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特開2024-28895オリゴヌクレオチド分子及び腫瘍治療におけるその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028895
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチド分子及び腫瘍治療におけるその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240227BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61K31/713 ZNA
A61K45/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P25/00
A61P13/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/44
A61K31/47
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206801
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2021544868の分割
【原出願日】2019-06-25
(31)【優先権主張番号】201910092375.8
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521339315
【氏名又は名称】ラクティゲン セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】カン タオ
(72)【発明者】
【氏名】リ ロンチョン
(72)【発明者】
【氏名】カン ムーリン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オリゴ核酸及び腫瘍の治療におけるその応用を提供する。
【解決手段】小分子活性化核酸分子であってもよい、腫瘍治療用のオリゴ核酸を提供する。小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖又は一本鎖RNA分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖NA分子は16~35ヌクレオチド長さを有する2本のオリゴヌクレオチド鎖を含み、且つ一方のヌクレオチド鎖がLHPP遺伝子プロモーター領域から選ばれる標的とは少なくとも75%の相同性又は相補性を有する。また、前記小分子活性化核酸分子又はそれを含む医薬組成物を用いて、細胞中でのLHPP遺伝子の発現をアップレギュレーションする方法、及びLHPP遺伝子の発現不足又は減少に関連する疾病を治療する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む小分子活性化核酸分子であって、第1核酸鎖は、LHPP遺伝子プロモーターのうち転写開始部から-917~-844領域(配列番号500)、-710~-675領域(配列番号501)、-198~-168(配列番号502)、-151~-28(配列番号503)又は-845~-711領域(配列番号504)における任意の連続した16~35個のヌクレオチドとは少なくとも75%の相同性又は相補性を有し、前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は相補して二本鎖核酸構造を形成することができ、前記二本鎖核酸構造はLHPP遺伝子の細胞での発現を活性化させることができる小分子活性化核酸分子。
【請求項2】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は2本の異なる核酸鎖上に存在する、請求項1に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項3】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は同一の核酸鎖上に存在し、好ましくは、前記小分子活性化核酸分子はヘアピン型一本鎖核酸分子であり、前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖が二本鎖核酸構造を形成する相補領域を含む、請求項1に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項4】
前記小分子活性化核酸分子の少なくとも1本の鎖は3’末端に0~6ヌクレオチドの突出を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項5】
前記小分子活性化核酸分子の2本の鎖はいずれも3’末端に0~6ヌクレオチドの突出を有し、好ましくは2~3ヌクレオチドの突出を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項6】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖の長さはそれぞれ16~35ヌクレオチドである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項7】
前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、配列番号329-492から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは少なくとも75%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、又は配列番号329-492から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは少なくとも75%の相同性又は相補性を有する核酸配列からなる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項8】
前記第1核酸鎖は、配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは少なくとも75%の相同性を有し、前記第2核酸鎖は、配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは少なくとも75%の相同性を有する、ことを特徴とする請求項1~7に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項9】
前記第1核酸鎖は、配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなり、且つ前記第2核酸鎖は、配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなる、ことを特徴とする請求項1~8に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項10】
前記小分子活性化核酸分子は、少なくとも1つの修飾を含み、好ましくは、前記修飾は化学修飾である、請求項1~9のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項11】
前記化学修飾は、下記修飾の少なくとも一つ又は複数を含むか、又は下記修飾から選ばれる、請求項10に記載の小分子活性化核酸分子。
(1)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるヌクレオチドと繋がるホスホジエステル結合に対する修飾、
(2)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるリボースの2’-OHに対する修飾、
(3)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における塩基に対する修飾、
(4)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における少なくとも1個のヌクレオチドはロック核酸である。
【請求項12】
前記化学修飾は、2’-フルオロ修飾、2’-オキシメチル修飾、2’-オキシエチレンメトキシ修飾、2,4’-ジニトロフェノール修飾、ロック核酸(LNA)、2’-アミノ修飾、2’-デオキシ修飾、5′-ブロモウラシル修飾、5′-ヨードウラシル修飾、N-メチルウラシル修飾、2,6-ジアミノプリン修飾、ホスホロチオエート修飾及びボラノホスフェート修飾を含むか、これらから選ばれる1種又は複数種である、請求項10に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項13】
LHPP遺伝子発現を少なくとも10%活性化/アップレギュレーションする、請求項1~12のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸。
【請求項15】
DNA分子である請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子又は請求項14又は15に記載の核酸を含む細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項16に記載の細胞、及び必要に応じて薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容可能な担体は、リポソーム、高分子ポリマー又はポリペプチドを含むか、これらから選ばれる、ことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記小分子活性化核酸分子を1~150 nM含有する、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物の、細胞におけるLHPP遺伝子発現の活性化/アップレギュレーション用の製剤の調製における使用。
【請求項22】
前記小分子活性化核酸分子は直接前記細胞に導入される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記小分子活性化核酸分子は該小分子活性化核酸分子をコードするヌクレオチド配列を前記細胞に導入することにより細胞で産生するものである、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記細胞は哺乳動物細胞を含む、請求項21~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記細胞はヒト細胞である、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
前記細胞は人体に存在する、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記人体は、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であり、且つ前記小分子活性化核酸分子は、前記疾患又は障害の治療に十分な量で投与される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍、より好ましくは、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌及び神経膠腫を含む、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
配列番号500-504のいずれか1つの配列上の任意の連続した16~35個のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれる分離したLHPP遺伝子小分子活性化核酸分子の標的部位。
【請求項30】
配列番号329-492に示されるヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれる、請求項29に記載の小分子活性化核酸分子の標的部位。
【請求項31】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物を前記細胞に投与することを含む、LHPP遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法。
【請求項32】
前記小分子活性化核酸分子は直接前記細胞に導入される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記小分子活性化核酸分子は、前記小分子活性化核酸分子をコードする前記核酸を前記細胞に導入することにより細胞で産生するものである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞は哺乳動物細胞を含む、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞はヒト細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞は人体に存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記人体は、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であり、且つ前記小分子活性化核酸分子は前記疾患又は障害の治療に十分な量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、腫瘍、好ましくは、固形腫瘍、より好ましくは、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌及び神経膠腫を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に治療有効量で投与することを含む、対象のLHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法。
【請求項40】
LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍、より好ましくは、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌及び神経膠腫を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象は哺乳動物である、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象はヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
さらに化学療法剤、放射線療法、細胞療法、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はほかの抗腫瘍薬を前記対象に投与してもよく、前記化学療法剤は、好ましくは、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ及びカボザンチニブを含むか、これらから選ばれる、ことを特徴とする請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物の、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物の調製における使用。
【請求項45】
LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍、より好ましくは肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌及び神経膠腫を含むか、これらから選ばれる、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物の、LHPPタンパク質発現不足により引き起こされる疾患治療用の薬物の調製における使用。
【請求項47】
前記対象は哺乳動物である、請求項44~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記対象はヒトである、請求項44~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
前記化学療法剤は、好ましくは、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、及びカボザンチニブを含むか、これらから選ばれる、請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物と化学療法剤との、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物又は薬物の組み合わせの調製における使用。
【請求項50】
LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍、より好ましくは肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌又は神経膠腫を含むか、これらから選ばれる、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記対象は哺乳動物である、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項52】
前記対象はヒトである、請求項49又は50に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の技術分野に属し、具体的には、遺伝子活性化に関連するオリゴ核酸分子に関して、例えば小分子活性化核酸分子及びヒスチジンホスファターゼLHPP遺伝子転写の活性化/アップレギュレーションにおける使用、並びに腫瘍などのLHPP欠乏に関連する疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスチジンホスファターゼLHPP(ホスホリシンホスホヒスチジン無機ピロリン酸ホスファターゼ、Phospholysine phosphohistidine inorganic pyrophosphate phosphatase)遺伝子は、ヒトゲノム10q26.13染色体にあり、7個のエクソンを有し、9種類のLHPPスプライスバリアント(Splice variants)を転写して生成することができる。LHPPは、肝臓、腎臓、脳組織など(1-3)を含むヒトの複数種の組織で発現されている。
【0003】
複数のGWAS(ゲノムワイド関連研究、Genome-wide association study)研究から明らかなように、LHPPは重度のうつ病(2; 4-7)及び癌(8-10)の危険因子である。最近の肝細胞癌に関する研究から明らかなように、LHPPは腫瘍抑制作用を有するヒスチジンホスファターゼ(11)であることが証明されている。この研究では、肝細胞癌マウスモデル(mTOR-駆動)において、腫瘍が発症すると同時に、腫瘍組織全体のヒスチジンのリン酸化レベルが明らかに上昇することを示している。プロテオーム分析を行った結果、腫瘍組織中のヒスチジンキナーゼNME1(ヌクレオシド二リン酸キナーゼA、Nucleoside diphosphate kinase A)及びNME2(ヌクレオシド二リン酸キナーゼB、 Nucleoside diphosphate kinase B)の発現レベルが上昇し、一方、ヒスチジンホスファターゼLHPPの発現レベルが低下することを明らかにしている。さらに好適には、LHPP遺伝子を肝細胞癌マウスモデルに導入した結果、腫瘍の重量が低下し、肝機能が保護されることが明らかにする。また、患者の肝癌サンプルのLHPP発現量を分析した結果、LHPP発現量は患者の腫瘍の重症度と負の相関を示し、全体的な生存率と正の相関を示す(11)。したがって、LHPPは肝細胞癌治療標的となることが期待できる。
【0004】
中国は肝癌の大国であり、世界では50%以上の新たに発症した肝癌患者及び死亡した肝癌患者が中国人であり(12)、しかしながら、肝癌の治療手段が少なく、治療効果があまり効かなくて、新規薬物が期待できる。本発明は、LHPP転写を高度に特異的且つ持続的に活性化させる小分子活性化RNAを提供した。それはLHPP遺伝子転写を効果的に活性化/アップレギュレーションすることで、LHPPタンパク質の発現量を高め、インビトロ及びインビボ実験で明らかな腫瘍抑制効果が認められ、癌を治療する特効薬として期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明内容
【0006】
本発明の1つの目的は、LHPP遺伝子転写を活性化/アップレギュレーションして、LHPPタンパク質の発現量を高めることで腫瘍などのLHPP欠乏に関連する疾患を治療するRNA活性化プロセスに基づく小分子活性化核酸分子を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、腫瘍抑制活性を有する小分子活性化核酸分子の組成物又は製剤を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、腫瘍抑制活性を有する小分子活性化核酸分子又はそれを含む組成物又は製剤の、LHPP遺伝子の細胞での発現を活性化/アップレギュレーションする薬物の調製における使用を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、LHPP遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、腫瘍抑制活性を有する小分子活性化核酸分子又はそれを含む組成物又は製剤の、腫瘍などのLHPP欠乏又は不足に関連する疾患又は障害の治療用の薬物の調製における使用、又はLHPP欠乏又は不足に関連する疾患又は障害、たとえば腫瘍、の治療方法を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、SEQ ID NO:500-504のいずれか1つの配列上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含むか、これらから選ばれる分離したLHPP遺伝子小分子活性化核酸分子の標的部位を提供する。
【0012】
技術案
【0013】
本発明の一態様では、細胞中のLHPP遺伝子の発現を活性化又はアップレギュレーションする小分子活性化核酸分子を提供し、前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖はLHPP遺伝子プロモーター領域の長さ16~35個ヌクレオチドの核酸配列とは少なくとも75%の相同性又は相補性を有し、前記遺伝子発現の活性化又はアップレギュレーションを実現することである。プロモーター領域とは、転写開始部位の上流の1000個のヌクレオチドを含むことである。具体的には、前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、LHPP遺伝子プロモーターのうち転写開始部位から-917~-844領域(H1、SEQ ID NO:500)、-710~-675領域(H2, SEQ ID NO:501)、-198~-168(H3, SEQ ID NO:502)、-151~-28(H4, SEQ ID NO:503)又は-845~-711領域(H5, SEQ ID NO:504)における連続した16~35個のヌクレオチドとは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又は100%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、これらから選ばれる。より具体的には、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:329-492から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する。特定の一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:329-492から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、又はこれらから選ばれる。別の一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:329-492から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する核酸配列からなる。
【0014】
本発明の小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖小分子活性化核酸分子を含み、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。第1核酸鎖はLHPP遺伝子プロモーターのうち転写開始部位から-917~-844領域(SEQ ID NO:500)、-710~-675領域(SEQ ID NO:501)、-198~-168(SEQ ID NO:502)、-151~-28(SEQ ID NO:503)又は-845~-711領域(SEQ ID NO:504)のうちのいずれかの連続した16~35個のヌクレオチドとは少なくとも75%の相同性又は相補性を有する。第1核酸鎖と第2核酸鎖は相補して二本鎖核酸構造を形成し、二本鎖核酸構造はLHPP遺伝子の細胞での発現を活性化させる。
【0015】
本発明の小分子活性化核酸の第1核酸鎖と第2核酸鎖は2本の異なる核酸鎖上に存在してもよく、同一の核酸鎖上に存在してもよい。第1核酸鎖と第2核酸鎖がそれぞれ2本鎖上にある場合、小分子活性化核酸分子の少なくとも1本鎖は、5’末端及び/又は3’末端に突出又はオーバーハングを有することができ、例えば3’末端に0~6ヌクレオチドの突出、0、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチドの突出を有する。好ましくは、本発明の小分子活性化核酸分子の2本の鎖は全て突出を有し、より好ましくは、小分子活性化核酸分子の2本の鎖の3’末端のいずれにも0~6ヌクレオチドの突出を有し、例えば、0、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチドの突出、最も好ましくは、2又は3ヌクレオチドの突出を有する。好ましくは、突出端のヌクレオチドはdTであってもよい。
【0016】
本発明の小分子活性化核酸分子は、二本鎖領域ヘアピン構造を形成可能な小分子活性化核酸分子、例えば一本鎖小分子活性化RNA分子を含むことがある。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する一本鎖小分子活性化RNA分子を含み、前記一本鎖小分子活性化核酸分子は二本鎖領域ヘアピン構造を形成することができる。第1核酸鎖と第2核酸鎖が同一の核酸鎖上に存在する場合、好ましくは、本発明の小分子活性化核酸分子はヘアピン型一本鎖核酸分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖は、二本鎖核酸構造を形成可能な相補領域を有し、前記二本鎖核酸構造は例えばRNA活性化メカニズムを通じてLHPP遺伝子の細胞での発現を促進することができる。
【0017】
上記小分子活性化核酸分子では、第1核酸鎖と第2核酸鎖の長さは、それぞれ16~35個ヌクレオチド、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35個ヌクレオチドであってもよい。
【0018】
一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:1-164から選ばれるいずれかひとつのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有し、且つ小分子活性化核酸分子の第2核酸鎖は、SEQ ID NO:165-328から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:1-164から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列を含むか、又はSEQ ID NO:1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列からなり、且つ本発明の小分子活性化核酸分子の第2核酸鎖は、SEQ ID NO:165-328から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列を含むか、又はSEQ ID NO:165-328から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列からなる。特定の実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:1-164のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列であり、且つ第2鎖は、SEQ ID NO:165-328のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列である。一実施形態では、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子は、合成するもの、インビトロで転写したもの又はベクターで発現させたものであってもよい。
【0019】
本明細書に記載の小分子活性化核酸分子における全てのヌクレオチドは、化学修飾を行われていない天然のヌクレオチドであってもよく、少なくとも1種の修飾を含んでもよい。一実施形態では、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子における修飾は、化学修飾であってもよく、たとえば、少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を有することができ、本発明で使用される化学修飾は、下記修飾を含むか、これらから選ばれる1種又は複数種、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0020】
(1)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるヌクレオチドのホスホジエステル結合に対する修飾、
【0021】
(2)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるリボースの2’-OHに対する修飾、
【0022】
(3)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における塩基に対する修飾、
【0023】
(4)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における少なくとも1個のヌクレオチドはロック核酸である。
【0024】
前記化学修飾は、当業者に公知されるものであり。前記ホスホジエステル結合修飾とは、ホスホジエステル結合における酸素に対する修飾であり、ホスホロチオエート修飾及びボラノホスフェート修飾を含むが、これだけではないというものである。これらの2種類の修飾はいずれもsaRNA構造を安定させ、塩基対の高い特異性及び高い親和性を保持することができる。
【0025】
リボース修飾とは、ヌクレオチドペントースにおける2’-OHに対する修飾であり、即ち、リボースのヒドロキシ位置にいくつかの置換基が導入され、例えば、2’-フルオロ修飾、2’-オキシメチル修飾、2’-オキシエチレンメトキシ修飾、2,4’-ジニトロフェノール修飾、ロック核酸(LNA)、2’-アミノ修飾、2’-デオキシ修飾などを含むが、これだけではないというものである。
【0026】
塩基修飾とは、ヌクレオチドの塩基に対する修飾であり、例えば、5′-ブロモウラシル修飾、5′-ヨードウラシル修飾、N-メチルウラシル修飾、2,6-ジアミノプリン修飾などを含むが、これだけではないというものである。
【0027】
これらの修飾は、小分子活性化核酸分子のバイオアベイラビリティを向上し、標的配列との親和性を高め、細胞内のヌクレアーゼ加水分解に対する耐性を向上させる。
【0028】
さらに、小分子活性化核酸分子の細胞への取り込みを促進するために、以上の修飾に加えて、小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖又は第2核酸鎖の末端に例えばコレステロールなどの親油性基を引入することにより、脂質二重層からなる細胞膜及び核膜が細胞核内の遺伝子プロモーター領域と作用することに寄与する。
【0029】
本発明に係る小分子活性化核酸分子は、細胞と接触すると、細胞中のLHPP遺伝子の発現を効果的に活性化又はアップレギュレーションし、好ましくは、少なくともアップレギュレーション10%を発現させることができる。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸に関する。一実施形態では、前記核酸はDNA分子であってもよい。
【0031】
本発明の別の態様では、以上に記載の小分子活性化核酸分子又は本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞を提供する。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖小分子活性化核酸分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。別の実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子プロモーター領域に標的化する一本鎖小分子活性化核酸分子であってもよい。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子又は本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸と、必要に応じて薬学的に許容可能な担体と、を含む組成物(例えば薬物組成物)を提供する。一実施形態では、前記薬学的に許容可能な担体は、リポソーム、高分子ポリマー又はポリペプチドを含むか、これらから選ばれる。一実施形態では、本発明の組成物は、1~150 nM、例えば1~100 nM、例えば1~50 nM、例えば10 nM、20 nM、30 nM、40 nM、50 nM、60 nM、70 nM、80 nM、90 nM、100 nM、110 nM、120 nM、130 nM、140 nM又は150 nMといった本発明の小分子活性化核酸分子を含有する。別の実施形態では、本発明の組成物は、ほかの化合物、例えば腫瘍治療用の小分子化合物をさらに含んでもよい。一実施形態では、腫瘍治療用の小分子化合物は、多標的抗腫瘍薬、たとえば、ソラフェニブ(Sorafenib、標的はPDGFR、KIT、RAF)(SELLECK、S1040)、チロシンキナーゼ阻害剤たとえばレンバチニブ(Lenvatinib、標的はFGFR、VEGFR2、PDGFR、KIT)(SELLECK、S1164)、キナーゼ阻害剤、たとえばレゴラフェニブ(Regorafenib、標的はFGFR、VEGFR2、PDGFR、KIT、RAF)(SELLECK、S1178)又はカボザンチニブ(Cabozantini、MET、VEGFR2及びRETシグナル伝達を阻害する)(SELLECK、S1119)を含むことができる。
【0033】
本発明の別の態様は、以上に記載の小分子活性化核酸分子、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を含むキットを提供する。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子と本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、LHPP遺伝子の細胞での発現を活性化/アップレギュレーションする薬物又は製剤の調製における使用に関する。
【0035】
本発明の別の態様は、さらに、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を前記細胞に投与することを含む、LHPP遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法に関する。
【0036】
本発明の小分子活性化核酸分子は細胞に直接導入してもよく、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸配列を細胞に導入することで細胞内で産生するものであってもよく、前記細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。上記細胞は、例えば細胞系や細胞株などのような単離体であってもよいし、例えば人体などの哺乳動物体に存在していてもよい。該人体は、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であってもよい。本発明の前記小分子活性化核酸分子は、LHPPタンパク質量の欠乏又はLHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害を治療するために十分な量で投与されることができる。。具体的には、LHPPタンパク質量の欠乏又はLHPP発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、例えば腫瘍、たとえば固形腫瘍を含むことができ、前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含むことができる。
【0037】
本発明の別の態様は、分離したLHPP遺伝子小分子活性化核酸分子の作用部位を提供する。、該部位は、LHPP遺伝子のプロモーター領域上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含み、好ましくは、前記作用部位は、SEQ ID NO:500-504のいずれか1つの配列上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含むか、これらから選ばれる。具体的には、前記作用部位は、SEQ ID NO:329-492のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列である。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明の小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を治療有効量で対象に投与することを含む、対象のLHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法に関する。一実施形態では、本発明の対象のLHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物、及び小分子化合物、抗体、ポリペプチド、タンパク質などを治療有効量で対象に投与することを含む。前記個体は、例えば人間などの哺乳動物であってもよい。一実施形態では、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、腫瘍、固形腫瘍などを含む。前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含む。
【0039】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物の調製における使用に関する。前記個体は、例えば人間などの哺乳動物であってもよい。一実施形態では、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する前記疾患は腫瘍、固形腫瘍などを含む。前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含む。
【0040】
一実施形態では、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、腫瘍たとえば固形腫瘍治療用の薬物の調製における使用を提供する。前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含む。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物と化学療法剤、放射線療法、細胞療法、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はほかの抗腫瘍薬の、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物又は薬物の組み合わせの調製における使用に関する。
【0042】
一実施形態では、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物と化学療法剤、放射線療法、細胞療法、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はほかの抗腫瘍薬は、腫瘍、たとえば固形腫瘍治療用の薬物又は薬物の組み合わせの調製における使用を提供する。前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含む。一実施形態では、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、及びカボザンチニブを含むか、これらから選ばれる。
【0043】
前記方法及び用途では、本発明の前記小分子活性化核酸分子は、化学療法剤、放射線療法、細胞療法、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はほかの抗腫瘍薬と組み合わせて使用することができる。前記化学療法剤は、好ましくはソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、及びカボザンチニブから選ばれる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るLHPP遺伝子発現を活性化/アップレギュレーション可能な小分子活性化核酸分子は、LHPP遺伝子を長時間活性化させることで、LHPP遺伝子とタンパク質の発現を効率よく特異的にアップレギュレーション又は回復させることができ、且つ毒性や副作用が低く、LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は病症用の薬物又は製剤の調製に用いられる。そして、LHPPの活性化用saRNAは、ほかの抗腫瘍薬と併用する場合、優れた相乗効果を示し、抗腫瘍効果の相乗作用を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1はLHPP遺伝子の構造模式図である。図には、LHPP遺伝子構造及びsaRNAを設計するための長さ1 kbのプロモーター領域が示され、ここで449 bpのAlu反復配列が除外される。
【0046】
図2図2はsaRNAにより仲介されたLHPP mRNA発現変化である。LHPPプロモーターに標的化する290個のsaRNAでそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、ワンステップRT-qPCRによりLHPP mRNA発現を分析する。図には、対照処理(対照、mock)に対するLHPP発現変化が示され、saRNAのプロモーター標的での位置でて-917から-28まで並べられている。
【0047】
図3図3は発現saRNAのLHPPプロモーターでのホットスポット領域である。LHPPプロモーターに標的化する290個のsaRNAでそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、ワンステップRT-qPCRによりLHPP mRNA発現を分析する。図には、対照処理(対照、mock)に対するLHPP発現変化が示され、saRNAのLHPPプロモーターでの標的位置で-917から-28まで並べられている。上方又は下方の数字は領域の限界を示す(LHPP転写開始部位に対して)。
【0048】
図4図4はLHPP mRNA発現量が細胞活性とは負の相関を示す。LHPPプロモーターに標的化する290個のsaRNAでそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、ワンステップRT-qPCRによりLHPP mRNA発現を分析し、CCK8法により細胞活性を検出する。細い線:LHPP mRNA 相対発現レベル(log2)、太い線:細胞活性。
【0049】
図5図5はsaRNAがLHPPの発現を誘導し、AKTリン酸化を抑制することである。LHPPプロモーターに標的化する10個のsaRNAでそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、(A)RT-qPCRによりLHPP mRNA発現を分析し、(B)ウェスタンブロット方法によりLHPP、pAKT、AKTタンパク質レベルを検出する。
【0050】
図6図6はsaRNAがLHPP mRNA発現を誘導し、肝癌細胞の増殖を抑制することである。示される8個の小分子活性化RNA分子は、それぞれ10 nMで肝癌細胞を72時間トランスフェクションする。(A)RT-qPCRによりLHPP遺伝子 mRNA発現レベルを分析する。(B)CCK-8方法で細胞活性を評価し、saRNA処理群の細胞の活性は対照(Mock)処理群の細胞活性に対する百分率で表される。
【0051】
図7図7はsaRNAがLHPP mRNA発現を誘導し、ほかの複数種の癌細胞の増殖を抑制することである。示される8個の小分子活性化RNAはそれぞれ10 nMで癌細胞を72時間トランスフェクションする。(A)RT-qPCRによりLHPP遺伝子 mRNA発現レベルを分析する。(B)CCK-8方法で細胞活性を評価し、saRNA処理群の細胞の活性は対照(Mock)処理群の細胞活性に対する百分率で表される。
【0052】
図8図8はsaRNAが化学薬品と併用してHepG2 細胞増殖を抑制することである。示される小分子活性化RNAはそれぞれ異なる濃度の勾配で癌細胞をトランスフェクションし、さまざまな化学薬品と併用する。(A)CCK-8方法により細胞活性を評価し、saRNA処理群細胞の活性は対照(Mock)処理群の細胞活性に対する百分率で表される。Compusyn(C) version 1.0 softwareを用いて併用指数(B)のグラフを描くし、併用指数の値(C)を算出する。
【0053】
図9図9はsaRNAが化学薬品と併用してU87MG細胞増殖を抑制することである。示される小分子活性化RNAはそれぞれ異なる濃度の勾配で癌細胞をトランスフェクションし、さまざまな化学薬品と併用する。(A)CCK-8方法により細胞活性を評価し、saRNA処理群細胞の活性は対照(Mock)処理群の細胞活性に対する百分率で表される。Compusyn(C) version 1.0 softwareを用いて併用指数(B)のグラフを描くし、併用指数の値(C)を算出する。
【0054】
図10図10は、saRNAが化学薬品と併用してHepG2移植腫瘍の成長を抑制することである。示される小分子活性化RNAを1mg/kgの用量で腫瘍内に注射して化学薬品と併用し、投与期間の移植腫瘍体積の変化を記録する。
【0055】
図11図11はsaRNAが化学薬品と併用してU87MG移植腫瘍の成長を抑制することである。示される小分子活性化RNAを1mg/kgの用量で腫瘍内に注射して化学薬品と併用し、投与期間の移植腫瘍体積の変化を記録する。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明では、関連用語は、以下のように定義される。
【0057】
本明細書で使用される「相補」という用語は、2本のオリゴヌクレオチド鎖が互いに塩基対を形成する能力を意味する。塩基対は、通常、逆方向に平行となるオリゴヌクレオチド鎖におけるヌクレオチド同士が水素結合により形成されるものである。相補オリゴヌクレオチド鎖は、ワトソン・クリック(Watson-Crick)方式で塩基ペアリング(例えば、A-T、A-U、C-G)を行うか、又は二本鎖体を形成させ得る任意のほかの方式(例えばHoogsteen型又は逆Hoogsteen型塩基ペアリング)で塩基ペアリングを行うことができる。
【0058】
相補は、完全相補及び不完全相補の2種類を含む。完全相補又は100%相補は、二本鎖オリゴヌクレオチド分子の二本鎖領域における第1オリゴヌクレオチド鎖からの各ヌクレオチドが第2オリゴヌクレオチド鎖の対応する位置のヌクレオチドと「ミスマッチ」無しに水素結合を形成できることを意味する。不完全相補とは、二本鎖のヌクレオチドユニットが全て水素結合で互いに接合することができないことを意味する。例えば、二本鎖領域の長さが20のヌクレオチドである2本のオリゴヌクレオチド鎖に対しては、各鎖における2つの塩基対のみが互いに水素結合で接合することが可能であると、オリゴヌクレオチド鎖は10%の相補性を有する。同じ実施例では、各鎖における18個の塩基対が互いに水素結合で接合することが可能であると、オリゴヌクレオチド鎖は90%の相補性を有する。実質的な相補とは、少なくとも約75%、約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%相補することを意味する。
【0059】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの重合体を意味し、DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドの一本鎖又は二本鎖分子を含むが、これらに制限されず、規則的・非規則的に交互するデオキシリボシル部分とリボシル部分のオリゴヌクレオチド鎖、並びにこれらの種類のオリゴヌクレオチドの修飾、天然に存在する、又は天然に存在しない骨格を含む。本発明に記載の標的遺伝子転写を活性化させるためのオリゴヌクレオチドは、小分子活性化核酸分子である。
【0060】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド鎖」と「オリゴヌクレオチド配列」は交換可能に使用することができ、35個以下の塩基を有する短鎖ヌクレオチドの総称(デオキシリボ核酸DNA又はリボ核酸RNA内のヌクレオチドを含む)である。本発明では、オリゴヌクレオチド鎖の長さは、16~35ヌクレオチドのいずれかの長さであってもよい。
【0061】
本明細書で示される用語「第1核酸鎖」はセンス鎖であってもよいし、アンチセンス鎖であってもよい。小分子活性化RNAのセンス鎖とは、小分子活性化RNA二本鎖体に標的遺伝子のプロモーターDNA配列のコード鎖とは同一性を有する核酸鎖を含むことをいい、アンチセンス鎖とは、小分子活性化RNA二本鎖体においてセンス鎖と相補する核酸鎖をいう。
【0062】
本明細書で示される用語「第2核酸鎖」はセンス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。第1オリゴヌクレオチド鎖がセンス鎖である場合、第2オリゴヌクレオチド鎖はアンチセンス鎖である。一方、第1オリゴヌクレオチド鎖がアンチセンス鎖である場合、第2オリゴヌクレオチド鎖はセンス鎖である。
【0063】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、1本のポリペプチド鎖のコード又は1本の機能RNAの転写に必要な全てのヌクレオチド配列を意味する。「遺伝子」は、宿主細胞に対して内因性、あるいは完全又は部分的に組換えられた遺伝子であってもよい(例えば、コードプロモーターを導入した外因性オリゴヌクレオチド及びコード配列、又は内因性コード配列に隣接する異種プロモーターを宿主細胞に導入したもの)。例えば、「遺伝子」は、エクソン及びイントロンで構成される核酸配列を含む。タンパク質をコードする配列は、例えば、開始コドンと終止コドンとの間のオープンリーディングフレームにおけるエクソンに含まれる配列であり、本発明では、「遺伝子」は、他の遺伝子がコード配列又は非コード配列を含むか否かを問わず、例えばプロモーター、エンハンサーなどのような遺伝子制御配列及び本分野で知られている他の遺伝子の転写、発現又は活性を制御する他の全ての配列を含むことができる。1つの場合、例えば、「遺伝子」は、例えばプロモーターやエンハンサーなどの制御配列を含む機能性核酸の説明に用いることができる。組換え遺伝子の発現は、一種又は多種の異種制御配列により制御することができる。
【0064】
本明細書で用いられる「標的遺伝子」は、生体内に天然に存在する核酸配列、組換え遺伝子、ウイルス又は細菌配列、染色体又は染色体外及び/又は細胞及び/又はその染色質に一時的又は安定的にトランスフェクション又は混入したものである。標的遺伝子は、タンパク質コード遺伝子であってもよいし、非タンパク質コード遺伝子であってもよい(例えば、マイクロRNA遺伝子、長鎖非コードRNA遺伝子)。標的遺伝子は、通常、プロモーター配列を含み、プロモーター配列と同一性(相同性とも言われる)を有する小分子活性化核酸分子を設計することにより、標的遺伝子に対する正調節を実現することができ、標的遺伝子の発現のアップレギュレーションとして表現される。「標的遺伝子プロモーター配列」とは、標的遺伝子の非コード配列を意味し、本発明において「標的遺伝子プロモーター配列と相補する」における標的遺伝子プロモーター配列とは、当該配列のコード鎖(非鋳型鎖とも言われる)、すなわち、当該遺伝子コード配列と同一の核酸配列である。「標的」又は「標的配列」とは、標的遺伝子プロモーター配列のうち小分子活性化核酸分子のセンスオリゴヌクレオチド鎖又はアンチセンスオリゴヌクレオチドと相同又は相補となる配列断片を意味する。
【0065】
本明細書で使用される用語「センス鎖」、「センス核酸鎖」は交換可能に使用され、小分子活性化核酸分子のセンスオリゴヌクレオチド鎖とは、小分子活性化核酸分子の二本鎖体に標的遺伝子のプロモーター配列のコード鎖と同一性を有する第1核酸鎖が含まれることを意味する。
【0066】
本明細書で使用される用語「アンチセンス鎖」、「アンチセンス核酸鎖」は交換可能に使用され、小分子活性化核酸分子のアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖とは、小分子活性化核酸分子の二本鎖体においてセンスオリゴヌクレオチド鎖と相補する第2核酸鎖を指す。
【0067】
本明細書で使用される「コード鎖」は、標的遺伝子における転写が不可能な1本のDNA鎖を指し、該鎖のヌクレオチド配列は、転写により生成されたRNAの配列と一致する(RNAではUでDNAにおけるTを置換した)。本発明に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列のコード鎖は、標的遺伝子DNAコード鎖と同一のDNA鎖に存在するプロモーター配列を意味する。
【0068】
本明細書で使用される「鋳型鎖」とは、標的遺伝子の二本鎖DNAのうちコード鎖に相補的な他本の鎖であって、鋳型としてRNAに転写可能な鎖を意味し、当該鎖は、転写したRNA塩基と相補的なものである(A-U、G-C)。転写過程において、RNAポリメラーゼは、鋳型鎖に結合し、鋳型鎖の3’→5’方向に沿って移動し、5’→3’方向に従ってRNAの合成を触媒する。本発明に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列の鋳型鎖は、標的遺伝子DNA鋳型鎖と同一のDNA鎖に存在するプロモーター配列を意味する。
【0069】
本明細書で使用される「プロモーター」とは、タンパク質コード又はRNAコード核酸配列と位置的に関連付けることによりそれらの転写に対して調節作用を果たす配列である。通常、真核遺伝子プロモーターは、100~5,000個の塩基対を含むが、この長さの範囲は、本明細書で使用される「プロモーター」を限定する趣旨ではない。プロモーター配列は、一般的にタンパク質コード又はRNAコード配列の5’末端に位置するが、エクソン及びイントロン配列にも存在する。
【0070】
本明細書で使用される「転写開始部位」という用語は、遺伝子の鋳型鎖に転写開始を標識するためのヌクレオチドを意味する。転写開始部位は、プロモーター領域の鋳型鎖に出現することができる。1つの遺伝子は、1つ以上の転写開始部位を有することができる。
【0071】
本明細書で使用される「同一性」又は「相同性」という用語は、小分子活性化RNAのうちの1本のオリゴヌクレオチド鎖(センス鎖又はアンチセンス鎖)が標的遺伝子のプロモーター配列のある領域のコード鎖又は鋳型鎖と類似性を有することを意味する。本明細書では、前記「同一性」又は「相同性」は、少なくとも約75%、約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又は約100%であってもよい。
【0072】
本明細書で使用される用語「突出」、「overhang」、「オーバーハング」は交換可能に使用され、オリゴヌクレオチド鎖の末端(5'又は3')の非塩基対ヌクレオチドを意味し、二本鎖オリゴヌクレオチド内の一方の鎖から延出する他方の鎖から産生するものである。二本鎖体の3'及び/又は5'末端からはみ出した一本鎖領域は、「突出」と称される。
【0073】
本明細書で使用される用語「遺伝子活性化」又は「活性化遺伝子」又は「遺伝子のアップレギュレーション」又は「アップレギュレーションされた遺伝子」は交換可能に使用され、遺伝子の転写レベル、mRNAレベル、タンパク質レベル、酵素活性、メチル化状態、染色質状態又は立体配置、翻訳レベル、又は細胞又は生物系でのこの活性又は状態を測定することで、ある核酸の転写、翻訳、発現又は活性の増加を測定することを意味する。これらの活動又は状態は、直接的又は間接的に測定することができる。また、「遺伝子活性化」、「活性化遺伝子」、「遺伝子のアップレギュレーション」、「アップレギュレーションされた遺伝子」は、このような活性化のメカニズムによらず、核酸配列に相関する活性が増加したことを意味し、例えば、調節配列として調節作用を発揮したり、RNAに転写されたり、タンパク質に翻訳されてタンパク質の発現を増加させたりする。
【0074】
本明細書で使用される用語「小分子活性化RNA」、「saRNA」、「小分子活性化核酸分子」は交換可能に使用され、遺伝子発現を促進できる核酸分子を指し、且つ標的遺伝子の非コード核酸配列(例えばプロモーター、エンハンサー等)とは配列同一性又は相同性を有するヌクレオチド配列を含む第1核酸断片(アンチセンス核酸鎖;アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖ともいう)と、第1核酸断片と相補するヌクレオチド配列を含む第2核酸断片(センス核酸鎖;センス鎖又はセンスオリゴヌクレオチド鎖ともいう)からなり、そのうち、前記第1核酸断片と第2核酸断片は二本鎖体を形成する。小分子活性化核酸分子は、合成され又はベクターで発現されるとともに二本鎖領域のヘアピン構造を形成できる一本鎖RNA分子で構成されてもよい。そのうち、第1領域は、遺伝子のプロモーター標的配列と配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、第2領域に含まれるヌクレオチド配列は、第1領域と相補的なものである。小分子活性化核酸分子の二本鎖体領域の長さは、通常は約10個~約50個の塩基対、約12個~約48個の塩基対、約14個~約46個の塩基対、約16個~約44個の塩基対、約18個~約42個の塩基対、約20個~約40個の塩基対、約22個~約38個の塩基対、約24個~約36個の塩基対、約26個~約34個の塩基対、約28個~約32個の塩基対であり、通常、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個の塩基対である。また、「saRNA」、「小分子活性化RNA」、「小分子活性化核酸分子」には、リボヌクレオチド部分以外の核酸も含まれ、修飾されたヌクレオチド又はその類似物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0075】
本明細書で使用される「ホットスポット」という用語は、長さが少なくとも30 bpである遺伝子プロモーター領域を意味する。これらの領域では、機能性小分子活性化核酸分子標的の凝集が現われ、即ち、これらのホットスポット領域を標的とする小分子活性化核酸分子の少なくとも30%は、標的遺伝子mRNAの発現が1.2倍以上になるまで誘導することができる。
【0076】
本明細書で使用される「合成」とは、オリゴヌクレオチドの合成方式を意味し、例えば化学合成、人体外転写、ベクター発現などのRNAを合成可能な任意の方式が含まれる。
【0077】
本発明では、RNA活性化方式によりLHPP遺伝子の発現をアップレギュレーションし、全長LHPPタンパク質の発現量を増加することで、関連疾患、特に肝細胞癌を治療する。本発明では、LHPP遺伝子は標的遺伝子ともいう。
【0078】
本発明が提供する小分子活性化核酸分子の製造方法は、配列設計と配列合成を含む。
【0079】
本発明の小分子活性化核酸分子配列の合成は、化学合成方法を用いるか、又は核酸合成の専門バイオテクノロジー企業に委託する。
【0080】
一般的には、化学合成の方法には、以下の4つの工程が含まれる:(1)オリゴリボヌクレオチドの合成;(2)脱保護;(3)精製分離;(4)脱塩及びアニール。
【0081】
例えば、本発明にかかるsaRNAの化学合成の具体的なステップは下記の通りである。
【0082】
(1)オリゴリボヌクレオチドの合成
【0083】
自動DNA/RNA合成機(例えば、Applied Biosystems EXPEDITE8909)にて1ミクロモルRNAの合成を設置するとともに、1サイクルのカップリングタイムを10~15分間に設定する。固相連結の5’‐O‐パラジメトキシトリチル‐チミジン支持物を開始剤とし、1回目のサイクルで固相支持物に塩基を連結し、n回目(19≧n≧2)のサイクルでn‐1回目のサイクルで連結された塩基に更に塩基を連結する。このように、全ての核酸配列の合成を完了するまでサイクルを繰り返す。
【0084】
(2)脱保護
【0085】
saRNAに連結された固相支持物を試験管に入れ、更にこの試験管にエタノール/アンモニア水溶液(体積比1:3)を1mL入れた後に、栓をした状態で25‐70℃のインキュベータに置き、2‐30時間インキュベーションする。saRNAの固相支持物が含む溶液をろ過してろ過液を集め、再蒸留水で固相支持物を2回溶出して(1回1mL)ろ過液を集める。集めた溶出液を合わせて、真空条件で1‐12時間乾燥させる。その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1M)を1mL入れて、室温で4‐12時間静置し、更にn-ブタノールを2mL入れて、高速遠心分離により沈殿物を集め、saRNA一本鎖の粗産物を得た。
【0086】
(3)精製分離
【0087】
得られたsaRNAの粗産物を濃度1モル/リットルの酢酸トリエチルアミン溶液2mLに溶解し、次に、高速液体クロマトグラフィー逆相C18カラムにより分離して、精製saRNA一本鎖産物を得る。
【0088】
(4)脱塩及びアニール
【0089】
サイズ排除ゲルろ過法で塩分を除去し、センス鎖及びアンチセンス鎖のオリゴリボ核酸一本鎖を同じモル比で1‐2mLの緩衝液(10 mM Tris,pH=7.5‐8.0、50 mM NaCl)に混ぜる。この溶液を95℃まで加熱した後、室温までゆっくりと冷却させて、saRNAが含む溶液を得た。
【0090】
本研究から、上記saRNAを細胞に導入すると、全長LHPP mRNAとタンパク質の発現を効果的に向上できることを見出した。
【0091】
以下、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例では、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、一般的な条件、たとえばSambrookら、分子クローニング:実験室ハンドバック(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載の条件、又はメーカーが推薦する条件を用いる。
[実施例]
実施例1 LHPPプロモーターに標的化する小分子活性化核酸分子の設計及び合成
【0092】
LHPPプロモーターについて-1 kb~-1 bpという1 kbの配列(SEQ ID No:493)を標的配列とし、ただし、-647 bp~-198 bpのAlu反復配列(図1)を除き、19個のヌクレオチドをsaRNA標的とし、1個の塩基を移動するごとに次の標的を得て、このようにして合計453個の標的を得た。標的配列をフィルタリングし、標的配列の保留のための基準は以下のとおりである。1)GC含量が35%~65%の間である。2)5個以上の連続した又同一ヌクレオチドを含まない。3)2個より多い2ヌクレオチド反復配列を含まない。4)2個より多い3ヌクレオチド反復配列を含まない。フィルタリングすると、290個の標的配列が得られる。
【0093】
ここで、実験に使用されている二本鎖小分子活性化RNA(saRNA)のセンス鎖とアンチセンス鎖の長さは全て21個ヌクレオチドであり、前記二本鎖saRNAの第1核酸鎖(センス鎖)は、5’領域の19個のヌクレオチドがプロモーター標的配列とは100%の同一性を有し、その3’末端にTT配列を有し、第2核酸鎖は、5’領域の19個のヌクレオチドは、第1リボ核酸鎖配列とは完全相補であり、その3’末端にTT配列を有する。前記二本鎖saRNAの2本の鎖を同量のモル数で混合し、アニーリング後に二本鎖saRNAを形成した。
【0094】
LHPPプロモーター配列は以下に示され、配列表のSEQ ID No:493の5’~3’の位置1~位置1000に対応する。
-1000 ttgaacccca taacatttca acgaattcct catcctttct gtgaatcaag
-950 agcctgaaaa gaaatggtga aataatatga tcctctcttc tttgaaagct
-900 caaagctatg ttggaccaga agtaaagtgt tctcgtttct atttaataac
-850 ttgaaaggtt ccgaggggcc attgaggaaa ctcctccctt ttaatatcaa
-800 tgtgtattta ttgcaaaaat aatgtagcat cgagtggtat tttatagctt
-750 atccaaaaac ctcctgggtt taacgcattg tgatagtccc gttttcttct
-700 cagcccaggt cctatgcatc ctcatctatg cagggctgtt atctgcatat
-650 aatttttttt ttttttaaga caaagtcttg ctctgtcgcc ccggctggag
-600 tgcagtggtg caatctcggc tcactgcaac ctccgcctcc caggttcaag
-550 cggttcttcc gcctcagcct accgagtagc tgggactaca ggcatgcgcc
-500 accacaccta ggtgattttt gtatttttag tagagacagg ggtttcacca
-450 tgttgaccag gctggtctcg aactcctgat ctcaagcgat ccacccgcct
-400 cagcctccca aagtgctggg attacaggca taagccacta cgcccggcct
-350 caattttgta ttgtactttt tctttctttc tttaatagag acagggtctc
-300 actatgttga ctaggttggt ctagaactcc tgggcacaag ctgtccgccc
-250 gcttctgcct cccaaagtgc tgggattgca ggcgtgaacc accgcccctg
-200 gctacaggtg ccttcttgtc tcaatttgcc tttgaccttt cttagggact
-150 tgttttctgc ttttcctgct ctttgtccgc tgatctcctg ggaagaaagc
-100 ttccgaaaag gacaccgttt caggggcgag tgacgccggg gtgcccaggc
-50 cgcgccccag ttccgggttt gcacccggtc ttcttgccct gccccgcccg
【0095】
実施例2 LHPPプロモーターに標的化するsaRNAのハイスループットスクリーニング
(1)細胞培養及びトランスフェクション
【0096】
ヒト肝癌細胞株Huh7を10%子牛血清(Sigma-Aldrich)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含有するDMEM培地(Gibco)で培養した。細胞を5% CO2、37℃の条件下で培養した。メーカーの指示に従って、RNAiMax (Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて10 nM(断らない限り)の濃度で小分子活性化RNAをトランスフェクションした。
【0097】
(2)ワンステップ法RT-qPCR
【0098】
トランスフェクション終了後、培地を捨てて、1ウェルあたりPBS 150 μlを加えて1回洗浄し、PBSを捨てて、1ウェルあたり細胞溶解液(Takara)50 μlを加え、室温で5分間インキュベートした。1ウェアあたり細胞溶解液1μlを取り、ワンステップ TB GreenTM PrimeScripTM RT-PCR キット II(Takara,RR086A)を用いてABI 7500 高速リアルタイム(Fast Real-time)PCRシステム(Applied Biosystems)にてqPCR分析を行い、サンプルごとに3個のウェルを繰り返して増幅させ、PCR反応条件を下表1に示す。
【表1】
【0099】
反応条件としては、段階1 逆転写反応:42℃、5分間;95℃ 10秒;段階2 PCR反応:95℃ 5秒、60℃ 20 秒、増幅45サイクル。HPRT1及びTBPを内部標準遺伝子とする。LHPP、HPRT1及びTBPに使用されるPCRプライマーを表2に示し、ここで、LHPPはLHPP F1/R1プライマー対で増幅される。
【表2】
【0100】
あるsaRNAトランスフェクションサンプルのLHPP(目標遺伝子)の、対照処理(Mock)に対する発現値(Erel)を計算するために、式1に目標遺伝子及び2個の内部参照遺伝子のCt値を代入して計算した。
【数1】
ここで、CtTmは対照(Mock)サンプル由来の目標遺伝子のCt値であり、CtTsはsaRNA処理サンプル由来の目標遺伝子のCt値であり、CtR1mは対照(Mock)サンプル由来の内部参照遺伝子1のCt値であり、CtR1sはsaRNA処理サンプル由来の内部参照遺伝子1のCt値であり、CtR2mは対照(Mock)サンプル由来の内部参照遺伝子2のCt値であり、CtR2sはsaRNA処理サンプル由来の内部参照遺伝子2のCt値である。
【0101】
(3)機能性saRNAのスクリーニング
【0102】
活性化LHPPで転写させたsaRNAを得るために、上記290個のsaRNAを用いて10 nMのトランスフェクション濃度でそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、前記と同様な方法により、細胞を溶解し、ワンステップRT-qPCRにより分析し、各saRNA処理サンプルのLHPP遺伝子の相対(対照(Mock)と比較して)発現値を得た。表3に示されるように、164(56.6%)及び37(12.8%)個のsaRNAは、それぞれ活性化及び抑制活性を示し、89(30.7%)個のsaRNAは、LHPPの発現に影響しない。活性化の最大程度は3.46倍、最大抑制程度は0.49倍である。活性化活性を有するこれらsaRNAは活性化用saRNAと呼ばれ、抑制活性を有するものは抑制用saRNAと呼ばれる。
【表3】
【0103】
図2は、さらにLHPP saRNAの高度活性化から高度抑制までの活性の分布を示している。
【0104】
【表4】
【0105】
290個のsaRNAの活性を、これらのsaRNAのLHPPプロモーター上の位置で並べたところ、機能性saRNAの分布に集まりが見られ、即ち、あるプロモーター領域では、活性化又は抑制用saRNAが特定の「ホットスポット(hot spot)」領域(図3)に集まることが明らかになる。図3に示されるように、プロモーターの-917/-844領域(H1)、-710/-675領域(H2)、-198/-168(H3)、-151/-28(H4)及び-845/-711領域(H5)のそれぞれには、5個のホットスポット領域が現れ、活性化用saRNAが高度に集まるように見られる。この分析結果から明らかなように、活性化用saRNAはプロモーター上でランダムに分布するものではなく、特定のホットスポット領域に集まるということである。
【0106】
配列表のSEQ ID NO:500の5’~3’の位置1~位置74に対応するホットスポットH1(5’~3’:-917~-844)配列:
【0107】
tctcttc tttgaaagct caaagctatg ttggaccaga agtaaagtgt tctcgtttct atttaataac ttgaaag
【0108】
配列表のSEQ ID NO:501の5’~3’の位置1~位置36に対応するホットスポットH2(5’~3’:-710~-675)配列:
【0109】
gttttcttct cagcccaggt cctatgcatc ctcatc
【0110】
配列表のSEQ ID NO:502の5’~3’の位置1~位置31に対応するホットスポットH3(5’~3’:-198~-168)配列:
【0111】
tacaggtg ccttcttgtc tcaatttgcc ttt
【0112】
配列表のSEQ ID NO:503の5’~3’の位置1~位置124に対応するホットスポットH4(5’~3’:-151~-28)配列:
【0113】
t tgttttctgc ttttcctgct ctttgtccgc tgatctcctg ggaagaaagc ttccgaaaag gacaccgttt caggggcgag tgacgccggg gtgcccaggc cgcgccccag ttccgggttt gca
【0114】
配列表のSEQ ID NO:504の5’~3’の位置1~位置135に対応するホットスポットHC(5’~3’:-845~-711)配列:
【0115】
aggtt ccgaggggcc attgaggaaa ctcctccctt ttaatatcaa tgtgtattta ttgcaaaaat aatgtagcat cgagtggtat tttatagctt atccaaaaac ctcctgggtt taacgcattg tgatagtccc。
【0116】
実施例3 saRNAによるLHPP mRNA発現の促進及び腫瘍細胞増殖の抑制
LHPPプロモーターに標的化する290個のsaRNAでそれぞれHuh7細胞をトランスフェクションし、72時間後、ワンステップRT-qPCRによりLHPP mRNA発現を分析し、CCK8法により細胞活性を検出した。図4に示されるように、活性化用saRNAがLHPP mRNA発現を促進すると、細胞活性が低下し、mRNA発現量は細胞活性と負の相関性を示す。
【0117】
CCK8法による細胞活性の検出:細胞を3-5×103個の細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、一晩培養し、オリゴヌクレオチド二本鎖体をトランスフェクションした。トランスフェクション後72時間後、CCK8溶液(Dojindo Molecular Technologies)10 uLを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーで450 nmでの吸光値を測定した。
【0118】
実施例4 saRNAによるLHPPタンパク質発現の促進
細胞を3-5×103個の細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、一晩培養し、ランダムに選択された10個のオリゴヌクレオチド二本鎖体をトランスフェクションした。トランスフェクション後72時間後、細胞を収集して、プロテアーゼ阻害剤を含有する細胞溶解液(1×RIPA緩衝液, CST)を用いて溶解した。BCA法(Thermo)によりタンパク質を定量化し、次に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動分離を行い、0.45 μmのPVDF膜に移した。一次抗体として、マウスモノクローナル抗LHPP(Invitrogen)又はウサギポリクローナル抗AKT(Cell Signaling Technology)、pAKT(Cell Signaling Technology)、α/β-チューブリン抗体(Cell Signaling Technology)を用いてブロットを検出し、二次抗体としてそれぞれ抗マウスIgG、HRP-に連結されれた抗体(Cell Signaling Technology)又は抗ウサギIgG、HRP-に連結された抗体(Cell Signaling Technology)を用いた。Image Lab(BIO-RAD, Chemistry Doctm MP imaging System)を用いて検出信号を走査した。
【表5】
【0119】
図5に示されるように、ランダムに選択されたこの10個のsaRNAは、LHPP mRNAとタンパク質の発現レベルを促進又は増加するとともに、AKTのリン酸化レベルをダウンレギュレーションする。
【0120】
実施例5 saRNAによる複数種の腫瘍細胞の増殖抑制
LHPP saRNAによるLHPP遺伝子mRNA発現誘導及び癌細胞増殖抑制の作用をさらに評価するために、スクリーニングした8個のsaRNA(RAG7-132、RAG7-133、RAG7-139、RAG7-177、RAG7-178、RAG7-694、RAG7-707及びRAG7-892)のそれぞれを用いて肝癌細胞株Huh7(東北大学医用細胞資源バンク)、HepG2(ATCC)、Hep3B(ATCC)、Li-7(東北大学医用細胞資源バンク)、SK-HEP-1(ATCC);肺癌細胞株A549(ATCC)、膀胱癌細胞株T24(ATCC)、前立腺癌細胞株PC3(ATCC)、及び神経膠腫細胞株U87MG(ATCC)をトランスフェクションし、そのmRNA発現と細胞活性を測定した。図6に示されるように、RAG7-133は、5種類の肝癌細胞株のいずれでも、程度が異なるが、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができ、RAG7-694は、Li-7を除く4種類の肝癌細胞株のいずれでも、程度が異なるが、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制ことができる。別の観点から、細胞株HepG2及びSK-HEP-1では、上記8個のsaRNAは、程度が異なるが、全てLHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができる。図7に示されるように、RAG7-133は、程度が異なるが、T24、PC3、及びU87MG細胞株のいずれでも、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができ、RAG7-694は、程度が異なるが、A549、T24及びPC3細胞株のいずれでも、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができ、RAG7-177は、程度が異なるが、A549、T24及びU87MG細胞株のいずれでも、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができ、RAG7-178は、程度が異なるが、A549、PC3、及びU87MG細胞株のいずれでも、LHPP遺伝子発現を誘導し、細胞増殖を抑制することができる。
【0121】
実施例6 saRNAと化学薬品の併用による細胞増殖の抑制
使用される化合物として、ソラフェニブ(Sora)(SELLECK、S1040)、レンバチニブ(Lenv)(SELLECK、S1164)、レゴラフェニブ(Rego)(SELLECK、S1178)、及びカボザンチニブ(Cabo)(SELLECK、S1119)を含む。次に、候補saRNAのそれぞれを用いて、異なる濃度の勾配で、細胞を24時間トランスフェクションした後、それぞれ上記化合物(濃度はそれぞれ5μM)を加え、細胞を48時間インキュベートし続け、CCK8法により細胞活性を検出した。Compusyn(C) version 1.0 ソフトウェア(ComboSyn, Inc. Paramus, NJ, USA)を用いて薬物併用指数(CI)を分析し、CI < 1は相乗作用、CI=1は相加作用、CI>1は拮抗作用である。
【0122】
図8に示されるように、HepG2細胞では、高用量(25 nM~100 nM)のRAG7-133は、レゴラフェニブとは、高い相乗効果(CI<0.3)を有し、低用量(1.0 nM~10 nM)の場合も相乗効果(0.3<CI<0.7)を有し、RAG7-133は、ソラフェニブ、カボザンチニブのそれぞれとは、相乗効果(CI<1)を有し、レンバチニブとは相乗効果(CI>1)がない。図9に示されるように、U87MG細胞では、RAG7-133は、4種類の化合物のそれぞれと相乗効果(CI<1)を有し、特にレンバチニブ又はカボザンチニブと併用すると、RAG7-133は、広い用量範囲(1.0 nM~100 nM)に亘って高い相乗効果(CI<0.1)を有する。
【0123】
実施例7 薬物併用によるマウスに対するヒトHepG2移植腫瘍の成長のインビボ抑制
saRNA製剤の調製:saRNA送達システムとしてインビボ-jetPEI(201-10G, Polyplus-transfection、フランス)を用いた。調製過程については以下のように簡単に説明した。まず、saRNAを10%グルコース溶液に希釈して、溶液Aを得て、メーカの指示に従って、所望量のインビボ-jetPEIを10%グルコース溶液に希釈して、溶液Bを得た後、溶液Aと溶液B(窒素とリンの比率8、グルコースの最終濃度5%)を等体積で混合し、均一に混合した後、室温で15分間静置し、使用に備えた。
対数成長期のHepG2細胞を準備し、計数後、細胞懸濁液を1 mL 5×107個に調整し、1匹あたり0.1 mLでBALB/cヌードマウスの右脇皮下に接種した。腫瘍が約100 mm3に成長すると、1群6匹で担癌ヌードマウスを4群(ベクター対照(Vehicle)群、saRNA群、レゴラフェニブ群、及びsaRNAとレゴラフェニブ併用群(saRNA+レゴラフェニブ群))にランダムに分けた。saRNA群とsaRNA+レゴラフェニブ群については、1、4、7、10日目にsaRNA 1 mg・kg-1で腫瘍内に注射し、レゴラフェニブ群とsaRNA+レゴラフェニブ群については、1~12日目に、レゴラフェニブ 3 mg・kg-1の用量で毎日胃内投与した。一回目の投与から、2日ごとにノギスで腫瘍の長径と短径を測定し、式:V=(l×w2)/2により腫瘍体積を計算し、ここで、lは腫瘍塊の最長直径、wは腫瘍塊の表面に平行し且つ長径に垂直な直径を示す。投与中の腫瘍成長曲線及び解剖後の腫瘍の大きさ及び形態を記録した。図10に示されるように、ベクター対照群(Vehicle)に比べて、saRNA群(RAG7-133単独投与)では、7日目から腫瘍の成長が低減して縮小する傾向が見られ、13日目にはsaRNA群の腫瘍体積が治療開始時の腫瘍体積に比べて34%増加する一方、ベクター対照群の腫瘍体積が118%増加し、両方の腫瘍体積の変化には有意な差異があり(P<0.05)、このことから、LHPP saRNAはマウスの腫瘍のインビボ成長を有意に抑制できることを示している。saRNA及びレゴラフェニブ併用群(RAG7-133+Rego)では、4日目から腫瘍の成長に低下の傾向が見られ、7日目から腫瘍が縮小し始め、13日目には腫瘍体積が治療開始時の腫瘍体積に比べて4%だけ増加する一方、化学薬品であるレゴラフェニブ(Rego)群では、治療の13日目には、腫瘍体積が治療開始時の腫瘍体積に比べて70%増加し、両方には有意な差異があり(P<0.01)、このことから、saRNAは、化学薬品と併用すると、化学薬品の癌抑制作用を相乗的に高めることを示している。
【0124】
実施例8 薬物併用によるマウスに対するヒトU87MG移植腫瘍の成長のインビボ抑制
saRNA製剤の調製:saRNA送達システムとしてインビボ-jetPEI(201-10G, Polyplus-transfection、法国)を用い、調製の過程については以下のように簡単に説明した。まず、saRNAを10%グルコース溶液に希釈して、溶液Aを得て、所望量のin vivo-jetPEIを10%グルコース溶液に希釈して、溶液Bを得た後、溶液Aと溶液B(窒素とリンの比率8、グルコースの最終濃度5%)を等体積で混合し、均一に混合した後、室温で15分間静置し、使用に備えた。
【0125】
対数成長期の神経膠腫細胞株U87MG細胞を準備し、計数後、細胞懸濁液を1 mL 9×107個に調整し、1匹あたり0.1 mLでBALB/cヌードマウスの右脇皮下に接種した。腫瘍が約100 mm3に成長すると、1群7匹で担癌ヌードマウスを4群(ベクター対照群、saRNA群、レゴラフェニブ群、及びsaRNAとレゴラフェニブの併用群(RAG7-133+Rego群))にランダムに分けた。saRNA群とsaRNA+レゴラフェニブ群に対しては、1、4、7、10日目に、saRNA 1 mg・kg-1で腫瘍内に注射し、レゴラフェニブ群とsaRNA+レゴラフェニブ群に対しては、1~12日目に、レゴラフェニブ3 mg・kg-1の用量で毎日胃内投与した。一回目の投与から、2日ごとにノギスで腫瘍の長径と短径を測定し、式:V=(l×w2)/2により腫瘍体積を計算し、ここで、lは腫瘍塊の最長直径、wは腫瘍塊の表面に平行し且つ長径に垂直な直径を示す。投与中の腫瘍成長曲線及び解剖後の腫瘍の大きさ及び形態を記録した。図11に示されるように、ベクター対照群(Vehicle)に比べて、saRNA群(RAG7-133単独投与)では、治療の13日目から腫瘍体積が治療開始時の腫瘍体積相に比べて167%増加する一方、対照群の腫瘍体積が406%増加し、両方の腫瘍体積の変化にははっきりした差異があり(P<0.05)、このことから、LHPP saRNAはマウスのインビボ腫瘍成長を有意に抑制できることを示している。saRNA及びレゴラフェニブ併用群(RAG7-133+Rego)では、治療の13日目に、腫瘍体積が、治療開始時の腫瘍体積に比べて132%増加し、レゴラフェニブ(Rego)単独投与群では、治療の13日目に、腫瘍の体積が治療開始時の腫瘍の体積に比べて251%増加し、両方の間でも有意差があり(P<0.05)、このことから、saRNAは化学薬品と併用すると、化学薬品の癌抑制作用を相乗的に高めることを示している。
【0126】
上記結果から分かるように、出願者は、LHPP遺伝子プロモーターに標的化するsaRNAをハイスループットスクリーニングすることにより、LHPP遺伝子発現を有意に活性化できる複数のsaRNAを見つけた。これらのsaRNAは、LHPP遺伝子及びタンパク質の発現をアップレギュレーションすることで、リン酸化AKTレベルをダウンレギュレーションし、さらにインビトロ又はインビボで腫瘍細胞増殖を抑制する。以上の結果から、LHPP遺伝子プロモーターに標的化するsaRNAの使用が腫瘍治療の手段として有望であることが明示された。
【0127】
参照文献
1. Yokoi F, Hiraishi H, Izuhara K. 2003. Molecular cloning of a cDNA for the human phospholysine phosphohistidine inorganic pyrophosphate phosphatase. J Biochem 133:607-14。
2. Neff CD, Abkevich V, Packer JC, Chen Y, Potter J, et al. 2009. Evidence for HTR1A and LHPP as interacting genetic risk factors in major depression. Mol Psychiatry 14:621-30。
3. Gohla A. 2019. Do metabolic HAD phosphatases moonlight as protein phosphatases? Biochim Biophys Acta Mol Cell Res 1866:153-66。
4. CONVERGE consortium. 2015. Sparse whole-genome sequencing identifies two loci for major depressive disorder. Nature 523:588-91。
5. Knowles EE, Kent JW, Jr., McKay DR, Sprooten E, Mathias SR, et al. 2016. Genome-wide linkage on chromosome 10q26 for a dimensional scale of major depression. J Affect Disord 191:123-31。
6. Polimanti R, Wang Q, Meda SA, Patel KT, Pearlson GD, et al. 2017. The Interplay Between Risky Sexual Behaviors and Alcohol Dependence: Genome-Wide Association and Neuroimaging Support for LHPP as a Risk Gene. Neuropsychopharmacology 42:598-605。
7. Cui L, Gong X, Tang Y, Kong L, Chang M, et al. 2016. Relationship between the LHPP Gene Polymorphism and Resting-State Brain Activity in Major Depressive Disorder. Neural Plast 2016:9162590。
8. Lesseur C, Diergaarde B, Olshan AF, Wunsch-Filho V, Ness AR, et al. 2016. Genome-wide association analyses identify new susceptibility loci for oral cavity and pharyngeal cancer. Nat Genet 48:1544-50。
9. Gutierrez-Camino A, Martin-Guerrero I, Garcia-Orad A. 2017. Genetic susceptibility in childhood acute lymphoblastic leukemia. Med Oncol 34:179。
10. Vijayakrishnan J, Kumar R, Henrion MY, Moorman AV, Rachakonda PS, et al. 2017. A genome-wide association study identifies risk loci for childhood acute lymphoblastic leukemia at 10q26.13 and 12q23.1. Leukemia 31:573-9。
11. Hindupur SK, Colombi M, Fuhs SR, Matter MS, Guri Y, et al. 2018. The protein histidine phosphatase LHPP is a tumour suppressor. Nature 555:678-82。
12. Bray F, Ferlay J, Soerjomataram I, Siegel RL, Torre LA, Jemal A. 2018. Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin 68:394-424。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024028895000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LHPP遺伝子の細胞での発現を活性化させるための小分子活性化核酸分子であって、小分子活性化核酸分子は、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含み、第1核酸鎖と第2核酸鎖は独立に16~35ヌクレオチド長であり、第1核酸鎖は、LHPP遺伝子プロモーターのうち転写開始部から位置-917~-844(配列番号500)、位置-710~-675(配列番号501)、位置-198~-168(配列番号502)、位置-151~-28(配列番号503)又は位置-845~-711(配列番号504)における任意の連続した16~35ヌクレオチドと100%の相同性又は相補性を有し、前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は相補して二本鎖核酸構造を形成する、小分子活性化核酸分子。
【請求項2】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は2本の異なる核酸鎖上に存在するか、または前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は同一の核酸鎖上に存在する、請求項1に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項3】
前記小分子活性化核酸分子の少なくとも1本の鎖は3'末端に0~6ヌクレオチドの突出を有する、請求項2に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項4】
前記小分子活性化核酸分子の両鎖は2又は3ヌクレオチドの突出を有する、請求項3に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項5】
前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、配列番号329-492から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と100%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、又は配列番号329-492から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と100%の相同性又は相補性を有する核酸配列からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項6】
前記第1核酸鎖は、配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と100%の相同性を有し、前記第2核酸鎖は、配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列とは100%の相同性を有する、請求項5に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項7】
前記第1核酸鎖は、配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号1-164から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなり、且つ前記第2核酸鎖は、配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号165-328から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなる、請求項6に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、又は請求項8に記載の組成物を含む、細胞におけるLHPP遺伝子発現の活性化/アップレギュレーション用の医薬製剤。
【請求項10】
LHPPタンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者を治療するための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項8に記載の組成物又は請求項9に記載の医薬組成物の使用
【請求項11】
前記疾患又は障害は腫瘍であり、
特に腫瘍が、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌または神経膠腫を含むか、または肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌及び神経膠腫から選択される、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
医薬製剤は、化学療法剤、放射線療法、細胞療法、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体又はほかの抗腫瘍薬と併用される、請求項10に記載の使用
【請求項13】
前記化学療法剤は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ及びカボザンチニブを含むか、又はこれらから選ばれる、請求項12に記載の使用
【外国語明細書】