(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028905
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ペグアスパラガーゼの凍結乾燥組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/50 20060101AFI20240227BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240227BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K38/50
A61K47/60
A61P35/02
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/30
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206920
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2021536342の分割
【原出願日】2019-05-20
(31)【優先権主張番号】201821048859
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】521268897
【氏名又は名称】ジェノバ バイオファーマスーティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENNOVA BIOPHARMACEUTICALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Block 1, Plot No. P-1 & P-2, I.T.B.T. Park Phase II, MIDC, Hinjawadi Pune 411057 Maharashtra (IN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー, ターサガタ
(72)【発明者】
【氏名】アーガワル, プラビーン クマール
(72)【発明者】
【氏名】シン, サンジェイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保存期間中に物理化学的安定性と生物学的活性を示す、アスパラガーゼを含有する組成物、及び前記組成物を調製するための組成物調製工程を提供する。
【解決手段】ペグアスパラガーゼ、凍結保護剤、増量剤、緩衝剤、及び任意に薬学的に許容される賦形剤を含み、前記増量剤は、グリシンを含み、前記増量剤は、前記組成物の38から50%の範囲で存在する、最適な保存安定性を有する凍結乾燥組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペグアスパラガーゼ、凍結保護剤、増量剤、緩衝剤、及び任意に薬学的に許容される賦形剤を含む、最適な保存安定性を有する凍結乾燥組成物。
【請求項2】
前記ペグアスパラガーゼは、アスパラギナーゼにリンカーで共有結合されたポリアルキレンオキシド基を含むペグ化アスパラギナーゼであり、
前記ポリアルキレンオキシドは、分子量が好ましくは4から6kDa、より好ましくは4.5から5.5kDa、最も好ましくは4.8から5.2kDaであるモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)であり、共役を通じてL-アスパラギナーゼの1つ以上の一次アミン基にアミド結合を介してコハク酸リンカーによって共有結合的に結合しており、
mPEGとL-アスパラギナーゼの共役反応により、L-アスパラギナーゼのモノマーあたり1から12mPEG、好ましくはL-アスパラギナーゼのモノマーあたり5から10mPEG、より好ましくはL-アスパラギナーゼのモノマーあたり7から10mPEG、最も好ましくはL-アスパラギナーゼのモノマーあたり7から9mPEGが共有結合している、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
L-アスパラギナーゼは、大腸菌又はエルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)からなる群より選択される細菌源由来のものであるか、又は組換え技術によって遺伝子操作された大腸菌によって得られたものである、請求項2に記載された組成物。
【請求項4】
前記組成物中のペグアスパラガーゼの量は、前記組成物の2から32%、より好ましくは5から20%、最も好ましくは6から14%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記凍結保護剤は、糖、ポリオール、ポリマー、及びアミノ酸からなる群より選択され、好ましくは糖であり、
前記糖はスクロースであり
前記凍結保護剤は、前記組成物の9から91%、好ましくは20から60%、最も好ましくは32から41%の範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記増量剤は、糖、ポリオール、ポリマー、及びアミノ酸からなる群より選択され、好ましくはアミノ酸であり、
前記アミノ酸は、グリシン、ヒスチジン、アルギニンからなる群より選択され、好ましくはアミノ酸がグリシンであり、
前記増量剤は、前記組成物の1から78%、より好ましくは20から60%、最も好ましくは38から50%の範囲で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤は、リン酸緩衝剤、リン酸ナトリウム緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素ニナトリウム)、リン酸カリウム緩衝剤(リン酸二水素カリウム-リン酸水素ニカリウム)、TRIS、クエン酸緩衝剤からなる群より選択され、好ましくは、リン酸緩衝剤であり、
前記緩衝剤は、前記組成物の3から33%、より好ましくは3から15%、最も好ましくは4から6%の範囲である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容される賦形剤は、塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウムからなる群より選択され、好ましくは塩化ナトリウムであり、
前記組成物中の前記塩の量は、前記組成物の0から40%、好ましくは0から10%、より好ましくは0から0.5%の範囲である、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
凍結乾燥前の及び凍結乾燥した製品の再構成後の前記製品のpHは、6から8であり、
オスモル濃度は、好ましくは250から600mOsm/Kg、より好ましくは250から500mOsm/Kg、最も好ましくは250から450mOsm/Kgの範囲である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
a. 凍結ステップ、
b. 任意にアニーリングステップ、
c. 一次乾燥ステップ、及び
d. 二次乾燥ステップからなる、
請求項1に記載の組成物を調製するための組成物調製工程。
【請求項12】
凍結乾燥工程の総時間は、好ましくは2880分(48時間)から5790分(96.5時間)、より好ましくは3120分(52時間)から4980分(83時間)、最も好ましくは3120分(52時間)から4200分(70時間)であり、
温度の変化は、-60℃から30℃であり、より好ましくは-50℃から30℃であり、最も好ましくは-40℃から25℃であり、
圧力の変化は、好ましくは0.037Torrから760Torrである、
請求項11に記載の組成物調製工程。
【請求項13】
前記凍結ステップは、-10℃から-60℃、より好ましくは-20℃から-50℃、最も好ましくは-35℃から-45℃の凍結ステップの最低温度で実施され、
総時間は、好ましくは150分から500分、より好ましくは200分から400分、最も好ましくは240分から350分であり、
最低凍結温度は、好ましくは20分から180分、より好ましくは30分から120分、最も好ましくは45分から90分であり、
前記最低凍結温度での保持時間は、好ましくは120分から480分、より好ましくは250分から360分、最も好ましくは200分から300分である、
請求項11に記載の工程。
【請求項14】
前記一次乾燥は、10℃から-50℃、より好ましくは0℃から-45℃、最も好ましくは-30℃から-40℃であり、
総時間は、好ましくは35から80時間、より好ましくは40から75時間、最も好ましくは50から60時間であり、
開始温度に到達するのに必要な時間は、好ましくは100分から1000分、より好ましくは250分から500分、最も好ましくは300分から400分であり、
開始時の圧力は、好ましくは50mTorrから200mTorrであり、
前記一次乾燥ステップの終了時の最高温度は、好ましくは5℃から25℃、より好ましくは8℃から22℃、最も好ましくは10℃から20℃であり、
本発明における前記凍結乾燥工程の前記一次乾燥ステップの最高温度での保持時間は、好ましくは5から72時間、より好ましくは8から24時間、最も好ましくは10から14時間であり、
本発明における前記凍結乾燥工程の前記一次乾燥ステップの終了時の圧力は、好ましくは37mTorrから112mTorr、より好ましくは50mTorrから90mTorr、最も好ましくは60mTorrから80mTorrである、
請求項11に記載の工程。
【請求項15】
前記二次乾燥ステップは、10℃から37℃、より好ましくは15℃から35℃、最も好ましくは20℃から30℃の温度であり、
総時間は、好ましくは3から24時間、より好ましくは4から16時間、最も好ましくは4から7時間であり、
前記凍結乾燥の前記二次乾燥ステップの保持時間は、好ましくは3から24時間、より好ましくは4から16時間、最も好ましくは4から7時間であり、
圧力は、好ましくは37mTorrから50mTorrである、
請求項11に記載の工程。
【請求項16】
請求項11に記載の工程から得られた凍結乾燥組成物。
【請求項17】
バイアルあたりの再構成量は、凍結乾燥後は1から5.5mLであり、凍結乾燥前は前記組成物の4から25%の範囲が好ましく、より好ましくは6から20%の範囲、最も好ましくは8から16%の範囲であり、ペグアスパラガーゼの最終濃度が750±20%IU/mlの範囲である、
請求項1又は16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の科学分野に関するものである。特に、ペグアスパラガーゼの凍結乾燥組成物及びその調製のための工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のドラッグデリバリーは、生体内に存在するタンパク質特有の不安定性のために、バイオ医薬品業界にとって大きな課題となっている。経口投与されたタンパク質は、消化管で消化されやすいのに対し、非経口的に注射されたタンパク質は、一般的に腎クリアランスやタンパク質分解が起こりやすいと言われている。その他にも、溶解性が低い、循環半減期が短い、免疫原性がある、凝集性があるなど、タンパク質医薬品には様々な問題がある。その結果、体内でのタンパク質の持続性が損なわれることになる。生体内でのタンパク質の持続性を実現するために、アミノ酸配列の変更による免疫原性の低下やタンパク質分解部位の除去、血清タンパク質との結合、抗体との融合、徐放性のためのリポソームへの組み込み、天然ポリマーや合成ポリマーとの結合など、いくつかのアプローチが試みられている。
【0003】
治療用タンパク質をポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーと結合させる方法はバイオ医薬品業界では古くから用いられており、循環半減期の延長や免疫原性の低減などを目的としたタンパク質の安全な改変法として受け入れられているが、この点に関する情報はUS4,179,337に記載されている。この結合工程は、ペグ化と呼ばれている。PEGは、USFDAやWHOなどの規制機関により、「一般に安全と認められている」(GRAS)化合物として分類されている。
【0004】
PEGは、直鎖状又は分岐状のポリマーであり、水溶性(分子量が大きくなると溶解度が大きくなる)、親油性、毒性のない性質を持っている。PEGの親油性は、治療用タンパク質に結合させるための末端基の官能化に適している。PEGの各分子は、通常、エチレンオキシド単位あたり2から3個の水分子と結合する。ペグ化により、タンパク質の表面がマスクされ、ポリペプチドの分子サイズが大きくなるため、抗体や抗原処理細胞のアクセスが妨げられ、またタンパク質分解酵素による分解が抑えられ、その結果、循環半減期が長くなる。さらに、(流体力学的半径の増加による)サイズの増加は、腎クリアランスを減少させることにより、その循環時間を延長させる。
【0005】
急性リンパ性白血病(ALL)のような多くのタイプのがん細胞では、がん細胞が新規にアミノ酸であるL-アスパラギンを合成することができず(アミノ酸であるL-アスパラギン酸からL-アスパラギンへの酵素変換を触媒するアスパラギン合成酵素が不足又は少ないため)、それを血液から取り込んで細胞の増殖に利用している。L-アスパラギナーゼは、L-アスパラギンからL-アスパラギン酸への加水分解を触媒し、アンモニアを放出する酵素である。L-アスパラギナーゼは、血中のL-アスパラギン濃度を低下させることで、がん細胞/腫瘍細胞によるL-アスパラギンの取り込みを阻害し、最終的には細胞を死滅させる。L-アスパラギナーゼは、細菌、酵母、真菌、放線菌、植物などから得ることができる。L-アスパラギナーゼは、タンパク質合成をL-アスパラギンに依存する腫瘍や癌の治療に有用である。特に、急性リンパ性白血病などの白血病の治療に用いられ、通常は他の抗腫瘍剤や抗がん剤と組み合わせて使用されるが、特定の臨床現場では単独で採用することも可能である。
【0006】
しかし、L-アスパラギナーゼ自体には、クリアランスの速さ、半減期の短さ、タンパク質による分解、この酵素で治療を受けた患者に非ヒト由来の免疫反応を引き起こす可能性があるなど、タンパク質であるがゆえの欠点がある。このような欠点があるため、この酵素の長期投与や反復投与には限界がある。先に述べたように、これらの問題はペグ化によって克服できる。L-アスパラギナーゼ(大陽菌由来)は、5kDaのモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)と共有結合することで修飾される。このペグアスパラガーゼは、実質的に非抗原性であり、循環系からのクリアランス速度を低下させる利点がある。
【0007】
ペグアスパラガーゼは、濃度750IU/mLの液体組成物として、1994年に米国FDAより「L-アスパラギナーゼに対する過敏症を有する患者における急性リンパ性白血病」の適応で承認され、「オンカスパー(登録商標)」の商品名で販売されていた。その後、2006年には、急性リンパ性白血病の第一選択薬として、多剤併用療法の一部として承認された。オンカスパー(登録商標)は、5kDaのモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)サクシニミジルサクシネートPEG(SS-PEGとも呼ばれる)をペグ化して製造されたものである。ペグ化アスパラギナーゼは、US5,122,614; 5,324,844; 5,612,460; US20120100121A1; CN105802946Aの各出願に開示されている。
【0008】
このような利点を持つペグアスパラガーゼの液体組成物に関して、熱安定性や低温流通体系の維持が困難であること、保存期間が短いことなどの問題が報告されている。ペグ化されたタンパク質、特にコハク酸リンカーで結合されたタンパク質は、液体組成物中で分解される傾向があり、水性組成物中ではPEGとコハク酸リンカーの間のエステル結合が加水分解されて、遊離PEGとコハク酸化タンパク質になることが報告されている。このような重要な医薬品を臨床現場で使用するためには、長期間の保存が可能で、製造時や診療所への配送時の温度変化にも対応できる組成物が必要となる。
【0009】
多くの場合、液体組成物中のタンパク質に関連する安定性の問題は、固体組成物とすることで克服できる。すべての主要な分解反応(脱アミド化、加水分解、タンパク質分解など)は水溶液中で起こるため、水分を除去することが効果的であることはよく知られている。液体から固体への変換に使用される最も一般的な方法は、フリーズドライ又は凍結乾燥である。凍結乾燥は、ペグアスパラガーゼを安定化させ、課題を克服するのに役立つ工程である。商品化されている生物由来の治療薬の半分以上は、凍結乾燥された組成物として提供されている。
【0010】
凍結乾燥のサイクルは、主に凍結、一次乾燥、二次乾燥の3つのステップで構成されており、凍結と一次乾燥の間には任意にアニーリングのステップがある。凍結乾燥の工程はストレスフリーではなく、バイオ医薬品の保存期間の延長を必ずしも保証するものではない。凍結乾燥ステップに伴うストレスは、タンパク質の物理的劣化(変性、凝集、沈殿など)と化学的劣化(酸化、メイラード反応、共有結合による凝集など)を引き起こす。最終的に生物活性の喪失につながるこれらの分解経路は、相互に排他的なものではなく、多くの場合、あるものが別のものにつながり、両方の分解経路が多少関連している。
【0011】
凍結乾燥サイクルの設計は、組成物に含まれるタンパク質の濃度、増量剤、安定剤、その他の賦形剤の性質と量によって決まる。見かけのガラス転移温度(Tg')、増量剤の結晶化温度などの重要な熱パラメータは、凍結乾燥サイクルの各段階におけるランプ時間と保持時間を含む各ステップの温度と圧力のパラメータを設定する際の指針となることから、通常、工程の設計に先立って組成物について決定される。
【0012】
ペグ化されたタンパク質には、最終的な凍結乾燥工程を決定するために対処しなければならない他の複雑な問題がある。例えば、PEGの状態(非晶質又は結晶)、相互作用に利用可能な自由水の量、保存温度、凍結乾燥パラメータ、タンパク質とPEGの比率などであり、これらすべてが凍結乾燥後のタンパク質の活性に影響を与えるため、すべてのペグ化された製品に対する普遍的な解決策は存在しない。
【0013】
したがって、あるタンパク質に適した工程や組成物が他のタンパク質には有効でない可能性があるため、各タンパク質に独自の工程や組成物を作ることが重要である。
【0014】
US 6,180,096及びUS 7,632,491B2は、より長い凍結乾燥サイクル、高い水分含有量を有するペグインターフェロン2bの組成物を開示している。US 8,367,054 B2は、凍結乾燥サイクルが短いペグインターフェロン2bの組成物を開示している。これらの文献では、凍結乾燥工程の重要性が開示されており、凍結乾燥サイクルに応じて製品の品質に変化があることが示唆されている。
【0015】
CN105796507Aには、ソルビトール、保護剤、緩衝剤、界面活性剤を含むペグアスパラガーゼの安定した組成物が開示されている。しかしながら、この組成物は、液状での安定性と凍結中の保護を課題としている。当該出願は、安定した凍結乾燥組成物を提供することができなかった。
【0016】
WO2018017190では、凍結乾燥保存安定組成物が開示されており、この組成物は、L-アスパラギナーゼにリンカーで共有結合したポリアルキレンオキシド基を含むポリアルキレンオキシド-アスパラギナーゼと、緩衝剤と、塩と、糖とを含んでいる。
【0017】
しかし、WO'190に開示されているような工程では時間がかかり(~5日)、経済的ではない。さらに、大量の賦形剤を使用するため、賦形剤のコストが50%程度上昇し、最終製品のコストが上昇する可能性があるため、好ましくない。
【0018】
ペグアスパラガーゼはオーファンドラッグに分類され、価格も高い。このように、保存安定性の高い製品を製造するためには、凍結乾燥のコストや添加剤の追加が必要となり、製品のコストが高くなる。
【0019】
したがって、保存期間中に物理的特性と生物学的活性を維持するペグアスパラガーゼの最適な保存安定性のある凍結乾燥組成物、及びそのような組成物の凍結乾燥工程が必要とされている。
【0020】
発明の目的
本発明の目的は、保存期間中に物理化学的安定性と生物学的活性を示すペグアスパラガーゼを含む最適な保存安定性を有する凍結乾燥組成物、及びそのような組成物の凍結乾燥工程を提供することである。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、保存期間中に物理化学的安定性と生物学的活性を示すペグアスパラガーゼを含む最適な保存安定性を有する凍結乾燥組成物、及びそのような組成物の凍結乾燥工程を提供する。
【0022】
本発明の組成物は、有意な量の不純物/分解剤の存在なしに、有意な温度範囲で長期間安定している。本発明はまた、ペグアスパラガーゼの保存安定性組成物を製造するための、経済的に実行可能でスケーラブルな凍結乾燥工程に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の範囲内の組成物のための固形状物質構造を示す。
【
図2】
図2は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価された、ペグアスパラガーゼの凍結前及び凍結後(
図2(B))の完全性と純度を示す分析データを示している。
【
図3】
図3は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で評価した分析データであり、ペグアスパラガーゼの先行技術の液体組成物(
図3(A))と本発明の凍結乾燥組成物(
図3(B))の安定性を比較したものである。
【
図4】
図4は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって評価された分析データであり、クマシー染色(
図4(A))、ヨウ素染色(
図4(B))によって、本発明の凍結乾燥組成物を用いた先行技術のペグアスパラガーゼの凍結乾燥組成物に存在する高分子量不純物の存在を示している。
図4(C)及び
図4(D)は、それぞれ抗アスパラギナーゼ抗体及び抗PEG抗体に対するサンプルのウェスタンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
組成物
本発明は、保存期間中に物理化学的安定性と生物学的活性を示すペグアスパラガーゼを含む最適な保存安定性のある凍結乾燥組成物と、そのような組成物の凍結乾燥工程を提供する。
【0025】
本発明の凍結乾燥組成物は、ペグアスパラガーゼを有効成分として含む。本発明の凍結乾燥組成物は、ペグアスパラガーゼ、凍結保護剤、増量剤、緩衝剤を含み、任意に、塩を含むがこれに限定されない他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0026】
本発明の凍結乾燥組成物は、アスパラギナーゼにポリアルキレンオキシド基がリンカーで共有結合しているペグ化アスパラギナーゼを含む。
【0027】
本発明の組成物は、ペグ化アスパラギナーゼに注目するものである。ペグアスパラガーゼとしても知られるペグ化アスパラギナーゼは、L-アスパラギナーゼの1つ以上の一級アミン基(リジン側鎖のε-アミノ酸及び末端アミン)にアミド結合を介してコハク酸リンカーで共有結合された、好ましくは4から6kDa、より好ましくは4.5から5.5kDa、最も好ましくは4.8から5.2kDaの分子量のモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含む。
【0028】
L-アスパラギナーゼは、大腸菌やエルウィニアクリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)のような他の細菌源から天然に得られたものであってもよく、組換え技術によって大腸菌で遺伝子工学的に得られたものであってもよい。
【0029】
mPEGとL-アスパラギナーゼの共役反応により、L-アスパラギナーゼ1モノマーあたり1から12mPEG、好ましくはL-アスパラギナーゼ1モノマーあたり5から10mPEG、より好ましくはL-アスパラギナーゼ1モノマーあたり7から10mPEG、最も好ましくはL-アスパラギナーゼ1モノマーあたり7から9mPEGが共有結合している。
【0030】
本発明のペグアスパラガーゼの量は、組成物の2から32%、より好ましくは5から20%、最も好ましくは6から14%の濃度(総質量%)で存在していてもよい。
【0031】
本明細書に記載されている凍結乾燥の工程は、この工程で利用される最適な賦形剤の量という点で、新規かつ独創的である。本発明の賦形剤は、保存期間中、本発明の組成物を物理的-化学的に安定させ、生物学的に活性化させるものである。また、本発明の賦形剤は、本発明の製品を得るために、短くて経済的な凍結乾燥サイクルを設計することを可能にする。ペグアスパラガーゼと本明細書に記載の賦形剤を含む本発明の組成物は、相乗効果を発揮する。
【0032】
本発明の組成物は、凍結保護剤を含む。凍結保護剤は、糖、ポリオール、ポリマー、及びアミノ酸から選択することができる。より好ましくは、本発明の凍結保護剤は、糖である。最も好ましくは、本発明の凍結保護剤はスクロースである。凍結保護剤は、本発明の組成物の9から91%、より好ましくは20から60%、最も好ましくは32から41%の範囲で存在していてもよい。理論によって制限されるものではないが、本発明の組成物は、サイクル中の賦形剤の負担を軽減するために、凍結保護と抗凍結の両方の役割を果たすことができる凍結保護剤を想定している。また、安定剤としての役割も果たすことができる。
【0033】
本発明の組成物は、増量剤を含む。本発明の増量剤は、糖、ポリオール、ポリマー、及びアミノ酸からなる群より選択され、好ましくは、増量剤は、グリシン、ヒスチジン、アルギニンからなる群より選択されるアミノ酸であり、好ましくは、アミノ酸はグリシンである。本発明の増量剤は、本発明の組成物の1から78%、より好ましくは20から60%、最も好ましくは38から50%の範囲で存在していてもよい。
【0034】
本発明の組成物は、緩衝剤を含む。緩衝剤は、リン酸ナトリウム緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素ニナトリウム)やリン酸カリウム緩衝剤(リン酸二水素カリウム-リン酸水素ニカリウム)などのリン酸塩緩衝剤、TRIS、クエン酸塩緩衝剤からなる群より選択されてもよく、好ましくは、本発明の組成物はリン酸塩緩衝剤を含む。凍結乾燥前の及び凍結乾燥した製品を再構成した後の製品のpHは、6から8であってもよい。本発明の緩衝剤は、本発明の組成物の3から33%、より好ましくは3から15%、最も好ましくは4から6%の範囲で存在していてもよい。
【0035】
本発明の組成物は、任意に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムからなる群より選択される塩を含んでいてもよい。組成物中の塩の量は、本発明の組成物の0から40%、好ましくは0から10%、より好ましくは0から0.5%の範囲であってよい。理論によって制限されるものではないが、本発明の組成物は、低塩又は無塩であることを特徴とする、すなわち、本発明の組成物は、先行技術の組成物とは異なり、非常に低量の塩を含んでいてもよく、また、塩を含まなくてもよい。
【0036】
本発明の組成物は、好ましくは250から600mOsm/Kg、より好ましくは250から500mOsm/Kg、最も好ましくは250から450mOsm/Kgの範囲のオスモル濃度を有する。
【0037】
凍結乾燥工程
凍結乾燥工程は、賦形剤や有効成分に固有のものであり、組成物ごとに工程を開発する必要があると考えられる。さらに、先行技術の工程は時間がかかり、賦形剤の使用比率が高く、経済的ではない。
【0038】
本発明の凍結乾燥工程は、得られた凍結乾燥製品が以下の特徴を有するように、有効活性医薬品材料を配合する。
a. バイアルの側面に付着しない滑らかな固形状物質
b. 安定した水分量
c. 保存期間の延長(常温)
d. 再構成時に容易に溶解し、透明な溶液が得られる
e. 蛋白質の活性が損なわれない
f. 蛋白質の構造に変化がない
g. pHが維持される
h. 再構成された溶液は、非経口投与のための許容可能なオスモル濃度の範囲内である
【0039】
凍結乾燥サイクルは、主に凍結、一次乾燥、二次乾燥の3つのステップで構成されており、凍結と一次乾燥の間には任意にアニーリングステップがある。これらの各ステップは、本発明の組成物に対して最適化されている。さらに、ここで示した工程は、ペグアスパラガーゼを有効成分とする類似の組成物にも適用可能であることが想定される。
【0040】
本発明における凍結乾燥工程の総時間は、好ましくは2880分(48時間)から5790分(96.5時間)、より好ましくは3120分(52時間)から4980分(83時間)、最も好ましくは3120分(52時間)から4200分(70時間)である。本発明における凍結乾燥工程は、好ましくは-60℃から30℃まで、より好ましくは-50℃から30℃まで、最も好ましくは-40℃から25℃までの温度の変動を含む。本発明における凍結乾燥工程の圧力変動は、好ましくは0.037Torrから760Torrである。
【0041】
凍結乾燥前
凍結乾燥前の組成物中に存在するペグアスパラガーゼの濃度は、組成物の4から25%の範囲が好ましく、より好ましくは6から20%の範囲、最も好ましくは8から16%の範囲である。
【0042】
凍結乾燥前の充填量は、0.5から5mlの範囲が好ましく、より好ましくは0.5から4mlの範囲、最も好ましくは0.5から3mlの範囲である。
【0043】
充填量及び再構成後の量に基づいて、適切な濃度の添加剤(もしあれば)を、投与前の凍結乾燥製品の再構成後に所望の濃度の添加剤となるように添加する必要がある。
【0044】
凍結乾燥サイクル
ステップ-1-凍結
本発明における凍結乾燥工程は、凍結ステップの最低温度が-10℃から-60℃であることが好ましく、より好ましくは-20℃から-50℃であり、最も好ましくは-35℃から-45℃である。本発明における凍結乾燥工程の凍結ステップの総時間は、好ましくは150分から500分、より好ましくは200分から400分、最も好ましくは240分から350分である。本発明における凍結乾燥工程の凍結ステップの最低凍結温度に到達するまでの時間は、好ましくは20分から180分、より好ましくは30分から120分、最も好ましくは45分から90分である。また、本発明における凍結乾燥工程の凍結ステップの最低凍結温度での保持時間は、好ましくは120分から480分、より好ましくは250分から360分、最も好ましくは200分から300分である。
【0045】
ステップ-2-一次乾燥
本発明における凍結乾燥工程は、一次乾燥ステップの開始温度が10℃から-50℃であることが好ましく、より好ましくは0℃から-45℃であり、最も好ましくは-30℃から-40℃である。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップの総時間は、好ましくは35から80時間、より好ましくは40から75時間、最も好ましくは50から60時間である。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップの開始温度に到達するのに要する時間は、好ましくは100分から1000分、より好ましくは250分から500分、最も好ましくは300分から400分である。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップの開始時の圧力は、好ましくは50mTorrから200mTorrである。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップ終了時の最高温度は、好ましくは5℃から25℃、より好ましくは8℃から22℃、最も好ましくは10℃から20℃である。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップの最高温度での保持時間は、好ましくは5から72時間、より好ましくは8から24時間、最も好ましくは10から14時間である。本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップの終了時の圧力は、好ましくは37mTorrから112mTorr、より好ましくは50mTorrから90mTorr、最も好ましくは60mTorrから80mTorrである。
【0046】
また、本発明における凍結乾燥工程の一次乾燥ステップは、1つ以上の中間乾燥ステップを含んでいてもよい。本発明における凍結乾燥工程の中間乾燥ステップの温度は、好ましくは-5℃から15℃、より好ましくは0℃から10℃、最も好ましくは3℃から7℃である。本発明における凍結乾燥工程の中間乾燥ステップでの保持時間は、好ましくは2から24時間、より好ましくは5から12時間、最も好ましくは8から10時間である。本発明における凍結乾燥工程の中間乾燥ステップでの圧力は、好ましくは75mTorrから200mTorr、最も好ましくは100mTorrから120mTorrである。
【0047】
ステップ-3-二次乾燥
一次乾燥サイクルが終了した時点で、乾燥した粉末には通常10%の水分が残っており、これを二次サイクルで除去する必要がある。これは凍結乾燥工程の最後のサイクルで、凍結していない水、すなわちアモルファス状態に関連する水を除去し、製品をさらに乾燥させて残留水分量を減少させる。
【0048】
本発明における凍結乾燥工程は、二次乾燥ステップの温度が10℃から37℃であることが好ましく、より好ましくは15℃から35℃であり、最も好ましくは20℃から30℃である。本発明における凍結乾燥工程の二次乾燥ステップの総時間は、好ましくは3から24時間、より好ましくは4から16時間、最も好ましくは4から7時間であり、本発明における凍結乾燥工程の二次乾燥ステップの保持時間は、好ましくは3から24時間、より好ましくは4から16時間、最も好ましくは4から7時間である。本発明における凍結乾燥工程の二次乾燥ステップの圧力は、好ましくは37mTorrから50mTorrである。
【0049】
凍結乾燥後
凍結乾燥後の1バイアルあたりの再構成量は、再構成後の希望投与量と凍結乾燥前のサンプルの初期濃度に応じて、1から5.5mLとすることができる。凍結乾燥した製品を必要な容量で再構成した後のペグアスパラガーゼの濃度は、750±20%IU/mlの範囲にある。
【0050】
用途
本発明の別の側面では、本発明の組成物は、取り扱いや輸送中に発生する温度変動にもかかわらず、長期間にわたって安定していることが確認された。これは、製品が室温だけでなく、30℃及び37℃でもかなりの時間安定しているためである。理論に制限されるものではないが、様々な成分を上記比率で最適に使用することで、凍結乾燥中及び凍結乾燥後の組成物の安定性が維持され、より安定した製品が得られることが提案される。本発明の組成物は、物理的完全性、生物学的活性及び化学的安定性を維持する凍結乾燥製品を実現することができる。
【0051】
さらに、本発明の組成物は、凍結乾燥後の純度が95%超えのペグアスパラガーゼを含む。この純度の高さにより、組成物は良好に安定化され、安定性に関する加速条件及び実時間条件のいずれにおいても劣化が少ないことがわかった。
【0052】
また、本発明の組成物は、本明細書の原則に従って成分を組み合わせて構成すると、適切な活性と保存期間中の安定性を有する組成物が得られるという点で、相乗効果がある。
【0053】
本発明の組成物の利点
1. 本発明の組成物は、固形状物質構造に望ましい機械的支持を与え、それによってペグアスパラガーゼの組成物に安定性を与えられ、凍結乾燥工程のストレスに対処する能力が高まり、結果として保存安定性のある製品を得ることができる。
【0054】
2. 本発明の工程は、他の先行技術の工程よりも凍結乾燥の時間が大幅に短縮されているため、凍結乾燥機の稼働時間が2日近く短縮され、設備の稼働率も向上し、経済的にも有効な工程となる。本発明のペグアスパラガーゼの新規組成物に最適化された凍結乾燥工程は、3日未満で完了し、約5日(112.5時間)の凍結乾燥工程に比べて著しく改善されている。
【0055】
3. 本発明の組成物では、凍結乾燥したペグアスパラガーゼの組成物に塩分濃度がないもの、又は塩分濃度が低いものを使用することができ、共晶温度やガラス転移温度の点で利点がある。
【0056】
4. 本発明で述べた新規の組成物は、より高い温度でも保存安定性のある製品を作り出す。凍結乾燥したペグアスパラガーゼの30℃での18ヶ月間の安定性と37℃での3ヶ月間の安定性は、液体製剤よりも熱安定性が向上していることを明確に示している。対象となる組成物の物理的、化学的、生物学的劣化は、加速保存と実時間保存の両方の条件で最小限に抑えられている。凍結乾燥したペグアスパラガーゼという新しい組成物は、輸送中や取り扱い中の温度変化に対応できるため、これは発展途上国にとって特に重要である。
【0057】
5. 本発明の凍結乾燥ペグアスパラガーゼの組成物は、凍結乾燥工程と同時に作り出されたものであり、製品に対する凍結乾燥条件のストレスを軽減することができる。本発明の組成物はペグアスパラガーゼの純度が高く、また、タンパク質の凍結乾燥によるストレスの結果として生成されることが多い分解物がないため、製品の免疫原性が低くなる(製品に関連する不純物(主に分解物)の存在が原因)。さらに、本発明では、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析したときに、他の先行技術の製品の場合に観察されるような、ストレスによる凝集が起こらず、より高い分子量の種が発生しません。先行技術製品の液体組成物には、高分子量の種の存在が見られなかったことに留意されたい。本発明の組成物に対応した新規の凍結乾燥工程を用いて開発された凍結乾燥ペグアスパラガーゼの新規組成物は、高分子量の種の存在を示さない。
【0058】
6. 本発明では、最適な量の賦形剤と最適な凍結乾燥工程に基づき、最適なコストで保存安定性の高い凍結乾燥製品を得ることができる。
【0059】
本発明は、本明細書において、実施例を用いて説明される。実施例は、本発明の組成物の説明と、凍結乾燥及び保存中のペグアスパラガーゼの保護を提供する。実施例は、本発明の一実施形態の説明であり、いかなる方法でも限定解釈されてはならない。
【実施例0060】
貯蔵安定性の高い製品を得るための凍結乾燥工程は、凍結乾燥後の製品の命運を決定する製剤の組成物に依存しているため、凍結乾燥サイクルと組成物を同時に開発する必要があることは、これまでに繰り返し述べてきたとおりである。実施例1及び2は、凍結乾燥工程と組成物の相互依存関係を詳細に示している。
【0061】
実施例1:賦形剤の効果
1.1凍結保護剤
ペグアスパラガーゼバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換した。バルク(原薬)は、(組成物の)様々な質量パーセントの凍結保護剤、すなわち、スクロースとトレハロースで製剤化した。製剤化されたペグアスパラガーゼの原液1mLを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの2mLのガラス製バイアルに充填し,13mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアル瓶を半分だけ閉じた状態で、凍結乾燥工程にかけた。
【0062】
凍結乾燥工程の凍結ステップでは、初期凍結は、凍結速度1.08℃/分で1時間かけて-40℃にして行い、バイアルを3時間保持した。一次乾燥ステップでは、112mTorrの条件下で0.028℃/分の速度で-5℃まで昇温し、その温度で6時間保持した。さらに0.006℃/分の速度で0℃まで昇温し、112mTorrの圧力下で0℃に6時間保持した。最後に、0.03℃/分の速度で20℃まで昇温し、112mTorrの圧力で5時間保持した。二次乾燥ステップでは、圧力をさらに37mTorrまで下げ、温度を0.17℃/分の速度で25℃まで上昇させ、5時間維持した。凍結乾燥工程の総時間は76.5時間である。
【0063】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを13mmのフリップオフシールで密封し、分析的特性評価を行った。凍結乾燥した製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、及び相対的な活性度(凍結乾燥前のサンプルに対する相対値)を測定した。凍結保護剤が異なるペグアスパラガーゼの様々な組成物の凍結乾燥工程の結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
凍結乾燥製品の組成物の種々の割合での様々な凍結保護剤の存在下における製剤化ペグアスパラガーゼの固形状物質の構造は、満足のいくものではなかった。そのため、満足のいく結果を得るためには増量剤の添加が必要であった。
【0066】
1.2増量剤
ペグアスパラガーゼバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換した。バルク(原薬)は、(組成物の)様々な質量パーセントの増量剤、すなわち、マンニトールとグリシンで製剤化した。製剤化ペグアスパラガーゼの原液1mLを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの2mLのガラス製バイアルに充填し,13mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアル瓶を半分だけ閉じた状態で、凍結乾燥工程にかけた。
【0067】
凍結乾燥工程の凍結ステップでは、初期凍結は、凍結速度1.08℃/分で1時間かけて-40℃にして行い、バイアルを3時間保持した。一次乾燥ステップは、112mTorrの条件下で0.028℃/分の速度で-35℃まで昇温させ、その温度で10時間保持した。さらに0.11℃/分の速度で5℃まで昇温し、112mTorrの圧力下で5℃に9時間保持した。最後に、0.13℃/分の速度で15℃まで昇温し、75mTorrの減圧下で15℃に12時間保持した。二次乾燥ステップでは、圧力をさらに37mTorrまで下げ、温度を0.33℃/分の速度で25℃まで昇温させ、5時間維持した。凍結乾燥工程のそう時間は53時間である。
【0068】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを13mmのフリップオフシールで密封し、分析的特性評価を行った。凍結乾燥した製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、相対的な活性度と純度(凍結乾燥前のサンプルに対する相対値)を測定した。増量剤が異なるペグアスパラガーゼの様々な組成物の凍結乾燥工程の結果を表2に示す。
【0069】
【0070】
固形状物質の構造を
図1に示す。このデータセットから明らかなように、増量剤のグリシンは固形状物質の構造に大きく貢献しており、また、活性を許容範囲内(600 IU/mLから900 IU/mL)に保持している。この凍結乾燥工程の増量剤がない場合の固形状物質構造は、薬剤的には許容できるものであるが、ペグアスパラガーゼの活性と純度は非常に低い。増量剤としてマンニトールを使用した場合、活性と純度は維持されるが、この凍結乾燥工程では良好な固形状物質の構造が示されない。
【0071】
1.3塩の影響
ペグアスパラガーゼバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換し、スクロース(凍結保護剤/抗凍結剤)、種々の量の増量剤(グリシン)、種々の量(組成物の質量%)の塩で製剤化した。製剤化したバルク2mlを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの5mLガラス製バイアルに充填し、20mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアル瓶を半分だけ閉じた状態で、最適化された凍結乾燥工程にかけた。
【0072】
凍結乾燥ステップでは、-40℃で4時間行った。凍結温度は1℃/分の凍結速度で凍結温度に到達させた。一次乾燥ステップでは、112mTorrの圧力下で0.014℃/分の速度で-35℃まで昇温させ、その温度で10時間保持した。さらに、112mTorrの圧力下で0.06℃/分の速度で5℃まで昇温させ、5℃で9時間保持した。圧力を75mTorrまで下げ、温度を0.02℃/分の速度で15℃まで昇温し、12時間保持した。二次乾燥サイクルでは、さらに圧力を37mTorrまで下げ、温度を0.33℃/分の速度で25℃まで昇温させ、5時間維持した。
【0073】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを20mmのフリップオフシールで密封した。凍結乾燥した製品を5mLの注射用水で再構成し、分析的特性評価を行った。凍結乾燥した製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、相対的な活性度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で測定したパーセンテージで表される)絶対的な純度、及びオスモル濃度を測定した。ペグアスパラガーゼの様々な組成物に対する凍結乾燥工程の結果を表3に示す。
【0074】
【0075】
最適化された凍結乾燥工程は、製品の重要な属性を変えることなく、塩分濃度の低い組成物や塩分濃度のない組成物に使用できることが明らかである。
【0076】
実施例2:同じ組成物に対する種々の凍結乾燥サイクルの影響
ペグアスパラガーゼバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換した。バルク(原薬)は、スクロース(組成物において34.3%の凍結保護剤/抗凍結材)及びグリシン(組成物において51.5%の増量剤)とともに製剤化した。製剤化したバルク1mlを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの2mLガラス製バイアルに充填し、13mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアルには、様々な凍結乾燥工程が施された。
【0077】
様々な凍結乾燥工程の凍結ステップは、様々な期間と温度で実施した。いくつかのケースでは、シングルステップの凍結が行われ、他のケースではマルチステップの凍結が行われた。1つのサイクルにおいて、最初の凍結は、1.16℃/分の凍結速度で2時間かけて-15℃にして行われた。その後、0.33℃/分の凍結速度でさらに温度を下げて-25℃とし、バイアルを3時間保持した。最後に、0.5℃/分の凍結速度で-40℃まで温度を下げ、バイアルを2時間保持した。凍結ステップの総時間は8.5時間であった。別のサイクルでは、凍結乾燥工程の凍結ステップは、-40℃で3時間行った。凍結温度は1℃/分の凍結速度に達した。凍結ステップの総時間は4時間であった。別のサイクルでは、凍結乾燥工程の凍結ステップを-40℃で6時間行った。凍結温度は、0.5℃/分の凍結速度に達した。凍結ステップの総時間は8時間であった。さらに別のサイクルでは、凍結乾燥工程の凍結ステップを40℃で4時間行った。凍結温度に1℃/分の凍結速度に達した。凍結ステップの総時間は5時間であった。
【0078】
凍結乾燥サイクルの一次乾燥ステップは、温度、圧力、時間に関しても変化させた。1つのサイクルでは、一次乾燥ステップにおいて、112mTorrの条件下で0.028℃/分の速度で温度を-5℃にし、その温度で6時間保持した。さらに、0.006℃/分の速度で温度を0℃にし、112mTorrの圧力下で0℃、6時間保持した。最後に、0.03℃/分の速度で20℃まで昇温し、112mTorrの圧力下で5時間、20℃に維持した。一次乾燥ステップの総時間は61.5時間であった。一次乾燥ステップの別のサイクルでは、112mTorrの条件下で0.15℃/分の速度で温度を-5℃にし、その温度で14時間保持した。さらに、0.06℃/分の速度で温度を5℃にし、112mTorrの圧力下で5℃、9時間維持した。最後に、圧力を75mTorrまで下げ、温度を0.067℃/分の速度で15℃まで上げ、6時間維持した。一次乾燥ステップの総時間は38.5時間であった。一次乾燥ステップの別のサイクルでは、112mTorrの条件下で温度を0.027℃/分の速度で-35℃まで上げ、その温度で10時間保持した。さらに、0.11℃/分の速度で温度を5℃にし、112mTorrの圧力下で5℃、9時間維持した。最後に、圧力を75mTorrまで下げ、温度を0.067℃/分の速度で15℃まで上げ、12時間維持した。一次乾燥ステップの総時間は42.5時間であった。一次乾燥ステップの別のサイクルでは、112mTorrの条件下で温度を0.027℃/分の速度で-35℃まで上げ、その温度で10時間保持した。さらに、0.11℃/分の速度で温度を5℃にし、112mTorrの圧力下で5℃、9時間維持した。さらに、0.014℃/分の速度で温度を10℃にし、112mTorrの圧力下で24時間、10℃に維持した。最後に、圧力を75mTorrまで下げ、温度を0.033℃/分の速度で15℃まで上げ、12時間維持した。一次乾燥ステップの総時間は72.5時間であった。さらに、一次乾燥ステップの別のサイクルでは、112mTorrの条件下で温度を0.027℃/分の速度で-35℃にし、その温度で6時間保持した。さらに、0.138℃/分の速度で温度を15℃にし、112mTorrの圧力下で15℃、9時間維持した。最後に、15℃で5時間かけて75mTorrまで減圧し、12時間維持した。一次乾燥ステップの総時間は38.5時間であった。
【0079】
凍結乾燥サイクルの二次乾燥ステップも、温度、圧力、時間に関して変化させた。あるサイクルでは、二次乾燥ステップの圧力を37mTorrまで下げ,温度を0.16℃/分の速度で25℃まで上昇させ、5時間維持した。二次乾燥ステップの総時間は5.5時間であった。1サイクルでは、二次乾燥ステップにおいて、圧力を37mTorrまでさらに下げ、温度を0.33℃/分の速度で25℃まで上げて5時間維持した。二次乾燥ステップの総時間は5.5時間であった。さらに、1つのサイクルでは、二次乾燥ステップにおいて、圧力を37mTorrまでさらに下げ、温度を0.33℃/分の速度で25℃まで上昇させ、9時間維持した。二次乾燥ステップの総時間は9.5時間であった。
【0080】
凍結乾燥工程の完了時間は48時間から83.5時間まで様々であった。
【0081】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを13mmのフリップオフシールで密封し、分析的特性評価を行った。凍結乾燥した製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、相対的な活性度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、相対純度(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で測定した凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、及びオスモル濃度を測定した。凍結乾燥した製品は、良好で満足のいく固形状物質の形成、許容可能な再構成時間(2分未満)を有し、再構成されたサンプルは無色透明であった。しかし、表4に示すように、相対的な活性度と純度にはかなりのばらつきがあった。この結果は、凍結乾燥工程の変化により、同じ組成物に付与されるストレス条件が異なるためと予想される。
【0082】
【0083】
実施例3:本発明の組成物の例示的な例-低塩
ペグアスパラガーゼのバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換した。凍結防止剤としてシヨ糖、増量剤としてグリシンを加え、最終的に18751U/mLになるように希釈し、必要なバルクを製剤化した。ペグアスパラガーゼ、スクロース、グリシン、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムをそれぞれ組成物の13.67%から7.04%、39.60%から36.78%、47.52%から44.13%、0.95%から0.88%、4.42%から4.10%、0.47%から0.43%の割合で含む最終製剤を得た。製剤化したバルク2mlを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの5mLガラス製バイアルに充填し、20mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアル瓶を半分だけ閉じた状態で、最適化された凍結乾燥工程にかけた。
【0084】
凍結乾燥工程の凍結ステップは、-40℃で4時間行った。凍結温度は1℃/分の凍結速度で達した。一次乾燥サイクルでは、112mTorrの条件下で0.014℃/分の速度で-35℃まで昇温し、その温度で10時間保持した。さらに、0.06℃/分の速度で5℃まで昇温し、112mTorrの圧力下で9時間、5℃に維持した。圧力を75mTorrまで下げ、温度を0.02℃/分で15℃まで上げ、12時間保持した。二次乾燥サイクルでは、圧力をさらに37mTorrまで下げ、温度を0.33℃/分の速度で25℃まで上げ、5時間維持した。凍結乾燥工程の総時間は66.5時間である。
【0085】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを20mmのフリップオフシールで密封した。凍結乾燥した製品を5mLの注射用水で再構成し、分析特性評価を行った(表5)。
【0086】
【0087】
図2は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定された凍結乾燥前及び凍結乾燥後のペグアスパラガーゼの完全性と純度を示している。
【0088】
組成物及び凍結乾燥サイクルの工程の堅牢性を複数のバッチで検証した。凍結乾燥された製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、絶対的な活性度、相対的な活性度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、絶対的な純度(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で測定したパーセンテージで表示)、相対的な純度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、オスモル濃度、水分含有量を測定した。製品の特性は、代表的な3つのバッチについて、表6に示す合格基準に適合する。
【0089】
【0090】
凍結乾燥した製品は,ICH品質ガイドライン(Q1A)に従って,5℃±3℃で24ヶ月間の長期安定性試験と、25℃±2℃/60%±5%相対湿度で6ヶ月の加速安定性試験を実施した。凍結乾燥の結果、常温(5℃±3℃)及び25℃±2℃/60%±5%相対湿度での各時点における製品ペグアスパラガーゼの結果をそれぞれ表7及び表8に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
製品の特性は、5℃±3℃で24ヶ月間、25℃±2℃/60%±5%相対湿度で6ヶ月間安定しており、全期間において合格基準に適合していた。さらに、凍結乾燥製品の高温での安定性を評価するために、30℃±2℃/65%±5%相対湿度で18ヶ月間の長期安定性試験と、37℃±2℃/75%±5%相対湿度で3ヶ月間の加速安定性試験を行った。30℃±2℃/65%±5%相対湿度及び37℃±2℃/75%±%相対湿度での各時点でのペグアスパラガーゼの凍結乾燥工程の結果をそれぞれ表9及び表10に示す。製品の特性は、30℃±2℃/65%±5%相対湿度で18ヶ月間、37℃±2℃/75%±5%相対湿度で3ヶ月間安定しており、全期間において合格基準を満たしていた。
【0094】
【0095】
【0096】
実施例4:本発明の組成物の例示的な例-無塩
ペグアスパラガーゼのバルクは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で緩衝液交換した。必要な濃縮バルクは、凍結保護剤/抗凍結剤としてスクロースを、増量剤としてグリシンを用い、最終的に18751U/mLになるように希釈して製剤化した。最終的な製剤は、ペグアスパラガーゼ、スクロース、グリシン、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウムで構成され、それぞれ組成物の12.57%から9.60%、38.71%から37.43%、46.45%から44.92%、0.93%から0.90%、4.32%から4.18%を含むようにした。製剤化したバルク2mlを、非経口投与に推奨される滅菌済み且つ発熱物質除去済みUSPタイプIの5mLガラス製バイアルに充填し、20mmのグレーのブロモブチルコーティングされたゴム栓で半分だけ閉じた。このバイアル瓶を半分だけ閉じた状態で、最適化された凍結乾燥工程にかけた。
【0097】
凍結工程の凍結ステップは、4時間かけて-40℃で行われた。凍結温度には1℃/分の凍結速度で到達した。一次乾燥サイクルでは、112mTorrの圧力下で0.014℃/分の速度で温度を-35℃まで上げ、その温度で10時間保持した。さらに、0.06℃/分の速度で温度を5℃まで上げ、112mTorrの圧力下で5℃、9時間保持した。圧力を75mTorrまで下げ、0.02℃/分の速度で温度を15℃まで上げ、12時間維持した。二次乾燥サイクルでは、圧力をさらに37mTorrまで下げ、温度を25℃まで0.33℃/分の速度で上昇させ、5時間維持した。凍結乾燥工程の総時間は66.5時間である。
【0098】
凍結乾燥工程の完了後、棚を上方に移動させることによってバイアルを完全に閉じた。その後、凍結乾燥室に滅菌した窒素ガスを導入して圧力を解放した。その後、凍結乾燥したバイアルを20mmのフリップオフシールで密封した。凍結乾燥した製品を5mLの注射用水で再構成し、分析特性評価を行った(表11)。
【0099】
【0100】
組成物及び凍結乾燥サイクルの工程の堅牢性を複数のバッチで検証した。凍結乾燥した製品について、固形状物質の構造、再構成時間、再構成後の透明度、絶対的な活性度、相対的な活性度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、絶対的な純度(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)で測定したパーセンテージで表示)、相対的な純度(凍結乾燥前のバルクに対する相対値)、オスモル濃度、水分含有量を測定した。製品の特性は、代表的な3つのバッチについて、表12に示す合格基準に適合した。
【0101】
【0102】
食塩を含まない凍結乾燥品を、5℃±3℃、25℃±2℃/60%±5%、30℃±2℃/65%±5%相対湿度、37℃±2℃/75%±5%相対湿度で長期安定性試験を行い、1ヶ月間のデータを表13に、3ヶ月間のデータを表14に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
実施例5:本発明の組成物と先行技術との比較
5.1 先行技術の液体組成物 対 本発明の固体組成物
先行技術で報告されているペグアスパラガーゼは、一般的に液体組成物として提示されており、より長い期間及びより高い温度での保存安定性がない。本発明は、様々な温度で保存安定な凍結乾燥組成物を開示するものである。従来の技術では、ペグアスパラガーゼは長期間安定ではないとされていた。本発明は、この制限を克服し、保存安定性のある組成物を提供する。先行技術の製品は、25℃±2℃/60%±5%相対湿度で3ヶ月以内に大幅に劣化する。
図3に示すように、液体製剤の劣化は、SDS-PAGEで分析した液体組成物の25℃±2℃/60%±5%相対湿度における複数のバンドの存在によって明らかである(
図3(A))。本発明により、25℃±2℃/60%±5%相対湿度、30℃±2℃/65%±5%相対湿度、37℃±2℃/75%±5%相対湿度で安定な保存安定製剤が得られる。本発明の組成物の安定性は、
図3(B)に示すように、適切な分子量の単一の拡散バンドの存在から明らかである
【0106】
5.2 先行技術の固体組成物 対 本発明の固体組成物
先行技術では、保存安定性の高い組成物が開示されているが、凍結乾燥製品では高分子量の凝集物が発生するという制限がある。本開示では、発明的な工程と改良された組成物を使用しており、さらなる凝集物/高分子不純物がない(
図4参照)。
図4は、本発明による先行技術の凍結乾燥組成物のSDS-PAGE分析を示す。SDS-PAGEゲルは、タンパク質クマシー染色(
図4(A))及びPEGヨウ素染色(
図4(B))から明らかなように、高分子量不純物の存在を確認している。さらに、抗アスパラギナーゼ抗体(
図4(C))及び抗PEG抗体(
図4(B))を用いたウェスタンブロット分析により、製品に関連する不純物の存在が確認された。このことは、凍結乾燥工程と製剤の組成物との相乗効果をさらに強調するものである。なお、先行技術製品の液体組成物では、高分子量の種の存在が確認されなかったことに注目したい。
前記緩衝剤は、リン酸緩衝剤、リン酸ナトリウム緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素ニナトリウム)、リン酸カリウム緩衝剤(リン酸二水素カリウム-リン酸水素ニカリウム)、TRIS、クエン酸緩衝剤からなる群より選択され、好ましくは、リン酸緩衝剤であり、
前記緩衝剤は、前記組成物の3から33%、より好ましくは3から15%、最も好ましくは4から6%の範囲である、
請求項1に記載の組成物。
a. 凍結ステップ、
b. 任意にアニーリングステップ、
c. 一次乾燥ステップ、及び
d. 二次乾燥ステップからなる、
請求項1に記載の組成物を調製するための組成物調製工程。
凍結乾燥工程の総時間は、好ましくは2880分(48時間)から5790分(96.5時間)、より好ましくは3120分(52時間)から4980分(83時間)、最も好ましくは3120分(52時間)から4200分(70時間)であり、
温度の変化は、-60℃から30℃であり、より好ましくは-50℃から30℃であり、最も好ましくは-40℃から25℃であり、
圧力の変化は、好ましくは0.037Torrから760Torrである、
請求項9に記載の組成物調製工程。
バイアルあたりの再構成量は、凍結乾燥後は1から5.5mLであり、凍結乾燥前は前記組成物の4から25%の範囲が好ましく、より好ましくは6から20%の範囲、最も好ましくは8から16%の範囲であり、ペグアスパラガーゼの最終濃度が750±20%IU/mlの範囲である、
請求項1に記載の組成物。