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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028798
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61P25/30
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202672
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2022526074の分割
【原出願日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】1916210.6
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1917320.2
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2008303.6
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521527989
【氏名又は名称】サイビン ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランズ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ナイト,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】チャブ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ロンデスブラフ,デリク
(72)【発明者】
【氏名】ベンウェイ,ティファニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル,ゼラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善された経口バイオアベイラビリティを有する幻覚薬を提供する。
【解決手段】幻覚的支援心理療法に使用するための、薬学的に許容される塩の形態である式Iの化合物を含む、医薬組成物である。

[Hはプロチウムまたは重水素であり、nは1で、Rが5位であり、Rは、-R、-OR、及び-O(CO)Rから独立して選択され、しかもR及びRは、独立して、C-Cアルキルから選択される]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幻覚的支援心理療法に使用するための、薬学的に許容される塩の形態である式I:
【化1】
(上式にて、Hはプロチウムまたは重水素であり、
nは1、2、3又は4から選択され、
は、-R、-OR、-O(CO)R、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、しかも
及びRは、独立して、C-Cアルキルから選択される)
の化合物。
【請求項2】
がメチルである、請求項1の使用のための化合物。
【請求項3】
が、ORおよび-O(CO)Rから独立して選択される、請求項1又は請求項2の使用のための化合物。
【請求項4】
がメチルである請求項1~3のいずれかの使用のための化合物。
【請求項5】
がメトキシである請求項1~4のいずれかの使用のための化合物。
【請求項6】
nが1である請求項1~5のいずれかの使用のための化合物。
【請求項7】
が4位又は5位にある、請求項6の使用のための化合物。
【請求項8】
nが1であり、Rが5-メトキシである、請求項1又は請求項2の使用のための化合物。
【請求項9】
Hが重水素である、請求項1~8のいずれかの使用のための化合物。
【請求項10】
HPLCによる99%と100%との間の純度を有する、請求項1~9のいずれかの使用のための化合物。
【請求項11】
前記の薬学的に許容される塩がフマル酸塩である、請求項1の使用のための化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【化2】
(上式にて、Hはプロチウムまたは重水素であり、
nは1、2、3又は4から選択され、
は、-R、-OR、-O(CO)R、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、しかも
及びRは、独立して、C-Cアルキルから選択され、但し、nが1で、Rが5-メトキシである場合には、Hはプロチウムである。)
【請求項13】
前記化合物が請求項2~11のいずれかに定義されるものである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
少なくとも第1及び第2の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記第1の化合物が、先行する請求項のいずれかに記載の化合物から選択され、前記第2の化合物が、前記第1の化合物の重水素化されていない類似体である、組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、または請求項14の組成物を、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項16】
幻覚的支援療法において使用するための請求項14又は請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
患者の精神疾患または神経疾患を治療する方法において使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、または請求項14又は請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記の精神疾患または神経疾患が、(i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)統合失調症、(iv)統合失調症型疾患、(v)不安障害、(vi)薬物乱用、および(vii)意欲消失障害から選択される、請求項17の使用のための化合物、その薬学的に許容される塩、または組成物。
【請求項19】
前記疾患が大うつ病性障害である、請求項17の使用のための化合物、その薬学的に許容される塩、または組成物。
【請求項20】
前記疾患が治療抵抗性うつ病である、請求項17の使用のための化合物、その薬学的に許容される塩、または組成物。
【請求項21】
前記化合物または組成物の経口投与を含む、請求項1及び請求項16~20のいずれか1項の使用のための化合物、その薬学的に許容される塩、または組成物。
【請求項22】
請求項1~13のいずれかに記載の化合物、その薬学的に許容される塩、または請求項14又は請求項15の組成物を、必要とする患者に投与することを含む治療方法。
【請求項23】
請求項1~13のいずれかに記載の化合物、その薬学的に許容される塩、または請求項14又は請求項15の組成物を、必要とする患者に経口投与することを含む治療方法。
【請求項24】
請求項17~20のいずれかに記載の方法である、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~13のいずれかに記載の化合物、その薬学的に許容される塩、または請求項14又は請求項15の組成物を含む経口剤形。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、並びにそのような化合物を含む組成物に関する。これらの化合物および組成物は、精神疾患または神経学的疾患の治療に使用される。式Iの化合物は、α-位に少なくとも1つの重水素原子を含み、その結果、α-二プロトン(diprotic)類似体と比較して改善された経口バイオアベイラビリティ(bioavailability)を有する。
【化1】
【発明の背景】
【0002】
N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)は、ヒトを含む多くの種の植物および動物において内在的に見出されるインドールアルカロイドである(S.A. Barker, E.H. Mcllhenny and R. Strassman, Drug Test. Anal., 2012、4, 617-635)。これは、メソアメリカおよび南アメリカ文化の中で長い使用の歴史を有しており、燻ることによるその使用の古学的証拠は、c.2130 BC にまで遡る(C.M. Torres, Ann. Mus. civ. Rovereto, Sez. Arch., St., Sc. nat., 1995、11、291-326)。DMTは、何世紀にもわたって現地の人々の儀式を行うのに使用されてきたアマゾンの調合薬アヤワスカ(concoction ayahuasca)の幻覚剤構成成分である。
【0003】
DMTは、化学者のRichard Manskeによって1931年に最初に合成され、その後、Dr. Stephen Szaraにより1950年代の間、調査研究に使用され、1960年代に幻覚剤の違法化が起こり、この研究のラインは停止された。1994年に、Dr. Rick Strassmanは、DMTへの研究に成功し、ヒトにおいては5つの研究が行われてきた。更なる研究は、現在、Imperial College Londonで行われている。
【0004】
DMTは、0.05mg/kgの低用量から0.4mg/kgの高用量まで、ヒトにおいて安全に投与されることが示されている。1994年以来行われた5つの研究のうち、2つは、1回のボーラス(bolus)注射を使用し、1つは繰り返しボーラス投与を使用し、2つは、長期の注入物(90-20分間にわたって)を使用したものである。DMTは、軽度から中程度の副作用が少数しか観察されず、ほとんどが負の幻覚剤的効果または高血圧の応答のいずれかに分類され、十分に耐性があることが見出された。
【0005】
DMTは、セロトニン5HT2A受容体に対して高い親和性を有する非選択的セロトニン受容体アゴニストであり、トリプタミンとして構造的に分類されている。最近の研究は、シロシビン、内因性神経伝達物質セロトニンに構造的に関連する別のトリプタミンの有意な治療効果を示した。シロシビン(psilocybin)の効力は、うつ病(R.L. Carhart-Harris et al., Psychopharmacology, 2018, 235, 399-408; R.L. Carhart-Harris et al., Lancet Psychiatry, 2016, 3, 7, 619-627)、人生の終わりの不安(R.R. Griffiths et al., J. Psychopharmacol., 2016, 30, 12, 1181-1197)および中毒(M.W. Johnson, A. Garcia-Romeu and R.R. Griffiths、Am.J. Drug Alcohol Abuse, 2017, 43, 1, 55-60)に示されており、精神的に破壊的な思考処理パターンに根ざした他のいくつかのメンタルヘルス疾患について現在調査されている(Anorexia Nervosa: NCT#NCT04052568)。Dr. Carhart-Harrisの研究室によりもたらされた証拠は、シロシビンの動作のメカニズムがDMTのものと多くの共通性を有することを見出した。
【0006】
脳磁波(MEG)、脳波(EEG)および機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を使用することにより、Carhart-Harrisのグループは、シロシビンによって誘発される幻覚状態を示し(S. D. Muthukumaraswamy et al., J. Neurosci., 2013, 33, 38, 15171-15183; M. M. Schartner et al., Sci. Rep., 2017, 7, 46421)、LSD(R. L. Carhart-Harris et al., 2016, 113, 17, 4853-4858; Schartner et al., 2017(上記))およびDMT(C. Timmermann et al., Sci. Rep., 2019, 9, 16324)が、周波数帯域の範囲にわたる振動パワーの減少に関連し、自発的信号ダイバーシティおよび脳ネットワークのグローバル統合を増加させることを示した。この研究は、エントロピー脳仮説にまとめられており(R. L. Carhart-Harris, Neuropharmacology, 2018, 142, 167-178; R. L. Carhart-Harris et al., Front. Hum. Neurosci., 2014, 8, 20, 1-22)、このグループによって最近報告されたシロシビンの抗うつ効果を説明することができるかもしれない(R.L. Carhart-Harris et al., 2018(上記); R.L. Carhart-Harris et al., 2016(上記))。
【0007】
エントロピー脳仮説の一体的特徴は、グローバルな脳機能のコンダクターとして述べられたデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる脳の一部を含んでいる(R.L. Carhart-Harris et al., 2014(上記))。DMNは、自分自身や他人のことを考える(P. Qin and G. Northoff、Neuroimage, 2011, 57, 3, 1221-1233; R. N. Spreng and C. L. Grady, J.Cogn. Neurosci., 2010, 22, 6, 1112-1123)、過去を思い出し、未来について考える(R.L.Buckner and D.C.Carroll, Trends Cogn. Sci., 2007, 11, 2, 49-57)などの、より高いレベルのメタ認知的作用に関連している。
【0008】
脳イメージ形成作業は、増加したDMNの完全性が、消沈した気分、具体的には、うつ病の反芻(depressive rumination)のマーカーであるかもしれないことを示唆した (M. G. Berman et al., Soc. Cogn. Effect., 2011, 6, 5, 548-55;J.P. Hamilton at al., Biol. Psychiatry, 2015, 78, 4, 224-230)。シロシビン(R.L. Carhart-Harris et al., PNAS, 2012, 109, 6, 2138-2143)、LSD(R.L. Carhart-Harris et al., 2016(上記))、アヤワスカ(F. Palhano-Fontes et al., PLOS One, 2015, 10, 2:e0118143)およびDMTの下で、DMN機能の完全性の低下が急激に観察され、その後、シロシビンで示されるように、急性後にその完全性が増加した(R. L. Carhart-Harris et al., 2017 (上記))。DMNの完全性の変化は、うつ病患者の気分の改善と相関している(同上)。観察されたDMNの完全性の減少とその後の増加は、DMNの急性モジュール崩壊がその後の再統合を可能にし、その後、正常な機能を可能にするという「リセット」メカニズムの仮説と一致している(同上)。
【0009】
リセットメカニズムと一致する抗うつ効果は、シロシビンを使用した複数の試験でサポートされてきたばかりでなく、アヤワスカを使用した予備試験でもサポートされてきた。 F. L. Osorio et al.によるパイロット研究Braz. J. Pschiatry, 2015, 31, 1, 13-20)では、再発性MDDを有する6人のボランティアに、アヤワスカの1回投薬を投与し、これにより、最大21日間維持される急速な抗うつ効果と抗不安効果が生じた。これらの結果は、後にR.F. Sanches et al., J. Clin. Psychopharmacol, 2016, 36, 1, 77-81によってより大きなサンプルで確認された。最近では、アヤワスカの抗うつ効果が、TRDの29人の患者を対象としたランダム化プラセボ対照試験で試験された(F. Palhano-Fontes et al., 2019, 49, 4, 655-663)。アヤワスカは、7日目まで維持された急速な抗うつ効果を発揮することが再び見出された。
【0010】
脳の活動で観察された証拠に加えて、個人が感じる幻覚的な体験の質もまた、治療結果にリンクしている。品質とは、しばしば「神秘的」または「精神的」と呼ばれる幻覚的体験の深さを意味し、神秘体験アンケート(MEQ)や変性意識状態(ASC)アンケートなどのアンケートを使用して測定される。現在、多くの研究により、相互接続の感覚の強さと一体性、時間と空間の超越、または驚異の感覚が、さまざまな適応症にわたるシロシビンによる長期的な治療結果を予測していることが示されている(M. P. Bogenschutz et al., J. Psychopharmacol., 2015, 29, 3, 289-299; R.R. Griffiths et al., 2016(上記); L. Roseman, D.J. Nutt and R.L. Carhart-Harris, Front. Pharmacol., 2018, 8, 974)。DMT経験は、そのようなすべてのスケールでシロシビンと同等のスコアを示し(C. Timmermann et al., Front. Psychol., 2018, 9, 1424)、さらに治療上の利益をもたらす可能性をさらに裏付けている。
【0011】
DMTを用いて実施されたイメージ研究から収集されたデータは、それがシロシビンと作用メカニズムを共有し、治療効果を促進する可能性のあるDMNでの「リセット」の発生を可能にするという強力な証拠を提供する。これは、DMTが幻覚的な状態を誘発するブルー(brew)の主成分であることを考えると、アヤワスカを使った試験で観察された抗うつ効果によって裏付けられている。
【0012】
Carhart-Harris研究室からの追加の予備的証拠は、DMTを投与された進行中の試験参加者における神経症傾向のスコアの減少を示した。うつ病の症状は神経症傾向のより高いスコアと関連していることが示されているため、特性神経症傾向はうつ病性障害の発症に重要な役割を果たす可能性がある(H. Sauer et al., J. Affect. Disord., 1997, 42, 2-3, 169-177)。 この性格特性とうつ病性障害の間の重要なメディエーターは反芻(rumination)であることが示されている。これは、前述のように、硬すぎるDMNの症状である可能性がある。したがって、DMTは治療効果の一部として、神経症傾向を低下させ、抑うつ性反芻の発症または継続を停止または予防する手段を提供することができる。
【0013】
上記を考慮すると、臨床グレードのトリプタミン、特にDMTは、多くの精神的健康状態の大規模な臨床試験において調査されるべきであるという圧倒的な証拠がある。しかしながら、現在、シロシビンとは別に、DMTまたはその他のトリプタミン由来の幻覚性の適正製造基準(GMP)提供者は存在していない。
【0014】
トリプタミンは、一般的には、Alexander Shulgin's pioneering publication TiHKAL:The Continuation(Berkeley, CA, Transform Press, 1997)から採用された方法を用いて合成される。これは、DMTを合成するためのいくつかの代替方法を開示しており、(1)塩化オキサリル、(2)ジメチルアミン、(3)水素化アルミニウムリチウムを使用したインドールから始まる3つのステップの経路が広く採用されており(スキーム1に示されている上部の合成ルートを参照)、類似のルートが、GMP対照の下でシロシビンをスケールするために使用されてきた(例えば、WO 2019/073379A 1参照)。塩化オキサリルは非常に毒性があり、腐食性である。それは、目、皮膚、および気道を激しく刺激し、水と激しく反応するため、大規模な取り扱いが困難である。
【0015】
オーキシン(植物ホルモンおよび天然物)からのDMTの合成は、J. Lab. Radiopharm., 1993, 33, 6, 455-465においてP.E. MorrisおよびC. Chiaoによって報告されている(スキーム1に示されている下部の合成経路を参照)。それにもかかわらず、塩化オキサリル経路は、他の既知の経路と比較してその高い収率のために人気があり続けている。したがって、当技術分野では、収率を犠牲にすることなく式Iの高純度化合物を製造しながら、問題のある塩化オキサリルの使用を回避する、式IのDMTおよびDMT型化合物を合成するための代替方法が必要とされている。
【0016】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)は、コロラドリバーヒキガエルの蟾酋毒(bufotoxin venom)(T. Lyttle, D. GoldsteinおよびJ. Gartz, J. Psychoact. Drugs, 1996, 28, 3, 267-290; A. T. Weil and W. Davis, J. Ethnopharmacol., 1994, 41, 1-2, 1-8)や、ビロラ樹脂、ペレグリナ、dictyoloma incanescensを含むさまざまな植物種種子(C.M. TorresおよびD.B. Repke, Anadenanthera:古代南アメリカの幻想的な植物、2006年、The Haworth Herbal Press, Oxford)に内因的に見られる短時間作用型の精神活性インドールアルキルアミンである。5-MeO-DMTは、コロンブス以前のアメリカ大陸の先住民文化で使用されたと報告されており(T. Weil and W. Davis, 1994(上記))、1936年に最初に合成的に製造された(T. Hoshino and K. Shimodaira, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1936, 11, 3, 221-224)。
【0017】
セロトニンの構造類似体として、5-MeO-DMTは5HT1Aおよび5HT2A受容体経路に対して親和性があり、特に5HT1Aに対して高い親和性を有し、5HT2A、5HT3A、5HT5、5HT6および5HT7受容体も活性化する(A.L. Halberstadt and D.E. Nichols, Handbook of Behavioral Neuroscience, 2010, 21, 621-636; M.C. McBride, J. Psychoactive Drugs, 2000, 32, 3, 321-331)。程度は低いが、5-MeO-DMTはD1、D3、およびalpha-2受容体も活性化し(T. S. Ray, PLOS One, 2010, 5, 2, e9019)、しかも、σ1受容体のリガンドである(A. Szabo et al., PLOS One, 2014, 9, 8, e106533)。
【0018】
5-MeO-DMTは、ヒトの血液、尿および脊髄液中に含まれる内因性トリプタミンであり(S. A. Barker, E.H. McIlhenny, R. Strassman, Drug Test. Anal., 2012, 4, 7-8, 617-635; F. Benington, R. D. Morin and L. C. Clark, J. Med. Sci., 1965, 2, 397-403; F. Franzen and H. Gross, Nature, 206, 1052; R. B. Guchhait., J. Neurochem., 1976, 26, 1, 187-190)、保護および治療に関連する効果を示すことが示されている。V.DakicらによるSci. Rep., 2017, 7, 12863の研究、およびA. SzaboらによるPLOS One, 2014, 9, 8, e106533の研究において、5-MeO-DMTは神経保護、抗炎症、および免疫応答とヒト脳細胞の形態形成の両方のモジュレーターであることが示されている。抗うつ特性は、前頭前野シータバンドの増加(M. S. Riga et al., Neuropharmacology, 2017, 113, A, 148-155)の形態で5-MeO-DMTを投与されたげっ歯類にて示されており、この領域の活性の変化は、治療抵抗性うつ病に対する別の幻覚性トリプタミンであるシロシビンの有効性に起因している(R.L. Carhart-Harris et al, 2012(上記))。
【0019】
5-MeO-DMTは、モノアミンオキシダーゼ阻害剤との同時投与なしでは、経口で生物学的に利用可能ではない。しかしながら、吸入された5-MeO-DMTは、強力な視覚および聴覚の変化と時間知覚の変化をもたらすと報告されており(J. Ott, J. Psychoactive Drugs, 2001, 33, 4, 403-407; Shulgin and Shulgin, 1997(上記))、また、急速に代謝され、半減期は12~19分である(H-W. Shen et al., Curr. Drug. Metab., 2010, 11, 8, 659-666)。経験豊富なユーザーからの報告によると、気化した5-MeO-DMTを吸入すると、精神的なエクスタシーや悟りから、死に近い不安やパニックの感情まで、さまざまな体験が生じる(https://www.erowid.org/library/books_online/tihkal/tihkal38.shtml, 2018)。
【0020】
人間を対象としたEEG研究では、気化した合成5-MeO-DMT(2~5 mg)が、α活性抑制の形態で見出された脳ネットワークダイナミクスの一時的な可逆的再構成を生成することが示されており、αからθ活性へのシフト、ガンマ電力の増加、およびすべてのバンドにおける誘導された超コヒーレンスが示された。被験者は、解決段階での平和、落ち着き、明晰さの感情を報告した(J. Acosta-Urquidi, Cosmos and History:The Journal of Natural and Social Philosophy, 2015, 11, 2, 115-129)。
【0021】
制御されていない環境でさまざまな形で5-MeO-DMTを摂取した500人以上の疫学研究では、多くのユーザーが、その使用に起因する治療効果を報告した(A. K. Davis et al., J. Psychopharmacol., 2018, 32, 7, 779-792)。精神医学的診断を受けたと説明された参加者は、心的外傷後ストレス疾患(79%)、うつ病(77%)、不安(69%)など、5-MeO-DMTの使用後に症状が改善したことを示した。これらの回答者は、使用頻度が低く(1年に1回未満)、生涯で4回以下であると報告した。さらに、5-MeO-DMTは、困難な経験の低い強さ(例えば、恐怖、不安)および低い中毒性(すなわち、消費に関連する法的、医学的、精神医学的処置の非常に低い割合)によって証明されるように、安全なプロフィールを示した。
【0022】
5-MeO-DMTは、薬物乱用疾患を治療する可能性も示した。プロテオミクス研究では、5-MeO-DMTは、代謝型グルタミン酸受容体5をダウンレギュレーションする能力があるため、抗中毒性を示し(V. Dakic et al., Sci. Rep., 2017, 7, 12863)、これは、アルコール(M.K. Bird et al., Int. J. Neuropharmacol., 2008, 11, 6, 765-774)、コカイン(C. Chiamulera et al., Nat. Neurosci., 2001, 4, 873-874)の、価値のある効果(rewarding effect)、およびニコチンの離脱(A. K. Stoker, B. Olivier and A. Markou, Psychopharmacology, 2012, 221, 317-327)を示す。治療作用の主なメカニズムは、アルコール使用疾患の治療する際の治療能力を一貫して示す同様のセロトニン作用効果を有する他の古典的な幻覚剤(LSD、シロシビンなど)と一緒に、5HT1Aおよび5HT2A受容体のアゴニスト作用である(F.S. Abuzzahab and B.J. Anderson, Int. Pharmacopsychiatry, 1971, 6、223-235; T. S. Krebs and P-O. Johansen, J. Psychopharmacol., 2012, 26, 7, 994-1002; E. M. Nielson et al., Front. Pharmacol., 2018, 9, 132)。
【0023】
DMTは、brew ayahuascaの形態で、アルコールに対する挙動増感を阻害することにより、アルコール依存性の動物モデルにおける習慣性行動の減少を示し(E.G. Cata-Preta et al, Front. Pharmacol. 2018, 9, 561)、これは、このトリプタミンのセロトニン作動性に起因すると理論づけられている(Shen et al., 2010(上記))。5-MeO-DMT使用者の上記の疫学的調査では、アルコール依存症または危険な飲酒をしている個人(66%、n =113人中75人)が、5-MeO-DMT使用後の状態の改善を報告し、アルコール使用疾患における治療薬としての潜在的な可能性の証拠を示唆した。
【0024】
ヒトにおける種々の精神的健康疾患の治療研究全体にわたる治療効果の強力な予測尺度は、神秘的なタイプの経験の発生である(M.P.Bogenschutz and M.W.Johnson, Prog. Neuropsychopharmacol. Biol. Psychiatry, 2016, 64, 4, 250-258; B.T.H. de Veen et al., Expert Rev. Neurother., 2017, 17, 2, 203-212; A. Loizaga-Velder and R. Verres, J. Psychoact. Drugs, 2014, 46, 1, 63-72; Roseman et al., 2018(上記))。特に、アルコール依存症のシロシビン支援治療に関する研究では、神秘的な経験の強度が結果の重要な予測因子として一貫して特定されることがわかった(M. P. Bogenschutz et al., 2015(上記); M.P. Bogenschutz and M. W. Johnson, 2016(上記); B.T.H. de Veen et al., 2017(上記))。投与された5-MeO-DMTは、シロシビン(J. Barsuglia et al., Front. Psychol., 2018, 9, 2459)と同等またはそれ以上の強度の神秘的なタイプの体験(Davis et al., 2018(上記))を確実に生じさせることが示されており、5-MeO-DMTは、シロシビンよりも物質使用疾患の治療において同様の、または潜在的に高い効果を有する可能性が高いということになる。このことは、うつ病(R. L. Carhart-Harris et al., 2018(上記); R. L. Carhart-Harris, et al., 2016(上記))や、終末期の不安(R. R. Griffiths et al., 2016(上記))、おそらく幻覚剤的に破壊的なパターンで根付けされる他の疾患(神経性食欲不振症:NCT#NCT04052568)を含む、シロシビンが有効性を示した他の疾患にも及ぶ。
【0025】
DMTおよびその置換類似体(例えば、5-MeO-DMT)は、モノアミンオキシダーゼ(MAO)によって媒介される脱アミノ化経路を介して不活性化される。MAOは、体のほとんどの細胞型に見出される。従って、DMTおよびその置換類似体(例えば、5-MeO-DMT)はしばしばMAO阻害剤(MAOI)と共に投与されて、それらが体中のそれらの標的部位に到達する前に化合物の不活性化を防止し、化合物への長時間の暴露を可能にする。上記のように、5-MeO-DMTは、MAOIと共投与することなく、経口的に生物学的に利用可能ではない。しかしながら、MAOIは、ある種の食品または薬物で摂取されたときに高血圧を引き起こすことがあり、このため、患者によるMAOIの使用は、典型的には、患者が食事を制限し、他のいくつかの薬物を回避することを必要とする。
【0026】
5-MeO-DMTなどの置換ジアルキルトリプタミンの治療の可能性に照らして、特に、MAOIの使用を回避でき、心理療法を支援するための、臨床的に適用可能な幻覚薬(psychedelic drug)の開発のために、改善された経口バイオアベイラビリティ、拡張および/または変更された薬物動態を有するそのような化合物の必要性が当該技術分野には残っている。本発明は、この必要性に対処するものである。
【発明の要約】
【0027】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関するものであり、この際、xH、n、R1およびR2は、以下に定義されるものである。
【化2】
【0028】
上記のように、5-MeO-DMTは、MAOIとの共投与しないと、経口的に生物学的に利用可能ではない。式Iの化合物はα位置に少なくとも1つの重水素原子を含む。本発明者らは、このような化合物が、驚くべきことに、それらのα-二プロトン類似体よりもゆっくりと代謝され、結果として改善された経口バイオアベイラビリティを有することを見出した。式Iの化合物は、精神医学的または精神的認知疾患における治療的適用を伴う強力なトリプタミン幻覚剤である。
【0029】
従って、第1の態様から見て、治療において使用するための式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【化3】
この際、xHは、プロチウムまたは重水素であり、
nは1、2、3、又は4から選択され、
R1は、-R3、-OR3、-O(CO)R3、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、
R2及びR3は独立してC1-C4アルキルから選択される。
第2の態様から見ると、第1の態様で定義される化合物またはその薬学的に許容される塩が提供され、但し、nが1であり、R1が5-メトキシである場合、1つのxHは重水素であり、他はプロチウムである。
【0030】
本発明者らは、化合物の薬物動態プロファイルを制御可能に改変し、それによってより柔軟な治療用途を可能にするために、本発明の化合物によって示される速度論的同位体効果に関する知識を適用した。特に、本発明の化合物とそれらの重水素化されていない類似体との混合物を含む個々の薬物物質組成物を提供することによって、本発明の化合物を製造することができる。このような組成物は、臨床におけるモノアミン酸化酵素阻害剤との注入プロトコルまたは併用療法に頼ることなく、治療的に最適化された持続時間の間、患者を外部世界から完全に解離させて維持するために、微調整された単一投与量を可能にすることができる。
【0031】
本発明者らは、重水素化の程度と親化合物の代謝半減期の増強効果との間の定量的な関係を観察した。このような技術的効果は、式Iの複数の化合物を含む組成物を調製することができる精度を定量的に増加させるために使用できる。「式Iの複数の化合物を含む組成物」とは、少なくとも第1及び第2の化合物を含む組成物を意味し、ここで第1の化合物は式Iの化合物であり、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体である。例えば、第1の化合物は、α-デューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンであってもよく、その場合、第2の化合物は5-メトキシジメチルトリプタミンである。
【0032】
従って、第3の態様から見ると、第1及び第2の化合物またはその薬学的に許容される塩を少なくとも含む組成物であって、第1の化合物が、第1または第2の態様で定義される化合物から選択され、第2の化合物が、第1の化合物の重水素化されていない類似体である組成物が提供される。
【0033】
第4の態様から見ると、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3の態様の組成物を含む医薬組成物が提供される。
【0034】
上述のように、本発明の化合物および組成物は、精神疾患または神経学的疾患の治療における使用を有する。従って、第5の態様から見ると、治療に使用するための第3または第4の態様の組成物が提供される。
【0035】
第6の態様から見ると、患者の精神疾患または神経疾患を治療する方法に使用するための、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3または第4の態様の組成物が提供される。
【0036】
第7の態様から見ると、必要とする患者に、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩または第3または第4の態様の組成物を投与することを含む治療方法が提供される。
【0037】
上述のように、本発明の化合物は、改善された経口バイオアベイラビリティーを有する。従って、第8の態様から見ると、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3または第4の態様の組成物を含む経口剤形が提供される。
【0038】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下の議論から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、DMT型化合物の製造のための公知の合成経路を示している。
図2図2は、式Iの化合物の重水素化されていない薬物物質と比較して、式Iの化合物の部分的に重水素化された薬物物質と、式Iの化合物の完全重水素化された薬物物質との予測された薬物動態プロファイルを示しており、予測されたA)血漿濃度およびB)脳組織濃度は、部分的に重水素化されたDMTの延長された半減期を示している。斜線の領域は、外界からの完全な解離として経験される効果部位濃度を示している。
図3図3は、実施例4に記載のDMTおよび6重水素含有組成物についてのインビトロ半減期を計算したプロットである。A)線形回帰分析。半減期についてのr2値は0.754であり、勾配は0と有意に異なることが見出された、p=0.01。B) (重水素化されていない)DMT (破線)からのパーセント変化としての、重水素化類似体の半減期。
図4図4は、実施例4に記載のDMTおよび6重水素含有組成物についてのインビトロ固有クリアランスを示している。A)線形回帰分析。固有クリアランスについてのr2値は0.7648であり、勾配は0と有意に異なることが見出された、p=0.01。B) (重水素化されていない)DMT (破線)からのパーセント変化としての、重水素化類似体の固有クリアランス。
【発明の詳細な説明】
【0040】
本明細書を通じて、本発明の1つまたは複数の態様は、本明細書に記載された1つまたは複数の特徴と組み合わされて、本発明の別個の実施形態を定義することができる。
【0041】
以下の議論では、文脈が明らかに逆に示されない限り、以下に提供される意味を有すると理解されるべき用語の数を参照する。化合物、特に本明細書に記載される化合物を定義するために本明細書で使用される命名法は、化学組成物についての国際純正・応用化学連合(IUPAC)の規則、特に「IUPAC Compendium of Chemical Terminology (Gold Book)」に従ったものであることを意図している(A.D. Jenkins et al., Pure & Appli. Chem., 1996, 68, 2287-2311参照)。誤解を避けるために、IUPAC組織の規則が本明細書に提供される定義とは逆である場合には、本明細書の定義が優先する。
【0042】
本明細書では、名詞の単数は、文脈がそうでなければ、複数の名詞を包含し、その逆もまた同様である。
【0043】
本明細書全体を通して、「含む」または「含んでいる」などの変形は、記載された元素、整数またはステップ、または元素のグループ、整数またはステップの包含を意味するが、任意の他の元素、整数またはステップ、または元素のグループ、整数またはステップを除外することを意味すると理解されるであろう。用語「含む」は、用語「から成る」の領域内を包含する。
【0044】
用語「から成る」またはその変形は、記載された元素、整数またはステップ、または元素のグループ、整数またはステップを含み、任意の他の元素、整数またはステップまたは元素のグループ、整数またはステップの排除を意味すると理解されるべきである。
【0045】
数または値を認定する際、本明細書中の用語「約」は、指定された値の±5%以内に存在する値を指すために使用される。例えば、カップリング剤:式Iの化合物の比が約1:1~約1.5:1である場合、0.95:1~1.575:1の比が含まれる。
【0046】
用語「ヒドロカルビル」は、任意の炭素原子から水素原子を除去することによって炭化水素から誘導される一価の基を定義し、ここで用語「炭化水素」は、水素および炭素のみからなる化合物を意味する。ヒドロカルビルが任意に1つ以上のヘテロ原子を含むものとして開示されている場合、ヒドロカルビル上の任意の炭素または水素原子は、原子価が満たされるように、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む官能基で置換されていてもよい。1つ以上のヘテロ原子は、窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択されてもよい。
【0047】
これらのヘテロ原子を含む酸素および硫黄ヘテロ原子または官能基は、ヒドロキシカルビルの-Hまたは-CH2-を置換することができ、但し、-Hが置換された場合、酸素または酸素を含む官能基は、=0(2つの-Hを置換)または-OH (1つの-Hを置換)として、-Hに最初に結合した炭素に結合し、硫黄または硫黄を含む官能基は、=S (2つの-Hを置換)または-SH (1つの-Hを置換)のいずれかとして、-Hに最初に結合した炭素原子に結合する。メチレン(-CH2-)が置換された場合、酸素は-O-として-CH2-に最初に結合した炭素原子に結合し、硫黄は-S-として-CH2-に最初に結合した炭素原子に結合する。
【0048】
窒素ヘテロ原子を含む窒素ヘテロ原子または官能基は、-H、-CH2-または-CH=で置換されていてもよく、但し、-Hが置換された場合、窒素または窒素を含む官能基は、三重結合N(3つの-Hを置換)、=NH (2つの-Hを置換)または-NH2 (1つの-Hを置換)として、-Hに最初に結合した炭素と結合し;-CH2-が置換された場合、窒素または窒素を含む官能基は、-NH-として-CH2-に最初に結合した炭素原子に結合し、-CH=が置換された場合には、窒素は、-N=として-CH=に最初に結合した炭素原子に結合する。
【0049】
用語「アルキル」は、当該技術分野において周知であり、任意の炭素原子から水素原子を除去することによってアルカンから誘導される一価の基を規定し、この際、「アルカン」という用語は、一般式CnH2n+2を有する非環式分岐または非分枝炭化水素を定義することを意図しており、ここでnは≧1の整数である。C1-C4アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルからなる群から選択されるいずれか1つを意味する。
【0050】
用語「シクロアルキル」は、環炭素原子から水素原子を除去することによってシクロアルカンから誘導される全ての一価の基を定義する。用語「シクロアルカン」は、飽和単環式および多環式分岐または非分枝状炭化水素を定義し、ここで単環式シクロアルカンは一般式CnH2nを有し、ここでnは≧3の整数である。典型的には、シクロアルキルは、シクロペンチルまたはシクロヘキシルのようなC5-C6シクロアルキルである。
【0051】
用語「アルキルアミノ」は、いずれか1つの水素原子が第1級(-NH2)、第2級(-NRH)または第3級(-NR2)アミノ基で置換されているアルキル基を意味し、ここで、R又は各Rは独立して、ヒドロカルビル基である。典型的には、いずれか1つの水素原子は3級アミノ基で置換されており、ここで各Rは独立してC1-C4アルキルである。
【0052】
第1の態様において定義される化合物および第2の態様の化合物は、治療に有用であり、それを必要とする患者に投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「患者」は、好ましくは哺乳動物を指す。典型的には、哺乳動物はヒトであるが、家庭用哺乳動物を指すこともできる。この用語は、実験室哺乳動物を包含しない。
【0053】
「処置」および「治療」という用語は、疾患の進行速度を減少または停止させるため、または疾患を改善または治療するための、患者の治療処置を定義する。また、処置または治療の結果としての疾患の予防も含まれる。予防に関する参考文献は、疾患の完全な予防を必要としないことを意図している:その代わりに、その進展は、本発明による処置または治療を介して阻害され得る。典型的には、処置または治療は予防的ではなく、化合物または組成物は、診断されたまたは疑われる疾患を有する患者に投与される。
【0054】
幻覚的支援心理療法(Psychedelic-assisted psychotherapy)とは、幻覚的手段による精神疾患の治療を意味し、これは、患者が幻覚的経験を受ける1つまたは複数のプロトコルによって増強される。幻覚剤的経験は、以前に知られていない1つの心の態様を打撃することを特徴とするものであり、また、幻覚、共感、認識または集中した意識の変更された状態、思考パターンの変化、恍惚または催眠状態、および筋状の状態についての、1つまたはそれ以上の知覚の変化が含まれる。
【0055】
当該技術分野で理解されるように、精神的認知症、精神疾患または神経学的疾患は、1つまたはそれ以上の認知疾患に関連し得る疾患である。本明細書で使用される「精神疾患(psychiatric disorder)」という用語は、個体において生じる臨床的に重要な行動または幻覚的症候群またはパターンであり、現在の苦痛(例えば、痛みのある症状)または疾患に関連するもの(すなわち、1つまたはそれ以上の重要な領域の疾患)、または死、痛み、崩壊性、または重要な自由度の重要な喪失の著しい増大に関連するものである。
【0056】
本明細書で参照される精神疾患または神経学的疾患の診断基準は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第5版、(DSM-5)に規定されている。
【0057】
本明細書で使用される「強迫性疾患」(OCD)という用語は、強迫観念または強迫観念のいずれか、しかし一般的には両方の存在によって定義される。症状は、重大な機能疾患および/または悩みを引き起こす可能性がある。強迫観念(obsession)は、人の心に繰り返し入る望ましくない侵入的思考、イメージ、または衝動として定義される。強迫行為(compulsion)とは、人が実行するように駆り立てられていると感じる反復的な行動または精神的行為である。通常、OCDは、強迫観念の採用を促進する1つ以上の強迫観念として現れる。たとえば、細菌への執着は、掃除への衝動を駆り立てるか、食べ物への執着は、食べ過ぎ、食べ過ぎ、または食べた後に吐く衝動を駆り立てる可能性がある(つまり、食べ物への執着は、摂食障害として現れる可能性がある)。強迫行為は、ドアがロックされていることを確認するなど、他の人が明白に観察できる場合もあれば、心の中で特定のフレーズを繰り返すなど、観察できない隠された精神的行為もある。
【0058】
「摂食障害(eating disorder)」という用語には、神経性食欲不振症、過食症、過食症(BED)が含まれる。神経性食欲不振症の症状には、体重をできるだけ低く保つために、食べる量が少なすぎる、および/または運動し過ぎることが含まれる。過食症の症状には、非常に短い時間でたくさんの食べ物を食べて(つまり、過食)、故意に病気になったり、下剤を使用したり、食べすぎたり、運動しすぎて体重増加を防ぐことが含まれる。BEDの症状には、不快に満腹になるまで定期的に大量の食物を食べ、その結果、動揺したり罪を犯したりすることが含まれる。
【0059】
本明細書で使用される「うつ病性障害」という用語は、大うつ病性障害、持続性鬱病性疾患、双極性疾患、双極性うつ病、および末期患者のうつ病を含む。
【0060】
本明細書で使用される「大うつ病性障害」(major depressive disorder, MDD、大うつ病または臨床的うつ病とも呼ばれる)という用語は、2週間以上の期間にわたる以下の症状のうちの5つ以上の存在として定義され(本明細書では、「大うつ病エピソード」とも呼ばれる)、一日の大部分、ほぼ毎日:
・悲しみ、空虚、涙などの抑うつ気分(子供や10代では、抑うつ気分は常に過敏症として現れることがある);
・すべてまたはほとんどの活動への関心が大幅に低下した、または喜びを感じなくなった;
・ダイエットをしていないときの大幅な体重減少、体重増加、または食欲の増減(子供では、期待どおりに体重が増えない);
・不眠症または睡眠への欲求の増加;
・他の人が観察できる落ち着きのなさ、または遅い行動のいずれか;
・倦怠感またはエネルギーの喪失;
・無価値感、または過度または不適切な罪悪感;
・意思決定の問題、または思考や集中の問題;
・死や自殺、または自殺未遂についての繰り返しの考え。
【0061】
症状の少なくとも1つは、気分が落ち込んでいるか、興味や喜びが失われている必要がある。
【0062】
気分変調(dysthymia)としても知られる持続性抑うつ疾患は、次の2つの特徴を示す患者として定義される:
A.少なくとも2年間、ほぼ毎日、ほとんどの時間、気分が落ち込んでいる。子供や青年はイライラする気分になることがあり、そして時間枠は少なくとも1年である。
B.落ち込んでいる間、人は次の症状のうち少なくとも2つを経験する。
・食べ過ぎまたは食欲不振。
・睡眠が多すぎる、または睡眠が困難である。
・倦怠感、エネルギー不足。
・自尊心の欠如。
・集中力や意思決定の難しさ。
【0063】
本明細書で使用される「治療抵抗性大うつ病性障害」という用語は、標準的なケア療法による適切な治療に対する適切な応答を達成できないMDDを表す。
【0064】
本明細書で使用される「双極性疾患」は、躁うつ病としても知られ、気分、エネルギー、活動レベル、および日常業務を遂行する能力に異常な変化を引き起こす障害である。
【0065】
双極性疾患には2つの定義されたサブカテゴリーがあり、それらのすべては、気分、エネルギー、および活動レベルの明確な変化を伴う。これらの気分は、非常に「上向き」、高揚、活力のある行動の期間(躁病エピソードとして知られ、以下でさらに定義される)から非常に悲しい、「下向き」、または絶望的な期間(うつ病エピソードとして知られている)にまで及ぶ。それほど重症ではない躁病期間は、軽躁病エピソードとして知られている。
【0066】
双極性I疾患(Bipolar I Disorder)は、少なくとも7日間続く躁病エピソード、または人がすぐに病院でのケアを必要とするほど重度の躁病症状によって定義される。通常、うつ病エピソードも発生し、通常は少なくとも2週間続く。混合された特徴(うつ病と躁症状を同時に有する)を伴ううつ病のエピソードも起こり得る。
【0067】
双極性II疾患(Bipolar II Disorder)は、うつ病エピソードと軽躁病エピソードのパターンによって定義されるが、上記の本格的な躁病エピソードではない。
【0068】
本明細書で使用される「双極性うつ病」は、躁症状の以前のまたは共存するエピソードを伴ううつ病症状を経験しているが、双極性障害の臨床基準に適合しない個人として定義される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「不安障害」という用語は、全般性不安障害、恐怖症、パニック障害、社交不安障害、および心的外傷後ストレス疾患を含む。
【0070】
本明細書で使用される「全般性不安障害」(GAD)は、特定の対象または状況に焦点を合わせていない、長期にわたる不安を特徴とする慢性疾患を意味する。全般性不安障害に苦しむ人々は、非特異的な持続的な恐怖と心配を経験し、日常の事柄に過度に関心を持つようになる。GADは、次の3つ以上の症状を伴う慢性的な過度の心労を特徴とする:落ち着きのなさ、倦怠感、集中力の問題、神経過敏、筋肉の緊張、睡眠障害。
【0071】
「恐怖症(Phobia)」とは、影響を受ける人が回避するために非常に長い時間を費やし、通常は実際にもたらされる危険に不釣り合いな、物体または状況に対する永続的な恐怖として定義される。恐れられている対象や状況を完全に回避できない場合、影響を受けた人は、社会的または職業的活動への著しい苦痛と重大な干渉を伴いそれに耐えることになる。
【0072】
「パニック疾患」に苦しむ患者は、激しい恐怖と不安の1つ以上の短時間の発作(パニック発作とも呼ばれる)を経験し、しばしば震え、震え、混乱、めまい、吐き気、および/または呼吸困難を示す患者として定義される。パニック発作は、突然発生し、10分以内にピークに達する恐怖または不快感として定義される。
【0073】
「社交不安障害」とは、世間の否定的な監視、困惑、屈辱、または社会的相互作用に対する強い恐怖と回避として定義される。社会不安は、赤面、発汗、話すことの困難など、特定の身体的症状を示すことがよくある。
【0074】
「心的外傷後ストレス疾患」(PTSD)は、心的外傷後の経験から生じる不安障害である。心的外傷後ストレスは、戦闘、自然災害、レイプ、人質事件、児童虐待、いじめ、さらには重大な事故などの極端な状況から生じる可能性がある。一般的な症状には、過覚醒、フラッシュバック、回避性行動、不安、怒り、うつ病などが含まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「産後うつ病」(PPD、出生後うつ病としても知られる)という用語は、新生児のいずれかの親が経験するうつ病の一形態である。症状は通常、出産後4週間以内に発症し、極度の悲しみ、倦怠感、不安、趣味や活動への興味や喜びの喪失、神経過敏、睡眠や食事のパターンの変化などが含まれる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「薬物乱用」という用語は、ユーザーが自分自身または他人に有害な量または方法で物質を消費する薬物のパターン化された使用を意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「意欲消失疾患」という用語は、症状として、自主的な目的のある活動を開始および実行する動機の低下を含む障害を指す。
【0078】
「LiAlxH4」とは、還元剤(有機化合物の酸化レベルを低下させることができる薬剤)であるリチウムアルミニウムヒドリド、xが1の場合、xHはプロチウム(原子量1の水素)、または重水素リチウムアルミニウム、xが2の場合、xHは重水素(原子量2の水素)を意味すると理解されたい。いくつかの実施形態によれば、「LiAlxH4」は、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4を意味する。いくつかの実施形態によれば、「LiAlxH4」はLiAlD4であり、任意に0.1から99.9%のLiAlH4を含む。本明細書に開示される方法のステージ2は、式IIの化合物をLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4と反応させることを含み、すなわち、LiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4の混合物は、式IIの化合物と反応させることができる。 2%から98%の水素化アルミニウムリチウムまたは2%から98%の水素化アルミニウムリチウムの混合物を使用することができる。
【0079】
文脈で別段の指示がない限り、アミンは第二級アミンを意味する。
【0080】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、混合物中の各成分を分離し、同定し、定量化するために使用される分析化学における技術である。HPLCのレビューについては、A.M. Sabir et al., Int. Res. J. Pharm., 2013, 4, 4, 39-46を参照。
【0081】
本明細書でいう溶媒には、MeCN(アセトニトリル)、DCM(ジクロロメタン)、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、iPrOAc(イソプロピルアセテート)、TBME (t-ブチルメチルエーテル)、THF (テトラヒドロフラン)、2-MeTHF (2-メチルテトラヒドロフラン)、EtOAc (酢酸エチル)、エタノールおよびトルエンが含まれる。本明細書で使用する場合、エーテル溶媒という用語は、アルキル-O-アルキル部分を含む溶媒を意味し、ここで、2つのアルキル成分は連結されていてもよい。エーテル溶媒には、ジエチルエーテル、TBME、THFおよび2-MeTHFが含まれる。
【0082】
乾燥剤は、溶液中の有機化合物から水を除去するために使用される化学物質である。乾燥剤の例には、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムが含まれる。本明細書に記載される乾燥剤は、典型的には硫酸マグネシウムである。
【0083】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬は、無毒性の酸アニオンを形成する酸である。例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩または酸性リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩およびグルコン酸塩が含まれる。
【0084】
水性塩基性溶液とは、後処理に適した温和な塩基、たとえば10%炭酸カリウム溶液を意味する。
【0085】
上記のように、本発明は、治療における使用のための式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を第1の態様で提供する。
【化4】
式中、xHは、プロチウムまたは重水素であり、
nは、1、2、3又は4から選択され、
R1 は、-R3、-OR3、-O(CO)R3、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、しかも
R2及びR3は独立してC1-C4アルキルから選択される。
R2 は、C1-C4アルキルから独立して選択され、しばしばメチルまたはエチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、R2はメチルである。
R1 は、-R3、-OR3、-O(CO)R3、-F、-Cl、-Brまたは-Iから独立して選択され、そしてR3はC1-C4アルキルから選択される。しばしば、R1は、-OR3、および-O(CO)R3から独立して選択される。しばしば、R3はメチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、R3はメチルである。いくつかの実施形態では、R1はメトキシまたはアセトキシ、例えばメトキシである。
【0086】
いくつかの実施形態では、nは1~4であり、いくつかの実施形態では、nが>1であるとき、少なくとも1つのR1は、4位または5位にある。
【0087】
いくつかの実施形態では、nは0または1である。いくつかの実施形態では、nは0である。他の実施形態ではnは1である。いくつかの実施形態では、nが1であり、R1は4位または5位にある。
【0088】
いくつかの実施形態では、nは1であり、R1は-OR3および-O(CO)R3から選択され、典型的にはR3はメチルである。しばしば、R1は-OR3であり、典型的にはR3はメチルである(すなわち、R1はしばしばOMeである)。
【0089】
いくつかの実施形態では、nが1である場合、R1は、4-メトキシ(4-MeO)、5-MeO、4-アセトキシ(4-AcO)、および5-AcO、例えば5-メトキシから選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、xHは重水素である。
【0091】
第1の態様のより具体的な態様において、式Iの化合物は、α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンである。
【0092】
式Iの化合物を製造する方法は、以下に記載され、式Iの高純度化合物の製造に適している。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、HPLCによる99%~100%の間の純度、例えばHPLCによる99.5%~100%の間の純度である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、HPLCによる純度が99.9%~100%の間、例えば、HPLCによる純度が99.95%~100%の間である。
【0093】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、HPLCによる2つ以下の不純物ピークを生じる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、HPLCによる不純物ピークを生じ、不純物ピークは0.2%を超えない。いくつかの実施形態では、HPLCによる不純物ピークは0.1%を超えない。
【0094】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。薬学的に許容される塩は、多くの場合、式Iの化合物および適当な酸からなる。式Iの化合物は、典型的には-N(R2)2にてプロトン化され、-[NH(R2)2]+を形成し、結果として生じる正電荷はアニオンによって相殺される。
【0095】
P.H. StahlおよびC.G. Wermuthは、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection and Use, Weinheim/Zuerich:Wiley-VCH/VHCA, 2002にて、その中に含まれる医薬品塩および酸の概要を提供している。本明細書に記載の酸は、式Iの薬学的に許容される塩の適した成分である。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記の酸は、フマル酸、酒石酸、クエン酸、塩酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳酸、樟脳-10-スルホン酸、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、炭酸、桂皮酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、ガラクタール酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、ヒプリン酸、臭化水素酸、イソ酪酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸酸からなる群から選択される任意のものである。
【0097】
しばしば、前記の酸は、フマル酸、酒石酸、クエン酸および塩酸から選択されるいずれかである。いくつかの実施形態では、酸はフマル酸であり、すなわち薬学的に許容される塩はフマル酸塩である。
【0098】
上記のように、本発明は、その第2の態様において、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化5】
この際、xHは、プロチウムまたは重水素であり、
nは1、2、3又は4から選択され、
R1-は、-R3、-OR3、-O(CO)R3、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、しかも、
R2及びR3は独立してC1-C4アルキルから選択され、但し、nが1で、R1が5-メトキシである場合、1つのxHは重水素であり、他はプロチウムである。
【0099】
誤解を避けるために、本発明の第1の態様の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関連する実施形態は、必要な変更を加えて第2の態様にも適用し、nが1で、R1が5-メトキシである場合、1つのxHは重水素で、もう1つはプロチウムである。 例えば、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のR2はメチルであってもよく、R1はメトキシまたはアセトキシであってもよく、及び/又はnは1であってもよく、R1は4位または5位にあってもよい。
【0100】
本明細書には、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を製造するための合成法も開示されている。この方法はステージ1とステージ2を含み、ステージ1は、以下:
(i)式IIIの化合物を2つ以上のカップリング剤と反応させて活性化化合物を生成する工程;
(ii)前記の活性化化合物と、式(R2)2NHを有するアミンとを反応させて、式IIの化合物を生成する工程;
を含み、ここで、ステージ2は、式IIの化合物をLiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4と反応させることを含む。
【化6】
この際、xHは、プロチウムまたは重水素であり、
nは1、2、3又は4から選択され、
R1 は、-R3、-OR3、-O(CO)R3、-F、-Cl、-Br又は-Iから独立して選択され、しかも、
R2及びR3は独立してC1-C4アルキルから選択される。
【0101】
誤解を避けるために、本発明の第1の態様の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩に関連する実施形態はまた、必要な変更を加えて、合成法の式Iの化合物(従って、式III及びIIの化合物)に適用される。例えば、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のR2(従って、式IIの化合物と式(R2)2NHを有するアミンもまた)はメチルであってもよく、式Iの化合物(従って、式IIIとIIもまた)のR1は、メトキシまたはアセトキシであってもよく、及び/又はnは1であってもよく、R1は4または5位であってもよい。
【0102】
この合成方法は、問題のある塩化オキサリルの使用を回避し、オーキシン誘導体から誘導され得る式IIIの化合物を使用する。式IIIの高品質および純度のオーキシンは、大規模で商業的に入手可能であり、および/またはフィッシャー合成、Bartoli合成、Japp-Klingemann合成またはLarock合成を介して容易に合成することができる(例えば、M.B. Smith and J. March, 2020, March's Advanced Organic Chemistry, 8th edition、Wiley, New Jerseyを参照)。この方法は、効率的で、大規模に実現可能であり、Current Good Manufacturing Practices(cGMP)との互換性があり、式Iの高純度化合物の製造に適している。例えば、この方法は、1g~100kgの範囲のバッチスケールで式Iの化合物を製造するのに適しており、純度が99.9%を超え、全体の収率が65%以上の式Iの化合物の製造に適している。
【0103】
式IIの化合物は、式IIIの化合物と2つ以上のカップリング剤とを反応させて活性化化合物を生成し、この活性化化合物と式(R2)2NHを有するアミンとを反応させることにより製造される。理論に拘束されることを望むものではないが、アミンの窒素原子は式IIIのカルボニルの炭素原子に結合し、その結果、式IIの化合物が形成されることが理解される。誤解を避けるために、式II及び式IのR2基は、アミンのR2基から誘導される。従って、上記のように、式II及び式IのR2は、独立してC1-C4アルキルから選択され、しばしば、メチルまたはエチルから独立して選択され、いくつかの実施形態では、R2はメチルである。
【0104】
式Iの化合物は、式IIの化合物とLiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4とを反応させることにより製造される。理論に拘束されることを望まないが、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4によって提供される水素化物または重水素化イオンは、式IIのカルボニルの炭素原子に結合し、その結果、式Iの化合物が形成されることが理解される。誤解を避けるために、式IのxH基は、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4によって提供される水素化物または重水素化イオンから誘導される。
【0105】
上記のように、この方法はステージ1とステージ2を含む。ステージ1は以下の:
(i)式IIIの化合物と2つ以上のカップリング剤とを反応させて活性化化合物を生成する
(ii)前記活性化化合物と、式(R2)2NHを有するアミンとを反応させて式IIの化合物を生成する
を含む。
【0106】
用語「カップリング剤」とは、アミンとカルボン酸との間の化学反応を促進する薬剤を意味する。2つ以上のカップリング剤は、カルボン酸活性化剤、すなわち、式IIIのカルボン酸部分と反応して、元のカルボン酸部分よりもアミンと反応しやすい元のカルボン酸部分に由来する活性化部分を含む化合物を生成する薬剤を含むことができる。
【0107】
活性化化合物は、式IIIの化合物と2つ以上のカップリング剤との反応生成物である。2つ以上のカップリング剤がカルボン酸活性化剤を含む場合、活性化化合物は、式IIIの元のカルボン酸部分から誘導された活性化部分を含み、これは、元のカルボン酸部分よりもアミンとより反応し易い。
【0108】
2つ以上のカップリング剤は、カルボン酸活性化剤を含んでもよい。2つ以上のカップリング剤は、添加カップリング剤を含んでもよい。
【0109】
添加カップリング剤(本明細書では「添加剤」とも呼ばれる)は、カップリング剤の反応性を高める薬剤である。添加剤は、式IIIの反応生成物とカップリング剤との反応生成物(活性化部分を含む化合物である生成物)と反応して、元の活性化部分よりもアミンと反応しやすいより活性な部分を含む化合物を生成することができる化合物であってもよい。
【0110】
前記の添加剤は、式IIIの反応生成物とカップリング剤との反応生成物(活性化部分を含む化合物である生成物)と反応して、元の活性化部分よりもアミンと反応しやすいより活性な部分を含む活性化化合物を生成することができる。
【0111】
多くの場合、2つ以上のカップリング剤は、カルボン酸活性化剤および添加カップリング剤を含む。
【0112】
2つ以上のカップリング剤の少なくとも1つは、カルボジイミドカップリング剤、ホスホニウムカップリング剤および3-(ジエトキシ-ホスホニルオキシ)-1、2、3-ベンゾ[d]トリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、例えばカルボジイミドカップリング剤またはホスホニウムカップリング剤からなる群から選択することができる。前記2つ以上のカップリング剤のうちの少なくとも1つは、カルボジイミドカップリング剤であってもよい。
【0113】
カルボジイミドカップリング剤は、カルボジイミド基R'-N=C=N-R" (式中、R'及びR"は、窒素、硫黄及び酸素から選択されるヘテロ原子、典型的には窒素で置換されていてもよいヒドロカルビル基である)を含むカップリング剤である。多くの場合、R'及びR"は、独立して、C1-C6アルキル、C5-C6シクロアルキル、C1-C6アルキルアミノおよびモルホリノC1-C6アルキルから選択される。しばしば、C1-C6アルキルはC3アルキルであり、C5-C6シクロアルキルはシクロヘキシルであり、C1-C6アルキルアミノはジメチルアミノプロピルおよび/またはモルホリノC1-C6アルキルはモルホリノエチルである。
【0114】
カルボジイミドカップリング剤は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDO)および1-シクロヘキシル-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドmetho-p-トルエンスルホン酸塩(CMCT)からなる群から選択されるいずれであってもよい。カルボジイミドカップリング剤は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDC)からなる群から選択される任意のものであってもよい。しばしば、カルボジイミドカップリング剤は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDC)、典型的には塩酸塩(EDC.HCL)である。EDCまたはEDC.HClは、毒性がなく、水溶性が高く、ステージ1の作業工程および洗浄工程において、それらの実質的に完全な除去を容易にするので、特に好ましい。
【0115】
ホスホニウムカップリング剤は、ホスホニウムカチオンと対イオン、典型的にはヘキサフルオロリン酸アニオンを含む。このホスホニウムカチオンは、式[PRa 3Rb]+であってもよく、この際、Raはジ(C1-C6)アルキルアミノまたはピロリジニルであり、Rbはハロまたは窒素および/または酸素原子で置換されていてもよいヒドロカルビル基である。しばしば、Rb は、ブロモ、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシまたは7-アザ-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシである。
【0116】
ホスホニウムカップリング剤は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ブロモ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrOP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザ-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)およびエチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセト-O2)トリ-(1-ピロリジニル)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)からなる群から選択される任意のものであってもよい。
【0117】
2つ以上のカップリング剤の少なくとも1つは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヒドロキシ-3.4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシミノ)アセテート(Oxyma Pure)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2、3-ジカルボキシイミド(HONB)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(6-Cl-HOBt)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4 -ジヒドロ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HODhbt)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-5-アザベンゾ-1,2,3-トリアジン(HODhat)および3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-5-アゼピンベンゾ-1,3-ジアジン(HODhad)からなる群から選択される添加カップリング剤であってもよい。
【0118】
2つ以上のカップリング剤の少なくとも1つは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヒドロキシ-3.4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシミノ)アセテート(Oxyma Pure)および4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)からなる群から選択される添加カップリング剤であってもよい。
【0119】
前記2つ以上のカップリング剤の少なくとも1つは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである添加カップリング剤であってもよい。
【0120】
前記2つ以上のカップリング剤は、カップリング剤と添加カップリング剤とで構成されていてもよく、前記カップリング剤及び添加カップリング剤は、前記実施形態で説明したものであってもよい。
【0121】
カップリング剤および添加カップリング剤の両方を使用する利点は、式IIIの化合物と式(R2)2NHを有するアミンからの式IIの化合物の形成の増加割合である。さらに、添加カップリング剤をカルボジイミドカップリング剤と一緒に使用する場合、望ましくない副反応の可能性を減少させることができる。例えば、式IIIの化合物とカルボジイミド結合試薬との反応は、O-アシルイソ尿素を形成し易い。これは、転位を受けて、アミンと反応しにくい安定な化合物であるN-アシルウレアを形成する可能性がある。添加剤カップリング試薬は、N-アシル尿素に転位する前にO-アシル尿素と反応し、不活性なN-アシル尿素ではなく、アミンと反応する化合物を生成することができる。
【0122】
それゆえ、2つ以上のカップリング剤は、カルボジイミドカップリング剤と添加カップリング剤とから構成されてもよい。
【0123】
2つ以上のカップリング剤は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDC)、典型的には塩酸塩(EDC.HCL)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)から構成されてもよい。
【0124】
しばしば、式IIIの化合物に対して過剰のカップリング剤が使用される。カップリング剤:式IIIの化合物の比は、約1:1~約3:1、典型的には約1:1~約2:1、最も典型的には約1:1~約1.5:1である。
【0125】
しばしば、式IIIの化合物に対して過剰の添加カップリング剤が使用される。時には、添加カップリング剤:式IIIの化合物の比は、約1:1~約3:1、典型的には約1:1~約2:1、最も典型的には約1:1~約1.5:1である。
【0126】
2つ以上のカップリング剤がカップリング剤および添加カップリング剤を含む場合には、カップリング剤:式IIIの化合物および、添加カップリング剤:式IIIの化合物の比は約1:1~約1.5:1が使用できる。
【0127】
上記のように、ステージ1は、活性化化合物(式IIIの化合物と2つ以上のカップリング剤とを反応させた生成物)を、式(R2)2NHを有するアミンと反応させて、式IIの化合物を生成することを含む。R2は、独立して、C1-C4アルキルから選択される。しばしば、R2は、独立して、メチルまたはエチルから選択される。典型的には、R2はメチルであり、すなわちアミンはジメチルアミンである。
【0128】
この方法で使用されるアミン:式IIIの化合物の比は、しばしば約≧1:1である。時には、アミン:式IIIの化合物の比は、約1:1~約3:1、典型的には約1:1~約2:1である。
【0129】
場合によっては、ステージ1は、式IIの化合物を単離することをさらに含む。当業者は、式IIの化合物の単離に適した技術における技術を知っている。例えば、式IIの化合物を、ジクロロメタンまたは酢酸エチルのような有機溶媒中に抽出し、水性塩基性溶液のような水溶液で洗浄し、濃縮してもよい。純度を高めるために、式IIの単離された化合物を再結晶化してもよい。当業者は、式IIの化合物の再結晶化に適した技術を知っている。例えば、式IIの化合物は、特定の温度(例えば、周囲温度(例えば、15~25℃)で、または溶液に熱が加えられる高温で)の最小量の溶媒に溶解し、得られた溶液を冷却して沈殿を促進することができる。あるいは、または更に、溶液の体積を減少させて、例えば周囲温度および圧力での簡単な蒸発によって沈殿を促進してもよい。あるいは、または更に、貧溶媒を使用することができる(この際、式IIの化合物は、すでに存在する溶媒よりも溶解性が低い)。
【0130】
式IIの単離された化合物は安定であり、大気中、例えば約20℃で固体として貯蔵することができる。それらは、必要がなければ、不活性条件下、例えば、窒素またはアルゴン下、または低温で、例えば、冷蔵庫または冷凍庫中に貯蔵できる。
【0131】
典型的には、ステージ1の工程(i)および(ii)は適当な溶媒中で実施される。当業者は、これらの工程にどの溶媒が適しているかを評価することができる。適当な溶媒の例には、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸イソプロピル(iPrOAc)、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)および酢酸エチル(EtOAc)が含まれる。いくつかの実施形態では、ステージ1の工程(i)および(ii)はジクロロメタン中で実施される。
【0132】
ステージ1の工程(i)および(ii)は適当な温度で実施され、当業者はこれらの工程に適したどの温度が適切であるかを評価することができる。ステージ1の工程(i)および(ii)は、しばしば、約10℃~約30℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、ステージ1の工程(i)および(ii)は、室温(約20℃)で実施される。
【0133】
場合によっては、この方法のステージ1は、以下の工程を含む。
i. 式IIIの化合物と、1~1.5当量の間の添加カップリング剤と、1~1.5当量の間のカルボジイミドカップリング剤を接触させて第1の組成物を生成する工程;及び
ii. 第1の組成物を、式(R2)2NHを有する、1当量と2当量の間のアミンと接触させて、第2の組成物を生成する工程
【0134】
しばしば、1g以上、例えば、1g~100kgまたは1g~1kgの式IIIの化合物が、本発明の方法において使用される。
【0135】
工程i及び工程iiの接触は、しばしば、第1の溶媒の存在下、例えば5~20容量の第1の溶媒の存在下で行われることがある。第1の溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸イソプロピル(iPrOAc)、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)および酢酸エチル(EtOAc)のいずれかから選択することができる。典型的には、第1の溶媒はDCMである。
【0136】
しばしば、工程iは、第1の組成物を撹拌(stirring)またはかき混ぜ(agitating)することをさらに含む。第1の組成物は、少なくとも30分間、例えば30分~3時間または30分~2時間、好ましくは少なくとも1時間、例えば1~3時間または1~2時間攪拌またはかき混ぜてもよい。第1の組成物は、10℃~30℃の間の温度に維持されてもよい。
【0137】
工程iiのアミンは、接触前に、しばしばテトラヒドロフラン(THF)またはエーテルのような溶媒に溶解される。アミンは、約2Mの濃度で溶媒中に存在していてもよい。典型的には、工程iiのアミンは、THF中に溶解される。
【0138】
場合によっては、工程iiはさらに、第2の組成物を攪拌またはかき混ぜすることを含む。第2の組成物は、少なくとも30分間、例えば30分~3時間または30分~2時間、好ましくは少なくとも1時間、例えば1~3時間または1~2時間攪拌またはかき混ぜてもよい。第2の組成物は、10℃~30℃の間の温度に維持されてもよい。
【0139】
工程iiはさらに、第2の組成物を水性塩基性溶液と接触させて第3の組成物を生成することを含んでもよく、例えば、第2の組成物を、2~10容量の水性塩基性溶液、例えば炭酸カリウムを含む水溶液と接触させる。
【0140】
場合によっては、工程iiはさらに、第3の組成物を攪拌またはかき混ぜることを含む。第3の組成物は、少なくとも1分間、例えば1~15分間または1~10分間、好ましくは少なくとも5分間、例えば5~15分間または5~10分間攪拌またはかき混ぜてもよい。第3の組成物は、10℃~30℃の間の温度に維持されてもよい。
【0141】
第3の組成物が有機および水性成分を含む場合、工程iiはさらに、有機成分を水性成分から分離することを含んでもよい。有機成分は、工程iの接触の8時間以内に水性成分から分離してもよい。
【0142】
場合によっては、本発明の方法のステージ1は、以下の工程を含む。
i. 第1の容器に、1g以上の式IIIの化合物と、1~1.5当量の添加カップリング剤を添加し、
ii.第1の容器に、DCM、アセトン、IPA、iPrOAc、TBME、2-MeTHFおよびEtOAcから選択される第1の溶媒の5~20容量を添加し、
iii. 第1の容器に、1~1.5当量のカルボジイミドカップリング剤を添加し、
iv.第1の容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間(例えば、1~2時間)、10℃と30℃との間で攪拌し、
v.第1の容器に、式(R2)2NHを有するアミンの1~2当量を添加し、この際、アミンは好ましくはエーテル溶媒に溶解され、
vi.さらに、第1の容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間(例えば、1~2時間)、10℃と30℃との間で撹拌し、
vii.第1の容器に、2~10容量の水性塩基性溶液を添加し、
viii.さらに、第1容器の内容物を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間(例えば、5~10分間)、10℃と30℃との間で攪拌し、
ix.非混和性有機画分を水性画分から分離させ、この際、有機画分は式IIの化合物を含み、
x.式IIの化合物を含む有機画分を除去し、
この際、工程i.~x.は単一の8時間以内に実施される。
【0143】
しばしば、第1の溶媒はDCMである。
【0144】
しばしば、前記アミンはジメチルアミンである。前記アミンは、例えば2Mの濃度でTHFに溶解されてもよい。
【0145】
しばしば、水性塩基性溶液は炭酸カリウムを含む。
【0146】
場合によっては、本発明の方法のステージ1は、以下の工程をさらに含む。
xi.有機画分を、乾燥剤、例えば塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤で乾燥し、
xii.有機画分を濾過し、
xiii.有機画分を、例えば1気圧未満の圧力下のような真空下で濃縮し、
xiv.濃縮された有機画分を第2の容器に添加し、
xv.第2の容器に、2~10容量の第2の溶媒を加え、この際、第2の溶媒が、IPA、EtOAc、iPrOAc、アセトニトリル(MeCN)、TBME、THF、2-MeTHFおよびトルエンから選択され、
xvi.第2の容器の内容物を少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間(例えば2~3時間)、45℃~55℃の間の温度で攪拌し、
xvii.第2の容器の内容物を15℃と25℃の間の温度に冷却し、
xviii.濾液を得るために、第2の容器の内容物を濾過し、この際、濾液は式IIの化合物を含み、
xix.濾液を乾燥させる
【0147】
工程xiの乾燥剤は、典型的には硫酸マグネシウムである。しばしば、ステップxvの溶媒はTBMEおよびIPAから選択される。
【0148】
この方法のステージ2は、式IIの化合物を、LiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4とを反応させて、式Iの化合物を生成することを含む。LiAlD4または、LiAlH4とLiAlD4の混合物は、式IIの化合物と反応させることができる。好ましい実施態様において、本方法のステージ2は、式IIの化合物を、LiAlH4とLiAlD4の混合物と反応させることを含む。このような混合物は、LiAlD4を含み、0.1~99.9%の間の水素化物を含む。2~98%の間の水素化アルミニウムリチウム、または2~98%の間のリチウムアルミニウム重水素化物の混合物を使用することができる。時々、LiAlH4とLiAlD4との混合物は、本質的に98% LiAlD4/2% LiAlH4からなる。時々、このような混合物は本質的に、95% LiAlD4/5% LiAlH4、95% LiAlH4/5% LiAlH4、85% LiAlD4/15% LiAlH4、80% LiAlD4/20% LiAlH4、75% LiAlD4/25% LiAlH4、70% LiAlD4/30% LiAlH4、65% LiAlD4/35% LiAlH4、60% LiAlD4/40% LiAlH4、55% LiAlD4/45% LiAlH4、50% LiAlD4/50% LiAlH4、45% LiAlD4/55% LiAlH4、40% LiAlD4/60% LiAlH4、35% LiAlD4/65% LiAlH4、30% LiAlD4/75% LiAlH4、25% LiAlD4/75% LiAlH4、20% LiAlD4/80% LiAlH4、15%のLiAlD4/85% LiAlH4、10% LiAlD4/90% LiAlH4、5% LiAlD4/95% LiAlH4、または2% LiAlD4/98% LiAlH4からなる。
【0149】
特定の割合のLiAlH4とLiAlD4から本質的に成るLiAlH4とLiAlD4との混合物とは、この混合物が、追加の成分(LiAlH4およびLiAlD4以外)を含むことができるが、これらの追加の成分の存在が、混合物の本質的な特性に実質的に影響を与えないことを意味する。特に、LiAlH4とLiAlD4から本質的に成る混合物は、式IIの化合物を還元して式Iの化合物を生成するのに有害な物質量の薬剤を含まない(例えば、式Iの化合物を生成するための式IIの化合物の還元を阻害する方法で、LiAlH4およびLiAlD4と反応する薬剤、式IIの化合物および/または式Iの化合物の物質量)。
【0150】
2つの混合物中に含まれるLiAlH4またはLiAlD4の量は、式Iの化合物中で求められる重水素化の程度に依存する。例えば、1つのxHがプロチウムであり、他方が重水素である式Iの化合物が求められる場合、50%のLiAlH4と50%LiAlD4の混合物が好ましい。あるいは、化合物の約半分がα位に2つの重水素原子を含む(すなわち、両方のxHは重水素である)、化合物の約半分が、α位に1つの重水素原子と1つのプロチウム原子を含む(すなわち、一方のxH は重水素で、もう一方はプロチウム)式Iの化合物の混合物が求められる場合には、25%のLiAlH4と75%のLiAlD4の混合物が好ましい。
【0151】
式IIの化合物に対して使用されるLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の量は、しばしば≦1:1である。誤解を避けるために、式IIの化合物に対するLiAlH4およびLiAlD4の比率は、化合物IIの量に対して使用されるLiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4の合計量を意味する。時には、LiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4:式IIの化合物の比は0.5:1~1:1、例えば0.8:1~1:1である。典型的には、LiAlH4および/またはLiAlD4:式IIの化合物の比は0.9:1である。
【0152】
典型的には、この方法のステージ2は適当な溶媒中で実施される。当業者は、どの溶媒がステージ2に適しているかを評価することができる。適当な溶媒の例には、THFおよびジエチルエーテルのようなエーテルが含まれる。多くの場合、ステージ2はTHF中で行われる。
【0153】
しばしば、LiAID4またはLiAlH4およびLiAlD4は、エーテル、例えばTHFまたはジエチルエーテル、典型的にはTHFのような適当な溶媒中のLiAID4またはLiAlH4およびLiAlD4の溶液または懸濁液として提供される。
【0154】
この方法のステージ2は適当な温度で実施され、当業者はこれらの工程に適したどの温度が適切であるかを評価することができる。しばしば、ステージ2は、約-5℃~約65℃の温度で実施される。
【0155】
典型的には、ステージ2は、一般に、式Iの化合物を単離することをさらに含む。当業者は、式Iの化合物の単離に適した当業者の技術を知っている。例えば、反応をクエンチする際(例えば、Rochelle塩のような酒石酸塩の水溶液を用いて)、式Iの化合物をエーテル、例えばTHFまたはジエチルエーテルのような有機溶媒中に抽出し、水性塩基性溶液のような水溶液で洗浄し、濃縮することができる。単離された式Iの化合物は再結晶されてもよい。当業者は、式Iの化合物の再結晶化に適した技術を知っている。式IIの化合物の再結晶に関して記載された再結晶化技術の例は、必要な変更を加えて、式Iの化合物の再結晶化に適用される。
【0156】
しばしば、約1g以上、例えば、約1g~約100kgまたは約1g~約1kgの式IIの化合物が、本発明の方法において使用される。
【0157】
典型的には、この方法のステージ2は、式IIの化合物と約0.8~約1当量、例えば約0.9当量のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4とを接触させて第1の組成物を生成することを含む。
【0158】
前記の接触は、典型的には、エーテル、例えばTHFまたはジエチルエーテル、典型的にはTHFのような溶媒の存在下で行われる。
【0159】
しばしば、この接触は、LiAID4またはLiAlH4およびLiAlD4を式IIの化合物に滴下して添加することを含み、この際、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4は、エーテル、例えば、THFまたはジエチルエーテルのような適当な溶媒中のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の溶液または懸濁液として提供される。LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4は、THF中のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の2.4Mまたは2M溶液または懸濁液として提供できる。時には、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4は、THF中のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の2M溶液または懸濁液として提供される。
【0160】
前記の接触は、しばしば、約-5℃~約65℃の温度で行われる。
【0161】
しばしば、ステージ2は、第1の組成物を攪拌またはかき混ぜることをさらに含む。第1の組成物は、約1時間~約6時間、典型的には約2時間攪拌またはかき混ぜてもよい。第1の組成物は、約55℃~約65℃の温度で撹拌またはかき混ぜてもよい。しばしば、第1の組成物は、約55℃~約65℃の温度で撹拌またはかき混ぜ、次いで約10℃~約30℃の温度に冷却される。
【0162】
典型的には、式IIの化合物は、約0.9当量のLiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4と接触される。
【0163】
本発明の方法のステージ2は、以下の工程を含むことができる。
i. 第3の容器に、式IIの化合物の1g以上(例えば、1g~1kg)を添加し、
ii. 第3の容器に、5~20容量のエーテル溶媒を添加し、
iii.第3の容器に、エーテル溶媒中のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の0.8~1当量の溶液を少なくとも15分(例えば15~30分)かけて-5℃~65℃の温度で滴下して加え、
iv.第3容器の内容物を55℃と65℃の間で1時間~6時間、好ましくは2時間撹拌し、
v.第3の容器の内容物を10℃~30℃に冷却し、
この際、第3の容器の内容物は式Iの化合物を含む。
【0164】
しばしば、エーテル溶媒はTHFである。典型的には、ステップiiiにて第3の容器に、0.9当量のLiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4が添加される。LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4は、典型的には、THF中の2.4Mまたは2M溶液として第3の容器に添加される。時には、この第3の容器に、THF中の2M溶液として、LiAlD4やLiAlH4やLiAlD4が添加される。
【0165】
時には、この方法のステージ2は、以下のステップを含む後処理を含む。
vi.5-20容量の酒石酸塩(例えば、Rochelleの塩)の水溶液を第4の容器に添加し、
vii. 第4容器に、式Iの粗製化合物を含む組成物を、少なくとも15分(例えば、15分~1時間)、好ましくは少なくとも30分(例えば、30分~1時間)にわたって、15℃~25℃で添加し、
viii.第4容器の内容物を15℃と25℃との間で少なくとも30分間 (例えば30分~1時間) 撹拌する。
【0166】
誤解を避けるために、式Iの粗化合物を含む組成物は、上記のステージ2の工程vの完了時の第3の容器の内容物を意味する。
【0167】
本方法のステージ2は、以下の工程をさらに含んでいてもよい。
ix. 有機画分を水性画分から分離させ、この際、有機画分は式Iの化合物を含み、
x.第4の容器から水性画分を除去し、
xi.5~20容量のブライン溶液を第4の容器に添加し、
xii.第4の容器の内容物を15℃と25℃の間の温度で少なくとも5分間(例えば5~15分間)攪拌し、
xiii.式Iの化合物を含む有機画分をフリー塩基として除去し、
xiv.乾燥剤、例えば塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤を用いて有機画分を乾燥し、
xv.有機画分を濾過し、そして
xvi.有機画分を、例えば1気圧未満の圧力下のような真空下で濃縮する。
【0168】
単離された式Iの化合物(ステージ2を介して製造される)は安定であり、空気中、周囲温度、例えば約20℃で固体として貯蔵することができる。それらは、必要なければ、不活性条件下、例えば窒素またはアルゴン下、または低温で、例えば冷蔵庫または冷凍庫中に貯蔵してもよい。時には、式Iの化合物は、溶媒中に貯蔵され、例えばエタノールに溶解される。場合によっては、式Iの化合物は、8時間以上、典型的には12時間以上の間、溶媒中に貯蔵される。
【0169】
上記のように、式Iの化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。薬学的に許容される塩は、適当な酸との反応により、式Iの化合物から形成することができる。従って、本方法は、式Iの化合物を酸性試薬と反応させて式Iの化合物の薬学的に許容される塩を生成するステージ3をさらに含むことができる。この酸性試薬は、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適している。
【0170】
誤解を避けるために、試薬が本明細書では当量の数として表される場合、これは、それぞれステージ1、ステージ2またはステージ3における試薬についての式III、式IIまたは式Iの化合物のモル当量に対してである。
【0171】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を合成する方法は、しばしば、ステージ1、ステージ2及びステージ3を含み、ステージ1は以下の工程を含む。
(i)式IIIの化合物を2つ以上のカップリング剤と反応させて活性化化合物を生成する;
(ii)前記の活性化された化合物と式(R2)2NHを有するアミンとを反応させて、式IIの化合物を生成する;
(iii)式IIの化合物を単離する。
ステージ2は、式IIの化合物とLiAlD4またはLiAlH4とLiAlD4とを反応させることを含み、
ステージ3は、式Iの化合物を、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬と反応させる工程を含む。
【0172】
場合によっては、酸性試薬:式Iの化合物が≧1:1である比が使用される。しばしば、酸性試薬:式Iの化合物の比は1:1である。
【0173】
典型的には、この方法のステージ3は適当な溶媒中で実施される。当業者は、どの溶媒がステージに適しているかを評価することができる。適切な溶媒の例には、エタノール、IPA、iPrOAcおよびMeCNが含まれる。ステージ3はしばしばエタノール中で行われる。
【0174】
本発明の方法のステージ3は、適切な温度で実施され、当業者は、これらの工程に適したどの温度が適切であるかを評価することができる。
【0175】
この方法のステージ3は、しばしば、式Iの化合物と酸性試薬とを接触させて第1の組成物を生成することを含む。しばしば、ステージ3の接触は、70~100℃の温度、例えば70~90℃または70~80℃の温度で実施される場合がある。時には、ステージ3の接触は、約75℃の温度で行われる。
【0176】
しばしば、ステージ3は、式Iの薬学的に許容される塩を単離することをさらに含む。当業者は、このような化合物の単離に適した技術における技術を知っている。例えば、化合物が懸濁液中に溶解される場合には、熱濾過などの濾過により懸濁液の他の成分のいくつかから分離することができる。式Iの薬学的に許容される塩は、濾液から沈殿することがある。当業者は、溶液を冷却し、溶液を濃縮する、および/または溶液に化合物の結晶形態を添加して核形成と更なる結晶の成長(すなわち、シーディング(seeding))を促進するなど、溶液からの化合物の沈殿を促進する方法を知っている。式Iの薬学的に許容される塩は再結晶されてもよい。当業者は、式Iの薬学的に許容される塩の再結晶化に適した技術を知っている。式IIの化合物の再結晶に関して記載された再結晶化技術の例は、必要な変更を加えて、式Iの薬学的に許容される塩の再結晶化に適用される。
【0177】
本方法のステージ3は、以下の工程を含むことができる。
i.第5の容器に、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬の少なくとも1当量を加え、
ii.式Iの化合物をフリー塩基として、エタノール、IPA、iPrOAcおよびMeCN から選択される溶媒のような5~20容量の溶媒に溶解し、この溶液を第5の反応容器に添加し、
iii.第5の容器の内容物を72℃より高い温度(例えば、72~90℃)で攪拌し、
iv.第5の容器の内容物を濾過し、
v.濾液を第6の容器に添加し、内容物を67℃~73℃の温度に冷却し、
vi.任意に、第6の容器に、式Iの化合物の薬学的に許容される塩の結晶形をシーディングし、
vii.第6容器の内容物を67℃~73℃の温度で少なくとも30分間(例えば30分~1時間)撹拌し、
viii.6番目の容器の内容物を1時間当たり2~8℃の速度で-5℃~5℃の温度まで冷却し、
ix.第6の容器の内容物を濾過して、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を含むフィルターケーキ(filter-cake)を製造する。
【0178】
しばしば、工程iiの溶媒はエタノールである。しばしば、ステップviiiにおける冷却速度は、1時間当たり5℃である。
【0179】
上記のように、薬学的に許容される塩は、しばしば、式Iの化合物および適当な酸を含む。本発明の薬学的に許容される塩の適当な成分として上に列挙した酸は、必要な変更を加えて、この方法のステージ3の酸性試薬に適用される。
【0180】
多くの場合、酸性試薬は、フマル酸、酒石酸、クエン酸および塩酸から選択されるもののいずれかであり、例えばフマル酸である。
【0181】
上記の合成方法により製造できる好ましい幻覚性トリプタミンの例には、表1に記載されたものが含まれる。本明細書に開示される化合物のR1およびR2は、表1に示される組み合わせのいずれであってもよい。また、表1に示されているのは、式Iの化合物およびそのプロティオ(protio)および重水素類似体の混合物を含む好ましい薬物物質の分子量である。
【0182】
【表1】
【0183】
本明細書に開示された合成方法は、β位ではなくα位に重水素を置換するので、当該技術分野で知られている他の合成よりも非常に少ないLiAlD4を使用することになり、治療用重水素化置換ジアルキルトリプタミンを生成するのに特に有用である。LiAlD4は、この合成において最も高価であり、試薬を製造するのが困難である。さらに、本明細書に開示された最適化された方法は、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4の必要量を、例えば2当量からら0.9当量に低減し、式Iの重水素化された化合物を製造する際の経済効率を高める。この点において、αおよびβ位の両方で典型的に重水素化される既知の重水素化類似体よりも、本明細書に開示される合成方法を介して製造される式Iの化合物は、より安価である。
【0184】
本明細書に開示される合成方法は効率的であり、式Iの化合物は、50%~100%の間、例えば60%~100%の間、または65%~100%の間の全体的収率で製造することができる。
【0185】
本明細書に開示されるのはまた、式Iの化合物を調製するのに適したキットであり、当該キットは以下を含む。
(A)式IIIの化合物、
(B)2つ以上のカップリング剤、
(C)式(R2)2NHを有するアミン、
(D)LiAlD4またはLiAlH4及びLiAlD4、および
(E)式Iの化合物の薬学的に許容される塩の製造に適した酸性試薬;
ここで、式IおよびIIIの化合物は、本明細書に開示される合成方法に関連して定義されるものである。
【0186】
誤解を避けるために、式IおよびIIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、2つ以上のカップリング剤、式(R2)2NHのアミン、LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4、および本明細書に開示された合成方法の酸性試薬は、必要な変更を加えてキットに適用される。例えば、式(R2)2NHのアミンのR2 (従って式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩)はメチルであってもよい;式I及びIIIのR1はメトキシまたはアセトキシであってもよく、及び/又はnは1であってもよく、R1は4又は5位にあってもよい;2つ以上のカップリング剤は、カルボジイミド結合剤および添加カップリング剤を含んでもよく;LiAlD4またはLiAlH4およびLiAlD4:式IIIの化合物の比は0.8:1~1:1であってもよく、および/または酸性試薬はフマル酸であってもよい。
【0187】
上記のように、本発明者らは、重水素化の程度と親化合物の代謝半減期の増強効果との間の定量可能な関係を観察した。第3の態様から見ると、少なくとも第1及び第2の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物が提供され、第1の化合物は、第1または第2の態様で定義される化合物から選択され、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体である。
【0188】
第1の化合物はα位に1または2個の重水素原子を含むが、1または2個の重水素原子の存在以外は第2の(重水素化されていない、すなわちプロティオ)化合物と同一である。
【0189】
しばしば、前記の組成物は、重量にて2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%、75%、90%、95%、96%または98%以上の第1の化合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、重量にて2%と90%、2%と95%、2%と96%、2%と97%、2%と98%、例えば、5%と90%、5%と95%、5%と96%、5%と97%、5%と98%;10%と90%、10%と95%、10%と96%、10%と97%、10%と98%; 15%と90%、15%と95%、15%と96%、15%と97%、15%と98%。 20%と90%、20%と95%、20%と96%、20%と97%、20%と98%; 25%と90%、25%と95%、25%と96%、25%と97%、25%と98%;30%と90%、30%と95%、30%と96%、30%と97%、30%と98%; 50%と90%、50%と95%、50%と96%、50%と97%、50%と98%; 60%と90%、60%と95%、60%と96%、60%と97%、60%と98%;または、75%と90%、75%と95%、75%と96%、75%と97%、75%と98%の間の第1の化合物を含む。
【0190】
前記組成物は2~98重量%の第2の化合物を含んでもよく、好ましくは第2の化合物の5~95重量%を含む。好ましい組成物は、第2の化合物10~90重量%、第2の化合物15~85重量%、第2の化合物20~80重量%、第2の化合物25~75重量%、第2の化合物30~70重量%、または第2の化合物40~60重量%を含む。
【0191】
前記組成物は、好ましくは、第1の化合物の5~95重量%を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、第1の化合物、第2の化合物および第3の化合物を含み、ここで、第1の化合物は、第1の態様または第2の態様において定義される化合物から選択され、但し、xHはプロチウムであり、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体であり、第3の化合物は、第1の化合物の重水素化された類似体であり、xHがプロチウムではなく重水素である点でのみ第1の化合物と異なる。
【0193】
典型的には、前記組成物は、第1または第3の化合物の2重量%以上を含む。いくつかの実施形態では、この組成物は、第1の化合物の2重量%以上を含む。いくつかの実施形態では、この組成物は、2重量%以上の第1の化合物と、2重量%以上の第3の化合物を含む。
【0194】
組成物が第1または第3の化合物の2重量%以上を含む場合には、そのような組成物は、第1または第3の化合物の最大95重量%、最大96重量%、最大97重量%、または最大98重量%を含み得ることが理解されるであろう。
【0195】
いくつかの実施形態では、第1の化合物は、全組成物の最大50重量%を含む。このような実施形態では、このような組成物は、第1の化合物の全組成に基づいて、2重量%以上、例えば5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、または30%以上を含み得ることが理解されるであろう。
【0196】
特定の実施形態によれば、前記組成物は、少なくとも第1および第2の化合物、またはその薬学的に許容される塩から本質的になり、第1の化合物は、第1または第2の態様で定義される化合物から選択され、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体である。少なくとも第1及び第2の化合物から本質的になる組成物とは、組成物が追加の成分(少なくとも第1および第2の化合物以外)を含み得るが、これらの追加の成分の存在は組成物の本質的な特徴に実質的に影響を与えないことを意味する。特に、少なくとも第1および第2の化合物から本質的になる組成物は、他の薬学的に活性な物質の物質量(すなわち、他の薬物物質の物質量)を含まない。
【0197】
実施例の項および関連する図3及び4に詳細に記載されているように、本発明者らは、N,N-ジメチルトリプタミンのα-炭素における重水素富化を増加させると、代謝安定性が増大し、クリアランスが減少し、半減期が長くなることを実証した。特に、本発明の重水素富化N,N-ジメチルトリプタミン含有組成物の製造のための投入還元剤が、約1:2.5~約2.5:1の比を有するLiAlH4およびLiAlD4を含む場合、分子量と半減期との間に線形関係が存在する。
【0198】
特定の実施形態によれば、第3の態様の組成物は、少なくとも第1および第2の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含み、第1の化合物は、第1または第2の態様で定義される化合物から選択され、ここで、R1およびR2は、表1に定義されたとおりであり、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体である。いくつかの実施形態では、組成物の平均分子量は、表1に定義された通りである。
【0199】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、第1、第2および第3の化合物を含み、ここで、第1の化合物は、第1の態様または第2の態様において定義される化合物から選択され、ここで、xHがプロチウムである場合、R1およびR2は、表1に定義されたものであり、第2の化合物は、第1の化合物の重水素化されていない類似体であり、第3の化合物は、第1の化合物の重水素化された類似体であり、xHがプロチウムではなく重水素であるという点でのみ第1の化合物と異なる。いくつかの実施形態では、組成物の平均分子量は、表1に定義された通りである。
【0200】
いくつかの実施形態では、第3の態様の組成物は、本質的に、第1、第2および任意に第3の化合物からなる。本明細書で使用されるように、平均分子量とは、適切な質量分光技術、例えばLC-MS SIM (選択イオンモニタリング)によって測定される、第1、第2および任意に第3の化合物の分子量の加重平均を意味し、薬学的に許容される塩の形成による重量の寄与を無視して、適用可能である。いくつかの実施形態では、平均分子量は加重平均である。
【0201】
本明細書に記載される還元において、特に水素化リチウムアルミニウムと重水素化リチウムアルミニウムの相対比率を調整することによって、このような特定の平均分子量を有する組成物を提供することは、本明細書の教示を介して当業者によって達成され得ることが理解されるであろう。
【0202】
前記組成物が、本質的に第1、第2および任意に第3の化合物からなるというのは、この組成物はこれらに更なる追加の成分を含むことができるが、このような追加の成分の存在が、組成物の本質的な特徴に実質的に影響を及ぼさないことを意味する。特に、前記組成物は、式Iの他の化合物および/またはそれらのプロチオ類似体を含む、他の薬学的に活性な化合物の物質量を含まない。
【0203】
換言すれば、これらの特定の実施形態による組成物は、第1、第2および任意に第3の化合物の混合物から本質的になる生物学的に活性な成分を含む薬物物質を構成し、ここで、薬物物質は、任意に薬学的に許容される塩の形態である。
【0204】
これらの特定の実施態様による組成物は、同位体的に富化されていないプロチオ類似体において見出されるよりも多い量の第1および任意に第3の化合物を含むことが理解されるであろう。これらの特定の実施態様における第1および任意の第3の化合物の割合が大きいほど、組成物の平均分子量が高くなることも理解されるであろう。
【0205】
第4の態様から見ると、第1の態様で定義される化合物または第2の態様の化合物、またはその薬学的に許容される塩、または薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた第3の態様の組成物を含む医薬組成物が提供される。
【0206】
本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。適した薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤の例と共に、当業者によって調製され得るが、Gennaro et. al., Remmington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott, Williams and Wilkins、2000(具体的にはパート5:医薬品製造)に記載されているものに限定されない。適した賦形剤はまた、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 付賦形剤、第2版;Editor A. Wade and P. J.Weller, American Pharmaceutical Association、Washington, The Pharmaceutical Press, London, 1994にも記載されている。M.F. Powell, T. Nguyen and L. Baloian は、PDA J. Pharm. Sci. Technol., 52, 238-311 (1998)において、非経口投与(口または消化管以外の投与)に適した賦形剤のレビューを提供している。このレビュー記事に列挙されている全ての可溶性賦形剤は、本発明の第4の態様で使用するのに適した賦形剤である。組成物には、経口、鼻、局所(頬、舌下および経皮を含む)、非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)または直腸投与に適したものが含まれる。
【0207】
本発明の医薬組成物は、錠剤のような固体投与単位に圧縮されてもよく、またはカプセルまたは坐剤に加工されてもよい。薬学的に適した液体を使用することにより、化合物は溶液、懸濁液、エマルジョンまたはスプレーの形態で調製することもできる。錠剤を含む投薬単位を製造するには、充填剤、着色剤、高分子結合剤などの従来の添加剤の使用が考えられる。一般に、任意の薬学的に許容される添加剤を使用することができる。
【0208】
医薬組成物を調製し、投与するのに適した充填剤には、ラクトース、デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体等、または適切な量で使用されるそれらの混合物が含まれる。非経口投与のためには、水性懸濁液、等張生理食塩水および滅菌注射液を使用することができ、これは、薬学的に許容される分散剤および/またはプロピレングリコールまたはブチレングリコールなどの湿潤剤を含む。
【0209】
本発明はまた、本発明の医薬組成物、その組成物に適した包装材料と組み合わせて、医薬組成物の使用説明書を含む包装材料を提供する。
【0210】
上記のように、本発明の化合物および組成物は、精神疾患または神経学的疾患の治療における使用を有する。従って、第5の態様から見ると、治療に使用するための第3または第4の態様の組成物が提供される。
【0211】
いくつかの実施形態では、前記の治療は、幻覚的支援心理療法であり、すなわち、治療は幻覚的手段による精神疾患の治療であり、これは、患者が化合物または組成物の投与によって誘発される幻覚的経験を受ける1つ以上のプロトコルによって増強される。
【0212】
第6の態様から見ると、患者の精神疾患または神経疾患を治療する方法において使用するための、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3または第4の態様の組成物が提供される。
【0213】
別の態様では、本発明は、薬剤の製造のための、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3または第4の態様の組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、この薬剤は、患者の精神疾患または神経疾患を治療する方法に使用するためのものである。
【0214】
いくつかの実施形態では、前記の精神疾患または神経疾患は、(i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)統合失調症、(iv) 統合失調症型疾患、(v)不安障害、(vi)薬物乱用、および(vii)意欲消失疾患から選択される。多くの場合、精神疾患または神経疾患は、(i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)不安障害、(iv)薬物乱用、および(v)意欲消失疾患からなる群から選択される。
【0215】
いくつかの実施形態では、前記の疾患は、大うつ病性障害、治療抵抗性の大うつ病性障害、分娩後うつ病、強迫性疾患および強迫性摂食障害のような摂食障害からなる群から選択される。
【0216】
いくつかの実施形態では、精神疾患または神経疾患は大うつ病性障害である。いくつかの実施形態では、精神疾患または神経疾患は、治療抵抗性うつ病である。
【0217】
上記のように、本発明の化合物は、胃腸管におけるモノアミンオキシダーゼ酵素によるそれらの代謝がそれらのα-二プロトン類似体よりも遅いので、改善された経口バイオアベイラビリティーを有する。従って、いくつかの実施形態では、治療または治療方法は、前記化合物、薬学的に許容されるその塩または組成物の経口投与を含む。
【0218】
第7の態様から見ると、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩または第3または第4の態様の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法が提供される。
【0219】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、幻覚的支援心理療法であり、すなわち、この治療方法は、患者が化合物または組成物の投与によって誘発される幻覚的経験を受ける1つ以上のプロトコルによって増強される幻覚的手段による精神疾患の治療である。
【0220】
いくつかの実施形態では、前記治療方法は、精神疾患または神経疾患を治療する方法である。誤解を避けるために、本発明の第5または第6の態様の治療方法に関連する実施形態は、必要な変更を加えて第7の態様に適用される。例えば、前記の疾患は、(i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)不安障害、(iv)薬物乱用、および(v)意欲喪失障害からなる群から選択されてもよい;および/または前記の治療方法は、化合物または組成物の経口投与を含んでもよい。
【0221】
前記の疾患を治療するために、有効量の化合物、薬学的に許容される塩または組成物、すなわち、疾患の進行速度を減少または停止させるのに十分な量、または疾患を改善または治療し、望ましい治療効果または抑制効果が生じるのに十分な量が投与される。
【0222】
上記のように、本発明の化合物は、改善された経口バイオアベイラビリティーを有する。従って、第8の態様から見ると、第1または第2の態様で定義される化合物、その薬学的に許容される塩、または第3または第4の態様の組成物を含む経口剤形が提供される。「経口投与形態」とは、特定の用量の化合物または組成物を含む特定の形態(例えば、錠剤またはカプセルなど)を意味し、この形態は経口投与に適している。経口剤形は、錠剤、カプセル、小袋、粉末または顆粒のような固体剤形、またはシロップ、溶液、アンプルまたは分散液のような液体または半固体経口剤形であってもよい。典型的には、経口剤形は固形剤形であり、しばしば錠剤またはカプセルである。
【0223】
本明細書で参照される各参照および全ての参照は、それぞれの参照の全内容が本明細書にその全体に記載されているかのように、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0224】
本発明は、以下の非限定的条項および実施例を参照してさらに理解することができる。
【0225】
1. 式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化7】
この際、少なくとも1つのxHは重水素であり、R1はR3、OR3、(O(CO)R3、F、Cl、Br又はIから選択され、そして各R2及びR3はそれぞれ独立してC1-C4アルキルから選択される。
【0226】
2. R1がOR3、好ましくはOMeである、条項1の化合物。
【0227】
3. 各R2がメチルである、条項1又は2の化合物。
【0228】
4. 両方のxHが重水素である、条項1~3のいずれかの化合物。
【0229】
5. 2つのステージを含む、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、ステージ1が、式IIIの化合物と、2つ以上のカップリング剤の組み合わせを反応させ、続いて式(R2)2NHを有するアミンとを反応させる工程を含み、ステージ2が、式IIの化合物を、LiAlxH4を用いて還元する工程を含み、
【化8】
この際、LiAlxH4は、LiAlD4であり、任意に0.1~99.9% LiAlH4を含み、
各R1は、独立して、R3、OR3、0(CO)R3、F、Cl、BrまたはIから選択され、しかも
各R2及びR3は、独立して、C1-C4アルキルから選択される。
【0230】
6. 式Iの化合物が薬学的に許容される塩である、条項5の方法であって、当該方法が、本質的に3つのステージから成り、ステージ1が以下の工程:
i.式IIIの化合物を、2つ以上のカップリング剤の組み合わせと反応させる工程、
ii.得られた中間体を、式(R2)2NHを有するアミンと反応させる工程、
iii.式IIの化合物を単離する工程、を含み、
ステージ2は、式IIの化合物をLiAlxH4を用いて還元する工程を含み、しかも
ステージ3は、式Iの化合物を、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬と反応させる工程を含む。
【0231】
7. ステージ1が以下の工程を含む、条項5または6の方法。
iv.第1の容器に、1g以上の式IIIの化合物と1~1.5当量の添加カップリング剤を添加し、
v.DCM、アセトン、IPA、iPrOAc、TBME、2-MeTHFおよびEtOAcから選択される第1の溶媒の5~20容量を第1の容器に添加し、
vi.1~1.5当量のカルボジイミドカップリング剤を第1の容器に添加し、
vii.第1容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、10℃と30℃との間で攪拌し、
viii. 式(R2)2NHを有するアミンの1~2当量を第1の容器に添加し、この際、アミンは好ましくはエーテル溶媒に溶解され、
ix.さらに、第1容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、10℃~30℃で攪拌し、
x.2~10容量の水性塩基性溶液、好ましくは10%炭酸カリウムを第1容器に加え、
xi.さらに、第1の容器の内容物を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、10℃と30℃との間で撹拌し、
xii. 水性画分から有機画分を分離させ、ここで、有機画分が、式IIの化合物を含み、
xiii.式IIの化合物を含む有機画分を除去し、
この際、工程iv.~xiii.が、単一の8時間以内に実施される。
【0232】
8. 2つ以上のカップリング剤がEDCを、好ましくはHCl塩として含む、条項5~7のいずれかの方法。
【0233】
9. 2つ以上のカップリング剤がHOBt、HOOBt、HOSu、HOAt、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシミノ)アセテート及びDMAPから選択される添加カップリング剤を含む、条項5~8のいずれかの方法。
【0234】
10. 2つ以上のカップリング剤が、カルボジイミドEDC.HClと、添加カップリング剤HOBtを含む、条項5~9のいずれかの方法。
【0235】
11. ステージ1での反応が溶媒としてのDCM中で実施される、条項5~10のいずれかの方法。
【0236】
12. アミンが、THF中の2Mジメチルアミンである、条項5~11のいずれかの方法。
【0237】
13. ステージ1が、以下の工程をさらに含む、条項5~12のいずれかの方法。
xiv.塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤で有機画分を乾燥し、
xv.有機画分を濾過し、
xvi.1気圧未満の圧力下で有機画分を濃縮し、
xvii. 濃縮された有機画分を第2の容器に添加し、
xviii. 第2の容器に2~10容量の第2の溶媒を添加し、第2の溶媒がIPA、EtOAc、iPrOAc、MeCN、TBME、THF、2-MeTHFおよびトルエンから選択され、
xix.第2の容器の内容物を少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、45℃~55℃の間で撹拌し、
xx.第2の容器の内容物を15℃と25℃との間に冷却し、
xxi.濾液を得るために第2の容器の内容物を濾過し、この際、濾液が式IIの化合物を含み、
xxii.濾液を乾燥する。
【0238】
14. 第2の溶媒がTBMEおよびIPAから選択される、条項13の方法。
【0239】
15. ステージ2が、以下の工程を含む、条項5~14のいずれかの方法。
xxiii.第3の容器に、式IIの化合物を1g以上加え、
xxiv.5~20容量の間のエーテル溶媒を第3の容器に添加し、
xxv.第3の容器に少なくとも15分間かけて、エーテル溶媒中のLiAlxH4の0.8~1当量、好ましくはTHFに溶解した2Mの溶液を、第3の容器を-5℃と65℃との間の温度に維持しながら滴下して加え、
xxvi.第3の容器の内容物を55℃と65℃との間で1時間~6時間、好ましくは2時間攪拌し、
xxvii.第3の容器の内容物を10℃と30℃との間に冷却し、
この際、第3の容器の内容物が、式Iの化合物を含む。
【0240】
16. ステージ2が以下の工程を含む後処理(workup)を含む、条項5~15のいずれかの方法。
xxviii.5~20容量の酒石酸塩水溶液を第4の容器に添加し、
xxix.式IIIの粗製化合物を含む組成物を、少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間にわたって、15℃と25℃の間で第4の容器に添加し、
xxx.第4容器の内容物を15℃と25℃との間で少なくとも30分間撹拌する。
【0241】
17. ステージ2がさらに以下の工程を含む、条項16に記載の方法。
xxxi. 水性画分から有機画分を分離させ、この際、有機画分が、式Iの化合物を含み、
xxxii.第4の容器から水性画分を除去し、
xxxiii.5~20容量のブライン溶液を第4の容器に添加し、
xxxiv.第4の容器の内容物を15℃と25℃との間の温度で少なくとも5分間撹拌し、
xxxv.式Iの化合物を含有する有機画分をフリー塩基として除去し、
xxxvi.塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤を用いて有機画分を乾燥し、
xxxvii. 有機画分を濾過し、
xxxviii.1気圧未満の圧力下で有機画分を濃縮する。
【0242】
18.ステージ3が以下の工程を含む、条項5~17のいずれかの方法。
xxxix.第5の容器に、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬の少なくとも1当量を加え、
xl.1g以上の式Iの化合物をフリー塩基として、エタノール、IPA、iPrOAcおよびMeCNから選択される溶媒の5~20当量に溶解し、溶液を第5の反応容器に添加し、
xli.第5の容器の内容物を72℃以上の温度で撹拌し、
xlii.第5の容器の内容物を濾過し、
xliii.濾液を第6の容器に添加し、内容物を67℃~73℃の温度に冷却し、
xliv.任意に、第6の容器を、式Iの化合物の薬学的に許容される塩の結晶形でシーディングし、
xlv.第6の容器の内容物を67℃~73℃の温度で少なくとも30分間撹拌し、
xlvi.第6の容器の内容物を、1時間当たり2~8℃の速度で-5℃~5℃の温度まで冷却し、
xlvii.第6の容器の内容物を濾過して、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を含むフィルターケーキを生成する。
【0243】
19. 式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩が、HPLCによる99%を超える純度で生成される、条項5~18のいずれかの方法。
【0244】
20. 条項5~19のいずれか1つの方法により得られる、条項1~4のいずれかの化合物。
【0245】
21. 幻覚的支援心理療法に使用するための、条項1~4 及び20のいずれかの化合物。
【0246】
22. (i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)統合失調症、(iv)統合失調症型疾患、(v)不安障害、(vi)薬物乱用、および(vii)意欲消失障害から選択される精神疾患または精神病性疾患の治療に使用するための、条項1~4のいずれかの化合物。
【0247】
23. 式Iの化合物を合成するためのキットであって、当該キットが:
a.式IIIの化合物、
b.2つ以上のカップリング剤、
c.式(R2)2NHを有するアミン、
d.LiAlxH4、および任意に、
e.式Iの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬
を含み、
【化9】
上式にて、LiAlxH4は、LiAlH4、LiAlD4またはそれらの混合物であり、
各R1は、独立して、R3、OR3、0(CO)R3、F、Cl、Br又はIから選択され、そして
各R2及びR3は、独立して、C1-C4アルキルから選択される。
【0248】
24. 条項1~4及び21~24のいずれか1つの化合物を含む経口剤形。
【0249】
25. 式Iの化合物が、α-デューテロ(deutero)-5-メトキシジメチルトリプタミン、α,α-ジデューテロ(dideutero)-5-メトキシジメチルトリプタミンまたはこれらの混合物から選択される、前記請求項のいずれかの化合物、方法、キット、または経口剤形。
【0250】
26.2つのステージを含む、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、ステージ1が、式Iの化合物と、2つ以上のカップリング剤の組み合わせを反応させ、続いて式(R2)2NHを有するアミンとを反応させる工程を含み、ステージ2が、式IIの化合物をLiAlxH4を用いて還元する工程を含み、
【化10】
上式にて、各xHは独立して、プロチウムおよび重水素から選択され、
nは0、1、2、3又は4から選択され、
各R1は、独立して、R3、-OR3、-O(CO)R3、F、Cl、Br又はIから選択され、そして
各R2及びR3は、独立して、C1-C4アルキルから選択される。
【0251】
27. ステージ1が、式IIの化合物を単離する工程をさらに含む、条項26の方法。
【0252】
28. 式IIIの化合物が薬学的に許容される塩である条項26の方法であって、当該方法が本質的に3つのステージからなり、
ステージ1が、以下の工程:
i.式Iの化合物を、2つ以上のカップリング剤の組み合わせと反応させる工程、
ii.得られた中間体を、式(R2)2NHを有するアミンと反応させる工程、
iii.式IIの化合物を単離する工程、を含み、
ステージ2が、式IIの化合物をLiAlxH4で還元する工程を含み、
ステージ3が、式IIIの化合物を、式IIIの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬と反応させる工程を含む。
【0253】
29. ステージ1が以下の工程を含む、条項26~31のいずれかの方法。
i.第1の容器に、1g以上の式Iの化合物と1~1.5当量の添加カップリング剤を添加し、
ii. DCM、アセトン、IPA、iPrOAc、TBME、2-MeTHFおよびEtOAcから選択される第1の溶媒の5-20容量を第1の容器に添加し、
iii.1~1.5当量のカルボジイミドカップリング剤を第1の容器に添加し、
iv.第1の容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、10℃~30℃の間で攪拌し、
v.式(R2)2NHを有する1~2当量の間のアミンを第1の容器に添加し、ここでアミンは好ましくはエーテル溶媒に溶解し、
vi.さらに、第1容器の内容物を少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間、10℃と30℃との間で攪拌し、
vii.第1の容器に2~10容量の水性塩基性溶液、好ましくは10%炭酸カリウムを添加し、
viii.さらに、第1の容器の内容物を少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、10℃と30℃との間で撹拌し、
ix. 水性画分から有機画分を分離させ、この際、有機画分が式IIの化合物を含み、
x.式IIの化合物を含む有機画分を除去し、
この際、工程i.~x.が、単一の8時間以内に実施される。
【0254】
30. 2つ以上のカップリング剤がEDCを、好ましくはHCl塩として含む、条項26~29のいずれかの方法。
【0255】
31.2つ以上のカップリング剤がHOBt、HOOBt、HOSu、HOAt、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシミノ)アセテートおよびDMAPから選択される添加カップリング剤を含む、条項26~30のいずれかの方法。
【0256】
32.2つ以上のカップリング剤が、カルボジイミドEDC.HClと、添加カップリング剤HOBtを含む、条項26~31のいずれかの方法。
【0257】
33.ステージ1における反応が溶媒としてのDCM中で実施される、条項26~32のいずれかの方法。
【0258】
34.前記アミンがTHF中の2Mジメチルアミンである、条項26~33のいずれかの方法。
【0259】
35.ステージ1が、以下の工程をさらに含む、条項28~34のいずれかの方法。
xi.塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤で有機画分を乾燥し、
xii.有機画分を濾過し、
xiii.1気圧未満の圧力下で有機画分を濃縮し、
xiv.濃縮された有機画分を第2の容器に加え、
xv.第2の容器に第2の溶媒を2~10容量加え、この際、第2の溶媒がIPA、EtOAc、iProAc、MeCN、TBME、THF、2-MeTHFおよびトルエンから選択され、
xvi.第2の容器の内容物を少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、45℃~55℃の間で撹拌し、
xvii.第2の容器の内容物を15℃と25℃の間まで冷却し、
xviii.濾液を得るために、第2の容器の内容物を濾過し、この際、濾液が式IIの化合物を含み、
xix.濾液を乾燥する。
【0260】
36.第2の溶媒がTBMEおよびIPAから選択される、条項35の方法。
【0261】
37. ステージ2が、以下の工程をさらに含む、条項26~36のいずれかの方法。
i.式IIの化合物の1g以上を第3の容器に添加し、
ii.5~20容量の間のエーテル溶媒を第3の容器に添加し、
iii.第3の容器に少なくとも15分間かけて、エーテル溶媒中のLiAlxH4の0.8~1当量、好ましくはTHFに溶解した2Mの溶液を、第3の容器を-5℃と65℃との間の温度に維持しながら滴下して加え、
iv.第3容器の内容物を55℃から65℃の間で1時間~6時間、好ましくは2時間攪拌し、そして
v.第3容器の内容物を10℃と30℃との間まで冷却し、
この際、前記第3の容器の内容物が、式IIIの化合物を含む。
【0262】
38.ステージ2が、以下の工程を含む後処理を含む、条項26~37のいずれかの方法。
vi.5~20容量の酒石酸塩水溶液を第4の容器に添加し、
vii.式IIIの粗製化合物を含む組成物を、少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間にわたって、15℃と25℃との間で第4容器に添加し、
viii.第4容器の内容物を15℃と25℃との間で少なくとも30分間撹拌する。
【0263】
39.ステージ2がさらに以下の工程を含む、条項38の方法。
ix.水性画分から有機画分を分離させ、この際、有機画分が、式IIIの化合物を含み、
x.第4の容器からの水性画分を除去し、
xi.5~20容量のブライン溶液を第4の容器に添加し、
xii.第4の容器の内容物を15℃と25℃との間の温度で少なくとも5分間攪拌し、
xiii.式IIIの化合物を含有する有機画分をフリー塩基として除去し、
xiv.塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸ナトリウムから選択される乾燥剤を用いて有機画分を乾燥し、
xv.有機画分を濾過し、そして
xvi.1気圧未満の圧力下で有機画分を濃縮する。
【0264】
40. ステージ3が、以下の工程を含む、条項26~39のいずれかの方法。
i.式IIIの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した少なくとも1当量の酸性試薬を第5の容器に加え、
ii. フリー塩基として1g以上の式IIIの化合物を、エタノール、IPA、iProAcおよびMeCNから選択される溶媒の5~20当量に溶解し、この溶液を第5の反応容器に添加し、
iii.第5容器の内容物を72℃以上の温度で撹拌し、
iv.第5の容器の内容物を濾過し、
v.濾液を第6の容器に添加し、内容物を67℃~73℃の温度に冷却し、
vi.任意に、第6の容器に、式IIIの化合物の薬学的に許容される塩の結晶形態をシーディングし、
vii.第6容器の内容物を67℃~73℃の温度で少なくとも30分間撹拌し、
viii.第6の容器の内容物を1時間当たり2~8℃の速度で-5℃~5℃の温度まで冷却し、
ix.第6の容器の内容物を濾過して、式IIIの化合物の薬学的に許容される塩を含むフィルターケーキを生成する。
【0265】
41. 式IIIの化合物が50%以上の全体的収率で得られる、条項26~40のいずれかの方法。
【0266】
42. 式IIIの化合物が65%以上の全体的収率で生成される、条項26~41のいずれかの方法。
【0267】
43.式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩が、HPLCによる99%を超える純度で生成される、条項26~42のいずれかの方法。
【0268】
44. HPLCによる99.9%を超える純度で、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物。
【0269】
45.式IIIの化合物またはその薬学的塩が、HPLCによる99.95%以上の純度で存在する、条項44の組成物。
【0270】
46.HPLCによる不純物ピークが2つ以下であり、HPLCによる不純物ピークが0.2%より大きくない、条項44または45のいずれかの組成物。
【0271】
47.条項26~43のいずれかの方法により得られる条項44~46のいずれかの組成物。
【0272】
48.nが0であるか、またはnが1であり、R1が4-メトキシ、5-メトキシ、4-アセトキシ、および5-アセトキシから選択される、条項26~43のいずれかの方法または条項44~47のいずれかの組成物。
【0273】
49各R2がメチルである、条項26~43または48のいずれかの方法または条項44~48のいずれかの組成物。
【0274】
50.幻覚的支援心理療法に使用するための条項44~49のいずれかの組成物。
【0275】
51.(i)強迫性疾患、(ii)うつ病性障害、(iii)統合失調症、(iv)統合失調症型疾患、(v)不安障害、(vi)薬物乱用、および(vii)意欲消失障害から選択される精神疾患または精神病性疾患の治療に使用するための、条項44~50のいずれかの組成物。
【0276】
52.式IIIの化合物がDMTまたは5-MeO-DMTである、条項44~51のいずれかの組成物。
【0277】
53. 式IIIの化合物の薬学的に許容される塩がDMTフマレートであり、好ましくはパターンA多形体(polymorphic form)を有する結晶性である、条項44~52のいずれかの組成物。
【0278】
54. 抗うつ剤として使用するための条項44~53のいずれかの組成物。
【0279】
55. 式IIIの化合物を合成するためのキットであって、当該キットが、以下を含む。
b.式Iの化合物、
c.2つ以上のカップリング剤、
d.式R2 2NHを有するアミン、
e.LiAlxH4、及び
f.式IIIの化合物の薬学的に許容される塩を結晶化するのに適した酸性試薬
【化11】
上式にて、各xHは独立して、プロチウムおよび重水素から選択され、
nは0、1、2、3又は4から選択され、
各R1は、独立して、R3、-OR3、-O(CO)R3、F、Cl、Br又はIから選択され、そして
各R2及びR3は、独立して、C1-C4アルキルから選択される。
【実施例0280】
N,N-DMT 220.9g (フリー塩基として)を、スキーム2に示された化学式を用いて、N,N-DMTフマレートとして製造した。6つの部分的に重水素化された混合物の別の4-6gもまた、変更された条件を用いて製造した。
【0281】
【化12】
【0282】
DMT
ステージ1:インドール-3-酢酸とジメチルアミンのカップリング
N2下の5L容器に、インドール-3-酢酸(257.0g、1.467モル)、HOBt (~20%湿潤)(297.3g、1.760モル)およびDCM (2313mL)を入れて乳白色懸濁液を得た。次いで、EDC.HCl (337.5g、1.760モル)を16-22℃で5分間にわたって滴下して投入した。THF (1100mL、2.200モル)中の2Mジメチルアミンを20~30℃で20分間にわたって滴下して投入する前に、反応混合物を周囲温度で2時間攪拌した。得られた溶液を周囲温度で1時間攪拌し、ここではHPLCは1.1%インドール-3-酢酸および98.1%のステージ1を示した。その後、この反応混合物を10% K2CO3(1285mL)で充填し、5分間攪拌した。層を分離し、上側の水性層をDCM (643mL×2)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、飽和食塩水(643mL)で洗浄した。次いで、この有機抽出物をMgSO4上で乾燥し、濾過し、45℃で減圧濃縮した。これにより、オフホワイトの粘着性固体としての未精製ステージ1 303.1gが得られた。次いで、この未精製物質を周囲温度に冷却しする前に、TBME (2570mL)中のスラリーに50℃で2時間入れ、濾過し、TBME (514mL×2)で洗浄した。次いで、フィルターケーキを真空中でにて50℃で乾燥させると、HPLCで98.5%、NMRで>95%の純度にて、オフホワイトの固体としてステージ1 266.2g (収率=90%)が得られた。
【0283】
ステージ2:DMTの調製
N2下の5L容器に、ステージ1(272.5g、1.347モル)およびTHF (1363mL)を投入し、オフホワイトの懸濁液を得た。次に、THF 中の2.4M LiAlH4 (505.3mL、1.213モル)を20~56℃で35分間かけて滴下して琥珀色の溶液を得た。この溶液を2時間60℃に加熱し、ここではHPLCはステージ1 ND、ステージ2 92.5%、Imp 1 2.6%、Imp 2 1.9%を示した。反応が完了した混合物を周囲温度に冷却し、次いで20~30℃で30分間かけて25% Rochelle塩の溶液(水溶液)(2725mL)に滴下して入れた。得られた乳白色懸濁液を20~25℃で1時間攪拌し、その後、層を分離し、上側の有機層を飽和塩水(681mL)で洗浄した。次いで、有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過し、45℃で減圧濃縮した。得られた未精製油状物を、EtOH (545mL×2)から共沸混合物を得た。これにより、HPLCで95.0%およびNMRによる>95%の純度にて、234.6g(収率=92%)のステージ2が得られた。
【0284】
ステージ3a (i)-(iii):DMTフマレートの核結晶(seed crystal)の調製
(i)ステージ2(100mg)を8容量の酢酸イソプロピルに取り、エタノール中の溶液としてフマル酸(1当量)を投入する前に50℃に加温した。次いで、室温に冷却する前にフラスコを50℃で1時間熟成させ、一晩撹拌し、白色の懸濁液を得た。固体を濾過により単離し、50℃で4時間乾燥して、161mgの生成物(>99%収率)を得た。HPLCによる純度は99.5%であり、NMRにより>95%であった。
(ii)方法(i)において酢酸イソプロピルをイソプロピルアルコールに置き換えると、一晩撹拌した後に白色の懸濁液が得られた。固体を濾過により単離し、50℃で4時間乾燥して、168mgの生成物(>99%収率)を得た。HPLCによる純度は99.8%で、NMRでは>95%であると測定された。
方法(i)において酢酸イソプロピルをテトラヒドロフランに置き換えると、一晩撹拌した後に白色の懸濁液が得られた。固体を濾過により単離し、50℃で4時間乾燥して、161mgの生成物(>99%収率)を得た。HPLCによる純度は99.4%であり、NMRでは>95%でであると測定された。
x線粉末回折による分析により、各方法9i)~(iii)の生成物は、パターンAと標識されたものと同じであることが示された。
【0285】
ステージ3b:DMTフマレートの調製
N2下の5Lフランジフラスコに、エタノール(2928mL)中の溶液として、フマル酸(152.7g、1.315モル)およびステージ2(248.2g、1.315モル)を入れた。この混合物を75℃に加熱すると暗褐色溶液が得られた。この溶液を、予熱された(80℃)5Lジャケット付き容器に研磨濾過(polish filter)した。次いで、溶液を70℃に冷却し、パターンA (0.1重量%)をシーディングした後、5℃/時間の速度で0℃まで冷却する前に、シード(結晶核)を各30分間成熟させた。0℃でさらに4時間撹拌した後、バッチを濾過し、冷エタノール(496mL×2)で洗浄し、次いで50℃で一晩乾燥させた。これにより、HPLCによる99.9%およびNMRによる>95%の純度にて、312.4g (収率=78%)のステージ3が得られた。XRPD:パターンA。
【0286】
5MeO-DMT
ステージ1:5-メトキシインドール-3-酢酸とジメチルアミンとのカップリング
N2下の(100mL)の3口フラスコに、5-メトキシインドール-3-酢酸(3.978g、19.385ミリモル)、HOBt (~20%湿潤)(3.927g、23.261mmol)およびDCM (40mL)を入れた。次に、EDC.HCl (4.459g、23.261ミリモル)を30℃未満で15分間にわたって滴下して入れた。この反応混合物を、周囲温度で1時間攪拌し、その後、2Mジメチルアミン(14.54mL、29.078mmol)を25℃未満で15分間かけて滴下した。1時間攪拌した後、HPLCは出発物質(SM、すなわち、5-メトキシインドール-3-酢酸)が残っていないことを示した。次いで、この反応混合物に10% K2CO3(20mL)を入れ、5分間攪拌し、次いで分離した。下側の水層を取り出し、DCM(10mL×2)で逆抽出した。有機抽出物を合わせ、飽和食塩水(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、濾過した。濾液を真空中にて45℃で濃縮して、HPLCによる純度95.7%にて3.898gの活性(収率=87%)生成物を得た。
【0287】
ステージ2:5MeO-DMTの調製
N2下の(100mL)の3口フラスコに、ステージ1メトキシ誘導体(3.85g、16.586ミリモル)およびTHF(19.25mL)を投入した。次いで、THF中の2.4M LiAlH4(6.22mL、14.927ミリモル)を、30分かけて<40℃にて滴下して加えた。この反応混合物を60℃に1時間加熱し、ここではHPLCは0.1% SM(ステージ1メトキシ誘導体)が残ったことを示した。次いで、この反応混合物を周囲温度に冷却し、30℃未満で30分かけて25% Rochelle塩(38.5mL)中にクエンチした。得られた懸濁液を、分離させる前に1時間攪拌した。次に、下側の水性層を除去し、上側の有機層を飽和食塩水(9.6mL)で洗浄した。次いで、有機物をMgSO4上で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した後、EtOH(10mL×2)から共沸混合物を得た。これにより、HPLCによる純度91.5%にて3.167gの活性(収率=88%)生成物を得た。
【0288】
ステージ3:5MeO-DMTフマレートの調製
N2下の50mLの3口フラスコに、フマル酸(1.675g、14.430ミリモル)および、EtOH (37.8mL)中のステージ2メトキシ誘導体(3.15g、14.430ミリモル)の溶液を入れた。次いで、この混合物を75℃に1時間加熱したが、これは予想されるような溶液を生成せず、この混合物をさらに加熱して還流(78℃)したが、依然として溶液は得られなかった。そのため、この懸濁液を0~5℃に冷却し、濾過し、EtOH(8mL×2)で洗浄した後、50℃で一晩乾燥させた。これにより、HPLCによる純度99.9%にて物質3.165g(収率=65%)が得られた。
【0289】
α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミン
ステージ1(5-メトキシインドール-3-酢酸とジメチルアミンのカップリング)については、上記を参照のこと。
【0290】
ステージ2:α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンの調製
N2下の100mLの3口フラスコに、ステージ1メトキシ誘導体(3.85g、16.586ミリモル)およびTHF (19.25mL)を投入した。次いで、THF (6.22mL、14.927ミリモル)中の2.4M LiAlD4を30分かけて<40℃で滴下して入れた。この反応混合物を60℃に1時間加熱し、ここではHPLCは0.1% SM (ステージ1メトキシ誘導体)が残ったことを示した。次いで、この反応混合物を周囲温度に冷却し、30℃未満で30分かけて25% Rochelle塩(38.5mL)中にクエンチした。得られた懸濁液を1時間攪拌してから分離した。次に、下側の水性層を除去し、上側の有機層を飽和食塩水(9.6mL)で洗浄した。次いで、有機物をMgSO4上で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、EtOH (10mL×2)から共沸混合物を得た。これにより、HPLCによる純度91.5%にて3.196gの活性(収率=88%)生成物が得られた。
【0291】
ステージ3:α,α-ジデューテロ-5-メトキシジメチルトリプタミンフマレートの調製
N2下の50mLの3口フラスコに、フマル酸(1.675g、14.430ミリモル)および、EtOH (37.8mL)中のステージ2メトキシ誘導体(3.15g、14.430ミリモル)の溶液を入れた。次いで、この混合物を75℃に1時間加熱したが、これは予想されるような溶液を生成せず、この混合物をさらに加熱して還流(78℃)したが、依然として溶液は得られなかった。そのため、この懸濁液を0~5℃に冷却し、濾過し、EtOH (8mL×2)で洗浄した後、50℃で一晩乾燥させた。これにより、HPLCによる純度99.9%にて3.165g(収率=65%)の物質が得られた。
【0292】
DMT化合物の重水素化混合物の合成
固体LiAlH4/LiAlD4混合物を用いたステージ2での変更された合成を、重水素化されていないDMTについての上記の方法を用いて、1.8当量のLiAlH4/LiAlD4対0.9当量を使用して採用した。
6回の重水素化反応を行った。
【0293】
DMT化合物の重水素化混合物(1:1 LiAlH4:LiAlD4を用いた)の代表的な合成法
N2下の250mLの3口フラスコにLiAlH4 (1.013g、26.7ミリモル)、LiAlD4(1.120g、26.7ミリモル)およびTHF(100ml)を入れた。得られた懸濁液を、ステージ1(6g、29.666ミリモル)を20~40℃で15分間にわたって滴下して入れる前に、30分間攪拌した。次いで反応混合物を2時間還流(66℃)して加熱し、ここではHPLCはステージ1が残っていないことを示した。この混合物を0℃に冷却し、25% Rochelle塩(水溶液)(120ml)にて30分かけて30℃未満でクエンチした。得られた乳白色の懸濁液を1時間撹拌し、次いで分離させた。下側の水性層を除去し、上側の有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄した。次いで、有機物をMgSO4上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。これにより、4.3gの未精製物質が得られた。次いで、この粗製物をエタノール(52mL)中に取り、75℃に加熱する前にフマル酸(2.66g、22.917ミリモル)で充填した。得られた溶液をさらに1時間0~5℃に冷却する前に、周囲温度まで一晩冷却した。固体を濾過により単離し、冷エタノール(6.5mL×2)で洗浄した。フィルターケーキを50℃で一晩乾燥して、HPLCによる純度99.9%で、NMRによる純度>95%にて5.7g(収率=63%)の生成物を得た。
【0294】
重水素化の程度の評価
これは、LCMS-SIM (SIM=単一イオンモニタリング)によって行われ、分析により、N,N-ジメチルトリプタミンの保持時間における、三重水素化されたN,N-ジメチルトリプタミン化合物(N,N-ジメチルトリプタミン(DO)、α-デューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(D1)およびα,α-ジデューテロ-N,N-ジメチルトリプタミン(D2))の各質量についての分離イオンカウントを得た。次いで、各成分の百分率を、これらのイオンカウントから計算した。
例えば、%D0=[D0/(D0+D1+D2)]×100
【0295】
HPLCパラメータ
システム:Agilent 1100/1200シリーズ液体クロマトグラフまたは同等物
カラム:トリアート(Triart)フェニル;150×4.6mm、3.0μm粒子サイズ(Ex:YMC、Part number:TPH12S03-1546PTH)
移動相A: 水:トリフルオロ酢酸(100:0.05%)
移動相B: アセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.05%)
勾配: 時間 %A %B
0 95 5
13 62 38
26 5 95
30.5 5 95
31 95 5
流量: 1.0mL/分
停止時間: 31分 実行後: 4分
注入量: 5μl 洗浄バイアル: N/A
カラム温度:30℃混合
波長: 200nm,(4nm) 参照: N/A
【0296】
質量分析パラメータ
システム: Agilent 6100シリーズ四重極LC-MSまたは同等物
乾燥ガス流:12.0L/分 乾燥ガス温度:350℃
噴霧器圧力:35psig
フラグメンター(Fragmentor):110 Gain:1.00
【0297】
Cpd RT RRT 濃度 希釈剤 検出 質量
DO 10.64 1.00 0.30mg/ml CH3CN:H20(50:50) (+)SIM 189.10m/z
D1 10.64 1.00 0.30mg/ml CH3CN:H20(50:50) (+)SIM 190.10m/z
D2 10.64 1.00 0.30mg/ml CH3CN:H20(50:50) (+)SIM 191.10m/z
MS-SIM範囲は、目標質量±0.1m/zである
【0298】
6つの重水素化反応物についてのデータが以下の表2に示されている:
【表2】
【0299】
DMT(SPL026)と6つの重水素化化合物の混合物のin vitro固有クリアランス
固有クリアランスのin vitro測定は、in vivo肝クリアランスを予測するための貴重なモデルである。肝臓は体内の薬物代謝の主な器官であり、無傷細胞中に存在する相Iおよび相II薬物代謝酵素の両方を含む。
【0300】
目的
ヒト肝細胞を使用して、DMTに対する重水素化DMT類似物混合物のin vitro固有クリアランスを評価する。
【0301】
実験の説明
10人のドナー(0.545百万細胞/mL)からプールされたヒト(混合性別)肝細胞を使用して、DMTおよび6つの重水素化類似体のin vitro固有クリアランスを調査した。
【0302】
全ての試験化合物、並びにスマトリプタン、セロトニン、ベンジルアミンコントロールについて5μMの濃度を使用した。この濃度は、モノアミン酸化酵素(MAO)のMichaelis定数(Km)を維持しながら、信号対雑音比を最大化するために選択された。ジルチアゼムおよびジクロフェナク(diclofenac)コントロールは、実験室有効濃度の1μMで使用した。
【0303】
試験化合物を96ウェルプレート内の肝細胞懸濁液と混合し、37℃で60分間インキュベートした。懸濁液を連続的に攪拌した。7つの時点で、少量のアリコートを取り出し、その中の試験化合物/ブレンド濃度をLC-MS/MSにより測定した。測定された時点は、2、4、8、15、30、45、および60分であった。
【0304】
以下のLC-MS/MS条件を分析に使用した:

装置: Thermo Vanquish UPLCシステムを備えたThermo TSQ Quantiva
カラム: Luna Omega 2.1x50mm 2.6μm
溶媒A: H2O+0.1%ギ酸
溶媒B: アセトニトリル+0.1%ギ酸
流量: 0.8ml/分
注入容量:1μl
カラム温度:65℃
勾配:
【表2-1】
MSパラメータ:
陽イオンスプレー電圧: 4000V
気化器温度: 450℃
イオン移動チューブ温度: 365℃
シースガス: 54
補助ガス: 17
掃引ガス: 1
滞留時間 8 ms
MRM転移:
・ DO=質量対充填比189.14>58.16
・ D1=質量対充填比190.14>59.17
・ D2=質量対充填比191.14>60.17
【0305】
MRM転移は、重水素を含まない(D0転移の場合)か、高レベルのD1またはD2重水素化(それぞれD1およびD2転移の場合)を含むDMTサンプルの予備分析から決定された。
【0306】
次に、得られた濃度-時間プロファイルを、固有クリアランス(CLint)と半減期(t1/2)を計算するために用いた。これを行うために、各分析物のMSピーク面積またはMSピーク面積/IS応答を、X軸上のサンプリング時間(分)に対してy軸上の自然対数スケールでプロットする。この線の勾配が除去率定数である。これは、-ln(2)/勾配によって半減期に変換される。固有クリアランスは、勾配/除去率定数から計算され、式は、CLint =(-1000*勾配)/細胞密度(1E6細胞/ml)であり、マイクロリットル/分/百万セルの単位が得られる。
【0307】
結果
固有クリアランスと半減期値を、DMTと上記の6つの重水素化混合物について計算した。これらのデータを、D0、D1およびD2の比率に応じて重み付けし、各化合物混合物の全体的な固有クリアランスと半減期値を得た(表3)。
【0308】
【表3】
【0309】
データは、回帰分析を用いて線形モデルと適合され、DMTのα-炭素での重水素富化は分子量(MW)の増加に伴って固有クリアランスを直線的に減少させるため、同定された範囲内で正確に予測できる半減期を有するDMT薬物物質の製造が可能になることが明らかになった。
【0310】
96.6%のD2-DMTを含む混合物1において最も大きな変化が見られ、重水素化されていないDMTと比較して固有クリアランス率がほぼ半分になり(図4)、半減期がほぼ2倍になる(図3)。重水素化の中間混合物(混合物2~5)は、分子量と相関した方法で固有クリアランスを減少させた(図4)。
【0311】
結論
これらのデータは、DMTのα-炭素での重水素富化が増加すると、代謝安定性が増加し、クリアランスの減少およびより長い半減期をもたらすことを示している。特に、本発明の方法による重水素富化DMT含有薬物物質の製造のための投入還元剤が、1:2.5~2.5:1の比率のLiAlH4とLiAlD4を含む場合、MWと半減期との間に線形関係が存在する。式Iのプロチオ、モノ-およびジ-デューテロ化合物の類似の混合物の相対的な半減期は、プロチオ、モノ-およびジ-デューテロDMTの混合物についてここで観察された傾向を反映すると予想される。式Iの化合物のα-炭素での重水素富化の増加は、代謝安定性を増加させ、クリアランスの減少およびより長い半減期をもたらすと予想される。
【0312】
DMTについての最良の態様
ステージ1
【表4-1】
【0313】
【表4-2】
【0314】
【表4-3】
【0315】
【表4-4】
【0316】
【表4-5】
【0317】
【表4-6】
【0318】
【表4-7】
【0319】
【表4-8】
【0320】
【表4-9】
【0321】
【表4-10】
【0322】
【表4-11】
【0323】
【表4-12】
【0324】
【表4-13】
【0325】
【表4-14】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幻覚的支援心理療法に使用するための医薬組成物であって、当該組成物が、薬学的に許容される塩の形態である式I:
【化1】
(上式にて、Hはプロチウムまたは重水素であり、
nは1で、Rが5位であり、
は、-R、-OR、及び-O(CO)Rから独立して選択され、しかも
及びRは、独立して、C-Cアルキルから選択される)
の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、ORおよび-O(CO)Rから独立して選択される、及び/又は、Rがメチルである、及び/又は、Rがメトキシである、及び/又は、nが1である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
nが1であり、Rが5-メトキシである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
Hが重水素である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式Iの化合物の純度が、HPLCによる99%と100%との間である、及び/又は、前記の薬学的に許容される塩がフマル酸塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【外国語明細書】