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特開2024-28867PD-1軸結合拮抗薬、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤で肺癌を治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028867
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】PD-1軸結合拮抗薬、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤で肺癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240227BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240227BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P11/00 ZNA
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K33/243
A61K31/282
C07K16/28
C12N9/99
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205970
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2020571529の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】62/689,105
(32)【優先日】2018-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/719,461
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/736,326
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-チャベス, アリエル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターカンプ, ダニエル アントニウス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個体における肺癌(例えば、小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺癌)を治療するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)、白金剤(例えば、シスプラチンまたはカルボプラチン)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を個体に投与することからなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺がんを有する個体を治療する方法であって、有効量の抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤を前記個体に投与することを含み、ここで、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、方法。
【請求項2】
前記治療は、前記個体の全生存期間(OS)を延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
肺がんを有する個体を治療する方法であって、有効量の抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤を前記個体に投与することを含み、ここで、前記治療は、前記個体の全生存期間(OS)を延長する、方法。
【請求項4】
前記治療が、前記個体のPFSを少なくとも約5ヶ月延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療が、前記個体のOSを少なくとも約11ヶ月延長する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
抗PD-L1抗体が:
(a)GFTFSDSWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列、およびアミノ酸RHWPGGFDY(配列番号3)を含むHVR-3を含むHVR-2を含む重鎖可変領域(V)、および
(b)RASQDVSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、SASFLYS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、およびQQYLYHPAT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(V)、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗PD-L1抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V)および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
白金剤がカルボプラチンまたはシスプラチンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
白金剤がカルボプラチンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
トポイソメラーゼII阻害剤が、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、オーリントリカルボン酸、またはHU-331である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
トポイソメラーゼ阻害剤がエトポシドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抗PD-L1抗体は、1200mgの用量で投与され、白金剤は、AUC=5mg/ml/minを達成するのに十分な用量で投与され、トポイソメラーゼII阻害剤は、100mg/mの用量で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗PD-L1抗体、前記白金剤および前記トポイソメラーゼII阻害剤は、4回の21日サイクルで投与され、およびここで、前記抗PD-L1抗体は、1日目に1200mgの用量で投与され、前記白金剤は1日目にAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、前記トポイソメラーゼII阻害剤は、サイクル1~4について、各21日サイクルの1日目、2日目、および3日目のそれぞれに100mg/mの用量で投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗PD-L1抗体が、サイクル4に続いてさらに投与され、前記抗PD-L1抗体が、サイクル4の後のサイクルごとに、各21日周期のの1日目に1200mgの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤が、サイクル1~4の1日目に順次投与される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗PD-L1抗体が白金剤に先行して投与され、ここで、白金剤が、サイクル1~4の1日目にトポイソメラーゼII阻害剤に先行して投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
肺癌が小細胞肺癌(SCLC)である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記SCLCが広汎性ステージSCLC(ES-SCLC)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記個体がES-SCLCに対して治療ナイーブである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記個体が、少なくとも約10の血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記個体が少なくとも約16のbTMBを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
肺癌が脳に転移している、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
肺癌が肝臓に転移している、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
肺癌がリンパ節に転移している、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
肺癌が副腎に転移している、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記個体が少なくとも65歳である、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記個体がPD-L1陰性である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者からのサンプル中の腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満がPD-L1を発現する場合に、前記患者がPD-L1陰性である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤をそれぞれ静脈内投与する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を有する個体を治療する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドを患者に投与することを含み、ここで、アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、カルボプラチンはAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、エトポシドは100mg/mの用量で投与され、およびここで、治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を延長する、方法。
【請求項32】
アテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドが4回の21日サイクルで投与され、アテゾリズマブがサイクル4に続いてさらに投与され、ここで、アテゾリズマブは、1~4サイクルの各21日周期の1日目に1200mgの用量で投与され、カルボプラチンは、1~4サイクルの各21日周期の1日目にAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、エトポシドは、1~4サイクルの各21日周期の1日目、2日目および3日目のそれぞれに100mg/mの用量で投与され、およびここで、アテゾリズマブは、第4サイクル以降のサイクルごとの、各21日周期の1日目に1200mgの用量でさらに投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記個体がES-SCLCに対して治療ナイーブである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記治療が、前記個体のPFSを少なくとも約5ヶ月延長する、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記治療が、前記個体のOSを少なくとも約11ヶ月延長させる、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記個体が、少なくとも約10の血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記個体が少なくとも約16のbTMBを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ES-SCLCが脳に転移している、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ES-SCLCが肝臓に転移している、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
肺癌がリンパ節に転移している、請求項31~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
肺癌が副腎に転移している、請求項31~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記個体が少なくとも65歳である、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記個体がPD-L1陰性である、請求項31~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
患者からのサンプル中の腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満がPD-L1を発現する場合、患者がPD-L1陰性である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記アテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドが、サイクル1~4について、各21日間周期の1日目に順次投与される、請求項31~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記アテゾリズマブがカルボプラチンに先行して投与され、前記カルボプラチンが、サイクル1~4について、各21日間周期の1日目にエトポシドに先行して投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記アテゾリズマブ、前記カルボプラチンおよび前記エトポシドがそれぞれ静脈内投与される、請求項31~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記個体がヒトである、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項1~30および48のいずれか1項に記載の方法に従って肺癌を有する個体を治療するための、白金剤およびトポイソメラーゼII阻害剤と組み合わせて使用するための、抗PD-L1抗体を含むキット。
【請求項50】
請求項31~48のいずれか1項に記載の方法に従って肺癌を有する個体を治療するための、カルボプラチンおよびエトポシドと組み合わせて使用するための、アテゾリズマブを含むキット。
【請求項51】
個体において肺癌を治療する方法における使用のための抗PD-L1抗体であって、前記方法は、有効量の抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤を前記個体に投与することを含み、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する、抗PD-L1抗体。
【請求項52】
請求項2~30および48のいずれか1項に記載の方法における使用のための、請求項51に記載の抗PD-L1抗体。
【請求項53】
進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を治療する方法における使用のためのアテゾリズマブを含む組成物であって、有効量のアテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドを個体に投与することを含み、アテゾリズマブは、1200mgで投与され、カルボプラチンは、AUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な量で投与され、エトポシドは、100mg/mの量で投与され、およびここで、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を延長する、組成物。
【請求項54】
請求項31~48のいずれか1項に従った方法における使用のための、請求項53に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月23日に出願された米国仮出願第62/689,105号、2018年8月17日に出願された第62/719,461号、および2018年9月25日に出願された第62/736,326号の利益を主張するものであり、それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
【0002】
ASCIIテキストファイル上の以下の投稿の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:シーケンスリストのコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:146392044940SEQLIST.TXT、記録日:2019年6月18日、サイズ:37KB)。
【0003】
本開示は、白金剤(例えば、カルボプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)と組み合わせて、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、アテゾリズマブ)を投与することにより、癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
肺がんは依然として世界のがん死亡原因の第一位であり、男性に最も多いがんであり、2008年には全ての新規がんの約13%を占めている(Jemal et al.(2011)CA Cancer J.Clin 61:69-90)。2012年には、ヨーロッパで313,000人の肺がんの新規症例と268,000人の肺がんによる死亡があったと推定された(GLOBOCAN(2012))。推定がん発生率:2012年の世界的な死亡率と有病率。入手可能:globocan(dot)iarc(dot)fr/Pages/fact_sheets_cancer.aspx)。米国の同様のデータによると、2015年には肺がんの新規症例数が221,200人、肺がんによる死亡者数が158,040人になると推定されている(Siegel et al.(2015)CA Cancer J Clin.65:5-29)。
【0005】
小細胞肺がん(SCLC)は肺がん全体の約13%を占めており、成長速度が速いこと、転移が早いことなどから非小細胞肺がん(NSCLC)と区別されている(Govindan et al.(2006)J Clin Oncol.24:4539-44)。SCLCのほぼ全ての症例はタバコの喫煙に起因する(Pesch et al.(2012)Int J Cancer.131:1210-9)。SCLC患者は広範囲の転移性疾患の症状を呈することが多く、臨床症状の悪化が早い可能性があるため、これらの患者に対しては迅速な治療開始が必要である。SCLC患者の生存の予後不良因子には、末期疾患、パフォーマンスの低下、体重減少、および過剰な病変の大きさに関連するマーカー(例えば、乳酸脱水素酵素)が含まれる(Yip et al.(2000)Lung Cancer.28:173-85;Foster et al.(2009)Cancer.115:2721-31。
【0006】
ステージが限定されたSCLCの患者は、長期生存の可能性がある化学療法や放射線治療を受けることができる(Stinchcombe et al.(2010)Oncologist.15:187-95)。しかし、SCLC患者の大多数(約70%)は、生存の見通しが悪い(全生存期間の中央値[OS]約10ヶ月)の末期疾患(ES-SCLC)と診断されている(Socinski et al.(2009).J Clin Oncol.27:4787-92.)。胸痛、呼吸困難、および咳は、肺がんの患者が経験する最も頻繁な疾患関連症状の1つである。化学療法単独でES-SCLC患者の症状を緩和し、生存期間を延長することができるが、長期生存はまれである(Johnson et al.(2004)Hematol Oncol Clin North Am.18:309-22;Demedts et al.(2010)Eur Respir J.35:202-15)。
【0007】
I期のSCLC患者の5年相対生存率は約31%だが、IV期では5年相対生存率は約2%に低下する。(アメリカ癌協会;小細胞肺癌の生存率、ステージ別:www.cancer.org/cancer/small-cell-lung-cancer/detection-diagnosis-staging/survival-rates.html。2018年6月アクセス済み。)したがって、当技術分野では、肺癌を治療する方法、例えば、生存率を延長する方法が必要とされている。
【0008】
特許出願、特許公報、およびUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に提供されるのは、肺癌患者を治療するための抗PD-L1抗体の方法および使用である。特に、本発明の方法および用途は、前治療歴のない進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)個体を対象とした、カルボプラチンおよびエトポシドとの併用によるアテゾリズマブ(TECETRIQ(登録商標))の無作為化第III相臨床試験からのデータに基づいている。本試験では、TECENTRIQ(登録商標)(アテゾリズマブ)と化学療法(カルボプラチンおよびエトポシド)を併用した初回(ファーストライン)治療では、化学療法のみの場合と比較して、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の患者の生存期間が有意に長くなることが示された。また、TECENTRIQをベースとした併用療法は、化学療法単独と比較して、疾患の悪化または死亡(PFS)のリスクを減少させた。TECENTRIQと化学療法の併用療法の安全性は、個々の医薬品の既知の安全性プロファイルと一致しており、併用療法では新たな安全性シグナルは確認されなかった。
【0010】
ある態様において、本明細書で提供される肺癌を有する個体を治療する方法であって、抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤の有効量を個体に投与することからなる方法であって、この治療により個体の無増悪生存期間(PFS)が延長される。いくつかの実施形態では、治療は、個体の全生存期間(OS)を延長する。
【0011】
別の態様において、本明細書で提供される肺癌を有する個体を治療する方法であって、抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤の有効量を個体に投与することからなる方法であって、この治療は、白金剤およびトポイソメラーゼII阻害剤による治療を受けた肺癌を有する個体と比較して、その個体の全生存期間(OS)が延長される(例えば、少なくとも0.5、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3か月のいずれか1つまで)。いくつかの実施形態では、治療は、OSを、例えば、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、または14ヶ月のうちの少なくとも約1つによって延長する。いくつかの実施形態では、治療は、14ヶ月以上、例えば、14.25、14.5、14.75、15、15.25、15.5、15.75、または15.75ヶ月以上のうちの約1つによって、OSを延長する。いくつかの実施形態では、治療はOSを約15.9ヶ月延長する。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.2ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.6ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約6ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約11ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約11.5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約12ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約12.3ヶ月延長する。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は以下を含む:GFTFSDSWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-2、およびHVRを含む重鎖可変領域(V)-3はアミノ酸RHWPGGFDY(配列番号3)を含み、(b)RASQDVSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1を含む軽鎖可変領域(V)、HVR-SASFLYSのアミノ酸配列(配列番号5)を含むL2、およびQQYLYHPATのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(V)と、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(V)からなる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0014】
いくつかの実施形態では、白金剤は、カルボプラチンまたはシスプラチンである。いくつかの実施形態では、白金剤はカルボプラチンである。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼII阻害剤は、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプシン、オーリントリカルボン酸、またはHU-331である。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤はエトポシドである。いくつかの実施形態では、白金剤はカルボプラチンであり、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドである。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体を1200mgの用量で投与し、白金剤をAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与し、トポイソメラーゼII阻害剤を100mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体、白金剤およびトポイソメラーゼII阻害剤は、4つの21日サイクルで投与され、ここで、抗PD-L1抗体は、1日目に1200mgの用量で投与され、白金剤は、1日目にAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、トポイソメラーゼII阻害剤は、1~4サイクルの各21日サイクルの1日目、2日目、および3日目に100mg/mの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、サイクル4に続いてさらに投与され、ここで、抗PD-L1抗体は、サイクル4の後の各サイクルについて、21日目の各サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤は、サイクル1~4の1日目に順次投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体が白金剤に先行して投与され、ここで、白金剤が、サイクル1~4の第1日目にトポイソメラーゼII阻害剤に先行して投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、肺癌は小細胞肺癌(SCLC)である。いくつかの実施形態では、SCLCは、末期SCLC(ES-SCLC)である。いくつかの実施形態では、その個体はES-SCLCの治療を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約10の血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約16のbTMBを有する。いくつかの実施形態では、肺癌は脳に転移している。いくつかの実施形態では、肺癌は肝臓に転移している。いくつかの実施形態では、肺癌は副腎に転移している。いくつかの実施形態では、肺癌はリンパ節に転移している。いくつかの実施形態では、肺癌は、肺内(例えば、元の病変部位の外)または他の肺に転移している。いくつかの実施形態では、個体は少なくとも65歳(例えば、約65歳から約74歳までの間、約75歳から約84歳までの間、または約85歳よりも大きい)である。いくつかの実施形態では、個体はPD-L1陰性である。いくつかの実施形態では、個体から得られたサンプル中の腫瘍細胞(TC)および/または腫瘍浸潤免疫細胞(IC)の1%未満がPD-L1を発現する場合、個体はPD-L1陰性であり、例えば、本明細書に記載のアッセイに従う。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤は、それぞれ静脈内投与される。
【0018】
別の態様において、本明細書で提供される方法は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を有する個体を治療する方法であって、有効量のアテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドを個体に投与することからなり、ここでアテゾリズマブは1200mgの用量で投与される。前記カルボプラチンは、AUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、前記エトポシドは、100mg/mの用量で投与され、ここで、前記治療が、前記個体の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を延長する治療法。
【0019】
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドは、4回の21日サイクルで投与され、アテゾリズマブは、サイクル4に続いてさらに投与され、ここで、アテゾリズマブは、サイクル1~4の各21日サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与される。カルボプラチンを、サイクル1~4の各21日周期の第1日目にAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な量で投与し、エトポシドを、サイクル1~4の各21日周期の第1日目、第2日目、および第3日目に100mg/mの量で投与する。そして、ここで、アテゾリズマブが、サイクル4以降の各サイクルについて、各21日間のサイクルの第1日目に1200mgの用量でさらに投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.2ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約5.6ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、その個体のPFSを少なくとも約6ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約11ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約11.5ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約12ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約12.3ヶ月延長する。
【0021】
いくつかの実施形態では、その個体はES-SCLCの治療を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約10の血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約16のbTMBを有する。いくつかの実施形態では、ES-SCLCは脳に転移している。いくつかの実施形態では、ES-SCLCは肝臓に転移している。いくつかの実施形態では、個体は少なくとも65歳である。
【0022】
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドは、サイクル1~4の各21日間のサイクルの第1日目に順次投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、カルボプラチンに先立って投与され、ここで、カルボプラチンは、サイクル1~4のための各21日間のサイクルの第1日目にエトポシドに先立って投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、カルボプラチンおよびエトポシドは、それぞれ静脈内投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
【0024】
別の様態において、本明細書に提供されるのは、上記および本明細書に記載される方法のいずれかに従って肺癌を有する個体を治療するための白金剤およびトポイソメラーゼII阻害剤と組み合わせて使用するための抗PD-L1抗体からなるキットである。また、本明細書には、上記および本明細書に記載の方法のいずれかに従って肺癌を有する個体を治療するためのカルボプラチンおよびエトポシドとの組み合わせで使用するためのアテゾリズマブからなるキットも提供される。
【0025】
別の様態において、本明細書で提供される抗PD-L1抗体は、個体における肺癌を治療する方法において使用するための抗PD-L1抗体であり、該方法は、抗PD-L1抗体、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤の有効量を個体に投与することからなり、該治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、上記または本明細書に記載のいずれかの方法に従った方法で使用するためのものである。
【0026】
別の様態において、本明細書で提供されるのは、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を治療する方法において使用するためのアテゾリズマブからなる組成物であって、この組成物は、有効量のアテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドを個体に投与することからなる。ここで、アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、カルボプラチンはAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な用量で投与され、エトポシドは100mg/mの用量で投与され、治療により、当該個体の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長される治療法。いくつかの実施形態では、組成物は、上記または本明細書に記載された方法のうちのいずれか1つに従った方法で使用するためのものである。
【0027】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本発明のこれらおよび他の態様は、当業者に明らかであろう。本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
特許または出願ファイルには、カラーの少なくとも1つの図面が含まれている。この特許または特許出願公告のカラー図面付きの写しは,請求および必要な手数料の支払いにより,国内官庁から提供される。
【0029】
図1図1は、実施例1に記載された臨床試験の試験デザインの概略を示す。A群には201人の患者が含まれていた。B群には202人の患者が含まれていた。PCI=予防的頭蓋照射。PD=病気の進行。
【0030】
図2図2は、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)の患者の全生存期間(OS)のカプランマイヤープロットを示している。
【0031】
図3図3は、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)の患者の無増悪生存期間(PFS)のカプランマイヤープロットを示している。
【0032】
図4図4は、A群とB群の患者における全奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)の比較を示している(CR=完全奏効、CR/PR=完全奏効/部分奏効、SD=安定病変、PD=進行性病変)。ORRおよびDORはRECIST v1.1基準に従って評価された。
【0033】
図5A図5Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者におけるOSのサブグループ解析を示すフォレストプロットである。P=プラセボ;A=アテゾリズマブ)。中央値はKM法から推定した。P+CEに対するハザード比および関連する信頼区間は、層化されていないCox回帰を用いて推定された。肝転移は標的病変のみを基準とした。
【0034】
図5B図5Bはまた、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者におけるOSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。
【0035】
図6A図6Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者におけるPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットである。P=プラセボ;A=アテゾリズマブ)。中央値はKM法から推定した。P+CEに対するハザード比および関連する信頼区間は、層化されていないCox回帰を用いて推定された。肝転移は標的病変のみを基準とした。
【0036】
図6B図6Bはまた、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者のPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。
【0037】
図7A図7Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB>16の患者の全生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0038】
図7B図7Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB<16の患者の全生存期間のカプランマイヤープロットである。
【0039】
図8A図8Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB>10の患者の全生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0040】
図8B図8Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB<10の患者の全生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0041】
図9A図9Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB>16の患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0042】
図9B図9Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMBが16未満の患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットである。
【0043】
図10A図10Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるbTMB>10の患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0044】
図10B図10Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)のbTMBが10未満の患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットである。
【0045】
図11A図11Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)対B群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者におけるOSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。
【0046】
図11B図11Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)対B群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースラインの危険因子を有する患者におけるOSのサブグループ分析を示す別のフォレストプロットを提供する。
【0047】
図11C図11Cは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)対B群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)における様々なベースライン危険因子を有する患者におけるOSのサブグループ分析を示す別のフォレストプロットを提供する。
【0048】
図12A図12Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるPD-L1発現レベルが1%未満のBEP1(バイオマーカー評価可能な母集団1)患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットを提供する。
【0049】
図12B図12Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるPD-L1発現レベルが1%未満のBEP2(バイオマーカー評価可能な母集団2)患者の無増悪生存期間のカプランマイヤープロットを示す。
【0050】
図13A図13Aは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるPD-L1発現レベルが1%未満のBEP1(バイオマーカー評価可能な母集団1)患者の全生存期間のカプランマイヤープロットを提供する。
【0051】
図13B図13Bは、A群(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)とB群(プラセボ+カルボプラチン+エトポシド)におけるPD-L1発現レベルが1%未満のBEP2(バイオマーカー評価可能な母集団2)患者の全生存期間のカプランマイヤープロットプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物または生物学的系に限定されず、それらが言うまでもなく多種多様であることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0053】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
【0054】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0055】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態が、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0056】
用語「PD-1軸結合拮抗薬」とは、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能不全を除去するために、PD-1軸結合パートナーとその1つ以上の結合パートナーとの相互作用を阻害する分子を意味し、その結果、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺傷)を回復または増強することになる。本明細書で使用されるとき、PD-1軸結合拮抗薬は、PD-1結合拮抗薬、PD-L1結合拮抗薬、およびPD-L2結合拮抗薬を含む。
【0057】
「PD-1結合拮抗薬」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体である。PD-1結合拮抗薬の特定の例を以下に提供する。
【0058】
「PD-L1結合拮抗薬」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-L1抗体である。PD-L1結合拮抗薬の具体例を以下に示す。
【0059】
「PD-L2結合拮抗薬」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2拮抗薬は、抗PD-L2抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、およびPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、イムノアドヘシンである。
【0060】
「持続的応答」とは、治療の中止後の腫瘍成長の低減への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の期間を有する。
【0061】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒なさらなる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、臨床病理学の過程中に治療される個体または細胞の自然な経過を変えるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および予後の寛解または改善が挙げられる。例えば、個体は、癌性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、および/または個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、癌に関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「治療」に成功する。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(癌等)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/または延ばすことを意味する。この遅延は、病歴および/または治療される個体に応じて様々な期間のものであり得る。当業者に明らかであるように、十分または著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症等の末期癌を遅延させることができる。
【0064】
「有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善または予防の達成に必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用または有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、および/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除または低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果としては、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、および/または生存期間の延長等の臨床結果が挙げられる。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明では、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的治療または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬の投与との関連で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
【0065】
本明細書で使用されるように、「併用」とは、別の治療様式に加えて、1つの治療様式の投与を意味する。したがって、「と併せて」とは、個体への1つの治療法の施行前、施行中、または施行後の別の治療法の施行を指す。
【0066】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性および急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から恩恵を受けることになる任意の状態である。
【0067】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。他の実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、癌である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0068】
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるとき、相互排他的ではない。
【0069】
「癌」および「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかる癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、例えば、胃腸癌および胃腸間質癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンストレームマクログロブリン血症等)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メーグス症候群、脳腫瘍、ならびに頭頸部癌、および関連転移が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明の抗体での治療に適する癌としては、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫、および多発性骨髄腫が挙げられる。いくつかの実施形態において、癌は、小細胞肺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、および肝細胞癌から選択される。
【0070】
「細胞傷害性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こすか、増殖を阻害するか、またはさもなければ細胞機能を妨害する)任意の薬剤を指す。細胞毒性剤には、放射性同位体(例えば At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤;成長阻害剤;核分解酵素などの酵素およびその断片;および細菌、真菌、植物または動物由来の低分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素(その断片および/または変種を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な細胞毒性薬は、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、LDH-A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ならびに癌代謝阻害剤から選択され得る。一実施形態では、細胞毒性薬は、タキサンである。一実施形態において、タキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルである。一実施形態では、細胞毒性薬は、白金剤である。一実施形態では、細胞毒性薬は、EGFRの拮抗薬である。一実施形態において、EGFRの拮抗薬は、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一実施形態では、細胞毒性薬は、RAF阻害剤である。一実施形態において、RAF阻害剤は、BRAFおよび/またはCRAF阻害剤である。一実施形態において、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、細胞毒性薬は、PI3K阻害剤である。
【0071】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物を含む。化学療法剤およびその誘導体の例としては、以下のものが挙げられる:エルロチニブ(TARCEVA(登録商標),Genentech/OSI Pharm.)、ジスルフィラム、エピガロカテキンガレート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラジコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標).アストラゼネカ社)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、ファイザー/スーゲン)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、ノバルティス)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、ノバルティス)、フィナサン酸塩(VATALANIB(登録商標)、ノバルティス)。オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、サノフィ)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、ワイエス)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、グラクソ・スミス・クライン)。ロナファミブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、バイエルラボ)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、アストラゼネカ)、AG1478、チオテパ、CYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メチュレドーパ、ウレドパなどのアジリジン。アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);カンプトテシン(トポテカンとイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);アドレノコルチコステロイド(プレドニゾンおよびプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリドおよびデュタステリドを含む5α-レダクターゼ);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エレタロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレスタミン、メクロレスタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード。カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンのようなニトロソウレア;エニジン系抗生物質のような抗生物質(例えば、カリチェマイシン、特にカリチェマイシンγ1Iおよびカリチェマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.1994 33:183-186);ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン と同様に、ネオカルジノスタチン発色団および関連する発色団エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノドキソルビシン。シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、デオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、マイコフェノール酸。ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトゾシン、ツベルクリジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗メタボローム剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ。アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジンなどのピリミジン類縁体。カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオステイン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロステインなどの抗アドレナール;フロリン酸などの葉酸補充剤;エースグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジキオン;エルフォミチン;酢酸エリプチン;アンエポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンティナン;ロニダイニン;メイタンシン、アンサミトシンなどのメイタンシノイド類 ミトグアゾン;マイトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジキオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン)。ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;マイトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、タクソール(パクリタキセル;ブリストル・マイヤーズ・スクイブ・オンコロジー、プリンストン、N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォフリー)、パクリタキセルのアルブミン設計ナノ粒子製剤(アメリカン・ファーマシューティカル・パートナーズ、シャウンバーグ、イリノイ州)、およびTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル、サノフィ-アベンティス)、クロランブシル、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イボスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルバイン(vinorelbine);ノバンドロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;および薬学的に許容される塩。
【0072】
また、化学療法剤には、以下のようなものがある:(i)抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)など、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびファレストン(クエン酸トレミフィン)。(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メグストロール)、AROMASIN(登録商標)(exemestane、ファイザー社)、フォルメスタニー、ファドロゾール、リビソール(ボルゾール)、フェマーラ(レトロゾール、ノバルティス)、アリミデックス(アナストロゾール、アストラゼネカ)などの抗アンドロゲン剤、(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロライド、ゴセレレリンなどの抗アンドロゲン剤。ブセレリン、トリプレリン、メドロキシプロゲステロンアセテート、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全トランスレチオン酸、フェンレチニド、およびトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ)などの抗アンドロゲン剤;iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、RalfおよびH-Ras;(vii)VEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標))およびHER2発現阻害剤などのリボザイム;(viii)遺伝子治療ワクチンなどのワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)LEUVECTIN(登録商標)およびVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;および(ix)上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸および誘導体。
【0073】
化学療法剤としては、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、および抗体-薬物コンジュゲート、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も挙げられる。本発明の化合物と組み合わせた薬剤としての治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エピラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イノツズマブ・オゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブ・テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブ・セルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、およびインターロイキン12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に改変された、組換え型で専らヒト配列の完全長IgG λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が挙げられる。
【0074】
化学療法剤には、EGFRに結合するか、またはさもなければそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、「EGFR拮抗薬とも称される。かかる薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体および小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、以下のものが挙げられる:MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(参照、米国特許第4,943,533号、Mendelsohn et al.)およびその変種、例えばキメラ化225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))およびリシェイプヒト225(H225)(参照、WO 96/40210、Imclone Systems Inc.);完全ヒト、EGFR標的化抗体IMC-11F8(イムクロン);II型変異型EGFRを結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されているようなEGFRを結合するヒト化抗体およびキメラ抗体;およびABX-EGFまたはPanitumumab(WO98/50433、Abgenix/Amgenを参照)のようなEGFRと結合するヒト抗体;EMD 55900(Stragliottoら、Eur.J.Cancer 32A:636-640(1996));EGFR結合のためにEGFおよびTGF-αの両方と競合するEGFRに対するヒト化EGFR抗体であるEMD7200(マツズマブ);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3およびE7.6.3として知られ、US 6,235,883に記載の完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);およびmAb 806またはヒト化mAb 806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))。抗EGFR抗体は、細胞傷害性剤にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFR拮抗薬としては、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、および同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公報、WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、およびWO99/24037に記載の化合物等の小分子を含む。特定の小分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標) Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271、Pfizer);および二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
【0075】
化学療法剤としては、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(PfizerおよびOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2およびEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、およびCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許公報:米国特許第5,804,396号、WO1999/09016(American Cyanamid)、WO1998/43960(American Cyanamid)、WO1997/38983(Warner Lambert)、WO1999/06378(Warner Lambert)、WO1999/06396(Warner Lambert)、WO1996/30347(Pfizer,Inc)、WO1996/33978(Zeneca)、WO1996/3397(Zeneca)、およびWO1996/33980(Zeneca)のいずれかに記載されるものが挙げられる。
【0076】
化学療法剤としては、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、およびゾレドロン酸、ならびにそれらの薬学的に許容される塩も挙げられる。
【0077】
また、化学療法剤には、以下のようなものがある:ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ベタメタゾンナトリウムリン酸塩、デキサメタゾン、デキサメタゾンナトリウムリン酸塩。フルオコルトン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、アクロメタゾンジプロピオン酸塩、ベタメタゾンバレレート、ベタメタゾンジプロピオン酸塩、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオン酸塩、フルオコルトンカプロエート、フルオコルトンピバル酸塩およびフルプレドニデンアセテート、フェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)およびそのD異性体形態(feG)などの免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAIDs)(IMULAN BioTherapeutics,LLC)。アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミデミノサイクリン、スルファサラジンなどの抗リウマチ薬。エタネルセプト(エンブレル)などの腫瘍壊死因子α(TNFα)遮断薬、インフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)、セルトリズマブペゴール(チムジア)、ゴリムマブ(シンポニ)、アナキンラ(キネレ)などのインターロイキン1(IL-1)遮断薬、アバタセプト(オレンシア)などのT細胞共刺激ブロッカー、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標))などのインターロイキン6(IL-6)ブロッカー、レブリキズマブなどのインターロイキン13(IL-13)遮断薬;ロンタリズマブなどのインターフェロンアルファ(IFN)ブロッカー;rhuMAb Beta7などのBeta7インテグリンブロッカー、抗M1primeなどのIgE経路ブロッカー、分泌されたホモ三量体LTa3および抗リンホトキシンアルファ(LTa)などの膜結合ヘテロ三量体LTa1 /β2ブロッカー;放射性同位元素(例:At211,I131,I125,Y90,Re186,Re188,Sm153,Bi212,P32,Pb212およびLuの放射性同位体);チオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832)などのその他の治験薬。ケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸およびそれらの誘導体などのポリフェノール。クロロキンなどのオートファジー阻害剤;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))などのビスホスホネート)、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));および上皮成長因子受容体(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチンなどのワクチン;ペリホシン、COX-2阻害剤(例:セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例:PS341);CCI-779;ティピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤。ピキサントロン;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤。および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;およびシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法の略であるCHOP、および5-FUとロイコボリンを組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))の治療レジメンの略であるFOLFOXのような上記の2つ以上の組み合わせ。
【0078】
化学療法剤としてはまた、鎮痛効果、解熱効果、および抗炎症効果を有する非ステロイド抗炎症薬が挙げられ得る。NSAIDとしては、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤を含む。NSAIDの具体的な例としては、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、およびナプロキセン、酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸誘導体、例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、およびイソキシカム、フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、ならびにCOX-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブが挙げられる。NSAIDの適応は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛および片頭痛、術後疼痛、炎症および組織損傷に起因する軽度~中程度の疼痛、発熱、腸閉塞症、ならびに腎疝痛等の状態の症状軽減であり得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「成長阻害剤」とは、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防または低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく減少させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断薬としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1で停止させるこれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。さらなる情報は、MendelsohnおよびIsrael編、The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1におけるMurakami et al.による「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば、p.13により見出せる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗癌薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
【0080】
「放射線療法」とは、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊する能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。多くの投与量および治療期間を決定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な投与量は、1日10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0081】
治療の目的のための「被験者」または「個体」とは、哺乳類に分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜および農場動物、および動物園、スポーツ動物、またはペット動物、例えば犬、馬、猫、牛などを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0082】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
【0083】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から特定および分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の汚染物質成分は、抗体の試験的、診断的、または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超の抗体になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0084】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し;その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0085】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインには、重鎖のC1、C2、およびC3ドメイン(総称してCH)と軽鎖のCHL(またはCL)ドメインが含まれる。
【0086】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは“V”と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは、“V”と呼ばれてもよい。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0087】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0088】
任意の哺乳類種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0089】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的および抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0090】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAにさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成はよく知られており、例えば、AbbasらがCellular and Mol.Immunology第4版に一般的に記載されている(W.B.Saunders,Co.,2000)。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0091】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0092】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0093】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0094】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシンで処理すると、F(ab’)断片が得られ、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋する能力を有する。
【0095】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。まとめると、6つのHVRは抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0096】
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメインおよび第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における指名である。F(ab’)抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0097】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0098】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは二価または二重特異性である可能性がある。ダイアボディについては、例えば、以下で詳しく説明されている:EP404,097;WO 1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);and Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)。三重特異性抗体および四重特異性抗体については、Hudson et al,Nat.Med.9:129-134(2003)にもまた記載されている。
【0099】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するようにさらに改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体の調製と比べて、モノクローナル抗体の調製における各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが通常他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。
【0100】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.のMonoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(see,e.g.,U.S.Pat.No.4,816,567)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);およびLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004))、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO 1998/24893;WO 1996/34096;WO 1996/33735;WO 1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);U.S.Pat.Nos.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;and 5,661,016;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);and Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995))。
【0101】
本明細書のモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りの部分が、他の種に由来する抗体または他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを含む「キメラ」抗体を含む(例えば、U.S.Pat.No.4,816,567;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体には、PRIMATTZED(登録商標)抗体が含まれ、抗体の抗原結合領域は、例えば、アカゲザルを目的の抗原で免疫することによって産生された抗体に由来する。
【0102】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾を加えて、抗体の性能をさらに洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、以下を参照:例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992).また以下を参照:例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号。
【0103】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、詳細には非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ等の当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成するヒト抗体に関する、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)もまた参照のこと。
【0104】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に」結合するが(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、より好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0105】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。天然抗体において、H3およびL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。以下を参照:例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct Biol.3:733-736(1996)を参照されたい.
【0106】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている。(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、そうではなく、構造的ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0107】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)、および89-97または89-96(L3)、ならびにVHにおいて、26-35(H1)、50-65または49-65(H2)、および93-102、94-102、または95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0108】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)、および89-97または89-96(L3)、ならびにVHにおいて、26-35(H1)、50-65または49-65(H2)、および93-102、94-102、または95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0109】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0110】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、およびそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0111】
Kabatナンバリングシステムは、可変ドメインの残基(軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)を参照する場合に一般的に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0112】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapata et al.(1995 Protein Eng,8(10):1057-1062)に記載の抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0113】
本明細書で使用されるとき、「結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的な」という用語は、生物学的分子等の異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0114】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特性に基づいて、特徴付けかつ/または特定される細胞および/または他の分子の実体を含有する、目的とする対象および/または個体から得られるか、またはそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句およびその変化形は、特性評価される細胞および/または分子実体を含有することが予期されるか、または含有することが既知である、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料としては、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、および組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
「組織試料」または「細胞試料」は、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結した、および/または保存された器官、組織試料、生検、および/または吸引液からなどの固形組織;血漿などの血液または任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液;対象の妊娠または発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織試料はまた、初代または培養細胞または細胞株であってもよい。任意で、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、または抗生物質などの天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、罹患細胞または組織に隣接する健常および/または非罹患の細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)。別の実施形態では、基準試料は、同じ対象または個体の身体の治療されていない組織および/または細胞から得られる。さらに別の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の治療されていない組織および/または細胞から得られる。
【0117】
薬品を用いた治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」および類似の単語は、がん等の疾患もしくは障害の危険性があるか、またはそれを 患う患者に付与される臨床的または治療的有益性を指す。一実施形態において、そのような利益としては、生存期間(全生存期間および無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効もしくは部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候もしくは症状を改善することのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0118】
治療に「有効な応答を示さない」患者とは、生存期間(全生存期間および無増悪生存期間を含む)が延長すること、客観的応答(完全応答もしくは部分的応答を含む)がもたらされること、または癌の兆候または症状が改善されることのうちのいずれも有しない患者を指す。
【0119】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合が含まれる;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例:B細胞受容体;BCR)などのダウンレギュレーションがある。そのようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とし、そして、例えば、本明細書の定義に開示されているように、様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0120】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を行う白血球を指す。ある特定の実施形態では、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能(複数可)を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞 毒性T細胞、および好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、天然源、例えば、血液から単離され得る。
【0121】
「ヒトエフェクター細胞を有する」がんまたは生体試料は、診断試験において、試料中に存在するヒトエフェクター細胞(例えば、浸潤性ヒトエフェクター細胞)を有するものである。
【0122】
「FcR発現細胞を有する」がんまたは生体試料は、診断試験において、試料中に存在するFcR発現(例えば、浸潤性FcR発現細胞)を有するものである。いくつかの実施形態では、FcRはFcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性化FcγRである。
II.概要
【0123】
本明細書に提供される方法は、個体における肺癌(小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がんなど)の治療または進行を遅らせるための方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を個体に投与することからなる方法である。また、本明細書に提供される方法は、肺癌(例えば、小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がん)を有する個体において免疫機能を増強する方法であって、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を個体に投与することからなる方法である。いくつかの実施形態では、治療は、その個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)の投与からなる治療と比較して、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本方法は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を有する患者を治療することからなり、カルボプラチンおよびエトポシドと組み合わせてアテゾリズマブを患者に投与することにより、投与は導入期および維持期からなる。導入期は、1日目にアテゾリズマブを1200mg、1日目にカルボプラチンをAUC=5mg/ml/分を達成するのに十分な量、エトポシドを21日間の各サイクルの1日目、2日目、3日目に100mg/mの用量で投与することからなる、サイクル1~4までの各サイクル。維持期は、サイクル4以降の各サイクルについて、各21日間のサイクルの1日目に1200mgの用量でアテゾリズマブを投与することからなり、ここで、個体がES-SCLCの治療を受けていない場合、個体の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が延長される。
III.PD-1軸結合アンタゴニスト
【0125】
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストとしては、PD-1結合アンタゴニスト、PDL1結合アンタゴニスト、およびPDL2結合アンタゴニストが挙げられる。「PD-1」の代替名としては、CD279およびSLEB2が挙げられる。「PDL1」の別名には、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hが含まれる。「PDL2」の別名には、B7-DC、Btdc、およびCD273が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトPD-1、PDL1、およびPDL2である。
【0126】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-1のリガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PDL1の結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PDL2の結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。
【0128】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。ニボルマブ(ブリストルマイヤーズスクイブ/オノ)は、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)とも呼ばれ、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWY DGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号11)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRAT GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)。
【0129】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号11および配列番号12からの6つのHVR配列(例えば、配列番号11からの3つの重鎖HVRおよび配列番号12からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号11からの重鎖可変ドメインおよび配列番号12からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(CAS登録番号:1374853-91-4)である。ペンブロリズマブ(メルク)は、MK-3475、メルク3475、ラムブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても知られており、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGG INPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYW GQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGV HTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCP APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAK GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENN YKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号13)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:
EIVLTQSPAT LSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLES GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVF IFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQ DSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号14)。
【0131】
配列の配列位置、抗PD-1抗体は、配列番号13および配列番号14からの6HVR配列(例えば、配列番号13からの3重鎖HVRおよび配列番号14からの3軽鎖HVR)からなる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号13からの重鎖可変ドメインおよび配列番号14からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MEDI-0680(AMP-514;アストラゼネカ)である。MEDI-0680はヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0133】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、PDR001(CAS登録番号1859072-53-9;ノバルティス)である。PDR001は、PDL1およびPDL2とPD-1との結合を阻害するヒト化IgG4抗PD1抗体である。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、REGN2810(Regeneron))である。REGN2810はヒト抗PD1抗体である。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、BGB-108(BeiGene)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、BGB-A317(BeiGene)である。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、JS-001(Shanghai Junshi)である。JS-001はヒト化抗PD1抗体である。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、STI-A1110(ソレント)である。STI-A1110はヒト抗PD1抗体である。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、INCSHR-1210(Incyte)である。INCSHR-1210は、ヒトIgG4抗PD1抗体である。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、PF-06801591(ファイザー社)である。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011としても知られている;Tesaro/AnaptysBio)である。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、AM0001(ARMO Biosciences)である。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ENUM 244C8(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 244C8は、PDL1とPD-1の結合を阻害することなく、PD-1の機能を阻害する抗PD1抗体である。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ENUM 388D4(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM 388D4は、PDL1とPD-1の結合を競合的に阻害する抗PD1抗体である。
【0144】
いくつかの実施形態では、PD-1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVRおよび3つの軽鎖HVR)および/または下記に記載のPD-1抗体からの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインからなる:WO2015/112800(出願人:Regeneron)、WO2015/112805(出願人:Regeneron)、WO2015/112900(出願人:Novartis)、US20150210769(Novartisに譲渡)、WO2016/089873(出願人:Celgene)、WO2015/035606(出願人:Beigene)、WO2015/085847(出願人:Shanghai Hengrui Pharmaceutical/Jiangsu Hengrui Medicine)、WO2014/206107(出願人:Shanghai Junshi Biosciences/Junmeng Biosciences)、WO2012/145493(出願人:Amplimmune)、US9205148(MedImmuneに譲渡),WO2015/119930(Applicants:Pfizer/Merck)、WO2015/119923 出願人:Pfizer/Merck)、WO2016/032927(出願人:Pfizer/Merck)、WO2014/179664(出願人:AnaptysBio)、WO2016/106160(出願人:Enumeral)およびWO2014/194302(出願人:Sorrento)。
【0145】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域に融合したPDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224(CAS登録番号1422184-00-6;GlaxoSmithKline/MedImmune)は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0146】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、ペプチドまたは低分子化合物である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AUNP-12(ピエールファーブル/オーリゲン)である。例えば、WO2012/168944,WO2015/036927,WO2015/044900,WO2015/033303,WO2013/144704,WO2013/132317,and WO2011/161699。
【0147】
いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PD-1を阻害する低分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1を阻害する低分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1およびVISTAを阻害する低分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、CA-170(AUPM-170としても知られている)である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1およびTIM3を阻害する低分子である。いくつかの実施形態では、低分子は、WO2015/033301およびWO2015/033299に記載の化合物である。
【0148】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PDL1抗体である。本明細書では、様々な抗PDL1抗体が企図され、記載されている。本明細書における実施形態のうちのいずれかでは、単離された抗PDL1抗体は、ヒトPDL1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPDL1、またはその変異形に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、PDL1とPD-1との間の結合および/またはPDL1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、ヒト抗体である。本発明の方法に有用な抗PDL1抗体の例、およびその製造方法は、PCT特許出願WO 2010/077634 A1および米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)およびRHWPGGFDY(配列番号3)のHVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を含み、そして
(b)軽鎖可変領域は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)およびQQYLYHPAT(配列番号6)のHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、アテゾリズマブおよびTECENTRIQ(登録商標)(CAS登録番号:1422185-06-5)としても知られているMPDL3280Aである。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)この重鎖可変領域配列は、以下のアミノ酸配列を含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)および
(b)この軽鎖可変領域配列は、以下のアミノ酸配列を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号8)。
【0151】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:10)。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はアベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8).アベルマブ(MSB0010718Cとしても知られている)は、ヒトモノクローナルIgG1抗PDL1抗体(Merck KGaA、ファイザー社)である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号15)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号16)。
【0153】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号15および配列番号16からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号15からの3つの重鎖HVRおよび配列番号16からの3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号15からの重鎖可変ドメインおよび配列番号16からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、デュルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7).MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載されているFc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PDL1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、重鎖および軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号17)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)。
【0155】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号17および配列番号18からの6つのHVR配列を含む(例えば、配列番号17の3つの重鎖HVRおよび配列番号18の3つの軽鎖HVR)。いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、配列番号17からの重鎖可変ドメインおよび配列番号18からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、MDX-1105(ブリストルマイヤーズスクイブ)である。MDX-1105、別名、BMS-936559は、WO2007/005874に記載の抗PDL1抗体である。
【0157】
いくつかの実施形態において、抗PDL1抗体は、LY3300054(イーライリリー)である。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はSTI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014はヒト抗PDL1抗体である。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はKN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリから生成されたシングルドメイン抗体(dAB)である。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、(例えば、腫瘍微小環境中のプロテアーゼによって)切断されると、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば、非結合性立体部位を除去することによって、その抗原を結合させることができるようにする、切断可能な部位またはリンカーから構成される。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はCX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0161】
いくつかの実施形態では、PDL1抗体は、6つのHVR配列(例えば3つの重鎖HVRおよび3つの軽鎖HVR)および/または、US20160108123(Novartisに譲渡)、WO2016/000619(出願人:Beigene)、WO2012/145493(出願人:Amplimmune)、US9205148(MedImmuneに譲渡)、WO2013/181634(出願人:Sorrento)、およびWO2016/061142(出願人:Novartis)に記載のPDL1抗体からの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインからなる。
【0162】
なおさらに具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらに具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なおさらなる一態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。
【0163】
なおさらに具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。さらに具体的な一態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターのないFc突然変異」またはグリコシル化突然変異から生じる。なおさらなる一実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態では、単離された抗PDL1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0164】
さらなる実施形態では、本開示は、上述した抗PDL1抗体のいずれかを、少なくとも1つの薬学的に受容可能な担体と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0165】
さらなる実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるような抗PDL1、抗PD-1、または抗PDL2抗体、またはそれらの抗原結合断片と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とからなる組成物を提供する。いくつかの実施形態では、個体に投与される抗PDL1、抗PD-1、もしくは抗PDL2抗体、またはその抗原結合断片は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物である。本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の薬学的に許容される担体のうちのいずれかが使用され得る。
IV.白金剤とトポイソメラーゼII阻害剤
白金剤
【0166】
白金剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、スターラプラチンなど)は、モノアダクト、鎖間クロスリンク、鎖内クロスリンク、またはDNAタンパク質クロスリンクとしてDNAの架橋を引き起こす、広く使用されている抗腫瘍剤である。白金剤は、典型的には、グアニンの隣接するN-7位に作用し、1,2位の鎖内クロスリンクを形成する。(Poklar et al.(1996).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(15):7606-11;Rudd et al.(1995).Cancer Chemother.Pharmacol.35(4):323-6)その結果、架橋は、癌細胞におけるDNA修復および/またはDNA合成を阻害する。
【0167】
カルボプラチンは、本明細書に記載の方法で使用される例示的な白金配位化合物である。カルボプラチンの化学名は白金、ジアミン[1,1-シクロブタンジカルボキシラト(2-)-O,O′]-(SP-4-2)であり、カルボプラチンは以下の構造式を有する。
【0168】
カルボプラチンは、分子式C6H12N2O4Pt、分子量371.25の結晶性粉末である。約14mg/mLの割合で水に溶解し、1%溶液のpHは5~7である。エタノール、アセトン、ジメチルアセトアミドには実質的に不溶である。カルボプラチンは主に鎖間DNA架橋を産生するが、この効果は細胞周期の非特異的なものである。カルボプラチンは、以下のように市販されている:PARAPLATIN(登録商標),BIOCARN,BLASTOCARB,BLASTOPLATIN,CARBOKEM,CARBOMAX,CARBOPA,CARBOPLAN,CARBOTEEN,CARBOTINAL,CYTOCARB,DUCARB,KARPLAT,KEMOCARB,NAPROPLAT,NEOPLATIN,NISCARBO,ONCOCARBIN,TEVACARB,WOMASTIN等。
トポイソメラーゼII阻害剤
【0169】
トポイソメラーゼIIの阻害剤(例えば、エトポシド(VP-16)、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトキサントロン、アムサクリン、エリプチン、オーリントリカルボン酸、およびHU-331)もまた、酵素媒介DNA切断の形成後に、トポイソメラーゼII:DNA共有結合複合体(すなわち、「開裂複合体」)を安定化させる、広く使用されている抗腫瘍剤である。このような開裂複合体の蓄積は、細胞死の経路を誘導する。
【0170】
エトポシドは、本明細書に記載の方法で使用される例示的なトポイソメラーゼII阻害剤である。エトポシドは、通常、プロドラッグであるエトポシドリン酸塩として投与されるが、その化学名は以下の通りである:4’-デメチレピポフィロトキシン9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-グルコピラノシド]、4’(リン酸二水素)。
【0171】
エトポシドリン酸塩は、以下の構造を有している:
【0172】
エトポシドのリン酸エステルであるエトポシドリン酸塩は、ポドフィロトキシンの半合成誘導体であり、脱リン酸化によりエトポシドに変換される。エトポシドは、DNAトポイソメラーゼIIとの相互作用やフリーラジカルの形成によりDNA鎖切断を誘導し、細胞周期停止(主に細胞周期のG2段階)や細胞死を引き起こす。エトポシドは以下のように市販されている:ETOPOPHOS(登録商標),TOPOSAR(商標)、VP-16,VEPESID(登録商標),ACTITOP,ASIDE,BIOPOSIDE,CTOP,CYTOP,EPOSED,ESIDE,ETHOPUL,ETOLON,ETONIS,ETOPLAST,ETOSID,ETOVEL,FYTOP,FYTOSID,LASTET,NZYTOP,ONCOSIDE,PLACID,POSID,RETOPSON,TEVASIDE,TOPOK,TOPOSIDE等。
V.抗体の調製
【0173】
本明細書に記載の抗体は、抗体を生成するための当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節により詳細に記載される。
【0174】
この抗体は、関心のある抗原(例えば、ヒトPD-L1のようなPD-L1)に対して向けられている。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
【0175】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0176】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的とする抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原でFabを平衡化し、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999))。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)で、100pMまたは26pM [125I]-抗原を目的のFabの段階希釈液と混合する。その後、目的とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0177】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定のため、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、およそ25μL/分の流量にて25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、会合センサグラムおよび解離センサグラムを同時に適合することによって、単純1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chenら、「J.Mol.Biol.」、第293巻、第865~881頁(1999年)を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラスモン共鳴アッセイによって、106M-1s-1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃でのPBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、判定することができる。
(i)抗原の調製
【0178】
他の分子に任意でコンジュゲートされる可溶性抗原またはその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体等の膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然源(例えば、癌細胞株)由来であり得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原およびその形態は、当業者には明らかであろう。
(ii)特定の抗体ベースの方法
【0179】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって動物において産生される。関連する抗原を、免疫化される種において免疫原性を有するタンパク質、例えば キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤などの二官能性または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した共役化)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介した共役化)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2、またはR1N=C=NR、ここでRおよびR1は異なるアルキル基である。
【0180】
動物は、タンパク質またはコンジュゲート(ウサギまたはマウスの場合、それぞれ100μgまたは5μg)を、例えばフロイントの完全アジュバント3容量と組み合わせて、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して免疫化され、溶液を複数の部位で皮内注射することにより、免疫化される。1ヶ月後、動物を、複数の部位での皮下注入により、完全フロイントアジュバント中の最初の量の1/5~1/10のペプチドまたはコンジュゲートで追加免疫する。7~14日後、動物を採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価が水平状態になるまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたものおよび/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートを、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0181】
本開示のモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することができ、さらに、例えば、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)、およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)regarding human-human hybridomas。追加の方法には、例えば、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生に関する米国特許第7,189,826号に記載されている方法が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0182】
他の様々なハイブリドーマ技術については、例えば、US 2006/258841;US 2006/183887(完全ヒト抗体)、US 2006/059575;US 2005/287149;US 2005/100546;US 2005/026229;および米国特許第7,078,492号および第7,153,507号。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルが以下に記載される。一実施形態では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、またはそれを産生することができるリンパ球を誘発するように免疫化される。抗体は、本開示のポリペプチドまたはそのフラグメント、およびモノホスホリルリピドA(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(TDM)などのアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって動物で産生される(Ribi Immunochem.Research、Inc.、ハミルトン、モンタナ州)。本開示のポリペプチド(例えば、抗原)またはそのフラグメントは、組換え法などの当技術分野で周知の方法を使用して調製することができ、そのいくつかは本明細書でさらに説明される。免疫された動物からの血清は、抗抗原抗体のためにアッセイされ、ブースター免疫は、任意に投与される。抗抗原抗体を産生する動物由来のリンパ球が単離される。代替として、リンパ球がインビトロで免疫化され得る。
【0183】
その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。示的な骨髄腫細胞には、米国カリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所細胞分布センターから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するものなどのマウス骨髄腫株、およびSP-2または X63-Ag8-653細胞は、米国カリフォルニア州ロックビルのAmerican Type Culture Collectionから入手できる。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York(1987))。
【0184】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むことになり、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。好ましくは、例えば、Even et al.,Trends in Biotechnology,24(3),105-108(2006)に記載されるウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
【0185】
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドについては、Franek,Trends in Monoclonal Antibody Research,111-122(2005)に記載されている。具体的には、標準の培養培地がある特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、またはタンパク質加水分解画分で富化され、アポトーシスが3~6つのアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって著しく抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモル濃度またはそれより高い濃度で存在する。
【0186】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養液は、本開示の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生のためにアッセイされてもよい。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定され得る。例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)を参照されたい。
【0187】
所望の特異性、親和性、および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る。例えば、上記のGodingを参照されたい。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィー等によって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための1つの手順は、US 2005/176122号および米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスで離液性塩等の最小限の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスで少量の有機溶媒を使用することも含む。
(iii)ライブラリ由来の抗体
【0188】
本開示の抗体は、コンビナトリアルライブラリを所望の活性(複数可)を有する抗 体についてスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、実施例3に記載の方法等のファージディスプレイライブラリを生成し、かつ所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。そのような方法は例えば、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」、第178巻:第1~37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2001年)で確認され、例えば、McCaffertyら、「Nature」、第348巻:第552~554頁;Clacksonら、「Nature」、第352巻:第624~628頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」、第222巻:第581~597頁(1992年);Marks and Bradbury、「Methods in Molecular Biology」、第248巻:第161~175頁(Lo編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2003年);Sidhuら、「J.Mol.Biol.」、第338巻、第2号:第299~310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」、第340巻、第5号:第1073~1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第101巻、第34号:第12467~12472頁(2004年);およびLeeら、「J.Immunol.Methods」、第284巻、第1~2号:第119~132頁(2004年)で更に説明されている。
【0189】
ある種のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に再結合され、次いでWinterら、「Ann.Rev.Immunol.」、第12巻:第433~455頁(1994年)に記載されているような、抗原結合ファージに対してスクリーニングすることが可能である。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントとして、またはFabフラグメントとしてのいずれかで、抗体フラグメントを呈する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を与える。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffithsら、「EMBO J」、第12巻:第725~734頁(1993年)によって記載されるように、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴うことなく、広範囲の非自己抗原および自己抗原に対する単一抗体源を提供することができる。最後に、天然ライブラリはまた、HoogenboomおよびWinter、「J.Mol.Biol.」、第227巻、第381~388頁(1992年)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を遂行することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリを説明する特許公表物としては、例えば、以下のものが挙げられる:米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
【0190】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
(iv)キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体
【0191】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある種のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に開示されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えばマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来の可変領域)、およびヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれらから変更している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0192】
特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。一般的に、非ヒト抗体をヒト化すると、ヒトに対する免疫原性は低下するが、親非ヒト抗体の特異性および親和性は維持される。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変ドメインを含み、FR(またはその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は所望により、ヒト定常領域の少なくとも一部もまた含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0193】
ヒト化抗体およびこれを製造する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に記載され、さらに、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号および第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフト接合を記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);およびOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「ガイド付き選択」手法を記載する)に記載される。
【0194】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が含む:「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)およびPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);および(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)およびRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
【0195】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は通常、van Dijkおよびvan de Winkel、「Curr.Opin.Pharmacol.」、第5巻:第368~74頁(2001年)およびLonberg、「Curr.Opin.Immunol.」、第20巻:第450~459頁(2008年)に記載されている。
【0196】
ヒト抗体は、抗原負荷に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。そのような動物は通常、内在性イムノグロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在する、もしくは動物の染色体中に無作為に導入したヒトイムノグロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は通常不活性である。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号および第6,150,584号、HuMab(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号、VelociMouse(登録商標)技術)を記載する米国特許出願公開第US 2007/0061900号も参照。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0197】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が説明されている。(例えば、Kozbor、「J.Immunol.」、第133巻、第3001頁(1984年);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」、第51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年);およびBoernerら、「J.Immunol.」、第147巻、第86頁(1991年)を参照されたい。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562,2006にも記載されている。更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0198】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載されている。
(v)抗体断片
【0199】
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段または組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片に関する概説については、Hudson et al.(Nat.Med.9:129-134,2003)を参照されたい。
【0200】
抗体断片を産生するために様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)、およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は全て、E.coliで発現され、E.coliから分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体フラグメントは、上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替えとして、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が増加したFabおよびF(ab’)2フラグメントについては、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、それ故に、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでのエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。Antibody Engineering、ed.Borrebaeck、前出を参照。抗体フラグメントはまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
(vi)多重特異性抗体
【0201】
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子が通常2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合する一方で、三重特異性抗体等のさらなる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。
【0202】
二重特異性抗体の作製方法が、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature,305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子を有する混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常親和性クロマトグラフィーステップによって行われるこの正しい分子の精製は、幾分厄介であり、生成物収率は低い。同様の手順が、WO93/08829、およびTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に記載されている。
【0203】
二重特異性抗体を作製するための当技術分野で知られている1つのアプローチは、「ノブからホールへ」または「隆起からキャビティへ」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)このアプローチにおいて、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)が各々界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面が他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用し、それにより、2つの免疫グロブリンポリペプチドの会合を可能にする。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「プロチェバランス」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)は、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「キャビティ」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)に対応するように操作することができる。いくつかの実施形態では、ホールは、ノブと同一または同様の大きさのものであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に位置付け可能であるように好適に位置付けられる。理論に拘束されることを望むことなく、これは、ヘテロ多量体を安定させ、かつ他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成を好むと考えられる。いくつかの実施形態では、このアプローチを使用して、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製することができる。
【0204】
いくつかの実施形態では、ノブは、小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖で置き換えることによって構築され得る。いくつかの実施形態では、ホールは、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖で置き換えることによって構築され得る。ノブまたはホールは、元の界面に存在し得るか、または合成的に導入され得る。例えば、ノブまたはホールは、界面をコードする核酸配列を改変させて、少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることによって合成的に導入され得る。核酸配列を改変させるための方法としては、当該技術分野で周知の標準の分子生物学技法が挙げられ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積を以下の表1に示す。いくつかの実施形態では、元の残基は、小さい側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン)を有し、ノブを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含み得る。いくつかの実施形態では、元の残基は、大きい側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン)を有し、ホールを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、およびバリンを含み得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、ノブまたはホールを形成するための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づいて特定される。当該技術分野で既知の三次元構造を得るための技法としては、X線結晶学およびNMRが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態では、ヒトIgGのCH3/CH3インターフェースは、4つの逆平行βストランド上に位置する各ドメイン上の16個の残基を含む。理論に拘束されることを望むことなく、変異残基は、好ましくは、ノブがパートナーCH3ドメイン内の補償ホールではなく周囲の溶媒によって収容され得る危険性を最小限に抑えるように、これらの2つの中央逆平行β鎖上に位置する。いくつかの実施形態では、2つの免疫グロブリンポリペプチドにおいて対応するノブおよびホールを形成する突然変異は、表2に提供される1つ以上の対に対応する。
【0206】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、表2の左側の欄に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右側の欄に列記される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0207】
上述のようにDNAを変異させた後、1つ以上の対応するノブまたはホール形成変異を有する修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の標準の組換え技法および細胞系を使用して発現および精製することができる。例えば、U.S.Pat.Nos.5,731,168;5,807,706;5,821,333;7,642,228;7,695,936;8,216,805;U.S.Pub.No.2013/0089553;およびSpiess et al.,Nature Biotechnology 31:753-758,2013を参照されたい。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、E.coli等の原核宿主細胞またはCHO細胞等の真核宿主細胞を使用して産生することができる。対応するノブおよびホールを持つ免疫グロブリンポリペプチドは、共培養下で、宿主細胞で発現され、ヘテロ多量体として一緒に精製され得るか、または単一培養下で発現され、別個に精製され、インビトロで構築され得る。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞の2つの株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)は、当該技術分野で既知の標準の細菌培養技法を使用して共培養される。いくつかの実施形態では、2つの株は、例えば、培養下で等しい発現レベルを達成するように、特定の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、2つの株は、50:50、60:40、または70:30の比率で混合され得る。ポリペプチドが発現した後、これらの細胞が一緒に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする当該技術分野で既知の標準の技法としては、サイズ排除クロマトグラフィーが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、標準の組換え技法を使用して別個に発現され、それらはインビトロで一緒に構築され得る。構築は、例えば、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で一緒に混合およびインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールで処理することにより)、濃縮し、かつポリペプチドを再酸化することによって達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィー等の標準の技法を使用して精製することができ、サイズ排除クロマトグラフィー等の標準の技法を使用して測定することができる。これらの方法のより詳細な説明については、Speiss et al.,Nat Biotechnol 31:753-8,2013を参照されたい。いくつかの実施形態では、修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、CHO細胞で別個に発現し、上述の方法を使用してインビトロで構築することができる。
【0208】
異なる手法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。これらの融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これにより、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する際に優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合に、またはそれらの比率が特に重要でない場合に、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0209】
このアプローチの一実施形態では、二種特異的抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖を有し、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)を有するように構成されている。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造が望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0210】
WO96/27011に記載の別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。1つのインターフェースは、抗体定常ドメインのCH 3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一または同様の大きさの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
【0211】
二重特異性抗体には、架橋抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、望ましくない細胞を免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、かつHIV感染を治療するために(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の便利な架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤が当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0212】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も本文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されてF(ab’)2’断片を生成する 手技について記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在の存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。その後、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。その後、Fab’-TNB誘導体の一方がメルカプトエチルアミンでの還元によってFab’-チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0213】
近年の進歩により、化学的にカップリングして二重特異性抗体を形成することができるFab’-SH断片のE.coliからの直接回収が容易になった。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217-225(1992)に、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生を記載している。各Fab’断片は、E.coliから別個に分泌され、インビトロでの指向性化学カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成する。
【0214】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養から直接作製および単離するための様々な技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が産生された。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。それらのフラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、あるフラグメントのVおよびVドメインは、別のフラグメントの相補的なVおよびVドメインと強制的に対になり、それによって2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用することによって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0215】
2を超える結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991).
(vii)単一ドメイン抗体
【0216】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(ドマンティス社、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照のこと)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる。
(viii)抗体バリアント
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。本抗体のアミノ酸配列変異形は、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
(ix)置換、挿入、および欠失バリアント
【0218】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換による変異誘発に関して目的とする部位には、HVRおよびFRが含まれる。保守的な置換は表3に示すとおりである。より実質的な変化は、表3において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載されるとおりである。目的とする抗体中にアミノ酸置換を導入し、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0219】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされてもよい。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro、
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0220】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0221】
ある種類の置換型バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)を有し、および/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成することができる、親和性成熟抗体である。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0222】
変更(例えば、置換)は、抗体親和性を改善するために、例えば、HVRにおいて行われてもよい。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、および/またはSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られた変異体VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.Methods in Molecular Biology 178:1-37に記載されている(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001)。)親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、このライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定されてもよい。特に、CDR-H3およびCDR-L3が、しばしば標的化される。
【0223】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つまたは複数のHVR中で生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)が、HVR中で行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外であり得る。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0224】
変異を標的とし得る抗体の残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989年)、「Science」、第244巻:第1081~1085頁によって記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異生成」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基または標的残基群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、または除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0225】
アミノ酸配列挿入として、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1個または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
(x)グリコシル化バリアント
【0226】
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0227】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを作製するために行われてもよい。
【0228】
一実施形態では、Fc領域を含む抗体変異形が提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが減少しているか、またはフコースを欠き、これによりADCC機能が改善され得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞等の天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、本抗体は、フコースを全く有しないか、またはフコースを有しないか、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体内のわずかな配列変異のため、297位から約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294位と300位との間に位置し得る。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する公報の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazakiら、「J.Mol.Biol.」、第336巻:第1239~1249頁(2004年);Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」、第87巻:第614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(Ripkaら、「Arch.Biochem.Biophys.」、第249巻、第533~545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;および国際公開第2004/056312A1号、Adamsら、特に実施例11において)、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」、第87巻、第614頁(2004年);Kanda,Y.ら、「Biotechnol.Bioeng.」、第94巻、第4号第680~688頁(2006年);および国際公開第2003/085107号を参照)が挙げられる。
【0229】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される二分オリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、US2005/0123546、およびFerrara et al.,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた提供する。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら)、国際公開第1998/58964号(Raju,S.)、および国際公開第1999/22764号(Raju、S.)に記載される。
【0230】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を有する抗体変異形は、FcγRIIIに結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体変異形は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、またはヒトエフェクター細胞の存在下でヒト野生型IgG1Fc領域を有するという点以外は同じ抗体と比較して増加したADCC活性を有する。
(xi)Fc領域バリアント
【0231】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域変異形が生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0232】
特定の実施形態において、本開示は、全てではないが一部のエフェクター機能を有し、それによりインビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば補体およびADCCなど)が不要または有害である用途にとって望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDCおよび/またはADCC活性の低減/欠乏を確認してもよい。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、一方で単球は、Fc(RI、Fc(RII、およびFc(RIIIを発現する。造血細胞内でのFcR発現は、Ravetch and Kinet、「Annu.Rev.Immunol.」、第9巻:第457~492頁(1991年)の第464頁、表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第83巻、第7059~7063頁(1986年)、およびHellstrom,I.ら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第82巻、第1499~1502頁(1985年)を参照のこと)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.ら、「J.Exp.Med.」、第166巻、第1351~1361頁(1987年)を参照のこと)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい))。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第95巻、第652~656頁(1998年)に開示されるような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号および国際公開第2005/100402号における、C1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoroら、「J Immunol Methods」、第202巻、第163頁(1996年);Cragg,M.S.ら、「Blood」、第101巻、第1045~1052頁(2003年);およびCragg,M.S.およびM.J.Glennie、「Blood」、第103巻、第2738~2743頁(2004年)を参照されたい)。FcRn結合およびインビボでのクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を用いても行うことができる(例えば、Petkova,S.B.ら、「Int’l.Immunol.」、第18巻、第12号、第1759~1769頁(2006年)を参照)。
【0233】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329の1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265および297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0234】
FcRへの結合が向上または低下した特定の抗体バリアントについて記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,およびShields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと。)
【0235】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態では、本抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、およびK334A。
【0236】
いくつかの場合において、例えば米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち向上または低下のいずれか)をもたらすFc領域内で変化が起こる。
【0237】
半減期が増大し、胎生Fc受容体(FcRn)への結合が向上した、母体IgGを胎児に移行する役割を果たす抗体(Guyerら、「J.Immunol.」、第117巻、第587頁(1976年)およびKimら、「J.Immunol.」、第24巻、第249頁(1994年))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上する1つ以上の置換基を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つ以上の置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントのその他の例に関係するDuncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号;および国際公開第94/29351号も参照のこと。
(xii)抗体誘導体
【0238】
本発明の抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な更なる非タンパク質部分を含有するように更に修飾され得る。ある特定の実施形態では、本抗体の誘導体化に好適なこれらの部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。このポリマーは、任意の分子量を有していてもよく、分岐していてもよく、または分岐していなくてもよい。本抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、1つより多くのポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
(xiii)ベクター、宿主細胞、および組換え方法
【0239】
抗体は、組換え方法を使用して産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生について、本抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。本抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して(例えば、本抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定され得る。より多くのベクターが用意されている。ベクター成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0240】
なおさらなる一態様では、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする核酸が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、前述の抗PDL1、抗PD-1、または抗PDL2抗体のうちのいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターをさらに含む。なおさらに具体的な一態様では、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞をさらに含む。なおさらに具体的な一態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらに具体的な一態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)等の哺乳類細胞である。
【0241】
なおさらなる一実施形態では、抗PDL1抗体の軽鎖可変領域配列または重鎖可変領域配列をコードする単離された核酸が提供され、
(a)(a)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)、およびRHWPGGFDY(配列番号3)と少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列をさらに含み、
(b)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)、およびQQYLYHPAT(配列番号6)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列をさらに含む。
具体的な一態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0242】
本抗体またはその抗原結合断片は、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、前述の抗PDL1、抗PD-1、もしくは抗PDL2抗体、または抗原結合断片のうちのいずれかをコードする核酸を発現に好適な形態で含有する宿主細胞をかかる抗体または断片の産生に好適な条件下で培養することと、その抗体または断片を回収することとを含むプロセスによって作製され得る。さらなる例示的な技術および方法が本明細書に記載されている。
(a)シグナル配列構成成分
【0243】
本開示の抗体は、直接的にのみではなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え的に生成され得る。この異種ポリペプチドは、好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端にて特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識およびプロセシング(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識もプロセシングもしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核シグナル配列によって置換される。酵母分泌のために、ネイティブシグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロマイセスおよびクルイベロマイセスα因子リーダーを含む)、または酸ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO 90/13646に記載されたシグナルによって置換されてもよい。哺乳類細胞発現において、哺乳類シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
(b)複製起点
【0244】
発現ベクターもクローニングベクターもいずれも、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは無関係にベクターの複製を可能にするものであり、これらとしては、複製起点または自己複製配列が挙げられる。かかる配列は、様々な細菌、酵母、およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点が大半のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド起点が酵母に好適であり、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)が哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳類発現ベクターに必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するために、典型的に使用され得る。
(c)遺伝子成分の選択
【0245】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択遺伝子、別名、選択可能なマーカーを含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンへの耐性を与えるか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質、例えば、BacilliについてD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子をコードする。
【0246】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子での形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、それ故に選択レジメンで生き残るタンパク質を産生する。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
【0247】
哺乳類細胞に好適な選択可能なマーカーの別の例は、DHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-Iおよび-II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等の抗体コード核酸を取り込むための細胞成分の特定を可能にするものである。
【0248】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸とともに増幅される。内因性DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)が使用され得る。
【0249】
代替として、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GS阻害剤であるL-メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸とともに増幅される。GS選択/増幅系が、上述のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用され得る。
【0250】
代替として、目的とする抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、および別の選択可能なマーカー、例えば、アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換または共形質転換された宿主細胞(具体的には、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418等の選択可能なマーカー用の選択剤を含有する培地中での細胞成長によって選択され得る。例えば、米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0251】
酵母での使用に好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al.,Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株に対する選択マーカー、例えば、ATCC番号44076またはPEP4-1を提供する。Jones,Genetics,85:12(1977).その後、酵母宿主細胞ゲノム中でのtrp1病変の存在により、トリプトファンの不在下での成長による形質転換の検出に有効な環境が提供される。同様に、Leu2が欠損した酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を持つ既知のプラスミドによって補完される。
【0252】
加えて、1.6μmの環状プラスミドpKD1由来のベクターが、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。代替として、組換え仔牛キモシンの大規模産生のための発現系としてK.lactisが報告された。Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)。Kluyveromycesの工業用株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定した多コピー発現ベクターも開示されている。Fleer et al.,Bio/Technology,9:968-975(1991)。
(d)宿主細胞の選択および形質転換
【0253】
本明細書におけるベクター中でのDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、またはより高次の真核生物細胞である。この目的のための好適な原核生物としては、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真核細菌、例えば:Escherichia、例えば大腸菌、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えばSalmonella typhimurium、Serratia、例えばSerratia marcescans、およびShigella、B.subtilis、B.licheniformisなどのバチルス(例えば、1989年4月12日に公開されたDD 266,710に開示されたB.licheniformis 41P)、P.aeruginosaなどのシュードモナス、およびStreptomycesなどが挙げられる。好ましい大腸菌クローニング宿主の一つは、大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)、大腸菌W3110(ATCC 27,325)のような他の株も適している。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。
【0254】
全長抗体、抗体融合タンパク質、および抗体フラグメントは、特に、治療用抗体がそれ自体が腫瘍細胞破壊に有効性を示す細胞傷害剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされている場合のように、グリコシル化およびFcエフェクター機能を必要としない場合には、細菌中で製造することができる。全長抗体は、より優れた血中半減期を有する。E.coliでの産生がより迅速であり、より費用効率が高い。細菌における抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を説明している、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照のこと。また、E.coliにおける抗体断片の発現を記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245-254も参照されたい。発現後、本抗体は、可溶性画分中のE.coli細胞ペーストから単離され得、例えば、アイソタイプに応じてタンパク質AまたはGカラムにより精製され得る。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に行われ得る。
【0255】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物が、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である。より下位の真核宿主微生物の中でSaccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母が最も一般的に使用されている。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianusなど、yarrowia(EP 402,226)、Pichia pastoris(EP 183,070)、Candida、Trichoderma reesia(EP 244,234)、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces、ならびに糸状真菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、およびAspergillus宿主、例えば、A.nidulansおよびA.nigerなどのいくつかの他の属、種、および菌株が本明細書において一般的に利用可能であり、有用である。治療用タンパク質の生産のための酵母および糸状菌の使用を議論するレビューについては、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)を参照のこと。
【0256】
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、結果として部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらすある特定の真菌および酵母株が選択され得る。たとえば、Li et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化について説明)、およびGerngross et al.(上記参照)。
【0257】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変異形、ならびに宿主、例えば、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(mosquito)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、およびBombyx mori由来の対応する許容昆虫宿主細胞が特定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1変異形、およびBombyx mori NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、かかるウイルスは、本発明における本明細書におけるウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る。
【0258】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、ムラサキウマゴヤシ(M.truncatula)、およびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号および第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術)を参照。
【0259】
脊椎動物細胞が宿主として使用され得、培養下での脊椎動物細胞の繁殖(組織培養)が日常的な手順になっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、以下のものが挙げられる:SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胎児腎臓株(浮遊培養での増殖のためにサブクローン化された293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);犬の腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌株(HepG2)。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞(Urlaubら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第77巻:第4216頁(1980年))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにNS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0260】
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換対の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された従来の栄養素培地中で培養される。
(e)宿主細胞の培養
【0261】
本開示の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は、種々の培地で培養してもよい。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)等の市販の培地が、宿主細胞の培養に好適である。また、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、同第5,122,469号、WO 90/03430、WO 87/00195、または米国特許番号30,985に記載のいずれの培地も宿主細胞の培地として使用することができる。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因等子)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終密度で存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは等価エネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物も当業者に既知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞で既に使用したものであり、当業者に明らかであろう。
(xiv)抗体の精製
【0262】
組換え技法を使用する場合、本抗体は、細胞内で産生され得るか、ペリプラズム空間で産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。本抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、微粒子残屑(宿主細胞または溶解断片のいずれか)が、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)には、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体を分離する方法が記載している。要するに、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍する。細胞片は遠心分離によって除去され得る。本抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清が、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して最初に濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害薬が前述のステップのいずれかに含まれてもよく、外来性混入物の増殖を防止するために、抗生物質が含まれてもよい。
【0263】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、および親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得、親和性クロマトグラフィーが典型的に好ましい精製ステップのうちの1つである。タンパク質Aの親和性リガンドとしての好適性は、本抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスにより、アガロースで達成され得るよりも速い流速および短いプロセシング時間が可能になる。抗体がCH3ドメインからなる場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質を精製するための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース(商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿も回収される抗体に応じて利用可能である。
【0264】
一般に、研究、試験、および臨床で使用するための抗体を調製するための様々な方法論が当該技術分野で十分に確立されており、上述の方法論と一致しており、かつ/または当業者によって目的とする特定の抗体に適切であると見なされる。
VI.生理活性抗体の選択
【0265】
上述のように産生された抗体は、1つ以上の「生物学的活性」アッセイに供されて、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するか、または本抗体の生物学的活性を保持する製剤および条件を選択することができる。本抗体は、それが産生される抗原に結合するその能力について試験され得る。例えば、当該技術分野で既知の方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット等)が使用され得る。
【0266】
例えば、抗PDL1抗体の場合、抗体の抗原結合特性は、PDL1に結合する能力を検出するアッセイで評価され得る。いくつかの実施形態では、抗体の結合性は、例えば、飽和結合、ELISA、および/または競合アッセイ(例えばRIA)によって決定され得る。本抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイにも供され得る。かかるアッセイが当該技術分野で既知であり、本抗体の標的抗原および意図される使用に依存する。例えば、本抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル、および/または同系腫瘍モデル、例えば、米国特許第8,217,149号に記載のモデルにおいて評価され得る。
【0267】
目的とする抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、例示的な抗PDL1抗体のPD-L1への結合を遮断する抗体)についてスクリーニングするために、通常の交差遮断アッセイ、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のアッセイが行われ得る。あるいは、エピトープマッピング、例えば、Champeら、J.Biol.Chem.270:1388-1394(1995)に記載されているように、抗体が関心のあるエピトープに結合するかどうかを決定するために実施することができる。
VII.医薬組成物および製剤
【0268】
また、本明細書では、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、およびトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害剤からなる肺癌(小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がん)の治療のための医薬組成物および製剤も提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物および製剤は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0269】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体(例えば、アテゾリズマブ)は、約60mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約120mMの濃度のスクロース、および約0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)からなる製剤中にあり、製剤は、約5.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体は、約125mg/mLの量の本抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約240mMの濃度のスクロース、および0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中に存在し、この製剤は、約5.5のpHを有する。
【0270】
目的の抗体を調製した後(例えば、本明細書に開示されているように製剤化することができる抗体を製造するための技術は、本明細書に精巧に記載されており、当技術分野で知られている)、それを構成する医薬製剤を調製する。ある特定の実施形態では、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一実施形態では、製剤中の抗体は、F(ab’)2等の抗体断片であり、この場合、完全長抗体では起こり得ない問題(抗体のFabへのクリッピング等)に対処しなければならない場合がある。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積および投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。約25mg/mLから約150mg/mL、または約30mg/mLから約140mg/mL、または約35mg/mLから約130mg/mL、または約40mg/mLから約120mg/mL、または約50mg/mLから約130mg/mL、または約50mg/mLから約125mg/mL、または約50mg/mLから約120mg/mL。または約50mg/mLから約110mg/mL、または約50mg/mLから約100mg/mL、または約50mg/mLから約90mg/mL、または約50mg/mLから約80mg/mL、または約54mg/mLから約66mg/mLは、製剤中の例示的な抗体濃度である。
【0271】
pH緩衝溶液中に抗体を含む水性製剤が調製される。いくつかの実施形態では、本開示の緩衝液は、約5.0から約7.0の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは約5.0から約6.5の範囲にあり、pHは約5.0から約6.4の範囲にあり、約5.0から約6.3の範囲にあり、pHは約5.0から約6.2の範囲にあり、pHは約5.0から約6.1の範囲にあり、pHは約5.5から約6.1の範囲にあり、pHは約5.0から約6.0の範囲にあり、pHは約5.0から約5.9の範囲にあり、pHは約5.0から約5.8の範囲にあり、pHは約5.1から約6.0の範囲にあり、pHは約5.2から約6.0の範囲にあり、pHは約5.3から約6.0の範囲にあり、pHは約5.4から約6.0の範囲にあり、pHは約5.5から約6.0の範囲にあり、pHは約5.6から約6.0の範囲にあり、pHは5.7から約6.0にあり、またはpHは約5.8から約6.0の範囲にある。いくつかの実施形態では、製剤は、6.0または約6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は5.9または約5.9のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は5.8または約5.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.7または約5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.6または約5.6のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.5または約5.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.4または約5.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.3または約5.3のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、5.2または約5.2のpHを有する。この範囲内でpHを制御するバッファーの例には、ヒスチジン(L-ヒスチジンなど)または酢酸ナトリウムが含まれる。特定の実施形態では、緩衝液は、約15mMから約25mMの濃度で酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、緩衝液には、酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムの濃度が約15mM~約25mM、約16mM~約25mM、約17mM~約25mM、約18mM~約25mM、約19mM~約25mM、約20mM~約25mM、約 21mMから約25mM、約22mMから約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、または約25mMである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.0の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.1の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.2の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.3の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.4の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.5の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.6の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.7の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.8の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH5.9の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH6.0の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH6.1の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH6.2の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約20mM、pH6.3の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.2の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.3の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.4の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.5の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.6の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.7の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.8の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH5.9の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH6.0の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH6.1の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH6.2の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は、約25mM、pH6.3の量の酢酸ヒスチジンまたは酢酸ナトリウムである。
【0272】
いくつかの実施形態では、製剤は、約60mMから約240mMの量のスクロースをさらに含む。いくつかの実施形態では、製剤中のショ糖は約60mM~約230mM、約60mM~約220mM、約60mM~約210mM、約60mM~約200mM、約60mM~約190mM、約60mM~約180mM、約60mM~約170mM、約60mM~約160mM、約60mM~約150mM、約60mM~約140mM、約80mM~約240mM、約90mM~約240mM、約100mM~約240mM、約110mMから約240mM、約120mMから約240mM、約130mMから約240mM、約140mMから約240mM、約150mMから約240mM、約160mMから約240mM、約170mMから約240mM、約180mMから約240mM、約190mMから約240mM、約200mMから約240mM、約80mMから約160mM、約100mMから約140mM、または約110mMから約130mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のショ糖は約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、または約240mMである。
【0273】
いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は、約40mg/ml~約125mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は40mg/ml~約120mg/ml、約40mg/ml~約110mg/ml、約40mg/ml~約100mg/ml、約40mg/ml~約90mg/ml、約40mg/ml~約80mg/ml、約40mg/ml~約70mg/ml、約50mg/ml~約120mg/ml、約60mg/ml~約120mg/ml、約70mg/ml~約120mg/ml、約80mg/ml~約120mg/ml、約90mg/ml~約120mg/ml、または約100mg/ml~約120mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約60mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約65mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約70mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約75mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約80mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約85mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約90mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約95mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約100mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約110mg/mlである。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体濃度は約125mg/mlである。
【0274】
いくつかの実施形態では、界面活性剤が抗体製剤に添加される。例示の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80号)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188等)が挙げられる。界面活性剤の添加量は、製剤化された抗体の凝集を低減し、および/または製剤中の微粒子の形成を最小化し、および/または吸着を低減するような量である。例えば、界面活性剤は、約0.001%から約0.5%(w/v)の量で製剤中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は約0.005%から約0.2%、約0.005% から約0.1%、約0.005%から約0.09%、約 0.005%から約0.08%、約0.005%から約0.07%、約0.005%から約0.06%、約0.005%から約0.05%まで、約0.005%から約0.04%まで、約0.008%から約0.06%まで、約0.01%から約0.06%まで、約0.02%から約0.06%まで、約0.01%から約0.05%まで、または約0.02%から約0.04%までである。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.005%または約0.005%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.006%または約0.006%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.007%または約0.007%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.008%または約0.008%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.009%または約0.009%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.01%または約0.01%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%または約0.02%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.03%または約0.03%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.04%または約0.04%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.05%または約0.05%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.06%または約0.06%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.07%または約0.07%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.08%または約0.08%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.1%または約0.1%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.2%または約0.2%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.3%または約0.3%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.4%または約0.4%の量で製剤中に存在する。特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.5%または約0.5%の量で製剤中に存在する。
【0275】
一実施形態では、製剤は、上で定義された薬剤(例えば、抗体、緩衝液、糖、および/または界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、およびベンゼトニウムCl等の1つ以上の保存料を本質的に含まない。別の実施形態では、保存料が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投与量製剤である。保存料の濃度は、約0.1%~約2%、好ましくは、約0.5%~約1%の範囲であり得る。1つ以上の他の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載のものが製剤中に含まれ得るが、但し、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下を含む:追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例:Zn-タンパク質複合体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー、および/または塩形成対イオン。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤をさらに含む。特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
【0276】
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な複数のタンパク質、好ましくは他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含み得る。例えば、抗体が抗PDL1(例えば、アテゾリズマブ)である場合、それは、別の薬剤(例えば、化学療法剤、および抗腫瘍剤)と組み合わせることができる。
【0277】
本明細書に記載の医薬組成物および製剤は、所望の純度を有する有効成分(抗体またはポリペプチドなど)を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって調製することができる。薬学的に許容される担体は一般的に、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤をさらに含む。特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
【0278】
例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号および国際公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジン緩衝液を含む。
【0279】
本明細書における組成物および製剤は、治療される特定の適応症に必要な1つより多くの活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0280】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにより、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、およびナノカプセル)内、またはマクロ乳濁液中にも取り込まれ得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
【0281】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。
【0282】
カルボプラチンおよび/またはエトポシドの医薬製剤は市販されている。たとえば、カルボプラチンは、PARAPLATIN(登録商標)を含むさまざまな商品名(本明細書の他の箇所で説明されている)で知られている。エトポシドは、VP-16、ETOPOPHOS(登録商標)、TOPOSAR(商標)、VEPESID(登録商標)など、さまざまな商品名で知られている(本書の他の箇所で説明されている)。いくつかの実施形態では、カルボプラチンおよび/またはエトポシドは、別個の容器に提供される。いくつかの実施形態では、カルボプラチンおよび/またはエトポシドは、それぞれ、市販されている製品と共に入手可能な処方情報に記載されているように、個体への投与のために使用されるおよび/または調製される。
VIII.治療方法
【0283】
本明細書に提供される方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、白金剤(例えば、カルボプラチン)、およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド)の有効量を個体に投与することからなる、個体における癌(例えば、肺癌、小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がん)の治療または進行を遅延させるための方法である。いくつかの実施形態では、この治療は、治療の中止後に個体における持続的応答をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、その個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。本明細書に記載の方法は、癌の治療のための腫瘍免疫原性の増大等の免疫原性の増強が所望される状態の治療における使用を見出し得る。また、本明細書に提供される方法は、(例えば、肺癌、例えば、小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がん)を有する個体における免疫機能を増強する方法であって、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、白金剤(例えば、カルボプラチン)、およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド)の有効量を個体に投与することからなる方法であって、本明細書に提供される。
【0284】
いくつかの実施形態では、肺癌は小細胞肺癌(SCLC)である。いくつかの実施形態では、SCLCは、ステージ4(IV)SCLCとも呼ばれる、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)である。いくつかの実施形態では、SCLCは、退役軍人局肺研究グループ(Veterans Administration Lung Study Group(VALG))の病期分類システムに従って、またはそれによって定義されるように、組織学的または細胞学的に確認されたES-SCLCである(例えば、Mickeら(2002)「Staging small cell lung cancer.Veterans Administration Lung Study Group versus International Association for the Study of Lung Cancer-what limits limited disease? Lung Cancer 37:271-6)を参照のこと。)いくつかの実施形態では、SCLCは、個体が手術不能であり、限定的または限定的なステージのSCLC(L-SCLCまたはLS-SCLC)を有するものとして分類することができない場合、ES-SCLCとして分類される。いくつかの実施形態では、ES-SCLCは検出可能であり、および/または元々患っていた肺の外に広がっている。いくつかの実施形態では、ES-SCLCは、肝臓、副腎、リンパ節および/または脳などの他の(例えば、遠隔の)器官に検出可能であり、および/またはさらに広がっている。いくつかの実施形態では、ES-SCLCは治療が困難である。
【0285】
いくつかの実施形態では、個体の予後は不良である。いくつかの実施形態では、個体は、治療を受けていない個体である。いくつかの実施形態において、治療未経験の個体は、例えば、癌、SCLC、またはES-SCLCのために、以前の治療を受けていない個体である。いくつかの実施形態では、治療ナイーブ個体は、ES-SCLCに対する先行治療を受けていない個体である。いくつかの実施形態では、治療ナイーブな個体は、化学療法ナイーブであり、例えば、例えば、癌、SCLC、および/またはES-SCLCの治療のための先行化学療法を受けていない個体である。いくつかの実施形態では、その個体は、ES-SCLCに対する治療を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、ES-SCLCのための先行する全身治療を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、治癒的意図を有する限定的病期SCLC(LS-SCLC)に対する先行化学放射線療法を受けており、ES-SCLCの診断から最後の化学療法、放射線療法、または化学放射線療法のサイクルから少なくとも6ヶ月間の無治療サイクルを経験している。いくつかの実施形態では、個体は、無症候性の前頭上または小脳中枢神経系(CNS)転移を有する。いくつかの実施形態では、個体は、中脳、ポンズ、髄質、または脊髄への転移を有していない。いくつかの実施形態では、個体はCNS疾患を有し、CNS疾患のためのコルチコステロイド治療を必要としない。いくつかの実施形態では、個体は、新たな無症候性転移を有し、CNS転移のための放射線療法および/または手術を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、RECIST v1.1基準に従って/またはRECIST v1.1基準によって定義された測定可能な疾患を有する(例えば、Eisenhauer et al.(2009)“New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(バージョン1.1).” Eur.J.Cancer.45:228-247を参照のこと).いくつかの実施形態では、個体は、CD137アゴニストまたは免疫チェックポイント遮断療法、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含むがこれらに限定されない免疫チェックポイント遮断療法による先行治療を受けていない。
【0286】
当技術分野で知られているか、または本明細書に記載されているPD-1軸結合アンタゴニスト、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤のいずれかを、本発明の方法に使用することができる。当技術分野で知られているか、または本明細書に記載されているPD-1軸結合アンタゴニスト、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤のいずれかを、本発明の方法に使用することができる。
【0287】
いくつかの実施形態では、治療は、導入期および維持期(または「維持療法」)からなる。いくつかの実施形態では、導入期は以下を含む:PD-1軸結合拮抗薬(例、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を1日目に1200mgの用量で投与し、1日目に5mg/mL/分の初期目標曲線下面積(AUC)を達成するのに十分な用量の白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)を投与し、およびサイクル1~4の各21日サイクルの1日目、2日目、および3日目のそれぞれに100mg/mの用量のトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)を投与する。いくつかの実施形態において、維持段階は、サイクル4に続く各21日サイクルの1日目に1200mgの用量でPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を投与することを含む。誘導サイクルおよび維持サイクルを含む例示的な投薬および投与スケジュールを以下の表4に提供する:
【0288】
いくつかの実施形態において、アテゾリズマブの1200mgの用量は、15m/kgの平均体重ベースの用量と同等である。いくつかの実施形態では、5mg/mL/分のAUCを達成するために必要なカルボプラチンの用量は、カルバート式に従って計算される(例えば、Calvert et al.(1989)“Carboplatin dosage:prospective evaluation of a simple formula based on renal function.” J.Clin.Oncol.7:1748-56;van Warmerdam et al.(1995)J.Cancer Res.Clin.Oncol.121(8):478-486)を参照のこと)。詳細については、以下の例1を参照のこと。
【0289】
いくつかの実施形態では、個体の無増悪生存期間(PFS)は、Eisenhauer et al.(2009)“New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(Version 1.1).” Eur J Cancer.45:228-47)に記載されているように、RECIST v1.1基準に従って測定される。いくつかの実施形態では、PFSは、治療の開始から、RECIST v1.1基準によって決定される疾患進行の最初の発生までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、PFSは、治療の開始から死亡の時間までの時間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、少なくとも4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75または6ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のいずれか1つだけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、その個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約5.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺がんなどの進展型小細胞肺がんなど)を有する個体と比較し、0.5、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくとも約1つによって、個体のPFSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がんなど)を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約1.1ヶ月増加させる。
【0290】
いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)は、治療開始から死亡までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、または14ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくとも約1つによって、個体のOSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、OSを14ヶ月以上、例えば、14.25ヶ月、14.5ヶ月、14.75ヶ月、15ヶ月、15.25ヶ月、15.5ヶ月、15.75ヶ月、または15.75ヶ月以上(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの約1つによって延長する。いくつかの実施形態では、治療はOSを約15.9ヶ月延長する。いくつかの実施形態では、治療は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺がんなどの進展型小細胞肺がんなど)を有する個体と比較し、0.5、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくとも約1つによって、個体のOSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺がんなどの進展型小細胞肺がんなど)を有する個体と比較し、約3ヶ月、例えば4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、または6.75ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくとも約1つによって、個体のOSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺癌、例えば、進展型小細胞肺がん)を有する個体と比較して、個体のOSを約6.6ヶ月増加させる。
【0291】
いくつかの実施形態では、個体は、65歳以上(例えば、約65歳から約74歳までの間、約75歳から約84歳までの間、または>85歳までの間)である。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約10、11、12、13、14、15、または16の血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する。いくつかの実施形態では、個体は、16より大きい血液腫瘍突然変異負荷(bTMB)を有する。bTMBは、周知の方法を用いて循環腫瘍DNA(ctDNA)のゲノムシークエンシングにより算出された腫瘍ゲノムのコード領域あたりの突然変異の総数を表している。
【0292】
いくつかの実施形態では、個体は、例えば、治療開始後12週間で、1つ以上の肺癌に関連した症状からの緩和を報告する。いくつかの実施形態では、肺癌に関連する症状は、腕の痛み、肩の痛み、胸の痛み、咳、および呼吸困難(すなわち、呼吸困難または呼吸困難)のうちの1つまたは複数である。
【0293】
いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
【0294】
いくつかの実施形態では、個体は、1つ以上のPD-1軸アンタゴニストに耐性を示す(耐性を示すと実証された)癌を有する。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、癌の再発または不応性癌を含む。再発とは、治療後の発症元の部位または新たな部位における癌の再現を指し得る。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、PD-1軸アンタゴニストでの治療中の癌の進行を含む。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、治療に応答しない癌を含む。癌は、治療開始時に耐性を示し得るか、または治療中に耐性を示すようになり得る。いくつかの実施形態では、癌は早期または後期にある。
【0295】
別の態様では、個体は、PD-L1バイオマーカーを発現する(例えば、診断試験において、発現することが示された)癌を有する。いくつかの実施形態では、そのような個体は、PD-L1陽性 であるか、またはPD-L1陽性癌を有する。いくつかの実施形態では、個体からのサンプル中の腫瘍細胞(TC)上(またはその中)でPD-L1発現(例えば、タンパク質発現)が検出される場合、または個体からのサンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上(またはその中)でPD-L1発現(例えば、タンパク質発現)が検出される場合、個体は「PD-L1陽性」であるか、または「PD-L1陽性癌」である。いくつかの実施形態では、個体のTCおよび/またはICは、低レベルのPD-L1バイオマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、個体のTCおよび/またはICは、高レベルのPD-L1バイオマーカーを発現する。いずれかの方法のいくつかの実施形態では、アッセイおよび/またはキットは、PD-L1バイオマーカーが、サンプルの0%以上、サンプルの少なくとも1%、サンプルの少なくとも5%、または個体からのサンプル(例えば、個体のTCおよび/またはICを含む個体からのサンプル)の少なくとも10%において存在する(例えば、IHCを介して検出される)場合、個体は、PD-L1陽性であるか、またはPD-L1陽性癌を有する。いずれかの方法のいくつかの実施形態では、アッセイおよび/またはキット、サンプル中の(例えば、個体のTCおよび/またはICを含む個体からのサンプル中の)PD-L1バイオマーカーの存在は、サンプル中の染色の任意のレベルとして検出される。
【0296】
これらの方法、アッセイ、および/またはキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、およびFISH、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される。
【0297】
これらの方法、アッセイ、および/またはキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、タンパク質発現によって試料中で検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、抗PD-L1抗体を使用して検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、IHCによって弱い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、IHCによって中程度の染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、IHCによって強い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、およびそれらの任意の組み合わせ中で検出される。いくつかの実施形態では、染色は、膜染色、細胞質染色、またはそれらの組み合わせである。
【0298】
いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体を使用して検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1はホルマリン固定パラフィン包埋サンプルで検出される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体は、検出可能な標識からなる二次抗体で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1を検出するために使用されるアッセイは、VENTANTA PD-L1(SP142)アッセイ(VENTANTA(登録商標)から市販されている)である。
【0299】
別の側面において、個体は、PD-L1バイオマーカーを発現しないか、または非常に低いレベルのPD-L1バイオマーカーを発現する癌を有する。いくつかの実施形態では、そのような個体は、PD-L1陰性と呼ばれ、または PD-L1陰性癌を有すると呼ばれる。いくつかの実施形態では、個体からのサンプル中の腫瘍細胞(TC)上(またはTC中)でPD-L1発現(例えば、タンパク質発現)が検出されない場合、PD-L1発現(例えば、タンパク質発現)が、個体からのサンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上(またはIC中)で検出されない場合、またはPD-L1発現(例えば、タンパク質発現)が、個体からのサンプル中の(または中の)TCおよび/またはIC上で非常に低いレベルで検出される場合、個体は「PD-L1陰性」であるか、または「PD-L1陰性癌」である。いずれかの方法のいくつかの実施形態では、アッセイおよび/またはキット、個体からのサンプル中のTCおよび/またはICの0%においてPD-L1(例えば、PD-L1発現)が(例えば、IHCまたは他のアッセイを介して)検出される場合、個体は「PD-L1陰性」であるか、または「PD-L1陰性癌」を有する。いずれかの方法、アッセイ、および/またはキットのいくつかの実施形態では、PD-L1(例えば、PD-L1発現)が(例えば、IHCまたは他のアッセイを介して)個体からのサンプル中のTCおよび/またはICの1%未満で検出される場合、個体は「PD-L1陰性」であるか、または「PD-L1陰性癌」である。いずれかの方法、アッセイ、および/またはキットのいくつかの実施形態では、「PD-L1陰性」とは、例えば、個体のTCおよび/またはICを含む個体からのサンプル中に染色がないことを意味する。
【0300】
PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、任意の順序で投与することができる。例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、順次(異なる時期に)投与してもよいし、同時に(同時に)投与してもよい。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、別個の組成物中にある。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)のうちの1つ以上(またはすべての3つ)が、同一の組成物中に存在する。
【0301】
PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、同一の投与経路で投与してもよいし、異なる投与経路で投与してもよい。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植による、吸入による、髄腔内、静脈内、静脈内、または鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、白金剤(例えば、カルボプラチン)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、留置、吸入、肝内、腹腔内、静脈内、または経鼻で投与される。いくつかの実施形態では、トポイソメラーゼII阻害剤(例えばエトポシド)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植による、吸入による、髄腔内、静脈内、静脈内、または経鼻で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、点滴を介して投与される。疾患の予防または治療のために、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)の有効量を投与してもよい。
【0302】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、個体(例えば、ES-SCLCの治療を受けていない個体)における進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を治療する方法であって、この方法は、有効量のアテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドを個体に投与することからなる。ここで、投与は導入期と維持期からなり、導入期には、アテゾリズマブを1日目に1200mg、カルボプラチンを1日目に5mg/mL/分の初期目標曲線下面積(AUC)を達成するのに十分な量、エトポシドを1日目、2日目、3日目の各21日間のサイクルで1~4日目に100mg/mの用量で投与し、維持期には維持期の投与を行う。いくつかの実施形態では、維持期は、サイクル4に続く各21日間のサイクルの1日目に1200mgの用量でアテゾリズマブを投与することからなる。いくつかの実施形態では、方法は、個体のPFS(例えば、これらの値の間の任意の範囲を含む、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、または6ヶ月のうちの少なくとも約1つによって)および/または個体のOS(例えば、10.5、10.75、11、11.25、11.5、11.75、12、12.25、12.5、12.75、13、13.25、13.5、13.75、または14ヶ月のうちの少なくとも約1つによって、これらの値の間の任意の範囲を含む)を延長する。いくつかの実施形態では、本方法は、白金剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)による治療を受けた肺癌(小細胞肺がん、例えば、進展型小細胞肺がんなど)を有する個体と比較して、個体のPFS(たとえば、少なくとも0.5、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3か月のいずれか、これらの値の間の範囲を含む)および/または個体のOS(たとえば、少なくとも0.5、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3か月のいずれか、これらの値の間の範囲を含む)を延長する。
【0303】
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブの投与は、カルボプラチンの投与に続いて行われ、カルボプラチンの投与は、サイクル1~4のための各21日間のサイクルの第1日目にエトポシドの投与に続いて行われ、例えば、上記の表4に示されるように、エトポシドの投与に続いて行われる。
【0304】
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、第1日目に60(±15分)にわたって静脈内投与され、カルボプラチンは、第1日目に30~60分の期間にわたって静脈内投与され、エトポシドは、最初の21日間のサイクル(すなわち、サイクル1については)の第1、第2、および第3日目に60分間の期間にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、第1日目に30(±10分)にわたって静脈内投与され、カルボプラチンは、第1日目に30~60分の期間にわたって静脈内投与され、エトポシドは、第2~4サイクルのための各21日間のサイクルについて、第1日目、第2日目、および第3日目に60分の期間にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4に続く各21日周期の第1日目に30(±10分)にわたって静脈内投与される。
【0305】
一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量の抗体は、1回以上の投与によるかにかかわらず、約0.01~約50mg/患者の体重kgの範囲であろう。いくつかの実施形態では、使用される本抗体は、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgであり、例えば、毎日投与される。いくつかの実施形態では、本抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬計画が有用であってもよい。一実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体は、21日周期の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量でヒトに投与される。用量は、注入物などの、単回用量で、または複数回用量(例えば、2回用量または3回用量)で投与されてもよい。併用治療において投与される本抗体の用量は、単剤治療と比較して減少し得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
【0306】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、さらなる療法をさらに含み得る。追加療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前記の組み合わせであってもよい。さらなる療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、さらなる療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、さらなる療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生および/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤等)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の治療は放射線治療である。いくつかの実施形態では、追加の治療は手術である。いくつかの実施形態では、追加の治療は、放射線治療および手術の組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の治療はガンマ線照射である。
【0307】
いくつかの実施形態では、追加の治療は、CT-011(ピディリズマブまたはMDV9300としても知られている;CAS登録番号1036730-42-3;CureTech/Medivation)からなる。CT-011は、hBATまたはhBAT-1としても知られており、WO2009/101611に記載の抗体である。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、重鎖および軽鎖の配列からなる抗体からなり、ここで:
(a)重鎖はアミノ酸配列を含む:QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTNYGMNWVRQAPGQGLQWMGWINTDSGESTYAEEFKGRFVFSLDTSVNTAYLQITSLTAEDTGMYFCVRVGYDALDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号19)、および
(b)軽鎖はアミノ酸配列を含む:EIVLTQSPSSLSASVGDRVTITCSARSSVSYMHWFQQKPGKAPKLWIYRTSNLASGVPSRFSGSGSGTSYCLTINSLQPEDFATYYCQQRSSFPLTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号20)。
【0308】
いくつかの実施形態では、追加の治療抗体は、配列番号19および配列番号20からの6つのHVR配列(例えば、配列番号19からの3つの重鎖HVRおよび配列番号20からの3つの軽鎖HVR)からなる。いくつかの実施形態では、追加の治療用抗体は、配列番号19からの重鎖可変ドメインおよび配列番号20からの軽鎖可変ドメインからなる。本明細書で使用するために企図される他の追加の治療用抗体には、限定されないが、以下のものが含まれる:alemtuzumab(Campath),bevacizumab(AVASTIN(登録商標),Genentech);cetuximab(ERBITUX(登録商標),Imclone);panitumumab(VECTIBIX(登録商標),Amgen),rituximab(RITUXAN(登録商標),Genentech/Biogen Idec),pertuzumab(OMNITARG(登録商標),2C4,Genentech),trastuzumab(HERCEPTIN(登録商標),Genentech),tositumomab(Bexxar,Corixia)、抗体薬物コンジュゲートgemtuzumab ozogamicin(MYLOTARG(登録商標),Wyeth),apolizumab,aselizumab,atlizumab,bapineuzumab,bivatuzumab mertansine,cantuzumab mertansine,cedelizumab,certolizumab pegol,cidfusituzumab,cidtuzumab,daclizumab,eculizumab,efalizumab,epratuzumab,erlizumab,felvizumab,fontolizumab,gemtuzumab ozogamicin,inotuzumab ozogamicin,ipilimumab,labetuzumab,lintuzumab,matuzumab,mepolizumab,motavizumab,motovizumab,natalizumab,nimotuzumab,nolovizumab,numavizumab,ocrelizumab,omalizumab,palivizumab,pascolizumab,pecfusituzumab,pectuzumab,pexelizumab,ralivizumab,ranibizumab,reslivizumab,reslizumab,resyvizumab,rovelizumab,ruplizumab,sibrotuzumab,siplizumab,sontuzumab,tacatuzumab tetraxetan,tadocizumab,talizumab,tefibazumab,tocilizumab,toralizumab,tucotuzumab celmoleukin,tucusituzumab,umavizumab,urtoxazumab,ustekinumab,visilizumabおよび抗インターロイキン12(ABT-874/J695,Wyeth Research and Abbott Laboratories)。
【0309】
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または化学予防剤である。いくつかの実施形態では、追加治療は、CTLA-4(CD152としても知られている)、例えば、ブロッキング抗体、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、またはYervoy(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(ticilimumabまたはCP-675,206としても知られている)、B7-H3(CD276としても知られている)に対するアンタゴニスト、例えば、ブロッキング抗体、MGA271、TGFβに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(CAT-192としても知られている)、フレゾリムマブ(GC1008としても知られている)またはLY2157299、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞または細胞傷害性T細胞)の養子移入からなる治療法。キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞障害性T細胞またはCTL)を養子に移すことからなる治療法、ドミナントネガティブTGFβ受容体(例えば、ドミナントネガティブTGFβII型受容体)を発現するT細胞を養子に移すことからなる治療法、HERCREEMプロトコールを含む治療法(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954参照)、CD137(TNFRSF9、4-1BB、またはILAとしても知られている)に対するアゴニスト、例えば 活性化抗体、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、CD40に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体CP-870893、OX40(CD134としても知られる)に対するアゴニスト、例えば、別のOX40抗体(例えば、AgonOX)と組み合わせて投与される活性化抗体、CD27に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体、CDX-1127、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)、抗体-薬物コンジュゲート(いくつかの実施形態では、メルタンシンまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)からなる)。抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600AまたはRG7599としても知られている)、トラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1、アド-トラスツズマブ・エムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)としても知られている、Genentech社)、DMUC5754A、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とした抗体-薬物コンジュゲート、例えば血管新生阻害剤であるMMAEとコンジュゲートされたEDNBRに対する抗体、VEGFに対する抗体、例えば VEGF-A、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)としても知られている、Genentech社)、アンジオポエチン2(Ang2としても知られている)に対して指示された抗体、MEDI3617、抗悪性腫瘍剤、CSF-1R(M-CSFRまたはCD115としても知られている)を標的とする薬剤。抗CSF-1R(IMC-CS4としても知られる)、インターフェロン、例えばインターフェロンαまたはインターフェロンγ、ロフェロン-A、GM-CSF(組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはロイキン(登録商標)としても知られる)。IL-2(アルデスロイキンまたはプロロイキン(登録商標)としても知られる)、IL-12、CD20を標的とする抗体(いくつかの実施形態では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(GA101またはGazyva(登録商標)としても知られる)またはリツキシマブである)、GITRを標的とする抗体(いくつかの実施形態では、GITRを標的とする抗体はTRX518である)、癌ワクチン(いくつかの実施形態では、癌ワクチンは、ペプチド癌ワクチンであり、これは、いくつかの実施形態では、パーソナライズされたペプチドワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチド癌ワクチンは、アジュバントと組み合わされた、多価のロングペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス化樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamadaら、Cancer Sci、104:14-21、2013)参照)、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(Hiltonol(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODN、腫瘍壊死因子(TNF)アルファ、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、例えば、ICOS-Lの投与による、またはICOSに対して指示されたアゴニスティック抗体、CX3CL1を標的とする治療法、CXCL10を標的とする治療法、CCL5を標的とする治療法、LFA-1またはICAM1アゴニスト、セレクチンアゴニスト、標的治療法。B-Rafの阻害剤、ベムラフェニブ(ゼルボラフ(登録商標)としても知られる)、ダブラフェニブ(タフィンラ(登録商標)としても知られる)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)としても知られる)、MEK1(MAP2K1としても知られる)またはMEK2(MAP2K2としても知られる)などのMEKの阻害剤。コビメチニブ(GDC-0973またはXL-518としても知られる)、トラメチニブ(メキニスト(登録商標)としても知られる)、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、オナルツズマブ(MetMAbとしても知られる)、Alkの阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤であるAF802(CH5424802またはアレクチニブとしても知られている)、BKM120、イデラリシブ(GS-1101またはCAL-101としても知られている)、ペリフォシン(KRX-0401としても知られている)、Akt、MK2206の阻害剤。GSK690693、GDC-0941、mTOR阻害剤、シロリムス(ラパマイシンとしても知られている)、テンシロリムス(CCI-779またはトリセル(登録商標)としても知られている)、エベロリムス(RAD001としても知られている)、リダフォロリムス(AP-23573としても知られている。MK-8669、またはデフォロリムス)、OSI-027、AZD8055、INK128、デュアルPI3K/mTOR阻害剤、XL765、GDC-0980、BEZ235(NVP-BEZ235としても知られている)、BGT226、GSK2126458、PF-04691502、PF-05212384(PKI-587としても知られている)などが挙げられる。さらなる療法は、本明細書に記載の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
IX.検出および診断方法
【0310】
いくつかの実施形態では、サンプルは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)、白金剤(例えば、カルボプラチン)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド)での処置に先立って得られる。いくつかの実施形態では、組織試料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋試料、アーカイブ試料、新鮮な試料、または凍結試料である。
【0311】
いくつかの実施形態では、試料は、全血である。いくつかの実施形態では、全血は、免疫細胞、循環腫瘍細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0312】
バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質フラグメントおよび/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の適切な基準に基づいて、定性的および/または定量的に決定することができる。ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在および/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在および/または発現レベル/量と比較して減少または低下する。ある特定の実施形態では、第2の試料は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在および/または発現レベル/量を決定するためのさらなる開示が本明細書に記載されている。
【0313】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を指す。ある特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0314】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。ある特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
【0315】
試料中の様々なバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、これらの多くは、当該技術分野で既知であり、当業者に理解されており、免疫組織化学(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、例えば、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)および他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、および/または遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、および/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれかを含むが、これらに限定されない。遺伝子および遺伝子生成物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.,eds.,1995,Current Protocols In Molecular Biology,Units 2(ノーザンブロット法)、4(サザンブロット法)、15(免疫ブロット法)、および18(PCR分析)において見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイ等の多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0316】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーの存在および/または発現レベル/量は、(a)試料(対象癌試料等)において、遺伝子発現プロファイリング、PCR(rtPCRもしくはqRT-PCR等)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、またはFISHを行うことと、b)試料中のバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量を決定することとを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、マイクロアレイ方法は、ストリンジェントな条件下で上述の遺伝子をコードする核酸分子にハイブリダイズすることができる1つ以上の核酸分子を有するか、または上述の遺伝子によってコードされるタンパク質のうちの1つ以上に結合することができる1つ以上のポリペプチド(ペプチドもしくは抗体等)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一実施形態では、PCR方法は、qRT-PCRである。一実施形態では、PCR方法は、多重PCRである。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。いくつかの実施形態では、発現は、多重PCRによって測定される。
【0317】
細胞中のmRNAの評価方法が周知であり、該方法として、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、および関連技法等)、ならびに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、および他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)が挙げられる。
【0318】
哺乳動物由来の試料は、ノーザンブロット、ドットブロット、またはPCR分析を使用してmRNAについて好都合にアッセイされ得る。加えて、かかる方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを決定する(例えば、アクチンファミリーメンバー等の「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)ことを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が決定され得る。
【0319】
任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNA等のmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験および対照組織試料からの試験および対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が分かるように構成する。例えば、発現が抗血管新生療法の臨床的利益の増加または低減と相関する様々な遺伝子の選択が固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバーとの標識されたプローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0320】
いくつかの実施形態によれば、存在および/または発現レベル/量は、前述の遺伝子のタンパク質発現レベルを観察することによって測定される。ある特定の実施形態では、この方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で生物学的試料を本明細書に記載のバイオマーカーに対する抗体(例えば、抗PD-L1抗体)と接触させることと、複合体が抗体とバイ オマーカーとの間に形成されるかを検出することとを含む。このような方法は、インビトロ法であっても、またはインビボ法であってもよい。一実施形態では、抗体を使用して、PD-L1軸結合アンタゴニストでの療法に適格な対象、例えば、個体の選択のためのバイオマーカーを選択する。
【0321】
ある特定の実施形態では、試料中のバイオマーカータンパク質の存在および/または発現レベル/量は、IHCおよび染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定または検出する信頼できる方法であることが示されている。これらの方法、アッセイ、および/またはキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、PD-L1は、免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、個体由来の試料中のPD-L1バイオマーカーの発現の増加は、タンパク質発現の増加であり、さらなる実施形態では、IHCを使用して決定される。一実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いた試料(対象癌試料等)のIHC分析を行うことと、b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを決定することとを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、IHC染色強度は、基準と比較して決定される。いくつかの実施形態では、基準は、基準値である。いくつかの実施形態では、基準は、基準試料(例えば、対照細胞株染色試料または非癌性患者由来の組織試料)である。
【0322】
IHCは、形態学的染色および/または蛍光インサイツハイブリダイゼーション等のさらなる技法と組み合わせて行われ得る。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイおよび間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合は、直接決定される。この直接アッセイは、さらなる抗体相互作用なしで可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体等の標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。複数の二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応する可能性があるため、シグナル増幅が起こる。
【0323】
IHCに使用される一次抗体および/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリーに群分けされ得る:以下に、これらのいくつかのレビューを示す:(a)35S、14C、125I、3H、131Iなどの放射性同位元素;(b)コロイド金粒子;(c)希土類キレート(ユーロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリテリン、フィコシアニン、またはSPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7などの市販のフルオロフォアを含むがこれらに限定されない蛍光標識および/ または上記のいずれか1つまたは複数の派生物;(d)さまざまな酵素基質ラベルが利用可能であり、および米国特許第4,275,149号。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば ホタルルシフェラーゼおよび細菌性ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ヘテロ糖類オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0324】
酵素-基質の組み合わせの例としては、例えば基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、および発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの一般的なレビューについては、米国特許第4,275,149号および第4,318,980号を参照されたい。
【0325】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1は、抗PD-L1診断抗体(すなわち、一次抗体)を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、直接標識される。
【0326】
このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。その後、スライド評価が、例えば、顕微鏡を使用して決定され、当該技術分野によって常用されている染色強度判断基準が用いられ得る。一実施形態では、腫瘍由来の細胞および/または組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、一般に、(試料中に存在する間質または周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞および/または組織において決定または評価されることが理解される。いくつかの実施形態では、腫瘍由来の細胞および/または組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、腫瘍内または腫瘍周辺免疫細胞等の腫瘍浸潤免疫細胞における決定または評価を含むことが理解される。
【0327】
いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍または腫瘍試料で評価される。本明細書で使用されるとき、腫瘍または腫瘍試料は、腫瘍細胞によって占有される腫瘍面積の一部または全てを包含し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍試料は、腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質(例えば、隣接腫瘍周辺線維形成性間質)によって占有される腫瘍面積をさらに包含する。腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質は、主要な腫瘍塊に直接隣接しており、かつ/またはそれと連続している免疫浸潤物(例えば、本明細書に記載の腫瘍浸潤免疫細胞)の面積を含み得る。いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍細胞で評価される。いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍浸潤免疫細胞等の上述の腫瘍面積内の免疫細胞で評価される。
【0328】
代替の方法では、試料は、抗体-バイオマーカー複合体が形成されるのに十分な条件下で該バイオマーカーに特異的な抗体と接触してもよく、その後、複合体を検出する。バイオマーカーの存在は、血漿または血清等の多種多様な組織および試料をアッセイするためのいくつかの方法で、例えば、ウエスタンブロット法およびELISA手順によって検出され得る。このようなアッセイ形式を用いた広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号および第4,018,653号を参照されたい。これらは、従来の競合結合アッセイだけでなく、非競合タイプの1部位および2部位または「サンドイッチ」アッセイの両方を含む。これらのアッセイは、標識された抗体の標的バイオマーカーへの直接結合も含む。
【0329】
組織または細胞試料中の選択されたバイオマーカーの存在および/または発現レベル/量も、機能アッセイまたは活性ベースのアッセイによって試験され得る。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、当該技術分野で既知のアッセイを行って、組織または細胞試料中の所与の酵素活性の存在を決定または検出することができる。
【0330】
ある特定の実施形態では、試料は、アッセイされるバイオマーカーの量の差および使用される試料の質の変動の両方、ならびにアッセイラン間の変動について正規化される。かかる正規化は、周知のハウスキーピング遺伝子等のある特定の正規化バイオマーカーの発現を検出し、かつそれを組み込むことによって達成され得る。代替として、正規化は、アッセイされた遺伝子またはその大サブセットの全ての平均シグナルまたはシグナル中央値に基づき得る(包括的正規化アプローチ)。遺伝子毎に、対象の腫瘍mRNAまたはタンパク質の測定された正規化量が、基準セットで見られる量と比較される。対象毎の試験された腫瘍毎の各mRNAまたはタンパク質の正規化発現レベルが、基準セットにおける測定された発現レベルの割合として表され得る。分析される特定の対象試料中の測定された存在および/または発現レベル/量がこの範囲内のある百分率で表されるが、これは、当該技術分野で周知の方法によって決定され得る。
【0331】
一実施形態では、試料は、臨床試料である。別の実施形態では、試料は、診断アッセイで使用される。いくつかの実施形態では、試料は、原発性腫瘍または転移性腫瘍から得られる。組織生検は、多くの場合、腫瘍組織の代表的な小片を得るために使用される。代替として、腫瘍細胞は、目的とする腫瘍細胞を含有することで知られているか、またはそのように考えられている組織または流体の形態で間接的に得られ得る。例えば、肺癌病変試料は、切除、気管支鏡法、微細針吸引、気管支擦過によって、または痰、胸膜液、もしくは血液から得られ得る。遺伝子または遺伝子産物は、癌もしくは腫瘍組織から、または他の身体試料、例えば、尿、痰、血清、もしくは血漿から検出され得る。癌性試料中の標的遺伝子または遺伝子産物の検出について上で考察された同じ技法が他の身体試料に適用され得る。癌細胞が癌病変から脱落し、かかる身体試料中に現れ得る。かかる身体試料をスクリーニングすることにより、これらの癌の簡単な早期診断が達成され得る。加えて、療法の進展が、かかる身体試料を標的遺伝子または遺伝子産物について試験することによってより容易に監視され得る。
【0332】
ある特定の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または組み合わせられた複数の試料である。例えば、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、基準試料が癌の初期診断中に得られる場合、かつ癌が転移性癌になったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0333】
ある特定の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない1以上の健常な個体由来の組み合わせられた複数の試料である。ある特定の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない疾患または障害(例えば、癌)を有する1以上の個体由来の組み合わせられた複数の試料である。ある特定の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または対象もしくは個体ではない1以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。ある特定の実施形態では、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または対象もしくは個体ではない疾患もしくは障害(例えば、癌)を有する1以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0334】
いくつかの実施形態では、試料は、個体由来の組織試料である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腫瘍組織試料(例えば、生検組織)である。いくつかの実施形態では、組織試料は、肺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腎組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、皮膚組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膵臓組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、胃組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膀胱組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、食道組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、中皮組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、乳房組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、甲状腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、結腸直腸組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、頭頸部組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、骨肉腫組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、前立腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、卵巣組織、HCC(肝臓)、血球、リンパ節、および/または骨/骨髄組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、結腸組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、子宮内膜組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、脳組織(例えば、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫等)である。
【0335】
いくつかの実施形態では、腫瘍組織試料(「腫瘍試料」という用語は、本明細書で同義に使用される)は、腫瘍細胞によって占有される腫瘍面積の一部または全てを包含し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍または腫瘍試料は、腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質(例えば、隣接腫瘍周辺線維形成性間質)によって占有される腫瘍面積をさらに包含する。腫瘍関連腫瘍内細胞および/または腫瘍関連間質は、主要な腫瘍塊に直接隣接しており、かつ/またはそれと連続している免疫浸潤物(例えば、本明細書に記載の腫瘍浸潤免疫細胞)の面積を含み得る。
【0336】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、疾患または障害は、腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、悪性癌性腫瘍(すなわち、癌)である。いくつかの実施形態では、腫瘍および/または癌は、固形腫瘍または非固形もしくは軟組織腫瘍である。軟組織腫瘍の例としては、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、前リンパ球性白血病、もしくはヘアリー細胞白血病)、またはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、もしくはホジキン病)が挙げられる。固形腫瘍は、血液、骨髄、またはリンパ系以外の身体組織の任意の癌を含む。固形腫瘍は、上皮細胞起源のものおよび非上皮細胞起源のものにさらに分類され得る。上皮細胞固形腫瘍の例としては、胃腸管、結腸、結腸直腸(例えば、類基底結腸直腸癌)、乳房、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣(例えば、類内膜卵巣癌)、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、唇、鼻咽頭、皮膚、子宮、男性生殖器、泌尿器官(例えば、尿路上皮癌、異型尿路上皮癌、移行上皮癌)、膀胱、および皮膚の腫瘍が挙げられる。非上皮起源の固形腫瘍としては、肉腫、脳腫瘍、および骨腫瘍が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、癌は、二次または三次局所進行性または転移性非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、癌は、腺癌である。いくつかの実施形態では、癌は、扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、癌は、原発性腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、上述の癌型のうちのいずれか由来の第2の部位での転移性腫瘍である。
【0337】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、癌は、ヒトエフェクター細胞を呈する(例えば、ヒトエフェクター細胞によって浸潤される)。例えば、IHCによる方法等のヒトエフェクター細胞の検出方法が当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのヒトエフェクター細胞を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、癌は、本明細書に記載の任意の癌である。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。
【0338】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、癌は、FcRを発現する細胞を呈する(例えば、FcRを発現する細胞によって浸潤される)。例えば、IHCによる方法等のFcRの検出方法が当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのFcRを発現する細胞を呈する。いくつかの実施形態では、FcRはFcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性化FcγRである。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。
【0339】
いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、およびFISH、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、FACS分析を使用して検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカーは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中の循環免疫細胞で検出される。いくつかの実施形態では、循環免疫細胞は、CD3+/CD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、分析前に、免疫細胞が血液試料から単離される。細胞選別を含むが、これに限定されない、かかる細胞集団の任意の好適な単離/濃縮方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、抗PD-L1抗体等のPD-L1/PD-1軸経路阻害剤での処置に応答する個体由来の試料中で上昇する。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中のCD3+/CD8+T細胞等の循環免疫細胞で上昇する。
【0340】
本開示のある特定の態様は、試料中の1つ以上の遺伝子または1つ以上のタンパク質の発現レベルの測定に関する。いくつかの実施形態では、試料は、白血球を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、末梢血試料(例えば、腫瘍を有する患者由来)であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍試料である。腫瘍試料は、癌細胞、リンパ球、白血球、間質、血管、結合組織、基底膜、および腫瘍に関連する任意の他の細胞型を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍浸潤白血球を含有する腫瘍組織試料である。いくつかの実施形態では、試料は、1つ以上の細胞型(例えば、白血球)を分離または単離するように処理され得る。いくつかの実施形態では、試料は、細胞型を分離または単離することなく使用され得る。
【0341】
腫瘍試料は、生検、内視鏡検査、または外科的手順を含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の方法によって対象から得られ得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、凍結、固定(例えば、ホルマリンもしくは同様の固定剤を使用して)、および/またはパラフィンワックスでの包理等の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍試料が切片化され得る。いくつかの実施形態では、新鮮な腫瘍試料(すなわち、上述の方法によって調製されていない腫瘍試料)が使用され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、mRNAおよび/またはタンパク質の完全性を保存するために溶液中でのインキュベーションによって調製することができる。
【0342】
いくつかの実施形態では、試料は、末梢血試料であり得る。末梢血試料は、白血球、PBMC等を含み得る。当該技術分野で既知の白血球を末梢血試料から単離するための任意の技法が使用され得る。例えば、血液試料が採取されてもよく、赤血球が溶解されてもよく、白血球ペレットが試料のために単離かつ使用されてもよい。別の例において、密度勾配分離を使用して、白血球(例えば、PBMC)を赤血球から分離することができる。いくつかの実施形態では、新鮮な末梢血試料(すなわち、上述の方法によって調製されていない末梢血試料)が使用され得る。いくつかの実施形態では、末梢血試料は、mRNAおよび/またはタンパク質の完全性を保存するために溶液中でのインキュベーションによって調製することができる。
【0343】
いくつかの実施形態において、治療に対する応答性は、生存期間(全生存期間および無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効もしくは部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候もしくは症状を改善することのいずれか1つ以上を指し得る。いくつかの実施形態では、応答性とは、癌患者における腫瘍の状態、すなわち、応答、安定、または進行を決定するための公開された一組のRECISTガイドラインに従う1つ以上の要因の改善を指し得る。これらのガイドラインのより詳細な議論については、Eisenhauerら、Eur J Cancer 2009;45:228-47;Topalianら、N Engl J Med 2012;366:2443-54;Wolchokら、Clin Can Res 2009;15:7412-20;およびTherasse,P.ら、J.Natl.Cancer Inst.92:205-16(2000)を参照のこと。応答性対象とは、癌(複数可)が、例えば、RECIST判断基準に基づく1つ以上の要因に従う改善を示す対象を指し得る。非応答性対象とは、癌(複数可)が、例えば、RECIST判断基準に基づく1つ以上の要因に従う改善を示さない対象を指し得る。
【0344】
従来の応答判断基準は、免疫療法薬の抗腫瘍活性を特徴付けるには適切でない場合があり、新たな病変の出現等の最初の明らかな放射線学的進行が先行し得る遅延応答をもたらし得る。したがって、新たな病変の出現の可能性を説明し、かつその後の評価で確認される放射線学的進行を可能にする修正された応答判断基準が開発されている。したがって、いくつかの実施形態では、応答性とは、免疫関連応答判断基準2(irRC)に従うより多くの要因のうちの1つの改善を指し得る。例えば、Wolchok et al.,Clin Can Res 2009;15:7412-20を参照されたい。いくつかの実施形態では、新たな病変は、定義された腫瘍負荷に追加され、例えば、その後の評価での放射線学的進行が続く。いくつかの実施形態では、非標的病変の存在は、完全応答の評価に含まれ、放射線学的進行の評価には含まれない。いくつかの実施形態では、放射線学的進行は、測定可能な疾患のみに基づいて決定され得、かつ/または最初に記録された日から4週間以上の連続評価によって確認され得る。
【0345】
いくつかの実施形態では、応答性は、免疫活性化を含み得る。いくつかの実施形態では、応答性は、治療効力を含み得る。いくつかの実施形態では、応答性は、免疫活性化および治療効力を含み得る。
X.製品またはキット
【0346】
本発明の別の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)および/またはトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害剤からなる製造品またはキットが提供される。いくつかの実施形態では、製造品またはキットは、さらに、個体における癌(例えば、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を含む、小細胞肺癌(SCLC)などの肺癌)の治療または進行を遅延させる(例えば、末期の小細胞肺癌(ES-SCLC)を含む、小細胞肺癌(SCLC)などの肺癌)ため、または癌を有する個体の免疫機能を強化するために、白金剤(カルボプラチンなど)およびトポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)と組み合わせてPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための指示書を含むパッケージインサートを含んでいる。当技術分野で知られているPD-1軸結合アンタゴニスト、白金剤、およびトポイソメラーゼII阻害剤のいずれかを、製造品またはキットに含めることができる。いくつかの実施形態では、キットはアテゾリズマブ、カルボプラチン、およびエトポシドからなる。
【0347】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、白金剤(カルボプラチンなど)、およびトポイソメラーゼII阻害剤(エトポシドなど)は、同じ容器内にあるか、または別個の容器内にある。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルもしくはポリオレフィン等)、または金属合金(ステンレス鋼もしくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用上の指示を有する添付文書等の商業的視点および使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、製品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗新生物薬)のうちの1つ以上をさらに含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、およびシリンジが挙げられる。
【0348】
本明細書は、当業者が本発明を実践することを可能にするのに充分なものであるとみなされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。本明細書で引用される全ての公報、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例0349】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されることになる。しかしながら、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修正または変更が当業者に提案されており、本明細書の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
実施例1:未治療の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者を対象とした、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の有無にかかわらず、カルボプラチンとエトポシドの第I/III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
【0350】
本試験は、化学療法を受けていないES-SCLC患者において、プラセボ、カルボプラチン、エトポシドと比較して、アテゾリズマブを投与した患者に見られる抗腫瘍効果が、カルボプラチンおよびエトポシドと併用した場合に、統計学的に有意で臨床的に関連性のあるPFSおよびOSの改善につながるかどうかを検討することを目的としたものである。この試験では、ITT集団におけるアテゾリズマブの有効性を評価し、PD-L1発現によるレトロスペクティブ評価や患者転帰との関連性などの探索的免疫エンドポイントを評価することができましたが、これに限定されない。
研究目的
【0351】
本試験の主な有効性の目的は以下の通りであった。
●RECIST v1.1(例えば、Eisenhauer et al.(2009)“New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(Version 1.1).” Eur J Cancer.45:228-47を参照のこと)に従って研究者が評価した無増悪生存期間(PFS)で測定した、ITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの有効性をプラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較して評価すること。
●全生存期間(OS)で測定した、ITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの有効性をプラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較して評価すること。
【0352】
この試験の二次的な有効性の目的は次のとおり:
●RECIST v1.1に従って研究者が評価した全体的な奏効率(ORR)によって測定された、ITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドとプラセボ+カルボプラチン+エトポシドの有効性を評価すること。
●RECIST v1.1に従って研究者が評価した奏効期間(DOR)によって測定された、ITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの有効性をプラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較して評価すること。
●ITT集団の各治療群における6か月および1年でのPFS率を評価すること。ITT集団の各治療群における1年および2年のOS率を評価すること。
●ITT集団におけるプラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較して、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドを投与された患者の咳、呼吸困難(単項目および多項目のサブスケール)、胸痛、腕・肩の痛み、または欧州がん研究治療機構(EORTC)の生活の質に関する質問-コア30(QLQ-C30)および補足的な肺がんモジュール(QLQ-LC13)を使用した疲労の患者報告肺がん症状の悪化までの時間(TTD)で測定されるアテゾリズマブの影響を調べること。
【0353】
本試験の安全性の目的は以下の通りである:
●アテゾリズマブとカルボプラチン+エトポシドを併用した場合の安全性と忍容性をカルボプラチン+エトポシドと比較して評価する。
●アテゾリズマブに対する抗治療抗体(ATA)の発現率と力価を評価し、免疫原性応答と薬物動態、安全性、有効性との潜在的な関係を探ること。
【0354】
本試験の薬物動態学的目的は、化学療法未実施のES-SCLC患者におけるアテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドの薬物動態を明らかにすることである。
【0355】
本研究の探索的な目的は以下の通りである:
●ITT集団におけるアテゾリズマブを含む治療群のPFS、ORR、DORをRECISTを修正して評価すること。
●免疫組織化学(IHC)または定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)、次世代シークエンシング(NGS)、および/または他の方法および有効性の測定法によって定義される腫瘍バイオマーカー(PD-L1、PD-1、体細胞突然変異などを含むが、これらに限定されない)の間の関係を評価すること。
●アーカイブおよび/または新鮮な腫瘍組織、血液、血漿および血清中の予測、予後、薬力学的探索的バイオマーカーと、それらの病状、抵抗性のメカニズム、および/または試験治療に対する反応との関連を評価すること。
●EuroQoL 5 Dimensions 5-Level(EQ-5D-5L)質問紙で評価された患者の健康状態を評価・比較し、償還のための経済モデルで使用するための効用スコアを作成すること。
●欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaires EORTC QLQ-C30およびLC13)で評価した健康関連QOL、肺がん関連症状、身体機能、健康状態の患者報告アウトカム(PRO)のベースラインからの変化を測定し、プラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの影響を検討すること。
●化学療法(カルボプラチンとエトポシドの両方)が導入療法中および導入後の末梢および腫瘍特異的T細胞集団に与える影響を評価し、その有効性および安全性の転帰との関係を評価する。
研究デザイン
【0356】
以下に記載されている研究デザインは、ES-SCLCを有し、化学療法を受けていない病期の患者を対象に、アテゾリズマブとカルボプラチン+エトポシドを併用した場合の安全性と有効性を、プラセボ+カルボプラチン+エトポシドを併用した場合と比較して評価することを目的とした第I/III相多施設共同二重盲検プラセボ対照試験の無作為化試験の詳細を示したものである。図1は、研究のデザインを示している。研究デザインに関する追加の詳細は、以下のスキーマに記載されている。
【0357】
資格のある患者は、性別(男性 vs 女性)、ECOG(すなわちEastern Cooperative Oncology Group)のパフォーマンスステータス(0 vs 1)、および脳転移の有無(yes vs no)で層別化され、表5に示すように、以下の治療レジメンのいずれかを受けるように1対1で無作為に割り付けられた。ECOGパフォーマンスの状態に関する更なる詳細は、Oken et al.(1982)Am J Clin Oncol.5:649-655を参照のこと。
【0358】
誘導治療は21日周期で4サイクル投与された。導入期の後、患者はアテゾリズマブ(アームA)またはプラセボ(アームB)のいずれかによる維持療法を継続した。維持期では、予防的頭蓋照射が地域の標準治療に従って許可され、予防的頭蓋照射電子症例報告書(eCRF)で報告された。治癒目的または残存病変を排除する目的の胸部放射線療法は許可されなかった。姑息的胸部放射線療法が許可された。表5の治療レジメンの投与および投与スケジュールを以下の表6に示す。
【0359】
臨床的に実行可能であれば、患者はX線病変進行時に腫瘍生検サンプルの採取を受けることが推奨された。これらのデータは、X線所見が腫瘍の存在と一致するかどうかを調べるために使用された。さらに、これらのデータを解析し、腫瘍組織の変化と臨床転帰との関連を評価し、化学療法単独での治療後のそのようなメカニズムと比較して、アテゾリズマブに対する進行および抵抗性の潜在的なメカニズムをさらに理解することを目的とした。この探索的バイオマーカー評価は、治療に関連した決定には使用されなかった。
【0360】
すべての患者は、治療用量の遅延にかかわらず、ベースライン時およびサイクル1、1日目から48週間、6週間ごと(±7日間)に腫瘍評価を受けた。48週目の腫瘍評価終了後、その後は治療量の遅延にかかわらず、9週目(±7日)ごとに腫瘍評価が必要となった。患者は、RECIST v1.1に従ったX線画像病変の進行、同意の撤回、スポンサーによる研究の終了、または死亡のいずれか早い方が発生するまで、腫瘍の評価を受けた。
【0361】
RECIST v1.1に基づいてX線像上の病変進行を超えて治療を継続した患者は、6週間(±7日)ごとに腫瘍の評価を受けるか、症状の悪化が認められた場合はそれより早く受けることを継続した。これらの患者に対しては、試験中の時間にかかわらず、試験治療が中止されるまで、6週間(±7日)ごとに腫瘍の評価が継続された。
【0362】
RECIST v1.1による放射線疾患の進行以外の理由で治療を中止した患者は、患者が新たな抗がん剤治療を開始したかどうかにかかわらず、RECIST v1.1.1(例:毒性、症状の悪化)に基づくX線撮影病変の進行、同意の撤回、スポンサーによる試験の終了、または死亡のいずれかが先に発生した場合が起こるまで、研究治療を続けた場合(すなわち、第1サイクル1日目から48週間は6週間[±7日]ごとに、その後は治療用量の遅延にかかわらず9週間[±7日]ごとに)と同じ頻度で、予定された腫瘍評価を継続した。
【0363】
試験を早期に中止した場合、アテゾリズマブによる治療で臨床的有用性が認められた患者には、治験責任医師の判断でアテゾリズマブによる治療を継続することが認められた。
評価項目
【0364】
本試験の主要な有効性評価指標は以下の通りであある:
●PFS、無作為化からRECIST v1.1を使用して研究者が決定した疾患進行の最初の発生までの時間、または何らかの原因による死亡のいずれか早い方の時間と定義される
●OS、ランダム化から死に至るまでの時間として定義される。
【0365】
本試験の副次的な有効性評価指標は以下の通りである:
●客観的奏効とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定されたPRまたはCRと定義される。
●奏効期間(DOR)、文書化された客観的奏効が最初に発現してから、RECIST v1.1.1を使用して治験責任医師が決定した疾患進行の時点までの時間間隔、または何らかの原因による死亡のいずれか早い方の時間間隔として定義される。
●6ヶ月時と1年時のPFS率:
●1年後と2年後のOS率。
●患者が報告した肺がん症状の悪化までの時間(TTD)は、EORTC QLQ-C30(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire C30)およびEORTC QLQ-LC13症状サブスケール(Berman et al.(1994)Eur J Cancer.30A(5):635-42参照のこと)のそれぞれについて、無作為化から悪化(10ポイントの変化)するまでの時間と定義され、2回の評価または1回の評価の後、3週間以内に何らかの原因で死亡した場合に定義された。
【0366】
この研究の安全性アウトカム指標は次のとおりで:
●National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE)v4.0に従って等級付けされた有害事象の発生率、性質、および重症度。
●治験治療投与中および投与後のバイタルサイン、身体所見、および臨床検査結果の変化。
●アテゾリズマブに対する抗治療抗体(ATA)反応の発生率、およびPK、薬力学、安全性、有効性パラメータとの相関性の可能性。
【0367】
本試験の薬物動態学的アウトカム指標は以下の通りである:
●注入後の観察された最大血清アテゾリズマブ濃度(Cmax)。
●選択したサイクルでの注入前、治療中止時、およびアテゾリズマブの最終投与後120日(±30日)で観察された最小血清アテゾリズマブ濃度(Cmin)。
●カルボプラチンの血漿中濃度。
●エトポシドの血漿中濃度。
【0368】
この研究の探索的結果の測定値は次のとおり:
●修正されたRECISTに従って調査員が決定した客観的レスポンス、PFS、およびDOR。
●アーカイブおよび/または新鮮に得られた腫瘍組織、ならびにアテゾリズマブによる治療前、治療中、または治療後、または進行時に採取された血液(または血液誘導体)中のPD-L1、免疫、およびSCLC関連、およびその他の探索的バイオマーカーの状態、および病状および/またはアテゾリズマブに対する反応との関連。
●EQ-5D-5Lの効用スコア(つまり、一般的な健康状態を測定するための標準化方法。The EuroQol Group(1990)Health Policy 16(3):199-208を参照)。
●EORTC QLQ-C30およびQLQ-LC13によって評価された、健康関連の生活の質、肺がん関連の症状、身体機能、および健康状態のPROのベースラインからの変化。
●導入療法中および導入後の末梢および腫瘍特異的T細胞集団のレベルとタイプの変化、およびその有効性と安全性の結果との関係。
患者
【0369】
化学療法を受けておらず、ES-SCLCを患っている患者は、この研究に参加する資格があった。
含有基準
【0370】
主要な包含基準は、18歳以上、ECOGパフォーマンスステータスが0または1である;組織学的および細胞学的にも確認されたES-SCLCである(Veterans Administration Lung Study Group(VALG)の病期分類システムによる;(Micke et al.(2002)“Staging small cell lung cancer:Veterans Administration Lung Study Group versus International Association for the Study of Lung Cancer-what limits limited disease?” Lung Cancer 37:271-6);ES-SCLCに対する全身治療の既往歴がない;限局期SCLCに対して以前に化学放射線療法を受けたことのある患者は、治癒を目的とした治療を受けていなければならず、広汎期SCLCと診断されてから最後の化学療法、放射線療法、または化学放射線療法サイクルから少なくとも6ヶ月間の無治療期間を経験していなければならない;無症状の中枢神経系転移の治療歴のある患者は、(a)転移が大脳上および/または小脳(すなわち、中脳、小脳、髄膜、脊髄への転移がないこと、(b)中枢神経系疾患の治療としてコルチコステロイドを継続的に必要としていないこと、(c)中枢神経系の治療が終了してから無作為化されるまでの間に中間進行の証拠がないこと、(d)スクリーニング検査で新たに無症状の中枢神経系転移が検出された患者は、中枢神経系転移に対する放射線治療および/または手術を受けなければならないこと、である;RECIST v1.1で定義された測定可能な病変(以前に照射された病変は、放射線照射後にその部位で病変の進行が明確に記録されており、以前に照射された病変が唯一の病変部位ではない場合にのみ測定可能な病変とみなされる);ランダム化前14日以内に得られた以下の臨床検査結果によって十分な血液学的および末梢臓器機能がある:
○顆粒球コロニー刺激因子支持なしでANCが≧1500細胞/μL。
○リンパ球数≧500/μL。
○輸血なしで血小板数≧10万/μL。
○ヘモグロビン≧9.0g/dL。(患者はこの基準を満たすために輸血を許可される)。
○INRまたはaPTTが≦1.5X正常範囲の上限(ULN)。(これは抗凝固療法を受けていない患者にのみ適用される。抗凝固療法を受けている患者は安定した用量である必要がある)。
○AST、ALT、およびアルカリホスファターゼが≦2.5XULN。ただし、次の例外がある:
●肝転移が記録されている患者:ASTおよび/またはALTが≦5XULN。
●記録された肝臓転移または骨転移を有する患者:アルカリホスァターゼが≦5XULN。
○血清ビリルビンが≦1.25XULN。(血清ビリルビンレベル≦3X ULNの既知のギルバート病の患者は登録させる。)
○血清クレアチニンが≦1.5XULN。
【0371】
患者は、無作為化の前または4週間以内に治療前の腫瘍組織サンプルを提出する必要がある。(利用可能な腫瘍組織サンプルを提出することができる。)
除外基準
【0372】
主な除外基準は次のとおりである:スクリーニング時のCT(コンピュータ断層撮影)またはMRI(磁気共鳴画像法)による評価および事前の放射線評価で決定された活動性または未治療の中枢神経系転移、手術および/または放射線による治療が確定的でない脊髄圧迫、または以前に脊髄圧迫と診断され治療を受けたことがあり、無作為化の≧1週間前から臨床的に安定していたという証拠のない脊髄圧迫、下腿神経疾患、制御不能な胸水、心嚢液貯留、または腹水があり、再発のドレナージ処置を必要とする場合(月1回またはそれ以上の頻度であるが、留置カテーテル(例:PleurX(登録商標))を使用している患者はドレナージの頻度に関係なく許可された。;制御不能または症候性の高カルシウム血症(無作為化前にデノスマブを投与されていた患者は、適格であれば、試験中はデノスマブの使用を中止し、ビスフォスフォネートに置き換える必要があった);無作為化前5年以内にSCLC以外の悪性腫瘍があった場合、転移または死亡のリスクが無視できるものを除いて(例:予想5年OS>90%)。完治が期待される治療を受けた悪性腫瘍(適切に治療された子宮頸がん、基底または扁平上皮がん、治癒の意図をもって外科的治療を受けた限局性前立腺がん、治癒の意図をもって外科的治療を受けた限局性管がんなど);試験期間中に妊娠していた、授乳中であった、または妊娠を意図していた女性。重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質症候群に伴う血管血栓症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患の既往歴;妊娠中、授乳中、または試験中に妊娠を予定していた女性;重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質症候群に伴う血管血栓症の既往歴。ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、血管炎、または糸球体腎炎(甲状腺補充ホルモン療法を受けている自己免疫関連甲状腺機能低下症の既往歴のある患者が対象となった。インスリンレジメンでコントロールされたI型糖尿病の患者は対象となった);特発性肺線維症、組織性肺炎の既往歴(例えば、特発性肺線維症、組織性肺炎(例:閉塞性気管支炎等)、薬剤性肺炎、特発性肺炎、またはスクリーニング胸部CTスキャンでの活動性肺炎の証拠。放射線分野での放射線肺炎の既往歴(線維化)は認められた);HIVに対する陽性検査結果;活動性B型肝炎(慢性または急性;スクリーニング時にB型肝炎表面抗原[HBsAg]検査結果が陽性であったことと定義)またはC型肝炎ウイルス(HCV)を有する患者;活動性結核。感染症の合併症、菌血症、または重度の肺炎のための入院を含むがこれらに限定されないランダム化時の重度の感染症;ニューヨーク心臓協会心疾患(クラスII以上)、心筋梗塞、またはランダム化前3ヶ月以内の脳血管事故などの重度の心血管系疾患、不安定な不整脈、または不安定狭心症。冠動脈疾患、うっ血性心不全で上記の基準を満たさない患者、または左室駆出率<50%の患者は、適切な場合には循環器専門医と相談の上、治療担当医師の意見に基づいて最適化された安定した医療レジメンを受けていることが必要とされた);無作為化前28日以内の診断以外の大手術、または試験期間中に大手術が必要となることが予想される大手術。同種骨髄移植または固形臓器移植を受けたことのある患者;治験薬の使用を禁忌とする疾患または状態の合理的な疑いを与えるその他の疾患、代謝機能障害、身体検査所見、または臨床検査所見;治験薬の結果の解釈に影響を与えた可能性のある、または治療合併症のリスクが高い患者;治験手順を理解し、遵守し、および/または遵守する能力を妨げる疾患または状態のある患者。無作為化の28日前までに治療目的で他の治験薬を使用した場合;無作為化の4週間前までに生ワクチンを投与した場合、または試験中に生ワクチンが必要になると予想される場合;CD137アゴニストまたは免疫チェックポイント遮断療法、抗-PD-1抗体、抗-PD-L1抗体を使用した治療歴のある場合。無作為化前1週間以内に全身性免疫抑制剤(コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、抗腫瘍壊死因子[抗TNF]剤を含むが、これらに限定されない)による治療を受けていること。キメラ化またはヒト化抗体または融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、またはその他の過敏症反応の既往歴;チャイニーズハムスター卵巣細胞で生産されたバイオ医薬品またはアテゾリズマブ製剤のいずれかの成分に対する既知の過敏症またはアレルギー;およびカルボプラチンまたはエトポシドに対するアレルギー反応の既往歴。
治療方法
【0373】
403人の患者が、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド(A群)またはプラセボ+カルボプラチン+エトポシド(B群)の治療を受けるように無作為(1:1)に割り付けられた。(A群およびB群の治療の詳細は上記の表5に示される)。患者の気質を下の表7に示し、患者の人口統計とベースライン特性を下の表8に示す。(表7および8では、PBO+CE=プラセボ+カルボプラチン+エトポシド。アテゾ+CE=アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド。)
【0374】
可能であれば、患者は無作為化の日に治験薬の最初の投与を受けた。これができなかった場合、最初の投与は無作為化後5日以内に発生した。アテゾリズマブとプラセボはスポンサーから供給された。カルボプラチンとエトポシドは背景治療であり、非試験的医薬品(NIMP)とされていた。市販の製剤では、カルボプラチンおよびエトポシドを使用した。
【0375】
本試験の導入期は、アテゾリズマブ/プラセボと化学療法を4サイクル行い、各サイクルの期間は21日間であった。図1を参照されたい。各サイクルの1日目に、対象となるすべての患者に以下の順序で試験薬の輸液を行った。
A群:アテゾリズマブ→カルボプラチン→エトポシド
B群:プラセボ→カルボプラチン→エトポシド
【0376】
導入期において、試験治療は、1日目に以下の方法で実施した。
1.アテゾリズマブ/プラセボ(1200mg、平均体重ベースの用量15mg/kgに相当)を、60分(±15分)かけて静脈内投与(最初の注入では30分[±10分]に短縮)、
2.続いてカルボプラチンを30~60分かけて静脈内投与し、5mg/mL/分の濃度-時間曲線(AUC)で初期目標面積を達成し(カルバート式投与)、
3.続いてエトポシド(100mg/m)を60分かけて静脈内投与した。
【0377】
AUC 5のカルボプラチン用量は、Calvert式(Calvert et al.(1989)J Clin Oncol 7:1748-56)を用いて計算した;
カルバート式;
総投与量(mg)=(目標AUC)X(糸球体濾過率[GFR]+25)
【0378】
AUC ベースの投与量を計算するためにカルバート式で使用した GFR は 125mL/分を超えないようにする。本プロトコルの目的のために、GFRはクレアチニンクリアランス(CRCL)と同等であると考えられた。CRCLは、機関のガイドラインにより、またはCockcroft and Gault(1976)Nephron 16:31-41に記載されている方法により、以下の式を用いて計算される。
【0379】
式中、CRCL=クレアチニンクリアランス mL/分
年齢=患者の年齢(年)
体重=患者の体重 kg
Scr=血清クレアチニン mg/dL
【0380】
血清クレアチニンレベルが異常に低い患者の場合、最小クレアチニンレベル0.8mg/dLを使用してGFRを推定するか、推定GFRを125mL/分に制限した。過量投与による潜在的な毒性を避けるために、医師はカルボプラチンの希望曝露量(AUC)に上限を設けることが推奨された。カルボプラチンのラベルに記載されているカルバート式に基づき、最大投与量を以下のように算出した。
カルボプラチンの最大投与量(mg)=目標AUC(mgX分/mL)X(GFR+25mL/分)
【0381】
最大投与量は、腎機能が正常な患者の場合、125mL/分を上限とするGFR推定値に基づく。より高い推定GFR値は使用しなかった。目標AUC=5の場合、最大投与量は5X150=750mg であった。目標AUC=4の場合、最大投与量は4X150=600mgであった。カルボプラチンの投与に関する詳細は、www.fda.gov/aboutfda/centersoffices/officeofmedicalproductsandtobacco/cder/ucm228974.htm に記載されている。
【0382】
導入期には、エトポシド(100mg/m)を2日目および3日目にも60分かけて静脈内投与した。化学療法が行われなかったサイクルは、導入化学療法サイクルの総数にはカウントされなかった。導入期の後、アテゾリズマブ/プラセボによる維持療法を開始した。(すなわち、1200mgを、その後の21日周期ごとの第1日目に、上述のように注入する。図1および上述の試験スキーマを参照のこと)。アテゾリズマブ/プラセボの用量変更は認められなかった。
腫瘍と応答の評価
【0383】
スクリーニング評価には、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン(禁忌でない限り経口/IV型造影)または胸部および腹部の磁気共鳴画像(MRI)が含まれていた。スクリーニング時に骨盤のCTまたはMRIスキャンが必要とされ、その後の対応評価では臨床的に指示された通り、または局所的な標準治療の通りに行われた。胸部のスパイラルCTスキャンは可能であれば取得したが、必須ではなかった。
【0384】
すべての患者で中枢神経系転移を評価するために、スクリーニング時に頭部のCT(禁忌の場合は造影剤を使用)またはMRI検査が必要であった。脳のMRIスキャンは、スキャンが不明確な場合のベースラインでの中枢神経系転移の診断の確認または反論に必要であった。活動性または未治療の中枢神経系転移を有する患者は、本試験の対象とはならなかった(除外基準を参照)。
【0385】
腫瘍評価のためのCTスキャンを陽電子放出断層撮影(PET)/CTスキャナーで実施した場合、CT取得は完全造影診断用CTスキャンの基準と一致していることが求められた。
【0386】
臨床的に必要とされる場合には、骨スキャンおよび頸部のCTスキャンも実施された。研究者の裁量で、RECIST v1.1に従った測定可能な疾患の他の評価方法が使用された。
【0387】
検査を繰り返すのではなく、インフォームドコンセントを得る前に標準治療として実施された腫瘍評価を、サイクル1の28日目から1日目までの間に使用することが許容された。スクリーニング時の既知の疾患部位のすべての文書化が必要であり、その後の腫瘍評価のたびに再評価された文書化が必要であった。スクリーニング時に疾患部位を評価するために使用されたレントゲン撮影法は、研究全体を通して同じであるべきである(例えば、CTスキャンの造影プロトコールは同じである)。応答は、RECIST v1.1(Eisenhauer et al.(2009)New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(Version 1.1).Eur J Cancer.45:228-47を参照のこと)を参照)および修正されたRECIST基準を用いて、治験責任医師により評価された。修正されたRECIST基準は、RECIST v1.1(Eisenhauer et al.;Topalian et al.(2012)N Engl J Med.366:2443-54;and Wolchok et al.(2009)Clin Can Res 15:7412-20)および免疫関連の応答基準(Wolchoik et al.;Nishino et al.(2014)J Immunother Can.2:17;and Nishino et al.(2013)Clin Can Res.19:3936-43)から導き出されました。評価は、可能であれば同じ評価者によって行われ、訪問先間での内部の一貫性を確保した。結果は、次のサイクルでの投与前に治験責任医師によって検討された。
【0388】
患者は、治療用量の遅延に関係なく、ベースライン時およびサイクル1、1日目から48週間、6週間ごと(±7日間)に腫瘍評価を受けた。48週間の腫瘍評価の完了後、腫瘍の評価は、治療用量の遅延にかかわらず、その後は9週間(±7日)ごとに必要とされた。患者は、RECIST v1.1に従ったX線画像病変の進行、同意の撤回、スポンサーによる研究の終了、または死亡のいずれか早い方が発生するまで、腫瘍の評価を受けた。RECIST v1.1に基づいてX線像上の病変進行を超えて治療を継続した患者は、6週間(±7日)ごとに腫瘍の評価を受けるか、症状の悪化が認められた場合はそれより早く受けることを継続した。これらの患者に対しては、試験中の時間に関係なく、試験治療が中止されるまで、6週間(±7日)ごとに腫瘍の評価が継続された。
【0389】
RECIST v1.1.1に基づくX線病変進行以外の理由で治療を中止した患者は、RECIST v1.1.1(例:毒性、症状の悪化)に基づくX線病変進行、同意の撤回、スポンサーによる試験終了、または死亡のいずれかが最初に発生するまで、患者が試験治療を継続していた場合(すなわち、第1サイクル1日目から48週間は6週間[±7日]ごとに、その後は治療用量の遅延にかかわらず9週間[±7日]ごとに)と同じ頻度で、予定されていた腫瘍の評価を継続した。
結果
【0390】
その結果を以下の表9に示す。
【0391】
表9は、RCECIST v1.1の全生存期間(OS)と治験責任医師が評価した無増悪生存期間(PFS)の共同主要評価項目を満たしていることを示している。全生存期間の改善は統計的に有意であり、臨床的に意義がある。
【0392】
アテゾ+CE投与群では、プラセボ+CE投与群と比較して全生存期間が延長した。図2を参照されたい。アテゾ+CEを投与された患者の6か月のOSはは85.8%に対し、プラセボ+CE投与群では82.8%であった。アテゾ+CEを投与された患者の12か月のOSは51.7%であったが、プラセボ+CEを投与された患者では38.2%であった。アテゾ+CEで治療された患者は、プラセボ+CEで治療された患者と比較して、無増悪生存期間の延長も示した。図3を参照されたい。アテゾ+CEを投与された患者の6ヶ月間のPFSは30.9%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者では22.4%であった。アテゾ+CEを投与された患者の12ヶ月間のPFSは12.6%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者では5.4%であった。
【0393】
アテゾ+CEを投与された患者の1年全生存率は51.7%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者の1年全生存率は38.2%であった。
【0394】
さらに、全体的な奏効率(ORR)は2つの治療群間で類似しており、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドを投与された患者では60%、プラセボ+カルボプラチン+エトポシドを投与された患者では64%のORRが確認された(CR:2.5% アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド群vs.プラセボ+カルボプラチン+エトポシド群で1%)。図4を参照されたい。(CR=完全奏効;CR/PR=完全奏効/部分奏効;SD=安定した疾患;PD=進行性疾患。)以下の表10を参照されたい。奏効期間(DOR)も2つの治療群間で類似しており、DORの中央値はアツェオリズマブ+カルボプラチン+エトポシド群で4.2か月であったのに対し、プラセボ+カルボプラチン+エトポシド群では3.9か月であった。ORRおよびDORはRECIST v1.1基準に従って評価された。
【0395】
OSの有益性とPFSの有益性は、解析したすべてのサブグループで観察された。図5図6を参照されたい。血中腫瘍変異負荷(bTMB)に関係なく、OSの有益性が認められた。図7AではbTMB>16の各治療群の患者のOSのカプランマイヤープロットを示し、それに対し、図7BではbTMB < 16の各治療群の患者のOSのKaplan Meierプロットを示している。図8AではbTMBが10以上の各治療群の患者のOSのKaplan Meierプロットを示し、図8BではbTMB < 10の各治療群の患者のOSのKaplan Meierプロットを示している。同様に、血中腫瘍変異負担(bTMB)に関係なくPFSの有益性が認められた。図9AではbTMBが16を超える各治療群の患者のPFSのKaplan Meierプロットを示し、図9BではbTMB<16の各治療群の患者のPFSのKaplan Meierプロットを示している。図10AではbTMBが10を超える各治療群の患者のPFSのKaplan Meierプロットを示し、図10BではbTMB<10の各治療群の患者のPFSのKaplan Meierプロットを示している。
【0396】
アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドを投与された患者の安全性プロファイルは、個々の治療成分の既知のリスクと一致していた。新たな安全信号は確認されなかった。化学療法の曝露量は両治療群で同様であったことから、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド治療レジメンにおいて、アテゾリズマブの投与はカルボプラチン+エトポシドの送達を損なうことはなかったことが示唆された。骨髄抑制に関連した毒性(好中球減少症や血小板減少症など)は両治療群間で一貫しており、化学療法に関連した率と一致していた。
【0397】
この試験では、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチンとエトポシド)を併用した初回(第一選択)治療では、化学療法のみの場合に比べて、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の患者の生存期間が有意に長くなることが示された。また、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチンとエトポシド)を併用することで、化学療法単独に比べて疾患の悪化や死亡(PFS)のリスクが低下した。これらの結果は、特に治療が困難な病期の進展型小細胞肺がんの初期治療において、免疫療法をベースとした併用療法を行った場合の初の良好な生存率である。さらに、ES-SCLCの初期治療において、化学療法のみの治療に比べて全生存期間が臨床的にも統計的にも有意に改善したことを示した20年以上ぶりの研究である。1年生存率はアテゾリズマブ群で13%高かったことから、この致死性疾患における長期生存率の向上の可能性が示唆された。
実施例2:実施例1の患者報告アウトカム(PRO)
【0398】
実施例1に記載の試験に参加した患者は、ベースライン時に、欧州がん研究治療機構(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)によるQOL質問票C30(EORTC QLQ-C30)およびQOL質問票LC13(QLQ-LC13)をベースライン時に、その後3週間ごとに記入した。分析には、ベースラインからの変化、12週目までの変化の累積分布関数曲線、および悪化までの時間(TTD)が含まれた。臨床的意義は、ベースラインからの10ポイント以上の変化(スコア範囲0~100)に基づいている。
【0399】
試験の完了率は、両群ともベースライン時で85%以上、75週目までは70%以上であった。ベースラインで患者が報告したアウトカムスコアは両群間で同等であった。両群とも早期に顕著な症状の改善が報告され、アテゾ+CEはプラセボ+CEに比べて改善が大きいという数値的な傾向がみられた。表11を参照されたい。12週目までに、アテゾ+CEを投与された患者では、プラセボ+CEを投与された患者と比較して、より高い割合で肺がん(LC)関連の症状の緩和が報告された(表11参照)。咳や胸痛のTTDには明らかな差は認められなかったが、呼吸困難のTTDの数値的遅延はアテゾ+CE投与群に有利であった(HR 0.75[95%CI 0.55-1.02])。アテゾ+CE群では、身体機能・役割機能および健康関連QOL(HRQoL:10ポイント以上の上昇)の改善が報告され、54週目までほとんどの来院で持続した。治療に関連した症状(例えば、下痢、吐き気/嘔吐)の変化は両群間で類似していた。
【0400】
アテゾ+CEによるファーストライン治療では、プラセボ+CEによる治療と比較して、患者が報告する肺がんの症状が即時かつ具体的に改善されたことに加えて、OSおよびPFSの改善が認められた。患者から報告されたアウトカムは、治療毒性による影響を最小限に抑えつつ、機能の持続的な改善と健康関連QOLの改善を示しており、ES-SCLCのファーストラインにAtezo+CEを追加することの有益性と危険性をさらに支持している。
実施例3:ITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの有効性に関する追加データ(プラセボ+カルボプラチン+エトポシドと比較した場合の全生存期間(OS)の測定値
【0401】
全生存期間(OS)によって測定されるITT集団におけるアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドとプラセボ+カルボプラチン+エトポシドとを比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの有効性に関する実施例1からの追加の結果を以下に記載する。
6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月の全生存率
【0402】
実施例1で示したように、アテゾ+CEで処置された患者は、プラセボ+CEで処置された患者と比較して、全生存期間が延長されたことを示した。図2を参照されたい。アテゾ+CEを投与された患者の6か月のOSはは85.8%に対し、プラセボ+CE投与群では82.8%であった。アテゾ+CE投与群の12ヵ月間のOSは51.7%対プラセボ+CE投与群38.2%であった。アテゾ+CEで治療された患者は、プラセボ+CEで治療された患者と比較して、無増悪生存期間の延長も示した。図3を参照されたい。アテゾ+CEを投与された患者の6ヶ月間のPFSは30.9%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者では22.4%であった。アテゾ+CEを投与された患者の12ヶ月間のPFSは12.6%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者では5.4%であった。アテゾ+CEを投与された患者の1年全生存率は51.7%であったのに対し、プラセボ+CEを投与された患者の1年全生存率は38.2%であった。
【0403】
無作為化から22.9ヵ月後に実施した追加解析では、アテゾ+CEで治療した患者の全生存期間中央値は約23.3ヵ月、全生存期間中央値またはプラセボ+CEで治療した患者は10.3ヵ月(層化HR(95%CI)=0.755(0.601、0.949);層化ログランクp値-0.0154)であった。22.9ヶ月の追跡調査におけるアテゾ+CE投与群とプラセボ+CE投与群の6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月の全生存期間を以下の表12に示す:
【0404】
実施例1で前述したように、Atezo+CEを投与された患者の6か月OSは85.8%であったが、プラセボ+CEを投与された患者では82.8%であった。アテゾ+CEを投与された患者の12ヶ月のOSは、51.9%対プラセボ+CEを投与された患者の39%であり、すなわち、実施例1に記載された結果と非常に類似していた。アテゾ+CEを投与された患者の18カ月間のOSは、プラセボ+CEを投与された患者の34%対21%であった。アテゾ+CE投与群の24ヵ月全生存期間は22%対プラセボ+CE投与群では16.8%であった。
サブグループ分析
【0405】
追加の更新されたサブグループ分析データは、図11A~11Cで提供される。実施例1で観察されたOSの有益性は、以下を含む解析された全てのサブグループで確認された:例として、65歳未満、65~74歳、75~84歳、85歳以上の患者(男女ともに);ネイティブアメリカン、アラスカ人、アジア人、黒人、アフリカ系アメリカ人、および白人の患者;タバコを使用したことがない患者、現在タバコを使用している患者、および以前にタバコを使用したことがある患者;脳(登録時)、肺(登録時)、肝臓(登録時)、リンパ節(登録時)、副腎(登録時)への転移の有無にかかわらず患者;およびbTMBに関係なく、すべての患者。
バイオマーカーサブグループ解析
【0406】
PD-L1発現のために選択されなかった疾患を有するES-SCLC患者を、実施例1に記載の試験に登録した。実施例1に記載したように、可能な場合には、腫瘍バイオマーカー(例えば、PD-L1)と治療に対する応答との間の関係を評価するために、分析のために試験に登録された患者から治療前の腫瘍組織サンプルを得た。バイオマーカー評価可能な患者のPD-L1有病率を表13に示す。
【0407】
BEP1とは、IHC染色の1年未満前に切除された腫瘍組織スライドからの有効なPD-L1免疫組織化学(IHC)結果を有する本試験のバイオマーカー評価対象患者を指す。BEP2とは、IHC染色時のスライドの年齢にかかわらず、腫瘍組織スライドからの有効なPD-L1免疫組織化学(IHC)結果を有する本試験のバイオマーカー評価対象患者を指す。様々なカットオフにおけるPD-L1有病率のパーセンテージは、BEP1/2に基づいている。BEP1とBEP2の人口統計学的およびベースライン特性は、治療群間で概ね均衡していた。図14Aおよび14Bを参照のこと。
【0408】
【0409】
BEP1およびBEP2でアテゾ+CEを投与された患者は、プラセボ+CEを投与されたBEP1およびBEP2の患者さんと比較して、すべての患者でPFSの改善が認められた。図12Aおよび12Bに示すように、PFSは、プラセボ+CEを投与された患者と比較して、アテゾ+CEを投与されたBEP1およびBEPの患者においても観察された。さらに、PD-L1発現量が1%未満のBEP1およびBEP2患者のうち、アテゾ+CEを投与した患者の全奏効率(ORR)は、プラセボ+CEを投与した患者のORRよりも高かった。表15を参照のこと。
【0410】
BEP1およびBEP2でアテゾ+CEを投与されたすべての患者で、プラセボ+CEを投与されたBEP1およびBEP2の患者と比較して、OSの有効性が示された。13Aおよび13Bに示すように、アテゾ+CEを投与したBEP1およびBEPの患者では、プラセボ+CEを投与した患者と比較して、PFSの有益性も観察された。
【0411】
このように、PD-L1陰性のサブグループ(すなわち、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞上に1%未満のPD-L1発現を有する患者)は、プラセボ+CEで治療された患者と比較して、アテゾ+CEでの治療が臨床的に有益であることが明らかになった。このような結果は、オールカマーの治療効果を示している。
【0412】
本開示は、理解を明確にする目的で、図示および例示の方法でいくつか詳細に記載されてきたが、これらの記載および例示は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参考として明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
【配列表】
2024028867000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の一の発明。
【外国語明細書】