(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028816
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】腎疾患及び歯周疾患を検出及び診断するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240227BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240227BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
G01N33/543 501A
G01N33/543 545A
G01N33/543 551A
G01N33/543 581A
C07K16/18
C07K17/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023203767
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021184696の分割
【原出願日】2017-03-02
(31)【優先権主張番号】62/302,299
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】イエラミッリ,マハーラクシュミー
(72)【発明者】
【氏名】ファラス,ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】クイン,ジョン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】イエラミッリ,マーティ,ヴィー.エス.エヌ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疾患進行を停止できるよう、早期ステージの腎疾患を検出する方法が必要とされている。
【解決手段】クレアチニンアッセイがヒトにおけるグレード1、2、または3の急性腎障害(AKI)を検出し得る前に、ヒトにおけるグレード1、2、または3のAKIを検出することができる。具体的には試料中のシスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料または対照基準に比べて高いことが腎疾患の徴候となることによって診断する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のシスタチンBポリペプチドを検出する方法であって、前記試料と、配列番号1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18
、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる1つ以上のポ
リペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体とを、前記シスタチンBポリペプチドと配
列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、1
7、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる1つ
以上のポリペプチドに特異的に結合する前記1つ以上の抗体との複合体の形成に適した条
件下で接触させること、及びシスタチンBポリペプチドと、配列番号1、2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異
的に結合する前記1つ以上の抗体との前記複合体を検出すること、を含む方法。
【請求項2】
対象における腎疾患を診断する方法であって、
(a) 前記対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであっ
て、シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24
、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上
の抗体を用いて決定される、決定すること、及び
(b) 前記試料中の前記シスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と
比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料ま
たは対照基準に比べて高いことが腎疾患の徴候となる、比較すること、によって診断する
方法。
【請求項3】
対象における腎疾患を治療する方法であって、前記対象からの試料中の前記シスタチン
Bポリペプチドの量を、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1
2、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26
、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を用い
て決定するための分析の結果を提供する試験を要求すること、及び前記試料が含有するシ
スタチンBポリペプチドの量が前記腎疾患に対する対照試料または対照基準に比べて高い
場合に、前記対象に腎機能低下に対する治療を投与すること、を含む方法。
【請求項4】
対象における歯周疾患を診断する方法であって、
(a) 前記対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであっ
て、シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24
、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上
の抗体を用いて決定される、決定すること、及び
(b) 前記試料中の前記シスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と
比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料ま
たは対照基準に比べて高いことが前記対象における歯周疾患の徴候となる、比較すること
、によって診断する方法。
【請求項5】
上部尿路感染症と下部尿路感染症とを識別する方法であって、
(a) 前記対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであっ
て、前記シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、
24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ
以上の抗体を用いて決定される、決定すること、及び
(b) 前記試料中の前記シスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と
比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料ま
たは対照基準に比べて高いことが前記対象における上部尿路感染症の徴候となる、比較す
ること、によって識別する方法。
【請求項6】
急性腎障害と下部尿路感染症とを識別する方法であって、
(a) 前記対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであっ
て、前記シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、
23、24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合す
る1つ以上の抗体を用いて決定される、決定すること、及び
(b) 前記試料中の前記シスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と
比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料ま
たは対照基準に比べて高いことが前記対象における急性腎障害の徴候となる、比較するこ
と、によって識別する方法。
【請求項7】
前記腎疾患の原因が、慢性腎疾患患者における急性腎障害もしくは活動性腎障害、進行
性慢性腎疾患、急性腎障害、活動性腎障害、または細菌感染である、請求項2または3に
記載の方法。
【請求項8】
前記腎疾患の原因ががんではない、請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
前記細菌感染の原因が、アナプラズマ種、エーリキア種、レプトスピラ種、エシェリキ
ア種、またはボレリア種である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記シスタチンBポリペプチドの量が、シスタチンBポリペプチドと、配列番号1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、1
9、20、21、22、23、24、25、26、または27からなるまたはより多くの
ポリペプチドに特異的に結合する前記1つ以上の抗体との複合体を検出することによって
決定される、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が固体担体に固定されている、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれ
かに記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が1つ以上の標識に結合している、請求項1、2、3、4、5、または6のい
ずれかに記載の方法。
【請求項13】
シスタチンBポリペプチドと、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、または27の1つ以上のポリペプチドに対し特異的な1つ以上の抗体との前記
複合体を、指示薬に接触させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の抗体が、配列番号5、6、7、11、または13からなる1つ以上のポ
リペプチドに特異的に結合する、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれかに記載
の方法。
【請求項15】
前記対象が非ヒト動物である、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれかに記載
の方法。
【請求項16】
前記試料が血液、血清、血漿、または尿である、請求項1、2、3、5、または6のい
ずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記試料が唾液、プラーク、歯肉溝液、歯肉生検、または舌スワブである、請求項4に
記載の方法。
【請求項18】
前記シスタチンBポリペプチドまたはシスタチンBポリペプチドの量が、免疫測定法、
競合的免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、
免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫測定法(RIA)、またはウェスタンブロッ
トアッセイによって決定または検出される、請求項1、2、3、4、5、または6のいず
れかに記載の方法。
【請求項19】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16
、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる
1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する、単離抗体。
【請求項20】
配列番号4、5、6、7、8、9、11、または13からなる1つ以上のポリペプチド
に特異的に結合する、請求項19に記載の単離抗体。
【請求項21】
前記単離抗体が、
(a) 凍結乾燥、粉末化、もしくは乾燥されている、
(b) 標識に結合している、
(c) 固体担体に固定されている、
(d) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1
5、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、もしくは2
7からなるポリペプチドに特異的に結合している、または、
(e) 固体担体に固定され、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、もしくは27に示されるポリペプチドに特異的に結合している、請求項19に
記載の単離抗体。
【請求項22】
腎疾患、慢性腎疾患患者における急性腎障害もしくは活動性腎障害、急性腎障害、活動
性腎障害、進行性慢性腎疾患、上部尿路感染症、または歯周疾患を診断するためのキット
であって、
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1
5、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27
からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、及び
(b) 前記1つ以上の抗体が対象の試料中に存在するシスタチンBポリペプチドに結
合するのを促進する1つ以上の試薬を含む、キット。
【請求項23】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16
、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる
、1つ以上の単離ポリペプチド。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、
(a) 凍結乾燥、粉末化、もしくは乾燥されている、
(b) 標識に結合している、
(c) 固体担体に固定されている、
(d) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1
5、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27
に示される1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体に特異的に結合す
る、請求項23に記載の1つ以上の単離ポリペプチド。
【請求項25】
哺乳類対象における腎疾患を診断する方法であって、
(a) 前記対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定すること、及び
(b) 前記試料中の前記シスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と
比較することであって、前記試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが前記対照試料ま
たは対照基準に比べて高いことが腎疾患の徴候となる、比較すること、によって診断する
方法。
【請求項26】
免疫複合体であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25
、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の単離
抗体、及び(ii)前記1つ以上の単離抗体に特異的に結合している1つ以上のポリペプ
チドを含む、免疫複合体。
【請求項27】
固体担体に固定されている、請求項26に記載の免疫複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、参照により全体が本明細書に援用される2016年3月2日に出願された米
国出願番号第62/302,299号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本文書は、EFS-Webを介して電子形式で提出された配列表の電子テキストファイ
ルを参照により援用する。本テキストファイルは「16-179-WO_ST25.fi
nal.txt」という名称で7.10KBであり、2017年3月2日に作成された。
【背景技術】
【0003】
腎疾患は、水分消費の増加、頻尿、食欲減退、体重損失、及び筋萎縮を伴う。概して、
腎疾患の臨床症状が発生する頃には回復不能な腎臓損傷が生じている。早期検出は早期治
療を可能にし、ひいては疾患の進行を遅らせる。現状の治療には、透析や、リン及びタン
パク質を抑えた食事が含まれる。寿命及びクオリティーオブライフを向上させるためには
、早期検出が極めて重要である。
【0004】
哺乳類における腎疾患進行は5つのレベルに分類される。哺乳類、例えばイヌの腎疾患
を検出するための現状の方法としては、腎臓超音波生検や、尿タンパク/クレアチニンレ
ベルの測定が挙げられる。生検は侵襲的であり、クレアチニン測定は、顕著な組織損傷が
生じた後の腎不全のステージ3に至って初めて正確さを有する。当技術分野では、疾患進
行を停止できるよう、早期ステージの腎疾患を検出する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、試料中のシスタチンB(「Cys B」)ポリペプチドを検出する方
法が提供される。当該方法は、試料と、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する
1つ以上の抗体とを、シスタチンBポリペプチドと配列番号1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上の
ポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体との複合体の形成に適した条件下で接触
させることを含む。シスタチンBポリペプチドと、配列番号1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上の
ポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体との複合体が、検出される。
【0006】
別の実施形態では、対象における腎疾患を診断する方法が提供される。当該方法は、対
象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであって、シスタチンB
ポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、2
6、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に結合す
る1つ以上の抗体を用いて決定される、決定することを含む。試料中のシスタチンBポリ
ペプチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料中のシスタチンBポリペプチドレ
ベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが腎疾患の徴候となる。
【0007】
また別の実施形態では、対象における疾患状態を治療する方法が提供される。当該方法
は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を、配列番号1、2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、2
0、21、22、23、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1
つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を用いて決定するための分析の
結果を提供する試験を要求することを含む。試料が含有するシスタチンBポリペプチドの
量が疾患状態に対する対照試料または対照基準に比べて高い場合に、対象に腎機能低下に
対する治療が投与される。当該疾患状態は、慢性腎疾患患者における急性腎障害もしくは
活動性腎障害、急性腎障害、活動性腎障害、進行性慢性腎疾患、歯周疾患、上部尿路感染
症、またはその組合せであり得る。
【0008】
さらに別の実施形態では、対象における歯周疾患を診断する方法が提供される。当該方
法は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであって、シス
タチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、
25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的
に結合する1つ以上の抗体を用いて決定される、決定することを含む。試料中のシスタチ
ンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料中のシスタチンBポリペ
プチドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが対象における歯周疾患の徴候
となる。
【0009】
別の実施形態では、上部尿路感染症と下部尿路感染症とを識別する方法が提供される。
当該方法は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであって
、シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、
24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに
特異的に結合する1つ以上の抗体を用いて決定される、決定することを含む。試料中のシ
スタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料中のシスタチンB
ポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが対象における上部尿路
感染症の徴候となる。
【0010】
別の実施形態では、急性腎障害と下部尿路感染症とを識別する方法が提供される。当該
方法は、(a)対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであっ
て、シスタチンBポリペプチドの量が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23
、24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1
つ以上の抗体を用いて決定される、決定すること、及び(b)試料中のシスタチンBポリ
ペプチドの量を対照試料または対照基準と比較することであって、試料中のシスタチンB
ポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが対象における急性腎障
害の徴候である、比較すること、を含む。
【0011】
一実施形態では、腎疾患の原因は、慢性腎疾患、急性腎障害、または細菌感染であり得
る。一実施形態では、腎疾患、慢性腎疾患、または急性腎障害の原因はがんではない。細
菌感染の原因は、アナプラズマ種、エーリキア種、レプトスピラ種、エシェリキア種、ま
たはボレリア種であり得る。シスタチンBポリペプチドの量は、シスタチンBポリペプチ
ドと、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、
15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または2
7からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の
抗体との複合体を検出することによって決定することができる。
【0012】
一実施形態では、シスタチンBポリペプチドと、配列番号1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上の
ポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体との複合体は、検出の前に指示薬と接触
させることができる。当該1つ以上の抗体は、配列番号5、6、7、11、または13か
らなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に結合することができる。
【0013】
一実施形態では、対象は非ヒト動物とすることができ、試料は血清、血漿、尿、唾液、
プラーク、歯肉溝液、歯肉生検、または舌スワブとすることができる。
【0014】
一実施形態では、シスタチンBポリペプチドまたはシスタチンBポリペプチドの量は、
免疫測定法、競合的免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(E
LISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、またはウェ
スタンブロットアッセイによって決定することができる。
【0015】
また別の実施形態では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に
結合する単離抗体が提供される。単離抗体は、凍結乾燥させてもよく、標識に結合してい
てもよく、固体担体に固定されていてもよく、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、2
5、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に
結合していてもよく、あるいは固体担体に固定され、かつ配列番号1、2、3、4、5、
6、7、8、9、10、11、15、16、17、18、19、20、21、22、23
、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチド
に特異的に結合していてもよい。
【0016】
一実施形態では、当該抗体は固体担体に固定されていてもよく、また1つ以上の標識に
結合していてもよい。
【0017】
さらに別の実施形態では、腎疾患、慢性腎疾患患者における急性腎障害もしくは活動性
腎障害、活動性腎障害、進行性慢性腎疾患、急性腎障害、上部尿路感染症、または歯周疾
患を診断するためのキットが提供される。当該キットは、配列番号1、2、3、4、5、
6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20
、21、22、23、24、25、26、または27からなる(またはそれを含む)1つ
以上のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、及び当該1つ以上の抗体が対象
の試料中に存在するシスタチンBポリペプチドに結合するのを促進する1つ以上の試薬を
含むことができる。
【0018】
別の実施形態では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12
、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、
または27からなる(またはそれを含む)1つ以上の単離ポリペプチドが提供される。当
該ポリペプチドは、凍結乾燥されてもよく、標識に結合していてもよく、固体担体に固定
されていてもよく、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、2
6、または27からなる(またはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に結合す
る1つ以上の抗体に特異的に結合していてもよい。
【0019】
また別の実施形態では、哺乳類対象、例えばヒト、イヌ、またはネコ対象における腎疾
患を診断する方法が提供される。当該方法は、(a)試料(例えば、尿、血液、血漿、血
清、細胞、組織)中のシスタチンBポリペプチドの量を決定すること、及び(b)試料中
のシスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較することであって、試
料中のシスタチンBポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが腎
疾患の徴候である、比較すること、を含む。シスタチンBポリペプチドの量は、配列番号
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる(ま
たはそれを含む)1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する単離抗体を用いて決定する
ことができる。哺乳類における腎疾患とは、例えば、慢性腎疾患患者における急性腎障害
もしくは活動性腎障害、慢性腎疾患、進行性慢性腎疾患、急性腎障害、活動性腎障害、上
部尿路感染症、または腎臓の細菌感染であり得る。一実施形態では、腎疾患は、がんでも
腎臓がんでもない。
【0020】
一実施形態では、免疫複合体であって、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、
23、24、25、26、または27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合す
る1つ以上の単離抗体、及び(ii)当該1つ以上の単離抗体に特異的に結合している1
つ以上のポリペプチドを含む、免疫複合体が提供される。当該1つ以上のポリペプチドと
は、例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、
15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、ま
たはその組合せであり得る。免疫複合体とは、抗原(例えば、ポリペプチド)と抗体との
間で形成された複合体である。免疫複合体は、固体担体に固定されていてもよい。
【0021】
以下のある特定の好ましい実施形態についてのより詳細な説明及び請求項から、具体的
な実施形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、近位尿細管の上皮細胞における正常な尿細管上皮、細胞破壊、及び細胞死を示す図である。
【
図2】
図2は、シスタチンCタンパク質の存在下におけるシスタチンBのウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図3】
図3は、ネイティブなイヌのシスタチンB(MDCKライセート)を用いて、Cys B ELISAアッセイで得られた標準曲線を示す図である。
【
図4】
図4は、イヌゲンタマイシンモデルからの血清及び尿のCys B ELISA分析を示す図である。
【
図5】
図5は、炎症または虚血誘発性活動性腎障害で診療所に受診したイヌからの尿のCys B ELISA分析を示す図である。
【
図6】
図6は、パネルA及びBにおいて、イヌ及びネコの参照範囲を示す図である。
【
図7】
図7は、パネルA及びBにおいて、AKIと診断された患畜における尿中及び血清シスタチンBレベルが健康なイヌ及びCKD患畜に比べて顕著に増加したことを示す図である。
【
図8】
図8は、健康な患畜及び下部尿路感染症患畜におけるシスタチンBレベルを示す図である。
【
図9】
図9は、イヌAKI試料、ヒトCKD試料、及びイヌ陰性対照試料におけるCys Bポリペプチドの検出を示す図である。
【
図10】
図10は、健康なイヌからの血清におけるCys B値を示す図である。これら及び他の対象物及び特徴については、図面と併せてなされる以下の詳細な説明から十分に理解されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下で本発明をより詳細に説明するが、本明細書で示す実施例は、例示的なものとして
意図されているに過ぎない。というのも、当業者には多くの改変及び変形が明らかなもの
となるためである。本明細書での説明及び後続の請求項全体において使用する「a(1つ
の、1種の)」、「an(1つの、1種の)」、及び「the(その、当該)」は、文脈
による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含む。数値を伴った「約」という
用語は、その値が上下5%変動することを意味する。例えば、約100という値は95-
105(すなわち、95から105の間の任意の値)を意味する。
【0024】
概して、本明細書で使用する用語は、本明細書に記載の組成物及び方法の文脈内で、ま
た各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野における通常の意味を有する。一
部の用語は、組成物及び方法の説明に関して追加的な教示を実施者に提供するために、以
下でより具体的に定義されている。
【0025】
本明細書に記載の組成物及び方法は、いくつかの疾患及び状態(例えば、腎疾患、慢性
腎疾患患者における急性腎障害または活動性腎障害、進行性慢性腎疾患、急性腎障害、活
動性腎障害、活動性腎障害、上部尿路感染症、及び歯周疾患を含む)の予測、診断、及び
進行の監視に使用することができる。腎疾患には、(1)健康な対象と比較しての腎機能
低下、もしくは(2)腎臓への物理的損傷、または(3)この両方、をもたらす任意の疾
患状態が含まれる。一実施形態では、腎疾患にはがんが含まれず、腎臓がんも含まれない
。腎臓がんを含めたがんのマーカーは、慢性腎疾患患者における急性腎障害もしくは活動
性腎障害、慢性腎疾患、進行性慢性腎疾患、活動性腎障害、急性腎障害、上部尿路感染症
、または歯周疾患のマーカーとは異なる。一実施形態では、慢性腎疾患患者における急性
腎障害、進行性慢性腎疾患、活動性腎障害、急性腎障害、上部尿路感染症、または歯周疾
患にはがんが含まれず、腎臓がんも含まれない。
【0026】
慢性腎疾患(CKD)とは、経時的な腎機能の漸進的喪失によって特徴づけられる状態
である。CKDは、慢性腎疾患(chronic renal disease)として
も知られる。CDKには、腎臓がんも、腎細胞がんも、膀胱がんも、そしてその他のがん
も含まれない。CKDが悪化するにつれ、老廃物が血液中で高レベルに集積し、高血圧、
貧血、骨の弱体化、低栄養状態、及び神経損傷が生じ得る。CKDは心疾患及び血管疾患
のリスクを高め、最終的には腎不全に至る恐れがある。CKDの原因は、糖尿病、高血圧
、及びその他の異常であり得る。早期の検出及び治療がしばしば疾患の悪化を防ぎ得る。
【0027】
International Renal Interest Societyによっ
て確立されたイヌにおけるCKDのステージを表1に示す。
【0028】
【0029】
【0030】
ヒトにおける腎疾患は、糸球体濾過率(GFR)に従ってステージ分類される。個人の
年齢、人種、性別、及び血清クレアチニンを用いた式を使用してGFRを計算する。以下
に、5ステージのCKD及び各ステージのGFRを示す。
【0031】
・ ステージ1 正常または高いGFR(GFR>90mL/分)
・ ステージ2 軽度CKD(GFR=60-89mL/分)
・ ステージ3A 中程度CKD(GFR=45-59mL/分)
・ ステージ3B 中程度CKD(GFR=30-44mL/分)
・ ステージ4 重度CKD(GFR=15-29mL/分)
・ ステージ5 末期CKD(GFR<15mL/分)
本明細書に記載の方法は、ヒトのステージ1、2、3A、3B、4、または5のCKDに
おける急性腎障害または活動性腎障害を検出することができる。一実施形態では、当該方
法は、クレアチニンアッセイまたはGFR値がステージ1、2、3A、3B、4、または
5のCKDにおける急性腎障害または活動性腎障害を検出し得る前に、ヒトにおけるステ
ージ1、2、3A、3B、4、または5のCKDにおける急性腎障害または活動性腎障害
を検出することができる。
【0032】
慢性の腎疾患(kidney disease)または腎疾患(renal dise
ase)は、糸球体疾患である場合も尿細管疾患である場合もある。
【0033】
急性腎障害(AKI)は、突然のまたは急速な腎臓の濾過機能の低下として定義される
。AKIは、慢性腎疾患(CKD)、透析が必要となる腎不全(末期の腎疾患)、腎疾患
、または死に至る恐れがある。軽度AKIまたはAKIからの完全回復であっても、何ら
かの短時間及び長時間持続する健康問題を有し得る。AKIは、何らかの原因(例えば、
低血圧、脱水)による腎臓の血流減少に由来する腎臓組織への損傷、腎臓に有害な物質へ
の曝露、腎臓内の抗炎症プロセス、全身疾患、圧挫傷、抗生物質、敗血症、または尿管の
閉塞によって起こり得る。AKIは、代謝性アシドーシス、高カリウムレベル、尿毒症、
体液バランスの変化、及び他の臓器系への影響に至る恐れがある。一実施形態では、AK
Iにはがんが含まれず、腎臓がんも含まれない。International Rena
l Interest Societyによって確立されたネコ及びイヌにおけるAKI
のグレードを表3に示す。
【0034】
【0035】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、グレード1、2、3、4、または5のAK
Iを検出することができる。一実施形態では、本明細書に記載の方法は、クレアチニンア
ッセイがグレード1、2、3、4、または5のAKIを検出し得る前に、グレード1、2
、3、4、または5のAKIを検出することができる。
【0036】
ヒトにおけるAKIは、以下のようにステージ分類することができる。
【表4】
【0037】
一実施形態では、方法はヒトにおけるステージ1、2、または3のAKIを検出するこ
とができる。一実施形態では、当該方法は、クレアチニンアッセイがヒトにおけるグレー
ド1、2、または3のAKIを検出し得る前に、ヒトにおけるグレード1、2、または3
のAKIを検出することができる。
【0038】
一実施形態では、腎疾患、CKD、またはAKIの原因は細菌感染である。一実施形態
では、細菌感染の原因は、アナプラズマ種、エーリキア種、レプトスピラ種、エシェリキ
ア種、またはボレリア種である。
【0039】
活動性腎障害は、進行中または進行性の腎障害、腎臓異常、または腎臓病態として定義
されている。活動性腎障害は、腎臓に累積的損傷をもたらす。
【0040】
ポリペプチド
シスタチンA及びBは、シスタチンスーパーファミリーのファミリー1のメンバーであり
、サイズが11kDaと比較的低分子のタンパク質である。ヒトにおいては、これらのタ
ンパク質は単量体であり、サイズは約11kDaである。これらはグリコシル化されず、
他のシスタチンスーパーファミリーに見られるジスルフィド架橋を有しない。また、シグ
ナル配列も欠如しているため、概してある細胞に限定された細胞内タンパク質である。O
chieng及びChaudhuri、J Health Care Poor Und
erserved 2010、21(1補遺):51を参照。いくらかの量のシスタチン
Bは細胞外液に存在し、これはヒトの尿から精製されたものである。Abrahamso
n他、J Biol Chem 1986、261:11282-11289を参照。シ
スタチンBは、リソソームシステインプロテイナーゼ、カテプシンファミリーのメンバー
、具体的にはカテプシンB、H、及びLを阻害することが示されている。Green他、
Biochem J 1984 218:939;D’Amico他、J Transl
Med 2014、12:350;Jarvinen及びRinne、Biochim
Biophys Acta 1982、708:210-217を参照。
【0041】
シスタチンBポリペプチドについては実施例1で詳細に説明されており、以下のものが
含まれる:
QVKAQLEERENKKYTTFKAVTFRSQVVAGTPYFIKVQVDD
DEFVHLRVFQSLPHENKPLALSSYQTNKAKHDELAYF(配列
番号1)
MMCGAPSASQPATADTQAIAD(配列番号2)
MMCGAPSASQPATADTQAIADQVKAQLEERENKKYTTFKA
VTFRSQVVAGTXYFIKVQVDDDEFVHLRVFQSLPHENKPL
ALSSYQTNKAKHDELAYF(配列番号3)(Xは任意のアミノ酸とすること
ができる、またはXはPもしくはNとすることができる)
QTNKAKHDELAYF(配列番号4)シスタチンB C末端「ペプチド9」
CGAPSASQPATADTQAIA(配列番号5)シスタチンB N末端「ペプチド
3-20」
CGAPSASQ(配列番号6)シスタチンB N末端「ペプチド3-10」
CAIADQVKA(配列番号7)シスタチンB N末端「ペプチド18-25」
FQSLPHENKPLALSS(配列番号8)シスタチンB「ペプチド2」
SQVVAGTPYFIKVQVDDD(配列番号9)シスタチンB「ペプチド1」
KHDELAYF(配列番号10)
MMCGAPSASQPATADTQAIADQVKAQLEE(配列番号11)
AIADQVKA(配列番号12)
SQVVAGTNYFIKVQVDDD(配列番号13)
【0042】
一実施形態では、配列番号1-27またはその断片を含む精製されたポリペプチドが提
供される。配列番号1-27のポリペプチド断片は、約95、90、80、70、60、
50、40、35、30、25、20、15、10(または約10から約95の間の任意
の範囲)未満の連続したアミノ酸からなり得る。一実施形態では、ポリペプチド断片は、
配列番号1-27の約10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、
80、90、または95を超える連続したアミノ酸からなる。一実施形態では、ポリペプ
チドまたはその断片は非天然のものである。
【0043】
配列番号1-2、4-13、及び15、16、17、18、19、20、21、22、
23、24、25、26、または27のポリペプチドが全長Cys Bポリペプチドより
も低分子であるという事実は重要である。というのは、低分子ポリペプチドは、全長ポリ
ペプチドのアッセイよりも高い特異性及び/または感受性を有し得るためである。これら
の低分子ポリペプチドは製造にかかる費用が少ない可能性があり、また全長ポリペプチド
よりも高い純度で得られ得る。さらに、試料中に存在する低分子断片及び低分子断片のレ
ベルは、疾患状態を示すことができる。断片化したポリペプチド(すなわち、全長未満)
のレベル増加は、疾患のマーカーとすることができる。
【0044】
ポリペプチドとは、アミド結合によって共有結合した3つ以上のアミノ酸の多量体であ
る。ポリペプチドは翻訳後に修飾され得る。精製されたポリペプチドとは、細胞材料、他
のタイプのポリペプチド、化学的前駆物質、ポリペプチド合成に用いる化学物質、または
その組合せを実質的に含まないポリペプチド調製物である。細胞材料、培地、化学的前駆
物質、ポリペプチド合成に用いる化学物質を実質的に含まないポリペプチド調製物は、約
30%、20%、10%、5%、1%未満またはそれ以上の他のポリペプチド、培地、化
学的前駆物質、及び/または合成に用いる他の化学物質を有する。そのため、精製された
ポリペプチドの純度は、約70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上であ
る。
【0045】
「ポリペプチド」という用語は、あるタイプのポリペプチド(例えば、ポリペプチドの
セット)のうちの1つ以上を指すことができる。また「ポリペプチド」は、2つ以上の異
なるタイプのポリペプチドの混合物(すなわち、以下に限定するものではないが、全長タ
ンパク質、切断ポリペプチド、またはポリペプチド断片を含むポリペプチドの混合物)を
指すこともできる。「ポリペプチド(単数)」または「ポリペプチド(複数)」という用
語は、それぞれが「1つ以上のポリペプチド」も意味し得る。
【0046】
ポリペプチドバリアントまたは、配列番号1-27に示されるポリペプチドまたはその
断片に対し、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のア
ミノ酸残基が異なる(例えば、アミノ酸の付加、置換、または欠失)。この比較に整列が
必要な場合、最大の相同性を有するよう配列を整列させる。バリエーション部位はポリペ
プチドの任意の位置で生じ得る。
【0047】
概して、バリアントポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチド配列の1つを修飾
し、修飾したポリペプチドを評価して生物学的等価物であるかを決定することによって、
同定することができる。バリアントが生物学的等価物であるのは、免疫組織化学アッセイ
、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫
測定法(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイなどのアッセイにおいて、本明細
書に記載のポリペプチドと実質的に同じ反応する場合、例えば元来のポリペプチドの90
-110%の活性を有する場合である。一実施形態では、当該アッセイは、生物学的に等
価なポリペプチドが、本明細書に記載のポリペプチドと対応反応抗原または抗体との結合
を約80、95、99、または100%低減することができる、競合アッセイである。対
応ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、バリアントポリペプチドとも特異的に結合す
る。
【0048】
バリアントポリペプチドは、配列番号1-27に示されるポリペプチドに対し、少なく
とも約80%、または約81、82、83、84、85、86、87、88、89、90
、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である。例えば
、配列番号1-27のバリアントポリペプチドは、配列番号1-27に対し、少なくとも
約99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、90%、87%、8
4%、または81%同一であり得る。バリアントポリペプチドは、1つ以上の保存的アミ
ノ酸バリエーションまたは他の軽微な修飾を有しながら生物学的活性を保持し、すなわち
配列番号1-27に対し生物学的に機能的な等価物である。生物学的に活性のある等価物
は、対応ポリペプチドに対し実質的に等価な機能を有する。
【0049】
アミノ酸配列に突然変異を導入する方法は当業者に周知である。例えば、Ausube
l(編)、Current Protocols in Molecular Biol
ogy、John Wiley and Sons,Inc.(1994);Mania
tis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manu
al、Cold Spring Harbor laboratory、Cold Sp
ring Harbor、N.Y.(1989))を参照。突然変異は、「QuickC
hange(商標)部位特異的変異誘発キット」(Stratagene)などの市販の
キットを用いて導入することもできる。当業者は、機能的に活性のあるバリアントポリペ
プチドを、ポリペプチドの機能に影響を及ぼさないアミノ酸を置き換えることによって生
成することができる。
【0050】
バリアントポリペプチドは、1つ以上の予測された非必須のアミノ酸残基において保存
的アミノ酸置換を有することができる。保存的置換とは、ペプチド化学分野の当業者が二
次構造及びポリペプチドのヒドロパシー性質が実質的に不変であると予測するであろう形
で、あるアミノ酸を特性が類似した別のアミノ酸に置換することである。概して、以下の
アミノ酸のグループが保存的変化に相当する:(1)ala、pro、gly、glu、
asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(
3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his
;及び(5)phe、tyr、trp、his。一実施形態では、ポリペプチドは、約1
、2、3、4、5、10、20、またはそれ以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0051】
本明細書において、2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)のパーセント同一性
は、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(PNAS USA 87:22
64-2268、1990)のKarlin及びAltschulにおける修正版(PN
AS USA 90:5873-5877、1993)を用いて決定する。このようなア
ルゴリズムは、Altschul他(J.Mol.Biol.215:403-410、
1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLAST
のヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムによってscore=100、word
length=12で実施する。BLASTのタンパク質検索は、XBLASTプログラ
ムによってscore=50、wordlength=3で実施する。比較目的でギャッ
プありの整列を取得するには、Altschul他(Nucleic Acids Re
s.25:3389-3402、1997)に記載のようにGappedBLASTを利
用する。BLAST及びGappedBLASTを利用する場合は、それぞれのプログラ
ム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターは、本明細書に
記載の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得するために使用する。
【0052】
同一性または同一であるとはアミノ酸配列の類似性を意味し、これらの語は当技術分野
で認識されている意味を有する。同一性を有する配列は、同一または類似のアミノ酸を共
有する。配列同一性とは、抗体の元来のアミノ酸配列に対し同一であるアミノ酸のパーセ
ンテージであり、必要に応じて配列同一性を最大化するように配列を整列しギャップを適
切に導入した後に決定する。したがって、基準配列に対し85%アミノ酸配列同一性を共
有する候補配列は、候補配列の基準配列との整列後に、候補配列の85%のアミノ酸が、
基準配列における対応アミノ酸と同一でありかつ/または保存的アミノ酸変化を構成する
必要がある。
【0053】
ポリペプチドまたは抗体は、通常は全く関連付けられていないアミノ酸配列に共有結合
または非共有結合していてもよい。さらに、ポリペプチドまたは抗体は、アミノ酸以外の
化合物または分子に共有結合または非共有結合していてもよい。例えば、ポリペプチドま
たは抗体は、指示試薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停
止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはその組合せに結合していても
よい。一実施形態では、タンパク質精製リガンドは、例えばポリペプチドのアミノ末端ま
たはカルボキシ末端における1つ以上のCアミノ酸残基であり得る。アミノ酸スペーサー
とは、ポリペプチドまたは抗体に通常は全く関連付けられていないアミノ酸の配列である
。アミノ酸スペーサーは、約1、5、10、20、100、または1,000アミノ酸を
含むことができる。
【0054】
ポリペプチドはさらに、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の輸送を指示するシグ
ナル(またはリーダー)配列を含むことができる。また、ポリペプチドは、ポリペプチド
の合成、精製、または識別を容易にするために(例えば、poly-His)、あるいは
固体担体へのポリペプチドの結合を強化するために、リンカーまたは他の配列を含むこと
もできる。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミ
ンに結合してもよい。
【0055】
ポリペプチドは、通常は全く関連付けられていないアミノ酸配列、すなわち異種アミノ
酸配列に共有結合または非共有結合していてもよい。異種アミノ酸配列は、異なる生物か
らのものであってもよく、合成配列であっても、通常はポリペプチドのカルボキシ末端ま
たはアミノ末端に位置しない配列であってもよい。さらに、ポリペプチドは、アミノ酸以
外の化合物または分子、例えば指示試薬に共有結合または非共有結合していてもよい。ポ
リペプチドは、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、
膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはその組合せに共有結合または非共有結
合していてもよい。また、ポリペプチドは、免疫応答を強化する部分(すなわち、ポリペ
プチドまたは他の化合物であり得る官能基)(例えば、IL-2などのサイトカイン)、
精製を促進する部分(例えば、6-ヒスチジンタグ、trpE、グルタチオンマルトース
結合タンパク質などのアフィニティータグ)、またはポリペプチドの安定性を促進する部
分(例えば、ポリエチレングリコール;アセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベ
ンジルオキシカルボニル、またはt-ブチルオキシカルボニルなどのアミノ末端保護基;
アミド、メチルアミド、及びエチルアミドなどのカルボニル末端保護基)に結合していて
もよい。一実施形態では、タンパク質精製リガンドは、例えばポリペプチドのアミノ末端
もしくはカルボキシ末端または両末端における1つ以上のCアミノ酸残基であり得る。ア
ミノ酸スペーサーとは、ポリペプチドに全く関連付けられていないアミノ酸の配列である
。アミノ酸スペーサーは、約1、5、10、20、100、または1,000アミノ酸を
含むことができる。
【0056】
所望の場合、ポリペプチドは、他のアミノ酸配列、例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸
スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、さらにタンパク質精
製に有用なリガンド、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ
、及びブドウ球菌プロテインA、またはその組合せも含有し得る融合タンパク質であって
もよい。融合タンパク質とは、作用可能に互いに結合した2つ以上の異なるアミノ酸配列
である。融合タンパク質コンストラクトは、有機化合物の合成技法を用いて、個々のポリ
ペプチド断片を固定した配列に共に連結させることによって化学的に合成することができ
る。また、融合タンパク質コンストラクトは、適正な配列でアミノ酸残基をコードする指
定された組換えDNA配列を有する導入発現ベクターを保有する、in vitroで培
養した遺伝子修飾宿主細胞(例えば、大腸菌)によって発現させることもできる。異種ポ
リペプチドは、例えばポリペプチドのN末端またはC末端に融合していてもよい。融合タ
ンパク質内に2つ以上のポリペプチドが存在してもよい。融合タンパク質内にポリペプチ
ドの断片が存在してもよい。融合タンパク質は、例えば配列番号1-27、その断片、ま
たはその組合せのうちの1つ以上を含むことができる。ポリペプチドは、多量体形態をと
ることができる。すなわち、ポリペプチドは配列番号1-27の2つ以上のコピーまたは
その組合せを含むことができる。
【0057】
一実施形態では、ポリペプチドは、ヒト、ウサギ、マウス、イヌ、ネコ、他の哺乳類、
またはその組合せに由来する。ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技法を用いて、
細胞または組織供給源から単離することができる。また、ポリペプチドは、組換えDNA
技法によって化学的に合成または生成することもできる。例えば、ポリペプチドは、従来
型のペプチドシンセサイザーを用いて合成することができる。
【0058】
一実施形態では、ポリペプチドを、固相または基質に対し、共有結合的にまたは非共有
結合的に固定する。
【0059】
ポリペプチドは、組換えで生成してもよい。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチ
ドを、当技術分野で周知の技法を用いて好適な発現宿主系で発現させることができる組換
え発現ベクターに導入してもよい。様々な細菌、酵母、哺乳類、及び昆虫の発現系が当技
術分野で利用可能であり、任意のこのような発現系を使用することができる。任意選択に
より、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、セルフリー翻訳系に翻訳すること
ができる。ポリペプチドは、凍結乾燥、粉末化、または乾燥させてもよく、例えばフリー
ズドライにしてもよい。
【0060】
ポリヌクレオチド
一実施形態には、本明細書で開示されるポリペプチドのうちの1つ以上をコードする単離
ポリヌクレオチドが含まれる。本発明のポリヌクレオチドは全ゲノム未満を含有し、1本
鎖または2本鎖の核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、cDNA、ゲ
ノムDNA、化学合成RNAもしくはDNA、またはその組合せとすることができる。ポ
リヌクレオチドは、他の構成要素、例えばタンパク質、脂質、及び他のポリヌクレオチド
を含まずに精製することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、50%、75%、90
%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%精製することができる。
本発明の一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1-27に示されるポリペプチ
ドまたはその断片をコードする。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドは、他のヌクレオチド配列、例えばリンカーをコードする配
列、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、またはタンパク質精製に有用
なリガンド、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、及びブド
ウ球菌プロテインAを含むことができる。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドは単離することができる。単離ポリヌクレオチドは、天然に
関連付けられた5’及び3’の隣接ゲノム配列の一方または両方にすぐ隣接していない、
天然に存在するポリヌクレオチドである。単離ポリヌクレオチドは、例えば、任意の長さ
の組換えDNA分子とすることができるが、天然に存在するゲノムにおいて当該組換えD
NA分子に直接隣接して天然に見いだされる核酸配列が除去されているか不在であること
を条件とする。単離ポリヌクレオチドは、天然に存在しない核酸分子も含む。
【0063】
本発明のポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列も、本発明のポリヌクレオチ
ドである。縮重ヌクレオチド配列は、本発明のポリペプチドまたはその断片をコードする
ポリヌクレオチドであるが、遺伝コードの縮重のため、野生型のポリヌクレオチド配列と
は核酸配列が異なる。生理学的に機能的なポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレ
オチドの相補DNA(cDNA)分子、種相同体、及びバリアントも、本発明のポリヌク
レオチドである。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在するポリペプチドのコード配列を含むことが
でき、あるいは天然に存在しない改変配列をコードすることができる。所望の場合、ポリ
ヌクレオチドは、発現調節要素(例えば、複製開始点、プロモーター、エンハンサー、ま
たは宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドの発現を駆動する他の制御要素を含む)
を含む発現ベクターにクローニングすることができる。発現ベクターは、例えば、pBR
322、pUC、もしくはColE1などのプラスミド、またはアデノウイルス2型ベク
ターもしくは5型ベクターなどのアデノウイルスベクターとすることができる。任意選択
により他のベクターも使用することができ、これには以下に限定するものではないが、シ
ンドビスウイルス、シミアンウイルス40、アルファウイルスベクター、ポックスウイル
スベクター、ならびにサイトメガロウイルス及びレトロウイルスベクター(例えば、マウ
ス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、及びラウス
肉腫ウイルス)が含まれる。また、ミニ染色体(例えば、MC及びMC1)、バクテリオ
ファージ、ファージミド、酵母人工染色体、バクテリア人工染色体、ウイルス粒子、ウイ
ルス様粒子、コスミド(ファージラムダのcos部位が挿入されたプラスミド)、及びレ
プリコン(細胞内で自らの制御下で複製が可能な遺伝子要素)も使用することができる。
【0065】
発現調節配列に作用可能に結合したポリヌクレオチドを調製し宿主細胞内で発現させる
方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,366,246号を参
照。本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの転写及び/または翻訳を指示する
1つ以上の発現調節要素に隣接した位置または近い位置にある場合、作用可能に結合して
いる。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、プローブまたはプライマー(例えば、PCRプ
ライマー)として使用して、試験試料(例えば、生物学的試料)中のポリヌクレオチドの
存在を検出することができる。プローブとは、典型的には配列特異的な様式で、例えばハ
イブリダイゼーションを通じて、標的核酸との相互作用が可能な分子である。プライマー
とは、酵素的操作を支持することができ、かつ酵素的操作が生じるように標的核酸とハイ
ブリダイズすることができる、プローブのサブセットである。プライマーは、ヌクレオチ
ドもしくはヌクレオチド誘導体、または酵素的操作を妨げない当技術分野で利用可能な類
似体のうちの任意の組合せから作製することができる。
【0067】
プローブまたはプライマーは、本発明のポリペプチドをコードする約6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、4
0、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、または
それ以上の連続したヌクレオチドであり得る。
【0068】
抗体
抗体には、本明細書に記載のシスタチンBポリペプチド、本明細書に記載のバリアントシ
スタチンBポリペプチド、またはその断片に特異的に結合する抗体分子が含まれる。抗体
は、複数のポリペプチドに特異的に結合することができる。「抗体」という用語は、イン
タクトな抗体、または抗原結合においてインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分も
しくは断片を指す。また、「抗体」という用語は、1つ以上のシスタチンBポリペプチド
(例えば、配列番号1-27)に特異的に結合する、任意のタイプの抗体分子または特定
の結合分子も含む。抗体は、天然に存在するものであっても、天然に存在しない、合成の
、または遺伝子操作されたものであってもよい。本明細書において、抗体の「抗原結合部
分」、抗体の「抗原結合断片」などという用語は、シスタチンBポリペプチド(例えば、
配列番号1-27)に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に取
得可能な、合成の、または遺伝子操作された任意のポリペプチド、糖タンパク質、または
免疫グロブリンを含む。
【0069】
抗体またはその断片は、本明細書に記載のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体
は、好適な実験動物においてin vivoで作製することも、組換えDNA技法を用い
てin vitroで作製することもできる。抗体を調製しその特性を決定する手段は、
当技術分野で周知である。例えば、Dean、Methods Mol.Biol.80
:23-37(1998);Dean、Methods Mol.Biol.32:36
1-79(1994);Baileg、Methods Mol.Biol.32:38
1-88(1994);Gullick、Methods Mol.Biol.32:3
89-99(1994);Drenckhahn他 Methods Cell.Bio
l.37:7-56(1993);Morrison,Ann.Rev.Immunol
.10:239-65(1992);Wright他 Crit.Rev.Immuno
l.12:125-68(1992)を参照。例えば、ポリクローナル抗体は、本明細書
に記載のポリペプチドを動物(例えば、ヒトもしくは他の霊長類、マウス、ラット、ウサ
ギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマ)に投与すること
によって生成することができる。免疫化した動物から血清を採取し、抗体は、例えば、硫
酸アンモニウムを用いて沈殿させ、次にアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマ
トグラフィーを行うことによって、血漿から精製する。ポリクローナル抗体を生成及び処
理する技法は、当技術分野において公知である。
【0070】
抗体は、IgG(IgG1、IgG2、IgG2a、Ig2b、IgG3、IgG4)
、IgM、IgA(IgA1及びIgA2)、IgD、及びIgEを含めた任意のアイソ
タイプとすることができる。
【0071】
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、またはその抗原結合
断片とすることができる。モノクローナル抗体とは、実質的に同質の抗体群から得られる
抗体である。実質的に同質の抗体群は、少量の変異体またはバリアントを含有し得る。モ
ノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位と相互作用する。それぞれのモ
ノクローナル抗体は、典型的には単一のエピトープを標的とするが、ポリクローナル抗体
の個体群は、典型的には多様なエピトープの群を標的とする様々な抗体を含有する。モノ
クローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler及びMilstein、N
ature 256:495、1975)、組換え法(米国特許第4,816,567号
)、及びファージ抗体ライブラリーからの単離(Clackson他、Nature 3
52:624-628、1991;Marks他、J.Mol.Biol.222:58
1-597、1991)を含めた多数の方法によって生成することができる。
【0072】
キメラ抗体またはその抗原結合部分は、特定の種または特定の抗体のクラスもしくはサ
ブクラスに由来する重鎖及び/または軽鎖の一部を有し、鎖の残りの部分は別の種、また
は別の抗体のクラスもしくはサブクラスに由来するものである。例えば、Morriso
n,Science 229:1202(1985);Oi他、BioTechniqu
es 4:214(1986);Gillies他、J.Immunol.Method
s 125:191-202(1989);米国特許第5,807,715号;同第4,
816,567号;同第4,816,397号を参照。
【0073】
キメラ抗体は、例えば、CDRグラフティング(EP239,400;PCT公開WO
91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;及び
同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイ
シング(resufacing)(EP592,106;EP519,596;Padl
an、Molecular Immunology 28:489-498(1991)
;Studnicka他、Protein Engineering 7(6):805
-814(1994);Roguska他、PNAS 96:969-973(1994
))、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含めた様々な技法を
用いて生成することができる。
【0074】
一実施形態では、キメラ抗体は、互いに異なる種の可変領域及び定常領域を含むことが
でき、例えば、抗体は、ある哺乳類の重鎖及び軽鎖の可変領域と、異なる動物(例えば、
マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、またはヒト)の重鎖及び軽鎖の定常領域を含むことができ
る。キメラ抗体は、受容抗体に導入されるCDRにもフレームワーク配列にも含まれてい
ない、追加のアミノ酸(amino acid acids)を含むことができる。この
ようなアミノ酸は、抗体が抗原を認識し結合する能力をより的確に最適化するために導入
され得る。例えば、必要に応じて、抗体の可変領域のフレームワーク領域内のアミノ酸を
置換して、再整形した抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するようにさせることが
できる。Sato他、Cancer Res.(1993)53:851-856を参照
。
【0075】
抗体の抗原結合部分または断片における非限定的な例としては、以下のものが挙げられ
る:Fab断片;Fab’断片;Fab’-SH断片;F(ab’)2断片;Fd断片;
Fv断片;1本鎖Fv(scFv)分子;sdAb断片(ナノボディ);Fab様抗体(
パパイン消化によって得られるFab断片に同等な、重鎖及び軽鎖の可変領域を含有する
抗原結合断片);F(ab’)2様抗体(ペプシン消化によって得られるF(ab’)2
断片に同等な、2つの抗原結合ドメインを含有する抗原結合断片)、抗原断片から調製さ
れる多特異性抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、多機能性抗体、ヒト化抗体、イヌ化
抗体、ヒト抗体、イヌ抗体、ネコ抗体、マウス抗体、ウサギ抗体、合成抗体、CDRグラ
フト抗体、及び抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば
、CDR3ペプチドなどの単離相補性決定領域(CDR))、または制限FR3-CDR
3-FR4ペプチド。また、他の遺伝子操作された分子、例えば、ドメイン特異性抗体、
単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボデ
ィ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価のナノボディ、二価のナノボ
ディ)、1本鎖(FV)2(sc(Fv)2);二価(scFv)2);四価([sc(
Fv)2]2)のscFV抗体、及びスモールモジュラー免疫医薬(SMIP)、及びサ
メ可変IgNARドメインも、本明細書における「抗原結合断片または部分」とみなされ
る。
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する
(specifically bind)」、または「~に特異的な」とは、第1の抗原
、例えば配列番号1-27のポリペプチドが、他の非特異的な分子よりも高いアフィニテ
ィーで本明細書に記載の抗体を認識し結合することを意味する。また、「特異的に結合す
る(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifi
cally bind)」、または「~に特異的な」は、第1の抗体、例えば配列番号1
-27に対し産生した抗体が、他の非特異的な分子よりも高いアフィニティーで配列番号
1-27を認識し結合することも意味する。非特異的分子とは、第1の抗原と共通のエピ
トープを共有しない抗原である。特異的結合は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(EL
ISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、またはウェス
タンブロットアッセイを用いて、当技術分野で周知の方法論を用いて試験することができ
る。
【0076】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24、25、26、27、または27に示されるポリペプチド上のエピ
トープに特異的に結合する。一実施形態では、エピトープは、AYFLAYF(配列番号
20)、ELAYF(配列番号21)、DELAYF(配列番号22)、HDELAYF
(配列番号23)、KHDELAYF(配列番号10)、AKHDELAYF(配列番号
24)、KAKHDELAYF(配列番号25)、NKAKHDELAYF(配列番号2
6)、TNKAKHDELAYF(配列番号27)、またはQTNKAKHDELAYF
(配列番号4)である。
【0077】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1-27またはその断片と
の結合において、第2の抗体または参照抗体と競合する。任意の競合的結合アッセイを使
用して、同じ抗原に対する2つの抗体間の競合を測定することができる。例えば、サンド
イッチELISAアッセイをこの目的に使用することができる。交差反応性をアッセイす
る手段は当業者に周知である(例えば、Dowbenko他(1988)J.Virol
.62:4703-4711を参照)。
【0078】
競合的結合の評価に使用するいずれかのアッセイを用いて、第1の抗体の存在下で、第
2の抗体の抗原に対する結合が少なくとも約30%、40%、50%、60%、75%、
90%またはそれ以上低減された場合、第1の抗体は第2の抗体の結合を競合的に阻害す
ると考えられる。
【0079】
競合的結合は、固体担体に付着した配列番号1-27に示される1つ以上の単離ポリペ
プチドを準備し、抗体の、当該ポリペプチドに結合する能力、または当該ポリペプチドと
の結合において本明細書に記載の抗体と競合する能力をアッセイすることによって、確認
することができる。
【0080】
抗体には、(a)配列番号1-27またはその抗原結合断片との結合において、参照抗
体と競合する抗体及びその抗原結合断片;(b)参照抗体と同じ配列番号1-27または
その抗原結合断片のエピトープに結合する抗体及びその抗原結合断片;(c)参照抗体と
実質的に同じKdで配列番号1-27またはその抗原結合断片に結合する抗体及びその抗
原結合断片;ならびに/または(d)参照抗体と実質的に同じオフレートで配列番号1-
27またはその抗原結合断片に結合する抗体及びその抗原結合断片が含まれ、ここで、参
照抗体とは、107l/molまたはそれ以上の結合アフィニティーKaで配列番号1-
27のポリペプチドまたはその抗原結合断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合
断片である。
【0081】
抗体またはその抗原結合断片におけるポリペプチドパートナーに対するアフィニティー
は、解離定数(Kd)によって表すことができる。平衡解離定数(Kd)は、koff/
konの定量で計算される。Chen,Y.他、1999、J.Mol.Biol.29
3:865-881を参照。アフィニティー定数を測定する様々な方法は当技術分野にお
いて公知である。特定の実施形態では、参照抗体は、特定のKonレート/会合レートま
たはKoffレートで配列番号1-27のポリペプチドに対する結合アフィニティーを有
する抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、抗体は6×105M-1s-
1またはそれより良好なKonで特異的に結合し、抗体は5×10-6s-1またはそれ
より良好なKoffレートで特異的に結合し、あるいは抗体は500pM、400pM、
300pM、200pM、100pM、50pM、40pM、30pM、20pM、また
はそれより良好な結合アフィニティーで特異的に結合する。
【0082】
配列番号1-27に特異的に結合する抗体は、試料(例えば、動物からの血清、血液、
血漿、細胞、組織、唾液、プラーク、歯肉溝液、歯肉生検、舌スワブ、または尿試料)中
に存在するシスタチンBポリペプチド及びその断片の存在を検出するのにとりわけ有用で
ある。免疫測定法は、1つの抗体またはいくつかの抗体を利用することができる。免疫測
定法は、例えば、1つのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、1つのポリペプチド
の複数のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の組合せ、異なるポリペプチドのエピ
トープに特異的なモノクローナル抗体、同じ抗原に特異的なポリクローナル抗体、異なる
抗原に特異的なポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体と
の組合せを使用することができる。免疫測定法プロトコルは、例えば、競合型、直接反応
型、またはサンドイッチ型の、例えば標識抗体を使用したアッセイに基づくことができる
。抗体は、当技術分野で公知の任意のタイプの標識で標識することができ、このような標
識には、例えば、蛍光、化学発光、放射性、酵素、コロイド金属、ラジオアイソトープ、
及び生物発光の標識が含まれる。
【0083】
抗体またはその抗原結合断片は支持体に結合させ、ある特定の疾患及び状態の試料中に
存在するポリペプチドの存在または量の検出に使用することができる。支持体としては、
例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロ
ン、アミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、及びマグ
ネタイト(magletite)が挙げられる。抗体またはその抗原結合断片は、凍結乾
燥、粉末化、または乾燥させてもよく、例えばフリーズドライにしてもよい。
【0084】
抗体はさらに、イムノアフィニティーカラムによるポリペプチドの単離に使用すること
もできる。抗体は、免疫選択活性を保持するように、例えば吸収または共有結合によって
、固体担体に固定することができる。任意選択により、抗体の抗原結合部位のアクセス性
が保たれるようにスペーサー群を含めることができる。次に、固定された抗体を使用して
、生物学的試料(以下に限定するものではないが、唾液、プラーク、歯肉溝液、歯肉生検
、舌スワブ、血清、血液、及び尿を含む)からの配列番号1-27またはその断片に特異
的に結合させることができる。
【0085】
また、抗体を免疫局在性の研究に使用して、様々な細胞事象または生理学的状態におけ
る本明細書に記載のポリペプチドの存在及び分布を分析することもできる。また、抗体を
使用して、受動免疫に関与する分子を同定したり、非タンパク質抗原の生合成に関与する
分子を同定したりすることもできる。このような分子の同定は、ワクチン開発に有用であ
り得る。抗体(例えば、モノクローナル抗体及び1本鎖抗体を含む)を使用して、ある特
定の疾患または状態の経過を監視することができる。ある動物からの試験試料中の配列番
号1-27またはその断片の量の増加または減少を測定することにより、障害の改善を目
的とする特定の治療レジメンが有効であるかどうかを判定することができる。抗体は、例
えば、RIA、ELISA、またはウェスタンブロットアッセイなどの直接結合アッセイ
を用いて、検出及び/または定量化することができる。
【0086】
検出の方法
一実施形態では、試料中のシスタチンBポリペプチドを検出する方法であって、試料と、
配列番号1-27に特異的な1つ以上の抗体とを、シスタチンBポリペプチドと配列番号
1-27に特異的な1つ以上の抗体との複合体の形成に適した条件下で接触させることを
含む方法が提供される。シスタチンBポリペプチドと配列番号1-27に特異的な1つ以
上の抗体との複合体が検出される。
【0087】
一実施形態では、配列番号1-27を含むポリペプチド及びその断片を検出する方法が
提供される。任意選択により、試料中の配列番号1-27を含むポリペプチドの量を検出
することができる。ポリペプチドの相対的レベルは、いくつかの疾患または状態の診断ま
たは検出に使用することができる。当技術分野で公知の任意のポリペプチド検出方法を本
明細書に記載の方法で使用することができる。
【0088】
本明細書に記載の抗体と共に使用するアッセイ方法としては、直接及び間接の標識技法
、イムノアフィニティーカラム、免疫磁気ビーズ、蛍光活性化セルソーティング(FAC
S)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、凝集アッセ
イ、ネフェロメトリックアッセイ、定量的ネフェロメトリックアッセイ、さらに一次抗体
を検出する標識二次抗体が挙げられ得る。
【0089】
抗体は、例えば、検出に適合した励起及び発光波長を有する蛍光標識によって、蛍光活
性化セルソーターなどの市販の装置を用いて、検出可能に標識することができる。蛍光標
識の例としては、フィコエリトリン(PE)、フルオレセインイソチオシアネート(FI
TC)、ローダミン(RH)、Texas Red(TX)、Cy3、Hoechst
33258、及び4’6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)が挙げられる
。このような標識は、標準的技法を用いて抗体に結合させることができる(Maino他
、1995、Cytometry 20:127-133)。
【0090】
本明細書に記載の方法は、配列番号1-27またはその断片の検出に使用することがで
き、このとき抗体または抗原結合抗体断片は配列番号1-27に特異的に結合する。生物
学的試料としては、例えば、動物(例えば、イヌ、ネコ、またはヒト)からの血清、血液
、細胞、血漿、唾液、プラーク、歯肉溝液、歯肉生検、舌スワブ、または尿が挙げられ得
る。試験試料は、未処理であっても、沈殿、分画、分離、希釈、濃縮、精製を行ってもよ
い。
【0091】
本明細書において、「患者(患畜)(patient)」または「対象」とは、ヒト、
またはネコ、ウシ、ブタ、ウマ、もしくはイヌを含めた非ヒト動物を意味し得る。
【0092】
本明細書において、「試料」、「試験試料」、「患者試料」、または「対象試料」とい
う用語には、以下に限定するものではないが、対象から得られた血液、血清、血漿、唾液
、プラーク、歯肉溝液、歯肉生検、舌スワブ、または尿の試料が含まれる。
【0093】
アッセイには、以下に限定するものではないが、競合型、直接反応型、またはサンドイ
ッチ型アッセイに基づいたものが含まれ、以下に限定するものではないが、酵素結合免疫
吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、IFA、放射免疫測定法(RIA)、
血液凝集(HA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)
、及びマイクロタイタープレートアッセイ(マイクロタイタープレートの1つ以上のウェ
ルで行われる任意のアッセイ)が含まれる。あるアッセイは、リバーシブルフロークロマ
トグラフィー結合アッセイ(reversible flow chromatogra
phic binding assay)、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む
。例えば、米国特許第5,726,010号を参照。
【0094】
アッセイでは、固相または基質を使用することができ、あるいは免疫沈殿法または固相
を利用しない他の任意の方法によって実施することができる。固相または基質が使用され
る場合、1つ以上のポリペプチドまたは抗体は、固体担体または基質(例えば、マイクロ
タイターウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、マトリックス、膜、合成もしくは
天然の繊維(例えば、ガラスもしくはセルロースベースの材料、またはポリエチレン、ポ
リプロピレン、もしくはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)で構成された繊維マット
、粒子材料(例えば、ガラスまたは様々な熱可塑性ポリマー)で構成された焼結構造、ま
たはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(概して本来的に合成のもの)で構
成された鋳造膜フィルム)に直接的または間接的に付着する。一実施形態では、基質は、
多孔質ポリエチレンとして一般的に知られる焼結ポリエチレン粒子であり、例えば、Ch
romex Corporation(Albuquerque,NM)製の10-15
ミクロンの多孔質ポリエチレンである。これらの基質材料は全て、フィルム、シート、ま
たはプレートなどの好適な形状で使用することができ、あるいは、紙、ガラス、プラスチ
ックフィルム、またはファブリックなどの適切な不活性担体にコーティングまたは結合ま
たは積層することができる。抗体を固相に固定する好適な方法としては、イオン的、疎水
的、共有結合的な相互作用などが挙げられる。
【0095】
一実施形態では、方法は、試験試料と、配列番号1-27に特異的に結合する1つまた
は複数の抗体とを、ポリペプチド/抗体複合体、すなわち免疫複合体の形成を可能にする
条件下で接触させることを含む。すなわち、抗体は、試料中に位置する配列番号1-27
の1つまたは複数のポリペプチドに特異的に結合する。当業者は、抗体/ポリペプチド複
合体の結合の検出に使用されるアッセイ及び条件に精通している。試料中のポリペプチド
及び抗体間複合体の形成が検出される。抗体/ポリペプチド複合体の形成は、ポリペプチ
ドが患者試料中に存在することを示すものである。
【0096】
一実施形態では、抗体に結合した酵素結合体などの指示試薬が検出可能な反応を触媒し
た場合に、ポリペプチド/抗体複合体が検出される。任意選択により、シグナル生成化合
物を含む指示試薬を、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成を可能にする条件下で、
ポリペプチド/抗体複合体に適用してもよい。ポリペプチド/抗体/指示薬複合体が検出
される。任意選択により、ポリペプチド/抗体複合体の形成の前にポリペプチドまたは抗
体を指示試薬で標識してもよい。当該方法は、任意選択により陽性または陰性の対象を含
むことができる。陽性対照は、Cys Bに特異的な抗体に特異的に結合し陽性の結果を
もたらすと考えられる1つ以上のポリペプチドを含有することができる。陰性対照は、い
かなるCys Bポリペプチドも、Cys Bに特異的な抗体に特異的に結合または交差
反応し得るいかなるポリペプチドも他の構成要素も含有しない。
【0097】
一実施形態では、1つ以上の抗体を、固相または基質に対し、共有結合的にまたは非共
有結合的に固定する。Cys Bポリペプチドを含む可能性のある試料を基質に添加する
。Cys Bに特異的な1つ以上の抗体を基質に添加する。抗体は、固相で使用されるも
のと同じ抗体であってもよく、あるいは異なる供給源または種からのものであってもよく
、酵素結合体などの指示試薬に結合していてもよい。各添加の前に洗浄ステップを実施し
てもよい。発色団または酵素基質を添加し、発色を展開させる。発色反応を停止させ、例
えば分光光度計を用いて、発色を定量化することができる。
【0098】
別の実施形態では、1つ以上の抗体を、固相または基質に固定する。Cys Bポリペ
プチドを含有する可能性のある試験試料を基質に添加する。Cys Bポリペプチドに特
異的に結合する第2の抗種抗体(anti-species antibody)を添加
する。この第2の抗種抗体は、固相に固定した抗体とは異なる種からのものである。第2
の抗種抗体に特異的に結合し、かつ固相に固定した抗体には特異的に結合しない第3の抗
種抗体を添加する。第3の抗種抗体は、酵素結合体などの指示試薬を含むことができる。
各添加の前に洗浄ステップを実施してもよい。発色団または酵素基質を添加し、発色を展
開させる。発色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、発色を定量化することがで
きる。
【0099】
一実施形態では、1つ以上の捕捉抗体は、本明細書に記載のポリペプチドの1つ以上の
エピトープに特異的に結合することができる。1つ以上の捕捉抗体は、配列番号1-27
の1つまたは複数のポリペプチドを、例えば固体担体に固定するのに使用することができ
る。1つ以上の検出抗体は、ポリペプチドの同じ1つ以上のエピトープまたは異なる1つ
以上のエピトープに特異的に結合することができる。検出抗体は、ポリペプチドの固体担
体への固定を検出または視覚化するのに使用することができる。この実施形態は、ただ1
つの抗体を捕捉機能及び検出機能の両方に使用するアッセイよりも特異的でありかつ感受
性が高いため、有利である。
【0100】
あるタイプのアッセイ形式では、1つ以上の抗体を固相または基質にコーティングする
ことができる。配列番号1-27を含むポリペプチドまたはその断片を含有する疑いのあ
る試験試料を、前述のポリペプチドに特異的な抗体または抗体断片に結合したシグナル生
成化合物を含む指示試薬と共に、試験試料ポリペプチドに対する固相の抗体またはポリペ
プチドに特異的な抗体に結合した指示試薬化合物の抗原/抗体複合体の形成に十分な条件
下で、一定時間インキュベートする。抗ポリペプチド抗体に結合した指示試薬と固相との
結合を、定量的に測定することができる。対照試料または対照基準から生成されたシグナ
ルと比較しての、シグナルの測定可能な変化は、配列番号1-27を含むポリペプチドま
たはその断片の存在を示すものである。このタイプのアッセイは、試験試料中のポリペプ
チドの量を定量化することができる。
【0101】
別のタイプのアッセイ形式では、1つ以上の抗体を担体または基質にコーティングする
。抗体を指示試薬に結合し、試験試料に添加する。この混合物を担体または基質に適用す
る。試験試料中にCys Bポリペプチドが存在する場合、Cys Bポリペプチドは指
示試薬に結合した1つ以上の抗体にも、担体に固定した1つ以上の抗体にも結合すること
になる。そして、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出することができる。このタイ
プのアッセイは、試験試料中のポリペプチドの量を定量化することができる。
【0102】
別のタイプのアッセイ形式では、1つ以上の抗体を担体または基質にコーティングする
。試験試料を担体または基質に適用し、インキュベートする。固体担体を洗浄液で洗浄す
ることにより、結合していない試料からの構成要素を洗い落とす。配列番号1-27を含
むポリペプチドまたはその断片が試験試料中に存在する場合、固相にコーティングされた
抗体に結合することになる。このポリペプチド/抗体複合体は、指示試薬に結合した第2
の抗種特異性抗体を用いて検出することができる。そして、ポリペプチド/抗体/抗種抗
体指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイは、試験試料中のポリペ
プチドの量を定量化することができる。
【0103】
ポリペプチド/抗体複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成は、例えば
放射分析法、比色分析法、蛍光分析法、サイズ分離法、または沈殿法によって検出するこ
とができる。任意選択により、ポリペプチド/抗体複合体の検出は、シグナル生成化合物
を含む指示試薬に結合した二次抗体を添加することによって行われる。ポリペプチド/抗
体複合体に会合したシグナル生成化合物(標識)を含む指示試薬は、上述の方法を用いて
検出することができ、これには発色剤、酵素結合体などの触媒、フルオレセイン及びロー
ダミンなどの蛍光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナンスリジニウム、ルテ
ニウム、及びルミノールなどの化学発光化合物、放射性元素、直接的な視覚標識、さらに
補因子、阻害物質、磁気粒子などが含まれる。酵素結合対の例としては、アルカリホスフ
ァターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼなどが挙げ
られる。特定の標識の選択はクリティカルなことではないが、特定の標識を選択すること
で、それ自身によってまたは1つ以上のさらなる物質と共にシグナルを生成することがで
きると考えられる。
【0104】
本明細書において「量を決定する」という表現は、試料中の1つ以上のポリペプチドの
レベルを測定または識別することを指す。これは、当技術分野で周知のポリペプチドを検
出するための方法論によって行うことができ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELI
SA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、またはウェスタ
ンブロットアッセイ、または免疫組織化学が挙げられる。代替方法として、配列番号1-
27のポリペプチドは、質量分析法または当業者に公知の類似方法によって決定すること
ができる。試料中に存在するポリペプチドの量の決定は、このようなin vitro分
析及び実験操作によって行われる。
【0105】
診断の方法
一実施形態では、対象における腎疾患を診断する方法が提供される。当該方法は、対象か
らの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであって、シスタチンBポリ
ペプチドの量が配列番号1-27に特異的に結合する1つ以上の抗体を用いて決定される
、決定することを含む。試料中のシスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基
準と比較し、試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べ
て高いことが腎疾患の徴候となる。
【0106】
他の方法では、CKD患者におけるAKIまたはAKIを診断することができる。一実
施形態では、当該方法は、がんまたは腎臓がんが原因の腎機能低下または腎臓への物理的
損傷を診断することができる。別の実施形態では、当該方法は、細菌感染が原因の腎疾患
、腎機能低下または腎臓への物理的損傷を診断することができる。細菌感染の原因は、例
えば、アナプラズマ種、エーリキア種、レプトスピラ種、エシェリキア種、またはボレリ
ア種であり得る。
【0107】
本発明の一実施形態では、細菌感染が原因の腎疾患、腎機能低下または腎臓への物理的
損傷を診断または検出する方法が提供される。当該方法は、対象からの試料中のシスタチ
ンBポリペプチドの量を決定することであって、シスタチンBポリペプチドの量が配列番
号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、
18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27からなる1つ以上
のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を用いて決定される、決定することを
含む。試料中のシスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料
中のシスタチンBポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが、細
菌感染が原因の腎疾患、腎機能低下、または腎臓への物理的損傷の徴候となる。
【0108】
本明細書で開示するポリペプチドは、疾患を有する対象試料において、疾患を有しない
対象からの対照対象試料よりも多い量または高いレベルで見いだされる。本明細書に記載
のポリペプチドの対象試料における相対的レベルは、疾患及び疾患重症度の進行を示すこ
とができる。すなわち、ある場合において、より多い量または高いレベルのシスタチンB
ポリペプチドは、より重症の疾患状態を意味する。
【0109】
シスタチンBポリペプチドの高いレベルとは、対照試料または対照基準よりも約10、
20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、
500%またはそれ以上高いレベルである。シスタチンBポリペプチドの高いレベルとは
、対照試料または対照基準よりも約10-500%またはそれ以上、約20-500%ま
たはそれ以上、約30-500%またはそれ以上、約40-500%またはそれ以上、約
50-500%またはそれ以上、約60-500%またはそれ以上、約100-500%
またはそれ以上のレベルである。
【0110】
また、シスタチンBポリペプチドの高いレベルとは、対照試料または対照基準に比べて
量が統計的有意に増加したレベルでもあり得る。
【0111】
また、シスタチンBポリペプチドの高いレベルとは、約10、20、50、100、2
00、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,5
00、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8
,000、9,000、10,000ng/ml、またはそれ以上であり得る。シスタチ
ンBポリペプチドの対照レベルまたは対照基準とは、約400、350、300、250
、200、150、100、50、20、10ng/mlまたはそれ以下であり得る。
【0112】
シスタチンBポリペプチドの高いレベルは、いかなるタイプの腎臓の疾患もしくは状態
、細菌感染、または歯周疾患も有しない正常な対照対象を用いて決定される対照試料また
は対照基準と比較することができる。
【0113】
一部の実施形態では、試験試料中のシスタチンBポリペプチドのレベルを、1個体以上
の正常な対照対象からの対照試料中のシスタチンBのレベルと比較する。典型的には、次
に対照試料中で測定した対照レベルを試験試料中で測定したシスタチンBポリペプチドレ
ベルと比較する。代替方法として、試験試料中のシスタチンBポリペプチドのレベルを、
予め決定または事前定義した対照レベル(「対照基準」)と比較する。例えば、シスタチ
ンBポリペプチドの対照基準は、データから、例えば、複数の正常または健康な対照対象
からの対照試料中のシスタチンBポリペプチドのレベルを含めたデータから計算すること
ができる。評価を受ける正常または健康な対照対象及び試験対象は、同じ種であり得る。
【0114】
特定の実施形態では、哺乳類における、より詳細にはイヌ、ネコ、及びヒトにおける、
ある特定の疾患または状態を識別するための試薬及び方法が提供される。ある特定の実施
形態では、患者の診断及び予測を提供する方法が提供される。対象試料中のCys Bポ
リペプチドの識別は、腎疾患の独立予測因子、または慢性腎疾患ステージ(例えば、ステ
ージ1-4)における急性腎障害または活動性腎障害の識別子であり得る。当該方法は、
慢性腎疾患における急性腎障害または活動性腎障害の診断及び識別を有利に可能にし、患
者の年齢または体重による影響または交絡を受けない。したがって、さらなる実施形態は
、ポリペプチドを用いて決定される前述の腎臓の患者予測を使用して、適切な腎臓療法を
選択することに向けられる。
【0115】
対象試料におけるCys Bポリペプチドの識別は、AKIグレード(例えば、グレー
ド1-5)の独立予測因子であり得る。本明細書に記載の方法及び組成物は、グレード3
より前のAKIステージの診断及び識別を有利に可能にし、患者の年齢または体重による
影響または交絡を受けない。
【0116】
抗体は、腎疾患にかかっている疑いのある動物、例えば、ヒト、ネコ、またはイヌから
試験試料を得ることにより、腎疾患の診断方法に使用することができる。試験試料と抗体
とを、抗体-抗原複合体(すなわち、免疫複合体)の形成を可能にする条件下で接触させ
る。当業者は、抗原/抗体複合体の形成を可能にし、それに適切である条件を認識してい
る。抗体-抗原複合体の存在または量は、当技術分野で公知の方法論によって決定するこ
とができる。
【0117】
実施形態にはさらに、患者試料中の特定のポリペプチドのレベルを識別することにより
、患者の健康状態を予測する、疾患進行を監視する、及び/または治療有効性を評価/監
視する方法が含まれる。一態様では、当該方法は、疾患進行または治療有効性を評価する
ために複数の時点で実施することができる。特定の実施形態では、当該方法は、診断で実
施し、次に、特定の療法が疾患進行の低減または改善をもたらすはずである治療後の特定
の時点で実施することができる。
【0118】
また、本明細書に記載の方法は、配列番号1-27を含むポリペプチドの量(amou
nt)または分量(quantity)も示すことができる。特定の実施形態では、ある
特定のポリペプチドの量または分量は、疾患ステージの指標(すなわち、ステージ1-4
)、疾患進行、及び/または予後指標をもたらす。酵素結合体などの多くの指示試薬を用
いると、存在するポリペプチドの量は生成シグナルに比例している。試験試料のタイプに
応じて、好適な緩衝試薬で希釈し、濃縮し、またはいかなる操作もすることなく固相と接
触させることができる。例えば、予め希釈した血清または血漿の試料、または尿などの濃
縮された検体は、ポリペプチドの存在または存在するポリペプチドの量の決定に使用する
ことができる。
【0119】
本明細書に記載のポリペプチド及びアッセイは、他のポリペプチドまたはアッセイと組
み合わせて腎疾患の存在を検出することができる。例えば、ポリペプチド及びアッセイは
、クレアチニンまたは一般的なタンパク質レベルの検出または測定に適した試薬と組み合
わせることができる。
【0120】
一実施形態では、上部尿路感染症と下部尿路感染症とを識別する方法も提供される。上
部尿路感染症とは、腎臓の感染症(腎盂腎炎)である。下部尿路感染症とは、膀胱の感染
症(膀胱炎)である。これらの状態は、区別が困難であり得る。これらの治療は異なり得
るため、医療従事者にとって上部尿路感染症と下部尿路感染症との違いが分かるのは有利
なことである。これらの感染症を識別するための方法が当技術分野で必要とされている。
【0121】
当該方法は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を、配列番号1-27
に特異的に結合する1つ以上の抗体を用いて決定することを含む。試料中のシスタチンB
ポリペプチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料中のシスタチンBポリペプチ
ドレベルが対照試料または対照基準に比べて高いことが対象における上部尿路感染症の徴
候となる。
【0122】
一実施形態では、急性腎障害と下部尿路感染症とを識別する方法が提供される。これら
の状態は、区別が困難であり得る。これらの治療は異なり得るため、医療従事者にとって
急性腎障害と下部尿路感染症との違いが分かるのは有利なことである。当該方法は、対象
からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定することであって、シスタチンBポ
リペプチドの量が配列番号1-27からなる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する
1つ以上の抗体を用いて決定される、決定することを含む。試料中のシスタチンBポリペ
プチドの量を対照試料または対照基準と比較し、試料中のシスタチンBポリペプチドレベ
ルが対照試料または対照基準に比べて高いことが対象における急性腎障害の徴候となる。
【0123】
一実施形態では、対象における歯周病を診断する方法が提供される。歯周疾患には、歯
肉炎(歯肉の炎症)及び歯周病が含まれる。歯周病は、アタッチメントロス及び歯槽骨の
破壊をもたらす歯周組織の疾患である。歯周疾患の臨床的診断は、疾患を示す歯周組織に
おける様々なサイン及び症状の認識によって行われる。サイン及び症状の出現は、通常は
疾患の発症からしばらく経ち、支持する骨及び組織にかなりの損傷が生じてからのことで
ある。さらに歯周疾患は、獣医学患畜において、全身麻酔なしでは適正に評価または治療
することができない場合が多い。歯周疾患を早期に検出する方法が当技術分野で必要とさ
れている。当該方法は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を決定するこ
とを含む。シスタチンBポリペプチドの量は、配列番号1-27に特異的な1つ以上の抗
体を用いて決定される。試料中のシスタチンBポリペプチドの量を対照試料または対照基
準と比較し、試料中のシスタチンBポリペプチドレベルが対照試料または対照基準に比べ
て高いことが対象における歯周疾患の徴候となる。
【0124】
治療方法
ある特定の実施形態では、対象における疾患状態を治療する方法が提供される。当該方法
は、対象からの試料中のシスタチンBポリペプチドの量を、番号1-13に特異的な1つ
以上の抗体を用いて決定するための分析の結果を提供する試験を要求することを含む。試
料が含有するシスタチンBポリペプチドの量が疾患状態に対する対照試料または対照基準
に比べて高い場合に、対象に疾患状態に対する治療が投与される。
【0125】
疾患状態には、AKI、歯周疾患、上部尿路感染症、及び腎疾患が含まれる。一実施形
態では、疾患状態は、がんでも腎臓がんでもない。
【0126】
CKD、AKI、及び腎疾患の治療としては、例えば、閉塞性ネフロン/尿管結石の手
術、腎臓新形成に対する化学療法、食事管理、腸のリン吸着剤、抗タンパク尿薬(例えば
、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、オメガ3脂肪酸)、降圧薬(例えば、
ACEI、カルシウムチャネル拮抗薬(CCA))、脱水を矯正するための輸液療法、ア
シドーシスの管理、利尿薬の投与、透析、電解質異常の矯正、制吐薬及び制酸薬、組換え
エリスロポエチンが挙げられる。上部尿路感染症は、抗生物質で治療することができる。
歯周疾患は、十分な洗浄、スケーリング、及びルートプランニング(root plan
ning)、歯肉グラフト手術、レーザー治療、再生手順(ポケットにおける膜(フィル
ター)、骨グラフト、または組織刺激タンパク質の使用)、歯科インプラント、ポケット
低減手順(歯肉組織の折り返し、及び組織を元の位置に固定する前の疾患原因細菌の除去
)で治療することができる。
【0127】
代替的な実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、組成物または治療レジーム
(組成物または食事)の疾患進行の改善に対する有効性を評価することができる。同様に
、本明細書に記載の方法を使用して、配列番号1-27を含むポリペプチドの患者レベル
に対する組成物または治療レジメンの活性を評価することができる。
【0128】
キット
一実施形態では、本明細書に記載の方法を実施するためのキットが提供される。ある特定
の実施形態では、当該キットは、配列番号1-27を含む1つまたは複数のポリペプチド
に特異的な1つまたは複数の抗体を含む。任意選択により、ある特定の実施形態では、使
用説明書に加えて、例えばサンドイッチアッセイで有用な二次抗体を含むことができる。
特徴的な標識抗体、さらに抗体の標識用の試薬もキットに存在し得る。
【0129】
さらなる実施形態では、キットは、それぞれが配列番号1-27を含む1つ以上のポリ
ペプチドに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を含む。ある特定の実施形態では、抗
体は、チップ、マイクロアレイ、ビーズなどを含むがこれに限定されない固体担体または
基質上で提供される。
【0130】
当該キット(例えば、製造品)は、患者試料中の本明細書に記載のポリペプチドまたは
そのタンパク質断片を検出するためのものであり得る。キットは、1つ以上の抗体及び、
当該抗体の、本明細書に記載の全長タンパク質またはタンパク質断片に対する結合を判定
する組成物を含む。また、キットまたは製造品は、1つ以上の抗体または抗体断片及び、
当該抗体または抗体断片の、試料中のポリペプチドに対する結合を判定する組成物も含む
ことができる。キットは、1つ以上のポリペプチドまたは抗体を含有するデバイス及び、
当該1つ以上のポリペプチドまたは抗体の使用説明書を、例えば哺乳類における腎疾患の
識別のために含むことができる。また、当該キットは、キットの1つ以上のポリペプチド
または抗体が腎臓の機能不全の識別のために使用され得るものであることを示すラベルを
含むパッケージング材料も含むことができる。緩衝液、対照などの当業者に公知の他の構
成要素は、このような試験キットに含まれ得る。本明細書に記載のポリペプチド、抗体、
アッセイ、及びキットは、例えば患者における個々のケースの腎疾患診断に有用である。
【0131】
当該キットは、腎疾患、特にイヌ、ネコ、及びヒトの腎疾患の治療を診断、予測、また
は監視するのに有用である。
【0132】
本明細書で例示的に記載される実施形態は、本明細書で具体的に開示されていない任意
の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の不在下で好適に実施され得る。したが
って、例えば、本明細書の各場合において、「~を含む」、「~から本質的になる」、及
び「~からなる」という用語のいずれかは、その通常の意味を保持しながら他の2つの用
語のいずれかに置き換えることができる。用いられた用語及び表現は、説明のための用語
として限定なしで使用され、このような用語及び表現の使用が、示され記載されている当
該特徴の等価物またはその一部を除外するようには意図されておらず、請求される実施形
態の範囲内で様々な改変が可能であることが認識されている。したがって、本明細書は実
施形態によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念における任意選択
による特徴、改変、及びバリエーションが当業者によって用いられ得ること、またこのよ
うな改変及びバリエーションが、本明細書及び付属の請求項によって定義されるこれらの
実施形態の範囲内とみなされることを理解するべきである。
【0133】
上述の特徴を含む方法の実施形態は、本開示の範囲内に入るように意図されている。
【実施例0134】
以下の実施例は、本開示における特定の実施形態及びその様々な用途を例示するもので
ある。これらの実施例は説明の目的で示すものに過ぎず、限定として解釈すべきではない
。
【0135】
実施例1:イヌCys Bのタンパク質配列
かつて、イヌCys Bは配列番号1に示すような77aaのタンパク質配列を有する
と考えられていた。
QVKAQLEERENKKYTTFKAVTFRSQVVAGTPYFIKVQVDD
DEFVHLRVFQSLPHENKPLALSSYQTNKAKHDELAYF(配列
番号1)
しかし、この考えは正しくない。MDCK細胞株をコンフルエントに増殖させ、付着し
た細胞を採取し、界面活性剤を含有する生理学的緩衝液に溶解した。溶解後、細胞を10
000rpmで30分間スピンして、細胞細片をペレット状にした。上清を尿特異性イヌ
シスタチンBの供給源に使用した。上清を使用して、イヌCys Bの欠損した21aa
N末端をトリプシン消化及びLC-MS同定を用いて配列決定した。
MMCGAPSASQPATADTQAIAD(配列番号2)
したがって、イヌCys B(FL-Cys B)の完全なアミノ酸配列を以下のように
決定した。
MMCGAPSASQPATADTQAIADQVKAQLEERENKKYTTFKA
VTFRSQVVAGTNYFIKVQVDDDEFVHLRVFQSLPHENKPL
ALSSYQTNKAKHDELAYF(配列番号3)
【0136】
実施例2:イヌシスタチンBに対する抗体
A. 組み換えタンパク質に対する抗体産生
ウサギにおける標準的な方法論に従って、免疫原として配列番号1及び配列番号3の組換
えタンパク質を使用することにより、ポリクローナル抗体を生成した。したがって、各抗
体は、ELISAアッセイでそれぞれの組換え免疫原に特異的に結合するように産生した
。
【0137】
マウスにおける標準的な方法論に従って、免疫原として配列番号3を有する組換えタン
パク質をアジュバントのCPGと共に使用することにより、モノクローナル抗体を産生し
た。7つの抗体は、ELISAアッセイでそれぞれの組換え免疫原に特異的に結合するよ
うに生成した。HRP-ヤギ抗マウスIgG H及びL鎖二次抗体を使用してモノクロー
ナル結合を検出した。試験した全てのクローンは、5ug/mlの組換えFLシスタチン
B(配列番号3)でコーティングしたプレートに結合した。表4は、クローンのうちの3
つにおける例示的な結合データを示している。
【0138】
【0139】
B: 合成ペプチドに対する抗体産生
イヌシスタチンBに由来する以下のペプチドをKLHに結合した。結合体を、ウサギの抗
体生成用の免疫原として使用した。
【0140】
シスタチンB C末端「ペプチド9」 QTNKAKHDELAYF(配列番号4)
シスタチンB N末端「ペプチド3-20」 CGAPSASQPATADTQAIA(
配列番号5)
シスタチンB N末端「ペプチド3-10」 CGAPSASQ(配列番号6)
シスタチンB N末端「ペプチド18-25」 CAIADQVKA(配列番号7)
シスタチンB「ペプチド2」FQSLPHENKPLALSS(配列番号8)
シスタチンB「ペプチド1」SQVVAGTPYFIKVQVDDD(配列番号9)
【0141】
さらに、マウスにおける標準的な方法論に従って、免疫原として配列番号2(N末端)
及び配列番号5(ペプチド3-20)のペプチドをフロイントアジュバントと共に使用す
ることにより、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生した。したがって、各
抗体は、ELISAアッセイでそれぞれの組換え免疫原に特異的に結合するように産生し
た。
【0142】
したがって、各抗体は、それぞれのペプチド免疫原に特異的に結合するように産生した
。例えば、下の表5は、ウサギ抗ペプチドポリクローナル抗体におけるペプチド1、2、
及び9とそれぞれの免疫原との典型的な結合曲線を示している。3つのポリクローナル抗
体全てが標的に対し高いアフィニティーで結合したので、これらをシスタチンB ELI
SAでサンドイッチの形成に使用することができる。
【0143】
【0144】
さらに、抗ペプチド9抗体及び抗ペプチド1抗体は、ELISAアッセイにおいて、刺
激を与えたMDCK細胞のライセート中で組換えFL-Cys B(配列番号3)及びネ
イティブな細胞内タンパク質に特異的に結合した。抗ペプチド9抗体は、競合ELISA
アッセイにおいて、ペプチドKHDELAYF(配列番号10)に特異的に結合すること
が示された。
【0145】
配列番号11、12、及び13を使用して、標準的な方法論に従ってウサギを免疫化し
た。各抗体は、ELISAアッセイにおいて、それぞれの抗原に特異的に結合した。
【0146】
実施例3:イヌシスタチンB検出のための免疫測定法
シスタチンB ELISAを以下のように開発した。
固相及び捕捉抗体:
96ウェル4BXマイクロタイタープレートを、10ug/mlのアフィニティー精製ウ
サギ抗ペプチド9で終夜4℃にてコーティングする。プレートを、0.05%のTWEE
N(登録商標)(ポリソルベート)20を含有する1×PBS、pH7.4で3回洗浄す
る。次にプレートを、1%のBSAを含有する1×PBS、pH7.4で2時間ブロック
する。上述のように洗浄した後、プレートを37℃、真空下で4時間乾燥させる。次にプ
レートを乾燥状態で4℃にて保管する。
【0147】
検出抗体の調製:
全長組換えシスタチンB(rFL-Cys B)(配列番号3)で免疫化したマウスから
、7つのモノクローナル抗体を生成した。rFL Cys Bに対する結合パフォーマン
スに基づいて1つのクローン(3H4)を選択し、プロテインGを用いて精製し、1.0
mgの精製された抗体をSMCC法を用いてホースラディッシュペルオキシダーゼ(HR
P)で標識し、脱塩して過剰なHRPを除去した。標識抗体を滴定し、0.25-2.0
ug/mlをELISAアッセイで使用した。
【0148】
シスタチンBサンドイッチELISAプロトコル:血清及び尿
シスタチンBは細胞内タンパク質であり、概して高濃度で自由に循環することはない。
このことは、負荷のかかったイヌ腎臓細胞から採集した上清中にタンパク質が見いだされ
なかったという事実によってさらに確認された。ただし、シスタチンBは破壊されたイヌ
腎臓細胞から精製された。そのため、血清中で検出される任意のシスタチンBは、この破
壊や細胞死に起因する可能性がある。活動性腎障害において、近位尿細管内の上皮細胞の
アポトーシス及びネクローシスは、血清及び尿中のシスタチンB増加をもたらす可能性が
ある(
図1)。
【0149】
シスタチンBは、愛玩動物における腎疾患とは関連付けられていない。上述のように組
換えシスタチンBに対するモノクローナル抗体を産生し、その特異性を、シスタチンCタ
ンパク質の存在下、ウェスタンブロット分析を用いて確認した(
図2)。これらの抗体を
用いてサンドイッチELISAも開発した。
【0150】
サンドイッチELISA用の基準は、rFL-Cys BまたはMDCK細胞ペレット
からの界面活性剤ライセートとした。両方の基準調製物を、LCMS法によって定量化し
た。尿試料を緩衝液A(0.1MのPO4;pH7.4、少なくとも0.1%のサルコシ
ルを含有)を用いて少なくとも1:10に希釈した。血清試料を緩衝液Aにおいて少なく
とも1:100に希釈し、100ulを上記のように二重反復でウェルに添加した。10
0マイクロリットル(100ul)を二重反復でポリクローナル抗体捕捉ウェルに添加し
、室温で振とうしながら1時間インキュベートした。次にプレートをPETCHEK(登
録商標)洗浄剤(IDEXX Laboratories,Inc.,Maine,US
A)で6回洗浄し、100ulの0.25-2ug/mlのHRPモノクローナル検出抗
体を添加した。検出抗体を振とうしながら30分間インキュベートし、次に6回洗浄し、
100ulの基質TMBをウェルに添加した。発色を5分間展開し、次に100ulの停
止溶液(1NのHCL)を加えた。プレートをVMAX(登録商標)マイクロプレートリ
ーダーで読み取った。Sigma plotで4PLパラメーター適合を使用し、未知数
を定量化した。
【0151】
ネイティブなイヌのシスタチンB(MDCKライセート)を用いて、上述のようにCy
s B ELISAアッセイで標準曲線を得た(
図3)。
【0152】
患畜試料中のイヌシスタチンBの検出
上述のようにシスタチンB ELISAアッセイを用いてイヌの尿におけるシスタチンB
レベルを決定した。これを表6に示す。
【0153】
【0154】
表6に示すように、健康なイヌは、急性(活動性)腎障害(AKI)及び慢性腎疾患(
CKD)に比較して尿中のシスタチンBレベルが低かった。AKI試料は、CKD試料よ
りも高いシスタチンBレベルを示した。
【0155】
ELISAを用いて、イヌゲンタマイシンモデルからの血清及び尿中のシスタチンB(
図4)、ならびに炎症または虚血誘発性活動性腎障害で診療所を受診したイヌの尿のシス
タチンB(
図5)を測定した。モデル系では、イヌに対し、血清クレアチニンが1.5m
g/dLに達するまで、8時間ごとに10mg/kgのゲンタマイシンを投与した。この
イヌでは、8日目にそのポイントに到達し、一方血清シスタチンBは1日目にベースライ
ンを上回って増加した。これらの暫定結果から、シスタチンBは、活動性腎障害に関しク
レアチニンよりも早期のマーカーとなることが示唆される。患畜試料では、健康な患畜と
活動性腎障害と診断された患畜との間に明確な分離がみられた。
【0156】
実施例4:経口スワブによるシスタチンB検出
コットンスワブを使用して、歯科検査を受けたイヌの歯肉の試料採取を行った。このイヌ
は、歯肉炎、歯肉疾患、さらに重度のう歯を示した。スワブをプラスチック試験管の中に
入れ、使用時まで4度で保管した。スワブを30分間室温に平衡化し、次に界面活性剤を
含有するシスタチンBアッセイ緩衝液0.5mlに30分間入れた。スワブを取り出し、
上述のシスタチンBアッセイで使用した。試料なしの対照スワブをバックグラウンドシグ
ナルの決定に使用した。対照スワブは、検出限界(LOD)を下回り平均ODが0.04
であった。一方、広範な歯科手順を受けたイヌからのスワブのODは1.04であった。
これにより、シグナル対ノイズS/N比は26となる。下の表7を参照。
【0157】
【0158】
2匹の歯周疾患を有するイヌの歯をコットンスワブで拭き取り、シスタチンB ELI
SA緩衝液中でシスタチンBを抽出し、試料としてシスタチンBアッセイにかけた。10
00ng/mlの組換え全長イヌシスタチンBタンパク質を添加した基準物質を陽性対照
として実行した。シグナル(450nMにおけるO.D.) は、組換え全長イヌシスタ
チンBタンパク質陽性対照については0.322、イヌ1については1.8485、イヌ
2については1.444であった。2匹の歯周疾患を有するイヌの値は、1000ng/
mlのイヌFL-Cys B基準物質よりも5倍超高かった。そのため、Cys Bは、
イヌなどの哺乳類における歯周疾患のマーカーとなる。
【0159】
実施例5:改変ELISA
96ウェル4BXマイクロタイタープレートを5μg/mlのアフィニティー精製ウサギ
抗ペプチド9で、終夜4℃にてコーティングした。プレートを、pH7.4、0.05%
のTWEEN(登録商標)(ポリソルベート)20を含有する1×PBSで3回洗浄する
。次にプレートを、1%のBSAを含有する1×PBS、pH7.4で2時間ブロックし
た。上述のように洗浄した後、プレートを37℃、真空下で4時間乾燥させる。次にプレ
ートを乾燥状態で4℃にて保管する。
【0160】
サンドイッチELISA用の基準は、rFL-Cys BまたはMDCK細胞ペレット
からの界面活性剤ライセートとした。両方の基準調製物を、LCMS法によって定量化し
た。尿試料を緩衝液A(0.1Mリン酸、pH7.2、少なくとも1.0%のN-ドデカ
ノイル-N-メチルグリシンナトリウム塩(Sarkosyl,Sigma)を含有)で
1:20に希釈した。血清試料を緩衝液Aにおいて少なくとも1:50に希釈し、100
ulを上記のように二重反復でウェルに添加した。100マイクロリットル(100ul
)を二重反復でポリクローナル抗体捕捉ウェルに添加し、室温で振とうしながら1時間イ
ンキュベートした。次にプレートをPETCHEK(登録商標)洗浄剤(IDEXX L
aboratories,Inc.,Westbook,Maine,USA)で6回洗
浄し、100ulの0.25-2ug/mlのHRP標識モノクローナル検出抗体を添加
した。検出抗体を振とうしながら30分間インキュベートし、次に6回洗浄し、100u
lの基質TMBをウェルに添加した。発色を5分間展開し、次に100ulの停止溶液(
1NのHCL)を加えた。プレートをVMAX(登録商標)マイクロプレートリーダーで
読み取った。Sigma plotで4PLパラメーター適合を使用し、未知数を定量化
した。
【0161】
実施例6:ヒトCys-Bの検出
この実施例では、抗イヌCys B抗体を用いてヒトCys Bを検出するためのELI
SAの構築を実証する。組換えヒトシスタチンB(rH FL Cys B)タンパク質
(配列番号14)をGenscript,USAから入手した。
>sp|P04080|CYTB_ヒトCystatin-B OS=ホモサピエンス
GN=CSTB PE=1 SV=2
MMCGAPSATQPATAETQHIADQVRSQLEEKENKKFPVFKA
VSFKSQVVAGTNYFIKVHVG
DEDFVHLRVFQSLPHENKPLTLSNYQTNKAKHDELTYF [
配列番号:14]
【0162】
rH FL Cys Bタンパク質と、イヌシスタチンBに対し産生した抗体との交差
反応性を、サンドイッチELISAによって評価した。簡潔に述べると、組換え全長イヌ
シスタチンB配列(rC FLシスタチンB)に対し産生したマウスモノクローナル抗体
を捕捉試薬に使用し、ELISAにおいて複数の組換えFL Cys B抗原に結合する
能力をスクリーニングした。スクリーニングした検出試薬は、ウサギポリクローナルN末
端抗イヌシスタチンB抗体及びホースラディッシュペルオキシダーゼ抗種IgG(H&L
)であった。ELISAにおいて用量依存性曲線をもたらす一連の試薬ペアが見いだされ
た。下の表8に示すように、マウスにおいてイヌC末端「ペプチド9」(QTNKAKH
DELAYF(配列番号4)に対し産生した3つのモノクローナル抗体(IF10、2B
5、及び9A10)を、抗イヌN末端シスタチンBポリクローナル抗体327(ウサギに
おいてCAIADQVKA(配列番号7)に対し産生)、328(ウサギにおいてCGA
PSASQPATADTQAIA(配列番号5)に対し産生)、または329(ウサギに
おいてCGAPSASQ(配列番号6)に対し産生)とペアリングして、サンドイッチE
LISAを形成した。さらに、これらのペアを、ラット及びマウスのrFlシスタチンB
タンパク質と結合させた。
【0163】
【0164】
N末端ウサギポリクローナル抗体327を固相捕捉として使用して、イヌシスタチンB
C末端「ペプチド9」QTNKAKHDELAYF(配列番号4)に対し産生したモノ
クローナルマウス抗体を、rH FLシスタチンBとの結合について分析した。表9を参
照。下の表10に示すように、あるC末端モノクローナル抗体(9A10)がサンドイッ
チを形成したのに対し、別のC末端モノクローナル抗体(2B5)はサンドイッチを形成
しなかった。これらのモノクローナル抗体の特異性をマッピングし、9A10モノクロー
ナルはヒト及びイヌ両方のシスタチンBの相同配列を認識した。rFLイヌシスタチンB
に対し産生し、固相結合ポリクローナル抗体327とペアリングした3H4モノクローナ
ル抗体は、ヒト及びイヌのrFLシスタチンB両方への結合を示した(表11)。
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
イヌCys Bに特異的な抗体は、ヒトCys-Bの検出に使用することができる。と
りわけAYF、LAYF(配列番号20)、ELAYF(配列番号21)、DELAYF
(配列番号22)、HDELAYF(配列番号23)、KHDELAYF(配列番号10
)、AKHDELAYF(配列番号24)、KAKHDELAYF(配列番号25)、N
KAKHDELAYF(配列番号26)、TNKAKHDELAYF(配列番号27)、
及びQTNKAKHDELAYF(配列番号4)を含むエピトープまたはその一部に結合
する抗体またはその特異的結合断片は、ヒト及びイヌのCys Bの検出に使用すること
ができる。
【0169】
実施例7:イヌ及びネコの尿における参照範囲の決定
イヌ及びネコからの尿試料を、地元の動物病院で2年のタイムフレームにわたり採取した
。尿を分取し、使用時まで凍結した。実施例3に記載のELISAアッセイを用いて、凍
結した尿試料のシスタチンBを測定した。獣医診察において、CKDを示唆する血清クレ
アチニンまたはSDMAレベル、尿路結石または尿路感染症の病歴または症状などの腎障
害の徴候を有しない健康な動物から、参照範囲を確立した。したがって、合計280匹の
健康なイヌ及び42匹の健康なネコを使用し、各種について+3標準偏差(Std De
v)を用いて257ng/mlの参照範囲を決定した。
図6を参照。そのため、正常で健
康な範囲は、約0ng/mlから約257ng/ml(例えば、約0、5、10、20、
50、75、100から約200、210、225、250,または257ng/ml)
とする。257ng/mlを上回る値(例えば、約257、260、270、280、2
90、300ng/ml及びそれ以上)は、腎疾患の徴候とする。
【0170】
実施例8:イヌAKI個体群におけるシスタチンB
臨床的に確認されたAKIを有するイヌ及び健康なイヌからの25のマッチした尿及び
血清の試料をシスタチンB ELISA(実施例5)にかけた。AKI患畜の病因には、
例えば腎毒性薬物、ヘビ咬傷、日射病、エチレングリコールの曝露、及び感染症が含まれ
た。
図7A-B及び表12-13に示すように、AKIと診断された患畜における尿中及
び血清シスタチンBレベルは、健康なイヌ及びCKD患畜に比べて顕著に増加した。
【0171】
【0172】
【0173】
実施例9:感染症におけるシスタチンB
動物の泌尿器系において最も感染性の高い疾患は、好気性細菌の感染症である。一般的な
生物としては、大腸菌、ブドウ球菌、腸球菌、及び連鎖球菌が挙げられる。一般的ではな
いが感染症の原因となる生物としては、クレブシエラ、プロテウス、及びシュードモナス
が挙げられる。マイコプラズマは尿路感染症の原因としてはまれであり、通常は細菌との
同時感染として見いだされる。レプトスピラ症は世界中で見られる人畜共通感染症であり
、その原因となるのは、腎臓や他の多くの臓器に感染する糸状のレプトスピラ細菌である
。リケッチア症(リケッチア症(rickettsioses))及び関連疾患(アナプ
ラズマ症、エーリキア症、Q熱、ツツガムシ病)の原因は、グラム陰性の偏性細胞内球桿
菌である。マダニ媒介疾患であるバベシアも腎疾患に関与している。
【0174】
ELISA、PCR、及び顕微鏡下凝集試験(MAT)力価>1:800(IDEXX
Laboratories,Inc.)によってレプトスピラ種陽性と確認された20
匹のイヌ患畜からの血清試料を、シスタチンB ELISAにかけた。健康と確認された
イヌの血清試料もELISAにかけて、血清中の平均シスタチンBレベルを決定した。下
の表14に示すように、9つのレプトスピラ症陽性試料(45%)は、健康なイヌからの
血清の相対カットオフ(平均+3SD)値(149.1ng/ml)を上回った(
図10
)。このデータは、試験したレプトスピラ症患畜の45%が腎障害を有したことを示すも
のである。そのため、シスタチンBの血清レベルが高い場合、レプトスピラに感染した患
畜における腎障害の存在を意味する。
【0175】
【0176】
実施例10:尿路感染症におけるシスタチンB
それぞれ尿路感染症(UTI)と臨床的に確認された10匹のイヌからの尿試料及び1
0匹の健康なコホートをシスタチンBアッセイにかけた。UTIは、陽性培養物及び臨床
検査によって確認した。UTIからの干渉は、既知のAKIマーカーの特異性に対し大き
な問題となっている。
図8は、シスタチンBレベルが健康な患畜と尿路感染症患畜との間
で顕著な差を示さなかったことを実証するものである。そのため、シスタチンBマーカー
は、AKI及びUTIの識別に使用することができる。
【0177】
実施例11:ネコ腎疾患におけるシスタチンB
腎疾患と診断された4匹のネコ及び健康な3匹のネコからの尿試料を地元の動物病院から
入手し、これらをシスタチンBアッセイにかけた。尿疾患を有する4匹のネコそれぞれに
おける尿中シスタチンB濃度は、参照範囲の257ng/mlを上回った。健康な3匹の
ネコそれぞれにおける尿中シスタチンB濃度は、参照範囲内であった。表15を参照。シ
スタチンBは、ネコにおける腎疾患のマーカーとなる。
【0178】
【0179】
実施例12:ヒツジにおける抗シスタチンB抗体
2頭のヒツジを使用して、配列番号4に対するヒツジポリクローナル抗体を生成した。ペ
プチドをKLHに結合し、フロイント完全アジュバントに乳化させた。標準的な200日
プロトコルを使用した。ヒツジ血清における抗体応答をウサギ血清のものと比較した。免
疫化プロトコルの初期段階であったにもかかわらず、ヒツジに同様の力価が見られた。ヒ
ツジ内で産生した抗体は、Cys Bポリペプチドの検出に使用することができる。
【0180】
【0181】
実施例13:CKD患者におけるヒト尿シスタチンB検出
ステージ4のCKDと診断されたヒト患者から尿を採取した。尿を段階希釈し、シスタ
チンB尿ELISAにかけた。2つの抗シスタチンBモノクローナル抗体(3H4(実施
例2及び3参照)及び9A10(実施例6参照))を比較した。
図9に示すように、ヒト
尿試料は、イヌAKI試料よりも高レベルのシスタチンBを生成し、またイヌ陰性対照よ
りも高レベルであった。さらに、異なる抗シスタチンBモノクローナル抗体は、おそらく
はエピトープの結合有効性に起因して、異なる応答を示した。そのため、CKDを含めた
腎疾患は、ヒトにおいて、シスタチンBに特異的な抗体を用いて診断することができる。