(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028912
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】タンパク質生産の間の代謝酵素活性およびジスルフィド結合還元
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240227BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207233
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2020549574の分割
【原出願日】2019-03-15
(31)【優先権主張番号】62/644,181
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジョセフ・キュラ
(72)【発明者】
【氏名】シュアンクオ・シュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンジアン・リ
(72)【発明者】
【氏名】サンチャイタ・ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・イーガン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元を評価するための方法を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態において、該開示は、目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法に関し、ここで少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは、測定され、かつ該目的のタンパク質のジスルフィド結合還元または低分子重量種の発生に関連するベンチマーク値を提供する。いくつかの実施形態において、該開示は、目的のタンパク質を生産する方法に関し、ここで目的のタンパク質を生産できる宿主細胞は培養され、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは測定され、かつ目的のタンパク質の下流単離は宿主細胞タンパク質測定により知らされる。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元の発生を予測する方法であって、該方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルが該目的のタンパク質のジスルフィド結合還元の発生に関連する、方法。
【請求項2】
目的のタンパク質を含む組成物中のインタクトな単量体タンパク質種のジスルフィド還元の発生を予測する方法であって、該方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルが該目的のタンパク質のインタクトな単量体タンパク質種のジスルフィド還元の発生に関連する、方法。
【請求項3】
目的のタンパク質を生産する方法であって、
a)該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を培養すること;
b)該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルまたは活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定すること;および
c)宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルのいずれかがベンチマーク値より下である場合に、該目的のタンパク質を単離すること
を含む、方法。
【請求項4】
目的のタンパク質を含む組成物が、細胞培養から生産される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
該細胞培養が、該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該宿主細胞タンパク質の発現レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の発現レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも3つの宿主細胞タンパク質の発現レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つのタンパク質の発現レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該宿主細胞タンパク質の活性レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の活性レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つのタンパク質の活性レベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該バイオリアクター代謝物のレベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つのバイオリアクター代謝物のレベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも3つのバイオリアクター代謝物のレベルが、決定される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの宿主細胞タンパク質が、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される、請求項6-8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの宿主細胞タンパク質が、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される、請求項6-8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの宿主細胞タンパク質が、チオレドキシンレダクターゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)からなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルは、測定され、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性のレベルは、測定され、および/または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルは、測定される、請求項1-18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
発現レベルが、細胞培養液中で測定される、請求項1-9、16、17、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
発現レベルが、細胞内で測定される、請求項1-9、16、17、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
細胞内発現レベルが、細胞培養ライセート中で測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
発現レベルが、ウェスタンブロット分析またはqPCR分析により測定される、請求項1-9、16、17、および19-22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
チオレドキシンレダクターゼ活性レベルが、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)活性レベルが、G6PD活性アッセイにより測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)活性レベルが、GAPDH活性アッセイにより測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
バイオリアクター代謝物のレベルが、細胞培養液中で測定される、請求項1-5、13-15、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生が、キャピラリー電気泳動により検出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項29】
チオレドキシンの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値がウェスタンブロット分析により決定されるとき約200%のチオレドキシン相対バンド強度である、請求項1-9および22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
チオレドキシンレダクターゼの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値がウェスタンブロット分析により決定されるとき約160%のチオレドキシンレダクターゼ相対バンド強度である、請求項1-9および22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
GAPDHの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値がウェスタンブロット分析により決定されるとき約140%のGAPDH相対バンド強度である、請求項1-9および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
チオレドキシンレダクターゼの活性レベルは、測定され、かつベンチマーク値がチオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより決定されるとき60秒後にa.0の相対TrxR活性(AU)である、請求項1-5、10、11、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)の活性レベルは、測定され、かつベンチマーク値がG6PD活性アッセイにより決定されるとき3.0の正規化されたレゾルフィン蛍光(AU)である、請求項1-5、10、11、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の活性レベルは、測定され、かつGAPDH活性アッセイにより決定されるとき該対照と比較して正規化されたGAPDH活性における減少、請求項1-5、10、11、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
目的のタンパク質が、抗体またはその抗原結合断片である、請求項1-35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
抗体が、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗体が、IgGアイソタイプのものである重鎖定常領域を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
IgGサブタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
宿主細胞が、哺乳類細胞である、請求項3-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
細胞培養が、バッチ、流加培養、または灌流培養である、請求項3-5、39、および40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
該哺乳類細胞の初期密度が、少なくとも2x102細胞/mL;少なくとも2x103細胞/mL;少なくとも2x104細胞/mL;少なくとも2x105細胞/mL;少なくとも2x106細胞/mL;少なくとも5x106細胞/mL;または少なくとも10x106細胞/mLである、請求項39-40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
細胞が、最大生細胞密度の少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95または少なくとも99パーセントの所望の生細胞密度に到達するのに十分な期間増殖される、請求項3-5および39-41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
細胞が、バイオリアクター中で増殖される、請求項3-5、および39-41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
バイオリアクターが、N-1シードバイオリアクターである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
バイオリアクターが、目的のタンパク質の大規模生産のために使用される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
バイオリアクターが、1,000L、2,500L、5,000L、8,000L、10,000L、12,000L、または15,000Lバイオリアクターである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
培養の生細胞密度が、定期的に測定される、請求項3-5および39-47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
培養のパーセント生存性が、定期的に測定される、請求項3-5および39-48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
培養の乳酸レベルが、定期的に測定される、請求項3-5および39-49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
培養のアンモニウムレベルが、定期的に測定される、請求項3-5および39-50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
目的のタンパク質の力価が、定期的に測定される、請求項3-5または39-51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
培養の浸透圧が、定期的に測定される、請求項3-5または39-52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
培養物中の溶存酸素の量が、定期的に測定される、請求項3-5または39-53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
培養のpCO2レベルが、定期的に測定される、請求項3-5または39-54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
培養のpHが、定期的に測定される、請求項3-5または39-55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
培養のグルタミンレベルが、定期的に測定される、請求項3-5または39-56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
培養のグルタミン酸レベルが、定期的に測定される、請求項3-5または39-57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
培養のグルコースレベルが、定期的に測定される、請求項3-5または39-58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルが、定期的に測定される、請求項3-5または39-59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
測定が、細胞培養の増殖フェーズの間行われる、請求項48-60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
測定が、細胞培養の移行フェーズの間行われる、請求項48-61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
測定が、細胞培養の生産フェーズの間行われる、請求項48-62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
該測定が、毎日行われる、請求項48-62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
発現または活性レベルが、細胞培養のスタート後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日に測定される、請求項3-5または39-59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
宿主細胞タンパク質が、CHO細胞タンパク質である、請求項1-65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
目的の抗体を生産する方法であって、
a)該抗体を生産することができる宿主細胞を培養すること;
b)目的の該抗体でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルまたは活性レベルを測定すること;
c)宿主細胞タンパク質発現または活性レベルのいずれかがベンチマーク値より上である場合、該宿主細胞の少なくとも1つの増殖条件を変更すること;および
d)目的の該抗体を単離すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の背景
広範囲の疾患を標的とするバイオ医薬品に対する増加した需要に伴い、現代の開発努力は、処理関連不純物を制御しながら、モノクローナル抗体(mAb)産物収量を最大化することに重く当てられる。より高い宿主細胞密度、力価、および生産性の予期せぬ副作用の1つは、採取された細胞培養液(HCCF)中の宿主細胞タンパク質(HCP)の増加した存在である。増加したHCPは、下流不純物クリアランス努力をさらに困難にするだけでなく、精製が始まる前であってもmAb安定性に影響を与えることもできる。増加したHCPの1つのかかる結果は、インタクトなmAbのチオレドキシン(Trx)誘導ジスルフィド結合還元および低分子重量種(LMW)の後続の形成である。ジスルフィド還元は、産物安定性、効力、および患者安全性への直接的なリスクであり;還元の酵素メカニズムによりよく確立されているが、HCCF中の増加したレダクターゼ活性および発現につながる細胞メカニズムは不明なままである。さらに、ジスルフィド還元におけるバッチ間変動性は、かかるメカニズムを研究することを困難にする。
【背景技術】
【0002】
従って、細胞培養におけるジスルフィド結合還元に関連するマーカーを同定するための、およびかかるマーカーを利用して採取前にジスルフィド結合リスクを確実に予測する方法の開発のための当該技術分野における必要がある。
【発明の概要】
【0003】
該開示の要約
1つの実施形態において、本開示は、目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元の発生を予測する方法に関し、該方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルは該目的のタンパク質のジスルフィド結合還元の発生に関連する。
【0004】
1つの実施形態において、本開示は、目的のタンパク質を含む組成物中のインタクトな単量体タンパク質種のジスルフィド還元の発生を予測する方法に関し、該方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルは該目的のタンパク質のインタクトな単量体タンパク質種のジスルフィド還元の発生に関連する。
【0005】
1つの実施形態において、本開示は、目的のタンパク質を生産する方法に関し、該方法は、a)該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を培養すること;b)該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルまたは活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定すること;およびc)宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルのいずれかがベンチマーク値より下である場合に、該目的のタンパク質を単離することを含む。
【0006】
1つの実施形態において、本開示は、目的の抗体を生産する方法に関し、該方法は、a)該抗体を生産することができる宿主細胞を培養すること;b)目的の該抗体でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルまたは活性レベルを測定すること、または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルを測定すること;c)宿主細胞タンパク質発現、活性、またはバイオリアクター代謝物レベルのいずれかがベンチマーク値より下である場合に、該宿主細胞の少なくとも1つの増殖条件を変えること;およびd)目的の該抗体を単離することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を含む組成物は、細胞培養から生産される。いくつかの実施形態において、細胞培養は、該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現レベルは、決定される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の発現レベルは、決定される。いくつかの実施形態において、少なくとも3つの宿主細胞タンパク質の発現レベルは、決定される。
【0009】
いくつかの実施形態において、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルは、決定される。
【0010】
いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の活性レベルは、決定される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の活性レベルは、決定される。
【0011】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター代謝物のレベルは、測定される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのバイオリアクター代謝物のレベルは、測定される。いくつかの実施形態において、少なくとも3つのバイオリアクター代謝物のレベルは、測定される。
【0012】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質は、チオレドキシンレダクターゼまたはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルは、測定され、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性のレベルは、測定され、および/または少なくとも1つのバイオリアクター代謝物のレベルは、測定される。
【0014】
いくつかの実施形態において、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルは、決定される。
【0015】
いくつかの実施形態において、発現レベルは、細胞培養液中で測定される。いくつかの実施形態において、発現レベルは、細胞内で測定される。いくつかの実施形態において、細胞内発現レベルは、細胞培養ライセート中で測定される。いくつかの実施形態において、発現レベルは、ウェスタンブロット分析またはqPCR分析により測定される。
【0016】
いくつかの実施形態において、チオレドキシンレダクターゼ活性レベルは、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)活性レベルは、G6PD活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)活性レベルは、GAPDH活性アッセイにより測定される。
【0017】
いくつかの実施形態において、バイオリアクター代謝物のレベルは、細胞培養液中で測定される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、キャピラリー電気泳動により検出される。
【0019】
いくつかの実施形態において、チオレドキシンの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約200%のチオレドキシン相対バンド強度である。いくつかの実施形態において、チオレドキシンレダクターゼの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約160%のチオレドキシンレダクターゼ相対バンド強度である。いくつかの実施形態において、GAPDHの発現レベルは、測定され、かつベンチマーク値は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約140%のGAPDH相対バンド強度である。
【0020】
いくつかの実施形態において、チオレドキシンレダクターゼの活性レベルは、測定され、かつベンチマーク値は、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより決定されるとき60分後の1.0の相対TrxR活性(A.U.)である。いくつかの実施形態において、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)の活性レベルは、測定され、かつベンチマーク値は、G6PD活性アッセイにより決定されるとき3.0の正規化されたレゾルフィン蛍光(AU)である。いくつかの実施形態において、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の活性レベルは、測定され、タンパク質濃度に正規化される。
【0021】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、抗体は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、IgGサブタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。
【0022】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0023】
いくつかの実施形態において、細胞培養は、バッチ、流加培養、または灌流培養である。いくつかの実施形態において、哺乳類細胞の初期密度は、少なくとも2x102細胞/mL;少なくとも2x103細胞/mL;少なくとも2x104細胞/mL;少なくとも2x105細胞/mL;少なくとも2x106細胞/mL;少なくとも5x106細胞/mL;または少なくとも10x106細胞/mLである。いくつかの実施形態において、細胞は、最大生細胞密度の少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95または少なくとも99パーセントの所望の生細胞密度に到達するのに十分な期間、増殖される。
【0024】
いくつかの実施形態において、細胞は、バイオリアクター中で増殖される。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、N-1シードバイオリアクターである。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、目的のタンパク質の大規模生産のために使用される。いくつかの実施形態において、バイオリアクターは、1,000L、2,500L、5,000L、8,000L、10,000L、12,000L、または15,000Lバイオリアクターである。
【0025】
いくつかの実施形態において、培養の生細胞密度は、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養の乳酸レベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のアンモニウムレベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質の力価は、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養の浸透圧(osmolarity)は、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養物における溶存酸素の量は、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のpCO2レベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のpHは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のグルタミンレベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のグルタミン酸レベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、培養のグルコースレベルは、定期的に測定される。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは、定期的に測定される。
【0026】
いくつかの実施形態において、測定は、細胞培養の増殖フェーズの間行われる。いくつかの実施形態において、測定は、細胞培養の移行フェーズの間行われる。いくつかの実施形態において、測定は、細胞培養の生産フェーズの間行われる。いくつかの実施形態において、測定は、毎日行われる。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは、細胞培養のスタート後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日に測定される。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質は、CHO細胞タンパク質である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1-1】
図1A-1Jは、モノクローナル抗体についての製造規模および実験室規模実行における12のモニターされた上流パラメーターについての傾向を示す。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す実行は平均化され、各パラメーターについて平均+SEMとして表される。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す試料間の差異は、両側対応t検定により分析された。各試料について、
図1AはバイオリアクターpHプロファイル、
図1Bはバイオリアクターグルタミンプロファイル、
図1Cはバイオリアクター乳酸プロファイル、
図1Dはバイオリアクターアンモニウムプロファイル、
図1Eはバイオリアクター生細胞密度、
図1Fはバイオリアクターパーセント細胞生存性、
図1Gはバイオリアクター溶存酸素含量、
図1HはバイオリアクターpCO
2含量、
図1Iはバイオリアクターグルタミン酸プロファイル、および
図1Jはバイオリアクターグルコースプロファイルを示す。
【
図1-2】
図1A-1Jは、モノクローナル抗体についての製造規模および実験室規模実行における12のモニターされた上流パラメーターについての傾向を示す。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す実行は平均化され、各パラメーターについて平均+SEMとして表される。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す試料間の差異は、両側対応t検定により分析された。各試料について、
図1AはバイオリアクターpHプロファイル、
図1Bはバイオリアクターグルタミンプロファイル、
図1Cはバイオリアクター乳酸プロファイル、
図1Dはバイオリアクターアンモニウムプロファイル、
図1Eはバイオリアクター生細胞密度、
図1Fはバイオリアクターパーセント細胞生存性、
図1Gはバイオリアクター溶存酸素含量、
図1HはバイオリアクターpCO
2含量、
図1Iはバイオリアクターグルタミン酸プロファイル、および
図1Jはバイオリアクターグルコースプロファイルを示す。
【
図1-3】
図1A-1Jは、モノクローナル抗体についての製造規模および実験室規模実行における12のモニターされた上流パラメーターについての傾向を示す。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す実行は平均化され、各パラメーターについて平均+SEMとして表される。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す試料間の差異は、両側対応t検定により分析された。各試料について、
図1AはバイオリアクターpHプロファイル、
図1Bはバイオリアクターグルタミンプロファイル、
図1Cはバイオリアクター乳酸プロファイル、
図1Dはバイオリアクターアンモニウムプロファイル、
図1Eはバイオリアクター生細胞密度、
図1Fはバイオリアクターパーセント細胞生存性、
図1Gはバイオリアクター溶存酸素含量、
図1HはバイオリアクターpCO
2含量、
図1Iはバイオリアクターグルタミン酸プロファイル、および
図1Jはバイオリアクターグルコースプロファイルを示す。
【
図1-4】
図1A-1Jは、モノクローナル抗体についての製造規模および実験室規模実行における12のモニターされた上流パラメーターについての傾向を示す。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す実行は平均化され、各パラメーターについて平均+SEMとして表される。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す試料間の差異は、両側対応t検定により分析された。各試料について、
図1AはバイオリアクターpHプロファイル、
図1Bはバイオリアクターグルタミンプロファイル、
図1Cはバイオリアクター乳酸プロファイル、
図1Dはバイオリアクターアンモニウムプロファイル、
図1Eはバイオリアクター生細胞密度、
図1Fはバイオリアクターパーセント細胞生存性、
図1Gはバイオリアクター溶存酸素含量、
図1HはバイオリアクターpCO
2含量、
図1Iはバイオリアクターグルタミン酸プロファイル、および
図1Jはバイオリアクターグルコースプロファイルを示す。
【
図1-5】
図1A-1Jは、モノクローナル抗体についての製造規模および実験室規模実行における12のモニターされた上流パラメーターについての傾向を示す。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す実行は平均化され、各パラメーターについて平均+SEMとして表される。ジスルフィド結合還元を示すかまたはジスルフィド結合還元が無いことを示す試料間の差異は、両側対応t検定により分析された。各試料について、
図1AはバイオリアクターpHプロファイル、
図1Bはバイオリアクターグルタミンプロファイル、
図1Cはバイオリアクター乳酸プロファイル、
図1Dはバイオリアクターアンモニウムプロファイル、
図1Eはバイオリアクター生細胞密度、
図1Fはバイオリアクターパーセント細胞生存性、
図1Gはバイオリアクター溶存酸素含量、
図1HはバイオリアクターpCO
2含量、
図1Iはバイオリアクターグルタミン酸プロファイル、および
図1Jはバイオリアクターグルコースプロファイルを示す。
【0028】
【
図2】
図2Aおよび2Bは、モノクローナル抗体の生産に関連する平常(NC D14)および低生存性(LVC D15)細胞培養条件から得られる試料中のジスルフィド結合還元の程度を示す。細胞のピーク生細胞密度(VCD)、VCD、および%生存性の測定はまた、各細胞培養条件について示される。特に、
図2Aは、14日での平常条件に関連する%単量体および細胞培養パラメーターを示し、
図2Bは、15日での低生存性条件に関連する%単量体および細胞培養パラメーターを示す。試料は、24時間以上空気無しでまたはエアヘッドスペース(air head space)で2-8°Cまたは室温(RT)で貯蔵された。
【0029】
【
図3】
図3は、10日および14日(D10およびD14)で平常(NC)細胞培養条件からおよび14日および15日(D14およびD15)で低生存性(LVC)細胞培養条件から得られる試料中のレドックスおよびアポトーシスに関連する23のタンパク質のプロテオミクス分析を示す。全ての試料は、ジスルフィド還元試料(NC D14)に対する異なる発現について比較された。
【0030】
【
図4-1】
図4A-4Dは、2つのモノクローナル抗体についてのベンチ、パイロット、および製造規模実行から採取される試料中のチオレドキシン1およびチオレドキシンレダクターゼ1の発現を示す。
図4Aは、チオレドキシン1についてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図4Bで定量されている。
図4Cは、チオレドキシンレダクターゼ1についてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図4Dで定量されている。
図4Aおよび4C中の太字の試料は、ジスルフィド結合還元を実証した。ブロットは、各試料について3重に(triplicate)実行され、かつバンド密度は、3つの別個のブロットについての平均+SEMを示す。
【
図4-2】
図4A-4Dは、2つのモノクローナル抗体についてのベンチ、パイロット、および製造規模実行から採取される試料中のチオレドキシン1およびチオレドキシンレダクターゼ1の発現を示す。
図4Aは、チオレドキシン1についてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図4Bで定量されている。
図4Cは、チオレドキシンレダクターゼ1についてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図4Dで定量されている。
図4Aおよび4C中の太字の試料は、ジスルフィド結合還元を実証した。ブロットは、各試料について3重に実行され、かつバンド密度は、3つの別個のブロットについての平均+SEMを示す。
【0031】
【
図5】
図5は、2つのモノクローナル抗体についてのベンチ、パイロット、および製造規模実行から採取される試料についてのチオレドキシンレダクターゼ活性アッセイの結果を示す。囲まれている試料は、ジスルフィド結合還元を実証した一方、他の試料は実証しなかった。
【0032】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、2つのモノクローナル抗体についての製造およびパイロット規模実行から採取される試料中のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)の発現を示す。
図6Aは、G6PDについてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図6Bで定量されている。
図6A中の太字の試料は、ジスルフィド結合還元を実証した。ブロットは、各試料について3重に実行され、かつバンド密度は、3つの別個のブロットについて平均+SEMを示す。
【0033】
【
図7】
図7は、モノクローナル抗体についての製造および実験室規模実行から採取される試料からのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)活性アッセイの結果を示す。枠で囲まれた試料はジスルフィド結合還元を実証した一方、アスタリスクが付けられた試料は実証しなかった。
【0034】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、モノクローナル抗体についての製造および実験室規模実行から採取される試料中のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現を示す。
図8Aは、GAPDHについてのウェスタンブロットを示し、バンド強度が
図8Bで定量されている。ブロットは、各試料について3重に実行され、かつバンド密度は3つの別個のブロットについて平均+SEMを示す。
【0035】
【
図9】
図9A-9Cは、二次モノクローナル抗体についての実験室規模およびパイロット実行から採取される試料中のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現およびジスルフィド結合還元の程度を示す。
図9Aは、GAPDHについてのウェスタンブロットを示し、バンド密度が
図9Bで定量されている。
図9Cは、24時間空気無しでまたはエアオーバーレイで(air overlay)2-8°Cまたは室温(RT)で貯蔵された実験室規模およびパイロット実行からの試料中のジスルフィド結合還元の程度を示す。
【0036】
【
図10】
図10Aおよび10Bは、モノクローナル抗体についての製造規模実行から採取される試料についてのグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)活性アッセイの結果を示す。
図10Aは相対的GAPDH活性を示し、かつ
図10Bはタンパク質濃度に正規化された相対的GAPDH活性を示す。
【0037】
【
図11-1】
図11A-11Jは、グリセルアルデヒド(Glyceraldeyde)-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子およびタンパク質発現の結果を示す。
図11Aおよび11B:対照、Reducing1、Reducing2、およびReducing3試料からのmRNAが、q-RT-PCRによりGAPDH遺伝子発現について分析された。相対的発現は、対照条件に正規化され、かつ結果は、経時的に(11A)または7日および9日細胞ペレット試料について(11B)プロットされた。相対的発現結果は、試験された各試料について平均+SEMを示す。
図11C、11E、11G、および11Iは、対照、Reducing1、Reducing2、またはReducing3下で培養されたmAbB細胞ペレット中のGAPDHについてのウェスタンブロットを示す。バンド密度は、定量され、かつ試験された各条件について0日細胞ペレットに正規化された(それぞれ11D、11F、11H、11J)。ブロットは、各試料について3重に実行され、バンド密度は、3つの別個のブロットについて平均+SEMを示す。
【
図11-2】
図11A-11Jは、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子およびタンパク質発現の結果を示す。
図11Aおよび11B:対照、Reducing1、Reducing2、およびReducing3試料からのmRNAが、q-RT-PCRによりGAPDH遺伝子発現について分析された。相対的発現は、対照条件に正規化され、かつ結果は、経時的に(11A)または7日および9日細胞ペレット試料について(11B)プロットされた。相対的発現結果は、試験された各試料について平均+SEMを示す。
図11C、11E、11G、および11Iは、対照、Reducing1、Reducing2、またはReducing3下で培養されたmAbB細胞ペレット中のGAPDHについてのウェスタンブロットを示す。バンド密度は、定量され、かつ試験された各条件について0日細胞ペレットに正規化された(それぞれ11D、11F、11H、11J)。ブロットは、各試料について3重に実行され、バンド密度は、3つの別個のブロットについて平均+SEMを示す。
【
図11-3】
図11A-11Jは、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子およびタンパク質発現の結果を示す。
図11Aおよび11B:対照、Reducing1、Reducing2、およびReducing3試料からのmRNAが、q-RT-PCRによりGAPDH遺伝子発現について分析された。相対的発現は、対照条件に正規化され、かつ結果は、経時的に(11A)または7日および9日細胞ペレット試料について(11B)プロットされた。相対的発現結果は、試験された各試料について平均+SEMを示す。
図11C、11E、11G、および11Iは、対照、Reducing1、Reducing2、またはReducing3下で培養されたmAbB細胞ペレット中のGAPDHについてのウェスタンブロットを示す。バンド密度は、定量され、かつ試験された各条件について0日細胞ペレットに正規化された(それぞれ11D、11F、11H、11J)。ブロットは、各試料について3重に実行され、バンド密度は、3つの別個のブロットについて平均+SEMを示す。
【0038】
【
図12】
図12Aおよび12Bは、実験室規模mAbBバッチについてのジスルフィド還元分析を示す。
図12A:対照、Reducing1、Reducing2、またはReducing3下で培養されたベンチ規模生産バイオリアクターからのHCCFは、5日間、溶存酸素有り(DO、塗りつぶし(solid)バー)で2-8°Cで、または溶存酸素無し(NO DO、チェック模様の(checkered)バー)で周囲温度でインキュベートされた。
図12Aは、各試料中に存在するインタクトな単量体のパーセント量を示す。
図12B:細胞試料は、示される時間に、各生産バイオリアクター(対照、Reducing1、Reducing2、およびReducing3)から取られ、上清は、乳酸およびピルビン酸含量について分析された。乳酸の濃度は、ピルビン酸の濃度により割られ、経時的に各バイオリアクターについてlac/pyr比を生じた。Lac/pyr比は、対照条件に正規化され、lac/pyr比対時間における相対的%増加としてプロットされた。
【発明を実施するための形態】
【0039】
該開示の詳細な説明
一般的な用語および表現の定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語が最初に定義される。この出願において使用されるように、本明細書中で他に明示的に提供される場合を除き、以下の用語のそれぞれは、以下に記載される意味を有するべきである。追加の定義が、該出願を通して記載される。
【0040】
本明細書中で使用される「および/または」なる用語は、もう片方のもの有りまたは無しの2つの特定された特徴または構成要素のそれぞれの特異的な開示としてみなされるべきである。ゆえに、本明細書中の「Aおよび/またはB」などの語句において使用されるとき「および/または」なる用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(単独)」および「B(単独)」を含むように意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句において使用されるとき「および/または」なる用語は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)のそれぞれを包含するように意図される。
【0041】
本明細書中でどこに「を含む」なる語を用いて態様が記載されても、他に、「からなる」および/または「本質的に・・からなる」なる用語において記載される類似の態様も提供されることが理解される。
【0042】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、この開示が関連する分野における当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 第2版, 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 第3版, 1999, Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, 改訂, 2000, Oxford University Pressは、この開示中で使用される語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0043】
単位、接頭辞、および記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)が受け入れる形式で示される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。本明細書中で提供される見出しは、明細書を全体として参照することにより有されることができる該開示の種々の態様を限定するものではない。従って、すぐ下で定義される語は、明細書全体を参照することにより、より完全に定義される。
【0044】
代替物(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか一つ、両方、またはその任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、任意の列挙(recite)または列挙(enumerate)された構成要素の「1つ以上」を指すと理解されるべきである。
【0045】
「約」または「本質的に・・を含む」なる用語は、値または組成がどのように測定または決定されるのか、つまり測定システムの限定に一部依存するであろう、当業者により決定されるとき特定の値または組成についての許容可能な誤差範囲内にある値または組成を指す。例えば、「約」または「本質的に・・を含む」は、当該技術分野における慣行ごとに1以内または1を超える標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」または「本質的に・・を含む」は、最大10%または20%(つまり、±10%または±20%)の範囲を意味することができる。例えば、約3mgは、2.7mgおよび3.3mg(10%の場合)の間または2.4mgおよび3.6mg(20%の場合)の間の任意の数を含むことができる。さらに、特に生物学的システムまたは処理に関して、該用語は、最大1桁、または最大5倍の値を意味することができる。特定の値または組成が該出願および特許請求の範囲において提供される場合、他に述べられない限り、「約」または「本質的に・・を含む」の意味は、その特定の値または組成についての許容可能な誤差範囲内にあると見なされるべきである。
【0046】
本明細書中に記載される場合、いかなる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲も、他に示されない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「ジスルフィド結合還元」なる用語は、硫黄-硫黄結合が壊され、かつ水素-硫黄結合により置き換えられる化学処理を指す。ジスルフィド基(S-S結合を特徴とする)およびチオール(H-S結合を特徴とする)の相互変換はレドックス反応を表し、ここでチオールは還元状態を表し、ジスルフィドは酸化状態を表す。タンパク質中で、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合は、は、しばしば、タンパク質の3次元構造および安定性に寄与し;ゆえにジスルフィド結合の還元は、低分子重量タンパク質種の形成をもたらすことができる。ジスルフィド結合還元の程度および低分子重量種の存在は、キャピラリー電気泳動などの既知の方法により測定されることができる。かかる測定は、しばしば、試料中の単量体%として表され、95%未満の単量体%は、ジスルフィド結合還元の存在を典型的に示す。
【0048】
開示の方法は、これらに限定されないが、灌流細胞培養、バッチ培養、および流加培養細胞培養を企図する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「灌流する(perfuse)」、「灌流」および「灌流培養」なる用語は、細胞を培養する方法を指すために交換可能に使用され、ここで追加の新鮮な培地が培養に提供され、使用済み培地が該培養から除去される。灌流は培養が播種される後に開始され、継続的または断続的いずれかに、所望によりある期間にわたって生じることができる。灌流の間に添加された新鮮な培地は、典型的に、培養処理の間に枯渇した細胞のための栄養サプリメントを提供する。灌流はまた、細胞培養からの細胞廃棄産物および毒性副産物の除去を可能にする。灌流は、細胞の増殖フェーズの間に実施されるが、細胞が流加培養細胞培養に移された後も継続されることができる。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「バッチ培養」なる用語は、培地並びに細胞自体を含む、細胞の培養において最終的に使用されるであろう全ての構成要素が、該培養処理の始めに提供される、細胞を培養する方法を指す。バッチ培養は、典型的に、ある時点で停止され、培地中の細胞および/または構成要素は採取され、所望により精製される。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「流加培養」なる用語は、細胞培養が新鮮な培地を補足される、すなわち、使用済みの培地は除去されない一方で細胞が新しい培地を「供給」される、細胞を培養する方法を指す。典型的に、「流加培養」培養処理は、バイオリアクター中で実施され、追加の構成要素(例えば栄養サプリメント)は、培養処理の開始後のある時に培養に添加される。栄養素の該制御された添加は、培養の増殖速度に直接影響し、オーバーフロー代謝物の蓄積の回避を可能にする(例えば、Wlaschin, K. F. ら, 「Fedbatch culture and dynamic nutrient feeding」, Cell Culture Engineering, 101:43-74 (2006)およびLee, J. ら, 「Control of fed-batch fermentations」, Biotechnol. Adv., 17:29-48 (1999)を参照)。流加培養は、典型的に、ある時点で終了され、培地中の細胞および/または構成要素は採取され、所望により精製される。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「接種(innoclulation)」、「接種(inoculum)」および「播種」は、培養を始めるための開始培地への細胞の添加を指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「細胞密度」なる用語は、培地の所与の体積中の細胞の数を指す。細胞密度は、市販の細胞をカウントする装置を使用して、またはバイオリアクター自体中に(または、培地および浮遊細胞が通過して、次いでバイオリアクターに戻されるループ中に)導入された市販の適したプローブを使用することにより、培養から細胞を抽出し、顕微鏡下で該細胞を分析することを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の任意の技術によりモニターされることができる。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「スーパー高細胞密度」および「高細胞密度」なる用語は、交換可能に使用され、N-1灌流バイオリアクター中の少なくとも約40x106細胞/mLの細胞密度を指す。既知の細胞培養技術は、細胞を「第1臨界レベル」(すなわち、「細胞培養を灌流し、概ね500万から4000万細胞/mLを得る前に、細胞生存性が廃棄物生産(例えば、細胞増殖阻害剤および、例えば乳酸、アンモニアなどの毒性代謝物)の増加した濃度に影響されてもよい細胞サイクル増殖フェーズの間の時点」)に増殖させることを含んでもよい。対照的に、本開示に従って増殖された細胞は、高細胞密度に達してもよい。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、少なくとも約40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、または130x106細胞/mLを超える標的細胞密度へ増殖される。特定の実施形態において、本開示の細胞は、約60x106細胞/mLの標的細胞密度へ増殖される。他の実施形態において、本開示の細胞は、約40x106細胞/mLの標的細胞密度へ増殖される。高密度播種は、培養を、約5x106細胞/mL、約10x106細胞/mL、約15x106細胞/mL、約20x106細胞/mL、または約25x106細胞/mLで播種することを指す。特定の実施形態において、高密度播種は、培養を約10x106細胞/mLで播種することを指す。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「生細胞密度」または「VCD」なる用語は、実験条件の所与のセット下で培地の所与の体積中に存在する生細胞の数を指す。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「細胞生存性」なる用語は、培養における細胞の条件または実験変動の所与のセット下で生き残る能力を指す。本明細書中で使用される場合、該用語はまた、その時の培養中の細胞の総数(例えば、生および死)に関して、特定の時に生きている細胞のその一部を指す。
【0057】
本明細書中で使用される場合、細胞培養の「増殖フェーズ」は、いずれの時点での生細胞密度も以前のどの時点よりも高いフェーズを指す。
【0058】
本明細書中で使用される場合、細胞培養の「生産フェーズ」は、将来の処理のために蓄積する有意な量のタンパク質を細胞が生産するフェーズを指す。
【0059】
本明細書中で使用される場合、細胞培養の「移行フェーズ」は、細胞培養条件が(例えば、細胞培養の温度を低くすることにより)変えられてもよい増殖および生産フェーズの間のフェーズを指す。典型的に、移行フェーズは、生産フェーズに入る前に24-48時間行われる。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「細胞全体(integral)」なる用語は、細胞増殖プロファイルの過程の間の全生細胞数を指す。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「力価」なる用語は、培地体積の所与の量で割った細胞培養により生産されるタンパク質の総量を指す。本質的に、「力価」なる用語は、濃度を指し、典型的に、培地1リットルあたりのポリペプチドのミリグラムの単位で表される。本開示の方法は、当該技術分野において既知の他の細胞培養方法から生産されるポリペプチド産物力価と比較して、ポリペプチド産物力価を実質的に増加させてもよい。
【0062】
本明細書中で使用される場合、それらの文法的バリエーションを含む「培地」、「細胞培養培地」および「培養培地」なる用語は、交換可能に使用され、細胞(例えば、動物または哺乳類細胞)が培養において増殖される栄養素溶液を指す。細胞培養培地は、細胞について物理化学的、栄養的、およびホルモン的環境であり、典型的に、以下からの少なくとも1以上の構成要素を含む:エネルギー源(例えば、グルコースなどの炭水化物の形態の);20の塩基性アミノ酸およびシステインを含む必須アミノ酸;典型的に低濃度で必要とされるビタミンおよび/または他の有機化合物;脂質または遊離脂肪酸(例えば、リノール酸);および微量元素(例えば、典型的に、通常はマイクロモル範囲の非常に低濃度で必要とされる無機化合物または天然要素)。培地は、固体、ゼラチン状、液体、気体、または相および材料の混合物であってもよい。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「細胞」なる用語は、動物細胞、哺乳類細胞、培養された細胞、宿主細胞、組み換え細胞、および組み換え宿主細胞を指す。かかる細胞は、一般に、適切な栄養素および/または増殖因子を含有する培地中に置かれた場合、増殖し生き残ることができる哺乳類組織から得られるかまたはそれに由来する細胞株である。本開示の方法において利用される細胞は、一般に、培養培地中に大量の特定のタンパク質を発現および分泌することができるか、または発現および分泌するように分子的に操作されることができる動物または哺乳類細胞である。1つの実施形態において、細胞により生産されるタンパク質は、細胞に内因性または同種であることができる。あるいは、タンパク質は、細胞に対して異種、すなわち外来である。
【0064】
本開示の方法において利用される細胞は、当該技術分野において既知であるかまたは商業的に入手可能であるものを含む任意の数の細胞培養培地中で増殖および維持されることができる。当業者は、特定の培養された宿主細胞における細胞増殖、細胞生存性および/またはタンパク質生産を最大化するように選択される1つ以上の既知の細胞培養培地を使用することを選んでもよい。例示的細胞培養培地は、目的のタンパク質を発現することができる細胞を培養するのに適した任意の培地を含む。いくつかの実施形態において、培地は、化学的に定義された培地である。
【0065】
加えて、細胞培養培地は、所望により、適切な濃度または量で、必要または所望により当業者により知られており実施されるように、1つ以上の追加の構成要素を含むように補足されることができる。例示的サプリメントは、化学遺伝子選択剤、ホルモンおよび他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、表皮増殖因子、血清、ソマトトロピン、下垂体抽出物、アプロチニン);塩(例えば、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、および緩衝液(例えば、HEPES(4-[2-ヒドロキシエチル]-1-ピペラジン-エタンスルホン酸));ヌクレオシドおよび塩基(例えば、アデノシン、チミジン、ヒポキサンチン);タンパク質および加水分解物;抗生物質(例えば、ゲンタマイシン);細胞保護剤(例えば、プルロニックポリオール(PLURONIC.RTM.F68))および細胞外マトリックスタンパク質(例えば、フィブロネクチン)を含むが、これらに限定されない。特定の細胞培養の増殖および維持を支持するサプリメントは、例えば、Barnes ら(Cell, 22:649 (1980))により;Mammalian Cell Culture, Mather, J. P., ed., Plenum Press, NY (1984)において;および米国特許番号5,721,121において記載されるように、当業者により容易に決定されることができる。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「バイオリアクター」なる用語は、細胞培養を増殖させるために使用される任意の装置、密閉容器または容器(例えば、発酵チャンバー)を指す。バイオリアクターは、循環ループフロー、pH、温度、過圧および/または培地灌流速度を含むがこれらに限定されない、細胞灌流処理の間に種々のパラメーターを制御することを可能にする。バイオリアクターは、市販のバイオリアクター、古典的な発酵槽および細胞培養灌流システム、並びに使い捨てバイオリアクターを含む。
【0067】
バイオリアクターは、該開示の方法に従って、望ましい規模で細胞を培養するのに有用な任意のサイズであることができる。例えば、本開示の方法において採用されるバイオリアクターは、少なくとも約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、5,500、6,000、6,500、7,000、7,500、8,000、8,500、9,000、9,500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,0000、13,000、14,000、15,000リットルまたはそれを超える、または任意の中間体積であってもよい。いくつかの実施形態において、本開示の方法において採用されるバイオリアクターは、目的のタンパク質の大規模生産のために使用されてもよい。かかる実施形態において、本開示の方法において採用されるバイオリアクターは、1,000Lバイオリアクター、2,500Lバイオリアクター、5,000Lバイオリアクター、8,000Lバイオリアクター、10,000Lバイオリアクター、12,000Lバイオリアクター、または15,000Lまたはそれを超えるバイオリアクターであってもよい。
【0068】
適したバイオリアクターは、本開示の培養条件下で細胞培養を保持するのに適した任意の材料で構成され(つまり、で構造され(constructed of))てもよく、細胞増殖および生存性を助長する。例えば、本開示の方法において採用されるバイオリアクターは、ガラス、プラスチックまたは金属で作られていることができる。しかしながら、バイオリアクターを含む材料は、ポリペプチド産物の発現または安定性に干渉するべきではない。適したバイオリアクターは、当該技術分野において既知であり、商業的に入手可能である。実施形態において、バイオリアクターは、N-1シードバイオリアクター(N-1バイオリアクター)である。
【0069】
本開示の方法において使用される灌流バイオリアクターは、使い捨て灌流バイオリアクターまたは他の任意の伝統的な灌流バイオリアクターであることができる。バイオリアクターは、所望により、スピンフィルター、タンジェンシャルフロー膜フィルター、動的(dynamic)膜、超音波セパレーター、重力セトラー、連続遠心分離または音響細胞保持装置、ミクロ濾過装置、超濾過装置などを含むがこれらに限定されない、任意の内部または外部細胞保持装置を装備してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、該開示の灌流バイオリアクターは、灌流処理の間に高細胞密度および高細胞生存性を得ることができるバイオリアクターである。特定の実施形態において、灌流バイオリアクターは、N-1バイオリアクター(またはN-1シードバイオリアクター)である。
【0071】
「バイオマスキャパシタンスプローブ」は、他の能力の中で生細胞密度を測定することができるプローブを指す。バイオマスキャパシタンスプローブは、キャパシタンスを使用して培養中の総生細胞を測定する。生細胞は、流電界におけるコンデンサとして働く。バイオマスキャパシタンスプローブは、これらの細胞からの電荷を測定し、それを報告することができる。
【0072】
本開示の方法に包含される細胞培養は、細胞型および培養条件について適切な任意の温度で増殖されてもよい。1つの実施形態において、タンパク質生産を高めるために、約30°Cおよび38°Cの間の温度を使用することが望ましい。別の実施形態において、温度は、少なくとも約25°C、26°C、27°C、28°C、29°C、30°C、31°C、32°C、33°C、34°C、35°C、36°C、37°C、38°C、39°C、40°C、または41°Cである。培養の間、異なる時に異なる温度を使用することも、望ましくてもよい。
【0073】
該開示の方法
実施形態において、該開示は、目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元を評価するための、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質バイオマーカーの使用に向けられる。いくつかの実施形態において、該開示は、目的のタンパク質を含む組成物中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法に関し、ここで少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルが、測定され、かつ該目的のタンパク質のジスルフィド結合還元または低分子重量種の発生に関連するベンチマーク値を提供する。他の実施形態において、該開示は、目的のタンパク質を生産する方法に関し、ここで目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞が培養され、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルが測定され、かつ目的のタンパク質の下流単離が宿主細胞タンパク質測定により知らされる。
【0074】
ジスルフィド結合還元および低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生を予測する方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現または活性レベルは該目的のタンパク質のジスルフィド結合還元の発生に関連する。いくつかの実施形態において、低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルを測定することを含み、ここでベンチマーク値より上の宿主細胞タンパク質発現または活性レベルは、該目的のタンパク質の低分子重量タンパク質種の発生に関連する。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、キャピラリー電気泳動により検出されることができる。
【0075】
実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法が、目的のタンパク質を含む組成物に実施される。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質は、CHO細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を含む組成物は、細胞培養から生産される。いくつかの実施形態において、細胞培養は、目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養は、該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養は、哺乳類細胞、例えばCHO細胞を含む。
【0076】
いくつかの実施形態においては、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを検出することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを検出することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも3つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを検出することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100の宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100の宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、酸化ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態においては、該方法は、熱ショックタンパク質ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシン(TRX様またはTRX1、細胞質)、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン(PRDX-1、PRDX-2、またはPRDX-6様)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびGAPDHからなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンレダクターゼの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともGAPDHの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GSTP1、GSTオメガ-1様アイソフォーム3、GST Y1様、GST A4様、またはGSTアルファ-3様)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH、細胞質様)、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH A鎖)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6-PDG、脱炭酸様)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、PDI A4、PDI A3、またはPDI A6様)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD[Cu-Zn]様)、D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(d-3-PHGDH様)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH[NADP]細胞質様)、Myeloid Zinc Finger 1(MZF-1)、またはアポトーシス誘導因子1(AIFM1、ミトコンドリア様)の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現レベルは、細胞培養液(CCF)中で測定される。他の実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現レベルは、細胞内で測定される。いくつかの実施形態において、細胞内発現レベルは、細胞培養ライセート中で測定される。特定の実施形態において、発現レベルは、ウェスタンブロット分析により測定される。
【0080】
これらの酵素は、平常細胞レドックス調節において重要な役割を果たし;かつジスルフィド還元試料中のそれらの存在は、ジスルフィド還元を実証した細胞培養条件における酸化ストレスの増加したレベルを示唆する可能性がある。
【0081】
いくつかの実施形態においては、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、熱ショックタンパク質経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシン(TRX様またはTRX1、細胞質)、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン(PRDX-1、PRDX-2、またはPRDX-6様)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびGAPDHからなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチチオレドキシンレダクターゼの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともGAPDHの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST P1、GSTオメガ-1様アイソフォーム3、GST Y1様、GST A4様、またはGSTアルファ-3様)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH、細胞質様)、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH A鎖)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6-PDG、脱炭酸様)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、PDI A4、PDI A3、またはPDI A6様)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD[Cu-Zn]様)、D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(d-3-PHGDH様)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH[NADP]細胞質様)、Myeloid Zinc Finger 1(MZF-1)、またはアポトーシス誘導因子1(AIFM1、ミトコンドリア様)の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の活性レベルは、細胞培養液(CCF)中で測定される。他の実施形態において、宿主細胞タンパク質の活性レベルは、細胞内で測定される。いくつかの実施形態において、細胞内活性レベルは、細胞培養ライセート中で測定される。特定の実施形態において、活性レベルは、活性アッセイにより測定される。
【0083】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、チオレドキシンレダクターゼまたはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、チオレドキシンレダクターゼ活性レベルは、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、G6PD活性レベルは、G6PD活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、GAPDH活性レベルは、GAPDH活性アッセイにより測定される。
【0085】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベル、および少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0086】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシンの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約200%のチオレドキシン相対バンド強度により示される。
【0087】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシンレダクターゼの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約160%のチオレドキシンレダクターゼ相対バンド強度により示される。
【0088】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、GAPDHの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約140%のGAPDH相対バンド強度により示される。
【0089】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシンレダクターゼの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより決定されるとき60分後の1.0の相対TrxR活性 (AU)により示される。
【0090】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、G6PDの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、G6PD活性アッセイにより決定されるとき3.0の正規化されたレゾルフィン蛍光(AU)により示される。
【0091】
特定の実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、GAPDHの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、GAPDH活性アッセイにより決定されるとき該対照と比較して正規化されたGAPDH活性における減少により示される。
【0092】
タンパク質を生産する方法
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、以下を含む:該目的のタンパク質を生産することができる宿主細胞を培養すること;該目的のタンパク質でない少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルまたは活性レベルを測定すること;および宿主細胞タンパク質発現または活性レベルのいずれかがベンチマーク値より下である場合、該目的のタンパク質を単離すること。実施形態において、ベンチマーク値であるかまたはそれより上の発現または活性レベルは、目的のタンパク質のジスルフィド結合還元の発生または低分子重量種の存在を示す。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質は、CHO細胞タンパク質である。
【0093】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも3つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100の宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも2つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも3つの、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100の宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導(hypoxia-inducible)因子1-アルファ経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、酸化ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、熱ショックタンパク質ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、チオレドキシン(TRX様またはTRX 1、細胞質)、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン(PRDX-1、PRDX-2、またはPRDX-6様)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびGAPDHなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンレダクターゼの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともGAPDHの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST P1、GSTオメガ-1様アイソフォーム3、GST Y1様、GST A4様、またはGSTアルファ-3様)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH、細胞質様)、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH A鎖)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6-PDG、脱炭酸様)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、PDI A4、PDI A3、またはPDI A6様)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD[Cu-Zn]様)、D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(d-3-PHGDH様)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH[NADP]細胞質様)、Myeloid Zinc Finger 1(MZF-1)、またはアポトーシス誘導因子1(AIFM1、ミトコンドリア様)の発現レベルを決定することを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において,宿主細胞タンパク質の発現レベルは、細胞培養液(CCF)中で測定される。他の実施形態において,宿主細胞タンパク質の発現レベルは、細胞内で測定される。いくつかの実施形態において、細胞内発現レベルは、細胞培養ライセート中で測定される。特定の実施形態において、発現レベルは、ウェスタンブロット分析およびqPCRにより測定される。
【0098】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路、熱ショックタンパク質経路、および/または低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、酸化ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、熱ショックタンパク質経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、低酸素誘導ストレス経路に関与する少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合還元の発生または低分子重量タンパク質種の発生を予測する方法は、チオレドキシン(TRX様またはTRX 1、細胞質)、チオレドキシンレダクターゼ、ペルオキシレドキシン(PRDX-1、PRDX-2、またはPRDX-6様)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6PGD)、およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)からなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、およびGAPDHからなる群から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチオレドキシンの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともチチオレドキシンレダクターゼの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくともGAPDHの活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST P1、GSTオメガ-1様アイソフォーム3、GST Y1様、GST A4様、またはGSTアルファ-3様)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH、細胞質様)、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-LDH A鎖)、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(6-PDG、脱炭酸様)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、PDI A4、PDI A3、またはPDI A6様)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD[Cu-Zn]様)、D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(d-3-PHGDH様)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH[NADP]細胞質様)、Myeloid Zinc Finger 1(MZF-1)、またはアポトーシス誘導因子1(AIFM1、ミトコンドリア様)の活性レベルを決定することを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の活性レベルは、細胞培養液(CCF)中で測定される。他の実施形態において、宿主細胞タンパク質の活性レベルは、細胞内で測定される。いくつかの実施形態において、細胞内活性レベルは、細胞培養ライセート中で測定される。特定の実施形態において、活性レベルは、活性アッセイにより測定される。
【0100】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、チオレドキシンレダクターゼまたはグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)から選択される少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、チオレドキシンレダクターゼ活性レベルは、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、G6PD活性レベルは、G6PD活性アッセイにより測定される。いくつかの実施形態において、GAPDH活性レベルは、GAPDH活性アッセイにより測定される。
【0102】
いくつかの実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の発現レベルおよび少なくとも1つの宿主細胞タンパク質の活性レベルを決定することを含む。
【0103】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、チオレドキシンの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約200%のチオレドキシン相対バンド強度により示される。
【0104】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、チオレドキシンレダクターゼの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約160%のチオレドキシンレダクターゼ相対バンド強度により示される。
【0105】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、GAPDHの発現レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元低分子重量タンパク質種の発生は、ウェスタンブロット分析により決定されるとき約140%のGAPDH相対バンド強度により示される。
【0106】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、チオレドキシンレダクターゼの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、チオレドキシンレダクターゼ活性アッセイにより決定されるとき60分後の1.0の相対TrxR活性(AU)により示される。
【0107】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、G6PDの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、G6PD活性アッセイにより決定されるとき3.0の正規化されたレゾルフィン蛍光(AU)により示される。
【0108】
特定の実施形態において、目的のタンパク質を生産する方法は、GAPDHの活性レベルを決定することを含み、かつ目的のタンパク質中のジスルフィド結合還元または低分子重量タンパク質種の発生は、GAPDH活性アッセイにより決定されるとき該対照と比較して正規化されたGAPDH活性における減少により示される。
【0109】
目的のポリペプチドおよびタンパク質
宿主細胞中で発現可能な任意のポリペプチドまたはタンパク質は、本開示に従って目的のポリペプチドまたはタンパク質として生産されてもよい。該ポリペプチドは、宿主細胞に内因性である遺伝子から、または遺伝子工学によって宿主細胞中に導入される遺伝子から発現されてもよい。該ポリペプチドは、自然に生じるものであってもよく、またあるいは人間の手により操作または選択された配列を有してもよい。操作されたポリペプチドは、自然に個々に生じる他のポリペプチドセグメントから組み立てられてもよく、また天然でない1つ以上のセグメントを含んでもよい。
【0110】
本開示に従って望ましく発現されてもよいポリペプチドは、しばしば、興味深い生物学的または化学的活性に基づいて選択されるだろう。例えば、本開示は、薬学的または商業的に関連する酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤などを発現するために採用されてもよい。
【0111】
抗体
医薬品または他の市販の薬剤として現在使用されているかまたは調査下にある多数の抗体を考えると、本開示に従う抗体の生産は興味深い。抗体は、特定の抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質である。宿主細胞中で発現されることができる任意の抗体またはその抗原結合断片は、本開示に従って使用されてもよい。いくつかの実施形態において、発現されるべき抗体は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0112】
別の実施形態において、抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体は、複数の生物に由来するアミノ酸断片を含有する。キメラ抗体分子は、例えば、ヒト定常領域とともに、マウス、ラット、または他の種の抗体からの抗原結合ドメインを含むことができる。キメラ抗体を作るための様々なアプローチが記載される。例えば、Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 6851 (1985); Takedaら, Nature 314, 452 (1985), Cabillyら, 米国特許番号4,816,567; Bossら, 米国特許番号 4,816,397; Tanaguchiら, 欧州特許公開EP171496; 欧州特許公開 0173494, 英国特許 GB 2177096Bを参照のこと。
【0113】
別の実施形態において、抗体は、例えば、リボソームディスプレイまたはファージディスプレイライブラリー(例えば、Winter ら, 米国特許番号6,291,159 およびKawasaki, 米国特許番号 5,658,754を参照)の使用またはネイティブ抗体遺伝子が不活性化され、ヒト抗体遺伝子で機能的に置き換えられ、一方でネイティブ免疫系の他の構成要素をインタクトなままにしているゼノグラフィック種の使用(例えば、Kucherlapatiら, 米国特許番号 6,657,103を参照)により得られるヒト抗体である。
【0114】
5つのヒト免疫グロブリンクラスは、それらの重鎖組成に基づいて定義され、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDと名付けられる。IgGクラスおよびIgAクラス抗体は、さらにサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、およびIgA1およびIgA2に分けられる。IgG、IgA、およびIgD抗体中の重鎖は、CH1、CH2、およびCH3と呼ばれる3つの定常領域ドメインを有し、かつIgMおよびIgE抗体中の重鎖は、4つの定常領域ドメイン、CH1、CH2、CH3、およびCH4を有する。
【0115】
別の実施形態において、抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、アミノ酸残基の大部分がヒト抗体に由来するキメラ抗体であり、ゆえにヒト対象に送達される時にいかなる潜在的な免疫反応も最小限にする。ヒト化抗体において、相補性決定領域中のアミノ酸残基は、少なくとも一部、所望の抗原特異性または親和性を付与する非ヒト種からの残基で置き換えられる。かかる変えられた免疫グロブリン分子は、当該技術分野において既知のいくつかの技術のいずれかにより作られることができ、(例えば、その全てが参照により本明細書中に組み込まれるTeng ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 80, 7308-7312 (1983); Kozborら, Immunology Today, 4, 7279 (1983); Olsson ら, Meth. Enzymol., 92, 3-16 (1982)), およびその全てが参照により本明細書中に組み込まれるPCT公開WO92/06193 または EP 0239400の教示に従って作られる)。ヒト化抗体もまた、商業的に生産されることができる。さらなる参照のために、その全てが参照により本明細書中に組み込まれるJonesら, Nature 321:522-525 (1986); Riechmann ら, Nature 332:323-329 (1988); および Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0116】
さらに別の実施形態において、上記のモノクローナル、ポリクローナル、キメラ、またはヒト化抗体は、自然のいずれの種におけるいずれの抗体においても自然に生じないアミノ酸残基を含有してもよい。これらの外来残基は、例えば、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体に新規または改変された特異性、親和性またはエフェクター機能を付与するために利用されることができる。別の実施形態において、上記の抗体は、毒素、低分子重量細胞毒性薬物、生物学的反応修飾剤、および放射性核種などの全身薬物療法のための薬物にコンジュゲートされてもよい(例えば、Kunzら, Calicheamicin derivative-carrier conjugates、 US20040082764 A1を参照)。
【0117】
細胞
細胞培養およびポリペプチドの発現の影響を受けやすい任意の哺乳類細胞または細胞型は、本開示に従って利用されてもよい。本開示に従って使用されてもよい哺乳類細胞の非限定的な例は、以下を含む:BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell,Leiden,The Netherlands));SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胎児腎臓株(懸濁培養中での増殖のためにサブクローン化された293または293細胞、Grahamら., J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞±DHFR(CHO、Urlaub および Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL5 1);TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982)); MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌株(HepG2)。特定の実施形態において、本開示は、CHO細胞株からのポリペプチドおよびタンパク質の培養および発現において使用される。
【0118】
加えて、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する任意の数の商業的および非商業的に入手可能なハイブリドーマ細胞株は、本開示に従って利用されてもよい。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が異なる栄養要求を有する可能性があるおよび/または最適な増殖およびポリペプチドまたはタンパク質発現のために異なる培養条件を必要とする可能性があり、かつ必要に応じて条件を変更することができるであろうことを理解する。
【0119】
上記のように、多くの場合、細胞は、高レベルのタンパク質またはポリペプチドを産生するように選択または操作されるだろう。しばしば、細胞は、例えば目的のタンパク質ポリペプチドをコードする遺伝子の導入によりおよび/または目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内因性でも導入されていても)の発現を調節する制御要素の導入により、高レベルのタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
【0120】
特定のポリペプチドは、細胞増殖、細胞生存性、または目的のポリペプチドまたはタンパク質の生産を何らかの方法で最終的に限定する細胞のその他の特性に有害な影響を有する可能性がある。特異的ポリペプチドを発現するように操作された1つの特定のタイプの細胞の集団の中でさえ、細胞集団内の変動性は、特定の個々の細胞がより良く増殖し、および/またはより多くの目的のポリペプチドを生成するように存在する。本開示の特定の実施形態において、細胞株は、細胞を培養するために選択された特定の条件下で、安定した(robust)増殖のために実施者により経験的に選択される。特定の実施形態において、特定のポリペプチドを発現するように操作された個々の細胞は、発現されたポリペプチドの細胞増殖、最終細胞密度、パーセント細胞生存性、力価またはこれらの任意の組み合わせまたは実施者により重要であるとみなされる他の条件に基づいて、大規模生産のために選択される。
【0121】
培地および培養条件
いくつかの実施形態において、哺乳類宿主細胞は、本明細書中に開示された任意のポリペプチドである目的のポリペプチドの生産を促進する条件下で培養される。基礎細胞培養培地処方は、当該技術分野において周知である。当業者は、これらの基礎培養培地処方に、アミノ酸、塩、糖、ビタミン、ホルモン、増殖因子、緩衝液、抗生物質、脂質、微量元素などの構成要素を、培養されるべき宿主細胞の要求に応じて添加するだろう。培養培地は、血清および/またはタンパク質を含有しても含有しなくてもよい。無血清および/または定義された培養培地を含む種々の組織培養培地は、細胞培養のために商業的に入手可能である。組織培養培地は、該開示の目的のために、インビトロ細胞培養における動物細胞、およびいくつかの実施形態において哺乳類細胞の増殖に適した培地として定義される。典型的に、組織培養培地は、緩衝液、塩、エネルギー源、アミノ酸、ビタミン、およびトレース必須要素を含有する。培養において適切な真核細胞の増殖を支持することができる任意の培地は、使用されることができ;該開示は、培養における真核細胞、特に哺乳類細胞に広く適用可能であり、かつ培地の選択は該開示に重要ではない。該開示における使用に適した組織培養培地は、例えばATCC(Manassas,Va.)から商業的に入手可能である。例えば、以下の培地のいずれか1つまたはそれらの組み合わせは、使用されることができる:RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、ライボビッツL-15培地、およびEX-CELL.TM.300シリーズ(JRH Biosciences,Lenexa,Kans.,USAから入手可能)などの無血清培地、とりわけ中でも、American Type Culture CollectionまたはJRH Biosciences、並びに他の売り手から得られることができるもの。無血清および/または無ペプトンの定義された培地が使用される場合、通常、培地はアミノ酸および微量元素について高度に濃縮される。例えば、米国特許番号5,122,469からMatherらへ、および米国特許番号5,633,162からKeenらへを参照のこと。
【0122】
特定の実施形態において、細胞は、無血清、無タンパク質、無増殖因子、および/または無ペプトン培地中で増殖されることができる。培地に適用される「無血清」なる用語は、ウシ胎児血清などの血清を含有しない任意の哺乳類細胞培養培地を含む。培地に適用される「無インスリン」なる用語は、外因性インスリンが添加されていない任意の培地を含む。この文脈において、外因性は、細胞自体の培養により生産されるもの以外を意味する。培地に適用される「無IGF-1」なる用語は、外因性インスリン様増殖因子-1(IGF-1)または類似物(例えば、Thebarton,South AustraliaのGroPep Ltd.から入手可能なLongR3、[Ala31]、または[Leu24][Ala31]IGF-1類似物など)が添加されていない任意の培地を含む。培地に適用される「無増殖因子」なる用語は、外因性増殖因子(例えば、インスリン、IGF-1)が添加されていない任意の培地を含む。培地に適用される「無タンパク質」なる用語は、外因的に添加されたタンパク質、例えば、トランスフェリンおよびタンパク質増殖因子IGF-1およびインスリンなどが無い培地を含む。無タンパク質培地は、ペプトンを有しても有さなくてもよい。培地に適用される「無ペプトン」なる用語は、外因性タンパク質加水分解物、例えば、動物および/または植物タンパク質加水分解物などが添加されていない任意の培地を含む。培地からペプトンを排除することは、ロット間変動性を減少させ、かつ濾過などの処理を高めるという利点を有する。化学的に定義された培地は、各構成要素が定義され、かつ純粋なソース、特定の実施形態において非動物ソースから得られる培地である。特定の実施形態において、培地は、化学的に定義され、かつ完全に無血清および無タンパク質である。
【0123】
いくつかの実施形態において、特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存性、および/または組み換えポリペプチド生産を最大化するように開発されてきた多くの個別化された培地処方の一つは、利用される。本明細書中に記載される方法は、市販の細胞培養培地との、または特定の細胞株を用いた使用のために個々に処方された細胞培養培地との組み合わせにおいて使用されてもよい。例えば、増加したポリペプチド生産を支持することができる濃縮培地は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、または1:15までまたはそれより高い比で組み合わされたDMEMおよびハムF12培地などの2つ以上の商業的培地の混合物を含んでもよい。あるいはまたは加えて、培地は、アミノ酸またはペプトンなどの栄養素の添加により濃縮されることができ、および/または培地(または以下に記載される例外を有するその構成要素のほとんど)は、その通常の推奨される濃度より高い、例えば、例えば2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、またはそれより高い濃度で使用されることができる。本明細書中で使用される場合、「1X」は標準濃度を意味し、「2X」は該標準濃度の2倍を意味する等。これらの実施形態のいずれかにおいて、塩などの実質的に浸透圧に影響することができる2Xは、培地の浸透圧が許容可能な範囲の外になるように、濃度において増加されることはできない。ゆえに、培地は、例えば、1Xのみで存在することができる塩を除く全ての構成要素に関して8Xであってもよい。濃縮培地は、無血清および/または無タンパク質であってもよい。さらに、培地は、例えば、ビタミン、アミノ酸、および代謝前駆体などの枯渇することができる培地構成要素を補填するために培養を維持する間、定期的に補足されてもよい。当該技術分野において既知であるように、異なる培地および温度は、異なる細胞株への多少の異なる効果を有してもよく、同じ培地および温度は、全ての細胞株に適していなくてもよい。
【0124】
哺乳類細胞に適した培養条件は、当該技術分野において既知である。例えば、Animal cell culture: A Practical Approach, D. Rickwood, ed., Oxford university press, New York (1992)を参照のこと。哺乳類細胞は、懸濁状態でまたは固体基板に付着している状態で培養されてもよい。さらに、哺乳類細胞は、例えば、マイクロキャリア有りまたは無しで、流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、振とうフラスコ、または攪拌タンクバイオリアクター中で培養され、かつバッチ、流加培養、連続、半連続、または灌流モードで操作されてもよい。
【0125】
培養条件をモニターすること
本開示の特定の実施形態において、実施者は、増殖中の細胞培養の特定の条件を定期的にモニターすることが有益または必要であることを見出してもよい。細胞培養条件をモニターすることは、実施者が、該細胞培養が組換えポリペプチドまたはタンパク質を準最適レベルで生産しているかどうか、または該培養が準最適生産フェーズに入ろうとしているかどうかを決定することを可能にする。特定の細胞培養条件をモニターするために、分析のために培養の少量のアリコートを除去することが必要であるだろう。当業者は、かかる除去が潜在的に細胞培養柱にコンタミネーションを導入してもよいことを理解し、かかるコンタミネーションのリスクを最小限にするために適切な注意をするであろう。
【0126】
非限定的な例として、細胞培養の温度、pH、細胞密度、生細胞密度、細胞生存性、統合生細胞密度、乳酸塩レベル、アンモニウムレベル、浸透圧、溶存酸素量、pCO2レベル、グルタミンレベル、グルタミン酸レベル、またはグルコースレベル、あるいは発現されたポリペプチドまたはタンパク質の力価をモニターすることは、有益または必要であってもよい。いくつかの実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは、代替として、または上記の細胞培養パラメーターに加えてモニターされる。いくつかの実施形態において、かかるパラメーターは定期的に測定される。特定の実施形態において、かかるパラメーターは毎日測定される。いくつかの実施形態において、かかる測定は、細胞培養の増殖フェーズの間行われる。いくつかの実施形態において、かかる測定は、細胞培養の移行フェーズの間行われる。いくつかの実施形態において、かかる測定は、細胞培養の生産フェーズの間行われる。特定の実施形態において、宿主細胞タンパク質の発現または活性レベルは、細胞培養のスタート後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日に測定される。
【0127】
当業者がこれらの条件を測定することを可能にする多くの技術が、当該技術分野において周知である。例えば、細胞密度は、血球計算盤、コールターカウンター、または細胞密度検査(CEDEX)を使用して測定されてもよい。生細胞密度は、培養試料をトリパンブルーを用いて染色することにより決定されてもよい。死細胞のみがトリパンブルーを取り込むため、生細胞密度は、細胞の総数をカウントし、色素を取り込む細胞の数を細胞の総数で割り、その逆数をとることにより決定されることができる。細胞生存性は、バイオマスキャパシタンスプローブを使用して測定されることもできる。HPLCは、乳酸、アンモニウム、または発現したポリペプチドやタンパク質のレベルを測定するために使用されることができる。あるいは、発現されたポリペプチドまたはタンパク質のレベルは、SDS-PAGEゲルのクーマシー染色、ウエスタンブロッティング、ブラッドフォードアッセイ、ローリーアッセイ、ビウレットアッセイ、およびUV吸収などの標準的な分子生物学技術により決定されることができる。リン酸化およびグリコシル化を含む、発現されたポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾をモニターすることも有益または必要であってもよい。
【0128】
哺乳類細胞培養を提供すること
バッチおよび流加培養によるタンパク質またはポリペプチドの生産のために哺乳類細胞を調製する種々の方法は、当該技術分野において周知である。発現に到達するのに十分な核酸(典型的に、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子および任意の作動可能に連結された遺伝子制御要素を含有するベクター)は、任意の数の周知の技術により宿主細胞株中に導入されてもよい。典型的に、細胞はスクリーニングされて、どの宿主細胞が実際にベクターを取り込み、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現するかが決定される。哺乳類細胞により発現される特定の目的のポリペプチドまたはタンパク質を検出する従来の方法は、免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、SDS-PAGE、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)技術、生物活性アッセイおよびアフィニティークロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない。当業者は、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を検出するための他の適切な技術を知っているであろう。複数の宿主細胞が目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する場合、列挙された技術のいくつかまたは全てが使用されて、どの細胞がそのポリペプチドまたはタンパク質を最高レベルで発現するかが決定されることができる。
【0129】
目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞が同定されると、その細胞は、当業者に周知の様々な方法のいずれかにより培養において増殖される。目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞は、典型的に、細胞の生存、増殖、および生存性を助長する温度でおよび培地においてそれを増殖させることにより増殖される。初期培養体積は、任意のサイズであることができるが、しばしば、目的のポリペプチドまたはタンパク質の最終生産において使用される生産バイオリアクターの培養体積よりも小さく、頻繁に、細胞は生産バイオリアクターに播種する前に体積が増加するバイオリアクター中で何度か継代される。細胞培養は、攪拌または振とうされ、培地の酸素化および細胞への栄養素の分散が増加されることができる。あるいはまたは加えて、当該技術分野において周知の特別な散布装置を使用して、培養の酸素化を増加および制御することができる。本発明に従って、当業者は、pH、温度、酸素化などを含むがこれらに限定されないバイオリアクターの特定の内部条件を制御または調節することが有益であることができることを理解するであろう。
【0130】
生産バイオリアクター中の開始細胞密度は、当業者により選択されることができる。本開示に従って、生産バイオリアクター中の開始細胞密度は、培養体積ごとの単一細胞と同じくらい低くあることができる。本開示の好ましい実施形態において、生産バイオリアクター中の開始細胞密度は、1mLあたり約2×102生細胞から1mLあたり約2×103、2×104、2×105、2×106、5×106または10×106生細胞およびそれを超える範囲であることができる。
【0131】
初期および中間細胞培養は、次の中間または最終生産バイオリアクターに播種する前に任意の所望の密度に増殖されてもよい。総生存性または総生存性近くが必要とされないが、播種の前に細胞のほとんどが生きたままであることが好ましい。本開示の1つの実施形態において、細胞は、例えば低スピード遠心分離により、上清から除去されてもよい。いかなる不要な代謝廃棄産物または培地構成要素をも除去するために、次のバイオリアクターに播種する前に、除去された細胞を培地を用いて洗浄することもまた望ましくてもよい。培地は、細胞が以前増殖された培地であってもよく、または本開示の実施者により選択される異なる培地または洗浄溶液であってもよい。
【0132】
細胞は、次いで、生産バイオリアクターに播種するための適切な密度へ希釈されてもよい。本開示の好ましい実施形態において、細胞は、生産バイオリアクター中で使用されるであろう同じ培地中へ希釈される。あるいは、細胞は、本開示の実施者の必要または所望に応じて、または細胞自体の特定の要求を満たすために、例えばそれらが生産バイオリアクターに播種する前に短期間貯蔵されるべきである場合、別の培地または溶液中へ希釈されることができる。
【0133】
初期増殖フェーズ
上記のように一度生産バイオリアクターが播種されると、細胞培養は、細胞培養の生存、増殖および生存性を助長する条件下で、初期増殖フェーズに維持される。正確な条件は、細胞型に応じて変わり、細胞が由来する生物、および発現されたポリペプチドまたはタンパク質の性質および特徴に応じて変わるだろう。
【0134】
本開示に従って、生産バイオリアクターは、ポリペプチドまたはタンパク質の大規模生産に適切ないかなる体積であることもできる。好ましい実施形態において、生産バイオリアクターの体積は、少なくとも500リットルである。他の好ましい実施形態において、生産バイオリアクターの体積は、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000リットルまたはそれを超える体積、またはその間の任意の体積である。当業者は、本開示の実施における使用に適したバイオリアクターを知っているかまたは選択することができるだろう。生産バイオリアクターは、生産されるポリペプチドまたはタンパク質の発現または安定性に干渉しない細胞増殖および生存性を助長する任意の材料で構成されてもよい。
【0135】
初期増殖フェーズにおける細胞培養の温度は、細胞が生存可能のままである温度の範囲に主に基づいて選択されるだろう。例えば、初期増殖フェーズの間、CHO細胞は、37°Cでよく増殖する。一般に、ほとんどの哺乳類細胞は、約25°Cから42°Cの範囲内で良く増殖する。好ましくは、哺乳類細胞は、約35°Cから40°Cの範囲内でよく増殖する。当業者は、細胞の必要および実施者の生産要求に応じて、適切な温度または細胞を増殖させるための温度を選択することができるだろう。
【0136】
本開示の1つの実施形態において、初期増殖フェーズの温度は、単一の一定の温度で維持される。別の実施形態において、初期増殖フェーズの温度は、ある温度の範囲内で維持される。例えば、温度は、初期増殖フェーズの間、徐々に増加または減少されてもよい。あるいは、温度は、初期増殖フェーズの間、何度も別々の量で増加または減少されてもよい。当業者は、単一または複数の温度が使用されるべきか、および温度は徐々にまたは別々の量で調整されるべきか決定することができるだろう。
【0137】
細胞は、実施者の必要および細胞自体の要件に応じて、初期増殖フェーズの間、より多いまたはより少ない時間、増殖されてもよい。1つの実施形態において、細胞は、邪魔されずに増殖することが可能とされる場合に最終的に達するであろう最大生細胞密度の所与のパーセンテージの生細胞密度に到達するのに十分な期間、増殖される。例えば、細胞は、最大生細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99パーセントの所望の生細胞密度に到達するのに十分な期間、増殖されてもよい。
【0138】
別の実施形態において、細胞は、定義された期間、増殖するのを可能にされる。例えば、細胞培養の開始濃度、細胞が増殖される温度、および細胞の固有の増殖速度に応じて、細胞は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて増殖されてもよい。いくつかの場合において、細胞は、1カ月間またはそれを超えて増殖するのを可能にされてもよい。細胞は、初期増殖フェーズ温度でのシードバイオリアクター中での増殖が、その接種時の生産バイオリアクター中の生細胞密度がすでに最大生細胞密度の所望のパーセンテージであるのに十分である場合、生産バイオリアクター中で0日間増殖されるであろう。本開示の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質生産要求および細胞自体の必要に応じて、初期増殖フェーズの期間を選択することができるであろう。
【0139】
細胞培養は、初期培養フェーズの間攪拌または振とうされて、細胞への酸素化および栄養素の分散を増加させてもよい。本開示に従って、当業者は、pH、温度、酸素化などを含むがこれらに限定されない初期増殖フェーズの間のバイオリアクターの特定の内部条件を制御または調節することが有益であることができることを理解するであろう。例えば、pHは、適切な量の酸または塩基を供給することにより制御されることができ、酸素化は、当該技術分野において周知である散布装置を用いて制御されることができる。
【0140】
培養条件をシフトさせること
本開示の教示に従って、初期増殖フェーズの終わりに、培養条件の少なくとも1つはシフトされて、第2のセットの培養条件が適用され、培養における代謝シフトが生じてもよい。阻害性代謝物、最も特に乳酸およびアンモニアの蓄積は、増殖を阻害する。例えば細胞培養の温度、pH、浸透圧または化学的誘導物質レベルにおける変化により達成される代謝シフトは、特異的グルコース消費速度に対する特異的乳酸塩生産速度の比における減少を特徴としてもよい。1つの非限定的な実施形態において、培養条件は、培養の温度をシフトさせることによりシフトされる。しかしながら、当該技術分野において既知であるように、温度をシフトさせることは、適切な代謝シフトが到達されることができる唯一のメカニズムではない。例えば、かかる代謝シフトは、pH、浸透圧、および酪酸ナトリウムレベルを含むがこれらに限定されない他の培養条件をシフトさせることにより到達されることもできる。上記のように、培養シフトのタイミングは、ポリペプチドまたはタンパク質生産要求または細胞自体の必要に基づいて、本開示の実施者により決定されるであろう。
【0141】
培養の温度をシフトさせる場合、温度シフトは比較的緩やかであってもよい。例えば、温度変化が完了するまでに数時間または数日かかってもよい。あるいは、温度シフトは比較的急激であってもよい。例えば、温度変化は数時間未満で完了してもよい。ポリペプチドまたはタンパク質の商業的大規模生産において標準的であるような適切な生産および制御装置を考えると、温度変化は1時間未満内で完了してさえもよい。
【0142】
後続の増殖フェーズにおける細胞培養の温度は、主に、細胞培養が生存可能なままであり、商業的に適切なレベルで組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する温度の範囲に基づいて選択されるであろう。一般に、ほとんどの哺乳類細胞は生存可能なままであり、約25°Cから42°Cの範囲内で商業的に適切なレベルで組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する。好ましくは、哺乳類細胞は生存可能なままであり、約25°Cから35°Cの範囲内で商業的に適切なレベルで組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する。当業者は、細胞の必要および実施者の生産要件に応じて、細胞を増殖させるための適切な温度(単数または複数)を選択することができるであろう。
【0143】
本開示の1つの実施形態において、後続の増殖フェーズの温度は、単一の一定の温度に維持される。別の実施形態において、後続の増殖フェーズの温度は、ある温度の範囲内に維持される。例えば、温度は、後続の増殖フェーズの間、徐々に増加または減少されてもよい。あるいは、温度は、後続の増殖フェーズの間、何度も別々の量で増加または減少されてもよい。当業者は、複数の別々の温度シフトがこの実施形態に包含されることを理解するであろう。例えば、温度は一度シフトされ、細胞は特定の期間この温度または温度範囲に維持され、その後、温度は再び、より高いかまたはより低い温度いずれかにシフトされてもよい。各別々のシフト後の培養の温度は一定であってもよく、または特定の温度範囲内に維持されてもよい。
【0144】
後続の生産フェーズ
本開示に従って、細胞培養の条件が上記のように一度シフトされると、細胞培養は、細胞培養の生存および生存性を助長し、商業的に適切なレベルでの所望のポリペプチドまたはタンパク質の発現に適切である第2のセットの培養条件下で、後続の生産フェーズの間維持される。
【0145】
上記のように、培養は、温度、pH、浸透圧、および酪酸ナトリウムレベルを含むがこれらに限定されないいくつかの培養条件の1つ以上をシフトさせることによりシフトされてもよい。1つの実施形態において、培養の温度がシフトされる。この実施形態によれば、後続の生産フェーズの間、培養は、初期増殖フェーズの温度または温度範囲よりも低い温度または温度範囲に維持される。例えば、後続の生産フェーズの間、CHO細胞は、25°Cから35°Cの範囲内で組換えポリペプチドおよびタンパク質をよく発現する。上記のように、複数の別々の温度シフトは採用されて、組換えポリペプチドまたはタンパク質の細胞密度または生存性を増加させるか、またはその発現を増加させてもよい。
【0146】
本開示に従って、細胞は、所望の細胞密度または生産力価が達せられるまで、後続の生産フェーズにおいて維持されてもよい。1つの実施形態において、細胞は、組換えポリペプチドまたはタンパク質に対する力価が最大に達するまで、後続の生産フェーズにおいて維持される。他の実施形態において、培養は、実施者の生産要件または細胞自体の必要に応じて、この時点の前に採取されてもよい。例えば、細胞は、最大生細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセントの生細胞密度に到達するのに十分な期間維持されてもよい。いくつかの場合において、生細胞密度が最大に到達するのを可能にし、次いで培養を採取する前に生細胞密度があるレベルまで低下するのを可能にすることが望ましくてもよい。極端な例において、培養を採取する前に、生細胞密度がゼロに近づくかまたはゼロに達するのを可能にすることが望ましくてもよい。
【0147】
本開示の別の実施形態において、細胞は、後続の生産フェーズの間に、定義された期間増殖することを可能にされる。例えば、後続の増殖フェーズのスタート時の細胞培養の濃度、細胞が増殖される温度、および細胞の固有の増殖速度に応じて、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて増殖されてもよい。いくつかの場合において、細胞は、1か月間またはそれを超えて増殖することを可能にされてもよい。本発明の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質生産要件および細胞自体の必要に応じて、後続の生産フェーズの期間を選択することができるであろう。
【0148】
特定の場合において、後続の生産フェーズの間、細胞により枯渇または代謝された栄養素または他の培地構成要素で、細胞培養を補足することが有益または必要であってもよい。例えば、細胞培養のモニタリングの間に枯渇したことが観察された栄養素または他の培地構成要素で細胞培養を補足することは、有利である可能性がある。あるいはまたは加えて、後続の生産フェーズの前に細胞培養を補足することは、有益または必要であってもよい。非限定的な例として、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸など)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、またはグルコースまたは他のエネルギー源で細胞培養を補足することは、有益または必要であってもよい。
【0149】
これらの補足構成要素は、全て一度に細胞培養に添加されてもよく、または一連の添加において細胞培養に提供されてもよい。本開示の1つの実施形態において、補足構成要素は、比例量で複数回細胞培養に提供される。別の実施形態において、最初に特定の補足構成要素のみを提供し、後で残りの構成要素を提供することが望ましくてもよい。本開示のさらに別の実施形態において、細胞培養は、これらの補足構成要素を継続的に供給される。
【0150】
本開示に従って、細胞培養に添加される総体積は、所望により最小量に保たれるべきである。例えば、細胞培養に添加された補足構成要素を含有する培地または溶液の総体積は、補足構成要素を提供する前の細胞培養の体積の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45または50%であってもよい。
【0151】
細胞培養は、細胞への酸素化および栄養素の分散を増加させるために、後続の生産フェーズの間、攪拌または振とうされてもよい。本発明に従って、当業者は、pH、温度、酸素化などを含むがこれらに限定されない後続の増殖フェーズの間のバイオリアクターの特定の内部条件を制御または調節することが有益であることができることを理解するであろう。例えば、pHは、適切な量の酸または塩基を供給することにより制御されることができ、酸素化は、当該技術分野において周知の散布装置を用いて制御されることができる。
【0152】
発現した目的のポリペプチドまたはタンパク質の単離
一般に、典型的には、本開示に従って発現される目的のタンパク質またはポリペプチドを単離および/または精製することが望ましいであろう。好ましい実施形態において、発現されたポリペプチドまたはタンパク質は培地中へ分泌され、ゆえに、細胞および他の固形物は、例えば精製処理における第1の工程として、遠心分離または濾過により除去されてもよい。
【0153】
あるいは、発現されたポリペプチドまたはタンパク質は、宿主細胞の表面に結合している。この実施形態において、培地は除去され、ポリペプチドまたはタンパク質を発現している宿主細胞は、精製処理における第1の工程として、溶解される。哺乳類宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH条件への曝露を含む、当業者に周知の任意の数の手段により到達されることができる。
【0154】
ポリペプチドまたはタンパク質は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、サイズ排除、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、または示差溶解性、エタノール沈殿を含むがこれらに限定されない標準的な方法によりまたはタンパク質の精製に利用可能な任意の他の技術(例えば、全て参照により本明細書中に組み込まれる、Scopes, Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition, Springer-Verlag, New York, 1987; Higgins, S. J. および Hames, B. D. (eds.), Protein Expression: A Practical Approach, Oxford Univ Press, 1999; および Deutscher, M. P., Simon, M. I., Abelson, J. N. (eds.), Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology (Methods in Enzymology Series, Vol 182), Academic Press, 1997を参照)により、単離および精製されてもよい。特に免疫アフィニティークロマトグラフィーについて、タンパク質は、該タンパク質に対して産生され、固定支持体に固定された抗体を含むアフィニティーカラムにそれを結合させることにより単離されてもよい。あるいは、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどの親和性タグは、標準的な組換え技術によりタンパク質に結合され、適切なアフィニティーカラムの通過による容易な精製を可能にすることができる。フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤は、精製処理の間のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減または排除するために、任意または全ての段階で添加されてもよい。プロテアーゼ阻害剤は、特に、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を単離および精製するために細胞を溶解しなければならない場合に所望である。当業者は、正確な精製技術が、精製されるべきポリペプチドまたはタンパク質の特性、ポリペプチドまたはタンパク質が発現される細胞の特性、および細胞が増殖された培地の組成に応じて変化することを理解するであろう。
【実施例0155】
分析のための細胞培養条件および試料の調製
独自の細胞培養培地および異なるIgG抗体を発現する2つの独自の組換えCHO細胞株を、以下の実施例に記載の実験のために使用した。細胞培養培地は、化学的に定義され、完全に無血清であった。組換えIgG生産CHO細胞を、250mL、1L、および3Lの振とうフラスコ中で懸濁培養中で維持し、36.5°C、150rpm、CO2濃度5%でのインキュベーションのためにCO2シェーカーインキュベーター(Kuhner)を使用した。
【0156】
N-1シードおよび流加培養生産両方のための実験室規模リアクター培養(cultivation)を、5L攪拌タンクリアクター(Sartorius)中で行った。全ての5Lリアクターは、2つの45°ピッチの3枚羽根インペラー、pHおよびDOプローブを装備した。N-1シードにおいて、培養を、3L振とうフラスコ培養から0.4-0.8x106細胞/mLの範囲で36.5°Cの温度で接種した。5Lバイオリアクターの初期作業体積は3Lであった。pHを、1M炭酸ナトリウム添加およびCO2ガススパージングにより7.0から7.4の範囲に制御した。インペラー攪拌を260rpmに設定し、通気を0.5mmのドリル穴スパージャーによる純酸素スパージングにより提供した。溶存酸素を、カスケード酸素スパージングを介して50%のレベルに維持した。消泡剤(EX-CELL消泡剤、Sigma-Aldrich)をバイオリアクターに添加して、泡レベルを制御した。細胞密度を、毎日のオフライン測定(Vi-cell,Beckman Coulter)によりおよび/またはオンラインキャパシタンスプローブ(Hamilton)を介して測定した。毎日のオフライン試料も、phOX機器(Nova Biomedical)を介してpH、溶存酸素、およびpCO2についてモニターし、グルコースおよび乳酸プロファイルを、Cedex Bio HT(Roche)を用いて測定した。
【0157】
細胞培養液(CCF)採取を、一次および二次深度フィルターとしてそれぞれ10SP02Aおよび90ZB05Aを使用する深度濾過を用いて行った。濾過の間、負荷の関数として差圧をモニターし、濾過フラックスに対する差圧の比率としてフィルター抵抗を算出した。濾過実験を、NFFSSソフトウェアにより制御されるPendoTECH機器(PendoTECH,Princeton,NJ)を使用して実施した。特に記載されない限り、フィルターの平衡化を、逆浸透脱イオン水(RODI)を使用して、600リットル/平方メートル/時(LMH)で>100L/m2に達するまで実施し、その後、一次深度有効濾過面積(EFA)に基づいて、50LMHの一定フラックスでロードし、その後15L/m2でのPBS追跡が続く。採取された細胞培養液を、実験試験を開始する前に、-80°Cまたは4°Cで最大3日間貯蔵した。
【0158】
実験室および製造規模バイオリアクターからの試料を、25-30μmフィルタープレートによる流出物の遠心分離を使用して、バッチ結合、96ウェル形式でアフィニティークロマトグラフィー(MabSelect PCC resin,GE Healthcare Life Sciences,Marlborough,MA,USA)を用いて精製した。プレートを、300μLのスラリー樹脂を96ウェルフィルタープレート中に添加し、2000rpmで1分間遠心分離し、96ウェル廃棄物回収プレートからのフロースルーを廃棄することにより樹脂を用いて調製した。次いで、プレートを300μlの1Xリン酸緩衝生理食塩水(Thermo Scientific,Bremen,DE)を用いて平衡化し、上記のように3重に遠心分離した。濾過したHCCF試料を≦2mg/mlに調整し、200μlを調製したプレート上に2重にロードし、2000rpmで1分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。これを合計4回反復した。次いで、ウェルを、上記の平衡化工程に示されるように1XPBSを用いて2回洗浄し、続いてコハク酸または酢酸緩衝液pH5.5-5.8のいずれかを用いて2回洗浄し、上記のように処理した。試料を溶出するために新鮮な廃棄物回収プレートを使用して、196μlのコハク酸または酢酸溶出バッファー(pH3.0-3.8)を樹脂に添加し、2000rpmで1分間遠心分離することにより、試料を溶出した。溶出工程を、ウェルあたり合計3回の溶出について2回反復した。タンパク質濃度を、Lunatic UV/Visリーダー(Unchained Labs,Pleasanton,CA,USA)を使用して適切な吸光係数を使用して決定した。
【0159】
プロテオミクス分析のためのプロテオミクスのためにIgGが枯渇したHCCF試料について、プレートを樹脂を用いてロードし、上記のように平衡化した。HCCFを4重にウェル中に添加し、攪拌してレジンスラリーを再懸濁し、1時間インキュベートし、次いで回収プレート中へ2000rpmで1分間遠心分離した。各試料からのIgG枯渇HCCFをプールし、Amicon Ultra-15 Centrifugal Filter Unit(Millipore Sigma,St.Louis,MO,USA)を使用して>25mg/mlに濃縮し、シグナル正規化に使用されるように2mg/ml BSA(Millipore Sigma,St.Louis,MO,USA)を用いて20mg/ml総タンパク質の最終濃度に調整した。