IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-289ロボットシステムの制御方法および制御装置
<>
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図1
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図2
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図3
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図4
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図5
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図6
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図7
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図8
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図9
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図10
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図11
  • 特開-ロボットシステムの制御方法および制御装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000289
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ロボットシステムの制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20231225BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B25J13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099003
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 康平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS12
3C707DS01
3C707KS05
3C707KT01
3C707KT06
3C707LS15
3C707LT06
3C707LT12
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】対象物の搬送を精度よく行うことのできるロボットシステムの制御方法および制御装置を提供する。
【解決手段】ロボットシステムの制御方法は、搬送装置により搬送される対象物を保持し、前記保持した前記対象物を目標位置まで搬送するロボットシステムの制御方法であって、前記目標位置への前記対象物の搬送を開始する予測位置を求める搬送開始位置予測ステップと、前記予測位置から前記目標位置までの前記対象物の搬送経路を生成する搬送経路生成ステップと、保持した前記対象物の前記目標位置までの搬送を開始する搬送開始ステップと、前記搬送を開始した開始位置と前記予測位置との差を用いて、前記搬送経路を補正する補正ステップと、を含んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置により搬送される対象物を保持し、保持した前記対象物を目標位置まで搬送するロボットシステムの制御方法であって、
前記目標位置への前記対象物の搬送を開始する予測位置を求める搬送開始位置予測ステップと、
前記予測位置から前記目標位置までの前記対象物の搬送経路を生成する搬送経路生成ステップと、
保持した前記対象物の前記目標位置までの搬送を開始する搬送開始ステップと、
前記搬送を開始した開始位置と前記予測位置との差を用いて、前記搬送経路を補正する補正ステップと、を含んでいることを特徴とするロボットシステムの制御方法。
【請求項2】
前記補正ステップは、前記差と予め設定された許容範囲とを比較した結果に基づいて実行される請求項1に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項3】
前記補正ステップでは、前記開始位置から前記予測位置までの補正用搬送経路を生成し、前記補正用搬送経路を用いて前記搬送経路を補正する請求項1に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項4】
前記補正ステップでは、前記搬送経路と前記補正用搬送経路とを合成することにより前記搬送経路を補正する請求項3に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項5】
前記補正ステップでは、前記搬送経路の後に前記補正用搬送経路を追加することにより前記搬送経路を補正する請求項3に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項6】
前記補正ステップでは、前記搬送経路の前に前記補正用搬送経路を追加することにより前記搬送経路を補正する請求項3に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項7】
前記搬送経路を補正する方法を複数備え、
前記補正ステップでは、複数の前記補正する方法から予め選択された1つの前記補正する方法を用いて前記搬送経路を補正する請求項1に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項8】
搬送装置により搬送される対象物を保持し、保持した前記対象物を目標位置まで搬送するロボットシステムの制御装置であって、
前記目標位置への前記対象物の搬送を開始する予測位置を求める搬送開始位置予測ステップと、
前記予測位置から前記目標位置までの前記対象物の搬送経路を生成する搬送経路生成ステップと、
保持した前記対象物の前記目標位置までの搬送を開始する搬送開始ステップと、
前記搬送を開始した開始位置と前記予測位置との差を用いて、前記搬送経路を補正する補正ステップと、を実行することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムの制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているロボットのトラッキング制御方法は、コンベアによって搬送されるワークをコンベアの直上に配置されているカメラで連続撮像し、その撮像結果に基づいてワークの位置および搬送速度を検出するステップと、ワークの搬送速度とロボットの動作時間から繰り返し計算によってトラッキング動作の目標位置を推定するステップと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-105217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、コンベアで搬送されるワークに対してロボットがトラッキングを開始できたとしても、その後、ロボットがワークをピックアップし、ピックアップしたワークを目標位置まで搬送することができるとは限らない。特に、ピックアップ後の搬送経路が予め決められている場合には、搬送経路の始点に対してピックアップ後の搬送を開始する実際の位置がずれると、そのずれがそのまま目標位置からのずれに繋がるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットシステムの制御方法は、搬送装置により搬送される対象物を保持し、保持した前記対象物を目標位置まで搬送するロボットシステムの制御方法であって、
前記目標位置への前記対象物の搬送を開始する予測位置を求める搬送開始位置予測ステップと、
前記予測位置から前記目標位置までの前記対象物の搬送経路を生成する搬送経路生成ステップと、
保持した前記対象物の前記目標位置までの搬送を開始する搬送開始ステップと、
前記搬送を開始した開始位置と前記予測位置との差を用いて、前記搬送経路を補正する補正ステップと、を含んでいる。
【0006】
本発明の制御装置は、搬送装置により搬送される対象物を保持し、保持した前記対象物を目標位置まで搬送するロボットシステムの制御装置であって、
前記目標位置への前記対象物の搬送を開始する予測位置を求める搬送開始位置予測ステップと、
前記予測位置から前記目標位置までの前記対象物の搬送経路を生成する搬送経路生成ステップと、
保持した前記対象物の前記目標位置までの搬送を開始する搬送開始ステップと、
前記搬送を開始した開始位置と前記予測位置との差を用いて、前記搬送経路を補正する補正ステップと、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
図2】ロボットシステムの制御方法を示すフローチャートである。
図3】搬送装置によるワークの搬送が開始された状態を示す正面図である。
図4】撮像部がワークを撮像する様子を示す正面図である。
図5】生成された搬送経路を示す上面図である。
図6】ロボットがワークを保持する様子を示す正面図である。
図7】目標位置の位置ずれが生じる様子を示す上面図である。
図8】補正用搬送経路を示す上面図である。
図9】第1補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。
図10】第2補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。
図11】第3補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。
図12】グラフィックインターフェースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットシステムの制御方法および制御装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1は、好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。図2は、ロボットシステムの制御方法を示すフローチャートである。図3は、搬送装置によるワークの搬送が開始された状態を示す正面図である。図4は、撮像部がワークを撮像する様子を示す正面図である。図5は、生成された搬送経路を示す上面図である。図6は、ロボットがワークを保持する様子を示す正面図である。図7は、目標位置の位置ずれが生じる様子を示す上面図である。図8は、補正用搬送経路を示す上面図である。図9は、第1補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。図10は、第2補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。図11は、第3補正方法で補正された搬送経路を示す上面図である。図12は、グラフィックインターフェースの一例を示す図である。
【0010】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、撮像部3と、制御装置4と、搬送装置6と、表示装置8と、を有している。なお、ロボット2、撮像部3および搬送装置6のキャリブレーションは済んでおり、それぞれお互いの相対的な位置関係が既知の状態となっている。
【0011】
ロボットシステム1では、搬送装置6が対象物としてのワークWを搬送方向Aに沿って搬送し、制御装置4が撮像部3で取得される画像GとワークWの搬送速度とに基づいてワークWの搬送状況を検出し、検出した搬送状況に基づいてロボット2が搬送中のワークWに対して並走(トラッキング)しながらワークWを保持し、保持したワークWを目標位置まで搬送する。なお、本実施形態では、図1に示すように、箱状のケースCに収容された状態でワークWが搬送される。ただし、これに限定されず、例えば、剥き出しの状態でワークWが搬送されてもよい。
【0012】
図1に示すように、ロボット2は、駆動軸を6つ有する6軸垂直多関節ロボットであり、基体21と、基体21に回動自在に連結されているロボットアーム22と、ロボットアーム22の先端に装着されているエンドエフェクター23と、を有している。ロボットアーム22は、複数のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。エンドエフェクター23は、目的の作業に応じて適宜選択される。なお、図示の構成では、エンドエフェクター23は、エアチャックによりワークWを吸着保持する構成となっている。
【0013】
また、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6には、それぞれ、モーターMと、モーターMの回転量を検出するエンコーダーEとが設置されている。制御装置4は、ロボットシステム1の運転中、各関節J1~J6について、エンコーダーEの出力が示す関節J1~J6の回転角度を制御目標に一致させるサーボ制御(フィードバック制御)を実行する。
【0014】
搬送装置6は、ベルトコンベアであり、ベルト62と、ベルト62を送る搬送ローラー63と、搬送ローラー63を駆動するモーター61と、ベルト62の回転量に応じた信号を制御装置4に出力するエンコーダー64と、を有している。制御装置4は、ロボットシステム1の運転中、エンコーダー64の出力が示すワークWの搬送速度を制御目標である目標搬送速度に一致させるサーボ制御(フィードバック制御)を実行する。
【0015】
撮像部3は、搬送装置6の上方からワークWを撮像し、撮像した画像を制御装置4に出力するカメラである。撮像部3の撮像エリアは、ロボット2の作業エリアよりも搬送方向Aの上流側に位置する。撮像部3から出力される画像における各画素の位置は、制御装置4によって搬送経路における位置と関連付けられる。したがって、撮像部3の画角内にワークWが存在する場合、撮像部3の画像内におけるワークWの位置に基づいて、当該画像を撮像した時刻(以下、「画像取得時刻Ti」ともいう。)におけるワークWの座標(位置)を特定することができる。
【0016】
制御装置4は、ロボット2、撮像部3および搬送装置6の駆動をそれぞれ制御する。制御装置4は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。なお、制御装置4の構成要素の一部または全部は、ロボット2の筐体の内側に配置されてもよい。また、制御装置4は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。
【0017】
以上、ロボットシステム1の構成について簡単に説明した。このようなロボットシステム1は、次のように稼働する。まず、制御装置4は、搬送装置6を稼働し、エンコーダー64の出力に基づいて検出されるワークWの搬送速度が目標搬送速度となるように制御装置4の駆動を制御する。この状態で、搬送装置6にワークWが供給され、搬送装置6によるワークWの搬送が開始される。次に、制御装置4は、撮像部3で撮像エリアを通過中のワークWを撮像し、ワークWが写った画像Gを取得する。次に、制御装置4は、画像Gから画像Gを取得した時刻におけるワークWの座標を検出する。次に、制御装置4は、画像Gを取得した時刻におけるワークWの座標とワークWの搬送速度とから未来の各時刻におけるワークWの位置を算出し、算出した位置に基づいてロボット2に対する制御信号を算出する。そして、制御装置4は、算出した制御信号でロボット2を駆動し、ロボット2に搬送中のワークWに対して所定の作業を行わせる。
【0018】
次に、所定の作業について説明する。本実施形態では、前記所定の作業として、搬送装置6により搬送されるワークWを保持(ピック)する保持工程と、保持したワークWを目標位置Peまで搬送する搬送工程と、を含んでいる。このような作業を行う際のロボットシステム1の制御方法は、搬送装置6でワークWを搬送するワーク搬送ステップS1と、目標位置PeへのワークWの搬送を開始する予測位置Psを求める搬送開始位置予測ステップS2と、予測位置Psから目標位置PeまでのワークWの搬送経路E1を生成する搬送経路生成ステップS3と、ワークWを保持するワーク保持ステップS4と、保持したワークWの目標位置Peまでの搬送を開始する搬送開始ステップS5と、搬送開始ステップS5において実際にワークWの搬送を開始した開始位置Ps’と搬送開始位置予測ステップS2で予測した予測位置Psとの差を用いて搬送経路E1を補正する補正ステップS6と、を含んでいる。以下、図2に示すフローチャートに基づいて、これら各工程S1~S6について詳細に説明する。
【0019】
[ワーク搬送ステップS1]
まず、制御装置4は、搬送装置6の駆動を開始し、エンコーダー64の出力が示すワークWの搬送速度Vsを目標搬送速度に一致させる。これにより、図3に示すように、搬送装置6上に載置されたワークWが目標搬送速度で搬送される。なお、搬送装置6へのワークWの供給方法は、特に限定されず、例えば、ロボット、パーツフィーダー等を用いて行うことができる。また、作業員が手作業で供給してもよい。
【0020】
[搬送開始位置予測ステップS2]
搬送装置6によるワークWの搬送が開始されると、制御装置4は、撮像エリアを通過するワークWを撮像部3によって撮像し、ワークWが写った画像Gを取得する。次に、制御装置4は、取得した画像Gに基づいて画像Gを取得した時刻、すなわち画像取得時刻TiにおけるワークWの位置(座標)を求める。次に、図4に示すように、制御装置4は、画像取得時刻Ti、画像取得時刻TiでのワークWの位置、搬送速度Vs、ワーク保持ステップS4に要する時間等に基づいて、搬送開始ステップS5を開始する位置である予測位置Psを求める。なお、予測位置Psは、ロボット2の位置を言い、より具体的には、例えば、ロボットアーム22の先端に設定されているTCP(ツールセンターポイント)の位置を言う。
【0021】
ただし、予測位置Psを求める方法としては、特に限定されない。例えば、上述の方法では、ワークWの搬送速度Vsとして予め設定された目標搬送速度を用いているが、これに限定されない。例えば、制御装置4は、ワークWが撮像エリアを通過する間、ワークWを撮像部3によって所定のフレームレートで連続撮像し、ワークWが写った複数の画像を取得する。次に、制御装置4は、各画像でのワークWの位置を求め、画像間でのワークWのずれ量(ワークWが進んだ距離)とフレームレートと、によりワークWの搬送速度Vsを求めてもよい。
【0022】
[搬送経路生成ステップS3]
搬送経路生成ステップS3では、制御装置4は、図5に示すように、搬送開始位置予測ステップS2で求めた予測位置Psから目標位置PeまでのワークWの搬送経路E1を生成すると共に、搬送開始ステップS5を開始する動作開始時刻Tsを設定する。搬送経路E1は、ワークWの状態、ロボット2の可動域、ロボット2の周辺環境(障害物の有無等)等に基づいて適宜設定することができる。また、搬送経路E1は、ロボット2の移動方向と移動距離とを規定するパラメーターである。
【0023】
[ワーク保持ステップS4]
ワーク保持ステップS4では、制御装置4は、図6に示すように、ロボット2の駆動を制御して、搬送装置6上を搬送されるワークWをエンドエフェクター23で保持する。具体的には、エンドエフェクター23をワークWに並走させつつワークWの直上に位置させるステップと、エンドエフェクター23を降下してワークWに当接させるステップと、エンドエフェクター23によりワークWを吸着保持するステップと、を行うことによりワークWを保持する。なお、前述したように、ワークWがケースCに収容されていることから、ワークWを保持した後もエンドエフェクター23をワークWに並走させ続ける。仮に、並走を止めてしまうと、ワークWがケースCにぶつかってしまい、ワークWの破損、作業エラー等が生じるおそれがある。
【0024】
[搬送開始ステップS5]
搬送開始ステップS5では、制御装置4は、まず、動作開始時刻Tsになったかを判定し、動作開始時刻Tsになった場合には、搬送経路生成ステップS3で生成した搬送経路E1に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動制御を開始する。しかしながら、制御装置4の計算処理にかかる時間のばらつき、各部間における通信にかかる時間のばらつき、目標搬送速度に対する搬送速度Vsのばらつき等の各種原因により、図7に示すように、本ステップS5を実際に開始した開始位置Ps’が搬送開始位置予測ステップS2で予測した予測位置Psに対してずれるおそれがある。特に、本実施形態のように、ケースCとワークWとの接触を避けるために、ロボット2をワークWに対して並走させた状態から次の動作すなわちワークWの目標位置Peまでの搬送を開始するような場合には、開始位置Ps’が予測位置Psに対してずれ易くなる。
【0025】
このように予測位置Psに対して開始位置Ps’がずれてしまうと、そのずれがそのまま目標位置Peにおいて生じてしまう。つまり、予測位置Psに対する開始位置Ps’のずれと同じだけ実際の搬送位置Pe’が目標位置Peからずれてしまう。したがって、精度のよい搬送作業を行うことができない。そこで、制御装置4は、搬送位置Pe’が目標位置Peと一致するように、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPs(ずれ)に基づいて搬送経路E1を補正する補正ステップS6を行う。
【0026】
[補正ステップS6]
補正ステップS6では、制御装置4は、まず、搬送開始ステップS5を開始した開始位置Ps’を求める。開始位置Ps’を求める方法は、特に限定されないが、本実施形態では、ロボット2の各関節J1、J2、J3、J4、J5、J6が有するエンコーダーEからの出力に基づいて求める。このような方法によれば、簡単かつ高い精度で開始位置Ps’を求めることができる。次に、制御装置4は、図8に示すように、ワークWを開始位置Ps’から予測位置Psに移動させるための補正用搬送経路E2を生成する。次に、制御装置4は、補正用搬送経路E2を用いて、以下に示す3つの方法のいずれかで搬送経路E1を補正する。このように、補正用搬送経路E2を用いて搬送経路E1を補正することにより、簡単に、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsをキャンセルすることができる。
【0027】
-第1補正方法-
第1補正方法では、制御装置4は、図9に示すように、搬送経路E1と補正用搬送経路E2とを合成、すなわち、搬送経路E1と補正用搬送経路E2とを足し合わせて、新たな搬送経路E3を生成する。このとき、ロボット2は、すでに搬送経路E1に基づいて移動を開始している。そのため、搬送経路E3は、ロボット2がワークWを搬送しながら少しずつ生成され、ロボット2は、生成された搬送経路E3を受け取るたびに搬送経路E3を更新し、ワークWを搬送する。これにより、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0028】
このような第1補正方法によれば、後述する第2、第3補正方法と比べてワークWの総移動距離を短くすることができ、搬送に要する時間(タクトタイム)を短縮することができる。
【0029】
-第2補正方法-
第2補正方法では、制御装置4は、図10に示すように、搬送経路E1でのワークWの搬送を行う前に、補正用搬送経路E2でのワークWの搬送を行う。つまり、制御装置4は、搬送経路E1の前に補正用搬送経路E2を追加する補正を行い、新たな搬送経路E3を生成する。これにより、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0030】
このような第2補正方法によれば、目標位置Peへのアプローチ方向が変わらず、例えば、三方が壁に囲まれている等、目標位置Peへのアプローチ方向に制限がある場合等でも適切な搬送を行うことができる。また、ユーザーが経路を予測することが容易となり、例えば、搬送中に障害物に接触する等の不具合を事前に回避し易い。
【0031】
-第3補正方法-
第3補正方法では、制御装置4は、図11に示すように、搬送経路E1でのワークWの搬送を行った後に、補正用搬送経路E2でのワークWの搬送を行う。つまり、制御装置4は、搬送経路E1の後に補正用搬送経路E2を追加する補正を行い、新たな搬送経路E3を生成する。これにより、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0032】
このような第3補正方法によれば、開始位置Ps’からの動き出し方向が搬送経路E1と変わらず、例えば、三方が壁に囲まれている等、動き出し方向に制限がある場合等でも適切な搬送を行うことができる。また、経路の予測が容易となり、例えば、搬送中に障害物に接触する等の不具合を事前に回避し易い。
【0033】
制御装置4は、以上のような3つの補正方法のいずれかにより搬送経路E1の補正を行った後、補正後の搬送経路E3に沿ってワークWが搬送されるようにロボット2の駆動を制御する。このような制御方法によれば、予測位置Psに対する開始位置Ps’のずれが生じても、ワークWの搬送中にそのずれがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。そのため、優れた精度でワークWを搬送することができる。
【0034】
図2に戻って、このような補正ステップS6では、制御装置4は、まず、ステップS61として、ロボット2の各関節J1、J2、J3、J4、J5、J6が有するエンコーダーEからの出力に基づいて開始位置Ps’を求める。次に、制御装置4は、ステップS62として、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsを求める。次に、制御装置4は、ステップS63として、差ΔPsと、予め設定された許容範囲とを比較した結果に基づいて、搬送経路E1を補正するかを判定する。予め設定された許容範囲とは、ユーザーが設定した許容範囲、ロボットが出荷時から記憶部等に記憶している許容範囲、機械学習によりロボットが記憶部に記憶した最適な許容範囲、等があげられる。
【0035】
ステップS63において、搬送経路E1を補正しないと判定した場合、搬送経路E1の補正を行うことなく、搬送経路E1に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。例えば、差ΔPsが許容範囲内である場合には、制御装置4は、ステップS64として、搬送経路E1の補正を行うことなく、搬送経路E1に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。このように、差ΔPsが許容範囲内である場合には搬送経路E1を補正しないことにより、速やかにワークWを目標位置Peまで搬送することができ、搬送に要する時間(タクトタイム)を短縮することができる。
【0036】
これに対して、ステップS63において、搬送経路E1を補正すると判定した場合、制御装置4は、ステップS65として、ワークWを開始位置Ps’から予測位置Psに搬送するための補正用搬送経路E2を生成する。例えば、差ΔPsが許容範囲外の場合には、制御装置4は、ステップS65として、ワークWを開始位置Ps’から予測位置Psに搬送するための補正用搬送経路E2を生成する。次に、制御装置4は、ステップS66として、搬送経路E1を補正する方法として、上述した第1、第2、第3補正方法から1つを選択する。選択方法としては、特に限定されないが、本実施形態では、事前にユーザーに選択させる構成となっている。
【0037】
例えば、本実施形態では、表示装置8に、図12に示すようなグラフィックインターフェース80を表示し、グラフィックインターフェース80を介してユーザーからの入力を受け付けることができる構成となっている。グラフィックインターフェース80には、補正方法を第1補正方法、第2補正方法、第3補正方法から1つ選択する欄が表示されている。そのため、ユーザーは、作業内容、作業環境等を考慮して第1補正方法、第2補正方法、第3補正方法から1つ選択することができる。ただし、これに限定されず、作業内容、作業環境等に基づいて制御装置4が自動で設定してもよい。このように、補正方法を選択できる構成とすることにより、状況に適した方法により搬送経路E1を補正することができるため、ワークWの搬送作業をより確実に行うことができる。
【0038】
第1補正方法が選択された場合、制御装置4は、ステップS671として、搬送経路E1と補正用搬送経路E2とを合成して新たな搬送経路E3を生成する。次に、制御装置4は、ステップS672として、搬送経路E3に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。以上により、ワークWが目標位置Peに搬送される。このような方法によれば、開始位置Ps’が予測位置Psからずれても、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0039】
第2補正方法が選択された場合、制御装置4は、ステップS681として、補正用搬送経路E2に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。次に、制御装置4は、ステップS682として、搬送経路E1に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。以上により、ワークWが目標位置Peに搬送される。このような方法によれば、開始位置Ps’が予測位置Psからずれても、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0040】
第3補正方法が選択された場合、制御装置4は、ステップS691として、搬送経路E1に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。次に、制御装置4は、ステップS692として、補正用搬送経路E2に沿ってワークWが移動するようにロボット2の駆動を制御する。以上により、ワークWが目標位置Peに搬送される。このような方法によれば、開始位置Ps’が予測位置Psからずれても、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。
【0041】
以上、ロボットシステム1について説明した。このようなロボットシステム1の制御方法は、前述したように、搬送装置6により搬送される対象物としてのワークWを保持し、保持したワークWを目標位置Peまで搬送するロボットシステム1の制御方法であって、目標位置PeへのワークWの搬送を開始する予測位置Psを求める搬送開始位置予測ステップS2と、予測位置Psから目標位置PeまでのワークWの搬送経路E1を生成する搬送経路生成ステップS3と、保持したワークWの目標位置Peまでの搬送を開始する搬送開始ステップS5と、搬送を開始した開始位置Ps’と予測位置Psとの差ΔPsを用いて、搬送経路E1を補正する補正ステップS6と、を含んでいる。このような制御方法によれば、予測位置Psに対する開始位置Ps’のずれが生じても、ワークWの搬送中にそのずれがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。そのため、優れた精度でワークWを搬送することができる。
【0042】
また、前述したように、ロボットシステム1の制御方法では、補正ステップS6は、前記差ΔPsと予め設定された許容範囲とを比較した結果に基づいて実行される。例えば、差ΔPsが許容範囲外のときに、搬送経路E1を補正し、差ΔPsが許容範囲内のときに、搬送経路E1を補正しない。このように、前記差ΔPsと予め設定された許容範囲とを比較した結果、搬送経路E1を補正する場合は、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsをキャンセルしてワークWを目標位置Peまで搬送することができ、搬送経路E1を補正しない場合は、速やかにワークWを目標位置Peまで搬送することができ、搬送に要する時間(タクトタイム)を短縮することができる。
【0043】
また、前述したように、補正ステップS6では、開始位置Ps’から予測位置Psまでの補正用搬送経路E2を生成し、補正用搬送経路E2を用いて搬送経路E1を補正する。これにより、簡単に、予測位置Psと開始位置Ps’との差ΔPsをキャンセルすることができる。
【0044】
また、前述したように、補正ステップS6では、搬送経路E1と補正用搬送経路E2とを合成することにより搬送経路E1を補正する。このような補正方法によれば、第2、第3補正方法と比べてワークWの総移動距離を短くすることができ、搬送に要する時間(タクトタイム)を短縮することができる。
【0045】
また、前述したように、補正ステップS6では、搬送経路E1の後に補正用搬送経路E2を追加することにより搬送経路E1を補正する。このような補正方法によれば、開始位置Ps’からの動き出し方向が搬送経路E1と変わらず、例えば、三方が壁に囲まれている等、動き出し方向に制限がある場合等でも適切な搬送を行うことができる。また、経路の予測が容易となり、例えば、搬送中に障害物に接触する等の不具合を事前に回避し易い。
【0046】
また、前述したように、補正ステップS6では、搬送経路E1の前に補正用搬送経路E2を追加することにより搬送経路E1を補正する。このような補正方法によれば、目標位置Peへのアプローチ方向が変わらず、例えば、三方が壁に囲まれている等、目標位置Peへのアプローチ方向に制限がある場合等でも適切な搬送を行うことができる。また、経路の予測が容易となり、例えば、搬送中に障害物に接触する等の不具合を事前に回避し易い。
【0047】
また、前述したように、搬送経路E1を補正する方法を複数備え、補正ステップS6では、複数の方法から予め選択された1つの方法を用いて搬送経路E1を補正する。このように、補正方法を選択できる構成とすることにより、状況に適した方法により搬送経路E1を補正することができるため、ワークWの搬送作業をより確実に行うことができる。
【0048】
また、前述したように、制御装置4は、搬送装置6により搬送される対象物としてのワークWを保持し、保持したワークWを目標位置Peまで搬送するロボットシステム1の制御装置であって、目標位置PeへのワークWの搬送を開始する予測位置Psを求める搬送開始位置予測ステップS2と、予測位置Psから目標位置PeまでのワークWの搬送経路E1を生成する搬送経路生成ステップS3と、保持したワークWの目標位置Peまでの搬送を開始する搬送開始ステップS5と、搬送を開始した開始位置Ps’と予測位置Psとの差ΔPsを用いて、搬送経路E1を補正する補正ステップS6と、を実行する。このような制御装置4によれば、予測位置Psに対する開始位置Ps’のずれが生じても、ワークWの搬送中にそのずれがキャンセルされ、ワークWを目標位置Peに搬送することができる。そのため、優れた精度でワークWを搬送することができる。
【0049】
以上、本発明のロボットシステムの制御方法および制御装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ロボットシステム、2…ロボット、21…基体、22…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、23…エンドエフェクター、3…撮像部、4…制御装置、6…搬送装置、61…モーター、62…ベルト、63…搬送ローラー、64…エンコーダー、8…表示装置、80…グラフィックインターフェース、A…搬送方向、C…ケース、E…エンコーダー、E1…搬送経路、E2…補正用搬送経路、E3…搬送経路、G…画像、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、M…モーター、Pe…目標位置、Pe’…搬送位置、Ps…予測位置、Ps’…開始位置、S1…ワーク搬送ステップ、S2…搬送開始位置予測ステップ、S3…搬送経路生成ステップ、S4…ワーク保持ステップ、S5…搬送開始ステップ、S6…補正ステップ、S61…ステップ、S62…ステップ、S63…ステップ、S64…ステップ、S65…ステップ、S66、S671…ステップ、S672…ステップ、S681…ステップ、S682…ステップ、S691…ステップ、S692…ステップ、Ti…画像取得時刻、Ts…動作開始時刻、W…ワーク、ΔPs…差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12