(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028871
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】疾患及び障害の治療及び予防のための抗レナラーゼ抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240227BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61P13/12
A61P9/00
A61P1/18
A61P1/16
A61P29/00
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P43/00 111
C07K16/40
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206178
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2020536124の分割
【原出願日】2018-12-27
(31)【優先権主張番号】62/611,609
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー デザイア
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ネルソン
(57)【要約】
【課題】 本発明は、レナラーゼに結合し且つ阻害する組成物及び方法に関する。
【解決手段】 一実施態様において、レナラーゼ結合分子は、レナラーゼ活性を阻害する。従ってレナラーゼ活性の減少が恩恵のある疾患及び状態において、そのような阻害性レナラーゼ結合分子は、治療薬として作用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レナラーゼに特異的に結合する抗体又はその結合部位を含有する、組成物。
【請求項2】
前記抗体又はその結合部位が、少なくとも10-6Mの親和性でレナラーゼへ特異的に結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体又はその結合部位が、配列番号:1-8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドへ特異的に結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記レナラーゼが、ヒトレナラーゼである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体又はその結合部位が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、免疫複合体、脱フコシル化抗体、及び二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫複合体が、治療薬又は検出部分を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体又はその結合部位が、ヒト化抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、及び抗体模倣体からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体又はその結合部位が、a)配列番号:155のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)CDR1、b)配列番号:156、配列番号:162、及び配列番号:168からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR2、c)配列番号:157、及び配列番号:163からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR3、d)配列番号:152のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)CDR1、e)配列番号:153のアミノ酸配列を含むLC CDR2、並びにf)配列番号:154、及び配列番号:160からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLC CDR3:からなる群から選択される、少なくとも一つを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体又はその結合部位が、配列番号:155のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号:156のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号:157のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号:152のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号:153のアミノ酸配列を含むLC CDR2、及び配列番号:154のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記抗体又はその結合部位が、配列番号:219のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:221のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記抗体又はその結合部位が、a)配列番号:197及び配列番号:203からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR1、b)配列番号:198及び配列番号:204からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR2、c)配列番号:199及び配列番号:205からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR3、d)配列番号:194及び配列番号:200からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むLC CDR1、e)配列番号:195のアミノ酸配列を含むLC CDR2、並びに、f)配列番号:196のアミノ酸配列を含むLC CDR3:からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記抗体又はその結合部位が、配列番号:197のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号:198のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号:199のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号:194のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号:195のアミノ酸配列を含むLC CDR2、及び配列番号:196のアミノ酸配列を含むLC CDR3:を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記抗体又はその結合部位が、配列番号:223のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号:225のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載のアミノ酸配列の少なくとも一つをコードしている配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項15】
前記分子が、配列番号:218、配列番号:220、配列番号:222、及び配列番号:224からなる群から選択される核酸配列の少なくとも一つと少なくとも80%同一である核酸配列の少なくとも一つを含む、請求項14記載の単離された核酸分子。
【請求項16】
請求項14記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項17】
請求項14記載の核酸分子を含む、細胞。
【請求項18】
請求項1記載の組成物を対象へ投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法。
【請求項19】
少なくとも一つの追加の薬剤を対象へ投与する工程を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患又は障害が、腎疾患、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記疾患又は障害が、癌であり、且つこの癌が、膵臓癌又はメラノーマである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、ヒトである、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患及び障害の治療及び予防のための抗レナラーゼ抗体に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月29日に出願された米国特許仮出願第62/611,609号の恩恵を主張するものであり、この仮出願はその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
レナラーゼ(RNLS)は、主に腎臓、心臓、骨格筋、精巣において、及び他の組織においてより少ない程度で生成されるタンパク質である(Xuら、2005 J Clin Invest. 115 (5):1275-80、及びWangら、2008 Mol Biol Rep. 35(4):613-20)。レナラーゼの2つのアイソフォームバリアントであるレナラーゼ-1及びレナラーゼ-2が説明されている。これらのレナラーゼの2つの型は、最終エキソンの差次的スプライシングが原因で異なる。レナラーゼは、カテコールアミンのエピネフリン、ノルエピネフリン及びドパミンを選択的に脱アミノ化する活性を持つ、新規フラビンアデニンジヌクレオチド-含有モノアミンオキシダーゼとして説明されている。健常個体と比べた、末期腎疾患患者の血漿中のレナラーゼの欠乏が説明されている。カテコールアミンは、心臓拍出及び血管抵抗に対する作用を通じ、病的なものを含む、血圧の維持及び調節において大きな役割を果たす。ラットへのレナラーゼ組換え型の注入は、心収縮性、心拍数、及び血圧の低下を引き起こす。腎不全患者は、循環カテコールアミンの上昇したレベルにより特徴付けられ、これは高血圧及び心臓血管系合併症によるより大きい死亡率と相関している。従ってタンパク質レナラーゼは、血圧のカテコールアミン-誘導した変化の制御及び維持において役割を果たすことができ、且つ腎疾患患者において認められるレナラーゼの欠乏は、有害な転帰をもたらし得る。
【0004】
健常個体と比べた、末期腎疾患患者の血漿中のレナラーゼの欠乏が、説明されている。腎不全患者は、循環カテコールアミンの上昇したレベルにより特徴付けられ、これは高血圧及び心臓血管系合併症によるより大きい死亡率と相関している。従ってタンパク質レナラーゼは、血圧のカテコールアミン-誘導した変化の制御及び維持において役割を果たすことができ、且つ腎疾患患者において認められるレナラーゼの欠乏は、有害な転帰をもたらし得る。しかし、癌におけるレナラーゼの役割についてはほとんど分かっていない。
【0005】
癌の本質的特徴は、細胞の老化及び死滅の異常調節である。レナラーゼ(RNLS)は、PI3K/AKT経路、及びMAPK経路を活性化するための細胞膜カルシウムATPase PMCA4bを介したシグナル伝達による虚血性及び毒性細胞傷害から保護する、分泌型フラボタンパク質である。
【0006】
皮膚癌は、一般的ヒト悪性腫瘍であり、その発生率は、発展途上国において上昇しつつある(Gray-Schopferら、2007 Nature. 445:851-7;Loweら、2014 Mayo Clinic Proceedings. 89:52-9;Lesinskiら、2013 Future oncology. 9:925-7)。メラノーマは、皮膚癌の最悪型であり、一旦切除不可能となると、生存率は低い(Loweら、2014 Mayo Clinic Proceedings. 89:52-9)。これは、分子が不均一性を示す疾患であり、疾患の発達及び進行に加担するシグナル伝達経路のいくつかの重要な改変が、同定されている。Ras/Raf/MEK/ERK及びPI3K/AKTシグナル伝達経路は、メラノーマの発症機序において重要な役割を果たす(Gray-Schopferら、2007 Nature. 445:851-7;Lesinskiら、2013 Future oncology. 9:925-7;Yajimaら、2012 Dermatology research and practice. 2012:354191)。Ras、Raf、PI3K又はPTEN(PI3Kインヒビター)の変異は、ERK及びAKTの持続的活性化へ繋がることができ、これは次に細胞の生存及び増殖を促進する。Dankortらは、このことを、メラノーマを発症していないマウスにおけるBRafV600Eのコンディショナルメラニン形成細胞-特異的発現により、よく実証したが、しかしPten腫瘍抑制因子遺伝子のサイレンシングと組合せられた場合、メラノーマ発達の100%表現率(penetrance)を明らかにした(Dankortら、2009 Nature genetics. 41:544-52)。これらの発症経路の解明は、活性化過剰のキナーゼを標的化する特異的インヒビターの開発を促進している。これらの物質は、転移性メラノーマ患者の選択群の治療において、有効であることが証明されているが、それらの有益な作用は、短命であることが多く、そのため追加の治療的標的の同定が、差し迫って必要である。
【0007】
RNLS発現は、メラノーマ腫瘍において、及び具体的にはCD163+腫瘍関連マクロファージ(TAM)において、顕著に増加している。原発性メラノーマ患者のコホートにおいて、疾患-特異的生存は、腫瘍塊中のRNLS発現と逆相関し、このことはRNLSの発症機序における役割を示唆していた。siRNA、抗RNLS抗体、又はRNLS由来の阻害ペプチドを使用するRNLSシグナル伝達の阻害は、インビトロにおいてメラノーマ細胞の生存を著しく減少する。モノクローナル抗体による抗RNLS療法は、異種移植マウスモデルにおいてメラノーマ腫瘍成長を顕著に阻害する。m28-RNLS(これまでは1D-28-4としても公知)による治療は、内因性RNLS発現の顕著な減少、並びにCD163+TAMにおける総及びリン酸化されたSTAT3の顕著な減少を引き起こした。腫瘍細胞において増大したアポトーシスは、B細胞リンパ腫2関連タンパク質Baxのp38 MAPK媒介した活性化に一過性に関連していた。細胞周期阻害物質p21の発現は増大し、且つ細胞周期の停止が報告された。これらの結果は、CD163+TAMによる増大したRNLS生成は、STAT3を活性化することにより、メラノーマ成長を促進すること、並びにRNLSシグナル伝達の阻害は、メラノーマの管理における可能性のある治療的適用であることを指摘している。
【0008】
体液及び組織中のレナラーゼ検出の改善された方法は、腎疾患、心血管疾患及び/又は癌の診断及び予後判定の助けとなり得る。しかし、関連バイオマーカーとしてのレナラーゼのバリデーションは、その検出のための高度に選択的な試薬を必要としている。抗体-ベースの技術は、バイオマーカーの検出に関して広範に使用されている。現在まで、特徴決定されていないか最少であるレナラーゼに対し生じた少数の試薬抗体のみが存在する。
【0009】
膵臓癌は、最も致命的な新生物の一つであり、世界中でおよそ330,000名の、米国で40,000名の死因である(World Cancer Report 2014. WHO Press; 2014)。膵臓癌は、検出が困難であり、且つほとんどの症例は末期で診断される(Nolenら、2014 PLoS ONE. 9(4):e94928)。この癌の化学療法の使用においていくらかの進歩が存在するが、この疾患は、全ての薬物療法に対し極めて抵抗性であり続けている(Hidalgoら、2010 New England Journal of Medicine. 362(17):1605-17)。膵臓癌の個人の全5年生存率は、<5%であり(Hidalgoら、2010 New England Journal of Medicine. 362(17):1605-17)、追加の治療的標的が必要とされている。
【0010】
膵臓癌の発達は、遺伝子変異の段階的蓄積に頼っており(Jonesら、2008 Science. 321(5897):1801-6)、その一部は異常なMAPK、PI3K及びJAK-STATシグナル伝達を引き起こす。最少の異形成性上皮から異形成症への、侵襲性癌腫への進展は、癌遺伝子(例えばKRAS2)の活性化、あるいは腫瘍抑制因子遺伝子(例えばCDKN2a/INK4a、TP53及びDPC4/SMaD4)の不活化のいずれかである、遺伝子変異の段階的蓄積を反映している(Hidalgoら、2012 Annals of Oncology. 23(補遺10):x135-x8)。膵臓腫瘍の95、90及び75%は、各々、KRAS2、CDKN2a、及びTP53に変異を有する。これらの変異は、癌成長を特徴付ける、持続され且つ調節されない増殖を生じる。膵管腺癌(PDAC)におけるこの変異を見通す中心のシグナル伝達経路は、24の進行したPDACの包括的遺伝子解析により、規定されている(Jonesら、2008 Science. 321(5897):1801-6)。これらのデータは、ほとんどのPDACは、主に点変異であり、且つおよそ12種の細胞シグナル伝達経路に影響を及ぼす、多数の遺伝子の変化を含むことを指摘している。
【0011】
その研究はまた、腫瘍の90%において少なくとも10倍、PDACにおいて過剰発現された541遺伝子を同定した。これは、腫瘍における又は腫瘍由来の細胞株における、最近特徴付けられたタンパク質であるレナラーゼ(RNLS)の2~4倍の増加を含んだ。新規の分泌型フラボタンパク質であるRNLS(Xuら、2005 J Clin Invest. 115(5):1275-80;Desirら、2012 J Am Heart Assoc. 1(e002634;Desirら、2012 J Am Soc Hypertens. 6(6):417-26;Liら、2008 Circulation. 117(10):1277-82)は、NADHオキシダーゼ活性を持ち(Farzaneh-Farら、2010 PLoS One. 5(10):e13496;Beaupreら、2015 Biochemistry. 54(3):795-806)、これは、その固有の酵素活性(Wangら、2014 Journal of the American Society of Nephrology. DOI:10.1681/asn.2013060665)とは無関係である受容体-媒介したプロセスを通じて、細胞及び臓器の生存を促進する(Leeら、2013 J Am Soc Nephrol. 24(3):445-55)。RNLSは、プロテインキナーゼB(AKT)、細胞外シグナル-制御キナーゼ(ERK)、及びマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p38)を、迅速に活性化する。ERK又はAKTのいずれかの化学阻害は、RNLSの保護的作用を無効にする(Wangら、2014 Journal of the American Society of Nephrology. DOI:10.1681/asn.2013060665)。
【0012】
従って、腎疾患、心血管疾患、及び癌を含む疾患又は障害の検出、診断、予防及び治療のための、抗体などの、レナラーゼに結合する、改善された方法及び組成物の必要性が存在する。本発明はこの必要性に対処している。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要
一実施態様において、本発明は、レナラーゼに特異的に結合する抗体又はその結合部位を含有する、組成物に関する。
【0014】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、少なくとも10-6Mの親和性でレナラーゼへ特異的に結合する。
【0015】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、配列番号:1-8から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドへ特異的に結合する。
【0016】
一実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。
【0017】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、免疫複合体、脱フコシル化抗体、及び二重特異性抗体である。
【0018】
一実施態様において、この免疫複合体は、治療薬又は検出部分を含む。
【0019】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、ヒト化抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、及び抗体模倣体から選択される。
【0020】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、a)配列番号:155のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)CDR1、b)配列番号:156、配列番号:162、及び配列番号:168から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR2、c)配列番号:157、及び配列番号:163から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR3、d)配列番号:152のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)CDR1、e)配列番号:153のアミノ酸配列を含むLC CDR2、並びにf)配列番号:154、及び配列番号:160から選択されるアミノ酸配列を含むLC CDR3:の少なくとも一つを含む。
【0021】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、配列番号:155のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号:156のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号:157のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号:152のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号:153のアミノ酸配列を含むLC CDR2、及び配列番号:154のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む。
【0022】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、配列番号:219のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号:221のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0023】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、a)配列番号:197及び配列番号:203から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR1、b)配列番号:198及び配列番号:204から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR2、c)配列番号:199及び配列番号:205から選択されるアミノ酸配列を含むHC CDR3、d)配列番号:194及び配列番号:200から選択されるアミノ酸配列を含むLC CDR1、e)配列番号:195のアミノ酸配列を含むLC CDR2、並びに、f)配列番号:196のアミノ酸配列を含むLC CDR3:の少なくとも一つを含む。
【0024】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、配列番号:197のアミノ酸配列を含むHC CDR1、配列番号:198のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号:199のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号:194のアミノ酸配列を含むLC CDR1、配列番号:195のアミノ酸配列を含むLC CDR2、及び配列番号:196のアミノ酸配列を含むLC CDR3:を含む。
【0025】
一実施態様において、この抗体又はその結合部位は、配列番号:223のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号:225のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0026】
一実施態様において、本発明は、レナラーゼに特異的に結合する少なくとも一つの抗体又はその結合部位をコードしている配列を含む、単離された核酸分子に関する。
【0027】
一実施態様において、この分子は、配列番号:218、配列番号:220、配列番号:222、及び配列番号:224から選択される少なくとも一つの核酸配列と少なくとも80%同一である核酸配列の少なくとも一つを含む。
【0028】
一実施態様において、本発明は、配列番号:218、配列番号:220、配列番号:222、及び配列番号:224から選択された、少なくとも一つの核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0029】
一実施態様において、本発明は、配列番号:218、配列番号:220、配列番号:222、及び配列番号:224から選択された、少なくとも一つの核酸配列を含む細胞に関する。
【0030】
一実施態様において、本発明は、レナラーゼに特異的に結合する抗体又はその結合部位を含有する組成物を対象へ投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法に関する。
【0031】
一実施態様において、本方法は、少なくとも一つの追加の薬剤を対象へ投与する工程を更に含む。
【0032】
一実施態様において、この疾患又は障害は、腎疾患、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌から選択される少なくとも一つである。
【0033】
一実施態様において、この疾患又は障害は、癌であり、且つこの癌は、膵臓癌又はメラノーマである。
【0034】
一実施態様において、この対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面の簡単な説明
以下の本発明の実施態様の詳細な説明は、添付図面と結びつけて解読する場合に、より良く理解されるであろう。本発明は、図面に示された実施態様の正確な配置及び手段に限定されないことは理解されるべきである。
【0036】
【
図1】
図1は、ウサギを免疫化するために使用したペプチド抗原(配列番号:1-7)を示す。
【0037】
【
図2】
図2は、完全長レナラーゼ-1タンパク質配列(配列番号:8)を示す。
【0038】
【
図3】
図3は、レナラーゼタンパク質(配列番号:8及び配列番号:50)内の抗原の位置を示す。抗原1A/1B、1C、1D、1E、1F、及び3A5を示す。
【0039】
【
図4-1】
図4-1は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-28-4重鎖のコード配列(配列番号:52)及びアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。
【
図4-2】
図4-2は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-28-4重鎖のコード配列(配列番号:52)及びアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。
【0040】
【
図5-1】
図5-1は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-28-4軽鎖のコード配列(配列番号:53)及びアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。
【
図5-2】
図5-2は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-28-4軽鎖のコード配列(配列番号:53)及びアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。
【0041】
【
図6-1】
図6-1は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-37-10重鎖のコード配列(配列番号:60)及びアミノ酸配列(配列番号:17)を示す。
【
図6-2】
図6-2は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-37-10重鎖のコード配列(配列番号:60)及びアミノ酸配列(配列番号:17)を示す。
【
図6-3】
図6-3は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-37-10重鎖のコード配列(配列番号:60)及びアミノ酸配列(配列番号:17)を示す。
【0042】
【
図7】
図7は、抗1Dエピトープモノクローナル1D-37-10軽鎖のコード配列(配列番号:61)及びアミノ酸配列(配列番号:18)を示す。
【0043】
【
図8-1】
図8-1は、抗1Fエピトープモノクローナル1F-26-1重鎖のコード配列(配列番号:68)及びアミノ酸配列(配列番号:25)を示す。
【
図8-2】
図8-2は、抗1Fエピトープモノクローナル1F-26-1重鎖のコード配列(配列番号:68)及びアミノ酸配列(配列番号:25)を示す。
【0044】
【
図9】
図9は、抗1Fエピトープモノクローナル1F-26-1軽鎖のコード配列(配列番号:69)及びアミノ酸配列(配列番号:26)を示す。
【0045】
【
図10-1】
図10-1は、 抗1Fエピトープモノクローナル1F-42-7重鎖のコード配列(配列番号:76)及びアミノ酸配列(配列番号:33)を示す。
【
図10-2】
図10-2は、 抗1Fエピトープモノクローナル1F-42-7重鎖のコード配列(配列番号:76)及びアミノ酸配列(配列番号:33)を示す。
【0046】
【
図11】
図11は、抗1Fエピトープモノクローナル1F-42-7軽鎖のコード配列(配列番号:77)及びアミノ酸配列(配列番号:34)を示す。
【0047】
【
図12-1】
図12-1は、抗レナラーゼ-2エピトープモノクローナル3A-5-2重鎖のコード配列(配列番号:84)及びアミノ酸配列(配列番号:41)を示す。
【0048】
【
図12-2】
図12-2は、抗レナラーゼ-2エピトープモノクローナル3A-5-2重鎖のコード配列(配列番号:84)及びアミノ酸配列(配列番号:41)を示す。
【0049】
【
図13】
図13は、抗レナラーゼ-2エピトープモノクローナル3A-5-2軽鎖のコード配列(配列番号:85)及びアミノ酸配列(配列番号:42)を示す。
【0050】
【
図14】
図14は、ELISAアッセイにおける、完全長レナラーゼタンパク質に対して産生された抗レナラーゼポリクローナル抗体は、結合したレナラーゼタンパク質へ特異的に結合することを示す。
【0051】
【
図15】
図15は、1Dペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体1D 28-4及び1D 37-10は、濃度依存様式でレナラーゼ-1に結合したことを示す。1Dペプチドは、レナラーゼ-1及びレナラーゼ-2の両方に存在する。モノクローナル抗体1F 42-7及び1F 26-1は、1Fペプチドに対して産生され、これは,レナラーゼ-1においてのみ存在する。1F mAbは、濃度依存様式でレナラーゼ-1に結合した。
【0052】
【
図16】
図16は、抗体は、ウェスタンブロッティングにより、レナラーゼを検出するために使用することができるかどうかを確立するために、細菌もしくは哺乳動物起源の、組換えレナラーゼタンパク質の連続希釈物を、SDS-PAGE上を流し、及びウェスタンブロッティングは、Ren1D 28-4抗体を用いて行ったことを示す。いずれかを起源とする組換えタンパク質は、この方法により明確に同定された。
【0053】
【
図17】
図17は、ELISAアッセイ(
図15)により、抗体1D-28-4、1D-37-10、1F-42-7及び1F-26-1は、濃度依存様式で、レナラーゼ-1タンパク質へ結合したことを示す。しかし、ELISAプレートアッセイにおいて、組換えレナラーゼ-2を検出するために同じ抗体が使用される場合、1D-28-4及び1D-37-10のみが、頑強な、濃度依存的結合を示した。抗体3A5-2は、ELISAアッセイにおいて、レナラーゼ-2アイソフォームへの結合が、認められた。従って1種又は他のレナラーゼアイソフォームに対応するペプチドに対して産生された抗体は、関連する完全長タンパク質に関する特異性を示すことを認めることができる。
【0054】
【
図18】
図18は、1Dエピトープに対し産生されたモノクローナル抗体1D 28-4及び1D 37-10は、濃度依存様式で1D-BSAタンパク質へ結合したことを示す(黒丸は1D 28-4、白丸は1D 37-10)。
【0055】
【
図19】
図19は、ビオチン化されたモノクローナル抗体1D 28-4(黒丸)、1D 37-10(白丸)、1F 42-7(黒三角)、及び1F 26-1(白三角)は、濃度依存様式でレナラーゼ-1へ結合したことを示す。
【0056】
【
図20】
図20A及び
図20Bを含む、
図20は、重複エピトープは、競合ELISAにより検出することができることを示す。(
図20A)ビオチン化された1D 37-10は、コンジュゲートされない1D 28-4により競合され(黒丸);同様に、1Fペプチドに対して産生された抗体も、互いに競合され;ビオチン化された1F 26-1は、コンジュゲートされない1F 42-7により競合され(黒三角):ビオチン化されたモノクローナル抗体からのシグナルは、免疫化されないウサギ由来のコンジュゲートされない抗体とインキュベーションされた場合に、減少しなかった(白丸及び白三角)。(
図20B)更なる実施例において、完全長レナラーゼ-1に対して産生されたポリクローナル抗体E2930は、各ビオチン化されたモノクローナル抗体1D 37-10、1F 26-1、並びにこれら2種のビオチン化されたmAbの混合物との競合を示した(黒丸、黒四角、及び白菱形);再度、2種のビオチン化された抗体の混合物は、免疫化されないウサギ由来のコンジュゲートされない抗体によっては競合せず(黒三角);2種のビオチン化されたモノクローナル抗体に対し、ポリクローナル抗体E2930で認められた競合は、このポリクローナル抗体は、レナラーゼポリペプチド上の複数のエピトープに結合することを示唆している。
【0057】
【
図21-1】
図21-1は、抗体1D-28-4、1F-42-7、1D-37-10及び1F-26-1は全て、高い親和性でレナラーゼへ結合したことを示す-K
D値は、2.67nM~0.316nMの間。幅のある会合速度及び解離速度が、これらの抗体間で認められ、これは異なる抗体組成物の異なる貢献を明らかにしている。
【
図21-2】
図21-2は、抗体1D-28-4、1F-42-7、1D-37-10及び1F-26-1は全て、高い親和性でレナラーゼへ結合したことを示す-K
D値は、2.67nM~0.316nMの間。幅のある会合速度及び解離速度が、これらの抗体間で認められ、これは異なる抗体組成物の異なる貢献を明らかにしている。
【0058】
【
図22】
図22は、抗レナラーゼ抗体結合親和性のまとめを示す。
【0059】
【
図23】
図23は、RNLSに対して作出された2種のモノクローナル抗体[クローン# 28-4(m28-RNLS)、37-10(m37-RNLS)]は、試験した全ての(合計5種)メラノーマ細胞株の生存度を低下したことを示し、且つ代表例が示されている。
【0060】
【
図24】
図24は、m28-RNLSは、増大する治療濃度と相関して、細胞傷害性レベルが増加する(p<0.05)ことを実証することを示す。
【0061】
【
図25】
図25は、対照(ウサギIgG)と抗レナラーゼ(m28-RNLS)処置群の間の、時間の関数としての腫瘍容積を示す。インビボ試験に関して、A375.S2(ヒトメラノーマ)細胞を、無胸腺ヌードマウスへ皮下注射し、腫瘍を作製した。一旦腫瘍が容積~50mm
3に達したならば、次に動物を、対照ウサギIgG又はRNLS中和モノクローナル抗体であるm28-RNLSのいずれかで処置した。全般的な動物の健康及び活動は本試験を通じて維持されたので、この抗体処置は、毒性があるようには見えなかった。腫瘍サイズは、隔日で測定し、且つm28-RNLSによる処置は、試験した全ての時点で、腫瘍容積を減少した(p<0.05)。
【0062】
【
図26】
図26は、細胞増殖マーカーKi67による異種移植した腫瘍由来の切片のIHC染色は、抗RNLS抗体で処置した腫瘍内の細胞増殖の、ウサギIgGで処置したものに対する、有意な減少を明らかにし:対照群における35.1±2.3陽性細胞/高倍率視野、対、RNLS Ab処置群における13.4±3.0、n=14、p=0.0004であることを示す。
【0063】
【
図27】
図27は、m28-RNLS投与は、ウサギIgGと比較して、腫瘍容積の有意な減少を引き起こしたことを示す。
【0064】
【
図28】
図28は、m28-RNLS、m37-RNLSの、及び市販のポリクローナル(RP-220の部分配列に対する)の、ヒト膵臓腺癌細胞の成長に対する阻害作用を示す。
【0065】
【
図29】
図29は、m28-RNLS、m37-RNLSの、及び市販のポリクローナル(RP-220の部分配列に対する)の、ヒト膵臓腺癌細胞の成長に対する阻害作用を示す。
【0066】
【
図30】
図30は、m28-RNLS、m37-RNLSの、及び市販のポリクローナル(RP-220の部分配列に対する)の、ヒト膵臓腺癌細胞の成長に対する阻害作用を示す。
【0067】
【
図31】
図31は、ウサギIgGと比べ、m28-RNLS処置が、腫瘍容積の有意な減少を引き起こしたことを示す。
【0068】
【
図32】
図32は、5種のヒト化されたm28バリアント(m28-K2、m2-K5、m28-K13、m28-K14及びm28-K16、表2)は、ヒト及びマウスの両方のRNLSへの増大した結合を示したことを示す。
【0069】
【
図33】
図33は、5種のヒト化されたm28バリアント(m28-K2、m2-K5、m28-K13、m28-K14及びm28-K16、表2)は、ヒト及びマウスの両方のRNLSへの増大した結合を示したことを示す。
【0070】
【
図34】
図34は、5種のヒト化されたm28バリアント(m28-K2、m2-K5、m28-K13、m28-K14及びm28-K16、表2)はまた、メラノーマ(SK-MEL-28)及び膵臓腺癌(BxPC3)のヒト細胞株の生存度を減少したことを示し(代表例を示した)、このことはヒト癌におけるm28バリアントの治療的有用性の可能性を指摘している。
【0071】
【
図35】
図35は、5種のヒト化されたm28バリアント(m28-K2、m2-K5、m28-K13、m28-K14及びm28-K16、表2)はまた、メラノーマ(SK-MEL-28)及び膵臓腺癌(BxPC3)のヒト細胞株の生存度を減少したことを示し(代表例を示した)、このことはヒト癌におけるm28バリアントの治療的有用性の可能性を指摘している。
【0072】
【
図36】
図36は、ヒト化されたm28バリアントの用量反応及びIC50を評価する例証的実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
詳細な説明
本発明は、レナラーゼに結合する物質を使用する、レナラーゼの少なくとも一つの生物活性の阻害に関する。様々な実施態様において、本発明は、レナラーゼのインヒビターをそれを必要とする対象へ投与することによる、個体におけるレナラーゼ-関連した病理又はレナラーゼ-関連した状態を治療する、組成物及び方法に向けられている。様々な実施態様において、本発明の組成物及び方法を用いて診断可能、予防可能及び治療可能な疾患及び障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓の虚血状態)、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌を含む。
【0074】
一実施態様において、本発明は、癌などの、レナラーゼ-関連した状態の治療、予防及び診断に広く関連している。一実施態様において、本発明は、癌の診断、治療、阻害、予防、又は軽減のための方法及び組成物に向けられている。一実施態様において、本発明は、レナラーゼのレベル、生成、及び活性の1又は複数を調節する組成物及び方法を提供する。癌並びに関連疾患及び障害の状況において、本発明は、レナラーゼのレベル、生成、及び活性の1又は複数を減少する組成物及び方法を提供する。本発明の一部の態様は、癌転移の治療、予防、診断又は予後判定の方法及び組成物を提供する。
【0075】
定義
別に定義しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書記載のものに類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実践又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料が説明されている。
【0076】
一般に、本明細書において使用される命名、並びに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、及び核酸化学における実験手法及びハイブリダイゼーションは、当該技術分野において周知であり且つ一般に利用されるものである。
【0077】
核酸及びペプチド合成に関して、標準技術が使用される。これらの技術及び手法は、一般に当該技術分野及び本文書を通じて提供される様々な一般的参考文献(例えば、Sambrook及びRussell, 2012, Molecular Cloning, A Laboratory Approach, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY、並びにAusubelら、2012, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY)における従来の方法に従い、実行される。
【0078】
本明細書において使用される命名並びに以下に説明される分析化学及び有機合成の実験手法は、当該技術分野において周知であり且つ一般に利用されるものである。化学合成及び化学分析に関して、標準技術又はその改変が使用される。
【0079】
冠詞「ある(“a”及び“an”)」は、その冠詞の文法上の目的語の1又は2以上(すなわち、少なくとも1)を指すように、本明細書において使用される。例として、「ある要素(an element)」は、1つの要素又は2以上の要素を意味する。
【0080】
本明細書において使用される「約」は、量、持続期間、及び同類のものなどの測定可能な値を指す場合、特定の値の±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1%の変動を包含し、そのようなものとして変動は開示された方法を実行する上で適切であることを意味する。
【0081】
用語「異常」は、生物、組織、細胞又はそれらの成分の文脈において使用される場合、少なくとも一つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、日時など)において、「正常」(予想される/恒常的)な各特徴を示すそれらの生物、組織、細胞又はそれらの成分とは異なる生物、組織、細胞又はそれらの成分を指す。一つの細胞、組織型、又は対象について正常であるか又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型について異常であることがある。
【0082】
本明細書において使用される用語「アナログ」とは概して、それがアナログである化合物、又は「親」化合物に、一般に構造的に類似した化合物を指す。一般にアナログは、親化合物の特定の特徴、例えば生物活性又は薬理活性を維持するであろう。アナログは、他の余り望ましくない特徴、例えば抗原性、タンパク質分解不安定性、毒性などを欠いてよい。アナログは、親の特定の生物活性は減少されるが、親の1又は複数の別の生物学的活性はその「アナログ」において影響されていない化合物を含む。ポリペプチドに適用される場合、用語「アナログ」は、親化合物に対する変動する範囲のアミノ酸配列同一性、例えば、親の所与のアミノ酸配列又は親の選択された部分もしくはドメインの中のアミノ酸の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%~85%又は約86%~89%、並びに更により好ましくは少なくとも約90%、約92%、約94%、約96%、約98%又は約99%の同一性を有してよい。ポリペプチドへ適用される際、用語「アナログ」は一般に、少なくとも結合ドメイン融合タンパク質の一部と実質的に同一である、少なくとも約3個のアミノ酸のセグメントで構成されるポリペプチドを指す。アナログは典型的には、少なくとも5個のアミノ酸長、少なくとも20個のアミノ酸長又はそれよりも長い、少なくとも50個のアミノ酸長又はそれよりも長い、少なくとも100個のアミノ酸長又はそれよりも長い、少なくとも150個のアミノ酸長又はそれよりも長い、少なくとも200個のアミノ酸長又はそれよりも長く、及びより典型的には少なくとも250個のアミノ酸長又はそれよりも長い。一部のアナログは、実質的生物活性を欠くが、依然予め決定されたエピトープに対する抗体産生、アフィニティクロマトグラフィーによる反応性抗体の検出及び/又は精製のための免疫学的試薬としての、あるいは結合ドメイン融合タンパク質機能の競合性又は非競合性アゴニスト、アンタゴニスト、もしくは部分アゴニストとしてなど、様々な用途に利用され得る。
【0083】
本明細書において使用される用語「抗体」は、結合パートナー分子の特定のエピトープへ特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然の給源由来、又は組換え給源由来のインタクトな免疫グロブリンであることができ、且つインタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。本発明における抗体は、様々な形で存在してよく、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「イントラボディ」)、Fv、Fab、Fab’、F(ab)2及びF(ab’)2、並びに単鎖抗体(scFv)、ラクダ科の抗体などの重鎖抗体、及びヒト化抗体を含む(Harlowら、1999, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlowら、1989, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houstonら、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Birdら、1988, Science 242:423-426)。
【0084】
用語「抗体断片」は、インタクトな抗体の少なくとも一部分を指し、且つインタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、sdAb(VL又はVHのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、scFv抗体、及び抗体断片から形成された多特異性抗体を含むが、これらに限定されるものではない。用語「scFv」は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも一つの抗体断片及び重鎖の可変領域を含む少なくとも一つの抗体断片を含む融合タンパク質を指し、ここで軽鎖及び重鎖の可変領域は、短い可動性ポリペプチドリンカーを介して隣接して連結され、且つ一本鎖ポリペプチドとして発現されることが可能であり、且つここでscFvは、それが誘導されたインタクトな抗体の特異性を保持している。特定しない限りは、本明細書において使用されるscFvは、いずれかの順で、例えばそのポリペプチドのN-末端及びC-末端に対して、VL及びVH可変領域を有してよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含むか、又はVH-リンカー-VLを含んでよい。
【0085】
本明細書において使用される「抗体重鎖」は、それらの天然に生じる高次構造において抗体分子に存在する、二種のポリペプチド鎖のより大きいものを指し、且つその抗体が属するクラスを通常決定する。
【0086】
本明細書において使用される「抗体軽鎖」は、天然に生じる高次構造において抗体分子に存在する、二種のポリペプチド鎖のより小さいものを指す。カッパ(κ)及びラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0087】
本明細書において使用される用語「合成抗体」により、例えば、本明細書記載のようにバクテリオファージにより発現された抗体などの、組換えDNA技術を用いて作製された抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードしているDNA分子の合成により作製される抗体、並びにそのDNA分子が抗体タンパク質を発現する抗体、あるいは抗体を特定するアミノ酸配列を意味するように解釈されるべきであり、ここでDNA配列又はアミノ酸配列は、当該技術分野において利用可能であり且つ周知である合成DNA又はアミノ酸配列技術を用いて得られる。
【0088】
「キメラ抗体」は、アクセプター抗体から誘導された軽鎖及び重鎖定常領域と結合された、ドナー抗体から誘導された天然に生じる可変領域(軽鎖及び重鎖)を含む、操作された抗体型を指す。
【0089】
「ヒト化抗体」は、非-ヒトドナー免疫グロブリンから誘導されたそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン-誘導された部分は1つの(又は複数の)ヒト免疫グロブリン(複数可)から誘導されている、操作された抗体型を指す。加えて、フレームワークサポート残基は、結合親和性を保存するように変更されてよい(例えば、1989, Queenら、Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032;1991, Hodgsonら、Bio/Technology, 9:421参照)。好適なヒトアクセプター抗体は、ドナー抗体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列への相同性により、従来のデータベース、例えばKABATデータベース、Los Alamosデータベース、及びSwiss Proteinデータベースなどから選択されたものであってよい。ドナー抗体のフレームワーク領域への相同性(アミノ酸ベース)により特徴付けられるヒト抗体は、ドナーCDRの挿入のための、重鎖定常領域及び/又は重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに適している。軽鎖定常及び可変フレームワーク領域を供与することが可能な好適なアクセプター抗体は、同様の様式で選択されてよい。アクセプター抗体重鎖及び軽鎖は、同じアクセプター抗体を起源とする必要はないことは、注意すべきである。先行技術は、そのようなヒト化抗体を作製するいくつかの方式を説明している(例えば、EP-A-0239400及びEP-A-054951参照)。
【0090】
用語「ドナー抗体」は、ドナー抗体に特徴的な結合特異性及び中和活性を持つ変更された免疫グロブリンコード領域及び結果的に発現された変更された抗体を提供するために、第一の免疫グロブリンパートナーへ、その可変領域、CDR、もしくは他の機能断片のアミノ酸配列、又はそれらのアナログをもたらす、抗体(モノクローナル、及び/又は組換え)を指す。
【0091】
用語「アクセプター抗体」は、第一の免疫グロブリンパートナーへ、その重鎖及び/もしくは軽鎖フレームワーク領域並びに/又はその重鎖及び/もしくは軽鎖定常領域をコードしているアミノ酸配列の全て(又は任意の部分であるが、一部の実施態様においては全て)をもたらす、ドナー抗体と異種の抗体(モノクローナル及び/又は組換え)を指す。いくつかの実施態様において、ヒト抗体は、アクセプター抗体である。
【0092】
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である、抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版、U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)参照。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。従って本明細書において使用される「CDR」は、3つの重鎖CDR全て、又は3つの軽鎖CDR全て(又は、適切ならば、全ての重鎖及び全ての軽鎖の両方のCDR)を指す。抗体の構造及びタンパク質フォールディングは、他の残基は、結合領域の一部と考えられることを意味してよく、且つ当業者によりそのように理解されるであろう。例えば、Chothiaら、(1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p 877-883を参照。
【0093】
用語「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、可変領域からCDRを除いた残りの配列を指す。CDR配列の正確な定義は、異なるシステムにより決定され得るので、フレームワーク配列の意味は、それに応じて異なるよう解釈される。6つのCDR(軽鎖のCDR-L1、-L2、及び-L3、及び重鎖のCDR-H1、-H2、及び-H3)はまた、軽鎖及び重鎖上のフレームワーク領域を、4つのサブ-領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)へ分け、ここでCDR1は、FR1とFR2の間、CDR2はFR2とFR3の間、及びCDR3はFR3とFR4の間に配置される。特定のサブ-領域をFR1、FR2、FR3又はFR4と特定することはなく、フレームワーク領域は、別に言及されるように、単独の天然に生じる免疫グロブリン鎖の可変領域内のFR組合せを表す。FRは、4つのサブ-領域の一つを表し、FRは、フレームワーク領域を構成する4つのサブ-領域の2つ以上を表す。
【0094】
本明細書において使用される「免疫学的検定」は、標的分子の検出及び定量のために、標的分子へ特異的に結合することが可能である抗体を使用する任意の結合アッセイを指す。
【0095】
抗体に関して本明細書において使用される用語「特異的結合」とは、特異的に結合するパートナー分子を認識するが、試料中の他の分子は実質的に認識も結合もしない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の結合パートナー分子に特異的に結合する抗体はまた、1又は複数の種由来のその結合パートナー分子に結合することもできる。しかしそのような異種間反応性は、特定された抗体の分類をそれ自身は変更しない。別の例において、結合パートナー分子に特異的に結合する抗体はまた、結合パートナー分子の異なるアレル型に結合することもできる。しかしそのような交差反応性は、特定された抗体の分類をそれ自身は変更しない。
【0096】
場合によっては用語「特異的結合」又は「特異的に結合」は、第二の結合パートナー分子との抗体、タンパク質、又はペプチドの相互作用に関して使用することができ、その相互作用は、結合パートナー分子上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在によって左右されることを意味し;例えば、抗体は、タンパク質全般よりもむしろ、特異的タンパク質構造を認識及び結合する。抗体がエピトープ「A」について特異的である場合、標識した「A」及びその抗体を含む反応物中の、エピトープA(又は遊離の非標識のA)を含む分子の存在は、抗体に結合した標識されたAの量を減少するであろう。場合によっては、用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、選択的結合を指し、ここでは抗体は、結合パートナー分子に結合する親和性増強にとって重要である、配列又は高次構造エピトープを認識する。
【0097】
本明細書において使用される用語「中和する」は、結合タンパク質がレナラーゼへ特異的に結合する場合の、レナラーゼの生物活性の中和を指す。好ましくは、中和結合タンパク質は、中和抗体であり、そのレナラーゼへの結合は、レナラーゼの生物活性の阻害を生じる。好ましくは、中和結合タンパク質は、レナラーゼへ結合し、レナラーゼの生物学的活性を、少なくとも約20%、40%、60、80%、85%又はそれ以上減少する。一部の実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。
【0098】
用語「エピトープ」は、抗体により認識された結合パートナー分子上の部位、又はその結合部位もしくは他の結合分子、例えばscFvなどの、その通常の意味を有する。エピトープは、全タンパク質又はポリペプチドの小さい部分を表すセグメントを含む、アミノ酸の分子又はセグメントであってよい。エピトープは、高次構造的(すなわち、不連続)であってよい。すなわち、これらは、タンパク質フォールディングにより並置されている、一次配列の非隣接部分によりコードされたアミノ酸から形成されてよい。
【0099】
本明細書において使用される語句「生物学的試料」は、その中での核酸又はポリペプチドの発現が検出される、細胞、組織、又は体液を含む任意の試料を含むことが意図される。そのような生物学的試料の例は、血液、リンパ液、骨髄、生検及びスメアを含むが、これらに限定されるものではない。本来は液体である試料は、本明細書においては「体液」と称される。生物学的試料は、例えば、ある領域の擦り又は拭いによるか、あるいは体液を得るための針の使用によることを含む、様々な技術により、患者から得ることができる。様々な生体試料を収集する方法は、当該技術分野において周知である。
【0100】
本明細書において使用される用語「癌」は、異所性細胞の異常な成長により特徴付けられる疾患として定義される。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を通じて体の他の部位へ拡散され得る。様々な癌の例は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌、肉腫及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本明細書において使用される「コンジュゲートされた」は、一つの分子の第二の分子への共有的結合を指す。
【0102】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写により作製されるmRNA分子のコード領域に、各々、相同であるか又は相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基及び遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなる。
【0103】
mRNA分子の「コード領域」はまた、mRNA分子の翻訳時に、転写RNA分子のアンチコドン領域にマッチするか、又は停止コドンをコードしている、mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。従ってこのコード領域は、mRNA分子によりコードされた成熟タンパク質には存在しないアミノ酸残基(例えばタンパク質輸送シグナル配列中のアミノ酸残基)のコドンを含む、ヌクレオチド残基を含んでよい。
【0104】
核酸を言及して本明細書において使用される「相補的」は、2つの核酸鎖の領域間の、又は同じ核酸鎖の2つの領域間の、配列相補性の広範な概念を指す。第一の核酸領域のアデニン残基は、第一の領域と逆平行である第二の核酸領域の残基と、残基がチミン又はウラシルである場合には、特異的水素結合(“塩基対”)を形成することが可能であることがわかっている。同様に、第一の核酸領域のシトシン残基は、第一の領域と逆平行である第二の核酸領域の残基と、残基がグアニンである場合には、塩基対を形成することが可能であることがわかっている。2つの領域が逆平行様式で配置された際に、第一の領域の少なくとも一つのヌクレオチド残基が、第二の領域の残基と塩基対形成することが可能である場合、核酸の第一の領域は、同じ又は異なる核酸の第二の領域と相補的である。好ましくは、第一の領域は、第一部分を含み、及び第二の領域は、第二部分を含み、これにより、第一部分及び第二部分が逆平行様式で配置された場合に、第一部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、及び好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%は、第二部分のヌクレオチド残基と塩基対形成することが可能である。より好ましくは、第一部分の全てのヌクレオチド残基は、第二部分のヌクレオチド残基と塩基対形成することが可能である。
【0105】
本明細書において使用される用語「誘導体」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は他の分子の化学修飾を含む。本発明の状況において、例えば、グリコシル化、ペグ化、又は任意の類似プロセスにより修飾されたものなどの「誘導体ポリペプチド」は、結合活性を保持している。例えば、用語結合ドメインの「誘導体」は、例えば1又は複数のポリエチレングリコール分子、糖、リン酸、及び/又は他のそのような分子の追加などにより、化学的に修飾された、結合ドメインの融合タンパク質、バリアント、又は断片を含み、ここでこれらの1又は複数の分子は、野生型の結合ドメイン融合タンパク質には天然には結合されない。ポリペプチドの「誘導体」は更に、参照ポリペプチドに対し、例えばアミノ酸の置換、欠失又は挿入を有することにより、参照ポリペプチドから「誘導され」ているそれらのポリペプチドを含む。従って、ポリペプチドは、野生型ポリペプチドから、又は任意の他のポリペプチドから「誘導され」てよい。本明細書において使用される、ポリペプチドを含む化合物はまた、特定の給源から、例えば特定の生物、組織型から、又は特定の生物又は特定の組織型中に存在する、特定のポリペプチド、核酸、もしくは他の化合物から「誘導され」てよい。
【0106】
本明細書において使用される用語「DNA」は、デオキシリボ核酸として定義される。
【0107】
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)、又は定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子の合成の鋳型として働く、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特異的配列の固有の特性、並びにそれらから生じる生物学的特性を指す。従って、遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生体系中でタンパク質を生成する場合に、その遺伝子は、タンパク質をコードしている。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり且つ配列表において通常提供されるコード鎖、並びに遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方は、タンパク質又は遺伝子もしくはcDNAの他の生成物をコードしていると称されることができる。
【0108】
別に特定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重型であるヌクレオチド配列及び同じアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列の全てを含む。語句タンパク質又はRNAをコードしているヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の型においてイントロン(複数可)を含み得る程度に、イントロンを含む。
【0109】
「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持することができず、且つその疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。
【0110】
対照的に、動物の「障害」は、動物は、ホメオスタシスを維持することはできるが、その動物の健康状態が、障害のないときよりも好ましくないような、健康状態である。治療されずに放置されたとしても、障害は、動物の健康状態の更なる低下を必ずしも引き起こさない。
【0111】
疾患又は障害の徴候又は症状の重症度、そのような徴候又は症状を患者が経験する頻度、又は両方が、減少される場合に、疾患又は障害は、「軽減される」。
【0112】
化合物の「有効量」又は「治療的有効量」は、化合物が投与される対象に有益な作用を提供するのに十分である、その化合物の量である。
【0113】
本明細書記載の結合ドメインポリペプチドに関する用語「高親和性」とは、少なくとも約10-6M、好ましくは少なくとも約10-7M、より好ましくは少なくとも約10-8M又はそれよりも強い、より好ましくは少なくとも約10-9M又はそれよりも強い、より好ましくは少なくとも約10-10M又はそれよりも強い、例えば最大10-12M又はそれよりも強い解離定数(Kd)を指す。しかし「高親和性」結合は、他の結合ドメインポリペプチドに関しては変動することができる。
【0114】
本明細書において使用される用語「阻害する」とは、活性又は機能を、例えば対照値に対し約10%、抑制又はブロックすることを意味する。好ましくは、活性は、対照値と比べ50%だけ、より好ましくは75%だけ、及び更により好ましくは95%だけ、抑制又はブロックされる。本明細書において使用される「阻害する」はまた、分子、反応、相互作用、遺伝子、mRNA、及び/又はタンパク質の発現、安定性、機能又は活性のレベルを測定可能な量だけ減少すること、あるいは全体的に妨害することを意味する。インヒビターは、例えば、結合する、部分的もしくは全体的に活性をブロックする、活性化を減少、妨害、遅延する、失活する、脱感作する、又はタンパク質、遺伝子及びmRNAの安定性、発現、機能及び活性をダウンレギュレーションする、化合物であり、例えばアンタゴニストなどである。
【0115】
本明細書において使用される関心対象の分子の用語「モジュレーター」及び「調節」は、その様々な型において、関心対象のプロテアーゼに関連した活性の拮抗、作動、部分的拮抗及び/又は部分的作動を包含することを意図される。様々な実施態様において、「モジュレーター」は、プロテアーゼの発現又は活性を阻害又は刺激してよい。そのようなモジュレーターは、プロテアーゼ分子の小型分子アゴニスト及びアンタゴニスト、アンチセンス分子、リボザイム、三重鎖(triplex)分子、及びRNAiポリヌクレオチド、及びその他のものを含む。
【0116】
本明細書において使用される「指示書(instruction material)」とは、本明細書に列挙された様々な疾患又は障害の軽減に作用するためのキット中の本発明の化合物、組成物、ベクター、又は送達システムの有用性を伝える為ため使用することができる、刊行物、記録、略図、又は任意の他の表現媒体を含む。任意に又は代わりに、指示書は、哺乳動物の細胞又は組織中の疾患又は障害を軽減する1又は複数の方法を説明することができる。本発明のキットの指示書は、例えば、本発明の同定された化合物、組成物、ベクター、もしくは送達システムを含む容器に添付されるか、又は同定された化合物、組成物、ベクター、もしくは送達システムを含む容器と一緒に出荷されることができる。あるいは、指示書及び化合物は、レシピエントにより協同して使用されることを意図して、指示書は、容器とは別に出荷されることができる。
【0117】
「単離された」は、天然の状態から変更又は除去されることを意味する。例えば、生存動物中にその正常な状況で天然に存在する核酸又はペプチドは、「単離され」ていないが、その天然の状況の同時に存在する物質から部分的に又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは、「単離されている」。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形で存在することができるか、又は例えば宿主細胞などの、非天然(non-native)の環境中に存在することができる。
【0118】
「単離された核酸」は、天然に生じる状態でそれに隣接する配列から分離されている、核酸セグメント又は断片、すなわち通常その断片に隣接している配列、すなわち天然に生じるゲノム中でその断片に隣接している配列から除去されているDNA断片を指す。この用語はまた、天然に核酸を随伴する他の成分から、すなわち天然にそれを細胞内で随伴しているRNA又はDNA又はタンパク質から実質的に精製されている核酸に適用される。従ってこの用語は、例えば、ベクターへ、自己複製プラスミドもしくはウイルスへ、又は原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへ、組み入れられた組換えDNA、あるいは他の配列から独立した個別の分子として(すなわち、PCRもしくは制限酵素消化により生成されるcDNAもしくはゲノムもしくはcDNA断片として)存在する、組換えDNAを含む。これはまた、追加のポリペプチド配列をコードしているハイブリッド遺伝子の一部である、組換えDNAも含む。
【0119】
本発明の状況において、通常生じる核酸塩基に関して、以下の略語が使用される。“A”はアデノシンを指し、“C”はシトシンを指し、“G”はグアノシンを指し、“T”はチミジンを指し、且つ“U”はウリジンを指す。
【0120】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖として定義される。更に、核酸は、ヌクレオチドのポリマーである。従って本明細書において使用される核酸及びポリヌクレオチドは、互換性がある。当業者は、核酸及びポリヌクレオチドは、モノマー性「ヌクレオチド」へ加水分解され得るという一般的知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドへ加水分解され得る。本明細書において使用されるポリヌクレオチドは、非限定的に組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCRを使用する組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングなどを含む、当該技術分野において利用可能な任意の手段により、並びに合成手段により、得られる全ての核酸配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0121】
本明細書において使用される用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に使用され、且つペプチド結合により共有的に連結されたアミノ酸残基で構成された化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含まなければならず、且つ非限定的に、タンパク質配列又はペプチド配列を構成することができる最大数のアミノ酸で配置されなければならない。ポリペプチドは、互いにペプチド結合により連結された、2個又はそれよりも多いアミノ酸を含む、任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書において使用されるこの用語は、例えば、ペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとして同じく当該技術分野において通常言及される短鎖、並びに多くの種類が存在する、一般に当該技術分野においてタンパク質と称される長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」は、例えば、生物学的活性断片、とりわけ実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾されたポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然のペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組合せを含む。
【0122】
用語「保存的置換」は、ポリペプチドを説明する場合、実質的にポリペプチドの活性を変更しないポリペプチドのアミノ酸組成の変化、すなわちアミノ酸の類似の特性を有する他のアミノ酸による置換を指す。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術分野において周知である。以下の6群は各々、互いに保存的置換を表すと一般に理解されるアミノ酸を含む:(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び、(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)(同じく、Creighton、1984、Proteins、W.H. Freeman and Company参照)。先に定義した保存的置換に加え、アミノ酸残基の他の修飾も、「保存的に修飾されたバリアント」を生じることができる。例えば、全ての帯電されたアミノ酸を、それらが正又は負のいずれかにかかわらず、互いに置換とみなすことができる。加えて、保存的に修飾されたバリアントもまた、コードされた配列中の単独のアミノ酸又は小さい割合、例えば多くは5%未満のアミノ酸を改変、付加又は欠失する、個々の置換、欠失又は付加から生じることができる。更に保存的に修飾されたバリアントは、未変性又は野生型遺伝子により利用されるアミノ酸のコドンを、同じアミノ酸の異なるコドンによる置換することにより、組換えポリペプチドから作製することができる。
【0123】
本明細書において使用される用語「RNA」は、リボ核酸として定義される。
【0124】
本明細書において使用される用語「組換えDNA」は、様々な給源からのDNAの小片を連結することにより作製されるDNAとして定義される。
【0125】
本明細書において使用される用語「組換えポリペプチド」は、組換えDNA法を用いることにより作製されるポリペプチドとして定義される。
【0126】
「医薬として許容し得る」により、製剤の他の構成成分と適合性があり、且つそのレシピエントへの投与に関して一般に安全である、例えば、担体、希釈剤又は賦形剤を意味する。本明細書において使用される「担体」は、コンジュゲートと一緒にした場合に、コンジュゲートの活性を保持し、且つ対象の免疫系と非反応性である、任意の物質を含む。例としては、リン酸緩衝食塩水、水などの標準の医薬担体、水中油型乳剤などの乳剤、及び様々な種類の湿潤剤のいずれかを含むが、これらに限定されるものではない。他の担体はまた、無菌の液剤、コート錠を含む錠剤、及びカプセル剤も含んでよい。典型的にはそのような担体は、デンプン、乳糖、特定型のクレイ、ゼラチン、ステアリン酸又はその塩、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、タルク、植物性油脂又は油、ガム、グリコールなどの賦形剤、又は他の公知の賦形剤を含む。そのような担体はまた、芳香剤もしくは着色剤又は他の構成成分も含んでよい。そのような担体を含有する組成物は、周知の常法により製剤化される。
【0127】
用語「患者」、「対象」、「個人」及び同類のものは、本明細書において互換的に使用され、且つ補体系を有する、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指し、状態又はその続発症に療法を必要とすえるヒト、易罹患性のヒトを含む。従って個体は、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、サル、及びマウス及びヒトを含んでよい。
【0128】
2つ以上の核酸配列又はポリペプチド配列の状況において本明細書において使用される「同一の」又は「同一性」は、それらの配列が、特定された領域にわたり同じである残基を特定された割合で有することを意味する。この割合は、2つの配列を最適にアラインメントし、特定の領域にわたり2つの配列を比較し、両配列中で同一残基が生じる位置の数を決定しマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を特定の領域中の位置の総数で除算し、この結果に100を掛けて、配列同一性の割合を得ることにより、計算することができる。2つの配列が異なる長さであるか、又はアラインメントが1又は複数の付着末端を生じ、及び比較される特定領域が単独の配列のみ有する場合において、単独配列の残基は、この計算の分母には含まれるが、分子には含まれない。DNA及びRNAを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は、同等と見なすことができる。同一性は、手作業により、又はBLASTもしくはBLAST2.0などの、コンピュータ配列アルゴリズムを使用することにより、実行することができる。
【0129】
語句「パーセント(%)同一性」又は「パーセント同一」とは、2つ以上のアミノ酸配列の比較において認められる配列類似性の割合を指す。%同一性は、任意の好適なソフトウェアを使用し、電子的に決定することができる。同様に2つのポリペプチド(又はそれらのいずれか又は両方の1又は複数の部分)の間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列を第二のポリペプチドのアミノ酸配列と比較することにより決定される。そのような比較に適した任意の好適なアルゴリズムは、本発明の状況における適用に適合させることができる。
【0130】
「治療的」処置は、病理の徴候を示す対象へ、それらの徴候の縮小又は除去を目的として、投与された処置である。
【0131】
「治療的有効量」は、患者へ投与された場合に、疾患の症状を改善する本発明の化合物の量である。「治療的有効量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、病態及びその重症度、治療される患者の年齢、及び同類のものに応じて変動するであろう。治療的有効量は、自身の知識及び本開示を考慮し、当業者により慣習的に決定することができる。
【0132】
用語「治療する」、「治療している」及び「治療」は、本明細書において説明された治療的又は予防的手段を指す。「治療」の方法は、障害の1もしくは複数の症状又は障害の再発を予防、治癒、遅延、重症度の軽減、又は改善するため、あるいはそのような治療が存在しない場合に予想されるものよりも対象の生存を延長するために、そのような処置を必要とする対象、例えば、疾患もしくは障害に罹患した対象、又は最終的にそのような疾患もしくは障害を獲得する対象への、本発明の組成物の投与を利用する。
【0133】
「バリアント」が本明細書において使用される場合、この用語は、各々、参照の核酸配列又はペプチド配列とは配列が異なるが、参照分子の必須の生物学的特性を保持している、核酸配列又はペプチド配列である。核酸バリアントの配列の変更は、参照核酸によりコードされたペプチドのアミノ酸配列を改変しないか、又はアミノ酸の置換、付加、欠失、融合及び切断を生じることがある。ペプチドバリアントの配列の変更は制限又は保存され、典型的には、参照ペプチド及びバリアントの配列が、全体的に非常に類似しており、並びに多くの領域において同一である。バリアント及び参照ペプチドは、任意の組合せの1又は複数の置換、付加、欠失により、アミノ酸配列が異なることができる。核酸又はペプチドのバリアントは、アレルバリアントなど、天然に生じることができるか、あるいは天然に生じることがわかっていないバリアントであることができる。核酸及びペプチドの天然に生じないバリアントは、変異誘発技術又は直接合成により作製されてよい。
【0134】
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な態様は、範囲のフォーマットで提示することができる。範囲フォーマットの説明は、単に便宜上及び簡潔さのためであることは理解されるべきであり、且つ本発明の範囲を確固として限定するものとして解釈されるべきではない。従って、範囲の説明は、可能な小範囲全て、並びにその範囲内の個々の数値を、具体的に明らかにしていると考えられるべきである。例えば、1から6までのような範囲の説明は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までなどの小範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを、具体的に明らかにしていると考えられるべきである。これは、範囲の幅とは無関係に適用する。
【0135】
説明
本発明は、レナラーゼに特異的に結合する物質を使用する、レナラーゼの結合及び阻害に関する。様々な実施態様において、本発明は、レナラーゼのインヒビターをそれを必要とする対象へ投与することにより、個体においてレナラーゼ-関連した疾患又は障害を治療する組成物及び方法に向けられる。一部の実施態様において、レナラーゼインヒビターは、レナラーゼ結合分子である。一部の実施態様において、レナラーゼ結合分子は、抗体である。様々な実施態様において、本発明の組成物及び方法を用いて診断可能、予防可能及び治療可能な疾患及び障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓の虚血状態)、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌を含む。
【0136】
一実施態様において、本発明は広範に、癌の治療、予防、及び診断に関する。一実施態様において、本発明は、癌の診断、病期決定、治療、阻害、予防又は軽減のための方法及び組成物に向けられる。一実施態様において、本発明は、レナラーゼのレベル、生成、及び活性の1又は複数を調節する組成物及び方法を提供する。癌並びに関連する疾患及び障害の状況において、本発明は、レナラーゼのレベル、生成、及び活性の1又は複数を減少する組成物及び方法を提供する。本発明の一部の態様は、癌転移の治療、予防、診断又は予後判定のための方法及び組成物を提供する。
【0137】
レナラーゼインヒビター組成物及び使用方法
様々な実施態様において、本発明は、レナラーゼインヒビター組成物、並びにレナラーゼのレベル又は活性の減少が望ましい疾患又は障害を治療又は予防する方法を含む。本発明の組成物及び方法により治療又は予防され得る、レナラーゼのレベル又は活性の減少が望ましい疾患又は障害の非限定的例の一つは、癌を含む。様々な実施態様において、レナラーゼインヒビター組成物及び本発明の治療又は予防の方法は、活性レナラーゼポリペプチドの量、活性レナラーゼペプチド断片の量、レナラーゼ酵素活性の量、レナラーゼ基質結合活性の量、レナラーゼ受容体結合活性の量、又はそれらの組合せを減少する。
【0138】
当業者により、本明細書に提供される開示を基に、活性レナラーゼのレベルの減少は、転写、翻訳、又は両方を含む、レナラーゼ発現の減少を包含し、且つ同じくRNAレベル(例えば、RNAi、shRNAなど)及びタンパク質レベル(例えば、ユビキチン化など)を含む、レナラーゼの分解を促進することを包含していることは理解されるであろう。当業者は、一旦本発明の内容が作動可能になれば(armed)、活性レナラーゼのレベルの減少は、レナラーゼ活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)の減少を含むことも理解するであろう。従って、レナラーゼのレベル又は活性の減少は、レナラーゼをコードしている核酸の転写、翻訳又は両方を減少することを含むが、これらに限定されるものではなく;同じくこれは、レナラーゼポリペプチド、又はそのペプチド断片の任意の活性の減少もまた含む。本発明のレナラーゼインヒビター組成物及び方法は、レナラーゼを選択的に阻害することができるか、又はレナラーゼ及び別の分子を両方共阻害することができる。
【0139】
レナラーゼの阻害は、本明細書に開示されたもの、並びに当該技術分野において公知の方法、又は今後開発される方法を含む、多種多様な方法を用いて評価することができる。すなわち日常作業者(routineer)は、本明細書に提供される開示を基に、レナラーゼのレベル又は活性の減少は、生物学的試料中に存在する、レナラーゼをコードすえる核酸(例えばmRNA)のレベル、レナラーゼポリペプチド又はそのペプチド断片のレベル、レナラーゼ活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)のレベル、又はそれらの組合せを評価する方法を使用することにより、容易に評価し得ることを理解するであろう。
【0140】
本明細書に提供される開示を基に、当業者は、対象が他の薬物療法又は療法により治療されるかどうかにかかわらず、本発明は、それを必要とする対象における治療又は予防において有用であることを理解するであろう。更に当業者は、本明細書に提供される内容を基に、本明細書記載の組成物及び方法により治療可能な疾患又は障害は、レナラーゼが役割を果たし、且つ減少されたレナラーゼのレベル又は活性が、正の治療的転帰を促進する、任意の疾患又は障害を包含することを更に理解するであろう。様々な実施態様において、本発明の化合物及び方法を使用し治療可能又は予防可能な疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓の虚血状態)、心血管疾患又は障害(例えば、高血圧、肺高血圧症、収縮期高血圧、糖尿病性高血圧、非症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症など)、癌、心疾患又は障害、腎疾患又は障害、消化管疾患又は障害、肝疾患又は障害、肺疾患又は障害、膵疾患又は障害(例えば膵炎)、精神疾患又は障害(例えばうつ病、不安症など)、又は神経疾患又は障害を含む。
【0141】
別の実施態様において、本発明のレナラーゼインヒビターは、患者における内因性及び/又は外因性レナラーゼのレベル又は活性を制御、用量設定(titrate)、減少、又は安定化するために、外因性レナラーゼ、組換えレナラーゼ、レナラーゼ断片、及び/又はレナラーゼアクチベーターにより治療される患者へ投与され得る。
【0142】
レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベル又は活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を減少する本発明のレナラーゼインヒビター組成物及び方法は、化学化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、抗体断片、抗体模倣体、リボザイム、小型分子化学化合物、短いヘアピン型RNA、RNAi、アンチセンス核酸分子(例えば、siRNA、miRNAなど)、アンチセンス核酸分子をコードしている核酸、タンパク質をコードしている核酸配列、レナラーゼ受容体、レナラーゼ受容体断片、又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されると解釈されるべきではない。一部の実施態様において、このインヒビターは、アロステリックインヒビターである。当業者は、本明細書に提供される開示を基に、レナラーゼインヒビター組成物は、レナラーゼ又はその断片のレベル又は活性を減少する任意の化学化合物を包含していることを容易に理解するであろう。加えて、レナラーゼインヒビター組成物は、化学技術分野の業者には周知であるように、化学修飾された化合物、及び誘導体を包含する。
【0143】
レナラーゼ又はレナラーゼ断片のレベル又は活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を減少する本発明のレナラーゼインヒビター組成物及び方法は、抗体及びその断片を含む。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(“イントラボディ”)、Fv、Fab及びF(ab)2、単鎖抗体(scFv)、重鎖抗体(ラクダ科の抗体など)、合成抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体を含む、様々な形の抗体を含む。一実施態様において、本発明の抗体は、レナラーゼに特異的に結合する抗体である。一部の実施態様において、本発明の抗体は、第一の特異性はレナラーゼに対してであり、及び第二の特異性は、二重特異性抗体を標的分子が存在し且つレナラーゼ結合が望ましい解剖学的位置に導くための、細胞又は組織上の標的分子に対してである、二重特異性抗体である。一部の実施態様において、本発明の抗体は、第一の特異性はレナラーゼに対してであり、及び第二の特異性は、抗体の二次的特異性により運搬され、且つレナラーゼ結合が望ましい解剖学的位置へ配備される第二の結合パートナー分子(すなわちペイロード)に対してである、二重特異性抗体である。
【0144】
一部の実施態様において、癌の治療のための、本発明のレナラーゼインヒビター(例えば、レナラーゼ結合分子)の対象への投与は、癌に対する対象の免疫系により免疫応答を開始及び/又は補足するのに役立つ。癌に対する対象の免疫応答は、自然免疫応答、体液性免疫応答、細胞性免疫反応、又はそれらの組合せを含む、何らかの宿主防御又は応答であることができる。
【0145】
更に当業者は、本開示及び本明細書に例証される方法を備える場合、レナラーゼインヒビター組成物は、本明細書において詳述され及び/又は当該技術分野において公知のレナラーゼの阻害の生理的結果のように、薬理学の技術分野において周知の基準により同定され得るような、今後発見されるそのようなインヒビターを含むことを理解するであろう。従って本発明は、本明細書において例示されるか又は開示される特定のレナラーゼインヒビター組成物に、いかなる様式においても限定されず;むしろ本発明は、当該技術分野において公知の及び今後発見されるような有用であることが日常作業者により理解されるそれらのインヒビター組成物を包含する。
【0146】
レナラーゼインヒビター組成物を同定及び生成する更なる方法は、当業者に周知であり、天然に生じる給源(例えば、ストレプトマイセス種、シュードモナス種、スチロテラ・アウランチウム(Stylotella aurantium)など)からインヒビターを得ることを含むが、これに限定されるものではない。あるいは、レナラーゼインヒビターは、化学的に合成することができる。更に日常作業者は、本明細書に提供される内容を基に、レナラーゼインヒビター組成物は、組換え生物から得ることができることを理解するであろう。レナラーゼインヒビターを学的に合成するため、並びにそれらを天然の給源から得るための組成物及び方法は、当該技術分野において周知であり、且つ当該技術分野において説明されている。
【0147】
当業者は、インヒビターは、化学化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、抗体断片、抗体模倣体、リボザイム、小型分子化学化合物、短いヘアピン型RNA、RNAi、アンチセンス核酸分子(例えば、siRNA、miRNAなど)、アンチセンス核酸分子をコードしている核酸、タンパク質をコードしている核酸配列、レナラーゼ受容体、レナラーゼ受容体断片、又はそれらの組合せとして投与することができることを理解するであろう。多くのベクター並びに他の組成物及び方法は、タンパク質又はタンパク質をコードしている核酸構築体を、細胞又は組織へ投与することに関して、周知である。従って、本発明は、レナラーゼのインヒビターであるタンパク質又はタンパク質をコードしている核酸を投与する方法を含む(Sambrookら、2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York;Ausubelら、1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)。
【0148】
当業者は、それ自身レナラーゼのレベル又は活性を増加する分子の量又は活性を減弱することは、レナラーゼのレベル又は活性を減少するための本発明の組成物及び方法において役立つことができることを、認めるであろう。
【0149】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA分子の一部分に相補的である、DNA分子又はRNA分子である。細胞中に存在する場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、存在するRNA分子へハイブリダイズし、且つ遺伝子産物への翻訳を阻害する。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する遺伝子発現の阻害は、細胞においてアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現する方法(Inoue、米国特許第5,190,931号)のように、当該技術分野において周知である(Marcus-Sekura、1988, Anal. Biochem. 172:289)。本発明の方法は、レナラーゼの量を減らすため、又はレナラーゼの量又は活性の増加を引き起こす分子の量を減らし、それによりレナラーゼの量又は活性を減少するための、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0150】
本発明において、当業者に周知の方法により、合成され且つ細胞へ提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドが企図される。例として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10~約100、より好ましくは約15~約50のヌクレオチド長であるように合成することができる。核酸分子の合成は、未修飾のアンチセンスオリゴヌクレオチドと比べ、生物活性を改善するように修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの合成であるように、当該技術分野において周知である(Tullis、1991、米国特許第5,023,243号)。
【0151】
同様に、遺伝子の発現は、アンチセンス分子のプロモーター又は他の遺伝子の制御要素へのハイブリダイゼーション、それによる遺伝子の転写に影響することにより阻害されてよい。関心対象の遺伝子と相互作用するプロモーター又は他の制御要素の同定方法は、当該技術分野において周知であり、且つ酵母ツーハイブリッドシステム(Bartel及びFields編集、The Yeast Two Hybrid System, Oxford University Press, Cary, N.C.)のような方法を含む。
【0152】
あるいは、レナラーゼを発現する遺伝子、又はレナラーゼのレベルもしくは活性を増加するタンパク質を発現する遺伝子の阻害は、リボザイムの使用により達成することができる。遺伝子発現の阻害のためのリボザイムの使用は、当業者に周知である(例えば、Cechら、1992, J. Biol. Chem. 267:17479;Hampelら、1989, Biochemistry 28: 4929;Altmanら、米国特許第5,168,053号参照)。リボザイムは、他の1本鎖RNA分子を切断する能力を持つ触媒性RNA分子である。リボザイムは、配列特異性があることが公知であり、従って特異的ヌクレオチド配列を認識するように修飾することができ(Cech、1988, J. Amer. Med. Assn. 260:3030)、特異的mRNA分子の選択的切断を可能にする。この分子のヌクレオチド配列が与えられるならば、当業者は、本開示及び本明細書に組み込まれた参考文献で提供されるよう、過度な実験を伴わずに、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイムを合成することができる。
【0153】
あるいは、レナラーゼを発現する遺伝子、又はレナラーゼのレベルもしくは活性を増加するタンパク質を発現する遺伝子の阻害は、短いヘアピン型RNA、又はsiRNA、miRNA、及びRNAiを含むアンチセンスRNAの使用を通じて達成することができる。この分子のヌクレオチド配列が与えられるならば、当業者は、本開示及び本明細書に組み込まれた参考文献で提供されるよう、過度な実験を伴わずに、短いヘアピン型RNA又はアンチセンスRNAを合成することができる。
【0154】
当業者は、レナラーゼ又はレナラーゼ断片のインヒビターは、急性的に(例えば、1日、1週間又は1ヶ月など、短期間にわたり)又は慢性的に(例えば、数ヶ月又は1年以上など、長期間にわたり)投与することができることを理解するであろう。当業者は、レナラーゼのインヒビターは、単独で、又は他の薬剤と組合せて投与することができることを理解するであろう。更にレナラーゼインヒビターは、単独で、又は互いに同時に、もしくは前に及び/もしくは後に投与されるという点において、時間の意味合い(temporal sense)の何らかの組合せで、投与することができる。当業者は、本明細書に提供される開示を基に、レナラーゼインヒビター組成物は、それを必要とする対象における疾患又は障害の治療又は予防に使用することができること、並びにインヒビター組成物は、単独で又は治療的結果に作用する別のインヒビターとの任意の組合せで使用することができることを理解するであろう。
【0155】
様々な実施態様において、本明細書に説明された本明細書のレナラーゼ又はレナラーゼ断片の任意のインヒビターは、単独で又は癌に関連した他の分子の他のインヒビターと組合せて投与することができる。
【0156】
当業者により、本明細書記載の方法を含む本開示で作動可能にした場合、本発明は、既に確立された癌などの疾患又は障害の治療に限定されないことは理解されるであろう。特に、この疾患又は障害は、対象に有害な点に対し症状発現される必要はなく;実際、この疾患又は障害は、治療が投与される前に、対象において検出される必要はない。すなわち、著しい疾患又は障害は、本発明が恩恵を提供する前には生じていない。従って本発明は、本明細書別所において先に考察されたように、レナラーゼインヒビター組成物は、疾患又は障害の開始前に、対象へ投与することができ、これにより疾患又は障害が発症することを予防するという点で、対象において疾患又は障害を予防する方法を含む。本明細書記載の予防的方法はまた、疾患又は障害の再発の予防に関して寛解にある対象の治療を含む。
【0157】
当業者は、本明細書の開示で作動可能にした場合に、疾患又は障害の予防は、癌を含む、疾患又は障害に対する予防的手段として、レナラーゼインヒビター組成物を対象へ投与することを包含していることを理解するであろう。本明細書別所でより完全に考察したように、レナラーゼのレベル又は活性を減少する方法は、レナラーゼ活性を減少するのみではなく、転写の減少、翻訳の減少のいずれか又は両方を含む、レナラーゼをコードしている核酸の発現も減少する広く過剰な技術を包含している。
【0158】
加えて、本明細書別所に開示されたように、当業者は、一旦本明細書に提供される内容により作動可能にされたならば、本発明は、レナラーゼの発現及び/又は活性の減少が、疾患、障害又は病理を媒介、治療又は予防するような、多種多様な疾患、障害及び病理の予防方法を包含することを理解するであろう。疾患がレナラーゼのレベル又は活性に関連するかどうかを評価する方法は、当該技術分野において公知である。更に本発明は、今後発見されるそのような疾患の治療又は予防を包含している
【0159】
本発明は、本発明の方法を実践するための、レナラーゼのインヒビターの投与を包含しており;当業者は、本明細書に提供される開示を基に、好適なレナラーゼインヒビターをどのように製剤化し且つ対象へ投与するかを理解するであろう。しかし、本発明は、いずれか特定の投与方法又は治療レジメンに限定されない。
【0160】
本発明は、レナラーゼに結合する組成物を提供する。一実施態様において、レナラーゼ結合剤は、レナラーゼのレベル又は活性を阻害する。従って、レナラーゼ活性の低下が有益であるような疾患及び状態において、そのような阻害性レナラーゼ結合剤は、潜在的に治療薬として作用し得る。
【0161】
場合によっては、その潜在的治療的役割に加え、レナラーゼは、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓の虚血状態)、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌を含むが、これらに限定されるものではない、疾患又は障害の診断マーカーとして使用することができる。適切に機能する腎臓を持たない患者は、より低いレベルのレナラーゼを有する。従って本発明のレナラーゼ結合剤を使用するレナラーゼの検出及び/又は定量を基に、癌を含む、心臓血管系、心臓、腎臓、胃腸、肝臓、肺、膵臓及び精神及び神経に関連した状態、障害及び疾患への易罹患性を診断する方法も、本発明に含まれる。例えば、高血圧、非症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症などの心臓血管系の状態、障害及び疾患;うつ病及び不安症などの、精神の状態、障害及び疾患;肺高血圧症などの、心臓の状態、障害及び疾患は全て、レナラーゼタンパク質レベルなどのレナラーゼレベルを決定することにより、診断され、評価され且つモニタリングされることができる。例えば、レナラーゼタンパク質の低下したレベルは、増加した症候性の結果に関連した障害の診断マーカーであろう。本発明の組成物及び方法は、収縮期高血圧、孤立性収縮期高血圧及び糖尿病性高血圧を含む、高血圧の治療、予防、軽減又は改善のために使用することができる。更に同じ恩恵が、より稀な高血圧障害、肺高血圧症、並びに膵炎について予測される。肺高血圧症は、肺動脈(心臓から肺へ繋がる血管)中の圧力が正常レベルを上回って上昇し、且つ生命を脅かすことがある、肺の稀な血管障害である。糖尿病性高血圧における及び孤立性収縮期高血圧における全身血圧の上昇を伴う、肺血管床(pulmonary bed)中の上昇した血圧の同様の発達も、類似の機序が関与することを示唆している。
【0162】
レナラーゼのレベル又は活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を減少する本発明のレナラーゼインヒビター組成物は、化学化合物、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体、抗体断片、抗体模倣体、リボザイム、小型分子化学化合物、短いヘアピン型RNA、RNAi、アンチセンス核酸分子(例えば、siRNA、miRNAなど)、アンチセンス核酸分子をコードしている核酸、タンパク質をコードしている核酸配列、レナラーゼ受容体、レナラーゼ受容体断片、又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものとして解釈されるべきではない。一部の実施態様において、インヒビターは、アロステリックインヒビターである。当業者は、本明細書に提供される開示を基に、レナラーゼインヒビター組成物は、レナラーゼのレベル又は活性を減少する化学化合物を包含することを容易に理解するであろう。加えて、レナラーゼインヒビター組成物は、化学技術分野の業者に周知であるように、化学的に修飾された化合物、及び誘導体を包含している。
【0163】
レナラーゼのレベル又は活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を減少する本発明のレナラーゼインヒビター組成物は、抗体及びその断片を含む。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(“イントラボディ”)、Fv、Fab及びF(ab)2、単鎖抗体(scFv)、重鎖抗体(ラクダ科の抗体など)、合成抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体を含む、抗体の様々な形を含む。一実施態様において、本発明の抗体は、レナラーゼに特異的に結合する抗体である。一部の実施態様において、本発明の抗体は、第一の特異性はレナラーゼに対してであり、及び第二の特異性は、二重特異性抗体をレナラーゼ結合が望ましい解剖学的位置に導くための標的分子に対してである、二重特異性抗体である。一部の実施態様において、本発明の抗体は、第一の特異性はレナラーゼに対してであり、及び第二の特異性は、レナラーゼ結合が望ましい解剖学的位置へ運搬され且つ配備される第二の結合パートナー分子に対してである、二重特異性抗体である。
【0164】
そのレナラーゼ結合断片を含む本発明の抗体は、いくつかの実施態様において、任意の好適なポリヌクレオチドによりコード化された、本明細書に開示された抗体アミノ酸配列、又は任意の単離されたもしくは製剤化された抗体を含む。更に、本開示の抗体は、本明細書記載の抗レナラーゼ抗体の構造的及び/又は機能的特徴を有する抗体を含む。一実施態様において、抗レナラーゼ抗体は、レナラーゼに結合し、これにより部分的に又は実質的に、レナラーゼの少なくとも一つの生物活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を改変する。一部の実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。
【0165】
一実施態様において、本発明の抗レナラーゼ抗体は、レナラーゼのタンパク質、ペプチド、サブユニット、断片、一部又はそれらの任意の組合せに特異的な、少なくとも一つの特定されたエピトープへ免疫特異的に結合し、且つ他の種由来の、レナラーゼ以外の、他のポリペプチドには特異的に結合しない。少なくとも一つのエピトープは、レナラーゼタンパク質の少なくとも一つの部分を含む、少なくとも一つの抗体結合領域を含むことができる。本明細書において使用される用語「エピトープ」は、抗体への結合が可能であるタンパク質決定基を指す。エピトープは、通常アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的活性のある表面基からなり、且つ通常特異的三次元構造特徴、並びに特異的荷電特徴を有する。高次構造的及び非-高次構造的エピトープは、前者への結合は、変性溶媒の存在下で喪失されるが、後者はそうではない点で、区別される。
【0166】
一部の実施態様において、本発明は、レナラーゼへ特異的に結合する抗体(例えば、抗体の結合部分)を含有する組成物を含む。一実施態様において、抗レナラーゼ抗体は、ポリクローナル抗体である。別の実施態様において、抗レナラーゼ抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施態様において、抗レナラーゼ抗体は、キメラ抗体である。更なる実施態様では、抗レナラーゼ抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。一部の実施態様において、本発明の抗体は、配列番号:1-7、8、50、92、94、及びそれらの断片の少なくとも一つへ特異的に結合する。
【0167】
抗体の結合部分は、結合パートナー分子(例えばレナラーゼ)へ特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を含む。抗体の結合機能は、完全長抗体の断片により実行され得ることが、示されている。用語抗体の「結合部分」に包含される結合断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFab断片を含む、二価の断片である、F(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなる、Fd断片;(iv)抗体の1本アームの、VL及びVHドメインからなる、Fv断片;(v)VHドメインからなる、dAb断片(Wardら、1989 Nature 341:544-546);並びに、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。更に、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは個別の遺伝子によりコードされているが、これらは、その中でVL及びVH領域が対形成し、一価の分子を形成する(1本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら、(1988) Science 242:423-426;及び、Hustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)、1本鎖タンパク質として作製されることが可能である合成リンカーによる、組換え法を用いて、繋ぐことができる。そのような単鎖抗体はまた、用語抗体の「結合部分」に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の常法を用いて得られ、且つそれらの断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、利用のために分泌される。結合部分は、組換えDNA技術によるか、又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断により、作製することができる。
【0168】
本発明のレナラーゼへ結合する抗体は、インビトロ、インサイチュ及び/又はインビボにおいて、少なくとも一つのレナラーゼ活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を、阻害、ブロック、又は干渉する、抗体である。好適な抗レナラーゼ抗体、特定部分、又はバリアントもまた、非限定的に、RNA、DNA又はタンパク質の合成、タンパク質放出、レナラーゼシグナル伝達、レナラーゼ切断、レナラーゼ活性、レナラーゼ受容体結合、レナラーゼ生成及び/又は合成などの、少なくとも一つのレナラーゼ活性又は機能に任意に影響を及ぼすことができる。
【0169】
一実施態様において、本発明の抗体は、レナラーゼへ結合する。一実施態様において、抗体は、レナラーゼ-1へ特異的に結合する。別の実施態様において、抗体は、レナラーゼ-2へ特異的に結合する。更に別の実施態様において、抗体は、レナラーゼ-1及びレナラーゼ-2の両方へ特異的に結合する。加えて、エピトープ特異性抗体が、作製されている。本発明の好ましい抗体は、モノクローナル抗体1C-22-1、1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2を含む。二重特異性抗体、例えばレナラーゼ-1及びレナラーゼ-2を認識する抗体の例は、抗体1C-22-1、1D-28-4、1D-37-10、及び本明細書記載のポリクローナル抗体を含む。レナラーゼ-型特異性抗体の例は、1F-26-1、1F-42-7を含み、これらはレナラーゼ-1に特異的である。3A-5-2は、レナラーゼ-2に特異的である。本発明の抗体断片は、配列番号:219、221、223、及び225に示したような、ヒト化された重鎖及び軽鎖Fv領域を含む。本発明の様々な実施態様において、抗レナラーゼ抗体又は抗体断片は、配列番号:219、221、223、及び225に示したような、ヒト化された重鎖及び軽鎖Fv領域、又はそれらの断片もしくは部分を含む。抗レナラーゼモノクローナル抗体をコードしている配列は、
図4から
図13、及び実施例2に示されている。
【0170】
モノクローナル抗体1D-28-4の重鎖コード配列の核酸(配列番号:52)及びアミノ酸配列(配列番号:9)は、
図4に認められる。モノクローナル抗体1D-28-4の軽鎖コード配列の核酸(配列番号:53)及びアミノ酸配列(配列番号:10)は、
図5に認められる。
【0171】
モノクローナル抗体1D-37-10重鎖コード配列の核酸(配列番号:60)及びアミノ酸配列(配列番号:17)は、
図6に認められる。モノクローナル抗体1D-37-10の軽鎖コード配列の核酸(配列番号:61)及びアミノ酸配列(配列番号:18)は、
図7に認められる。
【0172】
モノクローナル抗体1F-26-1の重鎖コード配列の核酸(配列番号:68)及びアミノ酸配列(配列番号:25)は、
図8に認められる。モノクローナル抗体1F-26-1の軽鎖コード配列の核酸(配列番号:69)及びアミノ酸配列(配列番号:26)は、
図9に認められる。
【0173】
モノクローナル抗体1F-42-7の重鎖コード配列の核酸(配列番号:76)及びアミノ酸配列(配列番号:33)は、
図10に認められる。モノクローナル抗体1F-42-7の軽鎖コード配列の核酸(配列番号:77)及びアミノ酸配列(配列番号:34)は、
図11に認められる。
【0174】
モノクローナル抗体3A-5-2の重鎖コード配列の核酸(配列番号:84)及びアミノ酸配列(配列番号:41)は、
図12に認められる。モノクローナル抗体3A-5-2の軽鎖コード配列の核酸(配列番号:85)及びアミノ酸配列(配列番号:42)は、
図13に認められる。.
【0175】
いくつかのモノクローナル抗体が、レナラーゼタンパク質へ結合することができるならば、それらのVH及びVL配列は、本開示の他の抗レナラーゼ結合分子を作製するために、「混合され及びマッチされる」ことができる。そのような「混合され及びマッチされる」抗体のレナラーゼ結合は、先に説明された及び実施例の結合アッセイ(例えば、免疫ブロット法、Bia-Coreなど)を用い、試験することができる。好ましくは、VH及びVL鎖が混合され且つマッチされる場合、特定のVH/VL対形成由来のVH配列は、構造的に類似したVH配列により置き換えられる。同様に好ましくは、特定のVH/VL対形成由来のVL配列は、構造的に類似したVL配列により置き換えられる。
【0176】
従って一部の実施態様において、本発明は、抗体又は抗体断片が、新規重鎖可変配列をコードする少なくとも一つのポリペプチド配列を含む、抗体又は抗体断片である。他の実施態様において、本発明は、抗体又は抗体断片が、新規軽鎖可変配列をコードする少なくとも一つのポリペプチド配列を含む、抗体又は抗体断片である。
【0177】
一実施態様において、第一のVH相補性決定領域(HC CDR1)は、配列番号:155に示したアミノ酸配列を含み;第二のVH相補性決定領域(HC CDR2)は、配列番号:156、配列番号:162、及び配列番号:168の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第三のVH相補性決定領域(HC CDR3)は、配列番号:157、及び配列番号:163の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第一のVL相補性決定領域(LC CDR1)は、配列番号:152に示したアミノ酸配列を含み;第二のVL相補性決定領域(LC CDR2)は、配列番号:153に示したアミノ酸配列を含み;第三のVL相補性決定領域(LC CDR3)は、配列番号:154、及び配列番号:160の群から選択されたアミノ酸配列を含む。一実施態様において、HC CDR1は、配列番号:155を含み;HC CDR2は、配列番号:156を含み;HC CDR3は、配列番号:157を含み;LC CDR1は、配列番号:152を含み;LC CDR2は、配列番号:153を含み;LC CDR3は、配列番号:154を含む。一実施態様において、VHは、配列番号:219を含み;VLは、配列番号:221を含む。一実施態様において、これら2つのポリペプチドは、リンカーにより連結され、単鎖可変領域(scFv)を形成し、ここでリンカーに対するポリペプチドの配置は、VH-リンカー-VL、及びVL-リンカー-VHの群から選択される。
【0178】
一実施態様において、第一のVH相補性決定領域(HC CDR1)は、配列番号:197、及び配列番号:203の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第二のVH相補性決定領域(HC CDR2)は、配列番号:198、及び配列番号:204の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第三のVH相補性決定領域(HC CDR3)は、配列番号:199、及び配列番号:205の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第一のVL相補性決定領域(LC CDR1)は、配列番号:194、及び配列番号:200の群から選択されたアミノ酸配列を含み;第二のVL相補性決定領域(LC CDR2)は、配列番号:195に示したアミノ酸配列を含み;第三のVL相補性決定領域(LC CDR3)は、配列番号:196に示したアミノ酸配列を含む。一実施態様において、HC CDR1は、配列番号:197を含み;ここでHC CDR2は配列番号:198を含み;ここでHC CDR3は配列番号:199を含み;ここでLC CDR1は配列番号:194を含み;ここでLC CDR2は配列番号:195を含み;ここでLC CDR3は配列番号:196を含む。一実施態様において、VHは、配列番号:223を含み;VLは、配列番号:225を含む。一実施態様において、これら2つのポリペプチドは、リンカーにより連結され、単鎖可変領域(scFv)を形成し、ここでリンカーに対するポリペプチドの配置は、VH-リンカー-VL、及びVL-リンカー-VHの群から選択される。
【0179】
様々な実施態様において、新規重鎖可変配列は更に、少なくとも一つの追加ポリペプチド配列を含む。様々な実施態様において、新規軽鎖可変配列は更に、少なくとも一つの追加ポリペプチド配列を含む。一実施態様において、VHポリペプチドは更に、重鎖CH1ドメインを含み;VLポリペプチドは更に、軽鎖CLドメインを含む。一実施態様において、VHポリペプチドは更に、重鎖CH1ドメイン、重鎖CH2ドメイン、及び重鎖CH3ドメインを含み、抗体重鎖を形成し;VLポリペプチドは更に、軽鎖CLドメインを含み、抗体軽鎖を形成する。一実施態様において、抗体重鎖及び抗体軽鎖は連結され、半抗体を形成する。一実施態様において、この半抗体は、別の半抗体へ連結され、抗体を形成する。様々な実施態様において、重鎖の軽鎖への連結は、半抗体を形成し、且つこれら2つの半抗体の連結は、ジスルフィド結合を用いて達成される。他の実施態様において、半抗体を形成する重鎖の軽鎖への連結、及び2つの半抗体の連結は、ジスルフィド結合でない結合又は連結を用いて達成される。
【0180】
別の態様において、本開示は、(a)配列番号:9、17、25、33及び41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;並びに、(b)配列番号:10、18、26、34及び42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその結合部位であって、ここで抗体がレナラーゼタンパク質へ特異的に結合するものを提供する。
【0181】
好ましい重鎖及び軽鎖の組合せは、(a)配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、(b)配列番号:17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、(c)配列番号:25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、(d)配列番号:33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、(e)配列番号:41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:を含む。
【0182】
別の態様において、本開示は、1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7又は3A-5-2又はそれらの組合せの重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体を提供する。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVH CDR1のアミノ酸配列は、各々、配列番号:11、19、27、35、及び43に示された配列へ組み込まれている。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVH CDR2のアミノ酸配列は、各々、配列番号:12、20、28、36、及び44に示された配列へ組み込まれている。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVH CDR3のアミノ酸配列は、各々、配列番号:13、21、29、37、及び45に示された配列へ組み込まれている。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVK CDR1のアミノ酸配列は、各々、配列番号:14、22、30、38、及び46に示された配列へ組み込まれている。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVK CDR2のアミノ酸配列は、配列番号:15、23、31、39及び47に示された配列へ組み込まれている。1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2のVK CDR3のアミノ酸配列は、各々、配列番号:16、24、32、40及び48に示された配列へ組み込まれている。CDR領域は、Kabatシステム(Kabat、E. A.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242)を用いて、示される。
【0183】
これらの各抗体は、レナラーゼファミリーメンバーに結合することができ、且つ結合特異性は、主にCDRl、CDR2、及びCDR3領域により提供されるとするならば、VH CDRl、CDR2、及びCDR3配列並びにVL CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、「混合され且つマッチされ」(すなわち、異なる抗体由来のCDRは、混合及びマッチされ得るが、各抗体は、VH CDRl、CDR2、及びCDR3並びにVL CDRl、CDR2、及びCDR3を含まなければならない)、本開示の他の抗レナラーゼ結合分子を作製する。そのような「混合され且つマッチされた」抗体のレナラーゼ結合は、先に及び実施例において説明された結合アッセイ(例えば、免疫ブロット法、Biacore(登録商標)分析など)を使用し、試験することができる。好ましくは、VH CDR配列が混合され且つマッチされた場合には、特定のVH配列由来のCDRl、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造が類似したCDR配列(複数可)と置き換えられる。同様に、VL CDR配列が混合され且つマッチされた場合には、特定のVL配列由来のCDRl、CDR2及び/又はCDR3配列は、好ましくは構造が類似したCDR配列(複数可)と置き換えられる。当業者には、新規VH及びVL配列は、1又は複数のVH及び/又はVL CDR領域配列を、モノクローナル抗体1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F42-7又は3A-5-2について本明細書に開示されたCDR配列由来の構造が類似した配列と置換することにより、作製することができることは容易に明らかであろう。
【0184】
従って別の態様において、本発明は、(a)配列番号:11、19、27、35、及び43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:12、20、28、36、及び44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:13、21、29、37、及び45からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:14、22、30、38、及び46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:15、23、31、39及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:16、24、32、40及び48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択される少なくとも一つを含む、単離されたモノクローナル抗体又はその結合部位を提供し、ここで抗体は、レナラーゼに特異的に結合する。
【0185】
別の実施態様において、この抗体は、(a)配列番号:11を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:12を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:13を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:14を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:15を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:16を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択されたCDRの少なくとも一つを含む。
【0186】
別の実施態様において、この抗体は、(a)配列番号:19を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:20を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:21を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:22を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:23を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:24を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択されたCDRの少なくとも一つを含む。
【0187】
別の実施態様において、この抗体は、(a)配列番号:27を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:28を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:29を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:30を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:31を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:32を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択されたCDRの少なくとも一つを含む。
【0188】
別の他の実施態様において、この抗体は、(a)配列番号:35を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:36を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:37を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:38を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:39を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:40を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択されたCDRの少なくとも一つを含む。
【0189】
別の実施態様において、この抗体は、(a)配列番号:43を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:44を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:45を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:46を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:47を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:48を含む軽鎖可変領域CDR3:から選択されたCDRの少なくとも一つを含む。
【0190】
前述の単離された抗レナラーゼ抗体CDR配列は、本発明に従い単離され、且つ列挙されたCDR配列を含むポリペプチドを含む、レナラーゼ結合タンパク質の新規ファミリーを確立する。レナラーゼ結合及び/又はレナラーゼ検出及び/又はレナラーゼ中和活性を有する、本発明のCDRを作製し且つ選択するために、本発明の結合タンパク質を作製する、並びにレナラーゼ及び/もしくはレナラーゼ結合及び/又はそれらの結合タンパク質の検出及び/もしくは中和の特徴を評価する当該技術分野において公知の標準方法を、使用することができ、これは本明細書に具体的に説明された方法を含むが、これらに限定されるものではない。
【0191】
好ましくは、本発明のレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、例えば、当該技術分野において公知のいくつかのインビトロ及びインビボアッセイのいずれか一つにより評価される、塩、化合物及び他のポリペプチドの複合混合物中のレナラーゼを検出し及び結合する高い能力を発揮する。当業者は、疾患の診断及び治療及び予防の方法において有用なものとして本明細書に説明されるレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、免疫クロマトグラフィーアッセイ、イムノドットアッセイ、Luminexアッセイ、ELISAアッセイ、ELISPOTアッセイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、質量分析アッセイ、放射免疫測定(RIA)、放射免疫拡散アッセイ、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析アッセイ、オークタロニー免疫拡散アッセイ、逆相タンパク質マイクロアレイ、ロケット免疫電気泳動アッセイ、免疫組織染色アッセイ、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ、FACS、タンパク質チップアッセイ、分離及び精製プロセス、並びにアフィニティクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるものではない、本発明の手法及び方法においても有用であることを理解するであろう(同じく、2007, Van Emon、Immunoassay and Other Bioanalytical Techniques, CRC Press;2005, Wild、Immunoassay Handbook, Gulf Professional Publishing;1996, Diamandis及びChristopoulos、Immunoassay, Academic Press;2005, Joos、Microarrays in Clinical Diagnosis, Humana Press;2005, Hamdan及びRighetti、Proteomics Today, John Wiley and Sons; 2007参照)。
【0192】
より好ましくは、本発明のレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、当該技術分野において公知のいくつかのインビトロ及びインビボアッセイのいずれか一つにより評価される、レナラーゼ活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)を中和する高い能力を発揮する。例えば、これらのレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、レナラーゼ-関連した又はレナラーゼ-媒介した疾患又は障害を中和する。好ましくは、本発明のレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)はまた、レナラーゼ活性を減少又は中和する高い能力を発揮する。一部の実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。
【0193】
本明細書において使用されるように、「レナラーゼタンパク質へ特異的に結合する」レナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、任意の動物のレナラーゼタンパク質に結合するレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)を指すことが意図される。一部の実施態様において,その抗体は、ヒトレナラーゼに結合する。好ましくは、レナラーゼ結合分子(例えば抗体など)は、1×10-6M以下、より好ましくは1×10-7M以下、より好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、より好ましくは1×10-9M以下、又は更により好ましくは3×10-10M以下のKDで、レナラーゼタンパク質へ結合する。本明細書において使用される用語タンパク質又は細胞へ「実質的に結合しない」とは、タンパク質又は細胞へ結合しない又は高い親和性で結合しないこと、すなわち、タンパク質又は細胞へ、1×106M以上、より好ましくは1×105M以上、より好ましくは1×104M以上、より好ましくは1×103M以上、更により好ましくは1×102M以上よりも大きいKDで結合することを意味する。本明細書において使用される用語「KD」は、KdのKaに対する比(すなわち、Kd/Ka)により得られ、並びにモル濃度(M)として表される、解離定数を指すことが意図される。レナラーゼ結合分子(例えば抗体など)に関するKD値は、当該技術分野において良く確立された方法を用いて決定することができる。結合分子(例えば抗体など)のKDを決定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用することにより、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0194】
本明細書において使用される用語IgG抗体に関する「高親和性」は、標的の結合パートナー分子に関して、1×l0-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、更により好ましくは1×10-8M以下、更により好ましくは5×10-9M以下、及び更により好ましくは1×10-9M以下のKDを有する抗体を指す。しかし「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに関して変動することができる。例えば、IgMアイソタイプに関する「高親和性」結合は、10-6M以下、より好ましくは10-7M以下、更により好ましくは10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0195】
いくつかの実施態様において、この抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域などの、重鎖定常領域を含む。好ましくは、この重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域である。更に、この抗体は、カッパ軽鎖定常領域又はラムダ軽鎖定常領域のいずれかの、軽鎖定常領域を含むことができる。好ましくは、この抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。あるいは、この抗体部分は、例えば、Fab断片又は単鎖Fv断片であることができる。
【0196】
抗レナラーゼ抗体の作製
本発明は、レナラーゼへ結合する組成物を提供する。本明細書で開示されたレナラーゼ分子は、本明細書で開示された他のポリペプチドと高い及び/又は有意な配列同一性を有するものを含む分子のクラスである。より具体的には、推定レナラーゼは、配列番号:49又は51の配列を有する核酸と、少なくとも約40%の配列同一性を共有するであろう。より好ましくは、レナラーゼをコードしている核酸は、本明細書に開示された配列番号:49又は51と、少なくとも約45%同一性、又は少なくとも約50%同一性、又は少なくとも約55%同一性、又は少なくとも約60%同一性、又は少なくとも約65%同一性、又は少なくとも約70%同一性、又は少なくとも約75%同一性、又は少なくとも約80%同一性、又は少なくとも約85%同一性、又は少なくとも約90%同一性、又は少なくとも約95%同一性、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。更により好ましくは、この核酸は、配列番号:49又は51又は93又は95である。用語「レナラーゼ」はまた、レナラーゼアイソフォームを含む。レナラーゼ遺伝子は、ヒトゲノムの10番染色体において310188bpに広がる9つのエクソンを含む。本明細書において開示されたレナラーゼクローン(配列番号:49、GenBank寄託番号:BC005364)は、エクソン1、2、3、4、5、6、8を含む遺伝子である。そこには、ヒトゲノムデータベースにおいて示されたレナラーゼタンパク質の少なくとも2つの追加の選択的スプライシングされた型が存在する。一つの選択的スプライシングされた型は、その配列が引用により明確に本明細書中に組み込まれている、GenBank寄託番号AK002080及びNMJ18363としてヒトゲノムデータベースにおいてクローンにより同定された、エクソン1、2、3、4、5、6、9を含む。他方の選択的スプライシングされた型は、その配列が引用により明確に本明細書中に組み込まれている、GenBank寄託番号BX648154としてヒトゲノムデータベースにおけるクローンにより同定された、エクソン5、6、7、8を含む。別に指摘しない限りは、「レナラーゼ」は、全ての公知のレナラーゼ(例えば、ラットレナラーゼ、及びヒトレナラーゼ)、並びに発見されるべきレナラーゼを包含し、本明細書に開示されたレナラーゼの特徴及び/又は物理的特性を有する、非限定的にヒトレナラーゼ及びチンパンジーレナラーゼを含む。
【0197】
加えて、推定レナラーゼは、配列番号:8又は50の配列を有するポリペプチドと、少なくとも約60%の配列同一性を共有している。より好ましくは、レナラーゼは、本明細書において開示された配列番号:8又は50と、少なくとも約45%同一性、又は少なくとも約50%同一性、又は少なくとも約55%同一性、又は少なくとも約60%同一性、又は少なくとも約65%同一性、又は少なくとも約70%同一性、又は少なくとも約75%同一性、又は少なくとも約80%同一性、又は少なくとも約85%同一性、又は少なくとも約90%同一性、又は少なくとも約95%同一性、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。更により好ましくは、レナラーゼポリペプチドは、配列番号:8又は50又は92又は94のアミノ酸配列を有する。
【0198】
一実施態様において、本発明の抗体は、動物を免疫化するために、レナラーゼの配列由来のペプチドを使用することにより作製され、これにより動物は、この免疫原に対する抗体を産生する。例証的免疫原は、レナラーゼ由来のペプチドを含む。すなわち、レナラーゼ配列の断片を有するペプチドは、本発明において使用することができる。ペプチドは、組換えペプチドとしての発現、大型ポリペプチドとしての発現を含む、様々な様式で作製され、及び酵素的もしくは化学的に切断されることができる。あるいは、これらは、当該技術分野において公知のように合成により作製されてよい。本発明の親和性試薬を作製するために使用される好ましいペプチドは、
図1(配列番号:1-7)に認められる。
【0199】
本発明の抗レナラーゼ抗体は、Kohler及びMilstein (1975) Nature 256:495の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術(ハイブリドーマ法)を含む、様々な技術により、任意に産生することができる。ハイブリドーマ法において、マウス又はハムスターもしくはマカクザルなどの他の好適な宿主動物は、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することが可能であるリンパ球を誘起するために、本明細書に説明されたように免疫化される。あるいは、リンパ球は、インビトロにおいて免疫化されてよい。その後リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの、好適な融合剤を使用し、骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、pp. 59-103 (Academic Press、1986))。
【0200】
ハイブリドーマ技術を用い特異的抗体を産生及びスクリーニングする方法は、慣習的であり、且つ当該技術分野において周知である。一実施態様において、本発明は、モノクローナル抗体、並びに本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法により産生された抗体を作製する方法を提供し、ここで好ましくは、このハイブリドーマは、本発明のポリペプチド又はペプチドにより免疫化したマウス又はウサギ又は他の種から単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合し、その後本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンの融合から生じるハイブリドーマをスクリーニングすることにより作製される。簡単に述べると、マウスは、レナラーゼポリペプチド又はそのペプチドにより免疫化することができる。好ましい実施態様において、レナラーゼポリペプチド又はそのペプチドは、免疫応答を刺激するために、アジュバントと共に投与される。そのようなアジュバントは、完全又は不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激複合体)を含む。そのようなアジュバントは、局所的沈着(local deposit)中にそれを捕捉することにより、このポリペプチドを、迅速な分散から防御することができるか、又はこれらは、マクロファージ及び免疫系の他の成分について走化性である因子を分泌するように、宿主を刺激する物質を含むことができる。好ましくは、ポリペプチドが投与される場合、免疫化のスケジュールは、数週間にまたがる、ポリペプチドの2回以上の投与に関与するであろう。
【0201】
あるいは、ウサギは、レナラーゼポリペプチド又はそのペプチドにより免疫化することができる。この実施態様において、完全長レナラーゼタンパク質又はレナラーゼ由来のペプチドのいずれかは、免疫原として使用することができる。
【0202】
本発明において使用されるレナラーゼは、様々な形状をとることができる。例えばこれらは、精製されたレナラーゼタンパク質又はその断片、組換えにより生成されたレナラーゼ又はその断片を含むことができる。一部の実施態様において、レナラーゼは、ヒトレナラーゼである。組換えレナラーゼが使用される場合、これは、当該技術分野において公知のように、真核細胞又は原核細胞において生成することができる。追加免疫原は、レナラーゼ由来のペプチドを含む。すなわち、レナラーゼ配列の断片を有するペプチドは、本発明において使用することができる。ペプチドは、組換えペプチドとしての発現、より大きいポリペプチドとしての発現を含む、様々な様式で生成され、及び酵素的又は化学的に切断され得る。あるいは、これらは、当該技術分野において公知のように、合成により生成されてよい。本発明の親和性試薬を作製するために使用される好ましいペプチドは、
図1(配列番号:1-7)に認められる。ヒトレナラーゼの完全長アミノ酸配列は、配列番号:8に示されており、ここで示されるように既知の多型が可能である(配列番号:92と比較)。レナラーゼ-2のアミノ酸配列は、配列番号:50において認められ、再度ここでも示されるように既知の多型が可能である(配列番号:94と比較)。その他の多型が存在することは理解される。これらも同じくレナラーゼの定義に含まれる。一部の実施態様において、本発明のレナラーゼ結合分子は、配列番号:1-7、8、50、92、94の少なくとも一つ、及びそれらの断片へ、特異的に結合する。
【0203】
この抗レナラーゼ抗体はまた任意に、本明細書に記載の及び/又は当該技術分野において公知のようにヒト抗体のレパトアを作製することが可能である、トランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非-ヒト霊長類など)の免疫化により産生されることもできる。ヒト抗レナラーゼ抗体を産生する細胞は、そのような動物から単離され、且つ本明細書に記載された方法のような好適な方法を用い、不死化されることができる。あるいは、この抗体コード配列は、本明細書に記した方法及び当該技術分野において公知の方法により、クローニングされ、好適なベクターへ導入され、且つ抗体の発現及び単離のため、宿主細胞のトランスフェクションに使用される。
【0204】
それらの生殖系列配置にヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を保有するトランスジェニックマウスの使用は、それに対し正常なヒト免疫系が寛容であるヒト自己抗原を含む様々な標的に対し向けられた、高親和性の完全ヒトモノクローナル抗体の単離を提供する(Lonberg, N.ら、米国特許第5,569,825号、米国特許第6,300,129号、並びに1994, Nature 368:856-9;Green, L.ら、1994, Nature Genet. 7:13-21;Green, L.及びJakobovits、1998, Exp. Med. 188:483-95;Lonberg, N.及びHuszar, D.、1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93;Kucherlapatiら、米国特許第6,713,610号;Bruggemann, M.ら、1991, Eur. J. Immunol. 21:1323-1326;Fishwild, D.ら、1996, Nat. Biotechnol. 14:845-851;Mendez, M.ら、1997, Nat. Genet. 15:146-156;Green, L.、1999, J. Immunol. Methods 231:11-23;Yang, X.ら、1999, Cancer Res. 59:1236-1243;Bruggemann, M.及びTaussig, M J.、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-458, 1997;Tomizukaら、WO02043478)。そのようなマウスにおける内因性免疫グロブリン遺伝子座は、破壊されるか又は欠失され、内因性遺伝子によりコードされた抗体を産生する動物の能力を失わせることができる。加えて、Abgenix社(フリーモント、カリフォルニア州)及びMedarex(サンノゼ、カリフォルニア州)などの会社は、本明細書の別所記載の技術を使用し、選択された標的に結合するパートナー分子(例えば抗原など)に対し向けられたヒト抗体を提供することに携わることができる。
【0205】
別の実施態様において、ヒト抗体は、ファージライブラリーから選択され、ここでそのファージは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含み、且つライブラリーは、例えば、単鎖抗体(scFv)として、Fab、又は対をなす又は対をなさない抗体可変領域を示すいくつかの他の構築体として、ヒト抗体結合ドメインを発現している(Vaughanら、Nature Biotechnology 14:309-314 (1996);Sheetsら、PITAS (USA) 95:6157-6162 (1998));Hoogenboom及びWinter、J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marksら、J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーのスクリーニングに関する、ファージディスプレイ法を用い、調製することもできる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野において確立されている。例えば、Ladnerらの、米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;及び第5,571,698号;Dowerらの、米国特許第5,427,908号及び第5,580,717号;McCaffertyらの、米国特許第5,969,108号及び第6,172,197号;並びに、Griffithsらの、米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号及び第6,593,081号を参照されたい。
【0206】
免疫原性抗原の調製、及びモノクローナル抗体産生は、組換えタンパク質生成などの任意の好適な技術を用いて、実行することができる。免疫原性抗原は、精製したタンパク質、又は細胞全体又は細胞もしくは組織抽出物を含有するタンパク質混合物の形で、動物へ投与することができるか、あるいはこの抗原は、該抗原又はその部分をコードしている核酸から、動物の体において新たに形成されることができる。
【0207】
本発明の単離された核酸は、当該技術分野において周知のように、(a)組換え法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はそれらの組合せを用いて、作製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、当該技術分野において公知の方法を用い、容易に単離され且つ配列決定される(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマが生成される場合、そのような細胞は、そのようなDNAの給源として役立つ。あるいは、ファージ又はリボソームディスプレイライブラリーなどの、コード配列及び翻訳産物が連結されている、ディスプレイ技術を使用し、バインダー及び核酸の選択は、簡略化される。ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域は、単離され、且つヒト抗体を含む抗体全体、又は任意の他の望ましい結合断片を作製するために使用され、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む、任意の望ましい宿主において発現される。
【0208】
ヒト化抗体
本発明は更に、ヒトレナラーゼに結合する、ヒト化された免疫グロブリン(又は抗体)を提供する。免疫グロブリンのヒト化された形は、実質的にヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリンと称される)由来の可変フレームワーク領域(複数可)及びレナラーゼに特異的に結合する実質的に非-ヒトmAb由来のCDRを有する。定常領域(複数可)が存在するならば、これもまた、ヒト免疫グロブリンに実質的に由来する。このヒト化抗体は、レナラーゼについてのKD、少なくとも約10-6M(1μM)、約10-7M(100nM)以下を示す。ヒト化抗体の結合親和性は、それらが誘導されるマウス抗体の結合親和性よりも大きいか又は小さくてよい。レナラーゼに関するヒト化抗体の親和性の変化に影響を及ぼし、親和性を改善するために、CDR残基又はヒト残基のいずれかにおける置換が行われ得る。
【0209】
レナラーゼに結合するヒト化抗体の生成の給源は、好ましくは1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7又は3A-5-2ウサギモノクローナル抗体であり、その作製、単離及び特徴決定は、本明細書に提供される実施例に説明されているが、レナラーゼへの結合に関して、1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F42-7又は3A-5-2抗体と競合する他の抗体も、使用することができる。配列表に明記された同定されたCDRは、ヒト化プロセスの出発点であることができる。例えば、以下のアミノ酸配列(及びその対応する核酸配列)のいずれか1又は複数は、ヒト化プロセスの出発点であることができる:(a)配列番号:11、19、27、35、及び43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDRl;(b)配列番号:12、20、28、36、及び44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号:13、21、29、37、及び45からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号:14、22、30、38、及び46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDRl;(e)配列番号:15、23、31、39及び47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;並びに、(f)配列番号:16、24、32、40及び48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0210】
ヒト可変ドメインフレームワークが、それにCDRが起源をもつ親可変フレームワークと同じ又は類似の高次構造を採用するならば、ウサギ又はマウスCDRのヒト可変ドメインフレームワークへの置換は、それらの正確な空間的配向の保持を生じる可能性が高い。これは、そのフレームワーク配列が、それからCDRが誘導される親可変フレームワークドメインと高度な配列同一性を示すヒト抗体から、ヒト可変ドメインを入手することにより、達成される。重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域は、同じ又は異なるヒト抗体配列から誘導されることができる。ヒト抗体配列は、天然に生じるヒト抗体の配列、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列から誘導された配列であることができるか、又は、いくつかのヒト抗体及び/又は生殖系列配列のコンセンサス配列であることができる。
【0211】
好適なヒト抗体配列は、ウサギ又はマウス可変領域のアミノ酸配列の、公知のヒト抗体の配列とのコンピュータ比較により同定される。この比較は、重鎖及び軽鎖について個別に行われるが、原理は互いに類似している。
【0212】
一例において、抗レナラーゼmAbのアミノ酸配列を使用し、公開された抗体配列データベースからコンパイルされたヒト抗体データベースをクエリーする。重鎖可変領域は、最高の配列同一性を伴うヒト可変領域を見つけるために、使用することができる。軽鎖可変領域は同様に、最高の配列同一性を伴うヒト可変領域を見つけるために、使用することができる。親mAbドナー由来の重鎖可変領域の一つのCDRをコードしている領域が、ヒト可変領域のCDRの代わりに、選択されたヒト重鎖可変配列へ移行されているDNA構築体が、各親の可変領域のために調製される。
【0213】
ヒト可変フレームワーク領域との親CDR領域の非天然の近位は、非天然の高次構造の拘束を生じ、これは、いくつかのアミノ酸残基の置換により補正されないならば、結合親和性の喪失に繋がる。先に注記したように、本発明のヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリン由来の可変フレームワーク領域(複数可)及び実質的に親(例えば、ウサギ又はマウス)の免疫グロブリン由来のCDRを含む。親抗体のCDR及び適切なヒトアクセプター免疫グロブリン配列を同定し、次工程は、もしあれば、これらの成分に由来するどの残基が、生じるヒト化抗体の特性を最適化するために、置換されるべきかを決定することである。概して、ヒトアミノ酸残基の親との置換は、最小化されるべきであり、その理由は親残基の導入は、ヒトにおいて免疫応答を誘起する抗体のリスクを増大するからである。アミノ酸は、CDR高次構造及び/又はパートナー分子に結合する標的への結合に対するそれらの可能性のある影響を基にした置換のために、選択される。そのような可能性のある影響の研究は、モデリング、特定の位置でのアミノ酸の特徴の試験、又は特定のアミノ酸の置換又は変異誘発の作用の経験に基づいた観察により、行うことができる。経験に基づく方法に関して、望ましい活性、結合親和性又は特異性をスクリーニングすることができる、バリアント配列のライブラリーを作製することは、特に都合が良いことが認められている。そのようなバリアントのライブラリーを作製する一つのフォーマットは、ファージディスプレイベクターである。あるいは、バリアントは、可変ドメイン内の標的化された残基をコードしている核酸配列の変動のために他の方法を用いて、作製することができる。
【0214】
更なる置換が必要であるかどうか、及び置換のためのアミノ酸残基の選択を決定する別の方法は、コンピュータモデリングを使用し、達成することができる。免疫グロブリン分子の三次元画像を作製するためのコンピュータのハードウェア及びソフトウェアは、広範に利用可能である。概して、分子モデルは、免疫グロブリン鎖又はそのドメインの溶解された構造から出発して、作製される。モデリングされるべき鎖は、溶解された三次元構造の鎖又はドメインと、アミノ酸配列類似性について比較され、且つ最大配列類似性を示すこれらの鎖又はドメインは、分子モデル構築の出発点として選択される。溶解された出発構造は、モデリングされる免疫グロブリン鎖又はドメイン中の実際のアミノ酸と出発構造中のアミノ酸の間の差異を可能にするように、修飾される。次に修飾された構造は、複合免疫グロブリンへ集成される。最後に、このモデルは、エネルギー最小化により、並びに全ての原子は、互いに適切な距離内にあること及び結合の長さと角度は化学的に許容し得る限界内であることの証明により、洗練される。
【0215】
一般にヒト化抗体中のCDR領域は、実質的に同一であり、より一般には、それからそれらが誘導される親抗体中の対応するCDR領域と同一である。通常は望ましくないが、時には、生じるヒト化免疫グロブリンの結合親和性にかなりの影響を及ぼすことなく、CDR残基の1又は複数の保存的アミノ酸置換を行うことは可能である。場合によっては、CDR領域の置換は、結合親和性を増強することができる。
【0216】
先に考察した特異的アミノ酸置換以外に、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域は、それらが誘導されるヒト抗体のフレームワーク領域と、普通には実質的に同一、より普通には同一である。当然、フレームワーク領域中のアミノ酸の多くは、抗体の特異性又は親和性にほとんど又は全く直接的には寄与しない。従って、フレームワーク残基の多くの個々の保存的置換は、生じるヒト化免疫グロブリンの特異性又は親和性のかなりの変化を伴わずに、忍容することができる。
【0217】
暗号縮重のために、様々な核酸配列が、各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードするであろう。所望の核酸配列は、固相DNA合成によるか又は所望のポリヌクレオチドのより早く調製されたバリアントのPCR変異誘発により、生成され得る。本出願に説明される抗体をコードする全ての核酸は、明確に本発明に含まれる。
【0218】
先に説明したように産生されたヒト化抗体の可変セグメントは、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも部分に連結される。この抗体は、軽鎖及び重鎖定常領域の両方を含むであろう。重鎖定常領域は通常、CH1、ヒンジ、CH2、CH3ドメインを含み、時にはCH4ドメインを含む。
【0219】
このヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意の抗体クラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のサブクラス(アイソタイプ)由来の、任意の型の定常ドメインを含んでよい。ヒト化された抗体が細胞毒性を示すことが望ましい場合は、定常ドメインは通常、補体-固定する定常ドメインであり、そのクラスは典型的にはIgG1である。そのような細胞毒性が望ましくない場合は、定常ドメインは、IgG2クラスのものであってよい。ヒト化抗体は、2つ以上のクラス又はアイソタイプからの配列を含んでよい。
【0220】
任意に定常領域に連結された、ヒト化された軽鎖及び重鎖可変領域をコードしている核酸は、発現ベクターへ挿入される。軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにおいて、クローニングされ得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター(複数可)中の制御配列に、機能的に連結される。そのような制御配列は、シグナル配列、プロモーター、エンハンサー、及び転写終結配列を含む(Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、10029 (1989);WO 90/07861;Coら、J. Immunol. 148、1149 (1992)を参照し、これらは全ての目的に関してそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0221】
レナラーゼ結合分子の使用方法
本発明のレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)の特性を考慮し、レナラーゼ結合分子は、ヒト及び動物におけるレナラーゼ-関連状態を診断、治療又は予防するための、診断薬、治療薬及び予防薬として適している。
【0222】
概して、利用は、本発明の1又は複数のモノクローナル抗体又は結合断片の治療的又は予防的有効量を、易罹患性対象、又はレナラーゼ活性が腫瘍成長及び転移などの病的後遺症を有することが分かっている状態を示す対象へ投与することを含む。抗体Fab及びF(ab’)2断片を含む、レナラーゼ結合分子の活性形を、投与することができる。
【0223】
好ましくは、使用されるレナラーゼ結合分子は、レシピエント種と適合性があり、その結果レナラーゼ結合分子に対する免疫応答は、許容し難いほど短い循環半減期を生じないか、又は対象においてレナラーゼ結合分子に対する免疫応答を誘導する。好ましくは、投与されるレナラーゼ結合分子は、対象のFc受容体への結合及びADCC機序の活性化などの、いくつかの二次機能を発揮する。
【0224】
個体の治療は、本発明のレナラーゼ結合分子の治療的有効量の投与を含んでよい。このレナラーゼ結合分子は、以下に説明するようなキットで提供され得る。レナラーゼ結合分子は、例えば、同量の混合物として使用又は投与されるか、又は個別に順番で提供されるかもしくは全て一度に投与され得る。レナラーゼ結合分子を患者へ提供する際に、投与される薬剤の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の医学的状態、既往歴などの因子に応じて変動するであろう。
【0225】
概して、レナラーゼ結合分子の全身性投与量を投与する場合、約1ng/kg~100ng/kg、100ng/kg~500ng/kg、500ng/kg~1μg/kg、1μg/kg~100μg/kg、100μg/kg~500μg/kg、500μg/kg~1mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~100mg/kg、100mg/kg~500mg/kg(レシピエント体重)の範囲である、レナラーゼ結合分子の用量をレシピエントへ提供することが望ましいが、より少ない又はより多い用量が投与されてよい。約1.0mg/kgと少ない用量は、若干の有効性を示すことが予想される。好ましくは、約5mg/kgが、許容し得る用量であるが、最大約50mg/kgの用量レベルも、特に治療上の使用について好ましい。あるいは、1μg~100μg、1mg~100mg、又は1g~100gの範囲の量など、レナラーゼ結合分子の特定量の投与が、患者の体重を基にせずに与えられてよい。例えば、部位特異的投与は、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、脳内、脳室内、結腸内、子宮頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、経膣、経直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、眼内又は経真皮手段など、体のコンパートメント又は洞へであることができる。
【0226】
レナラーゼ結合分子組成物は、特に液体の溶液もしくは懸濁液の形状での非経口(皮下、筋肉内又は静脈内)又は任意の他の投与での使用のため;非限定的にクリーム及び坐薬などの、特に半固形での、経膣又は経直腸投与での使用のため;非限定的に錠剤又はカプセル剤の形状などでの、口腔内、又は舌下投与のため;あるいは、非限定的に散剤、点鼻液又は噴霧剤又は特定の薬剤などでの、鼻腔内;あるいは、非限定的に点眼薬など眼内へ;あるいは、歯科疾患の治療のため;あるいは、皮膚構造を修飾するか又は経真皮貼付剤中の薬物濃度を増加するかのいずれかの、ジメチルスルホキシドなどの化学エンハンサーと共に、又は皮膚へのタンパク質及びペプチド含有製剤の塗布を可能にする酸化剤(WO 98/53847)と共に、あるいは電気穿孔法などの一過性輸送経路を作製するために電界の印加、又はイオン導入法などの皮膚を通る帯電した薬物の移動を増大するためか、もしくはソノフォレーシス(米国特許第4,309,989号及び第4,767,402号)など超音波の適用によるかで、非限定的にゲル、軟膏、ローション、懸濁液又は貼付剤送達システムなどで、経真皮に:調製することができる。
【0227】
類似のアプローチにおいて、本発明のレナラーゼ結合分子の別の治療上の使用は、本モノクローナル抗体の一つに対して生じた抗イディオタイプの抗体を使用する、患者の能動免疫化である。エピトープの構造を模倣する抗イディオタイプによる免疫化は、能動的抗レナラーゼ反応を誘起することができる(Linthicum、D. S及びFarid、N. R.、Anti-idiotypes、Receptors、and Molecular Mimicry (1988)、pp 1-5及び285-300)。
【0228】
本発明のレナラーゼ結合分子は、医薬として有用な組成物を調製するために、公知の方法に従い製剤化されることができ、これによりこれらの材料、又はそれらの機能性誘導体は、医薬として許容し得る担体ビヒクルと混合され、組み合わせられる。他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンなどを含む、好適なビヒクル及びそれらの製剤は、例えば、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(第16版、Osol, A.編集、Mack Easton Pa. (1980))に説明されている。有効投与に適した医薬として許容し得る組成物を形成するために、そのような組成物は、先に説明した化合物の有効量を、適量の担体ビヒクルと一緒に含む。追加の調剤方法は、作用期間を制御するために、利用されてよい。制御放出調製品は、その化合物を複合又は吸収するポリマーの使用を通じて達成されてよい。制御放出調製品による作用持続期間を制御する別の可能性のある方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレン酢酸ビニルコポリマーなどの、高分子材料の粒子への、本発明の化合物の混入による。あるいは、これらの物質の高分子粒子への混入の代わりに、これらの物質を、例えば界面重合で、調製されたマイクロカプセル内に、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)-マイクロカプセル内に、又は、コロイド状薬物送達システム、例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル中もしくはマクロエマルション中に、捕獲することが可能である。
【0229】
この治療は、単回投与量スケジュールで、又は好ましくは、治療の最初のコースは、1~10回の個別の投与量で、それに続き別の投与量が、その反応を維持するか又は強化するのに必要な後続の時間間隔で、例えば、第二の投与量が1~4ヶ月、及び必要ならば、その後数ヶ月の後続の投与量(複数可)などで与えられる、反復投与量スケジュールで与えられてよい。好適な治療スケジュールの例は、以下を含む:(i)0、1ヶ月及び6ヶ月、(ii)0、7日及び1ヶ月、(iii)0及び1ヶ月、(iv)0及び6ヶ月、又は疾患症状を軽減するか、もしくは疾患重症度を減少することが予想される、所望の反応を誘起するのに十分な、他のスケジュール。
【0230】
本発明はまた、本発明を実行するために有用なキットも提供する。本キットは、先に説明した抗体を含むか又はこれと関連して包装した、第一の容器を含む。このキットはまた、本発明を実行するのに必要であるか又はそれを簡便にする関連した溶液を含むか又は包装した、別の容器を含んでよい。これらの容器は、ガラス、プラスチック又は箔で製造されることができ、且つバイアル、ボトル、パウチ、チューブ、バッグなどであることができる。このキットはまた、本発明を実行する手順、又は第一の容器手段に含まれる試薬の量などの分析情報などの書面の情報を含むこともできる。この容器は、書面の情報と共に、別の容器器具内、例えば、箱又はバッグ内であってよい。
【0231】
更に別の本発明の態様は、生物学的試料中のレナラーゼを検出するためのキットである。このキットは、レナラーゼのエピトープに結合する1又は複数のレナラーゼ結合分子を保持する容器、並びに複合体を形成するためのレナラーゼへの結合を目的としてレナラーゼ結合分子を使用すること、及び複合体の形成を検出し、複合体の存在又は非存在は、試料中のレナラーゼの存在又は非存在に相関することに関する説明書を含む。容器の例は、複数の試料中のレナラーゼの同時検出を可能にする、マルチウェルプレートを含む。
【0232】
組合せ療法
本発明のレナラーゼ結合分子組成物は、疾患又は障害を治療するために、別の治療的処置又は薬剤と組合せて使用することができる。例えば、本発明のレナラーゼ結合分子は、単独で、又は1又は複数の治療的に有効な薬剤又は処置と組合せて投与されてよい。他の治療的に有効な薬剤は、本発明のレナラーゼ結合分子にコンジュゲートされるか、本発明のレナラーゼ結合分子と同じ組成物へ混入されるか、又は個別の組成物として投与されてよい。他の治療的薬剤又は処置は、本発明の抗体又は関連化合物の投与前、投与時及び/又は投与後に投与されてよい。
【0233】
いくつかの実施態様において、本発明のレナラーゼ結合分子は、1又は複数の他の治療的薬剤又は処置と同時投与される。他の実施態様において、本発明のレナラーゼ結合分子は、1又は複数の他の治療的薬剤又は処置の投与とは、独立して投与される。例えば、本発明のレナラーゼ結合分子は、最初に投与され、それに続けて1又は複数の他の治療的薬剤又は処置が投与される。あるいは、1又は複数の他の治療的薬剤が最初に投与され、引き続き本発明のレナラーゼ結合分子が投与される。別の例として、処置(例えば、手術、放射線など)が最初に実行され、引き続き本発明のレナラーゼ結合分子が投与される。
【0234】
他の治療的に有効な薬剤/処置は、手術、抗新生物形成物質(化学療法薬及び放射線を含む)、抗血管新生剤、他の標的に対する抗体、小型分子、光力学療法、免疫療法、免疫増強療法、細胞毒性物質、サイトカイン、ケモカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼインヒビター、心保護薬、免疫刺激薬、免疫抑制薬、及び造血細胞の増殖を促進する薬剤を含む。
【0235】
一実施態様において、本明細書において使用される「別の治療的薬剤」は、第二の個別の治療的薬剤又は抗癌剤、すなわち、本発明のレナラーゼ結合分子「以外の」治療的薬剤又は抗癌剤である。任意の二次的治療的薬剤は、本発明の組合せ療法において使用することができる。同じく二次的治療的薬剤又は「第二の抗癌剤」は、以下の指針に従い、相加作用、より大きい相加作用及び可能性のある相乗作用を達成する観点で選択されてよい。
【0236】
組合せ抗腫瘍療法を実践するために、本発明のレナラーゼ結合分子は、別の、すなわち第二の個別の抗癌剤と組合せて、動物又は患者においてそれらの組合せ抗腫瘍作用を生じるのに有効な様式で、動物又は患者へ投与されるであろう。従ってこれらの薬剤は、腫瘍又は腫瘍血管系内のそれらの組合せた、又は同時の存在、及び腫瘍環境内でそれらの組合せた作用を生じるのに、有効量で及び有効な期間で提供されるであろう。この目標を達成するために、本発明のレナラーゼ結合分子及び第二の個別の抗癌剤は、単独の組成物中、又は異なる投与経路を使用する2つの個別の組成物としてのいずれかで、実質的に同時に、動物へ投与されてよい。
【0237】
あるいは、本発明のレナラーゼ結合分子は、例えば数分から数週間までの範囲の間隔で、第二の個別の抗癌剤に先行するか、又はそれに連続することができる。本発明のレナラーゼ結合分子及び第二の個別の抗癌剤が、個別に動物へ適用されるいくつかの実施態様において、著しい期間は、各送達の時点の間に失効することはなく、その結果各薬剤は、依然腫瘍に有利な組合せ作用を発揮することができることは、確実であろう。そのような場合において、互いに約5分以内から約1週間までの、より好ましくは互いに約12~72時間以内の、両方の薬剤と腫瘍の接触が企図され、わずか約12~48時間の遅延時間が、最も好ましい。
【0238】
個別の時間指定型の組合せ療法のための第二の治療的薬剤は、本明細書別所に考察されたものを含む、いくつかの判定基準を基に選択されてよい。しかし、投与の前又は連続した、1又は複数の第二の個別の抗癌剤の選択に関する好ましさは、望ましい場合の実質的な同時投与におけるそれらの使用を排除しない。第二の個別の抗癌剤は、本発明の主要治療的薬剤の「前に」投与されるように選択され、且つ増大した及び潜在的に相乗的な作用を達成するようにデザインされた。
【0239】
本発明の主要治療的薬剤に「連続して」投与されるように選択され、且つ増大した及び潜在的に相乗的な作用を達成するようにデザインされた第二の個別の抗癌剤は、主要治療的薬剤の作用から恩恵を受ける薬剤を含む。従って、連続投与のための効果的第二の個別の抗癌剤は、転移を阻害する血管新生阻害剤;インビボにおいて悪性細胞からアクセス可能となり始める細胞内結合パートナー分子に特異的な抗体などの、壊死性腫瘍細胞を標的化する薬剤(米国特許第5,019,368号、第4,861,581号及び第5,882,626号、各々具体的に引用により本明細書中に組み込まれている);化学療法薬;並びに、任意の腫瘍細胞を攻撃する抗腫瘍細胞免疫複合体を含む。
【0240】
本発明のレナラーゼ結合分子はまた、癌免疫療法と組合せて投与されることもできる。癌免疫療法は、対象の癌細胞に対する体液性免疫応答、又は対象の癌細胞に対する細胞媒介性免疫反応、又は対象の癌細胞に対する体液性反応と細胞媒介性反応の組合せを誘起するようにデザインされたものであることができる。本発明のレナラーゼ結合分子との組合せにおいて有用な癌免疫療法の非限定的例は、癌ワクチン、DNA癌ワクチン、養子細胞療法、養子免疫療法、CAR T細胞療法、抗体、免疫増強化合物、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL-2など)、インターフェロン(IFN-αなど)、及びチェックポイントインヒビター(例えば、PD-1インヒビター、CTLA-4インヒビターなど)を含む。
【0241】
一部の状況において、治療期間を著しく延長することが望ましいことがあり、ここでは各投与の間に、数日間(2、3、4、5、6又は7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8)、又は更に数ヶ月間(1、2、3、4、5、6、7又は8)が経過する。これは、本発明の主要治療的薬剤などの、一つの治療が、実質的に腫瘍を破壊することが意図され、並びに血管新生阻害剤の投与などの、別の治療が、微小転移又は腫瘍再成長を防止することが意図された状況において、有利であろう。しかし抗血管新生は、創傷治癒を有効にするために、術後の管理期間(careful time)に投与されるべきである。その後血管新生阻害剤は、患者の生存期間にわたり投与されてよい。
【0242】
また、本発明のレナラーゼ結合分子又は第二の個別の抗癌剤のいずれかの2種以上の投与が利用されることも想起される。本発明のレナラーゼ結合分子及び第二の個別の抗癌剤は、互換的に、隔日もしくは隔週で投与されてよいか;又は、一連の一つの薬剤は、一連の他方の治療が続くように与えられてよい。任意の事象において、組合せ療法を使用し、腫瘍退縮を達成するために必要とされる全ては、両方の薬剤が、投与時点に関わりなく、抗腫瘍作用を発揮するのに有効な組合せ量で送達されることである。
【0243】
化学療法薬は、本発明のレナラーゼインヒビターと組合せて使用することができる。化学療法薬は、増殖している腫瘍細胞を死滅させ、全般的治療により生み出される壊死領域を増強することができる。
【0244】
本発明の一態様は、本発明のレナラーゼインヒビターを使用し、癌を治療又は予防する方法を提供する。当業者は、患者における癌の治療又は予防は、非限定的例として、癌細胞を死滅又は破壊させ、並びに癌細胞の増殖又は細胞分裂の速度を遅くすることを含むことを理解するであろう。当業者はまた、癌細胞は、非限定的例として、原発性癌細胞、癌幹細胞、転移性癌細胞であることができることも理解するであろう。以下は、開示された方法及び組成物により治療され得る癌の非限定的例である:急性リンパ芽球;急性骨髄性白血病;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;虫垂癌;基底細胞癌;肝外胆管癌;膀胱癌;骨癌;骨肉腫及び悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、中枢神経系非定型奇形様/ラブドイド腫瘍、小児;中枢神経系胎児性腫瘍;小脳星状細胞腫;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;頭蓋咽頭腫;上衣芽細胞腫;上衣細胞腫;髄芽腫;髄上皮腫;中間分化の松果体実質腫瘍;テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽細胞腫;視覚伝導路及び視床下部の神経膠腫;脳及び脊髄腫瘍;乳癌;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;カルチノイド腫瘍、胃腸管;中枢神経系非定型奇形様/ラブドイド腫瘍;中枢神経系胎児性腫瘍;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸癌;脊索腫、小児;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖症候群;結腸癌;結腸直腸癌;頭蓋咽頭腫;皮膚T細胞性リンパ腫;食道癌;ユーイング肉腫ファミリー腫瘍;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼内黒色腫;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(胃腸)癌;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);胚細胞腫瘍、頭蓋外;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児大脳星状細胞腫;神経膠腫、小児視覚伝導及び視床下部;ヘアリーセル白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌;ランゲルハンス細胞組織球症;ホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視覚伝導神経膠腫;眼内黒色腫;島細胞腫;腎臓(腎細胞)癌;ランゲルハンス細胞組織球増加症;喉頭癌;白血病、急性リンパ芽球性;白血病、急性骨髄性;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、ヘアリー細胞;口唇及び口腔癌;肝臓癌;肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ腫、AIDS-関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T-細胞性;リンパ腫、ホジキン;リンパ腫、非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ヴァルデンステローム;骨の悪性線維性組織球種及び骨肉腫;髄芽腫;メラノーマ;メラノーマ、眼球内(眼);メルケル細胞癌;中皮腫;原発不明の転移性扁平頸部癌;口腔癌;多発性内分泌腺腫症候群、(小児);多発性骨髄腫/形質細胞腫;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖症候群、慢性;鼻腔及び副鼻腔癌;鼻咽腔癌;神経芽細胞腫;非-小細胞肺癌;口内癌;口腔癌;口腔咽頭癌;骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性潜在的腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、島細胞腫;乳頭腫症;副甲状腺癌;陰茎癌;咽頭癌;クロム親和細胞腫;傍神経節腫;中間分化の松果体実質腫瘍;松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍;下垂体腫瘍;形質細胞腫/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎盂及び尿管、移行上皮癌;15番染色体上のNUT遺伝子が関与する気道癌腫;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺癌;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫、軟組織;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚癌(非メラノーマ);皮膚癌(メラノーマ);皮膚癌腫、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟部組織の肉腫;扁平上皮癌、原発不明の扁平頸部癌、転移性;胃腸(胃)癌;テント上原始神経外胚葉性腫瘍;T-細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;咽喉癌;胸腺腫及び胸腺癌腫;甲状腺癌;腎盂及び尿管の移行上皮癌;トロホブラスト腫瘍、妊娠性;尿道癌;子宮癌、子宮内膜;子宮肉腫;膣癌;外陰癌;ワルデンストレームマクログロブリン血症;並びに、ウィルムス腫瘍。
【0245】
一実施態様において、本発明は、手術、化学療法、化学療法薬、放射線治療、もしくはホルモン療法又はそれらの組合せなどの、癌の補完療法により、本発明のレナラーゼ結合分子の投与の前に、同時に又は連続して対象を治療することを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0246】
化学療法薬としては、細胞毒性物質(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムチンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンα-2a組換え品、パクリタキセル、テニポシド、及びストレプトゾシン)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はスルホン酸エチル)、アルキル化剤(例えば、アサリー(asaley)、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラト白金、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シスプラチン、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドラガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、及びYoshi-864)、抗有糸分裂薬(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、マイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、ビンブラスチン硫酸塩、及びビンクリスチン硫酸塩)、植物アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン及びタキソテレ)、生物製剤(例えば、αインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、及びインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、及びモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCl、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサスラゾール(oxanthrazole)、ルビダゾン、VM-26及びVP-16)、並びに合成品(例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、シス-ジアンミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミソール、ヘキサメチルメラミン、オールトランス型レチノイン酸、グリアデル及びポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0247】
抗増殖剤は、細胞の増殖を減少する化合物である。抗増殖剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、酵素、生物反応修飾因子、混合型(miscellaneous)薬剤、ホルモン及びアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及びロイプロリド酢酸塩)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェンクエン酸塩及びそのアナログ、トレミフェン、ドロロキシフェン及びロロキシフェン)が挙げられる。具体的抗増殖剤の追加例としては、レバミソール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム-89クロリド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デキスラゾキサン、及びオンダンセトロンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0248】
本発明のレナラーゼ結合分子は、単独で、又は細胞毒性/抗新生物形成性薬剤及び血管新生阻害剤を含む、他の抗腫瘍剤と組合せて投与することができる。細胞毒性/抗新生物形成性薬剤は、癌細胞を攻撃し且つ死滅させる薬剤として定義される。一部の細胞毒性/抗新生物形成性薬剤は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、及びダカバジンがある。他の細胞毒性/抗新生物形成性薬剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗薬、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキセート、メルカプトプリン、アザチオプリム、及びプロカルバジンがある。他の細胞毒性/抗新生物形成性薬剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトマイシンC、及びダウノマイシンがある。これらの化合物に関して、市販されている多くのリポソーム製剤が存在する。更に他の細胞毒性/抗新生物形成性薬剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)がある。これらとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドが挙げられる。混合型細胞毒性/抗新生物形成性薬剤としては、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、及びビンデシンが挙げられる。
【0249】
血管新生阻害剤は、当業者に周知である。本開示の方法及び組成物において使用するのに好適な血管新生阻害剤は、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。他の公知の血管新生のインヒビターとしては、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(α及びβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、並びにメタロプロテイナーゼ-1及び-2(TIMP-1及び-2)組織阻害因子が挙げられる。抗血管新生活性を伴う、ラゾキサン、トポイソメラーゼIIインヒビターなどの、トポイソメラーゼを含む小型分子も、使用することができる。
【0250】
開示された化合物と組合せて使用することができる他の抗癌剤は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクォン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオン酸塩;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミツルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロキシウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルオロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組換え型インターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲステロール酢酸塩;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;アルブミン-結合型パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフル;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロン酢酸塩;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩。他の抗癌剤は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側化形態形成タンパク質-1;抗男性ホルモン物質、前立腺癌;抗エストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィディコリン;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節因子;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGFインヒビター;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来インヒビター;カルゼレシン;カゼインキナーゼインヒビター(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;塩素;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタンセラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロダイデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクォン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメネ;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エクセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシン塩酸塩;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼインヒビター;ゲムシタビン;グルタチオンインヒビター;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活性ペプチド;インスリン様増殖因子1受容体インヒビター;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;4-イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトールスタチン;レトロゾール;白血病阻止因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミソール;リアロゾール;線状ポリアミンアナログ;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;細胞溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシンインヒビター;マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIFインヒビター;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子インヒビター;多発性腫瘍抑制因子1-ベース療法;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;窒素酸化物の抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導薬;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸塩;ホスファターゼインヒビター;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子インヒビター;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニソン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソームインヒビター;プロテインA-ベース免疫変調成分;プロテインキナーゼCインヒビター;プロテインキナーゼCインヒビター、微細藻類;タンパク質チロシンホスファターゼインヒビター;プリンヌクレオシドホスホリラーゼインヒビター;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質転移酵素インヒビター;rasインヒビター
;ras-GAPインヒビター;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe186エチドロン酸;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来インヒビター1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達インヒビター;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプタートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞インヒビター;幹細胞分裂インヒビター;スチピアミド;ストロメライシンインヒビター;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフル;テルラピリリウム;テロメラーゼインヒビター;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBCインヒビター;ウベニメクス;尿生殖洞-由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;イミリムマブ(imilimumab);ミルタザピン;BrUOG 278;BrUOG 292;RAD0001;CT-011;フォルフィリノックス;ティピファルニブ;R115777;LDE225;カルシトリオール;AZD6244;AMG655;AMG479;BKM120;mFOLFOX6;NC-6004;セツキシマブ;IM-C225;LGX818;MEK162;BBI608;MEDI4736;べムラフェニブ;イピリムマブ;イボルマブ(ivolumab);ニボルマブ;パノビノスタット;レフルノミド;CEP-32496;アレムツズマブ;ベバシズマブ;オファツムマブ;パニツムマブ;ペムブロリズマブ;リツキシマブ;トラスツズマブ;STAT3インヒビター(例えば、STA-21、LLL-3、LLL12、XZH-5、S31-201、SF-1066、SF-1087、STX-0119、クリプトタンシノン、クルクミン、ジフェルロイルメタン、FLLL11、FLLL12、FLLL32、FLLL62、C3、C30、C188、C188-9、LY5、OPB-31121、ピリメタミン、OPB-51602、AZD9150など);低酸素誘導因子1(HIF-1)インヒビター(例えば、LW6、ジゴキシン、ローレンジテルペノール(laurenditerpenol)、PX-478、RX-0047、ビテキシン、KC7F2、YC-1など)並びにジノスタチンスチマラマー。一実施態様において、抗癌剤は、5-フルオロウラシル、タキソール、又はロイコボリンである。
【0251】
診断方法
一部の実施態様において、比較物と比較した、対象の細胞、組織、又は体液中の、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルの変化(例えば増加)が、疾患又は障害の診断、疾患又は障害の重症度の評価、並びに疾患又は障害の治療の作用又は有効性のモニタリングのための、マーカーとして、本発明の方法において使用される。様々な実施態様において、疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓の虚血状態)、心血管疾患又は障害(例えば、高血圧、肺高血圧症、収縮期高血圧、糖尿病性高血圧、無症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症など)、癌、心疾患又は障害、腎疾患又は障害、消化管疾患又は障害、肝疾患又は障害、肺疾患又は障害、膵疾患又は障害(例えば膵炎)、精神疾患又は障害(例えば、うつ病、不安症など)、又は神経系疾患又は障害である。
【0252】
一実施態様において、本発明は、対象の生物学的試料中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルを評価することにより、対象の疾患又は障害を診断する方法である。一実施態様において、対象の生物学的試料は、細胞、組織、又は体液である。レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルが評価され得る体液の非限定的例は、血液、血清、血漿及び尿を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、対象の生物学的試料中の、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルは、比較物中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片レベルと比較される。比較物の非限定的例は、陰性対照、陽性対照、対象の予想される正常バックグラウンド値、対象の過去の正常バックグラウンド値、対象がその一員である集団の予想される正常バックグラウンド値、又は対象がその一員である集団の過去の正常バックグラウンド値を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、本疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓虚血状態)、心血管疾患又は障害(例えば、高血圧、肺高血圧症、収縮期高血圧、糖尿病性高血圧、無症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症など)、癌、心疾患又は障害、腎疾患又は障害、消化管疾患又は障害、肝疾患又は障害、肺疾患又は障害、膵疾患又は障害(例えば膵炎)、精神疾患又は障害(例えば、うつ病、不安症など)、又は神経系疾患又は障害である。一部の実施態様において、診断方法は、診断される疾患又は障害に関する患者の治療の更なる工程を含む。
【0253】
別の実施態様において、本発明は、対象の生物学的試料中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルを評価することによる、対象の疾患又は障害の重症度を評価する方法である。一実施態様において、対象の生物学的試料は、細胞、組織、又は体液である。レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルが評価され得る体液の非限定的例は、血液、血清、血漿及び尿を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、対象の生物学的試料中の、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルは、比較物中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片レベルと比較される。比較物の非限定的例は、陰性対照、陽性対照、対象の予想される正常バックグラウンド値、対象の過去の正常バックグラウンド値、対象がその一員である集団の予想される正常バックグラウンド値、又は対象がその一員である集団の過去の正常バックグラウンド値を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、本疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓虚血状態)、心血管疾患又は障害(例えば、高血圧、肺高血圧症、収縮期高血圧、糖尿病性高血圧、無症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症など)、癌、心疾患又は障害、腎疾患又は障害、消化管疾患又は障害、肝疾患又は障害、肺疾患又は障害、膵疾患又は障害(例えば膵炎)、精神疾患又は障害(例えば、うつ病、不安症など)、又は神経系疾患又は障害である。一部の実施態様において、重症度の評価方法は、その疾患又は障害に関する患者の治療の更なる工程を含む。
【0254】
別の実施態様において、本発明は、対象の生物学的試料中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルを評価することによる、対象の疾患又は障害の治療の作用をモニタリングする方法である。一実施態様において、対象の生物学的試料は、細胞、組織、又は体液である。レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルが評価され得る体液の非限定的例は、血液、血清、血漿及び尿を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、対象の生物学的試料中の、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルは、比較物中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片レベルと比較される。比較物の非限定的例は、陰性対照、陽性対照、対象の予想される正常バックグラウンド値、対象の過去の正常バックグラウンド値、対象がその一員である集団の予想される正常バックグラウンド値、又は対象がその一員である集団の過去の正常バックグラウンド値を含むが、これらに限定されるものではない。様々な実施態様において、本疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓虚血状態)、心血管疾患又は障害(例えば、高血圧、肺高血圧症、収縮期高血圧、糖尿病性高血圧、無症候性左心室機能障害、慢性うっ血性心不全、心筋梗塞、心調律異常、アテローム性動脈硬化症など)、癌、心疾患又は障害、腎疾患又は障害、消化管疾患又は障害、肝疾患又は障害、肺疾患又は障害、膵疾患又は障害(例えば膵炎)、精神疾患又は障害(例えば、うつ病、不安症など)、又は神経系疾患又は障害である。一部の実施態様において、治療の作用をモニタリングする方法は、その疾患又は障害に関する患者の治療の更なる工程を含む。
【0255】
様々な実施態様において、対象は、ヒト対象であり、且つ任意の人種、性別及び年齢であってよい。代表的対象は、疾患又は障害を経験していることが疑われるもの、疾患又は障害を経験していると診断されたもの、疾患又は障害を有すると診断されたもの、並びに疾患又は障害を発症するリスクがあるものを含む。
【0256】
本明細書に開示された本発明の方法から得られた情報は、単独で、又は対象からのもしくは対象から得られた生物学的試料からの他の情報(例えば、病態、病歴、生命徴候、血液化学など)と組合せて使用することができる。
【0257】
本発明の診断方法において、対象から得られた生物学的試料は、それらに含まれたレナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルについて評価される。一実施態様において、生物学的試料は、本明細書記載の方法において有用な少なくともレナラーゼポリペプチドの断片を含有する試料である。
【0258】
本発明の方法のその他の様々な実施態様において、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルが、比較物の対照と比較した場合に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、又は少なくとも1000%だけ増加した場合に、レナラーゼのレベルは増加したと決定される。様々な実施態様において、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片の増加したレベルは、疾患又は障害の指標である。様々な実施態様において、この疾患又は障害は、急性腎不全(すなわち、急性尿細管壊死、又はATN、腎臓虚血状態)、心血管疾患、膵炎、肝炎、腎臓の炎症障害、及び癌である。
【0259】
本発明の方法において、対象由来の生物学的試料は、患者から得られた生物学的試料中の、レナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルについて評価される。生物学的試料中のレナラーゼ、又はレナラーゼ断片のレベルは、生物学的試料中のレナラーゼポリペプチド又は断片の量、生物学的試料中のレナラーゼmRNA又は断片の量、生物学的試料中のレナラーゼ活性(例えば、酵素活性、基質結合活性、受容体結合活性など)の量、又はそれらの組合せを評価することにより、決定することができる。一部の実施態様において、生物学的試料中のレナラーゼのレベルは、本明細書別所に記載された本発明のレナラーゼ結合分子の少なくとも一つを使用するアッセイにおいて決定される。
【0260】
本発明の方法の様々な実施態様において、患者から得られた生物学的試料のレナラーゼレベルを測定する方法は、イムノクロマトグラフィーアッセイ、イムノブロットアッセイ、Luminexアッセイ、ELISAアッセイ、ELISPOTアッセイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、質量分析アッセイ、放射免疫測定(RIA)、放射免疫拡散アッセイ、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析アッセイ、オクタロニー免疫拡散アッセイ、逆相タンパク質マイクロアレイ、ロケット免疫電気泳動アッセイ、免疫組織染色アッセイ、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ、FACS、酵素-基質結合アッセイ、酵素アッセイ、発色団、発蛍光団、もしくは放射性基質などの検出可能な分子を利用する酵素アッセイ、そのような基質を利用する基質結合アッセイ、そのような基質を利用する基質置換アッセイ、並びにタンパク質チップアッセイを含むが、これらに限定されるものではない(同じく、2007、Van Emon、Immunoassay and Other Bioanalytical Techniques、CRC Press;2005、Wild、Immunoassay Handbook、Gulf Professional Publishing;1996、Diamandis及びChristopoulos、Immunoassay、Academic Press;2005、Joos、Microarrays in Clinical Diagnosis、Humana Press;2005、Hamdan及びRighetti、Proteomics Today、John Wiley and Sons; 2007も参照)。一部の実施態様において、生物学的試料中のレナラーゼのレベルは、本明細書別所に記載されている本発明のレナラーゼ結合分子の少なくとも一つを使用するアッセイにより、測定される。
【0261】
キット
本発明はまた、本発明のレナラーゼ結合分子(例えば抗体など)、又はそれらの組合せ、並びに例えば本明細書別所に説明されたような治療的処置又は非治療使用として、個体にレナラーゼ結合分子又はその組合せを投与することを説明する指示書を含むキットも含む。実施態様において、このキットは、例えば本発明のレナラーゼ結合分子の個体への投与前に、本発明のレナラーゼ結合分子又はその組合せを含有する治療的組成物を溶解又は懸濁するのに適している、(好ましくは無菌の)医薬として許容し得る担体を更に含む。任意に、このキットは、レナラーゼ結合分子を投与するためのアプリケーターを含む。
【実施例0262】
実験的実施例
本発明はここで、以下の実施例を参照し説明される。これらの実施例は、例証することのみを目的として提供され、且つ本発明は、これらの実施例に限定されるとは少しも解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される内容の結果としての明らかになる任意の及び全ての変動を包含すると解釈されるべきである。
【0263】
更なる説明なしに、当業者は、先行する説明及び以下の例証的実施例を用い、本発明の化合物を作製及び利用し、且つ請求された方法を実践することができると考えられる。従って以下の作業実施例は、本発明の好ましい実施態様を具体的に指摘し、且つ本開示の残りの部分を決して限定するものとは解釈されない。
【0264】
実施例1:癌治療のための新規組成物及び方法
本明細書記載の結果は、癌を治療する新規組成物及び方法の有用性を裏付けるデータを提供する。
【0265】
これらの実験において利用される材料及び方法は、ここで説明される。
【0266】
ウサギにおける抗レナラーゼモノクローナル抗体の合成
タンパク質抗原調製:レナラーゼ-1 cDNAを、pET27発現ベクター(Novagen)へサブクローニングし、次にこれを使用し、細菌のBL21 DE3株(Novagen)を形質転換した。レナラーゼタンパク質を、標準手順により、細菌の封入体から単離した。簡単に述べると、細菌の封入体を単離し、カオトロピック塩と還元剤の組合せ中に可溶化した。このタンパク質を、この可溶化緩衝液の希釈により、リフォールディングした。可溶化し且つリフォールディングしたタンパク質の、リン酸緩衝食塩水(PBS)への最終透析後、このタンパク質を、抗原として用い、ウサギを免疫化した。
【0267】
ペプチド抗原調製:免疫化のためのペプチドを、レナラーゼ-1又は2ポリペプチドのいくつかの領域をカバーし、且つ後続のコンジュゲーションにおいて使用するN又はC-末端システイン残基を含むように設計した。ペプチドを、標準ペプチド合成手順を用いて作製し、システイン残基を介して、スクリーニング目的のウシ血清アルブミン(BSA)又は動物免疫化のためのアジュバントであるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のいずれかに、コンジュゲートした。
【0268】
免疫化及び抗体選択:標準手順を使用し、KLH-コンジュゲートされたペプチド抗原及び全タンパク質抗原の各々を使用し、複数用量注射プロトコールを使用し、6匹のウサギを免疫化した。各ウサギからの免疫化前及び後の試験用採血(bleeds)を、コートされた抗原としてBSA-ペプチドコンジュゲート又はリフォールディングした全タンパク質のいずれかによる、標準ELISAプロトコール(下記プロトコール参照)を使用し、抗レナラーゼ力価について試験した。抗レナラーゼについて最高力価及びウェスタンブロット分析における内因性レナラーゼについての所望の検出特性を有する抗血清を持つウサギを、更なる分析のために選択した。選択した動物を、抗レナラーゼポリクローナル抗体の産生に関する終末期採血において使用するか、又は選択したウサギ脾臓はリンパ球収集の、いずれかにした。標準細胞融合後、各動物由来のハイブリドーマプールを、先に説明した同じペプチド及び全タンパク質ELISAフォーマットで、条件細胞培養培地を用いて、スクリーニングした。最高抗レナラーゼ力価及び好ましい内因性レナラーゼ結合特徴を伴うハイブリドーマを選択し、サブクローニングした。クローニングしたハイブリドーマを引き続き、増量し、モノクローナル抗体を、条件細胞上清から精製した。
【0269】
ハイブリドーマ培養及び増量:ハイブリドーマ細胞を、55μM 2-メルカプトエタノールを補充した、ハイブリドーマ-SFM無血清培地(Gibco/Invitrogen)において培養した。抗体精製のために、15mL培養培地中に浮遊させた107ハイブリドーマ細胞を、CELLine 1000バイオリアクターフラスコ(Wilson Wolf)の細胞コンパートメントに適用し、且つ上側コンパートメントを、1L培養培地で満たした。7日間連続培養した後、細胞コンパートメント内容物(細胞及び分泌された抗体を含む)を除去し、細胞を、1000gで5分間の遠心分離により、ペレット化した。上清を回収し、抗体精製の前に細胞デブリを除去するために、10,000gで15分間遠心分離し、濾過した(0.2μM)。
【0270】
抗体精製:抗レナラーゼモノクローナル抗体のために、予め透明化し馴化したハイブリドーマ上清を、予め平衡化したプロテインAアフィニティカラム(GE life sciences)上に、ポンプにより定圧で送った。このカラムを、20カラム容積のPBS(pH7.4)により洗浄した。抗体を、0.1Mグリシン(pH2.5)中で、カラムから溶離し、トリス緩衝液を用い、直ちに中和した。純粋な抗体を、過剰量PBS(pH7.4)に対して透析し、濾過滅菌し、アリコートで、-80℃又は4℃のいずれかで貯蔵した。ペプチド-コンジュゲート又は全レナラーゼタンパク質のいずれかの免疫原に対して産生された抗レナラーゼポリクローナル抗体に関して、終末期ウサギ採血血清を、プロテインAアフィニティカラム上を、最初に通過させた。このプロテインAカラムからの全精製したIgGプールを、PBS(pH7.4)に対して透析した。抗レナラーゼ抗体を更に、プールを、関連ペプチド抗原又は全レナラーゼタンパク質のいずれかとコンジュゲートされたActigel ALDカラム(Sterogene)を通過させることにより精製した(Actigel-抗原コンジュゲーションは、製造業者の説明書に従い、プロトコールを完了した)。このカラムを、PBSにより洗浄し、結合したIgGを、0.1Mグリシン(pH2.5)により溶離した。精製したIgGを、トリス緩衝液を用いて中和し、PBSに対して透析した。
【0271】
全般的ELISAスクリーニングアッセイ:組換えレナラーゼタンパク質又はレナラーゼペプチド-BSAコンジュゲートの100ng/ウェルを、96ウェルマイクロタイタープレートへ、4℃で一晩のインキュベーションにより結合させた。このプレートを、0.05%Tween-20を含有するリン酸-緩衝食塩水(PBST)中の5%ミルク溶液により、33℃で1時間ブロックした。レナラーゼ抗体採血を、PBS中に希釈し、50μLを各ウェルに添加した。33℃で1時間インキュベーションした後、プレートをPBSTで3回すすいだ。抗ウサギ-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた抗体(Dako、PBST中0.25μg/mLに希釈した)50μLを、各ウェルに添加し、プレートを、33℃で45分間インキュベーションした。このプレートを、PBSTで3回、及びPBSで1回洗浄した。100μLの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を、各ウェルに添加し、プレートを、室温でおよそ5分間インキュベーションした。この反応を停止するために、2N H2SO4の100μLを各ウェルに添加した。プレートを、分光光度計において、450nmで測定した。
【0272】
全般的サンドイッチELISAアッセイ:典型的には、リン酸-緩衝食塩水(PBS)中の400ng/ウェルの捕獲抗体を、96ウェルマイクロタイタープレートへ、4℃で一晩のインキュベーションにより結合させた。このプレートを、PBS中の8%無脂肪ドライミルク(NFDM)の溶液により、33℃で1時間ブロックした。レナラーゼを含有する試料を、0.05%Tween-20を含有するPBS(PBST)に希釈し、50μLを各ウェルに添加した。33℃で1時間インキュベーションした後、プレートをPBSTで3回すすいだ。ビオチン化された抗体プローブを、PBST中で4μg/mLに希釈し、50μLを各ウェルに添加した。33℃で1時間インキュベーションした後、プレートを、PBSTで3回洗浄した。検出のために、0.4μg/mLに希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ-コンジュゲートされた(HRP)ニュートラアビジン(NA-HRP)の50μLを、各ウェルに添加し、プレートを室温で45分間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを、PBSTで3回、及びPBSで1回洗浄した。HRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、100μL/ウェルで添加し、プレートを、室温でおよそ5分間インキュベーションした。この反応を停止するために、2N H2SO4の100μLを各ウェルに添加した。プレートを、分光光度計において、450nmで測定した。
【0273】
ウェスタンブロッティング手順:タンパク質試料を、4~20%トリス-グリシン勾配ゲル(Invitrogen)上で分解した。タンパク質を、ゲルから、XCell IIブロットモジュール(Invitrogen)を使用し、ポリビニルジフッ化物(PVDF)メンブレンへ移した。PVDFメンブレンを、0.1%Tween-20を含有するリン酸-緩衝食塩水(PBST)中の5%無脂肪粉ミルクの溶液により、室温で1時間ブロックした。その後ブロッキング緩衝液を除去し、メンブレンを、検出抗体と共にインキュベーションし、5%ミルク/PBSTの20mL中に希釈した。室温で1時間インキュベーションした後、メンブレンを、PBSTで各10分間、3回洗浄した。抗ウサギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(Dako、5%ミルク/PBST中0.25μg/mLに希釈)の20mLを、メンブレンに適用し、更に室温で1時間インキュベーションした。このメンブレンを、PBSTで各10分間、3回洗浄した。過剰なPBSTを、メンブレンから吸引し、メンブレンの表面を覆うのに十分な増強化学発光(ECL)プラス試薬(GE Lifesciences)を適用し、1分間インキュベーションした。その後過剰なECLプラス試薬を吸引し、メンブレンを、プラスチックフィエルム中に包んだ。タンパク質バンドを、メンブレンのHyperfilm-ECL(GE Lifesciences)への曝露により、可視化し、これは自動フィルム現像装置(Konica)を用いて処理した。
【0274】
ペプチド-抗原特異性ELISA:PBS中に100ng/ウェルに希釈した、ウシ血清アルブミン(BSA)-コンジュゲートされたレナラーゼペプチド抗原を、96ウェルマイクロタイタープレートに、4℃で一晩のインキュベーションにより結合させた。このプレートを、PBS中8%NFDMの溶液により、33℃で1時間ブロックした。ペプチド抗原を、それに対して産生された抗体、又は異なる抗原に対して産生された抗体の連続希釈物により、プローブした。抗体の出発濃度は、典型的には5μg/mLであり、2倍希釈工程で、0.05%Tween-20を含有するPBS(PBST)中に調製した。33℃で1時間インキュベーション後、プレートを、PBSTにより3回洗浄した。抗体結合を、50ng/mLのHRP-コンジュゲートされた抗ウサギIgGの50μL/ウェルでの添加により、アッセイした。このプレートを、室温で40分間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを、PBSTで3回、及びPBSで1回洗浄した。HRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、100μL/ウェルで添加し、プレートを、室温でおよそ5分間インキュベーションした。この反応を停止するために、2N H2SO4の100μLを各ウェルに添加した。プレートを、分光光度計において、450nmで測定した。
【0275】
エピトープ結合の特異性:細菌で発現されたレナラーゼアイソフォームを、PBS中100ng/ウェルに希釈し、96ウェルマイクロタイタープレートへ、4℃で一晩インキュベーションすることにより、結合させた。プレートを、PBS中8%NFDMの溶液により、33℃で1時間ブロックした。レナラーゼタンパク質を、典型的には1μg/mLで始まり、異なるビオチン化された抗体と混合した、コンジュゲートされない抗体の連続希釈物により、プローブした。ビオチン化された抗体の濃度は、125ng/ウェルで一定に維持した。両方の抗体を、PBST中で一緒に混合し、50μL/ウェルの1回添加として適用した。33℃で1時間インキュベーション後、プレートを、PBSTにより3回すすいだ。ビオチン化された抗体のレナラーゼへの結合を、0.4ng/mLのHRP-コンジュゲートされたニュートラアビジン(HRP-NA)の50μL/ウェルでの添加により、アッセイした。このプレートを、室温で40分間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを、PBSTで3回、及びPBSで1回洗浄した。HRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、100μL/ウェルで添加し、プレートを、室温でおよそ5分間インキュベーションした。この反応を停止するために、2N H2SO4の100μLを各ウェルに添加した。プレートを、分光光度計において、450nmで測定した。
【0276】
抗体親和性のBiacore測定:結合試験を、Biacore T100を本質的に説明されたように用いて行った(Guo Xら、2016, Scientific Reports, 6:22996)。アッセイは、流動緩衝液として、25mMトリス(pH8)、150mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.005%Tween-20及び0.1mg/mL BSAを用い、25℃で完了した。ビオチン化された抗体を、個別のストレプトアビジンセンサーチップフローセルに捕獲し、精製し、組換えレナラーゼ-1を、チップの表面上に注入した。
【0277】
ヒト化抗レナラーゼモノクローナル抗体の合成及び特徴決定
ヒト化戦略及びプロトコール:M28及びM42由来の相補性決定領域(CDR)は、標準方法(Nelson B, 2012, Methods in molecular biology, 899:27-41)を用い、ファージミド内のFab抗体断片フォーマットの4D5(ハーセプチン)フレームワークにグラフトした。生じるアミノ酸組成物を含む、このCDRグラフティングに使用したオリゴヌクレオチドは、表1に列挙している。加えて、HC-A71(Chothiaに従い番号付け(Chothia Cら、1987, Journal of molecular biology, 196(4):901-17))は、K71又はR71を、各々、M28及びM42へ変更し、親M28及びM42 CDR-H2を収容した。オリゴヌクレオチド-方向付けた変異誘発を使用し、親和性成熟ライブラリーM28及びM42バリアントを構築した。個々のM28 CDR-L3、-H1、-H2、及び-H3並びにM42 CDR-L1、-H1、-H2、及び-H3を、個別のライブラリーとして、多様化(diversification)のために標的化した。適用可能なCDRを最初に、表1に列挙したオリゴヌクレオチドを使用し、STOPコドンと置き換え、親和性成熟ライブラリーのためのSTOP鋳型を作製した。これらのSTOP鋳型を次に、標準プロトコール(Nelson B, 2012, Methods in molecular biology, 899:27-41)を使用し、縮重位置でのヌクレオチド比が、親のヌクレオチドの70%及び互いのヌクレオチドの10%に調節される、「ソフトランダム化(soft randomization)」戦略により多様化した、表1に列挙したオリゴヌクレオチドを使用し、親和性成熟ライブラリー(M28について4及びM42について4)の作製のために使用した。
【0278】
ヒト及びマウスのレナラーゼに対し交差反応し且つファージELISAに方向付けられたより高い親和性のバリアントの選択を、説明されたように行った(Nelson B、2012, Methods in molecular biology, 899:27-41;Reshetnyak AVら、2013, Proc of Nat Acad of Sci of the USA, 110(44):17832-7)。簡単に延べると、ライブラリーファージプールを、96-ウェルMaxisorpプレート(Nunc)上にコートされたヒトレナラーゼ(hRNLS)又はマウスレナラーゼ(mRNLS)の交互ラウンドを使用する、結合選択の3-5ラウンドでサイクルした。3-5ラウンドの選択後、個々のクローンの特異的結合を、説明されたような、ファージELISAにより評価した(Reshetnyak AVら、2013, Proc of Nat Acad of Sci of the USA, 110(44):17832-7)。ストレプトアビジン(New England Biolabs)に比べ、hRNLS及びmRNLS結合に関して少なくとも10倍大きいシグナルを示したクローンを、DNAシークエンシングに供し、ファージ-ディスプレイしたFabsの配列を解読した。
【0279】
3つの交差反応性M28バリアントを単離し、2つは複数のCDRに対する変化を伴い、これは、ライブラリー構築又は抗体選択時の組換えを指摘している。バリアントCDRは、標準方法を用い、系統的に組合せ、1のバリアントCDRから4バリアントCDRまでの範囲の変化を伴う、23の独特なバリアントを誘導した。23のバリアント全ては、溶液中競合ELISA(Reshetnyak AVら、, 2013, Proc of Nat Acad of Sci of the USA, 110(44):17832-7)を使用し、順位序列した(rank ordered)。マルチポイントELISA、及び細胞-ベースの試験、表面プラズモン共鳴、及びインビボ試験のために、6のバリアントM28-K2、M28-K5、M28-K9、M28-13、M28-14、及びM28-19を、マウスIgG1に対する再編成(ヒトFvとのキメラ)のために選択した。
【0280】
8の交差反応性M42バリアントを単離し、各々は、1つのCDRに対する変化を伴った。マルチポイントELISAを使用し、2つのCDR-H2バリアントと2つのCDR-H3バリアントの間で順位序列した。各CDR-H2及びCDR-H3に関する1つのバリアントを選択し、CDRを、合計11のバリアントについて組合せた。これらの11のバリアントを、溶液中競合ELISAに供し、順位序列した。3のバリアントM42-K31、M42-K34、及びM42-35を、マウスIgG1に対する再編成(ヒトFvとのキメラ)のために選択した。
【0281】
IgG1の転換、発現及び精製:バリアント由来の軽鎖Fv断片を、5’EcoRI部位及び3’BstAPI部位を含むようにPCR増幅し、これをマウスIgGκ軽鎖発現(ヒト-マウスキメラ)への転換のために、pFUSE2ss-CLIg-mkベクター(InvivoGen)へのクローニングに使用した。バリアント由来の軽鎖Fv断片を、5’EcoRI部位及び3’BsiWI部位を含むようにPCR増幅し、これをヒトIgGκ軽鎖発現への転換のために、pFUSE2ss-CLIg-hkベクター(InvivoGen)へのクローニングに使用した。重鎖Fv断片を、5’EcoRI部位及び3’NheI部位を含むようにPCR増幅し、これをマウスIgG1重鎖発現(ヒト-マウスキメラ)への転換のためにpFUSEss-CHIg-mG1(InvivoGen)への、又はヒトIgG4重鎖発現への転換のためにpFUSEss-CHIg-hG4(InvivoGen)への、クローニングに使用した。重鎖及び軽鎖ベクターを、製造業者の指示書に従い、Expi293F細胞(ThermoFisher)へ同時トランスフェクションした。細胞培養物は、5日間インキュベーションし、その後プロテインAセファロースビーズ(GE Healthcare)を使用し、上清から精製した。
【0282】
ここでこれらの実験の結果を、説明する。
【0283】
レナラーゼ抗原選択、免疫化及び抗体作製
レナラーゼは、血圧の制御及び維持に関与するとされたFAD-含有タンパク質である(Xu, J.ら、2005, J Clin Invest, 115(5):1275-80)。高-親和性、高-特異性抗レナラーゼ抗体の不在は、レナラーゼの生物学及び可能性のあるレナラーゼ-関連療法の両方の研究開発を妨げている。今日まで、いくつかのポリクローナル研究用-試薬抗体が開発されているが、これらは低親和性であり、且つ組織又は体液のいずれかの試料中の内因性レナラーゼの堅固な検出に失敗している。従って、レナラーゼの様々なアイソフォームに対し、更にはインタクトなタンパク質内の異なるペプチド配列に対し、特異性を持つレナラーゼ抗体のセットの開発は、レナラーゼ遺伝子産物の明確な検出及び特徴決定を可能にするであろう。更に、高親和性抗体のみの選択は、可能性のある低レベルのレナラーゼの検出を可能にし、結果的にレナラーゼレベルに関するタンパク質-ベースの診断薬の開発に繋がり得る。
【0284】
レナラーゼに高親和性及び特異性を持つ種々の抗体を作製するために、2つの方法を利用した。第一の方法において、免疫原として完全長レナラーゼ-1タンパク質を使用し、ポリクローナル抗体が生じた。レナラーゼ-1 cDNAを、pET27発現ベクター(Novagen)へサブクローニングし、次にこれを使用し、細菌BL21 DE3株(Novagen)を形質転換した。レナラーゼタンパク質を、細菌の封入体から、標準手順により単離した。簡単に述べると、細菌の封入体を単離し、カオトロピック塩と還元剤の組合せ中に可溶化した。このタンパク質を、この可溶化緩衝液の希釈により、リフォールディングし、引き続き、リン酸緩衝食塩水(PBS)へ最終透析した。
【0285】
免疫原として使用した完全長レナラーゼタンパク質の配列は、
図2に認めることができる。このタンパク質を、抗原として使用し、6匹のウサギを免疫化した。これらの動物からの抗血清を、ELISAアッセイにより、レナラーゼ結合特異性についてスクリーニングし、ここで抗原は、同じリフォールディングされたレナラーゼタンパク質であった。この抗血清はまた、ウェスタンブロットにより、ヒト組織溶解液中の内因性レナラーゼを検出する能力の基準を基に選択した。最高の抗レナラーゼ力価及び最大の内因性レナラーゼに対する特異性を持つ終末期採血抗血清を、抗体精製のために選択した。総IgGを、抗血清から、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーを使用し精製し、更に特異的抗レナラーゼ抗体を、組換えレナラーゼタンパク質とコンジュゲートされたカラム上で精製した。後者の実施例において認めることができるように、この方式で生じた抗体は、レナラーゼに結合し、更にレナラーゼ上の複数のエピトープに結合することが示されている。
【0286】
抗レナラーゼ抗体を生じる第二のアプローチにおいては、ペプチドを、免疫原として使用した。これらのペプチドは、9~21個のアミノ酸の範囲で作製され、且つレナラーゼ-1及びレナラーゼ-2タンパク質の領域に対応していた。これらのペプチド全ては、N又はC-末端システイン残基を有した。これらのペプチドの配列は、
図1に認めることができ、ここでレナラーゼ-1又は2配列に対応するこれらのペプチドは、
図3の配列アラインメントにおいて明らかにされている。認められるように、レナラーゼ-1特異的ペプチドは、1A-Fと表示され、且つレナラーゼ-2特異的ペプチドは、3A5と表示される。各ペプチドは、アジュバントKLHへ、システインを介してコンジュゲートし、且つ6匹のウサギを免疫化するために使用した。各動物の抗血清を、関連ペプチド(BSA-コンジュゲート)又は完全長レナラーゼ-1もしくは2の両方を使用する、ELISAアッセイにより、抗レナラーゼ抗体力価についてスクリーニングした。抗血清はまた、ウェスタンブロットにより、組織溶解液中の内因性レナラーゼを検出するそれらの能力についても試験した。これらのスクリーニング基準を使用し、好ましい特徴を持つ抗体を産生する動物を、選択した。一部の実施例において及び一部のペプチドについて、数匹の動物は、必要な特異性を持つ抗体を産生した。これらの場合において、1匹の動物は、ポリクローナル抗体産生について最終抗血清採血を有し、且つ1又は一部の実施例においては、2匹の別の動物を、脾臓リンパ球の採取に使用した。他の実施例において、1匹の動物は、終末期採血及び脾臓摘出を有した。これらのペプチド全てに対して産生されたポリクローナル抗体を、プロテインGクロマトグラフィーによる、終末期採血由来の総IgGの精製、引き続きのペプチドアフィニティクロマトグラフィー上の更なる精製により作製した。更に標準手順を使用し、選択した動物の脾臓由来のリンパ球を、ハイブリドーマ作製のために、骨髄腫細胞に融合した。このハイブリドーマ上清を、それに対して生じた両方のペプチドへの結合についてスクリーニングし、補助的に全レナラーゼタンパク質に対してスクリーニングした。選択されたハイブリドーマを、サブクローニングし、抗体精製のために増量した。これらのモノクローナル抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーにより、条件ハイブリドーマ培養上清から精製した。それについてモノクローナル抗体が生じたペプチドは、
図1に認めることができる。
【0287】
抗レナラーゼ抗体のヌクレオチド及びアミノ酸配列
モノクローナル抗体1D-28-4、1D-37-10、1F-26-1、1F-42-7及び3A-5-2を、それらのレナラーゼ結合特異性及び高親和性について選択した(以下の節参照)。標準ポリメラーゼ連鎖反応手法及び縮重プライマーセットを使用し、これらの抗体の抗体重鎖及び軽鎖可変領域のcDNAを、サブクローニングしたハイブリドーマから増幅した。可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、
図4から
図13に示している。この方式において、好ましい特徴を持つ抗体の組成が、例証されている。
【0288】
ELISA及びウェスタンブロットの両方において抗体はレナラーゼに対する特異性を示す
図14に認めることができるように、完全長レナラーゼタンパク質に対して産生された抗レナラーゼポリクローナル抗体は、ELISAアッセイにおいて結合したレナラーゼタンパク質に、特異的に結合する。PBS中に100ng/ウェルで希釈された、細菌で発現されたレナラーゼ-1は、4℃で一晩のインキュベーションにより、96ウェルマイクロタイタープレートに結合した。NFDMによるブロック後、レナラーゼタンパク質を、濃度1μg/mLから始まる、ポリクローナル抗体E2930の連続希釈物により、プローブした。抗体結合は、HRP-コンジュゲートされた抗ウサギIgGの添加により、アッセイした。プレートは、HRPの基質TMBとの反応後、分光光度計において450nmで測定した。
【0289】
第二の実施例において、全てのポリクローナル抗体及び選択されたモノクローナル抗体のクローンを、それに対して抗体が生じたペプチド抗原に結合させた。例えば
図15に認めることができるように、1Dペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体1D 28-4及び1D 37-10は、レナラーゼ-1へ濃度依存様式で結合した。1Dペプチドは、レナラーゼ-1及びレナラーゼ-2の両方に存在する。モノクローナル抗体1F 42-7及び1F 26-1は、レナラーゼ-1のみに存在する、1Fペプチドに対して産生された。1F mAbは、レナラーゼ-1に濃度-依存様式で結合した。
【0290】
更なる実施例において、抗体を使用しウェスタンブロッティングによりレナラーゼを検出することができるかどうかを確立するために、細菌又は哺乳動物起源の、組換えレナラーゼタンパク質の連続希釈物を、SDS-PAGE上を泳動させ、且つRen1D 28-4抗体を用い、ウェスタンブロッティングを行った。いずれかを起源とする組換えタンパク質は、
図16に認めることができるように、この方法で明確に同定された。この方式において、完全長レナラーゼタンパク質(配列番号:8又は50又は92又は94)もしくは配列番号:1-7に記載されたペプチド抗原に特異的な抗レナラーゼ抗体が作製された。
【0291】
抗体はレナラーゼ-1又はレナラーゼ-2のいずれかに特異的である
この実施例において、レナラーゼ-1又はレナラーゼ-2のいずれかの特異的ペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体は、関連する完全長レナラーゼアイソフォームについて絶対的特異性を示した。抗体1D-28-4及び1D-37-10は、1Dペプチドに対して産生され、従ってレナラーゼ-1及びレナラーゼ-2の両方に結合するはずである。抗体1F-42-7及び1F-26-1は、1Fペプチドに対して産生され(アラインメントについては
図3参照)、従ってレナラーゼ-1にのみ特異的であるはずである。抗体3A5-2は、ペプチド3Aに対して産生され、従ってレナラーゼ-2に特異的であるはずである。
【0292】
細菌で発現されたレナラーゼ-1及び2アイソフォームを、PBS中100ng/ウェルに希釈し、且つ96ウェルマイクロタイタープレートに結合させた。このプレートを、PBS中の8%NFDMの溶液により、33℃で1時間ブロックした。レナラーゼタンパク質を、抗体1D-28-4、1D-37-10、1F-42-7、1F-26-1及び3A5-2の連続希釈物により、プローブした。抗体の出発濃度は、典型的には1μg/mLであり、2倍希釈工程により、0.05%のTween-20含有PBS(PBST)中に調製した。33℃で1時間インキュベーションした後、プレートを、PBSTにより3回すすいだ。抗体結合を、HRP-コンジュゲートされた抗ウサギIgGの50ng/mLの、1ウェルにつき50μLの添加により、アッセイした。プレートを、室温で40分間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートをPBSTで3回及びPBSで1回洗浄した。HRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、1ウェルにつき100μL添加し、プレートを室温でおよそ5分間インキュベーションした。この反応を停止するために、各ウェルへ2N H2SO4の100μLを添加した。プレートを、分光光度計において450nmで測定した。
【0293】
ELISAアッセイにより、抗体1D-28-4、1D-37-10、1F-42-7及び1F-26-1は、レナラーゼ-1タンパク質へ濃度-依存様式で結合した(
図15)。しかし、ELISAプレートアッセイにおいて組換えレナラーゼ-2の検出に同じ抗体が使用される場合、1D-28-4及び1D-37-10のみが、頑強な、濃度-依存様式の結合を示した(
図17)。抗体3A5-2は、ELISAアッセイにおいて、レナラーゼ-2アイソフォームへ結合することが認められた(
図17)。従って、1又は他のレナラーゼアイソフォームに対応するペプチドに対して産生された抗体は、関連する完全長タンパク質に対し特異性を示すことを認めることができる。
【0294】
エピトープ-特異的抗レナラーゼ抗体
免疫化に使用されるレナラーゼペプチドを、合成し、次にウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲートした。このコンジュゲートされたペプチドを、PBS中100ng/ウェルで希釈し、96ウェルマイクロタイタープレートへ、4℃で一晩インキュベーションすることにより、結合させた。NFDMによるブロック後、BSA-コンジュゲートされたペプチドを、抗体の連続希釈物により、プローブした。抗体の結合は、HRP-コンジュゲートされた抗ウサギIgGを添加することにより、アッセイした。HRPの基質TMBとの反応後、このプレートを、分光光度計により450nmで測定した。1Dエピトープに対して産生されたモノクローナル抗体1D 28-4及び1D 37-10は、1D-BSAタンパク質へ濃度依存様式で結合した(
図18、1D 28-4について黒丸、1D 37-10について白丸)。しかしこれらのモノクローナルは、1F抗原への非常に弱い結合を明らかにした(1D 28-4、及び1D 37-10について半黒菱形、挿入図)。1Fエピトープに対して産生されたモノクローナル抗体1F 42-7及び1F 26-1は、濃度依存様式で、1F-BSAタンパク質へ結合した(1F 26-1について黒四角、1F 42-7結合について白四角)。しかし、これらの1F mAbは、1Dペプチドへの非常に弱い結合を明らかにした(1F 26-1、及び1F 42-7について半黒円、挿入図)。更なる実施例において、同じエピトープ-特異性が、ペプチド3Aにおける抗体3A5-2について及びペプチド1Cにおける抗体1C-22-1について、認められた。また更なる実施例において、ペプチド1A、1B、1C、1D、1E、1F及び3Aに対して産生された精製したポリクローナル抗体の全ては、関連するBSA-ペプチド融合体に特異的に結合した。
【0295】
従って、レナラーゼタンパク質内のペプチドエピトープに対して産生された抗体の複数の例は、絶対エピトープ特異性を示した。これらのエピトープ及びそれに結合するモノクローナル抗体の両方のアミノ酸組成は、本明細書において認められ且つ説明されている。
【0296】
抗レナラーゼ抗体コンジュゲーション
レナラーゼ-特異的抗体は、レナラーゼの検出試薬又はレナラーゼ-指向した治療薬としての抗体使用において助けとなるいくつかの実体に、コンジュゲートされることができる。これらのコンジュゲーションは、それらの抗体の関連するエピトープ特異性又は親和性と干渉することなく、完成され得る。これらのコンジュゲートの例は、放射性イオン、着色された、金属のもしくは蛍光の標識物、タグ又は毒素を含むが、これらに限定されるものではない。本実施例において、抗レナラーゼ抗体は、ビタミンビオチンにコンジュゲートされた。ビオチンは、タンパク質アビジン、ストレプトアビジン及びそれらの変種へ極めて高い親和性で結合する、小型の天然に生じるビタミンである。コンジュゲーションは、ビオチンの抗体上の第一級アミノ基への、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル結合を介して、完了される。過剰なコンジュゲートされないビオチンは、透析により除去することができる。
【0297】
更なる実施例において、この方式でコンジュゲートされた抗レナラーゼ抗体は、ELISAアッセイにおいて、レナラーゼタンパク質へ結合するそれらの能力を維持することが認められた。細菌で発現されたレナラーゼ-1を、PBS中に100ng/ウェルで希釈し、4℃で一晩インキュベーションすることにより、96ウェルマイクロタイタープレートへ結合させた。NFDMによるブロック後、レナラーゼタンパク質を、濃度1μg/mLから出発する、ビオチン化された抗体の連続希釈物により、プローブした。結合したビオチン化された抗体の存在は、HRP-コンジュゲートされたニュートラアビジンの添加により、アッセイした。プレートを、HRPの基質TMBとの反応後、分光光度計において450nmで測定した。ビオチン化されたモノクローナル抗体1D 28-4(
図19黒丸)、1D 37-10(白丸)、1F 42-7(黒三角)、及び1F 26-1(白三角)は、レナラーゼ-1へ、濃度依存様式で結合した。
【0298】
複数の抗体は、レナラーゼ上の同じエピトープへの結合について競合することができる
この実施例において、モノクローナル及びポリクローナル抗レナラーゼ抗体の両方の様々な組合せは、レナラーゼへの結合に関して互いに競合することが示された。これは、複数の抗体の重複するエピトープを明らかにした。更なる実施例において、ポリクローナル抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体と競合することが認められ、これはこのポリクローナルの複数のエピトープ特異性を明らかにしている。細菌で発現されたレナラーゼ-1を、PBS中に100ng/ウェルで希釈し、4℃で一晩インキュベーションすることにより、96ウェルマイクロタイタープレートへ結合させた。ブロック後、このタンパク質を、典型的には濃度1μg/mLから出発する、コンジュゲートされない抗体の連続希釈物により、プローブし、異なるビオチン化された抗体と混合した。ビオチン化された抗体の濃度は、125ng/ウェルで一定に維持した。両方の抗体を、PBST中に一緒に混合し、50μL/ウェルの1回の添加として、ブロック前のレナラーゼプレートに適用した。33℃で1時間のインキュベーション後、ビオチン化された抗体のレナラーゼへの結合を、0.4ng/mLのHRP-コンジュゲートされたニュートラアビジン(HRP-NA)の50μL/ウェルでの添加により、アッセイした。HRPの基質TMBを、結合したビオチン化された抗体の可視化のために添加した。次にプレートを、分光光度計において450nmで測定した。
【0299】
抗レナラーゼ抗体の特異性は、ビオチン化された抗体が、同じエピトープを共有するコンジュゲートされない抗体とインキュベーションされた場合の、シグナルの減少により示された。一例は、1Dペプチドに対して産生された抗体モノクローナルにより、
図20Aに示している。ビオチン化された1D 37-10は、コンジュゲートされない1D 28-4により、競合された(黒丸、
図20A)。同様に、1Fペプチドに対して産生された抗体も、互いに競合し:ビオチン化された1F 26-1は、コンジュゲートされない1F 42-7により競合された(黒三角、
図20A)。ビオチン化されたモノクローナル抗体からのシグナルは、免疫化されないウサギ由来のコンジュゲートされない抗体とインキュベーションした場合に、減少しなかった(白丸及び白三角、
図20A)。
【0300】
更なる実施例において、及び
図20Bにおいて認めることができるように、完全長レナラーゼ-1に対して産生されたポリクローナル抗体E2930は、ビオチン化されたモノクローナル抗体1D 37-10、1F 26-1の各々、並びにこれら2つのビオチン化されたmAbの混合物と競合することが示された(黒丸、黒四角、及び白菱形、
図20B)。再度、2つのビオチン化された抗体の混合物は、免疫化されないウサギ由来のコンジュゲートされない抗体によっては競合されなかった(黒三角、
図20B)。2つのビオチン化されたモノクローナル抗体に対するポリクローナル抗体E2930により認められた競合は、このポリクローナル抗体は、レナラーゼポリペプチド上の複数のエピトープに結合することを示唆している。
【0301】
抗体はレナラーゼへ高親和性及び異なる結合反応速度により結合する
抗体が内因性タンパク質の検出に使用される場合、その標的に対する高親和性が提示されなければならない。今日まで、抗レナラーゼ抗体に関する結合反応速度は説明されていない。本実施例において、複数の抗レナラーゼ抗体は、溶液結合アッセイにおいて、完全長レナラーゼに関して、低い又はナノモル以下の親和性を有することが明らかにされた。精製された抗レナラーゼ抗体を、ビオチン化し、且つBiacore T100装置のためのストレプトアビジンCM5センサーチップへ結合した。純粋な組換えレナラーゼ-1を、チップの表面上に注入した。結合試験を、流動緩衝液として25mMトリス(pH8)、150mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.005%Tween-20及び0.1mg/mL BSAを使用し、25℃で行った。レナラーゼの固定された抗体に対する結合反応速度は、この方式で測定することができる。
図21に認めることができ且つ
図22にまとめているように、抗体1D-28-4、1F-42-7、1D-37-10及び1F-26-1は全て、高い親和性でレナラーゼに結合し-K
D値は、2.67nMから0.316nMまで変動した。広範な会合及び解離が、これらの抗体間で認められ、これは異なる抗体組成の異なる寄与を明らかにしている。
【0302】
異種移植マウスモデルにおいて、モノクローナル抗体m28-RNLSによる抗RNLS療法は、メラノーマ腫瘍成長を顕著に阻害した(Hollander Lら、2016, Cancer Research, 76(13):3884-94)
RNLSに対して産生された2つのモノクローナル抗体[クローン#28-4(m28-RNLS)、37-10(m37-RNLS)]は、試験した全ての(合計5)メラノーマ細胞株の生存度を低下し、代表例を
図23に示している。m28-RNLSは、処置濃度の増加に相関した細胞毒性の増加するレベルを明らかにしている(p<0.05、
図24)。
【0303】
インビボ試験に関して、A375.S2(ヒトメラノーマ)細胞を、無胸腺ヌードマウスへ、皮下注射し、腫瘍を形成した。一旦腫瘍が容積~50mm
3に到達したならば、その後動物を、対照ウサギIgG又はRNLS中和するモノクローナル抗体m28-RNLSのいずれかで処置した。全般的動物の健康及び活動は、本試験を通じて維持されたので、この抗体処置は、毒性があるようには見えなかった。腫瘍サイズは、隔日で測定し、m28-RNLSによる処置は、試験した全ての時点で、腫瘍容積を減少した(p<0.05、
図25)。これらの動物を、全般的腫瘍サイズ及び一部の動物における潰瘍化のために、11日目に屠殺した。細胞増殖マーカーKi67による異種移植された腫瘍からの切片のIHC染色は、ウサギIgGにより処置したものと比較して、抗RNLS抗体で処置した腫瘍内の細胞増殖の有意な減少を明らかにした:対照群における35.1±2.3陽性細胞/高倍率視野、対、RNLS Ab処置群における13.4±3.0、n=14、p=0.0004(
図26)。免疫適格性(immunocompetent)における抗RNLS療法の有効性を試験するために、B16f10細胞(マウスメラノーマ株)を、C57BL/6マウスに皮下投与した。一旦腫瘍が容積~500mm
3に到達したならば、動物を、対照ウサギIgG又はRNLS中和するモノクローナル抗体m28-RNLSのいずれかで処置し、対照群の非常に大きい腫瘍組織量のために、7日目に屠殺した。
図27に示すように、m28-RNLS投与は、ウサギIgGと比べ、腫瘍容積の有意な減少を引き起こした。
【0304】
異種移植マウスモデルにおいて、モノクローナル抗体m28-RNLSによる抗RNLS療法は、膵臓腺癌の腫瘍成長を顕著に阻害する(Guo Xら、2016, Scientific Reports, 6:22996)
RP-220に対するウサギにおけるモノクローナル抗体のパネルから、2つのクローンm28-RNLS及びm37-RNLSを、それらの高い結合親和性を基に選択した(各々、K
Dが0.316及び2.67nM)。ヒト膵臓腺癌細胞の成長に対するm28-RNLS、m37-RNLS、及び市販のポリクローナル(RP-220の部分配列に対する)の阻害作用を、
図28、
図29、及び
図30に示す代表例により示している。
【0305】
阻害性抗体の治療的可能性を評価するために、BxPC3細胞を、無胸腺ヌードマウスへ皮下注射し、これらを対照ウサギIgG又はm28-RNLSのいずれかで処置し、且つ腫瘍容積を、最大3週間測定した。
図31に示したように、ウサギIgGと比べ、m28-RNLS処置は、腫瘍容積の有意な減少を引き起こした。
【0306】
m28-RNLSヒト化バリアントによる抗RNLS療法は、腫瘍成長を阻害する
メラノーマ細胞(ヒト:SK-MEL-28、マウス:YUMM1.7)及び膵臓腺癌細胞(ヒト:BxPC3)を、6-ウェル培養プレートに、密度5×104個細胞/ウェルで播種した。細胞増殖及び生存度の割合を、トリパンブルーアッセイを用いて決定した。これらの細胞を、PBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、且つ0.5%トリパンブルー色素により染色した。Bio-Rad TC10自動細胞カウンター(ハーキュリーズ、CA、米国)を使用し、各試料中の細胞総数、生存細胞総数、及び生存細胞の割合を評価した。記録された数を用い、増殖及び生存度の割合を決定した。
【0307】
5つのヒト化されたm28バリアント(m28-K2、m2-K5、m28-K13、m28-K14及びm28-K16、表2)は、ヒト及びマウスの両方のRNLSへの増加した結合を示した(
図32及び
図33)。これらのm28バリアントはまた、メラノーマ(SK-MEL-28)及び膵臓腺癌(BxPC3)のヒト細胞株の生存度を減少し(代表例を
図34及び
図35に示す)、このことはヒト癌におけるm28バリアントの可能性のある治療的有用性を指摘している。
【0308】
実施例2:配列
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【0309】
配列番号:218
M28-ヒト化されたFv配列重鎖ヌクレオチド
GAGGTTCAGCTGGTGGAGTCTGGCGGTGGCCTGGTGCAGCCAGGGGGCTCACTCCGTTTGTCCTGTGCAGCTTCTGGCTTCAATCTGAGCAGCTTCGCCGTTCACTGGGTGCGTCAGGCCCCGGGTAAGGGCCTGGAATGGGTTGCAATCATCAGCAGCGTTGGCATCACCCGCTATGCCGATAGCGTCAAGGGCCGTTTCACTATAAGCAAAGACACATCCAAAAACACAGCCTACCTACAAATGAACAGCTTAAGAGCTGAGGACACTGCCGTCTATTATTGTGCTCGCTATGGCTATAGCGGCGACGTGAACCGCCTGGACCTGTGGGGTCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCG
配列番号:219
M28-ヒト化されたFv配列重鎖アミノ酸(M28 CDR及びHC71グラフトに下線)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNLSSFAVHWVRQAPGKGLEWVAIISSVGITRYADSVKGRFTISKDTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARYGYSGDVNRLDLWGQGTLVTVSS
配列番号:220
M28-ヒト化されたFv配列軽鎖ヌクレオチド
GATATCCAGATGACCCAGTCCCCGAGCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGATAGGGTCACCATCACCTGCCGTGCCAGTCAGAGCGTGTATGACAACAACAACGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGAAAAGCTCCGAAGCTTCTGATTTACGGCGCCAGCACCCTCTACTCTGGAGTCCCTTCTCGCTTCTCTGGTAGCCGTTCCGGGACGGATTTCACTCTGACCATCAGCAGTCTGCAGCCGGAAGACTTCGCAACTTATTACTGTCTGGGCGAATTCAGCTGCAGCAGCGCTGACTGCTTCGCCTTCGGACAGGGTACCAAGGTGGAGATCAAACGA
配列番号:221
M28-ヒト化されたFv配列軽鎖アミノ酸(M28 CDR及びHC71グラフトに下線)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVYDNNNVAWYQQKPGKAPKLLIYGASTLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLGEFSCSSADCFAFGQGTKVEIKR
配列番号:222
M42ヒト化されたFv配列重鎖ヌクレオチド
GAGGTTCAGCTGGTGGAGTCTGGCGGTGGCCTGGTGCAGCCAGGGGGCTCACTCCGTTTGTCCTGTGCAGCTTCTGGCTTCAACCTGACCACCTACGGCGTTCACTGGGTGCGTCAGGCCCCGGGTAAGGGCCTGGAATGGGTTGCACTGATCGGCGATCGCGGCACCACCTATTATGCCGATAGCGTCAAGGGCCGTTTCACTATAAGCCGCGACACATCCAAAAACACAGCCTACCTACAAATGAACAGCTTAAGAGCTGAGGACACTGCCGTCTATTATTGTGCTCGCGGCAGCGGCTATGGCGCTCGCATCTGGGGTCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCG
配列番号:223
M42ヒト化されたFv配列重鎖アミノ酸(M42 CDR及びHC71グラフトに下線)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNLTTYGVHWVRQAPGKGLEWVALIGDRGTTYYADSVKGRFTISRDTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSGYGARIWGQGTLVTVSS
配列番号:224
M42ヒト化されたFv配列軽鎖ヌクレオチド
GATATCCAGATGACCCAGTCCCCGAGCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGATAGGGTCACCATCACCTGCCGTGCCAGTCAGACCGTGTATAACAACAACTACGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGAAAAGCTCCGAAGCTTCTGATTTACGAAACCAGCAAACTCTACTCTGGAGTCCCTTCTCGCTTCTCTGGTAGCCGTTCCGGGACGGATTTCACTCTGACCATCAGCAGTCTGCAGCCGGAAGACTTCGCAACTTATTACTGTCAGGGCGGCTACAGCGGCGTGGACTTCATGGCTTTCGGACAGGGTACCAAGGTGGAGATCAAACGA
配列番号:225
M42ヒト化されたFv配列軽鎖アミノ酸(M42 CDR及びHC71グラフトに下線)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTVYNNNYVAWYQQKPGKAPKLLIYETSKLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQGGYSGVDFMAFGQGTKVEIKR
【0310】
本明細書において引用された特許、特許出願及び刊行物の各々の及び全ての開示は、それらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。本発明は具体的実施態様を参照し明らかにされているが、本発明の他の実施態様及び変動は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者により誘導されてよいことは明白である。添付された請求項は、そのような実施態様及び同等の変動全てを含むと解釈されることが意図される。
前記抗体又はその結合部位が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、免疫複合体、脱フコシル化抗体、及び二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項1記載の抗体又はその結合部位。