(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028783
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】アモルファスポリアルファオレフィンおよびスプレー性が向上したホットメルト組成物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20240227BHJP
C08F 8/50 20060101ALI20240227BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C09J123/00
C08F8/50
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201390
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2021512251の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】18192854.0
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セバスチアン バビク
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン セパ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ エバース
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベーレント
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ フィート
(72)【発明者】
【氏名】カタリナ ラヴェルト
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ ローベル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来技術における1つまたは複数の欠点を有さないAPAOまたはAPAOをベースとする溶融塗布接着剤組成物を提供する。
【解決手段】粘度が190℃で1,000mPa・s~4,000mPa・sであり、分子量分布(Mw/Mn)が3~8であり、Mz/Mwの商が1.1~2.9であり、かつMz/Mnの商が9.1~19.9であり、いずれの場合も、特定の方法によって測定されたことを特徴とする、フリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が190℃で1,000mPa・s~4,000mPa・sであり、分子量分布(Mw/Mn)が3~8であり、Mz/Mwの商が1.1~2.9であり、かつMz/Mnの商が9.1~19.9であり、いずれの場合も、明細書規定の方法によって測定されたことを特徴とする、フリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの抗酸化剤を0.01重量%~3重量%含むフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのフリーラジカル開始剤分解物を0.01重量%~3重量%含むフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物。
【請求項4】
粘度が190℃で5,000mPa・s以上であるアモルファスポリアルファオレフィンを過酸化物フリーラジカル分解に付し、該分解の分解反応を15秒~1,200秒にわたって行い、
前記フリーラジカル分解が押出機で行われる、フリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フリーラジカル分解が、フリーラジカル形成剤、好ましくは過酸化ジベンゾイル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、またはp-メタンヒドロペルオキシドから選択されるフリーラジカル形成剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
使用される前記フリーラジカル形成剤の割合が、アモルファスポリアルファオレフィンとフリーラジカル形成剤の合計に対し、0.1重量%~5重量%であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記分解反応が150℃~250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項4~請求項6の少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
前記分解反応が30秒~600秒にわたって行われることを特徴とする、請求項4~請求項7の少なくとも1項記載の方法。
【請求項9】
前記分解反応が、30秒~600分の時間(t)にわたって、150℃~250℃の温度(T)で行われ、使用されるフリーラジカル形成剤の割合(A)が、アモルファスポリアルファオレフィンとフリーラジカル形成剤の合計に対し、0.1重量%~5重量%であり、(t)×(T)×(A)の積が1,000~100,000[秒℃重量%]であることを特徴とする、請求項4~請求項8の少なくとも1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載のアモルファスポリアルファオレフィンを調製することを特徴とする、請求項4~請求項9の少なくとも1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載のフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物、または請求項4~請求項10のいずれか1項記載の方法により製造されたフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物の使用。
【請求項12】
前記組成物の少なくとも90重量%が請求項1~請求項3のいずれか1項記載のフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物、または請求項4~請求項10のいずれか1項記載の方法により製造されたフリーラジカル分解アモルファスポリアルファオレフィンを含みワックスを含まない溶融塗布接着剤組成物であることを特徴とする、請求項11の使用。
【請求項13】
前記溶融塗布接着剤組成物が、スパイラルノズルによって塗布されることを特徴とする、請求項11または請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記溶融塗布接着剤組成物が、包装、建築物、カーペット、木材加工、自動車、マットレス、ビチューメンまたは衛生用品の用途に使用されることを特徴とする、請求項11~請求項13の少なくとも1項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度が190℃で5,000mPa・s未満であり、モル質量分布(Mw/Mn)が3~8であり、Mz/Mwの商が3.0以下であり、かつMz/Mnの商が21.0未満であるアモルファスポリアルファオレフィンと、分解アモルファスポリアルファオレフィン、特に本発明による前記アモルファスポリアルファオレフィンの製造方法と、本発明による前記アモルファスポリアルファオレフィンまたは本発明により製造されたアモルファスポリアルファオレフィンの溶融塗布接着剤組成物における使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤の塗布では、多くの場合、スプレーノズル(スパイラルノズル、シグネチャーノズルなど)が使用され、ホットメルト配合物は、圧力下でノズルによってメルトとして基板上にスプレーされる。
【0003】
アモルファスポリアルファオレフィン(以下、APAO)を含む配合物の問題点は、SBS/SIS[スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体]をベースとする配合物に比べ、塗布温度がはるかに高いこと、そしてスプレー結果の品質が低いことである。具体的には、SBS/SIS系システムは、約120℃で塗布され、非常に均一なスプレー結果をもたらす。このシステムの欠点は、樹脂システムを高水準(多くの場合、40重量%以上)で配合しなければならないことと、スチレン系原材料に起因する不快な臭いである。本点は、APAO系システムの利点が明らかとなる点であり、APAO系システムでは樹脂の配合はそれほど重要でなく(30重量%未満)、加えて不快な臭いも少ない。
【0004】
しかし、重大な欠点は、140℃を超える、SBS/SISシステムと比較して明らかに高い塗布温度である。例えば、特許文献1には、170℃超でのスパイラルノズルを用いたAPAOおよびシンジオタクチックPPの塗布が記載されている。
特許文献2には、例えば、APAO系ホットメルトの一般的に不十分なスプレー性が記載されており、そのため、SBS系またはゴム系システムが使用されている。
特許文献3には、200℃未満でのホットメルト配合物の使用が記載されている。
特許文献4には、好ましくは140℃~160℃でスプレー可能なAPAOシステムが記載されているが、5%~30%のオイルが添加されている。特許文献5では、処理温度を下げるために、SBSを配合したAPAOシステムが提案されている。
【0005】
塗布の観点から、シグネチャーノズルを使用する場合に130℃未満の塗布温度が繰り返し望まれている。APAOシステムでは、今までこれらを達成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許番号第1442089号
【特許文献2】米国特許番号第8921474号
【特許文献3】欧州特許番号第0442045号
【特許文献4】欧州特許番号第1124911号
【特許文献5】米国特許公開番号第20160222258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、従来技術における1つまたは複数の欠点を有さないAPAOまたはAPAOをベースとする溶融塗布接着剤組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことだが、特定のパラメータを満たすアモルファスポリアルファオレフィンは、上記欠点の1つまたは複数を解決できることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載され、かつ以下に記載されるアモルファスポリアルファオレフィンであり、粘度が190℃で5,000mPa・s未満であり、モル質量分布(Mw/Mn)が3~8であり、Mz/Mwの商が3.0以下であり、かつMz/Mnの商が21.0未満であることを特徴とするアモルファスポリアルファオレフィンを提供するものである。
【0010】
同様に、本発明は、粘度が190℃で5,000mPa・s以上であるアモルファスポリアルファオレフィンのフリーラジカル化、好ましくは過酸化分解を15秒~1,200秒にわたって行うことにより、分解アモルファスポリアルファオレフィンを得ることを特徴とする、分解アモルファスポリアルファオレフィンの製造方法を提供するものである。ポリマーの分解方法は、原理上は知られている。米国特許公開番号第4707524号には、例えば、過酸化物との混合によるポリプロピレンの分解が記載されている。米国特許公開番号第3121070号には、275℃~450℃の温度でのポリプロピレンの分解が記載されている。米国特許公開番号第3940379号には、メルトフローレートがより高いポリプロピレンを得るための、酸素または過酸化物の存在下でのポリプロピレンの分解が記載されている。Markus Gahleitner in Prog. Polym. Sci. 26 (2001年) 895頁~944頁には、ポリオレフィンのメルトレオロジーのレビューが掲載されている。
【0011】
また、本発明は、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOの溶融塗布接着剤組成物における使用を提供するものである。
【0012】
本発明によるAPAOを溶融塗布接着剤組成物で使用すると、スプレー温度を100℃~140℃に下げることができる。
したがって、本材料は、クラッキング(ポリマーの破壊や開裂)の傾向が少なくなる。
【0013】
本発明によるAPAOは、以前と同じ配合(SBS/SISまたは油さえも含まない)で120℃において使用されることができ、以前は不可能であった、使用温度および樹脂配合の引き下げ、そして不快な臭いの低減を可能とし、同時に優れたスプレー結果を実現する。
【0014】
スプレー温度が低いので、溶融塗布接着剤組成物の溶融に必要なエネルギーが少なくて済む。さらに、低温のおかげで基板が受けるストレスが少なく、またはより熱的に安定でない基板材料の使用が可能となる。
【0015】
本発明により使用される溶融塗布接着剤組成物のスプレー結果は、非常に均一であり、このことは、材料のより均一な塗布に繋がる。
【0016】
これは、明らかに良好な剥離値(すなわち、不織布基材の分離しにくさ)をもたらす。25mmのストリップで2.2Nを超える値が達成されたが、以前の値は2.0N未満であった(いずれの場合もASTM D1876に準拠して測定した)。
【0017】
さらなる利点は、処理安定性の高さである。「エンジェルヘア」(ノズルから無向に出てくるホットメルトフィラメント)を回避すると、洗浄サイクルが延び、洗浄の複雑さが軽減し、最終的には稼働時間が長くなる。
【0018】
本発明によるAPAOをベースとする溶融塗布接着剤組成物は、スプレーノズル法だけでなく、他の方法(例えば、スロットダイが使用される方法)にも使用され得る。
【0019】
本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOをベースとする溶融塗布接着剤組成物は、メタロセン系システムをベースとする配合物と比較して、ポリマーをはるかに高い水準で配合することができ、これは配合の複雑さを明らかに軽減する。したがって、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOをベースとすると、溶融塗布接着剤組成物に対し、最大70重量%のポリマー(APAO)あるいは95重量%を超えるポリマーでさえ配合することができる。一方、メタロセン系システムでは、全体の配合に対し、最大40重量%のポリマー(ポリオレフィン)しか使用できないことが多い。
【0020】
本発明によるAPAO、本発明による方法、およびAPAOの本発明による用途は、以下の例により説明されるが、本発明がこれらの例示的実施形態に限定されることを意図していない。範囲、一般式、または化合物群が以下に規定される場合、これらは、明示された対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)や化合物を除くことによって得られるすべての部分範囲および部分化合物群を包含するものとする。本明細書の文脈において文献が引用される場合、それらの内容は、特に言及された主題に関して、完全に本発明の開示内容の一部を形成するものとする。特に指定されていない限り、以下の百分率で示された数値は、重量%の数値である。平均(例えば、モル質量平均)が以下に規定された場合、特に指定されていない限り、それらは数値平均である。材料の特性(例えば粘度など)が以下に規定された場合、特に指定されていない限り、それらは25℃における材料の特性である。本発明において化学式(実験式)が使用される場合、規定された指数は、絶対数だけでなく平均値でもあり得る。ポリマー化合物に関する指数は、好ましくは平均値である。
【0021】
本発明によるアモルファスポリアルファオレフィンは、190℃での粘度が5,000mPa・s未満、好ましくは1,000mPa・s~4,000mPa・sであり、分子量分布(Mw/Mn)が3~8、好ましくは4~7であり、Mz/Mwの商が3.5未満、好ましくは1.1~2.9であり、かつMz/Mnの商が21.0未満、好ましくは1.1~19.9であることを特徴とする。
【0022】
Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量、Mzは遠心分離機の平均分子量である。分子量Mw、MnおよびMzは、DIN 55 672に記載されているように、HT-GPC[高温ゲル浸透クロマトグラフィー]によって測定される。具体的には、分析的HT-GPCを、一体型アイソクラティックポンプ付きPL220オーブン(Agilent社、ヴァルトブロン)を用いて150℃で実施した。使用した移動相は、流速1mL/分で1g/L以内のブチルヒドロキシトルエン(BHT)をスパイクした1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)(Merck社、ダルムシュタット)であり、使用した固定相は、Agilent PLgel Olexis Guard(50×7.5mm、プレカラム)を1つと、Agilent PLgel Olexis(300×7.5mm)を3つであった。検出については、IR検出器(モデルIR4、PolymerChar社、スペイン、バレンシア)を使用して行った。データセットを、ソフトウェアWinGPC(Polymer Standards Service社、マインツ)によるポリスチレンキャリブレーションEasiCal PS-1(Agilent社)を使用して評価した。
【0023】
粘度を、DIN 53 019に類似する回転粘度計を使用して190℃で測定した。粘度を、Brookfield社製CAP 2000+コーンプレート粘度計を使用して、次の表に類似する粘度依存性せん断速度で190℃で測定した。
【表0】
【0024】
ブルックフィールド粘度計のキャリブレーションを、500000BW型ニュートン標準サンプルを使用して行った。これは、Zentrum fur Messen und Kalibrieren & Analytik GMBH社から提供され、対応するキャリブレーション証明書とともに発行された。
【0025】
APAOは、プロペンまたは1-ブテンに富むAPAOであることが好ましい。好適なプロペンに富むAPAOは、モノマーとしてのプロペンをベースとしており、すべてのモノマーに対し、好ましくは、50重量%を超える程度、好ましくは51重量%~98重量%程度である。加えて、プロペンに富むAPAOは、コモノマーとして、1-ブテンおよび/またはエテン、好ましくは1-ブテンおよびエテンを含んでいてもよい。1-ブテンとエテンの合計は、49重量%未満であり、好ましくは、エテン含有量がすべてのモノマーに対し、0重量%~25重量%、好ましくは1重量%~15重量%である。好適な1-ブテンに富むAPAOは、モノマーとしての1-ブテンをベースとしており、すべてのモノマーに対し、好ましくは、50重量%を超える程度、好ましくは51重量%~98重量%程度である。加えて、1-ブテンに富むAPAOは、コモノマーとして、プロペンおよび/またはエテン、好ましくはプロペンおよびエテンを含んでいてもよい。プロペンとエテンの合計は、すべてのモノマーに対し、49重量%未満であり、好ましくは、エテン含有量がすべてのモノマーに対し、0重量%~25重量%、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0026】
本発明によるアモルファスポリアルファオレフィンは、好ましくは少なくとも1つの酸化防止剤を0.01重量%~3重量%含んでいてもよい。使用される酸化防止剤は、酸化防止剤および/または阻害剤として知られている任意の物質(すなわち、フリーラジカル反応の伝播を止める物質)であってよい。本発明によるアモルファスポリアルファオレフィンは、立体障害アミン(例えば、ピペリジン誘導体)、好ましくは立体障害フェノール(例えば、Irganox 1010、Naugard XL1、Songnox 1035)を含むことが好ましい。このようにして、APAOの分解および/またはAPAOの黄変を防止または軽減することができる。
【0027】
本発明によるAPAOは、フリーラジカル形成剤の少なくとも1つの分解物を0.01重量%~3重量%含むことが好ましい。好ましくは、本発明によるAPAOは、フリーラジカル形成剤の分解物として、安息香酸、メタノール、ブタノール、tert-ブタノール、プロピオン酸および/または2,5-ジメチルヘキサン-2,5-オールを含む。
【0028】
本発明によるAPAOは、以下に記載される本発明による方法によって調製されることができる。
【0029】
分解アモルファスポリアルファオレフィンを製造するための本発明による方法の特徴は、粘度が190℃において5,000mPa・s以上、好ましくは6,000Pa・s~100,000mPa・s、より好ましくは7,500mPa・s~75,000mPa・sであるアモルファスポリアルファオレフィンを、フリーラジカル、好ましくは過酸化分解に付し、前記分解反応を15秒~1,200秒にわたって行う点である。前記フリーラジカル、好ましくは過酸化分解は、混合装置、好ましくは押出機で行われることが好ましい。
【0030】
使用されるAPAOは、好ましくは、プロペンまたは1-ブテンに富むAPAOである。好適なプロペンに富むAPAOは、モノマーとしてのプロペンをベースとしており、すべてのモノマーに対し、好ましくは、50重量%を超える程度、好ましくは51重量%~98重量%程度である。加えて、プロペンに富むAPAOは、コモノマーとして、1-ブテンおよび/またはエテン、好ましくは1-ブテンおよびエテンを含んでいてもよい。1-ブテンとエテンの合計は、49重量%未満であり、好ましくは、エテン含有量がすべてのモノマーに対し、0重量%~25重量%、好ましくは1重量%~15重量%である。好適な1-ブテンに富むAPAOは、モノマーとしての1-ブテンをベースとしており、すべてのモノマーに対し、好ましくは、50重量%を超える程度、好ましくは51重量%~98重量%程度である。加えて、1-ブテンに富むAPAOは、コモノマーとして、プロペンおよび/またはエテン、好ましくはプロペンおよびエテンを含んでいてもよい。
【0031】
プロペンとエテンの合計は、すべてのモノマーに対し、49重量%未満であり、好ましくは、エテン含有量がすべてのモノマーに対し、0重量%~25重量%、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0032】
好ましくは、フリーラジカル分解は、フリーラジカル形成剤、好ましくは過酸化ジベンゾイル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、および/または、好ましくはまたは、p-メタンヒドロペルオキシドから選択されるフリーラジカル形成剤の存在下で行われる。使用されるフリーラジカル形成剤の割合は、APAOとフリーラジカル形成剤の合計に対し、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%であることが好ましい。
【0033】
本発明による方法における分解反応は、100℃~350℃、好ましくは150℃~250℃の温度で行われることが好ましい。前記分解は、好ましくはメルト内で行われる。
【0034】
使用されるフリーラジカル形成剤の反応性および濃度に応じて、分解反応を30秒~600秒にわたって行うことが好ましい。
【0035】
分解反応は、好ましくは、15秒~1,200秒、好ましくは30秒~600秒の時間(t)にわたって、100℃~350℃、好ましくは150℃~250℃の温度(T)で行われ、使用されるフリーラジカル形成剤の割合(A)が、APAOとフリーラジカル形成剤の合計に対し、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%であり、(t)×(T)×(A)の積が500~1,000,000[秒℃重量%]、好ましくは1,000~100,000[秒℃重量%]である。
【0036】
本発明による方法における分解反応は、混合装置内で行われることが好ましい。使用される混合装置は、押出機、ニーダー、またはスターラーを備える圧力反応器であることが好ましい。押出機内で前記反応を行うことが特に好ましい。上記で好ましいもの、特により好ましいものとして規定された反応時間、温度、およびフリーラジカル形成剤の割合を使用して、前記分解反応を混合装置内、好ましくは押出機内で行うことが特に好ましい。
【0037】
本発明による方法は、本発明によるAPAOの製造に特に適している。
【0038】
本発明によるAPAOまたは本発明より製造されたAPAOは、従来技術によるAPAOも使用可能な任意のホットメルト塗布で使用されることができる。
【0039】
より具体的には、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOは、溶融塗布接着剤組成物において、または溶融塗布接着剤組成物として使用される。好ましくは、これらの組成物は、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOを、50重量%~100重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%含む。溶融塗布接着剤組成物のさらなる構成要素としては、特に粘着付与剤樹脂および/またはワックス、特にフィッシャー・トロプシュワックスまたはポリエチレンワックスがあり得る。好ましい溶融塗布接着剤組成物は、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOを50重量%~100重量%、粘着付与剤樹脂(例えば、Exxon Mobil Corporation社製の水素化C5/C9 Escorez(商標) 5300)を0重量%~40重量%、そしてフィッシャー・トロプシュワックスまたはPEワックス(例えば、Shell GTL Sarawax SX80)を0重量%~10重量%含む。
【0040】
溶融塗布接着剤組成物は、スプレーノズル、スロットダイ、溶融塗布接着剤ガンによって、または溶融鋳造によって、好ましくはスプレーノズルによって塗布されることができる。接着剤をスプレーするための塗布ユニットを備える特に適切なコーティングシステムは、例えば、Nordson Corporation社(以下、Nordson)またはITW Dynatec GmbH社(以下、ITW)製のものである。適切なノズルは、例えば、Nordson社製のUNIVERSAL(商標) SIGNATURE(商標)ノズルもしくはControlled Fiberization、あるいはITW社製のUFD(商標)型類似ノズルである。さらに考えられるノズルを表Aに示す。
【0041】
【0042】
溶融塗布接着剤組成物は、包装、好ましくは段ボール包装または紙、建築物、特に木枠構造、カーペット、木材加工、好ましくはプロファイルシーリングおよびはぎ接着、自動車、好ましくはルーフ、エアフィルターまたは車両ランプ、マットレス、ビチューメン、衛生用品、好ましくはおむつまたはナプキンの用途で、本発明に従って使用されることができる。
【0043】
従来のホットメルト用途と同様に、本発明によるAPAOまたは本発明により製造されたAPAOは、他の非極性プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリブテン)への添加剤としても使用されることができる。
【0044】
これらは、相溶化剤として、あるいは顔料や他の添加剤または繊維を組み込むためのマスターバッチ用途用担体マトリックスとして適切であり得る。
【0045】
さらなる詳細がなくても、当業者であれば、上記の説明を可能な限り最大限に利用することができると想定される。したがって、好ましい実施形態と実施例は、決して限定的なものではなく、単に説明的な開示として解釈されるべきである。
【0046】
本発明の主題は、
図1~
図3によってより具体的に開示されるが、本発明の主題がそれらに限定されることを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明に従って使用される分解APAOを製造することができる装置の概略図である。該装置は、少なくとも1つの混合装置(M)、プレラジカル形成剤(R)用の供給物、分解対象のAPAO用の供給物(A)、任意の真空適用手段(V)を備える。生成物として混合装置(M)から出るのは、分解APAO(Ad)である。
【
図2a】
図2aは、優れたスプレーパターンの例を示す。パターンが規則的であり、フィラメントに穴やドリップがないことが明らかである。
【
図2b】
図2bは、不十分なスプレーパターンの例を示す。パターンが不規則で、フィラメントに穴やドリップがあることが明らかである。
【
図3a】
図3aは、ロールへのスプレーを示す。この視野角から、コーティング方向および反対方向のスプレーフィラメントの偏向を測定するのは非常に容易である。
【
図3b】
図3bは、ノズルDから不織布V1への接着剤のスプレー塗布の概略図である。ARは、不織布V1の塗布方向または前進を示す。塗布された接着剤に対し、さらに不織布V2が適用される。
【
図4a】
図4aは、塗布後の偏向を定量化するためのスプレーテンプレートを示す。当該テンプレートは、コーティングされ、かつカウンターラミネートされた基板(ポリプロピレン/ポリプロピレン)である。0cm、0.5cm、1cm、2cm、および3cmの偏向は、0、0.5、1、2、および>2のクラスに対応する。
【
図4b】
図4bは、偏向を定量化するためのスプレーテンプレートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の主題は、以下の実施例において詳細に説明されるが、本発明の主題がこれらに限定されることを意図していない。
【実施例0049】
実施例1:スターラーを備えるリアクター内での分解APAOの製造
VESTOPLAST(商標)750(Evonik Resource Efficiency GmbH社)400gを、スターラー付きの実験室用圧力リアクターに導入し、170℃まで加熱する。温度に達したら、過酸化物(Peroxan HX、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、Pergan GmbH社)4重量%(16g)を添加し、当該混合物を5分間撹拌した。続いて、当該混合物を排出し、ブルックフィールド実験室用粘度計で溶融粘度を190℃で測定する(測定方法については上記を参照)。190℃で排出された当該混合物の粘度は、4,000mPa・sであった。使用したVESTOPLAST(商標)750の190℃における粘度を測定すると、約50,000mPa・s以内の値が得られた。GPC分析では、次の値が得られた。Mz:145,100[g/mol];Mw:60,390[g/mol];Mn:14,180[g/mol];Mw/Mn:4.3;Mz/Mw:2.4;Mz/Mn:10.2。
【0050】
同様に、低粘度ベースポリマーB1(VESTOPLAST(商標)EP V2094、規格外、190℃での粘度=7,700mPa・s)を使用し、様々な量の過酸化物と様々な反応温度で、第一の分解実験を実施した。表Bは、使用した実験パラメータと測定した特性を示す。非分解VESTOPLAST(商標)408(表中、B2と記載)およびVESTOPLAST(商標)750(表中、B3と記載)の特性を比較する。
【0051】
【0052】
表Bから推測できるように、フリーラジカル分解による、190℃での粘度が5,000mPa・s以上であるアモルファスポリアルファオレフィンの分解によって、所望の材料/物性を有するAPAOが得られる。
【0053】
実施例2:押出機でのパイロットプラント規模での分解APAOの製造
ペレット形のVESTOPLAST(商標)750を、初期充填物として、フィードを介してベルスドルフDSK42押出機に運んだ。同時に、VESTOPLAST(商標)750(1.8kg/h)と、50重量%のPeroxan PK295V(1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)(Pergan GmbH社製)(約200g/h)(イソドデカン中の混合物)と、を計量した。押出機内の反応混合物の滞留時間(反応時間)は30秒であり、押出機内の温度は160℃である。190℃で排出された混合物の粘度は、2,800mPa・sであった。 Mz:149,200[g/mol];Mw:61,110[g/mol];Mn:14,350[g/mol];Mw/Mn:4.3;Mz/Mw:2.4;Mz/Mn:10.4。
【0054】
実施例3:溶融塗布接着剤組成物の製造
実施例2で得られたポリマーを処理して、溶融塗布接着剤組成物を得た。この目的のために、以下の表Cに規定された成分を、190℃で撹拌することにより互いに混ぜ合わせた。
【0055】
【0056】
実施例4:スプレー性の検証
スプレー性の検証のために、試験シリーズを、試験用の3種の温度(120℃、140℃および160℃)で、溶融塗布接着剤配合物ごとに14回の実験で実施した。同時に、使用するノズルの塗布領域を考慮して、ノズルの空気圧や塗布する溶融塗布接着剤の質量などのパラメータを変化させた。Nordson社製のメルテックスホットメルトコータースプレーシステム(モデル指定:MX 3012-1/0220-2086)を使用して、実験を行った。使用したノズルは、Nordson社製の低流量シグネチャーノズルであった。スプレーされるべきホットメルト配合物を190℃のタンク内で溶融し、ポンプによってノズルに運ぶ。適用された空気流を使用し、当該ホットメルト配合物を、ノズル出口における加熱空気流によって、ノズルの下を通る不織布基材上に堆積させる。各実験について10秒間のビデオ録画を行った。種々の実験パラメータを表1に示す。
塗布される溶融塗布接着剤の質量:(ポンプ速度およびベルト速度に応じて)0.5g/m2~10g/m2
基板の速度:15m/分
ノズルの圧力/空気速度:ノズルあたり10~130L(STP)/分 1~4バール
【0057】
【0058】
スプレーパターンの評価
以下に説明する基準を使用してスプレーパターンを評価した。評価の結果を表2a~2cで報告する。
【0059】
スプレーパターンの視覚的印象
スプレーパターンの視覚的印象を評価する必要がある。これは主観的な評価である。
【0060】
良好なスプレーパターンの場合、溶融塗布接着剤は、ノズル下の領域をぴったりカバーする細糸を作製する。糸が左右に走ることはなく、表面は規則的なパターンで覆われる。
図2aは、優れたスプレーパターンの例を示す。
【0061】
粗悪なスプレーパターンの場合、溶融塗布接着剤は、太い線および/または点で基材に塗布されている。フィラメントはノズルよりも幅広で、不規則である。スプレーパターンに大きな穴が開いている場合や基材の一部が溶融接着剤でカバーされていない場合がある。
図2bは、粗悪なスプレーパターンの例を示す。
評価:
0=良好なスプレーパターン
1=粗悪なスプレーパターン
【0062】
エッジの安定性
エッジの安定性は、直線の安定性と関連する。ラインに多くの穴がある場合、スプレーパターンのエッジの安定性が良好でないことを示す。個々の外れ値については、無視する。
評価:
0=エッジの安定性あり
1=エッジの安定性なし
【0063】
(テンプレートマスクから)フィラメントの偏向
偏向は、糸が中央印の2.5cm外側にあるスプレーパターン領域に関連する(偏向については、暗いテンプレートマスクに対して可視の糸のみ測定する)。
評価:
0=偏向なし
0.5=最大0.5cmの長さの偏向
1=最大1cmの長さの偏向
2=最大2cmの長さの偏向
3=2cmの長さを超える偏向
【0064】
微細フィラメント
偏向は、非常に微細なフィラメントが中央印の2.5cm外側にあるスプレーパターン領域に関連する(微細フィラメントは、暗いテンプレートマスクに対してほとんど不可視であり、テンプレートマスクに光が当てられている場合にのみ見える)。
評価:
0=偏向なし
0.5=最大0.5cmの長さの偏向
1=最大1cmの長さの偏向
2=最大2cmの長さの偏向
3=2cmの長さを超える偏向
【0065】
スプレービデオの評価
ノズル直下への塗布
溶融塗布接着剤の塗布については、ノズルの真下で行う。左または右への脱線は望ましくない。評価にはテンプレートマスクを使用する。
評価:
0=溶融塗布接着剤の塗布は、ノズルの真下で直線状に行われ、最大偏向は0.5cmである。
1=溶融塗布接着剤のフィラメントが著しく偏向しすぎているために基板に到達していない、あるいは溶融塗布接着剤フィラメントが直線で基板に到達しない程度、もしくは0.5cmよりも大きく偏向して基板に到達する程度に偏向している。
【0066】
テンプレートマスクからの微細フィラメントの偏向またはエンジェルヘアの形成
この場合に説明されるのは、2.5cmのスプレー幅のみを考慮した、コーティングの方向または反対方向のスプレーフィラメントの偏向である。2.5cmの塗布を超えるか、あるいは微細フィラメントが基板上を飛び越え基板に到達しない場合、これはエンジェルヘアと呼ばれる。
評価:
0=偏向していないフィラメント
0.5=最大0.5cm偏向したフィラメント
1=最大1cm偏向したフィラメント
2=最大2cm偏向したフィラメント
3=最大3cm偏向したフィラメント
4=3cmよりも大きく偏向したフィラメント
【0067】
図3は、ロールへのスプレーを示す。この視野角から、コーティング方向および反対方向のスプレーフィラメントの偏向を測定するのは非常に容易である。
【0068】
評価
評価は、ポイントの総数を表す。数値が小さいほど、スプレー性が高くなる。
【0069】
スプレー性
評価で得られた合計点が少ないほど、試験された溶融塗布接着剤のスプレー性が高くなる。0点はスプレー性が100%であることを意味し、11点はスプレー性が0%であることを意味する。
【0070】
表2a~2cは、例として、実施例3aの溶融塗布接着剤組成物を使用した、140℃での14回のスプレー試験の評価を示す。表3は、試験されたすべての溶融塗布接着剤組成物についてのスプレー性を%で示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表3から推測できるように、個々の評価基準の詳細な分析を用いて、接着剤および/またはポリマーのスプレー性を評価することができた。この方法に基づいて、分解ポリマーのスプレー性が明らかに改善され、かつ気圧変動、温度および塗布量(g/分またはg/m2)などと関連して極めて大きな塗布領域を実現し得ることが実証できた。