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特開2024-28925半導体用途のための高純度コーディエライト材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028925
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】半導体用途のための高純度コーディエライト材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/195 20060101AFI20240227BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C04B35/195
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207642
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2022539687の分割
【原出願日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】62/966,468
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ビスタ、サウラフ
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン、マシュー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、スティーブン、ロジャー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】動作温度範囲にわたって実質的にゼロである熱膨張係数(CTE)を有し、実質的に130GPaを超えるヤング率を有し、細孔を本質的に含まず、高い熱伝導率を有し、また研磨して低い表面粗さにすることができる、コーディエライト材料およびその作製方法を提供する。
【解決手段】X線回折、SEM、及び画像処理の方法を用いて測定して90~98体積%のコーディエライト結晶相を含むコーディエライト焼結体であって、前記コーディエライト焼結体は、SEM及び画像処理の方法を用いて測定して、0.1~5μmの直径を有する細孔を含む少なくとも1つの表面を有する、コーディエライト焼結体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折、SEM、及び画像処理の方法を用いて測定して90~98体積%のコーディエライト結晶相を含むコーディエライト焼結体であって、前記コーディエライト焼結体がSEM及び画像処理の方法を用いて測定して0.1~5μmの直径を有する細孔を含む少なくとも1つの表面を有する、コーディエライト焼結体。
【請求項2】
前記コーディエライト焼結体が、90体積%以上、好ましくは95体積%以上、好ましくは90~97体積%、好ましくは93~98体積%、好ましくは95~98体積%、好ましくは90~95体積%、好ましくは93~97体積%の量のコーディエライト結晶相を含む、請求項1に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの表面が、0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1umの直径を有する細孔を含む、請求項1又は2に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項4】
ASTM B962-17に従って測定して、2.55~2.63g/cc、好ましくは2.58~2.63g/cc、好ましくは2.61~2.63g/cc、好ましくは2.62~2.63g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項5】
ASTM B962-17に従って行なわれる密度測定値から計算して、0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%、好ましくは0.5~4%、好ましくは0.5~3%、好ましくは1~4%、好ましくは1~3%、好ましくは1~2%、好ましくは1.5~3.5%の体積多孔率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項6】
ASTM E1876-15に従って測定して、125~180GPa、好ましくは125~160GPa、好ましくは125~140GPa、好ましくは130~180GPa、好ましくは130~160GPa、好ましくは130~150GPaのヤング率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項7】
前記コーディエライト焼結体がX線回折によって決定して実質的に結晶性である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項8】
ISO標準25178-2-2012に従って測定して、表面上の75nm以下、好ましくは50nm以下、好ましくは25nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは10nm以下、好ましくは2~15nm、好ましくは2~10nm、好ましくは2~8nm、好ましくは2~5nmの算術平均高さ(Sa)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項9】
ISO標準25178-2-2012に従って、5.5μm未満、好ましくは4.0μm未満、好ましくは3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.3~3μm、好ましくは0.3~2μm、好ましくは0.3~1μmの最大高さ(Sz)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項10】
ICPMS法を使用して測定して、純度100%のコーディエライト焼結体に対して99.9~99.995%、好ましくは99.95~99.995%の純度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項11】
X線回折、SEM及び画像処理の方法を用いて測定して、前記コーディエライト焼結体が約95体積%~約98体積%の量の前記コーディエライト結晶相と約2体積%~約体積5%の量のサフィリン結晶相とを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む、フォトリソグラフィレチクル。
【請求項13】
粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の各々がタルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項14】
前記コーディエライト焼結体が、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項1~13のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項15】
前記コーディエライト焼結体が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属元素、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素を含む、ガラス形成成分を含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載のコーディエライト焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実質的に相が純粋なコーディエライト焼結体を含む熱膨張性の低いセラミックに関する。より具体的には、本開示は、コーディエライト焼結体を含む層を有するチャック、露光装置のステージ、リソグラフィ装置の光学素子用の支持部材、及び半導体製造用のフォトリソグラフィパターニングレチクルなどの半導体加工装置での使用に適した熱膨張性の低いコーディエライト焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における微細化が進むにつれて、熱膨張性が非常に低い材料が、この目的に使用されるマイクロリソグラフィプロセスにおける十分な位置決め精度に必要とされている。このように、ウェハーの位置決めには0.1nmの領域の精度が必要であり、したがって、小さな温度変動による誤った位置決めを回避するために、<0.5ppm/K(すなわち、<0.5×10-6/K)、好ましくは<0.05ppm/K、好ましくは<0.005ppm/Kの熱膨張係数が必要とされる。マイクロリソグラフィプロセスで使用される材料は同時に、振動を防止して構成要素の機械的安定性を保証するために高いヤング率を有し、加工中の熱及び温度変動を放散するために高い熱伝導率を有する必要がある。
【0003】
本明細書で使用される構成要素、例えば、基板ホルダー(ウェハーステージとして知られる)、レチクル、及び光学支持部材には、今日、LiO-Al-SiO(LAS)ガラスセラミック(例えば、Zerodur(登録商標))をベースとした低膨張ガラスセラミック、又は多くの場合コーディエライトをベースとする焼結セラミックのいずれかが使用されている。リチウム-高石英固溶体が主結晶相を形成するLAS系由来のガラスセラミックは、(0~50℃の温度範囲で)0.02ppm/K未満という特に低い熱膨張係数で作製することができる。更なる利点は、その製造方法の結果として、それらが測定可能な多孔性を有していないことである。しかしながら、それらのヤング率は概して、わずか90~95GPaの範囲内であり、多くの用途には低すぎる。更に、これらの低膨張ガラスセラミックの熱伝導率は低い。
【0004】
コーディエライト含有セラミックも同様に、例えば、米国特許出願公開第2013/0225392号に記載されているように、20~25℃の狭い温度範囲で<0.1ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。しかしながら、そのようなセラミックは、製造方法の結果として多孔性であり、70GPaという低いヤング率を特徴とする。この多孔性によって研磨時に欠陥又は穴が形成され、そのため、反射材料を堆積させてリソグラフィ用途で使用する非常に低い表面粗さの反射型レチクルを形成するためには表面が不適切になり、それに加えて熱伝導率が低下して半導体加工中の熱変動が生じ、またいくつかの用途には強度が低すぎる。そのようなセラミックはまた、しばしば、ドーパント及び/又は焼結助剤などの添加剤、及びコーディエライト結晶相以外の他の相を含有する。これらの添加剤及びコーディエライト以外の相の存在は、温度に伴う熱膨張係数(CTE)を大きく変化させ、また熱伝導率を低下させ、リソグラフィ用途において反射型レチクルとして使用する場合に、露光精度を低下させ、また半導体プラズマ加工チャンバ内で使用する場合、腐食及び侵食に対する耐性を低下させる。
【0005】
電子産業は、基板として使用した場合のコーディエライト材料の有益な熱特性を認識し、その有害な多孔性を補正してきた。例えば、米国特許第8,736,810号では、EUVエネルギーの吸収から生じるパターンの歪みを実質的に低減又は排除する反射型レチクルを開示しており、そこでは、多孔性表面を補正するためにコーディエライトの基板上に置かれた超低膨張ガラスの層をレチクルは有する。しかしながら、これには反射型レチクル及びその製造に追加の材料とプロセスコストがかかる。更に、ガラスの層もまたレチクルの熱伝導率を低下させ、それによって、パターンの歪みを生じる場合がある熱勾配を増加させる。
【0006】
したがって、例えば、真空又は静電チャックなどのウェハー支持体、光学素子の支持及び位置決め部材、及び半導体製造装置の反射型レチクルの一部としての使用に適した基板として使用でき、動作温度範囲にわたって実質的にゼロである熱膨張係数(CTE)を有し、実質的に130GPaを超えるヤング率を有し、細孔を本質的に含まず、高い熱伝導率を提供し、また研磨して低い表面粗さにすることができる、コーディエライト材料が当該技術分野で必要とされている。
【0007】
発明の概要
これら及び他の必要性は、本明細書に開示する様々な実施形態、態様、及び構成によって対処される。
【0008】
一態様では、コーディエライト(MgAlSi18)を含み、少なくとも1つの表面を有するコーディエライト焼結体を開示し、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0009】
別の態様では、コーディエライト焼結体の作製方法を開示し、方法は以下の工程、すなわち、a)二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なってMgAlSi18を含むコーディエライト焼結体を形成する工程と、e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む。
【0010】
別の態様では、MgAlSi18を含み、少なくとも1つの表面を有するコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含むフォトリソグラフィレチクルを開示し、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0011】
更なる態様では、MgAlSi18を含み、少なくとも1つの表面を有するコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む支持チャックを開示し、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0012】
なおも更なる態様では、MgAlSi18を含み、少なくとも1つの表面を有するコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む支持構造体を開示し、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0013】
更に別の態様では、以下の工程を含む方法によって作製されるコーディエライト焼結体を開示し、方法は、a)二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なってMgAlSi18を含むコーディエライト焼結体を形成する工程と、e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む。
【0014】
実施形態1。X線回折、SEM、及び画像処理の方法を用いて測定して90~98体積%のコーディエライト結晶相を含むコーディエライト焼結体であって、コーディエライト焼結体がSEM及び画像処理の方法を用いて測定して0.1~5μmの直径を有する細孔を含む少なくとも1つの表面を有する、コーディエライト焼結体。
【0015】
実施形態2。コーディエライト焼結体が、90体積%以上、好ましくは95体積%以上、好ましくは90~97体積%、好ましくは93~98体積%、好ましくは95~98体積%、好ましくは90~95体積%、好ましくは93~97体積%の量のコーディエライト結晶相を含む、請求項1に記載のコーディエライト焼結体。
【0016】
実施形態3。少なくとも1つの表面が、0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1umの直径を有する細孔を含む、実施形態1又は2に記載のコーディエライト焼結体。
【0017】
実施形態4。ASTM B962-17に従って測定して、2.55~2.63g/cc、好ましくは2.58~2.63g/cc、好ましくは2.61~2.63g/cc、好ましくは2.62~2.63g/ccの密度を有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0018】
実施形態5。ASTM B962-17に従って実施される密度測定値から計算して、0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%、好ましくは0.5~4%、好ましくは0.5~3%、好ましくは1~4%、好ましくは1~3%、好ましくは1~2%、好ましくは1.5~3.5%の体積多孔率を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0019】
実施形態6。ASTM E1876-15に従って測定して、125~180GPa、好ましくは125~160GPa、好ましくは125~140GPa、好ましくは130~180GPa、好ましくは130~160GPa、好ましくは130~150GPaのヤング率を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0020】
実施形態7。コーディエライト焼結体がX線回折によって決定してガラス質相を実質的に含まない、実施形態1~6のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0021】
実施形態8。X線回折によって決定して、コーディエライト焼結体が実質的に結晶性である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0022】
実施形態9。ISO標準25178-2-2012に従って測定して、75nm以下、好ましくは50nm以下、好ましくは25nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは10nm以下、好ましくは2~15nm、好ましくは2~10nm、好ましくは2~8nm、好ましくは2~5nmの表面上の算術平均高さ(Sa)を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0023】
実施形態10。ISO標準25178-2-2012に従って、5.5μm未満、好ましくは4.0μm未満、好ましくは3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.3~3um、好ましくは0.3~2um、好ましくは0.3~1umの最大高さ(Sz)を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0024】
実施形態11。SEM及びImageJ法を用いて測定して、コーディエライト焼結体の少なくとも1つの表面が、少なくとも1つの表面の総面積に対して1%未満、好ましくは0.9%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.6%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは約0.05%の量の多孔率を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0025】
実施形態12。コーディエライト焼結体が焼結助剤を含まない、実施形態1~11のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0026】
実施形態13。コーディエライト焼結体がドーパントを含まない、実施形態1~12のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0027】
実施形態14。ICPMS法を用いて測定して、100%純度のコーディエライト焼結体に対して99.9~99.995%、好ましくは99.95~99.995%の純度を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0028】
実施形態15。コーディエライト焼結体がX線回折、SEM及び画像処理の方法を用いて測定して、約95体積%~約98体積%の量のコーディエライト結晶相と約2体積%~約体積5%の量のサフィリン結晶相とを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0029】
実施形態16。コーディエライト焼結体の作製方法であって、以下の工程、すなわち、
a)二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程と、
b)焼成温度に達するまで熱を加え、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程と、
c)焼結装置のツールセットによって画定される容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、
d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なってコーディエライト焼結体を形成する工程と、
e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む、方法。
【0030】
実施形態17。更に以下の工程、すなわち、
f.任意で、アニーリング温度に達するまで熱を加えてコーディエライト焼結体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、コーディエライト焼結体をアニーリングする工程と、
g.アニーリングしたコーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む、請求項16に記載の方法。
【0031】
実施形態18。更に以下の工程、すなわち、
h.コーディエライト焼結体を機械加工して、フォトリソグラフィレチクル、光学素子の支持部材、真空チャック、静電チャック、支持チャック、マイクロリソグラフィプロセスで使用するレチクルチャックなどのコーディエライト焼結構成要素を作製する工程を含む、実施形態16又は17に記載の方法。
【0032】
実施形態19。圧力が5MPa~100MPa、好ましくは5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~50MPa未満、好ましくは5MPa~40MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~50MPa、好ましくは10~40MPa、好ましくは10~30MPa、好ましくは10~20MPa、好ましくは15~45MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは20MPa~40MPaである、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態20。焼結温度が、800~1300℃、好ましくは800~1250℃、好ましくは900~1300℃、好ましくは900~1250℃、好ましくは900~1200℃、好ましくは900~1100℃、好ましくは1000~1300℃、好ましくは1100~1300℃、好ましくは1100~1250℃である、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態21。焼成粉末混合物がICPMS法を用いて測定して99.95%より高い純度を有する、実施形態16~20のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施形態22。焼成粉末混合物がASTM C1274に従って測定されるBET表面積分析法を用いて測定して8~20m/g、好ましくは10~20m/g、好ましくは12~20m/g、好ましくは14~20m/g、好ましくは16~20m/g、好ましくは8~18m/g、好ましくは8~16m/g、好ましくは8~14m/g、好ましくは10~20m/g、好ましくは14~20m/g、好ましくは16~20m/gの比表面積を有する、実施形態16~21のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態23。実施形態1~15のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む、フォトリソグラフィレチクル。
【0037】
実施形態24。実施形態1~15のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む、支持構造体。
【0038】
実施形態25。実施形態1~15のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含む、支持チャック。
【0039】
実施形態26。粉末がタルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、実施形態16~22のいずれか1つに記載の方法によって作製されるコーディエライト焼結体。
【0040】
実施形態27。粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の各々がタルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項26に記載のコーディエライト焼結体。
【0041】
実施形態28。コーディエライト焼結体が、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、実施形態26又は27に記載のコーディエライト焼結体。
【0042】
実施形態29。粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の各々が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属元素、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素、を含むガラス形成成分を実質的に含まない、実施形態26~28のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【0043】
実施形態30。コーディエライト焼結体が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属元素、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素、を含むガラス形成成分を含まない、実施形態26~29のいずれか1つに記載のコーディエライト焼結体。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】反射リソグラフィ装置を示す。
【0045】
図2】EUVリソグラフィ装置で使用する例示的な反射型レチクルの実施形態を概略的に示す。
【0046】
図3】本明細書に開示する支持構造体の例示的な実施形態を示す。
【0047】
図4】比較例1のコーディエライト焼結体のX線回折結果を示す。
【0048】
図5図4及び比較例1のコーディエライト焼結体の5000倍の顕微鏡写真を示す。
【0049】
図6】本明細書に開示する実施形態による焼成粉末混合物のX線回折結果を示す。
【0050】
図7】本明細書に開示する実施形態によるコーディエライト焼結体のX線回折結果を示す。
【0051】
図8】本明細書に開示する実施形態によるコーディエライト焼結体の1000倍のSEM顕微鏡写真を示す。
【0052】
図9】本明細書に開示する実施形態によるコーディエライト焼結体の1000倍のトポグラフィーイメージングモードを使用して撮った図8の同じ表面領域のSEM顕微鏡写真を示す。
【0053】
図10】セラミック材料の焼結に使用される真空チャンバ(図示せず)内に簡単な配置で置かれたツールセットを有するSPS焼結装置の断面図である。
【0054】
図11A】1つのホイル層を示す図10の実施形態を示す。
【0055】
図11B】2つのホイル層を示す図10の代替の実施形態を示す。
【0056】
図11C】3つのホイル層を示す図10の別の代替の実施形態を示す。
【0057】
図12A図10のSPS焼結装置の平面図である。
図12B図10のSPS焼結装置の平面図である。
【0058】
図13】1200℃におけるグラファイト材料A及びBの平均熱膨張係数(CTE)の半径方向の分散を示したグラフである。
【0059】
図14A】グラファイト材料A及びBの熱膨張係数の標準偏差をppmで示す。
図14B】グラファイト材料A及びB各々の200~1200℃の動作温度にわたって測定された熱膨張係数の半径方向の偏差(絶対偏差)を示す。
【0060】
図15】グラファイト材料A及びBの400~1400℃の熱膨張係数を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
ここで特定の実施形態について詳細に言及する。特定の実施形態の例を添付の図に示す。本開示をこれらの特定の実装形態と併せて説明するが、本開示はそのような特定の実施形態に限定されるものではないことが理解される。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替、修正、及び等価物を包含することを意図している。以下の説明では、開示する実施形態を完全に理解できるように、多くの具体的な詳細を記載する。本開示はこれらの具体的な詳細のうちのいくつか又は全てを使用せずに実施することができる。
【0062】
本発明を実施するための本発明者らにとって既知の最良のモードを含む実施形態を開示する。それらの実施形態の変形例は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者には明らかである。本発明者らは当業者が必要に応じてそのような変形を使用することを想定し、また本発明者らは本発明が具体的に記載された以外でも実施されると想定している。したがって本発明は、適用される法によって認められるように、添付の特許請求の範囲に列記される主題の全ての修正及び等価物を含む。更に、上に開示する全ての可能な変形例における要素の任意の組合せは、文脈において別段の指示がない限り、又は明確な矛盾のない限り、本発明に包含される。更に、コーディエライト焼結体の作製方法に関して開示される全ての特徴はまた、製品、コーディエライト焼結体にも適用され、また製品、コーディエライト焼結体に関して開示される全ての特徴はまた、コーディエライト焼結体の作製方法にも適用される。
【0063】
引用される刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参照が個別に具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が記載されている場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
定義
【0064】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈に明確な矛盾のない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に明記されない限り、オープンエンド型の用語(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。値の範囲の列記は、特に指示がない限り、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個別に指すための簡略な方法としての役割を意図するものであり、各々の別個の値は個別に列記されているのと同様に明細書に組み込まれる。記載される全ての方法は、特に指示がない限り、又は文脈に明らかな矛盾のない限り、任意の適切な順序で実行することができる。任意及び全ての例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図するものであり、特に特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠なものとして特許請求されていない任意の要素を示すと解釈されるべきではない。本明細書及び特許請求の範囲における「含む(comprising)」という用語の使用は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」というより狭義の文言を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「EUVフォトリソグラフィ」という用語は、例えば、集積回路などの物品の製造に使用される極端紫外線リソグラフィを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「EUVフォトマスク基板」又は「基板」という用語は、多層フィルムスタックである。フィルムは、典型的には、ULE/LTEMの特徴を有する特殊な6インチ×6インチの基板上に堆積される。EUVフォトマスクとは、EUVフォトリソグラフィに使用されるパターニングされた反射型マスクである。
【0067】
「フォトマスク」と「レチクル」という用語は互換的に使用される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「半導体ウェハー」、「ウェハー」、「基板」、及び「ウェハー基板」という用語は互換的に使用される。半導体デバイス産業で使用されるウェハー又は基板は、典型的には、200mm、又は300mm、又は450mmの直径を有する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「コーディエライト焼結体」という用語は、「焼結物」、「本体」、又は「焼結体」と同義であり、粉末混合物からコーディエライト体を形成する加圧及び熱処理プロセスで処理された、本明細書に開示する粉末混合物から形成されたコーディエライトを含む固体セラミック物品を指す。実施形態において、「コーディエライト焼結体」という用語は一体型の本体を指す。「一体型」とは、追加の片なしで、それ自体で完全な単一片又は単一部材を意味し、すなわち、部材は、別の部材と共に一ユニットとして形成された1つのモノリシック片である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、a)粉末混合物を形成し得る出発材料、b)加工及び焼成後の粉末混合物、並びにc)本明細書に開示するコーディエライト焼結体中に様々な混入物及び/又は不純物がないことを指し、総質量のパーセントとして表される。純度が高くなること、100%に近づくことは、本質的に混入物又は不純物がない、Mg、Al、Si及びO並びに任意でのドーパント及び/又は焼結助剤の意図された材料組成物のみを含む、材料を表す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、a)粉末混合物を形成し得る出発材料、b)加工後の粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物、並びにc)コーディエライト焼結体の中に存在する、Mg、Al、Si及びO並びに任意でのドーパント及び/又は焼結助剤を含む出発材料自体以外の不純物を含む、化合物/混入物を指す。不純物は、加工/合わせた後、又は焼結中の出発粉末材料、粉末混合物、及び/又は焼成粉末混合物中に存在し得、またコーディエライト焼結体中に存在し得、ppmで報告され、ppmレベルが低くなると不純物含有量が低くなる。
【0072】
パーセントでの純度のppmでの不純物への変換は、純度の1%の低下=10,000ppmの不純物であることが当業者に知られている。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ドーパント」という用語は、コーディエライト焼結体中に残り得る程度の出発原料の酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムを含まない。不純物は、本明細書で定義されるドーパントが、例えば、コーディエライト焼結体中の粒径の修正及び相の純度などの特定の電気的、機械的、光学的、又は他の特性を得るために出発粉末又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、ドーパントとは異なる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に高密度化を向上させ、それによって多孔性を低減するジルコニア又はカルシアなどの添加剤を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、ダイと2つのパンチ、及び任意での追加のスペーサ要素を含み得る。
【0076】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶構造を有する結晶領域を意味すると理解される。
【0077】
本明細書で使用される場合、「剛性」という用語は、当業者に知られているようにヤング率の定義と同義であり、一致する。
【0078】
熱処理プロセスに関連して使用される場合、「焼成」又は「か焼」という用語は、例えば、水分及び/又は表面の不純物を除去し、結晶化度を上昇させ、いくつかの実施形態では、粉末及び/又は粉末混合物の表面領域を改変するために、空気中で粉末又は粉末混合物に対して行なわれる熱処理工程を意味すると理解される。
【0079】
セラミックの熱処理に適用される場合、「アニーリング」という用語は、本明細書では、開示されたコーディエライト焼結体を空気中で一定の温度にして、徐々に放冷して応力を緩和し、及び/又は化学量論を標準化する熱処理を意味すると理解される。
【0080】
当該技術分野で知られている「Sa」という用語は、表面の算術平均高さに関連し、表面全体にわたる算術平均の絶対値を表し、一般に「表面粗さ」と称される。ISO25178-2-2012セクション4.1.7による定義は、以下の式に従って計算される定義領域(A)内の縦座標の値の絶対値の算術平均である:
【数1】
【0081】
当技術分野で知られている「Sz」という用語は、(規模限定された表面の)最大高さ、又は「ピークトゥーバレー」を指し、ISO25178-2-2012セクション4.1.6に定義される定義領域(A)内の最大ピーク高さ値及び最大谷深さ値の合計として定義される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「ほぼ」、及び「約」という用語は、数と関連して使用されるためプラス又はマイナス10%の分散が許容される。
【0083】
以下の説明において、所与の範囲は下限及び上限の閾値を含む。したがって、パラメータAの「XからYの範囲」又は「XからYまでの範囲」の意味における定義は、AがX、Yの任意の値及びXからYまでの任意の値であることを意味する。パラメータAの「最大Yまで」又は「少なくともX」の意味における定義は、したがってAがY未満の任意の値及びYであり、又はAがX及びXより大きい任意の値であることをそれぞれ意味する。
【0084】
コーディエライト焼結体
【0085】
以下の詳細な説明は、本開示が、半導体ウェハーの作製の一部として必要なエッチング及び/又は堆積プロセスのためのナノメートルスケールのフィーチャーのパターニングを可能にするためのリソグラフィ装置、より具体的には(図1に示されるような)EUVリソグラフィ装置などの機器内に実装されることを想定している。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料、及び材料の組合せであってもよい。半導体ウェハーの加工に加えて、本開示の利点を発揮することができる他のワークピースとしては、非常に微細なスケールの解像度が好ましい任意のリソグラフィ加工、ミラー、光学素子の支持体、ステージ若しくはチャックなどのウェハー支持構造体、高精度かつ極低温レンズホルダー、様々なレンズ及びミラーの位置制御のための超低膨張基板、環境温度から例えば±100℃の温度範囲にわたって正確な位置制御が必要とされるマイクロメカニカルデバイスなどの様々な物品が挙げられる。
【0086】
リソグラフィは、集積回路(IC)並びに他のデバイス及び/又は構造体の製造における主要なプロセスとして広く認識されている。リソグラフィ装置は、リソグラフィ中に使用される機械であり(反射型リソグラフィ装置を図1に示す)、それは基板ウェハーの標的部分上などの基板半導体ウェハー上に所望のパターンを適用する。リソグラフィ装置を用いたICの製造中に、パターニングデバイス(あるいはマスク、レチクル、フォトマスク、又は反射型レチクルとも呼ばれる)100は、IC中の個々の層上に形成される回路パターンを生成する。パターニングデバイス100の例としては、レチクル、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが挙げられる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェハー)80上の領域(例えば、1つ、又はいくつかのダイの一部を含む)Cに転写される。パターンの転写は、典型的には、基板上に設けられた感光性材料(例えばレジスト)の層上へのイメージングによって行なわれる。「パターニングデバイス」100という用語は、ウェハー80の領域Cにパターンを形成するためなど、その断面にパターンを有する照射ビームBを与えるために使用され得る任意のデバイスを指すものとして広く解釈されるべきである。照射ビームBに与えられるパターンは、集積回路などの領域Cに形成されるデバイス内の特定の機能層に対応する。概して、単一の基板には連続的にパターニングされた隣接領域のネットワークが含まれる。ICの異なる層の製造では、多くの場合、異なるレチクルで異なる層上に異なるパターンをイメージングする必要がある。したがって、リソグラフィプロセス中にレチクルを変える必要がある。
【0087】
図1に、照射ビームB(例えばEUV照射)を調整するように構成されたイルミネータ(イルミネーションシステム、「IL」)、パターニングデバイス(例えば、マスク、レチクル、フォトマスク、フォトリソグラフィレチクル、反射型レチクル)100を支持するように構成され、パターニングデバイス100を高精度で位置決めするように構成された第1ポジショナ214に接続された第1支持プラットフォーム(例えば、レチクル又はマスク支持体)82、並びに基板(例えば、フォトレジストコーティングされたウェハー)80を保持するように構成され、ウェハー80を高精度で位置決めするように構成された第2ポジショナ216に接続された第2支持プラットフォーム(例えば、ウェハーテーブル、ウェハーチャック、ウェハー支持体)84を含む、反射型リソグラフィ装置98を示す。リソグラフィ装置98はまた、パターニングデバイス100によって照射ビームBに与えられたパターンをウェハー80上に投影するように構成されたプロジェクションシステム(Proj)を有する。リソグラフィ装置98において、パターニングデバイス100とプロジェクションシステムは反射型である。更に図1に示すように、イルミネータ(IL)は照射源から照射ビームを受け取る。照射ビームBは、第1支持プラットフォーム(例えば、レチクル支持体、マスク支持体)82上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク、フォトマスク、フォトリソグラフィレチクル、反射型レチクル)100に入射して、パターニングデバイス100によってパターニングされる。リソグラフィ装置98において、照射ビームBはパターニングデバイス(例えば、マスク、レチクル、フォトマスク、フォトリソグラフィレチクル、反射型レチクル)100から反射される。パターニングデバイス(例えば、マスク)100から反射された後、照射ビームBは、照射ビームBをウェハー80の領域C上に集束させるプロジェクションシステム(Proj)を通る。第2ポジショナ216と位置センサPS2(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)に補助されて、例えば、照射ビームBの経路中に異なる領域Cを位置決めするように、第2支持プラットフォーム84を高精度で移動させることができる。同様に、第1ポジショナ214と別の位置センサPS1を使用して、照射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えば、マスク、反射型レチクル、フォトリソグラフィレチクル)100を高精度で位置決めすることができる。
【0088】
既存のEUVリソグラフィ装置には、典型的には、超低膨張(ULE)ガラス、広い範囲の動作温度にわたって実質的に熱膨張係数がゼロであるガラスセラミック材料から形成された基板を有する反射型レチクルが組み込まれる。基板としてのULEガラスの選択は、典型的には、ULEガラスの熱膨張係数及びULEガラスの表面をEUVリソグラフィの用途に必要な微細表面の要件(すなわち、欠陥を実質的に含まず、実質的に平坦である非常に低い粗さを示す表面)に研磨する能力に基づく。
【0089】
概して、EUVリソグラフィ装置の既存の反射型レチクルは、典型的には約70%の反射率を示す。したがって、印刷するパターンに応じて、既存の反射型レチクルは入射するEUV照射ビームのエネルギーの約30%~100%を吸収する。そのような吸収によってレチクルが著しく加熱され得、ULEガラス基板の熱膨張係数が比較的低いにもかかわらず、レチクルの表面を歪ませるか、又は変形させ、投影される画像に誤差を生じる場合がある。
【0090】
9nmから例えば5nmという小さいノード寸法などの非常に微細なフィーチャーサイズで半導体デバイスを形成するために、ウェハー80上への露光中の正確さが必要である。照射の吸収から生成される熱によるパターニングデバイス90の熱膨張及び変形、並びに第1及び第2支持プラットフォーム82及び84の使用中の振動などの要因は問題であり、半導体デバイスをウェハー上にパターニングする際の露光精度を低下させる。
【0091】
これらの要因に対処するために、好ましくは、パターニングデバイス100、第1支持プラットフォーム82、及び第2支持プラットフォーム84は、熱伝導率が高く、0~50℃の温度範囲にわたって熱膨張係数が低く(1ppm/℃以下)、またヤング率の高い本明細書に開示するコーディエライト焼結体を含む。いくつかの実施形態では、コーディエライト焼結体は一体型の本体を有する。他の実施形態では、コーディエライト焼結体は2つ以上のコーディエライト焼結体を含み、それらは本明細書に開示する方法を使用して接合されてコーディエライト複合体を形成する。
【0092】
本明細書では、X線回折、SEM及び画像処理の方法を用いて測定して90~98体積%のコーディエライト結晶相を有するコーディエライト焼結体を開示し、コーディエライト焼結体は、SEM及び画像処理の方法を用いて測定して0.1~5umの直径を有する細孔を含む少なくとも1つの表面を有する。コーディエライト焼結体は、反射型レチクル、フォトリソグラフィレチクル、支持部材若しくは構造体若しくはプラットフォーム、ステージ、ウェハーチャック、位置決め要素、及びEUVリソグラフィ装置で使用するための静電チャックの材料として、又は基板としての材料層として使用に適する。
【0093】
コーディエライト焼結体は、本明細書に開示するように、約22.2mol%のMgO、約22.2mol%のAl及び約55.6mol%のSiOを含む粉末混合物から作製され、粉末混合物を本明細書に開示するように焼結して組成MgAlSi18のコーディエライト結晶相を含む一次結晶相を形成させる。言い換えれば、コーディエライト結晶相が材料の一次結晶相である。実施形態によると、一次結晶相のコーディエライト結晶相の割合は90体積%以上、好ましくは、コーディエライト結晶相は93体積%以上、好ましくは95体積%以上、好ましくは98体積%以上、好ましくは90~98体積%、好ましくは90~97体積%、好ましくは93~98体積%、好ましくは95~98体積%、好ましくは90~95体積%、好ましくは93~97体積%、最も好ましくは98体積%であり、結晶相の識別と割合は、SEM撮像及びImageJ画像処理と組み合わせて、±5体積%で結晶相の識別が可能なPANanlyticalのAerisモデルXRDを使用して、2θ=8°~85°の範囲でのX線回折測定を行なうことによって決定される。XRD、SEM及び画像処理ソフトウェアを組み合わせることにより、±0.1体積%で相の純度を決定することができる。全てのSEM画像は、エネルギー分散型分光法(EDS)及びトポグラフィーモードも有する後方散乱電子検出器(BSD)を備えたNano Science Instrumentsの走査型電子顕微鏡(SEM)Phenom XLモデルを使用して得た。本明細書に開示するようにSEM画像をImageJ画像処理ソフトウェアと組み合わせることによって、本明細書に開示するコーディエライト焼結体の約±0.1体積%までの相の識別及びフィーチャーの測定が可能になる。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。SEM画像を、BSD及びトポグラフィーモードを使用して1000倍で撮影して、結晶相及び存在する任意の多孔性を特定した。
【0094】
より高い精度、例えば最大約98%の精度で相の純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを使用すると、コーディエライト相は淡灰色に見え、酸化アルミニウム及び/又はアルミナが豊富な相は黒色又は濃灰色に見え、存在する場合、多孔性も黒色に見える。図8に示すように、当業者に知られているBSD法を用いて、1000倍で画像を撮影して、結晶相及び存在する任意の多孔性を特定した(試料015について)。結晶相(コーディエライト結晶相以外)を含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、BSD画像を、ImageJ処理ソフトウェアを使用して黒色及び白色の閾値で処理して、多孔性又は結晶相(コーディエライト結晶相以外)のいずれかを含み得る暗い又は黒色の領域を強調表示した。多孔性又は結晶相(XRDによってサフィリンを含むことが確認された)のいずれかを含む表面の総面積を計算した。
【0095】
BSD検出器のトポグラフィーモードを使用して、(図9に示すように)トポグラフィー画像をコーディエライト焼結体の表面全体にわたって得た。多孔性を含む領域又は面積を特定するために、トポグラフィー画像を、ImageJ処理ソフトウェアを使用して黒色及び白色の閾値で処理して、多孔性又は表面の欠陥を含み得る画像内の黒色領域を強調表示した。多孔性を含む表面の総面積をトポグラフィーイメージングから計算し、多孔性又は結晶相のいずれかを含む表面の総面積から差し引いて、多孔性を含む表面のパーセント及び結晶相(コーディエライト以外)を含む表面のパーセントの両方を得た。開示するトポグラフィー法を使用すると、コーディエライト焼結体の少なくとも1つの表面は、少なくとも1つの表面の総面積に対して約1%未満、好ましくは約0.9%未満、好ましくは約0.8%未満、好ましくは約0.6%未満、好ましくは約0.3%未満、好ましくは約0.1%未満、好ましくは約0.05%の量の多孔性を含む。結果として、XRD、SEM、及びImageJ法を使用すると、コーディエライト焼結体は約99%の密度を有し、約2体積%の量のサフィリン相(及びそれにより約98%の量のコーディエライト結晶相)を含む。
【0096】
本明細書に開示する相純度の高いコーディエライト焼結体は、0~500℃の温度範囲にわたってCTEの変化が最小(例えば、0.1×10-6/℃以下)である線膨張係数が低い焼結体を与える。出発粉末の適切な選択と焼結プロセスの慎重な制御によって、開示するように大半の量(最大で98体積%)のコーディエライト結晶相を含むコーディエライト焼結体を生成することができる。
【0097】
コーディエライト焼結体のX線回折結果を図7に示す。X線回折結果から、コーディエライト及びサフィリン、アルミナが豊富な相を含む相純度の高い焼結体が確認された。全てのピーク(サフィリンの「S」として示されるものを除く)はコーディエライト結晶相に対応した。出発材料のシリカ、アルミナ、又はマグネシアに対応するピークは検出されなかった。当業者に既知のピーク強度比の比較を使用すると、図7に示したコーディエライト焼結体は、コーディエライト結晶相を焼結体の約95体積%~98体積%の量で、サフィリン結晶相を約2体積%~5体積%の量で含んでいた。
【0098】
ImageJ分析方法を使用してコーディエライト焼結体中の細孔径を評価した。図9のトポグラフィー画像をImageJソフトウェアにインポートして、先に開示したように閾値で処理した。細孔径をImageJソフトウェア内で測定した。図9に示すように、本明細書に開示する実施形態によるコーディエライト焼結体は、ImageJソフトウェアを用いて測定して約5um以下、好ましくは4um以下、好ましくは3um以下、好ましくは2um以下、好ましくは1um以下の最大径を有する細孔を含む少なくとも1つの表面を有する。フィーチャーの寸法はImageJソフトウェアと組み合わせてSEM画像を使用して約±0.1umの精度まで測定することができ、したがって、コーディエライト焼結体は0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.1~1μmの直径を有する細孔を含み得る。
【0099】
開示する範囲の多孔性及び細孔径を有するコーディエライト焼結体の表面は、非常に低い表面粗さ、Sa(例えば約25nm以下)、及びピークトゥーバレー測定値、Sz(例えば約1μm未満)に研磨することができる焼結体を与える。
【0100】
10nm以下のノードサイズなどの非常に微細なフィーチャーサイズで半導体デバイスを形成するための露光に必要な精度を達成するためには、温度の変化による反射型レチクル上のパターニングされたフィーチャーの寸法の歪み、変化及びリソグラフィ構成要素の位置の変化を最小限にする必要がある。これらの影響によって半導体デバイスをウェハー上にパターニングする際の露光精度が低下する。リソグラフィ装置の全体的な露光精度、より具体的には反射型レチクル上のパターンの寸法、並びにリソグラフィ装置の様々な構成要素の位置決めを維持するためには、例えば、実施形態による反射型レチクル、レチクルチャック、及び/又は光学部品のための位置決め部材として使用されるコーディエライト焼結体の線膨張係数(CTE)を最小化することが好ましい。具体的には、ASTM E228に従って測定して、線膨張係数の絶対値は0~50℃の温度で1ppm/℃以下(すなわち、≦1×10-6/℃)であり、好ましくは、線膨張係数は0~50℃の温度で約0±0.020ppm/℃である。当業者は、線膨張係数の単位が、ASTM E228に従って、代わりに例えば、1×10-6cm/cm/℃と書かれ得ることを認識する。線膨張係数(CTE)の測定は、Linseisのモデル番号L75VD1600Cを使用してASTM E228に従って実施した。したがって、本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、熱膨張係数が低く、密度が高く、またそれに応じて多孔率が低く、ヤング率が高く、EUV反射型レチクル、静電チャック及び/又はレチクルチャックの構成要素、並びにリソグラフィ装置の構成要素の位置決め部材としての使用に特に適する。
【0101】
特にリソグラフィ装置の一部としての反射型レチクルとしての使用では、露光中のデバイスパターンの精度を最大化するために、多孔率が非常に低いコーディエライト焼結体、特に少なくとも1つの表面にわたって多孔率が低い焼結体が望ましい。多孔率が低くなると、それに応じて密度は高くなる。コーディエライト焼結体の密度が高いほど、多孔率は低くなる。コーディエライトの理論密度値は2.66g/ccと報告されており(D.R.Lide,CRC Handbook of Chemistry and Physics,CRC press(2012))、したがって、コーディエライトの理論密度として2.66g/ccを用いて、全ての相対密度値(又は理論密度%)を計算する。本明細書に開示する方法に従って調製されたコーディエライト焼結体、及び焼結体から作製されたコーディエライト焼結構成要素は、好ましい実施形態において高い密度を有する。密度の測定は、ASTM B962-17に従ってアルキメデスの浮力の方法を用いて行なった。密度の測定は、水などの既知の密度を有する液体を用い、また空気中で試料を秤量して、以下の式に従って行なった:
【数2】
【0102】
式中、A=空気中の試料の重量、B=液体中の試料の重量、D=空気の密度(0.0012g/cc)、D=液体の密度である。この計算を使用して、本明細書に開示するように、高い精度で密度を決定することができる。本明細書で報告される密度の値は5回の測定の平均であり、したがって、報告された密度は平均密度であると解釈される。
【0103】
本明細書に開示する方法に従って作製されたコーディエライト焼結体は、本明細書で報告されるコーディエライトの理論密度の96%以上、好ましくは97%以上、好ましくは98%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは約99%以上の密度(理論密度のパーセンテージ、又は相対的密度として報告される)を有する。したがって、言い換えれば、本開示に従って作製されたコーディエライト焼結体は、2.55~2.63g/cc(理論値の96%~99%)の密度を有する。いくつかの実施形態では、コーディエライト焼結体は、ASTM B962-17に従って測定して、2.58~2.63g/cc(理論値の97%~理論値の99%)、好ましくは2.61~2.63g/cc(理論値の98%~理論値の99%)、好ましくは2.62~2.63g/cc(理論値の98.5%~理論値の99%)の密度を有する。理論密度のパーセンテージとして、コーディエライト焼結体は、理論値の96%以上、好ましくは97%以上、好ましくは98%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99%以上、好ましくは本明細書で報告される理論値の96~99%を有する。
【0104】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示されるように、試料の測定された密度の同じ材料の報告された理論密度に対する比として定義される。体積多孔率(Vp)は密度測定値から以下のように計算される:
【数3】
【0105】
式中、ρ sampleはASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ theoreticalは本明細書に開示される報告された理論密度であり、RDは相対(分率)密度である。この計算を使用して、本明細書に開示するコーディエライト焼結体のASTM B962-17に従って行なった密度測定から、0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.5%の体積多孔率レベル(又はバルク多孔率)が計算された。
【0106】
本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、表面上(研磨時に明らか)の、及び本体全体にわたる多孔性を有する。したがって、実施形態では、コーディエライト焼結体は本明細書に開示するプロセスに従って作製された一体型の本体を含み得、それは、本体全体に分布して体積、又はバルク多孔率(本明細書に開示される密度の測定値から計算される)として測定される多孔性を有する。したがって、表面上で測定される多孔性はコーディエライト焼結体の体積又はバルク内の多孔率を表す。体積多孔率は、例えば走査型電子顕微鏡法を用いて測定される表面上の多孔性を代表するものと解釈される。本明細書で使用される場合、体積多孔率とバルク多孔率は同義である。
【0107】
リソグラフィ装置の使用中には、フォトマスク(又は反射型レチクル)100及び/又は基板(すなわち半導体基板)80を保持する支持プラットフォームの移動が必要である。この移動によって露光及びパターニング中に装置内で振動が生じ、振動によって支持構造体、ウェハー、及び/又は反射型レチクルの位置が変化する。これにより、パターンの歪みが生じ、露光精度が低下する。ヤング率によって測定される高い剛性を有するコーディエライト焼結体が、使用中のリソグラフィ装置の振動を防止及び最小化するために望ましい。10~100KHzの周波数の範囲にわたって、0.005%よりも良好な基準精度で測定することができるGrindoSonicのMK7 Impulse Excitation Technique(IET)を使用して、ASTM E1876-15に従って測定を行なってヤング率を決定した。ヤング率は、材料の比例限界未満の対応する歪みに対する引張応力又は圧縮応力の比として定義される。ASTM E1876-15に従って測定して、125~180GPa、好ましくは125~160GPa、好ましくは125~140GPa、好ましくは130~180GPa、好ましくは130~160GPa、好ましくは約130~150GPaのヤング率を有するコーディエライト焼結体は、リソグラフィ装置の使用中の露光精度の維持に十分な剛性及び高いヤング率を提供し得る。コーディエライト焼結体が開示する範囲を下回る剛性又はヤング率を有する場合、移動が停止した後に(ウェハー又はレチクルチャック、ステージ及び反射型レチクルなどの様々な構成要素の)振動が発生し、露光中に振動が存在して、露光精度が低下する。体積多孔率の存在はヤング率に大きく影響し、多孔率が高くなるとヤング率を低下させる。本明細書に開示するプロセスによって作製されたコーディエライト焼結体は、体積多孔率レベルが低いことから高いヤング率の値を示し、本明細書に開示するようにリソグラフィ装置内での使用中に機械的安定性及び振動に対する抵抗性を提供して、微細スケール、高解像度回路のパターニングを可能にする。
【0108】
EUV用途におけるような使用中に、反射型レチクルは入射した照射の約30~約100%を吸収して、それにより著しい加熱とレチクルの厚さにわたる熱勾配を生じ得る。レチクルの熱伝導率が開示する範囲よりも低い場合、EUVの照射から生じる熱はレチクルの厚さにわたって均一には分布せず、局所的な加熱と高い熱勾配を生じる。この局所的な加熱は、基板及び反射層のパターニングされたレチクル表面の熱的に誘発される変形を引き起こす。これによって、基板上に投影される画像内にエラーを生じる。したがって、パターニングされた画像及びパターニングされる表面の両方の熱による歪みは、既存のEUVリソグラフィ装置におけるイメージング性能を制限する要因である。したがって、照射の吸収による局所的なレチクルの加熱の影響を反射型レチクルにおける基板の熱伝導率を大きくすることによって低減することができる。基板の熱伝導率を大きくして、それによって(一定の厚さでの)熱抵抗性を低下させることによって、吸収された照射による加熱を基板の厚さ全体により均一に分布させることができ、これらに限定されないがレチクルチャック、及び/又はマスクテーブルを含む周囲の支持デバイスに基板からより効果的に伝導することができる。コーディエライトの熱伝導率は高いことが知られている。本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、非常に高密度で、実質的に相が純粋であり、結晶性が高く、それにより高い熱伝導率を有する焼結体が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、3.5W/mK以上、好ましくは3.5~5W/mK、好ましくは3.5~4W/mK、好ましくは4~5W/mKの熱伝導率を有し得る。熱伝導率は、ASTM E1461-13に従って行なわれる熱拡散率の測定から計算することができる。開示する範囲内の熱伝導率を有するコーディエライト焼結体は、パターニングする表面の任意の誘発される歪み、したがってパターニングされる画像における任意の誘発されるエラーを実質的に低減又は排除することができるレチクル基板を提供する。
【0109】
開示するコーディエライト焼結体は、0~50℃の温度で1×10-6/℃以下、及び50~500℃の温度で2~3ppm/℃の熱膨張係数(CTE)を有する。
【0110】
本開示によるコーディエライト焼結体の実施形態の上記の相純度、密度(及び対応するより低い多孔率)、多孔性(表面積による)、細孔径、弾性率、及び熱膨張係数は、先行技術においてコーディエライト又は低CTEガラスについて達成されたものよりも高い。例えば、表1に列記した以下の情報は京セラのウェブサイトからのものであり、表2にはフェローテックの特性を列記する。
【表1】
【表2】
【0111】
したがって、開示するコーディエライト焼結体は、例えば、ウェハーにパターンを転写するためのレチクル、ウェハーチャック、レチクル支持構造体、及び光学デバイスの位置決め構造体などの半導体用途で使用するための改善された材料を提供する。本明細書に開示する高密度コーディエライト焼結体は、後続の材料堆積のために微細な表面仕上げを提供する非常に平滑で平坦な表面に研磨することができる材料を与える。これらの堆積は、非常に平滑な表面(欠陥がなく事実上平坦な非常に低い表面粗さ)を提供するULE(超低膨張)ガラス表面層、及び/又はアルミニウム、金、白金、パラジウム、及び/又は他の金属などの反射金属層のいずれか、又は任意の特定の順序での両方であり、用途及びEUVリソグラフィレチクルの用途に層が必要とする使用周波数における性能に依存する。特定の実施形態では、本明細書に開示する高密度コーディエライト焼結体の低い表面粗さ(すなわち、高い平滑性)は、図2A)に示す反射型レチクル100を可能にし得、特定の実施形態において、それは(ナノメートルスケールの表面仕上げに研磨されたときに)ULEガラス表面を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する高密度コーディエライト焼結体の表面粗さ(例えば約75nm以下)は、例えば、約0.2mm未満、好ましくは約0.1mm未満、好ましくは約0.05mm未満、好ましくは約0.025mm未満の厚さのULEガラス表面層(図2B中のフィーチャー206として示される)の非常に薄い層を有する構造体を提供し得る。EUVリソグラフィ用途に必須の要件は、非常に低い表面粗さ(Sa)と非常に低い最大ピーク高さ(Sz、ピークトゥーバレー)を示し、実質的に欠陥を含まず、実質的に平坦なコーディエライト焼結体の表面であることを必要とする。特定の具体的な実施形態を参照して上に図示して説明したが、反射型レチクル100は示した詳細に限定されるものではない。むしろ、特許請求及び特許請求と同等の範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、反射型レチクル100の様々な変更(例えば、追加のガラス及び/又は反射層など)を行なうことができる。
【0112】
表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行なった。顕微鏡は2.8Hzの固有振動数を有するTMC tableTop CSP卓上型パッシブ除振台の上に置く。この非接触システムは、レーザービーム光と光学センサを使用して、表面を反射光の強度を介して解析する。顕微鏡は、x方向で1,024のデータポイントとy方向で786のデータポイントの合計786,432データポイントを取得する。所与のスキャンが完了すると、対物レンズがz方向に設定されたピッチで移動し、強度をスキャン間で比較して焦点を決定する。ISO25178表面テクスチャ(Areal Roughness測定)は表面粗さの分析に関連する国際標準集であり、この顕微鏡はそれに準拠している。
【0113】
共焦点顕微鏡を使用して20倍の倍率で試料の表面をレーザースキャンして、試料の詳細な画像を撮影した。7つの区画化されたブロックのプロファイルで粗さを得た。測定サンプリング長を表すラムダカイ(λ)を、ISO仕様4288:製品の幾何特性仕様(GPS)--表面テクスチャ:プロファイル方法-表面テクスチャの評価のための規則と手順に従って線の読取りが7つのうちの5つの中央ブロックからの測定値に制限されるように調整した。
【0114】
当業者に知られているRaは、ISO4287:1997製品の幾何特性仕様(GPS)--表面テクスチャ:プロファイル方法に従った2Dプロファイルの算術平均粗さを表す。これは表面と接触して線形プロファイルを作成するメカニカルスタイラスに基づく。
【0115】
Saはレーザー法を用いた3Dの測定表面にわたる高さの差を表し、一方、Raは2Dの線形プロファイルスキャンにわたる高さの差を表す。
【0116】
Raはスタイラス先端の幾何学的形状によって制限され、したがって、微細なフィーチャーの詳細が失われ、またピーク及び谷に歪みを生じる場合がある。このことは微細なサブミクロンのフィーチャーを測定するときに問題となり、Sa値と比較するためのRa値の使用における制限である。
【0117】
測定する区画はコーディエライト焼結体の代表的な研磨領域内で選択した。Sa及びSzの表面粗さの特徴は基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。
【0118】
本明細書に開示する高密度(理論値の約96%~理論値の約99%)を有するコーディエライト焼結体は、欠陥を実質的に含まない非常に平滑な表面に研磨することができる。密度がより低い焼結体はより高い程度の多孔率を有し、したがって表面粗さが高く欠陥が多くなる。高密度(及びそれによって多孔率が低い)焼結体は、5μm以下の直径を有する細孔を含む表面、及び少なくとも1つの表面の総面積に対して0.8%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは約0.05%の量の多孔率を有する表面積を提供する。開示するように多孔性の特徴を有する耐腐食性の研磨面を有する、開示するコーディエライト焼結体及び/又はそれから作製された構成要素は、ISO標準25178-2-2012に従って表面を測定して、75nm以下、好ましくは50nm以下、好ましくは25nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは10nm以下、好ましくは2~15nm、好ましくは2~10nm、好ましくは2~8nm、好ましくは2~5nmの算術平均高さ(Sa)を有し、また、5.5μm未満、好ましくは4.0μm未満、好ましくは3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満、好ましくは1.0μm未満、好ましくは0.75μm未満、好ましくは0.3~3μm、好ましくは0.3~2μm、好ましくは0.3~1μmの最大高さ/ピークトゥーバレー(Sz)を有し得る。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、表面粗さ及びピークトゥーバレーが低減された場合、特定の実施形態では、ULEガラス表面層の厚さを薄くして、熱伝導率を高めて熱抵抗を低減し、したがって、反射型レチクルのパターン精度を向上させ、また組み立ての製造工程を減らすことができる。
【0119】
コーディエライト焼結体の作製方法
コーディエライト焼結体の調製は、直流焼結及び関連技術と組み合わせた加圧支援焼結を用いて行なわれ、これは直流を使用して導電性のダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって材料を焼結する。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、粒子の成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な粒径と非常に高い密度(したがって低い多孔率)のコーディエライト焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。本明細書で使用する場合、直流焼結技術は、粉末の圧密及び高密度化を促進するためにパルス化されていないDC電流を含んでいた。
【0120】
コーディエライト焼結体は、以下の工程、すなわち、a)二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程と、b)焼成温度に達するまで熱を加え、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なって、コーディエライト焼結体を形成する工程と、e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む、方法によって調製され得る。以下の追加の工程、すなわち、f)任意でアニーリング温度に達するまで熱を加えてコーディエライト焼結体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことによりコーディエライト焼結体をアニーリングする工程、g)コーディエライト焼結体に適用された熱源を除去することによって、アニーリングされたコーディエライト焼結体の温度を環境温度まで下げる工程、h)コーディエライト焼結体を機械加工して、マイクロリソグラフィプロセスで使用するためのフォトリソグラフィレチクル、反射型レチクル、支持構造体、ウェハーステージ、基板、複合基板、真空チャック、支持チャック、静電チャック(ESC)、及びウェハーチャックなどの焼結コーディエライト構成要素を作製する工程は任意でのものである。
【0121】
コーディエライト焼結体の上述の特徴は、特に、粉末混合物を構成する酸化物の純度、混合及び焼成の条件、焼成粉末混合物への圧力、粉末混合物の焼結温度、粉末混合物の焼結時間、任意でのアニーリング工程中のコーディエライト焼結体の温度、及びアニーリング工程の継続時間を調整することによって実現される。コーディエライト焼結体は、EUVリソグラフィプロセス及び装置のための反射型レチクルの基板又は層としての使用に特に適する。コーディエライト焼結体はまた、マイクロリソグラフィプロセスにおける光学部品の熱膨張の小さい位置決め要素としての、及び反射型レチクル及び/又はウェハー基板のいずれか又は両方を保持するための静電チャックとしての使用に適する。本明細書に開示する方法は、拡大可能な製造プロセスを使用して、コーディエライト焼結体、特に大寸法のもの(直径100~620mm)の製造に適する。
【0122】
本明細書に開示する方法によって、ドーパント及び/又は焼結助剤を使用せずに、好ましくは90~99.9体積%のコーディエライト結晶相を含むコーディエライト焼結体及び焼結部品を調製することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、前述のコーディエライト焼結体及び焼結部品は、Y、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu、並びにそれらの酸化物及び組合せからなる群から選択される希土類酸化物の任意でのドーパントを、出発酸化物粉末の総質量に対して各々≧0.0001重量%、好ましくは≧0.0005重量%、好ましくは≧0.0010重量%、好ましくは≧0.0025重量%の量で含んで作製されてもよく、任意でのドーパントは出発粉末、粉末混合物、又は焼成粉末混合物に添加することができる。他の実施形態では、前述のコーディエライト焼結体及び焼結部品は、出発酸化物粉末の総質量に対して各々、≦0.05重量%、好ましくは≦0.03重量%、好ましくは≦0.01重量%、好ましくは≦0.0075重量%、好ましくは≦0.0050重量%、好ましくは≦0.0025重量%の量の開示した任意でのドーパントを含んで作製されてもよく、任意でのドーパントは出発粉末、粉末混合物、又は焼成粉末混合物に添加することができる。
【0124】
本明細書に開示する代替の実施形態では、前述のコーディエライト焼結体は、前述のドーパントのうちの少なくとも1つ、又はその全てを含まずに作製され得る。特に、高い熱伝導率と制御されたCTEが必要とされる用途では、コーディエライト焼結体がドーパントを含まないことが好ましい場合がある。したがって、特定の実施形態では、コーディエライト焼結体は、前述のドーパントのうちの少なくとも1つ、又はその全てを実質的に含まないか、又は含まない。
【0125】
焼結助剤は、本明細書に開示するコーディエライト焼結体及び焼結部品の調製において必要に応じて使用することができるが、それらは必須ではなく、任意でのものである。特定の実施形態では、本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、ジルコニア及びカルシア並びにそれらの組合せからなる群から選択される任意での焼結助剤を含んでもよい。いくつかの実施形態におけるこれらの焼結助剤は、出発酸化物粉末の総質量に対して各々、≧0.0002重量%、好ましくは≧0.0005重量%、好ましくは≧0.0010重量%、好ましくは≧0.0025重量%の量で添加することができる。他の実施形態では、任意の焼結助剤は、出発酸化物粉末の総質量に対して各々、≦0.05重量%、好ましくは≦0.03重量%、好ましくは≦0.01重量%、好ましくは≦0.0075重量%、好ましくは≦0.0050重量%、好ましくは≦0.0025重量%の量で存在し得、任意での焼結助剤は出発粉末、粉末混合物、又は焼成粉末混合物のいずれかに添加することができる。腐食及び侵食に対する抵抗性、高い熱伝導率及び制御されたCTEが必要とされる特定の用途では、コーディエライト焼結体が焼結助剤のうちの少なくとも1つ、又はすべてを含まないことが好ましい場合がある。したがって、実施形態では、コーディエライト焼結体は、前述の焼結助剤のうちの少なくとも1つ、又はその全てを実質的に含まないか、又は含まない。
【0126】
本明細書に開示する方法の工程a)は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程を含む。コーディエライト焼結体及び/又は焼結部品を形成するための出発粉末は、好ましくは、高純度の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。出発粉末は、マグネシア、シリカ、及びアルミナを含む化学的に精製された粉末であり、これらを合わせて、コーディエライトを(焼結工程後に)形成するための比率でひとまとめにされた粉末混合物を形成する。この方法は、多くの場合、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに様々な粘土及び粘土系化合物などの天然に存在する材料を含有する天然に存在する原料の鉱物堆積物を含む出発粉末を使用する他のコーディエライトの作製方法とは異なる。これらの鉱物堆積物は、多くの場合、特に鉄などの望ましくない元素、並びに他の不純物を含有し、それにより、純度が低く、最終用途には適さないコーディエライト焼結体を与える。したがって、高純度コーディエライト焼結体を形成するために、本明細書に開示する出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物は、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然材料のうちの少なくとも1つ、又はその全てを実質的に含まないか、又は含まない。
【0127】
より具体的には、天然に存在する鉱物堆積物は、コーディエライト焼結体中のガラス質相の形成に寄与する化合物及び不純物を含有する場合がある。鉱物堆積物中に存在するガラス形成構成成分としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、並びにホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素が挙げられ得る。これらのガラス形成成分がガラス質相を形成することは当業者に知られている。コーディエライト焼結体内でのガラス質相(本明細書で使用される場合、ガラス質相とはアモルファス、非結晶相を意味する)の形成は、CTEの変動性(特に0~500℃の温度範囲にわたる)を増大させ、熱伝導率を低下させ、ヤング率を低下させ得る。本明細書に開示する高純度の出発粉末から形成された相純度が高く実質的に結晶性のコーディエライト焼結体が、低CTE、高熱伝導率、及び高ヤング率を得るために望ましい。図7のXRDの結果は高度に結晶性のコーディエライト焼結体を示している。比較すると、図6の焼成粉末混合物のXRDの結果は、約22度前後に最大を有するパターンにおける凸状グラデーション(それはまた「バンプ」又は「ハンプ」として説明される)を示している。この凸状グラデーションは、長距離秩序が非常に限定されているか、又は長距離秩序を有していないことが知られているアモルファスのガラス質材料のXRDパターンと同様のXRDパターンを生成するナノメートルスケールのシリカ粒子に由来する場合がある(本明細書で使用される場合、長距離秩序とは、原子粒子が多くの原子の直径にわたって周期性を示し、各原子粒子が材料内で特定の関係を有する材料を意味することを意図している)。図7のXRDパターンはそのような「ハンプ」を示さず、したがって、非常に結晶性であり、ガラス質相を実質的に含まないか、又は含まないコーディエライト焼結体を示している。
【0128】
出発粉末について、比表面積(SSA、又はBET表面積)、及び粒径などの粉末の特徴を測定した。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の比表面積(SSA)を、0.01~2000m/gの比表面積にわたってほとんどの試料を10%以下の精度で測定することができるHoribaのBET表面積アナライザモデルSA-9601を用いて測定した。BET又はSSAの測定はASTM C1274に従って行なった。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の粒径を、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaのモデルLA-960レーザー散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した。以下に開示するように、d50の粒径を中央値として定義し、粒子の集団の半分がこの点を超え、半分がこの点の下にある値を表す。同様に、分布の90%がd90の粒径より下であり、粒子の集団の10%がd10の粒径より下にある。
【0129】
本明細書に開示する二酸化ケイ素(SiO)粉末は、好ましくは焼成(又はヒュームド)シリカ粉末を含む。焼成シリカ粉末は分岐構造及び集合体又は凝集体を含むことが知られており、したがって非球形である。非球形粒子の粒径測定の困難さ、及びそれによる本質的に高い不確実性が、当業者に知られている。本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布測定装置を用いた測定は、実質的に球形という粒子の形状の仮定に基づく。焼成シリカ粉末は、その製造方法のため(例えば、四塩化ケイ素又は砂などのケイ素含有化合物の火炎熱分解による)、非常に高いアスペクト比を有する実質的に非球状の凝集体又は集合体を含み、したがって、ヒュームドシリカ粉末を測定する場合、本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布の方法を用いた結果は十分な精度を提供しない場合がある。したがって、本明細書に開示するヒュームドシリカ粉末について報告される粒径は、文献に報告されている通りである。典型的には、本明細書に開示するシリカ粉末は、非常に小さいシリカ微結晶を含む。本明細書に開示するシリカ粉末は、約100nmの一次粒径(一次粒子は単一の粒子又は単一の微結晶を含む)、及び約9umのd50を有する。
【0130】
酸化マグネシウム(MgO)粉末は、好ましくは0.03~0.3μm、好ましくは0.05~0.3μm、好ましくは0.075~0.3μm、好ましくは0.1~0.3μm、好ましくは0.03~0.25μm、好ましくは0.03~0.15μm、好ましくは0.03~0.075μm、好ましくは0.1~0.2μmのd10の粒径、0.5~5μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは0.5~2μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~5μm、好ましくは3~5μm、好ましくは1~3μmのd50の粒径、及び6~30μm、好ましくは6~25μm、好ましくは6~20μm、好ましくは10~30μm、好ましくは15~30μm、好ましくは15~25μmのd90の粒径を有する市販の結晶性マグネシア粉末を含み得る。
【0131】
本明細書に開示する実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末は、0.05~2μm、好ましくは0.05~1μm、好ましくは0.05~0.75μm、好ましくは0.05~0.5μm、好ましくは0.08~2μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.2~2μm、好ましくは0.5~2μm、好ましくは0.2~2μm、好ましくは0.05~0.1μm、より好ましくは0.08~0.1μmのd10の粒径を有する市販の結晶性アルミナを含み得る。
【0132】
出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd50の粒径は、0.15~5μm、好ましくは0.15~4μm、好ましくは0.15~3μm、好ましくは0.15~2μm、好ましくは0.15~1μm、好ましくは0.15~0.75μm、好ましくは0.15~0.5μm、好ましくは0.2~5μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは1~3μm、より好ましくは0.15~0.3μmである。
【0133】
出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd90の粒径は、0.5~10μm、好ましくは0.75~10μm、好ましくは1~10μm、好ましくは3~10μm、好ましくは0.75~5μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは0.5~1μm、より好ましくは0.5~0.8μmである。
【0134】
二酸化ケイ素(SiO)は、20~40m/g、好ましくは20~35m/g、好ましくは20~30m/g、好ましくは25~40m/g、好ましくは30~40m/g、好ましくは約30m/g、より好ましくは25~35m/gの比表面積(SSA)を有し得る。
【0135】
酸化マグネシウム(MgO)は、2~10m/g、好ましくは2~8m/g、好ましくは2~6m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは4~8m/g、より好ましくは4~6m/gの比表面積を有し得る。
【0136】
酸化アルミニウム粉末は、典型的には、5~18m/g、好ましくは5~16m/g、好ましくは5~14m/g、好ましくは5~12m/g、好ましくは5~10m/g、好ましくは7~18m/g、好ましくは9~18m/g、好ましくは12~18m/g、好ましくは15~18m/gの比表面積を有する。
【0137】
出発材料として使用される二酸化ケイ素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)の粉末の純度は、100%純粋なシリカ及びアルミナと比較して、好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上、最も好ましくは約99.9999%である。
【0138】
酸化マグネシウム(MgO)粉末の純度は、好ましくは99.9%以上、好ましくは99.95%以上、より好ましくは99.99%以上である。
【0139】
マグネシア及びアルミナの出発粉末は、好ましくは結晶性であり、それによって結晶学的な長距離秩序を有する。マグネシア、シリカ、及びアルミナの出発粉末の各々、又は全てを、当業者に知られた方法に従って、篩い分けし、タンブリングし、ブレンドし、粉砕し、ジェットミル処理してもよい。いくつかの実施形態では、マグネシア、シリカ、及びアルミナの出発粉末は任意で、本明細書に開示する粉末の特徴を実現するために当業者に知られた方法に従って焼成してもよい。
【0140】
本明細書に開示する比較例によるコーディエライト焼結体は、200~250umのd50を有するシリカ粒、及び約13umのd50と約90umのd90を有するそれから形成された焼成粉末混合物で作製された。d50及びd90のこれらの値は、粉末の凝集を示し、焼結時に微細構造中に存在するより大きなサイズの微結晶及び残留相を形成し得る。この粒径分布では、コーディエライト焼結体中のシリカが豊富な凝集体と他の相との間のCTEの不一致、及び比較例1の図4のXRDパターンに示されるようにトリディマイト又はクリストバライトなどの残留するシリカが豊富な相のために、焼結時に(図5に示すように)マイクロクラックを生じた。比較例のd50及びd90の粒径よりも小さく、好ましくは開示するような範囲内のd50及びd90の粒径を有する出発粉末及び粉末混合物を使用して、開示する高エネルギー混合プロセスと組み合わせることにより、より均一でより小さい粒径分布が得られる。粉末混合物を形成するための開示された出発粉末、本明細書に開示された特徴を有する焼成粉末混合物、及びインサイチュのプロセスでコーディエライトを形成する開示された反応性のこの組合せによって、本明細書に開示する好ましい特性を有するコーディエライト焼結体を形成することができる。
【0141】
一実施形態では、粉末混合物は、出発粉末混合物として約22.2mol%のMgO、約22.2mol%のAl、及び約55.6mol%のSiOのモル比で構成される。出発粉末の代表的な特性を表4に列記する。
【表3】
【0142】
二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む前述の粉末を合わせての粉末混合物の作製は、ボールミリング(軸方向回転)、タンブリング(エンドオーバーエンド又は垂直)混合、ジェットミル処理、及びこれらの組合せの粉末調製技術を使用して行なうことができる。
【0143】
ボールミリング又はエンドオーバーエンド/タンブリング混合プロセスは、好ましくは湿式条件下で行なわれる。湿式混合条件を使用して、コーディエライト結晶相を形成するための相対量で秤量された出発粉末を、混合中に出発粉末の純度を保持するために、高純度(≧99.99%)のアルミナ媒体を使用してボールミリング又はエンドオーバーエンド/タンブリング混合し得る。他の実施形態では、ジルコニア媒体を使用して、硬質の凝集体を粉砕してもよい。本明細書に開示する全ての純度測定値は、特定の元素の報告限界を超えて測定されたものであり、Agilentの7900ICP-MSモデルG8403のICP-MSを使用して行なった。高純度アルミナ媒体を本明細書に開示するICPMS法を使用して試験し、約99.99%以上の純度を有することを認めた。合わせるプロセスを行なうために使用される媒体は、例えば直径5~20mm、好ましくは10~20mm、より好ましくは約20mmの範囲の直径を有し、粉末の重量に対して約75~約200重量%、好ましくは約100~約200重量%、より好ましくは約125~約175重量%の充填量の媒体を添加した。
【0144】
シリカ、マグネシア、及びアルミナの出発粉末は、エタノール、メタノール、及び他のアルコールなどの様々な溶媒中に懸濁させて、スラリーを形成することができる。(ボールミリング又はタンブリング混合プロセスのいずれかのために)形成されるスラリーは、総粉末重量に対して100~300重量%、好ましくは150~300重量%、好ましくは200~300重量%、好ましくは250~300重量%、好ましくは150~250重量%の量のエタノールを含み得る。エタノールの量は、粉末を完全に混合するためのスラリー中の媒体の十分な移動度を確保するために必要に応じて調整することができる。
【0145】
ボールミリング及びタンブリング混合の使用は、微粒子及び凝集体を破壊する高エネルギープロセスであり、焼成の前に均質な粉末混合物を得ることができる。「均質」という用語は、粉末又は粉末混合物が全体として実質的に同じ特性を有し、不規則性がなく均一であることを意味する。したがって、「均質な粉末混合物」とは、粒径分布(PSD)及び比表面積(SSA)が空間的に均一であり、比表面積又は粒径分布に著しい勾配を有しておらず、すなわち実質的に均一な粉末又は粉末混合物が存在していることを意味する。湿式混合は移動度の向上を通じて粉末の分散を改善し、熱処理又は焼成の前に微細スケールの均一な混合を与える。湿式ボールミリング又はタンブリング混合は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは16~24時間、好ましくは12~24時間の継続時間で行なわれ得る。ボールミリングは、直径約200mmの容器で各々、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用し得る。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。湿式エンドオーバーエンド/タンブリング(又は垂直)混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行なわれ得る。粉末スラリーは既知の方法に従って乾燥させる。湿式ボールミリング及び/又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合並びに乾燥の後、粉末混合物を任意で、繰り返し回数や順序の制限なく、例えば45~400μmの開口を有し得る任意の番号のメッシュを用いて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0146】
出発粉末の粒径分布を修正し、及び/又は粉末を完全に混合して、粒径分布の狭い粉末混合物又は焼成粉末混合物を形成するために当業者に知られているようなジェットミル処理プロセスもまた使用することができる。ジェットミル処理では不活性ガス又は空気のいずれかの高速ジェットを用いて粉砕媒体又は混合媒体を使用せずに粉末の粒子を衝突させることから、粉砕される粉末の初期純度が維持される。チャンバは、より大きな粒子のサイズを優先的に低減し得、粉末の粒径分布を狭くし得るように、設計され得る。処理前の機械の設定で決定された所望の粒径に達すると、粉末はジェットミル処理チャンバを出る。本明細書に開示する出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は本明細書に開示するように、開示された粉末粉砕/混合プロセスとして別々に、又はそれらの任意の組合せで、又はそれらの全てで、約100psiの圧力でジェットミル処理にかけてもよい。ジェットミル処理の後、粉末又は粉末混合物を任意で、繰り返し回数や順序の制限なく、例えば45~400μmの開口を有し得る任意の番号のメッシュを用いて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0147】
本明細書に開示するように、媒体を必要としないか、又は高純度アルミナ媒体を使用するいずれかの前述の混合及び粉砕の方法は、合わせるプロセス中の出発粉末の純度を維持し、それによって、それから形成されたコーディエライト焼結体は非常に高い純度を有する。(純度100%のコーディエライト焼結体に対して)99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは約99.999%の純度を有するコーディエライト焼結体を開示し、出発粉末の純度は、本明細書に開示する焼成粉末混合物中に維持され、本明細書に開示する方法全体を通して維持される。
【0148】
前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組合せで、又はその後に合わされて最終的なコーディエライト焼結体に焼結される2つ以上の粉末混合物に、使用することができる。
【0149】
本明細書に開示する方法の工程b)は、焼成温度に達するまで熱を加えて、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程を含む。この工程は、水分を除去し、コーディエライト粉末の表面条件が焼結前に均一になるように行なわれ得る。いくつかの実施形態では、焼成を行なうことにより出発粉末及び/又は粉末混合物の表面積が減少する場合があるが、他の実施形態では、焼成によって粉末の表面積の減少が生じない場合もある。より高い焼成温度は比表面積を減少させる場合もあり、開示する範囲内に調整され得る。熱処理工程に従った焼成は、約600℃~約1000℃、好ましくは約700℃~約1000℃、好ましくは約800℃~約1000℃、好ましくは約600℃~約900℃、好ましくは約600℃~約800℃、好ましくは約700℃~約900℃の温度で行なわれ得る。焼成は、酸素を含有する環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは5~7時間の継続時間で行なわれ得る。粉末混合物は焼成の前又は後に任意で、繰り返し回数や順序の制限なく、例えば、45~400umの開口を有するメッシュを使用して篩い分けしてもよく、また既知の方法に従ってタンブリング及び/又は混合及び/又はブレンド並びにそれらの組合せを行なってもよい。粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物のタンブリング及び/又はブレンド及び/又は混合は、既知の方法に従って、媒体なしで、又は本明細書に開示される高純度(>99.9%)のアルミナ媒体、又はジルコニア媒体を使用して行なわれ得る。
【0150】
600℃、6時間の焼成条件の図6Aに示すように、実施形態では、温度及び継続時間の焼成条件に応じて、焼成によって出発粉末から存在する酸化マグネシウム、シリカ、及び酸化アルミニウムを含む焼成粉末混合物が得られ得る。900℃及び1000℃で6時間の図6Bに示すように、他の実施形態では、より高温の焼成条件はコーディエライト結晶相及び出発粉末に対応する結晶相を有する粉末を含む焼成粉末混合物が得られ得る。
【0151】
焼成の後、焼成粉末混合物の比表面積及び粒径を本明細書に開示する方法を用いて測定した。
【0152】
焼結時にコーディエライト結晶相を形成するための粉末比で合わせた焼成粉末混合物は、0.05~3μm、0.05~2μm、0.05~1μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、好ましくは0.25~3μm、好ましくは0.25~1μm、好ましくは0.05~0.5μm、好ましくは0.1~0.3μmのd10粒径を有し得る。
【0153】
焼成粉末混合物のd50粒径は、0.2~5μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.2~3μm、好ましくは0.2~2μm、好ましくは0.2~1μm、好ましくは0.2~0.5μmのd50粒径を有し得る。
【0154】
焼成粉末混合物のd90粒径は、10~75μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~75μm、好ましくは40~75μm、好ましくは50~75μm、好ましくは50~70μm、好ましくは75μm以下かつ20μm以上のd90粒径を有し得る。
【0155】
焼成粉末混合物の比表面積は、8~20m/g、好ましくは10~20m/g、好ましくは12~20m2/g、好ましくは14~20m/g、好ましくは16~20m/g、好ましくは8~18m/g、好ましくは8~16m/g、好ましくは8~14m/g、好ましくは10~20m/g、好ましくは14~20m/g、好ましくは16~20m/gであり得る。
【0156】
焼成の前及び/又は後に、既知の方法に従って、コーディエライト粉末を篩い分け及び/又はタンブリングしてもよい。焼成粉末混合物の表面積が約20m/gより大きい場合、特に粒径が大きい場合、焼結装置のツールセットの装入中の粉末を取り扱いが困難になる。焼成粉末混合物の表面積が約8m/gより小さい場合、インサイチュの反応性焼結工程中のコーディエライト結晶相を形成する駆動力が低下し、焼結コーディエライト体の密度が低くなり得る。いくつかの実施形態では、焼成後の粉末混合物が好ましい場合があり、図6に本明細書に開示する焼成粉末混合物のXRD結果を示す。図6Aに、空気中600℃で6時間焼成された本明細書に開示する例示的な焼成粉末混合物を示し、図6Bに、一方の粉末は空気中900℃で6時間焼成し、他方は空気中1000℃で6時間焼成した本明細書に開示する2つの例示的な焼成粉末混合物のオーバーレイを示す。コーディエライト結晶相の形成を図6BのXRDパターンの「C」で示す。本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、典型的には、六方晶系構造を有する。表4に、本明細書に開示する焼成粉末混合物の特性の範囲を列記する。
【表4】
【0157】
本明細書に開示する方法の工程c)は、焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程を含む。一実施形態によるプロセスで使用される焼結装置は、通常、容積と第1及び第2開口部とを有する円筒状グラファイトダイである少なくとも1つのグラファイトダイを含むツールセットを備え、更に第1及び第2パンチを備える。第1パンチがダイの第1開口部内に移され、焼成粉末混合物はダイの第2開口部内に入れられて、第2パンチがダイの第2開口内に移され、それによって焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れる。(まとめられて焼結時にコーディエライト相を形成する)焼成粉末混合物は、ツールセット内に入れられる。当業者に知られている真空状態がツールセットによって生成された容積内に確立される。典型的な真空条件としては10-2~10-3トールの圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するために、また粉末から空気の大部分を除去するために真空にされる。
【0158】
開示する方法は、市販の高純度シリカ、マグネシア、及びアルミナ粉末(及び/又は化学合成技術から調製されるもの)を利用し、焼結助剤、ドーパント、コールドプレス、焼結前の白地の成形又は機械加工を必要としない。焼成粉末混合物を形成するための出発粉末は、多くの場合に望ましくない不純物が多い本明細書に開示するような天然に存在する原材料を含まないことが好ましく、したがって本明細書では、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに様々な粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する物質を実質的に含まないか、又は含まない、焼成粉末混合物が開示される。
【0159】
本明細書に開示する方法の工程d)は、焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加えて、焼結を行なってコーディエライト焼結体を形成する工程を含み、また工程e)では焼結装置の熱源を除去してコーディエライト焼結体を冷却することによってコーディエライト焼結体の温度を下げる。ツールセットによって画定された容積内に入れられた焼成粉末混合物に加えられる圧力は、5MPa~100MPa、好ましくは5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~45MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~45MPa、好ましくは10~40MPa、好ましくは10~30MPa、好ましくは10~20MPa、好ましくは15~45MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは20MPa~40MPaの範囲である。圧力は、ダイの中に入れられた材料上に軸方向に加えられる。
【0160】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチとダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗性/ジュール加熱を促進するグラファイトなどの導電性材料から構成される。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。したがって、示された温度が焼結される粉末中で実際に実現されているように、温度は処理されているコーディエライト粉末の可能な限り近くで測定されることが好ましい。
【0162】
ダイに入れられた粉末混合物に熱を加えることによって、900~1300℃、好ましくは900~1250℃、好ましくは900~1200℃、好ましくは900~1150℃、好ましくは900~1100℃、好ましくは1000~1300℃、好ましくは1050~1300℃、好ましくは1100~1300℃、好ましくは1150~1300℃、好ましくは1200~1300℃、好ましくは1150~1250℃の焼結温度を容易にする。
【0163】
焼結は、典型的には、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは80~100分、好ましくは85~95分、好ましくは10~60分、好ましくは10~45分、好ましくは10~30分の等温時間で行なわれ得る。特定の実施形態では、焼結は等温時間なしで行なわれ得、焼結温度に達した後、本明細書に開示する速度で冷却を開始する。プロセスの工程e)において、コーディエライト焼結体は、熱源の除去によって受動的に冷却される。コーディエライト焼結体の取り扱い及び任意でのアニーリング及び/又は機械加工プロセスの開始を容易に行なうことができる温度に達するまで自然対流が生じ得る。
【0164】
焼結中に典型的には体積の減少が生じ、その結果、コーディエライト焼結体は、焼結装置のツールセットに入れたときの出発粉末の体積の約3分の1の体積を有し得る。
【0165】
一実施形態において圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変化し得、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態ではまた、最初に所望の温度に達するように示された熱を加え、その後に、示された圧力を加えることが可能である。本開示による第3の実施形態では、焼結するコーディエライト粉末に温度と圧力を同時に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0166】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内のコーディエライト粉末を間接的に加熱するために使用することができる。
【0167】
他の焼結技術とは対照的に、焼結前の試料の調製、すなわち、コールドプレス又は白地の成形による試料の調製は必須ではなく、コーディエライト粉末を型に直接充填する。この処理工程の減少によって、最終的なコーディエライト焼結体のより高い純度が得られる。
【0168】
他の焼結技術とは更に対照的なことに、焼結助剤は必須ではない。また、高純度の出発粉末が、焼結体中に高い(約80体積%以上)コーディエライト相を有するコーディエライト焼結体の形成に望ましく、それにより、0~50℃の温度範囲にわたって好ましくは1×10-6ppm/℃以下の低いCTEが得られる。他の相の存在は、アモルファス又は結晶にかかわらず、CTE値及び特定の温度範囲にわたるCTEの分散に影響を与える。したがって、相が純粋なコーディエライト焼結体を得ることが好ましい。焼結助剤及びドーパントを含まないこと、またそれらのそれぞれの酸化物を100%含む(不純物、焼結助剤又はドーパントを含まず、それぞれの酸化物のみを含む)粉末に対して99.9%~99.995%以上の純度を有する高純度の出発材料を使用することにより、コーディエライト焼結体が100%純度のコーディエライト焼結体に対して、99.9~99.995%、好ましくは99.95~99.995%、好ましくは99.99~99.995%の純度を有する高純度のコーディエライト焼結体の製造が可能になる。
【0169】
他の焼結技術とは更に対照的なことに、90体積%を超える量のコーディエライト相を含むコーディエライト焼結体が、インサイチュの反応性焼結によって、開示する焼成粉末混合物の粒径分布、純度、比表面積の特性、及び圧力、温度、時間の焼結条件の組合せにより焼結工程中に形成される。
【0170】
一実施形態では、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.1℃/分~100℃/分、好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは2~25℃/分の特定の加熱勾配での予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0171】
本明細書に開示するコーディエライト焼結体の総純度は、100%純粋なコーディエライトに対して99.9%より高く、好ましくは99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは約99.999%である。
【0172】
別の実施形態では、プロセス工程d)は、上述の特定の加熱勾配と上述の特定の加圧勾配とを用いる予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0173】
一実施形態では、プロセス工程d)の終わりに、方法は更に工程e)、当業者に知られているように真空条件下でプロセスチャンバの自然冷却(非強制的冷却)によってコーディエライト焼結体を冷却する工程を含んでもよい。プロセス工程e)による更なる実施形態では、コーディエライト焼結体を、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン又は窒素の対流下で冷却してもよい。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。更なる実施形態では、コーディエライト焼結体は、酸素環境下の強制対流条件下で冷却される。焼結工程d)の終わりに、焼結装置に加えられた電力を除き、コーディエライト焼結体に加えられた圧力を除き、その後に、工程e)に従って冷却を行なって冷却工程を行なう。
【0174】
本明細書に開示する高密度で相が純粋なコーディエライト焼結体の形成は、反応性焼結プロセスによって実現され、それによって天然に存在する原材料を使用せずに、出発粉末のシリカ、マグネシア、及びアルミナからインサイチュでコーディエライトが形成される。
【0175】
コーディエライト焼結体の特性を表5に列記する。比較試料3及び18はそれぞれの高密度の特徴のために含めている。
【表5】
【0176】
本明細書に開示する方法の工程f)は、任意で、熱を加えてコーディエライト焼結体の温度を上昇させてアニーリング温度に到達させることによってアニーリングを行なうことによって、コーディエライト焼結体をアニーリングする工程であり、工程g)は、アニーリングしたセラミック焼結体の温度を下げる工程である。任意での工程f)において、工程d)又はh)のそれぞれで得られたコーディエライト焼結体又は構成要素をアニーリング手順で処理することができる。他の例では、コーディエライト焼結体又は構成要素のアニーリングを行ない得ない。他の状況下では、アニーリングは焼結装置の外部の炉内で、又は装置から取り出すことなく、焼結装置自体の内で行なわれてもよい。
【0177】
本開示によるアニーリングの目的ために、プロセス工程e)による冷却後にコーディエライト焼結体を焼結装置から取り出して、アニーリングのプロセス工程を炉などの別個の装置内で行なってもよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、本開示によるアニーリングの目的のために、工程d)におけるコーディエライト焼結体を、焼結工程d)と任意でのアニーリング工程の間に焼結装置から取り出す必要なしに、焼結装置内で続けてアニーリングしてもよい。
【0179】
このアニーリングによって、焼結体の化学的及び物理的特性を改良することができる。アニーリングの工程は、ガラス、セラミック、及び金属のアニーリングに使用される従来の方法によって行なうことができ、改良の程度は、アニーリング温度及びアニーリングを継続させる持続時間の選択によって選択することができる。
【0180】
通常、コーディエライト焼結体をアニーリングする任意での工程f)は、約800~約1200℃、好ましくは約900~約1200℃、好ましくは約1000~約1200℃、より好ましくは約900~約1100℃の温度で行なわれる。
【0181】
任意でのアニーリング工程f)は、結晶構造内の酸素空孔を修正して化学量論比に戻すことを意図している。コーディエライトをアニーリングする工程は、通常、酸素含有環境で、1~24時間、好ましくは1~20時間、好ましくは1~16時間、より好ましくは4~8時間を必要とする。
【0182】
通常、セラミック焼結体をアニーリングする任意でのプロセス工程f)は酸化雰囲気中で行なわれ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドを上昇させ、応力を低下させて、機械的な取り扱いを改善し、多孔率を低下させる。任意でのアニーリング工程は空気中で行なわれてもよい。
【0183】
コーディエライト焼結体をアニーリングする任意でのプロセス工程f)を行なった後、焼結された、またいくつかの場合ではアニーリングされたコーディエライト焼結体の温度を、プロセス工程g)に従って環境温度まで低下させ、焼結された、また任意でアニーリングされたコーディエライト体を、アニーリング工程が焼結装置の外部で行なわれる場合は炉から取り出し、又はアニーリング工程f)が焼結装置内で行なわれる場合はツールセットから取り出す。
【0184】
次いで、コーディエライト焼結体を、例えば、EUVリソグラフィプロセスで使用するためのレチクル基板などの最終体に機械加工、切断、及び/又は研磨し得る。コーディエライト焼結構成要素を作製するためのコーディエライト焼結体の機械加工は当業者に知られているものに従って行なうことができる。例えばコーディエライト焼結体は、実施形態において、4mm~100mmの厚さの範囲で10mmから最大550mmの直径を有するディスクの形状で形成される。焼結体はまた、用途に応じた必要に応じて様々な形状及び/又は構成要素の形状に機械加工することができる。本明細書に開示する方法に従って実現される高密度によって、コーディエライト焼結体の表面を微細な表面仕上げに研磨することができる。本明細書で定義される表面粗さSaは、表面粗さの分析に関連する国際標準集であるISO25178表面テクスチャ(Areal Roughness測定)に従って知られている表面の算術平均高さの尺度である。開示するコーディエライト焼結体は、18nm未満、好ましくは15nm未満、好ましくは10nm未満、より好ましくは8nm未満、より好ましくは5nm未満、より好ましくは2nm未満の表面粗さSaの値を有し得る。
【0185】
本明細書に開示する方法は、最大細孔サイズ、より高い密度、改善された機械的強度に対する制御を改善し、それによって、コーディエライト焼結体/構成要素、特に、例えば最大寸法で200~550mm以上の寸法のそれらのコーディエライト体の取り扱い性、及び耐食性コーディエライト焼結構成要素の格子内の酸素空孔の低減に対する制御を改善する。
【0186】
したがって、本明細書に開示する一実施形態では、以下の工程を含む方法によって作製されるコーディエライト焼結体であり、方法は、a)二酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al)を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程と、b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程と、c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なってMgAlSi18を含むコーディエライト焼結体を形成する工程と、e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む。
【0187】
コーディエライト焼結体を作製する方法に関して開示される全ての特徴は、製品、コーディエライト焼結体にも適用され、また製品、コーディエライト焼結体に関して開示される全ての特徴は、コーディエライト焼結体を作製する方法にも適用される。
【0188】
フォトリソグラフィレチクルとしての使用
本明細書では、MgAlSi18を含み、少なくとも1つの表面を有するコーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含むフォトリソグラフィレチクルを開示し、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0189】
開示するコーディエライト焼結体の1つの例示的な使用は、業界標準に適合するレチクルの厚さを維持しながら、EUV照射の吸収によるパターンの歪みを実質的に低減又は排除する、EUVリソグラフィ用途で使用するための反射型レチクルとしてのものである。
【0190】
図2A及び図2Bに、基板102及び反射層104を含むEUV反射型レチクル100の実施形態を概略的に示し、図2B)は更にULEガラス206の層を含む。図2A及び図2Bのフォトリソグラフィレチクルの実施形態は、反射層104を形成するために高反射性材料の1つ以上の層が上に置かれた基板102を含む。パターン(図示せず)はレジストのパターニングされた層の化学エッチングによって、又は追加で、又は代替的に、当業者に明らかな任意の他の技術によって、層104の反射表面上に形成することができる。反射層104は、選択される使用周波数における用途特異的な特性によって選択されるアルミニウム又は他の高反射性金属から形成することができる。
【0191】
基板102は、フォトリソグラフィレチクル100にかけられる温度の範囲にわたって熱膨張係数が実質的にゼロである本明細書に開示する方法によって作製されたコーディエライト焼結体を含む。本明細書に開示するコーディエライト焼結体の物理的及び化学的特性(例えば、非常に高い密度、低い表面の平滑性及び欠陥の不存在)によって、研磨と反射フィルムの適用を支持する低多孔率の上面106を提供してコーディエライト焼結体はレチクル基板としての使用に適し、それにはその後の細孔又は多孔性がなく、表面粗さ(Sa)が低くピークトゥーバレー(Sz)が低い。この場合、表面の特性は「ピークトゥーバレー」(Sz)値及び表面粗さ(Sa)として測定される。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、基板の上面106が十分に低い表面粗さとピークトゥーバレーの測定値(例えば、約14nm以下のSzと約10nm以下のSa)を有する場合、特定の実施形態では、レチクル100は基板の上面と少なくとも1つの反射層104との間に配置されるULEガラス層の追加の層、又は反射層の上のULEガラス層を有していない。本明細書に開示する範囲内のピークトゥーバレーのフィーチャーまで研磨することができるコーディエライト焼結体は、熱抵抗が低下し、それによって加熱した時のパターンの歪みが少ない反射型レチクルを与え得る。実施形態では、この層は最小の厚さ、例えば0.025mm未満の厚さなどを有して、比較的低い熱抵抗を維持し得る。例えば、米国特許第8,736,810号は、微小構造の欠陥(ボイド)によってコーディエライトは反射型レチクルにおける基板としての使用に不適切であり、反射層と基板との間に材料の追加の層が必要であることを開示している。その追加の材料層は、限定されないが、例えばアルミニウムをはじめとする金属層、グラファイトなどの非金属の伝導性材料、又はそれらの任意の組合せであり得る。対照的に、本開示によるEUV反射型レチクルは、本明細書に開示するコーディエライト焼結体を含む基板と、反射層を形成する高反射材料の少なくとも1つの層とからなる。本明細書に開示するコーディエライト焼結体を含む基板は、吸収された照射線による局所的な加熱から生じるパターンの歪みに関連する欠点を有しておらず、高反射材料を基板の表面上に直接配置することを可能にする表面特性を示す。
【0192】
コーディエライト焼結体の基板102は、環境温度の範囲(約22℃~25℃)にわたって熱膨張係数が実質的にゼロであり、また、光学層の熱伝導率よりも約3倍大きい熱伝導率を有する(例えば、コーディエライトは25℃で約3.8~約5W/(m-℃)の熱伝導率を有し、ULEガラスは25℃で約1.31W/(m-℃)の熱伝導率を有する)。一実施形態では、基板102の厚さは約5.00mm以上であってもよい。
【0193】
高い露光精度を維持するために、パターニングデバイス100及び/又はウェハー80は、第1及び第2支持プラットフォーム82及び84によって支持される。(図1に示すように)第1支持プラットフォーム82は、固定又は移動可能のいずれかのフレーム、構造体、又は支持体を含み得る。図3A及び図3Bに支持チャック並びに支持構造体82及び84の実施形態を示す。
【0194】
支持構造体としての使用
【0195】
開示するコーディエライト焼結体の別の例示的な使用は、EUV照射の吸収によるパターンの歪み及び位置の変動を実質的に低減又は排除するEUVリソグラフィ用途で使用するための支持チャック又は支持構造体(それぞれ図3A及びBに示す)としてのものである。支持構造体及び/又は支持チャックは、MgAlSi18を含む、少なくとも1つの表面を有する、コーディエライト焼結体の少なくとも1つの層を含み得、コーディエライト焼結体は2.55~2.63g/ccの密度を有する。
【0196】
図3A)に、支持チャック300の例示的な断面図を示し、それは、いくつかの実施形態では、構成要素302(それは、限定されないが、その上に取り付けられたパターニングデバイス100又はウェハー80を含む)を支持するように構成された静電チャックを含み得る。特定の例示的な例によると、支持チャック300はチャック基板304を含み、支持チャック300が静電クランプ機能を有する特定の実施形態では、チャック基板304は更に、構成要素302に静電気力を印加するために帯電されるように動作可能な内蔵帯電プレート306を含み得る。いくつかの実施形態では、支持チャック300は、第1又は第2支持プラットフォーム82及び84に取り付けられ得る。支持チャック300は更に、構成要素302を支持するように設計された多数の支持ピン308を含み、ガスがそれらの間を流れ得るように構成要素302とチャック基板304(及び適用可能な場合、帯電プレート306)との間に空間を残して、クランプの影響を低減する。リセプタクル60は、その上面が構成要素302の上面と同一平面上にあるように、第1及び第2支持構造体(それぞれ82及び84)に設けられる。
【0197】
図3Bに、支持構造体400の例示的な断面図を示す。特定の例示的な例によると、支持構造体400は、その上に取り付けられた構成要素302(いくつかの実施形態では、それは、限定されないが、パターニングデバイス100又はウェハー80を含み得る)を支持し、複合基板404a~dを更に含む。支持構造体400は、(例えば、はんだ付け、拡散接合、及び当業者に知られている同様の方法によって)第2下部構成要素404bに接合された第1下部構成要素404aを含み、両方が一緒に支持構造体400のベース体(「バルク」)を形成する。支持構造体400は、マイクロリソグラフィの高ビーム強度における複合基板404a~404dでの照射の吸収の結果としてより激しく発生する熱を除去するための複数のチャネル406を有し得る。支持構造体400は更に、構成要素302を支持するための上部支持構造体(404c及び404d)を有する。これらの構造体は各々、第1上部構造体404c及び第2上部構造体404dを有する。上部支持構造体は、EUV露光中の制御された位置変化によって露光中の精度を高める。
【0198】
例えば、内蔵の構成要素又は加熱要素を受け入れるための更なるチャネル406もまた、支持構造体400内(又は代替的に支持チャック300のチャック基板304内)に設けられてもよく、これはまた、例えば上述のように、高い剛性を維持しながら更なる重量の低減を実現するためにメッシュ又はハニカム構造で設けられてもよいことが理解される。
【0199】
このように形成された支持チャック300及び支持構造体400は、マイクロリソグラフィの高いビーム強度に耐えることができ、それによって、選択された構成要素のタイプによって軽量構造が実現され、同時に良好な熱伝達及び低い熱膨張が保証され、高いヤング率によって高い機械的安定性と位置精度が得られる。支持チャック300及び/又は支持構造体400は、複合構造体(ハニカム又はメッシュパターンのような形状)として、又はコーディエライトのモノリシックブロックとしてのいずれかで形成することが可能である。
【0200】
チャック基板304及び複合基板404a~dは、好ましくは本明細書に開示するコーディエライト焼結体を含む。
【0201】
装置/スパーク放電プラズマ焼結ツール
本明細書では、スパーク放電プラズマ焼結(SPS)ツールを開示し、それは、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁、及び外壁、を有する側壁を備えたダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチと下部パンチと、を含み、上部パンチと下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチと下部パンチの少なくとも1つがダイの内部容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間の間隙を形成し、間隙は10μm~100μmの幅を有し、少なくとも1つのセラミック粉末は、ASTM C1274に従って測定して1~18m/gの比表面積(SSA)を有する。
【0202】
図10に、本明細書に開示する大きな焼結セラミック体を作製するためにセラミック粉末の焼結に使用される簡略化されたダイ/パンチの配置を有するSPSツール1を示す。「装置」及び「ツール」という用語は、スパーク放電プラズマ焼結装置に関して互換的に使用される。
【0203】
典型的には、ダイ/パンチの配置は、当業者によって認識されるように真空チャンバ(図示せず)内にある。図10を参照すると、スパーク放電プラズマ焼結ツール1は、少なくとも1つのセラミック粉末5を受け入れることができる内部容積を画定する直径を有する内壁8を含む側壁を有するダイシステム2を備える。
【0204】
更に図10を参照すると、スパーク放電プラズマ焼結ツール1は、ダイシステム2と動作可能に連結された上部パンチ4と下部パンチ4’を含み、上部パンチ4と下部パンチ4’の各々はダイシステム2の内壁8の直径よりも小さい直径を画定する外壁11を有し、それにより、上部パンチ4と下部パンチ4’の少なくとも1つがダイシステム2の内部容積内に移動するときに、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々とダイシステム2の内壁8との間の間隙を形成する。
【0205】
ダイシステム2及び上部パンチ4と下部パンチ4’は少なくとも1つのグラファイトを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に開示するグラファイト材料は、少なくとも1つの等方性グラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、本明細書に開示するグラファイト材料は、例えば、炭素-炭素複合体などの少なくとも1つの強化グラファイト材料、及び等方性グラファイト材料のマトリックス中の炭素などの他の導電性材料の繊維、粒子、又はシート又はメッシュ、又は積層体を含むグラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、ダイと上部及び下部パンチはこれらの等方性及び強化されたグラファイト材料の組合せを含む。
【0206】
例えば、ダイ6及びパンチ4と4’などのツールの部品の一部又は全てに使用されるグラファイト材料は多孔性グラファイト材料を含んでもよく、それは、約5%~約20%、約5%~約17%、約5%~約13%、約5%~約10%、約5%~約8%、約8%~約20%、約12%~約20%、約15%~約20%、約11%~約20%、約5%~15%、6%~約13%、好ましくは約7%~約12%の多孔率を示す。
【0207】
好ましくは、グラファイト材料は、0.4~5.0μm、好ましくは1.0~4.0μmの平均細孔径(細孔直径)を有し、最大30μm、好ましくは最大20μm、好ましくは最大10μmの表面細孔径を有する細孔を含む。より好ましくは、10~30μmの表面細孔径を有する細孔が存在し得る。
【0208】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、<0.05mm、好ましくは<0.04mm、好ましくは<0.03mm、好ましくは<0.028mm、好ましくは<0.025mm、好ましくは<0.02mm、好ましくは<0.018mm、好ましくは<0.015mm、好ましくは<0.010mmの平均粒径を有し得る。
【0209】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、>0.001mm、好ましくは>0.003mm、好ましくは>0.006mm、好ましくは>0.008mm、好ましくは>0.010mm、好ましくは>0.012mm、好ましくは>0.014mm、好ましくは>0.020mm、好ましくは>0.025mm、好ましくは>0.030mmの平均粒径を有し得る。
【0210】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、≧1.45g/cm、好ましくは≧1.50g/cm、好ましくは≧1.55g/cm、好ましくは≧1.60g/cm、好ましくは≧1.65g/cm、好ましくは≧1.70g/cm、好ましくは≧1.75g/cmの密度を有し得る。
【0211】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、≦1.90g/cm、好ましくは≦1.85g/cm、及び好ましくは≦1.80g/cmの密度を有し得る。
【0212】
実施形態では、グラファイト材料は、≧3.3×10-6/℃、≧3.5×10-6/℃、≧3.7×10-6/℃、≧4.0×10-6/℃、≧4.2×10-6/℃、≧4.4×10-6/℃、≧4.6×10-6/℃、≧4.8×10-6/℃の、約400~約1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)を有する。
【0213】
実施形態では、グラファイト材料は、≦7.0×10-6/℃、好ましくは≦6.0×10-6/℃、好ましくは≦5.0×10-6/℃、好ましくは≦4.8×10-6/℃、好ましくは≦4.6×10-6/℃の、約400~1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)を有し得る。
【0214】
表6に本明細書に開示する例示的なグラファイト材料の特性を列記する。
【表6】
【0215】
図11A図11Cの実施形態に図示されるように、ダイシステム2は、ダイ6、及び任意で、しかし好ましくはダイの内壁上に位置する少なくとも1つの伝導性ホイル7を含む。ダイの内壁上の伝導性ホイルの数に制限はなく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の伝導性ホイルを、ダイ6及び上部パンチ4と下部パンチ4’の各々との間の円周ライナーとして設けてもよく、それによって、ダイシステム2の内壁8(存在する場合少なくとも1つの伝導性ホイルを含む)と上部及び下部パンチの各々の外壁11が間隙3を画定する。少なくとも1つの伝導性ホイル7は、本明細書に開示する方法に従った温度範囲内で安定なグラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、白金、及び他の延性、伝導性材料並びにそれらの組合せを含む。
【0216】
特定の実施形態では、伝導性ホイルは本明細書に開示する可撓性かつ圧縮性のグラファイトホイルを含み得、以下の特性、すなわち、
・99wt%超、好ましくは99.2wt%超、より好ましくは99.4wt%超、より好ましくは99.6wt%超、より好ましくは99.8wt%超、より好ましくは99.9wt%超、より好ましくは99.99wt%超、より好ましくは99.999wt%超の炭素含有量、
・500ppm未満、好ましくは400ppm未満、より好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満の不純物、
・0.4.0~6.0MPa、好ましくは4.2~5.8MPa、より好ましくは4.4又は5.6MPaの範囲のグラファイトホイルの引張強度、及び/又は
・好ましくは1.0~1.2g/cc、好ましくは1.02~1.18g/cc、より好ましくは1.04~1.16g/cc、より好ましくは1.06~1.16g/ccの好ましくは範囲内のグラファイトホイルのバルク密度のうちの1つ以上を有する。
【0217】
実施形態では、少なくとも1つのホイルは、典型的にはグラファイトを含む。特定の実施形態では、ダイシステムの一部としての少なくとも1つのホイルは、ダイの表面と上部及び下部パンチの各々との間の円周ライナーを含み得る。
【0218】
グラファイトホイルは、焼結中の粉末全体の温度分布を改善することができる。
【表7】
【0219】
ここで、図11A図11B、及び図11Cを参照し、グラファイトホイル配置の実施形態を有するSPSツールセットを示す。セラミック粉末5は、上部パンチ4及び下部パンチ4’のうちの少なくとも1つの間に置かれ、間隙3は上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁11とダイシステム2の内壁8との間に示されている。図11A図11B、及び図11Cに、それぞれ1~3層の伝導性ホイル7を、またダイ6をダイシステム2の一部として示す。したがって、間隙は、ダイシステム2の内壁8から上部及び下部パンチの各々の外壁11まで延びる。間隙の間隔は、加熱及び焼結の前及び/又は最中に粉末を脱気できるように整えられ、また同時にパンチとダイとの間のオーミック接触も維持して加熱及び焼結中のセラミック粉末全体の温度分布を改善する。
【0220】
グラファイトホイルは、例えば、0.025~0.260mm、好ましくは0.025~0.200mm、好ましくは0.025~0.175mm、好ましくは0.025~0.150mm、好ましくは0.025~0.125mm、好ましくは0.035~0.200mm、好ましくは0.045~0.200mm、好ましくは0.055~0.200mmの厚さを有し得る。
【0221】
間隙3の間隔は、上部パンチ4及び下部パンチ4’に最も近いホイル7の内向きの面から、上部及び下部パンチの各々の外壁11の外壁までで測定される。間隙3の間隔の好ましい範囲は、好ましくは10~100μm、好ましくは10~80μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは30~70μm、好ましくは20~60μm、好ましくは30~60μmである。
【0222】
更に、ダイシステム2の内壁8と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙3の幅は、一方では予熱、加熱、及び焼結プロセス中の粉末の脱気が十分に容易になるように、他方ではジュール又は抵抗加熱に十分な電気的接触を得て焼結を行なわれるように、当業者は決定することができる。間隙3の間隔が10μm未満である場合、ダイシステムの内部容積内で上部及び下部パンチの少なくとも1つを移動させ、それによりツールセットを組み立てるために必要な力は、ツールセットに損傷を引き起こす場合がある。更に、10um未満の間隙3は、セラミック粉末5内に吸着されたガス、有機物、湿気などを逃がすことができず、それにより、製造中のプロセス時間が延び、多孔性を残存させることにより、コーディエライト焼結体の密度を低下させる場合がある。特定の実施形態において、間隙3の幅が約70μmより大きい場合、本明細書に開示する粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物などの絶縁材料を焼結するときに、局所的な過熱が生じて、焼結中にツールセット内に熱勾配を生じる場合がある。これらの熱勾配(酸化物粉末の混合物の高い抵抗率、例えば、約1×10+10Ω-cm以上の抵抗率に起因する)により、コーディエライト焼結体全体にわたる密度差を生じ得る。本明細書に開示する粉末混合物及び焼成粉末混合物から大きな寸法のコーディエライト焼結体を形成するためには、10~70μmの間隙が好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、酸化物粉末の混合物を含むセラミック粉末を焼結するときのダイシステム2の内壁8と上部及び下部パンチの各々の外壁11との間の間隙3の間隔は、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~70μm、好ましくは30~70μm、好ましくは40~70μm、好ましくは50~70μm、好ましくは30~60μmである。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、焼結中のダイシステム2の内壁8と上部及び下部パンチの各々の外壁11との間の間隙の間隔は、予備焼結及び焼結プロセス中に粉末の有機物、水分、吸着分子などの脱気を促進するように機能すると考えられる。これにより、高い密度及び低い体積多孔率、低い密度変動及び本体を破壊することなく容易に取り扱うことができるような改善された機械的特性を有する大きなサイズのコーディエライト焼結体が得られる。本明細書に開示するように作製されたコーディエライトを含む焼結セラミック体は、コーディエライト焼結体の最大寸法に関して100mm~622mm以上の寸法を有する。
【0223】
実際には、上部パンチ4及び下部パンチ4’は、常に中心軸の周りに完全に整列されているわけではない。図12A及び図12Bはツールセット1の平面図であり、中心軸9の周りの上部パンチ4及び下部パンチ4’、間隙3、任意の数の伝導性ホイル7、及びダイシステム2の配置を示す。図12Aに示した実施形態では、間隙は中心軸9を中心として軸対称であり得る。図12Bに示した他の実施形態では、間隙は中心軸9を中心として非対称であり得る。図示した軸対称及び非対称の実施形態の両方において、本明細書に開示する酸化物セラミックを焼結するときの間隙3は10um~70umの間で延び得る。
【0224】
間隙の非対称性能は、一定範囲の温度にわたるCTEの半径方向の絶対偏差解析を行なうことによって測定することができる。例えば、図13に、本明細書に開示する装置のパンチ及びダイとして使用される2つの等方性グラファイト材料(A及びB)の1200℃における平均CTEからの半径方向の偏差を示す。図13は、所望の間隙を大きな温度範囲にわたってうまく維持することができる材料では、例えば室温から2000℃までで、半径方向の偏差がx-y平面において最大で>0.3×10-6ppm/℃では変化し得ないことを示している。材料Bは、x-y平面内で許容できないCTEの広がりを示すが、材料Aは、温度範囲全体を通して許容可能なCTEの広がりを示した。図13の両方の材料のx-y平面にわたっての一定の温度範囲にわたるグラファイト材料A及びBのppm/℃でのCTEの標準偏差を図14A)に、CTEの半径方向の絶対変動(デルタ)(最低から最高まで)をB)に示す。図15に、400~1400℃におけるグラファイト材料A及びBの熱膨張係数の分散を示す。
【0225】
焼結装置及び手順は、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/124,547号に開示されている。
【0226】
一実施形態に従って使用される特定のツールセットの設計の利点は、高くて均一な密度及び低い体積多孔率を有する非常に高い純度(ドーパント及び/又は焼結助剤の使用は必須ではない)の大きなセラミック体を得るための全体的な技術的効果をもたらし得、それによって、本開示による焼結プロセス、特にSPSプロセスにおける破壊の傾向が低減される。したがって、ツールセットに関して開示される全ての特徴はまた、100mmを超える、好ましくは100mm~約622mmの寸法のコーディエライト焼結体の製品にも適用される。
【0227】
本明細書に開示するツールセットの使用により、焼結する粉末中のより均質な温度分布を実現することが可能になり、非常に高く(本明細書に開示するようにコーディエライトの理論密度の>96%)かつ均一な密度(最大寸法にわたって<4%の変動)を有する、それにより破壊の傾向が低減されるコーディエライト焼結体、特に最大寸法で例えば100mm及び/又は200mmを超える大きな寸法のものを作製することが可能になる。
【0228】
開示するツールセットは更に、スペーサ要素、シム、ライナー、及び他のツールセット構成要素を含んでもよい。典型的には、そのような構成要素は、本明細書に開示する特性を有するグラファイト材料のうちの少なくとも1つから製造される。
【0229】
結晶相の純度、高い(化学的)純度、低い体積多孔率(及び対応する高い密度)及び高い熱伝導率が組み合わされた特性を有する本明細書に開示するコーディエライト焼結体は、本明細書に開示するように、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィの構成要素として使用される場合に、制御された熱膨張係数、高い弾性率、高い熱伝導率及び実質的に平滑で多孔性がない研磨面の相乗効果を与える。本明細書に開示するスパーク放電プラズマ焼結装置を使用して、これらの有益な特徴が、大きい寸法、特に直径100mm~600mm超のコーディエライト焼結体で得られ得る。
【0230】
以下に論じる例示的な実施例によって、特徴及び利点をより完全に示す。
【実施例0231】
以下の実施例に本開示の全体的な性質をより明確に示す。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0232】
全ての粒径の測定は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaのモデルLA-960レーザー散乱型粒径分布分析装置を使用して行なった。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の全ての比表面積(SSA)の測定は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoribaのBET表面積アナライザモデルSA-9601を使用して行なった。純度及び不純物は、Agilent7900 ICP-MSモデルG8403のICP-MSを使用して測定した。
【0233】
比較例1:試料003ボールミリング
焼結して相が純粋なコーディエライト結晶相を形成する相対量で合わせたアルミナ、マグネシア、及びシリカの粉末を含む粉末混合物を作製した。アルミナ粉末は、約24m/gの比表面積(SSA)、d10が約0.12um、d50が約0.67um、d90が約2.89umの粒径分布、及び100%純度のアルミナ粉末に対して99.9985%の純度を有していた。マグネシア粉末は、約4m/gの比表面積、d10が約0.14um、d50が約3.3um、d90が約6.5umの粒径分布、及び100%純粋なマグネシアに対して99.7966%の純度を有していた。シリカ粉末は、焼成シリカ粉末を噴霧乾燥して、より大きな凝集体又は微結晶に一次粒子を凝集させてシリカ粒子を生成することにより形成され得る焼成シリカ粒子を含んでいた。シリカ粒子は球状及び非球状の両方の粒子を含み得る。本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布測定装置を用いた測定は、実質的に球形という粒子の形状の仮定に基づく。したがって、本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布法を用いた結果は、シリカ粒子の測定には十分な精度を与えない場合がある。したがって、本明細書に開示するシリカ粒子について報告される粒径は、文献に報告されている通りである。本明細書に開示するシリカ粒子は、20~40m/gの比表面積、及びd50が200~250umの粒径分布、及び100%純度のシリカに対して99.999%を超える純度を有し得る。開示するような粒径分布を有するこの実施例によるシリカ粒子で作製されたコーディエライト焼結体は、粉末の凝集を示し、大きな粒径のd50を与える。このd50粒径により、焼結セラミック中の相の間のCTEの不一致のために焼結時に局所的なマイクロクラッキングを生じた。十分なエネルギーの粉砕と組み合わせたより小さいd50粒径を有する凝集のより少ない出発粉末を使用することにより、本明細書に開示するより均一でより小さい粒径分布が得られ、そのようなマイクロクラッキングを改善することができる。d10が0.03~0.3μm、d50が0.2~5μm、及びd90が40~120μmの粒径分布、及び20~40m/gのSSAを有するシリカ粉末が好ましい。粉末を秤量し、焼結するとコーディエライト相を形成するモル比で合わせて、粉末混合物を作製した。次いで、粉末混合物をボールミリング用の容器に移した。粉末重量に対して120%の量のエタノールを粉末混合物に添加してスラリーを形成し、粉末重量に対して100%の混合媒体を添加して、粉末混合物を含む粉末の間の混合を促進した。24時間混合した後、粉末混合物を含有するスラリーをミキサーから取り出し、ロータリーエバポレーターを用いて、エタノールをスラリーから除去した。その後、粉末混合物を600℃で8時間焼成した。焼成は、水分含有量を減少させ、結晶化度を高め、場合によっては表面積を減少させる場合がある。焼成した粉末混合物は、任意で、焼成後に既知の方法に従って、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどをしてもよい。焼成した粉末混合物は、23~27m/gの表面積、d10が約2um、d50が約10um、d90が約87umの粒径分布、及び99.986%の純度を有していた。粉末混合物は、焼成の前又は後のいずれかに、任意で、篩い分け、ブレンド、粉砕などをしてもよい。次いで、本明細書に開示する方法に従って、焼成粉末混合物を、1200℃の温度、30MPaの圧力で30分間、真空下で焼結した。アルキメデス法を使用して測定した5回の測定の平均密度は、2.62g/cc又は理論密度の98.5%であった。標準偏差は0.002g/ccであった。それに応じて、密度の測定値から1.5%の体積又はバルク多孔率が計算される。図5にこの実施例によるコーディエライト焼結体のSEM顕微鏡写真を示す。微細構造中のシリカが豊富な領域(例えばクリストバライト及び/又はトリディマイトなどのシリカが豊富な石英相を含む)は、局所的な熱膨張係数(CTE)の分散及びそれに続く焼結時のマイクロクラッキング、並びに図4のXRDパターン(丸で囲まれた)に示されるように、トリディマイト又はクリストバライトなどの残留する石英のシリカが豊富な相を生じた。したがって、焼結体中のシリカが豊富な領域を低減又は排除し、マイクロクラッキングを防ぐためには、約100nmの一次粒径、及び約9um以下のd50を有するシリカの出発粉末を用い、更に10~75μm、好ましくは70um未満のように可能な限り小さいd90粒径、8~20m/gのSSAを有する焼成粉末混合物を与える混合/粉砕プロセスを行なうことが好ましい。
【0234】
比較例2:試料018ボールミリングと遊星ミリング
アルミナ、マグネシア、及びシリカの粉末を含む粉末混合物を作製した。アルミナ粉末は、22~26m/gの表面積、d10が約0.12um、d50が約0.67um、d90が約2.89umの粒径分布、及び100%純度のアルミナ粉末に対して99.9985%の純度を有していた。マグネシア粉末は、約4m/gの表面積、d10が約0.14um、d50が約3.33um、d90が約6.49umの粒径分布、及び100%純粋なマグネシアに対して99.7966%の純度を有していた。シリカ粉末は、焼成シリカ粉末を噴霧乾燥して、より大きな凝集体又は微結晶に一次粒子を凝集させて焼成シリカ粒子を生成することにより形成され得る焼成シリカ粒子を含んでいた。シリカ粒子は、様々な量で球状粒子と非球状粒子の両方を含み得る粒子を含む。本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布測定装置を用いた測定は、実質的に球形という粒子の形状の仮定に基づく。したがって、本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布法を用いた結果は、シリカ粒子の測定には十分な精度を与えない場合がある。したがって、本明細書に開示するシリカ粒子について報告される粒径は、文献に報告されている通りである。本明細書に開示するシリカ粒子は、20~40m/gの比表面積、及びd50が200~250umの粒径分布、及び100%純度のシリカに対して99.999%を超える純度を有し得る。粉末を秤量し、焼結するとコーディエライト相を形成するモル比で合わせて、粉末混合物を作製した。次いで、粉末混合物をボールミリング用の容器に移した。粉末重量に対して120%の量のエタノールを粉末混合物に添加してスラリーを形成し、粉末重量に対して100%の混合媒体を添加して、粉末混合物を含む粉末の間の混合を促進した。スラリーを16時間ボールミリングし、当業者に既知の回転蒸発を用いて、エタノールをスラリーから除去した。乾燥後、粉末混合物を、30分間の継続時間で当業者に知られている遊星ミル処理にかけた。その後、粉末混合物を600℃で8時間焼成した。焼成は、水分含有量を減少させ、結晶化度を高め、場合によっては表面積を減少させる場合がある。粉末混合物は、焼成の前又は後のいずれかに、任意で、篩い分け、ブレンド、粉砕などをしてもよい。焼成した粉末混合物は、23~27m/gの表面積、d10が約1.5um、d50が約13um、d90が約85umの粒径分布、及び99.7365%の純度を有していた。次いで、本明細書に開示する方法に従って、焼成粉末混合物を、1180℃の温度、30MPaの圧力で30分間、真空下で焼結した。アルキメデス法を使用して測定した5回の測定の平均密度は、2.62g/cc又は理論密度の98.5%であった。微細構造中に明らかなシリカを含む領域は、熱膨張係数の分散を生じて、図5に示したものと同様にその後のマイクロクラッキングを発生させた。したがって、焼結体中のシリカが豊富な領域を低減又は排除し、マイクロクラッキングを防ぐためには、約100nmの一次粒径、及び約9um以下のd50を有するシリカの出発粉末を用い、更に10~75μm、好ましくは70um未満のように可能な限り小さいd90粒径、8~20m/gのSSAを有する焼成粉末混合物を与える混合/粉砕プロセスを行なうことが好ましい場合がある。
【0235】
実施例:試料015コーディエライト焼結体
【0236】
相が純粋な結晶性コーディエライトを含む焼結体を形成する相対量で合わせたアルミナ、マグネシア、及びシリカの粉末を含む粉末混合物を作製した。アルミナ粉末は、約6.5~8.5m/gの比表面積(SSA)、d10粒径が約0.07~0.09μm、d50粒径が約0.15~0.25μm、及びd90粒径が約0.5~1μmの粒径分布、及び100%純度のアルミナ粉末に対して99.999%の純度を有していた。マグネシア粉末は、約5.5~約6.5m/gの比表面積、d10が約0.09~約0.2um、d50が約1.0~2.5um、d90が約18~28umの粒径分布、及び100%純粋なマグネシアに対して99.99%の純度を有していた。シリカは、好ましくは焼成シリカ粉末を含む。焼成シリカ粉末(又はヒュームドシリカ粉末)は、その製造方法(例えば四塩化ケイ素又は砂などのケイ素含有化合物の火炎熱分解による)により、非常に高いアスペクト比を有する実質的に非球状の凝集体又は集合体を含み、したがって、ヒュームドシリカ粉末を測定するとき、本明細書に開示するレーザー散乱式粒径分布の方法を用いた結果は十分な精度を提供しない場合がある。したがって、本明細書に開示するヒュームドシリカ粉末について報告される粒径は、文献に報告されている通りである。本明細書に開示するシリカ粉末は、約100nmの一次粒径(一次粒子は、単一の粒子又は単一の微結晶を含む)、約9μmのd50を有し、約28~32m/gの比表面積、純度100%のシリカに対して99.999%を超える純度を有し得る。粉末を秤量し、焼結するとコーディエライト相を形成するモル比で合わせて、粉末混合物を作製した。次いで、粉末混合物をタンブリング(垂直又はエンドオーバーエンド)粉砕用の容器に移した。粉末重量に対して約250%の量のエタノールを粉末混合物に添加してスラリーを形成し、粉末重量に対して約150%の高純度(ICPMS法を用いて測定して約99.99%)の媒体を添加して粉末混合物の混合を促進した。約20のRPMで20時間混合した後、粉末混合物を含有するスラリーをミキサーから取り出し、当業者に知られている回転蒸発法を用いてエタノールをスラリーから除去した。その後、600℃で8時間焼成を行なった。焼成した粉末混合物は、任意で、焼成後に既知の方法に従って、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行なってもよい。粉末混合物は、(ASTM C1274に準拠したBET表面積測定に従って測定して)18~20m/gの比表面積、(本明細書に開示されるHoribaのモデルLA-960レーザー散乱式粒径分布分析装置を使用して測定して)d10が0.10~0.25um、d50が0.25~0.35um、d90が65~75umの粒径分布、及び(Agilent7900 ICP-MSモデルG8403のICP-MSを用いて測定して)99.9993の純度を有していた。次いで、本明細書に開示する方法に従って、焼成粉末混合物を、1200℃の温度、15MPaの圧力で30分間、真空下で焼結した。(ASTM B962-17に従ってアルキメデス法を使用して)測定した5回の測定の平均密度は、2.573g/cc又はコーディエライトの理論密度(2.66g/ccと報告されている(D.R.Lide,CRC Handbook of Chemistry and Physics,CRC press(2012))の96.73%であった。それに応じて、密度の測定値から3.27%の体積又はバルク多孔率が計算される。本明細書に開示するX線回折、SEM及び画像解析(ImageJ解析ソフトウェアを使用)を組み合せた方法を試料015について行なった。
【0237】
X線回折から、図7に示すように、焼結体が、当業者に知られているピーク強度比の比較によって決定される約95体積%の量のコーディエライト、及び約5体積%の量の、アルミナが豊富なサフィリン結晶相(「S」で示される(Mg,Al)(Al,Si)20)を含むことが確かめられた。
【0238】
より高い精度で、例えば最大で約98%を含むまでの相の純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを使用すると、コーディエライト相は淡灰色に見え、酸化アルミニウム及び/又はアルミナが豊富な相は黒色又は濃灰色に見え、存在する場合、多孔性も黒色に見える。図8に示すように、(試料015について)存在する結晶相及び任意の多孔性を特定するために、当業者に知られているBSD法を用いて、1000倍で画像を撮影した。サフィリン結晶相を含む黒色領域と多孔性を含むそれらとを区別するために、BSD画像を、ImageJ処理ソフトウェアを使用して黒色及び白色の閾値で処理して、多孔性又はサフィリン結晶相のいずれかを含み得る暗い又は黒色の領域を強調表示した。多孔性又はサフィリン結晶相のいずれかを含む表面の総面積を計算した。
【0239】
BSD検出器のトポグラフィーモードを使用して、(図9に示すように)トポグラフィー画像をコーディエライト焼結体の表面全体にわたって取得した。多孔性を含む領域又は面積を特定するために、トポグラフィー画像を、ImageJ処理ソフトウェアを使用して黒色及び白色の閾値で処理して、多孔性又は表面の欠陥を含み得る画像内の黒色領域を強調表示した。多孔性を含む表面の総面積をトポグラフィーイメージングから計算し、多孔性又はサフィリン結晶相のいずれかを含む表面の総面積から差し引いて、多孔性を含む表面のパーセント及びサフィリンを含む表面のパーセントの両方を得た。開示するトポグラフィー法を使用すると、コーディエライト焼結体の少なくとも1つの表面は、少なくとも1つの表面の総面積に対して約1%未満、好ましくは約0.9%未満、好ましくは約0.8%未満、好ましくは約0.6%未満、好ましくは約0.3%未満、好ましくは約0.1%未満、好ましくは約0.05%の量の多孔性を含み得る。
【0240】
図9のトポグラフィー画像を使用して、実施例によるコーディエライト焼結体の画像解析測定を行なった。測定から、コーディエライト焼結体は表面全体にわたって5um以下の最大細孔径を有する細孔を有した(図9のフィーチャー1で示されるように)。図9のフィーチャー2、3、及び4は、それぞれ2um、2um、及び3umの細孔径を有していた。SEM及びImageJ処理を使用して、約±0.1umの最小細孔径を測定することができる。したがって、この実施例によるコーディエライト焼結体は、SEM画像及びImageJ処理の方法を用いて測定して、0.1um~5um、好ましくは0.1um~4um、0.1um~3um、0.1um~2um、0.1um~1umの直径を有する細孔を含む表面を有する。
【0241】
コーディエライト焼結体の表面は、XRD、SEM及びImageJの方法を用いて測定して、約2%~約5%のサフィリン相を含み、したがって、約95~98%のコーディエライト相、及び約2~5%のサフィリン相を含むコーディエライト焼結体が本明細書に開示される。
【0242】
多くの実施形態を本明細書に開示した。それにもかかわらず、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行なうことができることが理解される。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーディエライト焼結体の作製方法であって、以下の工程、
a)二酸化ケイ素(SiO )、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化アルミニウム(Al )を含む粉末を合わせて粉末混合物を形成する工程、
b)加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行なうことにより、粉末混合物を焼成して焼成粉末混合物を生成する工程、
c)焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程、
d)焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なってコーディエライト焼結体を形成する工程、
e)コーディエライト焼結体の温度を下げる工程と、を含む前記コーディエライト焼結体の作成方法。
【請求項2】
さらに、以下の工程、
f)任意で、アニーリング温度に達するまで熱を加えてコーディエライト焼結体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、コーディエライト焼結体をアニーリングする工程、および、
g)アニーリングしたコーディエライト焼結体の温度を下げる工程、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
h)コーディエライト焼結体を機械加工して、フォトリソグラフィレチクル、光学素子の支持部材、真空チャック、静電チャック、支持チャック、マイクロリソグラフィプロセスで使用するレチクルチャックなどのコーディエライト焼結構成要素を作製する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
圧力が、5MPa~100MPaである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
焼結温度が、800~1300℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ICPMS法を使用して測定して、焼成粉末混合物が、99.95%以上の純度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
焼成粉末混合物が、ASTM C1274に従って測定されるBET表面積分析法を用いて測定して8~20m /gの比表面積を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末が、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により製造されるコーディエライト焼結体。
【請求項9】
粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の各々がタルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項8に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項10】
前記コーディエライト焼結体が、タルク、カオリン、ギブサイト、ドロマイト、セピオライト、フォルステライト、並びに他の粘土及び粘土系化合物を含む天然に存在する材料を含まない、請求項8または9に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項11】
粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の各々が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属元素、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素を含む、ガラス形成成分を実質的に含まない、請求項8または9に記載のコーディエライト焼結体。
【請求項12】
前記コーディエライト焼結体が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含むアルカリ金属元素、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)を含むアルカリ土類金属元素、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ルビジウム(Rb)を含む遷移金属、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)を含むメタロイド元素を含む、ガラス形成成分を含まない、請求項8または9に記載のコーディエライト焼結体。
【外国語明細書】