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特開2024-28876免疫応答を調節可能な金属含有製剤のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028876
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】免疫応答を調節可能な金属含有製剤のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240227BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20240227BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K9/14 ZNA
A61K45/00
A61K47/02
A61K31/7088
A61K9/127
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P37/04
A61K47/69
A61P43/00 111
C12N15/113 Z
C12N15/117 Z
C07K14/82
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206335
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2021500842の分割
【原出願日】2019-07-12
(31)【優先権主張番号】62/697,092
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,ジェームス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スン,シャオチー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】先天性免疫応答を刺激することが可能な組成物を提供する。
【解決手段】1つ以上のDAMPまたはPAMPと、Zn2+、Mn2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、および、Kからなる群から選択される1種以上のカチオンとを含むナノ粒子を含む、組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のDAMPまたはPAMPと、
Zn2+、Mn2+、Ca+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、および、Kからなる群から選択される1種以上のカチオンと
を含むナノ粒子を含む、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のDAMPまたはPAMPは、STINGアゴニスト、プリン含有因子またはプリン誘導体因子、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、NOD様受容体(NLR)アゴニスト、RIG-I様受容体(RLR)アゴニスト、細胞質内DNAセンサ(CDS)アゴニスト、C型レクチン受容体(CLR)アゴニスト、および、インフラマソーム誘発剤から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1以上の前記STINGアゴニストは、cGAMP、cdiAMP、cdiGMP、cAIMP、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMPジフルオル、cAIM(PS)2、ジフルオル(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp、Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、
【化1】

、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオロ、cAIMP(PS)2、ジフルオロ(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp、Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、3’3’-cGAMP、cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2'2’-cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2、cGAMPフッ素化物、3’3’-cGAMPフッ素化物、2’3’-cGAMPフッ素化物、2’2’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMP、2’3’-cdAMP、2’2’-cdAMP、3’3’-cdAMP、c-di-AM(PS)2、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp、Rp)、2’2’-c-di-AM(PS)2、3’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-cdAMPフッ素化物、2’2’-cdAMPフッ素化物、3’3’-cdAMPフッ素化物、cdGMP、2’3’-cdGMP、2’2’-cdGMP、3’3’-cdGMP、c-di-GM(PS)2、2’3’-c-di-GM(PS)2、2’2’-c-di-GM(PS)2、3’3’-c-di-GM(PS)2、cdGMPフッ素化物、2’3’-cdGMPフッ素化物、2’2’-cdGMPフッ素化物、3’3’-cdGMPフッ素化物、cAIMP、2’3’-cAIMP、2’2’-cAIMP、3’3’-cAIMP、cAIMPジフルオロ(3’3’-cAIMPフッ素化物、2’3’-cAIMPフッ素化物、2’2’-cAIMPフッ素化物、cAIM(PS)2ジフルオロ、3’-3’-cAIM(PS)2ジフルオロ(Rp/Sp)、2’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ、2’2’-cAIM(PS)2ジフルオロ、c-di-IMP、2’3’-cdIMP、2’2’-cdIMP、3’3’-cdIMP、c-di-IM(PS)2、2’3’-c-di-IM(PS)2、2’2’-c-di-IM(PS)2、3’3’-c-di-IM(PS)2、c-di-IMPフッ素化物、2’3’-cdIMPフッ素化物、2’2’-cdIMPフッ素化物、3’3’-cdIMPフッ素化物、およびアミドベンズイミダゾール(ABZI)ベース化合物からなる群より選択され、
前記TLRアゴニストは、TLR-3アゴニスト、TLR-4アゴニスト、TLR-5アゴニスト、TLR-7アゴニスト、TLR-8アゴニスト、TLR-9アゴニストから選択され、
前記NLRアゴニストはNLRP3アゴニストであり、
前記プリン含有因子またはプリン誘導体因子は、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオロ、cAIM(PS)2、ジフルオロ(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、3’3’-cGAMP、cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’2’-cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2、cGAMPフッ素化物、3’3’-cGAMPフッ素化物、2’3’-cGAMPフッ素化物、2’2’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMP、2’3’-cdAMP、2’2’-cdAMP、3’3’-cdAMP、c-di-AM(PS)2、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’2’-c-di-AM(PS)2、3’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-cdAMPフッ素化物、2’2’-cdAMPフッ素化物、3’3’-cdAMPフッ素化物、cdGMP、2’3’-cdGMP、2’2’-cdGMP、3’3’-cdGMP、c-di-GM(PS)2、2’3’-c-di-GM(PS)2、2’2’-c-di-GM(PS)2、3’3’-c-di-GM(PS)2、cdGMPフッ素化物、2’3’-cdGMPフッ素化物、2’2’-cdGMPフッ素化物、3’3’-cdGMPフッ素化物、cAIMP、2’3’-cAIMP、2’2’-cAIMP、3’3’-cAIMP、cAIMPジフルオロ(3’3’-cAIMPフッ素化物、2’3’-cAIMPフッ素化物、2’2’-cAIMPフッ素化物、cAIM(PS)2ジフルオロ、3’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ(Rp/Sp)、2’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ、2’2’-cAIM(PS)2ジフルオロ、c-di-IMP、2’3’-cdIMP、2’2’-cdIMP、3’3’-cdIMP、c-di-IM(PS)2、2’3’-c-di-IM(PS)2、2’2’-c-di-IM(PS)2、3’3’-c-di-IM(PS)2、c-di-IMPフッ素化物、2’3’-cdIMPフッ素化物、2’2’-cdIMPフッ素化物、3’3’-cdIMPフッ素化物、イミキモド、レシキモド、6-(4-アミノ-イミダゾキノリル)-ノルロイシン、
【化2】

、RNA、siRNA、マイクロRNA、干渉RNA、mRNA、レプリコンmRNA、RNA類似体、DNA、および、プリンベースPI3Kインヒビターから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、メタ-ポリヒスチジン-DOPE@リポソーム、金属-ポリヒスチジン-PEG、4arm-PEG-ポリヒスチジン-金属ヒドロゲル、sHDL-ポリヒスチジン、フラーレン、内包メタロフラーレンバッキーボール、トリメタル窒化物テンプレート化内包メタロフラーレン、単層および多層カーボンナノチューブ、分枝および樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層および多層ホウ素/硝酸塩ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、任意のナノ構造、マイクロ構造、レイヤーバイレイヤー処理若しくは自己集合処理を用いて形成されたそれらの誘導体、高分子電解質、微粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラスおよびポリマーのマイクロスフィアおよびナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィアおよびナノスフェア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、ならびに、有機金属フレームワーク(MOF)配位ポリマー(CP)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、さらに、抗原と連携しており、当該連携は、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、および混合から選択され、
前記抗原は、自己抗原由来であるか、または、α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1,Mum-2,およびMum-3、ネオ-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、GAGE3、GAGE4、GAGE5、GAGE6、GAGE7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-2、Mage-3、Mage-4、Mage-6、Mage-10、Mage-12、MAGE-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、TRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA-72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68/KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、ヒトEGFRタンパク質またはヒトEGFR残基306~325(SCVRACGADSYEMEEDGVRK(配列番号374))および残基897-915(VWSYGVTVWELMTFGSKPY(配列番号375))のようなその断片、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、WT1(およびWT1由来ペプチド配列:WT1 126-134(RMFP NAPYL(配列番号376))、WT1 122-140(SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号377))、および、WT1 122-144(SGQARMFPNAPYLPSCLESQPTI(配列番号378)))、MUC1(ならびにMUC1-由来ペプチドならびにRPAPGS(配列番号:379)、PPAHGVT(配列番号:380)、およびPDTRP(配列番号:381)などのグリコペプチド))、LMP2、EGFRvIII、イディオタイプ、GD2、Ras変異体、p53変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、サバイビン、hTERT、サルコーマ転座切断点、EphA2、EphA4、LMW-PTP、PAP、ML-IAP、AFP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、sLe(動物)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子のタンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-α、PDGFR-β、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、ERBB2、葉酸受容体1(FOLR1またはFBP)、IDH1、IDO、LY6K、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1、VEGFR1として最もよく知られている)、KDR、PADRE、TA-CIN(組換えHPV16 L2E7E6)、SOX2、新抗原、およびアルデヒドデヒドロゲナーゼからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原は、前記ナノ粒子の外面に結合されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物はアジュバントと連携しており、当該連携が、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、および混合から選択され、
前記アジュバントは、CPG、ポリIC、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、Amplivax、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IFN-a、Flt-3L等)、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTelRTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、イミキモド、レジキモド、ガーディキモド、3M-052、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、Aquila’s QS21スティミュロン、バジメザン、AsA404(DMXAA)、3M MEDI9197、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)、GLA-SE、CD1dリガンド(C20:2、OCH、AH04-2、α-ガラトシルセラミド、α-C-ガラトシルセラミド、α-マンノシルセラミド、α-フルクトシルセラミド、β-ガラトシルセラミド、β-マンノシルセラミド等)、STINGアゴニスト(例えば、環状[G(3’,5’)pA(3’,5’)p]、環状[G(2’,5’)pA(3’,5’)p]、環状[G(2’,5’)pA(2’,5’)p]、環状ジアデニレートモノホスフェート、環状ジグアニレートモノホスフェートを含む環状ジヌクレオチド)、CL401、CL413、CL429、フラジェリン、RC529、E6020、イミダゾキノリン系小分子TLR-7/8a(その脂質化アナログを含む)、ビロソーム、AS01、AS02、AS03、AS04、AS15、IC31、CAF01、ISCOM、サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IFN-a、Flt-3L等)、細菌毒素(CT、LT等)、アジュバントの任意の誘導体、ならびにアジュバントの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の平均粒径は、6から500ナノメートルの間である、請求項4に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年7月12日に出願された米国仮特許出願第62/697,092号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与されたCA210273に基づく政府支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
本開示は対象へ投与することにより、対象の先天性免疫応答(例えば、損傷関連分子パターン(DAMP)および病原体関連分子パターン(PAMP))を刺激することができる薬剤によって、対象の先天性免疫応答を刺激するための組成物および方法を提供する。特に、DAMP/PAMPおよび金属イオンの組成物、ならびにこのようなナノ粒子を(例えば、診断および/または治療設定において)利用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自然免疫系はヒトの防御の第1ラインであり、自然免疫系の活性化は炎症誘発性サイトカイン分泌を誘導し、適応免疫系を調整することができる。DAMPおよびPAMPは、主要な2つの先天性免疫刺激物質である。DAMPは組織損傷時に放出される内因性宿主生体分子であり、ヒートショックタンパク質およびHMGB1(High Mobility Group Box 1)、ATP、尿酸、ヒアルロン酸断片、ヘパリン硫酸および腫瘍由来DNAが含まれる。PAMPは様々な病原体認識受容体(PRR)によって認識される保存された病原体成分であり、抗病原体炎症を誘導する。PAMPには、Toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、RIG-I様受容体(RLR)、サイトソリックDNAセンサ(CDS)、IFN遺伝子(STING)アゴニストの刺激器、プリン含有またはプリン由来剤、C型レクチン受容体(CLR)などがある。
【0004】
癌および自己免疫疾患の両方に重要である、炎症誘発性サイトカインの生産および免疫細胞の炎症誘発性表現型の変化を、DAMPおよびPAMPは、誘導することができた。一方で、炎症誘発性表現型の変化は免疫抑制腫瘍微小環境を破壊し、「冷たい腫瘍(cold tumor)」を「熱い腫瘍(hot tumor)」に調整することができた。したがって、TLR-3、TLR4、TLR7、TLR9、NLRP3およびSTINGアゴニストは、現在、がん免疫療法のための治験中である。とくに腫瘍由来DNA-cGAS-STING経路は近年、腫瘍免疫を観察するために極めて重要であることが判明し、前臨床研究のがん免疫療法において劇的な効果が示されたことから、STINGアゴニストの第Iフェーズ臨床試験が数多く実施されるに至った。一方、DAMPおよびPAMPは自己免疫疾患の発生・進展に広く関与している。異常な先天性免疫応答を阻害することは、多くの治癒不能な自己免疫疾患に有効な治療法であることが明らかになりつつある。DAMPおよびPAMPを介する免疫応答を調節することにより、癌および自己免疫疾患を含む多様なヒト疾患に対する新しい治療法が提供されるであろう。
【0005】
本発明は、この必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0006】
免疫チェックポイント阻害薬は、患者自身の免疫系が癌と闘うことを可能にする。しかしながら、免疫チェックポイント阻害に対する現在の平均応答率は、約30%に過ぎない。これは、腫瘍の中には、免疫系に認識されにくい「低温腫瘍」という特徴を持つものがあることが原因と考えられる。このような腫瘍の特徴としては炎症応答の低さ、突然変異負荷の少なさ、T細胞および他の炎症促進免疫細胞の腫瘍浸潤の欠如などが挙げられる。一方、免疫系が認識できる炎症の特徴が多い「高温腫瘍」はがん免疫療法に対する治療応答速度が良好であることから、「低温腫瘍」を「高温腫瘍」に変える方法を理解することが重要である。
【0007】
蓄積されている証拠は、自然免疫系を介する腫瘍免疫の観察が、STING経路により腫瘍細胞由来DNAを感知することによって、腫瘍の存在を認識することを示している。STING経路の活性化は、I型インターフェロン応答および他の炎症誘発性表現型の変化などの自然免疫カスケードを誘発し、それはさらに適応性抗腫瘍反応を誘発した。したがって、STINGは「低温腫瘍」から「高温腫瘍」への復帰の「きっかけ」とされている。例えば、STINGアゴニストの腫瘍内投与は、局所および転移腫瘍の両方に対する抗腫瘍免疫応答を誘発し得る。1型インターフェロン応答は、抗原特異的T細胞浸潤と同様に、がん治療予後のより良好な特徴であることが、臨床において明らかにされている。したがって、インビボ安定性が大きく、好ましい薬物動態特性および許容可能な安全なプロファイルを有するSTINGアゴニストを開発することは、非常に重要であり、高い翻訳価値がある。
【0008】
しかしながら、ほとんどのヒトSTINGアゴニストの現行の評価は、環状ジヌクレオチドおよびそれらの誘導体に基づいている。これらの低分子量、低い薬物動態パラメータおよび重篤な副作用により、これらは全身への投与が大きく制限されている。
【0009】
本発明の実施形態を開発する過程で実施された実験は、Zn2+の存在下でcdi-AMP、cGAMP、およびcGMPを含むCDNが、均一なナノ粒子に集合することを実証した。Zn2+の存在下で均一なナノ粒子に集合したそのようなCDNは、脂質小胞でさらに安定化されることも示された。さらなる実験は、リン酸カルシウム、ならびにカチオン性ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびポリエチレングリコール(PEG)の共重合体の存在下で、CDNをナノ粒子中に調合できることを実証した。そのようなCDN-ナノ粒子集合体(例えば、リン酸カルシウムの存在下でナノ粒子に処方されたCDNおよびPEI-PEGの共重合体)(例えば、Zn2+およびリポソームの存在下でナノ粒子に処方されたCDN)は癌細胞取り込みの増加および腫瘍微小環境(例えば、TME)に対するより正確なターゲットを提供することにより、STINGアゴニスト送達有効度の増加およびSTINGアゴニストの毒性の低下を可能にすることがさらに示された。
【0010】
このような結果は、CDN-Znの実施形態を、以前の薬物送達システムと比較して、以下の独特な特徴を示す:1)生物活性を失うことなく放出される持続性薬物に適した可逆的集合体、2)高い負荷効率および負荷容量、3)細胞取り込みの増加、4)低pHにおけるpH感受性放出、5)良好な生体適合性、6)表面修飾および機能化に適した柔軟な表面化学、および7)低コストおよびスケールアップの容易さ。
【0011】
CDN@CaP/PEI-PEGの実施形態について、そのような結果は以前の薬物送達システムと比べて以下の独特な特徴を示す:1)細胞取り込みの増加、2)高い負荷効率、3)低pHにおけるpH感受性放出、4)生体適合性、および5)低コストおよびスケールアップの容易さ。
【0012】
CDNに関連するこれらのナノ粒子は、全身投与を介して腫瘍に対する特異的な免疫応答を誘導し、それにより腫瘍に対して直接の局所注射を行う必要性を回避することができるため、このような結果は臨床的に非常に重要である。
【0013】
本発明の実施形態を開発する過程で実施されたさらなる実験によって、特定の金属イオンがSTINGアゴニストのSTING活性化およびタイプI IFN応答を顕著に増強できることが発見された。例えば、最適化状態では、Mn2+またはCo2+はcGAMPのSTING活性を60倍以上強化することが示された。さらに、マウス腫瘍へのMn2+またはCo2+と組み合わせたSTINGアゴニストの投与は、治療効果を有意に改善し、血清I型IFN濃度の上昇、より高い腫瘍の根絶効果、および動物のより長い生存を特徴とすることが示された。処置後、腫瘍保有マウスの80%において、生じた腫瘍は根絶され、困難な二次腫瘍に対して80日後も耐性を有し、腫瘍再発に対する長期免疫が示された。さらに、この現象は、TLR3/4/7/8/9リガンド、NOD1/2リガンド、TLR 7/8リガンド、RIG-I&CDSアゴニスト、インフランマソーム誘導型など、様々な他の自然免疫経路で一般化可能であることが判明した。例えば、Co3+は細胞ICを介するIFNb、TNFa、IL6およびIL2のデンドリックセルによる生産を劇的に増加させたが、Mn2+は細胞ICを介するIFNb生産を増加させた。Mn2+は、MPLAを介したIFNbとTNFaの生産を増加させ、Ni2+はMPLAを介したTNFaの生産を増加させた。Mn2+はIFNbとTNFaのR848仲介生産を増加させ、Ni2+はTNFaのR848を介する生産を増加させた。加えて、Ni2+とMn2+はIFNbとTNFaのCpGを介する生産を増加させた。
【0014】
このような結果に基づいて、所望の標的に金属含有先天性免疫刺激剤の組み合わせを正確に送達し、免疫活性化を促進するために、いくつかの薬学的に許容可能な製剤が開発された。例えば、リポソーム被覆ナノ粒子、CDA-Mn-His11-DOPE@liposome(Mn-CDA/H11@lip)は、STINGアゴニストの全身送達のために使用され得、そして60%の生じたCT26大腸腫瘍を根絶し得る。Co-CDA/His33-PEGはIFNb生産を大幅に延長することができ、これは注射してから4日後でさえ検出可能であった。さらに、キレート化細胞内金属イオンが先天性免疫応答を阻害するかどうかを試験する実験を行った。均等なスクリーニングによって、DNA誘導性cGAS-STING-TypeI IFN/NFkB応答およびポリIC誘導TLR3cGAS-STING-Type-I IFNを効果的に阻害できるキレート剤がいくつか同定され、自己免疫疾患治療に有用であると考えられる。全体として、このような結果は、ワクチンアジュバントの有効度の改善、癌免疫療法の開発および自己免疫疾患の制御など、いくつかの達成されていない医学的課題を解決するための、単純ではあるが効果的なアプローチを表している。
【0015】
したがって、そのような結果および実施形態は、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することができる薬剤の局所送達および全身送達の両方のための新しいクラスの薬物送達システムを示す。
【0016】
それゆえに、本発明は、対象の先天性免疫応答を刺激できる薬剤を投与することによって、対象への投与時に、対象の先天性免疫応答を刺激するための組成物および方法を提供する。特に、対象への投与時に対象の先天性免疫応答を刺激することができる薬剤を含むそのような組成物、そのような組成物を合成するための方法、ならびにそのような組成物を利用するシステムおよび方法(例えば、診断および/または治療設定において)を対象とする。
【0017】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、1つ以上のDAMPまたはPAMPと、以下のa)またはb)のいずれかと:a)リン酸カルシウム、および、カチオン性ポリ(エチレンイミン)(PEI)とポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ヒスチジン)ポリエチレングリコール(PH-PEG)、脂質ポリ-ヒスチジン、ポリ(リジン)ポリエチレングリコールPEG(PK-PEG)またはアニオン性ポリ(グルタミン酸)ポリエチレングリコール(PGA-PEG)との共重合体;または、b) Zn2+、Mn2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、K、これらに関連するリン酸塩、およびこれらに関連する炭酸塩からなる群から選択される1種以上のカチオン;を含む、組成物を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、対象への投与時に当該対象における先天性免疫応答を刺激する能力を有している。いくつかの実施形態において、前記対象が癌に罹患しているか、または、癌に罹患する危険性がある。いくつかの実施形態において、前記組成物は、ワクチン適用に対する免疫応答を誘発するために使用されるものである。いくつかの実施形態において、前記対象は、癌に罹患しており、前記組成物は、前記対象への投与時に少なくとも1つの癌細胞における先天性免疫応答を刺激する能力を有している。いくつかの実施形態において、先天性免疫応答を刺激することは、サイトカインを介して媒介される先天性サイトカイン応答を刺激することを含み、当該先天性サイトカイン応答は1型インターフェロンを介して媒介される。
【0019】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、対象における癌を治療するための方法を提供し、当該方法は、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することが可能な薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含む薬学的に有効な量の組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、先天性免疫応答は、対象におけるサイトカインを介して媒介される先天性サイトカイン反応である。いくつかの実施形態において、先天性サイトカイン反応は、対象における1型インターフェロンを介して媒介される。
【0020】
このような方法は、特定の投与様式に限定されない。いくつかの実施形態においては、投与は全身投与である。いくつかの実施形態においては、投与は局所投与である。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、化学療法剤と共に投与される。いくつかの実施形態において、前記化学療法剤は、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルマスチン、クラドリビン、シスアプライド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチン-α、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(TAXOL)、ピロカルピン、プロクロルペラジン、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、トポテカン塩酸塩、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンの1つ以上である。
【0022】
そのような組成物は、特定のDAMPまたはPAMPアゴニストに限定されない。いくつかの実施形態において、DAMPおよびPAMPアゴニストは、STINGアゴニスト、プリン含有因子またはプリン誘導体因子、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、NOD様受容体(NLR)アゴニスト、RIG-I様受容体(RLR)アゴニスト、細胞質内DNAセンサ(CDS)アゴニスト、C型レクチン受容体(CLR)アゴニスト、および、インフラマソーム誘発剤から選択される。いくつかの実施形態において、DAMPおよびPAMPアゴニストは、TLR-3アゴニスト、TLR-4アゴニスト、TLR-5アゴニスト、TLR-7アゴニスト(例えば、イミキモド)、TLR-8アゴニスト(例えば、レジキモド)、TLR-9アゴニスト、およびNLRP3アゴニストから選択される。
【0023】
そのような組成物は、特定のプリン含有因子または部リン誘導体因子に限定されない。いくつかの実施形態において、前記プリン含有因子またはプリン誘導体因子は、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオロ、cAIM(PS)2、ジフルオロ(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、3’3’-cGAMP、cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’2’-cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2、cGAMPフッ素化物、3’3’-cGAMPフッ素化物、2’3’-cGAMPフッ素化物、2’2’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMP、2’3’-cdAMP、2’2’-cdAMP、3’3’-cdAMP、c-di-AM(PS)2、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’2’-c-di-AM(PS)2、3’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-cdAMPフッ素化物、2’2’-cdAMPフッ素化物、3’3’-cdAMPフッ素化物、cdGMP、2’3’-cdGMP、2’2’-cdGMP、3’3’-cdGMP、c-di-GM(PS)2、2’3’-c-di-GM(PS)2、2’2’-c-di-GM(PS)2、3’3’-c-di-GM(PS)2、cdGMPフッ素化物、2’3’-cdGMPフッ素化物、2’2’-cdGMPフッ素化物、3’3’-cdGMPフッ素化物、cAIMP、2’3’-cAIMP、2’2’-cAIMP、3’3’-cAIMP、cAIMPジフルオロ(3’3’-cAIMPフッ素化物、2’3’-cAIMPフッ素化物、2’2’-cAIMPフッ素化物、cAIM(PS)2ジフルオロ、3’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ(Rp/Sp)、2’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ、2’2’-cAIM(PS)2ジフルオロ、c-di-IMP、2’3’-cdIMP、2’2’-cdIMP、3’3’-cdIMP、c-di-IM(PS)2、2’3’-c-di-IM(PS)2、2’2’-c-di-IM(PS)2、3’3’-c-di-IM(PS)2、c-di-IMPフッ素化物、2’3’-cdIMPフッ素化物、2’2’-cdIMPフッ素化物、3’3’-cdIMPフッ素化物、イミキモド、レシキモド、6-(4-アミノ-イミダゾキノリル)-ノルロイシン、
【0024】
【化1】
【0025】
、RNA、siRNA、マイクロRNA、干渉RNA、mRNA、レプリコンmRNA、RNAアナログ、DNA、および、プリンベースPI3Kインヒビターから選択される。
【0026】
このような組成物は、特定の型または種類のSTINGアゴニストに限定されない。いくつかの実施形態において、STINGアゴニストは、STINGの小分子アゴニストである。いくつかの実施形態において、STINGの小分子アゴニストは環状ジヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態において、環状ジヌクレオチドは、cGAMP、cdiAMP、cdiGMP、およびcAIMPを含む。環状プリンジヌクレオチドのさらなる例は、例えば、米国特許番号7,709,4587,592,326; WO2007/054279;およびYan et al., Bioorg. Med. Chem Lett. 18: 5631 (2008)にいくらか詳細に記載されている。これらの文献の各々を、参照として本書に盛り込む。いくつかの実施形態において、追加のSTINGアゴニストは、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)、メトキシボン、6,4’-ジメトキシフラボン、4’-メトキシフラボン、3’,6’-ジヒドロキシフラボン、7,2’-ジヒドロキシフラボン、ダイゼイン、ホルモノネチン、およびレツシン7-メチルエーテル、またはそれらの任意の誘導体から選択される。いくつかの実施形態において、STINGの小分子アゴニストは、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオル、cAIM(PS)2、ジフルオル(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、SB11285、STING-アゴニスト-C11、STINGアゴニスト-1、STINGアゴニストG10、およびゲムシタビンを含むが、これに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、STINGの小分子アゴニストは、
【0028】
【化2】
【0029】
、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオロ、cAIMP(PS)2、ジフルオロ(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp、Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、3’3’-cGAMP、cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2'2’-cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2、cGAMPフッ素化物、3’3’-cGAMPフッ素化物、2’3’-cGAMPフッ素化物、2’2’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMP、2’3’-cdAMP、2’2’-cdAMP、3’3’-cdAMP、c-di-AM(PS)2、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp、Rp)、2’2’-c-di-AM(PS)2、3’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-cdAMPフッ素化物、2’2’-cdAMPフッ素化物、3’3’-cdAMPフッ素化物、cdGMP、2’3’-cdGMP、2’2’-cdGMP、3’3’-cdGMP、c-di-GM(PS)2、2’3’-c-di-GM(PS)2、2’2’-c-di-GM(PS)2、3’3’-c-di-GM(PS)2、cdGMPフッ素化物、2’3’-cdGMPフッ素化物、2’2’-cdGMPフッ素化物、3’3’-cdGMPフッ素化物、cAIMP、2’3’-cAIMP、2’2’-cAIMP、3’3’-cAIMP、cAIMPジフルオロ(3’3’-cAIMPフッ素化物、2’3’-cAIMPフッ素化物、2’2’-cAIMPフッ素化物、cAIM(PS)2ジフルオロ、3’-3’-cAIM(PS)2ジフルオロ(Rp/Sp)、2’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ、2’2’-cAIM(PS)2ジフルオロ、c-di-IMP、2’3’-cdIMP、2’2’-cdIMP、3’3’-cdIMP、c-di-IM(PS)2、2’3’-c-di-IM(PS)2、2’2’-c-di-IM(PS)2、3’3’-c-di-IM(PS)2、c-di-IMPフッ素化物、2’3’-cdIMPフッ素化物、2’2’-cdIMPフッ素化物、3’3’-cdIMPフッ素化物、およびアミドベンズイミダゾールベース化合物から選択される。
【0030】
すでに述べたように、CDNを癌治療薬として使用するには、2つの重大な制限がある:1)薬物動態が不良であることと、重篤で不適切な副作用である。薬物動態不良に関して、腫瘍内注入を介して投与された場合、CDNは低分子量および高親水性のために容易に拡散し、静脈内注入を介して投与された場合、CDNはインビボ不安定性、低親油性および高速排出のため、腫瘍組織に対して低生体利用効率を示し得る。重篤で不適切な副作用に関しては、ウイルス感染に対する免疫学的センサとして、STINGは身体中に広く分布している。そのため、高投与量のSTINGアゴニストまたは全身投与STINGアゴニストは、先天性免疫系を非特異的に活性化し、サイトカインストームを引き起こし得る。本発明は、DAMPおよび/またはPAMP(STINGアゴニストを含む)のこのような小分子アゴニストのプロドラッグを提供することによって、このような制限に対処する。
【0031】
実際、いくつかの実施形態において、DAMPおよび/またはPAMPの小分子アゴニストは、DAMPおよび/またはPAMPの小分子アゴニストのプロドラッグである。例えば、いくつかの実施形態において、DAMPおよび/またはPAMPの小分子アゴニストのプロドラッグは、本明細書に列挙されるDAMPおよび/またはPAMPの小分子アゴニストのいずれかのプロドラッグである。いくつかの実施形態において、DAMPおよび/またはPAMPの小分子アゴニストのプロドラッグは、ナノ粒子へのローディングおよび/または組織保持を支持する、疎水性部分と結合している。
【0032】
いくつかの実施形態において、CDNは、切断可能な脂質部分で修飾されて、CDNプロドラッグを作製する。例えば、以下のスキームに示されるように、脂質-CDNプロドラッグのための3つの合成経路が意図される。経路1についてはエステラーゼベースの活性化、経路2についてはホスホラミダーゼベースの活性化、経路3については環境感受性活性化の低下というように、それぞれ異なるメカニズムによって活性化される。
【0033】
スキーム1:脂質-CDNプロドラッグの合成経路
【0034】
【化3】
【0035】
スキーム2:脂質-CDNプロドラッグの合成経路
【0036】
【化4】
【0037】
スキーム3:脂質-CDNプロドラッグの合成経路
【0038】
【化5】
【0039】
改変後、脂質-CDNプロドラッグは、遊離形態またはリポソーム型の形態のいずれかにより投与され得ることが意図される。このような実施形態は、薬物動態を大幅に改善し、CDNの副作用を低減する。例えば、注射された脂質-CDNプロドラッグは、注射部位に保持され、腫瘍中にゆっくりとCDNを放出し、高い生体利用効率を付与し、かつ、正常組織への副作用を減少させることが意図される。例えば、リポソーム型の脂質-CDNプロドラッグは、静脈内または局所のいずれかで投与され得る。このようなリポソーム型脂質-CDNは、血中の薬物循環を大幅に延長し、腫瘍蓄積およびリンパ節排出を増大させ得る。より重要なことに、CDNは、脂質修飾後は不活性であり、エステラーゼによって切断された場合にのみ再活性化され得る。さらに、転移リンパ節は高いエステラーゼレベルにより無腫瘍リンパ節と区別でき、腫瘍部位での脂質‐CDNプロドラッグの選択的活性化を可能にすることが以前の研究に示さ4れている。
【0040】
いくつかの実施形態において、STING活性化化合物が提供される(例えば、WO2017011920、WO2017027646、WO2017011622、米国特許出願公開第20160287623号、WO2016100261、米国特許出願公開第20160074507号、およびWO2015161762号を参照されたい)。
【0041】
いくつかの実施形態において、cGAS調節化合物が提供される(例えば、WO2014179335を参照のこと)。
【0042】
いくつかの実施形態において、STING阻害化合物が提供される(例えば、米国特許出願公開第20170037400号を参照のこと)。
【0043】
いくつかの実施形態において、STING欠損および/またはcGAS欠損癌細胞を死滅させ得る化合物が提供される(例えば、WO2016201450を参照されたい)。
【0044】
いくつかの実施形態において、薬学的に活性な成分と組み合わされたSTING経路アゴニストが提供される(例えば、STING活性化/化学療法(WO2016096577)、STING活性化/免疫応答を刺激する選択されたワクチン製剤(米国特許出願公開第20150056224号および第20140205653号を参照のこと)、ならびにSTING活性化/サイトカイン生成(WO2013185052)を参照のこと)。
【0045】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物は、(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合により)ナノ粒子と連携する。
【0046】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子と連携するそのような組成物は、さらに、リン酸カルシウム、ならびにPEI/PEG、PH-PEG、PK-PEG、またはPGA-PEGの共重合体と連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。実際、いくつかの実施形態においては、対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤とナノ粒子との連携は、リン酸カルシウム、およびPEI/PEG、PH-PEG、PK-PEG、またはPGA-PEGの共重合体の存在下である。
【0047】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子と連携するそのような組成物は、Zn2+ Mn2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、K、およびこれらのリン酸塩または炭酸塩からなる群より選択される1つ以上のカチオンとさらに連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。実際、いくつかの実施形態においては、対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤とナノ粒子との連携は、そのようなカチオン(例えば、Zn2+、Co2+、またはMn2+)の存在下である。
【0048】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子および1つ以上のカチオン(例えば、Zn2+、Co2+、またはMn2+)またはリン酸カルシウムと連携するこのような組成物は、疎水性分子とさらに連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。
【0049】
いくつかの実施形態において、疎水性分子は脂質分子である。いくつかの実施形態において、脂質分子は膜形成脂質分子である。いくつかの実施形態において、脂質分子は非膜形成脂質分子である。
【0050】
本発明の実施形態に適用可能な脂質分子の例には、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチルホスファチジルエタノールアミン、ジメチルホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、およびこれらの混合物を含むが、これに限定されない。他のジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質も、使用することができる。これらの脂質中のアシル基は、好ましくはC10~C24炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基であり、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイルである。
【0051】
脂質分子の他の非限定的な例には、コレステロールなどのステロール、コレスタノールのようなその誘導体、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、およびそれらの混合物が含まれる。
【0052】
本発明における使用に適した脂質分子の他の例には、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート、グリセロールリシノール酸、ヘキサデシルステレエート、イソプロピルミリステート、両性アクリルポリマー、トリエタノールアミンラウリル硫酸、アルキルアリールスルフェートポリエチルオキシレート脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウム臭化物、セラミド、スフィンゴミエリンなどの非リン含有脂質が含まれる。
【0053】
本発明における使用に適した脂質分子の他の例には、脂肪酸およびその誘導体または類似体が含まれる。それらには、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノレニン酸、ジカプレート、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン酸、カプリリン酸、アラキドン酸、グリセロール1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1-10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピル、およびt-ブチル)、ならびに、それらのモノ-およびジ-グリセリド(すなわち、オレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレートなど)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33; El Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651-654)。
【0054】
本発明における使用に適した脂質分子の他の例には、PEG(PEG-脂質)で修飾された脂質分子が含まれる。PEG脂質の例には、例えば、PCT公開番号WO05/026372に記載されたようなジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、例えば、米国特許公開番号20030077829および2005008689に記載されたようなジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質に結合したPEG(PEG-PE)、は例えば、米国特許番号5,885,613に記載されたようなセラミドに結合したPEG、コレステロールまたはその誘導体に結合したPEG、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの特許文献の開示は、全ての目的のためにその全体を参照として本明細書に組み込む。追加のPEG-脂質とには、PEG-C-DOMG、2KPEG-DMG、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンPEG反復単位の直鎖状の水溶性ポリマーである。PEGはその分子量によって分類され、例えば、PEG2,000は約2,000ダルトンの平均分子量を有し、PEG5,000は、約5,000ダルトンの平均分子量を有する。PEGはSigma Chemical Co.および他の会社から市販されており、例えば、モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-コハク酸塩(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシニミジルコハク酸塩(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、およびモノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)を含む。米国特許番号6,774,180および7,053,150に記載されているような他のPEG(例えば、mPEG(20KDa)アミン)もまた、本発明のPEG-脂質複合体を調製するために有用である。これらの特許の開示は、全ての目的のためにその全体を参照として本明細書に組み込む。さらに、モノメトキシポリエチレングリコール酢酸(MePEG-CH2COOH)は、例えばPEG-DAA複合体を含むPEG-脂質複合体を調製するのに特に有効である。
【0056】
本明細書中に記載されたPEG-脂質複合体のPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含み得る。特定の例において、PEG部分は約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトンなど)の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEG部分は、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0057】
特定の例において、PEGは、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、またはアリール基によって置換されていてもよい。PEGは、脂質に直接結合され得るか、またはリンカー部分を介して脂質に連結され得る。PEGを脂質に連結するのに適した任意のリンカー部分は、例えば、非エステル含有リンカー部分およびエステル含有リンカー部分を含むものを使用することができる。好ましい実施形態において、リンカー部分は、非エステル含有リンカー部分である。本明細書中で使用される場合、用語「非エステル含有リンカー部分」は、カルボン酸エステル結合(-OC(O)-)を含まないリンカー部分をいう。好適な非エステル含有リンカー部分には、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCHCHC(O)-)、スクシナミジル(-NHC(O)CHCHC(O)NH-)、エーテル、ジスルフィド、ならびにそれらの組み合わせ(カルバメートリンカー部分およびアミドリンカー部分の両方を含むリンカーなど)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カルバメートリンカーを用いてPEGを脂質に結合させる。
【0058】
他の実施形態において、エステル含有リンカー部分は、PEGを脂質に結合するために使用される。適切なエステル含有リンカー部分には、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、スクシノイル、ホスフェートエステル(-O-(O)POH-O-)、スルホネートエステル、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0059】
様々な鎖長および飽和度の様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGに結合して、脂質複合体を形成することができる。このようなホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、または当業者に公知の従来の技術を使用して、単離または合成し得る。C10~C20の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含むホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノ-またはジ不飽和脂肪酸を有するホスファチジルエタノールアミン、ならびに、飽和および不飽和脂肪酸の混合物も使用することができる。適切なホスファチジルエタノールアミンには、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、およびジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物に連携するナノ粒子は、標的癌細胞を結合するように構成された1つ以上の薬剤とさらに連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。
【0061】
いくつかの実施形態において、標的癌細胞に結合する薬剤は、α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、Mum-2、およびMum-3、ネオ-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、Gage3、Gage4、Gage5、Gage6、Gage7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-A2、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A6、Mage-A10、Mage-A12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、およびTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、ヒトEGFR残基306-325(SCVRACGADSYEMEEDGVRK(配列番号:374))および残基897-915(VWSYGVTVWELMTFGSKPY(配列番号:375))などのヒトEGFRタンパク質またはそのフラグメント、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\サイクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、WT1(ならびにWT1由来ペプチド配列:WT1 126-134(RMFP NAPYL(配列番号:376))、WT1 122-140(SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号:377))、およびWT1 122-144(SGQARMFPNAPYLPSCLESQPTI(配列番号:378))、MUC1(ならびにMUC1-由来ペプチドならびにRPAPGS(配列番号:379)、PPAHGVT(配列番号:380)、およびPDTRP(配列番号:381)などのグリコペプチド))、LMP2、EGFRvIII、イディオタイプ、GD2、Ras変異体、p53変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、サバイビン、hTERT、サルコーマ転座切断点、EphA2、EphA4、LMW-PTP、PAP、ML-IAP、AFP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、sLe(動物)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子のタンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-α、PDGFR-β、MAD-CT-2、Fos関連抗体1、ERBB2、葉酸受容体1(FOLR1またはFBP)、IDH1、IDO、LY6K、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1、VEGFR1として最もよく知られる)、KDR、PADRE、TA-CIN(組換えHPV16 L2E7E6)、SOX2、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびそれらのいずれかの誘導体からなる群より選択される腫瘍抗原である。
【0062】
いくつかの実施形態において、標的癌細胞に結合するように構成された1つ以上の薬剤が、ナノ粒子の外面に結合している。いくつかの実施形態において、標的癌細胞に結合するように構成された1つ以上の薬剤は、ナノ粒子内にカプセル化している。
【0063】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物と連携するナノ粒子は、さらにアジュバントと連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記アジュバントは、CPG、ポリIC、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、Amplivax、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IFN-a、Flt-3L等)、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTelRTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、イミキモド、レジキモド、ガーディキモド、3M-052、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、Aquila’s QS21スティミュロン、バジメザン、AsA404(DMXAA)、3M MEDI9197、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)、GLA-SE、CD1dリガンド(C20:2、OCH、AH04-2、α-ガラトシルセラミド、α-C-ガラトシルセラミド、α-マンノシルセラミド、α-フルクトシルセラミド、β-ガラトシルセラミド、β-マンノシルセラミド等)、STINGアゴニスト(例えば、環状[G(3’,5’)pA(3’,5’)p]、環状[G(2’,5’)pA(3’,5’)p]、環状[G(2’,5’)pA(2’,5’)p]、環状ジアデニレートモノホスフェート、環状ジグアニレートモノホスフェートを含む環状ジヌクレオチド)、CL401、CL413、CL429、フラジェリン、RC529、E6020、イミダゾキノリン系小分子TLR-7/8a(その脂質化アナログを含む)、ビロソーム、AS01、AS02、AS03、AS04、AS15、IC31、CAF01、ISCOM、サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IFN-a、Flt-3L等)、および細菌毒素(CT、LT等)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール修飾CpG)またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、アジュバントは樹状細胞標的化分子である。
【0065】
対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することができる薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含み、ナノ粒子と連携するそのような組成物は、特異的なタイプのナノ粒子に限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。いくつかの実施形態において、前記ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、メタ-ポリヒスチジン-DOPE@リポソーム、金属-ポリヒスチジン-PEG、4arm-PEG-ポリヒスチジン-金属ヒドロゲル、sHDL-ポリヒスチジン、フラーレン、内包メタロフラーレンバッキーボール、トリメタル窒化物テンプレート化内包メタロフラーレン、単層および多層カーボンナノチューブ、分枝および樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層および多層ホウ素/硝酸塩ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、任意のナノ構造、マイクロ構造、レイヤーバイレイヤー処理若しくは自己集合処理を用いて形成されたそれらの誘導体、高分子電解質、微粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラスおよびポリマーのマイクロスフィアおよびナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィアおよびナノスフェア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、ならびに、有機金属フレームワーク(MOF)配位ポリマー(CP)からなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均サイズは6~500nmである。
【0068】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子はsHDLナノ粒子である。いくつかの実施形態において、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質と、少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣体との混合物を含む。いくつかの実施形態において、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(apoA-I)、アポリポタンパク質A-II(apoA-II)、アポリポタンパク質A4(apoA4)、アポリポタンパク質Cs(apoCs)、およびアポリポタンパク質E(apo E)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、および、これらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、HDLアポリポタンパク質模倣体は、ApoA-I模倣体である。
【0069】
いくつかの実施形態において、ApoA-I模倣体は、配列番号1-336、WDRVKDLATVYVDVLKDSGRDYVSQF(配列番号:341)、LKLLDNWDSVTSTFSKLREOL(配列番号:342)、PVTOEFWDNLEKETEGLROEMS(配列番号:343)、KDLEEVKAKVQ(配列番号:344)、KDLEEVKAKVO(配列番号:345)、PYLDDFQKKWQEEMELYRQKVE(配列番号:346), PLRAELQEGARQKLHELOEKLS(配列番号:347)、PLGEEMRDRARAHVDALRTHLA (配列番号:348), PYSDELRQRLAARLEALKENGG (配列番号: 349), ARLAEYHAKATEHLSTLSEKAK(配列番号:350), PALEDLROGLL(配列番号:351)、PVLESFKVSFLSALEEYTKKLN(配列番号:352)、PVLESFVSFLSALEEYTKKLN(配列番号:353)、PVLESFKVSFLSALEEYTKKLN(配列番号:352)、TVLLLTICSLEGALVRRQAKEPCV(配列番号:354)、QTVTDYGKDLME(配列番号:355)、KVKSPELOAEAKSYFEKSKE(配列番号:356)、VLTLALVAVAGARAEVSADOVAT (配列番号:357)、NNAKEAVEHLOKSELTOOLNA (配列番号:358)、LPVLVWLSIVLEGPAPAOGTPDVSS(配列番号:359)、LPVLVVVLSIVLEGPAPAQGTPDVSS(配列番号:360)、ALDKLKEFGNTLEDKARELIS(配列番号:361)、VVALLALLASARASEAEDASL (配列番号:362)、HLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVYOA (配列番号:363)、AQAWGERLRARMEEMGSRTRDR(配列番号:364)、LDEVKEQVAEVRAKLEEQAQ (配列番号:365)、DWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号:236)、DWLKAFYDKVAEKLKEAFPDWAKAAYDKAAEKAKEAA(配列番号:366)、PVLDLFRELLNELLEALKQKL (配列番号:367)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLA(配列番号:368)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLK (配列番号:4)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLA(配列番号:369)、PVLDLFRELLNELLEALKKLLK (配列番号:370)、PVLDLFRELLNELLEALKKLLA(配列番号:371)、PLLDLFRELLNELLEALKKLLA (配列番号:372)、および、EVRSKLEEWFAAFREFAEEFLARLKS(配列番号:373)のいずれかによって表される。
【0070】
いくつかの実施形態において、sHDLナノ粒子の平均粒径は、6~70ナノメートルである。
【0071】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物と連携するナノ粒子は、さらに、1つ以上の新抗原ペプチドと連携し(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)、ここで、1つ以上の新抗原ペプチドの各々は、対象から得られた腫瘍形成生物学的サンプルから同定される新抗原変異に特異的である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0072】
いくつかの実施形態において、1つ以上の新抗原ペプチドは、約5~約50アミノ酸長の範囲である。いくつかの実施形態において、1つ以上の新抗原ペプチドは、約15~約35アミノ酸長の範囲である。いくつかの実施形態において、1つ以上の新抗原ペプチドは、約18~約30アミノ酸長の範囲である。いくつかの実施形態において、1つ以上の新抗原ペプチドは、約6~約15アミノ酸長の範囲である。
【0073】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物と連携するナノ粒子は、1つ以上の生体高分子薬剤とさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。
【0074】
このような組成物は、特定の生体高分子薬剤に限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態において、生体高分子薬剤は核酸である。このような実施形態は、RNA、siRNA、マイクロRNA、干渉RNA、mRNA、レプリコンmRNA、RNA類似体、およびDNAを含むが、これらに限定されない、任意のタイプの核酸分子を包含する。
【0076】
いくつかの実施形態において、生体高分子薬剤はペプチドである。
【0077】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモンペプチド、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、オキシトシン、バソプレシン、コルチコトロピン放出因子(CRF)、CRF関連ペプチド、性腺刺激ホルモン放出関連ペプチド(GAP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)、オレキシン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、ソマトスタチン、チロトロピン放出ホルモン(THR)、THR類似体、カルシトニン(CT)、CT前駆体ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、アミリン、グルカゴン、インスリン、インスリン様ペプチド、神経ペプチドY(NPY)、膵ポリペプチド(PP)、ペプチドYY(PYY)、コレシストキニン(CCK)、CCK関連ペプチド、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ガストリン、ガストリン関連ペプチド、ガストリン抑制ペプチド、モチリン、セクレチン、血管活性腸管ペプチド(VIP)、VIP関連ペプチド、心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、タキキニン、アンジオテンシン、レニン基質、レニン阻害剤、エンドセリン、エンドセリン関連ペプチド、オピオイドペプチド、胸腺ペプチド、アドレノメデュリンペプチド、アロスタチンペプチド、アミロイドβタンパク質断片、抗菌ペプチド、抗酸化ペプチド、アポトーシス関連ペプチド、嚢細胞ペプチド(BCP)、ボンベシン、骨Glaタンパク質ペプチド、コカインおよびアンフェタミン関連転写産物(CART)ペプチド、細胞接着ペプチド、化学走化性ペプチド、補体阻害剤、コルチスタチンペプチド、フィブロネクチン断片、フィブリン関連ペプチド、FMRF、FMRFアミド関連ペプチド(FaRP)、ガラニン、ガラニン関連ペプチド、成長因子、成長因子関連ペプチド、G治療用ペプチド結合タンパク質断片、グアリリン、ウログアリリン、インヒビンペプチド、インターロイキン(IL)、インターロイキン受容体タンパク質、ラミニン断片、レプチン断片ペプチド、ロイコキニン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PAPCAP)、パンクレアスタチン、ポリペプチド反復鎖、シグナル伝達因子、トロンビン阻害剤、毒素、トリプシン阻害剤、ウイルス関連ペプチド、アジュバントペプチド類似体、α接合因子、抗不整脈ペプチド、食欲減退ペプチド、α-1抗トリプシン、ウシ松果体抗生殖ペプチド、ブルシン、C3ペプチドP16、カドヘリンペプチド、クロモグラニンA断片、避妊テトラペプチド、コナントキンG、コナントキンT、甲殻類心作用性ペプチド、C-テロペプチド、シトクロムb588ペプチド、デコルシンDecorsin)、デリシャスペプチド(delicious peptide)、デルタ睡眠誘導ペプチド、ジアゼパム結合抑制剤断片、一酸化窒素合成酵素阻害ペプチド、OVAペプチド、血小板カルパイン阻害剤(P1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1、リギン、統合失調症関連ペプチド、ナトリウムカリウムA治療用ペプチターゼ阻害剤-1、スぺラクト、精子活性化ペプチド、システミン、トロンビン受容体アゴニスト、タフトシン、脂質動員物質ホルモン、尿毒症性ペンタペプチド、不凍ポリペプチド、腫瘍壊死因子(TNF))、Leech[Des Asp10]デコルシン、L-オルニチルタウリン塩酸塩、P-アミノフェニルアセチルタフトシン、Ac-Glu-Glu-Val-Val-Ala-Cys-pNA、Ac-Ser-Asp-Lys-Pro、Ac-rfwink-NH2、Cys-Gly-Tyr-Gly-Pro-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val-Gly-Gly、D-Ala-Leu、D-D-D-D-D、D-D-D-D-D-D、N-P-N-A-N-P-N-A、V-A-I-T-V-L-V-K、V-G-V-R-V-R、V-I-H-S、V-P-D-P-R、Val-Thr-Cys-Gly、R-S-R、ウニ精子活性化ペプチド、SHU-9119アンタゴニスト、MC3-Rアンタゴニス、MC4-Rアンタゴニスト、グラスピモド(Glaspimod)、HP-228、α2-プラスミン阻害剤、APC腫瘍抑制剤、早期妊娠因子、γインターフェロン、腺性カリクレインN-1、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、サルコレシン(Sarcolecin)結合タンパク質、サーファクタントタンパク質D、ウィルムス腫瘍抑制因子、GABAB 1b受容体ペプチド、プリオン関連ペプチド(iPRP13)、コリン結合タンパク質フラグメント、テロメラーゼ阻害剤、カーディオスタチンペプチド、エンドスタチン由来ペプチド、プリオン阻害ペプチド、N-メチルD-アスパラギン酸塩受容体アンタゴニスト、およびC-ペプチド類似体である。
【0078】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、177Lu-DOTA0-Tyr3-オクトレオテート、アバレリックス酢酸塩(Abarelix acetate)、ADH-1、アファメラノチド(Afamelanotidec)、メラノタンI、CUV1647、アルビグルチド、アプロチニン、アルジプレシン(Argipressin)、アトシバン酢酸塩、バシトラシン、ベンチロミド、BH3ドメイン、ビバリルジン、トリフルオロ酢酸ビバリルジン水和物(Bivalirudin trifluoroacetate hydrate)、ブリシビモド、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブセレリン酢酸塩、カルシトニン、カルベトシン、カルベトシン酢酸塩、セクロピンAおよびB、セルレチド、セルレチドジエチルアミン、セトロレリクス、セトロレリクス酢酸塩、シクロスポリン、シレンギチド(Cilengitidec)、EMD121974、コルチコレリン酢酸塩注入剤、hCRF、コルチコレリンヒツジトリフルテート、コルチコレリントリフルオロ酢酸塩、コルチコトロピン、コシントロピン、ACTH 1-24、テトラコサクチドヘキサ酢酸塩、ダルババンシン、ダプトマイシン、デガレリクス酢酸塩、トリフルオロ酢酸デプトレオチド(過テクネチウム酸ナトリウムと共に)、デスモプレシン酢酸塩、デスモプレシンDDAVP、デュラグルチド、エカランチド、エドトレオチド(イットリウム-90と共に)、エルカトニン酢酸塩、エナラプリルマレイン酸塩(または2-ブタンジオエート)、エンフビルチド、エプフィヒバチド、エキセナチド、ガニレリクス酢酸塩、グラチラマー酢酸塩、グルタチオン、ゴナドレリン、ゴナドレリン酢酸塩、GnRH、LHRH、ゴセレリン、ゴセレリン酢酸塩、グラミシジン、ヒストレリン酢酸塩、ヒトカルシトニン、イカチバント、イカチバント酢酸塩、IM862、オグルファニド二ナトリウム、KLAKLAK、ランレオチド酢酸塩、レピルジン、リュープロリド、リュープロリド酢酸塩、リュープロレリン、リラグルチド、リシノプリル、リキシセナチド、ライプレッシン、マゲニン2、MALP-2Sc、マクロファージ活性化リポペプチド-2合成物(macrophage-activating lipopeptide-2 synthetic)、ナファレリン酢酸塩、ネシリチド、NGR-hTNF、オクトレオチド酢酸塩、オリタバンシン、オキシトシン、パシレオチド、ペギネサチド、ペンタガストリン、ペンテトレオチド(インジウム-111と共に)、フェニプレシン、プレウロシジン、プラムリンチド、プロチレリン、チロリベリン、TRH、TRF、サケカルシトニン、サララシン酢酸塩、セクレチン(ヒト)、セクレチン(ブタ)、セマグルチド、セラクチド酢酸塩、ACTH、コルチコトロピン、セルモレリン酢酸塩、GRF 1-29、シナプルチド、ルシナクタント中のKL4、シンカリド、ソマトレリン酢酸塩、GHRH、GHRF、GRF、ソマトスタチン酢酸塩、スパグルマットマグネシウム(またはナトリウム)塩(Spaglumat magnesium (or sodium) salt)、P物質、タルチレリン水和物、テデュグルチド、テイコプラニン、テラバンシン、テリパラチド、テルリプレシン酢酸塩、テトラコサクチド、チマルファシン、チモシンa-1、チモペンチン、トレバナニブ、トリプトレリン、トリプトレリンパモエート、チロセルロイチド、ウラリチド、バンコマイシン、バプレオチド酢酸塩、血管活性腸管ペプチド酢酸塩、Vx-001c、TERT572Y、ジコノチド酢酸塩、α5-α6Baxペプチド、およびβ-ディフェンシンから選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、組成物を用いて所望の目的を達成するのを助ける任意のペプチドである。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドは、任意の種類の疾患および/または障害の治療を容易にする任意のペプチドである。
【0080】
いくつかの実施形態において、ペプチドは抗原である。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗原は、ペプチドベースの抗原、タンパク質ベースの抗原、多糖類ベースの抗原、糖類ベースの抗原、脂質ベースの抗原、糖脂質ベースの抗原、核酸ベースの抗原、不活性生物ベースの抗原、弱毒化生物ベースの抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲン由来の抗原、および腫瘍抗原からなる群より選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗原は本明細書に記載の腫瘍抗原である。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗原は尿路感染に対するFimH;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の可溶性Fタンパク質;HIV由来のNEF、GAG、およびENVタンパク質;肺炎連鎖球菌タンパク質;HMGB1タンパク質;インフルエンザに対する血球凝集素およびニューロアミダーゼタンパク質;HPV16型および18型に由来するウイルス抗原;HSV-2由来のgL2、ICP4、gD2ΔTMR、またはICP4.2;ニューモリソイドのようなS.pneumoniae由来の抗原;コリン結合タンパク質A(CbpA)または肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、SP1912、SP1912L、シグナル配列の有無にかかわらずSP0148、シグナル配列の有無にかかわらずSP2108;CT209ポリペプチド抗原、CT253ポリペプチド抗原、CT425ポリペプチド抗原、CT497ポリペプチド抗原、およびCT843ポリペプチド抗原のようなChlamydia trachomatis由来の抗原、;アミロイド-βペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態において、抗原は、ナノ粒子の外面に結合している。いくつかの実施形態において、抗原はナノ粒子内にカプセル化されている。
【0085】
特定の実施形態において、本発明は、cGAS-STING活性化およびI型IFN応答を阻害し得る組成物であって、1つ以上の細胞透過性キレート剤またはそれらの誘導体を含み、細胞内金属イオンをcGAS-STING-I型IFN活性化に利用できなくし得る組成物を提供する。
【0086】
ある特定の実施形態において、本発明は、1つ以上の細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)を含み、細胞内金属イオンを先天性免疫経路に利用できなくすることによって、先天性免疫活性化を調節し得る組成物を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態において、そのような細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)は、ポリフェノール系キレート剤(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)、プニカラギン、(-)-カテキンガレート、(-)-カテキン、タンニン酸、タンニン、プニカリン、ベスカラギン、プロシアニジンC1、ゲラニイン、テアフラビン3,3’-ジガラート、脂質修飾NTA、ポルフィリン、EDTA、NOTA、DOTA、TPEN、およびクロフェレマー等を含むがこれに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態において、cGAS-STING活性化およびI型IFN応答を阻害し得る組成物を、自己免疫障害に罹患しているか、または自己免疫障害に罹患するリスクがある対象の治療において使用する。
【0089】
このように、本発明は、1つ以上の細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)を含む、先天性免疫活性化を調節することができる組成物を、対象(例えば、ヒト対象)に投与して、細胞内金属イオンを先天性免疫経路に利用できないようにすることによって、自己免疫障害を治療するするための方法を提供する。そのような実施形態において、そのような細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)は、ポリフェノール系キレート剤(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)、プニカラギン、(-)-カテキンガレート、(-)-カテキン、タンニン酸、タンニン、プニカリン、ベスカラギン、プロシアニジンC1、ゲラニイン、テアフラビン3,3’-ジガラート、脂質修飾NTA、ポルフィリン、EDTA、NOTA、DOTA、TPEN、およびクロフェレマー等を含むがこれに限定されない。
【0090】
自己免疫障害の例は、全身性エリテマトーデス、エカルディ・グティエール症候群、急性膵炎、加齢性黄斑変性、アルコール性肝疾患、肝線維症、転移、心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、パーキンソン病、多発性関節炎/胎児および新生児貧血、敗血症、炎症性腸疾患、および多発性硬化症を含むが、これに限定されない。
【0091】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬をそのような組成物と共に投与する。そのような追加の治療薬は、疾患修飾性抗リウマチ薬(例えば、レフルノミド、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン)、生物学的製剤(例えば、リツキシマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク)、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン、トラマドール)、免疫調節薬(例えば、アナキンラ、アバタセプト)、グルコルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、TNF-α阻害剤(例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、IL-1阻害剤、および、メタロプロテアーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記追加の治療剤は、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、非経口金または経口金を含むが、これらに限定されない。
【0092】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の組成物(例えば、1つ以上のDAMPおよび/またはPAMPを含む組成物)および1つ以上のアジュバント(本明細書に記載の通り)、化学療法剤、抗免疫抑制剤、免疫刺激剤、および抗原(本明細書に記載の通り)を対象に投与することを含む、対象における癌を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象はヒト対象である。
【0093】
いくつかの実施形態において、免疫刺激剤は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1、抗PD-Ll、抗TIM-3、抗BTLA、抗VISTA、抗LAG3、抗CD25、抗CD27、抗CD28、抗CD137、抗OX40、抗GITR、抗ICOS、抗TIGIT、およびIDOの阻害剤から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルマスチン、クラドリビン、シスアプライド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチン-α、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(TAXOL)、ピロカルピン、プロクロルペラジン、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、トポテカン塩酸塩、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンから選択される。
【0095】
いくつかの実施形態において、癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道がん、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、腹部の癌、頭頸部癌、精巣癌、黒色腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、および、子宮癌から選択される1つ以上である。
【0096】
追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】CDN-Zn、CDN-Zn@リポソームおよびCDN@CaP/PEI-PEGの合成の概略図である。(A)Zn2+とCDNとの間の配位架橋はCND-ZnNPの集合体を可能にし、次いで、集合体はリポソームによってさらに修飾される。(B)CDNとPEI-PEGの骨格との間の電荷相互作用により、CDNは合成中にCaP/PEI-PEG NP内に充填され得る。
図2】CDN-Zn、CDN-Zn@リポソームおよびCDN@CaP/PEI-PEGの特性評価。cdAMP-Zn(a)、cdGMP-Zn(b)、cGAMP-Zn(c)、CDN-Zn@liposome(d)およびCDN@CaP/PEI-PEG(e)のTEM画像(上パネル)、大きさ(中央パネル)およびゼータ電位(下パネル)。
図3】異なるCDN製剤の放出グラフ、およびインビトロのSTING活性。(A)製剤に対するCDNの充填効果。赤色の線は充填前のCDN吸光度を示し、一方、青色の線は、充填後の上清中の充填されていない遊離CDNの吸光度を示す。(B)ナノ製剤からのCDNの放出動態。(C)異なる濃度の遊離CDNおよびCDN-Znによる代表的なTHP1活性評価。使用されたCDNはcdAMPである。(D)遊離CDNおよびCDN@CaP/PEI‐PEGによる代表的なTHP1活性。使用されたCDNはcdAMP(ps)2である。
図4】CT26腫瘍モデルにおけるCDN製剤の治療効果。(A-C)6~7週間のBalb/Cマウスに対して、0日目に1.5×105のCT26腫瘍細胞を接種させた。10、15日目に、腫瘍保有マウスを、adAMP(ps)2の25ug/用量を含む示された製剤を腫瘍内に投与して処置した。(A)腫瘍保有マウスの平均腫瘍成長曲線、(B)異なる処置後のマウスの生存を示す。(C)異なる群の個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す。(D-E)CDN処置の2回目の投与の7日後、PBMCを(D)四量体染色および(E)AH1ペプチドによるELISPOT分析のために収集した。(F)CDN処置の最初の投与から7日後、AH1ペプチドを用いたELISPOT分析のためにPBMCを収集した。
図5】インビトロで金属イオンによるcGAS-STING-Type-I IFN活性を強化する。(a-c)骨髄由来樹状細胞(BMDC)(a-b)およびヒト単球細胞株THP1(c)を、STINGアゴニストの有無にかかわらず、様々な濃度の金属イオンと共にインキュベートした。STING活性を、細胞培養培地中のインターフェロン-β(IFN-b)放出によって定量化した。
図6】Co2+およびMn2+による、インビボでのSTING活性およびがん治療効果の増強。(a)腫瘍接種後9日目、12日目、15日目に適応注入を3回腫瘍内注射した後の個々の腫瘍増殖曲線。(b)適応処方の初回投与8時間後の血清IFN-β濃度。c-d)示された製剤で処置後の、個々の腫瘍保有マウスの腫瘍増殖(c)および生存(d)。
図7】Co2+およびMn2+によるSTING活性の増強は、インビボの後の抗原特異的免疫応答の改善をもたらした。(a)16日目のPBMC中のAH1特異的CD8+ T細胞の割合(b)22日目にAH1ペプチドで刺激した後の5E4 PBMC当たりのIFN-y分泌細胞数。(c-e)タイムライン(c)、腫瘍増殖曲線(d)および脾臓CD8+ T細胞中のAH1特異的CD8+ T細胞の割合(e)81日目から開始した腫瘍再誘発試験。
図8】代表的なPAMPの金属イオンによる、インビトロでのサイトカイングラフの変化。(a~d)骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、TLR3アゴニストポリICの有無にかかわらず、様々な濃度の金属イオンと共にインキュベートした。(e-f)BMDCを、TLR4アゴニストMPLAの有無にかかわらず、様々な濃度の金属イオンと共にインキュベートした。(g-h)BMDCを、TLR7/8アゴニストR848の有無にかかわらず、様々な濃度の金属イオンと共にインキュベートした。(i-j)BMDCを、TLR9アゴニストCpGを含むまたは含まない様々な濃度の金属イオンと共にインキュベートした。細胞培養培地のサイトカインレベルをELISAアッセイによって定量した。
図9】インビトロで、金属イオンにより、代表的なNOD様受容体(NLR)リガンドの免疫応答を調節した。(a~f)骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、NOD1アゴニストC12-iE-DAPを含むまたは含まない種々の濃度の金属イオンと共にインキュベートした。(g-1)BMDCを、NOD2アゴニストC18-MDPを含むまたは含まない、種々の濃度の金属イオンと共にインキュベートした。細胞培養培地のサイトカインレベルをELISAアッセイによって定量した。コントロール:生理食塩水中の相対PAMP。
図10】インビトロで、金属イオンにより、代表的なRIG-I様受容体-(RLR)リガンドの免疫応答を調節した。(a~f)骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、RLRリガンドPoly(dA:dT)/LyoVec(商標)(Invivogen)を含むまたは含まない、異なる濃度の金属イオンと共にインキュベートした。細胞培養培地のサイトカインレベルをELISAアッセイによって定量した。コントロール:生理食塩水中の相対PAMP。
図11】インビトロで、金属イオンにより、典型的な炎症誘発物質の免疫応答を調節した。(a~f)骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、300ng/mlのホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸(PMA)で3時間前処理し、2回洗浄した後、10~200mg/mlのミョウバン結晶処理を行った。NLRP3インフラマソームの形成は、IL‐1b分泌によって特徴づけることができた。(g-k)BMDCを、大腸菌外膜小胞の非カノニカルインフラマソーム誘導物質および異なる濃度の種々の金属イオンと共にインキュベートした。細胞培養培地のサイトカインレベルをELISAアッセイによって定量した。コントロール:生理食塩水中の相対PAMP。
図12】インビトロでの金属イオン単独の免疫効果。(a~f)骨髄由来樹状細胞(BMDC)は、異なる濃度の金属イオンであった。細胞培養培地のサイトカインレベルをELISAアッセイによって定量した。コントロール:生理食塩水の相対PAMP。
図13】先天性免疫刺激剤および金属イオンから構成される代表的な製剤1。(a)金属イオン-polyHis-DOPE@リポソームナノ粒子の構成の概要。(b)マンガン-CDA-H11-DOPE@リポソームナノ粒子(Mn-CDA/H11@リポソーム)のTEM像。(c-e)示された製剤で処置されたCT26結腸腫瘍モデルの腫瘍増殖曲線、および5匹のマウスのうちの腫瘍のない処置したマウスの数:(c)遊離CDA/Mn2+を5μg、または5μgのCDAを含むMn-CDA/H11@lipsomeを、3回投与した。(d)遊離CDA/Mn2+を1μg、または1ugのCDAを含むMn-CDA/H11@lipsomeを、腫瘍接種後9、12および15日目に腫瘍内(IT)注射によって3回投与した;(e)遊離CDA/Mn2+を20μg、または20μgのCDAを含むMn-CDA/H11@リポソームを腫瘍接種後9、12および15日目に静脈内(IV)注射によって3回投与した。(f)AH-1初回投与7日後のPBMC中の抗原特異的T細胞比率。(g)初回投与14日後のPBMC10万個あたりのELISPOTカウント。(h-j)適応注入注射4時間後の血清IFN-β、IP10およびTNF-a値。
図14】先天性免疫刺激剤および金属イオンから構成される代表的な製剤2。(a)金属イオン-ポリ-His-PEGナノ粒子構成の概要。(b)Co-CDA/H33-PEGナノ粒子のTEM像。(c)示された製剤で処理されたBMDCのインビトロSTING活性。(d)B16F10メラノーマモデルにおいて示された製剤を腫瘍内に1回注射した後の血清IFN-β。(e-f)示された製剤で処置されたマウスの腫瘍増殖(e)および個々の腫瘍増殖(f)。5ugの遊離CDA/Mn2+または5ugのCDAを含むMn-CDA-H33-PEGを、腫瘍接種後9、12および15日目にCT16腫瘍、IT注射により3回投与した。(g-h)初回投与7日後のPBMC中のAH-1抗原特異的T細胞比率(g)および初回投与14日後のPBMC10万個あたりのELISPOT計測。
図15】先天性免疫刺激剤および金属イオンから構成される代表的な製剤3。(a)金属イオン-4arm-PEG-polyHis配位ヒドロゲルの模式図組成物。CDA@Co2+-4arm-PEG-His11ヒドロゲル(CDA@4aH11-Coヒドロゲル)を示す。(b)注射6時間後の注射部位での注射用トリパンBlue@4aH11-Coヒドロゲルの保持。(c-e)示された製剤で処置されたマウスの個々の腫瘍増殖。20ugの遊離CDA/Mn2+または20ugのCDAを含むヒドロゲルを、腫瘍接種後9、12および15日目に腫瘍内(IT)に3回注射した。(f)CDA@4aH11-Coヒドロゲルによる処置後の代表的な腫瘍像。
図16】いくつかの他の代表的な製剤を使用して、金属イオンおよびPAMPを送達することができる。(a)金属イオンとCDNの自己集合。(b)リポソーム被覆CDN-金属イオン配位ナノ粒子。(c)ポリヒスチジン被覆ナノ粒子。(d-e)ポリマー安定化金属-CDN配位ナノ粒子または金属鉱物ナノ粒子。ポリ(ヒスチジン)ポリエチレングリコールの共重合体:PH-PEGまたはpHis-PEG、ポリ(エチレンイミン)-ポリエチレングリコール:PEI-PEG、ポリ(リジン)ポリエチレングリコールPEG:PK-PEG、アニオン性ポリ(グルタミン酸)ポリエチレングリコール:PGA-PEG。
図17】CT26大腸腫瘍モデルにおける図12から選択された製剤の治療効果。(a)異なる濃度の遊離CDNおよびCDN-Znによる代表的なTHP1活性評価。ここで使用されるCDNはcdAMPである。(b)遊離CDNおよびCDN@CaP/PEI‐PEGによる代表THP1活性。ここで使用されるCDNはcdAMP(ps)2である。(b-e)6~7週間のBalb/cマウスに、0日目に1.5×105のCT26腫瘍細胞を接種した。10、15日目に、腫瘍保有マウスを、腫瘍内にadAMP(ps)2の25ug/用量を含む示された製剤で処置した。(c)腫瘍保持マウスの平均腫瘍成長曲線、(d)異なる処置後のマウスの生存、(e)異なる群の個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す。(f-g)四量体染色(f)処置の初回投与から7日後、ELISPOT分析(g)処置の2回目の投与から7日後。
図18】cGAS-STING-I型IFN経路を阻害するためのキレート化金属イオン。(a)cGAS-STING-I型IFN経路を阻害しうる代表的なキレート剤の分子構造。(b-c)IFN-I応答の用量阻害曲線。(b)NF-kB炎症応答(c)DNA/リポフェクタミン2000(ThermoFisher、11668027)処理THP 1 二重KI-hSTINGWT(R232)レポーター細胞(Invivogen、thpd-r232)中の示された化合物による(d)b-cの細胞生存率。(e)DNA/リポフェクタミン2000(ThermoFisher、11668027)処理THP 1-ISG hSTINGHAQレポーター細胞(Invivogen、thp-isg)における指示化合物によるIFN-I応答の用量-阻害曲線。(f)cGAMP処理THP 1二重KI-hSTINGWT(R232)レポーター細胞(Invivogen、thpd-r232)における示された化合物によるIFN-I反応の用量阻害曲線。
図19】TLR3-I型IFN経路を阻害するためのキレート化金属イオン。ポリIC/リポフェクタミン2000(ThermoFisher)処置THP 1二重STING KOレポーター細胞(Invivogen)中の示された化合物によるIFN-I応答の用量阻害曲線。
図20】他の代表的な強力なポリフェノールキレート剤の分子構造。
【発明を実施するための形態】
【0098】
〔定義〕
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および表現を以下に定義する:
本明細書で使用される場合、用語「脂質」または「脂質分子」は水に不溶性であり、脂肪、油、ワックス、および関連化合物を含む脂肪物質を指す。それらは、血液中で作られるか(内因性)、食事中に摂取されるか(外因性)のいずれかであってよい。脂質は正常な身体機能に不可欠であり、外因性または内因性の供給源から生成されるかどうかに関わらず、細胞に使用されるために輸送され、次に、細胞に使用されるために放出されなければならない。細胞による使用されるための脂質の生産、輸送および放出は、脂質代謝と呼ばれる。いくつかのクラスの脂質があるが、2つの主要なクラスは、コレステロールおよびトリグリセリドである。コレステロールは食事から摂取され、体内のほとんどの器官、組織、主に肝臓の細胞により製造されることがある。コレステロールは遊離形態、または、より頻繁には、脂肪酸と結合したコレステロールエステルと呼ばれるものとして見出すことができる。本明細書中で使用される場合、「脂質」または「脂質分子」は任意の脂溶性化合物を指す。脂質化合物の非限定的な例としては脂肪酸、コレステロール、リン脂質、複合脂質、およびそれらの誘導体または類似体が挙げられ、それらは通常、少なくとも3つのクラス:(1)脂肪および油、ならびにワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質および糖脂質を含む「脂質化合物」、および(3)ステロイドなどの「脂質誘導体」に分類される。本発明での使用に適した脂質または脂質分子は、膜形成脂質および非膜形成脂質の両方を含む。
【0099】
本明細書で使用される用語「リポタンパク質」は水不溶性脂質が部分的に水溶性外殻に含まれるように構造化された球状化合物を指す。リポタンパク質のタイプに応じて、内容物は様々な量の遊離およびエステル化コレステロール、トリグリセリドおよびアポタンパク質、またはアポタンパク質を含む。リポタンパク質には、機能および脂質、ならびにアポタンパク質含有量が異なり、濃度の増加に応じて分類される、5つの主要なタイプがある:(i)カイロミクロンおよびカイロミクロンレムナント、(ii)超低密度リポタンパク質(「VLDL」)、(iii)中間密度リポタンパク質(「IDL」)、(iv)低密度リポタンパク質(「LDL」)、および(v)高密度リポタンパク質(「HDL」)。コレステロールは、リポタンパク質と連携した粒子として血流中を循環する。
【0100】
本明細書中で使用される場合、用語「HDL」または「高密度リポタンパク質」は、高密度リポタンパク質を指す。HDLは、血液中のコレステロールのトランスポーターとして機能する、ほぼ等しい量の脂質およびタンパク質の複合体を含む。HDLは肝臓および小腸の上皮細胞で主に合成され、これらから分泌される。分泌直後のHDLは、アポリポタンパク質A-I(apoA-Iとも呼ばれる)およびリン脂質をその主要成分として含有する円盤状粒子の形態であり、これは新生HDLとも呼ばれる。この新生HDLは血液中で、末梢細胞の細胞膜から遊離コレステロールを受け取り、または他のリポタンパク質の加水分解過程で産生され、その疎水性中心に、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の作用により、前記コレステロールから変換されたコレステロールエステルを保持しながら、成熟球状HDLを形成する。HDLは「コレステロール逆輸送」と呼ばれる脂質代謝プロセスにおける極めて重要な役割を果たしており、血液中に末梢組織からコレステロールを取り込み、肝臓に輸送する。コレステロール逆輸送は、アテローム性動脈硬化症に対するHDLの予防作用の主要な機序の1つと考えられているため、高レベルのHDLは、アテローム性動脈硬化症および冠動脈心疾患(CHD)のリスク低下と関連している。
【0101】
本明細書中で使用される場合、用語「合成HDL」、「sHDL」、「再構成HDL」、または「rHDL」は、HDLの少なくとも1つのタンパク質と連携する脂質、好ましくはApoA-Iまたはその模倣体で構成された、天然HDLに構造的に類似した粒子を指す。典型的には、sHDLの構成成分は血液に由来し、または組換え技術によって産生されてもよい。
【0102】
本明細書中で使用される用語「複合体化」は本明細書中で使用される場合、生体高分子薬剤(例えば、抗原、アジュバントなど)とナノ粒子および/または微粒子との非共有結合的相互作用に関する。
【0103】
本明細書で使用される用語「結合」は本明細書で使用される場合、生体高分子剤(例えば、抗原、アジュバントなど)とナノ粒子および/または微粒子との間の共有結合的な連携を示す。
【0104】
本明細書で使用される用語「カプセル化」はナノ粒子および/または微粒子の内部にカプセル化されるか、または完全に含まれる生体高分子剤(例えば、抗原、アジュバントなど)の配置を指す。
【0105】
本明細書で使用される用語「吸収」はナノ粒子および/または微粒子の内部、すなわち外表面の内側に取り込まれ、安定に保持される生体高分子剤(例えば、抗原、アジュバントなど)を指す。
【0106】
本明細書で使用される用語「吸着」はナノ粒子および/または微粒子の外表面への生体高分子物質(例えば、抗原、アジュバントなど)の付着を指す。このような吸着は、静電引力によって起こることが好ましい。静電引力は、2つ以上の反対の電荷、またはイオン性の化学基の間に生成される引力または結合である。一般に、吸着は典型的には可逆的である。
【0107】
本明細書で使用される用語「混合」はナノ粒子および/または微粒子に溶解、分散、または懸濁された生体高分子剤(例えば、抗原、アジュバントなど)を指す。いくつかの場合において、生体高分子剤は、ナノ粒子および/または微粒子中に均一に混合され得る。
【0108】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的生体高分子」または「生体高分子」または「生体高分子剤」は本明細書中で使用される場合、生物、または細胞培養物、例えば、真核生物(例えば、哺乳動物)細胞培養物または原核生物(例えば、細菌)細胞培養物から単離され得る、1kDaを超える分子量を有する分子をいう。いくつかの実施形態において、本用語の使用は、ポリマー、例えば、核酸(RNA、siRNA、マイクロRNA、干渉RNA、mRNA、レプリコンmRNA、RNA類似体、DNAなどを含むが、これらに限定されない)、ポリペプチド(タンパク質など)、炭水化物、および脂質を指す。いくつかの実施形態において、用語「生体高分子」はタンパク質を指す。いくつかの実施形態において、用語「生体高分子」は組換えタンパク質または融合タンパク質をいう。いくつかの実施形態において、タンパク質は可溶性である。いくつかの実施形態において、生体高分子は抗体、例えばモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、生体高分子はアジュバント、抗原、治療剤、造影剤などである。
【0109】
本明細書で使用される用語「抗原」は、本明細書では細胞の抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を得るために宿主免疫系を刺激する、1つ以上のエピトープを含有する分子として定義される。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、核酸、およびそれらの組み合わせとすることができる。抗原はウイルス、細菌、寄生虫、植物、原生動物、真菌、組織または、例えばガンもしくは白血病細胞などの形質転換細胞に由来する可能性があり、細胞全体またはその免疫構成要素、例えば細胞壁構成要素とすることができる。抗原は、抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってよい。抗原は、天然または合成の抗原、例えば、ハプテン、ポリエピトープ、隣接(flanking)エピトープ、および他の組換えまたは合成由来の抗原であり得る(例えば、Bergmann, et al., Eur. J.Immunol., 23:2777-2781 (1993); Bergmann, et al., J. Immunol., 157:3242-3249 (1996); Suhrbier, Immunol. and Cell Biol., 75:402-408(1997)を参照。)。
【0110】
本明細書中で使用される場合、用語「ネオアンチゲン」または「ネオアンチゲン性」は、ゲノムコードタンパク質のアミノ酸配列を変更する腫瘍特異的変異(複数可)から生じる腫瘍抗原のクラスを意味する。
【0111】
本明細書で使用される「腫瘍特異的抗原」は本明細書では腫瘍細胞に固有であり、身体の他の細胞内または細胞上には発生しない抗原として定義される。
【0112】
本明細書で使用される用語「腫瘍関連抗原」は、本明細書では腫瘍細胞に固有ではなく、抗原への免疫応答を誘導できない条件下で正常細胞内または細胞上で発生する抗原として定義される。
【0113】
本明細書で使用される用語「アジュバント」は、本明細書では他の抗原と共に投与される時、他の抗原に対する免疫応答を増加させる物質として定義される。アジュバントは本明細書では「免疫増強剤」および「免疫調節剤」とも称される。
【0114】
本明細書で使用される用語「抗原提示細胞」は、本明細書では抗原をプロセシングすることができ、リンパ球活性化に必要とされる分子と共に、細胞表面上にペプチドフラグメントを提示することができる高度に特殊化した細胞として定義される。T細胞に対する主要な抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞である。B細胞に対する主要な抗原提示細胞は、濾胞樹状細胞である。
【0115】
本明細書で使用される用語「交差提示」は、本明細書では抗原提示細胞が、細胞外抗原を取り込み、プロセシングし、CD8 T細胞(細胞傷害性T細胞)MHCクラスI分子で提示する能力として定義される。このプロセスは、ほとんどの腫瘍および抗原提示細胞に感染しないウイルスに対する細胞性免疫を誘導する。交差提示はまた、タンパク質抗原を用いたワクチン接種、例えば、腫瘍ワクチン接種における、細胞傷害性免疫の誘導にも必要である。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫性」、「免疫学的」または「免疫」応答は、抗原に対する体液性応答および/または細胞応答の発生である。
【0117】
本明細書中で使用される場合、用語「キット」は、材料を送達するための任意の送達システムをいう。本明細書に記載されるsHDLナノ粒子(例えば、siRNAをカプセル化するsHDLナノ粒子を含む組成物)(例えば、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子を含む組成物)との関連で、このような送達システムは、このような組成物および/または補助剤(例えば、材料を使用するための書面による使用説明書など)を、ある場所から別の場所へ、保管、輸送、または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、必要な薬剤および/または補助剤を含有する1つ以上のエンクロージャー(例えば、ボックス)を含む。本明細書で使用される場合、用語「断片化キット」は、それぞれが全体のキット構成要素の一部分を含む、2つ以上の別々の容器を含む送達システムを指す。容器は共に、または別々に、対象のレシピエントに送達され得る。例えば、第1の容器は、sHDLナノ粒子を含む組成物、またはこのようなsHDLナノ粒子を合成するために必要な成分を含んでもよいが、第2の容器は第2の薬剤(例えば、siRNA、抗原、アジュバント)(例えば、抗生物質またはスプレーアプリケーター)を含有する。実際には、それぞれが全体のキット構成要素の一部分を含む2つ以上の別々の容器を含む任意の送達システムは、用語「断片化キット」に含まれる。対照的に、「組み合わせキット」は、(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一ボックスに)記載されているようなsHDLナノ粒子のいずれかを合成および利用するために必要な構成要素の全てを含有する送達システムを指す。用語「キット」は、断片化されたキットおよび組み合わされたキットの両方を含む。
【0118】
本明細書で使用される用語「対象」は特定の処置のレシピエントとすべき、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、用語「対象」および「患者」は本明細書では、ヒト対象に関して同意味で使用される。
【0119】
本明細書において使用される用語「サンプル」は、最も広い意味で使用される。ある意味では、任意の供給源から得られた標本または培養物、ならびに生体サンプルおよび環境サンプルを含むことを意味する。生体サンプルは、動物(ヒトを含む)から得られてもよく、流体、固体、組織、および気体を包含する。生体サンプルは、血液製剤、例えば血漿、血清などを含む。環境サンプルは、表面物質、土、水、水晶および工業用サンプルなどの環境材料を含む。しかしながら、このような例は、本発明に適用可能なサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0120】
本明細書で使用される用語「インビトロ」は人工環境、および人工環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は試験管および細胞培養からなることができるが、これらに限定されない。用語「インビボ」は自然環境(例えば、動物または細胞)および自然環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。
【0121】
本明細書中で使用される場合、用語「薬物」または「治療剤」は、医療イメージング、監視、避妊、化粧、栄養補助食、医薬品および予防の用途を含む診断または治療目的のために生体に投与される任意の分子、分子複合体または物質を含むことを意味する。用語「薬物」は、化学的に修飾され、および/または生物学的なもしくは生体適合性の構造に機能的に結合された任意のこのような分子、分子複合体または物質をさらに含むことを意味する。
【0122】
本明細書で使用される「溶媒」というタームは、反応が行われる媒体を指す。溶媒は液体であってもよいが、液体形態に限定されない。溶媒のカテゴリーには、非極性、極性、プロトン性、および非プロトン性が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
〔発明の詳細な説明〕
CDNのcyclic-di-AMP(Listeria monocytogenesによって産生される)およびそのアナログであるcyclic-di-GMP(Legionella pneumophilaによって産生される)は、宿主細胞によってPAMP(Pathogen Associated Molecular Pattern)として認識され、このPAMPはSTINGとして知られるPRR(病原体認識受容体)に結合する。STINGは宿主哺乳動物細胞の細胞質におけるアダプタータンパク質であり、タンク結合キナーゼ(TBK1)-IRF3シグナル伝達軸を活性化し、その結果、自然免疫を強力に活性化するIFN-βおよび他のIRF-3依存性遺伝子産物が誘導される。STINGは宿主のサイトゾルサーベイランス経路の構成要素であり、細胞内病原体による感染を感知し、それに応じてIFN-βの産生を誘導し、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞の両方ならびに病原体特異的抗体からなる適応的な防御病原体特異的免疫応答の発現につながることが現在認識されている。
【0124】
免疫療法は複数の分野でがん治療を進めている。近年、IFN遺伝子の刺激因子(STING)経路を活性化する環状GAM‐AMP(cGAMP)を介した自然免疫系の活性化により、強い抗腫瘍免疫応答を開始できることが見出された。cGAMPの他に、cdiAMP、cdiGMPおよびcAIMPなどの様々な他のサイクリックジヌクレオチド(CDN)は、腫瘍および外因性病原体に対する必須の免疫防御機構として認識されている、STING経路を活性化することができる。しかしながら、低分子量、低い薬物動態特性および標的細胞以外への重篤な毒性のため、STINGアゴニストは腫瘍への直接局所注射を必要とする。本発明のための実施形態を開発する過程で実施された実験は、CDNが(1)Zn2+または(2)リン酸カルシウムおよびPEI-PEGのいずれかの存在下で均一なナノ粒子に集合することができることを発見した。このような結果に基づいて、CDNの送達のための2つのカテゴリーの薬物送達システムが開発された。皮下CT26腫瘍モデルにおいて、製剤は腫瘍増殖を有意に阻害することが示され、40%および60%の完全退縮率を達成した。したがって、これらの製剤は、STINGアゴニストのローカルおよび全身送達の両方のための新しいクラスの薬物送達システムを代表する。
【0125】
CDNに関連するこれらのナノ粒子は、全身投与を介して腫瘍に対する特異的な免疫応答を誘導し、それにより腫瘍に対して直接の局所注射を行う必要性を回避することができるため、このような結果は臨床的に非常に重要である。
【0126】
本発明のための実施形態を開発する過程で実施されたさらなる実験によって、Mn2+およびCo2+のような特定の金属イオンが、STINGアゴニストのSTING活性化およびタイプI IFN応答を増強することができることが発見された。マウスCT26大腸腫瘍モデルにおいて、Mn2+/Co2+-STINGアゴニストの組合せは、血清I型IFNの上昇した濃度を示し、より高い腫瘍根絶効果をもたらし、腫瘍担持マウスのより長い生存を促進することが示され、80%のマウスが治癒し、困難な二次腫瘍に対して抵抗性であった。さらに、これらに限定されないが、Toll様受容体(TLR)3/4/7/8/9リガンド、NOD1/2リガンド、TLR7/8リガンド、RIG-I&CDSアゴニストおよびインフラマソーム誘導物質を含む、他の様々な自然免疫経路についてもこの現象は一般的であることがわかった。この発見に基づいて、理想的な様式で所望の標的および放出に金属先天性免疫刺激剤の組み合わせを正確に送達するために、DAMP/PAMPの金属塩、配位および他の金属負荷製剤(水酸化物/炭酸塩/リン酸塩ミネラル、リポソーム、自己集合ナノ粒子、PLGA、ヒドロゲル、エマルジョンなど)などのいくつかの薬学的に許容される製剤が開発された。最後に、いくつかのキレート剤がDNA誘導cGAS-STING-Type-I IFN/NFkB応答およびpolyIC誘導TLR3cGAS-STING-Type-I IFNを効果的に阻害できることが分かった。
【0127】
したがって、そのような結果および実施形態は、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することができる薬剤の局所送達および全身送達の両方のための新しいクラスの薬物送達システムを示す。
【0128】
それゆえに、本発明は、対象における先天性免疫応答を刺激できる薬剤を投与することによって、対象への投与時に、対象における先天性免疫応答を刺激するための組成物および方法を提供する。特に、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することができる薬剤を含むそのような組成物、そのような組成物を合成するための方法、ならびにそのような組成物を利用するシステムおよび方法(例えば、診断および/または治療設定において)を対象とする。
【0129】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、1つ以上のDAMPまたはPAMPと、以下のa)またはb)のいずれかと:
a)リン酸カルシウム、および、カチオン性ポリ(エチレンイミン)(PEI)とポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ヒスチジン)ポリエチレングリコール(PH-PEG)、脂質ポリ-ヒスチジン、ポリ(リジン)ポリエチレングリコールPEG(PK-PEG)またはアニオン性ポリ(グルタミン酸)ポリエチレングリコール(PGA-PEG)との共重合体;または、
b) Zn2+、Mn2+、Ca+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、K、これらに関連するリン酸塩、およびこれらに関連する炭酸塩からなる群から選択される1種以上のカチオン;
を含む、組成物を提供する。
【0130】
このような組成物は、特定のDAMPまたはPAMPアゴニストに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、DAMPまたはPAMPアゴニストは、STINGアゴニスト、プリン含有因子またはプリン誘導体因子、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、NOD様受容体(NLR)アゴニスト、RIG-I様受容体(RLR)アゴニスト、細胞質内DNAセンサ(CDS)アゴニスト、C型レクチン受容体(CLR)アゴニスト、および、インフラマソーム誘発剤から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態において、DAMPまたはPAMPアゴニストは、TLR-3アゴニスト、TLR-4アゴニスト、TLR-5アゴニスト、TLR-7アゴニスト(例えば、イミキモド)、TLR-8アゴニスト(例えば、レジキモド)、TLR-9アゴニスト、およびNLRP3アゴニストから選択される。
【0133】
そのような組成物は、特定のプリン含有因子またはプリン誘導体因子に限定されない。いくつかの実施形態において、プリン含有因子またはプリン誘導体因子は、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオロ、cAIM(PS)2、ジフルオロ(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、3’3’-cGAMP、cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’2’-cGAM(PS)2、2’3’-cGAM(PS)2、cGAMPフッ素化物、3’3’-cGAMPフッ素化物、2’3’-cGAMPフッ素化物、2’2’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMP、2’3’-cdAMP、2’2’-cdAMP、3’3’-cdAMP、c-di-AM(PS)2、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’2’-c-di-AM(PS)2、3’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-cdAMPフッ素化物、2’2’-cdAMPフッ素化物、3’3’-cdAMPフッ素化物、cdGMP、2’3’-cdGMP、2’2’-cdGMP、3’3’-cdGMP、c-di-GM(PS)2、2’3’-c-di-GM(PS)2、2’2’-c-di-GM(PS)2、3’3’-c-di-GM(PS)2、cdGMPフッ素化物、2’3’-cdGMPフッ素化物、2’2’-cdGMPフッ素化物、3’3’-cdGMPフッ素化物、cAIMP、2’3’-cAIMP、2’2’-cAIMP、3’3’-cAIMP、cAIMPジフルオロ(3’3’-cAIMPフッ素化物、2’3’-cAIMPフッ素化物、2’2’-cAIMPフッ素化物、cAIM(PS)2ジフルオロ、3’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ(Rp/Sp)、2’3’-cAIM(PS)2ジフルオロ、2’2’-cAIM(PS)2ジフルオロ、c-di-IMP、2’3’-cdIMP、2’2’-cdIMP、3’3’-cdIMP、c-di-IM(PS)2、2’3’-c-di-IM(PS)2、2’2’-c-di-IM(PS)2、3’3’-c-di-IM(PS)2、c-di-IMPフッ素化物、2’3’-cdIMPフッ素化物、2’2’-cdIMPフッ素化物、3’3’-cdIMPフッ素化物、イミキモド、レシキモド、6-(4-アミノ-イミダゾキノリル)-ノルロイシン、
【0134】
【化6】
【0135】
およびプリンベースPI3Kインヒビターから選択される。
【0136】
このような組成物は、特定のSTINGアゴニストに限定されない。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは環状ジヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態では、環状ジヌクレオチドがcdi-AMP、cGAMP、またはcGMP、あるいはそのいずれかの誘導体である。いくつかの実施形態において、STINGの小分子アゴニストは環状ジヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態において、環状ジヌクレオチドは、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオル、cAIM(PS)2、ジフルオル(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、SB11285、STING-アゴニスト-C11、STINGアゴニスト-1、STINGアゴニストG10、ゲムシタビン、および本明細書に記載した追加のSTINGアゴニストを含むが、これに限定されない。
【0137】
開示された組成物および方法に使用するための適切なSTINGアゴニストには、これに限定されないが、環状ジヌクレオチド分子が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、STINGの小分子アゴニストは、cGAMP、cdiAMP、cdiGMP、およびcAIMPから選択される環状ジヌクレオチドである。環状プリンジヌクレオチドのさらなる例は例えば、米国特許7,709,458および7,592,326;WO2007/054279;およびYan et al., Bioorg.Med. Chem Lett. 18: 5631 (2008)に詳細に記載されている。これらの各々は参照として本書に組み込まれる。
【0138】
開示される方法において使用するためのさらなる適切なSTINGアゴニストとしては、これらに限定されないが、フラボノイドが挙げられる。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストはフラボノイドを含み得る。他の実施形態では、STINGアゴニストはフラボノイドからなることができる。適切なフラボノイドとしては10-(カルボキシメチル)-9(10H)アクリドン(CMA)、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)、メトキシボン、6,4’-ジメトキシフラボン、4’-メトキシフラボン、3’,6’-ジヒドロキシフラボン、7,2’-ジヒドロキシフラボン、ダイドゼイン、ホルモノネチン、レツシン7-メチルエーテル、キサントン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、10-(カルボキシメチル)-9(10H)アクリドン(CMA)であり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)であり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、メトキシボンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、6,4’-ジメトキシフラボンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、4’-メトキシフラボンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、3’,6’-ジヒドロキシフラボンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、7,2’-ジヒドロキシフラボンであり得る。いくつかの局面において、STINGアゴニストはダイドゼインであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、ホルモノネチンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、レツシン7-メチルエーテルであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、キサントンであり得る。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、上記フラボノイドの任意の組合せであり得る。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、フラボノイドはDMXAAを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、STINGの小分子アゴニストは、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GMP、cAIMP、cAIMPジフルオル、cAIM(PS)2、ジフルオル(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化物、c-di-AMPフッ素化物、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2(Rp,Rp)、c-di-GMPフッ素化物、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、SB11285、STING-アゴニスト-C11、STINGアゴニスト-1、STINGアゴニストG10、およびゲムシタビンを含むが、これに限定されない。
【0140】
特定の実施形態において、本発明は、cGAS-STING活性化およびI型IFN応答を阻害し得る組成物であって、1つ以上の細胞透過性キレート剤またはそれらの誘導体を含み、細胞内金属イオンをcGAS-STING-I型IFN活性化に利用できなくし得る組成物を提供する。
【0141】
ある実施形態において、本発明は、1つ以上の細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)を含み、細胞内金属イオンを先天性免疫経路に利用できないようにすることによって、先天性免疫活性化を調節し得る組成物を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態において、そのような細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)は、ポリフェノール系キレート剤(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)、プニカラギン、(-)-カテキンガレート、(-)-カテキン、タンニン酸、タンニン、プニカリン、ベスカラギン、プロシアニジンC1、ゲラニイン、テアフラビン3,3’-ジガラート、脂質修飾NTA、ポルフィリン、EDTA、NOTA、DOTA、TPEN、およびクロフェレマー等を含むがこれに限定されない。
【0143】
いくつかの実施形態において、cGAS-STING活性化およびI型IFN応答を阻害し得る組成物を、自己免疫障害に罹患しているか、または自己免疫障害に罹患するリスクがある対象の治療において使用する。
【0144】
このように、本発明は、1つ以上の細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)を含む、先天性免疫活性化を調節することができる組成物を、対象(例えば、ヒト対象)に投与して、細胞内金属イオンを先天性免疫経路に利用できないようにすることによって、自己免疫障害を治療するするための方法を提供する。そのような実施形態において、そのような細胞透過性キレート剤(例えば、金属イオンキレート剤)は、ポリフェノール系キレート剤(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)、プニカラギン、(-)-カテキンガレート、(-)-カテキン、タンニン酸、タンニン、プニカリン、ベスカラギン、プロシアニジンC1、ゲラニイン、テアフラビン3,3’-ジガラート、脂質修飾NTA、ポルフィリン、EDTA、NOTA、DOTA、TPEN、およびクロフェレマー等を含むがこれに限定されない。
【0145】
自己免疫障害の例は、全身性エリテマトーデス、エカルディ・グティエール症候群、急性膵炎、加齢性黄斑変性、アルコール性肝疾患、肝線維症、転移、心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、パーキンソン病、多発性関節炎/胎児および新生児貧血、敗血症、炎症性腸疾患、および多発性硬化症を含むが、これに限定されない。
【0146】
いくつかの実施形態において、そのような組成物と共に追加の治療剤を投与する。追加の治療剤の例は、疾患修飾性抗リウマチ薬(例えば、レフルノミド、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン)、生物学的製剤(例えば、リツキシマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク)、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン、トラマドール)、免疫調節薬(例えば、アナキンラ、アバタセプト)、グルコルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、TNF-α阻害剤(例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、IL-1阻害剤、および、メタロプロテアーゼ阻害剤からなる群より選択され、いくつかの実施形態において前記追加の治療剤は、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、非経口金または経口金を含むが、これらに限定されない。
【0147】
いくつかの実施形態において、対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物は、(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合により)ナノ粒子と連携する。
【0148】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子と連携するそのような組成物は、さらに、リン酸カルシウム、ならびにPEI/PEG、PH-PEG、PK-PEG、またはPGA-PEGの共重合体と連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。実際、いくつかの実施形態においては、対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤とナノ粒子との連携は、リン酸カルシウム、およびPEI/PEG、PH-PEG、PK-PEG、またはPGA-PEGの共重合体の存在下である。
【0149】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子と連携するそのような組成物は、Zn2+ Mn2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Pb2+、Sn2+、Ru2+、Au2+、Mg2+、VO2+、Al3+、Co3+、Cr3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、MoO3+、Cu、Au、Tl、Ag、Hg2+、Pt2+、Pb2+、Hg2+、Cd2+、Pd2+、Pt4+、Na、K、およびこれらのリン酸塩または炭酸塩からなる群より選択される1つ以上のカチオンとさらに連携する(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)。実際、いくつかの実施形態においては、対象における先天性免疫応答を刺激し得る薬剤とナノ粒子との連携は、そのようなカチオン(例えば、Zn2+、Co2+、またはMn2+)の存在下である。
【0150】
STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)が複数の細胞質DNA受容体のアダプターであり、細菌のセカンドメッセンジャーであるサイクリックジ-アデノシン一リン酸(c-di-AMP)およびサイクリックジ-グアノシン一リン酸(c-di-GMP)を認識するパターン認識受容体(PRR)であることは、当技術分野において公知である。細胞質DNAはサイクリックグアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸(cGAMP)シンターゼ(cGAS)に結合してサイクリックグアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸(cyclic GMP-AMP、またはcGAMP)を産生し、その後アダプタータンパク質STINGに結合して活性化し、IFNを誘導する。STINGは5つの推定膜貫通領域からなり、主に小胞体に存在し、NF-κBおよびIRF3転写経路の両方を活性化してI型インターフェロン(IFN-αおよびIFN-β)の発現を誘導し、発現後に強力な抗ウイルス状態を発揮することができる。
【0151】
それゆえ、DAMPおよびPAMP(例えば、STINGアゴニスト)は、癌細胞における先天性サイトカイン応答を刺激することができる。したがって、いくつかの実施形態において、DAMPおよびPAMP(例えば、STINGアゴニスト)は、癌細胞における先天性サイトカイン応答を刺激し得る。
【0152】
DAMPまたはPAMPによって刺激された先天性サイトカイン応答は、サイトカインを介して媒介される。いくつかの実施形態において、例えば、先天性サイトカイン応答は、1型インターフェロンを介して媒介され得る。
【0153】
上述のように、本発明は癌細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を抑制および/または阻害するために、対象への投与時に対象の先天性免疫応答を刺激することができる薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を用いて癌細胞の先天性免疫応答を刺激するための組成物および方法を提供する。特に、対象への投与時に対象の先天性免疫応答を刺激することができる薬剤(例えば、DAMP/PAMP)、そのようなナノ粒子を合成するための方法、ならびにそのようなナノ粒子を利用するシステムおよび方法(例えば、診断および/または治療設定において)に関連するナノ粒子を含む組成物(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)を対象とする。
【0154】
実際に、本発明の実施形態を開発する過程で実施された実験は、Zn2+の存在下でcdi-AMP、cGAMP、およびcGMPを含むCDNが、均一なナノ粒子に集合することを実証した。Zn2+の存在下で均一なナノ粒子に集合したそのようなCDNは、脂質小胞でさらに安定化されることも示された。さらなる実験は、リン酸カルシウム、ならびにカチオン性ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびポリエチレングリコール(PEG)の共重合体の存在下で、CDNをナノ粒子中に調合できることを実証した。そのようなCDN-ナノ粒子集合体(例えば、リン酸カルシウムの存在下でナノ粒子に処方されたCDNおよびPEI-PEGの共重合体)(例えば、Zn2+およびリポソームの存在下でナノ粒子に処方されたCDN)は癌細胞取り込みの増加および腫瘍微小環境(例えば、TME)に対するより正確なターゲットを提供することにより、STINGアゴニスト送達有効度の増加およびSTINGアゴニストの毒性の低下を可能にすることがさらに示された。
【0155】
対象への投与時に対象における先天性免疫応答を刺激することができる薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物に関連する(例えば、複合体化、結合体化、カプセル化、吸収、吸着、混合)特定タイプまたは種類のナノ粒子に限定されない。
【0156】
ナノ粒子の例としては、これらに限定されないが、metal-polyhistidine-DOPE@liposome、金属-ポリヒスチジン-PEG、4arm-PEG-ポリヒスチジン-金属ヒドロゲル、およびsHDL-ポリヒスチジン、フラーレン(主にC60、C70、C76、C80、C84)内面体金属フラーレン(TNT)、フラーレンケージ内に追加の原子、イオン、またはクラスターを含む内面体金属フラーレン(TNT)、カーボンケージ内の三金属窒化物分子クラスター内面体、単層および多層カーボンナノチューブ、銀ナノロッド、単層および多層ホウ素/硝酸塩ナノチューブ、カーボンナノチューブ(内部金属フラーレンおよび/または他の内部化学構造を有するナノチューブ)、カーボンナノホーンエンドポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、およびセルロースナノ粒子が挙げられる。粒子の実施形態はまた、有効性または選択性を高める能力を有する微粒子を含むことができる。他の非限定的な模範的ナノ粒子には、ガラスおよび高分子微小球およびナノ球、生分解性PLGA微球およびナノ球、金、銀、炭素および鉄ナノ粒子が含まれる。
【0157】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は修飾ミセルである。これらの実施形態において、改質ミセルは、疎水性ポリマーブロックを含有するように改質されたポリオールポリマーを含む。本開示で使用される用語「疎水性ポリマーブロック」はそれ自体が疎水性であるポリマーのセグメントを示す。本明細書で使用される用語「ミセル」は液体中に分散された分子の凝集体を指し、水溶液中の典型的なミセルは周囲の溶媒と接触する親水性「ヘッド」領域と凝集体を形成し、ミセル中心の疎水性単一テール領域を隔離する。いくつかの実施形態では、ヘッド領域が例えば、ポリオールポリマーの表面領域であってもよく、テール領域は例えば、ポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってもよい。
【0158】
本発明は、ナノメートルスケールに加えて、マイクロメートルスケールの粒子の使用をさらに包含する。マイクロ粒子が使用される場合、それらは比較的小さく、1~50マイクロメートルオーダーであることが好ましい。考察を容易にするために、本明細書中で使用される「ナノ粒子」は真のナノ粒子(約1nm~約1000nmのサイズ)、マイクロ粒子(例えば、約1マイクロメートル~約50マイクロメートル)、またはその両方を包含する。
【0159】
ナノ粒子の例としては例えば、これらに限定されないが、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子、フラーレン様材料、無機ナノチューブ、デンドリマー、共有結合した金属キレートを有するデンドリマー、ナノファイバー、ナノホーン、ナノオニオン、ナノロッド、ナノロープおよび量子ドットが挙げられる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子が金属ナノ粒子(例えば、金、パラジウム、プラチナ、銀、銅、ニッケル、コバルト、イリジウム、またはそれらの2つ以上の合金のナノ粒子物)である。ナノ粒子はコア-シェルナノ粒子のような、コアまたはコアおよびシェルを含むことができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子がsHDLナノ粒子である。一般に、sHDLナノ粒子は、HDLアポリポタンパク質と両親媒性脂質との混合物からなる。
【0161】
本発明は、特定のタイプまたは種類のHDLアポリポタンパク質の使用に限定されない。HDLアポリポタンパク質は、例えば、アポリポタンパク質A-I(apo A-I)、アポリポタンパク質A-II(apo A-II)、アポリポタンパク質A4(apo A4)、アポリポタンパク質C(apo Cs)、およびアポリポタンパク質E(apo E)が含まれる。いくつかの実施形態において、HDLアポリポタンパク質は、プレプロアポタンパク質、プレプロApoA-I、proApoA-I、AρoA-I、preproApoA-II、proApoA-II、ApoA-II、preApoA-lV、proApoA-lV、ApoA-IV、ApoA-V、preproApoE、proApoE、ApoE、preproApoA-lMilano、ρroApoA-IMilano、ApoA-lMilano、ρreproApoA-IParis、proApoA-IParis、およびApoA-IParisおよびこれらのタンパク質混合物のペプチド模倣体から選択される。好ましくは担体粒子がApo A-IまたはApo A-IIから構成されるが、アポリポタンパク質A4、アポリポタンパク質Csまたはアポリポタンパク質Eを含む他のリポタンパク質は、治療剤の送達のための担体粒子混合物を製剤化するために、単独でまたは組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、このようなHDLアポリポタンパク質の模倣体が使用される。
【0162】
ApoA-Iは、迅速に分解されて243個のアミノ酸残基を有する成熟ポリペプチドを生成するプロタンパク質として分泌されるプレプロアポリポタンパク質として、肝臓および小腸により合成される。ApoA-Iは主に、プロリンであるリンカー部分によって隔てられた6~8個の異なる22アミノ酸反復からなり、一部の場合では、いくつかの残基から構成されたストレッチからなる。ApoA-Iは、脂質と3種類の安定な複合体を形成する:プレ-β-1HDLと称される小さい脂質の少ない複合体;プレ-β-2HDLと称される極性脂質(リン脂質およびコレステロール)を含む扁平な円板状粒子;および球形または成熟HDL(HDL3およびHDL2)と称される極性および非極性の両方の脂質を含む球形粒子。循環集団のほとんどのHDLは、ApoA-IおよびApoA-II(第2の主要なHDLタンパク質)の両方を含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、ApoA-Iアゴニストまたは模倣体が提供される。いくつかの実施形態において、そのようなApoA-I模倣体はApoA-Iの活動を模倣する両親媒性α-ヘリックスを形成することができ、天然分子の活動に近づくか、またはそれを超える特異的活動を有する。いくつかのApoA-I模倣体は両親媒性ヘリックスを形成し(脂質の存在下で)、脂質に結合し、プレβ様またはHDL様複合体を形成し、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を活性化し、HDL画分の血清レベルを増加させ、コレステロール流出を促進するペプチドまたはペプチド類似体である。
【0164】
本発明は、特定のApoA-I模倣体の使用に限定されない。いくつかの実施形態において、Srinivasa, et al., 2014 Curr. Opinion Lipidology Vol. 25(4): 304-308に記載されているApoA-I模倣体のいずれかが利用される。いくつかの実施態様において、米国特許出願公開第2011/0046056および同第2013/0231459に記載されているApoA-I模倣体のいずれかが使用される。
【0165】
いくつかの実施形態において、「22A」ApoA-I模倣体が使用される(PVLDLFRELLNELLEALKQKLK)(配列番号4)(例えば、米国特許第7,566,695号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、米国特許第7,566,695号に記載されるような、表1に示す以下のApoA-I模倣体のいずれかが利用される:
表1.ApoA-I模倣体
【0166】
【表1】







【0167】
はN末端アセチル化およびC末端アミド化されたペプチドを示し;N末端がダンシル化されているペプチドを示し;spは、実験条件下で溶解度の問題を示したペプチドを示し;XはAibであり;ZはNalであり;OはOrnであり;He(%)はパーセントヘリシティを示し;micはミセルを示し;~は欠失したアミノ酸を示す。
【0168】
いくつかの実施態様において、米国特許第6,743,778号に記載されるような、以下の配列を有するApoA-I模倣体が利用される:Asp Trp Leu Lys Ala Phe Tyr Asp Lys Val Ala Glu Lys Lys Glu Ala Phe(配列番号255)。
【0169】
いくつかの実施形態では、米国特許出願公開第2003/0171277号に記載されるような、表2に示される以下のApoA-I模倣体のいずれかが利用される:
【0170】
【表2】


【0171】
いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2006/0069030号に記載されるような以下の配列を有するApoA-I模倣体が利用される:F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D(配列番号333)。
【0172】
いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2009/0081293号に記載されるような以下の配列を有するApoA-I模倣体が利用される:DWFKAFYDKVAEKFKEAF(配列番号334)、DWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号335)、PALEDLRQGLLPVLESFKVFLSALEEYTKKLNTQ(配列番号336)。
【0173】
いくつかの実施形態において、以下の配列のうちの1つを有するApoA-I模倣体が利用される:WDRVKDLATVYVDVLKDSGRDYVSQF(配列番号341)、LKLLDNWDSVTSTFSKLREOL(配列番号342)、PVTOEFWDNLEKETEGLROEMS(配列番号343)、KDLEEVKAKVQ(配列番号344)、KDLEEVKAKVO(配列番号345)、PYLDDFQKKWQEEMELYRQKVE(配列番号346)、PLRAELQEGARQKLHELOEKLS(配列番号347)、PLGEEMRDRARAHVDALRTHLA(配列番号348)、PYSDELRQRLAARLEALKENGG(配列番号349)、ARLAEYHAKATEHLSTLSEKAK(配列番号350)、PALEDLROGLL(配列番号351)、PVLESFKVSFLSALEEYTKKLN(配列番号352)、PVLESFVSFLSALEEYTKKLN(配列番号353)、PVLESFKVSFLSALEEYTKKLN(配列番号352)、TVLLLTICSLEGALVRRQAKEPCV(配列番号354)、QTVTDYGKDLME(配列番号355)、KVKSPELOAEAKSYFEKSKE(配列番号356)、VLTLALVAVAGARAEVSADOVATV(配列番号357)、NNAKEAVEHLOKSELTOOLNAL(配列番号358)、LPVLVWLSIVLEGPAPAOGTPDVSS(配列番号359)、LPVLVVVLSIVLEGPAPAQGTPDVSS(配列番号360)、ALDKLKEFGNTLEDKARELIS(配列番号361)、VVALLALLASARASEAEDASLL(配列番号362)、HLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVYOA(配列番号363)、AQAWGERLRARMEEMGSRTRDR(配列番号364)、LDEVKEQVAEVRAKLEEQAQ(配列番号365)、DWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号236)、DWLKAFYDKVAEKLKEAFPDWAKAAYDKAAEKAKEAA(配列番号366)、PVLDLFRELLNELLEALKQKL(配列番号367)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLA(配列番号368)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLK(配列番号4)、PVLDLFRELLNELLEALKQKLA(配列番号369)、PVLDLFRELLNELLEALKKLLK(配列番号370)、PVLDLFRELLNELLEALKKLLA(配列番号371)、PLLDLFRELLNELLEALKKLLA(配列番号372)、およびEVRSKLEEWFAAFREFAEEFLARLKS(配列番号373)。
【0174】
両親媒性脂質は、例えば、疎水性部分および親水性部分の両方を有する任意の脂質分子を含む。例としては、リン脂質または糖脂質が挙げられる。sHDL-TAナノ粒子に使用され得るリン脂質の例としては、これらに限定されるものではないが、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、リン脂質はイメージング剤(例えば、ローダミン(Rhod)標識DOPE(DOPE-Rhod))と複合体化される。いくつかの実施形態において、リン脂質は例えば、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、またはN-4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル)ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(MPB-DPPE)などのチオール反応性リン脂質である。
【0175】
いくつかの実施形態において、例示的なリン脂質としては、小アルキル鎖リン脂質、卵ホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどのジホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジル酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、卵スフィンゴミエリン、パルミトイルスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール塩、ホスファチジン酸、ガラクトセレブロシド、セレブロシド、ジラウリルホスファチジルコリン、(1,3)-D-マンノシル-(1,3)ジグリセリド、アミノフェニルグリコシド、3-コレステリル-6’-(グリコシルチオ)ヘキシルエーテル糖脂質およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。SMおよびパルミトイルスフィンゴミエリンを含むリン脂質画分は、少量の任意のタイプの脂質を任意に含むことができ、リソリン脂質、パルミトイルスフィンゴミエリン以外のスフィンゴミエリン、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、グリセリド、トリグリセリド、ならびにコレステロールおよびその誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態において、sHDLナノ粒子は、リン脂質/HDLアポリポタンパク質のモル比が2~250(例えば、10~200、20~100、20~50、30~40)である。
【0177】
一般に、そのように形成されたsHDLナノ粒子は球状であり、約5nm~約20nm(例えば、4~75nm、4~60nm、4~50nm、4~22nm、6~18nm、8~15nm、8~10nmなど)の直径を有する。いくつかの実施形態では、sHDLナノ粒子をサイズ排除クロマトグラフィーに供して、より均一な調製物を得る。
【0178】
従来のナノ粒子ビヒクルを含む他の方策と比較して、sHDLナノ粒子は、魅力的なな生体適合性およびカーゴ充填能力を有する。例えば、超小型であるが調整可能な大きさ(例えば、10~20nm)はsHDLナノ粒子がリンパ節に効率的に排出し、カーゴペプチド抗原および核酸ベースのアジュバントをリンパ節に存在する樹状細胞に送達することを可能にし、それにより、腫瘍免疫療法のためのSTINGアゴニストおよびアジュバントの同時送達のための効率的なプラットホームとしてそれらを配置する。
【0179】
特定の実施形態では、対象への投与時に対象の先天性免疫応答を刺激することができる1つ以上の薬剤(例えば、DAMP/PAMP)を含むそのような組成物に関連するナノ粒子を含む組成物であって、任意の種類の生体高分子薬剤(例えば、核酸、ペプチド、糖脂質など)がナノ粒子に関連する組成物を提供する。
【0180】
一部の実施形態では、生体高分子薬剤はペプチドである。
【0181】
例えば、一部の実施形態では、ペプチドは抗原である。
【0182】
例えば、一部の実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。抗原は、以下の腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を含むがこれらに限定されない腫瘍抗原であることが可能である:α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、Mum-2、およびMum-3、ネオ-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、Gage3、Gage4、Gage5、Gage6、Gage7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-A2、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A6、Mage-A10、Mage-A12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、およびTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、ヒトEGFR残基306-325(SCVRACGADSYEMEEDGVRK(配列番号:374))および残基897-915(VWSYGVTVWELMTFGSKPY(配列番号:375))などのヒトEGFRタンパク質またはそのフラグメント、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\サイクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、WT1(ならびにWT1由来ペプチド配列:WT1 126-134(RMFP NAPYL(配列番号:376))、WT1 122-140(SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号:377))、およびWT1 122-144(SGQARMFPNAPYLPSCLESQPTI(配列番号:378))、MUC1(ならびにMUC1-由来ペプチドならびにRPAPGS(配列番号:379)、PPAHGVT(配列番号:380)、およびPDTRP(配列番号:381)などのグリコペプチド))、LMP2、EGFRvIII、イディオタイプ、GD2、Ras変異体、p53変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、サバイビン、hTERT、サルコーマ転座切断点、EphA2、EphA4、LMW-PTP、PAP、ML-IAP、AFP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、sLe(動物)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子のタンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-α、PDGFR-β、MAD-CT-2、Fos関連抗体1、ERBB2、葉酸受容体1(FOLR1またはFBP)、IDH1、IDO、LY6K、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1、VEGFR1として最もよく知られる)、KDR、PADRE、TA-CIN(組換えHPV16 L2E7E6)、SOX2、およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ。
【0183】
生体高分子が抗原である一部の実施形態では、組成物は、(本明細書に記載される)アジュバントをさらに含む。
【0184】
一部の実施形態では、ペプチドは以下のものである:副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモンペプチド、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、オキシトシン、バソプレシン、コルチコトロピン放出因子(CRF)、CRF-関連ペプチド、性腺刺激ホルモン放出関連ペプチド(GAP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)、オレキシン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、ソマトスタチン、サイロトロピン放出ホルモン(THR)、THR類似体、カルシトニン(CT)、CT-前駆体ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、アミリン、グルカゴン、インスリン、インスリン様ペプチド、神経ペプチドY(NPY)、膵臓ポリペプチド(PP)、ペプチドYY(PYY)、コレシストキニン(CCK)、CCK関連ペプチド、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ガストリン、ガストリン関連ペプチド、ガストリン抑制ペプチド、モチリン、セクレチン、血管活性腸管ペプチド(VIP)、VIP関連ペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、タキキニン、アンジオテンシン、レニン基質、レニン阻害剤、エンドセリン、エンドセリン関連ペプチド、オピオイドペプチド、胸腺ペプチド、アドレノメデュリンペプチド、アロスタチンペプチド、アミロイドβ-タンパク質断片、抗菌断片ペプチド、抗酸化ペプチド、アポトーシス関連ペプチド、嚢細胞ペプチド(BCP)、ボンベシン、骨Glaタンパク質ペプチド、コカインおよびアンフェタミン関連転写(CART)ペプチド、細胞接着ペプチド、走化性ペプチド、補体阻害剤、コルチスタチンペプチド、フィブロネクチン断片、フィブリン関連ペプチド、FMRF、FMRFアミド関連ペプチド(FaRP)、ガラニン、ガラニン関連ペプチド、成長因子、成長因子関連ペプチド、G治療用ペプチド結合タンパク質フラグメント、グアリリン(Gualylin)、ウログアニリン、インヒビンペプチド、インターロイキン(IL)、インターロイキン受容体タンパク質、ラミニン断片、レプチン断片ペプチド、ロイコキニン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PAPCAP)、パンクレアスタチン、ポリペプチド反復鎖、シグナル伝達因子、トロンビン阻害剤、毒素、トリプシン阻害剤、ウイルス関連ペプチド、アジュバントペプチド類似体、α接合因子、抗不整脈ペプチド、食欲減退ペプチド、α-1抗トリプシン、ウシ松果体抗生殖ペプチド、ブルシン、C3ペプチドP16、カドヘリンペプチド、クロモグラニンA断片、避妊テトラペプチド、コナントキンG、コナントキンT、甲殻類心作用性ペプチド、C-テロペプチド、シトクロムb588ペプチド、デコルシン(Decorsin)、デリシャスペプチド(delicious peptide)、デルタ睡眠誘発ペプチド、ジアゼパム結合阻害断片、酸化窒素合成酵素遮断ペプチド、OVAペプチド、血小板カルパイン阻害剤(P1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1、リギン(Rigin)、統合失調症関連ペプチド、ナトリウムカリウムA治療用ペプチダーゼ阻害剤-1、スペラクト、精子活性化ペプチド、システミン、トロンビン受容体アゴニスト、タフトシン、脂質動員ホルモン、尿毒症ペンタペプチド、不凍ポリペプチド、腫瘍壊死因子(TNF)、Leech[Des Asp10]デコルシン、L-オルニチルタウリン塩酸塩、P-アミノフェニルアセチルタフトシン、Ac-Glu-Glu-Val-Val-Ala-Cys-pNA、Ac-Ser-Asp-Lys-Pro、Ac-rfwink-NH2、Cys-Gly-Tyr-Gly-Pro-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val-Gly-Gly、D-Ala-Leu、D-D-D-D-D、D-D-D-D-D-D、N-P-N-A-N-P-N-A、V-A-I-T-V-L-V-K、V-G-V-R-V-R、V-I-H-S、V-P-D-P-R、Val-Thr-Cys-Gly、R-S-R、ウニ精子活性化ペプチド、SHU-9119アンタゴニスト、MC3-Rアンタゴニスト、MC4-Rアンタゴニスト、グラスピモド(Glaspimod)、HP-228、α2-プラスミン阻害剤、APC腫瘍抑制剤、早期妊娠因子、γインターフェロン、腺性カリクレインN-1、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、サルコレシン(Sarcolecin)結合タンパク質、サーファクタントタンパク質D、ウィルムス腫瘍抑制因子、GABAB 1b受容体ペプチド、プリオン関連ペプチド(iPRP13)、コリン結合タンパク質断片、テロメラーゼ阻害剤、カーディオスタチンペプチド、エンドスタチン由来ペプチド、プリオン阻害ペプチド、N-メチルD-アスパラギン酸塩受容体アンタゴニスト、ならびにC-ペプチド類似体。
【0185】
一部の実施形態では、ペプチドは以下から選択される:177Lu-DOTA0-Tyr3-オクトレオテート、アバレリックス酢酸塩(Abarelix acetate)、ADH-1、アファメラノチド(Afamelanotidec)、メラノタンI、CUV1647、アルビグルチド、アプロチニン、アルジプレシン(Argipressin)、アトシバン酢酸塩、バシトラシン、ベンチロミド、BH3ドメイン、ビバリルジン、トリフルオロ酢酸ビバリルジン水和物(Bivalirudin trifluoroacetate hydrate)、ブリシビモド、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブセレリン酢酸塩、カルシトニン、カルベトシン、カルベトシン酢酸、セクロピンAおよびB、セルレチド、セルレチドジエチルアミン、セトロレリクス、セトロレリクス酢酸塩、シクロスポリン、シレンギチド(Cilengitidec)、EMD121974、酢酸コルチコレリン注射液、hCRF、コルチコレリンオウバイントリフルタート、トリフルオロ酢酸コルチコレリン、コルチコトロピン、コシントロピン、ACTH1-24、テトラコサクチド六酢酸塩、ダルババンシン、ダプトマイシン、デガレリクス酢酸塩、トリフルオロ酢酸デプレオチド(過テクネチウム酸ナトリウムと共に)、デスモプレシン酢酸塩、デスモプレシンDDAVP、デュラグルチド、エカランチド、エドトレオチド(イットリウム-90と共に)、エルカトニン酢酸塩、エナラプリルマレイン酸塩(または2-ブタンジオエート)、エンフビルチド、エプチフィバチド、エキセナチド、ガニレリクス酢酸塩、グラチラマー酢酸塩、グルタチオン、ゴナドレリン、ゴナドレリン酢酸塩、GnRH、LHRH、ゴセレリン、ゴセレリン酢酸塩、グラミシジン、ヒストレリン酢酸塩、ヒトカルシトニン、インカチバント、インカチバント酢酸塩、IM862、オグルファニド二ナトリウム、KLAKLAK、ランレオチド酢酸塩、レピルジン、リュープロリド、リュープロリド酢酸塩、リュープロレリン、リラグルチド、リシノプリル、リキシセナチド、ライプレッシン、マゲイニン2、MALP-2Sc、マクロファージ活性化リポペプチド-2合成物(macrophage-activating lipopeptide-2 synthetic)、ナファレリン酢酸塩、ネシリチド、NGR-hTNF、オクトレオチド酢酸塩、オリタバンシン、オキシトシン、パシレオチド、ペギネサチド、ペンタガストリン、ペンテトレオチド(インジウム-111と共に)、フェニプレシン、プレウロシジン、プラムリンチド、プロチレリン、チロリベリン、TRH、TRF、サケカルシトニン、サララシン酢酸塩、セクレチン(ヒト)、セクレチン(ブタ)、セマグルチド、セラクチド酢酸塩、ACTH、コルチコトロピン、セルモレリン酢酸塩、GRF 1-29、シナプルチド、ルシナクタント中のKL4、シンカリド、ソマトレリン酢酸塩、GHRH、GHRF、GRF、ソマトスタチン酢酸塩、スパグルマットマグネシウム(またはナトリウム)塩(Spaglumat magnesium (or sodium) salt)、物質P、タルチレリン水和物、テデュグルチド、テイコプラニン、テラバンシン、テリパラチド、テルリプレシン酢酸塩、テトラコサクチド、チマルファシン、チモシンa-1、チモペンチン、トレバナニブ、トリプトレリン、トリプトレリンパモエート、チロセルロイチド、ウラリチド、バンコマイシン、バプレオチド酢酸塩、血管活性腸管ペプチド酢酸塩、Vx-001c、TERT572Y、ジコノチド酢酸塩、α5-α6Baxペプチド、およびβディフェンシン。
【0186】
一部の実施形態では、ペプチドは、組成物を用いて所望の目的を達成するのを助ける任意のペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペプチドは、任意の種類の疾患および/または障害の治療を容易にする任意のペプチドである。
【0187】
一部の実施形態では、生体高分子薬剤は核酸である。このような実施形態は、RNA、siRNA、マイクロRNA、干渉RNA、mRNA、レプリコンmRNA、RNA類似体、およびDNAを含むが、これらに限定されない、任意のタイプの核酸分子を包含する。
【0188】
一部の実施形態では、対象へ投与すると対象における自然免疫応答を刺激することができる剤(例えば、DAMP/PAMP)および抗原を含む上記組成物と連携したナノ粒子は、免疫応答を誘発するために用いられる。一部の実施形態では、そのようなナノ粒子は、アジュバント(例えば、樹状細胞標的分子(DC))とさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントと同時投与される。一部の実施形態では、抗原は、アジュバントとさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。一部の実施形態では、抗原は、アジュバントとさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)しない。一部の実施形態では、抗原は、疎水性分子と結合される。一部の実施形態では、アジュバントは疎水性分子と結合される。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは6nmから500nmの範囲である。
【0189】
一部の実施形態では、疎水性分子は脂質分子である。一部の実施形態では、脂質分子は膜形成脂質分子である。一部の実施形態では、脂質分子は非膜形成脂質分子である。
【0190】
本発明の実施形態に適用可能な脂質分子の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチルホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリンおよびこれらの混合物などのリン脂質。他のジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質も使用することができる。これらの脂質中のアシル基は、C10~C24炭素鎖を有する脂肪酸(例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイル)に由来するアシル基であることが好ましい。
【0191】
脂質分子の他の非限定的な例としては、ステロール(例えば、コレステロール、およびコレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテルなどのコレステロールの誘導体、ならびに、それらの混合物)が挙げられる。
【0192】
本発明での使用に適した脂質分子の他の例としては、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート、リシノール酸グリセロール、ヘキサデシルステアレート(hexadecyl stereate)、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリルポリマー、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルアリールスルフェートポリエチルオキシレート脂肪酸アミド、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、セラミド、スフィンゴミエリンなどの非リン含有脂質が挙げられる。
【0193】
本発明での使用に適した脂質分子の他の例には、脂肪酸およびその誘導体または類似体が含まれる。それらには、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1-10 アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピルおよびt-ブチル)、ならびにそれらのモノグリセリドおよびジグリセリド(すなわち、オレエート、ラウレート、カプレート(caprate)、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレートなど)が含まれる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1-33;El Hariri et al.,J.Pharmacol.,1992,44,651-654)。
【0194】
本発明での使用に適した脂質分子の他の例には、PEGで修飾された脂質分子(PEG脂質)が含まれる。PEG脂質の例としては、例えばPCT公開公報第WO05/026372号に記載されるようなジアルキルオキシプロピルに結合されたPEG(PEG-DAA)、例えば米国特許公開公報第20030077829号および第2005008689号に記載されるようなジアシルグリセロールに結合されたPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)などのリン脂質に結合されたPEG、例えば米国特許第5,885,613号に記載されるようなセラミドに結合されたPEG、コレステロールまたはその誘導体に結合されたPEG、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの特許文献の開示は、あらゆる目的においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。追加のPEG脂質としては、PEG-C-DOMG、2KPEG-DMG、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
PEGは、2つの末端水酸基を有するエチレンPEG繰り返し単位の直鎖状の水溶性ポリマーである。PEGは、その分子量によって分類される。例えば、PEG2000は、約2,000ダルトンの平均分子量を有し、PEG5000は、約5,000ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)および他の会社から市販されており、例えば、以下のものを含む:モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-コハク酸(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルコハク酸(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、およびモノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)。米国特許第6,774,180号および第7,053,150号に記載されているような他のPEG(例えば、mPEG(20KDa)アミン)もまた、本発明のPEG脂質複合体を調製するのに有用である。これらの特許の開示は、あらゆる目的においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、モノメトキシポリエチレングリコール酢酸(MePEG-CHCOOH)は、例えばPEG-DAA複合体を含むPEG脂質複合体を調製するのに特に有効である。
【0196】
明細書中に記載されるPEG脂質複合体のPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を有し得る。特定の例において、PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトンなど)の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEG部分は、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0197】
特定の例において、PEGは、任意に、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、またはアリール基によって置換されることが可能である。PEGは、脂質に直接結合されることができる。あるいは、PEGは、リンカー部分を介して脂質に連結されてもよい。PEGを脂質にカップリングするのに適した任意のリンカー部分(例えば、非エステル含有リンカー部分およびエステル含有リンカー部分を含む)を使用することができる。好ましい実施形態では、リンカー部分は、非エステル含有リンカー部分である。本明細書中で使用される場合、用語「非エステル含有リンカー部分」は、カルボン酸エステル結合(-OC(O)-)を含まないリンカー部分を指す。好適な非エステル含有リンカー部分としては、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCHCHC(O)-)、スクシナミジル(-NHC(O)CHCHC(O)NH-)、エーテル、ジスルフィド、ならびにそれらの組み合わせ(カルバメートリンカー部分およびアミドリンカー部分の両方を含むリンカーなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カルバメートリンカーを用いてPEGを脂質に結合させる。
【0198】
他の実施形態において、エステル含有リンカー部分が、PEGを脂質に結合するために使用される。好適なエステル含有リンカー部分としては、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、サクシノイル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、スルホン酸エステル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0199】
様々な鎖長および飽和度の種々のアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGに結合させて、脂質複合体を形成することができる。このようなホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、または当業者に公知の従来の技術を使用して単離または合成されることができる。
【0200】
10~C20の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含むホスファチジルエタノールアミンが好ましい。モノ飽和脂肪酸またはジ飽和脂肪酸を有するホスファチジルエタノールアミンならびに飽和および不飽和脂肪酸の混合物も使用することができる。好適なホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、およびジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
このような実施形態は、特定の抗原に限定されない。実際に、抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、糖脂質、核酸、またはそれらの組み合わせとすることができる。抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、植物、原生動物、真菌、組織、または癌もしくは白血病細胞などの形質転換細胞を含むが、これらに限定されない任意の供給源に由来することが可能であり、細胞全体またはその免疫原生成分、例えば、細胞壁構成要素もしくはその分子構成要素、とすることができる。
【0202】
一部の実施形態では、抗原は、当該技術分野で知られており、商用、政府、および科学的供給源から入手可能である。一部の実施形態では、抗原は、完全に不活性化または弱毒化された生物である。これらの生物は、ウイルス、寄生虫、および細菌などの感染性生物であってよい。これらの生物は、腫瘍細胞であり得る。抗原は、腫瘍もしくはウイルスまたは細菌供給源に由来する、精製または部分的に精製されたポリペプチドであってよい。有効な抗原ペプチド(例えば、免疫応答を誘発することができる最小限のペプチド配列)を同定および選択するための基準は、当該技術分野において見出すことができる。抗原は、異種発現系においてポリペプチド抗原をコードするDNAを発現させることにより産生された組換えポリペプチドとすることができる。抗原は、抗原タンパク質の全部または一部をコードするDNAとすることができる。DNAは、プラスミドDNAなどのベクターDNAの形態であってよい。
【0203】
抗原は、単一の抗原として提供され得る、または抗原の組み合わせとして提供され得る。抗原は、ポリペプチドまたは核酸の複合混合物として提供され得る。
【0204】
一部の実施形態では、抗原は自己抗原である。本明細書で使用される場合、用語「自己抗原」は、哺乳動物に固有で、かつ自己免疫疾患の病因に関与し得る免疫原性抗原またはエピトープを指す。
【0205】
一部の実施形態では、抗原は、ウイルス抗原である。ウイルス抗原は、次のウイルスファミリーに由来するウイルスを含むが、これらに限定されない任意のウイルスから単離することができる:アレナウイルス科、アルテリウイルス属、アストロウイルス科、バキュロウイルス科、バドナウイルス属、バルナウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、カピロウイルス属、カ-ラウイルス属、カリモウイルス属、サーコウイルス科、クロステロウイルス属、コモウイルス科、コロナウイルス科(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスなどのコロナウイルス)、コルチコウイルス科、シストウイルス科、デルタウイルス属、ダイアンソウイルス属、エナモウイルス属、フィロウイルス科(例えば、マールブルグウイルスおよびエボラウイルス(例えば、ザイール、レストン、アイボリーコースト、またはスーダン株))、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス、デングウイルス1、デングウイルス2、デングウイルス3、およびデングウイルス4)、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス3、ヒトヘルペスウイルス4、ヒトヘルペスウイルス5、およびヒトヘルペスウイルス6、ならびにサイトメガロウイルス)、ハイポウイルス科、イリドウイルス科、レビウイルス科、リポスリクスウイルス科、ミクロウイルス科、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスAおよびインフルエンザウイルスBおよびインフルエンザウイルスC)、パポバウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、麻疹、おたふく風邪、およびヒトRSウイルス)、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、およびアフトウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、ワクシニアおよび天然痘ウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1およびHIV-2などのレンチウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど)、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど)、ならびにトティウイルス科。好適なウイルス抗原は、デングタンパク質M、デングタンパク質E、デングD1NS1、デングD1NS2およびデングD1NS3の全部または一部も含む。
【0206】
ウイルス抗原は、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、すなわち、単純ヘルペス1および単純ヘルペス2;例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)の肝炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザ、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタインバール、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱、およびリンパ球性脈絡髄炎などの特定の株に由来し得る。
【0207】
一部の実施形態では、抗原は、細菌抗原である。細菌抗原は、アクチノマイセス属、アナベナ属、バシラス属、バクテロイデス属、ブデロビブリオ属、ボルデテラ属、ボレリア属、カンピロバクター属、カウロバクター属、クラミジア属、クロロビウム属、クロマチウム属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、サイトファガ属、デイノコッカス属、エシェリキア属、フランシセラ属、ハロバクテリウム属、ヘリオバクター属(Heliobacter)、ヘモフィルス属、ヘモフィルスインフルエンザB型(HIB)、ヒフォミクロビウム属、レジオネラ属、レプトスピラ属、リステリア属、髄膜炎菌A、髄膜炎菌Bおよび髄膜炎菌C、メタノバクテリウム属、ミクロコッカス属、マイオバクテリウム属(Myobacterium)、マイコプラズマ属、ミクソコッカス属、ナイセリア属、ニトロバクター属、オスキラトリア属、プロクロロン属、プロテウス属、シュードモナス属、ロドスピリルム属、リケッチア属、サルモネラ属、シゲラ属、スピリルム属、スピロヘータ属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ストレプトミセス属、スルフォロブス属、テルモプラズマ属、チオバシラス属、ならびにトレポネーマ属、ビブリオ属およびエルシニア属を含むが、これらに限定されない任意の細菌に由来し得る。
【0208】
一部の実施形態では、抗原は、寄生虫抗原である。寄生虫抗原は、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、ノカルジア・アステロイデス、リケッチア・リケッチイ、チフスリケッチア、マイコプラズマ・ニューモニア、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ・ブルセイ、赤痢アメーバ、トキソプラズマ原虫、膣トリコモナスおよびマンソン住血吸虫に由来する抗原などの寄生虫であるがこれらに限定されない寄生虫から得ることができる。これらは、胞子虫抗原、プラスモディアン(Plasmodian)抗原、例えば、マラリア原虫スポロゾイト表面タンパク質(Circumsporozoite protein)、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓期抗原、頂端膜関連タンパク質(apical membrane associated protein)、またはメロゾイト表面タンパク質の全部または一部を含む。
【0209】
一部の実施形態では、抗原は、例えば、限定されないが、以下の天然アレルゲンに由来する抗原などのアレルゲンおよび環境抗原である:花粉アレルゲン(樹木花粉アレルゲン、ハーブ花粉アレルゲン、雑草花粉アレルゲン、および草花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入アレルゲン、唾液アレルゲン、および毒アレルゲン)、動物の毛アレルゲンおよびふけアレルゲン、ならびに食物アレルゲン。樹木、草、ハーブ由来の重要な花粉アレルゲンは、分類学的上のブナ目、モクセイ目、マツ目、およびスズカケノキ目(とりわけ、カバノキ(カバノキ属)、ハンノキ(ハンノキ属)、ハシバミ(ハシバミ属)、シデ(シデ属)およびオリーブ(オリーブ属)、シダ-(スギ属およびビャクシン属)、プラタナス(スズカケノキ属)を含む)、イネ目(すなわち、ドクムギ属、アワガエリ属、イチゴツナギ属、ギョウギシバ属、カモガヤ属、シラゲガヤ属、クサヨシ属、ライムギ属、およびモロコシ属の草を含む)、キク目およびイラクサ目(とりわけ、ブタクサ属、ヨモギ属、およびヒカゲミズ属のハーブを含む)に由来する。使用され得る他のアレルゲン抗原は、Dermatophagoides属およびEuroglyphus属のチリダニ由来のアレルゲン、コナダニ(例えば、Lepidoglyphys、Glycyphagus、およびTyrophagus)由来のアレルゲン、ゴキブリ、アブ、およびノミ(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ワモンゴキブリ属(Periplaneta)、ユスリカ属(Chironomus)およびイヌノミ属(Ctenocepphalides))由来のもの、ネコ、イヌ、およびウマなどの哺乳類、鳥類由来のもの、ハナバチ(ミツバチ上科(Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(Vespidae))、およびアリ上科(Formicoidae))を含む分類学上ハチ目(Hymenoptera)に由来するものなどの刺咬昆虫に由来するようなものを含む毒アレルゲンを含む。使用され得るさらに他のアレルゲン抗原は、アルテルナリア属(Alternaria)およびクラドスポリウム属(Cladosporium)などの真菌由来の吸入アレルゲンを含み得る。
【0210】
一部の実施形態では、抗原は、(本明細書に記載の)腫瘍抗原である。
【0211】
治療的および腫瘍特異的免疫療法の開発に対する重大な障壁の1つは、自己免疫を回避するための非常に特異的で制限された腫瘍抗原の同定および選択である。悪性細胞内での遺伝的変化(例えば、逆位、転座、欠失、ミスセンス変異、スプライス部位変異など)の結果として生じる腫瘍ネオアンチゲンは、最も腫瘍特異的な抗原クラスである。
【0212】
一部の実施形態では、抗原は、ネオアンチゲンである。用語ネオアンチゲンは、本明細書では、任意の新たに発現された抗原決定基を定義するために使用される。ネオアンチゲンは、1つ以上の分子の複合体形成の結果として、または結果として新しい抗原決定基の提示を伴う分子の切断の結果として、(特に、形質転換細胞もしくは感染細胞の表面上に)新たに発現された決定基としてタンパク質の構造変化時に生じることがある。したがって、本明細書中で使用される場合、用語ネオアンチゲンは、感染(例えば、ウイルス感染、原虫感染、または細菌感染)時に、プリオン媒介性疾患、細胞形質転換(癌)で発現される抗原を包含し、後者の場合に、ネオアンチゲンは腫瘍関連抗原と称されることがある。
【0213】
本発明は、ネオアンチゲンを同定する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、各患者由来の適合生殖細胞サンプルに対する腫瘍の全ゲノムシークエンシング、全エクソーム(例えば、捕捉されたエクソンのみ)シークエンシング、またはRNAシークエンシングを使用して、DNAレベルでの新生物/腫瘍内の全て、またはほぼ全ての変異を同定することを含む。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、新生物/腫瘍内で発現され、患者HLA対立遺伝子に結合し得る複数の候補ネオアンチゲンT細胞エピトープを生成するための1つ以上のペプチド-MHC結合予測アルゴリズムで、同定された変異を分析することを含む。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、癌ワクチンに使用される全てのネオオープンリーディングフレームペプチドおよび予測結合ペプチドのセットから選択される複数の候補ネオアンチゲンペプチドを合成することを含む。
【0214】
このように、本発明は、少なくとも部分的に、全てまたはほぼ全ての新生物/腫瘍内の変異(例えば、転座、逆位、大小の欠失、および挿入、ミスセンス変異、スプライス部位変異など)を同定する能力に基づく。特に、これらの変異は、対象の新生物/腫瘍細胞のゲノムに存在するが、対象由来の正常組織には存在しない。このような変異は、患者の新生物/腫瘍(例えば、ネオアンチゲン)に固有の変更されたアミノ酸配列を有するタンパク質を生じる変化をもたらす場合、特別な興味の対象である。例えば、有用な変異は、(1)タンパク質中に異なるアミノ酸をもたらす非同義変異;(2)終止コドンが改変または欠失されて、C末端に新規腫瘍特異的配列を有する、より長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異;(3)成熟mRNA中にイントロンを含み、それにより、独特な腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス部位変異;(4)2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質を生じる染色体再編成(すなわち、遺伝子融合);(5)新規の腫瘍特異的タンパク質配列を有する新しいオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト変異または欠失;などを含むことがある。例えば、腫瘍細胞におけるスプライス部位、フレームシフト、リードスルー、または遺伝子融合変異から生じる変異または変異ポリペプチドを有するペプチドは、正常細胞に対する腫瘍のDNA、RNA、またはタンパク質をシークエンスすることにより同定され得る。
【0215】
共通の腫瘍ドライバー遺伝子に由来する個別化ネオアンチゲンペプチドは、本発明の範囲内でもあり、さらに、以前に同定された腫瘍特異的変異を含んでもよい。
【0216】
任意の好適な合成時解読(sequencing-by-synthesis)プラットフォームが、変異を同定するために使用可能であることが好ましい。4つの主要な合成時解読プラットフォームが、現在利用可能である:Roche/454 Life Sciencesより入手可能なGenome Sequencers、イルミナ/Solexaより入手可能なHiSeq Analyzer、Applied Applied BioSystemsより入手可能なSOLiDシステム、およびHelicos Biosciencesより入手可能なHeliscopeシステム。合成時解読プラットフォームは、Pacific BiosciencesおよびVisiGen Biotechnologiesによっても記載されている。これらのプラットフォームのそれぞれは、本発明の方法において使用することができる。一部の実施形態では、シークエンシングされる複数の核酸分子は、支持体(例えば、固体支持体)に結合される。核酸を支持体上に固定化するために、捕捉配列/ユニバーサルプライミング部位を鋳型の3’および/または5’末端に付加することができる。核酸は、捕捉配列を、支持体に共有結合した相補的配列にハイブリダイゼーションさせることにより、支持体に結合させてもよい。捕捉配列(ユニバーサル捕捉配列とも呼ばれる)は、ユニバーサルプライマーとして二重に役立ち得る支持体に結合した配列に相補的な核酸配列である。
【0217】
捕捉配列の代わりに、結合対の要素(例えば、米国特許出願第2006/0252077号に記載されているような、例えば、抗体/抗原、受容体/リガンド、またはアビジン-ビオチン対など)が、その結合対のそれぞれの第2の要素で被覆された表面上に捕捉されるべき各フラグメントに連結されてもよい。捕捉に続いて、配列は、例えば、実施例および米国特許第7,283,337号に記載されているような、鋳型依存性合成によるシークエンシングを含む、例えば、単一分子検出/シークエンシングにより分析されてもよい。合成時解読法では、表面結合分子は、ポリメラーゼの存在下で複数の標識ヌクレオチド三リン酸に曝露される。鋳型の配列は、成長する鎖の3’末端に組み込まれた標識ヌクレオチドの順序により決定される。これは、リアルタイムまたはステップアンドリピートモードで行うことができる。リアルタイム分析のために、各ヌクレオチドに対する異なる光学的標識が取り込まれ、取り込まれたヌクレオチドの刺激のために複数のレーザーが利用されてもよい。
【0218】
任意の細胞型または組織を利用して、本明細書に記載されるシークエンシング方法に使用される核酸サンプルを得てもよい。一部の実施形態では、DNAまたはRNAサンプルは、新生物/腫瘍、または既知の技術(例えば、静脈穿刺)よって得られた血液または唾液などの体液から得られる。あるいは、核酸試験は、乾燥サンプル(例えば、毛髪または皮膚)上で実施することができる。
【0219】
様々な方法が、個体のDNAまたはRNAにおける特定の変異または対立遺伝子の存在を検出するために利用可能である。この分野の進歩により、正確で容易で安価な大規模SNPジェノタイピングが提供されている。ごく最近では、例えば、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステムおよびAffymetrix SNPチップなどの種々のDNA「チップ」技術を含むいくつかの新しい技術が説明されている。これらの方法は、通常PCRによる、標的遺伝子領域の増幅を必要とする。侵襲的切断、続いて、質量分析、または固定化パッドロックプローブおよびローリングサークル型増幅による小シグナル分子の生成に基づく、さらに他の新たに開発された方法は最終的に、PCRの必要性をなくし得る。特定の一塩基多型を検出するための当該技術分野で既知の方法のうちのいくつかが、以下にまとめられる。本発明の方法は、利用可能な方法全てを含むと理解される。
【0220】
PCRに基づく検出手段は、複数のマーカーの多重増幅を同時に含んでもよい。例えば、サイズが重複せず、かつ同時に分析することが可能なPCR産物を生成するためにPCRプライマーを選択することは、当該技術分野において周知である。
【0221】
あるいは、異なって標識され、したがって、それぞれ差異検出することができるプライマーを用いて異なるマーカーを増幅することが可能である。当然、ハイブリダイゼーションベースの検出手段は、サンプル中の複数のPCR産物の差異検出を可能にする。複数のマーカーの多重分析を可能にする他の技術は、当該技術分野で知られている。
【0222】
ゲノムDNAまたは細胞RNAにおける一塩基多型の分析を容易にするためのいくつかの方法が開発されている。一実施形態では、一塩基多型は、例えば、米国特許第4,656,127号に開示されているような特殊化されたエクソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用することにより検出することができる。この方法によれば、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーは、特定の動物またはヒトから得た標的分子にハイブリダイゼーションすることが可能となる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエクソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含有する場合、その誘導体は、ハイブリダイゼーションされたプライマーの末端に組み込まれることになる。このような組み込みにより、プライマーにエクソヌクレアーゼに対する耐性が与えられ、それによりその検出を可能にする。サンプルのエクソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性が分かっているので、プライマーがエクソヌクレアーゼに対して耐性になるという知見は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに相補的であることを明らかにする。この方法は、大量の無関係な配列データの判定を必要としないという利点を有する。
【0223】
本発明の別の実施形態では、溶液ベースの方法は、多型部位のヌクレオチドの同一性を判定するために使用される(例えば、フランス特許第2,650,840号;PCT出願番号WO1991/02087を参照のこと)。米国特許第4,656,127号の方法のように、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーが用いられてもよい。本方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的であれば、プライマーの末端に組み込まれることになる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を判定する。
【0224】
遺伝ビット分析(Genetic Bit Analysis)またはGBA(登録商標)として知られている代替的方法は、国際公開特許第WO1992/15712号に記載されている)。GBA(登録商標)は、標識ターミネーターおよび多型部位の3’側の配列に相補的なプライマーの混合物を使用する。したがって、組み込まれている標識ターミネーターは、評価対象の標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドにより決定され、該ヌクレオチドに相補的である。Cohenらの方法(フランス特許第2,650,840号;国際特許出願番号第WO1991/02087号)と対照的に、GBA(登録商標)法は、好ましくは、プライマーまたは標的分子が固相に固定されている異種相アッセイである。最近、DNAの多型部位をアッセイするためのいくつかのプライマー誘導ヌクレオチド組み込み手順が説明された(例えば、Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779-7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.AcidsRes.18:3671(1990);Syvanen,A.-C,et al.,Genomics 8:684-692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143-1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159-164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107-112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171-175(1993)を参照のこと)。これらの方法は、これらの方法が全て、多型部位の塩基同士を識別するための標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに依存しているという点で、GBA(登録商標)とは異なる。このような形式では、シグナルが、組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドのランで生じる多型は、ランの長さに比例するシグナルをもたらすことができる(例えば、Syvanen,A.-C,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46-59(1993)を参照のこと)。
【0225】
腫瘍特異的ネオアンチゲンを同定するための代替的方法は、直接的なタンパク質のシークエンシングである。タンデム質量分析(MS/MS)を含む多次元MS技術(MSn)を使用した酵素消化物のタンパク質のシークエンシングは、本発明のネオアンチゲンを同定するためにも使用することができる。このようなプロテオームアプローチは、迅速で高度に自動化された分析を可能にする(例えば、K.GevaertおよびJ.Vandekerckhove,Electrophoresis 21:1145-1154(2000)を参照のこと)。未知のタンパク質のデノボシークエンシングのためのハイスループットな方法が、患者の腫瘍のプロテオームを分析して、発現されたネオアンチゲンを同定するために使用され得ることは、本発明の範囲内にあるとさらに考えられる。例えば、メタショットガンタンパク質シークエンシングは、発現されたネオアンチゲンを同定するために使用され得る(例えば、Guthals et al.(2012)Shotgun Protein Sequencing with Meta-contig Assembly,Molecular and Cellular Proteomics 11(10):1084-96を参照のこと)。
【0226】
腫瘍特異的ネオアンチゲンは、ネオアンチゲン特異的T細胞応答を同定するためにMHC多量体を使用して同定されることもある。例えば、患者サンプルにおけるネオアンチゲン特異的T細胞応答のハイスループット解析は、MHCテトラマーベースのスクリーニング技術を使用して実施されてもよい(例えば、Hombrink et al.(2011)High-Throughput Identification of Potential Minor Histocompatibility Antigens by MHC Tetramer-Based Screening: Feasibility and Limitations 6(8):1-11;Hadrup et al.(2009)Parallel detection of antigen-specific T-cell responses by multidimensional encoding of MHC multimers,Nature Methods,6(7):520-26;van Rooij et al.(2013)Tumor exome analysis reveals neoantigen-specific T-cell reactivity in an Ipilimumab-responsive melanoma,Journal of Clinical Oncology,31:1-4;およびHeemskerk et al.(2013)The cancer antigenome,EMBO Journal,32(2):194-203を参照のこと)。このようなテトラマーベースのスクリーニング技術が、腫瘍特異的ネオアンチゲンの初期同定のために、あるいは患者がどのネオアンチゲンに既に曝露されている可能性があるかを判定して、それにより、本発明のワクチンのための候補ネオアンチゲンの選択を容易にする二次スクリーニングプロトコールとして、使用され得ることは、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0227】
本発明は、単離されたペプチド(例えば、記載された方法で同定された腫瘍特異的変異を含有するネオアンチゲン性ペプチド、既知の腫瘍特異的変異を含むペプチド、および記載された方法で同定された変異体ポリペプチドまたはそのフラグメント)をさらに含む。これらのペプチドおよびポリペプチドは本明細書では、「ネオアンチゲン性ペプチド」または「ネオアンチゲン性ポリペプチド」と称される。該ポリペプチドまたはペプチドは、様々な長さのものとすることができ、患者のHLA分子(「エピトープ」)に結合すると予測される小領域、ならびにN末端およびC末端の両方で伸長するさらなる隣接アミノ酸を最小限含むことになる。該ポリペプチドまたはペプチドは、中性(非荷電)形態または塩である形態のいずれかであることが可能であり、かつグリコシル化、側鎖酸化、もしくはリン酸化などの修飾を含有しないか、またはこれらの修飾を含有するかのいずれかであることが可能であり、修飾が本明細書に記載されるようなポリペプチドの生物学的活性を破壊しないという条件に従う。
【0228】
特定の実施形態では、少なくとも1つのネオアンチゲン性ペプチド分子のサイズは、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120またはそれ以上のアミノ分子残基、およびその中の導出可能な任意の範囲を含んでもよいが、これらに限定されない。具体的な実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチド分子は、50以下のアミノ酸である。好ましい実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチド分子は、約20~約30アミノ酸に等しい。
【0229】
このように、本発明は、対象へ投与すると対象における自然免疫応答を刺激することができる薬剤(例えば、DAMP/PAMP)と、1つ以上の新抗原ペプチドとを含むそのような組成物と連携するナノ粒子を提供する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、2つのネオアンチゲン性ペプチドと連携する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも5つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと連携する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも約6、約8、約10、約12、約14、約16、約18、または約20の異なるペプチドと連携する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも20以上の異なるペプチドと連携する。
【0230】
ネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、および類似体は、通常はタンパク質の一部ではない追加の化学的部分を含有するようにさらに修飾することができる。それらの誘導体化された部分は、溶解度、生物学的半減期、タンパク質の吸収、または結合親和性を改善することができる。これらの部分は、タンパク質などの所望の任意の副作用を低減または排除することもできる。これらの部分の概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)で見つけることができる。例えば、所望の活性を有するネオアンチゲン性ペプチドおよびポリペプチドは、未修飾ペプチドが所望のMHC分子に結合して、適切なT細胞を活性化させる生物学的活性の実質的に全てを増加させ、または少なくとも保持しながら、特定の所望の属性、例えば、改善された薬理学的特性を提供するために、必要に応じて修飾されてもよい。例えば、ネオアンチゲン性ペプチドおよびポリペプチドは、改善されたMHC結合などの使用において特定の利点を提供し得る変更であれば、保存的または非保存的のいずれかの置換などの種々の変更を受けてもよい。このような保存的置換は、あるアミノ酸残基を生物学的かつ/または化学的に類似する別のアミノ酸残基で(例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基で、またはある極性残基を別の極性残基で)置き換えることを包含してもよい。また、単一アミノ酸置換の効果は、D-アミノ酸を使用して調べられ得る。このような修飾は、例えば、Merrifield,Science 232:341-347(1986),Barany & Merrifield,The Peptides,Gross & Meienhofer,eds.(N.Y.,Academic Press),pp.1-284(1979);およびStewart & Young,Solid Phase Peptide Synthesis,(Rockford,III.,Pierce),2d Ed.(1984)に記載されるように、周知のペプチド合成手順を使用して行われ得る。
【0231】
一部の実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチドおよびポリペプチドは、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)との連携を促進する目的で連結剤により修飾されてもよい。本発明は、特定のタイプまたは種類の連結剤に限定されない。一部の実施形態では、連結剤は、システイン-セリン-セリン(CSS)分子である。
【0232】
ナノ粒子がsHDLであり、かつネオアンチゲン性ペプチドまたはポリペプチドがCSSで修飾されている一部の実施形態では、sHDLは、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)によりさらに修飾されており、混合時に、DOPE-PDPとCSSとが関与し、それにより、CSS-AgのsHDLとの複合体化(連結)を生じる。
【0233】
ネオアンチゲン性ペプチドおよびポリペプチドは、化合物のアミノ酸配列を伸長または減少(例えば、アミノ酸の付加または欠失)により、修飾され得る。ネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、または類似体は、特定の残基の順序または組成を変更することにより修飾することもできる。生物学的活性に必須の特定のアミノ酸残基(例えば、重要な接触部位の残基または保存された残基)は一般に、生物学的活性に対する悪影響なしに、変更され得ないことは、当業者に理解されるであろう。重要でないアミノ酸は、L-a-アミノ酸またはそのD-異性体などのタンパク質中に天然に存在するアミノ酸に限定される必要はないが、同様に、β-γ-δ-アミノ酸などの非天然アミノ酸、ならびにL-a-アミノ酸の多くの誘導体を含んでもよい。
【0234】
通常、ネオアンチゲンポリペプチドまたはペプチドは、MHC結合への静電荷、疎水性などの影響を判定するために、単一アミノ酸置換を有する一連のペプチドを使用することにより最適化されてもよい。例えば、一連の正電荷を有する(例えば、LysまたはArg)アミノ酸置換または負電荷を有する(例えば、Glu)アミノ酸置換は、ペプチドの長さに沿って行われ得、種々のMHC分子およびT細胞受容体に対する感度の異なるパターンを明らかにする。加えて、Ala、Gly、Proなどの小さい、比較的中性の部分を使用する複数の置換または類似の残基を用いる多重置換を使用してもよい。置換は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってよい。置換または付加される残基の数および種類は、必須の接触点間に必要な間隔と、求められる特定の機能的属性(例えば、疎水性対親水性)とに依存する。親ペプチドの親和性と比較して、MHC分子またはT細胞受容体に対する結合親和性の増加は、このような置換により達成され得る。いずれにせよ、このような置換は、例えば、結合を破壊し得る立体障害および電荷干渉を避けるように選択されたアミノ酸残基または他の分子フラグメントを用いたらよい。アミノ酸置換は通常、単一残基のものである。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせは、最終ペプチドに到達するために組み合わせられ得る。
【0235】
当業者は、このような腫瘍特異的ネオアンチゲンを産生するための様々な方法があることを理解するであろう。一般に、このような腫瘍特異的ネオアンチゲンは、インビトロまたはインビボのいずれかで産生され得る。腫瘍特異的ネオアンチゲンは、ペプチドまたはポリペプチドとしてインビトロで産生され得、その後に、これらは、個別化新生物ワクチンに製剤化され、対象に投与され得る。このようなインビトロ産生は、例えば、ペプチド合成または様々な細菌、真核生物、もしくはウイルス組換え発現系のうちのいずれかにおけるDNAもしくはRNA分子由来のペプチド/ポリペプチドの発現、続く、発現されたペプチド/ポリペプチドの精製などの、当業者に知られている様々な方法により生じ得る。
【0236】
あるいは、腫瘍特異的ネオアンチゲンは、腫瘍特異的ネオアンチゲンをコードする分子(例えば、DNA、RNA、ウイルス発現系など)を対象に導入することにより、インビボで産生されてもよく、その際、コードされた腫瘍特異的ネオアンチゲンが発現される。
【0237】
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技術による、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者らに既知の任意の技術で作製され得る。種々の遺伝子に対応するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は、これまでに開示されており、当業者らに既知のコンピュータデータベースで見つけられ得る。1つのこのようなデータベースは、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)のウェブサイトにあるアメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenbankおよびGenPeptデータベースである。既知遺伝子のコード領域は、本明細書に開示される、または当業者らに知られている技術を使用して、増幅および/または発現されて得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの種々の市販の調製物が、当業者らに知られている。
【0238】
ペプチドは、細菌物質または動物物質を汚染しない試薬を利用して化学的に容易に合成することができる(Merrifield RB:Solid phase peptide synthesis.I.The synthesis of a tetrapeptide.J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963)。
【0239】
本発明のさらなる態様は、本発明のネオアンチゲン性ペプチドをコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を提供し、これは、インビトロでネオアンチゲン性ペプチドを産生するために使用され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖および/もしくは二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、または天然形態もしくは安定化形態のポリヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格を有するポリヌクレオチドなど)、あるいはそれらの組み合わせであり得る。そして、ポリヌクレオチドは、ペプチドをコードする限り、イントロンを含有してもしなくてもよい。本発明のさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現することができる発現ベクターを提供する。異なる細胞型の発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、過度な実験を行うことなく選択することができる。一般に、DNAは、発現のために適切な向きおよび正しいリーディングフレームで、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要に応じて、DNAは、所望の宿主(例えば、細菌)により認識される適切な転写および翻訳調節制御対照ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクターで得られる。次に、標準的な技術を使用してクローニングするためにベクターが宿主細菌に導入される(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
【0240】
本発明は、本明細書に記載の同定された腫瘍特異的ネオアンチゲンと実質的に相同である変異体および等価物をさらに包含する。これらは、例えば、保存的置換変異(すなわち、1つ以上のアミノ酸を類似アミノ酸で置換すること)を含有することができる。例えば、保存的置換は、アミノ酸を同じ一般クラス内の別のアミノ酸と置換すること、例えば、1つの酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、1つの塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、または1つの中性アミノ酸を別の中性アミノ酸で置換することなどを指す。保存的アミノ酸置換の目的は、当該技術分野において周知である。
【0241】
本発明は、単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および発現ベクターを含有する宿主細胞も含む。ネオアンチゲン性ペプチドが、所望のネオアンチゲン性ペプチドをコードするRNAまたはcDNA分子の形態で提供され得ることも、本発明の範囲内であると考えられる。本発明は、本発明の1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドが単一発現ベクターによりコードされ得ることも規定する。本発明は、本発明の1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドが、ウイルスベースの系(例えば、アデノウイルス系)を使用してインビボでコードされて発現され得ることも提示する。
【0242】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペプチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチド、ならびにさらなるコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNAの形態をとることができる。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二本鎖または一本鎖とすることができ、一本鎖である場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖とすることができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現および/または分泌を助けるポリヌクレオチドと同じリーディングフレームで融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドに対するコード配列を含んでもよい(例えば、ポリペプチドを細胞から輸送するのを制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)。リーダー配列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、宿主細胞により切断されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有することができる。
【0244】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、後に個別化新生物ワクチンに取り込まれ得るポリペプチドであって、コードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列と同じリーディングフレームで融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドに対するコード配列を含むことができる。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合にマーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供するために、pQE-9ベクターにより供給されたヘキサ-ヒスチジンタグとすることができ、またはマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が使用される場合、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来の赤血球凝集素(HA)タグとすることができる。さらなるタグは、カルモジュリンタグ、FLAGタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag1、Softag3、V5タグ、Xpressタグ、Isopeptag、SpyTag、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)タグ、GSTタグ、蛍光タンパク質タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質タグ)、マルトース結合タンパク質タグ、Nusタグ、Strepタグ、チオレドキシンタグ、TCタグ、Tyタグなどを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、複数のネオアンチゲン性ペプチドを産生することができる単一のコンカテマー化ネオアンチゲン性ペプチドコンストラクトを作製するために、同じリーディングフレームに融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドのうちの1つ以上に対するコード配列を含んでもよい。
【0245】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一であるヌクレオチド配列を有する単離核酸分子を提供する。
【0246】
参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一である」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100ヌクレオチド毎に、最大5つの点変異を含むことができることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照配列と同一であることを意味する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドのうち最大5%は、欠失、もしくは別のヌクレオチドで置換することができる、あるいは、参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドは、参照配列に挿入されることができる。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で、またはそれらの末端位置の間のどこかで、生じることができ、参照配列中のヌクレオチドの間に別々に、または参照配列内の1つ以上の隣接するグループに散在する。
【0247】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、参照配列と、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一であるかどうか、また、一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラム、例えば、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を使用して、従来の方法で判定することができる。Bestfitは、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見つけるために、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)の局所的ホモロジーアルゴリズムを使用する。特定の配列が、本発明による参照配列と、例えば、95%同一であるかどうかを判定するために、Bestfitまたは他の任意の配列アライメントプログラムを使用する場合、パラメータは、同一性のパーセンテージが、完全長の参照ヌクレオチド配列全体で計算され、かつ参照配列中のヌクレオチドの総数の最大5%の相同性のギャップが許容されるように、設定される。
【0248】
本明細書に記載の単離腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によりインビトロで(例えば、実験室で)産生することができる。このような方法は、直接タンパク質合成法から、単離ポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し、好適な形質転換宿主中でそれらの配列を発現することにまで及ぶ。一部の実施形態では、目的の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離または合成することにより、組換え技術を使用してDNA配列を構築する。任意に、上記配列は、その機能的類似体を提供するために、部位特異的変異誘発により、変異誘発させることができる。例えば、Zoeller et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 81:5662-5066(1984)および米国特許第4,588,585号を参照のこと。
【0249】
実施形態では、目的のポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学合成により構築される。このようなオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づき、かつ目的の組換えポリペプチドが産生されるべき宿主細胞中で好ましいコドンを選択して、設計することができる。目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成するために、標準的な方法を適用することができる。例えば、完全なアミノ酸配列は、逆翻訳遺伝子を構築するために、使用可能である。さらに、特定の単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成ことが可能である。例えば、所望のポリペプチドの部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次に、ライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補的なアセンブリのために5’または3’オーバーハングを含有する。
【0250】
(例えば、合成、部位特異的変異誘発、または別の方法により)組み立てられると、目的の特定の単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、発現ベクターに挿入され、任意に、所望の宿主中でのタンパク質の発現に適した発現制御配列に作動可能に連結されることになる。適切なアセンブリは、ヌクレオチドシークエンシング、制限マッピング、および好適な宿主中での生物学的に活性なポリペプチドの発現により確認することができる。当該技術分野で周知のように、宿主中に移入遺伝子を高発現レベルで得るために、選択された発現宿主において機能的な転写および翻訳発現制御配列に作動可能に遺伝子を連結することができる。組換え発現ベクターが、腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドをコードするDNAを増幅および発現させるために使用され得る。組換え発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子に由来する好適な転写または翻訳調節要素に作動可能に連結された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドまたは生物学的同等類似体をコードする合成またはcDNA由来のDNAフラグメントを有する複製可能なDNAコンストラクトである。転写ユニットは、一般に、以下に詳細に記載されるように、(1)遺伝子要素または遺伝子発現において調節的役割を有する要素(例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー)と、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造またはコード配列と、ならびに(3)適切な転写開始および終結配列と翻訳開始および終結配列と、のアセンブリを含む。このような調節要素は、転写を制御するオペレーター配列を含むことができる。複製起点により通常与えられる宿主中で複製する能力、および形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子をさらに組み込むことができる。DNA領域は、互いに機能的に関連している場合、作動可能に連結される。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結される。プロモーターは、配列の転写を制御する場合、コード配列に作動可能に連結される。あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を可能にするために配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結されていることは、隣接していることを意味し、分泌リーダーの場合、隣接していること、かつリーディングフレーム内にあることを意味する。酵母発現系での使用を目的とする構造要素は、宿主細胞により翻訳されたタンパク質を細胞外分泌するのを可能にするリーダー配列を含む。あるいは、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現される場合、組換えタンパク質は、N末端メチオニン残基を含む可能性がある。この残基は、最終生成物を提供するために、発現された組換えタンパク質から、その後任意に切断することができる。
【0251】
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存することになる。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核宿主に有用な発現ベクターは、例えば、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターを含む。細菌宿主に有用な発現ベクターは、pCR1、pBR322、pMB9、およびそれらの誘導体を含む、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミドなどの既知の細菌プラスミド、M13および糸状一本鎖DNAファージなどの広宿主域のプラスミドを含む。
【0252】
ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、適切なプロモーターの制御下での、原核生物、酵母、昆虫、または高等真核細胞を含む。原核生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌(E.coli)または桿菌(bacilli)を含む。より高等な真核細胞は、哺乳動物由来の樹立細胞株を含む。無細胞翻訳系を用いることもできる。細菌、真菌、酵母、および哺乳類の細胞宿主と使用される適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、当該技術分野において周知である(Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual, Elsevier,N.Y.,1985を参照のこと)。
【0253】
また、種々の哺乳動物または昆虫の細胞培養系は、組換えタンパク質を発現させるために有利に用いられる。このようなタンパク質は一般に正しくフォールディングされ、適切に修飾され、完全に機能するので、哺乳動物細胞における組換えタンパク質の発現を実施することができる。好適な哺乳類宿主細胞株の例としては、Gluzman(Cell23:175,1981)により記載されたサル腎臓細胞のCOS-7系統、ならびに例えばL細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、およびBHK細胞株を含む適切なベクターを発現することができる他の細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、非転写要素(例えば、複製起点、発現されるべき遺伝子に連結された好適なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに他の5’または3’フランキング非転写配列)と、5’または3’非翻訳配列(例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびアクセプター部位)と、転写終結配列とを含むことができる。昆虫細胞における異種タンパク質の産生のためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers,Bio/Technology 6:47(1988)により概説される。
【0254】
形質転換された宿主により産生されたタンパク質は、任意の好適な方法に従って精製することができる。このような標準的な方法は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、およびサイジングカラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、示差溶解度、またはタンパク質精製のための他の任意の標準技術による方法を含む。アフィニティタグ(例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなど)は、タンパク質に結合させて、適切なアフィニティカラムを通過させることにより容易な精製を可能にすることができる。単離タンパク質は、タンパク質分解、核磁気共鳴およびX線結晶学のような技術を使用して、物理的に特徴づけられることもできる。
【0255】
例えば、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して、組換えタンパク質を培養培地に分泌する系からの上清を最初に濃縮することができる。濃縮工程後、好適な精製マトリックスに濃縮物を塗布することができる。あるいは、陰イオン交換樹脂(例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質)を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に用いられる他のタイプとすることができる。あるいは、陽イオン交換工程を用いることができる。好適なカチオン交換体は、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスを含む。最終的に、癌幹細胞タンパク質-Fc組成物をさらに精製するために、疎水性RP-HPLC培地(例えば、ペンダントメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲル)を用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)工程を用いることができる。均質な組換えタンパク質を提供するために、種々の組み合わせの上述の精製工程の一部または全てを用いることもできる。例えば、細胞ペレットからの最初の抽出、続く、1つ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー工程により、細菌培養で産生された組換えタンパク質を単離することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製工程に用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の簡便な方法により破壊することができる。
【0256】
このように、特定の実施形態では、本発明は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に、(本明細書に記載したような)対象へ投与すると対象における自然免疫応答を刺激することができる剤(例えば、DAMP/PAMP)と1つ以上の新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲンとを含む治療有効量の組成物(例えば、特定のT細胞応答を生じさせることができるワクチン組成物)を投与することによる、障害(例えば、新生物)、より詳細には、腫瘍の処置のための個別化方策に関連する。一部の実施形態では、そのような組成物は、さらにナノ粒子と連携する。実際に、特定の実施形態では、全ゲノム/エクソームシークエンシングは、個々の患者の新生物/腫瘍に独特に存在する全てまたはほぼ全ての変異ネオアンチゲンを同定するために使用され得、変異ネオアンチゲンのこの収集物は、患者の新生物/腫瘍の処置のための個別化癌ワクチンとして使用されるネオアンチゲンの特定の最適化されたサブセットを同定するために分析され得る。例えば、一部の実施形態では、新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲンの集団は、腫瘍特異的変異を同定するために各患者の新生物/腫瘍および正常なDNAをシークエンスし、患者のHLAアロタイプを決定することにより、同定され得る。次に、新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲンおよびその同族の天然抗原の集団に対して、どの腫瘍特異的変異が、患者のHLAアロタイプに結合することができるであろうエピトープを生成するか、特に、どの腫瘍特異的変異が、同族の天然抗原よりも効果的に患者のHLAアロタイプに結合することができるエピトープを生成するかについて予測する検証されたアルゴリズムを使用する生物情報科学分析を行ってもよい。この分析に基づいて、これらの変異のサブセットに対応する1つ以上のペプチドは、各患者のために設計および合成され、患者を免疫する時に癌ワクチンとして使用するために一緒にプールされてもよい。ネオアンチゲンペプチドは、別の抗新生物薬剤と組み合わされ得る。一部の実施態様では、このようなネオアンチゲンは、(例えば、正常な自己抗原の標的化を回避することにより)自己免疫の可能性を低減させながら、中枢性胸腺免疫寛容(central thymic tolerance)をバイパスする(それにより、より強い抗腫瘍T細胞応答を可能にする)と予想される。
【0257】
本発明は、対象において新生物/腫瘍特異的免疫応答を誘発し、新生物/腫瘍に対してワクチン接種し、本発明のネオアンチゲン性ペプチドまたはワクチン組成物を対象に投与することにより、対象における癌の症状を処置および/または緩和する方法をさらに提供する。
【0258】
本発明によれば、上記癌ワクチンは、癌を有する、または癌を発症するリスクがあると診断された患者に使用されて得る。一実施形態では、患者は、固形腫瘍(例えば、乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頚部、膵臓、脳、メラノーマ、および組織器官の他の腫瘍)ならびに血液腫瘍(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、およびB細胞リンパ腫を含むリンパ腫および白血病)を有することがある。
【0259】
本発明のペプチドまたは組成物は、CTL応答を誘発するのに十分な量で投与される。本発明のネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、またはワクチン組成物は、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて投与することができる。治療薬は、例えば、化学療法薬もしくは生物学的治療薬、放射線、または免疫療法である。特定の癌に対する任意の好適な治療的処置が施されてもよい。化学療法薬および生物学的治療薬の例としては、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチンα、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ピロカルピン、プロクロロペラジン、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。前立腺癌処置のために、抗CTLA-4を組み合わせることができる好ましい化学療法薬は、パクリタキセル(Taxol(登録商標))である。
【0260】
加えて、対象は、抗免疫抑制剤または免疫刺激剤をさらに投与されてもよい。例えば、対象は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1、抗PD-Ll、抗TIM-3、抗BTLA、抗VISTA、抗LAG3、抗CD25、抗CD27、抗CD28、抗CD137、抗OX40、抗GITR、抗ICOS、抗TIGIT、およびIDOの阻害剤をさらに投与される。CTLA-4またはPD-1/PD-L1を抗体により遮断することは、患者の癌性細胞に対する免疫応答を増強することができる。特に、CTLA-4遮断は、ワクチン接種プロトコールに従う場合に有効であることが示されている。
【0261】
当業者は、ワクチン組成物中に含まれるべき各ペプチドの最適な量および最適な投薬レジメンを、過度の実験を行うことなく決定することができる。例えば、ペプチドまたはその多様体は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射用に調製して得る。ペプチド注射の好ましい方法は、s.c、i.d.、i.p.、i.m.、およびi.v.を含む。DNA注射の好ましい方法は、i.d.、i.m.、s.c、i.p.、およびi.v.を含む。例えば、ペプチドまたはDNAの1~500mg、50μg~1.5mg、好ましくは、10μg~500μgの用量が、投与されてもよく、各ペプチドまたはDNAに依存することになる。この範囲の用量での使用は、以前の治験で成功した(Brunsvig P F,et al.,Cancer Immunol Immunother.2006;55(12):1553-1564;M.Staehler,et al.,ASCO meeting 2007;Abstract No 3017)。ワクチン組成物の他の投与方法は、当業者らに既知である。
【0262】
本発明のワクチンは、組成物中に存在するペプチドの選択、数、および/または量が、組織、癌、および/または患者特異的であるように作られてもよい。例えば、ペプチドの正確な選択は、副作用を回避するために、所与の組織における親タンパク質の発現パターンにより誘導されることができる。選択は、特定のタイプの癌、疾患の状態、早期処置レジメン、患者の免疫状態、および当然、患者のHLA-ハプロタイプに依存し得る。さらに、本発明によるワクチンは、特定の患者の個人的な必要性に応じて、個別的構成成分を含有することができる。例としては、特定の患者における関連ネオアンチゲンの発現、個人的なアレルギーまたは他の治療による望ましくない副作用、および第1ラウンドまたはスキームの処置の後の二次処置のための調整に従い、ペプチドの量を変更することが挙げられる。
【0263】
このようなワクチンは、既に癌に罹患している個体に投与され得る。治療用途では、このようなワクチンは、腫瘍抗原に対する有効なCTL応答を誘発し、かつ、少なくとも症状および/または合併症を治癒または部分的に停止させるのに十分な量で患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療に有効な用量」と定義される。この使用に有効な量は、例えば、ペプチド組成物、投与様式、処置される疾患の病期および重症度、患者の体重および全体的な健康状態、ならびに処方医師の判断に依存することになる。一般に、この使用に有効な量は、70kgの患者に対し、(治療投与または予防投与用である)初期免疫化の場合、約1.0μg~約50,000μgのペプチドの範囲、続いて、患者の応答および状態に応じて、かつ場合により、患者の血液中の特定のCTL活性を測定することにより、数週間から数ヶ月にわたる、ブースト投薬量、またはブーストレジメンに従った約1.0μg~約10,000μgのペプチドの範囲である。本発明のペプチドおよび組成物は一般に、特に癌が転移している場合に、重篤な疾患状態で、つまり、生命を脅かすまたは潜在的に生命を脅かす状況で用いられ得ることに留意すべきである。治療的使用では、投与は、腫瘍の検出または外科的除去後にできるだけ早く開始されるべきである。これに続いて、少なくとも症状が実質的に寛解するまで、かつ、その後の期間に、用量を増やす。治療的処置のための医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)は、非経口投与、局所投与、経鼻投与、経口投与、または局所投与のためのものである。医薬組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、または筋肉内投与されることが好ましい。組成物は、腫瘍への局所免疫応答を誘発するために外科的切除部位に投与されてもよい。
【0264】
このような実施形態は、特定のタイプのアジュバントに限定されない。一般に、アジュバントは、ワクチン組成物への混合が変異体ペプチドに対する免疫応答を増加させる、または、そうでなければ該免疫応答を変更する任意の物質である。担体は、足場構造物、例えば、ポリペプチドまたは多糖類であり、抗原性ペプチド(例えば、ネオアンチゲン性ペプチド)は、これらに連携することができる。任意に、アジュバントは、本発明のペプチドまたはポリペプチドに共有結合または非共有結合的に結合する。
【0265】
抗原に対する免疫応答を増加させる、アジュバントの能力は、通常、免疫介在性反応の有意な増加または疾患症状の低減により明らかにされる。例えば、体液性免疫の増加は通常、抗原に対して惹起された抗体の力価の有意な増加により明らかにされ、T細胞活性の増加は通常、細胞増殖または細胞傷害性またはサイトカイン分泌の増加に現れる。また、アジュバントは、例えば、主に体液性またはTh2応答を、主に細胞性応答またはTh1応答に変化させることにより、免疫応答を変更することもある。
【0266】
好適なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLG微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquilaのQS21スティミュロン(Aquila Biotech、米国マサチューセッツ州ウ-スター)、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体、ならびにRibi’s Detox. QuilまたはSuperfosなどの他の商標や特許で保護されたアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。樹状細胞に特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)およびそれらの調製は以前に、記載されている(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18-27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3-11)。また、サイトカインが、使用されてもよい。いくつかのサイトカインは、リンパ組織への樹状細胞の遊走に影響を及ぼすこと(例えば、TNF-α)、Tリンパ球に対する有効な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)(特に全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,849,589号)、および免疫アジュバントとして作用すること(例えば、IL-12)(Gabrilovich D I,et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.1996(6):414-418)と直接的に関連している。Toll様受容体(TLR)も、アジュバントとして使用されることがあり、「病原体関連分子パターン」(PAMPS)と呼ばれる、多くの微生物により共有される保存モチーフを認識するパターン認識受容体(PRR)のファミリーの重要なメンバーである。
【0267】
これらの「危険シグナル」の認識は、天然免疫系および適応免疫系の複数の要素を活性化する。TLRは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、T細胞およびB細胞、肥満細胞、ならびに顆粒球などの天然免疫系および適応免疫系の細胞により発現され、原形質膜、リソソーム、エンドソーム、およびエンドリソソームなどの異なる細胞区画に局在する。異なるTLRは、別のPAMPSを認識する。例えば、TLR4は、細菌細胞壁に含有されるLPSにより活性化され、TLR9は、非メチル化細菌またはウイルスのCpG DNAにより活性化され、TLR3は、二本鎖RNAにより活性化される。TLRリガンド結合は、1つ以上の細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらして、最終的に炎症および免疫(特に、転写因子NF-κBおよびI型インターフェロン)に関連する多くの重要な分子の産生をもたらす。TLR媒介性DC活性化は、DC活性化、食作用、活性化ならびにCD80、CD83、およびCD86などの共刺激マーカーの上方制御、流入領域リンパ節へのDCの遊走を可能にし、かつT細胞への抗原提示を促進するCCR7の発現の増強、ならびにI型インターフェロン、IL-12、およびIL-6などのサイトカインの分泌の増加をもたらす。これらの下流事象は全て、適応性免疫応答の誘発にとって重要である。
【0268】
標的化され得る他の受容体は、トール様受容体(TLR)を含む。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、これに結合する。PAMPは、樹状細胞の表面上のTLRを標的とし、内部でシグナル伝達し、それにより、DC抗原取り込み、成熟、およびT細胞刺激能を潜在的に増大させる。粒子表面に結合または共カプセル化されたPAMPは、非メチル化CpG DNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポ多糖(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンナン(細菌性)、ザイモサン(酵母性)、MALP-2などのマイコプラズマリポタンパク質(細菌性)、フラジェリン(細菌性)、ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)、またはイミダゾキノリン(合成)を含む。
【0269】
現在臨床開発中の最も有望な癌ワクチンアジュバントの中には、TLR9アゴニストCpGおよび合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドポリICLCがある。前臨床研究では、ポリICLCは、DCにおける炎症促進性サイトカインの誘導およびIL-10の刺激の欠如、ならびに高レベルの共刺激分子の維持により、LPSおよびCpGと比較した場合に、最も強力なTLRアジュバントであるようにみえる。さらに、ポリICLCは、最近、ヒトパピローマウイルス(HPV)16キャプソメアからなるタンパク質ワクチンのアジュバントとして、非ヒト霊長類(アカゲザル)のCpGと直接比較された(Stahl-Hennig C,Eisenblatter M, Jasny E,et al.Synthetic double-stranded RNAs are adjuvants for the induction of T helper 1 and humoral immune responses to human papillomavirus in rhesus macaques. PLoS pathogens.Apr 2009;5(4))。
【0270】
一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞標的分子(DC)である。DCは強力であり、抗原特異的免疫応答の開始に関与している。DCの1つの生物学的特徴は、抗原に遭遇する条件を感知して、「DC成熟」のプロセスを開始する能力である。種々の微生物および炎症性の産物に対する受容体を使用すると、DCは、遭遇する病原体(ウイルス、細菌、原生動物)の性質に応じて異なる方法で抗原曝露に応答する。この情報は、リンパ節における抗原提示時のサイトカイン放出パターンの変更により、T細胞に伝達され、誘発されたT細胞応答のタイプを変更する。したがって、DCの標的化は、一般に抗原の送達および抗原応答を量的に増強するだけでなく、所望のワクチン接種結果に応じて免疫応答の性質を質的に制御する機会を提供する。
【0271】
樹状細胞は、結合抗原のエンドサイトーシスを媒介することができる複数の細胞表面受容体を発現する。全身分布した抗原提示細胞上の表面分子を内在化する外因性抗原を標的とすることは、抗原の取り込みを容易にし、それにより、免疫化、したがって、ワクチン接種における主要な律速段階を克服する。
【0272】
樹状細胞標的分子は、樹状細胞の表面上に提示されるエピトープを認識してそれに結合するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。樹状細胞標的分子は、樹状細胞上の細胞表面受容体に結合するリガンドも含む。このような受容体の1つであるレクチンDEC-205は、体液性応答(抗体ベースの)および細胞性応答(CD8 T細胞)の両方を2~4桁増加させるためにインビトロおよびマウスにおいて使用されている(例えば、Hawiger,et al.,J.Exp.Med.,194(6):769-79(2001);Bonifaz,et al.,J.Exp.Med.,196(12):1627-38 (2002);Bonifaz,et al.,J.Exp.Med.,199(6):815-24(2004)を参照のこと)。
【0273】
マンノース特異的レクチン(マンノース受容体)およびIgGFc受容体を含む他の様々なエンドサイトーシス受容体も、抗原提示効率の同様の増強を伴ってこのように標的化されている。標的化され得る他の好適な受容体としては、DC-SIGN、33D1、SIGLEC-H、DCIR、CD11c、熱ショックタンパク質受容体、およびスカベンジャー受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0274】
一部の実施形態では、アジュバントは、CpGである。CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドは、ワクチン環境におけるアジュバントの効果を増強することも報告されている。理論に束縛されるものではないが、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を介して天然(非適応)免疫系を活性化することにより作用する。CpG誘発性TLR9活性化は、ペプチド抗原またはタンパク抗原、生存ウイルスまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞性ワクチンならびに予防的および治療的ワクチンの両方における多糖結合を含む多種多様な抗原に対する抗原特異的体液性応答および細胞応答を増強する。さらに重要なことに、それは、樹状細胞の成熟および分化を増強して、CD4T細胞が不在の時でさえ、Th1細胞の活性化の増強および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成をもたらす。TLR9刺激により誘発されるTh1バイアスは、通常Th2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバントの存在下でさえ維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、抗原が比較的弱い場合に強い応答を誘発するために特に必要である、他のアジュバントと、またはマイクロ粒子、ナノ粒子、脂質エマルジョン、もしくは類似の製剤などの製剤中で、製剤化または同時投与される場合、より強いアジュバント活性をさらに示す。それらは、免疫応答も増進し、いくつかの実験においてCpGを含まない総用量のワクチンへの同等の抗体応答を伴って、抗原用量を約2桁低減させることができた(Arthur M.Krieg,Nature Reviews,Drug Discovery,5,Jun.2006,471-484)。米国特許第6,406,705B1号は、抗原特異的免疫応答を誘発するための、CpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用について記載している。市販のCpG TLR9アンタゴニストは、本発明の医薬組成物の好ましい構成成分であるMologen(独国ベルリン)のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合性TLR7、TLR8、および/またはTLR9などの他のTLR結合分子が使用されることもある。
【0275】
例えば、(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)としても知られている)VadimezanまたはAsA404などのキサンテノン誘導体も、本発明の実施形態に係るアジュバントとして使用され得る。あるいは、このような誘導体は、腫瘍部位での免疫を刺激するために、例えば、全身送達または腫瘍内送達によって、本発明のワクチンと並行して投与されることもある。理論に束縛されるものではないが、このようなキサンテン誘導体が、IFN遺伝子(ISTING)受容体の刺激因子を介して、インターフェロン(IFN)産生を刺激することにより作用すると考えられている(例えば、Conlon et al.(2013)Mouse,but not Human STING,Binds and Signals in Response to the Vascular Disrupting Agent 5,6-Dimethylxanthenone-4-Acetic Acid,Journal of Immunology,190:5216-25およびKim et al.(2013)Anticancer Flavonoids are Mouse-Selective STING Agonists,8:1396-1401を参照のこと)。有用なアジュバントの他の例としては、化学的に修飾されたCpG(例えばCpR、Idera)、Poly(I:C)(例えばpolyi:CI2U)、非CpG細菌のDNAまたはRNA、ならびに免疫活性小分子ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、およびSC58175などの抗体が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、治療的にかつ/またはアジュバントとして作用し得る。本発明との関連で有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は、過度の実験を行うことなく当業者が容易に決定することができる。さらなるアジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルラモスチム)などのコロニー刺激因子を含む。
【0276】
ポリICLCは、約5000個のヌクレオチドの平均長のpolyl鎖およびpolyC鎖からなる合成的に調製された二本鎖RNAであり、これは、ポリリシンおよびカルボキシメチルセルロースの添加により血清ヌクレアーゼによる熱変性および加水分解に対して安定化されている。この化合物は、いずれもPAMPファミリーのメンバーであるTLR3およびMDA5のRNAヘリカーゼドメインを活性化して、DCおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化およびI型インターフェロン、サイトカイン、およびケモカインの「天然混合物」の産生をもたらす。さらに、ポリICLCは、2つのIFN誘導性核酵素系2’5’-OASおよびPl/eIF2aキナーゼ(PKR(4-6)としても知られている)ならびにRIG-IヘリカーゼおよびMDA5により媒介される、より直接的で広範な宿主標的化抗感染性の、かつ、場合により抗腫瘍の効果を発揮する。
【0277】
このような方法は、対象へ投与すると対象における自然免疫応答を刺激することができる剤(例えば、DAMP/PAMP)、抗原およびアジュバント(例えば、樹状細胞標的分子)を含む組成物と連携したsHDLナノ粒子を生成することに限定されない。一部の実施形態では、抗原およびアジュバントは、sHDLナノ粒子の外面に結合される。
【0278】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、抗原および/またはアジュバントの還元感受性連結を可能にするチオール反応性リン脂質と合成される。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子内にDCを充填することは、DC分子のコレステロール修飾により容易となる。一部の実施形態では、凍結乾燥法が、均質なsHDLの調製に使用される。一部の実施形態では、リン脂質およびApoA模倣ペプチドは、氷酢酸に溶解され、凍結乾燥される。一部の実施形態では、抗原ペプチドは、抗原ペプチドのコンジュゲーションを可能にするために、(例えば、室温で3時間)緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4))中で、sHDLと共にインキュベートされる。一部の実施形態では、結合されない抗原ペプチドは、脱塩カラム(MWCO=7000Da)を使用して除去される。一部の実施形態では、コレステロール修飾DC(Cho-DC)のsHDLへの組み込みは、sHDLと共に室温で約30分間インキュベートすることを含む。
【0279】
このような実施形態は、抗原およびDCと結合されたsHDLを特徴づける特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、sHDLの形態は、TEMにより観察される。一部の実施形態では、sHDLのサイズ分布は、Malven Nanosizer instrumentおよびGPCアッセイを使用する動的光散乱法(DLS)により分析される。
【0280】
免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)は、予防的および治療的用途の目的で対象においてT細胞を活性化するのに有用である。T細胞のナノ粒子ワクチン組成物による活性化は、それらの増殖、サイトカイン産生、分化、エフェクター機能、および/または生存を増加させる。これらを測定する方法は、当業者らに周知である。ナノ粒子ワクチン組成物により活性化されるT細胞は、α/βおよびγ/δT細胞受容体を含むT細胞受容体を発現する任意の細胞とすることができる。T細胞は、CD4およびCD8も発現するT細胞サブセットを含む、CD3を発現する全ての細胞を含む。T細胞は、ナイーブ細胞およびメモリー細胞の両方ならびにCTLなどのエフェクター細胞を含む。T細胞は、Th1、Tc1、Th2、Tc2、Th3、Treg、およびTr1細胞などの制御細胞も含む。T細胞は、NKT細胞および類似の独特なクラスのT細胞系統も含む。一部の実施形態では、活性化されるT細胞は、CD8+T細胞である。
【0281】
一般に、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)を含む組成物は、任意の疾患または障害であって、それに対して自身の免疫系が免疫応答を開始する疾患または障害を有する、またはこれを有しやすい傾向にある対象を処置するのに有用である。組成物は、予防ワクチンとして有用であり、これらは、感染性因子へのその後の曝露に対して、対象に耐性を与える。組成物は、癌を有する対象の腫瘍抗原またはウイルスに感染した対象のウイルス抗原などの既存抗原に対する対象の免疫応答を開始または増強するために使用することができる治療ワクチンとしても有用である。組成物は、アレルゲンなどの環境抗原に対して個体を「免疫寛容化する」ように機能する脱感作ワクチンとしても有用である。
【0282】
これらの組成物を樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞に対して標的化する能力、および抗原の交差提示を引き起こすことによりこれらの組成物がT細胞媒介性免疫応答を誘発する能力は、疾患を攻撃するために、疾患関連抗原に対し細胞媒介性応答を誘発するのに、これらの組成物を特に有用にさせる。したがって、一部の実施形態では、処置または予防されるべき疾患のタイプは、細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、または細胞内に侵入して、すなわち、細胞傷害性Tリンパ球により攻撃される他の微生物病原体により引き起こされる悪性腫瘍または慢性感染症である。
【0283】
予防的な、治療的な、または脱感作された免疫応答の望ましい結果は、当該分野で周知の原理に従って、疾患に応じて変化し得る。例えば、感染性因子に対する免疫応答は、感染性因子のコロニー形成および複製を完全に防止して、「無菌免疫」および疾患症状の非存在に影響を及し得る。しかし、感染性因子に対するワクチンは、症状の数、重症度、または持続時間を低減させる場合;症状を有する集団中の個体数を低減させる場合;または感染性因子の伝達を低減させる場合、効果的であると考えられ得る。同様に、癌、アレルゲン、または感染性因子に対する免疫応答は、疾患を完全に治してしまうこと、症状を緩和すること、または疾患に対する全体的な治療的介入において1つの側面となることがある。例えば、癌に対する免疫応答の刺激は、処置に影響を及ぼすために、外科的、化学療法的、放射線学的、ホルモン的、および他の免疫学的アプローチと組み合わされてもよい。
【0284】
感染性因子を有する対象、またはこれらに曝露された対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)で治療的または予防的に処置されることができる。感染性因子は、細菌、ウイルス、および寄生虫を含む。一部の場合では、対象は、例えば、感染性因子から疾患を発症するリスクがあり得る場合、予防的に処置されることができる。特有の感染症がある地域を旅行する、またはそこに住む個人は、リスクがあると考えられ得、特定の感染性因子に対するワクチン接種の候補であると考えられ得る。予防的処置は、特定の疾患と、地理的場所または職場環境などの特定の危険因子との間に既知の関係がある任意の数の疾患に適用することができる。
【0285】
悪性腫瘍を有する対象、または悪性腫瘍を発症するリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)で治療的または予防的に処置されることができる。成熟動物では、ほとんどの器官および組織において細胞の再生および細胞死の間のバランスが、通常、維持される。体内の種々のタイプの成熟細胞は、所与の寿命を有する。これらの細胞が死ぬ時に、新しい細胞が、種々のタイプの幹細胞の増殖および分化により生成される。通常の状況下では、新しい細胞の産生は調節されているので、任意の特定のタイプの細胞の数は一定に留まる。しかし、時折、正常な成長制御機序にもはや応答しない細胞が生じる。これらの細胞は、かなりの大きさに拡大して、腫瘍または新生物を産生する能力がある細胞のクローンを生じる。無限に成長することができず、広範囲に健康な周囲組織に浸潤しない腫瘍は、良性である。成長を続けて進行して浸潤性になる腫瘍は、悪性である。癌という用語は、特に悪性腫瘍を指す。制御不能な成長に加えて、悪性腫瘍は、転移を示す。このプロセスでは、癌細胞の小さなクラスターは、腫瘍から移動し、血液またはリンパ管に浸潤し、他の組織に運ばれ、そこで、増殖し続ける。このようにして、1つの部位における原発性腫瘍は、別の部位で二次性腫瘍を生じさせることができる。本明細書に開示されるような免疫応答(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子は、悪性腫瘍を有する対象を処置するために有用である。
【0286】
処置され得る悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚起源に従って本明細書では分類される。癌腫は、皮膚または内臓および腺の上皮内層などの内胚葉または外胚葉組織から生じる腫瘍である。メラノーマは、本発明が特に有用である皮膚の癌腫の一種である。あまり頻繁には発生しない肉腫は、骨、脂肪、および軟骨などの中胚葉結合組織に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は、単一細胞として増殖するが、リンパ腫は、腫瘍塊として成長する傾向がある。悪性腫瘍は、身体の多数の器官または組織に現れて癌を定着させることがある。
【0287】
免疫応答を活性化するように構成されて提供されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)で処置することができる癌のタイプとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃、子宮など。投与は、既存の腫瘍または感染症の処置に限定されず、個体におけるこのような疾患の発症リスクを予防または低下させるためにも、すなわち、予防的使用のためにも使用することもできる。予防的ワクチン接種の潜在的な候補は、癌を発症するリスクが高い、すなわち、特定のタイプの癌の個人歴または家族歴を有する、個体を含む。
【0288】
アレルゲンを有する対象、またはアレルゲンへの曝露のリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)で治療的または予防的に処置されることができる。このようなsHDLナノ粒子は、アナフィラキシーにつながるアレルギー反応などのアレルギー反応を予防および/または軽減する目的で対象に投与され得る。アレルギー反応は、IgE抗体の存在につながる抗原に対するT2応答で特徴づけられ得る。T1免疫応答の刺激およびIgG抗体の産生は、アレルギー性疾患を緩和することがある。したがって、本明細書に開示されるような免疫応答(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子は、アレルゲンに曝露された対象におけるアレルギー反応を予防および/または軽減する抗体の産生に有用である。
【0289】
免疫抑制状態を有する対象、またはこれらのリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL)で治療的または予防的に処置されることができる。本明細書に開示されるsHDLナノ粒子ワクチンは、AIDSまたはAIDS関連症候群、特発性免疫抑制、薬物誘発性免疫抑制、他のウイルス性または環境誘発性の状態、および特定の先天性免疫不全を含むがこれらに限定されない免疫抑制を特徴とする病状の処置のために使用することができる。このようなsHDLナノ粒子ワクチン組成物は、免疫抑制剤(例えば、特定の化学療法薬)の放射線療法の使用により損なわれた免疫機能を増加させるために用いられることもできる。したがって、このような薬物または放射線療法と共に使用される場合に、上記sHDLナノ粒子ワクチン組成物は、特に有用となることが可能である。
【0290】
一般に、本明細書に開示されるようなワクチン(例えば、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-STINGアゴニスト-αGalCer)(例えば、Ag/DC-STINGアゴニスト-sHDL))を投与する方法は、当該技術分野において周知である。当業者に既知の任意の許容される方法が、対象に製剤を投与するために使用され得る。投与は、局所投与(すなわち、特定の領域、生理系、組織、器官、もしくは細胞型への投与)または全身投与であり得る。ワクチンは、経口、吸入(経鼻または経肺)、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または経直腸手段を含むが、これらに限定されない多数の経路により投与することができる。注射は、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射とすることができる。一部の実施形態では、注射は複数の場所で行うことができる。
【0291】
製剤の投与は、有効量のワクチンが標的に到達することを可能にする任意の許容される方法により実現され得る。選択される特定の様式は、特定の製剤、処置される対象の状態の重症度、および有効な免疫応答を誘発するために必要とされる投薬量などの因子に依存することになる。本明細書で一般に使用されるように、「有効量」は、処置された対象において免疫応答を誘発することができる量である。ワクチンの実際の有効量は、利用される特定の抗原またはその組み合わせ、製剤化される特定の組成物、投与様式、およびワクチン接種される個体の年齢、体重、状態、ならびに投与経路および疾患または障害に応じて変動する可能性がある。
【0292】
特定の実施形態では、sHDLナノ粒子内にカプセル化された糖脂質は、ナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答の刺激因子として使用される。
【0293】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、T細胞およびナチュラルキラー細胞の両方の性質を共有する異種群のT細胞である。これらの細胞の多くは、非多型CD1d分子、自己および外来の脂質および糖脂質に結合する抗原提示分子を認識する。NKT細胞は、全末梢血T細胞の約0.1%しか構成しない。NKT細胞は、αβT細胞受容体を同時発現するT細胞のサブセットであるが、NK1.1などのNK細胞に通常関連する様々な分子マーカーをも発現する。最もよく知られているNKT細胞は、T細胞受容体の多様性がはるかに限定されているという点で、従来のαβT細胞とは異なる(「不変」または「1型」NKT)。それらおよび他のCD1d拘束性T細胞(「2型」NKT)は、ペプチド主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ではなく、抗原提示分子のCD1ファミリーのメンバーであるCD1d分子により提示される脂質および糖脂質を認識する。NKT細胞は、NK1.1およびNK1.1の両方ならびにCD4、CD4、CD8、およびCD8細胞を含む。
【0294】
特定の実施形態では、対象へ投与すると対象における自然免疫応答を刺激することができる剤(例えば、DAMP/PAMP)を含む組成物が、1つ以上の治療薬とさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。このような実施形態は、特定のタイプまたは種類の治療薬に限定されない。
【0295】
一部の実施形態では、治療薬は、癌を処置および/または予防するために構成される。このような治療薬の例としては、化学療法薬、抗腫瘍薬、抗血管新生薬、腫瘍抑制薬、抗菌薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0296】
一部の実施形態では、治療薬は、自己免疫障害および/または炎症性障害を処置および/または予防するために構成される。このような治療薬の例としては、疾患修飾抗リウマチ薬(例えば、レフルノミド、メトトレキセート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン)、生物学的薬剤(例えば、リツキシマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、非ステロイド抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク)、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン、トラマドール)、免疫調節薬(例えば、アナキンラ、アバタセプト)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、IL-1阻害薬、およびメタロプロテアーゼ阻害薬が挙げられる。一部の実施形態では、治療薬は、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、非経口金、または経口金が含まれるが、これらに限定されない。
【0297】
一部の実施形態では、治療薬は、心血管関連障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、心不全、不整脈、心房細動、高血圧、冠状動脈疾患、狭心症など)を処置および/または予防するために構成される。心臓血管関連障害を処置および/または予防するのに有用であることが知られている治療薬の例としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、ラミプリル)、アデノシン、α遮断薬(αアドレナリンアンタゴニスト薬剤)(例えば、クロニジン、グアナベンズ、ラベタロール、フェノキシベンザミン、テラゾシン、ドキサゾシン、グアンファシン、メチルドーパ、プラゾシン)、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)(例えば、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタン、エプロサルタン、ロサルタン、タソサルタン、バルサルタン)、抗凝固薬(例えば、ヘパリンフォンダパリヌクス、ワルファリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、ダルテパリン、ナドロパリン、チンザパリン)、抗血小板薬(例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、エプチフィバチド、チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、スルフィンピラゾン、チロフィバン)、β遮断薬(例えば、アセブトロール、ベタキソロール、カルテオロール、メトプロロール、ペンブトロール、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、エスモロール、ナドロール、ピンドロール、チモロール)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロピジン(amlopidine)、フェロジピン、イスラジピン、ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニモジピン、ニソルジピン)、利尿薬、アルドステロン遮断薬、ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、フロセミド、エタクリン酸、トラセミド)、カリウム保持性利尿薬、チアジド利尿薬(例えば、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメアジド、メチクロチアジド、メトラゾン、ポリチアジド、キナタゾン、トリクロルメチアジド)、強心薬、胆汁酸吸着薬(例えば、コレスチラミン、コレチポール(coletipol)、コレセベラム)、フィブラート系薬(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート)、スタチン(例えば、アトルバスタチン(atorvastatinm)、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン)、選択的コレステロール吸収阻害薬(例えば、エゼチミブ)、カリウムチャネル遮断薬(例えば、アミダロン(amidarone)、イブチリド、ドフェチリド)、ナトリウムチャネル遮断薬(例えば、ジソピラミド、メキシレチン、プロカインアミド、キニジン、フレカイニド、モリシジン、プロパフェノン)、血栓溶解薬(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ)、血管収縮薬、血管拡張薬(例えば、ヒドララジン、ミノキシジル、メカミラミン、イソルビドジントレート(isorbide dintrate)、一硝酸イソルビド(isorbide mononitrate)、ニトログリセリン)が挙げられる。
【0298】
一般に、そのように形成されたナノ粒子は、球状であり、約5nm~約20nm(例えば、4~75nm、4~60nm、4~50nm、4~22nm、6~18nm、8~15nm、8~10nmなど)の直径を有する。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子にサイズ排除クロマトグラフィーを行い、より均質な調製物を得る。
【0299】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、投与された粒子の場所を突き止めるのに有用な薬剤とさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。この目的に有用な薬剤は、蛍光タグ、放射性核種、および造影剤を含む。
【0300】
好適な造影剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:Molecular Probes(Handbook of fluorescent probes and research products)に記載されているような蛍光分子(例えば、ローダミン、フルオレセイン、テキサスレッド、アクリジンオレンジ、Alexa Fluor(各種)、アロフィコシアニン、7-アミノアクチノマイシンD、BOBO-1、BODIPY(各種)、Calcien、Calcium Crimson、Calcium green、Calcium Orange、6-カルボキシローダミン6G、Cascade blue、Cascade yellow、DAPI,DiA,DID,Di1,DiO,DiR,ELF 97,エオシン,ER Tracker Blue-White,EthD-1、臭化エチジウム、Fluo-3、Fluo4、FM1-43、FM4-64、Fura-2、Fura Red、Hoechst 33258、Hoechst 33342、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、Indo-1、JC-1、JC-9、JOE dye、リサミンローダミンB、ルシファーイエローCH、LysoSensor Blue DND-167、LysoSensor Green、LysoSensor Yellow/Blu、Lysotracker Green FM、Magnesium Green、Marina Blue、Mitotracker Green FM、Mitotracker Orange CMTMRos、MitoTracker Red CMXRos、Monobromobimane、NBD amines、NeruoTrace 500/525 green、ナイルレッド、Oregon Green、Pacific Blue、POP-1、ヨウ化プロピジウム、ローダミン110、ローダミンレッド、R-フィコエリスリン、Resorfin、RH414、Rhod-2、ローダミングリーン、ローダミン123、ROX dye、Sodium Green、SYTO blue(各種)、SYTO green(各種)、SYTO orange(各種)、SYTOX blue、SYTOX green、SYTOX orange、テトラメチルローダミンB、TOT-1、TOT-3、X-rhod-1、YOYO-1、YOYO-3。一部の実施形態では、セラミドが、造影剤として提供される。一部の実施形態では、S1Pアゴニストが、造影剤として提供される。
【0301】
さらに、放射性核種を造影剤として使用することができる。好適な放射性核種は、Fe(III)、Fe(II)、Cu(II)、Mg(II)、Ca(II)、およびZn(II)、インジウム、ガリウムおよびテクネチウムの放射性種が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な造影剤としては、常磁性T1型MIR造影剤におけるキレート化に一般に使用される金属イオンが挙げられ、銅、クロム、鉄、ガドリニウム、マンガン、エルビウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、およびホルミウムなどの二価および三価カチオンが挙げられる。放射性核種イメージングするためにキレート化されて使用されることができる金属イオンは、ガリウム、ゲルマニウム、コバルト、カルシウム、インジウム、イリジウム、ルビジウム、イットリウム、ルテニウム、イットリウム、テクネチウム、レニウム、白金、タリウム、およびサマリウムなどの金属を含むが、これらに限定されない。さらに、中性子捕捉放射線療法に有用であることが知られている金属イオンは、ホウ素および大きな核断面を有する他の金属を含む。さらに、超音波造影およびX線造影組成物に有用な金属イオンも好適である。
【0302】
他の好適な造影剤の例としては、放射線不透過性の気体または気体放出化合物が挙げられる。
【0303】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、標的化剤とさらに連携(例えば、複合体化、結合、カプセル化、吸収、吸着、混合)する。一部の実施形態では、標的化剤は、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子が所望の身体領域(例えば、心臓血管関連障害を患う身体領域)へ送達されるのを助けるために使用される。標的化剤の例としては、抗体、受容体リガンド、ホルモン、ビタミン、および抗原が挙げられるが、これらに限定されず、本発明は、標的化剤の性質によって限定されない。一部の実施形態では、抗体は、疾患特異的抗原に対して特異的である。一部の実施形態では、受容体リガンドは、CFTR、EGFR、エストロゲン受容体、FGR2、葉酸受容体、IL-2受容体、糖タンパク質、およびVEGFRに対するリガンドを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、受容体リガンドは、葉酸である。
【0304】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、医療デバイスにより患者の局所部位に送達され得る。本発明における使用に適した医療デバイスは、治療薬の局所送達のための既知のデバイスを含む。このようなデバイスは、注射カテーテル、バルーンカテーテル、二重バルーンカテーテル、微孔性バルーンカテーテル、チャネルバルーンカテーテル、注入カテーテル、灌流カテーテル(これらは、例えば、治療薬でコーティングされる、または、これらを介して、薬剤が投与される)などのカテーテル;皮下注射針および針注射カテーテルなどの針注射デバイス;ジェットインジェクターなどの無針注射デバイス;被覆ステント、分岐ステント、人工血管、ステントグラフトなど;ならびにワイヤコイルなどのコーティングされた血管閉塞デバイスなどを含むが、これらに限定されない。
【0305】
例示的なデバイスは、米国特許第5,935,114号;同第5,908,413号;同第5,792,105号;同第5,693,014号;同第5,674,192号;同第5,876,445号;同第5,913,894号;同第5,868,719号;同第5,851,228号;同第5,843,089号;同第5,800,519号;同第5,800,508号;同第5,800,391号;同第5,354,308号;同第5,755,722号;同第5,733,303号;同第5,866,561号;同第5,857,998号;同第5,843,003号;および同第5,933,145号に記載され、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。市販されており、本出願で使用され得る例示的なステントは、RADIUS(SCIMED LIFE SYSTEMS,Inc.)、the SYMPHONY(Boston Scientific Corporation)、the Wallstent(Schneider Inc.)、the PRECEDENT II(Boston Scientific Corporation)、およびNIR(Medinol Inc.)が挙げられる。このようなデバイスは、既知の技術により、体内の標的場所に送達および/または移植される。
【0306】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるような組成物を含むキットも提供する。一部の実施形態では、本キットは、このような組成物を生成するために必要な試薬およびツールのうちの1つ以上、ならびにこのような組成物を使用する方法を含む。
【0307】
本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、任意の好適な分析技術により、サイズおよび均一性について特徴づけられ得る。これら技術は、原子間力顕微鏡法(AFM)、エレクトロスプレーイオン化質量分析、MALDI-TOF質量分析、13C核磁気共鳴分光法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(多角度レーザー光散乱、デュアルUV、および屈折率検出器が装着されている)、キャピラリー電気泳動、ならびにゲル電気泳動を含むが、これらに限定されない。これらの分析方法は、sHDLナノ粒子集団の均一性を確保し、インビボ用途での最終的な使用のための製造品質管理において重要である。
【0308】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子をリポソームおよび遊離ApoA-I模倣ペプチドから分離することができるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)が、sHDL-TAナノ粒子を分析するために使用される。一部の実施形態では、サイズ分布およびゼータ電位は、例えば、Malven Nanosizer instrumentを使用した動的光散乱(DLS)により測定される。
【0309】
臨床用途が企図される場合、本発明の一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、意図される用途に適した形態の医薬組成物の一部として調製される。一般に、これには、発熱物質ならびにヒトまたは動物に有害である可能性がある他の不純物を基本的に含まない組成物の調製を必要とする。しかし、本発明の一部の実施形態では、そのままのsHDLナノ粒子製剤は、本明細書に記載の経路の1つ以上を使用して投与され得る。
【0310】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、標的細胞による取り込みを可能にする組成物を安定して送達するために、適切な塩および緩衝液と共に使用される。緩衝液はまた、sHDLナノ粒子が患者に導入される場合に用いられる。水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体中に分散された、細胞に対する有効量のsHDLナノ粒子を含む。このような組成物は、接種材料とも呼ばれる。語句「医薬的にまたは薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性の、または他の好ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。任意の従来の媒体または薬剤が、本発明のベクターまたは細胞と適合しない場合を除いて、治療組成物における使用が検討される。補助活性成分が、組成物に組み込まれることもある。
【0311】
本発明の一部の実施形態では、活性組成物は、典型的な医薬製剤を含む。本発明によるこれらの組成物の投与は、その任意の一般的経路を介して標的組織に到達できる限り、該任意の一般的経路を介する。これは、経口、経鼻、口腔、経直腸、膣内、または局所経路を含む。あるいは、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射によるものであってよい。
【0312】
本明細書に記載されるような組成物と連携した活性ナノ粒子は、非経口投与もしくは腹腔内投与または腫瘍内投与され得る。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製される。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製することもできる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0313】
注射使用に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉剤を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)により行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウム、を含むことが好ましいといえ得る。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物中で使用することにより、もたらされ得る。
【0314】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙された多様な他の成分と適切な溶媒中で、本明細書に記載されるような組成物と連携した、必要量の活性ナノ粒子を組み込み、続いて、濾過滅菌することにより、調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉剤の場合、好ましい調製方法は、有効成分および任意の追加の所望の成分の粉剤を予め滅菌濾過したそれらの溶液から生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0315】
製剤化されると、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子は、投薬製剤と適合する様式で、かつ治療的に有効であるような量で投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセル剤などの様々な剤形で容易に投与される。水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液は、適切に緩衝され、必要に応じて、液体希釈剤は、最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張化される。これらの特定の水溶液は特に、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に適する。例えば、1回の投薬量が、1mlの等張NaCl溶液に溶解され、それから1000mlの皮下注入液に添加されるか、または提案された注入部位に注射されるかのいずれかとすることができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照のこと)。本発明の一部の実施形態では、活性粒子または薬剤は、治療混合物内に1用量毎に約0.0001~1.0ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0、あるいは約10ミリグラム程度を構成するように製剤化される。複数用量が、投与されてもよい。
【0316】
他の投与様式に適するさらなる製剤は、膣坐剤およびペッサリーを含む。直腸ペッサリーまたは坐剤が、使用されることもある。坐剤は、直腸、膣、または尿道への挿入のための、通常薬用の種々の重量および形状の固体剤形である。挿入後、坐剤は軟化、溶融、または体腔液に溶解する。一般に、坐薬の場合、従来の結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る。このような坐剤は、0.5%~10%、好ましくは、1%~2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成され得る。膣坐薬またはペッサリーは、通常、球状または卵形であり、それぞれ約5gの重量である。膣内投薬は、坐剤の典型的概念から離れる様々な物理的形態(例えば、クリーム、ゲル、または液体)で利用可能である。sHDLナノ粒子はまた、吸入剤として製剤化されてもよい。
【0317】
本発明は、本明細書に記載されるような組成物と連携したナノ粒子を1つ以上のさらなる活性剤と同時投与することを含む方法も包含する。実際に、本発明のsHDLナノ粒子を同時投与することにより、先行技術の治療法および/または医薬組成物を増強する方法を提供することが、本発明のさらなる態様である。同時投与手順では、薬剤は、同時にまたは連続的に投与され得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物と連携したsHDLナノ粒子は、他の活性剤(複数可)の前に投与される。同時投与されるべき薬剤(複数可)は、処置される状態のタイプに依存する。
【0318】
本開示は、本明細書に記載されるような上記組成物と連携したナノ粒子を含む組成物または本明細書に記載されるようなナノ粒子を合成するために必要な成分を含むキットをさらに提供する。一部の実施形態では、本キットは、本明細書に記載されるようなの上記組成物と連携したナノ粒子を投与するために必要、十分または有用な構成成分の全てを含む。
【0319】
〔実施例〕
次の実施例は、特定の好ましい実施形態および本発明の態様を実証し、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0320】
(実施例1)
本実施例は、CDN/Zn、CDN/Zn@リポソーム NPおよびCDN@CaP/PEI-PEGの合成および特性について記載する。
【0321】
図1Aに示すように、CDN-Zn NPは単純な配位集合体によって調製された。ピラミッド状配位幾何学を有するZnは、アデニンおよびリン酸の両方と配位することができると想定される。得られた粒子の安定性をさらに高めるために、CDN/Znナノ粒子をリポソームで修飾した。MOF合成中の配位調節、およびリガンド交換およびシリカまたはポリマーシェルコーティングによる合成後修飾など、MOF表面修飾にはいくつかの異なる方法がある。DOPAは合成中にZn2+ベースのMOFをキャッピングするために広く使用されているため、ここでは表面上の脂質テールを有するCDN/Zn@DOPAの合成のために配位調節が適用され、これは別の脂質層コーティングを可能にした。
【0322】
得られたCDN-ZnおよびCDN/Zn@リポソーム NPの形態をTEM画像に示す(図2)。図2aに示すように、cdAMP-Zn NPは、表面でより高いTEMコントラストを有する球形を示した。メタノール中でのcdAMP-Znの速い核生成はZn2+配位不足を引き起こしたが、粒子表面はZn2+の飽和配位を有し、表面コントラストを増大させ、「コア-シェル」様組織をもたらしたと考えられる。水中ではより遅い核形成が起こるため、水性媒体中で合成を行った場合、均一な球状構造が得られることも見出された(図示せず)。TEM像と一致して、DLSおよびゼータ電位データから、cdAMP-Znのサイズは約150nmであり、表面電荷は中性であることが示された。図2bに示すように、同じ合成条件において、cd-GMP NPは、約100nmのサイズの均一な不規則な球状構造および電気的に中性の表面電荷を示した。cdAMP-ZnおよびcdGMP-Znとは対照的に、cGAMP-Znの形態および電荷は異なっていた(図2c)。球形ナノ粒子はいくつかの蓄積した小さなクラスターで構成され、表面はわずかな正電荷を持っていた。CDN-Zn NPの安定性を高めるために、リポソームでCDN-Znを修飾した。図2dに示すように、cdAMP-Zn@リポソームは代表的なCDN-Zn@リポソーム構造として示された。その結果、CDN-Zn@リポソームはDOPAキャッピング効果により、より均一でより小さなサイズを示すことが分かった。また、それらの表面は、リポソーム-PEGの修飾後にもわずかに負の電荷を示した。
【0323】
CaP/PEI-PEG製剤については、臨床的に使用されるアジュバントCaPハイドロゲルから実験を開始した。一般的に、CaPハイドロゲルは、Ca2+とPO 3-との高速混合によって調製され、針状ナノ構造が形成された。
CDNのCaPハイドロゲルへの負荷を増加させることを目的として、CDNへの電荷引力を増加させるためにPEI-PEGをCDNへ添加し、コロイド安定性を同時に増加させることができた(図1B)。ゲル状に凝集する傾向があった従来のCaPハイドロゲルとは異なり、CaP/PEI-PEGは水中に十分に分散した。図2eに示されるように、CDN@CaP/PEI-PEG NPは、約70nmのサイズおよび約+15mVの表面電荷の均一な針状クラスター構造を示した。形態、サイズおよび表面特性に基づいて、ここでの全ての製剤は、薬物送達用途のための大きな可能性を有する。
【0324】
(実施例2)
本実施例は、CDN-ZnおよびCDN@CaP/PEI-PEGの放出プロファイルおよびインビトロSTING活性化を実証する。
【0325】
薬物送達システムの2つの重要なパラメータとして、実験により、CDNナノ製剤の薬物負荷および放出特性をさらに決定した。ナノ製剤におけるCDN負荷効率は、CDN-Zn製剤では90%を超え、CDN/CaP-PEI-PEGでは80%を超えた(図3A)。薬物放出に関しては、cdAMP/ZnおよびcdGMP/Znは全く同様の放出プロファイルを示した(図3B)。最初の18時間では、放出はゼロ次放出に近く、その後、わずかに遅い放出相が観察された。cdAMP/ZnおよびcdGMP/Znからのゼロ次薬物放出は、フレームワークの安定な定数解離の結果であったと考えられる。しかし、異なる生体分子相互作用を有する生理学的状態におけるさらなる研究が必要である。cGAMP/Zn NPに関しては、インキュベーションの最初の8時間において速い放出相が存在し、続いて遅い放出相が存在した(図3B)。cGAMP/Znの全放出はcdAMP/ZnおよびcdGMP/Znのそれより速く、これはその独特のナノ粒子構成に関連している可能性がある。CDN@CAP/PEI-PEGについては、著しく急激な薬物放出相があり、続いて別の持続的放出相があった(図3B)。このプロファイルはCDN部分が電荷相互作用によってCAP/PEI-PEGの表面に付着し、高いイオン強度および高いpH状態で容易に放出されたことに起因すると考えられる。CDN-Zn@リポソームの放出プロファイルは、出願人らがCDN-Zn上のリポソームコーティング後の薬剤負荷量を定量化するための信頼できる方法を開発していないため、ここでは示されなかった。CDN-Zn表面上のリポソームは、粒子安定性を大幅に増加させ、薬物放出を遅延させることが予想される。徐放性薬物は、in situ薬物曝露および免疫刺激の程度を増加させるのに役立つ。
【0326】
CDN送達システムがインビトロでSTING経路を有効に活性化し、免疫応答を誘発することができるかどうかの実験を行った。IFN調節因子(IRF)誘導性SEAPレポーター構築物を有するTHP1-BlueTMISG(インターフェロン刺激遺伝子)細胞を実験に用いて、CDN製剤によるSTINGの活性化をモニターした。図3Cに示すように、0.25~2μg/mlのcdAMPにおいて、cdAMP/Zn製剤のIFNシグナル伝達経路の活性化の程度は、可溶形態の遊離cdAMPのIFNシグナル伝達経路の活性化の程度よりもはるかに高かった。遊離型と比較して、CDN@CaP/PEI-PEG製剤についても同様の刺激の向上が観察された(図3D)。これらのインビトロ評価の結果は、CDN-ZnおよびCDN@CaP/PEI-PEGがインビボ治療用途に有利な特性を有することを示している。
【0327】
(実施例3)
本実施例は、CDN-ZnとCDN@CaP/PEI-PEGの治療効果について記載する。
【0328】
最後に、CDN製剤の腫瘍担癌マウスに対する治療効果を検討した。実証のための代表的なCDNとして、cdAMP(ps)を用いた。腫瘍のサイズが~60mmに達した場合、25μg/用量のcdAMP(ps)の2用量を、10日目および15日目に腫瘍内投与した。抗原特異的免疫応答を評価するために、17日目にテトラマー染色のためにPBMCを回収し、22日目にAH1抗原ペプチドを用いてELISPOT分析を行った。図4Aに示すように、遊離CDN、CDN-ZnおよびCDN@CaP/PEI-PEGで処理したマウスの平均腫瘍増殖は、未処理群と比較して大きく遅延した。CDNおよびCDN@CaP/PEI-PEGと比較して、CDN-Znは腫瘍増殖をより良く阻害するようであったが、それらの間に統計的差異はなかった。治療後のマウスの生存について、未治療、CDN、CDN-ZnおよびCDN@CaP/PEI-PEG群の生存期間の中央値は、それぞれ23日、42日、64日および未到達であった(図4B)。個々の腫瘍増殖曲線(図4C)から、完全な腫瘍退縮は、未処理群の5匹中0匹のマウス;遊離CDN群およびCDN-Zn群の5匹中2匹のマウス;およびCDN@CaP/PEI-PEG群の5匹中3匹で観察された。
【0329】
PBMCテトラマー染色アッセイについて、各群間で有意差は観察されなかった(図4D)。PBMCテトラマー染色は、非特異的な腫瘍内CDN刺激後に抗原特異的T細胞応答を示すほど感度が高くなかったか、または時点が最適でなかった可能性がある。対照的に、22日目のELISPOT評価は、有意な抗原特異的免疫応答を示した(図4E-F)。2回目のCDN投与の7日後、遊離CDN、CDN-Zn、およびCDN@CaP/PEI-PEG群で有意なAH1抗原特異的T細胞応答が観察された。CDN-ZnとCDN@CaP/PEI-PEGの反応も遊離CDNより高く、遊離CDNとCDN@CaP/PEI-PEGの間に統計的差異が観察された。全体的に見て、このような結果は、CDN-ZnおよびCDN@CaP/PEI-PEGの治療活性はいずれも、遊離CDNと同程度か、または遊離CDNよりもさらに良好であることを実証した。当製剤の治療上の利点は、緩慢な放出と細胞取り込みの増加との組み合わせ効果に由来する。この利点に基づいて、本CDN-Zn@リポソームは、より持続的な放出および改善されたインビボ安定性により、改善された治療効果を発揮する。
【0330】
(実施例4)
本実施例は、実施例1、2および3の材料および方法を記載する。
【0331】
CDN-Znナノ粒子(NP)の合成
cGAMP、cdAMPおよびcdGMPをInvivogenから入手し、cdAMP(ps)をMedchemExpressから入手した。CDNは、使用前にメタノールに溶解した。一方、ZnCl(Sigma-Aldrich)をメタノールに溶解して100mM保存液を調製した。典型的な合成反応において、10:1(n/n)Zn2+溶液を、激しく撹拌しながら1mg/mlのCDN作業溶液に添加した。溶液を室温でさらに24時間撹拌した。得られたCDN-Zn NPを20000×g、15分間遠心分離して遊離CDNおよびZn2+を除去し、次いでメタノールで別の洗浄を行った。
【0332】
CDN-Zn@リポソームの合成
2つの工程を用いてCDN-Zn@リポソームを合成した。最初に、配位-モジュレーション法によりCDN-Zn@DOPA NPを合成した。簡潔に述べると、10モル比のZn2+溶液を、激しく撹拌しながら、クロロホルム中のCDN/DOPA(Avanti Lipids)に添加した。24時間インキュベート後、CDN-Zn@DOPA NPを20000×gで15分間遠心分離することにより分離した。次いで、CDN-Zn@DOPA NPを、DOPC、コレステロール、DSPE-PEG2k(2:2:1、Avanti Lipids)のTHF溶液中に再懸濁し、そして60℃で30%(v/v)エタノール/HOの溶液中に添加し、最後に、減圧下でTHFを蒸発させ、最終溶液を室温に冷まし、そして空のリポソームを20000×gで20分間遠心分離で除去することによって、CDN-Zn@リポソームを得た。次いで、得られたCDN-Zn@リポソームを、さらなる使用のためにPBS中に再懸濁した。
【0333】
CDN@CaP/PEI-PEG NPの合成
CDN@CaP/PEI-PEG NPは、1-ステップ沈殿法によって調製した。簡潔に述べると、連続攪拌しながら、CaCl(Sigma-Aldrich)の溶液とNaHPO4(Sigma-Aldrich)の溶液とを同時にPEI-PEGとCDNの混合液に入れた。一晩インキュベートした後、CDN@CaP/PEI-PEG NPを遠心分離18000×gで15分間分離した。得られたNPをヒスチジン緩衝液(pH7.4)で2回洗浄した。
【0334】
インビトロ放出分析
CDN-ZnおよびCDN-Zn@リポソームの放出プロファイルを、Slide-A-LyzerTMMINI透析装置、3.5K MWCO(Thermo Scientific)で調べた。簡潔に述べると、0.5mlのCDN-ZnまたはCDN-Zn@リポソームを再生セルロース膜のカップ中に充填し、14mlの放出緩衝液(PBS)を試験管に入れた。透析カップをコニカルチューブに挿入し、蓋をした後、デバイスを37℃で連続振盪(200rpm)しながらインキュベートした。必要とされた時点で、300μlの放出媒体を回収し、等量の新鮮なPBSを再充填した。放出媒体中のCDNの濃度をHPLC(GPC)によって分析した。最後に、放出緩衝液中のCDN濃度、緩衝液の体積、および総CDN負荷量に基づいて、放出率を計算した。
【0335】
インターフェロン刺激遺伝子の活性化の評価
Invivogenから購入したTHP1-BlueTMISG(インターフェロン刺激遺伝子)細胞を取り扱い、製造業者の指示に従って培養した。簡潔に述べると、細胞を受け取った直後に解凍し、5mlの増殖培地の25cmのフラスコに移した。1世代継代後、増殖培地中で細胞を維持し、1継代おきに選択抗生物質を加えて、7×10細胞/mlの出発細胞濃度で3日おきに継代した。CDN製剤の生物活性を評価するために、予め温めた製剤の溶液20μlを96ウェル平底プレートに添加した。次いで、180μlの細胞懸濁液(1ウェルあたり、~100,000細胞)をCDNサンプルと混合した。37℃、5%COで18時間インキュベートした後、20μlの上清を回収し、比色用の180μlのQUANTI-Blue液(Invivogen)と共にインキュベートした。THP1活性化は、620~655nmでの吸光度を測定することによって定量した。
【0336】
動物実験
すべての動物は、連邦、州、および地方のガイドラインに従って管理された。動物に関して実施されたすべての研究はUniversity Committee on Use and Care of Animals(UCUCA)に準拠し、承認された。6~8週齢の雌Balb/cマウス(Jackson Laboratories)に1×10個のCT26大腸癌細胞を接種した。腫瘍のサイズが~100mmに達した場合、種々の製剤中の2用量の25μgのcdAMP(ps)を、10日目および15日目に腫瘍内経路にて投与した。腫瘍のサイズと生存を2または3日ごとにモニターした。腫瘍のサイズは次式に基づいて計算した:体積=長さ×幅×0.5。腫瘍が直径1.5cmに達したとき、または動物が重度の体重減少または潰瘍形成で瀕死状態になったときに、動物を安楽死させた。17日目に、PBMC中の腫瘍抗原特異的CD8α+T細胞の割合を、ペプチド-MHCテトラマー(H-2Kb restricted AH1)(NIH Tetramer Core Facility、Atlanta、GA)を用いて、前述のテトラマー染色アッセイを用いて分析した。22日目に、前述のように処理されたマウス由来のPBMCを用いてELISPOTアッセイを行った。
【0337】
(実施例5)
本実施例は、実施例6~11の材料および方法を記載する。
【0338】
インビトロで自然免疫刺激因子を調節する金属イオンのスクリーニング
マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を単離し、培養した。簡潔に述べると、骨髄幹細胞を採取し、GM-CSF含有培地を有する細菌学的ペトリ皿中に蒔いた。細胞培養培地は、3、6および8日目にリフレッシュした。分化の10日後、使用するために未成熟DCを採取した。自然免疫刺激因子のサイトカインプロファイルを調節することができる金属イオンをスクリーニングするために、まず、96ウェルプレート中の各ウェルに10万BMDC/100μlを播種した。次いで、様々な濃度の種々の金属イオンを、種々の濃度の種々の自然免疫刺激因子と共に添加した。同時に、同じ濃度の遊離金属イオン単独または遊離自然免疫刺激因子単独をコントロールとして使用した。37℃、5%COで24時間インキュベートした後、種々のサイトカインのELISAアッセイのために上清を回収した。
【0339】
環状自然免疫刺激因子-金属イオン配位ポリマーの組み合わせ製剤:cGAMP、cdAMPおよびcdGMPはInvivogenから入手し、cdAMP(ps)はMedchemExpressから入手した。CDNは、使用前にメタノールまたはエンドトキシンを含まない水に溶解した。一方、メタノールまたは水に金属イオンを溶解させて100mMストック溶液を調製した。典型的な合成反応では、10:1(n/n)金属イオン溶液を激しく撹拌しながら1mg/mlのCDNワーキング溶液に添加した。溶液を室温でさらに24時間撹拌した。得られたCDN-金属の混合物を20000×g、15分間遠心分離して遊離CDNおよび金属イオンを除去し、次いでメタノールでもう一度洗浄を行った。
【0340】
CDN-金属イオン@リポソーム:2つの工程を用いてCDN-金属@リポソームを合成した。ここでは、CDN-Zn@リポソームを例に挙げる。まず、Zn-CDN/H11-DOPE NPを配位-モジュレーション法により合成した。簡潔に述べると、10モル比のZn2+溶液を、激しく撹拌しながら、クロロホルム中のCDN/H11-DOPE(Avanti Lipids)に添加した。24時間インキュベーション後、Zn-CDN/H11-DOPE NPを、20000×g、15分での遠心分離により分離した。次いで、Zn-CDN/H11-DOPE NPを、DPPC、コレステロール、DSPE-PEG5k(2:2:1、Avanti Lipids)のTHF溶液に再懸濁し、50%(v/v)エタノール/HOの溶液に添加した。最後に、THFを減圧下で蒸発させ、最終溶液を室温に冷まし、空のリポソームを20000×g、20分間の遠心分離によって除去することによって、CDN-Zn@リポソームを得た。次いで、得られたCDN-Zn@リポソームを、さらなる使用のためにPBS中に再懸濁した。
【0341】
金属イオン-CDN/ポリヒスチジン-PEGナノ配位重合体(NCP):金属イオン-CDN/ポリヒスチジン-PEG NCPを1-ステップ沈殿法により調製した。ここでは、Co2+-CDN/ポリヒスチジン-PEGを例に挙げる。簡潔に述べると、CoCl(Sigma-Aldrich)、CDN、ポリヒスチジン-PEGおよびHEPES緩衝液の固定比率の溶液を、連続撹拌しながら混合溶液に滴下した。24時間インキュベーション後、Co2+-CDN/ポリヒスチジン-PEGナノ粒子(NP)を10kDの遠心超フィルターで分離し、自由金属イオンとCDNを除去した。
【0342】
CDN@CaP/PEI-PEG NP:CDN@CaP/PEI-PEG NPを1-ステップ沈殿法によって調製した。簡潔に言えば、CaCl(Sigma-Aldrich)の溶液とNa2 HPO4(Sigma-Aldrich)の溶液とを、PEI-PEGとCDNの混合液に連続攪拌しながら同時に入れた。一晩インキュベートした後、CDN@CaP/PEI-PEG NPを遠心分離18000×gで15分間分離した。得られたNPをヒスチジン緩衝液(pH 7.4)で2回洗浄した。
【0343】
自然免疫刺激因子-金属鉱物@陰イオン性ポリペプチド-PEG:自然免疫刺激因子-金属鉱物@陰イオン性ポリペプチド-PEGを、1-ステップ沈殿法によって調製した。MnP@PGA-PEG NPを例に挙げる:MnCl(Sigma-Aldrich)溶液とNaHPO4(Sigma-Aldrich)溶液を、PGA-PEGと自然免疫刺激因子の混合溶液に、連続撹拌しながら同時に入れた。一晩のインキュベーションの後、自然免疫MnP@PGA-PEG NPを、18000×g、15分の遠心分離で分離した。得られたNPをヒスチジン緩衝液(pH 7.4)で2回洗浄した。
【0344】
インビトロ放出分析
製剤の放出プロファイルを、Slide-A-LyzerTMMINI透析装置、3.5K MWCO(Thermo Scientific)で調べた。簡潔に述べると、0.5mlの製剤溶液を再生セルロース膜のカップ中に充填し、14mlの放出緩衝液(PBS)を試験管に入れた。透析カップをコニカルチューブに挿入し、蓋をした後、デバイスを37℃で連続振盪(200rpm)しながらインキュベートした。必要とされた時点で300μlの放出媒体を回収し、等量の新鮮なPBSを再充填した。放出媒体中のCDNの濃度をHPLC(GPC)によって分析した。最後に、放出緩衝液中のCDN濃度、緩衝液の体積、および総CDN負荷量に基づいて、放出率を計算した。
【0345】
動物実験
すべての動物は、連邦、州、および地方のガイドラインに従って管理された。動物に関して実施されたすべての研究はUniversity Committee on Use and Care of Animals(UCUCA)に準拠し、承認された。6~8週齢の雌Balb/cマウス(Jackson Laboratories)に1×10個のCT26大腸癌細胞を接種した。腫瘍のサイズが~50mmに達した場合、指示された薬剤または製剤を指示された経路で投与した。腫瘍のサイズと生存を2または3日ごとにモニターした。腫瘍のサイズは次式に基づいて計算した:体積=長さ×幅×0.5。腫瘍が直径1.5cmに達したとき、または動物が重度の体重減少または潰瘍形成で瀕死状態になったときに、動物を安楽死させた。17日目に、PBMC中の腫瘍抗原特異的CD8α+T細胞の割合を、ペプチド-MHCテトラマー(H-2Kb restricted AH1)(NIH Tetramer Core Facility、Atlanta、GA)を用いて、前述のテトラマー染色アッセイを用いて分析した。22日目に、前述のように処理されたマウス由来のPBMCを用いてELISPOTアッセイを行った。
【0346】
(実施例6)
本実施例は、本実施例は、STINGアゴニストのSTING活性化を増強することができる金属イオンの同定について記載する。
【0347】
図5Aおよび5Bに示すように、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)は異なる金属イオンで処理されるか、または異なる金属イオンおよびSTINGアゴニストで共処理された。本発明者らは、生体系の必須ミネラルおよび微量ミネラル元素から金属イオンを選択した。Mn2+単独では、高毒性用量でBMDCを活性化することができた。しかし、Mn2+をSTINGアゴニストと組み合わせた場合、はるかに低濃度でSTING活性化を有意に増強した。同様に、Co2+自身はSTING活性化を示さなかった。しかし、125μMまたは250μMのCo2+を5μMのcGAMPと組み合わせた場合、STING経路の活性化を大幅に増強した。どちらの濃度も、十分に許容されるものである。この現象がヒト細胞においても機能するかどうかをさらに確認するために、本発明者らは、ヒト単球細胞株であるTHP1を使用して、同様の実験を繰り返した(図5C)。ヒトTHP1細胞でも同様の傾向が認められ、この現象がSTINGアゴニストのタイプとは無関係であることを実証した。
【0348】
(実施例7)
本実施例は、この例は、Co2+およびMn2+で強化されたSTINGの活性化と抗癌治療効果を実証する。
す。
【0349】
インビトロで強化されたI型IFN応答がインビボで癌治療に利益をもたらすかどうかを検討した。マウス腫瘍モデルにおいて、金属イオンとSTINGアゴニストの組み合わせを評価した。図6aと6cに示すように、Co2+-CDAとMn2+-CDAは腫瘍の成長を遅らせた。特に、金属-CDA群の生存率が80%であったのに対し、遊離CDA群では生存率が20%であったことから明らかなように、金属-CDA群の方が遊離-CDA群よりも腫瘍のないマウスが有意に多かった(図6d)。さらに、Co2+-CDA治療は、遊離CDA治療と比較して、注入後8時間で有意に高い血清IFNベータレベルをもたらした(図6b)。しかし、Mn2+-CDAの組み合わせでは同じ現象は見られなかった。
【0350】
(実施例8)
本実施例は、STINGアゴニストと金属の組み合わせに対するインビボ免疫応答を実証する。
【0351】
改善された癌治療効果の作用機序を研究するために、抗原特異的T細胞応答について治療動物を評価し、初回治療の81日間後に腫瘍再負荷試験を実施した。CDA-Mn2+は、実験22日目のELISPOT結果に示されるように、より良好なT細胞特異的反応を示したが、T細胞ELISPOT結果はCDA-Co2+群と遊離CDA群との間で類似していた(図7b)。腫瘍の再挑戦的研究では、CDA-Co2+およびCDA-Mn2+治療群の生存者が2回目のCT26腫瘍の増殖を完全に阻止した。CDA-Co2+処理群は、抗原特異的T細胞応答の有意な増加を示した。
【0352】
(実施例9)
本実施例は、他の自然免疫刺激因子を調節する可能性のある金属イオンの同定を実証する。
【0353】
STING経路に関する本発明者らの結果に基づいて、金属イオンが他の自然免疫刺激因子を調節し得るかどうかも評価した。マウスBMDCを、異なる金属イオン、または異なる金属イオンと自然免疫刺激因子との組み合わせで処理した。同様の金属イオン-自然免疫刺激因子相乗作用を観察した。しかし、異なる金属イオンは、TLR3/4/7/8/9リガンド、NOD1/2リガンド、TLR7/8リガンド、RIG-I & CDSアゴニストおよびインフランマソーム誘発因子を含む、異なるDAMPまたはPAMPとの相乗作用を示した。例えば、Co3+はポリICによるIFNb、TNFa、IL6およびIL2産生を劇的に増加させたが、Mn2+はポリICによるIFNb産生のみを増加させた(図8a~d)。Mn2+はMPLAのIFNbおよびTNFa生産を増加させたが、Ni2+はMPLAのTNFa生産を増加させた(図8e~f)。Mn2+はR848のIFNbおよびTNFa生産を増加させたが、Ni2+はR848のTNFa生産を増加させた(図7g~h)。Ni2+とMn2+は、CpGによってIFNベータとTNFaの生産を増加させた(図8i~j)。NOD1/2リガンド、TLR 7/8リガンド、RIG-I & CDSアゴニストおよび炎症誘発物質のサイトカインプロファイルは、Mn2+、Co2+、Al3+、Cu2+、Fe3+、Ni2+によっても調節され得る(図9~12)。これらの結果は、本発明者らの金属イオンに基づくアプローチが、広範囲の免疫刺激因子のサイトカインプロファイルを調節するための単純ではあるが効果的な方法であることを示す。この発見に基づいて、本発明者らはより良好な、より強力なワクチンアジュバントまたは癌免疫療法剤を作製するために、薬学的に許容される製剤が開発され得ると予想する。例えば、DAMP/PAMPの特定の金属塩は、元の形態よりも良好に機能し得る。選択された金属イオンおよび製薬上許容される配位分子を有するまたは有さないDAMP/PAMPから構成される配位ポリマーは、最適化された金属イオン-DAMP/PAMPの組み合わせをもたらし得る。金属イオンおよびDAMP/PAMPの同時送達のための、金属水酸化物/炭酸塩/リン酸塩鉱物、リポソーム、リピドナノ粒子、PLGA粒子、ハイドロゲル、エマルジョンなどを含むがこれらに限定されない他の薬学的に許容される製剤も可能である。
【0354】
(実施例10)
本実施例は、代表的な金属イオン-自然免疫刺激因子代表的な製剤について記載する。
【0355】
標的組織に理想的な放出プロファイルで金属イオンおよび自然免疫刺激因子共送達するために、DAMP/PAMPの特異的金属塩、配位および他の薬学的に許容される製剤(水酸化物/炭酸塩/リン酸塩鉱物、リポソーム、脂質ナノ粒子、PLGA、ハイドロゲル、エマルジョンなど)などの物理的および化学的特性に基づく適切な製剤を設計することができる。ここでは、配位製剤のいくつかの代表的な例、マンガン-CDA-H11-DOPE@リポソームナノ粒子(Mn-CDA/H11@リポソーム、図13)、Co-CDA/H33-PEG配位ナノ粒子(Co-CDA/H33-PEG、図14)、およびCDA@Co2+-4arm-PEG-His11ハイドロゲル(CDA@4aH11-Coハイドロゲル、図15)を提供する。CDAそのものは、プリン環のNを介してCo2+とMn2+と協調する可能性があり、ポリヒスチジンによってさらに安定化される可能性がある。ナノ粒子構造(図13-14)またはハイドロゲル(図15)は、様々なビルディングモジュール設計によって生成され、Co2+/Mn2+:CDA:ポリヒスチジン-PEG、反応時間、およびpHの比率および濃度を最適化することによって調整することができた。負荷効果はCo2+/Mn2+で約30%、CDAで70%以上であった。本発明者らは、マウスCT26大腸癌モデルにおいて、これらの配位製剤をさらに試験した。図13-15に示すように、これらのナノ粒子構成またはハイドロゲル製剤は、遊離CDAまたは遊離CDA+金属イオンと比較して、インビボでのSTING活性化を大幅に増強することができた。特に、リポソームコーティングナノ粒子、CDA-Mn-His11-DOPE@リポソーム(Mn-CDA/H11@lip)はSTINGアゴニストの全身送達に使用でき、60%確立されたCT26大腸癌を根絶した(図13);Co-CDA/His33-PEGはIFNb生産を大幅に延長でき、注入後4日でも検出可能であった(図14);注射可能なCDA@4aH11-Coハイドロゲルは非常に強い局所切除免疫応答と、1st投与後に形成された顕著な潰瘍を誘発した(図15f)。これらの改善された治療効果は、抗原特異的T細胞応答、I型IFN応答および炎症誘発性サイトカイン放出の上昇によっても特徴付けられた。
【0356】
上記の製剤に加えて、金属-自然免疫刺激因子を送達するために合成され得る多くの他の製剤が存在する。ここでは、TEM画像(図16)に示される形態を有するいくつかの実施例を提供した。図16(a)に示すように、CDA-Zn NPはその表面でより高いTEMコントラストを有する球形を呈し、「コア-シェル」様構造となった。また、本発明者らは、水中ではより遅い核形成が起こるため、水性媒体中で合成を行った場合、均一な球状構造が得られることを見出した。TEM像と一致して、DLSおよびゼータ電位データから、cdAMP-Znのサイズは約150nmであり、表面電荷は中性であることが示された。同じ合成条件下で、CDA-Co2+ NPは架橋ナノ粒子クラスター
を示した;CDG-Zn2+は、約100nmのサイズの均一な不規則な球状構造と中性の表面電荷を示した;cGAMP-Zn2+は蓄積した小さなクラスターから成る球状ナノ粒子を示し、表面はわずかに正電荷を帯びていた。CDN-Zn2+ NPの安定性を高めるために、リポソーム(図16b)、ポリヒスチジン(図16c)およびポリヒスチジン-PEG(図16d)などの他の多価配位剤も加えた。さらに、ナノスケールの金属鉱物中に負荷された自然免疫刺激因子もまた、金属イオン-自然免疫刺激因子の組み合わせの送達のために調製され得る(図16d-e)。ナノ粒子の安定性を増大させるために、PEI-PEG、PGA-PEGおよび他の陰イオン性ポリペプチド-PEGによる表面修飾を適用することができる。
【0357】
本発明者らはまた、担癌マウスにおいて上記の製剤のサブセットを評価した。腫瘍のサイズが60mmに達した場合、25μg/用量のadAMP(ps)2を含む示された製剤の2用量を、10日目および15日目に腫瘍内投与した。図17に示すように、遊離CDN、CDN-Zn2+およびCDN@CaP/PEI-PEGで処理したマウスの腫瘍増殖は、未処理群と比較して大幅に遅延した。CDN-Zn2+はCDNおよびCDN@CaP/PEI-PEGと比較して、それらの間に統計学的差異はなかったが、腫瘍増殖をより効率的に阻害した。治療後のマウスの生存については、未処理、CDN、CDN-Zn2+およびCDN@CaP/PEI-PEG群の生存期間中央値は、それぞれ23日、42日、64日および未到達であった(図17d)。個々の腫瘍増殖曲線(図17e)から、本発明者らは、未処理群の5匹中0匹のマウス;遊離CDN群およびCDN-Zn2+群の5匹中2匹のマウス;ならびにCDN@CaP/PEI-PEG群の5匹中3匹において、完全な腫瘍退縮を観察した。PBMCテトラマー染色アッセイについては、群間で有意差は観察されなかった(図17f)。PBMCテトラマー染色は、非特異的な腫瘍内CDN刺激後に抗原特異的T細胞応答を示すほど感度が高くないか、または時点が最適でなかった可能性がある。対照的に、22日目のELISPOT評価は有意な抗原特異的免疫応答を示した(図17f-g)。2回目のCDN投与の7日後、遊離CDN、CDN-Zn2+、およびCDN@CaP/PEI-PEG群で有意なAH1抗原特異的T細胞応答が観察された。CDN-Zn2+およびCDN@CaP/PEI-PEGの反応も遊離CDNより高く、遊離CDNとCDN@CaP/PEI-PEGの間に統計的差異が観察された。
【0358】
(実施例11)
本実施例は、自然免疫応答を阻害するための金属イオンのキレート化について記載する。
【0359】
本発明者らの発見における自然免疫応答の調節に対する金属イオンの興味深い機能を考慮して、キレート化金属イオンが、全身性エリテマトーデス、アイカルディ・ゴーティエール症候群、急性膵炎、加齢性黄斑変性、アルコール性肝疾患、肝線維症、転移、心筋梗塞、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、パーキンソン病、多発性関節炎/胎児および新生児貧血、敗血症、炎症性腸疾患、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療に使用される可能性がある自然免疫経路に従って金属イオンを阻害できるかどうかをさらに評価した。偏りのない選別により、自然免疫応答を阻害する顕著な機能を示すいくつかのキレート化剤を同定する(図18~19)。図18a~bに示されるように、構造の複雑性が増加するにつれて、キレート化剤はより高い阻害機能を果たした。これはキレート化剤の構造の複雑さが高いほど、キレート化能力が高くなるという本発明者らの仮説と一致する。THP1デュアルKI-hSTINGWT(R232)レポーター細胞株を用いて、cGAS-STING-I型IFN経路の活性化に非常に高い活性を有すると考えられるDNA/リポフェクタミン複合体チャレンジとこれらのキレート化剤を共インキュベートした。ISRE誘起発光により、阻害の程度を読み取ることができた。本発明者らはプニカラギン(PC)およびタンニン酸(TA)に対するDNA誘発I型IFN応答のIC50がナノモルレベルと同程度に低く、それらはインビトロアッセイにおいて十分に許容されることを見出した(図18b-d)。また、別のヒトSTING対立遺伝子HAQにおいても阻害効果を確認し、同様の結果が得られた(図18e)。キレート化剤がcGAS-STING-I型IFNのどの段階に影響を及ぼしているかを調べるために、cGAMPによって誘導されるI型IFNを阻害できるかどうかを検討した(図18f)。本発明者らは阻害効果が排除されたことを見出し、これは、これらのキレート化剤が主にcGAS阻害に作用し得ることを示す。ここで示すキレート化剤は、大部分が天然ポリフェノールであることに注意されたい。ポリフェノールは、ROSおよび抗炎症を欠失させることが広く報告されている。しかし、DNA誘導性炎症に対する強力な阻害効果を認識するものはほとんどない。同様に、本発明者らはまた、これらのキレート化剤が、STINGノックアウトTHP1レポーター細胞株におけるポリIC誘導性炎症反応を阻害するために使用され得ることを見出した(図19)。本発明者らは、多くの他のキレート化剤、特にポリフェノール構造のキレート化剤(図20に示される)がDNAおよびRNA誘導性炎症のための自然免疫阻害剤として使用され得ることを予想する。
【0360】
参照による組み込み
本明細書で参照された各特許文献および科学論文の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0361】
均等物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよい。それ故、上述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するものよりもむしろ、あらゆる点で例示的なものであると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の明細書よりはむしろ添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る全ての変更がその中に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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