(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028833
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ヒトおよび動物の健康ための微生物コミュニティーの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20240227BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240227BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240227BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K35/747 ZNA
A61P1/00
A61P1/12
A61P1/10
A61P1/04
A61P31/00
A61P43/00 105
A23L33/135
C12N1/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204439
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2022004062の分割
【原出願日】2017-02-03
(31)【優先権主張番号】16154288.1
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】521093392
【氏名又は名称】マイクロバイアル リソース マネジメント ヘルス エヌヴェー
【氏名又は名称原語表記】MICROBIAL RESOURCE MANAGEMENT HEALTH NV
【住所又は居所原語表記】Technologiepark-Zwijnaarde 82, 9052 Ghent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポッセミェールス,サム
(72)【発明者】
【氏名】マルツォラッティ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ヴィール,トム
(72)【発明者】
【氏名】シェイルリンク,イルセ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン アベール,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ボルカ,セリン
(72)【発明者】
【氏名】ゴッタルディ,ダヴィッド
(57)【要約】
【課題】
本発明は、好ましくは、胃腸障害を予防または処置するために使用するための、少なくとも6または7の異なる、特定の細菌種に属する細菌の混合物に関する。
【解決手段】
好ましくは、前記細菌の混合物は、前記障害を予防または処置するために前記混合物を対象に投与する前に、発酵槽において一緒に増殖される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌から本質的になる組成物。
【請求項2】
胃腸障害に関連する症状を予防または処置するために使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記胃腸障害が、腸の障壁機能の破壊、下痢、便秘、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、嚢炎、粘膜炎、腸の感染症、腸微生物叢ディスバイオシス(dysbiosis)およびこれらの任意の組み合わせである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記胃腸障害が、a)腸管において1または限定されたメンバーの有益な細菌の増殖および/または活性を刺激すること、b)腸管において1または限定されたメンバーの病原性細菌の増殖および/または活性を阻害すること、c)胃腸表面の粘膜への非病原性細菌の付着を相対的に増加させること、d)抗原、炎症促進物質、細菌または細菌生産物の腸による無制御の取り込みを減少させること、e)腸表面における抗炎症活性を提供すること、f)腸障壁機能を増加させること、g)細菌代謝物を生産すること、またはh)a)~g)の任意の組合せを介して予防または処置される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
Roseburia hominis種に属する細菌が、前記組成物から排除されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
Escherichia coli種、Enterococcus faecium種、Lactobacillus mucosae種、Bifidobacterium adolescentis種、Bifidobacterium longum種、Bacteroides thetaiotaomicron種およびBacteroides vulgatus種に属する細菌が、前記組成物に添加されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1以上のプレバイオティクスをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記胃腸障害を予防または処置するために、前記組成物を投与する前に、前記細菌が発酵槽において一緒に増殖される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記発酵槽が、胃腸管の動的シミュレーターである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細菌が、以下の株のリスト:Faecalibacterium prausnitzii LMG P-29362、Faecalibacterium prausnitzii DSMZ 17677、Butyricicoccus pullicaecorum LMG P-29360、Butyricicoccus pullicaecorum LMG24109、Roseburia inulinivorans LMG P-29365、Roseburia inulinivorans DSMZ 16841、Roseburia hominis LMG P-29364、Roseburia hominis DSMZ 16839、Akkermansia muciniphila LMG P-29361、Akkermansia muciniphila DSMZ 22959、Lactobacillus plantarum LMG P-29366、Lactobacillus plantarum ZJ316、Anaerostipes caccae LMG P-29359、Anaerostipes caccae DSMZ 14662または少なくとも1つの前記株の16SrRNA配列と少なくとも97%の配列同一性を示す株から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、直腸投与形態または経口摂取形態のいずれかとして製剤化されている医薬組成物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記経口摂取形態が、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、丸薬、懸濁液またはシロップである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
食品、飲料、食品サプリメントまたは栄養補助食品に組み込まれている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、105~1011コロニー形成単位の細菌を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に定義される組成物を含む、反応槽。
【請求項16】
1.5~8のpH範囲;炭素源の利用可能性;10分~200時間の保持時間;0~8g/Lの酸素利用可能性;微量栄養素の利用可能性;抗生物質の存在/不存在;0~20mMの間の胆汁酸塩の濃度;重金属の存在;免疫分子としての宿主因子の存在を含む、GI管を代表する標準化された条件下で操作する反応槽。
【請求項17】
標準化された条件を特徴付けるパラメーターが、請求項16に定義される、pH、特定の反応槽における保持時間、および胆汁酸塩の濃度を含む、請求項16に記載の反応槽。
【請求項18】
組成物の、5~20の別個の細菌メンバー、好ましくは5~15の別個の細菌メンバーが、機能的に安定なコラボローム(collaborom)を得るために、3~14日の時間存在する、請求項16または17に記載の反応槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、好ましくは、胃腸障害を予防または処置するために使用するための、少なくとも6または7の異なる、特定の細菌種に属する細菌の混合物に関する。より好ましくは、前記細菌の混合物は、前記障害を予防または処置するために前記混合物を対象に投与する前に、発酵槽において一緒に増殖される。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ヒトおよび動物の腸の生態系は、内容物の湿重量1グラム当たり1011を超える微生物、主に嫌気性菌を含むいわゆる微生物叢によって定着される、多様な異なる生息地および代謝性ニッチからなる(Macfarlane & Macfarlane, 1997)。今日、ヒトまたは動物の腸マイクロバイオームが、エネルギー収穫に寄与し、免疫系を調節し、日和見病原体に対する定着耐性を確立することによって、ヒトの健康(health)および健康(well-being)に重要な役割を果たすことはよく認識されている(Fuller & Gibson, 1997;Cummings & Macfarlane, 1997)。細菌およびそれらの代謝産物と粘膜層および/または腸壁との相互作用が重要であるという証拠が存在する(Barnett et al. 2012)。腸マイクロバイオームは、一般的に経時的に安定であるが、その組成は、食事の変化、抗生物質の使用、衛生およびストレスの増加などの外部摂動によって変化する。
【0003】
これは、ディスバイオシス(dysbiosis)と呼ばれる胃腸管の不均衡状態を導く(Clemente et al. 2012)。ディスバイオシスは、正常な腸マイクロバイオーム組成における中程度または重度の破壊によって特徴付けられ、それによって、重要な微生物種の欠如、特定の微生物機能におけるギャップ、結果として腸壁活性の損なわれた調節を引き起こす。これは、下痢または壊死性腸炎を引き起こす、病原性微生物の定着を導く可能性がある(Sekirov et al., 2008)。このような発病の極端な形態の1つが、古典的な抗生物質療法が患者の治癒を次第に困難にするCDAD(クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症(Clostridium difficile associated diarrhea))である。
【0004】
微生物ディスバイオシスの他の結果は、慢性炎症(Willing et al、2009)または食物アレルギーをもたらす易感染の免疫応答、または増加した腸の透過性、栄養素の吸収不良、さらには菌血症であり得る。微生物の機能性および腸壁の生理機能に対するディスバイオシスの悪影響は、このようにヒトの健康を損なう可能性がある。事実、便秘、IBS、IBD、嚢炎、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、心血管疾患、精神状態、認知機能障害、神経変性疾患、種々な種類の癌(例えば、結腸癌)、女性生殖器官の炎症、CDAD、リウマチまたは関節リウマチは全て、腸微生物叢の活性/組成の変化と関連している。したがって、ディスバイオシスは発生時に回避または治療すべきであることは明らかである。
【0005】
ディスバイオシスが病原体の存在に関連する場合、健康に有害な微生物を取り除くための明らかな戦略は、抗生物質の適用である。しかしながら、過去数十年にわたる広範かつ不適切な、広いスペクトラムでの抗生物質の使用は、抗生物質耐性を劇的に増加させている(Brandl et al., 2008)。さらに、抗生物質は、その多くが、重要な機能を果たし健康上の利益をもたらす先住の腸微生物をも攻撃し、それゆえディスバイオシスの状態を悪化させる。結果として、過去20年間で、機能性食品の研究、特にプレバイオティクスおよびプロバイオティクス製品の開発が大幅に増加した。プレバイオティクスの概念は、既に宿主に順応している先住の腸微生物の食事調節に関わるものであるので魅力的であるるものの(Van Loo et al, 1999)、主にそれは予防的方法において使用されている。
【0006】
治療的適用のために、重度に破壊された腸マイクロバイオームは、罹患した個体においてあまり豊富でないかまたは存在さえしない、健康を促進する種に有益な基質を提供するよりもむしろ、重要な微生物種の導入によってより多くの利益を得る。可能性のある解決策は、プロバイオティクスと呼ばれる生存可能な、健康を促進する微生物の導入である(Iannitti and Palmieri, 2010)。プロバイオティクス製品は、大部分が、特定の機能性を有する、1~いくつかの相互に連結されていない微生物株(大部分は乳酸産生細菌)からなる。しかしながら、上部消化管の過酷な条件下でのプロバイオティクス株の生存は困難であり、広大な先住マイクロバイオームとの競合はしばしば微々たるものである。しかし、易感染の腸生態系に新しい種を導入するという概念は、糞便微生物移植(fecal microbial transplants)(FMT)の適用によって近年勢いを増している(Khoruts et al., 2010)。
【0007】
これは健康なドナーから罹患したレシピエントへの糞便微生物スラリーの移動を伴う。この形態の細菌療法は、抗生物質耐性感染症の処置に主に適用され、90%以上の治癒率を有する。FMTは現在、胃腸ディスバイオシス(クローン病、肥満、過敏性腸症候群)に起因する多くの他の病態を処置するために検討されている。FMTは、単一のプロバイオティクス株がしばしば失敗する場所で効率的に機能するようにみえる。しかしながら、特徴付けが不十分である糞便移植は、感染性疾患の伝染リスクがあり、急性でも致命的でもない病態における広範な適用可能性には、現在疑問を投げかけられている(De Vrieze 2013)。
【0008】
2013年初めに、糞便微生物移植のための代替案が、CDADを治癒するための治療剤として、それらの培養可能性に基づいて個体から単離された微生物の人工的な混合物の使用に関する科学論文(Petrof et al., 2013)および特許出願(WO2013037068-胃腸系の障害の処置のための方法)により当該技術分野に提起された。そのような製品はまた、既知の微生物のセットから構成され、QPS基準が尊重される場合、糞便移植からの疾患伝染の懸念を取り除くであろう。しかしながら、微生物を一緒に混合することは、それらが互いに相互作用し、微生物ネットワークを要求する機能的なニッチを占めることを保証するわけではない。それゆえ、製品の安定性、標準化および重要な機能の性能は保証されていない。
【0009】
特許出願WO2014145958A2(ネットワークを基にした微生物組成物及び方法)において、有効量の、治療用細菌組成物、複数の単離された細菌または精製された細菌調製物を、これを必要とする哺乳動物対象に投与することが提案されている。複数の単離された細菌または精製された細菌調製物は、いわゆるネットワーク生態を形成することができる。この調製物に属する細菌は、ゲノム情報に基づいて選択され、緩やかにアセンブリされた株のセットとして哺乳動物対象に提供される。
【0010】
Becker et al. (2011)の刊行物において、8つの異なる株:Anaerostipes caccae、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium longum、Blautia producta、Clostridium butyricum、Clostridium ramosum、Escherichia coli、Lactobacillus plantarumからなるコミュニティーが記載されている。コミュニティーは、SIHUMIx(拡張された単純化ヒト微生物叢(Simplified Human Microbiota extended))と呼ばれている。この人工的な微生物コミュニティーをラット研究において試験し、SIHUMIx接種ラットと従来のヒト関連ラットおよび無菌ラットとを比較した。著者らは、そのコミュニティーが、組成および機能性の観点において、ヒト結腸関連微生物叢の代表であると主張している。微生物コミュニティーはラットの年齢に応じて発展したが、経時的に安定した組成に達した。
【0011】
Van den Abbeele et al. (2013)は、適切で重要な種およびクロスフィーディング微生物の混合物を接種することができる従来のインビトロ発酵槽を使用することにより、グリカン分解コミュニティーを創出する可能性を提案した。接種および安定化後、特定の機能のためのこのような微生物ネットワークユニットは、大規模に達成および生産され得る。
【0012】
最終的に、Newton et al. (1998)は、嫌気性ケモスタットを用いて、14の異なる糖加水分解およびアミノ酸発酵種(すなわち、Bifidobacterium longum、Bif. adolescentis、Bif. pseudolongum、Bif. infantis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bact. vulgatus、Lactobacillus acidophilus、Enterococcus faecalis、Ent. faecium、Escherichia coli、Clostridium perfringens、Cl. butyricum、Cl. innocuum、Cl. Bifermentans)を含む再現性のある定義された細菌コミュニティーを創出し、腸生物に対する硫酸還元細菌(sulphate-reducing bacterium)(SRB)であるDesulfovibrio desulfuricansの効果を研究した。
【0013】
しかしながら、胃腸障害を予防または処置するために効果的に使用することができる細菌種の代替および特定の混合物を設計する必要性は、依然として存在する。さらに、予め順応された混合物が、同じ細菌種の緩くアセンブリされ、かつ予め順応されていない混合物を投与することと比較した場合に、治療的により悪くまたはより良く機能するか否かは完全に不明である。
【発明の概要】
【0014】
発明の概要
本発明は、第1の例において、好ましくは、胃腸障害に関連する症状を予防または処置するために使用するための、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌から本質的になる組成物に関する。
【0015】
言い換えると、本発明は、それを必要する対象において、胃腸障害に関連する症状を予防または処置するための方法であって、治療的有効量の、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌から本質的になる組成物を投与することを含む、前記方法に関する。
【0016】
本発明は、さらに、前記胃腸障害が、腸の障壁機能の破壊、下痢、便秘、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、嚢炎、粘膜炎、腸の感染症、腸微生物叢ディスバイオシスおよびこれらの任意の組み合わせである、上記の組成物に関する。
【0017】
本発明はまた、前記胃腸障害が、a)腸管において1または限定されたメンバーの有益な細菌の増殖および/または活性を刺激すること、b)腸管において1または限定されたメンバーの病原性細菌の増殖および/または活性を阻害すること、c)胃腸表面の粘膜への非病原性細菌の付着を相対的に増加させること、d)抗原、炎症促進物質、腸による細菌または細菌生産物の無制御の取り込みを減少させること、e)腸表面における抗炎症活性を提供すること、f)腸障壁機能を増加させること、g)細菌代謝物を生産すること、またはh)a)~g)の任意の組合せを介して予防または処置される、上記の組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、Roseburia hominis種に属する細菌が、前記組成物から排除されている、上記の組成物に関する。
本発明はさらに、Escherichia coli種、Enterococcus faecium種、Lactobacillus mucosae種、Bifidobacterium adolescentis種、Bifidobacterium longum種、Bacteroides thetaiotaomicron種およびBacteroides vulgatus種に属する細菌が、前記組成物にさらに添加されている、上記の組成物に関する。
【0019】
本発明はさらに、1以上のプレバイオティクスをさらに含む、上記の組成物に関する。
好ましい態様において、本発明は、前記胃腸障害を予防または処置するために、前記組成物を投与する前に、前記細菌が発酵槽において一緒に増殖されることにより、予め順応されている、上記の組成物に関する。
この点について、本発明はさらに、前記発酵槽が、胃腸管の動的シミュレーターである、上記の組成物に関する。
【0020】
より具体的には、本発明は、前記細菌が、以下の株のリスト:Faecalibacterium prausnitzii LMG P-29362、Faecalibacterium prausnitzii DSMZ 17677、Butyricicoccus pullicaecorum LMG P-29360、Butyricicoccus pullicaecorum LMG24109、Roseburia inulinivorans LMG P-29365、Roseburia inulinivorans DSMZ 16841、Roseburia hominis LMG P-29364、Roseburia hominis DSMZ 16839、Akkermansia muciniphila LMG P-29361、Akkermansia muciniphila DSMZ 22959、Lactobacillus plantarum LMG P-29366、Lactobacillus plantarum ZJ316、Anaerostipes caccae LMG P-29359、Anaerostipes caccae DSMZ 14662および/または少なくとも1つの前記株の16S rRNA配列と少なくとも97%の配列同一性を示す株から選択される、上記の組成物に関する。
【0021】
本発明はさらに、前記組成物が、直腸投与形態または経口摂取形態のいずれかとして製剤化されている医薬組成物である、上記の組成物に関する。
この点について、本発明はさらに、前記経口摂取形態が、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、丸薬、懸濁液またはシロップである、上記の組成物に関する。
本発明はさらに、食品、飲料、食品サプリメントまたは栄養補助食品に組み込まれている、上記の組成物に関する。
本発明は、より具体的には、前記組成物が、105~1011コロニー形成単位の細菌を含む、上記の組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1:胃、小腸および3つのそれぞれの結腸領域からなるSHIME(登録商標)ユニットの概略図。液体SHIME(登録商標)栄養培地と膵液は、それぞれ胃と小腸を模擬した区画に入る。これらの滅菌区画内に規定された滞留時間後、懸濁液は3つの連続した結腸区画である、それぞれ異なるpHと滞留時間によって特徴付けられる上行、横行および下行結腸区画に進む。これらの区画に、ヒト糞便微生物叢が接種される。全てのベッセルは、ヘッドスペースにN2をフラッシュすることにより嫌気性に保たれ、連続的に攪拌され、37℃に保たれる。
【0023】
【
図2】
図2:24時間のインキュベーションにおける23の異なる組成物による酪酸生産(上パネル)、およびTHP1細胞の存在下で培養したCaco-2細胞の経上皮電気抵抗(Trans-Epithelial Electrical Resistance)(TEER)に対する効果(下パネル)。後者については、24時間後の23のインキュベーションから回収した試料を滅菌濾過し、半透性インサート上で14日間増殖させたCaco-2細胞の頂端区画に24時間(1:5v/v)添加し、PMA刺激THP1由来マクロファージの上に置いた(共培養)。増殖培地単独(DMEM)を対照として使用した。PMAの存在下で48時間培養されたTHP1細胞は、DMEM対照におけるTEERの減少によって測定されるように、Caco-2細胞に損傷を誘発する。TEER値は共培養前に測定された値(0時間)で正規化され、初期値からの百分率として表される。異なる組成物のコード化は以下のとおりであった:MX-Y、式中、X=組成物中に存在する単離体の数であり、Y=X単離体を含む、特有の組成物A、B、C等である。
【0024】
【
図3】
図3:7種の完全な組成物、またはその都度、元の7種のうちの1種が除かれている6種の組成物のいずれかにより、条件SHIME(登録商標)栄養培地中で24時間および48時間インキュベートした際の酪酸生産。結果は、全ての7種からなる組成物に対して、6種の組成物でのそれぞれのインキュベーションで検出された酪酸生産の百分率として提示される。組成物は、「全体」(全7種)または「全体-X」と呼ばれ、Xは全体の組成物から除かれた種である。
*:24時間における「全体」と比較してp<0.05;#:48時間における「全体」と比較してp<0.05。
【0025】
【
図4】
図4:条件SHIME(登録商標)栄養培地中での5日間の嫌気的インキュベーションにより組成物によって生産される酪酸、プロピオン酸および酢酸のレベル(mM)。組成物は、「アセンブリ」戦略(左パネル)または「コラボローム(collaborom)」戦略(右パネル)のいずれかによって生産された。
【0026】
【
図5】
図5:「コラボローム」戦略による組成物の3つの独立した生産サイクルにおける14日間にわたるプロピオン酸(左パネル)および酪酸(右パネル)のレベル(mM)の発展。適切な培養培地中での初期増殖において、組成物の株を混合し、接種し、pH6.15~6.4で単一の結腸領域からなるSHIME(登録商標)装置で14日間3重に培養した。
【0027】
【
図6】
図6:代替「コラボローム」戦略による組成物の生産における、酢酸、プロピオン酸および酪酸のモル%として表される、SCFAレベルの発展。適切な培養培地で初期増殖において、組成物の株を混合し、接種し、フェドバッチ方式で操作される単一の発酵槽で8日間3重に培養した。16時間の特定の間隔で、増殖培地の40%(v:v)を条件SHIME(登録商標)栄養培地で置き換えた。
【0028】
【
図7】
図7:(i)滅菌基本培地(上パネル)または(ii)SHIME結腸領域に由来する微生物叢(中央パネル)もしくは(iii)糞便微生物叢(下パネル)で補充された滅菌培地を用いた24時間のインキュベーションにおける酢酸、プロピオン酸、酪酸および総短鎖脂肪酸(Short Chain Fatty Acid)(SCFA)の生産(mM)。「コラボローム」戦略により生産される組成物による異なる処置を、合計インキュベーション量の0%~4%および20%の範囲で適用した。
【0029】
【
図8】
図8:M-SHIME(登録商標)における抗生物質回復実験における酢酸(上パネル)、プロピオン酸(中央パネル)および酪酸(下パネル)のレベル(mM)の発展。抗生物質のカクテル(それぞれ40/40/10mg/Lのアモキシシリン/シプロフロキサシン/テトラサイクリン)の投与によるSHIME(登録商標)由来の結腸微生物叢のディスバイオシス誘発において、ディスバイオシスされた微生物叢を「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略のいずれかにより生産された組成物で5日間処置した(1日目=組成物の投与開始)。結果を抗生物質投与前の値に対する、各時点でのSHIMEにおけるSCFAレベルのデルタで表す。
【0030】
【
図9】
図9:M-SHIME(登録商標)におけるIBD関連ディスバイオシス回復実験における酢酸(上パネル)、プロピオン酸(中央パネル)および酪酸(下パネル)のレベル(mM)。3つの独立したSHIME(登録商標)結腸ベッセルに、潰瘍性大腸炎患者からの糞便材料を接種した。同時に、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略のいずれかによって生産された組成物の単回用量を、それぞれのSHIME結腸ベッセルに添加した。第3の実験は、組成物を投与しない対照実験として並行して行った。酢酸、プロピオン酸および酪酸の生産を、組成物の投与の1および2日続けた。
【0031】
【
図10】
図10:C57/BL6マウスの抗生物質回収実験における酢酸、プロピオン酸および酪酸のレベル(mol%)の発展。マウスに標準食餌を与えた対照期間の後、5日間、クリンダマイシン(250mg/L)を飲料水に添加することにより、腸微生物叢ディスバイオシスを誘発した。この後、マウス(n=10/群)を、生理食塩水(細菌介在のない対照;左パネル)、「コラボローム」戦略により生産された組成物(中央パネル)、または「コラボローム」戦略により生産された拡張組成物(右パネル)のいずれかで、5日間、経口強制飼養した。同じ介在群から得られたマウス糞便試料をプールし、酢酸、プロピオン酸および酪酸のレベルを定量した。
【0032】
【
図11】
図11:C57/BL6マウスにおけるTNBS誘発大腸炎実験における疾患活動性指数(Disease Activity Index)(DAI)および体重変化の発展。マウスに標準食餌を与えた1週間の馴化期間の後、実験を開始した。各群(n=9/群)を経口強制飼養により5日間連続して処置した。全ての処置の予防的投与は、2mgのTNBS/50%EtOHの直腸投与の1日前に開始し、マウスを屠殺するまでTNBS投与後4日間持続した。以下の処置:TNBS+生理食塩水(ビヒクルTNBS対照);TNBS+「アセンブリ」戦略により生産された組成物、およびTNBS+「コラボローム」戦略により生産された組成物を含んだ。従来の群(TNBS処置をしないが、生理食塩水で処置)を、ビヒクル対照として含んだ。
【0033】
【
図12】
図12:C57/BL6マウスにおけるDSS誘発慢性大腸炎実験における疾患活動性指数(DAI)の発展。マウスに標準食餌を与えた1週間の馴化期間の後、実験を開始した。各群(n=10/群)を、経口強制飼養により、8週間連続して週に3回処置した。全ての処置の予防的投与は、最初のDSSサイクルの1週間前に開始した。最初のDSSサイクルは2週目に開始し、1週間のDSS投与(飲料水中0.25%)に続く2週間の回復を含む。この第1のサイクルの後に、同一の第2のDSSサイクルが続いた。第3のDSSサイクルは、1週間のDSS投与に続く1週間の回復からなり、その後、動物を屠殺した。以下の処置:DSS+生理食塩水溶液(ビヒクルDSS対照);DSS+「コラボローム」戦略により生産された組成物を含んだ。従来の群(DSS処置なし、生理食塩水で処置)を、ビヒクル対照として含んだ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の説明
腸マイクロバイオームは、種々の対象内に共存し、お互いや宿主と相互作用する何百もの微生物種を含む。近頃では、腸微生物叢は、代謝機能および免疫恒常性を制御することによってヒトの健康および疾患において重要な役割を果たすと一般に考えられている(Cenit et al., 2014)。いくつかの研究は、全てのヒト個体が健康な腸マイクロバイオームの機能的能力を定義する必須の種または株の重要な数を共有していることを示唆する「コアマイクロバイオーム」を定義する試みにおいて、これらの複雑な腸微生物コミュニティー群集を調査している(Kinross et al., 2011)。この概念(すなわち、全てのヒトに「コアマイクロバイオーム」が生息している)、腸微生物叢(例えば、要となる種、粘膜管腔微生物叢(mucosal versus luminal microbiota)、近位遠位結腸細菌(proximal versus distal colon bacteria)など)の組成および機能に関する利用可能な広範な文献、ならびに機能的ゲノム解析に基づいて、複雑なヒト腸マイクロバイオームの主な機能を網羅する微生物の候補のリストを同定することができた。
【0035】
本発明は、第1の例において、特別な驚くべき効果を有するヒト腸マイクロバイオームの細菌種のサブ群の特定の選択に関する。より具体的には、本発明は、好ましくは、胃腸障害に関連する症状を予防または処置するために使用するための、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌から本質的になる組成物に関する。用語「から本質的になる」は、それらが前記組成物の効果(すなわち、胃腸障害に関連する症状を予防または処置する)に悪影響を与えない限り、前記組成物が、他の細菌種および/または他の成分を含み得ることを指す。一つの態様において、本発明の組成物は、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌を含む。
【0036】
別の態様において、本発明の組成物は、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌からなる。
【0037】
細菌種Faecalibacterium prausnitzii(Duncan et al. 2002)、Butyricicoccus pullicaecorum(Eeckhaut et al. 2008)、Roseburia inulinivorans(Duncan et al. 2006)、Roseburia hominis(Duncan et al. 2006)、Akkermansia muciniphila(Derrien et al. 2004)、Lactobacillus plantarum(Walter 2008)およびAnaerostipes caccae(Schwiertz et al. 2002)は、当業者によく知られている細菌種である。用語「胃腸障害に関連する症状」は、ヒトおよび動物における健康問題を指す。本発明の組成物の使用は、より具体的には、細菌と腸表面との間の相互作用の正の調節をもたらす、ディスバイオシスからの予防/回復を導く。結果として、腸表面の改善された機能:例えば、障壁、ホルモン、免疫機能が得られる。腸表面に対する効果の開始は、「同じ株の緩くアセンブリされたセット」と比較して「予め順応されている組成物」が投与される場合に速い(さらに参照のこと)。本明細書で用いられるように、腸表面の障壁、ホルモンまたは免疫機能を調節または改善することは、腸表面の正常な恒常性に影響を及ぼす任意のパラメーター、特に病原体、抗原または他の有害物質による侵襲に対する第一線の防御におけるその役割、および宿主に全身的な影響を及ぼす物質(例えば、免疫分子、ホルモン)を生産するその役割を変化させることを含むことを意味する。
【0038】
前記パラメーターは、これらに限定されるものではないが、
- 腸管において1または限定されたメンバーの有益な細菌(例えば、lactobacilli、bifidobacteria、酪酸またはプロピオン酸産生細菌、他のもの)の増殖および/または活性の刺激;
- 腸管において1または多数の病原性細菌の増殖および/または活性の阻害;
- 腸表面の粘膜への非病原性細菌の付着の相対的な増加;
- 腸からの、抗原、炎症促進性分子、細菌または細菌生産物の無制御の取り込みの減少、
- 腸管関連リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue)(GALT)および宿主の全身性免疫系の調節;
- 特定の細菌代謝物(例えば、プロピオン酸、酪酸)の生産;および
- 代謝恒常性を直接的にまたは間接的に調節する特定の腸のシグナル伝達分子(例えば、プログルカゴン、GLP-1、GLP-2、FIAF)の生産の調節;
を含む。
【0039】
本発明は、したがって、前記胃腸障害が、a)腸管において1または限定されたメンバーの有益な細菌の増殖および/または活性を刺激すること、b)腸管において1または限定されたメンバーの病原性細菌の増殖および/または活性を阻害すること、c)胃腸表面の粘膜への非病原性細菌の付着を相対的に増加させること、d)腸による、抗原、炎症促進物質、細菌または細菌生産物の無制御の取り込みを減少させること、e)腸表面における抗炎症活性を提供すること、f)腸障壁機能を増加させること、g)細菌代謝物を生産すること、またはh)a)~g)の任意の組合せを介して予防または処置される、上記の組成物に関する。
【0040】
一般的な胃腸障害に関連し得る健康状態は、これらに限定されないが、便秘、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome)(IBS)、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Diseases)(IBD)、腸微生物叢ディスバイオシス、粘膜炎、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、心血管疾患、慢性疲労症候群、精神状態、認知機能障害、神経変性疾患、癌の形態、自己免疫状態、免疫機能障害、リウマチ、関節リウマチ、女性生殖器の炎症、病原体(細菌、ウイルスおよび真菌)の感染を含む。神経変性疾患の例としては、これらに限定されないが、ALS、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病を含む。癌の種類の例としては、これらに限定されないが、肺がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、および特に結腸直腸がんを含む。自己免疫疾患の例としては、これらに限定されないが、多発性硬化症、アトピー性皮膚炎、セリアック病、乾癬および狼瘡を含む。
【0041】
本発明の組成物が、胃腸上皮の粘膜層への非病原性細菌の相互作用および/または活性を増強するという観察に基づいて、前記調製物は、腸表面の障壁機能を改善するために、例えば、抗原、炎症誘発性分子、病原性細菌または細菌生産物の腸からの無制御の取り込みを予防または減少させるために、特に有用であると想定される。損なわれた粘膜障壁を有するそのような適応症の1つが、炎症性腸疾患である。炎症性腸疾患において、病変に対する解決策が損なわれた粘膜損傷がこれらの慢性的な適応症を導く重要な要素の1つであることが一般的に認められているので、本発明の組成物は前記適応症に有益な効果を有する。したがって、本発明の目的は、損なわれた障壁機能に関連し、抗原、炎症誘発性分子、病原性細菌または細菌生産物の腸からの無制御の取り込みにより特徴付けられる、状態の予防および処置において本発明の組成物の使用を提供することである。
【0042】
本明細書で使用される、「慢性結腸疾患」とも呼ばれる「炎症性大腸疾患」は、胃腸管の様々なレベルでの持続性粘膜炎症により特徴付けられる任意の状態、例えば、炎症性腸症候群、粘膜炎、胃潰瘍、クローン病、潰瘍性大腸炎、結腸直腸がんおよび嚢炎などを含む。
【0043】
粘膜炎は、典型的には、化学療法および放射線療法または幹細胞移植の有害事象として、口および胃腸管を覆う粘膜表面の炎症によって本質的に特徴付けられるものとして一般に認識されているので、本発明の組成物の適用は、前記適応症に有益な効果を有すると想定される。したがって、本発明の目的は、粘膜炎に関連する状態の予防および処置における本発明の組成物の使用を提供することである。粘膜炎は、胃腸管に沿ってどこでも生じ得る。口腔内に生じる場合、それは典型的には口腔粘膜炎と呼ばれる。
【0044】
本発明の組成物の適用は、かかるアレルゲンが特定の食品物質、化学物質および他の分子を含み得る、アレルギー反応を引き起こす抗原による侵入に対する保護を提供することであると想定される。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、アレルギー反応を引き起こす抗原による侵入に関連する状態(例えば、食品アレルギー、喘息、湿疹)の予防および処置における組成物の使用を提供する。
【0045】
さらに、組成物の適用は、腸関連リンパ組織(GALT)および全身性免疫系の両方に影響を及ぼすことも想定される。他の効果の中でも、これは、炎症誘発性サイトカインの発現の減少および免疫調節因子の生産の増加およびリンパ球の活性の改善をもたらし得る。したがって、前記組成物は、宿主免疫系の発達および機能の改善に特に有用であると想定される。
【0046】
本発明の別の側面において、本発明の組成物が上皮障壁を調節し、続いて慢性炎症を減少させるという観察に基づいて、前記組成物は、代謝恒常性の制御および改善に特に有用であると想定される。代謝恒常性に対する前記調製物の非限定的な効果には、食物摂取および脂肪およびグルコース代謝の制御、インスリン分泌および感受性の改善、ならびにコレステロール合成および代謝の制御を含む。したがって、本発明の目的は、食品取り込みの管理、満腹感の誘発、体重管理、損なわれた代謝恒常性に関連する状態、例えば肥満および2型糖尿病などの予防および処置における、本発明の組成物の使用を提供することである。
【0047】
本発明の組成物が、心血管疾患(CVD)のいくつかの確立された原因リスク因子を減少させるという観察に基づいて、本発明の別の側面において、前記組成物がCVDの予防に特に有用であることが想定される。CVDは、技術的には、心血管系に影響を及ぼす任意の疾患を指すが、アテローム性動脈硬化症に関連する疾患を指すために通常使用される。後者は、動脈血管に影響を及ぼす症候群であり、大部分がマクロファージ白血球の蓄積に起因し、低密度リポタンパクによって促進される、動脈の壁における慢性炎症応答である。CVDの発生は複数のメカニズムに依存し、多くの明確な原因リスク因子が同定されている。これらの因子は、これらに限定されないが、LDLコレステロール上昇、血漿トリグリセリド、代謝疾患(肥満、糖尿病、...)、慢性炎症および酸化ストレスを含む。特に、後者の2つの因子が最も重要である。アテローム性動脈硬化症は、酸化ストレスの状況においてフリーラジカル、特に酸素フリーラジカルによって酸化されるLDL(LDL-ox)から発症する。LDL-oxに引き起される損傷に対する、慢性炎症の場合における免疫系の過剰な応答は、疾患の拡大をさらに促進する。したがって、本発明の目的は、CVDの予防または処置における、本発明の組成物の使用を提供することである。
【0048】
さらなる側面において、粘膜層への正常な微生物叢の付着に関する本発明の組成物の有益な効果を考慮すると、組成物の適用は、病原体による粘膜付着および侵入に対する保護を提供することが想定される。病原体の例は、これらに限定されないが、Bacillus anthracis;Bacillus cereus;Bordetella pertussis;Borrelia burgdorferi;Brucella abortus;Brucella canis;Brucella melitensis;Brucella suis;Campylobacter jejuni;Chlamydia pneumonia;Chlamydia trachomatis;Chlamydophila psittaci;Clostridium botulinum;Clostridium difficile;Clostridium perfringens;Clostridium tetani;Corynebacterium diphtheria;腸内毒素原性のEscherichia coli(ETEC);腸病原性のE. coli;E. coli O157:H7;Francisella tularensis;Haemophilus influenza;Helicobacter pylori;Legionella pneumophila;Leptospira interrogans;Listeria monocytogenes;Mycobacterium leprae;Mycobacterium tuberculosis;Mycoplasma pneumonia;Neisseria gonorrhoeae;Neisseria meningitides;Pseudomonas aeruginosa;Rickettsia rickettsia;Salmonella typhi;Salmonella typhimurium;Shigella sonnei;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Staphylococcus saprophyticus;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumonia;Streptococcus pyogenes;Treponema pallidum;Vibrio cholera;Yersinia pestis;Candida spp.;Norovirus(Norwalk Virus);A型肝炎;天然痘、インフルエンザ、流行性耳下腺炎、麻疹、水痘、エボラおよび風疹を誘発するウイルスを含む。したがって、さらなる態様において、本発明は、病原体による粘膜付着および侵入に関連する状態の予防および処置における;特に後天性下痢および旅行者の下痢の処置および予防における、本発明の組成物の使用を提供する。
【0049】
本発明は、したがって、これを必要とする対象において胃腸障害に関連する症状を予防または処置するための方法であって、治療的有効量の、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌から本質的になる組成物を投与することを含む、前記方法に関する。
【0050】
用語「必要とする対象」は、上記の胃腸障害を有するヒトまたは非ヒト動物を指す。
用語「治療的有効量」は、その予防的または治療的効果を発揮することができる7種の細菌種の組み合わされた合計量の最小値を指す。7つの細菌種は、以下に列挙される:Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphila、Lactobacillus plantarumおよびAnaerostipes caccae。
しかしながら、「治療的有効量」はまた、以下に列挙される6つの細菌種:Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Akkermansia muciniphila、Lactobacillus plantarumおよびAnaerostipes caccaeの組み合わされた合計量の最小値も指す。
【0051】
最終の適用に応じて、前記組み合わされた合計量は、7つの細菌種のそれぞれの同量の結果でも、または7つの細菌種の同量でない量の結果であってもよく、7つの細菌種のそれぞれの単一の種が、組み合わされた合計量の0.0001%の最小存在量、より好ましくは組み合わされた合計量の0.001%の最小存在量、最も好ましくは組み合わされた合計量の0.01%の最小存在量である。このように、例えば6種が、組み合わされた合計量の10.00%の存在量を有する場合、7つ目の種は、組み合わされた合計量の40.00%の存在量を有する。最終の適用に応じて、前記組み合わされた合計量は、102~1014細菌細胞の1日用量の範囲、好ましくは103~1013細菌細胞の1日用量の範囲、より好ましくは104~1012細菌細胞の1日用量の範囲、および最も好ましくは105~1011細菌細胞の1日用量の範囲である。
【0052】
本発明はさらに、Roseburia hominis種に属する細菌が前記組成物から排除されている、上記の組成物に関する。用語「排除された」は、特に、7つ目の種としてRoseburia hominis種を添加または除去することなく、例の項でさらに示される6つの細菌種の組成物を作成することを指す。
本発明はさらに、Escherichia coli、Enterococcus faecium、Lactobacillus mucosae、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium longum、Bacteroides thetaiotaomicronおよびBacteroides vulgatusに属する細菌を前記組成物にさらに添加する、上記の組成物に関する。
【0053】
細菌種Escherichia coli(Rath et al. 1999)、Enterococcus faecium(Schleifer et al. 1984)、Lactobacillus mucosae(Roos et al. 2000)、Bifidobacterium adolescentis(Scharek et al. 2000)、Bifidobacterium longum(Bahaka et al. 1993)、Bacteroides thetaiotaomicron(Scharek et al. 2000)およびBacteroides vulgatus(Rath et al. 1999)は、当業者によく知られている細菌種である。本発明はさらに、1以上のプレバイオティクスをさらに含む、上記の組成物に関する。
【0054】
用語「プレバイオティクス」は、それらの宿主の健康に寄与する微生物(例えば、細菌)の増殖または活性を誘発する任意の化学物質を指す。したがって、プレバイオティクスは、腸マイクロバイオームの生物の組成に影響を与えたり、変化させたりすることができる。しかしながら、原則として、身体の他の領域をも言及することができる、より一般的な用語である。典型的な、しかし非限定的なプレバイオティクスは、胃腸管の上部を介して消化されていないものを少なくとも部分的に通過させ、それらの基質として作用することによって大腸に定着する有利な細菌の増殖または活性を刺激する、非消化性繊維化合物である。
【0055】
好ましい態様において、本発明は、前記胃腸障害を予防または処置するために、前記組成物を投与する前に、前記細菌が発酵槽において一緒に増殖される、上記の組成物に関する。後者の組成物は、「コラボローム戦略」または「代替コラボローム戦略」とも呼ばれる(さらに参照のこと)。これに対して、前記細菌が投与前に発酵槽中で一緒に増殖されない組成物は、「アセンブリ戦略」と呼ばれる(さらに参照のこと)。
これに関して、本発明はさらに、前記発酵槽が胃腸管の動的シミュレーターである、上記の組成物に関する。この特定の場合において、後者の組成物は、「コラボローム戦略」とも呼ばれる(さらに参照のこと)。
【0056】
SHIME(登録商標)(ヒト微生物生態系のシミュレーター(Simulator of the Human Microbial Ecosystem))は、全保持時間が72時間である、胃、小腸、および3つの結腸領域(上行、横行および下行結腸)を模擬する、5つの二重ジャケット付きベッセルから構成されるヒト胃腸管の動的インビトロモデルである(
図1)。1日3回、140mlのSHIME(登録商標)飼料および60mlの膵液をそれぞれ胃および小腸区画に添加した(Van den Abbeele et al., 2010)。微生物叢が課されたインビトロ条件に順応することを可能にする最初の2週間の安定化期間の後、単離手順が開始された。したがって、本発明の選択された微生物株を、GI管を代表する標準化された条件下で、単一段階(代替コラボローム戦略)または多段階反応槽もしくは胃腸管の動的シミュレーター(例えば、SHIME(登録商標)またはM-SHIME(登録商標)、コラボローム戦略)において接種することができる。
【0057】
したがって、本発明は、本明細書で定義され、および以下にさらに挙げられる、6または7または14までの種に属する細菌を含むか、それらからなる、またはそれらから本質的になる組成物を含む反応槽に関する:
- Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌を含むか、それらからなる、またはそれらから本質的になる組成物を含む、または
- Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種およびAnaerostipes caccae種に属する細菌を含むか、それらからなる、またはそれらから本質的になる組成物を含む、または
- Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種、Lactobacillus plantarum種、Anaerostipes caccae種、Escherichia coli種、Enterococcus faecium種、Lactobacillus mucosae種、Bifidobacterium adolescentis種、Bifidobacterium longum種、Bacteroides thetaiotaomicron種およびBacteroides vulgatus種に属する細菌を含むか、それらからなる、またはそれらから本質的になる組成物を含む。
【0058】
好ましい態様において、前記組成物を含むこの反応槽は、以下で定義されるGI管を代表する標準化された条件下である。
標準化された条件を特徴付けるパラメーターは、これらに限定されないが、pH(1.5~8の範囲);炭素源(炭水化物またはタンパク質のいずれか、またはそれらの組み合わせ)の利用可能性;特定の反応槽における保持時間(10分~200時間の範囲);酸素利用可能性(0~8g/Lの範囲);微量栄養素の利用可能性;抗生物質の存在/不存在;胆汁酸塩の濃度(0~20mMの範囲);重金属の存在;免疫分子としての宿主因子の存在を含む。好ましい態様において、標準化された条件を特徴付けるパラメーターは、pH、特定の反応槽における保持時間、および胆汁酸塩の濃度、本明細書の上記で定義される全てを含む。コラボロームの複雑さに応じて、1~15日の期間が機能的に安定したコラボロームを得るために必要とされる。平均して、7~14のメンバーから構成されるたコラボロームを開発するために、3~10日の時間が、機能的に安定したコラボロームを得るのに十分である(環境条件による)。本明細書で定義される組成物は、それゆえ、pH、特定の反応槽における保持時間および胆汁酸塩の濃度が本明細書で定義されるように設定される条件下で3~10日の時間に養成または培養された後に得ることができる。そのようなプロセスは、機能的に安定な組成物またはコラボロームの生産を可能にする。
本発明の文脈において、「機能的に安定なコラボローム」は、培養の少なくとも3または5または10日後に初期の様々な数の種の細菌を依然として含む、本明細書で定義される組成物である。
【0059】
さらなる側面において、1.5~8のpH範囲;炭素源の利用可能性;10分~200時間の保持時間;0~8g/Lの酸素利用可能性;微量栄養素の利用可能性;抗生物質の存在/不存在;0~20mMの間の胆汁酸塩の濃度;重金属の存在;免疫分子としての宿主因子の存在を含む、GI管を代表する標準化された条件下で操作する反応槽が提供される。一つの態様において、前記反応槽は、標準化された条件を特徴付けるパラメーターが、先の段落において定義される、pH、特定の反応槽中における保持時間、および胆汁酸塩の濃度を含むようなものである。一つの態様において、かかる反応槽は、5~20の別個の細菌メンバー、または6~14の別個の細菌メンバー、または5~15の別個の細菌メンバーの組成物を含む。好ましい態様において、かかる組成物は、機能的に安定なコラボロームを得るために、かかる反応槽において、3~14日、または3~10日の時間存在する。
【0060】
本発明は、より具体的には、特定の機能的特徴を有し、ヒトおよび動物の健康問題を予防または処置するために一緒に機能するように予め順応されている、緩やかにアセンブリされた同じ株のセット(=「アセンブリ戦略」)と比較して、より速いバイオ療法開始およびより高い有効性を得る、微生物株のセットの組成物および使用に関する。一緒に機能するように予め順応されているそのような微生物のセットは、「コラボローム戦略」または「代替コラボローム戦略」なる名称を用いる。
【0061】
言い換えれば、本発明は、好ましくは、緩やかにアセンブリされた同じ微生物株のセットと比較して、バイオ療法開始の時間を有意に短縮するために、および/またはディスバイオシスの処置の効果を有意に増加させるために使用するための微生物株のセットの予め順応されている組成物に関する。
【0062】
用語「バイオ療法開始の時間を有意に短縮する」とは、予め順応させることによって、微生物のセットが、緩やかにアセンブリされた同じ株のセットと比較して、少なくとも5%速く(時間的スケールで)、好ましくは少なくとも10%速く、より好ましくは少なくとも20%速く、最も好ましくは少なくとも30%速く、それらの機能性を発揮することができることを意味する。5%未満の任意の値は、生理的に関連性がないとみなされる。
【0063】
用語「処置の効果を有意に増加させる」とは、予め順応させることによって、微生物のセットが、少なくとも5%より有効的、好ましくは少なくとも10%より有効的、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%より有効的に、それらの機能性を発揮することができることを意味する。有効性は、微生物のセットが設計されたエンドポイントに依存する。可能性のある機能性には、これらに限定されないが、短鎖脂肪酸(SCFA)の生産;腸障壁透過性の改善;炎症促進性サイトカインの減少/増加;抗炎症性サイトカインの増加;病原体濃度の減少(少なくとも0.5log);ガス生産の減少;特定の腸壁受容体の刺激等を含む。5%未満の任意の値は、生理的に関連性がないとみなされる。
【0064】
したがって、本発明は、より具体的には、それを必要とするヒトおよび動物のディスバイオシスを予防または処置するための方法であって、治療量の微生物株のセットの予め順応された組成物を前記ヒトまたは動物に投与することを含み、前記処置は、緩やかにアセンブリされた同じ微生物株のセットの投与と比較して、より速いバイオ療法の開始および/または増加した有効性をもたらす、前記方法に関する。
【0065】
より具体的には、本発明は、前記細菌が、以下の株のリスト:Faecalibacterium prausnitzii LMG P-29362、Faecalibacterium prausnitzii DSMZ 17677、Butyricicoccus pullicaecorum LMG P-29360、Butyricicoccus pullicaecorum LMG24109、Roseburia inulinivorans LMG P-29365、Roseburia inulinivorans DSMZ 16841、Roseburia hominis LMG P-29364、Roseburia hominis DSMZ 16839、Akkermansia muciniphila LMG P-29361、Akkermansia muciniphila DSMZ 22959、Lactobacillus plantarum LMG P-29366、Lactobacillus plantarum ZJ316、Anaerostipes caccae LMG P-29359、Anaerostipes caccae DSMZ 14662および/または前記株の少なくとも1つの16S rRNA配列と少なくとも97%の配列同一性を示す株から選択される、上記の組成物に関する。
【0066】
受託番号LMG P-29362、LMG P-29360、LMG P-29365、LMG P-29364、LMG P-29361、LMG P-29366およびLMG P-29359を有する上で示される株は、BCCM/LMG Laboratorium voor Microbiologie, Universiteit Gent (UGent), K. L. Ledeganckstraat 35, B-9000 Gent, Belgiumで寄託された。
受託番号DSMZ 17677、LMG24109、DSMZ 16841、DSMZ 16839、DSMZ 22959、ZJ316およびDSMZ 14662を有する上で示される株は、公のコレクションに寄託され、集中的に記載されており、世界中の当業者はアクセス可能である。
【0067】
前記対応する株のそれぞれの16S rRNA配列に対して少なくとも97%(すなわち、97、98、99%)の配列相同性を示す前記菌株のそれぞれの変異体もまた本発明の一部であることはさらに明らかであるべきである。そのような配列「相同性」を決定するための例は、例えば、Eeckhaut et al. (2008)に記載されている。本明細書中で用いられる用語「16S rRNA」は、原核生物リボソーム小サブユニット(30S)の構成要素である約1542ヌクレオチドの核酸配列を指す。16S rRNAは、リボソームタンパク質の位置を定める足場として作用することが知られている。16S rRNA配列は、高度に保存された配列であることが知られているので、系統発生研究のために一般的に使用されている。何千もの生物からの16S rRNA配列の比較分析は、オリゴヌクレオチドシグネチャー配列の存在を実証している。本明細書中で用いられる用語「相同性」は、核酸の配列類似性を指す。例えば、一般に、2つの核酸が同一の配列を有する場合、それらは100%相同性を示す。核酸の1つのヌクレオチド配列の変化は、相同性の百分率を減少させる。一般に、相同性の百分率は、2つの核酸センテンス間の同一性の程度を定量化する。
【0068】
配列同一性または配列相同性は、配列を比較することによって決定される、2以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列または2以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として、本明細書において定義される。通常、配列同一性または類似性は、比較される配列の全長にわたって比較される。当該技術分野においては、「同一性」は、場合によっては、そのような配列のストリング間の一致によって決定される、アミノ酸または核酸配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」および「類似性」は、当業者に知られている様々な方法によって容易に計算することができる。好ましい態様において、配列同一性は、本明細書において同定される配列の全長を比較することによって決定される。
【0069】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムにまとめられている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法には、例えば、NCBIおよび他の供給源(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894)から公的に入手可能なBestFit、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990))が含まれる。用いられる最も好ましいアルゴリズムは、EMBOSS(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align)である。EMBOSSを用いたアミノ酸配列比較のための好ましいパラメーターは、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5、Blosum 62マトリックスである。EMBOSSを用いた核酸配列比較の好ましいパラメーターは、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5、DNA完全マトリックス(DNA同一性マトリックス)である。
【0070】
任意で、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者はまた、当業者には明らかな、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れてもよい。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。本明細書中に開示されるアミノ酸配列の置換変異体は、開示された配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その代わりに異なる残基が挿入されたものである。好ましくは、アミノ酸変化は保存的である。天然のアミノ酸の各々についての好ましい保存的置換は以下のとおりである:AlaからSer;Argからlys;Asnからglnまたはhis;Aspからglu;Cysからserまたはala;Glnからasn;Gluからasp;Glyからpro;Hisからasnまたはgln;Ileからleuまたはval;Leuからileまたはval;Lysからarg;glnからglu;Metからleuまたはile;Pheからmet、leuまたはtyr;Serからthr;Thrからser;Trpからtyr;Tyrからtrpまたはphe;およびValからileまたはleu。
【0071】
16S rRNA配列は、例えばGenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)にオンラインで寄託することができ、それらを、例えば、Eeckhaut et al. (2008)によって記載されているように、配列相同性の評価における参照として16S rRNA配列を使用するために、それらの固有の受託番号に基づいて検索され得ることは、当業者によく知られている。組成物の7つの細菌種の16S rRNA配列についてのGenBank受託番号を以下に列挙する。これらの受託番号は、配列相同性の評価のために、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/からそれぞれの16S rRNA配列を検索するために用いることができる。
【0072】
【0073】
本発明はさらに、前記組成物が、直腸投与形態または経口摂取形態のいずれかとして製剤化されている医薬組成物である、上記の組成物に関する。
この点について、本発明はさらに、前記経口摂取形態が、カプセル、マイクロカプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、丸薬、懸濁液またはシロップである、上記の組成物に関する。
本発明はさらに、食品、飲料、食品サプリメントまたは栄養補助食品に組み込まれている、上記の組成物に関する。
【0074】
したがって、本発明は、ヒト、非ヒト家畜または農場動物または水生動物のための、食品、食品サプリメントまたは医薬品として使用される、上記の組成物に関する。したがって、組成物は、食品、機能性食品、食品サプリメント、化粧品、栄養補助食品、プロバイオティック組成物または医薬品に組み込むことができる。食品は、典型的には、主要栄養素であるタンパク質、炭水化物および脂肪の1以上から主に構成される食用材料である。食品は、ビタミンまたはミネラルなどの1以上の微量栄養素も含有していてもよい。
【0075】
本明細書で用いられる食品なる用語は、飲料も包含する。組成物が組み込まれ得る食品の例には、スナックバー、シリアル、パン、マフィン、ビスケット、ケーキ、ペーストリー、加工野菜、スイーツ、ヨーグルトを含むプロバイオティック配合物、飲料、植物油ベースの液体、動物脂肪ベースの液体、冷凍菓子およびチーズが含まれる。好ましい食品には、ヨーグルト、チーズおよび他の乳製品が含まれる。飲料の例には、ソフトドリンク、シロップ、スクワッシュ、乾燥飲料ミックスおよび栄養ドリンクが含まれる。栄養補助食品は、疾患の予防および処置を含む、医療または健康上の利益を提供すると考えられる食品成分、食品サプリメントまたは食物製品である。機能性食品は、消費者に純粋な栄養を供給することを上回る健康上の利益を提供するものとして典型的に販売される食品である。
【0076】
本発明はまた、本明細書で議論される組成物を含むプロバイオティクスも提供する。プロバイオティクスは、典型的には、腸の微生物叢を増強することができる生きたサプリメントである。このようなプロバイオティクスは、特にヒトのみならず、農場および家畜動物、ならびに水生生物に与えられてもよい。プロバイオティクスは、ヒトまたは動物による摂取に適した、1以上の許容される賦形剤または香味料をさらに含んでいてもよい。
【0077】
本発明の組成物は、医薬組成物の製造において使用されてもよい。したがって、本発明はさらに、本発明の組成物および薬学的に許容し得る賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0078】
本発明の化合物を含む組成物は、種々の形態、例えば、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってもよい。かかる組成物において存在していてもよい賦形剤の例は、希釈剤(例えば、でんぷん、セルロース誘導体または糖誘導体)、安定剤(例えば、吸湿性賦形剤、例えばシリカまたはマルトデキストリンなど)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝剤)、結合剤、コーティング剤、保存剤、または懸濁剤を含む。好適な賦形剤は、当業者によく知られている。
本発明は、より具体的には、前記組成物は、合計105~1011コロニー形成単位の本発明の細菌を含む、上記の組成物に関する。
【0079】
この文書およびその特許請求の範囲において、動詞「を含む(to comprise)」およびその活用形は、その単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。加えて、動詞「からなる(to consist)」は、本明細書で定義される組成物が、具体的に同定されるものよりも多くの構成要素を含み得ることを意味する「から本質的になる(to consist essentially of)」と置き換えられてもよい。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への参照は、その文脈が、要素のうちの1つのみが存在することを明確に要求しない限り、1を超える要素が存在する可能性を排除するものではない。不定冠詞「a」または「an」は、したがって、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0080】
本明細書に引用される全ての特許および参考文献は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。以下の例は、説明の目的のためにのみ提供されており、いかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例0081】
例
例1.本発明の組成物の確立
1.1 組成物のための細菌の単離
抗生物質療法に曝露されていない、若くて健康なドナーを選択し、SHIME(登録商標)モデルに接種した。SHIME(登録商標)モデル(
図1、Van den Abbeele et al., 2010)のいくつかの操作パラメーターを制御することにより、食物繊維発酵、胆汁酸代謝、乳糖分解などに関与する微生物叢などのヒトの健康に有益な影響を及ぼす腸微生物叢のネットワークを豊かにし、そのネットワークを選択すことができる。SHIME(登録商標)装置は、様々な機能的特性を有する細菌株、例えば、繊維分解体(例えば、Bifido bacteria、Bacteroides)、発酵性(例えば、Escherichia coli)または乳酸産生体(例えば、Lactobacilli、PediococciおよびEnterococci)、酪酸産生体(例えば、Anaerostipes caccae、Butyricicoccus pullicaecorum、Faecalibacteruim prausnitzii、Roseburia hominis、Roseburia inulinivorans、Clostridium butyricum)およびプロピオン酸産生体(例えば、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、Roseburia inulinivorans、Akkermansia muciniphila)などの単離のために用いられた。この目的のために、選択培地は、LAMVAB(lactobacilli;Hartemink et al 1997)、RB(bifidobacteria;Hartemink et al. 1996)、Enterococcus培地(Enterococci;Possemiers et al. 2004)、TBX(Escherichia coli;Le Bon et al. 2010)、BBE(Bacteroides fragilis群;Livingston et al. 1978)、Mucin最小培地(Akkermansia;Derrien et al. 2004)、M2GSC(酪酸産生体;Barcenilla et al. 2000)または乳酸含有最小SHIME培地(酪酸産生体)、コハク酸およびフコース含有最小SHIME培地(プロピオン酸産生体)、硫酸塩富化最小培地(硫酸産生体)、アラビノキシラン含有最小SHIME培地および血液アガープレート(Prevotella)などから選択した。SHIMEに加えて、同じ戦略を使用して、細菌は、健康なドナーからの新鮮な糞便試料からも直接単離した。
【0082】
実際には、SHIMEの結腸区画または均質化された糞便試料から回収した試料の10倍希釈物を作成し、上記の特定の培地組成を有するアガープレート上に広げた。異なる細菌群のそれぞれの増殖条件を考慮して、プレートを37℃でインキュベートした。インキュベーションの際に、約30のコロニーを細菌群ごとに採取し、適切な条件下で、それぞれ液体増殖培地中でインキュベートした。一晩培養物中の短鎖脂肪酸濃度を、Possemiers et al. (2004)に記載されるように、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。さらに、液体培養物の試料を系統発生分析に用いた。DNAを、Possemiers et al. 2004に記載されるように抽出し,ほぼ全長の16S rRNA配列を、ユニバーサル真正細菌プライマーfD1およびrD1(Weisburg et al. 1991)を用いて各々の単離体について増幅した。精製の際に、DNA試料を配列決定のために送り出した。得られた配列を、BLASTツールボックス(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いる各々の単離体の同定のために、既存の配列と整列させた。
【0083】
1.2 本発明の組成物の設計
様々な細菌株を実際に機能的な微生物ネットワークとして組み合わせるために、SHIME(登録商標)反応槽および糞便から単離した純粋な培養物(例1.1に記載)を使用した。加えて、純粋な培養物は、BCCM/LMG(http://bccm.belspo.be)およびDSMZ(www.dsmz.de)などの培養コレクションから供給された。
【0084】
短鎖脂肪酸(SCFA)は、腸微生物叢による食物繊維発酵の最終生産物であり、宿主の健康にいくつかの有益な効果を発揮することが知られている。生産される主なSCFAは、約60:20:20のモル比の酢酸、酪酸およびプロピオン酸である。酢酸は腸から吸収され、宿主がエネルギー基質として使用することができる一方で、酪酸は腸上皮の主エネルギー源として作用し、炎症および結腸がんに対する保護効果が証明されている。プロピオン酸は、酪酸と比較して腸内で同様の局所活性を有するが、肝臓に輸送され、明確なコレステロール低下効果および血糖コントロールに対する効果を有することが示された。
【0085】
SCFAの重要かつ多様な生理学的役割を考慮すると、この腸微生物機能の破壊(例えば、胃腸障害)は、宿主の健康に重大な影響を及ぼす可能性がある。結果的に、この例において、スクリーニングを行い、合計SCFA生産および最も興味深い相対的SCFA生産比を誘発することができる組成物を設計した。後者について、酪酸は、生産される様々なSCFAの中で最も興味深いと考えられていた。さらに、腸障壁の完全な状態に関する異なる組成物の効果を、上皮細胞と免疫細胞との共培養によって評価した。
【0086】
実際には、1.1に記載された単離および選択ラウンドから得られた、または培養コレクションから注文された、最も興味深い発酵プロファイルを有する合計20の単離体(「単離体-X」と呼ぶ)を、それらのグリセロールストックから回収し、それらのそれぞれの最適な増殖条件下で増殖させ、細菌株の均質な懸濁液を得た。
【0087】
【0088】
単離体を98の個別の最初のスクリーニング実験のセットにおいて2~10の範囲の数で組み合わせた。各実験について、KH2PO4/K2HPO4でpH6.8に調整した滅菌SHIME(登録商標)栄養培地を含有する滅菌インキュベーションボトル中で発酵を開始し、窒素でフラッシュした。次に、滅菌培地に、等量の選択された種からなる10%(v/v)の混合接種物を接種した。インキュベーションボトルに窒素をフラッシュして嫌気性条件を確保し、37℃(90rpm)でインキュベートした。試料を、SCFA生産について24時間後に分析した。最も高い酪酸産物を有する組成物をその後選択し、最後の実験において23の異なる細菌のセットをさらに用いた(MX-Yと呼ぶ、式中、X=組成物中に存在する単離体の数であり、Y=X単離体を含む、特有の組成物A、B、C等である)。
【0089】
【0090】
これらの23の組み合わせを、先に記載したように再度インキュベートした。24時間後、試料を、SCFA分析およびPossemiers et al. (2013)に記載されている、Caco-2およびTHP1細胞の共培養モデルとの組み合わせのために回収した。後者の実験のエンドポイントは、腸障壁機能に対する保護効果の尺度としての経上皮電気抵抗(TEER)であった。
【0091】
図2は、23の異なる組成物の24時間のインキュベーションにより得られた酪酸レベルおよびTEER値に対するそれらの効果を記載する。酪酸レベルおよび腸内障壁機能に対する効果の両方において強い差異が観察され、最も高い酪酸レベルを有する組み合わせは、異なるランク付けにより示されるようにTEERレベルに対する高い保護作用を必ずしも誘発しなかった。驚くべきことに、7つの異なる単離体の1つの組成物(
図2においてM7-Bと呼ぶ)が、24時間後の酪酸レベルと特に腸障壁機能に対する保護効果との両方で一番にランク付けされた。この組成物は、SHIMEからの6つの単離体とヒトの糞便試料から得られた1つの培養物を含有していた。16S rRNA遺伝子配列決定およびNCBI BLASTデータベースでの配列の比較は、M7-Bが、新規のSHIME単離体である、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeならびに新規の糞便単離体である、Butyricicoccus pullicaecorumから構成されていたことを明らかにした。興味深いことに、新規の単離体は、
図2に示される他の組成物の少なくとも1つに全て存在したが、他の組成物のいずれも、酪酸生産およびTEER値の保護に関して同じ有効性に達しなかった。これは、観察された効果が組成物中に存在する特定の種の1つには関連しないが、これらの7つの細菌の特定の組み合わせのみが驚くべき肯定的な結果を導くことを示す。
【0092】
7つの新規の単離体は、以下の受託番号:Faecalibacterium prausnitzii LMG P-29362、Butyricicoccus pullicaecorum LMG P-29360、Roseburia inulinivorans LMG P-29365、Roseburia hominis LMG P-29364、Akkermansia muciniphila LMG P-29361、Lactobacillus plantarum LMG P-29366およびAnaerostipes caccae LMG P-29359で、BCCM/LMG細菌コレクション(Ghent Belgium)に寄託された。
【0093】
7つの単離体とそれぞれの種の存在の必要性との間の驚くべき相乗作用のさらなる実験的証拠として、単離体の1つが毎回7つの単離体の元の組成物から除去(すなわち排除)された実験が設定された。実際には、KH
2PO
4/K
2HPO
4でpH6.8に調整した滅菌SHIME(登録商標)栄養培地を含有する滅菌インキュベーションボトルで発酵を再び開始し、窒素をフラッシュした。次に、滅菌培地に、7つの単離体のうち6つの等量の10%(v/v)の混合接種物を接種した。7つの単離体の完全な組成物を対照として作用させ、合計8つの並行インキュベーションを生じた。インキュベーションボトルに窒素をフラッシュして嫌気性条件を確保し、37℃(90rpm)でインキュベートした。試料を、酪酸生産について24時間および48時間後に分析した。
図3に示すように、元の組成物から1種のみを除去することは、6種の全ての組成物について24時間後の酪酸生産レベルを、元の組成物の酪酸生産レベルの80%未満まで有意に低下させた。48時間のインキュベーション後も、酪酸レベルは、Roseburia hominisを含まない組成物を例外として、6種の全ての組成物について有意に低下した。これは、組成物の全ての単離体が、組成物の完全な可能性に到達するために必須であることを確認する。Roseburia hominisを含まない組成物のみが48時間のインキュベーション後も依然として完全な組成物と同様の機能性をもたらしたので、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Akkermansia muciniphila、Lactobacillus plantarumおよびAnaerostipes caccaeから本質的になる6種の組成物の使用が、2番目に最適であると想定することができる。
【0094】
1.3.本発明の組成物の生産
Lactobacillus plantarum種、Faecalibacterium prausnitzii種、Butyricicoccus pullicaecorum種、Roseburia inulinivorans種、Roseburia hominis種、Akkermansia muciniphila種およびAnaerostipes caccae種からなる組成物は、3つの異なる戦略を用いて生産される。これらの戦略は、1)組成物の種を別々に増殖させ、その後それらを一緒に混合すること、2)組成物の種を多段階発酵槽において一緒に増殖させること(すなわち、上記のインビトロSHIME(登録商標)モデル)、および3)組成物の種を一段階発酵槽において一緒に増殖させること、の何れかを含む。
【0095】
第1の戦略(=「アセンブリ」戦略)では、選択された種を、それらのグリセロールストックから回収し、それぞれの最適増殖条件の下で増殖させ、細菌株の均質な懸濁液を得た。それらの機能的活性を評価するために、選択された種の等量からなる混合接種物を作成した。この接種物を、KH
2PO
4/K
2HPO
4でpH6.8に調整した滅菌SHIME(登録商標)栄養培地を含有する滅菌インキュベーションボトルに10%(v/v)で添加した。インキュベーションボトルに窒素をフラッシュして嫌気性条件を確保し、37℃(90rpm)でインキュベートした。16時間の特定の間隔において、増殖培地の40%(v:v)を、条件SHIME(登録商標)栄養培地で置き換えた。条件SHIME(登録商標)栄養培地は、700mLの通常SHIME(登録商標)飼料(pH2)を37℃で1時間インキュベートし、その後25g/LのNaHCO
3、23.6g/LのKH
2PO
4および4.7g/LのK
2HPO
4で補充された300mLの膵液(pH6.8)を添加することにより、調製した。試料をSCFA生産について5日の期間にわたり分析した(
図4)。酪酸レベルは、アセンブリの24時間インキュベーションで7mMに、5日後に最大14mMに達した。
【0096】
第2の戦略(すなわち、「コラボローム」戦略、または「前記細菌が投与前に胃腸管の動的シミュレーターで一緒に増殖される」戦略)では、選択された種を、それらのグリセロールストックから回収し、それぞれの最適増殖条件の下で増殖させ、細菌株の均質な懸濁液を得た。次に、株を混合し、pH6.15~6.4で単一の結腸領域からなるSHIME(登録商標)装置(Van den Abbeele et al., 2010)において3重に接種した。2週間の順応期間を実施し、機能的コラボーム組成物を作成した。そのような順応期間の必要性および関連性は、選択された種の組成物の培養の間のSCFAプロファイルの発展によって明らかに実証される(
図5)。最初に、組成物は互いに順応し、供給された基質のSCFAへの変換において活性になるのに時間を要する。しかしながら、接種後4~6日で、組成物によるSCFAの生産が安定化し始め、高レベルの酪酸が測定された。インキュベーションの最後の日(14日目)に、3重のインキュベーションの各々は、酪酸レベルが19mMに達する、非常に類似した、安定した強力な活性な機能性組成物をもたらした。
【0097】
安定化されたコラボロームをグリセロールストックとして-80℃で凍結させ、その後、アセンブリ戦略と同じ方法で接種物として使用するために解凍した場合、酪酸レベルは、驚くほど速く上昇し、個別の種のアセンブリと同じインキュベーション条件下で、25%高いレベルに達した(
図4)。酪酸レベルは、アセンブリの24時間のインキュベーションですでに12mMに達し、2日後にすでに最大19mMに達した。
【0098】
第3の戦略では、前記組成物の生産は、フェドバッチ方式で操作される最適化された一段階発酵槽アプローチ(すなわち、代替「コラボローム」戦略または「前記細菌が投与前に1つの発酵槽で一緒に増殖される」戦略)を用いて行った。選択された種を、それらのグリセロールストックから回収し、それぞれの最適増殖条件の下で増殖させ、細菌株の均質な懸濁液を得た。発酵を、KH2PO4/K2HPO4でpH6.8に調整した滅菌SHIME(登録商標)飼料を含有する滅菌インキュベーションボトル中で開始し、窒素をフラッシュした。次に、滅菌培地に、等量の選択した種からなる10%(v/v)の混合接種物を接種した。インキュベーションボトルに窒素をフラッシュして嫌気性条件を確保し、37℃(90rpm)でインキュベートした。16時間の特定の間隔において、増殖培地の40%(v:v)を、条件SHIME(登録商標)栄養培地で置き換えた。条件SHIME(登録商標)栄養培地は、700mLの通常SHIME(登録商標)飼料(pH2)を37℃で1時間インキュベートし、その後25g/LのNaHCO3、23.6g/LのKH2PO4および4.7g/LのK2HPO4で補充された300mLの膵液(pH6.8)を添加することにより、調製した。
【0099】
図6に示すように、組成物によって生産された合計SCFA生産物およびSCFAの比は、6回の置き換えサイクル後に安定していた。前述の同じ戦略で再接種した場合、安定化されたコラボロームは、アセンブリ戦略における同じ種のセットと比較して、2日速い最大のSCFA生産(酢酸/プロピオン酸/酪酸比は、約14/12/74)、および25%高い酪酸生産を導いた。
【0100】
例2:インビトロ実験
2.1:複雑な微生物腸コミュニティーへの機能性組成物の添加の効果
この実験は、500~1000の微生物種からなると推定されるこの複雑な腸コミュニティーのメンバーを有する結腸基質に対する強力な競合が存在する、混合微生物腸コミュニティーに接種した場合に、機能性組成物が活性であることを実証する。この問題に取り組むために、実験を、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物を用いた小さなインキュベーションボトル中で行い、例1.3のコラボローム戦略を通して生産した。
【0101】
増加する濃度の予め順応させた組成物(0、4および20%)を、PBSで洗浄し、3つの異なる培地:
1)滅菌基本培地[2g/Lペプトン、2g/L酵母抽出物、2mL/L Tween 80、10μL/LビタミンK1、500mg/L L-システインHCl、100mg/L NaCl、40mg/L K2HPO4、40mg/L KH2PO4、10mg/L MgSO4・7H2O、6,7mg/L CaCl2・2H2O、1.5mg/Lレサズリン、50mg/Lヘミン(50mg/L)-pH5.5]+デンプン6g/L;
2)基本培地+20%糞便スラリー(De Boever et al., 2000に記載されているように調製);
3)基本培地+完全微生物叢を含む20%SHIME(登録商標)結腸懸濁液
に添加した。
【0102】
0%~4%および20%の予め順応された酪酸生産コンソーシアム(consortium)の増加する濃度は、絶対酪酸レベルの比例的増加をもたらした(
図7)。これは、滅菌培地においてのみ観察されるのではなく、糞便試料またはSHIME(登録商標)結腸領域の両方に由来する混合微生物叢で補充された培地についても観察された。したがって、この実験は、組成物が非競合的な結腸環境に存在する場合にのみ活性であるだけでなく、多くの腸微生物が同じ栄養素に対して競合する混合された微生物叢に投与された場合に、高い酪酸レベルをもたらすことも実証する。さらに、酪酸の生産が増加したばかりでなく、プロピオン酸の生産もまた大幅に増加した。インキュベーションにおけるこれらの増加および酢酸の減少の組み合わせは、組成物が一般的な微生物発酵プロファイルをより健康に有益なプロファイルに調節することができることを示している。
【0103】
2.2:抗生物質に誘発されたディスバイオシスな腸微生物コミュニティーの代謝機能を回復するための機能性組成物の有効性
抗生物質の使用は、腸微生物叢コミュニティーの大きな破壊を引き起こすと考えられている。ディスバイオシスな微生物組成は、病原体による感染に対してより感受性であることが示されている。さらに、多くの胃腸疾患は、炎症性腸疾患などのディスバイオシスな微生物組成と相関しており、健康な腸マイクロバイオームの重要性が強調されている。分類学的組成の回復、特に長期の抗生物質摂取後の機能性は、通常、健康な腸内微生物コミュニティーである前処置状態に達するまでに3ヶ月かかる(Panda et al., 2014)。抗生物質療法に曝露後の回復時間の短縮は、したがって、重度の感染のリスクを低減させ、一般的に宿主の健康を促進することができる。この点において、選択された組成物の観察された機能的活性は、抗生物質誘発性ディスバイオシスにおける微生物コミュニティーの回復を促進し、感染リスクを低減する有望な戦略であり得る。
【0104】
この例において、抗生物質誘発性ディスバイオシスを、適切な抗生物質を投与することにより、インビトロSHIME(登録商標)モデルにおいてモデル化した。この実験の目的は、機能性組成物の投与時の模擬腸結腸環境における典型的な「健康な」代謝産物プロファイルの回復を評価することであった。さらに、実験は、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略(例1.3を参照)のいずれかにより生産される場合、組成物の有効性を識別することを目的とした。実験を、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物で、再び実行した。腸マイクロバイオームの完全な機能的プロファイルをより上手く模倣するために、この特定の実験において、組成物を、Escherichia coli、Enterococcus faecium、Lactobacillus mucosae、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium longum、Bacteroides thetaiotaomicronおよびBacteroides vulgatusでさらに補充した。
【0105】
実際には、SHIME(登録商標)ベッセル(pH6.15~6.40)に糞便材料を接種し、14日間安定化させた(M-SHIME(登録商標)装置-Van den Abbeele et al., 2012)。2週間の制御期間後、SHIME(登録商標)由来の結腸微生物叢を、抗生物質のカクテル(それぞれ40/40/10mg/Lのアモキシシリン/シプロフロキサシン/テトラサイクリン)で処置して、ディスバイオシスを誘発した。1日後、ディスバイオシスな微生物を、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略のいずれかによって生産された機能性組成物で5日間処置した。研究のエンドポイントは、模擬腸結腸環境における典型的な「健康な」SCFA代謝物プロファイルの回復を評価することであった。組成物を投与しない抗生物質暴露後の腸コミュニティーの代謝活性の自発的な回復を模擬するために対照SHIME(登録商標)ベッセルを含んだ。結果は、抗生物質投与前の値に対する各時点でのSHIMEにおけるSCFAレベルのデルタとして表される(
図8)。
【0106】
SHIME(登録商標)ベッセルの抗生物質処置の際に、酢酸、プロピオン酸および酪酸生産の有意な低下が観察された。この発見は、腸微生物コミュニティーの破壊を確認する。前処置状態への代謝物プロファイルの回復(SCFA生産に関して)は、5日間の酢酸、プロピオン酸および酪酸の発展として
図8に示される。これは、機能の回復が、対照状況(組成物の投与なし)において遅く、完全な回復が、酢酸およびプロピオン酸について5日以内に観察されないことを示す。興味深いことに、組成物での処置は、3つの全てのSCFAの対照条件と比較してより速い回復をもたらした。さらに、アセンブリ戦略の組成物が、プロピオン酸および酪酸の完全な回復を、それぞれ5日後および3日後に誘発した一方で、コラボローム戦略の組成物は、それぞれ4日後および2.5日後のプロピオン酸および酪酸の完全な回復を伴う、アセンブリ戦略と比較してより速い回復を誘発した。最終的に、コラボローム戦略はまた、アセンブリ戦略と比較して、プロピオン酸および酪酸レベルの増加を伴う、最終的な活性の増加をもたらした。これらの結果は、抗生物質媒介微生物ディスバイオシスの回復のための組成物の可能性を強調している。さらに、この発見は、コラボローム戦略による予めの順応が、アセンブリ戦略と比較して抗生物質曝露後の微生物SCFA生産のより効率的な回復をもたらすことを明確に実証する。
【0107】
2.3:炎症性腸疾患におけるディスバイオシスな微生物腸コミュニティーの代謝機能を回復するための機能性組成物の有効性
炎症性腸疾患(IBD)は、損なわれた宿主-微生物相互作用に関連しており、少なくとも部分的には、腸微生物叢ディスバイオシスの状態に関連している。後者には、例えば、少ない存在量の、酪酸CoA:酢酸CoAトランスフェラーゼおよびプロピオン酸キナーゼを含み(Vermeiren et al., FEMS 2011)、これはひいてはバランスのとれたSCFA生産能力の生産に悪影響を与える。正常な腸の発達および維持に対するSCFAの重要な影響を考慮すると、SCFA生産の観点からの微生物叢組成および機能の回復は、IBD関連症状に肯定的な影響を及ぼし得る。この点において、選択された組成物の観察された機能的活性は、健康な腸障壁の回復および維持の基礎として、IBDのディスバイオシスにおける微生物コミュニティーの回復を増大させる有望な戦略であり得る。
【0108】
この例において、IBD関連ディスバイオシスを、前述のインビトロSHIME(登録商標)モデルにおいてモデル化した(Vigsnaes et al. 2013)。この実験の目的は、機能性組成物の投与時の模擬腸結腸環境におけるSCFAプロファイルの観点において、微生物叢の回復を評価することであった。さらに、実験は、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略(例1.3を参照)のいずれかにより生産される場合、組成物の有効性を識別することを目的とした。実験は、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物で再び行った。
【0109】
実際には、SHIME(登録商標)ベッセル(pH6.15~6.40)に潰瘍性大腸炎患者からの糞便材料を接種した(M-SHIME(登録商標)装置-Van den Abbeele et al., 2012)。同時に、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略のいずれかによって生産された機能性組成物の単回用量を結腸領域に添加し、投与を模擬した。3番目の実験を、組成物の投与なしの対照実験として平行して行った。酢酸、プロピオン酸および酪酸の生産を組成物の投与後1および2日続けた。
【0110】
結果を
図9に示す:アセンブリ戦略で生産された組成物の投与は、1日目にSCFA生産(主に酢酸および酪酸)の増加をもたらしたが、この効果は2日目にはもはや見られなかった。これは、組成物が、IBDマイクロバイオーム環境において機能的に活性であることを示す。興味深いことに、プロピオン酸および酪酸生産に対する効果は、IBD対照とは対照的に、コラボローム戦略の組成物の投与においてはるかに顕著であり、プロピオン酸および酪酸生産においてそれぞれ4倍および3倍の増加を伴った。アセンブリ戦略の組成物とは対照的に、効果は2日目に未だで顕著であり、低下した酢酸生産と一致した(クロスフィーディングの増加、それゆえネットワークの改善の兆候)。これらの結果は、IBD関連微生物ディスバイオシスの回復のための組成物の可能性を強調する。さらに、この発見は、コラボローム戦略による予めの順応が、アセンブリ戦略と比較してIBD条件下での微生物SCFA生産のより効率的な回復をもたらすことを明確に実証する。
【0111】
2.4:インビトロシミュレーションアッセイにおける植物性Clostridium difficileの増殖を阻害するための機能性組成物の有効性
この例において、機能性組成物が腸条件下で機能的に活性であるだけでなく、感染から腸環境を保護することができるか否かを評価することを目的として、Clostridium difficileチャレンジ試験を行った。かかるチャレンジ試験において、組成物に植物性Clostridium difficile(Cdif)細胞をチャレンジし、模擬胃腸条件下でCdifの増殖を阻害するその能力を評価した。さらに、実験は、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略(例1.3を参照)のいずれかにより生産される場合、組成物の有効性を識別することを目的とした。実験は、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物で、再び実行した。
【0112】
実際には、Clostridium difficile(LMG 21717T)のグリセロールストックを解凍し、窒素をフラッシュして嫌気性条件を確保した補強クロストリジウム培地(Reinforced Clostridial Medium)(RCM)ブロスを含有するボトルに接種した。ボトルを振盪インキュベーター(90rpm)で24時間インキュベートし、増殖した培養物の10%を再びRCMブロスに接種した。24時間の増殖後、均質化されたC. difficile培養物を、以下:
1)基本培地(ブランク);
2)アセンブリ戦略の組成物を含有する基本培地;
3)コラボローム戦略の組成物を含有する基本培地;
4)SHIME(登録商標)結腸懸濁液を含有する基本培地
を含有するボトルに(3重に)等分した(10%v:v)。
【0113】
ボトルを37℃で、振盪インキュベーター(90rpm)でインキュベートした。定期的な時点で、試料を回収し、トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子の検出および定量に基づくqPCRアッセイによってC. difficileを定量する前に、直ちに-80℃で凍結させた。この目的のために、ゲノムDNAをBoon et al. (2003)にしたがって抽出した。増幅反応は、フォワードおよびリバースオリゴヌクレオチド:5'-TATGGACTATGTTGTAATAGGAC-3'(フォワード)および5'-CATAATATTGGGTCTATTCCTAC-3'(リバース)を含んだ。検量線を作成することにより、PCR産物の絶対量を得た。
【0114】
この制御されたインビトロシミュレーションアッセイにおいて、C. difficileの増殖が48時間のインキュベーション後に基本培地において観察され、インビトロシミュレーションアッセイにおけるブランクの有効性が確認された。SHIME(登録商標)結腸懸濁液(実際の糞便移植のシミュレーションとして)は、48時間のインキュベーション後に最も高いC. difficile増殖阻害を示した(すなわち、58%)。興味深いことに、同様の結果がコラボローム戦略の組成物について得られ、約53%のC. difficile増殖阻害を示した。最も低い効果は、アセンブリ戦略の組成物が添加された場合に観察された(すなわち、23%の増殖阻害)。この実験は、C. difficileが組成物によってその増殖が有意に阻害されたこと、およびこの阻害がコラボローム戦略による組成物を予め順応させた場合に最も顕著であることを明らかに実証している。
【0115】
2.5:腸障壁機能および腸免疫の宿主バイオマーカーに関する機能性組成物の効果
例2.1~2.3は、組成物が、複雑な腸条件下で機能的に活性であり、コラボローム戦略による生産の場合に最も高い活性を有する腸代謝物プロファイルを回復することができることを示した。これは、腸上皮、およびそれによる腸障壁機能および局所免疫に有益な影響を与え得る。
【0116】
この可能性を評価するために、この例は、腸細胞(Caco-2細胞)およびマクロファージ(THP1)の確立された共培養細胞モデル(Possemiers et al. 2013)に関する、先の実験から回収した試料の組み合わせを記載する。このモデルにおいて、LPSによるTHP1細胞の刺激は、炎症促進性サイトカインの増加した生産をもたらし、腸細胞層を破壊して、いわゆる「リーキーガット(leaky gut)」状態を作り出す傾向がある。「リーキーガット」への効果は、対照条件と比較した、経上皮電気抵抗(TEER)[腸障壁有効性の測定]の効果および炎症性サイトカイン生産を評価することによって測定される。
実際には、例2.3のM-SHIME実験から1日目に回収した試料を、共培養リーキーガットモデルと組み合わせた。
【0117】
2.6:組成物の機能的活性に対する株同一性の変動の影響
組成物中の7つの単離体間の驚くべき相乗効果が株特異的であるか、または同じ種の他の株でも達成することができるか否かを評価するために、さらなる実験を行った。この例において、2つの異なる組成物は、「コラボローム」戦略(例1.3を参照)により生産される。
【0118】
組成物1が、例1.2に記載される特定の単離体を含有する一方で、組成物2は、培養コレクションから得られる同じ種の株から構成される:
組成物1:Faecalibacterium prausnitzii LMG P-29362、Butyricicoccus pullicaecorum LMG P-29360、Roseburia inulinivorans LMG P-29365、Roseburia hominis LMG P-29364、Akkermansia muciniphila LMG P-29361、Lactobacillus plantarum LMG P-29366およびAnaerostipes caccae LMG P-29359
組成物2:Lactobacillus plantarum ZJ316、Faecalibacterium prausnitzii (DSMZ 17677)、Butyricicoccus pullicaecorum (LMG 24109)、Roseburia inulinivorans (DSMZ 16841)、Roseburia hominis (DSMZ 16839)、Akkermansia muciniphila (DSMZ 22959)およびAnaerostipes caccae (DSMZ 14662)。
【0119】
実際には、選択された種を、それらのグリセロールストックから回収し、それぞれの最適増殖条件の下で増殖させ、細菌株の均質な懸濁液を得た。次に、株を組成物1および組成物2に混合し、6.15~6.4のpHで単一の結腸領域からなるSHIME(登録商標)装置(Van den Abbeele et al., 2010)において3重に接種した。酪酸生産プロファイルは、14日の期間続けた。
【0120】
驚くべきことに、酪酸生産における動力学は、両方の組成物において非常に類似しており、初期の強力な変動を伴い、その後、約6日後に酪酸レベルは安定化した。実験の最後(14日目)において、組成物1についての酪酸レベルが19.3mMに達する一方で、組成物2についてのレベルは18.8mMであった。これは、例1.2からの組成物において観察される相乗効果は、同じ種から得られる異なる株を用いることにより置き換えることができたことを示す。
【0121】
例3:インビボ実験
3.1:抗生物質に誘発された胃腸微生物叢破壊のマウスモデル
この例における実験の目標は、機能性組成物がインビボ設定においても抗生物質誘発性ディスバイオシス後の腸マイクロバイオームの代謝能力を回復することができるか否かを評価することであった。
【0122】
この例において、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物が用いられ、例1.3の「コラボローム」戦略を介して生産された。さらに、腸マイクロバイオームの完全な機能性プロファイルをより完全に模倣する必要性を評価するために、さらなる実験を、Escherichia coli、Enterococcus faecium、Lactobacillus mucosae、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium longum、Bacteroides thetaiotaomicronおよびBacteroides vulgatusでさらに補充された組成物(「拡張組成物」と呼ぶ)において行った。
【0123】
実際には、「組成物」および「拡張組成物」を、コラボローム戦略にしたがって新鮮に調製し、(嫌気的条件を確保するために嫌気性チャンバー内で)PBSで2回洗浄し、100μLに濃縮し、経口強制飼養によってできる限り早くマウスに投与した。少なくとも5週齢のマウス(C57/BL6)を購入し、病原体のない条件下で維持し、標準食餌を与えた。マウス実験は、ベルギーゲント大学動物実験倫理委員会(Ethics Committee of Animal Trials of Ghent University, Belgium)の承認を受けたプロトコールにしたがって行った。抗生物質誘発性ディスバイオシスを誘発するために、抗生物質クリンダマイシンを250mg/Lの濃度で飲料水に投与した。抗生物質処置の5日後、マウスの胃内容物をNaHCO3で中和し、その後マウス(1群あたり10匹のマウス)を5日間連続で、以下:
1)生理食塩水溶液中組成物;
2)生理食塩水溶液中拡張組成物および
3)生理食塩水溶液(対照)
を経口強制飼養した。
【0124】
従来の群(抗生物質処置をしないが、生理食塩水溶液で処置)を、強制飼養手順から生じる変動を排除するための対照として含んだ。実験中、糞便試料(約100mg/マウス)を回収し、将来の分析のために-80℃で保存した。
【0125】
同じ群に由来するプールされたマウスの糞便試料から得られたSCFAプロファイルは、5日間の抗生物質処置が酢酸のみが残存する程度まで、酪酸およびプロピオン酸生産を有意に減少させることを実証している(
図10)。
図10に示されるように、代謝機能の自発的な回復は遅く、最後の抗生物質処置の約5日後(10日目)にのみ開始され、もっとも3つの主要なSCFA(酢酸、プロピオン酸および酪酸)のモル比は未だ抗生物質前の状態に戻っていなかった。しかしながら、マウスがコラボローム戦略の組成物または拡張組成物のいずれかで処置された場合、酪酸代謝の回復は、抗生物質処置後、約3日後(8日目)にすでに開始した。さらに、両方の組成物で処置されたマウスの代謝活性は、抗生物質の最後の投与の5日後(10日目)に、プロピオン酸および酪酸の両方の良好な生産を伴う、ほぼ完全な回復を示した。拡張組成物は、組成物と比較してより高い多様性の酢酸およびプロピオン酸産生体を含有し、これは、実験の10日目でわずかに異なる発酵プロファイルによっても反映される。結論として、この例は、機能性組成物が、抗生物質誘発性ディスバイオシスにおける腸代謝プロファイルのより速くより強力な回復を得るのに有効であるこというインビボにおける確認を提供する。さらに、組成物中の正確な種の組み合わせにおける変化は、最終結果を特定の代謝プロファイルに合せることを可能にする。
【0126】
3.2:炎症についてのTNBSマウスモデル
TNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)モデルは、体重喪失、血性下痢および腸壁肥厚を含む、クローン病(Scheiffele et al. 2001)の特徴のいくつかを模倣する大腸炎に一般に使用される。組織病理学において、TNBSは、CDに罹患した患者に見られる古典的な特徴である深い潰瘍の形成を伴って、腸の斑状の貫壁性炎症を引き起こす。これは、TNBSモデルを、IBDにおける腸粘膜への損傷を予防および/または回復させるための、および健康な腸障壁の維持/発達を助けるための、機能性組成物の能力のインビボ評価のための優れた候補とする。
【0127】
この例において、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有する組成物を、TNBSモデルにおける評価に関する有益な効果を評価するために用いた。さらに、実験は、「アセンブリ」戦略または「コラボローム」戦略(例1.3を参照)のいずれかにより生産される場合、組成物の有効性を識別することを目的とした。大腸炎を、エタノール中で希釈した粘膜増感剤であるTNBSの直腸滴下注入によって動物において引き起した。エタノールの投与は、結腸粘膜障壁を破壊してTNBSの基底膜への浸透を可能にするための前提条件である。TNBSは、局在化した結腸および腸微生物タンパク質をハプテン化し、免疫原性にし、これにより、宿主の自然および適応免疫応答を誘発する。
【0128】
実際には、8~10週齢の雄性C57BL6/Jマウスを、12:12時間の明暗サイクルで20℃の温度制御室に収容した。動物は水と市販の食物を自由に入手できた。ケージ効果を避けるために、マウスをケージ間でランダム化した。1週間の順化後、実験を開始した。各群(n=9/群)を経口強制飼養により5日間連続して処置した。全ての処置の予防的投与は、2mgのTNBS/50%EtOHの直腸投与の1日前に開始し、TNBS投与後4日間マウスを屠殺するまで続けた。以下の処置:
1)TNBS+生理食塩水溶液中アセンブリ戦略の組成物;
2)TNBS+生理食塩水溶液中コラボローム戦略の組成物および
3)TNBS+生理食塩水溶液(対照)
を含む。
【0129】
従来の群(TNBS処置をしないが、生理食塩水溶液で処置)を、強制飼養手順から生じる変動を排除するための対照として含んだ。試験のエンドポイントとして、体重、糞便の血液喪失(ColoScreen)および一般的な外観を測定することにより、疾患活動性を毎日(毎日の処置の前に)監視した。
【0130】
この例の結果を
図11に表す。TNBSを含まないビヒクル(生理食塩水)対照群について、体重および疾患活動性に関する効果が観察されなかった一方で、TNBSを受けた対照群は、1日目における即時の8%の体重喪失および疾患活動性の強力な増加を示した。体重喪失と疾患活動性の両方は、研究の終わりまでに部分的に回復した。興味深いことに、組成物の強力な保護効果が体重喪失および疾患活動性の両方で観察されたが、この保護効果の程度は、組成物の生産戦略に依存していた。初期の軽度の保護が、低い体重喪失および疾患活動性に示されるように、アセンブリ戦略について一日目に観察された一方で、この保護効果は次の研究日にはもはや観察されなかった。対照的に、コラボローム戦略により生産された組成物の投与は、TNBS対照と比較して、一日目の体重喪失および疾患活動性に対する強力な予防効果、およびビヒクル対照のレベルまで疾患活動性が戻ることによって示されるような、研究の終わりまでの早くかつ完全な回復を導いた。結論として、この例は、機能性組成物が、TNBS誘発大腸炎誘導においての腸炎症および疾患活動性からのより速くより強力な回復を得るのに有効であるというインビボにおける確認を提供する。さらに、この発見は、コラボローム戦略による予めの順応が、アセンブリ戦略と比較してより効率的な活性をもたらすことを明らかに実証する。
【0131】
3.3:炎症についてのDSSマウスモデル
慢性DDSモデルは、体重喪失および血性下痢を含む、クローン病の特徴のいくつかを模倣する大腸炎に一般に使用される。組織病理学において、慢性DDS投与は、典型的な建築的(architectural)変化を伴う腸の炎症、例えば、腺窩の乱れ、炎症細胞の(サブ)粘膜炎症および線維症、CDに罹患した患者に見られる特徴などを引き起す。これは、DDSモデルを、IBDにおける腸粘膜への損傷を予防および/または回復させるための、および健康な腸障壁の維持/発達を助けるための、機能性組成物の能力のインビボ評価のための優れた候補とする。
【0132】
この例において、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Roseburia hominis、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含有し、「コラボローム」戦略(例1.3を参照)により生産される組成物を、慢性DSSモデルにおける評価に関する有益な効果を評価するために用いる。大腸炎を、飲料水中DSS(0.25%チャレンジ)の繰り返し投与により動物において引き起こす。実験は、DSS投与と回復の3サイクルで合計8週間にわたって行う。
【0133】
実際には、6週齢の雄性C57BL6/Jマウスを、12:12時間の明暗サイクルで20℃の温度制御室に収容する。動物は水と市販の食物を自由に入手できる。ケージ効果を避けるために、ケージ間でマウスをランダム化する。1週間の順化後、実験を開始する。各群(n=10/群)を経口強制飼養により、8週間連続して週に3回処置する。全ての処置の予防的投与は、第1のDSSサイクルの1週間前に開始する。第1のDSSサイクルは2週目に開始し、1週間のDSS投与(飲料水中0.25%)、その後2週間の回復を含む。この第1のサイクルの後に、同一の第2のDSSサイクルが続く。第3のDSSサイクルは、1週間のDSS投与、その後の1週間の回復からなり、その後動物は屠殺される。以下の処置:
1)非DSS対照
2)DSS+生理食塩水溶液中コラボローム戦略の組成物(3回/週)および
3)DSS+生理食塩水溶液(DSS対照)
を含む。
【0134】
研究のエンドポイントとして、体重、糞便の血液喪失(ColoScreen)および一般的な外観を監視することにより、1週間に3回(毎日の処置前)、各DSSサイクルにおいて疾患活動性(DAI)を監視した。
図12に示すように、DSSを受けていないビヒクル(生理食塩水)対照群についてDAIに対する効果は観察されなかった一方で、DSSを受けた対照群は各投与サイクルにおいてDAIの強い増加を示した。興味深いことに、組成物の強力な保護効果が疾患活動性に関して観察された(各サイクルにおいて約25%低いDAI)。このことは、機能性組成物が、DSS誘発性大腸炎誘導において腸炎症および疾患活動性からの強力な保護効果を得るのに有効であることをさらに実証する。
【0135】
例3.5:粘膜炎モデル
粘膜炎は、抗癌治療後の粘膜への損傷を説明するために使用される臨床用語である。これは、胃腸管(GT)(口を含む)および泌尿生殖管全体にわたって、および他の粘膜表面においてはより少ない程度で生じる。その重篤度および期間は、使用される薬物の用量および種類によって変化する。粘膜炎の重要性は、化学療法の用量を制限することである。GI管腺窩上皮は、化学療法毒性に対して特に脆弱であり、粘膜への細胞毒性の直接的な作用により、悪心および嘔吐、腹痛、膨張および下痢などを含む症状を伴う。5-フルオロウラシル(5FU)誘発性腸粘膜炎ラットモデルは、GI管への化学療法の効果を評価するために、Keefe et al.により確立されており、ラットにおける化学療法誘発性粘膜炎を調査するために現在最も広く使用されているモデルの1つである(Keefe 2004)。
【0136】
この例において、Lactobacillus plantarum、Faecalibacterium prausnitzii、Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Akkermansia muciniphilaおよびAnaerostipes caccaeを含む組成物を、実験のための基礎として用い、例1.3の「コラボローム」戦略により生産した。粘膜炎は、5FUの単回腹腔内用量により誘発される。
【0137】
実際には、合計30匹のラットを特定の時点で、対照群または実験群のいずれかにランダムに割り当てた。実験群の全てのラットは、5FU(150mg 5FU/kg BW)の単回腹腔内投与を受けた。対照群のラットは、溶媒ビヒクル(ジメチルスルホキシド)で処置を受けた。化学療法薬の投与に続いて、死亡率、下痢および一般的な臨床状態などの研究エンドポイントを24時間ごとに4回評価した。ラットのサブ群は、薬物の投与の24、48、および72時間後に、失血および頸椎脱臼によって屠殺した。関心のある主要なエンドポイントは、体重、下痢および一般的な健康状態(病気スコア)の発展であった。第2のエンドポイントは、腸試料および便および腸粘膜微生物叢分析の組織診を含んだ。
【0138】
評価された症状の予防または軽減に対する組成物の効果を評価するために、ラットの一部に経口強制飼養によって組成物を連続8日間投与した。予防的投与は、5FUの投与の5日前に開始し、5FU投与後3日間、またはラットを屠殺するまで続けた。対照動物は組成物を受けなかった。
【0139】
【0140】
【0141】
胃腸障害が、下痢、便秘、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、嚢炎、粘膜炎、または腸の感染症である、請求項2に記載の組成物。
Lactobacillus plantarumがZJ316株であるか、Anaerostipes caccaeがDSMZ 14662株であるか、または、Faecalibacterium prausnitziiがDSMZ 17677株である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、Akkermansia muciniphila、またはRoseburia hominisをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
Butyricicoccus pullicaecorumがLMG24109株であるか、Roseburia inulinivoransがDSMZ 16841株であるか、Akkermansia muciniphilaがDSMZ 22959株であるか、または、Roseburia hominisがDSMZ 16839株である、請求項13に記載の組成物。
Butyricicoccus pullicaecorum、Roseburia inulinivorans、およびAkkermansia muciniphilaをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
Lactobacillus plantarumがZJ316株であり、Anaerostipes caccaeがDSMZ 14662株であり、Faecalibacterium prausnitziiがDSMZ 17677株であり、Butyricicoccus pullicaecorumがLMG24109株であり、Roseburia inulinivoransがDSMZ 16841株であり、および、Akkermansia muciniphilaがDSMZ 22959株である、請求項15に記載の組成物。