚の発生を増強する最善の状況の増強が可能となる。年
齢、民族および表現型を含む詳細は、個別の胚の環境、胚の培地、培地の流動、および、これに限定されないが、胚の概日リズム周期の条件の増強を可能にする。
【0139】
[00154]胚の周囲のチャンバーの環境条件は、湿度、温度、圧力、およびガス溶質を含
む。環境の使用の一例は、実時間画像評価および記録の使用を通じた、遅い胚形態変化または卵割が速すぎる胚の検出に関し、胚の形態および着床生存能を安定化および増強するよう、環境の検出および変更を可能にする複数の環境センサーがある。
【0140】
[00155]温度センサーは、形態の実時間画像評価を通じて、チャンバーの温度の直接検
出および調整機能を可能にする。温度は、チャンバー環境の温度を維持する前述のPCB加熱要素を介して制御される。温度センサーから加熱要素へのフィードバックシステムは、チャンバーの温度の正確な調整機能を可能にする。
【0141】
[00156]湿度センサーは、個別のチャンバーの湿度のフィードバック検出および調整機
能を可能にし、チャンバー環境内へのガス入力の温度および湿度を変更することにより胚の周囲の湿度の個別の操作を可能にする。
【0142】
[00157]チャンバーにおける個別の環境のガス操作もまた利用可能である。各チャンバ
ーにおける専用のCO2およびO2センサーは、環境ガスの監視およびフィードバック検出を、調整機能とともに可能にする。ガスは、環境の変動の増加について個別に制御可能である。所定のプロファイルまたはユーザー入力値間で変化する能力を可能にする、個別のガス容量を利用可能である。操作可能なガスには、酸素、二酸化炭素、および窒素が含
まれる。これらのガスのそれぞれについて、個別の容器を提供できる。専用のガス送達システムを、各ガスについて利用可能である。ガスは、混合チャンバー内に、次に、胚を含有する培養ディッシュの周囲の環境チャンバーに放出されるガスの量を監視する、バルブシステムを通じて制御される。
【0143】
[00158]チャンバー圧力もまた、環境のガスおよび温度の操作で、胚成長の増強に必要
な特定の安定的な圧力に変更される。
[00159]環境プロファイルは、前述の変更可能な環境条件の変動値からなる、様々な環
境プリセット条件を含む。ガス、温度、湿度および圧力のプリセット構成は、試料形態のフィードバックに応じて選択可能である。自動環境変更の選択は、環境の迅速な変更を可能にする。胚の除去なしにチャンバーの環境を変更する能力により、光の増加およびラボの三次的環境への胚の曝露による有害作用の低減が可能になる。
【0144】
[00160]動的胚培地操作は、胚ディッシュの培地溶液を改変する動作である。「動的」
という用語は、培地の組成物の配合の変更および改変の動作(複数可)を指すと解されるべきである。
【0145】
[00161]流体培地操作を可能にし、ひいては胚が制御されたマイクロウェル内に入るこ
とを可能にし、胚の周囲の培地が胚の除去または喪失なしに変更されるよう、胚のための特別にデザインされた培養ディッシュを有することが所望されるので、本出願人により販売されるGAVI(商標)自動ガラス化ポッドを使用することが好ましい。培地交換の制御は、胚の喪失なしの自動培地移行を可能にするGAVI(商標)製品において達成された。GAVI(商標)製品の必要とされるよりコンパクトな送達システムが、培地の移行を可能にすると考えられる。各患者の胚のための単離システムゆえに、専用の配管が提供され、よりコンパクトなシステムを可能にし、これは、
図5から
図11のうちの任意の1つまたは複数に示す培養ディッシュデザインにより補助される。好ましくは、培養ディッシュ内に4つのウェルを有するメインのディッシュが提供される。これらのウェルのうちの1つは、胚を含有および配置する16個のマイクロウェルを保持する。これらの胚を通じて同じ培地を可能にする能力は、培地の移行および培地成分の感知を可能にする。
【0146】
[00162]好ましい実施形態では、胚ディッシュを培養システムに挿入する際に、培地が
患者の詳細とともに同定される。これは、胚を浸漬させている培地のタイプをトラッキングする能力を創出する。患者の情報は、培地内の成分の要件にとって決定的に重要でありうる。載置されている培地成分、たとえばバッファー、水、アミノ酸、塩/イオン、糖(グルコースおよびラクトース)、脂質、タンパク質、ステロイドおよび薬物など、とともに、ビタミン、抗生物質、HEPES、および表面活性剤を、現在胚を浸漬させている基礎培地を操作および補完するために使用できる。これは、基礎培地を補完する単一の成分、または、約20から約80の異なるタイプを含む複数の成分を交換する基礎培地のより顕著な交換でありうる。
【0147】
[00163]さらなる一実施形態は、システムへの挿入の際に、個別の胚/試料を包括基礎
培地中に浸漬させることを提供する。システム内に入ると、載置されている成分は、患者の詳細から得られた情報を有する胚のために特に調整された固有の培地を創出可能である。機器内への包括基礎培地を伴う胚の挿入および患者の詳細および病歴の知識を用いた最適化可能性の検出、以前の培地組合せの成功および不成功のデータからのアルゴリズムに基づく自動プロセスは、載置されている培地成分からの投薬による培地の補完を可能にする。
図22を特に参照すると、これは、胚に固有の培地を送達する、載置された状態での混合およびステージングを可能にする個別の容器内の様々な成分により可能である。これは、より広範な患者および彼らの個別の医療プロファイルの特定の需要に対応する能力を可能にする。
【0148】
[00164]さらに、別々の容器内に載置されている培地成分により、成分の有効期間は、
個別の成分が、各成分に最適な貯蔵条件を可能にする別々の個別の容器内に貯蔵されることにより、劇的に延長可能である。対照的に、一緒に添加される成分は、時間経過とともに相互作用して、より早く劣化する可能性がより高い。また、載置されている流体成分ではなく粉末成分の使用と同様に、液体形態に対して載置時に水和可能な粉末形態の顕著な有効期間の利点がある。粉末形態はまた、液体形態よりも安定的であり、環境条件、たとえば光、温度、および蒸発の影響を受けにくい。
【0149】
[00165]形態微速度撮影画像は、胚が必要とされるとおり発生していない場合に胚の培
地を改変する能力を与える、実時間フィードバックループを提供可能である。培地のすべての成分を別々の容器内に有する機能は、培地の濃度および/または溶液を必要に応じて改変する能力を可能にする。
【0150】
[00166]複数の培地ベースを、前述の患者の詳細に基づく所定のプロファイルおよび現
在普及し検証されている実験室の配合から創出可能である。これは、培地の生成およびカスタマイズを完全に載置されたまま可能にし、必要に応じてさらなるカスタマイズを可能にする。
【0151】
[00167]患者の詳細は、培地プロファイルが患者に合わせて調整可能である限り、溶液
/培地プロファイルにおける重要事項である。これは、個別の機器チャンバーゆえに、機器において複数のチャンバーおよび複数の培地構成を可能にする。これはたとえば、タンパク質欠乏症の患者にとって有益であり、アミノ酸の量を増加させるよう培地を改変でき、患者に欠陥があったとしても、発生の成功可能性を高めるよう胚を増強することを可能にする。
【0152】
[00168]培地解析は、消費された培地成分の決定を可能にすると考えられる。これは、
胚が発生を継続するのに必要なのはどの成分かを示す、初期培地対照との比較を可能にする。前述の胚が置かれた/ディッシュデザインは、培地内に含有されるものを決定するため、感知のための少量の培地または交換のための全培地の除去を可能にする。培養ディッシュ上の局所感知領域/隣接ウェルへの流体吸引は、消費された培地中の成分の非侵襲的感知を可能にすると考えられる。さらに、有益なことに、残りの培地成分がインサイチューで感知され、胚の成長および発生の限定的な中断を可能にする。これは、消費された培地の成分を知る能力と組み合わせて、実時間画像微速度撮影システムの両方において胚の監視を可能にし、環境および胚成長条件のさらなる指標を可能にする。
【0153】
[00169]胚発生の検出を、培地中に存在する残存するリソースから決定できる。培地は
胚のためのすべての栄養を含有するので、胚が培地上で栄養を摂取していない場合、培地が栄養を含有せず、培地の変更が必要なことがありうる。栄養は、培地内の成分のいくつかの態様の一例でしかない。培地成分の検出の際、さらなる胚発生を可能にするため、載置されている培地成分容器、混合および送達システムを通じて、培地中のバランスまたは欠乏を修正するよう改変が可能である。
【0154】
[00170]メタボロミクスを検出する能力が、好ましい実施形態では利用可能である。メ
タボロミクスの検出能力により、胚の形態とメタボロミクスとの間を並列し、妊娠に成功する培地中に見出されると予測されるものの既知の対照、特定の成分をさらに添加する培地改変におけるメタボロミクスの検出と比較して、選択および着床のより高い可能性を創出可能である。メタボロミクスは、混合領域において一緒に混合し、患者の要件に特に適合した培地溶液に添加することが可能な成分を機器に載置して維持できる。
【0155】
[00171]光学分光は、培地中のメタボロミクスを評価する非侵襲的方法を用いた培地の
検出を可能にする。成分を決定する光学分光機器、たとえばNIRSの能力は、胚発生を増進するためにメタボロミクス培地成分が適用および利用可能な要件を決定する能力を可能にすると考えられる。成功した胚に対する、良好な着床および良好な妊娠と考えられる、既知の培地成分と比較される。光学分光は、メタボロミクスプロファイリングを伴う形態画像化の実時間フィードバックとともに利用可能である。分光法の機器は、培地のメタボロミクスを検出する他の方法と比較して使用が容易であり、比較的安価である。機器は、経時的にきわめて安定しており、操作が単純で保守が容易である。他の分光検出法とは異なり、試験期間のための検出時間は、1秒未満から数分以内の範囲である。これは、組成を決定するための胚培地のサンプリングを可能にし、必要な補充物の分注により胚発生を増進することを可能にする。感知源、検出器および他の必要な成分の配置は、胚とともにインサイチューであるか、または、胚の周囲の吸引を通じて培地の一部が除去される二次感知領域上であるかのいずれかである。
図20は、これをよく示す。
【0156】
[00172]制御された成分容量の構成を伴う所定のプロファイルは、ユーザーにより選択
可能であり、培地組成を補完するよう適用される。機器/システムの対話型ユーザーインターフェースから培地組成を個別に管理および制御する適切なユーザーの能力により、ユーザーは、培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御する能力を有する。
【0157】
[00173]ユーザーは、患者の胚のプロファイルを改変するよう培地成分を完全に操作で
きる。この点に関して追加の一例は、グルコース欠乏症患者であり、これは、患者のプロファイルの改変を必要とすると考えられ、所望の培地成分および濃度へと培地の実時間改変および操作を可能にする。これは、胚発生を制御するためにユーザーの十分な柔軟性を可能にする。
【0158】
[00174]培地の除去は、胚に任意の新しい培地を補充および最小限の希釈をすることを
可能にする。胚を害することなしに胚の周囲の培地および流体を除去および補充する制御された能力を可能にする培養ディッシュデザインは、理想的な解決策だと考えられる。
図5から
図11のうちの任意の1つに示すディッシュで十分である。好ましい実施形態では、ディッシュにおける胚の座位から吸引される制御された廃棄物のために、ディッシュ/システムにおいて隔離された場所が提供される。吸引された培地は、機器上で混合される新しく分注される培地と交換できる。好ましくは、使用される培養ディッシュは、ディッシュ上の1つのウェルに胚のための座位を創出するマイクロウェルを有する。培地の除去および培地の補充は、別々のマイクロウェル内の胚の位置が制御されることによりもたらすことが可能である。マイクロウェルを含有するウェルのランディングエリア上からの吸引および分注は、培地の交換をもたらすことを可能にする。
【0159】
[00175]個別の溶液/成分のシステム内で培地を混合する。成分を別々に制御すること
は、それらに対するさらなる個別の制御を提供する。たとえば、冷蔵、有効期間および慎重な輸送方法に関して特別な要件を有する複数の成分がありえ、これらのそれぞれが成分にコストを加える。したがって、個別の容器の提供は、すべての成分の有効期間を延長しうる能力を創出し、成分全体をより低コストにする。
【0160】
[00176]システムの載置されている容器および分注能力を本明細書で説明する。成分の
混合は、バルブ、ポンプおよび多岐管システムにより制御され、ユーザーによるプロファイルまたは個別の成分の所定の選択が、個別の成分のバルブを開くトリガーとなり、特定の量/容量を隔離された容器から成分がステージングされる混合ステーションへと注入/吸入することを可能にする。次に、他の成分を必要に応じてステージング/混合領域内に分注する。比容積および/または量は、分注機構により制御される。次に成分を必要に応じて混合領域内で水和する。撹拌運動で混合し、成分を適切に組み合わせる。次に、組み
合わされた混合成分/溶液をチャンバーおよび選択された培養ディッシュ内に分注する。
【0161】
[00177]利用可能な混合成分を、別々の容器内に、粉末または液体形態のいずれかで貯
蔵する。液体形態成分は、保管してマイクロドーズポンプを使用してそれらの容器から吸入可能である。粉末成分は、水和を要し、変数は、バッファー、水、アミノ酸、塩、糖、およびタンパク質を含んでいてもよい。
【0162】
[00178]培地の分注が完了すると、形態および光学分光を、培地の変更が胚に影響を及
ぼすかどうかを決定するよう再評価するために使用する。フィードバックループは、ユーザーがコマンドを通じて培地混合領域を操作可能なよう、実時間で継続可能である。主目的は、胚がさらに発生することを可能にするよう培地を改良することである。
【0163】
[00179]代わりにまたは加えて、培地の改変のための成分は、個別の容器内に含有され
ていなくてもよい。むしろ、成分の組合せは、培養ディッシュ上にすでに配置されうるのであり、胚を置くのと同時に生じる水和だけを要する。これは、前述のとおり基礎培養物の有効期間の延長を可能にする基礎培養物でありうる。
【0164】
[00180]本発明がその特定の実施形態との関連で説明される一方で、さらなる修正が可
能なことが理解されると考えられる。本出願は、本発明の原理に一般に従う本発明の任意の変形形態、使用または適応形態を包含することが意図されており、本開示からのかかる逸脱を、本発明が関連する技術分野内で既知または慣習的プラクティスの範囲内のものとして、また、本明細書に前述の本質的特徴に適用できるものとして含む。
【0165】
[00181]本発明は、本発明の本質的特徴の趣旨から逸脱することなしに複数の形態で実
施できるので、特に指定しない限り、上述の実施形態が本発明を限定するものでなく、むしろ添付の特許請求の範囲に定義する本発明の趣旨および範囲内にあるものとして広く解されるべきであることが理解されるべきである。説明された実施形態は、すべての点において例示的でしかなく、限定的でないと考えられるべきである。
【0166】
[00182]様々な修正および均等な構成は、本発明および添付の特許請求の範囲の趣旨お
よび範囲内に含まれることが意図されている。したがって、特定の実施形態は、本発明の原理が実施される多くの仕方を例示するものと理解されるべきである。以下の特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション・クローズは、定義された機能を実行する構造を包含し、構造的均等物のみならず、均等な構造をも包含することが意図されている。たとえば、釘とネジは、釘が木製部分を合わせて固定するのに円柱面を用い、一方でネジが木製部分を合わせて固定するのにらせん面を用いる点で構造的等価物でないかもしれないとはいえ、木製部分を締結する環境では、釘とネジは均等な構造である。
【0167】
[00183]「サーバー」、「セキュアサーバー」または同様の用語が本明細書において使
用される場合、文脈が別の解釈を要するのでない限り、コミュニケーションシステムにおいて使用できるコミュニケーションデバイスが記載されているということに留意すべきであり、任意の特定のコミュニケーションデバイスタイプに本発明を限定すると解すべきでない。したがって、コミュニケーションデバイスには、セキュアであってもなくてもよいブリッジ、ルーター、ブリッジルーター(ルーター)、スイッチ、ノード、または他のコミュニケーションデバイスが含まれるが、これに限定されない。さらに、当業者により理解されると考えられるとおり、他のソフトウェアパッケージまたはアプリを、クラウドベースシステムを含める可能な実施とともに利用できる。
【0168】
[00184]本発明の様々な態様を示すためにフローチャートが本明細書において使用され
る場合、それは、本発明を任意の特定の論理フローまたは論理実行に限定するものと解さ
れるべきでないことにもまた留意すべきである。記載の論理は、結果全体を変化させることまたはさもなければ本発明の真の範囲を逸脱することなしに異なる論理ブロック(たとえばプログラム、モジュール、関数、またはサブルーチン)に区分できる。多くの場合、結果全体を変化させることまたはさもなければ本発明の真の範囲を逸脱することなしに、論理要素を追加、修正、削除、異なる順序で実施、または異なる論理構造(たとえば、論理回路、ルーピング・プリミティブ(looping primitives)、条件付き論理、および他の論理構造)を使用して実行できる。
【0169】
[00185]本発明の様々な実施形態を、プロセッサ(たとえば、マイクロプロセッサ、マ
イクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、または汎用コンピュータ、これについては、任意の市販のプロセッサを、単一のプロセッサ、システムのシリアルまたはパラレルセットのプロセッサのいずれかとして本発明の実施形態を実行するために使用でき、かかるものとして、市販のプロセッサの例には、Merced(商標)、Pentium(商標)、Pentium II(商標)、Xeon(商標)、Celeron(商標)、Pentium Pro(商標)、Efficeon(商標)、Athlon(商標)、AMD(商標)等が含まれるが、これらに限定されない)とともに使用するためのコンピュータプログラム論理、プログラム可能論理デバイスとともに使用するためのプログラム可能論理(たとえば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、または他のPLD)、個別のコンポーネント、集積回路(たとえば、特定用途向け集積回路(ASIC))、またはそれらの任意の組合せを含む任意の他の手段を含む多くの異なる形態で実施できる。本発明の例示的一実施形態では、主にユーザーとサーバーとの間のコミュニケーションのすべてが、コンピュータ実行可能形態に変換され、かかるものとしてコンピュータ可読媒体に保存され、オペレーティングシステムの制御下でマイクロプロセッサにより実行される、コンピュータプログラム指令のセットとして実行される。
【0170】
[00186]本明細書に記載の機能の全部または一部を実行するコンピュータプログラム論
理は、ソースコード形態、コンピュータ実行可能形態、および様々な中間形態(たとえば、アセンブラ、コンパイラ、リンカー、またはロケータにより生成される形態)を含む様々な形態で実施できる。ソースコードは、様々なプログラミング言語(たとえば、オブジェクトコード、アセンブリ言語、または高水準言語、たとえばFortran、C、C++、JAVA(商標)、またはHTML)のうちの任意のものにおいて実行される一連のコンピュータプログラム指令を含んでいてもよい。さらに、本発明の実施形態を実行するために使用できる何百もの利用可能なコンピュータ言語があり、比較的一般的なものには、様々なオペレーティングシステムまたは操作環境での使用のための、Ada、Algol、APL、awk、Basic、C、C++、Conol、Delphi、Eiffel、Euphoria、Forth、Fortran、HTML、Icon、Java(商標)、Javascript、Lisp、Logo、Mathematica、MatLab、Miranda、Modula-2、Oberon、Pascal、Perl、PL/I、Prolog、Python、Rexx、SAS、Scheme、sed、Simula、Smalltalk、Snobol、SQL、Visual Basic、Visual C++、Linux(商標)およびXML、QT、Pythonがある。ソースコードは、様々なデータ構造およびコミュニケーションメッセージを定義および使用できる。ソースコードは、コンピュータ実行可能形態(たとえば、インタープリタを介する)であってもよく、ソースコードは、コンピュータ実行可能形態に変換(たとえば、トランスレータ、アセンブラ、またはコンパイラ)されてもよい。
【0171】
[00187]コンピュータプログラムは、任意の形態(たとえば、ソースコード形態、コン
ピュータ実行可能形態、または中間形態)で恒久的または一時的に有形のストレージ媒体、たとえば半導体メモリデバイス(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはフラッシュ-プログラム可能RAM)、磁気メモリデバイス(たとえばディスケッ
トまたは固定ディスク)、光学メモリデバイス(たとえばCD-ROMまたはDVD-ROM)、PCカード(たとえばPCMCIAカード)、または他のメモリデバイスに固定できる。コンピュータプログラムは、様々なコミュニケーション技術、たとえば、これらに限定されないが、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(たとえばBluetooth(商標))、ネットワーキング技術、およびインターネットワーキング技術のうちの任意のものを使用してコンピュータに送信可能な信号で、任意の形態で固定できる。コンピュータプログラムは、添付の印刷または電子文書(たとえば、市販ソフトウェア)を伴う着脱可能なストレージ媒体として任意の形態で配布でき、コンピュータシステム(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上)にプレロードでき、または、コミュニケーションシステム(たとえば、インターネットまたはワールド・ワイド・ウェブ)を通じてサーバーまたは電子掲示板から配布できる。
【0172】
[00188]本明細書に記載の機能の全部または一部を実行するハードウェア論理(プログ
ラム可能論理回路との使用のためのプログラム可能論理を含む)を、従来のマニュアル法を使用してデザインでき、または、様々なツール、たとえばコンピュータ支援設計(CAD)、ハードウェア記述言語(たとえばVHDLまたはAHDL)、またはPLDプログラミング言語(たとえばPALASM、ABEL、またはCUPL)を使用してデザイン、キャプチャ、シミュレート、もしくは電子的に記録できる。ハードウェア論理はまた、本発明の実施形態を実行するためのディスプレイスクリーン内に組み込むことができ、このスクリーンは、セグメントディスプレイスクリーン、アナログディスプレイスクリーン、デジタルディスプレイスクリーン、CRT、LEDスクリーン、プラズマスクリーン、液晶ダイオードスクリーン等であってもよい。
【0173】
[00189]プログラム可能論理は、恒久的または一時的に有形のストレージ媒体、たとえ
ば半導体メモリデバイス(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはフラッシュ-プログラム可能RAM)、磁気メモリデバイス(たとえばディスケットまたは固定ディスク)、光学メモリデバイス(たとえばCD-ROMまたはDVD-ROM)、または他のメモリデバイスに固定できる。プログラム可能論理は、様々なコミュニケーション技術、たとえば、これらに限定されないが、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(たとえばBluetooth(商標))、ネットワーキング技術、およびインターネットワーキング技術のうちの任意のものを使用してコンピュータに送信可能な信号で固定できる。プログラム可能論理は、添付の印刷または電子文書(たとえば、市販ソフトウェア)を伴う着脱可能なストレージ媒体として配布でき、コンピュータシステム(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上)にプレロードでき、または、コミュニケーションシステム(たとえば、インターネットまたはワールド・ワイド・ウェブ)を通じてサーバーまたは電子掲示板から配布できる。
【0174】
[00190]「を含む(comprises/comprising)」および「を含む(
includes/including)」は、本明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するものと解されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。したがって、文脈が別の解釈を要するのでない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」等の用語は、排他的または網羅的な意味とは反対の包括的な意味で、すなわち、「を含むが、これらに限定しない」の意味で解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ART(生殖補助技術)処置を受けている1以上の患者の1以上の胚をインキュベートするのに適合した胚培養システムにおける生存可能な胚の割合を高めるためにフィードバックを提供する方法であって、
前記胚培養システムが複数のモジュールを含み、各モジュールは、複数の胚を各々収容するための間隔を置いて配置された、複数のマイクロウェルを含む培養ディッシュを収容するのに適合した少なくとも1つのチャンバーを有し、
前記方法が、
フィードバックが、
前記胚培養システムのチャンバーと連動した環境パラメータを測定するステップ、および、
前記培養システムの培養ディッシュと連動した培養培地パラメータを測定するステップ、
を含み、
各モジュールに関する検査手段および培地のサンプリング手段の1つまたはそれらの組合せを、1以上の胚に対応する患者の詳細とともに使用して、環境パラメータを操作するための前記胚培養システムのチャンバーを選択し、そして、培養培地パラメータを操作するための前記胚培養システムの培養ディッシュを選択する、ことを特徴とする、
前記方法。
【請求項2】
前記胚培養システムの選択された培養ディッシュと連動した培養培地パラメータを測定するステップが、
前記胚培養システムの培養ディッシュについて、載置されている成分を混合することにより培地を操作するステップ、
吸引および/または分注を介して1以上の胚周辺の培地を変化させるステップ、
培地の組成を感知し、リアルタイムフィードバックを可能にするステップ、
培地および/または環境のpHレベルを感知するステップ、
培地pHレベルを変化させるステップ、
マイクロウェル中の胚の座位とは離して培地成分を混合して組み合わせるステップ、
液体を混合領域内に別個に分注し、マイクロウェル中の胚の座位内に分注する前にステージングを可能にするステップ、
NIRSを使用し、補充のために試料培地の検出を可能にするステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記胚培養システムの選択されたチャンバーと連動した環境パラメータを測定するステップが、
温度およびガス組成を変化させることにより、前記培養システムにおける1以上の胚のチャンバー環境を改変するステップ、
個別のガス容器を提供し、チャンバーガス操作を可能にするステップ、
熱ストレスを適用して胚発生を高めるステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記各モジュールに関する検査手段が、
光学検査出段、または、
NIRS検査手段、
を含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生存可能な胚の割合を高めるためのフィードバック制御を伴う、ART(生殖補助技術)処置を受けている1以上の患者の1以上の胚をインキュベートするのに適合した胚培養システムであって、
前記胚培養システムは、
複数のモジュール、各モジュールは、複数の胚を各々収容するための間隔を置いて配置された、複数のマイクロウェルを含む培養ディッシュを収容するのに適合した少なくとも1つのチャンバーを有する;
前記胚培養システムの培養チャンバーと連動した環境パラメータを測定するための、環境パラメータ測定装置;
前記培養システムの培養ディッシュと連動した培養培地パラメータを測定するための、培地パラメータ測定装置;
を含み、
各モジュールに関する検査手段および培養ディッシュに関する培地のサンプリング手段の1つまたはそれらの組合せを、1以上の胚に対応する患者の詳細とともに使用して、1以上の培養チャンバーと連動している環境パラメータを操作するための環境パラメータ操作装置、および、1以上の培養ディッシュに連動している培養培地パラメータを操作するための培地バラメータ操作装置、を選択的に作動させる、ことを特徴とする、
前記システム。
【請求項9】
前記環境パラメータ操作装置および前記培地バラメータ操作装置が、
患者の詳細、および、
各モジュールに関する検査手段および各培養ディッシュに関する培地サンプリング手段の1つまたは双方からのフィードバック、
のうちの1つまたはそれらの組合せに基づいて選択的に作動される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項8、9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
培地パラメータ測定装置が、
光学検査手段、
光学分光デバイス装置、または、
NIRS検査手段、
を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記装置において、他のモジュールと独立に作動可能な2以上のモジュールを保持するように設けられた装置、ここにおいて、各モジュールは、他のモジュールから独立して装置から除去されることが可能である、
前記培養ディッシュを保持するための対象ホルダーを有する各モジュール、前記対象ホルダーは、前記培養ディッシュから光学顕微鏡装置まで光が透過できるように適合している、
前記胚を、前記光学顕微鏡装置に対して正確な位置に配置するためのアラインメント手段、ここにおいて、培養ディッシュ中の胚は、培養ディシュ中の他の胚と独立に光学検査されることが可能である、
を含む、請求項8から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記培地バラメータ操作装置が、
個別の培養培地成分を混合するための混合装置、前記混合装置は、液体または粉末の培地成分を隔離された容器から混合領域へ分注するためのバルブ分注器を含む;および、
前記混合された培地成分を、操作される胚を保持するディッシュへ分注するシリンジポンプを含む、分注装置、
を含む、請求項14に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0174
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0174】
[00190]「を含む(comprises/comprising)」および「を含む(includes/including)」は、本明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するものと解されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。したがって、文脈が別の解釈を要するのでない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」等の用語は、排他的または網羅的な意味とは反対の包括的な意味で、すなわち、「を含むが、これらに限定しない」の意味で解すべきである。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
生物学的試料の生存能を改善するために生物学的試料培養システムにおいてフィードバックを提供する方法であって、フィードバックが、
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定および操作するステップ、ならびに、
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む方法。
[態様2]
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定および操作するステップが、
温度およびガス組成を変化させることにより、培養システムにおける生物学的試料のチャンバー環境を改変するステップ、
個別のガス容器を提供し、チャンバーガス操作を可能にするステップ、
熱ストレスを適用して試料発生を改善するステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップが、
培養システムの培養ディッシュについて、載置されている成分を混合することにより培地を操作するステップ、
吸引および/または分注を介して生物学的試料周辺の培地を変化させるステップ、
培地の組成を感知し、リアルタイムフィードバックを可能にするステップ、
培地および環境のpHレベルを感知するステップ、
培地pHレベルを変化させるステップ、
試料の座位とは離して培地成分を混合して組み合わせるステップ、
液体を混合領域内に別個に分注し、試料の座位内に分注する前にステージングを可能にするステップ、
NIRSを使用し、補充のために試料培地の検出を可能にするステップ、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
[態様5]
培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様4に記載の方法。
[態様6]
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
生物学的試料が、
胚、
幹細胞、
卵母細胞、
精子、
のうちの少なくとも1つを含む、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムであって、
生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを測定するための環境パラメータ測定装置、
環境パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した環境パラメータを操作するための環境パラメータ操作装置、
生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定するための培地パラメータ測定装置、
培地パラメータ測定装置の少なくとも1つの出力に応答して、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを操作するための培地パラメータ操作装置、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含むシステム。
[態様9]
培地パラメータが、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様8に記載のシステム。
[態様10]
培地パラメータが、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様9に記載のシステム。
[態様11]
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様8から10のいずれか一項に記載のシステム。
[態様12]
培地パラメータ測定装置が、光学分光デバイスを含む、態様8から11のいずれか一項に記載のシステム。
[態様13]
培地パラメータ測定装置が、NIRSを含む、態様12に記載のシステム。
[態様14]
生物学的試料培養システムにおける生物学的試料の培養を制御する方法であって、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するステップ、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するステップ、
少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するステップ、
を含む方法。
[態様15]
培地成分が、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様14に記載の方法。
[態様16]
培地成分が、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様14または15に記載の方法。
[態様17]
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様14、15または16に記載の方法。
[態様18]
少なくとも1つの生物学的試料が、
胚、
幹細胞、
卵母細胞、
精子、
のうちの少なくとも1つを含む、態様14から17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムであって、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、
少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、
を含むシステム。
[態様20]
試料の生存能を改善するためにインタラクティブ制御に適合した生物学的試料培養システムであって、
少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッドを、包括基礎培地に浸漬するための試料取扱い装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを適合させるための環境制御装置、
を含むシステム。
[態様21]
培地成分が、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様19または20に記載のシステム。
[態様22]
培地成分が、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様21に記載のシステム。
[態様23]
環境パラメータが、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、態様19から22のいずれか一項に記載のシステム。
[態様24]
フィードバック装置が、光学分光デバイスを含む、態様19または21から23のいずれか一項に記載のシステム。
[態様25]
フィードバック装置が、NIRSを含む、態様24に記載のシステム。
[態様26]
本明細書に開示の方法またはプロトコル。
[態様27]
本明細書に開示の装置、システムおよび/またはデバイス。
【外国語明細書】