(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028850
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体及びその製薬用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240227BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240227BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 N
C12N15/13
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205320
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2022523657の分割
【原出願日】2019-10-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522160136
【氏名又は名称】上▲海▼宏成▲薬▼▲業▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲寧▼ 金▲鷹▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ ▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲賀▼ ▲鋒▼
(57)【要約】
【課題】ハイブリドーマスクリーニングとヒト化技術によって、ヒトPD-L1に特異的に結合し、特にヒトPD-L1に対して高親和力を有する抗体を得ること。
【解決手段】ヒトPD-L1に結合する抗体分子又はその抗原結合断片を提供した。また、前記抗体分子又はその抗原結合断片の、腫瘍又はがんを治療する薬物の調製における利用を提供した。提供された抗体は従来の抗PD-L1抗体に比べると、優れたPD-L1に対する親和力及び解離レート、低い免疫原性を有すると共に、より良い腫瘍抑制効果を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、前記重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は、
(1)SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(2)SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(3)SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(4)SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:57に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(5)SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(6)SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:63に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(7)SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:73に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(8)SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:78に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(9)SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:79、SEQ ID NO:76に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:80に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(10)SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:83に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(11)SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:78に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(12)SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:86に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ
から選ばれるCDR組み合わせを含むことを特徴とする、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医薬分野に属し、新規な抗PD-L1抗体又はその機能的断片に関する。また、本発明は、前記抗体又はその機能的断片の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-L1(CD274とも称される遺伝子によりコードされる)は、プログラム細胞死因子PD1のリガンド分子であり、造血細胞と非造血細胞例えばT細胞とB細胞、及び各種の腫瘍細胞に良く表現されている。PD-L1は、膜貫通型タンパク質の一種に属し、免疫グロブリンV様ドメインとC様ドメインを有する。PD-L1がリガンドとしてその受容体分子PD-1と相互に作用する場合、T細胞活性化と細胞因子の生成を抑制する。正常な組織感染又は炎症の期間に、免疫反応の安定的状態を維持して自己免疫を防止するためには、この様な相互作用は重要である。また、このような相互作用は、自分の免疫耐性を誘導・維持する面で極めて重要な役を立つが、腫瘍微環境において、一般的に毒性のT細胞を失活させ、腫瘍細胞に免疫回避を与える。当該遺伝子の腫瘍細胞における表現は、メラノーマと非小細胞肺がんなどを含む様々なヒト悪性腫瘍にPD-1又はPD-L1抗体薬物を利用できるか否か目安の一つとして考えられた。
【0003】
目の前には、複数のPD-L1モノクローナル薬物が既に市販され、例えば、ロシュに属するGENETECHにより研究して作製された始めてのPD-L1モノクローナル薬Atezolizumab(商品名Tecentriq)は、プラチナ系化学療法で失敗し又は進展された末期膀胱がんの治療に用いれられる。2017年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、加速して成人と12歳児童のメルケル細胞癌(MCC)の治療に用いられる新規な薬物Bavencioを許可した。当該薬物の主な成分はAvelumabであり、転移性メルケル細胞癌(mMCC)に対して継続的緩和作用を有する。欧州では、転移性尿路上皮がんを治療するPD-L1抗体バイオ製剤のライセンス申請もFDAによる優先審査を受けた。2018年3月に、AstraZenecaも、その免疫療法薬Imfinzi(Durvalumab)が既に正式にアメリカ食品医薬品局(FDA)により許可されたことを公開し、手術切除できないIII期の非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療に用いられる。
【0004】
そして、目の前にPDL1のモノクローナル薬物について、親和力と解離速度の面で向上する余地があり、また、臨床試験データから見れば、Atezolizumab薬の免疫原性が比較的に高いため、抗体に抵抗するものが大量に生じ、当該薬による治療効果を極大に影響した。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術課題は、ハイブリドーマスクリーニングとヒト化技術によって、ヒトPD-L1に特異的に結合し、特にヒトPD-L1に対して高親和力を有する抗体を得ることにある。
【0006】
上記した技術課題に対して、本発明の目的は、抗ヒトPD-L1抗体又はその断片を提供し、また、当該抗体又はその断片によってその利用を提供する。本発明に記載された抗体分子の「断片」は、抗体の種々の機能的断片、例えば、Fab、F(ab’)2又はscFv断片のような抗原結合部分を含む。
【0007】
本発明は、以下の技術手段を提供した。
【0008】
本発明は、一態様において、PD-L1、特にヒトPD-L1に特異的に結合でき、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:3を参照する抗体又はその断片を提供する。本発明の具体的な実施形態によれば、本発明にかかる抗体は、SEQ ID NO:3に示されたヒトPD-L1の細胞外領域を免疫原として得られたマウス抗体、及び前記マウス抗体に基づいて得られたキメラ抗体とヒト化抗体である。
【0009】
具体的には、本発明により提供された抗体又はその断片は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、その中、前記重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は、
(1)SEQ ID NO:35(EYTFTNNWIA)、SEQ ID NO:36(DIHPGGGFTNYNEKFKV)、SEQ ID NO:37(SKTRDYDAWFAY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:38(KSSQSLLYTGNQKNYLA)、SEQ ID NO:39(WASTRES)、SEQ ID NO:40(QQYYTYRT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(2)SEQ ID NO:41(GYTFTNYVVH)、SEQ ID NO:42(YVNPNNDGTIFNEKFKD)、SEQ ID NO:43(SPFAH)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:44(SASESVDFYGTSLMQ)、SEQ ID NO:45(TASNVDS)、SEQ ID NO:46(HQTRKVPYT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(3)SEQ ID NO:47(GYIFTEYIIH)、SEQ ID NO:48(WFYPGSDNIKYNEKFKD)、SEQ ID NO:49(HETGYFFDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:50(SASSSVSKMN)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:52(QQWSSNPLT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(4)SEQ ID NO:53(GYSFTGYNMN)、SEQ ID NO:54(NIDPYYGVTHYNQKFKG)、SEQ ID NO:55(GIPFYGLDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:56(GASSSVSFMH)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:57(QQWNTNPFT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(5)SEQ ID NO:58(AFNIDDTYIH)、SEQ ID NO:59(RIDPANGNTDYDPECQG)、SEQ ID NO:60(GLRLPGLVY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:61(RASQDISNYLN)、SEQ ID NO:62(YTSILYS)、SEQ ID NO:63(QQGNTLPWT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(6)SEQ ID NO:64(GFNIEDTYLH)、SEQ ID NO:65(RIDPANGNTYYDPKFQG)、SEQ ID NO:66(GLRLPGFPY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:67(RASQDISNYLS)、SEQ ID NO:68(YTSILHS)、SEQ ID NO:63(QQGNTLPWT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(7)SEQ ID NO:69(GDSIISGYWN)、SEQ ID NO:70(YISYTGSTYYNPSLKS)、SEQ ID NO:71(RGEWLLHFDV)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:72(KSSQSLLYSSNQKNSLA)、SEQ ID NO:39(WASTRES)、SEQ ID NO:73(QQYYSYPLT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(8)SEQ ID NO:74(GFSLTGYGVN)、SEQ ID NO:75(KIWGDGITDYNSALKS)、SEQ ID NO:76(DVMDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:77(SASSSISYMH)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:78(HHRSPYPT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(9)SEQ ID NO:74(GFSLTGYGVN)、SEQ ID NO:79(KIWGDGSTDYTSALKS)、SEQ ID NO:76(DVMDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:77(SASSSISYMH)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:80(HQRSPYPT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(10)SEQ ID NO:74(GFSLTGYGVN)、SEQ ID NO:75(KIWGDGITDYNSALKS)、SEQ ID NO:76(DVMDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:81(RSSQSIEQSNGNTYLE)、SEQ ID NO:82(KVSNRFS)、SEQ ID NO:83(FQGSHVPYT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(11)SEQ ID NO:74(GFSLTGYGVN)、SEQ ID NO:75(KIWGDGITDYNSALKS)、SEQ ID NO:76(DVMDY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:84(SASSSINYMH)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:78(HHRSPYPT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ、
(12)SEQ ID NO:35(EYTFTNNWIA)、SEQ ID NO:85(DIHPGGGYTNYNEKFKG)、SEQ ID NO:86(SKTRDYDSWFAY)に順次に示されたH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、SEQ ID NO:50(SASSSVSKMN)、SEQ ID NO:51(DTSKLAS)、SEQ ID NO:52(QQWSSNPLT)に順次に示されたL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3との組み合わせ
から選ばれるCDR組み合わせ(H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3とL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3)を含む、
【0010】
本発明により提供された軽重鎖CDRの組み合わせは、本発明に係る抗体又はその断片に由来し、当業者は、与えられた抗体又はその断片に含まれる可変領域アミノ酸配列に基づいて、その中に含まれるCDRを定常に特定することができる。例えば、本発明の具体的な実施形態によれば、AbM定義法を採用して可変領域アミノ酸配列におけるCDRを限定する。
【0011】
本発明により提供された抗体又はその断片において、好ましくは、前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31又はSEQ ID NO:33に示されたアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列から選ばれる配列を含み、
及び/又は、
本発明により提供された抗体又はその断片において、好ましくは、前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32又はSEQ ID NO:34に示されたアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列から選ばれる配列を含む。
【0012】
より好ましくは、前記抗体又はその断片に含まれる重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、
(1)SEQ ID NO:9に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:9に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:10に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:10に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(2)SEQ ID NO:11に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:11に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:12に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:12に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(3)SEQ ID NO:13に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:13に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:14に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:14に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(4)SEQ ID NO:15に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:15に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:16に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:16に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(5)SEQ ID NO:17に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:17に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:18に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:18に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(6)SEQ ID NO:19に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:19に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:20に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(7)SEQ ID NO:21に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:21に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:22に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:22に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(8)SEQ ID NO:23に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:23に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:24に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:24に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(9)SEQ ID NO:25に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:25に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:26に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:26に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(10)SEQ ID NO:27に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:27に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:28に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:28に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(11)SEQ ID NO:29に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:29に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:30に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(12)SEQ ID NO:31に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:31に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:32に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:32に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
(13)SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:33で示されるアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列と、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列又はSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列との組み合わせ、
から選ばれる。
【0013】
本発明の全体において、「少なくとも75%の同一性」とは、75%~100%の間の任意のパーセント数値の同一性、例えば75%、80%、85%、90%、ひいては91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性である。
【0014】
特に、本発明に係る抗体又はその断片は、少なくとも重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、両方はいずれも上記CDR及びその間のフレームワーク領域(frame work)を含み、それぞれのドメインは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のように配列されている。更に好ましくは、前記「少なくとも75%の同一性」によるアミノ酸配列における最大25%の差異は、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域におけるいずれのフレームワーク領域に存在してもよいし、本発明に係る抗体又はその断片において重鎖可変領域と軽鎖可変領域以外のいずれのドメイン又は配列に存在してもよい。前記差異は、いずれの位置でのアミノ酸欠失、付加又は置換によって生じてもよい。
【0015】
抗原について、本発明に係る抗体又はその断片は、抗PD-L1抗体又はその断片であり、好ましくは、前記抗体は、モノクローン抗体、単鎖抗体、二機能性抗体、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、完全又は一部ヒト化抗体、又はキメラ抗体などのいずれのものであり、又は、前記抗原結合断片は、半抗体又は抗体或いは半抗体の抗原結合断片、例えば、scFv、BsFv、dsFv、(dsFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2又はFvであり、より好ましくは、前記抗体はIgGである。
【0016】
可変領域の他、前記抗体又はその断片は更にヒト又はマウス由来の定常領域を含み、好ましくは、ヒト又はマウス由来の重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を含み、好ましくは、前記抗体又はその断片は重鎖と軽鎖を含み、より好ましくは、前記抗体又はその断片は、IgG、IgA、IgM、IgD又はIgEから選ばれる重鎖定常領域及び/又はκ型或いはλ型軽鎖定常領域を含む。
【0017】
本発明の具体的な実施形態によれは、前記抗体はモノクローン抗体であり、好ましくは、マウス、キメラ又はヒト化モノクローン抗体であり、好ましくは、前記モノクローン抗体の重鎖定常領域はIgG1又はIgG4亜型であり、軽鎖定常領域はκ型であり、
好ましくは、前記モノクローン抗体における重鎖定常領域は、SEQ ID NO:1に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:1に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記モノクローン抗体における軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列又はSEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列と少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明は、別の態様において、本発明に記載された抗体又はその断片をコードし、又は前記抗体又はその断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、重鎖又は軽鎖をコードする核酸分子を提供する。
【0019】
本発明に係る核酸分子は、ベクターにクローンされ、そして宿主細胞に形質転換又はトランスフェクションすることができる。そのため、本発明は、別の態様において、本発明に係る核酸分子を含むベクターを提供する。前記ベクターは、真核表現ベクター、原核表現ベクター、人工染色体及びバクテリオファージベクターなどであってもよい。本発明に係るベクター又は核酸分子は、宿主細胞に形質転換又はトランスフェクションすることに利用し、保存又は抗体表現などの目的で用いられてもよい。そのため、本発明は、さらに別の態様において、本発明に係る核酸分子及び/又はベクターを含み、又は本発明に係る核酸分子及び/又はベクターにより形質転換又はトランスフェクションされる宿主細胞を提供する。宿主細胞は、いずれの原核又は真核細胞、例えば、細菌又は昆虫、真菌、植物又は動物細胞であってもよい。
【0020】
本発明により提供された抗体又はその断片は、本分野に既知のいずれの方法で得られてもよい。例えば、まず、本発明により提供された核酸分子から前記抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖を得、そして前記抗体の任意に選択された他のドメインと抗体を組み立ててもよいし、本発明により提供された宿主細胞が前記抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖を表現して前記抗体を組み立てることが許容される場合、前記宿主細胞を培養してもよい。任意選択で、前記方法は生成された抗体を回収するステップを更に含んでいる。
【0021】
本発明により提供された抗体又はその断片、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞は、薬物組成物に含まれ、特に薬物製剤に含まれて、必要に応じて種々の目的で利用してもよい。そのため、本発明はまた、さらに別の態様において、本発明に記載された抗体又はその断片、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞、並びに任意に薬学的に許容されるの補助原料を含む薬物組成物を提供する。
【0022】
本発明は、さらに別の態様において、前記抗体又はその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は薬物組成物の、疾患を予防又は治療するための薬物の調製における利用を提供し、前記疾患は腫瘍又はがん、例えば、非小細胞肺がん、メラノーマ、膀胱がん、メルケルリンパ腫、皮膚扁平上皮がん、肺がん、ホジキンリンパ腫、腎臓がん、肝臓がん、食道がん、非ホジキンリンパ腫、乳がん、甲状腺がん、胃がん、大腸がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、喉頭がん、口腔癌、耳や目の腫瘍、胆道がん、胆嚢がん、副腎皮質がん、生殖器系腫瘍、多発性骨髄腫、神経系腫瘍、尿道上皮細胞がんを含む。
【0023】
そのため、これに応じて、本発明はまた、必要な被験者に本発明に係る抗体又はその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は薬物組成物を投与することを含む、疾患を予防又は治療する方法を提供し、前記疾患は、腫瘍又はがん、例えば、非小細胞肺がん、メラノーマ、膀胱がん、メルケルリンパ腫、皮膚扁平上皮がん、肺がん、ホジキンリンパ腫、腎臓がん、肝臓がん、食道がん、非ホジキンリンパ腫、乳がん、甲状腺がん、胃がん、大腸がん、上咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、喉頭がん、口腔癌、耳や目の腫瘍、胆道がん、胆嚢がん、副腎皮質がん、生殖器系腫瘍、多発性骨髄腫、神経系腫瘍、尿道上皮細胞がんを含む。好ましくは、前記被験者は哺乳類動物であり、より好ましくは、前記被験者は人である。
【0024】
本発明は、さらに別の態様において、本発明に係る抗体又はその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は薬物組成物を含むキットを提供する。前記キットは、治療又は診断用に用いられてもよい。
【0025】
本発明は従来技術に比べ、高い親和力でPD-L1、特にヒトPD-L1に結合できる新規な抗体を提供した。本発明に係る抗体は従来の抗PD-L1抗体に比べ、以下のような利点がある。本発明でスクリーニングされた抗体は、従来の抗体(GenetechのAtezolizumab(Tecentriq)を例とする)に比べると、PD-L1に対する親和力及び解離レートの面ではいずれも向上した。また、初期スクリーニングで得られたマウス抗体を最大限にヒト化改造することによって、抗体の免疫原性が低減された。そして、薬効学試験によれば、本発明により提供された抗体は、より良い腫瘍抑制効果を有することが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【
図1】本発明のハイブリドーマ細胞株の培養上清が抗原PD-L1に結合したFACS検定結果を示す。
【
図2】本発明のハイブリドーマ細胞の培養上清がPD-L1と細胞との結合を阻止したFACS検定結果を示す。
【
図3】本発明に係る抗体が抗原PD-L1に結合したFACS検定結果を示す。
【
図4】本発明に係る抗体がPD-L1と細胞との結合を阻止したFACS検定結果を示す。
【
図5】本発明に係る抗体が抗原PD-L1に結合したForteBio Octet検定結果を示し、その中、5A:14A7(hz);5B:Reference;5C:14A7(chi);5D:14A7である。
【
図6】本発明に係る抗体の動物体内における薬効試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を説明する。これらの実施例はいずれも本発明の範囲を制限することなく、ただ本発明を説明するためのものであることが、当業者にとって理解できる。
【0028】
以下の実施例におけるテスト方法は、特に説明しない限り、常法である。以下の実施例に用いられる医薬材料、試薬材料などは、特に説明しない限り、いずれも市販のものである。
【0029】
Atezolizumab(Reference):Genetech製、商品名Tecentriq、US2016/0319022A1に開示され、軽重鎖はそれぞれSEQ ID NO:6とSEQ ID NO:7を参照する。
【0030】
実施例1 本発明のハイブリドーマ細胞の調製
ヒトPD-L1タンパク(Genbank登録番号NP_054862.1由来、SEQ ID NO:3)の細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)とマウスIgG2a-FC(Genbank登録番号AAH31470.1由来)を含む融合タンパク質を免疫原として利用してマウスを免疫させ、5匹皮下接種させ、5匹筋肉免疫させ、アジュバントとしてquick antibody 5W水溶性アジュバントを利用し、強化免疫後2週間力価を測定し、力価が高い2匹のマウスを選択して免疫強化を行い、3日間後、後述の細胞融合を行う。
【0031】
融合しようとするマウス2匹を採取し、血清を採取した後、解剖して脾臓を取り、脾細胞を分離し、培養された骨髄腫細胞と融合させ、96ウェルプレートに播種と共に、選択性培地を加えてスクリーニングし、7日間後液を交換し、10日間後ELISA法で検出し、OD値が陰性コントロールの10倍以上よりも大きいものを選択してフローサイトメトリーで検出を行う。
【0032】
ダブル陽性の細胞を選別し、細胞限界希釈法によってサブクローンでプレートに播種し、モノクローン細胞を選別した。選別されたモノクローン細胞から培養上清を取り、ELISA検出及びフローサイトメトリー検出を行い、ダブル陽性の細胞を選別して増幅培養した。
【0033】
実施例2 本発明のハイブリドーマ細胞の培養上清とPD-L1との結合のELISA検出
コーティング液でヒトPD-L1タンパク(Genbank登録番号NP_054862.1由来、SEQ ID NO:3)の細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)とヒトIgG1-FC(Genbank登録番号CAC20454.1由来)を含む融合タンパク質を1~2μg/mlに希釈し、そして50~100μl/ウェルで酵素標識プレートのウェルに加え、4℃で一晩過ごし又は37℃で2時間吸着した。ウェル内の液を除去するとともに、洗浄液によって毎回3~5分間3回洗浄し、乾燥するまでに叩いた。ウェル毎にブロック液200μlを加え、4℃で一晩ごし又は37℃で2時間ブロックした。洗浄液で3回洗浄し、この際に、コーティング板は-20℃又は4℃で保存して利用に備えてもよい。
【0034】
ウェル毎に検定するハイブリドーマ細胞の培養上清50~100μlを加え、陽性コントロール(融合マウスの血清入り)、陰性コントロール(正常マウスの血清入り)、及びブランクコントロール(培地入り)を同時に設立した。37℃で1~2時間インキュベートし、洗浄して乾燥するまでに叩いた。そして、ウェル毎に1:10000希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ標識されたヤギ抗マウスIgG(SIGMA、品番A9044-2ml)である酵素標識二次抗体50~100μlを加え、37℃で1~2時間インキュベートし、洗浄して乾燥するまでに叩いた。ウェル毎に新鮮に配合された基質発色液TMB 50-100μlを加え、37℃で10~30分間インキュベートした。
【0035】
2mol/L H2SO4を加え反応を停止させ、酵素結合免疫リーダーでOD値を読み取った。
【0036】
結果判定:P/N>2:1(Pは陽性値、Nは正常マウス血清値を表す)を陽性とした。陰性コントロールウェルが無色又は無色に近づき、陽性コントロールウェルが明らかに発色すれば、直接に目視で結果を観察できる。
【0037】
実施例3 本発明のハイブリドーマ細胞の培養上清とPD-L1との結合のFACS検出
ヒトPD-L1タンパク(Genbank登録番号NP_054862.1由来、SEQ ID NO:3)の細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)遺伝子断片を合成し、PLVXウィルスパッキングベクター(Clontech、virus package mix、品番631275)に構築し、293T細胞にトランスフェクションしてウィルスをパッキングし、当該ウィルスでHEK293細胞を感染し、ピューロマイシン(puromycin)を加え、スクリーニングして耐薬細胞株、即ちPD-L1を安定に表現するHEK293を得、293T-h-PDL1と名付け、そして、2% FBSを含むPBSで細胞濃度1×107個細胞/mlの細胞懸濁液を調製した。
【0038】
フローサイトメトリーチューブ(サンプル管)毎に細胞懸濁液50μlを入り、そして検定するハイブリドーマ細胞の培養上清又は陽性コントロール抗体Atezolizumab(Reference)50μlを加え、4℃で60分間インキュベートした。フローサイトメトリーチューブ毎にフローサイトメトリー用の緩衝液1mlを加え、1200rpmで5分間遠心し、上清を除去し、繰り返して3回洗浄した。コントロール管1(培養上清と後述の二次抗体を加えることなく、ただ細胞懸濁液入り)とコントロール管2(培養上清を加えることなく、ただ細胞懸濁液と後述の二次抗体入り)を同時に設けた。
【0039】
そして、フローサイトメトリーチューブ毎にフローサイトメトリー用の緩衝液100μlを加えて再び懸濁させ、テスト要求に基づいてPE標識された抗マウスFcラベルの二次抗体(Biolegend、品番409304)5μlを加えて、4℃で遮光して30分間インキュベートし、そしてフローサイトメトリー用の緩衝液1mlを加え、室温下で1200rpmで5分間遠心し、上清を除去し、繰り返して3回洗浄した。
【0040】
また、フローサイトメトリーチューブ毎にフローサイトメトリー用の緩衝液250μlを加え、再び懸濁させて均一に混合し、機器に置いて検出した。
【0041】
【0042】
【0043】
実施例4 本発明のハイブリドーマ細胞の培養上清がPD-L1と細胞との結合を阻止したFACS検出
ヒトPD-1タンパク(SEQ ID NO:8)の細胞外領域(SEQ ID NO:8の第24位~第170位)遺伝子断片を合成し、PLVX-IRES-PURO(Clontech)に構築し、DH5αコンピテント細胞に形質転換し、プレートに塗り、37℃で一晩培養した。モノクローンコロニーを選定し、菌を揺らんで酵素切断して同定し、プラスミドを抽出し、シークエンシング検証し、正しいクローンを選定してプラスミドを抽出し、保存して使用に備えた。
【0044】
293T細胞を回復させ、連続して2回継代後、2×106個細胞/10ml/皿でプレートに播種し、16h~24h後、細胞密度が70%~80%に成長した時に、上記真核表現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、37℃で5%CO2培養器において培養した。12h~16h培養後、培地を除去し、液を交換し、48~56h後、対応量のPuromycin(最終濃度10μg/ml)を加えた。10% FBSを含むDMEM+10μg/ml Puromycinで連続して10日培養した。細胞の成長状態が良好であると、多クローン細胞を得たと一応に判断し、フローサイトメトリー検出を行った。
【0045】
陽性の多クローン細胞を取り、ウェル毎に0.5個細胞でプレートに播種し、7日後モノクローンを選択して増幅培養した。選択されたモノクローンをFACS検出し、陽性細胞、即ちh-PD1を安定に表現する293T細胞を選択し、293T-h-PD1細胞と名付けた。
【0046】
FACS緩衝液で当該細胞を1回洗浄し、2~5×105個細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、ウェル毎にハイブリドーマ上清50μL又は陽性コントロール抗体Atezolizumab(Reference)と実施例2における融合タンパク質PD-L1(hFC tag)500ngとの予備混合液を加え、2時間インキュベートした。そして、ウェル毎にFACS緩衝液400μlを加えて2回洗浄し、PE抗ヒトIgG Fc二次抗体を加え、1時間インキュベートした後、ウェル毎にFACS緩衝液400μlを加えて2回洗浄した。機器に置いて検出した。
【0047】
FACS阻止の検定結果を表2と
図2に示す。
【表2】
【0048】
実施例5 本発明のハイブリドーマ細胞の培養上清とPD-L1との結合の親和力検出
テスト方法:
1.同種に属するCapture Surface Dipを選択して利用した。
2.96ウェルプレートを取り、ウェル毎に200μl SD緩衝液(1×PBS+0.02% Tween20+0.1% BSA)を加え、ForteBio Octetに入り、予め循環した。
3.抗体を固定し、上清精製後の抗体濃度としては10μg/mlを採用した。
4.ヒトPD-L1タンパクの細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)をそれぞれ200nM、100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMの6つの勾配に希釈し、対応するウェルに加えた。
5.機器に置いて検出した。
【0049】
【0050】
上記したテストに基づいて対応するハイブリドーマ細胞株を選択し、モノクローン細胞からRNAを抽出し、cDNAに逆転写し、シークエンシングベクターに導入してシークエンシング分析を行った。
【0051】
例示的なマウス抗体の配列は以下の通りであり、その中、下線を引くのはCDRである(AbM定義法による)。マウス抗体の名付けはその由来するハイブリドーマ細胞株に基づく。
【0052】
A1(マウス抗体14A7)
>14A7-VH
QVQLKQSGAELVRPGTSVKMSCKATEYTFTNNWIAWVKQRPGHGLEWVGDIHPGGGFTNYNEKFKVKATLTADTSSSTAYMQLRSLTSEDSAIYYCAGSKTRDYDAWFAYWGQGTLVTVSA
>14A7-VL
DIVMTQAPSSLAVSVGEKVTLNCKSSQSLLYTGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVKAEDLAVYFCQQYYTYRTFGGGTKLEIK
【0053】
A2(マウス抗体15G10)
>15G10-VH
QVQLKQSGPELVKPGASVKTSCKASGYTFTNYVVHWVKQNPGQGLEWIGYVNPNNDGTIFNEKFKDKAILTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCARSPFAHWGQGTLVTVSA
>15G10-VL
QIVLTQSPASLTVSLGQRATISCSASESVDFYGTSLMQWFQQKPGQPPKLLVYTASNVDSEVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDIAMYFCHQTRKVPYTFGGGTKLEIK
【0054】
A3(マウス抗体13C9)
>13C9-VH
QVQLKQSGAGLVKPGASVKLSCKASGYIFTEYIIHWVKQRSGQGLEWIGWFYPGSDNIKYNEKFKDKATLTADKSSSTVYMELSRLTSEDSAVYFCARHETGYFFDYWGQGTTLTVSS
>13C9-VL
DIVITQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSKMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGSGTKLELKRA
【0055】
A4(マウス抗体18B4)
>18B4-VH
QVQLKQSGPELEKPGASVKISCKASGYSFTGYNMNWVKQSNGKSLEWIGNIDPYYGVTHYNQKFKGKATLTVDESSSTASMQLKSLTSEDSAIYYCARGIPFYGLDYWGQGTSVTVSS
>18B4-VL
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCGASSSVSFMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWNTNPFTFGSGTKLEIKRA
【0056】
A5(マウス抗体28B1)
>28B1-VH
QVQLKQSGAELVKPGASVMLSCTASAFNIDDTYIHWVKQRPEQGLEWIGRIDPANGNTDYDPECQGKATITTDMSSNTAYLQLSSLTSEDTAVYFCARGLRLPGLVYWGRGTLVTVSA
>28B1-VL
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSILYSGVPSRFSGSGSGTDYSLTINTLEEEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIIRA
【0057】
A6(マウス抗体22B10)
>22B10-VH
QVQLKQSGAELVKPGASVELSCTASGFNIEDTYLHWVNQRPEQGLEWIGRIDPANGNTYYDPKFQGKATITTDTSSNTAYLQLSRLTSEDTAVYYCARGLRLPGFPYWGQGTLVTVSA
>22B10-VL
DIQMTQTPSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLSWYQQKPDGTVKLLIYYTSILHSGVPSRFSGSGSGTDYSLAISNLDQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIKRA
【0058】
A7(マウス抗体4G7)
>4G7-VH
QVQLKESGPSLVKPSQTLSLTCSVTGDSIISGYWNWIRKFPGNELEYMGYISYTGSTYYNPSLKSRVSIIRDTFKNQYYLQLNSVTTEDTATYYCARRGEWLLHFDVWGAGTTVTVSS
>4G7-VL
DIVMTQAPSSLAVSVGEKVTVSCKSSQSLLYSSNQKNSLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKAEDLAVYYCQQYYSYPLTFGAGTKLELK
【0059】
A8(マウス抗体8A2)
>8A2-VH
QVQLKQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTGYGVNWVRQPPGKGLEWLGKIWGDGITDYNSALKSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTARYYCARDVMDYWGQGTSVTVSS
>8A2-VL
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSISYMHWYQQKPGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSESGTSYSLTISSMEAEDAATYYCHHRSPYPTFGAGTKLELK
【0060】
A9(マウス抗体7E5)
>7E5-VH
QVQLKQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTGYGVNWVRQPPGKGLEWLGKIWGDGSTDYTSALKSRLSISKDNSKSQVFLKVNSLQTDDTARYYCARDVMDYWGQGTSVTVSS
>7E5-VL
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSISYMHWFQQKPGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSESGTSYSLTISSMEAEDAATYYCHQRSPYPTFGAGTKLELK
【0061】
A10(マウス抗体2E5)
>2E5-VH
QVQLKQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTGYGVNWVRQPPGKGLEWLGKIWGDGITDYNSALKSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTEDTARYYCARDVMDYWGQGTSVTVSS
>2E5-VL
DVLMTQIPLSLPVSLGDQASISCRSSQSIEQSNGNTYLEWYLQKPGQSPKVLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVESEDLGVYYCFQGSHVPYTFGGGTKLEIK
【0062】
A11(マウス抗体10A3)
>10A3-VH
QVQLKQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTGYGVNWVRQPPGKGLEWLGKIWGDGITDYNSALKSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTEDTARYYCARDVMDYWGQGTSVTVSS
>10A3-VL
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSINYMHWFQQKPGTSPKRWIYDTSKLASGVPARFSGSESGTSYSLTISSMEAEDAATYYCHHRSPYPTFGAGTKLELKRA
【0063】
A12(マウス抗体6G5)
>6G5-VH
QVQLKQSGAELVRPGTSVKMSCKATEYTFTNNWIAWVKQRPGHGLEWIGDIHPGGGYTNYNEKFKGKATLTADTSSSTAYMQLSSLTSEDSAIYYCAGSKTRDYDSWFAYWGQGTLVTVSA
>6G5-VL
DIVITQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSKMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPSRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGSGTKLELKRA
【0064】
実施例6 本発明に係る抗体のヒト化改造
A1抗体(マウス抗体14A7)を選択して抗体のヒト化を行った。当該抗体と異なるヒト化鋳型との配列類似性、表現量及び軽重鎖の組み合わせが既に薬となった抗体に利用されたかなどを総合に考えた。軽重鎖類似性の値が200よりも大きく、表現量が50mg/mlよりも大きく、また軽重鎖の組み合わせが既に薬となった抗体に利用されたなどの要因で、最後にヒト化配列であるIGHV1-46*01(SEQ ID NO:4)とIGKV1-5*01(SEQ ID NO:5)をそれぞれ重鎖と軽鎖の鋳型として選択した。A1マウス由来のモノクローナルを相同モデル化し、Fabドメインの構造を模擬した。相同モデル化計算によって、予測されたA1抗体のFab構造を最後に得た。
【0065】
予測されたFab構造及び重鎖とIGHV1-46*01配列との対比分析によって、CDRドメインを全てヒト化鋳型に置き換え、構造模擬及び動力学計算を行った。構造模擬及び動力学分析によって、CDR構造に影響するいくつかのアミノ酸をマウス由来のものとして保留し、最後の重鎖バーションは、CDRドメイン及び68A、70Lなどを元のマウスのアミノ酸とする以外、他のマウス由来のアミノ酸が全て対応するIGHV1-46*01鋳型のヒトアミノ酸に置き換えられた。
【0066】
予測されたFab構造及び軽鎖とIGKV1-5*01配列との対比分析によって、CDRドメインを全てヒト化鋳型に置き換え、構造模擬及び動力学計算を行った。構造模擬及び動力学分析によって、CDR構造に影響するいくつかのアミノ酸をマウス由来のものとして保留し、最後の軽鎖バーションは、CDRドメインを元のマウスのアミノ酸として保留する以外、他のマウス由来のアミノ酸が全て対応するIGKV1-5*05鋳型のヒトアミノ酸に置き換えられた。
【0067】
A1抗体のヒト化抗体の配列は以下の通りである。
>VHヒト化配列14A7-VH-hz
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASEYTFTNNWIAWVRQAPGQGLEWVGDIHPGGGFTNYNEKFKVRATLTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAGSKTRDYDAWFAYWGQGTTVTVSS
>VLヒト化配列14A7-VL-hz
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCKSSQSLLYTGNQKNYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQQYYTYRTFGQGTKVEIK
【0068】
SEQ ID NO:1で示された配列を重鎖定常領域とし、SEQ ID NO:2で示された配列を軽鎖定常領域とし、シークエンシングによって得られた、PD-L1ターゲットに対する抗体DNA配列については、改めてプライマーを設計し、対応するキメラ抗体及びヒト化抗体の遺伝子を合成し、真核表現ベクターに導入し、DH5alphaコンピテント細胞に形質転換し、37℃恒温培養器において一晩培養し、モノクローン菌株を選択してシークエンシング同定した。配列が正しい菌株を選択して、菌を揺らぎ、プラスミドを抽出し、哺乳動物表現細胞293Fにトランスフェクションし、37℃、5%CO2の培養器に置き、7日間表現・培養した。
【0069】
表現上清を採取し、遠心・ろ過し、protein Gアフィニティークロマトグラフィーカラムを選択して精製し、精製された抗体をSDS-PAGE電気泳動で純度を検出し、BCAタンパク質検出キットで抗体濃度を検出し、分配して-80℃冷蔵庫に保存して利用に備えた。その中、キメラ抗体を「マウス抗体略称(chi)」と名付け、ヒト化抗体を「マウス抗体略称(hz)」と名付けた。
【0070】
実施例7 本発明に係る抗体とPD-L1との結合のFACS検出
テストの過程は、フローサイトメトリーチューブ毎に細胞懸濁液50μlを加えた後、検定する抗体、陽性コントロール抗体(Reference)又は陰性参照抗体(hIgG1)を加えた点以外、実施例3を参照し、濃度を
図3に示す。コントロール管1(抗体と二次抗体を加えることなく、ただ細胞懸濁液入り)とコントロール管2(抗体を加えることなく、ただ細胞懸濁液と二次抗体入り)を同時に設置した。
【0071】
【0072】
【0073】
実施例8 本発明に係る抗体がPD-L1と細胞との結合を阻止したFACS検出
テストの過程は、ウェル毎に検定する抗体、陽性コントロール抗体Atezolizumab(Reference)又は陰性参照抗体(hIgG1)を加えた点以外、実施例4を参照し、濃度を
図4に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
実施例9 本発明に係る抗体とPD-L1との結合の親和力検出
ヒトPD-L1タンパクの細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)をPBS緩衝液で最大濃度30nMの溶液に調製し、6つの濃度に3倍希釈し、濃度0をコントロールとした。PBSで本発明に係るマウス抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体を20nMの溶液に調製した。
【0077】
親和力検出機器としてForteBio Octetを利用して抗体と抗原の親和力を測定した。具体的な操作方法は実施例5を参照した。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例10 本発明に係るヒト化PD-L1抗体の動物体内における薬効試験
実施例4を参照し、ヒトPD-L1タンパク(SEQ ID NO:3)の細胞外領域(SEQ ID NO:3の第19位~第238位)遺伝子断片を合成し、PLVX-IRES-PURO(Clontech)に構築し、h-PDL1付き真核表現ベクターを得、プラスミドを抽出した。
【0081】
293T細胞をMC38細胞に変えた以外、同様に実施例4を参照し、h-PDL1を安定に表現したMC38細胞を得、MC38-h-PDL1細胞と名付けた。
【0082】
MC38-h-PDL1細胞を回復させ、体外培養し、0.3×10E8細胞を得た、6~8週齢の雄性BALB/Cマウス30匹を1週間馴染み飼育し、重量を測った。表7に示す接種条件で細胞を接種した。
【0083】
表7.マウス接種情報
【0084】
【表7】
接種後、週毎に2回腫瘍体積及び体重を計測し、平均腫瘍体積が約80~120mm
3に達した場合、腫瘍体積及び体重に応じてランダムに3つのグループ(グループ毎に10匹)に分けた。グループに分けた直後、給薬し始めた。給薬開始の日を0日目とした。給薬及びグループ分けの情報を表8に示す。
【0085】
【0086】
給薬開始後、マウスの体重及び腫瘍体積を計測した。結果を
図6に示す。
【0087】
以上の本発明の具体的な実施形態の記載は、本発明を制限することなく、当業者は本発明に基づいて各種の変更又は変形をすることができ、本発明の精神から離れない限り、いずれも本発明の請求の範囲に属する。
【配列表】
【外国語明細書】