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特開2024-28930薬物透過性構成要素を有する薬物送達デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028930
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】薬物透過性構成要素を有する薬物送達デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61M37/00 550
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207798
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2021081129の分割
【原出願日】2016-04-25
(31)【優先権主張番号】62/151,982
(32)【優先日】2015-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/293,232
(32)【優先日】2016-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514274409
【氏名又は名称】タリス バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒジン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬物透過性構成要素を有する薬物送達デバイス(1000)、ならびにそれを作製及び使用する方法が提供される。
【解決手段】薬物送達デバイス1000は、互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメン1004を画定する管1010を形成する第1(1012)及び第2(1014)の壁構造を有する筐体1002を含む。第2の壁構造、または第1の壁構造及び第2の壁構造の両方が、水に対して透過性であり、第1の壁構造が薬物に対して不透過性である一方で、第2の壁構造は薬物に対して透過性であるため、薬物は、第2の壁構造を通る拡散によってin vivoで放出可能である。
【選択図】図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁構造及
び第2の壁構造を備える筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水に対
して透過性であり、
前記第1の壁構造は、前記薬物に対して不透過性であり、前記第2の壁構造は、前記
薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記第2の壁構造を通る拡散によってin
vivoで放出可能であり、
前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において、前記管の断面積の90パ
ーセント未満を占め、
前記第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成物を含む、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記第2の壁構造は、前記断面において前記管の外周の約15度~約90度の円弧角を
有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の壁構造は、前記第1のポリウレタン組成物とは異なる第2のポリウレタン組
成物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、ワイヤ保持フレームの非存在下で、患者の膀胱内に前記デバイスを保
持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入
に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成される、請求項1に記載のデバ
イス。
【請求項5】
前記第1及び第2の壁構造は、共押出プロセスによって一体的に一緒に形成される、請
求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の壁構造は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミ
ドからなる群から選択される親水性ポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の壁構造は、前記第2の壁構造の厚さより大きい厚さを有する、請求項1に記
載のデバイス。
【請求項8】
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2の壁構造で形成された前記管の第1の端部と一体的に形成及び接続さ
れたセグメントである端部を有する環状壁セグメントをさらに備え、前記環状壁セグメン
トは、前記薬物貯蔵ルーメンのさらなる部分を画定するルーメンを画定し、また前記環状
壁セグメントは、前記第1のポリウレタン組成物で全体的に形成される、請求項1に記載
のデバイス。
【請求項10】
前記第1及び第2の壁構造は、各々、熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記管は、患者の膀胱内に前記デバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、
前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能で
あり、
前記管は、前記保持形状を有するように設定された熱的形状である、請求項1~9のい
ずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンを有する細長い弾
性筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記筐体は、
前記薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグ
メントと、
前記薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成され、かつ第
2の環状セグメント中の前記第2の材料を通る拡散によってin vivoで前記薬物を
放出するように構成される、前記第2の環状セグメントと、を備える管状壁構造を備え、
前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形
成及び接続された第1の端部を有する、薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記第2の環状セグメントは、前記第1の材料及び前記第2の材料で形成される、請求
項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2の環状セグメントにおいて、前記第1の材料は、第1の弓形部分を形成し、前
記第2の材料は、第2の弓形部分を形成し、前記第1及び第2の弓形部分は、一体的に接
続され、一緒になって前記第2の環状セグメントのアニュラスを画定する、請求項12に
記載のデバイス。
【請求項14】
前記第2の弓形部分は、15度~120度の円弧角を有する、請求項13に記載のデバ
イス。
【請求項15】
前記第2の弓形部分は、30度~60度の円弧角を有する、請求項13に記載のデバイ
ス。
【請求項16】
前記第2の環状セグメントは、主に前記第2の材料で形成される、請求項11に記載の
デバイス。
【請求項17】
前記第1及び第2の環状セグメントは、押出プロセスにおいて一緒に形成される、請求
項11に記載のデバイス。
【請求項18】
前記管状壁構造は、前記第1の材料で全体的に形成され、かつ、前記第2の環状セグメ
ントの対向する第2の端部と一体的に形成及び接続された第3の環状セグメントをさらに
備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第2及び第3の環状セグメントは、前記押出プロセスにおいて一緒に形成される、
請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記管状壁構造は、前記筐体の対向する端部間に全長(L)を有し、前記第2の環状
セグメントは、前記全長(L)の5%~50%である長さ(L)を有する、請求項11
に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第1の材料は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、またはエチレン-酢酸ビニル
(EVA)を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第2の材料は、親水性熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項11に記載のデバイス
【請求項23】
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項24】
前記デバイスは、ワイヤ保持フレームの非存在下で、患者の膀胱内に前記デバイスを保
持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入
に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成される、請求項11~23のい
ずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
少なくとも1つの熱可塑性材料を含む壁構造によって囲まれた閉鎖された薬物貯蔵ルー
メンを有する管状筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記壁構造の少なくとも一部は水透過性であり、
前記壁構造の少なくとも一部は前記薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記
壁構造の薬物透過性部分を通る拡散によってin vivoで放出可能であり、
前記管状筐体は、患者の膀胱内にデバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から
、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への前記デバイスの挿入に好適な非コイル形状ま
で弾性変形可能であり、
前記管状筐体は、前記コイル型保持形状を有するように設定された熱的形状である、薬
物送達デバイス。
【請求項26】
前記壁構造は、
前記薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグメン
トと、
前記薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成され、かつ第2の
環状セグメント中の前記第2の材料を通る拡散によってin vivoで前記薬物を放出
するように構成される、前記第2の環状セグメントと、を備え、
前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形成
及び接続された第1の端部を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記壁構造は、前記薬物に対して不透過性である第1の壁構造と、前記薬物透過性部分
である第2の壁構造と、を備え、前記第1及び第2の壁構造は、互いに隣接し、一緒にな
って前記管状筐体を形成する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水透過性
である、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1の壁構造は、第1の熱可塑性ポリウレタン組成物を含み、前記第2の壁構造は
、前記第1の熱可塑性ポリウレタン組成物とは異なる第2の熱可塑性ポリウレタン組成物
を含む、請求項27に記載のデバイス。
【請求項30】
前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において、前記管の断面積の90パー
セント未満を占める、請求項27に記載のデバイス。
【請求項31】
前記第2の壁構造は、前記断面において前記管の外周の約15度~約90度の円弧角を
有する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記第1及び第2の壁構造は、共押出プロセスにおいて一体的に形成される、請求項2
7に記載のデバイス。
【請求項33】
前記第2の壁構造は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミ
ドからなる群から選択される親水性ポリマーである、請求項27に記載のデバイス。
【請求項34】
前記第1の壁構造は、約50A~約70Aのショアデュロメータ値を有する材料で形成
される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記第2の壁構造は、約70A~約65Dのショアデュロメータ値を有する材料で形成
される、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記コイル型保持形状は、少なくとも0.5cmの曲率半径を有する少なくとも1つの
ループを備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項37】
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、請求項25~36のいずれか一項に記載の
デバイス。
【請求項38】
第1の端部と第2の端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンを有する細長い弾性筐体を
備える薬物送達デバイスを作製する方法であって、
第1の材料を押出流路に導入することを含む押出プロセスによって、送達される薬物に
対して不透過性である前記第1の材料で第1の環状セグメントを全体的に形成することと

1つ以上の第2の環状セグメントと一体的に接続された1つ以上の第1の環状セグメン
トを備える管状構造を形成するのに効果的な事前に選択された位置で、前記第1の材料を
含む前記押出流路に第2の材料を断続的に導入することによって、送達される前記薬物に
対して透過性である前記第2の材料で第2の環状セグメントを少なくとも部分的に形成す
ることと、を含む、方法。
【請求項39】
前記管状構造を1つ以上の位置で切断して前記細長い弾性筐体を形成することと、
前記薬物を前記薬物貯蔵ルーメンに入れることと、
前記筐体の前記第1及び第2の端部を封止することと、をさらに含む、請求項38に記
載の方法。
【請求項40】
前記第2の環状セグメントは、前記第1の材料及び前記第2の材料で形成される、請求
項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の環状セグメントにおいて、前記第1の材料は、第1の弓形部分を形成し、前
記第2の材料は、第2の弓形部分を形成し、前記第1及び第2の弓形部分は、一体的に接
続され、一緒になって前記第2の環状セグメントのアニュラスを画定する、請求項40に
記載の方法。
【請求項42】
前記第2の弓形部分は、15度~120度の円弧角を有する、請求項41に記載の方法
【請求項43】
前記第2の弓形部分は、30度~60度の円弧角を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の環状セグメントは、主に前記第2の材料で形成される、請求項38に記載の
方法。
【請求項45】
前記方法は、1つの第2の環状セグメントの対向する端部で一体的に接続された2つの
第1の環状セグメントを備える管状構造を形成するための様式で行われる、請求項38に
記載の方法。
【請求項46】
前記第1の材料は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、またはエチレン-酢酸ビニル
(EVA)を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の材料は、親水性熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
非コイル形状に弾性変形可能なコイル型保持形状を有するように前記環状構造を設定す
る熱的形状をさらに含む、請求項38~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
薬物を必要とする患者にそれを投与する方法であって、
(i)互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁
構造及び第2の壁構造を有する筐体と、(ii)前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬
物と、を備えるデバイスを前記患者内に挿入することであって、前記第1の壁構造は、前
記薬物に対して不透過性であり、かつポリウレタンを含有し、前記第2の壁構造は、前記
薬物に対して透過性であり、かつ前記管の外側表面積の90パーセント未満を占め、前記
第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水に対して透過
性である、挿入することと、
前記薬物を可溶化するために、前記第2の壁構造のみを通して、または前記第1及び第
2の壁構造の両方を通して水を吸収させることと、
前記第2の壁構造を通る拡散によって前記デバイスから前記可溶化薬物を放出させるこ
とと、を含む、方法。
【請求項50】
前記挿入することは、前記患者の尿道を通して、及び前記患者の膀胱内に前記デバイス
を配置することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって0
次である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって本質
的に0次である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記薬物送達デバイスを前記患者内に配置することは、
前記デバイスを比較的直線型の形状に弾性変形させることと、
前記デバイスを前記患者の尿道を通して挿入することと、
前記デバイスがコイル型保持形状となるように前記デバイスを前記患者の膀胱内に放出
することと、を含む、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
薬物を必要とする患者にそれを投与する方法は、
(i)管状壁構造と、第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に延在する薬物貯蔵ルー
メンとを備える細長い弾性筐体と、(ii)前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と
、を備えるデバイスを前記患者に挿入することであって、前記壁構造は、前記薬物に対し
て不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグメントと、前記薬物に
対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成された第2の環状セグメントと
を備え、前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的
に形成及び接続された第1の端部を有する、挿入することと、
前記薬物を可溶化するために前記管状壁構造を通して水を吸収させることと、
前記管状壁構造の前記第2の環状セグメントを通る拡散によって前記デバイスから前記
可溶化薬物を放出させることと、を含む、方法。
【請求項55】
前記挿入することは、前記患者の尿道を通して、及び前記患者の膀胱内に前記デバイス
を配置することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって0
次である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって本質
的に0次である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記薬物送達デバイスを前記患者内に配置することは、
前記デバイスを比較的直線型の形状に弾性変形させることと、
前記デバイスを患者の尿道を通して挿入することと、
前記デバイスがコイル型保持形状となるように前記デバイスを前記患者の膀胱内に放出
することと、を含む、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2015年4月23日に出願された米
国仮特許出願第62/151,982号、及び2016年2月9日に出願された米国仮特
許出願第62/293,232号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して、医療デバイスの分野に含まれ、より具体的には、限定されないが、
薬物を膀胱内に投与するために膀胱内に配置可能なデバイスを含む、薬物の制御放出のた
めに患者の体内に挿入するための薬物送達デバイスに関する。
【0003】
膀胱内薬物送達デバイスが知られている。そのようなデバイスの例は、Cimaらに対
する米国特許第8,679,094号、Leeらに対する米国特許第9,017,312
号、Leeらに対する米国特許第9,107,816号、及びLeeらに対する米国特許
出願公開第2012/0089121A1号に記載されている。いくつかの実施形態にお
いて、膀胱内デバイスは、固体または半固体製剤を収容する薬物貯蔵ルーメンを画定する
水透過性筐体を含み、膀胱からの水が薬物貯蔵ルーメン内に拡散して薬物を可溶化するこ
とによってin vivoで薬物の放出が起こり、次いで、薬物貯蔵ルーメン内で上昇し
た浸透圧が、放出開口部を通してデバイスから可溶化薬物を押し出す。
【0004】
例えば、特定の薬物及び治療応用を含む場合において、治療量の薬物が放出される期間
を延長すること、及び/または薬物があまりにも急速に出るのを防ぐことが望ましい。こ
れを達成する1つの方法は、水が薬物貯蔵部に進入できる速度を遅らせることによるもの
である。Cimaらに対する米国特許出願公開第2009/0149822A1号は、筐
体の水透過性を低下させるために、筐体の外側表面の少なくとも一部に共形コーティング
またはシースを加えることを開示している。しかしながら、この手法は製造を複雑にする
。さらに、これらの膀胱内デバイスのデバイス筐体は、典型的には弾性変形可能であるよ
うに設計されるため、デバイスの変形中にコーティングが剥離する及び/または亀裂が入
る可能性があり、それが放出動態を不所望に変更し、結果の再現性に悪影響を及ぼし得る
ことから、効果的なコーティングを維持することは困難であり得る。
【0005】
Leeらに対する米国特許出願公開第2014/0276636A1号は、第1の壁構
造が薬物に対して不透過性であり、第2の壁構造が薬物に対して透過性である、第1の壁
構造及び親水性の第2の壁構造でできた筐体から薬物が放出されるデバイスを開示してい
る。様々な異なる薬物に効果的な放出速度で薬物を送達することが可能なデバイスを提供
するために、また2つの壁構造の相対的なサイズ及び位置に関してより優れた柔軟性及び
制御を有するこれらのデバイスを作製するための方法を提供するために、これらのデバイ
スに改善及び/または代替の実施形態を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、薬物送達デバイスは、互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルー
メンを画定する管を形成する第1の壁構造及び第2の壁構造を有する筐体と、薬物貯蔵ル
ーメン内に収容された薬物とを含む。第2の壁構造、または第1の壁構造及び第2の壁構
造の両方が、水に対して透過性であり、第1の壁構造は、薬物に対して不透過性であり、
第2の壁構造は、薬物に対して透過性であるため、薬物は、第2の壁構造を通る拡散によ
ってin vivoで放出可能である。第2の壁構造は、管の縦軸に垂直な断面において
、管の断面積の90パーセント未満を占有し、第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成
物を含む。
【0007】
第2の態様において、薬物送達デバイスは、第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に
延在する薬物貯蔵ルーメンを有する細長い弾性筐体と、薬物貯蔵ルーメン内に収容された
薬物とを含む。筐体は、薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第
1の環状セグメントと、薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成
され、かつ第2の環状セグメント中の第2の材料を通る拡散によってin vivoで薬
物を放出するように構成される第2の環状セグメントとから形成される管状壁構造を含む
。第1の環状セグメントは、第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形成及び接続
された第1の端部を有する。
【0008】
第3の態様において、薬物送達デバイスは、少なくとも1つの熱可塑性材料を含有する
壁構造によって囲まれた閉鎖された薬物貯蔵ルーメンを有する管状筐体と、薬物貯蔵ルー
メン内に収容された薬物とを含む。壁構造の少なくとも一部は水透過性であり、壁構造の
少なくとも一部は薬物に対して透過性であるため、薬物は、壁構造の薬物透過性部分を通
る拡散によってin vivoで放出可能である。管状筐体は、患者の膀胱内にデバイス
を保持するのに好適なコイル型保持形状から、患者の尿道を通した、及び膀胱内へのデバ
イスの挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であり、管状筐体は、コイル型保持形
状を有するように設定された熱的形状である。
【0009】
第4の態様において、第1の端部と第2の端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンを有
する細長い弾性筐体を有する薬物送達デバイスを作製する方法は、(i)第1の材料を押
出流路に導入することを含む押出プロセスによって、送達される薬物に対して不透過性で
ある第1の材料で第1の環状セグメントを全体的に形成することと、(ii)1つ以上の
第2の環状セグメントと一体的に接続された1つ以上の第1の環状セグメントを有する管
状構造を形成するのに効果的な事前に選択された位置で、第1の材料を含む押出流路に第
2の材料を断続的に導入することによって、送達される薬物に対して透過性である第2の
材料で第2の環状セグメントを少なくとも部分的に形成することと、を含む。
【0010】
第5の態様において、薬物を必要とする患者にそれを投与する方法は、(i)互いに隣
接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁構造及び第2の壁
構造を有する筐体と、(ii)薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物とを含むデバイスを
患者内に挿入することを含み、第1の壁構造は、薬物に対して不透過性であり、かつポリ
ウレタンを含有し、第2の壁構造は、薬物に対して透過性であり、かつ管の外側表面積の
90パーセント未満を占有し、第2の壁構造、または第1の壁構造及び第2の壁構造の両
方が、水に対して透過性である。方法は、薬物を可溶化するために、第2の壁構造のみを
通して、または第1の壁構造及び第2の壁構造の両方を通して水を吸収させることと、第
2の壁構造を通る拡散によってデバイスから可溶化薬物を放出させることとをさらに含む
【0011】
第6の態様において、薬物を必要とする患者にそれを投与する方法は、(i)管状壁構
造と、第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンとを有する細
長い弾性筐体と、(ii)薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物とを含むデバイスを患者
内に挿入することを含み、壁構造は、薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に
形成された第1の環状セグメントと、薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも
部分的に形成された第2の環状セグメントとを含み、第1の環状セグメントは、第2の環
状セグメントの第1の端部と一体的に形成及び接続された第1の端部を有する。方法は、
薬物を可溶化するために管状壁構造を通して水を吸収させることと、管状壁構造の第2の
環状セグメントを通る拡散によってデバイスから可溶化薬物を放出させることとをさらに
含む。
【0012】
詳細な説明は、添付の図面を参照して記載される。同じ参照数字の使用は、同様または
同一のものを示し得る。様々な実施形態は、図面に示されるもの以外の要素及び/または
成分を利用し得、いくつかの要素及び/または成分は、様々な実施形態において存在しな
くてもよい。図中の要素及び/または成分は、縮尺通りに描かれているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本開示によるコイル型保持形状の薬物送達デバイスの一実施形態の縦断面図である。
図1B】本開示による図1Aの薬物送達デバイスの横断面図である。
図2】本開示による薬物送達デバイスの一実施形態の横断面図である。
図3】本開示による薬物送達デバイスの一実施形態の横断面図である。
図4】本開示による薬物送達デバイスの一実施形態の横断面図である。
図5】本開示による薬物送達デバイスの一実施形態の横断面図である。
図6】本開示による薬物送達デバイスの一実施形態の横断面図である。
図7A】本開示による比較的直線型の形状の、その中または弾性保持フレーム内に薬物が配置されていない薬物送達デバイスの別の実施形態の斜視図である。
図7B】線7B-7Bに沿った、図7Aに示される薬物送達デバイスの縦断面図である。
図7C】線7C-7Cに沿った、図7Aに示される薬物送達デバイスの横断面図である。
図8A】本開示による比較的直線型の形状の、その中または弾性保持フレーム内に薬物が配置されていない薬物送達デバイスの別の実施形態の斜視図である。
図8B】線8B-8Bに沿った、図8Aに示される薬物送達デバイスの縦断面図である。
図8C】線8C-8Cに沿った、図8Aに示される薬物送達デバイスの横断面図である。
図8D】線8D-8Dに沿った、図8Aに示される薬物送達デバイスの横断面図である。
図9A】本開示による比較的直線型の形状の、その中にいずれの薬物も配置されていない、薬物送達デバイスの別の実施形態の部分上面図である。
図9B】線9B-9Bに沿った、図9Aに示される薬物送達デバイスの部分縦断面図である。
図10A】本開示による薬物送達デバイスの別の実施形態の斜視図である。
図10B】線10B-10Bに沿った、図10Aに示される薬物送達デバイスの縦断面図である。
図10C】線10C-10Cに沿った、図10Aに示される薬物送達デバイスの横断面図である。
図10D】線10D-10Dに沿った、図10Aに示される薬物送達デバイスの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
改善された移植可能な薬物送達デバイス、その製造方法、及び薬物送達方法が提供され
る。具体的な実施形態において、デバイスは、膀胱内挿入及び徐放性薬物送達のために構
成され、好ましくは、治療有効量の薬物の0次放出速度を提供する。
【0015】
拡散に基づく薬物送達デバイス
【0016】
特定の薬物の場合、浸透圧送達機構を用いて、3~4日を超えて0次放出速度を達成す
ることは困難であり得ることが分かった。実験において、3~4日後には、薬物放出速度
が急速に低下し、治療期間の終了前に膀胱内の薬物尿中濃度を最低有効濃度未満にする可
能性がある。例えば、移植システム全体のサイズ上の制約に起因して、より多くの、また
はより高密度に充填された浸透物質を薬物とともに提供するだけで0次放出の期間を延長
することは必ずしも実現可能ではない。また、代わりに、全治療期間中に全体的な薬物の
1次放出を提供することも必ずしも実現可能ではなく、なぜなら、たとえ治療期間の終了
に向けて薬物放出速度が減衰するとしても、放出速度が依然として薬物の最低有効濃度よ
り高いため、十分に高い初期ピーク薬物放出速度を有することは安全ではない場合がある
からである。
【0017】
したがって、浸透圧薬物放出機構の代わりに、デバイス筐体の一部を画定する薬物透過
性ポリマーまたはマトリックス構成要素を通る薬物の拡散によって薬物放出が制御される
、本明細書に記載される特定のデバイスが開発された。一実施形態において、デバイスは
、薬物透過性ポリマー構成要素または部分を含む。例えば、薬物透過性壁構造のサイズ、
形状(例えば、円弧角)、厚さ、及び材料特性が、所望の薬物放出速度を達成するために
選択され得るように、デバイスの薬物透過性構成要素または部分は、筐体の残りの部分(
例えば、筐体の長さの少なくとも一部に沿って延在する単数または複数の材料のストリッ
プ)とは異なる材料で形成された筐体の一部であってもよい。特定の実施形態において、
(i)デバイスからの薬物の制御拡散、(ii)所望の機械特性(例えば、コンプライア
ンス)、(iii)所望の保持形状を有するように設定された熱的形状であり得るデバイ
ス、及び/または(iv)共押出プロセスにおいて有利に製造され得るデバイスを有利に
提供するために、薬物透過性部分、薬物不透過性部分、または薬物透過性及び不透過性部
分の両方が、ポリウレタン組成物で形成される。
【0018】
一態様において、図1A及び1Bに示されるように、壁構造104によって囲まれた閉
鎖された薬物貯蔵ルーメン106を有する管状筐体を含む薬物送達デバイス100が提供
され、(i)壁構造104の少なくとも一部は水透過性であり、(ii)壁構造の少なく
とも一部は薬物(固体薬物単位108に含有される)に対して透過性であるため、薬物は
、壁構造104の薬物透過性部分を通る拡散によってin vivoで放出可能である。
特定の実施形態において、後により詳細に論じられるように、壁構造は、一緒になって筐
体を形成する第1及び第2の壁構造を含む。本明細書において使用される場合、「薬物透
過性部分を通る拡散」(例えば、「第2の壁構造」、「第2の環状セグメント」、または
別の「薬物透過性部分」を通る)という表現は、その壁を通って延在する開口部または開
放構造を通過することによるのではなく、分子拡散によって壁を通過することにより薬物
が放出されることを指す。
【0019】
一態様において、図2に示されるように、互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメ
ン208を画定する管を形成する第1の壁構造206及び第2の壁構造205を有する筐
体を含む薬物送達デバイス200が提供され、(i)第2の壁構造205、または第1の
壁構造206及び第2の壁構造205の両方が、水に対して透過性であり、(ii)第1
の壁構造206は、薬物に対して不透過性であり、第2の壁構造205は、薬物に対して
透過性であるため、薬物は、第2の壁構造205を通る拡散によってin vivoで放
出可能である。本明細書において使用される場合、「薬物に対して不透過性」という用語
は、デバイスがin vivoに位置する治療期間にわたって、相当量の可溶化薬物が壁
を通って拡散することができないように、壁が可溶化薬物に対して実質的に不透過性であ
ることを指す。
【0020】
特定の実施形態において、管は、円筒形であるか、または別の好適な形状もしくは設計
である。本明細書において使用される場合、「円筒形」という用語は、管状筐体に関連し
て用いられる場合、実質的に円筒形の外壁を有する筐体を指す。一実施形態において、デ
バイスは開口部を含まず、薬物放出は、第2の壁構造を通る拡散によるのみである。
【0021】
いくつかの実施形態において、図2及び3に示されるように、第1の壁構造206/3
06と第2の壁構造205/305とは、互いに隣接し、一緒になって円筒管を形成する
。例えば、そのようなデバイスは、第1の壁構造と第2の壁構造とが一体的に形成される
ように、共押出プロセスにおいて形成されてもよい。一実施形態において、共押出された
第1及び第2の壁構造は、所望の特性を有する熱可塑性ポリマーである。
【0022】
図3に示されるように、第1の壁構造306と第2の壁構造306とは、一緒になって
、製剤が収容されるルーメン308を有する円筒管を形成する。第2の壁構造305は、
第1の壁構造306の長さの少なくとも一部に沿って延在するストリップの形態であり、
薬物に対して透過性である一方で、第1の壁構造306は、薬物に対して透過性ではない
。特定の実施形態において、複数の薬物透過性ストリップが単一のデバイスにおいて使用
されてもよい。したがって、第2の壁構造のサイズ、形状、厚さ、及び材料特性は、所望
の薬物放出速度を達成するように選択され得る。
【0023】
好ましい実施形態において、後により詳細に論じられるように、デバイスは、患者の尿
道を通した、及び患者の膀胱内への挿入に好適な比較的直線型の形状と、膀胱内でデバイ
スを保持するのに好適な保持形状との間で弾性変形可能である。一実施形態において、図
7A~7C、8A~8D、及び10A~10Dに示されるように、デバイスは、保持フレ
ームルーメン734、834、1034をさらに含む。特定の実施形態において、保持フ
レームルーメンは、ニチノールワイヤ等の弾性ワイヤを含む。特定の他の実施形態におい
て、保持フレームルーメンは、形状設定弾性ポリマーで充填される。他の実施形態におい
て、図1A~1B及び図2~6に示されるように、デバイスは、保持フレームルーメンま
たは保持フレームまたはワイヤを含まない。代わりに、筐体の材料が、保持フレームまた
はワイヤの非存在下で、直線型の形状と保持形状との間で弾性変形可能であるように構成
される。特定の実施形態において、管状筐体は、コイル形状または他の保持形状を有する
ように設定された熱的形状である。したがって、そのような実施形態において、デバイス
の設計及び製造は簡素化され、デバイスの全体的なサイズが最小化される(またはデバイ
スのサイズが一定のままである場合、薬物搭載量が増加され得る)。有利には、保持フレ
ームのない実施形態において、管状筐体材料は、(i)薬物貯蔵ルーメンを形成する、(
ii)薬物放出を制御する、及び(iii)配置されたら膀胱内にデバイスを保持する機
能を果たす。
【0024】
一実施形態において、図7A~7Cに示されるように、第1の端部706と第2の端部
708との間に延在する薬物貯蔵ルーメン704を有する細長い弾性筐体702を含む薬
物送達デバイス700が提供される。弾性筐体702は、互いに隣接し、一緒になって薬
物貯蔵ルーメン704を画定する管を形成する第1の壁構造716及び第2の壁構造72
4を含む管状壁構造710で形成され、(i)第2の壁構造724、または第1の壁構造
716及び第2の壁構造724の両方が、水に対して透過性であり、(ii)第1の壁構
造716は、薬物に対して不透過性であり、第2の壁構造724は、薬物に対して透過性
であるため、薬物は、第2の壁構造724を通る拡散によってin vivoで放出可能
である。
【0025】
第1及び第2の壁構造が一緒になって円筒管を形成する実施形態において、任意の好適
な末端プラグまたはクロージャまたは熱形成シールが、薬物が入れられた後で管の端部を
封止するために使用され得る。これらの末端プラグ/クロージャは、外部管の一部を形成
する薬物透過性ポリマー部分が薬物放出の唯一の経路であることを確実にする。
【0026】
いくつかの実施形態において、図2及び3に示されるように、壁206、205/30
6、305は、その外周にわたって実質的に一定の厚さを有する。例えば、第1及び第2
の壁構造206、205/306、305(一緒になって円筒管を形成する)の内径21
0/310及び外径212/312は同じである。
【0027】
他の実施形態において、壁は、例えば、薬物透過性部分(405/505/605)が
薬物不透過性部分の厚さ(406/506/606)よりも少ない厚さを有する図4~6
に示されるように、壁の外周にわたって様々な厚さを有してもよい。さらに、より薄い薬
物透過性壁構造(405/505/605)が、隣接する、より厚みのある薬物不透過性
壁構造(406/506/606)に対する種々の位置に配置されてもよい。図4に示さ
れるように、より薄い薬物透過性壁構造405は、薬物貯蔵ルーメンを形成する薬物不透
過性壁構造406の内側表面と同一表面上であってもよい。図5に示されるように、より
薄い薬物透過性壁505は、薬物不透過性壁構造506の厚さに対して中心にあってもよ
い。図6に示されるように、より薄い薬物透過性壁構造605は、薬物貯蔵ルーメンを形
成する表面の反対側の薬物不透過性壁構造606の外側表面と同一表面上であってもよい
【0028】
すなわち、薬物放出は、閉鎖した薬物筐体の一部を画定する薬物透過性構成要素を通る
薬物の拡散によって制御される。薬物透過性壁構造は、デバイスから所望の速度の制御さ
れた薬物拡散を提供するように位置し、寸法決定され、また材料特性を有し得る。
【0029】
薬物透過性部分または壁構造の特定の材料及び円弧角は、特定の薬物放出プロファイル
、すなわち、水及び薬物透過速度を達成するように選択され得る。例えば、特定の実施形
態において、図2及び3に示されるように、第2の壁構造205/305は、管の縦軸に
垂直な断面において、管の断面積の90パーセント未満を占める。一実施形態において、
第2の壁構造は、管の縦軸に垂直な断面において、管の断面積の50パーセント未満を占
める。一実施形態において、第2の壁構造は、管の縦軸に垂直な断面において、管の断面
積の25パーセント未満を占める。
【0030】
一実施形態において、図2に示されるように、第2の壁構造205は、断面において、
円筒管200の外周の約60度の円弧角214を有する。一実施形態において、図3に示
されるように、第2の壁構造305は、断面において、円筒管300の外周の約30度の
円弧角314を有する。一実施形態において、第2の壁構造は、約10度~約170度の
円弧角を有する。一実施形態において、第2の壁構造は、約15度~約90度の円弧角を
有する。本明細書において使用される場合、第2の壁構造の円弧角に関する「約」という
表現は、円弧角±3度を指す。第2の壁構造は、図1に示されるようにデバイスが保持形
状を有するように形成される場合、内側屈曲部(0度)、外側屈曲部(180度)、上部
(90度)、またはその間に位置してもよい。上部(90度)の位置は、第2の壁構造が
、一旦水を吸収すると大幅に膨潤する材料で形成される場合に好ましいかもしれない。
【0031】
第2の態様において、第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に薬物貯蔵ルーメンが延
在する細長い弾性筐体を有する薬物送達デバイスは、薬物に対して不透過性である第1の
材料で全体的に形成された第1の環状セグメントと、薬物に対して透過性である第2の材
料で少なくとも部分的に形成され、かつ第2の環状セグメント中の第2の材料を通る拡散
によってin vivoで薬物を放出するように構成される第2の環状セグメントとを含
む管状壁構造を有し、第1の環状セグメントは、第2の環状セグメントの第1の端部と一
体的に形成及び接続された第1の端部を有する。そのようなデバイスは、従来の押出プロ
セスに関連する特定の問題を克服することができる。例えば、2つの壁構造を有する管状
デバイス本体を作製するための特定の従来の押出プロセスの使用において、薬物透過性材
料を含むより小さな壁構造の一部(内腔軸に垂直な断面で見た場合、壁を画定する円弧角
によって定量化され得る)は、製造上の制約のためにある程度までしか低減することまた
は狭めることができない。この壁構造は、最も狭い確実に製造可能な円弧角においても、
所与の長さのデバイスにおける特定の薬物の場合には、薬物拡散のための面積が依然とし
て大き過ぎる(すなわち、薬物の放出が速過ぎる)場合があることが明らかになった。そ
のような状況において薬物放出動態を改変するために、多くの他の変数またはデバイスの
仕様が検討され得る:しかしながら、これらの変数を変化させることは、機械的、耐容性
、利用可能な薬物搭載量、またはデバイスの他の望ましい特徴も不所望に変更する可能性
がある。したがって、薬物透過性材料がデバイス本体の全長にわたる必要がないように押
出プロセスが改変され得ることが明らかになった。すなわち、押出プロセスは、デバイス
本体の薬物不透過性壁材料を押し出すプロセスの間に、薬物透過性材料の不連続な(また
は断続的な)供給を実施するように改変することができる。このようにして、管構造の全
体的な寸法を維持することができるだけでなく、有利には、放出のための薬物拡散の選択
された面積及びしたがって速度を付与するように、デバイスの壁構造の拡散部分の長さ及
び幅の両方を制御することができる
【0032】
したがって、機械特性ならびにデバイスの配置及び耐容性に好適な寸法を悪い方向に変
更することなく、薬物放出速度を低下させるまたは制御するように設計された管状デバイ
スが開発された。実施形態において、この設計は、薬物透過性領域(複数可)の長さがデ
バイスの全長の一部のみに沿って伸びるように長さを短縮することにより、薬物放出速度
を低下させる。したがって、有利には、より大きな円弧角の薬物透過性領域(複数可)が
、デバイスからの薬物放出速度を低下させるために用いられ得る。さらに、薬物透過性領
域の長さを短縮することにより、従来のデバイスと比較してより少ない量の薬物透過性材
料を使用して薬物放出速度の低下が実現され得る。このことは、特に、デバイスが膀胱内
で使用される場合に、デバイスの機械特性にとって有益である。
【0033】
一実施形態において、図8A~8Dに示されるように、第1の端部806と第2の端部
808との間に延在する薬物貯蔵ルーメン804を有する細長い弾性筐体802を含む薬
物送達デバイス800が提供される。弾性筐体802は、第1の環状セグメント812及
び第2の環状セグメント814を含む管状壁構造810から形成される。好ましい実施形
態において、第1及び第2の環状セグメント812、814は、押出プロセスにおいて一
緒に形成される。
【0034】
第1の環状セグメント812は、薬物貯蔵ルーメン804内に配置される薬物(図示せ
ず)に対して不透過性である第1の材料816で全体的に形成される。第1の環状セグメ
ント812は、第2の環状セグメント814の第1の端部820と一体的に形成及び接続
された第1の端部818を有する。第2の環状セグメント814は、第1の材料816と
、薬物貯蔵ルーメン804内に配置される薬物に対して透過性である第2の材料824と
から形成されるため、薬物は、第2の材料824を通る拡散によってin vivoで放
出可能である。
【0035】
図8A~8Dに示される実施形態において、第2の環状セグメント814は、管状壁構
造810の外側表面828と内側表面830との間に延在する中心部分826を含む。中
心部分826は、第2の材料824で全体的に形成される。
【0036】
長さに沿って延在する薬物透過性部分(例えば、図7A~7Cに示されるように)を有
するデバイス内の薬物透過性の第2の壁構造に関連して論じたように、第2の環状セグメ
ント内の特定の材料及び円弧角は、特定の薬物放出プロファイル、すなわち、水及び薬物
透過速度を達成するように選択され得る。例えば、特定の実施形態において、第2の材料
を含む第2の環状セグメントの一部は、中心部分の管状壁構造の断面積の約25%未満を
占める。一実施形態において、第1の材料を含む第2の環状セグメントの一部は、第1の
弓形部分を形成し、第2の材料を含む第2の環状セグメントの一部は、管状壁構造の外周
の約15度~約120度の円弧角を有する第2の弓形部分を形成する。第1及び第2の弓
形部分は、一体的に接続され、一緒になって第2の環状セグメントのアニュラスを画定す
る。一実施形態において、第2の材料を含む第2の環状セグメントの一部は、約30度~
約60度の円弧角を有する。
【0037】
一旦薬物が薬物貯蔵ルーメン804内に入れられると、任意の好適な末端プラグまたは
クロージャまたは熱形成シールが、弾性筐体802の第1及び第2の端部第2の端部80
6、808を封止/閉鎖するために使用され得る。これらの末端プラグ/クロージャは、
弾性筐体の一部を形成する第2の材料が薬物放出の唯一の経路であることを確実にする。
【0038】
特定の実施形態において、図8A~8Dに示されるように、管状壁構造は、第2の環状
セグメント814の対向する第2の端部822と一体的に形成及び接続された第3の環状
セグメント832をさらに含む。一実施形態において、第2及び第3の環状セグメント8
14、832は、押出プロセスにおいて一緒に形成される。一実施形態において、第3の
環状セグメント832は、第1の材料816で全体的に形成される。
【0039】
図9A~9Bは、図8A~8Dに示される薬物送達デバイス800の変形例を示してお
り、図9A~9Bは、デバイス900の部分的な縦断平面図及び断面図のみを示している
。薬物送達デバイス900は、管状壁構造で形成される細長い弾性筐体902を含む。管
状壁構造は、第1の環状セグメント912、第2の環状セグメント914、及び第3の環
状セグメント932を含む。第1の環状セグメントは、第1の材料916で形成され、第
2の環状セグメント914は、第1の材料916及び第2の材料924で形成され、第3
の環状セグメント932は、第1の材料916形成される。
【0040】
この実施形態において、第2の環状セグメント914は、管状壁構造910の外側表面
928と内側表面930との間に延在する中心部分926を含む。中心部分926は、第
2の材料924で全体的に形成される。第2の環状セグメント914は、第1及び第3の
環状セグメント912、932の各々につながる遷移領域を含むように示される。このよ
うに、第2の環状セグメント914内の全ての第2の材料924が管状壁構造の内側及び
外側表面928、930から延在するわけではない。912の端部である918と、91
4の端部である920とによって形成される接合部は、角度を成すかまたは直線的であり
得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、管状壁構造は、第2の材料、または薬物に対して透過性
である別の材料を含む1つ以上の追加の環状セグメントを含む。例えば、一実施形態にお
いて、管状壁構造は、第2の環状セグメントの対向する第2の端部と一体的に形成及び接
続された追加の環状セグメントを備える。管状壁構造が第2の環状セグメントの対向する
第2の端部と接続された第3の環状セグメントを含む一実施形態において、管状壁構造は
、第3の環状セグメントの対向する自由端部と一体的に形成及び接続された追加の環状セ
グメントを備える。
【0042】
代替の実施形態において、第2の材料が存在しないことによって管状壁構造の1つ以上
の開口部が画定されるようにデバイスの第2の材料が省略される。押出プロセスに応じて
、そのような開口部は、実質的に丸、正方形、長方形、または切り込みであり得る。薬物
放出は、開口部を通る拡散によって起こり得るか、または十分に小さい場合、デバイスか
らの薬物放出は、浸透圧によって起こり得る。
【0043】
薬物送達デバイスの別の実施形態が、図10A~10Dに示される。薬物送達デバイス
1000は、第1の端部1006と第2の端部1008との間に延在する薬物貯蔵ルーメ
ン1004を有する細長い弾性筐体1002を含む。弾性筐体1002は、第1の環状セ
グメント1012及び第2の環状セグメント1014を含む管状壁構造1010で形成さ
れる。好ましい実施形態において、第1及び第2の環状セグメント1012、1014は
、押出プロセスにおいて一緒に形成される。
【0044】
第1の環状セグメント1012は、薬物貯蔵ルーメン1004内に配置される薬物に対
して不透過性である第1の材料1016で全体的に形成される。第1の環状セグメント1
012は、第2の環状セグメント1014の第1の端部1020と一体的に形成及び接続
された第1の端部1018を有する。第2の環状セグメント1014は、薬物貯蔵ルーメ
ン1004内に配置される薬物に対して透過性である第2の材料1024で主にまたは排
他的に形成されるため、薬物は、第2の材料1024を通る拡散によってin vivo
で放出可能である。第2の環状セグメントが、中心部では第2の材料で排他的に形成され
、また、中心部の周囲の対向する端部の遷移領域内では第1及び第2の材料の段階的な組
み合わせで形成されるように、第2の環状セグメントは、遷移領域を含んでもよい。
【0045】
一旦薬物が薬物貯蔵ルーメン1004内に入れられると、任意の好適な末端プラグまた
はクロージャまたは熱形成シールが、弾性筐体1002の第1及び第2の端部1006、
1008を封止/閉鎖するために使用され得る。これらの末端プラグ/クロージャは、弾
性筐体の一部を形成する第2の材料が薬物放出の唯一の経路であることを確実にする。
【0046】
特定の実施形態において、図10A~10Dに示されるように、管状壁構造1010は
、第2の環状セグメント1014の対向する第2の端部1022と一体的に形成及び接続
された第3の環状セグメント1032をさらに含む。一実施形態において、第2及び第3
の環状セグメント1014、1032は、押出プロセスにおいて一緒に形成される。一実
施形態において、第3の環状セグメント1032は、第1の材料1016で全体的に形成
される。
【0047】
上記に示した実施形態の変形例において、薬物不透過性壁構造(例えば、第1の環状セ
グメント)、薬物透過性壁構造(例えば、第2の環状セグメント)、または薬物貯蔵ルー
メンを閉鎖する少なくとも1つの末端プラグに、開口部または切り込みが設けられる。そ
のような実施形態において、in vivoでの薬物放出は、(壁を越えた)拡散及び浸
透の両方によって起こる。薬物が比較的低い溶解度を有する場合、孔または切り込みを通
る浸透性の放出の貢献度は高くないかもしれない。しかしながら、孔または切り込みは、
押出された筐体の好ましくない膨張を防ぐことができる圧力逃し弁として機能することが
できる。
【0048】
実施形態において、第2の環状セグメントの長さ(L)は、弾性筐体の全長(L)よ
りも短い。これは、従来のデバイスによって提供される薬物放出速度を有益に維持するか
、またはデバイスの長さを増加することなく第2の材料の円弧角を増加させることによっ
て薬物放出速度を低下させる。実際に、特定の実施形態において、依然として低いまたは
低下した薬物放出速度を有しながら、デバイスの全長を短縮することができる
【0049】
一実施形態において、第2の環状セグメントの長さは、弾性本体の長さの約5%~約5
0%である。別の実施形態において、第2の環状セグメントの長さは、弾性本体の長さの
約10%~約30%である。一実施形態において、弾性本体に対する第2の環状セグメン
トの長さの比は、約0.1未満である。別の実施形態において、弾性本体に対する第2の
環状セグメントの長さの比は、約0.4未満である。本明細書において使用される場合、
長さに関する「約」という表現は、記載される値±10パーセントの長さを指す。一実施
形態において、第2の環状セグメントの長さは、約1cm~約8cmである。
【0050】
別途記載のない限り、本明細書において使用される場合、特定の要素の長さは、そのよ
うな要素がその対向する端部間に延在する縦方向の距離である。例えば、一実施形態にお
いて、各環状セグメントの長さは、その第1の端部と第2の端部との間の縦方向の距離で
ある。例えば、一実施形態において、弾性本体の長さは、その対抗する第1の端部と第2
の端部との間の長さである。
【0051】
上記実施形態において、第1の材料もしくは第1の壁構造、第2の材料もしくは第1の
壁構造、または両方が、水透過性材料で形成される。好ましい実施形態において、薬物は
固体形態(例えば、単数または複数の錠剤)であり、薬物貯蔵ルーメン内にある間に薬物
のin vivoでの可溶化を可能にするように、管状本体の少なくとも一部が水透過性
である。実施形態において、第1の材料または第1の壁構造は、水透過性部分のみであっ
てもよい。他の実施形態において、第1及び第2の両方の材料/壁構造が、水透過性であ
ってもよい。
【0052】
本発明のデバイスの壁構造及び/または環状セグメントの材料(複数可)は、様々な好
適な材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可
塑性シリコーンポリエーテルポリウレタン、脂肪族熱可塑性シリコーンポリエーテルポリ
ウレタン、セグメント化ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン
、熱可塑性ポリカーボネートポリウレタン、Bionate(登録商標)PCU、Bio
Span(登録商標)SPU、CarboSil(登録商標)TSPCU、Elasth
ane(商標)TPU、PurSil(登録商標)TSPU(DSM)、脂肪族及び芳香
族を含む他の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタ
ン、例えば、Carbothane(商標)TPU、Tecoflex(商標)TPU、
Tecothane(商標)TPU、Tecothane(商標)Soft TPU、P
ellethane(登録商標)TPU、及びTecophilic(商標)TPU、な
らびにそれらの組み合わせまたはブレンドから選択され得る。
【0053】
第2の材料もしくは壁構造、または薬物貯蔵部に収容される薬物に対して透過性である
他の材料は、親水性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び
親水性ポリアミドであってもよい。一実施形態において、薬物透過性壁構造は、Teco
philic(商標)TPU、HydroThane(商標)TPU(AdvanSou
rce Biomaterials Corp.)、Quadraphilic(商標)
TPU(Biomerics,LLC)(ALCグレードは脂肪族ポリカーボネート系、
またALEグレードは脂肪族ポリエーテル系の親水性ポリウレタンである)、Hydro
Med(商標)(AdvanSource Biomaterials Corp.)、
またはDryflex(登録商標)(HEXPOLTPE)である。薬物透過性部分(複
数可)または壁構造(複数可)を形成し得る別の親水性ポリマーは、ポリエーテルブロッ
クアミドPebax(登録商標)MV 1074 SA 01 MED(Arkema)
であり、これは可撓性及び親水性ポリマー及び剛性ポリアミドから作製される熱可塑性エ
ラストマーである。
【0054】
特定の実施形態において、第1の材料及び/もしくは第2の材料または第1の壁構造及び/もしくは第2の壁構造は、少なくとも1つの熱可塑性材料を含む。特定の実施形態において、第1の材料もしくは第1の壁構造、第2の材料もしくは第2の壁構造、または両方が、熱可塑性ポリウレタン等のポリウレタン組成物を含む。特定の実施形態において、第1の壁構造/材料は、第1のポリウレタン組成物を含み、第2の壁構造/材料は、第1のポリウレタン組成物とは異なる第2のポリウレタン組成物を含む。
【0055】
一実施形態において、第1の材料または第1の壁構造は、Tecoflex(商標)(
例えば、EG-80A)、Tecothane(商標)Soft(例えば、AR-62A
)、Carbothane(商標)TPU(例えば、AC-4075A及びPC-357
5A)、またはそれらの組み合わせもしくはブレンドから形成され、第2の材料または第
2の壁構造は、Tecophilic(商標)TPU(例えば、HP-60D-20、H
P-60D-35、HP-60D-60、及びHP-93A-100)、別の親水性TP
U、またはそれらの組み合わせもしくはブレンドから形成される。
【0056】
一実施形態において、円筒管の内径は、約1.0mm~約2.5mmであってもよい。
一実施形態において、円筒管の外径は、約2.0mm~約4.1mmである。一実施形態
において、第1の壁構造、第2の壁構造、または両方の厚さは、約0.2mm~約1.0
mmである。特定の実施形態において、第2の壁構造の厚さは、第1の壁構造の厚さとは
異なる。
【0057】
したがって、薬物透過性の管を形成するために同種の材料(例えば、透過性及び不透過
性熱可塑性材料のブレンド)を用いる薬物送達システムと比較して、二重壁構造を用いる
壁(例えば、薬物透過性ストリップの実施形態)の機械特性は、有利には管の薬物放出(
例えば、拡散)特性から切り離すことができる。例えば、単一材料の管では、管の材料を
変更することは、デバイスの機械特性及び拡散特性の両方に本質的に影響を及ぼす。さら
に、ブレンドポリマーの薬物放出特性は、容易に予測可能ではない場合がある。加えて、
2つの熱可塑性物質を混合する場合、真に均質なブレンドを得ることは困難であることが
多い。よって、そのような管状薬物送達システムを用いて薬物放出速度を調整するために
は実験が必要である。
【0058】
膀胱内で使用するには、患者への不快感及び刺激を回避または緩和するために、排尿筋の収縮の間にデバイスが柔軟であること(すなわち、容易に屈曲される、柔らかい感触)が重要である。したがって、第1及び第2の構成材料のデュロメータが重要であり、膀胱内でデバイスを適切に柔軟に維持しながら、所定のサイズのデバイス筐体を構築する際に、高デュロメータ材料の割合が制限される場合がある。例えば、Tecophilic(商標)熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol Corp.)は、70Aを越える、例えば、80A~65Dのショア硬度を有し得る一方で、他の薬物不透過性熱可塑性ポリウレタンは、Tecophilic(商標)よりも低いかまたは高いショア硬度、例えば、90A未満を有し得る。したがって、所望の管の機械特性を達成するためには、水で膨潤する親水性の薬物透過性の第2の材料でデバイス全体を作製するよりも、2種の異なるポリマー材料の組み合わせを用いることが有利であり得る。
【0059】
一実施形態において、第1の材料または第1の壁構造は、約50A~約70Aのショア
デュロメータ値を有する。一実施形態において、第1の材料または第1の壁構造は、90
A未満のショアデュロメータ値を有する。特定の実施形態において、第2の材料または第
2の壁構造は、約70A~約65Dのショアデュロメータ値を有する。特定の材料、なら
びにその厚さ及び壁面積、例えば、円弧角は、特定の薬物放出プロファイル、すなわち、
水及び薬物透過速度を達成するように選択され得る。
【0060】
一実施形態において、第1及び第2の材料/壁構造は、各々、熱可塑性ポリウレタンを
含み、管状壁構造は、膀胱内にデバイスを保持するのに好適な保持形状から、ルーメンを
通した膀胱内への挿入に好適な比較的直線型の形状まで弾性変形可能であり、管状壁構造
は、保持形状を有するように熱成形される。
【0061】
薬物不透過性部分が、管の断面積の大部分を占め、かつ水に対して著しく透過性であり
(例えば、Tecoflex EG-80A)、管が開口部を有する実施形態において、
貯蔵部の内容物(例えば、API及び賦形剤)が管の壁にわたって浸透圧勾配を形成する
ことができる限り、システムは、拡散及び浸透の両方によって薬物を放出するように操作
され得る。したがって、浸透性開口部の存在は、浸透圧によって起こる可能性がある貯蔵
部の膨張を低減するのに役立ち得る。
【0062】
好ましい実施形態において、本明細書に記載のデバイスは、治療有効量の薬物を放出す
るように構成され、薬物送達デバイスからの薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわ
たって0次である。一実施形態において、薬物送達デバイスからの薬物の放出速度は、少
なくとも7日間にわたって本質的に0次である。実施形態において、デバイスは、3日~
90日の期間にわたって、例えば、7日~30日、または7日~14日にわたって、治療
有効量の薬物を放出するように構成される。望ましくは、薬物送達デバイスからの薬物の
放出速度は、少なくとも7日間にわたって、例えば、7~14日間、またはそれ以上にわ
たって0次である。特定の実施形態において、デバイスは、例えば、内側ワッシャの隙間
に起因して、遅延時間後に薬物の放出を開始するように構成される。特定の実施形態にお
いて、遅延時間は、少なくとも約30分、約12時間~約24時間、または最長約2日で
あり得る。
【0063】
好ましい実施形態において、薬物は、ゲムシタビン塩酸塩及びトロスピウム塩化物であ
る。一実施形態において、少なくとも25mg/日のゲムシタビンが7日間にわたって放
出される。別の実施形態において、少なくとも1mg/日のトロスピウム塩化物が7日~
3ヶ月にわたって放出される。他の実施形態において、本明細書においてより詳細に論じ
られるように、本明細書に記載のデバイスを用いて他の薬物が送達されてもよい。
【0064】
薬物送達デバイスの他の態様
【0065】
本明細書に開示されるデバイス及び方法は、米国特許8,182,464号及び米国特
許8,343,516号、ならびに米国特許出願公開第2009/0149833号(M
IT12988);米国特許出願公開第2010/0331770号(TB101);米
国特許出願公開第2010/0060309号(TB108);米国特許出願公開第20
11/0202036(TB107)号;米国特許出願公開第2011/0152839
号(TB112);2011年8月5日に出願されたPCT/US11/46843(T
B113);2011年10月6日に出願された米国出願第13/267,560号(T
B116);及び2011年10月6日に出願された米国出願第13/267,469号
(TB117)に記載されるものに基づいており、これらの各々は、参照により本明細書
に組み込まれる。
【0066】
特定の実施形態において、デバイスは、膀胱内への挿入及び患者内における保持のため
に構成される。例えば、デバイスは、ルーメンを通した患者の体腔内への挿入に好適な比
較的直線型の形状と、図1Aに示されるような、デバイスを体腔内に保持するのに好適な
保持形状との間で弾性変形可能である。例えば、膀胱内に配置した後の保持形状において
、デバイスは、排尿の力または他の力による排出に抵抗し得る。デバイスは、内腔または
体腔内に保持されるように設計されるため、それらは、膀胱に関するもの等の従来の治療
の欠陥のうちのいくつかを克服することが可能である。本明細書に記載のデバイスは、手
術または頻繁な介入なしに、一旦挿入すれば、所望の期間にわたって薬物を放出すること
ができる。その結果、デバイスは、感染及び副作用の機会を低減し得るか、膀胱に局所的
もしくは局部的に送達される薬物の量を増加させ得るか、または治療プロセスの間の患者
の生活の質を改善し得る。薬物放出後、デバイスは、例えば、膀胱鏡及び鉗子によって除
去され得るか、回収手順を回避するために、少なくとも一部、生体分解性であり得る。
【0067】
デバイスには、1つ以上の固体薬物単位、例えば、錠剤、カプセル、またはペレットの
形態の少なくとも1つの薬物が入れられてもよい。1つ以上の固体形態の薬物を患者に提
供することが有利であることが多い。固体薬物は、デバイスの全体積に対して比較的大き
な薬物搭載量を提供することができ、輸送中、保管中、使用前、または薬物放出前の薬物
の安定性を潜在的に強化し得る。しかしながら、固体薬物は、薬物透過性構成要素を通っ
て、患者の周辺組織内に治療有効量で拡散するためには、in vivoで可溶化可能で
あるべきである。
【0068】
薬物貯蔵ルーメンは、1個または数個の薬物錠剤または他の固体薬物単位を維持し得る
。一実施形態において、デバイスは、約10~100個の円筒形薬物錠剤、例えば、ミニ
錠剤を、多数の個別の薬物貯蔵ルーメンの間に維持する。特定の実施形態において、ミニ
錠剤は、各々、約1.0~約3.3mm、例えば、約1.5~約3.1mmの直径、及び
約1.5~約4.7mm、例えば、約2.0~約4.5mmの長さを有し得る。
【0069】
デバイスは、膀胱鏡またはカテーテルを使用して患者内に挿入され得る。典型的には、
ヒト成人用の膀胱鏡は、約5mmの外径と、約2.4mm~約2.6mmの内径を有する
作業チャネルとを有する。実施形態において、膀胱鏡は、より大きな内径、例えば、4m
m以上の内径の作業チャネルを有してもよい。したがって、デバイスは、比較的小さいサ
イズになり得る。例えば、デバイスが比較的直線型の形状に弾性変形される場合、成人患
者用のデバイスは、約2.6mm未満、例えば、約2.0mm~約2.4mmの全外径を
有してもよい。小児患者の場合、デバイスの寸法は、例えば、成人患者と小児患者との間
の解剖学的サイズの差及び/または薬物投与量の差に基づいて比例的により小さいことが
予想される。挿入を可能にすることに加えて、比較的小さいデバイスのサイズはまた、患
者の不快感及び膀胱への外傷を軽減することもできる。
【0070】
一実施形態において、デバイスの全体的な構成は、ほとんどの患者に対してin vi
voでの耐容性を促進する。具体的な実施形態において、デバイスは、参照により本明細
書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0152839号(TB112)に記載
される膀胱の特徴及び設計上の考慮事項に基づいて耐容性のために構成される。
【0071】
保持形状のデバイスによって占有される三次元空間内では、任意の方向におけるデバイ
スの最大寸法は、好ましくは、充満時の膀胱の近似直径である10cmよりも小さい。い
くつかの実施形態において、任意の方向におけるデバイスの最大寸法は、約9cm未満、
例えば、約8cm、7cm、6cm、5cm、4.5cm、4cm、3.5cm、3cm
、2.5、またはそれ以下であってもよい。具体的な実施形態において、任意の方向にお
けるデバイスの最大寸法は、約7cm未満、例えば、約6cm、5cm、4.5cm、4
cm、3.5cm、3cm、2.5cm、またはそれ以下である。好ましい実施形態にお
いて、任意の方向におけるデバイスの最大寸法は、約6cm未満、例えば、約5cm、4
.5cm、4cm、3.5cm、3cm、2.5cm、またはそれ以下である。より具体
的には、デバイスによって占有される三次元空間は、3つの垂直な方向によって画定され
る。これらの方向のうちの1つに沿って、デバイスはその最大寸法を有し、他の2つの方
向に沿って、デバイスはより小さな寸法を有し得る。例えば、他の2つの方向におけるよ
り小さい寸法は、約4cm未満、例えば、約3.5cm、3cm、2.5cm、またはそ
れ以下であってもよい。好ましい実施形態において、デバイスは、これらの方向のうちの
少なくとも1つにおいて、3cm未満の寸法を有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、デバイスは、3つの方向のうちの少なくとも2つにおい
て、またある場合には、3つの方向の各々において、異なる寸法を有してもよく、そのた
め、デバイスは不均一な形状である。その不均一な形状のために、デバイスは、同様に不
均一な形状である空の膀胱において低減圧縮の配向を達成し得る。換言すると、空の膀胱
におけるデバイスの特定の配向により、デバイスは、膀胱壁に対してより低い接触圧を加
えることが可能となり、患者にとってのデバイスの耐容性をより高める。
【0073】
デバイスの全体的な形状により、デバイスが膀胱内でその方向を変更して、膀胱壁との
その係合または接触を低減することが可能となり得る。例えば、デバイスの全体的な外形
は湾曲していてもよく、デバイスの外表面または露出表面の全てまたは大部分が、実質的
に丸みを帯びていてもよい。デバイスはまた、実質的に鋭い縁部がなくてもよく、その外
表面は、膀胱壁との摩擦係合の低減が起こる材料から形成され得る。そのような構成は、
デバイスが膀胱壁により低い接触圧を印加するように、デバイスが空の膀胱内でその位置
を変更することを可能にする。換言すると、デバイスは、膀胱壁に対して滑動または転動
して、より低いエネルギー位置、すなわち、デバイスがより少ない圧縮を受ける位置をと
り得る。
【0074】
一実施形態において、たとえデバイスが三次元空間を占有していても、デバイスは略平
面形状である。そのようなデバイスは、デバイスがその周りで実質的に対称となる短軸と
、短軸に対して実質的に垂直である長軸とを画定し得る。デバイスは、長軸の方向に、約
6cmを越えない、また具体的な実施形態において、5cm未満、例えば、約4.5cm
、約4cm、約3.5cm、約3cm、またはそれ以下である最大寸法を有してもよい。
デバイスは、短軸の方向に、約4.5cmを越えない、また具体的な実施形態において、
4cm未満、例えば、約3.5cm、約3cm、またはそれ以下である最大寸法を有して
もよい。デバイスは、長軸断面及び短軸断面の両方において、実質的にその全外周の周り
で湾曲している。換言すると、デバイスの全体的な外形は湾曲しており、デバイスの断面
形状は丸みを帯びている。したがって、デバイスは、実質的に縁部がないが、例外として
2つの平坦な端部上に縁部があるが、それらはデバイスが平面内に位置するときに、デバ
イスの内部内で完全に保護される。これらの特徴は、デバイスが空の膀胱内にあるときに
、その方向を低減圧縮の位置になるように変更することを可能にする。
【0075】
デバイスはまた、膀胱内での可動性を許容するために、保持形状では十分小さくなり得
る。具体的には、デバイスは、配置されるとき、例えば、ほとんどの膀胱充満条件下で膀
胱全体にわたって自由にまたは妨げられずに移動するように、膀胱内で移動するのに十分
小さくなり得、デバイスに関する患者の耐容性を促進する。デバイスの自由な動きは、膀
胱全体にわたる均一な薬物送達も促進する。
【0076】
デバイスはまた、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20
12/0089121号(TB116)に記載されるように、筐体構成要素に低密度構成
材料を使用して、かつ/または筐体にガスまたはガス発生材料を組み入れることにより、
浮力を促進するように構成されてもよい。一般に、乾燥した状態及び薬物を入れた状態の
デバイスは、約0.5g/mL~約1.5g/mL、例えば、約0.7g/mL~約1.
3g/mLの範囲内の密度を有し得る。いくつかの実施形態において、乾燥した及び薬物
を入れた状態のデバイスは、1g/mL未満の密度を有する。
【0077】
移植可能な薬物送達デバイスは、製剤の放出後にデバイスの外植または回収が必要ない
ように、完全にまたは部分的に生体分解性であるように作製することができる。いくつか
の実施形態において、部分的な浸食が起きたときに、デバイスが膀胱から排出されるのに
十分小さい非分解性の部品に崩壊するように、デバイスは、部分的に生体分解性である。
本明細書において使用される場合、「生体分解性」という用語は、デバイスまたはその一
部が、溶解、酵素加水分解、浸食、吸収、またはそれらの組み合わせによってin-vi
voで分解することを意味する。一実施形態において、この分解は、意図されるデバイス
からの薬物放出動態を妨げない時間に起こる。例えば、デバイスの実質的な浸食は、製剤
が実質的にまたは完全に放出されるまでは起こり得ない。別の実施形態において、デバイ
スは浸食されやすく、製剤の放出は、浸食されやすいデバイス本体の分解特性または浸食
特性によって少なくともある程度は制御される。本明細書に記載のデバイスは、参照によ
り本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0089122号(TB117
)に記載されるものの特徴と一致するように設計され得る。
【0078】
薬物送達デバイスは、患者内に挿入される前に滅菌されてもよい。一実施形態において
、デバイスは、γ線照射またはエチレンオキシド滅菌等の好適なプロセスを用いて滅菌さ
れるが、他の滅菌プロセスが用いられてもよい。
【0079】
体腔内におけるデバイスの保持
【0080】
本明細書に記載のデバイスは、ルーメンを通した患者の膀胱(または外の体腔)内への
挿入に好適な比較的直線型の形状または非コイル形状と、膀胱(または他の体腔)内にデ
バイスを保持するのに好適な保持形状またはコイル形状との間で弾性変形可能である。あ
る実施形態において、薬物送達デバイスは、自然に保持形状となることができ、また手作
業で、または外部装置の補助により、体内への挿入のための比較的直線型の形状に変形さ
れ得る。一旦配置されたら、デバイスは、体内での保持のために、自発的または自然に初
期の保持形状に復元し得る。
【0081】
本開示の目的のために、「保持形状」という用語は、一般に、意図される移植位置にデ
バイスを保持するのに好適な任意の形状を指し、膀胱内にデバイスを保持するのに好適な
図1Aに示されるようなコイル形状または「プレッツェル」形状を含むが、これに限定
されない。同様に、「比較的直線型の形状」という用語は、一般に、体内への薬物送達デ
バイスの配置に好適な任意の形状を指し、尿道等の体の内腔内に位置付けられたカテーテ
ル、膀胱鏡、または他の配置機器の作業チャネルを通してデバイスを配置するのに好適な
図7A、8A、10Aに示されるような直線型または細長い形状を含むが、これに限定
されない。
【0082】
いくつかの実施形態において、図7A~7C、8A~8D、及び10A~10Dに示す
ように、デバイスは、保持フレームルーメン734、834、1034と、保持フレーム
ルーメン内に位置付けられた保持フレーム(図示せず)とをさらに含む。例えば、保持フ
レームルーメン及び保持フレームは、米国特許出願公開第2010/0331770号(
TB101)、米国特許出願公開第2010/0060309号(TB108)、米国特
許出願公開第2011/0202036号(TB107)、及び米国特許出願公開第20
11/0152839号(TB112)に記載される通りであり得る。
【0083】
他の実施形態において、図1A~1B及び図2~6に示されるように、デバイスは、保
持フレームルーメンまたは保持フレームまたはワイヤを含まない。代わりに、筐体の材料
が、保持フレームまたはワイヤの非存在下で、直線型の形状と保持形状との間で弾性変形
可能であるように構成される。そのような実施形態において、デバイスの設計及び製造は
簡素化され、デバイスの全体的なサイズが最小化される(またはデバイスのサイズが一定
のままである場合、薬物搭載量が増加され得る)。有利には、保持フレームのない実施形
態において、管状筐体材料は、(i)薬物貯蔵ルーメンを形成する、(ii)薬物放出を
制御する、及び(iii)配置されたら膀胱内にデバイスを保持する機能を果たす。
【0084】
例えば、管状筐体は、保持形状を有するように設定された熱的形状であってもよい。し
たがって、筐体は、保持形状に熱形成されるのに好適である1つ以上の熱可塑性材料を含
んでもよい。特定の実施形態において、薬物送達デバイスは、少なくとも1つの熱可塑性
材料を含む壁構造によって囲まれた閉鎖された薬物貯蔵ルーメンを有する管状筐体を含み
、(i)壁構造の少なくとも一部は水透過性であり、壁構造の少なくとも一部は薬物透過
性であり、(ii)管状筐体は、膀胱内にデバイスを保持するのに好適な保持形状から、
ルーメンを通した膀胱内へのデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形状まで弾性変形可
能であり、(iii)管状壁は、保持形状を有するように熱成形される。
【0085】
壁構造が第1及び第2の壁構造または第1及び第2の環状セグメントを備える特定の実
施形態において、第1及び第2の壁構造/セグメントは、各々、熱可塑性ポリウレタンで
あり、管状筐体は、保持形状を有するように熱成形される。一実施形態において、管状壁
は、一旦デバイスが膀胱内に移植されたら、それが比較的直線型の形状となるのを妨げる
のに効果的なばね定数を有する。したがって、管状壁の特性は、デバイスを、圧力負荷に
応じて変形するが、一旦負荷が取り除かれると自発的にその初期の形状に復元するばねと
して機能させ得る。
【0086】
特定の実施形態において、デバイスは、自然に保持形状となることができ、比較的直線
型の形状に変形され得、体内への挿入後は自然に保持形状に復元することができる。保持
形状の管状壁構造は、体腔内への保持のための形状であってもよく、比較的直線型の形状
の管状壁構造は、カテーテルまたは膀胱鏡等の配置機器の作業チャネルを通して体内に挿
入するための形状であってもよい。そのような結果を得るために、管状壁構造は、一旦デ
バイスが移植されたらそれが比較的薄くなるのを妨げるように選択された、弾性限界、弾
性率及び/またはばね定数を有することができる。そのような構成は、予期される力によ
りデバイスが体から偶発的に押し出されるのを制限または防止し得る。例えば、デバイス
は、排尿または排尿筋の収縮の間、膀胱内に保持され得る。
【0087】
好ましい実施形態において、デバイスは、患者の患者の尿道を通って延在するカテーテ
ルまたは膀胱鏡を通した挿入に好適な比較的直線型の形状と、カテーテルまたは膀胱鏡の
端部からデバイスを放出した後に、膀胱内にデバイスを保持するのに(すなわち、排尿中
に膀胱からデバイスが押し出されるのを防止するのに)好適な湾曲形状またはコイル形状
との間で弾性変形可能である。
【0088】
図1Aに示されるように、保持形状は、コイル形状または「プレッツェル」形状を含み
得る。プレッツェル形状は、本質的に、それぞれが独自のより小さい弓状部を有し、また
共通したより大きな弓状部を共有する、少なくとも2つの部分円構造を備える。プレッツ
ェル形状が最初に圧縮されると、より大きな弓状部が圧縮力の大部分を吸収して変形し始
めるが、圧縮を継続すると、より小さな弓状部が重なり、その後、3つ全ての弓状部が圧
縮力に抵抗する。2つの部分円が重なると、デバイスの圧縮に対する抵抗は全体として増
加し、排尿中に膀胱が収縮する際にデバイスが潰れて空となるのを妨げる。
【0089】
保持形状の壁構造は、平面に限定される二次元構造、回転楕円体の内部を占有する構造
等の二次元構造、またはそれらのいくつかの組み合わせを有し得る。保持形状は、直線的
にまたは半径方向のいずれかに接続され、同じかまたは交互の方向に曲がり、重なってい
るかまたは重なっていない、1つ以上のループ、渦巻き、または部分円を含み得る。保持
形状は、二次元または三次元の構成である1つ以上の円または楕円を含んでもよく、該円
または楕円は、閉環または開環のいずれかであり得、同じかまたは異なるサイズを有し、
重なっているかまたは重なっておらず、1つ以上の接続点で連結される。保持形状はまた
、球面空間、比例配分回転楕円体形状を有する空間、または扁平回転楕円体形状を有する
空間等の、回転楕円体形状の空間の周りを占有するかまたは巻回するような形状の三次元
構造であり得る。保持形状の壁構造は、球面空間の周りを占有するかまたは巻回するよう
な形状であり得る。保持形状の壁構造は、一般に、異なる平面内に位置する2つの交差す
る円、内側に丸まった端部を有する異なる平面内に位置する2つの交差する円、異なる平
面内に位置する3つの交差する円、または球面螺旋の形状を取り得る。これらの例の各々
において、壁構造は、配置機器による配置のために直線形状に伸張され得る。壁構造は、
様々な他の様式で、球面空間、または他の回転楕円体形状の空間の周りをまたは該空間を
通って巻回し得る。代替構成の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願に
記載されている。
【0090】
有利には、薬物透過性部分及び薬物不透過性部分を有する熱形成された共押出管を用い
る薬物送達デバイスは、3つの機能的構成要素(薬物貯蔵部/筐体、薬物透過経路、保持
性特徴部)を単一の熱成形された共押出管構成要素に統合し、デバイスの設計、及び薬物
放出速度を制御する能力を簡素化する。本明細書に記載されるように、そのようなデバイ
スにおいて、薬物放出速度は、薬物透過性部分(例えば、ストリップ)の角度及び厚さを
制御することによって、管筐体材料を全体的に変更することなく、比較的容易に調整され
得る。
【0091】
熱成形された共押出管状筐体には、薬物錠剤が入れられてもよく、両端が、熱的にまた
は接着剤(Tecoflex 1-MP TPU Adhesive、Lubrizol
等)を用いて封止されてもよい。局所的な管断面変形または管のよじれが起こった場合、
錠剤を入れることが困難になる。したがって、管を熱成形する場合、管の寸法は、よじれ
を防止するように選択されるべきである。純粋な曲げ条件下において、弾性管の臨界曲げ
曲率半径(R)は、以下の式を用いて近似され得る:
【数1】
式中、vはポアソン比であり、rは平均半径(すなわち、(ID+OD)/4)であり
、wは管の壁厚である(Guarracino,F.2003.On the anal
ysis of cylindrical tubes under flexure:
theoretical formulations,experimental da
ta and finite element analyses.Thin Wall
Struct;41:127-147)。一例として、図6は、内径2.16mm及び
壁厚0.81mmの複数コイル型ポリウレタン管である。ポリウレタンのポアソン比vが
0.49の場合(H.J.Qia,M.C.Boyce,Stress-strain
behavior of thermoplastic polyurethanes,
2005 Mechanics of Materials;37(8):817-83
9)、予測される臨界半径は0.5cmである。したがって、ポリウレタン管を熱成形す
る場合、よじれを防止するために、曲率半径は管の長さ全体に沿って0.5cm超である
べきである。よって、一実施形態において、保持形状は、少なくとも0.5cmの曲率半
径を有する少なくとも1つのループを備える。
【0092】
製剤及び固体薬物錠剤
【0093】
薬物貯蔵ルーメンは、固体、半固体、液体、懸濁液、ゲル等を含む種々の形態の薬物を
収容し得る。好ましい実施形態において、図1A及び1Bに示されるように、製剤は、デ
バイス100の薬物貯蔵ルーメン106に入れられる固体薬物単位108に形成される。
各々の固体薬物単位は、(送達デバイスが、通常、移植前の組み立て、保管、及び取り扱
いの間に曝露されるであろう温度及び圧力条件で)選択的に付与された形状を実質的に保
持する、固体の個別の物体である。薬物単位は、錠剤、カプセル、ペレット、またはビー
ズの形態であってもよいが、他の構成も可能である。
【0094】
固体薬物単位は、安定したスケーラブルな製造プロセスを用いて形成され得る。特に、
薬物錠剤は、低侵襲性の様式で患者の膀胱または別の窪み、内腔、もしくは組織部位内に
配置され得る薬物送達デバイスの筐体に、錠剤を入れ、効率的に保管するためのサイズ及
び形状である。
【0095】
固体薬物単位は、直接粉末圧縮法もしくは打錠法、成形法、または医薬品分野において
既知の他のプロセスによって作製され得る。好適な薬物錠剤の形成方法は、参照により本
明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0330149(TB102)号に
記載されている。製剤はまた、加工可能な形態でデバイス筐体に入れられてもよく、その
中で硬化してもよい。例えば、製剤が融解して固化するように構成される実施形態におい
て、製剤を融解させ、融解形態でデバイス筐体に注入し、次いで固化させることができる
。製剤はまた、薬物筐体とともに押し出されてもよく、筐体内で硬化してもよく、その後
、薬物の露出表面積を有するセグメントを形成するように、筐体の長さに沿って離れた位
置で切断されてもよい。
【0096】
固体薬物単位は、製剤を含み、製剤は、薬物含量を含み、かつ賦形剤含量を含み得る。
好ましい実施形態において、薬物含量は、1種以上の薬物、または医薬品有効成分(AP
I)を含む一方で、賦形剤含量は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。製剤は
、体腔もしくは内腔への局所送達、または体腔もしくは内腔の周辺への局部送達に有用で
あるもの等の、本質的に任意の治療薬剤、予防薬剤または診断薬剤を含み得る。製剤は、
APIのみからなってもよいか、または1種以上の賦形剤が含まれてもよい。
【0097】
本明細書において使用される場合、本明細書に記載の任意の特定の薬物に関する「薬物
」という用語は、その代替の形態、例えば塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、及び水和
物を含む。「賦形剤」という用語は、当該技術分野で既知であり、本発明の薬物において
有用な賦形剤の代表的な例は、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、
希釈剤、被覆剤、または防腐剤等の成分、ならびに製造、安定性、分散性、湿潤性、及び
/または放出動態を促進するための他の非活性成分を含み得る。薬物は、他の形態/種類
の活性成分の中でも特に、小分子、巨大分子、生物製剤、または代謝産物であり得る。
【0098】
選択された(小さい)サイズの所与の薬物送達デバイス内に保管され、またそこから放
出され得る薬物の量を最大化するために、薬物単位は、好ましくは、高重量分率の薬物ま
たはAPIを含み、固体薬物単位の製造上ならびにデバイスの組立て及び使用上の考慮事
項のために必要とされる賦形剤の重量分率は、低減されるかまたは低い。本開示の目的の
ために、薬物またはAPIに関連する「重量分率」、「重量百分率」、及び「重量パーセ
ント」等の用語は、塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、または水和物形態等の用いられ
る形態の薬物またはAPIを指す。例えば、90重量%の塩形態の薬物を有する固体薬物
単位は、90重量%未満の有機塩基形態のその薬物を含み得る。
【0099】
一実施形態において、固体薬物単位は、50重量%超の薬物である。別の実施形態にお
いて、固体薬物単位の重量の75%以上が薬物であり、残りの重量は、固体薬物単位の作
製を容易にする滑沢剤及び結合剤等の賦形剤を含む。本開示の目的のために、薬物または
APIに関連する「高重量分率」という用語は、賦形剤が、固体薬物単位の25重量%未
満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、さらにより好ましくは
10重量%未満を構成することを意味する。ある場合において、薬物含量は、固体薬物単
位の重量の約75%以上を占める。より具体的には、薬物含量は、薬物錠剤の重量の約8
0%以上を占めてもよい。例えば、薬物含量は、固体薬物単位の重量の約85%~約99
.9%を占めてもよい。いくつかの実施形態において、賦形剤含量は、完全に省略されて
もよい。
【0100】
一実施形態において、デバイスが膀胱内に位置するときに固体薬物単位が可溶化されて
可溶化薬物を放出するように、薬物及び賦形剤が選択され、固体薬物単位は水溶性である
ように製剤化される。
【0101】
個々の固体薬物単位は、本明細書に記載のデバイス内に適合する任意の選択された形状
及び寸法を有し得る。一実施形態において、固体薬物単位は、筐体内の薬物貯蔵ルーメン
が、選択された数の固体薬物単位によって実質的に充填されるようなサイズ及び形状であ
る。各固体薬物単位は、特定の筐体の薬物貯蔵ルーメンの断面形状に実質的に対応する断
面形状を有してもよい。例えば、薬物単位は、実質的に円筒形の薬物貯蔵ルーメン内に位
置付けられるように実質的に円筒形の形状であり得る。一旦入れられると、固体薬物単位
は、いくつかの実施形態において、薬物貯蔵ルーメンを実質的に充填することができ、薬
物筐体部分を形成する。
【0102】
一実施形態において、固体薬物単位は、デバイスがその配置構成にあるときに一列に整
列するような形状である。例えば、各固体薬物単位は、筐体内の薬物貯蔵ルーメンの断面
形状に対応する断面形状を有してもよく、また各固体薬物単位は、隣接する固体薬物単位
の端面に対応する端面の形状を有してもよい。固体薬物単位間の間隙または裂け目は、配
置中等にデバイスの変形または移動に対応し得る一方で、個々の薬物単位にそれらの固体
形態を保持させる。したがって、各薬物単位が、隣接する薬物単位に対して移動され得る
ため、薬物送達デバイスは、固体薬物が入っているにもかかわらず、比較的可撓性または
変形可能であり得る。
【0103】
固体薬物単位が、薬物送達デバイスを介した体の内腔または空洞(例えば、膀胱)への
挿入または移植のために設計される実施形態において、薬物単位は、尿道等の体の天然の
内腔を通した挿入に好適なサイズ及び形状の「ミニ錠剤」であってもよい。本開示の目的
のたえに、「ミニ錠剤」という用語は、一般に、実質的に円筒形である端面及び側面を有
する、実質的に円筒形の形状の固体薬物単位を示す。ミニ錠剤は、約1.0~約3.2m
m、例えば、約1.5~約3.1mmの範囲の、端面に沿って延在する直径を有する。ミ
ニ錠剤は、約1.7mm~約4.8mm、例えば、約2.0mm~約4.5mmの範囲の
、側面に沿って延在する長さを有する。錠剤の摩損度は、約2%未満であり得る。固体薬
物単位ならびにそれを作製するシステム及び方法の実施形態が、参照により本明細書に組
み込まれる米国特許及び特許出願を参照して後にさらに記載される。
【0104】
一実施形態において、製剤は、固体形態である。別の実施形態において、製剤は、乳濁
液もしくは懸濁液、ゲル、またはペースト等の半固体形態である。例えば、製剤は、粘性
の高い乳濁液または懸濁液であってもよい。本明細書において使用される場合、固体形態
は、別途指示のない限り、半固体形態を含む。一実施形態において、製剤は、液体形態で
ある。
【0105】
薬物は、低溶解度薬物であってもよい。本明細書において使用される場合、「低溶解度
」という用語は、37℃で約0.01mg/mL~約10mg/mLの水溶解度を有する
薬物を指す。他の実施形態において、薬物は、高溶解度薬物である。本明細書において使
用される場合、「高溶解度」という用語は、37℃で約10mg/mL超の水溶解度を有
する薬物を指す。例えば、特定の製剤のおよその溶解度は以下の通りである:塩化トロス
ピウム:500mg/mL;リドカインHCl:680mg/mL;リドカイン塩基:8
mg/mL、ゲムシタビンHCl:80mg/mL;ゲムシタビン塩基:15mg/mL
;オキシブチニンHCl:50mg/mL;オキシブチニン塩基:0.012mg/mL
;andトルテロジン酒石酸塩:12mg/mL。
【0106】
一実施形態において、薬物送達デバイスは、膀胱癌及び前立腺癌等の尿路癌を治療する
ために使用される。使用され得る薬物は、抗増殖剤、細胞毒性剤、化学療法剤、またはそ
れらの組み合わせを含む。尿路癌の治療に好適となり得る薬物の代表例は、カルメットゲ
ラン桿菌(BCG)ワクチン、ドセタキセル、シスプラチン、ドキソルビシン、バルルビ
シン、ゲムシタビン、マイコバクテリア細胞壁-DNA複合体(MCC)、メトトレキサ
ート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、フル
オロウラシル、ロイプロリド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メ
ゲストロール、シプロテロン、フルタミド、選択的エストロゲン受容体調整薬(すなわち
、タモキシフェン等のSERM)、ボツリヌス毒素及びシクロホスファミドを含む。薬物
は、モノクローナル抗体、TNF阻害薬、アンチロイキン等を含んでもよい。薬物はまた
、イミキモドまたは別のTLR7作動薬を含むTLR作動薬等の免疫調節薬であってもよ
い。薬物はまた、とりわけ、線維芽細胞成長因子受容体-3(FGFR3)-選択的チロ
シンキナーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤、もし
くはマイトゲン活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)阻害剤、またはこれらの組み合わせ等
のキナーゼ阻害剤でもよい。他の例は、セレコキシブ、エロロチニブ(erolotin
ib)、ゲフィチニブ、パクリタキセル、ポリフェノンE、バルルビシン、ネオカルチノ
スタチン、アパジコン、ベリノスタット、インゲノールメブテート、ウロシジン(MCC
)、プロキシニウム(Proxinium)(VB4845)、BC819(BioCa
ncell Therapeutics)、キーホールリンペットヘモシアニン、LOR
2040(Lorus Therapeutics)、ウロカニン酸、OGX427(O
ncoGenex)及びSCH721015(Schering-Plough)を含む
。薬物処置は、癌組織を標的とする従来の放射線または外科的治療法と組み合わされても
よい。
【0107】
一実施形態において、本明細書に記載のデバイスには、麻酔剤、鎮痛剤、及びこれらの
組み合わせが入れられる。麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、またはこれらの組
み合わせであってもよい。アミノアミドまたはアミド型麻酔薬の代表的な例は、アルチカ
イン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、
リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、及びトリメカインを含む。ア
ミノエステルまたはエステル型麻酔薬の代表的な例は、アミロカイン、ベンゾカイン、ブ
タカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ヘキシルカ
イン、ラロカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、オルトカイン、ピペロカイン
、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、プロキシメタカイン、リソカイン、
及びテトラカインを含む。これらの麻酔薬は、一般に弱塩基で、水溶性になるように塩酸
塩等の塩として配合され得るが、麻酔薬もまた遊離塩基または水和物形態で使用され得る
。ロントカイン(lontocaine)等の他の麻酔薬もまた、使用され得る。薬物は
また、オキシブチニンまたはプロピベリン等の麻酔薬効果を呈する抗ムスカリン化合物で
もよい。薬物はまた、単独または局所麻酔剤と組み合わせて、本明細書に記載される他の
薬物を含んでもよい。
【0108】
ある特定の実施形態において、鎮痛剤はオピオイドを含む。オピオイド作用薬の代表的
な例は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジ
ルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデ
イン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン
(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール
、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノ
ン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エト
ニタゼンフェンタニル(etonitazene fentanyl)、ヘロイン、ヒド
ロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボ
ルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノー
ル、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロヒネ(myrophine)、ナ
ルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロル
フィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、阿片、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレ
タム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジ
ン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピ
ラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、これらの薬学的に
許容される塩、及びこれらの混合物を含む。μ、κ、δ、及び痛覚オピオイド受容体作用
薬等の他のオピオイド薬物が、企図される。
【0109】
他の好適な鎮痛剤の代表的な例は、サリチルアルコール、塩酸フェナゾピリジン、アセ
トアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサール、イブプロフェン、インドプロ
フェン、インドメタシン、及びナプロキセンのような作用剤を含む。
【0110】
ある特定の実施形態において、薬物送達デバイスは、間質性膀胱炎(IC)、放射線膀
胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、術後痛、及び腎臓結石等の炎症状態を治療する
ために使用される。これらの状態に対する特定の薬物の限定されない例は、リドカイン、
グリコサミノグリカン(例えば、硫酸コンドロイチン、スロデキシド)、ペントサンポリ
硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイ
トマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、ケトロラク、シクロスポリンまたはそれらの
組み合わせを含む。腎臓結石に対しては、薬物(複数種を含む)は、疼痛を治療するよう
に、及び/または腎結石の溶解を促進するように選択され得る。
【0111】
ICの治療に使用され得る薬物の他の限定されない例は、神経成長因子モノクローナル
抗体(MAB)拮抗薬、例えばタネズマブ、及びカルシウムチャネルα-2-δ調整薬、
例えばPD-299685またはガベペンチン(gabepentin)を含む。外因的
に膀胱内に送達されたNGFが、膀胱の過活動を引き起こし、解離した膀胱求心性神経の
興奮性を増加させることから(Nature Rev Neurosci 2008;9
:453-66)、エビデンスは、膀胱が神経成長因子(NGF)を局所的に発現するこ
とを示唆している。したがって、記載される送達デバイスを使用して、MAB、またはN
GFに対する他の薬剤を局所的に送達すると、治療効果に必要な総用量が大幅に低減され
、有利となり得る。エビデンスはまた、電位感受性カルシウムチャネルのα-2-δユニ
ットと、例えば、ガバペンチンとの結合が、線維筋痛症等の神経因性疼痛の疾患の治療に
有効であり得ること、及びICと神経因性疼痛の疾患との間に共通した機構が存在し得る
ことも示唆している(Tech Urol.2001 Mar,7(1):47-49を
参照のこと)。したがって、記載される送達デバイスを使用してPD-299685また
はガベペンチン(gabepentin)等のカルシウムチャネルα-2-δ調整薬を局
所的に送達すると、ICの治療における用量関連全身毒性が最小限に抑えられ、有利とな
り得る。
【0112】
他の膀胱内癌治療は、アパジコン、アドリアマイシン、AD-32、ドキソルビシン、
ドキセタキセル(doxetaxel)、エピルビシン、ゲムシタビン、HTI-286
(ヘミアスタリン類似体)、イダルビシン、γ-リノレン酸、ミトザントロン、メグルミ
ン及びチオテパ等の小分子、EGF-デキストラン、HPC-ドキソルビシン、IL-1
2、IFN-a2b、IFN-γ、α-ラクトアルブミン、p53アデノベクター、TN
Fα等の大分子、エピルビシン+BCG、IFN+ファルマルビシン(farmarub
icin)、ドキソルビシン+5-FU(経口)、BCG+IFN、及び百日咳毒素+膀
胱切除術等の組み合わせ、マクロファージ及びT細胞等の活性化細胞、IL-2及びドキ
ソルビシン等の膀胱内の注入、BCG+アンチフィリノリティクス(antifirin
olytics)(パラメチル安息香酸またはアミノカプロン酸)及びドキソルビシン+
ベラピミル(verapimil)等の化学療法増感剤、ヘキシルアミノレブリン酸、5
-アミノレブリン酸、ヨードデキシウリジン(Iododexyuridine)、HM
FG1Mab+Tc99m等の診断剤/画像化剤、ならびにホルマリン等の局所毒性(出
血性膀胱炎)の管理用薬剤を含む。
【0113】
薬物送達デバイスは、例えば、切迫尿失禁及び神経因性失禁を含む、尿失禁、失禁、ま
たは尿意切迫感ならびに三角炎を治療するために使用され得る。使用され得る薬物は、抗
コリン薬、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、β-2作用薬、αアドレナリン、抗痙攣薬、ノルエ
ピネフリン吸収阻害剤、セロトニン吸収阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチ
ャネル開口薬、及び筋弛緩剤を含む。失禁の処置に好適な薬物の代表的な例は、オキシブ
チニン、S-オキシブチチン(S-oxybutytin)、エメプロニウム、ベラパミ
ル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシ
ベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスシアミ
ン(hyoscyamin)、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、臭化クリジ
ニウム、ジサイクロミンHCl、グリコピロレートアミノアルコールエステル、臭化イプ
ラトロピウム、臭化メペンゾラート、臭化メトスコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、
臭化イオトロピウム(iotropium bromide)、フェソテロジンフマル酸
塩、YM-46303(Yamanouchi Co.,Japan)、ランペリゾン(
Nippon Kayaku Co.,Japan)、イナペリゾン、NS-21(Ni
ppon Shinyaku Orion、Formenti、Japan/Italy
)、NC-1800(Nippon Chemiphar Co.,Japan)、ZD
-6169(Zeneca Co.,United Kingdom)、及びヨウ化スチ
ロニウム(stilonium iodide)を含む。
【0114】
さらに別の実施形態において、本発明の膀胱内薬物送達デバイスは、膀胱、前立腺、腎
臓、及び尿道に関与する感染症を治療するために使用される。抗生物質、抗菌剤、抗真菌
剤、抗原虫剤、防腐剤、抗ウイルス剤及び他の抗感染剤が、そのような感染症の処置のた
めに投与され得る。感染症の処置用薬物の代表的な例は、マイトマイシン、シプロフロキ
サシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アン
ピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、スルホンアミドトリメトプリ
ムスルファメトキサゾール、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、
テトラサイクリン、カナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、及びアミノグリコシ
ドを含む。
【0115】
他の実施形態において、薬物送達デバイスは、膀胱または子宮等の泌尿生殖器部位の線
維症の治療に使用される。線維症の処置用薬剤の代表的な例は、ペントクスフィリン(p
entoxphylline)(キサンチン類似体)、抗TNF、抗TGF剤、GnRH
類似体、外因性プロゲスチン、抗プロゲスチン、選択的エストロゲン受容体調節薬、ダナ
ゾール、及びNSAIDを含む。
【0116】
移植可能な薬物送達デバイスはまた、痙性または弛緩性の神経因性膀胱を治療するため
にも使用され得る。神経因性膀胱の処置用の薬物の代表的な例は、リドカイン、ブピバカ
イン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、及びロピバカイン等の鎮痛薬または
麻酔薬、抗コリン薬、オキシブチニンまたはプロピベリン等の抗ムスカリン、カプサイシ
ンまたはレシニフェラトキシン等のバニロイド、M3ムスカリン性アセチルコリン受容体
(mAChR)に作用するもの等の抗ムスカリン、バクロフェン等のGABAB作用薬を
含む鎮痙薬、ボツリヌス毒素、カプサイシン、αアドレナリン拮抗薬、抗痙攣薬、アミト
リプチリン等のセロトニン吸収阻害剤、ならびに神経成長因子拮抗薬を含む。様々な実施
形態において、薬物は、Reitz et al.,Spinal Cord 42:2
67-72(2004)に記載されるとおり、膀胱求心性神経に作用するものまたは遠心
性コリン作動性伝達に作用するものでもよい。
【0117】
一実施形態において、薬物は、神経病学的な排尿筋過活動及び/または排尿筋の低い柔
軟性に起因する尿失禁の治療用として知られているものから選択される。これらの種類の
薬物の例は、膀胱弛緩薬(例えば、オキシブチニン(顕著な筋弛緩活性及び局所麻酔活性
を有する抗ムスカリン剤)、プロピベリン、インプラトロプリウム、チオトロピウム、ト
ロスピウム、テロジリン、トルテロジン、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、
フラボキセート及び三環系抗うつ薬、膀胱及び尿道を支配する神経を遮断する薬物(例え
ば、バニロイド(カプサイシン、レシニフェラトキシン)、ボツリヌス毒素A)、または
排尿筋収縮強度、排尿反射、排尿筋括約筋協調不全を調整する薬剤(例えば、GABAb
作動薬(バクロフェン)、ベンゾジアザピン)を含む。別の実施形態において、薬物は、
神経病学的な括約筋不全に起因する尿失禁の治療用として知られているものから選択され
る。これらの薬物の例は、αアドレナリン作動薬、エストロゲン、βアドレナリン作動薬
、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン)を含む。さらに別の実施形態にお
いて、薬物は、排尿を促進することが知られているものから選択される(例えば、αアド
レナリン拮抗薬(フェントラミン)またはコリン作動薬)。さらに別の実施形態において
、薬物は、抗コリン作動薬(例えば、ジサイクロミン)、カルシウムチャネル遮断薬(例
えば、ベラパミル)、トロパンアルカロイド(例えば、アトロピン、スコポラミン)、ノ
シセプチン/オルファニンFQ及びベタネコール(例えば、m3ムスカリン作動薬、コリ
ンエステル)の中から選択される。
【0118】
特定の実施形態において、薬物は、トリアムシノロン、ブデソニド、またはプレドニゾ
ロン等のステロイドである。特定の実施形態において、薬物は、リドカイン、ゲムシタビ
ン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、トロスピウム、
トルテロジン、オキシブチニン、またはマイトマイシンCである。
【0119】
他のデバイスの特徴
【0120】
本明細書に記載のデバイスは、デバイスは、移植または回収手順の一部としての医療従
事者によるデバイスの検出または視認(例えばX線画像化または蛍光透視法)を容易化す
るために、少なくとも1つの放射線不透過性部分または構造を含んでもよい。一実施形態
において、筐体は、放射線不透過性充填材料、例えば硫酸バリウムまたは当該技術分野に
おいて知られている別の放射線不透過性材料を含む材料で構築される。いくつかの筐体は
、筐体が形成される材料の加工中に、硫酸バリウムまたは別の好適な材料等の放射線不透
過性充填剤をブレンドすることによって放射線不透過性に作製され得る。放射線不透過性
材料は、保持フレームを含む実施形態において保持フレームと関連付けられてもよい。超
音波画像化または蛍光透視法が、デバイスをin vivoで画像化するために使用され
てもよい。
【0121】
薬物送達デバイスは、例えば、固体薬物単位からの製剤の放出後に非吸収性デバイス本
体を除去するために、ストリング、ループ、または体腔からのデバイスの除去を容易にす
る他の構造等の回収特徴をさらに含んでもよい。ある場合において、デバイスは、ストリ
ングに尿道を通してデバイスを引かせることによって膀胱から除去されてもよい。デバイ
スは、カテーテルもしくは膀胱鏡のルーメン内または尿道内で、回収特徴によってデバイ
スを引いたときに、比較的狭いまたは線形の形状となるように構成されてもよい。
【0122】
薬物送達の方法
【0123】
本明細書に開示されるデバイス及び方法は、男性もしくは女性、成人もしくは小児にか
かわらず、ヒトにおける使用、または獣医学用途もしくは畜産用途等の動物における使用
に適合させることができる。したがって、「患者」という用語は、ヒトまたは他の哺乳動
物の対象を指し得る。
【0124】
特定の実施形態において、薬物を患者に投与する方法は、薬物送達デバイスを患者内に
挿入し、デバイスから薬物を放出させることを含む。例えば、デバイスは、本明細書に記
載される任意の特徴、または特徴の組み合わせを含み得る。一実施形態において、薬物は
、壁構造の第2の環状セグメントの第2の材料を通る拡散によって薬物貯蔵ルーメンから
放出される。壁構造が第1及び第2の壁構造を備える実施形態において、方法は、第2の
壁構造を通る拡散によって薬物貯蔵ルーメンから薬物を放出することを含む。
【0125】
特定の実施形態において、デバイスから薬物を放出させることは、水透過性壁部分また
はセグメントを通して水を吸収させることと(例えば、第2の壁構造/第2の材料のみを
通して、または第1及び第2の両方の壁構造/材料を通して薬物を可溶化する)、第2の
壁構造/材料を通る拡散によってデバイスから可溶化薬物を放出させることとを含む。す
なわち、特定の実施形態において、デバイスからの薬物の溶出は、デバイス内での薬物の
溶解後に起こる。体液がデバイスに進入し、薬物に接触して薬物を可溶化し、その後、可
溶化薬物がデバイスから拡散される。例えば、デバイスが膀胱内に移植される場合、薬物
は尿と接触して可溶化され得る。一実施形態において、デバイスから薬物を放出すること
は、第2の壁構造/材料、または第1及び第2の壁構造/材料の両方を通って吸収された
水で薬物を可溶化することを含む。
【0126】
特定の実施形態において、挿入することは、患者の尿道を通して、及び患者の膀胱内に
デバイスを配置することを含む。デバイスは、非外科的に移植されてもよく、移植手技が
終了した後、数日間、数週間、数ヶ月、またはそれ以上の間、薬物を送達することができ
る。一実施形態において、患者内に薬物送達デバイスを配置することは、配置機器を通し
て患者の体腔または内腔にデバイスを挿入することを含む。例えば、デバイスは、尿道等
の体の天然の内腔、または膀胱等の体腔内に位置付けられたカテーテルもしくは膀胱鏡等
の配置機器を通して配置されてもよい。配置機器は、典型的には、体内腔から除去され、
薬物送達デバイスは、所定の治療期間の間、膀胱または他の体腔内に留まる。
【0127】
デバイスは、いくつかの実施形態において、独立した手順で、または別の泌尿器学的も
しくは他の手順もしくは手術と併せて、他の手順の前、間または後に、患者の膀胱内に配
置されてもよい。デバイスは、術中、術後、またはその両方において、治療または予防の
ために局所及び/または局部組織に送達される1種以上の薬物を放出し得る。
【0128】
一例において、デバイスは、薬物送達デバイスを配置機器に通し、配置機器から体内に
デバイスを解放することにより配置される。デバイスが膀胱等の体腔内に配置される場合
、デバイスが配置機器から腔内に出ると、デバイスは、拡張されたまたはよりかさばる形
状となる。配置機器は、カテーテル、例えば、尿道カテーテル、または膀胱鏡等の任意の
好適なルーメンデバイスであり得る。これらの用語は、別途明示的な指示のない限り、本
明細書において交換可能に使用される。配置機器は、市販のデバイスであってもよいか、
または本発明の薬物送達デバイスに特別に適合させたデバイスであってもよい。一実施形
態において、薬物送達デバイスを患者内に配置することは、(i)デバイスを比較的直線
型の形状に弾性変形させること、(ii)デバイスを患者の尿道を通して挿入すること、
及び(iii)デバイスがコイル型保持形状となるようにデバイスを患者の膀胱内に放出
することを含む。
【0129】
薬物送達デバイスは、例えば、薬物送達デバイスが膀胱内に入る際に機器のルーメンを
出るまで、スタイレットまたは潤滑剤もしくは他の流体の流れによって駆動させて、配置
機器を通過させてもよい。したがって、デバイスは、成人または小児のいずれかの、治療
を必要とする男性または女性のヒト患者の膀胱内に移植され得る。
【0130】
一旦in vivoに配置されると、デバイスは、その後、1つ以上の状態の治療用の
1種以上の薬物を、配置部位における1つ以上の組織に局所的に、及び/または配置部位
から遠位の他の組織に局部的に放出し得る。放出は制御され得、長期間にわたって有効量
の薬物を放出し得る。その後、デバイスは、除去されるか、吸収されるか、排出されるか
、またはそれらのいくつかの組み合わせが行われてもよい。特定の実施形態において、デ
バイスは膀胱内に存在し、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、またはそれ以上等の所定の
期間にわたって薬物を放出する。
【0131】
一旦移植されると、デバイスは、望ましい所定の期間にわたり、所望量の薬物の長期的
、継続的、断続的、または周期的放出を提供し得る。実施形態において、デバイスは、長
期間、例えば12時間、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、または20、
25、30、45、60、もしくは90日間、またはそれ以上にわたって所望の投薬量の
薬物を送達し得る。薬物の送達速度及び用量は、送達されている薬物、及び治療されてい
る疾患または状態に依存して選択され得る。一実施形態において、薬物送達デバイスから
の薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって0次である。一実施形態において、
薬物送達デバイスからの薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって本質的に0次で
ある。
【0132】
デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、骨盤痛、膀胱炎、過活動膀胱症候群、膀胱
癌、神経因性膀胱、神経障害性もしくは非神経障害性の膀胱括約筋機能障害、感染症、術
後痛、または膀胱に送達される薬物で治療される他の疾患、障害及び状態を治療するため
に使用され得る。デバイスは、膀胱に局所的に、及び膀胱の近くの他の部位に局部的に薬
物を放出し得る。デバイスは、膀胱容量、伸展性、及び/または無抑制収縮の頻度等の膀
胱機能を改善する薬物、膀胱内もしくは他の近くの範囲における痛み及び不快感を低減さ
せる薬物、または他の効果を有する薬物、またはこれらの組み合わせの薬物を送達し得る
。膀胱で展開されたデバイスはまた、治療有効量の1種以上の薬物を、数ある中でも特に
、腎臓、尿道、尿管、陰茎、精巣、精嚢、輸精管、射精管、前立腺、膣、子宮、卵巣、卵
管の、またはこれらの組み合わせを含む身体の泌尿器官または生殖系内の他の場所等、体
内の他の泌尿生殖器へ送達し得る。例えば、薬物送達デバイスは、数ある他の疾患、障害
、及び症状の中でも特に、腎臓結石または線維症、勃起不全の処置に使用され得る。
【0133】
一実施形態において、デバイスは、異なる時間に放出される2つの薬物搭載量の薬物を
有し得る。第1の薬物搭載量は、比較的迅速な放出に適合され得る一方で、第2の薬物搭
載量は、より連続的な放出に適合され得る。
【0134】
後に、デバイスが非吸収性であるか、または別様に除去される必要がある場合等には、
デバイスが体から回収され得る。この目的のための回収デバイスは、当該技術分野で既知
であるか、または特別に製造されてもよい。デバイスはまた、例えば、排尿中に膀胱から
押し出されるように、デバイス全体が吸収されるか、またはデバイスが十分に分解するか
のいずれかであるために回収の必要がないように、完全にまたは部分的に生体分解性、吸
収性、または生物分解性であってもよい。デバイスは、いくらかの薬物、または好ましく
はほとんどもしくは全ての薬物が放出されるまで、回収または吸収され得ない。必要であ
れば、回収と同じ手順の間に、または後に、新しい薬物搭載デバイスが続けて移植されて
もよい。
【0135】
デバイスの作製方法
【0136】
本明細書に記載のデバイスは、一般に、デバイスの細長い弾性筐体を形成するための共
押出プロセスを用いることによって形成される:薬物貯蔵ルーメンに好適な量の薬物を入
れ(任意選択で、1種以上の賦形剤とともに製剤化される)、管状筐体の端部を閉鎖する
【0137】
薬物透過性部分が細長い筐体の全長に沿って延在しない実施形態において、デバイスを
作製する方法は、第1の材料を押出流路に導入することを含む押出プロセスによって第1
の環状セグメントを形成することと、1つ以上の第2の環状セグメントと一体的に接続さ
れた1つ以上の第1の環状セグメントを備える管状構造を形成するのに効果的な様式で、
事前に選択された位置で、第1の材料を含む押出流路に第2の材料を断続的に導入するこ
とと、を含む。具体的には、第2の環状セグメントにおいて、第1の材料が第1の弓形部
分を形成し、第2の材料が第2の弓形部分を形成し、第1及び第2の弓形部分が、一体的
に接続され、一緒になって第2の環状セグメントのアニュラスを画定するように、第1及
び第2の材料は押出流路内に位置する。方法は、管状構造を1つ以上の位置で切断して細
長い弾性筐体を形成することと、薬物を薬物貯蔵ルーメンに入れることと、薬物貯蔵ルー
メンの第1及び第2の端部を封止することとをさらに含む。この方法を用いると、得られ
るデバイスは、図8A~8D、図9A~9Bに示されるような管状壁構造を有し得る。
【0138】
別の実施形態において、デバイスを作製する方法は、第1の材料を押出流路に導入する
ことを含む押出プロセスによって第1の環状セグメントを形成することと、2つ以上の第
2の環状セグメントと一体的に接続された2つ以上の第1の環状セグメントを備える管状
構造を形成するのに効果的な様式で、選択された長さの押出流路に沿って第1の材料を交
換するために、第2の材料を押出流路に断続的に導入することによって第2の環状セグメ
ントを形成することとを含む。具体的には、第1の環状セグメントは、薬物に対して不透
過性である第1の材料で全体的に形成され、第2の環状セグメントは、薬物に対して透過
性であり、かつ第2の材料を通る拡散によってin vivoで薬物を放出するように構
成される第2の材料で主に形成される。「主に」という用語は、任意の遷移領域が、本明
細書の目的のために、第2の環状セグメントに含まれることを意味する。方法は、管状構
造を1つ以上の位置で切断して細長い弾性筐体を形成することと、薬物を薬物貯蔵ルーメ
ンに入れることと、筐体の第1及び第2の端部を封止することとをさらに含む。この方法
を用いると、得られるデバイスは、図10A~10Dに示されるような管状壁構造を有し
得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、管状壁構造は、該構造を通って延在する保持ルーメンを
含んでもよい。保持ルーメンには、任意選択で、ニチノールワイヤまたは他の超弾性ワイ
ヤ等の弾性保持フレームが入れられ、次いで、ルーメンの内部にフレームを保持するため
に封止されてもよく、かつ/または、任意選択で、ガス(例えば、空気)が充填され、次
いで、デバイスに薬物を入れる前または後に、その端部で封止されてもよい。別の実施形
態において、保持ルーメンは、デバイスに薬物を入れる前に、高デュロメータシリコーン
で充填されてもよく、次いで、管状壁構造をコイル型膀胱保持形状に付勢するのに効果的
な固体弾性形態に硬化される。
【0140】
他の実施形態において、方法は、非コイル形状に弾性変形可能なコイル型保持形状を有
するように管状構造を設定する熱的形状を含む。そのような実施形態において、保持ルー
メン及びフレームは、有利には必ずしも必要ではない場合がある。
【0141】
薬物送達デバイスを作製する方法のいくつかのステップまたはサブステップは、他の順
番で、または同時に行われてもよい。
【0142】
本開示は、下記の非限定的な実施例に関連して、さらに理解され得る。
【0143】
実施例
【0144】
膀胱内に薬物筐体を保持するのに好適な保持形状を有するように熱成形され、かつ、保
持フレームまたはワイヤなしで、ルーメンを通した膀胱内への挿入に好適な比較的直線型
の形状に弾性変形可能である管状薬物筐体を形成するために熱可塑性材料が使用され得る
かどうかを決定するために試験を行った。50重量パーセントの量の脂肪族ポリエーテル
系熱可塑性ポリウレタンTecoflex(商標)(EG-80A)(Lubrizol
Corp.)、及び50重量パーセントの量の脂肪族親水性ポリマー系熱可塑性ポリウ
レタンTecophilic(商標)(HP-93A-100)(Lubrizol C
orp.)を含有するブレンドされたポリマー材料を、約2.16mmの内径及び約0.
81mmの壁圧を有する管に成形した。
【0145】
本質的に、それぞれが独自のより小さい弓状部を有し、また共通したより大きな弓状部
を共有する2つの部分円構造からなる、コイル形状またはプレッツェル様形状を有するよ
うに、熱板、熱線銃、及びワイヤ固定具を使用して、約15cmの長さを有する管を曲げ
、熱成形した。次いで、乳糖錠(直径約2.16mm)を約13cmの長さ内に挿入し、
管の端部内に機械的に挿入された2.77mm(外径)のシリコーンスペーサによって端
部を封入した。
【0146】
脱気した脱イオン水(300g)をビーカーに注ぎ入れ、管系をビーカーに入れ、次い
で、パラフィンで上部を覆った状態で37℃のチャンバに入れた。
【0147】
このようにして、熱可塑性材料(例えば、ポリウレタンブレンド)が、保持フレームま
たはワイヤの非存在下で保持形状を有するように熱成形される管状薬物筐体を形成するた
めに使用され得ると結論付けられた。
【0148】
上記方法に従って別の長さの管を形成したが、本質的に、それぞれが独自のより小さい
弓状部を有し、また隣接する部分円構造(複数可)と共通したより大きな弓状部を共有す
る4つの部分円構造からなる複数コイル形状を有するように、熱板、熱線銃、及びワイヤ
固定具を使用して、曲げ、熱成形した。
【0149】
本明細書に記載される本開示の多くの変更例及び他の実行例が、上記の説明及び関連す
る図面に示される教示の恩恵を受けることは明白であろう。したがって、本開示は、開示
される特定の実行例に限定されるものではなく、変更例及び他の実行例が添付の特許請求
の範囲の範囲内に含まれることが意図されると理解されたい。特定の用語が本明細書にお
いて用いられるが、それらは、一般的かつ説明的な意味で使用されているに過ぎず、制限
する目的のためではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁構造及び第2の壁構造を備える筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水に対して透過性であり、
前記第1の壁構造は、前記薬物に対して不透過性であり、前記第2の壁構造は、前記薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記第2の壁構造を通る拡散によって放出可能であり、
前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において前記管の外周90度~180度の円弧角を有し
前記第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成物を含む、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記第2の壁構造は、約120度~約170度の円弧角を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の壁構造は、前記第1のポリウレタン組成物とは異なる第2のポリウレタン組成物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
者の膀胱内に前記デバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2の壁構造は、共押出プロセスによって一体的に一緒に形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の壁構造は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミドからなる群から選択される親水性ポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の壁構造は、前記第2の壁構造の厚さより大きい厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の壁構造は、約50A~約70Aのショアデュロメータ値を有する材料で形成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2の壁構造は、約70A~約65Dのショアデュロメータ値を有する材料で形成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コイル型保持形状は、少なくとも0.5cmの曲率半径を有する少なくとも1つのループを備える、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
(i)互いに隣接し、一緒になって管を形成する第1の壁構造及び第2の壁構造により画定される薬物貯蔵ルーメンであって、前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において前記管の外周の120度~170度の円弧角を有する薬物貯蔵ルーメンと、(ii)ニチノール保持フレームが配置された保持フレームルーメンと、を備える細長い筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物を含む複数のミニ錠剤と、を備え、
前記第1の壁構造は、前記薬物に対して不透過性であり、前記第2の壁構造は、前記薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記第2の壁構造のみを通る拡散によってin vivoで前記筐体から放出可能であり、
前記第1の壁構造は、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンを含み、前記第2の壁構造は、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記デバイスは、患者の膀胱内に前記デバイスを保持することに適合したコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した膀胱内への挿入に適合した非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成されている、膀胱内薬物送達デバイス
【請求項13】
前記第1の壁構造は、Carbothane(商標)AC-4075Aを含む、請求項12に記載のデバイス
【請求項14】
前記複数のミニ錠剤は、10~100個のミニ錠剤である、請求項12に記載のデバイス
【請求項15】
前記薬物貯蔵ルーメンの端部がポリマースペーサで封入されている、請求項12に記載のデバイス
【請求項16】
前記薬物はキナーゼ阻害剤を含む、請求項12に記載のデバイス
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
本明細書に記載される本開示の多くの変更例及び他の実行例が、上記の説明及び関連する図面に示される教示の恩恵を受けることは明白であろう。したがって、本開示は、開示される特定の実行例に限定されるものではなく、変更例及び他の実行例が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されると理解されたい。特定の用語が本明細書において用いられるが、それらは、一般的かつ説明的な意味で使用されているに過ぎず、制限する目的のためではない。
また、本発明は以下を提供する。
[1]
互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁構造及び第2の壁構造を備える筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水に対して透過性であり、
前記第1の壁構造は、前記薬物に対して不透過性であり、前記第2の壁構造は、前記薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記第2の壁構造を通る拡散によってin
vivoで放出可能であり、
前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において、前記管の断面積の90パーセント未満を占め、
前記第1の壁構造は、第1のポリウレタン組成物を含む、薬物送達デバイス。
[2]
前記第2の壁構造は、前記断面において前記管の外周の約15度~約90度の円弧角を有する、[1]に記載のデバイス。
[3]
前記第2の壁構造は、前記第1のポリウレタン組成物とは異なる第2のポリウレタン組成物を含む、[1]に記載のデバイス。
[4]
前記デバイスは、ワイヤ保持フレームの非存在下で、患者の膀胱内に前記デバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成される、[1]に記載のデバイス。
[5]
前記第1及び第2の壁構造は、共押出プロセスによって一体的に一緒に形成される、[1]に記載のデバイス。
[6]
前記第2の壁構造は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミドからなる群から選択される親水性ポリマーである、[1]に記載のデバイス。
[7]
前記第1の壁構造は、前記第2の壁構造の厚さより大きい厚さを有する、[1]に記載のデバイス。
[8]
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、[1]に記載のデバイス。
[9]
前記第1及び第2の壁構造で形成された前記管の第1の端部と一体的に形成及び接続されたセグメントである端部を有する環状壁セグメントをさらに備え、前記環状壁セグメントは、前記薬物貯蔵ルーメンのさらなる部分を画定するルーメンを画定し、また前記環状壁セグメントは、前記第1のポリウレタン組成物で全体的に形成される、[1]に記載のデバイス。
[10]
前記第1及び第2の壁構造は、各々、熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記管は、患者の膀胱内に前記デバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であり、
前記管は、前記保持形状を有するように設定された熱的形状である、[1]~[9]のいずれか一項に記載のデバイス。
[11]
第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンを有する細長い弾性筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記筐体は、
前記薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグメントと、
前記薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成され、かつ第2の環状セグメント中の前記第2の材料を通る拡散によってin vivoで前記薬物を放出するように構成される、前記第2の環状セグメントと、を備える管状壁構造を備え、
前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形成及び接続された第1の端部を有する、薬物送達デバイス。
[12]
前記第2の環状セグメントは、前記第1の材料及び前記第2の材料で形成される、[11]に記載のデバイス。
[13]
前記第2の環状セグメントにおいて、前記第1の材料は、第1の弓形部分を形成し、前記第2の材料は、第2の弓形部分を形成し、前記第1及び第2の弓形部分は、一体的に接続され、一緒になって前記第2の環状セグメントのアニュラスを画定する、[12]に記載のデバイス。
[14]
前記第2の弓形部分は、15度~120度の円弧角を有する、[13]に記載のデバイス。
[15]
前記第2の弓形部分は、30度~60度の円弧角を有する、[13]に記載のデバイス。
[16]
前記第2の環状セグメントは、主に前記第2の材料で形成される、[11]に記載のデバイス。
[17]
前記第1及び第2の環状セグメントは、押出プロセスにおいて一緒に形成される、[11]に記載のデバイス。
[18]
前記管状壁構造は、前記第1の材料で全体的に形成され、かつ、前記第2の環状セグメントの対向する第2の端部と一体的に形成及び接続された第3の環状セグメントをさらに備える、[11]に記載のデバイス。
[19]
前記第2及び第3の環状セグメントは、前記押出プロセスにおいて一緒に形成される、[18]に記載のデバイス。
[20]
前記管状壁構造は、前記筐体の対向する端部間に全長(L )を有し、前記第2の環状セグメントは、前記全長(L )の5%~50%である長さ(L)を有する、[11]に記載のデバイス。
[21]
前記第1の材料は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、またはエチレン-酢酸ビニル(EVA)を含む、[11]に記載のデバイス。
[22]
前記第2の材料は、親水性熱可塑性ポリウレタンを含む、[11]に記載のデバイス。
[23]
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、[11]に記載のデバイス。
[24]
前記デバイスは、ワイヤ保持フレームの非存在下で、患者の膀胱内に前記デバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であるように構成される、[11]~[23]のいずれか一項に記載のデバイス。
[25]
少なくとも1つの熱可塑性材料を含む壁構造によって囲まれた閉鎖された薬物貯蔵ルーメンを有する管状筐体と、
前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備え、
前記壁構造の少なくとも一部は水透過性であり、
前記壁構造の少なくとも一部は前記薬物に対して透過性であるため、前記薬物は、前記壁構造の薬物透過性部分を通る拡散によってin vivoで放出可能であり、
前記管状筐体は、患者の膀胱内にデバイスを保持するのに好適なコイル型保持形状から、前記患者の尿道を通した、及び膀胱内への前記デバイスの挿入に好適な非コイル形状まで弾性変形可能であり、
前記管状筐体は、前記コイル型保持形状を有するように設定された熱的形状である、薬物送達デバイス。
[26]
前記壁構造は、
前記薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグメントと、
前記薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成され、かつ第2の環状セグメント中の前記第2の材料を通る拡散によってin vivoで前記薬物を放出するように構成される、前記第2の環状セグメントと、を備え、
前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形成及び接続された第1の端部を有する、[25]に記載のデバイス。
[27]
前記壁構造は、前記薬物に対して不透過性である第1の壁構造と、前記薬物透過性部分である第2の壁構造と、を備え、前記第1及び第2の壁構造は、互いに隣接し、一緒になって前記管状筐体を形成する、[25]に記載のデバイス。
[28]
前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水透過性である、[27]に記載のデバイス。
[29]
前記第1の壁構造は、第1の熱可塑性ポリウレタン組成物を含み、前記第2の壁構造は、前記第1の熱可塑性ポリウレタン組成物とは異なる第2の熱可塑性ポリウレタン組成物を含む、[27]に記載のデバイス。
[30]
前記第2の壁構造は、前記管の縦軸に垂直な断面において、前記管の断面積の90パーセント未満を占める、[27]に記載のデバイス。
[31]
前記第2の壁構造は、前記断面において前記管の外周の約15度~約90度の円弧角を有する、[30]に記載のデバイス。
[32]
前記第1及び第2の壁構造は、共押出プロセスにおいて一体的に形成される、[27]に記載のデバイス。
[33]
前記第2の壁構造は、親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル、及び親水性ポリアミドからなる群から選択される親水性ポリマーである、[27]に記載のデバイス。
[34]
前記第1の壁構造は、約50A~約70Aのショアデュロメータ値を有する材料で形成される、[33]に記載のデバイス。
[35]
前記第2の壁構造は、約70A~約65Dのショアデュロメータ値を有する材料で形成される、[34]に記載のデバイス。
[36]
前記コイル型保持形状は、少なくとも0.5cmの曲率半径を有する少なくとも1つのループを備える、[25]に記載のデバイス。
[37]
前記薬物は、複数の固体錠剤の形態である、[25]~[36]のいずれか一項に記載のデバイス。
[38]
第1の端部と第2の端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンを有する細長い弾性筐体を備える薬物送達デバイスを作製する方法であって、
第1の材料を押出流路に導入することを含む押出プロセスによって、送達される薬物に対して不透過性である前記第1の材料で第1の環状セグメントを全体的に形成することと、
1つ以上の第2の環状セグメントと一体的に接続された1つ以上の第1の環状セグメントを備える管状構造を形成するのに効果的な事前に選択された位置で、前記第1の材料を含む前記押出流路に第2の材料を断続的に導入することによって、送達される前記薬物に対して透過性である前記第2の材料で第2の環状セグメントを少なくとも部分的に形成することと、を含む、方法。
[39]
前記管状構造を1つ以上の位置で切断して前記細長い弾性筐体を形成することと、
前記薬物を前記薬物貯蔵ルーメンに入れることと、
前記筐体の前記第1及び第2の端部を封止することと、をさらに含む、[38]に記載の方法。
[40]
前記第2の環状セグメントは、前記第1の材料及び前記第2の材料で形成される、[38]に記載の方法。
[41]
前記第2の環状セグメントにおいて、前記第1の材料は、第1の弓形部分を形成し、前記第2の材料は、第2の弓形部分を形成し、前記第1及び第2の弓形部分は、一体的に接続され、一緒になって前記第2の環状セグメントのアニュラスを画定する、[40]に記載の方法。
[42]
前記第2の弓形部分は、15度~120度の円弧角を有する、[41]に記載の方法。
[43]
前記第2の弓形部分は、30度~60度の円弧角を有する、[41]に記載の方法。
[44]
前記第2の環状セグメントは、主に前記第2の材料で形成される、[38]に記載の方法。
[45]
前記方法は、1つの第2の環状セグメントの対向する端部で一体的に接続された2つの第1の環状セグメントを備える管状構造を形成するための様式で行われる、[38]に記載の方法。
[46]
前記第1の材料は、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、またはエチレン-酢酸ビニル(EVA)を含む、[38]に記載の方法。
[47]
前記第2の材料は、親水性熱可塑性ポリウレタンを含む、[46]に記載の方法。
[48]
非コイル形状に弾性変形可能なコイル型保持形状を有するように前記環状構造を設定する熱的形状をさらに含む、[38]~[47]のいずれか一項に記載の方法。
[49]
薬物を必要とする患者にそれを投与する方法であって、
(i)互いに隣接し、一緒になって薬物貯蔵ルーメンを画定する管を形成する第1の壁構造及び第2の壁構造を有する筐体と、(ii)前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備えるデバイスを前記患者内に挿入することであって、前記第1の壁構造は、前記薬物に対して不透過性であり、かつポリウレタンを含有し、前記第2の壁構造は、前記薬物に対して透過性であり、かつ前記管の外側表面積の90パーセント未満を占め、前記第2の壁構造、または前記第1の壁構造及び前記第2の壁構造の両方が、水に対して透過性である、挿入することと、
前記薬物を可溶化するために、前記第2の壁構造のみを通して、または前記第1及び第2の壁構造の両方を通して水を吸収させることと、
前記第2の壁構造を通る拡散によって前記デバイスから前記可溶化薬物を放出させることと、を含む、方法。
[50]
前記挿入することは、前記患者の尿道を通して、及び前記患者の膀胱内に前記デバイスを配置することを含む、[49]に記載の方法。
[51]
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって0次である、[49]に記載の方法。
[52]
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって本質的に0次である、[49]に記載の方法。
[53]
前記薬物送達デバイスを前記患者内に配置することは、
前記デバイスを比較的直線型の形状に弾性変形させることと、
前記デバイスを前記患者の尿道を通して挿入することと、
前記デバイスがコイル型保持形状となるように前記デバイスを前記患者の膀胱内に放出することと、を含む、[49]~[52]のいずれか一項に記載の方法。
[54]
薬物を必要とする患者にそれを投与する方法は、
(i)管状壁構造と、第1の閉鎖端部と第2の閉鎖端部との間に延在する薬物貯蔵ルーメンとを備える細長い弾性筐体と、(ii)前記薬物貯蔵ルーメン内に収容された薬物と、を備えるデバイスを前記患者に挿入することであって、前記壁構造は、前記薬物に対して不透過性である第1の材料で全体的に形成された第1の環状セグメントと、前記薬物に対して透過性である第2の材料で少なくとも部分的に形成された第2の環状セグメントとを備え、前記第1の環状セグメントは、前記第2の環状セグメントの第1の端部と一体的に形成及び接続された第1の端部を有する、挿入することと、
前記薬物を可溶化するために前記管状壁構造を通して水を吸収させることと、
前記管状壁構造の前記第2の環状セグメントを通る拡散によって前記デバイスから前記可溶化薬物を放出させることと、を含む、方法。
[55]
前記挿入することは、前記患者の尿道を通して、及び前記患者の膀胱内に前記デバイスを配置することを含む、[54]に記載の方法。
[56]
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも36時間にわたって0次である、[54]に記載の方法。
[57]
前記薬物送達デバイスからの前記薬物の放出速度は、少なくとも7日間にわたって本質的に0次である、[54]に記載の方法。
[58]
前記薬物送達デバイスを前記患者内に配置することは、
前記デバイスを比較的直線型の形状に弾性変形させることと、
前記デバイスを患者の尿道を通して挿入することと、
前記デバイスがコイル型保持形状となるように前記デバイスを前記患者の膀胱内に放出することと、を含む、[54]~[57]のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】