(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028780
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】増強胎盤幹細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0735 20100101AFI20240227BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240227BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12N5/0735 ZNA
C12N15/113 Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023201202
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2022015746の分割
【原出願日】2014-03-13
(31)【優先権主張番号】61/785,222
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジップロック
2.TRITON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート アボット
(72)【発明者】
【氏名】キャシイ カラシエウイクズ‐メンデズ
(72)【発明者】
【氏名】キアオクイ ズハング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞生存を減少させる環境でより長い期間生存する、胎盤幹細胞を提供する。
【解決手段】細胞死を引き起こす1以上の条件下で培養されたとき、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べて生存の増加を示す、単離された胎盤幹細胞で、少なくとも1つの生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現する、単離された胎盤幹細胞である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞死を引き起こす1以上の条件下で培養されたとき、対応する未修飾の胎盤幹細胞と
比べて生存の増加を示す、単離された胎盤幹細胞。
【請求項2】
少なくとも1つの生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関
連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現する、単離された胎盤幹細胞。
【請求項3】
前記生存関連遺伝子が、ADAMTS9、ABCF2、DNAJB4、MYB、RTN4、ANLN、BACE1、ABHD10、
EGFR、NAA15、SEC24A MAP2K1、BCL2、ACTR1A、EIF4E、NAA25、SHOC2、CCNF、CAV2、ACVR2
A、EPT1、NAPG、SLC12A2、CDC14A、CD276、ADSS、FGF2、NOB1、SLC16A3、CDC25A、CDC42
、ALG3、FNDC3B、NOTCH2、SLC25A22、CHEK1、CDK6、ARHGDIA、GALNT7、SLC38A5、CUL2、C
OL3A1、ARL2、GPAM、PDCD4、SLC7A1、FGFR1、COL4A1、ATG9A、HACE1、PDCD6IP、SNX15、I
TPR1、COL4A2、PLAG1、HARS、PHKB、SPTLC1、KIF23、CPEB3、C9ORF167/TOR4A、HARS2、PI
SD、SQSTM1、TRIM63、CXXC6/TET1、C9ORF89、HERC6、PLK1、SRPR、CSHL1、DIABLO、CACNA
2D1、HMGA1、PNN、SRPRB、WEE1、DNMT3A、CAPRIN1、HSDL2、PNPLA6、TMEM43、MLLT1、DNM
T3B、CCDC109A/MCU、IGF2R、PPIF、TNFSF9、MMS19、FGA、CCND1、IPO4、SIAH1、TOMM34、
RECK、IMPDH1、CCND3、ITGA2、PPP2R5C、TPM3、RNASEL、INSIG1、CCNE1、KCNN4、PSAT1、
TPPP3、WT1、KREMEN2、CCNT2、KPNA3、PTCD3、UBE2V1、YIF1B、LPL、CDC14B、LAMC1、PTG
S2、UBE4A、ZNF622、MCL1、CDK5RAP1、LAMTOR3、PURA、UGDH、PIK3R1、CENPJ、LUZP1、RA
B9B、UTP15、PPM1D、CHORDC1、LYPLA2、RAD51C、VEGFA、SPARC、CREBL2、PIAS1、RARS、
又はWNT3Aである、請求項2記載の単離された胎盤幹細胞。
【請求項4】
前記生存関連遺伝子が、CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、
CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2である、請求項3
記載の単離された胎盤幹細胞。
【請求項5】
細胞死を引き起こす1以上の条件下で培養されたとき、同じ条件下で培養された対応す
る未修飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)カスパーゼ3/7の発現の減少、(ii)ミトコンドリア
膜電位の増加、及び/又は(iii)代謝活性の増加を示す、請求項1~4のいずれか一項記載の
単離された胎盤幹細胞。
【請求項6】
前記集団内の細胞の少なくとも50%が、請求項1~5のいずれか一項記載の細胞である、
単離された細胞集団。
【請求項7】
前記細胞集団内の細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%が増強
胎盤幹細胞である、請求項6記載の単離された細胞集団。
【請求項8】
細胞死を引き起こす1以上の条件下で培養されたとき、対応する未修飾の胎盤幹細胞と
比べて生存の増加を示す胎盤幹細胞を産生する方法であって、該胎盤幹細胞を、調節性RN
A分子と接触させた後、少なくとも1つの生存関連遺伝子を、該調節性RNA分子と接触させ
ていない同等量の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベ
ルで発現するように、胎盤幹細胞の集団を有効量の調節性RNA分子と接触させることを含
む、前記方法。
【請求項9】
前記調節性RNA分子が、マイクロRNA(miRNA)、マイクロRNA模倣物(miRNA模倣物)、低分
子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、又はこれらの任意の組
合せを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記調節性RNA分子が、前記胎盤幹細胞の少なくとも1つの生存関連遺伝子を標的にする
、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記生存関連遺伝子が、ADAMTS9、ABCF2、DNAJB4、MYB、RTN4、ANLN、BACE1、ABHD10、
EGFR、NAA15、SEC24A MAP2K1、BCL2、ACTR1A、EIF4E、NAA25、SHOC2、CCNF、CAV2、ACVR2
A、EPT1、NAPG、SLC12A2、CDC14A、CD276、ADSS、FGF2、NOB1、SLC16A3、CDC25A、CDC42
、ALG3、FNDC3B、NOTCH2、SLC25A22、CHEK1、CDK6、ARHGDIA、GALNT7、SLC38A5、CUL2、C
OL3A1、ARL2、GPAM、PDCD4、SLC7A1、FGFR1、COL4A1、ATG9A、HACE1、PDCD6IP、SNX15、I
TPR1、COL4A2、PLAG1、HARS、PHKB、SPTLC1、KIF23、CPEB3、C9ORF167/TOR4A、HARS2、PI
SD、SQSTM1、TRIM63、CXXC6/TET1、C9ORF89、HERC6、PLK1、SRPR、CSHL1、DIABLO、CACNA
2D1、HMGA1、PNN、SRPRB、WEE1、DNMT3A、CAPRIN1、HSDL2、PNPLA6、TMEM43、MLLT1、DNM
T3B、CCDC109A/MCU、IGF2R、PPIF、TNFSF9、MMS19、FGA、CCND1、IPO4、SIAH1、TOMM34、
RECK、IMPDH1、CCND3、ITGA2、PPP2R5C、TPM3、RNASEL、INSIG1、CCNE1、KCNN4、PSAT1、
TPPP3、WT1、KREMEN2、CCNT2、KPNA3、PTCD3、UBE2V1、YIF1B、LPL、CDC14B、LAMC1、PTG
S2、UBE4A、ZNF622、MCL1、CDK5RAP1、LAMTOR3、PURA、UGDH、PIK3R1、CENPJ、LUZP1、RA
B9B、UTP15、PPM1D、CHORDC1、LYPLA2、RAD51C、VEGFA、SPARC、CREBL2、PIAS1、RARS、
又はWNT3Aである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記生存関連遺伝子が、CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、
CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2である、請求項1
1記載の方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項記載の方法によって産生される単離された増強胎盤幹細胞
又はその集団。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項記載の単離された増強胎盤幹細胞を含む組成物。
【請求項15】
請求項8~12のいずれか一項記載の方法によって産生される単離された増強胎盤幹細胞
を含む組成物。
【請求項16】
CD10+、CD34-、CD105+、CD200+胎盤幹細胞である、請求項1~5又は13のいずれか一項記
載の胎盤幹細胞。
【請求項17】
前記集団内の前記増強胎盤幹細胞が、CD10+、CD34-、CD105+、CD200+胎盤幹細胞である
、請求項6又は7記載の細胞集団。
【請求項18】
前記増強胎盤幹細胞が、CD10+、CD34-、CD105+、CD200+胎盤幹細胞である、請求項8~1
2のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記増強胎盤幹細胞が、CD10+、CD34-、CD105+、CD200+胎盤幹細胞である、請求項14又
は15記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、2013年3月14日に
出願された米国仮特許出願第61/785,222号に対する優先権を主張する。
【0002】
(1.分野)
本明細書に提供されるのは、生存の増加を示す胎盤幹細胞(「増強胎盤幹細胞」)、その
ような胎盤幹細胞を含む組成物、並びにそのような胎盤幹細胞及び組成物を使用する方法
である。
【背景技術】
【0003】
(2.背景)
哺乳動物の胎盤はボリュームがあり、通常は医療廃棄物として廃棄されるので、それら
は、医学的に有用な細胞、例えば、胎盤幹細胞の独特の供給源となる。特定の環境、例え
ば、インビボで培養され/そこに存在する場合、細胞は、細胞に対して傷害として作用す
る環境因子の存在が原因で生存の低下を示すことがある。そのような傷害に対して抵抗性
であり、したがって、通常であれば細胞生存を減少させる環境でより長い期間生存する、
胎盤幹細胞の集団の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
(3.概要)
一態様において、本明細書に提供されるのは、胎盤幹細胞が、対応する未修飾の胎盤幹
細胞と比較して、特定の条件下でより長い期間生存するように、胎盤幹細胞を修飾する方
法、例えば、細胞死をもたらす条件に対して該細胞を抵抗性にするように該細胞を修飾す
る方法である。そのような修飾された胎盤幹細胞は、本明細書において、「増強胎盤幹細
胞」と呼ばれる。本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、生存の増加を示し、したがっ
て、治療、特に、胎盤幹細胞が、細胞死をもたらし得る条件に暴露される、例えば、宿主
細胞、血液、及び血液成分(例えば、血清、抗体、補体)、並びに細胞死の原因又は一因と
なる他の条件に暴露される治療で有利に使用されることができる。別の態様において、本
明細書に提示されるのは、増強胎盤幹細胞及び増強胎盤幹細胞を含む医薬組成物である。
【0005】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って修飾される胎盤幹細胞は、それ
らが、所与の条件に暴露されたとき、同じ条件に暴露された対応する未修飾の胎盤幹細胞
よりも長い期間生存することができる場合、増強胎盤幹細胞とみなされる。例えば、一実
施態様において、増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較したとき、血清
(例えば、ヒトもしくはラット血清)、補体、抗体、他の細胞(例えば、免疫系の細胞)、又
はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件の存在下で、生存の増加を示す。
対応する未修飾の胎盤幹細胞は、本明細書で使用される場合、対応する未修飾の胎盤幹細
胞が比較される増強胎盤幹細胞を作製するために使用される胎盤幹細胞又はその集団の同
じ特徴を有する、任意の胎盤幹細胞又はその集団を含むことができる。例えば、対応する
未修飾の胎盤幹細胞は、下の第5.3.1節に記載の胎盤幹細胞の物理的及び/もしくは形態的
特性のいずれかを保有することができ、並びに/又は下の第5.3.2節に記載の胎盤幹細胞の
細胞表面マーカー、分子マーカー、及び/もしくは遺伝子マーカーのいずれかを保有する
ことができる。ある実施態様において、対応する未修飾の胎盤幹細胞は、増強胎盤幹細胞
(すなわち、本明細書に記載の方法に従って修飾される胎盤幹細胞)と比較したとき、対応
する未修飾の胎盤幹細胞が本明細書に記載の方法に従って修飾されていないという事実を
除けば、物理的構造、形態的構造、及び/又は遺伝子構造に関して、増強胎盤幹細胞と同
じである。
【0006】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って修飾される胎盤幹細胞は、それ
らが、所与の条件に暴露されたとき、同じ条件に暴露された対応する未修飾の胎盤幹細胞
と比較して、(i)カスパーゼ3/7活性の減少、(ii)ミトコンドリア膜電位の増加、及び/又
は(iii)代謝活性の増加のうちの1つ又は複数を示す場合、増強胎盤幹細胞とみなされる。
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞は、所与の条件に暴露されたとき、同じ条件
に暴露された対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較して、カスパーゼ3/7活性の減少、ミト
コンドリア膜電位の増加、及び代謝活性の増加を示す。カスパーゼ3/7活性をアッセイす
るための方法及びキットは、当技術分野で公知であり、例えば、Caspase-Glo(登録商標)
3/7アッセイシステム(Promega)がある。また当技術分野で公知であるのは、細胞代謝活性
を測定するためのアッセイ及びキット(例えば、Cell Titer Gloキット(Promega)、ATP測
定キット(Life Technologies)、及びAmplex(登録商標) Redグルタミン酸/グルタミン酸オ
キシダーゼアッセイキット(Life Technologies))並びにミトコンドリア膜電位を測定する
ためのアッセイ及びキット(例えば、TMRE-ミトコンドリア膜電位アッセイキット(Abcam))
である。そのような方法及びキットも本明細書に記載されている(下記の第6.1.1.1.3節及
び第6.1.1.2節を参照されたい)。
【0007】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って修飾される胎盤幹細胞は、それ
らが、胎盤幹細胞の細胞死を引き起こすことが知られている条件、例えば、血清(例えば
、ラット血清)中での胎盤幹細胞の培養に暴露されたときに休止状態に入る場合、増強胎
盤幹細胞とみなされる。
【0008】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を作製する方法であ
って、胎盤幹細胞の生存と関連する1以上の遺伝子が阻害される(例えば、修飾されていな
い、例えば、オリゴマー又はポリマー分子と接触させられていない胎盤幹細胞と比較して
、下方調節される)ように、胎盤幹細胞の集団を有効量の該分子と接触させることを含む
、方法である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を作
製する方法であって、胎盤幹細胞の生存と関連する1以上の遺伝子が上方調節される(例え
ば、修飾されていない、例えば、オリゴマー又はポリマー分子と接触させられていない胎
盤幹細胞と比較して、上方調節される)ように、胎盤幹細胞の集団を有効量の該分子と接
触させることを含む、方法である。ある実施態様において、該オリゴマー又はポリマー分
子は、調節性RNA分子などの核酸分子である。具体的な実施態様において、該調節性RNA分
子は、マイクロRNA、マイクロRNA模倣物、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、ア
ンチセンスDNA、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA適合shRNA(shRNAmir)、又はこれ
らの任意の組合せである。
【0009】
ある実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるオリゴマー又はポリマー分子、例えば、調節性RNA分子は、準最適条件下での胎盤
幹細胞生存の強化と関連することが本明細書で特定された1以上の胎盤幹細胞遺伝子(本明
細書において「生存関連遺伝子」と呼ばれる)を標的にする。例えば、該オリゴマー又は
ポリマー分子、例えば、調節性RNA分子は、該1以上の胎盤幹細胞遺伝子の核酸又はアミノ
酸配列に相補的であるRNA又はDNA配列を有する結果として、該1以上の胎盤幹細胞遺伝子
を標的にする。ある実施態様において、胎盤幹細胞におけるそのような生存関連遺伝子の
阻害又は上方調節は、胎盤幹細胞が、それがなければ胎盤幹細胞の死を引き起こす1以上
の条件の存在下で生存する能力の増大をもたらす。ある実施態様において、胎盤幹細胞に
おけるそのような生存関連遺伝子の阻害又は上方調節は、胎盤幹細胞が、それがなければ
胎盤幹細胞の死を引き起こす1以上の条件の存在下で、同じ条件の存在下の対応する未修
飾の胎盤幹細胞よりも長い期間生存する能力をもたらす。ある実施態様において、胎盤幹
細胞におけるそのような生存関連遺伝子の阻害又は上方調節は、所与の条件に暴露された
とき、同じ条件に暴露された対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較して、胎盤幹細胞の(i)
カスパーゼ3/7活性の減少、(ii)ミトコンドリア膜電位の増加、及び/又は(iii)代謝活性
の増加をもたらす。ある実施態様において、胎盤幹細胞におけるそのような生存関連遺伝
子の阻害又は上方調節は、胎盤幹細胞の細胞死を引き起こすことが知られている1つ又は
複数の条件に暴露されたとき、胎盤幹細胞の休止状態への進入をもたらす。具体的な実施
態様において、増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で標的にされる該
1以上の生存関連遺伝子は、下記の表1に記載の遺伝子のうちの1つ又は複数を含む:
【表1】
【0010】
一実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れる調節性RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)である。具体的な実施態様において、該miRNA
は、上の表1に記載の遺伝子のうちの1つ又は複数(例えば、組合せ)を標的にする。別の具
体的な実施態様において、該miRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少なくとも2つ、
少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体的な実施態
様において、該miRNAは二本鎖であり、ここで、該miRNAの一方の鎖は、上の表1で特定さ
れる遺伝子(表中に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)のうちの
1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有す
る。
【0011】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製
するために使用されるマイクロRNAには、下の表2に記載のマイクロRNAが含まれる。別の
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するた
めに、下の表2に記載のマイクロRNAの組合せ(2つ以上)が使用される。別の具体的な実施
態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するために使用され
るマイクロRNAは、miR-16、miR-29a、miR-424、miR-4305、miR-3142、又はmiR-613である
。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製
するために使用されるマイクロRNAは、miR-16、miR-29a、miR-424、miR-4305、miR-3142
、及び/又はmiR-613のうちの2つ以上の組合せである。別の具体的な実施態様において、
本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するために使用されるマイクロRNA
は、miR-16である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強
胎盤幹細胞を作製するために使用されるマイクロRNAは、miR-29aである。別の具体的な実
施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するために使用さ
れるマイクロRNAは、miR-424である。
【表2】
【0012】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
される調節性RNA分子は、マイクロRNA模倣物(miRNA模倣物)である。具体的な実施態様に
おいて、該miRNA模倣物は、上の表1に記載の遺伝子のうちの1つ又複数(例えば、組合せ)
を標的にする。別の具体的な実施態様において、該miRNA模倣物は、上の表2に記載のマイ
クロRNAのうちの1つ又は複数に基づく。
【0013】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0014】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND
3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AK
T3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合
せ)を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本
明細書に記載の方法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、以下の胎盤幹細胞生存関連遺
伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、CDC25A、WEE1、CHEK1、及び/又はMYBのうちの2
つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるmiRNA又はm
iRNA模倣物は、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、及
び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。
【0015】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
される調節性RNA分子は、低分子干渉RNA(siRNA)である。具体的な実施態様において、該s
iRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にする。別の具体的な実施態
様において、該siRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ
、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体的な実施態様において、該
siRNAは二本鎖であり、ここで、該siRNAの一方の鎖は、上の表1で特定される遺伝子(表中
に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)のうちの1つの配列と少な
くとも約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0016】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の具体的な実
施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsi
RNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝
子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための
本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の
方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様にお
いて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製する
ための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標
的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に
記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、
胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎
盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存
関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0017】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるsiRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB
、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるsiRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、CDC25A、WEE1、CHEK1、及び/又はMYBのうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すな
わち、組合せ)を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:
MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多
く(すなわち、組合せ)を標的にする。
【0018】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
される調節性RNA分子は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。具体的な実施態様において、
該shRNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にする。別の具
体的な実施態様において、該shRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少なくとも2つ、
少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体的な実施態
様において、該shRNAは、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つの配列(表中に提供され
ている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少なくとも約70%、80%、90%、9
5%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0019】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の具体的な実
施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsh
RNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝
子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための
本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の
方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様にお
いて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製する
ための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標
的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に
記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、
胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎
盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存
関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0020】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるshRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB
、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるshRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、CDC25A、WEE1、CHEK1、及び/又はMYBのうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すな
わち、組合せ)を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:
MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多
く(すなわち、組合せ)を標的にする。
【0021】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
される調節性RNA分子は、アンチセンスRNAである。具体的な実施態様において、該アンチ
センスRNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にする。別の
具体的な実施態様において、該アンチセンスRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少な
くとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体
的な実施態様において、該アンチセンスRNAは、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つ
の配列(表中に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少なくとも
約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0022】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施
態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアン
チセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセン
スRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別の具体的な実施態様において
、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA
は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは
、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強
胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生
存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製
するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子BCL2を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するた
めの本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子P
PMIDを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本
明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的に
する。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載
の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0023】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CC
NE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、V
EGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1
、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、CDC25A、WEE1、CHEK1、及び/又はMYBのうちの2つ、3つ、
又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。別の具体的な実施態様において、増
強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、
以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、及び/又はITGA2の
うちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。
【0024】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるオリゴマー又ポリマー分子は、アンチセンスDNAである。具体的な実施態様におい
て、該アンチセンスDNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的
にする。別の具体的な実施態様において、該アンチセンスDNAは、上の表1に記載の遺伝子
のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にす
る。別の具体的な実施態様において、該アンチセンスDNAは、上の表1で特定される遺伝子
のうちの1つの配列(表中に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)
と少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0025】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施
態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアン
チセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセン
スDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別の具体的な実施態様において
、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNA
は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは
、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強
胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生
存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製
するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子BCL2を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するた
めの本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子P
PMIDを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本
明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的に
する。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載
の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0026】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスDNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CC
NE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、V
EGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1
、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、CDC25A、WEE1、CHEK1、及び/又はMYBのうちの2つ、3つ、
又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。別の具体的な実施態様において、増
強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、
以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、及び/又はITGA2の
うちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする。
【0027】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の方法に従って産生さ
れる単離された増強胎盤幹細胞及びその組成物、例えば、胎盤幹細胞が、対応する未修飾
の胎盤幹細胞と比較して、特定の条件下でより長い時間生存するように、該胎盤幹細胞を
有効量の1以上のオリゴマー又はポリマー分子(例えば、調節性RNA分子)と接触させること
により修飾されている胎盤幹細胞である。そのような増強胎盤幹細胞は、例えば、対応す
る未修飾の胎盤幹細胞(例えば、有効量のオリゴマー又はポリマー分子(例えば、調節性RN
A分子)と接触させられていない対応する胎盤幹細胞)と比較して、細胞死をもたらす条件
下で(例えば、その中の成分が該細胞に害を与え得る環境、例えば、インビボで)生存の増
加を示す。ある実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、対応する未
修飾の胎盤幹細胞と比較して、血清(例えば、ヒトもしくはラット血清)、補体、抗体、他
の細胞(例えば、免疫系の細胞)、又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条
件の存在下で、生存の増加を示す。
【0028】
ある実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、所与の条件に暴露さ
れたとき、同じ条件に暴露された対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)カスパー
ゼ3/7活性の減少、(ii)ミトコンドリア膜電位の増加、及び/又は(iii)代謝活性の増加の
うちの1つ又は複数を示す。具体的な実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤
幹細胞は、所与の条件に暴露されたとき、同じ条件に暴露された対応する未修飾の胎盤幹
細胞と比較して、カスパーゼ3/7活性の減少及びミトコンドリア膜電位の増加及び代謝活
性の増加を示す。
【0029】
ある実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、胎盤幹細胞の細胞死
を引き起こすことが知られている条件、例えば、血清(例えば、ラット血清)中での胎盤幹
細胞の培養に暴露したとき、休止状態に入る。
【0030】
一実施態様において、本明細書に提供される単離された増強胎盤幹細胞は、少なくとも
1つの生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発
現と比較して減少したレベルで発現する。具体的な実施態様において、本明細書に提供さ
れるのは、単離された増強胎盤幹細胞又はその集団であり、ここで、該単離された増強胎
盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子からの少なくとも1つの生存関連遺伝子を、対応する未修
飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現する
。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞又はその集団であり、ここで、該単離された増強胎盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子か
らの複数の生存関連遺伝子(例えば、組合せ)を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同
じ生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現し、例えば、該単離された増強
胎盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子からの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10
、又はそれより多くの遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝
子の発現と比較して減少したレベルで発現する。
【0031】
別の実施態様において、本明細書に提供される単離された増強胎盤幹細胞は、少なくと
も1つの生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の
発現と比較して増加したレベルで発現する。具体的な実施態様において、本明細書に提供
されるのは、単離された増強胎盤幹細胞又はその集団であり、ここで、該単離された増強
胎盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子からの少なくとも1つの生存関連遺伝子を、対応する未
修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加したレベルで発現す
る。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹
細胞又はその集団であり、ここで、該単離された増強胎盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子
からの複数の生存関連遺伝子(例えば、組合せ)を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における
同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加したレベルで発現し、例えば、該単離された増
強胎盤幹細胞は、表1に記載の遺伝子からの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、1
0、又はそれより多くの遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺
伝子の発現と比較して増加したレベルで発現する。
【0032】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CCND1を、対応する未修飾の胎
盤幹細胞における生存関連遺伝子CCND1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別
の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞で
あり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CCND3を、対応する未修飾の胎盤幹
細胞における生存関連遺伝子CCND3の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具
体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり
、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CCNE1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞
における生存関連遺伝子CCNE1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的
な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、こ
こで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CCNFを、対応する未修飾の胎盤幹細胞におけ
る生存関連遺伝子CCNFの発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態
様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該
増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CDK6を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関
連遺伝子CDK6の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様におい
て、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤
幹細胞は、生存関連遺伝子PPP2R5Cを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺
伝子PPP2R5Cの発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様におい
て、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤
幹細胞は、生存関連遺伝子CDC25Aを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝
子CDC25Aの発現と比較して減少したレベルで発現する。
【0033】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子WEE1を、対応する未修飾の胎盤
幹細胞における生存関連遺伝子WEE1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具
体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり
、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子CHEK1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞
における生存関連遺伝子CHEK1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的
な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、こ
こで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子MCL1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞におけ
る生存関連遺伝子MCL1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態
様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該
増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子BCL2を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関
連遺伝子BCL2の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様におい
て、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤
幹細胞は、生存関連遺伝子PPMIDを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝
子PPMIDの発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、
本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細
胞は、生存関連遺伝子HMGA1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子HMG
A1の発現と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細
書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、
生存関連遺伝子AKT3を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子AKT3の発現
と比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供
されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連
遺伝子VEGFAを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子VEGFAの発現と比較
して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される
のは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子
MYBを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子MYBの発現と比較して減少し
たレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離
された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子ITGA2を、
対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子ITGA2の発現と比較して減少したレ
ベルで発現する。
【0034】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子PPP2R5Cを、対応する未修飾の
胎盤幹細胞における生存関連遺伝子PPP2R5Cの発現と比較して増加したレベルで発現する
。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子MCL1を、対応する未修飾の胎盤
幹細胞における生存関連遺伝子MCL1の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具
体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり
、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子PPMIDを、対応する未修飾の胎盤幹細胞
における生存関連遺伝子PPMIDの発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的
な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、こ
こで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子HMGA1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞にお
ける生存関連遺伝子HMGA1の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実
施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで
、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子AKT3を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生
存関連遺伝子AKT3の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様に
おいて、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強
胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子VEGFAを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連
遺伝子VEGFAの発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様におい
て、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤
幹細胞は、生存関連遺伝子ITGA2を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝
子ITGA2の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、
本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細
胞は、生存関連遺伝子CCND1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子CCN
D1の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細
書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、
生存関連遺伝子CCND3を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子CCND3の発
現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提
供されるのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関
連遺伝子CCNE1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子CCNE1の発現と比
較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供され
るのは、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝
子CDC25Aを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子CDC25Aの発現と比較し
て増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるの
は、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺伝子WE
E1を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における生存関連遺伝子WEE1の発現と比較して増加し
たレベルで発現する。
【0035】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND
3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AK
T3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、
組合せ)を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して
減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは
、単離された増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、(i)以下の胎盤幹細
胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、
MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ
、又はそれより多くを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現
と比較して減少したレベルで発現し;並びに(ii)表1に列挙したの少なくとも1つのさらな
る生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と
比較して増加又は減少したレベルで発現する。さらに本明細書に提供されるのは、そのよ
うな増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団及びそのような増強胎盤幹細胞を含む組成物である
。
【0036】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤幹細
胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存
関連遺伝子の発現と比較して増加したレベルで、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1
、CCND3、CCNE1、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、PPP2R5C
、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を発現
する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離された増強胎盤
幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、(i)以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND
1、CCND3、CCNE1、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、PPP2R5C
、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くを、対応する未修飾の胎盤
幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加したレベルで発現し;かつ(ii)
表1に列挙した少なくとも1つのさらなる生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞
における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加又は減少したレベルで発現する。さら
に本明細書に提供されるのは、そのような増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団及びそのよう
な増強胎盤幹細胞を含む組成物である。
【0037】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD34-、CD10
5+、及びCD200+である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細
胞は、CD200を発現し、かつHLA-Gを発現しないか;又はCD73、CD105、及びCD200を発現す
るか;又はCD200及びOCT-4を発現するか;又はCD73及びCD105を発現し、かつHLA-Gを発現し
ないか;又はCD73及びCD105を発現し、かつ該幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の
形成を可能にする条件下で培養したとき、該集団における1以上の胚様体様体の形成を促
進するか;又はOCT-4を発現し、かつ該幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を
可能にする条件下で培養したとき、該集団における1以上の胚様体様体の形成を促進する
。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞はさらに、CD90+及
びCD45-である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞はさ
らに、CD80-及びCD86-である。また他の実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹
細胞は、CD44、CD90、HLA-A、HLA-B、HLA-C、もしくはABC-pのうちの1つもしくは複数を
発現し、及び/又はCD45、CD117、CD133、KDR、CD80、CD86、HLA-DR、SSEA3、SSEA4、もし
くはCD38のうちの1つもしくは複数を発現しない。ある実施態様において、本明細書に記
載の増強胎盤幹細胞は、例えば、混合白血球反応アッセイ、退縮アッセイ、又はビーズT
細胞アッセイによって決定可能な、対応する未修飾の胎盤幹細胞(例えば、有効量のオリ
ゴマー又はポリマー分子(例えば、調節性RNA分子)と接触させられていない胎盤細胞)より
も検出可能な程度に大きい程度まで、免疫細胞の活性を抑制し、例えば、T細胞の増殖を
抑制する。
【0038】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、免疫応答を調節する、例えば、対象、
例えば、ヒト対象の免疫応答を調節するか、又は免疫応答をインビトロで調節する方法で
あって、免疫細胞を、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞又はその組成物と接触させること
を含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞
は、同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞と同じ程度まで、免疫応答を調節することがで
きる。別の具体的な実施態様において、免疫応答を調節する方法で使用される増強胎盤幹
細胞は、該胎盤幹細胞を、本明細書に記載の有効量の1以上のオリゴマー又はポリマー分
子(例えば、調節性RNA分子)と接触させることにより修飾されたものである。細胞(例えば
、増強胎盤幹細胞を含む、胎盤幹細胞)が免疫応答を調節する能力を測定するためのアッ
セイは、当技術分野で公知であり(例えば、その開示が引用により完全に本明細書中に組
み込まれる米国特許第7,682,803号を参照のこと)、かつ本明細書に記載されており、例え
ば、混合リンパ球反応、退縮アッセイなどがある。
【0039】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、血管新生を促進する、例えば、対象、
例えば、ヒト対象における血管新生を促進する方法であって、該対象に、本明細書に記載
の増強胎盤幹細胞又はその組成物を投与することを含む、方法である。具体的な実施態様
において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、同等量の対応する未修飾の胎盤幹細
胞と同じ程度まで、血管新生を促進することができる。別の具体的な実施態様において、
血管新生を促進する方法で使用される増強胎盤幹細胞は、該胎盤幹細胞を、本明細書に記
載の有効量の1以上のオリゴマー又はポリマー分子(例えば、調節性RNA分子)と接触させる
ことにより修飾されたものである。細胞(例えば、増強胎盤幹細胞を含む、胎盤幹細胞)が
血管新生を促進する能力を測定するためのアッセイは、当技術分野で公知であり(例えば
、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2011/02501
82号参照)、例えば、細胞が内皮細胞による管形成を促進する能力のアッセイ、細胞が内
皮細胞の遊走及び/又は増殖を促進する能力のアッセイ、並びに細胞が血管新生を促進す
る因子を分泌する能力のアッセイがある。
【0040】
(3.1 定義)
本明細書で使用されるように、胎盤幹細胞、例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞
に言及する場合の「量」という用語は、胎盤幹細胞(例えば、増強胎盤幹細胞)の特定の数
を意味する。
【0041】
本明細書で使用されるように、「由来した」という用語は、単離されているか、又は別
の形で純化されていることを意味する。例えば、胎盤由来接着細胞は、胎盤から単離され
ている。「由来した」という用語は、組織、例えば、胎盤から直接単離された細胞、及び
初代単離株から培養又は拡大された細胞から培養される細胞を包含する。
【0042】
本明細書で使用されるように、「免疫局在化」は、免疫タンパク質、例えば、抗体又は
その断片を、例えば、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、磁気細胞選別、イン
サイチュハイブリダイゼーション、免疫組織化学などで用いる、化合物、例えば、細胞マ
ーカーの検出を意味する。
【0043】
本明細書で使用されるように、「SH2」という用語は、マーカーCD105上のエピトープに
結合する抗体を指す。したがって、SH2+と称される細胞は、CD105+である。
【0044】
本明細書で使用されるように、「SH3」及び「SH4」という用語は、マーカーCD73上に存
在するエピトープに結合する抗体を指す。したがって、SH3+及び/又はSH4+と称される細
胞は、CD73+である。
【0045】
本明細書で使用されるように、幹細胞は、該幹細胞が天然に関連している他の細胞の少
なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は少なくとも99%が、例えば、該幹細
胞の回収及び/又は培養時に、該幹細胞から除去される場合、「単離された」ものとなる
。「単離された」細胞の集団は、該細胞の集団が由来する組織、例えば、胎盤の他の細胞
から実質的に分離されている細胞の集団を意味する。いくつかの実施態様において、例え
ば、幹細胞の集団は、該幹細胞の集団が天然に関連している細胞の少なくとも50%、60%
、70%、80%、90%、95%、又は少なくとも99%が、例えば、該幹細胞の集団の回収及び
/又は培養時に、該幹細胞の集団から除去される場合、「単離された」ものとなる。
【0046】
本明細書で使用されるように、「胎盤幹細胞」という用語は、初代培養後の継代数を問
わず、組織培養基材(例えば、組織培養プラスチック又はフィブロネクチンコーティング
組織培養プレート)に接着する、哺乳動物胎盤に由来する、例えば、哺乳動物胎盤から単
離される、幹細胞又は前駆細胞を指す。しかしながら、本明細書で使用される「胎盤幹細
胞」という用語は、これらの細胞が当業者によって理解されている通り、栄養膜も、細胞
栄養芽層も、胚性生殖細胞も、胚性幹細胞も指さない。「胎盤幹細胞」及び「胎盤由来幹
細胞」という用語は、互換的に使用することができる。本明細書に別途注記しない限り、
「胎盤」という用語には、臍帯が含まれる。本明細書に開示される胎盤幹細胞は、ある実
施態様において、インビトロで多能性であるか(すなわち、該細胞は、分化条件下、イン
ビトロで分化する)、インビボで多能性であるか(すなわち、該細胞はインビボで分化する
)、又はその両方である。
【0047】
本明細書で使用されるように、細胞は、特定のマーカーが検出可能であるとき、そのマ
ーカーについて「陽性」である。例えば、胎盤幹細胞は、例えば、CD73について陽性であ
るが、それは、CD73が、胎盤幹細胞上において、(例えば、任意の所与のアッセイのアイ
ソタイプ対照又は実験上の陰性対照と比較したときに)バックグラウンドを検出可能な程
度に上回る量で検出可能であるからである。細胞はまた、あるマーカーを用いて、該細胞
を少なくとも1つの他の細胞型と区別することができるか、又は存在するかもしくは該細
胞によって発現される場合、あるマーカーを用いて、該細胞を選択もしくは単離すること
ができるとき、そのマーカーについて陽性である。
【0048】
本明細書で使用されるように、「幹細胞」という用語は、幹細胞の少なくとも1つの特
性、例えば、1以上のタイプの幹細胞と関連するマーカー又は遺伝子発現プロファイル;培
養下で少なくとも10~40回複製する能力;多能性、例えば、インビトロ、インビボ、又は
その両方のいずれかで、三胚葉細胞のうちの1つ又は複数の細胞に分化する能力;成体(す
なわち、分化した)細胞の特徴の欠如などを保持する細胞を指す。
【0049】
本明細書で使用されるように、「免疫調節」及び「免疫調節性」は、免疫応答の検出可
能な変化を引き起こすこと又は該変化を引き起こす能力を有すること、及び免疫応答の検
出可能な変化を引き起こす能力を意味する。
【0050】
本明細書で使用されるように、「免疫抑制」及び「免疫抑制性」は、免疫応答の検出可
能な低下を引き起こすこと又は該低下を引き起こす能力を有すること、及び免疫応答の検
出可能な抑制を引き起こす能力を意味する。
【0051】
本明細書で使用されるように、「オリゴマー又はポリマー分子」という用語は、(例え
ば、対象となる遺伝子、RNA、又はタンパク質の領域に結合又はハイブリダイズすること
により)対象となる遺伝子、RNA、又はタンパク質を標的にすることができる生体分子を指
す。対象となる遺伝子、RNA、又はタンパク質は、オリゴマー又はポリマー分子が、該対
象となる遺伝子、RNA、又はタンパク質の核酸又はアミノ酸配列に相補的であるという事
実により、オリゴマー又はポリマー分子によって「標的にされる」(したがって、対象と
なる遺伝子、RNA、又はタンパク質は、オリゴマー又はポリマー分子の「標的」である)。
オリゴマー及びポリマー分子には、例えば、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、
オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド模倣体、オリゴペプチド又はポリペプチ
ド、及びこれらの任意の組合せ(例えば、キメラ組合せ)が含まれる。したがって、これら
の化合物は、一本鎖、二本鎖、環状、分岐状であるか、又はヘアピンを有するものである
ことができ、かつ内部又は末端のバルジ又はループなどの構造エレメントを含むことがで
きる。オリゴマー又はポリマー性の二本鎖分子は、二本鎖化合物を形成するようにハイブ
リダイズされる二本鎖、又はハイブリダイゼーションと完全もしくは部分二本鎖分子の形
成とを可能にするのに十分な自己相補性を有する一本鎖であることができる。
【0052】
本明細書で使用されるように、「調節性RNA分子」という用語は、選択可能な標的(複数
可)(例えば、標的遺伝子、RNA、又はタンパク質)の発現又は活性を直接的又は間接的に調
節する(例えば、上方調節又は下方調節する)RNA分子を指す。ある実施態様において、「
調節性RNA分子」は、宿主細胞における選択可能な標的の発現を調節する、siRNA、マイク
ロRNA(miRNA)、マイクロRNA模倣物(miRNA模倣物)、アンチセンスRNA、shRNA、shRNAmir、
又はこれらのハイブリッドもしくは組合せである。ある実施態様において、本明細書に提
供される調節性RNA分子は、約1~約100、約8~約80、10~50、13~80、13~50、13~30、
13~24、18~22、18~24、19~23、20~80、20~50、20~30、又は20~24個のヌクレオ塩
基(すなわち、約1~約100個の連結したヌクレオシド)を含む。
【0053】
本明細書で使用されるように、「生存の増加」という語句は、対応する未修飾の胎盤幹
細胞と比較した増強胎盤幹細胞の生存を説明する場合、(例えば、アポトーシスによる)未
修飾の胎盤幹細胞の死を引き起こす条件下で、増強胎盤幹細胞が生存し続ける能力を指す
。ある実施態様において、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べた、本明細書に記載の増強
胎盤幹細胞の生存の増加は、該増強胎盤幹細胞が、所与の条件下で培養されたとき、同じ
条件下で培養された同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べて、少なくとも1.5倍、2
倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍の生存時間の
増加を示す能力を指す。ある実施態様において、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べた、
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞の生存の増加は、該増強胎盤幹細胞が、所与の条件下で
培養されたとき、同じ条件下で培養された同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べて
、少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5
倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、又は9倍~10倍の生存時間の増加を示す
能力を指す。増強胎盤幹細胞及び未修飾の胎盤幹細胞の生存は、当技術分野で公知の方法
、例えば、トリパンブルー排出アッセイ、二酢酸フルオレセイン取込みアッセイ、ヨウ化
プロピジウム取込みアッセイ;チミジン取込みアッセイ、及びMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾ
ール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて評価することが
できる。ある実施態様において、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べた、本明細書に記載
の増強胎盤幹細胞の生存の増加は、所与の条件(例えば、細胞死を引き起こす条件)下で培
養されたとき、同じ条件下で培養された対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較して、該胎盤
幹細胞における(i)カスパーゼ3/7活性の減少、(ii)ミトコンドリア膜電位の増加、及び/
又は(iii)代謝活性の増加のうちの1つ又複数を指す。ある実施態様において、増強胎盤幹
細胞は、所与の条件(例えば、細胞死を引き起こす条件)下で培養されたとき、同じ条件下
で培養された対応する未修飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍
、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍のカスパーゼ3/7活
性の減少;(ii)少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍
、8倍、9倍、もしくは10倍のミトコンドリア膜電位の増加;及び/又は(iii)少なくとも1.5
倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍の
代謝活性の増加を示す。ある実施態様において、増強胎盤幹細胞は、所与の条件(例えば
、細胞死を引き起こす条件)下で培養されたとき、同じ条件下で培養された対応する未修
飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍
~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、もしくは9
倍~10倍のカスパーゼ3/7活性の減少;(ii)少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3
.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、
もしくは9倍~10倍のミトコンドリア膜電位の増加;及び/又は(iii)少なくとも1.5倍~2.5
倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍
、7倍~8倍、8倍~9倍、もしくは9倍~10倍の代謝活性の増加を示す。カスパーゼ3/7活性
、ミトコンドリア膜電位、及び代謝活性は、例えば、下の第6.1.1.1.3節及び第6.1.1.2節
に記載されているような、当技術分野で公知の方法を用いて評価することができる。
【0054】
本明細書で使用されるように、「減少したレベル」という語句は、対応する未修飾の胎
盤幹細胞における同じの遺伝子の発現と比較した増強胎盤幹細胞における所与の遺伝子の
発現のレベルに言及する場合、増強胎盤幹細胞における遺伝子の発現が下方調節又は阻害
され、その結果、例えば、該遺伝子によって産生されるmRNA転写物及び/又は該遺伝子の
発現によって生じるタンパク質の減少がもたらされることを意味する。本明細書で使用さ
れるように、「増加したレベル」という語句は、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同
じの遺伝子の発現と比較した増強胎盤幹細胞における所与の遺伝子の発現のレベルに言及
する場合、増強胎盤幹細胞における遺伝子の発現が上方調節され、その結果、例えば、該
遺伝子によって産生されるmRNA転写物の量の増加及び/又は該遺伝子の発現によって生じ
るタンパク質の量の増加がもたらされることを意味する。所与の遺伝子が減少したレベル
又は増加したレベルで発現されているかどうかの決定は、細胞によるタンパク質産生又は
核酸産生の検出のための当技術分野で認められている任意の方法、例えば、核酸に基づく
方法、例えば、ノーザンブロット解析、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、リア
ルタイムPCR、定量的PCRなどによって達成することができる。タンパク質の発現は、対象
となるタンパク質に結合する抗体を用いて、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、サン
ドイッチアッセイなどで評価することができる。ある実施態様において、増強胎盤幹細胞
における遺伝子(例えば、生存関連遺伝子)は、その発現が、対応する未修飾の胎盤幹細胞
における遺伝子の発現と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.
5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍減少している場合、減少したレベルで発現され
る。ある実施態様において、増強胎盤幹細胞における遺伝子(例えば、生存関連遺伝子)は
、その発現が、対応する未修飾の胎盤幹細胞における遺伝子の発現と比較して、少なくと
も1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6
倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、又は9倍~10倍減少している場合、減少したレベル
で発現される。ある実施態様において、増強胎盤幹細胞における遺伝子(例えば、生存関
連遺伝子)は、その発現が、対応する未修飾の胎盤幹細胞における遺伝子の発現と比較し
て、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍
、又は10倍増加している場合、増加したレベルで発現される。ある実施態様において、増
強胎盤幹細胞における遺伝子(例えば、生存関連遺伝子)は、その発現が、対応する未修飾
の胎盤幹細胞における遺伝子の発現と比較して、少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.
5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍
~9倍、又は9倍~10倍増加している場合、増加したレベルで発現される。
【0055】
本明細書で使用されるように、胎盤幹細胞をオリゴマー又はポリマー分子と接触させる
文脈での「有効量」という用語は、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産生するのに十分
なオリゴマー又はポリマー分子の量を指す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
(4.図面の簡単な説明)
【
図1】陰性対照をトランスフェクトした又はカスパーゼ阻害剤の存在下で培養した胎盤幹細胞のカスパーゼ3/7活性と比較したときの、様々なマイクロRNAをトランスフェクトした胎盤幹細胞のカスパーゼ3/7活性を示す。
【0057】
【
図2】陰性対照をトランスフェクトした胎盤幹細胞の代謝活性と比較したときの、様々なマイクロRNAをトランスフェクトした胎盤幹細胞の代謝活性を示す。
【0058】
【
図3】陰性対照をトランスフェクトした胎盤幹細胞のミトコンドリア膜電位と比較したときの、様々なマイクロRNAをトランスフェクトした胎盤幹細胞のミトコンドリア膜電位を示す。
【0059】
【
図4】胎盤幹細胞に陰性対照をトランスフェクトしたときに観察されたレベルと比較したときの、様々なmiRをトランスフェクトした胎盤幹細胞におけるmiR-29A(
図4A)、miR-16(
図4B)、及びmiR-424(
図4C)の発現レベルを示す。
【0060】
【
図5】胎盤幹細胞の細胞周期分布に対するmiR-29A、miR-16、及びmiR-424トランスフェクションの効果を示す。(
図5A)G0/G1期の変化;(
図5B)S期の変化;(
図5C)G2/M期の変化。
【0061】
【
図6】サイクリンD3(
図6A)及びサイクリンE(
図6B)の胎盤幹細胞の発現に対するmiR-29A、miR-16、及びmiR-424の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
(5.詳細な説明)
(5.1 増強胎盤幹細胞の産生)
一態様において、本明細書に提供されるのは、胎盤幹細胞が、対応する未修飾の胎盤幹
細胞と比較して、特定の条件下でより長い期間生存するように、例えば、胎盤幹細胞を、
細胞死をもたらす条件に対して抵抗性にするように(すなわち、増強胎盤幹細胞を作製す
るように)胎盤幹細胞を修飾する方法である。そのような方法は、胎盤幹細胞における生
存と関連することが本明細書で特定された1以上の遺伝子(「生存関連遺伝子」)が阻害さ
れるように、すなわち、有効量の1以上のオリゴマー又はポリマー分子と接触させた胎盤
幹細胞における該遺伝子の発現が、対応する未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の発現
と比較して減少するように、該胎盤幹細胞を該オリゴマー又はポリマー分子と接触させる
ことを含む。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又は
ポリマー分子は、ヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA分子)、ヌクレオシド、ヌクレオチド
類似体、ヌクレオチド模倣体、ポリペプチド、ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド模倣体
、及びこれらの任意の組合せ(例えば、キメラ組合せ)を含む。具体的な実施態様において
、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法は、該胎盤幹細胞を、2以上の
ヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNA分子)、ヌクレオシド、ヌクレオチド類似体、ヌク
レオチド模倣体、ポリペプチド、ヌクレオチド類似体、及び/又はヌクレオチド模倣体の
組合せと接触させることを含む。
【0063】
一実施態様において、ヌクレオチド類似体は、RNA類似体、例えば、基、例えば、-O-CH
3、-O-CH2-CH2-O-CH3、-O-CH2-CH2-CH2-NH2、-O-CH2-CH2-CH2-OH、又は-Fとの置換によっ
て、例えば、2'-OH基で修飾されているRNA類似体である。
【0064】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又はポリマー分
子は、糖、塩基、又はヌクレオシド間連結中に1以上の修飾(例えば、化学的修飾)を含む
。本明細書で使用されるように、「ヌクレオシド間連結基」という用語は、例えば、RNA
ユニット間の、2つのヌクレオチドを共有結合的に共役させることができる基を指す。例
としては、リン酸エステル、ホスホジエステル基、及びホスホロチオエート基が挙げられ
る。一実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又はポリマー分
子は、少なくとも1つのリン酸エステルヌクレオシド間連結基を含む。一実施態様におい
て、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又はポリマー分子は、少なくとも1つ
のホスホジエステルヌクレオシド間連結基を含む。
【0065】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又はポリマー分
子は、一本鎖オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。ある実施態様において、
本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー又はポリマー分子は、二本鎖オリゴヌクレ
オチド又はポリヌクレオチドである。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使
用されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、糖、塩基、又はヌクレオシド間連
結中に1以上の修飾(例えば、化学的修飾)を含む。
【0066】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー分子は、調
節性RNA分子である。ある実施態様において、該調節性RNA分子は、マイクロRNA、低分子
干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、miR模倣物、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA
適合shRNA(shRNAmir)、又はこれらの任意の組合せである。
【0067】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるオリゴマー分子は
、アンチセンスDNA分子である。
【0068】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法は、胎盤幹細胞を、マイクロRN
A、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、miR模倣物、短鎖ヘアピ
ンRNA(shRNA)、及び/又はマイクロRNA適合shRNA(shRNAmir)の組合せと接触させることを
含む。
【0069】
(5.1.1 マイクロRNA)
ある実施態様において、増強胎盤幹細胞の産生のための本明細書に提供される方法は、
例えば、修飾されていない、例えば、有効量のマイクロRNA又はマイクロRNA模倣物と接触
させられていない胎盤幹細胞と比較して、胎盤幹細胞で通常細胞死を引き起こす条件で生
存の増加を示す能力が付与されるように、該胎盤幹細胞を該マイクロRNA又はマイクロRNA
模倣物と接触させることを含む。本明細書で使用されるように、「マイクロRNA」、「miR
NA」、又は「miR」という用語は、限定されないが、成熟一本鎖miRNA、前駆体miRNA(プレ
-miR)、及びこれらの変異体を含む、短鎖リボ核酸(RNA)分子を指す。いくつかの実施態様
において、miR阻害剤は、1以上の内在性miRの阻害によって、標的遺伝子を下方調節する(
例えば、阻害する)。一実施態様において、マイクロRNAは、天然に存在するものである。
ある実施態様において、マイクロRNAは、標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)上の相補的
配列に結合して、翻訳抑制及び遺伝子サイレンシングをもたらす転写後調節因子である。
ある実施態様において、単一の前駆体miRNAは、複数の成熟miRNA配列を含む。他の実施態
様において、多数の前駆体miRNAは、同じ成熟配列を含む。通常、前駆体miRNAは、ヘアピ
ンループ構造として存在し、各々のヘアピンには、効率的なプロセッシングに必要な配列
が隣接している。したがって、該前駆体は、miRNAの発現をもたらす一方の鎖(「アーム」
)と反対の鎖(「アーム」)とを保有する。いくつかの実施態様において、相対存在量によ
って、主に発現されるmiRNAがどちらであるかが明確に示される場合、「マイクロRNA」、
「miRNA」、又は「miR」という用語は、主要な生成物を指し、「マイクロRNA*」、「miRN
A*」、又は「miR*」という用語は、前駆体の反対のアームを指す。一実施態様において、
miRNAは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に最終的に入る「ガイド」鎖であり、mi
RNA*は、もう一方の「パッセンジャー」鎖である。別の実施態様において、対応するmiRN
Aと比べてより低いレベル(例えば、≦15%)で細胞内に存在するmiRNA*のレベル。より高
い割合のパッセンジャー鎖が細胞内に存在するいくつかの実施態様において、miRNA-3p(
すなわち、前駆体miRNAの3'アームに由来するmiRNA)及びmiRNA-5p(すなわち、miRNA-5pは
、前駆体miRNAの5'アームに由来するmiRNAである)という用語体系が、miRNA/miRNA*の代
わりに使用される。
【0070】
本明細書で使用されるように、「マイクロRNA模倣物」又は「miR模倣物」という用語は
、1以上のmiRNAの遺伝子サイレンシング能力を模倣する(imitate)又は模倣する(mimic)た
めに使用することができる分子を指す。一実施態様において、miR模倣物は、1以上の内在
性miRを模倣することにより、標的遺伝子を下方調節する(例えば、阻害する)。ある実施
態様において、miRNA模倣物は、合成非コードRNAである(すなわち、miRNAは、内在性miRN
Aの源からの精製によっては得られない)。ある実施態様において、miRNA模倣物は、RNAi
経路に進入し、遺伝子発現を調節することができる。ある実施態様において、miRNA模倣
物は、成熟分子(例えば、一本鎖)又は模倣物前駆体(例えば、プリ-miRNAもしくはプレ-mi
RNA)として設計することができる。
【0071】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるマイクロRNA又はmiRNA模倣物は、
核酸(修飾又は修飾核酸)を含み、これには、例えば、RNA、DNA、修飾RNA、修飾DNA、ロッ
クト核酸、もしくは2'-O,4'-C-エチレン架橋核酸(ENA)、又はこれらの任意の組合せを含
むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0072】
マイクロRNA又はmiR模倣物は、一本鎖又は二本鎖であることができ、修飾されたもの又
は未修飾のものであることができる。ある実施態様において、マイクロRNA又はmiR模倣物
は、約2~約30ヌクレオ塩基の長さを有する。ある実施態様において、マイクロRNA又はmi
R模倣物は一本鎖であり、かつ約15~約30ヌクレオ塩基の長さを有する。いくつかの実施
態様において、マイクロRNAは一本鎖であり、かつ約15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオ塩基の長さである。
【0073】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製する
ために使用することができるマイクロRNAは、上の表2に記載のマイクロRNA(又はそのマイ
クロRNA模倣物)である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って
増強胎盤幹細胞を作製するために、2以上の上の表2に記載のマイクロRNAを使用すること
ができる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細
胞を作製するために使用されるマイクロRNAは、miR-16、miR-29a、miR-424、miR-4305、m
iR-3142、及び/又はmiR-613である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の
方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するために使用されるマイクロRNAは、miR-16である
。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製
するために使用されるマイクロRNAは、miR-29aである。別の具体的な実施態様において、
本明細書に記載の方法に従って増強胎盤幹細胞を作製するために使用されるマイクロRNA
は、miR-424である。
【0074】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を産生する方
法であって、胎盤幹細胞又はその集団を、胎盤幹細胞における生存と関連することが本明
細書で特定された1以上の遺伝子(例えば、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つ又複数
)を標的にする1以上のマイクロRNA又はmiR模倣物と接触させることを含む、方法である。
【0075】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする
。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別
の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で
使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るmiRNA又はmiRNA模倣物は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0076】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND
3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AK
T3、VEGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合
せ)を標的にする。
【0077】
別の具体的な実施態様において、胎盤幹細胞の生存関連遺伝子(例えば、上の表1に記載
の遺伝子)とmiRNA又はmiRNA模倣物との接触は、該胎盤幹細胞における該遺伝子のmRNAレ
ベルの減少をもたらし、例えば、得られた増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝子のmRNA
レベルは、未修飾の胎盤幹細胞(すなわち、miRNA又はmiRNA模倣物と接触させられていな
い胎盤幹細胞)における同じ遺伝子のmRNAレベルと比べて減少している。ある実施態様に
おいて、本明細書に記載の方法に従って産生された増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝
子のmRNAレベルは、例えば、未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の発現(mRNAレベル)と
比較して、約、最大、又は多くとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、4
5%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%
減少している。
【0078】
別の具体的な実施態様において、胎盤幹細胞の生存関連遺伝子(例えば、上の表1に記載
の遺伝子)とmiRNA又はmiRNA模倣物との接触は、該胎盤幹細胞における該遺伝子のmRNAレ
ベルの増加をもたらし、例えば、得られた増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝子のmRNA
レベルは、未修飾の胎盤幹細胞(すなわち、miRNA又はmiRNA模倣物と接触させられていな
い胎盤幹細胞)における同じ遺伝子のmRNAレベルと比べて増加している。ある実施態様に
おいて、本明細書に記載の方法に従って産生された増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝
子のmRNAレベルは、例えば、未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の発現(mRNAレベル)と
比較して、約、最大、又は多くとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、4
5%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%
増加している。
【0079】
本明細書に記載の方法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、商業的販売会社(例えば
、Ambion; Dharmafect)よって供給されることができるか、又は例えば、固相合成によっ
て、もしくは例えば、オリゴヌクレオチド及び類似体のプロトコル(Protocols for Oligo
nucleotides and Analogs)、Agrawal編(1993)、Humana Press; Scaringe, Methods(2001)
, 23, 206-217. Gaitらの文献、RNA:タンパク質相互作用への化学合成RNAの適用(Applica
tions of Chemically synthesized RNA in RNA: Protein Interactions)、Smith編(1998)
, 1-36. Galloらの文献、Tetrahedron(2001), 57, 5707-5713に記載されている手順に従
って合成されることができる。
【0080】
本明細書に記載の方法で使用されるmiRNA又はmiRNA模倣物は、当技術分野で公知の種々
の方法によって同定することができる。ある実施態様において、そのようなmiRNA又はmiR
NA模倣物は、1以上のmiRNA又はmiRNA模倣物ライブラリー、例えば、市販のライブラリー(
例えば、Ambion、抗miR miRNA前駆体ライブラリーヒトV13)から、任意に、スクリーニン
グ方法、例えば、ミディアム又はハイスループットスクリーニングによって同定され、取
得される。一実施態様において、そのようなライブラリーは、広範な標的遺伝子又は遺伝
子ファミリーを包含することができる。スクリーニング方法は、例えば、自動ロボット工
学、液体処理装置、データ処理ソフトウェア、及び/又は高感度検出器、例えば、Precisi
on XS自動ピペッターシステム、EL406液体処理システム、又は相乗作用プレートリーダー
を用いて実施することができる。
【0081】
(5.1.2 siRNA)
ある実施態様において、増強胎盤幹細胞の産生のための本明細書に提供される方法は、
例えば、修飾されていない、例えば、siRNAと接触させられていない胎盤幹細胞と比較し
て、胎盤幹細胞で通常細胞死を引き起こす条件で生存の増加を示す能力が付与されるよう
に、該胎盤幹細胞を有効量の低分子干渉RNA(siRNA)と接触させることを含む。本明細書で
使用されるように、「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は当技術分野で周知であ
り、特定の遺伝子の発現に干渉するRNA分子を指す。
【0082】
本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、一本鎖又は二本鎖であることができ、修
飾されたもの又は未修飾のものであることができる。一実施態様において、本明細書に記
載の方法で使用されるsiRNAは、1以上の2'-デオキシ又は2'-O-修飾塩基を有する。いくつ
かの実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、1以上の塩基置換及
び反転(例えば、3~4ヌクレオ塩基反転)を有する。
【0083】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、二本鎖で
ある。一実施態様において、該siRNAの一方の鎖は、標的核酸に対してアンチセンスであ
るが、もう一方の鎖は、第一の鎖に相補的である。ある実施態様において、該siRNAは、
第一の鎖と第二の鎖との間の中央相補領域、及び該第一の鎖と第二の鎖との間で又は標的
RNAと任意に相補的である末端領域を含む。
【0084】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、約2~約50ヌクレ
オ塩基の長さを有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法で使用され
るsiRNAは二本鎖であり、かつ約5~45、約7~40、又は約10~約35ヌクレオ塩基の長さを
有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは二本
鎖であり、かつ約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、
26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35ヌクレオ塩基の長さである。
【0085】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAの第一の鎖及び/又は
第二の鎖の一方又は両方の末端は、1以上の天然又は修飾ヌクレオ塩基を付加して、突出
を形成させることにより修飾される。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使
用されるsiRNAの第一の鎖及び/又は第二の鎖の一方又は両方の末端は平滑である。本明細
書に記載の方法で使用されるsiRNAの第一の鎖及び/又は第二の鎖の一方の末端が平滑であ
り、もう一方が突出ヌクレオ塩基を有することが可能である。一実施態様において、該突
出は、約1~約10、約2~約8、約3~約7、約4~約6ヌクレオ塩基の長さである。別の実施
態様において、該突出は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオ塩基の長さで
ある。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは二本鎖で
あり、かつ約21ヌクレオ塩基の長さを有する。別の具体的な実施態様において、該siRNA
は二本鎖であり、センス鎖とアンチセンス鎖との間に19ntの相補領域が存在するように、
ジヌクレオチド3'突出(例えば、ジヌクレオチド3'DNA突出、例えば、UU又はTT 3'-突出)
を含む約21ヌクレオ塩基の長さを有する。
【0086】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を産生する方
法であって、胎盤幹細胞又はその集団を、胎盤幹細胞における生存と関連することが本明
細書で特定された1以上の遺伝子(例えば、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つ又複数
)を標的にする1以上のsiRNAと接触させることを含む、方法である。一実施態様において
、該siRNAは、二本鎖である。具体的な実施態様において、該二本鎖siRNAの一方の鎖(例
えば、センス鎖)は、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つの配列(表中に提供されてい
る遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少なくとも約70%、80%、90%、95%
、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0087】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の具体的な実
施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsi
RNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝
子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための
本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の
方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様にお
いて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製する
ための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標
的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に
記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、
胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎
盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存
関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるsiRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0088】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるsiRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB
、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする
。
【0089】
別の具体的な実施態様において、胎盤幹細胞の生存関連遺伝子とsiRNAとの接触は、該
胎盤幹細胞における該遺伝子のmRNAレベルの減少をもたらし、例えば、得られる増強胎盤
幹細胞における生存関連遺伝子のmRNAレベルは、未修飾の胎盤幹細胞(すなわち、siRNAと
接触させられていない胎盤幹細胞)における同じ遺伝子のmRNAレベルと比べて減少してい
る。ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って産生された増強胎盤幹細胞に
おける生存関連遺伝子のmRNAレベルは、例えば、未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の
発現(mRNAレベル)と比較して、約、最大、又は多くとも5%、10%、15%、20%、25%、3
0%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%、98%、又は99%減少している。
【0090】
本明細書に記載の方法で使用されるsiRNAは、商業的販売会社(例えば、Ambion; Dharma
con)よって供給されることができるか、又は例えば、固相合成によって、もしくは例えば
、オリゴヌクレオチド及び類似体のプロトコル(Protocols for Oligonucleotides and An
alogs)、Agrawal編(1993)、Humana Press; Scaringe, Methods(2001), 23, 206-217. Gai
tらの文献、RNA:タンパク質相互作用への化学合成RNAの適用(Applications of Chemicall
y synthesized RNA in RNA: Protein Interactions)、Smith編(1998), 1-36. Galloらの
文献、Tetrahedron(2001), 57, 5707-5713に記載されている手順に従って合成されること
ができる。
【0091】
増強胎盤幹細胞の産生に有用なsiRNAは、当技術分野で公知の種々の方法によって同定
することができる。ある実施態様において、そのようなsiRNAは、1以上のsiRNAライブラ
リー、例えば、市販のライブラリー(例えば、Ambion, Silencer(登録商標) Select ヒト
核ホルモン受容体(HNR) siRNAライブラリーV4; Dharmacon, siRNAライブラリーヒトON-TA
RGETplus siRNA核受容体サブライブラリー)から、任意に、スクリーニング方法、例えば
、ミディアム又はハイスループットスクリーニングによって同定され、取得される。一実
施態様において、そのようなライブラリーは、広範な遺伝子を包含することができるか(
例えば、ヒトゲノムワイドsiRNAライブラリー)、又は特定の標的遺伝子もしくは遺伝子フ
ァミリーを包含するように予め規定することができる(例えば、ヒト核受容体siRNAライブ
ラリー、ホスファターゼsiRNAライブラリーなど)。スクリーニング方法は、例えば、自動
ロボット工学、液体処理装置、データ処理ソフトウェア、及び/又は高感度検出器、例え
ば、Precision XS自動ピペッターシステム、EL406液体処理システム、又は相乗作用プレ
ートリーダーを用いて実施することができる。
【0092】
(5.1.3 他の分子)
増強胎盤幹細胞の産生に有用な他のオリゴマー又はポリマー分子としては、例えば、ア
ンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRNA、及びshRNAmirが挙げられる。ある実施態様に
おいて、これらの分子は互いに任意の組合せで使用することができ、また、siRNA、miR模
倣物、及び/又はmiR阻害剤と組み合わせて用いて、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産
生することができる。
【0093】
本明細書で使用されるように、「アンチセンスRNA」という用語は、アンチセンスリボ
核酸分子のことである。限定するものではないが、単なる例として、アンチセンスRNAは
、標的核酸(例えば、遺伝子又はmRNA)にハイブリダイスし、標的核酸の発現活性、例えば
、転写又は翻訳を調節する。
【0094】
本明細書で使用されるように、「アンチセンスDNA」という用語は、アンチセンスデオ
キシリボ核酸分子のことである。アンチセンスDNAは、逆方向に読み取られたときに遺伝
子の「センス鎖」に相補的なヌクレオチド配列を有するDNA配列を指す。限定するもので
はないが、単なる例として、アンチセンスDNAは、標的核酸(例えば、遺伝子又はmRNA)に
ハイブリダイスし、標的核酸の発現活性、例えば、転写又は翻訳を調節する。
【0095】
本明細書で使用されるように、「低分子ヘアピンRNA」又は「shRNA」という用語は、ス
テム-ループ構造を含むRNA分子を指し;「shRNAmir」という用語は、「マイクロRNA適合sh
RNA」を指す。ある実施態様において、該shRNAは、相補的な配列の第一の領域及び第二の
領域を含み、該領域の相補性の程度及び配向は、該領域間で塩基対形成が生じる程度に十
分なものであり、該第一の領域及び第二の領域は、ループ領域によって接続されており、
該ループは、該ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の
欠如から生じる。shRNAヘアピン構造は、例えば、細胞機構によって切断されて、siRNAに
なることができ、その後、これは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に結合する。
この複合体は、それに結合しているsiRNAとマッチするmRNAに結合し、それを切断する。
【0096】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるshRNAmirは、miRNAループ及びmiR
NA隣接配列がshRNAに付加された、天然に生じる一次転写物miRNAを模倣するshRNA構築物
である。任意の理論に束縛されることを望むものではないが、shRNAmirは、まずDroshaに
よって切断されて、shRNAを生成させ、その後、Dicerによって再び切断されて、siRNAを
生成させる。その後、siRNAは、標的mRNA分解のためにRISCに取り込まれる。これにより
、shRNAmirがDroshaによって切断されることが可能になり、それにより、より大きなノッ
クダウン効率の増加が可能になる。マイクロRNAなしの従来のshRNAコンストラクトと比較
したとき、shRNAヘアピンの両側へのmiR30ループ及び125ntのmiR30隣接配列の付加は、発
現されたヘアピンのDrosha及びDicerによるプロセッシングを10倍を超えて増加させるこ
とが報告されている。
【0097】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を産生する方
法であって、胎盤幹細胞又はその集団を、1以上の遺伝子生存関連遺伝子、例えば、上の
表1に記載の1以上の遺伝子を標的にする1以上のアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shR
NA、及びshRNAmirと接触させることを含む、方法である。
【0098】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用される調節性RNA分子は、短鎖ヘアピンRNA又はshRNAである。具体的な実施態様
において、該shRNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、該shRNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少なく
とも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体的
な実施態様において、該shRNAは、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つの配列(表中に
提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少なくとも約70%、80%
、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0099】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用される調節性RNA分子は、アンチセンスRNAである。具体的な実施態様において、
該アンチセンスRNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、該アンチセンスRNAは、上の表1に記載の遺伝子のう
ちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。
別の具体的な実施態様において、該アンチセンスRNAは、上の表1で特定される遺伝子のう
ちの1つの配列(表中に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少
なくとも約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0100】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用される分子は、アンチセンスDNAである。具体的な実施態様において、該アンチ
センスDNAは、上の表1に記載の生存関連遺伝子のうちの1つ又は複数を標的にする。別の
具体的な実施態様において、該アンチセンスDNAは、上の表1に記載の遺伝子のうちの少な
くとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを標的にする。別の具体
的な実施態様において、該アンチセンスDNAは、上の表1で特定される遺伝子のうちの1つ
の配列(表中に提供されている遺伝子の遺伝子IDに基づいて特定されるもの)と少なくとも
約70%、80%、90%、95%、98%、又は100%相補的な配列を有する。
【0101】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の具体的な実
施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるsh
RNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝
子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための
本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にす
る。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の
方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様にお
いて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製する
ための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MCL1を標
的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に
記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子BCL2を標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPMIDを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、
胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎
盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存
関連遺伝子AKT3を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製す
るための本明細書に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具
体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用
されるshRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0102】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるshRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF
、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB
、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を標的にする
。
【0103】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施
態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアン
チセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセン
スRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別の具体的な実施態様において
、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA
は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは
、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強
胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生
存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製
するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子BCL2を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するた
めの本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子P
PMIDを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本
明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的に
する。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載
の方法で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるアンチセンスRNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0104】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスRNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CC
NE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、V
EGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を
標的にする。
【0105】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND1を標的にする。別の
具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使
用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCND3を標的にする。別の具体的
な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用され
るアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNE1を標的にする。別の具体的な実施
態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアン
チセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CCNFを標的にする。別の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセン
スDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDK6を標的にする。別の具体的な実施態様において
、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNA
は、胎盤幹細胞生存関連遺伝子PPP2R5Cを標的にする。別の具体的な実施態様において、
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは
、胎盤幹細胞生存関連遺伝子CDC25Aを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強
胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎
盤幹細胞生存関連遺伝子WEE1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹
細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細
胞生存関連遺伝子CHEK1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞
を作製するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生
存関連遺伝子MCL1を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製
するための本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連
遺伝子BCL2を標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するた
めの本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子P
PMIDを標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本
明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子HMGA1を
標的にする。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書
に記載の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子AKT3を標的に
する。別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載
の方法で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子VEGFAを標的にする。
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法
で使用されるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子MYBを標的にする。別の具体
的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用さ
れるアンチセンスDNAは、胎盤幹細胞生存関連遺伝子ITGA2を標的にする。
【0106】
別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方
法で使用されるアンチセンスDNAは、以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子:CCND1、CCND3、CC
NE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、V
EGFA、MYB、及び/又はITGA2のうちの2つ、3つ、又はそれより多く(すなわち、組合せ)を
標的にする。
【0107】
別の具体的な実施態様において、胎盤幹細胞の生存関連遺伝子とshRNA又はアンチセン
スRNAとの接触は、該胎盤幹細胞における該遺伝子のmRNAレベルの減少をもたらし、例え
ば、得られた増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝子のmRNAレベルは、未修飾の胎盤幹細
胞(すなわち、shRNA又はアンチセンスRNAと接触させられていない胎盤幹細胞)における同
じ遺伝子のmRNAレベルと比べて減少している。ある実施態様において、本明細書に記載の
方法に従って産生された増強胎盤幹細胞における生存関連遺伝子のmRNAレベルは、例えば
、未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の発現(mRNAレベル)と比較して、約、最大、又は
多くとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、6
5%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%減少している。
【0108】
本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRNA、及びs
hRNAmirは、商業的販売会社(例えば、Ambion; Dharmafect)よって供給されることができ
るか、又は例えば、固相合成によって、もしくは例えば、オリゴヌクレオチド及び類似体
のプロトコル(Protocols for Oligonucleotides and Analogs)、Agrawal編(1993)、Human
a Press; Scaringe, Methods(2001), 23, 206-217. Gaitらの文献、RNA:タンパク質相互
作用への化学合成RNAの適用(Applications of Chemically synthesized RNA in RNA: Pro
tein Interactions)、Smith編(1998), 1-36. Galloらの文献、Tetrahedron(2001), 57, 5
707-5713に記載されている手順に従って合成されることができる。
【0109】
アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRNA、shRNAmir、及び増強胎盤幹細胞の産生に
有用な他の分子は、当技術分野で公知の種々の方法によって同定することができる。ある
実施態様において、そのようなアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRNA、shRNAmir、
及び他の調節性分子(例えば、調節性RNA分子)は、1以上のライブラリー、例えば、市販の
ライブラリー(Thermo Scientific, shRNAmirライブラリー)から、任意に、スクリーニン
グ方法、例えば、ミディアム又はハイスループットスクリーニングによって同定され、取
得される。一実施態様において、そのようなライブラリーは、広範な遺伝子を包含するこ
とができるか(例えば、ヒトゲノム標的化ライブラリー)、又は特定の標的遺伝子もしくは
遺伝子ファミリーを包含するように予め規定することができる(例えば、ヒト核受容体標
的化ライブラリー、ホスファターゼ標的化ライブラリーなど)。スクリーニング方法は、
例えば、自動ロボット工学、液体処理装置、データ処理ソフトウェア、及び/又は高感度
検出器、例えば、Precision XS自動ピペッターシステム、EL406液体処理システム、又は
相乗作用プレートリーダーを用いて実施することができる。
【0110】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA、アンチ
センスDNA、shRNA、及びshRNAmirは、約8~約100、約8~約80、10~50、13~80、13~50
、13~30、13~24、18~22、19~23、20~80、20~50、20~30、又は20~24個のヌクレオ
塩基(ヌクレオ塩基(すなわち、約1~約100個の連結ヌクレオシド))を含む。
【0111】
本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRNA、及びs
hRNAmirは、一本鎖又は二本鎖であることができ、修飾されたもの又は未修飾のものであ
ることができる。ある実施態様において、該アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、miR模
倣物、shRNA、shRNAmir、及び他の調節性RNA分子は、約1~約100、約8~約80、10~50、1
3~80、13~50、13~30、13~24、18~22、19~23、20~80、20~50、20~30、又は20~2
4個のヌクレオ塩基(すなわち、約1~約100個の連結ヌクレオシド)を含む。ある実施態様
において、本明細書に記載の方法で使用されるアンチセンスRNA、アンチセンスDNA、shRN
A、及びshRNAmirは一本鎖であり、約12~約35個のヌクレオ塩基(すなわち、約12~約35個
の連結ヌクレオシド)を含む。一実施態様において、本明細書に記載の方法で使用される
アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、miR模倣物、shRNA、及びshRNAmirは、約10、11、12
、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32
、33、34、又は35ヌクレオ塩基の長さである。
【0112】
本明細書に記載の方法で使用されるshRNAmirは、任意の公知の方法によって、細胞に送
達することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるsh
RNAmirは、真核細胞発現ベクターに組み込まれる。別の具体的な実施態様において、本明
細書に記載の方法で使用されるshRNAmirは、遺伝子発現用のウイルスベクターに組み込ま
れる。そのようなウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、例えば、レンチ
ウイルス及びアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様
において、本明細書に記載の方法で使用されるshRNAmirは、レンチウイルスベクターに組
み込まれる。
【0113】
(5.1.4 胎盤幹細胞への調節性分子の送達)
本明細書に記載の方法で使用される調節性オリゴマー又はポリマー分子は、トランスフ
ェクション(例えば、一過性のもしくは安定なトランスフェクション)又は当技術分野で公
知の他の手段によって、胎盤幹細胞に送達することができる。ある実施態様において、該
トランスフェクションは、例えば、脂質(例えば、リポソーム)、リン酸カルシウム、シク
ロデキストリン、デンドリマー、もしくはポリマー(例えば、カチオン性ポリマー)を用い
て;エレクトロポレーション、オプティカルトランスフェクション、遺伝子エレクトロト
ランスファー、インペイルフェクション(impalefection)、遺伝子銃、もしくはマグネト
フェクション(magnetofection)によって;ウイルス(例えば、ウイルスキャリア)によって;
又はこれらの組合せによって実施することができる。一実施態様において、該トランスフ
ェクションは、市販のトランスフェクション試薬又はキット(例えば、Ambion, siPORT(商
標)アミン, siPORT NeoFX's; Dharmafect, Dharmafect 3トランスフェクション試薬又はD
harmafect 1トランスフェクション試薬; Invitrogen, Lipofectamine RNAiMAX; Integrat
ed DNA Technologies, Transductin; Mirus Bio LLC, TransIT-siQUEST, TransIT-TKO)を
用いて実施される。具体的な実施態様において、該トランスフェクションは、Dharmafect
1トランスフェクション試薬とともに、Dharmacon ON-TARGET plus SMARTpool(登録商標)
siRNA試薬を用いて実施することができる。いくつかの実施態様において、該トランスフ
ェクションは、限定されないが、マイクロタイタープレート(例えば、96ウェルプレート)
及びマイクロプレートリーダー(例えば、相乗作用プレートリーダー)、又は自動化システ
ム、例えば、Precision XS自動ピペッターシステム、EL406液体処理システムの使用を含
む、ミディアム又はハイスループット様式で構成することができる。他の実施態様におい
て、該トランスフェクションは、限定されないが、組織培養ディッシュ又は培養フラスコ
(例えば、T25、T75、もしくはT225フラスコ)の使用を含む、ラージスケールで構成される
。胎盤幹細胞を、組織培養容器、例えば、ディッシュ、フラスコ、マルチウェルプレート
などにプレーティングし、胎盤幹細胞が、トランスフェクションの時点で約20~80%コン
フルエンス又は約30~70%コンフルエンスになるまで増殖するのに十分な時間、培養する
ことができる。例えば、トランスフェクションの時点で、96ウェルプレートに、1ウェル
当たり約2000、2500、3000、3500、又は4000個の胎盤幹細胞が存在し得る。一実施態様に
おいて、胎盤幹細胞は、トランスフェクションの時点で約50%コンフルエンスである。別
の実施態様において、トランスフェクションの時点で、96ウェルプレートに、1ウェル当
たり約3000又は3500個の胎盤幹細胞が存在する。別の実施態様において、トランスフェク
ションの時点で、96ウェルプレートに、1ウェル当たり約3500個の胎盤幹細胞が存在する
。
【0114】
本明細書に記載の方法で使用される調節性オリゴマー又はポリマー分子は、例えば、一
過性の又は安定なトランスフェクションによって細胞に投与することができる。一実施態
様において、調節性オリゴマー又はポリマー分子の安定なトランスフェクションは、例え
ば、機能的な調節性オリゴマー又はポリマー分子を発現するプラスミド又は発現ベクター
の使用によって実施することができる。一実施態様において、そのようなプラスミド又は
発現ベクターは、選択可能マーカー(例えば、抗生物質選択マーカー)を含む。別の実施態
様において、そのようなプラスミド又は発現ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プ
ロモーター、RNAポリメラーゼIII(RNA pol III)プロモーター(例えば、U6もしくはH1)、
又はRNAポリメラーゼII(RNA pol II)プロモーターを含む。
【0115】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って使用されるプラスミド又は発現
ベクターは、市販されている(例えば、Ambion, pSilencer(商標) 4.1-CMVベクター)。哺
乳動物発現ベクターの他の例としては、サイトメガロウイルスプロモーターを含むpLOC(O
pen Biosystems); pCDM8(Seedの文献、Nature 329:840(1987))及びpMT2PC(Kaufmanらの文
献、EMBO J. 6:187-195(1987))が挙げられる。使用し得る他の例となる発現ベクターとし
ては、pFN10A(ACT) FLEXI(登録商標)ベクター(Promega)、pFN11A(BIND) FLEXI(登録商標)
ベクター(Promega)、pGL4.31[luc2P/GAL4UAS/Hygro](Promega)、pFC14K(HALOTAG(登録商
標) 7) MCV FLEXI(登録商標)ベクター(Promega)、pFC15A(HALOTAG(登録商標) 7) MCV FLE
XI(登録商標)ベクター(Promega)などが挙げられる。
【0116】
哺乳動物細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルスの調節エレメン
トによって提供することができる。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオー
マウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びサルウイルス40に由来する
。さらなる好適な発現系は、例えば、Sambrookら編、分子クローニング:実験マニュアル(
Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, C
old Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)の第16章及び第
17章に記載されている。
【0117】
組換え発現ベクターは、例えば、発現されるべき遺伝子をコードする核酸配列に作動可
能に連結され得る1以上の制御配列を含むことができる。そのような制御配列は、例えば
、Goeddelの文献、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic
Press, San Diego, Calif.(1990)に記載されている。ある実施態様において、該ベクタ
ーは、胎盤幹細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を指令する制御配列を含む。あ
る他の実施態様において、該ベクターは、例えば、化学薬品、例えば、テトラサイクリン
との接触によって誘導可能である制御配列を含む。
【0118】
調節性オリゴマー又はポリマー分子は、当業者に公知の任意の技術によって、例えば、
直接的なトランスフェクションによって、細胞に投与することができる。例えば、該直接
的なトランスフェクションは、トランスフェクションの前に細胞を予めプレーティングし
、トランスフェクション複合体への暴露の前に一定期間(例えば、24時間)、該細胞を再接
着させ、成長を再開させる工程を含むことができる。調節性オリゴマー又はポリマー分子
は、リバーストランスフェクションによって、細胞に投与することもできる。例えば、該
リバーストランスフェクションは、プレーティングの前、細胞が浮遊状態にある間に、ト
ランスフェクション複合体を該細胞に添加する工程を含むことができる。
【0119】
様々な実施態様において、胎盤幹細胞に対する調節性オリゴマー又はポリマー分子の効
果、例えば、該胎盤幹細胞から増強胎盤幹細胞を作製するための該胎盤幹細胞における1
以上の生存関連遺伝子の下方調節は、最大、約、又は多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間、又は1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、もしくは28日、又はそれより長い間持続することができる。ある実施態
様において、本明細書に記載の方法を用いて作製された増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹
細胞が産生された時から多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15
、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、もしくは28
日以内に使用される(例えば、対象に投与される)。ある実施態様において、本明細書に記
載の方法を用いて作製された増強胎盤幹細胞は、使用前に(例えば、対象への投与の前に)
保存、例えば、凍結保存される。ある実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて
作製された増強胎盤幹細胞は、保存、例えば、凍結保存され、その後、本明細書に提供さ
れる方法に従って、修飾され、その後、対象に投与される。ある実施態様において、増強
胎盤幹細胞に対する調節性オリゴマー又はポリマー分子の効果は、誘導可能である。ある
他の実施態様において、胎盤幹細胞が修飾されて、増強胎盤幹細胞が産生される時と増強
胎盤幹細胞が投与又は凍結保存される時の間に、細胞の拡大(増強胎盤幹細胞の培養、増
殖など)は全く又は実質的に全く行われない。
【0120】
本明細書に記載の方法で使用される調節性オリゴマー又はポリマー分子の機能(例えば
、生存関連遺伝子のサイレンシング)、例えば、遺伝子サイレンシングのレベル又は程度
の評価は、細胞によるタンパク質産生又は核酸産生の検出のための任意の当技術分野で認
められている方法によって達成することができる。例えば、評価は、そのような核酸配列
をトランスフェクトしていない同等の胎盤幹細胞と比較して、増強胎盤幹細胞の試料(例
えば、10×105~10×107個の増強胎盤幹細胞、又は該増強胎盤幹細胞の1%、2%、3%、4
%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%の試料)中の対象となる遺伝子のmRNA又はタ
ンパク質レベルを決定することにより実施することができる。そのような評価は、例えば
、核酸に基づく方法、例えば、ノーザンブロット解析、、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反
応(RT-PCR)、リアルタイムPCR、定量的PCRなどを用いて実施することができる。他の実施
態様において、タンパク質の発現は、対象となるタンパク質に結合する抗体を用いて、例
えば、ELISA、サンドイッチアッセイなどで評価することができる。具体的な実施態様に
おいて、本明細書に記載の方法を用いて作製された増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾の
胎盤幹細胞(例えば、同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞)と比較して、5%、10%、15
%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%
、85%、90%、95%、又は100%少ない標的遺伝子(例えば、生存関連遺伝子)のmRNAを産
生する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて作製された増強胎盤
幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞(例えば、同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞)
と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60
%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%少ない標的遺伝子(例えば、
生存関連遺伝子)のタンパク質を産生する。
【0121】
(5.2 増強胎盤幹細胞の使用)
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞1つの利点は、それらが、未修飾の胎盤幹細胞(例えば
、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第7,311,904号;第7,
311,905号;第7,468,276号、及び第8,057,788号に記載されている胎盤幹細胞)の機能的特
徴を維持し、さらに、例えば、細胞死を引き起こす条件に暴露された(細胞死を引き起こ
す条件で培養された)ときに、未修飾の胎盤幹細胞と比較して、生存の増加を示すことで
ある。したがって、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、対象への胎盤幹細胞の投与を含
む方法で有利に使用することができ、ここで、該胎盤幹細胞は、対象に投与したとき、環
境的な傷害に暴露される(例えば、該胎盤幹細胞は、投与後、他の細胞、抗体、血液成分(
例えば、補体、血清)、及び他の宿主細胞成分に暴露される)。
【0122】
一実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、望ましくないもしくは有害
な免疫応答によって引き起こされるか、又は該免疫応答に関連する疾患、障害、又は状態
、例えば、炎症性要素を有する疾患、障害、又は状態を有し、或いは該疾患、障害、又は
状態を発症するリスクのある個体を治療する方法で使用することができる。別の実施態様
において、本明細書に提供されるのは、免疫細胞を複数の増強胎盤幹細胞(例えば、増強
胎盤幹細胞を含む組成物)と接触させることにより、免疫細胞又は複数の免疫細胞の活性
、例えば、増殖を調節する、例えば、抑制する方法である。そのような方法に従って、治
療有効量の増強胎盤幹細胞を個体に投与することができ、ここで、投与された増強胎盤幹
細胞は、例えば、同じ様式で投与された未修飾の胎盤幹細胞よりも長い期間、該個体で生
存することができる。
【0123】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、免疫応答を抑制する方法であ
って、複数の免疫細胞を、複数の増強胎盤幹細胞と、該増強胎盤幹細胞が免疫応答を検出
可能な程度に抑制するのに十分な時間接触させることを含む、方法であり、ここで、該増
強胎盤幹細胞は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ又は退縮アッセイで、T細胞増殖を検出
可能な程度に抑制する。この方法との関連における「免疫細胞」は、免疫系の任意の細胞
、特に、T細胞及びNK(ナチュラルキラー)細胞を意味する。したがって、本方法の様々な
実施態様において、増強胎盤幹細胞は、複数の免疫細胞と接触させられ、ここで、該複数
の免疫細胞は、複数のT細胞(例えば、複数のCD3+ T細胞、CD4+ T細胞、及び/もしくはCD8
+ T細胞)、並びに/又はナチュラルキラー細胞であるか、或いはこれらの細胞を含む。本
方法との関連における「免疫応答」は、免疫細胞によって通常知覚される刺激に対する免
疫細胞による任意の応答、例えば、抗原の存在に対する応答であることができる。様々な
実施態様において、免疫応答は、外来抗原、例えば、輸血もしくは移植片に存在する抗原
、又は自己免疫疾患に見られる自己抗原に応答したT細胞(例えば、CD3+ T細胞、CD4+ T細
胞、及び/又はCD8+ T細胞)の増殖であることができる。免疫応答は、移植片に含まれるT
細胞の増殖であることもできる。免疫応答は、ナチュラルキラー(NK)細胞の任意の活性、
樹状細胞の成熟などであることもできる。免疫応答は、1以上のクラスの免疫細胞の活性
の局所的、組織特異的、もしくは器官特異的、又は全身的効果であることもでき、例えば
、免疫応答は、移植片対宿主病、炎症、炎症関連瘢痕組織の形成、自己免疫疾患(例えば
、関節リウマチ、I型糖尿病、エリテマトーデスなど)、及び同様の疾患であることができ
る。
【0124】
そのような状況において本明細書で使用される「接触させること」は、胎盤幹細胞と免
疫細胞を一緒に、単一の容器(例えば、培養デュッシュ、フラスコ、バイアルなど)に、又
はインビボに、例えば、同じ個体(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)に入れることを包含
する。一実施態様において、該接触させることは、免疫細胞の免疫機能の変化が検出可能
となるのに十分な時間かつ十分な数の増強胎盤幹細胞及び免疫細胞を用いて行われる。あ
る実施態様において、該接触させることは、免疫機能(例えば、抗原に応答するT細胞増殖
)を、増強胎盤幹細胞の非存在下での免疫機能と比較して、少なくとも50%、60%、70%
、80%、90%、又は95%抑制するのに十分である。インビボの状況におけるそのような抑
制は、インビトロアッセイ(下記参照)で決定することができる;すなわち、インビトロア
ッセイでの抑制の程度から、増強胎盤幹細胞の特定の数とレシピエント個体における免疫
細胞の数を基に、該個体における抑制の程度を推定することができる。
【0125】
増強胎盤幹細胞が免疫応答を抑制する能力は、例えば、インビトロで評価することがで
きる。ある実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾
の胎盤幹細胞と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%
同じ程度、免疫応答を抑制する。ある実施態様において、本明細書に提供される増強胎盤
幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞と同じ程度まで、免疫応答を抑制する。例えば、
複数の増強胎盤幹細胞は、CD4+又はCD8+ T細胞と樹状細胞(DC)と増強胎盤幹細胞とを約10
:1:2の比で組み合わせることを含むMLRで試験することができ、その場合、該T細胞を、例
えば、娘細胞に分配されるCFSEなどの色素で染色し、かつ該T細胞を約6日間増殖させる。
増強胎盤幹細胞の存在下での6日目のT細胞増殖が、DCの存在下かつ胎盤幹細胞の非存在下
でのT細胞増殖と比較して検出可能な程度に低下している場合、該複数の増強胎盤幹細胞
は免疫抑制性である。さらに、未修飾の胎盤幹細胞を用いる対照を並行して実施して、増
強胎盤幹細胞が未修飾又は未処理の胎盤幹細胞よりも免疫抑制性であることを示すことが
できる。そのようなMLRにおいて、例えば、増強胎盤幹細胞は、解凍するか、又は培養物
から回収することができる。約20,000個の増強胎盤幹細胞を、100μlの培地(RPMI 1640、
1mM HEPES緩衝液、抗生物質、及び5%プールヒト血清)に再懸濁させ、ウェルの底に2時間
接着させる。CD4+及び/又はCD8+ T細胞を、全末梢血単核細胞Miltenyi磁気ビーズから単
離する。該細胞をCFSE染色し、1ウェル当たり合計100,000個のT細胞(CD4+ T細胞のみ、CD
8+ T細胞のみ、又は同等量のCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞)を添加する。ウェル中の容積を2
00μlとし、MLRを進行させる。退縮アッセイ又はBTRアッセイを同様の様式で使用するこ
とができる。
【0126】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、血管新生を促進するための方法である
。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象、例えば、ヒト対象にお
ける血管新生を促進するための方法であって、該対象に、本明細書に記載の増強胎盤幹細
胞又はその組成物を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、本明細書
に提供される増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞と少なくとも50%、60%、
70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同じ程度、血管新生を促進する。ある実
施態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、対応する未修飾の胎盤幹細胞
と同じ程度に血管新生を促進する。細胞(例えば、増強胎盤幹細胞を含む、胎盤幹細胞)が
血管新生を促進する能力を測定するためのアッセイは、当技術分野で公知であり(例えば
、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2011/02501
82号を参照のこと)、これには、例えば、細胞が内皮細胞による管形成を促進する能力の
アッセイ、細胞が内皮細胞の遊走及び/又は増殖を促進する能力のアッセイ、並びに細胞
が血管新生を促進する因子を分泌する能力のアッセイがある。
【0127】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、1以上の第二のタイプの幹細胞、例えば、骨髄由
来間葉系幹細胞とともに投与することができる。そのような第二の幹細胞は、該増強胎盤
幹細胞とともに、例えば、約1:10~約10:1の比で、個体に投与することができる。
【0128】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、当技術分野で公知の任意の様式で、例えば、全身
的に、局所的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、眼内に、非経口的に、髄腔内に、又は
器官、例えば、膵臓に直接的に、個体に投与することができる。インビボ投与については
、増強胎盤幹細胞を、以下に記載されているような、医薬組成物として製剤化することが
できる。
【0129】
(5.3 増強胎盤幹細胞及び増強胎盤幹細胞集団)
本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、本明細書に記載の方法を用いて、胎盤幹細胞
から産生される。増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法によれば、本明
細書に記載の増強胎盤幹細胞は、1以上の生存関連遺伝子(本明細書で特定されるもの、例
えば、上の表1で特定される1以上の生存関連遺伝子)を、対応する未修飾の胎盤幹細胞に
おける同じ生存関連遺伝子の発現と比較して、減少又は増加したレベルで発現する(すな
わち、該1以上の生存関連遺伝子の発現は下方調節される)。
【0130】
胎盤幹細胞は、胎児起源又は母親起源のどちらかであることができる(すなわち、母親
又は胎児のどちらかの遺伝子型を有することができる)。胎盤幹細胞の集団、又は胎盤幹
細胞を含む細胞の集団は、もっぱら胎児起源もしくはもっぱら母親起源の胎盤幹細胞を含
むことができ、又は胎児起源と母親起源の両方の胎盤幹細胞の混合集団を含むことできる
。胎盤幹細胞、及び胎盤幹細胞を含む細胞の集団は、例えば、以下で論じられる形態的特
性、マーカー特性、及び培養特性によって特定し、選択することができる。
【0131】
(5.3.1 物理的及び形態的特性)
増強胎盤幹細胞を作製するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞は、初
代培養で又は細胞培養で培養したとき、組織培養基材、例えば、組織培養容器表面(例え
ば、組織培養プラスチック)に接着する。培養下の胎盤幹細胞は、いくつかの細胞質突起
が中央の細胞体から伸びている、全般的に線維芽細胞様の星状の外観をしている。しかし
ながら、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を作製するための方法で使用される胎盤幹細胞
は、線維芽細胞よりも多くの数のそのような突起を示すので、該胎盤幹細胞は、同じ条件
下で培養された線維芽細胞と形態的に区別できる。形態的に、胎盤幹細胞は、培養下で一
般により丸みを帯びた又は敷石状の形態を示す造血幹細胞とも区別できる。
【0132】
したがって、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、例えば、線維芽細胞及び造血幹細胞
とは異なる。さらに、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、特に、胎盤幹細胞の細胞死を
引き起こす条件に暴露され及び/又は該条件下で培養されたときに該細胞が生存する能力
に関して、増強胎盤幹細胞を作製するために使用される胎盤幹細胞(すなわち、未修飾の
胎盤幹細胞)とは異なる。
【0133】
(5.3.2 細胞表面マーカー、分子マーカー、及び遺伝子マーカー)
未修飾の胎盤幹細胞と同様に、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、増強胎盤幹細胞、
又は増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団を同定及び/又は単離するために使用することがで
きる複数のマーカーを発現する。一般に、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞と関連する同
定マーカーは、該増強胎盤幹細胞が由来する胎盤幹細胞(すなわち、増強胎盤幹細胞を作
製するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)を同定するために使用する
ことができるものと同じである。したがって、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、細胞
表面マーカー、分子マーカー、及び遺伝子マーカーに関して、未修飾の胎盤幹細胞と同等
であり、これらの細胞間の違いは、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞が、生存関連遺伝子
のうちの少なくとも1つ(例えば、上の表1で特定される遺伝子のうちの少なくとも1つ)を
、同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞における該遺伝子の発現と比べてより低いレベル
で発現すること、すなわち、少なくとも1つの生存関連遺伝子が、本明細書に記載の増強
胎盤幹細胞で下方調節/阻害される(その場合、該生存関連遺伝子は、未修飾の胎盤幹細胞
では下方調節/阻害されない)ことである。
【0134】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹細胞が由来する胎盤幹細胞と同様、
骨髄由来間葉系細胞でも、脂肪由来間葉系幹細胞でも、臍帯血、胎盤血、又は末梢血から
得られる間葉系細胞でもない。
【0135】
ある実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を
産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)は、フローサイトメトリ
ーによって検出したとき、CD34-、CD10+、及びCD105+である。具体的な実施態様において
、本明細書に記載の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤
幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)は、神経表現型
の細胞、骨表現型の細胞、及び/又は軟骨表現型の細胞に分化する潜在能力を有する。別
の具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎
盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される
胎盤幹細胞)はさらに、CD200+である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載
の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生する
ための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、CD45-又はCD90+である
。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増
強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用さ
れる胎盤幹細胞)はさらに、フローサイトメトリーによって検出したとき、CD45-及びCD90
+である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離されたCD34-、CD10+、C
D105+、CD200+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記
載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、フローサイトメトリーによって検出したと
き、CD90+又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離され
たCD34-、CD10+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するた
めの本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、フローサイトメトリーに
よって検出したとき、CD90+及びCD45-であり、すなわち、該細胞は、CD34-、CD10+、CD45
-、CD90+、CD105+、及びCD200+である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載
の該CD34-、CD10+、CD45-、CD90+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹
細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、CD80-及
びCD86-である。
【0136】
ある実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を
産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)は、フローサイトメトリ
ーによって検出したとき、CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+、かつCD38-、CD45-、CD80
-、CD86-、CD133-、HLA-DR,DP,DQ-、SSEA3-、SSEA4-、CD29+、CD44+、CD73+、CD90+、CD1
05+、HLA-A,B,C+、PDL1+、ABC-p+、及び/又はOCT-4+のうちの1つ又は複数である。他の実
施態様において、本明細書に記載のCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強
胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)のいずれか
はさらに、CD29+、CD38-、CD44+、CD54+、SH3+、又はSH4+のうちの1つ又は複数である。
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹
細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、CD44+で
ある。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離されたCD34-、CD10+、CD10
5+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使
用される胎盤幹細胞)のいずれかはさらに、CD117-、CD133-、KDR-(VEGFR2-)、HLA-A,B,C+
、HLA-DP,DQ,DR-、もしくはプログラム死-1リガンド(PDL1)+のうちの1つもしくは複数、
又はこれらの任意の組合せである。
【0137】
別の実施態様において、本明細書に記載のCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞(及び/
又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)は
さらに、CD13+、CD29+、CD33+、CD38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD62E-、CD62L-、CD62P-
、SH3+(CD73+)、SH4+(CD73+)、CD80-、CD86-、CD90+、SH2+(CD105+)、CD106/VCAM+、CD11
7-、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4-、CD200+、CD133-、OCT-4+、SSEA3-、SSEA4-
、ABC-p+、KDR-(VEGFR2-)、HLA-A,B,C+、HLA-DP,DQ,DR-、HLA-G-、もしくはプログラム死
-1リガンド(PDL1)+のうちの1つもしくは複数、又はこれらの任意の組合せである。別の実
施態様において、本明細書に記載のCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞(及び/又は増強
胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)はさらに、C
D13+、CD29+、CD33+、CD38-、CD44+、CD45-、CD54/ICAM+、CD62E-、CD62L-、CD62P-、SH3
+(CD73+)、SH4+(CD73+)、CD80-、CD86-、CD90+、SH2+(CD105+)、CD106/VCAM+、CD117-、C
D144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4-、CD200+、CD133-、OCT-4+、SSEA3-、SSEA4-、ABC
-p+、KDR-(VEGFR2-)、HLA-A,B,C+、HLA-DP,DQ,DR-、HLA-G-、及びプログラム死-1リガン
ド(PDL1)+である。
【0138】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤
幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)のいずれかはさ
らに、フローサイトメトリーによって検出したとき、ABC-p+であるか、又は逆転写酵素ポ
リメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって決定したとき、OCT-4+(POU5F1+)であり、ここで、A
BC-pは、胎盤特異的ABC輸送体タンパク質(乳癌耐性タンパク質(BCRP)又はミトキサントロ
ン耐性タンパク質(MXR)としても知られる)であり、OCT-4は、オクタマー-4タンパク質(PO
U5F1)である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/
又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)の
いずれかはさらに、フローサイトメトリーによって決定したとき、SSEA3-又はSSEA4-であ
り、ここで、SSEA3は、ステージ特異的胎児抗原3であり、SSEA4は、ステージ特異的胎児
抗原4である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/
又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)の
いずれかはさらに、SSEA3-及びSSEA4-である。
【0139】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤
幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)のいずれかは、M
HC-I+(例えば、HLA-A,B,C+)、MHC-II-(例えば、HLA-DP,DQ,DR-)、もしくはHLA-G-のうち
の1つもしくは複数であるか、又は本明細書に記載の増強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤
幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用される胎盤幹細胞)のいずれかはさ
らに、MHC-I+(例えば、HLA-A,B,C+)、MHC-II-(例えば、HLA-DP,DQ,DR-)、もしくはHLA-G-
のうちの1つもしくは複数である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増
強胎盤幹細胞(及び/又は増強胎盤幹細胞を産生するための本明細書に記載の方法で使用さ
れる胎盤幹細胞)のいずれかはさらに、MHC-I+(例えば、HLA-A,B,C+)、MHC-II-(例えば、H
LA-DP,DQ,DR-)、及びHLA-G-である。
【0140】
また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞の集団である。ある
実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の単離された増強胎盤幹
細胞を含む増強胎盤幹細胞の集団であり、ここで、該細胞の集団は、例えば、少なくとも
10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75
%、80%、85%、90%、95%、又は98%の単離されたCD10+、CD105+、及びCD34-増強胎盤
幹細胞を含む;すなわち、該集団内の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、3
5%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又
は98%は、単離されたCD10+、CD105+、及びCD34-増強胎盤幹細胞である。具体的な実施態
様において、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、CD200+である
。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+、CD200+増強胎盤
幹細胞はさらに、フローサイトメトリーによって検出したとき、CD90+又はCD45-である。
別の具体的な実施態様において、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+、CD200+増強胎盤幹
細胞はさらに、フローサイトメトリーによって検出したとき、CD90+及びCD45-である。別
の具体的な実施態様において、上記の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞の
いずれかはさらに、CD29+、CD38-、CD44+、CD54+、SH3+、又はSH4+のうちの1つ又は複数
である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹
細胞、又は単離されたCD34-、CD10+、CD105+、CD200+胎盤幹細胞はさらに、CD44+である
。上記の単離されたCD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団のいずれかの
具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD13+、CD29+、CD33
+、CD38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD62E-、CD62L-、CD62P-、SH3+(CD73+)、SH4+(CD73+)
、CD80-、CD86-、CD90+、SH2+(CD105+)、CD106/VCAM+、CD117-、CD144/VE-カドヘリンlow
、CD184/CXCR4-、CD200+、CD133-、OCT-4+、SSEA3-、SSEA4-、ABC-p+、KDR-(VEGFR2-)、H
LA-A,B,C+、HLA-DP,DQ,DR-、HLA-G-、もしくはプログラム死-1リガンド(PDL1)+のうちの1
つもしくは複数、又はこれらの任意の組合せである。別の具体的な実施態様において、該
CD34-、CD10+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、CD13+、CD29+、CD33+、CD38-、CD44+、C
D45-、CD54/ICAM+、CD62E-、CD62L-、CD62P-、SH3+(CD73+)、SH4+(CD73+)、CD80-、CD86-
、CD90+、SH2+(CD105+)、CD106/VCAM+、CD117-、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4-
、CD200+、CD133-、OCT-4+、SSEA3-、SSEA4-、ABC-p+、KDR-(VEGFR2-)、HLA-A,B,C+、HLA
-DP,DQ,DR-、HLA-G-、及びプログラム死-1リガンド(PDL1)+である。
【0141】
ある実施態様において、該細胞の集団内の単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+
、CD34-、CD38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH2+、SH3+、SH4+、SSEA3-、SSEA4-、OC
T-4+、及びABC-p+のうちの1つもしく複数、又は全てであり、ここで、該単離された増強
胎盤幹細胞を作製する方法で使用される該胎盤幹細胞は、胎盤組織の物理的及び/又は酵
素的破壊によって得られた。具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は
、OCT-4+及びABC-p+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細
胞は、OCT-4+及びCD34-であり、ここで、該単離された増強胎盤幹細胞は、以下の特徴: C
D10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH3+、SH4+、SSEA3-、及びSSEA4-のうちの
少なくとも1つを有する。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞
は、OCT-4+、CD34-、CD10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH3+、SH4+、SSEA3-
、及びSSEA4-である。別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+、
CD34-、SSEA3-、及びSSEA4-である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強
胎盤幹細胞は、OCT-4+及びCD34-であり、かつSH2+又はSH3+のどちらかである。別の具体
的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+、CD34-、SH2+、及びSH3
+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+、CD3
4-、SSEA3-、及びSSEA4-であり、かつSH2+又はSH3+のどちらかである。別の具体的な実施
態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+及びCD34-であり、かつSH2+又はS
H3+のどちらかであり、かつCD10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SSEA3-、又はS
SEA4-のうちの少なくとも1つである。別の具体的な実施態様において、該単離された増強
胎盤幹細胞は、OCT-4+、CD34-、CD10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SSEA3-、
及びSSEA4-であり、かつSH2+又はSH3+のどちらかである。
【0142】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、SH2+、SH3+、SH4+、及びOCT-
4+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD2
9+、CD44+、CD54+、CD90+、CD34-、CD45-、SSEA3-、又はSSEA4-である。別の実施態様に
おいて、該単離された増強胎盤幹細胞は、SH2+、SH3+、SH4+、SSEA3-、及びSSEA4-である
。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、SH2+、SH3+、SH4+、
SSEA3-、及びSSEA4-、CD10+、CD29+、CD44+、CD54+、CD90+、OCT-4+、CD34-、又はCD45-
である。
【0143】
別の実施態様において、本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+
、CD34-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH2+、SH3+、及びSH4+であり;ここで、該単離さ
れた増強胎盤幹細胞はさらに、OCT-4+、SSEA3-、又はSSEA4-のうちの1つ又は複数である
。
【0144】
ある実施態様において、単離された増強胎盤幹細胞は、CD200+又はHLA-G-である。具体
的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD200+及びHLA-G-である。別の
具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD73+及びCD105+で
ある。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、C
D38-、又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞
はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該増強胎
盤幹細胞は、CD34-、CD38-、CD45-、CD73+、及びCD105+である。別の具体的な実施態様に
おいて、該単離されたCD200+又はHLA-G-増強胎盤幹細胞は、胚様体様体の形成を可能にす
る条件下で、単離された胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団における胚様体様体の形成を促
進する。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹
細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該単離され
た増強胎盤幹細胞は、こうしたマーカーの組合せを示さない胎盤細胞から単離されている
。
【0145】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
CD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞を含む、例えば、CD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞が濃縮さ
れている、細胞の集団である。具体的な実施態様において、該集団は、胎盤細胞の集団で
ある。様々な実施態様において、該細胞集団内の細胞の少なくとも約10%、少なくとも約
20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%
は、単離されたCD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞である。好ましくは、該細胞集団内の細胞
の少なくとも約70%は、単離されたCD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞である。より好ましく
は、該細胞の少なくとも約90%、95%、又は99%は、単離されたCD200+、HLA-G-増強胎盤
幹細胞である。該細胞集団の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、HLA-G-増
強胎盤幹細胞はまた、CD73+及びCD105+である。別の具体的な実施態様において、該単離
されたCD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はまた、CD34-、CD38-、又はCD45-である。別の具
体的な実施態様において、該単離されたCD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はまた、CD34-、C
D38-、CD45-、CD73+、及びCD105+である。別の実施態様において、該細胞集団は、胚様体
様体の形成を可能にする条件下で培養したとき、1以上の胚様体様体を生成させる。別の
具体的な実施態様において、該細胞集団は、増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単離さ
れている。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、HLA-G-増強胎盤幹細胞
は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0146】
別の実施態様において、本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞は、CD73+、CD105
+、及びCD200+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は
、HLA-G-である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD34
-、CD38-、又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹
細胞は、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離され
た増強胎盤幹細胞は、CD34-、CD38-、CD45-、及びHLA-G-である。別の具体的な実施態様
において、単離されたCD73+、CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞は、該単離された増強
胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき
、該集団における1以上の胚様体様体の形成を促進する。別の具体的な実施態様において
、該単離された増強胎盤幹細胞は、該単離された増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単
離されている。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、これら
のマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0147】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
単離されたCD73+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞を含む、例えば、単離されたCD73+、CD
105+、CD200+増強胎盤幹細胞について濃縮されている、細胞の集団である。様々な実施態
様において、該細胞集団内の細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約
30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%は、単離されたCD73
+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞である。別の実施態様において、該細胞の集団内の該
細胞の少なくとも約70%は、単離されたCD73+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞である。
別の実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約90%、95%、又は99%は、
単離されたCD73+、CD105+、CD200+増強胎盤幹細胞である。該集団の具体的な実施態様に
おいて、該単離された増強胎盤幹細胞は、HLA-G-である。別の具体的な実施態様において
、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、又はCD45-である。別の具体的
な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-
である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-
、CD38-、CD45-、及びHLA-G-である。別の具体的な実施態様において、該細胞の集団は、
胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき、1以上の胚様体様体を生成させる
。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞の集団は、増強胎盤幹細胞ではない
胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞の集団
は、これらの特徴を示さない胎盤細胞から単離されている。
【0148】
ある他の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD34-、C
D38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH2+、SH3+、SH4+、SSEA3-、SSEA4-、OCT-4+、HLA-
G-、又はABC-p+のうちの1つ又は複数である。具体的な実施態様において、該単離された
増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD34-、CD38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH2+、
SH3+、SH4+、SSEA3-、SSEA4-、及びOCT-4+である。別の具体的な実施態様において、該単
離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD34-、CD38-、CD45-、CD54+、SH2+、SH3+、
及びSH4+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD10
+、CD29+、CD34-、CD38-、CD45-、CD54+、SH2+、SH3+、SH4+、及びOCT-4+である。別の具
体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD34-、CD38-
、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、HLA-G-、SH2+、SH3+、SH4+である。別の具体的な実施態
様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+及びABC-p+である。別の具体的な実
施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、SH2+、SH3+、SH4+、及びOCT-4+である
。別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+、CD34-、SSEA3-、及
びSSEA4-である。具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+、CD34-、SSEA3-、及
びSSEA4-増強胎盤幹細胞はさらに、CD10+、CD29+、CD34-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+
、SH2+、SH3+、及びSH4+である。別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は
、OCT-4+及びCD34-であり、かつSH3+又はSH4+のどちらかである。別の実施態様において
、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD34-であり、かつCD10+、CD29+、 CD44+、CD54+、CD
90+、又はOCT-4+のいずれかである。
【0149】
別の実施態様において、単離された増強胎盤幹細胞は、CD200+及びOCT-4+である。具体
的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD73+及びCD105+である。別の
具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、HLA-G-である。別の具体的
な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞は、CD34-、CD38-、又
はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤
幹細胞は、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離さ
れたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞は、CD34-、CD38-、CD45-、CD73+、CD105+、及びHLA-
G-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞
は、該増強胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培
養したとき、該集団による1以上の胚様体様体の生成を促進する。別の具体的な実施態様
において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹細胞ではない胎
盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-
4+増強胎盤幹細胞は、これらの特徴を示さない胎盤細胞から単離されている。
【0150】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
CD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞を含む、例えば、CD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞について
濃縮されている、細胞の集団である。様々な実施態様において、該細胞集団内の細胞の少
なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも
約50%、又は少なくとも約60%は、単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞である。別
の実施態様において、該細胞の少なくとも約70%は、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎
盤幹細胞である。別の実施態様において、該細胞集団内の細胞の少なくとも約80%、90%
、95%、又は99%は、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞である。該単離された
集団の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに
、CD73+及びCD105+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4
+増強胎盤幹細胞はさらに、HLA-G-である。別の具体的な実施態様において、該単離され
たCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体
的な実施態様において、該単離されたCD200+、OCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、C
D38-、CD45-、CD73+、CD105+、及びHLA-G-である。別の具体的な実施態様において、該細
胞集団は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき、1以上の胚様体様体を
生成させる。別の具体的な実施態様において、該細胞集団は、単離されたCD200+、OCT-4+
増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、
該細胞集団は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0151】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された増
強胎盤幹細胞は、CD73+、CD105+、及びHLA-G-である。別の具体的な実施態様において、
該単離されたCD73+、CD105+、及びHLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、又はC
D45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強
胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において
、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、OCT-4+である。別の具
体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに
、CD200+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-
増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、CD45-、OCT-4+、及びCD200+である。別の具体
的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞は、該増強
胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき
、該集団における胚様体様体の形成を促進する。別の具体的な実施態様において、該単離
されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞は、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増
強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該
単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞は、これらのマーカーを示さない胎盤
細胞から単離されている。
【0152】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
単離されたCD73+、CD105+、及びHLA-G-増強胎盤幹細胞を含む、例えば、単離されたCD73+
、CD105+、及びHLA-G-増強胎盤幹細胞について濃縮されている、細胞の集団である。様々
な実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少
なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%は、単離
されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞である。別の実施態様において、該細胞の
集団内の細胞の少なくとも約70%は、単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞
である。別の実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約90%、95%、又は
99%は、単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞である。上記の集団の具体的
な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、CD3
4-、CD38-、又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD1
05+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実
施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、OCT-4+
である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤
幹細胞はさらに、CD200+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、C
D105+、HLA-G-増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、CD45-、OCT-4+、及びCD200+であ
る。別の具体的な実施態様において、該細胞集団は、CD73+、CD105+、HLA-G-増強胎盤幹
細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該細胞集団
は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0153】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD73+及びCD105+であり、該C
D73+、CD105+細胞を含む単離された胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件
下で培養したとき、該集団における1以上の胚様体様体の形成を促進する。別の具体的な
実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-
、又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎
盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、
該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、OCT-4+である。別の具体的な実施
態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、OCT-4+、CD34-、CD
38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増
強胎盤幹細胞は、該細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様に
おいて、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞は、これらの特徴を示さない胎盤細
胞から単離されている。
【0154】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
CD73+、CD105+である単離された増強胎盤幹細胞を含む、例えば、CD73+、CD105+である単
離された増強胎盤幹細胞について濃縮されている、細胞の集団であり、該細胞を含む単離
された胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき、該集団に
おける1以上の胚様体様体の形成を促進する。様々な実施態様において、該細胞の集団内
の細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、
少なくとも約50%、又は少なくとも約60%は、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細
胞である。別の実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約70%は、該単離
されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞である。別の実施態様において、該細胞の集団内の
細胞の少なくとも約90%、95%、又は99%は、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細
胞である。上記の集団の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎
盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、
該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、及びCD45-である。
別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞はさらに、O
CT-4+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細
胞はさらに、CD200+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD73+、CD105
+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、CD45-、OCT-4+、及びCD200+である。別の具体
的な実施態様において、該細胞集団は、該単離されたCD73+、CD105+増強胎盤幹細胞では
ない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該細胞集団は、これ
らのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0155】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、OCT-4+であり、該増強胎盤幹
細胞を含む単離された胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養した
とき、該細胞の集団における1以上の胚様体様体の形成を促進する。具体的な実施態様に
おいて、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD73+及びCD105+である。別の具
体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、
又はCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞
はさらに、CD200+である。別の具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤
幹細胞はさらに、CD73+、CD105+、CD200+、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的
な実施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞は、OCT-4+増強胎盤幹細胞では
ない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+
増強胎盤幹細胞は、これらの特徴を示さない胎盤細胞から単離されている。
【0156】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
OCT-4+である単離された増強胎盤幹細胞を含む、例えば、OCT-4+である単離された増強胎
盤幹細胞について濃縮されている、細胞の集団であり、該細胞を含む単離された胎盤細胞
の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき、該集団における1以上の
胚様体様体の形成を促進する。様々な実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なく
とも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50
%、又は少なくとも約60%は、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞である。別の実施態様
において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約70%は、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹
細胞である。別の実施態様において、該細胞の集団内の細胞の少なくとも約80%、90%、
95%、又は99%は、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞である。上記の集団の具体的な実
施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD34-、CD38-、又はCD45
-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに
、CD34-、CD38-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該単離されたOCT-4
+増強胎盤幹細胞はさらに、CD73+及びCD105+である。別の具体的な実施態様において、該
単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD200+である。別の具体的な実施態様におい
て、該単離されたOCT-4+増強胎盤幹細胞はさらに、CD73+、CD105+、CD200+、CD34-、CD38
-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様において、該細胞集団は、該増強胎盤幹細胞
ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該細胞集団は、
これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0157】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された胎
盤幹細胞は、単離されたHLA-A,B,C+、CD45-、CD133-、及びCD34-増強胎盤幹細胞である。
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、単
離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団であり、ここで、該細胞の集団内の細胞の少な
くとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくと
も約99%は、単離されたHLA-A,B,C+、CD45-、CD133-、及びCD34-増強胎盤幹細胞である。
具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎盤幹細胞
の集団は、HLA-A,B,C+、CD45-、CD133-、及びCD34-増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から
単離されている。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、非母
親起源である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞の集団は、
母親成分を実質的に含まず;例えば、該単離された増強胎盤幹細胞の集団内の該細胞の少
なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%
、98%、又は99%は、非母親起源である。
【0158】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された増
強胎盤幹細胞は、単離されたCD10+、CD13+、CD33+、CD45-、CD117-、及びCD133-増強胎盤
幹細胞である。別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な
細胞集団は、単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団であり、ここで、該細胞の集団
内の細胞の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%
、又は少なくとも約99%は、単離されたCD10+、CD13+、CD33+、CD45-、CD117-及びCD133-
増強胎盤幹細胞である。具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単
離された増強胎盤幹細胞の集団は、該単離された増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単
離されている。別の具体的な実施態様において、該単離されたCD10+、CD13+、CD33+、CD4
5-、CD117-、及びCD133-増強胎盤幹細胞は、非母親起源である、すなわち、胎児表現型を
有する。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞の集団内の該細胞
の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、
95%、98%、又は99%は、非母親起源である。別の具体的な実施態様において、該単離さ
れた増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎盤幹細胞の集団は、これらの特徴を示さない胎
盤細胞から単離されている。
【0159】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、単離されたCD10+、CD33-、CD
44+、CD45-、及びCD117-増強胎盤幹細胞である。別の実施態様において、本明細書に記載
の方法及び組成物において有用な細胞集団は、単離された増強胎盤幹細胞を含む、例えば
、単離された増強胎盤幹細胞について濃縮された、細胞の集団であり、ここで、該細胞の
集団内の細胞の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約
95%、又は少なくとも約99%は、単離されたCD10+、CD33-、CD44+、CD45-、及びCD117-増
強胎盤幹細胞である。具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単離
された増強胎盤幹細胞の集団は、該細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体
的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、非母親起源である。別の具体的
な実施態様において、該細胞集団内の該増強胎盤幹細胞の少なくとも約40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%、又は99%は、非母親
起源である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単離され
た増強胎盤幹細胞の集団は、これらのマーカーを示さない胎盤細胞から単離されている。
【0160】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された増
強胎盤幹細胞は、単離されたCD10+、CD13-、CD33-、CD45-、及びCD117-増強胎盤幹細胞で
ある。別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団
は、単離されたCD10+、CD13-、CD33-、CD45-、及びCD117-増強胎盤幹細胞を含む、例えば
、単離されたCD10+、CD13-、CD33-、CD45-、及びCD117-増強胎盤幹細胞について濃縮され
た、細胞の集団であり、ここで、該集団内の細胞の少なくとも約70%、少なくとも約80%
、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%は、CD10+、CD13-、CD33
-、CD45-、及びCD117-増強胎盤幹細胞である。具体的な実施態様において、該単離された
増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎盤幹細胞の集団は、該増強胎盤幹細胞ではない胎盤
細胞から単離されている。別の具体的な実施態様において、該単離された胎盤細胞は、非
母親起源である。別の具体的な実施態様において、該細胞集団内の該細胞の少なくとも約
40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%、又
は99%は、非母親起源である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹
細胞又は単離された増強胎盤幹細胞の集団は、これらの特徴を示さない胎盤細胞から単離
されている。
【0161】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された増
強胎盤幹細胞は、HLA A,B,C+、CD45-、CD34-、及びCD133-であり、さらに、CD10+、CD13+
、CD38+、CD44+、CD90+、CD105+、CD200+、及び/もしくはHLA-G-であり、並びに/又はCD1
17について陰性である。別の実施態様において、本明細書に記載の方法において有用な細
胞集団は、単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団であり、ここで、該集団内の該細
胞の少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%
、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は約99%は、HLA A,B,C-、CD45-、CD34-、CD
133-であり、さらに、CD10、CD13、CD38、CD44、CD90、CD105、CD200について陽性であり
、並びに/又はCD117及び/もしくはHLA-Gについて陰性である、単離された増強胎盤幹細胞
である。具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎
盤幹細胞の集団は、該増強胎盤幹細胞ではない胎盤細胞から単離されている。別の具体的
な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、非母親起源である。別の具体的な
実施態様において、該細胞集団内の該増強胎盤幹細胞の少なくとも約40%、45%、50%、
55%、60%、65%、70%、75%、90%、85%、90%、95%、98%、又は99%は、非母親起
源である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞又は単離された
増強胎盤幹細胞の集団は、これらの特徴を示さない胎盤細胞から単離されている。
【0162】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、抗体結合によって決定したと
き、CD200+及びCD10+であり、かつ抗体結合とRT-PCRの両方によって決定したとき、CD117
-である単離された増強胎盤幹細胞である。別の実施態様において、該単離された増強胎
盤幹細胞は、CD10+、CD29-、CD54+、CD200+、HLA-G-、MHCクラスI+、及びβ-2-ミクログ
ロブリン+である単離された胎盤幹細胞である。別の実施態様において、本明細書に記載
の方法及び組成物において有用な単離された増強胎盤幹細胞は、増強胎盤幹細胞であり、
ここで、少なくとも1つの細胞マーカーの発現は、同等数の間葉系幹細胞、例えば、骨髄
由来間葉系幹細胞での発現よりも少なくとも2倍高い。別の具体的な実施態様において、
該単離された増強胎盤幹細胞は、非母親起源である。別の具体的な実施態様において、該
細胞集団内の該細胞の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、
90%、85%、90%、95%、98%、又は99%は、非母親起源である。
【0163】
別の実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD44+、CD45-
、CD54/ICAM+、CD62E-、CD62L-、CD62P-、CD80-、CD86-、CD103-、CD104-、CD105+、CD10
6/VCAM+、CD144/VE-カドヘリンlow、CD184/CXCR4-、β2-ミクログロブリンlow、MHC-Ilow
、MHC-II-、HLA-Glow、及び/又はPDL1lowのうちの1つ又は複数である単離された増強胎盤
幹細胞である。具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、少なくとも
CD29+及びCD54+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は
、少なくともCD44+及びCD106+である。別の具体的な実施態様において、該単離された増
強胎盤幹細胞は、少なくともCD29+である。
【0164】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な細胞集団は、
単離された増強胎盤幹細胞を含み、該細胞集団内の細胞の少なくとも50%、60%、70%、
80%、90%、95%、98%、又は99%は、CD10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54/ICAM+、CD62
-E-、CD62-L-、CD62-P-、CD80-、CD86-、CD103-、CD104-、CD105+、CD106/VCAM+、CD144/
VE-カドヘリンdim、CD184/CXCR4-、β2-ミクログロブリンdim、HLA-Idim、HLA-II-、HLA-
Gdim、及び/又はPDL1dim増強胎盤幹細胞のうちの1つ又は複数である単離された増強胎盤
幹細胞である。別の具体的な実施態様において、該細胞集団内の細胞の少なくとも50%、
60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%は、CD10+、CD29+、CD44+、CD45-、CD54
/ICAM+、CD62-E-、CD62-L-、CD62-P-、CD80-、CD86-、CD103-、CD104-、CD105+、CD106/V
CAM+、CD144/VE-カドヘリンdim、CD184/CXCR4-、β2-ミクログロブリンdim、MHC-Idim、M
HC-II-、HLA-Gdim、及びPDL1dim増強胎盤幹細胞である。ある実施態様において、該増強
胎盤幹細胞は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)によって誘導されたとき、HLA-IIマーカ
ーを発現する。
【0165】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物において有用な単離された増
強胎盤幹細胞は、CD10+、CD29+、CD34-、CD38-、CD44+、CD45-、CD54+、CD90+、SH2+、SH
3+、SH4+、SSEA3-、SSEA4-、OCT-4+、及びABC-p+(ここで、ABC-pは、胎盤特異的ABC輸送
体タンパク質(乳癌耐性タンパク質(BCRP)又はミトキサントロン耐性タンパク質(MXR)とし
ても知られている)である)のうちの1つもしく複数、又は全てである、単離された増強胎
盤幹細胞であり、ここで、該単離された増強胎盤幹細胞は、臍帯血が抜かれ、かつ残留血
液を取り除くように灌流された、哺乳動物、例えば、ヒトの胎盤の灌流によって得られる
胎盤幹細胞に由来する。
【0166】
上記の実施態様のいずれかの別の具体的な実施態様において、列挙された細胞マーカー
(複数可)(例えば、分化マーカー又は免疫原性マーカー(複数可)のクラスター)の発現は、
フローサイトメトリーによって決定される。別の具体的な実施態様において、該マーカー
(複数可)の発現は、RT-PCRによって決定される。
【0167】
遺伝子プロファイリングにより、単離された増強胎盤幹細胞、及び単離された増強胎盤
幹細胞の集団が、他の細胞、例えば、間葉系幹細胞、例えば、骨髄由来間葉系幹細胞と区
別可能であることが確認される。本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞は、その発
現が、単離された増強胎盤幹細胞において、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、有意によ
り高い1以上の遺伝子の発現に基づいて、例えば、骨髄由来間葉系幹細胞と区別すること
ができる。特に、本明細書に提供される治療の方法において有用な単離された増強胎盤幹
細胞は、細胞を同等の条件下で成長させたとき、その発現が、単離された増強胎盤幹細胞
において、同等数の骨髄由来間葉系幹細胞よりも有意に高い(すなわち、少なくとも2倍高
い)1以上の遺伝子の発現に基づいて、骨髄由来間葉系幹細胞と区別することができ、ここ
で、該1以上の遺伝子は、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、C11orf9、CD
200、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR1
26、GPRC5B、ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2
、MEST、NFE2L3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、ST3GAL6、ST6GALNAC5
、SLC12A8、TCF21、TGFB2、VTN、ZC3H12A、又は前述のもののいずれかの組合せを含む。
例えば、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2007
/0275362号を参照されたい。ある具体的な実施態様において、該1以上の遺伝子の該発現
は、例えば、RT-PCR、又は例えば、U133-Aマイクロアレイ(Affymetrix)を用いるマイクロ
アレイ解析によって決定される。
【0168】
別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、DMEM-LG(例えば、Gi
bco製); 2%胎仔ウシ血清(例えば、Hyclone Labs製); 1×インスリン-トランスフェリン-
セレン(ITS); 1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA); 10-9Mデキサメタゾン(例え
ば、Sigma製); 10-4Mアスコルビン酸2-リン酸(例えば、Sigma製);上皮成長因子10ng/mL(
例えば、R&D Systems製);及び血小板由来成長因子(PDGF-BB) 10ng/mL(例えば、R&D Syste
ms製)を含む培地中で、何回かの集団倍加、例えば、約3~約35回の集団倍加の間、培養し
たとき、該1以上の遺伝子を発現する。別の具体的な実施態様において、胎盤細胞特異的
な遺伝子は、CD200である。
【0169】
これらの遺伝子の具体的な配列は、2008年3月現在、GenBankにおいて、受託番号NM_001
615(ACTG2)、BC065545(ADARB1)、(NM_181847(AMIGO2)、AY358590(ARTS-1)、BC074884(B4G
ALT6)、BC008396(BCHE)、BC020196(C11orf9)、BC031103(CD200)、NM_001845(COL4A1)、NM
_001846(COL4A2)、BC052289(CPA4)、BC094758(DMD)、AF293359(DSC3)、NM_001943(DSG2)
、AF338241(ELOVL2)、AY336105(F2RL1)、NM_018215(FLJ10781)、AY416799(GATA6)、BC075
798(GPR126)、NM_016235(GPRC5B)、AF340038(ICAM1)、BC000844(IER3)、BC066339(IGFBP7
)、BC013142(IL1A)、BT019749(IL6)、BC007461(IL18)、(BC072017) KRT18、BC075839(KRT
8)、BC060825(LIPG)、BC065240(LRAP)、BC010444(MATN2)、BC011908(MEST)、BC068455(NF
E2L3)、NM_014840(NUAK1)、AB006755(PCDH7)、NM_014476(PDLIM3)、BC126199(PKP-2)、BC
090862(RTN1)、BC002538(SERPINB9)、BC023312(ST3GAL6)、BC001201(ST6GALNAC5)、BC126
160又はBC065328(SLC12A8)、BC025697(TCF21)、BC096235(TGFB2)、BC005046(VTN)、及びB
C005001(ZC3H12A)に見出すことができる。
【0170】
ある具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、該細胞を同等の条件
下で成長させたとき、ACTG2、ADARB1、AMIGO2、ARTS-1、B4GALT6、BCHE、C11orf9、CD200
、COL4A1、COL4A2、CPA4、DMD、DSC3、DSG2、ELOVL2、F2RL1、FLJ10781、GATA6、GPR126
、GPRC5B、ICAM1、IER3、IGFBP7、IL1A、IL6、IL18、KRT18、KRT8、LIPG、LRAP、MATN2、
MEST、NFE2L3、NUAK1、PCDH7、PDLIM3、PKP2、RTN1、SERPINB9、ST3GAL6、ST6GALNAC5、S
LC12A8、TCF21、TGFB2、VTN、及びZC3H12Aの各々を、同等数の骨髄由来間葉系幹細胞より
も検出可能な程度に高いレベルで発現する。
【0171】
具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、CD200及びARTS1(1型腫瘍壊死因子の
アミノペプチダーゼ調節因子); ARTS-1及びLRAP(白血球由来アルギニンアミノペプチダー
ゼ); IL6(インターロイキン-6)及びTGFB2(形質転換成長因子、β2); IL6及びKRT18(ケラ
チン18); IER3(前初期応答(immediate early response)3)、MEST(中胚葉特異的転写物ホ
モログ)及びTGFB2; CD200及びIER3; CD200及びIL6; CD200及びKRT18; CD200及びLRAP; CD
200及びMEST; CD200及びNFE2L3(核因子(赤血球由来2)様3);又はCD200及びTGFB2を、同等
数の骨髄由来間葉系幹細胞よりも検出可能な程度に高いレベルで発現し、ここで、該骨髄
由来間葉系幹細胞は、該単離された胎盤幹細胞が経た継代数と同等の培養継代数を経たも
のである。他の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、ARTS-1、CD200、IL6、
及びLRAP; ARTS-1、IL6、TGFB2、IER3、KRT18、及びMEST ;CD200、IER3、IL6、KRT18、LR
AP、MEST、NFE2L3、及びTGFB2; ARTS-1、CD200、IER3、IL6、KRT18、LRAP、MEST、NFE2L3
、及びTGFB2;又はIER3、MEST、及びTGFB2を、同等数の骨髄由来間葉系幹細胞よりも検出
可能な程度に高いレベルで発現し、ここで、該骨髄由来間葉系幹細胞は、該単離された増
強胎盤幹細胞が経た継代数と同等の培養継代数を経たものである。
【0172】
上に言及した遺伝子の発現は、標準的な技術によって評価することができる。例えば、
遺伝子(複数可)の配列に基づくプローブを個々に選択し、従来の技術によって構築するこ
とができる。該遺伝子の発現は、例えば、該遺伝子のうちの1つ又は複数に対するプロー
ブを含むマイクロアレイ、例えば、Affymetrix GENECHIP(登録商標)ヒトゲノムU133A 2.0
アレイ又はAffymetrix GENECHIP(登録商標)ヒトゲノムU133 Plus 2.0(Santa Clara, Cali
fornia)で評価することができる。これらの遺伝子の発現は、特定のGenBank受託番号の配
列が修正された場合でも評価することができる。なぜなら、修正された配列に特異的なプ
ローブを、周知の標準的な技術を用いてすぐに作製することができるからである。
【0173】
これらの遺伝子の発現のレベルを用いて、単離された増強胎盤幹細胞の集団の素性を確
認するか、細胞の集団が少なくとも複数の単離された増強胎盤幹細胞を含むものであるこ
とを確認するか、又は同様のことを行うことができる。その素性が確認される単離された
増強胎盤幹細胞の集団は、クローン性であり、例えば、単一の単離された増強胎盤幹細胞
から拡大された単離された増強胎盤幹細胞の集団、又は増強胎盤幹細胞の混合集団、例え
ば、複数の単離された増強胎盤幹細胞から拡大される単離された増強胎盤幹細胞を含む細
胞の集団、もしくは本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞と少なくとも1つの他の
タイプの細胞とを含む細胞の集団であることができる。
【0174】
これらの遺伝子の発現のレベルを用いて、単離された増強胎盤幹細胞の集団を選択する
ことができる。例えば、細胞の集団、例えば、クローン性に拡大された増強胎盤幹細胞は
、上記の遺伝子のうちの1つ又は複数の発現が、該細胞の集団由来の試料において、骨髄
由来間葉系幹細胞の同等の集団よりも有意に高い場合に選択することができる。そのよう
な選択は、複数の単離された増強胎盤幹細胞集団由来の集団、その素性が不明である複数
の細胞集団由来の集団などについてのものであることができる。
【0175】
単離された増強胎盤幹細胞は、例えば、骨髄由来間葉系幹細胞対照における1以上のそ
のような遺伝子の発現のレベルと比較したときの、該1以上の遺伝子の発現のレベルに基
づいて選択することができる。一実施態様において、同等数の骨髄由来間葉系幹細胞を含
む試料における該1以上の遺伝子の発現のレベルが対照として使用される。別の実施態様
において、ある条件下で試験される、単離された増強胎盤幹細胞に対する対照は、該条件
下での骨髄由来間葉系幹細胞における該1以上の遺伝子の発現のレベルを表す数値である
。
【0176】
同様に、生存関連遺伝子の発現を用いて、単離された増強胎盤幹細胞の集団を選択する
ことができる。例えば、細胞の集団、例えば、クローン性に拡大された増強胎盤幹細胞は
、1以上の生存関連遺伝子(例えば、本明細書に記載の1以上の生存関連遺伝子)の発現が、
該細胞の集団由来の試料において、未修飾の胎盤幹細胞の同等の集団と比べて増加又は減
少している場合に選択することができる。
【0177】
本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞は、初代培養下、又は例えば、DMEM-LG(Gi
bco)、2%胎仔ウシ血清(FCS)(Hyclone Laboratories)、1×インスリン-トランスフェリン
-セレン(ITS)、1×リノール酸-ウシ血清アルブミン(LA-BSA)、10-9Mデキサメタゾン(Sigm
a)、10-4Mアスコルビン酸2-リン酸(Sigma)、上皮成長因子(EGF) 10ng/ml(R&D Systems)、
血小板由来成長因子(PDGF-BB) 10ng/ml(R&D Systems)、及び100Uペニシリン/1000Uストレ
プトマイシンを含む培地中での増殖中に、上記の特徴(例えば、細胞表面マーカー及び/又
は遺伝子発現プロファイルの組合せ)を示す。
【0178】
本明細書に開示される増強胎盤幹細胞のいずれかのある実施態様において、該細胞は、
ヒトである。本明細書に開示される増強胎盤幹細胞のいずれかのある実施態様において、
該細胞マーカー特徴又は遺伝子発現特徴は、ヒトマーカー又はヒト遺伝子である。
【0179】
単離された増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団の別の具体
的な実施態様において、該細胞又は集団は、拡大されたものであり、例えば、少なくとも
、約、もしくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17
、18、19、もしくは20回継代されたものであるか、又は少なくとも、約、もしくは多くと
も1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34
、36、38、もしくは40回の集団倍加の間、増殖させられたものである。該単離された増強
胎盤幹細胞又は該単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団の別の具体的な実施態様に
おいて、該細胞又は集団は、初代分離株である。本明細書に開示される、単離された増強
胎盤幹細胞、又は単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団の別の具体的な実施態様に
おいて、該単離された増強胎盤幹細胞は、胎児起源である(すなわち、胎児の遺伝子型を
有する)。
【0180】
ある実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、成長培地、すなわち、増殖を
促進するように調合された培地中での培養中、例えば、成長培地中での増殖中には分化し
ない。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹細胞は、増殖するために
フィーダー層を必要としない。別の具体的な実施態様において、該単離された増強胎盤幹
細胞は、フィーダー細胞層が存在しないというだけの理由で、フィーダー層の非存在下の
培養では分化しない。
【0181】
別の実施態様において、単離された増強胎盤幹細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活
性アッセイによって評価したとき、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)について陽性であ
る。そのようなアッセイは、当技術分野で公知である(例えば、Bostian及びBettsの文献
、Biochem.J., 173, 787(1978)を参照されたい)。具体的な実施態様において、該ALDHア
ッセイは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性のマーカーとして、ALDEFLUOR(登録商標)(Al
dagen社, Ashland, Oregon)を使用する。具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞の
約3%~約25%がALDHについて陽性である。別の実施態様において、該単離された増強胎
盤幹細胞は、ほぼ同じ細胞数を有しかつ同じ条件下で培養された骨髄由来間葉系幹細胞の
集団よりも少なくとも3倍、又は少なくとも5倍高いALDH活性を示す。
【0182】
本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団のいずれかのある実施態
様において、該細胞の集団内の増強胎盤幹細胞は、母親の遺伝子型を有する細胞を実質的
に含まず;例えば、該集団内の増強胎盤幹細胞の少なくとも40%、45%、50%、55%、60
%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%は、胎児の遺伝子型を
有する。本明細書に記載の単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団のいずれかのある
他の実施態様において、該増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団は、母親の遺伝子型を有する
細胞を実質的に含まず;例えば、該集団内の細胞の少なくとも40%、45%、50%、55%、6
0%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%は、胎児の遺伝子型
を有する。
【0183】
上記の単離された増強胎盤幹細胞又は単離された増強胎盤幹細胞を含む細胞集団のいず
れかの具体的な実施態様において、該細胞、例えば、該細胞の全て、又は該集団内の該細
胞の少なくとも約95%もしくは約99%の核型は、正常である。上記の増強胎盤幹細胞又は
増強胎盤幹細胞の集団のいずれかの別の具体的な実施態様において、増強胎盤幹細胞は、
非母親起源である。
【0184】
本明細書に開示される胎盤細胞の実施態様のいずれかの具体的な実施態様において、胎
盤細胞は遺伝的に安定であり、正常な2倍体染色体数及び正常な核型を示す。
【0185】
上記のマーカーの組合せのいずれかを有する単離された増強胎盤幹細胞又は単離された
増強胎盤幹細胞の集団を、任意の比で組み合わせることができる。上記の単離された増強
胎盤幹細胞集団のうちのいずれか2つ以上を組み合わせて、単離された増強胎盤幹細胞集
団を形成させることができる。例えば、単離された増強胎盤幹細胞の集団は、上記のマー
カー組合せのうちのあるものによって定義される単離された増強胎盤幹細胞の第一の集団
と、上記のマーカー組合せのうちの別のものによって定義される単離された増強胎盤幹細
胞の第二の集団とを含むことができ、ここで、該第一の集団と第二の集団は、約1:99、2:
98、3:97、4:96、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90
:10、95:5、96:4、97:3、98:2、又は約99:1の比で組み合わされる。同様に、上記の単離
された増強胎盤幹細胞又は単離された胎盤幹細胞集団のうちのいずれか3つ、4つ、5つ、
又はそれより多くを組み合わせることができる。
【0186】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を作製するための方法において有用な単離された胎盤
幹細胞は、例えば、酵素的消化もしくは灌流を伴うか又はこれらを伴わない胎盤組織の破
壊によって得ることができる。例えば、単離された胎盤幹細胞の集団は、臍帯血が抜かれ
、かつ残留血液を取り除くように灌流された哺乳動物胎盤を灌流すること;該胎盤を灌流
溶液で灌流すること;及び該灌流溶液を回収すること(ここで、灌流後の該灌流溶液は、単
離された胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を含む);及び該細胞の集団から該胎盤幹細胞を
単離することを含む方法に従って産生することができる。具体的な実施態様において、灌
流溶液を臍帯静脈と臍帯動脈の両方に通し、それが胎盤から浸出した後に回収する。別の
具体的な実施態様において、灌流溶液を臍帯静脈に通して臍帯動脈から回収するか、又は
臍帯動脈に通して臍帯静脈から回収する。
【0187】
様々な実施態様において、胎盤の灌流から得られる細胞の集団内に含まれる、本明細書
に記載の増強胎盤幹細胞を作製するための方法において有用な単離された胎盤幹細胞は、
該胎盤幹細胞の集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少な
くとも99.5%である。別の具体的な実施態様において、灌流によって回収される単離され
た胎盤幹細胞は、胎児細胞と母親細胞を含む。別の具体的な実施態様において、灌流によ
って回収される単離された胎盤幹細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95
%、99%、又は少なくとも99.5%胎児の細胞である。
【0188】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、灌流によって回収される
(単離される)、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を作製するための方法において有用な単
離された胎盤幹細胞の集団を含む組成物であり、ここで、該組成物は、胎盤幹細胞を単離
するために使用される灌流溶液の少なくとも一部を含む。
【0189】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を作製するための方法において有用な単離された胎盤
幹細胞の集団は、組織破壊酵素で胎盤組織を消化して、胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団
を得ること、及び該胎盤細胞の残りから複数の胎盤幹細胞を単離すること、又は実質的に
単離することにより産生することができる。胎盤の全体又は任意の部分を消化して、本明
細書に記載の単離された胎盤幹細胞を得ることができる。具体的な実施態様において、例
えば、該胎盤組織は、全胎盤(例えば、臍帯を含む)、羊膜、絨毛膜、羊膜と絨毛膜の組合
せ、又は前述のもののいずれかの組合せであることができる。他の具体的な実施態様にお
いて、組織破壊酵素は、トリプシン又はコラゲナーゼである。様々な実施態様において、
胎盤を消化することにより得られる細胞の集団に含まれる単離された胎盤幹細胞は、該胎
盤細胞の集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも
99.5%である。
【0190】
上記の単離された増強胎盤幹細胞の集団、及び単離された増強胎盤幹細胞の集団は、通
常、約、少なくとも、又は多くとも1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、
1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、又はそれより多くの
単離された胎盤幹細胞を含むことができる。本明細書に記載の方法及び組成物において有
用な単離された増強胎盤幹細胞の集団は、例えば、トリパンブルー排出によって、例えば
決定したとき、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%、98%、又は99%の生存している単離された増強胎盤幹細胞を含む。
【0191】
上記の胎盤幹細胞、又は胎盤幹細胞の集団(例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞
を産生する方法において有用な未修飾の胎盤幹細胞、もしくは本明細書に記載の増強胎盤
幹細胞、又はこれらの組成物)のいずれかについて、胎盤幹細胞の細胞又は集団は、少な
くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、もしくは20回、又はそれより
多く継代されたか、或いは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、2
4、26、28、30、32、34、36、38、もしくは40回、又はそれより多くの集団倍加の間拡大
された細胞であり、或いはこれらの細胞を含むことができる。
【0192】
上記の胎盤幹細胞又は胎盤幹細胞集団(例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産
生する方法において有用な未修飾の胎盤幹細胞、もしくは本明細書に記載の増強胎盤幹細
胞、又はこれらの組成物)のいずれかの具体的な実施態様において、該細胞、又は該集団
内の細胞の少なくとも約95%もしくは約99%の核型は、正常である。上記の胎盤幹細胞又
は胎盤幹細胞集団(例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産生する方法において有
用な未修飾の胎盤幹細胞、もしくは本明細書に記載の増強胎盤幹細胞、又はこれらの組成
物)のいずれかの別の具体的な実施態様において、該細胞、又は該細胞の集団内の細胞は
、非母親起源である。
【0193】
上記のマーカーの組合せのいずれかを有する単離された胎盤幹細胞又は単離された胎盤
幹細胞の集団(例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産生する方法において有用な
未修飾の胎盤幹細胞、もしくは本明細書に記載の増強胎盤幹細胞、又はこれらの組成物)
を任意の比で組み合わせることができる。上記の胎盤幹細胞集団のいずれか2つ以上を単
離又は濃縮して、胎盤幹細胞集団を形成させることができる。例えば、上記のマーカー組
合せのうちのあるものによって定義される胎盤幹細胞の第一の集団を含む単離された胎盤
幹細胞の集団を、上記のマーカー組合せのうちの別のものによって定義される胎盤幹細胞
の第二の集団と組み合わせることができ、ここで、該第一の集団と第二の集団は、約1:99
、2:98、3:97、4:96、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20
、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、又は約99:1の比で組み合わされる。同様に、上記の
胎盤幹細胞又は胎盤幹細胞集団のうちのいずれか3つ、4つ、5つ、又はそれより多くを組
み合わせることができる。
【0194】
上記の胎盤幹細胞(例えば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を産生する方法において
有用な未修飾の胎盤幹細胞、もしくは本明細書に記載の増強胎盤幹細胞、又はこれらの組
成物)の具体的な実施態様において、胎盤幹細胞は、IL-6、IL-8、及び単球走化性タンパ
ク質(MCP-1)を構成的に分泌する。
【0195】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法において有用な増強胎盤幹細胞は、
1~100ng/mLのVEGFへの4~21日間の暴露後に、免疫局在化によって検出したとき、CD34を
発現しない。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、例えば、血管内皮成
長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、又は塩基性線維芽細胞
成長因子(bFGF)などの血管新生因子の存在下、例えば、MATRIGEL(商標)などの基材上で培
養したとき、内皮細胞が新芽又は管状構造を形成するのを誘導する。
【0196】
別の態様において、本明細書に提供される増強胎盤幹細胞、或いは細胞の集団、例えば
、増強胎盤幹細胞の集団、又は該細胞の集団内の細胞の少なくとも約50%、60%、70%、
80%、90%、95%、もしくは98%が増強胎盤幹細胞である細胞の集団は、VEGF、HGF、IL-
8、MCP-3、FGF2、フォリスタチン、G-CSF、EGF、ENA-78、GRO、IL-6、MCP-1、PDGF-BB、T
IMP-2、uPAR、又はガレクチン-1のうちの1つもしく複数、又は全てを、例えば、1つ又は
複数の細胞が成長する培養培地中に分泌する。別の実施態様において、該増強胎盤幹細胞
は、低酸素条件(例えば、約5%未満のO2)下で、正常酸素条件(例えば、約20%又は約21%
O2)と比較して増加したレベルのCD202b、IL-8、及び/又はVEGFを発現する。
【0197】
別の実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞又は増強胎盤幹細胞を含む細
胞の集団のいずれかは、該増強胎盤幹細胞と接触している内皮細胞の集団における新芽又
は管状構造の形成を引き起こすことができる。具体的な実施態様において、該増強胎盤幹
細胞は、ヒト内皮細胞と共培養され、これにより、例えば、I型及びIV型コラーゲンなど
の細胞外マトリクスタンパク質、並びに/又は血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EG
F)、血小板由来成長因子(PDGF)、もしくは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの血管新
生因子の存在下、例えば、胎盤コラーゲン又はMATRIGEL(商標)などの基材中又は該基材上
で、少なくとも4日間培養したとき、新芽もしくは管状構造が形成され、又は内皮細胞新
芽の形成が支持される。別の実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む
細胞の集団のいずれかは、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来
成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、又はインターロイキン-8(IL-8)など
の血管新生因子を分泌し、それにより、I型及びIV型コラーゲンなどの細胞外マトリクス
タンパク質の存在下、例えば、胎盤コラーゲン又はMATRIGEL(商標)などの基材中又は該基
材上で培養したとき、ヒト内皮細胞が新芽又は管状構造を形成するのを誘導することがで
きる。
【0198】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を含む上記の細胞の集団のいずれかは、血管新
生因子を分泌する。具体的な実施態様において、該細胞の集団は、血管内皮成長因子(VEG
F)、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF
)、及び/又はインターロイキン-8(IL-8)を分泌する。他の具体的な実施態様において、増
強胎盤幹細胞を含む細胞の集団は、1以上の血管新生因子を分泌し、それにより、ヒト内
皮細胞がインビトロ創傷治癒アッセイで遊走するのを誘導する。他の具体的な実施態様に
おいて、増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団は、ヒト内皮細胞、内皮前駆細胞、筋細胞、又
は筋芽細胞の成熟、分化、又は増殖を誘導する。
【0199】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞及び増強胎盤幹細
胞の集団であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、前述の特徴のいずれかを含み(例えば、C
D34-、CD10+、CD105+、及びCD200+であり)、かつ少なくとも1つの生存関連遺伝子が、同
等数の未修飾の胎盤幹細胞(例えば、未修飾のCD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+胎盤幹
細胞)における該生存関連遺伝子の発現のレベルと比べて、該増強胎盤幹細胞で下方調節/
阻害されている。具体的な実施態様において、該少なくとも1つの生存関連遺伝子は、ADA
MTS9、ABCF2、DNAJB4、MYB、RTN4、ANLN、BACE1、ABHD10、EGFR、NAA15、SEC24A MAP2K1
、BCL2、ACTR1A、EIF4E、NAA25、SHOC2、CCNF、CAV2、ACVR2A、EPT1、NAPG、SLC12A2、CD
C14A、CD276、ADSS、FGF2、NOB1、SLC16A3、CDC25A、CDC42、ALG3、FNDC3B、NOTCH2、SLC
25A22、CHEK1、CDK6、ARHGDIA、GALNT7、SLC38A5、CUL2、COL3A1、ARL2、GPAM、PDCD4、S
LC7A1、FGFR1、COL4A1、ATG9A、HACE1、PDCD6IP、SNX15、ITPR1、COL4A2、PLAG1、HARS、
PHKB、SPTLC1、KIF23、CPEB3、C9ORF167/TOR4A、HARS2、PISD、SQSTM1、TRIM63、CXXC6/T
ET1、C9ORF89、HERC6、PLK1、SRPR、CSHL1、DIABLO、CACNA2D1、HMGA1、PNN、SRPRB、WEE
1、DNMT3A、CAPRIN1、HSDL2、PNPLA6、TMEM43、MLLT1、DNMT3B、CCDC109A/MCU、IGF2R、P
PIF、TNFSF9、MMS19、FGA、CCND1、IPO4、SIAH1、TOMM34、RECK、IMPDH1、CCND3、ITGA2
、PPP2R5C、TPM3、RNASEL、INSIG1、CCNE1、KCNN4、PSAT1、TPPP3、WT1、KREMEN2、CCNT2
、KPNA3、PTCD3、UBE2V1、YIF1B、LPL、CDC14B、LAMC1、PTGS2、UBE4A、ZNF622、MCL1、C
DK5RAP1、LAMTOR3、PURA、UGDH、PIK3R1、CENPJ、LUZP1、RAB9B、UTP15、PPM1D、CHORDC1
、LYPLA2、RAD51C、VEGFA、SPARC、CREBL2、PIAS1、RARS、又はWNT3Aである。具体的な実
施態様において、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又は10個よりも多くの該生存関連遺伝
子が、該増強胎盤幹細胞において、同等数の未修飾の胎盤幹細胞(例えば、未修飾のCD34-
、CD10+、CD105+、及びCD200+胎盤幹細胞)における該生存関連遺伝子の発現のレベルと比
べて下方調節/阻害されている。
【0200】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離されたCD34-、CD10+
、CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、生存関連遺
伝子CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、P
PMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB、又はITGA2を、未修飾のCD34-、CD10+、CD105+、及びCD
200+胎盤幹細胞における該生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現する。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離されたCD34-、CD10+、
CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、以下の胎盤幹
細胞生存関連遺伝子: CCND1、CCND3、CCNE1、CCNF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK
1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、MYB、又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、
又はそれより多くを、対応する未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と
比較して減少したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供さ
れるのは、単離されたCD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞であり、ここで
、該増強胎盤幹細胞は、(i)以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子: CCND1、CCND3、CCNE1、CC
NF、CDK6、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、CHEK1、MCL1、BCL2、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、M
YB、又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くを、対応する未修飾の胎盤幹細
胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して減少したレベルで発現し;及び(ii)表1に
記載の少なくとも1つのさらなる生存関連遺伝子を、対応する未修飾の胎盤幹細胞におけ
る同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加又は減少したレベルで発現する。さらに本明
細書に提供されるのは、そのような増強胎盤幹細胞を含む細胞の集団及びそのような増強
胎盤幹細胞を含む組成物である。
【0201】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離されたCD34-、CD10+
、CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、以下の胎盤
幹細胞生存関連遺伝子: CCND1、CCND3、CCNE1、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、MCL1、PPMID、H
MGA1、AKT3、VEGFA、PPP2R5C、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多
く(すなわち、組合せ)を、対応する未修飾のCD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+胎盤幹細
胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的
な実施態様において、本明細書に提供されるのは、単離されたCD34-、CD10+、CD105+、及
びCD200+増強胎盤幹細胞であり、ここで、該増強胎盤幹細胞は、以下の胎盤幹細胞生存関
連遺伝子: CCND1、CCND3、CCNE1、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、
VEGFA、PPP2R5C、及び/又はITGA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くを、対応す
る未修飾のCD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の
発現と比較して増加したレベルで発現する。別の具体的な実施態様において、本明細書に
提供されるのは、単離されたCD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+増強胎盤幹細胞であり、
ここで、該増強胎盤幹細胞は、(i)以下の胎盤幹細胞生存関連遺伝子: CCND1、CCND3、CCN
E1、PPP2R5C、CDC25A、WEE1、MCL1、PPMID、HMGA1、AKT3、VEGFA、PPP2R5C、及び/又はIT
GA2のうちの1つ、2つ、3つ、又はそれより多くを、対応する未修飾のCD34-、CD10+、CD10
5+、及びCD200+胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加したレベル
で発現し;並びに(ii)表1に記載の少なくとも1つのさらなる生存関連遺伝子を、対応する
未修飾の胎盤幹細胞における同じ生存関連遺伝子の発現と比較して増加又は減少したレベ
ルで発現する。さらに本明細書に提供されるのは、そのような増強胎盤幹細胞を含む細胞
の集団及びそのような増強胎盤幹細胞を含む組成物である。
【0202】
(5.3.3 培養下での成長)
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の成長は、あらゆる哺乳動物細胞に関
して、成長のために選択される特定の培地に、ある程度依存する。培養中、本明細書に提
供される増強胎盤幹細胞の産生の方法で使用される胎盤幹細胞は、培養下の基材、例えば
、組織培養容器(例えば、組織培養ディッシュプラスチック、フィブロネクチンコーティ
ングプラスチックなど)の表面に接着し、単層を形成する。
【0203】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、インビトロで細胞死
を引き起こす条件下で培養した場合、対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べて、生存の増加
を示す。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、インビボ
で細胞死を引き起こす条件下で培養した場合、例えば、対象に投与したとき、対応する未
修飾の胎盤幹細胞と比べて、生存の増加を示す。
【0204】
ある実施態様において、(インビトロもしくはインビボのどちらかで)細胞死を引き起こ
す条件下で、例えば、血清(例えば、ヒトもしくはラット血清)、補体、抗体、他の細胞(
例えば、免疫系の細胞)、及び/又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件
の存在下で培養されたとき、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、同じ条件下で培養され
た同等量の対応する未修飾の胎盤幹細胞と比べて、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、
3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍の生存の増加を示す。ある実施
態様において、(インビトロもしくはインビボのどちらかで)細胞死を引き起こす条件下で
、例えば、血清(例えば、ラット血清)、補体、抗体、他の細胞(例えば、免疫系の細胞)、
及び/又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件の存在下で培養されたと
き、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、同じ条件下で培養された同等量の対応する未修
飾の胎盤幹細胞と比べて、1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4
.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、又は9倍~10倍の生存の増
加を示す。該増強胎盤幹細胞及び未修飾の胎盤幹細胞の生存は、当技術分野で公知の方法
、例えば、トリパンブルー排出アッセイ、二酢酸フルオレセイン取込みアッセイ、ヨウ化
プロピジウム取込みアッセイ;チミジン取込みアッセイ、及びMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾ
ール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて評価することが
できる。
【0205】
ある実施態様において、(インビトロもしくはインビボのどちらかで)細胞死を引き起こ
す条件下で、例えば、血清(例えば、ラット血清)、補体、抗体、他の細胞(例えば、免疫
系の細胞)、及び/又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件の存在下で培
養されたとき、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、同じ条件下で培養された対応する未
修飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)カスパーゼ3/7活性の減少、(ii)ミトコンドリア膜電位
の増加、及び/又は(iii)代謝活性の増加を示す。カスパーゼ3/7活性、ミトコンドリア膜
電位、及び代謝活性は、当技術分野で公知の方法を用いて、例えば、下の第6.1.1.1.3節
及び第6.1.1.2節に記載の通りに、評価することができる。
【0206】
ある実施態様において、(インビトロもしくはインビボのどちらかで)細胞死を引き起こ
す条件下で、例えば、血清(例えば、ラット血清)、補体、抗体、細胞(例えば、免疫系の
細胞)、及び/又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件の存在下で培養さ
れたとき、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、同じ条件下で培養された対応する未修飾
の胎盤幹細胞と比較して、(i)少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、
5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍のカスパーゼ3/7活性の減少;(ii)少なくとも1.5
倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍の
ミトコンドリア膜電位の増加;及び/又は(iii)少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍
、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍の代謝活性の増加を示す。
【0207】
ある実施態様において、例えば、血清(例えば、ラット血清)、補体、抗体、細胞(例え
ば、免疫系の細胞)の存在下、(インビトロもしくはインビボのどちらかで)細胞死を引き
起こす条件下で、及び/又はアノイキス(例えば、低接着状態)をもたらし得る条件下で培
養されたとき、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、同じ条件下で培養された対応する未
修飾の胎盤幹細胞と比較して、(i)少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3
倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、もしく
は9倍~10倍のカスパーゼ3/7活性の減少;(ii)少なくとも1.5倍~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍
~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9
倍、もしくは9倍~10倍のミトコンドリア膜電位の増加;及び/又は(iii)少なくとも1.5倍
~2.5倍、2倍~3倍、2.5倍~3.5倍、3倍~4倍、3.5倍~4.5倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍
~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、もしくはa 9倍~10倍の代謝活性の増加を示す。
【0208】
(5.4 増強胎盤幹細胞を作製する方法で使用される胎盤幹細胞を得る方法)
(5.4.1 幹細胞回収組成物)
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を作製する方法で使用される胎盤幹細胞は、本明細書
に提供される方法に従って回収及び単離することができる。通常、胎盤幹細胞は、生理的
に許容し得る溶液、例えば、幹細胞回収組成物を用いて、哺乳動物胎盤から得られる。幹
細胞回収組成物は、関連する米国特許出願公開第20070190042号に詳細に記載されている
。
【0209】
幹細胞回収組成物は、幹細胞の回収及び/又は培養に好適な任意の生理的に許容し得る
溶液、例えば、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、クレブス溶液、改変クレブ
ス溶液、イーグル溶液、0.9%NaClなど)、培養培地(例えば、DMEM、HDMEMなど)などを含
むことができる。
【0210】
幹細胞回収組成物は、回収時から培養時まで胎盤幹細胞を保存する、すなわち、胎盤幹
細胞の死を防止し、又は胎盤幹細胞の死を遅延させ、死滅する細胞の集団内の胎盤幹細胞
の数を減少させるなどに役立つ1以上の成分を含むことができる。そのような成分は、例
えば、アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤もしくはJNK阻害剤);血管拡張剤(
例えば、硫酸マグネシウム、抗高血圧薬、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、副腎皮
質刺激ホルモン、コルチコトロピン放出ホルモン、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララ
ジン、アデノシン三リン酸、アデノシン、インドメタシンもしくは硫酸マグネシウム、ホ
スホジエステラーゼ阻害剤など);壊死阻害剤(例えば、2-(1H-インドール-3-イル)-3-ペン
チルアミノ-マレイミド、ピロリジンジチオカルバメート、もしくはクロナゼパム); TNF-
α阻害剤;及び/又は酸素運搬ペルフルオロカーボン(例えば、臭化ペルフルオロオクチル
、臭化ペルフルオロデシルなど)であることができる。
【0211】
幹細胞回収組成物は、1以上の組織分解酵素、例えば、メタロプロテアーゼ、セリンプ
ロテアーゼ、中性プロテアーゼ、RNアーゼ、又はDNアーゼなどを含むことができる。その
ような酵素としては、コラゲナーゼ(例えば、コラゲナーゼI、II、III、又はIV、クロス
トリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)由来のコラゲナーゼなど);ディ
スパーゼ、サーモリシン、エラスターゼ、トリプシン、LIBERASE、ヒアルロニダーゼなど
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
幹細胞回収組成物は、殺菌又は静菌有効量の抗生物質を含むことができる。ある非限定
的な実施態様において、抗生物質は、マクロライド(例えば、トブラマイシン)、セファロ
スポリン(例えば、セファレキシン、セフラジン、セフロキシム、セフプロジル、セファ
クロール、セフィキシム、もしくはセファドロキシル)、クラリスロマイシン、エリスロ
マイシン、ペニシリン(例えば、ペニシリンV)、又はキノロン(例えば、オフロキサシン、
シプロフロキサシン、もしくはノルフロキサシン)、テトラサイクリン、ストレプトマイ
シンなどである。特定の実施態様において、抗生物質は、グラム陽性及び/又はグラム陰
性細菌、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus au
reus)などに対して活性がある。
【0213】
幹細胞回収組成物は、以下の化合物のうちの1つ又は複数を含むこともできる:アデノシ
ン(約1mM~約50mM); D-グルコース(約20mM~約100mM);マグネシウムイオン(約1mM~約50m
M);一実施態様において、内皮の完全性及び細胞の生存能力を維持するのに十分な量で存
在する分子量20,000ダルトン超の巨大分子(例えば、約25g/l~約100g/lもしくは約40g/l
~約60g/lで存在する合成もしくは天然に存在するコロイド、デキストランもしくはポリ
エチレングリコールなどの多糖類);酸化防止剤(例えば、約25μM~約100μMで存在するブ
チル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、グルタチオン、ビタミンC
、もしくはビタミンE);還元剤(例えば、約0.1mM~約5mMで存在するN-アセチルシステイン
);細胞内へのカルシウムの流入を防止する薬剤(例えば、約2μM~約25μMで存在するベラ
パミル);ニトログリセリン(例えば、約0.05g/L~約0.2g/L);一実施態様において、残留血
液の凝固の防止を助けるのに十分な量で存在する抗凝血剤(例えば、約1000ユニット/l~
約100,000ユニット/lの濃度で存在するヘパリンもしくはヒルジン);又はアミロライド含
有化合物(例えば、約1.0μM~約5μMで存在するアミロライド、エチルイソプロピルアミ
ロライド、ヘキサメチレンアミロライド、ジメチルアミロライド、もしくはイソブチルア
ミロライド)。
【0214】
(5.4.2 胎盤の回収及び取扱い)
通常、ヒト胎盤は、出産後、娩出の直後に回収される。好ましい実施態様において、胎
盤は、インフォームドコンセントの後、かつ患者の全病歴を取得してその胎盤と関連付け
た後に、患者から回収される。この病歴は、分娩後も継続することが好ましい。そのよう
な病歴を用いて、胎盤又は胎盤から回収される幹細胞のその後の使用を調整することがで
きる。例えば、ヒト胎盤細胞は、その病歴を踏まえて、その胎盤と関係がある乳児のため
の、又はその乳児の両親、兄弟姉妹、もしくは他の血縁者のための個別化医療目的で使用
することができる。
【0215】
胎盤幹細胞の回収の前に、臍帯血及び胎盤血を取り除く。ある実施態様において、分娩
後に、胎盤内の臍帯血を回収する。胎盤は、従来の臍帯血回収プロセスにかけることがで
きる。通常、針又はカニューレを用い、重力の助けを借りて、胎盤を放血させる(例えば
、Andersonの米国特許第5,372,581号; Hesselらの米国特許第5,415,665号を参照されたい
)。通常、針又はカニューレを臍帯静脈内に留置し、胎盤を穏やかに揉んで、胎盤からの
臍帯血の排出を助けることができる。そのような臍帯血回収は、例えば、LifeBank社, Ce
dar Knolls, N.J., ViaCord, Cord Blood Registry and Cryocellによって商業的に行わ
れてもよい。臍帯血回収中の組織破壊を最小限に抑えるために、胎盤から重力排出し、そ
れ以上操作しないことが好ましい。
【0216】
通常、例えば、灌流又は組織分離による臍帯血の回収及び幹細胞の回収のために、胎盤
を、分娩室又は出産室から別の場所、例えば、実験室に輸送する。胎盤は、滅菌した断熱
輸送装置(胎盤の温度を20~28℃に維持する)に入れて、例えば、臍帯の近位部をクランプ
した胎盤を、滅菌したジップロック式プラスチックバッグに入れ、次いで、これを断熱容
器に入れることによって、輸送することが好ましい。別の実施態様において、胎盤は、20
05年9月19日に出願された係属中の米国特許出願第11/230,760号に概ね記載されているよ
うな臍帯血回収キットに入れて輸送される。好ましくは、胎盤は、分娩から4~24時間後
に実験室に移送される。ある実施態様において、臍帯近位部を、臍帯血回収前に、好まし
くは、胎盤ディスクへの挿入部から4~5cm(センチメートル)以内のところでクランプする
。他の実施態様において、臍帯近位部を、臍帯血回収後、ただし、胎盤のさらなる処理前
にクランプする。
【0217】
胎盤は、胎盤幹細胞回収前に、滅菌条件下、かつ室温又は5~25℃(摂氏)の温度のどち
らかで保管することができる。胎盤を灌流して残留臍帯血を取り出す前に、胎盤を、48時
間よりも長い期間、好ましくは4~24時間の期間、保管することができる。胎盤は、5~25
℃(摂氏)の温度で、抗凝血剤溶液に入れて保管することが好ましい。好適な抗凝血剤溶液
は、当技術分野で周知である。例えば、ヘパリン又はワルファリンナトリウムの溶液を使
用することができる。好ましい実施態様において、抗凝血剤溶液は、ヘパリンの溶液(例
えば、1:1000溶液中、1%w/w)を含む。放血された胎盤は、胎盤細胞が回収される前に、
最大で36時間保管されることが好ましい。
【0218】
哺乳動物の胎盤又はその一部は、いったん、一般に上記の通りに回収及び調製されれば
、当技術分野で公知の任意の様式で処理することができ、例えば、灌流又は破壊し、例え
ば、1以上の組織破壊酵素で消化して、幹細胞を得ることができる。
【0219】
(5.4.3 胎盤組織の物理的破壊及び酵素的消化)
一実施態様において、胎盤幹細胞を、例えば、上記の幹細胞回収組成物を用いて、器官
の物理的破壊、例えば、酵素的消化によって、哺乳動物胎盤から回収する。例えば、胎盤
又はその一部を、例えば、緩衝液、培地、又は幹細胞回収組成物と接触させながら、例え
ば、圧搾するか、剪断するか、細かく切り刻むか、さいの目状に切るか、みじん切りにす
るか、液体に浸して柔らかくするか、又は同様に処理して、その後、その組織を1以上の
酵素で消化することができる。胎盤又はその一部を、物理的に破壊し、1以上の酵素で消
化し、その後、得られた材料を、緩衝液、培地、又は幹細胞回収組成物に浸漬させ又は混
合することができる。任意の物理的破壊方法は、該破壊方法が、例えば、トリパンブルー
排出によって決定したとき、該器官中の細胞の複数、より好ましくは過半数、より好まし
くは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%を生存状態にしておくと
いう条件で使用することができる。
【0220】
通常、胎盤細胞は、胎盤組織の小さなブロック、例えば、体積が約1、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、
800、900、又は約1000立方ミリメートルである胎盤組織のブロックの破壊によって得るこ
とができる。
【0221】
酵素的消化は、単一の酵素又は酵素の組合せを用いて実施することができる。一実施態
様において、胎盤組織の酵素的消化では、マトリクスメタロプロテアーゼと中性プロテア
ーゼとヒアルロン酸消化用の粘液溶解酵素の組合せ、例えば、コラゲナーゼとディスパー
ゼとヒアルロニダーゼの組合せ、又はLIBERASE(Boehringer Mannheim社, Indianapolis,
Ind.)とヒアルロニダーゼの組合せが使用される。胎盤組織を破壊するために使用するこ
とができる他の酵素としては、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、セリンプロテアー
ゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシン、又はエラスターゼなどが挙げられる。セリン
プロテアーゼは、血清中のα2ミクログロブリンによって阻害されることがあるため、消
化のために使用される培地は、通常、無血清である。細胞回収の効率を高めるために、ED
TA及びDNアーゼが、酵素消化手順において一般的に使用される。幹細胞が粘性の消化産物
中に捕捉されることを避けるために、消化残渣を希釈することが好ましい。
【0222】
組織消化酵素の典型的な濃度としては、例えば、コラゲナーゼI及びコラゲナーゼIVの5
0~200U/mL、ディスパーゼの1~10U/mL、及びエラスターゼの10~100U/mLが挙げられる。
胎盤細胞を遊離させるために、プロテアーゼを、組み合わせて、すなわち、2以上のプロ
テアーゼを同じ消化反応で使用することもできるし、連続的に使用することもできる。例
えば、一実施態様において、胎盤又はその一部を、最初に2mg/mlの適量のコラゲナーゼI
で30分間消化し、その後、0.25%トリプシンで37℃で10分間消化する。セリンプロテアー
ゼは、他の酵素の使用後に続けて使用することが好ましい。
【0223】
別の実施態様において、幹細胞回収組成物を用いて胎盤幹細胞を単離する前に、幹細胞
を含む幹細胞回収組成物に、又はその中で組織を破壊及び/もしくは消化する溶液に、キ
レート剤、例えば、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N'N'-四酢酸
(EGTA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することにより、組織をさらに破壊する
ことができる。
【0224】
胎児細胞と母親細胞の両方を含む胎盤全体又は胎盤の一部(例えば、胎盤の一部が、絨
毛膜又は胎盤葉を含む場合)を消化して胎盤幹細胞を得る場合、回収される胎盤細胞は、
胎児起源と母親起源の両方に由来する胎盤細胞の混合物を含むことになることが理解され
るであろう。母親細胞(例えば、羊膜)を全く含まないか又は無視できる数しか含まない胎
盤の一部を用いて胎盤幹細胞を得る場合、回収される胎盤幹細胞は、ほとんど胎児性胎盤
幹細胞だけを含むことになる。
【0225】
(5.4.4 胎盤の灌流)
胎盤幹細胞は、哺乳動物胎盤の灌流によって得ることもできる。哺乳動物胎盤を灌流し
て幹細胞を得る方法は、例えば、米国特許第7,045,148号に開示されている。
【0226】
胎盤幹細胞は、例えば、灌流溶液としての幹細胞回収組成物を用いて、例えば、胎盤血
管系を通して、灌流によって回収することができる。一実施態様において、哺乳動物胎盤
は、臍帯動脈と臍帯静脈のどちらか又は両方に灌流溶液を通すことにより灌流される。胎
盤を通る灌流溶液の流れは、例えば、胎盤への重力による流れを用いて達成することがで
きる。好ましくは、灌流溶液は、ポンプ、例えば、蠕動ポンプを用いて、胎盤に強制的に
通される。臍帯静脈には、例えば、滅菌チューブなどの滅菌された接続器具に接続された
カニューレ、例えば、TEFLON(登録商標)又はプラスチックカニューレを挿入することがで
きる。この滅菌された接続器具は、灌流マニフォールドに接続される。
【0227】
灌流に備えて、胎盤は、臍帯動脈及び臍帯静脈が胎盤の最も高い位置に位置するように
方向付けられる(例えば、吊るされる)ことが好ましい。胎盤は、灌流流体、例えば、本明
細書に提供される幹細胞回収組成物を、胎盤血管系に、又は胎盤血管系及び周囲組織に通
すことにより灌流することができる。一実施態様において、臍帯動脈及び臍帯静脈は、柔
軟なコネクタを介して灌流溶液のリザーバに接続されたピペットに同時に接続される。灌
流溶液は、臍帯静脈及び臍帯動脈に通される。灌流溶液は、血管壁から滲出し及び/又は
血管壁を通過して胎盤の周囲組織に至り、妊娠中に母親の子宮に付着していた胎盤の表面
から、好適な開放容器中に回収される。灌流溶液を臍帯開口部に通して導入し、母親の子
宮壁と接続していた胎盤壁の開口部から流出又は浸出させることもできる。別の実施態様
において、灌流溶液を臍帯静脈に通して臍帯動脈から回収するか、又は臍帯動脈に通して
臍帯静脈から回収する。
【0228】
一実施態様において、臍帯近位部を灌流中にクランプし、より好ましくは、胎盤ディス
クへの臍帯挿入部から4~5cm(センチメートル)以内のところでクランプする。
【0229】
放血プロセス中の哺乳動物胎盤からの灌流流体の最初の回収物は、通常、臍帯血及び/
又は胎盤血の残留赤血球のために色が付いており;灌流液のこの部分は廃棄することがで
きる。灌流が進み、残留臍帯血細胞が胎盤から洗い流されるにつれて、灌流流体は、より
無色になっていく。
【0230】
胎盤幹細胞を回収するために使用される灌流液の体積は、回収されるべき胎盤幹細胞の
数、胎盤の大きさ、単一の胎盤から行われるべき回収の回数などに応じて変動し得る。様
々な実施態様において、灌流液の体積は、50mL~5000mL、50mL~4000mL、50mL~3000mL、
100mL~2000mL、250mL~2000mL、500mL~2000mL、又は750mL~2000mLであり得る。通常、
胎盤は、放血後、700~800mLの灌流液を用いて灌流される。
【0231】
胎盤は、数時間又は数日間にわたって、複数回灌流することができる。胎盤が複数回灌
流されることになる場合、それを、無菌条件下、容器(container)又は他の好適な容器(ve
ssel)中で維持又は培養し、幹細胞回収組成物、或いは抗凝血剤(例えば、ヘパリン、ワル
ファリンナトリウム、クマリン、ビスヒドロキシクマリン)を含むかもしくはこれを含ま
ない、及び/又は抗菌剤(例えば、β-メルカプトエタノール(0.1mM);ストレプトマイシン(
例えば、40~100μg/ml)、ペニシリン(例えば、40U/ml)、アンホテリシンB(例えば、0.5
μg/ml)などの抗生物質を含むかもしくはこれらを含まない、標準的な灌流溶液(例えば、
リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)などの通常の生理食塩水)を用いて灌流することができる
。一実施態様において、単離された胎盤は、該胎盤が、灌流及び灌流液の回収前に、1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、
もしくは24時間、或いは2もしくは3日間、又はそれより長い日数の間、維持又は培養され
るように、灌流液を回収することなく、ある期間維持又は培養される。灌流された胎盤は
、さらにもう1回以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、又はそれより長い時間、維持し、例えば、70
0~800mLの灌流流体を用いて、再び灌流することができる。胎盤は、1、2、3、4、5回、
又はそれより多くの回数、例えば、1、2、3、4、5、又は6時間に1回、灌流することがで
きる。好ましい実施態様において、回収される有核細胞の数が100細胞/mlを下回るまで、
胎盤の灌流と、灌流溶液、例えば、幹細胞回収組成物の回収が繰り返される。異なる時点
での灌流液をさらに個別に処理して、時間に応じた胎盤幹細胞の集団を回収することがで
きる。異なる時点からの灌流液をプールすることもできる。
【0232】
任意の理論に束縛されることを望まないが、胎盤の放血及び十分な時間の灌流の後、胎
盤幹細胞は、放血及び灌流された胎盤の微小循環に移動すると考えられ、この微小循環中
で、該胎盤幹細胞を、好ましくは、灌流によって回収容器中に洗い入れることにより回収
することができる。単離された胎盤を灌流することは、残留臍帯血を除去するだけではな
く、胎盤に酸素を含む適切な栄養を提供するためにも役立つ。胎盤は、残留臍帯血細胞を
除去するために使用したのと同様の溶液を用いて、好ましくは抗凝血剤を添加しないで、
培養及び灌流することができる。
【0233】
幹細胞は、1以上のプロテアーゼ又は他の組織破壊酵素を含む溶液を用いる灌流によっ
て、胎盤から単離することができる。具体的な実施態様において、胎盤又はその一部を25
~37℃にし、200mLの培養培地中で1以上の組織破壊酵素とともに30分間インキュベートす
る。灌流液由来の細胞を回収し、4℃にし、5mM EDTA、2mMジチオスレイトール、及び2mM
β-メルカプトエタノールを含む冷たい阻害剤混合物で洗浄する。数分後、胎盤幹細胞を
、本明細書中の別所に記載の冷たい(例えば、4℃の)幹細胞回収組成物で洗浄する。
【0234】
受け皿法(pan method)を用いる灌流、すなわち、灌流液が胎盤の母親側から滲出した後
に回収される灌流によって、胎児細胞と母親細胞の混合物が得られる。結果として、この
方法によって回収された細胞は、胎児起源と母親起源の両方の胎盤幹細胞の混合集団を含
む。対照的に、灌流流体が1つ又は2つの胎盤血管に通され、単に残りの血管を通して回収
される、胎盤血管系に通すだけの灌流は、ほとんど胎児起源のみの胎盤幹細胞の集団の回
収という結果をもたらす。
【0235】
(5.4.5 胎盤細胞の単離、選別、及び特徴付け)
哺乳動物胎盤由来の幹細胞は、灌流によって得られるものであれ、酵素的消化によって
得られるものであれ、最初に、フィコール勾配遠心分離によって他の細胞から純化する(
すなわち、単離する)ことができる。そのような遠心分離は、遠心分離速度などについて
、任意の標準的なプロトコルに従うことができる。一実施態様において、例えば、胎盤か
ら回収された細胞を、室温で15分間の5000×gでの遠心分離(これによって、細胞は、例え
ば、混入する破片及び血小板から分離される)によって灌流液から回収する。別の実施態
様において、胎盤灌流液を約200mlに濃縮し、Ficoll上に穏やかに重層し、22℃で20分間
、約1100×gで遠心分離し、細胞の低密度界面層をさらなる処理のために回収する。
【0236】
細胞ペレットを、新鮮な幹細胞回収組成物、又は幹細胞維持に好適な培地、例えば、2U
/mlヘパリン及び2mM EDTA(GibcoBRL, NY)を含むIMDM無血清培地に再懸濁させることがで
きる。全単核細胞画分を、例えば、製造業者の推奨手順に従って、Lymphoprep(Nycomed P
harma, Oslo, Norway)を用いて単離することができる。
【0237】
本明細書で使用されるように、胎盤幹細胞を「単離すること」は、該胎盤幹細胞が無傷
の哺乳動物胎盤内で通常関連している細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、
70%、80%、90%、95%、又は99%を取り除くことを意味する。
【0238】
灌流又は消化によって得られる胎盤幹細胞を、例えば、0.2%EDTA(Sigma, St. Louis M
O)を含む0.05%トリプシンの溶液を用いる示差的なトリプシン処理によって、例えば、さ
らに又は最初に単離することができる。他の接着性の集団が、通常、20~30分間を超える
インキュベーションを必要とするのに対し、胎盤幹細胞は、通常、約5分以内にプラスチ
ック表面から剥離するので、示差的なトリプシン処理が可能である。剥離した胎盤幹細胞
は、トリプシン処理、及び例えば、トリプシン中和溶液(TNS, Cambrex)を用いるトリプシ
ン中和の後、回収することができる。
【0239】
胎盤幹細胞の単離の一実施態様において、一定分量の、例えば、約5~10×106個の胎盤
細胞を、いくつかのT-75フラスコ、好ましくは、フィブロネクチンコーティングしたT75
フラスコの各々に入れる。そのような実施態様において、該細胞を、市販の間葉系幹細胞
成長培地(MSCGM)(Cambrex)を用いて培養し、組織培養インキュベーター(37℃、5%CO2)内
に入れることができる。10~15日後、接着していない細胞を、PBSで洗浄することにより
フラスコから除去する。その後、PBSをMSCGMに置き換える。フラスコを、様々な接着細胞
型の存在について、特に、線維芽細胞様細胞の集塊の同定及び拡大のために、毎日調べる
ことが好ましい。
【0240】
哺乳動物胎盤から回収される細胞の数及び種類は、例えば、フローサイトメトリー、細
胞選別、免疫細胞化学(例えば、組織特異的抗体もしくは細胞マーカー特異的抗体による
染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)などの標準的な細胞検出
技術を用いて形態及び細胞表面マーカーの変化を測定することにより、光学顕微鏡もしく
は共焦点顕微鏡法を用いて細胞の形態を調べることにより、並びに/又はPCR及び遺伝子発
現プロファイリングなどの当技術分野で周知の技術を用いて遺伝子発現の変化を測定する
ことによりモニタリングすることができる。これらの技術は、1以上の特定のマーカーに
ついて陽性である細胞を特定するためにも使用することができる。例えば、CD34に対する
抗体を用いて、上記の技術を用いて、細胞が、例えば、アイソタイプ対照と比較したとき
に検出可能な量のCD34を含むかどうかを決定することができ;もし含むのであれば、その
細胞はCD34+である。同様に、細胞が、RT-PCRによって検出されるのに十分なOCT-4 RNA、
又は最終分化した細胞よりも有意に多くのOCT-4 RNAを産生するならば、その細胞は、OCT
-4+である。細胞表面マーカー(例えば、CD34などのCDマーカー)に対する抗体、及びOCT-4
などの幹細胞特異的遺伝子の配列は、当技術分野で周知である。
【0241】
胎盤細胞、特に、フィコール分離、示差接着、又はその両方の組合せによって単離され
た細胞を、例えば、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を用いて選別し、さらに単離すること
ができる。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、細胞を含む粒子を、該粒子の蛍光特性に基づい
て分離するための周知の方法である(Kamarchの文献、1987, Methods Enzymol, 151:150-1
65)。個々の粒子中の蛍光部分のレーザーによる励起によって、わずかな電荷が生じ、混
合物からの正の粒子と負の粒子の電磁分離が可能になる。一実施態様において、細胞表面
マーカー特異的抗体又はリガンドを別々の蛍光標識で標識する。細胞を細胞選別装置に通
して処理し、使用される抗体に結合する能力に基づく細胞の分離が可能になる。FACSで選
別された粒子を、96ウェル又は384ウェルプレートの個々のウェルに直接堆積させて、分
離及びクローニングを容易にすることができる。
【0242】
ある選別スキームにおいて、胎盤幹細胞を、マーカーCD34、CD38、CD44、CD45、CD73、
CD105、OCT-4、及び/もしくはHLA-G、又は本明細書中の別所に記載の他のマーカーのいず
れかの発現に基づいて選別することができる。これは、幹細胞を培養下でのその接着特性
に基づいて選択する手順と関連させて達成することができる。例えば、胎盤幹細胞の接着
性による選択は、マーカー発現に基づく選別の前又は後に行うことができる。一実施態様
において、例えば、胎盤幹細胞を、最初に、そのCD34発現に基づいて選別することができ
; CD34-細胞を保持し、CD200+又はHLA-G+である細胞を他の全てのCD34-細胞から分離する
。別の実施態様において、胎盤幹細胞を、そのCD200及び/もしくはHLA-Gの発現又はその
欠如に基づいて選別することができ;例えば、これらのマーカーのどちらかを提示する細
胞を、さらなる使用のために単離することができる。例えば、CD200及び/又はHLA-Gを発
現する細胞を、具体的な実施態様において、そのCD73及び/もしくはCD105、又は抗体SH2
、SH3、もしくはSH4によって認識されるエピトープの発現、或いはCD34、CD38、又はCD45
の発現の欠如に基づいて、さらに選別することができる。例えば、一実施態様において、
胎盤幹細胞を、CD200、HLA-G、CD73、CD105、CD34、CD38、及びCD45の発現又はその欠如
によって選別し、CD200+、HLA-G-、CD73+、CD105+、CD34-、CD38-、及びCD45-である胎盤
幹細胞を、さらなる使用のために他の胎盤細胞から単離する。
【0243】
別の実施態様において、磁気ビーズを用いて、細胞を分離し、例えば、胎盤幹細胞を他
の胎盤細胞から分離することができる。該細胞を、磁気ビーズ(直径0.5~100μm)に結合
するその能力に基づいて粒子を分離する方法である磁気活性化細胞選別(MACS)技術を用い
て選別することができる。特定の細胞表面分子又はハプテンを特異的に認識する抗体の共
有結合的付加を含む、種々の有用な修飾を、磁気ミクロスフェアに対して行うことができ
る。次いで、ビーズを細胞と混合し、結合させる。次いで、細胞を磁場に通して、特異的
な細胞表面マーカーを有する細胞を完全に分離する。一実施態様において、次いで、これ
らの細胞を単離し、さらなる細胞表面マーカーに対する抗体に結合した磁気ビーズと再び
混合することができる。該細胞を再び磁場に通して、両方の抗体に結合した細胞を単離す
る。次いで、そのような細胞を希釈して、別々のディッシュ、例えば、クローン単離用の
マイクロタイターディッシュに入れることができる。
【0244】
胎盤幹細胞を、細胞形態及び成長特性に基づいて特徴付け、及び/又は選別することも
できる。例えば、胎盤幹細胞を、例えば、培養下で線維芽細胞様外観を有するものと特徴
付けること、及び/又はそのような外観に基づいて選択することができる。胎盤幹細胞を
、胚様体様体を形成するその能力を有するものと特徴付けること、及び/又はそのような
能力に基づいて選択することもできる。一実施態様において、例えば、線維芽細胞様の形
状であり、CD73及びCD105を発現し、かつ培養下で1以上の胚様体様体を産生する胎盤細胞
を、他の胎盤細胞から単離することができる。別の実施態様において、培養下で1以上の
胚様体様体を産生するOCT-4+胎盤細胞を他の胎盤細胞から単離する。
【0245】
別の実施態様において、胎盤幹細胞をコロニー形成単位アッセイによって同定し、特徴
付けることができる。コロニー形成単位アッセイは、当技術分野で一般に知られており、
例えば、Mesen Cult(商標)培地(Stem Cell Technologies社, Vancouver British Columbi
a)がある。
【0246】
胎盤幹細胞を、生存、増殖能力、及び寿命について、当技術分野で公知の標準的な技術
、例えば、(生存を評価するための)トリパンブルー排出アッセイ、二酢酸フルオレセイン
取込みアッセイ、ヨウ化プロピジウム取込みアッセイ;及び(増殖を評価するための)チミ
ジン取込みアッセイ、MTT細胞増殖アッセイを用いて評価することができる。寿命は、当
技術分野で周知の方法によって、例えば、延長培養下での集団倍加の最大数を決定するこ
とにより決定することができる。
【0247】
胎盤幹細胞を、当技術分野で公知の他の技術、例えば、所望の細胞の選択的成長(陽性
選択)、望ましくない細胞の選択的破壊(陰性選択);例えば、大豆凝集素を用いる、混合集
団における示差細胞凝集力に基づく分離;凍結-解凍処置;濾過;従来のゾーン遠心分離;遠
心水簸(向流遠心分離);単位重力分離;向流分配;電気泳動;などを用いて、他の胎盤細胞か
ら分離することもできる。
【0248】
(5.5 胎盤幹細胞の培養)
(5.5.1 培養培地)
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞は、幹細胞の培養のために許容し得
ると当技術分野で認識されている、任意の培地中及び任意の条件下で培養することができ
る。ある実施態様において、該培養培地は、血清を含む。ある実施態様において、本明細
書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞は、例えば、ITS(インスリン-トランスフェ
リン-セレン)、LA+BSA(リノール酸-ウシ血清アルブミン)、デキストロース、L-アスコル
ビン酸、PDGF、EGF、IGF-1、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM-LG(ダルベ
ッコの改変必須培地、低グルコース)/MCDB 201(ニワトリ線維芽細胞基本培地); 10%胎仔
ウシ血清(FBS)を含むDMEM-HG(高グルコース); 15%FBSを含むDMEM-HG; 10%FBS、10%ウ
マ血清、及びヒドロコルチゾンを含むIMDM(イスコフの改変ダルベッコ培地); 10%FBS、E
GF、及びヘパリンを含むM199; 10%FBS、GlutaMAX(商標)、及びゲンタマイシンを含むα-
MEM(最小必須培地); 10%FBS、GlutaMAX(商標)、及びゲンタマイシンを含むDMEMなどの中
で培養することができる。好ましい培地は、2%FBS、ITS、LA+BSA、デキストロース、L-
アスコルビン酸、PDGF、EGF、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含む、DMEM-LG/MCDB
-201である。
【0249】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞を培養するために使用することがで
きる他の培地としては、DMEM(高又は低グルコース)、イーグルの基本培地、ハムのF10培
地(F10)、ハムのF-12培地(F12)、イスコフの改変ダルベッコ培地、間葉系幹細胞成長培地
(MSCGM)、ライボヴィッツのL-15培地、MCDB、DMIEM/F12、RPMI 1640、改良DMEM(Gibco)、
DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREEが挙げられる。
【0250】
培養培地に、例えば、血清(例えば、胎仔ウシ血清(FBS)、好ましくは、約2~15%(v/v)
;ウマ科動物(ウマ)血清(ES);ヒト血清(HS));β-メルカプトエタノール(BME)、好ましくは
、約0.001%(v/v); 1以上の成長因子、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因
子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、白血病抑
制因子(LIF)、血管内皮成長因子(VEGF)、及びエリスロポエチン(EPO); L-バリンを含むア
ミノ酸;並びに例えば、ペニシリンG、ストレプトマイシン硫酸塩、アンホテリシンB、ゲ
ンタマイシン、及びナイスタチンなどの、微生物混入を制御するための1以上の抗生物質
及び/又は抗真菌剤を含む1以上の成分を、単独で又は組み合わせて補充することができる
。
【0251】
(5.5.2 胎盤幹細胞の拡大及び増殖)
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞をいったん単離すれば、該幹細胞又
は幹細胞の集団をインビトロで増殖及び拡大することができる。例えば、増強胎盤幹細胞
をいったん産生すれば、そのような細胞をインビトロで増殖及び拡大することもできる。
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞を、組織培養容器、例えば、ディッシ
ュ、フラスコ、マルチウェルプレートなどの中で、胎盤幹細胞が70~90%コンフルエンス
まで増殖するのに十分な時間、すなわち、胎盤幹細胞及びその子孫が組織培養容器の培養
表面積の70~90%を占めるようになるまで培養することができる。
【0252】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む胎盤幹細胞を、培養容器に、細胞成長を可能に
する密度で播種することができる。例えば、胎盤幹細胞を、低密度(例えば、約1,000~約
5,000個の細胞/cm2)から高密度(例えば、約50,000個以上の細胞/cm2)で播種することがで
きる。好ましい実施態様において、胎盤幹細胞は、大気中約0~約5体積パーセントのCO2
下で培養される。いくつかの好ましい実施態様において、胎盤幹細胞は、大気中約2~約2
5パーセントのO2下で、好ましくは、大気中約5~約20パーセントのO2下で培養される。胎
盤幹細胞は、約25℃~約40℃、好ましくは37℃で培養されることが好ましい。胎盤幹細胞
は、インキュベーター内で培養されることが好ましい。培養培地は、静置されるか、又は
例えば、バイオリアクターを用いて撹拌されることができる。胎盤幹細胞は、(例えば、
グルタチオン、アスコルビン酸、カタラーゼ、トコフェロール、N-アセチルシステインな
どを添加して)低酸化ストレス下で成長させることができる。
【0253】
いったん、70~90%のコンフルエンスが得られれば、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞
を含む胎盤幹細胞を継代することができる。例えば、該細胞を、当技術分野で周知の技術
を用いて、酵素処理、例えば、トリプシン処理して、組織培養表面から分離することがで
きる。該胎盤幹細胞をピペッティングによって取り出し、計数した後、約20,000~100,00
0個の幹細胞、好ましくは、約50,000個の胎盤幹細胞を、新鮮な培養培地を含む新しい培
養容器に継代する。通常、新しい培地は、幹細胞を取り出した培地と同じ種類である。本
明細書に提供されるのは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18
、もしくは20回、又はそれより多くの回数継代された、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞
を含む胎盤幹細胞の集団、及び該胎盤幹細胞の集団の組合せである。
【0254】
(5.6 増強胎盤幹細胞の保存)
増強胎盤幹細胞を保存する、すなわち、長期保管を可能にする条件、又は例えば、アポ
トーシスもしくは壊死による細胞死を阻害する条件下に置くことができる。
【0255】
増強胎盤幹細胞は、例えば、関連する米国特許出願公開第2007/0190042号に記載されて
いるような、アポトーシス阻害剤、壊死阻害剤、及び/又は酸素運搬ペルフルオロカーボ
ンを含む組成物を用いて保存することができる。
【0256】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を保存する方法であ
って、該増強胎盤幹細胞を、アポトーシス阻害剤及び酸素運搬ペルフルオロカーボンを含
む幹細胞回収組成物と接触させることを含む、方法であり、ここで、該アポトーシス阻害
剤は、該アポトーシス阻害剤と接触させられていない増強胎盤幹細胞の集団と比較したと
き、増強胎盤幹細胞の集団におけるアポトーシスを低下させ又は防止するのに十分な量で
、かつそれに十分な時間存在する。具体的な実施態様において、該アポトーシス阻害剤は
、カスパーゼ阻害剤である。別の具体的な実施態様において、該アポトーシス阻害剤は、
JNK阻害剤である。より具体的な実施態様において、該JNK阻害剤は、該増強胎盤幹細胞の
分化も増殖も調節しない。別の実施態様において、該幹細胞回収組成物は、該アポトーシ
ス阻害剤及び該酸素運搬ペルフルオロカーボンを別々の相に含む。別の実施態様において
、該幹細胞回収組成物は、該アポトーシス阻害剤及び該酸素運搬ペルフルオロカーボンを
エマルジョン中に含む。別の実施態様において、該幹細胞回収組成物は、乳化剤、例えば
、レシチンをさらに含む。別の実施態様において、該アポトーシス阻害剤及び該ペルフル
オロカーボンは、幹細胞と接触させる時点で、約0℃~約25℃である。別のより具体的な
実施態様において、該アポトーシス阻害剤及び該ペルフルオロカーボンは、幹細胞と接触
させる時点で、約2℃~10℃又は約2℃~約5℃である。別のより具体的な実施態様におい
て、該接触は、該増強胎盤幹細胞の輸送中に実施される。別のより具体的な実施態様にお
いて、該接触は、該増強胎盤幹細胞の集団の凍結及び解凍中に実施される。
【0257】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹細胞をアポトーシス阻害剤及
び臓器保存化合物と接触させることを含む方法によって保存することができ、ここで、該
アポトーシス阻害剤は、アポトーシス阻害剤と接触させられていない増強胎盤幹細胞と比
較したとき、増強胎盤幹細胞のアポトーシスを低下させ又は防止するのに十分な量でかつ
それに十分な時間存在する。具体的な実施態様において、臓器保存化合物は、UW溶液(米
国特許第4,798,824号に記載されており; ViaSpanとしても知られている; Southardらの文
献、Transplantation 49(2):251-257(1990)も参照されたい)、又はSternらの米国特許第5
,552,267号に記載されている溶液である。別の実施態様において、該臓器保存化合物は、
ヒドロキシエチルデンプン、ラクトビオン酸、ラフィノース、又はこれらの組合せである
。
【0258】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を産生するために使用されるべき胎盤幹細胞を
、灌流中に、アポトーシス阻害剤及び酸素運搬ペルフルオロカーボン、臓器保存化合物、
又はこれらの組合せを含む幹細胞回収組成物と接触させる。別の実施態様において、増強
胎盤幹細胞を産生するために使用されるべき該胎盤幹細胞を、組織破壊、例えば、酵素的
消化のプロセス中に接触させる。別の実施態様において、増強胎盤幹細胞を産生するため
に使用されるべき胎盤細胞を、灌流による回収の後に、又は組織破壊、例えば、酵素的消
化による回収の後に、該幹細胞回収化合物と接触させる。
【0259】
通常、胎盤幹細胞の回収、濃縮、及び単離中には、低酸素及び機械的ストレスによる細
胞ストレスを最小限にするか又は排除することが好ましい。したがって、本方法の別の実
施態様において、増強胎盤幹細胞を産生するために使用されるべき胎盤幹細胞は、回収、
濃縮、又は単離中、該保存中に6時間未満、低酸素状態に暴露され、ここで、低酸素条件
は、正常な血中酸素濃度未満である酸素の濃度である。より具体的な実施態様において、
該胎盤幹細胞は、該保存中に2時間未満、該低酸素状態に暴露される。別のより具体的な
実施態様において、該胎盤幹細胞は、回収、濃縮、又は単離中に、1時間未満もしくは30
分未満、該低酸素状態に暴露されるか、又は低酸素状態に暴露されない。別の具体的な実
施態様において、該胎盤幹細胞は、回収、濃縮、又は単離中に、剪断ストレスに暴露され
ない。
【0260】
本明細書に記載の、増強胎盤幹細胞、及び増強胎盤幹細胞を産生するために使用される
べき胎盤幹細胞は、例えば、小型の容器、例えば、アンプル中の凍結保存培地に入れて凍
結保存することができる。好適な凍結保存培地としては、例えば、成長培地を含む培養培
地、又は細胞凍結培地、例えば、市販の細胞凍結培地、例えば、C2695、C2639、もしくは
C6039(Sigma)が挙げられるが、これらに限定されない。凍結保存培地は、例えば、約10%
(v/v)の濃度のDMSO(ジメチルスルホキシド)を含むことが好ましい。凍結保存培地は、追
加の物質、例えば、Plasmalyte、メチルセルロースを含むことができ、グリセロールは含
まれていても含まれていなくてもよい。幹細胞は、凍結保存中、約1℃/分で冷却すること
が好ましい。好ましい凍結保存温度は、約-80℃~約-180℃、好ましくは、約-125℃~約-
140℃である。凍結保存された細胞は、液体窒素に移した後、使用のために解凍すること
ができる。いくつかの実施態様において、例えば、アンプルがいったん約-90℃に到達し
たら、液体窒素保管エリアに移す。凍結保存された細胞は、約25℃~約40℃、好ましくは
、約37℃の温度で解凍することが好ましい。ある実施態様において、本明細書に提供され
る増強胎盤幹細胞は、調節性RNA分子と接触(例えば、トランスフェクション)させてから
約12、24、36、48、60、又は72時間後に凍結保存される。一実施態様において、本明細書
に提供される増強胎盤幹細胞は、調節性RNA分子と接触(例えば、トランスフェクション)
させてから約24時間後に凍結保存される。
【0261】
(5.7 組成物)
(5.7.1 増強胎盤幹細胞を含む組成物)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の増強胎盤幹細胞を含む組成物である。そ
のような組成物は、例えば、研究又は治療に使用するための任意の生理的に許容し得る又
は医学的に許容し得る化合物、組成物、又は装置と組み合わされた、本明細書に提供され
る増強胎盤幹細胞の集団を含むことができる。
【0262】
増強胎盤幹細胞は、個体に容易に投与できる形態で調製することができる。例えば、本
明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、医療用途に好適な容器内に入れることができる。その
ような容器は、例えば、滅菌プラスチックバッグ、フラスコ、ジャー、バイアル、又は胎
盤細胞集団を容易に分注することができる他の容器であることができる。例えば、容器は
、血液バッグ、又はレシピエントへの液体の静脈内投与に好適な他のプラスチック製の医
学的に許容し得るバッグであることができる。容器は、増強胎盤幹細胞の凍結保存を可能
にするものであることが好ましい。
【0263】
増強胎盤幹細胞集団、例えば、凍結保存された増強胎盤幹細胞集団は、単一のドナー又
は複数のドナーに由来する増強胎盤幹細胞を含むことができる。該増強胎盤幹細胞は、意
図されるレシピエントと完全にHLAが適合するものであっても、部分的又は完全にHLAが適
合しないものであってもよい。
【0264】
したがって、一実施態様において、本明細書に提供されるのは、容器に入った増強胎盤
幹細胞を含む組成物である。具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、凍結保存
される。別の具体的な実施態様において、容器は、バッグ、フラスコ、バイアル、又はジ
ャーである。より具体的な実施態様において、該バッグは、滅菌プラスチックバッグであ
る。より具体的な実施態様において、該バッグは、該増強胎盤幹細胞の静脈内投与に好適
であるか、又は該投与を可能にするか、又は該投与を容易にする。該バッグは、投与前又
は投与中の、増強胎盤幹細胞と1以上の他の溶液、例えば、薬物との混合を可能にするた
めに相互接続された、複数の内腔又は区画を含むことができる。別の具体的な実施態様に
おいて、該組成物は、組み合わされた幹細胞集団の凍結保存を容易にする1以上の化合物
を含む。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、生理的に許容し得る水溶
液中に含まれる。より具体的な実施態様において、該生理的に許容し得る水溶液は、0.9
%NaCl溶液である。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、該増強胎盤幹
細胞のレシピエントとHLAが適合する。別の具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細
胞は、該増強胎盤幹細胞のレシピエントと、少なくとも部分的にHLAが適合しない。別の
具体的な実施態様において、該増強胎盤幹細胞は、複数のドナー由来の胎盤幹細胞に由来
する。
【0265】
(5.7.1.1 医薬組成物)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、治療有効量の増強胎盤幹細胞を含む医
薬組成物である。
【0266】
本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、インビボでの使用のための医薬組成物に製剤
化することができる。そのような医薬組成物は、医薬として許容し得る担体、例えば、生
理食塩水、又はインビボ投与のための他の認可された生理的に許容し得る溶液中に、増強
胎盤幹細胞を含むことができる。本明細書に提供される医薬組成物は、本明細書に記載の
増強胎盤幹細胞のいずれかを含むことができる。該医薬組成物は、胎児の、母親の、又は
胎児と母親の両方の増強胎盤幹細胞を含むことができる。本明細書に提供される医薬組成
物は、単一の個体もしくは胎盤から又は複数の個体もしくは胎盤から得られた胎盤幹細胞
から産生された増強胎盤幹細胞をさらに含むことができる。
【0267】
本明細書に提供される医薬組成物は、任意の数の増強胎盤幹細胞を含むことができる。
例えば、増強胎盤幹細胞の単回単位用量は、様々な実施態様において、約、少なくとも、
又は多くとも1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×1
09、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、又はそれより多くの増強胎盤幹細胞を含む
ことができる。
【0268】
本明細書に提供される医薬組成物は、50%又はそれより多くの生存している増強胎盤幹
細胞を含む(すなわち、集団内の細胞の少なくとも50%が機能している又は生きている)増
強胎盤幹細胞の集団を含むことができる。好ましくは、集団内の細胞の少なくとも60%が
生存している。より好ましくは、該医薬組成物中の集団内の増強胎盤幹細胞の少なくとも
70%、80%、90%、95%、又は99%が生存している。
【0269】
(5.7.1.2 増強胎盤幹細胞を含むマトリクス)
さらに本明細書に提供されるのは、増強胎盤幹細胞を含むマトリクス、ヒドロゲル、ス
キャフォールドなどである。本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、天然のマトリクス
、例えば、羊膜材料などの胎盤生体材料に播種することができる。そのような羊膜材料は
、例えば、哺乳動物胎盤から直接切除された羊膜;固定された又は加熱処理された羊膜、
実質的に乾燥している(すなわち、<20%、<15%、<10%、<5%、<2%、又は<1%H2
Oの)羊膜、絨毛膜、実質的に乾燥している絨毛膜、実質的に乾燥している羊膜と絨毛膜な
どであることができる。増強胎盤幹細胞を播種することができる好ましい胎盤生体材料は
、米国特許出願公開第2004/0048796号に記載されている。
【0270】
本明細書に提供される増強胎盤幹細胞は、例えば、注射に好適なヒドロゲル溶液に懸濁
させることができる。そのような組成物のための好適なヒドロゲルとしては、RAD16など
の自己集合ペプチドが挙げられる。増強胎盤幹細胞は、例えば、局所注射用のアルギネー
トもしくは多血小板血漿、又は他のフィブリン含有マトリクスと組み合わせることもでき
る。一実施態様において、増強胎盤幹細胞を含むヒドロゲル溶液を、例えば、鋳型中で硬
化させて、該細胞がその中に分散している埋め込み用のマトリクスを形成させることがで
きる。そのようなマトリクス中の増強胎盤幹細胞を、該細胞が埋め込み前に有糸分裂によ
って拡大されるように培養することもできる。ヒドロゲルは、例えば、共有結合、イオン
結合、又は水素結合によって架橋されて、水分子を捕捉してゲルを形成する3次元の開放
格子構造を生成させる有機ポリマー(天然又は合成)であることができる。ヒドロゲル形成
材料としては、イオンによって架橋される、アルギネート及びその塩などの多糖類、ペプ
チド、ポリホスファジン、並びにポリアクリレート、又はそれぞれ温度もしくはpHによっ
て架橋されるポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなど
のブロックポリマーが挙げられる。いくつかの実施態様において、ヒドロゲル又はマトリ
クスは生分解性である。
【0271】
いくつかの実施態様において、マトリクスは、その場で重合可能なゲルを含む(例えば
、米国特許出願公開第2002/0022676号; Ansethらの文献、J. Control Release, 78(1-3):
199-209(2002); Wangらの文献、Biomaterials, 24(22):3969-80(2003)を参照されたい)。
【0272】
いくつかの実施態様において、ポリマーは、荷電側鎖基又はその一価のイオン性塩を有
する、水、緩衝塩類溶液、又は水性アルコール溶液などの水溶液に、少なくとも部分的に
溶解可能である。カチオンと反応させることができる酸側鎖基を有するポリマーの例は、
ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル
酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、及びスルホン化ポリマー、例えば、スルホン化ポリ
スチレンである。アクリル酸又はメタクリル酸とビニルエーテルモノマー又はビニルエー
テルポリマーとの反応によって形成される酸側鎖基を有するコポリマーを使用することも
できる。酸基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくは、フッ素化)
アルコール基、フェノール性OH基、及び酸性OH基である。
【0273】
増強胎盤幹細胞を3次元フレームワーク又はスキャフォールドに播種し、インビボに埋
め込むことができる。そのようなフレームワークは、任意の1以上の成長因子、細胞、薬
物、或いは組織形成を刺激し又は本明細書中の別所に記載の治療方法の実施を別の形で強
化もしくは改善する他の成分と組み合わせて埋め込むことができる。
【0274】
本明細書で使用することができるスキャフォールドの例としては、不織マット、多孔性
発泡体、又は自己集合ペプチドが挙げられる。不織マットは、グリコール酸と乳酸の合成
の吸収性コポリマー(例えば、PGA/PLA)(VICRYL, Ethicon社, Somerville, N.J.)から構成
される繊維を用いて形成させることができる。フリーズドライ又は凍結乾燥などのプロセ
スによって形成される、例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA
)コポリマーから構成される、発泡体(例えば、米国特許第6,355,699号参照)をスキャフォ
ールドとして使用することもできる。
【0275】
別の実施態様において、スキャフォールドは、ナノ繊維スキャフォールド、例えば、電
界紡糸ナノ繊維スキャフォールドであるか、又はこれを含む。より具体的な実施態様にお
いて、該ナノ繊維スキャフォールドは、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、I型コラーゲン、フッ化ビ
ニリデンとトリフルオロエチレン(trifluoroethylnee)のコポリマー(PVDF-TrFE)、ポリ(-
カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)[P(LLA-CL)](例えば、75:25)
、及び/又はポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)とI型コラ
ーゲンのコポリマーを含む。ナノ繊維スキャフォールド、例えば、電界紡糸ナノ繊維スキ
ャフォールドを製造する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Xuらの文献、Tissue
Engineering 10(7):1160-1168(2004); Xuらの文献、Biomaterials 25:877-886(20040; M
engらの文献、J. Biomaterials Sci., Polymer Edition 18(1):81-94(2007)を参照された
い。
【0276】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、限定されないが、モノ-、ジ-、トリ-、α-トリ-
、β-トリ-、及びテトラ-リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイ
ト、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カル
シウムマグネシウム、BIOGLASS(登録商標)などの生体活性ガラス、並びにこれらの混合物
を含む、生理的に許容し得るセラミック材料に播種するか、又は該セラミック材料と接触
させることができる。現在市販されている多孔性の生体適合性セラミック材料としては、
SURGIBONE(登録商標)(CanMedica社, Canada)、ENDOBON(登録商標)(Merck Biomaterial Fr
ance, France)、CEROS(登録商標)(Mathys, AG, Bettlach, Switzerland)、及び石灰化コ
ラーゲン骨移植用製品、例えば、HEALOS(商標)(DePuy社, Raynham, MA)、並びにVITOSS(
登録商標)、RHAKOSS(商標)、及びCORTOSS(登録商標)(Orthovita, Malvern, Pa.)が挙げら
れる。フレームワークは、天然及び/又は合成材料の混合物、ブレンド、又は複合体であ
ることができる。
【0277】
別の実施態様において、増強胎盤幹細胞は、例えば、生体吸収性材料、例えば、PGA、P
LA、PCLのコポリマーもしくはブレンド、又はヒアルロン酸でできたマルチフィラメント
糸から構成されることができるフェルトに播種するか、又は該フェルトと接触させること
ができる。
【0278】
本明細書に記載の増強胎盤幹細胞は、別の実施態様において、複合体構造であり得る発
泡体スキャフォールドに播種することができる。そのような発泡体スキャフォールドは、
有用な形状に成形することができる。いくつかの実施態様において、細胞接着を増強する
ために、増強胎盤幹細胞の接種前に、フレームワークを、例えば、0.1M酢酸で処理し、次
いで、ポリリジン、PBS、及び/又はコラーゲン中でインキュベートする。マトリクスの外
側表面を、例えば、マトリクスのプラズマコーティング、又は1以上のタンパク質(例えば
、コラーゲン、弾性繊維、網状繊維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘ
パリン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラチ
ン硫酸など)、細胞マトリクス、並びに/もしくは他の材料、例えば、限定されないが、ゼ
ラチン、アルギネート、寒天、アガロース、及び植物ゴムなどの添加によって修飾して、
細胞の接着又は成長及び組織の分化を向上させることができる。
【0279】
いくつかの実施態様において、スキャフォールドは、スキャフォールドを非血栓形成性
にする材料を含むか、又は該材料で処理される。これらの処理及び材料は、内皮成長、移
動、及び細胞外マトリクス沈着を促進し、持続させることもできる。これらの材料及び処
理の例としては、天然材料、例えば、基底膜タンパク質、例えば、ラミニン及びIV型コラ
ーゲン、合成材料、例えば、EPTFE、及びセグメント化ポリウレタン尿素シリコーン、例
えば、PURSPAN(商標)(The Polymer Technology Group社, Berkeley, Calif.)が挙げられ
るが、これらに限定されない。スキャフォールドは、ヘパリンなどの抗血栓剤を含むこと
もできるし;スキャフォールドを、増強胎盤幹細胞を播種する前に、表面電荷を変化させ
るように処理する(例えば、プラズマコーティングする)こともできる。
【実施例0280】
(6.実施例)
(6.1 実施例1:胎盤幹細胞生存と関連する生存関連遺伝子の同定)
本実施例は、環境的傷害に対する胎盤幹細胞の応答と関連する分子経路及び特異的遺伝
子の同定を記載するものである。細胞カスパーゼ3/7活性の増加並びに細胞代謝活性及び
ミトコンドリア膜電位の減少は、細胞生存の減少と関連することが知られている。したが
って、生存の強化を、傷害後の胎盤幹細胞のカスパーゼ3/7活性、代謝活性、及びミトコ
ンドリア膜電位の測定によって評価した。
【0281】
(6.1.1 方法)
(6.1.1.1 マイクロRNAライブラリースクリーン)
環境的傷害に暴露された胎盤幹細胞の生存を強化することができるマイクロRNAを同定
するために、マイクロRNAライブラリースクリーンを使用した。胎盤幹細胞を組織培養プ
レートに24時間播種し、マイクロRNAライブラリーを24時間トランスフェクトし、その後
、100%正常ラット血清で一晩傷害させた。傷害(100%ラット血清)下での終夜培養の後、
細胞を細胞生存強化についてアッセイした。プロトコルは、以下でより詳細に記載されて
いる。
【0282】
(6.1.1.1.1 マイクロRNAトランスフェクション)
CD34-、CD10+、CD105+、CD200+胎盤幹細胞を、3×103個の濃度で、2連で、96ウェル組
織培養プレートに播種した(「0日目」)。24時間後、1日目に、細胞に、100nMのAmbion Pr
e-miR Mimic Library(miRBase v15)、適当な対照(無処理;ビヒクル;並びに製造業者から
得られた陰性対照1及び2)、並びにAmbionのアミントランスフェクション試薬をトランス
フェクトした。
【0283】
(6.1.1.1.2 環境的傷害)
2日目に、トランスフェクション培地を除去し、培養培地又は100%正常ラット血清(傷
害)(Invitrogen)のどちらかと交換し、一晩インキュベートした。
【0284】
(6.1.1.1.3 傷害/カスパーゼ3/7評価)
3日目に、傷害培地を除去し、100μLの0.5μM Hoechst 33342染料と交換し、細胞を37
℃で1時間インキュベートした。その後、染色された細胞を、InCell Analyzer(GE)を用い
てイメージングし、核数を解析した。イメージング後、Hoechst染料を除去し、細胞を100
μLのカスパーゼ-Glo 3/7(Promega)試薬とともに室温で1時間インキュベートした。イン
キュベーション後、絶対発光を、Biotek Synergyプレートリーダーを用いて読み取り、発
光計測値及び核数を用いて、カスパーゼ3/7活性/細胞を計算した。ヒットを両方の陰性対
照と対比して解析し、どちらかの陰性対照と比べて胎盤幹細胞のカスパーゼ3/7活性を有
意に低下させるマイクロRNAを同定した(p<0.05、スチューデントt-検定)。
【0285】
(6.1.1.2 代謝活性及びミトコンドリア膜電位研究)
マイクロRNAライブラリースクリーンに加えて、環境的傷害に暴露された胎盤幹細胞の
代謝活性及びミトコンドリア膜電位を、それぞれ、Cell Titer Gloアッセイ(Promega)及
びTMREミトコンドリア膜電位アッセイキット(Abcam)を用いて評価した。
【0286】
代謝活性の評価のために、上記のような傷害(ラット血清)に暴露された胎盤幹細胞を10
0μLのCell Titer Glo(Promega)試薬とともに室温で15分間インキュベートした。インキ
ュベーション後、絶対発光を、Biotek Synergyプレートリーダーを用いて読み取り、発光
計測値及び核数を用いて、代謝活性/細胞を計算した。
【0287】
ミトコンドリア膜電位の評価のために、上記のような傷害(ラット血清)に暴露された胎
盤幹細胞を1.5μMのTMRE染色(Abcam)試薬とともに37℃で30分間インキュベートした。イ
ンキュベーション後、細胞を0.2%BSA-PBSで2回洗浄し、蛍光を、Biotek Synergyプレー
トリーダーを用いて読み取った。平均蛍光強度読み出し値及び核数を用いて、ミトコンド
リア膜電位/細胞を計算した。
【0288】
両方のアッセイのために、ヒットを両方の陰性対照(Ambionから入手される陰性対照#1
及び陰性対照#1)と対比して解析し、どちらかの陰性対照と比べて、胎盤幹細胞の代謝活
性/細胞及び/又はミトコンドリア膜電位/細胞を有意に向上させるマイクロRNAとして同定
した(p<0.05、スチューデントt-検定)。
【0289】
(6.1.1.3 バイオインフォマティックスによる標的遺伝子予測/経路解析)
10種のマイクロRNA予測データベースのデータベース統合を用いて、ライブラリースク
リーンからの確認されたマイクロRNAヒットの予測される標的遺伝子を得た。このデータ
ベースは、Diana-microT、miRDB、miRTar、miRanda、miRBase、picTar、Targetscan、Tar
Base、miRecords、及びmiRTarBaseの予測アルゴリズムからなっていた。予測される標的
遺伝子の経路解析及び生体機能情報は、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)(Ingenuity Sy
stems)を用いて完成させた。
【0290】
(6.1.1.4 PCRによるマイクロRNA及び標的遺伝子検証研究)
マイクロRNA/標的遺伝子検証研究のために、胎盤幹細胞に、マイクロRNAライブラリー
スクリーンで確認されたヒットを、上記のように、ただし、傷害なしでトランスフェクト
し、マイクロRNA及びmRNAを、MiRvanaマイクロRNA単離キット(Ambion)を用いて単離した
。血清飢餓(DMEM中での培養)及び接触阻害(細胞播種数の倍加)は、マイクロRNA遺伝子修
飾と比較するために細胞周期停止陽性対照として本研究に含まれた条件であった。
【0291】
マイクロRNAトランスフェクション評価のために、RT-PCRを、各々のトランスフェクト
されたマイクロRNA模倣物に特異的なTaqmanマイクロRNA逆転写キット及びTaqmanマイクロ
RNAアッセイ(Life Technologies)を用いて遂行した。PCRを、AMPErase UNGを含まないTaq
man 2×ユニバーサルPCRマスターミックス(Life Technologies)及びcDNAとともにTaqman
マイクロRNAアッセイを用いて遂行し、Applied Biosystems 7900HT高速リアルタイムPCR
装置で標準モードで実行した。全てのデータをRQ Manager(Applied Biosystems)で解析し
た。
【0292】
mRNA/標的遺伝子発現を評価するために、RT-PCRを、Superscript VILOマスターミック
ス(Life Technologies)を用いて遂行した。PCRを、予測される標的遺伝子に特異的なTaqm
an遺伝子発現アッセイ(Life Technologies)と、Taqman高速ユニバーサルPCRマスターミッ
クス(Life Technologies)と、cDNAとを用いて遂行し、Applied Biosystems 7900HT高速リ
アルタイムPCR装置で高速モードで実行した。全てのデータをRQ Manager(Applied Biosys
tems)で解析した。
【0293】
(6.1.1.5 マイクロRNA細胞周期検証)
マイクロRNA細胞周期検証研究を遂行して、マイクロRNA細胞生存ヒットが、細胞を傷害
から防御する胎盤幹細胞の細胞休止状態を誘導するかどうかを試験した。
【0294】
胎盤幹細胞を播種し、マイクロRNA細胞生存ヒットを、上記のように、ただし、100%ラ
ット血清傷害なしでトランスフェクトした。その後、細胞を回収し、細胞周期分布解析の
ために、製造業者のプロトコルの通りに、BrdU Flowキット(BD Pharmingen)で染色した。
【0295】
さらに、胎盤幹細胞を、重要な細胞周期タンパク質の発現に対するマイクロRNA細胞生
存ヒットの効果について、ヒトCDK6、サイクリンD1(CCND1)、サイクリンD3(CCND3)、及び
サイクリンE(CCNE1)タンパク質に対する抗体を用いて評価した。標準的な技術をCDK6及び
CCND1のために使用した。
【0296】
サイクリンD3染色のために、細胞を、1%ホルムアルデヒドで、4℃で15分間固定し、次
いで、冷75%エタノールとともに、-20℃で最低でも2時間インキュベートした。細胞を、
冷0.25%Triton X-100で、4℃で5分間透過処理し、1%FBS-PBSで洗浄し、FcRブロッキン
グ試薬(Miltenyi Biotec)とともに、4℃で10分間インキュベートした。その後、胎盤幹細
胞を、対等な濃度のマウスIgG1アイソタイプ対照(BD Pharmingen)とともに、2.5×の製造
業者の推奨染色濃度のマウス抗ヒトサイクリンD3 Fitc抗体(BD Pharmingen)で染色し、室
温暗所で30分間染色した。データを、FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Bioscienc
es)を用いて取得し、FlowJo(Tree Star)で解析した。
【0297】
サイクリンE染色のために、細胞を、4%パラホルムアルデヒドで、4℃で15分間固定し
、冷0.1%Tween-20で、4℃で20分間透過処理した。細胞を1%FBS-PBSで洗浄し、FcRブロ
ッキング試薬(Miltenyi Biotec)とともに、4℃で10分間インキュベートした。その後、胎
盤幹細胞を、対等な濃度のマウスIgG1アイソタイプ対照(Abcam)とともに、2.5×の製造業
者の推奨染色濃度のマウス抗ヒトサイクリンE抗体(Abcam)で室温で30分間染色し、次いで
、マウスIgGに対するヤギポリクローナル二次抗体Dylight 488(Abcam)で、室温で30分間
二次染色した。データを、FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用い
て取得し、FlowJo(Tree Star)で解析した。
【0298】
(6.1.2 結果)
(6.1.2.1 マイクロRNAライブラリースクリーン)
100%ラット血清傷害への暴露による胎盤幹細胞生存の強化についての1,090個のマイク
ロRNAのスクリーニングにより、胎盤幹細胞における細胞1個当たりのカスパーゼ3/7活性
に対する多様な効果が得られた。
【0299】
いくつかのトランスフェクトされたマイクロRNAは、傷害後の細胞1個当たりのカスパー
ゼ3/7活性を低下させた。表3に示すように、合計36個のマイクロRNAヒットは、アッセイ
キットに提供される陰性対照のいずれかと比較して、傷害後の細胞1個当たりのカスパー
ゼ3/7活性を有意に増加させた。調節の範囲は、細胞1個当たり-7.23%~-34.44%のカス
パーゼ3/7活性の減少であった。
表 3:胎盤幹細胞生存強化についてのライブラリースクリーンからのマイクロRNAヒットの
リスト
【表3】
【0300】
(6.1.2.2 代謝活性及びミトコンドリア膜電位研究)
マイクロRNA MiR-16、miR-29a、miR-424、miR-4305、miR-3142、及びmiR-613の各々は
、陰性対照と比較して、傷害後の細胞1個当たりのカスパーゼ3/7活性の統計的に有意な減
少を引き起こすことが明らかになった(
図1)。
【0301】
これらのマイクロRNAヒットの各々は、傷害後の細胞1個当たりの胎盤幹細胞代謝活性を
増加させることも分かった(
図2)。6つの確認されたヒットのうち、miR-16及びmiR-424は
、細胞1個当たりの胎盤幹細胞ミトコンドリア膜電位も増加させ(
図3)、細胞生存強化がさ
らに裏付けられた。
【0302】
確認された上位のカスパーゼ3/7調節因子である、miR-16、miR-424、及びmiR-29aは、(
標的mRNAの核酸配列に対するその相補性に基づき)、それらの標的mRNAに結合する類似の
シード配列、すなわち、miRNAの機能にとって重要なmiRNAの5'配列を共有することが分か
った。miR-16とmiR-424は同一のシード配列を有しており、一方、miR-29aは、5番目の位
置のヌクレオチドが1つ異なっている(表4)。したがって、これらのマイクロRNAは、類似
したサブセットの標的遺伝子及び経路/生体機能を標的にし、調節することが予想された
。
表4:マイクロRNA間のシード配列類似性(成熟miRNA中に存在するシード配列は四角で囲ま
れている)
【表4】
【0303】
(6.1.2.3 標的遺伝子予測/経路解析)
miR-29a、miR-16、及びmiR-424のバイオインフォマティックス解析により、これらのマ
イクロRNAによって標的にされることが予測される合計150個の実験的に確認された遺伝子
が同定された。miR-29aの予測解析により、26個の標的遺伝子が得られ、miR-16の解析に
より、105個の標的遺伝子が予測され、一方、miR-424の解析により、19個の遺伝子が得ら
れた(表5)。
表5: miR-29a、miR-16、及びmiR-424についての実験的に確認された遺伝子のマイクロRNA
標的遺伝子予測
【表5】
【0304】
実験的に確認された遺伝子のいくつかは、2以上のマイクロRNAヒットによって標的にさ
れることが予測された(表5及び6:陰影付きの四角)。これらの予測された遺伝子には、ア
ポトーシス、細胞周期調節、転写活性化、及び細胞ストレス応答経路に関連する遺伝子が
含まれた。
表6: 2以上の確認された胎盤幹細胞生存強化マイクロRNAヒットによって標的にされるこ
とが予測された実験的に確認された遺伝子のリスト及び機能
【表6】
【0305】
(6.1.2.4 PCRによるマイクロRNA及び標的遺伝子検証研究)
qPCRを用いたマイクロRNA検証研究により、傷害前のマイクロRNA模倣物による胎盤幹細
胞のトランスフェクションの成功が確認された。miR-29aによる胎盤幹細胞のトランスフ
ェクションにより、2.78~7.47倍のmiR-29a発現の増加がもたらされ(
図4A)、miR-16によ
るトランスフェクションにより、762~2,158倍のmiR-16発現の増加がもたらされ(
図4B)、
miR-424によるトランスフェクションにより、274~914倍のmiR-424発現の増加がもたらさ
れた(
図4C)。
【0306】
遺伝子発現研究により、マイクロRNAヒットによって標的にされることがバイオインフ
ォマティックス研究で予測された数多くの遺伝子が検証され、確認された。2以上のマイ
クロRNAヒットによって標的にされることが予測された実験的に確認された遺伝子(イタリ
ック体)は全て、該マイクロRNAヒットによって標的にされ、調節されることが遺伝子発現
研究の範囲内で確認された。
【0307】
miR-16及びmiR424は、類似の標的遺伝子調節パターンを有しており、このパターンは、
血清飢餓及び接触阻害状態のシグナチャーと一致していたが、miR-29aとは異なっていた
。miR-16とmiR-424はどちらも、細胞周期進行に関連する遺伝子(CCND1、CCND3、CCNE1、C
CNF、及びCDK6)、細胞周期調節に関連する遺伝子(CDC25A、WEE1、及びCHEK1)、並びに転
写活性化に関連する遺伝子(MyB)を下方調節した。miR-16及びmiR-424は、細胞の成長及び
分裂の負の調節因子(PPP2R5C)、アポトーシスの阻害因子(MCL1)、細胞ストレス経路/p53
の負の調節因子(PPMID及びHMGA1)、並びに細胞生存シグナル伝達に関連する遺伝子(AKT3
及びVEGFA)及び接着に関連する遺伝子(ITGA2)を上方調節した。これらを考え合わせ、血
清飢餓及び接触阻害に起因する変化と比較すると、これらの分子変化は、miR-16及びmiR-
424による胎盤幹細胞生存強化のメカニズムとしての細胞周期停止の役割を示唆している
。
【0308】
miR-29aは、CCND1、CCND3、CCNE1、CDC25A、WEE1遺伝子発現を上方調節し、MCL1、PPMI
D、HMGA1、AKT3、VEGFA、及びITGA2遺伝子発現を下方調節し、このマイクロRNAの細胞生
存強化に関する少し異なる基本的メカニズムを示唆している。
【0309】
標的遺伝子検証研究で観察された分子変化は、これらのmiR処理によって、傷害に対し
て防御的であり、かつ細胞生存を強化する胎盤幹細胞の休止状態が誘導されることを示し
ている。
【0310】
(6.1.2.5 マイクロRNA細胞周期検証)
BrdUを用いた胎盤幹細胞マイクロRNA細胞周期検証研究により、上記のマイクロRNA細胞
生存ヒットが傷害に対して防御的である胎盤幹細胞の細胞休止の状態を誘導することが確
認された。miR-29aによる胎盤幹細胞のトランスフェクションにより、細胞周期のG0/G1期
細胞の分布の3.32%~4.77%の絶対的増加(
図5A)、S期細胞の分布の-1.4%~-3.32%の絶
対的減少(
図5B)、及びG2/M期細胞の分布の-1.8%~-2.05%の絶対的減少(
図5C)がもたら
された。miR-16によるトランスフェクションにより、細胞周期のG0/G1期細胞の分布の15.
45%~16.9%の絶対的増加(
図5A)、S期細胞の分布の-3.27%~-5.2%の絶対的減少(
図5B)
、及びG2/M期細胞の分布の-9.99%~-10.24%の絶対的減少(
図5C)がもたらされた。miR-4
24によるトランスフェクションにより、細胞周期のG0/G1期細胞の分布の11.85%~13.3%
の絶対的増加(
図5A)、S期細胞の分布の-2.88%~-4.81%の絶対的減少(
図5B)、及びG2/M
期細胞の分布の-8.27%~-8.52%の絶対的減少(
図5C)がもたらされた。
【0311】
フローサイトメトリーによる評価により、サイクリンD3及びサイクリンEがmiR-16及びm
iR-424の標的であることがさらに確認された。miR-16によるトランスフェクションにより
、胎盤幹細胞サイクリンD3発現の-29.55%~-35.25%の絶対的減少(
図6A)、及び胎盤幹細
胞サイクリンE発現の-20.75%~-23.2%の絶対的減少(
図6B)がもたらされた。miR-424に
よるトランスフェクションにより、胎盤幹細胞サイクリンD3発現の-20.25%~-25.95%の
絶対的減少(
図6A)、及び胎盤幹細胞サイクリンE発現の-11.15%~-13.6%の絶対的減少(
図6B)がもたらされた。
【0312】
miR-29aによる胎盤幹細胞のトランスフェクションにより、胎盤幹細胞によるサイクリ
ンD3及びサイクリンE遺伝子発現の上方調節、並びにサイクリンD3及びサイクリンEタンパ
ク質発現の増加がもたらされた(
図6A~B)。任意の特定の理論又はメカニズムに束縛され
ることを望まないが、上記の細胞周期研究に基づくと、細胞周期停止は、miR-29aによる
最も可能性の高い胎盤幹細胞生存強化のメカニズムである。しかしながら、これらのデー
タにより、このメカニズムは、miR-16及びmiR-424の場合と同様、サイクリンD3及びEの標
的化及び下方調節によって媒介される可能性が低いことが示される。
【0313】
これらの細胞周期検証研究は、マイクロRNAなどの調節性RNAが、細胞周期関連遺伝子/
タンパク質を標的にすることによって、傷害に直面した際に、胎盤幹細胞生存を強化する
ことができることをさらに示している。
【0314】
(6.1.3 結論)
分子標的及び生物学的経路/機構が細胞生存強化に関連しているので、胎盤幹細胞生存
を傷害の存在下で強化することができるマイクロRNAを同定し、検証した。データは、分
子標的及び生物学的経路/機構の標的化が生存能力の増強を伴う胎盤幹細胞における休止
の誘導をもたらすことを示している。マイクロRNA及びその標的遺伝子/経路の調節(例え
ば、マイクロRNAの使用以外の機構を介して)は、準最適条件下で生存するか、又は通常培
養/インビボ条件下でより長い持続期間生存することができる増強胎盤幹細胞を生成させ
ることができる新規の手段となる。
【0315】
(等価物:)
本明細書に開示される組成物及び方法は、本明細書に記載の具体的な実施態様によって
範囲が限定されるべきではない。実際、記載されているものに加えて、組成物及び方法の
様々な変更が、前述の説明及び付随する図面から、当業者に明らかになるであろう。その
ような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0316】
様々な刊行物、特許、及び特許出願が本明細書に引用されており、これらの開示は、引
用により完全に本明細書中に組み込まれる。