▶ ウニヴェルズィテート・デ・ザールラントの特許一覧
特開2024-28788金属ガラスを形成する硫黄含有合金
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028788
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】金属ガラスを形成する硫黄含有合金
(51)【国際特許分類】
C22C 45/00 20230101AFI20240227BHJP
B22F 9/02 20060101ALI20240227BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C22C45/00
B22F9/02 B
B22F9/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023201740
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2020510590の分割
【原出願日】2018-08-24
(31)【優先権主張番号】17001437.7
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517430853
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・デ・ザールラント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET DES SAARLANDES
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クバル、 アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ボフトラー、ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】グロス、 オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ、 ラルフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な機械的特性およびガラス形成特性を維持し、リンを使用することの欠点を低減または防止する金属ガラス形成合金およびその製造方法を提供する。
【解決手段】全体的または部分的にリンの代わりとして硫黄を使用し、新しい含硫黄合金系を非晶質として製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag,S
i,Ge)fSngBeh(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x (I)
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
a=0重量%~約15重量%または約30重量%~約90重量%であり、
b=0重量%~約68重量%であり、
a+b=約30重量%~約97重量%であり、
a=0重量%~約15重量%である場合、b=約35重量%~約68重量%であり、Aは、希土類(ラン
タニド+イットリウム)の群内の1つまたは複数の元素であり、a1/a=0~約1/10であり、
c=0重量%~約65重量%であり、
d=0重量%~約15重量%であり、
e=0重量%~約15重量%であり、
f=0重量%~約15重量%であり、
g=0重量%~約23重量%であり、
h=0重量%~約1重量%であり、
i=0重量%~約3.5重量%であり、
j=0重量%~約0.20重量%であり、
b=0%である場合、a、ならびにcおよびeの少なくとも一方は0%超であり、a=0重量%~約1
5重量%およびb=約35重量%~約68重量%である場合、c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重
量%超であり、
Fe(1)およびFe(2)は、それぞれFeを表し、Fe(2)は、a=0%である場合にのみ存在し、a=
約30重量%~約90重量%である場合、x=約0.21重量%~約9重量%であり、a=0重量%~約15重
量%およびbが約35重量%超である場合、x=約8重量%~約16.5重量%であり、
x1/xは、約1/10以上~約1であり、
重量パーセンテージの全ての和a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素の不可
避の微量不純物=100重量%であり、
少なくともx1/x=約1およびx=約0.21重量%~約1重量%である場合、Fe(1)、NiおよびAlを
含有する合金は、少なくとも約50体積%非晶質である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項2】
式(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag
,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
(式中、
a=約30重量%~約90重量%であり、
b=0重量%~約40重量%であり、
x=約0.21重量%~約9重量%、好ましくは約0.21重量%~約8.5重量%であり、
b、c、eの少なくとも1つは0超であり、
A、Fe(1)、Fe(2)、a1、c、d、e、f、g、i、j、x1、残りの境界条件および重量パーセン
テージの和は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
式(Ti,Zr,Nb)aPdb(Cu,Ni)cAlfSng(P,Sx1)x
(式中、
a=約30重量%~約90重量%であり、b=0%~約40重量%であり、a+b=約30重量%~約97重量%
であり、c、f、gは、請求項1に記載の通りであり、b、cの少なくとも一方は0重量%超であ
り、x1、xおよび全ての重量パーセンテージの和は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項2に記載の合金。
【請求項4】
式(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag
,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
(式中、
a=0重量%~約15重量%であり、
b=約35重量%超~約68重量%であり、
残りの重量パーセンテージおよび他の境界条件は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
x1/x=約1であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の合金。
【請求項6】
合金の全てが、約20μm以上の厚さにおいて少なくとも約50体積%非晶質であることを特
徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の合金。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の合金の溶融冶金製造の方法であって、
- 元素Fe、Pd、Ni、Cr、CuおよびCoの1つまたは複数が、個々に好適な容器内で硫黄と
、および場合によっては別個の容器内でリンと、加熱および合金化され、
- 得られた合金が、必要に応じて、B2O3による精製のためのフラックスプロセスに供
され、剰余のB2O3ならびに非硫化物および/または非リン化物不純物は、得られた高純度
の硫黄および/またはリンマスター合金から分離され、
- 場合によって高純度リン合金を含む高純度合金は、好適なオーブンまたは好適な容
器内でアルゴン中で高純度形態の合金の残りの元素と、また場合によっては高純度形態の
他のFe、Pd、Ni、Cr、Cuおよび/またはCoと、溶融および合金化され、
- 金属ガラスを形成しようとする場合には、その後急冷に供される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
急冷が、冷却鋳型プロセス、例えば冷却された鋳型内での傾動、回転、もしくは圧力鋳
造を使用して、または溶融紡糸プロセスを使用して、あるいは粉末化プロセスにより行わ
れることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
硫黄およびリンの合金を製造するための容器が、石英容器であることを特徴とする、請
求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
オーブンが、電気アーク炉であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の非晶質、部分非晶質、または結晶性合金から製造
される鋳物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガラスを形成する含硫黄合金、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ガラスまたは非晶質金属合金は、近年、その優れた機械的特性に起因してますます
重要となってきている。塊状の金属ガラスを形成し、極めて耐腐食性であり、非晶質構造
を得るために必要な冷却速度を大幅に低減し得る合金が発見されている。このためには、
金属合金へのリンの添加が非常に有利であることが証明されている。例えば、US 2013/00
48152 A1およびUS 2014/0116579 A1を参照されたい。
【0003】
一方、含硫黄金属合金はあまり注目されていない。DE 1 245 139 C2は、最大1重量%の
硫黄を含有し得る、永久磁石を製造するための金属合金を開示しており、これは、急冷さ
れない代わりに焼結されるため、非晶質ではなく結晶性である。DE 32 43 964は、筆記用
具用のペン先を製造するための、硫黄を含有し得る非晶質金属合金を記載しているが、含
硫黄合金または硫黄分については具体的に言及していない。DD 225 721 A1は、0.02質量%
~0.15質量%の硫黄含量を有するNi-C-Sで構成され溶融冶金により製造された出発粒子を
開示しており、これは、好ましくは10質量%~20質量%の硫黄を含むNi-Sマスター合金を介
して製造される。US 2009/0162629 A1は、極めて高いパラジウム含量を有する含硫黄非晶
質金属合金を記載しており、これは非金属としてリンも含有し得る。
【0004】
金属ガラス中にリンを使用することの主な欠点は、製造中に有害な白リンが形成される
ことである。さらに、高い可燃性およびそれに付随する爆発の危険性に起因して、保管お
よび処理に問題がある。リン元素は、標準圧力下では安定な溶融相を有さず、したがって
直接昇華を生じ、マスター合金を製造するのがより困難になる。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、多くの異なる金属ガラス形成合金において、良好な機械的特性および
ガラス形成特性を維持し、また上述の欠点を低減または防止しながら、全体的または部分
的にリンの代わりとして硫黄を使用し得ることが発見された。さらに、多くの全く新しい
含硫黄合金系を、非晶質として製造することができた。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様は、下記式:
(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag,S
i,Ge)fSngBeh(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x (I)
を有する金属ガラス形成含硫黄合金であって、
a=0重量%~約15重量%または約30重量%~約90重量%であり、
b=0重量%~約68重量%であり、
a+b=約30重量%~約90重量%であり、
a=0重量%~約15重量%である場合、b=約35重量%~68重量%であり、
Aは、希土類(ランタニド+イットリウム)の群からの1つまたは複数の元素であり、a1
/a=0~約1/10であり、
c=0重量%~約65重量%であり、
d=0重量%~約15重量%であり、
e=0重量%~約15重量%であり、
f=0重量%~約15重量%であり、
g=0重量%~約23重量%であり、
h=0重量%~約1重量%であり、
i=0重量%~約3.5重量%であり、
j=0重量%~約0.20重量%であり、
b=0である場合、a、ならびにcおよびeの少なくとも一方は0超であり、a=0重量%~約15
重量%およびb=約35重量%~約68重量%である場合、c、d、e、f、gの少なくとも1つは0超で
あり、
Fe(1)およびFe(2)は、それぞれFeを表し、Fe(2)は、a=0である場合にのみ存在し、a=約
30重量%~約90重量%である場合、x=約0.21重量%~約9重量%であり、a=0重量%~約15重量%
およびbが約35重量%超である場合、x=約8重量%~16.5重量%であり、
x1/x=約1/10~約1であり、
全てのパーセンテージの和であるa+b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素の不
可避の微量不純物=100重量%であり、
少なくともx1/x=約1およびx=約0.21重量%~1重量%である場合、Fe(1)、NiおよびAlを含
有する合金は、約20μm以上の厚さにおいて少なくとも約50体積%非晶質である、
金属ガラス形成含硫黄合金に関する。
【0007】
本発明はまた、上記の合金を製造するための方法に関し、その方法では、
- 元素Fe、Pd、Ni、Cr、CuおよびCoのうちの1つまたは複数が、個々に適切な容器内で
硫黄とともに加熱および合金化され、また任意で個々に別個の容器内でリンとともに加熱
および合金化され、
- 得られた合金(複数可)は、必要に応じて、B2O3による精製のためのフラックスプ
ロセスに供され、剰余のB2O3ならびに非硫化物および/または非リン化物不純物は、得ら
れた高純度の硫化物および/またはリン合金から分離され、
- 高純度硫黄合金は、場合によっては高純度リン合金と共に、好適なオーブン内でア
ルゴン雰囲気中で高純度形態の合金の残りの元素と、また場合によっては高純度形態のさ
らなるFe、Pd、Ni、Cr、Cuおよび/またはCoと、溶融および合金化され、
- 金属ガラスを形成しようとする場合には、その後急冷に供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1~2において製造された合金のサーモグラムである。
【
図2】実施例1~2において製造された合金の回折図である。
【
図3】実施例3において製造された合金のサーモグラムである。
【
図4】実施例3において製造された合金の回折図である。
【
図5】実施例4において製造された合金のサーモグラムである。
【
図6】実施例4において製造された合金の回折図である。
【
図7】実施例5において製造された合金のサーモグラムである。
【
図8】合金Ti29.3009Zr47.0547Hf2.2275Cu17.0260(Fe,Cr)0.1920O0.0212H0.0069C0.0484S3.9690および金属微量不純物としてのPb0.0004の回折図である。試料が非晶質であることを回折図から導き出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の概要において示された合金の式は、多くの元素の群を含むが、括弧内の各元素は
、本発明による合金中に単独で、または括弧内の他の元素と組み合わせて存在し得る。括
弧の後の下付き文字は、それぞれ重量パーセンテージの範囲を表し、これは括弧内の元素
の重量パーセンテージの全ての和である。
【0010】
以下の詳細が適用される。
【0011】
Feは、式中の2つの異なる組の括弧内にFe(1)およびFe(2)として示されるが、Fe(2)は、
Fe(1)が存在しない場合にのみ存在する。この非従来的な表記形式は、硫黄またはリンの
いずれかを含むマスター合金において変換できる合金元素の必要な存在を簡潔に示すため
に必要であった。
【0012】
文字Aは、希土類元素(ランタニド+イットリウム)を表し、その全重量は、これらの括
弧内の元素の全ての重量の最大10%あるいは1/10である。当業者には、希土類金属(ラン
タニドおよびイットリウム)による第1の括弧内の元素Ti、Zr、Nb、Hf、Feの割合的に制
限された置換がガラス形成特性を改善することが認識されている。
【0013】
また、第1の括弧内のTi、Zr、Nb、Hf、FeおよびAの重量パーセンテージが0重量%~約15
重量%である場合、元素Pdの重量パーセンテージbは高く、すなわち約30重量%超~約68重
量%である。Pdは、その量に応じて、元素Ti、Zr、Nb、Hf、FeおよびAを完全にまたは部分
的に置き換えることができる。a+bの全体的な重量パーセンテージは、約30重量%~約97重
量%である。
【0014】
合金は全て、少なくとも2種の金属を含有する。硫黄またはリンとのマスター合金を容
易に形成し得る金属の少なくとも1つが存在しなければならない。これらは、重量パーセ
ンテージbのPd、重量パーセンテージcのCuおよびNi、ならびに重量パーセンテージeのCo
、Cr、およびFeである。
【0015】
元素PおよびSの全体的な重量パーセンテージxは、元素Pdに対する元素Ti、Zr、Nb、Hf
、FeおよびAの量の比に依存する。元素Ti、Zr、Nb、Hf、FeおよびAが0重量%~15重量%の
全体的パーセンテージaでのみ存在し、それに伴ってPdのパーセンテージbが約35重量%~
約68重量%である場合、PおよびSの全体的な重量パーセンテージxは比較的高く、すなわち
約8重量%~約16.5重量%、好ましくは約9重量%または約10重量%~約68重量%である。Ti、Z
r、Nb、Hf、FeおよびAの全体的なパーセンテージaが高く、すなわち約30重量%~約90重量
%であり、それに伴ってPdの全体的なパーセンテージbがより低い、すなわち0重量%~約40
重量%である場合、PおよびSの全体的なパーセンテージxは、約0.21重量%~約9重量%であ
る。PおよびSの全体的な重量パーセンテージxに対するSの重量パーセンテージx1の比は、
約1/10~約1の範囲内である。これは好ましくは約1であり、すなわちこの場合合金中にリ
ンは存在しない。
【0016】
x1/x=約1およびx=約0.21重量%~約1重量%である場合、Fe(1)、NiおよびAlを含有する合
金は、約20μm以上の厚さにおいて少なくとも50体積%非晶質である。他の場合において、
すなわち概要の第1の態様において説明された合金の式に加えて、また以下に示される好
ましい合金の式を有する合金の場合のそれぞれにおいて、合金は、非晶質、部分非晶質(
例えば約20μm以上の厚さにおいて少なくとも約50体積%非晶質)または結晶形態で存在し
得る。
【0017】
合金の残りの元素の重量パーセンテージf、g、h、iおよびjについては特に説明は必要
ないが、但し、Beは有毒であることが知られているため、Beのパーセンテージであるjは
、好ましくは0重量%である。
【0018】
本発明によるさらに好ましい合金の群を以下で説明する。
【0019】
1つの好ましい合金は、式(Ti,Zr,Nb)aPdb(Cu,Ni)cAlfSng(P,Sx1)xを有し、式中、a=約3
0重量%~約90重量%であり、b=0重量%~約40重量%であり、a+b=約30重量%~約97重量%であ
り、c、f、g、x1、x、および重量パーセンテージの全ての和は、概要において本発明の第
1の態様で定義された通りであり、bおよびcの少なくとも一方は0重量%超である。
【0020】
別の好ましい合金は、式(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,TA,W)d(Co,Cr,Fe
(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)xを有し、式中、a=0重量%~約1
5重量%であり、b=約35重量%超~約68重量%であり、残りの重量パーセンテージおよび他の
境界条件は、概要において本発明の第1の態様で定義された通りである。
【0021】
別の好ましい合金は、式
NbaPdb(Cu,Ni)cCre(P,Sx1)x
を有し、式中、a=約41重量%~約59重量%であり、x=約0.5重量%~約3.5重量%であり、x1/x
=約1であり、c=約35重量%~約65重量%であり、好ましくはc=約40重量%~約55重量%であり
、e=0重量%~約1.5重量%であり、残りの重量パーセンテージおよび他の境界条件、ならび
に重量パーセンテージの全ての和は、概要において本発明の第1の態様で定義された通り
である。
【0022】
式
(Zr,Fe(1))a(Ni)c(Mo)dCre(B,C)i(P,Sx1)x
を有する合金も同様に好ましく、式中、a=約62重量%~約79重量%、好ましくは約65重量%
~約79重量%であり、c=0重量%~約22重量%であり、d=0重量%~約15重量%であり、e=0重量
%~約6重量%であり、c+d+e=約13重量%~約24重量%であり、x=約0.3重量%~約8.5重量%、
好ましくは約0.5重量%~約8.5重量%であり、x1/xおよびiおよび他の境界条件ならびに全
ての重量パーセンテージの和は、概要において本発明の第1の態様で定義された通りであ
る。
【0023】
最後に、式
((Nb,Hf)aPdb(Cu,Ni)c(Fe(2),Co)e(P,Sx1)x
を有する合金もまた好ましく、式中、a=0重量%~約15重量%であり、特に好ましくはa=0重
量%であり、b=約35重量%~約68重量%であり、c、e、xおよびx1、ならびに重量パーセンテ
ージの全ての和は、概要において本発明の第1の態様で定義された通りであり、また、x1/
x=約1であること、ならびにa=0重量%である場合、cおよびeの少なくとも一方が0重量%超
であることが特に好ましい。
【0024】
表1は、以下の一般的方法のガイドラインを使用して製造される具体的な合金の例を示
し、ここで急冷は、冷却された銅鋳型内に合金を注ぎ入れることにより達成される。これ
らの合金は全て、250μmの厚さにおいて少なくとも約50%非晶質である。効率的な急冷法
、例えば溶融紡糸プロセスが使用されるような場合には、100%非晶質の合金(金属ガラス
)を得ることができることが、当業者に認識される。
【0025】
非晶質構造のため、当該合金は、対応する結晶性合金よりも硬度、弾性、および剛性が
高い。例として、表1中の合金番号276は、566HV5の硬度を有し、2%超の弾性を有し、約3G
Paの曲げ強度を有する。
【0026】
合金の製造のためには、出発材料の純度は、本発明の概要において第1の態様で上述さ
れた元素の全ての量が維持されるような純度でなければならない。そのような材料は、以
降「高純度」と呼ばれ、この表現は、本発明において使用される場合、必ずしも従来の「
高純度」の定義と同じものを意味するとは限らない。当然ながら、当業者には、合金が不
可避的に微量不純物を含有し得ることが認識されている。したがって、本発明による合金
における全ての重量パーセンテージの和a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素
の不可避の微量不純物=100重量%である。この文脈で、微量とは、従来的に、約0.1重量%
以下、好ましくは約0.075重量%以下、より好ましくは約0.05重量%以下、特に好ましくは
約0.03重量%以下、より特に好ましくは約0.01重量%以下、極めて特に好ましくは約0.005
重量%以下、最も好ましくは約0.001重量%以下の、典型的には金属の、また場合によって
は半金属の不純物の総量を意味する。
【0027】
本発明による合金を製造するための一般的方法において、硫黄を伴ってFe、Pd、Ni、Cr
、CuまたはCoから1種または複数種のマスター合金が製造され、また場合によってはリン
を伴ってFe、Pd、Ni、Cr、CuまたはCoから1種または複数種のマスター合金が製造される
。金属と硫黄またはリンとは、(例えば石英ガラス製の)耐熱性容器内で、不活性ガス、
好ましくはアルゴン下で加熱および合金化される。加熱および合金化は、好ましくは、最
も高い温度で溶融する合金の成分の融点より約50℃~約100℃高い温度での約1~約10分の
誘導加熱により行われる。
【0028】
高純度(上で定義される)の元素がマスター合金に使用されない場合、マスター合金は
、精製のためにB2O3でのフラックスプロセスに供されてもよい。未処理のマスター合金は
、不活性ガス、好ましくはアルゴン中で5重量%~15重量%のB2O3と共に溶融され、約1000
℃~約1300℃、好ましくは合金の融点より少なくとも約100℃高い温度で約2~約24時間、
好ましくは約4時間保持される。非硫化物および/または非リン化物不純物は、B2O3溶融物
中に吸収されるが、これは、系全体の自由エネルギーの低下をもたらすためである。
【0029】
室温への冷却後、合金の上部に位置する不純物を含有する剰余のB2O3は、水中に溶解ま
たは分散されて水と共に捨てられ、高純度マスター合金が残される。
【0030】
高純度(上で定義される)硫黄合金(複数可)は、場合によっては高純度(上で定義さ
れる)リン合金(複数可)と共に、好適なオーブン内で、真空下、不活性ガス、好ましく
はアルゴン中で、同様にその高純度形態(上で定義される)で使用される合金の残りの元
素、ならびに場合によっては同様に高純度形態(上で定義される)のさらなるFe、Pd、Ni
、Cr、Cuおよび/またはCoと溶融および合金化される。これは、好ましくは電気アーク炉
内で行われ、合金は、電気アーク炉内で、約1000℃~約2000℃、好ましくは最も高い融点
を有する成分の融点より約500℃高い温度で、合計して約30~180秒間溶融される。これに
は、合金の回転を後に伴う複数の約30秒の溶融期間を実施することが好ましい。
【0031】
本明細書において(部分)非晶質とも呼ばれる非晶質または部分非晶質合金(金属ガラ
ス)(すなわち、約20μm以上の厚さ(約50μm以上の厚さがより好ましく、約100μm以上
の厚さがさらにより好ましく、約200μm以上、さらに良好には250μm以上の厚さが最も好
ましい)において少なくとも約50体積%が非晶質であり、完全に非晶質の合金を含む)を
製造するためには、合金は次いで急冷に供される。これは、例えば、チル鋳造プロセス、
例えば冷却された鋳型での傾動、回転、吸引もしくはダイカストを使用して、あるいは、
より効率的には、溶融紡糸プロセス、または合金溶融物が保護ガス雰囲気中で粉末を形成
するように処理される粉末化プロセスを使用して、あるいはいわゆるスプラットクエンチ
により行い得る。
【0032】
合金製の鋳物は、例えば、熱可塑性鋳型もしくは冷間成形により非晶質合金粉末から、
または、レーザービーム溶融(3D印刷)により非晶質および/もしくは(部分)結晶性合
金粉末から製造し得る。
【実施例0033】
以下の実施例において、(部分)非晶質とは、試料の約50体積%は非晶質であることを
意味する。
【0034】
実施例1:合金Ti8.58Zr69.43Ni10.75Cu8.22S3.02の製造
1A. マスター合金Ni73.3S26.7の製造
30gの高純度Ni-S合金Ni73.3S26.7を製造するために、21.99gのニッケルおよび8.01gの
硫黄を入手して、石英ガラス内でアルゴン中最高1500℃で5分間、誘導加熱により合金化
した。その後の精製プロセスにおいて、合金をアルゴン中で3.4gのB2O3と共に溶融し、10
00℃で4時間維持する。金属溶融物中の不純物は、精製プロセスにおいてB2O3溶融物中に
吸収される。室温への冷却後、B2O3溶融物は、不純物と共に水中に溶解または分散されて
マスター合金から取り除かれ、高純度合金が残される。
【0035】
1B. 残りの合金成分を伴ったマスター合金の変換
0.3689gのニッケル、10.4145gのジルコニウム、1.2870gのチタン、1.2330gの銅、およ
び、Ni73.3S26.7の組成を有する1.6966gのニッケル-硫黄合金を組み合わせることにより
、15gの合金Ti8.58Zr69.43Ni10.75Cu8.22S3.02を製造する。純粋な元素およびニッケル-
硫黄合金を、電気アーク炉内でアルゴン中約2000℃で合金化する。合金が均質であること
を確実にするために、合金化つまみを少なくとも3回回転させ、溶融を行う(約30秒間)
。
【0036】
その後、室温に冷却した冷却銅鋳型内に注ぎ入れることにより、0.5~1mmの厚さを有す
る(部分)非晶質部分の製造を行う。
【0037】
0.5mmの厚さを有するこの合金のサーモグラムが、
図1の一番上の曲線で示されている。
結晶点488℃、および398℃でのガラスへの転移は、(部分)非晶質構造に当てはまる。
【0038】
1mmの厚さを有するこの合金の回折図(Cu-K-α線)が、
図2の一番上の曲線で示されて
いる。曲線における幅広い隆起部は、(部分)非晶質構造を示している。
【0039】
実施例2:合金Ti74.1Ni20.6S5.3の製造
2A. マスター合金Ni69.11S30.89の製造
マスター合金Ni69.11S30.89を実施例1Aと同様に製造するが、ただし13.822gのニッケル
および6.178gの硫黄および2.1gのB2O3を添加する。
【0040】
2B. 残りの合金成分を伴ったマスター合金の変換
0.6994gのニッケル、5.9280gのチタン、および、Ni69.11S30.89の組成を有する1.3726g
のニッケル-硫黄合金を組み合わせることにより、8gの合金Ti74.1Ni20.6S5.3を製造する
。純粋な元素およびニッケル-硫黄合金を、電気アーク炉内でアルゴン中約2000℃で合金
化する。合金が均質であることを確実にするために、合金化つまみを少なくとも3回回転
させ、溶融を行う(約30秒間)。
【0041】
その後、室温に冷却した冷却銅鋳型内に注ぎ入れることにより、0.5mmの厚さを有する
(部分)非晶質部分の製造を行う。
【0042】
0.5mmの厚さを有するこの合金のサーモグラムが、
図1の一番下の曲線で示されている。
462℃の結晶点、および423℃でのガラスへの転移は、(部分)非晶質構造に当てはまる。
【0043】
0.5mmの厚さを有するこの合金の回折図(Cu-K-α線)が、
図2の一番下の曲線で示され
ている。曲線における幅広い隆起部は、(部分)非晶質構造を示している。
【0044】
図1および
図2はまた、Ti、Zr、Ni、またはPd、CuおよびSを含有する他の2種の合金(合
金番号218および248、表1、実施例6)のサーモグラムおよび回折図を示している。
【0045】
実施例3:合金Pd56.71Ni31.28S12.01の製造
3A. マスター合金Ni69.11S30.89の製造
合金Ni69.11S30.89を実施例2Aと同様に製造した。
【0046】
3B. マスター合金Pd86.04S13.96の製造
30gの高純度Pd-S合金Pd86.04S13.96を製造するために、25.812gのパラジウムおよび4.1
88gの硫黄を入手して、石英ガラス内でアルゴン中最高温度1600℃で5分間、誘導加熱によ
り合金化した。その後、精製プロセスにおいて、合金をアルゴン中で2.9gのB2O3と共に溶
融し、1000℃で4時間維持する。金属溶融物中の不純物は、精製プロセスにおいてB2O3溶
融物中に吸収される。室温への冷却後、B2O3溶融物は、不純物と共に水中に溶解または分
散されてマスター合金から取り除かれ、高純度合金が残される。
【0047】
3C. 残りの合金成分を伴ったマスター合金の変換
3.5693gのニッケル、3.9415gのパラジウム、Ni69.11S13.96の組成を有する3.8872gのニ
ッケル-硫黄合金、およびPd86.04S13.96の組成を有する8.6020gのパラジウム-硫黄合金を
組み合わせることにより、20gの合金Pd56.71Ni31.28S12.01を製造する。純粋な元素、ニ
ッケル-硫黄合金、およびパラジウム-硫黄合金を、電気アーク炉内でアルゴン中約2000℃
で合金化する。合金が均質であることを確実にするために、合金化つまみを少なくとも3
回回転させ、溶融を行う(約30秒間)。
【0048】
その後、室温に冷却した冷却銅鋳型内に注ぎ入れることにより、0.5~1.5mmの厚さを有
する(部分)非晶質部分の製造を行う。
【0049】
代替的に、純粋な元素、ニッケル-硫黄合金、およびパラジウム-硫黄合金を、石英ガラ
ス内で合金化することができる。
【0050】
0.5mmの厚さを有するこの合金のサーモグラムが、
図3の一番下の曲線で示されている。
176.2℃の結晶点、および152.9℃でのガラスへの転移は、(部分)非晶質構造に当てはま
る。
【0051】
1.5mmの厚さを有するこの合金の回折図(Cu-K-α線)が、
図4の下の曲線で示されてい
る。曲線における幅広い隆起部は、(部分)非晶質構造を示している。
【0052】
図3および
図4はまた、Pd、Ni、およびSを含有する別の合金(合金番号56、表1、実施例
6)のサーモグラムおよび回折図を下の曲線に示している。
【0053】
実施例4:合金Nb50.76Ni45.22Cu2.67S1.35の製造
4A. マスター合金Ni69.11S30.89の製造
マスター合金Ni69.11S30.89を実施例2Aと同様に製造した。
【0054】
4B. 残りの合金成分を伴ったマスター合金の変換
2.6586gのニッケル、3.1979gのニオブ、Ni69.11S30.89の組成を有する0.2753gのニッケ
ル-硫黄合金、および0.1682gの銅を組み合わせることにより、6gの合金Nb50.76Ni45.22Cu
2.67S1.35を製造する。純粋な元素およびニッケル-硫黄合金を、電気アーク炉内でアルゴ
ン中約2000℃で合金化する。合金が均質であることを確実にするために、合金化つまみを
少なくとも3回回転させ、溶融を行う(約30秒間)。
【0055】
その後、室温に冷却した冷却銅鋳型内に注ぎ入れることにより、0.5~3mmの厚さを有す
る(部分)非晶質部分の製造を行う。
【0056】
0.5mmの厚さを有するこの合金のサーモグラムが、
図5の下の曲線で示されている。696
℃の結晶点、および635℃でのガラスへの転移は、(部分)非晶質構造に当てはまる。
【0057】
3mmの厚さを有するこの合金の回折図(Cu-K-α線)が、
図6に示されている。曲線にお
ける幅広い隆起部は、(部分)非晶質構造を示している。
【0058】
図5はまた、Nb、Ni、Pd、およびSを含有する別の合金(合金番号20、表1、実施例6)の
サーモグラムおよび回折図を上の曲線に示している。
【0059】
実施例5:合金Mo10.68Ni6.59Fe69.48Cr3.37S1.25P6.90B0.50C1.23の製造
5A. マスター合金Ni84.06S15.94の製造
20gの高純度Ni-S合金Ni84.06S15.96を製造するために、16.812gのニッケルおよび3.188
gの硫黄を入手して、石英ガラス内でアルゴン中最高温度1500℃で5分間、誘導加熱により
合金化する。その後、精製プロセスにおいて、合金をアルゴン中で2.7gのB2O3と共に溶融
し、1250℃で4時間維持する。金属溶融物中の不純物は、精製プロセスにおいてB2O3溶融
物中に吸収される。室温への冷却後、B2O3溶融物は、不純物と共に水中に溶解または分散
されてマスター合金から取り除かれ、高純度合金が残される。
【0060】
5B. 合金Fe90.97P9.03の製造
25gの高純度Fe-P合金Fe90.97P9.03を製造するために、22.7425gの鉄および2.2575gのリ
ンを入手して、石英ガラス内でアルゴン中最高温度1600℃で5分間、誘導加熱により合金
化する。その後、精製プロセスにおいて、合金をアルゴン中で1.5gのB2O3と共に溶融し、
1250℃で4時間維持する。金属溶融物中の不純物は、精製プロセスにおいてB2O3溶融物中
に吸収される。室温への冷却後、B2O3溶融物は、不純物と共に水中に溶解または分散され
てマスター合金から取り除かれ、高純度合金が残される。
【0061】
5C. 残りの合金成分を伴ったマスター合金の変換
2.136gのモリブデン、0.674gのクロム、0.246gの炭素、0.100gのホウ素、Fe90.97P9.03
の組成を有する15.276gの鉄-リン合金、およびNi84.06S15.94の組成を有する1.568gのニ
ッケル-硫黄合金を組み合わせることにより、20gの合金Mo10.68Ni6.59Fe69.48Cr3.37S1.2
5P6.90B0.50C1.23を製造する。純粋な元素、ニッケル-硫黄合金、および鉄-リン合金を、
電気アーク炉内でアルゴン中約2000℃で合金化する。合金が均質であることを確実にする
ために、合金化つまみを少なくとも3回回転させ、溶融を行う(約30秒間)。
【0062】
その後、室温に冷却した冷却銅鋳型内に注ぎ入れることにより、0.5mmの厚さを有する
(部分)非晶質部分の製造を行う。
【0063】
0.5mmの厚さを有するこの合金のサーモグラムが、
図7に示されている。496℃の結晶点
、および427℃でのガラスへの転移は、(部分)非晶質構造に当てはまる。
【0064】
実施例6:製造されたさらなる合金
さらなる例を表1に示すが、これらは実施例1~5と同様に製造されるものである。合金4
28は、フラックスプロセスなしで製造される。
図8は、この合金の0.5mm厚の非晶質試料の
回折図を示す。
【0065】
【0066】
本明細書で引用されたあらゆる種類の全ての出版物は、それらの参照によってその全内
容が本明細書に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
本明細書で引用されたあらゆる種類の全ての出版物は、それらの参照によってその全内容が本明細書に含まれる。
本開示は以下の実施形態を含む。
実施形態1
下記式:
(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe
(1)
,A
a1
)
a
Pd
b
(Cu,Ni)
c
(V,Mo,Ta,W)
d
(Co,Cr,Fe
(2)
)
e
(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)
f
Sn
g
Be
h
(B,C)
i
(O,H,N)
j
(P,S
x1
)
x
(I)
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
a=0重量%~約15重量%または約30重量%~約90重量%であり、
b=0重量%~約68重量%であり、
a+b=約30重量%~約97重量%であり、
a=0重量%~約15重量%である場合、b=約35重量%~約68重量%であり、Aは、希土類(ランタニド+イットリウム)の群内の1つまたは複数の元素であり、a1/a=0~約1/10であり、
c=0重量%~約65重量%であり、
d=0重量%~約15重量%であり、
e=0重量%~約15重量%であり、
f=0重量%~約15重量%であり、
g=0重量%~約23重量%であり、
h=0重量%~約1重量%であり、
i=0重量%~約3.5重量%であり、
j=0重量%~約0.20重量%であり、
b=0%である場合、a、ならびにcおよびeの少なくとも一方は0%超であり、a=0重量%~約15重量%およびb=約35重量%~約68重量%である場合、c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重量%超であり、
Fe
(1)
およびFe
(2)
は、それぞれFeを表し、Fe
(2)
は、a=0%である場合にのみ存在し、a=約30重量%~約90重量%である場合、x=約0.21重量%~約9重量%であり、a=0重量%~約15重量%およびbが約35重量%超である場合、x=約8重量%~約16.5重量%であり、
x1/xは、約1/10以上~約1であり、
重量パーセンテージの全ての和a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%であり、
少なくともx1/x=約1およびx=約0.21重量%~約1重量%である場合、Fe
(1)
、NiおよびAlを含有する合金は、少なくとも約50体積%非晶質である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
実施形態2
式(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe
(1)
,A
a1
)
a
Pd
b
(Cu,Ni)
c
(V,Mo,Ta,W)
d
(Co,Cr,Fe
(2)
)
e
(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)
f
Sn
g
(B,C)
i
(O,H,N)
j
(P,S
x1
)
x
(式中、
a=約30重量%~約90重量%であり、
b=0重量%~約40重量%であり、
x=約0.21重量%~約9重量%、好ましくは約0.21重量%~約8.5重量%であり、
b、c、eの少なくとも1つは0超であり、
A、Fe
(1)
、Fe
(2)
、a1、c、d、e、f、g、i、j、x1、残りの境界条件および重量パーセンテージの和は、実施形態1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、実施形態1に記載の合金。
実施形態3
式(Ti,Zr,Nb)
a
Pd
b
(Cu,Ni)
c
Al
f
Sn
g
(P,S
x1
)
x
(式中、
a=約30重量%~約90重量%であり、b=0%~約40重量%であり、a+b=約30重量%~約97重量%であり、c、f、gは、実施形態1に記載の通りであり、b、cの少なくとも一方は0重量%超であり、x1、xおよび全ての重量パーセンテージの和は、実施形態1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、実施形態2に記載の合金。
実施形態4
式(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe
(1)
,A
a1
)
a
Pd
b
(Cu,Ni)
c
(V,Mo,Ta,W)
d
(Co,Cr,Fe
(2)
)
e
(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)
f
Sn
g
(B,C)
i
(O,H,N)
j
(P,S
x1
)
x
(式中、
a=0重量%~約15重量%であり、
b=約35重量%超~約68重量%であり、
残りの重量パーセンテージおよび他の境界条件は、実施形態1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、実施形態1に記載の合金。
実施形態5
x1/x=約1であることを特徴とする、実施形態1~4のいずれか一項に記載の合金。
実施形態6
合金の全てが、約20μm以上の厚さにおいて少なくとも約50体積%非晶質であることを特徴とする、実施形態1~5のいずれか一項に記載の合金。
実施形態7
実施形態1~6のいずれか一項に記載の合金の溶融冶金製造の方法であって、
- 元素Fe、Pd、Ni、Cr、CuおよびCoの1つまたは複数が、個々に好適な容器内で硫黄と、および場合によっては別個の容器内でリンと、加熱および合金化され、
- 得られた合金が、必要に応じて、B
2
O
3
による精製のためのフラックスプロセスに供され、剰余のB
2
O
3
ならびに非硫化物および/または非リン化物不純物は、得られた高純度の硫黄および/またはリンマスター合金から分離され、
- 場合によって高純度リン合金を含む高純度合金は、好適なオーブンまたは好適な容器内でアルゴン中で高純度形態の合金の残りの元素と、また場合によっては高純度形態の他のFe、Pd、Ni、Cr、Cuおよび/またはCoと、溶融および合金化され、
- 金属ガラスを形成しようとする場合には、その後急冷に供される
ことを特徴とする方法。
実施形態8
急冷が、冷却鋳型プロセス、例えば冷却された鋳型内での傾動、回転、もしくは圧力鋳造を使用して、または溶融紡糸プロセスを使用して、あるいは粉末化プロセスにより行われることを特徴とする、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
硫黄およびリンの合金を製造するための容器が、石英容器であることを特徴とする、実施形態7または8に記載の方法。
実施形態10
オーブンが、電気アーク炉であることを特徴とする、実施形態7から9のいずれか一項に記載の方法。
実施形態11
実施形態1から6のいずれか一項に記載の非晶質、部分非晶質、または結晶性合金から製造される鋳物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr)
e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSngBeh(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x (I)
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
0重量%<a≦15重量%またはa=30重量%~90重量%であり、
b=0重量%~68重量%であり、
a+b=30重量%~97重量%であり、
0重量%<a≦15重量%である場合、b=35重量%~68重量%であり、Aは、希土類(ランタニド+イットリウム)の群内の1つまたは複数の元素であり、a1/a=0~1/10であり、
c=0重量%~65重量%であり、
d=0重量%~15重量%であり、
e=0重量%~15重量%であり、
f=0重量%~15重量%であり、
g=0重量%~23重量%であり、
h=0重量%~1重量%であり、
i=0重量%~3.5重量%であり、
j=0重量%~0.20重量%であり、
b=0%である場合、cおよびeの少なくとも一方は0%超であり、0重量%<a≦15重量%およびb=35重量%~68重量%である場合、c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重量%超であり、
Fe
(1)
は、Feを表し、a=30重量%~90重量%である場合、x=0.21重量%~9重量%であり、0重量%<a≦15重量%およびbが35重量%超である場合、x=8重量%~16.5重量%であり、
x1/xは1であり、
重量パーセンテージの全ての和a+b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%であり、
少なくともx=0.21重量%~1重量%である場合、Fe(1)、NiおよびAlを含有する合金は、少なくとも50体積%非晶質である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項2】
下記式:
Pd
b
(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSngBeh(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x (I)
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
b=35重量%~68重量%であり、
c=0重量%~65重量%であり、
d=0重量%~15重量%であり、
e=0重量%~15重量%であり、
f=0重量%~15重量%であり、
g=0重量%~23重量%であり、
h=0重量%~1重量%であり、
i=0重量%~3.5重量%であり、
j=0重量%~0.20重量%であり、
c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重量%超であり、
Fe
(2)
は、Feを表し、bが35重量%超である場合、x=8重量%~16.5重量%であり、
x1/xは1であり、
重量パーセンテージの全ての和b+c+d+e+f+g+h+i+j+x+式(I)に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項3】
式 (Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr)
e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
(式中、
a=30重量%~90重量%であり、
b=0重量%~40重量%であり、
x=0.21重量%~9重量%であり、
b、c、eの少なくとも1つは0超であり、
A、Fe(1)
、a1、c、d、e、f、g、i、j、x1、残りの境界条件および重量パーセンテージの和は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
式 (Ti,Zr,Nb)aPdb(Cu,Ni)cAlfSng(P,Sx1)x
(式中、
a=30重量%~90重量%であり、b=0%~40重量%であり、a+b=30重量%~97重量%であり、c、f、gは、請求項1に記載の通りであり、b、cの少なくとも一方は0重量%超であり、x1、xおよび全ての重量パーセンテージの和は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項3に記載の合金。
【請求項5】
式 (Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr)
e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
(式中、
0重量%<a≦15重量%であり、
b=35重量%超~68重量%であり、
残りの重量パーセンテージおよび他の境界条件は、請求項1に記載の通りである)
を示すことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
下記式:
(Ti,Zr,Nb,Hf,Fe(1),Aa1)aPdb(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr)
e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
0重量%<a≦15重量%であり、
b=35重量%超~68重量%であり、
Aは、希土類(ランタニド+イットリウム)の群内の1つまたは複数の元素であり、a1/a=0~1/10であり、
c=0重量%~65重量%であり、
d=0重量%~15重量%であり、
e=0重量%~15重量%であり、
f=0重量%~15重量%であり、
g=0重量%~23重量%であり、
i=0重量%~3.5重量%であり、
j=0重量%~0.20重量%であり、
c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重量%超であり、
Fe
(1)
は、Feを表し、x=8重量%~16.5重量%であり、
x1/xは、1/10~1であり、
重量パーセンテージの全ての和a+b+c+d+e+f+g+i+j+x+上記式に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項7】
下記式:
Pd
b(Cu,Ni)c(V,Mo,Ta,W)d(Co,Cr,Fe(2))e(Mn,Al,In,Ga,Ag,Si,Ge)fSng(B,C)i(O,H,N)j(P,Sx1)x
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
b=35重量%超~68重量%であり、
c=0重量%~65重量%であり、
d=0重量%~15重量%であり、
e=0重量%~15重量%であり、
f=0重量%~15重量%であり、
g=0重量%~23重量%であり、
i=0重量%~3.5重量%であり、
j=0重量%~0.20重量%であり、
c、d、e、f、gの少なくとも1つは0重量%超であり、
Fe
(2)
は、Feを表し、x=8重量%~16.5重量%であり、
x1/xは、1/10~1であり、
重量パーセンテージの全ての和b+c+d+e+f+g+i+j+x+上記式に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項8】
式 (Ti,Zr,Nb)aPdb(Cu,Ni)cAlfSng(P,Sx1)x
を有する、金属ガラス形成含硫黄合金であって、
a=30重量%~90重量%であり、
b=0重量%~40重量%であり、
a+b=30重量%~97重量%であり、
c=0重量%~65重量%であり、
f=0重量%~15重量%であり、
g=0重量%~23重量%であり、
b、cの少なくとも一方は0重量%超であり、
x=0.21重量%~9重量%であり、
x1/xは、1/10~1であり、
重量パーセンテージの全ての和a+b+c+f+g+x+上記式に含まれない元素の不可避の微量不純物=100重量%である、
金属ガラス形成含硫黄合金。
【請求項9】
合金の全てが、20μm以上の厚さにおいて少なくとも50体積%非晶質であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の合金。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の合金の溶融冶金製造の方法であって、
- 元素Fe、Pd、Ni、Cr、CuおよびCoの1つまたは複数が、個々に容器内で硫黄と、および場合によっては別個の容器内でリンと、加熱および合金化され、
- 得られた合金が、必要に応じて、B2O3による精製のためのフラックスプロセスに供され、剰余のB2O3ならびに非硫化物および/または非リン化物不純物は、得られた高純度の硫黄および/またはリンマスター合金から分離され、
- 場合によって高純度リン合金を含む高純度合金は、オーブンまたは容器内でアルゴン中で高純度形態の合金の残りの元素と、また場合によっては高純度形態の他のFe、Pd、Ni、Cr、Cuおよび/またはCoと、溶融および合金化され、
- 金属ガラスを形成しようとする場合には、その後急冷に供される
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
急冷が、冷却鋳型プロセス、例えば冷却された鋳型内での傾動、回転、もしくは圧力鋳造を使用して、または溶融紡糸プロセスを使用して、あるいは粉末化プロセスにより行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
硫黄およびリンの合金を製造するための容器が、石英容器であることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
オーブンが、電気アーク炉であることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の非晶質、部分非晶質、または結晶性合金から製造される鋳物。
【外国語明細書】